(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】イオン源用シールドガス入口
(51)【国際特許分類】
H01J 27/08 20060101AFI20241112BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20241112BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20241112BHJP
H01J 37/317 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
H01J27/08
H01L21/265 603A
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522526
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022048194
(87)【国際公開番号】W WO2023076575
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】バッサム,ニール
(72)【発明者】
【氏名】アベシャウス,ジョシュア
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB03
5C101BB08
5C101CC17
5C101DD03
5C101DD16
5C101DD20
5C101DD22
5C101DD23
5C101DD33
5C101FF02
5C101FF49
(57)【要約】
イオン源は、1つ以上の放射線生成機構を有するアークチャンバ、内部容積を囲い込むアークチャンバボディ、およびその中に画定された少なくとも1つのガス入口開口部を有する。ガス源は、ソース種ガスまたはハロゲン化合物などのガスを、ガス入口開口部を通して供給する。ソース種ガスは、塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)などのアルミニウムベースのイオンソース材料にし得る。ガス入口開口部に近接して配置された1つ以上のシールドは、ガス入口開口部と内部容積との間の流体連通を提供し、1つ以上の放射線生成機構からガス入口開口部への見通し線を最小化し、1つ以上の放射線生成機構からガス入口開口部に熱放射線が到達するのを実質的に妨げる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に画定される1つ以上の放射線生成機構を有するアークチャンバであって、該アークチャンバは、内部容積を概ね囲い込むアークチャンバボディを含み、該アークチャンバボディが、該アークチャンバボディの内部に画定されるガス入口開口部を有しているアークチャンバと、
前記ガス入口開口部を通してガスを供給するように構成されているガス源と、
前記ガス入口開口部に近接して配置される1つ以上のシールドであって、前記ガス入口開口部と前記内部容積との間に流体連通を提供し、前記1つ以上の放射線生成機構から前記ガス入口開口部までの見通し線を最小化するとともに、熱放射線が、前記1つ以上の放射線生成機構から前記ガス入口開口部まで到達することを実質的に妨げるように構成されている1つ以上のシールドと、を備える、イオン源。
【請求項2】
ガス入口温度は前記ガス入口開口部において規定され、
前記1つ以上のシールドは、前記ガス入口温度を所定の最高温度未満に維持するように構成され、
前記所定の最高温度は、前記ガスの分解温度に基づく、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記イオン源は、ドーパント種を含むソース材料から、前記アークチャンバ内にプラズマを形成するように構成され、
前記1つ以上のシールドのうちの少なくとも1つのシールドは、前記ドーパント種を含むシールド材料から構成され、
前記シールド材料は、前記ガスによって化学的にエッチングされるように構成されている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記ドーパント種はアルミニウムを含み、
前記ガスはハロゲン化合物を含む、請求項3に記載のイオン源。
【請求項5】
前記1つ以上のシールドは、複数のシールドを含んでおり、
前記少なくとも1つのシールドは、前記複数のシールドのうち前記ガス入口開口部に最も近接しており、ドーパント種を含むシールドを含み、
前記複数のシールドのうち前記ガス入口開口部から最も離れているシールドは、耐火性金属、セラミック、またはグラファイトから構成されている、請求項3に記載のイオン源。
【請求項6】
前記ガスは、塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)を含む、請求項2に記載のイオン源。
【請求項7】
前記1つ以上の放射線生成機構は、前記内部容積内に画定されたプラズマカラム、カソード、リペラー、アークチャンバボディ、およびアークスリットプレートのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のイオン源。
【請求項8】
前記1つ以上のシールドは、前記プラズマカラムが前記ガス入口開口部においてプラズマの形成を概ね妨げるように構成されている、請求項7に記載のイオン源。
【請求項9】
前記1つ以上のシールドは、積み重ねられた構成の複数の剛性プレートを含む、請求項1に記載のイオン源。
【請求項10】
前記複数の剛性プレートは、前記ガス入口開口部に接触せず、前記ガス入口開口部を直接覆うように配置されている、請求項9に記載のイオン源。
【請求項11】
前記アークチャンバボディは、1つ以上のライナーを備え、
前記複数の剛性プレートは、最も内側のライナーおよび前記アークチャンバボディの後ろ側に埋め込まれている、請求項10に記載のイオン源。
【請求項12】
前記複数の剛性プレートは、所定の間隔距離だけ互いに離間している、請求項11に記載のイオン源。
【請求項13】
前記1つ以上のシールドは、複数のシールドから構成され、
前記複数のシールドのうちの1つ以上は、前記複数のシールドに画定された1つ以上のシールド開口部を有する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項14】
前記1つ以上のシールド開口部は、前記複数のシールドのうちの前記2つ以上に画定され、かつ互いにオフセットされることで、前記1つ以上の放射線生成機構から、前記1つ以上のシールド開口部を通り、前記ガス入口開口部へ向かう前記見通し線を妨げる、請求項13に記載のイオン源。
【請求項15】
前記1つ以上のシールドは、前記アークチャンバボディに対して対称に配置されている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項16】
前記アークチャンバボディは、1つ以上のライナーを備え、
前記1つ以上のシールドは、前記1つ以上のライナーに動作可能に結合されている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項17】
前記1つ以上のライナーは、前記ライナーに画定された1つ以上の熱遮断部を備え、
前記1つ以上の熱遮断部は、前記ガス入口開口部への熱移動を低減するように構成されている、請求項16に記載のイオン源。
【請求項18】
前記1つ以上の熱遮断部は、前記1つ以上のライナーに画定された溝、前記1つ以上のライナーの残りの部分よりも小さい断面を有する前記1つ以上のライナーの領域、および、前記1つ以上のライナーを通る前記ガス入口開口部への熱移動を制限するように構成された前記ガス入口開口部の周囲に画定された機械加工された周縁部のうち1つ以上を含む、請求項17に記載のイオン源。
【請求項19】
1つ以上の締結具をさらに備え、
前記1つ以上の締結具は、前記1つ以上のシールドを、前記アークチャンバボディおよび前記1つ以上のライナーのうちの1つ以上に動作可能に結合する、請求項16に記載のイオン源。
【請求項20】
前記1つ以上の締結具は、1つ以上のネジおよび/または1つ以上のスタンドオフを含む、請求項19に記載のイオン源。
【請求項21】
前記1つ以上のライナーに画定された複数のスロットをさらに備え、
前記1つ以上のシールドは、前記複数のスロットに摺動可能に係合するように構成されることで、前記1つ以上のシールドを前記1つ以上のライナーに動作可能に結合する、請求項16に記載のイオン源。
【請求項22】
前記1つ以上のシールドは、耐火性材料、セラミック、およびグラファイトのうちの1つ以上から構成されている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項23】
プラズマカラムを形成するように構成されたアークチャンバと、
前記アークチャンバの壁に画定されたガス入口開口部と、
1つ以上のシールドと、を備え、
前記1つ以上のシールドは、前記プラズマカラムから前記ガス入口開口部への見通し線を概ね妨げる、イオン源。
【請求項24】
前記1つ以上のシールドは、前記アークチャンバの1つ以上の壁を概ね画定する、請求項23に記載のイオン源。
【請求項25】
前記アークチャンバの対向する端部にそれぞれ配置されたカソードおよびリペラーをさらに備え、
前記アークチャンバは、対称であり、
前記1つ以上のシールドは、前記カソードおよび前記リペラーの均一なエロ―ジョンを提供するように構成されている、請求項24に記載のイオン源。
【請求項26】
前記1つ以上のシールドは、前記プラズマカラムの形成と同時に、前記ガス入口開口部近傍の温度を低下させるように構成されている、請求項23に記載のイオン源。
【請求項27】
前記1つ以上のシールドは、前記プラズマカラムの形成と同時に前記ガス入口開口部の分解および/または目詰まりをさらに最小限に抑える、請求項23に記載のイオン源。
【請求項28】
前記1つ以上のシールドのサイズ、形状、および量のうちの1つ以上は、前記ガス入口開口部を通して供給されるガスの温度感受性に少なくとも部分的に基づいて、前記プラズマカラムから前記ガス入口開口部への見通し線を妨げるように設定されている、請求項23に記載のイオン源。
【請求項29】
前記1つ以上のシールドは、前記プラズマカラムの形成と同時に前記アークチャンバの温度を低下させるように構成されている、請求項23に記載のイオン源。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は、2021年10月29日に出願された米国仮出願第63/273,338号「SHIELDED GAS INLET FOR AN ION SOURCE」の利益を主張するものであり、その全ての内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、概してイオン注入システムに関し、より具体的には、イオンビームを生成するように構成されたイオン注入システム用のイオン源に関し、イオン源にソースガスを導入するためのガス入口は、ガス状の塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)からアルミニウムイオンを形成する場合など、高温におけるソース材料の劣化を緩和するように遮蔽されている。
【0003】
〔背景技術〕
金属イオンを使ったイオン注入の需要が高まっている。例えば、アルミニウム注入はパワーデバイス市場にとって重要であり、市場規模は小さいが急成長しているセグメントである。アルミニウムを含む多くの金属では、材料をイオン源に導く供給方法が問題となる。システムは、イオン源のアークチャンバの外部にある小型のオーブンである利用可能な気化器を予め与えられ、これにより金属塩は、イオン源に蒸気を供給するのに十分な蒸気圧を発生させるために加熱される。しかしながら、オーブンはアークチャンバから離れた場所にあり、さらに所望の温度まで加熱し、蒸気流を安定させ、プラズマをスタートさせ、イオンビームをスタートさせるのに時間が掛かる、などがある。さらに、ある金属種から他の金属種に変更が望まれる場合、そのような金属種を変更するためにオーブンが十分に冷却されるのを待つのに時間がかかる。
【0004】
もう一つの従来技術は、アルミニウムや他の金属などの金属含有材料をアークチャンバ内に配置することである。アルミニウムの場合、金属含有材料は酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、または窒化アルミニウムを含むことがあり、いずれもプラズマチャンバーの約800℃の温度に耐えることができる。このようなシステムにおいて、イオンはプラズマ中の材料から直接スパッタリングされる。また、フッ素などのエッチャントを含むプラズマを使用して、金属を化学エッチングする方法もある。このような様々な技術を用いることで許容可能なビーム電流を得ることができる一方で、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、窒化アルミニウムの化合物は、いずれも良好な電気絶縁体であるため、イオン源に隣接する電極上に比較的短時間(例えば5~10時間)で堆積する傾向がある。そのため、高電圧の不安定性やそれに伴うイオン注入量の変動など、さまざまな悪影響が見られる。
【0005】
〔概要〕
したがって、本開示は、ガス状の塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)、ジボラン、または他のガスからイオンを含むイオンビームを形成するなど、熱的に不安定なガスを利用する場合にイオンビームを生成するためのシステムおよび装置を提供する。したがって、本開示のいくつかの態様について基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を以下に示す。この概要は、本開示の広範な概観ではない。また、本開示の重要な要素を特定するものでも、本開示の範囲を明確にするものでもない。その目的は、後に提示されるより詳細な説明の前段階として、簡略化された形で本開示のいくつかの概念を提示することである。
【0006】
本開示の一態様によれば、イオン注入システムが提供される。広義には、本開示は、イオンを注入するためのイオン注入およびイオン源に向けられる。1つの特定の例において、ガス状のアルミニウムベースのイオン源材料のような熱的に不安定なガスが提供され、イオン源は、ガス状のアルミニウムベースのイオン源材料を受けてイオン化し、そこからイオンビームを形成するように構成される。ビームラインアセンブリは、イオンビームを選択的に輸送するように構成され、エンドステーションは、ワークピースへのイオン注入のためにイオンビームを受け入れるように構成される。
【0007】
ガス状のアルミニウムベースのイオン源材料は、例えば、塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)を含み、または塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)で構成される。一例として、DMACは、真空下において室温で気相に遷移する液体として貯蔵される。例えば、加圧ガスボトルは、DMACを収容し、DMACをイオン源に供給するように構成される。例えば、イオン源は、アークチャンバを備え、加圧ガスボトルは、DMACをアークチャンバに供給するように構成される。1つ以上の専用供給ラインをさらに設けることができ、DMACを加圧ガスボトルからアークチャンバに移送するように構成される。例えば、低圧ガスボトルは、DMACを収容し、DMACをガスとして一次ガスラインを経由してイオン源のアークチャンバに供給するように構成される。
【0008】
本開示のいくつかの実施例によれば、イオン源が提供され、アークチャンバは、その内部に画定された1つ以上の放射線生成機構を有する。アークチャンバは、例えば、内部容積を概ね囲い込むアークチャンバボディを含む。アークチャンバは、例えば、アークチャンバボディに画定される少なくとも1つのガス入口開口部を有する。1つ以上のシールドは、例えば、ガス入口開口部に近接して配置される。1つ以上のシールドは、例えば、ガス入口開口部と内部容積との間に流体連通を提供する。1つ以上のシールドはさらに、熱放射線が、1つ以上の放射線生成機構からガス入口開口部まで到達することを実質的に妨げるように構成される。
【0009】
本開示の様々な態様によれば、イオン源が提供され、アークチャンバは、イオン源に画定された1つ以上の放射線生成機構を有する。アークチャンバは、内部容積を概ね囲い込むアークチャンバボディを含み、アークチャンバボディは、アークチャンバボディに画定されたガス入口開口部を有する。ガス源は、例えば、ガス入口開口部を通してガスを供給するように構成され、1つ以上のシールドはガス入口開口部に近接して配置される。一例では、ガスは塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)を含む。
【0010】
1つ以上のシールドは、例えば、ガス入口開口部と内部容積との間に流体連通を提供し、1つ以上のシールドは、1つ以上の放射線生成機構からガス入口開口部への見通し線(透視線、視野方向)を最小化し、1つ以上の放射線生成機構からガス入口開口部に熱放射線が到達するのを実質的に妨げるように構成される。
【0011】
ガス入口温度は、例えば、ガス入口開口部において規定されることができ、1つ以上のシールドは、ガス入口温度を所定の最高温度未満に維持するように構成され、所定の最高温度は、ガスの分解温度に基づく。別の例において、イオン源は、ドーパント種を含むソース材料から、アークチャンバ内にプラズマを形成するように構成される。1つ以上のシールドのうちの少なくとも1つのシールドは、例えば、ドーパント種を含むシールド材料から構成されることができ、シールド材料は、ガスによって化学的にエッチングされるように構成される。一例において、ドーパント種はアルミニウムを含み、ガスはハロゲン化合物を含む。別の実施例において、1つ以上のシールドは、複数のシールドを含んでおり、少なくとも1つのシールドは、複数のシールドのうちガス入口開口部に最も近接しており、ドーパント種を含むシールドを含み、複数のシールドのうちガス入口開口部から最も離れているシールドは、耐火性金属、セラミック、またはグラファイトから構成されている。
【0012】
1つ以上の放射線生成機構は、例えば、内部容積内に画定されたプラズマカラム、カソード、リペラー、アークチャンバボディ、およびアークスリットプレートのうちの1つ以上を含み得る。1つ以上のシールドは、例えば、プラズマカラムがガス入口開口部においてプラズマを形成するのを概ね妨げるように構成される。
【0013】
別の実施例によれば、1つ以上のシールドは、積み重ねられた構成の複数の剛性プレートを含む。複数の剛性プレートは、例えば、ガス入口開口部に接触せず、ガス入口開口部を直接覆うように配置される。アークチャンバボディは、例えば、1つ以上のライナーをさらに含み、複数の剛性プレートは、最も内側のライナーおよびアークチャンバボディの後ろ側に埋め込まれている。複数の剛性プレートは、例えば、所定の間隔距離だけ互いに離間させることができる。
【0014】
別の例において、1つ以上のシールドは複数のシールドを含み、複数のシールドのうちの1つ以上は、複数のシールドに画定された1つ以上のシールド開口部を有する。1つ以上のシールド開口部は、例えば、複数のシールドのうちの2つ以上に画定され、かつ互いにオフセットされることで、1つ以上の放射線生成機構から、1つ以上のシールド開口部を通り、ガス入口開口部への見通し線を妨げる。
【0015】
1つ以上のシールドは、例えば、アークチャンバボディに対して対称に配置される。さらに別の例では、1つ以上のシールドは、耐火性材料、セラミック、グラファイトの1つ以上で構成される。
【0016】
別の実施例において、アークチャンバボディは1つ以上のライナーを備え、1つ以上のシールドは、1つ以上のライナーに動作可能に結合される。1つ以上のライナーは、例えば、ライナーに画定された1つ以上の熱遮断部を備えることができ、1つ以上の熱遮断部は、ガス入口開口部への熱移動を低減するように構成される。1つ以上の熱遮断部は、例えば、1つ以上のライナーに画定された溝、1つ以上のライナーの残りの部分よりも小さい断面を有する1つ以上のライナーの領域、および、1つ以上のライナーを通るガス入口開口部への熱移動を制限するように構成されたガス入口開口部の周囲に画定された機械加工された周縁部のうちの1つ以上から構成され得る。
【0017】
1つ以上の締結具をさらに備えることができ、1つ以上の締結具は、例えば、1つ以上のシールドをアークチャンバボディおよび1つ以上のライナーのうちの1つ以上に動作可能に結合する。1つ以上の締結具は、例えば、1つ以上のネジおよび/または1つ以上のスタンドオフを含む。別の実施例において、複数のスロットが1つ以上のライナーに画定され、1つ以上のシールドは複数のスロットに摺動可能に係合するように構成されることで、1つ以上のシールドを1つ以上のライナーに作動可能に結合する。
【0018】
別の実施例によれば、イオン源が提供され、アークチャンバがプラズマカラムを形成するように構成される。例えば、ガス入口開口部はアークチャンバの壁に画定され、1つ以上のシールドが設けられ、1つ以上のシールドは、プラズマカラムからガス入口開口部への見通し線を概ね妨げる。1つ以上のシールドは、例えば、アークチャンバの1つ以上の壁を概ね画定する。
【0019】
別の実施例において、イオン源は、アークチャンバの対向する端部にそれぞれ配置されたカソードおよびリペラーをさらに備え、アークチャンバは対称であることで、1つ以上のシールドは、カソードおよびリペラーの均一なエロージョンを提供するように構成される。
【0020】
1つ以上のシールドは、例えば、プラズマカラムの形成と同時に、ガス入口開口部に近接する温度を低下させるようにさらに構成される。別の実施例において、1つ以上のシールドは、プラズマカラムの形成と同時にガス入口開口部の分解および/または目詰まりをさらに最小限に抑える。
【0021】
別の実施例によれば、1つ以上のシールドのサイズ、形状、および量のうちの1つ以上は、ガス入口開口部を通して供給されるガスの温度感受性に少なくとも部分的に基づいて、プラズマカラムからガス入口開口部への見通し線を妨げるように構成される。例えば、1つ以上のシールドは、プラズマカラムの形成と同時にアークチャンバの温度を低下させるように構成される。
【0022】
前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下において完全に説明され、特許請求の範囲において特に指摘される特徴から構成される。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に示している。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちのいくつかを示すものである。本開示の他の目的、利点および新規な特徴は、図面と併せて考慮すれば、以下の開示の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示のいくつかの態様に従った例示的な真空システムのブロック図である。
【
図2】ガス注入口を塞ぐ材料が堆積した従来のアークチャンバへのガス注入口の写真である。
【
図3】本開示のいくつかの例示的側面に従ったイオン源の概略図である。
【
図4】本開示の様々な実施例による例示的アークチャンバの透視図である。
【
図5】本開示の様々な実施例による
図4の例示的アークチャンバの部分断面図である。
【
図6】本開示のいくつかの例示的側面に従った別のイオン源の概略図である。
【
図7】本開示の実施例に従って、その中に画定された開口を有しない例示的なシールドの正面透視図を示す。
【
図8】本開示の実施例に従ってその中に画定されたスロットを有する例示的なシールドの正面透視図である。
【
図9A】本開示の実施例に従って、その中に画定された複数のオフセット孔を有する複数のシールドの例の正面図および背面図を示す。
【
図9B】本開示の実施例に従って、その中に画定された複数のオフセット孔を有する複数のシールドの例の正面図および背面図を示す。
【
図9C】本開示の実施例に従って、その中に画定された複数のオフセット孔を有する複数のシールドの例の正面図および背面図を示す。
【
図10】塩化ジメチルアルミニウムをガス状イオン源材料として用いてアルミニウムイオンを被加工物に注入する例示的な方法を示している。
【0024】
〔詳細な説明〕
本開示は、概して、イオン注入システムおよびそれに関連するイオン源材料に向けられる。より詳細には、本開示は高反応性および/または熱的に不安定なガスを使用する場合の前記イオン注入システムのための構成要素に向けられ、これによりイオン源内の高温がガスの反応性または反応速度を増加させる。例えば、イオン源材料は、ケイ素(シリコン)、炭化ケイ素、または他の半導体基板を様々な温度で電気的にドープするための原子イオンを生成するためのソースガスとして提供される。特に、本開示は、イオン源材料として塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)を使用する場合など、高温におけるこのようなソースガスの劣化を有利に最小化する。さらに、フッ素のような高反応性ガスを使用する場合、本開示によれば、イオン源のガス入口においてより低い温度を達成することにより、ガス入口に隣接または接触する構成要素のエッチング速度の低減がさらに達成され、例えば、NF3が利用される場合において、窒素およびフッ素への分解が低減される。
【0025】
従って、以下、図面を参照して本開示を説明するが、ここで、同様の参照数字は、全体を通して同様の要素を参照するために使用され得る。これらの態様の説明は単なる例示であり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の開示では、説明に対して、本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら、本開示は、これらの具体的な詳細がなくても実施できることは、当業者には明らかであろう。さらに、本開示の範囲は、添付図面を参照して以下に説明する実施形態または実施例によって限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図するものである。
【0026】
また、図面は、本開示の実施形態のいくつかの態様の例示を与えるために提供され、したがって、概略的なものとしてのみ見なされることに留意されたい。特に、図面に示された要素は、必ずしも互いに縮尺が一致しておらず、図面における様々な要素の配置は、それぞれの実施形態の明確な理解を提供するために選択されたものであり、本開示の実施形態による実装における様々な構成要素の実際の相対的な位置を必ずしも表していると解釈されるものではない。さらに、本明細書で説明する様々な実施形態および実施例の特徴は、特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0027】
また、以下の説明において、図面に示された、または本明細書に記載された機能ブロック、装置、構成要素、または他の物理的または機能的ユニット間の直接的な接続または結合は、間接的な接続または結合によっても実装され得ることを理解されたい。さらに、図面に示された機能ブロックまたはユニットは、1つの実施形態においては別々の特徴として実装され、別の実施形態においては共通の特徴において完全または部分的に実装されることもあることを理解されたい。例えば、いくつかの機能ブロックは、信号プロセッサなどの共通のプロセッサ上で動作するソフトウェアとして実装されてもよい。
【0028】
イオン注入は、半導体デバイス製造において、半導体材料および/またはウェハ材料にドーパントを選択的に注入する物理的プロセスである。そのため、ドーパントと半導体材料との間の化学的相互作用に依存することなく注入することができる。イオン注入のために、イオン注入装置のイオン源からのドーパント原子/分子はイオン化され、加速され、イオンビームに形成され、分析され、ウェハを横切って掃引され、または、イオンビームを通してウェハを移動する。ドーパントイオンはウェハに物理的に衝突し、表面に入り、そのエネルギーに関連した深さで表面下に静止する。
【0029】
イオン注入装置におけるイオン源は、通常、アークチャンバ内でソース材料をイオン化することによってイオンビームを生成する。ソース材料の構成要素は所望のドーパント元素である。所望のドーパント元素は、イオンビームの形状で、イオン化されたソース材料から取り出される。
【0030】
本開示の一般的な理解を得るために、また本開示の一態様に従って、
図1に例示的な真空システム100を示す。本実施例の真空システム100は、イオン注入システム101を含むが、プラズマ処理システム、または他の半導体処理システムなど、他の様々なタイプの真空システムも想定される。イオン注入システム101は、例えば、ターミナル102、ビームラインアセンブリ104、およびエンドステーション106を備える。
【0031】
通常、ターミナル102内のイオン源108は電源110に結合され、ドーパントガスをイオン源から複数のイオンにイオン化して、イオンビーム112を形成する。抽出電極に近接する個々の電極は、イオン源の近くまたは抽出電極に戻る中和電子の逆流を抑制するようにバイアスされることがある。
【0032】
本実施例のイオンビーム112は、ビームステアリング装置114を通り、開口部116からエンドステーション106に向けて照射される。エンドステーション106において、イオンビーム112は、ワークピース118(例えば、シリコンウエハー、ディスプレイパネルなどの半導体)に衝突する。このワークピース118は、チャック120(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的にクランプされ、または取り付けられる。ワークピース118の格子に埋め込まれると、注入されたイオンはワークピースの物理的および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造や金属仕上げに使用されるほか、材料科学研究における様々な用途にも使用されている。
【0033】
本開示のイオンビーム112は、ペンシルビームまたはスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、またはイオンをエンドステーション106に向ける他の形態など、任意の形態をとることができ、そのような形態はすべて、本開示の範囲内に含まれるものとして企図される。
【0034】
1つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は、真空チャンバ124のようなプロセスチャンバ122を備え、プロセス環境126はプロセスチャンバに関連付けられる。プロセス環境126は、一般に、プロセスチャンバ122内に存在し、一実施例では、プロセスチャンバに結合され、プロセスチャンバを実質的に排気するように構成された真空源128(例えば、真空ポンプ)によって生成された真空を含む。さらに、真空システム100の全体的な制御のためにコントローラ130が設けられる。
【0035】
本開示は、ワークピース118がワークピース118上に形成された炭化ケイ素ベースのデバイスを有し、ワークピース118がシリコンベースのデバイスよりも優れた熱的および電気的特性を有していることを発見されたことを理解し、特に、電気自動車などの高電圧および高温デバイスに使用される用途において理解する。しかしながら、炭化ケイ素へのイオン注入は、シリコンワークピースに使用されるドーパントとは異なる種類のドーパントの注入を利用する。炭化ケイ素の注入においては、アルミニウム、リン、窒素の注入がよく行われる。例えば、窒素注入は、窒素を気体として導入できるため、比較的簡単であり、チューニングやクリーンアップなども比較的容易である。しかし、アルミニウム注入は、現在のところ、アルミニウムの優れたガス状解決策がほとんど知られていないため困難である。
【0036】
本開示は、例えば、イオンビーム112を形成するために、イオン源材料132がイオン源108のアークチャンバ134に供給されることを想定している。これまで、アルミニウムイオンの後に続く注入のためのイオンビーム112を生成するために、イオン源108にガス状の形態で安全かつ効果的に供給できる材料はなかった。従来は、固体のソース材料(図示せず)を加熱気化器アセンブリ(図示せず)に配置し、得られたガスをアークチャンバ134に供給するか、Al203またはAlNなどの固体の高温セラミック(図示せず)をアークチャンバに配置し、フッ素ベースのガスでエッチングしていた。
【0037】
しかし、これらの技法にはいずれも大きな制限がある。例えば、気化器が固体材料をガス状に移行させるのに必要な温度に到達するまでの時間が30分を超えることがあり、その結果、道具の生産性に影響を与える。さらに、異なるドーパントガスをアークチャンバに導入したい場合、ソース材料が気相でなくなるように気化器の温度を下げるのに必要な時間が30分を超えることがある。これは、一般に、種間の遷移時間と呼ばれ、これにより、遷移時間は、イオン注入装置の生産性を低下させ得る。
【0038】
さらに、フッ素ベースのドーパントガス(例えば、BF3、NF3、PF3、PF5)を使用して酸化アルミニウム(Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)セラミックをエッチングする場合、結果として生じる反応の副生成物(例えば、AlFx、Al、N、および中性のAlNおよびAL2O3)は、抽出電極に絶縁膜を形成することができ(例えば、負電圧の場合)、次に、電荷を蓄電させるとともに、その後イオン源アークスリット光学プレートへ放電させることができ(正電圧の場合)、これにより工具の生産性をさらに低下させる可能性がある。
【0039】
限界または従来技術を克服するために、本開示のイオン注入システム101は、イオン源材料132としてガス状の塩化ジメチルアルミニウム(C4H10AlCl、またはDMACとも呼ばれる)を提供し、アルミニウムベースの材料をイオン源108のアークチャンバ134にガス状の形態で有利に供給する。DMACをガス状の形態でアークチャンバ134に供給することにより、例えば、有利には、種間の遷移時間がより速くなり(例えば、5分未満)、材料のウォームアップおよびクールダウンのための待ち時間がなくなり、従来のシステムで見られるような抽出電極に形成される絶縁材料が無くなる。イオン源材料132(例えば、DMAC)は、反応性の高い材料(発火性)であるため、例えば、専用の一次ガスライン136を介してアークチャンバ134に選択的に供給される。フッ素含有ガス源138(例えば、BF3、PF3、等)は、二次ガスライン140を介してアークチャンバ134に選択的に供給され、一次ガスライン136と二次ガスラインとは、分離された別個のガスラインである。フッ素含有ガス源138は、例えば、その少なくとも一構成要素がフッ素である分子またはガスの予備混合物である。
【0040】
アルミニウムイオンビームを生成するためのソース材料としてDMACのようなガスを使用することは、イオンソースの高速遷移と安定性の点で利点があるが、DMACガスを、400℃を超える温度にさらすと、DMACが分解する傾向がある。
図2は、例えば、イオン源の従来のアークチャンバの側壁202の写真200を示しており、汚染204は、DMACガスをアークチャンバに導入するために利用されるガス入口チャネル206に形成される可能性があり、これにより、ガス入口チャネルは、従来、アークチャンバ内で高温(例えば、400℃を超える)に曝され、ガス入口チャネルは、分解されたDMACで詰まるか、または他の方法で汚染される可能性がある。
【0041】
したがって、本開示は、イオン源に関連するガス入口開口部のそのような目詰まり、汚損、または汚染を概して防止するための多数の装置、システム、および方法を提供する。よって、本開示の一例の態様に従い、
図3は、例示的なイオン源300を示し、アークチャンバ302は、その中に画定された1つ以上の放射線生成機構304を有するように提供される。アークチャンバ302は、内部容積308を概ね取り囲み、または画定するアークチャンバボディ306を備える。1つ以上の放射線生成機構304は、例えば、カソード310、リペラー312(反カソードとも呼ばれる)、アークチャンバ302の壁314、アークスリット316、およびイオン源300の動作中に内部容積308内に画定されるプラズマカラム318のうちの1つ以上から構成される。アークスリット316は、破線で図示され、内部容積318を概ね囲い込むアークスリットプレート(明瞭化のため図示せず)内に画定される。
【0042】
アークチャンバボディ306は、例えば、1つ以上のライナー320をさらに備えることができ、1つ以上のライナーは、一般に、アークチャンバボディ306を熱的に、化学的に、または他の方法で保護する役割を果たす。1つ以上のライナー320は、例えば、グラファイトまたは他の保護材料などの材料で構成されるか、または構成され得る。一実施例では、アークチャンバ302は、さらに後述するように、ガス源324から内部容積308にガスを導入するための少なくとも1つのガス入口開口部322を備える。ガス入口開口部322(例えば、穴、チャネル、または他の開口)は、例えば、アークチャンバボディ306および1つ以上のライナー320の1つ以上に画定されるか、またはそれらを貫通する。
【0043】
本開示の一実施例によれば、1つ以上のシールド326がガス入口開口部322に近接して配置され、1つ以上のシールドは、ガス入口開口部と内部容積308との間の流体連通を提供する一方で、内部容積に関連する熱放射線からガス入口開口部を遮蔽する。例えば、
図3に図示される1つ以上のシールド326は、プラズマカラム318または1つ以上の放射線生成機構304の他のものに関連する熱放射線がガス入口開口部322に到達するのを実質的に制限するように構成される。一実施例では、1つ以上のシールド326は、1つ以上の締結具328を介してアークチャンバボディ306および1つ以上のライナー320のうちの1つ以上に動作可能に結合される。本実施例では、1つ以上の締結具328は、1つ以上のねじ330および/または1つ以上のスタンドオフ332を含み、それにより、1つ以上のシールド326は、1つ以上の締結具を介してアークチャンバボディ306に対して選択的に位置決めされる。1つ以上のシールド326は、例えば、1つ以上の放射線生成機構304(例えば、プラズマカラム318)からガス入口開口部322への見通し線を実質的に減少させるかまたは防止するものであり、様々な構成を有することが企図されている。例えば、1つ以上のシールド326は、矩形、卵形、円形、または不規則な形状の1つ以上など、多種多様なサイズおよび形状を有するものとして企図される。
【0044】
1つ以上のシールド326は、例えば、アークチャンバ302内のプラズマカラム318と実質的に干渉しないように構成されている。例えば、1つ以上のシールド326は、
図3に示すシールド334A、334B、および334Cから構成され、これにより、最も内側のシールド334Aがプラズマカラム318に最も直接曝される。このように、少なくとも最も内側のシールド334Aの構成は、例えば、アークスリット316に関して概ね対称であり、内部容積308内で概ね対称性を提供するように提供される。最も内側のシールド334Aは、例えば、カソード310、リペラー312、ライナー320およびアークスリット316のうちの1つ以上に対するその位置がプラズマカラム318の形成を実質的に妨げないように、このようにしてアークチャンバ302内に配置され得る。最も内側のシールド334Aは、例えば、ガス入口開口部322に関連するアークチャンバ302の側壁338の内面336(例えば、1つ以上のライナー320の表面)と実質的に同一平面上にあるか、またはそこからわずかに埋め込まれていてもよい(凹んでいてもよい)。最も内側のシールド334Aは、アークチャンバ302の側壁338に沿って部分的に延伸するように本実施例では図示されているが、本開示はさらに、1つ以上のシールド326のうちの少なくとも1つ(例えば、最も内側のシールド334A)が、カソード310およびリペラー312を有するアークチャンバ302の端部側壁340の間にほぼ完全に延伸することを企図している。
図3に示される例では、1つ以上のシールド326は、実質的に均一なサイズおよび形状である。
【0045】
例えば、
図4~5は別の実施例のアークチャンバ350を示し、それにより、1つ以上のシールド326は、アークチャンバボディ306および1つ以上のライナー320のうちの1つ以上と摺動可能に係合するように構成されたシールドプレート352A~352Cを含む。例えば、
図5のシールドプレート352A~352Cは、例えば、サイド部材356(例えば、1つ以上のライナー320またはアークチャンバボディ306のうちの1つ)に画定されたスロット354A~354Cに摺動可能に係合し、
図4に示すカバー部材358がサイド部材に動作可能に結合されて、シールドプレートを選択的に所定位置に固定する。このように、それぞれのシールドプレート352A~352Cとスロット354A~354Cとの間の摺動係合は、カバー部材358と共に、一般に、1つ以上の締結具328を画定する。本実施例では、例えば最も内側のシールドプレート352Aは、アークチャンバ302の側壁338の内面336から僅かに埋め込まれ、こうして再び内部容積308の一般的な対称性を提供する。アークチャンバ302の側壁338は、少なくとも最も内側のシールドプレート352Aを内部容積308に露出させる露出開口360をさらに画定する。
【0046】
従って、本開示は、
図3~5に示される実施例に例示されるような、1つ以上のシールド326とアークチャンバ302とに関連する内部容積308の対称性を一般的に提供することに操作上の利点があってよいが、1つ以上のシールドの様々な他の構成が本開示の範囲内に入るものとして意図されることを理解する。
図6に図示される別の実施例に従って、別のアークチャンバ370が図示され、それによって、1つ以上のシールド326は、様々な幾何学形状を有する複数のシールド372A~372Cを含み、それによって、複数のシールドは、ガス入口開口部322に対して概して段付きであるように図示される。複数のシールド372A~372Cは、例えば、プラズマカラム318に対して対称であるか、プラズマカラムからオフセットされているか、またはアークチャンバ302に対して非対称であることができる。
【0047】
再び
図3を参照すると、本開示の別の例示的態様に従って、ガス源324は、ガス(例えば、プロセスガス、共有ガス、または他のガス)を供給するように、または、ガス源とガス入口開口部とを選択的に流体結合された1つ以上の導管374を介して、ガス入口開口部322を通流するように構成される。ガス入口開口部322は、一実施例では単一の開口部であると開示されているが、複数の開口部、穴、またはチャネルも企図され、それにより、1つ以上の導管374は、選択的にガスをそこに供給するように構成されることにさらに留意すべきである。
【0048】
図3~6のアークチャンバ302、350、370のいずれかの動作中、例えば、ガス入口開口部322においてガス入口温度が規定され、1つ以上のシールド326は、ガス入口温度を所定の最高温度未満に維持するようにさらに構成される。所定の最高温度は、例えば、高温によりガスが実質的に分解し始めるガスの分解温度に基づくか、またはそれに関連することができる。一例では、ガスは塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)を含み、所定の最高温度は約400℃である。このように、ガスに関連する所定の最高温度に基づいて、1つ以上のシールド326に関連する数、サイズ、形状、厚さ、側壁338に沿った位置、または他の特徴の所定の構成を有利に提供することができる。さらに、1つ以上のシールド326の所定の構成は、ガス入口開口部322から内部容積308へのガスの所望の流量に基づくことができる。このように、ガス入口開口部322から内部容積308へのガスの所望の流量をもたらすために、1つ以上のシールド326の間またはシールド326を通るガスの所定の間隔または流路を設けることができる。
【0049】
別の実施例によれば、1つ以上のシールド326は、ガス入口開口部322において、またはガス入口開口部322に近接してプラズマが形成されるのを概して防止するようにさらに構成される。例えば、1つ以上のシールド326のうちの少なくとも1つは、ガス入口開口部に接触しないが、
図3、
図5、および
図6のいずれかのガス入口開口部322を直接覆うように配置され得る。1つ以上のシールド326は、例えば、
図7に図示されるように、1つ以上の剛性プレート380から構成され得る。1つ以上の剛性プレート380は、例えば、耐火性材料、セラミック、およびグラファイトのうちの1つ以上で構成することができる。1つ以上の剛性プレート380は、例えば、
図7に図示されているように、概して平面状であり、または湾曲プレート(図示せず)から構成され得る。1つ以上のシールド326は、例えば、
図3~6のいずれかのアークチャンバボディ306など、アークチャンバの様々な特徴に適合するようにさらに構成することができる。1つ以上の剛性プレート380は、例えば、上述のように、最も内側のライナーおよびアークチャンバボディ306に対して様々な位置に取り付けられるように構成される。1つ以上の剛性プレート380は、例えば、1つ以上の締結具328によって所定の間隔距離だけ互いに離間させることができ、それによって、上述したガスは、プレート間をガス入口開口部322からアークチャンバボディ306の内部容積308まで通過することができる。
【0050】
図8は別の実施例を示しており、1つ以上のシールド326の1つ以上は、その中に画定された1つ以上のスロット状開口382を備える。1つ以上のスロット状開口382は、例えば、
図4~5に図示されるように、例示的なアークチャンバ350のそれぞれのシールドプレート352A~352Cにさらに設けられる。
図4ではシールドプレート352Aのみが見えるが、
図5に図示したシールドプレート352Bおよび352Cも同様の構成を有することができる。従って、ガスは、
図5のガス入口開口部322をアークチャンバボディ306の内部容積308内に形成されるプラズマに曝されないように熱的に保護しながら、それぞれのシールドプレート352A~352Cのスロット状開口382のそれぞれを通過するように構成される。
【0051】
図9A~9Cは別の実施例を示し、1つ以上のシールド326は複数のシールド384A、384Bを含み、複数のシールドのうちの1つ以上は、その中に画定された1つ以上のシールド開口部386を有する。
図9Aにおいて、複数のシールド384A、384Bは、イオン源に設置されるように図示されており、それによって、シールドは、y方向に積み重ねられ、間隔をあけて配置され、それによって、複数の開口部は、y方向から見たときに、互いにオフセットしている。1つ以上のシールド開口部386は、例えば、複数のシールド384A、384Bのうちの2つ以上に画定され、それによって、1つ以上のシールド開口部は、複数のシールドのうちの2つ以上が互いに積み重ねられたときに互いにオフセットされ、プラズマカラム318と
図3および
図6に示されるガス入口開口部322との間の見通し線を概ね妨げる。本開示は、1つ以上のシールド開口部386が、
図9A~9Cに図示されるような円形、
図8のスロット状開口382によって図示されるようなスロット状、または曲線状、多角形、迷路状などの他の形状など、様々な形状のいずれかをとることを企図することを理解されたい。これにより、複数のシールドのうちの2つ以上のシールドの積層は、1つ以上のシールド開口部386の構成と組み合わせにおいて、プラズマカラム318または他の放射線生成機構304と、
図3および
図6に示されるガス入口開口部322との間の見通し線を概ね妨げる。
【0052】
別の実施例によれば、
図3および
図6に示されるように、1つ以上のライナー320は、その中に画定された1つ以上の熱遮断部388を備え、1つ以上の熱遮断部は、ガス入口開口部322への熱伝達を低減するように構成される。1つ以上の熱遮断部388は、例えば、1つ以上のライナー320に画定された1つ以上の溝からなる。代替的に、または追加的に、1つ以上の熱遮断部388は、例えば、
図5の例に示されるように、1つ以上のライナー320の残りの部分よりも小さい断面(例えば、断面の薄肉化)を有する1つ以上のライナー320の領域を備える。例えば、1つ以上の熱遮断部388は、ガス入口開口部322の周囲に画定された機械加工された周縁部のうち1つ以上を含むことができ、そこでガス入口開口部への熱移動を低減する。
【0053】
本開示の様々な態様の別の例示的な実施例に従って、
図3のイオン源300は、所定のソース材料からプラズマを形成するように構成され、1つ以上のシールド326は、ソース材料に適合する所定の材料を含み、1つ以上のシールドは、プラズマが形成されるときに構造的完全性を維持する。ガス入口開口部322に最も近接している1つ以上のシールド326のうちの1つ(例えば、シールド334C)は、例えば、ガス入口開口部から最も遠い1つ以上のシールドのうちの最も遠い1つ(例えば、シールド334A)よりも低い溶融温度を有することができる。ソース材料がハロゲン化合物である例では、シールド334Cは、ドーパント金属またはドーパントを含むセラミックを含むことができ、残りのシールドの1つ以上(例えば、シールド334A、334B)は、耐火性材料、セラミックまたはグラファイトを含むことができる。
【0054】
従って、本開示は、(例えば、ソースガスまたは分子の温度感受性に基づいて)ガス入口開口部322を覆うように、またはガス入口開口部に近接して、1つ以上のシールド326を配置することによって、ガス入口開口部に近接する表面または領域が、プラズマカラム318、カソード310(例えば、間接加熱カソードまたはIHC)、アークチャンバボディ306、またはリペラー312に関連する熱からそれに応じて保護されることを理解する。1つ以上のシールド326はまた、例えば、一般に、その領域における局所的な高圧に起因するガス入口開口部322またはその近傍におけるプラズマの形成を防止し、従って、ガス入口開口部を取り囲む領域または領域の温度を低下させ、および/または入口開口へのプラズマの侵入を防止する。1つ以上のシールド326は、例えば、タンタルのような伝熱率の低い耐火性材料を含み得るか、またはそれらで構成され得る。あるいは、1つ以上のシールド326は、タングステン、モリブデン、グラファイト、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの他の様々な材料を含みうるか、またはそれらで構成され得る。
【0055】
別の実施例に従って、1つ以上のシールド326の構成(例えば、長さ、幅、高さ、形状など)は、少なくとも部分的に、ガス入口開口部322を介してイオン源300に導入されるガスの温度感受性に基づくことができる。1つ以上のシールド326は、平面状で良く、または湾曲または釣鐘状などの任意の非平面状で良い。別の例では、1つ以上のシールド326の幅および高さは、プラズマカラム318からガス入口開口部322への見通し線を覆うか、または概ね防ぐように、千鳥状または階段状の構成を有してよい。
【0056】
1つ以上のシールド326は、例えば、1つ以上のねじ、スタンドオフ、クランプ、干渉嵌め部材、スロットなどの1つ以上の締結具328を介して、アークチャンバボディ306または1つ以上のライナー320に結合される。1つ以上の締結具328は、例えば、耐火性材料、セラミックまたはグラファイトのうちの1つ以上を含み、またはそれらで構成され、それによって、1つ以上の締結具は、高温ガス、およびフッ素ガスのような反応性ガスに耐えるように構成され、低い不純物レベルを有する。1つ以上の締結具328は、例えば、タンタルのような伝熱率の低い材料から構成され、それにより、熱は、アークチャンバボディ306または1つ以上のライナー320に容易に伝達されない。
【0057】
一例では、1つ以上のライナー320は、2つの端部片が1つ以上の放射シールドを介して一緒に橋渡しされ得るように構成され得る。1つ以上のライナー320のうちの1つ以上は、例えば、ガス入口開口部322の1つ以上の側面に機械加工された、または他の方法で画定された少なくとも1つの熱遮断部388を備えることができる。別の例では、熱遮断部388は、ガス入口開口部322の周囲に機械加工され得る。1つ以上のライナー320は、質量およびその後の熱移動をさらに低減するように、ガス入口開口部322に近接して薄くすることもできる。図示されていないが、1つ以上のライナー320は、一体型のU字形ライナー(例えば、2つの側部ライナーと後部ライナーとが組み合わされてU字形ライナーを形成する)を構成することができ、1つ以上のシールド326のうちの1つ以上が、ガス入口開口部322を覆うように配置されることができる。1つ以上のライナー320は、例えば、平坦であるか、またはプラズマに最も近いシールドの様々な輪郭に沿う形状であり得る。アークチャンバボディへの熱移動をさらに低減するために、様々な基礎となるU字形状のライナーを、間隔を空けて配置することができる。
【0058】
本開示は、例えば、このように、ガス入口開口部に近接する様々な構成要素の温度を低下させ、および/または、アークチャンバの余剰の部分よりも高い圧力の領域になり得るガス入口開口部の領域にプラズマが流れるのを概ね防止するための1つ以上の熱シールドを提供する。したがって、本開示は、塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)、ジボラン、ハロゲン化合物または他のそのようなガスのようなガスを導入する場合など、様々な熱的に不安定な安定ガスをアークチャンバに導入する場合に特に適用可能である。例えば、DMACは、高出力装置でアルミニウムイオンを注入するためのアルミニウム源として利用することができる。
【0059】
本開示は、高反応性ガスがアークチャンバに導入される様々な用途にも適用可能であることに留意されたい。このような用途において、本開示は、フッ素がタングステンと反応して揮発性のWFxを形成するような、高温および高反応性ガスが存在する場合に従来見られた懸念を改善する。例えば、フッ素、XeF2などの高反応性ガス、または他の高反応性ガスは、ガス入口開口部を通して供給されることができ、本開示の1つ以上のシールドは、ガス入口開口部の領域を有利に保護する。
【0060】
図10は、アルミニウムイオンをワークピースに注入するための例示的な方法400を示す。例示的な方法が一連の工程または事象として本明細書に図示され、説明されているが、本開示に従って、いくつかのステップが異なる順序で、および/または本明細書に図示され、説明されたものとは別の他のステップと同時に起こり得るので、本開示はそのような工程または事象の図示された順序によって限定されないことがさらに理解されるであろう。加えて、本開示に従った方法論を実施するために、図示されたすべてのステップが必要であるとは限らない。さらに、本方法は、本明細書において図示および説明されるシステムだけでなく、図示されない他のシステムに関連付けても実施され得ることが理解されるであろう。
【0061】
例示的な一態様に従って、
図4の工程402において、ガスは、ガス入口開口部を通してイオン源のアークチャンバに供給される。ガスは、一例では、塩化ジメチルアルミニウム(DMAC)の形態のガス状イオン源材料から構成され得る。ガス状イオン源材料は、例えば、低圧ボトル(例えば、約10~15torr)内に供給することができ、これにより、DMACは、ガスとして低圧ボトルからガス入口開口部を通してアークチャンバに流される。工程404において、ガス入口開口部は遮蔽される。例えば、上述したように、1つ以上のシールドはアークチャンバに設けられる。工程406では、イオン源材料がイオン源内で電離され、イオンが生成される。工程408では、イオンをイオン源から抽出してイオンを含むイオンビームを形成し、工程410では、アルミニウムイオンをワークピースに注入する。
【0062】
本開示を特定の実施形態または実施形態に関して示し、説明してきたが、上述の実施形態は本開示のいくつかの実施形態の実施例として役立つに過ぎず、本開示の適用はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、上述した構成要素(アセンブリ、デバイス、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、別段の指示がない限り、ここに例示される本開示の例示的な実施形態において機能を実行する開示された構造と構造的に等価でなくても、説明された構成要素の指定された機能を実行する(すなわち、機能的に等価である)任意の構成要素に対応することが意図される。加えて、本開示の特定の特徴は、いくつかの実施形態のうちの1つに関してのみ開示されている可能性があるが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途に対して所望され、かつ有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。したがって、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図される。
【国際調査報告】