(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】肺の再生のための多分化能性肺前駆細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20241108BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20241108BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20241108BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241108BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/06
A61K35/42
A61P11/00
A61P11/06
A61P9/12
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534338
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 IL2022051302
(87)【国際公開番号】W WO2023105526
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502379147
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイスナー ヤイール
(72)【発明者】
【氏名】ローズン チャヴァ
(72)【発明者】
【氏名】シェゼン エリアス
(72)【発明者】
【氏名】オーガッド ラン
(72)【発明者】
【氏名】ミルマン クレントシス イリット
(72)【発明者】
【氏名】スー シャオフア
(72)【発明者】
【氏名】ヤダフ ラジ クマール
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヤンシー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ02
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4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB55
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA42
4C087ZA59
4C087ZB26
(57)【要約】
肺再生のための多分化能性肺前駆細胞が提供される。それに応じて、単離肺細胞集団を培養によって増殖させる方法、単離肺細胞集団の投与を必要とする対象へのその投与に関する適合性を確認する方法、ならびに上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を選択することを含む単離肺細胞集団を生成する方法が提供される。また、単離肺細胞集団、それを含む医薬組成物、及びその使用も提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離肺細胞集団を培養によって増殖させる方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、ならびに
(b)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を増殖させるために、内皮細胞の増殖を促す因子と、上皮細胞の増殖を促す因子と、分化を防止する因子とを含む培地中で前記単離肺細胞集団を増殖させること、
を含み、それにより前記単離肺細胞集団を培養によって増殖させる、方法。
【請求項2】
単離肺細胞集団の投与を必要とする対象へのその投与に関する適合性を確認する方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、
(b)前記単離肺細胞集団を培養によって増殖させること、ならびに
(c)前記培養中及び/または前記培養後に、前記単離肺細胞集団上の上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現を決定すること、
を含み、前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の所定の閾値を上回る増殖が、前記単離肺細胞集団が前記対象への投与に好適であることを示しており、かつ
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である前記細胞集団の増殖がないことまたは前記所定の閾値を下回る増殖が、前記単離肺細胞集団が前記対象への投与に不適であることを示しており、
それにより前記単離肺細胞集団の前記対象への投与に関する適合性を確認する、方法。
【請求項3】
単離肺細胞集団を生成する方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、ならびに
(b)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を選択するために、前記単離肺細胞集団を、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーに結合可能な少なくとも1種の試薬と接触させること、
を含み、それにより前記単離肺細胞集団を生成する、方法。
【請求項4】
工程(b)の後に培養によって前記肺細胞を増殖させることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
培養培地が、内皮細胞の増殖を促す因子、上皮細胞の増殖を促す因子、及び分化を防止する因子を含む、請求項2及び4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記培養中及び/または前記培養後に、前記肺細胞上の前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現を決定することを更に含む、請求項1、4、及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である前記細胞集団の増殖が所定の閾値を上回ることは、前記単離肺細胞集団がそれを必要とする対象への投与に好適であることを示し、かつ
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である前記細胞集団の増殖が生じないことまたは前記所定の閾値を下回ることは、前記単離肺細胞集団が前記対象への投与に不適であることを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記内皮細胞の増殖を促す因子が、血管内皮成長因子(VEGF)、FGF、FGF2、IL-8、及びBMP4からなる群から選択される、請求項1及び5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記内皮細胞の増殖を促す因子が、血管内皮成長因子(VEGF)を含む、請求項1及び5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記上皮細胞の増殖を促す因子が、上皮成長因子(EGF)、ノギン、及びR-スポンジンからなる群から選択される、請求項1及び5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記上皮細胞の増殖を促す因子が、上皮成長因子(EGF)を含む、請求項1及び5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分化を防止する因子が、ROCK阻害剤、GSK3b阻害剤、及びALK5阻害剤からなる群から選択される、請求項1及び5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分化を防止する因子が、ROCK阻害剤を含む、請求項1及び5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記上皮細胞マーカーが、CD326、CD324、CD24、アクアポリン5(AQP-5)、ポドプラニン(PDPN)、または終末糖化産物特異的受容体(RAGE)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記内皮細胞マーカーが、CD31またはCD144(VE-カドヘリン)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団が、CD326
+CD31
+シグネチャを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団が、CD324
+CD31
+シグネチャを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団が、CD326
+CD144
+シグネチャを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団が、CD324
+CD144
+シグネチャを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
CD45発現細胞を枯渇させることを更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記単離肺細胞集団をCD45に結合可能な試薬と接触させて、CD45の発現が陰性である細胞集団を選択することによって、前記CD45発現細胞を枯渇させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
T細胞を枯渇させることを更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記結合可能な少なくとも1種の試薬が、抗体である、請求項3~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、単一特異性抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、二重特異性抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記解離が、酵素消化によるものである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記肺組織が、胎仔/胎児肺組織である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記肺組織が、成体肺組織である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記肺組織が、ヒト肺組織である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
CD326
+CD31
+細胞を少なくとも40%含む、単離肺細胞集団。
【請求項31】
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法に従って得られた、単離肺細胞集団。
【請求項32】
活性成分としての請求項30~31のいずれか一項に記載の単離肺細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項33】
肺上皮及び/または内皮組織の再生を必要とする対象においてそれを再生する方法であって、治療有効量の請求項30~31のいずれか一項に記載の単離肺細胞集団を前記対象に投与することを含み、それにより前記肺上皮及び/または内皮組織を再生する、方法。
【請求項34】
肺障害または肺損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、治療有効量の請求項30~31のいずれか一項に記載の単離肺細胞集団を前記対象に投与することを含み、それにより前記肺障害または肺損傷を処置する、方法。
【請求項35】
肺障害または肺損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置する際の使用のための、治療有効量の請求項30~31のいずれか一項に記載の単離肺細胞集団。
【請求項36】
前記対象が、ヒト対象である、請求項33~34のいずれか一項に記載の方法または請求項35に記載の使用のための単離肺細胞集団。
【請求項37】
前記単離肺細胞集団が、前記対象と非同系である、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法、または使用のための単離肺細胞集団。
【請求項38】
前記肺障害または肺損傷が、肺の慢性炎症を含む、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法、または使用のための単離肺細胞集団。
【請求項39】
前記肺障害または肺損傷が、嚢胞性線維症、肺気腫、石綿肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、特発性肺線維症、肺高血圧症、肺癌、サルコイドーシス、急性肺損傷(成人呼吸促迫症候群)、未熟児呼吸促迫症候群、未熟児慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、サーファクタントタンパク質B欠損症、先天性横隔膜ヘルニア、肺胞蛋白症、肺低形成、及び喘息からなる群から選択される、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法、または使用のための単離肺細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月8日に出願された米国仮出願第63/287,147号明細書の優先権の利益を主張するものであり、該仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野及び背景
本発明は、そのいくつかの実施形態では、肺前駆細胞に関し、限定するものではないがより具体的には、肺前駆細胞を生成する方法及び治療用途における肺前駆細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
末期呼吸器疾患は、世界中で主要な死因の1つであり、毎年550万人超が死亡している(2020年の世界保健機関のデータ)。現在、これらの病態に対する唯一の根治的処置は、損傷した臓器を肺移植により置き換えることである。好適な臓器の不足により、多くの患者が移植を待っている間に死亡しているため、肺疾患は幹細胞療法の最有力候補となっている。
【0004】
BM由来細胞(1)、肺由来p63+細胞(2)、LNEP(系統陰性上皮前駆細胞)(3)、ならびにマウス及びヒトsox9+細胞(4)、(5)など、種々の細胞集団が再生能を呈することが示されている。最近、適した前処置によって内因性肺前駆細胞をレシピエントの肺幹細胞ニッチから一掃することを前提として、胎仔肺前駆細胞がマウスにおける移植用の魅力的な供給源として提唱された。こうして、骨髄移植(BMT)に似た手順において、妊娠の管状期(ヒトでは20~22週、マウスではE15~E16)に採取し、ナフタレン及び6GyによるTBIで前処置した後にレシピエントマウスにI.V.注入したマウスまたはヒト胎仔/胎児肺細胞の単一細胞懸濁液は、肺胞系統及び細気管支系統内で顕著な肺キメリズムをもたらした。このキメリズムは、肺機能の顕著な改善と関連していた(6)。より最近では、顕著な肺キメリズムが成体マウス肺ドナーの単一細胞懸濁液の移植へと拡張され(7)(8)、胎仔/胎児細胞移植後に見出されるキメリズムと同様のレベルのキメリズムを実現するには約3倍多い細胞用量が必要とされた(6)。
【0005】
更なる背景技術には、以下が含まれる。
【0006】
国際公開第2013/084190号には、哺乳類胎仔/胎児肺組織からの単離細胞集団懸濁液を活性成分として含む医薬組成物が開示されており、胎仔/胎児肺組織は、在胎約20週~約22週の範囲から選択される在胎期のヒト肺臓器/組織の発生段階に対応する発生段階にある。
【0007】
国際公開第2016/203477号には、関心対象組織の懸濁液中の前駆細胞の移植を必要とする対象を前処置する方法が開示されている。
【0008】
国際公開第2017/203520号には、肺障害または肺損傷を処置する方法であって、有効量の造血前駆細胞(HPC)を含む懸濁液またはHPCを補充した懸濁液中の非同系肺組織細胞を対象に投与することを含み、当該有効量が、長期免疫抑制レジメンを行わずに肺組織細胞に対する寛容性を達成するのに十分な量である、方法が開示されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、単離肺細胞集団を培養によって増殖させる(expanding)方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、ならびに
(b)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を増殖させるために、内皮細胞の増殖を促す因子と、上皮細胞の増殖を促す因子と、分化を防止する因子とを含む培地中で単離肺細胞集団を増殖させること、
を含み、それにより単離肺細胞集団を培養によって増殖させる、方法が提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、単離肺細胞集団の投与を必要とする対象へのその投与に関する適合性を確認する方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、
(b)単離肺細胞集団を培養によって増殖させること、ならびに
(c)培養中及び/または培養後に、単離肺細胞集団上の上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現を決定すること、
を含み、
上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の所定の閾値を上回る増殖が、単離肺細胞集団が対象への投与に好適であることを示しており、かつ
上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖がないことまたは所定の閾値を下回る増殖が、単離肺細胞集団が対象への投与に不適であることを示しており、
それにより単離肺細胞集団の対象への投与に関する適合性を確認する、方法が提供される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、単離肺細胞集団を生成する方法であって、(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、ならびに(b)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を選択するために、単離肺細胞集団を、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーに結合可能な少なくとも1種の試薬と接触させること、を含み、それにより単離肺細胞集団を生成する、方法が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、工程(b)の後に培養によって肺細胞を増殖させることを更に含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、培養培地は、内皮細胞の増殖を促す因子、上皮細胞の増殖を促す因子、及び分化を防止する因子を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、培養中及び/または培養後に肺細胞上の上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現を決定することを更に含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖が所定の閾値を上回ることは、単離肺細胞集団がそれを必要とする対象への投与に好適であることを示し、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖が生じないことまたは所定の閾値を下回ることは、単離肺細胞集団が対象への投与に不適であることを示す。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子は、血管内皮成長因子(VEGF)、FGF、FGF2、IL-8、及びBMP4からなる群から選択される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子は、血管内皮成長因子(VEGF)を含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子は、上皮成長因子(EGF)、ノギン、及びR-スポンジンからなる群から選択される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子は、上皮成長因子(EGF)を含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、分化を防止する因子は、ROCK阻害剤、GSK3b阻害剤、及びALK5阻害剤からなる群から選択される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、分化を防止する因子は、ROCK阻害剤を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、CD326+CD31+細胞を少なくとも40%含む単離肺細胞集団が提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って得られた単離肺細胞集団が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、活性成分としての本発明のいくつかの実施形態の単離肺細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、肺上皮及び/または内皮組織の再生を必要とする対象においてそれを再生する方法であって、治療有効量の本発明のいくつかの実施形態の単離肺細胞集団を対象に投与することを含み、それにより肺上皮及び/または内皮組織を再生する、方法が提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、肺障害または肺損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、治療有効量の本発明のいくつかの実施形態の単離肺細胞集団を対象に投与することを含み、それにより肺障害または肺損傷を処置する、方法が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、肺障害または肺損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置する際の使用のための、治療有効量の本発明のいくつかの実施形態の単離肺細胞集団が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性であることを特徴とする肺細胞を単離するためのキットであって、(I)(i)CD31またはCD144、及び(ii)CD326、CD324、CD24、アクアポリン5(AQP-5)、ポドプラニン(PDPN)、または終末糖化産物特異的受容体(RAGE)、に結合可能な少なくとも1種の試薬と、(II)使用説明書とを含む、キットが提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、(i)懸濁液中の複数の単離肺細胞集団であって、肺細胞が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性であると特徴付けられており、複数の単離肺細胞集団が、同種細胞バンクを形成するためにHLAタイピングされており、各々が別々の容器内に個々に配置されている、懸濁液中の複数の単離肺細胞集団と、(ii)複数の単離肺細胞集団のHLAタイピングされた細胞に関する情報を含むカタログとを含む、細胞バンクが提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞マーカーは、CD326、CD324、CD24、アクアポリン5(AQP-5)、ポドプラニン(PDPN)、または終末糖化産物特異的受容体(RAGE)を含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、内皮細胞マーカーは、CD31またはCD144(VE-カドヘリン)を含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団は、CD326+CD31+シグネチャを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団は、CD324+CD31+シグネチャを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団は、CD326+CD144+シグネチャを含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団は、CD324+CD144+シグネチャを含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、CD45発現細胞を枯渇させることを更に含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離肺細胞集団をCD45に結合可能な試薬と接触させて、CD45の発現が陰性である細胞集団を選択することによって、CD45発現細胞を枯渇させる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、T細胞を枯渇させることを更に含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、工程(b)の後に培養によって肺細胞を増殖させることを更に含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、結合可能な少なくとも1種の試薬は、抗体である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は、単一特異性抗体である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は、二重特異性抗体である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、解離させることは、酵素消化によるものである。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、エクスビボで行われる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織は、胎仔/胎児肺組織である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織は、成体肺組織である。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織は、ヒト肺組織である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織は、死体ドナーからのものである。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織は、生体ドナーからのものである。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺細胞は、肺上皮組織を再生することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺細胞は、肺内皮組織を再生することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞は、懸濁液中にある。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞は、足場に埋め込まれているかまたは付着されている。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、活性成分として造血前駆細胞(HPC)を更に含む。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、HPCは、T細胞枯渇未熟造血細胞を含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、投与前に、肺組織への損傷を誘発することが可能な試薬を対象に投与することを更に含み、その損傷により肺組織内の常在幹細胞が増殖する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、投与前に、亜致死性、致死性、または超致死性の前処置プロトコル下で対象を前処置することを更に含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、有効量の造血前駆細胞(HPC)を対象に投与することを更に含む。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、投与後に対象を免疫抑制剤で処置することを更に含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、使用のための単離肺細胞集団は、肺組織への損傷を誘発することが可能な試薬の使用を更に含み、その損傷により肺組織内の常在幹細胞が増殖する。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、使用のための単離肺細胞集団は、亜致死性、致死性、または超致死性の前処置プロトコルを更に含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、使用のための単離肺細胞集団は、有効量の造血前駆細胞(HPC)の使用を更に含む。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、使用のための単離肺細胞集団は、免疫抑制剤の使用を更に含む。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織への損傷を誘発することが可能な試薬は、化学療法剤、免疫抑制剤、アミオダロン、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、ニトロフラントイン、プロカインアミド、キニジン、トカイニド、及びミノキシジルからなる群から選択される。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺組織への損傷を誘発することが可能な試薬は、ナフタレンを含む。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前処置プロトコルは、強度減弱前処置(RIC)を含む。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前処置プロトコルは、全身照射(TBI)、部分照射、化学療法剤、及び/または抗体免疫療法のうちの少なくとも1つを含む。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体免疫療法は、T細胞デバルキングを含む。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体免疫療法は、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)抗体、アレムツズマブ、ムロモナブ-CD3、またはそれらの組み合わせを含む。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TBIは、1~10Gyの範囲内の単回または分割照射線量を含む。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態によれば、HPCは、肺組織由来CD34+細胞を含む。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、HPCは、骨髄CD34+細胞または動員末梢血CD34+細胞を含む。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、HPCは、T細胞枯渇未熟造血細胞を含む。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離肺細胞集団及びHPCは、同じドナーから得られる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離肺細胞集団及び造血前駆細胞(HPC)は、別々の製剤中に存在する。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離肺細胞集団及びHPCは、同じ製剤中に存在する。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離肺細胞集団及び/またはHPCは、静脈内または気管内投与経路用に製剤化される。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、免疫抑制剤は、シクロホスファミド、ブスルファン、フルダラビン、タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、エベロリムス、シロリムス、グルココルチコイド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離肺細胞集団は、対象と非同系である。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺障害または肺損傷は、肺の慢性炎症を含む。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態によれば、肺障害または肺損傷は、嚢胞性線維症、肺気腫、石綿肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、特発性肺線維症、肺高血圧症、肺癌、サルコイドーシス、急性肺傷害(成人呼吸促迫症候群)、未熟児呼吸促迫症候群、未熟児慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、サーファクタントタンパク質B欠損症、先天性横隔膜ヘルニア、肺胞蛋白症、肺低形成、及び喘息からなる群から選択される。
【0082】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法及び材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法及び/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、本特許明細書が、定義を含めて優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を、単に例として、添付図面を参照しながら本明細書に記載する。これより、具体的に図面を詳細に参照するが、示される細部は、単に例としてのものであり、かつ本発明の実施形態を例示的に論じる目的のものであることが強調される。これに関して、説明を図面と併せて読むことで、本発明の実施形態がどのように実践され得るかが当業者には明らかとなる。
【0084】
図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1-1】
図1のA~Fは、sc-RNA seqによって評価した、レシピエント肺におけるmTomドナー由来細胞の多系統生着を示す。
図1のAは、キメラ肺由来の宿主及びドナー肺細胞の細胞選別の設計を示す。まず蛍光顕微鏡によって、3つのキメラ肺が顕著なキメリズムを呈することを検証し、プールし、酵素的に解離させ、単一のCD45-生細胞に対してゲーティングした後、Td-Tomato発現に基づいてドナー区画及びレシピエント区画へとFACSで分離した。
図1のBは、Td-Tomato細胞を移植したキメラ肺及び対照の非移植肺のFACS解析を示す。
図1のC~Dは、移植後6ヶ月時点のFACS選別したドナー(
図1のC)及びレシピエント(
図1のD)由来の区画のトランスクリプトーム解析を示す。クラスターのMonocle3 UMAP及び比例プロットは、ドナー細胞(n=6081)及びレシピエント細胞(n=3210)の解析を示しており、ドナー由来区画内の主要な上皮及び内皮クラスターが、レシピエント由来区画内で定義されたクラスターと同等であることを明確にしている。
図1のE~Fは、ドナー区画(
図1のE)及びレシピエント区画(
図1のF)における機能的に異なるgCap及びaCap内皮細胞を同定するヒートマップをそれぞれ示す。
【
図2-1】
図2のA~Eは、Confettiドナーからの胎仔肺細胞の移植を示す。
図2のAは、タモキシフェンによるCRE組換え誘発後のE16胎仔肺細胞を、ナフタレン及び6GyのTBIで前処置した免疫不全RAGレシピエントへの植込みに使用する実験スキームを示す。
図2のBは、E16 R26R-Confetti胎仔肺のFACS解析を示しており、Cre組換え細胞のパーセンテージを示す(n=5の胚)。
図2のCは、E16胎仔肺組織の二光子顕微鏡画像であり、TMX誘発後かつ移植前のR26R-Confettiマウスにおける単一の単色細胞を例示している(n=3の胚より)。
図2のDは、R26R-ConfettiドナーからのE16胎仔肺細胞をRAG2-/-レシピエントマウスに移植してから6週間後の単色パッチ(patch)を示す。キメラ肺のホールマウントを低倍率の蛍光顕微鏡によって解析した(スケールバー=200μm)。
図2のEは、異なる蛍光タグを発現する単色パッチを示している、二光子顕微鏡による同じキメラ肺の典型的解析を示す(スケールバー=50μm)。結果は3回の独立した実験を代表するものであり、各実験においてマウスはn=3であった。
【
図3-1】
図3のA~Gは、成体R26R-Confetti肺細胞を移植してから8週間後の肺キメリズム解析を示す。
図3のAは、実験手順の概略表現である。
図3のBの左側画像は、移植前の成体肺の二光子顕微鏡画像であり、Cre組換え後に4色のタグの色のうちの1色を発現する単一細胞を明らかにしている(n=3)。
図3のBの右側画像は、成体R26R-Confetti肺薄片の共焦点画像であり、肺組織の気管支及び肺胞部分、ならびにドナー肺内の蛍光細胞の拡散及びランダムな局在を示す。結果は、2回の独立した実験からのR26R-Confettiマウス(n=6)を代表するものである。
図3のC~Dは、2回用量のTMXを投与した後の成体R26R-Confetti肺のFACS解析を示しており、異なる蛍光タグを保有するCre組換え細胞のパーセンテージを示す(n=5)。
図3のE~Fでは、透明化手順によって透明なキメラ肺とし、それをライトシート顕微鏡で解析した。合計n=2のキメラ肺をLSMによって評価した。スケールバーは、
図3のEでは60μm、
図3のFでは40μm。
図3のGは、ホールマウントキメラ肺において各々が別個の色を呈する典型的な単色パッチを示す。合計n=4のキメラ肺を二光子顕微鏡によって評価した。スケールバー=50μm。
【
図4-1】
図4のA~Hは、異なる肺細胞亜集団の移植後のドナー由来肺パッチを示す。
図4のAは、CD45-肺細胞をCD326+CD31-細胞、CD326+CD31+細胞、CD326-CD31+細胞、及びCD326-CD31-細胞を含む4つの亜集団へとFACS選別するためのゲーティング戦略を示す。
図4のBは、Imagestream解析による二重陽性CD45-CD326+CD31+肺細胞の可視化を示す。
図4のCは、移植実験の概略表示である。
図4のDは、16回の実験におけるCD45-非造血性肺細胞集団から選別した各亜集団のパーセンテージを示す。
図4のEは、移植を受けたマウスの総数のうち、ドナー由来パッチを呈するキメラマウスのパーセンテージを示す(n=16の実験)。
図4のFは、nTnGドナーからの0.3~0.5×10
6個の選別した二重陽性CD326+CD31+細胞または単一陽性CD31+内皮細胞(赤色)を、GFP+ドナーからの0.5×10
6個の未選別細胞(緑色)と混合して移植してから6週間後のドナー由来肺パッチを示す。各群について示すホールマウント共焦点画像は、n=16の実験(各群に少なくともn=10のマウス)を代表するものである、スケールバー=500μm。移植を受けた全マウス(n=98)のうち、70%にはtd-tomato選別+未選別GFP細胞を移植し、30%にはtd-tomatoでFACS選別した細胞のみを移植した。
図4のG~Hは、GFP+未選別肺細胞を共移植せずに0.5×10
6個のnTnG CD326+CD31+細胞またはCD31+細胞を移植したマウスのホールマウント肺の代表的画像を示す。ドナー由来の赤色パッチは核td-tomatoを発現する。低倍率(スケールバー=500μm)及び高倍率(スケールバー=100μm)の画像は、各群のマウス(n=5)を代表するものである。
【
図5-1】
図5のA~Kは、選別したCD326+CD31+肺細胞亜集団を移植した後のドナー由来パッチに対する、選別したCD326-CD31+肺細胞亜集団を移植した後のドナー由来パッチの異なる細胞構成を示す。
図5のA~Dは、選別したnTnG CD326-CD31+肺細胞(赤色)に由来する典型的な肺パッチの染色を示す。
図5のA~Bは、内皮マーカーERG(核、緑色)に対する染色を示す、スケールバー=100μm(
図5のA)及び10μm(
図5のB)。
図5のCは、CD326-CD31+細胞を移植した後のドナー由来nTnG陽性パッチ内の内皮核マーカーSOX17(シアン)に対する染色を示す。染色されたマーカーは画像上に示されている、スケールバー=10μm。
図5のDは、CD326-CD31+細胞の移植後に形成されたドナー由来パッチにおける細胞表面内皮マーカーCD31及び上皮マーカーHOPXに対する染色を示す。左側:CD31及びSOX17に対する二重染色、右側:nTnG+(赤色)、CD31(青色)、及びHOPX(緑色)に対する三重染色。ドナー由来内皮CD31+細胞は、レシピエントのHOPX+AT1細胞(矢尻で示す)に近接して存在するのに対し、ドナー由来AT1細胞は検出不可である、スケールバー=10μm。
図5E~Fは、選別したnTnG CD326+CD31+肺前駆細胞に由来する典型的な肺パッチの染色を示しており、ドナー由来の上皮細胞及び内皮細胞を示す。
図5のE、ドナー由来AT1上皮細胞(矢尻)及び内皮細胞(矢印)を示している、左パネル:nTnG(赤色)及びSOX17(シアン)に対する二重染色、中央パネル:SOX17に対する単一染色、右パネル:nTnG(赤色)、SOX17(シアン)、及びHOPX(緑色)に対する三重染色、スケールバー=15μm。
図5のFは、ドナーAT1細胞(赤色、矢印で示す)及び宿主AT1細胞(矢尻で示す)を示している、HOPXに対する典型的な染色の高倍率像を示す。
図5のGは、CD326+CD31+由来パッチの三重染色の高倍率像を示しており、ドナー由来AT1細胞(赤色)と内皮CD31+細胞が近接して存在していることを実証する。矢印はドナー由来AT1細胞を示し、矢尻は宿主由来AT1細胞を示す。
図5のF及びGにおいて、スケールバー=10μm。画像はn=3のマウスを代表するものである。
図5のHは、選別したnTnG CD326+CD31+肺細胞に由来する典型的な肺パッチの染色を示しており、ドナー由来の上皮AT1細胞(AQP-5+、紫色)及び内皮細胞(SOX17+、緑色)を示す。肺胞AT1細胞(矢尻)及び内皮細胞(矢印)を表している、左パネル:nTnG(赤色)及びSOX17(緑色)の二重染色、中央パネル:nTnG(赤色)及びAQP-5(紫色)に対する二重染色、右パネル:nTnG、SOX17、及びAQP-5に対する三重染色、スケールバー=20μm。画像はn=3のマウスを代表するものである。
図5のIは、CD31に対する典型的なドナー由来パッチの染色(緑色)及びSPCに対する単一分子RNA FISHプローブの染色(シアン)を示しており、内皮細胞及びAT2細胞を示す、スケールバー=20μm。
図5のJ~Kは、CD326+CD31+細胞の移植に由来するパッチの組成とCD326-CD31+細胞の移植に由来するパッチの組成間の定量的差異のグラフによる要約を示す。
図5のJは、ドナー由来の核/パッチのグラフであり、CD326-CD31+細胞と比較してCD326+CD31+細胞に由来するパッチがより大きいことを示す、p=0.035、スチューデントのt検定、各群のマウス(n=3)からn=20のパッチを評価した。
図5のKは、CD326+CD31+細胞またはCD326-CD31+細胞から移植した後の、パッチあたりのドナー由来上皮細胞及び内皮細胞の絶対数のグラフである。A及びBは、移植したCD326-CD31+集団及びCD326+CD31+集団にそれぞれ由来する上皮細胞を表している(p=0.0001、スチューデントのt検定)、C及びDは、移植したCD326-CD31+集団及びCD326+CD31+集団にそれぞれ由来する内皮細胞を表している(p=0.04、スチューデントのt検定)、各群につきマウス2匹からのn=10のパッチを評価した。
【
図6-1】
図6のA~Jは、二重陽性CD326+CD31+パッチ形成肺細胞前駆細胞における異なる導入遺伝子発現を実証する。Shhプロモーター(
図6のA、C、F)またはVE-カドヘリンプロモーター(
図6のB、C、G)の下でGFPを発現するトランスジェニックレポーターマウスのCD326+CD31+肺細胞を、FACS及びImagestream解析によってこれらのマーカーの発現について解析した(n=6のマウス)。これらのマウスの細胞はtd tomatoを発現しており赤色であるが、導入遺伝子が発現されるとGFPを発現して緑色になる。
図6のA~Bは、ゲーティングしたCD326+CD31+二重陽性細胞のGFP発現を実証する典型的なドットプロットを示す。
図6のCは、VEカドヘリンCre mTmGマウスにおけるCD326+VEcad+細胞またはShh Cre mTmGマウスにおけるCD31+Shh+細胞と比較した、CD326+CD31+二重陽性細胞のパーセンテージを示す。図は、個々のトランスジェニックマウス(各遺伝子型につきn=6)の結果を示している。
図6のD左は、VEcad mTmGマウスからのFACS精製したCD326+VEcad
-(mT)及びCD326+VEcad+(mG)肺細胞集団の3D条件下での培養を示す(FACS選別スキームについては
図14のAを参照されたい)。VEcadを発現しないCD326+VEcad-細胞は、GFPを発現しないmT+赤色オルガノイドをもたらすのに対し、二重陽性CD326+VEcad+細胞は、GFPと様々な上皮マーカー(例えば、CK、AQP-5、及びSPC(マゼンタ))の両方を発現する緑色オルガノイドの生成をもたらす。
図6のD右は、5×10
5個のCD326+VEcad-またはCD326+VEcad+FACS選別肺細胞を播種した際に観察されたオルガノイドのウェルあたりの絶対数を示す。
図6のEの上部パネルは、GFP(緑色、VE-カドヘリン発現細胞由来)及び上皮マーカーサイトケラチン(マゼンタ)を呈するオルガノイドを示す。
図6のEの左下部パネルは、GFP(緑色、VE-カドヘリン発現細胞由来)及び肺胞AT1肺細胞に対する上皮マーカーAQP-5(マゼンタ)を呈するオルガノイドを示す。
図6のEの右下部パネルは、GFP(緑色、VE-カドヘリン発現細胞由来)及び肺胞AT2肺細胞に対する上皮マーカーSPC(マゼンタ)を呈するオルガノイドを示す。
図6のF~Gは、Shh Cre nTnGマウスまたはVEcad Cre nTnGマウスからのCD326+CD31+肺細胞前駆細胞のImagestream解析を示しており、これらの細胞におけるShh及びVE-cadの発現を例示している。
図6のH~Jは、Nkx2.1 Cre ER2 mTmGマウス(n=3)、Ager Cre ER2 mTmGマウス(n=5)、及びHopx Cre ER2 mTmGマウス(n=3)からの二重陽性CD326+CD31+肺細胞のFACS解析を示し、Nkx2.1+細胞、Ager+細胞、及びHopx+細胞のパーセンテージを明確化している。
【
図7】
図7のA~Eは、上皮マーカー及び内皮マーカーに対するキメラ肺内の再生パッチの染色を示す。
図7のAは、ドナー由来気管支パッチを示しており、気管支にドナー細胞が大量に生着していることを実証する。ドナー細胞は、膜状Ecad(青色)及び核Nkx-2.1(シアン)、核(黄色)に対して陽性染色されている(スケールバー=20μm)。
図7のBは、抗CD31抗体(青色)及び抗サイトケラチン抗体(シアン)で染色したドナー由来気管支肺胞パッチを示しており、上皮区画及び内皮区画におけるキメリズムを実証する(スケールバー=50μm)。
図7のCは、抗CD31抗体(青色)及び抗CC-10抗体(シアン)によるドナー由来気管支パッチの染色ならびに核(灰色)を示しており(スケールバー=50μm)、分泌細胞の区画における生着を実証する。示している画像はn=3のマウスを代表するものである。
図7のDは、抗AQP-5抗体による染色(緑色)を示しており、パッチ内のドナー由来mTom AT1細胞(赤色)の存在を実証する(核(青色)、スケールバー=5μm)。
図7のEは、SPCプローブ(smFISH)(緑色)及び抗CD31抗体(シアン)による肺胞パッチの染色を示しており、パッチ内にAT2細胞及び内皮細胞が存在することを実証する(核(灰色)、スケールバー=10μm)。
【
図8-1】
図8のA~Eは、タモキシフェンでCre組換えを発現するように誘発したドナーからの成体R26R-Confetti BMの移植を示す。
図8のAは、R26R-Confettiドナーからの成体BMを使用した脾臓コロニーアッセイの概略表現である。
図8のB~Cは、BM移植前のLSK+BM前駆細胞内の蛍光タグの発現を実証するFACS解析を示す。BMは、2回の独立した実験で成体R26R-Confettiマウス(n=8)により解析した。
図8のDは、致死量で照射したマウスにR26R-ConfettiドナーからのBMを移植してから9日後の単色脾臓コロニーの形成を示す。
図8のEは、末梢血キメリズムを示しており、移植したCr組換え細胞に起源を有する蛍光クローンが血液区画内に存在することを実証する。
図8のD~Eに示す結果は、2回の独立した実験を代表するものであり、各実験においてマウスはn=7であった。
【
図9-1】
図9のA~Eは、NA+6Gyで前処置したマウスへのE16 R26R-Confetti肝臓の移植を示す。
図9のAは実験ワークフローである。
図9のBは、Tmx投与の4日後のE16 confetti胎仔肝臓のFACS解析を示しており、Sca1+Ckit+造血前駆細胞集団内の4種の蛍光タグの発現を実証する。
図9のCは、NA+6Gy TBIで前処置したマウスに移植した胎仔肝細胞によって生成された単色脾臓コロニーを示す。スケールバー=500μm。
図9のDは、移植2ヶ月後のキメラマウスからの末梢血のFACS解析を示しており、血液区画内の単色クローンの持続性を実証する。
図9のEは、Na+6GY TBIで前処置し、E16胎仔肝細胞を移植したマウスの代表的な肺二光子画像を示しており、単離蛍光細胞が存在しかつ単色のドナー由来パッチが存在しないことを実証し、肺細胞の肺再生を媒介するユニークな能力を確証するものである。スケールバー=50μm。結果は、2回の独立した実験において移植したマウス(n=10)を代表するものである。
【
図10】
図10のA~Bは、LSMによる評価前の透明化キメラ肺試料の外観を示す。透明化キメラ肺の染色は
図3E~Fに示している。
【
図11】
図11のA~Bは、mTmGマウス由来のFACS選別したCD326+CD31+細胞を移植したキメラマウスの肺の染色を示す。
図11のAは、抗CD31抗体(青色)及び抗Nkx2.1抗体(シアン)による再生パッチの染色を示しており、再生パッチ内に上皮細胞及び内皮細胞が存在することを実証する(スケールバー=50μm)。
図11のBは、抗AQP-5抗体(シアン)及び抗CD31抗体(青色)による
図11Aに示した試料の染色を示しており、生着領域にドナー由来AT1細胞(矢印で示す)及び内皮細胞(矢尻で示す)が存在することを実証する(スケールバー=10μm)。
【
図12】
図12のA~Dは、CD326+CD31+nTnG FACS選別細胞を移植したマウスにおける移植9ヶ月後の長期キメリズムを実証する。
図12のAは、共焦点顕微鏡によって評価したホールマウント肺組織を示す、スケールバー=500μm。
図12のBは、抗Lyve-1抗体(青色)及び抗HOPX抗体(緑色)で染色したキメラ肺薄片の低倍率共焦点画像を示しており、肺の異なる区画にドナー由来細胞が大規模に生着していることを実証する、スケールバー=200μm。
図12のCは、抗CD31(青色)で染色し(nT核を有する内皮細胞(矢尻で示す)を示す)、抗SPC(緑色)で染色した(nT核を有するAT2細胞(矢印で示す)を示す)キメラ肺の共焦点画像である、スケールバー=20μm。
図12のDは、抗Hopx抗体によるキメラ肺の染色を示しており、ドナー由来AT1細胞(矢印で示す)を示す、スケールバー=20μm。
【
図13-1】
図13のA~Eは、トランスジェニックマウスの肺のFACS解析を示す。
図13のAは、Shh Cre mTmGマウスの肺における二重陽性mG-Shh+CD31+細胞を表す典型的なドットプロットを示す(n=6)。
図13のBは、VE cad Cre mTmGマウスの肺における二重陽性CD326+mG-VEcad+細胞を表す典型的なドットプロットを示す(n=6)。
図13のCは、Nkx 2.Cre ER2 mTmGマウスの肺における二重陽性mG-Nkx2.1+CD31+細胞を表す典型的なドットプロットを示す(n=5)。
図13のDは、Ager Cre ER2 mTmG肺の肺における二重陽性mG-Ager+CD31+細胞を表す典型的なドットプロットを示す(n=5)。
図13のEは、Hopx Cre ER2 mTmG肺の肺における二重陽性mG-Hopx+CD31+細胞を表す典型的なドットプロットを示す(n=3)。
【
図14-1】
図14のA~Dは、VEcad mTmGマウスの肺から採取したFACS精製CD326+VEcad-から成長したオルガノイドの上皮マーカーに対する染色を示す。
図14のAは、VEcad mTmGマウスから単一陽性CD326+VE cad mG-細胞及び二重陽性CD326+VE cad mG+細胞を精製するためのゲーティング戦略を示す。CD45-TER119-Sytox-CD326+単一生細胞を、CD326+VE-cad mG-肺細胞亜集団及びCD326+VE cad mG+肺細胞亜集団を精製するためにVE-cad mGの発現に応じて更にゲーティングした。単離細胞を、後述する方法に記載のとおりに肺オルガノイドを生成するために使用した。抗CK抗体(
図14のB)(シアン、スケールバー=20μm)、抗AQP-5抗体(
図14のC)(シアン、スケールバー=10μm)、及び抗SPC抗体(
図14のD)(シアン、スケールバー=7μm)でオルガノイドを染色した。核をDAPI(青色)によって染色した。画像は2回の独立した実験を代表するものである。
【
図15-1】
図15のA~Cは、異なる培養培地が、内皮マーカーと上皮マーカーとを二重発現する肺細胞の増殖に異なる影響を及ぼすことを実証する。
図15のAの上部パネルは、EGFと低濃度のROCK阻害剤(5μm)とを補充したマウス線維芽細胞から得た馴化培地(CM)(「元の培地」と記す)中でインキュベートした際の、様々な培養時点での二重陽性CD326+CD31+細胞のレベルを実証するFACS解析を示す。
図15のAの下部パネルは、EGFと、VEGFと、高濃度ROCK阻害剤(20μm)とを補充したCM(「CM+Epi+Endo+High RICK-I」と記す)中でインキュベートした際の、様々な培養時点での二重陽性CD326+CD31+細胞のレベルを実証するFACS解析を示す。
図15のBは、
図15のAに記載した2つの培養中の示した日における総細胞数を示す。
図15のCは、
図15のAに記載した2つの培養の示した日におけるCD326+CD31+二重陽性細胞数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、肺前駆細胞に関し、限定するものではないがより具体的には、肺前駆細胞を生成する方法及び治療用途における肺前駆細胞の使用に関する。
【0087】
本発明の原理及び作用は、図面及び付随する説明を参照することにより、より良く理解され得るであろう。
【0088】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるまたは実施例によって例証される詳細にその適用が必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または種々の手段で実践もしくは実行することが可能である。また、本明細書で用いられる術語及び専門用語は、説明を目的としたものであり、限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0089】
現在、末期呼吸器疾患に対する唯一の根治的処置は、損傷した臓器を肺移植により置き換えることである。好適な臓器の不足により、多くの患者が移植を待っている間に死亡しているため、肺疾患は幹細胞療法の最有力候補となっている。
【0090】
例えばBM由来細胞または肺由来細胞など、種々の細胞集団が肺再生能を呈し、顕著な肺宿主-ドナーキメリズムをもたらすことが示されている。注目すべきことに、ドナー由来パッチの大部分は、上皮細胞及び内皮細胞を含む異なる系統の肺区画を呈する。本発明者らは、肺細胞移植後に各ドナーパッチが単一の前駆細胞に起源を有する可能性を検討した。その目的のために、以下の実施例の項に示すように(実施例1を参照されたい)、多色Creレポーター系を保有するRosa26-Confettiマウス(9)の胎仔肺細胞または成体肺細胞を、ナフタレン及びTBIで前処置したレシピエントに移植した。この4色Cre組換え系は、ランダムに決定された1色のみを各細胞が発現する胎仔肺細胞または成体肺細胞の調製物を提供する。したがって、移植された細胞集団のダブレット内の各細胞が同じ色になる可能性は著しく低減する。注目すべきことに、免疫組織化学法、共焦点顕微鏡法、ならびに二光子顕微鏡法及びライトシート顕微鏡法により、移植後に発生するドナー由来肺パッチは全て単色であることが実証され、これは、移植後に観察されるドナー由来肺パッチがクローン起源であることを強く裏付けるものであり、このことは、骨髄移植後に通常同定される脾臓コロニー形成細胞と際立って類似している。これらの結果は、多様な肺細胞系統に分化可能な単一の多分化能性肺前駆細胞を決定的に証明するものであった。パッチの大部分が内皮細胞と上皮細胞の両方を含有している、及びかかるパッチの各々が単一の前駆細胞に由来している、という観察結果に沿って、本発明者らは、これら2つの別個の系統に沿って分化可能な推定上の多分化能性肺前駆細胞を探索した。
【0091】
続いて、本発明の実施形態を実践に移す際に、本発明者らは、内皮マーカーと上皮マーカーとを二重発現する新規肺前駆細胞集団を発見した(以下の実施例の項の実施例1を参照されたい)。これらの肺前駆細胞は、胎仔と成体の両方の肺組織から得られた。更に、これらの肺前駆細胞は、肺内皮細胞に加えて肺上皮細胞にも分化可能であり、結果としてレシピエントへの移植後に肺内皮組織及び肺上皮組織を生成することが可能であった。まとめると、これらの結果は、例えば肺損傷または肺疾患の処置などのための肺臓器または肺組織の再生に対する、新規肺前駆細胞の使用を立証するものである。
【0092】
したがって、本発明の一態様によれば、単離肺細胞集団を生成する方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、ならびに
(b)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を選択するために、単離肺細胞集団を、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーに結合可能な少なくとも1種の試薬と接触させること、
を含み、それにより単離肺細胞集団を生成する、方法が提供される。
【0093】
更に、本発明者らは、異なる培養条件がこの新規肺前駆細胞集団の増殖に異なる影響を及ぼすことを見出した。具体的には、VEGFと、EGFと、ROCK阻害剤とを含む培地中で解離肺細胞を培養すると、内皮マーカーと上皮マーカーとを二重発現する細胞が顕著に増殖するのに対し、EGFとROCK阻害剤のみを含む培地中でこれらの細胞を培養すると、細胞総数は増殖するが二重陽性細胞の総数は増殖しないことが示された(以下の実施例の項の実施例2)。まとめると、これらの結果は、内皮マーカーと上皮マーカーとを二重発現する肺前駆細胞の増殖を可能にする条件下で肺細胞を培養する必要があること、及び/または培養細胞を(例えば肺損傷もしくは肺疾患の処置などのための肺臓器もしくは肺組織の再生に)使用する前にこれらの前駆細胞の増殖を確認する必要があること、を立証するものである。
【0094】
したがって、本発明の一態様によれば、単離肺細胞集団を培養によって増殖させる方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、ならびに
(b)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を増殖させるために、内皮細胞の増殖を促す因子と、上皮細胞の増殖を促す因子と、分化を防止する因子とを含む培地中で単離肺細胞集団を増殖させること、
を含み、それにより単離肺細胞集団を培養によって増殖させる、方法が提供される。
【0095】
本発明の追加または代替の態様によれば、単離肺細胞集団の投与を必要とする対象へのその投与に関する適合性を確認する方法であって、
(a)単離肺細胞集団を得るために肺組織を解離させること、
(b)単離肺細胞集団を培養によって増殖させること、ならびに
(c)培養中及び/または培養後に、単離肺細胞集団上の上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現を決定すること、
を含み、 上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖が所定の閾値を上回ることは、単離肺細胞集団が対象への投与に好適であることを示し、かつ
上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖が生じないことまたは所定の閾値を下回ることは、単離肺細胞集団が対象への投与に不適であることを示し、
それにより単離肺細胞集団の対象への投与に関する適合性を確認する、方法が提供される。
【0096】
特定の実施形態によれば、本明細書に開示される方法は、エクスビボで行われる。
【0097】
本明細書で使用される「肺組織(pulmonary tissue)」という語句は、肺組織または肺臓器(lung tissue or organ)を指す。本発明の肺組織は、完全な臓器もしくは組織、または部分的な臓器もしくは組織であり得る。したがって、いくつかの実施形態の肺組織は、右肺、左肺、またはその両方を含み得る。本発明のいくつかの実施形態の肺組織は、(右肺または左肺のいずれかの)1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの葉を含み得る。更に、本発明のいくつかの実施形態の肺組織は、1つ以上の肺区域または肺小葉を含み得る。更に、本発明のいくつかの実施形態の肺組織は、任意数の気管支及び細気管支(例えば、気管支樹)ならびに任意数の肺胞または肺胞嚢を含み得る。
【0098】
用途及び利用可能な供給源に応じて、本発明の細胞は、出生前の生物、出生後の生物、成体、または死体のドナーから得られ得る。そのような決定を行うことは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態の肺細胞が、更に後述するように新鮮な調製物または凍結(例えば、凍結保存)した調製物であり得ることが理解されよう。
【0100】
特定の実施形態によれば、肺組織は、ヒト肺組織である。
【0101】
特定の実施形態によれば、肺組織は、死体ドナーからのものである。
【0102】
特定の実施形態によれば、肺組織は、生体ドナーからのものである。
【0103】
一実施形態によれば、肺組織は、成体起源(例えば、出生後の任意の段階の哺乳類生物)のものである。
【0104】
一実施形態によれば、肺組織は、胚起源のものである。
【0105】
一実施形態によれば、肺組織は、胎仔/胎児起源のものである。
【0106】
したがって、胚生物または胎仔/胎児生物は、ヒト起源または異種起源(例えばブタ)のいずれかのものであり得、かつ任意の在胎期にあり得る。そのような決定を行うことは、当業者の能力内である。
【0107】
種々の方法を用いて、胚生物または胎仔/胎児生物から臓器または組織を得ることができる。したがって、例えば、発生中の胎仔/胎児生物から(例えば外科手技により)組織を採取することによって、肺組織を得ることができる。
【0108】
一実施形態によれば、肺組織(pulmonary tissue)(すなわち、肺組織(lung tissue))は、ヒトの発生の管状期(例えば、在胎16~25週)に対応する在胎期の胎児生物から得られる。一実施形態によれば、肺組織は、ヒトの在胎16~17週、在胎16~18週、在胎16~19週、在胎16~20週、在胎16~21週、在胎16~22週、在胎16~24週、在胎17~18週、在胎17~19週、在胎17~20週、在胎17~21週、在胎17~22週、在胎17~24週、在胎18~19週、在胎18~20週、在胎18~21週、在胎18~22週、在胎18~24週、在胎19~20週、在胎19~21週、在胎19~22週、在胎19~23週、在胎19~24週、在胎20~21週、在胎20~22週、在胎20~23週、在胎20~24週、在胎21~22週、在胎21~23週、在胎21~24週、在胎22~23週、在胎22~24週、在胎22~25週、在胎23~24週、在胎23~25週、在胎24~25週、または在胎25~26週に対応する在胎期の胎仔/胎児生物から得られる。
【0109】
特定の実施形態によれば、肺組織は、ヒトの在胎20~22週に対応する在胎期の胎仔/胎児生物から得られる。
【0110】
特定の実施形態によれば、肺組織は、ヒトの在胎21~22日に対応する在胎期の胎仔/胎児生物から得られる。
【0111】
特定の実施形態によれば、肺組織は、ヒトの在胎20~21日に対応する在胎期の胎仔/胎児生物から得られる。
【0112】
当業者であれば、生物の在胎期とは、その生物を生み出す卵母細胞の受精後に経過した期間であることが理解されよう。以下の表は、本質的に対応する発生段階にある胎仔/胎児組織を得ることができる、ヒト組織及びブタ組織の在胎期の例を提供する。
【0113】
【0114】
同様に、成体生物(例えば、生体または死体)から肺臓器または肺組織を得るために、種々の方法を用いることができる。したがって、例えば、外科手技(例えば、開腹術または腹腔鏡検査)により臓器ドナーから組織を採取することによって、肺組織を得ることができる。成体生物から臓器/組織を得た後、肺細胞及び造血前駆細胞(以下で詳述する)を、当該技術分野で公知の方法に従ってそこから分離することができる。かかる方法は、細胞の供給源及び系統に依存し、例えば、フローサイトメトリー及び細胞選別(例えばwww(dot)bio-rad(dot)com/en-uk/applications-technologies/isolation-maintenance-stem-cellsで教示されているもの)を含み得る。
【0115】
肺細胞を得るためには肺組織はインタクトである(すなわち、臓器全体の移植に好適であるように組織構造を維持する)必要はないが、肺組織は生細胞を含む必要があることが理解されよう。
【0116】
加えて、特定の実施形態によれば、肺組織は複数のドナーから得られ得る。したがって、特定の実施形態によれば、肺細胞は複数の細胞ドナーから得られた細胞を含み得る。
【0117】
本発明は、肺臓器/組織(例えば、胎仔/胎児組織または成体組織)を得た後、そこから単離細胞集団を生成することを更に企図する。「単離肺細胞集団」という語句は、組織構造を形成しない(すなわち、結合組織構造のない)単離細胞を指す。
【0118】
したがって、肺細胞は、単一細胞の懸濁液または細胞凝集体中に含まれてよく、凝集体中の細胞は5個以下、10個以下、50個以下、100個以下、200個以下、300個以下、400個以下、500個以下、1000個以下、1500個以下、2000個以下である。
【0119】
本明細書で使用される「懸濁液中の肺細胞」という語句は、その天然環境(例えば、人体)から単離され、生存能を維持しながら肺組織から抽出されるが、組織構造を維持しておらず(すなわち、血管形成された組織構造がなく)かつ固体支持体に付着していない、細胞を指す。
【0120】
本発明の細胞懸濁液は、任意の機械的または化学的(例えば酵素的)手段によって得られ得る。細胞クラスターを解離させて、一次組織、培養中の付着細胞、及び凝集体から細胞懸濁液(例えば、単一細胞懸濁液)を形成するためのいくつかの方法が存在しており、それらには例えば、物理的力(機械的解離、例えばセルスクレーパー、小口径ピペットによるトリチュレーション、細針吸引、ボルテックスによる脱凝集、及びナイロンもしくはステンレス鋼の微細メッシュに通す強制濾過)、酵素(酵素的解離、例えばトリプシン、コラゲナーゼ、Acutaseなど)、または両方の組み合わせなどがある。
【0121】
特定の実施形態によれば、解離させることは、酵素消化によるものである。
【0122】
したがって、例えば、組織をIV型コラゲナーゼ(米国、ニュージャージー州、レイクウッド、Worthington biochemical corporation製)及び/またはディスパーゼ(米国、ニューヨーク州、グランドアイランド、Invitrogen Corporationの製品)などの酵素に供することによって、組織/臓器を酵素消化して単離細胞にすることができる。例えば、組織を、例えばコラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びCaCl2の存在下、37℃で約1時間、レーザーブレードで細かく切り刻むことによって酵素消化させることができる。この方法は、以下の実施例の項に本質的に記載されているように、例えば、フィルタ(例えば、70μm及び40μmのフィルタ)に通す連続濾過によって、得られた細胞懸濁液から非特異的細片を除去することを更に含み得る。
【0123】
更に、組織を所定のサイズに破壊するように設計されたデバイスを使用して、組織を機械的に解離させて単離細胞にすることができる。かかるデバイスは、スウェーデン国のCellArtis Goteborg社から入手することができる。それに加えて、またはその代わりに、倒立顕微鏡下で組織/細胞を観察しながら27g針(アイルランド国、ドロヘダ、BD Microlance社製)などの針を使用して、手動で機械的に解離させることができる。
【0124】
酵素的または機械的に組織を解離させた後、例えば200μlのGilsonピペットチップを使用して、解離細胞を(例えば、細胞を上下にピペッティングすることによって)小塊へと更に破壊する。
【0125】
特定の実施形態によれば、肺細胞の細胞懸濁液は生細胞を含む。細胞生存率は、当該技術分野で公知である任意の方法を使用して、例えば、細胞生存率アッセイ(例えば、Promega社から入手可能なMultiTox Multiplex Assay)、フローサイトメトリー、トリパンブルーなどを使用して、モニタリングすることができる。
【0126】
本発明の教示によれば、肺組織及びそれから得られる単離細胞は、上皮細胞マーカーと内皮細胞マーカーの両方を発現する細胞を含む。
【0127】
特定の実施形態によれば、上皮細胞マーカーと内皮細胞マーカーの両方を発現するこれらの細胞は、肺内皮細胞と肺上皮細胞の両方に分化可能な前駆細胞である。分化を決定する方法には、当業者に周知のインビトロ法及びインビボ法(例えば、移植法)が含まれる。非限定的な例は、以下の実施例の項に提供されている。
【0128】
ゆえに、一実施形態によれば、肺細胞は、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現によって特徴付けられる。
【0129】
本明細書で使用される「上皮細胞マーカー」という語句は、肺上皮細胞に特徴的な細胞表面タンパク質を指す。かかるマーカーには、CD326、CD324、CD24、アクアポリン5(AQP-5)、ポドプラニン(PDPN)、及び終末糖化産物特異的受容体(RAGE、すなわちAGER遺伝子によってコードされるもの)が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書で使用される「内皮細胞マーカー」という語句は、肺内皮細胞に特徴的な細胞表面タンパク質を指す。かかるマーカーには、CD31及びCD144(VE-カドヘリン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:CD326+及びCD31+によって特徴付けられる。
【0132】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:CD324+及びCD31+によって特徴付けられる。
【0133】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:CD24+及びCD31+によって特徴付けられる。
【0134】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:AQP-5+及びCD31+によって特徴付けられる。
【0135】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:PDPN+及びCD31+によって特徴付けられる。
【0136】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:RAGE+及びCD31+によって特徴付けられる。
【0137】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:CD326+及びCD144+によって特徴付けられる。
【0138】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:CD324+及びCD144+によって特徴付けられる。
【0139】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:CD24+及びCD144+によって特徴付けられる。
【0140】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:AQP-5+及びCD144+によって特徴付けられる。
【0141】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:PDPN+及びCD144+によって特徴付けられる。
【0142】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、共発現シグネチャ:RAGE+及びCD144+によって特徴付けられる。
【0143】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、Nkx2.1、CD200、Akap5、Sec14l3、Prdx6、及びClic3のうちの少なくとも1つの発現によって更に特徴付けられる。
【0144】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、内皮マーカーと上皮マーカーとを共発現する細胞を含む不均質な細胞集団(例えば、未分離の細胞集団)を含む。
【0145】
他の特定の実施形態によれば、肺細胞は、精製細胞集団を含む。したがって、細胞は、そこから特定の細胞集団を除去するように(例えば、亜集団の除去)、または所望の集団(例えば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団)を陽性選択するように処理することができる。特定の細胞種の精製は、当業者に公知である任意の方法によって、例えば、特異的抗体による根絶(例えば殺傷)、または任意の特定の細胞マーカー(例えば、CD31、CD34、CD41、CD45、CD8、CD8、CD48、CD105、CD150、CD271、CD326、MUCIN-1、PODOPLANINなど)を認識する特異的抗体を使用した親和性に基づく精製(例えば、MACSビーズ、FACSソーター、及び/もしくは捕捉ELISA標識を使用することによるものなど)によって実行することができる。かかる方法は、本明細書ならびにTHE HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY, 1~4巻 (D.N. Weir編)及びFLOW CYTOMETRY AND CELL SORTING (A. Radbruch編、 Springer Verlag, 1992)に記載されている。例えば、細胞は、例えばフローサイトメトリーまたはFACSによって選別することができる。したがって、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用することができ、FACSは、様々な程度のカラーチャネル、小角及び鈍角光散乱検出チャネル、ならびにインピーダンスチャネルを有し得る。当該技術分野で公知である任意のリガンド依存性分離技法は、抗体親和性ではなく細胞の物理的特性に依拠する陽性分離技法と陰性分離技法の両方(エルトリエーション及び密度勾配遠心分離を含むが、これらに限定されない)と併せて使用することができる。細胞選別のための他の方法には、例えば、プレート、ビーズ、及びカラムなどの固体支持体を使用する技法を含めたアフィニティー技法を使用したパニング及び分離が含まれる。したがって、生体試料は、固体マトリックス(例えばプレート)に付着した抗体を用いた「パニング」によって分離することができる。あるいは、細胞は磁気分離技法によって選別/分離することができ、これらの方法のいくつかは磁気ビーズを利用する。様々な磁気ビーズが、例えばDynal社(ノルウェー国)、Advanced Magnetics社(米国、マサチューセッツ州、ケンブリッジ)、Immuncon社(米国、フィラデルフィア)、Immunotec社(フランス国、マルセイユ)、Invitrogen社、Stem cell Technologies社(米国)、及びCellpro社(米国)を含めた多数の供給源から入手可能である。あるいは、抗体を、ビオチン化するかまたはジゴキシゲニンとコンジュゲートさせて、アビジンまたは抗ジゴキシゲニンをコーティングしたアフィニティーカラムと併せて使用することができる。
【0146】
一実施形態によれば、異なる枯渇/分離方法を組み合わせることができ、例えば、分離品質を向上させるために、または複数のパラメータによる選別を可能にするために、磁気細胞選別をFACSと組み合わせることができる。
【0147】
特定の実施形態によれば、かかる選択は、所望のマーカーに結合可能な試薬と接触させることによって行われる。かかる剤は、例えば抗体であり得る。抗体は、単一特異性または少なくとも二重特異性であり得る。
【0148】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、上皮マーカーと内皮マーカーの両方を発現する精製細胞集団を含む。
【0149】
特定の実施形態によれば、選択は、単離肺細胞集団を上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーに結合可能な少なくとも1種の試薬と接触させて、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を選択することによって行われる。
【0150】
特定の実施形態によれば、少なくとも1種の試薬は、単一の試薬である。このような場合、剤は、内皮マーカーと上皮マーカーの両方に対して特異性を有する。
【0151】
特定の実施形態によれば、少なくとも1種の試薬は、少なくとも2種の試薬を含む。このような場合、剤のうちの少なくとも1種は内皮マーカーに対する特異性を有し、剤のうちの少なくとも1種は上皮マーカーに対する特異性を有する。
【0152】
特定の実施形態によれば、少なくとも1種の試薬は、抗体である。
【0153】
特定の実施形態によれば、少なくとも1種の抗体は、単一特異性抗体である。この場合、接触は2種の別個の抗体によって行われ、1種は内皮マーカーに対する特異性を有し、もう1種は上皮マーカーに対する特異性を有する。
【0154】
特定の実施形態によれば、抗体は、二重特異性抗体である。この場合、接触は、内皮マーカーと上皮マーカーの両方に対する特異性を有する1種の抗体によって行われ得る。
【0155】
特定の実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって生成された肺細胞の少なくとも約0.1%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの二重発現によって特徴付けられる(例えば、CD326+CD31+、CD324+CD31+、CD326+CD144+、またはCD324+CD144+である)。
【0156】
特定の実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって生成された肺細胞の約0.1~10%、0.1~20%、0.1~50%、0.1~100%、1~10%、1~20%、1~50%、1~100%、10~20%、10~50%、10~100%、例えば約20~30%、例えば約20~40%、例えば約20~60%、例えば約30~50%、例えば約30~70%、例えば約40~50%、例えば約40~80%、例えば約50~60%、例えば約50~70%、例えば約60~80%、例えば約60~90%、例えば約70~90%、例えば約80~100%が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの二重発現によって特徴付けられる(例えば、CD326+CD31+、CD324+CD31+、CD326+CD144+、またはCD324+CD144+である)。
【0157】
特定の実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって生成された肺細胞の少なくとも約0.1%、1%、2%、5%、または10%が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの二重発現によって特徴付けられる。
【0158】
特定の実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって生成された肺細胞の約0.1~10%または1~10%が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの二重発現によって特徴付けられる。
【0159】
特定の実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって生成された肺細胞の少なくとも20%、30%、40%、または50%が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの二重発現によって特徴付けられる。
【0160】
また、本明細書では、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性であることを特徴とする肺細胞を単離するためのキットであって、
(i)CD31またはCD144、及び
(ii)CD326、CD324、CD24、アクアポリン5(AQP-5)、ポドプラニン(PDPN)、または終末糖化産物特異的受容体(RAGE)
に結合可能な少なくとも1種の試薬を含む、キットが提供される。
【0161】
特定の実施形態によれば、キットは、使用説明書を更に含む。
【0162】
特定の実施形態によれば、選択は、培養前に行われる。
【0163】
特定の実施形態によれば、選択は、培養後または培養中に行われる。
【0164】
特定の実施形態によれば、選択は、細胞を必要とする対象に細胞を投与する前に行われる。
【0165】
一実施形態によれば、肺細胞は、白血球細胞マーカーの発現の欠如によって特徴付けられる。
【0166】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、CD45の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0167】
したがって、特定の実施形態によれば、本方法は、CD45発現細胞を枯渇させることを含む。
【0168】
細胞を枯渇させる方法は当業者に周知であり、更に上述及び後述される。特定の実施形態によれば、CD45発現細胞を枯渇させることは、CD45の発現が陰性である細胞集団を選択するために、単離肺細胞集団をCD45に結合可能な試薬と接触させることによって行われる。
【0169】
一実施形態によれば、肺細胞は、10%未満、50%未満、または2%未満のCD45+細胞を含む。
【0170】
一実施形態によれば、肺細胞は、T細胞が枯渇している。
【0171】
したがって、特定の実施形態によれば、本方法は、T細胞を枯渇させることを含む。
【0172】
T細胞を枯渇させる方法は当業者に周知であり、更に上述及び後述される。特定の実施形態によれば、T細胞発現細胞を枯渇させることは、T細胞について陰性である細胞集団を選択するために、単離肺細胞集団をT細胞に結合可能な試薬と接触させることによって行われる。
【0173】
本明細書で使用される場合、「T細胞が枯渇した」という語句は、Tリンパ球が枯渇した肺細胞集団を指す。T細胞枯渇肺細胞は、CD3+細胞、CD2+細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、α/β T細胞、及び/またはγ/δ T細胞が枯渇している可能性がある。
【0174】
一実施形態によれば、T細胞枯渇肺細胞は、10%未満、50%未満、または2%未満のT細胞を含む。
【0175】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、CD3の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0176】
一実施形態によれば、治療有効量のT細胞枯渇肺細胞は、対象の体重1キログラムあたり、50×105個未満のCD3+T細胞、40×105個未満のCD3+T細胞、30×105個未満のCD3+T細胞、20×105個未満のCD3+T細胞、15×105個未満のCD3+T細胞、10×105個未満のCD3+T細胞、9×105個未満のCD3+T細胞、8×105個未満のCD3+T細胞、7×105個未満のCD3+T細胞、6×105個未満のCD3+T細胞、5×105個未満のCD3+T細胞、4×105個未満のCD3+T細胞、3×105個未満のCD3+T細胞、2×105個未満のCD3+T細胞、1×105個未満のCD3+T細胞、または5×104個未満のCD3+T細胞を含む。
【0177】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、CD2の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0178】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、CD4の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0179】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、CD8の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0180】
一実施形態によれば、治療有効量のT細胞枯渇肺細胞は、対象の体重1キログラムあたり、50×105個未満のCD8+細胞、25×105個未満のCD8+細胞、15×105個未満のCD8+細胞、10×105個未満のCD8+細胞、9×105個未満のCD8+細胞、8×105個未満のCD8+細胞、7×105個未満のCD8+細胞、6×105個未満のCD8+細胞、5×105個未満のCD8+細胞、4×105個未満のCD8+細胞、3×105個未満のCD8+細胞、2×105個未満のCD8+細胞、1×105個未満のCD8+細胞、9×104個未満のCD8+細胞、8×104個未満のCD8+細胞、7×104個未満のCD8+細胞、6×104個未満のCD8+細胞、5×104個未満のCD8+細胞、4×104個未満のCD8+細胞、3×104個未満のCD8+細胞、2×104個未満のCD8+細胞、または1×104個未満のCD8+細胞を含む。
【0181】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、T細胞受容体α及びβ鎖の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0182】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、T細胞受容体γ及びδ鎖の発現の欠如によって特徴付けられる。
【0183】
一実施形態によれば、T細胞枯渇肺細胞は、T細胞デバルキング(TCD)によって得られる。T細胞デバルキングは、例えば抗CD8抗体、抗CD4抗体、抗CD3抗体、抗CD2抗体、抗TCRα/β抗体、及び/または抗TCRγ/δ抗体を含めた抗体を使用して行うことができる。
【0184】
一実施形態によれば、肺細胞は、B細胞が枯渇している。
【0185】
一実施形態によれば、B細胞枯渇肺細胞は、10%未満、50%未満、または2%未満のB細胞を含む。
【0186】
一実施形態によれば、治療有効量の肺細胞は、対象の体重1キログラムあたり、50×105個未満のB細胞、40×105個未満のB細胞、30×105個未満のB細胞、20×105個未満のB細胞、10×105個未満のB細胞、9×105個未満のB細胞、8×105個未満のB細胞、7×105個未満のB細胞、6×105個未満のB細胞、5×105個未満のB細胞、4×105個未満のB細胞、3×105個未満のB細胞、2×105個未満のB細胞、または1×105個未満のB細胞を含む。
【0187】
一実施形態によれば、B細胞の枯渇は、B細胞デバルキングによって行われる。B細胞デバルキングは、例えば抗CD19抗体または抗CD20抗体を含めた抗体を使用して行うことができる。あるいは、抗CD20抗体の注入によって、インビボでのB細胞デバルキングを実現することができる。
【0188】
T細胞またはB細胞デバルキングは、インビトロまたはインビボで(例えば、ドナーから肺組織を取得する前のドナーにおいて)行うことができる。
【0189】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、内皮マーカーと上皮マーカーとを共発現する細胞に加えて、造血前駆細胞(hematopoietic progenitor or precursoe cells)(HPC)、間葉系前駆細胞、上皮細胞、内皮細胞などを含む、不均質な細胞集団を含む。
【0190】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、直ちに移植に使用される。
【0191】
他の特定の実施形態によれば、肺細胞は、エクスビボで培養される。
【0192】
本明細書で使用される場合、「培養(culturing)」または「培養物(culture)」という用語は、エクスビボ環境における少なくとも肺細胞及び培養培地を指す。培養物は、少なくとも肺細胞の生存を支持することが可能である条件下で維持される。かかる条件には、例えば、適切な温度(例えば、37℃)、雰囲気(例えば、O2%、CO2%)、圧力、pH、光、培地、サプリメントなどが含まれる。
【0193】
いくつかの実施形態の培養培地は、水ベースの培地であり得、これには、塩、栄養素、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、抗生物質、核酸、タンパク質(例えば、サイトカイン、成長因子、及びホルモン)などの物質の組み合わせが含まれ、これらは全て、肺細胞を生存可能な状態に維持するのに必要である。例えば、培養培地は、RPMI-1640(イスラエル国、Life Technologies社製)、Ko-DMEM(米国、ニューヨーク州、グランドアイランド、Gibco-Invitrogen Corporationの製品)、DMEM/F12(イスラエル国、ベイトハエメク(Beit Haemek)、Biological Industries社製)、Mab ADCB培地(米国、ユタ州、HyClone社製)、DMEM/F12(イスラエル国、ビエトハエメク(Biet Haemek)、Biological Industries社製)、必要な添加物が補充された馴化培地(例えば、フィーダー培地、例えばiMEFからのもの)などの合成組織培養培地であり得る。好ましくは、本発明の培養培地に含まれる全ての成分は、実質的に純粋であり、組織培養グレードである。
【0194】
特定の実施形態によれば、培地は、馴化培地である。
【0195】
「馴化培地(CM)」は、培地中で培養された細胞(例えば線維芽細胞、例えばiMEF)から産生され分泌された可溶性因子(培養由来成長因子)を補充した培養培地を指す。理解されるように、馴化培地は、細胞を実質的に含まない。細胞培養物から馴化培地を単離するための技法は、当該技術分野で周知である。馴化培地は、例えばR&D Systems社から市販品を入手することもできる(例えば、MEF馴化培地、カタログ番号AR005)。
【0196】
培養物は、組織培養用の無菌環境を提供することができるガラス、プラスチック、または金属容器内に存在し得る。特定の実施形態によれば、培養容器には、皿、プレート、フラスコ、ボトル、及びバイアルが含まれる。種々の製造業者から、COSTAR(登録商標)、NUNC(登録商標)、及びFALCON(登録商標)などの培養容器が市販されている。
【0197】
特定の実施形態によれば、培養容器は、組織培養プレートである。
【0198】
特定の実施形態によれば、培養物は、滅菌条件下で維持される。
【0199】
特定の実施形態によれば、培養物は、37~38℃で維持される。
【0200】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、それらの増殖を可能にする条件下で培養される。換言すれば、特定の実施形態によれば、肺細胞は、培養によってエクスビボで増殖される。
【0201】
「増殖させる」、「増殖される」、または「増殖」という用語は、細胞分裂によって集団内の細胞数が増加することを指す。増殖を評価する方法は当該技術分野で周知であり、それらには、CFSE及びBrDUなどの増殖アッセイ、ならびに直接細胞計数及び顕微鏡的評価による細胞数の決定が含まれるが、これらに限定されない。
【0202】
特定の実施形態によれば、増殖は、所与の時間間隔にわたって(かつ例えば培養前の非増殖細胞と比較して)、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約40倍、少なくとも約80倍、少なくとも約120倍、少なくとも約140倍であるか、またはそれを上回る。
【0203】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、本明細書に記載の上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団を増殖させるために、エクスビボで培養される。
【0204】
特定の実施形態によれば、かかる条件は、内皮細胞の増殖を促す因子と、上皮細胞の増殖を促す因子と、分化を防止する因子とを含む培養培地を含む。
【0205】
内皮細胞は、血管及びリンパ管の内部表面を覆う薄く平坦な細胞であり、内皮を構成している。本明細書では、「内皮細胞」という用語は、前駆細胞から成熟分化細胞までの任意の発生段階にある単離内皮細胞を指す。内皮細胞は、CD31、CD144(VE-カドヘリン)、CD54(I-CAM1)、vWF、VCAM、CD106(V-CAM)、VEGF-R2を含むがこれらに限定されない、内皮系統に典型的なマーカーを発現し得る。
【0206】
上皮細胞は、哺乳類の全身にわたる構造の腔または表面のいずれかを覆う細胞であり、上皮を構成している。基本的な細胞種は、扁平状、立方状、及び円柱状であり、その形状によって分類される。本明細書では、「上皮細胞」という用語は、前駆細胞から成熟分化細胞までの任意の発生段階にある単離上皮細胞を指す。上皮細胞は、サイトケラチン、CD326、CD324、CD24、アクアポリン5(AQP-5)、ポドプラニン(PDPN)、終末糖化産物、HOPX、サイトケラチン、Nkx 2.1、SP-A、SP-B、SP-D、クララ細胞タンパク質(CC16、CC10)、ムチン関連抗原:KL-6、17-Q2、17-B1を含む、上皮系統に典型的なマーカーを発現し得る。
【0207】
本明細書で使用される場合、「増殖を促す因子」は、培養中の増殖を促す生体分子(例えば、アミノ酸ベースもしくは核酸ベースのもの)または小分子化学物質を指す。
【0208】
内皮細胞の増殖を促す因子は当該技術分野で周知である。本発明の特定の実施形態とともに使用することができる非限定的な例には、血管内皮成長因子(VEGF)、b-FGF、FGF2、IL-8、BMP4が含まれる。
【0209】
特定の実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子は、VEGFを含む。
【0210】
本発明の特定の実施形態とともに使用することができるVEGFの非限定的な例には、hVEGF 165、rhVEGF-121、rhVEGF-164、VEGF-cが含まれる。
【0211】
VEGFは、例えばStemcell社、R&D systems社、Peprotech社など、多くの供給業者から市販されている。特定の実施形態によれば、VEGFは、例えばSartorius社から市販されているEndo培地などの培地中に含まれる。
【0212】
本発明のいくつかの実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子(例えばVEGF)は、少なくとも0.1ng/ml、少なくとも0.5ng/ml、少なくとも1ng/ml、少なくとも5ng/ml、または少なくとも10ng/mlの濃度で提供される。
【0213】
特定の実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子(例えばVEGF)は、10μg/ml以下、1μg/ml以下、100ng/ml以下の濃度で提供される。
【0214】
特定の実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子(例えばVEGF)は、5~100ng/mlの濃度で提供される。特定の実施形態によれば、内皮細胞の増殖を促す因子(例えばVEGF)は、約30ng/mlの濃度で提供される。
【0215】
上皮細胞の増殖を促す因子は当該技術分野で周知である。本発明の特定の実施形態とともに使用することができる非限定的な例には、上皮成長因子(EGF)、ノギン、R-スポンジンが含まれる。
【0216】
特定の実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子は、EGF(例えばhEGF)を含む。
【0217】
EGFは、例えばStemcell社、R&D systems社、Sigma-Aldrich社など、多くの供給業者から市販されている。
【0218】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子(例えばEGF)は、少なくとも0.1ng/ml、少なくとも0.5ng/ml、少なくとも1ng/ml、少なくとも5ng/ml、または少なくとも10ng/mlの濃度で提供される。
【0219】
特定の実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子(例えばEGF)は、10μg/ml以下、1μg/ml以下、100ng/ml以下の濃度で提供される。
【0220】
特定の実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子(例えばEGF)は、5~100ng/mlの濃度で提供される。
【0221】
特定の実施形態によれば、上皮細胞の増殖を促す因子(例えばEGF)は、約30ng/mlの濃度で提供される。
【0222】
本明細書で使用される場合、「分化を防止する因子」は、単独でまたは他の因子と組み合わせて、培養中の前駆細胞の分化を防止する(すなわち、多能性状態を維持する)生体分子(例えば、アミノ酸ベースもしくは核酸ベースのもの)または小分子化学物質を指す。
【0223】
分化を防止する因子は当該技術分野で周知である。本発明の特定の実施形態とともに使用することができる非限定的な例には、ROCK阻害剤、GSK3b阻害剤(例えば、CHIR99021)、ALK5阻害剤(例えば、A83-01)が含まれる。
【0224】
特定の実施形態によれば、分化を防止する因子は、ROCK阻害剤を含む。
【0225】
多くのROCK阻害剤が当該技術分野で公知であり、市販されている。非限定的な例には、Y27632(TOCRIS社製、カタログ番号1254)、ブレビスタチン(TOCRIS社製、カタログ番号1760)、及びチアゾビビン(Axon Medchem社製-Axon1535)が含まれる。
【0226】
本発明のいくつかの実施形態によれば、分化を防止する因子(例えばROCK阻害剤)は、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、少なくとも1μM、少なくとも5μM、または少なくとも10μMの濃度で提供される。
【0227】
特定の実施形態によれば、分化を防止する因子(例えばROCK阻害剤)は、10mM以下、1mM以下、100μM以下の濃度で提供される。
【0228】
特定の実施形態によれば、分化を防止する因子(例えばROCK阻害剤)は、5~50μMの濃度で提供される。
【0229】
特定の実施形態によれば、分化を防止する因子(例えばROCK阻害剤)は、約20μMの濃度で提供される。
【0230】
特定の実施形態によれば、所望の数の生細胞が得られるまで培養が行われる。細胞(例えば生細胞)数の測定は、当業者に公知である任意の方法を使用して、例えば、計数チャンバ、FACs解析、または分光光度計によって実行することができる。
【0231】
特定の実施形態によれば、培養または増殖は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間行われる。
【0232】
特定の実施形態によれば、培養または増殖は、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも24日間行われる。
【0233】
特定の実施形態によれば、培養または増殖は、20~30日間行われる。
【0234】
特定の実施形態によれば、培養または増殖は、最長5週間または最長4週間行われる。
【0235】
特定の実施形態によれば、培養または増殖は、細胞数が少なくとも1×107個に達するまで行われる。
【0236】
特定の実施形態によれば、培養または増殖は、上皮マーカーと内皮マーカーの両方を発現する細胞が少なくとも50,000個、少なくとも100,000個、少なくとも150,000個、少なくとも200,000個の細胞数に達するまで行われる。
【0237】
特定の実施形態によれば、本方法は、肺細胞上の上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現を決定することを更に含む。
【0238】
特定の実施形態によれば、決定は、選択後に行われる。
【0239】
特定の実施形態によれば、決定は、培養前に行われる。
【0240】
特定の実施形態によれば、決定は、培養中及び/または培養後に行われる。
【0241】
発現を決定する方法は当該技術分野で周知であり、それらには、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、ウエスタンブロット、PCRなどが含まれる。
【0242】
特定の実施形態によれば、発現の決定は、フローサイトメトリーによって行われる。
【0243】
特定の実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖が所定の閾値を上回ることは、単離肺細胞集団が対象への投与に好適であることを示す。
【0244】
一方、特定の実施形態によれば、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞集団の増殖が生じないことまたは所定の閾値を下回ることは、単離肺細胞集団が対象への投与に不適であることを示す。続いて、特定の実施形態によれば、増殖が生じないことまたは所定の閾値を下回ることが検出された場合、細胞は、二重陽性細胞の増殖が生じるまで再度培養されるか、または廃棄される。
【0245】
特定の実施形態によれば、かかる所定の閾値は、上皮/内皮二重陽性細胞自体の総数と比較して決定される。
【0246】
したがって、特定の実施形態によれば、増殖が所定の閾値を上回るとは、上皮/内皮二重陽性細胞の数が、培養前の数と比較して少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍またはそれを超えて増加することである。
【0247】
特定の実施形態によれば、増殖が所定の閾値を上回るとは、上皮/内皮二重陽性細胞の数が、培養前の数と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%またはそれを超えて増加することである。
【0248】
特定の実施形態によれば、増殖が所定の閾値を下回るとは、上皮/内皮二重陽性細胞の数が、培養前の数と比較して約1.5倍未満、約2倍未満、約3倍未満、約4倍未満、約5倍未満、約10倍未満までしか増加しないことである。
【0249】
特定の実施形態によれば、増殖が所定の閾値を下回るとは、上皮/内皮二重陽性細胞の数が、培養前の数と比較して5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、または100%未満までしか増加しないことである。
【0250】
特定の実施形態によれば、決定は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、または少なくとも72時間の培養後に行われる。
【0251】
特定の実施形態によれば、決定は、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、または少なくとも24日間の培養後に行われる。
【0252】
特定の実施形態によれば、決定は、20~30日間の培養後に行われる。
【0253】
特定の実施形態によれば、決定は、最長5週間または最長4週間の培養後に行われる。
【0254】
本発明のいくつかの実施形態の肺組織またはそれから得られる細胞は、移植での使用のために細胞が生存しかつ機能し続けるように、任意の工程(例えば、解離後、選択後、培養前、培養中、培養後)において適切な条件下で保存する(典型的には凍結による)ことができる。一実施形態によれば、肺細胞は、凍結保存された集団として保存される。他の保存方法は、米国特許第5,656,498号明細書、同第5,004,681号明細書、同第5,192,553号明細書、同第5,955,257号明細書、及び同第6,461,645号明細書に記載されている。幹細胞をバンキングするための方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0215942号明細書に記載されている。
【0255】
したがって、本発明の一態様によれば、
(i)懸濁液中の複数の単離肺細胞集団であって、肺細胞が、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性であると特徴付けられており、複数の単離肺細胞集団が、同種細胞バンクを形成するためにHLAタイピングされており、各々が別々の容器内に個々に配置されている、懸濁液中の複数の単離肺細胞集団と、
(ii)複数の単離肺細胞集団のHLAタイピングされた細胞に関する情報を含むカタログと
を含む、細胞バンクが提供される。
【0256】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法によって得ることができるまたは得られた細胞も企図する。
【0257】
したがって、本発明の一態様によれば、本方法に従って得られた単離肺細胞集団が提供される。
【0258】
特定の実施形態によれば、単離肺細胞集団は、上皮マーカーと内皮マーカーの両方を発現する細胞、例えばCD326+CD31+細胞を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%含む。
【0259】
本発明の一態様によれば、CD326+CD31+細胞を少なくとも40%含む単離肺細胞集団が提供される。
【0260】
特定の実施形態によれば、単離肺細胞集団は、CD326+CD31+細胞を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%含む。
【0261】
特定の実施形態によれば、本明細書に開示される肺細胞は、肺上皮組織を再生することができる。
【0262】
特定の実施形態によれば、本明細書に開示される肺細胞は、肺内皮組織を再生することができる。
【0263】
特定の実施形態によれば、細胞は、2Dまたは3Dの培養によって成長させることができる。
【0264】
特定の実施形態によれば、細胞は、懸濁液中にある。
【0265】
特定の実施形態によれば、細胞は、懸濁液中での成長を可能にする足場または担体に埋め込まれているかまたは付着されている。
【0266】
足場材料は、天然のもの(例えば、フィブリノゲン、フィブリン、トロンビン、キトサン、コラーゲン、アルギン酸塩、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、アルブミン、コラーゲン、合成ポリアミノ酸、プロラミン、多糖類(例えば、アルギン酸塩、ヘパリン、及び他の天然に存在する糖単位の生分解性ポリマー))または合成有機ポリマー(例えば、PLGA、PMMA、及びPCLなど)を含むことができ、この材料を、(例えば凝集、凝固、疎水性相互作用、もしく架橋により)ゲル化または重合または固化させ、2次元または3次元構造にすることができる。かかる足場は当該技術分野で公知であり、例えば、Florian Weinbergeret al. (2017) Circulation Research. 120:1487-1500、Rochkind S et al (2004) Neurol Res. 26(2):161-6、Rochkind S. et al. (2006) Eur Spine J. 15(2):234-45、FSY Wong, ACY Lo (2015) J Stem Cell Res Ther 5:267、及び国際特許出願公開第2020/245832号に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0267】
足場材料組成物に使用されるポリマーは、生体適合性、生分解性、及び/または生体内分解性(bioerodible)であり得、細胞の付着基材として働き得る。例示的な実施形態では、構造足場材料は、複雑な形状への加工が容易であり、インビボ条件下で所望の形状を維持するのに好適な剛性及び機械的強度を有する。
【0268】
ある特定の実施形態では、構造足場材料は、非吸収性または非生分解性のポリマーまたは材料であり得る。かかる非吸収性の足場材料は、宿主生物への長期的または永続的な植込み用に設計された材料を製造するために使用することができる。
【0269】
足場は、当業者に公知である多様な技法のいずれかによって作製することができる。塩浸出、ポロゲン、固相・液相分離(凍結乾燥と呼ばれることもある)、及び転相製造(phase inversion fabrication)は全て、多孔質足場の生産に使用することができる。繊維の引き抜き及び織り込み(fiber pulling and weaving)(例えば、Vacanti, et al., (1988) Journal of Pediatric Surgery, 23: 3-9を参照されたい)は、より整列したポリマー糸を有する足場を生産するために使用することができる。当業者であれば、標準的なポリマー加工技法を利用して多様な多孔性及び微細構造を有するポリマー足場を作出することができることを認識するであろう。
【0270】
足場材料は、当業者にとって(通常は溶液の形態で)容易に入手可能である(供給元は、例えば、英国のBDH社及びノルウェー国のPronova Biomedical Technology a.s.である)。足場材料の選択及び調製に関する一般的概要については、「Standard Guide for Characterization and Testing of Alginates as Starting Materials Intended for Use in Biomedical and Tissue Engineering Medical Products Applications」という表題の米国国家規格協会の出版物No.F2064-00を参照されたい。
【0271】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の肺細胞を対象に投与することも企図する。
【0272】
本方法は、用途に応じて、対象と同系または非同系の肺細胞を使用して行うことができる。
【0273】
本明細書で使用される場合、「同系」細胞という用語は、対象と本質的に遺伝的に同一である細胞、または対象の本質的に全てのリンパ球を指す。同系細胞の例には、対象由来の細胞(当該技術分野では「自家」とも称される)、対象のクローン由来の細胞、または対象の一卵性双生児由来の細胞が含まれる。
【0274】
特定の実施形態によれば、肺組織または肺細胞は、対象と非同系である。
【0275】
本明細書で使用される場合、「非同系」細胞という用語は、同種細胞または異種細胞など、対象と本質的に遺伝的に同一ではない細胞、対象の本質的に全てのリンパ球ではない細胞を指す。
【0276】
本明細書で使用される場合、「同種」という用語は、対象と同じ種であるが、対象と実質的に非クローン性であるドナーに由来する細胞を指す。通常、同じ種の非近交系、非接合性(non-zygotic)の双子哺乳類は、互いに同種である。同種細胞は、対象に対してHLA同一、部分的にHLA同一、またはHLA非同一(すなわち、1つ以上の異なるHLA決定基を示す)であり得ることが理解されよう。
【0277】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、対象のリンパ球のうちの相当な割合の種と比較して異なる種の抗原を実質的に発現する細胞を指す。通常、異なる種の非近交系哺乳類は、互いに異種である。
【0278】
本発明は、異種細胞が多様な種に由来することを想定している。したがって、一実施形態によれば、肺細胞は、任意の哺乳類に由来する。肺細胞に好適な種の起源には、主要な飼育動物または家畜及び霊長類が含まれる。かかる動物には、ブタ類(例えばブタ)、ウシ科(例えば雌ウシ)、ウマ科(例えばウマ)、ヒツジ科(例えば、ヤギ、ヒツジ)、ネコ科(例えばFelis domestica)、イヌ科(例えばCanis domestica)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター)、及び霊長類(例えば、チンパンジー、アカゲザル、マカクザル、マーモセット)が含まれるが、これらに限定されない。
【0279】
異種起源(例えばブタ起源)の肺細胞は、好ましくは、ブタ内因性レトロウイルスなどの人獣共通感染症がないことが公知である供給源から得られる。同様に、ヒト由来の細胞または組織は、好ましくは、病原体を実質的に含まない供給源から得られる。
【0280】
一実施形態によれば、肺細胞は、対象と非同系である。
【0281】
一実施形態によれば、肺細胞は、対象と同種である。
【0282】
一実施形態によれば、肺細胞は、対象と異種である。
【0283】
本発明の一実施形態によれば、対象はヒトであり、肺細胞は哺乳類起源(例えば、同種または異種)のものである。
【0284】
本発明の一実施形態によれば、対象はヒトであり、肺細胞はヒト起源(例えば、同系または非同系)のものである。
【0285】
一実施形態によれば、対象はヒトであり、肺細胞は異種起源(例えばブタ起源)のものである。
【0286】
一実施形態によれば、肺細胞は、移植前に遺伝子改変することができる。
【0287】
本発明のいくつかの実施形態の肺細胞は、上皮細胞及び内皮細胞に分化する能力を有する前駆細胞を含むため、肺障害の処置及び/または肺組織の再生を必要とする対象においてそれを行うために使用することができる。
【0288】
したがって、本発明の一態様によれば、肺上皮及び/または内皮組織の再生を必要とする対象においてそれを再生する方法であって、治療有効量の本明細書に開示される単離肺細胞集団を対象に投与することを含み、それにより肺上皮及び/または内皮組織を再生する、方法が提供される。
【0289】
本発明の追加または代替の態様によれば、肺上皮及び/または内皮組織の再生を必要とする対象においてそれを再生する際の使用のための、本明細書に開示される単離肺細胞集団が提供される。
【0290】
本発明の追加または代替の態様によれば、肺障害または肺損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置する方法であって、治療有効量の本明細書に開示される単離肺細胞集団を対象に投与することを含み、それにより肺障害または肺損傷を処置する、方法が提供される。
【0291】
本発明の追加または代替の態様によれば、肺障害または肺損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置する際の使用のための、本明細書に開示される単離肺細胞集団が提供される。
【0292】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語には、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延もしくは逆転、病態の臨床的もしくは審美的症状の実質的な寛解、または病態の臨床的もしくは審美的症状の出現の実質的な予防が含まれる。
【0293】
本明細書で使用される場合、「対象」または「~を必要とする対象」という用語は、疾患、障害、または傷害の結果として肺組織の損傷もしくは欠損を患っているかまたはその素因を有する、任意の年齢の哺乳類、好ましくはヒト(男性または女性)を指す。典型的には、対象は、臓器機能性の喪失をもたらし、かつ肺細胞または肺組織の移植による処置が適用可能な、障害または病理学的なもしくは望ましくない病態、状態、もしくは症候群、または物理的、形態学的、もしくは生理学的異常に起因して、肺細胞または肺組織の移植を必要としている(本明細書ではレシピエントとも称される)。
【0294】
特定の実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0295】
本明細書で使用される場合、「肺障害または肺損傷」という語句は、肺細胞もしくは肺組織の喪失もしくは欠損、または肺細胞もしくは肺組織の機能喪失を伴う、任意の疾患、障害、病態、または任意の病理学的なもしくは望ましくない病態、状態、もしくは症候群、または任意の物理的、形態学的、もしくは生理学的異常を指す。
【0296】
例示的な肺疾患には、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、石綿肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、特発性肺線維症、肺高血圧症、肺癌、サルコイドーシス、急性肺損傷(成人呼吸促迫症候群)、未熟児呼吸促迫症候群、未熟児慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、サーファクタントタンパク質B欠損症、先天性横隔膜ヘルニア、肺胞蛋白症、肺低形成、肺炎(例えば、細菌、ウイルス、または真菌を原因とするものを含む)、喘息、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎(例えば、ループス、関節リウマチ、または強皮症などの自己免疫性病態を伴うものを含む)、過敏性肺炎、特発性器質化肺炎(COP)、急性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、石綿肺、及び肺損傷(例えば、虚血/再灌流肺高血圧症または高酸素性肺損傷によって誘発されるもの)が含まれるが、これらに限定されない。
【0297】
一実施形態によれば、肺障害または肺損傷は、肺の慢性炎症(例えば、2週間を超えて持続する炎症)を含む。
【0298】
例示的な肺の慢性炎症病態には、慢性気道炎症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺癌、嚢胞性線維症(CF)、肉芽腫性肺疾患、特発性肺線維症、未熟児慢性肺疾患、放射線肺臓炎、全身性疾患(強皮症、ループス、皮膚筋炎、サルコイドーシス、ならびに成人及び新生児呼吸促迫症候群など)を伴う肺疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0299】
特定の実施形態によれば、肺障害または肺損傷は、嚢胞性線維症、肺気腫、石綿肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、特発性肺線維症、肺高血圧症、肺癌、サルコイドーシス、急性肺損傷(成人呼吸促迫症候群)、未熟児呼吸促迫症候群、未熟児慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、サーファクタントタンパク質B欠損症、先天性横隔膜ヘルニア、肺胞蛋白症、肺低形成、及び喘息からなる群から選択される。
【0300】
一実施形態によれば、対象は、肺細胞または肺組織の移植から利益を得ることができる。
【0301】
一実施形態によれば、肺細胞の移植により、構造的/機能的肺組織が再生される。
【0302】
一実施形態によれば、肺細胞の移植により、キメラ肺(すなわち、遺伝的に異なる起源に由来する細胞を含む肺)が生成される。
【0303】
本発明のいくつかの実施形態の肺細胞が、キメラ肺の生成を含めて構造的/機能的肺組織を再生することができることが理解されよう。キメラ肺は、肺胞、気管支及び/もしくは細気管支の構造、ならびに/または血管構造を含む。更に、いくつかの実施形態の構造的/機能的肺組織は、特異的細胞染色によって検出可能なサーファクタント[例えば、クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)、アクアポリン-5(AQP-5)、及びサーファクタントタンパク質C(sp-C)]合成能、ならびに/またはイオン輸送能(例えば、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通調節因子)に対する染色によって示されるもの)を含む。本発明のいくつかの実施形態の肺細胞は、更に、上皮組織、間葉組織、及び/または内皮組織を、(例えば、これら全ての構成成分を含む完全なキメラ肺組織の形成によって示されるように)再生することができる。
【0304】
本明細書で使用される場合、「再生」という用語は、肺上皮及び/または内皮組織の再構成を指す。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、再生とは、上皮組織及び/または内皮組織の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の増加を指す。例えば、X線、超音波、CT、MRI、組織試料の組織学的染色などを含めた、当業者に公知である任意の方法を使用して、再生を評価することができる。
【0305】
いくつかの実施形態に従って肺細胞を対象に移植した後、標準的な医療行為に従って、移植した細胞の成長機能性及び免疫適合性を種々の当該技術分野における標準的技法のいずれか1つに従ってモニタリングすることが推奨される。例えば、再生肺組織の機能性は、標準的な肺機能検査によって移植後にモニタリングすることができ、それら検査は例えば、サーファクタントタンパク質C(sp-C)に対する染色によって検出可能なサーファクタント合成能と、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通調節因子)に対する染色によって示されるイオン輸送能と、によって示される、発達中の植込片の機能特性の解析によるものである。
【0306】
肺細胞の生着を促進するために、ならびに移植片拒絶反応及び/または移植片対宿主病(GVHD)を少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%低減するまたは好ましくは回避するために、本明細書に開示される方法及び使用は、有利には、肺細胞の投与前に対象を前処置することを更に含み得る。
【0307】
本明細書で使用される場合、「前処置」という用語は、移植前の対象の予備的処置を指す。
【0308】
一実施形態によれば、移植成功率(例えば、キメリズムの形成)を増加させるために、対象は、肺組織または肺臓器内の細胞ニッチを空にすることが可能な前処置によって処置される。
【0309】
したがって、対象の前処置は、肺組織への損傷を誘発することが可能な治療有効量の試薬を対象に投与することによって行われ、その損傷により肺組織内の常在幹細胞が増殖する。
【0310】
「肺組織への損傷」という語句は、肺臓器/組織またはその一部への局所的傷害を指す。
【0311】
「常在幹細胞の増殖」という用語は、剤に晒されると、肺組織内に常在する内因性幹細胞の細胞分裂が誘発されることを指す。
【0312】
種々の前処置剤は、それが肺組織の少なくとも一部に損傷を誘発し、その結果肺組織内の常在幹細胞が増殖する限り、本発明に従って使用することができる。したがって、例えば剤は、化学物質、抗生物質、治療薬、毒素、または薬用植物もしくはその抽出物を含み得る。
【0313】
前処置プロトコルは、対象の年齢及び病態(例えば、疾患、病期)を考慮して調整することができ、そのような決定を行うことは、とりわけ本明細書で提供される開示を鑑みると、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0314】
理論に束縛されるものではないが、前処置の治療有効量とは、局所的な肺組織の損傷及び常在幹細胞の増殖を誘発するのに十分であるが、処置される対象の他の臓器(例えば、肝臓、腎臓、心臓など)に対して毒性ではない、前処置剤の量である。そのような治療有効量を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0315】
肺細胞毒性を引き起こす例示的な剤には、化学療法剤、免疫抑制剤、アミオダロン、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、ニトロフラントイン、プロカインアミド、キニジン、トカイニド、ミノキシジル、アミオダロン、メトトレキサート、タキサン類(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、ゲムシタビン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ブスルファン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ニトロソウレア(例えばカルムスチン)、ならびにシロリムスが含まれるが、これらに限定されない。
【0316】
肺細胞毒性を引き起こす追加の試薬は、以下の表2に列記されている[Collard, www(dot)merckmanuals(dot)com/professional/pulmonary-disorders/interstitial-lung-diseases/drug-induced-pulmonary-diseaseより援用]。
【0317】
【0318】
特定の実施形態によれば、肺組織への損傷を誘発することが可能な試薬は、化学療法剤、免疫抑制剤、アミオダロン、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、ニトロフラントイン、プロカインアミド、キニジン、トカイニド、及びミノキシジルからなる群から選択される。
【0319】
特定の実施形態によれば、肺組織への損傷を誘発することが可能な試薬は、ナフタレンを含む。
【0320】
一実施形態によれば、ナフタレン処置は、肺細胞投与の1~10日(例えば、7、6、5、4、3、2日、例えば3日)前に対象に施される。
【0321】
肺組織の損傷の評価は、当該技術分野で公知である任意の方法を使用して、例えば肺機能検査、胸部X線、胸部CT、またはPETスキャンによって、実行することができる。肺損傷を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0322】
上述したように、肺組織の損傷により、組織内の常在幹細胞が増殖する。
【0323】
常在幹細胞(例えば、肺組織内の内因性幹細胞)の増殖の評価は、当業者に公知である任意の方法を使用して、例えば、Francis et al, Gut. (2003) 52(11):1602-6及びFuchs et al., J Nucl Med. (2013) 54(1):151-8によって教示されているように、例えば、PETトレーサー(例えば、18F標識2-フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース(18FDG)または[18F]3’-デオキシ-3-フルオロチミジン((18)FLT))を用いた陽電子放出断層撮影(PET)を使用した細胞増殖のインビボイメージングなどによって、実行することができる。
【0324】
したがって、本発明の一実施形態によれば、関心対象組織への損傷を誘発することが可能な試薬を投与した後、対象を、第2の前処置剤、すなわち組織内の常在幹細胞を取り除く剤に晒す。細胞生物学分野の当業者には明らかなように、放射線に対する感受性は増殖期にのみ得られる。
【0325】
別の実施形態によれば、組織内の常在幹細胞を取り除く剤(後述)は、組織への損傷を誘発する剤(例えばナフタレン)で事前に前処置せずに、対象に投与することができる。
【0326】
一実施形態によれば、常在幹細胞を取り除く剤は、亜致死性、致死性、または超致死性の前処置プロトコルを構成する。
【0327】
一実施形態によれば、前処置プロトコルは、強度減弱前処置(RIC)を含む。
【0328】
一実施形態によれば、肺細胞の移植前に最長2週間(例えば、1~14日、1~10日、または1~7日)、強度減弱前処置が行われる。
【0329】
一実施形態によれば、前処置プロトコルは、全身照射(TBI)、全リンパ組織照射(TLI、すなわち全てのリンパ節、胸腺、及び脾臓への曝露)、部分照射、T細胞デバルキング(TCD)、化学療法剤、ならびに/または抗体免疫療法を含む。
【0330】
したがって、一実施形態によれば、TBIは、0.5~1Gy、0.5~1.5Gy、0.5~2.5Gy、0.5~5Gy、0.5~7.5Gy、0.5~10Gy、0.5~15Gy、0.5~20Gy、1~1.5Gy、1~2Gy、1~2.5Gy、1~3Gy、1~3.5Gy、1~4Gy、1~4.5Gy、1~1.5Gy、1~7.5Gy、1~10Gy、1~15Gy、1~12Gy、2~3Gy、2~4Gy、2~5Gy、2~6Gy、2~7Gy、2~8Gy、2~9Gy、2~10Gy、2~15Gy、2~20Gy、3~4Gy、3~5Gy、3~6Gy、3~7Gy、3~8Gy、3~9Gy、3~10Gy、3~15Gy、3~20Gy、4~5Gy、4~6Gy、4~7Gy、4~8Gy、4~9Gy、4~10Gy、4~15Gy、4~20Gy、5~6Gy、5~7Gy、5~8Gy、5~9Gy、5~10Gy、5~15Gy、5~20Gy、6~7Gy、6~8Gy、6~9Gy、6~10Gy、6~20Gy、7~8Gy、7~9Gy、7~10Gy、7~20Gy、8~9Gy、8~10Gy、10~12Gy、10~15Gy、または10~20Gyの範囲内の単回または分割照射線量を含む。
【0331】
特定の実施形態によれば、TBIは、1~20Gyの範囲内の単回または分割照射線量を含む。
【0332】
特定の実施形態によれば、TBIは、1~10Gyの範囲内の単回または分割照射線量を含む。
【0333】
一実施形態によれば、TBI処置は、移植の1~10日(例えば、1~3日)前に対象に施される。一実施形態によれば、対象は、移植の1日または2日前にTBIで1回前処置される。
【0334】
特定の実施形態によれば、TLIは、0.5~1Gy、0.5~1.5Gy、0.5~2.5Gy、0.5~5Gy、0.5~7.5Gy、0.5~10Gy、0.5~15Gy、0.5~20Gy、1~1.5Gy、1~2Gy、1~2.5Gy、1~3Gy、1~3.5Gy、1~4Gy、1~4.5Gy、1~1.5Gy、1~7.5Gy、1~10Gy、2~3Gy、2~4Gy、2~5Gy、2~6Gy、2~7Gy、2~8Gy、2~9Gy、2~10Gy、3~4Gy、3~5Gy、3~6Gy、3~7Gy、3~8Gy、3~9Gy、3~10Gy、4~5Gy、4~6Gy、4~7Gy、4~8Gy、4~9Gy、4~10Gy、5~6Gy、5~7Gy、5~8Gy、5~9Gy、5~10Gy、6~7Gy、6~8Gy、6~9Gy、6~10Gy、7~8Gy、7~9Gy、7~10Gy、8~9Gy、8~10Gy、10~12Gy、10~15Gy、10~20Gy、10~30Gy、10~40Gy、10~50Gy、0.5~20Gy、0.5~30Gy、0.5~40Gy、または0.5~50Gyの範囲内の照射線量を含む。
【0335】
特定の実施形態によれば、TLIは、1~20Gyの範囲内の単回または分割照射線量を含む。
【0336】
特定の実施形態によれば、TLIは、1~10Gyの範囲内の単回または分割照射線量を含む。
【0337】
一実施形態によれば、TLI処置は、移植の1~10日(例えば、1~3日)前に対象に施される。一実施形態によれば、対象は、移植の1日または2日前にTLIで1回前処置される。
【0338】
特定の実施形態によれば、対象は、例えば抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD3(OKT3)抗体、抗CD52抗体(例えばCAMPATH)、及び/または抗胸腺細胞グロブリン(ATG)抗体による、インビボT細胞デバルキングによって、(例えば、約100~500μg、例えば各300μgの治療有効用量で、移植の10、9、8、7、6、または5日前に)処置され得る。
【0339】
一実施形態によれば、前処置は、化学療法剤を含む。例示的な化学療法剤には、ブスルファン、ミレラン、ブスルフェクス、フルダラビン、メルファラン、ジメチルミレラン(Dimethyl mileran)、及びチオテパ、及びシクロホスファミドが含まれるが、これらに限定されない。化学療法剤は、移植前に単回用量または複数回用量、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回用量もしくはそれを超える用量(例えば、毎日の用量)で対象に投与され得る。一実施形態によれば、対象は、移植前(例えば、-7日目~-3日目)に、3~7日間連続で、例えば5日間連続で、化学療法剤(例えば、約30mg/m2/日の用量などのフルダラビン)が投与される。
【0340】
一実施形態によれば、前処置は、抗体免疫療法を含む。例示的な抗体には、抗CD52抗体(例えば、Campath、MabCampath、Campath-1H、及びLemtradaなどの商品名で販売されている、アレムツズマブ)、ならびに抗胸腺細胞グロブリン(ATG)剤[例えば、Thymoglobulin(Genzyme社から入手可能なウサギATG、rATG)及びAtgam(Pfizer社から入手可能なウマATG、eATG)]が含まれるが、これらに限定されない。追加の抗体免疫療法には、抗CD3(OKT3)剤、抗CD4剤、または抗CD8剤が含まれ得る。一実施形態によれば、抗体は、移植前(例えば、移植の4~8日前、例えば6日前)に、単回用量または数回の用量、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回用量もしくはそれを超える用量(例えば、毎日の用量)で対象に投与される。
【0341】
一実施形態によれば、前処置は、共刺激遮断を含む。したがって、例えば前処置は、少なくとも1種のT細胞共刺激阻害剤及び少なくとも1種のCD40リガンド阻害剤を対象に一過性に投与することを含んでもよく、より好ましくは、T細胞増殖阻害剤を対象に投与することを更に含んでもよい。
【0342】
一実施形態によれば、T細胞共刺激阻害剤はCTLA4-Igであり、CD40リガンド阻害剤は抗CD40リガンド抗体であり、T細胞増殖阻害剤はラパマイシンである。あるいは、T細胞共刺激阻害剤は、抗CD40抗体であってもよい。あるいは、T細胞共刺激阻害剤は、B7-1、B7-2、CD28、抗LFA-1、及び/または抗LFA3に特異的な抗体であってもよい。
【0343】
特定の実施形態によれば、前処置は、ナフタレン処置(例えば、移植の10、9、8、7、6、5、4、3、または2日前、例えば3日前)及びTBI処置(例えば、1~20Gy、例えば6Gyの線量で、例えば、移植の9、8、7、6、5、4、3、2、または1日前、例えば1日前)を含む。
【0344】
別の特定の実施形態によれば、前処置は、T細胞デバルキング処置(例えば、抗CD8及び/または抗CD4抗体で、例えば、移植の10、9、8、7、6、5、4、3、または2日前、例えば6日前)、ナフタレン処置(例えば、移植の10、9、8、7、6、5、4、3、または2日前、例えば3日前)、ならびにTBI処置(例えば、1~20Gy、例えば6Gyの線量で、例えば、移植の9、8、7、6、5、4、3、2、または1日前、例えば1日前)を含む。
【0345】
別の特定の実施形態によれば、前処置は、TBI処置(例えば、1~20Gy、例えば6Gyの線量で、例えば、移植の9、8、7、6、5、4、3、2、または1日前、例えば1日前)のみを含む。
【0346】
肺細胞の移植片拒絶反応を回避するために、対象に移植後免疫抑制レジメンを施すことができる。
【0347】
一実施形態によれば、対象は、肺細胞の投与後最長2週間、免疫抑制レジメンで処置される。
【0348】
一実施形態によれば、対象は、肺細胞の投与後、最長5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間、免疫抑制レジメンで処置される。
【0349】
好適なタイプの免疫抑制レジメンの例には、免疫抑制薬(免疫抑制剤とも呼ばれる)の投与及び/または免疫抑制照射が含まれる。
【0350】
移植にとって好適な免疫抑制レジメンの選択及び投与に関する豊富な指針は、当該技術分野の文献に提供されている(例えば、Kirkpatrick CH. and Rowlands DT Jr., 1992. JAMA. 268, 2952、Higgins RM. et al., 1996. Lancet 348, 1208、Suthanthiran M. and Strom TB., 1996. New Engl. J. Med. 331, 365、Midthun DE. et al. 1997. Mayo Clin Proc. 72, 175、Morrison VA. et al. 1994. Am J Med. 97, 14、Hanto DW., 1995. Annu Rev Med. 46, 381、Senderowicz AM. et al., 1997. Ann Intern Med. 126, 882、Vincenti F. et al., 1998. New Engl. J. Med. 338, 161、Dantal J. et al. 1998. Lancet 351, 623を参照されたい)。
【0351】
免疫抑制剤の例には、メトトレキサート、シクロホスファミド、シクロスポリン、シクロスポリンA、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン(スルファサラゾピリン(sulphasalazopyrine))、金塩、D-ペニシラミン、レフルノミド、アザチオプリン、アナキンラ、インフリキシマブ(REMICADE)、エタネルセプト、TNF.アルファ.遮断薬、炎症性サイトカインを標的とする生物学的製剤、及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が含まれるが、これらに限定されない。NSAIDsの例には、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サルサラート、サリチル酸ナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、ナプロキセン、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、Cox-2阻害剤、トラマドール、ラパマイシン(シロリムス)、及びラパマイシン類似体(CCI-779、RAD001、AP23573など)が含まれるが、これらに限定されない。これらの試薬は、個々にまたは組み合わせて投与することができる。
【0352】
特定の実施形態によれば、免疫抑制剤は、シクロホスファミド、ブスルファン、フルダラビン、タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、エベロリムス、シロリムス、グルココルチコイド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0353】
一実施形態によれば、免疫抑制剤は、シクロホスファミドである。
【0354】
一実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載されている移植後の投与に加えて、移植前(例えば、移植の4、3、または2日目、すなわち、T-4、-3、または-2)のシクロホスファミドの投与を更に企図する。
【0355】
特定の実施形態によれば、対象に投与される肺細胞は、有効量の造血前駆細胞(HPC)を含む。その代わりに、またはそれに加えて、特定の実施形態によれば、肺細胞は、有効量の造血前駆細胞(HPC)と組み合わせて対象に投与される。
【0356】
特定の実施形態によれば、HPCは、肺細胞の投与前、投与と同時に、または投与後に投与され得る。
【0357】
本明細書で使用される場合、「造血前駆細胞」または「HPC」という用語は、未熟造血細胞を含む細胞調製物を指す。かかる細胞調製物は、生体試料、例えば、肺組織(例えば、胎仔/胎児組織または成体組織)、骨髄(例えばT細胞枯渇骨髄)、動員末梢血(例えば、CD34+細胞のその濃度を高めるための動員)、臍帯血(例えば臍帯)、胎仔/胎児肝臓、卵黄嚢、及び/または胎盤を含むか、またはそれらに由来する。それに加えて、またはその代わりに、精製されたCD34+細胞または他の造血幹細胞(例えばCD131+細胞)は、本教示のいくつかの実施形態に従って、エクスビボでの増殖の有無を問わず使用することができる。
【0358】
特定の実施形態によれば、HPCは、肺組織由来CD34+細胞を含む。
【0359】
特定の実施形態によれば、HPCは、骨髄CD34+細胞または動員末梢血CD34+細胞を含む。
【0360】
特定の実施形態によれば、HPCは、T細胞枯渇未熟造血細胞を含む。
【0361】
特定の実施形態によれば、単離肺細胞集団及びHPCは、同じドナーから得られる。
【0362】
本明細書で使用される場合、「HPCの有効量」という用語は、長期免疫抑制レジメンを行わずに肺細胞に対する寛容性を達成するのに十分な量を指す。
【0363】
本明細書で使用される場合、「寛容性」という用語は、ドナーの細胞(例えば、ドナーHPC)と接触したときに、レシピエントの細胞(例えば、レシピエントのT細胞)の応答性が、かかる処置法が行われない場合のレシピエントの細胞の応答性と比較して低下している状態を指す。
【0364】
寛容誘発によって、移植片拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)のリスクを低減させながら細胞移植片または組織移植片(例えば肺細胞)を移植することが可能になる。
【0365】
HPCの有効量は、典型的には、対象の体重1Kgあたり約1×105~10×107個の細胞を含む。
【0366】
本発明のいくつかの実施形態の細胞は、生物にそれ自体で投与することもでき、または好適な担体もしくは賦形剤と混合された医薬組成物で投与することもできる。
【0367】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本明細書に記載される活性成分のうちの1種以上と、生理学的に好適な担体及び賦形剤などの他の化学構成成分との調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0368】
本明細書では、「活性成分」という用語は、生物学的効果を司る肺細胞を指す。
【0369】
ゆえに、本発明の一態様によれば、活性成分としての単離肺細胞集団と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0370】
特定の実施形態によれば、医薬組成物は、活性成分として造血前駆細胞(HPC)を更に含む。
【0371】
特定の実施形態によれば、単離肺細胞集団及び造血前駆細胞(HPC)は、別々の製剤中に存在する。
【0372】
他の特定の実施形態によれば、単離肺細胞集団及びHPCは、同じ製剤中に存在する。
【0373】
以下において、互換的に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に著しい刺激を引き起こさず、かつ投与された化合物の生物学的活性及び特性を妨げない、担体または希釈剤を指す。これらの語句には補助剤が含まれる。
【0374】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には、非限定的に、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類及び種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールが含まれる。
【0375】
薬物の製剤化及び投与のための技法は、参照により本明細書に援用される、"Remington’s Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版に見出すことができる。
【0376】
好適な投与経路には、例えば、経口、直腸、経粘膜、とりわけ経鼻、腸管、または非経口送達(筋肉内、皮下、及び髄内注射、ならびにくも膜下腔内、直接脳室内、心臓内(例えば、右室腔または左室腔内、総冠動脈(common coronary artery)内)、静脈内、気管内、気管支内、肺胞内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0377】
一実施形態によれば、投与は、静脈内経路によって行われる。
【0378】
したがって、特定の実施形態によれば、細胞は、静脈内投与用に製剤化される。
【0379】
一実施形態によれば、投与は、気管内経路によって行われる。
【0380】
したがって、特定の実施形態によれば、細胞は、気管内投与用に製剤化される。
【0381】
あるいは、対象への肺細胞の投与は、治療効果があるように、種々の好適な解剖学的部位へと肺細胞を投与することによって行うことができる。したがって、用途及び目的に応じて、肺細胞は、同所性解剖学的部位(細胞の臓器もしくは組織タイプにとって正常な解剖学的部位)に投与してもよく、または異所性解剖学的部位(細胞の臓器もしくは組織タイプにとって異常な解剖学的部位)に投与してもよい。
【0382】
したがって、用途及び目的に応じて、腎被膜下、または腎臓、精巣脂肪、皮下組織、大網、門脈、肝臓、脾臓、心臓腔、心臓、胸腔、肺、膵臓、皮膚、及び/または腹腔内空間へと、肺細胞を有利に植込む(例えば移植する)ことができる。
【0383】
中枢神経系(CNS)に薬物を送達するための従来のアプローチには、神経外科的戦略(例えば、脳内注射または脳室内注入)、BBBの内因性輸送経路のうちの1つを利用する試みにおける、剤の分子操作(例えば、内皮細胞表面分子に対する親和性を有する輸送ペプチドと、それ自体はBBBを通過することができない剤とを組み合わせて含む、キメラ融合タンパク質の生産)、剤の脂溶性を増加させるように設計された薬理学的戦略(例えば、脂質担体またはコレステロール担体への水溶性剤のコンジュゲーション)、及び高浸透圧での破壊によるBBBの完全性の一時的破壊(マンニトール溶液の頸動脈への注入またはアンジオテンシンペプチドなどの生物学的活性剤の使用によって生じる)が含まれる。しかしながら、これらの戦略の各々は、侵襲的外科手技に伴う固有リスク、内因性輸送系に固有の制限によって課せられるサイズ制限、CNS外で活性であり得る担体モチーフで構成されるキメラ分子の全身投与に伴う潜在的に望ましくない生物学的副作用、及びBBBが破壊された脳領域内での脳損傷の起こり得るリスクなどの制限があるため、最適ではない送達方法となっている。
【0384】
あるいは、例えば患者の組織領域(例えば肺組織)へと医薬組成物を直接注射することにより、医薬組成物を全身的ではなく局所的に投与することができる。
【0385】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当該技術分野で周知のプロセス、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
【0386】
したがって、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための医薬組成物は、活性成分を薬学的に使用可能な調製物に加工することを容易にする、賦形剤及び助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の様式で製剤化することができる。適当な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0387】
注射の場合、医薬組成物の活性成分は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化することができる。経粘膜投与の場合、透過すべきバリアに適切な浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野で一般に公知である。
【0388】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化することができる。かかる担体により、患者による経口摂取用に医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、溶液、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能になる。経口使用のための薬理学的調製物は、錠剤または糖衣錠芯を得るために、固体賦形剤を使用し、得られた混合物を任意選択的に粉砕し、必要に応じて好適な助剤を添加した後に顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、ショ糖、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖類などの充填剤、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボメチルセルロースナトリウム(sodium carbomethylcellulose)などのセルロース調製物、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加することができる。
【0389】
糖衣錠芯には好適なコーティングが施される。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒または溶媒混合物を任意選択的に含有し得る、濃縮糖溶液を使用することができる。識別のために、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0390】
経口使用可能な医薬調製物には、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル(push-fit capsule)、ならびにゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤製の密封軟カプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と混合された、及び任意選択的に安定剤と混合された活性成分を含有してもよい。軟カプセルでは、活性成分を、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解または懸濁させることができる。加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与用の全ての製剤は、選択された投与経路に好適な投与量であるべきである。
【0391】
頬側投与の場合、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはロゼンジなどの形態をとり得る。
【0392】
経鼻吸入による投与の場合、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための活性成分は、好適な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、または二酸化炭素を使用して、加圧パックまたはネブライザーから提供されるエアロゾルスプレーの形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることにより決定することができる。ディスペンサーで使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチン製)は、化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含めて製剤化することができる。
【0393】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、または防腐剤を任意選択的に添加した複数回用量容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンであってよく、かつ懸濁剤、安定化剤、及び/または分散剤などの製剤化剤を含有してもよい。
【0394】
非経口投与用の医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。更に、活性成分の懸濁液は、適切な油性または水ベースの注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチル、トリグリセリド、もしくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。任意選択的に、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤または活性成分の溶解度を増加させる剤も含有してもよい。
【0395】
あるいは、活性成分は、好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水ベースの溶液で使用前に構成するための粉末形態であってよい。
【0396】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物はまた、例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤または停留浣腸などの直腸用組成物に製剤化することができる。
【0397】
本発明のいくつかの実施形態の文脈における使用に好適な医薬組成物には、意図された目的を達成するのに有効な量で活性成分が含有されている組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量とは、障害(例えば、肺疾患もしくは肺病態)の症状を予防する、緩和する、もしくは寛解させるのに、または処置される対象の生存を延長するのに有効な活性成分(例えば肺細胞)の量を意味する。
【0398】
治療有効量を決定することは、とりわけ本明細書に提供される詳細な開示を踏まえると、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0399】
本発明の方法で使用される任意の調製物について、治療有効量または治療有効用量は、最初にインビトロアッセイ及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は、所望の濃度または力価を得るために動物モデルにおいて処方することができる。かかる情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0400】
肺細胞の治療有効量を評価するのに使用することができる例示的な動物モデルには、ネズミ科動物モデル(例えばマウス)が含まれ、この動物モデルでは、以下の実施例の項に詳述されているように、例えばナフタレン(例えば純度99%超)を腹腔内注射することにより(更に照射する(例えば、ナフタレン投与の40~48時間後)か否かを問わない)、肺損傷が誘発される。例えば、NOD-SCIDマウスなどの免疫不全マウスを、ナフタレンで処置し、続いて照射(例えば、低線量TBI、例えば1~3Gy)を行った後、肺細胞を投与することができる。
【0401】
特定の実施形態によれば、肺細胞は、対象の体重1Kgあたり、約1~10×106、5~10×106、1~50×106、10~50×106、10~60×106、10~70×106、10~80×106、10~90×106、1~100×106、5~100×106、10~100×106、40~100×106、50~100×106、1~200×106、5~200×106、10~200×106、50~200×106、100~200×106、1~500×106、5~500×106、10~500×106、100~500×106、1~1000×106、5~1000×106、10~1000×106、40~1000×106、50~1000×106、100~1000×106、500~1000×106、1~2000×106、5~2000×106、10~2000×106、20~2000×106、30~2000×106、40~2000×106、50~2000×106、60~2000×106、70~2000×106、80~2000×106、90~2000×106、100~2000×106、200~2000×106、300~2000×106、400~2000×106、500~2000×106、600~2000×106、700~2000×106、800~2000×106、900~2000×106、1000~2000×106、1500~2000×106、100~3000×106、200~3000×106、300~3000×106、400~3000×106、500~3000×106、600~3000×106、700~3000×106、800~3000×106、900~3000×106、1000~2000×106、1000~3000×106、2000~3000×106、500~4000×106、1000~4000×106、2000~4000×106、3000~4000×106個の細胞の用量範囲で対象に投与される。
【0402】
特定の実施形態によれば、培養によって増殖され、上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性である細胞を約1~10%含むCD45枯渇肺細胞は、対象の体重1Kgあたり、約1~10×106、5~10×106、1~50×106、10~50×106、10~60×106、10~70×106、10~80×106、10~90×106、1~100×106、5~100×106、10~100×106、40~100×106、50~100×106、1~200×106、5~200×106、10~200×106、50~200×106、100~200×106、1~500×106、5~500×106、10~500×106、100~500×106、1~1000×106、5~1000×106、10~1000×106、40~1000×106、50~1000×106、100~1000×106、500~1000×106、1~2000×106、5~2000×106、10~2000×106、20~2000×106、30~2000×106、40~2000×106、50~2000×106、60~2000×106、70~2000×106、80~2000×106、90~2000×106、100~2000×106、200~2000×106、300~2000×106、400~2000×106、500~2000×106、600~2000×106、700~2000×106、800~2000×106、900~2000×106、1000~2000×106、1500~2000×106、100~3000×106、200~3000×106、300~3000×106、400~3000×106、500~3000×106、600~3000×106、700~3000×106、800~3000×106、900~3000×106、1000~2000×106、1000~3000×106、2000~3000×106、500~4000×106、1000~4000×106、2000~4000×106、3000~4000×106個の細胞の用量範囲で対象に投与される。
【0403】
本発明の一実施形態によれば、肺細胞は、対象の体重1キログラムあたり、少なくとも約1×106、1.5×106、2×106、2.5×106、3×106、3.5×106、4×106、4.5×106、5×106、5.5×106、6×106、6.5×106、7×106、7.5×106、8×106、8.5×106、9×106、9.5×106、10×106、12.5×106、15×106、20×106、25×106、30×106、35×106、40×106、45×106、50×106、60×106、70×106、80×106、90×106、100×106、110×106、120×106、130×106、140×106、150×106、160×106、170×106、180×106、190×106、200×106、250×106、300×106、320×106、350×106、400×106、450×106、500×106、600×106、700×106、800×106、900×106、1000×106、1100×106、1200×106、1300×106、1400×106、1500×106、または2000×106個の細胞の用量で対象に投与される。
【0404】
特定の実施形態によれば、培養によって増殖され、かつ(培養前または培養後に)上皮細胞マーカー及び内皮細胞マーカーの発現が二重陽性であるように選択されたまたは(例えば、少なくとも20%)濃縮された細胞を含む肺細胞は、対象の体重1キログラムあたり、約1×106、1.5×106、2×106、2.5×106、3×106、3.5×106、4×106、4.5×106、5×106、5.5×106、6×106、6.5×106、7×106、7.5×106、8×106、8.5×106、9×106、9.5×106、10×106、12.5×106、15×106、20×106、25×106、30×106、35×106、40×106、45×106、50×106、60×106、70×106、80×106、90×106、100×106、110×106、120×106、130×106、140×106、150×106、160×106、170×106、180×106、190×106、200×106、250×106、300×106、320×106、350×106、400×106、450×106、500×106、600×106、700×106、800×106、900×106、1000×106、1100×106、1200×106、1300×106、1400×106、1500×106、または2000×106個の細胞の用量範囲で対象に投与される。
【0405】
本明細書に記載される活性成分の毒性及び治療有効性は、インビトロ、細胞培養、または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定することができる。これらのインビトロアッセイ及び細胞培養アッセイならびに動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量範囲を策定する際に使用することができる。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動し得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、Fingl, et al., 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p.1を参照されたい)。
【0406】
投与量及び投与間隔は、生物学的効果を誘発または抑制するのに足る十分な活性成分レベル(最小有効濃度、MEC)がもたらされるように個々に調整することができる。MECは調製物ごとに変動するが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴及び投与経路に依存する。検出アッセイを使用して血漿中濃度を決定することができる。
【0407】
処置される病態の重症度及び応答性に応じて、投薬は、単回または複数回の投与であってよく、処置の過程は、数日から数週間、または治癒がもたらされるかもしくは疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0408】
投与される組成物の量は、当然ながら、処置される対象、苦痛の重症度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0409】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有してもよい、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属箔またはプラスチック箔を含んでもよい。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与に関する説明書が添付されている場合がある。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関により定められた形式の、容器に関連する通知に適合していてもよく、この通知は、組成物の形態またはヒトへの投与もしくは獣医学的投与が該機関により承認されていることを表している。かかる通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルのもの、または承認された製品添付文書のものであり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、上で更に詳述したように、調製し、適切な容器に入れ、適応となる病態の処置に関するラベルを貼り付けることができる。
【0410】
肺細胞を投与する際に依然として存在している可能性のある残存免疫反応を更に回避するために、拒絶反応の可能性を低減させるいくつかのアプローチが開発されてきた。これらには、移植前に非同系細胞を半透過性の免疫隔離膜にカプセル化することが含まれる。あるいは、トランスジェニック動物(例えばブタ)で開発された細胞など、異種表面抗原を発現しない細胞を使用することができる。
【0411】
カプセル化技法は、一般に、小さな球状ビヒクルを要するマイクロカプセル化と、より大きな平板膜及び中空糸膜を要するマクロカプセル化とに分類される(Uludag, H. et al. (2000). Technology of mammalian cell encapsulation. Adv Drug Deliv Rev 42, 29-64)。
【0412】
マイクロカプセルを調製する方法は当該技術分野で公知であり、例えばLu, M. Z. et al. (2000). Cell encapsulation with alginate and alpha-phenoxycinnamylidene-acetylated poly(allylamine). Biotechnol Bioeng 70, 479-483、Chang, T. M. and Prakash, S. (2001) Procedures for microencapsulation of enzymes, cells and genetically engineered microorganisms. Mol Biotechnol 17, 249-260、及びLu, M. Z., et al. (2000). A novel cell encapsulation method using photosensitive poly(allylamine alpha-cyanocinnamylideneacetate). J Microencapsul 17, 245-521に開示されているものが含まれる。
【0413】
例えば、マイクロカプセルは、2-ヒドロキシエチルメチルアクリレート(HEMA)と、メタクリル酸(MAA)と、メタクリル酸メチル(MMA)とのターポリマーシェルと複合体化している修飾コラーゲンを使用して調製され、カプセルの厚さは2~5μmになる。かかるマイクロカプセルは、負に帯電した平滑表面を付与し、血漿タンパク質の吸収を最小限に抑えるために、追加の2~5μmのターポリマーシェルで更にカプセル化することができる(Chia, S. M. et al. (2002). Multi-layered microcapsules for cell encapsulation. Biomaterials 23, 849-856)。
【0414】
他のマイクロカプセルは、海産多糖類であるアルギン酸塩をベースとしたもの(Sambanis, A. (2003). Encapsulated islets in diabetes treatment. Diabetes Thechnol Ther 5, 665-668)またはその誘導体である。例えば、マイクロカプセルは、塩化カルシウムの存在下における、ポリアニオンであるアルギン酸ナトリウム及び硫酸セルロースナトリウムとポリカチオンであるポリ(メチレン-コ-グアニジン)塩酸塩との間の高分子電解質複合体化によって調製することができる。
【0415】
より小型のカプセルを使用すると細胞カプセル化が改善されることが理解されよう。したがって例えば、カプセルサイズを1mmから400μmに低減させると、カプセル化された細胞の品質管理、機械的安定性、拡散特性、及びインビトロ活性が改善された(Canaple, L. et al. (2002). Improving cell encapsulation through size control. J Biomater Sci Polym Ed 13, 783-96)。更に、孔径がわずか7nmに良好に制御され、表面化学作用が調整され、かつ精密な微小構造を有するナノ多孔質バイオカプセルが、細胞のための微小環境を免疫隔離することに成功したことが見出された(Williams, D. (1999). Small is beautiful: microparticle and nanoparticle technology in medical devices. Med Device Technol 10, 6-9、及びDesai, T. A. (2002). Microfabrication technology for pancreatic cell encapsulation. Expert Opin Biol Ther 2, 633-646を参照されたい)。
【0416】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0417】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は「含むが、それに限定されない」ことを意味する。
【0418】
「からなる」という用語は、「含んでおり、それに限定される」ことを意味する。
【0419】
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法、または構造が、追加の成分、工程、及び/または部分を含み得ることを意味するが、これは、追加の成分、工程、及び/または部分が、特許請求された組成物、方法、または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合に限られる。
【0420】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈により別途明確に指示されない限り、複数の指示対象が含まれる。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」という用語には、複数の化合物(それらの混合物を含む)が含まれ得る。
【0421】
本出願全体にわたって、本発明の種々の実施形態は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであると理解されるべきであり、本発明の範囲の変更不可能な制限であると解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は考えられる部分範囲の全て、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6も具体的に開示していると見なされるべきである。これは範囲の幅にかかわらず適用される。
【0422】
本明細書において数値範囲を示す場合は常に、数値範囲は、示された範囲内の挙げられた任意の数(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という語句と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数、ならびにそれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0423】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与の課題を達成するための様式、手段、技法、及び手順を指し、それらには、化学、薬理学、生物学、生化学、及び医療の分野の従事者に公知の様式、手段、技法、及び手順、または公知の様式、手段、技法、及び手順からそれらの従事者によって容易に開発されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0424】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語には、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延もしくは逆転、病態の臨床的もしくは審美的症状の実質的な寛解、または病態の臨床的もしくは審美的症状の出現の実質的な予防が含まれる。
【0425】
明確さのために別々の実施形態の文脈において記載された本発明のある特定の特質は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において記載された本発明の種々の特質は、別々に提供することも、または任意の好適な部分的組み合わせで提供することも、または本発明の任意の他の記載された実施形態において好適であるように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載されたある特定の特質は、それらの要素なしで実施形態が機能不能とならない限り、それらの実施形態の不可欠な特質であると見なしてはならない。
【0426】
上記に描写され、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例によって実験的に支持される。
【実施例】
【0427】
これより、以下の実施例を参照する。これらの実施例は、本発明を上記の説明とともに非限定的な形で例示するものである。
【0428】
一般に、本明細書で使用する命名法及び本発明で利用する実験手順には、分子的技法、生化学的技法、微生物学的技法、及び組換えDNA技法が含まれる。かかる技法は、文献中に十分に説明されている。例えば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989)、"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、以下:米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書、及び同第5,272,057号明細書、"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)に記載されている方法論を参照されたく、利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に広く記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書、及び同第5,281,521号明細書、"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984)、“Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984)、"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986)、"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)及び"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press、"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)を参照されたい。これらは全て、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように参照により援用される。他の一般的な参考文献は、本明細書全体にわたって提供されている。その中の手順は、当該技術分野で周知であると考えられており、読者の利便性のために提供される。その中に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0429】
一般的な材料及び実験手順
マウス - 動物を、ワイツマン研究所及びMDアンダーソン癌センターの動物実験委員会によって承認された条件下で維持した。全ての手順は、ワイツマン研究所及びMDAの獣医学リソースユニット(Veterinary Resources Unit)によってモニタリングされ、動物実験委員会(IACUC)によって承認された。使用したマウス系統には、Rag1-/-(C57BL/BJバックグラウンド上)、C57BL/6J(CD45.2)及びC57BL/6-Tg(CAG-EGFP)1Osb/J(イスラエル国、レホヴォト、ワイツマン研究所動物繁殖センター)、Gt(ROSA)26Sortm4(ACTB-tdTomato,-EGFP)Luo/J(39)、B6.129P2-Gt(ROSA)26Sortm1(CAG-Brainbow2.1)Cle/J(9)、B6.Cg-Shhtm1(EGFP/cre)Cjt/J(40)、B6.129-Tg(Cdh5-cre)1Spe/J(21)、B6.Cg-Agertm2.1(cre/ERT2)Blh/J(23)、Hopxtm2.1(cre/ERT2)Joe/J(35)、B6N.129S6-Gt(ROSA)26Sortm1(CAG-tdTomato*,-EGFP*)Ees/J(41)、Nkx2-1tm1.1(cre/ERT2)Zjh/J(22)(米国、バーハーバー、ジャクソン研究所)が含まれていた。全てのマウスを6~12週齢で使用した。マウスを小さなケージ内(各ケージに最大5匹の動物)で維持し、滅菌食餌及び酸性水を与えた。ランダム化:同じ年齢、性別、及び遺伝的背景の動物を処置群にランダムに割り当てた。事前に規定した除外基準は、IACUCガイドラインに基づくものであり、これには全身性疾患、毒性、呼吸促迫、飲食への支障、大幅な(15%を上回る)体重減少を含めた。試験期間全体を通じて、大半の動物は健康状態が良好であるように見えたため、適切な解析に含めた。全ての実験において、動物を処置群にランダムに割り当てた。
【0430】
ナフタレンによる肺損傷 - 既に記載されている(6~8)とおりに、ナフタレン(純度99%超、Sigma-Aldrich社製)をトウモロコシ油に溶解させ、TBIへの曝露の40~48時間前に腹腔内注射により体重1kgあたり200mgの用量で投与した。「二重」肺損傷の場合、ナフタレン処置動物を更にX線照射装置で照射した(ナフタレン投与の40~48時間後)。C57BL/6マウス及びRag1-/-マウスを6GyのTBIで照射した。
【0431】
肺細胞懸濁液 - 胎仔/胎児肺細胞または成体肺細胞の懸濁液を、既報(6~8)の方法にいくつかの変更を加えた酵素消化によって得た。簡潔に述べると、PBS(Ca+Mg+)中の1%のコラゲナーゼ、2.4U/mlのディスパーゼII(インディアナ州、インディアナポリス、Roche Diagnostics社製)、1mg/mlのDNAse-I(インディアナ州、インディアナポリス、Roche Diagnostics社製)の存在下、レーザーブレードで組織を細かく刻むことにより、または供給業者によって提供されたマウス肺解離プロトコルを使用して、GentleMACS(商標)Octo Dissociator with Heaters(Miltenyi Biotec社製)内で、リン酸緩衝生理食塩水(Ca+Mg+)中の1mg/mlのコラゲナーゼ、2.4U/mlのディスパーゼII、及び1mg/mlのDNAse-I(Roche Diagnostics社製)の存在下で肺組織を酵素消化することにより、肺を消化した。非特異的細片の除去を、70μm及び40μmのフィルタ、または100μm、70μm、及び40μmのフィルタに通す連続濾過によって行った。次いで、2%のFCS、2mMのEDTA、及び抗生物質を含むPBSで細胞を洗浄した。
【0432】
肝細胞懸濁液 - 胎仔/胎児肝臓または成体肝臓を40μmのセルストレーナーに入れ、6ウェルプレート内で5mLシリンジのプランジャーの平坦な端部を使用して潰し、3~4mLの氷冷DPBSに分注した。続いて、氷冷DPBSで細胞をすすぎ、濾過した細胞懸濁液を15μLのコニカルチューブに収集した。細胞を冷却遠心分離機(1,300rpm、10分間)で遠心分離して収集し、注射前に3~5mLのDPBSに再懸濁させた。トリパンブルーを使用して細胞を計数し、再懸濁させ、107細胞/mLのストック溶液を作製した。
【0433】
骨髄細胞懸濁液 - ミキサーホモジナイザー(OMNI社製)を使用してドナーマウスの長骨を粉砕することにより、移植用の骨髄細胞を調製した。Miltenyi社の磁気マイクロビーズ分離プロトコルを製造業者の指示に従って使用して、細胞からCD4細胞及びCD8細胞を枯渇させた。
【0434】
胎仔/胎児及び成体肺細胞移植 - C57BL/6マウスまたはRag1-/-レシピエントマウスをナフタレンで前処置し、48時間後に6GyのTBIに曝露させた。懸濁させた1×106個のE15~E16胚性マウス肺細胞または3~16×106個の成体マウス肺細胞を、照射の4~8時間後に尾静脈に注射することにより、マウスに移植した。
【0435】
TMX投与 - TMX(Sigma-Aldrich社製)を、トウモロコシ油で20mg/mlのストック溶液として調製した。R26R-Confetti成体マウスにおけるCre組換えを誘発するために、骨髄または肺の採取の5日前及び4日前に、マウスにTMX(5mg)を2回用量で腹腔内(IP)注射した。TMX投与の5日後に肺またはBMを採取した。Confetti胚におけるCRE組換えを誘発するために、E12で雌マウスをTMX 5mgの単回IP用量で処置した。胚をE16で採取し、Confetti陽性胚の肺細胞及び肝細胞を移植実験に使用した。
【0436】
Nkx2-1tm1.1(cre/ERT2)Zjh/J mTmG、B6.Cg-Agertm2.1(cre/ERT2)Blh/J mTmG、及びHopxtm2.1(cre/ERT2)Joe/JマウスmTmGにおけるCre組換えを誘発するために、FACS解析用に肺を採取する6日前に4mgのTMXを注射した。
【0437】
脾臓コロニーアッセイ - TMX投与の5日後に、8週齢のR26R-Confettiマウスの長骨を氷冷PBSでフラッシュすることにより骨髄を採取し、致死量で照射した(10Gy TBI)マウスに尾静脈注射によりBM細胞を移植した。移植の9日後にマウスを屠殺し、双眼顕微鏡及び蛍光顕微鏡で脾臓コロニーの存在について脾臓を評価した。
【0438】
R26R-Confettiドナー細胞及びトランスジェニックマウス肺のフローサイトメトリー解析 - 5種のレーザーを備えたLSRII(BD Biosciences社製)またはFortessaアナライザーでFACS解析を実施した。E16胎仔/胎児Confetti肺及び肝細胞、ならびに成体Confetti肺及び骨髄細胞を解析した。YFP/GFP、RFP、及びCFP標識細胞、ならびに上皮(CD326)、内皮(CD31)、及び造血(CD45)系統マーカーについてE16胎仔/胎児及び成体肺細胞を解析し、TMX投与で誘発したCre組換え後の異なる蛍光タグを付した細胞内における異なる細胞集団を定量化した。
【0439】
製造業者の指示に従って、コンジュゲート抗体または一致するアイソタイプ対照で試料を染色した。抗CD326、抗CD31、及び抗CD45抗体の完全なリストは以下の表3に提供する。Lin-Sca-1+c-kit+細胞(LSK)集団について、E16胎仔/胎児肝細胞及び成体骨髄細胞を解析した。細胞を以下の抗体または一致するアイソタイプ対照で染色した:系統パネル-ストレプトアビジン、続いてビオチン-APCまたはビオチンAPC-CY7、Sca-1-Brilliant Violet 711、C-kit PE-CY7で染色。使用した抗体の完全なリストは以下の表3に提供する。抗体は、e-Bioscience社、BD社、及びBiolegend社から購入した。
【0440】
データは、FlowJoソフトウェア(バージョンvX.0.7 Tree Star Inc製)を使用して解析した。
【0441】
TPLSMによる画像の取得 - Coherent Chameleon Visionレーザーを搭載したZeiss社製LSM 880正立顕微鏡を、外植肺組織のイメージング実験に使用した。940nmに調節したフェムト秒パルス二光子レーザーで画像を取得した。顕微鏡は、565 LPXRを含有するフィルタキューブを搭載しており、565 LPXRは、発光をPMT検出器(tdTomato蛍光用の579~631nmフィルタを備える)と更なる505 LPXRミラーへと分割し、505 LPXRミラーは、発光を2つのGaAsp検出器(GFP蛍光用の500~550nmのフィルタを備える)へと更に分割する。画像は、各Z面の間隔が1~5μm刻みである100~150μmのZスタックとして取得した。ズームは0.7に設定し、写真は512×512のx-y解像度で取得した。
【0442】
組織の透明化 - 4%PFAと、4%アクリルアミドと、0.0125%ビス-アクリルアミドと、0.1%アゾ開始剤VA-044とを含有するモノマー溶液でマウスを灌流した。早過ぎる重合を回避するために、40℃で絶えず振盪させながら、肺を上記溶液に更に24~48時間、直ちに浸漬させた。脱気後、肺を37℃で3時間重合させ、200mM SDSを含有する20mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH=9)で洗浄した。次いで、回転式電気泳動透明化システム(韓国、ソウル、Life Canvas Technologies社製SmartClear II Pro)を使用して肺を4日間透明化した。肺が十分に透明化された状態に達したら、20mMホウ酸ナトリウム緩衝液で24時間洗浄し、イメージングするまでインデックスマッチング溶液(EasyIndex、RI=1.46、Lifecanvas technologies社製)に浸漬させた。
【0443】
ライトシート顕微鏡 - 大きな肺容積をイメージングするために、ImspectorProソフトウェア(LaVision BioTec社製)で操作するultramicroscope II(ドイツ国、33617 ビーレフェルト、アスタ通り(Astastrasse)14、LaVision BioTec GmbH製)を使用して、透明化した肺の3次元画像を取得した。発光範囲460~800nm、1mW/nmのSuperkスーパーコンティニューム白色光レーザー(DK-3460 ビルケロド、ブロッケン84、NKT photonics社製)によって、ライトシートを生成した。赤色及び緑色のパッチを検出するために使用した励起フィルタは、それぞれ545/25及び470/40であった。対応する発光フィルタは、595/40及び525/50であった。顕微鏡は、単レンズ構成、4X対物レンズ(LVMI-Fluor 4X/0.3、NA:0.3、WD:5.6~6.0mm、RI範囲:1.33~1.57)を備えていた。試料を試料ホルダーに接着させ、EasyIndex溶液(RI=1.46、lifecanvas technologies社製)で満たされた100%石英製のイメージングチャンバ(LaVision BioTec社製)に入れ、側面から光を当てた。画像は、Andor社製Neo sCMOSカメラ(16ビット、2150×2560、ピクセルサイズ1.626×1.626μm、英国、277.3mi・ベルファスト、Andor社製)によって取得した。Zスタックを5μm刻みで取得し、2つの実視野(それぞれ3510×4160μm)を20%オーバーラップさせて取得し、Imarisスティッチャー(stitcher)(Oxford Instrument社傘下のBITPLANE社製、www(dot)bitplane(dot)com)を使用して貼り合わせた。
【0444】
赤色及び緑色の生着した肺パッチの3Dでのイメージング解像度を増加させるために、試料をまた、2台のsCMOSカメラPCO.Edge、1920×1920を備えたLightSheet Z.1顕微鏡(スウェーデン国、115 28 ストックホルム、テゲルッズ通り(Tegeluddsvaegen)76、Zeiss Ltd製)を使用してイメージングした。赤色及び緑色のパッチに、Zeiss社製照明光学系ライトシート10X/0.2を使用して光を当て、その発光をClr Plan-Neofluar20×/1.0 Corr nd=1.45(Zeiss Ltd.製)を使用して検出した。試料の縁部を指定のホルダーに接着させ、EasyIndex溶液(Lifecanvas Technologies社製)で満たされたイメージングチャンバに浸漬させた。
【0445】
片側照明を使用して2つの実視野:1093.91×1093.91×296.22μm、及び437.56×437.56×315.33μmでイメージングを実施した。赤色及び緑色のパッチの励起線は1%で561nm、2%で488nmであり、それぞれ575~615nm及び505~545nmで発光を収集した。
【0446】
キメラ肺におけるR26R-Confetti+病巣の免疫組織学による評価 - 20cm H2Oの定圧下にて気管を通じて導入した4%のPFA溶液で肺を固定した。次いで、肺を固定液に4℃で一晩浸漬させた。PFA処理後に肺を処理し、30%のショ糖で固定し、Optimal Cutting Temperature(OCT)化合物(Sakura Finetek USA,Inc.製Tissue-Tek)中で凍結させた。12μm厚の連続階段切片を葉の縦軸に沿って採取した。肺全体にわたって少なくとも20個の切片を系統的に試料採取できるように、切片間の固定距離を算出した。肺薄片を蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡で解析した。「Confetti」パッチ(同じ蛍光タグ(細胞質RFP及びYFP、核GFP、ならびに膜CFP)で標識された6個以上の隣接細胞の群を1つのパッチと定義した)の実数を薄片ごとに計数した。
【0447】
共焦点顕微鏡 - 生着した肺の12μm薄切片を、波長分離用の音響光学ビームスプリッタ及び音響光学チューナブルフィルタ(ドイツ国、Leica microsystems CMS GmbH製)と、スペクトル分離を備えた2つの内部HyD検出器と、を備えたレーザー走査型Leica社製TCS SP8正立顕微鏡を使用してイメージングした。共焦点ピンホールは1AU(580nmの場合は58.6μm)まで開放した。8kHzレゾナントスキャナを使用して、1024×1024、8ビット形式で2つの倍率にて画像を取得した。20×空気対物レンズ(HC PL 20x/0.75W、Leica microsystems社製)を使用して、実視野443.29μm、ピクセルサイズ=0.43μmの画像を得た。より高解像度の画像のために、60Xオイル対物レンズ(HC PL APO 63×/104 オイル CS2、Leica microsystems社製)を使用し、FOV=140.73μm、ピクセルサイズ=0.137μmの大きさの画像を得た。5つの異なるマーカー(抗体及び染色の詳細に関するリストを参照されたい)からの励起及びシグナル収集を明確に区別するために、連続イメージング工程を適用し、各Zスタックの取得後にシーケンスを移行させた。第1のシーケンスでは、488nmでArレーザーを(30%レーザーのうちの)2%で、HeNe633レーザーを1%で用いて励起を適用し、それぞれ505~566nm及び651~708nmで発光を収集した。第2のシーケンスでは、DPSS561レーザーを4%で使用して励起を適用し、574~638nmで収集した。第3のシーケンスでは、Diode405レーザーを8%で用いて励起を適用し、413~446nm及び493~521nmの2つの発光を収集した。
【0448】
広視野顕微鏡 - 肺組織切片の全領域をイメージングするために、高速イメージング用の電動ステージを備えたLeica社製DMi8倒立顕微鏡を使用した。10X空気対物レンズ(HC PL FLUOTAR 10x/0.3 DRY、Leica microsystems社製)を用いてイメージングし、CCDカメラ(1392×1040、8ビット、Leica DFC7000 GT、単色、Leica microsystems社製)で記録した。
【0449】
NA+6Gy TBIで前処置したマウスへの選別したCD326+CD31+、CD326+、CD31+細胞集団の移植 - 成体マウス肺からのFACS選別細胞集団の移植を伴う実験を実施した。使用した標識ドナーマウスには、GFP(C57BL/6-Tg(CAG-EGFP)1Osb/J)、mTmG(Gt(ROSA)26Sortm4(ACTB-tdTomato,-EGFP)Luo/J)、及びnTnG(Gt(ROSA)26Sortm1(CAG-tdTomato*,-EGFP*)Ees/J)(mTmGマウスは膜td-tomatoを発現し、nTnGマウスは核td-tomatoを発現する)が含まれていた。全体で、選別細胞のパッチ形成活性を試験する合計16回の独立した移植実験を実施した。単一のCD45-肺生細胞を、CD326+CD31-細胞、CD326+CD31+細胞、CD326-CD31+細胞、及びCD326-CD31-細胞を含む4つの亜集団へとFACS選別した。mTmGドナーまたはnTnGドナーのいずれかからの0.3~0.5×106個の選別細胞を、GFP+マウスドナーからの0.5×106個の未分離肺細胞とともにまたは未分離肺細胞なしで、ナフタレン処置し照射したC57BLマウスに移植した。移植を受けたマウスの肺を採取し、移植後6~24週間でドナー由来細胞の存在を評価した。
【0450】
単一分子蛍光in situハイブリダイゼーション(smFISH) - SmFISHを既に記載されている(42)とおりに実施した。smFISH用に、肺組織を採取し、膨張させ、4%パラホルムアルデヒドで3時間固定し、4%パラホルムアルデヒド中の30%のショ糖とともに一晩インキュベートし、次いでOCTに包埋して凍結させた。6μmの凍結切片をハイブリダイゼーションに使用した。smFishプローブをCy5とカップリングさせた。プローブは、Stellaris(登録商標)Biosearch(商標)Technologies社から購入した。
【0451】
キメラ肺の単一細胞RNAseq解析 - TdTom単一細胞懸濁液を移植したC57Blマウスから、移植の6ヶ月後にキメラ肺を採取した。3匹のキメラマウスの肺を酵素的に処理し、単一細胞に解離させ、プールし、CD45- td-tomato陽性細胞及びCD45- td-tomato陰性細胞についてFACS選別した。単一細胞RNAトランスクリプトーム解析を、10×のGenomics社製プラットフォームを使用してMDアンダーソンコアラボで実施した。Cell Ranger Single Cell Software Suite v3.0.1(www(dot)support(dot)10xgenomics(dot)com/single-cell-gene-expression/software/overview/welcome)を、試料のデマルチプレックス、mm10マウス参照ゲノム及びトランスクリプトームに対するアラインメント、ならびにフィルタリングした固有分子識別子(UMI)のカウントマトリックス(下流の解析用に使用)の生成に使用した。RパッケージSeurat(43~45)v3.1.1を使用して、3つのデータセットのデータQC、正規化、及び統合を実施した。ミトコンドリアの高パーセンテージ、極端に多いもしくは少ない遺伝子数、または高RNA含量というデータセット特有の外れ値を有する細胞を、潜在的な死細胞またはダブレットとして除外した。正規化にはLogNormalizeを使用した。統合は、デフォルトで2000個のアンカー遺伝子に基づいていた。Rパッケージmonocle3(46~48)v0.2.0を、一様多様体近似と投影(UMAP)法(49)を使用した統合データセットの次元削減に使用し、Louvain/Leidenコミュニティ検出(50)を使用して細胞の教師なしクラスタリングを実施した。各クラスターのマーカー遺伝子を、ウィルコクソンの順位和検定を使用して各クラスターの遺伝子発現プロファイルを他の全てのクラスターのものと比較することにより、Seuratを使用して同定した。MSigDB(52)ホールマーク遺伝子セット(v7.0)及びキュレーション済み肺遺伝子セット(www(dot)research(dot)cchmc(dot)org/pbge/lunggens/mainportal(dot)html)に対してRパッケージGSVA(51)v1.32.0を使用して、単一試料の遺伝子セット変動解析を実施し、クラスターごとの遺伝子セットエンリッチメントスコアを算出した。得られたクラスターを、マーカー遺伝子及び遺伝子セット解析結果に基づいて手動でキュレーション及び/またはマージした。
【0452】
上皮細胞コロニー形成アッセイ - VEcad mTmG成体マウス肺からのFACS選別細胞を、IBIDI社製ガラス底u-スライド(カタログ番号:81507)上で50%成長因子低減(GFR)マトリゲル(BD Biosciences社製)中で培養することにより、肺オルガノイドを成長させた。細胞選別実験用に、供給業者によって提供されたマウス肺解離プロトコルを使用して、GentleMACS(商標)Octo Dissociator with Heaters(Miltenyi Biotec社製)内で、リン酸緩衝生理食塩水(Ca+Mg+)中の1mg/mlコラゲナーゼ、2.4U/mlディスパーゼ、及び1mg/ml DNAse-I(Roche Diagnostics社製)の存在下で肺組織を酵素消化することにより、肺単一細胞懸濁液を調製した。CD45、CD326、及びCD31に対するコンジュゲート抗体で、単一細胞を染色した。CD326+mG-細胞及びCD326+mG+細胞をFACSにより精製し、マトリゲルと混合して、4~5×105個の細胞を含有する10μlの細胞/マトリゲル混合物をウェルごとに培養する。ゲルが固化してから数時間経過後、培養細胞の上面に50μlの上皮成長培地を添加した。48~72時間ごとに培地を交換した。培養7~10日後に上皮クローンの絶対数を求め、いくつかの実験では、播種した細胞数あたりの成長中クローンの数×100として、パーセンテージ(成長中クローンを生じさせた播種した細胞の数をウェルに播種した細胞の総数で除したもの)でコロニー形成効率を算出した。全ての細胞培養は、5%CO2の加湿インキュベータ内にて37℃で行った。培養7~10日後、ホールマウント上皮コロニーを染色し、共焦点顕微鏡(Olympus社製FV3000)で解析する。
【0453】
統計解析及び再現性 - サンプルサイズの算出は実施しなかった。雌と雄の両方のマウスをドナー及びレシピエントとして使用した。移植実験に使用した胎仔/胎児肺は、胎生(E)16日目に採取した。未分離集団またはFACS精製集団のいずれかの移植に使用した成体肺ドナーは、6~12週齢であった。実験は全て、少なくとも3回の生物学的反復試験で行った。全てのデータは平均±SEMまたはSDとして表している。統計解析はPrizmソフトウェアを使用して実施した。スチューデントのt検定、χ2分布検定、または一元配置分散分析(ANOVA)を使用して比較を検定した。P値<0.05を有意であると見なした。全てのグラフは、Excel、Prizm、及びAdobe Illustrator CC 2018ソフトウェアを使用して生成した。
【0454】
肺細胞培養 - 照射済みマウス胚性線維芽細胞(iMEF)からの馴化培地(CM)を24~48時間ごとに収集した。6~12週齢のC57BL/6から肺を新鮮な状態で採取し、上述のように酵素的に消化して単一細胞懸濁液とした。続いて、製造業者の指示に従って、磁気ビーズ(CD45マイクロビーズ、Miltenyi Biotec社製、#130-052-301)によってCD45+細胞を枯渇させた。次いで、10mlのCMあたり3×106個の細胞、または6ウェル組織培養プレートの1つのウェルあたり3×105個の細胞を、上皮成長因子(hEGF、Stemcell社製、#78006(20μg/ml))とROCK阻害剤(Y-27632、Tocris社製、#1254(5μm))とを補充したCM、または上皮成長因子(EGF)(20μg/ml)と、ROCK阻害剤(RI)(20μm)と、血管内皮成長因子(hVEGF、Stemcell社製、#78073)とを補充したCMに再懸濁させ、6ウェルプレート(ウェルあたり3×105個の細胞)中で、5%CO2の加湿インキュベータ内にて37℃で培養した。48~72時間ごとに培地を交換した。細胞の成長を追跡するために、72~96時間ごとに、細胞を継代し、計数し、FACS解析用に抗CD31抗体及び抗CD326抗体(以下の表3を参照されたい)で染色した。
【0455】
【0456】
実施例1
内皮マーカーと上皮マーカーとを二重発現する新規肺前駆細胞集団の同定 td-tomato標識細胞の移植後のレシピエント肺における長期キメリズム
これまでの試験では、免疫組織学(IH)を使用して肺キメリズムが最長4ヶ月間追跡調査された。免疫組織学(
図7のA~E)と単一細胞RNAトランスクリプトーム解析(
図1のA~F)の結果を使用し組み合わせて、キメリズムの6~8ヶ月の追跡調査を実施したところ、ドナー由来の上皮クラスター(線毛細胞、クラブ細胞、AT1及びAT2細胞)ならびに内皮クラスター(リンパ管、内皮前駆細胞、ならびに近頃記載された(10)gCap-「一般的」及びaCap-「アエロサイト」毛細血管細胞)が示された。得られたクラスターを、公開されているLGEA(肺遺伝子発現解析)ウェブポータルを使用して、マーカー遺伝子及び遺伝子セット解析結果に基づいて定義した。本発明者らは、明確に定義されたホールマーク遺伝子セットを各クラスターの定義に使用した。
【0457】
Cag-Cre ER2「Confetti」マウスの胎仔/胎児または成体から肺前駆細胞を移植することにより、単色パッチが生じる。
【0458】
移植後に観察された肺パッチの単一細胞起源を確実に確立するために、多色レポーター系「R26R-Confetti」マウス(9)をドナーとして利用した一連の実験を実行した。これらのマウスでは、組換えプロセスは各細胞で独立しており、確率論的である。娘細胞は同じ蛍光タンパク質を産生するが、実際に各パッチ内の全ての細胞が単一細胞に由来する場合、それらは全て同じ色になるはずである。複数の試験で、この系を使用して臓器、例えば、腸(9)、(11)、肺(12)、脳(13)、腎臓、乳腺、及びその他(14)、(15)、(16)、(17)、(18)における単一細胞由来のクローン性挙動が実証された。
【0459】
このアプローチの肺細胞移植試験に対する妥当性を検証するために、本発明者らは、最初に、単一細胞由来脾臓コロニーをもたらすことが公知である造血幹細胞移植の状況でこれを試験した(
図8のA~E)。
【0460】
次に、E16 R26R-Confettiドナーからの肺細胞懸濁液をナフタレン及び6Gy TBIで前処置したRAG-2レシピエントに移植した後に、肺パッチ形成を調査した(
図2のAの概略表現を参照されたい)。胚をE16で採取し、タモキシフェン(TMX)をE12で妊娠雌に投与して、蛍光細胞を発現している胎仔/胎児肺を蛍光顕微鏡下で単離した。採取した肺のおよそ5~6%が蛍光タグのうちの1種を発現していた(
図2のB)。二光子顕微鏡写真は、移植前の典型的な単色細胞を示しており、細胞は4種の蛍光タグのうちの1種をそれぞれ発現している(
図2のC)。
【0461】
タモキシフェンで誘発したドナーからの胎仔/胎児肺細胞をナフタレン処置し照射したレシピエントマウスに移植したところ、4種の蛍光タンパク質のうちの1種を発現する別々の単色肺パッチが生じたことから、各パッチが単一の肺前駆細胞に由来する可能性があることが強く示唆される(
図2のD~E)。造血LSK+(系統-Sca1+c-kit+)幹細胞に蛍光タグを発現させ(
図9のB)、造血脾臓コロニー(
図9のC)及び造血血液キメリズム(
図9のD)を誘発した、R26R-Confetti胎仔/胎児肝臓単一細胞懸濁液の同様の移植(
図9のAに概略的に示す)は、ドナー由来肺パッチを生じさせることはできなかった(
図9のE)ことから、観察されたパッチ形成活性の肺特異性が強く裏付けられる。
【0462】
次に、パッチ形成前駆細胞が成体マウス肺にも存在するという最近の知見に基づいて、同じアプローチを適用して、成体肺細胞移植後の肺パッチの起源を解析した。その目的のために前述のプロトコルを使用したが、成体肺におけるパッチ形成細胞の頻度はE16胎仔/胎児肺に見出される頻度と比較して約3~4倍低く(7)、かつ細胞のごく一部のみがCre組換えを受けるため、より高用量(16×10
6個)の肺細胞を移植に使用した(
図3のA)。
図3のBに示すように、TMX処置後、成体肺内で単色GFP、YFP、RFP、及びCFP蛍光細胞を二光子顕微鏡で記録することができ、また共焦点顕微鏡で示すように、これらのタグ付き細胞は肺全体にわたって分布していた(
図3のB)。TMXを2回投与した後のR26R-Confetti成体肺を更にFACS解析することにより、Cre組換え細胞のパーセンテージ(最大5%、
図3のC~D)を検出することができた。移植の8週間後におけるドナー由来パッチのクローン性を評価するために、共焦点顕微鏡、二光子顕微鏡、及びライトシート顕微鏡を使用した。
図3のE~F及び
図10のA~Bに示すように、「透明化された」キメラ肺のライトシート顕微鏡法では、別個の単色パッチが明らかとなった。
【0463】
同様に、ホールマウントキメラ肺の二光子スナップ写真では、膜CFP、核GFP、または細胞質RFPもしくはYFPのいずれかを発現する単色パッチが記録された(
図3のG)。ホールマウント肺組織におけるこれらの単色パッチの全深度二光子顕微鏡スキャンが提示された(データは示さず)。
【0464】
全体で、成体肺細胞を移植した12匹及びE16胎仔/胎児肺細胞を移植した3匹を含むキメラマウス15匹から収集した合計50視野を解析したところ、注目すべきことに、単色のドナー由来パッチのみが存在していることが見出された。単色クローン(n=50)対2色クローン(n=0)の実験上の分布を、理論分布の25%対75%(χ21=150)に対してχ2分布検定で検定したところ、いずれのクローンも2つの細胞に由来する可能性は非常に低い(p<0.001)ことが示唆された。これは、胎仔/胎児肺細胞または成体肺細胞の移植後に観察される肺パッチが単一の前駆細胞に由来することを実証するものである。
【0465】
2つの別個のパッチ形成肺細胞前駆細胞
系内の推定上の「パッチ形成」細胞の正体を明確化するために、マウス肺からのFACS精製細胞集団を移植した。この目的のために、GFP(C57BL/6-Tg(CAG-EGFP)1Osb/J)マウス、mTmG(Gt(ROSA)26Sor
tm4(ACTB-tdTomato,-EGFP)Luo/J)マウス、及びnTnG(Gt(ROSA)26Sor
tm1(CAG-tdTomato*,-EGFP*)Ees/J)マウス(mTmGマウスは膜td-tomatoを発現し、nTnGは核td-tomatoを発現する)を含む標識ドナーマウスを使用した。選別した肺細胞の膜または核のいずれかに蛍光タグをユニークに局在させることにより、キメラ肺の単色パッチ内において膜、細胞質、及び核の上皮及び内皮マーカーを単一細胞レベルで追跡し、選別した肺細胞亜集団の移植後にパッチの細胞構成を特徴付けることができた。パッチの大部分が内皮細胞と上皮細胞の両方を含有している、及びかかるパッチの各々が単一の前駆細胞に由来している、という観察結果に沿って、これら2つの別個の系統に沿って分化可能な推定上の多分化能性肺前駆細胞を探索した。CD45陰性肺細胞のFACS解析(
図4のA)及びimage-stream解析(
図4のB)により、CD326上皮マーカーとCD31内皮マーカーの両方を発現するユニークな亜集団が明らかとなった。したがって、パッチ形成細胞がこの二重陽性亜集団内に含まれる可能性があるという仮説を立てた。この仮説を検証するために、
図4のCに記載するように、CD326及びCD31に対する染色で得た4つの肺亜集団を選別した後、パッチ形成細胞用の移植アッセイを使用した。
【0466】
パッチ形成活性は、CD326+CD31+二重陽性細胞(37匹中21匹のマウス)または単一陽性CD326-CD31+細胞(61匹中28匹のマウス)の移植時にのみ見出すことができたのに対し、単一陽性CD326+CD31-上皮細胞画分または二重陰性CD326-CD31-画分ではパッチ形成活性は見出されなかった(
図4のF)。選別細胞は、レシピエント肺における初期のコロニー形成のために、ドナー細胞調製物中の他の生着促進細胞(facilitating cell)を必要とする可能性がある。よって、mTmGマウスまたはnTnGマウスの肺からの0.3~0.5×10
6個の選別細胞を、GFP+ドナーからの0.5×10
6個の未選別肺細胞とともに(
図4のF)、または未選別肺細胞なしで(
図4のG~H)移植することを試みた。これらの実験により、移植したFACS選別細胞は、共移植した未分離GFP+肺細胞調製物からの潜在的支持細胞の不在下でさえ、パッチ形成が可能であることが明確に実証された(
図4のG~H)。
【0467】
AQP-5、HOPX、及びSPCを含む肺胞上皮マーカー、またはCD31、ERG、及びSOX17を含む内皮マーカーに対してドナー由来パッチを染色したところ、二重陽性亜集団の移植後に形成されたパッチは内皮細胞と上皮細胞の両方を含有していた(
図5のE~I、
図11のA~B、
図12のA~D)のに対し、選別したCD326-CD31+単一陽性細胞によって形成されたパッチは主に内皮細胞で構成されていた(
図5のA~D)ことが実証された。この解析は、隣接細胞間の細胞境界の識別が可能になる核染色を使用することにより、強く裏付けられる。この目的のために、ドナー由来nTマーカーと核ERG/SOX17とを、またはHOPXの核発現とを共局在させることによって、ドナー由来の内皮細胞またはAT1上皮細胞の同定を可能にした(
図5のE~G)。同様に、パッチ内で、AQP-5に対して染色されたAT1細胞をSOX17に対して染色された内皮細胞と区別することができた(
図5のH)。CD31に対する染色及びSPCに対するsmRNA FISHプローブでの染色によって、同様に、AT2細胞を内皮細胞と識別することができた(
図5のI)。パッチを構成する細胞数の定量解析により、CD326+CD31+肺細胞の移植後に見出された細胞数は、CD326-CD31+細胞の移植後に見出された細胞数よりも多かったことが示唆される(
図5のJ)。この解析により、2種類のパッチ間の細胞構成の差異が認められ、内皮細胞と上皮細胞との共局在は、CD326+CD31+肺細胞の移植後に形成されたパッチで主に見出された(
図5のK)。
【0468】
CD326+CD31+パッチ形成肺前駆細胞の更なる特徴付け
選別したCD326+CD31+肺亜集団を更に特徴付けるために、典型的には上皮細胞または内皮細胞において活性化される異なるプロモーター(例えば、ソニックヘッジホッグ(Shh)及びVE-カドヘリン(カドヘリン5))の下でGFPを発現するトランスジェニックマウスを使用した。Shh Cre mTmGマウス及びShh Cre nTnGマウス(B6.Cg-Shh
tm1(EGFP/cre)Cjt/Jと、Gt(ROSA)26Sortm4(ACTB-tdTomato EGFP)Luo/Jマウスとの、及びB6N.129S6-Gt(ROSA)26Sor
tm1(CAG-tdTomato*,-EGFP*)Ees/Jマウスとの交配によりそれぞれ生成)は、上皮系統においてGFPを発現する(19、20)のに対し、VEカドヘリンCre mTmGマウス及びVEカドヘリンCre nTnGマウス(B6.129-Tg(Cdh5-cre)1Spe/Jマウスと、Gt(ROSA)26Sortm4(ACTB-tdTomato,-EGFP)Luo/Jマウスとの、及びB6N.129S6-Gt(ROSA)26Sor
tm1(CAG-tdTomato*,-EGFP*)Ees/Jマウスとの交配によりそれぞれ生成)は、内皮系統においてGFPを発現する(21)。これらのトランスジェニックマウスの肺のFACS解析により、二重陽性CD326+CD31+肺前駆細胞が、更なる典型的な内皮マーカー及び上皮マーカー、すなわちVE-カドヘリン(71%)及びShh(74%)も発現していることが明らかとなった(
図6のA~C)。更に、CD326+CD31+前駆細胞は、ドナー由来の上皮細胞及び内皮細胞で構成される単一細胞由来パッチを形成することができるほか、これらの細胞はインビトロで上皮オルガノイドを生成することができ、またこのアッセイを使用して、VEカドヘリンCre mTmGマウスドナーの肺から精製したCD326+CD31+亜集団内のVE-カドヘリン+細胞が実際に上皮コロニーを形成することができることが確証された。このように、FACS精製した二重陽性CD326+VEcad mG+細胞から生成されたオルガノイドは、GFP陰性かつmTを発現する選別したCD326+VEcad mG-肺細胞から生成されたオルガノイドとは対照的に、GFP+上皮細胞を呈した(
図6のD及び
図14のA~D)。GFP+オルガノイドの上皮性特徴を、サイトケラチン、AQP-5、及びSPCなどの更なる上皮マーカーに対する染色によって確証した(
図6のE)。
【0469】
CD326+CD31+細胞の二重性を、個々の細胞のImagestream解析によっても確証した。このように、Shh Cre nTnGマウスまたはVEcad Cre nTnGマウスからのCD326+CD31+肺細胞前駆細胞は、Shh及びVE cadについても二重陽性であることが見出された(
図6のF~G及び
図13のA~E)。更に、FACS解析の6日前にタモキシフェンの1回用量を投与してCre組換えを誘発したNkx2.1CreER2 mTmGの肺の解析(22)では、CD31+CD326+肺細胞集団内で高レベルのNKX2.1(68%)が同様に示された。注目すべきことに、Ager-CreER2 mTmG(23)、(24)、及びHopx-CreER2 mTmGトランスジェニックマウス(25)、(26)、(27)では、RAGE(終末糖化産物受容体)(Ager)が相当のレベルであり(25.5%)、ホメオボックス・オンリー・プロテインx(Homeobox only protein x)(Hopx)の発現が低い(14%)ことが示された。まとめると、細胞表面抗体染色ではなくトランスジェニックマウスにおける系統特異的GFP発現に基づくこれらの結果は、CD326+CD31+肺前駆細胞の二重特徴を更に裏付けるものである(
図6のH~J)。
【0470】
考察
マウスまたはヒト胎仔/胎児肺細胞をナフタレン及び6Gy TBIで前処置したマウスに移植してから6~8週間後に、上皮細胞と内皮細胞とを含む非常に多くのドナー由来パッチが肺全体で検出され得ることが最近実証された(6)。その後、成体肺細胞の移植後に同様の知見が実証されたが、パッチ形成細胞の濃度は胎仔/胎児肺での濃度と比較して3~4倍低かった(7)。本発明者らは今回、生じ得る4色のうちの1色で各蛍光細胞が標識されているR26R-Confettiドナーを使用して、Cre組換えにより、マウスの胎仔/胎児または成体の肺細胞の移植後に見出される各ドナー由来の肺パッチが、単一の多分化能性肺前駆細胞のコロニー形成及び分化によって形成されることを見出した。更に、この知見により、FACS精製によって推定上の多分化能性肺前駆細胞を特徴付けることができた。このようにして、移植アッセイを使用して、非造血性CD45陰性肺区画内に2つの別個のパッチ形成前駆細胞、すなわちCD326+CD31+細胞及びCD326-CD31+細胞を見出した。しかしながら、前者のみが上皮細胞と内皮細胞の両方を含むパッチを形成することができ、一方後者は主に内皮細胞の形成に関連していた。
【0471】
かかる細胞可塑性の古典的な例は、完全に成熟した分泌細胞が再生能を有する基底幹細胞に脱分化することを示しているTata et al.(28、29)によって実証されていた。細胞可塑性の別の例は、肺のある領域の幹細胞が他の肺領域の幹細胞に変換され得る場合の分化転換または決定転換として公知である(29)。更に、内皮系統及び上皮系統へと発達可能な多分化能性前駆細胞についてのエビデンスは、相当なレベルの「Yamanaka」転写因子を発現していることが見出されたヒト乳房前駆細胞に関しても記載されている(30、31)。
【0472】
注目すべきことに、二重陽性CD326+CD31+前駆細胞の二重特徴は、ShhまたはVE-カドヘリンプロモーター下で蛍光タグを発現するトランスジェニックマウスにおいて、二重陽性CD326+CD31+細胞がこれらの典型的な上皮マーカーと内皮マーカーの両方も発現するという実証によって更に立証された。加えて、タモキシフェン誘発Cre組換えと同じアプローチを使用したところ、CD326+CD31+細胞画分はまた、同様のレベルのNKX2.1を含み、かつAger及びHopxを発現する細胞を相当の(但しより低い)レベルで含むことが見出された。観察されたNKX2.1の発現は、肺特異性のホールマークであるこの転写因子が発生中の肺内の内皮細胞で発現するというこれまでの示唆(32)と一致する。注目すべきことに、いくつかの疾患状態に関与するマルチリガンドパターン認識受容体であるAgerは、AT1細胞のみならず肺胞内皮にも広範に発現している(24)。Hopx(ホメオボックスオンリータンパク質x)はAT1マーカーであり、心臓の発生(33)(34)ならびに毛包、腸、及び造血幹細胞の生物学的性質(35)、(36)、(37)、(38)の重要な調節因子である。
【0473】
結論として、データから、肺損傷の修復が可能な多分化能性CD326+CD31+肺前駆細胞を含む、新規肺亜集団が明らかとなる。これまでにも、上皮系統に沿った分化に制限された様々な肺前駆細胞が記載されているが、このユニークな前駆細胞は、十分に確立された上皮マーカーと内皮マーカーとを発現する二重表現型を呈し、かつ肺損傷マウスへの移植後に上皮運命または内皮運命の両方に分化することができる。全ての主要な肺疾患が上皮傷害を呈するのみならず内皮損傷も伴うことを考慮すると、この二重性は肺損傷の修復にとって特に価値がある。
【0474】
更に、肺前駆細胞の同定は、様々な肺疾患の修復を目的としたトランスレーショナル研究の可能性のほか、胎仔/胎児肺の発生及び成体肺における様々な細胞系統の定常状態の維持に関する理解を深めることを目的とした基礎研究にも貢献し得る。
【0475】
実施例2
内皮マーカーと上皮マーカーとを二重発現する肺前駆細胞の培養中の増殖
二重陽性CD31+CD326+肺細胞がパッチ形成肺前駆細胞に相当することを考慮して、このマーカーを、エクスビボ増殖戦略を導くために使用した。簡潔に述べると、6~12週齢のC57BL/6マウスから肺を新鮮な状態で採取し、酵素的に消化して単一細胞懸濁液として、CD45+細胞を枯渇させた。続いて、CD31+CD326+細胞の増殖に最も好適な条件を最適化するために、様々な培地中で細胞を培養した。
【0476】
4~5回の継代後、低用量のROCK阻害剤を含むEGFを含有する培地中で培養すると、細胞総数が増殖するが、培養中に二重陽性CD31+CD326+細胞が保持されることなく上皮運命への分化が誘発されることが見出された(
図15のA~C)。これに対して、VEGFと、EGFと、高用量のROCK阻害剤とを含む培地中で培養すると、CD31+CD326+細胞が顕著に増殖した(
図15のA~C)。
【0477】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照される際に、参照により本明細書に援用されると具体的かつ個々に述べられているかのようにその全体が参照により本明細書に援用されることが、本出願人(ら)の意図するところである。加えて、本出願におけるあらゆる参考文献の引用または特定は、かかる参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されてはならない。セクション見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、本出願のあらゆる優先権書類は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0478】
参考文献
(他の参考文献は本出願全体にわたって引用されている)
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【国際調査報告】