(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】哺乳動物における認知及び情緒的健康を支援するための、栄養素の組み合わせを使用する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241112BHJP
A61K 31/132 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20241112BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241112BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20241112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20241112BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20241112BHJP
A23K 20/111 20160101ALI20241112BHJP
A23K 20/121 20160101ALI20241112BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20241112BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20241112BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/132
A61K31/202
A61P25/28
A61P25/22
A61P43/00 121
A61K31/37
A61K31/12
A23K20/105
A23K20/111
A23K20/121
A23K20/158
A23K50/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516920
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022080035
(87)【国際公開番号】W WO2023073079
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】トロボ, ローラ
(72)【発明者】
【氏名】スタイナー, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】パン, ユアンロン
(72)【発明者】
【氏名】プレイトナー, ニコラス
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2B005AA06
2B150AA06
2B150AB10
2B150DA08
2B150DA09
2B150DA20
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2B150DB04
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4C206ZC75
(57)【要約】
組成物及び方法は、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを使用して、哺乳動物における認知及び情緒的健康を増強することができる。哺乳動物は、好ましくは、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における認知機能及び情緒的健康を増強する方法であって、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む組成物を前記哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記哺乳動物が、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が、加齢に伴う認知機能障害に関連する表現型を有しており、好ましくは前記表現型が、前記表現型を有していない対照哺乳動物と比較した、想起能力の低下、短期記憶障害、学習速度の低下、学習能力の低下、問題解決能力の低下、注意持続時間の減少、運動能力の低下、混乱の増加、又は認知症のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記情緒的健康の増強が、不安、ストレス、攻撃性、絶望、集中の欠如、若しくは易刺激性のうちの少なくとも1つを減少させること、及び/又は気分若しくは社会的行動のうちの少なくとも1つを改善することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投与する工程が、経口投与、経腸投与、非経口投与、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、ペットフード、ダイエタリーサプリメント、及びヒトが摂取するために配合された食品製品からなる群から選択される形態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組成物の単位剤形であって、(a)スペルミジンとエラグ酸との組合せ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組合せのうちの少なくとも1つを、前記組成物が投与される哺乳動物において認知機能及び情緒的健康を増強するのに有効な量で含む、組成物の単位剤形。
【請求項8】
前記哺乳動物が、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである、請求項7に記載の単位剤形。
【請求項9】
哺乳動物に投与するための組成物を製造する方法であって、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの他の原材料に添加して、前記組成物を形成する工程を含む、方法。
【請求項10】
前記組成物が、経口投与、経腸投与、非経口投与、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路による投与のために配合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの他の原材料が、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス、プレバイオティクス、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物が、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む組成物を投与する工程を含む方法であって、前記組成物が、哺乳動物における認知機能及び情緒的健康を増強するのに有効な量で前記哺乳動物に投与される、方法。
【請求項14】
前記組成物が、経口投与、経腸投与、非経口投与、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路によって投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物が、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本開示は、一般に、哺乳動物の栄養と、認知機能、行動、及び脳生理、さらには情緒的健康に対するその効果とに関する。特に、本開示は、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせなどの栄養素の組み合わせを利用して、高齢(aging)又は老齢(elderly)の哺乳動物、例えばヒト又はコンパニオンアニマルなどの哺乳動物における認知、並びに前記哺乳動物の思考、感情、及び行動の情緒的制御を支援する。
【0002】
[0002]老化した動物又は高齢の動物は、ある程度の認知障害を患うことが多い。加齢とともに進行する認知機能の低下を含む変化、並びに脳形態及び脳血管機能の加齢に伴う変化、例えば、脳の老化が一般に観察される。加齢に伴う又は加齢関連の認知障害は多くの形で顕在化し、特に、例えば、短期記憶障害、学習能力の低下、学習速度の低下、注意力の低下、運動能力の低下、及び/又は認知症の形で顕在化し得る。場合によっては、これらの認知機能の低下の明確な病因は不明である。他の場合には、認知障害は、認識されている疾患、障害、又は症候群、例えば、アルツハイマー病(AD)の発症又は進行から生じる。加齢関連認知低下は、ADとは区別され、ADとは独立して生じ得ることが知られている。
【0003】
[0003]認知障害の動物モデルは、生理学、神経学、解剖学、及び病理学を含むかかる状態の研究の強力な助けとなる。イヌは、認知タスクの役割に応じて変化する、学習及び記憶における加齢関連認知低下を示す有用なモデル動物である(Adams B et al.,2000a;Chan A D F et al.,2002;Su M-Y et al.,1998;及びTapp P D et al.,2003)。イヌにはコンパニオンアニマルとしての役割があることから、イヌにおけるこのような低下の研究自体が有用であるが、観察される低下が、ヒトにおいて見られる加齢に伴う認知機能の低下と類似しているという事実(Adams B et al.2000b)は、この研究をより一層有用なものにする。老化したイヌは、順調に高齢化したヒトと、AD患者の両方で見られるβアミロイドタンパク質などに関連する神経病理を発症する(Cotman CW and Berchtold,2002;及びCummings BJ et al.,1996)。しかしながら、イヌはADの全ての特徴を示すわけではなく、特にタウ含有の神経原線維変化(Dimakopoulos AC et al.,2002)は観察されていない。したがって、イヌにおける状態は区別され、イヌ認知機能不全症候群(Canine Cognitive Dysfunction Syndrome、CCDS)と呼ばれる。
【0004】
[0004]健康なイヌ及び不健康なイヌ(例えば、CCDSと診断されたイヌ)のいずれもが、進行性の認知障害及び神経病理学的変化を臨床的に有し得る(London E D et al.,1983)。さらに、高齢のイヌ及びCCDSと診断されたイヌは、様々な行動障害を示す。例えば、診断されたイヌでは、自分の名前又は聞き慣れたコマンドに応答しないこと、よく慣れた場所でも迷子になったり混乱したりすること、飼い主又は訪問者に挨拶又は応答しなくなること、日中の活動の減退を示すこと、円を描くように歩くこと、愛情を避けること、及び排尿又は排便コントロールを失うこと、が起こり得る。
【0005】
[0005]シニア(senior)のコンパニオンアニマルは、ペットの母集団の中で最も急速に拡大しているセグメントである。重要なことに、シニアのペットは、脳障害に関連する、不安、攻撃性及び認知障害などの行動変化を経験する。上記の混ざり合った行動変化は、ペット及び飼い主の情緒的幸福に対して測定可能で知覚される影響を有する。
【発明の概要】
【0006】
[0006]食事の変更は、脳関連障害などの、加齢に伴う多くの疾患の進行を遅延及び緩徐化するための強力な介入であり、消費者にはこの概念がますます認識されている。老化中に有益である、最も有効かつ科学的に検証された介入は、カロリー制限、栄養失調を招くことなく食品摂取を低減する食事レジメン、又は絶食レジメンの実施のいずれかに基づく。
【0007】
[0007]しかしながら、カロリー制限及び絶食は、栄養及び行動の著しい制約を伴うことから、ほとんどの人々は、そのような食事プロトコルへの遵守度が低くなる、又は生活様式への劇的な変化への抵抗が生じる。これらの課題はペットにも当てはまる。
【0008】
[0008]さらに、オートファジーを活性化することによる精神及び認知の健康の改善に関する既存のデータは、現在、カロリー制限、間欠的絶食、又は長期運動などの生活様式の変化に焦点を当てている。上記の生活様式は、特に中年及びシニアの人々にとって遵守が容易ではないため、当該集団のほとんどどの人にとってこの解決策は有効ではない。同時に、単一の栄養素の補給は、高用量を必要とする可能性、又は有効性が低い可能性があり、より効果的な組み合わせを発見する必要がある。
【0009】
[0009]したがって、本発明者らは、「カロリー制限模倣物質(caloric restriction mimetics、CRM)」として作用する栄養解決策又は栄養素を見出そうと試みた。CRMは、生活様式の変更を必要とせずに絶食の健康増進効果をシミュレートする成分として定義される。動物モデル及びヒトにおける既知CRM及び推定CRMのリストが、最近Madeo at al.Cell Metab.20191に発表されている。
【0010】
[0010]本開示は、CRMに関連付けられた非常によく検証された科学を活用して、第1に、老化中の認知パフォーマンス及び気分(認知、不安、社会的行動)を支援し、第2に、シニアペット、例えば7歳以上のシニア犬の生活の質と、間接的にその飼い主の生活の質とを大きく改善する、栄養解決策を明らかにする。
【0011】
[0011]行動上の利益を補完するものとして、ブレンドの「バイオマーカーシグネチャー」が齧歯類研究において示されている。バイオマーカーとしては、血中グルコース/インスリン代謝、血中酸化ストレスマーカー(例えば、C反応性タンパク質)、及びエピジェネティクスによって測定されるような生物学的老化の遅延、並びに炎症マーカーが挙げられる。非侵襲性バイオマーカーは、更にイヌの研究に使用でき、開業獣医への情報伝達のために使用できる。
【0012】
[0012]本明細書に記載されるように、本発明者らは、文献で報告された他の解決策と同様の効果サイズのリソソーム生合成に関与する転写因子EB(TFEB)下流遺伝子の相乗的活性化を見出した。この効果は、認知と情緒的健康とを同時に支援する効力を増大させるはずである。
【0013】
[0013]単一成分の補給と比較して、本開示は、認知及び情緒的健康(例えば、不安、気分及び絶望)を支援するための、栄養素のより効率的かつ相乗的なブレンドを提供する。当該ブレンドは、生活様式の変化と、成体及びシニアのペット及びヒトにおける認知及び情動状態を支援するための有効な栄養解決策との間のギャップを埋める。
【0014】
[0014]したがって、一般的な実施形態において、本開示は、認知機能及び情緒的健康を増強するための栄養素の組み合わせを含む組成物を提供する。本開示はまた、認知機能及び情緒的健康を増強するのに有効な量でこれらの組成物の1つを投与することを含む方法も提供する。認知機能及び情緒的健康の増強は、(a)認知障害、神経変性状態、脳卒中、認知症、又は加齢関連認知低下のうちの少なくとも1つを予防、低減、遅延及び/若しくは治療すること;(b)不安、抑うつ、否定的情動、ストレス、攻撃性、絶望、集中の欠如、若しくは易刺激性のうちの少なくとも1つを減少させること;並びに/又は(c)気分、幸せ、肯定的情動、精神的幸福、若しくは社会的行動のうちの少なくとも1つを維持又は改善すること(例えば、衝動的行動を減少させること)を含み得る。
【0015】
[0015]組成物は、哺乳動物(例えば、認知及び情緒的健康の増強を必要とする哺乳動物)、好ましくはコンパニオンアニマル又はヒト、例えば、高齢のコンパニオンアニマル、老齢のコンパニオンアニマル、高齢のヒト又は老齢のヒトに投与される。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態では、栄養素の組み合わせは、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、栄養素の組み合わせは、ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせを含む。
【0017】
[0017]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、特にコンパニオンアニマル又はヒト、例えば高齢のコンパニオンアニマル又は高齢のヒトにおいて、認知及び情緒的健康を改善する組成物及び方法である。
【0018】
[0018]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、認知障害、神経変性状態、脳卒中、及び認知症の治療及び/又は予防のための組成物及び方法である。
【0019】
[0019]本開示によって提供される1つ以上の実施形態の更に別の利点は、ペット及びペットの飼い主の両方の生活の質全体を改善することである。
【0020】
[0020]本開示のさらなる利点は、個体及びそのペットの寿命だけでなく、生活の質も改善することである。
【0021】
[0021]追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本明細書に開示される実験例において、DHAとクルクミンとの組み合わせによりオートファジー関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図1B】本明細書に開示される実験例において、DHAとクルクミンとの組み合わせによりオートファジー関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図2A】本明細書に開示される実験例において、DHAとクルクミンとの組み合わせによりリソソーム関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図2B】本明細書に開示される実験例において、DHAとクルクミンとの組み合わせによりリソソーム関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図3A】本明細書に開示される実験例において、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせによりオートファジー関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図3B】本明細書に開示される実験例において、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせによりオートファジー関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図4A】本明細書に開示される実験例において、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせによりリソソーム関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【
図4B】本明細書に開示される実験例において、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせによりリソソーム関連遺伝子に関して得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0026]定義
[0027]以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0024】
[0028]パーセンテージはすべて、特に明記しない限り組成物の総重量に対する重量によるものとする。同様に、比はすべて、特に明記しない限り重量によるものとする。pHについての参照がなされる場合には、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0025】
[0029]更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers)、整数(whole)又は分数、を含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲に対応するものと解釈されたい。
【0026】
[0030]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「1つの」、「ある」、及び「当該」(「a」、「an」及び「the」)の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「原材料/成分(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、そのような「原材料/成分」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。
【0027】
[0031]同様に、「含む/構成される(comprise)」、「含む/構成される(comprises)」、及び「含む/構成される(comprising)」という用語は、排他的ではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本開示により提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素を含まない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、識別された構成成分「から本質的になる」、及び「からなる」実施形態の開示でもある。
【0028】
[0032]本明細書で使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合には、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきではない。本明細書で開示されるすべての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0029】
[0033]「動物」には、齧歯類、水生哺乳動物、イヌ及びネコなどの飼育動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳動物」、又はこれらの複数形が使用される場合、これらの用語はまた、文章の文脈によって示される、又は示すことを目的としている効果について能力を有する任意の動物、例えば、オートファジーが可能な動物にも適用される。本明細書で使用するとき、用語「患者」は、本明細書で定義される治療を受けている又は治療を受ける予定の動物、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトを含むと理解される。本明細書で使用するとき、「個体」及び「患者」という用語は、多くの場合、ヒトを指して使用されるが、本開示はヒトに限定されない。
【0030】
[0034]したがって、「個体」及び「患者」という用語は、本明細書で開示される方法及び組成物が有益となり得る任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。実際に、ヒト以外の動物は、ヒトの状態によく似た長期の重篤な病気を経験し、老化の影響も経験する。
【0031】
[0035]ヒトの文脈における用語「老齢」は、少なくとも55歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。ヒトの文脈における用語「中高年者(older adult)」又は「高齢個体(ageing individual)」は、少なくとも45歳、好ましくは50歳超、より好ましくは55歳超の年齢を意味し、老齢の個体を含む。
【0032】
[0036]コンパニオンアニマル(すなわち、ネコ又はイヌ)などの他の動物については、「中高年」又は「高齢個体」とは、その個々の種、及び/又は種内の属において、平均寿命の50%を超えた動物をいう。動物は、平均期待寿命の66%を超えた場合、好ましくは平均期待寿命の75%を超えた場合、より好ましくは平均期待寿命の80%を超えた場合に、「老齢」又は「シニア」であるとみなされる。高齢のネコ又はイヌは、少なくとも約5歳齢である。老齢又はシニアのネコ又はイヌは、少なくとも約7歳齢である。
【0033】
[0037]「認知機能」という用語は、精神的安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推論能力、思考能力、判断能力、弁別能力若しくは選択能力、学習能力、学習容易性、知覚、直観、注意、及び認識のうちの1つ以上を含む、脳の特別な、正常な、又は適切な生理的活動を指す。「認知機能の増強」又は「認知機能の改善」は、精神的安定、記憶/想起能力、問題解決能力、推論能力、思考能力、判断能力、弁別能力若しくは選択能力、学習能力、学習容易性、知覚、直観、注意、及び認識のうちの1つ以上を含む、脳の特別な、正常な、又は適切な生理的活動における、当技術分野で好適な任意の手段によって測定したときの、任意の改善を指す。
【0034】
[0038]更にこれに関して、認知は、思考、経験、及び感覚を通じて学習及び理解する精神的プロセスである。認知は、知覚;注意;知識、記憶、判断及び評価の形成;推論、問題解決及び意思決定;並びに言語の理解及び生成を含む。
【0035】
[0039]非限定的な例として、認知機能は、認知領域ごとに特定される種々の認知課題によって評価できるが、本明細書に開示される組成物及び方法の様々な実施形態は、特定のテストに限定されない。
【0036】
[0040]例えば、実行機能(例えば、概念形成、抽象化、セットシフト、セット維持、プランニング、セルフモニタリング、注意の配分)の認知領域は、例えば、ウィスコンシンカード分類検査(WCST)、トレイルメイキングテストPart B(TMT B)、ストループカラーワード干渉テスト(SCWT)、カテゴリーテスト、積木模様(WAIS-R)、絵画完成(WAIS-R)、概念シフトタスク(CST)、ロンドン塔課題(TOL;CANTAB)、SOC(Stockings of Cambridge;CANTAB)、次元内/次元外シフトテスト(CANTAB;IED)、空間スパン(SSP;CANTAB)、ラフ図形流暢性検査(RFFT)、言語流暢性-文字流暢性及び意味カテゴリー流暢性検査、制御された口頭単語連想テスト(COWAT)、及びDelis-Kaplan実行機能システム(D-KEFS)などの一般的な神経認知テストにより評価できる。
【0037】
[0041]別の例として、注意及び処理速度の認知領域は、数字符号置換検査(DSST;WAIS-R)、数唱(順向、逆向)(WAIS-R)、持続処理課題(CPT)、反応時間(RTI;CANTAB)、選択反応時間(CRT;CANTAB)、単純反応時間(SRT;CANTAB)、トレイルメイキングテストPart A(TMT A)、定速聴覚的連続加算テスト(PASAT)、及び連続7減算テスト(SSST)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0038】
[0042]更に別の例として、作業記憶の認知領域は、計算(WAIS-R)、数唱(順向、逆向)(WAIS-R)、遅延認識スパンテスト(DRST)、空間作業記憶(SWM;CANTAB)、語音整列(LNS;WMS-R)、論理的記憶(WMS-R)、及びNバック課題などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0039】
[0043]例えば、言語学習及び記憶の認知領域は、カリフォルニア言語学習テスト(CVLT)、レイ聴覚性言語学習検査(RAVLT)、リバーミード行動記憶検査(RBMT)、改訂版ホプキンス言語学習テスト(HVLT-R)、論理的記憶(WMS-R)、言語性対連合(VPA;WMS-R)、視覚的言語学習テスト(VVLT)、数唱(順向、逆向)(WAIS-R)、Luria言語学習テスト(LVLT)、連続7減算テスト(SSST)、及び言語認識記憶テスト(VRM;CANTAB)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0040】
[0044]別の例として、視覚学習及び記憶の認知領域は、視覚的再生(WMS-R)、ベントン視覚記銘検査(VRT)、ベントン視覚弁別検査(VFD)、Rey-Osterrieth複雑図形検査(ROCF)、Kimuraの図形再認課題(RFT)、視覚的言語学習テスト(VVLT)、パターン認識記憶(PRM;CANTAB)、空間認識記憶(SRM;CANTAB)、遅延見本合わせ(DMS;CANTAB)、対連合学習(PAL;CANTAB)、及び同画探索検査2(MFFT-20)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0041】
[0045]更に別の例として、言語(language and verbal)理解の認知領域は、制御された口頭単語連想テスト(COWAT)、言語流暢性-意味カテゴリー流暢性及び文字流暢性、類似(WAIS-R)、言葉(WAIS-R)、知識(WAIS-R)、理解(WAIS-R)、及びトークンテストなどの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0042】
[0046]例えば、視空間/知覚処理の認知領域は、線分傾斜の判定(Judgement of Line Orientation)(JOLO)、ベントン視覚弁別検査(VFD)、積木模様(WAIS-R)、及び視空間スパン(順方向及び逆方向)(WMS-R)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0043】
[0047]別の例として、簡易的精神状態(brief mental status)及び一般知能の認知領域は、ミニメンタルステート検査(MMSE)、レーヴン漸進的マトリックス、改訂版ウェクスラー成人知能検査(WAIS-R)、全国成人読解テスト(NART)、ウェクスラー成人読解試験(WTAR)、及び非言語性知能テスト-3(TONI-3)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価できる。
【0044】
[0048]さらに別の例として、認知バッテリーの認知領域は、ケンブリッジ神経心理テスト自動バッテリー(CANTAB)、改訂版ウェクスラー記憶検査(WMS-R)、改訂版ウェクスラー成人知能検査(WAIS-R)、Victoria症状妥当性検査(VSVT)、CalCAP(California Computerised Assessment Package)、CNSバイタルサイン、マサチューセッツ総合病院認知及び身体機能質問票(CPFQ)、及びDelis-Kaplan実行機能システム(D-KEFS)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価することができる。
【0045】
[0049]例えば、精神運動機能の認知領域は、指タップ、溝付きペグボードテスト、及びパーデューペグなどの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価することができる。
【0046】
[0050]別の例として、意思決定及び応答制御の認知領域は、Go/No-go連合課題(GNAT;CANTAB)、情報収集課題(IST;CANTAB)、及びケンブリッジ・ギャンブル課題などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価することができる。
【0047】
[0051]別の例として、誘導の認知領域は、大/小円(Big/Little Circle)(BLC;CANTAB)などの1つ以上の一般的な神経認知テストによって評価することができる。
【0048】
[0052]本明細書で使用されるとき、「情緒的健康」は、例えば、臨床面接、行動-症状チェックリスト、パーソナリティの自己報告尺度、状態、特性及び行動、並びに投影検査(例えば、描画、文章完成、物語、インクブロット)、又は情動反応及び情動調節に関連する生理学的マーカー(例えば、心拍数、心拍変動、呼吸速度、皮膚コンダクタンスなどの自律神経系関連マーカー;例えば、中枢神経系関連:扁桃体、海馬、前頭前皮質、情動調節ネットワークのような、気分関連、ストレス関連、又は情動調節関連の脳領域及びネットワークの構造、機能又は活性化;EEG及び事象関連電位、例えば、情動認識に関連するものなど)のうちの1つ以上によって評価できる。「行動」という用語は、動物が、所与の刺激又は一連の条件に応答又は反応して行う任意のことを意味する。「行動の増強」又は「行動の改善」とは、動物が所与の刺激又は一連の条件に応答又は反応して行う任意の行動(anything)の任意の改善を意味する。本明細書において、「行動」は「行動機能」と同義に使用される。
【0049】
[0053]さらにこの点に関して、情緒的健康は、幸福の感覚及び実際の生活上の事象に対処する能力に関する。良好な情緒的健康を有する人々及び動物は、自らの思考、感情、及び行動を適切に管理することができ、実生活の課題に良好に対処し、主として良好な精神状態にあり、良好な社会的交流を維持する。
【0050】
[0054]情緒的健康の低下の徴候としては、悲しみ又は落ち込みを感じること、混乱した思考を有すること、集中力の低下を示すこと、過度の恐怖又は心配を有すること、又は極端な罪悪感を有すること、極端な気分の高低の変化を示すこと、友人(ペット)及び活動からの離脱を示すこと、著しい疲労又は低エネルギーを感じること、睡眠に問題を有することが含まれる。
【0051】
[0055]用語「状態」及び「疾患/障害」は、任意の疾患、状態、症状、又は徴候を意味する。「予防」は、状態又は障害のリスク、発生率及び/又は重症度の低減を含む。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」には、予防的治療又は抑止的治療(対象とする病的状態又は障害を予防する及び/又は発症を遅らせる治療)と、治癒的治療、治療的治療、又は疾患修飾的治療との両方が含まれ、例えば、診断された病的状態又は障害の治癒、遅延、症状の軽減、及び/又は進行の停止のための治療的手段、並びに、疾患に罹患する危険性がある患者、又は疾患に罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療が含まれる。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」は、対象が全快するまで治療することを必ずしも意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」はまた、1つ以上の主たる予防手段又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。非限定的な例として、処置/治療は、ペットの飼い主、患者、介護者、医師、看護師、又は別の医療専門家によって実施され得る。
【0052】
[0056]本明細書で使用するとき、予防又は治療上の「有効量」は、個体において、欠乏を防ぐ量、疾患若しくは医学的状態を治療する量、又は、より全般的には、個体に対して、症状を低減する量、疾患の進行を管理する量、若しくは栄養学上の利益、生理学上の利益若しくは医療上の利益を提供する量である。相対的な用語「改善された」、「増加した」、「増強された」などは、本明細書に開示される栄養素の組み合わせ(例えば、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又はDHAとクルクミンとの組み合わせ)を含む組成物の効果を、この原材料の特定の組み合わせを含まないが他の点では同一である組成物を基準にして表す。
【0053】
[0057]用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、コンパニオンアニマル又はヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。本明細書に記載の多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に記載の必須成分(essential elements)及び制限に加え、本明細書に記載の、又はそうでなければ食事療法に有用な、任意の追加の若しくは任意選択の原材料、構成成分、又は制限を含んでよく、これらから構成されてよく、又は本質的にこれらから構成されてよい。
【0054】
[0058]本明細書で使用するとき、「完全栄養」は、その組成物が投与される動物にとって、唯一の栄養源とするのに十分な、十分な種類及び量の主要栄養素(タンパク質、脂質及び炭水化物)及び微量栄養素を含有する。個体は、このような完全栄養組成物から、当該個体の栄養必要量の100%を受容可能である。
【0055】
[0059]本明細書で使用するとき、「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び動物対象のための投与量単位として好適な物理的に小分けされた単位を指し、各単位は、製薬上許容可能な希釈剤、担体、又はビヒクルとともに、所望の効果をもたらすのに十分な量の、予め定められた量の、本明細書に開示される組成物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及び宿主体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。
【0056】
[0060]実施形態
[0061]本開示の一態様は、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又はドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせなどの栄養素の組み合わせを、哺乳動物における認知及び情緒的健康(例えば、思考、感情、及び行動の情緒的制御)を支援又は増強するのに有効な量で、含む組成物である。例えば、いくつかの実施形態では、単位剤形は、ある量の、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又はドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせなどの栄養素の組み合わせを、哺乳動物における認知及び情緒的健康を支援又は増強するのに有効な量で含む。
【0057】
[0062]本開示の別の態様は、哺乳動物(例えば、認知及び情緒的健康の増強を必要とする哺乳動物)、例えば高齢のヒト又はコンパニオンアニマルなどの哺乳動物における認知的及び情緒的健康を支持又は増強する(例えば、思考、感情、及び行動の情緒的制御を増強する)ための方法である。この方法は、(1)認知機能及び/又は情緒的健康の低下を有する、又はその危険性がある、高齢の哺乳動物を識別する工程と、(2)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又はドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせなどの栄養素の組み合わせの有効量を上記哺乳動物に投与する工程とを含む。
【0058】
[0063]好ましくは、本方法はカロリー制限なしで行われる。例えば、組成物は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1ヶ月の期間にわたって、少なくとも1週間に1回、好ましくは週の7日間全てにおいて哺乳動物に投与することができ、投与期間中の1日のカロリー摂取量は、前の週のカロリー摂取量、好ましくは前の月のカロリー摂取量と実質的に同じである。
【0059】
[0064]小麦胚芽は、スペルミジンに富んでいる。したがって、本組成物の一部の実施形態は、本組成物中のスペルミジンの少なくとも一部を含む小麦胚芽及び/又は濃縮小麦胚芽抽出物を含む。
【0060】
[0065]エラグ酸は、フェノール酸である。本組成物の一部の実施形態は、本組成物中のエラグ酸の少なくとも一部を含むザクロ及び/又は濃縮ザクロ抽出物を含む。
【0061】
[0066]ドコサヘキサエン酸(DHA)は、C22:6n-3である。組成物中のDHAの少なくとも一部は、遊離形態(脂肪酸又はその生理学的に許容される塩として)であってもよく、又は脂肪酸誘導体の構造に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、DHAの少なくとも一部を含むトリグリセリドを含む。DHAは、例えば、卵、藻類、又は魚油などの天然供給源中に存在する。
【0062】
[0067]クルクミンは、ポリフェノール1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ヘプタ-1,6-ジエン-3,5-ジオンである。
【0063】
[0068]これらの化合物の濃度及び/又は1日用量の非限定的な例を以下に示す。
【0064】
[0069]ペットに投与されるクルクミンについては、1日に動物の体重1kg当たり0.25mg~250mgのクルクミンが、本明細書に開示される方法及び組成物の様々な実施形態において好適である。一態様では、1日に動物の体重1kg当たり0.5mg~約100mgのクルクミンを投与することができる。クルクミンは、好ましくは食品の0.00025%~2%、好ましくは食品の0.0005%~1%の量で存在する。
【0065】
[0070]ヒトに投与されるクルクミンについては、クルクミンは、1食当たり約0.01mg~約2.0g、好ましくは1食当たり約0.1mg~約2.0g、更により好ましくは1食当たり約10.0mg~約1.0gの量で存在してもよい。
【0066】
[0071]ヒトの場合、特に好ましいフェノールは、ロスマリン酸、エラグ酸、及びクロロゲン酸、又はこれらの任意の可能な組み合わせ若しくは混合物である。フェノールのそれぞれ、又はこれらのフェノールの組み合わせ(又は抽出物の形態)の合計は、組成物中に、又は粉末形態若しくは濃縮形態から再構成された組成物中に、0.1%~1%、0.15%~0.8%、0.15%~0.7%、0.15%~0.6%、0.15%~0.5%、0.2%~0.4%の濃度で存在でき、又は組成物中に約0.3%の濃度で存在できる。
【0067】
[0072]ペットに投与されるエラグ酸について、本明細書に開示される方法及び組成物の様々な実施形態における好適な用量は、1日に動物の体重1kg当たり0.1mg~1000mgである。一態様では、1日に動物の体重1kg当たり1mg~約500mgのエラグ酸を投与することができる。食品において、エラグ酸は、好ましくは食品の0.1mg/kg~10,000mg/kg、より好ましくは食品の10mg/kg~1000mg/kg、最も好ましくは食品の100mg/kg~750mg/kgで存在する。
【0068】
[0073]ヒトに対するエラグ酸の非限定的であるが特に好ましい用量としては、50mg~200mgの1日用量、及び対象の体重1kg当たり0.83mg~3.33mgが挙げられる。イヌに対するエラグ酸の非限定的であるが特に好ましい用量としては、15mg~60mg(例えば、10kgのイヌの場合)の1日用量、及びイヌの体重1kg当たり1.5mg~6mgが挙げられる。エラグ酸供給源の例としては、2g~8gの生栗及び87mL~350mLのザクロ果汁が挙げられる。
【0069】
[0074]ペットに投与されるDHAについて、本明細書に開示される方法及び組成物の様々な実施形態における好適な用量は、1日に動物の体重1kg当たり1mg~1000mgのDHAである。一態様では、1日に動物の体重1kg当たり5mg~約750mgのDHAを投与することができる。DHAは、好ましくは食品の0.005%~2%、好ましくは食品の0.05%~2%の量で存在する。
【0070】
[0075]ヒトについては、オメガ-3脂肪酸(例えば、DHA)の1日量の好ましい実施形態は、1日当たり約50mg~約5gのオメガ-3脂肪酸、好ましくは1日当たり約100mg~約5gのオメガ-3脂肪酸、より好ましくは1日当たり約250mg~2.5gのオメガ-3脂肪酸、最も好ましくは1日当たり約0.5g~約1.5gのオメガ-3脂肪酸である。
【0071】
[0076]ペットについては、本明細書に開示される方法及び組成物の一部の実施形態は、体重1kg当たり0.05mg~1g、好ましくは体重1kg当たり1mg~200mg、より好ましくは体重1kg当たり5mg~150mg、更により好ましくは体重1kg当たり10mg~120mg、最も好ましくは体重1kg当たり40mg~80mgの重量範囲でオートファジー誘導因子(例えば、スペルミジン)の一日用量を投与する工程を含み得る。典型的には、1日用量当たり50pg~10gのオートファジー誘導因子、好ましくはスペルミジン化合物を、1回又は複数回に分けて投与することができる。
【0072】
[0077]ヒトに投与されるスペルミジンについては、本明細書に開示される方法及び組成物の様々な実施形態における好適な用量は、1日に動物の体重1kg当たり0.09mg~50mgである。一態様では、1日に動物の体重1kg当たり0.1mg~約25mgのスペルミジンを投与することができる。食品において、スペルミジンは、好ましくは食品の0.1mg/kg~10.00mg/kg、より好ましくは10mg/kg~500mg/kg、最も好ましくは食品の25mg/kg~250mg/kgで存在する。
【0073】
[0078]組成物は、任意の哺乳動物による摂取のために配合することができる。ある実施形態では、哺乳動物はヒト以外であり、特定の実施形態では、哺乳動物はコンパニオンアニマルである。例示的な実施形態は、コンパニオンアニマルなどのペット、例えばイヌ又はネコによる摂取のために配合された組成物を特徴とする。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。哺乳動物に投与される組成物は、ペットフード、ダイエタリーサプリメント、又はヒトが摂取するために配合された食品製品であり得る。
【0074】
[0079]組成物は、健康な高齢の哺乳動物への投与のために配合され得る。特定の実施態様では、哺乳動物は、加齢に伴う認知障害に関連する表現型を有する。かかる表現型は、該表現型を有していない対照動物と比較した、想起能力の低下、短期記憶障害、学習速度の低下、学習能力の低下、問題解決能力の低下、注意持続時間の減少、運動能力の低下、混乱の増加、又は認知症のうちの1つ以上を含み得る。
【0075】
[0080]組成物は、定期的に投与することができ、いくつかの実施形態では、少なくとも1日1回である。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも約1週間、又は少なくとも約1ヶ月、又は少なくとも約3ヶ月から少なくとも約1年又はそれ以上(year longer)、哺乳動物の生涯に及ぶ期間にわたって、毎日の食事レジメンの一部として投与される。治療に有効な用量は当業者により決定され得るものであり、状態の重症度並びに個体の体重及び全身状態など、当業者に公知のいくつもの因子に応じて異なり得る。
【0076】
[0081]本組成物は、好ましくは少なくとも週2日、より好ましくは少なくとも週3日、最も好ましくは週7日;少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は更に長い期間、個体に投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、例えば、少なくとも治療効果が達成されるまで、数日にわたって連続的に個体に投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、少なくとも30日間、60日間、又は90日間連続で毎日個体に投与することができる。
【0077】
[0082]上記の投与例は、間断のない連日投与を必要とするものではない。それよりむしろ、投与期間中の2~4日間の中断など、投与には何回かの短期間の中断があってもよい。本組成物の理想的な投与継続期間は当業者により決定され得る。
【0078】
[0083]用語「長期投与」は、1ヶ月を超える反復投与又は反復摂取の期間を意味する。特定の実施形態では、2ヶ月、3ヶ月、又は4ヶ月超の期間が好ましい。5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、又は10ヶ月超を含む、より長期間も好ましい。11ヶ月又は1年を超える期間も好ましい。1年、2年、又は3年以上の長期間に及ぶ長期使用が、本開示に含まれる。特定の高齢の動物については、当該動物は、その残りの生涯にわたって定期的な摂取を続けることになるであろう。このような摂取が「長期」摂取と呼ばれる場合もある。
【0079】
[0084]好ましい実施形態では、本組成物は、個体に経口投与又は経腸投与(例えば経管栄養)される。例えば、本組成物は、飲料、カプセル、錠剤、散剤又は懸濁液剤として個体に投与することができる。
【0080】
[0085]本組成物は、ヒト及び/又は動物が摂取するのに好適ないかなる種類の組成物であってもよい。例えば、本組成物は、食品組成物、ダイエタリーサプリメント、栄養組成物、ニュートラシューティカルズ、摂取前に水又は乳で再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬品、飲料及びドリンクからなる群から選択され得る。一実施形態では、本組成物は、経口栄養補助食品(ONS)、完全栄養配合物、医薬品、薬剤又は食品製品である。好ましい実施形態では、本組成物は個体に飲料として投与される。本組成物は粉末として小袋に保存され、次に使用のために水などの液体に懸濁されてもよい。
【0081】
[0086]経口投与又は経腸投与が不可能である、又は推奨されない一部の場合には、本組成物はまた、非経口投与されてもよい。
【0082】
[0087]いくつかの実施形態では、本組成物は単回投与剤形で個体に投与され、すなわち、食事と組み合わせて個体に与えられる1つの製品中に全ての化合物が存在している。他の実施形態では、本組成物は別個の剤形で同時投与され、例えば少なくとも1つの構成成分と本組成物の他の構成成分のうちの1つ以上は別個のものとして同時投与される。
【0083】
[0088]様々な実施形態において、ペットフード又はペット用トリート組成物は、約15%~約50%の粗タンパク質を含む。粗タンパク質材料は、大豆ミール、ダイズタンパク質濃縮物、トウモロコシグルテンミール、小麦グルテン、綿実、及びピーナッツミールなどの植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、及び肉タンパク質などの動物性タンパク質を含み得る。本明細書で有用な肉タンパク質の例としては、豚肉、ラム肉、ウマ、家禽、魚、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0084】
[0089]組成物は、約5%~約40%の脂肪を更に含むことができる。組成物は、炭水化物源を更に含み得る。組成物は、約15%~約60%の炭水化物を含み得る。このような炭水化物の例としては、米、トウモロコシ、ミロ、ソルガム、アルファルファ、大麦、大豆、キャノーラ、オート麦、小麦、及びこれらの混合物などの穀物又は穀草類が挙げられる。組成物はまた、乾燥乳清及び他の乳製品副産物などの他の材料を任意に含み得る。
【0085】
[0090]いくつかの実施形態では、組成物の灰分は、1%未満~約15%、好ましくは約5%~約10%の範囲である。
【0086】
[0091]含水率は、組成物の性質に応じて様々であり得る。好ましい実施形態では、組成物は、完成品(complete)でありかつ栄養面でバランスのとれたペットフードであり得る。この実施形態では、ペットフードは、「ウェットフード」、「ドライフード」、又は中間含水率の食品であり得る。「ウェットフード」は、典型的には缶又はホイル袋で販売されるペットフードを表し、典型的には約70%~約90%の範囲の含水率を有する。「ドライフード」は、ウェットフードと同様の組成のものであるが、典型的には約5%~約15%又は20%の範囲の限られた含水率を含み、そのため、例えば、小さいビスケット状のキブルとして提供される、ペットフードを表す。一つの現在好ましい実施形態では、組成物は約5%~約20%の含水率を有する。ドライフード製品は、比較的常温保存可能であり、微生物又は真菌による劣化又は汚染に対して耐性を有するような様々な含水率の様々な食品を含む。ペットフードなどの押出成形された食品製品、又はヒト若しくはコンパニオンアニマル用のスナック食品である、ドライフード組成物も好ましい。
【0087】
[0092]組成物はまた、1つ以上の繊維源を含み得る。「繊維」という用語は、易消化性又は難消化性のもの、可溶性又は不溶性のもの、発酵性又は非発酵性のもののいずれであろうと、食品中の全ての「嵩高さ」源を含む。好ましい繊維は、海洋植物などの植物由来であってもよいが、微生物由来の繊維源も使用することができる。当業者に既知のように、様々な可溶性又は不溶性の繊維を使用することができる。繊維供給源は、ビートパルプ(サトウダイコン由来)、アラビアゴム、タルハゴム(gum talha)、オオバコ、米ぬか、イナゴマメゴム、柑橘系パルプ、フラクトオリゴ糖、ペクチン、短鎖オリゴフルクトース、マンナンオリゴフルクトース、ダイズ繊維、アラビノガラクタン、ガラクトオリゴ糖、アラビノキシラン、又はこれらの混合物であり得る。
【0088】
[0093]あるいは、繊維源は発酵性繊維であってもよい。発酵性繊維は、コンパニオンアニマルの免疫系に有益であることが以前から報告されている。腸内でのプロバイオティクスの増殖を増強するためのプレバイオティクスを提供する、当業者に既知の発酵性繊維又は他の組成物もまた、動物の免疫系に対し本開示によって提供される効果の増強を助けるために組成物に組み込むことができる。
【0089】
[0094]他の実施形態では、組成物は、プレバイオティクス、プロバイオティクス、又はこれらの組み合わせを更に含む。プロバイオティクスは、摂取した場合に特定の医学的状態の予防及び治療において有益な効果を有する生きた微生物である。プロバイオティクスは、定着阻害として知られる現象を通して生物学的効果を発揮すると考えられる。プロバイオティクスは、常在嫌気性菌叢が、消化管内で有害である可能性のある(主に好気性の)細菌の濃度を制限するプロセスを促進する。胃腸管における酵素の供給又は酵素活性への影響などの他の作用機序も、プロバイオティクスの関与する他の機能の一部を構成し得る。
【0090】
[0095]プレバイオティクスは、結腸内で細菌の増殖及び/又は活動を選択的に刺激することによって宿主の健康に有益に作用する非消化性の食品原材料である。プレバイオティクスとしては、フラクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、及びマンノオリゴ糖(典型的には、ペットフードなどの非ヒト食品用)が挙げられる。プレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖(FOS)は、小麦、タマネギ、バナナ、蜂蜜、ニンニク、及びリーキなどの多くの食品中に天然に見られる。また、FOSはチコリ根から単離することもでき、スクロースから酵素により合成することもできる。結腸内でのFOS発酵は、結腸内のビフィズス菌の数の増加、カルシウム吸収の増加、糞便重量の増加、胃腸通過時間の短縮、及び場合により血中脂質濃度の低下を含む数多くの生理作用をもたらす。ビフィズス菌の増加は、潜在的な病原体を阻害するための化合物を産生し、血中アンモニア濃度を低下させ、ビタミン及び消化酵素を産生することによって、ヒトの健康に有益であると想定されている。
【0091】
[0096]乳酸菌(Lactobacilli)又はビフィズス菌(Bifidobacteria)などのプロバイオティクス細菌は、腸内微生物叢のバランスを改善して抗体産生の増強及び白血球の食作用(貪食又は死滅)活性をもたらすことによって免疫応答に良い影響を与えると考えられる。ビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)は、老齢者における細胞性免疫のいくつかの側面を増強するための有効なプロバイオティクス栄養補助食品であり得る。プロバイオティクスは、全身の細胞性免疫応答を増強し、他の点では健康な成体における自然免疫をブーストするための栄養補助食品として有用であり得る。プロバイオティクスとしては、多くの種類の細菌が挙げられるが、一般に、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、及びペディオコッカス属(Pediococcus)の4つの属から選択される。有益な種としては、エンテロコッカス属(Enterococcus)及びサッカロマイセス属(Saccharomyces)の種が挙げられる。
【0092】
[0097]動物に投与すべきプロバイオティクス及びプレバイオティクスの量は、プレバイオティクス及びプロバイオティクスの種類及び性質並びに動物の種類及び性質、例えば、年齢、体重、全身の健康、性別、微生物の枯渇の程度、有害な細菌の存在、及び動物の食餌に基づいて、当業者によって決定される。一般に、プロバイオティクスは、腸管微生物叢の健康的な維持のために、1日当たり約1~約200億コロニー形成単位(CFU)、好ましくは、1日当たり約50億~約100億CFUの生菌量で動物に投与される。
【0093】
[0098]概して、プレバイオティクスは、腸内の健康な細菌叢を積極的に刺激し、これらの「善玉」菌を増殖させるのに十分な量で投与される。典型的な量は、1食当たり約1グラム~約10グラム、又は動物用に推奨される1日当たりの食物繊維の約5%~約40%である。
【0094】
[0099]プロバイオティクス及びプレバイオティクスは、任意の好適な手段によって組成物の一部とすることができる。一般に、作用物質は、組成物と混合されるか、又は組成物の表面に、例えば散布又は噴霧によって適用される。当該作用物質がキットの一部である場合、作用物質は他の材料と混合されていてよく、又は作用物質のためのパッケージ内にあってもよい。
【0095】
[0100]好ましい実施形態では、食品組成物は、設計される食品の種類に適した主要栄養素組成を含む。一実施形態では、食品組成物は、約20~32%のタンパク質、約30~50%の炭水化物、約5~20%の脂肪、及び約15%~25%の水分を有する。別の実施形態では、食品組成物は、プレミアムペットフード組成物又はスーパープレミアムペットフード組成物などのペットフード組成物である。一実施形態では、ペットフードは、イヌ用に配合することができ、約20~30%、好ましくは約24~28%、より好ましくは約25~27%のタンパク質含有量を有する。一実施形態では、ドッグフード組成物のタンパク質含有量は、約26重量%である。別の実施形態では、配合物は、ネコ用であり、約35~45%、好ましくは37~42%、より好ましくは約39~41%のタンパク質含有量を有する。一実施形態では、キャットフード組成物のタンパク質含有量は、約40%である。好ましい実施形態では、組成物は、約15%~約50%のタンパク質、約5%~約40%の脂肪、約5%~約10%の灰分を含み、約5%~約20%の含水率を有する、食品製品である。
【0096】
[0101]いくつかの実施形態では、食品組成物は、缶詰食品、冷凍食品、又は新鮮食品製品などのウェットフードであり得る。いくつかの実施形態では、食品組成物は常温保存可能である。他の実施形態では、食品組成物は冷蔵しなければならない。他の実施形態では、食品組成物は、上記の中間水分量製品又はドライフード製品である。
【0097】
[0102]いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書において定義される認知機能及び関連機能を増強するのに有効な量の1つ以上の認知薬(cognitive drug)と組み合わせて、動物に投与される。好ましい実施形態では、組成物は、動物に毎日、好ましくは単回投与される。
【0098】
[0103]特定の実施形態では、動物は、健康な高齢の動物である。他の実施態様では、動物は、加齢に伴う認知障害に関連する表現型を有する。例えば、該表現型を有していない対照動物と比較したとき、動物は、想起能力の低下、短期記憶障害、学習速度の低下、学習能力の低下、問題解決能力の低下、注意持続時間の減少、運動能力の低下、混乱の増加、又は認知症(ヒトにおけるアルツハイマー型又は他の動物における相当する型)のうちの1つ以上を含む表現型を有し得る。
【0099】
[0104]いくつかの実施形態では、組成物は、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又はドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせなどの栄養素の組み合わせを、1つ以上の社会的行動を改善するのに有効な量で含む。好ましい実施形態では、動物はコンパニオンアニマルである。
【0100】
[0105]いくつかの実施形態では、本方法は、(a)動物における社会的交流の低下を低減又は防止すること(例えば、高齢の動物が遊び時間への関与を維持すること、グループ活動に参加すること、介護者と交流することなどを確保するため);(b)動物における加齢に伴う行動変化(例えば、健忘;見当識障害;社会的交流の低下;睡眠及び覚醒の習慣の変化、特に夜間活動の増加;排尿及び排便の場所及びパターンの変化をもたらす「しつけ」が損なわれること;混乱;フラストレーション;焦燥性興奮及び攻撃性などの、気質の変化;ペーシング(pacing);及び徘徊(このような変化は、ヒト及び他の動物において認知機能の低下に応答して認められている)のうちの1つ以上)を低減又は防止すること;(c)動物のトレーナビリティ(trainability)を高め、例えば、動物に、組成物を使用せずに訓練が行われた場合よりも迅速に、課題を学習させ、又は言語、信号、若しくはその他の命令に従わせること;(d)動物において最適な脳機能を維持して、例えば、高齢のイヌにおける知的機能の低下(mental decline)の進行を遅らせること;(e)動物において学習及び記憶を促して、例えば、高齢の動物が事実を記憶し、指示を理解するのを助けること;(f)動物において記憶障害を低減すること;(g)動物において脳老化を低減すること;(h)例えば、脳卒中により生じる損傷を低減することによって、動物において脳卒中を予防又は治療すること、ここで、脳卒中は、例えば記憶障害の低減などの、認知機能の増強の特定の態様と相関している;(i)動物における認知症、例えば、ヒトにおけるアルツハイマー病(AD)、イヌにおけるイヌ認知機能不全症候群(CCDS)又は他の動物における同種の疾患を、例えば、アミロイドの沈着又は動脈機能の低下などの認知症の原因から生じる損傷の影響を低減することによって、予防又は治療すること;(j)動物における精神的明晰性及びアラートネスを維持すること;(k)動物の健康及びウエルネスを促進すること;並びに(l)動動物の全盛期を延長すること、からなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する。
【0101】
[0106]したがって、上記の開示を考慮して、一実施形態は、哺乳動物における認知機能及び情緒的健康を増強する方法であって、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法である。
【0102】
[0107]いくつかの実施形態では、哺乳動物は、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである。
【0103】
[0108]いくつかの実施形態では、哺乳動物は、加齢に伴う認知機能障害に関連する表現型を有しており、好ましくは上記表現型は、該表現型を有していない対照哺乳動物と比較した、想起能力の低下、短期記憶障害、学習速度の低下、学習能力の低下、問題解決能力の低下、注意持続時間の減少、運動能力の低下、混乱の増加、又は認知症のうちの1つ以上を含む。
【0104】
[0109]いくつかの実施形態では、情緒的健康の増強は、不安、ストレス、攻撃性、絶望、集中の欠如、若しくは易刺激性のうちの少なくとも1つを減少させること、及び/又は気分若しくは社会的行動のうちの少なくとも1つを改善することを含む。
【0105】
[0110]いくつかの実施形態では、投与する工程は、経口投与、経腸投与、非経口投与、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路を使用する。
【0106】
[0111]いくつかの実施形態では、組成物は、ペットフード、栄養補助食品、及びヒトが摂取するために配合された食品からなる群から選択される形態を有する。
【0107】
[0112]別の実施形態は、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを、組成物が投与される哺乳動物において認知機能及び情緒的健康を増強するのに有効な量で含む、組成物の単位剤形である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである。
【0108】
[0113]更に別の実施形態は、哺乳動物に投与するための組成物を製造する方法であって、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの他の原材料に添加して組成物を形成する工程を含む、方法である。いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与、経腸投与、非経口投与、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路による投与のために配合される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他の原材料は、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス、プレバイオティクス、及びこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである。
【0109】
[0114]別の実施形態は、(a)スペルミジンとエラグ酸との組み合わせ、又は(b)ドコサヘキサエン酸(DHA)とクルクミンとの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む組成物を投与する工程を含む方法であって、組成物が、哺乳動物における認知機能及び情緒的健康を増強するのに有効な量で哺乳動物に投与される、方法である。いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与、経腸投与、非経口投与、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路によって投与される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、高齢若しくは老齢のヒト、又は高齢若しくは老齢のコンパニオンアニマル、好ましくは老齢のイヌである。
【実施例】
【0110】
[0116]以下の非限定的な実施例は、本明細書に開示される発明概念を展開及び裏付ける臨床データを提示する。
【0111】
[0117]選択された栄養素の候補、具体的には、小麦胚芽、大豆、チーズ、及び家禽肉などの自然食品源によって提供され得るスペルミジン(ポリアミン);イタドリ(polygonum cuspidatum)抽出物などの自然食品源によって提供され得るレスベラトロール(スチルベノイド);ザクロの抽出物及び搾りかすなどの天然食品源から提供され得るエラグ酸(ジラクトン);クルクミン(Curcuma longa)などの自然食品源によって提供され得るクルクミン(クルクミノイド);魚油などの自然食品源によって提供され得るEPA及びDHA(オメガ-3脂肪酸);茶抽出物などの自然食品源によって提供され得るL-テアニン(アミノ酸類似体);β-ヒドロキシ酪酸(BHB-ケトン);チモール;及び大豆などの自然食品源によって提供され得るイソフラボン、を試験した。
【0112】
[0118]結果は、DHAとクルクミンとの組み合わせでは、オートファジー関連遺伝子(
図1A及び
図1B)に差異はなかったが、リソソーム遺伝子(
図2A及び
図2B)に有意な相乗効果があったことを示す。結果はまた、スペルミジンとエラグ酸との組み合わせでは、オートファジー関連遺伝子(
図3A及び
図3B)に差異はなかったが、リソソーム遺伝子(
図4A及び
図4B)に有意な相乗効果があったことを示す。
【0113】
[0119]これらの結果は、文献と比較したときに妥当である。例えば、Fu X.ら(Experimental Neurology 2021)は、TFEBを介して作用するPF11などの分子が、上記2種のブレンド(DHAとクルクミン、及びスペルミジンとエラグ酸)と同様にLamp1及びCtsd mRNAを増加させ、かつ神経保護作用があることを見出している。別の例として、Huangら(CNS,Neuroscience and Therapeutics 2018)は、運動が、SIRT1-TFEB経路を介して脳内のリソソーム機能をトレハロースよりも効率的に活性化することを見出した。
【0114】
[0120]科学的根拠の概要は、以下のとおりである:
【0115】
[0121]オートファジーフラックスは、シナプス機能及び精神疾患に関連している(総説については、Tomoda T.et al,Biological Psychiatry 2019を参照されたい)
【0116】
[0122]オートファジーフラックス及びリソソーム活性は、脳における均衡のとれた興奮性神経伝達及び抑制性神経伝達の重要な調節因子である(Sumitomo A.et al.,Human Molecular Genetics 2018;Kuijpers M.et al.,Neuron 2020;Hui KK.et al.,Science Advances 2019;Lakhani R.et al.,EMBO Molecular Medicine 2014を参照されたい)。
【0117】
[0123]オートファジーフラックス及びリソソーム活性は、気分安定薬(mood stabilizer)及びストレス応答の、重要なメディエーターである(Shu X.et al.,Cell Death and Disease 2019;Gulbins A.et al.,Molecular Psychiatry 2018;Gassen NC et al.,Plos Medicine 2014;Limanaqi F.et al.,Frontiers in Psychatry 2020;.Zhou et al.,Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry 2015;Wang S.et al.,Neuroscience Letters 2021)。
【0118】
[0124]オートファジーフラックス及びリソソーム活性は、神経発生及び上記のものなどの多数の機構によって脳及び精神の健康を支援する(Leeman DS.et al.,Science 2018;Fleming A.et al.,Trends in Neuroscience 2020)。
【0119】
[0125]本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】