(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ポリマー付加製造及びそれにより形成された眼科レンズ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20241112BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20241112BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20241112BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20241112BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241112BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241112BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/112
B29C64/209
B29C64/277
B33Y10/00
B33Y50/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580352
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022051600
(87)【国際公開番号】W WO2023149944
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523485629
【氏名又は名称】アンセニウム オプティカル サイエンシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダブリュ.アンソニー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ガネシュ ナラヤナン クマル
(72)【発明者】
【氏名】ランドール ピュー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA43
4F213AA44
4F213AH63
4F213AP06
4F213AP12
4F213AQ01
4F213AR07
4F213AR13
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL74
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
コンタクトレンズなどの光学要素としての使用に適した表面品質を有する成形品の付加製造のための改良された方法及び装置である。改良は、グレースケール画像のようなエネルギー透過率パターンに従ってモノマーを繰り返し塗布することに向けられている。方法は、堆積された重合性混合物の断続的なピン止めと、堆積された重合性混合物の最終硬化を含む。複数の画定された領域のパターンが製造されてもよく、各領域はその領域に関連するエネルギー透過率の量を表す。各領域は、8ビット、16ビット、32ビット、64ビットスケール又は他のスケールなどのスケールに基づく光の値を有してもよい。幾つかの実施形態では、各領域は、デジタル画像の最小の単一成分を指してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造により眼科レンズを形成する方法であって、前記方法が、
a.付加製造印刷ヘッドに対して基板を第1の位置で位置付けるステップ、
b.印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンを放出するステップであって、前記重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンがグレースケール画像の第1の部分に対応する、ステップ、
c.前記重合性混合物の堆積液滴を受取表面上で受け取るステップであって、前記受取表面が、前記基板、及び先に放出された重合性混合物の液滴、の一方又は両方を含む、ステップ、
d.前記基板を前記印刷ヘッドに対して次の位置に再位置付けするステップ、
e.前記グレースケール画像の次の部分に対応する、重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを前記印刷ヘッドから放出するステップ、
f.前記印刷ヘッドの前記基板に対する通過の間に、ステップa.からe.を複数回繰り返すステップ、
g.前記受取表面上の前記重合性混合物の堆積液滴を、前記重合性混合物の堆積液滴の部分重合を引き起こすピン止め工程に曝露するステップ、
h.前記基板に対する前記印刷ヘッドの次のパスのためにステップf.を繰り返すステップ、
i.ステップh.に含まれる各パスに続いて、重力を前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用させて、重合性混合物の表面を滑らかにすることを可能にするステップ、
j.ステップh.に含まれる各パスに続いて、現在のパス中に堆積された、前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部を、前記受取表面上に先に堆積された重合性混合物と一体化して、前記基板上に重合性混合物の結合された体積部を形成するステップ、
k.各ステップj.に続いて、前記重合性混合物の堆積液滴の前記部分重合を介して、前記重合性混合物の堆積液滴を前記受取表面上でピン止めするステップ、及び
l.前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板及び前記重合性混合物の堆積液滴を、最大5.0体積%の酸素濃度で制御された雰囲気中に収容するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部の酸素平衡濃度を最大8.0体積%にするステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板中の酸素濃度を前記制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡にするステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
重合性混合物の堆積液滴の最初のパターンを前記印刷ヘッドから放出するステップ、及び重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを前記印刷ヘッドから放出するステップの少なくとも1つが、前記グレースケール画像に含まれる画素に関連するデータ値に対応する所与の配置での重合性混合物の堆積の量を放出することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
相対的により大きいデジタル値が、前記グレースケール画像のより明るい領域に対応する相対的により小さいデジタル値よりも、前記グレースケール画像のより暗い領域に対応する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ピン止め工程が、前記重合性混合物の堆積液滴のゲル化を引き起こして前記重合性混合物の堆積液滴の硬化を引き起こさないのに十分な限られた時間の間、前記重合性混合物の堆積液滴を第1の波長の化学放射線に曝露するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップが、前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を、前記重合性混合物の堆積液滴の重合を引き起こすのに十分な時間及び十分な強度の第2の波長の化学放射線に曝露するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
重力が前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用して重合性混合物の前記表面を滑らかにすることを可能にするステップが、前記重合性混合物の堆積液滴間の介在空間を少なくとも部分的に充填することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基板中の酸素濃度を、前記基板及び前記重合性混合物の堆積液滴を含む制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡にするステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
付加製造により眼科レンズを形成する方法であって、前記方法が、
a.付加製造印刷ヘッドに対して基板を第1の位置で位置付けるステップ、
b.前記付加製造印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンを放出するステップであって、前記重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンが、エネルギー透過率パターンの第1の部分に対応する、ステップ、
c.前記重合性混合物の堆積液滴を受取表面上で受け取るステップ、
d.前記付加製造印刷ヘッドに対して次の位置(現在の位置プラスN)で前記基板を位置付けるステップ、
e.前記エネルギー透過率パターンの次の部分に対応する重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを放出するステップ、
f.物理的な力が、現在のパス中に堆積された重合性混合物の液滴の表面を滑らかにすることを可能にするステップ、
g.現在のパス中に堆積された、前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも幾つかを、前記受取表面上に先に堆積された重合性混合物と一体化して、前記基板上に重合性混合物の結合された体積部を形成するステップ、
h.前記受取表面上の前記重合性混合物の堆積液滴を、前記重合性混合物の堆積液滴の部分重合を引き起こすピン止め工程に曝露するステップ、
i.前記基板に対する前記付加製造印刷ヘッドの複数パスについて、ステップdからh.を繰り返すステップ、及び
j.前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を硬化して前記形成された眼科レンズを製造するステップ、
を含む、方法。
【請求項12】
前記重合性混合物の堆積液滴を前記受取表面上で受け取るステップが、前記堆積液滴を、前記基板、重合性混合物の先に放出された液滴、及び挿入部のうちの1つ又は複数で受け取ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に対する前記付加製造印刷ヘッドの通過中に、ステップd.からg.を複数回繰り返すことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記形成された眼科レンズを前記基板から解放するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
重力が前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用して、前記重合性混合物の堆積液滴間の介在空間を少なくとも部分的に充填することを可能にするステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ピン止め工程が、前記重合性混合物の堆積液滴のゲル化を引き起こし前記重合性混合物の堆積液滴の硬化を引き起こさないのに十分な限られた時間の間、前記重合性混合物の堆積液滴を第1の波長の化学放射線に曝露するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップが、前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を、前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部の重合を引き起こすのに十分な時間と十分な強度で第2の波長の化学放射線に曝露することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
最大2.0体積%を含む酸素濃度を有する制御された雰囲気中に前記基板及び前記重合性混合物を収容するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記基板中の酸素濃度を前記制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡にするステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
制御コマンドの生成前に前記エネルギー透過率パターンをディザリングするステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年11月9日に出願された米国非仮出願番号17/984,103の優先権を主張し、これは2022年2月3日に出願された米国仮出願番号63/306,472、及び2022年6月29日に出願された米国仮出願番号63/356,583の利益を主張し、これらの開示全体は、参照によりここに組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、改良された付加製造の分野に関し、特に、エネルギー透過率のマッピングを代表する重合性材料の液滴を繰り返し塗布することによって眼科デバイスを形成するための方法及び装置、並びに結果として得られるレンズに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
コンピュータ支援デザイン(CAD)モデル又は他の3次元(3D)モデルに基づいて堆積される材料の塗布を含む従来の付加製造が知られている。このような工程では、3Dモデルは、各層が3Dデザインの断面である層にスライスされる。各断面は、順次堆積されて成形品を形成する。犠牲層及び/又は層の一部は、後に除去される添加剤の形で塗布されることもある。
【0004】
材料は、典型的には焼結工程によって塗布され、それにより少量の材料が溶融されて特定の断面に対応する位置に配置され、融合析出工程が生じる。このような技術には、ステレオリソグラフィと選択的レーザー焼結が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
付加製造は、低コストとすることができ、製造物品及び製造実行量のデザインにおいてより柔軟性を提供する。しかしながら、付加製造によって形成される物品は、他の製造技術によって得られる完成品質に欠けることが多く、特に、十分な表面の滑らかさに欠ける。
【0006】
コンタクトレンズの製造は、旋盤切削からスピンキャスト成形、そして最も費用対効果の高い工程として残っているキャストモールドへと、過去数十年にわたって進化してきた。コンタクトレンズの旋盤加工は、通常、所望の形状に達するまで、一度にレンズ材料の1つのボタンを加工することを含む。このような工程は、複雑な旋盤設備と特殊なオペレーターの専門知識を必要とする。また、それらはコンタクトレンズの大量生産には効率的でない。
【0007】
キャストモールドはコンタクトレンズの大量生産には有効であるが、各レンズはおおよそのサイズと形状に従って形成されるため、同じ製造創業で1/8又は1/4ディオプターまでのばらつきが生じることがあり、その結果、患者の体験にばらつきが生じる。このような患者体験のばらつきは、「良いコンタクトレンズの日」と「悪いコンタクトレンズの日」と呼ばれることがある。
【0008】
眼科レンズのキャストモールドは、許容パラメータ内に維持することが困難な多くの変数を含む複雑な工程であり、これは最終製品にばらつきのある結果をもたらす。変数は、重合性モノマーの硬化可能な混合物をモールドキャビティ内に堆積すること、2つのモールドセクションを介してモールドキャビティを形成すること、キャビティ内にモノマー混合物を収容した状態で硬化させること、モールドアセンブリを分解してレンズを取り出すこと、のうちの1つ以上から生じることがある。一方のモールドセクションは前方のレンズ表面を形成し、他方のモールドセクションは後方のレンズ表面を形成する。
【0009】
キャストモールド設備のコストは、関連する製造ラインのサイズが大きいため、非常に高い。さらに、レンズをキャストするのに使用される光学的品質の金属挿入部の製造と、それに続くプラスチックモールドの射出成型には、多額の先行投資が必要であり、関連するデザインは、キャストモールド技術の対称性の制約によって制限される。キャストモールドはまた、有害な関連環境影響と追加コストを伴う大量のプラスチック廃棄物をもたらす。
【0010】
さらに、キャストモールドは、莫大な数のSKUの目録の管理と、関連する倉庫管理、注文ピッキング及び出荷物流の問題を必要とし、これら全てが、結果として得られるコンタクトレンズ製品に著しい環境上の不利益及びコストを追加する。さらに、レンズ成形工程で製造されるコンタクトレンズの種類は、光学度数、ベース曲線、及び直径などの限られた数のバリエーションのみを有することができる。
【0011】
発明の概要
従って、本発明は、例えばコンタクトレンズとしての使用のような、光学要素としての使用に資する表面品質を有する成形品の製造のための改良された方法及び装置を提供する。ここに提示される改良は、可視光に関連したエネルギースペクトルの強度をマッピングしたグレースケール画像などの、エネルギー強度マップに従ったモノマーの繰り返し塗布を伴う工程に向けられている。改良された方法は、塗布されたモノマーの断続的ピン止め及び最終硬化を含み、その結果、回転対称でない眼科デバイスを含む、ヒドロゲルをベースとする眼科デバイスのデザインの柔軟性が増大し、製造コストが減少する。本発明によれば、印刷ヘッドは、受取表面の頂点に対して垂直でない位置に堆積中に配置されてもよく、液滴は、それらが受取表面に接触したときに非球状であってもよい。改善には、廃棄物の減少、環境への影響の減少、倉庫保管のオーバーヘッドの減少、及び眼科レンズの製造及び保管に必要な労働力の減少も含まれる。
【0012】
本発明は、レンズが、光学ゾーン(ここではときどき「OZ」と呼ばれる)、及び周縁ゾーン、又はエッジ部分を含む2つ以上の構成要素を介して生成されてもよいことを提供する。光学ゾーン及び周縁ゾーンの一方又は両方は、非含水軸方向厚さプロファイルを記述するエネルギー強度パターンに基づいて形成されてもよい。
【0013】
幾つかの実施形態では、付加製造設備は、空気中レンズ度数(P)、レンズ屈折率(n)、中心厚さ(CT)、及び裏面曲率半径(RB)を含む、軸方向厚さプロファイルに従ってレンズ(又は他の成形品)を形成するために、重合性材料を受取表面に追加する印刷ヘッドの複数パスを行うように制御されてもよい。
【0014】
本開示の幾つかの実施形態は、付加製造によって眼科レンズを形成する方法を含んでもよく、方法は、付加製造印刷ヘッドに対して第1の位置で基板を位置付けるステップと、印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴のパターンを放出するステップを含み、重合性混合物の堆積液滴のパターンは、形成される眼科レンズのエネルギー透過率マップの一部に対応する。
【0015】
幾つかの変形例は、重合性混合物の堆積液滴を受取表面上で受け取ることであって、受取表面が、基板、及び先に放出された重合性混合物の一方又は両方を含むこと、を含む。実施形態は、基板を印刷ヘッドに対して第1の位置から次の位置(現在の位置プラスN)に再位置付けすることを含んでもよい。再位置付けは、基板及び印刷ヘッドの一方又は両方の移動によって達成されてもよい。
【0016】
さらに、本実施形態の変形例は、形成される眼科レンズのエネルギー透過率マップの次の部分に対応する重合性混合物の堆積液滴の次のパターン(第1の位置プラスN)を放出することを含む。複数の放出は、基板を含んでもよい受取表面に対する印刷ヘッドの通過の間に生じてもよい。
【0017】
幾つかの変形は、受取表面上の重合性混合物の堆積液滴から材料を一体化すること、及び重合性混合物の堆積液滴の部分的な重合を引き起こすピン止め工程に一体化された材料を曝露することを含んでもよい。印刷ヘッドの通過に続いて、重力、表面張力及び微小力のうちの1つ以上が、堆積液滴の少なくとも一部に作用して、堆積液滴の間の介在空間を均一にするなど、受取表面を滑らかにすることを可能にしてもよい。
【0018】
幾つかの実施形態では、現在の通過の間に堆積された重合性混合物の液滴の少なくとも一部は、受取表面上に先に堆積された重合性混合物と一体化されて同じ体積を形成してもよく、これは基板上の重合性混合物の単一体積を含んでもよい。実施形態はまた、堆積液滴の部分重合を介して受取表面上に堆積液滴をピン止めすること、及び重合性混合物の堆積液滴を硬化させることを含んでもよい。堆積液滴の一体化が、開示された工程が、堆積中、衝突時、又は衝突後に液滴が特定の形状を維持するという要件を緩和する。
【0019】
幾つかの実施形態において、ピン止め工程は、重合性混合物の堆積液滴のゲル化を引き起こすのに十分であるが堆積液滴の硬化を引き起こさない限られた時間の間、重合性混合物の堆積液滴を第1の波長の化学放射線(actinic radiation)に曝露するステップを含んでもよい。
【0020】
さらに、幾つかの実施形態において、硬化工程は、液滴堆積の1サイクル又は複数サイクルで堆積された重合性混合物の堆積液滴の重合を引き起こすのに十分な時間及び十分な強度で、重合性混合物の堆積液滴を第2の波長の化学放射線に曝露するステップを含んでもよい。
【0021】
本発明はさらに、形成された物体の周縁と、周縁部分と一緒に含有される物体の中心部分とを含む製造の方法を提供する。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、全体として球形状を有する接眼コンタクトレンズは、付加製造(又は機械加工及び/又はカスタム成形などの他の製造方法)を介して形成された本質的にリング形状を含むエッジ部分と、付加製造工程を介して周囲部分内に形成されたコンタクトレンズの光学ゾーンとを有してもよい。エッジ部分は、好ましくは、光学ゾーンを含む中心部分よりも質量が大きい。形成中、周囲リング部分は、部分的に又は完全に硬化されてもよく、内部応力は、より重い質量の部分においてより負担されてもよい。エッジ部分をそれが中心部分によって作用されていない間に形成することが、堆積されたモノマーがポリマーに硬化する間に応力を低減した状態でエッジ部分を形成することを可能にする。ここで提供される実施例は、一般に、球形コンタクトレンズを参照して説明されるが、長円形又は三日月形のコンタクトレンズ又は複雑な形状の眼内レンズのような他の成形品など、他の実施形態も本発明の範囲内である。
【0022】
幾つかの態様において、本発明は、単一のレンズ内に含まれる複数の画定された領域のパターンの適用を提供し、各領域は、それぞれの関連する領域を透過可能な光の量を表す。各領域は、8ビット、16ビット、32ビット又は64ビットスケールなどのスケールに基づく光透過率の値を有してもよい(他のスケールも本発明の範囲内である)。幾つかの実施形態では、各領域は、デジタル画像の最小の単一成分を指す場合がある。さらに、幾つかの実施形態では、デジタル画像の最小の単一成分は、ここでは「画素」と呼ばれてもよい。幾つかの実施形態では、画素は、例えば、ナノメートルの量などの距離測定に関連付けられてもよい。
【0023】
本発明は、複数の連続するパターンにおける重合性材料のその後の塗布を提供し、各連続するパターンはグレースケール画像に一致する。グレースケール画像の各パターンの塗布に続いて、重合性材料はピン止めされるが、完全には重合されない。
【0024】
グレースケール画像のパターンでモノマーを最終的に塗布した後、グレースケール画像の各塗布から凝集されたモノマーが重合されて、例えばエタフィルコンから形成されたヒドロゲルコンタクトレンズなどの、ポリマーレンズを形成する。
【0025】
複数の連続するグレースケール画像パターンの塗布は、1つを別の上に堆積されてもよいが、互いに並べて位置付けられてもよく、好ましくは、制御された雰囲気中で実施される。雰囲気は、非限定的な例として、製造工程に関与する特定の工程ステップ中に雰囲気中に存在する浮遊粒子状物質及びガスの一方又は両方などの、変数の特定の量を制限するように制御されてもよい。具体例として、好ましい実施形態は、モノマーが重合前に曝露される酸素の量を制限した雰囲気を含み、また重合前にモノマーと相互作用してもよい微粒子のサイズ及び量を制限する。
【0026】
幾つかの実施形態において、幾つかのモノマー又は他の重合性混合物では、酸素は、製造工程に関与するモノマー材料及びプレポリマーのフリーラジカル重合に関与する重要な変数として制御されてもよい。これは、重合後に含水されるべき比較的低レベルの架橋剤を含むヒドロゲルで形成され、得られるポリマーネットワークの変動から形状が容易に歪みやすい、眼科デバイスに特に関連してもよい。
【0027】
本発明の別の態様によれば、重合特性に影響を及ぼすことがある気体(酸素など)へのモノマー又は他の重合性混合物の曝露は、曝露量、モノマー全体にわたる曝露の一貫性、及び曝露時間の1つ又は複数において注意深く制御される。重合中、酸素濃度が、光学デバイスを形成するモノマーの一方の側(側1)又は他の部分で、第2の側(側2)又は他の領域と比較して高くなると、側1が側2よりも相対的に膨張することがあり、形成される光学デバイスに固有の光学特性の歪みが生じることがあることが発見されている。同様に、重合性混合物の酸素濃度が高い部分と低い部分は、酸素濃度が異なる別の部分とは異なる量で膨張することがある。重合前に重合性混合物への酸素の供給量を制限することにより、重合性混合物内で比較的一貫した酸素濃度が維持されることがあり、酸素濃度によって引き起こされる一貫した膨張係数がそれによって達成される。
【0028】
幾つかの実施形態では、比較的高濃度の開始剤、高強度UV光エネルギー、酸素捕捉剤、ワックス、又はコーティングが、重合性混合物の重合の前に、酸素の影響を管理するために使用されてもよい。しかしながら、現在までのところ、これらのいずれも、高品質の光学デバイスを一貫して作製することを示していない。
【0029】
本発明は、3D印刷装置の使用において、酸素の存在及び濃度を低レベルに制御することによって、及び/又は調整された濃度で同時に、眼科デバイスなどの光学要素を作製するための新規なアプローチをとる。幾つかの実施形態では、光学要素に含まれる光学デバイスの所望の寸法及び結果として得られる光学特性を得るために、光学デバイスの製造中に、重合性混合物の周囲雰囲気中の酸素レベルに対して重合性混合物中の酸素のレベルを制御することが有益である。この原理は、堆積印刷が生じる基板を含むように拡張されてもよい。したがって、実施形態は、重合工程の前及び中に所定のレベルに維持される酸素レベルを含む。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の態様において、本発明は、光学要素の3次元堆積印刷のための方法に関し、この方法では、重合性混合物の複数の液滴が、制御された雰囲気下で基板の表面上に堆積され、それによって、重合性混合物によるグレースケールなどの、堆積された重合性混合物を通るエネルギー強度透過率のパターンを形成し、重合性混合物のパターンを含有する制御された雰囲気は、せいぜい約5.0体積%(好ましくはせいぜい約1.0体積%)の酸素濃度で維持され、重合性混合物の酸素平衡濃度がせいぜい約8.0体積%(好ましくはせいぜい約2.0体積%)である。この文脈において、重合性混合物及び周囲環境中の酸素の体積%を測定する制約ゆえに、「約」は、記載された量の10%内であると考えられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の幾つかの実施形態において使用されてもよい例示的な付加製造装置を示す。
【
図2】
図2は、本発明の幾つかの実施形態による代替の3D印刷装置の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の幾つかの実施形態による3D印刷装置の制御プロトコルを生成するために使用されてもよい、グレースケール画像として表される例示的なエネルギー強度パターンを示す。
【
図4】
図4は、本発明の幾つかの実施形態による、特定された周縁部分を有する球面レンズの概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の幾つかの実施形態による、周縁部分と光学ゾーンを支持するキャリア部分とを有するレンズのプロファイル切断図の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明に従って形成可能な眼科レンズの例示的な含水表面を表すグラフ曲線を示す。
【
図7】
図7は、本発明に従って成形可能な眼科レンズの例示的な非含水軸方向厚さを表すグラフ曲線を示す。
【
図8】
図8は、周縁領域の偽色画像の概略図である。
【
図9】
図9は、遷移領域ゾーンを有する箔レンズ厚さプロファイルの偽色画像の概略図である。
【
図10】
図10は、乱視用レンズの周縁領域ゾーンの厚さプロファイルの偽色画像を示す。
【
図11】
図11は、乱視用レンズの厚さプロファイルの偽色画像を示す。
【
図12】
図12は、本発明の幾つかの実施形態を実施する間に実行されてもよい方法ステップを説明する。
【
図13】
図13は、基板上に先に堆積された重合性混合物の体積部に一体化する重合性混合物の堆積液滴の概略図である。
【
図13A】
図13Aは、基板上に先に堆積された重合性混合物の体積部に一体化する重合性混合物の堆積液滴の概略図である。
【
図14】
図14は、印刷ヘッドからの放出後の重合性混合物の液滴の形状の例示的な変化を示す概略図である。
【
図15】
図15は、本発明の幾つかの実施形態において実行されてもよい方法ステップのフローチャートを示す。
【
図15A】
図15Aは、本発明の幾つかの実施形態において実行されてもよい方法ステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、エネルギー透過率のパターン又はマップに基づいて、重合性混合物の小液滴を表面に塗布する装置及び方法を提供する。グレースケール画像が可視光エネルギーの透過率のマップとして使用されてもよい。表面は、平面、弧状表面、又は複雑な可変表面であってもよい。表面に塗布された重合性混合物の液滴は、蓄積してエネルギー透過率のマップを複製する重合性混合物のパターンとなる。重合性混合物の表面への塗布に続いて、塗布された重合性混合物は、放射線(強度及び/又は持続時間が限定される)及び/又は熱エネルギーなどの、限定された量の化学線状態(actinic condition)に曝露されてもよい。限られた量の化学放射線への曝露は、塗布された重合性混合物を所定の位置にピン止めするのに適切である。
【0033】
ピン止めされた重合性混合物は、後続の受取表面として作用して、エネルギー透過率のパターンで塗布された追加の重合性混合物を受け取ってもよい。重合性混合物の最終的な塗布後、基板表面に蓄積された重合性混合物は、蓄積された重合性混合物をポリマーに硬化させるのに十分な化学線状態(例えば、放射線及び熱エネルギー)に曝露されてもよい。
【0034】
受取表面上への塗布中及び硬化前の受取表面上における滞留中に重合性混合物の液滴を包含する雰囲気は、硬化した重合性混合物によって形成されるデバイスの一貫した光学的品質を達成するために、注意深く制御されてもよい。
【0035】
ここでの開示において、眼科レンズ(及び/又はコンタクトレンズ)が例示及び考察の目的で使用されているが、原理は成形品の形成一般に適用可能であり、提示された教示は、例えば眼内レンズなどの、正確な寸法形状、光学特性、及び/又は同様の均一なポリマー特性が好ましい任意の光学要素(又は他の成形品)に広く使用されてもよい。
【0036】
本発明によれば、幾つかの実施形態において、重合性混合物は、比較的高い表面対体積比を有する気体雰囲気中を高速で、典型的には1~15ピコリットル量の極めて小さな液滴の形態で送達される。多数の液滴(150万~900万と推定される)が、25ミリグラムのレンズを形成するために必要である。製造中に各液滴を適切な場所に供給するには、幾つかの要因が考慮されてもよい。これらの要因には、以下の1つ以上が含まれるが、これらに限定されるものではない:液滴の周囲工程条件への曝露、液滴が基板及び先に堆積された重合性混合物の一方又は両方からなる表面に衝突したときに生じる材料の層の厚さ、受取基板表面の湿潤及び先に堆積された重合性混合物との合一などの基板及び/又は先に堆積された重合性混合物からなる受取表面との相互作用、衝突する液滴の影響、重合性混合物の液滴の後続層間の化学放射線及び/又は大気ガスへの曝露時間を介したピン止め、及び堆積された重合性混合物の硬化/重合。
【0037】
付加製造工程中、重合性混合物が、周囲工程雰囲気(制御された雰囲気と呼ばれることもある)、受取基板表面、および先に堆積された重合性混合物の液滴のうちの1つ以上から、酸素などの周囲ガスにさらされる(および取り込まれる)機会が大きく、このような要因が正確に制御されない場合、得られる眼科レンズの表面およびバルク特性(光学特性を含む)が悪影響を受けることになる。
【0038】
酸素の影響は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などのヒドロゲル材料又は軟質コンタクトレンズ及び軟質眼内レンズに使用される他のモノマーを使用して製造されるレンズで特に顕著である。このような材料では、酸素への曝露によって引き起こされる変動は、レンズが水分を吸収した後の最終的な硬化レンズにおいてより顕著となる。したがって、好ましい実施形態では、酸素への曝露は悪影響を及ぼすと考えられるかもしれない。
【0039】
典型的には、酸素がより多く存在する状態で形成されたレンズの表面又はスキン部分は、バルク部分よりも多くのポリマーネットワーク欠陥を含み、酸素がより多く存在する状態で形成された領域でより多くの水が吸収されることを可能にする。このようなスキン領域で生じる歪みは、通常、全体的な機械的特性(弾性率、引張強さ、伸び)、光学特性(光透過率、屈折率など)、形状、及び部品間の再現性に悪影響を有する。
【0040】
本発明は、形成される光学要素の特性が大きな影響を受けない程度に酸素の影響が制御されることを目的として、制御された雰囲気(ここに記載される)の酸素含有量に関連して、重合性混合物の酸素含有量を制御し、調整することを教示する。
【0041】
眼科デバイス(例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、及び眼鏡レンズ)の形成を含むこれらの実施形態では、光学処方を作成する能力は、曲面の正確な形状に大きく依存する。これら及び他の非眼科光学要素上にこれらの必要な表面を作製することは、本発明で請求される原理を使用することによって達成されることができ、したがって、簡便性、効率性、デザインにおけるより多くの自由度、より低い時間要件、及びコストなどの3D堆積印刷を使用する利点を可能にする。
【0042】
幾つかの実施形態では、重合工程における酸素の影響、及びその結果として形成される物品の特性に対する酸素の影響が排除されるか、又は実質的に低減される。これは、ポリマーマトリックスを層状に形成する際の重合混合物の析出後の移動の改善された制御を可能にする。このことは、湾曲した、任意の又は不規則な表面又は形状の作成において重要であり、複数の弧状部分を組み込んだ表面を含む、精密な曲面を必要とする複雑な光学デバイスを作成する場合にはなおさらである。したがって、酸素阻害の克服と、光学製品用途における重合性混合物の移動の制御との複合効果が、光学的アーチファクト及び歪みを減少させ、さらには除去する可能性が高い。
【0043】
幾つかの実施形態において、本発明は、重合性混合物の複数の液滴が制御された雰囲気下で基板(及び/又は先に堆積された重合性混合物)の表面上に堆積され、それにより重合性混合物の層をエネルギー透過率のマップ(グレースケール画像など)を複製するパターンに形成する眼科デバイスの3次元堆積製造のための装置及びその装置の操作方法を提供する。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態において、重合性混合物中の酸素濃度は、重合性混合物が曝露される制御された雰囲気の酸素濃度、環境の他の部分(例えば重合性混合物の液滴を受け取る基板など)の酸素濃度、のうちの1つ以上との関係で調整されて、1つの供給源から他の供給源への酸素のマイグレーションが回避されるか又は少なくとも重合性混合物の重合にとって重要でない程度に抑制されるようになっていてもよい。
【0045】
用語解説
【0046】
本明細書及び提示された本発明に向けられた請求項では、様々な用語が以下の定義が適用されるところで使用されてもよい。
【0047】
ここで使用される「化学放射線」は、関連する重合性混合物中で化学反応を開始させることができるエネルギーの放出を指す。幾つかの実施形態において、化学放射線は、280~450nmの範囲の波長を有する放射線を含む。幾つかのより具体的な例示の実施形態において、UVA及び青色光に対応する化学放射線は、315~450nmの範囲の波長を有するエネルギーを含み、幾つかの好ましい実施形態は、365nm~400nm範囲のエネルギーを含む。
【0048】
「付加ベースの製造」(本明細書において「付加製造」と称されることもある)は、材料の単位が、材料の単位の形状への凝集を介してある形状に形成される構造に付加される工程を意味する。
【0049】
ここで使用される「弧状」は、曲面を含む幾何学的形状をいう。
【0050】
ここで使用される「硬化」は、重合性混合物の大部分を架橋するのに十分な強度の固定放射線及び/又は熱エネルギーを含んでもよい化学線状態に重合性混合物を曝露することを指す。
【0051】
ここで使用される「固定化放射線」は、適切な波長であり、固定化放射線に曝露された重合性混合物の大部分を架橋させるのに十分な強度及び持続時間の化学放射線を指す。
【0052】
「ゲル」又は「ゲル化」は、受取表面上に堆積された重合性混合物の移動を停止させるか、又は実質的に減速させるのに十分な重合度であって、後続の液滴が先に堆積された重合性混合物と融合し、歪みのない単一の重合性混合物の塊を有する構造を形成するのに十分な重合度を指す。ゲル化された重合性混合物は、より高い粘度状態に移行するが、完全硬化には至らない。ピン止め又はゲル化(又はゲル)は、流れと形状の管理を強化し、高品質の表面を提供する。
【0053】
ここで使用される「ゲル点」は、重合工程においてゲル又は不溶性部分が形成される点を指すものとする。ゲル点は、液体重合混合物が、固定表面上で不動な高粘度物質となる転化の程度と考えてもよい。ゲル点は、例えばソックスレー実験を用いて決定され得る:ポリマー反応が異なる時点で停止され、得られたポリマーが分析されて残留不溶性ポリマーの重量分率を決定する。データは、ゲルが存在しない時点まで外挿され得る。ゲル点は、反応中の重合性混合物の粘度を分析することによって決定されてもよい。粘度は、平行平板型レオメーターを使用し、重合性混合物を平行平板の間に挟んで測定され得る。少なくとも1枚のプレートは、重合に使用される波長で放射線に対して透明であるべきである。粘度が無限大に近づく点がゲル点である。ゲル点は、所与のポリマー系と所定の反応条件に対して、同じ転化度で生じる。
【0054】
ここで使用される「阻害剤」は、化学反応を遅らせるか又は停止させる化学反応剤又は工程を指す。
【0055】
ここで使用される「開始剤」は、連鎖反応又は重合を開始させる物質を指す。
【0056】
ここで使用される「強度」は、単位面積当たりに伝達される電力の量を指し、面積は、エネルギーの伝搬の方向に垂直な平面上で測定される(例えば、平方メートル当たりワット(W/m2))。
【0057】
ここで使用される「レンズ」は、眼内又は眼上に存在する任意の眼科デバイスを指す。これらのデバイスは、光学的補正を提供することができ、又は化粧品であってもよい。例えば、レンズという用語は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼挿入部、光学挿入部又は視力を矯正若しくは修正する又は視力を妨げることなく眼生理を美容的に向上させる(例えば、虹彩の色)他の同様のデバイスを指すことができる。
【0058】
ここで使用される「ピン止め(Pinning)」は、ゲル化工程又はゲル化を行うが重合性混合物の硬化を引き起こさない十分な量の重合性混合物に対して、限定された化学放射線への曝露などの化学線状態を適用することを指す。
【0059】
ここで使用される「重合性混合物」(「PM」と呼ばれることもある)は、外部エネルギー(例えば、280~450nmの範囲の化学放射線(例えば、UV光又は青色光又は熱)に曝露されると重合を受けてポリマー又はポリマーネットワークを形成することができる成分(反応性成分及び場合によっては非反応性成分)の液体混合物を指す。重合性混合物は、硬化及び/又は架橋され得る眼科レンズを形成するか、又は既存のレンズ若しくはレンズブランクを変更してもよいモノマー又はプレポリマー材料を含んでもよい。様々な実施形態は、以下のような1つ以上の添加剤を含む重合性混合物を含むことができる:UVブロッカー、接着剤、着色剤、光開始剤又は触媒、及びコンタクトレンズ又は眼内レンズなどの眼科レンズに望まれる他の添加剤。幾つかの実施形態において、重合性混合物はまた、ヒドロゲル前駆体であってもよい。
【0060】
ここで使用される場合、Xの重合性混合物の酸素平衡濃度という表現は、仮に混合物が1.0気圧(1013ミリバール)でX%の酸素濃度を有する雰囲気と平衡させることとされた場合に得られる重合性混合物中の酸素濃度を意味することが意図される。
【0061】
ここで使用される場合、光学要素という用語は、眼科デバイス、工業用途で使用されるレンズ、内視鏡用レンズ、検査デバイス、光ファイバーデバイス、カメラレンズ、望遠鏡レンズ等を含むが、これらに限定されないことが意図されている。現在特に興味深い実施形態は、眼科デバイスである。
【0062】
幾つかの実施形態では、光学要素は、その中に埋め込まれた1つ以上の物体、例えば、挿入部、電子機器、及び機能性添加剤放出リザーバ又はデポから選択される固体物体を有する。
【0063】
他の実施形態では、光学要素は、生物学的活性物質を含む1つ以上の機能的に活性な物質を含む。
【0064】
ここで使用される眼科デバイスは、眼球の前にある、又は眼球若しくは角膜、眼瞼及び眼腺を含む眼球の一部にある、若しくは眼球上にあるデバイスである。これらのデバイスは、光学的矯正、美容的強化(例えば虹彩の色)、視力強化、治療的利益(例えば包帯レンズとして)、又は潤滑剤、湿潤剤、抗炎症、抗アレルギー、抗細菌、抗感染、抗高血圧などの治療剤、又は眼の健康のための栄養補助食品、ビタミン、抗酸化剤を送達するデバイス、又は前述のいずれかの組み合わせを提供することができる。眼科デバイスの例示的な例には、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ(例えば、ソフトコンタクトレンズ又はハードコンタクトレンズ)、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、角膜インレーインプラントなどの角膜インプラント、及び眼科/接眼挿入部から選択されるものが含まれる。
【0065】
幾つかの実施形態では、眼科デバイスは、コンタクトレンズ、特に、ヒドロゲル材料のコンタクトレンズなどのソフトコンタクトレンズであり、他の実施形態は、ヒドロゲル材料の眼内レンズを含んでもよい。
【0066】
ヒドロゲルという用語は、少なくとも10重量%の含水率まで水を吸収した(膨潤した)架橋ポリマーを指す。好ましくは、このようなヒドロゲル材料は、少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%、及び70~90重量%までの含水率を有する。
【0067】
ここで使用される場合、重合性混合物という用語は、外部エネルギー(例えば、280~450nmの化学放射線(UV光線又は青色光線のような)又は熱)に曝露されると、重合を経てポリマー又はポリマーネットワークを形成することができる成分(反応性成分及び場合によっては非反応性成分)の液体混合物を指す。典型的には、混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤及び開始剤などの反応性成分を含む。さらに、重合性混合物は、湿潤剤、離型剤、染料、UV吸収剤及びフォトクロミック化合物などの光吸収化合物などの添加剤のような他の成分、反応性であっても非反応性であってもよいが、得られる眼科デバイス内に保持されることが可能な任意の成分、ならびに医薬、ビタミン、抗酸化剤及び栄養補助食品化合物をさらに含んでもよい。広範囲の添加剤が、製造される眼科デバイス及びその意図される用途に基づいて、添加されてもよいことが理解されるだろう。
【0068】
混合物が重合性であるという事実は、典型的には、混合物の1つ以上の構成成分(例えば、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤など)が、少なくとも1つの重合性官能基、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基のようなエチレン性不飽和基などの、少なくとも1つの重合性官能基を含むことを示唆する。
【0069】
幾つかの実施形態において、重合性混合物は少なくとも1つの親水性成分を含有する。幾つかの実施形態において、親水性成分は、親水性モノマー、例えば、ヒドロゲルを調製するのに有用であることが知られているものから選択され得る。
【0070】
幾つかの実施形態において、親水性は、少なくとも5グラムの化合物(類)が、弱酸性条件(pHが5~7)又は塩基性条件(pHが7~9)の下で、25℃で100mLの脱イオン水に可溶であることを意味し、幾つかの実施形態において、10グラムの化合物(類)が、弱酸性条件又は塩基性条件の下で、25℃で100mLの脱イオン水に可溶であることを意味する。
【0071】
親水性とは対照的に、疎水性は、5グラムの疎水性化合物が弱酸性又は塩基性条件下で、25℃で100mLの脱イオン水に完全に溶解しないことを意味する。化合物の溶解性は、目視観察によって確認され得、目に見える沈殿物や濁りがあれば、その化合物が疎水性であることを示す。溶解度は、混合又は攪拌の約8時間後に決定されてもよい。
【0072】
適切な親水性モノマーの1つのクラスには、アクリル又はビニル含有モノマーが含まれる。このような親水性モノマーは、それ自体架橋剤として使用されてもよいが、1つ以上の重合性官能基を有する親水性モノマーが使用される場合、その濃度は、所望の弾性率を有するコンタクトレンズを提供するために上述されたように制限されるべきである。
【0073】
ビニル型又はビニル含有モノマーという用語は、ビニル基(-CH=CH2)を含有し、重合することが可能なモノマーを指す。親水性ビニル含有モノマーの例には、N-ビニルアミド、N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP))、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、及びN-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミドなどのモノマーが含まれるが、これらに限定されない。代替のビニル含有モノマーには、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、及び5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドンが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
アクリル系モノマー又はアクリル含有モノマーは、アクリル基;(CH2=CRCOX)を含有するモノマーであり、ここでRはH又はCH3であり、及びXはO又はNであり、これらはまた容易に重合することが知られており、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、及びこれらの混合物などである。
【0075】
本発明で採用され得る他の親水性モノマーには、末端ヒドロキシル基の1つ以上が重合性二重結合を含有する官能基で置換されたポリオキシエチレンポリオールが含まれるが、これらに限定されない。例えば、ポリエチレングリコール、エトキシル化C1-20アルキルグルコシド、及びエトキシル化ビスフェノールAを、イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸無水物、メタクリロイルクロリド、ビニルベンゾイルクロリドなどの末端キャップ基の1モル当量以上と反応させ、カルバメート基又はエステル基などの連結部位を介してポリエチレンポリオールに結合した1つ以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを製造してもよい。他の適切な親水性モノマーは、当業者に明らかであろう。
【0076】
幾つかの実施形態において、親水性成分は、DMA、HEMA、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、NVP、N-ビニル-N-メチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びそれらの組み合わせなどの少なくとも1つの親水性モノマーを含む。別の実施形態において、親水性モノマーは、DMA、HEMA、NVP及びN-ビニル-N-メチルアクリルアミド及びそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、親水性モノマーは、DMA及び/又はHEMAを含む。
【0077】
親水性成分(複数可)(例えば、親水性モノマー(複数可))は、所望される特性の特定のバランスに応じて、広い範囲の量で存在してもよい。幾つかの実施形態において、親水性成分の量は、全反応性成分に基づいて、5から40重量%などの、60重量%までである。
【0078】
疎水性シリコーン含有成分(又はシリコーン成分)とは、モノマー、マクロマー又はプレポリマー中に少なくとも1つの[-Si-O-Si]基を含有するものである。幾つかの実施形態において、Si及び付着Oは、シリコーン含有成分中に、シリコーン含有成分の全分子量に対して、30重量%を超える量などの、20重量%を超える量で存在する。有用なシリコーン含有成分には、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基などの重合性官能基が含まれる。
【0079】
また、幾つかの実施形態において、架橋性モノマーは、単独で又は組み合わせて、採用されてもよく、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ここで、ポリエチレングリコールは、例えば、400までの分子量を有する)、及び他のポリアクリレート及びポリメタクリレートエステルを含んでもよい。架橋性モノマーは、重合性混合物100重量部に対して、通常の量、例えば0.1~5、好ましくは0.2~3の量で使用されてもよい。
【0080】
使用されてもよい別のモノマーはメタクリル酸であり、これはヒドロゲルが平衡状態で吸収する水の量に影響を与えるために使用される。メタクリル酸は通常、HEMAのような親水性モノマーの100重量部に対して0.2~8重量部の量で使用される。重合混合物中に存在し得る他のモノマーには、メトキシエチルメタクリレート、アクリル酸などが含まれる。
【0081】
実施形態において、重合性混合物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)又はヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマー、好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマーを含む。
【0082】
実施形態において、重合性混合物は、ヒドロキシエチルメタクリレートモノマー又はヒドロキシエチルアクリレートモノマーではないメタクリレートモノマー又はアクリレートモノマーを含む。
【0083】
実施形態において、重合性混合物は、反応性シリコーンモノマー又はオリゴマーを含む。
【0084】
更なる実施形態において、重合後の重合性混合物は、水中で非膨潤性であるポリマー、例えば、2重量%を超える含水量を取り込むことができないポリマーを提供する。
【0085】
1種以上の重合開始剤が重合性混合物に含まれてもよい。重合開始剤の例には、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、イソプロピルペルカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどのような、中程度に昇温された温度でフリーラジカルを発生する化合物、及び芳香族アルファ-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び第3級アミン+ジケトンなどの光開始剤系、これらの混合物などが含まれるが、これらに限定されない。光開始剤の例示は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチル)イルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル及びカンファーキノンと4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルの組み合わせである。市販の紫外線及び可視光線開始剤系には、Irgacure 819(登録商標)及びIrgacure 1700(登録商標)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズから)、Lucirin TPO開始剤(BASFから入手可能)が含まれるが、これらに限定されない。市販のUV光重合開始剤には、Irgacure 651、Darocur 1173及びDarocur 2959(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)が含まれる。これらの光重合開始剤及び他の光重合開始剤が、使用されてもよく、J.V.Crivello&K.Dietliker著、G.Bradley編、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1998年発行の第3巻「フリーラジカルカチオンおよびアニオン光重合用の光開始剤、第2版」に開示されている。
【0086】
幾つかの実施形態において、重合開始剤は、0.1~2重量%などの、重合性混合物の重合を開始してもよい量で重合性混合物中に含まれる。重合性混合物の重合は、使用される重合開始剤に応じて、熱又は可視光若しくは紫外線、又は他のエネルギーの適切な選択を使用して開始され得る。あるいは、幾つかの実施形態において、開始は、例えば、e-ビームを使用して、光開始剤なしで実施され得る。しかし、光開始剤が使用される場合、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))又は1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとDMBAPOとの組み合わせなどのビスアシルホスフィンオキシドであり、別の実施形態において、重合開始の方法は、可視光活性化を介する。
【0087】
幾つかの実施形態において、重合性混合物は、1種以上の内部湿潤剤を含んでもよい。内部湿潤剤には、高分子量の親水性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。内部湿潤剤の例には、ポリ(N-ビニルピロリドン)及びポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)などのポリアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
内部湿潤剤(複数可)は、所望される特定のパラメータに応じて、広範囲の量で存在してもよい。幾つかの実施形態において、湿潤剤(複数可)の量は、全反応性成分に基づいて5~40重量%など、6~30重量%などの、50重量%までである。
【0089】
さらに、重合性混合物は、キレート化剤、重合禁止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、ガラス遷移調整剤、相溶化成分、紫外線吸収化合物、眼科用医薬剤、眼科用消炎剤のような医薬剤、賦形剤、抗菌化合物、共重合性及び非重合性染料、離型剤、反応性色合い、顔料、及びキレート化剤、ならびにこれらの組み合わせから選択されるが、これらに限定されない1つ又は複数の補助成分を含有してもよい。幾つかの実施形態において、このような補助成分の合計は、20重量%までであってもよい。好ましい実施形態は、可視光、紫外光、赤色光、及び赤外光のうちの1つ又は複数に曝露されたときに反応性種を生成する光開始剤を含んでもよく、可視光、紫外光、赤色光、及び赤外光吸収部分のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0090】
重合性混合物は、例えば、混合物の構成成分を単純に混合することによって調製されてもよい。幾つかの実施形態では、反応性成分(例えば、親水性モノマー、湿潤剤、及び/又は他の成分)が不活性希釈剤と一緒に混合されて重合性混合物を形成する。このような希釈剤は、含水時に形成される眼科デバイスの膨張を制御し、成分の溶解性を補助し、ガラス遷移温度を調節する効果を有してもよい。他の実施形態は、不活性希釈剤を除外してもよい。
【0091】
適切な希釈剤のクラスには、限定されないが、3~20の炭素を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20の炭素を有するアミド、3~10の炭素をエーテル、ポリエーテル、有するケトン、及び8~20の炭素を有するカルボン酸が含まれる。炭素数が増加するにつれて、極性部分の数もまた所望のレベルの水混和性を提供するために増加されてもよい。幾つかの実施形態では、第1級及び第3級アルコールが好ましい。好ましいクラスには、4~20の炭素を有するアルコール及び10~20の炭素原子を有するカルボン酸が含まれる。
【0092】
幾つかの実施形態において、希釈剤は、1,2-オクタンジオール、t-アミルアルコール、3-メチル-3-ペンタノール、デカン酸、3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、トリプロピレンメチルエーテル(TPMEX)、ブトキシエチルアセテート、それらの混合物などから選択される。
【0093】
幾つかの実施形態において、希釈剤は、水にある程度の溶解性を有するものから選択される。幾つかの実施形態において、希釈剤の少なくとも約3%は水と混和性である。水溶性希釈剤の例には、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、エタノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、1-エトキシ-2-プロパノール、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、EH-5(Ethox Chemicals社から市販)、2,3,6,7-テトラヒドロキシ-2,3,6,7-テトラメチルオクタン、9-(1-メチルエチル)-2,5,8,10,13,16-ヘキサオキサヘプタデカン、3,5,7,9,11,13-ヘキサメトリオキシ-1-テトラデカノール、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。アルコールのホウ酸エステルなどのアルコールのエステルは、希釈剤の他の実施形態である。
【0094】
幾つかの実施形態において、好ましい希釈剤の量は、完全な重合性混合物に基づいて、10~60重量%など、20~50重量%などの、典型的には60重量%までである。
【0095】
別の態様では、幾つかの実施形態において、重合性混合物は、重合性混合物の重量に基づいて、0.5~5.0重量%の量の1つ以上の架橋剤、0~60.0重量%の1つ以上の非反応性希釈剤(例えば、多価アルコール、多価アルコールのエステル又は例えば、グリセロール及びグリセロールエステルなど多価アルコールのエーテル)、及び100.0ppm未満及び好ましくは50.0ppm未満の量の1つ以上の重合禁止剤を含む。グリセロール及びグリセロールエステルなど)を含む。重合性混合物の粘度も重要な役割を果たしてもよく、典型的には1~25cP、例えば2~15cP、特に3~10cPであるが、他の粘度も本発明の範囲内である。
【0096】
上述のように、重合性混合物の酸素平衡濃度は、好ましくは0.05~8,0体積%、例えば0.2~6.0体積%、例えば0.5~6体積%の範囲である。下限値(0.05%、0.1%、0,2%など)は実用上の理由から記載され、さらに低い濃度を達成することも十分可能である。
【0097】
重合性混合物の酸素含有量は、(先に周囲雰囲気(1013mbar、21体積%O2)下で混合されていた)重合性混合物を減圧Pに曝露することによって所望のレベル(X)に調整されてもよく、ここでP=X*1013/21mbarである。その後、減圧(「真空」と呼ばれることもある)が解放され得、酸素調整された重合性混合物が、Xの酸素濃度を有する好適な雰囲気に対応する、酸素濃度を有する雰囲気下で貯蔵され得る。
【0098】
幾つかの好ましい実施形態では、堆積された重合性混合物、及び重合性混合物と接触する基板に、制御された周囲雰囲気中の酸素濃度は、重合性混合物中の酸素平衡濃度よりも低い。
【0099】
3D印刷デバイス
複数の液滴の堆積は、典型的には、付加製造印刷ヘッドを使用して達成される。このような印刷ヘッドは、液体の複数の液滴の1次元パターン(線の形)又は2次元パターンのいずれかの同時堆積を行うことができる。幾つかの実施形態では、液滴は、例えば、液滴当たり約3ピコリットル~20ピコリットルなどのピコリットルの範囲、及び好ましくは基板に対する印刷ヘッドの10~30パスのような、付加製造のためのより小さい範囲にあることが好ましい。
【0100】
幾つかの実施形態では、複数の液滴の堆積の所望の速度及び精度は、重合性混合物の2次元パターンの同時堆積が可能な付加製造印刷ヘッドで達成されてもよく、眼科デバイスのエネルギー透過率の整数マップ(例えば、グレースケール画像)を表す重合性混合物の液滴のパターン(又は複数の連続パターン)が印刷され得るようになっていてもよい。
【0101】
ここに開示される実施例を形成するために使用される実施形態などの幾つかの好ましい実施形態では、グレースケール画像の形態においてエネルギー透過率の整数マップを表す2次元パターンは、眼科デバイスの少なくともサイズの領域に液滴を堆積させる印刷ヘッドの1回のパスで達成可能である。この目的に適した商業的に入手可能な印刷ヘッドには、富士フイルム製のSamba(商標)印刷ヘッド、例えば、Samba(商標)G3L印刷ヘッドがあり、これはモジュール当たり2048個のノズルを有し、1200ネイティブdpiの精度でネイティブドロップサイズが2.4ピコリットルから13,2ピコリットル最大ドロップサイズのオーダーの液体の堆積が可能である。
【0102】
3D印刷デバイスによって堆積される液滴の各パスのパターンは、形成される光学レンズの所望の透過率パターンと、透過率パターンに相関する形成される光学レンズの形状とに関連して決定されてもよい。例えば(眼科デバイスの場合)、患者の眼を測定することから収集されたデータが入力を生成するために使用されてもよい。データには、例えば、光学特性、表面特性、サイズ及び形状の寸法、眼疾患の状態の観察などが含まれてもよい。
【0103】
3次元(3D)印刷可能モデルは、コンピュータ支援デザイン(CAD)パッドケージ又は患者の眼のスキャンに基づいて作成されてもよい。患者の眼のスキャンは、患者の眼の形状及び外観を代表するデジタルデータを収集及び分析することを含んでもよい。収集されたデータに基づいて、対象となる眼科デバイスの3次元モデルが作成されてもよい。3次元モデルは、ソフトウェアによって処理されて、モデルをグレースケール画像(又は他のエネルギー強度マッピング)に変換し、特定のタイプの3Dプリンタに合わせた命令を含むファイルを生成し、グレースケール画像又は他のエネルギー透過率パターンに従って重合性混合物を繰り返し塗布してもよい。
【0104】
基板
本発明は、基板の表面上に重合性混合物の複数の液滴を堆積することを提供する。基板に適した材料には、ガラス、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、及び他の滑らかな材料の1つ以上が含まれる。
【0105】
幾つかの好ましい実施形態において、基板の形状は、結果として得られる(非含水)眼科デバイスの一側面の形状を表し、例えば、コンタクトレンズについては弧状又は他の方法で湾曲しており眼内レンズについては比較的平坦である部分を少なくとも含んでもよい。基板のサイズは、好ましくは、完成した含水眼科デバイスの必要な寸法に適合するように調整される。回転軸を有する基板は、旋盤加工、研削加工、射出成形のうちの1つ以上によって形成されてもよい。回転軸を有する形状に制約されない基板は、3D印刷などの他の工程で作製されてもよい。基板はしたがって、空気に曝露された患者の眼の一部に基づく基板表面形状など、球形ではない光学表面形状を含んでもよい。
【0106】
幾つかの実施形態では、重合性混合物を受け取る基板の表面の濡れ性を調整するために、基板の表面は、界面活性剤、UVに曝露される、オゾンに曝露される、及びプラズマ処理に曝露される、或いはこれらの処理の組み合わせのうちの1つ以上で前処理されてもよい。幾つかの好ましい実施形態において、ガラス又はポリマー基板の受取表面は、Tween80、又はDow Corning Additive67、Additive14、Additive57、Xiameter OFX-0193などのシリコーン界面活性剤で前処理されてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、界面活性剤は重合性混合物に含まれ得る。
【0107】
幾つかの実施形態において、眼科レンズの製造の方法は、基板中の酸素濃度を制御雰囲気中の酸素濃度と平衡にすることを含む。同様に、幾つかの好ましい実施形態において、基板中の酸素濃度は、基板上に堆積された重合性混合物の酸素含有量と同じかそれ未満である。
【0108】
制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡状態にある基板内の酸素濃度を得るために、基板は、例えば、少なくとも8時間の期間、液滴の堆積の前に、制御された雰囲気(又は対応する雰囲気)に曝露されることが可能であってもよい。
【0109】
幾つかの実施形態では、基板は、その内部で限られた量の酸素のみを利用できてもよく、したがって、基板内の酸素濃度に関して特別な予防措置を講じる必要がなくてもよい。
【0110】
代替の実施形態では、基板はそれ自体で眼科デバイス(例えば、通常の市販コンタクトレンズなど)であり、ここに記載された方法によって変更されて、最終的な眼科デバイス(例えば、1つ以上の異なる光学特性を有するように眼科デバイス、変更されたカラーパターンを有する眼科デバイス、異なる物理特性を有する眼科デバイスなど)を形成するようになっている。
【0111】
制御された雰囲気
幾つかの実施形態では、ここに記載された堆積印刷が行われる周囲雰囲気が制御されてもよい。制御された周囲雰囲気は、非限定的な例として、規定された範囲の特定ガス、規定された範囲の微粒子、及び制御された波長の光又は他のエネルギー波長の一方又は両方を含んでもよい。幾つかの好ましい実施形態において、好適に低濃度の酸素が重合性混合物を包含する雰囲気で達成されて、重合性混合物の酸素含有量が適切に制御されるようになっている。幾つかの実施形態において、基板の受取表面は、制御された周囲雰囲気内に含有されていてもよい。
【0112】
具体的な非限定的例として、幾つかの実施形態では、制御された雰囲気は、最大でも5.0体積%の酸素濃度を有する。幾つかの実施形態において、制御された雰囲気中の酸素濃度は、最大で2.0体積%、例えば0.01~2.0体積%、例えば0.03~1.5体積%、例えば0.05~1.2体積%の範囲、例えば0.1~1.1体積%、より好ましくは最大で1.0体積%である。下限(例えば0.01%、0.03%、0.05%など)は実用的な理由から記載されており、さらに低い濃度を達成することは十分に可能である。
【0113】
別の態様において、幾つかの実施形態では、重合性混合物の堆積が行われる制御された雰囲気は、最も好都合には、1.0atm.(1013mbar)であり、これは21体積%の酸素濃度に相当する。通常の大気中に見出される21体積%よりも低い酸素濃度は、好適には、大気中の空気と、幾つかの好ましい実施形態では、窒素、ヘリウム、アルゴン、又は他の不活性ガスのうちの1つ以上などの不活性ガスなどの他のガスとの混合によって得られてもよい。
【0114】
幾つかの実施形態では、制御された雰囲気は、純粋な酸素と特定量混合された窒素などの不活性ガスを含んでもよい。制御された雰囲気のための1つの好ましいアプローチは、不活性ガスとして窒素を使用して、大気中の酸素を置換し、それによって所望のレベルの酸素濃度を達成する。
【0115】
酸素濃度は、酸素濃度計によって監視され、付加製造工程の前、付加製造手順の開始時、及び製造工程中のうちの1つ又は複数で調整され、好ましくは、光学要素及び基板の一方又は両方を準備する工程中にも断続的又は連続的に制御されてもよい。
【0116】
液滴の付着と硬化
本発明の方法は、重合性混合物の複数の液滴を、制御された雰囲気下で、基板、及び先に堆積液滴の一方又は両方の表面上への連続的な堆積のパスを含む。重合性混合物の液滴は、好ましくは、印刷ヘッドから放出され、グレースケール画像(又は光強度を表す他の光マップ)などのエネルギー透過率パターンを代表する2次元パターンに基づいて堆積される。重合性混合物の液滴の堆積に続いて、液滴は制御された量の化学放射線に曝露されて、重合性混合物の液滴を基板に対して適所にピン止めするゲル化工程を引き起こしてもよい。
【0117】
重合性混合物は、典型的には、例えばここに記載された印刷デバイスなどの3D印刷デバイスを使用して堆積される。実施形態において、個々の液滴は、0.5~50pL、例えば1~40pL、又は2.0~15pLのような1.5~30pL、の体積を有する。
【0118】
幾つかの実施形態において、重合性混合物の各複数の液滴は、基板に対する表面上に堆積される。基板に対する表面は、基板の上面、先に堆積液滴、及び基板及び先に堆積された重合性混合物の液滴の一方又は両方の上に置かれた成形品、のうちの1つ以上と接触する液滴を含んでもよい。先に堆積された重合性混合物の上に堆積された重合性混合物は、先に堆積された重合性混合物に一体化して、重合性混合物の単一の塊が識別可能な層なしで基板上に形成するようになっていてもよい。表面と接触した後、重合性混合物は、眼科デバイスを形成するための液滴の連続層の最終層の堆積後に、限定された化学放射線又は熱に曝露されてもよい。成形品上に堆積された重合性混合物の液滴は、成形品に付着してもよい。成形品は、湿潤剤で処理された表面を有してもよい
【0119】
堆積された重合性混合物の連続する処分層が化学放射線(例えば、UV光)に曝露される本発明の変形において、重合性混合物は、光開始剤を含んでもよい。連続するパスに配置された重合性材料が熱に曝露される本発明の変形において、重合性混合物は熱開始剤を含んでもよい。
【0120】
本発明の幾つかの変形では、連続したパターンは、液滴の層の各堆積後に断続的な放射線(例えば、UV光)に曝露される。このような断続的な化学放射線への曝露によって得られる重合度は、典型的には、重合性混合物をピン止めし、又は他の方法でゲル化を得て、堆積液滴の第1の位置から別の位置へのマイグレーションを制御するようにする目的で必要とされる程度である。好ましい実施形態において、マイグレーションのこのような制御は、堆積された重合性混合物の限定された流れを可能にするが、堆積された重合性混合物の無制限の再配列を防止する。例えば、幾つかの実施形態において、制御されたマイグレーションは、重力が、堆積液滴を先に堆積された重合性混合物と一体化し、次いでゲル化工程で適所にピン止めされる重合性混合物の滑らかにされた表面に融合することを可能にする。
【0121】
本発明の幾つかの実施形態では、重合性混合物の複数の液滴が、基板及び先に堆積された重合性混合物の一方又は両方を含む表面上に堆積され、それによって、印刷ヘッドを制御するために参照される2次元グレースケール画像などの、エネルギー透過率を表す整数マップに基づくエネルギー透過率特性を有する重合性混合物のパターンを形成する。
【0122】
堆積された重合性混合物は、好ましくは、重合性混合物を堆積させる印刷ヘッドの各パス(又は幾つかのパス)の後にピン止め化学放射線に曝露され、最終的には、光学要素を形成するために液滴重合性混合物を堆積させる印刷ヘッドの最終パスの堆積の後に硬化化学放射線に曝露される。
【0123】
印刷ヘッドのパスは、重合性混合物が受け取られる基板に対して移動する印刷ヘッド、基板及び先に堆積された重合性混合物)が印刷ヘッドに対して移動すること、及び/又は重合性混合物が堆積される際に互いに対して移動する印刷ヘッド及び基板、のうちの1つ又は両方を含んでもよい。幾つかの好ましい実施形態において、印刷ヘッドの第1のパスに続くパスを介して堆積された重合性混合物のパターンの少なくとも一部は、先に堆積された重合性混合物と結合してその中に一体化され、それによって単一の体積部の重合性混合物を形成する。重力は、堆積された重合性混合物の限定された移動を誘導して堆積された重合性混合物の表面の滑らかさをもたらし、重力に基づく移動は、表面張力および微小力によって制限されてもよい。好ましくは、重合性混合物の単一の体積部は、限定された量の化学放射線への曝露によってピン止め及び/又はゲル化され、それによって重力誘導移動の滑らかにする効果に続く付加的な移動を制限する。
【0124】
本発明の幾つかの変形では、印刷ヘッドの一連の連続したパス、例えば、2~20パスの重合性混合物が、堆積された重合性混合物をピン止め及び/又はゲル化するのに有効な断続的な化学放射線に曝露する前に、堆積される。断続的な化学放射線への曝露の前に、堆積された重合性混合物は、重合性混合物の単一の体積部として限定されたマイグレーションを経てもよい。
【0125】
幾つかの実施形態では、受取表面の任意の特定の部分における印刷ヘッドの1パスで堆積される重合性混合物の量は、50μmまでであってもよいが、好ましくは最大25μmである。
【0126】
本発明の幾つかの変形では、重合性混合物は複数の光開始剤を含み、2つ以上の光開始剤が異なる波長の化学放射線に対して応答性を有する。これが特に興味深いのは、それが(ピン止め又はゲル化のための)断続的な露光のために1つの波長のUV光を利用し、光学要素を形成するために堆積された重合性混合物の最終硬化のために別の波長のUV光を利用することが望ましい場合である。従って、本発明の幾つかの変形では、第1の重合開始剤が、部分的に重合された重合性混合物の構成体を作成するために(適切な第1の化学放射線への曝露と併用して)使用され、第2の重合開始剤が、硬化工程を完了するために(適切な第2の化学放射線への曝露と併用して)使用される。
【0127】
重合性混合物中の酸素のレベルを所望の酸素含有量の範囲内に制御することに加えて、本発明の幾つかの実施形態は、本開示に記載の工程を使用して光学要素を作製するように、堆積された重合性混合物の重合を制御することを含み、堆積後の指定された時間枠内の堆積された重合性混合物の重合度は、後続のパスからの液滴が先に堆積された重合性混合物に融合して歪みが制限された光学要素の構造を形成することを可能にする一方で、重合混合物の移動を停止させるか又は実質的に遅くするゲル化の程度に、制限される。
【0128】
断続的なゲル化のための工程は、しばしば堆積された重合性混合物のピン止め又はゲル化と呼ばれることがある。本発明の幾つかの変形において、ピン止め工程は、例えば、UV硬化性重合性混合物及び/又はインク(UVインク)への紫外(UV)光の印加などの、ゲル化を引き起こすのに適した強度、波長及び時間の長さで、用量の化学放射線を印加することを含んでもよい。化学放射線の波長は、製造工程で使用される重合性混合物及び/又はUVインクの光化学的特性に適合されてもよい。
【0129】
断続的なゲル化の結果、堆積された重合性混合物及び/又はインク液滴は、より高い粘度状態に移動するが、全硬化には至らない。ピン止め又はゲル化(又はゲルする)を含む本発明の変形は、堆積された重合性混合物の流れ及び形態を管理する能力を向上させており、その結果、堆積された重合性混合物の最終硬化を介して形成された光学要素において高い光学的品質を提供する。例えば、重力がゲル化された重合性混合物の表面を滑らかにすることを可能にするが光学要素の形状を大きく変化させない十分な流れが好ましい。幾つかの変形では、例えば遠心力などの他の力が、表面形状を形成するために使用されてもよい。
【0130】
ゲル化及び硬化の工程は、光開始剤、架橋剤、化学放射線の源(例えば、UV光源)、化学放射線の強度、及び照射時間のうちの1つ以上の選択及び/又は集中に基づいて変更されてもよい。化学放射線の源の例には、発光ダイオード(LED)又は電球、レーザーなどが含まれてもよい。
【0131】
幾つかの具体的な実施形態では、2つの異なる波長で吸収する2つの光開始剤が、対応するUV LED光源(例えば、365nm及び400nm)で使用される。1つの開始剤は、重合性混合物のゲル化を開始できるが重合を完了するには不十分である濃度で存在してもよい。これは、最終的な硬化の前に、個々の層が同じ相対的な転化度になることを可能にする。光学要素全体の最終的な重合は、別の光重合開始剤/UV LED光の組み合わせ(例えば、第2の光重合開始剤の化学放射線エネルギー、又は第3の光重合開始剤の化学放射線エネルギーなど)を使用する別のステップとして行われてもよく、化学放射線エネルギーは光学的機能に必要な均一なポリマーネットワークをもたらす。
【0132】
ここでの代替として、Tg以上で活性な熱開始剤が、第2の(又は他の)光開始剤の代わりに、又はそれに加えて使用されて、堆積された重合性混合物の硬化を完了させてもよい。本発明はまた、堆積工程ステップ全体にわたって、及び最終硬化ステップ中に、堆積された重合性混合物の酸素含有量の制御なしで、酸素阻害効果がポリマーネットワークの均一性に悪影響を及ぼし、不完全に硬化したポリマー、したがって粘着性の表面を有するデバイスの生成につながる可能性があることを提供する。
【0133】
幾つかの実施形態では、重合性混合物が曲面上に堆積される場合、ここに記載された方法に従って、最初の堆積物、又は複数の堆積物が、重合性混合物の液滴のパターンとして曲面上に堆積されてもよい。液滴のパターンは、表面張力を許容する体積及び分布を含んで、それによって堆積された重合性混合物を適所にピン止めするゲル化工程で部分的に硬化するまで、限定された流れ又は他の移動で重合性混合物の液滴のパターンを維持する。
【0134】
印刷ヘッドからの追加の液滴の後続の堆積は、受取基板の表面が完全に覆われてその上に光学要素を構築するための基礎として確立されるまで、最初の堆積又は後続の層によって残された空間を埋めてもよい。ドットパターンの代替には、液滴を堆積して非常に薄い層(例えば、1ミクロン~8ミクロン)を形成すること、及びここに開示される工程でそのような非常に薄い層上に光学要素を構築することが含まれる。
【0135】
幾つかの実施形態では、印刷ヘッドを動作不能にするか又は低下した性能レベルで動作可能にする可能性のある印刷ヘッド内のモノマーの早期ゲル化又は重合を防止するために、モノマーを含む印刷ヘッドを、UV放射線のような化学放射線の照射を受け取らないように隔離することが有用である。化学放射線からの隔離は、低レベルの阻害剤を含む反応性モノマーを使用する場合及び/又は低酸素レベルの環境で印刷ヘッドを使用する場合に、特に重要である。
【0136】
一旦堆積されたインク又は重合性混合物の移動を停止又は減速させるために材料の同時印刷及びピン止めを達成する目的で、本発明の幾つかの実施形態は、印刷ヘッドから化学放射線源(例えば、UV光源)を隔離して、印刷ヘッド内の重合性混合物のゲル化/重合の可能性を本質的に排除又は実質的に低減するように動作可能な装置を含む。印刷ヘッドを化学放射線源から隔離し、酸素レベル及び重合混合物の移動の両方を制御することは、作製される最終レンズの光学性能に悪影響を及ぼすマトリックス内のアーチファクトなしに、正確な形状及び光学デバイスを作製することを可能にする。
【0137】
幾つかの実施形態では、重合性混合物(単数又は複数)の複数の堆積及びゲル化工程が完了した後であるが最終硬化工程が行われる前に、ゲル化して堆積された重合性混合物を溶媒又は水で洗浄し、例えば、過剰なモノマーを除去することが好ましい。
【0138】
次に
図1を参照すると、概略図は、装置とその基礎となるソフトウェアとを備えた付加製造システム100の一例を示し、これは実行されるとき、ソフトウェアは装置を動作可能にする。示されるように、付加製造システム100は、1つ又は複数の付加製造印刷デバイス101~102を含み、これは重合性混合物103の液滴110を、エネルギー強度及び/又はエネルギー透過率のパターン(例えば、グレースケール・パターン)で、基板104によって支持された受取表面103A上に堆積させるように動作可能である。基板104の受取部分104Aは、コンタクトレンズの後方曲線として適するように、滑らかで弧状であってもよい。受取表面103Aは、基板104の所定の受取部分104A及び先に堆積された重合性混合物103の一方又は両方を含んでもよい。
【0139】
1つ又は複数の化学放射線源105及び106(これは同じ波長又は異なる波長のエネルギーを放射するLEDを含んでもよい)。
【0140】
本発明の幾つかの変形は、筐体114内に制御された雰囲気109を提供するための1つ以上のポート107及び108を有する筐体114を含む。筐体114は、基板104、印刷デバイス101~102、液滴110基板上に蓄積された堆積された重合性混合物103からの重合性混合物(コンタクトレンズなどの眼科レンズを形成するように位置付けられる)、及び化学放射線の源105~106のうちの1つ以上に対して周囲であってこれらを包含する雰囲気を含んでもよい。
【0141】
幾つかの実施形態では、基板104は、少なくとも1つの3D印刷デバイス101-1-2に近接して、例えばその下に、位置付けられる。下又は下方という関係は、重力の方向から導かれる。印刷デバイス101-102は、重合性混合物110の液滴を受取表面103A上に吐出するように作動する。受取表面103Aは、基板104の受取部分104Aの表面、先に堆積された重合性混合物103の表面、及び硬質レンズ又は電子デバイスなどの挿入部の受取部分、のうちの1つ又は複数を含んでもよい。液滴は、グレースケール画像のようなエネルギー透過率パターンを再現するパターンで堆積される。パターンの連続的な堆積は、集合されて標的光学要素の所望の形状の重合性混合物の体積部を形成する(例えば、
図4、-5参照)。
【0142】
重合性混合物の液滴110を受取表面103Aに塗布して重合性混合物の体積部103を形成した後、重合性混合物は、第1の線量の化学放射線(これは、第1の波長範囲であり、第1の持続時間であり、第1の強度(例えば、紫外線又は青色光など)に曝露されてもよい。幾つかの実施形態において、第1の範囲の用量の化学放射線は、第1の化学放射線の源105を介して、堆積された重合性混合物に供給されてもよい。最終的な硬化は、凝集された重合性混合物を第2の用量の化学放射線(これは、第2の範囲の波長、第2の持続時間及び第2の強度を含む)に曝露することによって達成され得、同一の化学放射線源105又は異なる化学放射線源106から供給されてもよい。最終的な硬化は、眼科レンズ111のような成形品を基板から取り外すことを可能にすることになる。
【0143】
本発明の幾つかの変形例では、最終硬化工程ステップは、例えば周囲室温よりも上昇した温度などの、制御された温度を有する環境において追加的に実施されてもよい。
【0144】
幾つかの実施形態によれば、システム100の第1の印刷ヘッド101は、第1の重合性混合物を提供してもよく、第2の印刷ヘッド102は、第2の重合性混合物を提供してもよく、これは第1の重合性混合物と組成的に同じであっても異なっていてもよく、これは機能性添加剤又は非重合性混合物(例えば、機能性添加剤又は機能性添加剤を含む溶媒)を含んでもよい。
【0145】
システム100内の周囲条件は制御されてもよく、例えば、特に制御雰囲気109の酸素含有量に関して制御されてもよく、また、幾つかの実施形態では、温度、周囲光、微粒子の量、微粒子のサイズ、循環又は他の周囲雰囲気の移動、及びピン止めされていない、重合されていない堆積重合性混合物の移動、堆積重合性混合物の重合、及び堆積重合性混合物の重合によって形成されるデバイスの形状のうちの1つ又は複数に影響を及ぼす可能性のあるほとんどすべての変数が制御されてもよい。
【0146】
基板104が化学放射線を透過することが可能であるか又は化学放射線に対して透明である条件では、放射線の源105及び106の両方、又はいずれか一方は、個々に、又は交互の組み合わせで、
図1に示すものと同様に、基板104の下又は基板104に対して角度をつけて配置されてもよい。加えて、シャッター又は他の化学放射線シールドが、受取表面の上方又は横方向側面に配置されてもよい。シャッター又は他の化学放射線シールドは、印刷ヘッドを化学放射線又は他の化学線状態からシールドするように位置付けられ、機能する。
【0147】
周囲の気体環境の性質は、例えば、入口107、108を通る窒素ガスのパージの使用によって制御され得る。パージは、酸素分圧を所定のレベルまで増加又は減少させるために行われ得る。
【0148】
次に
図2を参照すると、概略図は、3D付加製造システム200内に組み込まれてもよい幾つかの代替的な態様を示している。幾つかの
図1と同じ参照番号が使用されている(例えば、3D印刷ヘッド101~102、化学放射線源105及び106、基板104、1つ又は複数のポート107及び108を有する筐体114、ならびに堆積された重合性混合物110に対する制御された雰囲気)。さらに、
図2に示される実施形態は、酸素センサ204、筐体114の内及び外に構成要素を移動させるためのゲート205、UV遮蔽スクリーン112、基板104と1つ又は複数の3D印刷ヘッド101~102との相対的な移動及び/又は1つ又は複数の化学放射線源105~106との相対的な移動を提供するように構成された作動構造203(例えば、ベルト駆動又はステッピングモータリニア駆動)を含む。
【0149】
示される3D印刷システム200は、
図2に示されるように、
図1のものと同様であり、また、基板104と、3D印刷ヘッド101~102、化学放射線源105~106、及び化学放射線源105~106のうちの1つ又は複数との間の相対移動を提供するように構成された(及び操作可能な)1つ又は複数のアクチュエータ201~203、及び幾つかの実施形態では、遮蔽スクリーン112及び/又は筐体を含む。幾つかの実施形態において、印刷ヘッドアクチュエータ201は、印刷ヘッド101~102のうちの1つ以上を基板104に対して移動させるように構成される(及び操作可能である)。同様に、放射線源アクチュエータ203は、1つ以上の化学放射線源105~106を基板104に対して移動させるように構成される(及び/又は操作可能である)。基板アクチュエータ203は、基板104を印刷ヘッド101~102及び化学放射線源105~106の一方又は両方に対して移動させるように構成される(及び/又は操作可能である)。ベルトドライブ203Aが作動構造203として示され、ステッピングモータトラックが作動構造201~202として示されているが、他のデバイス及び装置も本発明の範囲内である。作動構造201~203は、基板104、印刷ヘッド101~102、及び化学放射線源105~106のうちの1つ又は複数の間の相対移動が、印刷ヘッド(複数可)101~102からの重合性材料110の堆積と調整され得るように、同期化されてもよい。
【0150】
ここに提示された工程は、光学要素211を形成するために説明されたシステム100、200で実施されてもよい。工程は、第1の重合性混合物の液滴110を吐出する第1の印刷ヘッド101と、第1の重合性混合物、前記第1の重合性混合物とは組成的に異なる第2の重合性混合物、及び非重合性物質又は混合物を含んでもよい組成物の液滴110Aを吐出する1つ又は複数の追加の印刷ヘッド(複数可)102とを有する、1つ又は複数の印刷ヘッド101~102の操作を含んでもよい。
【0151】
幾つかの実施形態において、第1の重合性混合物、第2の重合性混合物、及び非重合性混合物のうちの1つ以上は、例えば溶解形態の物質などの、1つ以上の機能的に活性な物質を含む。
【0152】
基板からの眼科デバイスの解放及び後処理
光学要素211(例えば、眼科デバイス)を形成するための重合性混合物103の十分な堆積と、硬化工程の実行の後、光学要素211は通常、基板から解放される。光学要素211を形成するために特定のパターンで堆積された重合性混合物103は、光学要素211の調製中に基板104に十分に物理的に結合され、基板104に対する望まない移動を防止することが好ましいが、重合性混合物103は、基板104からの光学要素211の除去が光学要素211を損傷するほど確実に結合されるべきではない。例えば、幾つかの実施形態では、重合性混合物103の硬化を含む光学要素211の調製中に、重合性混合物103と基板104との間に共有結合が形成されないように注意すべきである。
【0153】
光学デバイス211は、物理的手段によって基板104から解放(又は他の方法で除去)されて、光学要素211を様々な方法で操作できるようになっていてもよい。例えば、光学要素は、副生成物を除去するために光学要素211を洗浄すること、光学要素211を緩衝生理食塩水に浸すこと、光学要素211を着色、マーキング、及び包装することのうちの1つ又は複数を介して操作されてもよい。例えば、本発明の幾つかの変形例では、光学要素211がヒドロゲルポリマーで形成される場合など、光学要素211は、水、及び緩衝生理食塩水などの溶液の一方又は両方で、光学要素211が膨張するように十分に浸されてもよい。膨張は、光学要素211の基板104からの解放を容易にする。溶液はまた、1つ以上の離型剤を含んでもよい。離型剤は、水と組み合わされたときに、離型剤を含まない水溶液を使用してそのような光学要素211を解放するのに必要とされる時間と比較して、光学要素211を基板104から解放するのに必要な時間を減少させる化合物、又は化合物の混合物を含んでもよい。
【0154】
典型的には好ましいが、光学要素211の硬化が基板104から解放する前に完了することは、厳密には必須ではない。
【0155】
幾つかの実施形態では、硬化後、光学要素211は、1つ以上の抽出工程ステップに供されて、光学要素211から未反応成分を除去する。抽出工程ステップは、従来の抽出流体、有機溶媒、アルコール、水(又は緩衝生理食塩水などの水溶液)のうちの1つ又は複数を使用して実行されてもよい。様々な実施形態において、抽出は、例えば、水溶液へのレンズの浸漬又は水溶液の流れへのレンズの曝露によって達成され得る。様々な実施形態において、抽出はまた、例えば、以下の1つ以上を含み得る:水溶液を加熱すること、水溶液を攪拌すること、水溶液中の離型助剤のレベルをレンズの解放を引き起こすのに十分なレベルまで上昇させること、レンズを機械的又は超音波的に攪拌すること、及びレンズから未反応成分を十分に除去するのに十分なレベルまで水溶液中に少なくとも1つの溶出助剤を組み込むこと。上記は、熱、攪拌又はその両方の追加の有り又は無しにより、バッチ又は連続工程で実施してもよい。眼科デバイスはまた、オートクレーブ及び放射線滅菌などの公知の手段によって滅菌されてもよいが、これらに限定されない。滅菌は、光学要素211を適当な保存容器に包装する前又はその後に行ってもよく、好ましくは包装した後に行う。幾つかの好ましい実施形態では、光学要素211は水溶液中で包装される。
【0156】
ヒドロゲルで形成された光学要素211の場合、包装は、約0.9%の塩化ナトリウムとリン酸緩衝系又はホウ酸緩衝系などの適切な緩衝剤を有する生理食塩水溶液中での包装を含んでもよい。さらに、包装溶液は、生物学的活性物質を含む1つ以上の機能的活性物質を含んでもよい。
【0157】
水溶液はまた、離型剤、湿潤剤、滑沢剤、活性医薬成分(API)、ビタミン、抗酸化剤及び栄養補助食品成分、それらの組み合わせ等、などの追加の水溶性成分を含んでもよい。ある実施形態では、水溶液は10重量%未満、他の実施形態では5重量%未満のイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を含み、別の実施形態では有機溶媒を含まない。その水溶液の組成による。水溶液は、精製、リサイクル、又は特別な廃棄手順などの特別な取り扱いを必要としてもよく又は必要としなくてもよい。
【0158】
幾つかの実施形態では、ヒドロゲル光学要素211の水性含有量は、少なくとも30重量%の水、幾つかの実施形態では少なくとも50重量%の水、幾つかの実施形態では少なくとも70重量%の水及び他の実施形態では90重量%の水を含む。
【0159】
本発明の変形では、重合性混合物110はヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマーを含み、方法は、光学要素、好ましくは眼科デバイスを水中で膨潤させる次のステップを含み、それによって光学要素が10~80重量%、好ましくは35~70重量%の含水率を得る。
【0160】
実施形態では、重合性混合物110は、HEMAモノマーを含まないアクリレートモノマーを含み、方法は、光学要素、好ましくは眼科デバイスを水中で膨潤させる後続のステップを含み、それによって光学要素は10~80重量%、好ましくは35~70重量%の含水率を得る。
【0161】
実施形態では、重合性混合物110は反応性シリコーン前駆体を含み、方法は、光学要素、好ましくは眼科デバイスを水中で膨潤させる次のステップを含み、それにより光学要素は5~70重量%、好ましくは10~50重量%の含水率を得る。
【0162】
新規な眼科デバイス
本発明の方法及び装置は、非限定的な例として、以下の1つ又は複数のような、以前には得られなかったデザインの光学要素211の形成を可能にする:対応する光学的矯正を有し、非常に急峻な曲率半径及び非常に高い球面矯正成分及び円柱矯正成分を含む、非回転対称面を有するコンタクトレンズ又は眼内レンズ;単一の球面矯正度数とは対照的に、同じレンズ内に複数の球面及び円柱矯正を含み、フォロプター又は屈折計からの屈折力の平均矯正度数だけでなく、眼の度数分布図を反映する球面矯正度数を含む、コンタクトレンズ又は眼内レンズ;PRK又はLASIK又はLASER手術の悪い手術結果に起因する光学収差或いは異常なコマル面に起因する収差を(非回転対称性により)矯正することができるコンタクトレンズ又は眼内レンズ。
【0163】
反復グレースケール画像に基づく付加製造
ここで
図3を参照すると、グレースケール画像300などの例示的なエネルギー透過率パターンが使用されて、グレースケール画像300を複製するパターンで重合性混合物の液滴の放出を制御する付加製造制御コマンドを作成してもよい。
【0164】
例えば、幾つかの実施形態では、例えば整数マップのような、グレースケール画像300に含まれる画素に関連するデータ値に対応する所与の位置における重合性混合物の堆積量を直接又は滴定変換のいずれかで表すデータのマップが使用される。他の実施形態では、画素に関連する値は、浮動小数点又は実数の整数の他の表現であってもよい。データ値は、画素位置におけるエネルギー透過率の量に対応してもよく、データ値は、電子的にアクセスされてもよく、ソフトウェアコマンドを実行するプロセッサは、データ値を付加製造印刷ヘッド制御コマンドに変換してもよい。印刷ヘッド制御コマンドは、画素ごとに、グレースケール画像300を複製するパターンに対応する位置における重合性混合物の堆積を制御するために実行可能である。例えば、比較的大きなデジタル数値を有するデータ値は、グレースケール画像300のより暗い領域に対応してもよく、グレースケール画像のより明るい領域に対応する放出よりも多量の重合性混合物の印刷ヘッドからの放出に対応してもよい。より多量の重合性混合物はより厚い堆積301に、制御コマンドの値は、より厚い堆積301のための印刷ヘッドの制御コマンド値への、より厚い堆積301の位置におけるグレースケール値の変換によって割り当てられてもよい。同様に、グレースケールに含まれるより小さい値は、より薄い堆積301Aに対応してもよく、適切な印刷ヘッド制御コマンドの値は、より薄い堆積301Aのための適切な制御コマンド値への、より小さいグレースケール値の変換によって割り当てられてもよい。
【0165】
幾つかの例では、より厚い堆積301は、印刷される受取表面上の3D印刷ヘッドのパスの間に、受取表面の特定の位置に比較的多量の重合性混合物を印刷することによって形成されてもよく、より薄い堆積301Aは、より薄い堆積301Aの位置に比較的少ない量の重合性混合物を印刷することに対応してもよい。より厚い量301は、グレースケール画像300の比較的暗い部分に対応してもよく、より薄い量301Aは、グレースケール画像300の比較的明るい部分に対応してもよい。
【0166】
本発明によれば、印刷ヘッド及び関連する重合性混合物の堆積の各パスに続いて、堆積された重合性混合物は、短い期間「着座」することを可能して、材料が重力、表面張力及び微小力などの物理的力によって作用されて表面特性を修正してもよい。表面特性の修正には、非限定的な例として、析出工程中に形成された高い部分及び低い部分を平らにすること、析出した重合性混合物の表面を滑らかにすること、析出した重合性混合物を介在領域に流入させること、及び析出した重合性混合物の均一なエッジを形成することの1つ以上が含まれてもよい。
【0167】
本質的に、本発明は、金型表面及び/又は旋盤加工表面などの製造された表面とは対照的に、自然界に存在する物理的な力によって形成される上面302についても可能である。重力は、堆積された重合性混合物が、例えば、制御された量の化学放射線への曝露によってピン止めされるなどのゲル化工程を経る前に、堆積された重合性混合物の上面を滑らかにすることになる。
【0168】
本発明の幾つかの変形では、制御コマンドが、3D印刷ヘッドが受取表面上を何回通過したかを決定するために使用されてもよい。3D印刷ヘッドの通過の数は、堆積された重合性混合物の厚さと相関してもよく、また堆積された重合性混合物のパターンの特定の位置におけるエネルギー透過率の量と相関してもよい。このようにして、堆積された重合性混合物は、所望の眼科的品質を有する眼科レンズを形成するのに適した形状及び体積で、堆積され、ピン止めされ、最終的に硬化されてもよい。堆積された重合性混合物は、対応するグレースケール画像の繰り返しの適用により、十分な厚さと適切な形状を達成する。
【0169】
本発明の幾つかの変形では、3D印刷ヘッドの各パスは、同じグレースケール画像に対応する重合性混合物のパターンを印刷してもよく、他の実施形態では、3D印刷ヘッドの異なるパスは、前のパスとは異なるグレースケール画像に対応してもよい。前述のように、本発明の幾つかの変形例では、重合性混合物を堆積させる3D印刷ヘッドの各パスの後に、堆積された重合性混合物を部分的に重合させるのに十分な量の化学放射線、熱活性化などのゲル化工程への重合性混合物の曝露が続いてもよい。硬化工程は、重合性混合物の最終パスが完了した後に完了してもよい。種々の実施形態において、最終層は、ピン止めステップに曝露されてもよく、及び/又は全硬化工程に直接移動してもよい。
【0170】
硬化及び/又はピン止めは、堆積されたモノマーに1以上の光開始剤の含有によって促進されてもよい。光開始剤は、非限定的な例として、約392nM及び400nMのエネルギーによって活性化される開始剤を含んでもよい。
【0171】
幾つかの実施例では、エネルギー透過率パターン(例えば、グレースケール画像)は、光学走査工程、画像取り込み工程、又は写真撮影工程を介するなどして処理される物理的形態の成形品から導出されて、エネルギー透過率データを例えばデジタルデータ値のような電子的形態に取り込んでもよく、電子的形態が制御コマンドに変換されてもよい。
【0172】
本発明の幾つかの変形は、一般に球形状を有するグレースケール画像を含み、より小さい値はより厚い堆積物に関連する。従って、異なる変換プロトコルが、どの値が厚い堆積物及び薄い堆積物にそれぞれ対応するかに応じて、異なるグレースケール画像に割り当てられてもよい。
【0173】
幾つかの例では、単一のグレースケール画像が、所望の製品レンズおよびそれに関連する制御コマンドを表すために使用されてもよい。単一のグレースケール画像は、堆積された重合性混合物に所望の光学的品質が具現化されるまで3Dプリントヘッドの連続パスで繰り返し堆積されて、硬化して患者の目に装着するのに適した物理的パラメータも満たす成形品を形成してもよい。
【0174】
他の例では、一連のグレースケール画像が組み立てられて、複数の制御コマンドのセットを作成してもよい。制御コマンドは、異なる形状デザインの堆積をもたらし、画像の付加合成物を物理的に作成してもよい。他の例では、複数のグレースケール画像は、任意の処理が発生する前に組み合わされて処理されてもよい。幾つかの実施例では、複数の画像の組み合わせは、上及び下の厚さ係数に対応するように正規化されてもよい。
【0175】
幾つかの実施例では、エッジプロファイル303、アライメント特徴部、等などの、異なる特徴部は、レンズプロファイルにグレースケールイメージを付加することによって、光学要素コマンドプロトコルにプログラムされてもよい。
【0176】
幾つかの例では、屈折要素は、グレースケール値のアレイとして表面平面の位置でデザインされてもよく、値は印刷工程で追加された厚さ又は厚さの範囲に対応する。同様の例において、一定のグレースケール値は、いかなる基礎構造にも屈折力を付加しないプラノレンズ要素に相当してもよい。
【0177】
幾つかの例では、グレースケール画像は、非限定的な例として、jpeg、tiff、bmp、pngなどの1つ以上のような多数のファイルタイプから参照されてもよく、ばらばらの位置に堆積される重合性混合物の量を変化させることによって、より厚い堆積を目標とする領域においてより多くの重合性混合物の堆積をもたらすように、眼科レンズ成形品のような所望の成形品を印刷するための制御コマンドプロトコルを作成するために使用されてもよい。パターン全体を印刷する結果、介在領域のない成形品が得られてもよい。
【0178】
本発明の幾つかの変形では、画像のグレースケール又は画像の付加的な組み合わせは、3D印刷ヘッドの複数のばらばらのパスの処理に対応してもよく、特定の場所に堆積された重合性混合物の量が、次の堆積パスが完了する前にピン止め工程に供される。印刷工程のパスの間に堆積された重合性混合物は、様々な含有された光開始剤を有するモノマー混合物であってもよい。光開始剤の1つは、関連するピン止め工程中の化学放射線の波長と関連していてもよい。複数の印刷パスが処理された後、受取基板上に堆積された重合性混合物の全体積は、硬化工程に供されてもよい。幾つかの例では、硬化工程は、異なる波長及び露光時間、強度などの化学放射線への曝露であってもよい。
【0179】
別の態様において、幾つかの実施形態では、印刷ヘッドからの液滴の排出及び硬化前の蓄積を介して堆積されたより滑らかな画像を生成するために、グレースケール又はエネルギー透過率パターンが、グレースケール又はエネルギー透過率パターンに基づく印刷ヘッドの制御コマンドの生成の前に、ディザリング工程又はアルゴリズムを介してディザリングされてもよい。ディザリングは、非限定的な例として、Floyd-Steinberg、Burkes、Sierra、Two Row Sierra、Jarvis、Stevenson、Arce、又は他の工程と一致する工程を含んでもよい。
【0180】
次に
図4を参照すると、光学要素400が本発明の幾つかの実施形態により示されている。光学要素400は、周縁部分401を含んでいて、これは光学要素400の光学ゾーン部分402の前に印刷又は他の方法で形成されてもよい。レンズキャリア部分403は、光学ゾーン部分402と周縁部分401を遷移させてもよい。キャリア部分403は、好ましくは、完成したレンズを装用者の眼の所定の位置に快適に維持するのに適したサイズ及び形状である。光学要素400の付加製造中、周縁部分401に含まれる重合性混合物は、光学ゾーン部分402に含まれる重合性混合物が印刷されピン止めされる前に、堆積されピン止めされてもよいが、完全には重合されない。幾つかの好ましい実施形態では、周縁部分401は、より大きな質量を含んで、重合性混合物がポリマーに硬化する際に、重合工程から生じる応力が、周縁部分401のより大きな質量の安定化の影響ゆえに、光学ゾーン部分402を変形させないようになっていてもよい。
【0181】
幾つかの実施形態では、周縁部分401は、光学要素400と共に残って快適なエッジ特徴部を形成してもよい。他の実施形態では、周縁部分401の一部又は全部は、例えばレーザートリミングによって、除去されてもよい。
【0182】
より質量の大きい周縁ゾーン部分401を含む実施形態が、以下のステップを介して形成されてもよい:a)周縁ゾーン部分(これは球面レンズの場合全体として環状を有し、他のレンズの場合、卵形状又はアーモンド形状などの対応する周囲形状を有する)に重合性混合物を印刷又はその他の方法で堆積させる;b)重合性混合物を周縁ゾーン部分401にピン止めする工程であって、ピン止めは、好ましくは、モノマーを堆積させる印刷ヘッドの各パスの後に行われる;c)重合性混合物を光学ゾーンに印刷又は堆積させる工程;重合性混合物を光学ゾーンにピン止めする工程;及び堆積された重合性混合物を硬化させる工程。幾つかの実施形態は、光学的品質を提供するために光学ゾーンにキャップを配置することをさらに含んでもよい。
【0183】
次に
図5を参照すると、光学挿入部又はキャップ504と光学ゾーン503を支持する周縁部分501とキャリア部分502を有する側面切断図である。本発明の幾つかの実施形態では、周縁部分501は、レンズ500のキャリア部分502及び/又は光学ゾーン503部分よりも大きい質量を含んでもよい。
【0184】
軸方向厚さプロファイルの生成
含水コンタクトレンズ前面曲率半径(RF)は、空気中レンズ度数(P)、レンズ屈折率(n)、中心厚さ(CT)、及び後方表面曲率半径(RB)を使用して、厚レンズ式から生成される。
【0185】
厚レンズの公式は、非限定的な例として、以下のものを含んでもよい:厚レンズの主平面に対する有効焦点距離は、以下によって与えられ、
【0186】
【0187】
レンズの頂点から主平面までの距離は
【0188】
【0189】
眼科レンズの場合、例示的な変数は以下を含んでもよい:
【0190】
【0191】
前方及び後方の光学ゾーン表面は、眼鏡レンズの前方及び後方の曲率半径と他の光学要素の中心厚から生成されてもよい。
【0192】
例示的な表面は、0.1008mmの中心厚さ、9.1mmの後方曲率半径及び1.4055の屈折率を持つ-3.0Dデザインについて
図6に示している。
【0193】
幾つかの実施形態では、軸方向の厚さプロファイルは、複数の半径方向位置について前表面位置から後方表面位置を減算することによって生成されてもよい。
【0194】
含水レンズの非含水レンズに対する比率は、レンズ材料に基づいて変化してもよく、含水レンズは非含水レンズよりも各方向に1.4倍大きい。したがって、非含水レンズの軸方向の厚さプロファイルは、含水レンズ前方及び後方表面から生成された軸方向の厚さプロファイルよりも約1.4倍小さくてもよい(ここで使用される場合、約という用語は、記載された量の10%内であってもよい)。また、半径方向の位置は、非含水レンズに対して約1.4倍小さくてもよい。
【0195】
次に
図6を参照すると、含水眼科レンズの光学ゾーン前方曲線表面603及び後方曲線表面604のグラフ表現600が示されている。
【0196】
グラフ表現600は、含水表面位置601のスケールを有する第1の軸と、含水半径方向位置602のスケールを有する第2の軸とを含む。第1の曲線は、眼科レンズ光学ゾーンの前方曲線603の値をマッピングし、第2の曲線は、後方曲線604の値をマッピングする。
【0197】
次に
図7を参照すると、非含水眼科レンズ光学ゾーンの軸方向厚さプロファイル703のグラフ表現700が示されている。好ましい実施形態において、軸方向厚さプロファイルは、偶数4次多項式によって適切に記述されてもよい。このモデルからの係数は、グレースケール印刷パターンの光学ゾーン部分、又は他のエネルギー透過率或いはエネルギー強度マップパターンを生成するために参照されてもよい。
【0198】
グラフ表現700は、非含水軸方向厚さ701のスケールを有する第1の軸と、非含水半径位置702のスケールを有する第2の軸とを含む。曲線は、眼科レンズ光学ゾーンの軸方向厚さ703の値をマッピングし、厚さ704に相関する数値がグラフ表現700の中央に表示される。
【0199】
乱視用レンズでは、光学度数は光学ゾーンの異なる方向(経線)に対して異なる。例えば、-2.75D/-4.5DX90は、垂直方向で-2.75D、水平方向で-7.5Dの度数を有する。結果として生じる軸方向の厚さプロファイルは、光学ゾーン内で経線方向に変化し、垂直方向で「最も平坦」、水平方向で「最も急峻」である。
【0200】
次に
図8を参照すると、厚さプロファイル800の偽色画像が光学ゾーンについて示されており、「第1の強度801は小さな厚さを表し、第4の強度804は比較的大きな厚さを有する領域を表す。第1の中間厚さ802及び第2の中間厚さ803などの、1つ又は複数の中間厚さ802~803もまた、含まれてもよい。各厚さは、厚さプロファイル800によって示されるそれぞれの位置に適切な量の重合性混合物を堆積させることによって達成され、重合性混合物を沈降させ、ゲル化工程を介して沈降した重合性混合物を所定の位置にピン止めし、最後に堆積されてピン止めされた重合性混合物を硬化させることを可能にしてもよい。
【0201】
水平(最も負の度数)及び垂直(最も正の度数)軸方向厚さプロファイルは、偶数4次多項式によってモデル化され、厚さプロファイル800によって表される光学ゾーングレースケール印刷パターンを生成するために使用される係数であってもよい。
【0202】
エネルギー透過率印刷パターン生成
幾つかの実施形態では、エネルギー透過率印刷パターン(グレースケール印刷パターン又はエネルギー強度の他の表現であってもよい)は、2つ(2)以上の領域:光学ゾーン801~804(軸方向厚さプロファイルによって例示的に定義される):及び周縁805を含んでもよい。また、医薬品又は他の溶出可能な物質を含む領域などの、他の領域が含まれてもよい。各領域は様々な方法で定義されてもよい。例えば、非限定的な例として、印刷パターンの画素サイズは約0.021mmと規定されてもよい。非含水レンズの直径は、例えば10.0mmであってもよい。X&Y方向の画素の数は、次の関係で定義される。
【0203】
【0204】
この定義は、Mpixelsが奇数であり、レンズの中心が印刷パターンの中心にあるようにすることを確実にする。
【0205】
たとえば、8ビット(255グレーレベル)の印刷パターンなど、多くのグレースケールレベルが指定されてもよい。印刷されたレンズの品質に影響を与えることがあるこれらの値の両方を変更することは、本発明の範囲内である。
【0206】
球面
球面レンズは、一般に回転対称(対称の10%内)である光学ゾーンを含み、例えば、非含水レンズの中心の厚さ、及び偶数4次モデルからの係数を使用することによって、定義されてもよい:
【0207】
【0208】
ここで(x0、yx)は印刷パターン中心である。その他のバリエーションも本発明の範囲内である。
【0209】
厚さプロファイルを生成するために使用される中心厚さ(CT)は、層厚さ×印刷される層の数に対する含水厚さに基づいてもよい。したがって、含水レンズCTが0.120mm、印刷する層の数が6、層厚が0.012mmの場合、印刷パターンを生成するために使用されるCTは0.120mm-0.72mm=0.048mmである。
【0210】
幾つかの好ましい実施形態では、これは、パターン内の「最も明るい」画素の「最も暗い」画素に対する比率が印刷に許容可能な範囲に留まることを確実にするために行われてもよい。他の実施形態では、画像は印刷ヘッドコントローラソフトウェアによって2値画像に変換されてもよい。グレースケールの範囲が大きすぎる場合、「明るい」領域は、滑らかなレンズ表面を形成するのに十分な「暗い」画素を有しないことがある。
【0211】
厚さは、rが非含水光学ゾーンの半直径(rmax)、典型的には4.0mm/1.4(~2.857mm)より小さい画素について計算されてもよい。
【0212】
周縁805は、r(mm)が光学ゾーン801~804の外側であるがレンズ直径内である領域である。多くの異なる方法が周縁の厚さプロファイルを定義するために使用されてもよい。例えば、幾つかの好ましい実施形態では、パターンは、周縁のすべての画素について光学ゾーンのエッジでの厚さを使用する。代替的な方法は、以下のうちの1つ以上を含んでもよい:光学のエッジでの値からレンズの「エッジ」で定義される値まで厚さを直線的に次第に少なく(tapering)する;及び光学のエッジでの値からレンズの「エッジ」で定義される値まで、高次の多項式又は円錐断面を使用して厚さを次第に少なくする;レンズの取り扱いを改善するために周縁に「補強」リングを追加する;周縁の異なるゾーンで異なる方法を使用して次第に少なくする;及び次第に少なくすることと「補強」リングの組み合わせ。
【0213】
トーリック(乱視用レンズ)
光学ゾーンは、回転対称でなくてもよく、非含水レンズ中心の厚さ、最も正と最も負の度数の経線の偶数4次モデルからの2組の係数、及び最も正の度数の経線の印刷パターンにおける所望の角度を使用して、定義されてもよい。
【0214】
例えば、幾つかの実施形態では、印刷パターンは、各主経線に対して「有効な」2次係数を計算することによって生成される:
【0215】
【0216】
「等価」r2係数は、2つの有効係数の平均として定義される。乱視係数は次のように定義される:
【0217】
【0218】
ここで、C2,effective,plusは、最も正の経線の有効第2係数であり、C2,effective,minusは、最も負の経線の実効第2係数である。レンズ印刷パターンの各ピクセルについて、レンズ中心(r(x,y))からの距離と、標準デカルト座標(θ(x,y))の角度が計算される。
【0219】
光学ゾーンの厚さは次のように定義されてもよい:
【0220】
【0221】
ここでφは最も正の経線の角度である。
【0222】
光学ゾーンのエッジでの厚さは角度によって変化する。トーリック印刷パターンについては、遷移ゾーンがすべての角度に対して単一の厚さ値を提供するために生成されてもよい。遷移ゾーンは、含水レンズの場合、0.5mm幅の環状であってもよい(非含水レンズの場合、0.5mm/1.4)。遷移用の目標厚さは、光学ゾーンの境界における最小厚さに等しくてもよく、以下と本質的に等しくてもよい:
【0223】
【0224】
遷移領域の各画素の厚さは、その半径方向の位置の一次関数として定義される。光学ゾーンエッジでの厚さは、遷移領域内の各画素に対して次のように定義される:
【0225】
【0226】
各点の傾きは次のように定義される;
【0227】
【0228】
各点の切片は次のように定義される:
【0229】
【0230】
遷移領域の各点の厚さは次のように定義される;
【0231】
【0232】
次に
図9を参照すると、遷移領域の例示的なグラフ画像が示されている。周縁軸方向厚さプロファイル900は、遷移ゾーン904の端部から光学ゾーン901の最小軸方向厚さまでの直線的変化によって定義される。周縁点902-903の勾配と切片は、光学ゾーンの厚さの端部と遷移ゾーンの厚さの端部にそれぞれ遷移ゾーンのエッジと最小厚さを使用するだけで、遷移ゾーンの定義に使用したのと同じ方式で定義される。レンズ直径の外側の全ての画素は0に設定されてもよい。
図10は、光学ゾーン1001の周縁領域に複数の異なる厚さ1002~1004を有する眼科レンズの周縁領域1000の厚さプロファイルを示す。
図11は、完全眼科レンズ1100の厚さプロファイルを示す。示された厚さプロファイルは、光学ゾーン1101~1104及び周縁領域1105を含むレンズ部分1101~1105を含む。レンズ部分1101~1105の各々は、1つ以上の画素1106(拡大図で示される)を含む。各画素1106は、厚さに関連付けられてもよい。
【0233】
印刷パターン
【0234】
印刷パターンに対応するエネルギー透過率パターン(例えば、及びエネルギー強度パターン又はグレースケールパターン)の幾つかの実施形態では、「明るい」画素は印刷されていない領域を表し、「暗い」画素は堆積された重合性混合物を受け取る領域を表してもよい。「暗い」画素の「強度」は、その位置における得られる眼科レンズの所望の厚さに対応する。
【0235】
幾つかの例示的な実施形態では、レンズの印刷パターン「強度」は、以下のように定義されてもよい:
【0236】
【0237】
ここで、floor( )は値を最小の整数に変換する。
【0238】
レンズの外側のすべてのピクセルは、255に設定されて、強度値が小さいほど厚さが大きくなり、最小の値は最小の厚さに対応するようになっていてもよい。
【0239】
255の値は8ビットの画像に対応する。255を超えるグレーレベルが使用される場合、255の値はグレーレベルの数に置き換えられる。例えば、10ビットの画像の場合、値は1023となるだろう。
【0240】
ここで
図12を参照すると、本開示の幾つかの実施形態による、眼科レンズを形成するための方法ステップがフローチャート形式で示されている。
【0241】
ステップ1202において、方法は、付加製造印刷ヘッドに対して第1の位置に基板を位置付けることを含む。基板は、平面状であっても弧状であってもよい受取部分を含んでもよい。受取部分は、重合性混合物を堆積させる印刷ヘッドの第1のパスのための受取表面として作動してもよい。第1のパスの後、受取表面は、典型的には、先に堆積された重合性混合物を有する少なくとも幾つかの領域を含むことになる。
【0242】
ステップ1204において、方法は、印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンを放出することを含んでもよく、重合性混合物の堆積液滴のパターンは、形成される眼科レンズのエネルギー透過率マップの第1の部分に対応する。好ましくは、パターンは、所望の光学系を通る光強度を表す2次元画像である。液滴は、T1のような時間指定で放出され、これは他の時間指定と相対的であってもよい。好ましい実施形態では、2次元表現は、X,Y位置(又は他の座標指定)に関連する数値を有することになる。数値は、X,Y軸指定によって指定された位置で光学要素を通過する光の量を表すことになる。印刷パターンは、幾つかの実施形態において、X,Yパターンに対応する受取表面上の位置に堆積された重合性混合物の量が数値と相関するように、数値に基づいてもよい(例えば、より明るい領域は、より低いX,Y数値を有してより少ない重合性混合物を受け取ることになり、より暗い領域は、より高いX,Y数値を有してより多くの重合性混合物を受け取ることになる)。
【0243】
光学要素のデザインは、光が光学要素をどのように通過するかの放射線追跡パターンの分析によって達成されてもよい。幾つかの実施形態では、X,Y数値は、所望の光学要素の3次元形状の数学的モデルから導かれてもよい。
【0244】
ステップ1206において、方法は、堆積された重合性混合物の液滴を受取表面上で受け取ることを含んでもよく、受取表面は、基板、先に放出された重合性混合物の液滴から形成された重合性混合物の凝集体、及び挿入部のうちの1つ以上を含んでもよい。挿入部は、例えば、光学的挿入部、受動電子デバイス、能動電子デバイス、及び/又は電池、収穫デバイス、又はアンテナなどの電源、を含んでもよい。
【0245】
ステップ1208において、第2の時間(T2)において、受取表面上の重合性混合物の堆積液滴は、ピン止め工程に曝露されてもよい。ピン止め工程は、重合性混合物の堆積液滴の部分重合を引き起こすことになる。好ましくは、部分重合は、流動に対して抵抗性であるがその後に堆積された重合性混合物と一体化することがある、部分重合混合物の粘性凝集をもたらす。
【0246】
ステップ1210において、方法は、基板(及び堆積された重合性混合物)を印刷ヘッドに対して次の位置(位置プラスN)に再位置付けすることを含んでもよい。
【0247】
ステップ1212において、方法は、形成される物品、例えば形成される眼科レンズの、エネルギー透過率マップの次の部分に対応する重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを放出することを含んでもよい。
【0248】
本発明の様々な実施形態において、方法は、ステップを複数回繰り返すことを含んでもよい。例えば、基板に対して印刷ヘッドの複数回の通過と、重力が重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用して堆積された重合性混合物の表面を滑らかにし、堆積液滴間の介在空間を充填し、既に堆積されピン止めされた材料と堆積された材料の凝集を可能にする、複数の滞留時間とがあってもよい。従って、ステップ1214において、重合性材料の液滴の次のパターンが放出されてもよい。パターンは、前のパターンと同じパターン又は異なるパターンであってもよい。
【0249】
ステップ1218において、印刷ヘッドの現在のパスにおいて堆積された重合性材料は、先に堆積された材料などの、受取表面上の材料と一体化されてもよい。幾つかの実施形態では、一体化された材料は、基板上に重合性混合物の単一の体積部を形成してもよい。
【0250】
ステップ1220において、重力が重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用して堆積された重合性混合物の表面を滑らかにし、堆積液滴間の介在空間を充填し、堆積された材料を既に堆積されてピン止めされた材料と凝集させてもよい。
【0251】
ステップ1222において、方法は、堆積された重合性混合物の液滴を硬化させることを含んでもよい。
【0252】
幾つかの実施形態では、ピン止め工程は、重合性混合物の堆積液滴を、重合性混合物の堆積液滴がゲル化して重合性混合物の堆積液滴の硬化を引き起こさない十分な限られた時間、化学線の第1の波長に曝露することを含んでもよい。同様に、幾つかの実施形態において、硬化工程は、堆積された重合性混合物の液滴の重合を引き起こすのに十分な時間及び十分な強度で、堆積された重合性混合物を第2の波長の化学放射線に曝露することを含んでもよい。幾つかの実施形態はまた、周囲温度の上昇によって硬化工程を促進することを含んでもよい。
【0253】
次に
図13を参照すると、概略図は、眼科レンズ1307を形成するための、1つ又は複数の印刷ヘッド1301からの1つ又は複数の重合性混合物1302の堆積を示す。印刷ヘッド1301は、基板1305の位置に対して印刷ヘッド1301の各パスの制御コマンドを生成するために使用される2Dパターンを複製するパターンで、基板1305の受取領域1306上に重合性混合物1303の体積部が形成されるまで、重合性混合物1302を堆積する。基板1305の受取領域1306の少なくとも一部は、堆積された重合性混合物1303の体積部が眼科レンズ1307のデザインのためのフットプリント領域をカバーするまで、堆積された重合性混合物1302の受取表面として作動することになる。
【0254】
ここで述べるように、光学要素に関する幾つかの好ましい実施形態では、眼科レンズ1307を形成するために印刷ヘッド1301から堆積される重合性混合物1302の量は、エネルギー強度(これは、眼科レンズを通るエネルギーの透過率を表してもよい)の整数マップを表す2次元パターンに従って変化する。
【0255】
パターンは、好ましくは、所望の眼科レンズ1307を通る光強度を表す2次元画像である。好ましい実施形態では、2次元表現は、複数のX,Y位置に関連するそれぞれの数値を有することになる。数値は、X,Y軸指定によって特定された所与の位置で眼科レンズ1307を通過する光の量を表してもよい。
【0256】
印刷ヘッドへの制御コマンドは、印刷ヘッド1301に、所与のX,Y位置で堆積される重合性混合物1302の量を特定する2次元印刷パターンに基づいて重合性混合物1302を堆積させる。重合性混合物1302を堆積させる複数回の連続パスの後、基板1305上の重合性混合物1303の体積部は、所望の眼科レンズの数学的モデルを代表する3次元形状を有する。
【0257】
X,Y軸指定によって特定される所与の位置で眼科レンズ1307を通過する光の量を表す重合性混合物の量の2次元印刷パターンは、受取表面1304上の位置で堆積される重合性混合物1302の量とも相関してもよい(例えば、2次元印刷パターンのより明るい領域はより低いX,Y数値を有していてより少ない重合性混合物を受け取ることになり、より暗い領域はより高いX,Y数値を有していてより多くの重合性混合物を受け取ることになる)。
【0258】
幾つかの実施形態において、眼科レンズのデザインは、光が眼科レンズをどのように通過するかの光線追跡パターンの分析によって達成されてもよい。好ましくは、X,Yの数値はかわりに所望の眼科レンズの3次元形状の数学的モデルから導出されてもよい。
【0259】
本発明によれば、所与のX,Y位置で堆積された重合性混合物の量を特定する2次元印刷パターンは、基板1305に対する印刷ヘッドの連続したパスにおいて複数回印刷される。堆積された重合性混合物1302は、受取表面1304上で受け取られる。受取表面1304は、先に堆積された重合性混合物1303の体積部、及び基板1305の受取領域1306の一方又は両方を含んでもよい。
【0260】
堆積された重合性混合物1303は、ピン止め及び/又はゲル化工程を経て、ゲル化された重合性混合物1303の体積部を形成する。ゲル化された重合性混合物1303の体積部は、十分に重合されて受取表面上で受け取られた重合性混合物の移動を防止する(又は少なくとも実質的に移動を遅くする)一方で、その後に堆積された重合性混合物1302が先に堆積された(及びピン止めされた)重合性混合物1303の体積部と溶融して、重合性混合物の単一の塊を有する構造を形成することを可能にする。好ましい実施形態において、溶融は、先に堆積されピン止めされた重合性混合物1303の体積部と交じり合うこと、又は交じり合うようになることを含んで、重合性混合物1303の体積部が硬化されると、基板1305の受取領域1306上に形成された重合性混合物1303の体積部において、堆積された重合性混合物1302の個々の層又は筋が識別できなくなるようになっていてもよい。このような実施形態は、不要な回折が、連続するステップに起因する光学的品質であるか又は重合された材料のばらばらの層が眼科レンズ中に存在することに関連する他の層間アーチファクトである可能性があるため、好ましいことがある。
【0261】
ピン止めの前に、重力が重合性混合物1303の体積部の表面1304に作用して、表面1304を滑らかにし、表面の介在収差を充填し、それによって(機械加工されたレンズの表面及び/又は機械加工された金型部品から形成されたレンズと比較して)得られる眼科デバイスの光学的品質を改善してもよい。
【0262】
重合性混合物1303の体積部の硬化は、印刷ヘッド1301と基板1305との最終パスの間の液滴重合性混合物1302の配置に続く。硬化は、重合性混合物1303の体積部の実質的に完全な重合を引き起こすのに十分な化学放射線及び/又は熱への重合性混合物1303の体積部の曝露によって処理されてもよい。
【0263】
示されるように、
図13は、堆積された重合性混合物1303の頂点1308に対して実質的に垂直である印刷ヘッド1301を示す。様々な実施形態において、液滴重合性混合物1302は、基板1305、受取領域1306及び先に堆積された重合性混合物1303の表面のうちの1つ以上を含んでもよい受取表面の頂点1308に対して垂直である軌道をたどってもよい(又はたどらなくてもよい)。
【0264】
ここで
図13Aを参照すると、印刷経路の方向1309に移動する印刷ヘッド1301が示されている。重合性混合物1302Aの液滴は、重合性混合物1302Aの液滴の放出の時における印刷ヘッド1301の速度及び方向によって影響される液滴軌道1309をたどることになる。液滴の軌道1309は、それ自体の速度と方向を有することになる。本発明によれば、幾つかの実施形態において、印刷ヘッド1301及び液滴軌道1309は、受取表面1304の頂点の表面に対して直角以外の角度であってもよいが、重合性混合物1302Aの液滴の一部(例えば、大部分)は、先に堆積された重合性混合物1303Aに一体化され、ピン止めされ、最終的に硬化されることになるからである。このように、本工程は、付加製造材料の小部分が漸増的に表面上に配置され、硬化される前に先に堆積された材料と一体化されないことを必要とする従来公知の工程とは異なる。
【0265】
次に
図14を参照すると、重合性混合物の液滴1401の例示的な動的形状が、印刷ヘッドからの放出後の様々な時間1402で示されている。本発明によれば、液滴1401の形状は、周囲雰囲気を通る液滴1401の移動の速度に基づいて変化してもよい。幾つかの好ましい実施形態において、ここに開示される工程によって形成される成形品は、一般に、重合性材料の液滴1401の形状に影響されない。比較的小さい質量の各液滴1401と、液滴が受取表面上の他の重合性材料に一体化されることは、製造された成形品の形状を、本質的に、個々の液滴1401の形状、又は印刷ヘッドによる放出後の様々な時間1402における液滴1401の変化する形状によって影響させないようにする(
図14には図示せず)。
【0266】
ここで
図15を参照すると、フローチャート1500が、本発明の幾つかの実施形態において実行されてもよい例示的な方法ステップを示している。
【0267】
ステップ1501において、工程は、付加製造印刷ヘッドに対して第1の位置で基板を位置付けることを含んでもよい。
【0268】
ステップ1502において、工程は、印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンを放出することを含んでもよく、重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンは、グレースケール画像の第1の部分に対応する。
【0269】
ステップ1503において、工程は、重合性混合物の堆積液滴を受取表面上で受け取ることを含んでもよく、受取表面は、基板、先に放出された重合性混合物の液滴、及び挿入された成形品のうちの1つ以上を含んでもよい。挿入された成形品は、非限定的な例として、剛性透過性レンズなどの光学要素、電子デバイス、及び電源のうちの1つ以上を含んでもよい、
【0270】
ステップ1504において、工程は、基板を印刷ヘッドに対して次の位置に再位置付けすることを含んでもよい。再位置付けは、基板及び印刷ヘッドの一方又は両方を他方に対して移動することを含んでもよい。
【0271】
ステップ1505において、工程は、グレースケール画像の次の部分に対応する印刷ヘッドから、重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを放出することを含んでもよい。
【0272】
ステップ1506において、工程は、重合性混合物の堆積液滴に重力などの物理的な力が作用することを可能にすることを含んでもよい。
【0273】
ステップ1507において、工程は、液滴の少なくとも幾つかを一体化して、基板上に重合性混合物の結合された体積部を形成することを含んでもよい。
【0274】
ステップ1508において、工程は、受取表面上の重合性混合物の堆積液滴を、重合性混合物の堆積液滴の部分重合を引き起こすピン止め工程に曝露することを含んでもよい。
【0275】
ステップ1509において、工程は、基板に対する印刷ヘッドの複数パスのための位置付け及び堆積ステップを繰り返すことを含んでもよい。
【0276】
ステップ1510において、工程は、重合性混合物の結合された体積部を硬化させて眼科レンズを形成することを含んでもよい。
【0277】
工程は、基板に対する印刷ヘッドの各パスに続いて、現在のパスの間に堆積された重合性混合物の液滴の少なくとも幾つかを、受取表面上に先に堆積された重合性混合物と一体化して、基板上に重合性混合物の結合された体積部を形成することを含んでもよい。
【0278】
ステップ1511において、工程は、形成された眼科レンズを基板から解放することを含んでもよい。
【0279】
実験の詳細
ヒドロゲルデバイスの含水量を決定する方法
【0280】
ヒドロゲルデバイス(例えば、コンタクトレンズ)の含水率は、以下に記載されているように決定されてもよい:ISO/DIS 18369-4:2016の4.6節(4.6.2に示される重量測定法)に記載されている。
【0281】
ケラトメトリー測定
角度計は、角膜の中心半径を測定し、この場合、PMMAドーム上に形成された非含水ヒドロゲル部品の前面の中心半径を測定する(PMMAドーム上の3-D印刷に関する実験セクションを参照)。使用された機器は、NidekモデルARK900Sからの自動角膜計であった。支持体は水平な台の上に設定され、くさびがヒドロゲル表面を持つPMMAドームの中心と軸を角膜計の中心と軸に整列させるために加えられた。非点収差が大きかった最初の測定セットでは、くさびは使用されず、測定された非点収差は、測定が軸から外れて行われたことによるアーチファクトであった。
【0282】
曲率半径測定
コンタクトレンズの度数は、材料の屈折率とコンタクトレンズの厚さによって変調されたコンタクトレンズの表面と裏面の度数の組み合わせに依存する。コンタクトレンズの表面と裏面の度数は、これらの面の半径に依存する。
【0283】
空気中での度数と半径の関係は、度数=(コンタクトレンズ屈折率-1)/半径であり、度数はディオプターであり、半径はメートルである。
【0284】
前面については、半径はISO18369-1:2006(E)(2.1.2.2.5)において、単一の屈折要素を有する表面の前面光学ゾーンの曲率半径として定義されている。
【0285】
PMMAドームの前面の曲率半径は、ISO DIS 18369-3:2016(附属書C)に規定されている方法の1つである検眼鏡(ophthalmometer)としても知られた自動角膜計で測定された。検眼鏡法は、硬質レンズ又は軟質レンズ表面の前方に既知の距離に置かれたターゲットの反射像のサイズを測定し、次に反射像の曲率と倍率の関係が使用されて後方光学ゾーン半径を決定する。それにもかかわらず、この方法はPMMAドームの前面半径の測定に使用された。
【0286】
光透過率
光線透過率はISO 18369-1:2006(E)で定義されている。以下の表に示される光線透過率の値は、380nm~780nmの平均値を示している。測定方法はISO DIS18369-3:2106(4,8.2)に詳述されている。
【0287】
装置と材料
本発明の原理を実証するために、一連の実験が行われた。実験は以下を使用して行われた。
【0288】
原材料
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);16ppmMEHQを有する99.9%HEMA、
エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA);アッセイ:98.0%
メタクリル酸(MAA);アッセイ99.0%
トリメチロールプロパントトリメタクリレート(TMPTMA)、テクニカルグレード
Irgacure 651光開始剤、BASF Corp,Southfield,Miから
Irgacure 819光開始剤、BASF Corp,Southfield,Miから、
ガラス顕微鏡スライド、EMS,Hatfield,Paから、及びAm Scopeから
Tween80(ポリソルベート80)界面活性剤
試薬グレードのイソプロパノール
脱イオン又は蒸留水
滅菌生理食塩水、Walgreens又はB&Lから
窒素ガスボンベ(<0.1%酸素)及び/又は液体窒素タンク
ロトバップ、グローブバッグ、デシケータ、ブラウンボトル、シリンジ、5pmフィルタ、リントフリータオル、標準ビーカー、秤量スケール(0.001g精度)、真空ポンプ
LEDソース及び測定器
365nm及び400nm出力のOMNIランプ。
強度測定用Omnicure LM 2011ライトメーター
ハネウェルToxi Pro 544590VD簡易ガス酸素モニター
33ミリバール(3.3キロパスカル)を下回る酸素を読み取るゲージ
【0289】
3D印刷ステーション
a)富士フイルムのSamba印刷ヘッド、b)印刷ヘッドの下で素材を移動させるコンベアベルト、次にUVランプの形での2つの異なる化学線源を使用してカスタム構築された。印刷ステーション全体は、ガスポートのある大気圧筐体に収納されている。
【0290】
実施例シリーズA-モデルサンプルの調製
このシリーズでは、重合HEMAの均一な厚さの正方形のサンプル(10mm×10mm)が調製され評価された。
【0291】
基板の調製
3滴のTween80が20mlの試薬グレードのイソプロパノールに添加され、3.1μmのフィルタで濾過された。スライドガラスがこの溶液に3回浸され風で乾燥された。
【0292】
含水溶液の調製
5滴のTween80を100mLの脱イオン水に混合し、80~90℃に加熱された。
【0293】
PM-1A、PM-lB及びPM-1C:
HEMA:97.
EGDMA:1.6%
Irgacure 819:0.2%
Irgacure 651:0.5%
【0294】
PM-2:
HEMA:98.1%
EGDMA:1.2%
Irgacure 819;0.2%
Irgacure 651;0.5%
【0295】
PM-3A、PM-3B及びPM-3C
【0296】
未触媒重合混合物サンプル(PM-1A、PM-1B、PM-1C、PM-2、PM-3A、PM-3B及びPM-3C;上記参照)が、モノマーと架橋剤を褐色ボトル中で混合することにより調製されて冷蔵庫中に一晩放置した。最終的な重合混合物サンプルは、光開始剤とともに、脱気と窒素ブランケットを交互に使用するロトバップで処理された。サンプルは、PM-1A、PM-1B、PM-1C及びPM-2の各々について約120グラムであった。PM-3A、PM-3B及びPM3Cの各々について同量は約34.5グラムであった。
【0297】
ポリマー混合物中の酸素濃度に対応する分圧は以下の通りである:
PM-1A:<0.5% O2
PM-1B:2.0% O2
PM-1C:5.0% O2
PM-2:<0.5% O2
PM-3A:<0.5% 02
PM-3B:2.0% 02
PM-3C:8.5% 02
【0298】
<0.5% O2のO2濃度
120gのサンプルが、11.0-12.0torr(約14.0mbar)への脱気と760torr(1013mbar)での窒素によるブランケットを交互に3-4サイクル行うことにより、Rotovapを用いて以下のプロトコルに従って処理された。1回の脱気サイクルは5~20分からの範囲であり、1回のブランケットサイクルは5分を超えなかった。
【0299】
2.0%O2のO2濃度
120gのサンプルが、72torr(95mbar)へ脱気して窒素で760torr(1013mbar)にブランケットすることにより、以下のプロトコルに従って2.0%O2に処理された。脱気サイクルは49分、ブランケットサイクルは15分を超えなかった。
【0300】
5.0%O2のO2濃度
120gのサンプルが、179torr(235mbar)まで脱気することによりRotovapによる以下のプロトコルで5.0%O2に処理され、45分間の混合を保った後、760torr(1013mbar)の窒素で5分を超えないようにブランケットした。
【0301】
8.0%O2のO2濃度
120gのサンプルが、300torr(400mbar)まで脱気することによりRotovapによる以下のプロトコルで8.5%O2に処理され、45分間の混合を保った後、760torr(1013mbar)の窒素で15分を超えない期間ブランケットした。
【0302】
LED源と印刷ステーションの設定
400nmのオムニランプは、基板から22.0mmで設定され、強度は、基板位置で光度計によって測定された4.5W/cm2に設定された。
【0303】
365nmのオムニランプは、基板から123mmで設定され、強度は、光度計で測定された0.63W/cm2に設定された。基板を印刷ステーションからUVステーションに移動させるベルト速度は、40ft/分(12m/分)に設定された。
【0304】
重合性混合物の10mm×10mmの正方形のデザインが印刷された。UVピン止め又はゲル化(触ると筋状/粘着性)は、400nmのランプへの30秒間(10秒間を3サイクル)の曝露の後に生じた。測定された層の厚さは約24μmであった。幾つかの実験が条件を選択するために異なる強度設定と露光時間で行われた。
【0305】
3D印刷条件:
UVピン止めでは、2400dpiで、層を印刷して400nmランプに30秒間曝露することが6回行われた。この後、ピン止め又はゲル化されたサンプルが365nmのランプ下で120秒間曝露され、サンプルを硬化した。
【0306】
酸素濃度は、2つの酸素プローブによって測定され、1つは印刷ステーションの近くに載置され、もう1つはUVステーションの近くに配置された。酸素の制御は、処理筐体に入る前に混合された空気と窒素の別々の流れの制御によって達成された。
【0307】
結果
断面は、ガラスの顕微鏡スライドに印刷された含水サンプルから、2枚重ねられた23番の外科用ブレードでサンプルの中央を切断することにより、作成された。400ミクロン幅の切り口が、次に0.9%食塩水のシャーレに横に置かれ、1時間平衡化に供した後、形状が顕微鏡で観察された。
【0308】
不均一性又は応力が、この場合は平坦である意図された形状からの逸脱として見ることができる。
【0309】
不均一性又は応力は、材料の光学特性に悪影響を与えることになる。
【0310】
非含水サンプル(365nmで硬化後)の外観と粘着性が、それぞれ目視検査と触感で評価された。
【0311】
上記のように調製された含水ヒドロゲルサンプル(10mm×10mm)の光透過率値、及び参照として市販のACUVUE 2コンタクトレンズ(透過率96.83%)が、380nm~780nmの平均として計算された。以下の表を参照。
【0312】
含水サンプルの中心厚さは、断面の顕微鏡で光学的に測定された。
【0313】
含水ヒドロゲルサンプルの評価
【0314】
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
処理雰囲気中の酸素レベルは、形成された成形品に影響を与える。含水サンプルの光透過率は、光学的機能にとって重要であるが、処理雰囲気中の低い酸素レベル(0.1%、0.5%、1.0%)ではかなり高く、市販のコンタクトレンズに匹敵する。処理雰囲気の2.0%酸素では光線透過率が低下し、5.0%では光線透過率のかなりの低下となる。同様に、含水サンプルの断面図は、最も低いレベルの変形が処理雰囲気中の低い酸素レベルで得られることを示している。
【0319】
重合性混合物の酸素レベルは光線透過率に多少の影響を有するが、5.0%までの酸素は処理雰囲気の酸素が低ければ許容できる。含水サンプルの断面は、処理雰囲気の低いレベルの酸素と相まって、重合性混合物の2.0%及び5.0%の酸素で最も低いレベルの変形を示す。
【0320】
断面サンプルに見られるような低いレベルの変形は、製品が均一であり、光学用途に適していることを示唆している。
【0321】
重合混合物PM-3A、PM-3B及びPM-3Cで作製されたサンプルについて、6層が印刷されて硬化させずにピン止めされた後のタッチに基づいて、観察が行われた。
【0322】
雰囲気中の酸素濃度は<0.5体積%で維持され、印刷及びピン止めステーションの両方に近接して載置された酸素プローブによって測定された。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成された。
【0323】
結果
<0.5%酸素を有するPM-3A:僅かに粘着性がある(tacky)が糸は引かない(not stringy)。
【0324】
2.0%酸素を有するPM-3B:僅かに粘着性があるが糸は引かない。
【0325】
8.5%酸素を有するPM-3C:僅かに粘着性があるが糸は引かない
【0326】
実施例シリーズB-PMMAドーム上でのヒドロゲル表面の調製
このシリーズでは、重合されたHEMAの厚さを変えたドーム形状のサンプルが調製され評価された。
重合性混合物の調製
HEMA:97.9~98.1%
EGDMA:1.2~1.4%
Irgacure 651:0.5%
Irgacure 819:0.2%
【0327】
重合性混合物は、PM-1A及びPM-2の調製のような<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前の実験に記載されたように調製された。
【0328】
3D印刷条件:
Tween80処理後のPMMA(ポリ(メチルメタクリレート))ドームが、一晩脱気され、D及びEとラベル付けされ、次いで基板として使用された。各層を印刷した後、400nmで15秒間UVピンニングを行い、6つの層が直径4mmから11mmの範囲で堆積され、最終硬化が365nmで120秒間行われた。
【0329】
結果
ヒドロゲル表面が印刷された2つのPMMAドームの測定が3回行われ、測定値は、最も平坦な曲率半径、最も急な曲率半径、及び主軸の3つの値を含んでいる。
上及び下に傾けたPMMAドーム:
1. 8.09/8.06@180
2. 8.10/7.94@120
3. 8.12/7.95@112
平均:8.10/7.99
PMMAドームEは上向きでごくわずかに左に傾いている:
1. 8.16/7.97@82
2. 8.16/7.97@97
3. 16/7.96@94
平均:8.16/7.97
【0330】
の結果は以下のことを実証している:
i.規則的な光学面の存在(これは自動角膜計で測定するために必要な表面の特徴である)
ii.最も平坦な半径と最も急な半径の両方の再現性の高い測定:ドームD:平坦な範囲0.03mm、急な範囲0.12mm;ドームE:平坦な範囲0.00mm、急な範囲0.01mm。軸は主方向を示しており、特別な印がないまま装置の前面にドームを設置したため変化しており、それゆえこのばらつきは関連性がない。
iii.両方のドームが少量の非点収差を示した。非点収差は、曲率半径の測定で説明された度数方程式を使用して、2つの想定屈折率に基づいて計算された。
【0331】
ヒドロゲル表面を有するPMMAドームD(n=1.49)度数l=60.49D;度数2=61.32D;乱視=0.83D;(n=1.42)度数1=51.85D;度数2=52.57D;乱視=0.72D。
【0332】
ヒドロゲル表面を有するPMMAドームF(n=1.49)度数l=60.05D;度数2=61.48D;乱視=1.43D;(n=1.42)度数1=51.47D;度数2=52.69D;乱視=1.22D。
【0333】
上記のヒドロゲル表面で印刷されたPMMAドームの前面は、等価な前面トーリックコンタクトレンズの前面に対応し、ドームDは0.75Dのトーリックコンタクトレンズに相当し、ドームEは1.25Dのトーリックコンタクトレンズに相当する。
【0334】
実施例シリーズC-埋め込み挿入部の調製
重合性混合物の調製:
実施例シリーズBと同じである。重合性混合物は、PM-1A及びPM-2の調製におけるような<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する以前の実験に記載されたように調製された。
【0335】
3D印刷条件;
雰囲気中の酸素濃度は、<0.5体積%に維持され、2つの酸素プローブ、1つは印刷ステーションの近くに載置され、もう1つはUVステーションの近くに配置される、によって測定された。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成された。
【0336】
Tween80で処理された脱気ポリプロピレン球が基板として使用された。各層を印刷した後、400nmで15秒間UVピン止めを行い、直径4mmから11mmの範囲の6つの層が堆積された。Tween80処理後の青く着色されたPMMA挿入部(直径6mm、厚さ50ミクロン)が一晩脱気され、ピン止め層の上に置かれ、追加の2層が、各層をピン止め後15秒間400nmでUVピン止めを行って直径11mmで堆積された。最終硬化は365nmで120秒間行われた。
【0337】
結果:
青く着色されたPMMA挿入部が明確に観察され得、ヒドロゲルデバイス内に完全に埋め込まれていることがわかった。さらに、この方法は、乱視をマスクするための硬質の挿入部を有するソフトコンタクトレンズの製造に使用され得る。
【0338】
実施例シリーズD-埋め込まれたリザーバ又はデポの調製
重合性混合物の調製:
PM-2の調製と同じである。重合性混合物は、PM-1A及びPM-2の調製におけるような<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前の実験に記載されたように調製された。
【0339】
3D印刷条件:
雰囲気中の酸素濃度は<0.5体積%に維持され、2つの酸素プローブ、1つは印刷ステーションの近くに載置され、もう1つはUVステーションの近くに配置される、によって測定された。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成された。
【0340】
Tween80で処理された直径13mmのガラス半球が基板として使用された。各層を印刷した後、UVピン止めを400mnで15秒間行い、15の層が直径9.5mmで堆積された。その後、食用色素の結晶でパックされたプラスチック製マイクロピペットの小片が、ピン止めされた15の層の上に置かれた。各層を印刷した後、UVピン止めを400nmで15秒間行い、直径9.5mmさらに3つの層が堆積された。数滴の更なる重合性混合物が堆積されて、マイクロピペット片の完全な封入を確実にし、アセンブリが365nmで120秒間硬化された。
【0341】
結果
食品着色料の結晶を含有するプラスチックのマイクロピペットが、明確に観察され得、ヒドロゲルデバイス内に完全に埋め込まれていた。この方法は、コンタクトレンズのような眼科デバイス内に機能性添加剤放出リザーバ又はデポの埋め込みを実証している。続いて、アセンブリの水中での含水は、含水した水が着色され、マイクロピペット片内に食品着色結晶がないことを示した。
【0342】
実施例シリーズE-非対称デザインの眼科デバイスの調製
重合性混合物の調製
PM-2の調製と同じである。重合性混合物は、PM-1A及びPM-2の調製におけるような<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前の実験に記載されたように調製された。
【0343】
3D印刷条件;
雰囲気中の酸素濃度は<0.5体積%で維持され、2つの酸素プローブ、1つは印刷ステーションの近くに載置され、もう1つはUVステーションの近くに配置される、によって測定された。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成された。
【0344】
Tween80で処理された直径13mmのガラス半球が基板として使用された。約6mm×4mmの非対称デザイン(Atheneum Optical Sciences Logo)を有する10の層が、各層の印刷後15秒間400nmでUVピン止めしながら基板上に堆積された。次に17の層が、各層の印刷後15秒間400nmでUVピン止めしながら堆積された。アセンブリはその後365nmで120秒間硬化された。
【0345】
結果
ロゴの非対称デザインは、生理食塩水で含水させる前と後のヒドロゲルデバイス内で明確に観察され得る。この方法は、コンタクトレンズのような眼科デバイスにおいて非対称屈折異常を矯正するために非対称構造を組み込むことの実行可能性を実証している。
実施例シリーズF-画像品質光学系と屈折矯正を有するサンプルの調製
重合性混合物の調製:
HEMA:95.4%
MAA:2.5%
EGDMA:1.2%
TMPMA:0.1%
Irgacure 819:0.3%
Irgacure 651:0.5%
【0346】
重合混合物は、PM-1A及びPM-2の調製と同様に、<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前の実験に記載されたように調製された。
【0347】
3D印刷条件;
雰囲気中の酸素濃度は<0.5体積%で維持され、印刷ステーションとピン止めステーションの近くに載置された酸素プローブによって測定された。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成された。Samba印刷ヘッドの解像度は1200dpiで設定された。
【0348】
直径10.0mmの円形デザインが印刷され、サンプルを生成した。ベルト速度は毎分10.0フィート(毎分3.05メートル)で設定された。UVピン止め又はゲル化は、400nmのUVランプへの10秒間の曝露後に生じた。硬化は365nmのUVランプに120秒間照射でなされた。印刷された度付き部(prescriptions)では、基礎層が最初に印刷され、ピン止めされ、硬化された。その後、各度付き部がピン止めされ、次に120秒間硬化され、その後トップコート又は最終コートが印刷され、ピン止めされ、硬化された。サンプルを調製するために使用された基板は、実施例シリーズAに記載されたようにTween80で処理されたガラス顕微鏡スライドであった。乾燥の度数(D)は、Topcon CL-200で測定された。乾燥サンプルが、スライドガラス基板を含む印刷されたサンプルで測定され、湿潤度数は、含水溶液(前述のTween80を含む加熱蒸留水)からサンプルを解放して次に生理食塩水で20時間以上平衡化した後に測定された。含水サンプルの直径は、13.9±0.1mmと測定された。
【0349】
結果は、以下の表に示されている:
【0350】
【0351】
結果
上の表に示された乾燥度数及び湿潤度数の結果は、3次元堆積印刷が、屈折異常を矯正するための眼科レンズのような画像品質の光学系を有する光学デバイスを生産し得ることを示唆している。
【0352】
一般的な所見
本明細書及び特許請求の範囲では、混合物(重合性混合物など)、開始剤、その他の添加剤に言及することがあるが、ここで定義される材料及び組成物が、1、2、又はそれを超えるタイプの個々の成分から構成されていてもよいことは、本発明の範囲内である。そのような実施形態において、それぞれの構成成分の総量は、個々の構成成分について上記で定義された量に対応すべきである
【0353】
混合物(複数可)、開始剤(複数可)等の表現における(複数可)は、1、2又はそれを超えるタイプの個々の構成成分が存在してもよいことを示す。一方、1という表現が使用される場合、それぞれの構成成分の1つ(1)のみが存在する。
【0354】
表現%は、特に断りのない限り、それぞれの成分の重量%を意味すると理解すべきである。
【0355】
結論
【0356】
本開示の多数の実施形態が説明された。本明細書は、多くの具体的な実施形態の詳細を含むが、いかなる開示の範囲又は請求され得るものの制限として解釈されるべきではなく、むしろ、本開示の特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。
【0357】
本明細書において別個の実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施形態において別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで組み合わせて実装され得る。さらに、特徴は、特定の組合せで作用するものとして上述され、当初はそのように請求されることさえあるが、請求された組合せからの1つ又は複数の特徴は、場合によっては組合せから切除され得、請求された組合せは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションのバリエーションに向けられてもよい。
【0358】
同様に、操作は特定の順序で図面に描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示された特定の順序で実行されること、又は順次実行されること、又は図示されたすべての操作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況においては、マルチタスク及び並列処理が有利であってもよい。
【0359】
さらに、上述した実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一のハードウェア製品及び/又はソフトウェア製品において一緒に一体化されるか、又は複数の製品に包装され得ることが理解されるべきである。
【0360】
このように、主題の特定の実施形態が説明された。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。場合によっては、特許請求の範囲に記載された動作は、異なる順序で実行されても望ましい結果を得ることができる。さらに、添付の図に描かれた工程は、望ましい結果を達成するために、必ずしも示された特定の順序、又は連続的な順序を必須としない。特定の実施形態では、マルチタスク及び並列処理が有利であってもよい。とはいえ、特許請求される開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよいことが理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造により眼科レンズを形成する方法であって、前記方法が、
a.付加製造印刷ヘッドに対して基板を第1の位置で位置付けるステップ、
b.印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンを放出するステップであって、前記重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンがグレースケール画像の第1の部分に対応する、ステップ、
c.前記重合性混合物の堆積液滴を受取表面上で受け取るステップであって、前記受取表面が、前記基板、及び先に放出された重合性混合物の液滴、の一方又は両方を含む、ステップ、
d.前記基板を前記印刷ヘッドに対して次の位置に再位置付けするステップ、
e.前記グレースケール画像の次の部分に対応する、重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを前記印刷ヘッドから放出するステップ、
f.前記印刷ヘッドの前記基板に対する通過の間に、ステップa.からe.を複数回繰り返すステップ、
g.前記受取表面上の前記重合性混合物の堆積液滴を、前記重合性混合物の堆積液滴の部分重合を引き起こすピン止め工程に曝露するステップ、
h.前記基板に対する前記印刷ヘッドの次のパスのためにステップf.を繰り返すステップ、
i.ステップh.に含まれる各パスに続いて、重力を前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用させて、重合性混合物の表面を滑らかにすることを可能にするステップ、
j.ステップh.に含まれる各パスに続いて、現在のパス中に堆積された、前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部を、前記受取表面上に先に堆積された重合性混合物と一体化して、前記基板上に重合性混合物の結合された体積部を形成するステップ、
k.各ステップj.に続いて、前記重合性混合物の堆積液滴の前記部分重合を介して、前記重合性混合物の堆積液滴を前記受取表面上でピン止めするステップ、及び
l.前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板及び前記重合性混合物の堆積液滴を、最大5.0体積%の酸素濃度で制御された雰囲気中に収容するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部の酸素平衡濃度を最大8.0体積%にするステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板中の酸素濃度を前記制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡にするステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
重合性混合物の堆積液滴の最初のパターンを前記印刷ヘッドから放出するステップ、及び重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを前記印刷ヘッドから放出するステップの少なくとも1つが、前記グレースケール画像に含まれる画素に関連するデータ値に対応する所与の配置での重合性混合物の堆積の量を放出することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
相対的により大きいデジタル値が、前記グレースケール画像のより明るい領域に対応する相対的により小さいデジタル値よりも、前記グレースケール画像のより暗い領域に対応する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ピン止め工程が、前記重合性混合物の堆積液滴のゲル化を引き起こして前記重合性混合物の堆積液滴の硬化を引き起こさないのに十分な限られた時間の間、前記重合性混合物の堆積液滴を第1の波長の化学放射線に曝露するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップが、前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を、前記重合性混合物の堆積液滴の重合を引き起こすのに十分な時間及び十分な強度の第2の波長の化学放射線に曝露するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
重力が前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用して重合性混合物の前記表面を滑らかにすることを可能にするステップが、前記重合性混合物の堆積液滴間の介在空間を少なくとも部分的に充填することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基板中の酸素濃度を、前記基板及び前記重合性混合物の堆積液滴を含む制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡にするステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
付加製造により眼科レンズを形成する方法であって、前記方法が、
a.付加製造印刷ヘッドに対して基板を第1の位置で位置付けるステップ、
b.前記付加製造印刷ヘッドから重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンを放出するステップであって、前記重合性混合物の堆積液滴の第1のパターンが、エネルギー透過率パターンの第1の部分に対応する、ステップ、
c.前記重合性混合物の堆積液滴を受取表面上で受け取るステップ、
d.前記付加製造印刷ヘッドに対して次の位置(現在の位置プラスN)で前記基板を位置付けるステップ、
e.前記エネルギー透過率パターンの次の部分に対応する重合性混合物の堆積液滴の次のパターンを放出するステップ、
f.物理的な力が、現在のパス中に堆積された重合性混合物の液滴の表面を滑らかにすることを可能にするステップ、
g.現在のパス中に堆積された、前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも幾つかを、前記受取表面上に先に堆積された重合性混合物と一体化して、前記基板上に重合性混合物の結合された体積部を形成するステップ、
h.前記受取表面上の前記重合性混合物の堆積液滴を、前記重合性混合物の堆積液滴の部分重合を引き起こすピン止め工程に曝露するステップ、
i.前記基板に対する前記付加製造印刷ヘッドの複数パスについて、ステップdからh.を繰り返すステップ、及び
j.前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を硬化して前記形成された眼科レンズを製造するステップ、
を含む、方法。
【請求項12】
前記重合性混合物の堆積液滴を前記受取表面上で受け取るステップが、前記堆積液滴を、前記基板、重合性混合物の先に放出された液滴、及び挿入部のうちの1つ又は複数で受け取ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に対する前記付加製造印刷ヘッドの通過中に、ステップd.からg.を複数回繰り返すことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記形成された眼科レンズを前記基板から解放するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
重力が前記重合性混合物の堆積液滴の少なくとも一部に作用して、前記重合性混合物の堆積液滴間の介在空間を少なくとも部分的に充填することを可能にするステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ピン止め工程が、前記重合性混合物の堆積液滴のゲル化を引き起こし前記重合性混合物の堆積液滴の硬化を引き起こさないのに十分な限られた時間の間、前記重合性混合物の堆積液滴を第1の波長の化学放射線に曝露するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップが、前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部を、前記基板上の前記重合性混合物の結合された体積部の重合を引き起こすのに十分な時間と十分な強度で第2の波長の化学放射線に曝露することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
最大2.0体積%を含む酸素濃度を有する制御された雰囲気中に前記基板及び前記重合性混合物を収容するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記基板中の酸素濃度を前記制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡にするステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
制御コマンドの生成前に前記エネルギー透過率パターンをディザリングするステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
付加製造により光学要素を形成する方法であって、前記方法が、
a.重合性混合物の第1の印刷パターンを液滴として放出するステップであって、前記重合性混合物の第1の印刷パターンがエネルギー透過率画像に対応する、ステップ、及び
b.前記液滴の少なくとも一部を、基板及び先に放出された重合性混合物の一方又は両方を構成する受容表面上で受容するステップ、
を含む方法。
【請求項22】
前記受容表面上に堆積された液滴を部分的に硬化するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
重合性混合物の第2の印刷パターンを液滴として放出して、重合性混合物の結合された体積部を形成するステップ;及び前記重合性混合物の結合された体積部を部分的に硬化するステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記重合性混合物の結合された体積部を硬化するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エネルギー透過率画像が、グレースケール画像を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
データ値が、前記グレースケール画像の領域の暗さのレベルに対応し、前記暗さのレベルが前記光学要素の領域の厚さに対応する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記データ値が、患者の眼の光学的特性、前記患者の眼の表面特性、及び前記患者の眼のサイズ及び形状、のうちの少なくとも1つに対応する位置に配置される重合性混合物の量に対応する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記受容表面が、市販のコンタクトレンズ及び眼内レンズのうちの1つを構成する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記基板が弧状表面を備える、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記光学要素が、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、オーバーレイレンズ、眼内レンズ、角膜インプラント、眼科挿入部、及び接眼挿入部から選択される眼科デバイスを構成する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記光学要素が非対称デザインを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記光学要素が、光学ゾーン内の異なる経線において異なる度数を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記重合性混合物中の物体を前記受容表面上に埋め込むステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記重合性混合物中に埋め込まれた前記物体が、挿入部、電子機器、及び硬質レンズのうちの1つ以上を構成する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
生物学的活性物質を含む機能的活性物質を含む放出リザーバを前記重合性混合物中に堆積させるステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記重合性混合物の第1の印刷パターンを放出する前記ステップが、前記エネルギー透過率画像に含まれる画素に関連するデータ値に対応する、受容表面上の所与の位置に配置される重合性混合物の量を放出することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記受容表面上に受容された前記重合性混合物の第1の印刷パターンをピン止め工程にさらすステップの前に、前記受容表面上の重合性混合物の前記液滴に表面張力及び微小力の一方又は両方が作用して、前記堆積の工程中に形成された高い及び低い領域を平らにすること、前記重合性混合物の堆積液滴の表面を滑らかにすること、重合性混合物の堆積液滴を介在領域に流入させること、及び重合性混合物の堆積液滴の均一なエッジを形成すること、のうちの1つ又は複数を達成することを可能にするステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記重合性混合物が、顔料及び反応性色合いの一方又は両方を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記基板が、ガラス、ポリオレフィン、及びポリスチレンのうちの1つ又は複数を含み、前記重合性混合物と相溶性のあるコーティングを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記受容表面を界面活性剤で処理するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
光学ゾーンが前記光学要素の全体を構成する、請求項30に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】追加
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】追加
【補正の内容】
【国際調査報告】