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特表2024-542848スクアレン及びトコフェロールを含む油脂の色価安定用組成物
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  • 特表-スクアレン及びトコフェロールを含む油脂の色価安定用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】スクアレン及びトコフェロールを含む油脂の色価安定用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/007 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A23D9/007
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534370
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2022020349
(87)【国際公開番号】W WO2023121130
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0183149
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ボ・キ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ウォン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】キュ・ウン・リ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ジン・キム
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC02
4B026DC03
4B026DG01
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DG08
4B026DH02
4B026DK01
4B026DK05
4B026DL02
4B026DX01
4B026DX02
(57)【要約】
本出願は、スクアレン及びトコフェロールを含む油脂の色価安定用組成物、それを含む油脂、及び加熱による油脂の変色を遅延させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクアレン及びトコフェロールを含む、油脂の色価安定用組成物。
【請求項2】
前記スクアレンの含量は、組成物の総重量に対して1~29重量%である、請求項1に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項3】
前記トコフェロールの含量は、組成物の総重量に対して1~29重量%である、請求項1に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、乳化剤をさらに含む、請求項1に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項5】
前記乳化剤の含量は、スクアレン及びトコフェロールを足した100重量部に対して300~500重量部である、請求項4に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項6】
前記乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチンである、請求項4に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項7】
前記グリセリン脂肪酸エステルの含量は、全乳化剤100重量部に対して55~90重量部である、請求項6に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項8】
前記レシチンの含量は、全乳化剤100重量部に対して10~45重量部である、請求項6に記載の油脂の色価安定用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の色価安定用組成物を含む油脂。
【請求項10】
前記油脂は、加熱による色相変化が遅延される、請求項9に記載の油脂。
【請求項11】
前記色価安定用組成物を10ppm~1000ppmで含む、請求項9に記載の油脂。
【請求項12】
前記油脂は、油脂を加熱して200℃で56時間持続させた後の色価の変化率が3500%以下である、請求項9に記載の油脂:
[式]
{T1-T0}/T0X100
前記式において、T0は、加熱前測定された初期油脂の色価であり、T1は、前記初期油脂を加熱して200℃で56時間持続させた後に測定された色価である。
【請求項13】
前記油脂は、大豆油(soy bean oil)、オリーブ油(olive oil)、パーム油(palm oil)、コーン油(corn oil)、パームオレイン油(palm olein oil)、パームステアリン油(palm stearin oil)、ココナッツ油(coconut oil)、キャノーラ油(canola oil)、及びひまわり油(sunflower oil)からなる群より選択される1種以上の植物性油脂であり、請求項9に記載の油脂。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の色価安定用組成物を油脂に添加する段階を含む、加熱による油脂の変色を遅延させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、油脂の色価安定用組成物及びそれを含む油脂に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、業店で天ぷら用に使用する食用油(以下、天ぷら油)は、150~200℃の高温で長時間繰り返し的に使用されており、高温という条件と天ぷら料理物から由来する成分により着色され、酸敗が進行されながら天ぷら料理物から由来した水分は、天ぷら油を加水分解して遊離脂肪酸を増加させるので、天ぷら油の酸価(Acid value)が高くなる。
【0003】
一方、食品公典によれば、天ぷら用油脂は、酸価が3.0以下でなければならず、これ以上の場合、新しい油脂に交換するように勧告している。しかし、実際天ぷら業店では、酸価の上昇速度よりも天ぷら油の色相変化速度がより速いので、酸価が3.0以下であっても着色による天ぷら料理物の品質価値低下を避けるために、新しい天ぷら油に交替するようになるので、天ぷら油の色相は、酸価とともに食用油の交替に重要な要素として活用されている。
【0004】
通常、油脂の酸化防止のために抗酸化剤を適用しているが、天ぷら油では、抗酸化剤の投入が必ず酸価及び色相変化遅延の効果として現われず、酸価に効果的な抗酸化剤であっても天ぷら油の色相変化を遅延させる効果は現さない物質があるため、天ぷら油の加熱による色価変化を遅延させるための新しい成分の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許 第2009-0118341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、加熱による油脂の変色を遅延させ得る色価安定用組成物の提供を目的とする。
【0007】
また、本出願は、加熱による変色が遅延される油脂の提供を目的とする。
【0008】
また、本出願は、加熱による油脂の変色を遅延させる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本出願を詳しく説明する。
【0010】
本出願の一側面は、油脂の色価安定用組成物を提供する。
【0011】
前記「油脂」は、一般的に油(oil)と脂肪(fat)を含む意味として用いられ、本出願において油脂は食用油を意味し、具体的には、天ぷら油として使用できる食用油を意味する。
【0012】
前記油脂の例としては、大豆油(soy bean oil)、オリーブ油(olive oil)、パーム油(palm oil)、コーン油(corn oil)、パームオレイン油(palm olein oil)、パームステアリン油(palm stearin oil)、ココナッツ油(coconut oil)、キャノーラ油(canola oil)、及びひまわり油(sunflower oil)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0013】
前記「色価(color value)」は、色の明度と彩度を数値化した値を意味し、前記「色価安定」は、初期油脂の色価と比べて、初期油脂を加熱して高温で特定の時間持続させた後の油脂色価の変化が少ないことを意味する。また、本出願において色価安定は、加熱による変色抑制、加熱による変色遅延、加熱による着色防止、加熱による着色抑制及び加熱による着色遅延と混用して使用してよい。
【0014】
本出願の油脂の色価安定用組成物は、スクアレン及びトコフェロールを含む。
【0015】
前記スクアレンは、炭素30個、水素50個が6個の二重結合体で連結された不飽和炭化水素であって、人体と動、植物界に広く分布されており、特に深海鮫に多く含有している。前記スクアレンは、抽出物から分離されたもの、合成されたもの、又は市販中の製品のいずれでも制限なしに使用してよい。前記スクアレンを油脂の色価安定用組成物に含むことで、加熱による油脂の変色を遅延させることができる。
【0016】
前記スクアレンの含量は、組成物の総重量に対して1~29重量%であってよい。具体的には、スクアレンの含量の下限値は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、又は15重量%であってよく、スクアレン含量の上限値は、29重量%、28重量%、27重量%、26重量%、25重量%、24重量%、23重量%、22重量%、21重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、又は15重量%であってよい。また、スクアレンの含量は、前記記載された含量の下限値で選択された一つと上限値で選択された一つの数値を組み合わせた範囲であってよい。例えば、5~29重量%、5~25重量%、5~20重量%、5~15重量%、5~10重量%、10~29重量%、10~25重量%、又は10~15重量%などであってよい。スクアレンを前記含量で添加することで、油脂に適用する場合、加熱による油脂の変色と酸価上昇を効果的に遅延させることができる。
【0017】
前記トコフェロールは、脂溶性ビタミンEの誘導体の一群であって、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びδ-トコフェロールのいずれか一つ以上又はこれらの混合物を使用してよく、抽出物から分離されたもの、合成されたもの、又は市販中の製品のいずれでも制限なしに使用してよい。
【0018】
前記トコフェロールの含量は、組成物の総重量に対して1~29重量%であってよい。具体的には、トコフェロールの含量の下限値は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、又は15重量%であってよく、トコフェロール含量の上限値は、29重量%、28重量%、27重量%、26重量%、25重量%、24重量%、23重量%、22重量%、21重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、又は15重量%であってよい。また、トコフェロールの含量は、前記記載された含量の下限値で選択された一つと上限値で選択された一つの数値を組み合わせた範囲であってよく、例えば、5~29重量%、5~25重量%、5~20重量%、5~15重量%、5~10重量%、10~29重量%、10~25重量%、又は10~15重量%などであってよい。トコフェロールを前記含量で添加することで、酸価の上昇を効果的に遅延させることができる。
【0019】
前記油脂の色価安定用組成物は、乳化剤をさらに含んでよい。
【0020】
前記乳化剤は、スクアレンとトコフェロールの分散安定性のために添加するものであって、食品用乳化剤を使用してよい。
【0021】
食品用乳化剤の例としては、脂肪酸モノグリセリド類、ソルビタン脂肪酸エステル類、蔗糖の脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、又はレシチンが挙げられ、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル又はレシチンが挙げられる。一般的な乳化剤は、油脂に混合された後、加熱時に油脂の色相変化を加速させる悪影響があり、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルとレシチンを適正量使用すると、加熱時油脂の色相変化を防止することができる。
【0022】
前記グリセリン脂肪酸エステルは、食品添加物公典で脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンのエステル又は誘導体として定義されている。グリセリン脂肪酸エステルの例としては、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチルスズ酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステルがある。
【0023】
前記レシチン例としては、大豆レシチン、キャノーラレシチン、コーンレシチン、ひまわりレシチンなどの植物レシチンと卵白レシチンなどの動物レシチンが挙げられ、天然由来の未精製レシチン(crude lecithin)、あるいは未精製レシチンから中性脂質、脂肪酸、炭水化物、タンパク質、無機塩、ステロール、色素などの不純物を除去して得られる高純度で精製されたレシチン(精製レシチン)のいずれを使用してもよく、酵素分解処理した酵素レシチンも含まれる。
【0024】
前記乳化剤の含量は、スクアレン及びトコフェロールを足した100重量部に対して300~500重量部であってよい。具体的には、乳化剤の含量の下限値は、300重量部、310重量部、320重量部、330重量部、340重量部、350重量部、360重量部、370重量部、380重量部、390重量部、又は400重量部であってよく、乳化剤含量の上限値は、500重量部、490重量部、480重量部、470重量部、460重量部、450重量部、440重量部、430重量部、420重量部、又は410重量部、400重量部であってよい。また、乳化剤の含量は、前記記載された含量の下限値で選択された一つと上限値で選択された一つの数値を組み合わせた範囲であってよく、例えば、300~450重量部、300~420重量部、300~400重量部、350~450重量部、350~420重量部などであってよい。
【0025】
前記乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの組み合わせを使用する場合、前記グリセリン脂肪酸エステルの含量は、全乳化剤100重量部に対して55~90重量部であってよく、前記レシチンの含量は、全乳化剤100重量部に対して10~45重量部であってよい。
【0026】
具体的には、前記グリセリン脂肪酸エステル含量の下限値は、55重量部、57重量部、60重量部、62重量部、65重量部、67重量部、70重量部、72重量部、又は75重量部であってよく、上限値は、90重量部、87重量部、85重量部、82重量部、80重量部、77重量部、又は75重量部であってよい。また、グリセリン脂肪酸エステルの含量は、前記記載された含量の下限値で選択された一つと上限値で選択された一つの数値を組み合わせた範囲であってよい。例えば、60~90重量部、65~90重量部、60~85重量部、60~80重量部、又は65~85重量部などであってよい。
【0027】
また、前記レシチン含量の下限値は、10重量部、15重量部、20重量部、又は25重量部であってよく、上限値は45重量部、40重量部、35重量部、30重量部、又は25重量部であってよい。また、レシチンの含量は、前記記載された含量の下限値で選択された一つと上限値で選択された一つの数値を組み合わせた範囲であってよい。例えば、10~40重量部、10~35重量部、10~30重量部、15~40重量部、20~40重量部、20~35重量部、又は20~30重量部などであってよい。
【0028】
すなわち、グリセリン脂肪酸エステルとレシチンの含量を割合で表現すると、グリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの重量比は、5:1~2:1であってよく、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、又は2:1であってよい。グリセリン脂肪酸エステル及びレシチンを前記重量比で含むと、油脂の色価安定用組成物が油脂に均一に分散されて透明性及び流れ性が良く、泡の発生が最小化され、乳化剤の添加と加熱による油脂の変色を効果的に遅延させることができる。
【0029】
本出願の他の一側面は、前記色価安定用組成物を含む油脂を提供する。
【0030】
本出願の色価安定用組成物を含む油脂において、前記油脂、色価安定、スクアレン、トコフェロール、及び乳化剤に関する内容は、前記で説明したとおりである。
【0031】
前記油脂は、前記油脂の色価安定用組成物を10ppm~1000ppmで含んでよく、具体的には、10~800ppm、10~500ppm、10~300ppm、50~800ppm、50~500ppm、50~300ppm、100~800ppm、100~500ppm、又は100~300ppmで含んでよい。前記含量で含むことで、加熱による油脂の変色を効果的に遅延させることができ、油脂に透明に分散させることができ、分散安定性を高めて大量生産時に作業性を高めることができる。
【0032】
本出願の油脂は、高温で加熱された後にも色相の変化が抑制され、酸価の上昇が抑制されるものであってよい。具体的には、天ぷら用油脂は、色価変化率及び酸価変化率が低いほど着色が抑制され、天ぷら油の交替周期を延長できるという側面で有利である。
【0033】
前記色価変化率は、初期油脂の色価(T0)に対し、油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、特定の時間持続させた後、油脂の色価(T1)との差をT0で割った変化率パーセントを意味し、下記[式2]で表現できる:
[式2]
色価変化率(%)={T1-T0}/T0X100
前記式2において、T0は、加熱前測定された初期油脂の色価であり、T1は、前記油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、特定の時間持続させた後に測定された油脂の色価である。
【0034】
天ぷら油においては、前記色価変化率の数値が低いほど高温で繰り返し使用後にも油脂の着色が抑制されることを示す。本出願の油脂の色価変化率は、スクアレンを含まないか、他の種類の抗酸化剤を含む油脂と比べて減少した。
【0035】
本出願において、油脂は、油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、56時間持続させた後の色価変化率が4000%以下、具体的には、3000~4000%、3000~3800%、3000~3500%、又は3000~3300%であってよい。
【0036】
前記酸価変化率は、初期油脂の酸価(T0)に対し、油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、特定の時間持続させた後、油脂の酸価(T1)との差をT0で割った変化率パーセントを意味し、下記[式1]で表現できる:
[式1]
酸価変化率(%)=(T1-To)/ToX100
前記式1において、T0は、加熱前測定された初期油脂の酸価であり、T1は、前記油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、特定の時間持続させた後に測定された油脂の酸価である。
【0037】
天ぷら油においては、前記酸価変化率の数値が低いほど高温で繰り返し使用後にも油脂の酸敗が抑制されることを示す。本出願の油脂の酸価変化率は、スクアレンを含まないか、他の種類の抗酸化剤を含む油脂と比べて減少した。
【0038】
本出願において、油脂は、油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、56時間持続させた後、油脂の色価変化率が6500%以下、具体的には、6000~6500%であってよい。
【0039】
前記油脂は、大豆油(soy bean oil)、オリーブ油(olive oil)、パーム油(palm oil)、コーン油(corn oil)、パームオレイン油(palm olein oil)、パームステアリン油(palm stearin oil)、ココナッツ油(coconut oil)、キャノーラ油(canola oil)、及びひまわり油(sunflower oil)からなる群より選択される1種以上の油脂であってよいが、これに制限されない。
【0040】
本出願のさらに他の一側面は、加熱による油脂の変色を遅延させる方法を提供する。
【0041】
前記加熱による油脂の変色を遅延させる方法は、前記色価安定用組成物を油脂に添加する段階を含む。
【0042】
本出願の加熱による油脂の変色を遅延させる方法で、前記油脂、色価、色価安定、スクアレン、トコフェロール、及び乳化剤に関する内容は、前記で説明したとおりである。
【0043】
前記色価安定用組成物を油脂に添加する段階は、色価安定用組成物と油脂を混合して撹拌するか、色価安定用組成物と油脂を混合した後に加熱及び撹拌して溶解させる過程を伴ってよいが、これに限定されるものではない。前記色価安定用組成物と油脂の混合物を加熱して溶解させる場合、40~60℃に加熱することを含んでよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0044】
本出願による油脂の色価安定用組成物は、加熱による油脂の色相変化を遅延させることができ、油脂の着色を効果的に抑制することで、天ぷら油の交替周期を延長させる効果がある。
【0045】
また、油脂の色価安定用組成物は、油脂に透明で均一に分散され得る。
【0046】
本出願の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、下記記載から当業者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本出願の比較例と実施例による油脂の加熱初期と油脂を200℃に加熱後、56時間持続させた後の色相を比べた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本出願を実施例及び実験例により詳しく説明する。ただし、下記実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0049】
[実施例及び比較例]
実施例1-1:油脂の色価安定用組成物の製造
スクアレン(セイルインターナショナル、輸入)、トコフェロール(kemin社)、大豆レシチン(セヤン貿易輸入)、及びグリセリン脂肪酸エステル(イルシンウェルズ、Almaxシリーズ)を使用し、スクアレン10重量%、トコフェロール10重量%、レシチン20重量%、グリセリン脂肪酸エステル60重量%の組成比で配合して、60℃条件でホモミキサー(T.K.Homomixer mark II F model、Tokushu Kika Kogyo)を使用して800rpmで30分~1時間撹拌して油脂の色価安定用組成物を製造した。
【0050】
実施例1-2:油脂の色価安定用組成物含有食用油の製造
前記実施例で製造した油脂の色価安定用組成物を、通常の精製工程を経て製造された精製大豆油(製品名:白雪大豆油(株)CJ第一製糖製品)に200ppmの濃度(大豆油重量に対して0.02%)に添加し、ホモミキサー(T.K.Homomixer mark II f model、Tokushu Kika Kogyo Co Ltd製造)を介して10,000rpmで30分間撹拌して食用油を製造した。
【0051】
比較例1:比較食用油1の準備
市販の、通常の精製工程を経て製造された精製大豆油(製品名:白雪大豆油、(株)CJ第一製糖製品)を比較食用油1として使用した。
【0052】
比較例2:比較食用油2の製造
実施例1-1でスクアレンをトコフェロール(Kemin製品)に代替して使用したこと以外は、実施例1-1と同一の方法で比較組成物2を製造した後、実施例1-2と同様に精製大豆油(製品名:白雪大豆油、(株)CJ第一製糖製品)に200ppmに添加し、ホモミキサー(T.K.Homomixer mark II f model、Tokushu Kika Kogyo Co Ltd製造)を介して10,000rpmで30分間撹拌して比較食用油2を製造した。
【0053】
比較例3:比較食用油3の製造
実施例1-1でスクアレンをローズマリー抽出物(Kemin製品)に代替して使用したこと以外は、実施例1-1と同一の方法で比較組成物3を製造した後、実施例1-2と同様に精製大豆油(製品名:白雪大豆油、(株)CJ第一製糖製品)に200ppmに添加し、ホモミキサー(T.K.Homomixer mark II f model、Tokushu Kika Kogyo Co Ltd製造)を介して10,000rpmで30分間撹拌して比較食用油3を製造した。
【0054】
比較例4:比較食用油4の製造
実施例1-1でスクアレンを緑茶抽出物(製品名:DS-ETP100、斗山バイオテク製品)に代替して使用したこと以外は、実施例1-1と同一の方法で比較組成物4を製造した後、実施例1-2と同様に精製大豆油(製品名:白雪大豆油、(株)CJ第一製糖製品)に200ppmに添加し、ホモミキサー(T.K.Homomixer mark II f model、Tokushu Kika Kogyo Co Ltd製造)を介して10,000rpmで30分間撹拌して比較食用油4を製造した。
【0055】
比較例5:比較食用油5の製造
スクアレンをオリーブ抽出物(亜洲薬品製品、ポリフェノール含量20mg/g)に代替して使用したこと以外は、実施例1-1と同一の方法で比較組成物5を製造した後、実施例1-2と同様に精製大豆油(製品名:白雪大豆油、(株)CJ第一製糖製品)に200ppmに添加し、ホモミキサー(T.K.Homomixer mark II f model、Tokushu Kika Kogyo Co Ltd製造)を介して10,000rpmで30分間撹拌して比較食用油5を製造した。
【0056】
[実験例1]
色価安定用組成物が添加された油脂の分散安定性の評価
油脂に抗酸化素材が適用された組成物の添加時、分離されることなく安定して分散されると作業性が高くなるので、大量生産時にも一定の品質に製造することができる。また、組成物の分散安定性が高いと油脂の透明度が高くなる。
【0057】
そこで、実施例の油脂色価安定用組成物と、比較例の各植物抽出物が含まれた比較組成物2~5を大豆油に添加して撹拌した時に、どのくらい容易に食用油と混合されるかを比べた。
【0058】
具体的には、実施例1-2の油脂の色価安定用組成物と、比較例2~5の比較組成物2~5を200ppmの濃度で大豆油に添加し、ホモミキサー(T.K.Homomixer mark II f model、Tokushu Kika Kogyo Co Ltd製造)を介して500rpmに撹拌しながら混合される過程を観察した結果を表1に示した。
【0059】
この際、分散安定性は、次のような基準で評価した。
非常に優秀(◎):油脂に抗酸化素材を添加した後撹拌した時に10分以内に混合されて透明な状態となった場合
優秀(○):油脂に抗酸化素材を添加した後20分間撹拌時に混合されて透明な状態となった場合
普通(●):油脂に抗酸化素材を添加した後30分間撹拌時に油脂と混合はされたが透明ではなく濁っている状態である場合
不良(X):油脂に抗酸化素材を添加した後30分間撹拌しても油脂と混合されない場合
【表1】
【0060】
[表1]に示されたように、本出願の油脂色価安定用組成物を添加した実施例1-2は、植物抽出物が添加された比較例に対して食用油と活性成分の混合が容易であることを確認した。これから、本出願の色価安定用組成物は、比較例4及び5の植物抽出物とは異なり、食用油に容易に混合されて均一に分散されることが分かる。
【0061】
[実験例2]
色価安定用組成物の種類による油脂の酸価及び色価安定性の評価
2-1.酸価の測定
実施例1-2及び比較例1~5の食用油を、それぞれ200gずつ丸いフラスコタイプのヒーティングメンタル(MS-DM603、(株)ミソン科学機器製造)に入れて加熱し、食用油品温の温度が200℃に到達すると、この温度を56時間維持しながら、200℃到達後8、16、24、32、40、48、56時間後の食用油をそれぞれ採取して油脂の酸価を測定し、測定された油脂の酸価変化率を下記式1により計算した。前記酸価は、食品公典の食品成分試験法(2.1.5.3.1酸価)により測定した。
[式1]
酸価変化率(%)=(T1-To)/ToX100
【0062】
前記式1において、酸価の変化率は、初期油脂の酸価(T0)に対する、初期油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、特定の時間持続させた後測定された油脂組成物の酸価(T1)との差をT0で割った変化率パーセントを意味する。
【0063】
【表2】

[表2]に示されたように、本出願の色価安定用組成物を添加した食用油は、これを添加しない比較例1の食用油に対して酸価変化率が低く示された。
これから、本出願の色価安定用組成物が食用油に添加されると、加熱と水分による食用油の酸価増加を抑制する効果があることが分かる。
【0064】
2-2.色価の測定
【0065】
実施例1-2及び比較例1~5の食用油を対象に色度を測定した。先ず各試料の温度は、25~35℃に維持して完全に清くて透明な状態で測定した。色度計(Lovibond PFX995、The Tintometer Ltd.,UK)を使用し、1.0インチの石英セルで測定して10R+Y値で表現した。測定された油脂の色価変化率は、下記式2により計算した。
[式2]
色価変化率(%)={T1-T0}/T0X100
【0066】
前記式2において、色価の変化率は、初期油脂の色価(T0)に対する、初期油脂を加熱して温度が200℃に到達すると、特定の時間持続させた後測定された油脂の色価(T1)との差をT0で割った変化率パーセントを意味する。
【0067】
【表3】

[表3]及び[図1]に示されたように、本出願の色価安定用組成物を添加した食用油がこれを添加しない食用油に対して加熱による色価変化率が50%以下の水準に低く示された。特に、加熱56時間経過後の色価の変化率は、本出願の色価安定用組成物を添加した食用油がこれを添加しない食用油や他の種類の抗酸化剤を添加した食用油に対して色価の変化率が非常に低いと示された。
これから、本出願の色価安定用組成物が食用油に添加されると食用油の色価安定性が顕著に増加するにつれて、加熱による食用油の変色が顕著に抑制されることが分かる。
【0068】
[実験例3]
色価安定用組成物の種類による酸化安定性の評価
油脂に添加された色価安定用組成物の多様な種類に対し、Rancimat方法を用いて油脂の酸化安定性(酸敗誘導時間)を評価した。
【0069】
加速化酸化試験法の一つであるRancimat方法によって、試料の酸化で形成された揮発性化合物の電気伝導度(conductivity)を測定することで、誘導時間(Inducton time)を計算して抗酸化性を比較検討した。具体的には、反応温度120℃、流速(flow rate)20ml/hrの測定条件として、実施例1、2及び比較例1~5の酸化安定性を比べた。
【表4】
【0070】
[表4]に示されたように、本出願の色価安定用組成物を添加した食用油の酸化安定性は、これを添加しないか既存の抗酸化剤として知られた他の種類の抗酸化剤を添加した食用油と類似の酸化安定性を有すると示された。一方、緑茶抽出物を添加した比較例4の食用油は、他の種類の抗酸化剤を添加した食用油に対して酸化安定性が最も優れていると示されたが、これと対照的に、前記実験例2で測定した酸価と色価安定性は、他の抗酸化剤と比べて顕著に低いと示された。
これから、油脂の酸化安定性を高める緑茶抽出物のような抗酸化物質と言って、油脂の酸価又は色価安定性を高める効果まであると断定できないことが分かる。
図1
【国際調査報告】