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特表2024-542833エスプレッソコーヒーマシン用の断熱フィルターホルダー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】エスプレッソコーヒーマシン用の断熱フィルターホルダー
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A47J31/06 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533895
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 IB2022061923
(87)【国際公開番号】W WO2023105459
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021000030974
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512102391
【氏名又は名称】ラ マルゾッコ エス アール エル
【氏名又は名称原語表記】LA MARZOCCO S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ グッチ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ デッラ ピエトラ
(72)【発明者】
【氏名】リカルド マルキ
(72)【発明者】
【氏名】リカルド ガッティ
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA20
4B104BA46
4B104EA25
4B104EA40
(57)【要約】
エスプレッソコーヒーを調製および分配するマシンのためのフィルターホルダーが記載されており、前記フィルターホルダーは、ハンドルと、ハンドルに接続されており、粉砕コーヒー用のフィルターを収容するように構成された本体と、ベースカップとを備え、ベースカップは、ポリサルファイド、ポリエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニルサルフォン、およびポリサルフォンのいずれかの材料で実質的に作製されるか、またはベースカップは、ガラス、セラミック、磁器、またはそれらの組み合わせで作製される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスプレッソコーヒーを調製および分配するマシン(10)のためのフィルターホルダー(20)であって、ハンドル(21)と、前記ハンドル(21)に接続されており、粉砕コーヒー用のフィルター(23)を収容するように構成された本体(22)と、ベースカップ(30)とを備え、前記ベースカップ(30)は、ポリサルファイド、ポリエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニルサルフォン、およびポリサルフォンのいずれかの材料で実質的に作製されるか、または前記ベースカップは、ガラス、セラミック、磁器、またはそれらの組み合わせで作製される、フィルターホルダー(20)。
【請求項2】
前記ベースカップ(30)がポリフェニレンサルファイド(PPS)で実質的に作製されている、請求項1に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項3】
前記ベースカップ(30)がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で実質的に作製されている、請求項1に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項4】
前記ベースカップ(30)がポリフェニルサルフォン(PPSU)で実質的に作製されている、請求項1に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項5】
前記ベースカップ(30)は前記本体(22)とは別個のおよび/または前記本体(22)から分離可能な部品であり、前記フィルターホルダーの前記本体(22)は、150Wm-1-1未満の熱伝導率を有する金属材料で実質的に作製されている、請求項1に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項6】
前記金属材料は鋼、好ましくはクロムメッキ鋼、または真鍮、好ましくはクロムメッキ真鍮である、請求項5に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項7】
前記本体(22)は、前記フィルターホルダーを支持して、前記粉砕コーヒーを前記フィルター内に押し込むことを容易にする、平坦な支持部材(26)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項8】
前記支持部材(26)は、好ましくは前記ハンドル(21)と実質的に反対の方向に、前記本体(22)の外側に向けて放射状に突出し、前記本体と一体に形成された歯を備える、請求項7に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項9】
前記本体(22)は、第1の内部溝(271)を有する第1の前フランジ(27)と、第2の内部溝(281)を有する第2の後フランジ(28)と、前記第1の前フランジ(27)と前記第2の後フランジ(28)との間に2つの対向する開口凹部(27、28)とを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項10】
前記第1の内部溝(271)および前記第2の内部溝(281)は前記開口凹部に開口しており、前記ベースカップ(30)は、前記ベースカップ(30)を前記本体(20)に結合するために、前記第1の内部溝(271)と係合するように構成された第1の前歯(37)と、前記第2の内部溝(281)と係合するように構成された第2の後歯(38)とを備える、請求項9に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項11】
前記ベースカップ(30)と前記本体(20)との間に更なる保持作用を提供するために、保持部材(282)、好ましくはボール押さえを更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項12】
前記第2の後フランジ(28)の自由端縁に係合するように構成された突出ラグ(33)を更に備える、請求項9、10または11に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項13】
前記フィルターホルダー(20)の前記本体(22)上の前記ベースカップ(30)の正しい角度当接位置を決定するように構成された、対向して配置されたウィスカー(32)を更に備える、請求項9~12のいずれか一項に記載のフィルターホルダー(20)。
【請求項14】
前記ベースカップ(30)の材料は、少なくとも100℃の温度を有する液体物質との接触に対して耐性がある材料である、請求項1に記載のフィルターホルダー(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エスプレッソコーヒーマシンの分野に関する。より具体的には、本発明は、一部が断熱されたフィルターホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料を調製するためのマシンは数多く知られている。特に、コーヒー粉末、ポッド、カプセル等からエスプレッソコーヒーを調製するためのマシンは数多く知られている。
【0003】
通常、エスプレッソコーヒーを調製するためのマシンでは、高圧かつ高温の水流が粉砕コーヒーのパックを通過する。既知のマシンの一部には、コーヒーのパックを通過する水の圧力および/または温度を正確に調整可能なものもある。既知のマシンの一部には、分配中に水の圧力および/または温度を修正可能なものもある。
【0004】
通常、エスプレッソコーヒーマシンは、フィルターホルダーアーム(単に「フィルターホルダー」とも呼ばれる)が取り付けられた少なくとも1つの分配ユニットを備える。
【0005】
フィルターホルダーは、一般的に、本体およびハンドルを備える。本体は、略円筒形の断面を有しており、頂部が開口している。底部に多数の小さな穴を有するカップ状の容器であるフィルターがフィルターホルダー本体内に収容されている。一定量の粉砕コーヒーをフィルター内に充填し、一般的には、バリスタが手動でまたは特別な装置を使用して圧縮する。
【0006】
通常、フィルターホルダーの本体の底部は、生成されたコーヒーを出口スパウトに向けて指向するように構成されており、この出口スパウトがエスプレッソコーヒーの流れを作り出し、それをコーヒーカップに誘導する。出口スパウトは、シングルまたはダブルであってよい。
【0007】
特許文献1には、コーヒーマシン用のフィルターホルダーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2087818(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
周知のように、エスプレッソコーヒーの分配は、高温かつ高圧下で行われる。
【0010】
コーヒーが所望の温度で分配されるように、多くの製造業者が、エスプレッソコーヒーの調製中の熱分散を低減するための対策を研究し、実施してきた。
【0011】
業務用エスプレッソコーヒーマシンでは、マシンを温めるのに比較的長い時間が必要である。バリスタの中には、この待ち時間をなくすために、夜間や、使用していない期間中にもマシンのスイッチを入れる習慣がある人もいる。いずれにしても、日中は、特に一日のうちの特定の時間帯には、マシンはコーヒーを分配し続けるため、通常、マシンは温められた状態を維持している。
【0012】
家庭用(または、例えば、小規模レストランに設置されているような、限定された業務用)エスプレッソコーヒーマシンでは、マシンを温めるのに必要な待ち時間が問題になる。
【0013】
実際、数分の待ち時間は、自分やゲストのためだけにコーヒーを調製したいユーザーにとっては煩わしいものである。家庭用エスプレッソコーヒーマシンの中には、待ち時間が5分~10分のものもある。
【0014】
本出願人は、エスプレッソコーヒーマシンの待ち時間の短縮を目的と定めた。
【0015】
本出願人は、エスプレッソコーヒーを調製するための経路の最終部分、特にフィルターの下流を調査した。
【0016】
本出願人によると、エスプレッソコーヒーの僅かとは言えない部分の熱が、フィルターホルダー本体の底部およびスパウトで損失される。実際、金属材料で作製されたフィルターホルダー本体は冷たい状態を維持し、即ち、室温の状態である。コーヒーがフィルターの穴から出てフィルターホルダーの底部に接触すると、コーヒーは大幅に冷える。これは、特に最初に流出してコーヒーカップの底部を満たすコーヒーの味に悪影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本出願人によると、問題は、底部が開口した金属体を有するフィルターホルダーを提供することと、金属体よりも熱伝導率が低い材料で作製されたベースカップを提供することとによって解決することができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、エスプレッソコーヒーを調製および分配するマシン用のフィルターホルダーが記載されており、前記フィルターホルダーは、ハンドルと、ハンドルに接続されており、粉砕コーヒー用のフィルターを収容するように構成された本体と、ベースカップとを備え、ベースカップは、ポリサルファイド、ポリエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニルサルフォン、ポリサルフォン等のいずれかの材料で実質的に作製されるか、またはベースカップは、ガラス、セラミック、磁器、またはそれらの組み合わせで作製される。
【0019】
実施形態によれば、ベースカップは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)で実質的に作製される。例えば、試験され、適切であると考えられる材料は、ソルベイ社の高弾性ポリフェニレンサルファイド(PPS)である、Ryton(登録商標)R-4-244 NA(または同シリーズの他の材料)である。
【0020】
実施形態によれば、ベースカップは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で実質的に作製される。
【0021】
実施形態によれば、ベースカップは、ポリフェニルサルフォン(PPSU)で実質的に作製される。例えば、試験され、適切であると考えられる材料は、ソルベイ社のRadel(登録商標)5100(または同シリーズの他の材料)であり、最適な機械的特性および熱的特性を有し、食品グレードの認定も受けている材料である。
【0022】
実施形態によれば、ベースカップは、本体とは別個のおよび/または本体から分離可能な部品であり、フィルターホルダーは、150Wm-1-1未満の熱伝導率を有する金属材料で実質的に作製される。
【0023】
例えば、金属材料は、鋼、好ましくはクロムメッキ鋼、または真鍮、好ましくはクロムメッキ真鍮である。
【0024】
本発明によるフィルターホルダーの本体は、アルミニウムまたはその合金で作製されていない。実際、アルミニウムは熱伝導率が高すぎる(200Wm-1-1を超える)ため、エスプレッソコーヒーを調製する際の使用時に、ベースカップに高い熱エネルギーを伝達する。
【0025】
本明細書および以下の特許請求の範囲の目的のために、本体またはベースカップ等の部品に関する「...[材料]で実質的に作製される」という表現は、前記部品が主にある特定の材料で作製されていることを示す。従って、例えば、フィルターホルダー本体が、表面にクロムメッキが施された鋼で作製されている場合、「鋼で実質的に作製されたフィルターホルダー本体」の定義に該当する。従って、表面層を適用しても、成分の全体的な組成には影響しない。
【0026】
実施形態によれば、ベースカップの材料は、食品安全要件(例えば、NSF食品接触認証)を満たす材料である。好ましくは、材料は、良好な熱安定性および良好な耐機械衝撃性を有する。
【0027】
実施形態によれば、ベースカップは、少なくとも部分的に透明である。
【0028】
実施形態によれば、ベースカップは、実質的に滑らかな内面を備える。
【0029】
実施形態によれば、ベースカップは、刻み目および/またはレリーフを有する内面を備える。
【0030】
実施形態によれば、本体は、フィルターホルダーを支持して、粉砕コーヒーをフィルター内に押し込むことを容易にする、平坦な支持部材を備える。
【0031】
実施形態によれば、支持部材は、好ましくはハンドルと実質的に反対の方向に、本体の外側に向けて放射状に突出し、本体と一体に形成された歯を備える。
【0032】
実施形態によれば、本体は、第1の内部溝を有する第1の前フランジと、第2の内部溝を有する第2の後フランジと、第1の前フランジと第2の後フランジとの間の2つの対向する開口凹部とを備える。
【0033】
実施形態によれば、第1の内部溝および第2の内部溝は開口凹部に開口しており、ベースカップは、ベースカップを本体に結合するために、第1の内部溝と係合するように構成された第1の前歯と、第2の内部溝と係合するように構成された第2の後歯とを備える。
【0034】
実施形態によれば、フィルターホルダーは、ベースカップと本体との間に更なる保持作用を提供するために、保持部材、好ましくはボール押さえを更に備える。
【0035】
実施形態によれば、フィルターホルダーは、第2の後フランジの自由端縁に係合するように構成された突出ラグを更に備える。
【0036】
実施形態によれば、フィルターホルダーは、フィルターホルダーの本体上のベースカップの正しい角度当接位置を決定するように構成された、対向して配置されたウィスカーを更に備える。
【0037】
実施形態によれば、ベースカップの材料は、少なくとも100℃の温度を有する液体物質との接触に対して耐性がある材料である。
【0038】
以下に、本発明の詳細な説明を、添付の図面を参照して、単なる非限定的な例示として提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明によるフィルターホルダーを使用可能なエスプレッソコーヒーマシンの一例の軸測図である。
図2】本発明の一実施形態による無底フィルターホルダーを示す図である。
図2A】本発明の一実施形態による無底フィルターホルダーを示す図である。
図3】本発明の一実施形態による無底フィルターホルダーを示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるフィルターホルダーのベースカップを示す図である。
図5】本発明の一実施形態によるフィルターホルダーのベースカップを示す図である。
図6】本発明の一実施形態によるフィルターホルダーのベースカップを示す図である。
図7】本発明の一実施形態による断熱ベースカップを備えるフィルターホルダーを示す図である。
図7A】本発明の一実施形態による断熱ベースカップを備えるフィルターホルダーを示す図である。
図8】本発明の一実施形態による断熱ベースカップを備えるフィルターホルダーを示す図である。
図9A】本発明の第2の実施形態によるフィルターホルダー本体の様々な軸測図である。
図9B】本発明の第2の実施形態によるフィルターホルダー本体の様々な軸測図である。
図9C】本発明の第2の実施形態によるフィルターホルダー本体の様々な軸測図である。
図10A図9のフィルターホルダー本体と共に結合するように構成されたベースカップの2つの軸測図である。
図10B図9のフィルターホルダー本体と共に結合するように構成されたベースカップの2つの軸測図である。
図11】分離した状態にある、即ち、係合前の図9および図10による本体およびベースカップを示す図である。
図12】本体およびベースカップを結合する第1段階の間にある、本体およびベースカップの図である。
図13】最終位置に結合されたフィルターホルダー本体およびベースカップを、2つの異なる角度から見た、2つの軸測図である。
図14】最終位置に結合されたフィルターホルダー本体およびベースカップを、2つの異なる角度から見た、2つの軸測図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、参照番号10で全体的に示される、エスプレッソコーヒーマシンを単なる例示として示している。マシン10は、実質的に閉口したマシン本体11を備え、その内部にはマシンの主要部品(その一部については後述する)が収容されている。マシン10の頂部には、コーヒーカップを置くための表面12が備えられていることが好ましい。表面12上のカップを加熱するための電気抵抗(図示せず)または他の加熱システムが設けられていてもよい。
【0041】
マシン10は、エスプレッソコーヒーを分配するための分配ユニット13を備える。分配ユニット13の下には、ドリップトレイ14が配置されることが好ましく、ドリップトレイ14は頂部がグリル15によって部分的に閉口されていることが好ましい。通常、エスプレッソコーヒーを分配している間、コーヒーカップはグリル15上に配置される。
【0042】
コーヒー粉末のパック用のフィルターを収容および支持するフィルターホルダーは、分配ユニット13と取り外し可能に係合することができる。
【0043】
マシン10は、例えば、マシンのオン/オフの切り替えおよび/または分配操作の開始/停止を行うための1つ以上のディスプレイおよび/またはプッシュボタンおよび/またはノブ16を備えることができる。
【0044】
図1に示すマシン10は、エスプレッソコーヒーの分配を開始/停止し、および/またはエスプレッソコーヒーの分配中に分配圧力を変更するためのレバー17も備える。
【0045】
図2は、本発明によるベースカップ30を取り付けることができる無底フィルターホルダー20を示している。
【0046】
好ましくは、フィルターホルダー20は、ハンドル21と、コーヒー粉末が充填されたフィルター23を保持するように構成された実質的に円筒形の本体22とを備える。
【0047】
好ましくは、フィルター23はカップ形状であり、頂部は開口しており、底部は閉口しているが、底部には複数の微細穴を有する。
【0048】
好ましくは、フィルター23を所定の位置に保持するために、フィルター保持クリップが設けられる。フィルター保持クリップは、フィルターホルダー20の本体22の内壁の溝内に収容することができる。
【0049】
好ましくは、本体22の外面には、そこから突出する、フィルターホルダー20を分配ユニット13に係合するように構成された、2つの直径方向に対向するフィン25が配置されている。フィルターホルダーと分配ユニットとの間の係合は、回転運動、並進運動、または回転運動と並進運動との組み合わせによって行うこともできる。
【0050】
本発明の実施形態によれば、ユーザーが粉砕コーヒーをフィルター23内に押し込まなければならないときに、フィルターホルダー20の支持を容易にするための支持部材26が設けられる。周知のように、実際には、粉砕コーヒーは、通常はフィルター内に充填され、その後、例えばタンパーによって手動で押し込まれる。
【0051】
図2図2A、および図3に示すように、支持部材26は、フィルターホルダー本体から放射状に突出する歯26の形態であってよい。支持歯26は、フィルターホルダー20のハンドル21に実質的に対向する点から外側に向けて放射状に突出してよい。支持歯によって、押し込み作業を行う必要がある人は、一方の手でフィルターホルダーを支持し、もう一方の手で粉砕コーヒーをフィルター内に押し込みながら、カウンターまたは作業台の端縁上にフィルターホルダー20を置く。
【0052】
図4図5および図6は、本発明によるフィルターホルダーのベースカップ30を示す。ベースカップ30は、フィルターホルダー本体とは別個の部材であり、容易かつ迅速に取り付けおよび取り外しが可能である。利点のうちの1つに、ベースカップ30がフィルターホルダー本体22とは別個であり、かつベースカップ30を手動でまたは機械的に(例えば、食洗器で)より徹底的に洗浄できるという事実がある。
【0053】
通常、フィルターホルダーのベースカップ30は、平面視で円形であってよい。好ましくは、フィルターホルダーのベースカップ30は、支持面を形成するように外方に突出する上側リップ31を有する。
【0054】
好ましくは、フィルターホルダーのベースカップ30は、図4図5および図6に示すように、コーヒーをシングルの出口開口部またはダブルの出口開口部に向けて指向するように、実質的に円錐台形状を有する。ダブルの出口開口部は、通常、コーヒーを2つの異なるコーヒーカップに分配するように設計されている。
【0055】
本出願人は、PBTのような熱可塑性材料は、加水分解、即ち、高温の水との接触に対して敏感すぎる材料であると考えている。特に、60℃を超える温度の水との接触に敏感である。従って、PBTは、80℃以上の温度で分配されるエスプレッソコーヒーとの接触には不適切である。通常、エスプレッソコーヒーの温度は、90℃以上にも達し得る。
【0056】
本出願人は、ベースカップの製造に様々な材料の使用を検討した。特に、本出願人は、ポリサルファイド、ポリエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニルサルフォン、ポリサルフォン等、またはガラス、セラミック、磁器、またはそれらの組み合わせから選択されたいくつかの材料を試験した。
【0057】
実施形態によれば、ベースカップは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)で実質的に作製される。例えば、試験され、適切であると考えられる材料は、高弾性ポリフェニレンサルファイド(PPS)である、ソルベイ社のRyton(登録商標)R-4-244 NAである。
【0058】
実施形態によれば、ベースカップは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で実質的に作製される。
【0059】
実施形態によれば、ベースカップは、ポリフェニルサルフォン(PPSU)で実質的に作製される。例えば、試験され、適切であると考えられる材料は、ソルベイ社のRadel(登録商標)5100であり、最適な機械的特性および熱的特性を備え、食品グレードの認定も受けている材料である。
【0060】
この材料は、ポリフェニルサルフォン(PPSFまたはPPSU)であり、スルフォニル基(SO)によって結合された芳香環で作製されたポリマーである。
【0061】
一方、PBTはポリエステルであり、即ち、エステル繰り返し単位(-COOR)を含む。
【0062】
PPSUは非晶質であるが、PBTは半結晶性である。
【0063】
フィルターホルダーのベースカップ30は、いずれの場合も、フィルターホルダー本体(通常は、鋼または真鍮等の金属で作製される)の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する材料で作製される。有利には、フィルターホルダーのベースカップは、型押しによって作製されてもよい。あるいは、フィルターホルダーのベースカップは、セラミック、磁器、ガラス、またはそれらの組み合わせで作製されてもよい。
【0064】
本明細書および特許請求の範囲では、熱伝導率は国際単位系で表されている。特に、熱伝導率は、Wm-1-1(ワット/メートル・ケルビン)で測定され、ワットは電力の測定単位、メートルは長さの測定単位、ケルビンは温度の測定単位である。
【0065】
実施形態によれば、ベースカップの材料の熱伝導率は、0.1~0.5の間である。実施形態によれば、前記材料の熱伝導率は、0.4未満である。
【0066】
しかしながら、ベースカップがセラミック、磁器、またはガラス(またはそれらの組み合わせ)で作製されている場合、熱伝導率は前述の値よりも大きくなり得、例えば、1~1.70の間となり、いずれの場合も5未満、好ましくは2未満となる。
【0067】
好ましくは、ベースカップの厚さは0.5mm~3mmの間、例えば1mmまたは2mmであってよい。
【0068】
実施形態によれば、ベースカップ30は、少なくとも部分的に透明な材料で作製され、これにより、ユーザーは、フィルターの微細穴から流出するコーヒーを見ることができる。周知のように、コーヒーは、優先経路を辿ることなく、フィルターから均一に流出することが好ましい。フィルターホルダー底部の材料が少なくとも部分的に透明である場合、ユーザーは、フィルターから流出するコーヒーの均一性を確認することができる。流れが不均一な場合、ユーザーは、フィルターの微細穴を慎重に洗浄するか、またはフィルターを交換する等の是正措置を講じることができる。必要に応じて、写真や動画をリクエストに添付して、技術支援をリクエストすることができる。
【0069】
ベースカップの内面は、エスプレッソコーヒーがシングルの開口部またはダブルの開口部に向けて自由に流れるように、実質的に滑らかであってよい。あるいは、ベースカップの内面は、経路、例えば溝を形成するように表面的なレリーフを備えてもよい。実施形態によれば、表面的なレリーフは、渦および/または巻回経路を形成するように構成される。前記渦または巻回経路は、出口が2つある場合に、流れを均一に混合または分割する効果を有する。
【0070】
図7図7Aおよび図8は、図2図2Aおよび図3に類似しており、フィルターホルダー20の本体22に取り付けられた断熱ベースカップ30を示している。
【0071】
この時点で、本発明の利点は明らかである。第一に、本発明により、加熱段階に必要な時間を大幅に短縮できる。
【0072】
断熱ベースカップを備えるフィルターホルダーは、フィルターホルダー内に存在する金属量を3分の2削減するが、分配ユニットとフィルターとの間の接触部分は金属の状態を維持し、その高い熱伝導率を利用してフィルターを急速に加熱できるようにする。
【0073】
ベースカップ30は、従来金属製であった標準的なフィルターホルダーおよびスパウトの部分に取って代わる。ベースカップが熱伝導率の低い材料で作製されているため、分配される水から熱を奪うことはなく、従って、既知のフィルターホルダーのようにフィルターホルダー全体が加熱されるのを待つ必要はない。
【0074】
従って、システムの加熱時間は、フィルターのみの加熱に対応しており、ラボ試験では、約2分かかった。
【0075】
第二に、本発明は、エスプレッソコーヒーの分配中に温度を維持することができる。
【0076】
実際、断熱ベースカップは、既知のフィルターホルダーよりも少ない量の熱を奪う傾向があるため、システム全体が、特定の配合に対してユーザーが設定した飲料分配温度に影響を与えることはない。これにより、飲料の感覚刺激特性の再現性を向上させることができる。
【0077】
第三に、本発明により、フィルターホルダー、特にその底部をより適切に洗浄することが可能となる。実際、断熱ベースカップは、工具を使用せずに取り外すことができる。取り外し可能なベースカップを食洗器に入れて徹底的に洗浄することも可能である。
【0078】
第四に、フィルターホルダーのベースカップ30が少なくとも部分的に透明な材料で作製されている場合、フィルターからのコーヒーの流出を監視して、分配における問題を特定する、またはフィルターからコーヒーが流出するのを単に見て楽しむこともできる。
【0079】
図9図14は、フィルターホルダー本体とベースカップとの間の係合が特に容易で、効率的であり、耐久性のある、本発明によるフィルターホルダーの一実施形態を示す。実際、本出願人は、取り外しおよび再組み立て操作が頻繁な洗浄の必要性に依存することを認識した。更に、ベースカップを容易に交換できるため、ダブルスパウトのフィルターホルダーをシングルスパウトのフィルターホルダーに容易に変換することができる。
【0080】
図9に示すように、フィルターホルダー20の本体22は、第1の前フランジ27および第2の後フランジ28を有するように成形されている。従って、2つのフランジ27と28との間に、互いに対向する2つの開口凹部が形成される。第1の前フランジ27は、好ましくは、ハンドル21と直径方向に対向している。第2の後フランジは、好ましくは、ハンドル21の突出部211に実質的に接続されている。
【0081】
実施形態によれば、2つのフランジ27、28は、フィルターホルダー20の本体22の実質的に円筒形のプロファイルに沿っている。
【0082】
実施形態によれば、第1の前フランジ27は、第2の後フランジ28よりも長く下方に延在している。この違いの理由は、以下で説明する。第2の後フランジ28の自由端縁は、好ましくは丸みを帯びている。
【0083】
第1の前フランジ27は、第1の内部溝271を備える。第1の内部溝271は、第1の前フランジ27の全幅にわたって延在しており、開口凹部に開口している。
【0084】
第2の後フランジ28は、第2の内部溝281を備える。第2の内部溝281は、第2の後フランジ28の全幅にわたって延在しており、開口凹部に開口している。
【0085】
好ましくは、第1の内部溝271および第2の内部溝281は、本体22の上縁の平面に平行な水平面内に配置される。
【0086】
一実施形態によれば、溝のうちの少なくとも1つは、ベースカップ30が本体22に結合されたときにベースカップ30を所定の位置に保持するための保持部材282を備える。
【0087】
例えば、保持部材282は、(例えば、バネによって)弾性的にプレストレスを与えられたボール押さえであってよい。ボール押さえ282は、第2の溝28の内側に、例えばその中央に配置され得る。通常はバネを含むプレストレス機構は、ハンドル21の突出部211内に収容することができる。
【0088】
フィルターホルダー本体は、フィルターホルダー20をエスプレッソコーヒーマシンの分配ユニットと共に係合するように構成されたフィン25も備える。
【0089】
フィルターホルダー20の本体22と係合するように構成されたベースカップ30が図10Aおよび図10Bに示されている。ベースカップ30は、頂部が開口しており、底部が実質的に閉口しているカップ形状である。スパウト35(図10および以降の図に示されているように、シングルスパウトまたはダブルスパウトであり得る)が底部から突出している。
【0090】
ベースカップ30は、2つの突出歯、即ち、第1の前歯37および第2の後歯38を備える側面を含む。2つの歯37、38は、互いに実質的に直径方向に対向している。第1の前歯37は、第1の前溝271と係合するように構成されている。第2の後歯38は、第2の後溝281と係合するように構成されている。
【0091】
第1の前歯37は、入口ランプ371と、実質的に平坦な部分372と、出口ランプ373とを含むことができる。
【0092】
同様に、第2の後歯38は、入口ランプ381と、実質的に平坦な部分382と、出口ランプ383とを含むことができる。実質的に平坦な部分382は、円筒形シート384によって中断されている。円筒形シート384は、保持部材382(ボール押さえ)と係合するように構成されている。
【0093】
実施形態によれば、ベースカップ30は、ベースカップの底部から外側に向けて放射状に突出する突出ラグ33も備えてもよい。ラグ33は、第2の後歯の実質的に下に位置することが好ましい。
【0094】
実施形態によれば、ベースカップ30の外面は、2つの対向して配置された突出ウィスカー32も含む。2つの対向して配置されたウィスカー32は、図13および図14に示すように、フィルターホルダー20の本体22上のベースカップ30の正しい角度当接位置を決定するように構成されている。
【0095】
ベースカップ30をフィルターホルダー本体22に結合するために、ベースカップ30は、フィルターホルダーのシートに垂直に挿入され(図11から図12への動き)、次に、第1の前歯37が第1の前溝27に係合し、第2の後歯38が第2の後溝28に係合するように回転される。回転の終了時には、ベースカップは図13および図14に示す位置にある。
【0096】
有利なことに、回転運動の間、ボール押さえ382のボールが、第2の歯38の円筒形シート384内に弾性的に侵入し、ベースカップ30とフィルターホルダーの本体22との相対的な位置を正確に画定する。入口ランプおよび出口ランプは、ボール押さえのボールのシート内への引き込みを容易にする。
【0097】
更に、回転運動の間、ラグ33は、第2の後フランジ28の下縁に係合する。前述のように、第2の後フランジ28は、第1の前フランジ27ほど下方に延在していない。これは、実際に、フィルターホルダー本体とベースカップとの一意の相対的位置を定義し、これらの部品が異なる位置に取り付けられるのを防ぐ。換言すると、ベースカップを本体に対して反対方向に回転させようとした場合、ラグが前フランジ27に衝突するため、この回転は阻止される。
【0098】
ベースカップ30を取り外すには、ベースカップをフィルターホルダーの本体22に対して回転させ、ボール押さえのボールを円筒形シートから出すだけでよい。
【0099】
図9図14の実施形態は、取り外しおよび再組み立て操作によって位置決めが不確実になることがないため、特に有利であることは明白である。ベースカップを取り付けるおよび取り外す人は、正しい取り付け位置を容易に感知できる。
【0100】
有利なことに、ベースカップを取り付ける/取り外すのに必要な係合力/係合解除力は非常に制限されているため、基本的に誰でもベースカップを係合/係合解除することができる。この態様は、エスプレッソコーヒーマシンが家庭用である場合に特に有利である。
【0101】
有利なことに、本発明によれば、係合したベースカップはフィルターホルダーによって強固に保持され、基本的にフィルターホルダーの一体部分になる。使用済みのコーヒーパックを取り外すために、フィルターホルダーをコーヒー粕の引き出しに叩きつけることを伴うより強力な操作の間でさえも、ベースカップが誤って外れることを防ぐ。
【0102】
有利なことに、ベースカップは熱伝導率が低いため、フィルターホルダーが高温の場合でさえも、いつでもベースカップを取り外すまたは再組み立てすることが可能である。
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】