(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】高カリウム血症治療用医薬ポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20241112BHJP
A61K 31/787 20060101ALI20241112BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 3/12 20060101ALI20241112BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/78 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20241112BHJP
C08F 226/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08F220/10
A61K31/787
A61P3/00
A61P3/12
A61P7/00
A61P9/00
A61K31/78
A61K31/765
C08F226/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547638
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2022129968
(87)【国際公開番号】W WO2023088111
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/131264
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523297631
【氏名又は名称】ウォーターストーン ファーマシューティカルズ(ウーハン)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】フー ミン
(72)【発明者】
【氏名】フー ミンロン
(72)【発明者】
【氏名】リー トントン
(72)【発明者】
【氏名】リャン イン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シアオロン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ファーミン
【テーマコード(参考)】
4C086
4J100
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086FA02
4C086FA03
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZC21
4J100AE75Q
4J100AL24P
4J100AL67Q
4J100AQ21Q
4J100BA03Q
4J100EA05
4J100FA21
4J100JA53
(57)【要約】
本出願は、モノマーと架橋剤の重合反応によって調製されるカリウム結合性ポリマーであって、前記モノマーは、式(V)の化合物であり、前記架橋剤は式(VI)の化合物及び/又は式(VII)の化合物であり、変数は明細書中に規定されるとおりである、カリウム結合性ポリマー、及び、高カリウム血症を治療又は予防するためのその使用は本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーと架橋剤とを1:0.02~1:0.20の範囲のモノマー/架橋剤モル比で重合させることによって得られる繰り返し単位を含む、ポリマーであって、前記モノマーは、酸性基と、該酸性基に隣接したpKa低下性基とを含み、前記酸性基は、スルホン酸基(-SO
3
-)、硫酸基(-OSO
3
-)、カルボキシル基(-CO
2
-)、ホスホン酸基(-OPO
3
2-)、リン酸基(-OPO
3
2-)及びスルファミン酸基(-NHSO
3
-)からなる群より選ばれ、前記pKa低下性基は、ニトロ、シアノ、カルボニル、トリフルオロメチル及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、前記架橋剤は、前記ポリマーに式(I):
【化1】
(式中、n1は0、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、n2は1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、R
1はH又は
【化2】
であり、好ましくは、Hである)で表される構造部分を与えるポリマー。
【請求項2】
前記酸性基はカルボキシル基であり、pKa低下性基はフッ素である、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
反応部位は遊離アルケニル基である、請求項1記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリビニルスルホン酸ポリマー、ポリビニルスルファミン酸ポリマー、ポリ(ビニルスルファミン酸/ビニル硫酸)コポリマー、ポリビニルアミノホスホン酸ポリマー、N-(ビスホスホン酸エチル)ポリビニルアミンポリマー、ポリ(α-フルオロアクリル酸)ポリマー、ビニルホスホン酸/アクリル酸コポリマー、ビニルホスホン酸/α-フルオロアクリル酸コポリマー、ポリビニル硫酸ポリマー及び架橋ポリビニルスルファミン酸ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1記載のポリマー。
【請求項5】
式(II)
【化3】
(式中、n1は0、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、n2は1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、そしてR
2はH、又は、
【化4】
であり、好ましくは、Hであり、
mは0.80~0.98の範囲であり、nは0.02~0.20の範囲であり、そしてm+n=1であり、
*は結合部位を表す)を有するポリマー又はその医薬上許容される塩。
【請求項6】
R
2はHである、請求項5記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーは、式(III)により表される構造を有し、又は、式(III)により表される構造の塩である、請求項5記載のポリマー。
【化5】
【請求項8】
前記ポリマーの塩は、式(IV)
【化6】
(式中、Mはアルカリ性基である)を有する、請求項5記載のポリマー。
【請求項9】
MはFe、Ca、Na、Mg又はリジンである、請求項8記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーは、1つ以上のポリマー又はその塩を含む、請求項5~9のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項11】
以下の構造のいずれかを有し、又は以下の構造のいずれかの塩である、ポリマー。
【化7】
(式中、mは0.80~0.98の範囲であり、nは0.02~0.20の範囲であり、pは0.02~0.20の範囲であり、そしてm+n=1又はm+n+p=1である)
【請求項12】
前記ポリマーの塩は、以下の構造のいずれかを有する、請求項11記載のポリマー。
【化8-1】
【化8-2】
【請求項13】
モノマーと架橋剤との重合反応によって調製されるポリマー又はその塩であって、前記モノマーは式(V)
【化9】
(式中、R
1はH又はC
1-6アルキルであり、好ましくはC
1-3アルキルであり、より好ましくはメチルである)の化合物であり、
前記架橋剤は式(IV)
【化10】
の化合物及び/又は、式(VII)
【化11】
の化合物(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、そして各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)であり、
重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、ただし、前記モノマーのモル分率と前記架橋剤のモル分率の合計は1である、ポリマー又はその塩。
【請求項14】
前記モノマーは式(VIII)
【化12】
の化合物である、請求項13記載のポリマー又はその塩。
【請求項15】
前記架橋剤は、式(VI)
【化13】
(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)の化合物であり、好ましくは、前記架橋剤は式(IX)
【化14】
の化合物であり、そして重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、ただし、前記モノマーのモル分率と前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.15の範囲であり、前記モノマーと前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.10の範囲であり、前記モノマーと前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、さらにより好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.93~0.97の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.03~0.07の範囲であり、前記モノマーと前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、最も好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.95であり、前記架橋剤のモル分率は0.05である、請求項13又は14記載のポリマー又はその塩。
【請求項16】
前記架橋剤は式(VI)
【化15】
の化合物及び式(VII)
【化16】
の化合物(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)であり、
前記モノマーのモル分率は0.84~0.96であり、前記架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、前記架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、前記モノマーと前記2つの架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、前記モノマーのモル分率は0.86~0.94であり、前記架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は、前記架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率と等しく、0.03~0.07であり、前記モノマーと前記2つの架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、前記モノマーのモル分率は0.90であり、前記架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.05であり、前記架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.05である、請求項13又は14記載のポリマー又はその塩。
【請求項17】
式(VI)の化合物は式(IX)
【化17】
の化合物であり、式(VII)の化合物は式(X)
【化18】
の化合物である、請求項16記載のポリマー又はその塩。
【請求項18】
以下の工程:
(a)モノマー、架橋剤及び開始剤を混合して油相とし、水に分散剤及び無機塩を加え、それらを室温で均一に溶解及び分散させて水相とし、前記油相と前記水相を混合し、高温にて、ある時間反応させてエステルポリマーを得ること、
(b)アルカリ水溶液と有機溶媒との混合溶液中での加水分解により、工程(a)からのエステルポリマーからアルキル部分を除去してカルボン酸塩ポリマーを生成すること、
(c)工程(b)からのカルボン酸塩ポリマーを酸で酸性化して、酸の形態の所望のポリマーを得ること、
(d)場合により、工程(c)からの酸の形態のポリマーを塩の形態の所望のポリマーに転化させること、
を含む方法により調製され、
前記モノマーは式(V)
【化19】
の化合物(式中、R
1はH又はC
1-6アルキルであり、好ましくはC
1-3アルキルであり、より好ましくはメチルである)であり、
前記架橋剤は式(VI)
【化20】
の化合物、及び/又は、式(VII)
【化21】
の化合物(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)であり、
重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、ただし、前記モノマーのモル分率と前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、
前記重合反応の前記高温は60℃以上の温度、例えば、60℃~85℃であり、
前記分散剤は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪藻土、タルク粉末、Tween 20、Tween 40、Tween 80、Tween 85、Span 20、Span 40、Span 60、Span 65、Span 80、Span 85又はそれらの任意の混合物から選ばれる、ポリマー又はその塩。
【請求項19】
前記モノマーは式(VIII)
【化22】
の化合物である、請求項18記載のポリマー又はその塩。
【請求項20】
前記架橋剤は、式(VI)
【化23】
(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)の化合物であり、好ましくは、前記架橋剤は式(IX)
【化24】
の化合物であり、そして重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、前記モノマーのモル分率と前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.15の範囲であり、前記モノマーと前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.02~0.10の範囲であり、前記モノマーと前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、さらにより好ましくは、重合反応において、前記モノマーのモル分率は0.93~0.97の範囲であり、前記架橋剤のモル分率は0.03~0.07の範囲であり、前記モノマーと前記架橋剤のモル分率の合計は1であり、最も好ましくは、前記モノマーのモル分率は0.95であり、前記架橋剤のモル分率は0.05である、請求項18又は19記載のポリマー又はその塩。
【請求項21】
前記架橋剤は式(VI)
【化25】
の化合物、及び、式(VII)
【化26】
の化合物(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)であり、
前記モノマーのモル分率は0.84~0.96であり、前記架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、前記架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、前記モノマーと前記2つの架橋剤のモル分率の合計は1であり、好ましくは、前記モノマーのモル分率は0.86~0.94であり、前記架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は、前記架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率と等しく、0.03~0.07であり、前記モノマーと前記2つの架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、前記モノマーのモル分率は0.90であり、前記架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.05であり、前記架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.05である、請求項18又は19記載のポリマー又はその塩。
【請求項22】
式(VI)の化合物は式(IX)
【化27】
の化合物であり、式(VII)の化合物は式(X)
【化28】
の化合物である、請求項21記載のポリマー又はその塩。
【請求項23】
前記開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V50)、2,2'-アザビス(2-イミダゾリン)二塩酸塩(VA044)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化ラウロイル、クメンヒドロパーオキサイド及びその任意の混合物から選ばれる、請求項18~22のいずれか1項記載のポリマー又はその塩。
【請求項24】
前記無機塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びそれらの任意の混合物から選ばれる、請求項18~23のいずれか1項記載のポリマー又はその塩。
【請求項25】
工程(b)における前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル及びそれらの任意の混合物から選ばれ、工程(b)におけるアルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及びそれらの任意の混合物から選ばれる、請求項18~24のいずれか1項記載のポリマー又はその塩。
【請求項26】
工程(c)において使用される酸は、硫酸、塩酸、硝酸又はそれらの任意の混合物から選ばれる、請求項18~25のいずれか1項記載のポリマー又はその塩。
【請求項27】
前記ポリマーは、ナトリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、リジン塩又はそれらの組み合わせの形態であり、例えば、前記ポリマーは、Na-Ca-Fe複合塩又はLys-Ca-Fe複合塩の形態である、請求項18~26のいずれか1項記載のポリマー又はその塩。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリマー又はその塩及び医薬上許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項29】
動物におけるカリウムレベルを低下させるための、又は高カリウム血症を治療もしくは予防するための、請求項1~27のいずれか1項記載のポリマー又はその塩。
【請求項30】
有効量の請求項1~27のいずれか1項記載のポリマー又はその塩を投与することを含む、動物におけるカリウムレベルを低下させるための、又は高カリウム血症を治療もしくは予防するための方法。
【請求項31】
前記高カリウム血症は、カリウム貯留を引き起こす薬剤の投与によって引き起こされる、請求項30記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年11月17日に出願された特許出願第PCT/CN2021/131264号の優先権を主張し、それを参照により本明細書に組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、医薬化学の分野に関し、特に、本開示は、高カリウム血症を治療するための医薬ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
カリウム(K+)は細胞内に最も多く存在する陽イオンであり、人体におけるその含有量は約35mEq/kg~40mEq/kgである。約5.0mEq/L~6.0mEq/Lの範囲の血清カリウムは軽度の高カリウム血症と定義できるが、通常は生命を脅かすものではない。しかしながら、中等度から重度の高カリウム血症(血清カリウム値が約6.1mEq/Lを超える)は、重篤な結果を引き起こす可能性がある。不整脈及び心電図波形の歪みはどちらも高カリウム血症の特徴である。血清カリウム濃度が約9mEq/L以上に上昇すると、房室解離、心室頻拍又は心室細動などの症状が現れることがある。
【0004】
高カリウム血症は、一般の健康な集団では稀である。しかしながら、一部の集団では高カリウム血症の発生率がより高くなる。入院患者の中で、高カリウム血症の発生率は、高カリウム血症の定義に応じて約1%~10%である。重症患者、未熟児又は高齢者はすべて、よりリスクの高いグループに属する。腎機能の低下、泌尿生殖器疾患、がん、重度糖尿病及び併用投薬はすべて、患者の高カリウム血症のリスクを高める可能性がある。
【0005】
高カリウム血症に対する既存の治療計画のほとんどは入院に限定されている。ケイキサレート(Kayexalate)などのイオン交換樹脂は、大量に使用しなければならず、患者が協力したがらないため、外来患者又は長期治療には適していない。このような治療法は胃腸(GI)管に重大な副作用をもたらし、過剰なナトリウムを導入する可能性があり、高ナトリウム血症、関連する体液貯留及び高血圧を引き起こす可能性がある。利尿薬は、患者に腎臓からナトリウム及びカリウムを除去させることができる。それにもかかわらず、既存の腎症及び関連する利尿薬抵抗性により、利尿薬の有効性が限定されることがよくある。さらに、利尿薬は、血圧及び血液量の低下が好ましくない患者には禁忌である。例えば、うっ血性心不全(CHF)患者は低血圧を患っており、しばしば、ACE阻害剤とスピロノラクトンなどの高カリウム血症を誘発する可能性のある非カリウム利尿剤の組み合わせが投与される。
【0006】
したがって、高カリウム血症を治療するための高いカリウム結合能を有する新薬の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【0007】
発明の説明
1つの態様において、本開示はポリマーを提供する。
【0008】
本開示の1つの実施形態によれば、前記ポリマーは、モノマーと架橋剤とを1:0.02~1:0.20の範囲のモノマー/架橋剤モル比で重合させることによって得られる繰り返し単位を含む。モノマーは、酸性基と、酸性基に隣接したpKa低下性基とを含む。 酸性基は、スルホン酸基(-SO
3
-)、硫酸基(-OSO
3
-)、カルボキシル基(-CO
2
-)、ホスホン酸基(-OPO
3
2-)、リン酸基(-OPO
3
2-)及びスルファミン酸基(-NHSO
3
-)からなる群より選ばれる。pKa低下性基は、ニトロ、シアノ、カルボニル、トリフルオロメチル及びハロゲン原子からなる群より選ばれる。架橋剤は、ポリマーに式(I)で表される構造部分を与える:
【化1】
(式中、n1は0、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2、3であり、より好ましくは1であり、n2は1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2、3であり、より好ましくは1であり、R
1はH又は
【化2】
であり、好ましくは、R
1はHであり、そして*は結合部位を表す)。
【0009】
出願人は、本開示の実施形態によるポリマーが、塩状態よりも酸性状態にあるときのほうが、極めて高い安定性及びカリウムイオン吸着能力を有することを発見した。本開示の実施形態による酸又は塩形態のポリマーは、高カリウム血症の効果的な治療のための薬剤として使用することができる。
【0010】
本開示の1つの実施形態によれば、上記ポリマーは、以下の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0011】
好ましい実施形態において、酸性基はカルボキシル基であり、pKa低下性基はフッ素である。
【0012】
好ましい実施形態において、モノマーと架橋剤の反応部位は遊離アルケニル基である。
【0013】
好ましい実施形態において、前記ポリマーは、ポリビニルスルホン酸ポリマー、ポリビニルスルファミン酸ポリマー、ポリ(ビニルスルファミン酸/ビニル硫酸)コポリマー、ポリビニルアミノホスホン酸ポリマー、N-(ビスホスホン酸エチル)ポリビニルアミンポリマー、ポリ(α-フルオロアクリル酸)ポリマー、ビニルホスホン酸/アクリル酸コポリマー、ビニルホスホン酸/α-フルオロアクリル酸コポリマー、ポリビニル硫酸ポリマー及び架橋ポリビニルスルファミン酸ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0014】
本開示の1つの実施形態によれば、本開示はさらに、式(II)
【化3】
で表されるポリマー又はその塩を提供する。
(式中、R
2はH、又は、
【化4】
であり、好ましくは、R
2はHであり、
mは0.80~0.98の範囲であり、nは0.02~0.20の範囲であり、そしてm+n=1であり、
n1は0、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2、3であり、より好ましくは1であり、
n2は1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2、3であり、より好ましくは1であり、
波状結合は、
【化5】
のランダム結合を表し、
*は
【化6】
が結合して鎖延長ポリマーネットワークを生成する結合部位を表す)。
【0015】
上記ポリマーは、以下の技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0016】
好ましい実施形態において、R2はHである。
【0017】
好ましい実施形態において、ポリマーは式(III)又はその塩により表される。
【化7】
【0018】
好ましい実施形態において、式(II)のポリマーの塩は、式(IV)により表される塩である。
【化8】
(式中、Mはアルカリ性基である)。
【0019】
好ましい実施形態において、MはFe、Ca、Na、Mg、リジン又はそれらの組み合わせである。
【0020】
好ましい実施形態において、ポリマーは、1つ以上のポリマー又はその塩を含み又はそれらからなる混合物である。
【0021】
別の好ましい実施形態において、ポリマーは、以下の構造式のいずれか又はその塩により表される。
【化9】
(式中、mは0.80~0.98の範囲であり、nは0.02~0.20の範囲であり、pは0.02~0.20の範囲であり、そして変数m及びnのみが存在するときにはm+n=1であり、変数m、n及びpのすべてが存在するときにはm+n+p=1である)。
【0022】
好ましくは、ポリマーは、以下の構造のいずれかにより表される塩である。
【化10-1】
【化10-2】
(式中、mは0.80~0.98の範囲であり、nは0.02~0.20の範囲であり、pは0.02~0.20の範囲であり、変数m及びnのみが存在するときにはm+n=1であり、又は、変数m、n及びpがすべて存在するときにはm+n+p=1である)。
【0023】
変数m、n及びpは末端値を含む上記の範囲内のいずれかの値であることができる。例えば、mは、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97又は0.98であることができ、nは0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19又は0.20であることができ、pは0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19又は0.20であることができ、そして変数m及びnのみが存在するときにはm+n=1であり、又は、変数m、n及びpがすべて存在するときにはm+n+p=1である。
【0024】
好ましい実施形態において、mは0.80であり、nは0.20であり、又は、mは0.85であり、nは0.15であり、又は、mは0.89であり、nは0.11であり、又は、mは0.90であり、nは0.10であり、又は、mは0.95でありnは0.05であり、又は、mは0.98であり、nは0.02である。
【0025】
別の好ましい実施形態において、mは0.85~0.98の範囲であり、nは0.02~0.15の範囲であり、そしてm+n=1であり、より好ましくは、mは0.90~0.98の範囲であり、nは0.02~0.10の範囲であり、そしてm+n=1であり、さらに好ましくは、mは0.93~0.97の範囲であり、nは0.03~0.07の範囲であり、そしてm+n=1である。
【0026】
別の好ましい実施形態において、mは0.84~0.96の範囲であり、nは0.02~0.14の範囲であり、pは0.02~0.14の範囲であり、そしてm+n+p=1であり、より好ましくは、mは0.86~0.94の範囲であり、n及びpは同じで、0.03~0.07の範囲であり、m+n+p=1であり、さらにより好ましくは、mは0.90、nは0.05、そしてpは0.05である。
【0027】
本開示の1つの実施形態によれば、本開示は、モノマーと架橋剤とを、1:0.02~1:0.25、例えば1:0.02、1:0.05、1:0.12又は1:0.25のモノマー/架橋剤のモル比で重合することにより得られる繰り返し単位を含み、モノマーはメチル2-フルオロアクリレートであり、架橋剤はペンタエリスリトールトリアリルエーテルである、ポリマー又はその塩を提供する。
【0028】
本開示の1つの実施形態によれば、本開示は、モノマーと架橋剤との重合反応によって調製されるポリマー又はその塩を提供し、ここで、モノマーは式(V)
【化11】
(式中、R
1はH又はC
1-6アルキルであり、好ましくはC
1-3アルキルであり、より好ましくはメチルである)の化合物であり、
架橋剤は式(IV)
【化12】
及び/又は、式(VII)
【化13】
(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、そして各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)の化合物であり、
重合反応において、モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、ただし、モノマーのモル分率と架橋剤のモル分率の合計は1である。
【0029】
重合反応におけるモノマーのモル分率及び架橋剤のモル分率は、末端値を含めて上記の範囲内のいずれの値であってもよい。例えば、モノマーのモル分率は、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97又は0.98であり、架橋剤のモル分率は、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19又は0.20であり、 モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1である。
【0030】
好ましい実施形態において、重合反応において、モノマーのモル分率は0.80であり、架橋剤のモル分率は0.20であり、又は、モノマーのモル分率は0.85であり、架橋剤のモル分率は0.15であり、又は、モノマーのモル分率は0.89であり、架橋剤のモル分率は0.11であり、又は、モノマーのモル分率は0.90であり、架橋剤のモル分率は0.10であり、又は、モノマーのモル分率は0.95であり、架橋剤のモル分率は0.05であり、又は、モノマーのモル分率は0.98であり、架橋剤のモル分率は0.02である。
【0031】
別の好ましい実施形態において、重合反応において、モノマーのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.15の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、重合反応において、モノマーのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.10の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、さらにより好ましくは、重合反応において、モノマーのモル分率は0.93~0.97の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.03~0.07の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1である。
【0032】
好ましい実施形態において、モノマーは式(VIII)
【化14】
の化合物である。
【0033】
好ましい実施形態において、架橋剤は、式(VI)
【化15】
(式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1,2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である)の化合物である。さらなる好ましい実施形態において、架橋剤は式(IX)
【化16】
の化合物であり、そして重合反応において、モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、モノマーのモル分率と架橋剤のモル分率の合計は1であり、好ましくは、重合反応において、モノマーのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.15の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、重合反応において、モノマーのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.10の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、さらにより好ましくは、重合反応において、モノマーのモル分率は0.93~0.97の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.03~0.07の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1である。例えば、重合反応において、モノマーのモル分率は0.80であり、架橋剤のモル分率は0.20であり、又は、モノマーのモル分率は0.85であり、架橋剤のモル分率は0.15であり、又は、モノマーのモル分率は0.89であり、架橋剤のモル分率は0.11であり、又は、モノマーのモル分率は0.90であり、架橋剤のモル分率は0.10であり、又は、モノマーのモル分率は0.95であり、架橋剤のモル分率は0.05であり、又は、モノマーのモル分率は0.98であり、架橋剤のモル分率は0.02である。
【0034】
別の好ましい実施形態において、架橋剤は式(VI)
【化17】
の化合物及び式(VII)
【化18】
の化合物である。
式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1,2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、モノマーのモル分率は0.84~0.96であり、架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、モノマーと2つの架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、モノマーのモル分率は0.86~0.94であり、架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は、架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率と等しく、0.03~0.07であり、モノマーと2つの架橋剤のモル分率の合計は1である。例えば、モノマーのモル分率は0.90であり、架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.05であり、架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.05である。
【0035】
より好ましい実施形態において、式(VI)の化合物は式(IX)
【化19】
の化合物であり、式(VII)の化合物は式(X)
【化20】
の化合物である。
【0036】
モノマーと架橋剤との重合反応によって得られるポリマーは、モノマーによって与えられる構造部分Aと架橋剤によって与えられる構造部分Bとを含むことを理解されたい。ここで、式(V)
【化21】
のモノマーによって与えられる構造部分Aは式(V’)
【化22】
の残基であり、R
1はH又はC
1-6アルキルであり、好ましくはC
1-3アルキルであり、より好ましくはメチルであり、そして*は構造部分A又は構造部分Bの結合部位を表し、
式(VI)
【化23】
の架橋剤により与えられる構造部分Bは式(VI’)
【化24】
の残基であり、ここで、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、そして*は構造部分A又は構造部分Bの結合部位を表し、
式(VII)
【化25】
の架橋剤により与えられる構造部分Bは、式(VII’)
【化26】
の残基であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、そして*は構造部分A又は構造部分Bの結合部位を表す。
【0037】
ポリマー中の構造部分A又は構造部分Bのモル分率は、重合反応における対応するモノマー及び対応する架橋剤のモル分率と同じであることを理解されたい。
【0038】
好ましい実施形態において、モノマーは式 (VIII)
【化27】
の化合物であり、そして対応して、構造部分Aは式 (VIII’)
【化28】
の残基である。
【0039】
好ましい実施形態において、架橋剤は式(VI)
【化29】
の化合物であり、そして対応して、構造部分Bは、式(VI’)
【化30】
の化合物であり、式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましく1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましく1、2又は3であり、より好ましく1であり、そして*は構造部分A又は構造部分Bの結合部位を表す。より好ましくは、架橋剤は式(IX)
【化31】
の化合物であり、そして対応して、構造部分Bは、式(IX’)
【化32】
の化合物であり、式中、*は構造部分A又は構造部分Bの結合部位を表し、そしてポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.02~0.20の範囲であり、構造部分Aと構造部分Bのモル分率の合計は1であり、好ましくは、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.02~0.15の範囲であり、構造部分Aと構造部分Bのモル分率の合計は1であり、より好ましくは、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.02~0.10の範囲であり、構造部分Aと構造部分Bのモル分率の合計は1であり、さらにより好ましくは、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.93~0.97の範囲であり、ポリマー中の構造部分のモル分率は0.03~0.07の範囲であり、構造部分Aと構造部分Bのモル分率の合計は1である。例えば、構造部分Aのモル分率は0.80であり、構造部分Bのモル分率は0.20であり、又は、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.85であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.15であり、又は、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.89であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.11であり、又は、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.90であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.10であり、又は、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.95であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.05であり、又は、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.98であり、ポリマー中の構造部分Bのモル分率は0.02である。
【0040】
別の好ましい実施形態において、架橋剤は式(VI)
【化33】
及び式(VII)
【化34】
の化合物であり、そして対応して、構造部分Bは式(VI’)
【化35】
の残基、及び、式(VII’)
【化36】
の残基であり、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましく1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましく1、2又は3であり、より好ましく1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましく1であり、そして*は構造部分A又は構造部分Bの結合部位を表す。ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.84~0.96であり、ポリマー中の構造部分Bとしての式(VI')の残基のモル分率は0.02~0.14であり、ポリマー中の構造部分Bとしての式(VII')の残基のモル分率は0.02~0.14であり、ポリマー中の構造部分A及び2つの構造部分Bのモル分率の合計は1であり、より好ましくは、ポリマー中の構造部分Aのモル分率は0.86~0.94であり、ポリマー中の構造部分Bとしての式(VI')の残基のモル分率は、ポリマー中の構造部分Bとしての式(VII')の残基のモル分率に等しく、0.03~0.07であり、ポリマー中の構造部分Aと2つの構造部分Bのモル分率の合計は1である。例えば、ポリマー中の構造部分Aは0.90であり、ポリマー中の構造部分Bとしての式(VI')の残基のモル分率は0.05であり、ポリマー中の構造部分Bとしての式(VII')の残基のモル分率は0.05である。
【0041】
より好ましい実施形態において、架橋剤は式(IX)
【化37】
の化合物、及び、式(X)
【化38】
の化合物であり、そして対応して、構造部分Bは式(IX’)
【化39】
の残基、及び、式(X’)
【化40】
の残基である。
【0042】
上述のとおりのポリマーの塩は、好ましくは医薬上許容される塩である。例えば、ポリマーは、ナトリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、リジン塩又はそれらの組み合わせの形態である。例えば、ポリマーは、Na-Ca-Fe複合塩又はLys-Ca-Fe複合塩の形態である。
【0043】
上記の重合体又はその塩を総称して「本発明によるポリマー」という。
【0044】
本発明のポリマーは、本出願の開示を考慮すれば当業者に明らかとなる幾つかの利点を有する。
【0045】
第一に、本発明によるポリマーは、インビトロ及びインビボでカリウムカチオン(K+)に対する高い結合能を有し、したがって動物の体から過剰なカリウムカチオンを除去することができる。より具体的には、本発明によるポリマーのカリウム結合能が、胃腸管、特に結腸をシミュレートする生理学的条件下でインビトロで決定されるときに、例えば、本発明によるポリマーのカリウム結合能が約5.5以上のpHを有する溶液中でインビトロで決定されるときに、酸の形態の本発明によるポリマーは、5mmol/g以上、好ましくは5~12mmol/g、より好ましくは5.5~10mmol/g、さらに好ましくは6mmol/g~8mmol/gのカリウム結合能を有し、そして塩の形態の本発明によるポリマーは、2~5mmol/gのカリウム結合能を有する。
【0046】
第二に、本発明によるポリマーは芳香族基を含まないため、芳香族共役系によって引き起こされる潜在的な薬物相互作用が回避される。
【0047】
第三に、塩形態の本発明によるポリマーは、市販品のVeltassa(Replypsa)と比較して、本発明によるポリマーからのカルシウムカチオンの摂取量が大幅に低減されるように精巧に設計されており、本発明によるポリマーからのナトリウムカチオンの摂取量は、市販品Lokelma(登録商標)(AstraZenca)と比較して大幅に減少される。したがって、塩の形態の本発明によるポリマーは、Veltassa(登録商標)によって引き起こされる高カルシウム血症及びLokelma(登録商標)によって引き起こされる高ナトリウム血症を軽減することができる。
【0048】
第四に、本発明によるポリマーは鉄カチオンを含むことができ、したがって、合併症として虚血性貧血を患うことが多い慢性腎臓病の患者にとって有益である。
【0049】
別の態様において、本開示は、カリウム結合性ポリマー又はその塩を調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を含む:
(a)モノマー、架橋剤及び開始剤を混合して油相とし、水に分散剤及び無機塩を加え、それらを室温で均一に溶解及び分散させて水相とし、前記油相と前記水相を混合し、高温で、ある時間反応させてエステルポリマーを得ること、
(b)アルカリ水溶液と有機溶媒との混合溶液中での加水分解により、工程(a)からのエステルポリマーからアルキル部分を除去してカルボン酸塩ポリマーを生成すること、
(c)工程(b)からのカルボン酸塩ポリマーを酸で酸性化して、酸の形態の所望のポリマーを得ること、
(d)場合により、工程(c)からの酸の形態のポリマーを塩の形態の所望のポリマーに転化させること。
【0050】
モノマー/架橋剤の比率は1:0.02~1:0.25の範囲であり、これはモノマーのモル分率が0.80~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率が0.02~0.20の範囲であり、ただし、モノマーのモル分率と架橋剤のモル分率の合計が1であることを意味する。
【0051】
モノマーのモル分率及び架橋剤のモル分率は、末端値を含めて上記の範囲に含まれるいずれの値であってもよい。例えば、モノマーのモル分率は、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97又は0.98であり、架橋剤のモル分率は、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19又は0.20であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1である。
【0052】
好ましい実施形態において、モノマーのモル分率は0.80であり、架橋剤のモル分率は0.20であり、又は、モノマーのモル分率は0.85であり、架橋剤のモル分率は0.15であり、又は、モノマーのモル分率は0.89であり、架橋剤のモル分率は0.11であり、又は、モノマーのモル分率は0.90であり、架橋剤のモル分率は0.10であり、又は、モノマーのモル分率は0.95であり、架橋剤のモル分率は0.05であり、又は、モノマーのモル分率は0.98であり、架橋剤のモル分率は0.02である。
【0053】
別の好ましい実施形態において、モノマーのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.15の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、モノマーのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.10の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1である。
【0054】
モノマーは式(V)
【化41】
の化合物であり、式中、R
1はH又はC
1-6アルキルであり、好ましくはC
1-3アルキルであり、より好ましくはメチルである。R
1がメチルである式(V)の化合物は式(VIII)
【化42】
に対応する。
【0055】
架橋剤は式(VI)
【化43】
の化合物、及び/又は、式(VII)
【化44】
の化合物であり、式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である。
【0056】
好ましい実施形態において、架橋剤は式(VI)
【化45】
の化合物であり、式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である。より好ましい実施形態において、架橋剤は式(IX)
【化46】
の化合物である。モノマーのモル分率は0.80~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.20の範囲であり、モノマーのモル分率と架橋剤のモル分率の合計は1であり、好ましくは、モノマーのモル分率は0.85~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.15の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、モノマーのモル分率は0.90~0.98の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.02~0.10の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1であり、さらにより好ましくは、モノマーのモル分率は0.93~0.97の範囲であり、架橋剤のモル分率は0.03~0.07の範囲であり、モノマーと架橋剤のモル分率の合計は1である。モノマーのモル分率は0.80であり、架橋剤のモル分率は0.20であり、又は、モノマーのモル分率は0.85であり、架橋剤のモル分率は0.15であり、又は、モノマーのモル分率は0.89であり、架橋剤のモル分率は0.11であり、又は、モノマーのモル分率は0.90であり、架橋剤のモル分率は0.10であり、又は、モノマーのモル分率は0.95であり、架橋剤のモル分率は0.05であり、又は、モノマーのモル分率は0.98であり、架橋剤のモル分率は0.02である。
【0057】
別の好ましい実施形態において、架橋剤は、式(VI)
【化47】
の化合物及び式(VII)
【化48】
の化合物であり、式中、各n1は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各n2は、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1であり、各qは、独立して、1、2、3、4、5、6又は7であり、好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1である。モノマーのモル分率は0.84~0.96であり、架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.02~0.14であり、モノマーと2つの架橋剤のモル分率の合計は1であり、より好ましくは、モノマーのモル分率は0.86~0.94であり、架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は、架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率と等しく、0.03~0.07であり、モノマーと2つの架橋剤のモル分率の合計は1である。例えば、モノマーのモル分率は0.90であり、架橋剤としての式(VI)の化合物のモル分率は、0.05であり、架橋剤としての式(VII)の化合物のモル分率は0.05である。
【0058】
より好ましい実施形態において、式(VI)の化合物は、式(IX)
【化49】
の化合物であり、そして式(VII)の化合物は式(X)
【化50】
の化合物である。
【0059】
上記の方法において、開始剤は、水溶性フリーラジカル開始剤、油溶性フリーラジカル開始剤又は2つ以上の開始剤の混合物であることができる。水溶性開始剤としては、限定するわけではないが、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V50)、2,2'-アザビス(2-イミダゾリン)二塩酸塩(VA044)などが挙げられる。油溶性開始剤としては、限定するわけではないが、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化ラウロイル、クメンヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。本開示の方法で使用されるこれらの開始剤の量は、当該技術分野で従来から使用されているものと同じである。例えば、本開示の方法で使用されるBPOの量は、モノマーの0.1~10.0モル(%)、好ましくは1.0~5.0モル%の範囲であることができる。
【0060】
本開示における重合反応は、上述の方法の工程(a)に示されるように、懸濁重合である。上記の方法で使用される分散剤は、懸濁重合中の粒子の凝集を防ぐことを目的としている。この目的に適した分散剤としては、限定するわけではないが、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチル セルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪藻土、タルク粉末、Tween 20、Tween 40、Tween 80、Tween 85、Span 20、Span 40、Span 60、Span 65、Span 80、Span 85又はそれらの任意の混合物が挙げられる。本開示の方法で使用されるこれらの分散剤の量は、当該技術分野で従来から使用される量と同じである。例えば、本開示の方法で使用されるPVAの量は、水相の0.1%~2.0%(w/w)、好ましくは0.3%~1.0%(w/w)の範囲であることができる。
【0061】
上記方法の工程(a)において水相に無機塩を添加することにより、粒子の凝集を低減できることが判明した。この目的に適した無機塩としては、水相に溶解可能な種々の塩が挙げられる。例えば、それは、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びそれらの任意の混合物から選択されうる。無機塩の添加量は、水相全体の質量を基準として、0.1%~10%w/w、好ましくは1%~5%w/w、より好ましくは3%~4%w/wの範囲、例えば、2%w/wである。
【0062】
上記の方法の工程(a)における重合反応の高温とは、60℃以上、例えば60℃~85℃の温度を指す。
【0063】
上記の方法の工程(b)における加水分解は、アルカリ水溶液と有機溶媒との混合溶液中で行うべきである。本発明者らは、有機溶媒のないアルカリ水溶液中又は酸の存在下での加水分解は不完全であり、又は、加水分解を促進するために温度を上げると着色した不純物が生成することを見出した。加水分解に使用される有機溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどのエーテル、ならびにそれらの任意の混合物から選ばれる。加水分解に使用されるアルカリとしては、限定するわけではないが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及びそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0064】
上記の方法の工程(c)で使用される酸としては、限定するわけではないが、硫酸、塩酸、硝酸又はそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0065】
上記の方法の工程(d)における転化は、塩を形成するのに適した転化様式で実施することができる。例えば、それは、適切な水性塩基又は塩溶液を使用して達成されうる。 前記適切な塩基又は塩は、塩化第二鉄六水和物、塩化第二鉄、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム及びそれらの任意の混合物から選択されうる。
【0066】
別の態様において、本開示は、上記の方法によって調製されたポリマーを提供する。
【0067】
さらに別の態様において、本開示は、上記のような1つ以上のポリマー又はその塩及び医薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0068】
医薬組成物は、インビボでのカリウムカチオンレベルを低下させ、高カリウム血症を予防及び治療するためのカリウム結合剤として使用される。
【0069】
医薬組成物は、従来的な経口投与方法における固形製剤(限定するわけではないが、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、固体分散体を含む)又は液体製剤(限定するわけではないが、懸濁剤を含む)に製剤化されうる。
【0070】
医薬組成物は、上記の1つ以上のポリマー又はその塩を組成物の1%~100%w/w、例えば、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%w/wで含む。あるいは、1つ以上の上記ポリマー又はその塩は、単位剤形中に1g、2g、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10g、12g、16g、18g、20g、24g、30g、40g、50g、60g、70g、80g、90g、100gの量で存在してもよい。
【0071】
医薬組成物に使用される医薬上許容される賦形剤は、以下の物質の1つ以上から選択されうる。
a)希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、デキストリンなど、
b)崩壊剤、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプン(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン)など、
c)結合剤、例えば、デンプンスラリー、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース、エチルセルロースなど、
d)流動促進剤、例えば、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムなど、
e)着色剤、
f)香味剤、
h)懸濁化剤。
【0072】
幾つかの実施形態において、希釈剤は、組成物の35%~90%w/wの量で存在することができる。幾つかの実施形態において、崩壊剤は、組成物の0.5%~10%w/wの量で存在することができる。幾つかの実施形態において、結合剤は、組成物の0.5%~5%w/wの量で存在することができる。幾つかの実施形態において、流動促進剤は、組成物の0.1%~5%w/wの量で存在することができる。幾つかの実施形態において、着色剤、香味剤及び懸濁化剤のそれぞれは、組成物の0.05%~5%w/wの量で存在することができる。
【0073】
さらに別の態様において、本開示は、インビボでカリウムカチオンを吸着するか、又はカリウムカチオンレベルを低下させるための薬剤の製造における、上記のとおりのポリマーもしくはその塩、又は、上記のとおりの医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0074】
本開示のさらに別の態様において、本開示は、高カリウム血症を予防又は治療するための薬剤の製造における、上記のとおりのポリマーもしくはその塩、又は上記の医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0075】
本開示の1つの実施形態によれば、高カリウム血症は、カリウム貯留を引き起こす薬剤の投与によって引き起こされる。
【0076】
カリウム貯留を引き起こす薬剤としては、限定するわけではないが、スピロノラクトン、フルオキセチン、メトプロロール、キニーネ、ロペラミド、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、エフェドリン、アミトリプチリン、イミプラミン、ロキサピン、シンナリジン、アミオダロン、ノルトリプチリン、鉱質コルチコステロイド、プロポフォール、ジギタリス、スクシニルコリン、エプレレノン、α-アドレナリン作動薬、RAAS阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー、βブロッカー、アルドステロン拮抗薬、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、カンレノン、アリスキレン、アルドステロン合成阻害剤、VAP拮抗薬、アミロリド、トリアムテリン、カリウムサプリメント、ヘパリン、非ステロイド性抗炎症薬、ケトコナゾール、トリメトプリム、ペンタミド、カリウム保持性利尿薬、アミロリド、トリアムテレン、アドリアマイシン及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
さらに別の態様において、本開示は、有効量の上記の1つ以上のポリマー又はその塩を投与することを含む、インビボでカリウムカチオンレベルを低下させるための方法、又は、動物の高カリウム血症を予防もしくは治療するための方法をさらに提供する。
【0078】
さらに別の態様において、本開示は、以下の条件のイオンクロマトグラフィーによりポリマーのカリウム結合能を検出する工程を含む、ポリマーのカリウムイオン吸着量を測定する方法をさらに提供する。
クロマトグラフィー用カラム: IonPac CS17 分析カラム (4 x 250 mm)
保護カラム: IonPac CG17 ガードカラム (4 x 50 mm)
流量: 1.0 ml/分
検出器:電気伝導度検出器
カラム温度:30℃
注入量:10μl
溶離液:6mM メタンスルホン酸溶液
運転時間:20分
【0079】
定義及び説明
当業者は、記号*が、モノマー又は同じもしくは異なる架橋剤によって与えられる構造部分にさらに結合できる結合部位を表すことを理解することができる。
【0080】
本明細書における「カリウム」、「カリウムイオン」及び「カリウムカチオン」という用語は、互換的に使用することができ、文脈で相反することが示されない限り、K+を表す。
【0081】
用語「動物」は、本明細書で使用されるときに、ヒト及び他の哺乳動物、例えば霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギなどが含まれ、好ましくはヒトである。本開示は、具体的には、動物の体からカリウムイオンを除去するためのポリマー組成物を提供する。好ましくは、この組成物は、動物の胃腸管からカリウムイオンを除去するために使用されうる。
【0082】
「カリウム結合」、「カリウムイオン吸収」及び「カリウム吸収」という用語は、本明細書で使用されるときに、互換的に使用される。本発明によるカリウム結合性ポリマーは、高いカリウム結合能を有する。本発明によるポリマーのカリウム結合能は、インビトロで測定することができる。好ましくは、本発明によるポリマーのカリウム結合能のインビトロ測定は、胃腸管、特に結腸をシミュレートした生理学的条件下で実施される。特定の実施形態において、本開示のポリマーのカリウム結合能のインビトロ測定は、約5.5以上のpH、例えば6~8のpHを有する溶液中で行われる。様々な実施形態において、約5.5以上のpH、例えば6~8のpHを有する溶液中で測定して、酸の形態における本発明によるポリマーのカリウム結合能は、5mmol/g以上、好ましくは5.5mmol/g以上、より好ましくは6mmol/g以上である。好ましくは、約5.5以上のpHを有する溶液中で測定した、酸の形態の本発明によるポリマーのインビトロカリウム結合能は、5mmol/g~12mmol/g、好ましくは5.5mmol/g~10mmol/g、より好ましくは6mmol/g~8mmol/gである。本発明によるポリマーのインビボカリウム結合能は、酸形態又は塩形態で動物に投与されるかに関わらず、酸形態のポリマーのインビトロカリウム結合能に比例することが見出される。
【0083】
「有効量」又は「有効用量」という用語は、本明細書で使用されるときに、動物に投与したときに、動物のカリウムイオンレベルを実質的に低下させ、それにより、高レベルのカリウムイオンに関連する疾患又は疾患の1つ以上の症状を予防、軽減又は治癒することができ、又は、疾患又はその1つ以上の症状の発症又は進行を遅らせることができる本発明によるポリマーの量を指す。本発明によるポリマーのカリウム結合能が高いほど、その用量は少なくなる。一般に、本発明によるポリマーの有効な治療用量及び予防用量は、約1g/日~約100g/日の範囲である。好ましい用量範囲は、約5g/日~約60g/日である。より好ましい用量範囲は、約15g/日~約50g/日である。1日の投与量は、単回投与してもよいし、又は数回に分けて投与してもよい。例えば、1日量を1日3回又は1日1回で取ってもよい。
【0084】
本発明によるポリマー又はそれを含む組成物は、多量の結合カリウムを保持することができる。このポリマーは胃腸管内でカリウムに結合し、ポリマーが糞便中に排泄される前に結合カリウムを放出しない。ここでいう「多量」とは、結合カリウムをすべて保持できることを示さない。好ましくは、治療効果及び/又は予防効果を達成するために、結合カリウムの少なくとも一部は保持される。結合カリウムの約5%~約100%を保持することが望ましい。好ましくは、ポリマー組成物は結合カリウムの約25%を保持できる。より好ましくは、結合カリウムの約50%が保持されうる。より好ましくは、結合カリウムの約75%が保持されうる。最も好ましくは、結合カリウムの約100%が保持されうる。最適には、結合カリウムの保持期間は、高カリウム血症の効果的な治療及び/又は予防に十分な時間である。
【0085】
本発明のカリウム結合性ポリマーは、胃腸管によって吸収されないことが好ましい。「によって吸収されない」という表現及びその文法上の同義語は、投与されたポリマーが完全に吸収されないことを意味するものではない。特定量のポリマーが吸収されないことが望ましい。好ましくは、ポリマーの約90%以上が吸収されない。より好ましくは、ポリマーの約95%以上が吸収されない。より好ましくは、ポリマーの約97%以上が吸収されない。最も好ましくは、ポリマーの約98%以上が吸収されない。
【0086】
幾つかの実施形態において、本発明によるカリウム結合性ポリマーは、プロトン性又はイオン性の酸性基、例えば、スルホン酸基(-SO3
-)、硫酸基(-OSO3
-)、カルボキシル基(-CO2
-)、ホスホン酸基(-OPO3
2-)、リン酸基(-OPO3
2-)、スルファミン酸基(-NHSO3
-)を含むことができる。
【0087】
ポリマーにホスホン酸基(-OPO3
2-)又はリン酸基 (-OPO3
2-)を与える適切なホスホン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、エチレン-1,1-ビスホスホン酸、ホスホン酸カルボキシレートのエチレン誘導体、オリゴ(メチレンホスホン酸)及びヒドロキシエタン-1,1-ビスホスホン酸が挙げられる。これらのモノマーの合成方法は既知である。
【0088】
ここで使用される好ましいモノマーは2-フルオロアクリレートであり、最も好ましくはメチル2-フルオロアクリレートである。これらのモノマーは、例えば、Waterstone Pharmaceuticals(Hubei)Co.,Ltd.から市販されているか、あるいは、既知の方法、例えば欧州特許第EP415214号明細書に開示されている方法によって調製することもできる。
【0089】
本明細書で値と併せて使用されるときに、「約」という用語は、その値の±20%の範囲に拡張する。例えば、約5%とは、4%~6%の範囲を意味する。好ましくは、値と組み合わせた「約」という語は、その値をその値の±10%又は±5%の範囲に拡張する。
【0090】
「w/w」という表現は、本明細書で使用されるときに、この表現と併せた比率又は百分率が質量基準で示されることを意味する。
【0091】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用されるときに、1~6個の炭素原子(C1-6アルキル)、好ましくは1~3個の炭素原子(C1-3アルキル)を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を指す。アルキルの例としては、限定するわけではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル及びt-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルが挙げられる。
【0092】
「モル分率」という用語は、特定の基準に対する化合物又は構造部分のモル比を意味する。例えば、「モノマーのモル分率が0.85~0.98、架橋剤のモル分率が0.02~0.15、モノマーと架橋剤のモル分率の合計が1」という表現は、モル分率の計算に指定された基準は、モノマーと架橋剤のモルの合計であることを意味し、モノマーのモル分率は、モノマーと架橋剤のモルの合計に対するモノマーのモルの比を意味し、0.85~0.98の範囲であり、同様に、架橋剤のモル分率は、モノマーと架橋剤のモルの合計に対する架橋剤のモルの比を意味し、0.02~0.15の範囲である。
【0093】
本明細書で定義されていない用語は、当該技術分野における通常の意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図面の簡単な説明
本開示の上記及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面と併せて実施形態の説明を読むことにより明らかとなり、容易に理解できるようになるであろう。
【0095】
【
図1】
図1Aは、例3のMFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーのSEMスペクトルであり、
図1Bは、例3のMFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーのXPS結果である。
【0096】
【
図2】
図2は、例14で作製した図であり、例3で調製したLokelma及びMFA-APEナトリウム塩ポリマー(MFA-APE-Na)が正常SDラットの血清K+を低下させ、MFA-APE-Naポリマーの血清カリウム低下効果が2つのポジティブコントロールであるLokelma及びVeltassaの効果よりも優れていたことを示す。
【0097】
【
図3】
図3は、例15で作製した図であり、例3で調製したLokelma及びMFA-APEナトリウム塩ポリマー(MFA-APE-Na)がKClにより誘発される血清K+の増加を低下させたことを示す。
【0098】
【
図4】
図4は、例16で作製した図であり、例3で調製したLokelma及びMFA-APE複合塩ポリマー(MFA-APE-Na-Ca-Fe)が、5/6腎摘出術を行った高カリウムラットモデルにおいて血清K+を低下させたことを示す。
【0099】
【
図5】
図5は、例17で作製した図であり、例5で調製したLokelma及びMFA-APE複合塩ポリマー(MFA-APE-リジン-Ca-Fe)が、5/6腎摘出術を行った高カリウムラットモデルにおいて血清K+を低下させたこと、及び、MFA-APE-リジン-Ca-Feポリマーの血清カリウム低下効果は、投与後14日目のポジティブコントロール(Lokelma)の効果よりも有意に優れていたことを示す。
【実施例】
【0100】
例
本開示は、特定の実施形態を参照して以下に説明される。これらの実施形態は単に説明的なものであり、本開示をいかなる形でも限定するものではないことに留意されたい。
【0101】
以下の略語は、本開示全体を通じて使用される。
【表1】
【0102】
例で使用した架橋剤は表1に示す構造を有する。
【表2】
【0103】
例1
【化51】
精製水(550mL)、NaCl(11.0g)及びPVA(3.4g)を反応フラスコに加え、完全に溶解して透明な溶液が得られるまで20℃~30℃で撹拌することによって溶解した。MFA溶液を以下のように調製した:104.0gのMFA(1.0モル)、12.8gのAPE(0.05モル)及び0.73gのBPO(0.003モル)を撹拌し、完全に溶解して、後で使用するための透明な溶液を提供した。調製したMFA溶液を反応フラスコ内の溶液に加えた。反応フラスコ内の材料の温度を70℃~80℃まで徐々に上昇させ、その後、温度を保持して15時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーによるモニタリングにより、反応が完了したことが示された。20℃~30℃に温度を下げた後、吸引ろ過を行った。フィルタケーキをスラリー化し、水及びエタノールで洗浄した。得られた湿潤生成物を50℃で真空乾燥し、白色固体、すなわち、MFA-APEエステルポリマー97.3gを得た。MFA-APEエステル生成物を、SHIMADZU IRSpirit-T フーリエ変換赤外分光計(FTIR)を使用した赤外分光光度法 (中国薬局方2020第IV巻総則0402)によって特性化した。C=C結合の特徴的な吸収ピークは、MFA-APEエステルポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0104】
反応フラスコに水400mL、EtOH130mL及び水酸化ナトリウム48.0gを加え、次いで、撹拌しながら上記のMFA-APEエステルポリマーを加えた。温度を50℃~60℃に上昇させ、続いて撹拌し、その温度を15時間保持した。温度を20℃~30℃に下げ、次いでろ過を行い、フィルタケーキをスラリー化し、水及びエタノールで洗浄し、ろ過して、湿潤MFA-APEナトリウム塩ポリマーを提供した。
【0105】
反応フラスコに水500mL及び濃塩酸100mLを加え、上記の湿潤MFA-APEナトリウム塩ポリマーを加え、次いで、20℃~30℃で15時間撹拌した。ろ過後に、フィルタケーキを4Lの水で繰り返し洗浄した。ろ過後に得られた湿潤生成物を500mLのエタノールで1回スラリー化した。ろ過後に得られた湿潤生成物を50℃で8時間真空乾燥して、白色の乾燥生成物84.6gを得て、これを破砕し、120メッシュの篩にかけて、MFA-APE酸ポリマー(m=0.95、n=0.05)(MFA-APE-H)を得た。
【0106】
このMFA-APE酸ポリマーのK+吸着量は例13で測定して7.2mmol/gであった。
【0107】
MFA-APE酸ポリマーを示差走査熱量計(DSC)によって測定した。機器モデル: METTLER TOLEDO DSC3示差走査熱量計。分析方法: 中国薬局方2020年版、総則0661熱分析。窒素条件:50mL/分。スキャン手順:30℃から140℃まで10℃/分で昇温し、その後、温度を20℃/分で30℃まで下げた。次に、再び10℃/分で150℃まで昇温し、2回目の加熱曲線を記録した。すべての試薬トレイはアルミニウムである。得られたDSCプロファイルは、酸ポリマーのガラス転移温度(Tg)が139.75℃であることを示した。
【0108】
MFA-APE酸ポリマーを、熱重量分析装置(TGA)によって測定した。機器モデル:TGA 2 示差走査熱量計。分析方法: 中国薬局方2020年版、総則0661熱分析。窒素条件:50mL/分。スキャン手順:30℃から800℃まで10℃/分で昇温する。この曲線に基づいてMFA-APE酸ポリマーの分解温度の値を計算した。すべての試薬トレイは白金である。得られたTGAプロファイルは、最終ポリマーの分解温度が208.90℃であることを示した。
【0109】
例2
【化52】
精製水(550mL)、NaCl(11.0g)及びPVA(3.4 g)を反応フラスコに加え、完全に溶解して透明な溶液になるまで20~30℃で撹拌して溶解した。MFA溶液を以下のように調製した:104.0gのMFA(1.0モル)、14.0gのTAIC(0.056モル)、12.8gのAPE(0.05モル)及び0.73gのBPO(0.003モル)を撹拌し、完全に溶解させ、後で使用する透明な溶液を提供した。調製したMFA溶液を反応フラスコ内の透明な溶液に加えた。反応フラスコ内の材料の温度を70℃~80℃に徐々に上昇させ、その後、温度を保持して15時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーによるモニタリングにより、反応が完了したことが示された。20℃~30℃に温度を下げた後、吸引ろ過を行った。フィルタケーキをスラリー化し、水で3回洗浄した。得られた湿潤生成物を乾燥して、115.2gの白色固体、すなわちMFA-TAIC-APEエステルポリマーを得た。MFA-TAIC-APEエステルポリマーを乾燥させ、例1に記載したようにFTIRによって特性化した。C=C結合の特徴的な吸収ピークは、MFA-TAIC-APEエステルポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0110】
反応フラスコに水400mL、EtOH130mL及び水酸化ナトリウム48.0gを加え、次いで、撹拌しながら上記のMFA-TAIC-APEエステルポリマーを加えた。温度を50℃~60℃に上昇させ、続いて撹拌し、その温度を15時間保持した。温度を20℃~30℃に下げ、次いで、ろ過を行い、フィルタケーキをスラリー化し、水で3回洗浄した。ろ過された湿潤生成物は、MFA-TAIC-APEナトリウム塩ポリマー(MFA-TAIC-APE-Na)であった。
【0111】
反応フラスコに水500mL及び濃塩酸100mLを加え、上記の湿潤MFA-TAIC-APEナトリウム塩ポリマーを加え、次いで、20℃~30℃で15時間撹拌した。ろ過後に、フィルタケーキを4Lの水で繰り返し洗浄した。ろ過後に得られた湿潤生成物を500mLのエタノールで1回スラリー化した。ろ過後に得られた湿潤生成物を50℃で8時間真空乾燥して、白色乾燥生成物85.7gを得て、これを破砕し、120メッシュの篩にかけて、MFA-TAIC-APE酸ポリマー(m=0.90、n=0.05、p=0.05)(MFA-TAIC-APE-H)を得た。
【0112】
例13で測定してこのMFA-TAIC-APE酸ポリマーのK+吸着量は6.6mmol/gであった。
【0113】
このMFA-TAIC-APE酸ポリマーを、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-TAIC-APE酸ポリマーのガラス転移温度が137.90℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-TAIC-APE酸ポリマーの分解温度が192.97℃であることを示した。
【0114】
例3
【化53】
MFA-APEエステルポリマーを、例1と同様の手順を用いて調製した。MFA-APEエステルポリマーを、例1に記載したようにFTIRによって特性化した。ガスクロマトグラフィーモニタリングにより、反応が完了したことが示された。C=C結合の特徴的な吸収ピークは、MFA-APEエステルポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0115】
反応フラスコに水400mL、EtOH130mL及び水酸化ナトリウム48.0gを加え、撹拌しながら上記のMFA-APEエステルポリマーを加えた。温度を50℃~60℃に上昇させ、続いて撹拌し、その温度を15時間保持した。温度を20℃~30℃に下げ、次いで、ろ過を行い、フィルタケーキをスラリー化し、水及びエタノールで洗浄し、ろ過して湿潤MFA-APEナトリウム塩ポリマー(MFA-APE-Na)を提供した。MFA-APEナトリウム塩ポリマーをサンプリングし、例13に記載されるようにカリウム結合測定のために乾燥させて、このMFA-APEナトリウム塩ポリマーのK+吸着量は4.2mmol/gであることが示された。
【0116】
反応フラスコに水500mL及び濃塩酸100mLを加え、上記の湿潤MFA-APEナトリウム塩ポリマーを加え、次いで、20℃~30℃で15時間撹拌した。ろ過後に、フィルタケーキを4Lの水で繰り返し洗浄し、ろ過して、湿潤MFA-APE酸ポリマー(MFA-APE-H)を提供した。
【0117】
例13に記載されるようにカリウム結合測定のためにMFA-APE酸性ポリマーをサンプリングし、乾燥させ、このMFA-APE酸性ポリマーのK+吸着量は7.4mmol/gであることが示された。
【0118】
上記の酸ポリマーに水240mLを加え、10~30℃で撹拌した。FeCl3(0.7g)、Ca(OH)2(18.0g)及びNaOH(9.6g)を混合物にゆっくりと添加し、内部温度を10~30℃の範囲に制御した。混合物を2~5時間撹拌し、次いで混合物をろ過し、湿潤固体を得た。湿潤固体を2Lの水でスラリー化した。ろ過後に、得られたウェットケーキを50℃で8時間真空乾燥し、黄色の乾燥生成物99.0gを得た。これを破砕し、120メッシュの篩にかけて、MFA-APE Na-Ca-Fe複合塩ポリマー(m=0.95、n=0.05)(MFA-APE-Na-Ca-Fe)を得た。
【0119】
例13で測定してこのMFA-APE-Na-Ca-FeポリマーのK+吸着量は2.39mmol/gであった。
【0120】
このMFA-APE-Na-Ca-Feポリマーを、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、最終ポリマーのガラス転移温度が130.82℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、最終ポリマーの分解温度が193.06℃であることを示した。
【0121】
このMFA-APE-Na-Ca-Feポリマーは走査型電子顕微鏡(SEM)によって検出された。分析機器モデル: Quanta 400熱電界放射型走査型電子顕微鏡。分析手順: 走査電子顕微鏡分析手順のJY/T 0584-2020総則。SEMの結果を
図1Aに示した。SEM写真は、MFA-APE-Na-Ca-Feポリマーが規則的な球状構造を有することを示した。
【0122】
MFA-APE-Na-Ca-FeポリマーはX線光電子分光法(XPS)によって検出された。分析方法: X線光電子分光法のGB/T 19500-2004総則。XPSの結果を
図1Bに示した。結果はMFA-APE-Na-Ca-Feポリマーには炭素、酸素、フッ素、カルシウム、ナトリウムが存在することを示した。MFA-APE-Na-Ca-Feポリマーを硫酸溶液で酸性化し、上清を採取し、チオシアン酸カリウム試験溶液を添加すると陽性反応が示され、MFA-APE-Na-Ca-Feポリマーに鉄イオンが存在することが示された。
【0123】
例4
【化54】
例2と同様の手順を用いてMFA-TAIC-APEエステルポリマーを調製した。ガスクロマトグラフィーによるモニタリングにより、反応が完了したことが示された。MFA-TAIC-APEエステルポリマーを、例1に記載したようにFTIRによって特性化した。C=C結合の特徴的な吸収ピークは、MFA-TAIC-APEエステルポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0124】
反応フラスコに水400mL、EtOH130mL及び水酸化ナトリウム48.0gを加え、次いで、撹拌しながらMFA-TAIC-APEエステルポリマーを加えた。温度を50℃~60℃に上昇させ、続いて撹拌し、その温度を15時間保持した。温度を20℃~30℃に下げ、次いで、ろ過を行い、フィルタケーキをスラリー化し、水で3回洗浄した。ろ過された湿潤固体は、MFA-TAIC-APEナトリウム塩ポリマー(MFA-TAIC-APE-Na)であった。
【0125】
反応フラスコに水500mL及び濃塩酸100mLを加え、上記のMFA-TAIC-APEナトリウム塩ポリマーを加え、20℃~30℃で15時間撹拌した。ろ過後に、フィルタケーキを4Lの水で繰り返し洗浄し、ろ過して、MFA-TAIC-APE酸ポリマー(MFA-TAIC-APE-H)を提供した。
【0126】
得られた湿潤MFA-TAIC-APE酸ポリマーに水240mLを加え、10~30℃で撹拌した。0.7gのFeCl3、18.0gのCa(OH)2及び9.6gのNaOHを、内部温度を10~30℃の範囲にしながら混合物にゆっくりと添加した。混合物を2~5時間撹拌し、次いでろ過して湿潤固体を提供した。湿潤固体を2Lの水でスラリー化した。ろ過後に、得られたウェットケーキを50℃で8時間真空乾燥して、黄色の乾燥生成物102.5gを得て、これを破砕し、120メッシュの篩にかけて、MFA-TAIC-APE Na-Ca-Fe複合塩ポリマー(m=0.90、n=0.05、p=0.05)(MFA-TAIC-APE-Na-Ca-Fe)を得た。
【0127】
例5
【化55】
MFA-APE酸ポリマーは、例1と同様の手順を使用して調製した。MFA-APE酸ポリマーは、例1に記載したようにFTIRによって特性化した。C=C結合の特徴的な吸収ピークは、MFA-APE酸ポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0128】
240mLの水を湿潤MFA-APE酸ポリマーに加え、10~30℃で撹拌した。FeCl3(0.7g)、Ca(OH)2(15.0g)及びL-リジン(23.7g)を、内部温度を10~30℃の範囲にしながら混合物にゆっくりと加えた。混合物を2~5時間撹拌し、次いでろ過して湿潤固体を提供した。湿潤固体を2Lの水でスラリー化した。ろ過後に、得られたウェットケーキを50℃で8時間真空乾燥して、淡赤色乾燥生成物109.3gを得た。これを破砕し、120メッシュの篩にかけて、MFA-APE Lys-Ca-Fe複合塩ポリマー(m=0.95、n=0.05)(MFA-APE-Lys-Ca-Fe)を得た。
【0129】
このMFA-APE-Lys-Ca-Fe塩ポリマーのK+吸着量は、例13で測定して2.95mmol/gであった。
【0130】
このMFA-APE-Lys-Ca-Fe塩ポリマーを、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、ポリマーのガラス転移温度が144.52℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、ポリマーの分解温度が194.38℃であることを示した。
【0131】
例6~9
例6~9を例1と同様の手順で実施して、MFA-APE酸ポリマーを提供した。次いで、例3と同様の手順を用いて塩ポリマーを調製した。C=C結合の特徴的な吸収ピークはこれらのMFA-APE酸ポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0132】
例6において、MFA及びAPEの量は1.0モル及び0.25モルであり、MFA及びAPEのモル分率0.80:0.20(m:n=0.80:0.20)に相当する。例13で測定してMFA-APE酸ポリマーのK+吸着量は5.5mmol/gであった。このMFA-APE酸ポリマーを、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーのガラス転移温度が164.25℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーの分解温度が196.51℃であることを示した。例13で測定して、MFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーのK+吸着量は2.6mmol/gであった。このMFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーは、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーのガラス転移温度が166.65℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーの分解温度が181.09℃であることを示した。
【0133】
例7において、MFA及びAPEの量は1.0モル及び0.12モルであって、MFA及びAPEのモル分率0.89:0.11(m:n=0.89:0.11)に相当する。例13で測定して、MFA-APE酸ポリマーのK+吸着量は6.6mmol/gであった。このMFA-APE酸ポリマーを例1に記載したようにDSC及びTGAで検出した。得られたDSCプロファイルは、酸ポリマーのガラス転移温度が134.94℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、このポリマーの分解温度が211.67℃であることを示した。例13で測定して、MFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーのK+吸着量は2.8mmol/gであった。このMFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーは、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーのガラス転移温度が146.51℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-APE-Na-Ca-Fe塩ポリマーの分解温度が191.81℃であることを示した。
【0134】
例8において、MFA及びAPEの量は1.0モル及び0.02モルであり、MFAAPEのモル分率0.98:0.02(m:n=0.98:0.02)に相当する。例13で測定して、MFA-APE酸ポリマーのK+吸着量は7.6mmol/gであった。このMFA-APE酸ポリマーを、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーのガラス転移温度が140.17℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーの分解温度が209.85℃であることを示した。
【0135】
例9において、MFA及びAPEの量は0.5モル及び0.5モルであり、MFA及びAPEのモル分率0.50:0.50(m:n=0.50:0.50)に相当する。例13で測定して、MFA-APE酸ポリマーのK+吸着量は3.2mmol/gであった。この最終生成物を、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーのガラス転移温度が106.01℃でることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーの分解温度が198.09℃であることを示した。
【0136】
例10
精製水(550mL)、PEG600(4.6g)及びNaCl(11.0g)を反応フラスコに加え、混合物が完全に溶解するまで20℃~30℃で撹拌した。MFA溶液を以下のように調製した:MFA(104.0g、1.0モル)、APE(12.8g、0.05モル)及びBPO(0.73g、0.003モル)を撹拌し、後の使用のために完全に溶解した。調製したMFA溶液を反応フラスコに加えた。温度を徐々に70~75℃まで上昇させ、反応物を15時間撹拌した。フラスコ内にバルク固体が形成された。反応混合物のろ過後に、123gのウェットケーキを得て、50℃で乾燥させて、90.4gの白色固体を得た。このMFA-APEエステルポリマーは不均一で硬く、不規則で塊状であった。
【0137】
例11
精製水(550mL)、NaCl(11.0g)及びPVA(4.6g)を反応フラスコに加え、混合物が完全に溶解するまで50℃~60℃で撹拌した。MFA溶液を以下のように調製した。MFA(104.0g、1.0モル)、APE(12.8g、0.05モル)及びBPO(0.73g、0.003モル)を撹拌し、後の使用のために完全に溶解した。調製したMFA溶液を反応フラスコに加えた。温度を55~59℃まで徐々に上昇させ、混合物を55~59℃で15~20時間撹拌した。固体は沈殿しなかった。追加量のBPO(0.73g、0.003モル)を反応混合物に投入し、温度を60℃以上に上昇させたところ、幾らかの白色固体が沈殿した。温度を維持し、混合物を15~20時間撹拌した。反応物をろ過し、得られた固体を水及びEtOHでスラリーにして、88.5gの湿潤MFA-APEエステルポリマーを提供した。MFA-APEエステルポリマーを例1に記載したようにFTIRにより特性化した。C=C結合の特徴的な吸収ピークは、このMFA-APEエステルポリマーのフーリエ変換赤外分光計(FTIR)で観察されなかった。
【0138】
水(270mL)、EtOH(90mL)及び調製した湿潤MFA-APEエステルポリマー71gをフラスコに加えた。水酸化ナトリウム(40g)を反応フラスコに加え、温度を60~65℃に上昇させた。混合物を60~65℃で20~24時間撹拌した。温度を20℃~30℃に下げ、混合物をろ過し、水で洗浄して、MFA-APE-Na塩ポリマーを提供した。
【0139】
MFA-APE-Na塩ポリマーを濃HCl中で撹拌した。それを水で2倍に希釈し、ろ過し、水で洗浄して120gの湿潤MFA-APE酸ポリマーを提供し、これを50~60℃で乾燥して46.7gのMFA-APE酸ポリマーを提供した。
【0140】
例13で測定して、MFA-APE酸ポリマーのK+吸着量は7.2mmol/gであった。このMFA-APE酸ポリマーを、例1に記載したようにDSC及びTGAによって検出した。得られたDSCプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーのガラス転移温度が138.64℃であることを示した。得られたTGAプロファイルは、MFA-APE酸ポリマーの分解温度が210.32℃であることを示した。
【0141】
【0142】
精製水(570mL)、NaCl(11.4g)及びPVA(4.6g)を反応フラスコに加え、完全に溶解するまで50℃~60℃で撹拌して溶解した。MFA溶液を以下のように調製した:MFA(104.1g、1.0モル)、TMPTA(14.8g、0.05モル)及びBPO(0.73g、0.003モル)を撹拌し、完全に溶解した。調製したMFA溶液を反応フラスコに加えた。反応フラスコ内の材料の温度を70℃~75℃まで徐々に上昇させた。混合物を70~75℃で15時間撹拌した。温度を20~30℃に下げ、反応混合物をろ過した。フィルタケーキを水で2回、そしてEtOHで1回、連続してスラリー化した。ろ過により、MFA-TMPTAエステルポリマーである白色固体のウェットケーキ85.6gを提供した。
【0143】
水(270mL)、EtOH(90mL)及び66.0gの湿潤MFA-TMPTAエステルポリマーを反応フラスコに加えた。水酸化ナトリウム(40g)をフラスコに加えた。反応混合物を60~65℃で20時間撹拌した。温度を20~30℃に下げ、次いで、ろ過を行った。得られたフィルタケーキはゲル状であった。GCMSによる検出により、分解生成物であるトリメチロールプロパンの存在が示された。ケーキを水で洗浄したときに溶解した。混合物を濃縮し、EtOHを添加して、黄色固体が沈殿した。沈殿物をろ去し、EtOHで洗浄し、乾燥させて、23.0gの黄色の層状固体を提供した。固体の水への溶解度は>1mg/mLであった。
【0144】
例13
カリウム緩衝液:カリウム緩衝液は、150mmol/Lのカリウム及び200mmol/Lの2-[モルホリノ]エタンスルホン酸から構成され、pHは6.0~8.0であった。
【0145】
標準グラフ:5つの100mlメスフラスコを番号1、2、3、4及び5で識別する。この順序で、1、3、6、8及び10mLのカリウム緩衝液をピペットでフラスコに加え、水で定容するまで希釈し、そして混合する。メスフラスコ1、2、3、4及び5についてイオンクロマトグラフィー検出を行い、カリウムイオンのピーク面積を記録する。罫線座標紙上に、観察されたピーク面積を縦軸としてプロットし、カリウムの濃度(ミリモル/リットル単位)を横軸としてプロットする。
【0146】
試験サンプル溶液:約1.6gのポリマーを取り、250ml三角フラスコに入れ、100mlのカリウム緩衝液を加え、37℃±2℃のウォータバスに入れ、磁石で24時間撹拌し、均一に振盪し、サンプリングし(推奨に応じて15分、3時間、5時間又は24時間)、ろ過し、ろ液1.0mlをピペットで正確に100mlメスフラスコに移し、水で標線まで希釈する。
【0147】
イオンクロマトグラフィーで試験サンプル溶液を分析し、カリウムイオンのピーク面積を記録し、標準グラフから内挿してカリウム濃度をミリモル/リットル単位で決定する。樹脂に吸着したカリウムイオンの吸着量(mmol/g)を次の式で計算する。
ポリマーのカリウムイオン吸着量=(X-2.5Y)/W
(上式中、Xは交換前のカリウム溶液100mL中のカリウムの重量(mmol)であり、Yは、標準グラフから内挿された1L当たりのカリウムの重量(mmol)であり、そしてWは、無水ベースで表示した、採取されたポリマーの重量(g)である。
【0148】
クロマトグラフィー条件を以下の表2に示す。
【表3】
【0149】
結果及び分析
例におけるポリマーのカリウム吸収能を下記の表3に示した。
【表4-1】
【表4-2】
【0150】
例14
24匹の正常な雄SDラット(6~8週、190~210g、湖北省実験動物研究センター)を3~5日間適応して飼育した後に、無作為に4つの群、すなわちブランクコントロール群、ポジティブコントロール群1(Lokelma)、ポジティブコントロール群2(Veltassa)、試験品群(例3で調製したMFA-APE-Na)に分け、各群は6匹のラットを含んだ。各群の動物に、10ml/kgの体積に従って単回用量でビヒクル又は薬物を経口投与した。より具体的には、ブランクコントロール群の動物を10ml/kgの生理食塩水で処理し、ポジティブコントロール群1を同体積の生理食塩水中1.8g/kgのLokelmaで処理し、ポジティブコントロール群2を同体積の生理食塩水中3.5g/kgのVeltassaで処理し、試験品群を同体積の生理食塩水中1.8g/kgのMFA-APE-Naで処理した。投与の6時間後に、頸静脈から血液を採取した。血液サンプルを遠心分離し、上清を採取して血清カリウム濃度を検出した。
【0151】
結果は以下のことを示した。
図2に示されるように、(1)ブランクコントロール群と比較して、試験品群(MFA-APE-Na)の血清K+レベルは投与後6時間で有意に低下した(P<0.01)、(2)試験品(例3で調製したMFA-APE-Na)のカリウム低下効果は、Lokelma(P<0.01)及びVeltassa(P<0.001)のカリウム低下効果よりも有意に良好であった、(3)試験品群におけるベースラインからの血清K+レベルの変化は有意に低かった(P<0.05)、(4)試験品(例3で調製したMFA-APE-Na)のカリウム低下効果は、Lokelma(P<0.05)及びVeltassa(P<0.05)のカリウム低下効果よりも有意に良好であった。
【0152】
例15
18匹の正常な雄SDラット(6~8週、190~210g、湖北省実験動物研究センター)を3~5日間適応して飼育し、その後、ランダムに3つの群、すなわちモデル群、ポジティブコントロール群(Lokelma)、試験品群(例3で調製したMFA-APE-Na)に分け、各群は6匹のラットを含んだ。各群の動物に、10ml/kgの体積に従って単回用量でビヒクル又は薬物を経口投与した。モデル群のラットを10ml/kgの体積の生理食塩水で処理した。ポジティブコントロール群のラットを同体積の生理食塩水中1.8g/kgのLokelmaで処理した。試験品群のラットを同体積の生理食塩水中1.8g/kgのMFA-APE-Naで処理した。投与3時間後に10%KCl溶液を腹腔内注射し、次いで投与4、5及び6時間後に5%KCl溶液を腹腔内注射した。10%及び5%KCl溶液の腹腔内注射体積は4ml/kgであった。血液サンプルを、投与前(0時間)及び投与後3.5時間、4.5時間、及び6.5時間で頚静脈から採取した。血液サンプルを遠心分離し、上清を採取して血清カリウム濃度を検出した。
【0153】
結果は、以下のことを示した。
図3に示されるように、投与後4.5時間及び 6.5時間で、モデル群と比較して、試験品群(例3で調製したMFA-APE-Na)及びポジティブコントロール群(Lokelma)の血清カリウム濃度が低下し、統計学的有意差があった(P<0.05)。
【0154】
例16
24匹の正常な雄SDラット(生後6~8週、200~250g、浙江バイタルリバー実験動物技術有限公司)を3~5日間適応して飼育し、その後ランダムに5つの群、すなわち、正常群、モデル群、ポジティブコントロール群(Lokelma)、試験品群(例3で調製したMFA-APE-Na-Ca-Fe)に分け、各群は6匹のラットを含んだ。正常群を除いて、他の動物は次のようにモデル化された。最初に左腎の3分の2(上下の腎臓の3分の1)を除去し、1週間後に右腎全体を除去し、5/6腎摘出ラットモデルを得た。従来食を2週間続けた後に、アドリアマイシンを単回静脈内注射し(3.5mg/kg)、すぐにトリメトプリム(300mg/kg胃内、1日4回)及びキナプリル(30mg/L、水に添加)を投与した。各群の動物に、20ml/kgの体積に従って単回用量でビヒクル又は薬剤を経口投与した。正常群及びモデル群のラットを20ml/kgの体積のビヒクル(0.1%キサンタンガム)で処理し、ポジティブコントロールを同体積のビヒクル中2g/kgのLokelmaで処理し、試験品群を同体積のビヒクル中2g/kgの例3のMFA-APE-Na-Ca-Feで処理した。経口投与を1日1回、2週間行った。アドリアマイシン注射の5日前と、アドリアマイシン注射の7日後及び14日後に、すべてのラットの血液を頸静脈から採取した。血液サンプルを遠心分離し、上清を採取して血清カリウム濃度を検出した。
【0155】
結果は以下のことを示した。モデル群と比較して、投与後7日目及び14日目において、試験品群(例3で調製したMFA-APE-Na-Ca-Fe)の血清カリウム濃度が
図4に示されているように、有意に低下した(それぞれP<0.001、P<0.01)。
【0156】
例17
24匹の正常な雄SDラット(6~8週、200~250g、浙江バイタルリバー研究所動物技術有限公司)を3~5日間適応して飼育し、その後ランダムに4つの群、正常群、モデル群、ポジティブコントロール群(Lokelma)、試験品群(例5で調製したMFA-APE-リジン-Ca-Fe)に分け、各群は6匹のラットを含んだ。正常群を除いて、他の動物は次のようにモデル化した。最初に左腎の3分の2(上下の腎臓の3分の1)を除去し、11週間後に右腎全体を除去して5/6腎摘出ラットモデルを得た。従来食を2週間摂取した後に、アドリアマイシンを静脈内注射し(3.5mg/kg)、直ちにトリメトプリム(300mg/kg胃内)及びキナプリル(30mg/L、水に添加)を投与した。各群の動物に、20ml/kgの体積に従って単回用量でビヒクル又は薬剤を経口投与した。正常群及びモデル群のラットを20ml/kgの体積のビヒクル(0.1%キサンタンガム)で処理し、ポジティブコントロール群を同体積のビヒクル中2g/kgのLokelmaで処理し、試験品群を同体積のビヒクル中2g/kgの例5のMFA-APE-リジン-Ca-Feで処理した。経口投与を1日1回2週間行った。アドリアマイシン注射の5日前と、アドリアマイシン注射の7日後及び14日後に、すべてのラットの血液を頸静脈から採取した。血液サンプルを遠心分離し、上清を採取して血清カリウム濃度を検出した。
【0157】
結果は以下のことを示した。
図5に示されるように、投与後7日目及び14日目におけるモデル群と比較して、試験品群(MFA-APE-リジン-Ca-Fe)及びポジティブコントロール群 (Lokelma)の血清カリウム濃度が有意に減少し(P<0.01又はP<0.001)、投与後14日目の試験品(MFA-APE-リジン-Ca-Fe)のカリウム低下効果は、ポジティブコントロール(Lokelma)のカリウム低下効果よりも有意に良好であった。
【0158】
本明細書において、「実施形態」、「幾つかの実施形態」、「例」、「具体例」又は「幾つかの例」などの用語を参照した記載は、実施形態又は例に関して説明した特定の特徴、構造、材料又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語は例示的なものであり、必ずしも同じ実施形態又は例を指すものではない。さらに、記載された特定の特徴、構造、材料又は特性は、任意の1つ以上の実施形態又は例において適切な方法で組み合わせることができる。さらに、当業者は、異なる実施形態又は例、及び本明細書に記載される異なる実施形態又は例の特徴を、互いに矛盾することなく組み合わせることができる。
【0159】
以上、本開示の実施形態を図示し説明したが、上述の実施形態は例示であり、本開示を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者は、本開示の範囲内で、上述の実施形態に変更、修正、置換及び変形を加えることができる。
【国際調査報告】