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特表2024-542918撹拌床反応中での微粒子と気相との接触
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】撹拌床反応中での微粒子と気相との接触
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/10 20060101AFI20241112BHJP
   C01B 32/963 20170101ALI20241112BHJP
【FI】
B01J8/10 301
C01B32/963
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024510390
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2021086901
(87)【国際公開番号】W WO2023117048
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ティルマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、ドレガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、フリッケ
(72)【発明者】
【氏名】アレナ、カリヤキナ
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン、クナイスル
【テーマコード(参考)】
4G070
4G146
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB02
4G070AB05
4G070AB06
4G070BA02
4G070BB15
4G070CA21
4G070CA25
4G070CB05
4G070CB18
4G070CB19
4G070CC01
4G070CC11
4G070CC20
4G070DA21
4G070DA23
4G146MA14
4G146MB02
4G146NA01
4G146PA06
(57)【要約】
本発明は、撹拌固定床中で粒子と気相とを接触させて生成物を製造する方法であって、
前記粒子の処理がガス通過反応器のプロセスゾーンで行われ、前記粒子が前記気相との接触中にクローズクリアランス撹拌機によってプロセスゾーン内で循環され、
式1
において、hのすべての値の半分について、前記プロセスゾーンW(h)におけるクローズクリアランスW(h)が0.9を超える場合、前記撹拌機の機構はクローズクリアランスであり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記撹拌機の機構の外周であり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記反応器の内周である前記方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌固定床中で粒子と気相とを接触させて生成物を製造する方法であって、
前記粒子の処理がガス通過反応器のプロセスゾーンで行われ、前記粒子が前記気相との接触中にクローズクリアランス撹拌機によってプロセスゾーン内で循環され、
式1
【数1】
において、hのすべての値の半分について、前記プロセスゾーンW(h)におけるクローズクリアランスW(h)が0.9を超える場合、前記撹拌機の機構はクローズクリアランスであり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記撹拌機の機構の外周であり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記反応器の内周である、前記方法。
【請求項2】
前記反応器のプロセスゾーンが回転対称であり、
前記撹拌機の機構が、式1
【数2】
[式中、
W(h)は回転対称の反応器における撹拌機の機構のクローズクリアランスであり、2つの回転面の回転軸に垂直な2つの平面断面の円周の商として定義され、hは高さ座標hを表し、
(h)は、平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の任意の複数の点において式2
【数3】
に従って計算される円形の内部断面の円周であり、
(h)は、回転軸から撹拌機の機構の外形までの距離であり、撹拌機の機構はそれに取り付けられるすべての構成要素を含み、
(h)は、平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の各任意の点において式3
【数4】
に従って計算される円形の回転外面の円周であり、該円形の回転外面は、回転軸の周りの反応器の内側輪郭の回転によって形成され、
(h)は、反応器の内側輪郭から回転軸までの距離であり、
hのすべての値の半分について、前記プロセスゾーンW(h)におけるクローズクリアランスW(h)が0.9を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子と前記気相との接触が0.08~5MPaで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記クローズクリアランス撹拌機を備える前記反応器のプロセスゾーンの床温度が30~1500℃の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の相互接続された反応器内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化学的または物理的なプロセスが前記反応器のプロセスゾーン内で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学的プロセスが、新たな官能化による粒子表面の被覆、気相と粒子との反応、および粒子における気相の反応から選択される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌固定床中で粒子と気相とを接触させて生成物を製造する方法であって、粒子の処理がガス通過反応器のプロセスゾーンで行われ、粒子が気相との接触中にクローズクリアランス撹拌機によってプロセスゾーン内で循環され、撹拌機の機構がクローズクリアランスである前記方法に関する。
【0002】
固体表面における気相の反応は、今日の世界にとって不可欠な要素である。例えば、内燃機関からの排気ガスの処理はロジウム触媒の表面で行われる。気体と固体表面との間の多くの反応は化学産業においても行われる。この目的のために、一般に、これらの反応が効率的かつ高い空時収率で行われるように、できるだけ多くの固体表面とガスとを接触させることが非常に重要である。一般に、固体とガスとを接触させるために、これまでに様々なプロセスが開発されてきた。これらのプロセスは主に、用いられる固体の形態が異なる。技術的要求がますます大きくなってきており、より小さい粒子が用いられ、プロセスで用いることができる固体表面積がより大きくなっている。
【0003】
気体-固体反応を行うための商業用途として、複数のタイプの反応器が知られている。例えば、FBR(流動床反応器)やロータリーキルンには、すべての粒子サイズに用いることができるわけではないという欠点がある。特に、非常に微細な粒子の場合、かなりの技術的複雑さがなければ、気相との反応は不可能である。ゲルダートC級の粒子は、現在利用可能な方法では処理できない。ゲルダートC級の粒子は、サイズが小さい(d90<20μm)という特徴を有し、強い粒子間引力を示すため、きれいな流動化が困難である。典型的な例は、小麦粉や、固形物を扱った際の摩耗粉等の微細な粉塵である。簡素なリアクターでは、これらの粒子床は気泡を激しく形成する傾向があり、その上にある粒子床全体が持ち上げられる。浅い流動床では、分配ベースと床表面との間に煙突やトンネルが形成され、気相が粒子床の他の領域を均等に流れなくなる[D. Geldart, Types of gas fluidization, Powder Technology 7 (1973) 258]。したがって、このような粒子の良好な流動化は、通常、撹拌機または振動機を介してエネルギーを機械的に入力することによってのみ達成することができる。
【0004】
少なくとも1つの粒子床を含む多相反応系では、多孔質固体と流体前駆体との良好な接触が必要であることが一般に知られている[F. Schuth Chem. Unserer Zeit 2006, 40, 92-103]。
【0005】
このようなプロセスの例としては、リチウムイオン蓄電池に用いられるシリコンと炭素との複合材料の製造が挙げられる。
【0006】
例えば、US10,147,950B2には、ロータリーキルンまたは同等のタイプの炉内で、好ましくは粒子を撹拌しながら、300~900℃の高温で、CVD(「化学的蒸着法」)プロセスまたはPE-CVD(「プラズマ化学蒸着」)プロセスにより、多孔質炭素中のモノシランSiHからシリコンを堆積することが記載されている。2mol%のモノシランと窒素との混合物が不活性ガスとして用いられる。ガス混合物中のシリコン前駆体の濃度が低いと、反応時間が非常に長くなる。さらに、ロータリーキルン内の床と反応器と体積の比率は、通常、非常に好ましいものではなく、これは、そうしないとガス流を介して粒子がかなり放出されることになるためである。
【0007】
気体-固体反応を行うためのさらなる方法は、ガス流動床である。
【0008】
ガス流動床では、固体粒子の床が緩められ、上向きに流れるガスによって運ばれ、固体層全体が液体のような挙動を示す[VDI-Warmeatlas [VDI Heat Atlas], 11th edition, Section L3.2 Stromungsformen und Druckverlust in Wirbelschichten [Types of Flow and Pressure Drop in Fluidized Beds, pp. 1371 - 1382, Springer Verlag, Berlin Heidelberg, 2013]。
【0009】
ガス流動床は一般に流動床とも呼ばれる。流動床を作成する操作は、流動化(fluidization)または流動化(fluidizing)とも呼ばれる。
【0010】
ガス流動床では、固体粒子は非常に良好に分散される。その結果、固体と気体との間に非常に高い接触領域が形成され、これをエネルギーおよび物質移動プロセスに理想的な方法で利用することができる。一般に、ガス流動床は、非常に優れた質量および熱伝達操作、ならびに均一な温度分布によって特徴付けられる。物質および熱の伝達プロセスの質は、特に流動床での反応によって得られる生成物の均一性にとって非常に重要であり、流動状態の均一性と相関する可能性がある。したがって、均一な流動床または均一な流動状態の形成は、流動床プロセスを用いて同じ生成物特性を有する生成物を製造するために不可欠である。
【0011】
流動特性は粒子の粒径および固相密度に応じて分類することができる。粒径がd90<20μmであり、粒子とガスとの間の密度差が>1000kg/mである粒子は、ゲルダートC級(凝集性)に包含される[D. Geldart, Types of Gas Fluidization, Powder Technology 7 (1973) 285]。ゲルダートC級の粒子は流動状態になりにくいという特徴を有する。粒子サイズが小さいため、粒子間引力の影響は、ガスの流れを介して一次粒子に作用する力と同程度かそれよりも大きくなる。これに応じて、流動床全体の上昇および/またはチャネル形成等の効果が生じる。流動床ではなくチャネル形成の場合、粒子床内に管が形成され、そこを流動化ガスが優先的に流れるのに対して、床の大部分にはまったく流れがない。その結果、流動化の均一性は達成されない。ガス速度が床の一次粒子の最小流動化速度をはるかに超えて増大すると、時間の経過とともに個々の粒子からなる凝集体が形成され、これらは完全にまたは部分的に流動化し得る。典型的な挙動は、様々なサイズの凝集体を含む層の形成である。流入底部の直上の最下層には、移動したとしてもほとんど移動しない非常に大きな凝集体がある。上の層には、より小さな流動化した凝集体がある。最も小さな凝集体は最上層に存在し、これらは部分的にガス流を伴っているが、これはプロセス工学の観点から問題がある。このような粒子床の流動特性は、さらに、大きな気泡の形成および流動床の低膨張によって特徴付けられる。英語の文献では、この挙動は「agglomerate bubbling fluidization」(ABF)と呼ばれている[Shabanian, J.; Jafari, R.; Chaouki, J., Fluidization of Ultrafine Powders, IRECHE., vol. 4, N.1, 16-50]。
【0012】
ABF流動床は、流動床内の不均一性およびそれに伴う不均一な質量および熱伝達条件のため、均一な特性を有する物質の製造には適さないことが当業者には明らかであろう。
【0013】
この理由により、例えばGB2580110B2では、50μmを超えるサイズ(d50)を有する粒子が、1.25体積%のモノシランを含む流動床内で流動化される。しかしながら、このようにして得られた粒子は、反応終了後に必要な目標サイズ<20μmまで粉砕する必要がある。<20μmの粒子がこの流動床で流動化すると、多孔質炭素粒子の激しい凝集および不均一な浸透が発生する。
【0014】
流動化助剤は、凝集体の形態の<20μmの粒子を主に均質な流動床に変換することが知られている。US7,658,340Bには、例えば、流動化ガスによって加えられる力に加えて、振動力、磁力、音響力、回転力もしくは遠心力、またはそれらの組み合わせ等のさらなる力要素の導入により、流動床中のSiOナノ粒子(ゲルダートC級)からなる凝集体のサイズに影響を及ぼし、ほとんど均質な流動床が形成される。
【0015】
Cadoret et al. [Cadoret, L.; Reuge, N.; Pannala, S.; Syamlal, M.; Rossignol, C.; Dexpert-Ghys, J.; Coufort, C.; Caussat, B.; Silicon Chemical Vapor Deposition on macro and submicron powders in a fluidized bed, Powder Technol., 190, 185-191, 2009]では、振動流動床反応器におけるサブミクロンサイズの非多孔質酸化チタン粒子上へのモノシランSiHからのシリコンの蒸着について説明されている。振動を導入することにより、流動床内の凝集塊のサイズ範囲は300~600μmに制限された。
【0016】
サイズが<20μmの粒子は均一に流動できないため、流動化助剤を用いない流動床プロセスは、多孔質マトリックス粒子におけるシリコンのインターカレーションプロセス/堆積プロセスには適していない。また、流動層が不均一であるため、均一な生成物を製造することはできない。
【0017】
<20μmの粒子の流動化には多大な技術的複雑性が必要となるため、流動化助剤を用いた流動床プロセスは、ゲルダートC級の粒子と気相とを接触させるには不利である。複雑さが増大すると、投資やメンテナンスに多額の費用がかかる。
【0018】
流動化助剤を用いた流動床プロセスによる多孔質粒子への例示的なシリコンインターカレーションのさらなる欠点は、粒子密度または表面品質等の一次粒子の特性がプロセスの過程で変化することである。これらは凝集体の形成に未知の影響を及ぼし;この形成はプロセス領域で知られているはずである。プロセスの全期間にわたって均一なプロセス条件を保証することができない。
【0019】
流動床技術のさらなる欠点は、一次多孔質粒子からなる凝集体の流動化によりガス流が必要となり、一次粒子および/または比較的小さな凝集体の放出につながることである。
【0020】
流動床技術の根本的な欠点は、均一な流動床を形成するための流動ガス流が流動床内の粒子または凝集体のサイズに依存することである。結果として、計量導入される反応性ガスの量および反応性ガスと多孔質粒子との接触時間は、粒子床の流動化および混合の状態に依存する。例えば、流動床プロセスでは、気相と粒子床との接触時間を、ガス速度を低下させることによってのみ増大させることができる。しかしながら、ガス速度は流動化および混合の状態を確保するための重要なパラメータである。
【0021】
流動床技術の欠点を解決するための1つの可能性は、流れとは関係なく粒子床と気相を混合することである。
【0022】
US2020/0240013A1には、撹拌床反応器内で、より小さいミリメートル範囲の平均粒径を有する粒子上へのシリコン含有ガスからのシリコンの堆積が記載されている。このような粒径により、用いられる床材の流動性は非常に優れていると考えられる。記載された装置により、気体と固体との間の交換は、中央の撹拌スクリューを用いることによって行われ、反応ガスは撹拌床の開口部を通して同時に供給される。このサイズの粒子の場合、粒子を流動状態に変換するために大量の流動化ガス流が必要であるため、この出願文書は特にミリメートル範囲の粒子の処理の利点を対象としている。
【0023】
しかしながら、US2020/0240013A1で用いられている撹拌機は、<20μmの凝集粒子の循環には適していない。
【0024】
技術文献から、非常に広範囲の撹拌手段を撹拌床内での粒子の循環に用いることができることが知られている[M. Muller, Feststoffmischen [Solids mixing], Chemie Ingenieur Technik 2007, 79, 7]。例えば、クローズクリアランスらせん状撹拌機を用いることにより、粒子は反応器内で横方向上方に輸送され、その結果、材料が滑り落ちる結果として粒子の相対運動を伴う循環流が生じる。粒子の反応器壁への付着が防止される。
【0025】
粒子床の運動状態を記述するパラメータは、回転系における遠心力と重力との比を示すフルード数(Fr)である。
【数1】
【0026】
ここで、rは系に関連する特性半径である。回転混合機構を備える系の場合、rは撹拌手段の外径に相当する。回転ドラムを備える系の場合、rはコンテナの内径である。角周波数ω=2πnは、回転系の回転速度nに依存する。重力の影響は、重力加速度gを介して考慮される。フルード数が小さい場合、重力成分が優勢となり、その結果、材料の半径方向の輸送が低くなる。粒子床の循環が不十分である。一方、フルード数が大きい場合、遠心力成分が支配的となり、その結果、材料が容器の壁に強く当たりすぎて輸送される。ここでも、粒子床の循環は不十分である。
【0027】
気相と撹拌粒子床との間の接触時間を記述するためのパラメータの1つは、反応器内の気相の滞留時間である。平均滞留時間tは、反応器の容積と計量された気相の体積流量Vとの商として計算することができる。
【数2】
【0028】
撹拌床反応器内の均一な反応条件を評価するためのさらに重要な尺度は、シリコン前駆体の滞留時間tに対する粒子床の循環時間tの比t/tである。粒子床の循環時間tは、反応器の容積Vと循環粒子の体積流量Vとの商として計算される。
【数3】
【0029】
撹拌手段によって循環される粒子の体積流量Vは、単位時間当たりに撹拌手段によって接線方向に動かされる粒子の体積として定義され、一般に下記式で表される。
【数4】
【0030】
循環粒子の体積流量は、回転速度nと撹拌手段の個々の撹拌要素iによって接線方向に動かされるすべての体積の合計との積である。個々の撹拌要素の幾何学的寸法は、撹拌手段の内縁から回転軸までの距離rR,inner,iによって、撹拌手段の外縁から回転軸までの距離rR,outer,iによって、ならびにそれぞれの撹拌要素の上部輪郭ho.i(r)および下部輪郭hu.i(r)によって説明される。
【0031】
比率t/tが<1であると仮定すると、粒子の循環操作は床を通るガスの流れよりも速く、したがって粒子とともにガスが均一に分布する。比率t/tの値が>1である場合、ガスは撹拌床自体が循環するよりも速く流れる。その結果、異なる堆積条件を有するゾーンが撹拌床内に形成され、床内での生成物の分布が不均一になる。
【0032】
このような背景に対して、本発明の目的は、ゲルダートC級の粒子と気相とを接触させるための方法を提供することであり、この方法は技術的に実施が容易であり、特に、粒子の放出、反応時間およびそれに必要なインフラストラクチャとの関係において、上述した従来技術の方法の欠点がない。
【0033】
本発明は、撹拌固定床中で粒子と気相とを接触させて生成物を製造する方法であって、
前記粒子の処理がガス通過反応器のプロセスゾーンで行われ、前記粒子が前記気相との接触中にクローズクリアランス撹拌機によってプロセスゾーン内で循環され、
式1
【数5】
において、hのすべての値の半分について、前記プロセスゾーンW(h)におけるクローズクリアランスW(h)が0.9を超える場合、前記撹拌機の機構はクローズクリアランスであり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記撹拌機の機構の外周であり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記反応器の内周である前記方法を提供する。
【0034】
驚くべきことに、本発明によるクローズクリアランス撹拌機の機構を用いた結果、気相と固体との間の接触時間が、気体と粒子との反応が良好な変換率で達成されるか、粒子におけるガスの反応(触媒作用)が良好な変換で達成されるか、または粒子の物理的修飾が達成されるような持続時間となるように、<20μmの粒子が反応器中で循環され、気相が計量される。
【0035】
流動床反応器と比較して、ガス通過撹拌反応器または撹拌床反応器(SBR)は、流動化にガスが用いられないため、SBR内で圧縮および予熱する必要があるガスの量が少なくて済み、構造が単純である。これにより、関連するアセンブリのコストが削減される。SBRの場合、流動化助剤を操作するための複雑な制御および調整技術は必要ない。FBRと比較して、SBRは、所定の質量に対して撹拌床が占める体積が小さいため、より小型である。具体的な投資コストはより低くなる。
【0036】
GB2580110B2と比較して、本発明の方法ではさらなるプロセスステップを必要としない。
【0037】
流動床反応器と比較して、粒子循環は気相の供給とは独立している。より長い滞留時間が可能であり、特に気相と粒子との反応の場合には、より高い変換率がもたらされる。
【0038】
本発明の方法における撹拌は、粒子を循環させるだけである。粒子はスターラーによって巻き上げられない。
【0039】
ガス流は、本発明の方法におけるガス流による粒子の巻き上げが最小となり、したがって反応器からの粒子の排出も同様に最小となるような寸法に設定される。同時に、ガス流は、好ましくは、気相と粒子との反応の場合、用いられる気相の変換が最大になるように、または同時に資源を節約しながら粒子の物理的修飾が効率的になるような寸法である。
【0040】
粒子とガスとの均一な接触条件は、無次元のフルード数で表される撹拌機速度パラメータの適切な選択と、適切な計量速度によって可能である。
【0041】
US2020/0240013A1と比較して、本発明の方法は、クローズクリアランス撹拌機を用いることによって改良されている。
【0042】
クローズクリアランス撹拌機による粒子床のこの循環の結果、液相と固相との十分に良好なマクロ混合が達成され、固相中のすべての粒子の均一な処理がもたらされる。
【0043】
気相と粒子との反応の場合、本発明によらない方法と比較した本発明の方法のさらなる経済的利点は、考えられる気相のより高い変換率、例えば、多孔質粒子へのSiHの堆積の場合におけるより高いシリコン収率にある。
【0044】
本発明の方法を用いることにより、新たな機能化による粒子表面の被覆、気相と粒子との反応、粒子における気相の反応(触媒作用)、または粒子の効率的な物理的修飾は、例えば、クローズクリアランス撹拌機の機構による粒子床の一定循環により行うことができる。用いられる粒子床は、単一タイプの粒子または粒子混合物で構成され得る。
【0045】
本発明の方法は、用いられる粒子の前処理または後処理のために複数のステップを行うことを含んでいてもよい。これらの処理は、1つの反応器内で、または2つ以上の反応器またはカラム内で行うことができる。気体生成物が本発明の方法から得られる場合、本発明の方法から導出される気相は、例えばスクラバー、蒸留または凝縮による分離によって所望の生成物から分離することができる。
【0046】
用いられる粒子が別の反応器で前処理される場合、粒子は、例えば、縦樋、連続コンベア、フローコンベア/吸引または圧力コンベアユニット(例えば、真空コンベア、輸送ブロワー);機械式コンベア(例えば、駆動付きローラーコンベア、スクリューコンベア、円形コンベア、循環コンベア、バケットコンベア、ロータリースターバルブ、チェーンコンベア、スクレーパーコンベア、ベルトコンベア、振動コンベア);重力コンベア(例えば、シュート、ローラートラック、ボールトラック、レールトラック)、および非連続コンベア、床ベースおよびレールフリー(例えば、自動車両、手動フォークリフトトラック、電動フォークリフトトラック)、無人輸送システム(DTS)、エアクッション車、ハンドカート、電動カート、自動車(トラクター、ワゴン、フォークリフトスタッカー)、移送台車、移送/リフト台車、棚アクセス装置(曲線経路に追従可能なコンバーターあり/なし);床ベースおよびレール固定(例えば、プラント鉄道、軌道車両);床フリー(例えば、トロリートラック)、クレーン(例えば、橋梁クレーン、ポータルクレーン、ジブクレーン、タワークレーン)、電動天井軌道、小型船舶輸送システム;固定式(例えば、エレベーター、リフティングプラットフォームおよびチェリーピッカー、段階的コンベア)によってさらなる反応器または容器に移送され得る。
【0047】
クローズクリアランスW(h)は、2つの回転面の回転軸に垂直な2つの平面断面の円周の商として定義され、hは高さ座標を表す。回転内面は、撹拌機の機構の完全な回転によって形成され、回転軸から撹拌機の機構の外側輪郭までの距離r(h)によって特徴付けられる。撹拌機の機構は、それに取り付けられるすべての構成要素を含む。回転軸に垂直な回転面の任意の点hにおける平面断面は円形の面を形成する。断面の円周は以下のように計算される。
【数6】
【0048】
回転の外面は、回転軸の周りの反応器の内側輪郭の回転によって形成される。これは、距離r(h)により表される。反応器の内部輪郭には、それに取り付けられるすべての構成要素が含まれる。回転外面の回転軸に垂直な任意の断面の円周は、以下のように計算される。
【数7】
【0049】
クローズクリアランスは、円周を用いて以下のように定義される。
【数8】
【0050】
一般に、反応器には1つ以上の撹拌機構を含めることができる。個々の撹拌機の機構の輪郭は、完全な回転を通じて回転面を形成する。これらの回転面は別々に存在することができる。これらは、好ましくは互いに重なり合うことができる。個々の回転面、または重なっている回転面を回転軸に垂直な任意の点で切断すると、その円周が確認できる図形が得られる。複数の図形が得られる場合、合計の円周は個々の円周を合計することによって決定される。
【0051】
一般に、反応器は、1つ以上の反応器部材から構成され得、各部材は好ましくは回転対称であり、互いに接続されている。すべての反応器の壁全体が図形を囲んでいる。この図形を撹拌機構の回転軸に垂直な任意の点で切断すると、得られる図形の円周を決定することができる。クローズクリアランスW(h)は、回転対称の反応器の場合と同様の方法で計算される。
【0052】
クローズクリアランスはhによって異なり得る。撹拌機の本発明による実施形態は、hのすべての値の半分について、プロセスゾーンにおけるクローズクリアランスW(h)が>0.9である場合に存在し;W(h50%)はこのために定義され。好ましい実施形態において、W(h50%)は>0.95である。特に好ましい実施形態において、W(h50%)は>0.97である。非常に特に好ましい実施形態において、W(h50%)は>0.99である。本発明の方法の特殊な場合において、W(h50%)は1を超える値も可能である。
【0053】
本発明の目的は、撹拌機によって動かされない床のデッドスペースを可能な限り小さく保つことにある。したがって、シェルの加熱部分の粒子は可能な限り効率的に動き続け、エネルギーが壁から床に伝達される。これにより、壁への粒子の付着も防止される。
【0054】
プロセスゾーンは、撹拌された粒子床が気相と接触する反応器内の領域であり、乾燥操作、凝縮反応または気相の分解等の化学的または物理的なプロセスが発生し、反応器のこの領域で行われることでさらに定義される。
【0055】
気相は、不活性ガスおよび/または任意に少なくとも1つの反応性成分からなる。一般に、1つ以上の反応性成分は、混合形態で、または別々に、または不活性ガス成分との混合物で、または純粋な物質として反応器に導入することができる。反応性成分は、標準条件下における反応性成分の全圧力(DIN1343に準拠)に対する不活性ガス成分の分圧に基づいて、好ましくは0~99%、特に好ましくは最大50%、特に好ましくは最大30%、非常に特に好ましくは最大5%の不活性ガス成分を含有する。用いることができる不活性ガスの例としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素もしくは二酸化炭素、またはそれらの混合物、例えばフォーミングガスが挙げられる。アルゴン、特に窒素が好ましい。
【0056】
反応性成分は、例えば熱処理等の選択された条件下で反応することができ、好ましくは
-水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化二窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、二酸化硫黄
-水蒸気
-SiH、GeH、SnH、SbH、GaH、AsH、BiH、NH、PH、HS、HSe等の、選択された条件下で気体である水素化物
-オリゴマーまたはポリマーシラン、特にnが2~10の範囲の整数を含み得る一般式Sin+2の直鎖状シラン、およびnが3~10の範囲の整数を含み得る一般式-[SiH-の環状シラン
-オリゴマーまたはポリマーゲルマン、特にnが2~10の範囲の整数を含み得る一般式Gen+2の直鎖状ゲルマン、およびnが3~10の範囲の整数を含み得る一般式-[GeH-の環状ゲルマン
-Cl、F、Br、クロロシラン、ホスゲン、フルオロホスゲン、塩化水素、臭化水素、フッ化水素、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、二酸化塩素、六フッ化硫黄、四フッ化硫黄、六塩化硫黄、四塩化硫黄、四フッ化ケイ素、トリフルオロシラン等のハロゲン含有前駆体物
-シリコーン前駆体およびシラン化用前駆体、例えばシラノールおよびシラザン
-気相からポリマーコーティングに用いることができる前駆体の例としては、p-キシレンまたはそのハロゲン化誘導体、アクリレート、メタクリレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)分散液、スチレン、ビニルピロリドン、無水マレイン酸等が挙げられる
-炭化水素、好ましくは1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素を含む群から選択される炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン;1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えばエテン、アセチレン、プロペン、メチルアセチレン、ブチレン、ブチン(1-ブチン、2-ブチン)、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えばシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンまたはノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタンまたはナフタレン、さらなる芳香族炭化水素、例えばフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセンまたはフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、および例えば天然ガス凝縮物、石油留出物またはコークス炉凝縮物からの多数のそのような化合物を含む混合画分、流動接触分解装置(FCC)、蒸気分解装置またはフィッシャー-トロプシュ合成プラントの生成物ストリームからの混合画分、またはより一般的には、木材、天然ガス、石油および石炭の処理からの炭化水素含有材料ストリーム
を含む群から選択される。
【0057】
特に好ましい反応性成分は、水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、モノシランSiH4、モノゲルマンGeH4を含む群から選択され、これらを単独または混合物として使用することができる。
【0058】
気相を反応器に計量供給する間、反応性成分の成分は、例えば気体、液体、または昇華可能な固体の形態で存在する可能性がある。
【0059】
反応性成分は、好ましくは、気体、液体、固体、例えば昇華性、または場合により異なる物質状態の物質からなる物質混合物である。
【0060】
プロセスの一変形例では、気相は、例えば下から、横から、あるいは特殊な撹拌機を通して、反応器内の粒子床に直接供給される。
【0061】
好ましい実施形態では、反応器内の温度、圧力、圧力変化または差圧測定値およびガス流量測定値は、確立された測定機器および測定方法を用いて決定される。標準校正後は、異なる測定器でも同じ測定結果が得られます。
【0062】
気相による粒子の処理の進行は、反応の終了を特定し、それにより反応器の占有時間を可能な限り短く保つために、分析的に監視することが好ましい。反応の進行を観察するためのプロセスには、例えば反応器の内容成分の固体とガスの比率を変化させることによって反応の進行を決定するための発熱または吸熱性を測定するための温度測定や、ガス空間の組成の変化を観察できるさらなる方法が含まれます。反応中。プロセスの好ましい変形例では、気相の組成は、ガスクロマトグラフおよび/または熱伝導率検出器および/または赤外分光器および/またはラマン分光器および/または質量分析計によって測定される。好ましい実施形態では、水素含有量は熱伝導率検出器によって測定され、および/または存在するクロロシランはガスクロマトグラフまたはガス赤外分光器によって測定される。
【0063】
この方法のさらに好ましい変形例では、反応器/ガス排出位置に、凝縮性または再昇華性の副生成物または生成する生成物を除去するための技術的解決策が備えられる。
【0064】
この方法の好ましい実施形態では、計量操作は複数回繰り返され、それぞれ充填される気相はそれぞれの場合において同一または異なっていてもよく、2つ以上の反応性成分の混合物も可能である。装入される気相は、それぞれの場合において、同様に同一であっても異なっていてもよく、あるいは異なる反応性成分の混合物から構成されていてもよい。
【0065】
本出願の文脈における反応器としては、レトルトオーブン、管状反応器、撹拌床反応器、撹拌槽反応器およびオートクレーブを含む群から選択される反応器タイプが好ましい。撹拌反応器およびオートクレーブを使用することが特に好ましく、撹拌反応器を使用することが特に好ましく、撹拌タンク反応器を使用することが非常に特に好ましい。これらの反応器は、負圧でも正圧でも運転できます。本発明による方法に使用される反応器は、少なくとも温度制御可能でなければならない。さらに、耐真空性と耐圧性も備えています。さらに、ガスを計量および排出するための装置、および固体を導入および除去するための装置を装備することもできる。
【0066】
温度制御可能な反応器は、一般に、反応器内部の温度を例えば-40~1500℃の範囲に調整できるように運転できる反応器である。より小さい温度範囲も可能である。
【0067】
必要なすべてのプロセスステップは、本発明による反応器内で行うことができるが、粒子の前処理および後処理のために、異なる設計のさらなる反応器を使用することもできる。
【0068】
粒子および結果として生じる可能性のある粒子状の固体生成物は、一般に、プロセス中に固定床として、または混合しながら撹拌された形態で存在し得る。粒子または得られた生成物を撹拌混合することが好ましい。しかしながら、粒子と用いる気相とを接触させる際には、粒子を積極的に混合する必要がある。これにより、例えば、すべての多孔質粒子と気相との均一な接触、または床の均一な温度分布を達成することが可能になる。粒子の循環は、例えば反応器内の内容物を撹拌することによって、または撹拌器の周囲で反応器全体を動かすことによって生じさせることができる。
【0069】
クローズクリアランス撹拌機を備える反応器のプロセスゾーン内で用いられる粒子の床温度は、好ましくは10~2000℃、特に好ましくは30~1500℃、最も好ましくは100~1000℃の範囲である。
【0070】
反応器のさらに好ましい構成は、循環のための可動撹拌手段を備える固定反応器である。循環の目的は、多孔質固体をできるだけ均一に気相と接触させることである。そのための好ましい形状は、円筒形反応器、円錐形反応器、球形もしくは多面体の回転対称反応器、またはそれらの組み合わせである。撹拌手段の運動は回転運動であることが好ましい。他の形式の運動も適している。撹拌手段は撹拌シャフトを介して駆動されることが好ましく、撹拌シャフトごとに1つの撹拌手段または2つ以上の撹拌手段が存在し得る。2つ以上の撹拌シャフトを反応器に導入することができ、各シャフト上に1つの撹拌手段または2つ以上の撹拌手段が存在し得る。主反応器軸は、好ましくは水平または垂直に配向される。さらに好ましい実施形態において、撹拌シャフトは、任意の所望の向きの反応器内に水平または垂直に設置される。垂直に操作される反応器の場合、例えば、1つの撹拌手段または2つ以上の撹拌手段が主撹拌シャフトを介した回転運動によって床材料を混合する構成が好ましい。2つ以上の撹拌シャフトを平行に走行させる構成も可能である。2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない構成もさらに可能である。垂直に操作される反応器のさらなる構成は、搬送スクリューを用いることを特徴とする。搬送スクリューは、流動層材料を中央で搬送することが好ましい。本発明によるさらなる設計は、反応器の縁に沿って回転する搬送スクリューである。さらに好ましい構成は、軌道を回る撹拌系または螺旋撹拌系である。水平に操作される反応器の場合、例えば、1つの撹拌手段または2つ以上の撹拌手段が主撹拌シャフトを介した回転運動によって床材料を混合する構成が好ましい。2つ以上の撹拌シャフトが平行に存在する構成も可能である。2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない構成がさらに好ましい。垂直に操作される反応器の場合、ヘリカル撹拌機、スパイラル撹拌機、アンカー撹拌機、または層材料を軸方向もしくは半径方向、または軸方向および半径方向の両方に搬送し、本発明によるクローズクリアランスWを有する一般的な撹拌手段を含む群から選択される撹拌手段が好ましい。水平に操作される反応器では、1つのシャフト上に2つ以上の撹拌手段があることが好ましい。水平に操作される反応器の撹拌手段の本発明による構成は、プラウシェア、パドル、ブレード撹拌機、スパイラル撹拌機、または床材料を軸方向と半径方向の両方に搬送し、本発明によるクローズクリアランスWを有する一般的な撹拌手段である。撹拌手段にスクレーパーを追加することで、クローズクリアランスを減らすことができる。反応器は、可動撹拌手段に加えてバッフル等の剛性の内部構造を備えていてもよい。
【0071】
本発明の方法を実施するための反応器の構造に適した材料としては、原則として、それぞれのプロセス条件下で必要な機械的強度および耐薬品性を示す任意の材料が挙げられる。耐薬品性の観点から、反応器は適切な固体材料、および媒体と接触する部分に特別なコーティングまたはメッキが施された化学的に耐性のない(耐圧性)材料の両方で構成される。
【0072】
本発明によれば、材料は:
-(DIN CEN ISO/TR15608に準拠)鋼の場合は材料グループ1~11に対応し、ニッケルおよびニッケル合金の場合はグループ31~38に対応し、チタンおよびチタン合金の場合はグループ51~54に対応し、ジルコニウムおよびジルコニウム合金の場合はグループ61および62に対応し、鋳鉄の場合はグループ71~76に対応する金属材料
-単一物質系の酸化物セラミックス、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン(コンデンサー材料)、および多物質系、例えばチタン酸アルミニウム(例えば、酸化アルミニウムおよび酸化チタンの混合物)、ムライト(酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の混合物)、チタン酸ジルコン酸鉛(圧電セラミック)、または酸化ジルコニウムで強化された酸化アルミニウム(ZTA-ジルコニア強化酸化アルミニウム)-Al/ZrO)等の分散セラミックス、
-非酸化物セラミック、例えば炭化物、例としては炭化ケイ素および炭化ホウ素、窒化物、例としては窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および窒化チタン、ホウ化物およびケイ化物、ならびにそれらの混合物、および
-粒子複合材料の群に属する複合材料、例えば超硬合金、セラミック複合材料、コンクリートおよびポリマーコンクリート、繊維複合材料、例えばガラス繊維強化ガラス、金属マトリックス複合材料(MMC)、繊維セメント、炭素繊維強化炭化ケイ素、自己強化熱可塑性プラスチック、鉄筋コンクリート、繊維強化コンクリート、繊維プラスチック複合材料、例えば炭素繊維強化プラスチック(CRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)およびアラミド繊維強化プラスチック(ARP)、繊維セラミック複合材料(セラミックマトリックス複合材料(CMC))、浸透複合材料、例えば金属マトリックス複合材料(MMC)、分散強化アルミニウム合金または分散硬化ニッケル-クロム超合金、層状複合材料、例えばバイメタル、チタン-グラファイト複合材料、複合プレートおよび複合チューブ、ガラス繊維強化アルミニウムおよびサンドイッチ構造、および構造複合材料
を含む群から選択される
【0073】
本発明の方法は、ゲルダードC級のすべての粒子の操作に適している。下記のリストは例のみを示すものであり、本出願の範囲を制限するものではない。用いられる粒子は多孔質であってもよく、非多孔質であってもよい。本発明の方法に用いられる粒子は、好ましくは、硬質カーボン、軟質カーボン、メソカーボンマイクロビーズ、天然グラファイトまたは合成グラファイト、単層および多層のカーボンナノチューブおよびグラフェン、二酸化ケイ素、シリカゲル、酸化アルミニウム、ケイ素-アルミニウム混合酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化チタンおよび酸化ジルコニウム等の酸化物、炭化ケイ素および炭化ホウ素等の炭化物、窒化ケイ素および窒化ホウ素等の窒化物;塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化マグネシウム等のハロゲン化物;炭酸塩(例えば、CaCO、MgCO)、硫酸塩(例えば、CaSO、MgSO)、硫化物(例えば、MoS)等の塩、および下記の成分式で表される他のセラミック材料の形態のアモルファスカーボンを含む群から選択される:
AlMgSi[式中、0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であり、少なくとも2つの係数a~g>0であり、かつa×3+b×3+c×4+d×2+g×4≧e×3+f×2である。]。
【0074】
セラミック材料は、例えば、二元、三元、四元、五元、六元または七元の化合物であり得る。下記の成分式を有するセラミック材料が好ましい:
非化学量論的窒化ホウ素BN[式中、z=0.2~1である。]、
非化学量論的窒化炭素CN[式中、z=0.1~4/3である。]、
炭窒化ホウ素BCN[式中、x=0.1~20であり、かつz=0.1~20であり、またx×3+4≧z×3である。]、
窒化ホウ素BN[式中、z=0.1~1であり、かつr=0.1~1であり、また3≧r×2+z×3である。]、
炭窒酸化ホウ素BCN[式中、x=0.1~2であり、z=0.1~1であり、かつr=0.1~1であり、またx×3+4≧r×2+z×3である。]、
炭酸化ケイ素SiCO[式中、x=0.1~2であり、z=0.1~2であり、またx×4+4≧z×2である。]、
炭窒化ケイ素SiCN[式中、x=0.1~3であり、かつz=0.1~4であり、またx×4+4≧z×3である。]、
炭窒化ホウ素ケイ素SiCN[式中、w=0.1~3であり、x=0.1~2であり、かつz=0.1~4であり、またw×4+x×3+4≧z×3である。]、
ホウ素炭酸化ケイ素SiCO[式中、w=0.10~3であり、x=0.1~2であり、かつz=0.1~4であり、またw×4+x×3+4≧z×2である。]、
ケイ素ホウ素炭窒酸化物SiCN[式中、v=0.1~3であり、w=0.1~2であり、x=0.1~4であり、かつz=0.1~3であり、またv×4+w×3+4≧x×3+z×2である。]、および
アルミニウムホウ素ケイ素炭窒酸化物AlSiCN[式中、u=0.1~2であり、v=0.1~2であり、w=0.1~4であり、x=0.1~2であり、かつz=0.1~3であり、またu×3+v×3+x×4+4≧w×3+z×2である。]。
【0075】
本発明の方法のためのさらなる粒子は、チタン酸塩(例えば、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸アルミニウム、ペロブスカイト等)またはスピネル(例えば、マグネシアスピネル、クロム酸コバルト、アルミン酸コバルト等)またはタングステン酸塩等の混合酸化物であってもよい。
【0076】
本発明の方法のためのさらなる粒子は、1種以上の触媒種、例えばニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウムまたはロジウム、さらにメタロセン等の金属化合物を含む基材であってもよい。用いることができる触媒担体の例としては、活性炭、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ポリマーまたはシリカゲルが挙げられる。
【0077】
本発明の方法のためのさらなる粒子は、有機性であるもの、例えば、共有結合性有機構造体(COF)、多孔性芳香族構造体(PAF)等のポリマー、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、アミノフェノール-ホルムアルデヒド樹脂等の樹脂、ポリスチレン、ポリビニルピリジンもしくはそれらのコポリマー等のポリマー、または有機金属性であるもの、例えばMIL-101(Cr)等の金属有機構造体であってもよい。
【0078】
粒子としては、好ましくは非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素および窒化ケイ素、またはこれらの材料をベースとした混合材料が用いられ;特に好ましくは非晶質炭素、窒化ホウ素および二酸化ケイ素が用いられる。
【0079】
粒子の体積加重粒度分布は、ISO13320に従って、多孔質粒子の分散媒体としてエタノールを用いて、Horiba LA950測定装置を備えるMieモデルを用いた静的レーザー散乱により決定することができる。
【0080】
粒子は、個別化された粒子の形態であることが好ましい。粒子は、例えば、独立した形態または凝集した形態で存在し得る。粒子は凝集していないことが好ましく、凝塊化していないことが好ましい。凝集とは一般に、多孔質粒子の製造過程において、一次粒子が最初に形成され、合体および/または一次粒子が例えば共有結合を介して互いに結合し、このようにして凝集体を形成することを意味する。一次粒子は、一般に独立した粒子である。凝集体または独立した粒子は、凝集体を形成する可能性がある。凝塊は、例えばファンデルワールス相互作用や水素結合等を介して互いに結合した凝集体または一次粒子が緩やかに蓄積したものである。凝塊化した凝集体は、一般的な混練および分散プロセスによって簡単に再び凝集体に戻すことができる。凝集体は、そのようなプロセスによって一次粒子に分解されるとしても、部分的にしか分解されない。凝集体、凝塊または独立した粒子の形態の粒子の存在は、例えば従来の走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて視覚化することができる。対照的に、マトリックス粒子の粒子サイズ分布または粒子直径を測定するための静的光散乱法では、凝集体と凝塊とを区別することができない。
【0081】
粒子は、任意の形態を有してもよく、すなわち、例えば、破片状、フレーク状、球状、または針状であってもよいが、破片状または球状の粒子が好ましい。形態は、例えば、球形度ψまたは球形度Sによって特徴付けられ得る。ワデルの定義によれば、球形度ψは、体積が等しい球体の表面積と、物体の実際の表面積との比である。球体の場合、ψは1である。この定義によれば、本発明の方法のための粒子は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の球形度ψを有する。
【0082】
球形度Sは、表面に投影された粒子の投影像と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影像において測定される円周Uとの比であり:
【数9】
である。理想的な円形の粒子の場合、Sの値は1となる。本発明の方法のための粒子の場合、球形度Sは、球形度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0の範囲にあり、特に好ましくは0.65~1.0の範囲にある。球形度Sの測定は、例えば、光学顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真を参照して、または粒子が10μm未満である場合には、好ましくは走査型電子顕微鏡を用いて、ImageJ等の画像解析ソフトウェアを用いたグラフィック評価によって行われる。
【0083】
多孔質粒子が用いられる場合、多孔性粒子は、好ましくは0.2cm/g以上、特に好ましくは0.6cm/g以上、最も好ましくは1.0cm/g以上のガスアクセス可能な細孔容積を有する。
【0084】
多孔質粒子の細孔は、任意の直径、すなわち一般にマクロ細孔(50nm超)、メソ細孔(2~50nm)およびミクロ細孔(2nm未満)の範囲を有してもよい。多孔質粒子は、異なる細孔タイプの任意の混合物として用いることができる。メソ細孔範囲ではDIN 66134に準拠したBJH(ガス吸着)による細孔径分布、ミクロ細孔範囲ではDIN 66135に準拠したHorvath-Kawazoe(ガス吸着)による細孔径分布、マクロ細孔範囲ではDIN ISO 15901-1に準拠した水銀圧入法による細孔径分布が評価される。
【0085】
多孔質粒子のガスがアクセスできない細孔容積は、下記式を用いて決定することができる。
【数10】
【0086】
純粋な材料の密度は、相組成または純物質の密度(閉じた多孔性がないかのような材料の密度)に基づく、多孔質粒子の理論的な密度である。純物質の密度データは、当業者であれば、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)で見つけることができる。例えば、酸化ケイ素の純物質密度は2.203g/cm、窒化ホウ素の純物質密度は2.25g/cm、窒化ケイ素の純物質密度は3.44g/cm、炭化ケイ素の純物質密度は3.21g/cmである。骨格密度は、ヘリウム比重計によって測定される多孔質粒子(ガスがアクセス可能な)の実際の密度である。
【0087】
本発明の方法は、本発明によるすべての固体とガスとを接触させるために用いることができる。生成物は、変化した固体および/または反応器からの排気ガスの一部であり得る。変化した固体とは、固体が化学的または物理的に変化したことを意味する。それは、例えば、酸化、還元、焼成、アニール、活性化、不動態化、コーティング、浸透、乾燥、冷却または加熱されていてもよい。製造される生成物は多孔質または非多孔質であり得る。
【0088】
本出願の範囲を制限することなく、製造される固体生成物の例としては、金属粉末、金属酸化物、混合酸化物、水酸化物、水和物、シリコン、シリコン化合物、シリコン微小球、焙焼鉱石、塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、シュウ酸塩、顔料、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、カーボンブラック、有機物質または触媒が挙げられる。
【0089】
本発明の方法で得られる生成物の一般的な応用分野は、電池、タイヤ産業、活性炭処理、データ送信および保存用の材料、燃料電池、触媒、衣類、化粧品、コーティング材料、太陽電池産業およびシリコン産業等である。
【0090】
反応器からガス流とともに排出される生成物は、標準条件下では気体または液体であり得る。
【0091】
本発明の方法を介して固体が生成物として得られる場合、得られる材料は、例えば破片状、フレーク状、球状または針状等の任意の形態を有し得るが、破片状または球状粒子であることが好ましい。
【0092】
ワデルの定義によれば、球形度ψは、体積が等しい球体の表面積と、物体の実際の表面積との比である。球体の場合、ψは1である。
【0093】
球形度Sは、表面に投影された粒子の投影像と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影像において測定される円周Uとの比であり:
【数11】
である。理想的な円形の粒子の場合、Sの値は1となる。球形度Sの測定は、例えば、光学顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真を参照して、または粒子が10μm未満である場合には、好ましくは走査型電子顕微鏡を用いて、ImageJ等の画像解析ソフトを用いたグラフィック評価によって行われる。
【0094】
本発明の方法の使用例は、ゲルダートC級の粒子のコーティングである。本発明の方法は化学蒸着(CVD)に基づいており、ガス状の反応性成分が粒子の表面で化学的に分解され、それにより粒子の表面に膜が形成される。固体のコーティングは、化学、製薬、農業、化粧品、エレクトロニクスおよび食品を含む様々な産業にとって不可欠なプロセスである。コーティングは、有効成分の放出または溶解を制御するため、粉末の流動性を改善するため、酸化、光、空気または湿気の影響を受けやすい反応性物質を保護するため、機械的特性(例えば、耐摩耗性および圧縮性)を改善するため、または美的魅力(例えば、質感、外観、臭気および味のマスキング、色)を改善するために、様々な目的で用いられる。
【0095】
この方法を用いることにより、ポリマーコーティングを得ることができる。この場合、気相モノマーが反応して表面に純粋な固体フィルムを直接形成する。したがって、重合とコーティングとが単一の処理工程で行われる。これにより、例えば非相溶性モノマーのせいで他の方法を用いては製造することができない、高度に架橋されたコーティングの形成が可能となる。例えばポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)および他の多くのフッ素ポリマー、導電性ポリマー、ならびに高度に架橋された有機ネットワークのように、溶解性が限られている、または溶解性がまったくないポリマーで表面を修飾することは、CVDプロセスの応用における既知のギャップである。
【0096】
CVDプロセスにおける望ましくない副反応として、気相からの粒子の形成(均一な堆積)も発生する可能性がある。典型的には、均一な堆積は反応器の最も高温の点で起こり、温度勾配が高い反応器ではより顕著になる。
【0097】
しかしながら、本発明による撹拌床反応器の場合のように、粒子が常に動いていれば、これらの望ましくない副反応を回避することができる。この動きにより高い熱輸送がもたらされ、反応器内の温度勾配が最小限に抑えられる。さらに、反応器の壁への粒子の固着も抑制される。
【0098】
本発明による撹拌床反応器のさらなる使用例としては、ゲルダートC級の微粒子と気相との任意の化学反応が含まれ得る。このような化学反応の例としては、次のようなものが挙げられる:
-エッチング
-炭化および焼成
-還元または酸化反応
-ハロゲン化、アルキル化、ニトロ化、ヒドロホルミル化、シラン化等の固体の官能化
-撹拌触媒上での気体-気体反応、例えば、金属酸化物の表面での水蒸気からの水素の生成
-活性化、不動態化および洗浄等の表面処理
-超臨界乾燥を含む乾燥、アニーリング等の物理的プロセス
-固体または気体生成物との気体-固体反応、例えば、不均一触媒による化学反応。このような反応の一例は、チーグラー・ナッタ法によるポリエチレンの製造も挙げられる。
【0099】
不均一系触媒反応系において、すなわち気相からの反応物が固体触媒の表面で反応する場合、粒子と周囲の気相との間の良好な質量伝達および熱伝達に加えて、粒子床と反応器の壁との間の非常に良好な巨視的エネルギー輸送も存在する。粒子の一定の動きおよび粒子床全体の循環により高い熱輸送がもたらされ、その結果、ホットスポットが回避され、床全体が弱い温度勾配を有するのみとなる。
【0100】
撹拌床反応器における本発明の方法のさらなる応用例は、例えばHPLCおよびUHPLCカラム用の分離剤として用いることができるゲルダートC級の粒子から進行するコアシェル構造の製造であり得る。コアシェル粒子が充填されたカラムは、同じ直径の完全多孔質粒子が充填されたカラムよりも著しく高い効率を実現する。これらの粒子構造は、本発明の方法を介して有利な方法で製造することができる。
【0101】
製造された生成物は、例えばNMR(核磁気共鳴)、EA(元素分析)、IR(赤外分光法)、ラマン分光法、X線回折、SEM(走査型電子顕微鏡)、定性分析、定量分析、電気重量測定、伝導度測定、電位差測定、ポーラログラフィー、粒径測定、表面特性評価、クロマトグラフィー、質量分析、密度測定、窒素収着、熱重量測定、熱量測定、ICP発光分光法、容積測定、分光測光法、イオンクロマトグラフィー等の確立された適切な分析方法を用いて分析することができる。
【0102】
特性評価には下記の分析方法および機器が用いられる。
【0103】
無機分析・元素分析:
実施例で報告されるCの含有量は、Leco CS230分析装置を用いて測定される。Oおよび必要に応じてNまたはHの含有量の測定には、Leco TCH-600分析装置が用いられる。他の報告されている元素の定性的および定量的測定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析(Optima 7300DV、Perkin Elmer社製)によって行われる。この目的のために、サンプルをマイクロ波(Anton Paar社製のMicrowave 3000)中で酸分解(HF/HNO)した。ICP-OESの測定は、酸性水溶液(例えば、酸性化された飲料水、廃水、およびその他の水サンプルや土壌や堆積物の王水抽出物等)の分析に用いられる、ISO 11885「Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry (ICP-OES) (ISO 11885:2007); German version of EN ISO 11885:2009」に基づいている。
【0104】
粒子サイズの測定:
本発明に関連して、粒度分布は、ISO 13320に従って、Horiba LA950を用いた静的レーザー散乱法により測定される。サンプルの調製において、測定溶液中の粒子の分散には、測定されるのが凝集体のサイズではなく個々の粒子のサイズであることを確認するために特別な注意が払われなければならない。粒子はエタノールに分散させて測定した。この目的を達成するために、測定前に、必要に応じて分散液をLS24d5ソノトロードを備えるHielscher UIS250v実験室用超音波装置において250Wの超音波で4分間処理した。
【0105】
BET表面積の測定:
材料の比表面積は、Sorptomatic 199090装置(Porotec社製)またはSA-9603MP装置(Horiba社製)を用いて、BET法(窒素を用いたDIN ISO 9277:2003-05に準拠した測定)により窒素によるガス吸着を介して測定される。
【0106】
骨格密度:
骨格密度、すなわち外部からガスがアクセス可能な細孔空間のみの体積に基づく多孔質固体の密度は、DIN 66137-2に準拠したHeピクノメトリーによって決定される。
【0107】
ガスがアクセス可能な細孔容積:
グルヴィッチのガスがアクセス可能な細孔容積は、DIN66134に従って窒素によるガス吸着測定によって決定される。
【0108】
変換率:
変換率は、例えば、用いた出発物質(反応物)のモルでの物質量に対する、変換された出発物質のモルでの物質量の商として計算される。これらの例では、用いられたSiH分子の量がSiに変換されることを示す。
【数12】
【0109】
収率:
収率は、実際に得られる生成物の質量と、理論上可能な最大の生成物の質量との商である。収率は質量比量としてパーセントで表される。
【数13】
【0110】
これは、ガス流に同伴される粒子の損失の尺度である。
【実施例
【0111】
SiHは、Linde GmbHから入手した。
【0112】
すべての実施例において、多孔質粒子として非晶質多孔質炭素を用いた。
-仕様表面積=1907m/g
-細孔容積=0.96cm/g
-体積加重粒径中央値D50=2.95μm
-粒子密度=0.7g/cm
-ゲルダート級により分類される凝集性:C
【0113】
実施例における変換率の計算:
変換率は、用いた出発物質(反応物)のモルでの物質量に対する、変換された出発物質のモルでの物質量の商として計算される。これらの実施例では、用いられたSiH分子の量がSiに変換されることを示す。
【数14】
【0114】
実施例における収率の計算:
収率は、実際に得られた生成物の質量と、理論上可能な最大の生成物の質量との商である。収率は質量比量としてパーセントで表される。
【数15】
【0115】
これは、ガス流に同伴される粒子の損失の尺度である。
【0116】
実験例を実施するにあたり、下記の反応器を用いた。
【0117】
本発明の実施例1~5のすべてに用いた反応器は、内半径r=121.5mm、および高さh=512mmを有する円筒形の下部(ビーカー)と、平らな底を備える複数の接続(例えば、ガス供給、ガス排出、温度測定、圧力測定のためのもの)を有する蓋とから構成された。壁の内部は存在しなかった。反応器の容積はV=24リットルであった。反応器の内側輪郭を回転軸を中心に回転させることにより生じる回転面の任意の断面の円周は763.4mmと計算された。用いたスターラーは、r=119.5mmのマルチフライトヘリカルスターラーであった。ヘリカルスターラーが完全に回転すると、回転面が形成される。この回転面の回転軸に垂直な任意の断面の円周は750.8mmであった。2つの円周から、W=0.98のクローズクリアランスが得られた。らせんの高さは、反応器の内側のクリアランスの高さの約75%に相当した。撹拌粒子床の高さがらせんの高さよりも低くなるように反応器を満たした。したがって、プロセスゾーンの50%超が、クローズクリアランスW=0.98を有するスターラーの領域にあった。ビーカーをジャケットヒーターで電気的に加熱した。温度は原則的にヒーターと反応器との間で測定した。ガスは、ガスを移動床に直接導入する外径d=6mmの2本の浸漬管を介して床の下半分(反応器底部から125mm上)に供給した。
【0118】
比較例1(本発明によらない)で用いた流動床反応器は、外径160mm、および高さ1200mmの円筒部分から構成されていた。円筒部分は底部チャンバーおよび流動床反応器自体で構成されていた。2つの部分はガス透過性の底によって互いに分離されていた。円筒形反応器部分の上部に、円筒形反応器部分と比較して断面積が2倍に広がった断面を有する反応器部分が続いた。反応器の上端には、ガス出口用のフィルター要素を備えた蓋があった。反応温度は反応器の壁の加熱によって調整され、加熱領域の高さはガス透過性底部から始まる円筒の長さの80%であった。プロセス温度に用いられる尺度は、加熱ジャケットと反応器の外壁との間の温度であった。加熱は電気的に行った。したがって、流動化ガスは、流動層反応器に流入する前にガスヒーターで予熱された。流動化ガス流は、直接制御されるソレノイドバルブを用いてパルス化された。流動床の品質の尺度として、流動化指数を用いた。
【0119】
予備試験では、流動床の圧力降下を測定することで最小流動速度を決定した。
【0120】
流動化指数の定義:
流動化指数FIは、理論上の達成可能な最大圧力損失ΔpWS,thに対する流動床上で測定された圧力損失ΔpWS,measurementの比として定義され、下記式1によって計算される。
【数16】
【0121】
理論上の達成可能な最大圧力損失は、ガス密度を無視して、床の質量m、重力による加速度g、および反応器の断面積AWSから、ΔpWS,th=m・g/AWSとして計算される。
【0122】
完全流動層である場合、流動化指数は1以下の値をとる。
【0123】
流動化指数の決定:
流動化指数は、測定された圧力損失と理論上の最大可能圧力損失との比である。流動化指数を決定するには、技術的な測定によって流動床の圧力損失を検出する必要がある。圧力損失は、流動床の底端と上端との間の差圧測定値として測定される。差圧測定器は、膜上で検出した圧力をデジタル値に変換し、圧力差を表示する。圧力測定ラインは、ガス透過性底部の直上および流動床の直上に配置されるように構成する必要がある。流動化指数を決定するには、導入された粒子床の重量を正確に検出することがさらに必要である。[VDI-Warmeatlas [VDI Heat Atlas], 11th edition, section L3.2 Stromungsformen und Druckverlust in Wirbelschichten [Types of Flow and Pressure Drop in Fluidized Beds], pp. 1371 - 1382, Springer Verlag, Berlin Heidelberg, 2013]も参照されたい。
【0124】
最小流動化速度の決定:
最小流動化速度は、空反応器の断面積に基づく流動化ガス速度であり、この速度で粒子床は、流れを通過する固定床から流動床へと移行する。最小流動化速度は、質量流量計を用いた調整された流動化ガス流の測定と、デジタル差圧計を用いた流動床の圧力損失の測定とを同時に行うことにより決定することができる。反応器の断面積が分かれば、測定された流動化ガス流から流動化ガス速度を計算できる。流動化ガス速度に対する圧力損失のプロットされたプロファイルは、流動床特性曲線と呼ばれる。流動床特性曲線は、高い流動ガス速度から始まり、この速度を徐々に減少させることによって記録されることに留意すべきである。純粋な固定床横断流の場合、圧力損失は直線的に増大する。関連する流動化指数FIは1未満である。十分に発達した流動床の場合、測定される圧力損失は一定である。関連する流動化指数FIは1に等しい。最小の流動化状態は、2つの領域の間の遷移に位置する。空の反応器の断面積に基づく関連する流動化ガス速度は、最小流動化速度に等しい。固定床から流動床への移行が範囲によって特徴付けられる場合、外挿された固定床特性曲線と外挿された流動床特性曲線との交点が最小流動化点として定義される。[VDI-Warmeatlas [VDI Heat Atlas], 11th edition, section L3.2 Stromungsformen und Druckverlust in Wirbelschichten [Types of Flow and Pressure Drop in Fluidized Beds], pp. 1371 - 1382, Springer Verlag, Berlin Heidelberg, 2013]も参照されたい。
【0125】
比較例2(本発明によらない)では、間接加熱ロータリーキルンが用いられた。このロータリーキルンは、長手軸を中心に回転可能な、直径20cm、加熱可能な容積30Lの石英ガラス製の回転管を備えていた。石英管の外壁の温度をプロセス温度の尺度として用いた。加熱は電気的に行われ、3つのゾーンで制御できた。シリコン浸透反応を行うためには、回転管を気密に密閉する必要がある。
【0126】
比較例1(本発明によらない):パルス流動化ガス流を用いた流動床反応器内でのケイ素含有材料の製造
多孔質出発材料としての非晶質炭素(比表面積=1907m/g、細孔容積=0.96cm/g、体積加重粒径中央値D50=2.95μm、粒子密度=0.7g/cm、ゲルダートC級)の粒子500gを反応器に導入した。
【0127】
粒子床は窒素からなる流動化ガスで流動化され、ガスの量は最小流動化速度が予備試験で確認された速度の少なくとも3倍となるような量であった。同時に、ソレノイドバルブを用いて、バルブの開位置と閉位置との間の周波数が3Hzになるように、ガス流が振動するように誘導した。次いで、反応器内の温度を設定温度の430℃まで上昇させた。温度の上昇を考慮して、流動化指数が0.95を超えるように流動化ガス流を調整した。
【0128】
設定温度が430℃に達した時点で、流動化ガスを10体積%のSiHを含む反応性ガスに置換した。バルブの開位置と閉位置との間の周波数が3Hzのガス流の脈動を、流動化ガスの切り替え中および切り替え後も維持し、さらに、FI=0.98の流動化指数の値だけでなく、シリコンの堆積中の多孔質出発材料の密度の変化により、流動化指数の値が常に0.95超となるように流動化ガスのガス量を調整した。
【0129】
2.6時間の反応時間の後、流動化ガスを窒素のパルス流に戻した。加熱出力を下げた。温度が50℃に達したところで、流動化ガス流を、窒素中に5体積%の酸素を含む流動化ガスに切り替え、流動化ガス流を60分間維持して、得られた生成物の表面に存在する反応性基の反応を制御した。次いで、反応器を室温まで冷却した。
【0130】
操作終了後、反応器から黒色固体990gが排出された。得られたケイ素含有材料を円筒形容器に導入し、ドラムフープミキサーで均質化した。流動床プロセスの結果として形成された凝集物は、篩い分けによって除去することができた。製造時の反応条件およびケイ素-炭素複合粒子の材料特性を表2にまとめる。
【0131】
比較例2(本発明によらない):回転管状反応器における本発明によらない方法によるケイ素含有材料の製造
回転管状反応器(内容積30L)に、比較例1と同じ多孔質炭素(比表面積=1907m/g、細孔容積=0.96cm/g、体積加重粒子中央値D50=2.95μm、粒子密度=0.7g/cm、ゲルダートC級の粒子)0.9kgを充填した。窒素で不活性化した後、反応器を430℃に加熱した。反応温度に達した時点で、反応ガス(N中10%SiH、計量速度2.3m/h)を反応器に8.5時間通過させ、その間、反応器を毎分約7回転の速度で回転させた。次いで、反応器を不活性ガスでパージした。生成物を反応器から取り出す前に、不活性ガス下で室温まで冷却した。製造時の反応条件およびケイ素-炭素複合粒子の材料特性を表2にまとめる。
【0132】
実施例1~5(本発明による):標準圧力(0.1MPa)下でシリコン前駆体としてモノシランSiHを用いる本発明の方法によるケイ素含有材料の製造(パラメータA~Dのそれぞれの値および実施例番号を表1にまとめる)
撹拌機構を備えた本発明による反応器(容積24L、直径25cm)に、比較例1および2と同じ多孔質炭素(比表面積=1907m/g、細孔容積=0.96cm/g、体積加重粒径中央値D50=2.95μm、粒子密度=0.7g/cm、ゲルダートC級の粒子)2.4kgを導入した。次いで、反応器の温度を240分間350℃に調整し、反応器を窒素で不活性化した。
【0133】
次いで、反応器を430℃に加熱した。反応温度に達した時点で、反応ガスを濃度Aおよび計量供給速度BでC時間反応器に通した。気相を反応器に供給しながら、粒子床を、反応性成分の平均滞留時間に対する循環時間の比がDであり、床の運動状態はフルード数3となるように、本発明によるクローズクリアランス撹拌機構、ヘリカル撹拌機によって循環させた。
【0134】
次いで、ケイ素含有材料を120分以内で70℃の温度まで冷却した。次いで、反応器を窒素で1時間、5体積%の酸素含有量を有する希薄空気で1時間、10体積%の酸素含有量を有する希薄空気で1時間、15体積%の酸素含有量を有する希薄空気で1時間、その後空気で1時間パージした。最後に、生成物を反応器から取り出した。
【0135】
【表1】
【0136】
製造時の反応条件およびケイ素炭素複合粒子の材料特性を以下の表2にまとめた。
【表2】
【0137】
用いる反応器に関係なく、同じ特徴的な材料特性を得ることができる。しかしながら、本発明による反応器系におけるSiH変換率、生成物収率および反応時間は、流動床およびロータリーキルンと比較して改善された。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌固定床中で粒子サイズがd 90 <20μmであるゲルダートC級の粒子と気相とを接触させて生成物を製造する方法であって、
前記粒子の処理がガス通過反応器のプロセスゾーンで行われ、前記プロセスゾーンが、撹拌された粒子床が気相と接触する反応器内の領域であり、前記粒子が前記気相との接触中にクローズクリアランス撹拌機によってプロセスゾーン内で循環され、
式1
【数1】
において、hのすべての値の半分について、前記プロセスゾーンW(h)におけるクローズクリアランスW(h)が0.9を超える場合、前記撹拌機の機構はクローズクリアランスであり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記撹拌機の機構の外周であり、u(h)は高さ座標hでの断面における前記反応器の内周である、前記方法。
【請求項2】
前記反応器のプロセスゾーンが回転対称であり、
前記撹拌機の機構が、式1
【数2】
[式中、
W(h)は回転対称の反応器における撹拌機の機構のクローズクリアランスであり、2つの回転面の回転軸に垂直な2つの平面断面の円周の商として定義され、hは高さ座標hを表し、
(h)は、平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の任意の複数の点において式2
【数3】
に従って計算される円形の内部断面の円周であり、
(h)は、回転軸から撹拌機の機構の外形までの距離であり、撹拌機の機構はそれに取り付けられるすべての構成要素を含み、
(h)は、平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の各任意の点において式3
【数4】
に従って計算される円形の回転外面の円周であり、該円形の回転外面は、回転軸の周りの反応器の内側輪郭の回転によって形成され、
(h)は、反応器の内側輪郭から回転軸までの距離であり、
hのすべての値の半分について、前記プロセスゾーンW(h)におけるクローズクリアランスW(h)が0.9を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子と前記気相との接触が0.08~5MPaで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記クローズクリアランス撹拌機を備える前記反応器のプロセスゾーンの床温度が30~1500℃の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の相互接続された反応器内で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化学的または物理的なプロセスが前記反応器のプロセスゾーン内で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学的プロセスが、新たな官能化による粒子表面の被覆、気相と粒子との反応、および粒子における気相の反応から選択される、請求項6に記載の方法。
【国際調査報告】