IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングスの特許一覧

特表2024-542948プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム
<>
  • 特表-プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム 図1
  • 特表-プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム 図2
  • 特表-プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム 図3
  • 特表-プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム 図4
  • 特表-プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム 図5
  • 特表-プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】プロゲステロン代謝産物を測定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20241112BHJP
   G01N 33/74 20060101ALI20241112BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N33/74
H01J49/00 310
H01J49/00 360
H01J49/00 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523428
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 US2022048078
(87)【国際公開番号】W WO2023076509
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/272,517
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホルムキスト, ブレット
(72)【発明者】
【氏名】モア ケレメン, メアリー キャサリン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA12
2G041GA03
2G041GA09
2G041HA01
2G045AA25
2G045AA26
2G045AA27
2G045CA26
2G045DA54
2G045FA36
2G045FB06
(57)【要約】
生物試料中のプロゲステロンスルファートなどのプロゲステロン代謝産物の検出および/または分析のために液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)を使用する方法およびシステムを開示する。場合によっては、プロゲステロンスルファート量を使用して、皮膚の妊娠性掻痒症が(ICP)の初期徴候であるのか、あるいは良性妊娠性掻痒症に起因するのかを区別し得る。上記システムは、必要に応じて、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析によって被験体由来の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する方法であって、(a)前記プロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前記1またはそれを超えるプリカーサーイオンの1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成された1またはそれを超えるプリカーサーイオンまたは工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前記検出されたイオンを、前記試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量と関連付ける工程を含む、方法。
【請求項2】
前記プロゲステロン代謝産物がプロゲステロンスルファートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロゲステロンスルファートが、5β-プレグナン-3α,20α-ジオールスルファート(PM3S);5α-プレグナン-3α-オール-20-オンスルファート(PM4S);5α-プレグナン-3β-オール-20-オンスルファート(PM5S);5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM2DiS);または5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM3DiS)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記質量分析が多重反応モニタリングタンデム質量分析である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
PM3Sを、399.400→97.100のトランジションを使用して測定する;PM5Sを、397.3→97.0のトランジションを使用して測定する;PM4Sを、397.2→97.0のトランジションを使用して測定する;PM2DiSを、479.098→381.2+479.099→381.2+479.100→381.2+479.101→381.2+479.102→381.2のトランジションの合計を使用して測定する;PM3DiSを、479.098→399.1+479.099→399.1+479.100→399.1+479.101→399.1+479.102→399.1のトランジションのトランジションの合計を使用して測定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料を、質量分析前に精製工程に供する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記精製工程が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精製工程が、前記試料の希釈および/またはタンパク質沈殿のうちの少なくとも1つを含む、請求項6~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
PM3Sを個別に測定し、PM4SおよびPM5Sを同時に測定し、PM2DiSおよびPM3DiSを同時に測定する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
安定同位体で標識された内部標準の添加をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記安定同位体で標識された内部標準が、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]スルファート(PM3S-d)、5α-プレグナン-3β-オール-20-オン-[2,2,4,4-d4]スルファート(PM5S-d)、5α-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート(PM2DiS-d)、または5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート(PM3DiS-d)のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料がヒトの血清または血漿である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記プロゲステロンスルファートの定量下限(LLOQ)が、100μLの試料あたり1ngである、請求項2~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記プロゲステロンスルファートの定量上限(ULOQ)が、100μLの試料あたり500ngである、請求項2~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
プロゲステロンスルファート量を使用して、皮膚の妊娠性掻痒症が(ICP)の初期徴候であるのか、あるいは被験体における良性妊娠性掻痒症に起因するのかを区別する、請求項2~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
被験体由来の試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのシステムであって、前記システムは、
目的のプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試験試料を提供するためのステーションおよび/または構成要素;
1またはそれを超えるプリカーサーイオンおよび1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成するために目的のプロゲステロン代謝産物を断片化するための質量分析用のステーションおよび/または構成要素;ならびに前記試料中の目的のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのステーションおよび/または構成要素
を含む、システム。
【請求項17】
前記目的のプロゲステロン代謝産物がプロゲステロンスルファートである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記試料中の前記目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションおよび/または構成要素をさらに含む、請求項16~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記試料中の前記目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離するためのステーションおよび/または構成要素をさらに含む、請求項16~18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
コンピュータプログラム製品であって、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前記1またはそれを超えるデータプロセッサに、(a)プロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前記1またはそれを超えるプリカーサーイオンの1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成されたプリカーサーイオンのうちの1つまたは複数または工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前記検出されたイオンを、前記試料中のプロゲステロンの代謝産物の存在または量と関連付ける工程のうちの少なくとも1つの工程を指示する操作を実施させる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本明細書中に開示の発明の主題は、プロゲステロン代謝産物バイオマーカーを分析するための方法およびシステムに関する。ある特定の実施形態では、臨床診断のためにバイオマーカーの測定を使用し得る。
【背景技術】
【0002】
背景
ホルモン、ビタミン、および代謝産物などのバイオマーカーを、ある特定の障害のスクリーニングまたは診断のために使用することができる。例えば、プロゲステロンの種々の代謝産物は、閉経および乳癌などの種々の生理学的状態の重要な指標であり得る。さらに、プロゲステロン代謝産物は、排卵および健康な妊娠の維持能力で役割を果たし得る。したがって、産科における課題は、病的徴候を認識の正常の変化に関連する徴候と区別することである。プロゲステロン代謝産物(ある特定のプロゲステロンスルファートが挙げられる)は、妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)などの妊娠合併症および前述の合併症から生じ得る合併症(胎児死亡、早期産、および/または医原性早期産など)を軽減するための種々の治療化合物の有効性の良好な指標であり得る。例えば、場合によっては、皮膚の妊娠性掻痒症がICPの初期徴候であるのか、あるいは良性妊娠性掻痒症に起因するのかを識別することは重要である(Hayyeh et al.,Hepatology 63:1287-1298(2016))。ICPは、血清胆汁酸の上昇を特徴とし、自発性の早期分娩および死産を合併する。ICPのバイオマーカーは、早期診断および処置に非常に重要であり、他の母体の疾患と識別することが可能であろう。プロゲステロンスルファートの測定により、産科ケアを高リスク集団に標的集中することができる。
したがって、プロゲステロン代謝産物の測定のために使用することができる分析技術を開発することが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Hayyeh et al.,Hepatology 63:1287-1298(2016)
【発明の概要】
【0004】
要旨
いくつかの実施形態では、質量分析によって試料中のプロゲステロンの代謝産物の存在または量を決定する方法を開示する。1つの実施形態では、タンデム質量分析(MS/MS)を使用する。この方法は、(a)プロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンの1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;および(c)工程(a)で生成された1またはそれを超えるプリカーサーイオンまたは工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程を含み得る。1つの実施形態では、検出されたイオンを使用して、試料中のプロゲステロン代謝産物の量を決定する。ある特定の実施形態では、プロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。ある特定の実施形態では、質量分析はタンデム質量分析である。
【0005】
本明細書中に開示の方法または方法の工程のうちのいずれかを実施するためのシステムも開示する。ある特定の実施形態では、システムは、試料を提供するためのステーションおよび/または構成要素;必要に応じて、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションおよび/または構成要素;必要に応じて、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離するためのステーションおよび/または構成要素;プロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンおよび1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成するための質量分析用のステーションおよび/または構成要素;ならびに試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するために質量スペクトルを分析するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、ある特定のステーションまたは構成要素は、単一のステーションおよび/または構成要素として組み合わせられている。ある特定の実施形態では、プロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。ある特定の実施形態では、ステーションのうちの少なくとも1つは、コンピュータによって制御され得る。
【0006】
開示のシステムまたは開示のシステムの任意の部分(例えば、構成要素)が動作し、そして/または開示の方法のうちのいずれかの1つの工程または複数の工程を実施するように構成された命令を含む、非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータプログラム製品も開示する。
【0007】
図面の簡単な説明
本開示は、以下の制限されない図面を参照してより理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の1つの実施形態によるプロゲステロン代謝産物の定量分析法のフローチャートを示す。
【0009】
図2図2は、本開示の1つの実施形態によるプロゲステロン代謝産物の定量分析のためのシステムを示す。
【0010】
図3図3は、本開示の種々の実施形態による例示的な計算装置を示す。
【0011】
図4図4は、本開示のある特定の実施形態によるTurbo Spray LC-MS/MSを使用した399.400→97.100トランジションの分析物のピークを示すPM3S多重反応モニタリング(MRM)クロマトグラム(10対)を示す。
【0012】
図5図5は、本開示のある特定の実施形態によるPM5Sについての397.3→97.0トランジションの分析物ピークおよびPM4Sについての397.2→97.0トランジションの分析物ピークを示すPM4SおよびPM5SのMRMクロマトグラムを示す。
【0013】
図6図6は、本開示のある特定の実施形態によるPM2DiSについての479.098→381.2+479.099→381.2+479.100→381.2+479.101→381.2+479.102→381.2トランジションの合計の分析物ピークおよびPM3DiSについての479.098→399.1+479.099→399.1+479.100→399.1+479.101→399.1+479.102→399.1トランジションの合計の分析物ピークを示すPM2DiSおよびPM3DiSのMRMクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
開示の発明の主題は、開示の発明の主題の全てではないがいつかを示す以下の添付の説明および図面を参照した後に直ちにより完全に記載されるであろう。開示の発明の主題は、多数の異なる形態で具体化することができ、本明細書中に記載の実施形態に制限されると解釈されないものとする。全体を通して、同一の数字は同一の要素を指す。
【0015】
開示の発明の主題が属する分野の当業者は、説明および関連する図面に存在する技術の利点を有する本明細書中に記載の開示の発明の主題の多数の修正形態および他の実施形態を編み出すであろう。したがって、本開示の発明の主題が本明細書中に開示の特定の実施形態に制限されず、修正形態および他の実施形態が添付のクレームの範囲内に含まれることが意図されると理解すべきである。具体的な用語を本明細書中で使用しているが、これらの用語は一般的および説明的な意味でのみ使用され、本発明の制限を目的としない。さらに、「本明細書中で援用される」と言及された任意の参考文献は、その全体が援用されると理解すべきである。
定義および説明
【0016】
以下の用語は当業者に十分に理解されていると考えられるが、ここに開示した主題の説明を容易にするために、以下に定義を記載する。他の定義は、本明細書を通して見出される。別段の定義がない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、ここに記載の主題が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。
【0017】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載された数値は、可能である程度の正確さで報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定値で見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書中に開示の全ての範囲は、その範囲に包括されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるものとする。例えば、1から10までの範囲の記載は、最小値1と最大値10の間(およびその両端を含む)のありとあらゆる部分範囲;すなわち、1またはそれを超える最小値(例えば、1~6.1)で始まり10またはそれ未満の最大値(例えば、5.5~10)で終わるすべての部分範囲を含むと見なされるべきである。
【0018】
用語「a」、「an」、および「the」は、クレームを含む本出願で使用される場合、「1またはそれを超える」を指す。したがって、例えば、「a cell」との言及には、例えば、文脈上逆の意味を明確に示さない限り(例えば、複数の細胞)、複数のかかる細胞が含まれる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「AMR」または「分析測定範囲」は、いかなる希釈、濃縮、または有用なアッセイプロセスの一部ではない他の前処理を行うことなく、方法によって標本を直接測定することができる分析物の値の範囲である。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「分析カラム」は、試験試料マトリックスの構成要素を分離するのに十分なクロマトグラフィー用プレートを有するクロマトグラフィーカラムを指す。好ましくは、分析カラムから溶離された構成要素を、目的の分析物(複数可)の存在または量を決定可能な様式で分離する。いくつかの実施形態では、分析カラムは、平均粒径が約5μmまたはそれ未満の粒子を含む。いくつかの実施形態では、分析カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリス型シリカ固定相(フェニル-ヘキシル官能化分析カラムなど)である。分析カラムを、さらなる精製または分析のために保持材料を非保持材料から分離または抽出して「精製された」試料を得るために典型的に使用される「抽出カラム」と区別することができる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「分析物」は、測定可能な量という名目で示される構成要素である。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「分析妨害」は、検出試薬またはシグナル自体のいずれかと特異的または非特異的に反応する物質の存在に起因した分析物の見かけ上の濃度、活性、または強度の人為的な増加または減少を指す。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「大気圧化学イオン化」または「APCI」は、大気圧下でプラズマ内に生じるイオン-分子反応によってイオンを生成する質量分析法を指す。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極との間の放電によって維持される。次いで、イオンを、典型的には、一連の差動的にポンピングされたスキマーステージを使用することによって質量分析器に引き出す。加熱および事前加熱されたNガスの向流を使用して、溶媒の除去を改善し得る。APCIにおける気相イオン化は、極性の低い種の分析にはESIよりも有効であり得る。
【0024】
本明細書中で使用される用語「大気圧光イオン化」または「APPI」は、分子Mの光イオン化機構が分子M+を形成するための光子吸収および電子放出である質量分析形態を指す。光子エネルギーが典型的にはイオン化電位のすぐ上にあるので、分子イオンは解離の影響を受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィーを必要とせずに試料を分析することが可能である場合があり、したがって、時間と費用が大幅に節約される。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを引き出してMH+を形成することができる。Mのプロトン親和性が高い場合にこの形成が起こる傾向がある。この形成は、M+とMH+の合計が一定であるので、定量正確度に影響を及ぼさない。プロトン性溶媒中の化合物は、通常はMH+として観察されるのに対して、非極性化合物は通常はM+を形成する(例えば、Robb et al.,Anal.Chem.72(15):3653-3659(2000)を参照のこと)。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「生物試料」は、生物学的供給源(動物、細胞培養物、および臓器培養物などが挙げられるが、これらに限定されない)から得た試料を指す。好適な試料としては、無細胞DNA、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙、鼻咽頭スワブ、脳脊髄液、臓器、毛髪、筋肉、または他の組織試料が挙げられる。
【0026】
本明細書中で使用される用語「化学的イオン化」は、試薬ガス(例えば、アンモニア)を電子衝撃に供し、分析物のイオンが試薬ガスイオンと分析物分子の相互作用によって形成される方法を指す。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「クロマトグラフィー」は、液体または気体によって運搬される化学物質の混合物が、化学物質が液体または固体の固定相の周囲または上部を流れた場合の化学物質の分布の相違の結果として構成要素に分離されるプロセスを指す。
【0028】
本明細書中で使用される用語「電子イオン化」は、気相または蒸気相中の目的の分析物が電子流と相互作用する方法を指す。分析物との電子の衝撃により分析物イオンが生成され、次いで、質量分析技術に供され得る。
【0029】
本明細書中で使用される用語「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」は、溶液が短尺の細管に沿って通過し、細管の端部に正または負の高電位が印加される方法を指す。細管の末端に到達した際に、溶液は気化(噴霧化)されて、溶媒蒸気中で非常に小さな液滴のジェットまたはスプレーとなり得る。この液滴のミストは、凝結を防止し、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱された蒸発室を流れることができる。液滴が小さくなるに従って表面電荷密度が増加し、やがて同一電荷間で自然反発して、イオンおよび中性分子が放出される。
【0030】
本明細書中で使用される用語「電界脱離」は、不揮発性の試験試料をイオン化表面に配置し、強電界を使用して分析物イオンを生成する方法を指す。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「HPLC」または「高速液体クロマトグラフィー」は、移動相を加圧下で強制的に固定相(典型的には高密度に充填されたカラム)に通過させることによって分離度を増大させる液体クロマトグラフィーを指す。クロマトグラフィー用カラムは、典型的には、化学的部分の分離(すなわち、分画)を容易にするための担体(すなわち、充填剤)を含む。担体は、微粒子を含み得る。粒子は、本明細書中に記載の実験で定量されるバイオマーカー分析物などの化学的部分の分離を容易にするために種々の化学的部分と相互作用する結合表面を含む。1つの好適な結合表面は、アルキル結合表面などの疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C-4、C-8、またはC-18結合アルキル基、好ましくはC-18結合基を含み得る。クロマトグラフィー用カラムは、試料を受け入れるための入口および分画した試料を含む流出物を排出するための出口を含む。この方法では、試料(または予め精製された試料)を、カラムの入口にアプライし、溶媒および溶媒混合物を用いて溶離し、出口から排出し得る。異なる溶媒モードを、異なる目的の分析物を溶離するために選択し得る。例えば、液体クロマトグラフィーを、勾配モード、定組成モード、または多型(すなわち、混合)モードを使用して行い得る。
【0032】
本明細書中で使用される用語「イオン化」および「イオン化すること」は、1またはそれを超える電子数と等価な正味の電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを指す。陰イオンは、1またはそれを超える電子数の正味の電荷が負のイオンであり、一方で、陽イオンは1またはそれを超える電子数の正味の電荷が正のイオンである。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「イオン合計」または「シグナル合計」は、信号対雑音比を増加させる様式での本質的に同一のトランジションの個別のクロマトグラム(例えば、タンデム質量分析)を合計する手法を指す。同一サイクル時間における複数のトランジションをプログラミングすることにより、個々のトランジションについての滞在時間が減少し、各々のトランジションについてのシグナルの強度がほぼ同一であるにもかかわらず、シグナルを合計することが可能である。ノイズが無作為であるので、シグナルの反復物を合計するとシグナルはおよそ線形に増加する一方で、ランダムノイズは減少するであろう(例えば、Pauwels et al.,Anal.Bioanal.Chem.,407:6191-6199(2015)を参照のこと)。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「妨害」は、分析物を正確に測定することができるようにするための、例えば、溶血、脂肪血症、および/または黄疸に起因する試料中の非分析物の存在による負の影響を指す。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「液体クロマトグラフィー」または「LC」は、流体が微粉化物質のカラムまたは細管通路を通じて均一に浸透する際に、流動物の1またはそれを超える構成要素が選択的に遅延するプロセスを意味する。バルク流体は固定相(複数可)と相対的に移動するので、遅延は、1またはそれを超える固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物の構成要素の分配に起因する。液体クロマトグラフィーとしては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「LOD」または「検出限界」は、記載の確率で検出することができる試料中の分析物の最少量である。典型的には、LODを、試料の低測定値のブランク上限(LOB)+1.645×SD(または2×SD)として表す。また、本明細書中で使用される場合、「LLOQ」または「定量下限」は、記載の許容され得る精度および正確度を用いて定量することができる試料中の分析物の最少量である。
【0037】
本明細書中で使用される用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」は、不揮発性試料をレーザー照射に供し、それにより種々のイオン化経路(光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスター崩壊が挙げられる)によって試料中の分析物を脱離およびイオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料をエネルギー吸収マトリックスと混合し、分析物分子の脱離を容易にする。
【0038】
本明細書中で使用される用語「質量分析」または「MS」は、一般に、イオンの質量電荷比、すなわち「m/z」に基づいてイオンをフィルタリング、検出、および測定する方法を指す。MS技術では、1またはそれを超える目的の分子をイオン化し、その後にイオンを質量分析計に導入し、ここで、電界の組み合わせに起因して、イオンが質量(「m」)および電荷(「z」)に依存した経路の空間を進む。用語「タンデム質量分析」または「MS/MS」は、第一段階で分子がイオン化されて親(またはプリカーサー)イオンを形成し、これらのイオンがその質量電荷(m/z)比によって分離される質量分析型を指す。次いで、特定のm/zの親イオンを選択および断片化して、娘(またはプロダクトまたは断片)イオンを形成し、次いで、娘イオンをそのm/z比によって分離する。トリプル四重極質量分析計は、第1および第3の四重極をマスフィルタとして使用し、第2の四重極を、例えば、衝突誘起脱離、イオン化、または本明細書中で考察した他の技術による断片化のために使用する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「オンライン」は、システム内の種々の構成要素が動作的に連結されており、いくつかの実施形態では、流体が相互に連通している、システム中に試験試料を配置する(例えば、注入する)ような方法で実施される精製または分離工程を指す。オンラインという用語と対照的に、用語「オフライン」は、事前および/またはその後の精製もしくは分離工程および/または分析工程と分離して行われる精製、分離、または抽出を指す。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「精度」を、標準偏差(SD)および/またはパーセント変動係数(%CV)として表す。「ラン内精度」は、同一の測定の連続的な測定結果の間の一致の近さであり、同一の測定条件(同一の分析ラン)下で行われる。「ラン間精度」は、規定された条件下(異なる分析の実施および/またはオペレータ、研究所、施設、試薬のロット、構成装置など)で得た独立した試験結果の間の一致の近さである。
【0041】
本明細書中で使用される場合、プロゲステロン代謝産物は、生化学的機序によるプロゲステロン由来の化合物である。プロゲステロンスルファートは、少なくとも1つの硫酸基を有するプロゲステロン代謝産物である。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「精製する」または「分離する」またはこれらの派生語は、試料マトリックスからの目的の分析物(複数可)以外の材料の全ての除去を必ずしも指さない。その代わりに、いくつかの実施形態では、精製するまたは分離するという用語は、試料マトリックス中に存在する1またはそれを超える他の構成要素と比較して1またはそれを超える目的の分析物の量を富化させる手順を指す。いくつかの実施形態では、「精製」または「分離」手順を使用して、分析物の検出を妨害し得る試料の1またはそれを超える構成要素、例えば、質量分析による分析物の検出を妨害し得る1またはそれを超える構成要素を除去することができる。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「選択性」は、試料内に見出される可能性がある他の物質が寄与することなく目的の分析物を正確に測定する測定手順の能力を指す。選択性を、目的の分析物の存在下での目的の分析物以外の物質に対する交差反応性および/または応答と表し得る。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「選択反応モニタリング」または「SRM」は、特定の質量のイオンをタンデム質量分析計の第1段階で選択し、プリカーサーイオンの断片化反応のイオン生成物を質量分析計の第2段階で選択する質量分析における技術である。対照的に、「多重反応モニタリング」または「MRM」は、1またはそれを超えるプリカーサーイオン由来の複数のプロダクトイオンへのSRMの適用である。例えば、1またはそれを超える異なるプリカーサーイオンが第1段階で形成されるMRMでは、前述のイオンが連続的に選択され、複数のプロダクトイオンが検出され得る。SRMは、単一の固定された質量枠のみをモニタリングする一方で、MRMは、複数の断片イオン質量の軌跡を並行して取得するために複数の狭い質量枠を迅速にスキャンする。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「特異性」は、目的の分析物が試料内に見出される可能性がある物質と共に存在する場合に、測定手順が目的の分析物を判別する能力を指す。特異性を、目的の分析物の非存在下での目的の分析物以外の物質に対する交差反応性および/または応答率として表し得る。
【0046】
本明細書中で使用される用語「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」は、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、それにより種々のイオン化経路(光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスター崩壊が挙げられる)によって試料中の分析物を脱離およびイオン化する方法を指す。SELDIの場合、試料を、典型的には、1またはそれを超える目的の分析物を優先的に保持する表面に結合させる。MALDIと同様に、このプロセスもイオン化を容易にするためにエネルギー吸収材料を使用し得る。
【0047】
本明細書中で使用される用語、「被験体」は動物を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、試料を、哺乳動物(イヌ、ネコ、ウマ、ラット、およびサルなどが挙げられるが、これらに限定されない)から得る。いくつかの実施形態では、試料を、ヒト被験体から得る。場合によっては、ヒト被験体は、妊婦である。いくつかの実施形態では、被験体は、患者、すなわち、自ら臨床の場で疾患または症状の診断、予後、または処置を訴えている生きているヒトである。いくつかの実施形態では、試料は、生物試料ではなく、例えば、ビタミンの製造または実験室での分析中に得られ、製造および/または分析プロセスの組成および/または収量を決定するために分析することができる非生物試料を含む。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「ULOQ」または「定量上限」は、希釈することなく定量することができる試料中の分析物の最大量である。
プロゲステロンスルファートを検出する方法
【0049】
本開示の実施形態は、プロゲステロン代謝産物バイオマーカーの定量分析のための方法およびシステムに関する。本開示は、種々の方法で具体化され得る。
【0050】
1つの実施形態では、質量分析によって被験体由来の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する方法であって、(a)前述のプロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンから1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成されたプリカーサーイオンのうちの1つまたは複数または工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前述の検出されたイオンを、前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量と関連付ける工程を含む、方法を開示する。ある特定の実施形態では、方法は、以下を含み得る:少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試料を準備する工程;必要に応じて、前述の試料中の前述の少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離する工程;質量分析を使用して、前述のプロゲステロン代謝産物に特異的な1またはそれを超えるプリカーサーイオンおよび前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンに由来するもう1つのプロダクトイオンを生成する工程;および前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する工程。
【0051】
ある特定の実施形態では、プロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。種々の実施形態では、プロゲステロン代謝産物としては、5β-プレグナン-3α,20α-ジオールスルファート(PM3S);5α-プレグナン-3α-オール-20-オンスルファート(PM4S)および/または5α-プレグナン-3β-オール-20-オンスルファート(PM5S);および/またはジプロゲステロンスルファート(5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM2DiS)および/または5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM3DiS)など)のうちの少なくとも1つが挙げられ得る。プロゲステロン代謝産物について本明細書中で互換可能に使用されるさらなる名称としては、以下が挙げられ得る:PM2DiS(アロプレグナンジオールジスルファート):5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート;PM3S(プレグナンジオールスルファート):5β-プレグナン-3α,20α-ジオールスルファート;PM3DiS(プレグナンジオールジスルファート):5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート;PM4S(アロプレグナノロンスルファート):5α-プレグナン-3α-オール,20-オンスルファート;またはPM5S(エピアロプレグナノロンスルファート):5α-プレグナン-3β-オール,20-オンスルファート。
【0052】
1つの実施形態では、試料を、タンデム質量分析(MS/MS)によって測定し得る。ある特定の実施形態では、トリプル四重極タンデム質量分析を使用し得る。ある特定の実施形態では、必要に応じてトランジションイオン合計を使用した多重反応モニタリング(MRM)を使用し得る。
【0053】
分析物(すなわち、目的のプロゲステロン代謝産物)を、質量分析前に部分精製し得る。したがって、1つの実施形態では、プリカーサーイオンを生成する工程(a)の前に試料を精製工程に供する。例えば、ある特定の実施形態では、試料をタンパク質の希釈および/または沈殿に供する。あるいは、液液抽出(LLE)を使用し得る。あるいは、固相抽出(SPE)を使用し得る。
【0054】
ある特定の実施形態では、試料を、精製のためのクロマトグラフィーに供し得る。1つの実施形態では、クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィー(LC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはハイスループットクロマトグラフィー(HTLC)である。したがって、種々の液体クロマトグラフィー分離技術を使用し得る。例えば、LC工程は、1回のLC分離、または複数回のLC分離を含み得る。1つの実施形態では、クロマトグラフ分離は、抽出および分析液体クロマトグラフィーを含む。本明細書中で考察されるように、ある特定の実施形態では、分析クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含み得る。ある特定の実施形態では、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)(ハイスループット液体クロマトグラフィーとしても公知)を使用し得る。さらに、および/またはあるいは、他のクロマトグラフ精製タイプを使用し得る。
【0055】
また、ある特定の実施形態では、本開示の方法は、複数の液体クロマトグラフィー工程を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、二次元液体クロマトグラフィー(LC)手順を使用する。例えば、1つの実施形態では、この方法は、目的のバイオマーカーをLC抽出カラムから分析カラムに移動させることを含み得る。1つの実施形態では、少なくとも1つの目的のバイオマーカーの抽出カラムから分析カラムへの移動を、ハートカッティング技術によって行う。別の実施形態では、目的のバイオマーカーを、クロマトフォーカシング技術によって抽出カラムから分析カラムへ移動させる。あるいは、目的のバイオマーカーを、カラム切り替え技術によって抽出カラムから分析カラムへ移動させる。これらの移動工程は、手作業で行い得るか、オンラインシステムの一部であり得る。必要に応じて、抽出カラムを、本明細書中に記載の方法およびシステムで使用しなくてよい。
【0056】
したがって、ある特定の実施形態では、方法は、(a)プロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試料を提供する工程;(b)試料の希釈および/またはタンパク質沈殿によって試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製する工程;(c)プロゲステロン代謝産物を分析カラムに移動させ、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離する工程;および(d)前述のクロマトグラフィーで分離したプロゲステロン代謝産物を質量分析によって分析して、試験試料中の1またはそれを超えるバイオマーカーの存在または量を決定する、分析する工程を含み得る。1つの実施形態では、質量分析はタンデム質量分析である。
【0057】
ある特定の実施形態では、5つの別個のプロゲステロン代謝産物(例えば、PM3S、PM4S、PM5S、PM2DiS、およびPM3DiS)を、希釈およびタンパク質沈殿後にタンデム質量分析検出(LC-MS/MS)を用いた液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
【0058】
ある特定の実施形態では、ある特定のプロゲステロン代謝産物を、共に(すなわち、同一のアッセイで同時に)または個別に(すなわち、異なるアッセイで)測定し得る。例えば、ある特定の実施形態では、PM3Sを、あるアッセイ(「PM3S」アッセイ)において個別に測定する。また、ある特定の実施形態では、一流酸塩PM4SおよびPM5Sを、あるアッセイ(「MPMS」アッセイ)において共に測定する。また、ある特定の実施形態では、二硫酸塩PM2DiSおよびPM3DiSを、あるアッセイ(「PMDiS」アッセイ)において共に測定する。かかる実施形態では、3つのアッセイは、別々の標準、品質コントロール(QC)材料、内部標準、および液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法を使用し得る。しかしながら、試料処理における工程は、3つ全てのアッセイについて同一であり得る。
【0059】
方法は、内部標準の使用を含み得る。内部標準は、安定同位体で標識した目的のプロゲステロン代謝産物の分析物を含み得る。ある特定の実施形態では、安定同位体は、重水素(d)であり得る。あるいは、他の同位体を使用し得る。例えば、ある特定の実施形態では、内部標準(複数可)は、以下のうちの少なくとも1つを含み得る:PM3S-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM5S-d(すなわち、5α-プレグナン-3β-オール-20-オン-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM2DiS-d(すなわち、5α-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート);および/またはPM3DiS-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート)。かかる標準を、合成および/または購入し得る。
【0060】
したがって、ある特定の実施形態では、プロゲステロンスルファートの安定同位体で標識された内部標準(PM3S-d、PM5S-d、PM2DiS-d、および/またはPM3DiS-d)を標準、品質コントロール、および患者試料(例えば、血清アリコート)に添加して、各々の試料からの別個のプロゲステロンスルファートの回収率を評価および補正し得る。標準、対照試料、および患者試料を希釈し、次いで、タンパク質沈殿および/または他の精製工程に供する。次いで、試料(すなわち、試料、対照、および/または標準)の一部を、再構成前の乾燥によって濃縮し得る。
【0061】
次いで、各々の患者および検定物質由来の最終生成物を、タンデム質量分析を用いたHPLCによって分析し得る。ある特定の実施形態では、試料をARIA TX4システムに注入し、目的の分析物(複数可)を勾配分離による分析カラムによってクロマトグラフィー分析を行う。陰イオンエレクトロスプレーイオン化(ESI)モード(Turboionspray)で操作するAB SCIEX API5000トリプル四重極質量分析計を、検出のために使用し得る。あるいは、本明細書中に記載の他のタイプのイオン化および/または質量分析法を使用し得る。
【0062】
ある特定の実施形態では、各々の試料の逆算量を、マトリックス(例えば、6%ウシ血清アルブミン(BSA))中に既知量のプロゲステロンスルファートをスパイクすることによって作成した二連の検量線から決定し得る。分析物および内部標準を、選択反応モニタリング(SRM)および/または多重反応モニタリング(MRM)で定量し得る。ある特定の実施形態では、イオン合計を使用し得る。
【0063】
モニタリングし得るトランジションの例を表1に列挙する。1つの実施形態では、LC-MS/MS取得は、表3~5でモニタリングされたトランジションを含み得る。あるいは、他のトランジションをモニタリングし得る。当該分野で公知のように、トランジションは機械ごとにわずかに変動する場合があり、機器の調整中に決定される。例えば、ある特定の実施形態では、選択反応モニタリング(SRM)または多重反応モニタリング(MRM)を使用して、親(プリカーサー)イオンおよびプロダクト(すなわち、娘または断片)イオンを選択し得る。親-娘(すなわち、プリカーサー-プロダクトまたはプリカーサー-断片)イオンのために選択するPM3S、MPMS(PM4SおよびPM5S)、およびPMDiS(PM2DiSおよびPM3DiS)についてのMRMスキャンの例を、図4~6にそれぞれ示す。したがって、ある特定の実施形態では、図4に示すように、PM3Sを、399.400→97.100のトランジションについての分析物のピークを使用してMRMによって測定する。さらに、および/またはあるいは、ある特定の実施形態では、図5に示すように、PM4SおよびPM5Sを、PM5Sについては397.3→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用し、PM4Sについては397.2→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用したMRMによって測定する。さらにおよび/またはあるいは、ある特定の実施形態では、PM2DiSおよびPM3DiSを、イオン合計を使用したMRMによって測定する。したがって、図6に示すように、479.098→381.2+479.099→381.2+479.100→381.2+479.101→381.2+479.102→381.2のトランジションの合計をPM2DiSの検出のために使用し、479.098→399.1+479.099→399.1+479.100→399.1+479.101→399.1+479.102→399.1のトランジションの合計をPM3DiSの検出のために使用し得る。
表1
【表1】
【0064】
種々の試料を使用し得る。いくつかの実施形態では、生物試料は、血液、血清、血漿、尿、鼻咽頭スワブ、または唾液を含み得る。ある特定の実施形態では、試料は血清である。例えば、血清を、レッドトップチューブまたはSST管に採取し、凍結し得る。血清を、パープルトップ(EDTA)チューブまたはグリーントップ(ヘパリン)チューブ中に採取し得る。ある特定の実施形態では、最少量で1mLの血清、または2.5mLの血清(例えば、小児被験体用)または5mLの結成(成人用)を使用し得る。
【0065】
ある特定の実施形態では、血漿試料または血清試料のいずれかを使用して、PM3S、PM4S、PM5S、PM2DiS、およびPM3DiSの各々についての100μLの試料アリコートの検出下限(LLOD)は1ng/mLである。より低い体積の試料を使用し得る。したがって、ある特定の実施形態では、PM3S、PM2DiS、およびPM3DiSについては体積20μLを使用し、PM4SおよびPM5Sについては体積10μLを使用し得る。
【0066】
方法は、PM3S、PM4S、PM5S PM2DiS、およびPM3DiSについての1~500ng/mLの分析測定範囲(AMR)(すなわち、LLOQ-ULOQ)にわたるプロゲステロンスルファートの検出を含み得る。PM3S、PM2DiS、およびPM3DiSを、2,500ng/mLの最大量の測定のために5倍まで希釈することができる一方で、PM4SおよびPM5Sを、5,000ng/mLの最大量の測定のために10倍まで希釈することができる。ある特定の実施形態では、各々のプロゲステロンスルファートについてのULOQは約500ng/mLであり、LLOQは1ng/mLである。
【0067】
本開示の方法の例を、図1に示す。したがって、1つの実施形態では、方法100は、生物試料(例えば、プロゲステロンスルファート代謝産物を含むと考えられる血清試料または血漿試料)を提供する工程102を含み得る。
【0068】
次に、内部標準を、試料に添加し得る104。ある特定の実施形態では、プロゲステロンスルファートの安定同位体で標識された内部標準(PM3S-d、PM5S-d、PM2DiS-d、および/またはPM3DiS-d)を、標準、品質コントロール、および患者の血清または血漿アリコートに添加して、各々の試料からの別個のプロゲステロンスルファートの回収率を評価および補正する。
【0069】
次いで、試料(ならびに必要に応じた標準および対照試料)を希釈し106、タンパク質を沈殿させる108ための試薬を添加し得る。例えば、ある特定の実施形態では、試料を6%ウシ血清アルブミン(BSA)中への内部標準(IS)の添加によって希釈し、次いで、アセトニトリルを添加してタンパク質を沈殿させる。次いで、試料抽出物の一部を、再構成前の試料の乾燥によって濃縮し得る。
【0070】
図1をさらに参照して、方法は、試料中のプロゲステロンスルファートを他の構成要素から分離するための手段としての液体クロマトグラフィーをさらに含み得る。ある特定の実施形態では、単一工程のHPLCを使用する110。あるいは、いくつかの実施形態では、2つの液体クロマトグラフィー工程を使用する。例えば、方法は、第1の抽出カラムでの液体クロマトグラフィー(示さず)、その後の第2の分析カラム(例えば、HPLC)への移行を含み得る。あるいは、HTLCを使用し得る。
【0071】
必要に応じて当該分野で公知の種々の分析カラムを使用して、良好に精製し得る。ある特定の実施形態では、分析カラムは、平均粒径約2~3μm(例えば、2.6μm)の粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、分析カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリス型シリカ固定相(フェニル-ヘキシル官能化分析カラムなど)である。あるいは、ある特定の実施形態では、Aria TX4 HTLCシステム(Cohesive Technologies,MA)を使用する。
【0072】
次いで、分離した分析物を、質量分析によって分析する。1つの実施形態では、トリプル四重極タンデム質量分析(MS/MS)を使用し、それにより、イオン化後に1またはそれを超えるプリカーサーイオンを選択し112、1またはそれを超えるプリカーサーイオンをさらなる断片化に供して1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成し114、それにより、1またはそれを超えるプロダクトイオンを検出のために使用する。
【0073】
次いで、目的の分析物を、タンデムMS116によって測定した特徴的なトランジション量に基づいて定量し得る。いくつかの実施形態では、タンデム質量分析計は、トリプル四重極質量分析計を含む。ある特定の実施形態では、Applied Biosystems API5000またはAPI5500をネガティブESIモードで使用し得る。いくつかの実施形態では、タンデム質量分析計は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードで操作される。いくつかの実施形態では、分析物および内部標準を、選択反応モニタリングモード(SRM)で定量する。あるいは、誘導結合プラズマ、またはMALDI、またはSELDI、またはAPPIなどを使用した他のイオン化法をイオン化のために使用し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、各々の試料中の各々の分析物の逆算量を、既知量の精製された分析材料を標準的な試験試料(例えば、チャコール処理済みヒト血清またはBSA)中にスパイクすることによって作成された検量線に対する内部標準を使用した場合の未知試料の応答または応答比の比較によって決定し得る。1つの実施形態では、検定物質を既知濃度で調製し、分析して、濃度検量線に対する内部標準を使用した場合の応答または応答比を得る。
【0075】
開示の方法は、生理学的に関連するレベルでプロゲステロンスルファートを定量することができる。本明細書中で考察されるように、プロゲステロンスルファートレベルは、妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)などの妊娠合併症および前述の合併症から生じ得る合併症(胎児死亡、早期産、および/または医原性早期産など)を軽減するための種々の治療化合物の有効性の重要な指標であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、プロゲステロンスルファート量を使用して、皮膚の妊娠性掻痒症が(ICP)の初期徴候であるのか、あるいは被験体における良性妊娠性掻痒症に起因するのかを区別する。1つの実施形態では、この方法は、PM3S、PM4S、PM5S、PM2DiS、および/またはPM3DiSの血清中の濃度レベルを以下の通りに報告することができる:PM3S:36.0~221ng/mL;および/またはPM4S:44.7~725ng/mL;および/またはPM5S:11.2-223;PM2DiS:37.4~505ng/mL;および/またはPM3DiS:4.912~78.3ng/mL。
プロゲステロンスルファートバイオマーカーを分析するためのシステム
【0076】
他の実施形態では、本開示は、本明細書中に開示の方法の工程のうちのいずれかを実施するためのシステムを含む。例えば、ある特定の実施形態では、試料中の1またはそれを超えるプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのシステムを開示する。ある特定の実施形態では、プロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのシステムは、目的のプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試験試料を提供するためのステーションおよび/または構成要素;少なくとも1つのプリカーサーイオンおよび少なくとも1つのプロダクトイオンを生成するために目的のプロゲステロン代謝産物を断片化するための質量分析計のステーションおよび/または構成要素;ならびに前述の試料中の目的のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。ある特定の実施形態では、システムは、試料中の目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。さらに、および/またはあるいは、システムは、試料中の目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離するためのステーションおよび/または構成要素をさらに含み得る。例えば、システムは、試験試料を提供するためのステーションおよび/または構成要素;必要に応じて、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションおよび/または構成要素;必要に応じて、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離するためのステーションおよび/または構成要素;プロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンおよび1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成するための質量分析用のステーションおよび/または構成要素;ならびに試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するために質量スペクトルを分析するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、ある特定のステーションおよび/または構成要素は、単一のステーションおよび/または構成要素として組み合わせられている。
【0077】
ある特定の実施形態では、プロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。種々の実施形態では、プロゲステロン代謝産物としては、5β-プレグナン-3α,20α-ジオールスルファート(PM3S);5α-プレグナン-3α-オール-20-オンスルファート(PM4S)および/または5α-プレグナン-3β-オール-20-オンスルファート(PM5S);および/またはジプロゲステロンスルファート(5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM2DiS)および/または5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM3DiS)など)のうちの少なくとも1つが挙げられ得る。
【0078】
1つの実施形態では、試料を、タンデム質量分析によって測定し得る。ある特定の実施形態では、トリプル四重極タンデム質量分析(MS/MS)を使用し得る。ある特定の実施形態では、必要に応じてトランジションイオン合計を使用した選択反応モニタリング(SRM)または多重反応モニタリング(MRM)を使用し得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、ステーションのうちの少なくとも1つを、非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータおよび/またはコンピュータプログラム製品によって制御し得る。したがって、ある特定の実施形態では、システムは、非一時的な機械可読記憶媒体(システムのステーションおよび/または構成要素のうちのいずれかを制御するように構成された命令を含む)中で明白に具体化されるコンピュータプログラム製品を含み得る。
【0080】
システムは、安定同位体で標識された内部標準(複数可)を添加するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。ある特定の実施形態では、プロゲステロンスルファートの安定同位体で標識された内部標準(例えば、PM3S-d、PM5S-d、PM2DiS-d、および/またはPM3DiS-d)を標準、品質コントロール、および患者の血清または血漿のアリコートに添加して、各々の試料からの別個のプロゲステロンスルファートの回収率を評価および補正する。
【0081】
ある特定の実施形態では、また、システムは、液体クロマトグラフ分離のためのステーションの前に試料中の少なくとも1つの目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。ある特定の実施形態では、部分精製のためのステーションおよび/または構成要素は、試料の希釈、液液抽出、固相抽出、および/またはタンパク質の沈殿のためのステーションまたは構成要素を含み得る。例えば、部分精製のためのステーションおよび/または構成要素は、希釈および/またはタンパク質沈殿のための試薬を含み得る。
【0082】
ある特定の実施形態では、システムは、試料中のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離するためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。種々の実施形態では、クロマトグラフィーは、液体クロマトグラフィー(LC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはハイスループットクロマトグラフィー(HTLC)である。LC工程は、1つのLC分離、または複数のLC分離を含み得る。1つの実施形態では、クロマトグラフ分離は、抽出および分析液体クロマトグラフィーを含む。本明細書中で考察されるように、ある特定の実施形態では、分析クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含み得る。ある特定の実施形態では、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)(ハイスループット液体クロマトグラフィーとしても公知)を使用し得る。さらに、および/またはあるいは、他のタイプの精製を使用し得る。
【0083】
本明細書中に記載のように、いくつかの実施形態では、同位体で標識された内部標準または複数の標準を、試料に添加し得る。同位体で標識された内部標準または複数の標準を部分精製工程前に添加して、前述の手順中に生じ得る分析物(例えば、プロゲステロン代謝産物)の損失を標準化し得る。したがって、部分精製のためのステーションおよび/または構成要素は、溶媒および/または同位体で標識された材料を用いた作業に必要なフードまたは他の安全機能を含み得る。
【0084】
試料の希釈、タンパク質沈殿、および内部標準の添加のためのステーションまたは構成要素は、各々が別個のステーションであり得るか、1つまたは2つのステーションまたは構成要素として組み合わせ得る。
【0085】
1つの実施形態では、クロマトグラフ分離のためのステーションおよび/または構成要素は、液体クロマトグラフィー(LC)を行うための少なくとも1つの装置を含む。1つの実施形態では、液体クロマトグラフィーのためのステーションおよび/または構成要素は、分析クロマトグラフィーのためのカラムを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含み得る。あるいは、いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーは、HTLCを含み得る。いくつかの実施形態では、また、クロマトグラフ分離は、分析液体クロマトグラフィー前の抽出クロマトグラフィーを含み得る。
【0086】
当該分野で公知の種々の分析カラムを、必要に応じて良好に精製するためのクロマトグラフステーションの一部として使用し得る。ある特定の実施形態では、分析カラムは、平均粒径が約2~3μm(すなわち、2.6μm)の粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、分析カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリス型シリカ固定相(フェニル-ヘキシル官能化分析カラムなど)である。あるいは、ある特定の実施形態では、ステーションは、Aria TX4 HTLCシステム(Cohesive Technologies,MA)を含み得る。
【0087】
ある特定の実施形態では、本開示のシステムは、複数の液体クロマトグラフィー工程を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、二次元液体クロマトグラフィー(LC)手順を使用する。例えば、1つの実施形態では、本開示のシステムは、目的のバイオマーカーをLC抽出カラムから分析カラムに移動させるためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。1つの実施形態では、少なくとも1つの目的のバイオマーカーの抽出カラムから分析カラムへの移動を、ハートカッティング技術によって行う。別の実施形態では、目的のバイオマーカーを、クロマトフォーカシング技術によって抽出カラムから分析カラムへ移動させる。あるいは、目的のバイオマーカーを、カラム切り替え技術によって抽出カラムから分析カラムへ移動させる。これらの移動工程は、手作業で行い得るか、オンラインシステムの一部であり得る。必要に応じて、抽出カラムを、本明細書中に記載の方法およびシステムで使用しなくてよい。
【0088】
ある特定の実施形態では、質量分析のためのステーションおよび/または構成要素は、タンデム質量分析計を含む。いくつかの実施形態では、タンデム質量分析計は、トリプル四重極質量分析計を含む。ある特定の実施形態では、Applied Biosystems API5000、API5500、またはAgilent 7000トリプル四重極質量分析計をネガティブESIモードで使用し得る。いくつかの実施形態では、タンデム質量分析計は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードで操作される。いくつかの実施形態では、分析物および内部標準を、選択反応モニタリングモード(SRM)で定量する。あるいは、誘導結合プラズマ、またはMALDI、またはSELDI、またはAPPIなどを使用した他のイオン化法をイオン化のために使用し得る。
【0089】
図2は、本開示のシステムの実施形態の図面を提供する。図2に示すように、システム200は、目的のプロゲステロン代謝産物を含み得る試料をサンプリングコンテナ中に等分するためのステーションおよび/または構成要素202を含み得る。1つの実施形態では、試料を、液液抽出または試料の希釈を容易にするために、1つのコンテナまたは複数のコンテナに等分する。等分のためのステーションおよび/または構成要素は、分析で使用されない生物試料の一部を破棄または貯蔵するための容器を含み得る。
【0090】
システムは、内部標準を試料に添加するためのステーションおよび/または構成要素204をさらに含み得る。1つの実施形態では、内部標準は、非天然同位体で標識した目的のプロゲステロン代謝産物のうちの少なくとも1つを含む。したがって、内部標準を添加するためのステーションまたは構成要素は、試料への同位体で標識された内部標準溶液の添加を容易にするための安全機能を含み得る。
【0091】
また、システムは、いくつかの実施形態では、目的のプロゲステロン代謝産物の部分精製のためのステーション(複数可)および/または構成要素(複数可)208を含み得る。したがって、ある特定の実施形態では、システムは、試料の希釈および/またはタンパク質沈殿のためのステーションまたは構成要素208を含み得る。あるいは、他のタイプの試料精製(液液抽出または固相抽出など)のためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。
【0092】
また、システムは、試料の液体クロマトグラフィー(LC)のためのステーションおよび/または構成要素210を含み得る。本明細書中に記載のように、1つの実施形態では、液体クロマトグラフィーのためのステーションおよび/または構成要素は、HPLC(またはHTLC)カラムを含み得る。液体クロマトグラフィーのためのステーションは、固定相を含むカラム、および移動相として使用される溶媒を含むコンテナまたは容器を含み得る。1つの実施形態では、移動相は、アセトニトリル、ギ酸アンモニウム、および水、または揮発性緩衝液との他の混和性溶媒の勾配を含む。したがって、1つの実施形態では、クロマトグラフィーのためのステーションおよび/または構成要素は、1つのカラムまたは複数のカラムに適用される別個の溶媒の量を調整するのに適切なラインおよび弁を含み得る。また、ステーションおよび/または構成要素は、目的のバイオマーカーを含まない画分を除去および破棄するための手段を含み得る。1つの実施形態では、目的のバイオマーカーを含まない画分をカラムから連続的に除去し、除染のための廃棄用容器に送り、破棄する。ある特定の実施形態では、ステーションおよび/または構成要素は、Aria TX4 HTLCシステム(Cohesive Technologies,MA)を含み得る。
【0093】
また、システムは、質量分析のためのステーションおよび/または構成要素212を含み得る。1つの実施形態では、質量分析のためのステーションまたは構成要素は、タンデム質量分析(MS/MS)を含む。また、システムは、分析物の特徴付けおよび/または定量のためのステーションおよび/または構成要素を含み得る。特徴付けおよび/または定量のためのステーションおよび/または構成要素は、LC-MS/MSの結果のデータ分析のためのステーションおよび/または構成要素216を含み得る。1つの実施形態では、分析は、目的のプロゲステロン代謝産物(複数可)の同定および定量の両方を含む。
【0094】
図2に例証するように、システムのステーションおよび/または構成要素のうちのいずれかを、コンピュータ300および/またはプログラミング可能なソフトウェアによって少なくとも一部を自動化、ロボット制御、および/または制御し得る。例えば、LC-MS/MSおよび/またはデータ分析のためのステーション(複数可)および/または構成要素(複数可)を、コンピュータによって少なくとも一部を制御し得る。したがって、システムは、システムまたはシステムの任意の部分(例えば、ステーションまたは構成要素)が動作し、そして/または開示の実施形態のうちのいずれかの方法の1つの工程または複数の工程を実施するように構成された命令を含む、非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータプログラム製品を含み得る。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータプロセッサ、および前述の1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサが、1またはそれを超える本明細書中に開示の方法またはプロセスのうちの一部または全部を実施し、そして/または本明細書中に開示のシステムの一部のうちのいずれかを動作させる命令を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含むシステムを提供する。
【0095】
例えば、1またはそれを超えるデータプロセッサ、および前述の1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサに、少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試料を準備する工程;必要に応じて、前述の試料中の前述の少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離する工程;タンデム質量分析を使用して、前述のプロゲステロン代謝産物に特異的な少なくとも1つのプリカーサーイオンおよび少なくとも1つのプロダクトイオンを生成する工程;および前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する工程のうちの少なくとも1つを指示するように動作を実施させる命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含むシステムを開示する。さらにおよび/またはあるいは、ある特定の実施形態では、1またはそれを超えるデータプロセッサ、および前述の1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサに、(a)前述のプロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前述のプリカーサーイオンの1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成されたプリカーサーイオンのうちの1つまたは複数または工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前述の検出されたイオンを、前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量と関連付ける工程のうちの少なくとも1つを指示するように動作を実施させる命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含むシステムを開示する。
【0096】
開示のシステムの構成要素またはステーションのうちのいずれかを動作させ、そして/または開示の実施形態のうちのいずれかの方法の1つの工程または複数の工程を実施するように構成された命令を含む非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータプログラム製品も開示する。例えば、ある特定の実施形態では、非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータプログラム製品は、1またはそれを超えるデータプロセッサに、少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試料を準備する工程;必要に応じて、前述の試料中の前述の少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離する工程;タンデム質量分析を使用して、前述のプロゲステロン代謝産物に特異的な少なくとも1つのプリカーサーイオンおよび少なくとも1つのプロダクトイオンを生成する工程;および前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する工程のうちの少なくとも1つを指示するように動作を実施させるように構成された命令を含む。ある特定の実施形態では、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサに、(a)前述のプロゲステロン代謝産物からプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前述のプリカーサーイオンの1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成されたプリカーサーイオンのうちの1つまたは複数または工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前述の試料中の前述の検出されたイオンをプロゲステロン代謝産物の存在または量と関連付ける工程のうちの少なくとも1つを指示するように動作を実施させる命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を開示する。
【0097】
システムおよびコンピュータ製品は、本明細書中に開示の方法のうちのいずれかを実施し得る。本明細書中に記載の1またはそれを超える実施形態を、プログラムのモジュール、エンジン、またはコンポーネントを使用して実装することができる。プログラムのモジュール、エンジン、またはコンポーネントは、1またはそれを超える提示したタスクまたは機能を実行することができるプログラム、サブルーチン、プログラムの一部、またはソフトウェアコンポーネントまたはハードウェアコンポーネントを含むことができる。本明細書中で使用される場合、モジュールまたはコンポーネントは、他のモジュールまたはコンポーネントと独立してハードウェアコンポーネント上に存在することができる。あるいは、モジュールまたはコンポーネントは、他のモジュール、プログラム、または機械の共用の要素またはプロセスであり得る。
【0098】
図3は、プロゲステロン代謝産物の検出および/または定量のために使用される分析システム300のブロック図を示す。図3で例証されるように、1またはそれを超えるプロセッサによって実行可能なモジュール、エンジン、または構成要素(例えば、プログラム、コード、または命令)を使用して、種々の実施形態の分析システムの種々のサブシステムを実装し得る。モジュール、エンジン、またはコンポーネントは、非一時的なコンピュータ媒体に記憶され得る。必要に応じて、モジュール、エンジン、またはコンポーネントのうちの1つまたは複数は、システムメモリ(例えば、RAM)にロードされ、分析システムの1またはそれを超えるプロセッサによって実行され得る。図3に示す例では、方法の実装または本開示のシステムのうちのいずれかの動作のためのモジュール、エンジン、または構成要素を示す。
【0099】
したがって、図3は、本開示のシステムおよび方法との使用に好適な例示的な計算装置300を例証する。例示的な計算装置300は、1またはそれを超える通信バス315を使用してメモリ310および計算装置300の他の構成要素と通信しているプロセッサ305を含む。プロセッサ305は、異なる例(図1~2および4~6中の例または本明細書中の他所に開示の例など)によるプロゲステロン代謝産物レベルを検出するための1またはそれを超える方法を実施するか、1またはそれを超えるステーションを操作するためにメモリ310に記憶されたプロセッサ実行可能命令を実行するように構成されている。この例では、メモリ310は、本明細書中に考察されるように試料についての結果を分析する320ことができるプロセッサ実行可能命令325を記憶し得る。
【0100】
また、計算装置300は、この例では、ユーザー入力を受け入れるための1またはそれを超えるユーザー入力デバイス330(キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロフォンなど)を含み得る。また、計算装置300は、ユーザーインターフェースなどのユーザーに視覚的出力を提供するためのディスプレイ335を含み得る。また、計算装置300は、通信インターフェース340を含み得る。いくつかの例では、通信インターフェース340は、1またはそれを超えるネットワーク(ローカルエリアネットワーク(「LAN」);広域ネットワーク(「WAN」)(インターネットなど);メトロポリタンエリアネットワーク(「MAN」);二地点間接続または同位層間接続などが挙げられる)を使用して通信できる場合がある。他のデバイスとの通信は、任意の好適なネットワークプロトコルを用いて行われ得る。例えば、1つの好適なネットワークプロトコルは、インターネットプロトコル(「IP」)、伝送制御プロトコル(「TCP」)、ユーザーデータグラムプロトコル(「UDP」)、またはその組み合わせ(TCP/IPまたはUDP/IPなど)が挙げられ得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、精製または分離工程のうちの1つまたは複数を、「オンライン」で実施することができる。オンラインシステムは、1つのコンテナから試料のアリコートを取り出し、かかるアリコートを別のコンテナ中に移すためのオートサンプラーを含み得る。例えば、オートサンプラーを使用して、LC抽出カラム上の抽出後に試料を移し得る。さらに、またはあるいは、オンラインシステムは、LC抽出カラムから単離された画分をLC分析カラム上に注入するための1またはそれを超える注入ポートを含み得る。さらに、またはあるいは、オンラインシステムは、LC精製された試料をMSシステム中に注入するための1またはそれを超える注入ポートを含み得る。したがって、オンラインシステムは、1またはそれを超えるカラム(抽出カラムおよび/または分析カラムが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。さらに、またはあるいは、システムは、検出システム(例えば、質量分析計システム)を含み得る。また、オンラインシステムは、1またはそれを超えるポンプ;1またはそれを超える弁;および必要に応じた配管系統を含み得る。かかる「オンライン」システムでは、目的の試験試料および/または分析物を、システムから退出することなく(例えば、回収し、次いでシステムの別の構成要素に破棄することなく)、システムの1つの構成要素から別の構成要素まで通過することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、オンラインでの精製法または分離法を自動化することができる。かかる実施形態では、プロセスが設定および開始された時点で、オペレータの介入を必要とせずに工程を実施することができる。例えば、1つの実施形態では、システムまたはシステムの一部を、1つのコンピュータまたは複数のコンピュータ300によって制御し得る。したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、システムの種々の構成要素(ポンプ、弁、およびオートサンプラーなどが挙げられる)を制御するためのソフトウェアを含み得る。かかるソフトウェアを使用して、試料および溶質の正確な添加のタイミングおよび流速によって抽出プロセスを最適化することができる。
【0103】
方法における工程およびステーションを含むシステムのうちのいくつかまたは全てがオンラインであり得るが、ある特定の実施形態では、工程のうちのいくつかまたは全てを「オフライン」で実施し得る。かかるオフライン手順では、目的の分析物を、典型的には、例えば、抽出カラム上または液体/液体抽出によって、試料マトリックス中の他の構成要素から分離し、次いで、別のクロマトグラフシステムまたは検出器システムへのその後の導入のために回収する。オフライン手順は、典型的には、オペレータ側の手作業による介入が必要である。
【0104】
本明細書中に記載のように、液体クロマトグラフィーは、ある特定の実施形態では、高乱流液体クロマトグラフィーまたはハイスループット液体クロマトグラフィー(HTLC)を含み得る。例えば、Zimmer et al.,J.Chromatogr.A 854:23-35(1999)を参照のこと;米国特許第5,968,367号;同第5,919,368号;同第5,795,469号;および同第5,772,874号も参照のこと。伝統的なHPLC分析は、カラム充填に依存し、このカラム充填は、カラムを通過する試料の層流を試料からの目的の分析物の分離の基本とする。かかるカラムでは、分離は拡散過程である。HTLCのカラムおよび方法などによって得られる乱流は質量移動速度を増強し、分離特性を改善し得る。いくつかの実施形態では、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を単独または1またはそれを超える精製方法と組み合わせて使用して、質量分析前に目的のバイオマーカーを精製し得る。かかる実施形態では、試料を、分析物を捕捉するHTLC抽出カートリッジを使用して抽出し、次いで、イオン化の前に第2のHTLCカラムまたは分析HPLCカラムにて溶離し、クロマトグラフィーを行い得る。これらのクロマトグラフィー手順に関与する工程を自動化様式でリンクすることができるので、分析物の精製中のオペレータ関与の必要性を最小にすることができる。また、いくつかの実施形態では、高乱流液体クロマトグラフィーによる試料調製法を使用すると、液液抽出を含む他の試料調製方法が必要でなくなり得る。したがって、いくつかの実施形態では、試験試料(例えば、体液)を、高乱流液体クロマトグラフィーシステムに直接配置する(例えば、注入する)ことができる。
【0105】
例えば、典型的な高乱流または乱流液体クロマトグラフィーシステムでは、試料を、巨大な(例えば、25ミクロン超)粒子を充填した狭い(例えば、内径0.5mm~2mm×長さ20~50mm)カラムに直接注入し得る。ある流速(例えば、3~500mL/分)がカラムに印加されるとき、比較的幅が狭いカラムは、移動相の速度を増加させる。カラム中に存在する巨大粒子は、加速による背圧を防止し、粒子間の間欠的な渦の形成を促進し、それにより、カラム内に乱流を得ることができる。
【0106】
高乱流液体クロマトグラフィーでは、分析物分子は、粒子に迅速に結合する場合があり、典型的には、カラムの長手方向に拡大(すなわち、拡散)しない。この長手方向の拡散の軽減により、典型的には、試料マトリックスから目的の分析物がより良好でより迅速に分離される。さらに、カラム内の乱流は、典型的には粒子を通過するにつれて生じる分子の摩擦を軽減する。例えば、伝統的なHPLCでは、粒子の最も近くを進む分子は、粒子間の経路の中心を流れる分子よりもゆっくりカラムに沿って移動する。この流速の相違により、分析物分子がカラムの長手方向に広がる。カラム内で乱流が起こるとき、粒子由来の分子上の摩擦が無視できるほどになり、長手方向の分散が軽減される。
【0107】
ある特定の実施形態では、質量分析計は、「四重極」システムを使用する。「四重極」または「四重極イオントラップ」質量分析計では、振動高周波(RF)電界にあるイオンは、電極間に印加された直流(DC)電位、RFシグナルの振幅、およびm/zに比例した力を受ける。特定のm/zを有するイオンのみが四重極を長手方向に進む一方で、全ての他のイオンは四重極から外れるような電圧および振幅を選択することができる。したがって、四重極装置は、装置に注入されたイオンの「マスフィルタ」および「質量検出器」の両方としての機能を果たすことができる。
【0108】
ある特定の実施形態では、タンデム質量分析、すなわち「MS/MS」を使用する。理由の1つとしてMS/MSの選択性が分析前の試料の大規模なクリーンアップの必要性を最小にすることができるので、MS/MS法は、複雑な混合物、特に生物試料の分析に有用である。
【0109】
1つの実施形態では、本開示の方法およびシステムは、トリプル四重極MS/MSを使用する。トリプル四重極MS/MS装置は、典型的には、断片化手段によって分離された2つの四重極マスフィルタからなる。1つの実施形態では、装置は、イオン格納デバイスまたはイオン透過デバイスとしてRFのみのモードで操作される四重極マスフィルタを含み得る。1つの実施形態では、四重極は、1ミリトルと10ミリトルとの間の圧力の衝突ガスをさらに含み得る。他のタイプの「ハイブリッド」タンデム質量分析計も多く知られており、本開示の方法およびシステムで使用することができ、磁場セクター型分析器と四重極フィルタの種々の組み合わせが挙げられる。これらのハイブリッド装置は、しばしば、マスフィルタのいずれかまたは両方としての高分解能磁場セクター型分析器(すなわち、二重収束組み合わせで配置された磁場セクター型および静電気セクター型の両方を含む分析器)を含む。高分解能マスフィルタの使用は、化学的ノイズを非常に低レベルに低下させるのに非常に有効であり得る。
【0110】
本開示の方法およびシステムについて、種々の方法(電子イオン化、化学的イオン化、高速電子衝撃、電界脱離、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)、表面増強レーザー脱離イオン化(「SELDI」)、光子イオン化、エレクトロスプレーイオン化、および誘導結合プラズマが挙げられるが、これらに限定されない)を使用してイオンを生成することができる。
【0111】
本開示の実施形態は、ある特定の利点を提供し得る。ある特定の実施形態では、本開示の方法およびシステムは、測定された多くの分析物について以前に達成可能な感度より高い感度を提供し得る。
【0112】
また、本開示の方法およびシステムの実施形態は、測定された多くの分析物について以前に達成されなかった迅速な処理が可能である。例えば、本開示の方法およびシステムを使用して、複数の試料を、96ウェルプレートおよび処理能力が有意に高い4つのLC-MS/MSシステムから構成される複合システムを使用して、プロゲステロンスルファート分析物について分析し得る。
【0113】
別の利点として、本開示の方法およびシステムによって得られる特異性および感度により、種々の生物学的材料由来の分析物を分析可能である。例えば、本開示のLC-MS/MS法を、複雑な生物試料マトリックス(血液、血清、血漿、尿、唾液、および鼻咽頭スワブなどが挙げられるが、これらに限定されない)中の目的の分析物の定量に適用することができる。したがって、本開示の方法およびシステムは、臨床適用および/または臨床試験に好適である。
【0114】
さらなる潜在的な利点として、ある特定の実施形態では、本開示のシステムおよび方法は、標的分析物の定量下限(LOQ)(mg/dL)を達成しながら同重体妨害、試料含有量の変動(溶血試料および脂血症の試料が挙げられる)に対処するためのアプローチを提供する。したがって、本開示の方法およびシステムの実施形態は、障害の離床診断で使用される臨床バイオマーカーを定量的、高感度、かつ特異的に検出可能である。
【実施例
【0115】
実施例
本開示は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解され得る。
実施例1-アッセイ方法
【0116】
5つの別個のプロゲステロンスルファート(PM3S、PM4S、PM5S、PM2DiS、およびPM3DiS)を、希釈およびタンパク質沈殿後にタンデム質量分析検出を用いた液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって測定した。PM3Sを、1つのアッセイで別個に測定した(PM3S)。PM4SおよびPM5Sを1つのアッセイで共に測定し(MPMS)、一方で、PM2DiSおよびPM3DiSを1つのアッセイで共に測定した(PMDiS)。3つのアッセイは、別々の標準、QC材料、内部標準、およびLCMS法を使用する。試料処理工程は、3つ全てのアッセイで同一である。
【0117】
プロゲステロンスルファートの安定同位体で標識された内部標準(PM3S-d、PM5S-d、PM2DiS-d、および/またはPM3DiS-d)を、標準、品質コントロール、および患者の血清アリコートに添加して、各々の試料からの別個のプロゲステロンスルファートの回収率を評価および補正した。標準、対照試料、および患者の血清を希釈し、次いで、タンパク質沈殿を行った。試料抽出物の一部を、再構成前の試料の乾燥によって濃縮した。各々の患者および検定物質由来の最終生成物を、タンデム質量分析を用いたHPLCによって分析した。全ての試料をARIA TX4システムに注入し、目的の分析物(複数可)を勾配分離による分析カラムによってクロマトグラフィー分析を行った。陰イオンエレクトロスプレーイオン化(ESI)モード(Turboionspray)で操作するAB SCIEX API5000トリプル四重極質量分析計を検出のために使用した。
【0118】
各々の試料中の分析物の逆算量を、6%BSA中に既知量のプロゲステロンスルファートをスパイクすることによって作成した二連の検量線から決定した。分析物および内部標準を、必要な場合にイオン合計を使用した選択反応モニタリング(SRM)モードで定量した。モニタリングしたトランジションを、以下の表に列挙する。トランジションは機械ごとにわずかに変動する場合があり、機器の調整中に決定されることに留意のこと。
実施例2-LC-MS/MSアッセイによるプロゲステロンスルファートのバリデーション
【0119】
クロマトグラフアッセイ-バリデーションランは、最小限の3つの濃度レベル(低、中、高)の品質コントロール(QC)を含む。
【0120】
較正の合否基準-検量線は、最少でも6つの非ゼロ濃度レベルおよびブランクを有する。リードバック濃度は、前述のレベルの少なくとも75%で名目濃度の15%(LLOQで20%)以内でなければならない。
【0121】
QC合否基準-QCの少なくとも2/3が目標値の±15%である;各々の濃度レベルでのQCの少なくとも50%が目標値の±15%である。
【0122】
短期貯蔵、長期貯蔵、および凍結融解での安定性-以下の条件で貯蔵された血清は、PM3S、PM4S、PM5S、PM2DiS、およびPM3DiSの濃度の分析のための使用が許容される:凍結(-10℃以下および-55℃以下):27日間;冷蔵(2~8℃):14日間;室温(15~30℃):14日間;または凍結融解サイクル(-10℃以下):6サイクル(合計融解回数7)。凍結血清(-10℃以下)についての長期貯蔵は27日間であり、試料を、ドライアイス上での凍結状態で運搬し得る。
基準範囲
【0123】
基準範囲を確立するために、120人の妊婦の血清試料を分析し、全ての試料を、基準範囲評価のために使用した。別個の血清(SST)試料を、AFP Tetra分析のために妊娠15~24週の範囲の女性から採取した。97.5パーセンタイルによって決定された血清中のPM3S、PM4S、PM5S、PM2DiS、およびPM3DiS濃度の基準範囲を、以下に列挙する:
・PM3S:36.0~221ng/mL
・PM4S:44.7~725ng/mL
・PM5S:11.2~223ng/mL
・PM2DiS:37.4~505ng/mL
・PM3DiS:4.912~78.3ng/mL
【0124】
例示的なスキャンを、図4~6に示す。これらの実験では、多重反応モニタリングを使用して、適切なトランジションを選択した。PM3Sを、1つのアッセイで別個にモニタリングした(PM3S)(図4)。PM4SおよびPM5Sを、1つのアッセイで共に測定した(図5)。PM2DiSおよびPM3DiSを、1つのアッセイで共に測定した(図6)。イオン合計を、PM2DiSおよびPM3DiSの分析および測定のために使用した)。
【0125】
結果を表2にまとめており、表中、合否基準に合格した分析物を分析物のカラムに示す。
表2
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
実施例3-LC-MS/MS取得法
【0126】
表3~5は、PM3S(表3)、PM4SおよびPM5S(MPMS)(表4)、PM2DiSおよびPM3DiS(PMDiS)(表5)のために使用した分析物取得方法を示す。かかるスキャンの結果を、図4(PM3S)、図5(MPMS)、および図6(PMDiS)に示す。表3~5で使用されるように、ISは、本明細書中に記載の同位体で標識した標準を示す。1、2、および3(ならびに下位指定語A、B、C、およびD)は、モニタリングされた異なるトランジションを示し、アッセイ定量のために使用される場合と使用されない場合がある。
表3-PM3S取得法
【表3】
表4-MPMS分析物取得法
【表4】
表5-PMDiS取得法
【表5-1】
【表5-2】
実施例4-好適な方法およびシステムの例示的な実施形態
【0127】
以下で使用されるように、方法またはシステムに対するいかなる範囲の符号も、方法またはシステムの各々に対する1つの符号を個別に示すと理解される(例えば、「例示的な実施形態1~4は、例示的な実施形態1、2、3、または4と理解される。」)。
【0128】
例示的な実施形態1は、質量分析によって被験体由来の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する方法であり、(a)前述のプロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンから1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成されたプリカーサーイオンのうちの1つまたは複数または工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前述の検出されたイオンを、前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量と関連付ける工程を含む。
【0129】
例示的な実施形態2は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、プロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。
【0130】
例示的な実施形態3は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、プロゲステロンスルファートは、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール(PM3S);5α-プレグナン-3α-オール-20-オンスルファート(PM4S);5α-プレグナン-3β-オール-20-オンスルファート(PM5S);5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM2DiS);または5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM3DiS)のうちの少なくとも1つを含む。
【0131】
例示的な実施形態4は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、PM3Sを個別に測定し、PM4SおよびPM5Sを同時に測定し、PM2DiSおよびPM3DiSを同時に測定する。
【0132】
例示的な実施形態5は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、質量分析はタンデム質量分析である。
【0133】
例示的な実施形態6は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、タンデム質量分析はトリプル四重極タンデム質量分析である。
【0134】
例示的な実施形態7は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、必要に応じてイオン合計を使用した選択反応モニタリング(SRM)または多重反応モニタリング(MRM)を使用して、プリカーサーイオンおよび/またはプロダクトイオンを選択する。
【0135】
例示的な実施形態8は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、PM3Sを、399.400→97.100のトランジションについての分析物のピークを使用してMRMによって測定する。
【0136】
例示的な実施形態9は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、PM4SおよびPM5Sを、PM5Sについては397.3→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用し、PM4Sについては397.2→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用したMRMによって別々または共に測定する。
【0137】
例示的な実施形態10は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、PM2DiSおよび/またはPM3DiSを、イオン合計を使用したMRMによって測定する。
【0138】
例示的な実施形態11は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、479.098→381.2+479.099→381.2+479.100→381.2+479.101→381.2+479.102→381.2のトランジションの合計をPM2DiSの検出のために使用する。
【0139】
例示的な実施形態12は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、479.098→399.1+479.099→399.1+479.100→399.1+479.101→399.1+479.102→399.1のトランジションの合計をPM3DiSの検出のために使用し得る。
【0140】
例示的な実施形態13は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、試料を、最初の断片化工程(a)の前に精製工程に供する。
【0141】
例示的な実施形態14は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、精製工程はクロマトグラフィーを含む。
【0142】
例示的な実施形態15は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはハイスループット液体クロマトグラフィー(HTLC)を含む。
【0143】
例示的な実施形態16は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、クロマトグラフィー前に試料の希釈および/またはタンパク質沈殿のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0144】
例示的な実施形態17は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、安定同位体で標識された内部標準の添加をさらに含む。
【0145】
例示的な実施形態18は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、安定同位体で標識された内部標準は、PM3S-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM5S-d(すなわち、5α-プレグナン-3β-オール-20-オン-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM2DiS-d(すなわち、5α-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート);および/またはPM3DiS-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート)のうちの少なくとも1つを含む。
【0146】
例示的な実施形態19は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、試料は血清または血漿である。
【0147】
例示的な実施形態20は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、プロゲステロンスルファートのLLOQは、100μLの試料あたり1ngである。
【0148】
例示的な実施形態21は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、プロゲステロンスルファートのULOQは、100μLの試料あたり500ngである。
【0149】
例示的な実施形態22は、任意の前述または後述の例示的な実施形態の方法であり、ここで、プロゲステロンスルファート量を使用して、皮膚の妊娠性掻痒症が(ICP)の初期徴候であるのか、あるいは被験体における良性妊娠性掻痒症に起因するのかを区別する。
【0150】
例示的な実施形態23は、試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのシステムであり、前述のシステムは、目的のプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試験試料を提供するためのステーションおよび/または構成要素;1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成し、前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンから1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成し、前述のプリカーサーイオンのうちの少なくとも1つまたは前述の少なくとも1つのプロダクトイオンの量を決定するために前述の目的のプロゲステロン代謝産物を断片化するための質量分析のステーションおよび/または構成要素;ならびに前述の試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのステーションおよび/または構成要素を含む。
【0151】
例示的な実施形態24は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、目的のプロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。
【0152】
例示的な実施形態25は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、プロゲステロンスルファートは、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール(PM3S);5α-プレグナン-3α-オール-20-オンスルファート(PM4S);5α-プレグナン-3β-オール-20-オンスルファート(PM5S);5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM2DiS);または5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM3DiS)のうちの少なくとも1つを含む。
【0153】
例示的な実施形態26は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、PM3Sを個別に測定し(PM3S)、PM4SおよびPM5Sを同時に測定し、PM2DiSおよびPM3DiSを同時に測定する。
【0154】
例示的な実施形態27は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、質量分析はタンデム質量分析である。
【0155】
例示的な実施形態28は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、タンデム質量分析はトリプル四重極タンデム質量分析である。
【0156】
例示的な実施形態29は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、必要に応じてイオン合計を使用した選択反応モニタリング(SRM)または多重反応モニタリング(MRM)を使用して、プリカーサーイオンおよび/またはプロダクトイオンを選択する。
【0157】
例示的な実施形態30は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、PM3Sを、399.400→97.100のトランジションについての分析物のピークを使用してMRMによって測定する。
【0158】
例示的な実施形態31は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、PM4SおよびPM5Sを、PM5Sについては397.3→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用し、PM4Sについては397.2→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用したMRMによって別々または共に測定する。
【0159】
例示的な実施形態32は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、PM2DiSおよび/またはPM3DiSを、イオン合計を使用したMRMによって測定する。
【0160】
例示的な実施形態33は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、479.098→381.2+479.099→381.2+479.100→381.2+479.101→381.2+479.102→381.2のトランジションの合計をPM2DiSの検出のために使用する。
【0161】
例示的な実施形態34は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、479.098→399.1+479.099→399.1+479.100→399.1+479.101→399.1+479.102→399.1のトランジションの合計をPM3DiSの検出のために使用し得る。
【0162】
例示的な実施形態35は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、試料中の目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素から部分精製するためのステーションおよび/または構成要素をさらに含む。
【0163】
例示的な実施形態36は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、試料中の目的のプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離するためのステーションおよび/または構成要素をさらに含む。
【0164】
例示的な実施形態37は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、試料は血漿または血清である。
【0165】
例示的な実施形態38は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、少なくとも1つの安定同位体を内部標準として添加し、必要に応じて、安定同位体で標識された内部標準は、PM3S-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM5S-d(すなわち、5α-プレグナン-3β-オール-20-オン-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM2DiS-d(すなわち、5α-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート);および/またはPM3DiS-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート)のうちの少なくとも1つを含む。
【0166】
例示的な実施形態39は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のシステムであり、ここで、ステーションおよび/または構成要素のうちの少なくとも1つは、非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータおよび/またはコンピュータプログラム製品によって制御される。
【0167】
例示的な実施形態40は、例示的な実施形態1~22の方法工程のうちのいずれかを実施するか、例示的な実施形態23~39のステーションおよび/または構成要素のうちのいずれかを制御するように構成された命令を含む、非一時的な機械可読記憶媒体中で明白に具体化されるコンピュータプログラム製品である。
【0168】
例示的な実施形態41は、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサに、少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試料を準備する工程;必要に応じて、試料中の前述の少なくとも1つのプロゲステロン代謝産物を他の構成要素からクロマトグラフィーで分離する工程;タンデム質量分析を使用して、プロゲステロン代謝産物に特異的な1またはそれを超えるプリカーサーイオンおよび1またはそれを超える断片イオンを生成する工程;および前述の試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定する工程のうちの少なくとも1つを指示するように動作を実施させる命令を含む任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品である。
【0169】
例示的な実施形態42は、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサに、(a)プロゲステロン代謝産物から1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成する工程;(b)前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンから1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成する工程;(c)工程(a)で生成されたプリカーサーイオンのうちの1つまたは複数または工程(b)の1またはそれを超えるプロダクトイオンまたはこれらの両方の存在または量を検出する工程;および前述の検出されたイオンを、前述の試料中のプロゲステロンの代謝産物の存在または量と関連付ける工程のうちの少なくとも1つを指示するように動作を実施させる命令を含む任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品である。
【0170】
例示的な実施形態43は、1またはそれを超えるデータプロセッサ上で実行されたときに、前述の1またはそれを超えるデータプロセッサに、試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためにシステムまたはシステムの任意のステーションおよび/もしくは構成要素が動作するように操作を実行させる命令を含み、前述のシステムが、目的のプロゲステロン代謝産物を含むと考えられる試験試料を提供するためのステーションおよび/または構成要素;1またはそれを超えるプリカーサーイオンを生成し、前述の1またはそれを超えるプリカーサーイオンから1またはそれを超えるプロダクトイオンを生成し、1またはそれを超えるプリカーサーイオンまたは1またはそれを超えるプロダクトイオンの量を決定するために前述の目的のプロゲステロン代謝産物を断片化するための質量分析のステーションおよび/または構成要素;ならびに前述の試験試料中のプロゲステロン代謝産物の存在または量を決定するためのステーションおよび/または構成要素を含む、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品である。
【0171】
例示的な実施形態44は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、プロゲステロン代謝産物はプロゲステロンスルファートである。
【0172】
例示的な実施形態45は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、プロゲステロンスルファートは、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール(PM3S);5α-プレグナン-3α-オール-20-オンスルファート(PM4S);5α-プレグナン-3β-オール-20-オンスルファート(PM5S);5α-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM2DiS);または5β-プレグナン-3α,20α-ジオールジスルファート(PM3DiS)のうちの少なくとも1つを含む。
【0173】
例示的な実施形態46は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、PM3Sを個別に測定し、PM4SおよびPM5Sを同時に測定し、PM2DiSおよびPM3DiSを同時に測定する。
【0174】
例示的な実施形態47は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、質量分析はタンデム質量分析である。
【0175】
例示的な実施形態48は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、タンデム質量分析はトリプル四重極タンデム質量分析である。
【0176】
例示的な実施形態49は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、必要に応じてイオン合計を使用した選択反応モニタリング(SRM)または多重反応モニタリング(MRM)を使用して、プリカーサーイオンおよび/またはプロダクトイオンを選択する。
【0177】
例示的な実施形態50は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、PM3Sを、399.400→97.100のトランジションについての分析物のピークを使用してMRMによって測定する。
【0178】
例示的な実施形態51は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、PM4SおよびPM5Sを、PM5Sについては397.3→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用し、PM4Sについては397.2→97.0のトランジションについての分析物のピークを使用したMRMによって別々または共に測定する。
【0179】
例示的な実施形態52は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、PM2DiSおよび/またはPM3DiSを、イオン合計を使用したMRMによって測定する。
【0180】
例示的な実施形態53は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、479.098→381.2+479.099→381.2+479.100→381.2+479.101→381.2+479.102→381.2のトランジションの合計をPM2DiSの検出のために使用する。
【0181】
例示的な実施形態54は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、479.098→399.1+479.099→399.1+479.100→399.1+479.101→399.1+479.102→399.1のトランジションの合計をPM3DiSの検出のために使用し得る。
【0182】
例示的な実施形態55は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、試料を、最初の断片化工程(a)の前に精製工程に供する。
【0183】
例示的な実施形態56は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、精製工程はクロマトグラフィーを含む。
【0184】
例示的な実施形態57は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはハイスループット液体クロマトグラフィー(HTLC)を含む。
【0185】
例示的な実施形態58は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、クロマトグラフィー前に試料の希釈および/またはタンパク質沈殿のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0186】
例示的な実施形態59は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、安定同位体で標識された内部標準の添加をさらに含む。
【0187】
例示的な実施形態60は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、安定同位体で標識された内部標準は、PM3S-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM5S-d(すなわち、5α-プレグナン-3β-オール-20-オン-[2,2,4,4-d4]スルファート);PM2DiS-d(すなわち、5α-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート);および/またはPM3DiS-d(すなわち、5β-プレグナン-3α,20α-ジオール-[2,2,4,4-d4]ジスルファート)のうちの少なくとも1つを含む。
【0188】
例示的な実施形態61は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、試料は血清または血漿である。
【0189】
例示的な実施形態62は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、プロゲステロンスルファートのLLOQは、100μLの試料あたり1ngである。
【0190】
例示的な実施形態63は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、プロゲステロンスルファートのULOQは、100μLの試料あたり500ngである。
【0191】
例示的な実施形態64は、任意の前述または後述の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品であり、ここで、プロゲステロンスルファート量を使用して、皮膚の妊娠性掻痒症が(ICP)の初期徴候であるのか、あるいは被験体における良性妊娠性掻痒症に起因するのかを区別する。
【0192】
本開示の種々の実施形態が本明細書中に記載されている。これらの実施形態が単に本開示の例示にすぎないと認識すべきである。前述の説明の読了後に、好ましい実施形態の変形形態が当業者に明らかとなり得る。当業者がかかる変形形態を適宜使用することができ、本開示が本明細書中の具体的記載とは異なって実施されることが意図されると予想される。したがって、本開示は、適用法に認められた本明細書に添付のクレームに記載の発明の主題の全ての修正形態および均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形形態中の上記要素の任意の組み合わせは、別段の指示が無い限り、あるいは、文脈と明確に矛盾しない限り、本開示に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】