(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-18
(54)【発明の名称】酸化マグネシウム製造装置
(51)【国際特許分類】
C01F 5/08 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
C01F5/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532896
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2022015417
(87)【国際公開番号】W WO2023101198
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168054
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0130500
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524206692
【氏名又は名称】インダストリー アカデミック コーオペレイション ファウンデーション オブ ヨンナム ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジュファン
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク スミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン へウォン
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB06
4G076BA35
4G076BD02
4G076BH01
4G076CA02
4G076DA20
(57)【要約】
本出願は、酸化マグネシウム製造装置、これを用いた酸化マグネシウム製造方法、これを用いて製造された酸化マグネシウムおよび前記酸化マグネシウムの用途に関する。本出願の酸化マグネシウム製造装置、これを用いた酸化マグネシウム製造方法およびこれを用いて製造された酸化マグネシウムによれば、低コストで高い熱伝導度を有し、球状の小さい粒子径を有し、緻密な構造を有することができる。このような酸化マグネシウムは、放熱充填材に使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留水、酸化マグネシウム前駆体粉末および添加剤を混合して、懸濁液を製造する混合部と;
前記混合部で混合された懸濁液を噴霧し、乾燥して、顆粒を製造する噴霧乾燥部と;
前記噴霧乾燥部で製造された顆粒を熱処理して、酸化マグネシウムを形成する熱処理部と;を含む酸化マグネシウム製造装置。
【請求項2】
前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)粉末である、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項3】
前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、懸濁液100重量部に対して25重量部~70重量部で含まれる、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項4】
前記添加剤は、分散剤、焼結助剤および熱特性改善剤の中から選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項5】
前記分散剤は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれる、請求項4に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項6】
前記焼結助剤は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.1重量部~0.5重量部で含まれる、請求項4に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項7】
前記熱特性改善剤は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.05重量部~0.45重量部で含まれる、請求項4に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項8】
前記添加剤は、結合剤および可塑剤の中から選択された1つ以上を含まない、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項9】
前記懸濁液は、固形分含有量が15vol%~50vol%である、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項10】
前記噴霧乾燥部は、懸濁液の噴霧および乾燥が同時に行われる、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項11】
前記噴霧乾燥部で噴霧される液滴は、直径が10μm~200μmの球状を有する、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項12】
前記噴霧乾燥部は、熱風が流入する流入口および熱風が排出される排出口を含み、前記噴霧乾燥部の内部に流入する熱風の温度が120℃~180℃であり、前記噴霧乾燥部の外部に排出される熱風の温度が50℃~100℃である、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項13】
前記熱処理は、1300℃~1450℃で5分~120分間行われる、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項14】
前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、相対密度が95%以上である、請求項4に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項15】
前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、粒子の直径が5μm~150μmの球状を有する、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項16】
前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、熱伝導度が40W/m・K~65W/m・Kである、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項17】
前記熱処理部で熱処理された顆粒と顆粒間に凝集して凝集体が形成される場合、凝集体の大きさを調節する粒子径調節部をさらに含む、請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置。
【請求項18】
請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置を用いて酸化マグネシウムを製造する方法であって、
蒸留水、酸化マグネシウム前駆体粉末および添加剤を混合して、懸濁液を製造する混合段階と;
前記混合段階で混合された懸濁液を噴霧し、乾燥して、顆粒を製造する噴霧乾燥段階と;
前記噴霧乾燥段階で製造された顆粒を熱処理して、酸化マグネシウムを形成する熱処理段階と;を含む酸化マグネシウム製造方法。
【請求項19】
前記噴霧乾燥段階は、前記懸濁液の噴霧および乾燥が同時に行われる、請求項18に記載の酸化マグネシウム製造方法。
【請求項20】
前記熱処理段階で熱処理された顆粒と顆粒間に凝集して凝集体が形成される場合、凝集体の大きさを調節する粒子径調節段階をさらに含む、請求項18に記載の酸化マグネシウム製造方法。
【請求項21】
請求項1に記載の酸化マグネシウム製造装置を用いて製造された酸化マグネシウム。
【請求項22】
請求項21に記載の酸化マグネシウムを含む放熱充填材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、酸化マグネシウム製造装置、これを用いた酸化マグネシウム製造方法、これを用いて製造された酸化マグネシウムおよび前記酸化マグネシウムの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化マグネシウム(MgO)は、酸化アルミニウム(Al2O3)より約2倍~3倍程度高い熱伝導度特性を有し、また、原材料コストが安いため、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ベリリウム(BeO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ホウ素(BN)など高価な高熱伝導材料と比較してコストに比べて熱伝導性に非常に優れた長所を有している。
【0003】
これより、放熱(heat dissipating)材料の充填材(filler)に使用されている酸化アルミニウムを酸化マグネシウムに置き換える試みが行われている。放熱充填材が備えるべき最も重要な条件は、経済的な低コストと高い熱伝導度だけでなく、高分子樹脂内に稠密に充填するために、粒子の直径が約150μm以下の緻密球状粒子からなることである。通常のセラミック製造工程で粒子径が150μm以下の球状粒子を大量に製造する最も経済的な工程としては、噴霧乾燥(Spray Drying)工程がよく知られている。噴霧乾燥工程は、セラミック粉末粒子が液体内に均一に分散した懸濁液を製造した後、この懸濁液を噴霧器(atomizer)と呼ばれる液滴(droplets)発生装置を用いて直径が数十~数百μmの球状の懸濁液滴を連続的に発生させ、同時に液滴が散布された容器の内部に高温の気体を吹き込んで液滴から液状成分の蒸発を引き起こすことによって、直径が数十~数百μmの球状の固体粉末塊、すなわち顆粒を製造する工程を称する。したがって、放熱充填材として有望な酸化マグネシウムを約150μm以下の球状粒子に製造するにあたって、最も経済的であり、大量生産が可能な工程は、この噴霧乾燥工程を採択することによって可能であると判断される。
【0004】
ところで、酸化マグネシウムは、水分または水と接触すると、MgO+H2O=Mg(OH)2の水和反応が起こる問題があり、通常のセラミック噴霧乾燥工程で懸濁液の製造のための溶媒として最も多く使用する水を使用することができないという問題がある。
【0005】
このような問題を克服するために、従来、懸濁液の製造のための溶媒として水の代わりにアルコール系溶媒を使用する非水系噴霧乾燥工法を採択している。しかしながら、有機溶媒を使用する非水系噴霧乾燥工程では、安全のために可燃性有機溶媒からなる懸濁液の爆発を防止するために、防爆型噴霧乾燥機を使用する。このような防爆型噴霧乾燥機は、水を使用する水系噴霧乾燥工程で使用する噴霧乾燥機に比べて高価である。それだけでなく、量産で大量に消費される高純度の有機溶媒の価格も、水系工程の蒸留水に比べて非常に高い短所がある。さらに、有機溶媒は、種類によって程度の差があるが、大部分が有害性を持っていて、可能であれば、非水系よりも水系工程がさらに好ましいといえる。したがって、このような短所を補完するための酸化マグネシウム製造装置が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、低コストで高い熱伝導度を有し、球状の小さい直径を有し、緻密な酸化マグネシウムを製造できる酸化マグネシウム製造装置、これを用いた酸化マグネシウム製造方法、これを用いて製造された酸化マグネシウムおよび前記酸化マグネシウムの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本出願の酸化マグネシウム製造装置は、蒸留水、酸化マグネシウム前駆体粉末および添加剤を混合して、懸濁液を製造する混合部と;前記混合部で混合された懸濁液を噴霧し、乾燥して、顆粒を製造する噴霧乾燥部と;前記噴霧乾燥部で製造された顆粒を熱処理して、酸化マグネシウムを形成する熱処理部と;を含む。
【0008】
前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)粉末でありうる。
【0009】
また、前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、懸濁液100重量部に対して25重量部~70重量部で含まれてもよい。
【0010】
また、前記添加剤は、分散剤、焼結助剤および熱特性改善剤の中から選択された1つ以上を含んでもよい。
【0011】
また、前記分散剤は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。
【0012】
また、前記焼結助剤は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.1重量部~0.5重量部で含まれてもよい。
【0013】
また、前記熱特性改善剤は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.05重量部~0.45重量部で含まれてもよい。
【0014】
また、前記添加剤は、結合剤および可塑剤の中から選択された1つ以上を含まなくてもよい。
【0015】
また、前記懸濁液は、固形分含有量が15vol%~50vol%でありうる。
【0016】
また、前記噴霧乾燥部は、懸濁液の噴霧および乾燥が同時に行われ得る。
【0017】
また、前記噴霧乾燥部から噴霧される液滴は、直径が10μm~200μmの球状を有することができる。
【0018】
また、前記噴霧乾燥部は、熱風が流入する流入口および熱風が排出される排出口を含み、前記噴霧乾燥部の内部に流入する熱風の温度が120℃~180℃であり、前記噴霧乾燥部の外部に排出される熱風の温度が50℃~100℃でありうる。
【0019】
また、前記熱処理は、1300℃~1450℃で5分~120分間行われ得る。
【0020】
また、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、相対密度が95%以上でありうる。
【0021】
また、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、粒子の直径が5μm~150μmの球状を有することができる。
【0022】
また、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、熱伝導度が40W/m・K~65W/m・Kでありうる。
【0023】
また、酸化マグネシウム製造装置は、前記熱処理部で熱処理された顆粒と顆粒間に凝集して凝集体が形成される場合、凝集体の大きさを調節する粒子径調節部をさらに含んでもよい。
【0024】
また、本出願の酸化マグネシウム製造方法は、前記酸化マグネシウム製造装置を用いて酸化マグネシウムを製造する方法に関し、蒸留水、酸化マグネシウム前駆体粉末および添加剤を混合して、懸濁液を製造する混合段階と;前記混合段階で混合された懸濁液を噴霧し、乾燥して、顆粒を製造する噴霧乾燥段階と;前記噴霧乾燥段階で製造された顆粒を熱処理して、酸化マグネシウムを形成する熱処理段階と;を含む。
【0025】
また、前記噴霧乾燥段階は、懸濁液の噴霧および乾燥が同時に行われ得る。
【0026】
また、酸化マグネシウム製造方法は、前記熱処理段階で熱処理された顆粒と顆粒間に凝集して凝集体が形成される場合、凝集体の大きさを調節する粒子径調節段階をさらに含んでもよい。
【0027】
また、本出願の酸化マグネシウムは、前記酸化マグネシウム製造装置を用いて製造される。
【0028】
また、本出願の放熱充填材は、前記酸化マグネシウムを含む。
【発明の効果】
【0029】
本出願の酸化マグネシウム製造装置、これを用いた酸化マグネシウム製造方法およびこれを用いて製造された酸化マグネシウムによれば、低コストで高い熱伝導度を有し、球状の小さい直径を有し、緻密な構造を有することができる。このような酸化マグネシウムは、放熱充填材に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本出願の一実施形態による酸化マグネシウム製造装置を用いて酸化マグネシウムを製造するための過程を説明するために例示的に示した図である。
【
図2】
図2は、実施例1の水酸化マグネシウム顆粒を走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図3】
図3は、実施例1の水酸化マグネシウム顆粒を走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図4】
図4は、比較例1の水酸化マグネシウム顆粒を走査電子顕微鏡で撮影して100倍拡大した写真である。
【
図5】
図5は、比較例1の水酸化マグネシウム顆粒を走査電子顕微鏡で撮影して1000倍拡大した写真である。
【
図6】
図6は、実施例1の酸化マグネシウム粒子を走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図7】
図7は、実施例1の酸化マグネシウム粒子を走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図8】
図8は、実施例2の酸化マグネシウム粒子を走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図9】
図9は、実施例2の酸化マグネシウム粒子を走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図10】
図10は、比較例2の酸化マグネシウム粒子を走査電子顕微鏡で撮影して200倍拡大した写真である。
【
図11】
図11は、実施例2の酸化マグネシウム粒子に対する一次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図12】
図12は、実施例2の酸化マグネシウム粒子に対する一次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図13】
図13は、実施例3の篩い分けの実行前に酸化マグネシウム粒子に対する一次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図14】
図14は、実施例3の篩い分けの実行前に酸化マグネシウム粒子に対する一次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図15】
図15は、実施例3の篩い分けの実行後に酸化マグネシウム粒子に対する一次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図16】
図16は、実施例3の篩い分けの実行後に酸化マグネシウム粒子に対する一次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図17】
図17は、実施例2の酸化マグネシウム粒子に対する二次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図18】
図18は、実施例2の酸化マグネシウム粒子に対する二次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して1500倍拡大した写真である。
【
図19】
図19は、比較例1の酸化マグネシウム粒子に対する二次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して500倍拡大した写真である。
【
図20】
図20は、比較例1の酸化マグネシウム粒子に対する二次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して2000倍拡大した写真である。
【
図21】
図21は、比較例2の酸化マグネシウム粒子に対する二次顆粒欠陥を分析するために走査電子顕微鏡で撮影して200倍拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して本出願の酸化マグネシウム製造装置を説明し、添付の図面は、例示的なものであり、本出願の酸化マグネシウム製造装置が添付の図面に制限されるものではない。
【0032】
図1は、本出願の一実施形態による酸化マグネシウム製造装置を用いて酸化マグネシウムを製造するための過程を説明するために例示的に示した図である。
図1に示されたように、前記酸化マグネシウム製造装置は、混合部10、噴霧乾燥部20および熱処理部30を含む。本出願の酸化マグネシウム製造装置によれば、低コストで高い熱伝導度を有し、球状の小さい直径を有し、緻密な構造を有することができる。
【0033】
前記混合部は、懸濁液を製造する部分であり、蒸留水、酸化マグネシウム前駆体粉末および添加剤を混合して行われる。具体的には、前記混合は、容器に前記蒸留水および添加剤を投入して一次混合した後、前記混合物に酸化マグネシウム前駆体粉末を投入して二次混合して行われ得る。例えば、前記混合方法としては、通常、セラミック工程で使用される各種粉砕および混合法を使用することができ、さらに例を挙げると、撹拌(stirring)、超音波処理(ultrasonication)、ボールミリング(ball milling)、アトリッションミリング(attrition-milling)、ビーズミリング(bead-milling)、振動ミリング(vibratory milling)またはプラネタリーミリング(planetary milling)などを使用することができる。
【0034】
一実施形態において、前記混合は、ボールミリングを用い、酸化マグネシウム前駆体粉末の直径の十分な減少および均一な混合のために、直径が5~10mmのボール、例えば、ジルコニアボールを用いて12~24時間ボールミリングを通じて行われ得る。
【0035】
前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)粉末でありうる。前記酸化マグネシウム前駆体粉末として前述した粉末を使用することによって、前記蒸留水と接触しても水和反応が起こらず、水系噴霧乾燥工程を用いることができる。
【0036】
前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、懸濁液100重量部に対して25重量部~70重量部で含まれてもよい。具体的には、前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、懸濁液100重量部に対して30重量部~68重量部、35重量部~66重量部、40重量部~64重量部、45重量部~62重量部、50重量部~60重量部または55重量部~60重量部で含まれてもよい。前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、前記懸濁液内に前述した含有量で含まれることによって、良好な噴霧乾燥工程の進行が可能であり、また、適正な直径の顆粒の生産収率の効率化を図ることができる。これに対し、前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、前述した範囲未満の含有量を有する場合、製造された顆粒の直径が小さくなることはもちろん、顆粒製造収率が減少することができる。また、前記酸化マグネシウム前駆体粉末は、前述した範囲超過の含有量を有する場合、懸濁液の粘度が高くなって、噴霧乾燥が不可能になる。
【0037】
また、前記添加剤は、分散剤、焼結助剤および熱特性改善剤の中から選択された1つ以上を含んでもよい。
【0038】
具体的には、前記分散剤としては、水系セラミック懸濁液の製造時に一般的に使用される各種水系用分散剤を使用することが可能であり、例えば、ポリカルボン酸のアンモニウム塩(Sannopco 5468CF)、アンモニア水(NH4OH)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(Polyoxyethylene nonylphenyl ether)、分岐リン酸塩(Branched phosphate,Solvay Rhodafac RE-610)、DISPERBYK-194またはDISPERBYK-6230を使用することができる。
【0039】
前記分散剤の含有量は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.1重量部~10重量部、1重量部~9重量部、3重量部~8重量部または5重量部~7重量部でありうる。前記分散剤を前述した含有量で含むことによって、懸濁液内に分布した水酸化マグネシウム粉末粒子の分散性を向上させ、それによる粘度の減少を達成することができ、これによって、高濃度の低粘度懸濁液を製造することができる。
【0040】
前記焼結助剤としては、酸化マグネシウムの焼結を促進すると知られたすべての物質を使用することが可能であり、例えば、酸化チタン(TiO2)、ニオビウム(Nb2O5)、ジルコニア(ZrO2)、酸化ガリウム(Ga2O3)、三酸化二マンガン(Mn2O3)、五酸化バナジウム(V2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5-)、五酸化二アンチモン(Sb2O5)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ユウロピウム(Eu2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)、三酸化ボロン(B2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化スズ(SnO2)、二酸化マンガン(MnO2)、二酸化ケイ素(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)を使用することができる。
【0041】
前記焼結助剤の含有量は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.1重量部~0.5重量部または0.2重量部~0.4重量部でありうる。前記焼結助剤を前述した含有量で含むことによって、酸化マグネシウムの緻密化を促進することができる。
【0042】
前記熱特性改善剤としては、酸化マグネシウムの熱伝導特性を向上させると知られたすべての物質を使用することが可能であり、例えば、焼結助剤の役割と熱特性改善の役割を同時に行うニオビウム(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ユウロピウム(Eu2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)またはアルミナ(Al2O3)を使用することができる。
【0043】
前記熱特性改善剤の含有量は、前記酸化マグネシウム前駆体粉末100重量部に対して0.05重量部~0.45重量部、0.1重量部~0.4重量部、0.15重量部~0.35重量部または0.2重量部~0.3重量部でありうる。前記熱特性改善剤を前述した含有量で含むことによって、酸化マグネシウムの熱伝導度を増加させるという観点から有利になる。
【0044】
1つの例示において、前記添加剤は、結合剤(binder)および可塑剤(plasticizer)の中から選択された1つ以上を含まなくてもよい。具体的には、通常、セラミック懸濁液の製造時に噴霧乾燥で製造した顆粒をプレス成形などの方法で成形したとき、作製される成形体が後続工程を進める間に受ける応力と変形によって破損せずに、十分に耐えられるようにするために、結合剤および可塑剤などの有機添加剤をさらに投入してもよい。しかしながら、本出願のように、成形体製造工程を必要としない場合には、前述した添加剤以外の添加剤、例えば、結合剤および可塑剤の中から選択された1つ以上の有機添加剤をさらに投入する必要がない。
【0045】
前記懸濁液は、固形分含有量が15vol%~50vol%でありうる。具体的には、前記懸濁液の固形分含有量は、20vol%~45vol%、25vol%~40vol%または30vol%~40vol%でありうる。前記懸濁液は、前述した固形分含有量を有することによって、前記噴霧乾燥部で顆粒の製造に有利になる。これに対し、前記懸濁液が前述した固形分含有量未満の場合、前記噴霧乾燥部で噴霧乾燥後、製造される顆粒の直径が小さくなる問題が発生することがある。また、前記懸濁液が前述した固形分含有量を超える場合、懸濁液の粘度が高すぎ、液滴の噴霧が難しくなる問題が発生することがある。
【0046】
前記噴霧乾燥部は、顆粒を製造するための部分であり、前記混合部で混合された懸濁液を噴霧し、乾燥して行われる。本明細書において顆粒は、非常に微細な一次粒子が弱く結合されて作成された二次粒子を意味する。例えば、前記一次粒子は、1μm以下の直径を有し、前記二次粒子は、1μm超過~1000μm未満の直径を有することができる。
【0047】
例えば、前記噴霧は、ノズル型噴霧器または回転円板型噴霧器を用いて行われ得る。この際、前記噴霧乾燥部がノズル型噴霧器を含む場合、ノズルの噴霧圧力、噴霧乾燥部への懸濁液供給速度、噴霧乾燥部内に進入する熱風の温度と外へ抜け出る熱風の温度および熱風の供給速度を調節して、液滴および顆粒の直径、収得率、形状欠陥発生率を制御することができる。また、前記噴霧乾燥部が円板型噴霧器を含む場合、円板の回転速度および直径、噴霧乾燥部への懸濁液供給速度、噴霧乾燥部内に進入する熱風の温度と外へ抜け出る熱風の温度および熱風の供給速度を調節して、液滴および顆粒の直径、収得率、形状欠陥発生率を制御することができる。
【0048】
1つの例示において、前記噴霧乾燥部は、懸濁液の噴霧および乾燥が同時に行われ得る。具体的には、前記懸濁液は、噴霧乾燥部を介して噴霧と同時に乾燥が行われ得る。前記噴霧乾燥部は、懸濁液の噴霧と乾燥を同時に行うことによって、非常に短時間内、例えば1秒以内にすぐに液滴形態の懸濁液を乾燥して顆粒化することができ、これによって、顆粒の経済的大量生産が可能になり得る。
【0049】
前記噴霧乾燥部から噴霧される液滴は、直径が10μm~200μmの球状を有することができる。具体的には、前記噴霧乾燥部から噴霧される液滴は、直径が15μm~190μm、20μm~180μmまたは25μm~170μmの球状を有することができる。この際、前記液滴は、噴霧乾燥部で乾燥される前に噴霧される懸濁液の状態でありうる。前記噴霧乾燥部から噴霧される液滴は、前述した直径の球状を有することによって、液滴の乾燥後に形成される顆粒の大きさが5μm~150μmを有することができる。これによって、前記顆粒は、良好な流動性を有することとなり、後続工程の進行時に顆粒間に互いに固まる現象を最小化することができる。本明細書において用語「直径」は、球状の大きさを意味し得る。
【0050】
前記噴霧乾燥部は、前記懸濁液を乾燥するために、熱風が流入する流入口(不図示)および熱風が排出される排出口(不図示)を含んでもよい。例えば、前記噴霧乾燥部の内部に流入する熱風の温度が120℃~180℃、130℃~170℃または140℃~160℃であり、前記噴霧乾燥部の外部に排出される熱風の温度が50℃~100℃、60℃~90℃または70℃~80℃でありうる。前記乾燥は、前述した条件で行われることによって、良好な球状の形状と直径を有する顆粒の収得率を向上させることができる。
【0051】
前記熱処理部は、水酸化マグネシウム顆粒を焼結して酸化マグネシウムを形成する部分であり、前記噴霧乾燥部で製造された顆粒を熱処理して行われる。本明細書において熱処理して形成された酸化マグネシウムは、焼結顆粒とも呼ばれ得る。
【0052】
1つの例示において、前記熱処理は、1300℃~1450℃で5分~120分間行われ得る。具体的には、前記熱処理は、1400℃~1450℃で30分~90分間行われ得る。前記顆粒は、前記熱処理部で前述した条件で熱処理されることによって、水酸化マグネシウムの熱分解および緻密化を達成することができる。
【0053】
前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、相対密度が95%以上でありうる。前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、前述した相対密度を有することによって、緻密化を達成することができる。
【0054】
また、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、直径が5μm~150μmの球状を有することができる。具体的には、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムの球状粒子の直径は、10μm~120μm、20μm~90μm、または30μm~60μmでありうる。前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、前述した直径の球状を有することによって、放熱充填材として使用が可能となる。
【0055】
また、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、熱伝導度が40W/m・K~65W/m・Kでありうる。具体的には、前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムの熱伝導度は、45W/m・K~60W/m・Kでありうる。前記熱処理されて形成された酸化マグネシウムは、前述した熱伝導度を有することによって、各種放熱充填材として使用が可能となる。
【0056】
1つの例示において、前記酸化マグネシウム製造装置は、粒子径調節部(不図示)をさらに含んでもよい。前記粒子径調節部は、前記熱処理部で熱処理された顆粒と顆粒間に凝集して凝集体が形成される場合、凝集体の大きさを調節する部分である。具体的には、前記熱処理部で顆粒を熱処理する過程で顆粒内部の緻密化だけでなく、顆粒と顆粒間の接触面にも緻密化が同時に起こり、ネッキング現象によって凝集体が形成されることができ、これを目的とする直径の酸化マグネシウム粒子に製造するために、粒子径を調節することができる。例えば、前記粒子径調節部では、前記凝集体を乳鉢(mortar)などを用いて滑らかに粉砕し、これらを篩い分け(seive)することで、粒子径、すなわち直径を制御することができる。
【0057】
本出願は、また、酸化マグネシウム製造方法に関する。例示的な酸化マグネシウム製造方法は、前述した酸化マグネシウム製造装置を用いて酸化マグネシウムを製造する方法に関する。したがって、後述する酸化マグネシウム製造方法に関する具体的な事項は、前記酸化マグネシウム製造装置で記述した内容を同一に適用することができるので、これを省略することとする。
【0058】
前記酸化マグネシウム製造方法は、混合段階、噴霧乾燥段階および熱処理段階を含む。前記酸化マグネシウム製造方法によれば、低コストで高い熱伝導度を有し、小さい直径を有し、緻密な酸化マグネシウムを製造することができる。
【0059】
前記混合段階は、懸濁液を製造する段階であり、蒸留水、酸化マグネシウム前駆体粉末および添加剤を混合して行われる。前記混合段階に対する具体的な説明は、前記混合部で記述したものと同一なので、これを省略することとする。
【0060】
前記噴霧乾燥段階は、顆粒を製造するための段階であり、前記混合段階で混合された懸濁液を噴霧し、乾燥して行われる。前記噴霧乾燥段階に対する具体的な説明は、前記噴霧乾燥部で記述したものと同一なので、これを省略することとする。
【0061】
1つの例示において、前記噴霧乾燥段階は、懸濁液の噴霧および乾燥が同時に行われ得る。前記噴霧乾燥段階で噴霧および乾燥が同時に行われる具体的な説明は、前記噴霧乾燥部で記述したものと同一なので、これを省略することとする。
【0062】
前記熱処理段階は、酸化マグネシウムを形成する部分であり、前記噴霧乾燥段階で製造された顆粒を熱処理して行われる。前記熱処理段階に対する具体的な説明は、前記熱処理部で記述したものと同一なので、これを省略することとする。
【0063】
1つの例示において、前記酸化マグネシウム製造方法は、粒子径調節段階をさらに含んでもよい。前記粒子径調節段階は、前記熱処理段階で熱処理された顆粒と顆粒間に凝集して凝集体が形成される場合、凝集体の大きさを調節する段階である。前記粒子径調節段階に対する具体的な説明は、前記粒子径調節部で記述したものと同一なので、これを省略することとする。
【0064】
本出願は、また、酸化マグネシウムに関する。例示的な酸化マグネシウムは、前述した酸化マグネシウム製造装置を用いて製造された酸化マグネシウムである。したがって、後述する酸化マグネシウムに関する具体的な事項は、前記酸化マグネシウム製造装置で記述した内容が同一に適用されることがあるので、これを省略することとする。
【0065】
前記酸化マグネシウムは、前述した酸化マグネシウム製造装置を用いて製造される。これを通じて製造された酸化マグネシウムは、高い熱伝導度を有し、小さい直径を有し、緻密化を達成することができる。また、このような酸化マグネシウムは、放熱充填材に使用することができる。
【0066】
本出願は、また、前記酸化マグネシウムの用途に関する。例示的な酸化マグネシウムは、前述した酸化マグネシウムを含む放熱充填材に使用することができる。したがって、後述する酸化マグネシウムに関する具体的な事項は、前記酸化マグネシウム製造装置で記述した内容を同一に適用することができるので、これを省略することとする。
【0067】
前記放熱充填材は、前記酸化マグネシウムを含む。前記放熱充填材は、前述した酸化マグネシウムを含むことによって、高い熱伝導度を有し、小さい直径を有し、緻密化を達成することができる。
【0068】
以下、実施例および比較例に基づいて上記で記述した内容をより具体的に説明するが、本出願の範囲が下記提示された内容によって制限されるものではない。
【0069】
実施例1
酸化マグネシウム製造
図1の装置を用いて酸化マグネシウムを製造した。具体的には、混合部として、500mlの体積を有するポリエチレン容器内に直径10mmのZrO
2ボールを約半分程度充填し、均一な混合のために高純度の蒸留水70g(35.9wt%)と分散剤(APCA32.5%溶液)8g(4.1wt%)を投入した後、約3分間ボールミリングを行った。その後、前記ポリエチレン容器内にさらに1μm以下の粒径を有するルチル系(Rutile)酸化チタン粉末(TiO
2)0.24g(0.1wt%)と酸化ニオビウム粉末(Nb
2O
5,Kojundo Chem.Lab.Co.,Ltd.)0.21g(0.1wt%)を投入した後、約5分間ボールミリングを行った。その後、前記ポリエチレン容器内にさらに水酸化マグネシウム粉末(Mg(OH)
2,大井化金)116.06g(59.5wt%)を投入した後、約24時間ボールミリングを行った。その後、前記ポリエチレン容器内にさらに分散剤(APCA32.5%溶液)を0.58g(0.3wt%)投入し、ボールミリングを1分間行った後、ビーカーに注いだ後、続いて撹拌して、噴霧乾燥用懸濁液を製造した。この際、前記懸濁液は、固形分含有量が39.6vol%であった。
【0070】
その後、懸濁液を噴霧乾燥部に投入して、下記表1の条件で噴霧乾燥を行い、顆粒を製造した。
【0071】
【0072】
その後、顆粒を熱処理部としてアルミナ(Al2O3)材質のルツボに入れ、前記ルツボを電気炉内で1450℃の温度で1時間熱処理を行った。この際、昇温速度は、5℃/minにした。昇温過程中に約300℃から水酸化マグネシウムの熱分解が起こって、顆粒内水酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粒子に変わり、約1100℃からは転換された酸化マグネシウム粒子の緻密化が始まって、直径が35μmの酸化マグネシウムが製造された。前記顆粒は、実験室スケールの噴霧乾燥システムを使用しているので、直径が一般的な生産用噴霧乾燥システムによる顆粒より全般的に小さいことが確認された。しかしながら、これは、生産用噴霧乾燥システムを用いる場合、容易に最大150μmまで粒度制御が可能であることが分かった。また、顆粒の表面に微粉末形態の粒子が付着することができるが、量産用噴霧乾燥機では、別途の微細粒子捕集装置が設置されているので、このような現象がほとんど発生しない。
【0073】
実施例2
酸化マグネシウム製造
固形分の含有量を34.6vol%に変更し、分散剤としてSannopco社のSN5468CFおよびアンモニア水(28%)を3:5の割合で混ぜて作成した溶液を使用するものに変更し、熱処理温度を1400℃に変更したことを除いて、実施例1の酸化マグネシウム製造装置で実施例1と同様の方法で直径が35μmの酸化マグネシウムを製造した。
【0074】
実施例3
酸化マグネシウム製造
実施例2で製造された酸化マグネシウムが凝集する場合、前記実施例2で製造された酸化マグネシウムをアルコールと混合した後、直径3mmの小さいZrO2ボールを用いて30分間低い回転速度でボールミリングを行った。ボールミリングされた酸化マグネシウムスラリーを635番の篩い(網目の大きさ20μm)の上に注いだ後、超音波振動を起こして篩い分けを行って、直径が40μmの酸化マグネシウムを製造した。
【0075】
比較例1
酸化マグネシウム製造
原料粉末を水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を使用する代わりに酸化マグネシウム(MgO)を使用し、溶媒としてイソプロピル(Iso-propyl)アルコール(大井化金)、分散剤としてBYK-145をMgO粉末100重量部に対して1.5重量部で使用し、固形分の含有量を32.5vol%に変更し、熱処理温度を1400℃に変更したことを除いて、実施例1の酸化マグネシウム製造装置で実施例1と同じ方法で直径が80μmの酸化マグネシウムを製造した。
【0076】
比較例2
酸化マグネシウム製造
固形分の含有量を25.5vol%に変更したことを除いて、実施例1の混合部を用いて実施例1と同様の方法で懸濁液を製造した。
【0077】
その後、前記懸濁液を撹拌(stirring)用マグネットバー(magnetic bar)が入っているビーカーに入れ、撹拌加熱装置(Hot-plate)で95℃~115℃で前記懸濁液が流動性を完全に喪失するまで撹拌し、乾燥して、前記懸濁液内の液体成分を蒸発させた。その後、完全乾燥のために、前記懸濁液が入ったビーカーを90℃のオーブンに入れ、12時間乾燥した後、乾燥された粉末ケーキをアルミナ乳鉢で粉砕した後、#50番の篩いを用いて篩い分けを実施して、水酸化マグネシウム顆粒を製造した。この際、粉砕および篩い分けを行う理由は、直径が数十~数百μmの水酸化マグネシウム顆粒を製造するためである。
【0078】
その後、前記水酸化マグネシウム顆粒を実施例1の熱処理部を用いて実施例1と同様の方法で熱処理して、粒子径が約100μmの酸化マグネシウムを製造した。この際、前記粒子径は、長軸と短軸の長さの平均径を意味する。
【0079】
実験例1.形態分析
実施例および比較例で製造された水酸化マグネシウム顆粒および酸化マグネシウム粒子を走査電子顕微鏡で撮影して、形態を分析した。
【0080】
その結果、
図2および
図3に示されたように、実施例1の水酸化マグネシウム顆粒は、15μm~60μm直径の球状を示すことを確認した。しかしながら、
図4および
図5に示されたように、比較例1の水酸化マグネシウム顆粒は、内部が空いている中空またはドーナツ形態の20μm~100μm粒子径を示すことを確認した。
【0081】
また、
図6および
図7に示されたように、実施例1の酸化マグネシウム粒子は、10μm~50μm直径の緻密な球状を示すことを確認した。また、
図8および
図9に示されたように、実施例2の酸化マグネシウム粒子は、5μm~40μm直径の緻密な球状を示すことを確認した。
【0082】
一方、
図10に示されたように、比較例2の酸化マグネシウム粒子は、形状が球状でない不規則な形状を有する一種の塊状を示すことを確認した。その理由は、実施例の噴霧乾燥のように、懸濁液を噴霧させて表面張力によって球状の液滴を形成させる噴霧過程を経ることなく、懸濁液を直接乾燥する方式を選択したためである。したがって、比較例2の酸化マグネシウム粒子の製造方法では、良好な球状の形状を有する球状の酸化マグネシウム焼結顆粒を製造することが非常に困難であることを確認した。
【0083】
実験例2.一次顆粒欠陥分析
実施例および比較例で製造された水酸化マグネシウム顆粒の欠陥(中空(hollow)またはドーナツ(dimple))を確認するために、実施例および比較例で製造された酸化マグネシウム粒子を乳鉢で乳鉢棒で少し衝撃を加えて一部の粒子が破壊されるようにした後、これを走査電子顕微鏡で観察した。
【0084】
その結果、
図11および
図12に示されたように、実施例2で製造された酸化マグネシウム粒子は、内部にも空いた空間なしで酸化マグネシウムで充填されていることを確認した。この際、走査電子顕微鏡で観察するとき、乳鉢棒によって破壊された酸化マグネシウム粒子も一部含まれていて、一部の酸化マグネシウム粒子の場合、球状の形状を持たなかったようであるが、実際にはその酸化マグネシウム粒子も元々球状の形状を正確に備えた粒子であることを確認した。
【0085】
また、
図13および
図14に示した実施例3で製造された篩い分けの実行前に酸化マグネシウム粒子に比べて、
図15および
図16に示した実施例3で製造された篩い分けの実行後に酸化マグネシウム粒子が直径が40μm以下を有することを確認し、前記酸化マグネシウム粒子の間に便利に分級が可能であることを確認した。
【0086】
実験例3.二次顆粒欠陥分析
実施例および比較例で製造された水酸化マグネシウム顆粒の欠陥をさらに確実に確認するために、実施例および比較例で製造された酸化マグネシウム粒子をピペットチップ(Precision Pipette Tips,PCR-200)内に少量充填した後、そこへ常温硬化型エポキシ樹脂(Epoxy Mount Resin and its Hardener,Allied)を充填し、含浸および硬化させ、その後、チップを切断し、その断面を1200番砂布、および1μmおよび6μmのダイヤモンド研磨材を用いて研磨した後、走査電子顕微鏡で観察した。
【0087】
図17および
図18に示されたように、実施例2で製造されたほぼすべての酸化マグネシウム粒子は、球状の形状を有しており、また、その内部も中空(hollow)またはドーナツ(dimple)欠陥なしに全部充填された状態であることが分かった。
【0088】
これに対し、
図19および
図20に示されたように、比較例1で製造された酸化マグネシウム粒子は、内部が空いた馬蹄形であることを確認した。
【0089】
また、
図21に示されたように、比較例2で製造された酸化マグネシウム粒子は、内部が比較的に良好な緻密化が達成されているが、その粒子の断面形状が球状でない不規則な形状を有していることが分かった。したがって、比較例2の酸化マグネシウム粒子の製造方法では、良好な球状の形状を有する酸化マグネシウム焼結顆粒を製造することが非常に困難であることを確認した。
【符号の説明】
【0090】
10:混合部
20:噴霧乾燥部
30:熱処理部
【国際調査報告】