(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ボツリヌス毒素を含む安定した液状製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20241112BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20241112BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20241112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241112BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P25/02
A61P25/06
A61P17/00
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577144
(86)(22)【出願日】2023-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2023016817
(87)【国際公開番号】W WO2024091049
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0141776
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523466329
【氏名又は名称】ファルマ リサーチ バイオ シーオー・,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】PHARMA RESEARCH BIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンハン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ-キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン-グン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チェ-ユブ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン,ドン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジュン ウォク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC10
4C076CC18
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE41
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA04
4C084DA33
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA10
4C084ZA08
4C084ZA20
4C084ZA30
(57)【要約】
本発明は、ボツリヌス毒素及びプロリンを含む液状製剤並びにその製造方法、その用途に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボツリヌス毒素及びプロリンを含む液状製剤。
【請求項2】
前記ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素A型である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項3】
前記プロリンは、全体液状製剤を基準として0.01~0.5%(w/v)で含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項4】
前記液状製剤は、スクロースをさらに含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項5】
前記スクロースは、全体液状製剤を基準として0.5~20%(w/v)で含む、請求項4に記載の液状製剤。
【請求項6】
前記液状製剤は、アルブミン(Albumin)をさらに含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項7】
前記アルブミンは、組換えアルブミンである、請求項6に記載の液状製剤。
【請求項8】
前記アルブミンは、全体液状製剤を基準として0.01~1%(w/v)で含む、請求項6に記載の液状製剤。
【請求項9】
前記液状製剤は、非イオン性界面活性剤及び等張化剤をさらに含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤はポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びポリソルベート100からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項9に記載の液状製剤。
【請求項11】
前記液状製剤は、0.005~0.1%(w/v)の濃度で非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項12】
前記等張化剤は、塩化ナトリウム、グリセリン、塩化カリウム、及びデキストロースからなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項9に記載の液状製剤。
【請求項13】
前記液状製剤は
100Unit/mlのボツリヌス毒素、及び
0.01~0.5%(w/v)のプロリンを含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項14】
前記液状製剤は
100Unit/mlのボツリヌス毒素、
0.01~0.5%(w/v)のプロリン、及び
0.01~1%(w/v)のアルブミンを含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項15】
前記液状製剤は
100Unit/mlのボツリヌス毒素、
0.01~0.5%(w/v)のプロリン、及び
0.5~20%(w/v)のスクロースを含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項16】
前記液状製剤は
100Unit/mlのボツリヌス毒素、
0.01~0.5%(w/v)のプロリン、
0.01~1%(w/v)のアルブミン、及び
0.5~20%(w/v)のスクロースを含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項17】
ボツリヌス毒素及びプロリンを含む液状製剤を利用してボツリヌス毒素を安定化させる方法。
【請求項18】
前記液状製剤にアルブミン、スクロースまたはその両方をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボツリヌス毒素及びプロリンを含む液状製剤並びにその製造方法、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ボツリヌス毒素は、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)のようなバクテリアにより生産される神経毒素タンパク質の一種であり、シナプス前神経末端に非可逆的に付着して神経接合部にアセチルコリンの分泌を抑制することにより筋肉の収縮を遮断し、二次的に筋肉の弛緩効果を示す作用をする。このような機能により、ボツリヌス毒素は1989年に米国FDA承認後、治療または美容目的として用いられている(KR 10-2010-0107475 A,KR 10-2008-0049152 Aなど)。
【0003】
治療目的には、斜視(strabismus)、斜頸(torticollis)または眼瞼痙攣(blepharospasm)のような神経筋肉疾患に、美容目的にはシワ、しかめっ面シワの除去及び四角い顎の治療、多汗症(hyperhidrosis)または片頭痛(migraine)の治療に注射剤として用いられている。副作用には、嚥下困難(dysphagia)、変声(voice change)、口腔乾燥(dry mouth)及びかすみ目(blurred vision)などのような事例が報告されたが、まだボツリヌス毒素による直接的な死亡事故がなく適切に使用すると、非常に安全な薬品として評価されている。
【0004】
ただし、ボツリヌス毒素のようなタンパク質製剤の場合、薬剤化の過程に多くの問題が発生する。これは、タンパク質の不安定性に起因してボツリヌス毒素のように極めて低濃度で薬剤化が行われるタンパク質製剤の場合、その問題が深刻である。
【0005】
従来の商業用ボツリヌス毒素製剤は、タンパク質の安全性を高めるために、凍結乾燥されたり真空乾燥された乾燥粉末の形態で製造されている。しかしながら、凍結乾燥などの方法で製造された乾燥粉末剤形の場合、使用時に再水和過程を経なければならないため、使用上の不便があるだけでなく、再水和過程で希釈過程のエラーなどにより投与されるボツリヌス毒素量の偏差、特に、活性の側面における偏差などが発生する問題があり、使用者の便宜性及び再水和過程におけるエラーを最小化できる液状製剤に対する需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】KR 10-2010-0107475 A
【特許文献2】KR 10-2008-0049152 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
まだボツリヌス毒素の活性を長く維持しながら長期間保管できる安定した液状製剤の開発が不備であるため、新たな組成のボツリヌス毒素を含む液状製剤の開発が依然として要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの目的は、ボツリヌス毒素及びプロリンを含む液状製剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記液状製剤を製造する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、上記液状製剤を利用してボツリヌス毒素を安定化させる方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるボツリヌス毒素の液状製剤は、再水和過程を経る必要なしに直ちに使用可能な形態であるため、使用者の便宜性が向上するだけでなく、再水和過程における希釈エラーなどによるボツリヌス毒素の活性偏差などを減少させることができ、定量投与が可能である。それだけでなく、液状状態における保存安定性に優れ、常温または冷蔵条件でも長期間ボツリヌス毒素の活性が維持される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】賦形剤の種類別残存力価を評価した結果を示したものである。
【
図2】賦形剤及び二糖類の組み合わせによる残存力価を評価した結果を示したものである。
【
図3】プロリン及びスクロースの濃度別の残存力価を評価した結果を示したものである。
【
図4】賦形剤及びアルブミンの組み合わせにともなう残存力価を評価した結果を示したものである。
【
図5】賦形剤、二糖類及びアルブミンの組み合わせによる残存力価を評価した結果を示したものである。
【
図6】アルブミンが含まれた液状製剤にプロリン及びスクロースの濃度別の残存力価を評価した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用できる。即ち、本発明で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本発明の範囲が制限されることはない。
【0014】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験だけを用いて本発明に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知または確認することができる。また、このような等価物は本発明に含まれることが意図される。
【0015】
本発明を実現する一つの様態は、ボツリヌス毒素及びプロリンを含む液状製剤を提供する。
【0016】
具体的には、上記液状製剤は、ボツリヌス毒素、及びプロリンを含むことを特徴としたり;ボツリヌス毒素、スクロース、及びプロリンを含むことを特徴としたり;ボツリヌス毒素、アルブミン、及びプロリンを含むことを特徴としたり;ボツリヌス毒素、スクロース、アルブミン、及びプロリンを含むことを特徴とすることができるが、これに限定されない。また、本発明の液状製剤は、等張化剤、非イオン性界面活性剤、緩衝剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0017】
本発明において用語「液状製剤」とは、医薬品の形態を液状に製剤化した薬物を意味し、これは、液状の内用製剤及び外用製剤をすべて含む。
【0018】
本発明の液状製剤は、薬理効果を示すボツリヌス毒素が液状に製剤化される時、これを一定期間安定に維持及び/又は貯蔵させる物質を含む。上記液状製剤の薬理効果を示すボツリヌス毒素以外に含まれる成分は安定化剤と混用され得る。本発明において用語「安定化剤」とは、製剤中で有効成分などの構成成分を一定期間安定に維持させる物質をいう。
【0019】
本発明の液状製剤は、長期間保存にもボツリヌス毒素の薬理効果が長く維持されるように安定化できる安定化剤の組成を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明において、用語「ボツリヌス毒素(Botulinum toxin)」は「クロストリジウム・ボツリヌム毒素」とも称され、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)由来タンパク質の一種であり、シナプス前神経末端に非可逆的に付着して神経接合部にアセチルコリンの分泌を抑制することにより筋肉の収縮を遮断し、二次的に筋肉の弛緩効果を示す作用をするタンパク質を指す。
【0021】
ボツリヌス毒素タンパク質は、約150kDの分子量を有し、血清学的特徴によりAからGまでの7種類に分かれる。ボツリヌス毒素A型は、ヒトに対して知られた最も致命的な天然物質であり、血清型A以外にも、6種類の他の一般に免疫学的に相違したボツリヌス毒素、即ち、ボツリヌス毒素血清型B、C、D、E、F、及びGが存在する。相違した血清型は、型特異的抗体による中和により識別することができ、これらが誘発する麻痺の重症度及びこれらが最も影響を及ぼす動物種は相違する。
【0022】
ボツリヌス毒素分子の分子量は、既知のボツリヌス毒素血清型7種類の全てにおいて約150kDである。一方、クロストリジウム系バクテリアによりボツリヌス毒素は、関連した非毒素タンパク質と共に150kDボツリヌス毒素タンパク質分子を含む複合体として放出される。したがって、ボツリヌス毒素タイプA複合体は、クロストリジウム系バクテリアにより、900kD、500kD及び300kD型として生成され得る。ボツリヌス毒素タイプB及びCは500kD複合体であり、ボツリヌス毒素タイプDは、300kD及び500kD複合体として生成され得る。ボツリヌス毒素タイプE及びFは、約300kD複合体として生成され得る。その複合体(即ち、分子量が約150kDより大きいもの)は、非毒性赤血球凝集素タンパク質及び非毒素及び非毒性非赤血球凝集素タンパク質を含むものと考えられる。
【0023】
ボツリヌス毒素は、約150kDの純粋神経毒素成分と共に非毒素タンパク質を含む高分子量の複合体の形態を含む。したがって、複合体化された形態は、ボツリヌス神経毒素タンパク質及び一つまたはそれ以上の非毒素ヘマグルチニンタンパク質及び/又は一つまたはそれ以上の非毒素非ヘマグルチニンタンパク質を含むことができる。具体的には、ボツリヌス毒素複合体タンパク質は、ボツリヌス神経毒素(BoNT;Botulinum neurotoxin)、非毒性非ヘマグルチニン(NTNH;nontoxic nonhemagglutinin)、及びヘマグルチニン(HA)タンパク質の複合体であってもよい。上記複合体の分子量は、約150kDより大きくてもよい。例えば、ボツリヌス毒素A型の複合体化された形態は、約900kD、約500kDまたは約300kDの分子量を有することができる。本発明のクロストリジウム・ボツリヌム毒素複合体の精製方法は、上記多様な複合体を精製することができる。
【0024】
一つの具体例として、本発明のボツリヌス毒素はA型毒素であってもよい。
【0025】
前述した具現例のいずれか一つの具体例として、本発明のボツリヌス毒素は、非毒性タンパク質と結合した複合体の形態であってもよい。具体的には、本発明のボツリヌス毒素複合体タンパク質は、ボツリヌス毒素(BoNT;Botulinum neurotoxin)、非毒性非ヘマグルチニン(NTNH;nontoxic nonhemagglutinin)、及びヘマグルチニン(HA:hemagglutinin)タンパク質の複合体であってもよい。より具体的には、本発明のボツリヌス毒素複合体タンパク質は、BoNT、NTNH、HA70(hemagglutinin 70)、HA33(hemagglutinin 33)及びHA17(hemagglutinin 17)の複合体であってもよい。より具体的には、上記HA70はHA20(hemagglutinin 20)とHA50(hemagglutinin 50)に分けられたり、上記BoNTは約50kDの軽鎖(LC:Light chain)と約100kDの重鎖(HC:Heavy chain)に分けられる。しかし、これに限定されない。
【0026】
前述した具体例のいずれか一つの具体例として、本発明のボツリヌス毒素複合体タンパク質は、150kD超過の分子量を有するものであってもよい。具体的には、約250kD~1400kDの分子量を有してもよく、より具体的には、280kD~1300kD、300kD~1200kD、700kD~1100kD、800kD~1000kD、または約900kDの分子量を有してもよいが、これに限定されない。
【0027】
本発明のボツリヌス毒素は、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)培養液から得られたものであるか、商業的に得られたものをいずれも含むことができ、上記ボツリヌス毒素は、最終的に、100unit/mlになるように含まれてもよいが、これに限定されない。
【0028】
本発明において、用語「プロリン(proline)」はアミノ酸の一つであり、本発明の目的上、ボツリヌス毒素の薬理効果が長く維持されるのに役立つ。
【0029】
本発明の液状製剤は、上記プロリンを約0.01~0.5%(w/v)、約0.05~0.5%(w/v)、約0.1~0.5%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、または約0.5%(w/v)の濃度で含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0030】
一例として、本発明の液状製剤は、多様な賦形剤中にプロリンを添加した時、ボツリヌス毒素の活性維持効果に最も優れることを確認した。
【0031】
本発明による液状製剤は、スクロースをさらに含んでもよいが、これに限定されない。上記スクロースは、液状製剤内のボツリヌス毒素の安定性を増大させることができる。
【0032】
本発明の液状製剤は、上記スクロースを約0.5~20%(w/v)、約0.5~15%(w/v)、約0.5~10%(w/v)、約0.5~8 %(w/v)、約0.5~5 %(w/v)、約0.5~4 %(w/v)、約1~20%(w/v)、約1~15%(w/v)、約1~10%(w/v)、約1~8%(w/v)、約1~6%(w/v)または約0.0 %(w/v)、約1.0 %(w/v)、約2.0 %(w/v)、約3.0 %(w/v)、約4.0 %(w/v)、約5.0 %(w/v)、約6.0 %(w/v)または約8.0 %(w/v)の濃度で存在してもよいが、特に、これに限定されない。
【0033】
一例として、本発明の液状製剤は、プロリンにスクロースをさらに添加する場合に、37℃の加速条件で10週間90%以上の残存力価を示すことを確認した。これは、ボツリヌス毒素を含む液状製剤にプロリン及びスクロースの組み合わせが安定化剤としてボツリヌス毒素を液状製剤で力価の減少なしに長期間保存できることを示唆するものである。
【0034】
本発明による液状製剤は、アルブミン(albumin)をさらに含むことができる。上記アルブミンはタンパク質の一種であり、特に、金属イオン、薬物及び異種生物をはじめとする多様な物質を運搬する血漿タンパク質として知られており、培養環境のpH調節及び浸透圧維持に関連していることが知られている。本発明において上記アルブミンは、これに限定されるものではないが、ヒトの血漿や血清などから抽出して得られるHuman Serum Albumin(HSA)か、組換えして製造したRecombinant Human Serum Albumin(rHSA)を使用してもよく、具体的には、上記アルブミンは、動物由来HSAまたは植物由来組換えHSAが用いられてもよいが、これに限定されない。組換えアルブミンの場合、血液媒介汚染物質が含まれず、定義された物質のみを利用できるところ、免疫原性が低い利点を有する。
【0035】
本発明の液状製剤は、上記アルブミンを約0.01~1%(w/v)、約0.05~1%(w/v)、約0.1~1%(w/v)、約0.1~0.8%(w/v)、約0.2~0.7%(w/v)、約0.3~0.6%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.5%(w/v)、または約0.6%(w/v)の濃度で含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0036】
本発明による液状製剤の具体的な例示として、ボツリヌス毒素及びプロリンを含むものであってもよく、より具体的な例示としては、100Unit/mlのボツリヌス毒素及び0.01~0.5%(w/v)のプロリンを含む液状製剤が挙げられる。
【0037】
本発明による液状製剤は、スクロースをさらに含むものであってもよい。具体的な例示として、ボツリヌス毒素、スクロース、及びプロリンを含むものであってもよく、より具体的な例示としては、100Unit/mlのボツリヌス毒素、0.5~20%(w/v)のスクロース、及び0.01~0.5%(w/v)のプロリンを含む液状製剤が挙げられる。
【0038】
本発明による液状製剤は、アルブミンをさらに含むものであってもよい。具体的な例示として、ボツリヌス毒素、アルブミン、及びプロリンを含むものであってもよく、より具体的な例示としては、100Unit/mlのボツリヌス毒素、0.01~1%(w/v)のアルブミン、及び0.01~0.5%(w/v)のプロリンを含む液状製剤が挙げられる。
【0039】
また他の具体的な例示としてボツリヌス毒素、スクロース、アルブミン、及びプロリンを含むものであってもよく、より具体的な例示としては、100Unit/mlのボツリヌス毒素、0.5~20%(w/v)のスクロース、0.01~1%(w/v)のアルブミン、及び0.01~0.5%(w/v)のプロリンを含む液状製剤が挙げられるが、本発明の液状製剤は、上記例示に限定されない。
【0040】
本発明の液状製剤は、非イオン性界面活性剤及び/又は等張化剤をさらに含んでもよい。
【0041】
上記非イオン性界面活性剤は、タンパク質溶液の表面張力を低くして疎水性表面にタンパク質が吸着または凝集することを防止することができる。
【0042】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤の具体的な例としては、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート);上記ポリオキシエチレンの後の数値(20)は、オキシエチレン基(-(CH2CH2O)-)の総個数を意味する)、ポロキサマー(PEO-PPO-PEO共重合体;PEO:poly(ethylene oxide)、PPO:poly(propylene oxide))、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化合物(例えば、ポリオキシエチレン-ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル:C1-C30)、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンコポリマー(アルキル:C1-C30)など)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulphate,SDS)などであってもよく、またポリソルベートまたはポロキサマーが挙げられ、これらが一つまたは二つ以上の組み合わせの形態でも用いられる。
【0043】
具体的には、上記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはポリソルベート80であってもよく、これらが組合わせて用いられてもよいが、特に、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明において上記非イオン性界面活性剤は、本発明の液状製剤に約0.2%(w/v)以下の濃度、例えば、約0.001~約0.2%(w/v)、約0.001~約0.1%(w/v)、約0.005~約0.1%(w/v)、約0.001~約0.08%(w/v)、約0.002~約0.08%(w/v)、約0.005~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.05%(w/v)、または約0.05%(w/v)で含まれてもよいが、特に、これに限定されない。
【0045】
上記等張化剤は、液状製剤の浸透圧調整のために添加される物質であり、適正浸透圧を維持しながらボツリヌス毒素を安定化するのに寄与できる限り、等張化剤として制限なく本発明の液状製剤に含まれ得る。
【0046】
上記等張化剤は、水溶性無機塩を含んでもよく、具体的には、本発明の液状製剤は、塩化ナトリウム、グリセリン、塩化カリウム、及びデキストロースからなる群から選択されるいずれか一つ以上であるものを等張化剤として含んでもよいが、これに限定されない。
【0047】
本発明において上記等張化剤は、本発明の液状製剤に約5%(w/v)以下の濃度、例えば、約0.01~約5%(w/v)、約0.1~約5%(w/v)、約0.1~約3%(w/v)、約0.1~約2%(w/v)、約0.5~約1.5%(w/v)、約0.75~約1.25%(w/v)または約0.9%(w/v)で含まれてもよいが、特に、これに限定されない。
【0048】
本発明の液状製剤は、緩衝剤をさらに含んでもよい。一例として、上記緩衝剤は、酢酸とその塩、クエン酸とその塩、及びリン酸とその塩からなる群から選択されるいずれか一つ以上であってもよく、その例として、リン酸とその塩(例えば、リン酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、またはこれらの水素または二水素塩)、クエン酸とその塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、酢酸とその塩(例えば、酢酸ナトリウム)、またはリン酸ナトリウムであってもよいが、これに限定されない。
【0049】
本発明において上記緩衝剤は、本発明の液状製剤に約5.0%(w/v)以下の濃度、約4.0%(w/v)以下の濃度、約3.0%(w/v)以下の濃度、約2.0%(w/v)以下の濃度、約1.0%(w/v)以下の濃度、約0.9%(w/v)以下の濃度、約0.8%(w/v)以下の濃度、例えば、約0.01~約5.0%(w/v)、約0.01~約4.0%(w/v)、約0.01~約3.0%(w/v)、約0.01~約2.0%(w/v)、約0.01~約1.0%(w/v)、約0.01~約5.0%(w/v)、約0.1~約1.0%(w/v)、約0.01~約0.9%(w/v)、約0.05~約0.9%(w/v)、約0.1~約1.00%(w/v)、約0.4~約0.9%(w/v)、約0.4~約2.0%(w/v)、約0.3~約1.0%(w/v)、約0.3~約0.8%(w/v)、または約0.05%(w/v)、または約0.7%(w/v)で含まれてもよいが、特に、これに限定されない。
【0050】
本発明の液状製剤は、薬学的に許容可能な塩の形態を含んでもよい。
【0051】
上記用語、「薬学的に許容可能」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、またはアレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0052】
本発明の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。適した塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含むことができる。
【0053】
また、本発明による液状製剤は、さらに薬学的に許容可能な担体、賦形剤などを含んでもよく、このような担体、賦形剤は、非自然的に存在するものであってもよい。
【0054】
具体的には、「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激することなく本発明の液状製剤の特性を阻害しない担体または希釈剤をいう。液状溶液に製剤化される組成物において許容される薬学的担体には、滅菌、及び生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分中の一つ以上の成分を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。
【0055】
より具体的には、上記薬学的組成物に含まれてもよい担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリ乳酸(Poly Lactic Acid)、ポリ-L-乳酸(poly-L-lactic acid)、鉱物油などが挙げられる。
【0056】
本発明の液状製剤は、ボツリヌス毒素の投与により予防、治療または改善の効果が得られる疾患、例えば、亢進性骨格筋を特徴とする神経筋肉障害の治療または予防のために用いられる。また、頭痛、片頭痛、緊張性頭痛、副鼻腔頭痛、頚椎性頭痛、発汗障害、脇の多汗症、手の多汗症、足の多汗症、フレイ症候群、過運動性皮膚シワ(hyperkinetic skin line)、顔面シワ、眉間シワ、目じりシワ、口元シワ、鼻唇シワ、皮膚障害、弛緩不能症、斜視、慢性裂肛、眼瞼痙攣、筋骨格痛、線維筋痛症、すい臓炎、頻脈、前立腺肥大、前立腺炎、尿閉、尿失禁、過敏性膀胱、片側顔面痙攣、震え、筋痙攣、胃腸管障害、糖尿病、唾液過多症、排尿筋-括約筋協調不全、脳卒中後硬直、傷回復、小児脳性麻痺、平滑筋痙攣、再狭窄、局所筋緊張異常、てんかん、頸部筋緊張異常症、甲状腺障害、高カルシウム血症、強迫障害、関節炎痛み、レイノー症候群、皮膚伸展線条、腹膜癒着、血管痙攣、鼻水、筋肉痙縮、喉頭筋緊張異常、書痙及び手根管症候群などの疾患治療及び美容目的などに多様に用いられるが、これに限定されない。
【0057】
本発明において用語「予防」とは、上記ボツリヌス毒素またはこれを含む液状製剤の投与により疾患を抑制または液状製剤の投与により疾患の発病を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味し、本発明において用語「治療」とは、ボツリヌス毒素またはこれを含む液状製剤の投与により目的とする疾患の症状が改善、好転または有益になるあらゆる行為を意味する。
【0058】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の液状製剤は、神経筋肉障害の治療または予防のために利用されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0059】
また、本発明の液状製剤は、皮下投与に適した剤形及び組成を有し、皮下投与の経路に投与されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0060】
本発明において用語「投与」とは、任意の適切な方法で患者に液状製剤を導入することを意味し、例えば、筋肉内投与、皮下投与などになってもよいが、これに限定されない。
【0061】
本発明の液状製剤の全体投与用量は、一日に患者体重1kg当り約0.0001mg~500mgであってもよく、液状製剤は、上記用量を適切に投与できるように剤形化されてもよい。しかし、上記ボツリヌス毒素の用量は、投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食事及び排泄率など多様な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるものであるため、このような点を考慮する時、当該分野の通常の知識を有する者であれば、上記本発明の液状製剤の特定の用途による適切な有効投与量を決定できるものである。
【0062】
本発明において、用語「約(about)」は、用語の後に記載される正確な数字だけでなく、ほぼその数字であるか、その数字に近い範囲までを含む。その数字が提示された文脈を考慮し、言及した具体的な数字と近接したり、ほぼその数字か否かを決定することができる。一例として、用語「約」は、数値の-10%~+10%の範囲を指すことができる。他の例において、用語「約」は、与えられた数値の-5%~+5%の範囲を指すことができる。しかし、これに限定されない。
【0063】
本発明を具現するもう一つの態様は、上記液状製剤の製造方法を提供する。
【0064】
具体的には、上記製造方法は、ボツリヌス毒素及びプロリンを互いに混合する段階を含んでもよく、さらにアルブミン、スクロースまたはその両方をさらに混合する段階を含んでもよいが、これに限定されない。
【0065】
本発明を具現するもう一つの態様は、上記液状製剤を利用してボツリヌス毒素を安定化させる方法を提供する。
【0066】
上記液状製剤は、スクロース、アルブミン、等張化剤、非イオン性界面活性剤、及び緩衝剤からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
液状製剤及びこれを構成する要素については、前述の通りである。
【0068】
本発明のボツリヌス毒素のようなタンパク質製剤の場合に、薬剤化の過程で多くの問題が発生する。これは、タンパク質の不安定性に起因してボツリヌス毒素のように極めて低い濃度で薬剤化が行われるタンパク質の場合に問題が深刻である。ボツリヌス毒素は、毒性が非常に強いので、治療または美容目的としての使用のためには、微量が投与されなければならないため、高濃度のボツリヌス毒素の液状製剤よりは、低濃度のボツリヌス毒素の液状製剤が好まれる。
【0069】
このような側面で、ボツリヌス毒素の活性を一定に維持できる新たな形態の液状製剤に対する需要が切実な状況である。本発明の液状製剤は、長期間保存してもボツリヌス毒素の活性を維持でき、投薬安定性も優れる。
【0070】
以下、本発明を実施例及び実験例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例及び実験例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1. ボツリヌスA型毒素液状製剤の製造
ボツリヌスA型毒素(分子量約900kD)の液状製剤は、下記のような方法で製造した。緩衝剤としてリン酸ナトリウム(Sodium Phosphate)50mmol、等張化剤として塩化ナトリウム(Sodium chloride)0.9%、界面活性剤としてポリソルベート20を0.05%(w/v)の濃度で添加した。ボツリヌスA型毒素と等張化剤、界面活性剤が含まれた緩衝剤にそれぞれの賦形剤を当該濃度別に添加して均質に混合及び溶解させた後、pH 6.0に補正後、0.22μmでフィルターした。フィルターされた溶液を利用、最終的に100Unit/mlになるようにボツリヌス毒素液状製剤を製造した(表1)。
【0072】
【0073】
賦形剤候補群は、下記表2の濃度で添加した。下記の賦形剤候補群は、食品医薬品安全所で告示した添加剤の最大含量に基づいてそれぞれ濃度を調節して添加した。
【0074】
【0075】
実施例2. ボツリヌスA型毒素の安定性の評価
実施例1で製造されたボツリヌス毒素液状製剤の安定性評価のためにAnti-SNAP25抗体を利用したELISA方法を用いて37℃の加速条件でSNAP25切断に及ぼす影響を確認し、これを通じて毒素の力価を計算した。製造されたボツリヌス毒素液状製剤は、37℃の加速条件で保管しながら一定期間(1週間)ごとにサンプリングを行って保管時間により変化する毒素力価を確認した。
【0076】
ELISAは、次のような方法で進めた。検定しようとする液状製剤とRecombinant SNAP25(abcam,USA)をそれぞれ100:1の割合で混ぜた後、37℃のチャンバーで酵素反応を行った。21時間後、液状製剤-SNAP25混合物を取り出して10mM EDTA(ethylene-diamine-tetraacetic acid)が添加されたCoating buffer(100mM Bicarbonate/carbonate,pH 9.6)と1:1の割合で混ぜた後、96 well plate(Thermo,USA)にwell当たり100ulずつ分注して室温で2時間coatingした。コーティングが終わった後、Washing buffer(Thermo,USA)で3回洗浄後、5% skim milkを利用して室温で2時間blockingした。その後、Washing bufferで3回洗浄し、5% skim milkに希釈させた切断されたSNAP25に対する特異的抗体(mybiosource,USA)を各wellに100ulずつ分注して室温で2時間反応させた。その後、Washing bufferで3回洗浄し、5% skim milkに希釈したHRPが結合された2次抗体(abcam,USA)を常温で2時間反応させた。反応後、Washing bufferで3回洗浄し、TMB Substrate solution(Thermo,USA)を各wellに100ulずつ分注して発色反応を誘導した。同量の2N硫酸(Sigma,USA)を添加して反応を中止させた後、吸光度分析器(BioTek,USA)を利用して450nmで吸光度を測定し、測定された数値はpositiveとnegative controlの数値を利用して毒素力価を%で示した。毒素力価は下記の式で計算した。
【0077】
毒素力価(%)=(検定しようとする液状製剤実験群の発色数値-毒素を処理していない実験群の発色数値)/(100Unit/ml濃度のBoNT/A原液のみを処理した実験群の発色数値-毒素を処理していない実験群の発色数値)×100
【0078】
実施例3. ボツリヌスA型毒素液状製剤の安定化剤の評価
上記実施例1のボツリヌスA型毒素の液状製剤に対し、実施例2の方法により37℃の加速条件で1週間隔で力価を評価する実験を行った。
【0079】
3-1. 賦形剤の種類別残存力価の評価
賦形剤の種類別残存力価の評価を行った。具体的には、賦形剤はメグルミン+グルタミン酸(Meglumine+Glutamic acid)、N-アセチルシステイン(N-Acetylcysteine)、プロリン(Proline)、タウリン(Taurine)、グルタチオン(Glutathion)、またはPEG3350を用い、ボツリヌス毒素の液状製剤組成に含まれた上記賦形剤の濃度は、上記表2の通りである。
【0080】
その結果、
図1で示したように、賦形剤中、プロリンが6週間以上残存力価90%以上を維持することを確認し、上記賦形剤のボツリヌス毒素の活性維持効果が最も優れることが分かった。
【0081】
3-2. 二糖類の組み合わせによる残存力価の評価
二糖類を添加する場合にも残存力価が優れるかどうかを確認するために、実施例3-1の賦形剤に二糖類をさらに含めて残存力価を評価した。
【0082】
具体的には、上記二糖類は、スクロース(Sucrose)、ラクトース(Lactose)及びこれらの組み合わせを用いた。
【0083】
その結果、
図2で示されるように、プロリン及びスクロースの組み合わせの場合に37℃の加速条件で10週間90%以上残存力価が最も優れることを確認した。
【0084】
上記結果は、ボツリヌス毒素を含む組成物にプロリン及びスクロースの組み合わせが安定化剤としてボツリヌス毒素を液状製剤で力価の減少なしに長期間保存し得ることを再確認したことである。
【0085】
3-3. スクロースの濃度による残存力価の評価
上記実施例3-2を通じて、プロリン及びスクロースの組み合わせが安定化剤として最も効果があることを確認し、プロリン及びスクロース濃度による残存力価を評価した。
【0086】
具体的には、プロリンは0.1%~0.3%(w/v)を用い、スクロースは0%~8%(w/v)を用いた。
【0087】
その結果、下記表3と
図3に示した通り、プロリンは0.2%~0.3%(w/v)及びスクロースは4%~8%(w/v)の組み合わせが37℃の加速条件で10週間90%以上の残存力価を示すことを確認した。
【0088】
【0089】
3-4. rHSAと賦形剤の組み合わせにともなう残存力価の評価
rHSAを含む場合にも残存力価が優れるかどうかを確認するために、実施例3-1の賦形剤にrHSAをさらに含めて残存力価を評価した。
【0090】
その結果、
図4に示されるように、rHSA及びプロリンの組み合わせの場合に、37℃の加速条件で10週間90%以上残存力価が最も優れることを確認した。
【0091】
上記結果は、ボツリヌス毒素を含む組成物にrHSA及びプロリンの組み合わせが安定化剤としてボツリヌス毒素を液状製剤で力価の減少なしに長期間保存し得ることを示唆することである。
【0092】
3-5. rHSAと二糖類の組み合わせにともなう残存力価の評価
上記実施例3-2、実施例3-4結果に基づいて、rHSA及び二糖類の組み合わせが安全性が長期間維持されることを確認したところ、二糖類の種類別に残存力価の評価を比較するために液状製剤を製造した。
【0093】
具体的には、上記二糖類は、スクロース(Sucrose)、及びラクトース(Lactose)を用いた。
【0094】
その結果、
図5に示されるように、rHSA、プロリン及びスクロースの組み合わせの場合に37℃の加速条件で10週間90%以上残存力価が最も優れることを確認した。
【0095】
上記結果は、ボツリヌス毒素を含む組成物にrHSA、プロリン及びスクロースの組み合わせが安定化剤としてボツリヌス毒素を液状製剤で力価の減少なしに長期間保存し得ることを再確認したことである。
【0096】
3-6. スクロースの濃度によるrHSAが含まれた液状製剤の残存力価の評価
上記実施例3-5を通じて、rHSA、プロリン及びスクロースの組み合わせが安定化剤として最も効果があることを確認し、プロリン及びスクロース濃度による残存力価を評価した。
【0097】
具体的には、rHSAが含まれた液状製剤にプロリンは0.1%~0.3%を用い、スクロースは0%~8%を用いた。
【0098】
その結果、下記表4と
図6に示した通り、プロリンは0.2%~0.3%及びスクロースは4%~8%の組み合わせが37℃の加速条件で10週間約80%以上の残存力価を示すことを確認した。
【0099】
【0100】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】