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特表2024-542915移相システム、無線周波数チップ、及びレーダーセンサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】移相システム、無線周波数チップ、及びレーダーセンサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 11/22 20060101AFI20241112BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20241112BHJP
   H01P 5/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H03H11/22
G01S7/03 220
H01P5/04 603D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581068
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2022123127
(87)【国際公開番号】W WO2024065630
(87)【国際公開日】2024-04-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521162919
【氏名又は名称】加特▲蘭▼微▲電▼子科技(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】リュウ トウ
(72)【発明者】
【氏名】チン カ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】劉正東
(72)【発明者】
【氏名】シュウ ブン テイ
【テーマコード(参考)】
5J070
5J098
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AF01
5J070AF03
5J070AF05
5J070AH35
5J098AB32
5J098AC04
5J098AD03
(57)【要約】
【課題】本願は、移相システム、無線周波数チップ、及びレーダーセンサを提供する。
【解決手段】移相システムは、縦続接続された少なくとも2つの伝送線路移相ユニットを含み、ここで、各伝送線路移相ユニットが少なくともシングルパスの移相制御信号によって制御されて、前記伝送線路移相ユニットが第1位相または第2位相によって無線周波数信号を移相し、前記伝送線路移相ユニットは、少なくとも複数セットの伝送線路を含み、ここで、縦続接続された2つの伝送線路移相ユニットにおける第1セットの伝送線路中の少なくとも一部の伝送線路間は、物理的に隔離され、かつそれぞれの第2セットの伝送線路によって接続されている。この移相システムは、伝送線路移相器の伝送経路が長いことに起因して移相リニアリティが低下してしまうという問題を解決する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦続接続された少なくとも2つの伝送線路移相ユニットを含み、ここで、
各伝送線路移相ユニットが少なくともシングルパスの移相制御信号によって制御されて、前記伝送線路移相ユニットが第1位相または第2位相によって無線周波数信号を移相し、
前記伝送線路移相ユニットは、少なくとも複数セットの伝送線路を含み、ここで、縦続接続された2つの伝送線路移相ユニットにおける第1セットの伝送線路中の少なくとも一部の伝送線路間は、物理的に隔離され、かつそれぞれの第2セットの伝送線路によって接続されている、
ことを特徴とする移相システム。
【請求項2】
第1セットの伝送線路間のピッチが第2セットの伝送線路間のピッチよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の移相システム。
【請求項3】
無線周波数インバータをさらに含み、前記無線周波数インバータは、縦続接続された伝送線路移相ユニットの最初段又は最終段に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の移相システム。
【請求項4】
前記無線周波数インバータの信号インターフェースは、伝送線路移相ユニットの第2セットの伝送線路に接続され、かつ第1セットの伝送線路における少なくとも一部の伝送線路から物理的に隔離される、
ことを特徴とする請求項3に記載の移相システム。
【請求項5】
前記伝送線路移相ユニットはシングルエンド伝送線路移相ユニットであり、ここで、前記第1セットの伝送線路は、第1ペアアース線及びシングルエンド信号線であり、第2セットの伝送線路は、第2ペアアース線及び前記シングルエンド信号線であり、または、
前記伝送線路移相ユニットは、差動伝送線路移相ユニットであり、ここで、前記第1セットの伝送線路は、第1ペア差動伝送線路であり、第2セットの伝送線路は、第2ペア差動伝送線路である、
ことを特徴とする請求項1に記載の移相システム。
【請求項6】
移相コントローラをさらに含み、前記移相コントローラは、対応する伝送線路移相ユニットが移相操作を行うことを制御するように、各前記伝送線路移相ユニットに結合され、少なくともシングルパスの移相制御信号を少なくとも1つの伝送線路移相ユニットに出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移相システム。
【請求項7】
前記の物理的に隔離されることは、物理的に切り離されて形成された隙間またはシールド構造である、
ことを特徴とする請求項1に記載の移相システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の移相システムを含む、
ことを特徴とする無線周波数チップ。
【請求項9】
受信された無線周波数送信信号を検知信号波で自由空間に放射するための送信アンテナと、
検知されたエコー信号波を無線周波数受信信号に変換するための受信アンテナと、
請求項8に記載の無線周波数チップとを含み、
ここで、前記エコー信号波は前記検出信号波が物体を介して反射して形成されるものであり、
前記無線周波数チップは、前記送信アンテナと受信アンテナとに結合され、移相付きの無線周波数送信信号を前記送信アンテナに出力し、前記無線周波数受信信号をベースバンドデジタル信号に変換することに用いられる、
ことを特徴とするレーダーセンサ。
【請求項10】
請求項9に記載のレーダーセンサまたは請求項8に記載の無線周波数チップと、前記レーダーセンサまたは無線周波数チップが組み立てられた機器本体と、を含む、
ことを特徴とする機器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、集積回路技術の分野に関し、具体的に、移相システム、無線周波数チップ、及びレーダーセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの無線応用、特に無線通信とレーダーセンサ分野では、無線周波数(RF)回路に位相制御能力を備えることで、情報容量、干渉に対する耐性を向上させたり、検出/通信の指向性を大幅に高めたりすることができる。
【0003】
これにより、ターミナルデバイスが位相制御能力を備えるように、無線周波数回路に移相器を導入している。移相器の移相正確度、移相精度、校正複雑度、校正周期、帯域幅などの影響要素により、移相器は、多くの無線周波数回路全体の性能のボトルネックとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の問題に鑑みて、本願には、伝送線路移相器の伝送経路が長いことに起因して移相リニアリティが低下してしまうという問題を解決するための移相システム、無線周波数チップ、及びレーダーセンサが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1態様によれば、移相システムが提供され、この移相システムは、縦続接続された少なくとも2つの伝送線路移相ユニットを含み、ここで、各伝送線路移相ユニットが少なくともシングルパスの移相制御信号によって制御されて、前記伝送線路移相ユニットが第1位相または第2位相によって無線周波数信号を移相し、前記伝送線路移相ユニットは、少なくとも複数セットの伝送線路を含み、ここで、縦続接続された2つの伝送線路移相ユニットにおける第1セットの伝送線路中の少なくとも一部の伝送線路間は、物理的に隔離され、かつそれぞれの第2セットの伝送線路によって接続されている。
【0006】
本願の第2態様によれば、第1態様に記載された移相システムを含む無線周波数チップが提供される。
【0007】
本願の第3態様によれば、レーダーセンサが提供され、このレーダーセンサは、入力無線周波数送信信号を検知信号波で自由空間に放射するための送信アンテナと、検知されたエコー信号波を無線周波数受信信号に変換するための受信アンテナと、第2態様に記載された無線周波数チップとを含み、ここで、エコー信号波は検出信号波が物体を介して反射して形成されるものであり、無線周波数チップは、送信アンテナと受信アンテナとに結合され、移相付きの無線周波数送信信号を前記送信アンテナに出力し、前記無線周波数受信信号をベースバンドデジタル信号に変換して対象物を測定することに用いられる。
【0008】
本願の第4態様によれば、上述したレーダーセンサまたは上述した無線周波数チップと、前記レーダーセンサまたは無線周波数チップが組み立てられた機器本体と、を含む機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本願に提供された移相システムは、伝送線路移相ユニット間の一部の伝送線路を物理的に隔離することにより、長い伝送線路で無線周波数信号を伝送する際の電磁的影響を低減し、移相リニアリティを向上させ、移相システムの移相能力を全体的に向上させる。
【0010】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示にすぎず、本願を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面を参照して例示的な実施例を詳細に説明することにより、本願の上記及び他の目的、特徴及び利点は、より明確になる。以下に記載される図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、本願を限定するものではない。
図1a図1aは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相ユニットの原理を示す図である。
図1b図1bは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相ユニットの原理を示す図である。
図2図2は、1つの例示的な実施例の伝送線路移相ユニットの構成を示す図である。
図3図3は、1つの例示的な実施例の伝送線路移相ユニットの構成を示す図である。
図4図4は、1つの例示的な実施例の伝送線路移相ユニットの構成を示す図である。
図5a図5aは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相器の構成を示す図である。
図5b図5bは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相器の構成を示す図である。
図6図6は、1つの例示的な実施例の無線周波数インバータの構成を示す図である。
図7a図7aは、1つの例示的な実施例の無線周波数インバータの信号伝送を示す図である。
図7b図7bは、1つの例示的な実施例の無線周波数インバータの信号伝送を示す図である。
図7c図7cは、1つの例示的な実施例の無線周波数インバータの信号伝送を示す図である。
図7d図7dは、1つの例示的な実施例の無線周波数インバータの信号伝送を示す図である。
図8a図8aは、1つの例示的な実施例の移相システムの構成を示す図である。
図8b図8bは、1つの例示的な実施例の移相システムの構成を示す図である。
図9a図9aは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相器の構成を示す図である。
図9b図9bは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相器の構成を示す図である。
図10a図10aは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相器の構成を示す図である。
図10b図10bは、1つの例示的な実施例の伝送線路移相器の構成を示す図である。
図11図11は、移相システムの構成を示す図である。
図12a図12aは、1つの例示的な実施例の校正回路の作動状態を示す図である。
図12b図12bは、1つの例示的な実施例の校正回路の作動状態を示す図である。
図13図13は、1つの例示的な実施例の無線周波数チップの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、例示的な実施例について、添付の図面を参照して全面的に説明する。 しかしながら、例示的な実施例は、種々の形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載の実施例に限定されるものと解釈されるべきではない。逆に、これらの実施例を提供することで、本願が全面的かつ完全なものになり、例示的な実施例の構想が全面的に当業者に伝えられることができる。図中の同一の符号は、同一又は類似の部分を示すため、それらの繰り返しの説明は割愛されるものとする。
【0013】
説明された特徴、構造、又は特性は、任意の適切な方法で1つ又は複数の実施例で組み合わせられることができる。以下の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を与えるために、いくつかの具体的なディテールが提供される。しかしながら、当業者は、本開示の技術案は、これらの特定のディテールのうちの1つ又は複数がなくても、又は他の手段、コンポーネント、材料、装置等が採用されることで、実施され得ることを認識されるであろう。
【0014】
添付の図面に示されているフローチャートは、例示に過ぎず、すべての内容及び操作/ステップを含む必要はなく、また、記載されている順序で実行する必要もない。 例えば、ある操作/ステップが分解されたり、ある操作/ステップが組み合わせられたり、部分的に組み合わせたりすることができるため、実際の状況に応じて実際に実行される順序が変わる可能性がある。
【0015】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲、並びに上述した図面における「第1」、「第2」等の用語は、異なる対象物を区別するために用いられるものであり、特定の順序を説明するために用いられるものではない。さらに、「含む」及び「有する」という用語、及びそれらの任意のバリエーションは、非排他的な包含をカバーすることを意図している。
【0016】
当業者は、図面は実施例を示すための概略図に過ぎず、図面内のモジュール又はプロセスが本願の実施に必ずしも必要ではないため、本願の保護範囲を限定するために使用されるものではないことを理解できる。
【0017】
移相器を搭載したレーダーセンサを例として、レーダーセンサに設定された動作モードによって、移相器は、局部発振信号(LO信号とも呼ばれる)を移相処理し、送信アンテナによって検知信号波に変換して自由空間に放射し、送信アンテナによって放射された検出信号波が物体を介して反射してエコー信号波を形成するときに、受信アンテナが前記エコー信号波を無線周波数受信信号に変換し、この無線周波数受信信号が局部発振信号を介してミックスした後、ベースバンド信号を出力し、このベースバンド信号が移相器によって提供された移相情報を持っているため、レーダーセンサの信号処理器がベースバンド信号から当該物体に対する物理的な相対測定値を正確に抽出することに寄与する。
【0018】
いくつかのレーダーセンサの例では、移相器は、IQ移相器を採用しており、即ち移相器は、入力無線周波数信号を同相信号と直交信号に変換し、移相制御信号によって同相信号と直交信号の振幅を調整し、ベクトル合成を利用して任意の移相の無線周波数信号を得る。しかしながら、IQ移相器は、アクティブデバイスであるため、PVDが変化した場合、安定し難い。一方、IQ移相器は、明らかな非理性的特性を有しているため、シングルポイント校正を採用する必要があり、例えば、プリセットされた移相ポイントを1つずつ校正する必要がある。この校正複雑度と校正周期はレーダーセンサの作動効率を制限していると考えられる。
【0019】
本願は、伝送線路移相器を提供する。前記伝送線路移相器は、少なくとも1つの伝送線路移相ユニットを含む。伝送線路移相ユニットは、複数セットの伝送線路(アース線を含んでもよいし、含まなくてもよい)と、複数の位相調整回路と、を含む。異なるセットの伝送線路における無線周波数電流のクローズド経路長が異なるため、等価インダクタンスが異なる。一部の位相調整回路は、複数セットの伝送線路間又は伝送線路とアース線の間に接続され、信号を異なる伝送線路上又は異なるアース線上で切り替えるために使われ、伝送線路における等価インダクタンスLを調整し、このため、この部分の位相調整回路は、インダクタンス調整回路と呼ばれる。残った部分の位相調整回路は、異なる伝送線路間又は伝送線路とアース線との間にスイッチキャパシタンスを入れて、伝送線路の等価キャパシタンスCを調整し、このため、この部分の位相調整回路は、キャパシタンス調整回路と呼ばれる。伝送線路の挿入位相φと等価インダクタンスL及び等価キャパシタンスCとの間には、対応関係
があるため、位相調整回路(即ちインダクタンス調整回路とキャパシタンス調整回路)によって、伝送線路の移相ユニットの挿入位相φを調整し、移相の機能を実現することができる。
【0020】
位相調整回路の状態を制御することで、伝送線路の移相ユニットを少なくとも第1位相状態(参照状態とも呼ばれる)と第2位相状態(移相状態とも呼ばれる)の2つの状態に配置することができる。伝送線路移相ユニットの第1及び第2位相状態における等価インダクタンス及び等価キャパシタンスは、それぞれL、C及びL、Cと表記され、この2つの状態における挿入位相は、それぞれφ及びφと表記される。伝送線路移相ユニットの第1位相状態(参照状態)と第2位相状態(移相状態)における挿入位相の差は、移相量と呼ばれ、Δφと表記される。したがって、
である。前記伝送線路移相ユニットは、3種類又は3種類以上の状態を提供することもできる。これにより、前記位相調整回路は、受信された少なくとも1種類の移相制御信号に基づいて、前記伝送線路移相ユニットから出力された無線周波数信号が入力無線周波数信号に対して少なくとも第1位相又は第2位相の移相を備えるように、前記複数セットの伝送線路が位置する伝送線路の電気的パラメーターを調整する。
【0021】
伝送線路移相ユニットは、伝送線路の基本的な構成タイプによって、シングルエンド伝送線路移相ユニットと差動伝送線路移相ユニットに分けられることができる。
【0022】
例えば、シングルエンド伝送線路で構成された伝送線路移相ユニットは、シングルエンド信号線と、第1ペアアース線と、第2ペアアース線と、を含む。図1aに示すように、シングルエンド信号線Sと第1ペアアース線(G1-1、G1-2)は、第1セット伝送線路を構成し、シングルエンド信号線Sと第2ペアアース線(G2-1、G2-2)は、第2セット伝送線路を構成する。2ペアのアース線と信号線との間のピッチ差を利用して、異なる等価インダクタンスを実現し、信号線とアース線との間のスイッチキャパシタンスを利用して、異なる等価キャパシタンスを実現する。アース線を切り替える回路とスイッチキャパシタンスは、位相調整回路22に含まれている。
【0023】
また、例えば、差動伝送線路で構成された伝送線路移相ユニットは、第1ペア差動伝送線路と、第2ペア差動伝送線路と、アース線と、を含み、ここで、アース線があってもよいし、なくてもよい。図1bに示すように、信号線Sig1_P、Sig1_Nは、第1セット伝送線路を構成し、信号線Sig2_PとSig2_Nは、第2セット伝送線路を構成する。これらは、いずれも差動伝送線路である。2セットの差動伝送線路PN間のピッチ差を利用して、異なる等価インダクタンスを実現する。差動伝送線路間のスイッチキャパシタンスを利用して、異なる等価キャパシタンスを実現する。差動伝送線路を切り替えるインダクタンスとスイッチキャパシタンスは、いずれも調整回路21に含まれている。
【0024】
伝送線路移相ユニットに安定した電気的性能と有効な差動対称性を持つようになる(後者は、伝送線路移相ユニットのみに対して有効である)ために、通常、軸対称的な構造を採用しており、ここで、対称軸が伝送線路移相ユニットの中心線であり、信号伝送方向に平行であり、図1aと図1bにおける仮想軸線(図中の一点鎖線)のように、この仮想軸線は、各伝送線路のパターンレイアウトにおける構造対称関係を示すためのものであり、実際の伝送線路ではない。実際の伝送線路には、仮想軸線と重なる場合又は部分的に重なる場合があり、図1aに示すように、シングルエンド伝送線路移相ユニットにおける信号線Sが仮想軸線と重なり、第1ペアアース線におけるアース線G1-1とアース線G1-2とが信号線Sに対して、等しい第1ピッチd21を有し、第1ペアアース線におけるアース線G1-1とアース線G1-2とが信号線Sに対して、等しい第2ピッチd22を有する。実際の伝送線路には、仮想軸線と重ならない場合もあり、図1bに示すように、差動伝送線路移相ユニットにおける第1ペア差動伝送線路の信号線Sig1_PとSig1_Nは、仮想軸線(図中の一点鎖線)に対して、等しい第1ピッチd11を有し、第2ペア差動伝送線路における信号線Sig2_P、Sig2_Nは、仮想軸線に対して、等しい第2ピッチd21を有する。
【0025】
なお、当業者は、本願で挙げられた移相量、ピッチなどの物理量がエンジニアリング誤差範囲に適合する物理量であることを理解すべきである。
【0026】
さらに、図1aと1bは、シングルエンドと差動という2つの伝送線路移相ユニットのパターンレイアウト方式を示しており、図における各セットの伝送線路が同じ金属層に位置している。他のいくつかの例では、各セットの伝送線路の金属層は、同じでない層にしたり、積層したりするレイアウト方式を採用してもよい。また、図1a、図1bの例では、挿入位相の小さいセットの伝送線路間のピッチは、挿入位相の大きなセットの伝送線路間のピッチより短い。他のパターンレイアウトの例では、各セットの伝送線路の対応する等価インダクタンスL/等価キャパシタンスCが所望の調整範囲を実現し、最終的に所望の移相量Δφを実現し、移相過程でインピーダンス整合を維持するように、異なるセットの伝送線路間のピッチが同じであってもよいし、似てもよく、異なるセットの伝送線路間が異なる長さを有してもよい。
【0027】
これにより、位相調整回路は、上記の原理に基づいて、少なくともシングルパスの移相制御信号を出力するように設計された回路である。前記移相制御信号は、位相調整回路の制御対象デバイスの数、制御対象の電気的パラメーターなどに応じて設定されるものである。いくつかの例では、その中のシングルパスの移相制御信号は、電圧、電流、デューティ比などの調整可能な電気的パラメーターを利用して、制御対象デバイスに対する制御を実現している。例えば、シングルパスの移相制御信号の電圧又は電流は、スイッチ管のオン/オフを調整できる。例えば、シングルパスの移相制御信号の電圧(又は電流)は、スイッチ管が線形領域範囲内で異なるインピーダンスを提供するように調整することができる。例えば、シングルパスの移相制御信号の電圧(又は電流)は、スイッチ管がカットオフ領域又は飽和領域などになるように調整することができる。例えば、シングルパスの移相制御信号のデューティ比は、キャパシタンスの充/放電時間を調整でき、さらにキャパシタンスの変化に応じて相応する位相状態の切り替えなどに適応することを調整することができる。他のいくつかの例では、その中のマルチパスの移相制御信号が符号化信号を構成しており、制御対象アレイを制御して、回路全体のキャパシタンスパラメーター及び/又はインダクタンスパラメーターを調整する。例えば、マルチパスの移相制御信号は、制御対象スイッチアレイにおけるオン/オフスイッチの数を調整して、対応するキャパシタンスパラメーター及び/又はインダクタンスパラメーターなどを調整することができる。
【0028】
これにより、伝送線路移相ユニットにおける位相調整回路は、異なるセットの伝送線路を切り替えるためのスイッチ管又は異なるセット伝送線路が異なる流量の無線周波数信号を伝送するためのスイッチ管などを含んでもよい。これに対応して、半導体工程で製造されたスイッチ管は、移相制御信号を調整することで、飽和領域とカットオフ領域の間で切り替えることができる。半導体工程で製造されたスイッチ管は、移相制御信号を調整することで、飽和領域とカットオフ領域の間の線形領域内で抵抗値を調整し、異なるセットの伝送線路が分流された無線周波数信号を伝送するようになる。位相調整回路は、キャパシタンスと、抵抗と、をさらに含んでもよく、対応する位相状態に必要な等価回路内のキャパシタンス値及び/又は抵抗値に適応し、即ち伝送線路移相ユニットのキャパシタンスパラメーター及び/又はインダクタンスパラメーターを実際に変更している。これにより、無線周波数信号移相の目的だけでなく、伝送線路移相ユニットと外部回路との間のインピーダンス整合も実現できる。外部回路は、無線周波数の駆動増幅回路又は移相された無線周波数信号を受信する他の回路などが挙げられる。
【0029】
上記の移相量の式から分かるように、前記位相調整回路は、伝送線路の移相ユニットにおける等価インダクタンス又は等価キャパシタンスを個別に調整することができる。移相前後に伝送線路が整合状態にあることを保つために、移相前後に伝送線路の特性インピーダンスZが一定であることが要求される。
に基づいて、移相前後に等価インダクタンスLと等価キャパシタンスCの比を一定に保つ必要がある。したがって、通常、等価インダクタンスと等価キャパシタンスを同時に調整する必要がある。無線周波数回路の場合、異なるセットの伝送線路、スイッチ管などの電子デバイスが調整されると、キャパシタンスパラメーターとインダクタンスパラメーターが同時に変化する可能性がある。本願で記載された位相調整回路における各制御回路の種類は、伝送線路移相ユニット全体のキャパシタンスパラメーター又はインダクタンスパラメーターに対して主な調整作用を果たすという視点から区別して理解すべきである。
【0030】
位相調整回路は、インダクタンス調整回路を含み、移相制御信号の制御の下で、前記伝送線路移相ユニットが前記第1位相又は第2位相によって移相操作を行うように、前記伝送線路移相ユニットのインダクタンスパラメーターを調整するために使われる。
【0031】
いくつかの例では、スイッチ管と可変抵抗、又はスイッチ管と調整可能なインダクタなどの制御対象デバイスを用いて、異なるセットの伝送線路をセット別に選択し、伝送線路移相ユニットが第1位相状態と第2位相状態の間で切り替えることを実現する。
【0032】
伝送線路移相ユニットがシングルエンド伝送線路移相ユニットである場合を例として、いくつかの例では、前記インダクタンス調整回路は、第1ペアアース線と第2ペアアース線の間で切り替える回路に使われる。例えば、インダクタンス調整回路は、第1ペアアース線におけるアース線G1-1と第1ペアアース線におけるアース線G2-1の間に接続されたスイッチ管SW_1と、第1ペアアース線におけるアース線G1-2と第1ペアアース線におけるアース線G2-2との間に接続されたスイッチ管SW_2と、を含む。伝送線路移相ユニットが第1位相状態に設定された場合、スイッチ管SW_1とSW_2は、オンになり、シングルエンド信号線Sと第1ペアアース線(G1-1、G1-2)とで移相操作を行う。移相状態に設定された場合、スイッチ管SW_1とSW_2は、オフになり、シングルエンド信号線Sと第2ペアアース線(G2-1、G2-2)とで移相操作を行う。
【0033】
他のいくつかの例では、前記インダクタンス調整回路は、無線周波数信号の第1ペアアース線と第2ペアアース線における流量を調整するために使われる回路である。例えば、インダクタンス調整回路は、第1ペアアース線におけるアース線G1-1と第1ペアアース線におけるアース線G2-1との間に接続されたスイッチ管MOS_1と、第1ペアアース線におけるアース線G1-2と第1ペアアース線におけるアース線G2-2との間に接続されたスイッチ管MOS_2と、を含む。入力無線周波数信号に対して第1位相で移相する場合、スイッチ管MOS_1、MOS_2は、飽和領域又は線形領域で動作し、シングルエンド信号線Sと第1ペアアース線(G1-1、G1-2)の位置する伝送線路を流れる無線周波数信号の流量がシングルエンド信号線Sと第2ペアアース線(G2-1、G2-2)の位置する伝送線路を流れる無線周波数信号の流量よりも大きくなる。入力無線周波数信号に対して第2位相で移相する場合、スイッチ管MOS_1とMOS_2は、カットオフ領域又は線形領域で動作し、シングルエンド信号線Sと第2ペアアース線(G2-1、G2-2)の位置する伝送線路を流れる無線周波数信号の流量がシングルエンド信号線Sと第1ペアアース線(G1-1、G1-2)の位置する伝送線路を流れる無線周波数信号の流量よりも大きくなる。
【0034】
伝送線路移相ユニットが差動伝送線路移相ユニットであることを例として、差動伝送線路移相ユニットにおけるインダクタンス調整回路は、スイッチ管を含み、異なるセットの伝送線路間でセット選択を行うために使われる。例えば、図2に示すように、インダクタンス調整回路は、少なくとも2つのスイッチ管(sw_sig1、sw_sig2)を含み、その中の一方のスイッチ管sw_sig1は、第2ペア差動伝送線路の信号線Sig2_Pと第1ペア差動伝送線路の信号線路Sig1_Pとの間に接続され、他方のスイッチ管sw_sig2は、第2ペア差動伝送線路の信号線Sig2_Nと第1ペア差動伝送線路の信号線Sig1_Nとの間に接続されている。ここで、信号線Sig2_Pと信号線Sig1_Pは、いずれも差動の1セットの無線周波数信号群における同じ無線周波数信号Sig_Pを伝送するために使われ、信号線Sig2_Nと信号線Sig1_Nは、いずれも差動の1セット無線周波数信号における同じ無線周波数信号Sig_Nを伝送するために使われる。
【0035】
入力無線周波数信号に対して第2位相で移相操作を行うことを選択すると、スイッチ管sw_sig1とsw_sig2は、オフになり、第2ペア差動信号線Sig2_PとSig2_Nが無線周波数信号を伝送するようになる。入力無線周波数信号に対して第1位相で移相操作を行うことを選択すると、第2スイッチ管sw_sig1とsw_sig2がオンになり、第1ペア差動信号線Sig1_PとSig1_Nが無線周波数信号を伝送するようになる。
【0036】
位相調整回路は、キャパシタンス調整回路をさらに含み、キャパシタンス調整回路は、前記伝送線路移相ユニットが前記第1位相又は前記第2位相を選択するように、入力移相制御信号の制御の下で、前記伝送線路移相ユニットのキャパシタンスパラメーターを調整する。ここで、キャパシタンス調整回路は、可変キャパシタンスを提供する制御対象回路であり、伝送線路移相ユニットの第1位相(又は第2位相)の状態で必要なキャパシタンスに応じて調整することができる。
【0037】
キャパシタンス調整回路は、可変キャパシタンス回路に基づいて調節を提供するものであり、例を挙げると、以下の少なくとも1つの制御対象回路を含む:スイッチキャパシタンスアレイ、可変キャパシタンスダイオードを含んだ可変キャパシタンス回路。ここで、前記スイッチキャパシタンスアレイには、複数セットのスイッチ管とキャパシタの直列回路が含まれており、各スイッチ管は、入力移相制御信号を受信して選択的にオン/オフになる。可変キャパシタンスダイオードを含んだ可変キャパシタンス回路において、前記可変キャパシタンスダイオードは、入力移相制御信号を受信してキャパシタンス値を調整する。
【0038】
上記の可変キャパシタンス回路に加えて、固定キャパシタンスを有するスイッチキャパシタンスをさらに含んでもよく、キャパシタンス調整回路にベースキャパシタンス値を提供し、残りの可変キャパシタンス回路は、ベースキャパシタンス値に基づいて総キャパシタンス値を調整する。以上の固定及び/又は可変キャパシタンススイッチに基づいて、前記第1スイッチ管が受信した入力制御信号は、調整メカニズムとすることができ、スイッチ管の導通状態を調整することで、オフとオンの2つの状態だけでなく、オフとオンの間に介在する複数の半導通状態でも動作でき、キャパシタンス値を制御していることと等価である。
【0039】
前記キャパシタンス調整回路は、無線周波数信号を伝送する伝送線路とリファレンスアースとの間に結合されてもよい。例えば、シングルエンド伝送線路移相ユニットのキャパシタンス調整回路は、信号線Sと任意のアース線との間に結合される。また、図3に示すように、差動伝送線路移相ユニットには、アース線Gnd_PとGnd_Nが含まれている。ここで、Gnd_PとGnd_Nとの間は、金属接続を利用して等電位回路を形成している。同じセットの各伝送線路は、それぞれアース線Gnd_PとGnd_Nの間にキャパシタンス調整回路を結合する。例えば、図3に示すように、キャパシタンス調整回路は、直列接続された2セットのキャパシタcapとスイッチ管sw_capを含む。その中で、一方の直列接続されたキャパシタcapとスイッチ管sw_capは、アース線Gnd_Pと信号線Sig2_Pとの間に接続され、他方の直列接続されたキャパシタcapとスイッチ管sw_capは、アース線Gnd_Nと信号線Sig2_Nとの間に接続されている。差動伝送線路移相ユニットが対称的なパターンレイアウトを持つように、差動無線周波数信号の対称性を維持する。前記キャパシタンス調整回路は、対称的に集積回路に配置されている。
【0040】
差動伝送線路移相ユニットの回路の複雑度を簡素化し、差動信号の信号対称性を維持し、無線周波数信号の干渉に対する耐性を利用した移相と信号伝送の実現に寄与するために、第1ペア差動伝送線路間のピッチ(図1aに示す2×d11)と第1ペア差動伝送線路における伝送線路の長さは、第1位相の対応するインダクタンスパラメーターとキャパシタンスパラメーターに基づいて設定される。
【0041】
差動伝送線路移相ユニットを例として、図2に示すように、キャパシタンス調整回路は、第2ペア差動伝送線路(Sip2_P、Sip2_N)の間に接続されている。このキャパシタンス調整回路は、仮想軸に沿って対称的に配置されたキャパシタcap1及びcap2と、スイッチ管sw_capと、を含む。ここで、キャパシタcap1は、その一端が第2ペア差動信号線Sig_Pに接続され、他端がスイッチ管sw_capに接続されている。キャパシタcap2は、その一端が第2ペア差動信号線Sig_Nに接続され、他端がスイッチ管sw_capに接続されている。このキャパシタンス調整回路の動作プロセスは、例えば、移相制御信号の制御の下で、スイッチ管sw_capがオンになると、伝送線路移相ユニットが第2位相によって入力無線周波数信号に対して移相操作を行い、スイッチ管sw_capがオフになると、伝送線路移相ユニットが第1位相で入力無線周波数信号に対して移相操作を行うことである。また、移相制御信号の制御の下で、スイッチ管sw_capが半導体特性を利用して大きな抵抗値を提供する場合、無線周波数信号の2ペアの差動伝送線路における分流配置を調整することに相当し、第2ペア差動伝送線路(Sip2_P、Sip2_N)から伝送される無線周波数信号の電流成分が第1ペア差動伝送線路(Sip1_P、Sip1_N)から伝送される無線周波数信号の電流成分よりも大きくなり、これにより、伝送線路移相ユニットは、第2位相で入力無線周波数信号に対して移相操作を行い、スイッチ管sw_capが半導体特性を利用して小さい抵抗値を提供する場合、無線周波数信号の2ペアの差動伝送線路における分流配置を調整することに相当し、第2ペア差動伝送線路(Sip2_P、Sip2_N)から伝送される無線周波数信号の電流成分が第1ペア差動伝送線路(Sip1_P、Sip1_N)から伝送される無線周波数信号の電流成分よりも小さくなり、これにより、伝送線路移相ユニットは、第1位相で入力無線周波数信号に対して移相操作を行う。
【0042】
上記の各制御対象回路は、各伝送線路間の位置関係、回路デバイスの配置位置によって、対応する伝送線路を接続することができる。例えば、半導体の積層構造では、位相調整回路と各伝送線路は、メタライズドスルーホール及び/又はマイクロストリップワイヤなどの導体で接続されることができる。伝送線路移相ユニットの移相を切り替えるときに生じるジッタ、移相ドリフト、差動信号中のコモンモードなどの移相器指標を体系的に抑制するために、前記伝送線路移相ユニットには、複数のブリッジがさらに含まれている。各ブリッジは、マイクロストリップワイヤを含んでもよいし、マイクロストリップワイヤと金属スルーホールを含んでもよい。あらゆるブリッジは、位相調整回路内の他の電気部品を対応する伝送線路に対称的に結合するために、全体として対称的な構造を呈している。これにより、伝送線路移相ユニット全体の軸対称の回路構成を実現している。例えば、図2に示すように、各ブリッジ(Brg_11、Brg_21及びBrg_31)は、それぞれ信号線Sig1_Pと信号線Sig2_Pに結合され、各ブリッジ(Brg_12、Brg_22、Brg_32)は、それぞれ信号線Sig1_Nと信号線Sig2_Nに結合されている。ここで、各ブリッジBrg_11とBrg_12、Brg_21とBrg_22及びBrg_31とBrg_32は、それぞれ信号伝送方向に沿って対称的に配置されている。各ブリッジBrg_11とBrg_31は、ブリッジBrg_21に対して対称的に配置され、各ブリッジBrg_12とBrg_32は、ブリッジBrg_22に対して対称的に配置されている。キャパシタンス調整回路とインダクタンス調整回路は、各ブリッジの対称的な位置に接続され、伝送線路移相ユニットのパターン全体の対称的な回路構成を実現している。
【0043】
いくつかの図示していない例では、キャパシタンス調整回路とインダクタンス調整回路における一部の電気部品は、同じブリッジの異なる接続点に結合してブリッジの数を減らすことができる。これにより、回路構成を簡素化し、伝送線路移相ユニット全体の回路安定性を高めることができる。
【0044】
いくつかの実施例では、差動伝送線路移相ユニットの電磁放射の集積回路における他の回路への信号干渉、例えば電磁放射の低周波回路への信号干渉を低減するために、伝送線路移相ユニットは、第1ペア差動伝送線路と第2ペア差動伝送線路の周りに設けられた接地導体をさらに含み、接地導体は、差動伝送線路移相ユニットの電磁シールドを提供するために使われる。接地導体は、省略してもよいし、残してもよい。
【0045】
いくつかの例では、伝送線路移相ユニットと他の回路との位置関係によって、この接地導体は、少なくとも伝送線路移相ユニットと他の回路との間の金属層に位置する。例えば、この金属層に接地金属のストリップ状の接地導体を形成する。ここで、接地金属ストリップの数は、隙間を有するストリップネット状の接地導体に配置されるように、複数本であってもよい。例えば、差動伝送線路移相ユニットと他の回路との間の金属層に接地導体を形成し、この接地導体も対称的な構造であり、電磁放射を効果的に遮蔽できる。図3又は図4に示すように、この接地導体は、アース線Gnd_P及びGnd_Nと、アース線間を接続する金属線と、を含む。ここで、図3に示すように、接地導体のエンベロープサイズは、伝送線路移相ユニットのエンベロープサイズよりも大きい。あるいは、図4に示すように、接地導体のエンベロープサイズは、伝送線路移相ユニットのエンベロープサイズよりも小さい。
【0046】
他のいくつかの例では、伝送線路移相ユニットと集積回路のパッケージ構造との間の金属層を利用して接地導体を形成する。
【0047】
他のいくつかの例では、伝送線路移相ユニットにおける各伝送線路移相ユニットの周囲の金属層と対応する金属層との間のアーススルーホールを利用して、伝送線路移相器を収容するための立体的な接地導体を形成する。
【0048】
前記伝送線路移相器には、複数の伝送線路移相ユニットが含まれており、各伝送線路移相ユニットの少なくとも1セットの伝送線路は、互いに接続されて、縦続回路を形成している。縦続接続された各伝送線路の移相ユニットが提供できる移相は、同じであってもよいし、異なってもよい。伝送線路移相ユニットにおけるすべての伝送線路移相ユニットがそれぞれの第1位相にある状態を伝送線路移相ユニットの参照状態とし、各伝送線路移相ユニットが第2位相にある状態を位相状態とする。例えば、レーダーセンサにプリセットされた移相ステッピングによって、縦続接続された各伝送線路移相ユニットの第1位相と第2位相は、いずれも同じであり、各伝送線路移相ユニットは、移相制御信号によって個別に制御でき、伝送線路移相器が移相ステッピングの整数倍で移相操作を提供できるようになる。ここで、移相ステッピングは、伝送線路移相器における単一の伝送線路移相ユニットの移相量Δφである。
【0049】
各伝送線路移相ユニット間は、少なくとも1セットの信号線によって電気的に接続されて縦続回路を形成する。例えば、レーダーセンサでは、複数のシングルエンド伝送線路移相ユニットにおけるそれぞれのシングルエンド信号線S、第1ペアアース線(G1-1、G1-2)及び第2ペアアース線(G2-1、G2-2)は、いずれも一体成形された金属線である。各伝送線路移相ユニットは、位相調整回路を利用して移相操作を提供する。また、レーダーセンサでは、複数のシングルエンド伝送線路移相ユニットにおけるそれぞれのシングルエンド信号線Sと第2ペアアース線(G2-1、G2-2)とは、いずれも一体成形された金属線である。各伝送線路移相ユニットは、位相調整回路を利用して、無線周波数信号を選択して異なるセットの伝送線路に沿って伝送することで、移相操作を提供する。
【0050】
無線周波数信号の場合、無線周波数信号の電磁特性と伝送線路移相器における各伝送線路に形成された長い全長によって、伝送線路移相器は、移相総量と移相誤差オフセットとの間が互いに制約されることを形成している。伝送線路移相器に含まれた伝送線路移相ユニットの数が多いほど、移相可能な総位相量が大きくなるとともに、伝送線路が長くなるため、長い伝送線路は、無線周波数信号を伝送するときに発生する電磁放射によって、伝送線路移相器全体に非線形移相偏差が生じやすくなる。
【0051】
したがって、前記伝送線路移相ユニットのうち、2ペアの移相用伝送線路は、縦続接続を形成するときに、各伝送線路移相ユニット間の第1ペア伝送線路間は、物理的に隔離され、それぞれの第2ペア伝送線路によって接続される。
【0052】
ここで、前記各ペアの移相用伝送線路は、上記の例における同じセットの伝送線路内の伝送線路に属する。例えば、シングルエンド伝送線路移相ユニットにおける移相用の第2ペアアース線(G2-1、G2-2)は、1セットの伝送線路(S、G2-1、G2-2)における一部の伝送線路に属する。また、例えば、差動伝送線路移相ユニットにおける移相用の第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)は、1セットの伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)である。
【0053】
いくつかの例では、伝送線路移相ユニットの第1ペア伝送線路は、第2ペア伝送線路間に配置され、即ち第1ペア伝送線路間のピッチが第2ペア伝送線路間のピッチよりも小さい。こうすると、各伝送線路移相ユニット間に同じピッチの小さい第1ペア伝送線路間に物理的隔離が形成され、さらに各伝送線路移相ユニット間に同じピッチの大きな第2ペア伝送線路間に電気的接続が形成される。
【0054】
前記物理的隔離は、電磁的に隔離するためのシールド構造又は伝送線路移相ユニット間の伝送線路間に形成された隙間などを含む。ここで、シールド構造は、伝送線路間に非電流伝送を形成する構造であり、その例として、絶縁媒体を介して伝送線路間に形成された突起や空隙、又は伝送線路に配置された金属スルーホールなどが挙げられ、無線周波数信号が電流を伝送できないようになる。前記隙間は、物理的に接続されていない伝送線路で形成され、プラスチックなどの絶縁媒体や空気を充填することで、非電流伝送を実現することができる。図5aに示すように、差動伝送線路移相ユニット11は、縦続接続されて伝送線路移相器を形成しており、ここで、差動無線周波数信号(Input_P、Input_N)が入力信号であり、差動無線周波数信号(Output_P、Output_N)が移相された出力信号であり、縦続接続された各伝送線路移相ユニット11の各第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)は、全体として金属線を形成し、縦続接続された各伝送線路移相ユニット11の各第1ペア差動伝送線路(Sig1_P、Sig1_N)間は、物理的に切り離され、隙間を形成する。また、図5bに示すように、シングルエンド伝送線路移相ユニット12は、縦続接続されて伝送線路移相器を形成しており、ここで、シングルエンドの無線周波数信号Inputが入力信号であり、シングルエンドの無線周波数信号Outputが移相された出力信号であり、縦続接続された各伝送線路移相ユニット12の各第2ペアアース線(G2-2、G2-1)とシングルエンド信号線Sとが全体として金属線を形成し、縦続接続された各伝送線路移相ユニット12の各第1ペアアース線(G1-2、G1-1)間が物理的に切り離され、隙間を形成する。
【0055】
ピッチが近い異なるペアの伝送線路間に物理的な間隔を形成することを利用して、伝送線路移相器が小さい移相操作時に累積的な電磁干渉を形成することを制限するのに役立つ。これは、伝送線路移相器の移相リニアリティと移相精度を高めるとともに、伝送線路移相器の校正難易度を大幅に低下させる。
【0056】
前記伝送線路移相器は、移相ステッピングの移相を提供できるように、無線周波数回路に単独で配置されることができる。あるいは、伝送線路移相器を他のタイプの移相器と縦続接続し、移相システムを形成する。
【0057】
本願は、前記伝送線路移相器と、各前記伝送線路移相器の位相調整回路に接続された移相コントローラとを含んだ移相システムをさらに提供する。
【0058】
各伝送線路移相ユニットの移相量△φ=φ-φを利用して、360°内で多段移相操作を提供するという目的を達成するために、いくつかの例では、前記移相システムには、(360°/△φ)個の伝送線路移相ユニットが縦続接続されている。集積回路のサイズ制限が高いレーダーチップでは、前記移相システムは、レーダーチップのサイズ制限に適応しにくいだけでなく、無線周波数信号の損耗を増やしている。これにより、本願は、無線周波数インバータと、伝送線路移相器とを含んだ移相システムをさらに提供する。ここで、前記無線周波数インバータは、各伝送線路移相器のいずれとも縦続接続されている。前記無線周波数インバータは、縦続接続された伝送線路移相ユニットの任意の縦続位置に接続できる。例えば、伝送線路移相ユニットをバラバラに制御して複数の位相状態を調整することをできるだけ減らすために、前記無線周波数インバータは、縦続回路の最初段又は最終段に位置している。
【0059】
前記無線周波数インバータは、制御対象逆相又は同相の無線周波数デバイスであり、シングルエンド無線周波数インバータ又は差動無線周波数インバータであってもよい。集積回路のパターンレイアウトでは、無線周波数インバータの回路構成には、層間と素子間の接続によるパターン非対称が生じやすく、シングルエンド及び差動信号の変換と逆移相操作の両方を満たす場合、一部の無線周波数インバータから出力された差動信号又はシングルエンド信号の位相に偏差があるため、移相システム全体の移相精度に影響する。
【0060】
簡素化された回路構成で上記の課題を解決するために、本願は、シングルエンドと差動の変換を実現できる無線周波数インバータを提供する。前記無線周波数インバータは、同じ対称軸で対称的に配置するインダクタ回路と、もう1つの位相調整回路と、を含む。前記対称軸は、無線周波数インバータ回路全体が対称的なレイアウトを形成する回路構成の公称を測定するために使われる。例えば、この対称軸は、実体ではなく、無線周波数インバータを測定するための回路構造を対称的な構造として使うことができる。また、この対称軸がインダクタ回路におけるタップ線及びタップ線に沿って形成された公称である。
【0061】
ここで、前記インダクタ回路は、シングルエンド信号インターフェースと、差動信号インターフェースと、を含む。ここで、シングルエンド信号インターフェース(又は差動信号インターフェース)は、対応する伝送線路移相器又は局部発振回路を縦続接続するために使われる。シングルエンド信号インターフェースは、シングルエンド信号端子SIGと、1ペアアース端子(Gnd_A、Gnd_B)と、を含む。差動信号インターフェースは、1ペア差動信号端子(Sig_P、Sig_N)を含む。前記シングルエンド信号インターフェースと差動信号インターフェースは、いずれも対称軸に沿って対称する方式によって、無線周波数インバータの回路構成に配置されている。
【0062】
前記無線周波数インバータの位相調整回路は、2つの制御対象スイッチを含み、各制御対象スイッチがアース線と前記シングルエンド信号インターフェースのアース端子との間に接続され、前記インダクタ回路が無線周波数信号の位相を同相又は逆相に出力するようになる。言い換えれば、前記インダクタ回路は、入力無線周波数信号を同相又は逆相で移相する。ここで、前記制御対象スイッチは、集積回路のパターンレイアウトにおいて対称軸に沿って対称する。上記の無線周波数インバータは、パターンレイアウト対称の回路構成を有しているため、その逆相と同相は、いずれもより小さい位相誤差を備えている。
【0063】
このゆえに、インダクタ回路は、この対称軸を中心に対称的に配置された回路構成であり、シングルエンド信号インターフェースを提供する第1インダクタと、差動信号インターフェースを提供する第2インダクタと、を含む。第1インダクタと第2インダクタは、誘導結合によってシングルエンド無線周波数信号と差動無線周波数信号との間の変換を提供する。ここで、軸対称の回路レイアウトにおいて、前記第1インダクタと第2インダクタは、集積回路の同じ金属層又は異なる金属層に配置されてもよく、あるいは同じ配線形状又は異なる配線形状を有してもよい。ここで、前記配線形状は、例えば、円形、楕円形、矩形又は多角形(例えば、五角形や六角形など)などが挙げられる。
【0064】
図6に示すように、前記インダクタ回路は、前記シングルエンド信号インターフェースにおける信号端子312に接続されるタップ線路311に沿って軸対称な第1インダクタ31と、前記第1インダクタ31と結合し、前記タップ線311に沿って軸対称で、前記差動信号インターフェース(321、322)に接続される第2インダクタ32と、を含む。ここで、第1インダクタ31の1ペアアース端子(313、314)には、無線周波数インバータの位相調節回路における1ペア制御対象スイッチ(SW_P、SW_N)がそれぞれ接続されており、このうち、1ペアアース端子(313、314)は、タップ線路311(即ち対称軸)に沿って対称的である。第1インダクタのシングルエンド信号インターフェースと第2インダクタの差動信号インターフェースには、それぞれアース線(33、33’)が配置されている。ここで、シングルエンド信号端子側のアース線は、対称軸に沿って対称的であり、この1ペア制御対象スイッチ(SW_P、SW_N)が軸対称な回路レイアウト方式でアース端子(313、314)とアース線33の間に接続されるようになる。差動信号インターフェース側のアース線33’も対称軸に沿って対称的であってもよい。加工の便宜上、ここで、図6に示した第1インダクタ31と第2インダクタ32は、異なる金属層に位置してもよいし、同じ金属層に位置し且つ重畳箇所に絶縁設置されてもよい。
【0065】
シングルエンド信号インターフェースが無線周波数信号入力端子であり、差動信号インターフェースが無線周波数信号出力端子であることを例として、移相制御信号の制御の下で、制御対象スイッチSW_Pがオフになり、制御対象スイッチSW_Nがオンになると、図7aに示すように、無線周波数インバータは、シングルエンド信号インターフェースの入力シングルエンド無線周波数信号に対して0°の移相操作を行い、同相の無線周波数信号を出力する。制御対象スイッチSW_Pがオンになり、制御対象スイッチSW_Nがオフになると、図7bに示すように、無線周波数インバータは、シングルエンド信号インターフェースの入力シングルエンド無線周波数信号に対して180°の移相操作を行い、逆相の無線周波数信号を出力する。
【0066】
差動信号インターフェースが無線周波数信号入力端子であり、シングルエンド信号インターフェースが無線周波数信号出力端子であることを例として、移相制御信号の制御の下で、制御対象スイッチSW_Pがオフになり、制御対象スイッチSW_Nがオンになると、図7cに示すように、無線周波数インバータは、差動信号インターフェースの入力無線周波数信号に対して0°の移相操作を行い、シングルエンド無線周波数信号を出力する。制御対象スイッチSW_Pがオンになり、制御対象スイッチSW_Nがオフになると、図7dに示すように、無線周波数インバータは、差動信号インターフェースの入力無線周波数信号に対して180°の移相操作を行い、図7cに示した位相と逆のシングルエンド無線周波数信号を出力する。
【0067】
図8aに示す移相システムを例として、無線周波数インバータ42のシングルエンド信号インターフェースにレーダーセンサ内の局部発振回路(図示せず)が接続され、無線周波数インバータ42の差動信号インターフェースに縦続接続された複数の差動伝送線路移相ユニット41が接続されている。ここで、隣接する伝送線路移相ユニット41におけるピッチの近い各第1ペア差動信号線間は、物理的に隔離され、各第2ペア差動信号線間は、電気的に接続され、且つ無線周波数インバータ42の差動信号インターフェースの差動伝送線路(SIG_P、SIG_N)を接続し、さらに、伝送線路移相ユニット41のアース線は、無線周波数インバータ42の差動信号インターフェースにおけるアース線GNDに接続されている。
【0068】
図8bに示す移相システムを例として、無線周波数インバータ42の差動信号インターフェースにレーダーセンサ内の局部発振回路(図示せず)が接続され、無線周波数インバータ42のシングルエンド信号インターフェースに縦続接続された複数のシングルエンド伝送線路移相ユニット43が接続されている。ここで、隣接する伝送線路移相ユニット43におけるピッチの近い各第1ペアアース線間は、物理的に隔離され、各第2ペアアース線間は、電気的に接続され、且つ無線周波数インバータ42のアース線に接続され、縦続接続された各伝送線路移相ユニット43の各シングルエンド信号線は、無線周波数インバータ42のシングルエンド信号インターフェースにおけるシングルエンド信号線SIGに接続され、さらに、伝送線路移相ユニット43のアース線は、無線周波数インバータ42の差動信号インターフェースにおけるアース線GNDに接続されている。
【0069】
図8a及び図8bに示す例から分かるように、無線周波数インバータと伝送線路移送器とを含んだ移相システムでは、伝送線路移相器は、それぞれの移相制御信号の制御下で、0-180°の範囲内で単位移相をステッピングとする複数回の移相操作を行うことができ、無線周波数インバータは、移相制御信号の制御下で、180°の逆相移相操作を行うことができる。これにより、移相システム全体は、360°の移相範囲内で高精度な移相操作を行うことができ、移相器システムの集積回路における全体サイズを効果的に縮小している。
【0070】
上記の各例に示した無線周波数インバータと伝送線路移相ユニットは、いずれも受動デバイスであるため、動作時に、外部環境、電圧などの変化の影響を受けにくい。これにより、その移相誤差は、IQ移相器などの能動デバイスよりも小さくなる。しかし、伝送線路移相ユニットを縦続接続すると、その累積誤差が現れるようになる。したがって、本願の移相システムは、校正することができる。ここで、前記移相システムは、伝送線路移相器を含んでもよいし、縦続接続された無線周波数インバータと伝送線路移相器とを含んでもよい。
【0071】
移相システムの電磁放射を考慮した上で、前記無線周波数インバータの信号インターフェースは、伝送線路移相ユニットの第2セット伝送線路に接続され、且つ第1セット伝送線路における少なくとも一部の伝送線路から物理的に隔離している。
【0072】
具体的には、前記差動信号インターフェースは、前記差動伝送線路移相器における第2ペア差動伝送線路に接続され、前記差動信号インターフェースは、前記差動伝送線路移相器における第1ペア差動伝送線路から物理的に隔離している。図8aに示すように、無線周波数インバータの差動信号インターフェースにおける差動信号端子(SIG_P、SIG_N)は、差動伝送線路移相器の中で外側に配置された第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)に接続され、内側に配置された第1ペア差動伝送線路(Sig1_P、Sig1_N)は、差動信号インターフェースから物理的に隔離している。
【0073】
前記シングルエンド信号インターフェースは、前記シングルエンド伝送線路移相器における1セット伝送線路の1ペアアース線に接続され、前記シングルエンド信号インターフェースは、前記シングルエンド伝送線路移相器における他のセットの伝送線路の1ペアアース線から物理的に隔離している。図8bに示すように、無線周波数インバータのシングルエンド信号インターフェースにおける信号端子SIGとアース線端子GNDは、シングルエンド伝送線路移相器におけるシングルエンド信号線Sと外側に配置された1ペアアース線(G2-1、G2-2)に接続され、内側に配置された他の1ペアアース線(G1-1、G1-2)は、シングルエンド信号インターフェースから物理的に隔離している。
【0074】
伝送線路移相器における各伝送線路移相ユニットのインダクタンス及び/又はキャパシタンス調整回路は、校正メカニズムをさらに含む。エンジニアリング誤差(例えば、設計偏差、半導体加工偏差、温度変化、電圧変化、工程角変化など)の影響によって、伝送線路移相ユニット(伝送線路と制御対象回路を含んだ)のキャパシタンスパラメーターC、CとインダクタンスパラメーターL、Lは、目標移相量から一定の偏差があるため、第1、第2位相状態の移相関数

には、偏差が生じる。最終的に、移相器の移相量Δφ=φ-φと目標移相量との間に偏差がある。これらの偏差を修正するために、伝送路移相ユニットにとって、校正メカニズムが必要である。
【0075】
伝送線路移相器の校正メカニズムの原理は、キャパシタンス及び/又はインダクタンス調整回路の性能を調整することで、回路の電気的パラメーターC、C、L、Lの一部又は全部を一定範囲内で調整し、伝送線路移相ユニットの実際の移相量Δφを設計目標移相量に調整することである。
【0076】
伝送線路移相器における各伝送線路移相ユニットは、伝送線路移相器が提供できる各移相量の移相誤差を補償するために、対応する少なくとも1パスの移相制御信号によって制御される。したがって、各伝送線路移相ユニットの入力移相制御信号は、対応する第1位相又は第2位相の位相校正情報に基づいて決定される。ここで、この校正位相情報は、校正された移相システムが校正後のある非校正状態(例えば動作状態)で出力される無線周波数信号の実際移相量であり、校正前の移相量に比べて、プリセットされた移相量に近い情報である。この校正位相情報は、移相システム(又はその中の伝送線路移相器)における実際移相量と校正前の移相量との間の位相偏差又はこの位相偏差に基づいて決定された補償情報が挙げられる。
【0077】
ここで、前記補償情報は、伝送線路移相器を複数回テストすることによって設定された校正ポリシー等に基づいて決定される。ここで、この校正ポリシーには、伝送線路移相器(又はシングル伝送線路移相ユニット)の異なる移相量での移相変化による移相への影響、温度の伝送線路移相器(又はシングル伝送線路移相ユニット)の移相への影響、伝送線路移相器(又はシングル伝送線路移相ユニット)のシステム誤差による移相への影響などの少なくとも1つが含まれるが、これらに限定されるものではない。前記補償情報は、例えば、決定された位相偏差に基づいて移相位相に対応する補償電気的パラメーターを決定することを含む。補償電気的パラメーターは、補償電圧、補償デューティ又は補償電流などを含む。前記移相制御信号に含まれる調整可能な電気的パラメーターは、補償される電気的パラメーターに対応する。例えば、伝送線路移相器(又はシングル伝送線路移相ユニット)の校正回路は、プリセットされた総移相量の最小値又は最大値又は単位移相などに基づいて、各伝送線路移相ユニットに対応する補償情報をそれぞれ算出し、記憶する。前記補償情報は、さらに、例えば、任意の2つの移相量と校正回路によって検出された位相偏差とに基づいて決定された当該2つの移相量間の任意の他の移相量と、対応する他の補償情報と、を含む。
【0078】
いくつかの例では、加工難易度、移相安定性、移相精度などの要因を統合して、伝送線路移相器に縦続接続された各伝送線路移相ユニットは、いずれも第1位相状態と、第2位相状態と、を含む。これにより、伝送線路移相器は、加工が容易な制御対象デバイスであるだけでなく、移相の非線形偏差を効果的に減らすことができる。したがって、伝送線路移相器の校正回路は、より便利で迅速に校正操作を行うことができる。
【0079】
伝送線路移相器を搭載した集積回路の校正ニーズに関連して、伝送線路移相器を含んだレーダーセンサを例として、レーダーセンサには、校正状態と動作状態が含まれる。ここで、校正状態において、レーダーセンサは、伝送線路移相器の校正を含めた少なくとも1つの回路の校正操作を行う。動作状態において、レーダーセンサは、電磁波を送受信し、電磁波の有効区間に基づいて信号処理を行うことを含めた少なくとも1つの信号測定処理操作を行う。ここで、いくつかの例では、校正状態と動作状態は、時分割切り替えの異なる状態である。他のいくつかの例では、校正にかかる時間と信号リソースを低減するために、この校正回路は、動作状態を含んだ期間内に動作する。
【0080】
校正時に、伝送線路移相器は、任意の全体移相量Φ(例えば移相量最小値)によって入力無線周波数信号RFに対して移相操作を行い、移相を行った無線周波数信号RF_1を出力し、校正回路は、この移相量Φに対応する無線周波数信号RF_1を収集し、無線周波数信号RF_1の実際移相量Φとプリセットされた移相量Φとの位相偏差△Φを算出する。移相システムは、他の全体移相量Φ(例えば移相量最大値)によって入力無線周波数信号RFに対して移相操作を行い、移相を行った無線周波数信号RF_2を出力し、校正回路は、この移相量Φに対応する無線周波数信号RF_2を収集し、無線周波数信号RF_2の実際移相量Φとプリセットされた移相量Φとの位相偏差△Φを計算する。校正テストに関与した縦続接続の伝送線路移相ユニットの数と各伝送線路移相ユニットの移相誤差が線形に累積するという特徴に基づいて、校正回路は、測定された2つの位相偏差をそれぞれ均等分配することで、各伝送線路移相ユニットがそれぞれ第1位相と第2位相に対応するそれぞれの位相偏差を得ることができる。
【0081】
レーダーセンサ、特に車載用レーダーセンサでは、レーダーセンサが提供する測定情報の高信頼性を確保するために、レーダーセンサには自己診断システム(BIST)が含まれており、上記の校正回路は、この自己診断システムに配置されることができる。校正状態で伝送線路移相器の位相偏差を検出するために、この位相偏差が校正可能範囲内にあれば、この校正回路を利用して位相校正情報を決定して、記憶する。
【0082】
IQ移相器が1つずつの移相量を校正する方式と異なり、伝送線路移相器は、縦続接続された伝送線路移相ユニットを採用し、且つ各伝送線路移相ユニットが良好な移相リニアリティを備えているため、校正回路は、伝送線路移相器における各伝送線路移相ユニットがいずれも第1位相状態又は第2位相状態にあることを統一的に制御することで、移相システムによる無線周波数信号移相の位相偏差を検出し、各伝送線路移相ユニットの位相偏差を得ることができ、ひいては位相校正情報を得ることができる。
【0083】
したがって、図11に示すように、本願で提供された移相システムは、校正回路と、伝送線路移相器と、を含む。ここで、校正回路の具体的な校正ステップは、下記のとおりである。図12aに示すように、伝送線路移相器が縦続接続されたN個の伝送線路移相ユニット(1#、2#、…、N#)を含むとする。すべての伝送線路移相ユニットをいずれも校正前の第1位相状態に配置し、図12aに示すように、この伝送線路移相器の出力端子(即ち図中のoutput)を利用して、校正回路が出力信号(ある同一周波数基準信号に対する)の位相をテストし、Φと定義し、図12bに示すように、すべての伝送線路移相ユニットを校正前の第2位相状態に配置し、校正回路を利用して伝送線路移相器の出力信号の位相をテストし、Φと定義する。そうすると、伝送線路移相器全体の校正前の移相量は、△Φ=Φ-Φである。伝送線路移相器全体の移相量は、各伝送線路移相ユニットの共通移相から由来しており、且つ各伝送線路移相ユニットの移相量が全く同じである。したがって、各伝送線路移相ユニットの校正前の移相量は、△φ=φ-φ=△Φ/Nであり、即ち移相ステッピングである。校正回路によって、伝送線路移相器全体の校正後の移相量を決定し、この校正後の全体移相量を均等分配し、伝送線路移相ユニットの校正後の移相ステッピングを得ることができ、さらに伝送線路移相ユニットの校正後の移相ステッピングを目標値(例えば5.625°)に校正することができる。
【0084】
いくつかの例では、校正回路は、プリセットされた電気的パラメーターと移相量とのマッピング関係によって、得られた各伝送線路移相ユニットに対応するそれぞれの目標値を校正後の第1位相と第2位相の移相量に対応する位相校正情報に変換してメモリに記憶する。移相システムは、動作時に、一定の電気的パラメーターを第1位相状態とし、前記位相校正情報に基づいて校正後の第2位相状態に対応する電気的パラメーターを算出する。
【0085】
他のいくつかの例では、校正回路は、異なる位相状態における校正前の全体位相偏差Φ、Φを統合して、各伝送線路移相ユニットのいずれかの位相状態における校正前の位相偏差Φ/N、Φ/Nを決定する。この位相偏差は、伝送線路移相ユニットのいずれかの位相状態に対応する移相量の移相誤差を反映する。プリセットされた電気的パラメーターと挿入位相との間のマッピング関係によって、各伝送線路移相ユニットの位相偏差を位相校正情報に変換し、メモリに記憶する。移相システムは、動作時に、異なる移相状態に対応する各位相校正情報によって、対応する移相制御信号を生じさせる。
【0086】
これにより、校正回路は、アナログ回路と、デジタル回路と、を含み、ここで、アナログ回路が無線周波数信号をベースバンド信号に変換するための位相収集回路を含み、デジタル回路がベースバンド信号の位相偏差を検出するための位相校正回路を含む。
【0087】
ここで、前記位相収集回路は、移相システムにおけるM個の伝送線路移相ユニットから出力された無線周波数信号を収集し、収集された無線周波数収集信号をダウンコンバート処理することにより、無線周波数信号中の校正前の実際位相を持つベースバンド信号を得る。位相校正回路におけるアナログデジタル変換器を利用して、ベースバンド信号をベースバンドデジタル信号に変換し、周波数領域に記載された実際位相とプリセットされたM倍の第1位相(又はM倍の第2位相)に対応する移相位相との間の偏差を利用して、各伝送線路移相ユニットの校正後の第1位相(又は第2位相)を得る。ここで、1≦M≦Nであり、Nが移相システムにおける伝送線路移相ユニットの総数である。位相校正回路は、少なくとも2回検出された実際位相を利用して、各伝送線路移相ユニットの位相校正情報を計算し、メモリに記憶する。ここで、前記計算は、位相偏差の均等分配計算及び位相と電気的パラメーターとの間の変換計算などを含む。
【0088】
無線周波数信号の実際移相量を抽出するために、いくつかの例では、校正回路は、校正用の無線周波数信号の初期位相、各位相状態での移相値又は移相量などのパラメーターをプリセットし、それに基づいて伝送線路移相器を対応する移相操作を行うように制御し、実際移相量を得ることができる。他のいくつかの例では、位相収集回路は、無線周波数収集回路と、変調回路と、周波数変換回路と、を含む。ここで、前記無線周波数収集回路は、前記移相システムの出力端子に結合され、移相システムから出力された無線周波数信号を収集して無線周波数サンプリング信号を出力することに用いられる。この無線周波数収集回路は、シングルエンド結合器であってもよいし、直交結合器であってもよい。
【0089】
前記変調回路は、前記無線周波数収集回路に結合され、第1ベースバンド信号を入力し、前記第1ベースバンド信号を利用して前記無線周波数サンプリング信号を変調して前記実際位相を含んだ変調信号を出力するために使われる。この第1ベースバンド信号は、IF信号であってもよく、その初期位相が任意の位相であってもよい。変調回路は、2パスの信号を変調することにより、得られた変調信号が前記実際位相を持つようになる。前記変調回路は、シングルエンド変調回路又は直交変調回路であってもよい。
【0090】
前記周波数変換回路は、前記変調回路に結合され、局部発振信号を入力し、前記局部発振信号を利用して前記変調信号をダウンコンバート処理し、実際位相を含んだ第2ベースバンド信号を生成するために使われる。ここで、局部発振信号は、移相システム入力無線周波数信号である。前記周波数変換回路は、ダウンコンバート操作を行うことにより、実際位相を含んだ第2ベースバンド信号を得る。この第2ベースバンド信号の周波数は、第1ベースバンド信号の周波数とほぼ同じである。これにより、校正前に、位相収集回路は、第1ベースバンド信号と局部発振信号を利用して、実際移相量付きの無線周波数信号を実際位相付きのベースバンド信号(即ち第2ベースバンド信号)に変換する。前記周波数変換回路は、シングルエンド周波数変換回路又は直交周波数変換回路であってもよい。
【0091】
位相校正回路は、ADCを含んだデジタル回路であり、第2ベースバンド信号を第2ベースバンドデジタル信号に変換し、第2ベースバンドデジタル信号を周波数領域に変換し、第2ベースバンドデジタル信号の実際位相を計算する。この実際位相が局部発振信号の初期位相、第1ベースバンド信号の初期位相及び伝送線路移相器の実際位相という3つの和を含む。プリセットされた各初期位相値を利用してデータ演算を行い、位相校正回路は、伝送線路移相器の校正後の実際位相を抽出することができる。
【0092】
いくつかの例では、前記位相収集回路は、上記の各回路モジュールの回路組み合わせによって、直交信号を含んだ第2ベースバンド信号を出力する。これにより、位相校正回路が局部発振信号と第1ベースバンド信号における初期位相を取り除き、校正精度を向上させるのに役立つ。上記の各初期位相値は、第1ベースバンド信号又は局部発振信号に対してそれぞれの位相検出を行うことで得ることもできるため、校正回路の動作による校正偏差をさらに下げることができる。
【0093】
移相システムが動作時に校正後の第1位相の整数倍(又は第2位相の整数倍)でより正確に移相操作を行うことができるように、移相システムにおける移相制御信号は、位相校正情報を反映している。
【0094】
前記移相システムは、移相コントローラをさらに含む。移相コントローラは、移相システムにおける各位相調整回路に接続され、移相指令を移相制御信号に変換する。校正回路を含んだシステムでは、この移相コントローラは、移相指令に基づいて予め記憶された位相校正情報を読み取り、対応する移相制御信号を生成する。ここで、前記位相校正情報は、前記移相器を校正することによって決定されるものである。
【0095】
前記移相コントローラは、例えばMCU、FPGAまたは専用ハードウェアプロセッサーなどの校正回路でのデジタルシグナルプロセッサーと共用されてもよいし、個別に配置されてもよい。例えば、移相コントローラは、プロセッサーとコーデックなどを含む。前記移相コントローラは、前記デジタル信号プロセッサーとともに、移相システムにおける各位相校正情報を記憶するためのメモリをメインテナンスする。例えば、移相コントローラは、入力移相制御指令における移相情報に基づいて、校正後の第1位相によって移相する伝送線路移相ユニットと、校正後の第2位相によって移相する伝送線路移相ユニットを決定し、各伝送線路移相ユニットを制御するための符号化信号を生成し、コーデックによって各伝送線路移相制御信号に変換して各伝送線路移相ユニットの位相調整回路に出力する。
【0096】
この移相制御指令は、前記移相コントローラを制御する上位システムから由来してもよい。前記上位システムは、移相システムが位置する集積回路(例えばレーダーチップ)で運転するソフトウェアシステム及び/又はハードウェアシステム、又は前記集積回路のピンに接続された外部システムである。この上位システムのハードウェアシステムは、プロセッサーなどの移相コントローラと共用したり、個別に配置したりすることができる。ソフトウェアシステムは、ハードウェアシステムが時系列に実行できるプログラムなどを含む。前記移相制御指令は、例えば、レベル信号又はプログラム指令である。
【0097】
無線周波数インバータと伝送線路移相器を含んだ移相システムの場合、移相コントローラは、移相制御指令に基づいて無線周波数インバータにおける位相調整回路に移相制御信号を出力する。これにより、360°の範囲内で単位移相を移相ステッピングとする複数種類の校正可能な移相操作を実現できる。
【0098】
例えば、図7aと図7bに示すように、移相インバータのシングルエンド信号インターフェースは、入力インターフェースであり、差動信号インターフェースは、出力インターフェースであり、移相コントローラが無線周波数インバータの位相調整回路におけるスイッチ管SW_Pをオフに、スイッチ管SW_Nをオンに制御した場合、無線周波数インバータは、同相の無線周波数信号を出力する。移相コントローラが無線周波数インバータの位相調整回路におけるスイッチ管SW_Pをオンに、スイッチ管SW_Nをオフに制御した場合、無線周波数インバータは、逆相の無線周波数信号を出力する。また、図7c、7dに示すように、移相インバータの差動信号インターフェースは、入力インターフェースであり、シングルエンド信号インターフェースは、出力インターフェースであり、移相コントローラが無線周波数インバータの位相調整回路におけるスイッチ管SW_Pをオフに、スイッチ管SW_Nをオンに制御した場合、無線周波数インバータは、同相の差動無線周波数信号を出力する。移相コントローラが無線周波数インバータの位相調整回路におけるスイッチ管SW_Pをオンに、スイッチ管SW_Nをオフに制御した場合、無線周波数インバータは、逆相の差動無線周波数信号を出力する。
【0099】
それに応じて、伝送線路移相器における各位相調整回路は、移相制御信号を調整するための可変デバイスを含み、伝送線路移相器が校正された移相によって移相操作を行うことを実現する。例えば、キャパシタンス調整回路は、スイッチキャパシタンスアレイ、可変キャパシタンスダイオード又は可変キャパシタなどのキャパシタンス調整可能なデバイスを含む。さらに、インダクタンス調整回路は、スイッチ管、可変抵抗又は可変インダクタンスなどのインダクタンス調整可能なデバイス(又は抵抗調整可能なデバイス)を含んでいる。
【0100】
なお、キャパシタンス調整回路とインダクタンス調整回路には、第1位相(又は第2位相)の状態で伝送線路移相器の全体キャパシタンスパラメーターとインダクタンスパラメーターが移相とインピーダンス整合のニーズを満たすように、制御対象接続回路(又は制御対象非接続回路)の固定デバイス(例えば固定キャパシタ又は固定抵抗など)を含んでもよい。
【0101】
伝送線路移相器が縦続接続されたシングルエンド伝送線路移相ユニットを含むことを例として、図9aに示すように、前記伝送線路移相ユニットは、シングルエンド信号線Sigと、第1ペアアース線Gnd1と、第2ペアアース線Gnd2と、位相調整回路と、第2ブリッジ53と、を含む。ここで、位相調整回路は、キャパシタンス調整回路などを含む。ここで、キャパシタンス調整回路は、可変キャパシタンスダイオードDと、可変電源Sと、制御対象キャパシタンス回路と、を含む。ここで、制御対象キャパシタンス回路は、スイッチ管sw_cと、キャパシタcと、を含む。ここで、キャパシタCとスイッチ管sw_cは、信号線Sigと第2ブリッジ53との間に直列接続され、キャパシタCとスイッチ管sw_cの直列回路と並列接続されている。可変電源Sは、入力移相制御信号に基づいて調整可能な電圧(又は電流)を出力し、可変キャパシタンスダイオードDは、伝送線路移相ユニットのキャパシタンスパラメーターが対応する第1位相(又は第2位相)に必要なキャパシタンスパラメーターに適合するように、調整可能な電圧(又は電流)の制御の下でキャパシタンスを調整する。インダクタンス調整回路は、第1ペアアース線における各アース線と第2ブリッジ53との間に接続された各スイッチ管sw_lを含む。ここで、各スイッチ管sw_lは、入力移相制御信号のオン/オフによって、無線周波数信号の第1ペアアース線又は第2ペアアース線での伝送を切り替え、スイッチ管sw_lは、スイッチング電圧の制御の下で、伝送線路移相ユニットのインダクタンスパラメーターが対応する第1位相又は第2位相に必要なインダクタンスパラメーターに適合するように、第1ペアアース線又は第2ペアアース線が形成したインダクタンスパラメーターを調整する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第1位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_cがオフになり、各スイッチ管sw_lがオンになり、可変電源が可変キャパシタンスダイオードを調整して第1キャパシタンス値を提供する。これにより、シングルエンドの伝送線路移相ユニットにおける第1ペアアース線Gnd1と信号線Sigとが無線周波数信号を伝送する伝送経路を形成し、可変キャパシタンスダイオードが第1位相を校正するためのキャパシタンス値を提供する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第2位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_cがオンになり、スイッチ管sw_lがオフになり、可変電源が可変キャパシタンスダイオードを調整して第2キャパシタンス値を提供する。このゆえに、シングルエンド伝送線路移相ユニットにおける第2ペアアース線Gnd2と信号線Sigが無線周波数信号を伝送する伝送経路を形成し、可変キャパシタンスダイオードが第2位相を校正するための補償キャパシタンス値を提供する。これにより、伝送線路移相ユニットは、異なる位相状態で、伝送線路移相ユニットが位置する無線周波数伝送リンクのインピーダンス整合に同時に適合することを実現できる。
【0102】
上記の図9aに示す校正可能な伝送線路移相ユニットは、キャパシタンスパラメーターを調整することで各移相量を校正する伝送線路移相ユニットである。図9aとは異なり、図9bに示す伝送線路移相ユニットは、インダクタンスパラメーターを調整することで各移相量を校正する伝送線路移相ユニットである。図9bに示すように、シングルエンド伝送線路移相ユニットは、シングルエンド信号線Sigと、第1ペアアース線Gnd1と、第2ペアアース線Gnd2と、位相調整回路と、第2ブリッジ53’と、を含む。ここで、位相調整回路は、インダクタンス調整回路などを含む。ここで、キャパシタンス調整回路は、スイッチ管sw_cとsw_sと、キャパシタCと、を含む。ここで、キャパシタCとスイッチ管sw_cは、信号線Sigと第2ブリッジ53’との間に直列接続され、スイッチ管sw_sは、信号線Sigと第2ブリッジ53’との間に接続され、キャパシタCとスイッチ管sw_cとの直列回路と並列接続されている。インダクタンス調整回路は、第1ペアアース線Gnd1における各アース線と第2ブリッジ53’との間に接続された各可変抵抗Ad_Rを含む。ここで、各可変抵抗Ad_Rは、無線周波数信号の第1ペアアース線Gnd1と第2ペアアース線Gnd2における伝送を分流するため、入力移相制御信号Vctrlに応じて抵抗値を調整する。言い換えれば、可変抵抗Ad_Rは、伝送線路移相ユニットのインダクタンスパラメーターが対応する第1位相又は第2位相に必要なインダクタンスパラメーターに適合するように、調整可能な電圧又は電流の制御の下で、第1 ペアアース線Gnd1と第2ペアアース線Gnd2によって形成されるインダクタンスパラメーターを調整する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第1位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_sがオンになり、スイッチ管sw_cがオフになり、シングルエンド伝送線路移相ユニットにおける第1ペアアース線Gnd1と信号線Sigが無線周波数信号を伝送するための伝送経路を形成し、可変抵抗Ad_Rから接続された第1抵抗値によって、第2ペアアース線Gnd2と信号線Sigで形成された等価インダクタンスが第1位相を校正するためのインダクタンス値を提供する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第2位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_sがオフになり、スイッチ管sw_cがオンになることで、シングルエンド伝送線路移相ユニットにおける第2ペアアース線Gnd2と信号線Sigとが無線周波数信号を伝送するための伝送経路を形成し、可変抵抗Ad_Rから接続された第2抵抗値によって、第1ペアアース線Gnd1で形成された等価インダクタンスが第2位相を校正するためのインダクタンス値を提供する。
【0103】
伝送線路移相ユニットが差動伝送線路移相ユニットであることを例として、図10aに示すように、前記伝送線路移相ユニットは、第1ペア差動伝送線路(Sig1_P、Sig1_N)と、第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)と、第2位相調整回路と、第1ブリッジ(631、632)と、を含む。ここで、第2位相調整回路は、キャパシタンス調整回路とインダクタンス調整回路などを含む。ここで、キャパシタンス調整回路は、可変キャパシタンスダイオードD2と、可変電源S2と、制御対象キャパシタンス回路と、を含む。ここで、制御対象キャパシタンス回路は、スイッチ管sw_capと、キャパシタcapと、を含む。ここで、直列接続されたコンデンサcapとスイッチ管sw_capは、第1ブリッジ631を介して第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)の間に接続される。可変キャパシタンスダイオードD2と可変電源S2も、第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)の間に接続される。ここで、可変電源S2は、入力移相制御信号に基づいて調整可能な電圧又は電流を出力し、可変キャパシタンスダイオードD2は、伝送線路移相ユニットのキャパシタンスパラメーターが対応する第1位相又は第2位相に必要なキャパシタンスパラメーターに適合するように、調整可能な電圧又は電流の制御の下で、キャパシタンスを調整する。インダクタンス調整回路は、第2差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)における各差動伝送線路と第1ブリッジ632との間に接続された各スイッチ管sw_sigを含む。ここで、各スイッチ管sw_sigは、入力された移相制御信号によってオン又はオフになり、無線周波数信号の第1ペアアース線又は第2ペアアース線での伝送を切り替え、スイッチ管sw_sigは、伝送線路移相ユニットのインダクタンスパラメーターが対応する第1位相又は第2位相に必要なインダクタンスパラメーターに適合するように、スイッチング電圧の制御の下で、第1ペア差動伝送線路又は第2ペア差動伝送線路が形成したインダクタンスパラメーターを調整する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第1位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_capがオフになり、各スイッチ管sw_sigがオンになり、可変電源が可変キャパシタンスダイオードを調整して、第1キャパシタンス値を提供する。したがって、差動伝送線路移相ユニットにおける第1ペア差動伝送線路が無線周波数信号を伝送するための伝送線路を形成し、可変キャパシタンスダイオードが第1位相を校正するためのキャパシタンス値を提供する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第2位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_capがオンになり、スイッチ管sw_sigがオフになり、可変電源が可変キャパシタンスダイオードを調整して第2キャパシタンス値を提供する。これにより、差動伝送線路移相ユニットにおける第2ペア差動伝送線路が無線周波数信号を伝送するための伝送線路を形成し、可変キャパシタンスダイオードが第2位相を校正するためのキャパシタンス値を提供する。
【0104】
上記の図10aに示す校正可能な伝送線路移相ユニットは、キャパシタンスパラメーターを調整することで各移相量を校正する伝送線路移相ユニットである。図10aとは異なり、図10bに示す伝送線路移相ユニットは、インダクタンスパラメーターを調整することで各移相量を校正する伝送線路移相ユニットである。図10bに示すように、差動伝送線路移相ユニットは、第1ペア差動伝送線路(Sig1_P、Sig1_N)と、第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)と、位相調整回路と、第1ブリッジ(631’、632’)と、を含む。ここで、位相調整回路は、キャパシタンス調整回路とインダクタンス調整回路などを含む。ここで、キャパシタンス調整回路は、スイッチ管sw_capと、容量capと、を含む。ここで、直列接続されたキャパシタcapとスイッチ管sw_capは、第1ブリッジを介して第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)に接続される。インダクタンス調整回路は、第2ペア差動伝送線路における各伝送線路(Sig2_P又はSig2_N)と第1ブリッジ631’との間に接続された各可変抵抗R’を含む。ここで、各可変抵抗R’は、入力された移相制御信号Vctrlによって抵抗を調整し、無線周波数信号の第1ペア差動伝送線路と第2ペア差動伝送線路における伝送を分流する。言い換えれば、可変抵抗R’は、伝送線路移相ユニットのインダクタンスパラメーターが対応する第1位相又は第2位相に必要なインダクタンスパラメーターに適合するように、調整可能な電圧又は電流の制御の下で、第1ペア差動伝送線路と第2ペア差動伝送線路で形成されたインダクタンスパラメーターを調整する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第1位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_capがオフになり、差動伝送線路移相ユニットにおける第1ペア差動伝送線路(Sig1_P、Sig1_N)が無線周波数信号を伝送するための伝送線路を形成し、可変抵抗R’から接続された第1抵抗値によって第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig1_N)が第2ペア差動伝送線路における無線周波数信号を分流し、形成された等価インダクタンスが第1位相を校正するためのインダクタンス値を提供する。各パス移相制御信号を入力することは、伝送線路移相ユニットが第2位相で移相操作を行うことを示す場合、スイッチ管sw_capがオンになり、差動伝送線路移相ユニットにおける第2ペア差動伝送線路(Sig2_P、Sig2_N)が無線周波数信号を伝送するための伝送経路を形成し、可変抵抗R’で接続された第2抵抗値によって第1ペア差動伝送線路(Sig1_P、Sig2_N)が第2ペア差動伝送線路における無線周波数信号を分流し、形成された等価インダクタンスが第1位相を校正するためのインダクタンス値を提供する。
【0105】
なお、上記のいずれかの伝送線路移相ユニットは、例示的なものだけであり、校正可能な伝送線路移相ユニットでは、インダクタンスとキャパシタンスの両方を調整することで、対応する位相状態を校正することもできる。インダクタンスパラメーター及び/又はキャパシタンスパラメーターなどを調整する方式によって、伝送線路移相ユニットが異なる位相状態で、伝送線路移相ユニットが位置する無線周波数伝送リンクのインピーダンス整合に同時に適合することを実現できる。ここで、インピーダンス整合は、伝送線路移相ユニットのキャパシタンスパラメーターとインダクタンスパラメーターの比の安定さを示すことができる。
【0106】
また、上記の各例から分かるように、キャパシタンス調整回路には、さらに校正するための独立したキャパシタンス調整可能な回路が含まれてもよい。インダクタンス調整回路には、さらに、校正するための独立したインダクタンス調整可能な回路が含まれてもよい。また、キャパシタンス調整回路におけるキャパシタンスパラメーター校正用回路は、可変キャパシタンスダイオードに限らず、スイッチキャパシタンスアレイ、直列接続されたキャパシタ及びスイッチ管などの制御対象回路であってもよい。例えば、キャパシタンス調整回路は、固定キャパシタと可変キャパシタンスダイオードを組み合わせた可変キャパシタンス回路の代わりに、符号化された移相制御信号を利用してスイッチキャパシタンスアレイを調整し、キャパシタンス調整回路の複雑さなどを簡素化してもよい。類似的に、インダクタンス調整回路におけるインダクタンスパラメーター校正用回路は、スイッチ管と可変抵抗に限らず、スイッチング抵抗アレイなどの制御対象回路であってもよい。前記キャパシタンス調整回路及び/又はインダクタンス調整回路は、伝送線路移相ユニットの集積回路における回路集積ニーズ又は他の回路設計ニーズに適合するように、校正された各種位相状態間のインダクタンス/キャパシタンスの変化を総合的に考慮して、校正と移相を両立させた位相調整回路を提供してもよい。
【0107】
また、前記キャパシタンス調整回路及び/又はインダクタンス調整回路の全体又はその一部の制御対象回路は、異なる位相状態におけるキャパシタンスパラメーター及び/又はインダクタンスパラメーターを調整することによってインピーダンス整合と移相の目的を同時に満たすために、図示と異なる接続方式を採用してもよい。
【0108】
本願は、図13に示すように、信号発生器と、周波数逓倍器と、移相システムと、駆動増幅器とを含んだ無線周波数チップをさらに提供する。
【0109】
ここで、信号発生器は、クロック基準信号に基づいて中間周波数信号を生成する。この信号発生器は、例えば、位相同期ループ回路を含む。位相同期ループ回路における電圧制御発振器は、ループ制御を受けて中間周波数信号を生じさせる。この中間周波数信号は、例えば、FMCW信号(周波数連続変調信号)であり、レーダーセンサによる物理量測定の検出ニーズに適用できる。
【0110】
周波数逓倍器は、前記信号発生器に接続され、前記中間周波数信号の周波数を無線周波数信号に逓倍する。周波数逓倍器は、中間周波数信号を無線周波数帯域に逓倍するために使われる。レーダーチップを例として、周波数逓倍器は、FMCW信号をミリ波帯に逓倍する。
【0111】
前記移相システムは、移相制御信号の制御で、出力された無線周波数信号が入力された無線周波数信号と比べて無移相であるか、0-360°間のある移相量を持つように、無線周波数信号を移相する。
【0112】
移相システムに縦続接続されたN個の伝送線路移相ユニットが含まれていることを例として、移相コントローラの制御の下で、N個の伝送線路移相ユニットにおけるM個は、第2位相φの状態にあり、(N-M)個は、第1位相0の状態にある。これにより、移相システムが入力された無線周波数信号に対して移相した合計移相量は、Mφである。
【0113】
移相システムに無線周波数インバータと縦続接続されたN個の伝送線路移相ユニットを含んだことを例として、移相コントローラの制御の下で、N個の伝送線路移相ユニットにおけるM個は、第2位相状態(例えば、移相量がΦである)にあり、(N-M)個は、第1位相状態(例えば、移相量が0である)にあり、無線周波数インバータが180°の位相状態にある。そうすると、移相システムが入力された無線周波数信号の位相に対して移相した合計移相量は、(MΦ+180)°である。
【0114】
駆動増幅器は、前記移相システムに接続され、移相付きの無線周波数信号を増幅して出力する。この駆動増幅器は、移相付きの無線周波数信号をバックエンド回路(例えば、アンテナ装置)を駆動するのに適した電力に増幅して出力するために使われる。
【0115】
これにより、無線周波数チップは、移相付きの無線周波数信号を生じさせる。この移相付きの無線周波数信号は、レーダーセンサで、位相エンコードを利用してレーダー信号の識別能力を高め、レーダー干渉を低減し、ビームフォーミングなどの面に使われる。移相システムは、より良いリニアリティを持っているため、校正の難易度を大幅に簡略化し、移相の正確性を高めている。
【0116】
本願は、送信アンテナと受信アンテナを含むアンテナアレイと、無線周波数チップとを備えたレーダーセンサをさらに提供する。
【0117】
前記無線周波数チップにおける駆動増幅器は、移相付きの無線周波数信号を送信アンテナで検知信号波に変換して自由空間に送信する。移相付きの無線周波数信号は、無線周波数送信信号とも呼ばれる。
【0118】
検知信号波が物体で反射して形成したエコー信号波を受信するために、前記無線周波数チップは、さらに信号受信器を含み、周波数逓倍器から提供された無線周波数信号(局部発振信号とも呼ばれる)を利用して入力信号をミックスし、ベースバンド信号を取得し、ADCによりベースバンドデジタル信号に変換して出力する。ここで、無線周波数入力信号は、エコー信号波を受信アンテナで変換したものである。これによると、出力されたベースバンドデジタル信号には、レーダチップと物体との相対的な位置関係による位相ずれだけでなく、移相システムによる移相量も含まれていることが分かる。移相システムの移相操作により、信号受信器に接続された信号処理回路は、この移相量を利用してベースバンドデジタル信号を干渉除去し、得られた受信信号の信号対雑音比を高めることができる。これにより、信号処理回路は、前記受信信号を利用してFFTを含んだ信号処理を行い、レーダーチップと周囲環境中の物体との間の測定情報を検出することができる。測定情報は、距離、相対速度及び角度のうち少なくとも1つを含む。ここで、信号処理回路は、例えば、ベースバンドデジタル信号(及び/又は受信信号)を専門的に処理するハードウェアアクセラレーター及び/又はプロセッサーなどを含む。信号処理回路は、レーダーセンサの主要な構成部分となるように、無線周波数チップに集積されてもよいし、個別に配置されてもよい。
【0119】
1つの実施例では、本願は、機器本体と、機器本体に設置された上記の実施例におけるレーダーセンサ又は無線周波数チップと、を含んだ機器をさらに提供し、ここで、レーダーセンサが目標検知に使われる。無線周波数チップは、通信にも使われてもよく、音声、文字及び画像のうち少なくとも1つを持った無線周波数信号を伝送する。
【0120】
レーダーセンサ又は無線周波数チップは、機器本体の外部又は内部に設置してもよいし、レーダーセンサの一部は、機器本体の内部に設置され、残りの一部は、機器本体の外部に設置されてもよい。
【0121】
なお、レーダーセンサ及び/又は無線周波数チップは、無線信号を送受信することで目標検知及び/又は通信などの機能を実現し、検知目標情報及び/又は通信情報を機器本体に提供し、ひいては機器本体の運転を補助したり、制御したりすることができる。
【0122】
1つの代替実施例では、上記の機器本体は、例えばスマートハウス、交通、スマートホーム、コンシューマエレクトロニクス、モニタリング、産業オートメーション、インキャビン検査及びヘルスケアなどの分野で使用されている部品及び製品であってもよい。例えば、当該機器本体は、スマート交通輸送機器(例えば、自動車、自転車、オートバイ、船舶、地下鉄、電車など)、セキュリティ機器(カメラなど)、液面/流速計測機器、スマート装着デバイス(ブレスレット、メガネなど)、スマートホーム機器(ロボット掃除機、ドアロック、テレビ、エアコン、スマートランプなど)、各種通信機器(携帯電話、タブレットなど)であってもよいし、ゲート、スマート交通インジケーター、スマートサイン、交通カメラ及び各種産業化ロボットアーム(又はロボット)などであってもよいし、生命特徴パラメーターを検出するための各種機器及び当該機器を搭載した各種機器、例えば自動車室内検出、室内人員モニタリング、スマート医療機器、コンシューマエレクトロニクスなどであってもよい。
【0123】
もう1つの代替実施例では、上記の機器本体が先進運転支援システム(ADAS)に応用された場合、車載センサであるレーダーセンサ(例えばミリ波レーダー)は、ADASシステムに自動緊急ブレーキ(AEB)、ブラインドスポットディテクション(BSD)、レーンチェンジアシスト(LCA)、後退時車両検知警報(RCTA)など各種機能的安全保障を提供することができる。特に電磁環境が複雑な道路では、本願は、移相システムが提供できるより高い解像度とより正確な移相を利用して、検出正確性を高めることができる。これにより、ADASの自動支援機能の即時性と信頼性を向上させる。
【0124】
なお、本願は、特定例がどのように形成され、かつ使用されるかを記載するものであるが、本願は、これらの例示的ないかなるディテールに限定されるものではない。逆に、本願に開示された内容の教示によれば、これらの原理は、他の多くの実施例に適用されることができる。
【0125】
以上は、本願の例示的な実施例を示しかつ記載している。本願は、ここで記載された詳細な構造、設置方法又は実現方法に限定されるものではないことを理解されたい。逆に、本願では、記載された特許請求の精神及び範囲内に含まれた種々の修正及び均等な設置をカバーすることを意図している。

図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12a
図12b
図13
【国際調査報告】