(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】周囲媒体中の生物活性物質の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 27/414 20060101AFI20241112BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241112BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20241112BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20241112BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20241112BHJP
G01N 21/17 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
G01N27/414 301Y
G01N21/64 F
G01N33/497 Z
G01N33/00 C
G01N33/00 B
G01N33/483 C
G01N33/483 F
G01N21/17 N
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521165
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022077874
(87)【国際公開番号】W WO2023057602
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー サンドロ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA12
2G043BA16
2G043BA17
2G043CA01
2G043CA03
2G043CA06
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA13
2G045AA40
2G045BA01
2G045BB04
2G045FB03
2G045FB19
2G045HA01
2G045HA09
2G045JA07
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB04
2G059BB09
2G059BB13
2G059CC05
2G059CC16
2G059CC17
2G059CC19
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE04
2G059EE07
2G059FF12
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH03
2G059JJ17
(57)【要約】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に動作可能に結合可能なセンサーチップを提案する。センサーチップは、複数の受容体タンパク質複合体を含む反応セルと、反応セルを周囲媒体から分離し、一以上の生物活性物質に対して透過性である膜とを含むものであり、受容体タンパク質複合体は、反応セル内の一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになるものである。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に動作可能に結合可能なセンサーチップであって、前記センサーチップが、
複数の受容体タンパク質複合体を含有する反応セルと、
前記反応セルを前記周囲媒体から分離し、また前記一以上の生物活性物質に対して透過性である膜と、を備えるものであり、
前記受容体タンパク質複合体は、前記反応セル内の前記一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって該受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになるものであり、また
前記センサーチップは、前記一以上の生物活性物質を検出するための前記検出装置に少なくとも部分的に取り外し可能に挿入される、センサーチップ。
【請求項2】
前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の前記検出可能な一以上の状態変化は、前記周囲媒体中の前記一以上の生物活性物質の存在の示唆である、請求項1に記載のセンサーチップ。
【請求項3】
前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化が、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部のコンホメーションの状態の変化、前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の局在性の変化、前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の位置の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の組成の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の質量の変化、前記反応セルの少なくとも一部の質量の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の物理的特性の変化、前記反応セルの少なくとも一部の物理的特性の変化、前記反応セルの少なくとも一部の光学特性の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の化学的特性の変化、前記反応セル内に含有される基体の化学的特性の変化、前記反応セル内に含まれる基体の導電率の変化、前記反応セルの少なくとも一部内の遊離蛍光分子または光吸収分子の濃度の変化のうちの一つ以上と関連している、請求項1から2のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項4】
前記受容体タンパク質複合体は、前記一以上の生物活性物質への結合に伴って、前記反応セル内での位置が変化するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項5】
前記周囲媒体は、環境空気および水の少なくとも一方を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項6】
前記膜は、気体に対して透過性であり、および/または
前記膜は、水または水性液体に対して不透過性である、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項7】
前記センサーチップが、前記検出装置内に少なくとも部分的に挿入される形状およびサイズで構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項8】
前記センサーチップを前記検出装置に動作可能に結合するための一つ以上のコネクターをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項9】
前記反応セル内に少なくとも部分的に配置され、前記反応セル内の基体または組成物の導電率を決定するように構成される、一つ以上の電極をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項10】
前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一つの構成要素によって放射および/または散乱される電磁放射に対して半透明である少なくとも一つの検出窓をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項11】
前記反応セルと流体的に連結可能な少なくとも一つの貯蔵部をさらに含むものであり、前記少なくとも一つの貯蔵部は、脱イオン水を前記反応セルに供給するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項12】
前記受容体タンパク質複合体は、前記受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインであって一以上の生物活性物質に結合するよう構成されて前記生物活性物質のうちの一つへの結合に伴ってコンホメーションが変化するよう構成された受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれ含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
【請求項13】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合することができる検出装置であって、前記検出装置が、
前記少なくとも一つのセンサーチップの前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された少なくとも一つのセンサーを備えるものであり、該状態変化は、前記センサーチップの膜を通して前記周囲媒体から前記センサーチップの前記反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発され、また
前記少なくとも一つのセンサーと結合された処理回路を備えるものであり、該処理回路は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、前記周囲媒体中の前記一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成されるものである、検出装置。
【請求項14】
前記検出信号が、前記周囲媒体の体積当たりの一以上の生物活性物質の量、前記周囲媒体の体積当たりの生物活性物質の質量、前記周囲媒体中の生物活性物質の濃度、前記周囲媒体の受容体タンパク質の活性化能、および前記周囲媒体の生物活性を示す、請求項13に記載の検出装置。
【請求項15】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出システムであって、該検出システムが、
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも一つのセンサーチップと、
請求項13および14のいずれか一項に記載の検出装置と、を備える、検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、生物活性物質の検出に関する。特に、本開示は、検出装置に結合可能なセンサーチップ、および周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に関する。さらに、本開示は、こうしたセンサーチップおよび検出装置を備える検出システムに関する。また、本開示は、該センサーチップ、検出装置または検出システムの使用、および該センサーチップ、検出装置または検出システムにより一以上の生物活性物質を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト、動物、または生物体は、概して、それらの化学的環境と絶えず相互作用する。例えば、生物体は通常、周囲の空気または水などの周囲媒体に曝露または接触し、周囲媒体から分子、作用物質、または化合物を受容、摂取、吸収、またはそうでなければ取り込み、それによってそれらの化学的環境と相互作用し得る。周囲媒体からの特定の分子、作用物質または化合物に関連する相互作用は、生物体が生存するのに望ましいか、または必要でさえある可能性がある。こうした相互作用の例には、ヒトまたは動物によって吸入され、肺毛細管を通過する赤血球中のヘモグロビンに結合する酸素、または腸上皮を越えて選択的に輸送される糖分子がある。しかしながら、他の分子、作用物質または化合物に関連する周囲媒体との化学的相互作用は、通常の生命維持プロセスの一部ではない可能性があり、また望ましくない影響を有し、生物体に害を与える可能性さえもあり得る。こうした望ましくない影響は、周囲媒体から生物体が受容した分子、作用物質または化合物によって引き起こされ得るものであり、これらは細胞または細胞全体の分子構成単位を非特異的に損傷させる。例えば、オゾンなどの酸化化合物は、生物体によって吸収されると、タンパク質、脂質または核酸などである生物体の生体分子を酸化し得、そしてそれらの生化学的および/または構造的機能性を減少または破壊さえもし得る。あるいは、生物体が吸収した化学化合物、作用物質または分子は、生物体の特定の生化学的プロセスを、多くの場合生物体の生体分子を化学的に変化させることなく、活性化、阻害またはさらには除去し得る。こうしたプロセスまたは相互作用の例としては、イブプロフェンによる酵素シクロオキシゲナーゼの阻害、またはニコチンによるニコチンアセチルコリン受容体の活性化がある。典型的には、このような相互作用は、影響を受けた生体分子とエフェクターである分子、作用物質または化合物との間の構造的一致に依存する。例えば、イブプロフェンはシクロオキシゲナーゼの活性部位に結合し、それによって、通常の状況下ではシクロオキシゲナーゼによって炎症および疼痛の発症に関与するシグナル分子に変換されるものであるアラキドン酸の結合が阻止される。
【0003】
生物体は、それらが曝露される有害な化学化合物、作用物質または分子を検出し、そして適切な生理応答を誘発するための機序を発達および進化させてきた。生物体において生理応答を誘発する化学化合物、作用物質および分子を、概して、本明細書では生物活性物質(bioactive agent)と称し得る。ヒトおよびその他の生物体に関して、生物活性物質の検出および生理応答の誘発に役立つ様々な受容体タンパク質が特定されてきた。受容体タンパク質の重要な例には、アリール炭化水素受容体(AHR)、プレグナンX受容体(PXR)、および構成的アンドロスタン受容体(CAR)がある。これら受容体タンパク質は、生物系に対して外来性である生物活性物質、化合物または分子に関連する生物活性物質に対して、特に所謂、生体異物に対して、一定の結合特異性を示す。他方で、生体異物など潜在的に有害であるがむしろ重要な制御系の一部としての生物活性物質に対して検出および防御するようには進化してきていない様々な受容体タンパク質が存在する。例えば、内分泌系またはホルモン系は、成長、器官形成、受精能、繁殖および睡眠をはじめとする、動物またはヒトにおける様々な発達機能および定常状態機能を制御する。これら受容体タンパク質は、ホルモン類である自身の同族リガンドに特異的に結合し、それらによって活性化される。しかしながら、特定の構造的特徴をホルモンと共有している生物活性物質は、これら受容体に結合して、受容体を活性化させもする場合がある。このプロセスは、内分泌かく乱と呼ばれ得、内分泌系の重要な役割を考慮すると、有害な影響を有し得る。例えば、エストロゲン受容体(ER)を活性化する生物活性物質または生体異物性の化合物である異種エストロゲンへの曝露が、特に遺伝物質を直接的または間接的に損傷することによってではなく、身体内において誤った時点および/または場所で細胞シグナル伝達カスケードを活性化させることによって、乳がん、肺がん、腎がん、膵がんおよび脳がんの発症の原因となってきた。
【0004】
周囲媒体の成分を検出するための様々な装置、システムおよび器具、ならびに対応するセンサーが、過去数年間にわたって開発されてきた。媒体または周囲媒体中の成分の検出はまた、環境監視とも称され得る。概して、環境監視は、経時的な周囲媒体または環境の状態または質の特徴決定を指し、また例えば、環境または周囲媒体の化学組成がヒトまたは動物の健康にリスクを引き起こさないということを確実にするために実施され得る。
【0005】
周囲媒体中の成分の検出または環境監視は、例えば、そのような影響に起因するリスクを推定するため、およびそれらの低減または排除のための戦略を開発するために、自然環境、通常は土壌、水、空気または生態系への人間の活動の影響を識別および定量化するために用いられる重要なツールであり得る。環境監視は、地球規模での、例えば気候変動もしくは海洋のマイクロプラスチック汚染の監視、地域規模での、例えば特定の河川の汚染の監視、またはローカル規模での、例えば産業施設での空気の質もしくは養魚場における水質の監視が実施され得る。ローカルな環境監視は、多くの場合、産業施設または農業施設の規制ガイドラインの遵守を確実にするために実施することができる。最終的には、排気を検出および除去することによって、従業員、近隣の住民および環境の安全を維持し、それによって曝露を低減し、したがって関連するリスクが低減することを目的とする。こうした監視は、予想される排気の性質が通常よくわかっていることから、標的を定める形で実施することができる。例えば、養魚場にごく近接している場合には、水中の抗生物質残留物を環境監視に基づいて観察または検出することができる。農業領域では、地下水および/または河川水中の殺虫剤残留物が関心対象であり得、製油所付近では、周囲空気中の揮発性炭化水素の濃度が監視されて、精製プロセスの任意の段階で生成物の漏出の指標として使用され得る。
【0006】
しかしながら、環境監視または周囲媒体の成分の検出は、概して、人間の民間の環境または個人的な環境を監視するためなど、個人または個人的な用途でも利用され得る。例えば粉塵、花粉および/もしくは真菌胞子、揮発性有機炭素(VOC)、一酸化窒素(NOx)またはUV照射の濃度は、対応する検出装置を自宅に有するもしくは例えば車内に積載した、またはバックパックもしくはハンドバッグなどの手荷物物品に装着した者または個人に近接した空気中で測定され得る。こうした用途の目的は、通常、供給源を除去することではなく曝露から逃れることによって、個人の曝露を低減することであり得るが、これは供給源を除去することが、例えばUV、花粉またはオゾンの曝露の場合では、達成が困難であり得ることが理由である。特に、環境監視のこうした個々のまたは個人的な用途では、未知または定められていない汚染源を検出することが困難である場合がある。例えば、環境または周囲媒体の現在の局所的な質の包括的な推定を取得することは、例えば粒子状物質、VOC、NOx、オゾン、UV、エレクトロスモッグおよびイオン化放射線などの様々な環境パラメータを同時に監視することを必要とし得る。
【0007】
この目的のために、過去数年間にわたって様々な装置および対応するセンサーが開発されてきた。これら装置およびセンサーの一部は、複数の環境パラメータを同時に監視することができ、例えば最適な経路計画のために、随意に大気汚染の位置および時間固有の予測をはじめとする空気の質のリアルタイム追跡を可能にすることができる。しかしながら、環境監視のためのこれらの公知または従来の装置は、通常、利用される検出モードまたはセンサーが、高度に選択的であるか、またはほとんど選択的でないかのいずれかであるという点で制限される。例えば、NOx、一酸化炭素またはオゾンなどの既知の外因性病原性毒素は、高感度かつ高度に選択的な電気化学センサーまたは分光センサーを使用して選択的に検出され得る。こうした高度に選択的なセンサーは、周囲媒体中で検出しようとする特定の分子、作用物質または化合物の濃度について貴重な情報を与え得る一方で、特にそれぞれの分子、作用物質または化合物がわかっていなければ、有害である可能性がある他の分子、作用物質または化合物は検出されない場合がある。一方で、環境監視で利用されるよくあるタイプの非選択的センサーは、VOCセンサーであるが、これは例えば光イオン化に依存し、また所与の周波数またはエネルギーの光によってイオン化される任意の有機分子を検出する。しかしながら、有機分子のイオン化電位は、その毒性または生物活性に関連しない可能性がある。一例として、松の木の特徴的な匂いの原因である植物由来のテルペンであるピネン、およびロケット推進剤である1.1-ジメチルヒドラジンは、それぞれ8.07eVおよび8.05eVといった実質的に同一のイオン化電位を有し、いずれも約8eVという十分に高い周波数のUV光またはエネルギーによってイオン化する。しかしながら、それらがもつ急性毒性または生物活性は、有意に異なる。一方で、化学合成で頻繁に使用されるカルボニル化合物であるアセトアルデヒドは、10.2eVのイオン化電位を有し、したがって、約8eVで動作するVOCセンサーによって検出されないものの有意な急性毒性または生物活性を有する。
【0008】
前述の例から明らかなように、高度に選択的なセンサーを採用する装置は、センサーによって検出はできないがヒトの健康に潜在的に悪影響を与える可能性がある様々な化合物、作用物質または分子を検出できない場合がある。したがって高度に選択的なセンサーを利用する場合、偽陰性の数がかなり多い可能性がある。一方で、選択的でないセンサーを採用する装置は、健康上の関連性が限定された読取値を提供する可能性があり、これは偽陽性の数が多い可能性がある。加えて、選択的でないセンサーを有する装置はまた、ヒトの健康に悪影響を及ぼし得る他の化合物、分子または作用物質の検出に失敗する場合があり、これは、偽陰性の数も多い可能性がある。言い換えれば、選択的でないセンサーを有する装置は、共通の特定の物理化学的特性を有する広範な群の化合物、分子または作用物質を検出する可能性があるものの、当該装置は、健康上のリスクを有する可能性のある分子、化合物または作用物質を、健康上のリスクを有しない分子、化合物または作用物質と区別することができない可能性がある。
【0009】
したがって、例えば偽陽性および/または偽陰性の数の減少を報告するなど、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための改善された装置、システム、器具および方法を提供することが要望され得る。
【0010】
このことは、独立請求項の主題によって達成される。任意選択的特徴は、従属請求項および以下の説明によって提供される。
【発明の概要】
【0011】
本開示の態様は、周囲媒体中で一以上の生物活性物質を検出する、センサーチップ、検出装置、検出システム、前述のもののうちの一以上の使用、および方法に関する。本開示の一態様を参照して本明細書の上記および下記に提示するあらゆる開示は、本開示のその他の態様に等しく適用される。
【0012】
本開示の一態様によれば、周囲媒体および/またはセンサーチップを取り囲む媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に動作可能に結合可能なセンサーチップが提供される。このセンサーチップは、複数の受容体タンパク質複合体を含む反応セルと、該反応セルを周囲媒体から分離し、また一以上の生物活性物質に対して透過性である膜とを含む。そこで受容体タンパク質複合体は、反応セル内の一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになる。
【0013】
以下でもさらに解明されることとなるように、周囲媒体から反応セルに入る生物活性物質に結合することができる反応セル内の受容体タンパク質複合体を利用することが、生物体の高度かつ洗練された能力を活用して、生物活性物質をそれらの周囲媒体中で検出することを可能にし得る。結果として、本開示のセンサーチップ、検出装置および/または検出システムによって検出または報告される多数の偽陽性事象および偽陰性事象を有意に低減させることができ、それによって、周囲媒体中での生物活性物質の包括的で、信頼性があり、かつ正確である検出を可能にする。
【0014】
センサーチップの反応セルは、受容体タンパク質複合体を含有または含む区画またはチャンバーを指すか、または示し得、該反応セルは、その少なくとも一部分、一部、または領域が、膜によって周囲媒体から分離され得る。反応セルは、任意の適切なサイズ、形状、幾何学的形状、形態、または体積を有し得る。
【0015】
膜は、概して、センサーチップによって検出しようとする一以上の生物活性物質に対して透過性であり得る。例えば、膜は、反応セルと周囲媒体との間での物質交換を可能にし得る。特に、膜は、一以上の生物活性物質が、例えば拡散に応じて、膜を通って周囲媒体から反応セルに入ることができるように配置および構成され得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、生物活性物質とは、例えばセンサーチップの受容体タンパク質複合体と同等またはそれに相当する生物体の受容体タンパク質への結合に伴って、ヒトまたは動物などである生物体において生理応答を誘発することができる分子、作用物質または化合物を指し得る。その点においては、生理応答を誘発することには、生物体における細胞防御機序または細胞応答を誘発することが含まれ得る。あるいは、または追加的に、生理応答を誘発することには、生物体において生化学的プロセスを活性化、阻害および排除することのうちの一以上が含まれ得る。
【0017】
例えば、生物体によって取り込まれて生物体のホルモン受容体タンパク質に結合する生物活性物質は、本明細書で上記で述べたように、内因性シグナル伝達の活性の不在下で細胞応答を活性化する可能性がある。生物活性物質は、生物体において生理応答を誘発するので、通常、生物体に対する特定の毒性または健康上のリスクにも関連するか、または該リスクを伴う。したがって、本開示のセンサーチップにより一以上の生物活性物質を検出することによって、周囲媒体の毒性または汚染を確実に決定または評価することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、受容体タンパク質複合体は、概して、一以上の生物活性物質に結合し、そして結合に伴ってそれらの状態が変化するように構成された機能的複合体を指すか、または示し得るが、当該変化はセンサーチップによって検出または測定され得る。その点においては、各受容体タンパク質複合体は、少なくとも一の生物活性物質に結合するように構成された少なくとも一つのリガンド結合ドメインを含み得るが、これはこの文脈ではリガンドとも称し得る。例えば、各受容体タンパク質複合体は、類似の、同一の、または同等の構造、配列または形態で生物体に存在し得る受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインを含み得る。
【0019】
したがって、センサーチップの受容体タンパク質複合体のうちの一つが少なくとも一の生物活性物質に結合することによって誘発される状態変化は、生物活性物質が生物体内の同等または類似の受容体タンパク質に結合するときに誘発される細胞応答または生理応答を反映し、これに類似し、またはその示唆となり得る。したがって、センサーチップによって状態変化が検出または決定されるとき、生物活性物質が生物体において生理応答を誘発するだろうということを推定することができる。したがって、本開示によるセンサーチップは、例えばVOCセンサーの場合のような、化合物の生物活性に関連しない可能性がある特定の構造的性質に基づく広範囲の化合物に非選択的に応答するセンサーよりも、有意な利点を提供することができる。さらに、受容体タンパク質複合体のうちの一つに結合する生物活性物質の化学構造ならびにその供給源は不明である場合があるということに留意されたい。したがって、本開示によるセンサーチップは、既知の生物活性物質、例えば病原性毒素、を選択的かつ排他的に検出するセンサーよりも、有意な利点を提供することも可能である。
【0020】
受容体タンパク質複合体の結合は、コンホメーション、構造、形状、位置、局在性、組成、化学反応性、化学活性、およびその他についての変化をはじめとする、受容体タンパク質複合体の様々な種類の状態変化を結果としてもたらすか、それを伴うか、または付随し得る。あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体において誘発される状態変化は、反応セルおよび/または膜の少なくとも一部の変形または変化をもたらし得る。受容体タンパク質複合体のこうした様々な状態変化、および/またはそれに関連するセンサーチップの少なくとも構成要素の変形もしくは変化は、例えば、検出原理または検出モードを使用して、異なるアプローチによって検出することができる。以下で詳細に述べることとなるように、これらの異なる検出原理の全てを、本開示の文脈で想定している。
【0021】
一実施例では、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部のコンホメーション的な状態の変化を伴い得る。例えば、受容体タンパク質複合体は、反応セル内ではその天然状態であり得、また生物活性物質のうちの一つへの結合に伴ってそのコンホメーションが変化するように構成されてもよい。
【0022】
あるいは、または追加的に、受容体複合体の状態変化は、反応セル内での受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の局在性および/または位置の変化を伴い得る。したがって、受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴って、反応セル内での位置および/または局在性が変化するように構成され得る。位置の変化は、反応セル内での各タンパク質複合体またはその少なくとも一部の移動を伴い得、またはそれらを含み得る。位置および/または局在性の当該変化は、例えば、受容体タンパク質複合体の、または受容体タンパク質複合体に結合する別のリガンドのコンホメーションの変化によって誘発され得る。
【0023】
あるいは、または追加的に、状態変化は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の組成の変化を伴い得る。例えば、受容体タンパク質複合体の組成は、受容体タンパク質複合体の構成要素または部分の解離または交換に基づいて、または受容体タンパク質複合体の別の構成要素または部分への結合によって、生物活性物質への結合に伴って変化し得る。したがって、受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴って一以上の構成要素へと解離するように構成され得、一以上の生物活性物質への結合に伴って一以上の構成要素が交換されるように構成され得、および/または一以上の生物活性物質への結合に伴って一以上の部分に結合するように構成され得る。
【0024】
随意に、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の組成の変化は、例えば生物活性物質への結合に伴って一つ以上の部分が放出される場合には、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の質量の変化を伴い得る。あるいは、または追加的に、反応セルおよび/または膜の少なくとも一部の質量の変化は、誘発される状態変化を伴い得、またセンサーチップによって検出され得る。
【0025】
さらに、誘発された状態変化は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の物理的特性の変化のうちの一以上、反応セルおよび/または膜の少なくとも一部の物理的特性の変化、反応セルおよび/または膜の少なくとも一部の光学特性の変化、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の化学的特性の変化、反応セル内に含有される基体の化学的特性の変化、反応セルに含まれる基体の導電率の変化、反応セルの少なくとも一部内の遊離蛍光分子または光吸収分子の濃度の変化を伴い得る。
【0026】
それに伴うセンサーチップの少なくとも部分または構成要素の前述の状態変化および/または変形または変化のうち任意の一以上を利用して、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を確実に検出することができる。したがって、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な一以上の状態変化は、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在の示唆となり得る。
【0027】
一例としては、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束または固定され得るものであり、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、一以上の生物活性物質への結合に伴って少なくとも一つの機能面から解離するように構成され得る。言い換えれば、少なくとも一つの機能面に拘束または固定化された受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、一以上の生物活性物質への結合に伴って少なくとも一つの機能面から放出または遊離され得る。少なくとも一つの機能面からの解離は、例えば少なくとも一つの機能面、膜、または反応セルの別の内面の質量の変化、少なくとも一つの機能面、膜、または反応セルに含まれる別の内側面もしくは基体の光学特性の変化、ならびに機能面、膜および反応セルのうちの一以上の別の性質または特性の変化のうちの一以上をもたらすか、またはそれを伴い得る。当該変化のうち任意の一または複数は、センサーチップによって検出することができ、また一以上の生物活性物質の正確な検出を可能にすることができる。
【0028】
一例として、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、反応セルの少なくとも一つの機能面に共有結合され得る。したがって、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、受容体タンパク質複合体を少なくとも一つの機能面に共有結合することに基づいて、少なくとも一つの機能面に拘束または固定され得る。例えば、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、反応セルの少なくとも一つの機能面において、反応セルの少なくとも一つの機能面に共有結合したリガンドによって、例えば低親和性リガンドまたは高親和性リガンドによって、拘束または固定され得る。その中では、少なくとも一つの機能面の少なくとも一部が、当該リガンドを含み得るか、または当該リガンドでコーティングされ得る。低親和性リガンドおよび高親和性リガンドの両方が使用され得るが、低親和性リガンドは、高親和性リガンドと比較して、より強い信号を提供し得る。
【0029】
あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体は、反応セルの少なくとも一つの機能面に静電的に拘束され得る。これには、例えば、イオン結合、またはファンデルワールス力などの弱い相互作用による結合が含まれ得る。静電的な拘束は、例えば少なくとも一つの機能面が担持する電荷に基づいて受動的に、または例えば少なくとも一つの機能面またはその近傍のセンサーチップの一つ以上の電極を帯電することに基づいて能動的に、提供され得る。
【0030】
反応セルの少なくとも一つの機能面は、反応セルに面する膜の内側面によって画定され得る。言い換えれば、反応セルの内部に面する、または反応セルの内部の方に向けられる膜の内側面が、少なくとも一つの機能面を構成し得る。
【0031】
あるいは、または追加的に、少なくとも一つの機能面は、反応セルの内側面を含み得るものであり、内側面が膜の方に向けて配設される。膜の方に向けて配設される内側面は、内側面の表面法線ベクトルおよび膜の表面法線ベクトルが、互いに対して横断方向に配向されることを意味し得る。例えば、少なくとも一つの機能面は、膜に対向または膜に隣接して配置された反応セルの内側面を含み得る。
【0032】
一実施例では、周囲媒体は、センサーチップの環境または周囲における環境空気、大気または空気を含み得る。したがって、本開示のセンサーチップは、環境空気中で一以上の生物活性物質を検出するように構成され得る。したがって、センサーチップは、例えば、環境空気の質の環境監視および/または監視のために、利用され得る。
【0033】
あるいは、周囲媒体は水を含み得る。したがって、本開示のセンサーチップは、水中の一以上の生物活性物質を検出するように構成され得る。したがって、センサーチップは、例えば、地表水、地下水、海洋水、河川水、養魚場の水、プール水などの水の質の環境監視および/または監視のために、利用され得る。本開示によるセンサーチップはまた、土壌などのその他の媒体または物質中の一以上の生物活性物質を検出するのに有利に利用され得ることに留意されたい。
【0034】
膜は、周囲媒体に接触するように構成された外側面を含み得、また反応セルに面する内側面を含み得る。したがって、膜の外側面は、周囲媒体の方に向けることができ、また膜の内側面は、反応セルの内部の方に向けることができる。少なくともセンサーチップの使用中、膜の外側面が、周囲媒体に絶えず接触するように構成され得るものであり、これにより一以上の生物活性物質の存在の観点で周囲媒体を絶えず監視することを可能にすることができる。
【0035】
一実施例では、反応セルは、液体、ゼラチンおよび半固体の基体のうちの一以上を含有し得る。その点において、反応セルは、基体で部分的または完全に充填され得る。例えば、基体は、受容体タンパク質複合体が、特に一以上の生物活性物質に結合していない場合には、天然状態を維持することとなるように構成され得る。こうした液体、半固体および/またはゼラチン性の基体を反応セル内に提供することで、受容体タンパク質複合体の寿命、すなわちセンサーチップの寿命を、有意に増大させることができる。
【0036】
一例として、基体は、水溶液、等張溶液および緩衝溶液のうちの少なくとも一つを含み得る。したがって、反応セルは、水性液、等張液、緩衝液、ゼラチン性および/または半固体の基体、例えばゼラチン性マトリクスを含有し得るものであり、そこでは受容体タンパク質複合体および反応セル内に存在する可能性のある任意のさらなるタンパク質が、それらの天然状態を維持する。
【0037】
随意に、基体は、受容体タンパク質複合体を、例えばそれらの天然状態で安定化するための安定化タンパク質を含み得る。あるいは、または追加的に、基体は、例えばTweenまたはトリトンX-100のうちの一以上などの界面活性分子または界面活性分子複合体を含み得る。
【0038】
センサーチップの膜は、気体透過性であり得る。膜の気体透過性は、膜を横断して膜を通って反応セルに入ることができる空気を周囲媒体が含有または含む場合に、特に有利であり得る。あるいは、または追加的に、膜は水または水性の液体に対して不透過性であり得る。水または水性の液体に対する膜の不透過性は、反応セルから出た基体または他の液体の漏れを防止し、それによってセンサーチップの機能性を確実にし、その寿命を増大し得る。
【0039】
一実施例では、膜は、複数の細孔を含み得、好ましくは気体で充填されて水を除外する。膜の当該構成は、センサーチップの増大した寿命にわたって、気体透過性であり、その上、水または水性の液体に対する不透過性を効率的に確実にすることができる。
【0040】
例えば、膜は、多孔性炭素紙材料および穿孔されたフッ素重合体のうちの少なくとも一つを含み得る。しかしながら、膜は脂質を含む他の材料または重合体も含み得ることに留意されたい。
【0041】
さらなる実施例では、センサーチップは、膜の外側面の少なくとも一部を覆う格子をさらに備え得る。格子は、外部からの物理的損傷から膜および/または反応セルを保護するように配置および構成され得る。格子は剛性の開放格子であり得る。格子は、センサーチップの筐体と一体的に形成され得るか、またはセンサーチップの筐体に取り付けられた別個の部品または部材として形成され得る。
【0042】
あるいは、または追加的に、センサーチップは、密封カバーであって膜の外側面の少なくとも一部を覆い、膜が周囲媒体と接触するのを防止するように構成された密封カバーをさらに備え得る。密封カバーは、膜と直接接触してもよく、または膜と離間していてもよい。例えば、密封カバーは、膜の外側面の少なくとも一部を覆う格子の外側面に配置され得る。特に密封カバーは、センサーチップが動作していないときに、膜の外側面を覆って、生物活性物質が反応セル内に入るのを遮断するために利用され得る。これによりセンサーチップの耐用期間または寿命を増大させることができるが、これは密封カバーによって覆われていないと、反応セル内の受容体タンパク質複合体の量が時間とともに減少し得るという理由からである。
【0043】
概して、密封カバーは単回使用のみであり得るか、または密封カバーは膜を覆うために再利用され得る。したがって、反応セルは、膜の外側面の少なくとも一部を密封カバーで覆うことによって、封止可能および/または再封止可能であり得る。
【0044】
一実施例では、密封カバーは、例えば密封カバーをセンサーチップに着脱可能に取り付ける、または貼り付けることを可能にする、接着フィルムを含み得る。例えば接着フィルムは、密封カバーの表面の少なくとも一部に、例えば該表面の周囲に、配置され得るものであり、これが密封カバーをセンサーチップにしっかりと取り付けられることを可能にし、膜または反応セルが密封カバーによって周囲媒体に対して包括的に封着されることを確実にすることを可能にする。しかしながら、スナップ嵌め接続または他の機械的な結合のみならず磁気的な結合をはじめとする、密封カバーをセンサーチップに取り付ける他の手段もまた利用可能であることに留意されたい。
【0045】
密封カバーは、気密であってもよく、および/または空気が密封カバーを横断することを遮断するように構成されてもよい。センサーチップに対する密封カバーの気密の構成および取り付けは、時間とともに反応セル内の受容体タンパク質複合体の数を減少させる可能性がある周囲媒体または生物活性物質が反応セル内に進入できないことを確実にすることができる。上述のように、反応セルのこの密封は、センサーチップが動作していないとき、例えばセンサーチップを保管しているときに、特に有利であり得る。
【0046】
センサーチップは、検出装置の中に少なくとも部分的に挿入されるような形状およびサイズで構成され得る。したがって、センサーチップは、検出装置内に少なくとも部分的に挿入され得るように、形状設定およびサイズ設定され得る。こうした部分的な挿入は、検出装置内でセンサーチップを正しく位置決めすることを確実にすることができ、センサーチップと検出装置との間の適切な接続または結合を確実にすることができ、またセンサーチップを損傷から保護することができる。
【0047】
例えばセンサーチップは、検出装置のソケットの中に少なくとも部分的に挿入されるような形状およびサイズで構成され得る。言い換えれば、検出装置は、センサーチップを少なくとも部分的に受容する少なくとも一つのソケットを備えることができる。該ソケットは、例えばスロット様に形成され得、そしてセンサーチップは、センサーチップをソケット内に押し込むことによってソケット内に挿入され得る。
【0048】
随意に、センサーチップは、センサーチップの筐体の外側面に少なくとも一つの表面特徴を備えてもよいものであり、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴は、ソケット内でのセンサーチップの正しい位置決めを確実にするようにソケットの少なくとも一つの表面特徴に対して相補的に形成される。その中では、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴は、随意に、ソケットの少なくとも一つの表面特徴と係合して、センサーチップをソケット内に固定するように構成され得る。したがって、ソケットの表面特徴およびセンサーチップの筐体の表面特徴は、センサーチップをソケット内に固定するためのクリック嵌めまたはスナップ嵌め機構を提供し得る。
【0049】
あるいは、または追加的に、センサーチップは、センサーチップを検出装置に磁気的に結合するための一つ以上の磁石または磁気素子を含み得る。また、センサーチップを検出装置に固定するその他の手段、例えば螺子による締付けまたはその他の機械的な締付けも利用され得る。
【0050】
上述のように、一以上の異なる検出原理または形態を適用して、一以上の生物活性物質への結合によって誘発される受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を検出することができる。例えば、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部についての状態変化は、光学測定に基づいて検出可能であり得る。こうした光学測定は、反応セルの少なくとも一部内で、膜の少なくとも一部で、または反応セルの外側で実施され得る。あるいは、または追加的に、状態変化は、蛍光光の検出に基づいて、かつ受容体タンパク質複合体の一以上の構成要素の蛍光励起に基づいて、検出可能であり得る。例えば、受容体タンパク質複合体は、少なくとも一つの蛍光標識を含み得、また一以上の生物活性物質への結合に伴って解離するように構成されて、それによって少なくとも一つの蛍光標識を反応セルに放出し得る。結合に伴って受容体タンパク質複合体から放出される蛍光標識によって放射された蛍光光が、状態変化を検出するために検出され得る。あるいは、または追加的に、状態変化は、光散乱に基づいて、例えば反応セルの少なくとも一部に光を通過させることによって、および反応セルを通過する光の強度の変化を測定することによって、検出可能であり得る。あるいは、または追加的に、状態変化は、反応セルの少なくとも一つの機能面の一以上の光学特性を決定することに基づいて検出可能であり得る。あるいは、または追加的に、反応セル内または少なくとも一つの機能面における電磁放射の吸収を利用して、受容体タンパク質複合体の状態変化を検出することができる。例えば、受容体タンパク質複合体の一以上の生物活性物質への結合は、少なくとも一つの機能面からの受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の解離および/または受容体タンパク質複合体の解離をもたらし得、これが少なくとも一つの機能面および/または反応セル内に含有される基体の光学特性の検出可能な変化を結果的にもたらし得る。あるいは、または追加的に、状態変化は、反応セル内に含有される基体の導電率および/または導電率の変化を決定することに基づいて検出され得る。この目的のために、センサーチップは、反応セルの内部に配置される一つ以上の電極を備え得る。あるいは、または追加的に、状態変化は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の一以上の生物活性物質への結合に伴って反応セル内で生じる電気化学的プロセスの検出に基づいて検出可能であり得る。あるいは、または追加的に、状態変化は、反応セルの少なくとも一つの機能面の質量および/または質量の変化を決定することに基づいて、例えば、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束されるか、または固定される受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定することに基づいて、検出可能であり得る。例えば、受容体タンパク質複合体は、少なくとも一つの機能面に拘束され得、また一以上の生物活性物質への結合に伴ってそこから解離し得るものであるが、これは少なくとも一つの機能面または膜の質量の測定可能な変化を結果的にもたらし得る。あるいは、または追加的に、少なくとも一つの機能面の一以上の物理特性または光学特性の変化は、反応セルの少なくとも一つの機能面における表面プラズモン共鳴に基づいて検出可能であり得る。前述の検出原理またはさらに他の検出原理のうちのいずれか一つ以上を利用して、一以上の生物活性物質への受容体タンパク質複合体の結合によって誘発される状態変化を検出し得ることが強調される。
【0051】
対応するセンサーまたは検出素子など、前述の状態変化のうちの一つ以上を実際に検出するためのさらなる技術的手段が、センサーチップおよび/または検出装置に含まれてもよいことに留意されたい。したがって、センサーチップおよび検出装置の一方または両方は、光学測定に基づいて、蛍光光の検出に基づいて、受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の蛍光励起に基づいて、光散乱に基づいて、センサーチップの反応セル内に含有される基体の導電率を決定することに基づいて、反応セル内で発生する電気化学的プロセスに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面の一つ以上の光学特性を決定することに基づいて、電磁放射の吸収を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面の質量を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束または固定される受容体タンパク質複合体の質量を決定することに基づいて、および反応セルの少なくとも一つの機能面における表面プラズモン共鳴に基づいて、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成され得る。
【0052】
一実施例によれば、センサーチップは、センサーチップを検出装置に動作可能に結合するための一つ以上のコネクターを含む。当該動作可能に結合することは、一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化が検出可能であるように、センサーチップが一つ以上のコネクターを介して検出装置に接続され得ることを意味し得る。
【0053】
一実施例では、一つ以上のコネクターは、一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の少なくとも一部のコンホメーションの状態の変化を光学的に検出するために、検出装置からの電磁放射を反応セルに結合するように構成された少なくとも一つの光コネクターを含み得る。あるいは、または追加的に、一つ以上のコネクターは、反応セルから出た電磁放射を結合するための少なくとも一つのさらなる光コネクターを含み得る。例えば、センサーチップは、検出装置からセンサーチップ内に電磁放射を伝達するための第一の光コネクターと、センサーチップから出て検出装置内に電磁放射を伝達するための第二の光コネクターとを備え得る。センサーチップはまた、センサーチップを検出装置に光学的に結合するために三つ以上の光コネクターを含み得る。
【0054】
この少なくとも一つの光コネクターおよび/または少なくとも一つのさらなる光コネクター、例えば第一の光コネクターおよび第二の光コネクターは、センサーチップの筐体内に配置される少なくとも一つの開口部を含み得る。対応する光コネクターの少なくとも一つの開口部を介して、電磁放射が、一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の状態変化を光学的に検出するために、センサーチップの中へ、および/または外に結合され得る。
【0055】
随意に、少なくとも一つの開口部は、所定の波長の電磁放射に対して半透明である材料の層で封止され得る。例えば、状態変化は、受容体タンパク質複合体の一つ以上の蛍光標識の蛍光励起に基づいて検出され得るが、これは生物活性物質への結合に伴って放出され得る。その中では、開口部を封止する材料の層は、所定の波長または波長の範囲の少なくとも蛍光励起光に対して透過性または半透明であり得、これが蛍光励起光を反応セルに結合することを可能にする。あるいは、または追加的に、開口部を封止する材料の層は、少なくとも蛍光標識によって放射される蛍光光に対して透過性または半透明であり得る。
【0056】
少なくとも一つの開口部は、例えば、開口部を通して反応セルに入るこうした光または電磁放射が、反応セルの少なくとも一部を横断する光のシースとなるように形付けられ、配向され、または形成され得る。例えば、少なくとも一つの開口部は、反応セルの長手方向軸に平行に配向され得る。
【0057】
さらに別の実施例では、センサーチップは、一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の少なくとも一部についての状態変化を光学的に検出するために、反応セルを通って電磁放射を案内するための少なくとも一つの光学ガイドをさらに含む。その中では、少なくとも一つの光学ガイドが、反応セルの少なくとも一部を横断し得る。例えば、少なくとも一つの光学ガイドは、反応セルを通って反応セルの長手方向軸に平行に延在し得る。反応セル内に一つ以上の光学ガイドを配置することは、概して、高感度光学測定を可能にし得、それによって結合に伴う受容体タンパク質複合体の状態変化の正確かつ信頼性のある検出を可能にする。
【0058】
少なくとも一つの光学ガイドは、センサーチップの少なくとも一つの光コネクターと整列して光学的に結合され得る。したがって、電磁放射または光は、少なくとも一つの光コネクターを介して、少なくとも一つの光学ガイドの中および/または外に結合され得る。
【0059】
一例として、センサーチップは、少なくとも二つの光学ガイドと、少なくとも二つの光学ガイドの端部に配置された少なくとも一つの反射素子とを備え得るものであり、少なくとも一つの反射素子は、少なくとも二つの光学ガイドを光学的に結合する。言い換えれば、電磁放射は、光学ガイドのうちの一つを通過し、少なくとも一つの反射素子で反射され、またさらなる光学ガイドに結合し得る。随意に、少なくとも二つの光学ガイドの各々は、少なくとも一つの反射素子に対向するそれぞれの光学ガイドの端部に配置された検出装置(sensor deceive)の少なくとも一つの光コネクターと光学的に結合され得る。当該構成においては、少なくとも二つの光学ガイドを通して反応セルを横断する電磁放射の経路長を最大化することができるが、これによりセンサーチップの感度を増加させることができる。
【0060】
さらに別の実施例では、センサーチップの一つ以上のコネクターは、センサーチップを検出装置に電気的に結合するための少なくとも一つの電気コネクターを含み得る。当該電気コネクターは、電気信号、例えば制御信号または検出信号を、検出装置によってセンサーチップに提供すること、またはその逆を提供することを可能にし得る。あるいは、または追加的に、少なくとも一つの電気コネクターは、センサーチップと検出装置との間のデータ通信または通信結合を可能にし得る。
【0061】
一実施例では、センサーチップは、反応セル内に少なくとも部分的に配置され、反応セル内の基体または組成物の導電率または導電率の変化を決定するように構成される、一つ以上の電極をさらに含む。本明細書で上述したように、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の結合に伴って誘発される状態変化は、受容体タンパク質複合体のいくつかの構成要素への解離、および/または受容体タンパク質複合体の少なくとも一つの機能面からの解離を含み得る。これら状態変化のいずれかは、反応セル内に含有される基体の導電率の変化をもたらし得るものであり、これは、高精度、高感度および高性能である一つ以上の電極によって測定可能であり得る。
【0062】
さらに別の実施例では、センサーチップは、受容体タンパク質複合体の少なくとも一つ以上の構成要素によって放射および/または散乱される電磁放射に対して半透明である少なくとも一つの検出窓をさらに含み得る。例えば、少なくとも一つの検出窓は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一以上の構成要素によって、例えば一以上の生物活性物質への結合に伴って放出される一以上の蛍光標識によって、放射された蛍光光に対して半透明であり得る。
【0063】
あるいは、または追加的に、少なくとも一つの検出窓は、蛍光励起光に対して不透明であり得る。したがって、検出窓によって、蛍光励起光が反応セルから出るのを遮断することができる。当該構成は、特に蛍光励起光の強度が蛍光標識によって放射される実際の蛍光光の強度よりもはるかに大きい場合に、センサーチップの感度を増大させることを可能にし得る。
【0064】
少なくとも一つの検出窓は、例えば、膜に対向して配置されてもよく、膜の方に向けて配設されてもよく、および/または膜の方に向けて配向されてもよい。検出窓の当該配置は、膜の光学特性または反応セルの機能面の変化が、センサーチップの検出窓を通して確実に検出され得ることを確実にすることができる。
【0065】
一実施例では、反応セルに面する少なくとも一つの検出窓の内側面は、受容体タンパク質複合体の少なくとも構成要素に結合するように構成された分子捕捉複合体で少なくとも部分的にコーティングされて、それによって一以上の生物活性物質に結合した受容体タンパク質複合体が内側面に捕捉されるようにすることができる。したがって、少なくとも一つの検出窓の内側面は、一以上の生物活性物質に既に結合している反応セル内の受容体タンパク質複合体のシンクとして作用し得る。コーティングされた内側面によって、センサーチップの感度は、有意な量の生物活性物質を含有する周囲媒体中での長時間の動作中であっても高レベルに維持され得る。当該構成は、例えば蛍光励起に基づいて、光学的に状態変化を検出する場合に特に有利であり得る。例えば、センサーチップの長時間の動作または生物活性物質への大量の曝露の後では、受容体タンパク質複合体の大部分が生物活性物質に結合し、膜から解離および/または遊離している可能性があり、このことが、新たに結合した受容体タンパク質複合体によって誘発されるさらなる蛍光の適切な検出を不正確にさせる可能性がある。したがって、少なくとも一つの検出窓のコーティングされた内側面によれば、一以上の蛍光標識などの既に結合した受容体タンパク質複合体またはその構成要素が、コーティングされた内側面に捕捉されて、また光学測定に影響し得ない、または影響を及ぼし得ないことを確実にすることができる。
【0066】
受容体タンパク質複合体またはその一つ以上の構成要素を分子捕捉複合体に実際に結合させるために、受容体タンパク質複合体は、親和性タグを含み得、好ましくは分子捕捉複合体に対して高い親和性で結合する。親和性タグは、例えば、ビオチンであり得、その場合には、分子捕捉複合体はストレプトアビジンを含み得る。あるいは、または追加的に、親和性タグはヒスチジンタグであり得、その場合には、分子捕捉複合体はキレート化ニッケルイオンを含み得る。
【0067】
あるいは、または追加的に、反応セルに面する少なくとも一つの検出窓の内側面は、蛍光標識などの受容体タンパク質複合体の少なくとも一つの構成要素によって放射される散乱光および/または蛍光光を消光するための消光分子で少なくとも部分的にコーティングされ得る。あるいは、または追加的に、反応セルに面する膜の内側面は、受容体タンパク質複合体の少なくとも構成要素によって放射される散乱光および/または蛍光光を消光するための消光分子で少なくとも部分的にコーティングされ得る。散乱光および/または蛍光光を消光することで、一以上の生物活性物質に結合する受容体タンパク質複合体に起因しない光散乱または蛍光放射に由来するノイズを低減または除去さえもすることができる。
【0068】
一実施例では、センサーチップおよび/または反応セルは、細長形状を有し得る。当該細長形状は、周囲媒体に曝露される膜および/または反応セルの面を増大させることを可能にし得るが、このことが生物活性物質の実際の検出の質および精度を向上させることを可能にし得る。その中では、膜は随意に、センサーチップの長軸方向側部に配置され得る。
【0069】
さらに別の実施例では、反応セルは、長方形断面を有し得る。あるいは、または追加的に、反応セルは、平行六面体として形成され得る。しかしながら、本開示の文脈においては、他の幾何学的形状、形状、または形態の反応セルも想定されることに留意されたい。
【0070】
例えば、反応セルは、円形、楕円形、または長円形の断面を有してもよく、および/または管状形状であってもよい。その中では、膜が、反応セルの周囲または外周に沿って反応セルを少なくとも部分的に取り囲み得る。また当該構成が、生物活性物質が通過して反応セルに入ることができる膜の面を増加または最大化することを可能にさせ得、それによって生物活性物質の検出の正確性および精度を向上させることが可能になる。
【0071】
さらなる実施例では、センサーチップは、反応セルと流体的に結合可能な少なくとも一つの貯蔵部をさらに含み得るものであり、該少なくとも一つの貯蔵部は、脱イオン水を反応セルに供給するように構成される。したがって、少なくとも一つの貯蔵部は、脱イオン水で少なくとも部分的に充填され得る。貯蔵部は、本明細書では水貯蔵部とも称し得る。貯蔵部によれば、時間の経過により反応セルから漏れ出る基体、または液体を、例えば膜を通過する水を、脱イオン水を反応セルに供給することで補填することができる。
【0072】
あるいは、または追加的に、反応セルは、センサーチップを初めて使用する前は乾燥状態にあるか、または液体、半固体および/もしくはゼラチン性の基体を含まないものであり得、そしてセンサーチップは、脱イオン水を貯蔵部から反応セルに供給することによって起動され得る。
【0073】
一実施例では、少なくとも一つの貯蔵部の壁の少なくとも一部は、貯蔵部の容積が調整可能であり得るように、置き換え可能であるか、可撓性であるか、または移動可能であり得る。当該構成は、時間の経過による反応セルからの基体、液体、流体または水のあらゆる損失または漏出を動的に補填することを可能にし得る。
【0074】
例えば、少なくとも一つの貯蔵部の少なくとも一部は、可撓性バッグまたは可撓性ブリスターとして形成することができる。そこでは、貯蔵部の容積は、反応セルに供給される脱イオン水の量または体積に応じて、特に、水が反応セルに向かって貯蔵部から出て行こうとしていたとしても収縮に対して有意な抵抗をもたらすことなく、調整することができる。
【0075】
随意に、少なくとも一つの貯蔵部は、圧力均等化のための少なくとも一つの開口を備えるセンサーチップの筐体の部分に取り囲まれ得る。少なくとも一つの開口を介して、例えば空気などの周囲媒体は、水が貯蔵部から反応セルに向かって、例えば貯蔵部と比較して反応セル内のオスモル濃度が高いことによって引き出されるとき、筐体に入ることができる。
【0076】
あるいは、または追加的に、センサーチップは、少なくとも一つの貯蔵部の容積を調整するように構成された少なくとも一つの移動可能なピストンをさらに含み得る。また当該構成は、時間の経過による反応セルからの基体、液体、流体または水のあらゆる損失または漏出を動的に補填することを可能にし得る。
【0077】
随意に、少なくとも一つの貯蔵部は、反応セルから貯蔵部内に拡散する塩を遮断する半透膜によって反応セルに流体的に結合または接続され得る。半透膜は、塩が反応セル内に留まり、貯蔵部から反応セル内への脱イオン水の流れを導くオスモル濃度の勾配を維持することを確実にし得る。
【0078】
さらに別の実施例では、センサーチップは、反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通を遮断するように構成された少なくとも一つの遮断要素をさらに含み得る。例えばセンサーチップは、少なくとも一つの遮断要素を使用して、反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通の遮断を解除することに応じて、起動可能であり得る。言い換えれば、センサーチップは、流体連通の遮断を解除することによって、および脱イオン水を貯蔵部から反応セル内に供給することによって、起動され得る。
【0079】
少なくとも一つの遮断要素は、例えば、少なくとも一つの貯蔵部と反応セルとの間に配置された水不透過性膜を備え得る。その中では、センサーチップは、水不透過性膜の少なくとも一部を破壊することに応じて、または水不透過性膜の少なくとも一部を破壊することによって、起動可能になり得る。
【0080】
あるいは、または追加的に、少なくとも一つの遮断要素は、反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通を遮断または遮断解除するように動作可能である移動可能なピンを備え得る。その中では、センサーチップは、反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通が遮断解除されるかまたは確立されるように移動可能なピンを移動させることに応じて、起動可能になり得る。
【0081】
一実施例によれば、受容体タンパク質複合体は、受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインであって一以上の生物活性物質に結合するよう構成されて生物活性物質のうちの一つへの結合に伴ってコンホメーションが変化するよう構成された受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれ含み得る。随意に、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、一つ以上の受容体タンパク質の複数のリガンド結合ドメインを含み得る。したがって、複数の生物活性物質は、単一の受容体タンパク質複合体によって結合され得、センサーチップの全体的な感度を向上させることができる。
【0082】
さらに随意に、複数のリガンド結合ドメインは、異なる種類のものであってもよく、異なる種類の生物活性物質に結合するように構成されてもよい。言い換えれば、受容体タンパク質複合体は、異なる種類の生物活性物質に結合するように構成された異なる種類の受容体タンパク質の、例えばリガンド結合ドメインなどである少なくとも一部を含み得る。したがって、複数の異なる種類の生物活性物質が、単一の受容体タンパク質複合体により検出され得る。
【0083】
一実施例によれば、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、異種センサータンパク質(xenosensor protein)またはホルモン受容体タンパク質である受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインを含み得る。あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体は、アリール炭化水素受容体、構成的アンドロスタン受容体、プレグナンX受容体、およびエストロゲン受容体からなる群から選択される受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれが含み得る。
【0084】
あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、アリール炭化水素受容体またはアリール炭化水素受容体タンパク質の少なくとも一つの結合ドメインを含み得る。例えば、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、少なくともPAS(Per-ARNT-Sim)ドメインまたはアリール炭化水素受容体タンパク質全体を含んでもよいものであり、これは、材料、化合物、分子、および/または作用物質の、例えばポリ塩化ジベンゾジオキシン、ジベンゾフランおよびビフェニルなどのハロゲン化芳香族炭化水素、ならびに/または例えば3-エチルコラントレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンズアントラセンおよびベンゾフラボンなどの多環式芳香族炭化水素の、検出を可能にし得る。
【0085】
概して、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、組換えタンパク質または非組換えタンパク質を含み得る。あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体は、それぞれ、単量体受容体タンパク質、ホモ二量体受容体タンパク質複合体またはヘテロ二量体受容体タンパク質複合体の少なくとも一部を含み得る。
【0086】
さらに、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、一以上の生物活性物質に結合に伴って、それぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離する有機部分または無機部分を含み得る。
【0087】
一例として、受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴ってそれぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離または放出される少なくとも一つの蛍光標識を含み得る。当該受容体タンパク質複合体を使用して、受容体タンパク質複合体の一以上の生物活性物質への結合によって誘発される状態変化は、受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離または遊離された少なくとも一つの蛍光標識の蛍光励起に基づいて検出され得る。随意に、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、同一または異なる種類の複数の蛍光標識を含み得る。一例として、少なくとも一つの蛍光標識は、蛍光色素または緑色蛍光タンパク質であり得る。
【0088】
あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴ってそれぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離または放出されるナノ粒子を含み得る。結合に伴って放出される部分として、ナノ粒子、例えば金ナノ粒子を使用することで、結合事象で誘発した質量の変化を増加させることができ、生物活性物質の検出の感度および精度を向上させ得る。
【0089】
さらに別の実施例では、センサーチップは、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに含まれる受容体タンパク質複合体の種類を識別するためのチップ識別子をさらに含む。同様に、チップ識別子は、センサーチップにより検出可能な生物活性物質の種類を識別することを可能にし得る。一実施例では、チップ識別子は、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに含まれる受容体タンパク質複合体の種類を示す情報またはデータを含み得る。
【0090】
随意に、チップ識別子は、ユーザー装置によって読み取り可能、および/または検出装置によって読み取り可能であり得る。本明細書で使用される場合、ユーザー装置は、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、スマートデバイス、スマートウォッチまたは任意の他のコンピューティングデバイスなどの、センサーチップまたは検出装置に動作可能および/または通信可能に結合可能である任意のデバイスを指し得る。チップ識別子を読み取ることで、特に、センサーチップおよび/または受容体タンパク質複合体の種類に関連する情報をユーザー装置および/または検出装置に提供することが可能になり得る。これはさらに、センサーチップが検出装置に挿入されているときに、検出装置によるセンサーチップの適切な動作および制御を確実にすることを可能にし得る。
【0091】
一実施例では、チップ識別子は、バーコード、QRコード、RFIDタグ、ラベル、およびデータストレージのうちの一つ以上を含み得る。バーコード、QRコード、ラベル、またはRFIDタグは、光学検出に基づいて、またはユーザー装置および/もしくは検出装置に使用されるRFIDリーダーを使用して、ユーザー装置および/または検出装置によって読み取ることができる。同様に、データストレージに格納されたデータは、例えばセンサーチップの一つ以上のコネクターを介して、データ通信を確立することに基づいて、ユーザー装置および/または検出装置によって読み取ることができる。
【0092】
さらに別の実施例では、センサーチップは、センサーチップの使用度または残りの寿命を示す履歴データを格納するように構成されたデータストレージをさらに含み得る。また、当該データは、ユーザー装置および/または検出装置によって読み取ることができる。データストレージに履歴データを格納することで、特に、例えば検出装置に再挿入することによって、依然としてセンサーチップの適切な機能性を確実にしながらセンサーチップを再使用することが可能になり得るが、これは例えば、検出装置がセンサーチップの寿命がまだ有効であると判断することができるという理由からである。
【0093】
例えば、センサーチップの使用に関連する一以上の動作パラメータが、チップの耐用期間または寿命の全体にわたって測定され、また履歴データとしてデータストレージに格納され得る。言い換えれば、データストレージは、センサーチップの使用度または残りの寿命を示す一以上の動作パラメータを格納するように構成することができる。
【0094】
随意に、例えば反応セル内の受容体タンパク質複合体の枯渇に起因して、センサーチップの残りの寿命が所定の閾値に到達または下回る場合には、検出装置および/またはユーザー装置によって通知が提供されてもよく、それによってセンサーチップを交換するべきであることが示される。随意に、検出装置および/またはユーザー装置は、履歴データに基づいて、反応セル内の受容体タンパク質複合体の枯渇を決定し、決定された枯渇に基づいてセンサーチップの残りの寿命を決定することができる。
【0095】
あるいは、または追加的に、検出装置および/またはユーザー装置は、履歴データに基づいて、例えば累積大気汚染などである生物活性物質への累積曝露を決定し得る。随意に、当該情報は、例えば、検出装置および/またはユーザー装置のユーザーインターフェースにおいて、ユーザーに提供され得る。
【0096】
一実施例では、センサーチップのデータストレージは、センサーチップを検出装置に動作可能に結合すると、例えばセンサーチップを検出装置に少なくとも部分的に挿入すると、検出装置によってアクセス可能になり得る。あるいは、または追加的に、センサーチップのデータストレージは、センサーチップを検出装置に動作可能に結合すると、検出装置によって読み取ることができる。例えば、センサーチップのデータストレージおよび/またはチップ識別子は、センサーチップを検出装置に動作可能に結合すると、自動的に検出および/または読み取ることができる。
【0097】
概して、センサーチップは、複数の反応セルおよび/または膜を含み得る。随意に、複数の反応セルは、異なる種類の生物活性物質に結合するように構成された異なる種類の受容体タンパク質複合体を含み得る。これら構成は、センサーチップの感度を向上させ、センサーチップによって検出できる生物活性物質の範囲を広げることを可能にし得る。したがって、高精度での複数の異なる生物活性物質の検出を可能にし得るコンパクトなセンサーチップを提供することができる。
【0098】
さらに別の実施例では、センサーチップは、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された一つ以上のセンサーをさらに含む。随意に、センサーチップは、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の決定された状態変化を示す検出信号を提供するように構成された処理回路を備え得る。したがって、受容体タンパク質複合体の状態変化の実際の検出のための電子機器および検出素子は、センサーチップ内に少なくとも部分的にまたは完全に含まれ得る。しかしながら、代替的または追加的に、一つ以上のセンサーおよび/または処理の少なくとも一部は、検出装置内に配置され得る。
【0099】
例えば、センサーチップは、状態変化を光学的に検出するために、光検出器などである一つ以上の光学センサーを備え得る。あるいは、または追加的に、センサーチップは、反応セル内の導電率測定に基づいて状態変化を検出するための一つ以上の電極を備え得る。あるいは、または追加的に、センサーチップは、センサーチップの少なくとも一つの機能面に固定された、および/または該機能面から放出された受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定することに基づいて状態変化を検出するために配置および構成された一つ以上の圧電素子を備え得る。あるいは、一つ以上の圧電素子は、少なくとも一つの機能面の方に向けて配設された反応セルの一つ以上の内側面における受容体タンパク質複合体またはその一つ以上の構成要素の質量および/または質量の変化を決定することに基づいて、センサーチップの少なくとも一つの機能面に固定された、および/または該機能面から放出された受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定するために配置および構成され得る。
【0100】
本開示のさらなる態様は、一以上の生物活性物質を検出するための、本明細書の上記および下記において説明したセンサーチップの使用に関する。センサーチップを参照しながら本明細書の上記および下記に提示した任意の開示は、センサーチップの使用に等しく適用される。
【0101】
本開示のさらなる態様においては、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置が提供される。検出装置は、本明細書の上記および下記において説明するように、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容して、検出装置を少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合するように構成された筐体を備える。検出装置は、少なくとも一つのセンサーチップの反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成された処理回路をさらに備えるものであり、状態変化は、センサーチップの膜を通して周囲媒体からセンサーチップの反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発される。
【0102】
検出装置は随意に、少なくとも一つのセンサーチップの反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定する一つ以上のセンサーを含んでもよいことに留意されたい。あるいは、センサーの少なくとも一部または全てが、センサーチップ内に含まれてもよい。同様に、処理回路の少なくとも一部または全体が、センサーチップ内に配置されてもよく、またはセンサーチップ内に含まれてもよい。
【0103】
処理回路は、例えば、検出装置および/またはセンサーチップのデータ処理または動作制御のための一つ以上のプロセッサ、一つ以上のコントローラ、または一つ以上のマイクロコントローラを含み得る。随意に、処理回路の少なくとも一部は、プリント回路基板上に実装され得る。あるいは、または追加的に、処理回路の少なくとも一部は、スマートチップまたはスマートデバイスとして実装され得る。あるいは、または追加的に、処理回路の少なくとも一部は、特定用途向け集積回路ASICとして実装され得る。
【0104】
本開示のなおさらなる態様においては、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するために、本明細書の上記および下記に記述したように、少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合可能である検出装置が提供される。検出装置は、少なくとも一つのセンサーチップの反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された少なくとも一つのセンサーを備えるものであり、状態変化は、センサーチップの膜を通して周囲媒体からセンサーチップの反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発される。検出装置は、少なくとも一つのセンサーと結合した処理回路をさらに含むものであり、処理回路は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成される。
【0105】
一実施例では、周囲媒体は、環境空気を含み得る。あるいは、または追加的に、検出装置は、環境空気の質を監視するための環境監視装置であり得るか、または環境監視装置として構成され得る。
【0106】
検出装置は、静止使用での装置および/もしくはデスクトップ装置とすることができ、または静止使用での装置および/もしくはデスクトップ装置として構成することができる。検出装置は、例えば、この環境中の空気の質を監視するために、自宅またはオフィスで利用され得る。あるいは、検出装置は、例えば自動車またはこれに類するものなど、他の場所に少なくとも一時的に設置することができる。概して、検出装置は、空気の質を、絶えずまたは所定の時間間隔で監視するように構成され得る。
【0107】
あるいは、検出装置は、携帯型装置、モバイル装置、および/もしくは手持ち式装置であってもよく、または携帯型装置、モバイル装置、および/もしくは手持ち式装置として構成されてもよい。当該構成においては、検出装置は、例えば絶えず、または所定の時間間隔で、ある者の周囲の空気の質を監視するために、その者が運搬することができる。検出装置は、例えば、その者のポケット、バッグ、バックパックもしくはハンドバッグ内で運搬することができ、またはその者の物品に、例えば衣類、バッグ、バックパックもしくはハンドバッグなどに取り付けることができる。
【0108】
本明細書で使用される場合、検出信号は、例えば、電子信号またはデータ信号などの電子的に処理可能な信号を指し得、または示し得る。随意に、検出信号は、処理回路によって使用されて、例えば検出装置のユーザーインターフェースにおいて、検出された一以上の生物活性物質を示す読取値を提供することができる。あるいは、または追加的に、検出信号は、検出装置からユーザー装置に送信されて、ユーザー装置によってさらに処理されて、検出された一以上の生物活性物質を示す読取値を提供することができる。
【0109】
検出信号は、周囲媒体の体積当たりの一以上の生物活性物質の量、周囲媒体の体積当たりの生物活性物質の質量、周囲媒体中の生物活性物質の濃度、周囲媒体の受容体タンパク質の活性化能、および周囲媒体の生物活性を示し得る。したがって、前述の量のうちの一以上が、検出信号の処理に基づいて、処理回路および/またはユーザー装置によって決定され得る。
【0110】
一実施例では、検出装置は、センサーチップに機械的に結合可能であり得る。機械的結合は、例えば、スナップ嵌合接続、センサーチップおよび検出装置の少なくとも部分的に係合する表面特徴、例えば螺子による締付けによる検出装置でのセンサーチップの機械的固定、またはその他の機械的結合を含み得る。センサーチップを検出装置と機械的に結合することによって、センサーチップを、検出装置とセンサーチップとの間の動作可能な結合が可能となるように所定の位置および/または配向にすることが確実になり得る。したがって、センサーチップと検出装置とを機械的に結合することには、随意に、センサーチップと検出装置との間の動作可能な結合を確立することが含まれ得るものであり、これは、例えば一以上の光学接続、一以上の電気接続、および/または一以上のデータ接続を確立することを含み得る。したがって、センサーチップを検出装置に機械的に結合することによって、センサーチップが機能的かつ動作的であることを確実にし得る。
【0111】
あるいは、または追加的に、検出装置は、センサーチップに磁気的に結合可能であり得る。例えば検出装置は、センサーチップを検出装置に磁気的に結合するために、センサーチップの一つ以上の磁気カウンター部品または磁気的素子と相互作用する一つ以上の磁石を備え得る。またセンサーチップを検出装置と磁気的に結合することによって、センサーチップを、検出装置とセンサーチップとの間の動作可能な結合が可能となるように所定の位置および/または配向にすることが確実になり得る。したがって、センサーチップと検出装置とを磁気的に結合することには、随意に、センサーチップと検出装置との間の動作可能な結合を確立することが含まれ得るものであり、これは、例えば一以上の光学接続、一以上の電気接続、および/または一以上のデータ接続を確立することを含み得る。したがって、センサーチップを検出装置に磁気的に結合することによって、センサーチップが機能的かつ動作的であることを確実にし得る。
【0112】
一実施例では、検出装置は、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容するように構成され得る。例えば、検出装置は、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容するように構成された少なくとも一つのソケットを備え得る。センサーチップは、検出装置または少なくとも一つのソケットの中に少なくとも部分的に取り外し可能に挿入され得る。あるいは、または追加的に、少なくとも一つのソケットは、検出装置の筐体が少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に取り囲むように、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容するように構成され得る。センサーチップを検出装置またはソケットの中に少なくとも部分的に挿入することで、センサーチップを保護することができ、またセンサーチップと検出装置との間の動作可能な結合を確立することができることを確実にし得る。
【0113】
随意に、少なくとも一つのソケットは、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴に相補的に形成される少なくとも一つの表面特徴を備えて、少なくとも一つのソケット内でのセンサーチップの正しい位置決めを確実にすることができる。例えば、少なくとも一つのソケットの少なくとも一つの表面特徴は、ソケット内にセンサーチップを位置決めするための一つ以上のガイドを含み得る。あるいは、または追加的に、少なくとも一つのソケットの少なくとも一つの表面特徴は、センサーチップがソケット内に取り外し可能に固定可能であるように、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴と少なくとも部分的に係合するように構成され得る。したがって、ソケットの表面特徴およびセンサーチップの筐体の表面特徴は、随意に、センサーチップをソケット内に固定するためのクリック嵌めまたはスナップ嵌め機構を提供し得る。
【0114】
検出装置は、同一または異なる種類の複数のセンサーチップを受容するように構成された複数のソケットを備え得ることに留意されたい。例えば、異なる種類の生物活性物質、または例えばUV放射の曝露もしくはオゾンの曝露などである一以上の環境パラメータを検出するための異なる種類のセンサーチップを、単一の検出装置で利用することができる。したがって、この検出装置を使用して、環境を包括的に監視することができる。
【0115】
検出装置の処理回路は、センサーチップまたは検出装置の少なくとも一つのセンサーを用いて、一以上の生物活性物質への結合に伴う反応セル内の一つ以上の受容体タンパク質の位置変化を検出することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を決定するように構成され得る。
【0116】
例えば、検出装置は、少なくとも一つのセンサーチップの反応セルの基体中に溶解した受容体タンパク質複合体の存在、数、質量、密度、および質量密度のうちの一つ以上を決定するように構成され得る。あるいは、または追加的に、検出装置は、センサーチップに送信された光学信号および電気信号のうちの少なくとも一つの変化を決定することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの反応セルの基体中に溶解した受容体タンパク質複合体の存在、数、質量、密度および質量密度のうちの一つ以上を決定するように構成され得る。したがって、検出装置は、センサーチップに送信された光学信号および電気信号のうちの少なくとも一つの変化を決定することに基づいて、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が一以上の生物活性物質に結合することによって誘発される状態変化を検出するように構成され得る。
【0117】
一実施例においては、受容体タンパク質複合体は、生物活性物質のうちの一つへの結合に伴って反応セルの少なくとも一つの機能面から解離するように構成され得るものであり、検出装置は、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または該機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定するように構成され得る。
【0118】
随意に、検出装置は、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または該機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定して、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するように構成された一つ以上の圧電素子を含み得る。一実施例においては、例えば膜や、膜の方に向けて配設または膜に対向して配置されるセンサーチップの筐体の一部などである、少なくとも一つの機能面を担持するセンサーチップの構成要素に隣接して、近接して、または接触するように、検出装置の一つ以上の圧電素子が配置され得る。質量および/または質量の変化は、例えば膜などの少なくとも一つの機能面を担持するセンサーチップの構成要素の機械的振動の励起、および例えば減衰挙動などの機械的振動の特性の測定に基づいて決定され得る。このことが、例えば検出装置の処理回路によって、少なくとも一つの機能面を担持するセンサーチップの構成要素の機械的特性を決定することを可能にし得、またそれにより、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または該機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定することを可能にし得る。しかしながら、一つ以上の圧電素子は、代替的にセンサーチップ内に配置され得るか、また検出装置によって動作可能に制御され得ることに留意されたい。
【0119】
あるいは、または追加的に、一つ以上の圧電素子は、反応セルの少なくとも一つの機能面の方に向けて配設または該機能面に対向して配置された反応セルの内側面に結合した受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の質量を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または該機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定するように構成され得る。例えば、受容体タンパク質複合体は、結合に伴って少なくとも一つの機能面から遊離して、少なくとも一つの機能面の方に向けて配設された反応セルの内側面の方に向けて拡散し得る。受容体タンパク質複合体またはその構成要素は、内側面で蓄積し得るものであり、この蓄積は、内側面における受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を決定することによって測定することができる。また、この構成では、検出装置の一つ以上の圧電素子は、反応セルの内側面を担持するセンサーチップまたは反応セルの構成要素に隣接して、近接して、または接触して配置され得る。質量および/または質量の変化は、例えば、本明細書において上述のようにセンサーチップの構成要素の機械的振動を励振することに基づいて決定され得る。
【0120】
一実施例においては、一つ以上の圧電素子は、センサーチップの反応セルの一以上の機能面に機械的に結合可能であり得る。あるいは、または追加的に、一つ以上の圧電素子は、反応セルの一つ以上の機能面の方に向けて配設されるセンサーチップの反応セルの一つ以上の内側面に機械的に結合可能であり得る。圧電素子を反応セルの少なくとも一つの機能面または一つ以上の内側面に機械的に結合することによって、少なくとも一つの機能面に固定された、または該機能面から放出した受容体タンパク質複合体の質量および/または質量の変化を、高精度で確実に検出することができる。上述のように、一つ以上の圧電素子は、例えば、反応セルの少なくとも一つの機能面または一つ以上の内側面を担持または支持する構成要素に隣接して配置され得る。例えば、少なくとも一つの機能面が膜の内側面で提供または画定されるならば、一つ以上の圧電素子は、膜の反対側に、または膜の反対側と接触して配置され得る。
【0121】
一実施例においては、受容体タンパク質複合体は、少なくとも一つの蛍光標識を備え得るものであり、検出装置が、一つ以上の蛍光標識を励起することに基づいて、および一つ以上の蛍光標識によって放射された蛍光光を検出することに基づいて、一以上の生物活性物質を検出するように構成され得る。例えば、受容体タンパク質複合体は、生物活性物質のうちの一以上への結合に伴ってそれぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離する少なくとも一つの蛍光標識を備え得るものであり、検出装置が、一つ以上の受容体タンパク質複合体から解離した一つ以上の蛍光標識を励起することに基づいて、および一つ以上の解離した蛍光標識によって放射される蛍光光を検出することに基づいて、一以上の生物活性物質を検出するように構成され得る。したがって、検出装置は、結合に伴って受容体タンパク質複合体から放出される反応セル内の遊離蛍光標識または光吸収標識の蛍光励起に基づいて、受容体タンパク質複合体の一つ以上の生物活性物質への結合によって誘発される状態変化を検出するように構成され得る。
【0122】
検出装置は、一つ以上の蛍光標識を励起するように構成された、例えばレーザーダイオードまたは発光ダイオード(LED)などの一つ以上の光源を含み得るものであり、検出装置が、一つ以上の蛍光標識によって放射された蛍光光を検出するように構成された一つ以上の光検出器を含み得る。
【0123】
あるいは、または追加的に、検出装置は、反応セルの少なくとも一部を照射するように構成された一つ以上の光源を含み得るものであり、検出装置が、反応セル内の受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素によって散乱された光を検出するように構成された一つ以上の光検出器を含み得る。したがって、検出装置は、散乱光の検出に基づいて、および/または光散乱に基づいて、状態変化を検出するように構成され得る。
【0124】
一実施例では、一つ以上の光検出器は、センサーチップを少なくとも部分的に受容して、反応セルの外に透過する電磁放射を検出するために、検出装置のソケットに隣接して、またはその近傍に、配置され得る。例えば、一つ以上の光源は、一つ以上の光源が放射する電磁放射が反応セル内に結合可能であるように、センサーチップを少なくとも部分的に受容するための検出装置のソケットに隣接して、または近接して、配置され得る。
【0125】
あるいは、または追加的に、一つ以上の光検出器は、センサーチップの検出窓に対向するように配置され得る。言い換えれば、一つ以上の光検出器は、センサーチップが検出装置によって少なくとも受容されているときに、センサーチップの少なくとも一つの検出窓に対向して配置され得る。
【0126】
一実施例においては、一つ以上の光源は、センサーチップの一つ以上の光コネクターを通して電磁放射または光を反応セルに結合するように配置され得る。
【0127】
あるいは、または追加的に、検出装置は、電磁放射をセンサーチップの反応セルの少なくとも一部を横断する一つ以上の光学ガイドに結合するように配置された一つ以上の光源を含み得るものであり、検出装置が、一つ以上の光学ガイドを横断する電磁放射を検出するように構成された一つ以上の光検出器を含み得る。一実施例においては、一つ以上の光源は、一つ以上の光学ガイドの端部と整列するように配置され得る。あるいは、または追加的に、一つ以上の光検出器は、一つ以上の光学ガイドの端部と整列するように配置され得る。当該構成は、正確性、感度、および精度を伴って、受容体タンパク質複合体の状態変化の信頼性のある光学測定または検出を可能にし得る。
【0128】
一実施例においては、処理回路は、一つ以上の光学ガイドに隣接して配置された反応セルの機能面および内側面のうちの少なくとも一つの一つ以上の光学特性を決定するように構成され得る。例えば、処理回路は、一つ以上の光学ガイドを通して反応セル内へ透過するエバネッセント光の吸収を決定することに基づいて、一つ以上の光学特性を決定するように構成され得る。また、少なくとも一つの光学ガイドに隣接して配置された反応セルの機能面または内側面の光学特性を測定することにより、受容体タンパク質複合体の状態変化の信頼性の高い光学測定または検出を、高い正確性、感度、および精度で可能にすることができる。
【0129】
なおさらなる実施例においては、検出装置は、センサーチップを少なくとも部分的に取り囲むように構成された筐体をさらに含み得るものであり、筐体は、周囲媒体を通過させる一つ以上の穴を含み、それによってセンサーチップの少なくとも一部が周囲媒体と接触可能である。筐体内に一つ以上の穴を提供することにより、センサーチップの膜は周囲媒体と確実に接触することができ、それによって生物活性物質が周囲媒体から反応セルに入り、その中で検出され得ることが確実になり得る。
【0130】
随意に、検出装置は、検出装置の筐体内の一つ以上の穴を通して該センサーチップの少なくとも一部へと周囲媒体を通過させるための一つ以上のチャネルをさらに含み得る。言い換えれば、検出装置の筐体内に配置された一つ以上の穴は、一つ以上のチャネルを介して流体的に結合され得、これによって周囲媒体が、穴およびチャネルを通ってセンサーチップまたはその少なくとも一部に送達することができる。
【0131】
随意に、検出装置は、一つ以上のチャネルに配置されて、また検出装置の筐体内の一つ以上の穴を通して該センサーチップの少なくとも一部へと周囲媒体を送達または輸送するように構成された、一つ以上の換気装置をさらに含み得る。例えば、一つ以上のマイクロ換気装置が、一つ以上のチャネル内に配置され得る。当該構成は、周囲媒体が停滞するのを防止することができ、またセンサーチップまたはその少なくとも一部が、検出装置の周囲に現在存在する周囲媒体と接触できるようにすることを確実にし得る。
【0132】
なおさらなる実施例においては、検出装置は、センサーチップの少なくとも一部を加熱するように構成された一つ以上の加熱素子を含み得る。一つ以上の加熱素子は、センサーチップ、反応セル、またはその少なくとも一部が、センサーチップの所定の動作温度において、またはその近傍で、例えば体温もしくは室温で、またはその近傍で維持され得ることを確実にし得る。例えば、適用される一部の機構および検出原理は、生物活性物質の反応セル内への拡散および受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の反応セルでの拡散などである拡散プロセスを伴い得る。当該プロセスは、概して温度に依存し、合理的な時間内に検出信号を得るために、最低温度を維持することが必要であり得る。また、受容体タンパク質複合体の状態変化は、温度依存的であり得、またセンサーチップの所定の動作温度において、その近傍で、またはそれを超えて、良好に観察可能であり得る。検出装置に加熱素子を配置することで、センサーチップおよび検出装置の適切な機能がセンサーチップを加熱することによって確実にされ得るという理由から、低温領域または寒候期で特に有利であり得る。
【0133】
例えば、一つ以上の加熱素子は、センサーチップを少なくとも部分的に受容するために、検出装置のソケットに隣接して配置され得る。したがって、センサーチップまたはその少なくとも一部は、一つ以上の加熱素子によって効率的に加熱され得る。
【0134】
随意に、検出装置は、センサーチップの少なくとも一部の温度を決定するように構成された一つ以上の温度センサーをさらに含み得る。温度センサーによって、センサーチップ、反応セル、またはその少なくとも一部がセンサーチップの所定の動作温度において、またはその近傍に維持され得ることを確実にするために、検出装置において包括的な温度制御を実施することができる。
【0135】
一実施例においては、処理回路は、一つ以上の温度センサーを使用して、センサーチップの少なくとも一部の温度を決定することに基づいて、センサーチップの少なくとも一部の温度を制御するように構成され得る。例えば、処理回路は、反応セルまたはその少なくとも一部がセンサーチップの所定の動作温度において、またはその近傍に維持され得るように、センサーチップの少なくとも一部の温度を制御するように構成され得る。随意に、所定の動作温度は、検出装置および/またはセンサーチップのデータストレージに格納されてもよいものであり、これにより動作中に処理回路によってアクセスされて温度を制御することができる。
【0136】
さらなる実施例においては、検出装置は、検出装置へのセンサーチップの挿入時にセンサーチップの一つ以上の電気コネクターに接続するための一つ以上の電気コネクターをさらに含む。センサーチップと検出装置との間の電気接続は、センサーチップを検出装置への挿入に伴って自動的に確立できることが好ましい。
【0137】
一実施例においては、処理回路は、センサーチップの一つ以上の電極に結合可能であり得るものであり、処理回路が、反応セル内の基体または組成物の導電率を決定するように構成され得る。したがって、処理回路は、例えば電圧および/または電流を一つ以上の電極に供給することに基づいて、一つ以上の電極を制御して、反応セル内の導電率測定を実施して、受容体タンパク質複合体の一以上の生物活性物質への結合によって誘発される状態変化を検出するように構成され得る。
【0138】
あるいは、または追加的に、処理回路は、センサーチップの使用度または残りの寿命を示す一以上の動作パラメータを決定するように構成され得る。あるいは、または追加的に、処理回路は、センサーチップの一以上の動作パラメータを決定することに基づいて、少なくともセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成され得る。上述のように、例えば受容体タンパク質複合体の枯渇に起因して、センサーチップの寿命が制限される場合がある。センサーチップの残りの寿命または使用度を決定することによって、例えば、センサーチップを交換する必要がある場合に、ユーザーに通知することができる。また、センサーチップは複数回使用することができ、例えばセンサーチップが依然として動作可能または機能していることを確実にしながら、検出装置に再挿入することができる。
【0139】
一実施例においては、処理回路は、センサーチップのデータストレージからセンサーチップの使用度または残りの寿命を示す履歴データを取得することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成され得る。したがって、履歴データは、センサーチップに格納することができ、そして検出装置の処理回路によって処理されて、センサーチップの使用度または残りの寿命を決定することができる。履歴データは、例えば、センサーチップのこれまでの動作時間または過去の動作時間にわたって累積された、一つ以上の動作パラメータの値を含み得る。
【0140】
例えば、処理回路は、センサーチップの決定された一つ以上の動作パラメータおよび/またはセンサーチップのデータストレージから取得された履歴データの少なくとも一部を一つ以上の閾値と比較することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成され得る。一つ以上の閾値は、検出装置のデータストレージに格納され得るか、またはセンサーチップのデータストレージから処理回路によって取得され得る。
【0141】
随意に、処理回路は、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに使用される受容体タンパク質複合体の種類を決定することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成され得る。そこで使用されるセンサーチップおよび/または受容体タンパク質複合体の種類は、センサーチップのチップ識別子の読取値に基づいて、センサーチップのデータストレージから対応するデータを取得することに基づいて、および/または例えば検出装置のユーザーインターフェースを介した、ユーザー入力に基づいて、決定され得る。
【0142】
さらに処理回路は、随意に、一つ以上の動作パラメータを検出装置のデータストレージおよび/またはセンサーチップのデータストレージ内に格納するように構成され得る。したがって、一つ以上の動作パラメータを、例えば履歴データとして格納することができるものであるが、このことが、その後の時点でのセンサーチップの使用度および/または残りの寿命の決定を可能にする。
【0143】
一実施例では、処理回路は、センサーチップの少なくとも一部の温度を監視することに基づいて、一以上の動作パラメータを決定するように構成され得る。言い換えれば、一以上の動作パラメータは、センサーチップの少なくとも一部の温度、例えば経時的な温度、を含み得る。反応セル内の特定のプロセスまたは反応、例えば受容体タンパク質複合体の拡散のみならず枯渇などは、温度依存的であり得るため、経時的なセンサーチップの少なくとも一部の温度が、センサーチップの使用度および/または残りの寿命を正確に決定することを可能にし得る。
【0144】
あるいは、または追加的に、処理回路は、センサーチップ内の受容体タンパク質複合体の経時的な枯渇を決定するように構成され得る。例えば、処理回路は、センサーチップおよび/または検出装置の経時的な一以上の動作パラメータに基づいて、例えばセンサーチップの少なくとも一部の経時的な温度に基づいて、受容体タンパク質複合体の枯渇を決定するように構成され得る。随意に、処理回路は、センサーチップにおける受容体タンパク質複合体の経時的な決定された枯渇に基づいて、センサーチップの残りの寿命を決定するように構成され得る。
【0145】
さらなる実施例では、検出装置は、ユーザーインターフェースを含み得るものであり、処理回路が、センサーチップの寿命の満了時に、ユーザーインターフェースを介してユーザーに通知を与えるように構成され得る。したがって、センサーチップの寿命の満了時にユーザーに通知することができるので、適切な時期にユーザーがセンサーチップを交換できる。
【0146】
随意に、処理回路は、決定された一以上の生物活性物質に関連する情報をユーザーインターフェースを介してユーザーに提供するように構成され得る。例えば、周囲媒体の即時または現在の質、例えば空気の質、および/または生物活性物質への即時の曝露に関する情報が、ユーザーインターフェースにおいて提供され得る。また、過去の曝露などの他の情報、またはセンサーチップおよび/または検出装置の動作に関連する他の情報、例えばセンサーチップの使用度および/または残りの寿命に関する情報が、ユーザーインターフェースにおいて提供され得る。
【0147】
さらに随意に、処理回路は、周囲媒体中の生物活性物質の濃度が所定の閾値に達したかまたはそれを超えたと判断すると、ユーザーインターフェースを介してユーザーに通知するように構成され得る。したがって、高濃度の生物活性物質が検出された時にユーザーに警告を提供することができる。
【0148】
概して、ユーザーインターフェースは、任意の種類のユーザーインターフェースであり得る。例えば、ユーザーインターフェースとしては、振動素子、ディスプレイ、一つ以上のLED、およびスピーカーのうちの一つ以上が含まれ得る。
【0149】
さらに別の実施例では、センサーチップは、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに含有される受容体タンパク質複合体の種類を識別するためのチップ識別子を含み得るものであり、処理回路が、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに含有される受容体タンパク質複合体の種類を示す情報またはデータを、チップ識別子から取得するように構成され得る。検出装置は、この目的のために、バーコードリーダー、QRコードリーダー、およびRFIDスキャナまたはRFIDリーダーのうちの一つ以上を随意に含み得る。
【0150】
検出装置は、電気エネルギーを供給するための一つ以上のエネルギー蓄積部をさらに含み得る。例えば、検出装置は、検出装置および/またはセンサーチップに電気エネルギーを供給するための一つ以上の電池、アキュムレータおよび/またはコンデンサを備え得る。こうした構成は、検出装置が携帯可能または移動可能な装置として設計されている場合に特に有利であり得る。しかしながら、代替的または追加的に、検出装置は、供給グリッドを介して電力を供給することもできる。
【0151】
検出装置は、検出装置をユーザー装置と通信可能に結合するための通信回路をさらに含み得る。例えば、通信回路は、無線通信回路、好ましくはBluetoothトランスミッタ、赤外線トランスミッタ、または無線LANトランスミッタを含み得る。これにより、検出装置とユーザー装置との間の無線データ接続および通信が可能になり得る。特に、これにより、検出装置からデータ、例えば生物活性物質による曝露を示唆するデータ、および/または周囲媒体の質を示すデータを、ユーザー装置で取得することが可能になり得る。次に、データは、ユーザー装置でさらに処理および/または表示されてもよく、そしてユーザーが評価することができる。
【0152】
別の実施例では、検出装置は、電離放射線に対する検出装置の曝露を測定する一つ以上の放射センサーをさらに含み得る。例えば、一つ以上の放射センサーは、UV放射に対して感度が高い可逆的フォトクロミック層と、電離放射に対して感度が高いラジオクロミック色素膜とのうちの少なくとも一つを含み得る。一つ以上の放射センサーを使用することにより、生物活性物質の決定と並行して、または同時に、照射への曝露を決定することが可能になり得る。したがって、周囲媒体の質および/または様々な環境パラメータへのユーザーの曝露を包括的に評価することができる。
【0153】
あるいは、または追加的に、検出装置は、湿度センサー、揮発性有機炭素センサー、オゾンセンサー、粒子状物質センサー、硝酸用センサー、および一酸化炭素センサーのうちの一つ以上をさらに含み得る。また、前述のセンサーのうちの一つ以上を使用することで、生物活性物質による曝露に加えて、その他の様々な環境パラメータへのユーザーの曝露を包括的に決定または評価することが可能になり得る。
【0154】
本開示のさらなる態様によれば、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出システムが提供される。検出システムは、本明細書の上記および下記に記載される少なくとも一つのセンサーチップと、本明細書の上記および下記に記載される検出装置とを備える。検出装置およびセンサーチップのいずれかを参照しながら上記および下記に提示したあらゆる開示は、検出システムに等しく適用される。
【0155】
本開示のさらなる態様は、本明細書の上記および下記に記載したような、検出装置の使用、ならびに本明細書の上記および下記に記載したような、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出システムの使用に関する。
【0156】
本開示のさらなる態様によれば、本明細書の上記および下記に記載したように、検出システム、検出装置、およびセンサーチップのうちの一つ以上による、またはそれらを使用した、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出する方法が提供される。あるいは、または追加的に、方法は、検出システム、検出装置、およびセンサーチップのうちの一つ以上を操作する方法に関し得る。該方法は、
-例えば拡散に基づいて、一以上の生物活性物質をセンサーチップの膜を通してセンサーチップの反応セルの中へ通過させるステップと、
-一以上の生物活性物質を一以上の受容体タンパク質複合体に結合させて、それによって受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を誘発するステップと、
-検出装置、センサーチップおよび/または検出システムにより、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の誘発された状態変化を検出するステップと、
-検出装置、センサーチップおよび/または検出システムにより、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の決定された状態変化に基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を生成するステップと、を含む。
【0157】
繰り返しになるが、検出装置、センサーチップ、および検出システムのいずれかに関連して本明細書の上記および下記に提示するあらゆる開示は、一以上の生物活性物質を検出する方法に等しく適用されることが強調される。
【0158】
一実施例では、一以上の生物活性物質をセンサーチップの膜に通過させることには、センサーチップの膜を周囲媒体と接触させることが含まれる。
【0159】
随意に、方法は、脱イオン水をセンサーチップの貯蔵部からセンサーチップの反応セルに供給することに基づいて、センサーチップを起動することをさらに含み得る。
【0160】
例えば、センサーチップを起動することは、少なくとも一つの貯蔵部とセンサーチップの反応セルとの間にある少なくとも一つの遮断要素を使用して、またはそれを起動することに基づいて、反応セルと該貯蔵部との間の流体連通を遮断解除することを含み得る。随意に、少なくとも一つの遮断要素は、貯蔵部と反応セルとの間に配置された移動可能なピンを含み得るものであり、センサーチップを起動することは、移動可能なピンを移動させることを含み得る。
【0161】
あるいは、または追加的に、少なくとも一つの遮断要素は、貯蔵部と反応セルとの間に配置された水不透過性膜を含み得るものであり、センサーチップを起動することは、水不透過性膜の少なくとも一部を破壊することを含み得る。
【0162】
あるいは、または追加的に、センサーチップを起動することは、膜の外側面から密封カバーを除去することを含み得る。密封カバーを除去することによって、膜と周囲媒体との間で接触が確立され得、これによって検出しようとする生物活性物質が膜を通して反応セルに入ることができる。
【0163】
さらに別の実施例においては、誘発された状態変化を検出することとして、少なくとも一つのセンサーチップの反応セルの基体中に溶解した受容体タンパク質複合体の数、質量、密度および質量密度のうちの一以上を決定することが含まれ得る。あるいは、または追加的に、誘発された状態変化を検出することとして、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または該機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定することが含まれ得る。
【0164】
あるいは、または追加的に、誘発された状態を検出することとして、反応セルの少なくとも一つの機能面の方に向けて配設された反応セルの少なくとも一つの内側面に固定された、または該内側面から遊離した受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定することが含まれ得る。あるいは、または追加的に、誘発された状態変化を検出することとしては、受容体タンパク質複合体の一つ以上の蛍光標識を励起すること、および一つ以上の蛍光標識によって放射される蛍光光を検出することが含まれ得る。あるいは、または追加的に、誘発された状態変化を検出することとしては、反応セル内の受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素によって散乱された光を検出することが含まれ得る。あるいは、または追加的に、誘発された状態変化を検出することとしては、反応セルの機能面および内側面の少なくとも一方の一以上の光学特性を決定することが含まれ得る。あるいは、または追加的に、誘発された状態変化を検出することは、センサーチップの一つ以上の光学ガイドを通って反応セル内に透過するエバネッセント光の吸収を決定することが含まれ得る。
【0165】
以下で、本開示の様々な態様、実施例、および例示的な実施形態をまとめているが、これは非限定的であるものと解釈されるべきであり、単に例示の目的として機能する。
【0166】
本明細書に記載のセンサーチップ、検出装置、および検出システムは、検出要素または化学的認識要素として、例えば生物学的な受容体タンパク質などである受容体タンパク質複合体を採用することができる。受容体タンパク質複合体は、水性環境に、例えばセンサーチップの反応セル内に存在し得、また例えば低拡散抵抗のものである多孔質膜を通して周囲媒体と相互作用し得る。受容体タンパク質複合体は、例えば、異種センサータンパク質、または例えばAHR、CAR、PXRおよびERなどのホルモン受容体であり得るか、またはそれを含み得る。候補である受容体タンパク質複合体のこの列挙は網羅的ではなく、一つまたはいくつかのリガンド分子に対する結合特異性を呈する任意の他のタンパク質が、化学的認識要素として機能し得る。
【0167】
本開示は、パーソナライズされた空気の質の監視に限定され得るものではないが、例えば、水または土壌抽出物中の汚染物質を検出するのに応用されてもよい。さらに、例えば代謝である恒常性生化学プロセスにおいて活性なタンパク質を使用でき、その場合は検出システムは診断用途に使用され得る。
【0168】
さらに、受容体タンパク質複合体のクローニングに使用可能な遺伝子配列は、ヒト、動物、植物、真菌細菌、または古典的起源のものとすることができる。例えば、分子レベルでのセンサーチップの作動原理に応じて、それらは、非組換え形態または組換えタンパク質の形態で使用することができる。さらに、非組換えタンパク質と組換えタンパク質の組み合わせ、および同一または異なる種起源の異なるタンパク質の組み合わせを、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部として使用することができる。随意に、受容体タンパク質複合体は、その単離後に、例えばフルオロフォアを用いて化学的に標識され得る。本明細書で使用される場合、候補タンパク質は、それらの生物学的起源に関係なく、それらが組換えであっても組換えでなくても、およびそれらが標識されていても標識されていなくても、集合的に受容体タンパク質複合体と呼ぶ。さらに、生細胞において受容体タンパク質複合体と何らかの方法で相互作用し得るタンパク質であるが、それ自体は受容体タンパク質ではないタンパク質が含まれ得る。当該さらなるタンパク質は、任意の起源のもの、組換えまたは非組換えのものであってもよく、標識および非標識のものであってもよい。
【0169】
上述のように、検出システムは、例えば環境監視のために、静止使用の装置であるか、または携帯型装置であり得る。検出システムは、以下に記載の特徴のうちの一以上を備え得る。検出システムは、例えばクリック機構または磁気的接続によって検出装置上に取り付けられ得る一つ以上の交換可能および/または使い捨てのセンサーチップを備え得る。センサーチップは、適切な液体、半固体、および/またはゼラチン性のマトリクス中に受容体タンパク質を含有し得る。センサーチップは、センサーチップを検出装置に接続するための適切な電気接点および/または光学接点を提供し得る。センサーチップは、周囲の媒体または雰囲気から反応セルへの物質移動が生じる場所である気体透過性面を提供し得る。随意に、チップは、状態変化または受容体タンパク質複合体へのリガンド結合の事象を電子的に処理可能な変数または信号に変換し得る変換器および/または処理回路の一部または大部分を含有し得る。検出装置は、中にセンサーチップを挿入することができるソケットをさらに備え得る。ソケットは、センサーチップを動作および維持するために必要な適切な光学接続および/または電気接続および/または物質流接続を提供し得、またセンサーチップの気体透過性面が、周囲媒体雰囲気と直接的かつ随意に絶えず接触することを可能にし得る。検出装置は、外側筐体、該外側筐体の上に配置されるオン/オフボタン、外側筐体内に埋め込まれる電池充電用の電源を差し込むための接続、周囲空気が外側筐体に入ることを可能にする外側筐体の穿孔、ならびに外側筐体に埋め込まれる小型スクリーンまたはLEDアレイであって、検出装置に対して周囲の大気汚染のレベルおよび例えば電池状態などである装置状態を説明する色分けされた光信号を与えることを可能にさせる小型スクリーンまたはLEDアレイのうちの一つ以上を随意に備え得る。検出装置は、周囲に大量の空気汚染が検出されると装置が音響信号を発報することを可能にさせるスピーカー、例えば衣服、自転車またはバックパックのストラップに装置を固定する手段、UV放射に対して感度が高い可逆的フォトクロミックコーティングまたは層、および電離放射に対して感度が高いラジオクロミック色素膜のうちの一つ以上を随意に備え得る。検出装置は、光源、電圧源および電流源などの物理信号の供給源のうちの一つ以上を随意に備え得るものであり、これらは生物活性物質の受容体タンパク質複合体への結合事象に伴って、例えば強度、振幅、波長および/または周波数などのその特性の測定可能な変化を経験する。この物理信号の測定可能な変化を検出し、それを電子的に処理可能な変数または信号に変換する変換器および/または処理回路の大部分または全体が、検出装置内に含まれ得る。検出装置は、周囲媒体を能動的にサンプリングし、それをセンサーチップに供給することができるマイクロファンまたは換気装置のうちの一つ以上を、随意に、さらに備え得る。また、検出装置は、マイクロファンによって生成されるサンプリング流量を制御するための手段を備え得、これは検出装置内に含まれ得る。さらに随意に、Bluetoothトランスミッタおよび/またはレシーバー、または例えばユーザー装置などの外部装置との通信手段がある。さらに、検出装置は、センサーチップの動作のため、センサーチップの状態を監視するため、および/または周囲媒体の汚染に対するチップの応答を読み取るために、充電可能バッテリーパック、マイクロプロセッサ、マイクロエレクトロニクス、およびマイクロオプティクスのうちの一つ以上を備え得る。さらに、検出装置は、温度センサー、加熱ユニットまたは加熱素子、データストレージ、一つ以上のセンサーであって湿度、圧力、VOC、オゾン、一酸化窒素、一酸化炭素、粒子状物質またはこれに類するものに対する感度が高い一つ以上のセンサー、および随意のアクセサリ構成要素のうちの一つ以上を備え得る。検出装置は、GPSトラッカー、クロック、ならびに周囲媒体の質に関して、時間に関して、および/またはより広い場所、例えばクラウドベースのネットワーク内の場所に関して収集した情報を共有するための手段、のうちの一つ以上をさらに備え得る。さらに、検出システム、検出装置、および/またはセンサーチップを制御し、センサーの読取値、警告、ならびに環境の現在および予測される質に関する情報を得るために、ソフトウェアまたはアプリケーションがユーザー装置に提供され得る。こうしたソフトウェアまたはアプリケーションは、共有データにアクセスし、それを、例えば経路計画または曝露回避戦略の開発の目的で、所与の場所および時間における周囲媒体の質を、例えば推定または予測するために使用するように構成され得る。ソフトウェアまたはアプリケーションは、例えば、累積的な個人の曝露を監視して、曝露回避戦略の成功に関するレポートをコンパイルする、または例えば任意の互換性のある健康モニタリング装置によって監視される、健康状態と曝露を相関させるように、構成され得る。
【0170】
以下で、本開示によって想定される技術的概念を、例示的な目的でまとめているが、これは非限定的であるものと解釈されるべきである。検出装置を取り囲む媒体中に存在する分子、化合物、および/または作用物質は、センサーチップの反応セル内へと拡散し得る。当該分子が、反応セル内に含有する受容体タンパク質または受容体タンパク質複合体のリガンドであれば、それらは、受容体タンパク質複合体に結合し、測定され得る受容体タンパク質複合体の状態の変化を誘発し得る。可能性のある技術的解決策としては、燃料電池または微細穿孔されたフッ素重合体に使用される多孔質炭素紙などのセンサーチップ用の気体透過性膜が含まれ得、その両方が低拡散抵抗のものであり、また水性液体に対してほとんど不透過性である。気体透過性膜は、例えば、受容体タンパク質複合体を含有する液体、半固体および/またはゼラチン性の基体を含有することができる反応セルから、周囲媒体を分離することができる。例えば、受容体タンパク質複合体は、異種センサータンパク質(xenosensor protein)のリガンド結合ドメイン、例えばヒトAHRを含み得る。
【0171】
あるいは、または追加的に、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、アリール炭化水素受容体またはアリール炭化水素受容体タンパク質の少なくとも一つの結合ドメインを含み得る。例えば、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、少なくともPAS(Per-ARNT-Sim)ドメインまたはアリール炭化水素受容体タンパク質全体を含んでもよいものであり、これは、材料、化合物、分子、および/または作用物質の、例えばポリ塩化ジベンゾジオキシン、ジベンゾフランおよびビフェニルなどのハロゲン化芳香族炭化水素、ならびに/または例えば3-エチルコラントレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンズアントラセンおよびベンゾフラボンなどの多環式芳香族炭化水素の、検出を可能にし得る。
【0172】
受容体タンパク質は、受容体タンパク質複合体の低親和性リガンドを、反応セルまたは膜の内側面などである反応セルの機能面に共有結合することによって、センサーチップの反応セル内の特定の位置においてさらに固定化され得る。受容体タンパク質複合体によるリガンドの結合により、受容体タンパク質複合体が固定化され得る。さらに、生物活性物質などである中度または高度の親和性リガンドは、反応セル内へと拡散し得、また受容体タンパク質複合体に競合的に結合し、そしてそれらは固定化部位から遊離し得る。
【0173】
遊離事象は、様々な手段によって検出され得る。例えば、反応セルの機能面または別の内側面に結合した質量は、例えば水晶発振子微量天秤など圧電素子によって監視され得る。あるいは、または追加的に、反応セルの機能面または別の内側面の光学特性は、当該面を透過するエバネッセント光照射野との、導波路または光学ガイドの面のごく近傍にある分子の相互作用を測定することによって監視され得る。あるいは、または追加的に、遊離そのものではなく遊離した受容体タンパク質複合体の存在を検出可能である。例えば、受容体タンパク質複合体は、受容体タンパク質複合体が反応セル内で自由に拡散しているときに検出可能な標識と連結し得る。標識することは、例えば融合タンパク質および緑色蛍光タンパク質(GFP)の形態で達成され得、その場合、検出は、GFPの蛍光励起および検出装置の一つ以上の光検出器による放射蛍光光の検出に基づき得る。緑色蛍光タンパク質GFPを含有する融合タンパク質を含む、ヒト異種センサータンパク質ならびにヒト異種センサータンパク質の様々な組換え型は、クローニングして、分子結合アッセイで使用することができる。AHRリガンドなどの多数の潜在的に適切な低親和性リガンドが使用されてもよい。検出装置の感度は、圧電素子または光検出器などの今日利用可能な検出器の感度、および処理回路に依存し得る。当該素子は、受容体タンパク質複合体の遊離を検出するために十分な感度のものである。圧電素子での検出の場合、例えば受容体タンパク質複合体は、ナノ粒子または金ナノ粒子など高質量部分に連結することができ、これは結果として検出限界が50フェムトモルの濃度範囲になり得る。光学的検出の場合、受容体タンパク質複合体当たりの信号を、蛍光機構を使用することによって桁違いに増加させることができ、光の繰り返し励起および放射を可能にする。分子レベルでの作動原理のいくつかの詳細な例は、本明細書の上記および下記にある。受容体タンパク質複合体に結合し、センサーチップまたは検出装置を誘発して検出信号を報告する生物活性分子または生物活性物質の化学的構造は、わかっていない場合があることに留意されたい。したがって、本開示によるセンサーチップおよび検出装置は、ヒトの健康に有害作用を有することがわかっているか、または推測され得る化合物を選択的に検出するセンサーよりも優れている。一方で、生物活性分子または生物活性物質は、好ましくは、タンパク質複合体の状態の測定可能な変化を誘発するのに十分な親和性で受容体タンパク質複合体に結合する必要がある。従って、生物体においてもそうであるはずであると仮定することができるが、これは細胞防御機構(異種センサータンパク質に結合する場合)を誘発するか、または内因性シグナル伝達の活性の不在下で細胞応答を活性化する(ホルモン受容体に結合する場合)こととなるかのいずれかである。したがって、センサーチップおよび検出装置はまた、化合物の生物活性に関連しない可能性がある一定の構造的特性に基づいて、広範囲の化合物に対して非選択的に応答するセンサーよりも優れている。
【0174】
従来のセンサーの場合、測定単位は、周囲媒体中の所与の化合物の濃度、または特定された物理的もしくは化学的特性の成分の質量濃度であり得るが、体積当たりの質量または体積当たりの部分という概念は、本明細書に記載のセンサーチップおよび検出装置の場合には好適には適用されない場合があることに注目されたい。検出装置によって生成される読取値または検出信号の強度は、周囲媒体中の生物活性物質の濃度および受容体タンパク質複合体に対するそれらの親和性の結果であり得る。したがって、本明細書に記載のセンサーチップおよび検出装置の測定単位は、周囲媒体の受容体タンパク質の活性化能、それ故の周囲媒体の生物活性として、例えば選択された受容体タンパク質複合体の種類に応じて、最も良好に説明することができる。
【0175】
以下で、本開示によって想定される技術的概念の詳細を、例示的な目的でまとめているが、これは非限定的であるものと解釈されるべきである。センサーチップは基本的に、任意の形状およびサイズを有し得る。特に携帯型検出装置の場合では、センサーチップの設置面積は最小化することができる。一例として、センサーチップは、潜在的に検出装置の設計に応じて、長さ約1~10cm、幅1~10cm、および厚さ0.5~2cmであり得る。センサーチップは、反応セルと、例えば水性液、等張液、緩衝液、半固体および/またはゼラチン性のマトリクスなどである基体を含有する区画と、を含み、そこでは受容体タンパク質複合体および存在し得るさらなるタンパク質が、それらの天然状態を維持し得る。基体は、気体に対して透過性であるが水に対しては透過性ではない膜によって周囲から分離された反応セルの一つの側またはいくつかの側にあり得る。膜材料の厚さおよび構造は、拡散に対する抵抗を最小化するように選択され得る。具体的には、膜は、厚さが薄く、かつ/または高空隙率であることが好ましい。随意に、膜の細孔は水を除外することができ、これには、該細孔を気体で充填することができる。気体透過性膜は、例えば剛性の開放格子によって、外側からの物理的損傷から保護することができるが、該開放格子は、チップの筐体の一部であり得、また媒体からの周囲気体が膜に自由にアクセスすることを可能にさせ得る。当該格子は、センサーチップがその未使用の状態にあるときに、接着フィルムまたは気密カバーによって覆われていてもよい。これにより、動作中でないときに、分子または作用物質が周囲環境からセルへと入るのを防止することができる。セルは再封止可能であり得、これにより反応セルの耐用期間または寿命を延ばすことが可能になり得る。
【0176】
さらに、水が気体透過性膜を通過することによって反応セルから蒸発し得るため、センサーチップは、脱イオン水を含有する小さな貯蔵部を提供し得る。貯蔵部は、反応セルに接続され得るものであり、反応セルからの塩の拡散は、接続箇所に半透膜が存在することによって妨げることができる。一実施例では、貯蔵部は、水が反応セルに向かって出て行こうとしていたとしても収縮に対して有意な抵抗を何ももたらさない小さな可撓性ブリスターであり得る。貯蔵部は、剛直な筐体によって取り囲まれてもよく、剛直な筐体は、反応セル内のより高いオスモル濃度によって、水が可撓性ブリスターから反応セルの方へ向けて引かれたときに周囲の空気または媒体が通って筐体に入ってくることができる穴を備え得る。あるいは、または追加的に、水貯蔵部の容積の柔軟性は、移動可能なピストンによって達成され得る。
【0177】
一実施例では、特に、受容体タンパク質複合体および存在し得るさらなるタンパク質が凍結乾燥および再構成してもその機能性を維持するならば、同じ水貯蔵部または別の貯蔵部が、センサーチップの起動に役立ち得る。起動は、貯蔵部と反応セルとの間の水不透過性バリアまたは膜を破壊することによって達成され得、それに伴って水が反応セルに入り、受容体タンパク質複合体を再構成することとなる。このプロセスは、反応セルの方がオスモル濃度が高いことによって駆動し得、そして反応セル内の浸透圧がその筐体および随意に気体透過性膜を覆う剛性の格子によって相殺されるまで、継続することとなる。
【0178】
さらに、センサーチップは、取り付けられる際にそれを通して検出装置に接続させることができる電気および/または光学の接点または接続を提供し得る。
【0179】
受容体タンパク質複合体は、標準的な分子生物学的方法を使用してクローニング、発現および単離、ならびに/または精製することができる。センサーチップの分子作動原理に応じて、生細胞中においてi)受容体タンパク質複合体に結合して、リガンド結合に伴ってそれから解離するか、またはii)リガンド結合に伴って受容体タンパク質複合体に結合するか、またはiii)リガンド結合に伴って受容体タンパク質を化学的に修飾するか、またはiv)リガンド結合に伴って受容体タンパク質複合体によって化学的に修飾されるものである補助タンパク質が、クローニングおよび単離され、さらにセンサーチップに含まれ得る。
【0180】
機能的なこの装置において、受容体タンパク質複合体は、センサーチップの反応セルに存在し得る。センサーチップの分子作動原理に応じて、それらは固定化されてもよく、すなわち、反応セル内側の領域もしくは表面に拘束されるか、またはその中に含有される基体中に溶解されてもよい。さらに、分子レベルのセンサーチップの作動原理に応じて、溶解または固定化された受容体タンパク質複合体は、ホモ二量体(一緒に結合された二つの受容体タンパク質)として、または多タンパク質複合体の形態での、単量体形態(他のタンパク質と複合体でない)であり得る。
【0181】
受容体タンパク質複合体が反応セルの領域または表面に固定化される実施例では、受容体タンパク質は、好ましくは、周囲媒体の成分がセルに入る場所に可能な限り近接して固定化され得る。例えば、これは、気体透過性膜自体であり得、特に反応セルの内側に面する膜の側であり得る。かかる実施形態は、反応セルに入る生物活性物質などの周囲媒体の成分と受容体タンパク質複合体へのその結合との間の遅延を最小化することができ、また同時に、侵入点が受容体タンパク質複合体と密接に近づくので、結合の可能性を最大化することができる。
【0182】
受容体タンパク質複合体の固定化は、膜に、受容体タンパク質複合体、またはホモ二量体の一員、または多タンパク質複合体の一員もしくは複数員を共有結合させることによって達成することができる。共有結合は、それによってリガンド結合ドメインおよび/またはタンパク質間相互作用部位の構造を変化させることのないものであり得、またタンパク質またはリガンド結合に立体的に影響を与えないものであり得る。あるいは、または追加的に、使用される受容体タンパク質複合体の低親和性リガンド(一つの種類の受容体タンパク質のみが存在する場合)、または低親和性リガンドの混合物(いくつかの種類の異なる受容体タンパク質が存在する場合)を固定化することによって達成することができる。あるいは、または追加的に、これは、受容体タンパク質複合体の特定の領域もしくはドメインに、または反応セル内に存在して受容体タンパク質複合体に結合した追加のタンパク質のうちの一つもしくはいくつかに結合する分子を共有結合することによって達成され得る。それによって、結合タンパク質の標的の領域またはドメインは、リガンド結合部位または反応セル内に存在する異なるタンパク質間の相互作用部位と同一ではない場合がある。例としては、固定化しようとするタンパク質の特定のエピトープに特異的なモノクローナル抗体の固定化、または固定化しようとするタンパク質複合体がニッケルイオンをキレート化することができるヒスチジンタグを含有する場合にはニトリロ三酢酸結合ニッケル2+イオンの固定化が挙げられる。
【0183】
タンパク質を反応セルで固定化するための複数の手段を実施することができる。これらは、リガンド結合前のタンパク質複合体の固定化などである同じ目的、またはリガンドもしくは生物活性物質に結合したタンパク質複合体の結合などである違う目的を果たし得る。また、いくつかの種類の受容体タンパク質複合体が、同じセンサーチップ内に存在してもよく、これがセンサーの化学的特異性をより広いものにさせることを可能にする。受容体タンパク質複合体および/または受容体タンパク質複合体と相互作用するさらなるタンパク質に、異なる標識が連結されてもよく、これが、いくつかの使用される受容体タンパク質複合体のうちのいずれが、その周囲に存在するリガンドまたは対応する生物活性物質に結合したかを決定することを可能にする。あるいは、または追加的に、それ故に異なる特異性を提供するような異なる受容体タンパク質複合体を含有する様々なチップが利用可能であり得、随意に全てが、検出装置上に存在するソケットと合致する。
【0184】
センサーチップは、一旦起動すると、受容体タンパク質複合体の枯渇を理由に耐用期間または寿命が制限され得るものであり、これは環境監視に利用可能な受容体タンパク質の量が時間とともに減少する可能性があるからである。この減少は、二つの機構、i)ある時点で、利用可能な全ての受容体タンパク質が、周囲から反応セルに入った分子に結合することとなること、ならびにii)受容体タンパク質が、結合分子または作用物質の不在下かつセンサーチップの基体における最適化された物理化学的条件下であっても、決まった半減期を有すること、に起因し得る。前者の機構による受容体タンパク質複合体の枯渇は、累積的な検出された汚染の関数であり得、またセンサーチップに最初に存在する受容体タンパク質複合体の既知の量に基づいて計算することができる。後者の機構による受容体タンパク質複合体の枯渇は、反応セル内の物理化学的条件下での受容体タンパク質の安定性の関数であり得る。これは、採用された受容体タンパク質複合体および基体組成物などのセンサーチップに特異的なパラメータによって、ならびにセンサーチップがその寿命中で曝露した、温度など検出装置の使用度に特有のパラメータによって定められ得る。受容体タンパク質複合体の枯渇は、絶え間なく、または定めた時間間隔で、検出装置によって決定することができる。固定化した受容体タンパク質複合体を用いる実施形態では、例えば、これが、固定化した受容体タンパク質複合体の層の吸光度のインピーダンスなどの特性を測定することによって達成され得る。あるいは、または追加的に、センサーチップに特有のパラメータは、開発または生産の一部として決定され得る。さらに、検出装置またはセンサーチップの使用度に関連するパラメータは、チップの寿命の間中、測定され得る。
【0185】
例えば、センサーチップは、例えばユーザー装置上または検出装置上に設置された、検出装置を動作させるために使用されるソフトウェアアプリケーションがチップの使用履歴を読み取ることを可能にし得るチップ識別子を保持し得る。チップ識別子は、チップ挿入時に検出装置によって自動的に検出できることが好ましい。あるいは、または追加的に、チップは、チップを検出装置に挿入すると、ユーザーによって入力され得るチップID番号などの物理的識別子を保持し得る。ソフトウェアは、使用履歴、センサータイプ、および累積的な検出された汚染または曝露から、センサーチップの受容体タンパク質の枯渇を推定し、そしてチップを交換するべき時をユーザーに通知することができる。
【0186】
センサーチップの寿命は限られているため、また持続可能性および製品コストを理由に、センサーチップは、好ましくは可能な限り最小量の材料、好ましくはリサイクル材料およびリサイクル可能な材料で作製され得ることが好ましい。チップは、電気的および/または光学的なリード線またはコネクターのみを含むことが好ましく、ダイオード、光検出器またはプロセッサなど信号の生成、捕捉または処理に関与するさらなる電子センサー要素はない。しかしながら、代替的に、こうした要素のうちの一つ以上が、センサーチップに含まれてもよい。
【0187】
以下では、センサー応答時間は、模範的に推定される。基本的な作動原理は、周囲媒体から気体透過性膜における境界層への生物活性物質の輸送、境界層を越える気体透過性膜への輸送、気体透過性膜を通した生物活性物質の拡散、生物活性物質の受容体タンパク質複合体への拡散、生物活性物質の受容体タンパク質複合体への結合、任意で検出部位への受容体タンパク質複合体の拡散、そして最後に結合に伴って誘発された状態変化の検出を含み得る。
【0188】
周囲媒体から気体透過性膜における境界層への生物活性物質の輸送は、対流によって駆動され得、すなわち周囲媒体が、気体透過性膜における境界層に能動的または受動的に持ち込まれ得る。特定の装置寸法およびサンプリング速度が約0.5~10mL/秒である場合、これは装置のサイズに依存し得るが、物質移動は、受動的および能動的のいずれであっても、センサーチップの周囲の生物活性物質の発生と比較して約1~5秒の遅延を引き起こすと予想され得る。
【0189】
境界層を越える気体透過性膜への輸送およびこの層を越える輸送は、
に従って考慮される分子または生物活性物質のブラウン運動および拡散係数Dに依存し得るものであり、式中、msd(x)はx方向(例えば、気体透過性膜に向かう方向)の平均二乗変位であり、またΔtは時間である。関連有機分子および生物活性物質の拡散係数は、0.05cm2/秒(大気中、周囲条件で)の範囲であり得る。境界層を構成する開放格子の厚さを2mmと仮定すると、格子のコームを通る気体透過性膜への移動は、およそ2秒の間に生じることが予想され得る。
【0190】
さらに、気体透過性膜を越える移動は、同じ物理的原理に従い得るが、膜の細孔サイズに応じて、拡散係数Dは、クヌーセン拡散係数で置き換えるべきであり、すなわち細孔壁との分子の衝突が流体中の分子間の衝突よりも頻度が大きくなるにつれて、有効拡散係数は減少する。さらに、膜の種類に応じて、膜の細孔は液体または気体で充填され得るので、それに応じた拡散係数をとる(水中の拡散係数は桁数が少ない)。膜中の細孔サイズが約0.2μmであると仮定すると、これは25℃での空気中の分子の平均自由経路の約半分の範囲内にあるので、細孔は空気で充填され、またクヌーセン拡散係数は、約0.025cm2/秒の範囲内にある。したがって、厚さ200μmの膜では、約0.2秒のさらなる遅延を引き起こし得る。
【0191】
受容体タンパク質複合体に対する生物活性物質の拡散の動態は、さらなる遅延を引き起こし得る。これは、受容体タンパク質複合体が気体透過性膜に固定化される実施形態においては無視できる場合がある。受容体タンパク質複合体が反応チャンバー内に溶解される実施形態の場合では、水中の拡散係数、および気体透過性膜と溶解した受容体タンパク質複合体の位置との間の平均距離を使用して、上述のように推定することができる。水中の関連する有機分子の拡散係数は、10~5cm2/秒の範囲内にあり得、溶解した受容体タンパク質複合体と気体透過性膜との間の平均距離は、反応セル直径の半分であると推定され得る。したがって、反応セルの寸法は、0.1mm以下の範囲とすることができる。より大きな寸法(平均距離1mm、例えば、数千秒の遅延を引き起こす)の場合は、反応セル内に存在する基体は、例えば、反応セル内に対流を生成することによって、または不均一な熱供給によって、またはマイクロ流体循環を導入することによって、能動的に混合することができる。
【0192】
生物活性物質と受容体タンパク質複合体との間の実際の結合は、迅速なプロセスであり得るので、応答時間の推定は考慮しなくともよい。さらに、検出部位に対する受容体タンパク質複合体の拡散に関しては、受容体タンパク質複合体に対する生物活性物質の拡散に関して上述したものと同じ考慮事項が適用されるが、タンパク質複合体の拡散係数は、通常、有機分子または生物活性物質の拡散係数よりも約十倍小さいものである10~6cm2/秒の範囲内にあり得る。さらに、検出は、通常直ちに起こるので、生物活性物質の発生とセンサー信号の生成との間の遅延の一因とならない。
【実施例】
【0193】
以下に非限定的な実施例の非網羅的な一覧を提供している。これらの実施例の特徴のうちのいずれか一つ以上は、本明細書に記載の別の実施例、実施形態、または態様のうちのいずれか一つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
【0194】
実施例1:
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に動作可能に結合可能なセンサーチップであって、センサーチップが、
複数の受容体タンパク質複合体を含有する反応セルと、
反応セルを周囲媒体から分離し、また一以上の生物活性物質に対して透過性である膜とを備えるものであり、
受容体タンパク質複合体は、反応セル内の一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになるものである、センサーチップ。
実施例2:
受容体タンパク質複合体の該少なくとも一部の検出可能な状態変化は、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在の示唆である、実施例1に記載のセンサーチップ。
実施例3:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化が、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部のコンホメーションの状態の変化、反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の局在性の変化、反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の位置の変化、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の組成の変化、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の質量の変化、反応セルの少なくとも一部の質量の変化、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の物理的特性の変化、反応セルの少なくとも一部の物理的特性の変化、反応セルの少なくとも一部の光学特性の変化、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の化学的特性の変化、反応セル内に含有される基体の化学的特性の変化、反応セル内に含まれる基体の導電率の変化、反応セルの少なくとも一部内の遊離蛍光分子または光吸収分子の濃度の変化のうちの一つ以上と関連している、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例4:
受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴って、反応セル内での位置が変化するように構成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例5:
受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴って、一以上の構成要素へ解離するように構成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例6:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束されるか、または固定化され、また
受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴って、少なくとも一つの機能面から解離するように構成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例7:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、反応セルの少なくとも一つの機能面に共有結合する、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例8:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、反応セルの少なくとも一つの機能面に共有結合した低親和性リガンドによって、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束されるか、または固定化される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例9:
受容体タンパク質複合体は、反応セルの少なくとも一つの機能面に静電的に拘束される、実施例6から8のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例10:
反応セルの少なくとも一つの機能面が、反応セルに面する膜の内側面によって画定される、実施例6から9のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例11:
少なくとも一つの機能面が、膜の方に向けて配設された反応セルの内側面を含む、実施例6から10のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例12:
少なくとも一つの機能面が、膜に対向して配置される反応セルの内側面を含む、実施例6から11のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例13:
周囲媒体は、環境空気を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例14:
周囲媒体は、水を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例15:
膜は、周囲媒体に接触するように構成された外側面を含み、また
膜は、反応セルに面する内側面を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例16:
一以上の生物活性物質が、外因性の作用物質を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例17:
反応セルが、液体、ゼラチン性、および半固体の基体のうちの一以上を含有する、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例18:
基体は、受容体タンパク質複合体が天然状態を維持するように構成されている、実施例17に記載のセンサーチップ。
実施例19:
基体が、水溶液、等張溶液、および緩衝溶液のうちの少なくとも一つを含む、実施例17および18のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例20:
基体が、受容体タンパク質複合体を安定化するための安定化タンパク質を含む、実施例17から19のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例21:
基体が、界面活性分子または界面活性分子複合体を含む、実施例17から20のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例21:
基体が、TweenまたはトリトンX-100のうちの少なくとも一つを含む、実施例17から21のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例23:
膜は、気体に対して透過性であり、および/または
膜は、水または水性液体に対して不透過性である、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例24:
膜は、複数の細孔を含み、好ましくは気体で充填されて水を除外するものである、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例25:
膜は、多孔性炭素紙材料および穿孔されたフッ素重合体のうちの少なくとも一つを含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例26:
膜の外側面の少なくとも一部を覆う格子をさらに備える、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例27:
膜の外側面の少なくとも一部を覆い、また膜が周囲媒体と接触するのを防止するように構成された、密封カバーをさらに備える、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例28:
密封カバーが、接着フィルムを含む、実施例26に記載のセンサーチップ。
実施例29:
反応セルが、膜の外側面の少なくとも一部を密封カバーで覆うことによって、封止可能および/または再封止可能である、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例30:
密封カバーは気密である、27から29のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例31:
センサーチップが、検出装置内に少なくとも部分的に挿入される形状およびサイズで構成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例32:
センサーチップが、検出装置のソケット内に少なくとも部分的に挿入される形状およびサイズで構成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例33:
センサーチップが、センサーチップの筐体の外側面に少なくとも一つの表面特徴を備えるものであり、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴は、ソケット内でのセンサーチップの正しい位置決めを確実にするようにソケットの少なくとも一つの表面特徴に対して相補的に形成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例34:
センサーチップの少なくとも一つの表面特徴が、ソケットの少なくとも一つの表面特徴と係合して、センサーチップをソケット内に固定するように構成される、実施例33に記載のセンサーチップ。
実施例35:
センサーチップが、センサーチップを検出装置に磁気的に結合するための一つ以上の磁石を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例36:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を、光学測定に基づいて、蛍光光の検出に基づいて、受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の蛍光励起に基づいて、光散乱に基づいて、反応セル内に含有される基体の導電率を決定することに基づいて、反応セル内で発生する電気化学的プロセスに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面の一つ以上の光学特性を決定することに基づいて、電磁放射の吸収に基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面の質量を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束または固定される受容体タンパク質複合体の質量を決定することに基づいて、および反応セルの少なくとも一つの機能面における表面プラズモン共鳴に基づいて、決定可能である、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例37:
センサーチップを検出装置に動作可能に結合するための一つ以上のコネクターをさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例38:
センサーチップが、一つ以上のコネクターを介して検出装置に接続可能であり、それによって、一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化が、検出装置によって検出可能になる、実施例36に記載のセンサーチップ。
実施例39:
一つ以上のコネクターが、一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を光学的に検出するために、検出装置からの電磁放射を反応セルに結合するように構成された少なくとも一つの光コネクターを含む、実施例37から38のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例40:
一つ以上のコネクターが、反応セルから出た電磁放射を結合するための少なくとも一つのさらなる光コネクターを含む、実施例38に記載のセンサーチップ。
実施例41:
少なくとも一つの光コネクターが、センサーチップの筐体内に配置された少なくとも一つの開口部を含む、実施例38から40のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例42:
少なくとも一つの開口部が、所定の波長の電磁放射に対して半透明である材料の層で封止される、実施例41に記載のセンサーチップ。
実施例43:
少なくとも一つの開口部が、反応セルの長手方向軸に平行に配向される、実施例41から42のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例44:
一以上の生物活性物質への結合に伴う受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を光学的に検出するために、反応セルを通って電磁放射を案内するための少なくとも一つの光学ガイドをさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例45:
少なくとも一つの光学ガイドが、センサーチップの少なくとも一つの光コネクターと整列および光学的に結合される、実施例44に記載のセンサーチップ。
実施例46:
少なくとも一つの光学ガイドが、反応セルを通って反応セルの長手方向軸に平行に延在する、実施例44から45のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例47:
センサーチップが、少なくとも二つの光学ガイドと、少なくとも二つの光学ガイドの端部に配置された少なくとも一つの反射素子とを備えるものであり、少なくとも一つの反射素子は、少なくとも二つの光学ガイドを光学的に結合する、実施例44から46のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例48:
少なくとも二つの光学ガイドの各々が、少なくとも一つの反射素子に対向するそれぞれの光学ガイドの端部に配置された検出装置(sensor deceive)の少なくとも一つの光コネクターと光学的に結合される、実施例47に記載のセンサーチップ。
実施例49:
一つ以上のコネクターが、センサーチップを検出装置に電気的に結合するための少なくとも一つの電気コネクターを含む、実施例37から48のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例50:
反応セル内に少なくとも部分的に配置され、反応セル内の基体または組成物の導電率を決定するように構成される、一つ以上の電極をさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例51:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一つ以上の構成要素によって放射および/または散乱される電磁放射に対して半透明である少なくとも一つの検出窓をさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例52:
少なくとも一つの検出窓が、受容体タンパク質複合体の少なくとも一つ以上の構成要素によって放射される蛍光光に対して半透明であり、および/または
少なくとも一つの検出窓が、蛍光励起光に対して不透明である、実施例51に記載のセンサーチップ。
実施例53:
少なくとも一つの検出窓が、膜に対向して配置される、および/または膜の方に向けて配設される、実施例51から52のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例54:
反応セルに面する少なくとも一つの検出窓の内側面が、受容体タンパク質複合体の少なくとも構成要素に結合するように構成された分子捕捉複合体で少なくとも部分的にコーティングされて、それによって一以上の生物活性物質に結合した受容体タンパク質複合体が内側面に捕捉されるようになる、実施例51から53のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例55:
分子捕捉複合体は、ストレプトアビジンを含む、実施例54に記載のセンサーチップ。
実施例56:
反応セルに面する少なくとも一つの検出窓の内側面が、キレート化ニッケルイオンで少なくとも部分的にコーティングされる、実施例51から55のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例57:
反応セルに面する少なくとも一つの検出窓の内側面が、受容体タンパク質複合体の少なくとも一つの構成要素によって放射される蛍光光を消光するための消光分子で少なくとも部分的にコーティングされる、実施例51から56のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例58:
反応セルに面する膜の内側面が、受容体タンパク質複合体の少なくとも構成要素によって放射される蛍光光を消光するための消光分子で少なくとも部分的にコーティングされる、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例59:
センサーチップおよび/または反応セルが、細長形状を有する、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例60:
センサーチップおよび/または反応セルが、細長形状を有し、また
膜が、センサーチップの長軸方向側部に配置される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例61:
反応セルが、長方形断面を有し、および/または
反応セルが、平行六面体として形成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例62:
反応セルが、円形、長円形、または楕円形の断面を有し、および/または
反応セルが、管状形状である、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例63:
膜が、反応セルの周囲に沿って反応セルを少なくとも部分的に取り囲むものである、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例64:
反応セルと流体的に連結可能な少なくとも一つの貯蔵部をさらに含むものであり、該少なくとも一つの貯蔵部は、脱イオン水を反応セルに供給するように構成される、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例65:
少なくとも一つの貯蔵部が、脱イオン水で少なくとも部分的に充填される、実施例64に記載のセンサーチップ。
実施例66:
少なくとも一つの貯蔵部の壁の少なくとも一部が、貯蔵部の容積が調整可能であるように、変位可能、可撓性、または移動可能である、実施例64から65のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例67:
少なくとも一つの貯蔵部の少なくとも一部が、可撓性バッグまたは可撓性ブリスターとして形成される、実施例64から66のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例68:
少なくとも一つの貯蔵部の容積を調整するように構成された少なくとも一つの移動可能なピストンをさらに含む、実施例64から67のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例69:
少なくとも一つの貯蔵部が、センサーチップの筐体の一部分によって取り囲まれ、また
筐体の当該部分が、圧力均等化のための少なくとも一つの開口を備える、実施例64から68のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例70:
少なくとも一つの貯蔵部が、反応セルから貯蔵部内へ拡散する塩を遮断する半透膜によって反応セルに流体的に結合される、実施例64から69のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例71:
反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通を遮断するように構成された少なくとも一つの遮断要素をさらに含む、実施例64から70のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例72:
センサーチップは、少なくとも一つの遮断要素を使用して、反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通を遮断解除することに応じて起動可能である、実施例71に記載のセンサーチップ。
実施例73:
少なくとも一つの遮断要素が、少なくとも一つの貯蔵部と反応セルとの間に配置された水不透過性膜を備える、実施例71から72のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例74:
センサーチップが、水不透過性膜の少なくとも一部を破壊することに応じて起動可能である、実施例73に記載のセンサーチップ。
実施例75:
少なくとも一つの遮断要素は、反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通を遮断または遮断解除するように動作可能である移動可能なピンを備える、実施例71から74のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
実施例76:
センサーチップは、移動可能なピンを移動することに応じて起動可能であって、それによって反応セルと少なくとも一つの貯蔵部との間の流体連通を遮断解除することができる、実施例75に記載のセンサーチップ。
実施例77:
受容体タンパク質複合体は、受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインであって一以上の生物活性物質に結合するよう構成されて生物活性物質のうちの一つへの結合に伴って状態および/またはコンホメーションが変化するよう構成された受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれ含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例78:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、一つ以上の受容体タンパク質の複数のリガンド結合ドメインを含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例79:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、異なる種類の生物活性物質に結合するように構成された異なる種類の複数のリガンド結合ドメインを含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例80:
受容体タンパク質は、異種センサータンパク質またはホルモン受容体タンパク質である、実施例76から78のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例81:
受容体タンパク質複合体は、アリール炭化水素受容体、構成的アンドロスタン受容体、プレグナンX受容体、エストロゲン受容体、およびアリール炭化水素受容体からなる群から選択される受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれが含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例82:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、組換えタンパク質または非組換えタンパク質を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例83:
受容体タンパク質複合体は、それぞれ、単量体受容体タンパク質、ホモ二量体受容体タンパク質複合体またはヘテロ二量体受容体タンパク質複合体の少なくとも一部を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例84:
受容体タンパク質複合体が、異なる種類の生物活性物質に結合するように構成された異なる種類の受容体タンパク質の少なくとも一部を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例85:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部は、一以上の生物活性物質への結合に伴って、それぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離する有機部分または無機部分を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例86:
受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴って、それぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離する少なくとも一つの蛍光標識を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例87:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部が、同一または異なる種類の複数の蛍光標識を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例88:
少なくとも一つの蛍光標識が蛍光色素または緑色蛍光タンパク質である、実施例85から86のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例89:
受容体タンパク質複合体は、一以上の生物活性物質への結合に伴ってそれぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離するナノ粒子を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例90:
受容体タンパク質複合体は、反応セル内に配置された分子捕捉複合体に結合するように構成された親和性タグを含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例91:
センサーチップの種類および/またはセンサーチップが含む受容体タンパク質複合体の種類を識別するためのチップ識別子をさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例92:
チップ識別子が、ユーザー装置によって読取可能、および/または検出装置によって読取可能である、実施例91に記載のセンサーチップ。
実施例93:
チップ識別子が、センサーチップの種類および/またはセンサーチップが含む受容体タンパク質複合体の種類を示す情報またはデータを含む、実施例91または92のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例94:
チップ識別子が、バーコード、QRコード、RFIDタグ、ラベル、およびデータストレージのうちの一つ以上を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例95:
センサーチップの使用度または残りの寿命を示す履歴データを格納するように構成されたデータストレージをさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例96:
データストレージが、センサーチップの使用度または残りの寿命を示す一以上の動作パラメータを格納するように構成される、実施例95に記載のセンサーチップ。
実施例97:
データストレージが、センサーチップが検出装置に動作可能に結合すると、検出装置によってアクセス可能である、実施例95から96のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例98:
センサーチップが、複数の反応セルを含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例99:
複数の反応セルが、異なる種類の生物活性物質に結合するように構成された異なる種類の受容体タンパク質複合体を含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例100:
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された一つ以上のセンサーをさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例101:
一つ以上のセンサーと結合し、また受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の決定された状態変化を示す検出信号を提供するように構成された処理回路をさらに含む、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップ。
実施例102:
一つ以上の生物活性物質を検出するための、先述の実施例のいずれか一つに記載のセンサーチップの使用。
実施例103:
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための、実施例1から101のいずれか一つに記載の少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合することができる検出装置であって、該検出装置が、
少なくとも一つのセンサーチップの反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された少なくとも一つのセンサーを備えるものであり、該状態変化は、センサーチップの膜を通して周囲媒体からセンサーチップの反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発され、また
少なくとも一つのセンサーと結合された処理回路を備えるものであり、該処理回路は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成されるものである、検出装置。
実施例104:
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置であって、検出装置が、
実施例1から101のいずれか一つに記載の少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容して、検出装置を少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合するように構成された筐体と、
少なくとも一つのセンサーチップの反応セル内の受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成された処理回路とを備えるものであり、該状態変化は、センサーチップの膜を通して周囲媒体からセンサーチップの反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発される、検出装置。
実施例105:
周囲媒体は、環境空気を含むものであり、および/または
検出装置が、環境空気の質を監視するための環境監視装置である、実施例103および104のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例106:
検出装置が、静止使用での装置および/またはデスクトップ装置である、実施例103から105のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例107:
検出装置が、携帯可能装置、移動可能装置、および/または手持ち装置である、実施例103から105のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例108:
検出信号が、電子的に処理可能な信号である、実施例103から107のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例109:
検出信号が、周囲媒体の体積当たりの一以上の生物活性物質の量、周囲媒体の体積当たりの生物活性物質の質量、周囲媒体中の生物活性物質の濃度、周囲媒体の受容体タンパク質の活性化能、および周囲媒体の生物活性を示す、実施例103から108のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例110:
検出装置が、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容するように構成されている、実施例103から109のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例111:
検出装置が、センサーチップに機械的に結合可能である、実施例103から110のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例112:
検出装置が、センサーチップに磁気的に結合可能である、実施例103から111のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例113:
検出装置が、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容するように構成されている少なくとも一つのソケットを備える、実施例103から112のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例114:
少なくとも一つのソケットが、検出装置の筐体が少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に取り囲むこととなるように、少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容するように構成される、実施例113に記載の検出装置。
実施例115:
少なくとも一つのソケットが、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴に相補的に形成される少なくとも一つの表面特徴を備えて、少なくとも一つのソケット内でのセンサーチップの正しい位置決めを確実にすることができる、実施例113から114のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例116:
少なくとも一つのソケットの少なくとも一つの表面特徴は、ソケット内にセンサーチップを位置決めするための一つ以上のガイドを含む、実施例115に記載の検出装置。
実施例117:
少なくとも一つのソケットの少なくとも一つの表面特徴が、センサーチップの少なくとも一つの表面特徴と少なくとも部分的に係合するように構成され、それによってセンサーチップがソケット内に取り外し可能に固定可能にすることができる、実施例115から116のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例118:
検出装置が、同一または異なる種類の複数のセンサーチップを受容するように構成された複数のソケットを備える、実施例103から117のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例119:
検出装置が、センサーチップを検出装置に磁気的に結合するための一つ以上の磁石を含む、実施例103から118のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例120:
検出装置が、光学測定に基づいて、蛍光光の検出に基づいて、受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の蛍光励起に基づいて、光散乱に基づいて、センサーチップの反応セル内に含有される基体の導電率を決定することに基づいて、反応セル内で発生する電気化学プロセスに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面の一つ以上の光学特性を決定することに基づいて、電磁放射の吸収を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面の質量を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面に拘束または固定される受容体タンパク質複合体の質量を決定することに基づいて、および反応セルの少なくとも一つの機能面における表面プラズモン共鳴に基づいて、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成される、実施例103から119のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例121:
処理回路が、センサーチップまたは検出装置の少なくとも一つのセンサーを用いて、一以上の生物活性物質への結合に伴う反応セル内の一つ以上の受容体タンパク質の位置変化を検出することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を決定するように構成される、実施例103から120のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例122:
検出装置が、少なくとも一つのセンサーチップの反応セルの基体中に溶解した受容体タンパク質複合体の存在、数、質量、密度、および質量密度のうちの一つ以上を決定するように構成される、ならびに/または
検出装置が、センサーチップに送信された光学信号および電気信号のうちの少なくとも一つの変化を決定することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの反応セルの基体中に溶解した受容体タンパク質複合体の存在、数、質量、密度、および質量密度のうちの一つ以上を決定するように構成される、実施例103から121のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例123:
受容体タンパク質複合体が、生物活性物質のうちの一つへの結合に伴って反応セルの少なくとも一つの機能面から解離するように構成され、また
検出装置が、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または反応セルの少なくとも一つの機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定するように構成される、実施例103から122のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例124:
検出装置が、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または反応セルの少なくとも一つの機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の質量を決定して、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するように構成された一つ以上の圧電素子を含む、実施例103から123のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例125:
一つ以上の圧電素子が、反応セルの少なくとも一つの機能面の方に向けて配設された反応セルの内側面に結合した受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素の質量を決定することに基づいて、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または反応セルの少なくとも一つの機能面から遊離した受容体タンパク質複合体の質量を決定するように構成される、実施例124に記載の検出装置。
実施例126:
一つ以上の圧電素子が、センサーチップの反応セルの一以上の機能面に機械的に結合可能であり、および/または
一つ以上の圧電素子が、反応セルの一つ以上の機能面の方に向けて配設されるセンサーチップの反応セルの一つ以上の内側面に機械的に結合可能である、実施例124から125のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例127:
受容体タンパク質複合体が、少なくとも一つの蛍光標識を含み、また
検出装置が、一つ以上の蛍光標識を励起することに基づいて、および一つ以上の蛍光標識によって放射される蛍光光を検出することに基づいて、一以上の生物活性物質を検出するように構成される、実施例103から124のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例128:
受容体タンパク質複合体が、生物活性物質のうちの一以上への結合に伴って、それぞれの受容体タンパク質複合体の残りの部分から解離する少なくとも一つの蛍光標識を含み、また
検出装置が、一つ以上の受容体タンパク質複合体から解離した一つ以上の蛍光標識を励起することに基づいて、および一つ以上の解離した蛍光標識によって放射される蛍光光を検出することに基づいて、一以上の生物活性物質を検出するように構成される、実施例103から127のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例129:
検出装置が、一つ以上の蛍光標識を励起するように構成された一つ以上の光源を含み、また
検出装置が、一つ以上の蛍光標識によって放射される蛍光光を検出するように構成された一つ以上の光検出器を含む、実施例127から128のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例130:
検出装置が、反応セルの少なくとも一部を照射するように構成された一つ以上の光源を含み、また
検出装置が、反応セル内の受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素によって散乱された光を検出するように構成された一つ以上の光検出器を含む、実施例103から129のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例131:
一つ以上の光検出器は、センサーチップを少なくとも部分的に受容して、反応セルの外に透過する電磁放射を検出するために、検出装置のソケットに隣接して配置される、実施例129から130のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例132:
一つ以上の光検出器が、センサーチップの検出窓に対向するように配置されている、実施例129から131のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例133:
一つ以上の光源は、一つ以上の光源によって放射される電磁放射が反応セル内に結合可能であるように、センサーチップを少なくとも部分的に受容するための検出装置のソケットに隣接して配置される、実施例129から132のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例134:
一つ以上の光源が、センサーチップの一つ以上の光コネクターを介して電磁放射を反応セルに結合するように配置される、実施例129から133のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例135:
検出装置が、電磁放射をセンサーチップの反応セルの少なくとも一部を横断する一つ以上の光学ガイドに結合するように配置される一つ以上の光源を含み、また
検出装置が、一つ以上の光学ガイドを横断する電磁放射を検出するように構成された一つ以上の光検出器を含む、実施例103から134のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例136:
一つ以上の光源が、一つ以上の光学ガイドの端部と整列するように配置されるものであり、および/または
一つ以上の光検出器が、一つ以上の光学ガイドの端部と整列するように配置される、実施例135に記載の検出装置。
実施例137:
処理回路が、一つ以上の光学ガイドに隣接して配置された反応セルの機能面および内側面のうちの少なくとも一つの一つ以上の光学特性を決定するように構成される、実施例103から136のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例138:
処理回路が、一つ以上の光学ガイドを通して反応セル内へ透過するエバネッセント光の吸収を決定することに基づいて、一つ以上の光学特性を決定するように構成される、実施例135から137のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例137:
センサーチップを少なくとも部分的に取り囲むように構成された筐体をさらに含むものであり、
筐体が、センサーチップの少なくとも一部が周囲媒体と接触可能であるように、周囲媒体を通るための一つ以上の穴を含む、実施例103および105から136のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例140:
検出装置の筐体内の一つ以上の穴を通してセンサーチップの該少なくとも一部へと周囲媒体を通過させるための一つ以上のチャネルをさらに含む、実施例139に記載の検出装置。
実施例141:
一つ以上のチャネルに配置されて、また検出装置の筐体内の一つ以上の穴を通してセンサーチップの該少なくとも一部へと周囲媒体を送達するように構成された、一つ以上の換気装置をさらに含む、実施例140に記載の検出装置。
実施例142:
センサーチップの少なくとも一部を加熱するように構成された一つ以上の加熱素子をさらに含む、実施例103から141のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例143:
一つ以上の加熱素子が、センサーチップを少なくとも部分的に受容するための検出装置のソケットに隣接して配置される、実施例142に記載の検出装置。
実施例144:
センサーチップの少なくとも一部の温度を決定するように構成された一つ以上の温度センサーをさらに含む、実施例103から143のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例145:
処理回路は、一つ以上の温度センサーを使用して、センサーチップの少なくとも一部の温度を決定することに基づいて、センサーチップの少なくとも一部の温度を制御するように構成される、実施例144に記載の検出装置。
実施例146:
検出装置へのセンサーチップの挿入時に、センサーチップの一つ以上の電気コネクターに接続するための一つ以上の電気コネクターをさらに含む、実施例103から145のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例147:
処理回路が、センサーチップの一つ以上の電極に結合可能であり、また
処理回路が、反応セル内の基体または組成物の導電率を決定するように構成される、実施例103から146のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例148:
処理回路が、センサーチップの使用度または残りの寿命を示す一以上の動作パラメータを決定するように構成されるものであり、および/または
処理回路が、センサーチップの一以上の動作パラメータを決定することに基づいて、少なくともセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成される、実施例103から147のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例149:
処理回路が、センサーチップのデータストレージからセンサーチップの使用度または残りの寿命を示す履歴データを取得することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成される、実施例148に記載の検出装置。
実施例150:
処理回路が、センサーチップの決定された一以上の動作パラメータを一つ以上の閾値と比較することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成される、実施例148から149のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例151:
処理回路が、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに使用される受容体タンパク質複合体の種類を決定することに基づいて、少なくとも一つのセンサーチップの使用度または残りの寿命を決定するように構成される、実施例144から150のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例152:
処理回路が、一以上の動作パラメータを、検出装置のデータストレージに、および/またはセンサーチップのデータストレージに格納するように構成される、実施例148から151のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例153:
処理回路が、センサーチップの少なくとも一部の温度を監視することに基づいて、一以上の動作パラメータを決定するように構成される、実施例148から152のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例154:
処理回路が、経時的に、センサーチップ内の受容体タンパク質複合体の枯渇を決定するように構成される、実施例103から153のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例155:
処理回路が、経時的に、センサーチップ内の受容体タンパク質複合体の枯渇を判定することに基づいて、センサーチップの残りの寿命を決定するように構成される、実施例103から154のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例156:
検出装置がユーザーインターフェースを含み、また
処理回路が、センサーチップの寿命の満了時に、ユーザーインターフェースを介してユーザーに通知を提供するように構成される、実施例103から155のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例157:
検出装置がユーザーインターフェースを含み、また
処理回路が、決定された一以上の生物活性物質に関連する情報をユーザーインターフェースを介してユーザーに提供するように構成される、実施例103から156のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例158:
検出装置がユーザーインターフェースを含み、また
処理回路が、周囲媒体中の生物活性物質の濃度が所定の閾値に達したかまたはそれを超えたと決定すると、ユーザーインターフェースを介してユーザーに通知するように構成される、実施例103から157のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例159:
ユーザーインターフェースが、振動素子、ディスプレイ、一つ以上のLED、およびスピーカーのうちの一つ以上を含む、実施例156から158のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例160:
センサーチップが、センサーチップの種類および/またはセンサーチップに含まれる受容体タンパク質複合体の種類を識別するためのチップ識別子を含むものであり、また
処理回路が、センサーチップの種類および/またはセンサーチップが含む受容体タンパク質複合体の種類を示す情報またはデータを、チップ識別子から取得するように構成される、実施例103から159のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例161:
検出装置が、バーコードリーダー、QRコードリーダー、およびRFIDスキャナのうちの一つ以上を含む、実施例103から160のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例162:
電気エネルギーを供給するための一つ以上のエネルギーストレージをさらに含む、実施例103から161のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例163:
検出装置をユーザー装置と通信可能に結合する通信回路をさらに含む、実施例103から162のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例164:
通信回路が、無線通信回路、好ましくはBluetoothトランスミッタを含む、実施例163に記載の検出装置。
実施例165:
電離放射線に対する検出装置の曝露を測定するための一つ以上の放射センサーをさらに含む、実施例103から164のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例166:
一つ以上の放射センサーが、UV放射に対して感度が高い可逆的フォトクロミック層と、電離放射に対して感度が高いラジオクロミック色素膜とのうちの少なくとも一つを含む、実施例165に記載の検出装置。
実施例167:
湿度センサー、揮発性有機炭素センサー、オゾンセンサー、粒子状物質センサー、硝酸用センサー、および一酸化炭素センサーのうちの一つ以上をさらに含む、実施例103から166のいずれか一つに記載の検出装置。
実施例168:
周囲媒体中の一つ以上の生物活性物質を検出するための、実施例103から167のいずれか一つに記載の検出装置の使用。
実施例169:
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出システムであって、検出システムが、
実施例1から101のいずれか一つに記載の少なくとも一つのセンサーチップと、
実施例103から167のいずれか一つに記載の検出装置とを備えるものである、検出システム。
実施例170:
実施例169に記載の検出システムにより、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出する方法であって、該方法が、
一以上の生物活性物質をセンサーチップの膜を通してセンサーチップの反応セルの中へ通過させることと、
一以上の生物活性物質が一以上の受容体タンパク質複合体に結合し、それによって受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を誘発することと、
検出装置により、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の誘発された状態変化を検出することと、
受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の決定された状態変化に基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在の示唆となる検出信号を生成することとを含む、方法。
実施例172:
一以上の生物活性物質をセンサーチップの膜に通過させることは、センサーチップの膜を周囲媒体と接触させることを含む、実施例170に記載の方法。
実施例172:
脱イオン水をセンサーチップの貯蔵部からセンサーチップの反応セルに供給することに応じて、センサーチップを起動することをさらに含む、実施例170から171のいずれか一つに記載の方法。
実施例173:
センサーチップを起動することが、少なくとも一つの貯蔵部とセンサーチップの反応セルとの間にある少なくとも一つの遮断要素を使用して、反応セルと該貯蔵部との間の流体連通を遮断解除することを含む、実施例172に記載の方法。
実施例174:
少なくとも一つの遮断要素が、貯蔵部と反応セルとの間に配置された水不透過性膜を含むものであり、
センサーチップを起動することが、水不透過性膜の少なくとも一部を破壊することを含む、実施例173に記載の方法。
実施例175:
少なくとも一つの遮断要素が、貯蔵部と反応セルとの間に配置された移動可能なピンを含むものであり、
センサーチップを起動することは、移動可能なピンを移動させることを含む、実施例173から174のいずれか一つに記載の方法。
実施例176:
センサーチップを起動することは、膜の外側面から密封カバーを取り外すことを含む、実施例173から175のいずれか一つに記載の方法。
実施例177:
誘発された状態変化を検出することは、少なくとも一つのセンサーチップの反応セルの基体中に溶解した受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定することを含む、実施例170から176のいずれか一つに記載の方法。
実施例178:
誘発された状態変化を検出することは、反応セルの少なくとも一つの機能面に固定された、または反応セルの少なくとも一つの機能面から遊離した、受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定することを含む、実施例170から177のいずれか一つに記載の方法。
実施例179:
誘発された状態を検出することは、反応セルの少なくとも一つの機能面の方に向けて配設された反応セルの少なくとも一つの内側面に固定された、または該内側面から遊離した、受容体タンパク質複合体の数、質量、密度、および質量密度のうちの一以上を決定することを含む、実施例170から178のいずれか一つに記載の方法。
実施例180:
誘発された状態変化を検出することは、受容体タンパク質複合体の一つ以上の蛍光標識を励起すること、および一つ以上の蛍光標識によって放射される蛍光光を検出することを含む、実施例170から179のいずれか一つに記載の方法。
実施例181:
誘発された状態変化を検出することは、反応セル内の受容体タンパク質複合体の一つ以上の構成要素によって散乱された光を検出することを含む、実施例170から180のいずれか一つに記載の方法。
実施例182:
誘発された状態変化を検出することは、反応セルの機能面および内側面の少なくとも一方の一以上の光学特性を決定することを含む、実施例170から181のいずれか一つに記載の方法。
実施例183:
誘発された状態変化を検出することは、センサーチップの一つ以上の光学ガイドを通して反応セル内に透過するエバネッセント光の吸収を決定することを含む、実施例170から182のいずれか一つに記載の方法。
【0195】
ここで、以下の図を参照しながら実施例についてさらに説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【
図1A】
図1Aは、一以上の生物活性物質を検出するためのセンサーチップの斜視図を示す。
【
図2】
図2Aは、一以上の生物活性物質を検出するための検出システムの斜視図を示す。
図2Bは、
図2Aの検出システムの断面図を示す。
図2Cは、
図2Aの検出システムのもう一つの断面図を示す。
【
図3】
図3A~3Cはそれぞれ、センサーチップの反応セルの断面図を示す。
【
図4】
図4Aは、一以上の生物活性物質を検出するためのセンサーチップの斜視図を示す。
図4Bおよび4Cはそれぞれ、
図4Aのセンサーチップの断面図を示す。
【
図5】
図5は、一以上の生物活性物質を検出するための検出システムの断面図を示す。
【
図6】
図6は、センサーチップの反応セルの断面図を示す。
【
図7】
図7は、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出する方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0197】
これら図は模式的なものにすぎず、真の縮尺ではない。原則として、同一または同様の部品、要素、および/またはステップは、図中に同一または同様の参照符号を付して与える。
【0198】
図1Aは、一以上の生物活性物質を検出するためのセンサーチップ100の斜視図を示す。
図1B、1Cおよび1Dは、
図1Aのセンサーチップ100の断面図を示す。
【0199】
図1A~1Dに示すセンサーチップ100は、例えばセンサーチップ100の長手方向軸180に平行な投影では、長方形断面を有する細長構造として例示的に示され、または設計される。
【0200】
センサーチップ100は、反応セル101を取り囲む筐体181または外側筐体181を備える。センサーチップ100は、開放格子113であって、その下に反応セル101を空気または水などの周囲媒体から分離する膜114が配置される開放格子113をさらに備える。反応セル101は、受容体タンパク質複合体115であって反応セル101内の一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって本明細書の上記に記載し、また本明細書の以下にさらに詳細に記載することとなるように、受容体タンパク質複合体115の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになる、受容体タンパク質複合体115を含む。
【0201】
随意に、センサーチップ100は、筐体181と一体的に形成され得る、貯蔵部102または水貯蔵部102を含む。したがって、水貯蔵部102を形成する筐体181の部分は、一種類の単一の材料のみで作製することができ、一方で筐体181の、反応セル101が配置される部分は、複数の部品または部分に分割することができる。特に、センサーチップ100またはその筐体181は、下方の光透過部103または検出窓103と、光透過部103に隣接する二つの部品104と、貯蔵部102に面する長方形部品105と、その対向する側に配置されるもう一つの長方形壁106と、上方側にある平坦な長方形部品107とを備える。上方側にある長方形部分107は、開放格子113を備える。
【0202】
センサーチップ100の光透過部103または検出窓103は、特定の波長λemの光、例えば蛍光放射の放射波長、に対して透過性であるが、別の特定の波長λexの光、例えば蛍光励起のための励起波長、に対しては透過性でなくともよい材料で作製することができる。
【0203】
筐体の部品104、105、および106は、光に対して透過性ではなく、また任意で、反応セル101の内部体積に面する側が、例えばフッ素重合体などである低タンパク質吸着性の材料でコーティングされ得る。
【0204】
筐体181の部品105は、チャネル109、例えば可撓性マイクロチャネル109となり得る開口部108を提供する。
【0205】
筐体181の部品106は、蛍光励起のための励起波長などである特定の波長λexの光に対して透過性の材料によって封止され得る光コネクターまたは開口部110を含む。
【0206】
開口部110または光コネクター110は、それを通過する光が、反応セル101の幅の端から端にわたる光のシース111を生じるような形状を有することが好ましい。光コネクター110または開口部110は、光のシース111が、気体透過性膜114に近接して、好ましくは0.1mm以下の距離の範囲内に位置することになるような場所に配置されることが好ましい。
【0207】
筐体181の側面部品104は、センサーチップ100を検出装置に取り付けることを可能にし、かつ適切な配向および位置決めを確実にする、ガイド112などである一つ以上の表面特徴112を提供する。
【0208】
筐体181の平坦な長方形部品107は、例えば、約0.2~2mmの範囲のメッシュサイズを有する開放格子113を備える。格子113のすぐ下には、好ましくは格子113と融合して、気体透過性膜114が、膜114が保護されるように配置される。
【0209】
膜114は、厚さがほとんどなく、拡散抵抗が低く、またタンパク質吸着性が低い。透過性膜114の内側は、反応セル101の内部体積に直接面する。
【0210】
センサーチップ100が検出装置内に取り付けられていない場合には、開放格子113は、箔などである取り外し可能な密封カバー(図示せず)によって覆われ、また気密に封止され得る。例えばセンサーチップ100が一時的に使用されないという理由や、例えば環境品質の別の態様に焦点を当てるためにユーザーがセンサーチップ100の種類を変更することを意図するという理由で、再びセンサーチップ100を検出装置から取り外している場合には、この密封カバーを格子113上に再び取り付けることができるので、水が反応セル101から蒸発すること、および受容体タンパク質複合体115が消費されることが防止されることとなる。
【0211】
反応セル101内では、受容体タンパク質複合体115は、気体透過性膜114に固定化される。受容体タンパク質複合体115は、特に反応セル101の機能面182に固定することができるが、これは
図1A~1Dの実施例では、反応セル101の内部に面する膜114の内側面によって画定される。
【0212】
膜114の機能面182または内側面における受容体タンパク質複合体の固定化は、受容体タンパク質複合体115の公知の低親和性リガンドである共有結合した分子によって達成され得る。
【0213】
反応セル101は、好ましくは凍結乾燥である基体116、例えば、塩、緩衝液および任意に受容体タンパク質複合体115を安定化するタンパク質の混合物116、および/またはTweenもしくはトリトンX-100などである少量の界面活性分子を含有し得る。
【0214】
光透過壁103または検出窓103は、受容体タンパク質複合体115の高親和性リガンドであるか、または受容体タンパク質複合体115の一部を高親和性で結合することがわかっている、共有結合した分子または分子捕捉複合体117で任意にコーティングされ得る。これら分子捕捉複合体117は、遊離した受容体タンパク質複合体115またはその一部に対するシンクとして機能し、また同じ遊離受容体タンパク質複合体115によって生成される複数のシグナルの発生を低減することができる。分子捕捉複合体117は、反応セル101の内側面183に共有結合することができるが、この内側面183は、機能面182または膜114の方に向けて配設される。
図1A~1Dの実施例では、反応セル101の内側面183は、機能面182および/または膜114に対向して配置される。
【0215】
分子捕捉複合体117を検出窓103の内側面に結合する分子または架橋剤は、特定のまたは所定の波長λemの光、例えば蛍光放射の放射波長、を吸収しないものであり得る。さらに、所定の波長λemの蛍光を消光することがわかっている分子が、検出窓103の内側面(図示せず)に共有結合されてもよい。
【0216】
水貯蔵部102は、調整可能な容積を有し得る。例えば、貯蔵部102は、脱イオン水を含有する可撓性のブリスター118を含み得る、またはそれによって画定され得る。可撓性ブリスター118は、例えば直径0.1~0.5mmの可撓性マイクロチャネル109などであるチャネル109を介して反応セル101に接続される。チャネル109は実質的にブリスター118の延長であり、開口部108を通って到達する。可撓性ブリスター118が包含される筐体181の部分は、空気または周囲媒体がそれを通ってチャンバーまたは貯蔵部102に入りチャンバーまたは貯蔵部102内に陰圧を生成することなくブリスター118から水が流出することを可能にさせる、一つまたはいくつかの小さな孔119または開口119を備える。
【0217】
チャネル109は、遮断要素120、例えば移動可能または取り外し可能なピン120で塞ぐことができる。さらに、反応セル101と脱イオン水とは、例えば反応セル101に直接面するチャネル109の端部に存在する半透膜121によって分離されるが、これが取り外し可能なピン120の不在下での、ブリスター118内の水と反応セル101内の緩衝等張溶液とが混ざることを防止する。
【0218】
未使用状態のセンサーチップ100では、可撓性ブリスター118に含まれる脱イオン水は、周囲に対して過圧で貯蔵されることが好ましい。具体的には、未使用状態のチップ100では、可撓性ブリスター118はわずかに膨張しているので、チャネル109が反応セル101に開放されると、初期量の脱イオン水を反応セル101の中へと能動的に押し出すことができる。
【0219】
反応セル101に面する側には、センサーチップ100の筐体180の部品105が、反応セル101内側の基体116またはマトリクス116が溶解されている脱イオン水の導電率を測定することを可能にする電極122を備える。導電率測定は、反応セル101内に存在する溶液のオスモル濃度を監視するための効果的な手段を提供することができるが、これがタンパク質複合体115がそれらの天然の機能的状態にあるか否かの指標となり得る。
【0220】
図2Aは、一以上の生物活性物質を検出するための検出システム500の斜視図を示す。
図2Bおよび2Cはそれぞれ、
図2Aの検出システム500の断面図を示す。特に、
図2A~
図2Cは、検出装置200と、検出装置200に挿入されたセンサーチップ100とを有する検出システム500を示す。別段の記載がない限り、
図2A~
図2Cのセンサーチップ100は、
図1A~
図1Dを参照しながら説明したセンサーチップ100と同じ特徴を備える。
【0221】
特に、
図2A~
図2Cは、センサーチップ100が設置、結合または取り付けられた状態の検出装置200を示す。検出装置200は、中にセンサーチップ100を軸方向に挿入することができるソケット202を備える。ソケット202は、センサーチップ100の適切な配向および位置決めを確実にするガイド203などである表面特徴203と、また任意に、センサーチップ100が挿入されているか否か、およびセンサーチップ100が適切に配向されているか否かを検知するセンサー(図示せず)を備える。このセンサーは、チップが挿入されていない場合、またはチップが不適切に挿入された場合に、検出装置200を停止することができる。
【0222】
挿入されると、センサーチップ100は、クリック機構204によって、例えばバネによってセンサーチップ100の方に向けて押されるフックによって、定位置に保持される。磁気接続などの機構を、代わりに、または追加的に使用してもよい。
【0223】
検出装置200はさらに、光源205、例えばレーザーダイオードを提供するが、これは装置200が起動中であるときに、特定の波長λexの光、またはある範囲の蛍光励起波長などであるλexをカバーするより広い範囲の波長の光を放射する。光源205は、検出装置200の筐体206に取り付けられ、またセンサーチップ100の光コネクター110または開口部110を通してセンサーチップ100の反応セル101内へと光を放射するように配置される。
【0224】
検出装置200は、受容体タンパク質複合体115と反応セル101内の一以上の生物活性物質との結合によって誘発される状態変化を検出するための一つ以上のセンサー207をさらに提供する。
【0225】
図2A~2Cに示す実施例では、検出装置200は、一つ以上の光センサー207、例えば光センサー207のアレイを含む。これらは、センサーチップ100の光透過部103または検出窓103の下に配置され、また随意に、特定の波長λ
emの光、またはある範囲の蛍光放射波長などの波長の範囲の光に対して透過性の材料の層208によって保護される。
【0226】
検出装置200は、少なくとも一つのセンサー207と結合された処理回路209をさらに含むものであり、処理回路209は、反応セル101内の受容体タンパク質複合体115の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成される。
【0227】
処理回路209および/または検出装置200は、プロセッサ、メモリ、データストレージ、通信回路、Bluetooth受信機および/または送信機、または他の電子構成要素を含み得る。
【0228】
検出装置200は、センサーチップ100の少なくとも一部を加熱する加熱素子210をさらに備える。加熱素子210は、センサーチップ100の下方、例えば一つ以上のセンサー207の下方に、または反応セルの温度が制御することができる何らかの他の場所に、位置させることができる。検出装置200はまた、温度制御のための一つ以上の温度センサーを含み得る。
【0229】
検出装置200の筐体内には、チャネル211が形成され、開放格子113が配置されているセンサーチップ100の面に沿って延在する。このチャネル211は、換気孔212または開口212によって周囲環境と連通する。このチャネル211を通る気流は随意に、マイクロ換気装置213などである換気装置213によって駆動され得る。
【0230】
さらに、検出装置200は、オン/オフボタン214、スピーカー215、電池充電用接続216、一つ以上の電池、例えばバックパックのストラップなどに装置を固定する手段217、装置200および/またはセンサーチップ100の状態を示すダイオードのアレイ218のうちの一つ以上を提供する。装置200および/またはセンサーチップ100の状態の通知には、装置200の電池状態、センサーチップ100の反応チャンバー内に存在する水溶液または基体116の導電率、装置200またはセンサーチップ100の使用度、センサーチップ100の残りの寿命、受容体タンパク質複合体115の予測される枯渇、またはその他が含まれるが、これらに限定されない。
【0231】
さらに、検出装置200は、ユーザーインターフェース219、例えば即時かつ現在の空気の質に関する情報を与える小型スクリーン219を備える。加えて他の情報も表示され得る。
【0232】
図1A~
図2Cの検出システム500、検出装置200および/またはセンサーチップ100の動作原理および動作を、以下に要約する。
【0233】
センサーチップ100は、その包装(図示せず)から取り外すことができ、また遮断要素120またはピン120および密封カバー(図示せず)を取り外して、センサーチップ100を起動することができる。ピン120が取り外されると、開口108を経て到達するチャネル109が開放され、貯蔵部102からの水が、半透膜121に、そして最終的に、塩、緩衝液および任意で受容体タンパク質複合体115を安定化するタンパク質および任意で少量の界面活性分子を含む、好ましく凍結乾燥された基体116を含有する反応セル101に、到達することとなる。形成された溶液のオスモル濃度により、反応セル101が完全に充填され、そして浸透圧が反応セル101またはセンサーチップ100の剛性の筐体によって相殺されるまで、貯蔵部102またはブリスター118から反応セル内へと水が引き込まれることとなる。
【0234】
次に、センサーチップ100を検出装置200に挿入し、装置200に存在するクリック機構204で固定することができ、そして装置200を起動することができる。検出装置200内に固定されると、チップ100内に存在する電極122と検出装置200内に配置された対応する接続との間の接触が確立され、そしてチップ100の壁内に存在する光コネクター110または開口部110が、検出装置200の光源205の前に位置決めされる。随意に、加熱素子210を起動することができる。センサーチップ100がその動作状態、例えば反応セル101内の目標のオスモル濃度および目標の最小温度に達すると、換気装置213および光源205が、自動的に、またはユーザーによって、例えば検出装置200に無線で結合され得るユーザー装置上にインストールされたアプリケーションを介してのいずれかで、起動され得る。
【0235】
換気装置213が、周囲空気を収集し、それをセンサーチップ100の開放格子113および気体透過性膜114が配置されているチャネル211を通して押し出す。周囲空気中に存在する分子および生物活性物質は、上記で記載し、
図3A~3Cを参照しながら記載するとおり、膜114を越えて拡散し、センサー応答を誘発することとなる。
【0236】
図3A~3Cはそれぞれ、センサーチップ100の可能な動作原理を示すためのセンサーチップ100の反応セル101の断面図を示す。
【0237】
受容体タンパク質複合体115は、気体透過性膜114に共有結合された低親和性リガンド301によって、気体透過性膜114の内側面上など、反応セルの機能面182上に固定化される。受容体タンパク質複合体115は、反応セル101に入る一以上の生物活性物質に結合するように構成された受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメイン302を含む。受容体タンパク質複合体115は、以下ではフルオロフォアとも呼ばれる少なくとも一つの蛍光標識303と親和性タグ304とをさらに含む。
【0238】
受容体タンパク質複合体115または受容体タンパク質のリガンド結合ドメイン302は、全長受容体タンパク質、または受容体タンパク質の一つもしくはいくつかのドメインのみ、例えばリガンド結合ドメイン302のみ、であり得る。受容体タンパク質複合体115またはリガンド結合ドメイン302は、例えばヒト異種センサー、ホルモン受容体タンパク質、またはアリール炭化水素受容体を含み得る。
【0239】
フルオロフォア303は、例えば、緑色蛍光タンパク質とすることができるが、この場合、受容体タンパク質複合体115は、融合タンパク質、または共有結合した蛍光色素、例えばDAPI(4 ,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)などである。
【0240】
親和性タグ304は、光透過壁103または検出窓103上に存在するコーティングの成分305に対して高い親和性を有する。成分305は、
図1A~1Dを参照しながら記載した分子捕捉複合体117を指すか、または示す。親和性タグ304は、例えばビオチンであり得るが、その場合、反応セル101の光透過壁103または検出窓103上のコーティングは、ストレプトアビジンを含むこととなる。あるいは、親和性タグ304は、ヒスチジンタグであり得、その場合には、反応セル101の光透過壁103上のコーティングは、キレート化ニッケルイオンを含むこととなる。
【0241】
受容体タンパク質複合体115の組成は、検出した環境生物活性物質の定められたスペクトルおよび目標とする感度に関してカスタム調整され得る。例えば、複数のフルオロフォア303が単一の受容体タンパク質複合体115中に存在してもよく、すなわち、異なるフルオロフォアおよび/または同じフルオロフォアのいくつかの単位が、同じ受容体タンパク質複合体115に連結されてもよい。さらに、二以上の種類の受容体タンパク質複合体115を、所与のセンサーチップ100内に存在させることができる。例えば、異なる受容体タンパク質および/もしくは同じ受容体タンパク質の異なるドメイン、ならびに/または、例えば異なるフルオロフォアを担持するなど、異なる組み換え特性の受容体タンパク質、および/または異なる組成の受容体タンパク質複合体を、使用してもよい。
【0242】
受容体タンパク質複合体115のリガンドである生物活性物質307または生物活性分子307は、気体透過性膜114を通って拡散することとなり、そして反応セル101内の溶液中に一旦入ると、気体透過性膜114に共有結合された低親和性リガンド301と競合することとなる。この競合的結合は、低親和性リガンド301と生物活性物質307との相対的親和性に依存して、特定の確率で受容体タンパク質複合体115を膜114から遊離させることとなる。
図3Bの遊離した受容体タンパク質複合体308は、反応セル101内で自由に拡散する。
【0243】
検出装置200内に存在する光源205は、波長λ
exのビームまたは好ましくは光のシース309を反応チャンバー内に放射するものであり、λ
exは受容体タンパク質複合体115に存在するフルオロフォア303の励起波長である。光路内に遊離受容体タンパク質複合体308が拡散すると、フルオロフォア303が励起され、
図3Bに示すように波長λ
emの蛍光光を放射する。
【0244】
センサーチップ100の光透過壁103または検出窓103、および随意に光検出器207をセンサーチップ100と隔てている壁208は、波長λemの光に対して透過性である。反応セル101の幾何学形状および光シース309の位置に起因して、フルオロフォア303によって放射された光の約半分は、反応セルを取り囲む光センサー207のシースに到達する(残りの半分は、反応セルの非透過壁の方に向けて、または気体透過性膜の方に向けて進行し、検出されることとならない)。
【0245】
光センサー207の帯域幅によっては、反応セル101内の液体マトリクスまたは基体116中のタンパク質または粒子状不純物によって散乱され得る波長λexの光も、検出信号を誘発する可能性がある。これを避けるために、反応セル101の検出窓103は、波長λexの光に対して不透過性であることが好ましい。
【0246】
拡散による移動はランダムであるため、受容体タンパク質複合体115は、光路内に留まったり、光路から離れて再び光路に入ってきたりする可能性があり、これが経時的にいくつかの信号を与える。センサーチップ100の長時間の動作または大量の曝露の後では、受容体タンパク質複合体115の大部分が気体透過性膜114から遊離し、これがさらなる蛍光の適切な検出を不正確にさせる可能性がある。したがって、反応セル101の光透過壁103または検出窓103は、受容体タンパク質複合体115上の親和性タグ304を高い親和性で結合する分子捕捉複合体117、305でコーティングされているため、受容体タンパク質複合体115用のシンクとして機能する。
【0247】
反応セル101の光透過壁103または検出窓103を除いて、反応セルの全ての内側面を低タンパク質吸着性のコーティングで覆うことができ、反応セル101のこの内側形状を理由に、遊離した受容体タンパク質複合体115の大部分は、最終的に光路を通過し、セル101の光透過部103または検出窓103に到達し、そこでそれらが溶液から除去されることとなる。
【0248】
溶液中の受容体タンパク質複合体115の平均滞留時間またはその半減期などの動作パラメータは、受容体タンパク質複合体115の質量およびサイズ、反応セル内の溶液の粘度、ならびにセル101内の温度に基づいて計算することができる。この平均滞留時間は、複数の励起および放射事象について検出装置200によって報告された検出信号を補正し、それによって検出装置200の感度および正確性を増大させるために使用され得る。
【0249】
例えば、セル内の溶液中に存在するタンパク質または小さな粒子状不純物で散乱された場合、波長λexの光は、気体透過性膜114または反応セルの検出窓103に存在する固定化された受容体タンパク質複合体115に到達し得るものであるが、これは、生物活性物質307が反応セル101に入ってセル101にわたって拡散したことによって既に遊離された受容体タンパク質複合体115である。この散乱光は、受容体タンパク質複合体115のフルオロフォア303を励起し、そして波長λemの光子の放射を誘発するものであるが、これが光検出器207に到達するので、大気汚染の即時の存在に関連しない信号が生成され得る。したがって、反応セル101の光透過壁103または検出窓103上の、および/または気体透過性膜114上のコーティングは、電子の授受(図示せず)によってフルオロフォア303の蛍光を消光することがわかっている分子を含み得る。散乱光の消光は、こうした直接関係のない励起事象を減少および/または除去し、それによって光散乱に由来するノイズを減少および/または除去することとなる。あるいは、光センサー207によって検出された蛍光強度は、散乱効果に対して補正され得る。例えば、光透過壁103または気体透過性膜114に捕捉された受容体タンパク質に由来する蛍光強度は、それらに到達する経験的に決定された散乱光の量、フルオロフォア303の安定性、および内部に存在することが予想される受容体タンパク質複合体115の量に基づいて予測することができるが、これは、例えば光センサー207によって検出された累積蛍光信号から決定することができる。
【0250】
図4Aは、一以上の生物活性物質を検出するためのセンサーチップ400の斜視図を示す。
図4Bおよび4Cはそれぞれ、
図4Aのセンサーチップ400の断面図を示す。別段の記載がない限り、
図4Aおよび
図4Bのセンサーチップ100は、
図1A~
図3Cのいずれかを参照しながら説明したセンサーチップ100と同様の特徴を備える。
【0251】
図4A~4Cのセンサーチップ400は、円筒形断面の二重層構造である。長方形断面などである他の断面が可能である。この構造体またはセンサーチップ400の外側層は、剛性の開放格子401を備え、これを通して周囲空気が空気チャンバー402を通過して入ってくることができる。空気チャンバー402は、上述の空気チャネル211と機能的に類似している。
【0252】
センサーチップ400の構造体の内側層は、それを通して空気チャンバー402内の空気中に存在する成分が気体透過性膜404に到達し得る、開放格子403を備える。内側開放格子403および気体透過性膜404は、上述の開放格子113および気体透過性膜114と機能的に類似している。
【0253】
気体透過性膜404によって形成されるシリンダー内に閉じ込められた容積が、センサーチップ400の反応セル405を画定する。これは、上述の反応セル101と機能的に類似している。
【0254】
上述のセンサーチップ100の例示的な実施形態と同様に、気体透過性膜404の内側面は、固定化された受容体タンパク質複合体(
図4A~4Cには図示せず)で覆われる。
【0255】
反応セル405内に、一つまたは二つまたは多数の光学ガイド406が配置される。これらは、ファイバーの形態で、または平面の光学ガイドもしくは任意の他の適切な形状の形態で存在し得る。
【0256】
光学ガイド406は、受容体タンパク質複合体115の一またはいくつかの構成要素を高親和性で結合することがわかっている共有結合した分子捕捉複合体で覆われ得る(
図4には図示せず)。気体透過性膜404と光学ガイド406の表面との間の距離は、0.1mm以下の範囲であることが好ましい。
【0257】
分子または分子複合体の化学的性質、生物学的起源、ならびに光学ガイド406上での固定化の手段は、前述の図を参照しながら記載した反応セル101の光透過壁103に共有結合した分子または分子複合体117について記載されるものと類似している。
【0258】
あるいは、固定化した受容体タンパク質および高親和性複合体の配置は、反転してもよく、すなわち、受容体タンパク質が、光学ガイド406上に固定化され得、かつ高親和性複合体が、気体透過性膜404上に固定され得る。
【0259】
好ましくは、固定化した分子または分子複合体の吸収スペクトルおよび他の光学特性、ならびに共有結合の吸収スペクトルは、受容体タンパク質複合体115の吸収スペクトルまたは他の光学特性と重複しないか、または限定される程度にだけ重複する。
【0260】
センサーチップの一方の端部407は、上述の水貯蔵部102と機能的に類似した水貯蔵部408を備える。水貯蔵部408の反応セル405への接続および水貯蔵部408の動作原理は、上述のものと同一であり得る。遮断要素409または取り外し可能なピン409が、貯蔵部408内に配置されるまたは貯蔵部408を画定する可撓性ブリスター410を、反応セル405の凍結乾燥された内容物(図示せず)から封止することができる。半透膜411は、反応セル405内に存在する基体が、一旦ピン409が取り外されたブリスター410内の水と自由に混ざることから隔てる。
【0261】
さらに、センサーチップ400の該端部は、例えば光学ミラーである反射素子、または単一の光学ガイド406を通過する光を反射することができ、かつ/もしくは二つの光学ガイド406の対を接続する光学ガイド412を提供し得る。
【0262】
センサーチップ400のもう一方の端部は、チップ400の反応セル405内に配置される光学ガイド406と整列し、かつ該光学ガイド406の延長を形成する、一つまたは二つまたは多数の光コネクター414または開口部414を有する構造体413または部品413を備える。
【0263】
さらに、センサーチップ400の構造体413または部品413の一部分は、その中に挿入されたときにチップ400を検出装置に電気的に接続する電気的な接点またはコネクター415を備える。これら接点415は、上述の電気接点122と機能的に類似している。
【0264】
動作中、すなわち、起動状態の検出装置に取り付けられている場合、検出装置の光学系によって、例えば一つ以上の光源によって放射される光416は、チップ400の一方の端部からチップ400のもう一方の端部まで、チップ400の長手方向軸に沿って反応セル405内の端から端にわたる光学ガイド406を通って長軸方向に通過する。光は、反射素子412または光学構造412によって反射または偏向されて、
図4Bの参照符号417によって示されるように、センサーチップ400の端部または部分413の方に向けて光学ガイド406を通って戻るように進行し、最終的に検出装置の光学系の方に向けてチップ400を去る。
【0265】
図5は、一以上の生物活性物質を検出するための検出システム500の断面図を示す。特に、
図5は、検出装置550と該検出装置550に挿入されたセンサーチップ400とを有する検出システム500を示す。別段の記載がない限り、
図5のセンサーチップ400は、
図1A~
図4Cを参照しながら説明したセンサーチップ100、400と同じ特徴を備える。同様に、
図5の検出装置550は、
図2A~4Cを参照しながら説明した検出装置200と同じ特徴を備える。
【0266】
図5は、検出装置550の中に挿入されたセンサーチップ400を示す。センサーチップ400の一方の端部を形成する構造体413は、検出装置550に差し込まれ、そして装置550内に配置される電子接続および光学接続との接触を確立する。具体的には、センサーチップ400内に存在する光学ガイド406は、光コネクター414または開口部414を介して、検出装置550内に配置される光学系503に接続する。光学系503は、一つまたはいくつかの光源504と、光センサー505などである一つまたはいくつかの光検出器505とを備える。
【0267】
装置550に存在するソケットおよびチップ400の端部構造は、上述のように、装置550内のチップ400の適切な配向を確実にする相補的なガイド(図示せず)を提供する。ソケット内でのチップ400の固定は、例えば、クリックイン機構、磁気接続、または螺子による締付けによって達成することができる。
【0268】
さらに、装置550は、前述の図を参照しながら説明したように、電池、マイクロプロセッサ、および可能性のある他の電子構成要素を備える。
【0269】
周囲空気が、センサーチップ400の剛性の開放格子401を通って受動的に空気チャンバー402に入る。駆動力は、センサーチップ400に対して相対的な周囲空気の移動および/またはブラウン運動であり得る。
【0270】
あるいは、装置550のソケットは、完全なセンサーチップ400と長さが同じもの、またはセンサーチップよりも長さが長いものであり得る。この場合、チップ400は装置550内に完全に挿入されて、装置550が、周囲空気をサンプリングし、それをセンサーチップ500の空気チャンバー402に供給するための換気装置などの追加的な特徴を備えてもよい。
【0271】
ダイオード、スクリーン、または装置を衣服、自転車もしくはバックパックのストラップに固定するための手段など、装置550の表面上に存在する特徴は、
図2A~2Cを参照しながら説明するものと類似している。
【0272】
図6は、
図4A~5のセンサーチップ400のあり得る動作原理を説明するセンサーチップ400の反応セル405の断面図を示す。
【0273】
図1A~3Cを参照しながら記載した実施例と同様に、受容体タンパク質複合体115は、使用される受容体タンパク質複合体115のリガンド結合ドメイン302の低親和性リガンドであることがわかっている共有結合した分子301に結合することによって、気体透過性膜404に固定化される。
【0274】
受容体タンパク質複合体115は、受容体タンパク質の少なくともリガンド結合ドメイン302からなる。任意に、親和性タグ304などのさらなる構成要素が存在する。生物学的起源または組換え特性など受容体タンパク質複合体115の構成要素の特徴は、前述の図を参照しながら上記で説明した通りである。
【0275】
空気チャンバー402内に存在する環境分子または生物活性物質307は、開放格子403および気体透過性膜404を通って拡散し、そして反応セル405に入る。
【0276】
生物活性物質307は、一旦反応セル405内に入ると、受容体タンパク質複合体115のリガンド結合ドメイン302での結合が競合し、そして最終的に膜404から受容体タンパク質複合体115を遊離させる。
【0277】
遊離した受容体タンパク質複合体308は、反応セル405内で自由に移動し、そして最終的にその中心に存在する光学ガイド406に到達することとなり、また光学ガイド406の表面に存在する分子または分子捕捉複合体117に結合することとなる。この結合が、反応セル405内に存在する基体または液体マトリクスと光学ガイド406の表面との間の境界層の特性を変化させることとなる。
【0278】
光学ガイド406を通過する光611は、光学ガイド406に完全に拘束されるのではなく、反応セル405内に存在する基体または液体マトリクス中にある程度透過して、光学ガイド406のすぐ周辺と相互作用するエバネッセント場を形成することとなる。
【0279】
例えば、検出装置550または一つ以上のセンサー505で、エバネッセント場の吸収を測定することができる。検出装置内に存在する光源は、例えば波長λemの狭い範囲などである特定のスペクトルの光を放射する。受容体タンパク質複合体115の一つ以上の構成要素の吸収スペクトルは、波長λabsで最大値を示す。λabs≒λemならば、光学ガイド406の表面近傍にある受容体タンパク質複合体115の存在が、センサー装置550内の光センサー505に到達する光強度の減少をもたらす。光強度のこの減少は、定量化することができる。この単位時間当たりの減少が、単位時間当たりの光学ガイド406に結合する受容体タンパク質複合体115の数に関する直接的な尺度を提供するものであり、これは同様に、反応セル405に入る生物活性物質307の量と、それ故の周囲空気中のそれらの濃度と相関する。代替的な実施形態として、例えば、エバネッセント場による、導波路結合、表面プラズモン共鳴、または受容体タンパク質複合体115の構成要素の蛍光励起が採用され得る。
【0280】
あるいは、検出原理が逆であってもよい。受容体タンパク質複合体115は、光学ガイド406上に固定され得、そして周囲環境から反応セル405に進入した生物活性物質が結合することに伴って光学ガイドから遊離される。受容体タンパク質複合体115に対するリガンドの存在により、この実施形態では、複合体115とエバネッセント場との間の相互作用が減少する。例えば、周囲環境において受容体タンパク質複合体115に対するリガンドが存在することにより、エバネッセント光の吸収が減少し、したがって検出装置550内の光検出器505に到達する光強度が増加することとなる。
【0281】
センサーチップ400で用いられる可能性があるさらに別の検出原理は、受容体タンパク質複合体の堆積および/または遊離の圧電検出に依存する。この作動原理は、
図6を参照しながら記載したものと同一であり得るが、受容面での遊離受容体タンパク質複合体115の高親和性リガンドへの結合の検出は、表面の光学特性の変化の代わりに、表面に結合した物質の質量を決定することによって達成される。
【0282】
こうした実施形態では、光学ガイド406は、その表面に高い感度で吸着した質量の変化を検出することができる一つ以上の圧電素子で置き換えることができる。それによって、少なくとも一つの圧電素子が、反応セル405の中心に存在してもよく、または反応セルの壁のうちの一つもしくはいくつかを含んでもよい。
【0283】
あるいは、ピエゾ系のセンサーチップは、逆の原理に依存してもよい。受容体タンパク質複合体115を、圧電素子上に固定化することができ、そして反応セル405に進入した生物活性物質と結合すると、そこから遊離する。結果は、圧電素子に結合した質量の減少を検出することとなる。
【0284】
圧電素子によって環境的な作用物質を検出するセンサーを記載してきたが、本明細書で提案する解決策は、以下のとおり相当に高い感度を提供する。当技術分野で説明されるピエゾ系のセンサーは、例えば圧電素子の表面に固定化された受容体タンパク質への環境的な作用物質の結合によってもたらされる質量増加を測定することに依存する。対照的に、本明細書に記載の間接的な検出方法は、完全な受容体タンパク質複合体115の結合に依存する。これらは通常、質量が桁違いに大きいので、圧電素子によってより効率的に検出することができる。
【0285】
以下では、センサーチップの例示的な材料が記載されているが、これに限定されるものと解釈されない。気体透過性膜を含む反応セルの内側面は、(水溶性)タンパク質に対して非吸収性である材料でコーティングまたは製造されてもよい。例としては、テフロンなどのフッ素重合体、または高疎水性コーティングが挙げられる。あるいは、オボアルブミンまたはウシ血清アルブミンなどのタンパク質での表面予備コーティングを提供することができる。光源が放射した光がそこを通って反応セルに入るものである開口部は、少なくとも波長λexの光に対して透過性であり得る。
【0286】
気体透過性膜に好適な材料としては、例えば、フッ素重合体、多孔質PET膜、炭素紙、好ましくは疎水性コーティングを伴うもの、および多孔質シリコン-PDMS膜から製造された、ミクロンサイズの穿孔を有する疎水性膜を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0287】
反応セルの検出窓または光透過壁の材料は、波長λemの光に対して透過性であり得、また好ましくは波長λexの光に対して不透過性である。対応する材料は、光分光機器での用途で公知であり、反応セルで使用されるフルオロフォアに対して特異的である。反応セルの検出窓または光透過壁の材料は、中性pHの塩水溶液に対してさらに耐性があり得る。追加的な分光学的特性を有するこうした材料が利用できない場合には、コーティングされたまたは二重層状の壁を使用することができる。コーティング層または保護層は、波長λemの最小の光に対して透過性であり得る。検出窓の堅牢性を高めるために、サンドイッチ構造を使用することができ、すなわち波長λemの光に対して透過性であるが、波長λexに対して不透過性の材料を、例えば、少なくとも波長λemの光に対して透過性である二層の堅牢な材料の間に配置させることができる。あるいは、少なくとも波長λemの光に対して透過性である堅牢な材料を、波長λemの光に対しては透過性であるが波長λexの光に対しては透過性でない好適なコーティングにより被覆させることができる。
【0288】
検出装置の光学システムは、上述の通り、λexまたはλabsの範囲内の狭い帯域幅の波長の光を好ましく放射する光源を含み得、また反応セルの壁の開口部が、少なくともこの波長の範囲の光に対して透過性であり得る。あるいは光源は、広範囲の波長の光を放射することができ、その場合には、反応セルの壁の開口部は、好ましくは、λexまたはλabsのみの範囲内の狭い帯域幅の光に対して透過性である。
【0289】
光学ガイドについては、材料は、エバネッセント場の強度を最適化するために、反応セル内部の基体または液体マトリクスと比較して好適な屈折率のものであるべきである。正確な数値は、使用される波長に依存し、これは同様に受容体タンパク質複合体の吸収スペクトルに依存する。
【0290】
検出装置に関して、光センサーなどのセンサーを覆い、かつ保護する一つ以上の層が使用されてもよい。要件および技術的解決策法は、本明細書で上記した光透過壁または検出窓について記載されるものと同一である。
【0291】
以下に、検出装置およびセンサーチップの例示的かつ非限定的な寸法を要約する。
【0292】
静止使用での装置の場合、検出装置は、最大約1000cm3の体積を有し得る。そのセンサーチップは、長さがおよそ1~10cm、幅が5~10cm、および厚さが2~3cmであり得、また反応セルは、好ましくは0.5mm未満の拡散距離を有し得る。
【0293】
携帯可能な検出装置の場合、検出装置は、最大約200cm3の体積を有し得る。そのセンサーチップは、長さがおよそ1~5cm、幅が0.5~1cm、および厚さが0.5~1cmであり得、また反応セルは、好ましくは0.5mm未満の拡散距離を有し得る。
【0294】
図7は、例えば、前述の図を参照しながら説明した検出システム、検出装置および/またはセンサーチップを使用して、周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出する方法を示すフローチャートを示す。
【0295】
ステップS1において、一以上の生物活性物質が、センサーチップ100の膜114を通過してセンサーチップ100の反応セル101の中へ入る。
【0296】
ステップS2において、一以上の生物活性物質が、一以上の受容体タンパク質複合体115に結合し、それによって受容体タンパク質複合体115の少なくとも一部の状態変化が誘発される。
【0297】
ステップS3において、受容体タンパク質複合体115の少なくとも一部の誘発された状態変化を検出する。
【0298】
ステップS4において、受容体タンパク質複合体115の少なくとも一部の決定された状態変化に基づいて、周囲媒体中の一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号が生成される。
【0299】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的において、別途示されていない限り、量(amounts)、数量(quantities)、割合などを表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。また、全ての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつその中のあらゆる中間の範囲を含むものであり、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合も、列挙されていない場合もある。したがって、この文脈では、数AはAのA±20%として理解される。この文脈内において、数Aは、数Aが変化する特性の測定値に対する通常の標準誤差内にある数値を含むと考えられてもよい。数Aは、添付の特許請求の範囲で使用されるような一部の事例において、それによってAが逸脱する量が本願発明の基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさないという条件で、上記に列挙される割合だけ逸脱してもよい。また、全ての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつその中のあらゆる中間の範囲を含むものであり、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合も、列挙されていない場合もある。
【0300】
本発明は、図面および上記の説明で詳細に例示および説明されているが、そのような例示および説明は、例示的または代表的であり、限定するものではなく、本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、当業者および本願発明の実施によって、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から理解され、かつ達成され得る。
【0301】
特許請求の範囲において、「含む、備える(comprising)」という文言は、他の要素またはステップを除外するものではなく、また不定冠詞「a」もしくは「an」は、複数であることを除外するものではない。特定の尺度が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの尺度の組み合わせが有利に使用されることができないことを示唆するものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定していると解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に動作可能に結合可能なセンサーチップであって、
前記周囲媒体が環境空気を含み、前記センサーチップが、
複数の受容体タンパク質複合体を含有する反応セルと、
前記反応セルを前記周囲媒体から分離し、また前記一以上の生物活性物質に対して透過性である膜と、を備えるものであり、
前記受容体タンパク質複合体は、前記反応セル内の前記一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって該受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになるものであり、また
前記センサーチップは、前記一以上の生物活性物質を検出するための前記検出装置
のソケットに少なくとも部分的に取り外し可能に挿入
可能であるような形状およびサイズに構成される、センサーチップ。
【請求項2】
前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の前記検出可能な一以上の状態変化は、前記周囲媒体中の前記一以上の生物活性物質の存在の示唆である、請求項1に記載のセンサーチップ。
【請求項3】
前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化が、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部のコンホメーションの状態の変化、前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の局在性の変化、前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の位置の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の組成の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の質量の変化、前記反応セルの少なくとも一部の質量の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の物理的特性の変化、前記反応セルの少なくとも一部の物理的特性の変化、前記反応セルの少なくとも一部の光学特性の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の化学的特性の変化、前記反応セル内に含有される基体の化学的特性の変化、前記反応セル内に含まれる基体の導電率の変化、前記反応セルの少なくとも一部内の遊離蛍光分子または光吸収分子の濃度の変化のうちの一つ以上と関連している、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項4】
前記受容体タンパク質複合体は、前記一以上の生物活性物質への結合に伴って、前記反応セル内での位置が変化するように構成される、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項5】
前記周囲媒体は、
水を含む、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項6】
前記膜は、気体に対して透過性であり、および/または
前記膜は、水または水性液体に対して不透過性である、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項7】
前記センサーチップを前記検出装置に動作可能に結合するための一つ以上のコネクターをさらに含む、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項8】
前記反応セル内に少なくとも部分的に配置され、前記反応セル内の基体または組成物の導電率を決定するように構成される、一つ以上の電極をさらに含む、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項9】
前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一つの構成要素によって放射および/または散乱される電磁放射に対して半透明である少なくとも一つの検出窓をさらに含む、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項10】
前記反応セルと流体的に連結可能な少なくとも一つの貯蔵部をさらに含むものであり、前記少なくとも一つの貯蔵部は、脱イオン水を前記反応セルに供給するように構成される、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項11】
前記受容体タンパク質複合体は、前記受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインであって一以上の生物活性物質に結合するよう構成されて前記生物活性物質のうちの一つへの結合に伴ってコンホメーションが変化するよう構成された受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれ含む、請求項1
に記載のセンサーチップ。
【請求項12】
前記受容体タンパク質が、異種センサータンパク質(xenosensor protein)またはホルモン受容体タンパク質である、請求項1のセンサーチップ。
【請求項13】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための、請求項1
に記載の少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合することができる検出装置であって、
前記周囲媒体が環境空気を含み、前記検出装置が、
前記少なくとも一つのセンサーチップを少なくとも部分的に受容する少なくとも一つのソケット、
前記少なくとも一つのセンサーチップの
反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された少なくとも一つのセンサーを備えるものであり、該状態変化は、前記センサーチップの膜を通して前記周囲媒体から前記センサーチップの前記反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発され、また
前記少なくとも一つのセンサーと結合された処理回路を備えるものであり、該処理回路は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、前記周囲媒体中の前記一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成されるものである、検出装置。
【請求項14】
前記検出信号が、前記周囲媒体の体積当たりの一以上の生物活性物質の量、前記周囲媒体の体積当たりの生物活性物質の質量、前記周囲媒体中の生物活性物質の濃度、前記周囲媒体の受容体タンパク質の活性化能、および前記周囲媒体の生物活性を示す、請求項
13に記載の検出装置。
【請求項15】
周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出システムであって、該検出システムが、
請求項1から
12のいずれか一項に記載の少なくとも一つのセンサーチップと、
請求項
13および
14のいずれか一項に記載の検出装置と、を備える、検出システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0301
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0301】
特許請求の範囲において、「含む、備える(comprising)」という文言は、他の要素またはステップを除外するものではなく、また不定冠詞「a」もしくは「an」は、複数であることを除外するものではない。特定の尺度が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの尺度の組み合わせが有利に使用されることができないことを示唆するものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定していると解釈されるべきではない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出装置に動作可能に結合可能なセンサーチップであって、前記センサーチップが、
複数の受容体タンパク質複合体を含有する反応セルと、
前記反応セルを前記周囲媒体から分離し、また前記一以上の生物活性物質に対して透過性である膜と、を備えるものであり、
前記受容体タンパク質複合体は、前記反応セル内の前記一以上の生物活性物質に結合するように構成され、それによって該受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の検出可能な状態変化が誘発されるようになるものであり、また
前記センサーチップは、前記一以上の生物活性物質を検出するための前記検出装置に少なくとも部分的に取り外し可能に挿入される、センサーチップ。
〔2〕前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の前記検出可能な一以上の状態変化は、前記周囲媒体中の前記一以上の生物活性物質の存在の示唆である、前記〔1〕に記載のセンサーチップ。
〔3〕前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化が、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部のコンホメーションの状態の変化、前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の局在性の変化、前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の位置の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の組成の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の質量の変化、前記反応セルの少なくとも一部の質量の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の物理的特性の変化、前記反応セルの少なくとも一部の物理的特性の変化、前記反応セルの少なくとも一部の光学特性の変化、前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の化学的特性の変化、前記反応セル内に含有される基体の化学的特性の変化、前記反応セル内に含まれる基体の導電率の変化、前記反応セルの少なくとも一部内の遊離蛍光分子または光吸収分子の濃度の変化のうちの一つ以上と関連している、前記〔1〕から〔2〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔4〕前記受容体タンパク質複合体は、前記一以上の生物活性物質への結合に伴って、前記反応セル内での位置が変化するように構成される、前記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔5〕前記周囲媒体は、環境空気および水の少なくとも一方を含む、前記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔6〕前記膜は、気体に対して透過性であり、および/または
前記膜は、水または水性液体に対して不透過性である、前記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔7〕前記センサーチップが、前記検出装置内に少なくとも部分的に挿入される形状およびサイズで構成される、前記〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔8〕前記センサーチップを前記検出装置に動作可能に結合するための一つ以上のコネクターをさらに含む、前記〔1〕から〔7〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔9〕前記反応セル内に少なくとも部分的に配置され、前記反応セル内の基体または組成物の導電率を決定するように構成される、一つ以上の電極をさらに含む、前記〔1〕から〔8〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔10〕前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一つの構成要素によって放射および/または散乱される電磁放射に対して半透明である少なくとも一つの検出窓をさらに含む、前記〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔11〕前記反応セルと流体的に連結可能な少なくとも一つの貯蔵部をさらに含むものであり、前記少なくとも一つの貯蔵部は、脱イオン水を前記反応セルに供給するように構成される、前記〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔12〕前記受容体タンパク質複合体は、前記受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインであって一以上の生物活性物質に結合するよう構成されて前記生物活性物質のうちの一つへの結合に伴ってコンホメーションが変化するよう構成された受容体タンパク質の少なくとも一つのリガンド結合ドメインをそれぞれ含む、前記〔1〕から〔11〕のいずれか一項に記載のセンサーチップ。
〔13〕周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための、前記〔1〕から〔12〕のいずれか一項に記載の少なくとも一つのセンサーチップに動作可能に結合することができる検出装置であって、前記検出装置が、
前記少なくとも一つのセンサーチップの前記反応セル内の前記受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定するように構成された少なくとも一つのセンサーを備えるものであり、該状態変化は、前記センサーチップの膜を通して前記周囲媒体から前記センサーチップの前記反応セル内に入る一以上の生物活性物質との一つ以上の受容体タンパク質複合体の結合によって誘発され、また
前記少なくとも一つのセンサーと結合された処理回路を備えるものであり、該処理回路は、受容体タンパク質複合体の少なくとも一部の状態変化を決定することに基づいて、前記周囲媒体中の前記一以上の生物活性物質の存在を示唆する検出信号を提供するように構成されるものである、検出装置。
〔14〕前記検出信号が、前記周囲媒体の体積当たりの一以上の生物活性物質の量、前記周囲媒体の体積当たりの生物活性物質の質量、前記周囲媒体中の生物活性物質の濃度、前記周囲媒体の受容体タンパク質の活性化能、および前記周囲媒体の生物活性を示す、前記〔13〕に記載の検出装置。
〔15〕周囲媒体中の一以上の生物活性物質を検出するための検出システムであって、該検出システムが、
前記〔1〕から〔12〕のいずれか一項に記載の少なくとも一つのセンサーチップと、
前記〔13〕および〔14〕のいずれか一項に記載の検出装置と、を備える、検出システム。
【国際調査報告】