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特表2024-542938高強度ブリキを製造するための方法およびそれにより製造されたブリキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】高強度ブリキを製造するための方法およびそれにより製造されたブリキ
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20241112BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20241112BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20241112BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241112BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20241112BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20241112BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C21D9/46 H
B21B3/00 A
B21B1/22 M
B21B1/22 K
C22C38/00 301T
C22C38/50
C23C28/00 A
B32B15/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522265
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078565
(87)【国際公開番号】W WO2023062153
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202573.8
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21204747.6
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500252006
【氏名又は名称】タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL IJMUIDEN BV
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、アントニー、ハンブレ
【テーマコード(参考)】
4E002
4F100
4K037
4K044
【Fターム(参考)】
4E002AD04
4E002AD05
4E002BC05
4E002BD09
4E002CA04
4F100AB03A
4F100AB10A
4F100AB11A
4F100AB12A
4F100AB13A
4F100AB14A
4F100AB16A
4F100AB17A
4F100AB21B
4F100AK01C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA41C
4F100BA41D
4F100CB00D
4F100DA03
4F100DA05
4F100DA11
4F100EC18D
4F100EH71B
4F100EJ17A
4F100EJ42A
4F100JA11A
4F100JB16C
4F100JK01
4F100JK07A
4F100JL11D
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4K037EA01
4K037EA05
4K037EA11
4K037EA13
4K037EA15
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EA32
4K037EC02
4K037FA05
4K037FG03
4K037FH01
4K037FH03
4K037FM02
4K037GA05
4K037JA06
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA21
4K044BB01
4K044BB03
4K044BC07
4K044BC11
4K044CA18
4K044CA31
(57)【要約】
本発明は、高強度3ピース鋼缶胴体を製造するための方法およびそれにより製造された缶に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EN10002-1-2001 Eに従って測定される435MPa~700MPaの下降伏応力(ReL)を有するとともに、3ピース缶胴体用の改善されたH-グレイン溶接性を有し、H-グレイン溶接範囲が少なくとも300Aである、高強度ブリキを製造するための方法であって、以下のステップ:
・重量%で、
C:0.045~0.095;
Mn:0.250~0.475;
Si:0~0.030
Al_sol:0.005~0.025;
N:0.0070~0.0140;
S:0~0.020;
P:0~0.020;
任意選択で、
Cr:0~0.100;
Cu:0~0.100;
Ni:0~0.100;
Ti:0~0.010;
Nb:0~0.010;
V:0~0.010;
のうちの1以上;
残部:鉄および製鋼プロセスから生じる不可避的不純物;
を含む、BOF-製鋼プロセスにより製造された鋼スラブの熱間圧延によって、熱間圧延ストリップを製造するステップ;
・その後、熱間圧延ストリップを第1の冷間圧延によって中間厚さにするステップであって、第1の冷間圧延の圧下率が85%~91%であり、冷間圧延ストリップを次いで連続アニーリングまたはバッチ式アニーリングによる再結晶化アニーリングに供して、完全再結晶化アニーリングされたストリップを製造するステップ;
・その後、完全再結晶化アニーリングされたストリップを第2の冷間圧延によって最終厚さにするステップであって、第2の冷間圧延の圧下率が2%~17%であるステップ;
・その後、アニーリングされたストリップの片面または両面を電気スズめっきして、ブリキを製造するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
鋼スラブが、
Cr:0~0.030;
Cu:0~0.040;
Ni:0~0.060;
Ti:0~0.004;
Nb:0~0.004;
V:0~0.004;
Ni+Cu+Cr+Mo+Sn+Nb+Ti+V:0~0.100;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱間圧延ストリップが、最大0.045mm、好ましくは最大0.040mm、より好ましくは最大0.035mmのクラウン値C40を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
鋼スラブが、
Si:0~0.020、および/または、
Ti:0~0.002、および/または、
Nb:0~0.002
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ブリキ上のスズの量が、最大5.0g/m、好ましくは最大4.5g/m、より好ましくは最大4.0g/mである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ブリキ上のスズの量が、少なくとも1.5g/m、好ましくは少なくとも2.0g/m、より好ましくは少なくとも2.5g/m、より一層好ましくは少なくとも2.8g/mである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性ポリマーラミネート層が、ラミネートを形成するようにブリキの片面または両面に形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーラミネート層が、直接押出しおよびインライン式ラミネート加工を使用して、または、1もしくは複数の熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキに結合するための接着層を使用するフィルムラミネート加工によって、または、1もしくは複数の熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキに結合するための熱結合を使用するフィルムラミネート加工によって、ブリキの片面または両面に形成され、好ましくは、複数の熱可塑性ポリマーラミネート層が、ブリキの細長いストリップがラミネートされないまま残存するように、ブリキの片面または両面に形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ラミネートされないまま残存する細長いストリップに沿って前記ラミネートを分割することにより、前記ラミネートが、圧延方向に平行な方向のいずれかの側にラミネートされていない端部を有する幅cの細いラミネートストリップに分割される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
3ピース缶胴体が、ブリキまたはラミネートから長方形の胴体ブランクを切断することによって、ブリキまたはラミネートから製造可能であり、缶胴体の周部を形成することになる長方形の胴体ブランクの側部cが、冷間圧延ストリップの圧延方向に垂直であり、缶胴体を閉鎖するための溶接が行われることになる側部wが、ブリキまたはラミネートの圧延方向に平行である(H-グレイン)、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
3ピース缶胴体が、ブリキまたはラミネートから長方形の胴体ブランクを切断することによって、ブリキまたはラミネートから製造可能であり、缶胴体の周部を形成することになる長方形の胴体ブランクの側部cが、冷間圧延ストリップの圧延方向に平行であり、缶胴体を閉鎖するための溶接が行われることになる側部wが、ブリキまたはラミネートの圧延方向に垂直である(C-グレイン)、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
435MPa~700MPaの下降伏応力(ReL)を有するとともに、3ピース缶胴体用の改善されたH-グレイン溶接性を有する高強度ブリキであって、
重量%で、
C:0.045~0.095;
Mn:0.250~0.475;
Si:0~0.030
Al_sol:0.005~0.025;
N:0.0070~0.0140;
S:0~0.020;
P:0~0.020
任意選択で、
Cr:0~0.100;
Cu:0~0.100;
Ni:0~0.100;
Ti:0~0.010;
Nb:0~0.010;
V:0~0.010;
のうちの1以上;
残部:鉄および不可避的不純物
を含み、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により製造された高強度ブリキ。
【請求項13】
Cr:0~0.030;
Cu:0~0.040;
Ni:0~0.060;
Ti:0~0.004;
Nb:0~0.004;
V:0~0.004;
Ni+Cu+Cr+Mo+Sn+Nb+Ti+V:0~0.100
を含む、請求項12に記載の高強度ブリキ。
【請求項14】
少なくとも350A、好ましくは少なくとも400AのH-グレイン溶接範囲を有する、請求項12または13に記載の高強度ブリキ。
【請求項15】
少なくとも8.0%のH-グレインフランジ加工能を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の高強度ブリキまたはラミネート。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載のブリキまたはラミネートから製造された3ピース缶用の胴体ブランク。
【請求項17】
請求項11に記載の方法により製造された長方形の胴体ブランクから製造された3ピース缶胴体であって、胴体ブランクが円筒または任意のその他の好適な形状に成形され、溶接されて、開放端を有する閉鎖胴体が形成され、缶胴体を閉鎖する溶接シームがラミネートされたブリキの圧延方向に平行である、3ピース缶胴体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度ブリキを製造するための方法およびそれにより製造されたブリキに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、製造される缶のほとんどは、2つのタイプ:底蓋、通常は多かれ少なかれ円筒状である胴体、および天蓋の3つの構成要素からなる3ピース缶;ならびに、底蓋と一体化された胴体、および天蓋の2つの構成要素からなる2ピース缶、のうちの1つである。
【0003】
ダブルシーミングと呼ばれる技法は、通常、缶胴体を缶の蓋(天蓋および底蓋)に取り付けるために使用され、その後、缶の中身は、外部汚染から保護される。3ピース缶の胴体は、巻かれて(円筒状の)胴体となる長方形のシートで形成され、端部同士は、はんだ付けまたは溶接によって接合される。溶接された缶は、市場の大部分を占める一方、はんだ付けされた缶は、市場からほとんどすべてが消えつつある。
【0004】
ブリキは、腐食から鋼板を保護するために、工業用の純粋なスズで両面がコーティングされた、ライトゲージの冷間圧延低炭素鋼のシートまたはストリップであり、主に包装産業で使用されるものである。スズ層は、通常、電気分解により、通常、連続製造ラインで堆積される。
【0005】
ブリキ用の鋼基材は、SR(single reduced)ストリップとして、および、DR(double reduced)ストリップとして製造される(図1参照)。SRストリップは、最終ゲージに直接冷間圧延された後、アニーリングされ、スズめっきされる。DR製品には、中間ゲージに到達するように第1の冷間圧延の圧下が与えられた後、アニーリングされ、次いで、第2の冷間圧延の圧下が与えられ、最終ゲージとなる。得られたDR製品は、特定の用途のためのライトゲージ鋼の利用が可能となり得るSR製品よりも、通常、より剛性(stiffer)があり、より硬く(harder)、より強固(stronger)である。
【0006】
ブリキは、鋼の強度および成形性、ならびに、スズの耐腐食性、はんだ付け可能性および良好な外観を、1つの材料で組み合わせる。この広範な記述において、今日、最終使用要件を満たすようにオーダーメイドされた極めて広範な製品が存在する。鋼基材の製造およびその後のスズによるコーティングは、互いに独立しており、鋼の任意の性質の組は、理論的に、任意のスズコーティングと組み合わされ得る。ブリキに使用される鋼の組成は密に制御され、選択されるグレードおよびその処理手法に従い、異なる成形性(「調質度(tempers)」)を有する様々なタイプが製造され得る。ブリキは、約0.10mm~約0.49mmの鋼の厚さで販売される。鋼は、種々の厚さのスズでコーティングされ得る。2つの面上の異なる厚さ(異なるコーティング)が、容器の内面および外面に、様々な条件を満たすように形成され得る。また、様々な表面仕上げ品が、多様な用途のために製造され得る。
【0007】
スズは、僅かな金属光沢を有する白色系コーティングとして堆積される。必要とされる場合、スズは、輝く鏡のような仕上げ品を製造するために誘導加熱または抵抗加熱(またはそれらの組合せ)によって流動溶融(flow-melted)される。この流動溶融プロセスは、不活性スズ-鉄合金層の形成によって製品の耐腐食性を高める。
【0008】
ブリキのストリップから3ピース缶胴体用のブランクを製造する場合、2つの基本的な選択肢:いわゆるC-グレイン(C-grain)ブランクおよびH-グレイン(H-grain)ブランクがある。
【0009】
C-グレインブランクは、溶接されることになるブランクの端部がコイルの幅に平行になるように、ストリップから切断される。H-グレインブランクは、溶接されることになるブランクの端部がコイルの幅に垂直になるように、ストリップから切断される(図2参照)。したがって、C-グレイン缶胴体は、溶接(または溶接方向)が胴体シートの圧延方向に垂直である3ピース溶接缶胴体である。Cは周部(circumferential)を表し、圧延方向は缶胴体の周方向である(図2参照)。H-グレイン缶胴体は、溶接(または溶接方向)が胴体シートの圧延方向に平行である3ピース溶接缶胴体である(図2参照)。Hは高さを表し、圧延方向は缶胴体の高さ方向である。
【0010】
長年、インゴット鋳造鋼では、汚れた粒子が材料中に巻き込まれた(rolled-in)。これら一連の汚れた粒子は、圧延方向に沿って並べられ、したがって溶接に平行な圧延方向で製造された缶胴体(H-グレイン缶)は、材料内の汚れた粒子に起因した割れたフランジというより多くのリスクを被った。この歴史的理由で、3ピース缶のほとんどはC-グレイン缶として製造された(そして依然として製造されている)。今日、C-グレインフォーマットを保持するための別の理由がある。3ピース(食品)缶のほとんどは、再結晶化アニーリングされた冷間圧延鋼ストリップの第2の圧延がさらなる強度をゆする鋼を提供するという理由で、DR材料品質から製造される。圧延方向に対する機械的性質の相違(異方性)は、DR材料に固有のものであり、C-グレイン缶に好ましい。フランジ亀裂のより小さいリスクおよびC-グレイン缶に関するより広い溶接範囲が、C-グレイン缶胴体を使用し続ける主な理由である。溶接範囲(welding range)(溶接許容度(welding latitude)とも呼ばれる)は、冷た過ぎずかつ熱過ぎない溶接で溶接ナゲット(weld nuggets)を形成するのに必要とされる電流(アンペア)で表される。冷た過ぎる溶接は溶接強度を低減させ、熱過ぎると溶融金属が噴出(splashing)するリスクを増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、435MPa~700MPaの引張り強度を有するとともに、改善されたH-グレイン溶接性を有する、即ち3ピース缶本体用の最大溶接範囲を有する高強度ブリキを製造するための方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、435MPa~700MPaの引張り強度を有する、溶接された3ピース缶胴体を製造するための方法を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、435MPa~700MPaの引張り強度を有するとともに、第2の冷間圧延の圧下が低減されたまたは全くない、溶接された3ピース缶胴体を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、435MPa~700MPaの下降伏応力(ReL:lower yield strength)を有するとともに、3ピース缶胴体用の改善されたH-グレイン溶接性を有する高強度ブリキを製造するための方法であって、以下のステップ:
・重量%で、
C:0.045~0.095;
Mn:0.250~0.475;
Si:0~0.030
Al_sol:0.005~0.025;
N:0.0070~0.0140;
S:0~0.020;
P:0~0.020
任意選択で、
Cr:0~0.100;
Cu:0~0.100;
Ni:0~0.100;
Ti:0~0.010;
Nb:0~0.010;
V:0~0.010;
のうちの1以上;
残部:鉄および製鋼プロセスから生じる不可避的不純物
を含む、BOF-製鋼プロセスにより製造された鋼スラブの熱間圧延によって、熱間圧延ストリップを製造するステップ、ここで、熱間圧延ストリップは、好ましくは最大0.045mmのクラウン値C40を有する;
・その後、熱間圧延ストリップを第1の冷間圧延によって中間厚さにするステップであって、第1の冷間圧延の圧下率が85%~91%であり、冷間圧延ストリップを次いで連続アニーリングまたはバッチ式アニーリングによる再結晶化アニーリングに供して、完全再結晶化アニーリングされたストリップを製造するステップ;
・その後、完全再結晶化アニーリングされたストリップを第2の冷間圧延によって最終厚さにするステップであって、第2の冷間圧延の圧下率が2%~17%であるステップ;
・その後、アニーリングされたストリップの片面または両面を電気スズめっきして、ブリキを製造するステップ
を含む、方法によって実現される。
【0015】
以下、本発明は、以下の非限定的な図を使用して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明による冷間圧延プロセスの概略図を示す。第2の冷間圧延の圧下率(DR)が0である場合、下の図は上の図に変わる。コーティングは、スズめっきおよび任意選択でポリマーコーティング等の追加のコーティングを含む。
図2図2は、C-グレインおよびH-グレイン缶胴体の間の主要な相違を示す図である。
図3図3は、本発明により製造されたストリップを示す図であり、ストリップ上には、3ピース缶胴体用のブランクが投影されており、切断後、上の図ではH-グレイン缶胴体の製造が、下の図ではC-グレイン缶胴体の製造が可能である。
図4図4は、3ピース缶胴体における溶接の断面を示す図であり、熱の影響を受けるゾーンと、コーティングのない鋼および溶接を保護するための粉末コーティングまたはラッカー等からなるサイドストライプ(side stripe)とを示す。
図5図5は、スズめっきされた鋼基材をポリマーフィルムで覆うために使用されるフィルムラミネート加工プロセスの概略図を示す。図面は、両面コーティングを示すが、これは片面で実行されてもよい。
図6図6は、スズめっきされた鋼基材をポリマーフィルムで覆うのに使用される直接押出しプロセスの概略図を示す。図面は両面コーティングを示すが、これは片面で実行されてもよい。
図7図7は、剥き出しの端部と、ポリマーコーティングのないゾーンとを示すストリップを示す、ポリマーコーティングされたスズめっき鋼基材の一部の上面図である。コーティングのないゾーンに描かれた線は垂直切断線(vertical cutting lines)を反映し、水平に描かれた線は水平切断線(horizontal drawn lines)を反映し、水平線間の距離は、得られる3ピース缶のブランク高さである。
図8図8は、良好な溶接、金属が溶融されなかった冷間溶接、およびスプラッター(splatter)が生じた熱間溶接の結果を示す図である。
図9図9は、クラウンC40の定義を示す図である。
図10図10は、コーン試験の幾何学的特徴を示す図である。
図11図11は、スズ層が両面に設けられた(鋼基材+スズ層=ブリキ)、および、両面に熱可塑性ポリマーラミネート層が設けられた、鋼基材を含むラミネートの概略的断面(縮尺は合わせていない)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、3ピース缶に所望の強度を与えるために、鋼ストリップの調整された化学組成が必要であることを見出した。プロセスは、厚いまたは薄い鋼スラブを製造することから開始され、そのために、高炉もしくは直接還元プロセスからの銑鉄をベースとするBOF-製鋼プロセスにおいて、または、EAF-製鋼プロセスにおいて、溶鋼が製造される。EAF-製鋼プロセスは一般に、主として溶融スクラップおよび/または直接還元鉄をベースとするプロセスの結果として、ならびに、EAF-製鋼プロセスにおいて鋼を精錬するための選択肢がBOF-製鋼プロセスと比較してより制限されていることに起因して、EAF-製鋼プロセスで製造された鋼には、より多量の不可避的不純物/残留元素が生じる。したがって、BOF-製鋼プロセスは、本発明による鋼を製造する製鋼プロセスとして好ましいが、これに限定されるものではない。
【0018】
当然ながら、BOF-製鋼プロセスにおいてEAF-溶融物を精錬することが可能である。本発明において、EAFおよびBOFの組合せも、BOF製鋼プロセスであると見なされる。
【0019】
製鋼プロセス後、スラブを慣用のホットストリップミルで、または、薄スラブ鋳造および直接圧延ミルで処理して、熱間圧延ストリップに加工する。
【0020】
鋼スラブの化学組成は、個々の元素がそれぞれ請求項に記載される範囲内にある限り、独立して、請求項に記載される範囲で変化させてもよいことに留意されたい。
【0021】
硫黄およびリンは、残留元素であり、有益な元素であるとは見なされない。それらは不可避的不純物と見なされ、したがって、それらの存在は好ましくは制限される。硫黄およびリンの含量はそれぞれ、好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。アルミニウムは、溶鋼から酸素を除去するために脱酸剤として使用される。一部のアルミニウムはアルミナとして鋼中に依然として存在し、残りはAl_solと称され、これは、固溶体中にアルミニウムとして存在し得、例えば、AINとして析出し得る。
【0022】
任意選択の元素Cr、NiおよびCuの最大量は、好ましくはそれぞれ0.075%、より好ましくはそれぞれ0.060%である。不可避的不純物としてのSn、MoおよびBの量は、好ましくはそれぞれ0~0.030%、0~0.020%および0~0.005%である。
【0023】
好ましい実施形態において、BOF-製鋼プロセスにより製造された鋼スラブは、重量%で、
C:0.045~0.095;
Mn:0.250~0.475;
Si:0~0.030
Al_sol:0.005~0.025;
N:0.0070~0.0140;
S:0~0.020;
P:0~0.020;
Cr:0~0.030;
Cu:0~0.040;
Ni:0~0.060;
Ti:0~0.004;
Nb:0~0.004;
V:0~0.004;
Ni+Cu+Cr+Mo+Sn+Nb+Ti+V:0~0.100;
残部:鉄および製鋼プロセスから生じる不可避的不純物;
を含む。
【0024】
銅、ニッケルおよびクロムは、溶融物から除去するのが難しいため、不可避的不純物でもあり、少量では、それらの存在は鋼の性能に悪影響を及ぼさない。スズおよびモリブデンも不可避的不純物であり、それらの存在は鋼の性能に悪影響を及ぼし得るので、それらのレベルは慎重に制御されなければならない。最も重要な残留元素の合計(Ni+Cu+Cr+Mo+Sn+Nb+Ti+V)は0.100%以下に保つことが好ましい。
【0025】
最終ブリキで必要とされるH-グレイン溶接性をもたらすことができるようにするために、熱間圧延ストリップが可能な限り平らであることは非常に重要である。幅方向(over width)における厚さのばらつきは、一緒に溶接されることになる材料の厚さのばらつきに繋がり、溶接効率および缶胴体の溶接品質に関わる。溶接ウインドウ(welding window)が大きい場合、溶接品質および溶接効率は、一緒に溶接されることになる端部同士の広範囲の厚さにわたって最大化され、それは、ストリップの幅方向における厚さのばらつきを理由として、H-グレイン胴体を製造するために特に重要であるが、C-グレイン缶胴体を製造するためにも価値がある。
【0026】
ストリップを熱間圧延する場合、幅方向にわたってクラウンが形成される。クラウンは、中心に最大厚さがあり、端部付近に最小厚さがある厚さの相違である。後続の冷間圧延では、得られる冷間圧延ストリップでの平坦性の欠陥なしに、熱間圧延プロセスで生じるクラウンを変更できないことは、周知の事実である。相対的なクラウンおよびウェッジは、エッジドロップ(edge drop)に起因して端部からある特定の距離で測定される。C40およびW40の場合、この距離は端部から40mmであり、クラウンおよびウェッジは下記の通り計算される。
【0027】
【数1】
【0028】
本発明者らは、熱間圧延ストリップのC40クラウン値は最大0.045mmが好ましいことを見出した。C40は、より好ましくは0.040mm以下であり、より一層好ましくは0.035以下であり、最も好ましくは0.030mm以下である。熱間圧延ストリップにおけるこの低レベルのクラウンは、冷間圧延プロセスにより、幅方向にわたって非常に小さい厚さの差を有するストリップを製造することを可能にし、これは、冷間圧延ストリップから3ピース缶胴体を製造するためのH-グレイン溶接プロセスにとって大きな利益である。なぜなら、一緒に溶接されることになる端部同士の厚さの差が相応に小さくなるためである。鋼の化学と組み合わせることにより、これは、完全な溶接をもたらすため、溶接パラメーターを変化させる必要なしに、より大きい溶接ウインドウを有する溶接プロセスを提供する。ブランクがストリップの端部から切断されるか、または、ストリップの中心部から切断されるかに関係なく、より大きい溶接ウインドウにより、完全な溶接をもたらすことが可能になる。クラウンが0.045mmよりも大きい場合、または、化学的性質が本明細書で上述した範囲内にない場合、溶接ウインドウまたはフランジ加工能は、厚さの差を取り扱うのに不十分になる可能性があり、その結果、低温過ぎるまたは高温過ぎる溶接で溶接ナゲットの形成がもたらされる。
【0029】
熱間圧延ストリップにおける低いクラウンC40値が実現されると、ホットストリップミルに問題が生じる。なぜなら、高いクラウンは、ホットストリップミルを助けるからである。熱間圧延ストリップにおける所望のクラウン値は、クラウンが所望の最小値である0.045mmに達するまで、端部を切り取ることによって実現されてもよいことに留意すべきである。この切断された熱間圧延ストリップは、その後、本発明による冷間圧延ストリップに加工されてもよい。経済的には、これは魅力的ではない。なぜなら、既にある程度の加工を受けた材料の損失をもたらすからである。冷間圧延ストリップは、ある量の過剰幅(over-width)で既に製造されることにも留意すべきである。ある程度の過剰幅を目的とすることにより、プロセスは、少なくとも所望量のブランクが最終冷間圧延ストリップの幅から切断され得ることを確実にする。切断損失の量は、材料およびコスト上の損失を最小限に抑えるために、最小限に抑えられることが重要であることは明らかである。これは、低いホットストリップミルクラウンを確実にすることにより、実現され得る。
【0030】
熱間圧延ストリップは、第1の圧下において85%~91%の第1の冷間圧延の圧下率で冷間圧延され、その後、再結晶化アニーリングされ、その後、所望の最終引張り強度レベルおよび厚さに応じて2~17%の第2の冷間圧延の圧下率で冷間圧延される。最後に、DRストリップには、公知の連続電気スズめっきラインを使用して、片面または両面にスズ層が設けられる。好ましい実施形態において、アニーリングは、連続アニーリングライン(CA-ライン)で行われる。非常に速いプロセスサイクルを可能にし、かつ、3ピース缶の製造に有益なストリップの長さおよび幅にわたってより均質な製品を製造するバッチ式アニーリングと比較して、CA-ラインでは、より高い加熱速度および冷却速度が実現され得る。また、より高い加熱、特により高い冷却速度によって、より小さい結晶粒度が生じ得、それにより、材料のより高い強度が生じ得る。
【0031】
H-グレイン胴体の1つの重要な利点は、商業上の性質である。缶胴体の高さは、ブランクサイズによって決定される。H-グレイン缶胴体の一定の直径に対して缶の高さを変更することはさらに容易である。なぜなら、ブランクは、圧延方向でストリップから切断され、ストリップの幅は、ストリップの幅から得られたブランクの数に合わせて調整されるからである。スペックの数は低減され、それにより、缶製造業者にコスト削減がもたらされる。
【0032】
H-グレイン溶接を促進させる追加の利点がある場合もある。Tata Steelが所有権を有するProtact(登録商標)材料等の、サイドにストライプのあるポリマーコーティングされた鋼基材(side striped polymer coated steel substrates)のような予備コーティングされた材料を溶接する場合には、H-グレイン缶のみが実際には大量に製造され得る。
【0033】
一実施形態において、最小炭素含量は0.050%であり、好ましくは最大炭素含量は0.090%である。炭素は、鋼における主要な硬化元素であり、炭素含量が増加するにつれて硬度が増大する。しかしながら、展延性および溶接性は、炭素の増加と共に減少する。
【0034】
一実施形態において、マンガン含量は少なくとも0.300%であり、好ましくは少なくとも0.325%である。好適な最大マンガン含量は0.450%であり、好ましくは最大0.425%である。
【0035】
一実施形態において、本発明による鋼スラブは、最大0.020%のSi、好ましくは最大0.015%のSi、より好ましくは最大0.010%のSiを含む。ケイ素は、残留元素であり、ブリキに有益な元素であるとは見なされず、したがって、その存在は好ましくは制限される。ケイ素は、ブリキの耐腐食性に悪影響を及ぼす場合もあることが知られている。TiおよびNbは、残留元素であり、微量で既に存在する場合に鋼の性質に影響を及ぼす。したがって、NbおよびTi含量は、好ましくはそれぞれ最大0.002%および最大0.002%にさらに制限される。
【0036】
スズの量、ひいては、DR基材の表面に堆積されるスズ層の厚さは、溶接性に影響を及ぼし、したがって、ブリキ上のスズの量は、好ましくは最大5.0g/m、より好ましくは最大4.5g/m、より一層好ましくは最大4.0g/mである。
【0037】
溶接後に十分な耐腐食性を保持するために、ブリキ上のスズの量は、好ましくは少なくとも1.5g/m、より好ましくは少なくとも2.0g/m、より一層好ましくは少なくとも2.5g/mまたは少なくとも2.8g/mである。
【0038】
本発明による方法は、C-グレインまたはH-グレインの方向で3ピース缶用のブランクを製造するために使用され得る。しかしながら、本発明による方法は、熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキの片面または両面に形成してラミネートを形成するラミネート加工ステップを含むことに極めて十分適している。このように鋼基材からなるラミネートには、片面または両面にスズ層が設けられ、それによってブリキが製造され、このブリキにはさらに、片面または両面に熱可塑性ポリマーラミネート層が設けられる。熱可塑性ポリマーラミネート層は、直接押出しおよびインライン式ラミネート加工を使用して、または、1もしくは複数の熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキに結合するための接着層を使用するフィルムラミネート加工によって、または、1もしくは複数の熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキに結合するための熱結合を使用するフィルムラミネート加工によって、ブリキの片面または両面に形成されてもよい。ポリマーラミネート層は、ブリキの両面で同一であってもよい。
【0039】
3ピース缶胴体を製造するために、ブリキまたはラミネートはさらに、ブリキまたはラミネートから3ピース缶胴体用の長方形の胴体ブランクを切断することによって加工される。そのような長方形ブランクは2つの側部(sides)を有し、側部wは、缶胴体を形成するために溶接が行われる側部であり、側部cは、溶接後に缶胴体の周部(circumference)になる側部である。冷間圧延ストリップの圧延方向に対するこのブランクの方向に応じて、2つのタイプの缶胴体が製造され得る:
C-グレイン: w⊥RDおよびc//RD
H-グレイン: w//RDおよびc⊥RD
【0040】
ラミネートからブランクを製造する場合、溶接領域は剥き出しの金属である必要がある。そうでなければ、缶胴体は溶接されないからである。C-グレイン缶胴体では、これは複雑である。なぜなら、各ブランクは、例えば、機械的(例えば、研磨(scouring))、化学的(例えば、溶解)または光学的(例えば、レーザー)手段を使用して、個々に処理される必要があるからである。これは、生産性の観点から好ましくない。この目的のためには、H-グレインブランクを使用することが有利である。なぜなら、ラミネートは、覆われていないブリキの細い(narrow)ストリップを残し、かつ、溶接領域の外側の部分のみラミネートすることによって、または、方向//RDでブランク形成する前にラミネート層を局所的に除去することによって形成され得るからである。
【0041】
一実施形態において、ブリキには、ラミネートを形成するための熱可塑性ポリマーラミネート層が設けられる。これは、ラミネート層と共に製造された缶胴体がさらに腐食から保護され、ラミネート層が装飾印刷に良好な基礎も提供し得るという利点を有する。しかしながら、缶胴体の溶接を可能にするために、溶接されることになるブランクの端部は剥き出しである必要があり(即ち、熱可塑性ポリマーラミネート層により覆われておらず、剥き出しのブリキである必要があり)、これらの溶接領域は、溶接後に腐食から保護される必要がある(図4参照)。熱可塑性ポリマーラミネート層は、直接押出しおよびインライン式ラミネート加工を使用して、または、1もしくは複数の熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキに結合するための接着層を使用するフィルムラミネート加工によって、または、1もしくは複数の熱可塑性ポリマーラミネート層をブリキに結合するための熱結合を使用するフィルムラミネート加工によって、ブリキの片面または両面に形成されてもよい(図5および6参照)。
【0042】
ラミネートを使用する場合、ブリキの細長い(narrow longitudinal)ストリップがラミネート加工されないまま残存するように、複数の熱可塑性ポリマーラミネート層がブリキの片面または両面に形成されることが好ましい。ラミネート加工されていない細長いストリップに沿ってラミネートを分割することにより、ラミネートは、圧延方向に平行な方向のいずれかの側にラミネートされていない端部を有する幅cの細いラミネートストリップに分割される。
【0043】
複数の熱可塑性ポリマーラミネート層は、ストリップから切断されることになるブランクよりも僅かに小さい幅を有する。ブランクは、ラミネートされていない細長いストリップに切断され、缶胴体を閉鎖するための溶接を行うためにかろうじて十分な剥き出しのブリキを残す。これは、好ましい実施形態である。なぜなら、缶胴体の製造業者を、溶接を可能にするための端部からのラミネートの除去作業から解放するからである。
【0044】
好ましい実施形態において、3ピース缶胴体は、ブリキまたはラミネートから長方形の胴体ブランクを切断することによって、ブリキまたはラミネートから製造可能であり、缶胴体の周部を形成することになる長方形の胴体ブランクの側部cは、冷間圧延ストリップの圧延方向に垂直であり、缶胴体を閉鎖するための溶接が行われることになる側部wは、ブリキまたはラミネートの圧延方向に平行である(H-グレイン)。
【0045】
一実施形態において、3ピース缶胴体は、ブリキまたはラミネートから長方形の胴体ブランクを切断することによって、ブリキまたはラミネートから製造可能であり、缶胴体の周部を形成することになる長方形の胴体ブランクの側部cは、冷間圧延ストリップの圧延方向に平行であり、缶胴体を閉鎖するための溶接が行われることになる側部wは、ブリキまたはラミネートの圧延方向に垂直である(C-グレイン)。
【0046】
第2の態様によれば、本発明はまた、本発明による方法を使用して製造されたブリキまたはラミネートに具現化されるとともに、それから製造された胴体ブランクまたは3ピース缶胴体に具体化される。
【0047】
一実施形態において、435MPa~700MPaの下降伏応力(ReL)を有するとともに、3ピース缶胴体用の改善されたH-グレイン溶接性を有する高強度ブリキであって、重量%で、
C:0.045~0.095;
Mn:0.250~0.475;
Si:0~0.030
Al_sol:0.005~0.025;
N:0.0070~0.0140;
S:0~0.020;
P:0~0.020
任意選択で、
Cr:0~0.100;
Cu:0~0.100;
Ni:0~0.100;
Ti:0~0.010;
Nb:0~0.010;
V:0~0.010;
のうちの1以上;
残部:鉄および不可避的不純物
を含む、高強度ブリキである。
【0048】
好ましい実施形態において、高強度ブリキは、
Cr:0~0.030;
Cu:0~0.040;
Ni:0~0.060;
Ti:0~0.004;
Nb:0~0.004;
V:0~0.004;
Ni+Cu+Cr+Mo+Sn+Nb+Ti+V:0~0.100
を含む。
【0049】
一実施形態において、高強度ブリキは、少なくとも350A、好ましくは少なくとも400AのH-グレイン溶接範囲を有する。
【0050】
一実施形態において、高強度ブリキまたはラミネートは、少なくとも8.0%のH-グレインフランジ加工能を有する。
【0051】
本明細書で上述した缶胴体を参照する場合、これらの缶胴体は円形断面を有することができるが、楕円形、正方形、長方形等の異なる断面を有してもよいことに留意すべきである。本明細書に記載の本発明は、これらのそれほど従来型ではない缶胴体形状に等しく適用可能である。
【0052】
第3の態様によれば、本発明はまた、本発明によるブリキまたはラミネートから製造された3ピース缶用の胴体ブランクに具現化されるとともに、本発明に従って製造された長方形の胴体ブランクから製造された3ピース缶胴体に具体化される。胴体ブランクは、円筒または任意のその他の好適な形状に成形され、溶接されて、開放端を有する閉鎖胴体が形成され、缶胴体を閉鎖する溶接シームは、ラミネートされたブリキの圧延方向に平行である。
【実施例
【0053】
3ピース溶接缶胴体における本発明による鋼の性能を試験するため、CおよびH-グレイン胴体に関する溶接範囲が、胴体のフランジ加工能とともに決定された。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
溶接試験は、Soudronic AFB1000 bodywelderを使用して実行された。溶接での重なりは0.5mmである。溶接の上限は、溶接中のスパッタリング(spattering)の出現によって決定され(=「高温溶接」)、下限は、胴体の試験中に胴体が溶接できなくなったときである(=「低温溶接」)。
【0058】
溶接試験の結果は、表4に示される。
【0059】
【表4】
【0060】
本発明による材料の溶接範囲は高く、参照材料よりもさらに大きい。材料のN含量は、溶接性に重要であるように見える。より高いN含量は、より広い溶接範囲をもたらす。
【0061】
N鋼のC-グレインおよびH-グレイン胴体の両方に関する溶接範囲は300Ampを超え、これは製造ラインでの溶接範囲のサイズに関して一般に使用される最小基準である。Nb鋼は、C-グレイン胴体に関しても、H-グレイン胴体に関しても、満足のいくものではなく、LC鋼のみが、C-グレイン胴体に関して十分機能する。
【0062】
溶接範囲の2/3で溶接された缶は、コーン試験(cone test)に供された。缶胴体(n=15)は、胴体の両端で試験された。コーン試験では、30kNのロードセルを有するInstron 5567 圧縮/引張り機を使用して、40°の頂角αでコーンを65mm/分の速度で胴体内に加圧する。胴体とコーンとを一致させた後、力-変位曲線(Force-Displacement curve)を測定し、力の急激な降下によって特徴付けられる胴体の破裂後に、試験を一旦停止させる。コーンの変位から、破裂直前の直径が決定され得る。破裂は、材料自体に、溶接に、またはHAZに生じ得る。破裂までのコーンの変位Iは、力-変位曲線から決定され、したがって、直径の増大は、2・dR=2tan(α/2)Iである。したがって、絶対フランジ加工能(%)は、2dR×100/D(%)である。
【0063】
試験の結果、2つの端部の間でのフランジ加工能に差は示されず、したがって、これらは平均化された。コーン試験の結果は、表5に示される。
【0064】
【表5】
【0065】
これらの結果は、C-グレイン胴体のフランジ加工能がH-グレイン胴体の場合よりも高く、本発明の材料のH-グレイン加工能は参照材料の場合よりも大きいことを示す。本発明者らは、73mm直径の缶胴体で2.5mmのフランジ幅を得るための絶対フランジ加工能は、少なくとも6.8%であるべきであることを決定した。したがって、N鋼は、これに関し、そのフランジ加工能が、C-およびH-グレインの両方に必要とされる下限よりも著しく高いので(表5参照(最後の2欄:フランジ加工能-6.8)/6.8×100)、かなりの潜在能力を提供すると結論付けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】