(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】がん治療での使用のためのヘテロ環式化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20241112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20241112BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241112BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C07D487/04 157
C07D487/04 CSP
A61P35/00 ZNA
A61P15/00
A61P13/08
A61P1/18
A61K31/496
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523445
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 GB2022052690
(87)【国際公開番号】W WO2023067356
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522000809
【氏名又は名称】アルティオス ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ヘアルド
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ストックレー
(72)【発明者】
【氏名】ハリー フィンチ
(72)【発明者】
【氏名】サム マン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
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4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ヘテロ環式誘導体、及び、がんの治療及び予防におけるその使用、並びに該誘導体を含む組成物、並びに、それらの製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
又は、その互変異性体若しくは立体化学異性体の形態、医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物。
【請求項2】
式(I)の化合物の遊離塩基であって、(3aR,11aS)-6,10-ジメチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(E1)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の式(I)の化合物、を含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の式(I)の化合物を1以上の治療薬と組み合せて含む、医薬組成物。
【請求項5】
療法における使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
がんの予防又は治療における使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって:
(a)式(II)の化合物の:
【化2】
式(I)の化合物への相互変換;及び
(b)式(I)の化合物の医薬として許容し得る塩の任意の形成
を含む、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヘテロ環式誘導体、及び、がんの治療及び予防におけるその使用、並びに該誘導体を含む組成物、並びに、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
DNA二本鎖切断(DSB)の堅牢な修復は、ゲノム安定性及び細胞生存の維持のために欠くことができない。DSBは、3つの主要経路:相同組換え(HR)、非相同末端結合(NHEJ)、及び代替的NHEJ(alt-NHEJ)のうちの一つによって修復できる。マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)は、最もよく特徴づけられているalt-NHEJ機構である。HR媒介修復は、正確なエラーフリー修復に不可欠な忠実性の高い機構であって、がん易罹患性ゲノムの安定性を妨げる。逆に、NHEJ及びMMEJは、変異的瘢痕を修復部位に残す可能性があるエラープローン経路である。MMEJは、HR経路及びNHEJ経路の双方で平行して機能することができる(Truongらの文献、PNAS 2013, 110(19), 7720-7725)。
【0003】
正常細胞とは異なり、がん細胞の生存は、多くの場合、DNA損傷応答(DDR)経路の誤制御に依存する。例えば、別の経路の不活性化又は増殖増大に起因する複製ストレスの増大のいずれかに対処するための、1つの経路(多くの場合、変異原性)への依存性の増大。又、異常なDDRは、がん細胞を特定の種類のDNA損傷に対して感作させることができ、そのため、欠陥性DDRを利用して標的化がん療法を開発できる。決定的なことは、HR及びNHEJの機能障害又は不活性化を伴うがん細胞は、MMEJ媒介DNA修復に高度に依存するようになる。遺伝子的、細胞生物学的、及び生化学的なデータによって、Polθ(UniProtKB-O75417(DPOLQ_HUMAN)が、MMEJにおける重要なタンパク質であることが特定された(Kentらの文献、Nature Structural & Molecular Biology((2015), 22(3), 230-237、Mateos-Gomezらの文献、Nature(2015), 518(7538), 254-257)。Polθは、多機能性酵素であり、N末端ヘリカーゼドメイン(SF2 HEL308型)及びC末端の低忠実性DNAポリメラーゼドメイン(A型)を含む(Wood及びDoublieの文献、DNA Repair(2016), 44, 22-32)。双方のドメインが、MMEJにおいて協調機構的な機能を有することが示された。ヘリカーゼドメインは、ssDNA末端からRPAタンパク質が除去されることを媒介し、アニーリングを刺激する。ポリメラーゼドメインは、ssDNA末端を伸張し、残っているギャップを埋める。
【0004】
従って、治療的なPolθの不活性化は、細胞のMMEJを行う能力を無効化し、様々な定義された腫瘍の状況において新規な標的化戦略を提供するであろう。第一に、Polθは、HR欠損(HRD)細胞の生存に不可欠であることが示されており(例えば、FA/BRCA欠損による合成致死)、HRD腫瘍細胞株では上方制御されている(Ceccaldiらの文献、Nature(2015), 518(7538), 258-262)。インビボ研究では又、Polθが、HRD卵巣、子宮、及び乳がんのサブセットにおいて有意に過剰発現されて予後不良に関連することが示されている(Higginsらの文献、Oncotarget(2010), 1, 175-184, Lemeeらの文献、PNAS(2010), 107(30), 13390-13395, Ceccaldiらの文献、(2015)、上掲)。重要なのは、Polθは、正常組織ではほとんど抑制されているが、マッチしたがん試料では上方制御されているために、発現増大は疾患と関連することが示されたことである(Kawamuraらの文献、International Journal of Cancer(2004), 109(1), 9-16)。次に、Polθの抑制又は阻害は、腫瘍細胞へ放射線感受性を与える。最後に、Polθ阻害は、腫瘍におけるシスプラチン抵抗性及びPARP阻害剤(PARPi)抵抗性の出現の根底にある、BRCA2変異のMMEJ依存的な機能性回復を防止することができるであろう。
【0005】
以上より、がん治療に効果的なPolθ阻害剤を提供する要求が存在している。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様では、式(I)の化合物、又は、その互変異性体若しくは立体化学異性体の形態、医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物が提供される。
【化1】
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
1の実施態様では、本発明は、式(I)の化合物の遊離塩基であって、(3aR,11aS)-6,10-ジメチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(E1)である、式(I)の化合物を提供する。
【0008】
式(I)の化合物及びそのサブグループへの言及は又、そのイオン形態、塩、溶媒和物、異性体(幾何異性体及び立体化学異性体を含む)、互変異性体、N-オキシド、エステル、プロドラッグ、同位体、並びに保護された形態、例えば下記の;好ましくは、その塩又は互変異性体又は異性体又はN-オキシド又は溶媒和物;更に好ましくは、その塩又は互変異性体又はN-オキシド又は溶媒和物、更により好ましくは、その塩又は互変異性体又は溶媒和物、を含む。下文では、本発明の任意の態様(化学的プロセスにおける中間化合物を除く)で定義される、化合物、並びにそのイオン形態、塩、溶媒和物、異性体(幾何異性体及び立体化学異性体を含む)、互変異性体、N-オキシド、エステル、プロドラッグ、同位体、及び保護された形態は、「本発明の化合物」と称される。
【0009】
(塩)
式(I)の特定の化合物は、塩の形態、例えば酸付加塩又は、特定の場合は、有機塩基及び無機塩基の塩、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩等、として存在してもよい。そのような塩は全て本発明の範囲内であり、式(I)の化合物への言及は、その化合物の塩形態を含む。
【0010】
本発明の塩は、「医薬の塩:性質、選択、及び用途(Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use)」、P. Heinrich Stahl(編)、Camille G. Wermuth(編)、ISBN:3-90639-026-8、Hardcover、388頁、2002年8月に記載の方法等の従来の化学的方法により、塩基性成分又は酸性成分を含む親化合物から合成可能である。一般に、そのような塩は、水中若しくは有機溶媒中、又は双方の混合物中で、これらの化合物の遊離酸又は遊離塩基形態を、適切な塩基又は酸と反応させることによって調製でき;一般に、非水性媒体、例えば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルが用いられる。
【0011】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機及び有機双方の多様な酸で形成し得る。酸付加塩の例には、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、及び、アシル化アミノ酸、並びに陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が含まれる。
【0012】
1の特別な塩の群は、酢酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1の特別な塩は、塩酸塩である。
【0013】
式(I)の化合物が、アミン基を含む場合、例えば、当業者に周知の方法でアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成してもよい。そのような第四級アンモニウム化合物は、式(I)の範囲内である。
【0014】
本発明の化合物は、その塩が形成される元の酸のpKaに応じてモノ塩又はジ塩として存在し得る。
【0015】
医薬としての使用のためには、式(I)の化合物の塩は、医薬として許容し得るべきであることが認識されるであろう。適切な医薬として許容し得る塩は、当業者には明らかであろう。医薬として許容し得る塩には、Berge、Bighley、及びMonkhouseの文献、J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1~19頁によって報告されるものが含まれる。そのような医薬として許容し得る塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、若しくはリン酸、及び、有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、若しくはナフタレンスルホン酸、で形成された酸付加塩が含まれる。他の塩、例えば、シュウ酸塩又はギ酸塩を、例えば、式(I)の化合物の単離において使用してもよく、これらは本発明の範囲内に含まれる。しかし、医薬として許容し得ない塩も又、後に医薬として許容し得る塩へと変換し得る中間体形態として調製し得る。そのような医薬として許容し得ない塩の形態であって、例えば本発明の化合物の精製又は分離において有用であり得るものも又、本発明の一部を形成する。
【0016】
式(I)の特定の化合物は、1当量以上の酸と酸付加塩を形成し得る。本発明は、その範囲内に、全ての可能な化学量論形態及び非化学量論形態を含む。
【0017】
(溶媒和物)
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が、その中でそれらを反応させる、又はそれらから沈殿若しくは結晶化させる溶媒と複合体を形成できることを認めるであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として公知である。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られている。本発明の化合物の医薬として許容し得る溶媒和物は、本発明の範囲内である。1の実施態様では、本発明の化合物の医薬として許容し得る溶媒和物には、その水和物が含まれる。
【0018】
1の実施態様では、式(I)の化合物の結晶形は、共結晶又はコフォーマーである。そのような共結晶又はコフォーマーは、サッカリン、カフェイン、ニコチンアミド、若しくはカルボン酸等の水溶性分子を用いて調製し得る。コフォーマーは、その技術が参照により本明細書に組み込まれている、Emami Sらの文献、(2018) BioImpacts 8(4), 305-320に記載のように調製し得る。
【0019】
本発明は式(I)の化合物の医薬として許容し得る誘導体を含み、そしてこれらは本発明の範囲内に含まれることが理解されるであろう。
【0020】
本明細書で使用される場合、「医薬として許容し得る誘導体」は、式(I)の化合物の任意の医薬として許容し得るエステル又はそのようなエステルの塩であって、レシピエントに投与すると、式(I)の化合物又はその活性代謝産物若しくは残基を(直接的に若しくは間接的に)提供することができるものを含む。
【0021】
(N-オキシド)
アミン基を含む式(I)の化合物は又、N-オキシドを形成し得る。アミン基を含む式(I)の化合物への本明細書での言及は、そのN-オキシドも含む。
【0022】
化合物が、幾つかのアミン基を含む場合、1以上の窒素原子が酸化されてN-オキシドを形成していてもよい。N-オキシドの特定の例は、三級アミンのN-オキシド又は窒素含有ヘテロ環の窒素原子のN-オキシドである。
【0023】
N-オキシドは、対応するアミンを、過酸化水素又は過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)等の酸化剤で処理することによって形成可能であり、例えば、「上級有機化学(Advanced Organic Chemistry)」、Jerry March著、第4版、Wiley Interscienceを参照されたい。更に特に、N-オキシドは、L. W.Deadyの文献(Syn. Commun. 1977、7、509-514)の手順によって調製可能であり、その手順ではアミン化合物を、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)と、例えばジクロロメタン等の不活性溶媒中で反応させる。
【0024】
(プロドラッグ)
式(I)の化合物の特定の保護された誘導体は、最終の脱保護段階前に調製されるものであり、それ自体では薬理活性を有しないかもしれないが、ある例では、経口的又は非経口的に投与された後に体内で代謝されて、薬理学的に活性である本発明の化合物を形成し得ることが当業者に認識されるであろう。従って、そのような誘導体は、「プロドラッグ」と記述し得る。本発明の化合物の全てのそのようなプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。本発明の化合物に機能的に適したプロドラッグの例は、Drugs of Today、19、9、1983、499-538、及び「化学トピックス(Topics in Chemistry)」、第31章、306~316頁、及び「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」、H. Bundgaard著、Elsevier、1985年、第1章に記載されている(これらの文献内の開示は、参照により本明細書に組み込まれている)。「プロ成分」として当業者に公知の特定の成分は、例えばH. Bundgaardの文献「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」(該文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれている)に記載されており、適切な機能性基が本発明の化合物内に存在する場合に、そのような機能性基上に配置し得ることが、当業者によって更に認識されるであろう。
【0025】
又、本発明の化合物及び様々な塩の範囲内には、それらの多形が含まれる。
【0026】
(エナンチオマー)
キラル中心が、式(I)の化合物内に存在する場合、本発明はその範囲内に、全ての可能なエナンチオマー及びジアステレオ異性体を、それらの混合物を含めて含む。異なる異性体形態は、従来法により、一方を他方から分離若しくは分割してもよく、又は、任意の所定の異性体を、従来の合成方法によって又は立体特異的合成若しくは不斉合成によって得てもよい。本発明は又、任意の互変異性体又はその混合物にも及ぶ。
【0027】
(同位体)
本発明は又、1以上の原子が、天然に最もよくみられる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられているという事実がなければ、式(I)に列挙するものと同一である、全ての医薬として許容し得る同位体標識化合物を含む。
【0028】
本発明の化合物に含めるのに適した同位体の例には、2H(D)及び3H(T)等の水素同位体、11C、13C、及び14C等の炭素同位体、36Cl等の塩素同位体、18F等のフッ素同位体、123I、125I、及び131I等のヨウ素同位体、13N及び15N等の窒素同位体、15O、17O、及び18O等の酸素同位体、32P等のリン同位体、並びに35S等の硫黄同位体が含まれる。
【0029】
特定の同位体標識された式(I)の化合物、例えば、放射性同位体を組み込んだものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究に有用である。式(I)の化合物は又、それらが、標識された化合物と、他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との複合体の形成を検出又は特定するのに使用できる点で、価値ある診断特性を有し得る。検出方法又は特定方法では、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)等の標識剤で標識された化合物が使用可能である。放射性同位体トリチウム、即ち3H(T)、及び炭素-14、即ち14Cは、それらの取り込みの容易さ及び検出手段が整っていることを考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0030】
重水素、即ち、2H(D)等の重い同位体での置換は、より高い代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増大又は必要投薬量の減少に起因する特定の治療的利点をもたらすことがあるため、幾つかの状況では好ましいかもしれない。
【0031】
11C、18F、15O、及び13N等の陽電子放出同位体での置換は、標的占有率を検査するための陽電子放出トポグラフィ(PET)研究において利用できる。
【0032】
同位体標識された式(I)の化合物は、一般に、当業者に公知の従来技術によって、又は、下記実施例及び調製に関しての記載に類似のプロセスによって、従来採用されてきた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて、調製可能である。
【0033】
(純度)
式(I)の化合物は医薬組成物としての使用を意図しているために、それらはそれぞれが、好ましくは実質的に純粋な形態で、例えば少なくとも60%純度、更に好適には少なくとも75%純度、そして好ましくは少なくとも85%、特に少なくとも98%純度(%は、重量対重量ベースである)で提供されることが容易に理解されるであろう。本化合物の純粋でない調製物は、医薬組成物で用いられる更に純粋な形態を調製するために使用し得る。
【0034】
(プロセス)
本発明の更なる態様では、式(I)の化合物及びその誘導体の調製のためのプロセスが提供される。下記スキームは、本発明の化合物を合成するのに使用し得る合成スキームの例である。下記スキームにおいて、反応性基を、良く確立された技術により保護基で保護することも、脱保護することもできる。
【0035】
本発明の更なる態様では、本明細書で定義される式(I)の化合物の製造方法であって:
(a)式(II)の化合物の:
【化2】
式(I)の化合物への相互変換;及び
(b)式(I)の化合物の医薬として許容し得る塩の任意の形成
を含む、前記製造方法が提供される。
【0036】
プロセス(a)は、通常、式(I)の化合物を調製する相互変換反応を含む。例えば、実施例1の工程(xvii)に記載のような。
【0037】
式(II)の化合物は、本明細書に記載される手順に従って調製し得る。例えば、式(II)の化合物は、実施例1、特に実施例1の工程(xvi)に記載される実験手順に従って調製し得る。
【0038】
適切であれば、本明細書に記載される反応は、当業者に公知の1以上の反応が次に続くか又はそのような反応より先行するかし、本明細書で定義される可変要素のそれぞれに対する必要な置換を達成するのに適切な順序で行われ、式(I)の他の化合物が得られる。そのような反応であって、反応条件が文献中で見つけることのできるものの非限定的な例には:
反応性基の保護、
反応性基の脱保護、
ハロゲン化、
脱ハロゲン化、
脱アルキル化、
アミン、アニリン、アルコール、及びフェノールのアルキル化、
ヒドロキシル基に対するMitsunobu反応、
適切な基に対する環化付加反応、
ニトロ、エステル、シアノ、アルデヒドの還元、
遷移金属を触媒とするカップリング反応、
アシル化、
スルホニル化/スルホニル基の導入、
エステル基のけん化/加水分解、
エステル基のアミド化又はエステル交換、
カルボキシル基のエステル化又はアミド化、
ハロゲン交換、
アミン、チオール、又はアルコールでの求核性置換、
還元的アミノ化、
カルボニル及びヒドロキシルアミン基のオキシム形成、
S-酸化、
N-酸化、
塩化
が含まれる。
【0039】
アリールカップリング及び還元を含む反応の順番は、変更し得ることが認識される。又、広い範囲のパラジウムベース触媒が、アリールカップリング反応を行うのに適していることも認識される。
【0040】
異性体分離を合成順序の適切な段階で行い得ることも又、認識し得る。強調されるべきは、そのようなキラル分離が、本発明の重要な態様を形成すること、及びそのような分離が、本明細書に記載される方法に従って行っても、又は公知の方法に従って行ってもよいことである。又、合成中に中間体の保護誘導体、例えば、Boc保護アミン若しくはSEM保護アミドを一時的に形成することが、クロマトグラフィ分離、キラル分割を容易にするため、又は特定の工程での溶解性向上若しくは収率上昇を達成するために有益であり得ることも認識される。
【0041】
上述の反応の多くでは、1以上の基を保護することが、その分子上の望ましくない部位で反応が起こるのを防ぐために必要なこともある。保護基、並びに官能基を保護及び脱保護する方法の例は、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(T. Green及びP. Wutsの文献;第4版;John Wiley and Sons、2007)に見出すことができる。
【0042】
ヒドロキシ基は、例えば、エーテル(-OR)又はエステル(-OC(=O)R)として、例えば:tert-ブチルエーテル;テトラヒドロピラニル(THP)エーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、若しくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリル若しくはtert-ブチルジメチルシリルエーテル;又はアセチルエステル(-OC(=O)CH3)として、保護し得る。
【0043】
アミン基は、例えば、アミド(-NRCO-R)又はカルバマート(-NRCO-OR)として、例えば:メチルアミド(-NHCO-CH3)として;ベンジルカルバマート(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz、若しくはNH-Z)として;tert-ブチルカルバマート(-NHCOOC(CH3)3、NH-Boc)として;2-ビフェニル-2-プロピルカルバマート(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、NH-Boc)として、9-フルオレニルメチルカルバマート(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルカルバマート(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルカルバマート(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルカルバマート(-NH-Troc)として、アリルカルバマート(-NH-Alloc)として、又は2(-フェニルスルホニル)エチルカルバマート(-NH-Psec)として、保護し得る。
【0044】
例えば環状アミン並びにヘテロ環式N-H基等のアミン用の他の保護基には、トルエンスルホニル(トシル)及びメタンスルホニル(メシル)基、ベンジル基、例えばパラ-メトキシベンジル(PMB)基、及びテトラヒドロピラニル(THP)基が含まれる。
【0045】
カルボン酸基は、エステルとして、例えば:C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル、tert-ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル;又はC5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル、パラ-メトキシベンジルエステル)として保護し得る。
【0046】
本発明の特定の化合物は、本発明の別の化合物へ標準的な化学的方法により変換可能であることが、当業者により理解されよう。
【0047】
医薬として許容し得る塩は、適切な酸又は酸誘導体との反応によって従来通り調製し得る。
【0048】
(治療的有用性)
本発明の化合物、そのサブグループ及び例は、Polθポリメラーゼ活性の阻害剤であり、本明細書に記載される疾患状態若しくは病状を予防又は治療するのに有用であり得る。更に、本発明の化合物及びそのサブグループは、Polθが媒介する疾患若しくは病状を予防又は治療するのに有用であろう。がん等の疾患状態若しくは病状を予防すること、又はその予防若しくは治療への言及は、その範囲内に、がんの緩和又はがんの発生率の低下を含む。
【0049】
従って、例えば、本発明の化合物は、がんの緩和又はがんの発生率を減少させるのに有用であろうことが想定される。
【0050】
本発明の化合物は、成人集団の治療に有用であり得る。本発明の化合物は、小児集団の治療に有用であり得る。
【0051】
これらのPolθの阻害の結果として、本化合物は、細胞がMMEJを行う能力を無効化する手段を提供するために有用であろう。従って、本化合物は、がん等の増殖性障害を治療又は予防するのに有用であることが証明されるであろう。更に、本発明の化合物は、細胞の蓄積に関連する障害がある疾患の治療において有用であり得る。
【0052】
理論により拘束されるものではないが、本発明のPolθ阻害剤が、特定のがんの治療的処置において特に有用である特徴を実証するであろうと予測される。例えば、1の実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、BRCA1及びBRCA2欠損している原発性及び続発性の固体腫瘍であって、乳房、卵巣、前立腺、及び膵臓を含む固体腫瘍において、好適に致死性である。
【0053】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、プロモーター過剰メチル化を伴うもの等の、BRCA欠損以外の機構によってHRDである様々な原発性及び続発性固体腫瘍において、好適に致死性である。DSB修復経路が、完全に下方制御されていないかもしれないこれらの腫瘍では、Polθ阻害剤(Polθi)を、別のDDR調節薬であるPARP阻害剤、DNA-PK阻害剤、ATR阻害剤、ATM阻害剤、wee1阻害剤、又はCHK1阻害剤等と一緒に投与することもできる。
【0054】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、原発性及び続発性の乳房、卵巣、前立腺、及び膵臓の腫瘍であって、BRCA1欠損を保持するが、PARPi薬物療法へ曝された後に又は曝されずにPARPi治療に対して抵抗性である腫瘍において、致死性である。
【0055】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、PARPi治療プログラムとともに与えられた場合に、CRRを含むORRを増大させるものであり、PARPi抵抗性の発現を遅らせるであろうし、再発までの時間及びDFSを延長させるであろうし、そしてHRD(BRCA1/2欠損及び他のHRD機構)原発性及び続発性腫瘍(乳房、卵巣、前立腺、及び膵臓)のOSを延長させるであろう。
【0056】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、特にWT p53との関連でATM活性(ATM-/-)の喪失を伴う様々な腫瘍において合成病(synthetic sickness)及び/又は合成致死性を示す。腫瘍の種類には、CLLと共に、胃、肺、乳房、及びCRCを含む約10%の全固体腫瘍が含まれるであろう。別のDDR修飾因子、例えばDNA-PK阻害剤、PARP阻害剤、又はATR阻害剤との共薬物治療は、そのような活性を更に増強し得る。Polθ阻害剤は、CLLを、薬物抵抗性が生じている古典的な化学療法及び免疫化学療法に対して再感作させるであろう。従って、更なる実施態様では、本発明の医薬組成物は、DNA-PK阻害剤、PARP阻害剤、又はATR阻害剤を更に含む。
【0057】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、非相同末端結合(NHEJ-D)のDNA二本鎖切断修復プロセスを欠損した様々な腫瘍において合成病及び/又は合成致死性を示す。は、前立腺、膵臓、子宮頸部、乳房、肺、膀胱、及び食道を含むおおよそ2~10%の全固体腫瘍を含むであろう。別のDDR修飾因子、例えばPARP阻害剤、ATM阻害剤、wee1阻害剤、CHK阻害剤、又はATR阻害剤等との共薬物治療は、そのような活性を更に増強し得る。Polθ阻害剤は、NHEJDがん細胞を、DNA DSB誘発性化学療法及び電離放射線ベースの療法に、更に感作させるであろう。従って、更なる実施態様では、本発明の医薬組成物は、PARP阻害剤、ATM阻害剤、wee1阻害剤、CHK阻害剤、又はATR阻害剤を更に含む。
【0058】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、Polθを過剰発現している卵巣、NSCL、及び乳房の腫瘍等のHR機能保持(proficient)腫瘍の化学療法中のDNA複製ストレス応答を減少させる。これは、治療に対するORRを増加させOSを増大させるであろう。そのような効果は、CMLを含む多種多様な白血病で使用される及び扁平上皮細胞癌の管理で使用される、シタラビン(Ara-C)及びヒドロキシウレアにおいて特に生じやすい。
【0059】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、EBRT及び近接照射療法を含む放射線治療において、固体腫瘍を選択的に感作させ、正常組織はほとんど又は全く感作させない。区域化した標的治療設定において、これは、生存率増大を引き起こす局所領域的制御を向上させ得る。これは、NSCLC、SCCH&N、直腸がん、前立腺がん、及び膵臓がんの管理において特に明白であろう。
【0060】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、PARPiとの共薬物療法の有り又は無しの場合に、CaP等のPTEN欠損腫瘍において合成病及び/又は合成致死性を示す。更に又、このような腫瘍は、PTEN欠損及びPolθ阻害剤誘導性放射線感受性の双方によって、放射線治療に対する鋭敏な感受性を示すであろう。
【0061】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、TLSポリメラーゼ活性を抑制し、原発性及び続発性固体腫瘍(例えば、乳房、肺、卵巣、CRC)を、薬物(例えば、シスプラチン、マイトマイシン、及びシクロホスファミド)に対して感作させ、かつ腫瘍抵抗性を伴う薬剤誘発性変異の獲得を減少させ、寛解の延長及びTTRの増加をもたらす。
【0062】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、イマチニブ抵抗性を発現したBCR-ABL陽性CML、並びにリガーゼIIIαレベルの上昇、リガーゼIVレベルの減少、及びaltEJ DSB修復に対する依存性増加を示す他の固体腫瘍を、再感作させる。
【0063】
更なる実施態様では、本発明のPolθ阻害剤は、好適には、アロマターゼ阻害剤抵抗性の、同様にリガーゼIIIαレベルの上昇、リガーゼIVレベルの減少、及びaltEJ DSB修復に対する依存性増加を示すER-原発性及び続発性乳がんにおける合成病及び/又は合成致死性を示す。
【0064】
本発明の更なる態様では、相同組換え欠損(HRD)を特徴とする腫瘍の治療における使用のための、本明細書で定義される式(I)の化合物が提供される。
【0065】
本明細書における「相同組換え欠損(HRD)」への言及は、結果的に相同組換え遺伝子の欠損又は機能喪失をもたらす遺伝子変異のいずれかを指すことが認識されるであろう。当該遺伝子変異の例には、変異(例えば、点変異)、置換、欠損、一塩基多型(SNP)、ハプロタイプ、染色体異常、コピー数多型(CNV)、エピジェネティクス、DNA反転、発現の減少、及び誤局在化が含まれる。
【0066】
1の実施態様では、該相同組換え遺伝子は、ATM、ATR、BRCA1、BRCA2、BARD1、RAD51C、RAD50、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCL、FANCM、PALB2(FANCN)、FANCP(BTBD12)、ERCC4(FANCQ)、PTEN、CDK12、MRE11、NBS1、NBN、CLASPIN、BLM、WRN、SMARCA2、SMARCA4、LIG1、RPA1、RPA2、BRIP1、及びPTENのいずれかから選択される。
【0067】
本明細書における「非相同末端結合欠損(NHEJD)」への言及は、結果的に相同組換え遺伝子の欠損又は機能喪失をもたらす遺伝子変異のいずれかを指すことが認識されるであろう。当該遺伝子変異の例には、変異(例えば、点変異)、置換、欠損、一塩基多型(SNP)、ハプロタイプ、染色体異常、コピー数多型(CNV)、エピジェネティクス、DNA反転、発現の減少、及び誤局在化が含まれる。
【0068】
1の実施態様では、当該非相同末端結合遺伝子は、LIG4、NHEJ1、POLL、POLM、PRKDC、XRCC4、XRCC5、XRCC6、及びDCLRE1Cのうちのいずれか1以上から選択される。
【0069】
本発明の更なる態様では、Polθを過剰発現している腫瘍の治療における使用のための、本明細書で定義される式(I)の化合物が提供される。
【0070】
本発明の更なる態様では、リガーゼIIIαレベルの上昇、リガーゼIVレベルの減少、及びaltEJ DSB修復に対する依存性増加を有する腫瘍の治療における使用のための、本明細書で定義される式(I)の化合物が提供される。
【0071】
治療(若しくは阻害)し得るがん(及びその良性の対応物)の例には、限定されるものではないが、上皮起源の腫瘍(腺腫、並びに、腺癌、扁平上皮癌、移行上皮癌、及び他の癌腫を含む様々な種類の癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、胃腸管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、及び肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、膵外分泌部、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、頬側口腔、喉頭、咽頭、咽頭鼻腔部、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔のがん)、卵巣、ファロピウス管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、並びに付属器(例えば、メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、ケラトアカントーマ、異形成母斑)の癌腫等;血液系悪性腫瘍(即ち、白血病、リンパ腫)並びに境界領域悪性腫瘍の前悪性血液障害及び障害であって、リンパ系血液系悪性腫瘍及び関連病変(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えばびまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、MALTリンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性疾患)、及び、骨髄性リネージの血液系悪性腫瘍及び関連病変(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性疾患、例えば真性赤血球増加症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖症候群、骨髄異形成症候群、及び前骨髄球性白血病)を含むもの;間葉系起源の腫瘍、例えば、軟組織、骨、若しくは軟骨の肉腫、例えば骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、及び隆起性皮膚線維肉腫;中枢若しくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星状細胞腫、神経膠腫及び神経膠芽腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン腫);内分泌性腫瘍(例えば、脳下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼部及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽細胞腫);生殖細胞及び絨毛性腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに、小児及び胎児の腫瘍(例えば、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、及び未分化神経外胚葉性腫瘍);又は、患者を悪性腫瘍になりやすくする先天性若しくはそうではない症候群(例えば、色素性乾皮症)が含まれる。
【0072】
多くの疾患が、持続的な制御されていない血管新生を特徴とする。慢性増殖性疾患は、多くの場合、炎症性及び/若しくは増殖性の状態に寄与し得る又はそれを維持することができるか、又は、血管の浸潤性増殖を介して組織破壊をもたらす、重大な血管新生を伴う。腫瘍の成長及び転移は、血管新生依存的であることが判明している。本発明の化合物は、従って、腫瘍血管新生のイニシエーションを予防及び妨害するのに有用であり得る。特に、本発明の化合物は、転移及び転移性のがん治療に有用であり得る。
【0073】
転移又は転移性の疾患とは、ある器官又は部分から別の隣接していない器官又は部分への疾患の伝播である。本発明の化合物によって治療可能ながんには、原発性腫瘍(即ち、発生部位のがん細胞)、局所的浸潤(その局所領域内の周囲の正常組織に侵入しそれを浸潤するがん細胞)、及び転移性(若しくは続発性)腫瘍、即ち、血流を通って(血行性伝播)、又はリンパ流を経て、又は体腔を横切って(経体腔)体内の別の部位及び組織に循環された悪性細胞から生じた腫瘍、が含まれる。
【0074】
特定のがんには、肝細胞癌、メラノーマ、食道、腎臓、結腸、結腸直腸、肺のがん(例えば、中皮腫又は肺腺癌)、乳房、膀胱、消化管、卵巣、及び前立腺のがんが含まれる。
【0075】
更なる態様では、本明細書に記載の通り、疾患又は病状、特にがんの治療用の医薬品の製造のための、該化合物の使用が提供される。
【0076】
該化合物は又、腫瘍増殖、病状形成、細胞を化学療法に感作させて生じた化学療法及び放射線療法に対する抵抗性の治療において有用であり得、かつ抗転移薬としても有用であり得る。
【0077】
本発明の化合物のPolθの阻害剤としての効能は、本明細書の実施例に記載される生物学的及び生物物理学的アッセイを用いて測定可能であり、所与の化合物によって示される親和性のレベルを、IC50値の観点から定義できる。本発明の特定の化合物は、1μM未満の、より特には0.1μM未満のIC50値を有する化合物である。
【0078】
CRISPR媒介型遺伝子編集の有効性を高めるPolθの喪失の役割が、WO2017/062754において記載されている。従って、Polθ抑制性化合物は、CRISPRベースの編集方法及び/又はCRISPRベースの編集治療の効率を高めるのに有用な可能性がある。更に又、化合物媒介性Polθ阻害は、ランダム組み込み事象の頻度を減少させる可能性があるため、CRISPR媒介性技術のどのような安全性への懸念も改善する道を提供する。従って、本発明の更なる態様では、CRISPRベースの編集方法及び/又はCRISPRベースの編集治療における本明細書で定義される式(I)の化合物の使用、例えばCRISPRベースの編集方法及び/又はCRISPRベースの編集治療の効率の増強が提供される。
【0079】
(医薬組成物)
本活性化合物は、単独投与可能であるが、医薬組成物(例えば、製剤)として提供することが好ましい。1の実施態様では、それは無菌医薬組成物である。
【0080】
従って、本発明は更に、上記で特定された医薬組成物、並びに少なくとも1つの式(I)の化合物(及び本明細書で定義されるそのサブグループ)を、本明細書に記載の通り、1以上の医薬として許容し得る賦形剤及び任意で他の治療薬又は予防薬と共に含む医薬組成物を作製する(例えば、混合す)方法を提供する。
【0081】
医薬として許容し得る賦形剤(複数可)は、例えば、担体(固体、液体、若しくは半固体の担体等)、アジュバント、希釈剤、充填剤若しくは増量剤、造粒剤、コーティング剤、放出制御剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、懸濁剤、増粘剤、香味料、甘味料、味覚マスキング剤、安定化剤、又は、医薬組成物において慣用の任意の他の賦形剤から選択できる。様々な種類の医薬組成物用の賦形剤の例を、下記に更に詳細に記載する。
【0082】
本明細書で使用される用語「医薬として許容し得る」は、賢明な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、若しくは他の問題若しくは合併症を伴わずに、合理的な利益/リスク比に見合う、対象(例えば、ヒト)の組織と接触させる用途に適した、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形に関する。各担体、賦形剤その他も又、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「許容し得る」ものでなければならない。
【0083】
式(I)の化合物を含む医薬組成物は、公知技術に従って製剤化することができ、例えば「レミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing Company、Easton、PA、USAを参照されたい。
【0084】
医薬組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、気管支内、舌下、点眼、耳内、直腸、膣内、又は経皮での投与に適した任意の形態とすることができる。組成物の非経口投与を意図する場合、それを、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下投与用に、又は、注射、注入、若しくは他の送達手段による標的器官又は組織内への直接送達用に、製剤化することができる。送達は、ボーラス注入、短期間輸液注入、又は長期間輸液注入によるものでもよく、受動送達によるものでも、又は適切な注入ポンプ若しくはシリンジ駆動装置を利用して行うものでもよい。
【0085】
非経口投与に適した医薬製剤には、水性及び非水性の滅菌注射液が含まれ、それらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、共溶媒、界面活性剤、有機溶媒混合物、シクロデキストリン複合体形成剤、(エマルジョン製剤を形成及び安定化するための)乳化剤、リポソームを形成するためのリポソーム成分、ポリマーゲル形成用のゲル化可能なポリマー、凍結乾燥保護剤、並びに、特に、可溶性形態の活性成分を安定化させるため、及び、その製剤を対象レシピエントの血液と等張とするための組み合せ薬剤を含み得る。非経口投与用の医薬製剤も又、懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液の形態をとり得る(R. G. Stricklyの文献、「経口用製剤及び注射用製剤における可溶化賦形剤(Solubilizing Excipients in oral and injectable formulations)」、Pharmaceutical Research, Vol 21(2)2004, 201~230頁)。
【0086】
本製剤は、単位用量又は複数回用量容器、例えば、密閉されたアンプル、バイアル、及び予備充填済シリンジとして提供してもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結された(lyophilised))状態で保管してもよい。1の実施態様では、製剤は、適切な希釈剤を用いる後続の再構成のために、ボトル内の活性医薬成分として提供される。
【0087】
医薬製剤は、式(I)の化合物又はそのサブグループを凍結乾燥することによって調製できる。凍結乾燥(lyophilisation)は、組成物を凍結乾燥する手順を指す。従って、凍結乾燥する(freeze-drying)及び凍結乾燥(lyophilisation)は、本明細書において同義語として使用される。
【0088】
即時調製注射の溶液及び懸濁液は、滅菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製し得る。
【0089】
非経口注射用の本発明の医薬組成物は又、医薬として許容し得る滅菌で水性若しくは非水性の、溶液、分散体、懸濁液、又はエマルジョン、及び使用直前に減菌の注射可能溶液又は分散体への再構成用の滅菌粉末も含み得る。
【0090】
適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、カルボキシメチルセルロース及びその適切な混合物、植物油類(ヒマワリ油、紅花油、コーン油、若しくはオリーブ油等)、並びに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチン等の増粘材料又は被覆材料の使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0091】
本発明の組成物は又、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等のアジュバントを含み得る。微生物作用の阻止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含めることによって確保し得る。又、糖類、塩化ナトリウム等の張性を調節する薬剤を含むことが望ましいこともある。注射可能な医薬形態の長期的吸収は、アルミニウムモノステアラート及びゼラチン等の吸収遅延薬剤を含めることによって達成し得る。
【0092】
本発明の特定の1実施態様では、医薬組成物は、例えば注射又は注入による、静脈内(i.v.)投与に適した形態である。静脈内投与のための溶液は、そのまま投与することもでき、又は投与前に輸液バッグ(医薬として許容し得る賦形剤、例えば0.9%生理食塩水若しくは5%ブドウ糖等を含む)内に注入することもできる。
【0093】
別の特別な実施態様では、医薬組成物は、皮下(s.c.)投与に適した形態である。
【0094】
経口投与に適した医薬剤形には、錠剤(コーティングあり若しくはなし)、カプセル剤(硬質若しくは軟質シェル)、カプレット剤、丸剤、ロゼンジ錠、シロップ剤、液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、及び懸濁剤、舌下錠剤、ウェハ剤、又は、口腔内頬側パッチ等のパッチが含まれる。
【0095】
従って、錠剤組成物は、単位用量の活性化合物を、不活性な希釈剤又は担体、例えば糖若しくは糖アルコール等、具体的にはラクトース、スクロース、ソルビトール、若しくはマンニトール;及び/又は、非糖由来希釈剤、例えば炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等、又はセルロース若しくはその誘導体、例えば微結晶性セルロース(MCC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び、コーンスターチ等のデンプン、と共に含み得る。錠剤は又、結合剤及び造粒剤(ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロース等の膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアラート)、防腐剤(例えば、パラベン)、抗酸化剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸又はクエン酸緩衝剤)、及び発泡剤(クエン酸塩/炭酸水素塩混合物等)等の標準的な成分を含み得る。これら賦形剤は周知であり、本明細書で詳細に述べる必要はない。
【0096】
錠剤は、胃液との接触時に薬物を放出するように(即時放出錠剤)、又は、長期にわたり若しくは胃腸管の特定領域で制御された様式で放出するように(制御放出錠剤)設計し得る。
【0097】
カプセル製剤は、硬質ゼラチン種若しくは軟質ゼラチン種でもよく、固体、半固体、又は液体形態の活性成分を含有可能である。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチン又は合成若しくは植物由来のその等価物から作製可能である。
【0098】
固体剤形(例えば;錠剤、カプセル剤等)は、コーティングされてもよく又はコーティングされなくてもよい。コーティングは、保護フィルム(例えば、ポリマー、ワックス、若しくはワニス)として、又は薬物放出を制御する目的又は美観若しくは識別目的の機構として機能し得る。コーティング(例えば、Eudragit(商標)型ポリマー)は、胃腸管内の所望の部位で活性成分を放出するように設計可能である。従って、コーティングは、消化器管内の特定のpH条件下で分解し、それにより胃内、又は回腸、十二指腸、空腸、若しくは結腸内で選択的に化合物を放出するように選択できる。
【0099】
コーティングの代わりに又はコーティングに加えて、該薬物を、放出制御剤、例えば制御された様式で消化器管内で化合物を放出するように適合し得る放出遅延化剤、を含む固体マトリックス内で提供し得る。或いは、該薬物を、例えばポリメタクリレートポリマーコーティングであって、本化合物を様々な酸性度又はアルカリ度の条件下で消化器管内で選択的に放出するように適合し得るポリマーコーティング内で提供し得る。或いは、このマトリックス材料又は放出遅延化コーティングは、剤形が消化器管を通過するにつれて実質的に継続して崩壊する易崩壊性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態でもよい。別の代替的態様では、コーティングは、消化管内での微生物作用で崩壊するように設計し得る。更なる代替的態様では、活性化合物は、本化合物の放出の浸透性制御を提供する送達系内での製剤化が可能である。浸透性放出及び他の遅延放出又は持続的放出製剤(例えば、イオン交換樹脂ベースの製剤)は、当業者に周知の方法に従って作成し得る。
【0100】
式(I)の化合物は、担体と共に製剤化して、ナノ粒子の形態で投与してもよく、ナノ粒子の増大した表面積がその吸収を支援する。更に、ナノ粒子は、細胞内への直接的浸透の可能性を提供する。ナノ粒子薬物送達系は、「薬物送達のためのナノ粒子技術(Nanoparticle Technology for Drug Delivery)」(Ram B Gupta及びUday B. Kompella編、Informa Healthcare, ISBN 9781574448573、2006日3月13日発行)に記載されている。薬物送達用のナノ粒子は又、J. Control. Release, 2003、91(1-2), 167-172及びSinhaらの文献、Mol. Cancer Ther. 8月1日、(2006) 5, 1909にも記載されている。
【0101】
本医薬組成物は、通常、約1%(w/w)~約95%(w/w)の活性成分及び99%(w/w)~5%(w/w)の医薬として許容し得る賦形剤又は賦形剤の組み合せを含む。特に、この組成物は、約20%(w/w)~約90%、%(w/w)の活性成分及び80%(w/w)~10%の医薬として許容し得る賦形剤又は賦形剤の組み合せを含む。本医薬組成物は、約1%~約95%、特に約20%~約90%の活性成分を含む。本発明による医薬組成物は、例えばアンプル、バイアル、坐剤、予備充填済シリンジ、ドラジェ、錠剤、又はカプセル剤の形態等の、例えば単位用量形態でもよい。
【0102】
医薬として許容し得る賦形剤(複数可)は、製剤の所望の物理的形態に従い選択可能であり、例えば、希釈剤(例えば、充填剤又は増量剤等の固体希釈剤;並びに溶媒及び共溶媒等の液体希釈剤)、崩壊剤、緩衝剤、滑沢剤、流動助剤、放出制御剤(例えば、放出遅延化又は放出延長化ポリマー又はワックス)、結合剤、造粒剤、色素、可塑剤、抗酸化剤、防腐剤、香味料、味覚マスキング剤、張性調整剤、並びにコーティング剤から選択可能である。
【0103】
当業者は、製剤使用のために成分の適切な量を選択する専門知識を有するであろう。例えば、錠剤及びカプセル剤は、通常、0~20%の崩壊剤、0~5%の滑沢剤、0~5%の流動助剤、及び/又は0~99%(w/w)の充填剤/又は増量剤を(薬物投与量に応じて)含む。これらは又、0~10%(w/w)のポリマー結合剤、0~5%(w/w)の抗酸化剤、0~5%(w/w)の色素を含み得る。徐放錠剤は更に、0~99%(w/w)の放出制御(例えば、遅延化)ポリマーを(用量に応じて)含み得る。錠剤又はカプセル剤のフィルムコーティングは、通常、0~10%(w/w)のポリマー、0~3%(w/w)の色素、及び/又は0~2%(w/w)の可塑剤を含む。
【0104】
非経口製剤は、通常、0~20%(w/w)の緩衝剤、0~50%(w/w)の共溶媒、及び/又は0~99%(w/w)の注射用水(WFI)を(用量に応じて、凍結乾燥品の場合に)含む。筋肉内デポ用製剤は又、0~99%(w/w)の油類を含み得る。
【0105】
経口投与用の医薬組成物は、活性成分を固体担体と組み合せることにより得ることができ、必要に応じて、得られた混合物を顆粒化し、その混合物を、必要に応じて又は必ず、適切な賦形剤の添加後に、錠剤、糖衣錠コア、又はカプセル剤へと加工する。これらは又、活性成分が測定量で拡散すること又は放出されることを可能とするポリマー若しくはワックスのマトリックスに組み込むことも可能である。
【0106】
本発明の化合物は又、固体分散体として製剤化することもできる。固体分散体は、2以上の固体の均質で極めて微細な分散相である。固体分散体の一種である固溶体(分子分散系)は、医薬技術での使用において周知であり(Chiou及びRiegelmanの文献、J. Pharm. Sci., 60, 1281-1300(1971)を参照)、溶解速度を増加させ、難水溶性の薬物の生物学的利用能を増加させるのに有用である。
【0107】
本発明は又、上述の固溶体を含む固体剤形も提供する。固体剤形には、錠剤、カプセル剤、チュアブル錠剤、及び分散性錠剤又は発泡錠剤が含まれる。公知の賦形剤を、固溶体とブレンドして、所望の剤形を得ることができる。例えば、カプセル剤は、(a)崩壊剤及び滑沢剤、又は(b)崩壊剤、滑沢剤、及び界面活性剤とブレンドした固溶体を含み得る。更に、カプセル剤は、増量剤、例えばラクトース又は微結晶性セルロース等を含み得る。錠剤は、少なくとも1つの崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、増量剤、及び滑剤とブレンドされた固溶体を含み得る。チュアブル錠剤は、増量剤、滑沢剤、並びに必要に応じて追加の甘味剤(例えば、人工甘味料)、及び適切な香料とブレンドした固溶体を含み得る。固溶体は又、薬物及び適切なポリマーの溶液を、糖ビーズ等の不活性担体の表面上に噴霧することによって形成し得る(「ノンパレイユ」)。これらビーズは次に、カプセルに充填する又は圧縮して錠剤化することが可能である。
【0108】
該医薬製剤は、単一包装、通常はブリスターパック内に治療の全ソースが含まれる「患者パック」で患者に提供し得る。患者パックは、バルクで供給された医薬品を薬剤師が患者への供給分として分配する従来型処方と比較して、通常の患者用処方には含まれていないが患者パックには含まれる添付文書に患者が常にアクセス可能である点で利点を有する。添付文書を含めることにより、医師の指示に対する患者の服薬コンプライアンスが向上することが示されている。
【0109】
局所用及び経鼻送達用の組成物には、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、点液(liquid drop)、並びにインサート(例えば、眼内インサート)が含まれる。そのような組成物は、公知の方法に従って製剤化可能である。
【0110】
直腸内又は膣内投与用の製剤の例には、例えば、活性化合物を含む、成形可能材料又はワックス状材料から形成し得るペッサリー及び坐剤が含まれる。活性化合物の溶液も又、直腸内投与のために使用し得る。
【0111】
吸入投与用組成物は、吸入可能な粉末組成物又は液体若しくは粉末のスプレー剤の形態でもよく、粉末吸入装置又はエアロゾル分注装置を用いる標準的な形態で投与可能である。そのような装置は、周知である。吸入投与のために、粉末化製剤は、通常、活性化合物を、ラクトース等の不活性固体粉末化希釈剤と共に含む。
【0112】
式(I)の化合物は、一般的に、単位剤形で提供されるものであり、従って、通常、所望のレベルの生物活性を提供するのに充分な化合物を含有する。例えば、製剤は、1ナノグラム~2グラムの活性成分、例えば、1ナノグラム~2ミリグラムの活性成分を含み得る。これらの範囲内で、化合物の特定の部分範囲は、0.1ミリグラム~2グラムの活性成分(より一般的には10ミリグラム~1グラム、例えば50ミリグラム~500ミリグラム)、又は1マイクログラム~20ミリグラム(例えば、1マイクログラム~10ミリグラム、例えば、0.1ミリグラム~2ミリグラムの活性成分)である。
【0113】
経口組成物の場合、単位剤形は、1ミリグラム~2グラム、より典型的には10ミリグラム~1グラム、例えば50ミリグラム~1グラム、例えば100ミリグラム~1グラムの活性化合物を含み得る。
【0114】
活性化合物は、それを必要とする患者(例えば、ヒト患者又は動物患畜)に、所望の治療効果を達成するのに充分な量で投与されるであろう。
【0115】
(治療方法)
本明細書で定義される式(I)の化合物及びサブグループは、Polθが媒介する様々な疾患状態又は病状の予防又は治療において有用であり得る。従って、本発明の更なる態様では、Polθが媒介する疾患状態又は病状(例えば、がん)を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載の通り、式(I)の化合物を投与することを含む、前記方法が提供される。そのような疾患状態及び病状の例は、上で述べられており、特に、がんを含む。
【0116】
化合物は、一般に、そのような投与を必要とする対象、例えば、ヒト患者又は動物患畜、特にヒトに投与される。
【0117】
化合物は、通常、治療的又は予防的に有用でありかつ一般的に非毒性である量で投与されるであろう。しかしながら、特定の状況では(例えば、重篤な疾患の場合には)、式(I)の化合物を投与することの利益が、何らかの有毒な作用又は副作用の不利な点を上回ることがあり、その場合、ある程度の毒性と関連する量で化合物を投与することが望ましいとみなし得ることがある。
【0118】
化合物は、有益な治療効果を維持するために長期間にわたって投与しても、又は短期間のみで投与してもよい。或いは、化合物は、持続的な様式で又は間欠的投薬を提供する様式(例えば、パルス式)で投与し得る。
【0119】
式(I)の化合物の典型的な1日投与用量は、体重キログラムあたり100ピコグラム~100ミリグラム、より典型的には体重キログラムあたり5ナノグラム~25ミリグラム、より通常には、体重キログラムあたりで、キログラムあたり10ナノグラム~15ミリグラム(例えば10ナノグラム~10ミリグラム、より典型的にはキログラムあたり1マイクログラム~キログラムあたり20ミリグラム、例えばキログラムあたり1マイクログラム~10ミリグラム)の範囲とすることができるが、必要な場合にはより高い又はより低い用量で投与し得る。式(I)の化合物は、毎日又は、例えば、2日、若しくは3日、若しくは4日、若しくは5日、若しくは6日、若しくは7日、若しくは10日、若しくは14日、若しくは21日、若しくは28日毎の繰り返しで投与できる。
【0120】
本発明の化合物は、例えば、1~1500 mg、2~800 mg、又は5~500 mg、例えば、2~200 mg若しくは10~1000 mgの用量範囲で経口的に投与してもよく、用量の特定の例には、10、20、50、及び80 mgが含まれる。該化合物は、1日1回又は日に2回以上投与してもよい。化合物は、持続的投与(即ち、治療レジメン期間全体の間、中断無しに毎日摂取)が可能である。或いは、化合物は、間欠的投与(即ち、1週間等の所定期間持続的に摂取され、次に1週間等の期間中断され、次いで別の1週間等の期間持続的に摂取され、以下治療レジメン期間全体にわたり同様に行われる)が可能である。間欠的投与を伴う治療レジメンの例には、投与が、1週間の投与、1週間の休薬;又は2週間の投与、1週間の休薬;又は3週間の投与、1週間の休薬;又は2週間の投与、2週間の休薬;又は4週間の投与、2週間の休薬;又は1週間の投与、3週間の休薬のサイクルであって、1サイクル以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10サイクル、又はそれを超えるサイクルにわたって繰り返されるレジメンが含まれる。
【0121】
1の特定の投薬スケジュールでは、患者は式(I)の化合物の注入点滴を、毎日1時間の間、最長で10日間にわたり、特に最長で5日間にわたり、1週間にわたり、その治療は、2~4週間等の所望の間隔で、特に3週間毎に繰り返されて受けるであろう。
【0122】
更に特に、患者は、5日間にわたり毎日1時間の間、式(I)の化合物の注入を受け、その治療は、3週間毎に繰り返されてもよい。
【0123】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、30分~1時間にわたる注入を受け、その後に可変時間内で、例えば1~5時間、例えば3時間の持続的注入を受ける。
【0124】
更に特定の投薬スケジュールでは、患者は、12時間~5日間にわたる持続的注入、特に24時間~72時間の持続的注入を受ける。
【0125】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、該化合物を経口的に週1回与えられる。
【0126】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、化合物を経口的に7~28日、例えば、7、14、又は28日にわたり1日1回与えられる。
【0127】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、化合物を経口的に1日、2日、3日、5日、又は1週間にわたり1日1回与えられ、その後に必要な日数の休薬をとることで、1又は2週間の周期が完了する。
【0128】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、化合物を経口的に2週間にわたり1日1回与えられ、その後に2週間の休薬が続く。
【0129】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、化合物を経口的に2週間にわたり1日1回与えられ、その後に1週間の休薬が続く。
【0130】
別の特定の投薬スケジュールでは、患者は、化合物を経口的に1週間にわたり1日1回与えられ、その後に1週間の休薬が続く。
【0131】
しかしながら、最終的には、投与される化合物の量及び用いられる組成物の種類は、疾患の性質又は治療中の生理的条件に対応するものであり、かつ医師の裁量によるものであろう。
【0132】
Polθ阻害剤を、単一の薬剤として又は他の抗がん剤と組み合せて使用可能であることが認識されるであろう。組み合せの実験は、例えば、Chou TC、Talalay P.の文献、「用量効果関係の定量分析:複数薬物又は酵素阻害剤の併用効果(Quantitative analysis of dose-effect relationships:the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors)」Adv Enzyme Regulat 1984;22:27-55に記載のように実施可能である。
【0133】
本明細書で定義される化合物は、特定の疾患状態、例えば、本明細書において先に定義されたがん等の新生物性疾患の治療のために、単独治療薬として投与可能であり、又はそれは1以上の他の化合物(若しくは療法)との併用療法でも投与可能である。上記病状の治療には、本発明の化合物は、有利には、1以上の他の医薬品と、更に特定的には、がん療法において他の抗がん剤又はアジュバント(その療法におけるサポート剤)と組み合せて採用し得る。式(I)の化合物と(同時重複してであろうと異なる時間間隔であろうと)共に投与し得る、他の治療薬又は治療処置の例には、限定されるものではないが:
・トポイソメラーゼI阻害剤;
・代謝拮抗薬;
・チューブリン標的指向化剤;
・DNA結合剤及びトポイソメラーゼII阻害剤;
・アルキル化剤;
・モノクローナル抗体;
・抗ホルモン剤;
・シグナル伝達阻害剤;
・プロテアソーム阻害剤;
・DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤;
・サイトカイン及びレチノイド;
・クロマチン標的化療法;
・放射線療法;並びに
・他の治療薬若しくは予防薬
が含まれる。
【0134】
抗がん剤又はアジュバント(若しくはその塩)の特定の例には、限定されるものではないが、下記群(i)~群(xlvi)、及び任意に群(xlvii)から選択される薬剤のいずれかが含まれる:
(i)白金化合物、例えば、シスプラチン(任意で、アミホスチンとの組み合せ)、カルボプラチン、又はオキサリプラチン;
(ii)タキサン化合物、例えば、パクリタキセル、パクリタキセルタンパク質結合粒子(Abraxane(商標))、ドセタキセル、カバジタキセル、又はラロタキセル;
(iii)トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン化合物、例えば、カンプトテシン、イリノテカン(CPT11)、SN-38、又はトポテカン;
(iv)トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、抗腫瘍性エピポドフィロトキシン又はポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシド若しくはテニポシド;
(v)ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンクリスチンのリポソーム製剤(Onco-TCS)、ビノレルビン、ビンデシン、ビンフルニン、又はビンベシル(vinvesir);
(vi)ヌクレオシド誘導体、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU、任意でロイコボリンとの組み合せ)、ゲムシタビン、カペシタビン、テガフル、UFT、S1、クラドリビン、シタラビン(Ara-C、シトシンアラビノシド)、フルダラビン、クロファラビン、又はネララビン;
(vii)代謝拮抗薬、例えば、クロファラビン、アミノプテリン、又はメトトレキサート、アザシチジン、シタラビン、フロクスウリジン、ペントスタチン、チオグアニン、チオプリン、6-メルカプトプリン、又はヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド);
(viii)アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード又はニトロソウレア等、例えば、シクロホスファミド、クロラムブシル、カルムスチン(BCNU)、ベンダムスチン、チオテパ、メルファラン、トレオスルファン、ロムスチン(CCNU)、アルトレタミン、ブスルファン、ダカルバジン、エストラムスチン、ホテムスチン、イホスファミド(任意で、メスナとの組み合せ)、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、ウラシル、メクロレタミン、メチルシクロヘキシルクロロエチルニトロスウレア(methylcyclohexylchloroethylnitrosurea)、又はニムスチン(ACNU);
(ix)アントラサイクリン、アントラセンジオン、及び関連薬物、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン(任意でデクスラゾキサンとの組み合せ)、ドキソルビシンのリポソーム製剤(例えば、Caelyx(商標)、Myocet(商標)、Doxil(商標))、イダルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、アムサクリン、又はバルルビシン;
(x)エポチロン、例えば、イキサベピロン、パツピロン、BMS-310705、KOS-862及びZK-EPO、エポチロンA、エポチロンB、デスオキシエポチロンB(別名:エポチロンD若しくはKOS-862)、アザエポチロンB(別名:BMS-247550)、アウリマリド(aulimalide)、イソラウリマリド、又はレウテロビン(luetherobin);
【0135】
(xi)DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、テモゾロミド、アザシチジン若しくはデシタビン、又はSGI-110;
(xii)葉酸代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、ペメトレキセド二ナトリウム、又はラルチトレキセド;
(xiii)細胞傷害性抗生物質、例えば、アンチノマイシン(antinomycin)D、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、レバミゾール、プリカマイシン、又はミトラマイシン;
(xiv)チューブリン結合剤、例えば、コンブレスタチン、コルヒチン、又はノコダゾール;
(xv)シグナル伝達阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤(例えば、EGFR(上皮成長因子受容体)阻害剤、VEGFR(血管内皮成長因子受容体)阻害剤、PDGFR(血小板由来成長因子受容体)阻害剤、MTKI(マルチターゲット型キナーゼ阻害剤)、Raf阻害剤、mTOR阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ドボチニブ(dovotinib)、アキシチニブ、ニロチニブ、バンデタニブ、バタリニブ(vatalinib)、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、エベロリムス(RAD 001)、ベムラフェニブ(PLX4032/RG7204)、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、又はIκBキナーゼ阻害剤、例えばSAR-113945、バルドキソロン、BMS-066、BMS-345541、IMD-0354、IMD-2560、若しくはIMD-1041等、又はMEK阻害剤、例えば、セルメチニブ(AZD6244)及びトラメチニブ(GSK121120212)等;
(xvi)オーロラキナーゼ阻害剤、例えば、AT9283、バラセルチブ(AZD1152)、TAK-901、MK0457(VX680)、セニセルチブ(R-763)、ダヌセルチブ(PHA-739358)、アリセルチブ(MLN-8237)、又はMP-470;
(xvii)CDK阻害剤、例えば、AT7519、ロスコビチン、セリシクリブ、アルボシジブ(フラボピリドール)、ディナシクリブ(SCH-727965)、7-ヒドロキシ-スタウロスポリン(UCN-01)、JNJ-7706621、BMS-387032(別名:SNS-032)、PHA533533、PD332991、ZK-304709、又はAZD-5438;
(xviii)PKA/B阻害剤及びPKB(akt)経路阻害剤、例えば、AKT阻害剤、例えばKRX-0401(ペリホシン/NSC 639966)、イパタセルチブ(GDC-0068;RG-7440)、アフレセルチブ(GSK-2110183;2110183)、MK-2206、MK-8156、AT13148、AZD-5363、リン酸トリシリビン(VQD-002;リン酸トリシリビン一水和物(API-2;TCN-P;TCN-PM;VD-0002)、RX-0201、NL-71-101、SR-13668、PX-316、AT13148、AZ-5363、セマフォア(semaphore)、SF1126、若しくはエンザスタウリン塩酸塩(LY317615)等、又はMTOR阻害剤、例えばラパマイシン類似物、例えば、RAD 001(エベロリムス)、CCI 779(テムシロレムス(temsirolemus))、AP23573及びリダホロリムス、シロリムス(初めはラパマイシンとして知られた)、AP23841及びAP23573等、カルモジュリン阻害剤、例えば、CBP-501(フォークヘッド型トランスロケーション阻害剤)、エンザスタウリン塩酸塩(LY317615)、又はPI3K阻害剤、例えば、ダクトリシブ(BEZ235)、ブパルリシブ(BKM-120;NVP-BKM-120)、BYL719、コパンリシブ(BAY-80-6946)、ZSTK-474、CUDC-907、アピトリシブ(GDC-0980;RG-7422)、ピクチリシブ(ピクトレリシブ、GDC-0941、RG-7321)、GDC-0032、GDC-0068、GSK-2636771、イデラリシブ(かつてのCAL-101、GS 1101、GS-1101)、MLN1117(INK1117)、MLN0128(INK128)、IPI-145(INK1197)、LY-3023414、イパタセルチブ、アフレセルチブ、MK-2206、MK-8156、LY-3023414、LY294002、SF1126若しくはPI-103、又はソノリシブ(sonolisib)(PX-866);
(xix)Hsp90阻害剤、例えば、AT13387、ハービマイシン、ゲルダナマイシン(GA)、17-アリルアミノ-17-デスメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、例えば、NSC-330507、Kos-953、及びCNF-1010、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン塩酸塩(17-DMAG)、例えば、NSC-707545及びKos-1022、NVP-AUY922(VER-52296)、NVP-BEP800、CNF-2024(BIIB-021、経口用プリン)、ガネテスピブ(STA-9090)、SNX-5422(SC-102112)、又はIPI-504;
(xx)モノクローナル抗体(放射性同位元素、毒素、又は他の薬剤にコンジュゲートしていないもの若しくはコンジュゲートしたもの)、抗体誘導体及び関連薬、例えば、抗CD、抗VEGFR、抗HER2、抗CTLA4、抗PD-1、又は抗EGFR抗体等、例えば、リツキシマブ(CD20)、オファツムマブ(CD20)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、GA101(CD20)、トシツモマブ(CD20)、エプラツズマブ(CD22)、リンツズマブ(CD33)、ゲムツズマブオゾガマイシン(CD33)、アレムツズマブ(CD52)、ガリキシマブ(CD80)、トラスツズマブ(HER2抗体)、ペルツズマブ(HER2)、トラスツズマブ-DM1(HER2)、エルツマキソマブ(HER2及びCD3)、セツキシマブ(EGFR)、パニツムマブ(EGFR)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ベバシズマブ(VEGF)、カツマクスマブ(catumaxumab)(EpCAM及びCD3)、アバゴボマブ(CA125)、ファルレツズマブ(葉酸受容体)、エロツズマブ(CS1)、デノスマブ(RANKリガンド)、フィギツムマブ(IGF1R)、CP751,871(IGF1R)、マパツムマブ(TRAIL受容体)、metMAB(met)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、ナプツモマブ・エスタフェナトクス(5T4)、シルツキシマブ(IL6)、又は免疫調節剤、例えば、CTLA-4遮断抗体及び/若しくはPD-1若しくはPD-L1及び/若しくはPD-L2に対する抗体等、例えば、イピリムマブ(CTLA4)、MK-3475(ペンブロリズマブ、かつてのランブロリズマブ、抗PD-1)、ニボルマブ(抗PD-1)、BMS-936559(抗PD-L1)、MPDL320A、AMP-514若しくはMEDI4736(抗PD-L1)、若しくはトレメリムマブ(かつてのチシリムマブ、CP-675,206、抗CTLA-4);
【0136】
(xxi)エストロゲン受容体アンタゴニスト又は選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)又はエストロゲン合成阻害剤、例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ドロロキシフェン、フェソロデックス、若しくはラロキシフェン;
(xxii)アロマターゼ阻害剤及び関連薬、例えば、エキセメスタン、アナストロゾール、レトラゾール、テストラクトンアミノグルテチミド、ミトタン、又はボロゾール;
(xxiii)抗アンドロゲン薬(即ち、アンドロゲン受容体アンタゴニスト)及び関連薬、例えば、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、シプロテロン、又はケトコナゾール;
(xxiv)ホルモン及びその類似物、例えば、メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール(別名:ジエチルスチルボエストロール)又はオクトレオチド;
(xxv)ステロイド、例えば、ドロモスタノロンプロピオナート、メゲストロールアセタート、ナンドロロン(デカノアート、フェンプロピオナート)、フルオキシメストロン(fluoxymestrone)、又はゴシポール、
(xxvi)ステロイド性シトクロムP450 17α-ヒドロキシラーゼ-17,20-リアーゼ阻害剤(CYP17)、例えばアビラテロン;
(xxvii)ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト又はアンタゴニスト(GnRAs)、例えば、アバレリックス、ゴセレリンアセタート、ヒストレリンアセタート、ロイプロリドアセタート、トリプトレリン、ブセレリン、若しくはデスロレリン;
(xxviii)グルココルチコイド、例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン;
(xxix)分化誘導薬、例えば、レチノイド、レキシノイド、ビタミンD、又はレチノイン酸、及びレチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)、例えば、アキュテイン、アリトレチノイン、ベキサロテン、又はトレチノイン;
(xxx)ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばチピファルニブ;
【0137】
(xxxi)クロマチン標的化療法、例えばヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えば、パノビノスタット、レスミノスタット、アベキシノスタット、ボリノスタット、ロミデプシン、ベリノスタット、エンチノスタット、キシノスタット、プラシノスタット、テフィノスタット、モセチノスタット、ギビノスタット、CUDC-907、CUDC-101、ACY-1215、MGCD-290、EVP-0334、RG-2833、4SC-202、ロミデプシン、AR-42(オハイオ州立大学)、CG-200745、バルプロ酸、CKD-581、酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサミド酸(SAHA)、デプシペプチド(FR 901228)、ダシノスタット(NVP-LAQ824)、R306465/JNJ-16241199、JNJ-26481585、トリコスタチンA、クラミドシン、A-173、JNJ-MGCD-0103、PXD-101、又はアピシジン;
(xxxii)プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、デランゾミブ(CEP-18770)、イキサゾミブ(MLN-9708)、オプロゾミブ(ONX-0912)、又はマリゾミブ;
(xxxiii)光線力学治療薬、例えば、ポルフィマーナトリウム又はテモポルフィン;
(xxxiv)海洋生物由来の抗がん剤、例えばトラベクチジン(trabectidin)等;
(xxxv) 放射免疫療法用の放射性標識化薬物、例えば、ベータ粒子放射同位体(例えば、ヨウ素-131、イットリウム(Yittrium)-90)又はα粒子放射同位体(例えば、ビスマス-213又はアクチンイウム-225)を含むもの、例えば、イブリツモマブ又はヨウ素トシツモマブ;
(xxxvi)テロメラーゼ阻害剤、例えばテロメスタチン;
(xxxvii)マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、バチマスタット、マリマスタット、プリノスタット(prinostat)、又はメタスタット(metastat);
(xxxviii)組換えインターフェロン(例えば、インターフェロン-γ及びインターフェロンα等)並びにインターロイキン(例えばインターロイキン2)、例えば、アルデスロイキン、デニロイキンジフチトクス、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、又はペグインターフェロンα2b;
(xxxix)選択的免疫応答調節薬、例えば、サリドマイド又はレナリドミド;
(xl)治療型ワクチン、例えば、シプロイセル-T(プロベンジ)又はOncoVex;
【0138】
(xli)サイトカイン活性化剤、ピシバニール、ロムルチド、シゾフィラン、ビルリジン、又はチモシン;
(xlii)三酸化ヒ素;
(xliii)Gタンパク質共役型受容体(GPCR)阻害剤、例えばアトラセンタン;
(xliv)酵素、例えば、L-アスパラギナーゼ、ペグアスパルガーゼ、ラスブリカーゼ、又はペグアデマーゼ;
(xlv)DNA修復阻害剤、例えばPARP阻害剤等、例えば、オラパリブ、ベラパリブ(velaparib)、イニパリブ、ルカパリブ(AG-014699若しくはPF-01367338)、タラゾパリブ、又はAG-014699;
(xlvi)DNA損傷応答阻害剤、例えば、ATM阻害剤AZD0156 MS3541、ATR阻害剤AZD6738、M4344、M6620、wee1阻害剤AZD1775;
(xlvii)デス受容体(例えば、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体)のアゴニスト、例えば、マパツズマブ(かつてのHGS-ETR1)、コナツムマブ(かつてのAMG 655)、PRO95780、レクサツムマブ、デュラネルミン、CS-1008、アポマブ、又は組換えTRAILリガンド、例えば組換えヒトTRAIL/Apo2リガンド;
【0139】
(xlviii)予防薬(補助剤);即ち、化学療法剤に関連する副作用の一部を低減又は緩和する薬剤、例えば
-制吐剤、
-化学療法関連好中球減少症を予防若しくはその期間を短縮し、かつ血小板、赤血球、又は白血球のレベル低下により生じる合併症を予防する薬剤、例えば、インターロイキン-11(例えばオプレルベキン)、エリスロポエチン(EPO)及びその類似物(例えば、ダルベポエチンα)、コロニー刺激因子類似体、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えばサルグラモスチム)、並びに顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及びその類似物(例えば、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム)、
-骨再吸収阻害剤、例えばデノスマブ又はビスホスホネート、例えば、ゾレドロナート、ゾレドロン酸、パミドロナート、及びイバンドロナート、
-炎症反応抑制剤、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びプレドニゾロン、
-先端巨大症又は他の稀なホルモン産生腫瘍の患者の成長ホルモン並びにIGF-I(及び他のホルモン)の血中レベルを低下させるために使用する薬剤、例えばホルモンソマトスタチンの合成形態、例えば、オクトレオチドアセタート、
-葉酸レベルを低下させる薬物に対する解毒薬、例えば、ロイコボリン又はフォリン酸、
-疼痛対処薬、例えばオピエート、例えば、モルヒネ、ジアモルヒネ、及びフェンタニル、
-非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばCOX-2阻害剤等、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、及びルミラコキシブ、
-粘膜炎用薬剤、例えばパリフェルミン、
-食欲不振、悪液質、浮腫、又はスロモエンボリック(thromoembolic)事象を含む副作用治療用薬剤、例えばメゲストロールアセタート。
【0140】
1の実施態様では、抗がん剤は、組換えインターフェロン(例えば、インターフェロン-γ及びインターフェロンα)、及びインターロイキン(例えばインターロイキン2)、例えば、アルデスロイキン、デニロイキンジフチトクス、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、又はペグインターフェロンα2b;インターフェロン-α2(500μ/ml)、特にインターフェロン-β;並びにシグナル伝達阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤(例えば、EGFR(上皮成長因子受容体)阻害剤、VEGFR(血管内皮成長因子受容体)阻害剤、PDGFR(血小板由来成長因子受容体)阻害剤、MTKI(マルチターゲットキナーゼ阻害剤)、Raf阻害剤、mTOR阻害剤、例えば、イマチニブメシラート、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ドボチニブ、アキシチニブ、ニロチニブ、バンデタニブ、バタリニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、エベロリムス(RAD 001)、ベムラフェニブ(PLX4032/RG7204)、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、又はIκBキナーゼ阻害剤、例えばSAR-113945、バルドキソロン、BMS-066、BMS-345541、IMD-0354、IMD-2560、若しくはIMD-1041等、又はMEK阻害剤、例えばセルメチニブ(AZD6244)及びトラメチニブ(GSK121120212)、特にRaf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ)又はMEK阻害剤(例えば、トラメチニブ)から選択される。
【0141】
本発明の組み合せ中に存在するそれぞれの化合物は、個々に様々な投薬スケジュールで異なる経路によって投与し得る。従って、2以上の薬剤のそれぞれの薬量は異なっていてもよく、2以上の薬剤のそれぞれは、同時に又は異なる時点で投与し得る。当業者は、その一般常識によって、用いるべき投薬レジメン及び併用療法を知っているであろう。例えば、本発明の化合物は、それらの既存の組み合せレジメンに従って投与される1以上の他の薬剤と組み合せて使用しても良い。標準的な組み合せレジメンの例を、下記に示す。
【0142】
タキサン化合物は、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり50~400 mg(mg/m2)、例えば75~250 mg/m2の投薬量で、特に、パクリタキセルは約175~250 mg/m2、及びドセタキセルは約75~150 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0143】
カンプトテシン化合物は、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり0.1~400 mg(mg/m2)、例えば1~300 mg/m2の投薬量で、特に、イリノテカンは約100~350 mg/m2、及びトポテカンは約1~2 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0144】
抗腫瘍ポドフィロトキシン誘導体は、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり30~300 mg(mg/m2)、例えば50~250 mg/m2の投薬量で、特に、エトポシドは約35~100 mg/m2、及びテニポシドは約50~250 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0145】
抗腫瘍ビンカアルカロイドは、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり2~30 mg(mg/m2)の投薬量で、特にビンブラスチンは約3~12 mg/m2の投薬量で、ビンクリスチンは約1~2 mg/m2の投薬量で、及びビノレルビンは約10~30 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0146】
抗腫瘍ヌクレオシド誘導体は、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり200~2500 mg(mg/m2)、例えば700~1500 mg/m2の投薬量で、特に5-FUは200~500 mg/m2の投薬量で、ゲムシタビンは約800~1200 mg/m2の投薬量で、及びカペシタビンは約1000~2500 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0147】
ナイトロジェンマスタード又はニトロソウレア等のアルキル化剤は、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり100~500 mg(mg/m2)、例えば、120~200 mg/m2の投薬量で、特に、シクロホスファミドは約100~500 mg/m2の投薬量で、クロラムブシルは約0.1~0.2 mg/kgの投薬量で、カルムスチンは約150~200 mg/m2の投薬量で、及びロムスチンは約100~150 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0148】
抗腫瘍アントラサイクリン誘導体は、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり10~75 mg(mg/m2)、例えば、15~60 mg/m2の投薬量で、特にドキソルビシンは約40~75 mg/m2の投薬量で、ダウノルビシンは約25~45 mg/m2の投薬量で、及びイダルビシンは約10~15 mg/m2の投薬量で、投与される。
【0149】
抗エストロゲン剤は、有利には、特定薬剤及び治療中の病状に応じて1日あたり約1~100 mgの投薬量で投与される。タモキシフェンは、有利には5~50 mg、特に10~20 mgの投薬量で、1日2回経口投与され、治療効果を達成し維持するのに充分な時間この療法が継続される。トレミフェンは、有利には約60 mgの投薬量で、1日1回経口投与され、治療効果を達成し維持するのに充分な時間この療法が継続される。アナストロゾールは、有利には約1mgの投薬量で、1日1回経口投与される。ドロロキシフェンは、有利には約20~100 mgの投薬量で、1日1回経口投与される。ラロキシフェンは、有利には約60 mgの投薬量で、1日1回経口投与される。エキセメスタンは、有利には約25 mgの投薬量で、1日1回経口投与される。
【0150】
抗体は、有利には、体表面積1平方メートルあたり約1~5 mg(mg/m2)の投薬量で、又は異なる場合には当分野において公知のように、投与される。トラスツズマブは、有利には、治療コースあたり、体表面積1平方メートルあたり1~5 mg(mg/m2)、特に2~4mg/m2の投薬量で投与される。
【0151】
式(I)の化合物を、1、2、3、4種、又はそれを超える他の治療薬(特に1種若しくは2種、より特定的には1種)との併用療法で投与する場合、該化合物は、同時に又は逐次的に投与し得る。後者の場合、該2以上の化合物は、有利な効果又は相乗効果の達成が確実となるのに充分な期間及び量並びに様式で投与し得る。逐次的に投与する場合、それらは、短い間隔で(例えば、5~10分の間)、又はより長い間隔で(例えば、1、2、3、4時間若しくはそれを超える時間の間をあけて、又は必要であれば更に長い期間をあけて)投与可能であり、厳密な投薬レジメンは、治療薬(複数可)の特性に見合うものである。これらの投薬は、例えば、治療コースあたり1回、2回、又はそれを超える回数で実施されてもよく、これは、例えば、7、14、21、若しくは28日毎に繰り返してもよい。
【0152】
1の実施態様では、療法で使用するための医薬品の製造のための式(I)の化合物であって、該化合物は、1、2、3、又は4種の他の治療薬と組み合せて用いられる、前記化合物が提供される。別の実施態様では、式(I)の化合物を含むがん治療用医薬品であって、該医薬品は、1、2、3、又は4種の他の治療薬と組み合せて用いられる、前記医薬品が提供される。本発明は更に、がんを患う患者における奏効率を増強する又は強めるための医薬品の製造のための式(I)の化合物の使用であって、該患者は、1、2、3、若しくは4種の他の治療薬で治療中である、前記使用を提供する。
【0153】
その組み合せの各成分の、特別な投与方法及び投与順序、及びそれぞれの投薬量、並びに治療レジメンは、投与される特別な他の医薬品及び本発明の化合物、それらの投与経路、治療中の特別な腫瘍、並びに治療中の特別な宿主に依存し得ることが認識されるであろう。最適な投与方法及び投与順序、及び投薬量、並びに治療レジメンは、当業者が、従来法を用いて、そして本明細書に提示された情報を考慮して容易に決定できる。
【0154】
組み合せて投与される場合、本発明の化合物及び1以上の他の抗がん剤(複数可)の重量比は、当業者によって決定し得る。当該比並びに厳密な投薬量及び投与頻度は、用いられる本発明の特定の化合物及び他の抗がん剤(複数可)、治療中の特定の病状、治療中の病状の重症度、その特定の患者の、年齢、体重、性別、食事、投与時、及び全身健康状態、投与様式、並びに当患者個体が摂取しているかもしれない他の治療薬に依存するが、これは当業者に周知なとおりである。更に又、1日当たりの有効量が、治療される対象の反応に応じて、及び/又は、本発明の化合物を処方する医師の判断に応じて、減少若しくは増加し得ることは明らかである。式(I)の本化合物及び別の抗がん剤の特別な重量比は、1/10~10/1、より特定的には1/5~5/1、更により特定的には1/3~3/1の範囲であり得る。
【0155】
本発明の化合物は又、放射線療法、光線力学的療法、遺伝子療法;外科手術及び食事制限等の、化学療法以外の治療と併用して投与し得る。
【0156】
本発明の化合物は又、腫瘍細胞を放射線療法及び化学療法に対して感作させるという治療的応用も有する。従って、本発明の化合物を、「放射線増感剤」及び/若しくは「化学療法増感剤」として使用可能であり、又は別の「放射線増感剤」及び/若しくは「化学療法増感剤」と組み合せて投与することも可能である。1の実施態様では、本発明の化合物は、化学療法増感剤として使用される。
【0157】
用語「放射線増感剤」は、細胞の電離放射線に対する感受性を増大させるために、及び/又は、電離放射線で治療可能な疾患の治療を促進するために、治療有効量で患者に投与される分子として定義される。
【0158】
用語「化学療法増感剤」は、細胞の化学療法に対する感受性を増大させるために、及び/又は、化学療法で治療可能な疾患の治療を促進するために、治療有効量で患者に投与される分子として定義される。
【0159】
1の実施態様では、本発明の化合物は、「放射線増感剤」及び/又は「化学療法増感剤」と共に投与される。1の実施態様では、本発明の化合物は「免疫増感剤」と共に投与される。
【0160】
用語「免疫増感剤」は、細胞のPolθ阻害剤に対する感受性を増大させるために、治療有効量で患者に投与される分子として定義される。
【0161】
多くのがん治療プロトコルでは現在、X線照射と共に放射線増感剤を採用する。X線で活性化される放射線増感剤の例には、限定されるものではないが:メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、EO9、RB 6145、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、並びにこれらの治療的に有効な類似体及び誘導体が含まれる。
【0162】
がんの光線力学的療法(PDT)では、増感剤の照射活性化因子として可視光を採用する。光線力学的放射線増感剤の例には、限定されるものではないが:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、錫エチオポルフィリン、フェオボルビド-a(pheoborbide-a)、バクテリオクロロフィル-a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、並びにこれらの治療的に有効な類似体及び誘導体が含まれる。
【0163】
放射線増感剤は、治療的有効量の1以上の他の化合物と共に投与してもよく、この他の化合物は限定されるものではないが:本発明の化合物;放射線増感剤の標的細胞への取り込みを促進する化合物;標的細胞への治療用物質、栄養素、及び/若しくは酸素の流れを制御する化合物;追加の放射線照射を伴って若しくは伴わずに腫瘍に対して作用する化学療法剤;又はがん若しくは他の疾患を治療するための治療的に有効な他の化合物、を含む。
【0164】
化学療法増感剤は、治療的有効量の1以上の他の化合物と共に投与してもよく、この他の化合物は限定されるものではないが:本発明の化合物;化学療法増感剤の標的細胞への組み込みを促進する化合物;標的細胞への治療用物質、栄養素、及び/若しくは酸素の流れを制御する化合物;腫瘍に対して作用する化学療法剤、又はがん若しくは他の疾患を治療するための治療的に有効な他の化合物、を含む。カルシウムアンタゴニスト、例えば、ベラパミルは、抗新生物剤と組み合せると、受容されている化学療法剤に抵抗性の腫瘍細胞に化学療法感受性を確立すること及び薬物感受性悪性腫瘍でその化合物の有効性を増強することに有用であることが判明している。
【0165】
免疫増感剤の例には、限定されるものではないが:免疫調節剤、例えば、モノクローナル抗体、例えば、免疫チェックポイント抗体等[例えば、CTLA-4遮断抗体、並びに/又は、PD-1及びPD-L1及び/若しくはPD-L2に対する抗体、例えば、イピリムマブ(CTLA4)、MK-3475(ペムブロリズマブ、かつてのランブロリズマブ、抗PD-1)、ニボルマブ(抗PD-1)、BMS-936559(抗PD-L1)、MPDL320A、AMP-514、若しくはMEDI4736(抗PD-L1)、若しくはトレメリムマブ(かつてのチシリムマブ、CP-675,206、抗CTLA-4)];又はシグナル伝達阻害剤;又はサイトカイン(例えば、組換えインターフェロン等);又は腫瘍溶解性ウイルス;又は免疫アジュバント(例えば、BCG)が含まれる。
【0166】
免疫増感剤は、治療的有効量の1以上の他の化合物と共に投与してもよく、この他の化合物は限定されるものではないが:本発明の化合物;免疫増感剤の標的細胞への組み込みを促進する化合物;標的細胞への治療用物質、栄養素、及び/若しくは酸素の流れを制御する化合物;腫瘍に作用する治療薬、又はがん若しくは他の疾患を治療するための治療的に有効な他の化合物、を含む。
【0167】
別の化学療法剤との併用療法での使用のために、式(I)の化合物及び1、2、3、4種、又はそれを超える他の治療薬を、例えば、2、3、4種、若しくはそれを超える治療薬を含有する剤形中に、即ち、全ての薬剤を含む一元的な医薬組成物中に一緒に製剤化することができる。別の実施態様では、個々の治療薬を、別個に製剤化し、任意でそれらの使用のための説明書を含むキットの形態で、一緒に提供してもよい。
【0168】
1の実施態様では、式(I)の化合物と1種以上(例えば、1又は2種)の他の治療薬(例えば、上述のような抗がん剤)との組み合せが提供される。更なる実施態様では、本明細書に記載のPolθ阻害剤、及び:アピトリシブ、ブパルリシブ、コパンリシブ、ピクチリシブ、ZSTK-474、CUDC-907、GSK-2636771、LY-3023414、イパタセルチブ、アフレセルチブ、MK-2206、MK-8156、イデラリシブ、BEZ235(ダクトリシブ)、BYL719、GDC-0980、GDC-0941、GDC-0032、及びGDC-0068から選択される、PI3K/AKT経路阻害剤の組み合せが提供される。
【0169】
別の実施態様では、療法、例えばがんの予防又は治療における使用のための、1以上(例えば、1若しくは2種)の他の治療薬(例えば、抗がん剤)と組み合せた式(I)の化合物が提供される。
【0170】
1の実施態様では、医薬組成物は、式(I)の化合物を、医薬として許容し得る担体及び、任意で1以上の治療薬(複数可)と共に含む。
【0171】
別の実施態様では、本発明は、腫瘍細胞の成長を阻害するための医薬組成物の製造における、本発明の組み合せの使用に関する。
【0172】
更なる実施態様では、本発明は、式(I)の化合物及び1以上の抗がん剤を含む製品であって、がんを患う患者の治療での同時的な、別々な、又は逐次的な使用のための組み合せ調製物としての前記製品に関する。
【実施例】
【0173】
(実施例)
これから、本発明を次の実施例に記載される具体的な実施態様を参照して説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0174】
【0175】
(典型的な分取HPLC方法)
HPLCによる中間体の精製のために、通常は次のカラム:SunFire C18、Xtimate C18、Phenomenex Gemini、Phenomenex Synergi C18、Phenomenex Luna、Waters Xbridge C18、Boston Prime C18、及びShim-pack C18、を用いた。使用した移動相は通常、例えばぎ酸(0.1%(v/v))又は水酸化アンモニウム(0.05%(v/v))の、酸性又は塩基性いずれかの添加剤を含む水及びMeCNであった。典型的な方法は、95%水:5% MeCNで開始し、5~12分間かけて通常の流速は25 mL/分で水及びMeCNの極性比を減少させた。質量検出用HPLCとして通常使用した質量分析計はWaters 3100であり、100~700 g/molの質量を検出した。
【0176】
(実施例1)
(3aR,11aS)-6,10-ジメチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン
【化3】
【0177】
(工程i.) DCM(200 mL)中の2-クロロ-6-ニトロアニリン(20.0 g、116 mmol)、トリエチルアミン(23.4 g、231 mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(1.42 g、11.5 mmol)の混合物へ、二炭酸ジ-tert-ブチル(55.6 g、254 mmol)を添加した。反応混合物を25 ℃で16時間攪拌した。完了後、混合物を水(300 mL)で希釈し、EtOAc(3×100 mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和クエン酸水溶液(100 mL)、塩水(3×300 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポしてtert-ブチル(tert-ブトキシカルボニル)(2-クロロ-6-ニトロフェニル)カルバマート(43.0 g、99%収率)を黄色固体として得て、これを精製なしに使用した。
【化4】
【0178】
(工程ii.) tert-ブチル(tert-ブトキシカルボニル)(2-クロロ-6-ニトロフェニル)カルバマート(53.0 g、142 mmol)のTHF(500 mL)溶液へ、5% Pt-V/C(5 g)を添加した。反応混合物を20 ℃で20時間、H
2雰囲気下(15 psi)で攪拌した。完了後、反応物を濾過し、濾液をエバポして、tert-ブチル(2-アミノ-6-クロロフェニル)(tert-ブトキシカルボニル)カルバマート(48.3 g、99%収率)を白色固体として得て、これを更なる精製なしに使用した。
【化5】
【0179】
(工程iii.) MeOH(500 mL)中のtert-ブチル(2-アミノ-6-クロロフェニル)(tert-ブトキシカルボニル)カルバマート(46.5 g、135 mmol)及びK
2CO
3(37.4 g、271 mmol)の混合物を、60 ℃で3時間攪拌した。完了後、混合物をエバポしてMeOHを除去し、水(300 mL)で希釈し、EtOAc(2×200 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(2×200 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポしてtert-ブチル(2-アミノ-6-クロロフェニル)カルバマート(32.3 g、98%収率)を黄色固体として得て、これを更なる精製なしに使用した。
【化6】
【0180】
(工程iv.) ナトリウムメトキシド(33.3 g、618 mmol)のMeOH(150 mL)溶液へ、tert-ブチル(2-アミノ-6-クロロフェニル)カルバマート(15.0 g、61.8 mmol)及びパラホルムアルデヒド(2.78 g、92.7 mmol)を添加した。この混合物を0 ℃で12時間攪拌し、その後NaBH
4(11.6 g、309 mmol)を添加し、そして反応混合物を20 ℃で更に2時間攪拌した。完了後、混合物を水(20 mL)でクエンチし、エバポしてMeOHを除去した。水性混合物を水(200 mL)で希釈し、EtOAc(3×100 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(3×200 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、カラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=5/1)で精製してtert-ブチル(2-クロロ-6-(メチルアミノ)フェニル)カルバマート(7.8 g、49%収率)を白色固体として得た。
【化7】
【0181】
(工程v.) tert-ブチル 2-((ジフェニルメチレン)アミノ)アセテート(CAS:81477-94-3;100 g、339 mmol)及びフマル酸ジメチル(CAS:624-49-7;73.2 g、508 mmol)のEtOAc(1 L)溶液へ、(S)-2-((2,3-ビス(ジシクロヘキシルアミノ)シクロプロプ-2-エン-1-イリデン)アミノ)プロパン-1-オール(CAS:1808186-23-3, J. S. Banderらの文献、Chem. Sci. 2015, 6, 1537に記載の通りに調製した;18.5 g、33.9 mmol)を添加した。反応混合物を室温で48時間攪拌した。完了後、反応混合物をエバポし、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/EtOAc=4/1)で精製して、1-(tert-ブチル)2,3-ジメチル(1S,2S)-1-((ジフェニルメチレン)アミノ)プロパン-1,2,3-トリカルボキシラートを無色油状物質(140 g、94%収率)として得た。
【0182】
(工程vi.) 1-(tert-ブチル)2,3-ジメチル(1S,2S)-1-((ジフェニルメチレン)アミノ)-プロパン-1,2,3-トリカルボキシラート(140 g、318.5 mmol)のTHF(1.4 L)溶液へ、15%(w/w)クエン酸水溶液(1.4 L)を添加した。反応混合物を室温で48時間攪拌した。完了後、反応物をNaHCO
3飽和水溶液でクエンチし、EtOAc(3×1 L)で抽出した。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、エバポした。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/EtOAc=3/7)で精製して2-(tert-ブチル)3-メチル(2S,3S)-5-オキソピロリジン-2,3-ジカルボキシラートを白色固体(70 g、90%収率)として得た。
【化8】
【0183】
(工程vii.) 2-(tert-ブチル)3-メチル(2S,3S)-5-オキソピロリジン-2,3-ジカルボキシラート(40.0 g、164 mmol)及びTFA(250 mL)の混合物を、25 ℃で12時間、N
2雰囲気下で攪拌した。完了後、反応混合物をエバポした。残留物を(PE/EtOAc=10/1)で60分間トリチュレートした。懸濁液を濾過して、(2S,3S)-3-(メトキシカルボニル)-5-オキソピロリジン-2-カルボン酸(27.0 g、87%収率)を白色固体として得た。
【化9】
【0184】
(工程viii.) (2S,3S)-3-(メトキシカルボニル)-5-オキソピロリジン-2-カルボン酸(3.64 g、19.4 mmol)のMeCN(40 mL)溶液へ、Ghosez試薬(CAS:26189-59-3;3.12 g、23.3 mmol)を0 ℃で添加した。混合物を20 ℃で1時間攪拌し、その後、その混合物を、MeCN(40 mL)中のtert-ブチル(2-クロロ-6-(メチルアミノ)フェニル)カルバマート(工程 ivに記載の通りに調製した;5 g、19.4 mmol)及びN,N-ジメチルピリジン-2-アミン(4.76 g、38.9 mmol)の混合物へ0 ℃で滴加した。反応混合物を0 ℃で30分間攪拌した。完了後、混合物を水(20 mL)で希釈し、エバポしてMeCNを除去した。残留物を更に水(60 mL)で希釈し、EtOAc(3×80 mL)で抽出した。合わせた層を塩水(200 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、エバポし、カラムクロマトグラフィ(EtOAc)で精製して、メチル(2S,3S)-2-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-クロロフェニル)(メチル)カルバモイル)-5-オキソピロリジン-3-カルボキシラート(6.5 g、71%収率)を黄色固体として得た。
m/z ES+ [M+H]+ 425.9.
【0185】
(工程ix.) 1,4-ジオキサン(120 mL)中のメチル(2S,3S)-2-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-クロロフェニル)(メチル)カルバモイル)-5-オキソピロリジン-3-カルボキシラート(11.4 g、26.8 mmol)、2-ブロモ-6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン(CAS:451459-17-9;8.35 g、34.8 mmol)、Pd
2(dba)
3(2.45 g、2.7 mmol)、キサントホス(3.10 g、5.4 mmol)、及びK
2CO
3(11.1 g、80.3 mmol)の混合物を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を100 ℃で3時間、N
2雰囲気下で攪拌した。完了後、混合物をエバポし、水(300 mL)で希釈し、EtOAc(3×350 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(600 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポし、そしてカラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=3/1)で精製して、メチル(2S,3S)-2-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-クロロフェニル)(メチル)カルバモイル)-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-オキソピロリジン-3-カルボキシラート(11.0 g、66%収率)を黄色固体として得た。
【化10】
【0186】
(工程x.) メチル(2S,3S)-2-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-クロロフェニル)(メチル)カルバモイル)-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-オキソピロリジン-3-カルボキシラート(19.3 g、32.9 mmol)の、THF(200 mL)及びMeOH(20 mL)溶液へ、NaBH4(2.50 g、65.9 mmol)を少量ずつ 0 ℃で徐々に添加した。反応混合物を25 ℃で1時間攪拌した。完了後、混合物を徐々にNH4Cl飽和水溶液(150 mL)でクエンチし、水性混合物を30分間攪拌した。混合物をエバポし、水(100 mL)で希釈し、そしてEtOAc(3×250 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(600 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、エバポしてtert-ブチル(2-クロロ-6-((2S,3S)-3-(ヒドロキシメチル)-N-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-オキソピロリジン-2-カルボキサミド)フェニル)カルバマート(18.3 g、粗生成物)を茶色固体として得て、これを更なる精製なしに使用した。
m/z ES+ [M+H]+ 557.1.
【0187】
(工程xi.) tert-ブチル(2-クロロ-6-((2S,3S)-3-(ヒドロキシメチル)-N-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-オキソピロリジン-2-カルボキサミド)フェニル)カルバマート(18.3 g、32.8 mmol)のDCM(200 mL)溶液へ、トリエチルアミン(13.3 g、131 mmol)を添加し、その後メタンスルホニルクロリド(6.02 g、52.5 mmol)を0 ℃で滴加した。反応混合物を0 ℃で 1時間攪拌した。完了後、混合物を水(200 mL)でクエンチした。層を分液し、水層を更にEtOAc(2×300 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(800 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、エバポして((2S,3S)-2-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-クロロフェニル)(メチル)カルバモイル)-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-オキソピロリジン-3-イル)メチル メタンスルホナート(20.5 g、粗生成物)を茶色固体として得て、これを更なる精製なしに使用した。
m/z ES+ [M+H]+ 635.2.
【0188】
(工程xii.) ((2S,3S)-2-((2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-クロロフェニル)(メチル)カルバモイル)-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-オキソピロリジン-3-イル)メチル メタンスルホナート(20.5 g、32.2 mmol)のN-メチル-2-ピロリドン(250 mL)溶液へ、K
3PO
4(20.5 g、96.8 mmol)を添加した。反応混合物を60 ℃で12時間攪拌した。完了後、混合物を水(1200 mL)で希釈し、EtOAc(3×800 mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×1000 mL)、塩水(2×1000 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポし、そしてカラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=3/1)で精製して、tert-ブチル(3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-2,11-ジオキソ-1,2,3,3a,4,10,11,11a-オクタヒドロ-5H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-5-カルボキシラート(14.0 g、76%収率)を黄色固体として得た。
【化11】
【0189】
(工程xiii.) tert-ブチル(3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-2,11-ジオキソ-1,2,3,3a,4,10,11,11a-オクタヒドロ-5H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-5-カルボキシラート(13.5 g、25.0 mmol)のDCM(120 mL)溶液へ、TFA(36.9 g、324 mmol)を添加した。反応混合物を20 ℃で5時間攪拌した。完了後、混合物をエバポし、残留物をDCM(100 mL)で希釈し、そして飽和NaHCO
3水溶液でpH 8まで塩基性にした。層を分液し、そして水層を更にEtOAc(2×150 mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(300 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポして(3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(10.9 g、粗生成物)を黄色固体として得て、これを更なる精製なしに使用した。
【化12】
【0190】
(工程xiv.) DMF(110 mL)中の(3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(11.3 g、25.7 mmol)、Na
2CO
3(8.19 g、77.2 mmol)、及びTBAB(830 mg、2.58 mmol)の混合物へ、臭化アリル(15.5 g、128 mmol)を添加した。反応混合物を100 ℃で12時間攪拌した。完了後、混合物を水(100 mL)で希釈し、EtOAc(3×100 mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×150 mL)、塩水(2×100 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポし、そしてカラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=3/1)で精製して、(3aR,11aS)-5-アリル-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(12.0 g、97%収率)をオフホワイト色固体として得た。
【化13】
【0191】
(工程xv.) THF(50 mL)及び水(10 mL)中の、(3aR,11aS)-5-アリル-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(4.45 g、9.29 mmol)及びNaIO
4(5.96 g、27.8 mmol)混合物へ、OsO
4(236 mg、0.93 mmol)を0 ℃で添加した。反応混合物を0 ℃で2時間攪拌した。完了後、反応混合物をNa
2S
2O
3飽和水溶液(50 mL)でクエンチし、25 ℃で更に30分間攪拌した。混合物を水(200 mL)で希釈し、EtOAc(3×100 mL)で抽出した。有機層をNa
2S
2O
3飽和水溶液(2×100 mL)、NaHCO
3飽和水溶液(2×100 mL)、及び塩水(3×100 mL)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、エバポして、2-((3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-2,11-ジオキソ-1,2,3,3a,4,10,11,11a-オクタヒドロ-5H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-5-イル)アセトアルデヒド(4.4 g、98%収率)を黄色固体として得た。
【化14】
【0192】
(工程xvi.) MeOH(2 mL)中の2-((3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-2,11-ジオキソ-1,2,3,3a,4,10,11,11a-オクタヒドロ-5H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-5-イル)アセトアルデヒド(50 mg、0.10 mmol)、1-メチルピペラジン(11 mg、0.11 mmol)、及び4Åモレキュラーシーブ(10 mg)の混合物へ、酢酸(31 mg、0.52 mmol)を添加した。混合物を20 ℃で30分間攪拌し、その後NaBH
3CN(13 mg、0.21 mmol)を添加した。反応混合物を20 ℃で更に30分間攪拌した。完了後、反応混合物を水(0.1 mL)でクエンチして濾過した。濾液をエバポし、分取HPLCにより精製して、(3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(29 mg、46%収率)をオフホワイト色固体として得た。
【化15】
【0193】
(工程xvii.) トルエン(55 mL)中の(3aR,11aS)-6-クロロ-10-メチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(3.5 g、6.19 mmol)、メチルボロン酸(11.1 g、185 mmol)、XPhos-Pd-G2(974 mg、1.24 mmol)、及びCs
2CO
3(6.05 g、18.5 mmol)の混合物を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を110 ℃で12時間、N
2雰囲気下で攪拌した。混合物を濾過し、濾液をエバポした。残留物をカラムクロマトグラフィ(Al
2O
3、EtOAc/MeOH=15/1)、続いて逆相フラッシュクロマトグラフィ(水(0.1% NH
4OH)/MeCN)で精製して、(3aR,11aS)-6,10-ジメチル-1-(6-メチル-4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-5-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル)-1,3a,4,5,10,11a-ヘキサヒドロ-2H-ベンゾ[b]ピロロ[2,3-f][1,4]ジアゾシン-2,11(3H)-ジオン(5.0 g、74%収率)を白色固体として得た。
【化16】
【0194】
(生物学的データ)
(PolθポリメラーゼドメインWT KIアッセイ)
PicoGreenアッセイを用いて、インビトロPolθ活性を阻害する、可逆的な化合物のKI値を測定した。
【0195】
ヒトPolθポリメラーゼドメイン(アミノ酸(aa)1820-2590)を大腸菌内で発現させ、精製し、アリコート化し、必要時まで-80℃で保管した。Polθ基質を、DNA II Short対DNA II Longの1.2:1比混合物から作成し、アニーリングバッファ(20 mM Tris pH 7.5、50 mM NaCl)中の最終濃度20 mM基質とした。基質を、50 mLアリコート中、加熱ブロックで95℃まで5分間加熱し、その後加熱ブロックのスイッチを切り、反応物を室温まで冷却し、必要時まで-20℃で保管した。
【表2】
【0196】
アッセイ測定を、25 mMのTris pH 7.5、12.5 mMのNaCl、0.5 mMのNaCl、5%(v/v)のグリセロール、0.01%(v/v)のTriton X-100、0.1 mg/mlのBSA、1mMのDTTを含む1×バッファで行った。試験化合物を、100% DMSOで希釈して調製し、それぞれ12μMの中間体ストック(100×最終最高濃度)を得た。100 nLの23×1:1.5倍段階希釈液及びDMSOのみのコントロールを、Tecanディスペンサーを用いてGreiner 384ウェル黒色低容量プレート(製品コード784076)に分注した。DMSO濃度は、DMSOでバックフィルすることにより、最終アッセイ体積の1%に維持した。
【0197】
基質(200 nMのDNA基質及び100 μMのdNTP)並びに酵素(0.312 nMのPolθ)の2×作業ストックを、アッセイバッファ内で作成した。5 μL/ウェルの酵素及び基質両方の2×溶液を、Tempestディスペンサ(Formulatrix社)を用いて、化合物をプレ分注しておいたアッセイプレートに分注し、最終アッセイ濃度を100 nM DNA基質、50 μM dNTP、及び0.156 nM Polθとした。反応を停止させるために、25 mMのTris-HCl pH 7.5及び20 mMのEDTAを含む溶液5 μLを、Tempestタイムディレイファンクションを用いて6時点(t=0、15、30、60、90、120、150、180分)に添加した。タイムコース中は、プレートをカバーして蒸発を防止した。アッセイ完了後、5μLの検出試薬(25 mM Tris-HCl pH 7.5、及び2.5%(v/v)PicoGreen)をTempestリキッドハンドラー(Formulatrix社)を用いてウェルに分注し、次にプレートを、CLARIOstar Plus(BMG Labtech社)にかけて、フルオレセインのデフォルト光学設定及びオートゲイン/フォーカス設定を用いて読み取った。
【0198】
全てのデータ解析は、GraphPad Prism V.8(GraphPad Software Inc社、サンディエゴ、カリフォルニア)を用いて行った。各阻害剤濃度のタイムコースデータは、GraphPad Prismの線形回帰モデルに当てはめた。コントロール(DMSOのみ)の反応が線形でない時点は全て、解析から除外した。線形回帰から得られた初期速度(傾き)を、次に、阻害剤濃度に対してプロットし、GraphPad Prismで阻害剤対反応変数の傾き(4パラメータ)モデルに当てはめ、KI値を決定した。
【0199】
実施例1の化合物を上記PolθポリメラーゼドメインWT K
Iアッセイで試験し、その結果を下表に示す。
【表3】
【配列表】
【国際調査報告】