IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エメンドバイオ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-542883改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント
<>
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図1
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図2A
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図2B
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図2C
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図3
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図4
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図5
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図6
  • 特表-改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-18
(54)【発明の名称】改変された忠実度の高いOMNI-79ヌクレアーゼバリアント
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/14 20060101AFI20241111BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C12N9/14 ZNA
C12N15/55
C12N15/09 110
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532887
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2022080627
(87)【国際公開番号】W WO2023102407
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,858
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521476126
【氏名又は名称】エメンドバイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】イザール、リオル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】ロッカー、リアット
(72)【発明者】
【氏名】マロン・デイビッド、ミリット
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、ゲノム編集のための組成物及び方法に関する。特に、I14、S1005及びE1050の少なくとも1つにアミノ酸置換を含む野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)を有する、天然に存在しないOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1005、I14及びE1050の少なくとも1つにアミノ酸置換を含む野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)を有する、天然に存在しないOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項2】
前記S1005及び/又はE1050でのアミノ酸置換が、正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項3】
前記正に荷電したR基を有するアミノ酸が、リジン又はアルギニンである、請求項2に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項4】
前記アミノ酸置換が、S1005R、S1005K、I14L及びE1050Kのいずれか1つである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項5】
I14及びS1005のそれぞれにアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項6】
前記アミノ酸置換がI14L及びS1005Rである、請求項3に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項7】
S1005及びE1050のそれぞれにアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項8】
前記アミノ酸置換がS1005K及びE1050Kである、請求項5に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項9】
配列番号2、配列番号3又は配列番号12~25のいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項10】
前記アミノ酸置換の位置がI14で、I14L、I14V、I14F、I14C、I14A又はI14Tのいずれか1つである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項11】
前記アミノ酸置換がI14Lである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項12】
前記アミノ酸置換の位置がI14で、前記アミノ酸が芳香族又は疎水性のR基を有する、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項13】
前記アミノ酸置換の位置がS1005で、S1005R、S1005K、S1005Q、S1005I、S1005M、S1005V、S1005T、S1005N、S1005F、S1005A、S1005G又はS1005Eのいずれか1つである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項14】
前記S1005でのアミノ酸置換が、正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項15】
前記S1005でのアミノ酸置換が、極性のR基を有するアミノ酸への置換である、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項16】
前記アミノ酸置換がS1005Rである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項17】
前記アミノ酸置換がS1005Kである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項18】
前記アミノ酸置換がS1005Tである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項19】
前記アミノ酸置換がS1005Nである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項20】
前記アミノ酸置換がS1005Qである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項21】
前記アミノ酸置換の位置がE1050で、E1050K、E1050R、E1050P、E1050A、E1050I、E1050L、E1050V、E1050G又はE1050Tのいずれか1つである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項22】
前記アミノ酸置換がE1050Kである、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項23】
前記E1050でのアミノ酸置換が、正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である、請求項1に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項24】
野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)との配列同一性が少なくとも80%である、請求項1~23のいずれか一項に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項25】
核局在化配列(NLS)を更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項26】
前記バリアントは、前記バリアントをDNA標的部位に向けるガイドRNA分子と複合体を形成した野生型OMNI-79ヌクレアーゼと比較して、前記ガイドRNA分子と複合体を形成した場合、前記DNA標的部位での活性が増加する、請求項1~25のいずれか一項に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアント。
【請求項27】
DNA標的部位を標的とするガイドRNA分子と複合体を形成した請求項1~26のいずれか一項に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントを含むCRISPRシステムであって、野生型OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質及び前記ガイドRNA分子を含む野生型CRISPRシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加しているCRISPRシステム。
【請求項28】
オンターゲット編集活性が増加した遺伝子編集方法であって、DNA標的部位を、請求項1~26のいずれか一項に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質を含む活性なCRISPRシステムと接触させることを含む方法。
【請求項29】
前記遺伝子編集は真核細胞又は原核細胞で生じる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記真核細胞は植物細胞又は哺乳動物細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物細胞はヒト細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記DNA標的部位が、遺伝子の病原性アレルの内部又は近傍にある、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記DNA標的が外因性ドナー分子で修復される、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記オンターゲット編集活性が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、2倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍又は10倍増加する、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項28~34のいずれか1項に記載の方法で得られた改変細胞。
【請求項36】
前記細胞は生着できる、請求項35に記載の改変細胞。
【請求項37】
前記細胞は、生着後に子孫細胞を生じさせることができる、請求項36又は36に記載の改変細胞。
【請求項38】
前記細胞は、自家移植後に子孫細胞を生じさせることができる、請求項35~37のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項39】
前記細胞は、生着後少なくとも12か月間又は少なくとも24か月間、子孫細胞を生じさせることができる、請求項35~38のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項40】
前記細胞は、造血幹細胞、前駆細胞、CD34+造血幹細胞、骨髄細胞及び末梢単核細胞からなる群より選択される、請求項35~39のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項41】
請求項35~39のいずれか1項に記載の改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項42】
請求項41に記載の組成物のin vitro又はex vivo製造方法であって、前記細胞を前記薬学的に許容される担体と混合することを含む、方法。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチド分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年12月1日出願の米国仮特許出願第63/284,858号の利益を主張し、その内容は参照によりこの明細書に組み入れられる。
【0002】
この出願全体で、括弧内で参照するものをはじめ、さまざまな刊行物を参照する。この出願で言及する全ての刊行物は、本発明が属する分野及び本発明が利用できる分野における特徴を追加するために、その全体が、参照によりこの明細書に組み入れられる。
【0003】
配列表に対する参照
本出願は、2022年11月30日に提出したXMLファイルに含まれる、MS-Windows(登録商標)とのオペレーティングシステム互換性を有するIBM-PC形式で2022年11月14日に作成した、サイズが133キロバイトのファイル「221130_91808-A-PCT_Sequence_Listing_AWG.xml」中のヌクレオチド配列を、本出願の一部分として、参照により組み入れる。
【背景技術】
【0004】
標的化ゲノム改変は、病原性の遺伝的変化の作用を逆転させるために使用できる強力なツールであり、したがって、ヒト遺伝子疾患に対する新規な治療法を提供する可能性がある。遺伝子改変ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及び最も直近ではCRISPR/CasといったRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼをはじめとする現在のゲノム操作ツールは、ゲノム中に配列特異的なDNA切断を生成する。ゲノム配列の改変は、次の工程で起こり、新たに形成されたDNA切断部に応答して引き起こされる細胞のDNA修復メカニズムが働いた結果である。これらのメカニズムは、例えば、(1)切断部の2つの端部が、迅速ではあるが不正確でもある様式でライゲーションされる古典的非相同末端結合(NHEJ)(すなわち、切断部位における小さな挿入又は欠失の形態のDNAの変異が高頻度で生じる)。又は(2)切断部位の周囲のDNAを正確な様式で置きかえるために無傷の相同性DNAドナーを用いる相同組換え修復(HDR)、を含んでよい。効率的で安全なゲノム編集のためには、最初のDNA損傷誘導因子のオフターゲット活性が最小限であることが必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
改善された活性を有する改変されたクラスター化規則的配置短回文反復(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)/CRISPR関連OMNI-79ヌクレアーゼ、並びにゲノム操作、ゲノム外操作、ゲノム標的化、ゲノム編集及びin vitro診断におけるそれらの使用を、この明細書で開示する。
【0006】
いくつかの態様では、野生型OMNI-79ヌクレアーゼと比較して、活性が増加したOMNI-79ヌクレアーゼバリアント及び改良したバリアントを用いる方法が提供される。有利には、改変OMNI-79ヌクレアーゼバリアントがCRISPRエンドヌクレアーゼシステムで活性の場合、このCRISPRエンドヌクレアーゼシステムは、野生型OMNI-79ヌクレアーゼが活性である野生型CRISPRエンドヌクレアーゼシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加している。例えば、改変OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、標的のアレル中のみに存在し、標的ではないアレル中には存在しないヘテロ接合SNPを含有する標的領域におけるヌクレアーゼ活性を示してもよい。
【0007】
本発明のいくつかの態様によれば、野生型OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)と少なくとも80%同一の配列を含むOMNI-79ヌクレアーゼタンパク質のバリアントが提供される。
【0008】
本発明のいくつかの態様によれば、I14、S1005及びE1050の少なくとも1つにアミノ酸置換を含む野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)を有する、天然に存在しないOMNI-79ヌクレアーゼバリアントが提供される。
【0009】
本発明のいくつかの態様によれば、DNA標的部位を標的とするガイドRNA分子と複合体を形成した、明細書に開示したOMNI-79ヌクレアーゼバリアントを含むCRISPRシステムであって、野生型OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質及びガイドRNA分子を含む野生型CRISPRシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加しているCRISPRシステムが提供される。
【0010】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、OMNI-79バリアントを標的部位に向けるガイドRNAと複合体を形成した場合、野生型OMNI-79ヌクレアーゼ(配列番号1)と比較して、標的部位での活性が増加する。
【0011】
本発明のいくつかの態様によれば、DNA標的部位を、明細書に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質を含む活性なCRISPRシステムと接触させることを含む、オンターゲット編集活性が増加した遺伝子編集方法が提供される。
【0012】
いくつかの態様によれば、標的部位を、明細書に記載のOMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントを含む活性なCRISPRシステムと接触させることを含む、オンターゲット編集活性が増加した遺伝子編集方法が提供され、ここで、活性なCRISPRシステムは、野生型OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質を有する野生型CRISPRシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加している。
【0013】
さらなる態様及び本発明の適用可能性の完全な範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、本発明の精神及び範囲内でのさまざまな変更及び改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになることから、詳細な説明及び実施例は、本発明の好ましい態様を示すもので、説明のみを目的として記載されていることを理解する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】さまざまなhLDLR遺伝子標的に対する野生型OMNI-79ヌクレアーゼ及びOMNI-79バリアント5570の編集活性。編集活性は、次世代シーケンシング(NGS)解析により決定した。3回反復の平均及び標準偏差を示す。
図2A-2C】OMNI-79単一変異体の編集活性。HeLa細胞へのトランスフェクションにより、hSERP_g12R(図2A)、hLDLR_g46(図2B)及びhLDLR_g76(図2C)の3か所のゲノム部位を標的とする単一点変異バリアントを試験した。編集活性は、NGS解析により決定した。3回反復の平均及び標準偏差を示す。
図3】1005位での他の置換の編集活性に対する効果。hLDLR_g76を標的とする編集活性を、HeLa細胞へのトランスフェクションにより試験した。編集活性は、NGS解析で決定した。3回反復の平均及び標準偏差を示す。
図4】OMNI-79 V5570 RNP複合体による編集のNGS解析。事前組み立てた精製OMNI-79 V5570タンパク質(105pmol)及びsgRNA(124pmol)の複合体を、製造業者の指示に従いLonza Nucleofector(登録商標)Xユニットを用いて、HepG2(human hepatic carcinoma)細胞にエレクトロポレーションした。回復後、細胞を12ウェル組織培養プレートにプレーティングし、37℃、5%COインキュベータ中に維持した。エレクトロポレーションの72時間後、トリプシンを用いて細胞を分散させ、製造業者の説明書に従いQuickExtract溶液を用いて、ゲノム抽出物を調製した。インデル率の解析を、NGSにより行った。
図5】HepG2細胞でのOMNI-79 V5570 mRNAによる編集のNGS解析。1μgのOMNI-79 V5570コードmRNA(Trilink)、及び124pmol sgRNA(Agilent)を、製造業者の説明書に従いLonza Nucleofector(登録商標)Xユニットを用いて、HepG2細胞にエレクトロポレーションした。回復後、細胞を12ウェル組織培養プレートにプレーティングし、37℃、5%COインキュベータ中に維持した。エレクトロポレーションの72時間後、トリプシンを用いて細胞を分散させ、製造業者の説明書に従いQuickExtract溶液を用いて、ゲノム抽出物を調製した。インデル率の解析を、NGSにより行った。
図6】AAV感染によって発現されたOMNI-79 V5570及びgRNAによる編集のNGS解析。OMNI-79 V5570及び対応するsgRNA配列を保持するアデノ随伴ウイルスDJ血清型(AAV-DJ)を、Hepa1-6(マウス肝細胞がん)細胞及びHepG2細胞に、1×10~3×10の感染多重度(MOI)で感染させた。細胞を12ウェル組織培養プレートにプレーティングし、37℃、5%COインキュベータ中で16時間維持し、続いて、残ったウイルスを洗浄し、新しい培地を用いて更に48時間インキュベートした。トリプシンを用いて細胞を分散させ、製造業者の説明書に従いQuickExtract溶液を用いて、ゲノム抽出物を調製した。インデル率の解析を、NGSにより行った。
図7】HeLa細胞でのOMNI-79 V5570 mRNAによる編集のNGS解析。hSERP_g12及びCXCR4_s25部位を標的とする編集活性を、HeLa細胞へのOMNI-79 V5570コードmRNA(インハウスIVT)のトランスフェクションにより試験した。編集活性は、NGS解析で決定した。3回反復の平均及び標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
この明細書は、野生型OMNI-79ヌクレアーゼ(配列番号1)と比較して、標的部位での増加した活性を示す改変されたOMNI-79ヌクレアーゼを提供する。野生型OMNI-79ヌクレアーゼは、PCT国際特許出願第PCT/US2021/035928号に開示されており、参照により、この明細書に組み込まれる。改変されたOMNI-79ヌクレアーゼバリアントがCRISPRエンドヌクレアーゼシステムで活性の場合、このCRISPRエンドヌクレアーゼシステムは、野生型OMNI-79ヌクレアーゼを含むシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加している。いくつかの態様では、改変されたOMNI-79ヌクレアーゼは、野生型OMNI-79ヌクレアーゼに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むOMNI-79ヌクレアーゼバリアントである。いくつかの態様では、改変されたOMNI-79ヌクレアーゼは、野生型OMNI-79ヌクレアーゼに対する複数のアミノ酸置換を有する。
【0016】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、86%、87%,88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。限定するものではない例として、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、配列番号1で示す配列と、アミノ酸残基の最大で1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%又は20%が相違していてもよい。そのような配列の相違は、配列アライメントによって明らかにしてもよい。OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、OMNI-79野生型ヌクレアーゼの少なくとも1つのアミノ酸残基を、別のアミノ酸残基で、例えば、保存的若しくは非保存的アミノ酸置換で、置換することにより、及び/又は、OMNI-79野生型ヌクレアーゼのアミノ酸残基に挿入若しくは欠失を生じさせることにより、生成してもよい。この明細書に記載した他の変異に加えて、又はこの明細書に記載の変異に追加する変異とともに、置換、挿入又は欠失を含むがそれらには限定されないそのような変異を行い、OMNI-79野生型ヌクレアーゼからOMNI-79ヌクレアーゼバリアントを生成してもよい。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、親の野生型OMNI-79ヌクレアーゼの所望の活性、例えば、ガイドRNA及び標的DNAと相互作用する能力、並びに/又はヌクレアーゼの活性(例.二本鎖DNA切断、一本鎖DNA切断、又はヌクレアーゼ若しくはニッカーゼ活性の欠如を引き起こす能力)を保持する。いくつかの態様では、バリアントは、親の活性のレベルを超えて、又は親の活性に等しいレベルで、所望の活性、例えばヌクレアーゼ活性を保持する。いくつかの態様では、バリアントは、親の活性のレベルの少なくとも100%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%又は30%のレベルで、親の所望の活性を保持する。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、OMNI-79野生型ヌクレアーゼと比較して、オンターゲット効果が向上している。いくつかの態様では、野生型のOMNI-79ニッカーゼと比較して、活性が増加したOMNI-79ニッカーゼのバリアントが提供される。いくつかの態様では、野生型のOMNI-79不活性型ヌクレアーゼと比較して、活性が増加したOMNI-79不活性型ヌクレアーゼのバリアントが提供される。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、不活性化されたRuvC又はHNHドメインを有するニッカーゼで、S1005、I14及びE1050の少なくとも1つにアミノ酸置換を更に含む。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、不活性化されたRuvC及びHNHドメインを有する不活性型ヌクレアーゼで、S1005、I14及びE1050の少なくとも1つにアミノ酸置換を更に含む。
【0017】
いくつかの態様では、野生型OMNI-79のアミノ酸配列(配列番号1)と少なくとも80%同一の配列を含み、少なくとも1つのアミノ酸置換を有するOMNI-79ヌクレアーゼタンパク質のバリアントが提供される。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、アミノ酸残基を、正の、負の、荷電のない、親水性の、疎水性の、極性の又は極性のないアミノ酸への置換を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、アミノ酸を、R、K、H、D、E、S、T、N、Q、C、U、G、P、A、I、L、M、F、W、Y及びVからなる群より選択される別のアミノ酸への置換から選択される。
【0018】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質(配列番号1)のI14、S1005及びE1050の少なくとも1つに、アミノ酸置換を含む。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。いくつかの態様では、野生型OMNI-79のアミノ酸配列(配列番号1)と少なくとも80%同一の配列を含み、野生型OMNI-79タンパク質のI14、S1005及びE1050の少なくとも1つに、少なくとも1つのアミノ酸置換を有するOMNI-79ヌクレアーゼタンパク質のバリアントが提供される。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質の配列の以下の位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つを含む:I14L、S1005R、S1005K及びE1050K。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。いくつかの態様では、置換は表3に掲載したものに対応する。
【0019】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質のI14及びS1005に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質のI14及びS1005に、アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質に、アミノ酸置換I14L及びS1005Rを含む。
【0020】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質のS1005及びE1050に、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質のS1005及びE1050に、アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントは、野生型OMNI-79タンパク質に、アミノ酸置換S1005K及びE1050Kを含む。
【0021】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、核局在化配列(NLS)、細胞透過性ペプチド配列及び/又は親和性タグの1つ以上を更に含む。ある態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、真核細胞の核内に検出可能な量の CRISPR ヌクレアーゼを含むCRISPR複合体の蓄積を促進するのに十分に強力な1以上の核局在化配列を含む。
【0022】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、表3中の野生型OMNI-79と比較して表示した置換に対応するアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0023】
いくつかの態様によれば、野生型OMNI-79ヌクレアーゼ配列に1以上の置換又は変異を含む単離されたOMNI-79ヌクレアーゼタンパク質バリアントが提供され、前記単離されたOMNI-79ヌクレアーゼバリアントはCRISPRシステム中で活性であり、前記CRISPRシステムは、野生型CRISPRシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加している。
【0024】
いくつかの態様によれば、明細書に記載したOMNI-79ヌクレアーゼバリアントに対する別の変異が行われてもよい。その例には、PAM認識配列を変更する変異、酵素のヌクレアーゼ活性を変更する変異、及びヌクレアーゼの一部の切断又は除去が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様によれば、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、バリアントの所望のアミノ酸配列を生成する塩基配列によってコード化されてもよい。例えば、塩基配列は、細菌、植物又は哺乳動物などの細胞に対してコドン最適化されていてもよい。
【0025】
本発明のいくつかの態様では、CRISPR ヌクレアーゼとターゲティング分子は、標的DNA配列に結合して標的DNA配列を切断するCRISPR複合体を形成する。CRISPRヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼとシングルガイドRNA(sgRNA)分子を含むCRISPR複合体を形成してもよい。あるいは、CRISPRヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ、crRNA分子及びtracrRNA分子を含むCRISPR複合体を形成してもよい。
【0026】
本発明のいくつかの態様によれば、オンターゲット編集活性が増加した遺伝子編集方法であって、標的部位を、適切なガイドRNA又はガイドRNA複合体と複合体を形成したOMNI-79タンパク質バリアントを有する活性なCRISPRシステムと接触させることを含む方法が提供され、ここで、前記活性なCRISPRエンドヌクレアーゼシステムは、野生型OMNI-79 CRISPRシステムと比較して、オンターゲット編集活性が向上している。
【0027】
いくつかの態様によれば、I14、S1005及びE1050の少なくとも1つにアミノ酸置換を含む野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)を有する、天然に存在しないOMNI-79ヌクレアーゼバリアントが提供される。
【0028】
いくつかの態様では、S1005及び/又はE1050でのアミノ酸置換が、正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である。
【0029】
いくつかの態様では、正に荷電したR基を有するアミノ酸が、リジン又はアルギニンである。
【0030】
いくつかの態様では、アミノ酸置換が、I14L、S1005R、S1005K及びE1050Kのいずれか1つである。
【0031】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、I14及びS1005のそれぞれにアミノ酸置換を含む。
【0032】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がI14L及びS1005Rである。
【0033】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、S1005及びE1050のそれぞれにアミノ酸置換を含む。
【0034】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がS1005K及びE1050Kである。
【0035】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、配列番号2、配列番号3又は配列番号12~25のいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0036】
いくつかの態様では、アミノ酸置換の位置がI14で、I14L、I14V、I14F、I14C、I14A又はI14Tのいずれか1つである。
【0037】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がI14Lである。
【0038】
いくつかの態様では、S1005でのアミノ酸置換が、正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である。
【0039】
いくつかの態様では、アミノ酸置換の位置がS1005で、S1005R、S1005K、S1005Q、S1005I、S1005M、S1005V、S1005T、S1005N、S1005F、S1005A、S1005G又はS1005Eのいずれか1つである。
【0040】
いくつかの態様では、S1005でのアミノ酸置換が正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である。
【0041】
いくつかの態様では、S1005でのアミノ酸置換が極性のR基を有するアミノ酸への置換である。
【0042】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がS1005Rである。
【0043】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がS1005Kである。
【0044】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がS1005Tである。
【0045】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がS1005Nである。
【0046】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がS1005Qである。
【0047】
いくつかの態様では、アミノ酸置換の位置がE1050で、E1050K、E1050R、E1050P、E1050A、E1050I、E1050L、E1050V、E1050G又はE1050Tのいずれか1つである。
【0048】
いくつかの態様では、アミノ酸置換がE1050Kである。
【0049】
いくつかの態様では、E1050でのアミノ酸置換が、正に荷電したR基を有するアミノ酸への置換である。
【0050】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)との配列同一性が少なくとも80%である。例えば、いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)との配列同一性が少なくとも80%で、かつ、明細書に記載したアミノ酸置換のいずれか1つを有していてもよい。いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、配列番号1に示す配列に対する明細書に記載したアミノ酸置換を有していてもよく、残りのアミノ酸配列の野生型OMNI-79タンパク質配列(配列番号1)との配列同一性は少なくとも80%である。
【0051】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、核局在化配列(NLS)を更に含む。
【0052】
いくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、バリアントをDNA標的部位に向けるガイドRNA分子と複合体を形成した場合、当該ガイドRNA分子と複合体を形成した野生型OMNI-79ヌクレアーゼと比較して、DNA標的部位に対する活性が増加する。
【0053】
本発明のいくつかの態様によれば、DNA標的部位を標的とするガイドRNA分子と複合体を形成した、明細書に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントを含むCRISPRシステムであって、野生型OMNI-79ヌクレアーゼタンパク質及びガイドRNA分子を含む野生型CRISPRシステムと比較して、オンターゲット編集活性が増加しているCRISPRシステムが提供される。
【0054】
本発明のいくつかの態様によれば、DNA標的部位を、明細書に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質を含む活性なCRISPRシステムと接触させることを含む、オンターゲット編集活性が増加した遺伝子編集方法が提供される。
【0055】
いくつかの態様では、遺伝子編集は真核細胞又は原核細胞で生じる。
【0056】
いくつかの態様では、真核細胞は植物細胞又は哺乳動物細胞である。
【0057】
いくつかの態様では、哺乳動物細胞はヒト細胞である。
【0058】
いくつかの態様では、DNA標的部位が、遺伝子の病原性アレルの内部又は近傍にある。
【0059】
いくつかの態様では、DNA標的が外因性ドナー分子で修復される。
【0060】
いくつかの態様では、オンターゲット編集活性が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、2倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍又は10倍増加する。
【0061】
本発明のいくつかの態様によれば、明細書に記載の方法で得られた改変細胞が提供される。
【0062】
いくつかの態様では、細胞は生着できる。
【0063】
いくつかの態様では、生着後に子孫細胞を生じさせることができる。
【0064】
いくつかの態様では、自家移植後に子孫細胞を生じさせることができる。
【0065】
いくつかの態様では、細胞は、生着後少なくとも12か月間又は少なくとも24か月間、子孫細胞を生じさせることができる。
【0066】
いくつかの態様では、細胞は、造血幹細胞、前駆細胞、CD34+造血幹細胞、骨髄細胞及び末梢単核細胞からなる群より選択される。
【0067】
本発明のいくつかの態様によれば、明細書に記載の改変された細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。本発明のいくつかの態様によれば、細胞と薬学的に許容される担体と混合することを含む、組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法が提供される。
【0068】
本発明のいくつかの態様によれば、明細書に記載のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子が提供される。
【0069】
送達
本願のOMNI-79バリアント組成物は、タンパク質、DNA分子、RNA分子、リボヌクレオタンパク質(RNP)、核酸ベクター又はそれらの組合せとして送達されてもよい。いくつかの態様では、RNA分子は化学修飾を含む。適切な化学修飾の限定的するものではない例には、2'-O-メチル(M)、2'-O-メチル-3'-ホスホロチオエート(MS)又は2'-O-メチル-3'-チオPACE(MSP)、シュードウリジン及び1-メチルシュードウリジンがある。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。
【0070】
本願のOMNI-79バリアント及び/若しくはそれをコードするポリヌクレオチド、並びに/又は、シングルガイドRNA分子、crRNA分子、tracrRNA分子若しくはそれらをコードするヌクレオチド分子といった追加の分子は、適切な手段で標的細胞に送達されてもよい。標的細胞は、単離されているか否か、培養中であるか、in vitro、ex vivo、in vivo又はin plantaであるかといった任意の環境における、真核細胞又は原核細胞などの任意の細胞であってもよい。標的細胞中の標的部位は、細胞の核の内部にあってもよい。
【0071】
この明細書に記載の組成物は、例えば、複製起点、プロモーター及び抗生物質耐性をコードする遺伝子のような追加の配列を有するベクター分子の一部分として、細胞に導入してもよい。さらに、組成物は、裸の核酸若しくはタンパク質として、若しくは、リポソーム、エクソソーム若しくはポロキサマーのような薬剤と複合体を形成するか、その内部にパッケージングされる核酸若しくはタンパク質として、細胞に導入されてもよいか、又は、組換えウイルス(例.アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))若しくはウイルス様粒子により送達できる。限定するものではない例として、組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)中に、又は、非組み込み型レンチウイルス若しくは逆転写能を欠くレンチウイルスなどのレンチウイルス中にパッケージングしてもよい。追加の限定するものではない例として、組成物を、リポソーム、細胞外ベシクル又はエクソソームにパッケージングすることが挙げられ、これらは、水疱性口内炎糖タンパク質(VSVG)を用いて偽型化されるか、又は細胞膜透過性ペプチド、抗体、標的化部分若しくはそれらのいずれかの組合せとコンジュゲートしてもよい。
【0072】
いくつかの態様では、送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA及びガイドRNAを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA、ガイドRNA及びドナーテンプレートを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む。いくつかの態様では、送達される組成物は、CRISPRヌクレアーゼ、ガイドRNA、及び例えば相同性修復による遺伝子編集用のドナーテンプレートを含む。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼのmRNA及びガイドRNA分子(例.シングルガイドRNA分子又はcrRNA分子)を含み、ヌクレアーゼを標的部位に誘導するために用いられる。いくつかの態様では、細胞に送達される組成物は、ヌクレアーゼのmRNA、ガイドRNA分子及びドナー鋳型分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じてヌクレアーゼタンパク質バリアント及びガイドRNA分子を含む。細胞に送達される組成物は、必要に応じて、ヌクレアーゼタンパク質バリアント、ガイドRNA分子及び/又は相同組換え修復のためのドナー鋳型を含む。細胞に送達される組成物は、必要に応じて、ヌクレアーゼバリアントのmRNA、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子を含む。細胞に送達される組成物は、ヌクレアーゼバリアントのmRNA、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子、並びにドナー鋳型分子を含む。細胞に送達される組成物は、ヌクレアーゼタンパク質バリアント、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子を含む。細胞に送達される組成物は、必要に応じて、ヌクレアーゼタンパク質バリアント、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子、並びに相同組換え修復のためのDNAドナー鋳型分子を含む。
【0073】
そのような組成物は、適切なウイルスベクター系を使用して送達できる。従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子導入法により、核酸及び/又はOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質を、細胞(例.哺乳動物細胞、植物細胞など)及び標的組織に導入できる。そのような方法は、in vitroでコードされた核酸及び/又はOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質を細胞に投与するためにも使用できる。ある態様では、核酸及び/又はOMNI-79ヌクレアーゼバリアントタンパク質は、in vivo又はex vivoでの遺伝子治療のために投与される。非ウイルスベクター送達系は、裸の核酸、及びリポソーム又はポロキサマーといった送達ビヒクルと複合体を形成した核酸を含む。遺伝子治療の手順の総説については、Anderson, Science 256:808-813 (1992);Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993);Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993);Miller, Nature 357:455-460 (1992);Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995);Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds.) (1995)及びYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照。
【0074】
核酸及び/又はタンパク質の非ウイルス送達法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティックス、パーティクルガン加速、ビロソーム、ウイルス様粒子、エクソソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン若しくは脂質:核酸コンジュゲート、人工ビリオン、及び薬剤による核酸の取込み促進が含まれ、又は、バクテリア若しくはウイルス(例.アグロバクテリウム(Agrobacterium)、リゾビウム(Rhizobium)sp. NGR234、シノリゾボイウム メリロティ(Sinorhizoboium meliloti)、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルス、キャッサバベインモザイクウイルス)によって植物細胞に送達できる。例えばChung et al. Trends Plant Sci. (2006)を参照。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用したソノポレーションも、核酸の送達に使用できる。タンパク質及び/又は核酸のカチオン性脂質媒介送達も、in vivo又はin vitro送達方法として予定されている。Zuris et al., Nat. Biotechnol. (2015)、Coelho et al., N. Engl. J. Med. (2013);Judge et al., Mol. Ther. (2006)及びBasha et al., Mol. Ther. (2011)を参照。
【0075】
トランスポゾンベースの系(例.組換えSleeping Beautyトランスポゾン系又は組換えPiggyBacトランスポゾン系)といった非ウイルスベクターも、標的細胞に送達して、標的細胞で組成物の分子のポリヌクレオチド配列又は組成物の分子をコードするポリヌクレオチド配列の転移に利用してもよい。
【0076】
別の代表的な核酸送達系には、Amaxa(登録商標)Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte, Inc.(Rockville, Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, Mass.)及びCopernicus Therapeutics Inc.(例えば、米国特許第6,008,336号を参照)が提供するものが含まれる。リポフェクチンは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号及び米国特許第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例.Transfectam(登録商標)、Lipofectin(登録商標)及びLipofectamine(登録商標)RNAiMAX)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び中性脂質は、国際公開第91/17424号及び同第91/16024号に開示のものが含まれる。細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vivo投与)への送達が可能である。
【0077】
免疫脂質複合体などの標的リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に広く知られている(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994);Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994);Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995);Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号;同第4,217,344号;同第4,235,871号;同第4,261,975号;同第4,485,054号;同第4,501,728号;同第4,774,085号;同第4,837,028号及び同第4,946,787号を参照)。
【0078】
別の送達方法には、EnGeneIC送達ビヒクル(EDV)中に送達される核酸のパッケージングを使用することが含まれる。EDVは、抗体の一方のアームが標的組織に対して特異性を有し、もう一方のアームがEDVに対して特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達する。抗体はEDVを標的細胞の表面に運び、次いで、EDVはエンドサイトーシスによって細胞内に運ばれる。細胞に入ると、内容物が放出される(MacDiamid et al (2009) Nature Biotechnology 27(7) p. 643参照)。
【0079】
核酸を送達するためのRNA又はDNAウイルスに基づく系の使用は、高度に進化した方法を利用して、ウイルスを体内の特定の細胞に向け、ウイルスのペイロードを核に輸送する。ウイルスベクターは、患者に直接投与でき(in vivo)、又は、in vitroで細胞を処理するために使用することもでき、改変細胞を患者に投与する(ex vivo)。核酸を送達するためのRNA又はDNAウイルスに基づく系には、遺伝子導入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス及び単純ヘルペスウイルスのベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。宿主ゲノムへのインテグレーションは、レトロウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルス遺伝子導入法を用いて可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期的発現をもたらす。また、さまざまな細胞及び標的組織において、高い形質導入効率が観察されている。OMNI-79バリアント又はバリアントを発現する核酸、及び関連する核酸は、非組込みレンチウイルスによって送達してもよい。必要に応じて、レンチウイルスによるRNA送達が利用される。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼのmRNA及びガイドRNA分子(例.シングルガイドRNA分子又はcrRNA分子)を含み、ヌクレアーゼを標的部位に向けるために用いられる。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼのmRNA、ガイドRNA分子及びドナー鋳型分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じてヌクレアーゼタンパク質バリアント及びガイドRNA分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼタンパク質バリアント、ガイドRNA分子及び/又は相同組換え修復のためのドナー鋳型分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼバリアントのmRNA、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼバリアントのmRNA、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子、並びにドナー鋳型分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼタンパク質バリアント、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子を含む。レンチウイルスは、必要に応じて、ヌクレアーゼタンパク質バリアント、DNAターゲティングcrRNA分子及びtracrRNA分子、並びに相同組換え修復のためのドナー鋳型分子を含む。
【0080】
これまでに説明したように、本願の組成物は、非組込みレンチウイルス粒子法(例.LentiFlash(登録商標)系)を使用して標的細胞に送達できる。そのような方法は、
mRNA又は他のRNAを標的細胞に送達するために使用してもよく、標的細胞へのRNAの送達により、標的細胞の内部で本願組成物が組み立てられる。国際公開第2013/014537号、同第2014/016690号、同第2016/185125号、同第2017/194902号、同第2017/194903号も参照。
【0081】
レトロウイルスのトロピズムは、外来エンベロープタンパク質を組み込むことによって変更でき、標的細胞の潜在的な標的を拡大する。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入又は感染できるレトロウイルスベクターであり、通常、高いウイルス力価を生み出す。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列をパッケージングできるシス作用性の長い末端反復配列で構成されている。最小限のシス作用LTRが、ベクターの複製とパッケージングに十分で、その後、治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで、恒久的な導入遺伝子の発現を提供するために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びそれらの組合せに基づくものが含まれる(例えば、Buchscher Panganiban, J. Virol. (1992);Johann et al., J. Virol. (1992);Sommerfelt et al., Virol. (1990);Wilson et al., J. Virol. (1989);Miller et al., J. Virol. (1991);国際公開第94/26877号を参照)。
【0082】
臨床試験において、現在、少なくとも6種のウイルスベクター法が遺伝子導入に利用でき、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠陥ベクターの補完を含む方法を利用して、形質導入剤を生成する。
【0083】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., Blood (1995);Kohn et al., Nat. Med. (1995);Malech et al., PNAS (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療で使用された最初の治療用ベクターである(Blaese et al., Science (1995))。MFG-Sパッケージ化ベクターでは、50%以上の形質導入効率が観察されている(Ellem et al., Immunol Immunother. (1997);Dranoff et al., Hum. Gene Ther. (1997))。
【0084】
パッケージングされる細胞は、宿主細胞に感染できるウイルス粒子を形成するために使用される。そのような細胞には、アデノウイルスAAVをパッケージする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージするpsi.2細胞又はPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用するウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージングするプロデューサー細胞株によって得られる。ベクターは、通常、パッケージングとその後の宿主への組込み(該当する場合)に必要な最小限のウイルス配列、発現されるタンパク質をコードする発現カセットに置き換えられる他のウイルス配列を含む。不足しているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用するAAVベクターは、通常、パッケージングと宿主ゲノムへの組込みに必要なAAVゲノムの末端逆方向反復(ITR)配列のみを保有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、つまりrepとcapをコードするヘルパープラスミドを含む細胞株にパッケージ化されているが、ITR配列は欠いている。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染している。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製とヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列が欠如しているので大量にパッケージ化されていない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によって低減できる。さらに、AAVは、バキュロウイルス系を使用して臨床で使用する規模で生成できる(米国特許第7,479,554号参照)。
【0085】
多くの遺伝子治療において、遺伝子治療ベクターが特定の組織に高い特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上にウイルス外被タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、目的の細胞に対して特異性を有するように改変できる。リガンドは、対象とする細胞に存在することが知られている受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9747-9751 (1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変でき、組換えウイルスは、ヒト上皮成長因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞に感染することを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス-標的細胞のペアに拡張できる。例えば、繊維状ファージは、実質的に任意の細胞受容体に対して特異的な結合親和性を有する抗体断片(例.FAB又はFv)を提示するように改変できる。この説明は主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原則が非ウイルスベクターにも適用できる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取込みを促進する取込み配列を含むように改変できる。遺伝子治療ベクターは、通常、以下に説明する全身投与(例.静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内注入)又は局所適用により、個々の患者に投与することでin vivo送達できる。あるいは、ベクターは、個々の患者から移植した細胞(例.リンパ球、骨髄吸引液、生検組織)やユニバーサルドナーの造血幹細胞といった細胞にex vivo送達でき、次いで、通常、ベクターを組み込んだ細胞の選択後に患者に再移植される。
【0086】
診断、研究又は遺伝子治療(例.宿主生物へのトランスフェクト細胞の再注入による)のためのex vivo細胞トランスフェクションは、当業者に広く知られている。好ましい態様では、細胞は、対象生物から単離され、RNA組成物がトランスフェクトされ、対象生物(例.患者)に再注入される。ex vivoトランスフェクションに適したさまざまな細胞は、当業者に周知である(例えば、Freshney et al., Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994)と、その患者から細胞を単離し培養する方法についての考察で引用されている参考文献を参照)。
【0087】
適切な細胞には、真核及び原核細胞及び/又は細胞株が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような細胞又はそのような細胞から生成される細胞株の非限定的な例には、COS、CHO(例.CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NSO、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例.HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)及びperC6細胞、任意の植物細胞(分化又は未分化)、並びにツマジロクサヨトウ(Spodopterafugiperda)(Sf)といった昆虫細胞、又は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)及びシゾサッカロミセス(chizosaccharomyces)といった真菌細胞が含まれる。ある態様では、細胞株はCHO-K1、MDCK又はHEK293細胞株である。さらに、初代細胞を単離し、ヌクレアーゼ系(例.CRISPR/Cas)で処理した後に、治療対象に再導入するために、ex vivoで使用してもよい。適切な初代細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、及びCD4+T細胞又はCD8+T細胞などであるがこれらには限定されない血球のサブセットが含まれる。適切な細胞には、例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞(CD34+)、神経幹細胞及び間葉系幹細胞などの幹細胞も含まれる。
【0088】
ある態様では、幹細胞を、細胞のトランスフェクション及び遺伝子治療のex vivo手順で使用する。幹細胞を使用する利点は、in vitroで他の細胞型に分化できること、又は骨髄に生着する哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入できることである。GM-CSF、IFNγ、TNFαなどのサイトカインを使用して、in vitroでCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型に分化させる方法が知られている(限定するものではない例として、Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照)。
【0089】
幹細胞は、公知の方法で形質導入及び分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+及びCD8+(T細胞)、CD45+(汎B細胞)、GR-1(顆粒球)並びにIad(分化した抗原提示細胞)などの不必要な細胞に結合する抗体で骨髄細胞をパニングすることで、骨髄細胞から単離される(限定するものではない例として、Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照)。いくつかの態様では、改変した幹細胞も使用できる。
【0090】
特に、本願のOMNI-79バリアントは、有糸分裂後の細胞又は活発に分裂していない細胞(例.停止細胞)のゲノム編集に適している可能性がある。本発明のOMNI-79バリアントを使用して編集してもよい有糸分裂後の細胞の例には、筋細胞、心筋細胞、肝細胞、骨細胞及びニューロンが含まれるが、これらには限定されない。
【0091】
治療用RNA組成物を含有するベクター(例.レトロウイルス、リポソーム等)は、in vivoでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のRNA又はmRNAを投与できる。投与は、血液又は組織細胞との最終的な接触で分子を導入するために通常使用される、注射、注入、局所適用及びエレクトロポレーションが含まれるが、これらには限定されない経路による。そのような核酸を投与する適切な方法は利用可能で、当業者に広く知られている。特定の組成物を投与する複数の経路が使用できるが、特定の経路が他の経路よりも迅速かつ効果的な反応が得られることが多い。
【0092】
導入遺伝子の免疫細胞(例.T細胞)への導入に適したベクターには、非組込みレンチウイルスベクターが含まれる。例えば米国特許出願公開第2009/0117617号を参照。
【0093】
薬学的に許容される担体は、投与される組成物により、及び、組成物を投与するために用いる方法により、ある程度決まる。したがって、利用可能な医薬組成物の適切な製剤は多種多様であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989を参照されたい。
【0094】
相同組換えによるDNA修復
本発明のいくつかの態様では、OMNI-79ヌクレアーゼバリアントは、標的部位でDNAを切断して、細胞性修復メカニズム、例えば、限定するものではないが、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(HDR)を誘導するために使用する。
【0095】
用語「相同組換え修復」又は「HDR」は、例えば、DNAの二本鎖及び一本鎖切断の修復中の、細胞内のDNA損傷を修復するメカニズムを指す。HDRは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「核酸テンプレート」(この明細書ではドナーテンプレートと同じ意味で使用される)を使用して、二本鎖又は一本鎖の切断が生じた配列(例.DNA標的配列)を修復する。これは、例えば、核酸テンプレートからDNA標的配列への遺伝情報の伝達をもたらす。核酸テンプレート配列がDNA標的配列と異なり、核酸テンプレートポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの一部又は全部がDNA標的配列に組み込まれる場合、HDRは、DNA標的配列の変更につながる可能性がある(例.挿入、削除、変異)。いくつかの態様では、核酸テンプレートポリヌクレオチドの全体若しくは一部分、又は核酸テンプレートのコピーが、DNA標的配列の部位に組み込まれる。
【0096】
用語「核酸テンプレート」及び「ドナー」は、ゲノムに挿入又はコピーされるヌクレオチド配列を指す。核酸鋳型は、標的核酸に付加されるか、標的核酸における変化を鋳型とするか、又は標的配列の改変に使用してもよい、例えば1つ以上のヌクレオチドの配列を含む。核酸テンプレート配列の長さは、任意、例えば2~10,000ヌクレオチド(又はその間若しくはそれらを超える任意の整数)、好ましくは約100~1,000ヌクレオチド(又はその間の任意の整数)、より好ましくは約200~500ヌクレオチドである。核酸テンプレートは、一本鎖核酸、二本鎖核酸であってもよい。いくつかの態様では、核酸テンプレートは、例えば目標位置の、標的核酸の野生型配列に対応する、例えば1つ以上のヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、核酸テンプレートは、例えば目標位置の、標的核酸の野生型配列に対応する、例えば1つ以上のリボヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、核酸テンプレートは修飾リボヌクレオチドを含む。
【0097】
例えば、変異遺伝子の修正又は野生型遺伝子の発現増加のための、外因性配列(「ドナー配列」、「ドナーテンプレート」又は「ドナー」ともいう)の挿入も実行できる。ドナー配列は、通常、それが配置されるゲノム配列と同一ではないということは容易に明らかである。ドナー配列は、対象とする位置で効率的なHDRを可能にするために、2つの相同領域が隣接する非相同配列を含むことができる。さらに、ドナー配列は、細胞クロマチン中の対象領域と相同ではない配列を含むベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンと相同な不連続な領域を含むことができる。例えば、前記配列は、対象領域には通常存在しない配列を標的挿入するためにドナー核酸分子中に存在でき、対象領域の配列と相同な領域に隣接できる。
【0098】
ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖及び/又は二本鎖のDNA又はRNAであってもよく、線状又は環状の形態で細胞に導入してもよい。例えば、米国特許出願公開第2010/0047805号;同第2011/0281361号;同第2011/0207221号及び同第2019/0330620号を参照。線状の形態で導入する場合、ドナー配列の末端は、当業者に知られている方法で(例えば、エキソヌクレアーゼによる分解から)保護できる。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基を線状分子の3’末端に付加し、及び/又は自己相補的オリゴヌクレオチドを一方の末端又は両末端に連結する。例えば、Chang and Wilson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987);Nehls et al., Science (1996)を参照。外因性のポリヌクレオチドを分解から保護する他の方法には、末端アミノ基の付加及び修飾ヌクレオチド間結合(例.ホスホロチオエート、ホスホロアミデート及びO-メチルリボース又はデオキシリボース残基)の使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
したがって、修復にドナー鋳型を使用する本発明の態様は、線状又は環状の形態で細胞に導入できる一本鎖及び/又は二本鎖のドナーテンプレートである、DNA又はRNAを使用してもよい。本発明の態様において、遺伝子編集組成物は、(1) 修復前に遺伝子を二本鎖切断するガイド配列を含むRNA分子、及び、(2) 修復のためのドナーRNAテンプレートを含み、ガイド配列を含むRNA分子は第1のRNA分子で、ドナーRNAテンプレートは第2のRNA分子である。いくつかの態様では、ガイドRNA分子及びテンプレートRNA分子は、1つの分子の一部としてつながっている。
【0100】
ドナー配列は、オリゴヌクレオチドであってもよく、遺伝子修正又は内在性配列の標的化による改変に使用してもよい。オリゴヌクレオチドは、ベクターにより細胞に導入しもよく、細胞にエレクトロポレーションしてもよく、又は当該技術分野において知られている他の方法で導入してもよい。オリゴヌクレオチドは、内因性遺伝子(例.βグロビンの鎌状変異)の変異配列の「修正」のために使用でき、又は、内因性遺伝子座に所望の目的で配列を挿入するために使用してもよい。
【0101】
ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーター及び抗生物質耐性をコードする遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入できる。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸の核酸として、薬剤(例.リポソーム、エクソソーム、ポロキサマー)と複合体を形成し、若しくはこのような薬剤内にパッケージ化した核酸として導入でき、又は、組換えウイルス(例.アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))若しくはウイルス様粒子によって送達できる。
【0102】
ドナーは、一般に、その発現が組込み部位の内因性プロモーター、すなわちドナーが挿入される内因性遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入される。しかし、ドナーがプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば構成的プロモーター又は誘導性若しくは組織特異的プロモーターを含んでもよいことは明らかである。
【0103】
ドナー分子は、内因性遺伝子の全て若しくは一部が発現するように、又は全く発現しないように、内因性遺伝子に挿入されてもよい。例えば、本願の導入遺伝子は、例えば導入遺伝子との融合物として、内因性配列の一部(導入遺伝子のN末端及び/又はC末端)が発現されるか、又は全く発現されないように、内因性遺伝子座に挿入されてもよい。他の態様では、導入遺伝子(例.内因性遺伝子などの追加のコード配列の有無によらない)は、セーフハーバー遺伝子座(例.CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12c(AAVS1としても知られている)遺伝子、アルブミン遺伝子又はRosa遺伝子)など、任意の内因性遺伝子座に組み込まれる。例えば、米国特許第7,951,925号及び同第8,110,379号;米国特許出願公開第2008/0159996号;同第20100/0218264号;同第2010/0291048号;同第2012/0017290号;同第2011/0265198号;同第2013/0137104号;同第2013/0122591号;同第2013/0177983号及び同第2013/0177960号、並びに米国仮出願第61/823,689号を参照)。
【0104】
内因性の配列(内因性又は導入遺伝子の一部)を導入遺伝子とともに発現させる場合、内因性配列は全長配列(野生型又は変異体)であっても部分配列であってもよい。好ましくは、内因性配列は機能的である。これらの全長又は部分配列の機能の非限定的な例には、導入遺伝子(例:治療遺伝子)によって発現され、及び/又は担体として作用するポリペプチドの半減期の増加が含まれる。
【0105】
さらに、発現に必須ではないものの、外因性の配列は、転写又は翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム侵入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナルも含んでいてもよい。
【0106】
ある態様では、ドナー分子は、タンパク質をコードする遺伝子(例.細胞若しくは個体で欠けているタンパク質をコードするコード配列、又はタンパク質をコードする遺伝子の別のバージョン)、調節配列及び/又はマイクロRNA若しくはsiRNAといった構造核酸をコードする配列からなる群から選択される配列を含む。
【0107】
DNAターゲティングRNA分子
本発明のいくつかの態様では、DNAターゲティングRNA分子は、ガイド配列部分を含む。RNA分子の「ガイド配列部分」は、特定の標的DNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を指し、例えば、ガイド配列部分は、その長さに沿って標的とされるDNA配列に部分的又は完全に相補的である。いくつかの態様では、ガイド配列部分の長さは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50ヌクレオチド、又は、約17~50、17~49、17~48、17~47、17~46、17~45、17~44、17~43、17~42、17~41、17~40、17~39、17~38、17~37、17~36、17~35、17~34、17~33、17~31、17~30、17~29、17~28、17~27、17~26、17~25、17~24、17~22、17~21、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~22、18~20、20~21、21~22若しくは17~20ヌクレオチドである。ガイド配列部分の全長は、その長さに沿って標的とされるDNA配列に完全に相補的である。ガイド配列部分は、CRISPR複合体のDNAターゲティング部分として機能するガイド配列部分を有するCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部分であってもよい。ガイド配列部分を有するDNA分子がCRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子はCRISPRヌクレアーゼを特定の標的DNA配列にターゲティングできる。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。RNA分子は、所望の配列を標的とするように特別に設計できる。したがって、「ガイド配列部分」を含む分子は、ターゲティング分子の一種である。この出願全体で、用語「ガイド分子」、「RNAガイド分子」、「ガイドRNA分子」及び「gRNA分子」は、ガイド配列部分を含む分子と同義であり、用語「スペーサー」は「ガイド配列部分」と同義である。
【0108】
本発明のいくつかの側面では、開示した方法は、明細書に記載した組成物を、細胞に導入することを含む、無細胞系で又は細胞のゲノム中の標的部位で、ヌクレオチド配列を改変する方法を含む。
【0109】
いくつかの態様では、細胞は真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞又は植物細胞である。いくつかの態様では、ゲノムの改変は細胞の核の内部で生じる。
【0110】
本発明のいくつかの側面では、開示された方法は、対象のゲノムの標的部位においてヌクレオチド配列を改変することを含む、ゲノムの変異に関連する疾患に罹患している対象の治療のための本願の組成物の使用を含む。
【0111】
本発明のいくつかの側面では、開示された方法は、変異障害に関連するアレルを本願の組成物の標的とすることを含む、変異障害を有する対象を治療する方法を含む。
【0112】
いくつかの態様では、変異障害は、腫瘍形成、加齢黄斑変性、統合失調症、神経障害、神経変性疾患、運動障害、脆弱X症候群、セクレターゼ関連障害、プリオン関連障害、ALS、依存症、自閉症、アルツハイマー病、好中球減少症、炎症関連障害、パーキンソン病、血液及び凝固の疾患及び障害、βサラセミア、鎌状赤血球貧血、細胞調節不全、腫瘍に関連する疾患及び障害、炎症及び免疫に関連する疾患及び障害、代謝、肝臓、腎臓及びタンパク質の疾患及び障害、筋肉及び骨格の疾患及び障害、皮膚の疾患及び障害、神経の疾患及び障害、並びに、眼の疾患及び障害のいずれかから選択される疾患又は障害に関連する。
【0113】
疾患及び治療
本発明のある態様は、遺伝子編集、処置又は治療方法の一形態として、ヌクレアーゼを、疾患又は障害に関連する特定の遺伝子座にターゲティングする。例えば、遺伝子の編集又はノックアウトを誘導するために、特別に設計したガイドRNA分子を使用して、明細書に開示した新規なヌクレアーゼを、遺伝子の病原性変異アレルに特異的にターゲティングしてもよい。ヌクレアーゼのPAM要件を最初に考慮してガイドRNA分子を設計することが好ましく、このことは、明細書で示すように、遺伝子編集が行われる系にも依存する。例えば、OMNI-79ヌクレアーゼを標的部位に向けるように設計されたガイドRNA分子は、OMNI-79PAM配列(例.「NGG」)に隣接するDNA二本鎖領域のDNA鎖に相補的なスペーサー配列を含むように設計される。ガイドRNA分子は、好ましくは、ヌクレアーゼの特異的活性を増大させ、オフターゲット効果を減少させるために、十分かつ好ましくは最適な長さのスペーサー領域(すなわち、標的アレルと相補的なガイドRNA分子の領域)を含むように更に設計される。
【0114】
限定するものではない例として、ガイドRNA分子は、ヌクレアーゼによるDNA損傷時に非相同末端結合(NHEJ)経路が誘導されて、フレームシフト変異の導入による変異アレルのサイレンシングがもたらされるように、ヌクレアーゼを変異アレルの特定の領域、例えば、開始コドンの近傍、を標的とするように設計してもよい。ガイドRNA分子を設計するこのアプローチは、ドミナントネガティブ変異の作用を変化させ、それによって対象を治療するのに特に有用である。別の非限定的な例として、ガイドRNA分子は、ヌクレアーゼによるDNA損傷時に相同性指向修復(HDR)経路が誘導されて、変異アレルのテンプレートを介した修正がもたらされるように、変異したアレルの特定の病原性変異を標的とするように設計してもよい。ガイドRNA分子を設計するこのアプローチは、変異アレルのハプロ不全作用を変化させ、それによって対象を治療するのに特に有用である。
【0115】
疾患又は障害を治療するために改変の標的としてもよい遺伝子の限定するものではない例を以下に示す。変異障害を誘発する疾患関連遺伝子と変異が文献に記載されている。そのような変異は、DNA損傷を引き起こすことによってDNA修復経路を誘導してアレルを改変し、それによって変異障害を治療するCRISPR組成物を、疾患関連遺伝子のアレルを標的とするDNAターゲティングRNA分子を設計するために使用できる。
【0116】
ELANE遺伝子の変異は好中球減少症に関連している。したがって、ELANEを標的とする本発明の態様は、好中球減少症に罹患した対象の治療方法において、無制限に使用してもよい。ELANE遺伝子を標的とし、好中球減少症の治療に有用なガイドRNA分子は、PCT国際出願第PCT/US2020/059186号に開示されている。
【0117】
CXCR4は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染における共受容体である。したがって、CXCR4を標的とする本発明の態様は、HIV-1に罹患した対象を治療する方法、又はHIV-1感染に対する耐性を対象に付与する方法において、無制限に使用してもよい。
【0118】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)の破壊は、腫瘍細胞のCAR-T細胞による死滅を促進し、PD-1ががん治療の標的となる可能性がある。したがって、PD-1を標的とする本発明の態様は、がんに罹患した対象の治療方法において、無制限に使用してもよい。ある態様では、治療は、PD-1欠損となるように本発明に従って改変されたT細胞によるCAR-T細胞療法である。
【0119】
また、BCL11Aはヘモグロビン産生抑制に関与する遺伝子である。BCL11Aを阻害することによってグロビン産生を増加させ、サラセミアや鎌状赤血球貧血などの疾患を治療してもよい。例えば、国際公開第2017/077394号、米国特許出願公開第2011/0182867号;Humbert et al. Sci. Transl. Med. (2019)及びCanver et al. Nature (2015)を参照。したがって、BCL11Aのエンハンサーを標的とする本発明の態様は、βサラセミア又は鎌状赤血球貧血に罹患した対象の治療方法において、無制限に使用してもよい。
【0120】
本発明は、以下の表A又は表Bに列挙した疾患又は障害の研究、改変又は治療において、疾患関連遺伝子を標的とするために使用してもよい。実際、遺伝子座を有する疾患関連遺伝子は、本明細書に開示のヌクレアーゼを使用して、適切な疾患関連遺伝子、例えば米国特許出願公開第2018/0282762号及び欧州特許第3079726号(B1)に列挙されているものを標的とすることによって、研究、改変又は治療してもよい。
【0121】
【表A】
【0122】
【表B-1】
【0123】
【表B-2】
【0124】
【表B-3】
【0125】
別段の定義がある場合を除き、この明細書で使用する全ての技術用語及び/又は学術用語は、本発明に関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料が本発明の態様の実施又は試験に使用できるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合は、定義を含む明細書が優先される。また、材料、方法及び実施例は単に説明のためのもので、必ずしも限定することを意図したものではない。
【0126】
考察において特に言及しない限り、本発明の態様の特徴の状態又は関連性を変更する「実質的に」及び「約」などの形容詞は、状態又は関連性が、意図された用途の態様の動作に許容可能な範囲内に定義されることを意味すると理解される。特に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲における「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく包括的な「又は」と見なされ、結合する項目の少なくとも1つ又は任意の組合せを示す。
【0127】
本明細書における用語「1つ」は、列挙された構成要素の「1つ以上」を指すことを理解されたい。特に断りのない限り、単数形の使用が複数形を含むことは、当業者には明らかである。したがって、用語「1つ」及び「少なくとも1つ」は、この出願では同じ意味である。
【0128】
この教示をより理解し、かつ、決して教示の範囲を限定しないために、特に断りのない限り、量、割合又は比率を示す全ての数字、及び明細書や特許請求の範囲で使用する他の数値は、全ての場合において、用語「約」で修飾されると理解すべきである。したがって、反する指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載の数値は、得ようとする所望の特性に応じて変化する可能性がある近似値である。少なくとも、各数値は、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め手法を適用して解釈する必要がある。
【0129】
この明細書及び特許請求の範囲において、動詞「含有する」、「含む」及び「有する」並びにそれらの活用形は、動詞の目的語が必ずしも動詞の主語の成分、要素又は部分の完全なリストではないことを示すために使用される。本明細書における他の用語は、当該技術分野において周知の意味である。
【0130】
この明細書では、用語「ターゲティング配列」又は「ターゲティング分子」は、特定の標的配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列又は分子を指し、例えば、ターゲティング配列は、その長さに沿って、標的となる配列と少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を有する。ターゲティング配列又はターゲティング分子は、単独で又は他のRNA分子と組み合わせて、CRISPR複合体のターゲティング部分として機能するターゲティング配列を有するCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部であってもよい。ターゲティング配列を有する分子がCRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、単独で又は追加のRNA分子(例.tracrRNA分子)と組み合わせて、CRISPRヌクレアーゼを特定の標的配列にターゲティングできる。限定するものではない例として、CRISPR RNA分子又はシングルガイドRNA分子のガイド配列部分はターゲティング分子として機能する可能性がある。それぞれの実現可能性は、この発明の個別の態様である。ターゲティング配列、所望の配列を標的とするように特別に設計できる。
【0131】
この明細書では、用語「標的」は、ターゲティング分子のターゲティング配列が、標的ヌクレオチド配列を有する核酸と優先的にハイブリダイズすることを指す。用語「標的」は、標的ヌクレオチド配列を有する核酸の優先的なターゲティングが存在するが、オンターゲットハイブリダイゼーションに加えて意図しないオフターゲットハイブリダイゼーションも生じ得るような、可変のハイブリダイゼーションを包含することが理解される。RNA分子が配列を標的とする場合、ヌクレアーゼ活性により、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼ分子の複合体が配列を標的にすることが理解される。
【0132】
この明細書では、用語「野生型」は、当業者が理解する技術用語で、バリアント又は変種とは区別される、自然界に存在する生物、株、遺伝子又は特性の代表的な形態を意味する。したがって、この明細書では、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列が野生型の配列を指す場合、バリアントは、例えば置換、欠失、挿入を含む、その配列のバリアントを指す。本発明のいくつかの態様では、改変されたCRISPRヌクレアーゼは、配列番号1の野生型OMNI-79ヌクレアーゼに対して、「変異」とも呼ばれる少なくとも1つのアミノ酸修飾(例.置換、削除及び/又は挿入)を含むCRISPRヌクレアーゼのバリアントである。
【0133】
用語「非天然」、「天然に存在しない」又は「改変された」は、同じ意味で使用され、人間による改変を示す。核酸分子又はポリペプチドで使用する場合、この用語は、核酸分子又はポリペプチドが、自然界で自然に関連付けられており、かつ、自然界で見いだされる少なくとも1つの成分を少なくとも実質的に含まないことを意味してもよい。
【0134】
用語「変異体」又は「バリアント」は同じ意味で使用され、天然に存在しないか、改変されている分子を指す。
【0135】
この明細書では、用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸を含み、グリシン及びD又はLの光学異性体、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣物が含まれる。
【0136】
この明細書では、「ゲノムDNA」は、対象とする細胞又は細胞群に存在する、直鎖状及び/若しくは染色体DNA及び/若しくはプラスミド又は他の染色体外DNAの配列を指す。いくつかの態様では、対象とする細胞は真核細胞である。いくつかの態様では、対象とする細胞は原核細胞である。いくつかの態様では、この方法は、ゲノムDNA配列の所定の標的部位において二本鎖切断(DSB)を引き起こし、ゲノムの標的部位においてDNA配列の変異、挿入及び/又は欠失をもたらす。
【0137】
「真核」細胞は、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞及びヒト細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0138】
この明細書では、用語「改変細胞」又は「改変された細胞」は、標的配列とのハイブリダイゼーション、すなわちオンターゲットハイブリダイゼーションの結果として、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体によって二本鎖切断された細胞を指す。用語「改変細胞」は、バリアントによる二本鎖切断の後に変異が修復又は修正された細胞を更に含んでもよい。改変細胞は、単離されている若しくは単離されていない、又は、培養物中、in vitro、ex vivo、in vivo若しくはin plantaで維持されている任意の環境における、真核生物又は原核生物といった任意の細胞であってもよい。
【0139】
本発明は、本明細書に記載のバリアント又は方法によって得られる改変細胞を提供する。ある態様では、これらの改変細胞は、子孫細胞を生じさせることができる。ある態様では、これらの改変細胞は、生着後に子孫細胞を生じさせることができる。限定するものではない例として、改変細胞は、造血幹細胞(HSC)、又は同種異系細胞移植若しくは自家細胞移植に適した細胞であってもよい。この明細書に記載のバリアント及び方法は、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞を生成するためにも利用してもよい。
【0140】
本発明はまた、これらの改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物も提供する。細胞を薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、これを調製するin vitro又はex vivoの方法も提供される。
【0141】
この明細書では、用語「ヌクレアーゼ」は、核酸のヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を切断できる酵素を指す。ヌクレアーゼは、天然の供給源から単離又は誘導されてもよい。天然の供給源は、任意の生物であってもよい。あるいは、ヌクレアーゼは、ホスホジエステル結合切断活性を有する修飾タンパク質又は合成タンパク質であってもよい。
【0142】
この明細書では、用語「プロトスペーサー隣接モチーフ」又は「PAM」は、標的DNA配列の近傍に位置し、CRISPRヌクレアーゼが認識する標的DNAのヌクレオチド配列を指す。PAM配列は、ヌクレアーゼによって異なっていてもよい。例えば、野生型化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9は、PAM配列「NGG」を認識する。当業者は、単一ガイドRNA分子又はcrRNA:tracrRNA複合体がCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成して、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する対象とする標的ゲノムDNA配列と結合できることを理解する。ヌクレアーゼは、その後、標的DNAの切断を介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生成する。
【0143】
この明細書では、分子の配列間のX%の塩基又はアミノ酸が同じで、同じ相対位置にある場合、配列又は分子は、それぞれの配列又は分子に対してX%の「配列同一性」を有する。例えば、第2のヌクレオチド配列との配列同一性が少なくとも95%の第1のヌクレオチド配列は、他の配列と同一の相対位置で少なくとも95%の塩基を有する。
【0144】
用語「核局在化配列」及び「NLS」は、関連付けられたタンパク質の、細胞質から核膜バリアを通過する輸送を指示するアミノ酸配列/ペプチドを示し、同じ意味で使用される。用語「NLS」は、特定のペプチドの核局在化配列だけではなく、細胞質ポリペプチドの核膜バリアを通過する移行を指示できるその誘導体も包含することを意図している。NLSは、ポリペプチドのN末端、C末端又はN末端とC末端の両者に付着した場合、ポリペプチドの核移行を指示できる。さらに、ポリペプチドのアミノ酸配列中にランダムに位置するアミノ酸の側鎖にN末端又はC末端で連結したNLSを有するポリペプチドが移行する。NLSは、通常、タンパク質表面に露出した正に帯電したリジン又はアルギニンの1つ以上の短い配列で構成されているが、他のタイプのNLSも知られている。NLSの非限定的な例には、SV40ウイルスラージT抗原、ヌクレオプラスミン、c-myc、hRNPA1 M9 NLS、インポーチンα由来のIBBドメイン、筋腫Tタンパク質、ヒトp53、マウスc-abl IV、インフルエンザウイルスNS1、肝炎ウイルスδ抗原、マウスMx1タンパク質、ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ及びステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイド由来のNLS配列が含まれる。
【0145】
用語「CRISPRシステム」は、明細書に記載の変異体又はバリアントなどのCRISPRヌクレアーゼタンパク質と、ガイドRNA分子又はガイドRNA複合体の一部分と標的DNA配列との間の相補性に基づいてCRISPRヌクレアーゼタンパク質を所望の標的DNA配列に向けるための適切なガイドRNA分子又はガイドRNA複合体(例.シングルガイドRNA又はcrRNA:tracrRNA複合体)とを含むCRISPRエンドヌクレアーゼ系を指す。用語「野生型CRISPRエンドヌクレアーゼ系」は、野生型CRISPRタンパク質と、ガイドRNA分子又はガイドRNA複合体の一部分と標的DNA配列との間の相補性に基づいて野生型CRISPRヌクレアーゼタンパク質を所望の標的DNA配列に向けるための適切なガイドRNA分子又はガイドRNA複合体(例.シングルガイドRNA又はcrRNA:tracrRNA複合体)とを含むCRISPRエンドヌクレアーゼ系を指す。
【0146】
この発明では、「オンターゲット編集活性が維持」は、OMNI-79バリアントに関連し、それによってOMNI-79バリアントをプログラムする、ガイドRNA分子によって標的とされるDNA標的部位を標的とするOMNI-79バリアントの能力を指す。いくつかの態様では、OMNI-79バリアントは、DNA標的に対するオンターゲット編集活性を、野生型OMNI-79ヌクレアーゼの編集率以上で維持する。いくつかの態様では、OMNI-79バリアントは、DNA標的に対するオンターゲット編集活性を、野生型OMNI-79ヌクレアーゼの編集率の少なくとも100%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%又は30%維持する。
【0147】
これまでに説明した態様は互いに適用可能であることが意図されている。例えば、本発明のRNA分子又は組成物は、本発明の方法で利用してもよいことが理解される。
【0148】
この明細書では、全ての見出しは単に整理のためであって、いかなる方法でも開示を制限することを意図するものではない。個々の項の内容は、全ての項に等しく適用できる。
【0149】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、限定を意図しない以下の実施例を検討することで、当業者に明らかになる。さらに、これまでに説明し、また、特許請求の範囲に記載する本発明のさまざまな態様及び側面のそれぞれは、以下の実施例で実験的に裏付けられている。
【0150】
明確にするために、別々の態様として説明する本発明の特徴は、一つの態様で組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、一つの態様として説明する本発明のさまざまな特徴は、別個に、適切なサブコンビネーションとして、又は本発明の他の態様で適切に提供されてもよい。態様がそれらの要素がなくては機能しない場合を除き、さまざまな態様として記述した特定の特徴は、それらの態様の本質的な特徴であると考えるべきではない。
【0151】
一般に、この明細書で使用する命名法及びこの発明で利用する実験の手順には、分子、生化学、微生物学及び組換えDNA技術が含まれる。そのような技術は文献に十分に記載されている。例えば、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A laboratory Manual" (1989);Ausubel, R. M. (Ed.), "Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III (1994);Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York;Birren et al. (Eds.), "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号及び同第5,272,057号に示された方法;Cellis, J. E. (Ed.), "Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III (1994);Freshney, "Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" Third Edition, Wiley-Liss, N. Y. (1994);Coligan J. E. (Ed.), "Current Protocols in Immunology" Volumes I-III (1994);Stites et al. (Eds.), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (Eds.), "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996);Clokie and Kropinski (Eds.), "Bacteriophage Methods and Protocols", Volume 1: Isolation, Characterization, and Interactions (2009)を参照、これらは全て参照により組み込まれる。他の一般的な参考資料は、この明細書全体で提供している。
【0152】
本発明の完全な理解を容易くするために、以下に実施例を提供する。以下の実施例は、本発明を製造し、実施する代表的な様式を説明するものである。しかし、この発明の範囲は、これらの実施例に開示された特定の態様に限定されるものではなく、これらは例示のみを目的とするものである。
【実施例
【0153】
実施例1 OMNI-79 CRISPRヌクレアーゼバリアントライブラリ
野生型OMNI-79 CRIPSRヌクレアーゼのオープンリーディングフレームを、ヒト細胞株発現に対してコドン最適化し(配列番号1)、それぞれT7又はCMVプロモーターを用いて細菌と哺乳動物の両者での発現を可能にする二重発現プラスミド(pShuttle)にクローニングした。全長OMNI-79オープンリーディングフレーム(ORF)に沿ったコンビナトリアルランダム変異を含む完全遺伝子ライブラリを、OMNI-79配列中の各位置にNNK縮重コドンを有する組み込まれたオリゴを用いて構築し、ORF当たり平均2.6のアミノ酸置換を有するライブラリを得た。
【0154】
細菌に基づく陽性選択システム
活性が増強されたOMNI-79バリアントを単離するために、陽性選択細菌システムを設計した。このシステムでは、陽性選択プラスミドを大腸菌BW25141株(1DE3)にエレクトロポレーションし、陽性選択細菌株を作製した。陽性選択プラスミドは、T7発現シングルガイドRNA(sgRNA)及び埋め込まれたオンターゲット部位を含む。ヒトSerpina遺伝子のエクソン5内の配列である標的部位の配列、並びにガイドRNA分子のスペーサー配列及び足場配列を、表1に示す。陽性選択プラスミドは、クロラムフェニコール耐性カセットも含み、araBADプロモーターの制御下に大腸菌毒素遺伝子CcdBを発現する。したがって、OMNI-79バリアントを含むOMNI-79完全遺伝子ライブラリを陽性選択細菌株にエレクトロポレーションすると、陽性選択プラスミドを切断して毒素を中和する活性なOMNI-79バリアントを発現する細菌コロニーのみが、アラビノースを含有する選択プレート上で生き残ることができる。
【0155】
エレクトロポレーション後のTB培地中での10分間の回復時間の後に、形質転換された細菌を、カルベニシリン及び15mMアラビノースを含有する選択TBプレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートする。次の朝、生存プールを回収し、プラスミドを単離し、次の選択ラウンドのために陽性選択細菌株に再形質転換する。7回の陽性選択ラウンドを行い、最終ラウンド後、単一細菌コロニーを無作為に採取し、完全に配列決定した。
【0156】
【表1】
【0157】
細菌による選択後のOMNI-79ヌクレアーゼバリアントの活性を試験するために、陽性選択したクローンを単離し、それらのpShuttleプラスミドを、内因性Serpina遺伝子を標的とするsgRNAとともに、個々にHeLa細胞にトランスフェクションした(表2)。72時間後、細胞を回収して溶解し、それらのゲノムDNA含有物を、推定ゲノム標的部位配列を増幅するPCR反応で使用した。続いて、アンプリコンの次世代シーケンシング(NGS)を行い、得られた配列を用いて標的部位での編集の割合を算出した。切断部位周囲の短い挿入又は欠失(インデル)は、ヌクレアーゼ誘導型DNA切断後のDNA末端の修復の典型的な結果である。したがって、編集率の算出は、各アンプリコン内のインデル含有配列の割合から推定した。
【0158】
選択したOMNI-79ヌクレアーゼバリアントを、Neuro-2aマウス神経芽腫(Mn2A)細胞で、マウスSARM1標的部位を標的とする追加のガイドRNA分子を用いて更に解析した(表2参照)。
【0159】
【表2】
【0160】
結果
細菌による選択後に高度に富化された2種類のOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼバリアントが単離され、表3に示すように、両者ともHeLa細胞中の野生型OMNI-79 CRISPRヌクレアーゼと比較して増大した活性を示した。OMNI-79バリアント5570も、mSARM1標的を用いてNeuro-2aマウス神経芽腫(mN2A)細胞で試験した場合、高い活性を示した(表3参照)。
【0161】
【表3】
【0162】
実施例2
結果
V5570及びV5603は、CRISPR OMNI-79ヌクレアーゼの高活性バリアントである(表3参照)。バリアントV5570の編集活性を、HeLa細胞へのDNAトランスフェクションにより、数か所の標的hLDLR遺伝子部位で試験した(表6)。全ての場合で、OMNI-79バリアントV5570は、野生型OMNI-79と比較して高い編集活性を示した(図1、表8)。
【0163】
OMNI-79バリアントV5570及びV5603は、それぞれ2か所の変異を含む。各変異の活性に対する影響及び寄与を調べるために、単一変異バリアントを作製し、それらの活性を試験した。具体的には、4種類の単一変異バリアントの活性を、3か所の標的ゲノム部位、hSERP_g12R、hLDLR_g46及びhLDLR_g76(表6)について、HeLa細胞へのDNAトランスフェクションにより試験した。S1005R又はS1005K変異のいずれかを含むバリアントのみが、野生型OMNI-79と比較して高い編集活性を示した(図2A~2C、表8)。これらの結果は、1005位での変異が、バリアントV5570及びV5603で観察された比較的高い活性に関与することを実証する。
【0164】
S1005R及びS1005KがOMNI-79 V5570及びV5603の観察された活性に関与することが実証されたら、1005位での他の置換の影響を試験した。それぞれが異なる物理化学基を表す異なるアミノ酸置換を含む10種類のバリアントを更に作製した(表4)。バリアントの編集活性に対する各単一変異の影響を、hLDLR_g76標的について、これまでに説明したように試験した(図3、表6)。1005位でのアルギニン(R)やリジン(K)のような正に荷電したアミノ酸は全て、高い編集活性を支持する結果が示された(図3、表8)。さらに、1005位でのトレオニン(T)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)のような極性アミノ酸も、高い編集活性を支持した(図3、表8)。
【0165】
材料及び方法
HeLa細胞へのDNAトランスフェクション
哺乳動物細胞における内因性含有物のヌクレアーゼ活性:OMNI-79ヌクレアーゼ及びそのバリアントのヌクレアーゼを、sgRNA発現プラスミドとともに、DNAトランスフェクションによって哺乳動物細胞系(HeLa)で発現させた。各sgRNAは、tracrRNA部分及びスペーサー部分から構成されている。スペーサー3’ゲノム配列は、OMNI-79ヌクレアーゼに対する予測上のPAMを含む。全てのアッセイを3回反復した。「OMNIヌクレアーゼ単独」(すなわち、ガイドなし)のトランスフェクション細胞を、陰性対照とした。細胞溶解物を、部位特異的ゲノムDNA増幅及びNGS解析に使用した。
【0166】
NGS解析
トランスフェクション後72時間で細胞を回収し、そのゲノムDNA含有物を、対応する推定ゲノム標的を増幅するPCR反応で使用した。アンプリコンをNGSにかけ、続いて、得られた配列を用いて、各標的部位における編集の割合を算出した。切断部位周囲の短い挿入又は欠失(インデル)は、ヌクレアーゼ誘導型DNA切断後のDNAの修復の典型的な結果である。したがって、編集率の算出は、各アンプリコン内のインデル含有配列の割合から推定した。
【0167】
実施例3
結果
OMNI-79 V5570によるゲノム編集の可能性を試験するために、数種類の異なる送達法を用いた。OMNI-79 V5570を、HepG2細胞中でリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部分として、LDLR遺伝子中の複数の部位を標的として試験した。全ての場合で、NGSから算出した編集は高く、58.5%から最大84.3%の範囲であった(図4、表6)。また、OMNI-79 V5570は、バリアントヌクレアーゼをコードするmRNA分子を送達することによるトランスフェクション及びエレクトロポレーション実験でも試験した。ここでも、全ての場合で、3種類の異なる遺伝子で高レベルの編集が観察された(図5及び図7、表7)。最後に、OMNI-79 V5570を、ウイルス形質導入により送達した(図6、表8)。
【0168】
材料及び方法
OMNI-79タンパク質の精製
RNPを組み立てるためのタンパク質生成及び合成ガイド生成の発現方法は、以下のとおり:簡単に説明すると、OMNI-79ヌクレアーゼオープンリーディングフレームを細菌に対してコドン最適化し(表1)、以下の要素を含むpNNCプラスミドにクローニングした:SV40 NLS-OMNI-79 ORF細菌最適化型-HAタグ-SV40 NLS-8Hisタグ(表4)。OMNI-79構築物を、KRX細胞(PROMEGA)で発現させた。細胞を、6.66mMラムノース、0.05%グルコース及びcarb抗生物質を添加したTB、0.4%グリセロール中で増殖させた。誘導を、18℃に温度を低下させた4時間後の対数期中期に行った。化学溶解により細胞を溶解させ、清澄化した溶解物をNi-NTA樹脂で精製した。次いで、CEX(SO3 fractogel)樹脂による精製及びそれに続くSuperdex(登録商標)200 Increase16/600、AKTA Pure(GE Healthcare Life Sciences)によるSEC精製を行った。OMNI-79タンパク質を含有する画分を高塩濃度中にプールし、22mg/mLストックに濃縮し、液体窒素中で急速凍結して、-80℃で保存した。
【0169】
in vitro転写(IVT)及びトランスフェクション
HiScribe T7高収量RNA合成キット(NEB# E2040S)をN1-メチルシュードウリジン-5’-三リン酸塩及びCleanCapとともに用い、製造業者の指示に従ってOMNI-79 V5570コードmRNAを作製した。収量は、約150μg mRNAであった。HeLa細胞を播種し、トランスフェクション時に70~90%コンフルエントとした。Lipofectamine(登録商標)3000を用い、製造業者の指示に従ってIVT mRNAを合成gRNAとともにトランスフェクションした。トランスフェクションの72時間後、トリプシンを用いて細胞を分散させ、製造業者の指示に従いQuickExtract溶液を用いて、ゲノム抽出物を調製した。NGSにより、インデル率を解析した。
【0170】
RNP及びmRNAエレクトロポレーション
V5570をRNP形態で送達するために、105pmolの精製タンパク質を124pmolのsgRNA及び100μM Cas9エレクトロポレーションエンハンサー(IDT)と混合して、複合体を組み立てた。25℃で10分間のインキュベーション後、RNP複合体を4×10個の予め洗浄したHepG2細胞と混合し、HepG2細胞に対するDS-123プログラムを備えたLonza SF細胞株4D-Nucleofector(登録商標)Xキットを用い、製造業者の指示に従ってエレクトロポレーションした。細胞を12ウェル組織培養プレートに再プレーティングし、TCインキュベータ(37℃、5%CO)中でインキュベートした。エレクトロポレーションの72時間後に、細胞を回収した。Quick extract(Lucigen)を使用して細胞溶解とゲノムDNA抽出を行い、特異的プライマーを用いて内因性ゲノム領域を増幅し、NGSでオンターゲット活性を測定した(図4、表3)。
【0171】
OMNI-79 V5570をmRNA形態で送達するために、1μgの精製V5570 mRNA(Trilink)の溶液を124pmolのsgRNA及び100μMのCas9エレクトロポレーションエンハンサー(IDT)と混合した。溶液を、4×10個の予め洗浄したHepG2細胞と混合し、DS-123プログラムを備えたLonza SF細胞株4D-Nucleofector(登録商標)Xキットを用い、製造業者の指示に従いエレクトロポレーションした。細胞を12ウェル組織培養プレートに再プレーティングし、TCインキュベータ(37℃、5%CO)中でインキュベートした。エレクトロポレーションの72時間後に、細胞を回収した。Quick extract(Lucigen)を使用して細胞溶解とゲノムDNA抽出を行い、特異的プライマーを用いて内因性ゲノム領域を増幅し、NGSでオンターゲット活性を測定した(図5、表3)。
【0172】
ウイルス形質導入
OMNI-79 V5570をAAV形態で送達するために、OMNI-79 V5570と対応するsgRNA分子を有するAAV-DJウイルスを調製し、精製した(VectorBuilder)。HepG2及びHepa1-6細胞を、それぞれMOI 1×10及び3×10で、対応するsgRNAを有するAAV-DJに感染させた。ウイルス粒子を添加した細胞を、TCインキュベータ(37℃、5%CO)中で一晩インキュベートした。翌日、細胞を洗浄し、新しい培地で更に48時間インキュベートした。感染の72時間後に細胞を回収した。Quick extract(Lucigen)を使用して細胞溶解とゲノムDNA抽出を行い、特異的プライマーを用いて内因性ゲノム領域を増幅し、NGSでオンターゲット活性を測定した(図6、表3)。
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
【表8-1】
【0178】
【表8-2】
【0179】
【表9】
【0180】
参考文献
1. Ahmad and Allen (1992) “Antibody-mediated Specific Binging and Cytotoxicity of Lipsome-entrapped Doxorubicin to Lung Cancer Cells in Vitro”, Cancer Research 52:4817-20.
2. Anderson (1992) “Human gene therapy”, Science 256:808-13.
3. Atosuo JT, Lilius E-M. The Real-Time-Based Assessment of the Microbial Killing by the Antimicrobial Compounds of Neutrophils. Scientific World Journal. 2011;11:2382-2390.
4. Basha et al. (2011) “Influence of Cationic Lipid Composition on Gene Silencing Properties of Lipid Nanoparticle Formulations of siRNA in Antigen-Presenting Cells”, Mol. Ther. 19(12):2186-200.
5. Behr (1994) “Gene transfer with synthetic cationic amphiphiles: Prospects for gene therapy”, Bioconjuage Chem 5:382-89.
6. Blaese et al. (1995) “Vectors in cancer therapy: how will they deliver”, Cancer Gene Ther. 2:291-97.
7. Blaese et al. (1995) “T lympocyte-directed gene therapy for ADA-SCID: initial trial results after 4 years”, Science 270(5235):475-80.
8. Briner et al. (2014) “Guide RNA functional modules direct Cas9 activity and orthognality”, Molecular Cell 56:333-39.
9. Buchschacher and Panganiban (1992) “Human immunodeficiency virus vectors for inducible expression of foreign genes”, J. Virol. 66:2731-39.
10. Burstein et al. (2017) “New CRISPR-Cas systems from uncultivated microbes”, Nature 542:237-41.
11. Canver et al., (2015) "BCL11A enhancer dissection by Cas9-mediated in situ saturating mutagenesis", Nature Vol. 527, Pgs. 192-214.
12. Chang and Wilson (1987) “Modification of DNA ends can decrease end-joining relative to homologous recombination in mammalian cells”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4959-4963.
13. Charlesworth et al. (2019) “Identification of preexisting adaptive immunity to Cas9 proteins in humans”, Nature Medicine, 25(2), 249.
14. Chung et al. (2006) “Agrobacterium is not alone: gene transfer to plants by viruses and other bacteria”, Trends Plant Sci. 11(1):1-4.
15. Coelho et al. (2013) “Safety and efficacy of RNAi therapy for transthyretin amyloidosis” N. Engl. J. Med. 369, 819-829.
16. Crystal (1995) “Transfer of genes to humans: early lessons and obstacles to success”, Science 270(5235):404-10.
17. Dillon (1993) “Regulation gene expression in gene therapy” Trends in Biotechnology 11(5):167-173.
18. Dranoff et al. (1997) “A phase I study of vaccination with autologous, irradiated melanoma cells engineered to secrete human granulocyte macrophage colony stimulating factor”, Hum. Gene Ther. 8(1):111-23.
19. Dunbar et al. (1995) “Retrovirally marked CD34-enriched peripheral blood and bone marrow cells contribute to long-term engraftment after autologous transplantation”, Blood 85:3048-57.
20. Ellem et al. (1997) “A case report: immune responses and clinical course of the first human use of ganulocyte/macrophage-colony-stimulating-factor-tranduced autologous melanoma cells for immunotherapy”, Cancer Immunol Immunother 44:10-20.
21. Gao and Huang (1995) “Cationic liposome-mediated gene transfer” Gene Ther. 2(10):710-22.
22. Haddada et al. (1995) “Gene Therapy Using Adenovirus Vectors”, in: The Molecular Repertoire of Adenoviruses III: Biology and Pathogenesis, ed. Doerfler and Boehm, pp. 297-306.
23. Han et al. (1995) “Ligand-directed retro-viral targeting of human breast cancer cells”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92(21):9747-51.
24. Humbert et al., (2019) "Therapeutically relevant engraftment of a CRISPR-Cas9-edited HSC-enriched population with HbF reactivation in nonhuman primates", Sci. Trans. Med., Vol. 11, Pgs. 1-13.
25. Inaba et al. (1992) “Generation of large numbers of dendritic cells from mouse bone marrow cultures supplemented with granulocyte/macrophage colony-stimulating factor”, J Exp Med. 176(6):1693-702.
26. Jinek et al. (2012) “A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity”, Science 337(6096):816-21.
27. Johan et al. (1992) “GLVR1, a receptor for gibbon ape leukemia virus, is homologous to a phosphate permease of Neurospora crassa and is expressed at high levels in the brain and thymus”, J Virol 66(3):1635-40.
28. Judge et al. (2006) “Design of noninflammatory synthetic siRNA mediating potent gene silencing in vivo”, Mol Ther. 13(3):494-505.
29. Kohn et al. (1995) “Engraftment of gene-modified umbilical cord blood cells in neonates with adnosine deaminase deficiency”, Nature Medicine 1:1017-23.
30. Kremer and Perricaudet (1995) “Adenovirus and adeno-associated virus mediated gene transfer”, Br. Med. Bull. 51(1):31-44.
31. Macdiarmid et al. (2009) “Sequential treatment of drug-resistant tumors with targeted minicells containing siRNA or a cytotoxic drug”, Nat Biotehcnol. 27(7):643-51.
32. Makaryan V. et al. The diversity of mutations and clinical outcomes for ELANE-associated neutropenia. Curr. Opin. Hematol. 2015;22(1):3-11.
33. Malech et al. (1997) “Prolonged production of NADPH oxidase-corrected granulocyes after gene therapy of chronic granulomatous disease”, PNAS 94(22):12133-38.
34. Maxwell et al. (2018) “A detailed cell-free transcription-translation-based assay to decipher CRISPR protospacer adjacent motifs”, Methods 14348-57
35. Miller et al. (1991) “Construction and properties of retrovirus packaging cells based on gibbon ape leukemia virus”, J Virol. 65(5):2220-24.
36. Miller (1992) “Human gene therapy comes of age”, Nature 357:455-60.
37. Mitani and Caskey (1993) “Delivering therapeutic genes - matching approach and application”, Trends in Biotechnology 11(5):162-66.
38. Nabel and Felgner (1993) “Direct gene transfer for immunotherapy and immunization”, Trends in Biotechnology 11(5):211-15.
39. Nasri M. et al. CRISPR /Cas9-mediated ELANE knockout enables neutrophilic maturation of primary hematopoietic stem and progenitor cells and induced pluripotent stem cells of severe congenital neutropenia patients. Haematologica. 2020;105(3):598-609.
40. Nehls et al. (1996) “Two genetically separable steps in the differentiation of thymic epithelium” Science 272:886-889.
41. Remy et al. (1994) “Gene Transfer with a Series of Lipphilic DNA-Binding Molecules”, Bioconjugate Chem. 5(6):647-54.
42. Sentmanat et al. (2018) “A Survey of Validation Strategies for CRISPR -Cas9 Editing”, Scientific Reports 8:888, doi:10.1038/s41598-018-19441-8.
43. Sommerfelt et al. (1990) “Localization of the receptor gene for type D simian retroviruses on human chromosome 19”, J. Virol. 64(12):6214-20.
44. Van Brunt (1988) “Molecular framing: transgenic animals as bioactors” Biotechnology 6:1149-54.
45. Vigne et al. (1995) “Third-generation adenovectors for gene therapy”, Restorative Neurology and Neuroscience 8(1,2): 35-36.
46. Wagner et al. (2019) “High prevalence of Streptococcus pyogenes Cas9-reactive T cells within the adult human population” Nature Medicine, 25(2), 242
47. Wilson et al. (1989) “Formation of infectious hybrid virion with gibbon ape leukemia virus and human T-cell leukemia virus retroviral envelope glycoproteins and the gag and pol proteins of Moloney murine leukemia virus”, J. Virol. 63:2374-78.
48. Yu et al. (1994) “Progress towards gene therapy for HIV infection”, Gene Ther. 1(1):13-26.
49. Zetsche et al. (2015) “Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease of a class 2 CRIPSR-Cas system” Cell 163(3):759-71.
50. Zuris et al. (2015) “Cationic lipid-mediated delivery of proteins enables efficient protein based genome editing in vitro and in vivo” Nat Biotechnol. 33(1):73-80.
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024542883000001.xml
【国際調査報告】