(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-18
(54)【発明の名称】エンジン制御装置を備える航空機のための後付け航空機オートスロットル制御
(51)【国際特許分類】
B64D 31/06 20240101AFI20241111BHJP
B64D 31/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B64D31/06
B64D31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575666
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022047605
(87)【国際公開番号】W WO2023146593
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504326918
【氏名又は名称】イノヴェイティヴ ソリューションズ アンド サポート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ヘドリック ジェフリー エス エム
(72)【発明者】
【氏名】アスカルプール シャフラム
(72)【発明者】
【氏名】クノプフ マルクス
(57)【要約】
航空機の手動スロットル設定を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムとインターフェース接続されるオートスロットルシステム。オートスロットルシステムは、検知されたPCL位置シグナリングとして自動出力コマンドシグナリングがFADECシステムにより認識されるように、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を仮想化するように合成された自動出力コマンドシグナリングを生成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムを備えた航空機のオートスロットルを制御するためのシステムであって、
処理回路、メモリ、及び入力/出力機構を含むオートスロットル制御装置であって、オートスロットル制御プログラムを含む命令を実行するように動作可能であり、検知されたPCL位置シグナリングを受け取るように動作可能な入力を含み、自動出力コマンドシグナリングを出力するように動作可能である、オートスロットル制御装置と、
前記オートスロットル制御装置及び前記FADECシステムに電気的に接続されるFADECインターフェースであって、前記検知されたPCL位置シグナリングと前記自動出力コマンドシグナリングの中から前記コマンド入力に接続されるものを選択するように前記オートスロットル制御装置によって制御可能な、FADECインターフェースと、
を備え、
前記オートスロットル制御プログラムは、実行されると、前記システムがオートスロットル制御のための連動状態にあるときに、前記オートスロットル制御装置に、制御目標設定値を決定し、前記制御目標設定値に従って前記自動出力コマンドシグナリングを生成するようにさせ、
前記自動出力コマンドシグナリングは、前記オートスロットル制御プログラムに従って前記オートスロットル制御装置によって生成され、検知されたPCL位置シグナリングとして前記自動出力コマンドシグナリングが前記FADECシステムにより認識可能であるように、前記検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を仮想化するように合成される、システム。
【請求項2】
前記FADECインターフェースは、前記システムがオートスロットル制御のための連動状態にないとき、前記検知されたPCL位置シグナリングを選択することをデフォルトに設定される電気的選択スイッチを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記オートスロットル制御装置及び前記FADECインターフェースは、安全側故障のために配置され、前記電気的選択スイッチは、前記オートスロットル制御装置が完全に機能しかつ連動するときにのみ、前記自動出力コマンドシグナリングを選択する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検知されたPCL位置シグナリングは、手動移動可能なレバーの角度位置を検出するように配置された角度位置センサによって生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記角度位置センサは、前記FADECシステムから励磁信号を受け取るように動作し、前記励磁信号は、前記オートスロットル制御装置によっても受け取られる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記自動出力コマンドシグナリングは、前記手動スロットル設定値とは無関係に、前記オートスロットル制御プログラムに従って、前記オートスロットル制御装置によって生成されかつ自動的に調整される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
検知されたPCL位置シグナリングを受け取るように動作する前記オートスロットル制御装置の前記入力は、前記FADECシステムによって受け取られるのと同じ検知されたPCL位置シグナリングを受け取る、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記オートスロットル制御装置は、FADECインターフェースプロセスを含む命令を実行するように動作可能であり、前記FADECインターフェースプロセスは、実行されると、前記オートスロットル制御装置に、前記航空機のための前記オートスロットル制御装置の構成中に、前記検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を学習させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記オートスロットル制御装置は、前記システムがオートスロットル制御のための連動状態にあるとき、オートスロットル連動信号を生成するように動作可能であり、前記FADECインターフェースは、前記オートスロットル連動信号に応答して、前記検知されたPCL位置シグナリング及び前記自動出力コマンドシグナリングの中から前記コマンド入力に接続されるものを選択するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記オートスロットル制御装置は、前記検知されたPCL位置シグナリングに基づく手動スロットル設定値の検知された変更に応答して、オートスロットル制御のための連動状態から抜け出して遷移するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムを備える航空機のオートスロットルを制御するための方法であって、
オートスロットル制御装置が、制御目標設定値を決定することを含むオートスロットル制御プログラムを含む命令を実行するステップと、
前記オートスロットル制御装置が、検知されたPCL位置シグナリング信号を受け取るステップと、
前記オートスロットル制御装置が、前記制御目標設定値に基づく自動出力コマンドシグナリングを出力するステップであって、検知されたPCL位置シグナリングとして前記自動出力コマンドシグナリングが前記FADECシステムにより認識可能であるように、前記検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を合成することを含む、ステップと、
前記オートスロットル制御装置の制御下で、前記検知されたPCL位置シグナリングと前記自動出力コマンドシグナリングの中から前記コマンド入力に接続されるスロットルコマンド信号を電気的に選択するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記電気的に選択するステップは、前記オートスロットル制御プログラムがオートスロットル制御のための連動状態にないとき、前記検知されたPCL位置信号を選択することをデフォルトに設定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
手動可動制御部の角度位置を検出するように配置された角度位置センサによって、前記検知されたPCL位置シグナリングを生成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記角度位置センサが、前記FADECシステムからの励磁信号を受け取るステップと、
前記オートスロットル制御装置が、前記励磁信号を受け取るステップと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記自動出力コマンドシグナリングを出力するステップは、前記手動スロットル設定値とは無関係に、前記オートスロットル制御プログラムに従って、前記オートスロットル制御装置によって、前記自動出力コマンドシグナリングを自動的に調整するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記検知されたPCL位置シグナリングを受け取るステップは、前記FADECシステムによって受け取られるのと同じ検知されたPCL位置シグナリングを受け取ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記オートスロットル制御装置が、前記航空機のための前記オートスロットル制御装置の構成中に、前記検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を学習するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記オートスロットル制御プログラムがオートスロットル制御のための連動状態にあるときに、オートスロットル連動信号を生成するステップをさらに含み、
前記検知されたPCL位置シグナリング及び前記自動出力コマンドシグナリングの中から前記コマンド入力に接続されるものを選択することは、前記オートスロットル連動信号に応答して実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記検知されたPCL位置シグナリングに基づく手動スロットル設定値の検知された変更に応答して、前記オートスロットル制御プログラムをオートスロットル制御のための連動状態から抜け出して遷移させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
処理回路によって実行されると、実施例11から19のいずれかを実施するための動作を前記処理回路に実行させる命令を含む、少なくとも1つの非一時的な機械可読媒体。
【請求項21】
実施例11から19のいずれかを実施するための手段を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年10月22日出願の米国仮出願第63/271,044号及び2021年12月27日出願の米国仮出願第63/294,014号の利益を主張するものであり、各々の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
(技術分野)
本発明は、一般に、航空術及び航空機制御に関し、より詳細には、パイロットの作業負荷を低減し、安全な飛行特性を維持するための自動スロットル制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にオートスロットルと呼ばれる航空機用自動スロットルシステムは、パイロットの介入を最小限に抑えて航空機のエンジンを制御するシステムである。このようなオートスロットルは、航空機の真に自動化されたハンズオフ制御を実現する能力を提供し、その結果、航空機の運転効率を高め、例えば燃料消費におけるコストを低減し、パイロットの作業負荷を大幅に低減し、それによって飛行安全性を顕著に高める。オートスロットルは、航空会社の旅客ジェット機、最新の地域及び一般航空ジェット機、及び最新のタービンプロペラ機など、大型又は最新の高性能航空機では普及しており、これは、一般に、総合的飛行管理システム(FMS)の一部としてオートスロットルを組み込んでいる。また、FMSは、横方向航法(LNAV)及び垂直方向航法(VNAV)によるオートパイロット制御も提供し、その飛行計画に沿って航空機を制御し、安全運航範囲内での運航を維持することができる。FMSは、根本的に航空機のメーカーによって航空機に組み込まれる統合的なシステムであり、監視パラメータの中で航空機の構成、位置、方位、速度、高度、性能を評価するために、航空機のあらゆる場所に様々なセンサ及びアクチュエータを備える。
【0003】
FMSは複雑でコストがかかるため、このようなシステムは、従来、一般航空に使用されるような小型航空機には実現困難と考えられてきた。小型航空機は、ピストン又はタービンを使用する単数又は複数エンジンを有する航空機(例えば、軽飛行機又は超軽量ジェット機(VLJ))を含む場合があり、一般に10人以下の乗客を収容する。通常、小型航空機の最大離陸重量(MTOW)は15,000ポンド(6,800kg)未満である。小型機は、自動操縦、GPSナビゲーションなどの、異種システムを含むことができるが、このようなシステムは、航空機メーカーのオプションとして提供されるか又は既存の航空機に後付けされる傾向にあるので、一般に、完成したFMSには統合されていない。また、レーダーベースの高度計、冗長対気速度センサなどのFMSで使用される特定のセンサは、通常、小型航空機には存在せず、FMSの追加をさらに困難にしている。
【0004】
米国特許出願第17/675,534号「PILOT INTERFACE FOR AIRCRAFT AUTOTHROTTLE CONTROL」には、航空機のスロットルの制御目標設定値を決定し、制御目標設定値に従ってスロットルを動的に調整する、小型航空機での使用に適したオートスロットルシステムが記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。オートスロットルシステムは、オートスロットル制御プログラムを実装し、オートスロットルアクチュエータを制御して、航空機のエンジン出力を自動的に制御するスロットル設定値を設定し、動的に調整することができる。オートスロットル制御プログラムは、複数のオートスロットル制御モードのうちの異なるものに従ってスロットル設定値を設定し、動的に調整することができ、オートスロットル制御モードの各々は、対応する制御目標設定値を規定する。
【0005】
小型航空機、特に小型の多発航空機は、多くの場合、全自動デジタルエンジン制御(Full-Authority Digital Engine Control:FADEC)システムを採用しており、このシステムは、最適又は最適に近いエンジン効率を提供するために、監視された設定値及び条件のセットに基づいて、飛行中の様々なエンジンパラメータの制御を自動化する。例えば、FADECシステムは、空気密度、スロットルレバー位置、エンジン温度、エンジン圧力などの飛行状況に基づいて、燃料流量、ステータベーン位置、エアブリードバルブ位置、又はこのようなエンジンパラメータの他のものを制御することができる。FADECシステムは、エンジン温度を運転限界以下に保つなど、特定の制約を履行することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FADECシステムを装備した小型航空機にオートスロットルシステムを組み込むことは、特に後付け装備として望ましいであろう。しかしながら、これには多くの課題がある。例えば、FADEC非対応の航空機で動作する既知のオートスロットルシステムは、出力制御レバー(PCL)と統合され、燃料制御を航空機のエンジに適合させるように動作する傾向がある。しかしながら、この機能(及び他の多種多様な機能)は、FADECシステムの領域である。後付けオートスロットルが作動しているとき、オートスロットルシステムがFADECシステムの機能に取って代わることは弊害をもたらす。
【0007】
従来、オートスロットルシステムがFADECシステムに取って代わることは、FADECシステムの機能をバイパスすること、又はオートスロットルシステムに実質的な複雑性を追加してその機能に取って代わることになる。エンジン最適化及び運航エンベロープ制限機能は非常に重要であるため、FADECシステムの機能を省略又は無効にすることは明らかに望ましくない。FADECシステムの機能を引き継ぐためにオートスロットルシステムに複雑性を加えることは、そのようなシステムの開発、認定、設置の費用を大幅に増加させ、すでにFADECシステムを有している航空機に、そのようなオートスロットルシステムを後付けすることに対する市場の需要はほとんどないであろう。加えて、どのような後付けシステムでも、既存の運航手順を維持することが非常に望ましい。既存のFADECシステムを無効にするオートスロットルシステムの追加は、航空機搭乗員が習得すべき運航手順を複雑にする傾向がある。
【0008】
これら及び他の理由から、FADEC対応航空機に後付けオートスロットルシステムを統合するための実用的な解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、航空機の手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムとインターフェース接続されるオートスロットルシステムに関する。オートスロットルシステムは、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を仮想化するように合成された自動出力コマンドシグナリングを生成し、自動出力コマンドシグナリングは、検知されたPCL位置シグナリングとしてFADECシステムによって認識されるようになっている。
【0010】
一実施形態によれば、航空機は、手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムを備える。航空機に後付け可能なオートスロットル制御装置は、処理回路、メモリ、及び入力/出力機構を含む。オートスロットル制御装置は、オートスロットル制御プログラムを含む命令を実行するように動作する。オートスロットル制御装置は、検知されたPCL位置シグナリングを受け取るように動作可能な入力を含み、自動出力コマンドシグナリングを出力する。
【0011】
FADECインターフェースは、オートスロットル制御装置及びFADECシステムに電気的に接続され、オートスロットル制御装置からのオートスロットル連動信号に応答して、検知されたPCL位置信号及び自動化された電力コマンド信号の中からコマンド入力に接続されるものを選択するように、オートスロットル制御装置によって制御可能である。オートスロットル制御プログラムは、実行されると、システムがオートスロットル制御のための連動状態(engaged state)にあるとき、オートスロットル制御装置に、制御目標設定値を決定し、制御目標設定値に従って自動出力コマンドシグナリングを生成するようにさせる。オートスロットル制御装置は、同様に、システムがオートスロットル制御のための連動状態にあるとき、オートスロットル連動信号を生成するように動作する。
【0012】
自動出力コマンドシグナリングは、オートスロットル制御プログラムに従ってオートスロットル制御装置によって生成され、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を仮想化するように合成され、自動出力コマンドシグナリングは、FADECシステムによって検知されたPCL位置シグナリングとして認識されるようになっている。
【0013】
主題の関連する態様は、本明細書に記載される方法のいずれかによる動作を実行するために、オートスロットルシステムの制御装置上で実行可能である命令(少なくとも1つの有形、非一時的な機械可読媒体上に格納される)を含む。
【0014】
関連する態様において、手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有するFADECシステムを備える航空機のオートスロットルを制御するための方法が提供される。
【0015】
本方法は、オートスロットル制御装置が、制御目標設定値を決定することを含むオートスロットル制御プログラムを含む命令を実行するステップを含む。さらに、本方法は、オートスロットル制御装置が、検知されたPCL位置シグナリングを受け取るステップと、オートスロットル制御装置が、制御目標設定値に基づく自動出力コマンドシグナリングを出力するステップであって、自動出力コマンドシグナリングが検知されたPCL位置シグナリングとしてFADECシステムによって認識可能であるように、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を合成することを含むステップと、オートスロットル制御装置の制御下で、検知されたPCL位置シグナリング及び自動出力コマンドシグナリングの中からコマンド入力に接続されるスロットルコマンド信号を電気的に選択するステップと、を含む。
【0016】
多くの利点が、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
本発明は、添付の図面に関連した本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することでより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】航空機及びその飛行に関与する基本的な力を例示する簡易図である。
【
図1B】いくつかの実施形態による航空機に当該システムが一緒に実装される場合のFADECシステムとオートスロットルシステムとの間の基本的な関係を示す簡略化されたブロック図である。
【
図2A】本開示のいくつかの実施形態に従ってオートスロットル制御装置を後付けすることができる航空機のコックピット又は操縦室を示す図である。
【
図2B】一実施形態による統合スタンバイユニット(ISU)の一部としてのオートスロットル制御装置及び情報表示装置の実施構成を示す図である。
【
図3】いくつかの実施形態によるオートスロットル制御システムを示すハイレベルブロック図である。
【
図4】例示的な実施形態によるオートスロットル制御装置の構成要素を示す簡略化されたブロック図である。
【
図5】いくつかの実施例によるオートスロットル制御装置によって実行可能な特定の命令の一部を示す簡略化されたブロック図である。
【
図6】いくつかの実施例によるオートスロットル制御システムのいくつかの基本状態を示す状態図である。
【
図7】いくつかの実施形態によるオートスロットルシステム制御装置とFADECシステムとの間の電気的インターフェースの一例を示す簡略化されたブロック図である。
【
図8】例示的な実施形態による航空機のFADECシステムとインターフェース接続された後付けオートスロットルシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、様々な変更例及び代替形態に適用できるが、その具体的な内容は、図面に例示的に示されており、詳細に説明されることになる。しかしながら、その目的は、本発明を説明された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。むしろ、その目的は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲に入る全ての修正形態、均等物、及び代替形態をカバーすることである。
【0020】
本開示の態様は、従来の燃料燃焼航空機(プロペラ駆動、ターボプロップ、ジェット機など)、電気航空機(バッテリ駆動、太陽電池駆動、又は燃料電池駆動)、又はハイブリッド駆動航空機など、あらゆる動力航空機に適用可能であることに留意されたい。以下の説明では、様々な実施形態が、1つの又はいくつかのタイプの推進又は推進-エネルギ-送達システムとの関連で説明されるが、説明された実施形態の原理は、航空機技術者の技量の範囲内にある適切な適応でもって、他の推進又は推進-エネルギ-送達システムを有する他のタイプの航空機に適切に適用可能であることを理解されたい。
【0021】
図1Aは、航空機100及びその飛行に関与する基本的な力を示す簡易図である。航空機100は、主に航空機100の本体(例えば、その翼、胴体、及び操縦翼面)の形状及び向きを利用して空気を下向きに向けることにより、その前進運動から揚力102を発生させる。また、揚力は、空気密度、速度の二乗、空気の粘性及び圧縮性、空気が流れる表面積に依存する。航空機100の本体形状への依存は複雑であり、数学的にモデル化することは困難である。航空機100の傾き、空気の粘性(例えば、気温、湿度、高度に起因する)、揚力上の圧縮率(compressibility on the lift)の作用は変わりやすく、所定の動作条件に関して導き出すことも困難である。
【0022】
抗力104は、航空機100の前進運動に抵抗する力である。抗力104は、特に、空気と航空機100の表面との間の空気力学的摩擦(表面摩擦)、空気中を通る航空機100の運動に対する空気力学的抵抗(形状抗力)、及び揚力によって生じる抗力(誘導抗力)などの多くの成分を有し、これらは同様に、抗力を予測的に計算するために考慮することが困難である。揚力102と同様に、抗力104は、航空機100のサイズ、形状、及び重量、航空機100の表面特性、空気の流体特性、及び他のパラメータを含む、多数の複雑な要因に依存する。特に、抗力104の異なるパラメータは、異なる対気速度で支配的になる。低い対気速度では、抗力104の主成分は誘導抗力である。航空機100がその対気速度を増加させると、揚力102がより容易に生成され、誘導抗力が実際に低減する。しかしながら、対気速度の増加に伴い、他の抗力成分(総称して寄生抗力と呼ばれる)が増加する。
【0023】
推力106は、抗力104に打ち勝つために航空機100が発生する推進力である。推力の生成には、燃料又は他の搭載エネルギ供給源の消費が必要である(例えば、バッテリ駆動型航空機の場合の電気量)。推力の大きさは、エンジンの種類及び数量、ならびにスロットル設定値など、航空機100の推進システムに関連する多数のパラメータに依存する。重量108は、重力と、機体の質量、燃料の質量(燃料消費型航空機の場合、時間的に変動する量である)、及び航空機100上のあらゆるペイロード(人、貨物など、これも空中投下作戦の場合のように動的に変動し得る)を含む航空機100の質量との組合せである。重量108の動的変動は、揚力102及び抗力104の大きさも航空機100の飛行中に経時的に変化することを意味する。
【0024】
航空機100の性能は、様々な物理的制約によって制限される。例えば、対気速度は、利用可能な推力と同様に、航空機100の機体の空気力学及び構造強度によって実質的に制限される。また、エンジン、シャフト、プロペラ、及びその他の関連する構成要素が耐えられる出力、推力、又はトルクにも制限がある。同様に、エンジンは、エンジン構成要素又は流体が作動できる温度によって制限される。このような様々な制約は、通常、エンジン製造業者によって提供される最大定格として表される。
【0025】
航空機100の運航中、様々な制約は、飛行フェーズ、空気密度及び温度、及び他のパラメータに応じて航空機の性能制限を支配する。例えば、離陸及び上昇中、航空機100の性能は、主に、最大エンジン出力、推力、又はトルクによって制限される傾向があり、一方、巡航中、航空機100の性能は、エンジン温度によって制限される傾向がある。
【0026】
揚力102と抗力104の両方の力が複雑で変動するため、航空機100のパイロットが、所望の動作点、例えば、
-離陸中又は上昇中の最大出力、最大推力、最大トルクの動作点、
-巡航中の最高温度の動作点、
-耐久性最大化飛行のための最大効率の動作点
で、離陸、上昇、又は巡航するために、現在の高度、重量、及び空気の状態を考慮して、最適なスロットル設定値を維持することは困難である。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、オートスロットル制御システム(オートスロットルシステム、又は単にオートスロットルと互換的に呼ばれる場合がある)が航空機に採用され、現在の飛行フェーズの動作点、又は一連の動作点を維持するために、エンジン出力を動的に調整する。動作点は、PCLを含むオートスロットルシステムのインターフェースを使用して、パイロットによって設定及び変更することができる。また、動作点は、安全又は最適な飛行エンベロープを維持するために、オートスロットルシステムによって自動的に調整することもできる。
【0028】
別の関連する態様では、PCLには、オートスロットル制御モードを設定する入力を含む、オートスロットルのパイロット制御を容易にするために、スイッチ、押しボタンなどの単純な入力装置のセットが付随する。
【0029】
図1Bは、いくつかの実施形態による航空機に当該システムが一緒に実装される場合のFADECシステムとオートスロットルシステムとの間の基本的な関係を示す簡略化されたブロック図である。図示のように、航空機のエンジン120は、エンジン制御シグナリング123を生成するFADECシステム122によって制御される。エンジン制御シグナリング123は、空気密度、エンジン温度、エンジン圧力、及び他のそのようなパラメータを含む飛行状態、さらに手動スロットル入力に基づいて、エンジン120のスロットル設定値、ステータベーン位置、エアブリードバルブ位置などのアクチュエータを制御するための様々な信号を含む。
【0030】
FADECシステム122は、手動スロットル入力130、及び検知状態132を含む入力を受け取る。手動スロットル入力130の一例は、PCLの位置である。検知状態132は、温度センサ、圧力センサなどの出力を含み、FADECシステム122に飛行状態情報を提供する。
【0031】
オートスロットルシステム124は、同様に手動スロットル入力130を受け取る。様々な実施構成において、オートスロットルシステム124は、FADECシステム122によって読み取られるのと同じPCL位置センサを読み取る。他の実施構成では、オートスロットルシステム124は、FADECシステム122によって使用されるものとは異なる専用のPCLセンサを使用する。オートスロットルシステム124は、オートスロットル(AT)出力125を生成し、これは入力としてFADECシステムが受け取る。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に説明されるように、オートスロットルシステム124は、手動スロットル入力130又はAT出力125の中から選択するために、FADECシステム122へのPCL位置入力を制御するFADECインターフェースを含む。
【0032】
図2Aは、本開示のいくつかの実施形態に従ってオートスロットルパイロットインタフェース制御が実装される、航空機100などの航空機のコックピット又は操縦室200(これらの用語は、本明細書において互換的に使用することができる)を示す図である。コックピット200は、この例では、センターコンソールに枢動可能に取り付けられ、アーチ形の移動経路に沿って前後方向に移動可能なPCL202を含む。
【0033】
PCL202は、図示の実施例に示されるように、単一のレバーとすること又は多発航空機の場合には、複数のレバー(図示せず)を備えることができる。簡略化のため、本明細書では、複数のレバーへの具体的な言及が意図されない限り、1又は2以上の出力制御レバーを単に「PCL」と呼ぶことになる。より一般的な実施形態では、レバーではなく、別の形態で出力制御入力を提供することができる。例えば、出力制御入力は、少なくとも1つのスライダ、ノブ、ホイール、ペダル、又は他のパイロット作動可能機構(又は機構のセット)として実装することができる。ここでも、簡略化のために、出力制御入力(それがどのような形であれ)を単に「PCL」と呼ぶ。
【0034】
FADEC対応航空機では、PCL202は、FADECシステム制御装置を介して、航空機100のそれぞれのエンジン及び燃料供給システムに接続される。例えば、FADECシステムは、PCLの位置又は動きを示すシグナリングを読み取り、その位置又は動きを、エンジン出力を設定又は調整するためのパイロットの要求(call)として解釈する。例えば、いくつかの実施構成では、PCLの位置(選択された推力位置)情報は、他のタイプのセンサの中でも、ポテンショメータ、回転式可変差動変圧器(RVDT)又は回転式可変インダクタンス変換器(RVIT)センサなどのPCL角度測定センサを介して、FADEC制御装置によって監視される。さらに、FADECシステム制御装置は、PCLの位置又は動きに基づいて、エンジン出力(例えば、燃料又は燃焼空気の流れ、又は電気航空機の場合は、エンジンへの電力供給)を調整するアクチュエータを作動させる又は調整する。他の多くのエンジンパラメータも同様にFADECシステムによって制御することができる。
【0035】
オートスロットルシステムは、米国特許第11,027,854号(その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、又は他の適切な検知手段によって、PCL202の位置を検知及び監視するように配置することもできる。従って、PCL202は、オートスロットルパイロットインタフェース制御の一部として機能することができる。1つのタイプの実施形態では、オートスロットルシステムは、PCL位置を決定するために、FADECシステムの一部であり、オートスロットルシステムによっても読み取られる角度測定センサを使用する。他の実施形態では、オートスロットルシステムは、FADECシステムのセンサから独立してPCL位置を測定するために、追加の専用センサを利用する。
【0036】
図2Aに示される実施例は、追加のオートスロットルパイロットインタフェース制御、すなわち、オートスロットル起動制御部204、離陸/ゴーアラウンド制御部206、及びオートスロットルモードセレクタ208を示す。これらの制御部204-208は、図示の実施形態によれば、モーメンタリ式押しボタンスイッチとして実装される。しかしながら、他の実施形態では、制御部204-208は、セレクタノブ、複数のロッカースイッチ、マルチポジションセレクタスイッチ、トグルスイッチ、プッシュオン/プッシュオフスイッチ、複数のソフトキー制御部(例えば、タッチスクリーンを介して)等の他のタイプの入力機構を使用して実装することができる。
【0037】
加えて、オートスロットルモード表示装置210が設けられている。オートスロットルモード表示装置210は、後述の表示装置をオートスロットル制御装置にインターフェース接続する表示デコーダ又は駆動回路と共に、LED又はLCDセグメント、LED又はLCDデバイスのマトリクス、又は他の適切な表示技術を含むことができる。図示の実施例では、オートスロットルモード表示装置210は、情報がオートスロットルモードセレクタ208のパイロットに面する表面に表示されるように、オートスロットルモードセレクタ208と一体である。他の実施形態では、オートスロットルモード表示装置210は、オートスロットルモードセレクタ208とは別個であり、コックピット200の制御パネルの他の場所に配置することができる。さらに他の実施形態では、オートスロットルモード表示装置210は、計器表示又はナビゲーション表示画面など、コックピット200に存在する汎用情報表示装置を使用して、又はヘッドアップ表示装置に表示される情報の一部として実装される。
【0038】
図2Bは、実施形態による統合スタンバイユニット(ISU)の一部としてのオートスロットル制御部及び情報表示装置の実装を示す図である。図示のように、ISU220は、多機能表示装置222と、セレクタノブ224、インジケータライト226、及び押しボタン228A及び228Bを含む様々なオートスロットル制御部とを含むユーザインターフェースである。多機能表示装置222は、ATモード表示230、AT設定232など、オートスロットル動作に関連する情報を表示することができる。インジケータライト226は、オートスロットルの状態、例えば作動可能(armed)/作動解除(disarmed)、連動(engaged)/非連動(disengaged)などを示すことができる。例えば、インジケータライト226は、オートスロットルが連動している場合は緑色に点灯し、オートスロットルが非連動の場合は琥珀色に点灯し、オートスロットルが連動していない場合は非点灯とすることができる。
【0039】
A/T PWRの記号のある押しボタン228Aは、オートスロットルシステムの作動可能/作動解除制御部として機能することができる。MENUの記号のある押しボタン228Bは、セレクタノブ224の機能の制御部として機能する場合がある。従って、動作状況に応じて、セレクタノブ224は、オートスロットルモード、オートスロットル制御目標設定値などを選択するための入力として動作することができる。セレクタノブ224は、回転入力に加えて、押しボタン入力を提供することができる。関連する実施形態では、制御装置などのオートスロットルシステムの回路の少なくとも一部は、ISU220に収容することができる。
【0040】
多機能表示装置222は、オートスロットル情報に加えて、対気速度、高度、方位、水平線、及び様々な監視されたエンジン状態などの様々な飛行及びエンジン関連の状態を表示することができ、これら全ては、航空機の操縦室の計器クラスタに設けられる他の、主要な、計器に対して冗長である可能性があり、従来のスタンバイユニットに表示される情報と一致している。特に、いくつかの実施形態では、ISU220は、ISU220によって置き換えられることになる、航空機に元々備わっている従来のスタンバイユニットと一致する外形寸法を有する。例えば、ISU220は、本来は従来のスタンバイユニットのために作られていた計器パネルのカットアウトに嵌合することができる。有利には、ISU220の追加は、航空機の保証された視野を変更せず、これは、後付け用途で特に有益である。
【0041】
図3は、いくつかの実施形態によるオートスロットル制御システム300を示すブロック図である。図示のように、システム300は、手動スロットル入力302を含み、これは、PCL202のようなPCL、又は他のタイプの入力の形態をとることができる。例えば、パイロットインターフェースは、ローカルオペレータインターフェース(LOI)デバイスの形態で設けることができる。LOIデバイスは、有効/無効、連動/非連動、制御モード選択、速度/トルク設定値など、パイロットからの入力を受け入れるために、1又は2以上の押しボタン、ノブ、スイッチ、タッチスクリーン制御部、ジョイスティック、トラックボール、タッチパッド、マイク及び音声認識システムなどを有するか又は実装することができる。LOIデバイスは、オートスロットルシステムの動作状態並びにオートスロットル制御の設定値を表示する表示装置又はインジケータライトを含むことができる。
【0042】
スロットル設定センサ308は、PCLの位置又は動きを検出するように配置され、PCL位置シグナリング309Aをオートスロットル制御装置310及びFADECインターフェース304に提供する。特に、シグナリング309A及び309Bは、手動PCL入力302が適用された場合のPCLの手動の動きの作用を表す。
【0043】
FADECインターフェース304は、その例が以下にさらに詳細に説明されるが、オートスロットルシステムとFADECシステムとの協調動作を容易にする。オートスロットルシステムが連動すると、オートスロットル制御装置310は、FADECインターフェース304を介してFADECシステムに選択的に供給されるコマンドシグナリング305を生成する。FADECシステムは自動的にスロットル設定値306を生成してエンジン出力を調整し、他のパラメータを制御してエンジン性能及び信頼性を最適化する。オートスロットルシステムが非連動となると、FADECインターフェース304はコマンドシグナリング305をFADECシステムに渡さない。
【0044】
以下により詳細に説明するように、1つのタイプの実施構成では、FADECインターフェース304は、オートスロットルシステムが連動するか又は非連動であるかいずれかに応じて、オートスロットル制御装置310からのコマンドシグナリング305と、検知されたPCL位置シグナリング309Bとの間を選択する。さらに、以下でさらに詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、コマンドシグナリング305は、PCLが手動で位置決め又は移動されたかのように、実際のPCL位置シグナリング309Bを模倣するように合成される仮想PCL位置信号である。仮想PCL位置信号は、実際に検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を仮想化し、オートスロットルシステムによって生成された自動出力コマンドシグナリングは、検知されたPCL位置シグナリングとしてFADECシステムによって認識されるようになっている。
【0045】
いくつかの実施形態では、オートスロットル制御装置310は、PCL位置シグナリング309Aを受け取ることにより、PCL位置センサ308を介してPCL位置を監視する。オートスロットル制御装置310が連動状態で、コマンドシグナリング305を生成しているとき、PCL位置は、同時に、あらゆる手動スロットル入力302について監視される。この動作状態において、手動スロットル入力302がない場合、オートスロットル制御装置310は、その自動制御モードを維持するが、手動スロットル入力302が検出されると、オートスロットル制御装置310は、非連動になり、その非連動の通知をパイロットに提示する。このような通知は、ライト又は表示装置を使用した可視指示、又は可聴通知を含むことができる。いくつかの実施構成では、通知は、パイロットがオートスロットル制御の非連動を認めるまで繰り返される。
【0046】
オートスロットル制御装置310は、複数の入力に基づいて、FADECインターフェース304へのコマンドシグナリング305を生成する。オートスロットルモード入力312は、オートスロットルモードセレクタ208、又はISU220の制御部224及び228などの適切な入力を介して、航空機100のパイロットによって提供される。入力は、オートスロットル制御装置310の連動/非連動、オートスロットルモードの選択、又はオートスロットルの挙動又は動作目的を規定する1又は2以上の利用可能なオートスロットルプログラムからの選択などのパラメータを含むことができる。
【0047】
オートスロットル制御装置310への他の入力は、オートスロットル起動入力314、及びオートスロットルTO-GAコマンド入力316を含むことができる。オートスロットル起動入力314は、オートスロットル起動制御部204を介して提供することができ、オートスロットル制御の連動状態と作動可能状態との間を選択するために、並びにオートスロットルを完全に非連動にして作動解除状態にするために、パイロットによって様々なパターン(例えば、短押し/長押し)で操作可能である。オートスロットル離陸/ゴーアラウンド(TO-GA)入力は、離陸/ゴーアラウンド制御部206を介して提供され、航空機100が地上にあるときにオートスロットルを離陸オートスロットルプログラムにするため、又は航空機100が空中にあるときにオートスロットルを上昇(ゴーアラウンド)プログラムにするために、パイロットによって操作可能である。追加の機能は、入力312-316に割り当てることができ、これらは個別に、又はPCL202を介して手動スロットル入力302と組み合わせて作動させることができる。例えば、オートスロットル起動入力314は、オートスロットルの粗速度調整又は微速度調整を切り替えるために、パイロットによって特定のパターン(例えば、二度押し)でさらに起動させることができる。同様に、PCL202の位置決めと連動したオートスロットル起動入力314の起動は、パイロットによって、オートスロットル制御目標設定値を設定又は再設定するために使用することができる。
【0048】
また、オートスロットル制御装置310は、高度計、燃料消費率センサなどの航空機100上の他の利用可能なセンサと併せて、エンジン温度センサ320、エンジントルクセンサ322、及び対気速度センサ324などのセンサからの様々な入力を受け取ることができる。
【0049】
図4は、一実施例によるオートスロットル制御装置310の構成要素を示す簡略化されたブロック図である。オートスロットル制御装置310は、1又は2以上のプロセッサコア412を含むことができる中央処理装置(CPU)410を含む。メモリ回路414は、スタティック又はダイナミックランダムアクセスメモリ(RAM)、及びCPU410とインターフェース接続されたメモリ制御装置回路を含むことができる。命令416は、CPU410又はメモリ414のメモリ制御装置回路とインターフェース接続された、読み出し専用メモリ(ROM)デバイス又はフラッシュEEPROMデバイスなどの電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)デバイスに格納することができる。入力/出力(I/O)制御装置418は、上述の様々な入力及びコマンドシグナリング305出力へのインターフェースを含む。いくつかの実施構成では、I/O制御装置418は、シリアル通信用のユニバーサル非同期送受信機(UART)、パラレルポート、又はデータバスインタフェースを含むことができる。I/O制御装置418は、CPU410又はメモリ414のメモリ制御装置とインターフェース接続することができる。
【0050】
ADC/DAC420は、アナログ/デジタル(A/D)変換器、及びデジタル/アナログ変換器(D/A)を含み、1又は2以上のセンサ又はアクチュエータとインターフェース接続することができる。いくつかの実施形態では、ADC/DACは、PCL位置センサ308とインターフェース接続される(PCL位置シグナリング309Aを受け取る)。また、ADC/DAC420は、FADECインターフェース304とインターフェース接続することができ、この場合、ADC/DAC420は、コマンドシグナリング305を合成することができる。ADC/DAC420は、CPU410又はメモリ414のメモリ制御装置とインターフェース接続することができる。
【0051】
オートスロットル制御装置310は、オートスロットル制御システム300の機能を実行するために、命令416を実行するように動作可能である。
図5は、いくつかの実施例による命令416の一部を示す簡略化されたブロック図である。オートスロットルモード入力312又はオートスロットルTO-GA入力316を介してオートスロットル制御システム300を動作させるときに、航空機100のパイロットは、オートスロットル動作の制御アルゴリズムを指示する特定の利用可能なプログラムの中から選択することができる。また、オートスロットルの動作状態は、オートスロットルモード入力312及びオートスロットル起動入力314を介して選択可能である。
【0052】
命令416は、ユーザインターフェースプロセス502、飛行安全監視プロセス504、対気速度プログラム510、エンジン推力プログラム512、耐久性最大化プログラム514、対気速度最大化プログラム516、離陸/ゴーアラウンドプログラム518、及びFADECインターフェースプロセス520を含む。各プロセス又はプログラムは、オートスロットル制御システム300を動作させるためにオートスロットル制御装置310によって実行可能な命令のセットを含む。一般に、プログラム510-518の各々は個別に実行される(1つのプログラムが別のプログラムに自動的に遷移する場合もある)。しかしながら、ユーザインターフェースプロセス502、飛行安全監視プロセス504、及びFADECインターフェースプロセス520は、連続的に実行される。
【0053】
ユーザインターフェースプロセス502は、全てのユーザ入力(及び随意的に特定のセンサ)を監視し、それに応答してオートスロットル制御システム300を様々な状態に設定するように動作する。
図6は、一実施例による、いくつかの基本状態を示す状態図である。基本状態は、作動解除状態(disarmed state)602及び作動可能状態(armed state)604を含む。作動可能状態604は、連動状態(engaged state)612及び非連動状態(disengaged state)614を含む。オートスロットル制御システム300は、遷移603を介して作動解除状態602から非連動状態614に遷移し、遷移615を介して非連動状態614から元の作動解除状態602に遷移する。オートスロットル制御システム300は、遷移605を介して作動解除状態602から作動可能-連動状態612に遷移し、遷移613を介して作動可能-連動状態612から元の作動解除状態602に遷移する。図示のように、作動可能状態では、オートスロットル制御システム300は、遷移617及び619を介して連動状態612と非連動状態614との間を遷移する。
【0054】
作動解除状態602では、オートスロットル制御システム300は、一般に動作しない。いくつかの実施形態では完全に動作不能とすることができ、又は他の実施形態では、オートスロットル制御システム300は、過速度/速度不足、過温度、過トルクなどの特定の安全関連指標を監視するために最小限に動作可能とすることができ、さらに、安全な飛行エンベロープを回復及び維持するために、安全でない状態に応答してオートパイロット制御に自律的に連動することができる。作動可能状態604では、オートスロットル制御システム300は、制御入力を監視し、オートスロットル制御目標設定値を決定する。作動可能-連動状態612では、オートスロットル制御システム300は、制御目標設定値に従ってコマンドシグナリング305を生成する。
【0055】
以下の表1は、一実施例に従って、ユーザインターフェースプロセス502によって処理されるパイロット入力の様々な動作を要約している。
(表1)
【0056】
1つの実施形態では、
図2Aに示すように、オートスロットルモードセレクタ208は、オートスロットルシステムを最初に作動可能にし、オートスロットルモード間を切り換えるために使用されるボタンである。別の実施形態では、
図2Bに示すように、A/T PWRボタン228Aは同様の機能を有する。モードは、以下により詳細に説明され、非限定的に以下を含むことができる。
TO-離陸モード
CLB-上昇モード
CRZ-巡航-最大出力モード
THR-推力維持モード
GA-ゴーアラウンドモード
###-設定-速度制御モード
OFF-非連動
【0057】
図2Aに示す実施形態では、計器パネルに取り付けられたモードセレクタ208のボタンは、オートスロットルモード及び速度目標値を表示するための表示装置210(例えば、ボタン面上のバックライト付きLCD又はLEDアレイ)を組み込むことができる。オートスロットルモードは、作動可能-非連動状態614のときは第1の色、例えば白で表示することができ、作動可能-連動状態612のときは第2の色、例えば緑で表示することができる。
【0058】
図2Bの実施形態では、A/T PWRボタン228Aは、モードセレクタ208ボタンと同様の機能を有する。多機能表示装置222及びインジケータライト226は、オートスロットルシステムの状態を示すように作動する。
【0059】
作動可能状態604でないときにオートスロットルモードセレクタ208ボタン又はA/Tボタン228Aを押すと、オートスロットルが作動可能になる。1つの実施例では、オートスロットルは、最初に、現在のトルク又は対気速度で作動可能になる。いくつかの実施例では、オートスロットルモードセレクタ208のボタン又はA/T PWRボタン228Aを繰り返し押すと、推力モードと速度モード(推力作動可能、速度作動可能、非連動の場合はオフ)が切り替わる。いくつかの実施例では、オートスロットルモードセレクタ208のボタン又はA/T PWRボタン228Aを押し続けると(>1秒)、オートスロットルが連動又は非連動になる。オートスロットルは、作動可能状態604からのみ連動させることができる。
【0060】
他の実施例では、セレクタノブ224は、A/T PWRボタン228Aではなく、又はA/T PWRボタン228Aに加えて、オートスロットルモード選択入力を容易にするために使用することができる。オートスロットルシステムとのユーザ対話を容易にするために、多種多様な入力パターン、及び他のタイプのユーザインターフェース制御が企図される。
【0061】
いくつかの実施形態では、オートスロットルシステム300が作動可能状態604にあるとき、PCL202を動かして、オートスロットル目標トルク値又は速度値を調整することができる。調整された設定値は、表示装置210に表示される。特に、オートスロットル設定値は、航空機が飛行中に実際に設定パラメータに到達する前に、PCL202の手動移動を使用して調整及び設定することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、オートスロットル起動制御部204は、1つの実施形態において、ボタンであり、PCLハンドルの右側に配置されている。オートスロットル起動制御部204のボタンを押すと、オートスロットルシステム300は、作動可能-連動状態612になるか、又は、オートスロットルは、作動可能-非連動状態614に切り離されることになる。オートスロットル起動制御部204のボタンを再度押すと、(作動可能)オートスロットルが状態612に再連動し、更新されたトルク又は速度目標値を能動的に維持することになる。速度制御モードで、作動可能-非連動状態614にある間にオートスロットル起動制御部204のボタンを2度押すと、目標速度の粗調整又は微調整が切り替わることになる。オートスロットル起動制御部204のボタンを押し続けると(>1秒)、オートスロットルは完全に非連動になり、作動解除状態602に戻ることになる。
【0063】
1つの実施形態では、離陸/ゴーアラウンド制御部206は、PCLハンドルの左側のボタンとして実装される。オートスロットルシステムが作動可能-非連動状態614にあり、モードが離陸(TO)モードに設定されているとき、スロットルハンドルの離陸/ゴーアラウンド制御部206のボタンを作動させると、TOモードが起動し、コマンドシグナリング305は自動的に最大連続推力設定値に調整されることになる。航空機100が空中にあるとき、オートスロットルが作動可能状態612、614のいずれかにある間に離陸/ゴーアラウンドコントロール206ボタンを押すと、ゴーアラウンド(GA)モードが起動し、コマンドシグナリング305は、オートスロットルの制御下で最大連続推力に自動的に調整されることになる。
【0064】
図5に戻ると、飛行安全監視プロセス504は、航空機のセンサ(例えば、エンジン温度センサ320、エンジントルクセンサ322、対気速度センサ324、高度計など)を監視し、航空機100の現在の動作状態又は性能、又は状態を、航空機100及びそのエンジンの事前に設定された制約と比較して、航空機がその安全な飛行エンベロープ内で動作していることを保証するように動作する。例えば、現在の高度での速度超過/速度不足、温度限界、トルク限界、多発航空機における差動トルクなどを監視し、オートスロットルシステムの制御を無効にして、航空機が安全な動作条件内に留まるようにコマンドシグナリング305を調整することができる。
【0065】
対気速度プログラム510は、オートスロットルに基本的な固定-対気速度制御(設定速度制御モード)を実施させる。プログラム510は、特定の対気速度を設定するためのパイロット入力を受け付けるが、この入力は、例えば、PCL202又はセレクタノブ224の移動による手動スロットル入力302を介して設定することができる。その後、対気速度プログラム510は、指示対気速度が設定値より下がればエンジン出力を増加させ、指示対気速度が設定値より上がればエンジン出力を減少させるコマンドシグナリング305を生成する。オートスロットルが設定速度制御モードに連動している場合、パイロットは、例えば、オートスロットル起動制御部204のボタン又はA/T PWRボタン228Aを押して、オートスロットルを作動可能-非連動状態614に解除し、PCL202又はセレクタノブ224を動かして、新しい目標速度(表示装置210に白色で表示することができる)を選択することができる。目標速度が選択された後、オートスロットル起動制御部204のボタン又はA/T PWRボタン228Aを再び押すと、選択された対気速度を維持するためにオートスロットルが再開する。作動可能-非連動状態614では、設定速度制御モードにある間、PCL202又はA/T PWRボタン228Aの動きは、5ノット増分に丸められた目標速度の変化に変換することができる。例えばオートスロットル起動制御部204のボタン、又はセレクタノブ224をダブルクリックすると、目標速度を(細かい)1ノット増分で調整することができる。
【0066】
エンジン推力プログラム512は、推力維持モード(THR)を実行し、現在のエンジントルクを維持する。プログラム512は、現在の上昇率に基づいて適用できる出力及び温度限界を守るために、トルクを自動的に減少させることができる。THRモードでオートスロットルが作動可能-連動状態612にある間、パイロットはオートスロットル起動制御部204のボタンを押してオートスロットルを一時的に作動可能-非連動状態614に解除し、PCL202又はA/T PWRボタン228Aを手動で動かして新しい推力設定値を選択することができる。トルクを調整した後、オートスロットル起動制御部204のボタン又はA/T PWRボタン228Aを再び押すことによって、オートスロットルを再連動させて、新しいトルクを維持することができる。
【0067】
耐久性最大化プログラム512は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国出願第17/359,019号に記載されるような、航空機が支配的条件下でその最大揚力対抗力(L/D)比又はその近くで動作するように、航空機100の効率的な動作点を決定及び維持するための動的対気速度制御アルゴリズムを実装する。
【0068】
対気速度最大化プログラム516は、(例えば、エンジン温度センサ320を介して)エンジン温度を監視し、エンジン温度を適用できる最大動作温度限界又はその近傍に維持しながら、最大速度を要求するようにコマンドシグナリング305を調整する、巡航動作のためのオートスロットルシステム300の動的制御アルゴリズムを実装する。
【0069】
離陸/ゴーアラウンドプログラム518は、離陸モード(TO)、上昇モード(CLB)、巡航モード(CRZ)、及びゴーアラウンドモード(GA)、並びにこれらのモード間の自動遷移を実施する。TOは、航空機100が地上にある間に開始される。離陸プログラム518に従って、コマンドシグナリング305は最大連続トルク(MCT)を維持するように設定される。TOは、(地上にある間に)モードセレクタ208のボタン又はA/T PWRボタン228Aを押すことによって作動可能にされる。モードセレクタ208のボタン又はA/T PWRボタン228Aを再度押すと、TOが作動解除される。
【0070】
TOが作動解除された状態で、パイロットは、上述したように、PCLハンドルの離陸/ゴーアラウンド制御部206のボタンを押すことにより、オートスロットル離陸を開始することができる。これは、オートスロットル300を連動させ、MCTへの出力が徐々に増加するようにコマンドシグナリング305を動的に調整するようにさせる。このような制御の下で、推力は、手動又は自動で上昇出力に低減されるまでMCTに維持されることになる。
【0071】
離陸/ゴーアラウンドプログラム518に従い、TOは、予め設定されたモード遷移基準を満たすと、上昇モード(CLB)に遷移する。1つの実施態様では、モード遷移基準は、MCTにおける予め設定された持続時間(例えば、2-5分)を含む。別の実施態様では、CLBに入るためのモード遷移基準は、高度上昇であり、これは、航空機100の利用可能な気圧高度計によって測定可能である(例えば、TOが開始された高度から400フィートの高度上昇)。この手法は、多くの小型航空機では一般的に備えられていないレーダーベースの高度計又は他の高価な計器に依存するのではなく、容易に利用可能な高度測定データを使用する。
【0072】
関連する実施形態では、CLBに入る遷移基準は、TO中にパイロットによるPCL202の手動減少を含む(例えば、オートスロットル起動制御部204のボタンを作動させてオートスロットル状態を作動可能-非連動状態614に遷移させ、PCL202を手動で再位置決めすることによって出力を減少させ、その後、起動制御部204のボタンを再び作動させてオートスロットルを連動状態612に再連動させる)。他の実施形態では、CLBモードは、オートスロットルが既に連動している場合に1秒を超えてセレクタノブ224を押し続けるなど、他の制御部の動作によって開始することができる。
【0073】
上昇モード(CLB)では、オートスロットルは、MCTを維持するが、エンジン温度限界を守るために自動的に出力を下げることになる。離陸又は上昇を中断して水平飛行になると(利用可能な高度計を監視することにより、毎分200フィート未満などの小さい上昇率として自動的に検出可能)、オートスロットルは巡航モード(CRZ)に遷移し、最大巡航出力設定値まで出力を下げることになる。
【0074】
巡航モード(CRZ)では、オートスロットルは、PCLを制御して、エンジン温度限界を守りながら最大巡航トルクを発生させる。
【0075】
ゴーアラウンドモード(GA)は、GAが、オートスロットルが作動可能-連動状態612又は作動可能-非連動状態614のいずれかにある間、及び航空機100が空中にあるときに起動されることを除いて、TOに類似している。このような条件下では、GAは、パイロットによる離陸/ゴーアラウンド制御部206のボタンの作動時に起動される。一旦起動されると、GAは、基本的にTOと同様に機能する、すなわち、オートスロットルは、MCTのためにPCLを設定し、上昇モード(CLB)又は巡航モード(CRZ)に遷移する条件が満たされるまで、この設定を維持する。
【0076】
FADECインターフェースプロセス520は、コマンドシグナリング305のシグナリング及び値の範囲を決定するために動作する。特に、オートスロットルが連動状態612にあるとき、コマンドシグナリング305は、FADECインターフェース304(
図3)への入力として、検知されたPCL位置シグナリング309Bに取って代わる。従って、いくつかの実施形態では、オートスロットル制御装置310は、FADECインターフェースプロセス520の制御下で、初期構成プロセス中に、ADC/DAC420(
図4)のアナログ/デジタル変換器を使用してそのシグナリングをサンプリング及び量子化することによって、PCL位置シグナリング309Bの電気的特性を学習する。初期構成の一例として、オートスロットル制御装置310が、サンプリングされ量子化されたPCL位置シグナリング309Bを読み出し、そのシグナリングを格納する間に、PCL202は、1つの位置限界から他方に移動させることができる。オートスロットル制御装置310がPCL位置シグナリング309Bの学習を完了すると、FADECインターフェースプロセス520の制御下で、コマンドシグナリング305として使用される仮想PCL位置シグナリングを合成することができる。
【0077】
図7は、いくつかの実施形態による、オートスロットルシステム制御装置とFADECシステムとの間の電気的インターフェースの一例を示す簡略化されたブロック図である。図示のように、航空機100に事前に組み込むことができるFADEC制御装置702は、従来通りにPCLセンサ704からPCL位置シグナリング705を受け取る。PCLセンサ704は、ポテンショメータ、RVDTセンサ、RVITセンサなどの1又は2以上の角度位置センサとして実装することができる。単発航空機では、単一のPCLのみが存在する場合があり、その場合、単一のPCL位置センサを使用することができる。複数のPCLを有する多発航空機では、各PCLにPCLセンサを使用することができる。他の実施構成では、冗長性のためにPCLごとに複数のPCL位置センサを使用することができる。明瞭化のために、この説明はPCLセンサ704の1つの例を示すが、本明細書で説明する原理は複数PCL/複数PCLセンサ構成に容易に適用できることを理解されたい。
【0078】
FADEC制御装置702は、PCLセンサ704に供給される励磁信号(excitation signal)707を生成することができる。結果として、PCLセンサは、励磁信号707と、PCL202(
図2A)のようなPCLの角度位置との組み合わせに基づいて、PCL位置シグナリング705を生成する。オートスロットルシステムがない場合、PCL位置シグナリング705は、事実上、FADEC制御装置702へのスロットルコマンド入力715であり、これは、パイロットの意図するスロットル設定値を決定するためにFADEC制御装置702によって読み取られる。
【0079】
いくつかの実施形態では、PCLのアクチュエータは、オートスロットルシステムの一部として提供されない。従って、オートスロットルシステムが連動すると、PCLを物理的に動かす代わりに、推力コマンドが仮想化される又は模倣される。従って、PCLの位置とオートスロットルによって指令された推力は、常に一対一に対応するわけではない。オートスロットルが連動しているとき、PCLは手動で最後に設定された位置のままである。しかしながら、オートスロットルが連動しているとき、パイロットは、リアルタイムのフィードバックを得るために、ISU表示装置上でオートスロットルが生成したスロットルレバー設定値及びオートスロットルモードを監視することができる。パイロットは、いかなる時もオートスロットルを切り離し、手動スロットルレベルコマンドを提供することができる。いくつかの実施形態では、オートスロットルシステム連動している間にPCLを手動で動かすと、オートスロットル状態は、連動状態612から非連動状態614(
図6)に即座に遷移する。
【0080】
オートスロットル制御装置は、オートスロットルシステムの状態に基づいて、FADEC制御装置702へのスロットルコマンド入力から選択的に結合又は切り離される。この結合又は切り離しは、FADECインターフェース304(
図3)の一例であるFADECインターフェース714によって達成される。例えば、オートスロットルシステムが連動状態612(
図6)にあるとき、FADECインターフェース714は、PCL位置シグナリング705の代わりに仮想PCL位置シグナリング711を選択し、スロットルコマンド入力715とする。他の状態では、FADECインターフェースは、スロットルコマンド入力715としてPCL位置シグナリング705を選択することに戻る。
【0081】
特に、励磁信号707は、PCLセンサ704から切り離される必要はない。換言すれば、様々な実施形態において、励磁信号707は、オートスロットルシステムの動作に関係なく、PCLセンサ704に常に供給される。
【0082】
様々な実施形態では、FADECインターフェース714は、適切なサポート回路を有するトランスミッションゲートなどの電気機械リレー、又は半導体スイッチとして実装することができる。
【0083】
仮想PCL位置シグナリング711又はPCL位置シグナリング705の選択は、オートスロットル制御装置710によって生成されたAT連動信号713に応答して行われる。関連する実施形態では、オートスロットルシステムは、オートスロットルシステムの故障又は誤作動の場合に、AT連動信号713がアサートされないように、フェイルセーフが作動するように設計される。同様に、FADECインターフェース714は、(AT連動信号713がない場合の)デフォルト選択がPCL位置シグナリング705であるように構築される。
【0084】
仮想PCL位置シグナリングを生成するために、オートスロットル制御装置710は、初期システム構成時に学習されたPCL位置シグナリング705を使用し、デジタルアナログ変換器(DAC)を動作させて、決定されたスロットル設定値を表す信号を合成し、FADECインターフェース714に供給する。RVDTセンサを使用するようないくつかの実施構成では、PCL位置シグナリング705は、PCLの範囲にわたって線形である。従って、仮想PCL位置シグナリング711は線形補間することができる。他の実施構成では、適切な伝達関数又は較正曲線を利用することができる。いくつかの実施構成では、励磁信号707は、仮想PCLシグナリングを生成するためにオートスロットル制御装置310が必要としていないが、他の実施構成では、オートスロットル制御装置310は、励磁信号707をサンプリングし、量子化し、読み出し、読み出した励磁信号707及びPCL位置シグナリング705に基づいて適切な仮想PCL位置シグナリング711を生成する。
【0085】
関連する実施形態では、オートスロットルシステムは、従来通りにFADECシステムの一部として供給されるPCLセンサとは独立して動作する、それ自身の専用のPCL位置センサを利用する。
【0086】
図8は、一実施例による双発航空機のFADECシステムとインターフェース接続された後付けオートスロットルシステムを示すブロック図である。図示のように、航空機のコックピットのスロットルクワドラント(quadrant)内の左側(LH)&右側(RH)PCLと、航空機のテールコーン領域のLH&RH FADEC制御装置800A、800Bとの間のRVDTセンサ信号のルーティング及び接続は、図示のようにコネクタ802を通過する。RVDTセンサは、航空機のパイロットによって手動で制御されるスロットルレバーの角度位置をFADECに送る。FADECは、このスロットルレバーの位置情報に基づいてエンジン燃料の制御を行う。LH&RHのRVDTセンサのチャンネルA及びチャンネルB、及び、LH&RHのFADECのチャンネルA及びチャンネルBを使用して各エンジンを制御するために提供される既存の冗長性が示されている。
【0087】
既存のエンジン制御の冗長性は、パススルー接続と、後付けオートスロットルシステムの一部であるリレーボックス(RRB)のリレーの常閉接点を使用することで維持される。FADECからRVDTセンサへのRVDT励磁電圧は、RRBを通過し(切り替えられずに)、オートスロットル制御装置によっても監視される。RVDT信号だけがRRBによって切り替えられる。RVDTリレーボックスのリレーは、連動状態612(
図6)のオートスロットル機能が作動しているとき、後付けオートスロットル制御装置810の切り替え出力(例えば、DC+28V)によって常開接点に切り替えられる。
【0088】
オートスロットルが連動状態612にあるとき、オートスロットル制御装置810は、受け取ったFADEC RVDT励磁電圧、現在のオートスロットル動作モード、及びパイロット選択推力目標値に沿った仮想PCL位置RVDT信号を、ユーザインターフェースを介して出力する。これらのオートスロットル制御仮想RVDT信号は、RRBを介してFADECに送られ、オートスロットルで指令されたPCL位置をFADECにもたらす。エンジンの性能は、FADECによって監視され、エンジンデータの出力を含む図示のようなデータバスを介してオートスロットル制御装置810に提供される。
【0089】
オートスロットル制御装置810のオートスロットル機能が連動していないときでさえ、ISUからの+28VDC出力が維持される原因となる、オートスロットル制御装置810の+28VDCの切り替え出力の万一の場合の故障状態は、RRBのリレーのコイルとオートスロットル制御装置810の+28VDC出力との間の接続を切断するために、後付けユーザインターフェースUIスイッチ/アナンシエーター内の手動制御スイッチを使用することによって緩和される。
【0090】
単一の個々のリレーの常開接点の閉位置での溶融を引き起こす故障は、他の個々のリレーを使用して他のRVDT信号を切り替えることによって緩和される。このように、単一のリレーが故障しても、他のリレーが冗長RVDT信号の経路を提供する。
【0091】
この実施例で説明したような後付けインターフェースは、実質的な配線を変更することなく、その取り付けを有利に容易にし、既存のFADEC装備航空機のための後付けオートスロットルシステムの取り付けを1日で完了する可能性をサポートする。
【0092】
(追加的注記及び実施例)
実施例1は、手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムを備えた航空機のオートスロットルを制御するためのシステムであり、本システムは、処理回路、メモリ、及び入力/出力機構を含むオートスロットル制御装置であって、オートスロットル制御プログラムを含む命令を実行するように動作可能であり、検知されたPCL位置シグナリングを受け取るように動作可能な入力を含み、自動出力コマンドシグナリングを出力するように動作可能である、オートスロットル制御装置と;オートスロットル制御装置及びFADECシステムに電気的に接続されるFADECインターフェースであって、検知されたPCL位置シグナリングと自動出力コマンドシグナリングの中からコマンド入力に接続されるものを選択するようにオートスロットル制御装置によって制御可能な、FADECインターフェースと;を備え、オートスロットル制御プログラムは、実行されると、システムがオートスロットル制御のための連動状態にあるときに、オートスロットル制御装置に、制御目標設定値を決定し、制御目標設定値に従って自動出力コマンドシグナリングを生成するようにさせ;自動出力コマンドシグナリングは、オートスロットル制御プログラムに従ってオートスロットル制御装置によって生成され、検知されたPCL位置シグナリングとして自動出力コマンドシグナリングがFADECシステムにより認識可能であるように、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を仮想化するように合成される。
【0093】
実施例2では、実施例1の主題は、FADECインターフェースが、システムがオートスロットル制御のための連動状態にないとき、検知されたPCL位置シグナリングを選択することをデフォルトに設定される電気的選択スイッチを備えることを含む。
【0094】
実施例3では、実施例2の主題は、オートスロットル制御装置及びFADECインターフェースが、安全側故障のために配置され、電気的選択スイッチは、オートスロットル制御装置が完全に機能しかつ連動するときにのみ、自動出力コマンドシグナリングを選択することを含む。
【0095】
実施例4では、実施例1-3の主題は、検知されたPCL位置シグナリングが、手動移動可能なレバーの角度位置を検出するように配置された角度位置センサによって生成されることを含む。
【0096】
実施例5では、実施例4の主題は、角度位置センサが、FADECシステムから励磁信号を受け取るように動作し、励磁信号が、オートスロットル制御装置によっても受け取られることを含む。
【0097】
実施例6では、実施例1-5の主題は、自動出力コマンドシグナリングが、手動スロットル設定値とは無関係に、オートスロットル制御プログラムに従って、オートスロットル制御装置によって生成されかつ自動的に調整されることを含む。
【0098】
実施例7では、実施例1-6の主題は、検知されたPCL位置シグナリングを受け取るように動作するオートスロットル制御装置の入力が、FADECシステムによって受け取られるのと同じ検知されたPCL位置シグナリングを受け取ることを含む。
【0099】
実施例8では、実施例1-7の主題は、オートスロットル制御装置が、FADECインターフェースプロセスを含む命令を実行するように動作可能であり、FADECインターフェースプロセスは、実行されると、オートスロットル制御装置に、航空機のためのオートスロットル制御装置の構成中に、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を学習させることを含む。
【0100】
実施例9では、実施例1-8の主題は、オートスロットル制御装置が、システムがオートスロットル制御のための連動状態にあるとき、オートスロットル連動信号を生成するように動作可能であり、FADECインターフェースが、オートスロットル連動信号に応答して、検知されたPCL位置シグナリング及び自動出力コマンドシグナリングの中からコマンド入力に接続されるものを選択するように動作可能であることを含む。
【0101】
実施例10では、実施例1-9の主題は、オートスロットル制御装置が、検知されたPCL位置シグナリングに基づく手動スロットル設定値の検知された変更に応答して、オートスロットル制御のための連動状態から抜け出して遷移するように動作可能であることを含む。
【0102】
実施例11は、手動スロットル設定値を示す検知された出力制御入力(PCL)位置シグナリングを受け取るコマンド入力を有する全自動デジタルエンジン制御(FADEC)システムを備える航空機のオートスロットルを制御するための方法であり、本方法は、オートスロットル制御装置が、制御目標設定値を決定することを含むオートスロットル制御プログラムを含む命令を実行するステップと;オートスロットル制御装置が、検知されたPCL位置シグナリング信号を受け取るステップと;オートスロットル制御装置が、制御目標設定値に基づく自動出力コマンドシグナリングを出力するステップであって、検知されたPCL位置シグナリングとして自動出力コマンドシグナリングがFADECシステムにより認識可能であるように、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を合成することを含む、ステップと;オートスロットル制御装置の制御下で、検知されたPCL位置シグナリングと自動出力コマンドシグナリングの中からコマンド入力に接続されるスロットルコマンド信号を電気的に選択するステップと;を含む。
【0103】
実施例12では、実施例11の主題は、電気的に選択するステップが、オートスロットル制御プログラムがオートスロットル制御のための連動状態にないとき、検知されたPCL位置信号を選択することをデフォルトに設定するステップを含む、ことを含む。
【0104】
実施例13では、実施例11-12の主題は、手動可動制御部の角度位置を検出するように配置された角度位置センサによって、検知されたPCL位置シグナリングを生成するステップをさらに含む、ことを含む。
【0105】
実施例14では、実施例13の主題は、角度位置センサが、FADECシステムからの励磁信号を受け取るステップと、オートスロットル制御装置が、励磁信号を受け取るステップと、をさらに含む、ことを含む。
【0106】
実施例15では、実施例11-14の主題は、自動出力コマンドシグナリングを出力するステップが、手動スロットル設定値とは無関係に、オートスロットル制御プログラムに従って、オートスロットル制御装置によって、自動出力コマンドシグナリングを自動的に調整するステップを含む、ことを含む。
【0107】
実施例16では、実施例11-15の主題は、検知されたPCL位置シグナリングを受け取るステップが、FADECシステムによって受け取られるのと同じ検知されたPCL位置シグナリングを受け取ることを含む、ことを含む。
【0108】
実施例17では、実施例11-16の主題は、オートスロットル制御装置が、航空機のためのオートスロットル制御装置の構成中に、検知されたPCL位置シグナリングの電気的特性を学習するステップをさらに含む、ことを含む。
【0109】
実施例18では、実施例11-17の主題は、オートスロットル制御プログラムがオートスロットル制御のための連動状態にあるときに、オートスロットル連動信号を生成するステップをさらに含み;検知されたPCL位置シグナリング及び自動出力コマンドシグナリングの中から前記コマンド入力に接続されるものを選択することは、オートスロットル連動信号に応答して実行される、ことを含む。
【0110】
実施例19では、実施例11-18の主題は、検知されたPCL位置シグナリングに基づく手動スロットル設定値の検知された変更に応答して、オートスロットル制御プログラムをオートスロットル制御のための連動状態から抜け出して遷移させるステップをさらに含む、ことを含む。
【0111】
実施例20は、処理回路によって実行されると、実施例11から19のいずれかを実施するための動作を処理回路に実行させる命令を含む、少なくとも1つの非一時的な機械可読媒体である。
【0112】
実施例21は、実施例11から19のいずれかを実施するための手段を備える装置である。
【0113】
実施例22は、実施例11から19のいずれかを実施するための手段を備えるシステムである。
【0114】
上記の実施形態は、例示的であり非限定的であることが意図されている。追加の実施形態は、そのような主題を明示的に除外していない各請求項の中にある。加えて、本発明の態様は、特定の実施形態を参照して説明されるが、当業者は、請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更を行い得ることを認識するであろう。
【0115】
当業者であれば、本発明が、上述のあらゆる個々の実施形態に例示されるよりも少ない特徴を備える場合があることを認識するであろう。本明細書に記載された実施形態は、本発明の様々な特徴を組み合わせることができる方法の網羅的な提示であることが意図されていない。従って、実施形態は、特徴の相互に排他的な組み合わせではなく、むしろ、本発明は、当業者によって理解されるように、異なる個々の実施形態から選択される異なる個々の特徴の組み合わせで構成することができる。
【0116】
上記の参照文献の参照によるあらゆる組み込みは、本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように制限される。上記の参照文献の参照によるあらゆる組み込みは、参照文献に含まれる請求項が参照により本出願の請求項に組み込まれないようにさらに限定される。しかしながら、あらゆる参照文献の請求項は、特に除外されない限り、本明細書の開示の一部として組み込まれる。上記の参照文献の参照によるあらゆる組み込みは、参照文献に提示されるあらゆる定義が、組み込まれた主題にのみ適用され、本明細書に直接存在するあらゆる主題に適用されないようにさらに制限される。
【0117】
本発明の請求項の解釈のために、35U.S.C.§112(f)の規定は、特定の用語「のための手段」又は「のためのステップ」が請求項に記載されない限り適用されないことが明示的に意図されている。
【国際調査報告】