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特表2024-542934回転装置で生成された熱エネルギーを使用して水素を生産する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】回転装置で生成された熱エネルギーを使用して水素を生産する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20241112BHJP
   C01B 3/36 20060101ALI20241112BHJP
   C01B 3/24 20060101ALI20241112BHJP
   B01J 19/18 20060101ALI20241112BHJP
   F24V 40/00 20180101ALI20241112BHJP
【FI】
B01J19/00 301D
C01B3/36
C01B3/24
B01J19/18
F24V40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520875
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 FI2022050684
(87)【国際公開番号】W WO2023062280
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,433
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148164
【氏名又は名称】クールブルック オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ベリ マッティ プロラ
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス オウニ
【テーマコード(参考)】
4G075
4G140
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA05
4G075AA63
4G075BA01
4G075BA05
4G075BD10
4G075CA02
4G075DA02
4G075EA05
4G075EB21
4G075ED02
4G140DA03
4G140DB03
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB14
4G140EB32
(57)【要約】
水素の生産に関連するプロセスにおいて流体媒体中に熱エネルギーを投入する方法が提供される。方法は少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に配置された固定ベーン集成体として形成されたステータとを含む。この方法では、当該流体媒体流が前記回転装置の定置の構成部分及び回転する構成部分をそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、回転装置内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与される。この方法はさらに、水素生産設備として形成され、そして約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で水素を製造することに関連する熱消費プロセスを実施するようにさらに形成された熱消費プロセス設備内へ、前記少なくとも1つの回転装置を組み込み、そして熱消費プロセス設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くことを含み、投入エネルギーは電気エネルギーを含む。関連する方法、配置関係、及び水素生産のための設備がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素生産設備内で水素を生産することに関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入する方法であって、前記方法が、前記水素生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
前記方法が、
- 約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で水素生産に関連するプロセスを実施するように形成された前記水素生産設備内へ、前記少なくとも1つの回転装置を組み込むこと、
- 前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、そして
- 当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記水素生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置を、炭化水素含有ガスから水素を生産するように形成された少なくとも1つの反応器又は炉に接続することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反応器又は炉が、前記炭化水素含有ガスから水素を生成するために熱及び/又は触媒プロセスを実施するように形成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素生産設備がメタン熱分解プラント、又は水蒸気メタン改質(SMR)プラントである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度、好ましくは約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、さらに好ましくは約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、少なくとも1つの回転装置によって生成することを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、
前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記ロータブレードと、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記回転装置内で、前記ディフューザ領域が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの回転装置の下流側に付加的な加熱装置を配置し、そして前記付加的な加熱装置を通って伝搬する前記流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の温度への前記流体媒体の予熱が、回転装置内で実施される、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水素生産設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって前記加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも2つの回転装置が並列又は直列に接続されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、前記加熱された流体媒体を生成し、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、前記連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、前記連続内の前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
水素生産に関連する前記プロセス中へ、前記反応性化合物又は化合物の混合物を導入することを含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体が、供給ガス、リサイクルガス、メイクアップガス、及びプロセス流体から成る群から選択される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記回転装置に入る前記流体媒体が、本質的にガス状の媒体である、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱された流体媒体を前記回転装置内で生成することを含む、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、炭化水素含有ガスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、メタン、天然ガス、又はこれらの混合物を含み、又はこれから成る、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、炭化水素含有ガス以外のガス状媒体、例えば空気、蒸気(HO)、窒素(N)又はこれらの任意の組み合わせを含み、又はこれから成る、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、水素生産焼却設備における水素生産プロセス期間中に生成された排ガスからリサイクルされたリサイクルガスを含み、又はこれから成る、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する流体媒体流との間の熱伝達プロセスを通して、前記回転装置の外部で前記加熱された流体媒体を生成することをさらに含む、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記回転装置内で生成された、炭化水素含有ガス以外の前記加熱された流体媒体と、炭化水素含有ガスとして提供され且つ前記回転装置を迂回する流体媒体流との間の熱伝達プロセスを通して、前記回転装置の外部で、炭化水素含有ガスとして提供される、前記加熱された流体媒体を生成することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
水素生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記水素生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記水素生産設備内へ組み込まれることにより、前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される、請求項1から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
水素生産設備であって、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で炭化水素含有ガスから水素を生産するように形成された少なくとも1つの反応器又は炉と、前記少なくとも1つの反応器又は炉内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、を含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
前記少なくとも1つの回転装置が、投入エネルギー量を受容するように形成されており、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、そして
当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、前記少なくとも1つの回転装置がさらに形成されている、
水素生産設備。
【請求項34】
前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む、請求項33に記載の水素生産設備。
【請求項35】
前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む、請求項33に記載の水素生産設備。
【請求項36】
前記回転装置が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成された前記ディフューザ領域を含む、請求項33に記載の水素生産設備。
【請求項37】
前記少なくとも1つの回転装置が、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めるようにさらに形成されている、請求項33に記載の水素生産設備。
【請求項38】
前記少なくとも2つの回転装置が集成体内へ配置され、そして並列又は直列に接続されている、請求項33から37のいずれか1項に記載の水素生産設備。
【請求項39】
メタン熱分解プラント又は水蒸気メタン改質(SMR)プラントとして形成された、請求項33から38のいずれか1項に記載の水素生産設備。
【請求項40】
請求項1から32のいずれか1項に記載の方法を通して水素の生産に関連するプロセスを実施するように形成された水素生産設備。
【請求項41】
任意には水蒸気メタン改質のプロセスを通して、水素及び/又は合成ガスの生産に関連するプロセスを実施するための、請求項33から38のいずれか1項に記載の水素生産設備の使用。
【請求項42】
メタンから水素、燃料、及び/又は化学物質への変換に関するプロセスを実施するための、請求項33から38のいずれか1項に記載の水素生産設備の使用。
【請求項43】
任意には水蒸気メタン改質のプロセスを通した水素及び/又は合成ガスの生産に関連するプロセスのために且つ/又は前記プロセス内に形成された熱消費設備内での、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項44】
メタンから水素、燃料、及び/又は化学物質への変換に関するプロセスのために且つ/又は前記プロセス内に形成された熱消費設備内での、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項45】
水素生産設備のエネルギー効率を改善するための、且つ/又は前記水素生産設備内の温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減するための、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法の利用。
【請求項46】
水素を生産する方法であって、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法に基づいて、水素生産設備内で水素を生産することに関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入することを含む、水素を生産する方法。
【請求項47】
水素を製造する方法であって、前記方法が、水素生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、前記方法が、
- 前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導入すること、ここで前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、
- 前記少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体の流れを、前記水素生産設備内へ供給すること、及び
- 約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で水素生産を実施するために、前記少なくとも1つの回転装置及び前記水素生産設備を操作すること、
をさらに含む、
水素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大まかに言えば、流体中へ熱エネルギー(熱)を投入するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、高い温度及び極めて高い温度で実施される、水素の生産に関連する熱消費産業プロセスにおいて、エネルギー効率を最適化し、そして温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減するツール及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
業界及び政府は、温室効果ガス(GHG)排出量を著しく低減するための技術を見出そうと闘っている。地球温暖化を制限する目的で、例えばエネルギー担体の生産に関連する数多くの主要産業部門を横断する脱炭素方策に着手しなければならない。多くの脱炭素シナリオは、原料及び/又は燃料としての水素の使用を伴う。世界の水素生産の約90%がメタンを利用し、メタンは天然ガスの主要成分である。
【0003】
水蒸気メタン改質(SMR)は、一見したところ最も注目に値し、そして幅広く使用されているC1化学例であり、そしてこれは、メタンから水素を生産するための主要なプロセスである(等式1a参照)。世界の水素の最大95%がSMRを通して生産されている。水蒸気メタン改質では、前処理された天然ガス又は他の適宜の原料ガス、例えばシェールガス、製油所オフガス又はバイオガスを先ず水蒸気で前改質することにより、長鎖炭化水素を分解してメタンと合成ガスとにし、次いでこれを主要改質反応器内へ導入し、ここでメタンが水素と一酸化炭素へ変換される。水素収率を水性ガスシフト(WGS)ユニット内でさらに高めることができる。ここでは、一酸化炭素の部分が水と反応することにより、水素と二酸化炭素とを生産する(等式1b)。
【化1】
【0004】
改質反応(等式1a)は吸熱反応であるので、これは熱源を必要とする。コンベンショナルなSMR生産プラントの場合、熱は外部の炉によって提供される。外部の炉は典型的には燃料燃焼型である。炭素捕捉装置が存在しないと、水素回収後に、残されたメタン含有流、CO及びCOは炉のための燃料として使用されるように経路決定され、そして全てのCOは大気へ放出される。他方において、炭素捕捉は、極めて希薄なCO源である煙道ガス排出流と比較して、ほとんど純粋なCOを含有するSMR生成物流(等式1b)からより効率的に、ひいてはより一般的に行われる。結果として、SMRプロセスでさえも、炭素捕捉を採用する。炉内で燃焼する燃料を起源とするCOはなおも大気中へ放出される。したがって、SMRプロセスは、大気中の最も重要な二酸化炭素源の1つである。
【0005】
SMRに代わるものは、自己熱改質(ATR)プロセス(等式2a)である。このプロセスは、水素と一酸化炭素との異なる比での混合物として提供された合成ガスを産出する。ATRとSMRとの主な違いは、SMRが酸素を使用しない又は必要としないことである。反応2aにおいて、熱は、炭化水素供給流中のメタンを部分酸化することにより生産される。
【化2】
【0006】
メタン及び酸素を副反応なしにCO及びHへ直接に変換させることができると、平衡変換率はほとんど100%となるが、しかしこのような場合には、反応は極めて高い温度を必要とする。ほとんどの事例では、ATRのプロセスは、一連の反応(等式2a~2c)を通して進行する。これらの反応は、一酸化炭素及び水素とともに、二酸化炭素及び水をも産出する。
【化3】
【0007】
メタンの最適な変換は通常は、高温でのその部分酸化によって達成される(等式2a)。SMR(等式1a)と比較して、ATRの部分酸化反応は発熱反応であり、外部熱源を必要としない。にもかかわらず、反応収率はより低い。なぜならば供給物(メタン/天然ガス)の部分が燃料として使用されるからである。しかしながら、排ガスが存在せず、そしてCOの全ては炭素捕捉のための生成物流中で濃縮される。
【0008】
他方において、具体的には再生可能エネルギー源を使用して熱分解プロセスによって必要となる熱を供給するならば、メタン熱分解プロセスを通してメタン(これは天然ガス又はバイオガスから得られる)を水素へ変換/分解することで、COフリーの水素を生産することができる。メタンの熱分解プロセスは、ただ1つの副生成物として固体炭素を生産する。したがって炭素酸化物(CO、CO)の分離及び貯蔵の必要はなくなり、このプロセスはSMRと比較すると複雑でない。したがって、メタン熱分解を通して生産される1H分子当たりのエネルギー所要量は、SMRによって生産される量のほとんど半分である。上記のことを考慮に入れると、メタン熱分解プロセスは、持続可能な水素を生産する上で大きな可能性を有する。
【0009】
メタンクラッキング(熱分解)は、COフリーの水素生産のためのブリッジ技術と考えられる。熱分解では、メタン及び/又はより重質の炭化水素が、酸素の不在において、そして高温下で元素炭素とCOとを生産する。メタンクラッキングプロセス中に、未反応のメタンが水素ガスから分離され、そして熱分解反応器へ再循環される。メタンクラッキングのためのガス原料が主にCHから成ってはいるものの、やはり存在し得る他の炭化水素も、C-H結合の熱分割によって、CHと同様にクラッキングされる。
【0010】
メタン熱分解の主な反応は吸熱反応であり、そして理想的には、等式3に基づいて、ガス状水素と固体炭素とを生産する。
【化4】
【0011】
メタン熱分解のプロセス概念は、大まかに言えば3つのカテゴリー、すなわち(i)熱的(非触媒的)分解、(ii)(熱)触媒的分解、及び(iii)プラズマ分解、に分けることができる。適宜の触媒が存在しない場合には、分解反応はほぼ700℃を上回る温度で開始する。しかしながら、技術的に適切な反応速度及びメタン変換率を達成するためには、これらの温度はかなりより高い温度、すなわち触媒プロセスにおいてほぼ800℃を上回り、熱プロセスにおいてほぼ1000℃を上回り、そしてプラズマ分解において約2000℃までの温度でなければならない。メタンの熱分解及び(熱)触媒分解のために使用されるコンベンショナルなガス反応器システムは典型的には、管状固定床、可動床、及び流動床反応器を含む。
【0012】
前記コンベンショナルなシステムでは、触媒のタイプに応じて、10~300秒間で提供される滞留時間とともに500~1100℃の温度で、水素と炭素との熱力学的平衡に近づく。触媒が存在しないと、滞留時間は著しく長くなる。全体的に見ると、メタン熱分解において、滞留時間は、生成物分布及び選択性に影響を与える臨界パラメータである。滞留時間及び温度は、炭素生成物の特性、ひいてはそのさらなる用途へ影響を与える。
【0013】
メタン熱分解はまた、ベンゼン及びC2-炭化水素の生産のために用いられてよい。高温でのメタンの熱分解は、炭素が形成される前に反応を停止し得ることを条件として、主要生成物として、エチレン、アセチレン、ベンゼン、及び水素を産出することができる。実際に、メタンは熱分解又は熱的結合によって、高い収率とともにアセチレンに直接に変換することができる。反応は高度な吸熱反応であり、高温の熱供給を必要とする。反応の主要生成物は典型的にはアセチレン及び水素である。好ましくは供給物の水素希釈によって、メタンの短い反応時間及び低い分圧を用いて、過剰な炭素形成を回避することができる。反応混合物の迅速な急冷も、示唆したように極めて重要である。
【0014】
したがって、水蒸気メタン改質は、触媒の使用の有無にかかわらず実施することができる。非触媒的改質反応はメタン熱分解で出発する経路を通って進行するが、しかし水蒸気の存在に基づき、中間生成物はCO及びHへ迅速に変換する。したがって、非触媒的改質は、800℃を上回る温度で進行する。これらの温度は、メタン熱分解のために必要とされる温度と同様であり、典型的には触媒的メタン改質の温度よりも高い(約700℃で開始する)。
【0015】
しかしながら、メタン熱分解に際して高い温度に達するために用いられる既存の加熱技術は、いくつかの共通の問題によって妨げられる。熱分解及び熱触媒分解の場合、例えば、プロセスに必要とされる熱は典型的には、上述の(燃料駆動式)外部加熱器によって提供される。反応器壁を通る熱エネルギーの転移は、高温表面上の炭素質堆積物、例えばコークス及び煤の急速な形成を招く。このことは動作の困難を引き起こし、熱転移を大幅に損なう。反応器内でガスを加熱することを伴う解決手段、又は集光型太陽熱発電(太陽熱熱分解)を利用する解決手段において、熱分解プロセスは、制御されない状態でしばしば進行し(いくつかの事例では、熱分解反応は、(予)加熱中にすでに始動させられることがある)、ひいては反応器部分のファウリングを招く。
【0016】
他方において、上記プロセスによって天然ガス/メタンから水素を生産するために必要とされる高い温度は一般に、これらのプロセスの電化を制限する主な理由の1つである。GHG排出量を低減するのに適した解決手段が考えられてはいるものの、現行の技術、及び既存の設備インフラストラクチャが、十分に高い温度を獲得する必要性を満たすことができないため、産業プロセスの電化は阻まれたままである。
【0017】
加熱を目的として、いくつかの回転解決手段が提案されている。米国特許第11,098,725号明細書(Sanger他)に開示された液体力学的加熱器ポンプ装置は、加熱された流体及び/又は加圧された流体の流れを選択的に生成するために動作可能である。前述の液体動圧加熱器ポンプは、自動車車両の乗客コンパートメントを暖める熱を提供するために、そして他の能力、例えばウィンドウの除氷及びエンジンの冷却を可能にするために、自動車車両の冷却システム内に組み付けられるように設計されている。開示された装置は、エンジンを冷却するための加圧流体流を提供することもできる。開示された技術は摩擦に基づくものであり、また加熱されるべき流体は液体なので、提示されたデザインは、ガス空気力学の極端な乱流を伴う条件には適していない。
【0018】
米国特許第7,614,367号明細書(Frick)には、回転運動エネルギーを熱に変換することにより、流体を無炎加熱し、濃縮し、又は蒸発させるシステム及び方法が開示されている。流体加熱のために形成されたシステムは、回転運動エネルギー発生器と、回転加熱装置と、一次熱交換器とを、すべて閉ループ流体連通した形で含んでよい。回転加熱装置は水ブレーキ動力計であってよい。前記明細書は海洋掘削又は採油プラットフォームにおいて水を加熱するためのシステムの使用を開示している。しかしながら、提示されたシステムは、ガス状の媒体を加熱するのには適しておらず、また、高い温度及び極めて高い温度との使用には(液体安定性、蒸気圧などに基づき)実現し得ない。
【0019】
加えて、いくつかの回転ターボ機械型装置も、炭化水素(蒸気)クラッキングのプロセスを実施することで知られており、目標製品、例えばエチレン及びプロピレンの収率を最大化することを目的としている。
【0020】
これに関して、効率的な加熱システム、具体的には高い温度及び極めて高い温度で産業規模において水素を生産することに適したシステムを設計し製造することに関連する技術分野のアップデートが、流体物質の上昇する温度に伴う難題に効率的に且つ環境に優しく対処することに鑑みて、なおも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、関連技術の制約及び欠点から生じる問題の少なくともいくつかを解決し、又は少なくとも軽減することである。1つ又は2つ以上の目的は、本明細書中に記載された、加熱された流体媒体を生成するための方法、回転装置、及び本明細書中に定義された関連の使用の種々の実施態様によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
1つの態様では、水素生産設備内で水素を生産することに関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入する方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
実施態様では、前記方法が、前記水素生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、前記方法が、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で水素を生成することに関連するプロセスを実施するように形成された前記水素生産設備内へ、前記少なくとも1つの回転装置を組み込むこと、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、及び当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、をさらに含む。
【0024】
一実施態様では、前記方法は、前記水素生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置を、炭化水素含有ガス、例えば炭化水素含有供給ガスから水素を生産するように形成された少なくとも1つの反応器又は炉に接続することを含む。実施態様では、前記少なくとも1つの反応器又は炉が、前記炭化水素含有ガスから水素を生成するために熱及び/又は触媒プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、前記水素生産設備がメタン熱分解プラント、又は水蒸気メタン改質(SMR)プラントである。一実施態様では、前記炭化水素含有ガスがメタン、天然ガス、又はこれらの混合物である。
【0025】
実施態様では、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度、又は約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、又は約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、少なくとも1つの回転装置によって生成することを含む。
【0026】
実施態様では、前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む。
【0027】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される。
【0028】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。前記ディフューザ領域は、固定ベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。
【0029】
実施態様では、前記方法において、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される。
【0030】
実施態様では、前記方法は、前記少なくとも1つの回転装置の下流側に付加的な加熱装置を配置し、そして前記付加的な加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む。実施態様では、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記所定の温度への前記流体媒体の予熱が、回転装置内で実施される。
【0031】
実施態様では、前記方法は、前記水素生産設備内へ少なくとも2つの回転装置を組み込むことを含み、前記回転装置が並列又は直列に接続されている。実施態様では、連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、前記加熱された流体媒体を生成し、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、該連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される。実施態様では、前記方法において、該連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱される。実施態様では、前記方法において、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、該連続内の前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される。
【0032】
実施態様では、前記方法は、水素を生産することに関連する前記プロセス中へ、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入することを含む。
【0033】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体が、供給ガス、リサイクルガス、メイクアップガス、及びプロセス流体から成る群から選択される。
【0034】
実施態様では、前記方法において、前記回転装置に入る前記流体媒体が、本質的にガス状の媒体である。
【0035】
実施態様では、前記方法が、前記加熱された流体媒体を前記回転装置内で生成することを含む。実施態様では、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が炭化水素含有(供給)ガスである。実施態様では、前記加熱された流体媒体が、メタン、天然ガス、又はメタンと天然ガスとの混合物を含み、又はこれから成る。実施態様では、前記加熱された流体媒体が、C2-C4アルカン(エタン、プロパン、ブタン)、又はこれらの混合物のいずれか1つ、及び/又は適宜のより長鎖の炭化水素のいずれか1つを含有する。実施態様では、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、炭化水素含有(供給)ガス以外のガス状媒体、例えば空気、蒸気(HO)、窒素ガス(N)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つである。実施態様では、前記回転装置内で生成された、前記加熱された流体媒体が、水素生産焼却設備における水素生産プロセス期間中に生成された排ガスからリサイクルされたリサイクルガスである。
【0036】
実施態様では、前記方法が、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する流体媒体流との間の熱伝達プロセスを通して、前記回転装置の外部で前記加熱された流体媒体を生成することをさらに含む。実施態様では、前記方法が、前記回転装置内で生成された、炭化水素含有(供給)ガス以外の前記加熱された流体媒体と、炭化水素含有(供給)ガスとして提供され且つ前記回転装置を迂回する流体媒体流との間の熱伝達プロセスを通して、前記回転装置の外部で、炭化水素含有(供給)ガスとして提供される、前記加熱された流体媒体を生成することをさらに含む。
【0037】
実施態様では、前記方法が、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む。
【0038】
実施態様では、前記方法において、水素生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある。
【0039】
実施態様では、前記方法において、前記水素生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる。
【0040】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記水素生産設備内へ組み込まれることにより、(例えば供給及び/又は生産を通して得られた)前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される。
【0041】
一実施態様によれば、水素生産に関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入する方法であって、前記方法が、前記水素生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含む方法は、エネルギー効率を改善し、又は温室効果ガス排出量及び粒子排出量、又はその両方を低減する。
【0042】
別の態様では、水素生産設備が提供され、前記水素生産設備は、本開示によれば、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、水素生産に関連するプロセスを実施するように形成された反応器又は炉として形成された少なくとも1つの熱消費ユニットとを含む。
【0043】
一実施態様では、前記水素生産設備が、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で炭化水素含有ガスから水素を生成するように形成された少なくとも1つの反応器又は炉と、前記少なくとも1つの反応器又は炉内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、を含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、前記少なくとも1つの回転装置が、投入エネルギー量を受容するように形成されており、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、そして当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、前記少なくとも1つの回転装置がさらに形成されている。
【0044】
いくつかの形態では、前記水素生産設備内部で、前記少なくとも1つの回転装置が、加熱器、バーナ、オーブン、焼却炉、ドライヤ、ボイラ、コンベア装置、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つとして形成された少なくとも1つの熱消費ユニット内へ、加熱された流体媒体を供給するようにさらに形成されており、そして前記少なくとも1つの回転装置が、前記水素生産設備内部で、これらの熱消費ユニット又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つに接続されている。
【0045】
実施態様では、前記水素生産設備において、前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む。1つの実施態様では、前記少なくとも1つのロータブレード列の上流側で前記集成体内へ配置された固定ベーンが、固定ガイドベーンとして形成されている。1つの実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置が、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。前記ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。いくつかの形態では、ベーン付きディフューザは、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側で集成体内へ配置された複数の固定ベーンとして実現されていてよい。
【0046】
1つの実施態様では、前記水素生産設備内部に設けられた前記少なくとも1つの回転装置が、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めるようにさらに形成されている。
【0047】
いくつかの形態では、前記水素生産設備内部に設けられた前記少なくとも1つの回転装置が、本質的に螺旋状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に半径方向の軌道、のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って、そして左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路に沿って、入口と出口との間で流体流を実現するように形成されている。
【0048】
実施態様では、前記水素生産設備が、前述の態様に基づく方法及び関連する実施態様を通して水素の生産に関連するプロセスを実施するように形成されている。実施態様では、前記水素生産設備が、メタン熱分解プラント又は水蒸気メタン改質(SMR)プラントとして形成されている。
【0049】
さらなる態様では、集成体が提供され、そして前記集成体は、いくつかの前記態様に基づく少なくとも2つの回転装置を含み、前記回転装置が並列又は直列に接続されている。
【0050】
さらなる態様では、配列が提供され、そして前記配列は、いくつかの前記態様に基づく少なくとも1つの回転装置を含み、前記少なくとも1つの回転装置は、少なくとも1つの反応器又は炉に接続されている。
【0051】
さらなる態様では、水素生産設備が提供されており、前記水素生産設備がいくつかの前述の態様及び実施態様に基づく方法を通して水素生産プロセスを実施するように形成されており、そして前記水素生産設備が本明細書中に記載された少なくとも1つの回転装置を含む。
【0052】
いくつかのさらなる態様では、いくつかの前述の態様及び実施態様に基づく方法及び設備の使用が提供され、独立請求項40~44に記載されている。
【0053】
さらなる態様では、水素を生産する方法が、独立請求項45に記載されたものに基づいて提供される。前記方法は、いくつかの前述の態様及び関連する実施態様に記載された方法に基づいて、水素生産設備内で水素を生産することに関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入することを含む。
【0054】
1つの態様では、水素を生産する方法が提供されており、前記方法が、水素生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、前記方法が、前記水素生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、前記少なくとも1つの回転装置内で生成された、加熱された流体媒体の流れを、前記水素生産設備内へ供給すること、及び約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で、水素生産を実施するために、前記少なくとも1つの回転装置及び前記水素生産設備を操作すること、をさらに含む。
【0055】
本発明の有用性は、それぞれの具体的なその実施態様に応じて、種々の理由から生じる。
【0056】
全体的に見て、本発明の実施態様は、高温の流体、例えばガスを生成するための電化された回転流体加熱器を提供する。この加熱器は、水素の生産に関連する種々の熱消費プロセスにおいて、例えば燃料燃焼型加熱器の代わりにさらに使用することができる。水素の生産は、例えばメタンを水素へ変換するために必要とされる温度まで流体を加熱するために、典型的には燃料燃焼型加熱器を採用する。ここに提示した本発明は、コンベンショナルな燃料燃焼型加熱器の代わりに回転装置を使用することを可能にする。提示された方法は、水素生産に関連する反応に対応するように構成され且つ高い温度及び極めて高い温度、例えば概ね500℃を超える温度で動作する熱消費ユーティリティ、例えば反応器及び/又は炉内へ、熱エネルギーを投入することをさらに可能にする。これらの反応器及び/又は炉は、熱エネルギー、ひいては熱消費の高い需要がある。本発明は、水素生産産業において使用される、約500℃~約2000℃の範囲内の温度まで流体物質を加熱するための装置及び方法を提供する。
【0057】
方法において、燃焼型加熱器の代わりに回転装置を使用することに伴う利点は、少なくとも、
- 電化加熱を支援すること、
- 温室効果ガス(NO、CO、CO、NOなど)、燃料に由来する他の有害成分(例えばHCl、HS、SO及び重金属など)、粒子排出量及び煤煙排出量を排除するか、又は少なくとも著しく低減すること、
- 加熱器の体積が低減され、すなわち回転装置の体積が、コンベンショナルな処理加熱器又は熱交換器と比較して少なくとも1桁小さくなること、
- 投資コストが軽減されること、
- 引火性の有害な流体/ガスを使用する場合の安全性が改善されること、
- 大量のガスの取り扱いが実現可能であること、
- 圧力降下が存在しないこと、
- ガスの圧縮(ブロワ機能)のためにも回転(加熱器)装置を使用することが可能であること、
- ガスの直接加熱に際して温度差に依存しない。回転装置内の温度上昇は、約10~1700℃以上であり得ること、
- 任意には熱交換器内の温度差を最適化することにより、流体の間接加熱に際して回転装置を使用することが可能であること、
- 高温プロセスガスの少なくとも部分的なリサイクルが可能であり、ひいては熱回収を改善してよりシンプルにし、そしてエネルギー効率を改善すること、
- 発熱反応によりガス温度を例えば2000℃以上までさらに高める反応性化学物質を添加することによって、加熱されるべきガスの温度をさらに上昇させることが可能である、
ことを含む。
【0058】
実施態様では、回転装置は、水素生産に関連する種々のプロセス用途において直接又は間接に加熱するためのコンベンショナルな燃焼型加熱器又はプロセス炉の代わりに使用することができる。伝統的には、このような熱は主として、顕著なCO排出量を招く化石燃料の燃焼を通して生産されている。化石燃料の代わりに、木材又は他のバイオベースの材料を使用することには、重要な資源限界があり、また環境への他の顕著な影響、例えば持続可能な土地利用と関連する影響がある。再生可能電気の開発のコスト効率が高められるのにともなって、例えば風力圧電及び太陽光発電の急速な開発にともなって、化石燃料燃焼の代わりに、再生可能電気によって給電される回転装置を使用することが可能である。これは温室効果ガス排出を著しく低減することになる。回転装置は、流体を最大1700℃以上の温度に電化加熱することを可能にする。このような温度は、現行の電気加熱を用いることによって到達するのは困難又は不可能である。
【0059】
本発明はしたがって、温室効果ガス排出量(CO、CO、NO)及び粒子排出量の低減を可能にする。回転装置を使用することにより、水素生産プロセスのための閉加熱ループ又は準閉加熱ループを有すること、そして煙道ガスをリサイクルすることを通して熱損失を低減することにより、これらのプロセスのエネルギー効率をさらに改善することもできる。反対に、コンベンショナルな加熱器内では、煙道ガスを部分的にしかリサイクルすることができない。
【0060】
コンベンショナルな炉の代わりに(電化された)回転流体加熱器装置を設けることによって行われる水蒸気メタン改質の場合、煙道ガスの形成、ひいては希釈CO源(典型的には燃料燃焼から生じる)の形成を回避することができる。SMR反応(純粋なCO源を提供する等式1b参照)からの既に利用可能な炭素捕捉技術と組み合わせて、ここに開示された方法は、CO排出物のない水素生産の達成を可能にする。
【0061】
メタン熱分解へ回転装置を組み込むことにより、長い滞留時間に起因する炉又は他のタイプの加熱器内の高温加熱表面上の炭素堆積物の形成に関連する問題を解消するか、又は少なくとも軽減する。炭素形成の規模が著しく減少するように、原料ガス、ここではメタンの装置内の滞留時間を最小化することができる。これに加えて又はこの代わりに、反応の変換速度が改善され且つ炭素堆積物が機械の回転部分を妨げないように装置内部にロータユニットを配置することにより、回転装置を通って伝搬する前記原料ガスの温度を高めることもできる。回転装置は、メタンの十分な変換に到達するために触媒を伴って又は伴わずに、異なるタイプの熱分解反応器と接続された状態で、メタン熱分解に際して使用することができる。
【0062】
回転装置は、プロセスガス、不活性ガス、空気、又は任意のその他のガスを直接加熱するために、又はプロセス流体(液体、蒸気、ガス、蒸気/液体混合物など)を間接加熱するために使用することができる。例えば、回転装置は、水素生産中に発生した排ガスからリサイクルされたリサイクルガスを直接加熱するために使用することができる。
【0063】
前記回転装置内で生成された、加熱された流体は、ガス、蒸気、液体、及び固形の材料のうちのいずれか1種を加熱するためにさらに使用することができる。したがって、回転装置内で生成された高温ガスは、固形材料を加熱するために使用することができ、あるいは、触媒プロセス及び熱プロセスのいずれか1つのプロセスのために構成された、充填反応器内の供給物を加熱するために使用することもできる。ここに提供された方法はさらに、プロセスガス又はプロセス液を間接に加熱するために、熱交換器内の加熱媒体として高温ガスを使用するのを可能にする。蒸発器内におけるような付加的な使用も排除されない。
【0064】
回転装置は、水素生産に際して使用される反応器及び炉を含む、固形、液状、又はガス状の化石燃料、いくつかの事例ではバイオベースの燃料で伝統的に燃焼又は加熱される(例えば予熱器としての)多数のタイプの炉、加熱器、キルン、ガス化器、及び反応器と少なくとも部分的に置き換えることができ、あるいはこれらと組み合わせることもできる。加熱されたガスは引火性、反応性、又は不活性であってよく、そしてリサイクルして回転装置へ戻すことができる。その加熱機能に加えて、回転装置はブロワとして作用してもよく(複合加熱器-ブロワ機能)、ひいては圧力を高め、そして種々の用途において、例えば触媒流動床反応器内でガスをリサイクルするのを可能にする。
【0065】
ここに提供された方法では、回転装置は、CO排出がほとんど完全に存在しない状態で(このことは、回転装置が再生可能電気を使用する場合に可能である)、所要動作温度までメタン含有供給物を加熱する際に使用することができる。回転装置内の滞留時間は著しく短い。このことは選択性を改善し、反応副生成物の形成を低減する。短い滞留時間はまた、コークス形成を最小限に抑え、予定されたデコーキング処置の間の動作期間を長くする。本開示に基づく方法では、実際の水素生産のための反応器(例えばメタン水蒸気改質器)と、加熱器(回転装置)とは分離されている。このことは動作時の付加的なフレキシビリティを可能にする。実施態様によれば、水素生産のための反応器又は炉は、回転装置に並列又は直列に接続することができる。このことは、同じ生産プロセスにおける、炭素除去のための熱反応器と、デコーキング及び清浄化のための触媒反応器との間の切り換えをさらに可能にする。
【0066】
加えて、本解決手段は、間接加熱に際して熱交換器内の温度差の改善された最適化を可能にする。
【0067】
本発明は、電気エネルギー、例えば再生可能源から得られる電気エネルギーを使用するフレキシビリティをさらに提供する。再生可能エネルギーは日を単位として、そしてさらに時間を単位として変化する。本発明は、水素生産に関与する種々のプロセスに熱を提供するために、ここに開示された回転装置をコンベンショナルな燃料動作型(燃料燃焼型)加熱器と一体化することにより、再生可能電気生産のバランスをとることを可能にする。
【0068】
本発明はさらに、伝統的な化石燃焼炉と比較して、現場投資コストの低減を可能にする。
【0069】
「いくつかの(a number of)」という表現は、本明細書中では1から出発して例えば1、2、又は3までの任意の正の整数を意味する。「複数の(a plurality of)」という用語は、本明細書中では2から出発して例えば2、3、又は4までの任意の正の整数を意味する。「第1」及び「第2」という用語は、別段の明示がない限り、いかなる順番又は重要性をも示すことなしに、1つのエレメントを別のエレメントから区別するだけのために使用される。
【0070】
「ガス化」という用語は、ここでは、物質が任意の可能な手段によってガス状形態へ変換されることを示すために利用される。
【0071】
詳細な説明及び添付の図面を考察することにより、本発明の種々異なる実施態様が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、実施態様に基づく方法を実施するように形成された水素生産設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。
図2A図2Aは、実施態様に基づく、水素生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2B図2Bは、実施態様に基づく、水素生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2C図2Cは、実施態様に基づく、水素生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2D図2Dは、実施態様に基づく、水素生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2E図2Eは、実施態様に基づく、水素生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2F図2Fは、実施態様に基づく、水素生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図3図3は、実施態様に基づく、メタン熱分解プロセスを介した水素生産のための設備及び方法を示す概略図である。
図4A図4Aは、実施態様に基づく、水蒸気メタン改質プロセスを介した水素生産のための設備及び方法を示す概略図である。
図4B図4Bは、実施態様に基づく、水蒸気メタン改質プロセスを介した水素生産のための設備及び方法を示す概略図である。
図4C図4Cは、実施態様に基づく、水蒸気メタン改質プロセスを介した水素生産のための設備及び方法を示す概略図である。
図5A図5Aは、実施態様に基づく設備及び方法へ回転装置100を組み込むレイアウトを示す図である。
図5B図5Bは、実施態様に基づく設備及び方法へ回転装置100を組み込むレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の詳細な実施態様が、添付の図面に関連してここに開示される。
【0074】
図1は、実施態様に基づく方法を実施するように形成された水素生産設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。図2~4は、実施態様に基づく装置及び方法を記載している。図1~4及び関連する実施例は、例示を目的としたものであり、本発明の概念の適用可能性を、本開示において明示されたレイアウトに限定しようと意図するものではない。破線で示されたブロックダイアグラム区分は、いくつかの形態では任意であってよい。
【0075】
実施態様において、熱消費設備1000は、産業プラント、工場、又は本質的に原材料、例えば天然ガス、バイオガス、及び/又は任意の他の炭化水素含有原料から水素、及び任意には合成ガス(syngas)を生産することを目的とした産業プロセス又は一連の産業プロセスを実施するように設計された機器を含む任意の産業システムによって代表される。実施態様では、設備は燃料及び炭化水素、例えばエタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、及びこれに類するものを生産するようにさらに構成することができる。この文脈において、「燃料」という用語は、エネルギー担体として使用される製品に関し、そして「化学製品」という用語は、燃料としては使用されない任意の他の製品に関する。熱消費プロセス、及び設備1000内部で少なくとも水素の生産に関連する熱消費プロセスを実施するように形成され、熱消費プロセスユニット及び/又はユーティリティと呼ばれる動作ユニットが、集合的に符号101によって示されている。設備1000は、同じ又は異なる熱消費プロセスを実施するように形成されたいくつかの動作ユニット101を含んでよい。実施態様では、動作ユニット101は、熱消費プロセスを実施するように形成された少なくとも1つの熱消費装置を含み、又はこれから成っている。実施態様では、動作ユニット101は、メタン及び/又は原料、例えば天然ガス又はバイオガスから熱プロセス及び/又は触媒プロセスを通して、水素を生産することを目的とする反応、又は一連の反応を実施するように形成された反応器装置として形成されている。
【0076】
熱消費プロセス設備1000はこのように、500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で熱消費プロセス101を実施するように形成されている。本開示において、熱消費産業プロセスは、炭化水素原料から、メタン水蒸気改質又はメタン熱分解のプロセスを通して水素、炭素、及び任意には合成ガスを生産することに関与するプロセスである。実施態様では、設備1000は、500~1700℃の範囲内の温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、本質的に約800~900℃以上の範囲内の温度で開始する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、1000℃に本質的に等しい、又は1000℃を超える温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、本質的に約1100~1200℃以上の範囲内の温度で開始する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000は、1200℃に本質的に等しい、又は1200℃を超える温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、約1300~1700℃の範囲内の温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、1500℃に本質的に等しい、又は1500℃を超える温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、1700℃に本質的に等しい、又は1700℃を超える温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。いくつかの実施態様では、設備は、1700℃を超える温度で、例えば2000℃以上で、例えば約1700℃~約2500℃の範囲内で産業プロセスを実施するように形成することができる。設備は約1700℃で、約1800℃で、約1900℃で、約2000℃で、約2100℃で、約2200℃で、約2300℃で、約2400℃で、約2500℃で、そして上述の温度点の間に含まれる任意の温度値で、産業プロセスを実施するように形成することができる。なお指摘しておくが、設備1000は、500℃未満の温度で産業プロセスの少なくとも一部を実施することから排除されない。
【0077】
水素の生産は、典型的には高い熱エネルギーの需要及び消費に関連し、そしてコンベンショナルな解決手段においては、かなりの産業排出物、例えば二酸化炭素を大気中へ作り出す。本開示は、高い熱エネルギー需要のある水素生産関連プロセス101中へ熱エネルギーを投入する方法及び装置を提供する。これにより、前記プロセスにおけるエネルギー効率を顕著に改善することができ、且つ/又は大気中へ放出される空気汚染物質量を低減することができる。レイアウト1000(図1)は、これらの改善された設備及び方法を概略的に示している。
【0078】
実施態様では、方法は、少なくとも1つの回転装置(以後、装置100)を含む又はこれから成る回転加熱器ユニット100によって、加熱された流体媒体を生成することを含む。明確にするために、回転加熱器ユニットは、回転装置と同じ符号100によって、本開示において示されている。回転加熱器ユニットは好ましくは、プロセス設備1000内へ組み込まれている。実施態様では、加熱された流体媒体は、少なくとも1つの回転装置によって生産されるものの、複数の回転装置が並列又は直列に使用されてよい。
【0079】
回転装置100は独立型の装置として、又は直列に(連続して)又は並列に配置されたいくつかの装置として提供することができる。1つ又は2つ以上の装置が、共通の熱消費ユニット101に接続されてよい。
【0080】
熱消費ユニット101は、炭化水素含有供給物、例えばメタン含有供給物から水素を生産することを目的とした反応を実施するように構成され、そして触媒プロセス及び/又は熱プロセスをそれぞれ実施するために触媒を伴って且つ/又は触媒を伴わずに動作する1つ又は2つ以上の反応器及び/又は炉として提供される。反応器は例えば固定床反応器、流動床反応器、又は任意の他の適宜のタイプの反応器装置であり得る。いくつかの形態では、ユニット101内の吸熱反応を実行するために、符号100内で加熱された流体、例えばガスが直接に使用される。このような事例では、符号100内で加熱された流体は、符号101のプロセス流体を少なくとも部分的に形成する。いくつかの他の形態では、符号100内で加熱された流体はその熱エネルギーを、熱消費ユニット/プロセス101内で使用されるプロセス流体へ転移することにより、反応熱を前記プロセスへ間接的に提供する。間接加熱の場合には、符号100内で加熱された流体は、熱消費ユニット/プロセス101内で使用されるプロセス流体と同じであるか又はこれとは異なっていてよい。しかしながら典型的には、これは異なっている。前記間接加熱を伴う形態では、回転装置100内の流体中へ加えられる熱エネルギーは、いわゆる「熱交換器」タイプの形態の使用を通して、熱消費ユニット/プロセス101へ転移される。「熱交換器」タイプの形態は、この文脈では、任意の既存の燃焼型加熱器、反応器、又は炉、又は任意のコンベンショナルな熱交換器装置で代表される。これらすべての装置は熱消費ユニット101とみなされる。さらなる形態では、回転装置100内で加熱された流体、例えばガスは、その熱エネルギーを熱消費ユニット101へ必ずしも転移するとはかぎらず、熱は、同じ又は後続の回転装置ユニット100内部の吸熱反応を実行するために使用される。
【0081】
いくつかの形態では、いくつかの装置100をいくつかの熱消費ユニット101(例えば水素生産のための反応器)に接続することができる。異なる形態、例えばn+x個の回転装置をn個のユニット101に接続してもよい。nはゼロ以上であり、そしてxは1以上である。こうして、いくつかの形態では、設備1000は、共通の熱消費ユニット101に接続された1、2、3又は4つの並列の回転装置100を含んでよい。4を超える回転装置の数も排除されない。
【0082】
実施態様において、投入エネルギー量Eは、熱消費プロセス設備1000内へ(回転)加熱器ユニットとして組み込まれた少なくとも1つの回転装置100内へ導かれる。投入エネルギーEは好ましくは電気エネルギーを含む。いくつかの実施態様では、熱消費プロセス設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、約5~約100パーセントの範囲内、好ましくは約50~約100パーセントの範囲内で提供される。このように、熱消費プロセス設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、(総投入エネルギーから)5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、及び100パーセントのうちのいずれか1つ、又は上記点の間に含まれる任意の中間値を占めてよい。
【0083】
電気エネルギーは外部源又は内部源から供給することができる。実際には、装置内へ供給される電気投入エネルギーE1は、電力の観点で定義することができる。後者は単位時間あたりのエネルギー転移速度(ワットで測定される)として定義される。
【0084】
図1の設備レイアウトで実施される本発明のいくつかの実施態様の詳細を、下記ラインに沿って説明する。以下の符号は部材のために使用される。
【0085】
流れ:1.供給物、2.予熱された供給物又は供給混合物、3.回転装置100によって加熱された供給物、4.例えば(発熱)化学反応を通して温度を上昇/促進するように形成された付加的な(ブースタ)加熱器ユニット内でさらに加熱された供給物、5.熱消費プロセス101から出る高温流体媒体、6.浄化部へ導かれた流体媒体、7.製品流及び/又は排ガス、8.反応性化合物又は化合物の混合物、例えば反応性化学物質、又は付加的な加熱器ユニット103内で流体/ガスの温度を高めるために使用される支援燃料、9.熱消費プロセス101中に高温流体媒体によって加熱されるべきプロセス流(固体、液体、ガス、蒸気、又はこれらの混合物)(間接加熱器用途)、10.さらなる処理及び/又は貯蔵のために送られる、加熱されたプロセス流(固体、液体、ガス、蒸気、又はこれらの混合物)(間接加熱器用途)、11.浄化部から出たリサイクル流、12.熱回収部への供給流、13.熱回収部からの高温流体流。区分(ユニット):100.回転加熱器ユニット(回転装置)、101.熱消費動作(プロセス)ユニット、102.予熱器ユニット、103.付加的な加熱装置(ブースタ加熱器)、104.熱回収ユニット、105.浄化ユニット。
【0086】
回転装置100は、供給流1、以後、供給物1を受容するように形成されている。全体的に見ると、供給物1は、純粋な成分又は成分混合物として提供された任意の適宜の流体、例えば液体又はガス又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成ることができる。供給物は原料液又は原料ガス、例えばメタン、天然ガス、メタンと天然ガスとの混合物、シェールガス、製油所オフガス、液化石油ガス、ナフサ、又は任意の他の適宜の炭化水素含有原料、プロセスガス/作業ガス、メイクアップガス(いわゆる置換/補充ガス(replacement/supplement gas))、リサイクルガス、及びこれに類するものであり得る。ガス状供給物は不活性ガス(蒸気、空気、窒素ガス、及びこれに類するもの)、又は反応性ガス(例えば酸素)、引火性ガス、例えば炭化水素、又は任意の他のガスを含むことができる。供給物はプロセスに応じて選択される。したがって、熱消費プロセス101の性質、及び実際には熱消費プロセス101が配属する具体的な産業/産業の分野が、供給物質の選択に対する特定の要件及び/又は制限を暗示する。これに加えて又はこの代わりに、供給物1は、(水)蒸気、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、及び一酸化炭素(CO)のうちのいずれか1種を含んでよい。
【0087】
供給物1が本質的にガス状の形態で装置100内へ入ることが好ましい。供給物の予熱、又は液状又は本質的に液状の供給物のガス状形態への変換は、任意の予熱器ユニット102内で実施することができる。予熱器ユニットは、(予)加熱器装置又は装置群として形成されている。予熱器ユニット102内では、最初はガス状形態(例えばプロセスガス)で提供された供給物流をさらに加熱(例えば過熱)することができる。予熱器ユニット102内では、供給物1が既にガス形態になっていなければこれを蒸発させ、そして任意には過熱することができる。
【0088】
予熱器ユニット102は、流体物質に熱を提供するように形成された任意のコンベンショナルな装置/システムであってよい。いくつかの形態では、予熱器ユニット102は燃焼型加熱器(すなわち、加熱器内部に配置されたコイルを通って流れる流体供給物の温度を上昇させるために高温燃焼ガス(煙道ガス)を使用する直接燃焼型熱交換器)であってよい。これに加えて又はこの代わりに、予熱器ユニット102は、(例えば熱回収部から到着した高温流13から熱エネルギーを抽出することによって)熱消費設備内の他のユニットによって利用可能となるエネルギーを活用するように形成することもできる。予熱器ユニット102はこのように他の蒸気流、電気、及び/又は例えば廃熱流(図示せず)を利用するように形成することができる。
【0089】
水素生産関連の熱消費プロセス及び関連の機器に応じて、回転加熱器ユニット(装置100)によって、加熱された流体媒体を生産するために使用される供給物流1は、未使用の供給物(新鮮な供給物)及び/又はリサイクル流を含んでよい。したがって、供給物1は、新鮮な供給物、リサイクル(流体)流、及びこれらの混合物のうちのいずれか1種から成ってよい。(予)加熱された供給物を表す流れ2は、供給物1に加えて、すべてのリサイクル流、例えば浄化区分105及び/又は熱回収区分104から到着したものを含んでよい。
【0090】
回転加熱器ユニット/回転装置100内では、温度は、熱消費プロセス101によって必要とされるレベルまで、又は回転装置によって達成される最大レベルまで高められる。回転装置100によって達成された温度上昇が熱消費プロセスにとって十分ではない場合、且つ/又は例えば流体の温度を、流体がその熱を熱消費プロセスへ転移したあとで再び上昇させる必要がある場合には、回転加熱器ユニット100(100A)の下流側に、「ブースタ」加熱器とさらに呼ばれる付加的な加熱器ユニット(100B、103)によって、温度をさらに高めることができる。図2Bに関する説明参照。それぞれの付加的な加熱器ユニットは、下記に基づいて実現された付加的な加熱装置を含み、又はこれから成る。
【0091】
水素の生産と関連する熱消費プロセスにおいて、主な熱消費源は、作業流体及び/又は関連する機器の加熱、及び吸熱反応(進行するのに外部エネルギーを必要とする反応)である。いくつかの用途では、熱消費プロセス101から熱を回収することができる。熱回収区分が図1において符号104で示されている。回収された熱は、供給物流1及び/又はリサイクル流(分離したリサイクル流が図1に符号11で示されている)を加熱するためにさらに使用することができる。
【0092】
熱回収は、プロセスユニット101から出たガスを収集し、これらのガスを予熱器ユニット102及び/又は回転装置100へリサイクルすることを通して準備されてよい。熱回収装置104は、少なくとも1つの熱交換装置(図示せず)で代表することができる。任意の適宜の技術に基づく熱交換器を利用することができる。熱回収は、熱がどこか他の場所で消費される場合、又は安全性又はその他の理由により熱を回収することができない場合、供給ガスを加熱するのに際して任意であってよい。
【0093】
設備レイアウト1000では、熱回収ユニット104は、予熱器102の前及び/又は後に配置することができる。後者の形態では、熱回収ユニット104は、水素生産プロセス101から流れる高温流体媒体(流れ5)から熱を回収するように配置されている。この熱は、供給物流1及びリサイクル流11を加熱するようにさらに利用されてよい。他方において、熱回収ユニット104が予熱器102の前に配置されている場合には、供給物1はまずユニット104へ(流れ12として)導かれ、そして次いで予熱部102へ流れ13として戻される。このような場合には、ユニット104は第1予熱器として作用する。
【0094】
いくつかの事例において、ガスは熱回収部へ導かれる前に、例えばダスト及び微粒子からの浄化を必要とする。浄化は、例えば熱回収区分104の前に配置された一連のフィルタによって行うことができる(図示せず)。これに加えて又はこの代わりに、プロセスユニット101から出たガスは、浄化ユニット105(ユニット104を迂回する)へ導かれ、そして浄化後に熱回収部へ戻されてもよい(図示せず)。
【0095】
プロセスガスは、価値生成物に加えて、望まれない不純物及び副生成物をも含有し得る。不純物及び副生成物は、加熱器装置100、103に蓄積し且つ/又は腐食を引き起こし、触媒床に毒をもたらすことによりプロセスユニット101にとって有害となりうる。熱消費プロセス101から放出された流れの浄化及び分離は、浄化ユニット105内で実施される。ユニット105は、ダスト及び固形粒子を機械的に除去するように構成されたいくつかのアプライアンス、例えばフィルタ、サイクロンなどを含むことができる。任意のコンベンショナルな浄化/分離法及び装置が利用されてよい。模範的な浄化/分離法の一例としては、極低温分離法、膜処理、圧力スイング吸着(PSA)、蒸留、吸収、及びこれらの方法の任意の組み合わせが挙げられる。ユニット105は、例えば圧縮によってガス圧を高めるように形成された装置を含んでもよい。典型的には、浄化ユニット105は、プロセスユニット101よりも低い温度で動作する。したがって浄化ユニットに入る前には、製品ガス流が(例えば熱回収部104内で)冷却される。符号101における反応器床の劣化範囲を最小限に抑えるために、リサイクルガス11の組成を制御することも重要である。
【0096】
浄化ユニット105は、排ガス、例えば二酸化炭素をさらなる炭素捕捉のために浄化するようにさらに構成することができる。水素生産設備から流れ7(図1)として放出された排ガスは、炭素捕捉部へさらに導くことができる(図示せず)。好適な排ガス浄化法の一例としては、例えばPSA、蒸留、吸収などが挙げられる。
【0097】
熱消費プロセス101を実施するために必要とされる、加熱された流体媒体が、少なくとも1つの回転装置100によって生成される。
【0098】
一実施態様では、加熱された流体媒体は回転装置100内で生成される。ここでは前記装置を通して伝搬された流体媒体中へ、熱エネルギー量が直接に加えられる。このような場合には、回転装置内で生成された、加熱された流体媒体は例えばプロセスガス、例えば炭化水素含有ガス(例えばメタン含有供給ガス、天然ガス、又はこれらの混合物)(図1、流れ1~4、特に流れ2参照)であってよく、これに対して、熱消費ユニット101から出る高温流体媒体5は、製品含有流、例えば水素含有流であってよい。直接加熱の場合、流れ1~5は作業流体又はプロセス流体と関連する。
【0099】
回転装置内で生成された、加熱された流体媒体は、熱消費ユニット/プロセス101へ熱エネルギーを転移するためにキャリアとしてさらに使用することができる。キャリアは、炭化水素含有供給物、例えばメタン含有供給物の水素への変換を実施又は媒介するように形成されている。例えば、不活性ガス、例えば空気、窒素、又は蒸気(HO)を回転装置100内で加熱し、そしてこの不活性ガスをさらに使用して、回転装置によって生成された熱を、水素生産プロセス101を実施するように構成された反応器又は炉へ搬送する。これに関連して、加熱された媒体(例えばプロセス101によって活用された)流体流の生成は、回転装置内で生成された、加熱された流体媒体と、プロセス101によって活用されひいては回転装置を迂回する適宜の媒体との間の熱転移プロセスを通して、回転装置外部で実施することができる。例えば水素生産に関連するプロセスの場合、回転装置外部での、加熱された炭化水素含有(供給)ガス(例えばメタン)の生成は、回転装置内で生成された炭化水素含有(供給)ガス以外の加熱された流体媒体(例えば蒸気、空気、窒素など)と、回転装置を迂回する炭化水素含有(供給)ガス流との間の熱転移プロセスを通して実施される。図1はこのような、回転装置100を迂回し、この文脈において炭化水素含有供給物/プロセス流を意味する流れ(プロセス流)9を示し、これに対して回転加熱器100を介してプロセスユニット101に到着する流れ1~4は、「低温」プロセス流9を加熱するためにプロセスユニット101へ導かれた流体媒体(例えば蒸気又はその他の不活性加熱媒体)を意味する。加熱されるべきプロセス流体(例えばメタン又は天然ガス)が高い圧力又は真空下にあるときに、間接加熱用途において加熱媒体として不活性高温ガスが使用されることが好ましい。流れ10はそれぞれ「高温」プロセス流を表す。ユニット101がメタン変換ユニットである場合には、流れ10は製品(水素)含有流を表し、そして流れ5は、ユニット/プロセス101から出る不活性流体媒体流(1~4と同じ)を表す。間接加熱において、流れ9及び10は、作業流体又はプロセス流体に関連するのに対して、流れ1~5は熱転移媒体を表す。したがって、間接加熱において、ユニット101は「熱交換器」タイプの装置として作用する。この装置は、当該流体間の直接的な接触なしに、装置を通って流れる2種の流体間で熱エネルギーを転移するのを可能にする。
【0100】
プロセス流体の直接加熱のための装置100を採用する模範的水蒸気メタン改質プロセスが、図4A及び4Bに、そしてプロセス流体の間接加熱のための装置100を採用する模範的水蒸気メタン改質プロセスが、図4Cにそれぞれ提示されている。
【0101】
実施態様に基づく、水素生産設備内へ供給されるべき加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータブレードを含むロータと、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、を含み、ロータがケーシング内部に閉じ込められている。装置100では、当該流体媒体流が前記回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬するときに、前記少なくとも1つのロータブレード列を通過したときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成される。
【0102】
回転装置100の実施形態は、米国特許第7,232,937号明細書(Bushuev)、米国特許第9,494,038号明細書(Bushuev)、及び米国特許第9,234,140号明細書(Seppala他)に基づく回転反応器装置、並びに米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に基づくラジアル反応器装置の開示内容に概ね従う。前記明細書の内容全体はここに参照することにより援用される。実施態様に基づく方法を採用するように形成され得る、任意の他の実施形態を利用することもできる。
【0103】
上で参照した特許文献において、回転ターボ機械タイプの装置は、炭化水素を処理するための、具体的にはスチームクラッキングするための反応器として設計されている。これらの用途に対する大まかな要件は、ガスの急速加熱、高い温度、短い滞留時間、及び栓流(軸方向の混合を暗示しない流動モデル)である。これらの要件は、ターボ機械タイプの反応器が、比較的小さな容積内に収容されるいくつかの加熱段を有するデザインをもたらす。
【0104】
本開示は、回転装置(限定はしないが上で参照したものを含む)を電化し、そして熱消費プロセス101、例えば水素の生産に関連するプロセスにおいてさらに供給される、加熱された流体媒体を生成するための加熱器として使用することができる。回転装置加熱器ユニットを熱消費プロセス中へ組み込むことにより、温室効果ガス及び粒子の排出量を著しく低減することができる。一例としては、回転装置は下記蒸気メタン改質プロセスにおいて、燃料燃焼型加熱器に取って代わることができる。温度範囲は、(上で参照した反応器装置で概ね達成可能な)約1000℃から少なくとも約1700℃まで、そしてさらに2500℃まで広げることができる。これらの高い温度を達成し得る回転装置の構成は、空気力学的ハードルが存在しないことにより可能である。
【0105】
実施態様に基づいて水素生産設備内へ組み込まれ、且つ実施態様に基づく方法のために、加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、こうして、少なくとも1つのロータユニットがロータ軸上に取り付けられた状態で、水平方向(長手方向)軸線に沿って位置決めされたロータ軸を含む。ロータユニットは、ロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって配置された複数のロータ(作業)ブレードを含む。ロータブレードは一緒に、ロータブレード・カスケードを形成する。回転装置100はこのように、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータ(作業)ブレードを含み、これらのロータブレードは、本質的に環状のロータブレード集成体又はロータブレード・カスケードを形成している。
【0106】
実施態様では、装置は、少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に位置する集成体を成すように配置された複数の固定ベーンをさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。
【0107】
いくつかの実施態様では、複数の固定ベーンは固定ベーン・カスケード(ステータ)を成すように配置することができる。固定ベーン・カスケードは、少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する、本質的に環状の集成体として提供される。少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する集成体を成すように配置された固定ベーンは、固定ガイドベーン、例えば(入口)ガイドベーン(IGV)として提供されてよく、そして流体流をロータ内へ所定の方向に導くように、例えばロータ固有の作業投入能力を制御し、そしていくつかの事例ではこれを最大化するように、固定ベーンは中心軸の周りにプロフィール、寸法、及び配置関係に関して形成されていてよい。
【0108】
回転装置は、2つ又は3つ以上の本質的に環状のロータブレード列(ロータブレード・カスケード)がロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的に配置された状態で形成されている。このような場合には、固定ガイドベーンは、第1ロータブレード列の上流側に、各ロータブレード列の上流側に順番に、又はロータブレード列の連続的な配置における任意の選択されたロータブレード列の上流側に設けられていてよい。
【0109】
実施態様では、回転装置100は、少なくとも1つのロータブレード列(ロータブレード・カスケード)の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成することができる。いくつかの形態では、ベーン付き又はベーン無しのディフューザが、少なくとも1つのロータブレード・カスケードの下流側の前記ディフューザ領域内に配置されている。いくつかの形態では、ディフューザは、複数の固定(ステータ)ベーンとして実現することができる。これらの固定ベーンは、ロータの下流側の本質的に環状の集成体として提供されるディフューザベーン・カスケードを成すように配置される。
【0110】
ロータ、固定ガイドベーン、及びディフューザ領域は、ケーシング内に形成された内部通路(ダクト)内部に閉じ込められている。
【0111】
例えば米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に記載されたようないくつかの形態では、ディフューザ(装置)を設けることが省かれ、そしてディフューザ領域は、ロータの下流側に配置されたダクトの本質的にベーン無しの部分(いわゆるベーンレス・スペース)によって形成されてよく、そしてロータから到着する高速流体流を拡散するように、そのジオメトリ及び/又は寸法パラメータに関して形成されてよい。
【0112】
ダクトのベーン無し部分を設けることは、上記回転装置100のすべての形態に共通している。形態に応じて、ベーン無し部分(ベーンレス・スペース)はロータブレードの下流側(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、又はディフューザベーン・カスケードの下流側(Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)に配置されている。例えばSeppala他によって記載されたいくつかの形態では、ケーシング内部の内部通路内の回転ブレード列及び固定ブレード列は、ベーン無し部分がロータブレードの下流側に配置された固定ディフューザベーンからの出口と、後続のロータブレード・カスケードユニットのロータブレードの上流側に配置された固定ガイドブレードへの入口との間に形成されるように配置されている。
【0113】
「上流側」及び「下流側」という用語はここでは、装置全体を通した流体流の方向(入口から出口へ)における、所定の部分又は構成部分、ここではロータに対する構造的な部分又は構成部分の空間的且つ/又は機能的な配置を意味する。
【0114】
全体的に見ると、作業ブレード・カスケードを備えたロータは、作業ブレード列の一方又は両方の側に本質的に環状の集成体(カスケードと呼ばれる)を成すように配置された固定(ステータ)ベーン列の間に位置決めすることができる。ロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的(順番に)配置された2つ又は3つ以上のロータブレード/ロータブレード・カスケード列を含む形態が、これらの間に固定ブレードを有する又は有しない状態で考えられる。ロータブレード列の間に固定ベーンが存在しない場合には、ダクトを通って伝搬する流体媒体の速度はそれぞれ後続の列において増大する。このような場合には、複数の定置ベーンが第1ロータブレード・カスケードの上流側に前記順番で(固定ガイドベーンとして)、そして最後のロータブレード・カスケードの下流側に(固定ディフューザベーンとして)、集成体を成すように配置されてよい。
【0115】
任意には固定ディフューザベーン集成体(ディフューザ領域)を備えたケーシング内部に閉じ込められた、ロータブレード列(ロータブレード・カスケード)と、前記ロータブレードの下流側に位置するダクトの一部とは、完全なエネルギー転換サイクルを媒介するように形成された最小限のプロセス段(以後、段)とみなすことができる。したがって、少なくとも1つの回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードから出てダクト内を後続のロータブレード列へ向かって伝搬するか、又は本質的にトロイド形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道に続く同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。(ロータの周囲を閉じ込める)ダクトは好ましくは、流体流がダクト内で伝搬すると、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられるように成形されている。
【0116】
少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する固定ガイドブレード列は、エネルギー変換サイクル中の回転ブレード列(カスケード)の進入時の所要の流動条件を準備する。
【0117】
いくつかの形態では、プロセス段は、(ロータブレードの上流側の)固定ガイドベーンと、ロータブレード列と、前記ロータブレードの下流側に配置されたディフューザ領域とから成る集成体によって確立される。ディフューザ領域は、任意にはディフューザベーンが設けられたタクトの本質的にはベーン無しの部分として提供される。固定ガイドベーン、少なくとも1つのロータブレード列、及びディフューザ領域をそれぞれ通して制御された状態で、流体媒体流が連続的に伝搬することにより可能になるエネルギー変換サイクル中、ロータ軸の機械エネルギーが運動エネルギーへ変換され、そしてさらに流体の内部エネルギーへ変換され、続いて流体温度が高められる。回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードを出てディフューザ領域を通ってダクト内を通過して、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられたときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列内で、流れは加速し、そして軸及び回転ブレードの機械エネルギーは流体流へ転移される。各ロータブレード列の少なくとも一部では、流れは超音速流状態へ達し得る。ディフューザ領域内では、ロータから到着した高速流体流は、顕著なエントロピー増大を伴って拡散される。これにより流れは運動エネルギーを流体物質の内部エネルギー内へ散逸し、ひいては熱エネルギーを流体中へ提供する。ディフューザの上流側の流れが超音速である場合、流体流の運動エネルギーは、多重ショック及び粘性混合及び散逸のシステムを通して流体の内部エネルギーへ変換される。流体の内部エネルギーが増大する結果、流体温度が上昇する。エネルギー変換機能は、例えばロータブレードの下流側に配置されたダクトのベーン無しの部分によって(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、且つ/又は拡散ベーン集成体によって(Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)果たすことができる。
【0118】
回転装置100は、多段又は単一段解決手段として形成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に配置されたいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って連続的に配置された1~5つのロータブレード列)を含むと考えることができる。
【0119】
水素生産に関連する高温プロセス中へ回転装置100を組み込むことにより、長い滞留時間に起因する炉又は他のタイプの加熱器内の高温加熱表面上の炭素堆積物の形成を回避するか、又は少なくとも大幅に低減することが可能になる。炭素形成の規模が著しく減少するように、回転装置内の原料ガス、例えばメタンの滞留時間を最小化することができる。これに加えて又はこの代わりに、回転装置を通って伝搬する原料ガスの温度を、反応が十分に高い変換速度で、且つ本質的に炭素堆積物が存在しない状態で進行するレベルまで高くすることもできる。このことは、前記装置の内部に、単一のロータユニット又はいくつかのロータユニットを、ディフューザ領域の前に直列に配置された状態で提供することにより達成し得る。
【0120】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された模範的形態において、回転装置100は実質的にリングトーラスの形状で実現することができる。ここでは子午面におけるダクトの断面はリング状プロフィールを形成する。装置は、固定ガイドベーン(ノズルベーン)と固定拡散ベーンとの間に配置されたロータユニットを含む。段は、固定ノズルベーン、ロータブレード、及び拡散ベーンの列を有する状態で形成されている。これらを通って流体流は、本質的に螺旋状の軌道に基づいて確立された流路にしたがって、連続的に伝搬する。この形態において、流体流は、装置内部の入口と出口との間を伝搬しながら、数回にわたって回転ロータブレード・カスケードを通って循環する。同様のリング形状の形態がBushuevの米国特許第9,494,038号明細書に記載されている。
【0121】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された別の模範的形態では、回転装置100は、本質的に管状の軸方向タイプのターボ機械として形成することができる。このような形態では、装置は延長された(細長い)ロータハブを含む。このロータハブに沿って、複数のロータブレードがいくつかの連続的な列を成すように配置されている。ロータはケーシング内部に閉じ込められている。ケーシングの内面は固定(ステータ)ベーンとディフューザベーンとを備えている。固定ベーン及びディフューザベーンは、ステータ、ロータ・カスケード、及びディフューザ・カスケードのブレード/ベーンが、ロータハブに沿って長手方向に(ロータシャフトの長さに沿って入口から出口まで)交互に位置している。長手方向においてロータに沿った特定の位置におけるロータ・カスケードのブレードは、それぞれ固定ガイド(ノズル)ベーン及び拡散ベーンの隣接する対と一緒に段を形成する。
【0122】
記載された形態において、後続の段は、段の間にブレード/ベーンのないスペースを有する。
【0123】
Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書に概要を示されたさらに別の模範的形態では、回転装置100は、ラジアル・ターボ機械として形成することができる。ラジアル・ターボ機械は概ね遠心圧縮機又は遠心ポンプのための設計に従う。「遠心」という用語は、装置内部の流体流が半径方向であることを暗示し、したがって、装置は本開示では「ラジアルフロー装置」と呼ばれることがある。装置は細長い軸上に取り付けられたいくつかのロータユニットを含む。各ロータユニットには固定ガイドベーンが先行する。エネルギー変換を可能にする方式で成形されたダクトのベーン無し部分(例えばU字ベンド又はS字ベンド)が、ロータユニットの後に配置されている。加えて形態は、ロータの下流側に配置された別個のディフューザ装置(ベーン付き又はベーン無し)を含んでもよい。
【0124】
上記すべての形態において、回転装置100は、本明細書中に開示された方法において同様に機能する。動作中、熱消費プロセス設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ導かれる投入エネルギー量は、ロータの機械エネルギーへ変換される。回転装置内の状態は、流量状態を作り出すように調節される。この流量状態にあるときには、ロータの回転ブレードによって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流が少なくとも1つのロータブレード列から出て、ダクト及び/又はディフューザ領域を通過することにより後続のロータブレード列又は同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列には、固定ガイドベーンが先行してよい。したがって調節し得る状態は、少なくとも回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬する流体媒体流を調節することを含む。流れの調節は、このような装置の動作関連パラメータ、例えば温度、質量流量、圧力などを調節することを含んでよい。これに加えて又はこの代わりに、流れの状態は、ケーシング内部に形成されたダクトの形状を変更することにより調節することができる。
【0125】
いくつかの模範的な形態では、回転装置は、Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書のいずれか一方において論じられた、本質的にトロイダル形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において論じられた、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書において論じられた本質的に半径方向の軌道、及びBushuevの米国特許第7,232,937号明細書において論じられているような、左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って入口と出口との間で流体流を実現するように形成することができる。回転装置の空気力学的設計は様々であり得る。
【0126】
回転装置は駆動エンジンを利用する。好ましい実施態様では、装置は電気エネルギーを投入エネルギーとして利用し、したがって装置は電動モータ駆動型である。本開示の目的上、任意の適宜のタイプの電動モータ(すなわち、電源から機械的負荷へエネルギーを転移し得る装置)を利用することができる。モータ駆動軸とロータ軸との間に配置された好適なカップリング、並びに種々のアプライアンス、例えば出力コンバータ、コントローラ、及びこれに類するものは、ここでは説明しない。加えて、装置は例えばガスタービン又は蒸気タービン、又は任意の他の適宜の駆動装置によって直接に駆動することができる。いくつかの回転装置100を共通の熱消費ユニット101に並列接続することを伴うレイアウトにおいて、前記装置の1つ又は2つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを利用してよく、例えば電動モータ駆動型装置を、蒸気タービン、ガスタービン、及び/又はガスエンジンによって駆動される装置と組み合わせることができる。
【0127】
電力(単位時間当たりのエネルギー転移速度と定義される)を、装置の回転軸を推進するために使用される電動モータに電流を供給することを通して、回転装置内へ供給することができる。回転装置内への電力の供給は(回転加熱器ユニット/装置100及び/又は熱消費プロセス設備1000に対して)外部源から実現することができる。これに加えて又はこの代わりに、電気エネルギーを設備1000の内部で生産することもできる。
【0128】
外部源は、持続可能なエネルギー生産のために提供された種々の支援設備を含む。こうして、電力は少なくとも1つの再生可能エネルギー源を活用する発電システム、又は異なる再生可能エネルギー源を活用する発電システムの組み合わせから供給することができる。再生可能エネルギーの外部源は太陽光発電、風力発電、及び/又は水力発電として提供することができる。こうして、電力は以下のユニット、すなわち、太陽光発電システム、風力発電システム、及び水力発電システムのうちの少なくとも1つからプロセス中へ受容されてよい。いくつかの模範的な例では、外部電力源として原子力発電所が提供されてよい。原子力発電所は一般にエミッションフリーとみなされる。「原子力発電所」は、伝統的な原子力、そしてこれに加えて又はこの代わりに、核融合電力を使用するものと解釈されるべきである。
【0129】
電気は、発電機を駆動するための運動エネルギー源としてタービンを利用する発電所から供給することができる。いくつかの事例では、少なくとも1つの装置100を駆動するための電力は、例えば別個の設備として、又はコジェネレーション設備内部、及び/又は複合サイクル発電所内部で提供される少なくとも1つのガスタービン(GT)から供給することができる。電力はこうして、以下のユニット、すなわち複合サイクルガスタービンプラント(CCGT)、及び/又は熱回収と組み合わされた電気生産、及び熱電併給(CHP)を通した利用のために形成されたコジェネレーション設備、のうちの少なくとも1つから供給することができる。いくつかの例では、CHPプラントは、記載のプロセスにおける再生可能エネルギーのシェアを大きくするためのバイオマス燃焼プラントであり得る。これに加えて又はこの代わりに、電力の供給は、任意にはエンジン発電所の一部として提供された、火花点火エンジン、例えばガスエンジン、及び/又は圧縮エンジン、例えばディーゼルエンジンから実現することができる。さらに、典型的には蒸気タービンの使用によって媒介される形で、化石原料、例えば石炭、油、天然ガス、ガソリン、及びこれに類するものから電気エネルギーを生産するように形成された任意のコンベンショナルな発電所を使用して、回転装置100のための投入エネルギーとして電気エネルギーを生成することもできる。また、再生可能エネルギー源として水素を利用して、燃料電池を使用して例えば電気へ再変換することもできる。
【0130】
外部源及び内部源として実現された上述の電力源のいかなる組み合わせも考えられる。低排出量の電力を別の(外部の)源から取り込むことは、熱消費プロセス設備のエネルギー効率を改善する。
【0131】
回転装置の駆動エンジン内への電力を含む投入エネルギーの導入にはさらに、任意には設備1000内の他の場所、又は前記設備の外部で生成された熱エネルギーを利用して、出力タービンから機械軸出力を駆動エンジンへ導くことが付随し得る。軸出力は、1つの回転エレメントから別の回転エレメントへ伝達された機械出力と定義され、軸のトルクと回転速度との合計として計算される。機械出力は、単位時間あたりの作業量又はエネルギー量(ワットで測定)と定義される。
【0132】
実際には、例えば電動モータ及び出力タービンからの軸出力は、これらのうちのいずれか一方が全軸出力又はその一部を提供し得るように分割することができる。
【0133】
図2A~2Dは、設備1000内部の回転加熱器ユニットを形成する回転装置100の、予熱器ユニット102、温度ブースタ区分103、及び熱回収ユニット104の関する模範的レイアウトを示している。以下の符号は部材のために使用される。すなわち100、100A、100B-回転加熱器ユニット(回転装置)、101-熱消費ユニット/プロセス、102-予熱器ユニット、103-付加的な加熱装置(ブースタ加熱器)。
【0134】
図2Aは、回転装置を通して導かれた流体媒体流(供給物流1)中に熱を投入するように形成された回転装置100の基本実施形態を概略的に示している。装置100から出た加熱された流れが、それぞれ符号2で示されている。基本実施形態において、流体の体積が、装置100のケーシング内の入口と出口との間に形成された流路に沿って伝搬している間に、所定の温度まで加熱されるように、回転装置100のロータシステムは空気力学的に形成されている(いわゆる「ワンパス」実施形態)。装置100は1つの段において、約10℃~約120℃の範囲内の、いくつかの形態では約500℃までの温度上昇(デルタT、ΔT)を可能にする。したがって、多段実施形態の場合には流体は「ワンパス」の実施に際して1000℃まで加熱することができる(10段装置の場合には1段あたり100℃の温度上昇)。流体媒体が装置段を通過するのに費やす滞留時間は数秒に満たない規模、例えば約0.01~1.0ミリ秒の規模なので、基本形態において既に、高速の効率的な加熱を達成することができる。温度上昇は必要に応じて最適化することができる。
【0135】
図2Bは、いわゆるブースタ加熱に関与する基本概念を示している。ブースタ加熱は、独立型の加熱装置100の能力を超えて流体媒体、例えばプロセスガスを加熱する任意の方法である。
【0136】
温度ブーストは、熱的、化学的、又はその両方のものとみなすことができる。「熱的ブースト」とも呼ばれる第1形態の場合、付加的な回転加熱器装置(図2B、2C及び2Dに符号100Bとして示されている)が、「一次」回転加熱器装置(図2B、2C及び2Dに符号100Aとして示されている)の下流側に配置されている。装置100A、100Bは、本開示の範囲内では回転加熱器ユニット100として概ね認識される。加熱された流体媒体の生成はこのように、連続して接続された少なくとも2つの回転装置100A、100Bを設けることによって達成し得る。流体媒体流(供給物流1)は、ここでは一次加熱器と呼ばれる、連続内の少なくとも第1の回転装置(100A)内で所定の温度に加熱される。そして第1の回転装置100A内で「予熱された」、当該第2の回転装置100Bを通って伝搬する流体媒体流(流れ3参照)中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流(流れ2参照)は、該連続内の少なくとも第2の回転装置(100B)内でさらに加熱される。装置100Bはしたがってブースタ加熱器と呼ばれる。装置100A、100Bは同一であってよく、またサイズ又は内部設計に関して変化していてもよい。例えば符号100Bのような2つ又は3つ以上のブースタ装置の列を、一次加熱器100Aの後に配置することができる。ブースタ装置は並列又は直列に、あるいはその回転速度及び空気力学特性の最適化を可能にする任意の組み合わせで配置することができる。
【0137】
第2の付加的又は代替的な形態(さらに「化学的ブースト」とも呼ばれる)では、符号103(図1、2B)で示された付加的な加熱装置は、これを通って伝搬する流体媒体流中へ反応性成分5、例えば可燃燃料を受容し、これにより、水素生産の熱消費プロセス101へ前記流体媒体流を導く前に発熱反応によって熱を提供するように構成されている。この形態では、付加的な加熱器ユニット/加熱装置103を通して導かれた流体媒体流中に反応性化学物質5を導入(例えば注入)することにより、温度ブーストを達成することができる。なお、図2Bの流れ5は、図1に示された流れ8に相当する。
【0138】
反応性化学物質に基づくブースタ加熱器ユニット103は、熱的ブースタ加熱器ユニット100、100B(図2B)の後、又は一次加熱器100、100A(図1)のすぐ後に配置されてよい。反応性化学物質(反応物質)5は燃焼ガス、例えば水素ガス、炭化水素、アンモニア、酸素、空気、他のガス及び/又は任意の他の適宜の反応性化合物、任意には触媒を含んでよい。ユニット103において、発熱反応によって、流体流は、化学物質媒介加熱に関与しない単一の回転装置によっては典型的には達成し得ないレベルまで加熱することができる(流れ4参照)。例えば、燃料ガス、例えば水素は、酸素含有プロセスガス、例えば空気中に導入することができる。高温において、水素と酸素とは発熱反応に入ることによって、水分子を生産する(水素燃焼)。
【0139】
燃料ガスを空気(又は富化酸素)とともにバーナを通してブースタ加熱器ユニット103内へ注入することにより、ガスの温度を上昇させ得る。加熱されたガスが引火性ガスを含有し、これらのガスを加熱のためだけに消費し得るならば、空気/又は酸素を添加することができる。プロセスガスは、H、NH、CO、燃焼させて熱を生成し得る燃料ガス(メタン、プロパンなど)を含有することができる。実現し得るならば、他の反応性ガスを注入することにより熱を生成することもできる。
【0140】
化学的ブーストのために構成された付加的な加熱器103は、パイプ片として、又は発熱反応が行われるチャンバとして形成されてよく、且つ/又は付加的な熱エネルギーを生産するための発熱反応に対応するために反応性化合物を受容するように配置された少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。ブースタ区分103はこのように、少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。任意には、反応性化学物質は、熱消費プロセス101に直接に注入することができる(図示せず)。これに加えて又はこの代わりに、反応性化学物質媒介ブーストは、相応に変更された単一の装置100、103内で実施することもできる。
【0141】
ブースタ加熱に関与する配置関係において、第1の回転装置(100A)内で所定の温度まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で最大限度までさらに上昇させることができる。一例としては、一次加熱器(100A)内で約1700℃まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で2500℃以上までさらに上昇させることができる。
【0142】
上述の概念を別々に又は組み合わせて用いることにより、並列又は直列に(連続に)接続された装置100のいずれか1つに、反応性化学物質5を導入することができる。ブースタ加熱器を設けることは任意である。
【0143】
付加的又は代替的な形態において、予熱及び付加的な加熱を同じ装置100内で実施することもできる(図示せず)。このことは、多段形態において達成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に位置するいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って1~5つのロータブレード列が連続的に配置されている)を含む。
【0144】
これに加えて又はこの代わりに、例えば回転装置100内で一度加熱された流体の温度を、流体がその熱を熱消費プロセス101へ転移した後で再び上昇させる必要がある場合に、ブースタ加熱を用いることができる。熱消費ユニット101と交互に位置するいくつかの回転加熱器装置100(100A、100B及び/又は任意には103)を含む模範的形態が、図2Eに示されている。このような形態は、例えば温度が反応器毎に低下し、反応器間で再び上昇させることが必要とされる、一連の連続的な触媒吸熱反応器のために利用することができる(図5に関する説明を参照)。
【0145】
少なくとも2つの回転装置、例えば100A、100B、及び任意には103(103が回転装置100として実施される場合)を並列又は直列に接続すると、回転装置集成帯を確立することができる(例えば図2B~2D参照)。「一次」加熱器100A又は「ブースタ」加熱器100B、103として実現された回転装置100間の接続は、機械的且つ/又は機能的であり得る。少なくとも2つの個々の、物理的に一体化された又は一体化されていない個々の装置ユニット間が連携されると、機能的(例えば達成可能な熱投入に関して)な接続を確立することができる。後者の場合、いくつかの補助装置を介して、少なくとも2つの回転装置間の連携を確立することができる(図示せず)。いくつかの形態では、集成体は、互いにミラー状に反映するように接続された少なくとも2つの装置を含む。これにより、前記少なくとも2つの装置はこれらの中心(ロータ)軸を介して少なくとも機能的に接続される。このようなミラー状の形態は、直列に(連続に)機械的に接続された少なくとも2つの回転装置100を有するものとさらに定義し得るのに対して、機能的接続は並列(アレイ状)の接続とみなすことができる。いくつかの事例では、前記「ミラー状」の配列はさらに変更を加えることにより、少なくとも2つの入口と、配列の本質的に中心に配置された共通の排出(放出)モジュールとを含むことができる。
【0146】
回転装置(図2Bの100A、100B、103参照)を同じ(ロータ)軸上で集成することができる。各回転装置は任意には、装置の独立した最適化を可能にする別々の駆動装置(モータ)を備えることができる。2つ又は3つ以上の別々の回転装置が使用されると、動作温度及び圧力の観点から、建築費(材料など)を最適化することができる。
【0147】
これに加えて又はこの代わりに、集成体内部の少なくとも1つの回転装置は、流体流の圧力を高めるように設計することができる。したがって、集成体内の少なくとも1つの回転装置には、加熱器機能とブロワ機能との組み合わせを割り当てることができる。
【0148】
これに加えて又はこの代わりに、反応性ガス又は不活性ガスを含有する流れを回転装置100へ(図示せず)、又は前記装置の下流側に位置する(例えば熱消費プロセス区分101内の)任意の機器へ供給することができる。このように、熱消費プロセスユニット101が熱消費ユニット、例えば反応器として形成されている場合には、反応性ガスは熱消費プロセスユニットへ直接に注入されてよい。いくつかの用途では、熱を生成し、且つ/又は反応に関与するために、支援燃料がプロセスユニット101へ直接に注入されてよい。
【0149】
図2Cは、間接プロセス加熱とともに回転加熱器装置100A、任意には100Bを使用する様子を示している。回転装置100(100A、100B)は、熱消費ユニット101内の流体を間接加熱するために使用することができる。熱は、熱交換器タイプの形態を成す2つの非混合流体間で転移される。したがって、流体、例えばガス又は液体を、回転装置100内で加熱された流体に対して実現可能な熱交換器装置101内で蒸発(気化)させるか又は過熱することができる。熱消費プロセスに対応するように形成された熱消費ユニット101は、任意の(既存の)燃焼型加熱器、反応器、又は炉、又は任意のコンベンショナルな熱交換器装置によって代表することができる。前記「熱交換器」形態(101)は、最適な熱転移のために必要に応じて選択することができる。加熱用ガス(流れ1~3参照)は、加熱及び安全性にとって最適であるように選択することができる(例えば蒸気、N、空気)。回転装置100A、100B内で加熱されたガスは大気圧に近くてよく、あるいは圧力を上昇させることにより、熱転移を改善することもできる。装置100内で加熱された熱転移媒体3(100Bから出た流れ3)は、熱消費プロセス101へ導かれる。ここで熱は流れ3から「低温」プロセス流6へ転移され、これにより「高温」プロセス流7が生産される。流れ4は(不活性)熱転移媒体流出物をそれぞれ表す。ユニット101がメタンから水素への変換ユニットである場合には、流れ6はメタン含有供給物流を表し、そして流れ7は、水素含有製品流を表すことになる。
【0150】
図2Cのプロセス流6及び7はこうして図1の流れ9及び10にそれぞれ相当し(間接加熱形態)、これに対して図2Cの熱転移媒体流3および4は流れ3(任意には4)及び5にそれぞれ相当する(間接加熱形態)。
【0151】
回転装置100によってプロセス流体を間接加熱するための別の模範的形態レイアウトが、図2Fに提示されている。熱消費ユニット101は、回転装置100から供給された加熱媒体流(熱転移媒体)によって、プロセス流入流を所定の温度まで加熱するように設計された熱交換器として作用するように設定されている。図2Fの形態は、水素生産設備内部の熱交換器101内で、ガス状媒体、例えば水素(ガス)及び/又は水素含有ガス流を加熱することに適用されてよい。熱交換器装置を通って流れる任意の他のプロセス流の温度を上昇させるために、同じレイアウトが適用されてよい。
【0152】
ガス状媒体、例えば水素ガスの加熱は、単に蒸気を加熱流体(図示せず)として使用することによって、回転装置100内で実施することはできるものの、水素流の圧力が例えば10バールを上回る値まで高められるような事例、又は水素流の温度が極めて高くなり、例えば約1000℃までの温度になるような事例では、図2Fに示された間接加熱のコンセプトを適用することが有益である。高い圧力且つ/又は高い温度で動作するように回転装置を設計すると、その材料要件を増大させ、そしてその技術的解決手段を複雑にするおそれがある。このことは装置のコスト全体を再び高くしてしまう。しかしながら、不活性ガス、例えば空気、窒素、二酸化炭素、又は蒸気の低圧加熱のために装置を設計し、そしてプロセスユニット101(熱交換器形態を成す)内で水素又は他のプロセス流を加熱するために、加熱されたガスを使用すると、その結果として加熱システムのコスト全体を低くすることができる。
【0153】
図2Fにおいて、回転装置100は、非作業流体(例えば不活性流体)、例えば空気、(水)蒸気、二酸化炭素、又は窒素ガス(N)を低い圧力で、例えば10バール未満の圧力で加熱するために使用される。このような非作業流体はさらに「熱転移媒体」と呼ばれる。装置100に入る流入流4(熱転移媒体、低温)の温度は約200~1100℃であり、そして100を出る流出流3(熱転移媒体、高温)の温度は約800~1200℃である。また、熱消費ユニット101に入る「低温」プロセス流体6(例えば水素)の温度は約20~500℃であるのに対して、101を出る「高温」プロセス流体流出流7の温度は約700~1000℃である。熱転移流体からプロセス流内への熱転移を可能にするために、回転装置100から放出された、加熱された流体の温度は、加熱されたプロセス流体(例えば水素)の目標温度を超えなければならない。
【0154】
回転装置100から放出された「高温」流体3は、熱消費ユニット101内へ導入される。熱消費ユニット101は、熱転移媒体(符号100内で加熱された不活性流体)から熱転移面を通ってプロセス流体、例えば水素流へ熱エネルギーを転移可能にし、その結果水素流を加熱する熱交換器として、図2Fのレイアウトにおいて提供されている。熱転移媒体は、これがその熱をプロセス流体へ供与するのに伴って冷める。冷却された熱転移媒体4を回転装置100内へ再導入することにより、システムの熱効率を改善することができる。
【0155】
熱交換器101の材料は、高温水素雰囲気、及び/又は高圧に耐えるように選択される。しかしながら、熱交換器のような定置の機器にとっては、このことは回転装置100にとってよりもさらにコスト効率の良い選択肢である。
【0156】
回転装置100を使用することにより、熱交換器形態(ここでは熱消費ユニット101によって表される)の温度差の最適化が可能になる。これにより、(熱交換器、反応器、炉、加熱器などとして形成された)ユニット101のサイズ、及び表面温度が過度に高いことに起因して表面上に発生する不所望な反応(ファウリング、コーキング)を最小化することができる。高い表面温度はプロセス加熱器内の過剰なファウリングを引き起こすおそれがある。間接加熱を用いることにより、水素の生産に関連する種々の用途において、プロセス加熱器を交換することができる。
【0157】
図2Dは回転加熱器装置100Aを、予熱器102と、熱消費プロセス(図示せず)からリサイクルされたリサイクルプロセス流体(流れ4)と一緒に示している。予熱器は、電気式、燃焼型、燃焼エンジン、ガスタービンなどであってよく、これはプロセスにおける任意の高温流から余剰の熱を回収するための熱交換器であり得る。予熱器102を設けることは任意である。この概念は、装置100Aの下流側に位置する任意のブースタ加熱器100Bを含むことができる。流れ1’は、予熱器102へ送られる(供給物)流体を表す。前記流体は回転装置100A、100Bを通ってさらに伝搬され、そこで供給物は加熱され、そして流れ3において熱消費プロセスへ送られる。
【0158】
回転装置100A、100Bのいずれか1つは、流体リサイクル装置(図2Dの流れ4参照)を備えることができる。回転装置と流体リサイクル装置とのいかなる組み合わせも考えられる。少なくとも1つの回転装置による流体媒体流の再循環を通して、リサイクルが可能になる。
【0159】
いくつかの形態において、回転装置100はコンベンショナルな燃焼型加熱器から排出された低酸素含量の煙道ガスを利用することができる。このような場合には、燃焼型加熱器から排出された高温煙道ガスはリサイクルガス(図2Dの流れ4)と混合されることにより、回転加熱器100、100A内での加熱のために使用される。記載の事例において使用される煙道ガス中の酸素含量は好ましくは、安全な加熱を可能にするための引火性限界を下回る。
【0160】
態様に基づく方法は、いくつかの非限定的実施例に基づいて以下に明らかにするように、水素の生産に関連する種々の熱消費プロセス101に、完全又は部分的に適用することができる。
【0161】
図3を参照する。図3には、メタン熱分解を通したメタンの直接変換プロセス中へ回転装置100を組み込み、これにより水素と炭素とが生産されることが概略的に示されている。このプロセスは、有用な炭化水素、例えば燃料及び/又は化学製品を生産するために範囲拡張することができる。符号9及び10を除いて、部材の指定は図1と同じである。
【0162】
このようなプロセスにおいて、供給物1及び/又はリサイクルガス流11(浄化ユニット105から戻る)には、熱回収部104内で(予)加熱が施され、続いて予加熱器102内で(予)加熱が施される。あるいは、流れ1、11は先ず予加熱器102内で、続いて熱回収部104内で加熱される。熱分解を通したメタンの直接変換プロセスにおいて、生供給物、例えば天然ガス又はバイオガスが、典型的にはプロセスに必要とされる範囲まで浄化される(図示せず)。供給物が純粋メタンである場合には、浄化(脱硫など)は必要とされない。
【0163】
水素及び炭素の生産のために、メタンが、加熱装置として作用する少なくとも1つの回転装置100内で、所定の温度まで加熱される(図3、流れ2参照)。この温度は、関連する変換比が下流側のメタン変換プロセス101において達成され得るレベルに調節される。熱変換プロセスに関して、前記温度レベルは1000℃超であり、好ましくは約1300℃~約1700℃の範囲内にある。触媒プロセスにおいて、温度は、選択された触媒に依存する。推奨温度値の1つは約800℃であるが、しかしいくつかの触媒は約500℃以上で既に動作する。装置100内の予測滞留時間は短く、例えば約1~20ミリ秒の範囲内にある。加熱器内(すなわち装置100内)のコークス形成を回避するために、短い滞留時間は重要である。装置103又は上流内へ反応性化学物質8(流れ3参照)を注入することにより加熱が媒介される任意の付加的な加熱装置103が、回転装置100に後置されてよい。これに加えて又はこの代わりに、上記のように集成された、回転形態を成すいくつかの回転装置100A、100B、任意には103によって温度ブーストを実施することもできる。
【0164】
所定の温度に加熱されたメタン(流れ4)は、熱消費プロセス/ユニット101へ進行する。熱消費プロセス/ユニットは、直列又は並列に配置されたいくつかの異なるタイプの反応器装置(この実施例では101A及び101B)で表すことができる。反応器100A、100Bのいずれか1つ、又はその両方は、メタンから水素への熱変換/分解(メタン熱分解)を実施するように形成されている。この実施例では、第1反応器100Aが熱反応器である。反応器100Aは例えばサイクロンタイプであってよく、速度及び重力によって炭素の分離を可能にする。他の反応器タイプを利用することもできる。反応器101A内では、流れ温度は約700~900℃のレベルまで低下することがあり、これにより分解反応速度は低くなる。後続の反応器ユニット、例えば101Bは、メタンの高温熱分解に適した触媒を供給された反応器と、メタンの低温熱分解に適した異なるタイプの触媒を供給された反応器とを含むことにより、反応器内のメタンの変換を最大化することができる。
【0165】
回転装置内で加熱される流体(ここではメタンガス)の温度、及び前記流体が装置内で費やす滞留時間を、熱消費プロセス(ここでは熱分解)が発生する際の閾値を下回るように調節することにより、流体が流れ4として(ここではメタン熱分解のための反応器として形成された)熱消費ユニット101に入る前に熱消費プロセスを開始するのを回避する。全体的に見ると、典型的な多段形態を成す装置100は、これを通る流体の温度を段階的に高めるように設計されている。したがって、装置100を通って伝搬する流体流の流れは、装置の最終作業段で、流体が前記最終作業段のロータを通過した後に、閾値温度(熱消費プロセス、例えばこの事例ではメタン熱分解が熱消費ユニット101内で発生する際の温度)が達成されるように調節することができる。こうして、回転装置100から放出されたメタンガス流出流(流れ4)の温度は、ほぼメタン熱分解の温度となる。この温度は、下流側の機器101内の触媒の存在/不在に応じて再び変化してよい。記載の配置関係は、回転装置100内部の炭素質堆積物の形成を回避するのをさらに可能にする。
【0166】
流れ9はコークスを示しており、コークスは熱反応器101Aから除去される。触媒反応器101Bは、触媒の機械的デコーキングを必要とすることがある。したがって、反応器100Bから放出された流れ10は、解放された炭素と一緒に、機械的デコーキングのための触媒を含有してよい。
【0167】
触媒のタイプに応じて、反応器ユニット101Bから放出された流れ5の温度は、およそ500℃以上であってよい。水素を含む製品流5は、熱回収ユニット104へ導かれ、そこで高温製品ガスが浄化ユニット105の前で冷却される。浄化ユニットは、例えば圧力スイング吸着(PSA)による水素分離ユニットから成っていてよく、そして水素の浄化及びメタンのリサイクルのためのさらなるアプライアンスを含んでよい。流れ7はしたがって浄化ユニット105から放出された製品ガス(水素)を示し、そして流れ11は、リサイクルガス(例えばメタン、及びいくつかの事例では水素)を意味する。リサイクルガスは、回転加熱器100内で(流れ13として)流体/ガスを加熱するために(再)使用することができる。リサイクルガス11は、プロセス流体としてのメタンの直接加熱を伴うプロセスにおいて反応物質として(再)使用することもできる。したがって、好ましい変換及び選択性を達成するために、リサイクルガス流11の組成(例えばリサイクルガス流中の水素及びより重質の炭化水素の量)を調節することが重要である。
【0168】
水素に加えて、図3に概略的に示されたプロセスは、一例としてはエタン、エチレン、アセチレン、及びベンゼンを含む他の有用な化学物質の生産を可能にする。前記化合物の生産は、高い温度で、好ましくは1500℃を超える温度で、天然ガス又はバイオガスから得られたメタンを熱分解することにより達成することができる。これにより、炭素生産量を最小化するために必要な滞留時間が極めて短くなる。任意の他の適宜の炭化水素含有原料を上で示したように利用することもできる。熱的及び/又は触媒的な熱分解は反応器101A、101B内で実施されるのに対して、所要温度への加熱は、回転装置100で実施されてよい(符号103内の任意のブースタ加熱を伴う)。
【0169】
有用な炭化水素及び炭素形成に対する選択性の損失を回避するために、反応器101Aの直後に反応を停止するように急冷が必要となる。滞留時間を最小化し、選択性を最適化するために、ただ1つの反応器101Aを使用することができる。熱的な熱分解の場合、反応器101Aの直後に急冷ユニットを配置することにより、反応を停止し、ひいては、有用な炭化水素及び炭素形成に対する選択性の損失を回避することができる。急冷ユニットは図3に示されてはいないが、しかしこのような急冷ユニットは、熱回収部104のコンベンショナルな部分であり、そして典型的にはこれは高圧蒸気発生器から成り、又は冷却媒体の直接注入を伴う。触媒が使用される場合には、反応器101(101A、101B)内の温度はより低いことが可能であり、そして急冷は必要とされなくてよい。急冷ユニットを設けることは、炭化水素生産プロセスでは典型的には必要とされるものの、水素の生産においてはこれを省くことができる。
【0170】
なお、図3に示された両プロセスは(水素の生産、及び他の炭化水素/化学物質の生産)は、ガス、例えばメタン及び水素分のリサイクルを支援する。水素の生産に際しては、リサイクルガスは典型的にはメタンであるのに対して、炭化水素の生産のために構成されたプロセスでは、リサイクルガスは水素とメタンとの混合物である。
【0171】
空気又は純酸素(8)を任意には回転加熱器装置100から出た流れ3中へ注入することにより、熱分解反応器101(101A)の前でメタンガスの温度を高めることができる。いくつかの事例では、別個のチャンバ(図示せず)内で水素生成物の一部を酸素によって燃焼させることができ、そしてこうして形成された高温蒸気を、反応器101(101A)に入る蒸気と混合することができる。あるいは、反応器101へ導かれた高温メタンガスへ、酸素8だけを注入することもできる。後者の処置は、(水)蒸気と炭素酸化物(CO及びCO)とを生産することになる。しかしながら、このことは製品ガス6からCO/COを除去するために、浄化区分105上へ付加的な負担をかけることがある。100と101との間への空気/酸素の注入を伴う記載の処置において、回転装置100から出た流れ3を水素生産部101へ直接に伝搬してよく、したがってブースタ加熱器103を設けることは任意であってよい。
【0172】
図4A~4Cは、水蒸気メタン改質(SMR)のプロセスを介した水素生産プロセスへ回転装置100を組み込むことを概略的に示している。同じプロセスを合成ガスの生産のために使用することができる。
【0173】
コンベンショナルな水蒸気メタン改質の場合、メタンは燃焼型加熱器によって外部で加熱された改質管内に配置された触媒床を、蒸気と一緒に通過させられる。本開示は、回転装置が触媒SMRプロセス及び非触媒SMRプロセスにおいて、燃料燃焼型加熱器に取って代わり得ることを教示している。
【0174】
本開示は、水蒸気メタン改質プロセス中へ回転装置100を組み込む少なくとも2つの別個の方法を記述する。
【0175】
一実施態様では、回転装置は(直接)加熱器として作用する。この加熱器は、装置を通って伝搬するメタンガス蒸気混合物又は天然ガス蒸気混合物の温度を、行われるべき改質反応によって必要とされるレベルまで高める。触媒改質反応が約800~900℃で発生する場合、回転装置100は、メタン-蒸気混合物を約1000℃を上回る温度まで加熱するために必要である。それというのも、混合物の温度を低下させる吸熱改質反応が、反応の進行に伴って触媒床内の混合物の温度を低下させるからである。非触媒改質反応は約1100℃で発生する。この場合には、回転装置100は、メタン-蒸気混合物を、約1300℃を上回る温度まで加熱するために必要とされる。
【0176】
図4Aはこのように、水蒸気メタン改質における直接加熱器として回転装置を適用することを示している。図4Aの設備レイアウトは、触媒SMR及び非触媒SMRのいずれか一方に適用可能である。
【0177】
例えば図2A、2Bに示された配置関係を利用することができる。符号101は熱消費ユニット/ユーティリティを示しており、この熱消費ユニット/ユーティリティは、この実施態様では、水素と炭素酸化物とを産出するためにメタンの水蒸気改質を実施するように形成された反応器として形成されている。いくつかの事例では、反応器101は、触媒改質反応器として形成されている。
【0178】
直接加熱は、任意には予熱された供給物含有プロセス流体、例えばメタンと蒸気との混合物、又は天然ガスと蒸気との混合物を、回転装置100を通して伝搬することを伴う。前記混合物は所定の温度に加熱される。予熱器102は図示されていない。予熱され脱硫された供給物、例えば天然ガス(NG)は少なくとも1つの装置100内で加熱され、そしてこれはさらに、SMR反応器によって表されたプロセスユニット101内へ導かれる。いくつかの形態では、装置100は、予改質器として作用することができる。予改質器は、天然ガスを蒸気で予改質するように形成され(図4A、「高圧蒸気」流参照)、これにより長鎖炭化水素がメタンと合成ガスとに分解されるように形成されている。合成ガスはこの段階でプロセスから引き出すことができる(図示せず)。あるいは、予改質器は、ユニット101内部に配置されてもよい。
【0179】
SMR反応器(ユニット101)は、改質反応を実施するように構成されたいかなるコンベンショナルな反応器であってもよい。反応器は触媒水蒸気メタン改質又は非触媒水蒸気メタン改質のプロセスのために設計することができる。模範的SMR反応器は、充填床反応器であってよい。メタンと蒸気との混合物は装置100内で、約1000℃まで加熱され(この温度は触媒の存在/不在に応じて変化してよい)、そしてSMR反応器101内へ導かれる。ここで改質反応が(等式1aに基づいて)発生する。回転装置100はこのように、通常は改質管(101)を取り囲む燃料燃焼型加熱器に取って代わる。主SMR反応器の下流側に高温水性ガスシフト(WGS)ユニット/反応器を配置することにより、水素収率を高めることができる(等式1b)。SMR反応器101から、又は水性ガスシフト反応器から放出された製品流は、熱回収部104へ、そして浄化部105へ進行する。熱回収部は水の冷却及び凝縮を伴ってよく、冷却器/水凝縮器装置を含む。浄化は圧力スイング吸着(PSA)、又は任意の他の適宜の方法を介して実施されてよい。ユニット105からは、浄化済みの水素を利用/貯蔵のために(「水素製品」流参照)、そしてリサイクルのために(「水素リサイクル」流参照)送ることができる。変換されていないメタンをユニット105からリサイクルのために送ることもできる(「メタンリサイクル」流)。
【0180】
いくつかの事例では、改質反応を完成状態にもたらすために、且つ/又は所期の反応規模に到達するために、付加的な「回転装置100-SMR反応器101」列(図4Aに破線で示されたボックス参照)を使用することが有益な場合がある。このような列を成すSMR反応器は触媒床反応器101であってよい。非触媒改質の場合にも、反応が完成まで進行するために必要とされる滞留時間を最適化するために、符号100及び101から成るいくつかの列が有用であり得る。一例としては1~10のこのような列が設備1000内部に連続的に配置されてよい。
【0181】
2つの主な反応SMR(等式1a)及びWGS(等式1b)を考慮に入れて、反応器101が平衡状態に達すると想定されるシミュレーションが、所要の列の数を推定する。シミュレーションは圧力20バール、及び蒸気とメタンとの比3:1を考慮に入れる。システムへの供給物は370℃であり、この温度で脱硫が実施される(図4A参照)。
【0182】
配列100~101を伴う触媒改質の場合、回転装置100内で供給物を1000℃(反応器入口温度)に加熱すると、反応器101の出口におけるメタン変換率は約37%となる。この時点で、温度は約650℃まで低下することになる。各反応器101への入口が1000℃まで加熱される3つ(i-iii)の連続的な列100-101(図5A)を使用する結果、メタン変換率は78%となり、これは試験圧力レベルではよりコンベンショナルである。
【0183】
図5Aは、回転装置100と触媒気相反応器101との交互の列(i-iii)を概略的に示している。回転装置100は、ガス状供給物及び他の反応物質の直接加熱装置として使用される。ガス状供給物はこうして最大許容温度(触媒温度許容差及び望まれない副反応の速度によってしばしば設定される)まで加熱され、そして図5Aに基づいて、第1触媒反応器101内へ供給される。反応物質はこうして、これらが反応器101へ入る前に加熱される。101において、反応させておく結果、断熱温度が減少する。その後、所望の変換率に達しない場合には、流出流は次の回転装置100内で、次の反応器101内へ供給されるように再加熱される。
【0184】
配列100-101を伴う非触媒改質の場合には、1300℃の反応器入口温度は、最大メタン変換率59%をもたらすことができる。この時点で、温度は約745℃に低下することになる。第2の列を加えると、返還率を95%まで上昇させることができる。連続的な回転装置反応器(100-101)列を使用することにより、そして次の加熱段の前の反応のために許される温度及び/又は滞留時間を調節することにより、プロセスを最適化することができる。加熱のために必要とされる総出力が吸熱反応の反応熱及び反応規模/変換率によって決定されるのに対して、プロセス収率及びコストを最適化するために列の数及び温度レベルを調節することができる。
【0185】
いくつかの事例では、2つのプロセス(符号100における加熱及び符号101における反応)の組み合わせが単一のユニット内で実現されてよい。加熱及び反応は、同じ機器ピース内で行われる。このような配置は非触媒SMR(図4B)において特に有益である。
【0186】
特に非触媒SMRのために設計された模範的設備レイアウトが、図4Bにより詳細に示されている。非触媒SMR設備において、回転加熱器100とSMR反応器101とは、単一の機器ピース内で組み合わされてよい。加熱器(供給物プリコンディショナ)の機能と反応器の機能とを組み合わせた少なくとも1つの回転装置100を含む形態の場合、予熱器102を設けることは省かれてよい。組み合わされた解決手段100-101は、より低い圧力を利用する。このことは反応収率を改善する。さらに、図4Bのレイアウトは、イオウ除去工程を改質器101の下流側に移すのを可能にする。それというのは働きを弱めるべき触媒が存在しないからである。供給物中のイオウの存在はコークス化をさらに低減し得る。
【0187】
別の実施態様では、回転装置100は任意の適宜のガス(熱転移媒体)を加熱するように形成された間接加熱器であり、その後、符号100内で加熱された前記高温ガスは、水素生産プロセス/ユニット191内へ、例えば改質炉内へ供給される。回転装置100内で生産された高温ガスは、炉の内部空間へ入り、そして改質器管を、必要な反応温度まで加熱する。こうして、装置100は、炉内の燃料燃焼型の外部バーナに取って代わることができる。このような配置関係は、既存のインフラストラクチャのほとんどを利用し得るという意味において有益である。
【0188】
図4Cは、水蒸気メタン改質において回転装置を間接加熱器として適用することを示す。回転装置は改質器炉101内の燃焼型加熱器に取って代わる。図4Cのレイアウトは、例えば図2C、2D及び/又は2Fに示された配置関係を利用することができる。
【0189】
図4A、4B(直接加熱)に示されたレイアウトと、図4C(間接加熱)に示されたレイアウトとの主な相違点は、図4A及び4Bのレイアウトでは、回転装置は供給物含有プロセス流体(例えばメタン流混合物)を(直接に)加熱するために使用され、そこから、加熱された流体が蒸気改質器101内へ導かれるのに対して、図4Cのレイアウトでは、回転装置100は、供給/プロセス流体以外の流体媒体(明確にするために、熱転移媒体と呼ぶこともできる)を加熱するように形成されていることである。図4Cから観察できるのは、装置100内で加熱されるべき熱転移媒体として、任意の適宜のガス(例えばメイクアップガス、空気、窒素、又は蒸気)を使用し得ることである。熱転移媒体は、改質器管を外部から加熱するために、熱消費ユニット101、例えば改質器炉へさらに導かれる。メタン含有供給物、及び任意には改質反応のために必要とされる蒸気が、他の場所から(ひいては回転装置100を迂回して)改質器101内へ供給される。吸熱改質反応が改質器101内で進行するために必要とされる熱が、回転装置100内で生成された、加熱された流体媒体(空気、窒素、蒸気など)と、回転装置100を迂回するプロセス流(メタン、蒸気)との間の熱転移プロセスを通して、こうして改質器101内へ供給される。
【0190】
熱転移媒体のリサイクルを、例えば図2Dに示されているように、間接加熱配置において実施することができる。前記熱転移媒体とプロセス流体(メタン、蒸気)との間の熱転移の結果としてユニット101内(ここでは改質器炉内)で冷却された熱転移媒体を、再加熱のために送ることができる(図2Dに示された流れ9として)。こうして熱損失を最小化することができる。これと相応して、水素製品、及び未反応原料をリサイクルすることもできる(メタンのリサイクルは図4Cには示されていない)。
【0191】
図5Bは、既存の改質器炉101に回転装置100を改造部分として組み込み、ここで装置100は燃焼型加熱器に取って代わっていることを示す単純化されたレイアウトである。図5Bは、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度で水素生産に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの反応器又は炉101と、前記少なくとも1つの反応器又は炉内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置100と、を含む配置関係を概略的に示している。
【0192】
図5Bのレイアウトにおいて、少なくとも1つの回転装置100は、炉/反応器101の外部の燃料燃焼型ラジアント加熱器バーナに取って代わるために使用される。回転装置100は不活性ガス、例えば蒸気、空気、又は窒素を加熱するために間接加熱器として使用される。不活性ガスは、燃焼型加熱器内の燃料と同様に、炉101の耐火性空間内へさらに供給される。回転装置からの高温ガスは、炉内部の触媒反応器管への加熱を可能にする。装置100によって加熱された不活性ガスは、炉101内部の管/コイルを通って伝搬するプロセス流体のための加熱媒体/熱転移媒体としてここでは作用する。プロセス流体はガス(例えばメタンガス)、液体、又はガス-液体混合物であり得る。
【0193】
また、図5Bの形態では、炉から出た煙道ガス(例えばN、CO、HO、NO、SO、粒状物質)は、再加熱のために回転装置への投入流としてさらに使用されてよい(図5B、煙道ガス・リサイクルライン参照)。
【0194】
ここでの回転装置100のさらなる利点は、回転装置がブラワとして作用し、流体が循環するのに必要な圧力上昇を可能にすることである。したがって、このレイアウトは、(コンベンショナルな燃焼型炉には典型的な)別個のエアブロワの必要性を排除する。
【0195】
再循環加熱器として回転装置を使用することは、煙道ガスからの最適な熱回収を可能にし、そして熱損失が最小化されることを保証する。この実施態様では、有害な環境排出物、例えば二酸化炭素、窒素酸化物、イオウ酸化物、及び粒状物質の排出も回避される。
【0196】
不活性ガス、例えば蒸気又は窒素を回転装置100内で循環させることは、具体的には加熱されるべき流体が高圧であり、且つ/又はこれが引火性である場合に有利である。このことは、不活性雰囲気を炉内に提供することにより、プロセス安全性を改善する。
【0197】
全体的に見ると、図5A及び5Bは、回転装置100を、吸熱反応のために構成された触媒反応器と一体化した概観を提供する。高温吸熱触媒反応のために熱を提供する燃焼型の加熱器及び炉は、水素生産産業における、例えば(触媒)メタン蒸気改質を通したすべての排出物のうちの大部分の主なる原因となる。回転装置100は、触媒反応器101の供給物を加熱し、そして高温供給物を、上昇する温度プロフィールを有する触媒床へ導入することにより、このような触媒反応に熱エネルギーを提供するために使用することができる。反応速度を維持するために、そして反応を完成状態にもたらすために、回転装置は前記触媒床間の再加熱器として作用することができる(図2E、5A参照)。
【0198】
図5A及び5Bは、下記の吸熱性の固体触媒反応プロセス中に、すなわち、1)熱を、反応器管を通して触媒床及び触媒床の長さに沿った反応物質へ連続的に導入するために、触媒含有管を外部加熱装置へ晒す(図5B、間接加熱)ための、そして2)反応物質を反応器に入る前に高温に加熱し、結果として断熱温度低下を伴いながら反応を生じさせておき、次いで、所期変換が達成されない場合には、反応物質を次の反応器のために再加熱する(図5A、直接加熱)ための吸熱性の固体触媒反応プロセス中に、反応熱を供給する最も一般的な経路内へ回転装置100を組み込むことを示している。図5Bの概念は、既存の炉を改造するのに適している。新しい「グリーンフィールド(greenfield)」装置のためには、回転装置内のガスの直接加熱を適用することもできる(図5A)。図5Aのレイアウトは、(石油精製装置内の半再生式の触媒改質器ユニット内で典型的に実施される)触媒ガソリン改質プロセス中へ組み込むことができる。回転装置100は、上記のように、燃焼型加熱器に取って代わることにより、直接に適用することができる。
【0199】
当業者には明らかなように、技術の発展とともに、本発明の基本的な考えを種々の方法で実現し組み合わせることができる。本発明及びその実施態様はこのように上記実施例に限定されることはなく、これらは添付の特許請求の範囲内で広く変化し得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
【国際調査報告】