(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】光学測定システムによる物体の照明および結像中の光学生成システムの照明および結像特性をシミュレートするための瞳絞り形状を最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534028
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022084351
(87)【国際公開番号】W WO2023104687
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021213827.6
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197DA02
2H197DB10
2H197DC16
2H197GA03
2H197GA05
2H197GA06
2H197GA22
2H197HA03
(57)【要約】
光学生成システムの特性をシミュレートするために、照明瞳の領域に瞳絞りを有する結像されるべき物体のための照明光学ユニットと、物体を結像するための結像光学ユニットとを含む光学測定システムが使用される。瞳絞りの瞳絞り形状を最適化するために、最初に、瞳絞りの開始絞り形状が、シミュレーションのための初期設計候補として事前定義される(30)。開始絞り形状が修正され(31)、対応する修正絞り形状の少なくとも1つの製造境界条件が検査される(33)。検査する(33)ステップが境界条件への適合を示すまで、「修正する」ステップと「検査する」ステップとが繰り返される。光学生成システムの特性と光学測定システムの特性との間の整合品質が決定され(34)、整合品質が、照会される(35)、事前定義された最適化基準に達するまで、「修正する」ステップ、「検査する」ステップ、および「決定する」ステップが繰り返される。最適化において最小メリット関数値Eで生じた目標絞り形状からもたらされる目標絞り形状が、最適化基準に達した後の最適化瞳絞り形状として製造される(37)。これは、光学測定システムによる物体の照明および結像中に、できる限り偏差がない光学生成システムの照明および結像特性のシミュレーションをもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定システムによる物体(5)の照明および結像中に光学生成システムの前記照明および結像特性をシミュレートするための瞳絞り形状(39)を最適化するための方法であって、
- 前記光学測定システムが、最適化されるべき前記瞳絞り形状(39)を有する照明瞳の領域に瞳絞り(8)を有する前記物体(5)のための照明光学ユニット(7)と、前記物体(5)を結像するための結像光学ユニット(10)とを含み、
- 前記シミュレーションのための初期設計候補として前記瞳絞り(8)の開始絞り形状(8
dc)を事前定義する(30)ステップと、
- 直近に事前定義された絞り形状(8
dc)とは異なる修正絞り形状(8
dcnew)を生じさせるように前記開始絞り形状(8
dc)を修正する(31)ステップと、
- 前記修正絞り形状(8
dcnew)の製造に関する少なくとも1つの製造境界条件を検査する(33)ステップ、および前記検査する(33)ステップが、前記製造境界条件への適合を示すまで、前記「修正する」ステップと前記「検査する」ステップとを繰り返すステップと、
- 前記製造境界条件が適合されるとすぐに、前記光学生成システムの前記照明および結像特性と、前記光学測定システムの前記照明および結像特性との間の整合品質を決定する(34)ステップと、
- 前記整合品質が、クエリステップ(35)によって検査される事前定義された最適化基準に達成するまで、前記「修正する」ステップ、前記「検査する」ステップ、および前記「決定する」するステップを繰り返すステップと、
- 前記最適化基準を達成した後に、最適化された瞳絞り形状(39)として、前記最適化基準の達成からもたらされる目標絞り形状を製造する(37)ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記瞳絞り形状の周縁検査部分(23、24)の前記製造境界条件を前記検査する(33)ステップの間に、局所境界条件への適合が検査され、その場合、中央領域(25
1、25
2、25
3)のまわりに配置されたそれぞれの前記検査部分の周囲領域(26
i)について、これらが照明光(1)の透過に関して前記中央領域(25
1~25
3)と全く同じように振る舞うかどうかを確認するために検査が行われ、それぞれの前記周囲領域(26
i)の事前定義された割合が前記中央領域(25
1~25
3)と全く同じように振る舞う場合、前記局所境界条件が満たされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中央領域(25
1~25
3)および前記周囲領域(26
i)が、行および列のピクセルとして配置されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記整合品質を決定する(34)ステップが、前記光学生成システムの照明および/または結像瞳と、前記光学測定システムの照明および/または結像瞳(12、21、21’)との間の整合を確認することによって影響を受けることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記整合品質を決定する(34)ステップが、
- 前記光学生成システムの照明瞳および結像射出瞳の瞳重なり領域(A
r,φ)と、
- 使用された絞り形状をもつ照明瞳(12)および前記光学測定システムの前記結像射出瞳(21、21’)を事前定義するための結像開口(11)の対応する瞳重なり領域(A
r,φ)と
の間の光学照明および結像パラメータ(D、T、HV)の比較によって影響を受けるメリット関数(E)の値を、各々が前記照明瞳全体を覆う複数の瞳重なり領域(A
r,φ)について計算することによって行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下の
- 前記瞳重なり領域(A
r,φ)における前記照明瞳を通過する前記照明光(1)の積分強度(I)(D)、および/または
- 前記瞳重なり領域(A
r,φ)における前記照明瞳を通過する前記照明光(1)の、テレセントリック性パラメータ(σ
φ)で重み付けされた積分強度(I)(T)
が、光学照明および結像パラメータとして使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記事前定義された最適化基準が達成されるとすぐに、最適化ルーチンが、以下のように継続され、すなわち、
- 前記最適化基準を強化する(36)ステップと、
- 前記整合品質が前記強化された最適化基準に達するまで、前記「修正する」ステップ、前記「検査する」ステップ、および前記「決定する」ステップを再度実行するステップと、
- 前記最適化クエリステップ(35)において検査される終了基準が達成されるまで、前記「強化する」ステップおよび前記「再度実行する」ステップを繰り返すステップと
が継続されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
照明された物体視野(3)にわたる前記物体(5)の照明の照明角度の分布の依存性が、前記整合品質を決定するときに考慮に入れられることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法によって最適化されている瞳絞り(8)。
【請求項10】
前記瞳絞り形状(39)が、自由形状絞り境界により具現化されることを特徴とする、請求項9に記載の瞳絞り。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法によって最適化された少なくとも1つの瞳絞り(8)を含む計測システム(2)であって、前記計測システム(2)の光学測定システムが、照明瞳の領域に前記最適化された瞳絞り(8)を有する前記物体(5)のための照明光学ユニット(7)と、前記物体(5)を結像するための結像光学ユニット(10)とを含む、計測システム。
【請求項12】
前記瞳絞り(8)のための交換ホルダを特徴とする、請求項11に記載の計測システム。
【請求項13】
アナモルフィック投影光学ユニットを有する光学生成システムの前記照明-結像特性のシミュレーションで使用するように構成されている、請求項11または12に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、独国特許出願DE 10 2021 213 827.6の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光学測定システムによる物体の照明および結像中の光学生成システムの照明および結像特性をシミュレートするための瞳絞り形状を最適化するための方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法によって最適化された瞳絞り、および少なくとも1つのそのような瞳絞りを含む計測システムに関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィマスクの空間像を3次元で測定するための計測システムが、WO 2016/012 425およびWO 2016/012 426から知られている。リソグラフィマスクの空間像を3次元で決定するための対応する計測システムおよび方法が、DE 10 2019 206 651から知られている。DE 10 2013 219 524は、光学システムの結像品質を決定するためのデバイスおよび方法、ならびに光学システムを説明している。DE 10 2013 219 524は、ピンホールの結像に基づいて波面を決定するための位相回復方法を説明している。DE 10 2017 210 164は、投影レンズの結像挙動を調節するための方法、および調節装置を説明している。投影露光装置におけるレンズ加熱を補償するための方法が、米国特許第9,746,784号から知られている。特にアナモルフィック投影光学ユニットを有する光学生成システムが、例えば、米国特許出願公開第2020/0272058号から知られている。光学生成システムのさらなる変形が、WO 2009/100 856から知られている。DE 10 2008 001 553は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の物体面に走査積分照明エネルギーを設定するための構成要素を開示している。EP 0 674 778は、構造化表面を生成するための線量パターンを作り出すプロセスおよびデバイスを開示している。DE 103 52 040およびWO 2005/045 503は、光学デバイス、特に顕微鏡のための絞りおよび/またはフィルタ構成を開示している。
【0004】
既知の計測システムは、照明光学ユニットのセットアップおよび/または結像光学ユニットのセットアップに関して、場合によっては、シミュレートされるべき光学生成システムの中の対応する照明セットアップおよび結像光学構成要素と大きく異なる。これは、特に、計測システムのセットアップが、光学生成システムのセットアップに費やされる設計およびエネルギーに関する費用と同じ費用で達成され得ないということに起因する。
【発明の概要】
【0005】
それゆえに、本発明の目的は、計測システムで使用される瞳絞り形状の最適化方法を提供することであり、最適化方法は、照明および結像光学構成要素に差異があるにもかかわらず、計測システムの光学測定システムによる物体の照明および結像中に、できる限り偏差がない光学生成システムの照明および結像特性のシミュレーションをもたらす。
【0006】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する最適化方法によって達成される。
【0007】
本発明によれば、特に、光学システムの数学的または数値的モデリングは、光学システムの照明および結像特性への瞳絞りの絞り形状の変化の影響を、この手段が絞り形状最適化を可能する精度で全体的に定性的に決定することを可能にすることが認識されている。最適化方法の最終製造ステップの過程で生じる目標絞り形状は、光学測定システムによる物体の照明および結像中の光学生成システムの照明および結像特性を高い精度でシミュレートすることを保証する。光学生成システムのさらに複雑な照明設定、および/または光学生成システムの複雑な結像特性、例えば、光学生成システムの投影光学ユニットのアナモルフィック結像が、最適化方法中の整合品質決定中に考慮に入れられシミュレートされ得る。投影光学ユニットのアナモルフィック結像については、米国特許第9,366,968号が参照される。特に、例えば、構造の規定のゆえに必要な光学測定システムの照明側瞳掩蔽を、最適化方法中に考慮に入れることができる。次いで、光学測定システムのこの照明側掩蔽は、目標絞り形状によって補正または補償することができる。光学測定システムの瞳絞りの機械的構造で必要とされる必要な添え骨部の効果さえ考慮に入れることができる。製造境界条件を検査するとき、絞り形状の自立構成、最小絞り添え骨部幅、最小絞り孔径、および絞りエッジ部分の最大曲率に関する規定を考慮に入れることができる。これにより、製造することができない最適化解が見いだされる状況が避けられる。さらに、光学生成システムの結像光学ユニットの射出瞳の特に中央の掩蔽(光学生成システムにおいてしばしば見いだされる)を、最適化方法との関連で考慮に入れることができる。この場合、光学生成システムの射出瞳の中央の掩蔽は、測定システムの結像光学ユニットのNA開口絞りの中央絞りによって考慮に入れることができる。一方の光学生成システムと他方の光学測定システムとの間の異なる結像射出瞳アポダイゼーションさえも考慮に入れることができる。
【0008】
最適化方法は、特に、結像されるべき物体の構造構成が考慮に入れられるように実施することができる。したがって、異なる構造に関連して変化する光学特性を考慮に入れることができる。
【0009】
多数の個々のスポットから規則的に構築される光学生成システムの照明瞳と、規則的に連続して照明される領域を有する計測システムの光学測定システムの照明瞳との間の構成の差を同様に考慮に入れることができる。
【0010】
あるいは、最適化方法は、特定の物体構造が方法に影響を与えないように機能することもできる。特に、大きい像側開口数(0.5よりも大きい像側開口数)を有する光学生成システムは、良好な品質でシミュレートすることができる。
【0011】
請求項2による製造境界条件への適合を検査するための検査方法は、実際に価値があることが判明している。製造品質に関する要件は、それぞれ検査される周囲領域のサイズを事前定義することによって事前定義することができる。これにより、特に、目標絞り形状のそれぞれの検査部分に沿って、すなわち、検査が目標絞り形状の絞り縁部全体に沿って行われた後、過度に狭い添え骨部または絞り縁部の過度に大きい曲率が生じる状況が避けられる。
【0012】
請求項3による、製造境界条件の検査中に検査される周囲領域のピクセルごとの配置は、実際に価値があることが判明している。ピクセルのサイズは、達成可能な製造分解能に従って選ぶことができる。
【0013】
瞳絞り形状の製造境界条件のピクセルベース検査の代わりに、多角形境界が、所望の境界形状として使用されてもよく、そのような場合、互いにそれぞれ隣接する多角形の線分の角度から曲率推定(絞り形状の丸み半径)を導出することができる。
【0014】
請求項4による、一方の光学生成システムと他方の光学測定システムとの間の瞳整合を考慮に入れることは、十分な整合品質決定を保証するのに価値があることが判明している。ここで、それぞれの照明瞳および/またはそれぞれの結像瞳に関する情報が、関与する光学システムの境界条件に応じて使用されてもよい。
【0015】
請求項5によるメリット関数値計算は、最適化方法との関連で整合品質決定の数値モデリングを簡単にする。瞳重なり領域のサイズは、整合品質決定との関連で変更することができる。これは、関与する光学システムの選ばれた境界条件に応じて行うことができる。要求される整合品質の程度は、整合品質を決定するときに使用される瞳重なり領域のサイズと、照明瞳にわたるそれらの数および分布とを事前定義することによって細かく影響され得る。この事前定義は、特に、シミュレートされるべき光学生成システムの照明および結像特性に応じて行うことができる。
【0016】
重なりベースのメリット関数の代わりに、整合品質はまた、多数のテスト結像を考慮に入れた直接結像シミュレーションによって達成されてもよい。そのような直接結像シミュレーションとの関連で、直接対応する結像パラメータ、特に、限界寸法(CD)または結像テレセントリック性の偏差を評価することができ、光学生成システムと光学測定システムとの間の整合を保証することができる。
【0017】
請求項6による照明および結像パラメータは、関与する光学システムの典型的な結像特性または結像収差によく適合するので、実際に価値があることが判明している。さらなる照明および結像パラメータ、例えば、2つの互いに垂直な座標に沿った可能な構造分解能(限界寸法、CD)を互いに比較するパラメータを使用することもできる。そのようなパラメータの1つの例は、いわゆるHV(水平/垂直)非対称性である。瞳透過の下限を事前定義するパラメータが、さらに、整合品質決定との関連で使用されてもよい。
【0018】
請求項7による最適化ループは、既知の最適化方法を使用することを可能にする。その1つの例は、シミュレーテッドアニーリングである。技術文献で知られている他の最適化方法を使用することもできる。全計算時間、またはさもなければ最適化基準との適合の品質を、終了基準に選ぶことができる。
【0019】
請求項8による物体照明の視野依存性を考慮に入れることにより、光学生成システムの照明および結像特性のシミュレーションが改善される。視野依存性は、光学生成システムの瞳をそれぞれの視野にわたって平均化することによって、および/またはすべての視野点または選択された視野点領域に対する最適化方法との関連で整合品質を決定することによって考慮に入れることができる。
【0020】
請求項9による瞳絞りの利点は、本発明による最適化方法を参照して上述で既に説明したものに対応する。
【0021】
請求項10による自由形状瞳絞りの場合、これは、対応して、光学生成システムの光学特性をシミュレートするための設計の自由度を大きくする。自由形状瞳絞りは、絞り境界には区別された対称軸および/または対称面がない瞳絞りである。自由形状瞳絞りの場合、多重回転対称さえ存在しない。
【0022】
請求項11による計測システムの利点は、最適化方法およびそれによって最適化された瞳絞りを参照して上述で既に説明したものに対応する。
【0023】
請求項12による交換ホルダは、計測システムの光学測定システムにおいて異なる瞳絞りを使用することを可能にする。
【0024】
対応して最適化された瞳絞りを有する計測システムは、請求項13による使用において特に価値があることが判明している。互いに垂直な方向における光学生成システムの投影光学ユニットの異なる結像スケールが、これらの2つの方向における異なるスケーリングによる製造ステップとの関連で考慮に入れられてもよい。
【0025】
本発明の例示的な実施形態が、図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】物体が照明光で照明されるときの結像光学生成システムの目標波面をシミュレートするための計測システムの、視線方向が入射面に垂直である非常に概略的な平面図であり、計測システムは、物体を照明するための照明光学ユニットと、物体を結像するための結像光学ユニットをもつ光学測定システムとを含み、照明光学ユニットおよび結像光学ユニットは、各々、非常に概略的に示されている。
【
図2】計測システムの照明光学ユニットの瞳面に配置するためのシグマ絞りの平面図である。
【
図3】
図2と同様の図において、計測システムの光学測定システムの結像光学ユニットの瞳面に配置するためのNA絞りの平面図である。
【
図4】光学生成システムの照明および結像特性と光学測定システムの照明および結像特性との間の整合品質を最適化するための方法を解明するための、照明光学ユニットおよび結像光学ユニットを含む光学システムの照明瞳と結像光学ユニットの瞳との間の瞬間的な重なりを概略的に示す図である。
【
図4A】光学特性に関して計測システムによりシミュレートされた光学生成システムの照明瞳(左側)および投影光学ユニット射出瞳(右側)を示す図である。
【
図4B】絞り形状最適化方法との関連で見いだされた
図4Aによる瞳構成をシミュレートするための計測システムの光学測定システムのシグマ瞳絞り形状(左側)およびNA開口絞り形状(右側)を示す図である。
【
図5】少なくとも1つの製造境界条件を検査する方法を解明するための光学測定システムの照明光学ユニットの瞳の絞り形状の詳細を示す図であり、製造境界条件を満たす絞り形状の周縁検査部分の許容可能な経路を示す。
【
図6】
図5と同様の図において、製造境界条件を満たさない絞り形状の検査部分の1つの例を示す図である。
【
図7】光学測定システムによる物体の照明および結像中に光学生成システムの照明および結像特性をシミュレートするための瞳絞り形状を最適化する方法の流れ図である。
【
図8】瞳座標(角度空間)で示されている、最適化方法中に生じる目標絞り形状の1つの例を示す図である。
【
図9】
図8による角度空間結果に基づく目標絞り形状を有する製造金属シートからの途中で途切れた詳細を示す図であり、追加の位置合せマーキング開口部が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
位置関係の提示を容易にするために、以下では、デカルトxyz座標系が使用される。
図1において、x軸は、図面の面に垂直に図面から外に延びる。y軸は、
図1において右の方に延びる。
図1において、z軸は上方に延びる。
【0028】
子午線断面に対応する図において、
図1は、物体が照明光1で照明されるときの結像光学生成システムの照明および結像特性、特に目標波面をシミュレートするための計測システム2におけるEUV照明光または結像光1のビーム経路を示す。計測システム2の光学測定システムの結像光学ユニットにおいて、物体面4の物体視野3に配置されたレチクルまたはリソグラフィマスクの形態のテスト構造5(
図2参照)が、EUV照明光1を使用して結像される。以下では、テスト構造5は、物体または試料とも呼ばれる。
【0029】
計測システム2は、3次元(3D)空間像を分析するために使用される(空間像計測システム)。用途には、空間像が生産投影露光装置、例えばスキャナにも現われるようにリソグラフィマスクの空間像をシミュレートすることが含まれる。そのような計測システムは、WO 2016/012 426、米国特許出願公開第2013/0063716号(その中の
図3参照)、DE 102 20 815(その中の
図9参照)、DE 102 20 816(その中の
図2参照)、および米国特許出願公開第2013/0083321号から知られている。
【0030】
照明光1は、物体5で反射される。照明光1の入射面は、yz平面と平行である。
【0031】
EUV照明光1は、EUV光源6によって生成される。光源6は、レーザプラズマ源(LPP;レーザ生成プラズマ)または放電源(DPP;放電生成プラズマ)とすることができる。原理的に、シンクロトロンベース光源、例えば自由電子レーザ(FEL)を使用することもできる。EUV光源の使用波長は、5nmと30nmとの間の範囲であり得る。原理的に、計測システム2の1つの変形では、光源6の代わりに、別の使用光波長の光源、例えば、193nmの使用波長の光源を使用することもできる。
【0032】
計測システム2の実施形態に応じて、後者が、反射物体またはさもなければ透過物体5に使用されてもよい。透過物体の1つの例は、ピンホール絞りである。
【0033】
計測システム2の照明光学ユニット7は、光源6と物体5との間に配置される。照明光学ユニット7は、物体視野3にわたる定義された照明強度分布で、そして同時に、物体視野3の視野点が照明される定義された照明角度分布で、検査されるべき物体5を照明するのに役立つ。この照明角度分布は、以下、照明開口または照明設定とも呼ばれる。
【0034】
照明光学ユニット瞳面9に配置され、そこに照明瞳を事前画定する照明光学ユニット7のシグマ開口絞り8によって、照明開口は境界を定められる。シグマ開口絞り8は、以下、シグマ絞りとも呼ばれる。シグマ開口絞り8は、そこに入射する照明光1のビームの境界を周縁で定める。代替としてまたは加えて、シグマ開口絞り8および/または結像光学ユニットの絞りはまた、照明光ビームを内側から遮光する、すなわち、掩蔽絞りとして機能することができる。対応する絞りは、内側絞り本体を有することができ、内側絞り本体は、それに応じて、内側のビームを遮光し、前記絞り本体は、複数の添え骨部によって、例えば4つの添え骨部によって外側絞り支持体に接続される。
【0035】
図2は、
図1における視線方向IIからの平面図でシグマ絞り8の1つの実施形態を示す。
図2に示された座標σ
x、σ
yは、角度空間において照明光学ユニット瞳面9に広がり、
図1の座標xおよびyに対応する。シグマ照明絞り8は、4つの添え骨部8
1~8
4を有し、4つの添え骨部8
1~8
4は、周縁絞り支持体8
Tと、内側掩蔽遮光本体8
Oとの間をスポークのように延びて、内側掩蔽遮光本体8
Oを支持する。添え骨部8
iと、キャリア8
Tと、内側掩蔽遮光本体8
Oとの間に、シグマ絞り8は、σ
x/σ
y座標系の4つの象限に対応する4つの開口部8
I、8
II、8
III、および8
IVを有する。計測システムの掩蔽された照明は、
図2によるシグマ絞り8によって事前定義される。
【0036】
シグマ開口絞り8は、変位駆動部8aによって、照明光学ユニット瞳面9内で、すなわち、xy平面と平行に、規定された方法で、変位可能である。絞り変位駆動部8aは、物体5を照明するときの照明設定を事前定義するためのアクチュエータである。
【0037】
変位駆動部8aに加えて、計測システム2は交換ホルダ8bを有し、それによって、それぞれのシグマ絞り8を交換シグマ絞り8’と交換することが可能である。交換ホルダ8bは、現在使用されているシグマ絞り8をその都度絞りマガジンに移送し、絞りマガジンから交換シグマ絞りを選択し、この選択したシグマ絞りを照明光学ユニット瞳面9の現在のシグマ絞りの場所まで移送することを可能にする。
【0038】
物体5で反射した後、照明または結像光1は、計測システム2の光学測定システムの結像光学ユニットまたは投影光学ユニット10に入る。照明開口と同様に、
図1の投影光学ユニット10の入射瞳12内のNA開口絞り11によって事前画定された投影光学ユニット開口がある。
【0039】
入射瞳12は、照明光学ユニット7の照明瞳に対して光学的に共役である。
【0040】
図3は、
図2と同様の図で、再度、NA開口絞り11の平面図を示す。
【0041】
添え骨部111、112、113、114は、NA開口絞り11の絞り支持体をNA開口絞り11の中心掩蔽遮光本体11Oに接続する。掩蔽遮光本体11Oは、シミュレートされるべき光学生成システムの結像光学ユニットの中心掩蔽をシミュレートする。
【0042】
絞り8、11の絞り材料は、金属とすることができる。
【0043】
入射瞳12は、投影光学ユニット10の投影光学ユニット瞳面の1つの例である。NA開口絞り11はまた、投影光学ユニット10の射出瞳に配置されてもよい。NA開口絞り11は、変位駆動部13によって、投影光学ユニット瞳面12内で、すなわち、xy平面と平行に、規定された方法で、変位可能である。変位駆動部13はまた、照明設定を事前定義するためのアクチュエータである。
【0044】
一般に、シグマ開口絞り8とNA開口絞り11は、互いに対して、照明光1の中心光線とテスト構造5での反射とが、両方の絞りに中心で当たるように位置合せされる。シグマ開口絞り8およびNA開口絞り11は、互いに中心を合わせることができる。
【0045】
測定されるべき結像光学ユニット10は、計測システム2の空間分解検出デバイス14に向けて物体5を結像させるのに役立つ。検出デバイス14は、例えば、CCD検出器として設計される。CMOS検出器を使用することもできる。検出デバイス14は、投影光学ユニット10の像面15に配置される。
【0046】
検出デバイス14は、デジタル像処理デバイス17に信号接続される。
【0047】
xy平面における検出デバイス14のピクセル空間分解能は、座標方向xおよびyにおいて測定されるべき入射瞳12の開口数(NAx、NAy)に反比例するように事前定義することができる。このピクセル空間分解能は、x座標の方向では規則正しくλ/2NAxよりも小さく、y座標の方向では規則正しくλ/2NAyよりも小さい。この場合、λは、照明光1の波長である。検出デバイス14のピクセル空間分解能はまた、NAx、NAyとは無関係に、正方形ピクセル寸法を用いて実現され得る。
【0048】
検出デバイス14の空間分解能は、再サンプリングによって増加または減少させることができる。x方向およびy方向に異なる寸法をもつピクセルを備えた検出デバイスも可能である。
【0049】
物体5は、物体ホルダまたはホルダ18によって担持される。ホルダ18は、変位駆動部またはアクチュエータ19によって、一方ではxy平面に平行に、他方ではこの平面に垂直に、すなわち、z方向に変位させることができる。変位駆動部19は、計測システム2の動作全体と同様に、中央制御デバイス20によって制御され、中央制御デバイス20は、これ以上具体的に示されない方法で、制御されるべき構成要素に信号接続される。
【0050】
計測システム2の光学セットアップは、半導体構成要素の投影リソグラフィ製造中の物体5の投影露光の過程において照明および結像の最も正確な可能なシミュレーションまたはエミュレーションに役立つ。計測システム2の光学測定システムは、この場合に使用される投影露光装置の結像光学生成システムの照明および結像特性、特に目標波面をシミュレートするのに役立つ。
【0051】
図1は、物体面4の領域におけるテスト構造5の様々な可能な配置面を、いずれの場合も破線を使用して示している。計測システム2の動作中、テスト構造5は、物体面4に対するテスト構造5の異なる距離位置z
mで、サブ開口10iによってそれぞれ事前定義された照明角度分布を使用して照明され、強度I(x,y,z
m)が、それぞれの距離位置z
mで、像面15において空間的に分解されて記録される。この測定結果I(x,y,z
m)は、空間像とも呼ばれる。
【0052】
焦点面zmの数は、2と20との間、例えば、10と15との間とすることができる。この場合、数レイリー単位(NA/λ2)にわたるz方向の全変位がある。
【0053】
入射瞳12に加えて、
図1は、さらに、投影光学ユニット13の射出瞳21も概略的に示す。結像光学ユニット10の入射瞳12および射出瞳21は、両方とも楕円形である。代替として、2つの瞳12、21は、円形の境界を有することもできる。
【0054】
計測システム2の結像光学ユニット10は、同一構造である、すなわち、x方向およびy方向に同じ結像スケールを有する。
【0055】
図1は、下部に、検出デバイス14の3つの測定結果を再度xy平面図で示し、中央の測定結果は、物体面4に配置された場合のテスト構造5の像表現を示し、他の2つの測定結果は、テスト構造5が、物体面4のz座標と比較して、正のz方向に1回および負のz方向に1回変位された像表現を示す。テスト構造5の空間像は、それぞれのz座標に割り当てられた測定結果の全体から生じる。
【0056】
計測システム2の光学測定システムによる物体5の照明および結像中の光学生成システムの照明および結像特性のシミュレーションとの関連で、シグマ照明絞り8の瞳絞り形状が最適化される。この最適化方法の一部は、シグマ絞り8の特定の絞り形状を使用して、一方の光学生成システムの照明および結像特性と、他方の計測システム2の光学測定システムの照明および結像特性との間の整合品質を決定することである。少なくとも1つのメリット関数の値が、この整合品質の決定との関連で計算される。前記メリット関数は、一方の光学生成システムの照明瞳および結像瞳の瞳重なり領域と、光学測定システムのシグマ絞り8の使用された絞り形状をもつ照明瞳および使用されたNA開口絞り11をもつ結像瞳の対応する瞳重なり領域との間の光学照明および結像パラメータの比較によって影響を受ける。
【0057】
図4は、入射瞳12となり得る照明瞳と、射出瞳21となり得る結像瞳との間のそのような瞳重なり領域A
r,φを示す。
【0058】
射出瞳21の中心Z
Ar,φは、デカルト座標
【数1】
【数2】
に位置する。デカルト座標σ
x、σ
yの代わりに、
図4に同様に示されている極座標を選ぶことも可能である。この場合、σ
φは、照明瞳12の中心Z
Bと射出瞳21の中心Z
Aとの間の距離を表す。Φは、
図4に示されるように、距離σ
φと、例えばσ
y軸との間角度を表す。図示の場合、φは90°である。
【0059】
そのような瞳重なり領域A
r,φの助けにより整合品質を決定することとの関連で、走査される様々な支持点
【数3】
【数4】
における重なりが評価される。この場合、以下の評価項が使用される。
【0060】
【数5】
ここで、Dは、それぞれの瞳重なり領域A
r,φにわたる強度I(σ
x,σ
y)の単純な加算を記述する項である。このD項(式(1)による)は、像寸法CD(限界寸法)すなわち、事前定義された方向に沿った構造の幅と相関する。
【0061】
パラメータCDの定義に関連して、米国特許第9,176,390号が参照される。
【0062】
T項(式(2)による)は、重なり領域Aにわたる積分を表し、前記積分は、再び、距離値σφで重み付けされる。T項のこの定式化では、簡単にするために、射出瞳11または21には、それぞれ、アポダイゼーションがないと仮定されている。このT項は、結像パラメータ結像テレセントリック性と相関する。これは、物体が結像される基板のデフォーカス位置の関数としてオフセットされた物体構造の感度を含むことができる。
【0063】
シグマ絞り8の所与の瞳絞り形状について、すべての可能な重なり領域A
r,φの整合品質を決定するときに、以下の最適化規定が適用される。
【数6】
この場合、dcは、それぞれの設計候補、すなわち、シグマ絞り8の現在考慮されている絞り形状を表す。tは、光学生成システム、すなわち、特に、スキャナの形態の投影露光装置の目標照明瞳を表す。
【0064】
式(3)および(4)による最適化規定は、通例、達成されない。整合品質を決定するとき、設計候補dcの絞り形状は、最適化規定(3)、(4)が最小値をもたらすまで変更される。
【0065】
最適化変数DおよびTに加えて、さらなる照明および/または結像パラメータと相関するさらなる変数が、さらに、整合品質を決定するときに使用されてもよい。そのような変数の1つの例は、
【数7】
である。このHV項は、垂直次元および水平次元に沿った限界寸法(CD)の差を定量化する結像変数「HV非対称性」と相関する。HV項は、物体5上に結像されるべき構造に応じて、例えば、特に同じ周期性および同じ目標CDを有する、結像されるべき水平または垂直ラインの場合、またはさもなければいわゆるコンタクトホール、すなわち、領域内のxyアスペクト比が1である構造の場合、関心のあるものとなり得る。次いで、HV非対称性は、2つのCDの間の差、すなわち、水平(h)ラインおよび垂直(v)ラインの場合にはCD
h-CD
v、またはx方向およびy方向に広がりを有するコンタクトホールの場合にはCD
x-CD
yとして理解することができる。
【0066】
上述の式(5)に従ってHV項を確定することには、座標原点Z
Bを中心として互いに対して90°回転されている2つの画定された重なり領域A
r,φおよびB
r,φの場所における式(1)による2つのD項の間の差を計算することが含まれる(
図4参照)。重なり領域Bの積分を計算するために、例えば入射瞳12と、対応して90°回転された射出瞳21’との間の重なりが考慮に入れられる。
【0067】
次いで、HV項についても、対応する最適化規定がある。
【数8】
比較計算が行われた後、使用される重なり領域A
r,φは、一方では光学生成システムおよび他方では計測システム2の照明光学ユニット7の照明瞳全体を覆う。
【0068】
図4Aおよび
図4Bは、一方では光学生成システム(
図4A)および他方では計測システム2の光学測定システム(
図4B)の2つの瞳対を示し、それらは、特に
図4に関連して上述で説明した整合品質決定との関連で互いに比較される。
【0069】
図4Aは、左側に、xダイポール照明設定の場合の照明瞳の照明を示す。
図4Aは、右側に、中央のほぼ楕円形の瞳掩蔽をもつ光学投影システムの投影光学ユニットの射出瞳を示す。
【0070】
光学生成システムのシミュレートされるべき照明設定(
図4Aの左側を参照)は、光学生成システムの照明光学ユニットのファセット化構成、例えば、視野ファセットミラーおよび瞳ファセットミラーを有する構成、またはMEMSミラー構成が照明光学ユニット内で使用される構成に対応する、照明瞳内の多数の個々のスポットで構成することができる。
図4Aの左側のそれぞれの個々のスポットのサイズは、この個々のスポットの輝度、すなわち、この個々のスポットに割り当てられた照明方向からの照明強度の尺度である。
【0071】
図4Bは、左側に、
図4Aによる照明設定および射出瞳をもつ光学生成システムの照明および結像特性のシミュレーションのためのシグマ絞り8の目標絞り形状(最適化方法によって得られた)を示す。
図4Bは、右側に、NA絞り11(
図3も参照)によって生成される中央掩蔽をもつ光学測定システムの結像光学ユニットの射出瞳を示す。
【0072】
シグマ絞り8の瞳絞り形状の最適化方法は、絞り形状のそれぞれの設計候補に関して少なくとも1つの製造境界条件を検査することを含む。製造境界条件のそのような検査の1つの例を、
図5および
図6を参照して以下でより詳細に説明する。
【0073】
絞り形状設計候補8
dcが検討され、周縁検査部分23、24が
図5および
図6に示される。製造方法の分解能は、
図5および
図6による図の個々のピクセル25
iの範囲により明らかにされる。暗色またはハッチングで示された個々のピクセル25
iは、照明/結像光1を遮断する多分連続的な絞り材料を表し、開いている個々のピクセル25
iは、多分連続的な絞り開口部(照明/結像光の透過)を表す。
【0074】
したがって、検査方法との関連で、絞り形状設計候補8dc全体は、開始または修正絞り形状とも呼ばれ、ピクセル離散化での規則的なビットマップとして記述される。
【0075】
それぞれの検査部分23、24の丸み、すなわち、その曲率を局所的にピクセルベースの方法で定義するために、定義された半径rを有する周囲領域が、ビットマップの各ピクセル25
iについて評価される。これが、
図5および
図6においてピクセル25
1、25
2、および25
3について示される。異なるハッチングで強調表示されている、評価されるそれぞれの周囲ピクセル領域26
1、26
2、26
3は、正方形であり、いずれの場合も、両方の座標x、yに沿って5つの個々のピクセル25
iの範囲を有する。考慮されるべき中央の個々のピクセル、例えば25
1と、周囲ピクセル領域、例えば26
1とは、行および列に配置される。
【0076】
以下の規定が評価中に検査される。
【0077】
考慮している中央の個々のピクセルに関して反対の状態の「絞り材料」または「絞り開口部」を有する、考慮している個々のピクセルのまわりのそれぞれのピクセル領域26i内の個々のピクセル25iの切り上げた和は、(2r+1)2/2よりも小さい。
【0078】
それゆえに、r=2の場合、この和は13未満でなければならないが、その理由は、比較数は、常に整数であり、(2r+1)2/2が整数をもたらさない限り、次のより高い整数に切り上げられるからである。
【0079】
対応する評価は、個々のピクセル251が絞り材料を有し、絞り開口部を表す9つの個々のピクセル251がピクセル領域261内に存在し、その結果、「13よりも小さい数」という規定が満たされ、そして、対応して、個々のピクセル252(=絞り開口部)に対しても満たされる(絞り材料からなるピクセル領域262内の個々のピクセル251の数=8、すなわち、13よりも小さい)ので、前記の規定が個々のピクセル251および252に対して満たされることを示す。
【0080】
この要件は、個々のピクセル253では、個々のピクセル253が絞り開口部を表し、ピクセル領域263には、絞り材料を表す合計16個の個々のピクセル25iが存在するので満たされない。
【0081】
したがって、ピクセル領域26i、すなわち、それぞれの中央の個々のピクセル25iのまわりの周囲領域が、十分な確率で、照明光の透過に関して中央領域と全く同じように振る舞うかどうかを確かめるために検査が行われる。
【0082】
したがって、この方法による製造境界条件の検査により、個々のピクセル251および252の領域に周縁検査部分23を製造することが可能であるが、個々のピクセル253の領域に周縁検査部分24を製造することは可能でないことが示される。これらの製造境界条件は、すべての個々のピクセル25iに対して同様に検査される。そのとき、上記で説明した規定がすべての個々のピクセル25iについて満たされなければならないという要件により、シグマ絞り8の製造可能な絞り形状がもたらされる。それぞれの検査部分23、24について局所的に定式化された規定は、絞り形状設計候補8dcのそれぞれの絞り形状が局所的にしか変化せず、それゆえに、いずれの場合も、絞り形状全体のうちの対応する小さい検査部分のみが製造可能性について検査されなければならないことを示す。
【0083】
最小孔径および例えば最小絞り添え骨部幅は、半径rの選択を介して事前定義することができる。
【0084】
製造境界条件を検査するとき、シグマ絞りの傾斜照明を考慮に入れることも可能であり、その場合、シグマ絞り8の楕円形状は、例えば、円形入射瞳12をもたらす。この点に関して、
図5および
図6からのビットマップ表現の場合、個々のピクセル25
iのx範囲およびy範囲は、互いに同一でないように選ぶことができる。
【0085】
一方の光学生成システムの照明および結像特性と、他方の計測システム2の光学測定システムの照明および結像特性との間の整合品質を決定するとき、光学生成システムの物体照明の視野依存性を考慮に入れることができる。これは、次いで、光学生成システムにおいて、物点が、そこから離間した物点と比較して、照明角度にわたって照明光の異なる強度分布で影響を受けることを考慮に入れる。
【0086】
この視野変動の考慮は、考慮された目標瞳(光学生成システムの照明瞳の座標の照明強度の強い影響に対する項It)が物体視野3全体にわたって平均された目標瞳視野平均値と置き換えられることによって達成することができる。代替として、光学生成光学システムの走査中に、すべての視野座標について、特に、物体変位方向yに垂直なすべてのx視野座標について、上述の式(3)、(4)、および(6)に従って最適化規定を最小化することが可能である。したがって、次いで、瞳重なり領域Ar,φ,xの視野依存境界も生じ得る。
【0087】
計測システム2の光学測定システムによる物体5の照明および結像中に光学生成システムの照明および結像特性をシミュレートするためのシグマ絞り8の瞳絞り形状を最適化する方法全体の1つの例を、
図7による流れ図を参照して以下で説明する。
【0088】
事前定義ステップ30において、最初に、シグマ絞り8、8dcの開始絞り形状が、シミュレーションのための初期設計候補として選択される。
【0089】
最適化との関連で、この開始絞り形状8dcは、修正ステップ31において修正され、その結果、境界形状に関してわずかに変更された修正絞り形状8dcnewが、生成ステップ32において生じる。
【0090】
検査ステップ33において、この修正絞り形状8
dcnewが、この修正絞り形状8
dcnewの製造に関する少なくとも1つの製造境界条件を満たすかどうかを確かめるために検査が行われる。これは、
図5および
図6を参照して上述で説明した検査方法の助けにより行うことができる。検査ステップにより、修正絞り形状8
dcnewの少なくとも1つの周縁検査部分23、24が製造境界条件を満たさないことが示された場合(検査ステップ33の判定「N」)、修正ステップ31および生成ステップ32が繰り返される。これは、次に与えられた修正絞り形状8
dcnewの検査ステップ33が事前定義された製造境界条件への適合(検査ステップ33の判定「Y」)を示すまで行われる。
【0091】
次いで、決定ステップ34は、光学生成システムの照明および結像特性と、光学測定システムの照明および結像特性との間の整合品質を決定することを含む。これは、特に、
図4および式(1)~(6)を参照して、上述で説明した整合品質決定の助けにより行われる。
【0092】
一般に、式(3)、(4)、および(6)による整合規定は必ずしもすべてが同時に0になるわけではないので、整合品質決定中にメリット関数Eを使用することができる。このメリット関数は、重み付き誤差最小化として次のように通常の方法で書くことができる。
【0093】
【数9】
ここで、Iは、シグマ絞り8
dcnewの絞り形状を表し、それは、メリット関数によって評価されるように意図される。I
tは、光学生成システムの目標照明瞳を表し、これは、最適化の意図された目標である。DおよびTは、式(3)および(4)と関連して上述で論じた評価項を表す。加えて、メリット関数Eは、例えば、評価項HV(式(5)および(6)を参照)によって拡張することもできる。
【0094】
メリット関数Eは、加えて、シグマ絞り8dcnewの最小透過率の要件によって拡張することができる。
【0095】
光学生成システムの目標照明瞳に加えて、決定ステップ34は、光学生成システムの瞳伝達関数および計測システム2の光学測定システムの瞳伝達関数によっても影響され得る。
【0096】
この目的のために、式(1)に関連して上述で定義したD項は、以下のように書くことができる。
【数10】
ここで、Pは、アポダイゼーション関数、すなわち、瞳伝達関数のエネルギー比率である。
【0097】
次いで、射出瞳11または21のアポダイゼーションは、それぞれ、この手段によって考慮に入れることができる。
【0098】
決定ステップ34の過程で、最適化クエリステップ35において、最適化基準への適合が照会される。そのような最適化基準の1つの例は、シミュレーテッドアニーリングのボルツマン基準である。
【数11】
この場合、rは、区間[0,1[(したがって、正確な数値「1」はこの区間では除外される)からの一様に分布する乱数であり、βは、シミュレーテッドアニーリング最適化の過程でだんだん増加する制御パラメータである。E(dc
new)およびE(dc)は、最後の最適化ステップ中に、およびその前の最適化ステップ中にシグマ絞り8の絞り形状に対して生じたメリット関数である。
【0099】
ボルツマン基準が満たされる限り、すなわち、最適化がまだ終了していない(クエリステップ35において判定Yである)限り、現在の絞り形状8dcnewは、事前定義ステップ36において行われる次の修正のための初期絞り形状8dcとして設定される。制御パラメータβも事前定義するステップ36において増加される。このようにして、最適化基準は、事前定義ステップ36との関連で強化される。その後、方法は、修正ステップ31に続き、ボルツマン基準がもはや満たされないか、または制御パラメータβが事前定義された値よりも大きいことを最適化クエリステップ35が示す(クエリステップ35におけるクエリ結果N)まで、ステップ32~35が繰り返される。
【0100】
それゆえに、その後、最適化基準が最適化クエリステップ35において達成された(クエリ結果Nの)場合、最適化において最小メリット関数値Eで生じた目標絞り形状をもつシグマ絞り8が、製造ステップ37において製造される。
【0101】
瞳面9の瞳座標におけるそのような目標絞り形状38が、
図8の左上に示される。
【0102】
これからもたらされるシグマ絞り8の実際の絞り輪郭が、
図9の右下に示される。例えば、光学生成システムのダイポール照明設定をシミュレートするために使用することができるシグマ絞り8の絞り開口部の境界39は、シミュレートされるべき照明設定の実際のダイポール形状をわずかしか連想させない自由形状構成を有する。
【0103】
加えて、
図9は、その上、瞳面9にシグマ絞り8を位置づけるための位置合せ補助であるさらなる絞り開口部40を示す。
【0104】
次に製造されたシグマ絞り8の目標絞り形状を用いて、光学測定システムに正しく位置合せして挿入した後、次いで、計測システム2は、光学生成システムの照明および結像条件に最適にモデル化された照明および結像条件の下で、物体またはテスト構造5を測定することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定システムによる物体(5)の照明および結像中に光学生成システムの前記照明および結像特性をシミュレートするための瞳絞り形状(39)を最適化するための方法であって、
- 前記光学測定システムが、最適化されるべき前記瞳絞り形状(39)を有する照明瞳の領域に瞳絞り(8)を有する前記物体(5)のための照明光学ユニット(7)と、前記物体(5)を結像するための結像光学ユニット(10)とを含み、
- 前記シミュレーションのための初期設計候補として前記瞳絞り(8)の開始絞り形状(8
dc)を事前定義する(30)ステップと、
- 直近に事前定義された絞り形状(8
dc)とは異なる修正絞り形状(8
dcnew)を生じさせるように前記開始絞り形状(8
dc)を修正する(31)ステップと、
- 前記修正絞り形状(8
dcnew)の製造に関する少なくとも1つの製造境界条件を検査する(33)ステップ、および前記検査する(33)ステップが、前記製造境界条件への適合を示すまで、前記「修正する」ステップと前記「検査する」ステップとを繰り返すステップと、
- 前記製造境界条件が適合されるとすぐに、前記光学生成システムの前記照明および結像特性と、前記光学測定システムの前記照明および結像特性との間の整合品質を決定する(34)ステップと、
- 前記整合品質が、クエリステップ(35)によって検査される事前定義された最適化基準に達成するまで、前記「修正する」ステップ、前記「検査する」ステップ、および前記「決定する」するステップを繰り返すステップと、
- 前記最適化基準を達成した後に、最適化された瞳絞り形状(39)として、前記最適化基準の達成からもたらされる目標絞り形状を製造する(37)ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記瞳絞り形状の周縁検査部分(23、24)の前記製造境界条件を前記検査する(33)ステップの間に、局所境界条件への適合が検査され、その場合、中央領域(25
1、25
2、25
3)のまわりに配置されたそれぞれの前記検査部分の周囲領域(26
i)について、これらが照明光(1)の透過に関して前記中央領域(25
1~25
3)と全く同じように振る舞うかどうかを確認するために検査が行われ、それぞれの前記周囲領域(26
i)の事前定義された割合が前記中央領域(25
1~25
3)と全く同じように振る舞う場合、前記局所境界条件が満たされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中央領域(25
1~25
3)および前記周囲領域(26
i)が、行および列のピクセルとして配置されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記整合品質を決定する(34)ステップが、前記光学生成システムの照明および/または結像瞳と、前記光学測定システムの照明および/または結像瞳(12、21、21’)との間の整合を確認することによって影響を受けることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項5】
前記整合品質を決定する(34)ステップが、
- 前記光学生成システムの照明瞳および結像射出瞳の瞳重なり領域(A
r,φ)と、
- 使用された絞り形状をもつ照明瞳(12)および前記光学測定システムの前記結像射出瞳(21、21’)を事前定義するための結像開口(11)の対応する瞳重なり領域(A
r,φ)と
の間の光学照明および結像パラメータ(D、T、HV)の比較によって影響を受けるメリット関数(E)の値を、各々が前記照明瞳全体を覆う複数の瞳重なり領域(A
r,φ)について計算することによって行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下の
- 前記瞳重なり領域(A
r,φ)における前記照明瞳を通過する前記照明光(1)の積分強度(I)(D)、および/または
- 前記瞳重なり領域(A
r,φ)における前記照明瞳を通過する前記照明光(1)の、テレセントリック性パラメータ(σ
φ)で重み付けされた積分強度(I)(T)
が、光学照明および結像パラメータとして使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記事前定義された最適化基準が達成されるとすぐに、最適化ルーチンが、以下のように継続され、すなわち、
- 前記最適化基準を強化する(36)ステップと、
- 前記整合品質が前記強化された最適化基準に達するまで、前記「修正する」ステップ、前記「検査する」ステップ、および前記「決定する」ステップを再度実行するステップと、
- 前記最適化クエリステップ(35)において検査される終了基準が達成されるまで、前記「強化する」ステップおよび前記「再度実行する」ステップを繰り返すステップと
が継続されることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項8】
照明された物体視野(3)にわたる前記物体(5)の照明の照明角度の分布の依存性が、前記整合品質を決定するときに考慮に入れられることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項9】
請求項1
または2に記載の方法によって最適化されている瞳絞り(8)。
【請求項10】
前記瞳絞り形状(39)が、自由形状絞り境界により具現化されることを特徴とする、請求項9に記載の瞳絞り。
【請求項11】
請求項1
または2に記載の方法によって最適化された少なくとも1つの瞳絞り(8)を含む計測システム(2)であって、前記計測システム(2)の光学測定システムが、照明瞳の領域に前記最適化された瞳絞り(8)を有する前記物体(5)のための照明光学ユニット(7)と、前記物体(5)を結像するための結像光学ユニット(10)とを含む、計測システム。
【請求項12】
前記瞳絞り(8)のための交換ホルダを特徴とする、請求項11に記載の計測システム。
【請求項13】
アナモルフィック投影光学ユニットを有する光学生成システムの前記照明-結像特性のシミュレーションで使用するように構成されている、請求項11に記載の計測システム。
【国際調査報告】