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特表2024-542914ヒトCXCL16抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ヒトCXCL16抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20241112BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241112BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241112BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241112BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K47/68
A61P37/04
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61K31/337
A61K39/395 U
G01N33/574 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581056
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 IB2022061294
(87)【国際公開番号】W WO2023094995
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164723
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524004009
【氏名又は名称】セラス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cellus, Inc.
【住所又は居所原語表記】#409, Daehak-ro 80, Buk-gu, Daegu, Daegu, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(72)【発明者】
【氏名】チョー, サン ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソン クン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA05
4B064DA13
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE41
4C076FF68
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA65
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA65
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、がん治療のためのCXCL16抗体を開示する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のCXCL16抗体は、がん、例えば、甲状腺がん、乳がん、および前立腺がんの増殖を阻害し得る。また、がん治療のためのCXCL16抗体と標的化抗がん剤および/または免疫チェックポイント阻害剤との組み合せについても記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号12のいずれか1つのHCDR1、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;
配列番号13のいずれか1つのHCDR2、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;および
配列番号14のいずれか1つのHCDR3、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント
を含む重鎖可変領域、ならびに
配列番号15のいずれか1つのLCDR1、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;
配列番号16のいずれか1つのLCDR2、または前記配列に対して1、2、もしくは3個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;および
配列番号17のいずれか1つのLCDR3、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント
を含む軽鎖可変領域
を含む、CXCL16に結合する抗体。
【請求項2】
抗体が、
配列番号22と少なくとも80%同一であるHC-FR1;
配列番号23と少なくとも80%同一であるHC-FR2;
配列番号24と少なくとも80%同一であるHC-FR3;
配列番号25と少なくとも80%同一であるHC-FR4;
配列番号26と少なくとも80%同一であるLC-FR1;
配列番号27と少なくとも80%同一であるLC-FR2;
配列番号28と少なくとも80%同一であるLC-FR3;および
配列番号29と少なくとも80%同一であるLC-FR4
の1つ以上を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
抗体が、
配列番号22のアミノ酸配列を有するHC-FR1;
配列番号23のアミノ酸配列を有するHC-FR2;
配列番号24のアミノ酸配列を有するHC-FR3;
配列番号25のアミノ酸配列を有するHC-FR4;
配列番号26のアミノ酸配列を有するLC-FR1;
配列番号27のアミノ酸配列を有するLC-FR2;
配列番号28と少なくとも80%同一であるLC-FR3;および
配列番号29と少なくとも80%同一であるLC-FR4
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
抗体が、
配列番号22のアミノ酸配列を有するHC-FR1;
配列番号23のアミノ酸配列を有するHC-FR2;
配列番号24のアミノ酸配列を有するHC-FR3;
配列番号25のアミノ酸配列を有するHC-FR4;
配列番号26のアミノ酸配列を有するLC-FR1;
配列番号27のアミノ酸配列を有するLC-FR2;
配列番号28と少なくとも80%同一であるLC-FR3;および
配列番号29と少なくとも80%同一であるLC-FR4
の1つ以上を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
抗体がCXCL16への結合についてCXCR6(配列番号21)と競合する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
抗体が、
配列番号12のいずれか1つのHCDR1、またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;
配列番号13のいずれか1つのHCDR2、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;および
配列番号14のいずれか1つのHCDR3、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント
を含む重鎖可変領域、ならびに
配列番号15のいずれか1つのLCDR1、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;
配列番号16のいずれか1つのLCDR2、または前記配列に対して1、2、もしくは3個のアミノ酸が置換されているそのバリアント;および
配列番号17のいずれか1つのLCDR3、または前記配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアント
を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号12~17の6つのCDR全てを含む、請求項1または6に記載の抗体。
【請求項8】
抗体が、配列番号1~5のいずれか1つのVアミノ酸配列、または前記Vアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ配列を含むVH領域を含む、ならびに/または
抗体が、配列番号6~10のいずれか1つのVアミノ酸配列を含む;および前記Vアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ配列を含む、V領域を含む、
請求項1または7に記載の抗体。
【請求項9】
抗体が、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5からなる群より選択される抗体のV、またはそれらのバリアントを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
抗体が、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5からなる群より選択される抗体のVを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
抗体が、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5からなる群より選択される抗体のVとVの両方を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
置換の少なくとも1つまたは2つが保存的置換である;置換の少なくとも50%が保存的置換である;または置換の全てが保存的置換である、請求項6に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の単離された抗体または抗体フラグメント。
【請求項14】
抗体が、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、scFv、またはFabである、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体と結合について競合する抗体。
【請求項16】
配列番号1~5のいずれか1つのVアミノ酸配列を含むV領域および/もしくは配列番号6~10のいずれか1つのVアミノ酸配列を含むV領域を含む抗体、または前記Vアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するV領域および前記Vアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するV領域を含む抗体であって、対応するVもしくはV領域への変化がフレームワーク領域のみに存在する抗体。
【請求項17】
抗体のV領域のFW領域が、対応する抗体のいずれか1つのV領域に存在するFW領域と少なくとも80%同一である、請求項7に記載の抗体。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体と、細胞傷害性薬剤とを含む免疫複合体。
【請求項19】
(1)配列番号1~5のいずれか1つのVアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および/または配列番号6~10のいずれか1つのVアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するV配列を含むポリペプチド。
【請求項20】
請求項19記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体のV領域および/またはV領域をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体のV領域および/またはV領域をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体または請求項18に記載の免疫複合体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項25】
免疫応答を誘導する、および/またはがんを治療する方法であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体、または請求項24に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項26】
腫瘍転移を阻害する方法であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体または請求項24に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項27】
腫瘍転移が骨転移である、請求項26に記載の腫瘍転移を阻害する方法。
【請求項28】
抗体が静脈内投与される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
CXCL16に結合する抗体によって結合され得る腫瘍組織を有するがん患者を治療する方法であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体を患者に投与することを含む、方法。
【請求項30】
がんが甲状腺がんまたは乳がんである、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
抗体が静脈内投与される、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
化学療法および/または放射線療法を施すことをさらに含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
化学療法を施すことが、パクリタキセルを投与することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
免疫学的チェックポイント抗原を標的とする薬剤を投与することをさらに含む、請求項25~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
薬剤がモノクローナル抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
モノクローナル抗体がPD-1リガンドのPD-1への結合を阻害する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
モノクローナル抗体が抗PD-1抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
CXCL16に結合する抗体による治療に適した腫瘍を有する患者を同定する方法であって、患者からの腫瘍サンプルを請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体と接触させること、および腫瘍サンプルへの抗体の結合を検出することを含み、結合の検出がCXCL16に結合する抗体による治療に適した腫瘍を有する患者を指し示す、方法。
【請求項40】
抗体を生成する方法であって、重鎖をコードするポリヌクレオチドおよび軽鎖をコードするポリヌクレオチドが発現する条件下で、請求項22または23に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項41】
腫瘍標的活性を有する抗体を同定する方法であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体のVまたはV CDR3をコードするポリヌクレオチドに変異を誘発すること、変異を誘発されたVまたはV CDR3を含む抗体を発現させること;ならびにin vivoで腫瘍増殖を阻害する、または腫瘍サイズ、腫瘍浸潤、および/もしくは転移を減少させる抗体を選択することを含む、方法。
【請求項42】
がんを治療する方法のための、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項43】
がんがCXCL16発現の増加に関連している、請求項42に記載の抗体の使用。
【請求項44】
がんが、乳がん、甲状腺がん、子宮頸がん、肺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、肝臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、骨がん、皮膚がん、頭部がん、子宮頸がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、血液がん、胃がん、肛門周囲がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎盂がん、CNS中枢神経系腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、または脳幹神経膠腫である、請求項42に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年11月25日に韓国知的財産庁に出願された韓国特許出願第10-2021-0164723号に対する優先権を主張する。前記出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、がんを治療するために使用される治療用抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
がんは現在、世界中で最も多くの死亡者数を引き起こしている疾患の一つであり、がん発症年齢は徐々に低下し、平均寿命は徐々に延びているため、がん罹患率はさらに増加すると予想されている。がんは、遺伝的および環境的な因子によって異常な細胞分裂が起こると発症する。
【0004】
甲状腺未分化がんは、高分化型の甲状腺乳頭がんまたは濾胞性甲状腺がんとは異なり、増殖が早く、局所再発が多いために致死的な疾患であり、5年生存率は1.0%から7.1%である。平均生存期間は4カ月から12カ月であることが知られている。どの治療も満足のいく結果を示していない。これまで、様々な治療法が試みられてきたが、それらは臨床転帰および予後に満足のいく結果を示していない。それが発生するのは非常にまれで、甲状腺がん全体に占める割合は通常5%から10%以下であることが知られている。甲状腺未分化がんの増殖は短期間に急速に起こるため、診断時には、腫瘍が大きいだけでなく、局所浸潤および遠隔転移も重度で、外科的治療が不可能なケースが多い。したがって、甲状腺未分化がんの治療には、単一の治療法ではなく、多様式のアプローチが必要とされる。
【0005】
トリプルネガティブネガティブ乳がん(TNBC)には、乳がんによく見られる受容体を持たない。それはエストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を発現せず、HER2陰性(ER-/PR-/HER2-)である。TNBCは、タキソール、タモキシフェン、および抗HER2受容体抗体(トラスツズマブ)など、数多くの従来的な乳がん治療剤に対する耐性を示す。トリプルネガティブ乳がんは、若年層において発生し、閉経前年齢でより一般的であり、局所再発率および遠隔再発率が高く、リンパ節転移よりも血行性転移の可能性が高く、他のタイプよりも核および組織悪性度が高く、そして腫瘍サイズが大きい。これらの特徴は全て、予後不良に関連している。しかしながら、トリプルネガティブ乳がんには、他の乳がんに比べて有効な分子標的療法または抗がん剤がまだ存在せず、そのため、様々な腫瘍生物学的調査を行う必要がある。
【0006】
最近の研究により、特定の標的を有する抗がん剤は、標的を持たない抗がん剤に比べて耐性(獲得耐性)が生じやすいことが報告されている。抗がん剤に対する獲得耐性を防ぎ、抗がん剤の効果を最大限に高めるために、獲得耐性を誘導する因子を阻害する薬剤との併用療法が登場している。また、標的抗がん剤の適用範囲はしばしば限定的であり、他の因子の阻害剤と同時投与することで適用範囲を拡大することも可能である。また、そのような併用投与により、抗がん剤への耐性が示された場合だけでなく、有効性が示された場合においても、抗がん剤の効果を増強して抗がん剤の投与量を低減することが可能である。これにより、身体の各臓器に対する抗がん剤の毒性および/または副作用を最小限に抑えながら、抗がん剤の効果を高めることが可能とである。
【発明の概要】
【0007】
簡単な概要
本出願は、がん治療のためのCXCL16抗体を開示する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のCXCL16抗体は、がん、例えば、甲状腺がん、乳がん、および前立腺がんの増殖を阻害し得る。また、がん治療のためのCXCL16抗体と標的化抗がん剤および/または免疫チェックポイント阻害剤との組み合せについても記載される。
【0008】
1つの態様において、本明細書で提供されるものは、配列番号12またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるHCDR1;配列番号13またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるHCDR2;ならびに、配列番号14またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるHCDR3を含む重鎖可変領域;配列番号15またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるLCDR1;配列番号16またはその配列に対して1、2、もしくは3個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるLCDR2;ならびに、配列番号17またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、CXCL16に結合する抗体である。
【0009】
いくつかの実施形態において、抗体は、以下の1つ以上を含む:配列番号22と少なくとも80%同一であるHC-FR1;配列番号23と少なくとも80%同一であるHC-FR2;配列番号24と少なくとも80%同一であるHC-FR3;配列番号25と少なくとも80%同一であるHC-FR4;配列番号26と少なくとも80%同一であるLC-FR1;配列番号27と少なくとも80%同一であるLC-FR2;配列番号28と少なくとも80%同一であるLC-FR3;および配列番号29と少なくとも80%同一であるLC-FR4。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗体は以下を含む:配列番号22のアミノ酸配列を有するHC-FR1;配列番号23のアミノ酸配列を有するHC-FR2;配列番号24のアミノ酸配列を有するHC-FR3;配列番号25のアミノ酸配列を有するHC-FR4;配列番号26のアミノ酸配列を有するLC-FR1;配列番号27のアミノ酸配列を有するLC-FR2;配列番号28と少なくとも80%同一であるLC-FR3;および配列番号29と少なくとも80%同一であるLC-FR4。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は以下の1つ以上を含む:配列番号22のアミノ酸配列を有するHC-FR1;配列番号23のアミノ酸配列を有するHC-FR2;配列番号24のアミノ酸配列を有するHC-FR3;配列番号25のアミノ酸配列を有するHC-FR4;配列番号26のアミノ酸配列を有するLC-FR1;配列番号27のアミノ酸配列を有するLC-FR2;配列番号28と少なくとも80%同一であるLC-FR3;および配列番号29と少なくとも80%同一であるLC-FR4。いくつかの実施形態において、抗体は、CXCL16への結合についてCXCR6(配列番号21)と競合する。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号12またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるHCDR1;配列番号13またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるHCDR2;ならびに、配列番号14またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるHCDR3を含む重鎖可変領域;配列番号15またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるLCDR1;配列番号16またはその配列に対して1、2、もしくは3個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるLCDR2;ならびに、配列番号17またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているそのバリアントのいずれか1つにおけるLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は配列番号12~17の6つのCDR全てを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号1~5のいずれか1つのVHアミノ酸配列、またはそのVHアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ配列を含む、VH領域を含み、ならびに/または、抗体は、配列番号6~10のいずれか1つのVLアミノ酸配列、およびそのVLアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ配列を含む、VL領域を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5からなる群より選択される抗体またはそのバリアントのVHを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5からなる群より選択される抗体のVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5からなる群より選択される抗体のVHおよびVLの両方を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号42の重鎖および配列番号43の軽鎖を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、置換の少なくとも1つまたは2つが保存的置換であるか;置換の少なくとも50%が保存的置換であるか;または置換の全てが保存的置換である。
【0019】
別の態様では、本明細書において提供されるものは、本明細書に開示の単離された抗体または抗体フラグメントである。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体はヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、scFv、またはFabである。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体はヒト化抗体であり、ヒトIgG1アイソタイプ定常ドメイン、配列番号48を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化CXCL16抗体は、配列番号49を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に開示のCXCL16抗体との結合について競合する。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1~5のいずれか1つのVHアミノ酸配列を含むVH領域および/もしくは配列番号6~10のいずれか1つのVLアミノ酸配列を含むVL領域を含む抗体、または前記VHアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するVH領域および前記VLアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するVL領域を含み、対応するVHもしくはVL領域への変化はフレームワーク領域のみに存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体のVL領域のFW領域は、対応する抗体のいずれか1つのVL領域に存在するFW領域と少なくとも80%同一である。
【0024】
別の態様において、本明細書において提供されるものは、抗体および細胞傷害性薬剤を含む免疫複合体である。
【0025】
別の態様において、本明細書において提供されるものは、(1)配列番号1~5のいずれか1つのVHアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および/または配列番号6~10のいずれか1つのVLアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含むポリペプチドである。
【0026】
別の態様において、本明細書において提供されるものは、上記において開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0027】
別の態様において、本明細書において提供されるものは、上記において開示の抗体のVH領域および/またはVL領域をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
【0028】
別の態様において、本明細書において提供されるものは、実施例20の発現ベクターを含む宿主細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、上記において開示の抗体のVH領域および/またはVL領域をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0029】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、(i)上記において開の抗体またはその抗体の免疫抱合体と、(ii)薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0030】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、上記において開示の抗体または医薬組成物を投与することを含む、免疫応答を誘導する方法および/またはがんを治療する方法である。
【0031】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、上記において開示の抗体または医薬組成物を投与することを含む、腫瘍転移を阻害する方法である。いくつかの実施形態では、腫瘍転移が骨転移である、腫瘍転移を阻害する方法である。いくつかの実施形態では、抗体は静脈内投与される。
【0032】
別の態様において、本明細書で提供されるものは、CXCL16に結合する抗体によって結合され得る腫瘍組織を有するがん患者を治療する方法であって、上記において開示の抗体を患者に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、がんは甲状腺がんまたは乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がんである。いくつかの実施形態では、抗体は静脈内投与される。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、化学療法および/または放射線療法を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態において、化学療法はパクリタキセルである。いくつかの実施形態では、本方法は、免疫学的チェックポイント抗原を標的とする薬剤を投与することをさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、薬剤はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体はPD-1へのPD-1リガンド結合を阻害する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は抗PD-1抗体である。
【0035】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるものは、CXCL16に結合する抗体による治療に適した腫瘍を有する患者を同定する方法であって、患者からの腫瘍サンプルを上記において開示の抗体と接触させること、および腫瘍サンプルへの抗体の結合を検出することを含み、結合の検出がCXCL16に結合する抗体による治療に適した腫瘍を有する患者を指し示す、方法である。
【0036】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるものは、抗体を生成する方法であって、重鎖をコードするポリヌクレオチドおよび軽鎖をコードするポリヌクレオチドが発現する条件下で、上記において開示の宿主細胞を培養することを含む、方法である。
【0037】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるものは、腫瘍標的活性を有する抗体を同定する方法であって、上記において開示の抗体のVHまたはVL CDR3をコードするポリヌクレオチドに変異を誘発すること、変異を誘発されたVHまたはVL CDR3を含む抗体を発現させること;ならびにin vivoで腫瘍増殖を阻害する、または腫瘍サイズ、腫瘍浸潤、および/もしくは転移を減少させる抗体を選択することを含む、方法である。
【0038】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるものは、がんを治療する方法のための、上記において開示の抗体の使用である。いくつかの実施形態において、がんはCXCL16発現の増加と関連している。いくつかの実施形態において、がんは、乳がん、甲状腺がん、子宮頸がん、肺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、肝臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、骨がん、皮膚がん、頭部がん、子宮頸がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、血液がん、胃がん、肛門周囲がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎盂がん、CNS中枢神経系腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、または脳幹神経膠腫である。
【0039】
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1Aおよび1Bは、ヒトCXCL16(図1A)とマウスCXCL16(図1B)に対するヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の結合の結果を示している。
図1B図1Aおよび1Bは、ヒトCXCL16(図1A)とマウスCXCL16(図1B)に対するヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の結合の結果を示している。
図2A図2A、2B、2C、および2Dは、がん細胞の走化性と遊走性の解析におけるヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞の走化性および移動を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図2A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図2B)、乳がん細胞株MDA-MB-231(図2C)、および単球細胞株THP-1(図2D)。
図2B図2A、2B、2C、および2Dは、がん細胞の走化性と遊走性の解析におけるヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞の走化性および移動を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図2A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図2B)、乳がん細胞株MDA-MB-231(図2C)、および単球細胞株THP-1(図2D)。
図2C図2A、2B、2C、および2Dは、がん細胞の走化性と遊走性の解析におけるヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞の走化性および移動を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図2A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図2B)、乳がん細胞株MDA-MB-231(図2C)、および単球細胞株THP-1(図2D)。
図2D図2A、2B、2C、および2Dは、がん細胞の走化性と遊走性の解析におけるヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞の走化性および移動を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図2A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図2B)、乳がん細胞株MDA-MB-231(図2C)、および単球細胞株THP-1(図2D)。
図3A図3A、3B、3C、および3Dは、Akt活性化に対するヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞におけるCL16誘導性のAkt活性化を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図3A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図3B)、乳がん細胞株MDA-MB-157(図3C)、および前立腺がん細胞株PC3(図3D)。
図3B図3A、3B、3C、および3Dは、Akt活性化に対するヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞におけるCL16誘導性のAkt活性化を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図3A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図3B)、乳がん細胞株MDA-MB-157(図3C)、および前立腺がん細胞株PC3(図3D)。
図3C図3A、3B、3C、および3Dは、Akt活性化に対するヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞におけるCL16誘導性のAkt活性化を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図3A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図3B)、乳がん細胞株MDA-MB-157(図3C)、および前立腺がん細胞株PC3(図3D)。
図3D図3A、3B、3C、および3Dは、Akt活性化に対するヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果の結果を示している。がん細胞におけるCL16誘導性のAkt活性化を阻害するヒト化CXCL16抗体の能力をいくつかの細胞株で評価した:CXCR6過剰発現CHO-K1細胞(図3A)、甲状腺がん細胞株BHP10-3M(図3B)、乳がん細胞株MDA-MB-157(図3C)、および前立腺がん細胞株PC3(図3D)。
図4A図4Aおよび4Bは、トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231由来の腫瘍を有するマウスにおける腫瘍増殖(図4A)または腫瘍重量(図4B)の結果を示している。これらのマウスは、抗マウスCXCL16抗体単独、または抗マウスCXCL16抗体とパクリタキセル(PTX)の組み合わせのいずれかで処置した。結果は、抗マウスCXCL16抗体が乳がんマウスモデルにおいて腫瘍の体積と重量を有意に減少させたことを示している。
図4B図4Aおよび4Bは、トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231由来の腫瘍を有するマウスにおける腫瘍増殖(図4A)または腫瘍重量(図4B)の結果を示している。これらのマウスは、抗マウスCXCL16抗体単独、または抗マウスCXCL16抗体とパクリタキセル(PTX)の組み合わせのいずれかで処置した。結果は、抗マウスCXCL16抗体が乳がんマウスモデルにおいて腫瘍の体積と重量を有意に減少させたことを示している。
図5図5は、レンバチニブ(標的抗がん剤)と抗マウスCXCL16抗体の併用療法によって処置した甲状腺がんを有するマウスにおける腫瘍増殖を示している。結果は、レンバチニブと抗マウスCXCL16抗体の併用療法が、甲状腺がんマウスモデルにおいて腫瘍体積を有意に低減させたことを示している。
図6図6は、レンバチニブ(標的抗がん剤)、PD-L1阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤)、および抗マウスCXCL16抗体の併用療法によって処置した甲状腺がんを有するマウスにおける腫瘍増殖を示している。
図7図7は、パクリタキセル、PD-L1阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤)、抗マウスCXCL16抗体の併用療法によって処置した乳がんを有するマウスにおける腫瘍増殖を示している。
図8A図8Aは、骨の転移ニッチに似せた2チャンバー系を示している。
図8B図8Bは、CD11b+細胞の遊走に対するCXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5)の効果を示している。
図9A図9A、9B、および9Cは、ゾレンドロン酸(ZA)耐性骨転移の骨髄血清において、より高い濃度のCXCL16が検出されたことを示している。図9Aは、5週目および7週目の脛骨における骨腫瘍の生物発光画像(BLI)を示している。図9Bは、骨転移のZA-Rモデルの開発を示した概略図である。図9Cは、骨髄血清中のCXCL16濃度を指し示しているデータである。
図9B図9A、9B、および9Cは、ゾレンドロン酸(ZA)耐性骨転移の骨髄血清において、より高い濃度のCXCL16が検出されたことを示している。図9Aは、5週目および7週目の脛骨における骨腫瘍の生物発光画像(BLI)を示している。図9Bは、骨転移のZA-Rモデルの開発を示した概略図である。図9Cは、骨髄血清中のCXCL16濃度を指し示しているデータである。
図9C図9A、9B、および9Cは、ゾレンドロン酸(ZA)耐性骨転移の骨髄血清において、より高い濃度のCXCL16が検出されたことを示している。図9Aは、5週目および7週目の脛骨における骨腫瘍の生物発光画像(BLI)を示している。図9Bは、骨転移のZA-Rモデルの開発を示した概略図である。図9Cは、骨髄血清中のCXCL16濃度を指し示しているデータである。
図10A図10A、10B、および10Cは、抗CXCL16抗体が骨転移の腫瘍増殖を低減させたことを示している。図10Aは、実験計画を示している。図10Bは、骨転移の程度を指し示す代表的なBLIを示している。図10Cは、生物発光(BLI)の結果を表すドットプロットを含んでいる。
図10B図10A、10B、および10Cは、抗CXCL16抗体が骨転移の腫瘍増殖を低減させたことを示している。図10Aは、実験計画を示している。図10Bは、骨転移の程度を指し示す代表的なBLIを示している。図10Cは、生物発光(BLI)の結果を表すドットプロットを含んでいる。
図10C図10A、10B、および10Cは、抗CXCL16抗体が骨転移の腫瘍増殖を低減させたことを示している。図10Aは、実験計画を示している。図10Bは、骨転移の程度を指し示す代表的なBLIを示している。図10Cは、生物発光(BLI)の結果を表すドットプロットを含んでいる。
図11A図11A、11Bおよび11Cは、抗CXCL16抗体による処置が、ZA耐性骨転移の腫瘍増殖を低減させた結果を示している。図11Aは、実験計画を示している。図11Bは、骨転移の程度を指し示す代表的なBLIを示している。図11Cは、生物発光(BLI)の結果を表すドットプロットを含んでいる。
図11B図11A、11Bおよび11Cは、抗CXCL16抗体による処置が、ZA耐性骨転移の腫瘍増殖を低減させた結果を示している。図11Aは、実験計画を示している。図11Bは、骨転移の程度を指し示す代表的なBLIを示している。図11Cは、生物発光(BLI)の結果を表すドットプロットを含んでいる。
図11C図11A、11Bおよび11Cは、抗CXCL16抗体による処置が、ZA耐性骨転移の腫瘍増殖を低減させた結果を示している。図11Aは、実験計画を示している。図11Bは、骨転移の程度を指し示す代表的なBLIを示している。図11Cは、生物発光(BLI)の結果を表すドットプロットを含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本開示は、CXCL16抗体を含む、がんを予防または治療するための医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本医薬品は、標的抗がん剤および免疫チェックポイント阻害剤のうちの1つ以上をさらに含む。CXCL16抗体は、全長抗体またはそのフラグメントの形態で提供されうる。
【0042】
用語
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの抗体」への言及は、2つまたはそれ以上のそのような分子の組み合わせなどを含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られているそれぞれの値に対する通常の誤差範囲、例えば±20%、±10%、または±5%を指し、これらは記載された値の意図される意味の範囲内である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原エピトープと特異的に結合するために必要な可変領域配列を含む単離された結合剤または組換え結合剤を意味する。したがって、本明細書で使用される「抗体」とは、所望の生物学的活性、例えば、特異的標的抗原との結合を示す、あらゆるクラスもしくはサブクラスの抗体またはそのフラグメントの任意の形態のである。よって、それは最も広い意味で使用され、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ヒト抗体、キメラ抗体、ナノ抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびscFv、Fabなどを含むが、これらに限定されない抗体フラグメントを特に包含する。本出願では、「抗CXCL16抗体」および「CXCL16抗体」という用語は互換的に使用される。
【0045】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、例えば、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント;ダイアボディ;直鎖抗体(例えば、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995));一本鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメントと、残りの「Fc」フラグメント(容易に結晶化される能力を反映した呼称)を生成する。ペプシン処置は、2つの抗原結合部位を持ち、依然として抗原を架橋できるF(ab’)フラグメントを生じさせる。本発明の文脈において、結合ドメインは、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)を含むFvを含む。これらは一般に、単一のポリペプチド鎖上の(N末端からC末端までの)VL-scFvリンカー-VHまたはVH-scFvリンカー-VLを含むscFvドメイン、あるいはVH-CH1とVL-CLが結合した2つの異なるポリペプチド鎖上のFabフラグメントのいずれかとして構成される。
【0046】
単鎖FvまたはscFvは、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体フラグメントを指し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが抗原結合のために望ましい構造を形成することを可能とする。scFvの概要については、Pluckthun(1994)THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315を参照されたい。また、WO88/01649および米国特許第4,946,778号および第5,260,203号も参照のこと。
【0047】
本明細書で使用される場合、「V領域」または「可変領域」または「可変ドメイン」とは、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、フレームワーク3、CDR3、およびフレームワーク4のセグメントを含む抗体可変領域ドメインを指す。重鎖のV領域であるVHは、B細胞分化の過程でV遺伝子(HV)、D遺伝子(HD)およびJ遺伝子(HJ)がV(D)J組換えとして知られる形で再配列した結果である。軽鎖のV領域であるVLは、抗体のV遺伝子(LV)とJ遺伝子(LJ)の再構成の結果であり、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変領域は「VH」または「V」と表記され、軽鎖の可変領域は「VL」または「V」と表記される。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含んでいる。
【0048】
本明細書で使用される「相補性決定領域(CDR)」とは、軽鎖および重鎖可変領域によって確立される4つの「フレームワーク」領域を中断する、各鎖における3つの超可変領域(HVR)を指す。CDRは、抗原のエピトープに結合するための主な寄与因子である。各鎖のCDRは、N末端から順にナンバリングされ、CDR1、CDR2、CDR3と呼ばれ、また、CDRが位置する鎖によっても同定される。よって、V CDR3(HCDR3)は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメイン中にあり、その一方、V CDR3(LCDR3)は、それが位置する抗体の軽鎖の可変ドメインのCDR3である。「CDR」という用語は、CDRの配列に言及する場合、「HVR」と互換的に使用される。
【0049】
CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当技術分野における様々な周知の定義、例えば、Kabat、Chothia、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、およびAbMを用いて決定され得る(例えば、Chothia & Lesk,1987,Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J.Mol.Biol.196,901-917;Chothia C.et al.,1989,Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.Nature 342,877-883;Chothia C.et al.,1992,Structural repertoire of the human VH segments J.Mol.Biol.227,799-817;Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol 1997,273(4)を参照)。抗原結合部位の定義は、以下においても記載されている:Ruiz et al.,IMGT,the international ImMunoGeneTics database.Nucleic Acids Res.,28,219-221(2000);およびLefranc,M.-P.IMGT,the international ImMunoGeneTics database.Nucleic Acids Res.Jan 1;29(1):207-9(2001);MacCallum et al,Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,J.Mol.Biol.,262(5),732-745(1996);およびMartin et al,Proc.Natl Acad.Sci.USA,86,9268-9272(1989);Martin,et al,Methods Enzymol.,203,121-153,(1991);Pedersen et al,Immunomethods,1,126,(1992);およびRees et al,In Sternberg M.J.E.(ed.),Protein Structure Prediction.Oxford University Press,Oxford,141-1721996)。Kabatナンバリングによって決定されるCDRへの言及は、例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991))に基づく。Chothia CDRはChothiaによって定義されたように決定される(例えば、Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987)を参照)。CDRのナンバリングおよび配置は、採用されているナンバリング系に応じて異なり得る。可変重鎖および/または可変軽鎖配列の開示には、採用されているナンバリング系に関係なく、関連するCDRの開示が含まれると理解される。特に明示しない限り、本出願のCDR、例えば、表3に示されているものは、IMGTとKabatを組み合わせて定義されている。1つの例示的な例として、配列番号1のCDR1領域は、GFTFSNAVMNであり、これは、GFTFSNAV(IMGTによる)とNAVMN(Kabatによる)の残基の組み合わせである。
【0050】
「Fc領域」とは、抗体の定数領域から最初の定数領域免疫グロブリンドメインを除いた領域を指す。ヒトの免疫グロブリンの場合、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインのN末端にある柔軟なヒンジを指す。IgAおよびIgMの場合、FcにはJ鎖が含まれうる。IgGの場合、Fcは免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3、ならびにCγ1とCγ2の間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動しうることが当技術分野で理解されているが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Kabat et al.(1991,NIH Publication 91-3242,National Technical Information Service,Springfield,VA)におけるように、EUインデックスに従ったナンバリングを用いて、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義される。「Fc領域」という用語は、この領域を単独で指す場合もあれば、抗体または抗体フラグメントの文脈におけるこの領域を指す場合もある。「Fc領域」には、天然に存在するFc領域の対立遺伝子バリアント、ならびにエフェクター機能を調節する修飾が含まれる。また、Fc領域には、生物学的な機能に変化をもたらさないバリアントも含まれる。例えば、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から、生物学的機能を実質的に損なうことなく、1つ以上のアミノ酸が欠失され得る。そのようなバリアントは、活性への影響が最小になるように、当技術分野で知られている一般的な規則に従って選択され得る(例えば、Bowie,et al.,Science 247:306-1310,1990を参照のこと)。例えば、IgG4抗体では、組換えIgG4抗体で観察される不均一性をなくすために、単一のアミノ酸置換(KabatナンバリングによるとS228P;IgG4Proと命名)が導入されうる(例えば、Angal,et al.,Mol Immunol 30:105-108,1993を参照)。特定の実施形態では、Fc領域は、抗体の薬物動態特性を改善する置換、例えば、血清半減期を増加させる置換を含む。Fc領域の置換の非限定的な例は、米国特許第8,088,376号に見出すことができ、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0051】
本明細書で使用される「重鎖」という用語は、抗原に対する特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む、可変領域ドメインVHと3つの定常ドメインドメインCH1、CH2およびCH3とを含む全長重鎖を指し、そのフラグメントは全てを意味する。
【0052】
さらに、本明細書で使用される「軽鎖」という用語は、抗原に対する特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む、可変領域ドメインVLと定常領域CLとを含む、全長軽鎖およびそのフラグメントの両方を指す。
【0053】
「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、2つ以上のポリペプチド配列の文脈において、特定の領域、例えば、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたって対応が最大となるように比較し、アライメントした場合の2つの配列の長さにわたって、同一であるか、または同一であるアミノ酸残基の特定の割合(例えば少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。アミノ酸配列のパーセント同一性を決定するためのアライメントは、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用するものを含む様々な方法で実施され得る。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例は、BLAST 2.0アルゴリズムであり、これは、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されている。したがって、本発明の目的のため、パーセント配列同一性を決定するために、BLAST 2.0がデフォルトのパラメーターで使用され得る。
【0054】
本発明の抗体またはそのフラグメントは、当技術分野で知られている方法、例えば、ファージディスプレイ法または酵母細胞表面発現系を使用して生成され得る。例えば、scFvを調製するために、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号に記載の方法が使用されてもよく、また、組換えFab、Fab’、およびF(ab’)フラグメントを生成するために、WO92/22324に記載の方法が使用され得る。
【0055】
本発明の抗体は、ヒトを含む哺乳動物、鳥類等の任意の動物由来のものでありうる。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリの抗体でありうる。
【0056】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体であり、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体、または内因性免疫グロブリンを発現しない1つ以上のヒト免疫グロブリンをトランスフェクトされた動物から単離された抗体のいずれかを含む(米国特許第5,939,598号を参照)。
【0057】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントには、上記の配列により定義される抗体における1つ以上の置換、欠失、逆位または転座などの変異を通して本発明の所望の効果を達成する全ての変異体が含まれる。
【0058】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、本明細書で使用される場合、RNA、cDNA、ゲノムDNA、および上記の合成形態および混合されたポリマーのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を指す。特定の実施形態において、ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾型、およびそれらの組み合わせを指す。この用語には、DNAの一本鎖および二本鎖の形態も含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、ポリヌクレオチド、例えば、cDNAまたはmRNAは、天然に存在するヌクレオチドと、天然に存在するヌクレオチドおよび/または天然に存在しないヌクレオチドの結合によって一緒に連結された修飾ヌクレオチドのいずれかまたは両方を含みうる。当業者には容易に理解されるように、核酸分子は、化学的もしくは生化学的に修飾されていてもよく、または非天然もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。そのような修飾には、例えば、標識、メチル化、1つ以上のアナログでの天然に存在するヌクレオチドの置換、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレーター、アルキレーター、および修飾連結(例えば、αアノマー核酸など)などのヌクレオチド間修飾が含まれる。上記の用語はまた、一本鎖、二本鎖、部分的二本鎖、三本鎖、ヘアピン型、環状型、および南京錠型コンフォメーションを含む、あらゆる位相幾何学的コンフォメーションを含むことも意図されている。核酸配列への言及は、特に断りのない限り、その相補体を包含する。よって、特定の配列を有する核酸分子への言及は、その相補的配列を有するその相補鎖を包含すると理解すべきである。また、この用語には、同じポリペプチド配列をコードするコドン最適化核酸も含まれる。
【0059】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製性の核酸構造体としてのベクターと、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。本明細書で使用される「ベクター」とは、目的の核酸配列がベクター中に挿入された組換えコンストラクトを指す。特定のベクターは、それが作動可能に連結されている核酸の発現を指示し得る。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0060】
本明細書で使用される「置換」は、1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドが、それぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドに置換されることを示す。
【0061】
「単離された」核酸とは、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、通常、核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、その核酸分子は染色体外に、あるいは天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0062】
「抗体またはそのフラグメントをコードする単離された核酸」とは、抗体の重鎖および軽鎖(またはそのフラグメント)をコードする1つ以上の核酸分子であって、単一のベクターまたは別々のベクター中にそのような核酸分子が含まれており、宿主細胞内の1つ以上の位置にそのような核酸分子が存在するものを指す。
【0063】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養」という用語は互換的に使用され、外来性核酸が導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)を指す。よって、宿主細胞は、組換え宿主細胞であり、継代回数に関係なく、一次形質転換細胞およびそれに由来する子孫細胞を含む。
【0064】
本明細書で使用されるポリペプチドの「バリアント」とは、典型的には、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または挿入の点で、本明細書に具体的に開示されるポリペプチドと異なるポリペプチドである。本明細書で使用される場合、「バリアント」とは、天然に存在する配列ではなく、改変された配列を指す。
【0065】
同じ標的に対する2つの抗体の結合の強さを表す文脈において、「同等」という用語は、2つの結合反応から計算される2つの解離定数(K)の値が、互いに3倍以内であることを指す。別の言い方をすれば、第1のK(第1の抗体と標的との間の結合反応のK)と第2のK(第2の抗体と標的との間の結合反応のK)との間の比は、端点を含めずに1:3または3:1の範囲内である。K値が低いほど、結合が強いことを示す。例えば、基準抗体よりも強い結合力を持つ抗体バリアントは、同じ標的に対して基準抗体で測定されるKの少なくとも1/3のKで標的に結合する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「治療剤」とは、疾患に罹患している患者に治療上有効な用量で投与されると、疾患の症状および疾患に関連する合併症を治癒するか、または少なくとも部分的に阻止する薬剤を指す。
【0067】
本明細書で使用される「個体」という用語は、疾患の治療を必要とする対象、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシなどを指す。いくつかの実施形態では、個体は哺乳動物である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、任意の適切な方法によって対象に本発明の所定の組成物を提供することを指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、標的疾患の発症を抑制または遅らせるあらゆる作用を指す。
【0070】
本明細書において使用される場合、「治療」という用語は、標的疾患およびその代謝異常が改善されることを意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「改善」という用語は、所望の疾患に関連するパラメーター、例えば、本明細書に開示の組成物の投与による症状の程度を低減するあらゆる作用を意味する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「骨転移」という用語は、がん細胞が元の部位から骨に広がることを指す。ほぼ全てのタイプのがん、例えば、乳がん細胞、甲状腺がん細胞、前立腺がん細胞などが、骨に広がる(転移する)可能性を有する。
CXCL16
【0073】
CXCL16(NM_022059)は、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)をコードする遺伝子である。CXCL16タンパク質は、CXCケモカインファミリーに属する小さなサイトカインである。それは、CXCケモカインドメイン、ムシン様ストーク、膜貫通ドメイン、およびSH2に結合できる潜在的なチロシンリン酸化領域を含む細胞質尾部から成る。CXCL16の発現は、炎症性サイトカインのIFN-ガンマおよびTNF-アルファによって誘導される。CXCL16は、甲状腺がんの予後を予測するマーカーとして報告されている。韓国特許第10-2019-0145732号を参照。
【0074】
ヒトCXCL16タンパク質(配列番号11)は254個のアミノ酸を含み、ケモカイン受容体CXCR6に結合することができる。Kim et al.,Scientific Reports,9:13288 | https://doi.org/10.1038/s41598-019-49613-z。他のケモカインとは異なり、CXCL16は膜結合分子としてだけでなく、可溶性ケモカインとしても発現される。Abel et al.,J.Immunol.172,6362-6372(2004).CXCL16はマクロファージおよび樹状細胞によって産生され、CXCL16が豊富な環境への免疫細胞の走化性を制御する。Jin et al.,Oncol.Rep.37,3279-3286(2017).
【0075】
ヒトCXCL16:
MGRDLRPGSRVLLLLLLLLLVYLTQPGNGNEGSVTGSCYCGKRISSDSPPSVQFMNRLRKHLRAYHRCLYYTRFQLLSWSVCGGNKDPWVQELMSCLDLKECGHAYSGIVAHQKHLLPTSPPISQASEGASSDIHTPAQMLLSTLQSTQRPTLPVGSLSSDKELTRPNETTIHTAGHSLAAGPEAGENQKQPEKNAGPTARTSATVPVLCLLAIIFILTAALSYVLCKRRRGQSPQSSPDLPVHYIPVAPDSNT(配列番号11)
【0076】
CXCL16抗体
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のCXCL16抗体は、CXCL16(配列番号11)に結合し、配列番号12を含むHCDR1、またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されたバリアントHCDR1;配列番号13を含むHCDR2、またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されたバリアントHCDR2;ならびに、配列番号14を含むHCDR3、またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているバリアントHCDR3を含む、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号15またはその配列に対して1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸が置換されているバリアントLCDR1のいずれか1つを含むLCDR1;配列番号16またはその配列に対して1、2、もしくは3個のアミノ酸が置換されているバリアントLCDR2のいずれか1つを含むLCDR2;ならびに配列番号17またはその配列に対して1、2、3、4、または5個のアミノ酸が置換されているバリアントLCDR3のいずれか1つを含むLCDR3を含む、軽鎖可変領域を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、CXCL16に結合する抗体は、配列番号1~5のいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV;および配列番号6~10のいずれか1つと95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体は、表3に記載のVL配列と比較して、VLアミノ酸配列中に少なくとも1つの変異を有し、かつ10、20、30、40、または50以下の変異を有する。いくつかの実施形態では、VLアミノ酸配列は、表3に記載のVL配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の挿入または欠失を含みうる。いくつかの実施形態では、VLアミノ酸配列は、表2に示されるCDR配列に対する欠失または挿入、例えば、1、2、3、4、5、6、または7個のアミノ酸の欠失または挿入を含みうる。いくつかの実施形態では、本開示のCXCL16抗体は、表2に示されているように、各々がLCDR1、LCDR2、およびLCDR3に対して少なくとも70%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本発明のCXCL16抗体は、表2に示されているように、各々がLCDR1、LCDR2、およびLCDR3に対して少なくとも80%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本発明のCXCL16抗体は、それぞれ配列番号15~17に記載のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ全てを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体は、表3に記載のVH配列と比較して、VHアミノ酸配列中に少なくとも1つの変異を有し、かつ10、20、30、40、または50以下の変異を有する。いくつかの実施形態では、VHアミノ酸配列は、表3に記載のVH配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の挿入または欠失を含みうる。いくつかの実施形態では、VHアミノ酸配列は、表1に示されているCDR配列に対する欠失または挿入、例えば1、2、3、4、5、6、または7個のアミノ酸の欠失または挿入を含みうる。いくつかの実施形態では、VH領域は、表1に示されるHCDR1配列と比較して、1つまたは2つの置換を有するHCDR1を含む。いくつかの実施形態では、HCDR1は、表1に示されるHCDR1配列と比較して、3つ、4つ、または5つの置換を有する。いくつかの実施形態では、VH領域は、表1に示されるHCDR2配列と比較して、1つもしくは2つ;または1つ、2つ、もしくは3つの置換を有するCDR2を含む。いくつかの実施形態では、VH領域は、表1に示されるHCDR3配列と比較して、1つ、2つ、もしくは3つ;または1つ、2つ、3つ、もしくは4つの置換を有するHCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本開示のCXCL16抗体は、表1に示されているように、各々がCDR1、CDR2、およびCDR3に対して少なくとも70%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本発明のCXCL16抗体は、表1に示されているように、各々がHCDR1、HCDR2、およびHCDR3に対して少なくとも80%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗腫瘍抗体は、それぞれ配列番号12~14に記載のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のうちの1つ、2つ、または3つ全てを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR1領域は、配列番号22と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR1領域は、配列番号22の配列を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR2領域は、配列番号23と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR2領域は、配列番号23の配列を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR3領域は、配列番号24と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR3領域は、配列番号24の配列を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR4領域は、配列番号25と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR4領域は、配列番号25の配列を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR1領域は、配列番号26と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR1領域は、配列番号26の配列を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR2領域は、配列番号27と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR2領域は、配列番号27の配列を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR3領域は、配列番号28と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR3領域は、配列番号28の配列を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体のV領域のFR4領域は、配列番号29と少なくとも80%または少なくとも90%同一である。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体のV領域のFR4領域は、配列番号29の配列を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体は、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5のうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体はHC5LC1である。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
注:本開示における各CXCL16抗体の名前は2つの部分から成る:第1の部分は重鎖を表し、第2の部分は軽鎖を表す。一例として、抗体HC5LC1は、重鎖HC5(配列番号42を含む)と軽鎖LC1(配列番号43を含む)を含む、など。表4を参照。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
本開示の目的上、HC-FR1は、重鎖可変領域のフレームワーク1(FR1)領域を指す;HC-FR2は、重鎖可変領域のFR2領域を指す;HC-FR3は、重鎖可変領域のFR3領域を指す;LC-FR1は、軽鎖可変領域のフレームワーク1(FR1)領域を指す;LC-FR2は、軽鎖可変領域のFR2領域を指す;LC-FR3は、軽鎖可変領域のFR3領域を指す。
【0096】
バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の任意のCXCL16抗体のバリアントが、重鎖および/または軽鎖配列に変異を導入することによって生成され得る。いくつかの実施形態では、変異は、本明細書に開示のCXCL16抗体、例えば、抗体HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5のいずれか1つのCDRの1つ以上に導入される。いくつかの実施形態では、変異はフレームワーク領域に導入される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるCXCL16抗体は、配列番号1~5のいずれか1つのVH領域および/もしくは配列番号6~10のいずれか1つのVL領域を含む、または配列番号1~5のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するVH領域および配列番号6~10のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するVL領域を含む抗体であって、対応するVH領域またはVL領域に対する変異はフレームワーク領域のみに存在している。
【0097】
本明細書に開示の抗体は、腫瘍細胞に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体はがん細胞株に添加され、結合はバイオライトインターフェロメトリー(ForteBio)を用いて分析される。HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5は全て、ヒトCXCL16に対して強い結合を示した。表6および実施例1を参照。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCXCL16抗体は、配列番号12のHCDR1、配列番号13のHCDR2、配列番号14のHCDR3、配列番号15のLCDR1、配列番号16のLCDR2、配列番号17のLCDR3を含み;VH領域内のFW領域は、配列番号1~5のいずれか1つのVH領域内に存在するFW領域と少なくとも80%同一であり、VL領域内のFW領域は、配列番号6~10のいずれか1つのVL領域内に存在するFW領域と少なくとも80%同一である。
【0099】
腫瘍結合活性
本明細書に記載のCXCL16抗体は、当技術分野で周知のアッセイによって評価されるように、腫瘍細胞に結合し得る。好適なアッセイの非限定的な例には、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いた表面プラズモン共鳴分析、またはフローサイトメトリーアッセイ、またはバイオライトインターフェロメトリーアッセイが含まれ、これらは実施例のセクションでさらに説明される。
【0100】
いくつかの実施形態において、バリアント活性を評価するための結合アッセイは、ex vivoの腫瘍組織または腫瘍細胞に対して、例えば、同系(免疫適合)マウスでin vivoで腫瘍移植片として増殖させ、24~48時間以内に採取して処理した腫瘍細胞に対して行われる。結合は、フローサイトメトリーを含む数多くの手段により評価され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞に結合する抗体の結合は、標準的な免疫染色手順を使用して、新鮮な凍結ヒト腫瘍サンプルまたは固定腫瘍サンプルに対して実施される免疫蛍光法によって評価される。
【0102】
本明細書に開示の抗体は、腫瘍細胞に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体はがん細胞株に添加され、結合はバイオライトインターフェロメトリーアッセイを用いて分析される。HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5は、ヒトCXCL16に対して強い結合を示した。例えば、表6、および実施例1を参照。
【0103】
腫瘍阻害活性
本明細書に開示のCXCL16抗体のin vivo腫瘍阻害活性は、腫瘍増殖および動物生存率のモニタリングを含むがこれらに限定されない、いくつかのアッセイを使用することによって評価されうる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体は、腫瘍増殖の速度、サイズ、腫瘍浸潤および/または転移の減少を含む、腫瘍に対する阻害効果を示す。1つの例示的な例において、CXCL16抗体は、MDA-MB-231細胞に由来する腫瘍を有するマウスにおける腫瘍増殖を阻害する(実施例2を参照)。そのような抗体は、例えば、CXCL16を発現または過剰発現する腫瘍を有する対象に投与した場合、in vivoで腫瘍を標的とした効果を示す。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のCXCL16抗体は、がん細胞の走化性および遊走を阻害する。がん細胞の走化性および遊走は、当技術分野で周知の方法を使用して評価され得る。CXCR6を発現する細胞はCXCL16サイトカインを含む培地に向かって遊走する傾向があるため、これらのアッセイが典型的にデザインされる。1つの例示的なアッセイは、トランスウェル遊走アッセイである。簡単に説明すると、容器が上部チャンバーと下部チャンバーへと分割され、CXCR6を発現する細胞が上部チャンバーに播種され、CXCL16が下部チャンバーに含まれる培地に添加される。上部チャンバーは、細胞が通過することを可能とするポリカーボネート膜で下部チャンバーから分離されている。一定の期間が経過して、CXCR6を発現する細胞がCXCL16を含む下部チャンバー内の培地へと遊走した後、下部チャンバー内の細胞が計数され、これが下部チャンバーに遊走する細胞の数を表す。CXCR6発現細胞を本明細書に開示のCXCL16抗体で処理すると、下部チャンバーへと遊走する細胞の数が減少し、CXCL16抗体が走化性遊走を阻害できることが指し示される。1つの例示的なアッセイは、実施例2に開示されている。結果は図8Bに示されており、これは、HC5LC1、HC5LC2、およびHC5LC5を含む様々なCXCL16抗体が走化性および遊走を阻害することを指し示している。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCXCL16抗体は、がん細胞の骨転移を阻害する。骨転移の阻害における抗体の活性は、当技術分野で周知の方法で評価される。1つの例示的な方法は、骨の転移ニッチを模倣した2チャンバー系を使用する。簡単に説明すると、メッシュインサートである上部チャンバーが、下部チャンバー内に吊り下げられている。下部チャンバーには、がん細胞/全骨髄細胞の共培養物とCXCL16濃縮液が含まれており、骨の転移ニッチの微小環境を模倣している。上部チャンバーには、骨髄からの前破骨細胞(例えば、ヒトCD11b+骨髄骨髄細胞)が存在する。典型的には、前破骨細胞は破骨細胞へと分化し、これが骨の転移ニッチにおける腫瘍の形成を支持する。したがって、破骨細胞前駆体の遊走を阻害することで、骨の転移ニッチにおける腫瘍の進行を効果的にブロックすること、すなわち、骨転移を抑制することができる。上部チャンバー内の細胞をCXCL16抗体と接触させた後、上部チャンバー(別名、インサートのメッシュ)に保持されている細胞が計数される;これらの細胞の数は、転移ニッチへの細胞の動員を阻害する抗体の能力と正の相関を有する。
【0106】
抗体の形式
本発明のさらなる態様において、本開示に係るCXCL16抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)フラグメントでありうる。別の実施形態では、抗体は実質的に全長の抗体であり、例えば、IgG抗体、または本明細書で定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。具体的な抗体フラグメントのレビューについては、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。抗体フラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞による産生を含むが、これらに限定されない様々な技術によって作製され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、患者に投与される本開示に係るCXCL16抗体は、IgG1サブクラスのIgGである。いくつかの実施形態では、そのような抗体は、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスのIgGである。いくつかの実施形態では、そのような抗体はIgMである。いくつかの実施形態では、そのような抗体はラムダ軽鎖定常領域を有する。いくつかの実施形態では、そのような抗体はカッパ軽鎖定常領域を有する。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示に係るCXCL16抗体は一価の形式である。いくつかの実施形態では、腫瘍標的抗体はフラグメントの形式であり、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)フラグメントである。
【0109】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体フラグメントを含む、本明細書に開示のCXCL16抗体は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食性(ADCP)、および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を示すFc領域を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、および/またはADCCなどの抗体の1つ以上の機能特性を変更するように改変されたFc領域でありうる。したがって、Fc領域は、エフェクター機能、すなわち、免疫細胞上に発現されるFc受容体に結合した際に特定の生物学的機能を誘導する能力を増加または減少させるための追加の変異を含み得る。免疫細胞には、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および細胞傷害性T細胞が含まれるが、これらに限定はされない。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のFc領域は、エフェクター機能を調節する追加の修飾を含み得る。エフェクター機能を調節するFc領域アミノ酸変異の例には、Fc領域の228位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、243位、265位、269位、270位、297位、298位、318位、326位、327位、329位、330位、331位、332位、333位、および334位(EUナンバリングスキーム)における1つ以上の置換が含まれるが、これらに限定はされない。
【0111】
エフェクター機能を低下させる例示的な置換には、以下が含まれる:329位は、プロリンがグリシンもしくはアルギニン、またはFcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基Trp 87およびTrp 110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面を破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている変異を有しうる。エフェクター機能を低下させる追加の例示的な置換には、S228P、E233P、L235E、N297A、N297D、およびP331Sが含まれる。エフェクター機能を低下させるために複数の置換、例えば、ヒトIgG1 Fc領域のL234AおよびL235A;ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、およびP329G;ヒトIgG4 Fc領域のS228PおよびL235E;ヒトIgG1 Fc領域のL234AおよびG237A;ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、およびG237A;ヒトIgG2Fc領域のV234AおよびG237A;ヒトIgG4 Fc領域のL235A、G237A、およびE318A;ならびにヒトIgG4 Fc領域のS228PおよびL236Eが存在してもよい。エフェクター機能を増加させる置換の例には、例えば、E333A、K326W/E333S、S239D/I332E/G236A、S239D/A330L/I332E、G236A/S239D/A330L/I332E、F243L、G236A、およびS298A/E333A/K334Aが含まれる。いくつかの実施形態において、Fc変異はP329G、L234A、L235A、またはそれらの組み合わせを含む。エフェクター機能を増加または減少させることができるFc領域のアミノ酸変異の記述は、例えば、Wang et al.,Protein Cell.9(1):63-73,2018;Saunders,Front Immunol.Jun 7,eCollection,2019;Kellner et al.,Transfus Med Hemother.44(5):327-336,2017;およびLo et al.,J Biol Chem.292(9):3900-3908,2017に見出され得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、Fc領域は、ADCCを調節する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、EUナンバリングスキームに従ってFc領域の298位、333位、および/または334位における置換を有しうる。具体的には、S298A、E333A、およびK334AをFc領域に導入して、FcγRIIIaに対するFc領域の親和性を増加させ、FcγRIIaおよびFcγRIIbに対するFc領域の親和性を減少させることができる。
【0113】
また、Fc領域は、血清半減期を増加させるために追加の変異を含み得る。Fc領域におけるそのような変異は、新生児Fc受容体(FcRn)への結合の強化を通じて、抗体の薬物動態を改善し得る。抗体の血清半減期を増加させるFc領域の置換の例には、例えば、M252Y/S254T/T256E、T250Q/M428L、N434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M428L/N434S、M252Y/M428L、D259I/V308F、N434S、V308W、V308Y、およびV308Fが含まれる。抗体の血清半減期を増加させ得るFc領域のアミノ酸変異に関する記述は、例えば、Dumet et al.,MAbs.26:1-10,2019;Booth et al.,MAbs.10(7):1098-1110,2018;およびDall’Acqua et al.,J Biol Chem.281(33):23514-24,2006に見出され得る。
【0114】
さらに、いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、化学的に修飾されるか(例えば、1つ以上の化学的部分が抗体に結合され得る)、または抗体の1つ以上の機能的特性を変化させるために修飾されていてもよく、例えば、そのグリコシル化(例えば、低フコシル化、アフコシル化、または増加したシアリル化)を変化させるための細胞株および/または細胞培養条件下で産生されうる。例えば、抗体は、様々なポリマー、例えば、ポリエチレングリコールのうちの1つに連結され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、化学的部分への連結を容易にするため、および/または翻訳後修飾、例えば、グリコシル化の対象となる残基を変化させるための変異を含みうる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体は、NK細胞を動員する、および/またはADCCを増加させる抗体の能力を高めるグリコシル化の変化を有するFc領域を含む。いくつかの実施形態において、Fc領域は、フコースを含まないグリカンを含む(すなわち、Fc領域がアフコシル化されている)。アフコシル化抗体は、細胞内のフコースプールを枯渇させる異種酵素を発現する細胞株(例えば、ProBioGen AGのGLYMAXX(登録商標)、ベルリン、ドイツ)を使用して産生され得る。また、非フコシル化抗体は、内因性α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子が欠失した宿主細胞株を用いて産生することもできる。Satoh,M.et al.,”Non-fucosylated therapeutic antibodies as next-generation therapeutic antibodies,” Expert Opinion on Biological Therapy,6:11,1161-1173,DOI:10.1517/14712598.6.11.1161を参照。
【0116】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体は多価抗体として構築される。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体は、1分子当たり4つのCXCL16結合アームを含む4価の分子として構築される。そのようなコンストラクトは、ADCC活性の増加、ならびにフローサイトメトリーによって測定される腫瘍細胞への結合の増加を示す。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示のCXCL16抗体は、二重特異性または多重特異性の形式、例えば、三重特異性の形式で使用される。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、同一かまたは異なる抗原に結合するさらなる結合ドメインを含む二重特異性または多重特異性抗体に組み込まれてもよい。
【0118】
二重特異性または多重特異性抗体で使用され得る様々な形式がありうる。形式は、結合アームの数、各結合アームの形式(例えば、Fab、scFv、scFab、またはVHのみ)、結合アーム上に存在する抗原結合ドメインの数、互いに対する各アームの連結性および結合構造、Fcドメインの存在または非存在、Igクラス(例えば、IgGまたはIgM)、Fcサブクラス(例えば、hIgG1、hIgG2、またはhIgG4)、およびFcに対する変異(例えば、エフェクター機能を低減もしくは高めるため、または血清半減期を延長するための変異)などの要素を変更し得る。二重特異性および多重特異性形式の例については、Speiss et al.,Alternative Molecular Formats and Therapeutic Applications for Bispecific Antibodies,Mol Immunol,67,95-106(2015)の図1も参照されたい。
【0119】
CXCL16抗体コンジュゲート/共刺激剤
さらなる態様では、本発明のCXCL16抗体は、治療用部分、画像化/検出用部分、または酵素にコンジュゲートまたは連結されうる。例えば、腫瘍標的抗体は、検出可能なマーカー、細胞傷害性薬剤、免疫調節剤、造影剤、治療剤、オリゴヌクレオチド、または酵素にコンジュゲートされうる。抗体を所望の分子にコンジュゲートまたは連結するための方法は、当技術分野でよく知られている。この部分は、共有結合または非共有結合で抗体に連結されうる。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗体は、細胞傷害性部分または生存に必要な重要な細胞プロセスに影響を与える他の部分(「ペイロード」)に直接的に、または切断可能もしくは切断不可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、例えば、G2/Mで細胞周期停止を引き起こすことによって、有糸分裂中の細胞においてアポトーシスを誘導する微小管阻害剤である。使用され得る微小管阻害剤の非限定的な例には、メイタンシン誘導体(DM1/DM4)、またはオーリスタチン(MMAE/MMAF)およびそのバリアント、例えば、モノメチルオーリスタチンD、PF-06380101、デュオスタチン5、AS269、Tap18Hr1、AGD-0182、HPA-オーリスタチンFが含まれる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、チューブリン標的剤、例えば、ヘミアステリン、チューブリシン、またはエリブリンである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、エンジイン(カリケアマイシン)、デュオカルマイシン誘導体、ピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD二量体)、およびインドリノベンゾジアゼピン擬似二量体を含む、DNA損傷ペイロードである。
【0121】
いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、アウリスタチン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メイタンシノイドタキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、メトトレキサート、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、シュードモナス由来外毒素A、シュードモナス外毒素40、アブリン、アブリンA鎖、モデクチンA鎖、アルファサルシン、ジェロニン、ミトジェリン、リストリクトシン、コブラ毒因子、リボヌクレアーゼ、改変志賀毒素、フェノマイシン、エノマイシン、キュリシン、クロチン、カリケアマイシン、サポナリアオフィシナリスインヒビター、グルココルチコイド、オーリスタチン、オーロマイシン、イットリウム、ビスマス、コンブレスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、cc1065、またはシスプラチンを含むが、これらに限定はされない細胞傷害性薬物にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、抗体は、酵素阻害剤、増殖阻害剤、溶解剤、DNAまたはRNA合成阻害剤、膜透過性修飾剤、DNA代謝産物、ジクロロエチルスルフィド誘導体、タンパク質生成阻害剤、リボソーム阻害剤、またはアポトーシス誘導剤などの薬剤と連結されうる。いくつかの実施形態では、抗体はトポイソメリアーゼ阻害剤、例えば、トポイソメリアーゼI阻害剤などの薬物にコンジュゲートされる。トポイソメラーゼI阻害剤には、キノリンアルカロイド(SN-38、DXd)が含まれるが、これに限定はされない。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体は、例えば、膜の透過性を高め、膜を横切るタンパク質の移行を促進することにより、生体膜を通過する抗体の輸送を促進する分子に連結される。よって、例えば、抗体は、細胞透過性ペプチドなどの細胞透過剤に連結されうる。細胞透過性ペプチドの例には、TAT、浸透性ポリアルギニン分子、クニッツドメイン由来ペプチド、例えば、アンジオペップ-2、SynB、ブフォリン、トランスポルタン、両親媒性ペプチドなどが含まれる。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリアミンなどのカチオン性分子にコンジュゲートされうる。いくつかの実施形態では、抗体は、血液脳関門を通過する輸送、例えば、トランスサイトーシスを促進する薬剤にコンジュゲートされうる。よって、例えば、抗体は内在化した内皮細胞受容体、例えば、CXCR6受容体、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体、低比重リポタンパク質受容体などに結合する薬剤とコンジュゲートしていてもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞質への抗体の侵入を促進する毒素、例えば、志賀毒素とコンジュゲートしていてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体は、細胞内への抗体の内部移行を促進するために、改変毒素体(ETB)にコンジュゲートされ得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のCXCL16抗体は、ポリペプチド免疫調節剤、例えば、アジュバントと共にコンジュゲートまたは投与される。免疫調節剤の例には、サイトカイン(例えば、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ))、成長因子、リンホトキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、造血因子、インターロイキン(例えば、インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-6、IL-10、IL-12、IL-15、IL-15/IL-15Rα、例えば、Sushiドメイン複合体、IL-18、およびIL-21)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、-β、または-γ、エリスロポエチンおよびトロンボポエチン、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態では、抗体は、アジュバント、トール様受容体(TLR)アゴニスト、C型レクチン受容体(CLR)アゴニスト、レチノイン酸誘導性遺伝子I様受容体(RLR)アゴニスト、サポニン、キチン、キトサンなどの多糖類、β-グルカン、ISCOM、QS-21、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストなどの自然免疫系を刺激する化合物、または別の免疫増強剤と共に連結または投与される。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体は、IL-15融合コンストラクト、IL-15:IL-15Rα融合コンストラクト、または単鎖IL-15:IL-15Rα(sushi)融合コンストラクトなどのIL-15受容体アゴニストにコンジュゲートされるか、またはそれと共に投与される。1つの実施形態では、IL-15受容体アゴニストにコンジュゲートされた腫瘍標的抗体は、二重特異性抗体または多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IL-15受容体アゴニストをさらに含む、本明細書に記載の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体または多重特異性抗体である。
【0125】
1つの実施形態では、本明細書に記載のCXCL16抗体は、単鎖IL-15:IL-15Rα(sushi)融合コンストラクトと共に投与される。いくつかの実施形態では、CXCL16抗体は、NKTR-255などのポリマーをコンジュゲートさせたIL-15コンストラクトと共に投与される。
【0126】
例えば、体重1kgあたり0.01mg未満から体重1kgあたり約25mgまたは0.1~10mg/kgの範囲で、または患者あたり1mg~2gまたは患者あたり約50mg~1000mgの範囲の治療有効量を含む、IL-15:IL-15Rα一本鎖コンストラクトが対象に投与され得る。
【0127】
1つの実施形態では、単鎖IL-15融合コンストラクトは、ポリペプチドリンカーを用いてIL-15Rα(sushi)に結合されたIL-15を含む。1つの実施形態では、単鎖IL-15融合コンストラクトは、長い半減期のために、Fcなどの別のタンパク質にポリペプチドリンカーを介して結合される。例えば、WO2018071919A1(米国特許第10550185号に対応)の図9Bを参照のこと。1つの実施形態では、IL-15が、Fcの重鎖のN末端と結合または融合され、重鎖ヘテロ二量化技術を用いて、IL-15Rα(sushi)が、もう一方のFc重鎖N末端に結合または融合されて、所望のハイブリッドFcが形成される。例えば、WO2018071919A1の図9Aを参照。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗体は、放射性核種、鉄関連化合物、色素、蛍光剤、または画像化剤と連結されうる。いくつかの実施形態では、抗体は、限定はされないが、金属;金属キレート剤;ランタニド;ランタニドキレート剤;放射性金属;放射性金属キレート剤;陽電子放出原子核;マイクロバブル(超音波用);リポソーム;リポソームまたはナノスフェア中にマイクロカプセル化された分子;単結晶酸化鉄ナノ化合物;磁気共鳴画像造影剤;光吸収剤、光反射剤および/または散乱剤;コロイド粒子;近赤外蛍光色素分子などの蛍光色素分子などの薬剤に連結されうる。
【0129】
上記コンストラクトのいずれかの1つの実施形態において、CXCL16抗体は、HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5のうちのいずれか1つである。上記コンストラクトのいずれかの1つの実施形態において、腫瘍標的結合ドメインはHC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5のVH配列およびVL配列を含む。
【0130】
抗体の生成
開示の抗体は一般的に、当技術分野でよく知られているベクターおよび組換え法を用いて生成される(例えば、Sambrook & Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,Current Protocols in Molecular Biologyを参照)。遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、およびキットは、商業ベンダーから入手可能である。したがって、本発明のさらなる態様において、本明細書で提供されるものは、本明細書に記載の腫瘍標的抗体のいずれかのV領域および/またはV領域、またはそのフラグメントをコードする単離された核酸;そのような核酸を含むベクター、ならびに抗体コード核酸を複製するため、および/または抗体を発現させるために使用される、核酸が導入された宿主細胞である。そのような核酸は、腫瘍標的抗体(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)のVを含むアミノ酸配列、および/またはVを含むアミノ酸配列をコードしうる。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、(1)Vアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよびVアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、または(2)Vアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターおよびVアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。
【0131】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載のCXCL16抗体を作製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、抗体の発現に適した条件下で、前段落に記載の宿主細胞を培養することを含む。いくつかの実施形態では、抗体はその後、宿主細胞(または宿主細胞培養液)から回収される。
【0132】
本開示の抗体またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む適切なベクターには、クローニングベクターおよび発現ベクターが含まれる。選択されるクローニングベクターは、使用される宿主細胞によって異なりうるが、有用なクローニングベクターは一般に自己複製が可能であり、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有していてもよく、および/またはそのベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を保有しうる。例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1プラスミド、pCR1、RP4、ファージDNA、およびシャトルベクターが含まれる。これらならびにpFUSE、pTRIOZ、pETEv2、TGEX-HC-hG1、TGEX-LC-hk、pOpti VEC、pCDNA3.3、pTRIOz、pFUSECHig、pFUSE-CLig、またはpOptiVECなどの他の多くのクローニングベクターが商業ベンダーから入手可能である。
【0133】
発現ベクターは一般に、本開示の核酸を含む複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは宿主細胞内でエピソームとして、あるいは染色体DNAの一部として複製可能であり得る。好適な発現ベクターとしては、プラスミドならびに、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびその他のベクターを含むウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
本明細書に記載の抗体を発現させるのに適した宿主細胞には、原核細胞または真核細胞の両方が含まれる。例えば、グリコシル化およびFcエフェクター機能を必要としない場合、CXCL16抗体は細菌中で生成されうる。発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性画分として単離され、さらに精製されうる。あるいは、宿主細胞は真核宿主細胞であってもよく、これには、糸状菌もしくは酵母などの真核微生物、グリコシル化経路が「ヒト化」され、部分的または完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の生成がもたらされる真菌もしくは酵母株、脊椎動物、無脊椎動物、および植物細胞が含まれる。無脊椎動物細胞の例には、昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合せて使用されうるバキュロウイルス株が数多く同定されている。植物細胞培養物も宿主細胞として利用され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体を生成するために脊椎動物宿主細胞が使用される。例えば、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株などの哺乳動物細胞株;ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977に記載の293または293細胞);ベビーハムスター腎細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980に記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68,1982に記載のTRI細胞;MRC 5細胞;およびFS4細胞が、腫瘍を標的とする抗体を発現するために使用されうる。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980);ならびにY0、NS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。また、本開示の宿主細胞には、限定されるものではないが、単離された細胞、in vitro培養細胞、およびex vivo培養細胞も含まれる。抗体の生成に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268,2003を参照のこと。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明のCXCL16抗体は、CHO細胞株、例えば、CHO-K1細胞株によって産生される。重鎖配列および軽鎖配列をコードする1つ以上の発現プラスミドが導入され得る。例えば、1つの実施形態では、重鎖をコードする発現プラスミドおよび軽鎖をコードする発現プラスミドが、Freestyle Max試薬などの試薬を使用して、CHO-K1宿主細胞株において1:1の割合で、線状化プラスミドとして宿主細胞にトランスフェクトされる。生産細胞株を取得するためのクローニング方法としては、単一細胞イメージングと組み合わせた蛍光活性化セルソーティング(FACS)が使用され得る。
【0137】
本開示のCXCL16抗体またはそのフラグメントをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、ポリペプチドの発現が起こることを可能とする適切な条件下で培養され得る。ポリペプチドは分泌され、ポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から単離されうる。あるいは、ポリペプチドは、細胞質または膜画分中に保持され、細胞を採取、溶解して、所望の方法でポリペプチドを単離してもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体はin vitro合成によって生成され得る(例えば、Sutro Biopharma生化学的タンパク質合成プラットフォームを参照)。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるものは、本明細書に開示のCXCL16抗体のバリアントを作製する方法である。よって、例えば、本明細書に記載のV CDR3のバリアントをコードするコンストラクトを修飾することができ、修飾されたコンストラクトによってコードされるV領域は、本明細書に記載のV領域またはバリアント領域と対になる本明細書に記載のV領域の文脈で、標的細胞(例えば、乳がん細胞)への結合活性および/またはin vivo腫瘍標的活性について試験され得る。同様に、本明細書に記載のV CDR3のバリアントをコードする構築物を修飾することができ、修飾されたコンストラクトによってコードされるV領域は、標的細胞もしくは他の腫瘍細胞への結合、および/またはin vivo腫瘍標的活性の有効性について試験され得る。また、そのような解析は、他のCDRまたはフレームワーク領域で行われてもよく、所望の活性を有する抗体が選択され得る。
【0140】
がんの治療
さらなる態様において、本明細書において提供されるCXCL16抗体、または本明細書に記載のそのバリアントは、がんを治療するための治療剤として使用され得る。
【0141】
いくつかの態様において、本開示は、腫瘍標的化効果を有するCXCL16抗体による治療の候補となる対象を同定する方法を提供する。よって、1つの実施形態では、本発明は、本開示のCXCL16抗体による治療から利益を得ることができる患者を同定する方法を提供する。1つの実施形態では、患者は、CXCL16を過剰発現するがん、すなわち、正常組織よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、または100%高いレベルでCXCL16を発現するがんを有する。いくつかの実施形態では、がんサンプルは原発腫瘍に由来する。代替的な実施形態では、がんサンプルは転移性病変である。CXCL16との結合相互作用を介したがん細胞への抗体の結合は、バイオライトインターフェロメトリー(ForteBio)、免疫組織化学またはフローサイトメトリーなどの任意のアッセイを使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、サンプル中の腫瘍細胞の少なくとも0.2%、0.5%もしくは1%、または少なくとも5%もしくは10%、または少なくとも20%、30%もしくは50%への抗体の結合が、本明細書に記載のように、CXCL16で治療される患者を決定するための選択基準として使用されうる。
【0142】
本明細書に開示のCXCL16抗体は、がんを治療するために使用され得る。一般に腫瘍とは、身体組織の自律的な過剰増殖により異常に成長した腫瘤を指し、腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられ得る。悪性腫瘍は良性腫瘍に比べて非常に早く増殖し、周囲の組織に浸潤しながら転移を起こし、生命を脅かす。そのような悪性腫瘍は一般に「がん」と呼ばれる。よって、「がん」という用語は、細胞死の制御に関連する疾患、または正常なアポトーシスのバランスが崩れた際の過剰な細胞増殖によって引き起こされる疾患を指す。場合によっては、これらの異常な増殖亢進細胞が周囲の組織および臓器に浸潤して塊を形成し、その浸潤が構造の破壊もしくは変形を引き起こすことがあり、この状態が総称してがんと呼ばれる。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のCXCL16抗体の治療から利益を得ることができるがんは、子宮頸がん、肺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、肝臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、骨がん、皮膚がん、頭部がん、子宮頸がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、血液がん、胃がん、肛門周囲がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎盂がん、中枢神経系腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳である。いくつかの実施形態では、がんは神経膠腫および下垂体腺腫である。
【0144】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のCXCL16抗体によって治療され得る甲状腺がんは、甲状腺未分化がんである。組織非形成性甲状腺がんとも呼ばれる甲状腺未分化がんは、甲状腺がんの中で最も予後が悪い。肺または骨への遠隔転移が最初から見つかることが多く、確認された場合はステージIVとみなされる。平均生存期間は約3から6ヶ月であり、生存率は0%に近い。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCXCL16抗体で治療され得る乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲンおよびプロゲステロン受容体(ER-/PR-)が欠如していることが知られており、HER2遺伝子は発現されない。したがって、TNBCはエストロゲン受容体モジュレーター(タモキシフェン)およびHER2阻害剤(トラスツズマブ)に対して耐性である。トリプルネガティブ乳がんは、米国では全乳がん患者の約12~17%、韓国では全乳がん患者の約15.9%を占めている。トリプルネガティブ乳がん患者の5年生存率は約77%であると報告されており、これは、他のタイプの乳がん患者の約93%よりも低い。これらのがん患者は、本明細書に開示のCXCL16抗体の治療による恩恵を受けうる。
【0146】
併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCXCL16抗体は、本出願では併用剤とも呼ばれる1つ以上の追加の治療剤と共に投与されうる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCXCL16抗体は、1つ以上の標的抗がん剤と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態では、標的化抗がん剤は、腫瘍細胞抗原を標的とするような治療抗体である。標的抗がん剤の非限定的な例には、セツキシマブ、トラスツズマブ、イブリツモマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、イマチニブ、ニロチニブ、ラドチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オルムチニブ、オシメルチニブ、セリチニブ、ラパチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、ベムラチニブ、スニチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ダサチニブ、クリゾチニブ、ゾパニブ、レゴラフェニブ、ベバシズマブ、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、アキシチニブ、ニンテダニブ、およびレンバチニブが含まれる。
【0147】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群より選択されるが、これらに限定はされない。
【0148】
いくつかの実施形態において、併用剤はPD-L1阻害剤である。PD-L1阻害剤の非限定的な例には、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュバルマブ、エンバフォリマブ、コシベリマブ、AUNP12、CA-170、BMS-986189、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブが含まれ、ティスレリズマブ、トリパリマブ、ドスターリマブ、INCMGA00012、AMP-224、およびAMP-514から成る群より選択される1つ以上でありうる。
【0149】
いくつかの実施形態において、併用剤はCTLA-4阻害剤である。CTLA-4阻害剤の非限定的な例には、イピリムマブおよびトレメリムマブが含まれる。
【0150】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体および併用剤は、同時に、別々に、または連続して投与されうる。
【0151】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体はコハク酸代謝を阻害する。
【0152】
いくつかの実施形態では、標的化抗がん剤は経口投与されうる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は注射によって投与されうる。
【0153】
いくつかの実施形態では、CXCL16抗体および併用剤は、それぞれ単一の剤形または単一の用量で提供されうる。
【0154】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍のサイズを低減させるか、または腫瘍の転移を阻害するためのものでありうる。
【0155】
本明細書に開示の医薬組成物はまた、薬学的に許容される塩も含みうる。本明細書における「薬学的に許容される塩」という用語には、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基に由来する塩が含まれる。
【0156】
適切な酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、グルコン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が含まれる。酸付加塩は、従来的な方法、例えば、過剰な酸の水溶液に化合物を溶解し、メタノール、エタノール、アセトン、またはアセトニトリルなどの水混和性有機溶媒を使用して塩を沈殿させることによって調製され得る。それはまた、等モル量の化合物と酸もしくはアルコールを水中で加熱し、次いで混合物を蒸発乾固することによって、または沈殿した塩を吸引濾過することによっても調製され得る。
【0157】
適切な塩基から誘導される塩には、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにアンモニウムが含まれるが、これらに限定はされない。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過剰のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解させ、未溶解の化合物塩を濾過し、次いで濾液を蒸発および乾燥させることによって得ることができる。この場合、金属塩としてナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩を調製することが薬学的に適切であり、対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩と適切な銀塩(例えば、硝酸銀)とを反応させることによって得ることができる。
【0158】
医薬組成物中のCXCL16抗体および/または1つ以上の併用剤(例えば、標的抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤)は、疾患の症状、症状の進行度合い、患者の状態等に応じて、例えば、組成物の総重量に対して0.0001から0.0001で適宜調整され得るが、それは99.9重量%であってもよく、または0.001から50重量%でありうるが、これらに限定されるものではない。含有率は、溶剤を除いた乾燥量に基づく。
【0159】
本発明の医薬組成物は、疾患の程度および/または目的に応じて有効成分の含有量が変動しうる。いくつかの実施形態では、それは1回投与時に0.01μgから10000mg、好ましくは0.1μgから1000mgの有効用量である。それは1日に数回、反復投与され得る。しかしながら、医薬組成物の投与量は、製剤方法、投与経路、処置の回数、ならびに患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食事、および排泄率などの様々な因子を考慮して決定され、患者に対する有効な投与量が決定される。したがって、この点を考慮して、当業者であれば、本発明の組成物の適切な有効用量を決定することができるであろう。本発明の医薬組成物は、本発明の効果が示される限り、その製剤、投与経路および投与方法は特に限定されない。
【0160】
本発明に係る医薬組成物は、医薬組成物の調製に一般的に使用される適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含みうる。賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、吸着剤、湿潤剤、フィルムコーティング材料、および放出制御添加剤からなる群より選択される少なくとも1つでありうる。
【0161】
本発明に係る医薬組成物は、それぞれ常法に従って、調製され得るが、パウダー、顆粒、徐放性顆粒、腸溶性顆粒、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁剤、スピリッツ剤、トローチ剤、香料、およびリモネード剤、タブレット、徐放性タブレット、腸溶性タブレット、舌下タブレット、硬カプセル剤、軟カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、液状エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流剤、石膏剤、ローション剤、パスタ剤、スプレー剤、吸入剤、パッチ剤、無菌注射液、またはエアロゾルなどの外用剤を製剤化して使用できる。外用剤は、クリーム、ゲル、パッチ、スプレー、軟膏、警告剤、ローション、リニメント、パスタ、またはパップ剤でありうる。
【0162】
本発明に係る医薬組成物中に含まれうる担体、賦形剤、および希釈剤には、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルが含まれうる。
【0163】
製剤の場合、それは通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。
【0164】
本発明に係るタブレット、パウダー、顆粒、カプセル、丸薬、およびトローチのための添加剤としては、コーンスターチ、バレイショデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、ジマンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、尿素、コロイダルシリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、セルロース(HPMC)、HPMC 1928、HPMC 2208、HPMC 2906、HPMC 2910などのヒドロキシプロピルメチル賦形剤、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェル;ゼラチン、アラビアガム、エタノール、寒天粉末、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製シェラック、澱粉粉末、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コーンスターチ、寒天粉末、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、1-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、ポリ酢酸ビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム、重炭酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアゴム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウムなどの崩壊剤、エチルセルロース、スクロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ジソルビトール溶液、軽質無水ケイ酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、硬化植物油、タルク、石灰石、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール4000、6000、流動パラフィン、硬化大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーンオイル、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、ナトリウム酢酸塩、オレイン酸ナトリウム、dl-ロイシン、軽質無水ケイ酸等、潤滑剤が使用され得る。
【0165】
本発明に係る液体製剤のための添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸ショ糖、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(Twinester)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ラノリンエーテル、ラノリンエステル、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が使用され得る。
【0166】
本発明に係るシロップには、ショ糖液、その他の糖類または甘味料が使用されてもよく、必要に応じて、香料、着色剤、保存剤、安定化剤、懸濁化剤、乳化剤、増粘剤等が使用されうる。
【0167】
精製水が本発明に係る乳化物において使用されてもよく、必要に応じて、乳化剤、保存剤、安定化剤、香料等が使用されうる。
【0168】
本発明に係る懸濁化剤においては、アカシア、トラガカンサ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC 1828、HPMC 2906、HPMC 2910などの懸濁化剤が使用されうる。必要であれば、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、着色剤、および香料が使用されてもよい。
【0169】
本発明に係る注射液は、注射液用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リングゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖+塩化ナトリウム注射液、PEG(ペグ)、乳酸リングゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、不揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、大豆油、コーン油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンゼンなどの溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、尿素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイーン、ニジョンチンアミド、ヘキサミン、およびジメチルアセトアミドなどの溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸および酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガムなどのバッファー;塩化ナトリウムなどの等張化剤;亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、炭酸ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(NaS2O)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、窒素ガス(N)、エチレンジアミン四酢酸などの安定化剤;0.1%重硫化ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、チオ尿素、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウムなどの硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、およびグルコン酸カルシウムなどの鎮痛剤;SiMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、Tween80、およびモノステアリン酸アルミニウムなどの懸濁剤を含む。
【0170】
本発明に係る坐剤は、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソール、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナール、綿実油、落花生油、パーム油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセリン、ツイーンまたはスパン、イムハウゼン、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプス ソリダス、ブチラムテゴ-G)、セベスファーマ16、ヘキサリドベース95、コトマール、ヒドロキソートSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ハイドロハイドロコート25、ハイドロコート711、イドロポスタル、マッサエストラリウム、A、AS、B、C、D、E、I、T、マッサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオポスタル-N、パラマウンド-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、IV型坐剤(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、サポスタル(N、Es)、ウェコビ(W、R、S、M、Fs)、テスタートリグリセリドベース(TG-95、MA、57)などを含む。
【0171】
経口投与用の固体製剤には、タブレット、丸剤、パウダー、顆粒、カプセルなどが含まれ、そのような製剤には、抽出物中に少なくとも1つの賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、ショ糖もしくは乳糖、ゼラチンなどが含まれる。単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用され得る。
【0172】
経口投与のための液体製剤には、懸濁液、内服液、乳濁液、シロップなどが含まれる。一般的に使用される単純な希釈剤である水および流動パラフィンに加えて、湿潤剤、甘味料、香料、および保存料などの様々な賦形剤が含められうる。非経口投与用の製剤には、滅菌水溶液、非水溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥製剤、および坐剤が含まれる。非水性溶媒および懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルが含まれる。
【0173】
本発明に係る医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本発明において、「薬学的に有効な量」とは、医学的処置に適用され得る妥当なベネフィット/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効な量のレベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物活性およびタイプによって決定される;薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排泄率、治療期間、併用薬を含む因子、ならびに医療分野において周知の他の因子が決定され得る。例示的な実施形態では、CXCL16抗体は、100mcg/20g/日、週に2回、腹腔内注射によって;または、50mcg/20g/日、週3回、静脈内注射によって投与される;PD-L1ペプチドは、腹腔内注射により0.1mg/20g/日、週5回投与される;レンバチニブは、経口投与により30m/kg/日で投与される;パクリタキセルは、腹腔内注射により週2回、10mg/kg、または腹腔内注射により週1回、10mg/kg/日で投与される。
【0174】
本発明に係る医薬組成物は、個々の治療剤として、または他の治療剤と組み合わせて投与されてもよく、従来的な治療剤と連続して、または同時に投与されうる。
【0175】
医薬組成物および他の治療剤は、単回または複数回投与されうる。当業者は、上記の全ての因子を考慮して、最小限の量で、または副作用なしで最大の効果を得ることができる量を決定しうる。
【0176】
本発明の医薬組成物は、様々な経路を介して個体に投与されうる。あらゆる投与様式、例えば、経口投与、皮下注射、腹腔内投与、静脈内注射、筋肉内注射、傍脊髄(髄腔内)注射、舌下投与、頬側投与、直腸挿入、膣内投与が想定され得る。それは、内部挿入、眼投与、耳投与、経鼻投与、吸入、口または鼻への噴霧、皮膚投与、経皮投与等により投与され得る。
【0177】
本発明の医薬組成物は、治療すべき疾患、投与の経路、患者の年齢、性別、体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に有効成分としての薬物のタイプに応じて決定される。
【0178】
いくつかの実施形態において、本開示は、CXCL16抗体;ならびに標的抗がん剤および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される1つ以上の併用剤を有効成分として提供し、ここで、CXCL16抗体;および併用剤は、同時に、別々に、または連続的に投与され、それは、がんの予防もしくは治療のための薬学的併用製剤を提供する。
【0179】
本発明の薬学的併用製剤の成分であるCXCL16抗体、標的抗がん剤、および免疫チェックポイント阻害剤はそのまま、または塩、好ましくは薬学的に許容される塩の形態で使用されうる。
【0180】
本発明の薬学的併用製剤は、投与方法および投与の経路に応じて、成分としてCXCL16抗体を含みうる。いくつかの実施形態では、標的抗がん剤および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される1つ以上の薬剤の組み合わせもまた、CXCL16抗体と共に同時に1つの製剤に含まれうる。いくつかの実施形態では、併用剤およびCXCL16抗体は、毎日または1日1回の投与単位に応じて、個別に製剤化され、1つのパッケージに含まれていてもよい。本明細書に開示の医薬組合せの具体的な製剤化方法は、当業者には公知または明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン、1995年)に記載されている。本発明に係る医薬組合せ製剤の成分であるCXCL16抗体と、標的抗がん剤および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される1つ以上の併用剤は、同時に、または別々に、または所定の順序に従って投与され得る。本明細書で使用される場合、「同時投与」という用語は、経口投与の場合、2つの成分が同時に胃の中に存在するように、CXCL16抗体とその組み合わせが一緒に、または実質的に同時に服用されることを意味する(例えば、投与の間隔が15分以内)。同時に投与される場合、その組み合わせは、1つの製剤中に同時に含まれるように製剤化されうる。経口投与の場合、好ましくは1日量が1回の投与量に含まれるように製剤化されうる;しかしながら、1日2回、3回、4回などの分割用量で投与されるように製剤化されてもよい。
【0181】
例示的な実施形態
実施形態1:CXCL16抗体を有効成分として含む、がんを予防または治療するための医薬組成物。
【0182】
実施形態2:実施形態1の医薬組成物と、化学療法剤、標的抗がん剤および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される1つ以上の併用剤とを投与することを含む、対象におけるがんを予防または治療する方法。
【0183】
実施形態3:標的抗がん剤が、セツキシマブ、トラスツズマブ、イブリツモマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、イマチニブ、ニロチニブ、ラドチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オルムチニブ、オシメルチニブ、セリチニブ、ラパチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、ベムラチニブ、スニチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ダサチニブ、クリゾチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ベバシズマブ、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、アキシチニブ、ニンテダニブ、およびレンバチニブからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
【0184】
実施形態4:免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群より選択される1つである、実施形態2に記載の方法。
【0185】
実施形態5:PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュバルマブ、エンバフォリマブ、コシベリマブ、AUNP12、CA-170、またはBMS-986189のうちの1つである、実施形態4に記載の方法。
【0186】
実施形態6:PD-1阻害剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、ティスレリズマブ(ティスレリズマブ)、トリパリマブ、ドスターリマブ、INCMGA00012、AMP-224、またはAMP-514である、実施形態4に記載の方法。
【0187】
実施形態7:CTLA-4阻害剤が、イピリムマブまたはトレメリムマブである、実施形態4に記載の方法。
【0188】
実施形態8:CXCL16抗体および併用剤が、同時に、別々に、または連続的に投与される、実施形態2に記載の方法。
【0189】
実施形態9:CXCL16抗体が、コハク酸代謝を阻害することを特徴とする、実施形態2に記載の方法、医薬組成物。
【0190】
実施形態10:がんが、子宮頸がん、肺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、肝臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、骨がん、皮膚がん、頭部がん、子宮頸がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、血液がん、胃がん、肛門周囲がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎盂がん、CNS中枢神経系腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、および下垂体腫瘍である、実施形態2に記載の方法。
【0191】
実施形態11:標的抗がん剤が経口投与される、実施形態2に記載の方法。
【0192】
実施形態12:CXCL16抗体および併用剤が、それぞれ、単一の剤形または単一の用量で提供される、実施形態2に記載の方法。
【0193】
実施形態13:医薬組成物が腫瘍のサイズを縮小させるか、または腫瘍の転移を阻害する、実施形態1または2に記載の方法。
【0194】
実施形態14:有効成分として、CXCL16抗体と、化学療法剤、標的抗がん剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される1つ以上の併用剤とを含む、がんの予防または治療のための医薬併用製剤であって、CXCL16抗体および併用剤薬剤が同時に、別々に、または連続的に投与される、医薬併用製剤。
【0195】
実施形態15:がん転移を阻害するための医薬組成物であって、医薬組成物が有効成分としてCXCL16抗体を含む、医薬組成物。
【0196】
実施形態16:有効成分として、がん転移を阻害するためのCXCL16抗体と、化学療法剤、標的抗がん剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群より選択される1つ以上の併用剤とを含む医薬組成物。
【0197】
実施形態17:CXCL16抗体を有効成分として含む、がんを診断するための組成物。
【0198】
実施形態18:実施形態17に記載の組成物を含む、がんを診断するためのキット。
【0199】
本明細書において言及される全ての文献は、その内容が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の要素またはその好ましい態様を導入する際、冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」、「the(その)」、「said(前記)」は、要素のうちの1つ以上を指す。「comprising(含む)」、「including(含む)」、および「having(有する)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在しうることを意味する。本発明を特定の態様に関して説明してきたが、これらの態様の詳細を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0200】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、以下の実施例は、本発明の理解をより容易にするために提供されるに過ぎず、本発明の内容は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0201】
非公式な配列表:
配列番号1:HC1の重鎖可変領域
QVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDNSKTMLYLQMNSLRAEDTAVYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS
【0202】
配列番号2:HC2の重鎖可変領域
AVQLVESGGGLVQPGGSLKISCAASGFTFSNAVMNWVRQASGKGLEWVGRIRTKPNNYATFYADSVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS
【0203】
配列番号3:HC3の重鎖可変領域
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVGRIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTAYLQMNILKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTTVTVSS
【0204】
配列番号4:HC4の重鎖可変領域
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTAWTTEGIYWGQGTTVTVSS
【0205】
配列番号5:HC5の重鎖可変領域
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNAVMNWVRQASGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS
【0206】
配列番号6:LC1の軽鎖可変領域
DIVMTQSPDSLAVSAGETVTINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDVAVYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIK
【0207】
配列番号7:LC2の軽鎖可変領域
DIVMTQSPSSLAVSLGETATINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRQSGVPDRFTGSGAGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIK
【0208】
配列番号8:LC3の軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDFATYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIK
【0209】
配列番号9:LC4の軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELK
【0210】
配列番号10:LC5の軽鎖可変領域
DIVMTQSPSSLAVSAGERATINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELK
【0211】
配列番号11:ヒトCXCL16
MGRDLRPGSRVLLLLLLLLLVYLTQPGNGNEGSVTGSCYCGKRISSDSPPSVQFMNRLRKHLRAYHRCLYYTRFQLLSWSVCGGNKDPWVQELMSCLDLKECGHAYSGIVAHQKHLLPTSPPISQASEGASSDIHTPAQMLLSTLQSTQRPTLPVGSLSSDKELTRPNETTIHTAGHSLAAGPEAGENQKQPEKNAGPTARTSATVPVLCLLAIIFILTAALSYVLCKRRRGQSPQSSPDLPVHYIPVAPDSNT
【0212】
配列番号12:HCDR1
GFTFSNAVMN
【0213】
配列番号13:HCDR2
RIRTKPNNYATFYADSVKG
【0214】
配列番号14:HCDR3
TAWTTEGIY
【0215】
配列番号15:LCDR1
KSSQSLLYSGNQKNYLA
【0216】
配列番号16:LCDR2
WASTRQS
【0217】
配列番号17:LCDR3
QQYYDTPWT
【0218】
配列番号18:重鎖シグナルペプチド
MGWTLVFLFLLSVTAGVHS
【0219】
配列番号19:軽鎖シグナルペプチド
MVSSAQFLGLLLLCFQGTRC
【0220】
配列番号20:CXCR6
MAEHDYHEDYGFSSFNDSSQEEHQDFLQFSKVFLPCMYLVVFVCGLVGNSLVLVISIFYHKLQSLTDVFLVNLPLADLVFVCTLPFWAYAGIHEWVFGQVMCKSLLGIYTINFYTSMLILTCITVDRFIVVVKATKAYNQQAKRMTWGKVTSLLIWVISLLVSLPQIIYGNVFNLDKLICGYHDEAISTVVLATQMTLGFFLPLLTMIVCYSVIIKTLLHAGGFQKHRSLKIIFLVMAVFLLTQMPFNLMKFIRSTHWEYYAMTSFHYTIMVTEAIAYLRACLNPVLYAFVSLKFRKNFWKLVKDIGCLPYLGVSHQWKSSEDNSKTFSASHNVEATSMFQL
【0221】
配列番号21:HC-FR1
VQLVESGGGXVXPXSLXSCAAS;ここで、XはAもしくはQまたはEであり得る;XはLまたはVであり得る;XはQまたはKであり得る;XはKまたはGであり得る;XはEまたはGであり得る;XはKまたはRであり得る;XはIまたはLであり得る
【0222】
配列番号22:HC-FR2
WVRQAXGKGLEWVX;ここでXはPまたはSであり得る;XはAまたはGであり得る。
【0223】
配列番号23:HC-FR3
FTXSRDXSKXYLQMXLXEDTAX10YYC;ここで、XはFまたはIであり得る;XはDまたはNであり得る;XはS、T、またはNであり得る;XはMまたはTであり得る;XはV、L、またはAであり得る;XはDまたはNであり得る;XはN、S、またはIであり得る;XはKまたはRであり得る;XはTまたはAであり得る;X10はMまたはVであり得る。
【0224】
配列番号24:HC-FR4
WGQGTXVTVSS;ここで、XはLまたはTであり得る
【0225】
配列番号25:LC-FR1
DIXMTQSPXSLXSXGXTIXC;ここで、XはV、Qであり得る;XはSであり得る;D;XはA、Sであり得る;XはV、Aであり得る;XはA、L、Vであり得る;XはE、Dであり得る;XはT、Rであり得る;XはV、Aあり得る;XはN、Tであり得る。
【0226】
配列番号26:LC-FR2
WYQQKPGQXPKLLIY;XはSまたはPであり得る。
【0227】
配列番号27:LC-FR3
GVPXRFXGSGXGTDFTLTISSXQXEDXAXYYC;XはD、Sであり得る;XはI、S、またはTであり得る;XはSまたはAであり得る;XはVまたはLであり得る;XはA、Pであり得る;XはL、V、またはFであり得る;XはI、V、またはTであり得る。
【0228】
配列番号28:LC-FR4
GGGTKXEXK;ここで、XはLまたはVであり得る;そしてXはLまたはIであり得る。
【0229】
配列番号29:キメラ抗体CLS-A1HC0LC0重鎖配列
AVQLVESGGGLVQPKESLKISCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKSMVYLQMDNLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVS
【0230】
配列番号30:キメラ抗体CLS-A1HC0LC0軽鎖配列
DIVMTQSPSSLAVSAGETVTINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELK
【0231】
配列番号31:マウスCXCL16配列
MRRGFGPLSLAFFLFLLALLTLPGDGNQGSVAGSCSCDRTISSGTQIPQGTLDHIRKYLKAFHRCPFFIRFQLQSKSVCGGSQDQWVRELVDCFERKECGTGHGKSFHHQKHLPQASTQTPEAAEGTPSDTSTPAHSQSTQHSTLPSGALSLNKEHTQPWEMTTLPSGYGLEARPEAEANEKQQDDRQQEAPGAGASTPAWVPVLSLLAIVFFLTAAMAYVLCNRRATQQNSAGLQLWYTPVEPRP
【0232】
配列番号32:キメラ抗体(HC0)の重鎖のアミノ酸配列
ACCMGWTLVFLFLLSVTAGVHSAVQLVESGGGLVQPKESLKISCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKSMVYLQMDNLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSSAETTAPSVYPLAPGTALKSNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGALSSGVHTFPAVLQSGLYTLTSSVTVPSSTWSSQAVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRECNPCGCTGSEVSSVFIFPPKTKDVLTITLTPKVTCVVVDISQNDPEVRFSWFIDDVEVHTAQTHAPEKQSNSTLRSVSELPIVHRDWLNGKTFKCKVNSGAFPAPIEKSISKPEGTPRGPQVYTMAPPKEEMTQSQVSITCMVKGFYPPDIYTEWKMNGQPQENYKNTPPTMDTDGSYFLYSKLNVKKETWQQGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
【0233】
配列番号33:キメラ抗体(HC0)の重鎖の最適化されたコード配列(チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)(CHO)用)
ACCATGGGCTGGACCCTGGTGTTCCTGTTCCTGCTAAGCGTGACGGCGGGCGTCCACTCCGCTGTGCAACTCGTGGAGAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCTAAGGAGAGCCTGAAGATCAGCTGCGCCGCTAGCGGCTTCACATTCAGCAACGCCGTGATGAACTGGGTGAGACAAGCCCCTGGCAAGGGCCTGGAGTGGGTGGCTAGAATCAGAACCAAGCCTAACAACTACGCCACCTTCTACGCCGACAGCGTGAAGGGCAGATTTACGTTCAGCAGAGATGACAGCAAGAGCATGGTGTACCTGCAGATGGACAACCTGAAGACCGAGGACACCGCCATGTACTACTGCACCGCCTGGACCACCGAGGGCATCTACTGGGGCCAAGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGCGCCGAGACCACCGCCCCTAGCGTGTACCCTCTGGCCCCTGGCACCGCCCTGAAAAGCAATAGCATGGTGACCCTGGGCTGCCTTGTGAAGGGCTATTTCCCTGAGCCTGTGACCGTGACCTGGAACTCCGGCGCCCTGAGCAGCGGCGTGCACACCTTCCCTGCCGTGCTGCAGAGCGGCCTGTACACCCTGACAAGCAGCGTGACCGTGCCTAGCAGCACCTGGAGCAGCCAAGCCGTGACCTGCAACGTGGCCCACCCTGCTAGCAGCACCAAGGTGGACAAGAAGATCGTGCCTAGAGAGTGCAACCCTTGCGGCTGCACCGGCAGCGAGGTGAGCAGCGTGTTCATCTTCCCTCCTAAGACCAAGGACGTGCTGACCATCACCCTGACCCCTAAGGTGACCTGCGTGGTGGTGGACATCTCTCAGAACGACCCTGAGGTGAGATTCAGCTGGTTCATCGACGACGTGGAGGTGCACACCGCTCAGACCCACGCCCCTGAGAAGCAAAGCAACAGCACCCTTAGAAGCGTGAGCGAGCTGCCTATCGTGCACAGAGACTGGCTGAACGGCAAGACCTTCAAGTGCAAGGTGAACAGCGGCGCCTTCCCTGCCCCTATCGAGAAGAGCATCAGCAAGCCTGAGGGCACCCCTAGAGGCCCTCAAGTGTACACCATGGCCCCTCCTAAGGAGGAGATGACACAGAGCCAAGTGAGCATCACCTGCATGGTGAAAGGCTTCTACCCTCCTGACATCTACACCGAGTGGAAGATGAACGGACAGCCTCAAGAGAACTACAAGAACACCCCTCCTACCATGGACACCGACGGCAGCTACTTCCTGTACAGCAAGCTGAACGTGAAGAAGGAGACCTGGCAGCAAGGCAACACCTTCACCTGCAGCGTGCTGCACGAGGGCCTGCACAACCACCACACCGAGAAGAGCCTGAGCCACAGCCCTGGCAAG
【0234】
配列番号34:キメラ抗体(LC0)の軽鎖のアミノ酸配列
ACCMVSSAQFLGLLLLCFQGTRCDIVMTQSPSSLAVSAGETVTINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELKRADAAPTVSIFPPSTEQLATGGASVVCLMNNFYPRDISVKWKIDGTERRDGVLDSVTDQDSKDSTYSMSSTLSLTKADYESHNLYTCEVVHKTSSSPVVKSFNRNEC
【0235】
配列番号35:キメラ抗体_LC(LC0)の軽鎖の最適化されたコード配列(チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)(CHO)用)
ACCATGGTGAGCAGCGCTCAGTTCCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGCTTCCAAGGCACAAGATGCGACATCGTGATGACACAGAGCCCTAGCAGCCTGGCCGTGAGCGCCGGCGAGACCGTGACCATCAACTGCAAGAGCTCTCAGAGCCTGCTGTACAGCGGCAATCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGAAGCCTGGACAGAGCCCTAAGCTGCTGATCTACTGGGCTAGCACAAGACAGAGCGGCGTGCCTGACAGATTCATCGGCAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCGTGCAAGCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGTCAGCAGTACTACGACACCCCTTGGACCTTCGGCGGCGGCACCAAGCTGGAGCTGAAGAGAGCCGACGCCGCCCCTACCGTGAGCATCTTCCCTCCTAGCACCGAGCAGCTGGCCACCGGCGGCGCTAGCGTGGTGTGCCTGATGAACAACTTCTACCCTAGAGACATCAGCGTGAAGTGGAAGATCGACGGCACCGAGAGAAGAGACGGCGTGCTGGACAGCGTGACCGACCAAGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCATGAGCAGCACCCTGAGCCTGACCAAGGCCGACTACGAGAGCCACAACCTGTACACCTGCGAGGTGGTGCACAAGACAAGCAGCAGCCCTGTGGTGAAGAGCTTCAACAGAAACGAGTGC
【0236】
配列番号36:キメラ抗体HC0LC0のVHドメインは、以下の配列を有していた
AVQLVESGGGLVQGPKESLKISCAASGFTFSNAVMNWVRGAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKSMVYLQMDNLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS(配列番号36)(CDRの残基に下線が引かれている)。
【0237】
配列番号37:最も近いヒト生殖系列遺伝子V領域は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)IGHV3-73*01である
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSGSAMHWVRQGASGKGLEWVGRIRSKANSYATAYAASVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTR
【0238】
配列番号38:重鎖HC1
QVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDNSKTMLYLQMNSLRAEDTAVYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0239】
配列番号39:重鎖HC2
AVQLVESGGGLVQPGGSLKISCAASGFTFSNAVMNWVRQASGKGLEWVGRIRTKPNNYATFYADSVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0240】
配列番号40:重鎖HC3
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVGRIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTAYLQMNILKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0241】
配列番号41:重鎖HC4
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTAWTTEGIYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0242】
配列番号42:重鎖HC5
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNAVMNWVRQASGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0243】
配列番号43:軽鎖LC1
DIVMTQSPDSLAVSAGETVTINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDVAVYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0244】
配列番号44:軽鎖LC2
DIVMTQSPSSLAVSLGETATINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRQSGVPDRFTGSGAGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0245】
配列番号45:軽鎖LC3
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDFATYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0246】
配列番号46:軽鎖LC4
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0247】
配列番号47:軽鎖LC5
DIVMTQSPSSLAVSAGERATINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0248】
配列番号48:ヒトIgG1アイソタイプ定常ドメイン
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0249】
配列番号49:ヒトIgKアイソタイプ定常ドメイン
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【実施例
【0250】
実施例
実施例1.ヒトCXCL16のCXCL16への結合
25種類のCXCL16抗体の結合特性をバイオライトインターフェロメトリー(ForteBio)を使用して分析した。抗体は全て、新たに調製したランニングバッファーで希釈した。捕捉法を使用して、抗体を0.3μg/mLで一連のバイオセンサーの表面に固定化した。組換えヒトCXCL16(rhCXCL16)タンパク質(100nM)を表面上に通過させ、10分間結合反応を起こさせた。抗体と抗原の相互作用の結合データをバイオセンサー上において25℃で収集した。その後、ランニングバッファーを10分間流し、それらを解離させた。結合定数(k)と解離定数(k)を観測し、平衡結合定数(K))を計算した。作製した25種類の抗体のうち、5つの抗体が有意な結合親和性を示した(K<1×10-8M)。R:適合データと実験データがどの程度相関しているかを示す値;X2:実験データとフィットさせた直線の間の誤差の尺度。
【0251】
選択した6つのCXCL16抗体の結合親和性をさらに特徴付けるために、タンパク質ベースのELISAを行った。組換えヒトCXCL16抗原(976-CX、R&D Systems、米国)を96ウェルプレート上に固定化し、室温で2時間インキュベートした。非特異的な結合部位は、PBS中1%のBSAと共に4℃で一晩インキュベートすることによりブロックした。次いで、プレートをPBSで洗浄した。様々な濃度(0.001~10nM)のヒト化CXCL16抗体を固定化抗原と共に室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄し、HRP標識抗ヒトIgG抗体(W4031、Promega、米国)と共に0.5時間インキュベートし、基質溶液(DY008B、R&D Systems)を使用して現像した。結果を図1Aに示すが、これは、ヒト化抗体HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5の結合親和性が対照のIgG抗体よりも有意に高かったことを指し示している。
【0252】
マウスCXCL16抗原との交差反応性を評価するために、同じELISA実験を組換えマウスCXCL16抗原(503-CX、R&D Systems)を用いて実施した。室温で2時間インキュベートすることにより、マウスCXCL16抗原を96ウェルプレート上に固定化した。非特異的な結合部位は、PBS中1%のBSAと共に4℃で一晩インキュベートすることによりブロックした。コーティング後、プレートをPBSで洗浄した。様々な濃度(0.001~10nM)のヒト化CXCL16抗体を固定化抗原と共に室温で2時間インキュベートした。結合の後、プレートを洗浄し、HRP標識抗ヒトIgG抗体(W4031、Promega、米国)と共に0.5時間インキュベートし、基質溶液(DY008B、R&D Systems)を使用して現像した。結果が図1Bに示されている。ヒト化抗体の結合親和性はIgG抗体と同様であった。この結果は、ヒト化CXCL16抗体がヒトCXCL16に特異的に結合することを指し示している。表6を参照。
【0253】
【表6】
【0254】
注:HC0LC0はヒトCXCL16に結合するキメラ抗体である;実施例7の関連する開示を参照のこと。NDはシグナルが検出できなかったことを指す。「Res@3.7nM」は3.7nMでの分解能を意味する。
【0255】
実施例2 機能アッセイ
a.がん細胞の走化性および遊走の阻害
【0256】
CXCR6はケモカインCXCL16の受容体であり、CXCR6を保有する細胞はCXCL16に応答して遊走する。したがって、CXCL16とCXCR6の相互作用によって誘導される細胞遊走の阻害におけるCXCL16抗体の活性を評価するために、トランスウェル遊走アッセイを実施した。孔径8μmのポリカーボネート膜(Corning、ニューヨーク州、米国)をゼラチンでプレコートし、膜を24ウェルプレート中に配置した。膜は、各ウェルを上部チャンバーと下部チャンバーに分離した。上部チャンバーにはCXCR6を過剰発現したCHO-K1細胞を播種した。下部チャンバーは、100ng/mLのrhCXCL16を含む培地で満たした。4~5時間後、下部チャンバーを1%クリスタルバイオレット溶液で染色し、下部チャンバーの遊走細胞数を数えた。結果は、ヒト化CXCL16抗体HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5が、CXCR6過剰発現CHO-K1細胞の上部チャンバーから下部チャンバーへの遊走を阻害したことを示している。結果は、rhCXCL16の処置がCXCR6過剰発現CHO-K1細胞の下部チャンバーへの細胞遊走を増加させた一方で、ヒト化CXCL16抗体の処置が遊走を減少させたことを示している。図2Aを参照。
【0257】
CXCL16のブロックが、がん細胞の遊走の阻害を導き得ることを評価するために、トランスウェル遊走アッセイを行った。アッセイのために、孔径8μmのポリカーボネート膜(Corning、ニューヨーク州、米国)を使用した。孔径8μmのポリカーボネート膜(Corning、ニューヨーク州、米国)をゼラチンでプレコートし、膜を24ウェルプレート中に配置した。膜は、各ウェルを上部チャンバーと下部チャンバーに分離した。CXCL16抗体(10~100μg/mL)を上部および下部チャンバー内で0.5時間プレインキュベートした。上部チャンバーと下部チャンバーに甲状腺がん細胞BHP10-3M(1×10/100μL)と共培養馴化培地(0.5×共培養-CM)をそれぞれ播種した。
【0258】
共培養-CMは、BHP10-3M細胞とTHP-1細胞の共培養から得られる馴化培地である。BHP10-3M細胞を10mlのRPMI1640培地中、3×10細胞で100mm培養皿に播種した。24時間培養後、THP-1細胞を6×10個、追加的に播種した。その後、10μLの5mM PMAストック溶液(V1171、Promega)を10mLのRPMI培地に加えて、5μMのPMAを調製した。それはマクロファージの分化を誘導した。24時間のインキュベーション後、甲状腺がん細胞とマクロファージの共培養から得られた馴化培地(共培養-CM)を回収したところ、それにはCXCL16が豊富に含まれていた。上部チャンバーで甲状腺がん細胞を、下部チャンバーで共培養-CMを6時間インキュベートした後、下部チャンバーを1%クリスタルバイオレット溶液で染色し、遊走した細胞の数を計測した。共培養-CMはBHP10-3M細胞の下部チャンバーへの細胞遊走を増加させ、ヒト化CXCL16抗体HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5は遊走を減少させた。図2Bを参照。
【0259】
CXCL16のブロックが、がん細胞の遊走の阻害を導くことを評価するために、トランスウェル遊走アッセイを行った。アッセイのために、孔径8μmのポリカーボネート膜(Corning、ニューヨーク州、米国)を使用した。膜をゼラチンでプレコートし、インサートを24ウェルプレート中に配置した。CXCL16抗体(10~100μg/mL)を上部および下部チャンバー内で30分間プレインキュベートした。上部チャンバーと下部チャンバーに乳がん細胞MDA-MB-231(1×10/100μL)と共培養馴化培地(0.5×共培養-CM)をそれぞれ播種した。
【0260】
共培養-CMは、MDA-MB-231細胞とTHP-1細胞の共培養から得られる馴化培地である。BHP10-3M細胞を10mlのRPMI1640培地中、3×10細胞で100mm培養皿に播種した。24時間培養後、THP-1細胞を6×10個、追加的に播種した。その後、10μLの5mM PMAストック溶液(V1171、Promega)を10mLのRPMI培地に加えて、5μMのPMAを調製した。それはマクロファージの分化を誘導した。24時間のインキュベーション後、甲状腺がん細胞とマクロファージの共培養から得られた馴化培地(共培養-CM)を回収したところ、それにはCXCL16が豊富に含まれていた。上部チャンバーで乳がん細胞を、下部チャンバーで共培養-CMを6時間インキュベートした後、下部チャンバーを1%クリスタルバイオレット溶液で染色し、遊走した細胞の数を計測した。共培養-CMはMDA-MB-231細胞の下部チャンバーへの細胞遊走を増加させ、ヒト化CXCL16抗体はそれを減少させた。図2Cを参照。
【0261】
CXCL16のブロックが単球/マクロファージの遊走の阻害を導き得ることを評価するために、トランスウェル遊走アッセイを行った。アッセイのために、孔径5μmのポリカーボネート膜(Corning、ニューヨーク州、米国)を使用した。膜をゼラチンでプレコートし、インサートを24ウェルプレート中に配置した。ヒト化CXCL16抗体(10~100μg/mL)を上部および下部チャンバー内で30分間プレインキュベートした。上部チャンバーと下部チャンバーに単球細胞THP-1と共培養馴化培地を播種した。4時間後、下部チャンバーを1%クリスタルバイオレット溶液で染色し、遊走した細胞の数を数えた。共培養-CMはTHP-1細胞の下部チャンバーへの細胞遊走を増加させ、ヒト化CXCL16抗体はそれを減少させた。結果は、ヒト化CXCL16抗体がCXCL16とCXCR6の相互作用によって誘導される細胞遊走を阻害することを示唆した。ヒト化CXCL16抗体は、甲状腺がん細胞および乳がん細胞を含むがん細胞の遊走を阻害する。ヒト化CXCL16抗体によるがん細胞の遊走の阻害は、抗がん効果を指し示した。図2Dを参照。
【0262】
b.細胞内Aktシグナル伝達経路の活性化、CXCL16-Aktシグナル伝達が細胞遊走を媒介する
CXCL16-CXCR6相互作用は、細胞内Aktシグナル伝達経路を活性化し、細胞遊走を促進する。この実験は、CXCL16-CXCR6相互作用によって誘導されるAktシグナル伝達をブロックするCXCL16抗体の能力を評価するために設計した。がん細胞を、10μg/mLのヒト化CXCL16抗体(HC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、もしくはHC5LC5)または対照抗体(MAB976、R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州)の存在下で、100ng/mLのrhCXCL16(976-CX、R&D systems)により30分間処置した。細胞溶解物を採取した。抗pAkt(希釈比1:1000、#9102;Cell Signaling)、抗Akt(希釈比1:1000、#4370;Cell Signaling)、および抗βアクチン抗体(希釈比1:10,000、STJ91464、St John’s Laboratory、英国)を使用した。結果は、rhCXCL16が甲状腺がん細胞(図3B)、乳がん細胞(図3C)、および前立腺がん細胞(図3D)を含む様々ながん細胞においてAktのリン酸化を活性化する一方、CXCL16抗体のHC4LC1、HC5LC1、HC5LC2、HC5LC3、およびHC5LC5がAktのリン酸化を抑止することを示している。
【0263】
c.骨転移のin vitro モデルにおける細胞遊走の阻害
骨の転移ニッチに似せた2チャンバー系を構築した。下部チャンバーには、CXCL16が豊富に含まれるがん細胞/全骨髄細胞の共培養(CM)の馴化培地(共培養-CMと呼ばれる)が含まれている。がん細胞培養物のみからのCMは、単独-CMと呼ばれ、対照として使用される。単独-CMには、無視できる濃度のCXCL16が含まれている。上部チャンバー(インサートを使用)は、転移チャンバーへと動員され得る細胞を収容している。ヒトCD11b+骨髄系細胞をCXCL16抗体で1時間処置し、処置細胞を上部チャンバーに加えた。4時間後、インサート(別名、上部チャンバー)を回収し、インサート内の細胞を染色し、転移ニッチへの細胞動員を阻害するCXCL16抗体の能力を評価した。図8Aおよび図8Bに示すように、共培養-CM(高濃度のsCXCL16)は単独-CM群と比較して増強された細胞遊走ポテンシャルを示した。
【0264】
d.単独またはパクリタキセル(PTX)と組み合わせた、同所性異種移植モデルにおける腫瘍増殖の阻害
本実施例は、ヒト化CXCL16が単独またはパクリタキセル(PTX)との組み合わせで、同所性異種移植モデルにおける腫瘍増殖を阻害することを示している。乳がんマウスモデルを作製するために、トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231(6.5×10細胞)を、T細胞を欠くBALB/cヌードマウスの背中に移植した。細胞移植後5日目から各実験群に抗がん剤を投与した。「IgG対照」群には、IgG抗体を投与した。IgG抗体(MAB006、R&Dシステム)を50mcg/20g/日で週3回静脈内投与した。「PTX」群には、パクリタキセルを投与した。パクリタキセル(S1150、Selleckchem)を週に1回、10mg/kg/マウスで腹腔内投与した。「抗CXCL16」群には、抗CXCL16抗体を投与した。抗マウスCXCL16抗体(MAB503、R&D Systems社、ミネアポリス、MN)を50mcg/20g/dayで週3回静脈内投与した。PTX+抗CXCL16」群には、パクリタキセルと抗CXCL16抗体の両方を投与した。腫瘍のサイズを7、11、13、15、18、20日目に測定した。腫瘍のサイズをノギスで測定し、次の式を使用して腫瘍体積を計算した:体積=1/2×a×b2、ここで、a=腫瘍の長径、b=腫瘍の短径。マウスを20日目に屠殺し、腫瘍を除去し、腫瘍重量を測定した。結果は、マウスCXCL16抗体がマウス腫瘍モデルにおいて腫瘍の体積と重量を有意に減少させたことを示している。CXCL16群における腫瘍の体積および重量の低減は、PTX群と同等であった。それは、ヒト化CXCL16抗体が腫瘍の増殖を阻害し、in vivoで抗がん作用を有しうることを示唆している。図4Aおよび図4Bを参照。
【0265】
実施例3.甲状腺がんモデルマウスに対する標的抗がん剤との併用効果
2×10細胞の甲状腺未分化がん細胞株FROをT細胞欠損nu/nuマウスの背部に注射し、腫瘍が形成された5日目から各実験群に抗がん剤を投与した。対照群には、抗がん剤を投与せず、実験群1には、抗VEGF標的抗がん剤であるレンバチニブ(LENVIMA(登録商標))を30mg/kg/日で週5回経口投与し、実験群2には、レンバチニブを投与し、抗CXCL16治療抗体を100mcg/20g/日で週2回腹腔内投与した。腫瘍のサイズをノギスで測定し、次の式を使用して腫瘍体積を計算した:体積=1/2×a×b2、ここで、a=腫瘍の長径、b=腫瘍の短径。
【0266】
図5に示すように、レンバチニブの治療効果が維持された第I相(22日目まで)では、実験群1と実験群2の腫瘍増殖率は同程度であった。それでも、レンバチニブの治療効果が低下したため、割合が対照群のものと同じとなった。腫瘍が再び増殖し始める第2相(22日後)では、CXCL16治療抗体(抗CXCL16抗体)を投与した実験群2では、実験群1に比べて、腫瘍の増殖率が有意に低減し、併用治療の相乗効果が指し示された。
実施例4.甲状腺がんマウスモデルに対する標的抗がん剤および/またはPD-L1阻害剤との併用効果
【0267】
5×10細胞の甲状腺未分化がん細胞株TBP3743をC57Bl/6マウスの背部に注射し、腫瘍が形成された5日目から各実験群に抗がん剤を投与した。対照群には、抗がん剤は投与しなかった。標的抗がん剤レンバチニブを実験群1に30mg/kgで週5回経口投与し、実験群2には、レンバチニブ経口投与と抗マウスCXCL16抗体を100mcg/20g/日で週2回注射し、レンバチニブを実験群3に投与し、レンバチニブの経口投与およびペプチドPD-L1阻害剤(KR-20190072466-Aに記載のとおり、その開示は全て参照により本明細書に組み込まれる)を週5回投与し、実験群4には、レンバチニブの経口投与、週5回のPD-L1阻害剤(ペプチド)の注射、週2回の抗CXCL16治療抗体の注射を併用した。
【0268】
実験の15日目からは、レンバチニブ単独(実験群1)、レンバチニブ+抗CXCL16治療抗体(実験群2)、レンバチニブ+PD-L1阻害剤(実験群3)と比較して、併用投与群では治療効果がより良好であった。実験19日目には、レンバチニブ+PD-L1阻害剤+抗CXCL16治療抗体の3剤併用療法群(実験群4)が最も良好な治療効果を示すことが確認された。図6を参照されたい。
【0269】
実施例5.乳がんマウスモデルに対する標的抗がん剤および/またはPD-L1阻害剤との併用効果
2×10個の乳がん細胞株4T1をC3Hマウスの背部に注射し、腫瘍が形成された5日目から各実験群に抗がん剤を投与した。対照群には、抗がん剤を投与せず、標的抗がん剤パクリタキセル(タキソール)を実験群に10mg/kg/日で週2回腹腔内投与し、実験群2には、パクリタキセル投与と抗CXCL16治療抗体を100mcg/20g/日で週2回腹腔内投与し、実験群3投与には、パクリタキセルを注射し、PD-L1阻害剤(ペプチド)を0.1mg/20g/日で週5回腹腔内投与し、実験グループ4には、パクリタキセルを注射し、PD-L1阻害剤(ペプチド)を週5回注射し、そして抗CXCL16治療抗体を週2回注射した。
【0270】
図7に示すように、実験群1(タキソール単独)と実験群2および3(2剤併用療法)には明らかな治療効果はなかったが、実験の17日目と19日目には、パクリタキセル+PD-L1阻害剤+抗CXCL16治療抗体(実験群4)の3剤併用療法が最も良好な治療効果を示した。
【0271】
よって、CXCL16抗体は、標的抗がん剤および/またはPD-L1阻害剤と組み合わせることで、相乗効果を示すことになる。したがって、がんを予防または治療するために、本発明のCXCL16抗体、標的抗がん剤および/または免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせて使用できると期待される。
【0272】
実施例6.CXCL16抗体はマウスモデルにおいて骨転移を阻害し得る
1.ゾレンドロン酸(ZA)耐性骨転移の骨髄血清における、より高いCXCL16濃度
甲状腺未分化がん細胞株FRO(2×10)細胞/10μL PBS)を、生後6週の雌BALB/cヌードマウスの右脛骨に移植した。マウスを対照群とゾレドロン酸(ZA)処置群に分けた。ゾレドロン酸は、骨転移の治療に有効であることが知られている薬剤である。ZA処置群には、3日目から週に1回、ゾレンドロン酸(ZA)を4μg/マウスで静脈内注射した。毎週、バイオルミネッセンスイメージング(BLI)を評価した。細胞移植の4~5週間後にBLIを観察した際のZAに対する治療反応は様々である。ZA処置マウス16匹中7匹で骨腫瘍が観察された。骨腫瘍を有していなかった9匹を「ZA非耐性(ZA_nonR)」群と定義し、骨腫瘍を有していた7匹を「ZA耐性(ZA-R)」群と指定した。ZA_nonR群は7週目まで脛骨で無視できるBLIシグナルを示したが、ZA-Rは4~5週から7週までに腫瘍増殖を示した。
【0273】
細胞移植から5週間後、ZA-Rの初期段階でマウスを屠殺した。骨髄血清を採取し、ELISAを使用してCXCL16濃度を測定した。結果は、ZA_RにおけるCXCL16濃度がZA_nonR群および対照群よりも有意に高かったことを示している。ZA_nonRにおけるCXCL16濃度は対照群よりも低かった。図9B~9Cを参照。結果は、骨転移におけるZA耐性が、高いCXCL16濃度と関連していることを指し示している。
2. 抗CXCL16抗体は骨転移の腫瘍増殖を低減させた
【0274】
甲状腺未分化がん細胞株FRO(2×10)細胞/10μL PBS)を、生後6週の雌BALB/cヌードマウスの右脛骨に移植した。3日目に、マウスを対照群、CXCL16抗体(aCXCL16)群、およびゾレドロン酸(ZA)群に分けた。CXCL16群では、抗CXCL16抗体(ヒトCXCL16タンパク質に対するラットIgG、配列番号12~17のCDRを有するラットIgG)を週に1回、25μg/マウスで腹腔内注射した。ZA処置群には、週に1回、ゾレンドロン酸(ZA)を4μg/マウスで静脈内注射した。毎週、バイオルミネッセンスイメージング(BLI)を評価した。図10Bおよび図10Cに示すように、21日目では、CXCL16群のBLIシグナルは対照群よりも有意に低かったが、ZA群とは同程度であった。これらの結果から、抗CXCL16抗体は骨転移の腫瘍増殖を低減させることが指し示された。結果は、CXCL16抗体がZAと同様な程度に骨転移の進行を阻害し、CXCL16抗体が骨転移の阻害において潜在的な治療効果を有することも示唆している。
【0275】
3.aCXCL16の処置はZA耐性骨転移の腫瘍増殖を低減させた
甲状腺未分化がん細胞株FRO(2×10)細胞/10μL PBS)を、生後6週の雌BALB/cヌードマウスの右脛骨に移植した。3日目に、ZAを週1回、4μg/マウスで静脈注射した。28日目に、ZA耐性マウス、ZA処置にもかかわらず骨腫瘍を有するマウスを選択した。それらをZA群とZA aCXCL16群に分けた。ZA群では、ZAを単独で注射したが、ZA+aCXCL16群では、ZAと抗ヒトCXCL16抗体(配列番号12~17のCDRを有するラットIgG)の両方を注射した。抗CXCL16抗体を25μg/マウスで週に1回、28日目から42日目まで2週間、腹腔内注射した。毎週、バイオルミネッセンスイメージング(BLI)を評価した。図11A~11Cに示すように、42日目では、ZA+aCXCL16群のBLIシグナルは、ZA群のものよりも有意に低かった。これらの結果から、抗CXCL16抗体がZA耐性骨腫瘍の増殖を低減させることが指し示された。
【0276】
実施例7.ヒト化CXCL16抗体の生成
1.キメラ抗体HC0LC0の生成
ラットで産生された抗ヒトCXCL16抗体を取得した。質量分析法を使用して抗体をシークエンシングし、配列番号12~17に開示されるCDR配列を有することを決定した。ラット抗体のバリアントの配列は、以下にさらに説明するように、ラット抗体の定常領域配列をヒトIgG1抗体の定常領域配列で置き換えることによって設計した。キメラ抗体はHC0LC0と呼ばれる。
【0277】
バリアント抗体の重鎖および軽鎖(それぞれ配列番号32および配列番号34)をコードするDNA配列(配列番号33および配列番号35)を合成し、哺乳動物一過性発現プラスミドpETEv2にクローニングした(TGEX-HC-hG1、TGEX-LC-hk、pOpti VEC、pCDNA3.3、pTRIOz、pFUSECHig、pFUSE-CLigも使用され得る)。キメラ抗体の重鎖および軽鎖の発現には、CHO細胞でより高いレベルの発現をもたらし得ることから、マウス抗体シグナルペプチドMGWTLVFLFLLSVTAGVHS(配列番号18)およびMVSSAQFLGLLLLCFQGTRC(配列番号19)をそれぞれ使用した。
【0278】
CHO細胞ベースの一過性発現系を使用してバリアント抗体を発現させ、得られた抗体を含む細胞培養上清を遠心分離と濾過によって回収した。これらのバリアント抗体を細胞培養上清からアフィニティークロマトグラフィーによって精製した(最先端のAKTAクロマトグラフィー装置を使用)。精製した抗体をリン酸緩衝生理食塩水中にバッファー交換した。最終的に、キメラ抗体HC0LC0を精製した。
【0279】
2.キメラ抗体HC0LC0のヒト化
CDRループ構造の最適な保持のために、IMGTおよびKabat抗体ナンバリング系の組み合わせを用いて、キメラ抗体HC0LC0可変ドメインをシークエンシングし、CDRを同定した。IMGTおよびKabat抗体ナンバリング系はよく知られており、例えば、Lefranc,M.-P.et al.,”IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains”.Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003)PMID:12477501 LIGM:268;and Dunbar J and Deane CM.ANARCI:Antigen receptor numbering and receptor classification.Bioinformatics(2016)を参照されたい。
【0280】
キメラ抗体HC0LC0のVHドメインは、シグナルペプチド配列を含まない以下の配列を有していた。
【0281】
AVQLVESGGGLVQGPKESLKISCAASGFTFSNAVMNWVRGAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKSMVYLQMDNLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS(配列番号36)(CDRの残基に下線が引かれている)。
【0282】
最も近いヒト生殖系列遺伝子V領域は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)IGHV3-73*01である:
【0283】
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSGSAMHWVRQGASGKGLEWVGRIRSKANSYATAYAASVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTR(配列番号37)(CDRの残基に下線が引かれている)
【0284】
げっ歯類のVHドメインとの比較のために、BLAST検索アルゴリズムを用いてヒトIgG配列のデータベースを検索し、上位200のBLASTの結果からヒト可変ドメインの候補を選択した。3つのヒト可変ドメインが、フレームワークの相同性、重要なフレームワーク残基の維持、および標準的なループ構造の組み合わせに基づいて選択され、それらがアクセプターフレームワークとして使用される。その後、HC0LC0のVHのCDRをこれらのアクセプターフレームワークにグラフトし、ヒト化VHバリアントを作製する。場合によっては、生殖系列配列との緊密な類似性を維持しつつ、抗体を親抗体(ラットCXCL16抗体)により類似させるために、復帰突然変異を加えた。CDRの残基には下線が引かれている。
【0285】
>VH1(配列番号1)
QVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDNSKTMLYLQMNSLRAEDTAVYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS
【0286】
>VH2(配列番号2)
AVQLVESGGGLVQPGGSLKISCAASGFTFSNAVMNWVRQASGKGLEWVGRIRTKPNNYATFYADSVKGRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS
【0287】
>VH3(配列番号3)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVGRIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTAYLQMNILKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTTVTVSS
【0288】
>VH4(配列番号4)
【0289】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNAVMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTAWTTEGIYWGQGTTVTVSS
【0290】
>VH5(配列番号5)
【0291】
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNAVMNWVRQASGKGLEWVARIRTKPNNYATFYADSVKGRFTFSRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAMYYCTAWTTEGIYWGQGTLVTVSS
【0292】
同様に、CDR-ループコンフォメーションの最適な保持のために、IMGTとKabat抗体ナンバリング系の組み合わせを使用して、キメラ抗体HC0LC0の軽鎖の可変ドメインを決定した。
【0293】
キメラ抗体HC0LC0のVLドメインは、シグナルペプチド配列を含まない以下の配列を有していた。
【0294】
DIVMTQSPSSLAVSAGETVTINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELK
【0295】
黄色でハイライトされたCDR残基はIMGTナンバリング系を使用して同定され、赤色でハイライトされたCDR残基はKabatナンバリング系を使用して同定された。
【0296】
最も近いヒト生殖系列遺伝子V領域は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)IGKV4-1*01である:
【0297】
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDCVAVYYCQQYYSTP
【0298】
ラットのVLドメインとの比較のために、BLAST検索アルゴリズムを用いてヒトIgK配列のデータベースを検索し、上位200のBLASTの結果からヒト可変ドメインの候補を選択した。これらの候補を、フレームワークの相同性、重要なフレームワーク残基の維持、および標準的なループ構造の組み合わせに基づいて2つにまで絞った。これらのアクセプターフレームワークにHC0LC0のVLのCDRをグラフトしたものが、ヒト化バリアントとなる。VH1-5には、ヒト生殖細胞系列配列との緊密な類似性を維持しつつ、抗体を親抗体(ラットCXCL16抗体)により類似させるための復帰突然変異が含まれている。
【0299】
>VL1(配列番号6)
DIVMTQSPDSLAVSAGETVTINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSVQAEDVAVYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIK
【0300】
>VL2(配列番号7)
【0301】
DIVMTQSPSSLAVSLGETATINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRQSGVPDRFTGSGAGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIK
【0302】
>VL3(配列番号8)
【0303】
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDFATYYCQQYYDTPWTFGGGTKVEIK
【0304】
>VL4(配列番号9)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDLAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELK
【0305】
>VL5(配列番号10)
DIVMTQSPSSLAVSAGERATINCKSSQSLLYSGNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRQSGVPDRFIGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAIYYCQQYYDTPWTFGGGTKLELK
【0306】
3.ヒト化の検証
ヒト化バリアントをチェックして、それらがヒト化されているかどうかをWHOのヒト化抗体の定義に従って確認した。Ehrenmann F.,Kaas Q.and Lefranc M.-P.2010 IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign:a database and a tool for immunoglobulins or antibodies,T cell receptors,MHC,IgSF and MhcSF Nucleic Acids Res.38,D301-307を参照。ヒト化鎖の可変ドメインは、全体として分析すると、他の種よりもヒトに近いV領域のアミノ酸配列を有している(IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM(登録商標)(IMGT(登録商標))DomainGapAlignツールを用いて評価)。表7を参照。
【0307】
【表7】
【0308】
4.T細胞エピトープスクリーニング
MHCクラスII分子の溝にペプチド配列が提示されると、CD4+T細胞の活性化と免疫原性応答が引き起こされる。この反応を低減させるため、MHCクラスII分子への結合親和性を低下させることでT細胞を活性化し得る「T細胞エピトープ」の組み込みを回避するように、治療用タンパク質を設計することができる。
【0309】
元のラット抗体のVHおよびVLとヒト化バリアント配列をMHC II結合ペプチドについてスクリーニングし、in silicoアルゴリズムを使用してヒト化プロセスが高い親和性を持つペプチド配列を除去したことを確認した。以下の8つの対立遺伝子は世界人口の99%以上を占め、MHCクラスIIエピトープの予測に使用される標準的な対立遺伝子セットである:DRB1*01:01;DRB1*03:01;DRB1*04:01;DRB1*07:01;DRB1*08:02;DRB1*11:01;DRB1*13:02;DRB1*15:01。Wang et al.,Peptide binding predictions for HLA DR,DP and DQ molecules.BMC Bioinformatics.11:568;Gonzalez-Galarza FF,Nucleic Acid Research,39(2011),D913-D919;Greenbaum J,et al.,Immunogenetics 63(6):325-35を参照。
【0310】
本発明の以上の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明の技術的精神または本質的な特徴を変更することなく、他の特定の形態に容易に変更できることを理解できる。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、制限的なものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
【配列表】
2024542914000001.xml
【国際調査報告】