(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-18
(54)【発明の名称】細胞治療において使用するSARM1の発現の減少
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20241111BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241111BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241111BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241111BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20241111BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20241111BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20241111BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/10 ZNA
C12N15/09 100
A61P35/00
A61P31/00
A61P35/02
A61P7/00
A61P37/04
A61K35/28
A61K35/545
C12N5/078
C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532886
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022080749
(87)【国際公開番号】W WO2023102478
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521476126
【氏名又は名称】エメンドバイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン・メシア、ミハル
(72)【発明者】
【氏名】ディアマント、レイチェル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB31
(57)【要約】
本発明は、がん、感染症、疾患若しくは障害に罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている対象に、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞を投与することを含む、養子免疫細胞治療又は予防のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん、感染症、疾患若しくは障害に罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている対象に、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞を投与することを含む、養子免疫細胞治療又は予防のための方法。
【請求項2】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、SARM1の発現が低下する又は不活性化されるように改変されているか、前記細胞は、ドミナントネガティブSARM1配列多様体又はそのドミナントネガティブ断片を発現するように改変されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、iPS由来細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、γδT細胞、iPS由来T細胞、インバリアントNKT細胞(iNKT)、iPS由来NKT、単球又はマクロファージからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、前記対象において、機能性の増加、生存率の増加、パーシスタンスの増加、増殖の増加及び/又は腫瘍保持の増加を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、前記対象において、細胞毒性の増加及び/又は殺傷活性の増加を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象は、がんに罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記がんは腫瘍を含む、及び/又は前記がんは血液悪性腫瘍である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記がんは、静止性の黒色腫、転移性前立腺がん、転移性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、膀胱がん、脳腫瘍、食道がん、肝臓がん、頭頚部のがん、扁平上皮肺がん、非小細胞肺がん、メルケル細胞がん、肉腫、肝細胞がん、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、膵臓がん、大腸がん、子宮頸がん、胃がん、腎臓がん、転移性腎細胞がん、白血病、卵巣がん及び悪性神経膠腫からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、ex vivo又はin vitroで調製される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、in vivoで調製される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、動員及び/又はアフェレーシスにより前記対象から得た細胞から調製される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞は、骨髄穿刺により前記対象から得た細胞から得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞は、前記細胞のSARM1阻害又はSARM1不活性化の前に刺激される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、前記対象に投与する前に培養して増殖される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、生着可能である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、子孫細胞を生み出すことができる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、生着後に子孫細胞を生み出すことができる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、自家生着後に子孫細胞を生み出すことができる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、生着後少なくとも12か月間又は少なくとも24月か間、子孫細胞を生み出すことができる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、細胞に、ギャップマー、shRNA、siRNA、カスタマイズしたTALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ又は低分子阻害剤を送達することで調製される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞中のSARM1遺伝子のアレルが、挿入又は欠失変異を受ける、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記挿入又は欠失変異は未熟終止コドンを生じる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、
少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
ガイド配列部分を含むRNA分子又は前記RNA分子をコードするヌクレオチド分子
を含む組成物を前記細胞に導入すること
を含む方法によって調製され、ここで、
前記CRISPRヌクレアーゼと前記RNA分子との複合体は、前記SARM1遺伝子のアレルを二本鎖切断し、
前記RNA分子の前記ガイド配列部分は、連続する17~50ヌクレオチドを含む、
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ガイド配列部分は、前記SARM1遺伝子のエクソンI、エクソンII、エクソンIII、エクソンIV、エクソンV、エクソンVI、エクソンVII、エクソンVIII又はエクソンIXの上流50塩基対から下流50塩基対の間に位置する標的配列に相補的である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ガイド配列部分は、前記SARM1遺伝子のエクソンの上流30塩基対から下流30塩基対の間に位置する標的配列に相補的であり、
a) 前記エクソンはエクソンIで、前記ガイド配列部分は、配列番号1~56、301~356、1348~2223、57~114、357~414、2224~3095、115~174、415~474、3096~3963のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
b) 前記エクソンはエクソンIIで、前記ガイド配列部分は、配列番号3964~7683のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
c) 前記エクソンはエクソンIIIで、前記ガイド配列部分は、配列番号7684~8967のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
d) 前記エクソンはエクソンIVで、前記ガイド配列部分は、配列番号8968~9525のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
e) 前記エクソンはエクソンVで、前記ガイド配列部分は、配列番号9526~10947のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
f) 前記エクソンはエクソンVIで、前記ガイド配列部分は、配列番号10948~11571のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
g) 前記エクソンはエクソンVIIで、前記ガイド配列部分は、配列番号11572~12717のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
h) 前記エクソンはエクソンVIIIで、前記ガイド配列部分は、配列番号12718~13455のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;又は、
i) 前記エクソンはエクソンIXで、前記ガイド配列部分は、配列番号598~1347のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれか1つに記載の配列のヌクレオチドを含む連続する17~50ヌクレオチドを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法に従い、対象における、がん、感染症、疾患又は障害の治療又は予防に使用する、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞を含む医薬。
【請求項28】
対象における、がん、感染症、疾患又は障害を治療又は予防するためのキットであって、請求項27に記載の医薬、及び、がん、感染症、疾患若しくは障害に罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている対象に、前記組成物を送達するための説明書を含む、キット。
【請求項29】
細胞中のSARM1(sterile alpha and toll/interleukin-1 receptor motif-containing 1)遺伝子のアレルを不活性化する方法であって、
少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
ガイド配列部分を含むRNA分子又は前記RNA分子をコードするヌクレオチド分子
を含む組成物を前記細胞に導入すること
を含み、ここで、
前記CRISPRヌクレアーゼと前記RNA分子との複合体は、前記SARM1遺伝子のアレルを二本鎖切断し、
前記ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれか1つに記載の配列のヌクレオチドを含む連続する17~50ヌクレオチドを含み、
前記細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、iPS由来細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、γδT細胞、iPS由来T細胞、インバリアントNKT細胞(iNKT)、iPS由来NKT、単球又はマクロファージからなる群から選択される、
方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法によって改変された細胞であって、前記改変細胞が、少なくとも1つの不活性化されたSARM1アレルを含む、改変細胞。
【請求項31】
養子免疫細胞治療又は予防に使用する、請求項30に記載の改変細胞。
【請求項32】
前記養子免疫細胞治療又は予防は、対象における、がん、感染症、疾患又は障害の治療又は予防である、請求項31に記載の改変細胞。
【請求項33】
この明細書で開示した1つ以上の要素を特徴とする、組成物、方法、製造方法、キット、改変細胞又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年12月1日に出願された米国仮出願第63/284,995号の恩恵を主張し、この仮出願の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
この出願全体で、括弧に入れて参照したものを含む、さまざまな刊行物を参照する。この出願において全体として言及された全ての刊行物の開示は、この発明が属する技術分野及びこの発明とともに使用される技術分野における追加の特徴の説明を提供するために、参照によりこの出願に組み入れられる。
【0003】
配列表への言及
この出願は、「221201_91818-A-PCT_Sequence_Listing_AWG.xml」という名前のファイルに存在する塩基配列を参照により組み入れ、そのファイルは、サイズが11,660kbで、MS-Windows(登録商標)とのシステム互換性を有するIBM-PC機フォーマットで2022年12月1日に作成され、この出願の一部として、2022年12月1日に出願されたxmlファイルに含まれている。
【背景技術】
【0004】
CAR T細胞治療のような免疫治療は、いくつかの疾患及び障害を治療するための有望なアプローチを提供する。しかし、そのような治療をより有効なものとするために、操作した細胞の患者に移入した後のパーシスタンスを増加させる同種養子免疫移入戦略を開発することが非常に望まれている。
【発明の概要】
【0005】
SARM1(sterile alpha and TIR motif-containing 1)遺伝子は、プログラムされた細胞内死の傷害誘導形態であるワーラー変性を促進することによってMYD88及びTRIF依存性toll様受容体シグナル伝達経路の負の調節因子として作用するNAD+ヒドロラーゼである。SARM1は、ストレスに応答して細胞死を活性化させることもできる(Molday et al., 2013)。
【0006】
本発明は、操作した免疫細胞においてSARM1遺伝子の発現をノックアウトし、ノックダウンし、又は阻害して、細胞治療の間のそれらのパーシスタンス、増殖及び/又は保持を増加させるアプローチを開示する。したがって、明細書に記載する細胞治療に関連する細胞におけるSARM1遺伝子の発現の両アレルノックアウト、ノックダウン又は阻害は、がん治療のための細胞治療アプローチを含む、細胞治療アプローチを改善するために利用してもよい。
【0007】
本開示は、がん、感染症、疾患若しくは障害に罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている対象に、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞を投与することを含む、養子免疫細胞治療又は予防のための方法も提供する。いくつかの態様では、細胞は、免疫細胞(例.リンパ球、単球又はマクロファージ)である。いくつかの態様では、SARM1阻害免疫細胞は自家である。他の態様では、SARM1阻害免疫細胞は同種である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A-1B】SARM1を標的とするRNAガイド分子の活性のHeLa細胞でのスクリーニング。細胞をDNAトランスフェクションの72時間後に採取した。ゲノムDNAを抽出し、オンターゲットプライマーを使用して内因性ゲノム領域を増幅した後にキャピラリー電気泳動した。グラフは、3回の独立した実験における編集の割合(%)の平均±標準偏差(STDV)を示す。
図1A:SpCas9コーディングプラスミドを、示したRNAガイド分子を発現するプラスミドと共トランスフェクトした。
図1B:OMNI-50又はOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼを、示したRNAガイド分子と共トランスフェクトした。
【
図2】特定のRNAガイド分子と複合体を形成したSpCas9ヌクレアーゼのRNPを、Neuro-2a細胞にエレクトロポレートしてRNP活性を決定した。細胞をDNAエレクトロポレーションの72時間後に採取し、ゲノムDNAを抽出し、次いで次世代シークエンシング(NGS)によって分析した。グラフは、2回の独立したエレクトロポレーションにおける編集の割合(%)±STDVを示す。
【
図3】編集後のSARM1 RNAの相対量。Neuro-2a細胞をエレクトロポレーションの7日後に採取し、RNAを抽出し、逆転写した。AriaMxシステムを使用してSARM1 RNAの相対量を定量化した。mRNAのレベルを、編集を行わなかった未処理の細胞に対して定量化する。
【
図4】SARM1を標的とするRNAガイド分子を伴うOMNI-103 CRISPRヌクレアーゼのHeLa細胞での編集活性。特定のRNAガイド分子をOMNI-103 CRISPRヌクレアーゼと共トランスフェクトし、それらのオンターゲット活性を決定した。細胞をDNAトランスフェクションの72時間後に採取し、ゲノムDNAを抽出し、変異の領域を増幅し、NGSによって分析した。トランスフェクション効率をmCherry蛍光によって測定した。グラフは、3回の独立したトランスフェクションにおける編集の割合(%)±STDVを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
別段の定義がある場合を除き、この明細書で用いる全ての技術的及び/又は科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。この明細書に記載したものと類似した又は等価の方法及び材料は、本発明の態様の実施又は試験に使用できるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含めて、この明細書が優先する。加えて、材料、方法及び実施例は例証となるのみであり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0010】
この明細書では、用語「1つの(a、an)」は、列挙された成分の「1つ以上」を指すことが理解される。単数形の使用は、具体的に別段の説明がある場合を除き、複数形を含むことは当業者に明らかである。したがって、用語「1つの(a、an)」及び「少なくとも1つの」は、この出願では同じ意味である。
【0011】
この教示をより良く理解することを目的として、かつ教示の範囲を決して限定することなく、別段の指示がある場合を除き、この明細書及び特許請求の範囲で用いられる、量、パーセンテージ又は割合を表す全ての数及び他の数値は、あらゆる場合において、用語「約」により修飾されていると理解される。したがって、反する指示がある場合を除き、明細書及び特許請求の範囲に示した数的パラメータは近似値で、得ようとする所望の性質に依存して変動する可能性がある。最低でも、各数的パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮しかつ通常の丸め技術を適用することによって解釈される。
【0012】
別段の説明がある場合を除き、形容詞、例えば、本発明の態様の特徴を示す状態又は関係を修飾する「実質的に」及び「約」は、その状態又は特性が、それが意図される適用についての態様の運用に受け入れられる許容範囲内までで定義されることを意味すると理解される。別段の指示がある場合を除き、この明細書及び特許請求の範囲における語「又は」は、排他的な「又は」というよりむしろ、包含的な「又は」であると見なされ、それが結合させる項目の少なくとも1つ又は任意の組合せを示す。
【0013】
本出願の説明及び特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」、「含有する(include)」及び「有する(have)」、並びにそれらの活用形は、その動詞の目的語が、必ずしも、その動詞の主語の成分、要素又は部分の完全な列挙とは限らないことを示すために用いられる。この明細書では他の用語は、当技術分野におけるそれらの周知の意味により定義されることを意図する。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、DNAヌクレアーゼを利用して標的部位のDNAを切断し、例えば、非相同末端結合(NHEJ)が挙げられるがこれには限定されない、細胞修復機構を誘導する。古典的なNHEJでは、二本鎖切断(DSB)部位の2つの末端が、迅速ではあるものの不正確に連結される(すなわち、切断部位におけるわずかな挿入又は欠失というDNAの変異が多く生じる)。
【0015】
この明細書では、用語「改変された細胞」又は「改変細胞」は、標的配列とのハイブリダイゼーション、すなわち、オンターゲットハイブリダイゼーションの結果、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体が二本鎖切断を行った細胞を指す。
【0016】
この明細書では、用語「標的化配列」又は「標的化分子」は、特定の標的配列とハイブリダイズできる塩基配列又は当該塩基配列を含む分子を指し、例えば、標的化配列は、標的となる配列と少なくとも部分的に相補的である塩基配列を有する。標的化配列又は標的化分子は、単独で、又は他のRNA分子と組み合わせて、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部であってもよく、標的化配列が、CRISPR複合体の標的化部分としての役割を果たす。標的化配列を有する分子がCRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、単独で又は1つ以上の別のRNA分子(例.tracrRNA分子)と組み合わせて、CRISPRヌクレアーゼを特定の標的配列に向けることができる。限定するものではない例として、CRISPR RNA分子のガイド配列部分又はシングルガイドRNA分子は、標的化分子としての役割を果たしてもよい。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。標的化配列は、所望の配列を標的とするようにカスタムデザインできる。
【0017】
この明細書では、用語「標的とする」又は「向ける」は、標的化分子の標的化配列を、標的となる塩基配列を有する核酸へ優先的にハイブリダイズさせることを指す。用語「標的とする」は、変化するハイブリダイゼーション効率を包含し、したがって、標的の塩基配列を有する核酸が優先的に標的となるが、オンターゲットハイブリダイゼーションに加えて、意図しないオフターゲットハイブリダイゼーションも生じる可能性があることは理解されている。RNA分子が配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼ分子の複合体は、ヌクレアーゼ活性のためにその配列を標的とすることは理解されている。
【0018】
RNA分子の「ガイド配列部分」は、特定の標的DNA配列とハイブリダイズできる塩基配列を指し、例えば、ガイド配列部分は、ガイド配列部分に沿って標的となるDNA配列と部分的に又は完全に相補的である塩基配列を有する。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50、又は、およそ17~50、17~49、17~48、17~47、17~46、17~45、17~44、17~43、17~42、17~41、17~40、17~39、17~38、17~37、17~36、17~35、17~34、17~33、17~31、17~30、17~29、17~28、17~27、17~26、17~25、17~24、17~22、17~21、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~22、18~20、20~21、21~22若しくは17~20である。いくつかの態様では、ガイド配列部分の全長は、ガイド配列部分に沿って標的となるDNA配列と完全に相補的である。ガイド配列部分は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部であってもよく、ガイド配列部分がCRISPR複合体のDNA標的化部分としての役割を果たす。ガイド配列部分を有するRNA分子が、単独で又は1つ以上の別のRNA分子(例.tracrRNA分子)と組み合わせて、CRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、CRISPRヌクレアーゼを特定の標的DNA配列に向けることができる。したがって、ガイド配列部分を有するRNA分子とCRISPRヌクレアーゼを直接結合させることで、又はガイド配列部分を有するRNA分子と1つ以上のRNA分子をCRISPRヌクレアーゼに結合させることで、CRISPR複合体を形成できる。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。ガイド配列部分は、所望の配列を標的とするようにカスタムデザインできる。したがって、「ガイド配列部分」を含む分子は一種の標的化分子である。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、この明細書に記載したガイド配列部分、例えば、配列番号1~13457のいずれかに示すガイド配列と同じ配列、又は、1、2、3、4若しくは5ヌクレオチド以下の異なる配列を含む。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。これらの態様の一部において、ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれかに示す配列と同じ配列を含む。この出願全体で、用語「ガイド分子」、「RNAガイド分子」、「ガイドRNA分子」及び「gRNA分子」は、ガイド配列部分を含む分子と同義である。
【0019】
この明細書では、用語「非区別的な」は、遺伝子の全てのアレルで共通する特定のDNA配列を標的とするRNA分子のガイド配列部分を指す。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、SARM1を標的とするRNA分子は、配列番号1~13457のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含む。RNA分子及び/又はRNA分子のガイド配列部分は、修飾ヌクレオチドを有していてもよい。ヌクレオチド/ポリヌクレオチドへの代表的な修飾は、合成であってもよく、天然に存在するアデニン、シトシン、チミン、ウラシル又はグアニン塩基以外の塩基を含むヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを包含してもよい。ポリヌクレオチドへの修飾には、合成で、天然に存在しないヌクレオシド、例えば、ロックド核酸を有するポリヌクレオチドが挙げられる。RNAの安定性を増加又は減少させるために、ポリヌクレオチドを修飾してもよい。修飾ポリヌクレオチドの例は、1-メチルプソイドウリジンを有するmRNAである。修飾ポリヌクレオチドとその用途の例は、参照によりこの明細書に組み入れられる米国特許第8,278,036号、国際公開第2015/006747号及びWeissman and Kariko (2015)を参照。
【0021】
この明細書では、配列番号で示す「連続する・・・ヌクレオチド」は、ヌクレオチドの介入を一切含まない、配列番号に示した順序での配列のヌクレオチドを指す。
【0022】
本発明のいくつかの態様では、SARM1を標的とするRNA分子のガイド配列部分は、50ヌクレオチド長であってもよく、配列番号1~13457のいずれか1つに示す配列の連続する20~22ヌクレオチドを含有してもよい。本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分は、22ヌクレオチド長未満であってもよい。例えば、本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分は、17、18、19、20又は21ヌクレオチド長であってもよい。そのような態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれか1つに示す連続する17~22ヌクレオチドの配列における、それぞれ17、18、19、20又は21ヌクレオチドからなってもよい。例えば、配列番号13458に示す連続する17ヌクレオチドの配列のガイド配列部分は、以下の塩基配列のいずれか1つからなってもよい(連続する配列から排除されたヌクレオチドには、取り消し線が引かれている):
【0023】
【0024】
本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは、20を超えてもよい。例えば、本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチド長は、21、22、23、24又は25であってもよい。そのような態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれか1つに示す連続する20、21又は22ヌクレオチドの配列を含有する17~50ヌクレオチド、及び、標的配列の3’末端、5’末端、又は両者に隣接するヌクレオチド(の配列)に完全に相補的なヌクレオチドを含む。
【0025】
本発明のいくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼ、及びガイド配列部分を含むRNA分子は、標的DNA配列と結合して標的DNA配列を切断する、CRISPR複合体を形成する。CRISPRヌクレアーゼ、例えば、Cpf1は、追加のtracrRNA分子なしで、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子を含むCRISPR複合体を形成してもよい。あるいは、CRISPRヌクレアーゼ、例えば、Cas9は、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子とtracrRNA分子の間でCRISPR複合体を形成してもよい。特定の標的DNA配列とハイブリダイズできる塩基配列を含むガイド配列部分と、CRISPRヌクレアーゼ結合に関与する配列部分、例えばtracrRNA配列部分は、同じRNA分子中に存在できる。あるいは、ガイド配列部分は1つのRNA分子に存在し、CRISPRヌクレアーゼ結合に関与する配列部分、例えばtracrRNA部分は、別のRNA分子に存在してもよい。ガイド配列部分(例.DNA標的化RNA配列)及び少なくとも1つのCRISPRタンパク質結合RNA配列部分(例.tracrRNA配列部分)を含む単一のRNA分子が、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成し、DNA標的化分子としての役割を果たすことができる。いくつかの態様では、ガイド配列部分を含むDNA標的化RNA部分を含む第1のRNA分子と、CRISPRタンパク質結合RNA配列を含む第2のRNA分子は、塩基対形成により相互作用して、CRISPRヌクレアーゼの標的をDNA標的部位とするRNA複合体を形成し、あるいは、融合してCRISPRヌクレアーゼと複合体化し、CRISPRヌクレアーゼの標的をDNA標的部位とするRNA分子を形成する。
【0026】
本発明のいくつかの態様において、ガイド配列部分を含むRNA分子は、tracrRNA分子の配列を更に含んでいてもよい。そのような態様は、RNA分子のガイド部分とトランス活性化crRNA(tracrRNA)の合成的融合体としてデザインされてもよい。(Jinek et al., 2012参照)。そのような態様では、RNA分子はシングルガイドRNA(sgRNA)分子である。本発明のいくつかの態様は、個々のtracrRNA分子及びガイド配列部分を含む個々のRNA分子を利用するCRISPR複合体も形成してもよい。そのような態様では、tracrRNAは、塩基対形成を介してRNA分子とハイブリダイズしてもよく、この明細書に記載した発明のある特定の適用において有利な可能性がある。
【0027】
用語「tracrメイト配列」は、塩基対形成を介してtracrRNAとハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成を促進するように、tracrRNA分子に対して十分に相補的な配列を指す(米国特許第8,906,616号参照)。本発明のいくつかの態様では、RNA分子はtracrメイト配列を有する部分を更に含んでいてもよい。
【0028】
本発明では、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、及び、遺伝子産物の産生を制御する全てのDNA領域を含み、前記制御領域の配列は、コード配列及び/又は転写配列と隣接しているか、していないかを問わない。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列、例えば、リボソーム結合部位及び配列内リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、並びに遺伝子座調節領域が挙げられるが、必ずしもそれらに限定されるものではない。
【0029】
「真核」細胞には、真菌細胞(例.酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞及びヒト細胞が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0030】
この明細書では、用語「ヌクレアーゼ」は、核酸のヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を切断する能力がある酵素を指す。ヌクレアーゼは、天然物から単離してもよく、又は天然物に由来するものであってもよい。天然物は、生きている生物体であってもよい。あるいは、ヌクレアーゼは、ホスホジエステル結合切断活性を保持する、改変された又は合成されたタンパク質であってもよい。遺伝子改変は、ヌクレアーゼ、例えばCRISPRヌクレアーゼを用いて実現できる。
【0031】
細胞治療で使用する細胞においてSARM1発現を低下又は不活性化させる戦略のいずれか1つ又は組合せを、この発明で使用してもよい。
【0032】
この発明のいくつかの態様では、がん、感染症、疾患若しくは障害に罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている対象に、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞を投与することを含む、養子免疫細胞治療又は予防のための方法を提供する。
【0033】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、SARM1の発現が低下する又は不活性化されるように改変されているか、細胞は、ドミナントネガティブSARM1配列多様体又はそのドミナントネガティブ断片を発現するように改変されている。
【0034】
いくつかの態様では、細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、iPS由来細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、γδT細胞、iPS由来T細胞、インバリアントNKT細胞(iNKT)、iPS由来NKT、単球又はマクロファージからなる群から選択される。いくつかの態様では、前駆細胞が最初に改変され、次いで分化されて、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞が調製される。あるいは、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、細胞、例えば初代NK細胞を、直接編集することで調製してもよい。
【0035】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、機能性の増加を示す。いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、生存率の増加及び/又は増強を示す。いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、殺傷能力、細胞毒性、トラフィッキング、局在性、パーシスタンス及び/又は増殖のような、in vivoでの機能性の増強を示す。
【0036】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、対象において、機能性の増加、生存率の増加、パーシスタンスの増加、増殖の増加及び/又は腫瘍保持の増加を示す。
【0037】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、対象において、細胞毒性の増加及び/又は殺傷活性の増加を示す。例えば、いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、標的のより高い殺傷活性を示す。
【0038】
いくつかの態様では、対象は、がんに罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている。
【0039】
いくつかの態様では、がんは腫瘍を含む、及び/又はがんは血液悪性腫瘍である。
【0040】
いくつかの態様では、がんは、静止性の黒色腫、転移性前立腺がん、転移性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、膀胱がん、脳腫瘍、食道がん、肝臓がん、頭頚部のがん、扁平上皮肺がん、非小細胞肺がん、メルケル細胞がん、肉腫、肝細胞がん、多発性骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、膵臓がん、大腸がん、子宮頸がん、胃がん、腎臓がん、転移性腎細胞がん、白血病、卵巣がん及び悪性神経膠腫からなる群から選択される。
【0041】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、ex vivo又はin vitroで調製される。
【0042】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、in vivoで調製される。
【0043】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、動員及び/又はアフェレーシスにより対象から得た細胞から調製される。
【0044】
いくつかの態様では、細胞は、骨髄穿刺により対象から得た細胞から得られる。
【0045】
いくつかの態様では、細胞は、細胞のSARM1阻害又はSARM1不活性化の前に刺激される。
【0046】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、対象に投与する前に培養して増殖される。
【0047】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、生着可能である。
【0048】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、子孫細胞を生み出すことができる。
【0049】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、生着後に子孫細胞を生み出すことができる。
【0050】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、自家生着後に子孫細胞を生み出すことができる。
【0051】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、生着後少なくとも12か月間又は少なくとも24か月間、子孫細胞を生み出すことができる。
【0052】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、細胞に、ギャップマー、shRNA、siRNA、カスタマイズしたTALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ又は低分子阻害剤を送達することで調製される。
【0053】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞中のSARM1遺伝子のアレルは、挿入又は欠失変異を受ける。
【0054】
いくつかの態様では、挿入又は欠失変異は未熟終止コドンを生じる。
【0055】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、
少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
ガイド配列部分を含むRNA分子又はRNA分子をコードするヌクレオチド分子
を含む組成物を細胞に導入すること
を含む方法によって調製され、ここで、
CRISPRヌクレアーゼとRNA分子との複合体は、SARM1遺伝子のアレルを二本鎖切断し、
RNA分子のガイド配列部分は、連続する17~50ヌクレオチドを含む。
【0056】
いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンI、エクソンII、エクソンIII、エクソンIV、エクソンV、エクソンVI、エクソンVII、エクソンVIII又はエクソンIXの上流50塩基対から下流50塩基対の間に位置する標的配列に相補的である。
【0057】
いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンの上流30塩基対から下流30塩基対の間に位置する標的配列に相補的であり、
a)エクソンはエクソンIで、ガイド配列部分は、配列番号1~56、301~356、1348~2223、57~114、357~414、2224~3095、115~174、415~474、3096~3963のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
b)エクソンはエクソンIIで、ガイド配列部分は、配列番号3964~7683のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
c)エクソンはエクソンIIIで、ガイド配列部分は、配列番号7684~8967のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
d)エクソンはエクソンIVで、ガイド配列部分は、配列番号8968~9525のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
e)エクソンはエクソンVで、ガイド配列部分は、配列番号9526~10947のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
f)エクソンはエクソンVIで、ガイド配列部分は、配列番号10948~11571のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
g)エクソンはエクソンVIIで、ガイド配列部分は、配列番号11572~12717のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
h)エクソンはエクソンVIIIで、ガイド配列部分は、配列番号12718~13455のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;又は、
i)エクソンはエクソンIXで、ガイド配列部分は、配列番号598~1347のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。
【0058】
いくつかの態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれか1つに記載の配列のヌクレオチドを含む連続する17~50ヌクレオチドを含む。
【0059】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、生存率の増加及び/又は機能性の増加を示す。
【0060】
この発明のいくつかの態様では、明細書に示す方法に従い、対象における、がん、感染症、疾患又は障害の治療又は予防に使用する、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞を含む医薬を提供する。いくつかの態様では、この発明は、対象における、がん、感染症、疾患又は障害を治療又は予防するためのキットであって、医薬、及び、がん、感染症、疾患若しくは障害に罹患している、又は罹患するリスクがあると判断されている対象に、組成物を送達するための説明書を含む、キットを提供する。
【0061】
この発明のいくつかの態様では、細胞中のSARM1(sterile alpha and toll/interleukin-1 receptor motif-containing 1)遺伝子のアレルを不活性化する方法であって、
少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
ガイド配列部分を含むRNA分子又はRNA分子をコードするヌクレオチド分子
を含む組成物を細胞に導入すること
を含み、ここで、
CRISPRヌクレアーゼとRNA分子との複合体は、SARM1遺伝子のアレルを二本鎖切断し、
ガイド配列部分は、配列番号1~13457のいずれか1つに記載の配列のヌクレオチドを含む連続する17~50ヌクレオチドを含み、
細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、iPS由来細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、γδT細胞、iPS由来T細胞、インバリアントNKT細胞(iNKT)、iPS由来NKT、単球又はマクロファージからなる群から選択される、
方法を提供する。
【0062】
この発明のいくつかの態様では、細胞中のSARM1遺伝子のアレルを不活性化するための方法によって改変された細胞であって、改変細胞が、少なくとも1つの不活性化されたSARM1アレルを含む、改変細胞を提供する。
【0063】
いくつかの態様では、改変細胞は、2つの不活性化されたSARM1アレルを含む。いくつかの態様では、改変細胞は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、生存率の増加及び/又は機能性の増加を示す。いくつかの態様では、機能性の増加は、細胞毒性の増加及び/又は殺傷能力の増加を含む。
【0064】
いくつかの態様では、細胞は、養子免疫細胞治療又は予防に使用される。
【0065】
いくつかの態様では、養子免疫細胞治療又は予防は、対象における、がん、感染症、疾患又は障害の治療又は予防である。
【0066】
この発明のいくつかの態様では、SARM1遺伝子のアレル中又はその近傍に位置するSNP位置(REF/SNP配列)を含む標的配列に完全に又は部分的に相補的な塩基配列を含むガイド配列部分(例.標的化配列)を含むRNA分子を送達することによって、細胞中のSARM1発現を不活性化する方法を提供する。いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個又は26個より多くのヌクレオチドからなる。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、CRISPRヌクレアーゼを標的配列に向けるために構成され、SARM1標的部位の500、400、300、200、100、50、25又は10ヌクレオチド以内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される、それと複合体化したCRISPRヌクレアーゼによる、切断事象を提供する。いくつかの態様では、切断事象は、SARM1遺伝子のナンセンスコドン介在的分解を可能にする。いくつかの態様では、RNA分子は、crRNA分子又はシングルガイドRNA分子のようなガイドRNA分子である。
【0067】
いくつかの態様では、SARM1遺伝子のアレルの標的配列は(例えは、NHEJ媒介インデル(例.挿入又は欠失)の導入により)変更され、SARM1遺伝子のアレルによってコードされる遺伝子産物の発現を低下又は排除する。いくつかの態様では、発現の低下又は排除は、未熟終止コドンに起因するような、ナンセンスコドン介在的mRNA分解に起因する。いくつかの態様では、発現の低下又は排除は、切断型のSARM1遺伝子産物の発現に起因する。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SNP位置を含む標的配列に相補的である。いくつかの態様では、SNP位置はrs782593684である。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~174のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、1、2又は3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、配列番号1、4、8、20、24、26~27、33、35、37、41、47、49、51、53、56、175~214、57、60、64、76、80、82~83、92、94、98、102、105、107、109、111、114、215~256、115、118、122、132、139、141~142、151、157、161、164~165、167、169、171、174、及び257~300のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、1、2又は3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。いくつかの態様では、SNP位置17:28372349_C_CT。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、配列番号301~474のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、1、2又は3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、配列番号301、304、315、321、326~328、335、338、340、344、346~348、353、355~356、475~513、357、361、364、368、373、384~385、393、396、398、402、404~406、411、413~414、514~554、415~416、419、422、424、427、432、443~444、458、462、464~466、471、473~474及び555~597のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、1、2又は3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。
【0068】
この発明のいくつかの態様では、RNA分子又はRNA分子をコードする配列であって、RNA分子が、SARM1遺伝子中又はその近傍に位置する標的配列に完全に又は部分的に相補的な塩基配列を含むガイド配列部分(例.標的化配列)を含む、RNA分子又はRNA分子をコードする配列を提供する。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンI、エクソンII、エクソンIII、エクソンIV、エクソンV、エクソンVI、エクソンVII、エクソンVIII又はエクソンIXの上流30塩基対から下流30塩基対の間に位置する標的配列に相補的である。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンI、エクソンII、エクソンIII、エクソンIV、エクソンV、エクソンVI、エクソンVII、エクソンVIII又はエクソンIXの上流50塩基対から下流50塩基対の間に位置する標的配列に相補的である。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。いくつかの態様では、SARM1遺伝子の標的配列(例えば、NHEJ媒介インデル(例.挿入又は欠失)の導入により)は変更され、SARM1遺伝子によってコードされる遺伝子産物の発現を低下又は排除する。いくつかの態様では、発現の低下又は排除は、ナンセンスコドン介在的mRNA分解に起因する。いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個又は26個より多くのヌクレオチドからなる。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、CRISPRヌクレアーゼを標的配列に向けるために構成され、SARM1標的部位の500、400、300、200、100、50、25又は10ヌクレオチド以内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される、それと複合体化したCRISPRヌクレアーゼによる、切断事象を提供する。いくつかの態様では、切断事象は、SARM1遺伝子のナンセンスコドン介在的分解を可能にする。いくつかの態様では、RNA分子は、crRNA分子又はシングルガイドRNA分子のようなガイドRNA分子である。
【0069】
いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンの上流30塩基対から下流30塩基対の間に位置する標的配列に相補的である。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンの上流50塩基対から下流50塩基対の間に位置する標的配列に相補的である。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、SARM1遺伝子のエクソンの上流7塩基対から下流7塩基対の間に位置する標的配列に相補的である。いくつかの態様では、エクソンはエクソンIで、ガイド配列部分は、配列番号1~56、301~356、1348~2223、57~114、357~414、2224~3095、115~174、415~474及び3096~3963のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンIIで、ガイド配列部分は、配列番号3964~7683のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンIIIで、ガイド配列部分は、配列番号7684~8967のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンIVで、ガイド配列部分は、配列番号8968~9525のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンVで、ガイド配列部分は、配列番号9526~10947のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンVIで、ガイド配列部分は、配列番号10948~11571のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンVIIで、ガイド配列部分は、配列番号11572~12717のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンVIIIで、ガイド配列部分は、配列番号12718~13455のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。いくつかの態様では、エクソンはエクソンIXで、ガイド配列部分は、配列番号598~1347のいずれかに記載の配列と、同じ配列を含むか、3ヌクレオチド以下が異なる配列を含む。
【0070】
この発明の態様では、二本鎖切断(DSB)を引き起こすために、RNA分子を使用してCRISPRヌクレアーゼをSARM1アレルのエクソン又はスプライス部位に方向付け、これは、エラーが生じやすい非相同末端結合(NHEJ)機構の誘導によるヌクレオチドの挿入又は欠失と、SARM1アレル中のフレームシフト変異の形成につながる。フレームシフト変異は、例えば、SARM1アレル中の未熟終止コドンが生成され、SARM1アレルの不活性化又はノックアウトされ、切断型タンパク質が生成するか、アレルの転写物のナンセンスコドン介在的mRNA分解が生じる可能性がある。さらなる態様では、1つのRNA分子を使用して、CRISPRヌクレアーゼをSARM1アレルのプロモーターに方向付ける。
【0071】
明細書に記載するSARM1アレルの不活性化に使用するCRISPR組成物は、少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ、RNA分子及びtracrRNA分子を含んでいてもよく、対象又は細胞中で同時に効果を発揮する。少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ、RNA分子及びtracrRNAは、実質的に同時に送達してもよく、又は異なる時点で送達し、同時に効果を発揮してもよい。例えば、これには、RNA分子及び/又はtracrRNAが対象又は細胞内に実質的に存在する前に、CRISPRヌクレアーゼを対象又は細胞に送達することを含む。
【0072】
いくつかの側面によれば、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞が提供される。いくつかの態様では、細胞は、免疫細胞(例.単球、マクロファージ、リンパ球、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)、iPS由来T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、インバリアントNKT細胞(iNKT)又はiPS由来NKT細胞)である。いくつかの態様では、SARM1阻害細胞は、幹細胞、HSC又はiPScである。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞(例.免疫細胞)は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレアーゼ、低分子又はポリヌクレオチドを含む好適なSARM1阻害剤を利用することで調製してもよい。
【0073】
いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、SARM1の活性が低下するように遺伝子改変される。いくつかの態様では、SARM1阻害又はSARM1不活性化細胞は、SARM1の活性が低下するように遺伝子改変された前駆細胞から誘導される。限定するものではない例では、SARM1阻害iNKは、CRISPRを利用してSARM1アレルをノックアウトすることなどによってSARM1の活性が低下するように遺伝子改変されて、iNK細胞に更に分化したiPScから誘導される。
【0074】
いくつかの態様では、SARM1阻害若しくはSARM1不活性化細胞、又はそれから誘導された細胞は、細胞治療のために使用される。いくつかの態様では、SARM1阻害細胞、又はそれから誘導された細胞は、免疫治療のために使用される。
【0075】
本開示のいくつかの側面によれば、この明細書は、細胞中のSARM1(sterile alpha and toll/interleukin-1 receptor motif-containing 1)遺伝子のアレルを不活性化することによって細胞生存率及び/又は細胞機能性を増加させるための方法であって、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子、及び配列番号1~13457のいずれか1つに記載の配列のヌクレオチドを含む連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子又はRNA分子をコードするヌクレオチド分子を含む組成物を細胞に導入することを含み、ここで、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子との複合体が、SARM1遺伝子のアレルを二本鎖切断する方法を提供する。この方法で改変してもよい細胞の限定するものではない例には、肝臓細胞(例.肝細胞)、肺細胞、脾臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、皮膚細胞、膀胱細胞、眼の細胞、眼球細胞、網膜細胞、角膜細胞、脳細胞、食道細胞、頭部の細胞、頚部の細胞、卵巣の細胞、精巣の細胞、前立腺細胞、胎盤細胞、上皮細胞、内皮細胞、脂肪細胞、腎臓/腎細胞、心臓細胞、筋肉細胞、血液細胞(例.白血球)、免疫細胞、中枢神経系(CNS)細胞及び神経節細胞などの他に、これらの組合せを含む。
【0076】
SARM1編集戦略
細胞中のSARM1アレルをノックアウトするために提供する方法は、細胞治療又は免疫治療で使用するSARM1不活性化細胞の調製に使用してもよい。
【0077】
SARM1編集戦略は、(1)スプライスドナー及びアクセプター部位に隣接するためにエクソンの上流及び下流7ヌクレオチド以内を含む、エクソン2~9のいずれか1つ、又はその組合せを標的とすることによって、これらのエクソン中のフレームシフトが、非機能的な、切断されたSARM1タンパク質、又は変異型SARM1転写物のナンセンスコドン介在的分解をもたらす、両アレルノックアウト;並びに(2)エクソン中の第2のメチオニンコドンの上流にあるか若しくはそれとオーバーラップするエクソン1中のインデルを媒介し、それを排除して翻訳の再開を予防することによる、又はエクソン1-イントロン1ジャンクションを標的とすることによってスプライスドナーを破壊することによる、SARM1タンパク質の切断を含むが、これらに限定されない。
【0078】
CRISPRヌクレアーゼ及びPAM認識
いくつかの態様では、配列特異的ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼから選択されるか、その機能性バリアントである。いくつかの態様では、配列特異的ヌクレアーゼはRNA誘導型DNAヌクレアーゼである。そのような態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ(例.Cpf1)をガイドするRNA配列は、RNA誘導型DNAヌクレアーゼと結合し、及び/又は、前記RNA誘導型DNAヌクレアーゼを細胞中の全てのSARM1アレルへ誘導する。いくつかの態様では、CRISPR複合体は、tracrRNAを更に含まない。RNA誘導型DNAヌクレアーゼがCRISPRタンパク質である限定するものではない例では、顕性SARM1アレルと機能的アレルとの間で相違する少なくとも1つのヌクレオチドは、RNA分子がハイブリダイズするように設計されている領域内のPAMサイト内及び/又は当該サイトの近傍に存在してもよい。RNA分子は、当技術分野において一般的に知られた方法により、ゲノム中の選択した標的と結合するように操作できることを、当業者は理解する。
【0079】
この明細書では、用語「PAM」は、標的となるDNA配列の近傍に位置し、かつCRISPRヌクレアーゼ複合体により認識される標的DNAの塩基配列を指す。PAM配列は、ヌクレアーゼの種類によって異なっていてもよい。加えて、ほとんど全てのPAMを標的にできるCRISPRヌクレアーゼがある。本発明のいくつかの態様では、CRISPRシステムは、ガイド配列部分と、標的を認識するための追加の要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣にある標的DNA部位のプロトスペーサーとの間で、ワトソン・クリック塩基対を形成することにより、CRISPRヌクレアーゼを標的DNA部位へ誘導するガイド配列部分を有する1つ以上のRNA分子を利用する。その後、CRISPRヌクレアーゼは、標的DNA部位を切断し、プロトスペーサー内に二本鎖切断を作り出す。限定するものではない例において、II型CRISPRシステムは、crRNAのガイド配列部分とプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間で、ワトソン・クリック塩基対を形成することにより、CRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)を標的DNAへ誘導する成熟crRNA:tracrRNA複合体を利用する。本発明の操作されたRNA分子が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、例えば利用するCRISPRヌクレアーゼに関連する配列に対応するPAMの隣の対象とする標的ゲノムDNA配列と会合するように更にデザインされることを、当業者は理解する。そのPAMは、例えば、限定するものではない例として、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9 WT(SpCAS9)ではNGG若しくはNAG(Nは任意の核酸塩基である);黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SaCas9)ではNNGRRT;Jejuni Cas9 WTではNNNVRYM;SpCas9-VQRバリアントではNGAN若しくはNGNG;SpCas9-VRERバリアントではNGCG;SpCas9-EQRバリアントではNGAG;SpCas9-NRRHバリアントではNRRH(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、HはA、C、又はTである);SpCas9-NRTHバリアントではNRTH(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、HはA、C、又はTである);SpCas9-NRCHバリアントではNRCH(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、HはA、C、又はTである);SpCas9のSpGバリアントではNG(Nは任意の核酸塩基である);SpCas9のSpCas9-NGバリアントではNG若しくはNA(Nは任意の核酸塩基である);SpCas9のSpRYバリアントではNR若しくはNRN若しくはNYN(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、YはC又はTである);ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)Cas9バリアント(ScCas9)ではNNG(Nは任意の核酸塩基である);黄色ブドウ球菌のSaKKH-Cas9バリアント(SaCas9)ではNNNRRT(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGである);髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(NmCas9)ではNNNNGATT(Nは任意の核酸塩基である);アリサイクロバチルス・アシドフィルス(Alicyclobacillus acidiphilus)Cas12b(AacCas12b)ではTTN(Nは任意の核酸塩基である);又はCpflではTTTV(VはA、C、又はGである)である。本発明のRNA分子は、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼとともに複合体を形成するようにそれぞれデザインされ、かつ前記CRISPRヌクレアーゼに対応する1つ以上の異なるPAM配列を利用して、対象とする塩基配列を標的とするようにデザインされる。
【0080】
いくつかの態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ、例えば、CRISPRヌクレアーゼは、事実上、二本鎖又は一本鎖のいずれかで、細胞のゲノムにおける所望の位置にDNA切断を引き起こすために用いてもよい。最も一般的に用いられるRNA誘導型DNAヌクレアーゼはCRISPRシステムに由来するが、他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼも、この明細書に記載したゲノム編集組成物及びゲノム編集方法における使用のために企図される。例えば、米国特許出願公開第2015/0211023号(参照によりその全内容が組み入れられる)を参照。
【0081】
本発明の実施に使用できるCRISPRシステムは非常にさまざまである。CRISPRシステムは、I型、II型又はIII型のシステムであってもよい。適切なCRISPRタンパク質の限定するものではない例には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又はCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8al、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Casl0、Casl Od、CasF、CasG、CasH、Csyl、Csy2、Csy3、Csel(又はCasA)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC)、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、Csxl0、Csxl6、CsaX、Csx3、Cszl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4及びCul966が挙げられる。
【0082】
いくつかの態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼは、II型CRISPRシステムに由来したCRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)である。CRISPRヌクレアーゼは、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、ノカルディオプシス・ダッソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトマイセス・プリスチナエスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス、ストレプトスポランジウム・ロゼウム(Streptosporangium roseum)、ストレプトスポランジウム・ロゼウム、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、バチルス・シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バチルス・セレニティレデュセンス(Bacillus selenitireducens)、エキシグオバクテリウム・シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ミクロシラ・マリナ(Microscilla marina)、バークホルデリアレス・バクテリウム(Burkholderiales bacterium)、ポラロモナス・ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス種(Polaromonas sp.)、クロコスファエラ・ワトソニー(Crocosphaera watsonii)、シアノセイス種(Cyanothece sp.)、ミクロキスティス・エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス種(Synechococcus sp.)、アセトハロビウム・アラビティカム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニフェツクス・デゲンシイ(Ammonifex degensii)、カルディセルロシロプトル・ベスキー(Caldicellulosiruptor bescii)、キャンディダトゥス・デスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)、ナトラネロビウス・サーモフィルス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム(Pelotomaculum thermopropionicum)、アシディチオバチルス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム・ビノスム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター種(Marinobacter sp.)、ニトロソコッカス・ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス・ワッソニ(Nitrosococcus watsoni)、シュードアルテロモナス・ハロプランクティス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、クテドノバクテル・ラセミファー(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム・エベスチガータム(Methanohalobium evestigatum)、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノジュラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノストック種(Nostoc sp.)、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、アルスロスピラ種(Arthrospira sp.)、リングビア種(Lyngbya sp.)、ミクロコレウス・クソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オシラトリア種(Oscillatoria sp.)、ペトロトガ・モビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、アカリオクロリス・マリーナ(Acaryochloris marina)、又は既知のPAM配列を有するCRISPRヌクレアーゼをコードする任意の種に由来してもよい。非培養性細菌によりコードされるCRISPRヌクレアーゼも、本発明に関連して使用してもよい。(Burstein et al. Nature, 2017参照)。既知のPAM配列を有するCRISPRタンパク質のバリアント、例えば、SpCas9 D1135Eバリアント、SpCas9 VQRバリアント、SpCas9 EQRバリアント又はSpCas9 VRERバリアントも、本発明に関連して使用してもよい。
【0083】
したがって、Cas9タンパク質若しくは改変されたCas9、若しくはCas9のホモログ若しくはオルソログといったCRISPRシステムのRNA誘導型DNAヌクレアーゼ、又は、Cpf1とそのホモログ及びオルソログといった他のCRISPRシステムに属する他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼを、本発明の組成物に使用してもよい。別のCRISPRヌクレアーゼ、例えば、国際公開第2020/223514号及び国際公開第2020/223553号(それぞれの内容は参照により組み入れられる)に記載のヌクレアーゼも使用してもよい。
【0084】
ある特定の態様では、CRISPRヌクレアーゼは、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」であってもよい。天然配列ポリペプチドの「機能性誘導体」は、天然配列ポリペプチドと質的に共通した生物学的性質を有する化合物である。「機能性誘導体」には、天然配列の断片、並びに天然配列ポリペプチド及びその断片の誘導体(ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通の生物学的活性を有する)が挙げられるが、それらに限定されるものではない。この明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を加水分解して断片にする能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントと、その共有結合性改変体及び融合体の両者を包含する。Casポリペプチド又はその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質又はその断片の変異体、融合体、共有結合性改変体が挙げられるが、それらに限定されるものではない。Casタンパク質又はその断片、加えてCasタンパク質又はその断片の誘導体を含むCasタンパク質は、細胞から取得可能なものであってもよく、若しくは化学的に合成されるものであってもよく、又はこれらの方法の組合せにより得られるものであってもよい。細胞は、天然でCasタンパク質を産生する細胞、又は、天然でCasタンパク質を産生し、かつ、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように、若しくは、内因性Casと同じ若しくは異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように、遺伝子操作された細胞であってもよい。場合によっては、細胞は、天然ではCasタンパク質を産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作されている。
【0085】
いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼはCpf1である。Cpf1は、Tリッチなプロトスペーサー隣接モチーフを利用する単一のRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。Cpf1は、ねじれ型DNA二本鎖切断によってDNAを切断する。アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)及びラクノスピラ科(Lachnospiraceae)に由来する2つのCpf1酵素が、ヒト細胞において効率的にゲノム編集を行うことが示されている。(Zetsche et al., 2015参照)。
【0086】
したがって、Cas9タンパク質若しくは改変されたCas9、若しくCas9のホモログ、オルソログ若しくはバリアントといったII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNAヌクレアーゼ、又は、Cpf1及びそのホモログ、オルソログ若しくはバリアントといった他のCRISPRシステムに属する他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼを、本発明で使用してもよい。
【0087】
いくつかの態様では、ガイド分子は、新しい性質又は向上した性質(例.分解に対する安定性、ハイブリダイゼーションエネルギー又はRNA誘導型DNAヌクレアーゼとの結合性)を付与する1つ以上の化学修飾を含む。適切な化学修飾には、修飾塩基、修飾糖、又は修飾されたヌクレオシド間結合が挙げられるが、それらに限定されるものではない。適切な化学修飾の限定するものではない例には、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’-O-メチルプソイドウリジン、β,D-ガラクトシルキューオシン、2’-O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、β,D-マンノシルキューオシン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-β-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸-メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸、ワイブトキソシン、キューオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)-カルバモイル)スレオニン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、ワイブトシン、3-(3-アミノ-3-カルボキシ-プロピル)ウリジン、(acp3)u、2’-O-メチル(M)、3’-ホスホロチオエート(MS)、3’-チオPACE(MSP)、プソイドウリジン又は1-メチルプソイドウリジンが挙げられる。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。
【0088】
RNA誘導型CRISPRヌクレアーゼによってSARM1アレルを標的とすることに加えて、細胞(例.造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)、γδT細胞、iPSc由来T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、インバリアントNKT細胞(iNKT)、iPS由来NKT、単球又はマクロファージ)治療に使用するための、標的細胞内のSARM1発現を阻害する他の手段としては、ギャップマー、shRNA、siRNA、カスタマイズされたTALEN、メガヌクレアーゼ又はジンクフィンガーヌクレアーゼの使用、低分子阻害剤、及び標的細胞において遺伝子の発現を低下させ又は排除するための当技術分野において知られている他の方法が挙げられるが、それらには限定されない。例えば、米国特許第6,506,559号;同第7,560, 438号;同第8,420,391号;同第8,552,171号;同第7,056,704号;同第7,078,196号;同第8,362,231号;同第8,372,968号;同第9,045,754号及び国際公開第2004/067736号;同第2006/097853号;同第2003/087341号;同第2000/041566号;同第2003/080809号;同第2010/079430号;同第2010/079430号;同第2011/072246号;同第2018/057989号;同第2017/164230号を参照、これらの内容全体は、参照により組み入れられる。
【0089】
有利には、この明細書で提示した少なくとも1つのガイド配列部分を含むガイドRNA分子は、細胞内でCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成した場合、他のガイドRNA分子と比べて改善されたSARM1ノックアウト効果をもたらす。これらの特別にデザインされた配列は、他のヌクレオチド標的化に基づいた遺伝子編集又は遺伝子サイレンシング方法、例えば、siRNA、TALEN、メガヌクレアーゼ又はジンクフィンガーヌクレアーゼのために、SARM1標的部位を特定することにも有用である可能性がある。
【0090】
細胞への送達
この明細書に記載した、SARM1の発現を低下させ又は排除するのに有用な組成物は、適切な手段によって標的細胞に送達してもよい。本発明の方法でSARM1を標的とするために使用するRNAガイド分子は、細胞治療のために対象に投与する予定の細胞又はそのような細胞とすることが予定されている細胞であって、SARM1アレルを含む及び/又は発現する細胞に送達してもよい。例えば、本発明のある態様では、SARM1アレルを特異的に標的とするRNA分子が標的細胞に送達され、標的細胞は、造血幹細胞(HSC)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、ナチュラルキラー細胞(NK)、iPS由来NK細胞(iNK)、T細胞、自然免疫様T細胞(iT)ナチュラルキラーT細胞(NKT)、インバリアントNKT細胞(iNKT)、単球又はマクロファージである。細胞への送達は、in vivo、ex vivo又はin vitroで実施してもよい。いくつかの態様では、細胞への送達はex vivo又はin vitroで行われ、得られた改変細胞を必要とする対象に投与してもよい。いくつかの態様では、細胞への送達はin vivoで行われ、細胞の改変は、必要とする対象の内部で生じる。さらに、この明細書に記載した核酸組成物は、DNA分子、RNA分子、リボ核タンパク質(RNP)、核酸ベクター、又はそれらの組合せのうちの1つ以上として細胞に送達してもよい。
【0091】
いくつかの態様では、RNA分子は化学修飾を含む。適切な化学修飾の限定するものではない例には、2’-O-メチル(M)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、又は2’-O-メチル-3’-チオPACE(MSP)、プソイドウリジン及び1-メチルプソイドウリジンが挙げられる。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。
【0092】
適切なウイルスベクター系を用いて、核酸組成物、例えば、本発明のRNA分子の組成物を送達してもよい。核酸を導入し、組織を標的とするために、通常のウイルス及び非ウイルスに基づく遺伝子移入を行うことができる。ある特定の態様では、in vivo又はex vivo遺伝子治療のために核酸が投与される。非ウイルスベクター送達系には、裸の核酸、及び送達媒体(例.リポソーム又はポロキサマー)と複合体化した核酸が挙げられる。遺伝子治療の手順の総説は、Anderson (1992);Nabel & Felgner (1993);Mitani & Caskey (1993);Dillon (1993);Miller (1992);Van Brunt (1988);Vigne (1995);Kremer & Perricaudet (1995);Haddada et al. (1995)及びYu et al. (1994)を参照。
【0093】
核酸及び/若しくはタンパク質の非ウイルス性送達の方法には、電気穿孔、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、パーティクルガン加速、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリカチオン若しくは脂質:核酸コンジュゲート、人工ビリオン、及び促進剤による核酸の取込みが挙げられ、又は、核酸及び/若しくはタンパク質は、細菌若しくはウイルス(例.アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、リゾビウム種(Rhizobium sp.)NGR234、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)、タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)、ジャガイモウイルスX(potato virus X)、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)、及びキャッサバ葉脈モザイクウイルス(cassava vein mosaic virus))により植物細胞へ送達できる(例えば、Chung et al., 2006を参照)。例えばSonitron 2000系(Rich-Mar)を用いるソノポレーションも、核酸の送達に使用できる。タンパク質及び/又は核酸のカチオン性脂質媒介送達も、in vivo、ex vivo又はin vitro送達として企図される。(Zuris et al. (2015)を参照;Coelho et al. (2013);Judge et al. (2006)及びBasha et al. (2011)も参照)。
【0094】
トランスポゾンに基づく系(例.組換えスリーピングビューティトランスポゾン系又は組換えPiggyBacトランスポゾン系)のような非ウイルスベクターを、標的細胞に送達してもよく、標的細胞において、組成物の分子の塩基配列又は組成物の分子をコードする塩基配列の転位に利用してもよい。
【0095】
他の代表的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte, Inc.(Rockville, Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, Mass.)及びCopernicus Therapeutics Inc.が提供するもの(例えば米国特許第6,008,336号参照)が含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号及び米国特許第4,897,355号で説明されており、リポフェクション試薬は市販されている(例.Transfectam(登録商標)、Lipofectin(登録商標)及びLipofectamine(登録商標)RNAiMAX)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質及び中性脂質には、国際公開第91/17424号及び国際公開第91/16024号に開示されているものが含まれる。細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vivo投与)への送達が可能である。
【0096】
免疫脂質複合体といった標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者によく知られている(例えば、Crystal, Science (1995);Blaese et al., (1995);Behr et al., (1994);Remy et al. (1994);Gao and Huang (1995);Ahmad and Allen (1992);米国特許第4,186,183号;同第4,217,344号;同第4,235,871号;同第4,261,975号;同第4,485,054号;同第4,501,728号;同第4,774,085号;同第4,837,028号及び同第4,946,787号を参照)。
【0097】
送達の別の方法には、送達する核酸をEnGeneIC送達媒体(EDV)へパッケージングすることが含まれる。EDVは、抗体の一方のアームが標的組織に対する特異性を有し、他方がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を用いて、標的組織へ特異的に送達する。抗体は、EDVを標的細胞表面に運び、EDVがエンドサイトーシスによって細胞内に運ばれる。細胞内に入った後に、内容物が放出される。(MacDiarmid et al., 2009参照)。
【0098】
ウイルスによる核酸の送達のためのRNA又はDNAウイルス系の使用は、ウイルスの標的を体内の特定の細胞とし、ウイルスペイロードを核へ輸送する高度に進化した方法を活用する。ウイルスベクターは、患者へ直接投与でき(in vivo)、又は、in vitroで細胞を処理するために使用でき、改変された細胞を患者へ投与する(ex vivo)。核酸を送達する従来のウイルス系には、遺伝子移入のための、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス及び単純ヘルペスウイルスのベクターが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0099】
レトロウイルスのトロピズムは、外来エンベロープタンパク質を組み入れることにより変化させることができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大する。レンチウイルスベクターは、分裂していない細胞に形質導入又は感染できるレトロウイルスベクターであり、通常、ウイルス力価が高い。レトロウイルスの遺伝子移入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、シス作用性末端反復配列で構成され、最大6~10kbの外来配列をパッケージングする能力がある。最小限のシス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、治療用遺伝子を標的細胞へ組み込み、導入遺伝子を永続的に発現させるために用いられる。広く用いられるレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びそれらの組合せに基づくものが挙げられる。(例えば、Buchschacher et al. (1992);Johann et al. (1992);Sommerfelt et al. (1990);Wilson et al. (1989);Miller et al. (1991);国際公開第94/26877号を参照)。
【0100】
臨床試験における遺伝子移入のために、現在、少なくとも6つのウイルスベクターが利用でき、それらは、ヘルパー細胞株へ挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用して、形質導入剤を生成する。
【0101】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験で使用されたことがあるレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., 1995;Kohn et al., 1995;Malech et al., 1997を参照)。PA317/pLASNは、遺伝子治療の治験で使用された初めての治療用ベクターであった(Blaese et al., 1995)。MFG-Sパッケージングベクターの形質導入効率は、50%以上であった(Ellem et al., (1997);Dranoff et al., 1997)。
【0102】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染する能力があるウイルス粒子を形成するために用いられる。そのような細胞には、アデノウイルス、AAVをパッケージングする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージングするPsi-2細胞又はPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子へパッケージングする産生細胞株により生成される。ベクターは、通常、パッケージング及び(該当する場合は)その後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットで置換されている。欠損したウイルス機能は、パッケージング細胞株によりトランスで供給される。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、通常、パッケージング及び宿主ゲノムへの組込みに必要とされるAAVゲノム由来の末端逆位配列(ITR)のみを有する。ウイルスDNAは細胞株においてパッケージングされ、その細胞株は、他のAAV遺伝子、つまり、ITR配列を欠くが、rep及びcapをコードするヘルパープラスミドを含有する。その細胞株は、ヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ITR配列の欠損のため、ヘルパープラスミドは大量にはパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性が高い熱処理によって軽減できる。さらに、バキュロウイルス系を用いて臨床スケールでAAVを産生できる(米国特許第7,479,554号参照)。
【0103】
多くの遺伝子治療において、遺伝子治療ベクターは、特定の組織に対して高度の特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面のウイルス被覆タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、所定の細胞に対する特異性を有するように改変できる。そのリガンドは、対象とする細胞に存在することが知られた受容体に対して親和性を有するように選択される。例えば、Hanら(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70と融合したヒトヘレグリンを発現するように改変でき、その組換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳がん細胞に感染することを報告した。この原理は、他のウイルス-標的細胞の組合せに拡張でき、その組合せでは、標的細胞は受容体を発現し、ウイルスは細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する。例えば、繊維状ファージは、事実上、選択したいかなる細胞受容体に対しても特異的な結合親和性を有する抗体断片(例.FAB又はFv)を提示するように操作できる。この説明は、主にウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理が非ウイルスベクターに適用できる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取込みを優先する特定の取込み配列を含むように操作できる。
【0104】
遺伝子治療ベクターは、個々の患者への投与により、例えば、全身投与(例.硝子体内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内注入)又は局所適用により、in vivoで送達できる。
【0105】
ベクターは、細胞、例えば、個々の患者から外植された細胞(例.リンパ球、骨髄穿刺、組織生検)又はユニバーサルドナー造血幹細胞へ、ex vivoで送達され、続いて、その細胞を患者へ、ベクターを組み入れている細胞の選択後に、再移植できる。限定するものではない代表的なex vivoアプローチは、培養のために患者から組織(例.末梢血、骨髄及び脾臓)を取り出し、培養細胞(例.造血幹細胞)に核酸を移入し、次いで、細胞を、患者の標的組織(例.骨髄及び脾臓)に生着させることを含んでいてもよい。いくつかの態様では、幹細胞又は造血幹細胞は、生存率増強剤で更に処理してもよい。
【0106】
診断、研究のための、又は(例えばトランスフェクト細胞の宿主への再注入による)遺伝子治療のためのex vivoでの細胞トランスフェクションは、当業者によく知られている。好ましい態様において、対象から細胞が単離され、核酸組成物がトランスフェクトされ、対象(例.患者)へ再注入される。ex vivoトランスフェクションに適したさまざまな細胞型は、当業者によく知られている(例えば、Freshney, "Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique and Specialized Applications (6th edition, 2010)と、この文献の、患者から細胞を単離し、培養する方法の考察で引用されている文献を参照)。
【0107】
治療用核酸組成物を有するベクター(例.レトロウイルス、リポソーム)は、in vivoで細胞に形質導入するために、生物体へ直接投与することもできる。投与は、注射、注入、局所適用(例.点眼剤及びクリーム)及び電気穿孔を含むが、それらには限定されない、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触するように導入するために通常使用される経路による。そのような核酸を投与する適切な方法が利用でき、当業者によく知られており、特定の組成物を投与する複数の経路が使用できるが、特定の経路が、別の経路より迅速かつ効果的な反応を提供できる場合が多い。いくつかの態様によれば、組成物はIV注射で送達される。
【0108】
導入遺伝子の免疫細胞(例.T細胞)への導入に適したベクターには、非組込み型レンチウイルスベクターが挙げられる。例えば、米国特許出願公開第2009/0117617号を参照。
【0109】
薬学的に許容される担体は、部分的には、投与する組成物によって、加えて、組成物の投与に用いる方法によって、決まる。したがって、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989の記載されているように、利用できる医薬組成物の幅広い種類の適切な製剤がある。
【0110】
開示した組成物及び方法は、患者のがん、疾患、障害又は感染症を治療する医薬の製造又は免疫治療にも使用してもよい。
【0111】
SARM1遺伝子のアレルを特異的に標的とするRNAガイド配列部分の例
SARM1遺伝子を標的とするために多数のガイド配列を設計できるが、明細書に記載する方法を有効に実行するために、表1に記載され、配列番号1~13457によって特定される塩基配列を具体的に選択した。SARM1両アレルノックアウト細胞の例は、その全内容が参照によって組み込まれる、PCT国際出願第PCT/US2021/034583号で提供される。この発明のいくつかの側面によれば、本明細書で開示するガイド分子は、野生型のSARM1又は改変されていないSARM1を発現する対応細胞と比較して、生存率の増加及び/又は機能性の増加を示すSARM1両アレルノックアウト細胞を生成するために利用してもよい。細胞の限定するものではない例は、肝臓細胞(例.肝細胞)、肺細胞、脾臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、皮膚細胞、膀胱細胞、眼の細胞、眼球細胞、網膜細胞、角膜細胞、脳細胞、食道細胞、頭部の細胞、頚部の細胞、卵巣の細胞、精巣の細胞、前立腺細胞、胎盤細胞、上皮細胞、内皮細胞、脂肪細胞、腎臓/腎細胞、心臓細胞、筋肉細胞、血液細胞(例.白血球)、免疫細胞、中枢神経系(CNS)細胞及び神経節細胞などの他に、これらの組合せを含む。
【0112】
表1は、上記態様においてSARM1アレルと関連付けるために説明したような使用のために設計されたガイド配列を示す。それぞれの操作したガイド分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、例えば、配列NGG又はNAGにマッチするPAMの隣に存在する対象とする標的ゲノムDNA配列と関連付けるように更に設計され、ここで、「N」は任意の核酸塩基である。ガイド配列は、例えばSpCas9WT(PAM SEQ:NGG)、SpCas9.VQR.1(PAM SEQ:NGAN)、SpCas9.VQR.2(PAM SEQ:NGNG)、SpCas9.EQR(PAM SEQ:NGAG)、SpCas9.VRER(PAM SEQ:NGCG)、SaCas9WT(PAM SEQ:NNGRRT)、SpRY(PAM SEQ:NRN若しくはNYN)、NmCas9WT(PAM SEQ:NNNNGATT)、Cpf1(PAM SEQ:TTTV)又はJeCas9WT(PAM SEQ:NNNVRYM)を含むが、これらに限定されない、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと連携して機能するように設計された。この発明のRNA分子は、それぞれ、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成するように設計されており、使用するCRISPRヌクレアーゼに対応する1つ以上の異なるPAM配列を利用して対象となる塩基配列を標的とするために設計されている。
【0113】
【0114】
本発明の完全な理解を促すために実施例を示す。以下の実施例は、本発明の製造及び実施の代表的な様式の実例を示す。しかし、本発明の範囲は、これらの実施例において開示される特定の態様に限定されず、これらの態様は実例的な目的のものに過ぎない。
【実施例】
【0115】
実験の詳細
実施例1 SARM1ノックアウト分析
配列番号1~13457のいずれか1つに記載の配列のヌクレオチドを含む連続する17~50ヌクレオチドを含むガイド配列部分を、HeLa細胞においてSpCas9を使用して高いオンターゲット活性についてスクリーニングする。オンターゲット活性は、DNAキャピラリー電気泳動分析によって決定する。
【0116】
実施例2 SARM1編集分析
SARM1(Sterile alpha and toll/interleukin-1 receptor motif-containing 1)は、その活性が軸索変性と関連付けられるNAD+ヒドロラーゼである。SARM1の両アレルノックアウトのための最適なRNAガイド分子を選択するために、SARM1エクソンを標的とする23個のRNAガイド分子をHeLa細胞においてスクリーニングした(表2)。簡潔に述べれば、SpCas9コーディングプラスミド(64ng)を、RNAガイド分子を発現するDNAプラスミド(20ng)と96ウェルプレートフォーマットにおいてjetOPTIMUS(登録商標)試薬(Polyplus)を使用して共トランスフェクトした。細胞をDNAトランスフェクションの72時間後に採取し、ゲノムDNAを抽出し、内因性ゲノム領域を増幅するプライマーを使用してキャピラリー電気泳動のために使用した。
図1Aのグラフは、3回の独立した実験の編集の割合(%)の平均±標準偏差(STDV)を示す。全てのRNAガイド分子についてのキャピラリー電気泳動データの分析は10%~90%の活性範囲を示す。
【0117】
さらに、HeLa細胞においてOMNI-50(配列番号13471)及びOMNI-79(配列番号13472)CRISPRヌクレアーゼを用いてスクリーニングを行った。トランスフェクション条件は、SpCas9トランスフェクションの条件と同一であった。編集効率を次世代シークエンシング(NGS)分析によって測定した。OMNI-50のg13による編集効率は43%(STDV=3.94)であった。OMNI-79のg33による編集効率は35%(STDV=4.2)であった。
図1Bを参照。RNAガイド分子のガイド配列部分を表4に示す。
【0118】
RNAガイド分子がナンセンスコドン介在的分解(NMD)によってSarm1ノックアウトを付与することを検証するために、SARM1を発現するマウスNeuro-2a細胞を使用した。HeLaスクリーニングからのヒトSARM1を標的とする10個の最も活性のガイドRNA分子の効果を試験するために、発明者らは、ヒトガイドRNA分子に対応するマウスSARM1 DNAを標的とする10個のマウスに特異的なガイドRNA分子を特定した。マウスRNAガイド分子の活性をマウス細胞で試験した。簡潔に述べれば、150×10
3個のNeuro-2a細胞を、105ピコモルのSpCas9タンパク質及び120ピコモルのsgRNAから構成されるプレアセンブルされたRNPと混合し(表3を参照)、100ピコモルのエレクトロポレーション増強剤(IDT-1075916)と混合し、DS-134プログラムを応用することによってSF cell 4D-nucleofector X Kit S(PBC2-00675, Lonza)を使用してエレクトロポレートした。細胞の画分をエレクトロポレーションの72時間後に採取し、ゲノムDNAを抽出して、NGSによってオンターゲット活性を測定した。NGS分析によれば、全てのガイドRNA分子は、高い挿入又は欠失(インデル)活性を示した(
図2)。
【0119】
SARM1転写物のレベルに対する編集の効果を評価するために、全RNAをNeuro-2a細胞からエレクトロポレーションの7日後に抽出し、Sarm1のmRNAレベルをqRT-PCRによって測定した。結果は、ナンセンスコドン介在的分解(NMD)に起因するSarm1 mRNAのレベルにおける80%より大きい低下を実証している(
図3)。
【0120】
次に、独特のPAM要件を示す新規のCRISPRヌクレアーゼ、OMNI-103(配列番号13473)をSARM1の編集について試験した。このヌクレアーゼを上記のようにHeLa細胞で試験した。この目的のために、ヒトゲノム中の特定の位置を標的とするように設計されたsgRNA分子(表5Aに示すガイド配列部分(gRNA)の配列)とともに、対応するOMNI-P2A-mCherry発現ベクター(pmOMNI、表7)を使用して、HeLa細胞中にOMNI-103をトランスフェクトした。72時間後に細胞を採取し、トランスフェクション効率を、mCherry蛍光をマーカーとして利用するFACSで定量化するために、細胞の半数を使用した。残りの細胞を溶解し、それらのゲノムDNAのPCR反応を行い、対応する推定ゲノム標的を増幅した。アンプリコンをNGSにかけ、次いで、得られた配列を使用して、それぞれの標的部位における編集の割合を算出した。切断部位の周辺の短い挿入又は欠失(インデル)は、ヌクレアーゼ誘導DNA切断後のDNA末端の修復の代表的な結果である。したがって、編集の割合(%)の算出を、それぞれのアンプリコンの配列に含まれるインデルの比率から推定した。表5B及び
図4を参照。
【0121】
実施例3 SARM1編集NK細胞アッセイ
代謝アッセイ
解糖及び酸化的ミトコンドリア代謝: Seahorse XF Glycolysis Stress Test Kit及びSeahorse XF Cell Mito Stress Kit(Agilent Technologies)を使用して、解糖及び酸化的ミトコンドリア代謝を同時に分析するための改変した製造元の説明書に従ってSeahorseアッセイを行う。簡潔に述べれば、NK及びiNK細胞を洗浄し、グルコースを含まない培地(GIBCO)に再懸濁する。1.5×105個の細胞をウェルごとに3連でプレーティングし、Seahorse Xfe96 Analyzer(Agilent Technologies)で分析する。グルコース、オリゴマイシン、FCCP、ピルビン酸ナトリウム、ロテノン及びアンチマイシンAを段階的に注入して代謝機能を測定する。SRC測定値は、平均最大OCR値から平均基底OCR値を引いたものとして算出する。ATP関連呼吸(ATP-linked respiration)は、平均基底OCR値から平均ポストオリゴマイシン値を引いたものとして算出する。解糖は、平均ポストグルコースECAR値から平均基底ECAR値を引いたものとして算出する。解糖予備能は、平均最大ECAR値からポストグルコースECAR値を引いたものとして算出する。
【0122】
ATP定量化アッセイ: 1ウェル当たり1×105個のNK及びiNK細胞を、ATP Bioluminescence Assay Kit HS II(Sigma Aldrich)とInfinite M200 PRO Luminometer(Tecan)を使用して分析する。
【0123】
NAD+及びNADH定量化アッセイ: NAD+及びNADH濃度を、NAD/NADH Cell-Based Assay Kit(Cayman Chemical)を使用して製造元の説明のとおりに定量化し、Infinite M200 PRO Luminometerを用いて分析する。酸化ストレスの分析のために、NK及びiNK細胞を過酸化水素(Sigma Aldrich)と1時間培養する。処理後に、5mM MitoSox Indicator Dye(Thermo Fisher)を含む無血清培地中で細胞を培養する。次いで細胞を洗浄し、フローサイトメトリー分析のために抗CD56抗体及び定着性生存色素(fixable viability dye)で対比染色する。代謝物の質量分析のために、iNK細胞及び増殖させた末梢血NK細胞を液体窒素中で瞬間凍結し、メタボロミクスを行う。
【0124】
殺傷アッセイ
細胞毒性を評価するためのin vitroアッセイ: 腫瘍標的細胞をCFSE染色し、5%FBSを含む培地に再懸濁する。NKエフェクター細胞を標的細胞と96ウェルプレート中5:1のE:T比及びヨウ化プロピジウムの存在下で共培養する。共培養された細胞をIncuCyte(Sartorius)、生細胞分析システムに最大24時間入れ、死んだ標的細胞を示す二重染色された細胞によってNK細胞の殺傷能力を定量化する。
【0125】
3次元腫瘍スフェロイド細胞毒性アッセイ: 腫瘍細胞を数日間培養してスフェロイドを形成させる。次いで4×104個のNK又はiNK細胞をそれぞれのウェルに穏やかに加え、細胞を数日間共培養した。培養の終了時に、それぞれのウェル中の細胞を破砕して単一細胞懸濁液とし、フローサイトメトリー分析のために蛍光コンジュゲートしたCD56抗体及び定着性生存色素で染色する。腫瘍細胞をNucLight Redに基づいて定量化し、NK又はiNK細胞をCD56発現に基づいて定量化する。
【0126】
SARM1編集NK細胞のin vivo保持モデル:
NSGマウスにおける保持モデルを使用して、編集したNK細胞のin vivo機能性を試験する。3つの実験群(対照、編集した細胞及び編集していない細胞)を使用する。マウスに1日当たり300radの照射を行った後に細胞を注入する。細胞を200μlの緩衝液に再懸濁し、マウスの静脈内に注入する。IL2及びIL15を腹腔内に注入する。注入の3~4日後にマウスを屠殺し、骨髄及び脾臓を分析してNK保持能力を測定する。アッセイを要約する表を以下に示す:
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例4 NK細胞におけるSARM1のノックアウトはNK細胞の殺傷活性を向上させる
序論
SARM1(Sterile alpha and Toll/interleukin-1 receptor motif-containing 1)は、その活性が軸索変性と関連付けられるNAD+ヒドロラーゼである。GMX1778は、NAD+生合成酵素ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)の強力で特異的な阻害剤である。GMX1778によるNAMPTの選択的な阻害は、NAD+の産生を遮断し、細胞死をもたらす。そのため、NAMPTは、細胞内NAD濃度の重要な制御因子であり、結果的にエネルギー代謝の重要な制御因子でもある。
図5を参照。
【0136】
結果
編集及びNGS: 2×10
6個の解凍した初代NK細胞を5日間増殖させ、次いで113ピコモルのSpCas9及び226ピコモルのSARM1_g91 gRNA(GUACUGGUGGCAAACCCAGU(配列番号11104))をエレクトロポレートした。7日後に細胞をNGS分析したところ、SARM1の90%の編集を示した。
図6Aを参照。
【0137】
殺傷アッセイ: エレクトロポレーションの10日後に、6,250個のNK細胞を、GFPで標識された2,500個のMCF7標的細胞とともに、3連でプレーティングした。共培養物を2.5:1のE:T比で24時間インキュベートした。画像を1時間ごとにIncucyte(登録商標)で撮影した。殺傷アッセイ培地は、10%のFBS及び20ng/mlのIL-15を補充したMEM-αであった。
図6Bを参照。
【0138】
生存率(ATPlite)アッセイ: エレクトロポレーションの15日後に、50,000個のSARM1_g91_KO及び非処理(NT)細胞を、GMX1778の濃度を増加させながら3連でプレーティングし、48時間インキュベートした。細胞生存率をATPliteキットによって定量化した。
図6Cを参照。
【0139】
結論
これらの結果は、SARM1ノックアウトNK細胞がGMX1778処理(SARM1誘導剤)によって細胞生存率が向上することを示し、SARM1ノックアウトNK細胞の殺傷能力が向上することも示す。
【0140】
そのため、この実施例の結果は、NK細胞におけるSARM1のノックアウトがNK細胞の殺傷活性を向上させるという概念実証となる。他のヌクレアーゼ及びガイド分子の組合せを、SARM1をノックアウトし、同じ効果を達成するために使用してもよい。これらの予想外の結果は、NK細胞におけるSARM1のノックアウトがNK細胞の殺傷活性を向上させることを示す最初のものである。そのため、SARM1-KO NK細胞は、免疫治療、例えば、がん治療で使用してもよい。
【0141】
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【配列表】
【国際調査報告】