(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】回転機械用ポンピングシール
(51)【国際特許分類】
F01C 19/08 20060101AFI20241112BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F01C19/08 A
H02K5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523552
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 GB2022052665
(87)【国際公開番号】W WO2023067336
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523354255
【氏名又は名称】ジョン クレイン ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JOHN CRANE UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】グレアム バーロウ
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA00
5H605BB05
5H605CC02
5H605DD07
5H605DD35
(57)【要約】
回転機械は、回転シャフトと、該回転シャフトの一部を取り囲むと共に内部で初期圧力を有する筐体と、前記筐体の外部へ気体を排気することで、前記筐体内での圧力を前記初期圧力未満である動作圧力にまで減少させる気体封止部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトと、
前記回転シャフトの一部を取り囲む筐体と、
前記筐体内での圧力が大気圧未満となるように気体を前記筐体の外へ排気するように構成される気体封止部、
を備える回転機械。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機械であって、前記筐体内での圧力が大気圧未満である、回転機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転機械であって、前記回転シャフトがモーターの回転子である、回転機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の回転機械であって、前記回転シャフトが、結合部材によって一つに接合される2つの部分を有する、回転機械。
【請求項5】
請求項4に記載の回転機械であって、前記結合部材は前記筐体内に存在する、回転機械。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の回転機械であって、前記筐体は、該筐体内に形成されて気体を前記筐体へ引き込むことを可能にする抽気穴を有する、回転機械。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の回転機械であって、前記筐体内での前記圧力に基づいて前記筐体内への気体の流れを制御するように構成されるバルブを有する、回転機械。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の回転機械であって、
前記気体封止部は、
前記回転シャフトと共に回転するように前記回転シャフトと結合可能な嵌合リングと、
基本リング、
を有する、回転機械。
【請求項9】
請求項8に記載の回転機械であって、前記基本リングを前記嵌合リングへ向かうように付勢するように構成される付勢部材をさらに備える、回転機械。
【請求項10】
請求項8に記載の回転機械であって、前記回転シャフトに結合されると共に前記嵌合リングを担持するスリーブリングをさらに備える、回転機械。
【請求項11】
回転シャフトと、該回転シャフトの一部を取り囲む筐体とを備える回転機械の動作方法であって、
乾性気体封止部によって前記筐体内で前記シャフトを封止する段階と、
前記筐体内で初期圧力を設定する段階と、
前記筐体内での圧力が前記初期圧力からより低い圧力へ減少するように、前記乾性気体封止部によって気体を前記筐体の外へ排気する段階、
を有する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記初期圧力が大気圧で、かつ、前記より低い圧力が大気圧未満である、方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法であって、前記回転シャフトがモーターのローターである、方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の方法であって、前記回転シャフトが、結合部材によって一つに接合される2つの部分を有する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記結合部材は前記筐体内に存在する、方法。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか一項に記載の方法であって、前記筐体が該筐体内に形成される抽気穴を有し、前記抽気穴を介して気体を前記筐体へ引き込むことで前記気体を前記筐体内に再充填する段階をさらに有する、方法。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか一項に記載の方法であって、当該回転機械が、前記筐体内への気体流を制御するバルブを有し、前記筐体内での前記圧力に基づいて前記バルブを介して前記筐体内へ気体が流れることを可能にする段階をさらに有する、方法。
【請求項18】
回転シャフトと、
該回転シャフトの一部を取り囲むと共に内部で初期圧力を有する筐体と、
前記筐体の外部へ気体を排気することで、前記筐体内での圧力を前記初期圧力未満である動作圧力にまで減少させる気体封止部、
を備える回転機械。
【請求項19】
請求項18に記載の回転機械であって、請求項2~10のいずれか一項でさらに定義される、回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、回転機械の技術に関し、特に、ポンピングシールを含む回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械は、筐体に取り付けられた固定子巻線を有する固定子と、固定子に対して回転する回転子巻線を含む回転子とを含む。固定子巻線は、回転子に回転力を与えるように励磁されることもあれば、回転子の回転が固定子巻線内での電流を誘起することもある。第1の動作モードでは、電流は固定子巻線へ流れ、第2の動作モードでは、電流は固定子巻線から流れる。
【0003】
いずれのモードでも、回転子は固定子に対して回転する。回転子は、電気機械のタイプに応じて、磁石またはコイルのいずれかを含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例示的な実施形態は、回転機械-特にシャフトがポンピングシールを含む密閉筐体内で回転可能な任意の機械-に関する。密閉筐体は、一定容積の気体環境内にシャフトを収容する。前記気体環境は大気であることもあるが、必ずしも大気である必要はない。前記ポンピングシールは、一定容積のガスからガスを取り出すことで、圧力を下げる。前記圧力が低下すると、シャフトの回転と気体の攪拌による発熱(エネルギーの浪費)が減少する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態では、回転機械が開示されている。この実施形態では、当該機械は、回転シャフトと、該回転シャフトの一部を取り囲む筐体と、前記筐体内の圧力を初期圧力よりも低い動作圧力まで下げるように前記筐体から気体を排気する気体封止部とを含む。
【0006】
任意の実施形態において、本明細書では、前記気体封止部ガは、前記筐体内の圧力が大気圧未満になるように前記筐体から気体を排気することができる。
【0007】
任意の重要な実施形態において、前記筐体内の圧力は、大気圧の1/2未満-0.5バール絶対圧未満-となるように低下させることができる。
【0008】
任意の重要な実施形態において、前記回転シャフトは、モータの回転子であってよいし、あるいは結合部材によって一緒に結合された2つの部分を含むことができる。結合部材が使用される場合、前記結合部材は前記筐体内部に存在することができる。
【0009】
任意の重要な実施形態において、前記筐体は、該筐体内に形成されて気体を前記筐体内に引き込むことを可能にする抽気穴を有することができる。
【0010】
任意の重要な実施形態において、当該機械は、前記筐体筐体内の圧力に基づいて前記筐体内への気体の流れを制御するバルブを含むことができる。
【0011】
任意の重要な実施形態において、前記乾性気体封止部は、前記回転シャフトと共に回転するように前記回転シャフトに結合され得るか又は前記回転シャフトの一部であり得る嵌合リング及び基本リングを含むことができる。
【0012】
場合によっては、当該機械は、前記基本リングを前記嵌合リングに向かって付勢する付勢部材を任意に含むこともできる。
【0013】
任意の重要な実施形態において、当該機械は、前記回転シャフトに結合されると共に前記嵌合リングを担持するスリーブリングを含むことができる。
【0014】
また回転シャフトと、該回転シャフトの一部を取り囲む筐体とを含む回転機械の動作方法が開示されている。これは、本明細書で開示または言及される機械のいずれであってもよい。当該方法は、前記筐体内の前記シャフトを乾性気体封止部で密封する段階と、前記筐体内で初期圧力を設定する段階と、前記筐体内の圧力が前記初期圧力からより低い圧力まで低下するように、前記乾性気体封止部で前記筐体から気体を排気する段階を有する。
【0015】
任意の重要な方法において、前記初期圧力は大気圧で、かつ、前記より低い圧力は大気圧の1/2未満-たとえば0.5バール絶対圧未満-であってよい。複数の実施形態では、前記初期圧力は外部環境圧力より高くてよく、かつ、前記より低い圧力は前記初期圧力より低い。
【0016】
任意の重要な方法において、前記回転シャフトはモータの回転子である。
【0017】
任意の重要な方法において、前記回転シャフトは、任意に前記筐体内に存在し得る結合部材によって一緒に結合された2つの部分を含む。
【0018】
任意の重要な方法において、前記筐体は、該筐体内に形成された抽気穴を有することができ、当該方法は、前記抽気穴を介して気体を前記筐体内に引き込むことで前記筐体内の気体を再充填する段階も有することができる。
【0019】
当該方法はまた、機械と、前記筐体内への気体の流れを制御するバルブとを有し、前記筐体内の圧力に基づいて前記バルブを介して前記筐体内へ気体が流れることを可能にする段階をさらに有することができる。
【0020】
さらなる技術的特徴および利点は、本発明の技術によって実現される。本発明の実施形態および態様は、本明細書において詳細に説明され、請求項に記載される対象の一部とみなされる。より良く理解するために、詳細な説明および図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に記載された排他的権利の具体的内容は、明細書の最後に記載された特許請求の範囲において具体的に指摘され、明確に請求されている。本発明の実施形態の前述および他の特徴および利点は、添付の図面と併せて取られる以下の詳細な説明から明らかである。
【
図1】ポンピング乾性気体封止部を含む回転機械の断面図である。
【
図2】A~Dは、回転機械用のポンプとして使用することができるように乾性気体封止部内で利用可能な様々な種類の面を図示している。
【
図3】ポンピング乾性気体封止部と、機械のチャンバ内へ気体を戻すためのバルブとを含む回転機械の断面図である。
【
図4】ポンピング乾性気体封止部と、機械のチャンバ内に気体を充填または戻す抽気穴を含む回転機械の断面図である。
【
図5】複数の実施形態で使用され得る封止部の一例の断面図であり、封止部を通る気体経路を示す。
【
図6】結合部材によって結合された2つのシャフトを有するチャンバを含む機械を示す。
【0022】
本明細書に描かれている図は例示である。本発明の技術的思想から逸脱することなく、図またはそこに記載された動作に多くの変形があり得る。例えば、動作を異なる順序で実行する、動作を追加、削除、修正することができる。また、「結合される」という用語およびその変形は、2つの要素間に接続経路を有することを表すものであり、要素間に介在する要素/接続物がない状態での2つの要素間の直接的な接続を意味するものではない。これらの変形はすべて、本明細書の一部とみなされる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
開示された装置および方法の1つ以上の実施形態の詳細な説明は、図を参照して例示的に示されるが、限定ではない。
【0024】
本発明の様々な実施形態が、関連する図面を参照して本明細書で説明される。本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の代替的な実施形態を考えることができる。様々な接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が、以下の説明および図面において要素間に規定される。これらの連結および/または位置関係は、別段の指定がない限り、直接的であっても間接的であってもよく、本発明はこの点で限定することを意図していない。従って、実在物の結合は、直接的な結合または間接的な結合のいずれかを指称することができ、実在物間の位置関係は、直接的な位置関係または間接的な位置関係とすることができる。さらに、本明細書で説明する様々なタスクおよびプロセスステップは、本明細書で詳細に説明しない追加のステップまたは機能を有する、より包括的な手順またはプロセスに組み込むことができる。
【0025】
次に、本発明の態様により具体的に関連する技術の概要に目を向けると、まず、本明細書の教示は、回転シャフト(例えば、回転子)シャフト)を含むすべての機械に適用可能であることが理解されるものとする。例には、電気モータ、電気発電機、フライホイール、運動エネルギー回生システム(KERS)、エネルギー貯蔵システム、ガスタービン、風力タービン、蒸気タービン、および結合部材が含まれる。特定の実施形態では、回転シャフトの少なくとも一部が密閉チャンバに封入される。
【0026】
本願発明者らは、このような回転シャフトが、密閉チャンバ内のガス環境の撹拌によって熱を発生させることを認識していた。この熱は、システムから失われるエネルギーに相当し、非効率をもたらす。世界中の回転シャフトの数を考えると、この熱の発生を制限することができる簡単な技術を持つことは、コスト削減と排出量削減という可能性のある利点を伴って、大幅なエネルギーの節約となるだろう。
【0027】
この問題の認識を踏まえ、本明細書の実施形態は、撹拌による熱の発生を低減できるシステムおよび方法に関する。基本的な形態では、これは、回転子が回転している密閉チャンバ内の気体の圧力を下げることによって達成することができる。チャンバは、乾性気体封止部によって密閉される。乾性気体封止部とは、好適には、非接触メカニカルガスシールのような気体封止部(すなわち、ある領域から別の領域への期待の通過を防止する)を指す。蒸気やエアロゾルのようなガス中に含まれる物質も場合によっては存在することが理解されよう。乾性気体封止部は、チャンバから気体を排気すること、チャンバ内での攪拌とそれに伴う熱を減少させるのに利用され得る。チャンバ内の圧力は、動作領域で大気圧未満にまで下げることができる。一の実施形態では、大気圧の1/2以下-0.5バール絶対圧未満-に低減される。
【0028】
図1は、回転機械1の一例を示している。図示された機械1は、モータまたは発電機、振動ダンパ、オルタネータ、ポンプ、コンプレッサ、またはタービンであってよいが、当業者は、本明細書の教示がそれほど限定されず、回転軸を有する任意の機械に適用され得ることを理解するであろう。
【0029】
機械1は、チャンバ3内に密閉された回転シャフト2(例えば回転子)を含む。チャンバ3は、シャフト2が開口部9を介してチャンバ3の外に出る際に貫通する単一の開口部4を有するものとして示されている。当業者であれば、シャフトの両端がチャンバ3を超えて延在するような状況に対応するために、チャンバーが複数の開口部を有することが可能であることを理解するであろう。これは、非限定的な例をほんの数例挙げると、密閉されたチャンバ内にある結合部材の場合と同様に、モーター/発電機で起こり得ることである。
【0030】
チャンバ3は筐体5によって画定される。筐体5は、一の実施形態ではモータまたはタービンの筐体であってよい。図示されているように、シャフト2に接続された部材6が筐体3内にある。その部材は、回転子巻線、回転子磁石、結合部材、フライホイール、歯車などが挙げられる。もちろん、他の例も存在し得る。
【0031】
開口部9は、乾性気体封止部4によって少なくとも部分的または全体的に充填されている。この場合、封止部4は制御された速さでチャンバ3から気体を排気する役割を果たす。気体が通る経路は、一般に「流れ」とラベル付けされた矢印で示されている。
【0032】
回転シャフトを支持するために、1つ以上の軸受7a、7bが筐体5内に設けられ得る。第1軸受7aは、封止部4の外側(方向A)にあるように示されているが、正確な構成は変化し得る。図示されているように、流れは、封止部4の外側からシャフトに向かって半径方向内側(方向B)である。当業者であれば、方向は逆でもよいことがわかるであろう。方向は、溝の向きを含む多くの要因によって決定される。
【0033】
一般に、
図1に示す封止部4のような乾性気体封止部は、回転リングと固定リングとの間に封止部を設けることによって作動する。回転リングは、回転シャフト/ローターに嵌合されるため、「嵌合リング」と呼ばれることもある。回転リングは、シャフトスリーブを介して回転子に嵌合させることができる。固定リングは基本リングと呼ばれることもあり、動作中は回転しない。
【0034】
動作中、封止部を形成し、又は流れを制限し得る2つのリングの間には気体の層が形成される一方、2つのリングは互いに接触することなく相対的に動くことが可能である。回転(嵌合)リングの溝は、気体を嵌合リングの半径方向端部から2つのリングの間の位置まで引き込む。溝に引き込まれた気体は、溝の半径方向内側の端部(または先端)に向かうにつれて圧縮される。圧縮された気体は、基本リングを嵌合リングから「剥離」させ、数ミクロン(例えば3~10μm)の範囲の連続するギャップを生成する圧力ダムを形成する。リング間の相対的な軸方向移動を可能にするため、基本リングは通常、ばね等の圧縮部材によって乾性気体封止部の固定部分に取り付けられる。
【0035】
以下の例では、完全な封止体としての乾性気体封止部が示されている。しかしながら、当業者であれば、本明細書の教示は、2つのリングの相対回転によるポンプ作用を利用するあらゆる種類の装置に適用できることを理解するであろう。一例として、軸方向の動きが非常に小さく、ばね又は他の付勢部材が不要なナノマシンが挙げられる。また、例えば、回転しないリングを回転するリングの方に付勢させるエラストマー部品を含む装置も考えられる。
【0036】
剥離後、制御された量の気体がダム領域を越えて封止部の低圧側(例えば、密閉されたチャンバの外側)に流れ(例えば、ポンプで送られるか、さもなければ移動可能な状態にされる)、制御された封止部の漏れを生じ、リングは非接触封止体として気体の薄膜上で作動する。制御された漏れを利用して、密閉チャンバから気体を排気し、チャンバ中の圧力を下げることができる。 これにより、一部の実施形態では、熱を低減することができる。
図1を参照すると、ガスが送り出される様子は、「流れ」とラベル付けされた矢印で示されている。
【0037】
シールリングまたは嵌合リングの一方は、リング間に気体を引き込んでリング間での分離、すなわちリフトオフを引き起こすことによって非接触動作を可能にするように、表面テクスチャパターンを含む。具体的に例示した表面テクスチャパターンは溝であるが、これは限定を意味するものではなく、上述した分離またはリフトオフと、それに続くチャンバ3からの気体のポンピングを支援する限り、任意の種類の表面パターンを使用することができる。
【0038】
図2aは、シールリングまたは嵌合リング(114、116)のいずれかの封止面とすることができる一般的な封止面200の例を示す。この面200の表面テクスチャパターン/溝202は一方向で、外径ODから内径IDに向かって延びている。
【0039】
図2bは、シールリングまたは嵌合リング(114、116)のいずれかの封止面となり得る一般的な封止面204の別の例を示す。この面204の表面テクスチャパターン/溝206も一方向であり、内径IDから外径ODに向かって延びている。
【0040】
図2cは、シールリングまたは嵌合リング(114、116)のいずれかの封止面となり得る一般的な封止面208の別の例を示す。この面208の表面テクスチャの特徴/溝202は双方向であり、外径ODから内径IDに向かって延びている。
【0041】
図2dは、シールリングまたは嵌合リング(114、116)のいずれかの封止面となり得る一般的な封止面220の別の例を示す。この封止面220の表面テクスチャ230は双方向で、内径IDから外径ODに向かって延びている。
【0042】
[0048] これらの実施例のいずれにおいても、気体が表面テクスチャ特徴/溝に入ると、面が互いに相対的に回転する際に圧縮され、面を分離させる剥離力が生じる。上記のいずれの例においても、表面テクスチャパターン/溝は、所望の流れに基づいて十分な深さを有することができる。
【0043】
作動中、シール4はチャンバ3内の圧力を下げる役割を果たすことができる。このプロセスすなわちポンピングは、一の実施形態では、チャンバ内の圧力を、チャンバを取り囲む周辺圧力よりも低いレベルまで低下させることができる。特定の実施形態において、シールは、気体が真空状態に近づくまでチャンバから排気する、すなわち撹拌のためのガス密度を減少させることができるように配置することができる。
図3の下に示すように、真空に近い圧力では、プロセスを再び開始するためにチャンバ3を再充填するために大気圧に戻すように、リリーフバルブ301が開くか、または、シールが、開くように設計され得る。あるいは、
図4に示すように、小さな抽気穴401(または他の任意の形態の充填設備)が、システムを継続的に真空に近い状態にさせることもできる。この実施形態または他の実施形態では、気体封止部は、再充填のために逆圧で開くことができる。
【0044】
別の実施形態では、気体封止部は、筐体内の圧力を筐体内の初期圧力よりも低い動作圧力まで下げるために、筐体から気体を排気する。初期筐体圧力は、筐体内にシャフトを密封した後、乾性気体封止部で筐体から気体を排気する前の圧力と定義することができる。
【0045】
どのような構成においても、圧力を低下させることにより、攪拌及び発熱のための気体媒体が減少又は除去される。例えば、気体は初期圧力の1/2またはそれ以下の圧力であり得る。さらに、真空に近い場合、熱の伝導と高温を防止する熱障壁を確立することができる。もちろん、圧力が低下する程度は初期圧力の影響を受ける可能性があり、初期圧力が高い場合は、パーセンテージベースで低い圧力よりも低下するのが一般的である。
【0046】
簡略化のために本明細書では完全には示さないが、使用され得る乾性気体封止部の例には、PCT出願PCT/US21/25126及び2020年8月13日に出願された米国特許出願第16/992,296号に開示されたものが含まれ、これらの両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。もちろん、その封止体または後述の
図5に示す封止体のすべての部品が必要なわけではなく、上述したような2つのリングのみが必要な場合もある。特に、ラビリンスシールと分離シールは必要ない場合もある。
【0047】
図5は、単一の非接触式乾性気体封止部の組立体100(略して乾性気体封止組立体)の部分断面図である。)この組立体は、任意の重要な実施形態に示される封止部4として使用され得る。しかしながら、本明細書の教示は、他の乾性気体封止部の構成にも適用することができる。詳細な説明を読めば理解されるように、本明細書の教示は、単一乾性気体封止部、タンデム型乾性気体封止部、中間ラビリンス付きタンデム型乾性気体封止部、ラビリンス付きまたはラビリンスなしの三重乾性気体封止部、および二重対向乾性気体封止部を含むがこれらに限定されない、あらゆる種類の乾性気体封止部に適用することができる。
【0048】
乾性気体封止組立体100の少なくとも一部は、回転シャフト2と筐体5との間に配置される。嵌合リングは、シャフト2の一部として形成されるか、またはシャフト2に取り付けられる。
【0049】
回転シャフトは、任意の回転機械の一部であってよく、実際には、筐体5によって画定されるチャンバ3内に収容される結合部材2c(
図6参照)によって一緒に結合される2つの部分(2a及び2b)から形成されるシャフトであってよい。上記のように、シャフト2は、筐体5の軸受キャビティ108内に配置された軸受(図示せず)を介して筐体5によって支持され得る。また、固定子は、それ自体の保持部材を含むのではなく、筐体の一部とすることもできる。
【0050】
筐体5は、チャンバ3と軸受キャビティ108との間に延び、乾性気体封止組立体100が挿入され得る環状封止チャンバ112を画定する、その中に形成された穴109を含む。このチャンバは、封止部4によって排気される気体を含む。
【0051】
任意のシュラウド126は、ラビリンスシールを含むことができ、かつ回転シャフト2と筐体5との間に形成された半径方向に延びる開口部を覆って延びる。任意のシュラウド126は、チャンバ3から穴109への気体の自由な流れを抑制するために設けられることができる。シュラウド126は、穴109内に配置され、図示されているように、プロセスキャビティ106から穴109内へのプロセスガスの自由な流れを全体的又は部分的に阻止する役割を果たすラビリンスシール128を担持する。
【0052】
ラビリンスシール128は、その半径方向内端に、複数の隆起部134を含む。作動中、隆起部134は、回転シャフト102の外面136の近くに配置される。複数の隆起部134と、任意の2つの連続する隆起部134の間に形成された対応する中間キャビティは、プロセスキャビティ106から回転シャフト2を経由して封止チャンバ112への気体の侵入を妨げる。
【0053】
図5に示された乾性気体封止組立体100は、一般に第1封止部110として参照される単一の乾性気体封止部を含む。典型的には、第1封止部110の構成部品は予めカートリッジに組み立てられ、その後封止チャンバ112内に配置される。カートリッジ118は、1つ以上の部品で形成され、設置時に圧縮機筐体104と同様に互いに固定された関係で接合され得る固定子117を含む。図示のように、固定子117は、ラジアルシール140のような封止部材によってチャンバ3に封止され得る保持リング117aを含む。
【0054】
カートリッジ118はまた、1つ以上の部品で形成され、回転シャフト2と共に回転するように回転シャフト2に取り付けられるスリーブリング115を含むことができる。しかし、一の実施形態では、カートリッジを省略することができる。例えば、嵌合リングがシャフトの一部で、基本リングが筐体に組み込まれてもよい。
【0055】
図示されたスリーブリング115は、
図5において2つの部分115a、115bを含む。特に、スリーブ115は、回転シャフト2に接触して回転するように構成された回転リング115aを含む。図示された実施形態では、スペーサスリーブ115bがスリーブ115の一部として含まれている。勿論、スリーブリング115は、一体の部分として形成され得るか、又は動作中に互いに接合されるか又は他の方法で互いに相対的に静止状態に保持される(例えば、全ての部分が一体として一緒に回転する)任意の数の部分を含み得る。
【0056】
図示されたカートリッジ118は、分離シール119と呼ばれるものも含む。もちろん、分離シール119は、一般に乾性気体封止部の一部として必要ではなく、乾性気体封止部に接合される別個の部材であってもよい。分離シールは、軸受キャビティ108内に配置された軸受(図示せず)からの油または他の潤滑剤が第1封止部110に侵入するのを防止または低減する役割を果たすことができる。分離シール119はまた、外部環境からの汚染物の侵入を防止または低減することができる。汚染物は、例えば、汚れ、破片、または他の望ましくない粒子もしくは液体の1つまたは組み合わせを含み得る。
【0057】
分離シール119は、特定の実施形態では必要とされないことが理解されよう。すなわち、本明細書の実施形態は、カートリッジ118の一部としての分離シールを必要としない。さらに、以下の実施形態の1つ以上に示されるように、存在する場合、分離シール119は、第1封止部110に隣接する必要はなく、1つ以上の他の封止部が、第1封止部110と分離シール119との間に提供され得る。
【0058】
[回転シャフト102に対するスリーブリング115の軸方向移動は、回転シャフト102の溝に受け入れられたシャフトスラストリング125によって制限される。固定子117の軸方向移動は、筐体5内の溝に受容された固定子スラストリング121によって制限される。
【0059】
上記の実施例では、シャフトスラストリング125は、2つの部材が一緒に回転するように、スリーブリング115に対して固定することができることを理解されたい。また、完全を期すために、他の部材をスリーブリング115に取り付けて支持または他の機能を提供することができるが、本明細書では特に説明しないことを理解されたい。任意の一例として、相手側リング位置固定要素115cがある。
【0060】
スリーブリング115は、回転リング又は嵌合リング114を回転シャフト2に担持し、さもなければ回転リング又は嵌合リング114と嵌合する。すなわち、スリーブリング115が回転シャフト102に嵌合することにより、嵌合リング114もシャフト102と共に回転することができる。 メイティングリング114は、その面に形成された1つ以上の溝(図示せず)を含むことができる。このような溝の例は、
図2に上述したとおりである。
【0061】
基本リング116は、シャフトと共に回転せず、従って、一般的に又は完全に、動作中に筐体に対して回転的に静止しているので、静止リングとも呼ぶことができる。参照符号113は、嵌合リング114と基本リング116の間に形成された封止界面の位置を示している。
【0062】
当業者には理解されるように、基本リング116は、封止界面113において嵌合リング114と基本リング116との間で距離を制御した状態が維持され得るように、作動中に筐体104に対して軸方向に移動可能である。図示の実施形態では、保持リング117aと基本リング116との間に配置された1つ以上の付勢部材138によって、基本リング116にばねの力が加えられている。
【0063】
作動中、気体はチャンバ3内に存在する。気体はいわゆる封止チャンバ112に存在し、封止部を通るその経路は矢印150で示されている。
【0064】
回転シャフト102との連結による嵌合リング114の回転は、封止チャンバ112内の気体の一部を嵌合リング114の外径からそこに形成された溝内に引き込む。溝の形状は、封止性能を高めるために最適化されている。溝は、先端で体積が減少するため、溝に入った気体が圧縮されるような先端を有する形状である。気体圧力がわずかに高い領域は圧力ダムを形成し、いわゆる「リフトオフ」(剥離)をもたらし、基本リング116と嵌合リング114の物理的な分離をもたらす。このように、作動中、ガスはダム領域(基本リングと嵌合リング114の間)を越えて封止界面113の下流側160に流れる。封止界面を通過した気体は、筐体5内の通気口174を介して、または他の手段によって、乾性気体封止組立体100から出ることができる。
【0065】
上述のリフトオフを可能にするために、必要な移動を可能にする手段としてキャリアリング170が設けられる。キャリアリング170は、付勢部材138によって保持リング117aに結合されている。付勢部材138は、単一の部材であってもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。付勢部材138は、一の実施形態では、1つ以上のばねを含む。
【0066】
付勢部材138は、回転シャフト102のそのような移動により嵌合リング114が軸方向に移動しても、基本リング116がそれ自身と嵌合リング114との間の動作中の距離を一定に保つことを可能にすることができる。
【0067】
気体が封止界面113の周囲を制御されない状態で移動できないようにするために、1つ以上のラジアルシールを設けることができる。封止部はポリマーまたはエラストマーで形成することができ、そのような封止部の一例はリップシールである。
図5では、封止部はリップシールとして図示されているが、これは例示に過ぎず、限定を意味するものではない。図示されているように、保持リング117aとキャリアリング170との間に第1封止部172を設けることができる。第1封止部172は、一の実施形態では保持リング117aに対して固定されている。この第1封止部172は、封止気体が経路150をたどり、気体が衝突すると膨張するように配置することができる。これにより、第1封止部172は、いわゆる接触シールとなる。基本リング116が移動すると(リフトオフまたはシャフトの移動のいずれかによって)、キャリアリング170は第1封止部172に対して相対的に移動する。基本リング116とキャリアリング170との間に封止部を設けることもでき、この封止部は好適にはポリマーまたはエラストマーから形成することができる。
【0068】
「約」という用語は、出願時に利用可能な装置に基づいて特定の量を測定することに関連する誤差の程度を含むことを意図している。
【0069】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的だけのためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形(”a”、”an”及び”the”)は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書において使用される場合、用語「備える」および/または「有する(含む)」は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、部材、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、部材、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0070】
本開示は、例示的な実施形態または実施形態を参照して説明されてきたが、当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、等価物をその要素に置き換えることができることが理解されるであろう。 加えて、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの変更を行うことができる。したがって、本開示は、本開示を実施するために企図される最良の態様として開示される特定の実施形態に限定されず、本開示は、特許請求の範囲に属する全ての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】