(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】往復圧縮機潤滑剤
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241108BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20241108BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20241108BHJP
C10M 137/02 20060101ALN20241108BHJP
C10M 135/36 20060101ALN20241108BHJP
C10M 133/44 20060101ALN20241108BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20241108BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241108BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C10M169/04
C09K5/04 E
C10M137/10 Z
C10M137/02
C10M135/36
C10M133/44
C10N40:30
C10N30:00 A
C10N30:08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024534591
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022051913
(87)【国際公開番号】W WO2023107418
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レイクストロー, ブリジット
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, スコット
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE29C
4H104BG19C
4H104BH02C
4H104BH06C
4H104CB14A
4H104LA04
4H104LA11
4H104PA20
(57)【要約】
ハイドロフルオロカーボン冷凍システムに使用するための、少なくとも1種のチオリン添加剤を有する冷凍潤滑剤。チオリン添加剤は、冷凍潤滑剤の安定性並びに金属及び/又は冷媒相溶性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油と、少なくとも1種のチオリン添加剤と、を含む、冷凍潤滑剤。
【請求項2】
前記少なくとも1種のチオリン添加剤が、チオリン含有酸、塩、エステル、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項3】
前記少なくとも1種のチオリン添加剤が、アルキル置換チオリン酸エステル、例えば、ジアルキルジチオリン酸エステルである、請求項1又は2に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項4】
前記チオリン添加剤が、式(I)のような構造を有し、
【化3】
式中、R
1及びR
2が、個別に、水素又はC
1~C
20ヒドロカルビル基であり、Xが、O又はSであり、R
3が、水素、C
1~C
20ヒドロカルビル基、又はR
4(O=C)OR
5であり、式中、R
4が、C
1~C
8ヒドロカルビル基、R
5が、水素又はC
1~C
20ヒドロカルビル基であってもよい、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項5】
前記少なくとも1種のチオリン添加剤が、アルキル置換チオリン酸塩、例えば、トリフェニルチオホスフェートなどのアルキル置換チオホスフェートである、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項6】
前記少なくとも1種のチオリン添加剤が、ジアルキルジチオリン酸エステル及びトリフェニルチオホスフェート(O,O,O-トリフェニルホスホロチオエート)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項7】
前記少なくとも1種のチオリン添加剤が、前記冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.1~2重量%(又は0.2~1重量%、又は0.3~0.6重量%)で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項8】
前記潤滑剤が、少なくとも1種のリン耐摩耗添加剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項9】
前記少なくとも1種のリン耐摩耗添加剤が、アルケニルホスファイト、ブチル化トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジメチルオクタデシルホスホネート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項10】
前記少なくとも1種のリン耐摩耗添加剤が、前記冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.1~4重量%(又は0.1~3重量%、又は0.2~1重量%、又は0.3~0.6重量%)で存在する、請求項7又は9に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項11】
前記潤滑剤が、少なくとも1種の金属不動態化剤及び/又は少なくとも1種の腐食防止剤、例えば、ジメルカプトチアジアゾール及び/又はベンゾールトリアゾールを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項12】
前記少なくとも1種の金属不動態化剤及び/又は前記少なくとも1種の腐食防止剤が、0.009~0.5重量%(又は0.01~0.05重量%、又は0.02~0.07重量%)で存在する、請求項11に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項13】
前記少なくとも1種の金属不動態化剤及び/又は前記少なくとも1種の腐食防止剤が、硫黄を実質的に含まない、請求項11又は12に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項14】
消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、抗酸化剤(例えば、アルキル化エステルフェノール、アルカリールアミン、若しくはジtertブチルクレゾール)、酸捕捉剤(例えば、エポキシド)、又はそれらの組み合わせである少なくとも1種の他の添加剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項15】
前記消泡剤が、存在する場合、前記冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.01~0.5重量%(又は0.01~0.05重量%、又は0.1~0.3重量%)で存在する、請求項14に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項16】
前記抗酸化剤が、存在する場合、前記冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.05~1重量%(0.1重量%~0.5重量%、又は0.1~0.3重量%)で存在する、請求項14又は15に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項17】
前記オキシジェネートが、少なくとも1種のアルコール、エステル油、エーテル油、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項18】
前記オキシジェネートが、少なくとも1種のポリオールエステル、少なくとも1種のポリアルキレングリコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項19】
前記オキシジェネートが、少なくとも1種のポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコールと、ペンタエリスリトールと、2-エチルヘキサン酸との反応混合物から誘導されたポリオールエステルを含む、請求項18に記載の冷凍潤滑剤。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の冷凍潤滑剤と、少なくとも1種のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒と、を含む、組成物。
【請求項21】
前記HFC冷媒が、R-32(ジフルオロメタン)、R-404A(44重量%のC
2HF
5、52重量%のC
2H
3F
3、及び4重量%のC
2H
2F
4のブレンド)、R-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、R-410A(50重量%のCH
2F
2及び50重量%のC
2HF
5のブレンド)、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
圧縮機と、凝縮器と、請求項20又は21に記載の組成物と、を含む、冷凍システム。
【請求項23】
前記圧縮機が、往復圧縮機である、請求項22に記載の冷凍システム。
【請求項24】
前記冷凍システムが、銅及び/又は銅合金部品を含む、請求項22又は23に記載の冷凍システム。
【請求項25】
凝縮温度が100~140°F(37.8~60.0℃)の範囲であり、蒸発温度が5~55°F(-15~12.8℃)の範囲である、請求項22~24のいずれか一項に記載の冷凍システム。
【請求項26】
オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む冷凍潤滑剤を含む組成物の金属相溶性を改善する及び/又はその金属腐食を低減する方法であって、前記方法が、少なくとも1種のチオリン添加剤を前記冷凍潤滑剤に添加することを含む、方法。
【請求項27】
前記組成物が、少なくとも1種のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒、例えば、R-32、R-134a、R-404A、又はR-410Aを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
冷凍潤滑剤のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒との相溶性及び/又はその安定性を改善する方法であって、前記方法が、少なくとも1種のチオリン添加剤を前記冷凍潤滑剤に添加することを含む、方法。
【請求項29】
オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む冷凍潤滑剤を含む組成物における、前記組成物の金属相溶性を改善する及び/又はその金属腐食を低減するための、チオリン添加剤の使用。
【請求項30】
前記組成物が、少なくとも1種のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒、例えば、R-32、R-134a、R-404A、又はR-410Aを更に含む、請求項29に記載の添加剤の使用。
【請求項31】
冷凍潤滑剤における、前記冷凍潤滑剤のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒、例えば、R-32、R-134a、R-404A、又はR-410Aとの相溶性及び/又はその安定性を改善するための、チオリン添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、冷媒がハイドロフルオロカーボン(「hydrofluorocarbon、HFC」)冷媒を含む、往復圧縮機システムに使用するための潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
低背圧/低温条件で使用するための潤滑剤は、往復圧縮機における潤滑剤冷媒組み合わせの酸化及び腐食性を抑制するために、腐食防止剤又は金属不活性化剤と抗酸化剤との組み合わせをうまく利用してきた。凝縮温度が100~140°F(37.8~60.0℃)の範囲であり、かつ蒸発温度が5~55°F(-15~12.8℃)の範囲である、動作エンベロープを有する中背圧/中温往復圧縮機では、その潤滑剤は、安定しておらず、潤滑剤の酸価の増加及び/又は暗色化をもたらす可能性がある。潤滑剤の酸価の増加により、鋼、アルミニウム、又は銅で作製された部品を含む圧縮機金属部品の劣化(堆積物、酸化、及び/又は腐食)がもたらされる可能性がある。この状況は、硫黄が銅腐食の一因となり得ることが知られているように、硫黄含有添加剤が潤滑剤に使用された場合、銅系において悪化する可能性がある。したがって、本技術よりも前には、硫黄を含有する金属不動態化剤は、銅部品を有する冷凍システムにおいて避けられていた。
【発明の概要】
【0003】
開示される技術は、高圧/高温環境下で改善された安定性を有し、これにより、圧縮機金属部品の劣化の低減をもたらすことができる潤滑剤を提供する。したがって、オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油と、少なくとも1種のチオリン添加剤と、を含む、冷凍潤滑剤が開示される。硫黄を有しているにもかかわらず、これらのチオリン添加剤は、硫黄を含有する金属不動態化剤、例えば、ジメルカプトチジアゾールを有する冷凍潤滑剤と比較して、銅腐食を含む金属腐食を低減するのに驚くほど有効である。
【0004】
少なくとも1種のチオリン添加剤は、チオリン含有酸、塩、エステル、又はそれらの組み合わせであってもよい。チオリンエステルの好適な例としては、アルキル置換チオリン酸エステル、例えば、ジアルキルジチオリン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。チオリン塩の好適な例としては、アルキル置換チオリン酸塩、例えば、トリフェニルチオホスフェートなどのアルキル置換チオホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のチオリン添加剤は、ジアルキルジチオリン酸エステル及び/又はトリフェニルチオホスフェート(O,O,O-トリフェニルホスホロチオエート)を含み得る。少なくとも1つのチオリン添加剤は、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.1~2重量%で存在してもよい。
【0005】
本明細書に開示される冷凍潤滑剤は、少なくとも1種のリン耐摩耗添加剤を更に含み得る。好適なリン耐摩耗添加剤としては、アルケニルホスファイト、ブチル化トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジメチルオクタデシルホスホネート、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1種のリン耐摩耗添加剤は、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.1~4重量%で存在してもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、冷凍潤滑剤は更に、少なくとも1種の金属不動態化剤及び/又は少なくとも1種の腐食防止剤、例えば、ジメルカプトチアジアゾール及び/又はベンゾトリアゾールを促進してもよい。少なくとも1種の金属不動態化剤及び/又は少なくとも1種の腐食防止剤が、硫黄、例えば、ベンゾトリアゾールを実質的に含まない、請求項10に記載の冷凍潤滑剤。
【0007】
更に他の実施形態では、冷凍潤滑剤は、消泡剤、抗酸化剤、酸捕捉剤、又はそれらの組み合わせである少なくとも1種の他の添加剤を更に含んでもよい。好適な消泡剤としては、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。好適な抗酸化剤としては、アルキル化エステルフェノール、アルカリールアミン、ジtertブチルクレゾール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好適な酸捕捉剤としては、エポキシドが挙げられる。
【0008】
消泡剤は、存在する場合、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.01~0.5重量%で存在し得る。抗酸化剤は、存在する場合、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.05~1重量%で存在し得る。
【0009】
冷凍潤滑剤における使用に好適なオキシジェネートとしては、少なくとも1種のアルコール、エステル油、エーテル油、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、オキシジェネートは、少なくとも1種のポリオールエステル、少なくとも1種のポリアルキレングリコール、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。更に他の実施形態では、オキシジェネートは、少なくとも1種のポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコールと、ペンタエリスリトールと、2-エチルヘキサン酸との反応混合物から誘導されたポリオールエステルを含んでもよい。
【0010】
上記の潤滑剤組成物は、ハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒と組み合わせて使用されてもよい。したがって、上記のような冷凍潤滑剤と、少なくとも1つのハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒と、を含む組成物が開示される。好適なHFC冷媒としては、R32、R-134a、R-404A、R-410A、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
冷凍潤滑剤及びHFC冷媒を含むそのような組成物は、圧縮機及び凝縮器を含む冷凍システムにおける使用に好適である。圧縮機は、往復圧縮機であってもよい。いくつかの実施形態では、冷凍システムは、銅及び/又は銅合金部品を含む。開示される組成物は、凝縮温度が100~140°F(37.8~60.0℃)の範囲であり、かつ蒸発温度が5~55°F(-15~12.8℃)の範囲である、冷凍システムにおける使用に好適である。
【0012】
少なくとも1種のチオリン添加剤を冷凍潤滑剤に添加することによって、オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む冷凍潤滑剤を含む組成物の金属相溶性を改善する及び/又はその金属腐食を低減する方法も開示される。本組成物は、少なくとも1種のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒、例えば、R-32、R-134a、R-404A、又はR-410Aを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、冷凍潤滑剤のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒との相溶性及び/又はその安定性を改善する方法が開示される。本方法は、少なくとも1種のチオリン添加剤を冷凍潤滑剤に添加することを含んでもよい。
【0013】
オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む冷凍潤滑剤を含む組成物における、本組成物の金属相溶性を改善する及び/若しくはその金属腐食を低減する並びに/又は冷凍潤滑剤のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒、例えば、R-32、R-134a、R-404A、又はR-410Aとの相溶性及び/若しくはその安定性を改善するための、チオリン添加剤の使用。
【発明を実施するための形態】
【0014】
様々な好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な例示により以下に説明する。オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油と、少なくとも1種のチオリン添加剤と、を含む、冷凍潤滑剤。これらの潤滑剤は、良好な金属相溶性を有し、かつ/又は銅を含有する金属を含む金属の腐食を低減する。
【0015】
オキシジェネート
で使用される場合、オキシジェネートとは、有機化合物であって、それらの成分のうちの1つとして酸素を含有する、有機化合物を指す。これらは、6個の炭素原子毎に少なくとも1個の非プロトン性又はプロトン性酸素を有する有機化合物を含む。オキシジェネートは、7個の炭素原子毎に少なくとも1個の非プロトン性若しくはプロトン性酸素、又は8個の炭素原子毎に1個の非プロトン性若しくはプロトン性酸素、又は12個の炭素原子毎に少なくとも1個の非プロトン性若しくはプロトン性酸素を有する有機化合物も含む。オキシジェネートは、16個の炭素原子毎に少なくとも1個の非プロトン性若しくはプロトン性酸素、又は20個の炭素原子毎に1個の非プロトン性若しくはプロトン性酸素を有する有機化合物も含む。
【0016】
オキシジェネートは、例えば、アルコール、エステル油、及びエーテル油を含むことができる。オキシジェネートは、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、少なくとも45重量%の潤滑粘度の油として冷凍潤滑剤中に含まれ得る。いくつかの例では、オキシジェネートは、少なくとも50重量%~少なくとも80重量%で存在してもよい。他の実施形態では、オキシジェネートは、少なくとも80重量%~少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%で存在してもよい。更に他の実施形態では、オキシジェネートは、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも96重量%、97重量%、98重量%、又は少なくとも99重量%で存在してもよい。
【0017】
潤滑粘度の油としての使用に好適なアルコールとしては、一価アルコール、例えば、エタノール、メタノール、n-ブタノール及びtert-ブタノールなどのプロピレンアルコール誘導体、並びにイソプロピルアルコールが挙げられ、高級分岐アルコールとしては、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、及びそれらの組み合わせの異性体が挙げられる。分岐アルコールの例としては、2-エチルヘキサノール、イソオクタノール、イソデカノール、及びイソドデカノールが挙げられる。本明細書で使用される場合、アルコールはまた、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどのポリオールも包含する。
【0018】
潤滑粘度の油としての使用に好適なエーテルとしては、石油化学供給原料及び再生可能な供給原料から製造されるものが挙げられる。例としては、メチルターシャリーブチルエーテル(methyl tertiary butyl ether、MTBE)、ターシャリーアミルメチルエーテル(tertiary amyl methyl ether、TAME)、エチルターシャリーブチルエーテル(ethyl tertiary butyl ether、ETBE)及びターシャリーアミルエチルエーテル(tertiary amyl ethyl ether、TAEE)が挙げられる。他のエーテルの例としては、tert-ヘキシルメチルエーテル(tert-hexyl methyl ether、THEME)及びジイソプロピルエーテルが挙げられる。ポリエーテルはまた、本明細書で「エーテル」という用語でも考慮され、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテルを含む。ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG)、及びそれらの混合ポリマーを含む、ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリアルキレンオキシド)の低分子量オリゴマーも好適であり得る。
【0019】
潤滑粘度の油としての使用に好適なエステル油としては、モノカルボン酸と一価アルコールとのエステル、ジオールとモノカルボン酸とのジ-エステル及びジカルボン酸と一価アルコールとのジ-エステル、モノカルボン酸のポリオールエステル、及び一価アルコールとポリカルボン酸とのポリエステル、並びにそれらの混合物が挙げられる。エステルは、大きく分けて2つのカテゴリー、すなわち、合成及び天然に分類され得る。
【0020】
潤滑粘度の油としての使用に好適な合成エステルは、モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、ネオペンタン酸、2-エチルヘキサン酸など)及びジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、リノール酸、アルキルマロン酸、並びにアルケニルマロン酸)と、種々の一価アルコール(例えば、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、イソ-オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、及びプロピレングリコール)のうちのいずれかとのエステルを含み得る。これらのエステルの具体的な例としては、ジブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエコイシルセバケート、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることによって形成された複合エステルが挙げられる。他の合成エステルとしては、C5~C12モノカルボン酸並びにポリオール及びポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトールから作製されたものが挙げられる。エステルは、モノカルボン酸と一価アルコールとのモノエステルとすることもできる。
【0021】
好適なエステルとしては、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸及びヒドロキシ脂肪酸(例えば、12-ヒドロキシステアリン酸)などのヒドロキシ置換カルボン酸と、上記のような一価アルコールとの組み合わせたエステルも挙げられる。
【0022】
天然(又は生物由来)エステルは、再生可能な生物学的資源、生物、又は実体から誘導された材料を指し、石油又は同等の原料から誘導された材料とは異なる。熱伝達流体中で好適な天然エステルとしては、脂肪酸トリグリセリド、加水分解若しくは部分加水分解トリグリセリド、又はエステル交換トリグリセリドエステル、例えば脂肪酸メチルエステル(又はFAME)が挙げられる。好適なトリグリセリドとしては、パーム油、大豆油、ヒマワリ油、菜種油、オリーブ油、アマニ油、及び関連材料が挙げられるが、これらに限定されない。他のトリグリセリド源としては、藻類、獣脂、及び動物プランクトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度の油は、少なくとも1種のポリオールエステル(「polyolester、POE」)油を含むオキシジェネートであり、ポリオールエステル油は、少なくとも5個の炭素原子を有する少なくとも1種の(モノ)カルボン酸でエステル化されたポリオールを含む。更に他の実施形態では、ポリオールエステル油は、(モノ)カルボン酸又はそれらの無水物の混合物でエステル化されたポリオールを含み、(モノ)カルボン酸又は無水物は、個別に、5~13個の炭素原子を有する。C5カルボン酸又は無水物のC13カルボン酸又は無水物に対する好適な比率としては、95:5~5:95が挙げられるが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、(モノ)カルボン酸又はそれらの無水物の混合物は、少なくとも3つのC5~C13カルボン酸又は無水物を含む。好適なポリオールとしては、トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、モノペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、POEは、芳香族ポリカルボン酸若しくはそれらの無水物のエステル及び/又は複合エステルを含み得る。複合エステルは、ポリオール(トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、モノペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールを含み得るが、これらに限定されない)、及びポリ酸若しくは酸無水物(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸を含み得るが、これらに限定されない)、又はそれらの任意の混合物から構成されるオリゴマー単位から構成され得る。複合エステルは、官能性(モノ)カルボン酸又は(モノ)アルキルアルコール、又は単独でキャップされたグリコールエーテル、又はそれらの任意の混合物で完全に又は部分的にキャップされていてもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「(モノ)カルボン酸」又は「(モノ)アルキルアルコール」とは、(モノ)が任意選択であること、すなわち、カルボン酸又はアルキルアルコール化合物がモノであってもポリであってもよいことを意味する。しかしながら、開示される技術のいくつかの実施形態では、モノカルボン酸及び/又はモノアルキルアルコールのみが存在する。
【0025】
いくつかの実施形態では、オキシジェネートは、芳香族エステルを含んでもよい。好適な芳香族エステルは、過度に限定されない。芳香族エステルを作製するために使用される芳香族炭化水素は、1~5個、又は1~4個、又は2~4個のカルボン酸官能基を有してもよい。いくつかの実施形態では、芳香族炭化水素は、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸無水物、芳香族ポリカルボン酸エステル、又はそれらの混合物であってもよい。開示される技術を1つの動作理論に限定するものではないが、カルボキシル基が芳香族エステルに直接結合している場合、その結合の周りの回転の自由度が制限されると考えられる。これにより、芳香族エステルの分子量と比較してより高いニート粘度を有するより剛性の分子が得られる。いくつかの実施形態では、芳香族エステルは、1,8-ナフタル酸などの多環式芳香族酸又は酸無水物を使用して調製することができる。
【0026】
芳香族エステルを作製するために使用される(モノ)アルキルアルコールは、少なくとも1種のC4~C15又はC8~C13直鎖又は分岐鎖アルコールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、(モノ)アルキルアルコールは、C10アルコール及びC13アルコールを含んでもよい。C10アルコールのC13アルコールに対する好適な比率としては、95:5~5:95が挙げられるが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、(モノ)アルキルアルコールは、分岐鎖C10及び分岐鎖C13アルコールを含んでもよく、すなわち、(モノ)アルキルアルコールは、C10アルキルアルコールとC13アルキルアルコールとの混合物であり、両方とも分岐鎖である。
【0027】
芳香族エステルを作製するために使用されるグリコールエーテルは、アルキレングリコールを含んでもよく、アルキレングリコールとしては、一般構造R1(-O-R2)x-OR3が挙げられ、式中、R1及びR3は、個別に、水素又はC1~C4ヒドロカルビル基であってもよく、R2は、モノエーテル又は単一の、交互の、若しくはランダムに分布したポリエーテルサブユニットであってもよい。あるいは、芳香族エステルは、二重にキャップされていないPAG基が2つの芳香族酸を一緒に連結する複合エステルであってもよい。いくつかの実施形態では、オキシジェネートは、安息香酸エステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、又はそれらの混合物である少なくとも1種の芳香族エステルを含んでもよい。
【0028】
いくつかの例では、潤滑粘度の油は、少なくとも1種のアルコール、エステル油、エーテル油、又はそれらの組み合わせを含むオキシジェネートである。いくつかの実施形態では、オキシジェネートは、少なくとも1種のポリオールエステル、少なくとも1種のポリアルキレングリコール、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。更に他の実施形態では、オキシジェネートは、少なくとも1種のポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコールと、ペンタエリスリトールと、2-エチルヘキサン酸との反応混合物から誘導されたポリオールエステルを含んでもよい。
【0029】
他の実施形態では、冷凍潤滑剤は、上記のオキシジェネートの代わりに、又はそれに加えて、他の周知の潤滑剤を含んでもよい。好適な潤滑剤としては、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドラインのグループI~V、すなわち、以下を挙げることができる。
【0030】
【0031】
冷凍潤滑剤は、鉱油又は合成油、例えば、ポリアルファオレフィン油及び/又はポリエステル油、並びにそれらの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、冷凍潤滑剤は、鉱油ベースストックを含み、グループI、グループII、及びグループIIIの基油又はそれらの混合物のうちの1つ以上であり得る。更に他の実施形態では、冷凍潤滑剤は、アルキルベンゼン、ポリアルキレングリコール、及びポリビニルエーテルなどの他の一般的な基油を含んでもよい。
【0032】
性能添加剤
いくつかの実施形態では、冷凍潤滑剤は、上記のような少なくとも1種のチオリン添加剤を含む。少なくとも1種のチオリン添加剤は、チオリン含有酸、塩、エステル、又はそれらの組み合わせであってもよい。チオリン添加剤は、式(I)のような構造を有してもよく、
【0033】
【化1】
式中、R
1及びR
2は、個別に、水素又はC1~C
20ヒドロカルビル基であってもよく、Xは、O又はSであってもよく、R
3は、水素、C1~C
20ヒドロカルビル基、又はR
4(O=C)OR
5であってもよく、式中、R
4は、C
1~C
8ヒドロカルビル基であってもよく、R
5は、水素又はC
1~C
20ヒドロカルビル基であってもよい。
【0034】
R1、R2、R3、及びR5のいずれかは、個別に、直鎖、分岐鎖、又は環状C1~C20ヒドロカルビル基であってもよい。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR5のいずれかは、個別に、直鎖、分岐鎖、又は環状C1~C8、C2~C8、又はC4~C8、又はC4~C6、又はC4~C5ヒドロカルビル基であってもよい。いくつかの例では、R4は、C2~C6の直鎖、分岐鎖、又は環状ヒドロカルビル基であってもよい。いくつかの実施形態では、R4は、C2ヒドロカルビル基又は分岐鎖C3ヒドロカルビル基であってもよく、及び/又はR5は、C1~C4又はC5ヒドロカルビル基であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のチオリン添加剤は、アルキル置換チオリン酸エステルである。そのような実施形態では、Xは、Sであってもよく、R3は、R4(O=C)OR5であってもよく、式中、R4は、C1~C8ヒドロカルビル基であってもよく、R5は、水素、又はC1~C20、若しくはC1~C4、若しくはC5ヒドロカルビル基であってもよく、R1及びR2は、個別に、直鎖、分岐鎖、又は環状C1~C20、又はC2~C8、又はC4~C8ヒドロカルビル基であってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のチオリン添加剤は、ジアルキルジチオリン酸エステルであってもよい。いくつかの例では、ジアルキルジチオリン酸エステルは、式(I)の構造を有してもよく、式中、Xは、Sであってもよく、R3は、R4(O=C)OR5であってもよい。
【0036】
いくつかの例では、ジアルキルジチオリン酸エステルは、式(II)の構造を有してもよく、
【0037】
【化2】
式中、R
1及びR
2は、個別に、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4又はC
5ヒドロカルビル基であってもよく、R
4は、C
2ヒドロカルビル基又は分岐鎖C
3ヒドロカルビル基であってもよく、R
5は、直鎖又は分岐鎖C
1~C
4又はC
5ヒドロカルビル基であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のチオリン添加剤は、アルキル置換チオリン酸塩であってもよい。そのような実施形態では、Xは、Oであってもよく、R3は、水素又はC1~C20ヒドロカルビル基であってもよい。更に他の実施形態では、Xは、Oであってもよく、R1、R2、及びR3は、個別に、直鎖、分岐鎖、又は環状C1~C20、又はC2~C8、又はC4~C8ヒドロカルビル基であってもよい。更に他の実施形態では、Xは、Oであってもよく、R1、R2、及びR3は全て、環状C5~C6ヒドロカルビル基、例えば、トリフェニルチオホスフェート(O,O,O-トリフェニルホスホロチオエート)であってもよい。
【0039】
いくつかの例では、冷凍潤滑剤は、少なくとも2種のチオリン添加剤を含み、1種の添加剤は、ジアルキルジチオリン酸エステルであり得、1種の添加剤は、トリフェニルチオホスフェート(O,O,O-トリフェニルホスホロチオエート)であり得る。少なくとも1種のチオリン添加剤は、冷凍潤滑剤中に、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.1~2重量%、又は0.2~1重量%、又は0.3~0.6重量%で存在してもよい。これらの様々な範囲は、典型的には、組成物全体の中に存在するチオリン添加剤の全てに適用される。しかしながら、いくつかの実施形態では、これらの範囲は、個々のチオリン添加剤にも適用され得る。
【0040】
いくつかの例では、冷凍潤滑剤は、上記のような少なくとも1種のチオリン添加剤、及び少なくとも1種の耐摩耗剤を含む。いくつかの例では、耐摩耗剤は、リン耐摩耗剤であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、冷凍潤滑剤は、少なくとも1種のチオリン添加剤及び少なくとも1種のリン耐摩耗剤を含む。
【0041】
リン耐摩耗剤は、金属不含有機リン耐摩耗剤であってもよい。有機リン耐摩耗剤は、硫黄を含有してもよく、又は硫黄を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、リン耐摩耗剤は、硫黄を含まなくてもよい。リン耐摩耗剤は、ホスファイト、ホスホネート、アルキルリン酸エステル、アミン若しくはアンモニウムリン酸塩、又はそれらの混合物であり得る。
【0042】
ジヒドロカーボン及びトリヒドロカーボンホスファイトなどの亜リン酸エステル、例えば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリル及び亜リン酸ポリプロピレン置換フェノール;アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩又は誘導体、例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩、続いてP2O5と更に反応させたもの、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
リン酸アミンは、(i)モノヒドロカルビルリン酸、(ii)ジヒドロカルビルリン酸、(iii)リン酸のヒドロキシ置換ジエステル、又は(iv)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジ若しくはトリエステルのアミン塩であり得る。リン耐摩耗剤のアミン塩は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又はそれらの混合物の塩であり得る。
【0044】
アミンリン酸塩は、モノ又はジヒドロカルビルリン酸(典型的には、アルキルリン酸)、又はそれらの混合物から誘導され得る。モノ又はジヒドロカルビルリン酸のアルキルは、3~36個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み得る。直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルリン酸のヒドロカルビル基は、4~30個、又は8~20個の炭素原子を含有し得る。ヒドロカルビルリン酸の好適なヒドロカルビル基の例には、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、アミル、4-メチル-2-ペンチル(すなわち、メチルアミル)、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、2-プロピルヘプチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。一実施形態では、ホスフェートは、モノ-(2-エチル)ヘキシルホスフェートとジ-(2-エチル)ヘキシルホスフェートとの混合物である。
【0045】
好適な第一級アミンの例には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、及びドデシルアミン、並びにn-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、及びオレヤミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンには、Armeen C、Armeen O、Armeen O L、Armeen T、Armeen H T、Armeen S、及びArmeen S DなどのArmeen(商標)アミン(Akzo Chemicals、シカゴ、Ill.から入手可能な製品)などの市販の脂肪アミンが含まれ、ここで、文字表示はココ、オレイル、獣脂、又はステアリル基などの脂肪族に関連する。
【0046】
したがって、いくつかの例では、冷凍潤滑剤は、アルケニルホスファイト、ブチル化トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジメチルオクタデシルホスホネート、又はそれらの組み合わせである少なくとも1種のリン耐摩耗添加剤を含む。金属不含リン耐摩耗剤は、潤滑剤組成物中に0.1~4重量%、又は0.1~3重量%、又は0.2~1重量%、又は0.3~0.6重量%の量で存在し得る。
【0047】
更に他の実施形態では、冷凍潤滑剤は、少なくとも1種のチオリン添加剤、少なくとも1種のリン耐摩耗剤、及び少なくとも1種の金属不動態化剤を含み、金属不動態化剤は、腐食防止剤及び/又は金属不活性化剤を含み得る。冷凍潤滑剤における使用に好適な金属不動態化剤は、過度に限定されず、金属不活性化剤及び腐食防止剤の両方を含んでもよい。
【0048】
好適な金属不活性化剤には、トリアゾール又は置換トリアゾールが含まれる。例えば、トリルトリアゾール又はトルトリアゾールが、開示される潤滑剤組成物に利用され得る。金属不活性化剤の好適な例には、
(i)1つ以上のトル-トリアゾール、例えば、商標名Irgamet 39でBASFにより市販されているN,N-ビス(2-エチルヘキシル)-ar-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メタンアミン、CAS登録番号94270-86-70;
(ii)動物及び/又は植物供給源から誘導された1つ以上の脂肪酸、及び/又はそのような脂肪酸の水素化形態、例えばAkzo Nobel Chemicals,Ltdから市販されているNeo-Fat(商標)、のうちの1つ以上が含まれる。
【0049】
好適な腐食防止剤には、
(i)N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシン、CAS登録番号110-25-8;
(ii)tert-アルキル及び(C12~C14)第一級アミンと反応された、リン酸、モノ-及びジイソオクチルエステル、CAS登録番号68187-67-7;
(iii)ドデカン酸;
(iv)トリフェニルホスホロチオネート、CAS登録番号597-82-0;及び
(v)リン酸、モノ-及びジヘキシルエステル、テトラメチルノニルアミン、及びC11-14アルキルアミンとの化合物、のうちの1つ以上が含まれる。
【0050】
一実施形態では、金属不動態化剤は、腐食添加剤及び金属不活性化剤から構成される。1つの有用な添加剤は、サルコシンのN-アシル誘導体、例えばサルコシンのN-アシル誘導体である。一例は、N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシンである。この誘導体は、商標名SARKOSYL(商標)OでBASFから入手できる。別の添加剤は、Ciba-Geigyから市販されているAmine O(商標)などのイミダゾリンである。
【0051】
したがって、いくつかの例では、冷凍潤滑剤は、ジメルカプトチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、又はそれらの組み合わせを含む少なくとも1種の金属不動態化剤を有してもよい。金属不動態化剤は、潤滑剤の総重量に基づいて、0.009~0.5重量%で冷凍潤滑剤中に存在し得る。いくつかの実施形態では、金属不動態化剤は、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.01~0.5重量%、又は0.01~0.3重量%、又は0.02~0.25重量%、又は更に0.02~0.07重量%で存在してもよい。これらの様々な範囲は、典型的には、組成物全体の中に存在する金属不動態化剤の全てに適用される。しかしながら、いくつかの実施形態では、これらの範囲は、個々の腐食防止剤及び/又は金属不活性化剤にも適用され得る。上記の範囲は、組成物全体の中に存在する全ての腐食防止剤及び金属不活性化剤を全て合わせた量に適用され得る。
【0052】
これらの実施形態のいずれにおいても、組成物は、上述の添加剤に加えて、1種以上の追加の性能添加剤を更に含んでもよい。性能添加剤の好適な例としては、抗酸化剤、消泡剤、酸捕捉剤、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
冷凍潤滑剤における使用に好適な抗酸化剤は、過度に限定されない。好適な抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(butylatedhydroxyanisole、BHA)、フェニル-a-ナフチルアミン(phenyl-a-naphthylamine、PANA)、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、高分子量フェノール系抗酸化剤、ヒンダードビスフェノール系抗酸化剤、ジ-アルファ-トコフェロール、ジ-ターシャリーブチルフェノールが含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、抗酸化剤には、
(i)BASFから市販されているヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、CAS登録番号35074-77-2;
(ii)BASFから市販されているN-フェニルベンゼンアミン、2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物、CAS登録番号68411-46-1;
(iii)BASFから市販されているフェニル-a-及び/又はフェニル-b-ナフチルアミン、例えばN-フェニル-ar-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-1-ナフタレンアミン;
(iv)テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、CAS登録番号6683-19-8;
(v)チオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、CAS登録番号41484-35-9(21 C.F.R.§178.3570にもチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)として列挙されている);
(vi)ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);
(vii)ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);
(viii)BASFから市販されているビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)アミン;及び
(ix)BASFから市販されているベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-、チオジ-2,1-エタンジイルエステル、のうちの1つ以上が含まれる。
【0055】
一実施形態では、冷凍潤滑剤は、アルキル化エステルフェノール、アルカリールアミン、ジtertブチルクレゾール、又はそれらの組み合わせである抗酸化剤を含んでもよい。抗酸化剤は、冷媒潤滑剤の総重量に基づいて、0.02重量%~1重量%若しくは2重量%、又は0.05重量%~1重量%、又は0.1~0.5重量%、又は0.1~0.3重量%で冷媒潤滑剤中に存在し得る。これらの様々な範囲は、典型的には、組成物全体の中に存在する抗酸化剤の全てに適用される。しかしながら、いくつかの実施形態では、これらの範囲は、個々の抗酸化剤にも適用され得る。
【0056】
更に他の実施形態では、冷凍潤滑剤は、消泡剤、酸捕捉剤、又はそれらの組み合わせである少なくとも1種の他の添加剤を更に含んでもよい。
【0057】
消泡剤には、ポリシロキサン;アクリル酸エチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルのコポリマー;及び任意選択で酢酸ビニル;フッ素化ポリシロキサン、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤が含まれる。開示される技術はまた、C5~C17アルコールと組み合わせて、シリコーン含有消泡剤とともに使用されてもよい。更に他の実施形態では、追加の消泡剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、トリメチル-トリフルオロ-プロピルメチルシロキサンなどの有機シリコーンを含んでもよい。一実施形態では、消泡剤は、ポリジメチルシロキサンであってもよい。
【0058】
酸捕捉剤としては、約1~約12個の炭素原子、又は1~10個の炭素原子、又は1~4個若しくは6個若しくは8個の炭素原子のアルキル基を有するアルコキシドを挙げることができる。炭素は、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和であり得る。アルコキシドの例としては、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、及びtert-ブトキシドが挙げられる。一実施形態では、酸捕捉剤は、エポキシドを含む。金属不動態化剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、0.009~0.5重量%で冷凍潤滑剤中に存在し得る。いくつかの実施形態では、金属不動態化剤は、冷凍潤滑剤の総重量に基づいて、0.01~0.5重量%、又は0.02~0.3重量%、又は0.05~0.25重量%、又は更に0.02~0.07重量%で存在してもよい。
【0059】
説明される各化学成分の量は、他に示されない限り、市販の物質中に慣習的に存在し得るあらゆる溶媒又は希釈油を除いて、すなわち、活性化学物質基準で表される。しかしながら、別段の指示がない限り、本明細書で言及される各化学物質又は組成物は、異性体、副生成物、誘導体、及び商用グレードで存在すると通常理解される他のそのような物質を含有し得る商用グレードの物質であると解釈されるべきである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、並びに芳香族、脂肪族、及び脂環式置換芳香族置換基だけでなく、環が分子の別の部分を介して完成される(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する)環状置換基;
置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、置換基の主に炭化水素の性質を変化させない非炭化水素基を含有する置換基(例えば、ハロ(特にクロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、並びにスルホキシ);
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈において、主に炭化水素特性を有するが、そうでなければ炭素原子から構成された環又は鎖中に炭素以外を含有し、かつピリジル、フリル、チエニル、及びイミダゾリルとして置換基を包含する置換基が挙げられる。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、及び窒素が挙げられる。一般に、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2個以下、又は1個以下の非炭化水素置換基が存在し、代替的に、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しない場合がある。
【0061】
上で説明される材料のうちのいくつかは、最終配合物中で相互作用し得るため、最終配合物の成分は、最初に添加されたものとは異なり得ることが既知である。例えば、(例えば洗浄剤の)金属イオンは、他の分子の他の酸性部位又はアニオン性部位に移動することができる。それによって形成された生成物は、その意図された用途において本発明の組成物を用いた際に形成された生成物を含めて、容易に説明することができない場合がある。それにもかかわらず、全てのそのような修飾及び反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、上で説明される成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【0062】
冷凍潤滑剤は、ハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒を使用する冷凍システムにおいて有用である。HFC冷媒の例としては、R-32(ジフルオロメタン)、R-404A(44重量%のC2HF5、52重量%のC2H3F3、及び4重量%のC2H2F4のブレンド)、R-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、R-410A(50重量%のCH2F2及び50重量%のC2HF5のブレンド)、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
冷凍システムは、典型的には圧縮機を有し、冷凍潤滑剤及び冷媒の両方が充填される。いくつかの実施形態では、圧縮機は、往復圧縮機であってもよい。いくつかの実施形態では、冷凍システムは、銅及び/又は銅合金部品を含む。開示される組成物は、凝縮温度が100~140°F(37.8~60.0℃)の範囲であり、かつ蒸発温度が5~55°F(-15~12.8℃)の範囲である、冷凍システムにおける使用に好適である。
【0064】
組成物の金属相溶性を改善する及び/又はその金属腐食を低減する方法が開示される。組成物は、オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む冷凍潤滑剤を含む。本方法は、上記のような少なくとも1種のチオリン添加剤を冷凍潤滑剤に添加することを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1種のハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒、例えば、R-32、R-134a、R-404A、又はR-410Aを更に含んでもよい。
【0065】
冷凍潤滑剤とハイドロフルオロカーボン(「HFC」)冷媒との相溶性及び/又はその安定性を改善する方法及び使用も開示される。本方法及び使用は、少なくとも1種のチオリン添加剤を冷凍潤滑剤に添加することを含む。オキシジェネートである少なくとも1種の潤滑粘度の油を含む冷凍潤滑剤を含む組成物における、組成物の金属相溶性を改善する及び/又はその金属腐食を低減するための、チオリン添加剤の方法及び使用も開示される。
【0066】
本明細書に開示される冷凍潤滑剤は、改善された安定性並びに金属及び/又は冷媒相溶性を有し、これは、以下の実施例を参照してより良く理解され得る。
【実施例】
【0067】
複数の潤滑剤試料を調製し、潤滑剤の安定性及び様々な金属との相溶性を評価した。
【0068】
175℃での潤滑剤及びR-410Aの安定性及び相溶性
5つの異なる潤滑剤をR-410A冷媒と組み合わせる。R-410Aは、50重量%のジフルオロメタン(CH2F2、R-32と呼ばれる)と50重量%のペンタフルオロエタン(CHF2CF3、R-125と呼ばれる)との非共沸ブレンドである。潤滑剤組成物を以下の表1に提供する。
【0069】
【表1】
1-チオリン添加剤は、ジチオリン酸エステルである
2-チオリン添加剤は、トリフェニルチオホスフェートである
3-リン耐摩耗剤は、ブチル化トリフェニルホスフェートである
4-MPは金属不動態化剤を示す
5-AOは、抗酸化剤を示す
【0070】
各潤滑剤に対して、4つの密封チューブを調製する。最初の3つのチューブは、冷媒及び潤滑剤を2対8の比率(0.4gの冷媒に対して1.6gの潤滑剤)で含む。1種の金属触媒(銅、アルミニウム、又は鋼)も各チューブに入れる。第4のチューブは、より多くの潤滑剤と冷媒との混合物を同じ2対8の比率で含む(0.5gの冷媒に対して2.0gの潤滑剤、金属触媒。液体及び金属触媒の両方の目視評価を行い、記録する。次いで、チューブを175℃の一定温度で14日間エージングする。エージング後、最初の3つのチューブを、潤滑剤の色、不透明度、微粒子配合、金属触媒の腐食、及び鋼触媒の表面上の銅めっきの変化について目視で検査する。目視結果を取得し、記録する。
【0071】
潤滑剤の色をASTM D1500に従って測定する。この色試験のために、液体試料を試験容器に入れ、比色計及び標準光源を使用して着色ガラスディスクと比較する。ガラスディスクの値は0.5~8.0の範囲である。
【0072】
目視結果を以下の表2に記載する。
【0073】
【0074】
上記の目視試験結果に見られるように、本発明の潤滑剤は、エージングしていない試料に色がより近く、175℃に14日間曝露されたときの潤滑剤の劣化がより少ないことを示した。色値は、比較例(Comp Ex)の3.0に対して、発明例1及び発明例2(Inv1及びInv2)が2.75、発明例3及び発明例4(Inv3及びInv4)が2.5であった。本発明の潤滑剤は、金属クーポン、特に銅との相溶性もより高かった。Inv3及びInv4の金属クーポンは、全ての金属の光沢を維持しており、比較潤滑剤よりも有意に改善されていた。
【0075】
次いで、試料チューブを開放し、これらのチューブから潤滑剤を脱気する。次いで、潤滑剤を全酸価(「Total Acid Number、TAN」)(ASTM D974を使用)について分析し、イオンクロマトグラフィー(「Ion Chromatography、IC」)を使用して分解酸(全有機酸)について分析する。フッ化物が潤滑剤中に存在する場合、HFC冷媒との不相溶性を示すことができる。IC結果を以下の表3に示す。
【0076】
【0077】
上に示されるように、Inv3及びInv4は、Comp Exよりもエージング後により小さいTANの変化を有する。
【0078】
200℃での潤滑剤及びR-32の安定性及び相溶性
比較例(Comp Ex)並びに発明例3及び発明例4(Inv3及びInv4)の追加の試料を、R-32冷媒を用いて調製する。R-32は、ジフルオロメタン(CH2F2)である。試料を200℃で14日間維持することを除いて、エージング試験もこれらの試料で繰り返す。潤滑剤の性能も、上記のような視覚試験及びIC試験を使用して試験する。目視結果を以下の表5に記載する。
【0079】
【0080】
上記の目視試験結果に見られるように、本発明の潤滑剤は、エージングしていない試料に色がより近く、200℃に14日間曝露されたときの潤滑剤の劣化がより少ないことを示した。Comp Exは、チューブ壁及び底に暗い堆積物も有した。本発明の潤滑剤は、金属クーポン、特に銅との相溶性もより高かった。IC結果を以下の表6に示す。
【0081】
【0082】
上に示されるように、Inv3及びInv4は、200℃でエージングした後のTANの変化がComp Exよりも小さい。Inv3及びInv4は、潤滑剤中のフッ化物の濃度がより低いことによって示されるように、HFC冷媒との相溶性もより高い。
【0083】
上記で言及した文献の各々は、上記に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、優先権が主張される任意の先行出願を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。任意の文献の言及は、そのような文献が先行技術として適格であること、又は任意の管轄区域における当業者の一般知識を構成することを認めるものではない。実施例を除いて、又は他に明示的に示される場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本説明における全ての数量は、「約(about)」という語によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書に記載される量、範囲、及び比率の上限及び下限は、独立して組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲及び量は、他の要素のうちのいずれかについての範囲又は量と一緒に使用することができる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する」、又は「を特徴とする」と同義である「含む(comprising)」という移行用語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。しかしながら、本明細書における「含む」の各記載において、この用語がまた、代替的な実施形態として、「から本質的になる」及び「からなる」という句を包含することが意図され、ここで、「からなる」は、指定されていない任意の要素又はステップを排除し、「から本質的になる」は、考慮中の組成物又は方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の記載されていない要素又はステップの包含を許容する。
【0085】
本発明を例解する目的で、ある特定の代表的な実施形態及び詳細を示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。これに関して、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】