(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】自動電気解剖学的(EA)データポイント選択
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20241108BHJP
A61B 5/343 20210101ALI20241108BHJP
A61B 5/349 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/343
A61B5/349
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533861
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 IB2022061028
(87)【国際公開番号】W WO2023105324
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】コーエン・ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】カッツ・ナタン・シャロン
(72)【発明者】
【氏名】ドヴォルキン・ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】ザール・リオール
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127CC06
4C127GG01
4C127GG15
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための方法であって、診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信することを含む、方法。EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントについて信頼レベル受信される。データポイントに対する1つ以上のデータ収集パラメータは、不整脈のタイプ及び信頼レベルに基づいて自動的に設定される。自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップが構築され、提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための装置であって、
診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信するように構成されたインタフェースと、
プロセッサであって、
前記EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントの信頼レベルを受信し、
前記不整脈のタイプ及び前記信頼レベルに基づいて、前記データポイントに対する1つ以上のデータ収集パラメータを自動的に設定し、
前記自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、前記取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップを構築し、提示するように構成された、プロセッサと、を備える、装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、追加のデータポイントの取得に応答して前記受信された信頼レベルを調整するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信頼レベルが、予め設定された必要な信頼レベルである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記データ収集パラメータが、心周期長、前記データポイントを取得するカテーテルの位置、前記カテーテルの接触力、局所活性化時間(LAT)、双極電位、及び単極電位からなるタイプの群から選択される少なくとも1つのパラメータタイプを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記不整脈のタイプが、心室頻脈、粗動、及び心房細動のうちの1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記不整脈のタイプに基づいて前記データ収集パラメータのうちの少なくとも1つを選択するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、所与のデータ収集パラメータの値に対する制限を自動的に調整し、値が前記制限内にある前記データポイントのみを前記EAマップに含めるように更に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記所与のデータ収集パラメータの前記値のヒストグラムを構築し、前記ヒストグラムから前記制限を導出することによって、前記制限を自動的に調整するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、遡及的に設定されたデータ収集パラメータを使用して、前記EAマップをオフラインで構築及び提示するように更に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための方法であって、
診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信することと、
前記EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントの信頼レベルを受信することと、
前記不整脈のタイプ及び前記信頼レベルに基づいて、前記データポイントに対する1つ以上のデータ収集パラメータを自動的に設定することと、
前記自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、前記取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップを構築し、提示することと、を含む、方法。
【請求項11】
追加のデータポイントの取得に応答して、前記受信された信頼レベルを調整することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信頼レベルが、予め設定された必要な信頼レベルである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記データ収集パラメータが、心周期長、前記データポイントを取得するカテーテルの位置、前記カテーテルの接触力、局所活性化時間(LAT)、双極電位、及び単極電位からなるタイプの群から選択される少なくとも1つのパラメータタイプを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記不整脈のタイプが、心室頻脈、粗動及び心房細動のうちの1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上のデータ収集パラメータを設定することが、前記不整脈のタイプに基づいて前記データ収集パラメータのうちの少なくとも1つを選択することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
所与のデータ収集パラメータの値に対する制限を自動的に調整することと、値が前記制限内にある前記データポイントのみを前記EAマップに含めることとを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記制限を自動的に調整することが、前記所与のデータ収集パラメータの前記値のヒストグラムを構築することと、前記ヒストグラムから前記制限を導出することとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
遡及的に設定されたデータ収集パラメータを使用して、前記EAマップをオフラインで構築及び提示することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、心臓内電気解剖学的(EA)信号の分析に関し、具体的には、EAマップを生成するためのEAデータポイントの自動選択に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓内信号のコンピュータ支援分析は、以前に特許文献において提案された。例えば、米国特許出願公開第2018/0125575号は、誘電特性に基づく組織損傷評価及び/又は作成のためのデバイス及び方法を説明している。いくつかの実施形態では、1つ以上のプローブ周波数は、組織(例えば、心筋組織)に近接する電極を含む電極を介して送達される。測定された誘電特性(インピーダンス特性など)は、任意選択で他の既知の及び/又は推定された組織特性と共に、組織の損傷状態を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、発生中の損傷状態は、損傷の治療形成(例えば、電気伝送特性を変更するための心臓組織のアブレーション)中に監視される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【
図1】本開示の例示的な実施形態による、電気解剖学的(EA)マッピングのシステムの概略的な描写図である。
【
図2A】本開示の例示的な実施形態による、それぞれ、アルゴリズム閾値を下回る、及び上回るデータポイントの総数に対するアルゴリズム制御された制限設定を伴う、収集データのヒストグラムの概略図である。
【
図2B】本開示の例示的な実施形態による、それぞれ、アルゴリズム閾値を下回る、及び上回るデータポイントの総数に対するアルゴリズム制御された制限設定を伴う、収集データのヒストグラムの概略図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、
図2のヒストグラムを使用して自動EAデータポイント選択を実行するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、
図3のアルゴリズムを使用した自動遡及的EAデータポイント選択のための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
概要
心不整脈に罹患している患者では、電気活動インパルスは、病理組織領域で生成されてもよく、及び/又は心臓組織内の病理経路を辿ってもよい。電気解剖学的(EA)検査では、医師の目標のうちの1つは、例えば、多電極カテーテルを患者の心臓に挿入し、カテーテルを介して心臓内ECG信号を測定することによって、そのような病理学領域及び/又は電気活動の経路を識別することである。典型的には、カテーテルは、心内膜における電気活動を測定するために、血管を通って心臓に通される。
【0005】
電気活動を測定するために、カテーテルのいくつかの電極を心臓組織と接触させて、電極とウィルソン中心端子(Wilson Central Terminal)グランドなどのグランドとの間、又はカテーテルの2つの電極間の電位差を取得する。カテーテル電極とグランドとの間の電位差は、電極の単極信号と呼ばれる。カテーテルの2つの電極間の電位差は、電極間の双極信号と呼ばれる。
【0006】
EA検査中に電気活動のインパルスが辿る経路を理解するために、医師は、インパルスが電極の各々の下を通過した時間を知る必要がある。この目的のために、(i)心室の壁組織上の測定された場所と、(ii)EPマッピングシステムがEAマップを生成することができるそれぞれの電気的活性化信号とを含むデータポイントのセットが取得される。不整脈を診断するのに有用なEAマップの一例は、心室の壁組織の領域の局所活性化時間(LAT)マップと呼ばれるEAタイミング図マップである。
【0007】
LATマップを生成するために、プロセッサは、以下で電位図(EGM)と呼ばれる、心臓内の様々な点で収集された心臓内ECG信号を分析して、各信号における(すなわち、EGMの波形における)活性化を識別し、活性化に注釈を付けてLAT値を計算しなければならない場合がある。
【0008】
注釈時間は、カテーテルによって測定される、心臓インパルスが特定の心臓組織の場所を通過した時間を表す。異なる時間に異なるEGM信号が収集されるので、異なる時間に収集された信号を整列させるためにゲート測定技法が使用されることがある。心臓電気生理学の分野では、ゲート測定に使用される「ゲート」は、基準注釈と呼ばれる。例としては、体表面ECGのQRS信号のRピーク、冠静脈洞内で検出された活性化、右心房上部で検出された活性化が挙げられ、又は複数の信号によって供給されるより高度な方法が基準注釈として使用されてもよい。LAT値は、マッピング注釈時間と基準注釈時間との間の差として定義される。
【0009】
典型的には、全ての心拍を使用して、EAマップを更新することができる。作業者は、各心拍中に取得された「良好な」データポイントのみを収集するために、システムの基準を定義する必要がある。これらのデータポイントは、EAマップに適用され、それらのEA特性に従って色分けされる。マップの色分けに基づいて、医師は不整脈を正確に診断することができる。しかしながら、データポイントの良好な分布を提供するために最良の基準を選択することと、マップの理解に寄与する「良好な」ポイントのみを選択することとの両方が困難である。
【0010】
診断値のEAマップを取得するために、EAマッピングシステムの作業者は、システムが「関連する」データポイントのみを収集するためのEAパラメータ(例えば、他のパラメータの中でも、周期長、カテーテルの安定性、LAT値の安定性)を定義する必要がある。これらのポイントは、EAマップに適用され、その色分けに寄与する。この色分けに基づいて、医師は疾患を正確に診断することができる。
【0011】
課題は、一方では、ポイントの良好な分布を提供する最良の基準を選択することであり、他方では、マップの理解に寄与する「関連する」ポイントのみを選択することである。ときには、処置中に、例えば患者に生じる変化に従って、パラメータを調整しなければならない。パラメータを正しく設定するには、熟練と時間を必要とする。
【0012】
以下に説明する本開示の実施形態は、EAパラメータ選択を自動的に実行するように構成された技法及びアルゴリズムを提供する。更に、いくつかの実施形態は、ユーザが、最初に拒絶されたデータポイントを含む他のマップ、又は異なる設定を有する同じマップを生成することを可能にする。この目的のために、これらの実施形態では、プロセッサは、全ての取得されたデータポイントを収集し、マップが生成され得るポイントクラウドとして機能するようにそれらをメモリに格納する。
【0013】
いくつかの実施形態では、作業者は、最初に、追跡される不整脈タイプを選択し、データポイントに望ましい信頼レベル(以下、「信頼レベル」と呼ばれる)を選択し、次いで、それらの入力及び収集データに基づいて、アルゴリズムは、データポイントのための収集パラメータを自動的に設定する。
【0014】
信頼レベルは、調整可能なレベル(例えば、アルゴリズムによって自動的に取得される信頼レベルであって、低い信頼レベルから開始し、アルゴリズムは、より高品質のポイントが収集されるにつれてバーを上げる)であり得る。或いは、信頼レベルは、固定された必要な信頼レベル(例えば、到達すべき目標最小信頼レベルとして予め設定されたレベル)であり得る。一実施形態では、信頼レベルは、より多くのデータポイントが取得されるにつれて後に調整される初期値を有する。別の実施形態では、信頼レベルは、アルゴリズム又はユーザによって予め設定された必要な信頼レベルである。
【0015】
例えば、信頼レベル(調整可能又は固定)に基づいて、プロセッサは、取得パラメータのうちの少なくともいくつかの制限をどの程度厳密に設定するかを決定する。プロセッサは、自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップを構築して提示する。
【0016】
例えば、作業者が粗動をマッピングしたい場合、アルゴリズムは、以下のように、関連するデータポイントのみを収集するために関連する取得パラメータを設定する。
1.周期長(CL)は、所与の許容誤差内で安定しており、したがって、システムは、「同じ」CL値を有するデータポイントの95%を捕捉する(すなわち、CLオフ許容誤差を有する取得されたデータポイントをドロップする)。
2.LAT安定性及び位置安定性パラメータは、高品質のデータポイントが捕捉されることを可能にするために非常に高く(例えば、0と1との間の範囲のレベルで、半分などの最小値を上回る信頼レベルのレベルを設定することによって)設定されるべきである。
3.EAマップは心室全体にわたって均一であるべきであるので、マップは高密度であるべきである(例えば、分離された位置のデータポイントは破棄される)。
4.データポイントの信号対雑音比(SNR)は、所与の閾値を上回るように設定される。
【0017】
別の例として、作業者が心房細動(AFib)をマッピングしたい場合、アルゴリズムは、LAT安定性及びLAT領域一貫性を含む関連する取得パラメータを設定する。
【0018】
更に別の例として、作業者が心室頻脈(VT)細動をマッピングしたい場合、アルゴリズムは、ECGパターンマッチング、CL安定性、位置安定性、及びLAT安定性の関連する取得パラメータを設定する。
【0019】
一実施形態では、プロセッサがデータポイントを集約するとき、プロセッサは、各パラメータについてヒストグラムを生成し、例えば、事前定義された範囲内に入るデータポイントのみを維持する。最初に、取得されたデータポイントの数が少ないとき、プロセッサは広い事前定義された範囲を使用する。取得されたデータポイントの数が増加するにつれて、プロセッサは範囲を狭め、これは、プロセッサが、ヒストグラムを作成するデータポイントの関連する部分を決定するためにより厳しい制限を適用することを意味する。
【0020】
他の実施形態では、作業者がデータポイントを収集するためのパラメータを最初に選択する代わりに、開示されたアルゴリズムが最初に実行されて、システムに、事例のためにカテーテルによって捕捉された全てのデータポイントの集約を開始させる。十分なデータポイントが収集されると、アルゴリズムは自動的にデータを分析し、更なるデータポイントを収集するために取得パラメータの最良の組み合わせを統計的に選択する。
【0021】
例えば、プロセッサは、治療中の不整脈のタイプの変化(例えば、アブレーションによって粗動に低減された心房細動)を識別し、取得パラメータ設定をリアルタイムで調整して、患者の現在の状態に対する関連するEAマップを生成し得る。この目的のために、アルゴリズムは、LAT値に対する制約をより狭い制限内になるように厳しくしてもよい。
【0022】
前述の自動化されたプロセスを提供することによって、侵襲的心臓マッピングシステムの作業者によるより低い作業負荷で、EAマップの精度を改善することができる。
【0023】
システムの説明
図1は、本開示の一実施形態による、電気解剖学的(EA)マッピングのシステム21の概略的な描写図である。
図1は、患者25の心臓23のEAマッピングを実施するために、Pentaray(登録商標)EAマッピングカテーテル29を使用している医師27を示す。カテーテル29は、その遠位端に、機械的に可撓性であり得る1つ以上のアーム20を備え、各アームに1つ以上の電極22が連結されている。マッピング手順中に、電極22は、心臓23の組織から及び/又は心臓23の組織への単極信号及び/又は双極信号を取得及び/又は注入する。
【0024】
コンソール30内のプロセッサ28は、電気インタフェース35を介してこれらの信号を受信し、これらの信号に含まれる情報と、データポイントの自動選択のための開示されたアルゴリズムとを使用して、LATマップ又はCLマップなどのデータポイントからEAマップ40を生成する。プロセッサ28は、データポイント及びマップをメモリ33に格納し、メモリ33は、必要な開示されたソフトウェアも保持する。処置中及び/又は処置後に、プロセッサ28は、ディスプレイ26上にEAマップ40を表示してもよい。ユーザインタフェース100のユーザ制御部32は、上述のように、更なる更新を防止するために、医師27がプロセッサ28と通信してEAマップ40の各部分をロックすることを可能にする。制御部32には、例えば、トラックボール及び制御ノブ、並びにキーボードが含まれ得る。ユーザインタフェース100の他の要素には、ディスプレイ26のタッチスクリーン機能が含まれ得る。
【0025】
処置中に、追跡システムを使用して感知電極22のそれぞれの場所を追跡することで、信号の各々とその信号を取得した場所とを関連付けることができる。例えば、米国特許第8,456,182号で説明され、その開示が参照により本明細書に組み込まれるBiosense-Webster(Irvine California)製のActive Current Location(ACL)システムが使用され得る。ACLシステムでは、プロセッサは、感知電極22の各々と患者25の皮膚に連結されている複数の表面電極24との間で測定されたインピーダンスに基づいて、電極のそれぞれの場所を推定する。例えば、3本の表面電極24を患者の胸部に、別の3本の表面電極を患者の背部に、連結してもよい。例示しやすいように、1本の表面電極のみを
図1に示す。患者の心臓23内部の電極22と表面電極24との間に電流が流される。プロセッサ28は、表面電極24で測定して得られた電流振幅間(又はこれらの振幅によって示されるインピーダンス間)の比及び患者の身体上の電極24の既知の位置に基づいて、患者の心臓内の全ての電極22の推定される場所を計算する。こうして、プロセッサは、電極22から受信した任意の所与のインピーダンス信号と信号が取得された場所とを関連付けることができる。
【0026】
図1に示す例示的な図示は、単に概念を明確にするために選んだものである。電圧信号の測定に基づく方法など、他の追跡方法が用いられてもよい。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense Webster製)などの他のタイプの感知カテーテルが、同等に用いられてもよい。組織センサとの接触部分は、EAマッピングカテーテル29の遠位端に取り付けられてもよい。上述のように、アブレーションに使用される電極などの他のタイプの電極が、必要な位置データを取得するための電極22に取り付けられて同様の方法で利用されてもよい。実施形態では、1つ以上の電極22の測定値は、その物理的接触品質が悪いと示される場合に廃棄され得るが、他の電極の測定値は、その接触品質が十分であると示される場合に有効と見なされ得る。したがって、この場合、位置データを収集するために使用されるアブレーション電極が、感知電極と見なされる。任意選択的な実施形態では、プロセッサ28は、測定中に電極22のそれぞれと心室の内面との間の物理的接触の質を示すように更に構成されている。
【0027】
プロセッサ28は、典型的には、本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアと共に汎用コンピュータを備える。特に、プロセッサ28は、
図3に含まれている本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、これは、以下で更に記載のように、プロセッサ28が本開示の工程を行うことを可能にする。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、或いは、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。
【0028】
ヒストグラムを使用する自動EAデータポイント選択
EAマッピング中、取得されたデータポイントの総数は、典型的には、数百から1万を優に超える数に増加する。上述したように、開示されたアルゴリズムは、システムに、ある事例についてカテーテルによって捕捉された全てのデータポイントの集約を開始させる。最初に、アルゴリズムは、取得パラメータに対して広い事前定義された制限を有することによって、大部分又は全ての取得されたデータポイントを使用する。データポイントの数が増加するにつれて、アルゴリズムは、例えば、信頼レベルの実際のレベル対予め設定された目標レベルに従って、及び/又は取得されたデータポイントの数に対する閾値の増加のカスケードによって設定された条件を満たすように、制限のうちの少なくともいくつかを徐々に狭める。
【0029】
例えば、データポイントの数が第1の閾値(例えば、2000データポイント)を超えて増加するにつれて、プロセッサは、収集データのヒストグラムにわたる制限として
図2に視覚化される、基準のセットを満たすデータポイントのみを維持し始めるために、開示されるアルゴリズムを適用してもよい。
【0030】
図2A及び
図2Bは、本開示の一実施形態による、それぞれ、データポイントの低い総数(例えば、第1の閾値未満)及び高い総数(例えば、>10,000)についての、アルゴリズム制御された下限212及び上限214を有する収集データのヒストグラム202~210の概略図である。
【0031】
データポイントは、粗動タイプの心臓律動問題のEAマッピング中に収集される。
【0032】
図2Aに見られるように、データポイントの総数が閾値未満(例えば、1218<2000)であるとき、アルゴリズムは、(例えば、LAT安定性の)ヒストグラム全体、又はほぼ全体(例えば、位置安定性)を捕捉するために、制限214を最大に設定することによって、EAマップを構築するために全ての利用可能なデータポイントを使用する。
【0033】
データポイントの総数が閾値を上回る(例えば、2000を上回る)とき、プロセッサは、制限214を
図2Bに示される最小値に徐々に狭める(例えば、閾値のカスケードに従って低下させる)。
【0034】
図2Bに見られるように、データポイントの総数が閾値をはるかに上回る(例えば、13341>2000)時までに、アルゴリズムは、データポイントの一部のみ(例えば、ヒストグラムの一部)を使用して、例えば、LAT安定性及び位置安定性ヒストグラムに対するより厳しい制限214を使用して、EAマップを構築する。
【0035】
上述したように、プロセッサは、データポイントクラウド全体を保存する。したがって、プロセッサは、EAデータポイントの自動選択を実行して、新しいEAマップをオフラインで生成することができる。例えば、基準信号が誤っているか又は誤動作していると見なされた場合、プロセッサは、別の基準信号を使用し、自動プロセスを再実行して、より関連するEAマップを生成し得る。
【0036】
図2A及び
図2Bに示される例示的な図は、概念を明確化する目的のために選択されているに過ぎない。例えば、粗動以外のタイプの不整脈では、異なるパラメータがアルゴリズムによって次第に制限され得る。
【0037】
自動EAデータポイント選択方法
図3は、本開示の一実施形態による、
図2のヒストグラムを使用して自動EAデータポイント選択を実行するための方法及びアルゴリズムを概略的に説明するフローチャートである。図示されたプロセスは、ユーザが必要な信頼レベルを設定するアルゴリズム入力ステップ302と、ユーザがマッピングする不整脈のタイプを設定するステップ304とを含む。不整脈のタイプは、一般に、例えば、患者の病歴からユーザに知られている。信頼レベル及び不整脈のタイプに基づいて、アルゴリズム308は以下のように設定する。
a)データ収集パラメータ310(LAT、双極電位、位置など)。
b)
図2A及び
図2BのLAT安定性ヒストグラム204及び位置安定性ヒストグラム206それぞれの変化する制限に示されるように、例えば、取得されたデータポイントの総数306に基づいて適合するデータポイントのみを維持するための、パラメータの少なくとも一部に対する可変制限311(例えば、
図2の制限212及び214)。
【0038】
図3に示されている例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。本実施形態はまた、カテーテル取得信号と並行してECG信号を受信するなど、アルゴリズムの追加のステップを含んでもよい。このステップ及び他の可能なステップは、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書における開示内容から意図的に省略されている。
【0039】
自動遡及的EAデータポイント選択
上述したように、プロセッサは、開示されたアルゴリズムを使用して代替又は追加のEAマップの生成を可能にするために、データポイントクラウド全体を保存する。
【0040】
図4は、本開示の一実施形態による、
図3のアルゴリズムを使用した自動遡及的EAデータポイント選択のための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。プロセスは、受信ステップ402で始まり、ユーザは、
図3のアルゴリズムを使用して自動的に生成されたEAマップを受信する(例えば、ディスプレイ上でレビューする)。
【0041】
決定ステップ404において、ユーザがマップが正しい、又は関連していると判断した場合、プロセスは終了する。一方、ユーザがマップに欠陥がある、準最適である、又は無関係であると判断した場合、ユーザは、アルゴリズムを再実行することによって、改善されたマップを生成することができる。
【0042】
この目的のために、ユーザは、設定調整ステップ406において、初期アルゴリズム設定を調整又は変更する。例えば、ユーザが、基準電極(体表面電極又はカテーテル電極のいずれか)が良好に機能していないことを判断した場合、ユーザは、基準電極を変更することができる。別の例として、信頼レベルが最適でなかったことをユーザが判断した場合、ユーザは信頼レベルレベルを調整し得る。
【0043】
最後に、オフライン実行ステップ408において、ユーザはアルゴリズムを再実行し、プロセッサはリアルタイムEAデータポイント選択及びEAマップ生成を模倣する。
【0044】
上述した本開示の一実施形態は、電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための方法を提供し、この方法は、診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信することを含む。EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントについて信頼レベル受信される。データポイントに対する1つ以上のデータ収集パラメータは、不整脈のタイプ及び信頼レベルに基づいて自動的に設定される。自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップが構築され、提示される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本方法は、追加のデータポイントの取得に応答して、受信された信頼レベルを調整することを更に含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、信頼レベルは、予め設定された必要な信頼レベルである。
【0047】
一実施形態では、データ収集パラメータは、心周期長、データポイントを取得するカテーテルの位置、カテーテルの接触力、局所活性化時間(LAT)、双極電位、及び単極電位からなるタイプの群から選択される少なくとも1つのパラメータタイプを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、不整脈のタイプは、心室頻脈、粗動及び心房細動のうちの1つである。
【0049】
一実施形態では、1つ以上のデータ収集パラメータを設定することは、不整脈のタイプに基づいてデータ収集パラメータのうちの少なくとも1つを選択することを含む。
【0050】
別の実施形態では、本方法は、所与のデータ収集パラメータの値に対する制限を自動的に調整することと、値が制限内にあるデータポイントのみをEAマップに含めることとを更に含む。
【0051】
更に別の実施形態では、制限を自動的に調整することは、所与のデータ収集パラメータの値のヒストグラムを構築することと、ヒストグラムから制限を導出することとを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、本方法は、遡及的に設定されたデータ収集パラメータを使用して、EAマップをオフラインで構築及び提示することを更に含む。
【0053】
本開示の別の実施形態によれば、電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための装置であって、ユーザインタフェース(100)とプロセッサ(28)とを含む装置が更に提供される。ユーザインタフェースは、診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信するように構成される。プロセッサは、(i)EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントについての信頼レベルを受信し、(ii)不整脈のタイプ及び信頼レベルに基づいて、データポイントについての1つ以上のデータ収集パラメータを自動的に設定し、(iii)自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップを構築及び提示するように構成される。
【0054】
本明細書で説明される実施形態は主に心臓EAマッピングシステムに対処するが、本明細書で説明される方法及びシステムは、脳波図(EEG)などの神経活性化を取得する必要がある任意の医療用途において必要な変更を加えて使用することもできる。
【0055】
したがって、上で説明される実施形態は例として挙げたものであり、本開示は上述に具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読んで当業者が思いつくであろう、先行技術には開示されていないそれらの変形及び修正を含む。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) 電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための装置であって、
診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信するように構成されたインタフェースと、
プロセッサであって、
前記EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントの信頼レベルを受信し、
前記不整脈のタイプ及び前記信頼レベルに基づいて、前記データポイントに対する1つ以上のデータ収集パラメータを自動的に設定し、
前記自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、前記取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップを構築し、提示するように構成された、プロセッサと、を備える、装置。
(2) 前記プロセッサが、追加のデータポイントの取得に応答して前記受信された信頼レベルを調整するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記信頼レベルが、予め設定された必要な信頼レベルである、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記データ収集パラメータが、心周期長、前記データポイントを取得するカテーテルの位置、前記カテーテルの接触力、局所活性化時間(LAT)、双極電位、及び単極電位からなるタイプの群から選択される少なくとも1つのパラメータタイプを含む、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記不整脈のタイプが、心室頻脈、粗動、及び心房細動のうちの1つである、実施態様1に記載の装置。
【0057】
(6) 前記プロセッサが、前記不整脈のタイプに基づいて前記データ収集パラメータのうちの少なくとも1つを選択するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記プロセッサが、所与のデータ収集パラメータの値に対する制限を自動的に調整し、値が前記制限内にある前記データポイントのみを前記EAマップに含めるように更に構成されている、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記プロセッサが、前記所与のデータ収集パラメータの前記値のヒストグラムを構築し、前記ヒストグラムから前記制限を導出することによって、前記制限を自動的に調整するように構成されている、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記プロセッサが、遡及的に設定されたデータ収集パラメータを使用して、前記EAマップをオフラインで構築及び提示するように更に構成されている、実施態様1に記載の装置。
(10) 電気解剖学的(EA)マッピング手順を構成するための方法であって、
診断される不整脈のタイプを含むユーザ入力を受信することと、
前記EAマッピング手順において患者の心臓で取得されたデータポイントの信頼レベルを受信することと、
前記不整脈のタイプ及び前記信頼レベルに基づいて、前記データポイントに対する1つ以上のデータ収集パラメータを自動的に設定することと、
前記自動的に設定されたデータ収集パラメータに従って、前記取得されたデータポイントのうちの少なくともいくつかを含むEAマップを構築し、提示することと、を含む、方法。
【0058】
(11) 追加のデータポイントの取得に応答して、前記受信された信頼レベルを調整することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記信頼レベルが、予め設定された必要な信頼レベルである、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記データ収集パラメータが、心周期長、前記データポイントを取得するカテーテルの位置、前記カテーテルの接触力、局所活性化時間(LAT)、双極電位、及び単極電位からなるタイプの群から選択される少なくとも1つのパラメータタイプを含む、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記不整脈のタイプが、心室頻脈、粗動及び心房細動のうちの1つである、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記1つ以上のデータ収集パラメータを設定することが、前記不整脈のタイプに基づいて前記データ収集パラメータのうちの少なくとも1つを選択することを含む、実施態様10に記載の方法。
【0059】
(16) 所与のデータ収集パラメータの値に対する制限を自動的に調整することと、値が前記制限内にある前記データポイントのみを前記EAマップに含めることとを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記制限を自動的に調整することが、前記所与のデータ収集パラメータの前記値のヒストグラムを構築することと、前記ヒストグラムから前記制限を導出することとを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 遡及的に設定されたデータ収集パラメータを使用して、前記EAマップをオフラインで構築及び提示することを含む、実施態様10に記載の方法。
【国際調査報告】