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特表2024-542981ポリ(ビニルブチラール)ポリマーの回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ポリ(ビニルブチラール)ポリマーの回収
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20241112BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20241112BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B17/02
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525042
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022047970
(87)【国際公開番号】W WO2023076440
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,162
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/368,383
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/377,410
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/377,402
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/377,405
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】マ,イーノン
【テーマコード(参考)】
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
4F100AK23
4F100AK23B
4F100AK23C
4F100AK23D
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA04
4F100CA04B
4F100CA04C
4F100CA04D
4F100GB07
4F100GB32
4F100JL16
4F100JL16B
4F100JL16C
4F100JL16D
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F401AA15
4F401AB03
4F401AC20
4F401AD01
4F401BA13
4F401BB09
4F401EA46
4F401EA59
4F401FA01Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
ポリ(ビニルブチラール)(PVB)を回収する方法。この方法は、溶媒を再生システムへ供給するステップを含む。さらなるステップは、リサイクルPVBを溶媒へ加え、特定の温度において指定の時間で撹拌してリサイクルPVBを溶解させてPVB混合物を形成させるステップを含む。さらなるステップは、PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップを含む。さらなるステップは、熱をPVB混合物から得られるPVB固体に施して回収PVBポリマーを得るステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ビニルブチラール)(PVB)を回収する方法であって、
(a)溶媒を再生システムへ供給するステップと;
(b)リサイクルPVBを溶媒へ加え、撹拌してPVB固体及び可塑剤を含むPVB混合物を形成させるステップと;
(c)PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
PVB固体中の可塑剤のレベルを測定するステップ(d)をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
PVB固体に熱を加えて回収PVBポリマーを得るステップ(e)をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)~(d)を繰り返すステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)においてリサイクルPVBが供給される再生システムが、バッチ反応器システムを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)において加えられる溶媒が水及びアルコールの混合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アルコールが、エタノール、メタノール、又はイソプロパノール、又は2種以上のアルコールの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水が約15~約48wt.%の量で存在する、又はアルコールがエタノールであり、水が約30~約40wt.%の量で存在する、又はアルコールがメタノールであり、水が約15~約25wt.%の量で存在する、又はアルコールがイソプロパノールであり、水が約40~約48wt.%の量で存在する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
リサイクルPVBが約2~約20ミリメートルの直径を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)においてリサイクルPVBが供給される再生システムが、連続再生システムを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
連続再生システムが連続撹拌槽反応器である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リサイクルPVBが、少なくとも1wt.%(5wt.%、10wt.%、15wt.%、20wt.%、又はそれを超える)の量で溶媒へ加えられる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法により形成される、リサイクルPVB。
【請求項14】
請求項13に記載のリサイクルPVBを含む、樹脂層。
【請求項15】
請求項14に記載の樹脂層を含む、中間層。
【請求項16】
第2の樹脂層をさらに含む、請求項15に記載の中間層。
【請求項17】
樹脂層がコア層であり、中間層が第2の樹脂層及び第3の樹脂層をさらに含み、コア層が第2の樹脂層と第3の樹脂層の間にある、請求項15に記載の中間層。
【請求項18】
請求項13に記載のリサイクルPVBを含む、組成物。
【請求項19】
第1の基材、請求項15から17のいずれか一項に記載の中間層、及び第2の基材を含む積層体であって、中間層が第1の基材と第2の基材の間にある、積層体。
【請求項20】
ステップ(b)が、約22℃~約60℃(22℃~約50℃、22℃~約40℃、22℃~約30℃)の温度で撹拌するステップを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂製造の分野に関し、具体的には本発明は、ポストインダストリアル及びポストコンシューマーのポリ(ビニルブチラール)の回収及び再使用の分野にある。
【背景技術】
【0002】
[002]自動車用フロントガラス及び建築用安全ガラスなどの積層ガラスパネルは、典型的には、間に挟まれた可塑化ポリマー層と共に積層された2枚のガラスで構成される。ポリ(ビニルブチラール)(「PVB」)は、典型的には自動車のフロントガラス及び建築用安全ガラスの大多数のポリマー中間層における主要成分をなす、一般的なポリマーである。一般に、PVB樹脂は、天然ガスから又は石油精製プロセスから直接エタンを分離することから始まる合成プロセスによって製造される。次いでエタンを水蒸気分解してエテン(エチレン)を生成させ、これを酢酸原料と共に使用して酢酸ビニルモノマーを得る。酢酸ビニルモノマーをフリーラジカル重合により重合してポリ(酢酸ビニル)とする。ポリ(酢酸ビニル)をポリ(ビニルアルコール)に加水分解し、次いでこれをブチルアルデヒドと反応させてポリ(ビニルブチラール)を得る。
【0003】
[003]上記の合成プロセスはエネルギー集約的であり、非再生可能原料の使用に依存する。したがって、ポストインダストリアル及びポストコンシューマーのリサイクルPVBに由来するリサイクルPVB樹脂の見通しは、未使用PVB樹脂よりも製造するのにあまりコストがかからずPVB製造の環境フットプリントを大幅に低減することができる、PVBの潜在的に価値の高い原料と当技術分野で長く考えられてきた。ポストインダストリアルの例となる原料としては、仕様外であるか、損傷したか、又はその他において使用不可能であるPVBロールに由来するPVBが挙げられる。ポストコンシューマーのリサイクルPVBの例となる原料としては、過去に使用された自動車用フロントガラス及び建築用安全ガラス、並びに他の過去に使用された消費者製品、例えば電力デバイス(例えば、太陽光発電デバイス)及び電子ディスプレイデバイスなどが挙げられる。
【0004】
[004]当技術分野における長年の切実な必要性にもかかわらず、PVBのリサイクルに関連するいくつかの問題が存在する。例えば、ポストインダストリアル及びポストコンシューマーPVBは共に、一般には、様々な製品及び/又は異なる製造業者から得られるような異なるPVB組成の様々な混合物、並びに可塑剤、UV吸収剤、太陽光吸収剤などの添加剤を含む。その結果として、ポストインダストリアル及び/又はポストコンシューマーPVB混合物は、様々なポリビニルアルコール含量を含む様々なポリ(ビニルブチラール)組成のPVBを含むことがある。リサイクルPVBの混合物内のそのような組成の違いは、PVBから他の不純物が除去されているにもかかわらず、常にPVBの許容不可能な高いヘイズ及び/又は変色をもたらす。具体的には、著しく組成の異なるPVB材料が共に混合されると、化学的な不適合性が、異なる屈折率を有する非混和性マイクロドメインに起因する濁った又は曇った材料をもたらし、これはリサイクルにおけるその利用を大きく制限する。
【0005】
[005]さらに、回収PVB中の可塑剤の存在は再使用又はリサイクルすることをより困難にする。可塑剤をPVBから最初に分離又は除去することにより、PVBの重要成分をリサイクル又は再加工のためのそれぞれの原料の状態に戻すことが可能となる。分離後に得られる再生PVB樹脂は次いで、例えばエタノール溶液中の再アセタール化により単一のPVB組成に転化させることができる。
【0006】
[006]上記の点から、得られるPVBが、新しい積層ガラスパネル内に組み込まれてもよいものなどの新しいPVB樹脂及び中間層を作るのに使用できる透明なポリマーとなるように、リサイクルPVB材料から可塑剤を除去することができる方法でポストインダストリアル及び/又はポストコンシューマーPVBを加工する必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[007]本発明の実施形態による、PVBを回収する方法のフローチャートの図である。
図2】[008]ポリマー中間層に対向した一対のガラス板を含む積層ガラスパネルの概略図であり、ポリマー中間層はコア層に対向した一対のスキン層を有する3層を含む。
図3】[009]ポリマー中間層に対向した一対のガラス板を含む積層ガラスパネルの別の概略図であり、ポリマー中間層はくさび形を有する。
図4】[010]40%の水含量を有するエタノール/水混合物を使用した、2つの異なる温度における多段階抽出の2つの例を示すグラフの図である。
図5】[011]抽出サイクルの様々な回数対可塑剤除去の収率を示すグラフの図である。
図6】[012]より多量の初期ポリマー添加量における抽出サイクルの様々な回数を示すグラフの図である。
図7】[013]時間及び水のパーセンテージの関数としての、可塑剤抽出を示すグラフの図である。
図8】[014]抽出物のGPECクロマトグラムの図であり、16~23分において検出可能な樹脂を示していない。
図9】[015]抽出済みシートのGPECクロマトグラムの図であり、16~23分において2つの樹脂を示し、8~10分において2phr未満の可塑剤の溶出を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[016]本発明の一態様は、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)を回収する方法に関する。この方法は、溶媒を再生システムへ供給するステップを含む。さらなるステップは、リサイクルPVBを溶媒へ加え、特定の温度において指定の時間で撹拌してPVB混合物を形成させるステップを含む。PVB混合物を撹拌してリサイクルPVBから可塑剤を抽出又は除去する。さらなるステップは、PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップを含む。PVB固体を分析してPVB固体中の残留可塑剤の量を決定してもよい。必要に応じて、PVB固体を再生システムへ供給し、先行するステップを1回又は複数回繰り返してもよい。ステップは、可塑剤がPVB固体から完全に(又は所望のレベルを下回って)除去されるまでなど、複数回繰り返されてもよい。さらなるステップは、蒸発、真空及び/若しくは熱、又は当業者に既知の他のプロセスなどのさらなる加工を、PVB混合物から得られるPVB固体に施して、回収PVBポリマーを得るステップを含む。
【0009】
[017]本発明の別の態様は、回収ポリ(ビニルブチラール)(PVB)ポリマーに関する。回収PVBポリマーは、溶媒を再生システムへ供給するステップを含む方法により製造される。さらなるステップは、リサイクルPVBを溶媒へ加え、特定の温度において指定の時間で撹拌してPVB混合物を形成させるステップを含む。PVB混合物を撹拌してリサイクルPVBから可塑剤を抽出又は除去する。さらなるステップは、PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップを含む。PVB固体を分析してPVB固体中の残留可塑剤の量を決定してもよい。必要に応じて、PVB固体を再生システムへ供給し、先行するステップを1回又は複数回繰り返してもよい。ステップは、可塑剤がPVB固体から完全に(又は所望のレベルを下回って)除去されるまでなど、複数回繰り返されてもよい。さらなるステップは、蒸発、真空及び/若しくは熱、又は当業者に既知の他のプロセスなどのさらなる加工を、PVB混合物から得られるPVB固体に施して、回収PVBポリマーを得るステップを含む。
【0010】
[018]本発明の別の態様は、回収ポリ(ビニルブチラール)(PVB)を含む中間層を含む積層ガラスパネルに関する。回収PVBは、溶媒を再生システムへ供給するステップを含む方法により製造される。さらなるステップは、リサイクルPVBを溶媒へ加え特定の温度において指定の時間で撹拌してPVB混合物を形成させるステップを含む。PVB混合物を撹拌してリサイクルPVBから可塑剤を抽出又は除去する。さらなるステップは、PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップを含む。PVB固体を分析してPVB固体中の残留可塑剤の量を決定してもよい。必要に応じて、PVB固体を再生システムへ供給して先行するステップを1回又は複数回繰り返してもよい。ステップは、可塑剤がPVB固体から完全に(又は所望のレベルを下回って)除去されるまでなど、複数回繰り返されてもよい。さらなるステップは、蒸発、真空及び/若しくは熱、又は当業者に既知の他のプロセスなどのさらなる加工を、PVB混合物から得られるPVB固体に施して、回収PVBポリマーを得るステップを含む。
【0011】
[019]別の態様は、再アセタール化プロセスなどにおいて回収PVBポリマーをさらに加工するステップを含む。回収PVBをさらに加工するステップは、回収PVBポリマーをアルコールなどの溶媒へ加え、特定の温度において特定の量の触媒及び特定の量のブチルアルデヒドと共に指定の時間で撹拌して、回収PVBポリマーを溶解させ平衡化させてPVB溶液とするステップを含んでもよい。さらなるステップは、PVB溶液をろ過して非溶解固体を除去するステップを含む。さらなるステップは、PVB溶液を水酸化カリウム(KOH)などの塩基により中和するステップを含む。さらなるステップは、中和したPVB溶液に析出を生じさせ、水で洗浄して溶媒を除去してPVB固体を得るステップを含む。さらなるステップは、得られるPVB固体をろ過し、ろ過したPVB固体を乾燥させて回収PVBポリマーを得るステップを含む。実施形態において、PVBポリマー単一の組成であってもよい(すなわち、既知の又は均一の組成、例えば単一の原料に由来し同じ残留ヒドロキシルレベルなどの同じ又は同様の特性を有するものなど)。他の実施形態において、PVBポリマーは複数の又は未知の原料に由来する不均一の組成であってもよい。
【0012】
[020]別の態様は、単一のポリマー組成である回収PVBポリマーをさらに加工するステップを含む。PVBポリマーが単一の(すなわち、既知の又は均一の)組成である場合、回収PVBポリマーを直接加工することができる。回収PVBのさらなる加工は、回収PVBポリマーをアルコールなどの溶媒へ加え、回収PVBポリマーが完全に溶解してPVB溶液を形成するまで特定の温度で撹拌する、さらなるステップを含んでもよい。さらなるステップは、PVB溶液をろ過して非溶解固体を除去するステップを含む。さらなるステップは、PVB溶液に析出を生じさせ、水で洗浄して溶媒を除去してPVB固体を得るステップを含む。さらなるステップは、得られるPVB固体をろ過し、ろ過したPVB固体を乾燥して回収PVBポリマーを得るステップを含み、回収PVBポリマーは単一の又は均一の組成である。あるいは、析出の代わりに、ろ過後のさらなるステップは、溶媒を蒸発させて回収PVBポリマーを得るステップを含み、回収PVBポリマーは単一又は均一の組成である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[021]本発明の実施形態は、ポリ(ビニルブチラール)(「PVB」)を回収、リサイクル、及び/又は再使用する方法に向けられている。より詳細には、本発明の実施形態は、ポリマー中間層及び/若しくはポリマー中間層を含む積層ガラスパネルを形成するのに使用することができる、又は他の加工ステップで使用することができる、十分な量のPVBポリマーを得るために、ポストインダストリアル及び/又はポストコンシューマーのリサイクルPVBをリサイクルする方法に向けられている。より詳細には、図1は本発明の実施形態にしたがってPVBをリサイクルする例示的な方法を示す。この方法は、溶媒を再生システムへ供給するステップS1を含む。リサイクルPVBがアルコール中に可溶性とならないように、溶媒は特定の量の水を含有するアルコール及び水の混合物であってもよい。溶媒混合物を撹拌する。この方法は、リサイクルPVB材料を溶媒へ加えてPVB混合物を形成させるさらなるステップS2を含んでもよい。リサイクルPVBは、少なくともいくらかの可塑剤を含んでもよい。さらなるステップS3は、PVB混合物を指定の時間で指定の温度において撹拌して、可塑剤がリサイクルPVBから抽出されることを可能にして、液体及びPVB固体の混合物を形成させるステップを含んでもよい。さらなるステップS4は、PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップを含んでもよい。さらなるステップS5は、PVB固体中に残留する可塑剤のレベルを決定して、さらなる再生が必要とされるかどうかを決定するステップを含んでもよい。可塑剤がPVB固体中に(所望のレベルを超えて)存在する場合、PVB固体をステップS1へ戻すことによってこのプロセスを繰り返してもよい。さらなるステップS6は、除去されたPVBポリマーを熱、蒸発、及び/又は真空などにより加工又は処理して、乾燥したPVBポリマー又は溶解したPVB溶液を形成させるステップを含んでもよい。ステップS6は場合により、乾燥したPVBポリマー又は溶解したPVB溶液のさらなる加工を含んでもよい。回収PVBポリマーは、リサイクルPVBに最初に含まれていた可塑剤のかなりの部分を保持しないことになり、検出可能なレベルの可塑剤を含有しない場合がある。上記のステップの間に回収された、得られるPVBポリマーはさらに処理されてもよく、あるいはポリマー中間層及び/若しくはポリマー中間層を含む積層ガラスパネルの製造などの市販の製品において使用されるのに、又は樹脂製造プロセスにおいて使用され再アセタール化されてPVB樹脂を形成するのに、十分な品質(例えば、十分な透明性及び/又は色)となり得る。回収PVBは、他の用途において、例えば回収PVBにより形成させることができる接着剤など、並びにフローリング、セラミック組成物、バインダー、コーティング、インク、分散液、及び他の用途においても使用することができる。
【0014】
[022]エタノール、メタノール、及びイソプロパノールなどのアルコールは、エタノールなどのアルコールが純粋であるか又は比較的少ない水含量を有する場合に、PVB及び可塑剤の両方において良好な溶媒である。発明者は、水が特定の量又はレベルで存在する場合に(下記に記載されるように)、アルコール及び水の混合物を含む溶媒がPVBポリマーを再生又はリサイクルさせるのに使用でき、溶媒混合物がプロセスの間に可塑剤のみを溶解させPVB樹脂の溶解が最小限であることを見出した。このことは、可塑剤がPVBポリマー(樹脂)から抽出及び分離されるのを可能にする。
【0015】
[023]PVBは、水含量が重量で特定の量を超えるとアルコール及び水の溶媒混合物中に不溶性となるが、一方可塑剤(トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)など)はアルコール及び水の溶媒混合物中で著しい溶解性を有する。溶媒混合物に存在する水が少なすぎる場合、リサイクルPVBは溶媒中に溶解することになり、したがって溶媒は、リサイクルPVBから可塑剤を除去又は抽出するために特定の最適な量の水を有するように調製及び選択されなければならない。
【0016】
[024]表1は、様々な溶媒混合物(水中の様々なレベルのアルコールを有する)を使用して得られたPVBの抽出物を示し、これはグラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)を使用して分析された。
【0017】
【表1】
【0018】
[025]表1に示すように、アルコールがエタノールである場合、中間層製品からの可塑剤の抽出における、アルコール/水溶媒混合物中の水の重量パーセントの最適範囲は約30~約40%である。エタノール/水混合物中の水の量が約40重量%の水を超える場合、アルコール/水混合物中の可塑剤の溶解性は非常に限定的となる。表1に示すように、溶媒混合物中の水含量が低すぎる場合、樹脂はエタノール中にますます可溶性となり、水含量が高すぎる場合、抽出効率は低下する。
【0019】
[026]同様に、メタノール及び水の溶媒混合物を使用する場合、最適な水の範囲は約15~約25重量%の水である。メタノール/水混合物中の水の量が約25重量%の水を超える場合、アルコール/水混合物中の可塑剤の溶解性は非常に限定的となる。表1に示すように、溶媒混合物中の水含量が低すぎる場合、樹脂はメタノール中にますます可溶性となり、水含量が高すぎる場合、抽出効率は低下する。
【0020】
[027]最後に、イソプロパノール及び水の溶媒混合物を使用する場合、最適な水の範囲は約40~約48重量%の水である。イソプロパノール/水混合物中の水の量が約48重量%の水を超える場合、アルコール/水混合物中の可塑剤の溶解性は非常に限定的となる。表1に示すように、水含量が低すぎる場合、樹脂はイソプロパノール中にますます可溶性となり、水含量が高すぎる場合、抽出効率は低下する。
【0021】
[028]表2は22℃における抽出されるシートに対する様々なアルコール/水溶媒混合物の効率を比較する。表2に示される量は、3種の異なるアルコール/水溶媒混合物についての、可塑剤の開始時の量(時間0における)、並びに1回の抽出サイクル後のPVB中の可塑剤の得られるレベルを表し、抽出時間はそれぞれ1時間及び4時間である。
【0022】
【表2】
【0023】
[029]表2のデータにより示されるように、20%の水を含むメタノール、29%の水を含むエタノール、及び48%の水を含むイソプロパノールは同等の抽出効率を有するが、しかし、29%の水を含むエタノールを含む溶媒混合物は20%の水を含むメタノール及び48%の水を含むイソプロパノール水よりも大きい樹脂の損失を生じることになり、すなわちそれぞれ1.9、0.4、及び0%の樹脂の損失となる(表1を参照)。このことは、同様の効率が期待される場合、所望の効果及び利用可能な溶媒に応じて、樹脂の損失又は浸出がより少ない溶媒系が好ましいことを示す。
【0024】
[030]図4は、40%の水含量及び11.8重量%(wt.%)のポリマー添加量を有するエタノール/水混合物を使用した、2つの異なる温度における多段階抽出の2つの例を示す。図4により示されるように、抽出の初期の繰り返しではより高い温度が有利であるが、高い温度の利点は後半の段階で減少した。このことは、初期の繰り返しではより高い温度を使用し後半の段階ではより低い温度を使用する、温度勾配法を多段階抽出プロセスにおいて適用できることを示唆する。
【0025】
[031]図5は、より短くより頻回の抽出サイクルがより多くの可塑剤除去をもたらすことを示し、同じ抽出時間の1サイクルにおける30%と比較すると、4サイクル及び4時間では50%である。このことは、図6でさらに実証されるように、抽出率が抽出物中の可塑剤濃度及びポリマー添加量の関数でもあることを示す。図6は、28.5wt.%というより高いポリマー添加量で開始する可塑剤の抽出を示す。各抽出の後、残留する可塑剤の量は減少する。残留する可塑剤の量は減少するが、図6図4と比較すると、より低いポリマー添加量で開始した場合に(約28.5wt.%と比較して、約11.8wt.%)、抽出される可塑剤の量は、特に短時間でははるかに多い。プロセスの抽出効率は低いポリマー添加量で開始した場合により高くなる。
【0026】
[032]図7は、水及びエタノールの異なる混合物における、抽出率の差を示す。図7に示すように、水は抽出率を低下させるが、PVB樹脂の溶解性を制限するために、エタノール/水混合物中の最低でも約30%の水が、より少ない樹脂の損失を実現する。示されるように、溶媒混合物中の水及びアルコールの最適なバランス又は比を選択する必要がある。溶媒混合物においてより多くの水を使用すると、樹脂の浸出はより少ないが抽出効率及び抽出率はより低くなる。
【0027】
[033]ステップS2の再生システムに供給されるリサイクルPVBは、ポストインダストリアル及び/又はポストコンシューマーのリサイクルPVBを含んでもよい。そのようなポストインダストリアルのリサイクルPVBは、仕様外であるか、損傷したか、又はその他において使用不可能であるPVBロールを含んでもよく、一方そのようなポストコンシューマーのリサイクルPVBは、過去に製造された及び/又は使用済みの自動車用フロントガラス、及び建築用安全ガラス、並びに端部又は他の切り落とし材料から回収された材料を含んでもよい。リサイクルPVB材料は、電力デバイス(例えば、太陽光発電デバイス)、電子ディスプレイデバイスなどの他の消費者製品、並びに他の供給源からのスクラップ又はポストコンシューマー材料も含んでもよい。リサイクルPVB材料は、様々な量のポリビニルアルコール(「PVOH」)などの様々なPVB組成、並びに様々な量及び種類の可塑剤及び他の添加剤を有してもよい。例えば、リサイクルPVBの第1の部分は約9~15重量パーセント(wt.%)のPVOH量を有してもよく、リサイクルPVBの第2の部分は約15~20wt.%のPVOH量を有してもよく、リサイクルPVBの第3の部分は約20~25wt.%のPVOH量を有してもよい。これらのPVOH量は例示の目的のみのためのものであり、使用される材料及び材料の供給源に応じて、PVOH量の他の範囲(又は異なるPVOH範囲)も可能である。一般に、リサイクルPVBは、約9~約25wt.%、又はそれを超えるPVOHの量を有してもよいが、出発物質に応じて他の量も可能である。
【0028】
[034]リサイクルPVBは、ある量の可塑剤(又は出発リサイクルPVBに応じて異なる量の可塑剤)を含んでもよく、これは一般にPVBを軟らかくするため及び/又はPVBのガラス転移温度Tを下げるために使用される。考えられる可塑剤としては、限定はされないが、多塩基酸のエステル、多価アルコール、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「3-GEH」として知られる)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペート及びノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、及び高分子可塑剤、例えば油変性セバシン酸アルキド、並びにホスフェート及びアジペートの混合物など、並びにそれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、3-GEHが特に好ましい。適切な可塑剤の他の例としては、限定はされないが、テトラエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)(「4-GEH」)、ジ(ブトキシエチル)アジペート、及びビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ジオクチルセバケート、ノニルフェニルテトラエチレングリコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。一般に、PVB材料(例えば、樹脂又はスクラップ)の可塑剤含量は、樹脂100部に対する部(「phr」)として、重量/重量ベースで測定されることになる。例えば、30グラムの可塑剤が100グラムのポリマー樹脂に加えられる場合、得られる可塑化ポリマーの可塑剤含量は30phrとなる。リサイクルPVB材料は様々な量及び/又は種類の可塑剤を有してもよい。
【0029】
[035]リサイクルPVB材料を切断する、切り刻む、及び/又は細断してPVB材料の小径(例えば2~20mmなどであるが、装置及び他の要因に応じて最大で1cmまでを含めた他のサイズを使用できる)のチップ、顆粒、ペレット、又はフレークを形成させてもよい(チップ、顆粒、ペレット、フレークなどは本明細書において「粉砕PVB材料」と呼ばれる)。粉砕PVB材料、例えばPVB材料のフレーク、チップ、及び/若しくはペレットなどを互いに組み合わせて混合組成物(例えば、混合された量のPVOH又は他の要素を有する)を形成させてもよく、又は1つの原料に由来する粉砕PVB(既知の組成を有するPVBロールなど)を単独で使用してもよい。そのような粉砕PVB材料を再生システムに供給することができ、これは単独のバッチ反応器リサイクルシステム又は連続再生リサイクルシステムの形態であってもよい。例えば、単独のバッチ反応器は、連続撹拌槽反応器(CSTR)又は別の同様の反応器、例えば対向流スクリュープレス抽出器又は当業者に既知の他の装置などの形態の槽を含んでもよい。本明細書に記載の方法のステップの1つ又は複数(又はすべて)は単独のバッチ反応器内で行われてもよい。あるいは、連続再生システムを使用してもよく、連続再生システムは複数の相互に連結した槽(例えばCSTR)又は管状の配置にある複数の区画を含む。連続再生システムにおいて、ステップの各々は独立に、複数の槽又は管状の配置にある複数の区画のうちの1つ又は複数において行われてもよい。連続再生システムの有益としては、単独のバッチ反応器と比較してより高い処理量及びより高い効率を挙げることができる。
【0030】
[036]ステップS1を参照すると、再生システム(例えば、単独の、バッチ反応器リサイクルシステム又は連続再生リサイクルシステム)に加えられる溶媒は、リサイクルPVB材料の成分を選択的に溶解させ溶液又は混合物を形成させるのに十分な様々な溶媒を含んでもよい。適切な溶媒の例としては、リサイクルPVBの1つ又は複数の成分(例えば可塑剤及び他の添加剤、例えばUV吸収剤、太陽光、又は赤外線吸収剤、抗酸化剤など)を選択的に溶解させるのに十分な量の水を有する、1つ又は複数のアルコール、例えば、エタノール、メタノール、又はイソプロパノールの混合物を挙げることができる。溶媒混合物は、溶媒並びに可塑剤などの他の材料及び不純物からPVBポリマーを分離するためにろ過することができるPVB混合物を形成させるために、リサイクルPVB材料の成分を選択的に溶解させるように構成されている。他のアルコール、例えばn-ブタノールなどの3個を超える炭素原子を有するアルコール、又は1個を超えるヒドロキシル基を有するアルコール(すなわち、ジオール及びトリオール)なども、そのアルコールが水に混和性である限り使用できる。
【0031】
[037]ステップS2を参照すると、リサイクルPVBを再生システム(及び溶媒)へ加え、撹拌してPVB混合物を形成させる。
【0032】
[038]ステップS3を参照すると、PVB混合物を一定時間撹拌してもよい。撹拌の時間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間以上であってもよいが、他の時間が適切である場合がある。混合物は室温(約22~23℃)で撹拌されてもよく、又は混合物は、室温を超える温度などまで、例えば少なくとも約25℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも45℃、又は少なくとも約50℃以上などの温度まで加熱されてもよい。撹拌の時間及び温度は、リサイクルPVBから可塑剤を抽出するのに有効であるように選択される。
【0033】
[039]ステップS4を参照すると、このステップはPVB混合物をろ過してPVBポリマー固体を混合物から除去するステップを含む。いくつかの実施形態において、フィルターは、スクリーン、メッシュ、布、又は他の同様のろ過要素を含んでもよい。ステップS4に関して、溶媒及び可塑剤(及び他の不純物)をPVB混合物から除去して回収PVBポリマーを得ることができる。下記により詳細に述べるように、最初のろ過ステップ後に、回収PVBはリサイクルPVB中に存在する相当なレベルの最初の可塑剤を保持している場合がある。回収PVBを再生プロセスのステップS1又はS2へ戻して可塑剤をさらに溶解させる(及び抽出する)ことが必要な場合がある。プロセスの出発点に戻るのは1回又は複数回行われてもよく、実施形態において、プロセスの出発点への戻りは可塑剤が完全に除去されるか又は検出不可能なレベルまで除去されるまで繰り返される。回収PVBはいくらかの残留する可塑剤を有してもよく(必要に応じて)、又は、複数回の繰り返し後に(下記にさらに説明する)、検出可能なレベルの可塑剤が存在しなくてもよく、又は非常に少量の可塑剤が存在してもよい(すなわち、回収PVBが、最初のリサイクルPVBの一部として含まれる低レベルの最初の可塑剤を保持してもよい)。
【0034】
[040]ステップS5を参照すると、回収PVB固体を分析して回収PVB固体中の残留する可塑剤の量を決定することができ、可塑剤のレベルが高すぎる場合(すなわち、検出不可能なレベルを超える又は所望のレベルを超える)、回収PVB固体をステップS1後の再生システムへ戻してもよい(ここで新しい溶媒が加えられるか又は再生システム中に存在する)。
【0035】
[041]ステップS6を参照すると、ろ過された混合物(すなわち、回収PVBポリマー)は、アルコール及び水の乾燥、蒸発、又は真空による除去などによりアルコール及び水が除去されてもよい。例えば、回収PVB固体は、オーブンなどにおいて特定の温度で一定時間乾燥させて乾燥PVBポリマーを形成させてもよい。乾燥の時間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間以上であってもよい。乾燥の温度は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、少なくとも約70℃以上であってもよい。乾燥のための時間及び温度は、水及びアルコールを乾燥又は除去するために使用される方法に応じて様々であってもよい。
【0036】
[042]別の実施形態において、回収PVB固体は乾燥又は溶媒の除去を必要とせずにさらに加工するために、アルコールなどの溶媒に溶解させてもよい。回収PVBポリマーが既知の又は均一なポリマーである場合、回収PVBポリマーさらに直接加工することができる。回収PVBのさらなる加工は、回収PVBポリマーをアルコールなどの溶媒へ加え、回収PVBポリマーが完全に溶解してPVB溶液を形成するまで特定の温度で撹拌するさらなるステップを含んでもよい。さらなるステップは、PVB溶液をろ過して非溶解固体を除去するステップを含む。さらなるステップは、PVB溶液に析出を生じさせ、水で洗浄して溶媒を除去してPVB固体を得るステップを含む。さらなるステップは、得られるPVB固体をろ過し、ろ過したPVB固体を乾燥させて回収PVBポリマーを得るステップを含み、回収PVBポリマーは単一の又は均一の組成である。あるいは、析出の代わりに、ろ過後のさらなるステップは、溶媒を蒸発させて回収PVBポリマーを得るステップを含み、回収PVBポリマーは単一又は均一の組成である。
【0037】
[043]回収PVBが混合されているか又は不均一な組成である場合、回収PVBのさらなる加工は、回収PVBポリマーをアルコールなどの溶媒へ加え、特定の温度において特定の量の触媒及び特定の量のブチルアルデヒドと共に指定の時間で撹拌して、回収PVBポリマーを溶解させ平衡化させてPVB溶液とするステップを含んでもよい。さらなるステップは、PVB溶液をろ過して非溶解固体を除去するステップを含む。さらなるステップは、水酸化カリウム(KOH)などの塩基によりPVB溶液を中和して中和PVB溶液を形成させるステップを含む。さらなるステップは、中和PVB溶液に析出を生じさせ、水で洗浄して溶媒を除去してPVB固体を得るステップを含む。さらなるステップは、得られるPVB固体をろ過し、ろ過したPVB固体を乾燥して回収PVBポリマーを得るステップを含む。
【0038】
[044]あるいは、回収PVBポリマーは場合により、押出プロセス(例えば、押出機又は共押出機による)において使用してPVB中間層及び/又はPVB中間層を含む積層ガラスパネルを形成させるために、アセタール化プロセスなどにおいてさらに加工されてもよい。得られる回収PVBポリマーは、特にポストインダストリアルのリサイクル材料の場合、ポリマー中間層及び/又はポリマー中間層を含む積層ガラスパネルの製造などの、市販品において使用されるのに十分な品質及び/又は透明性であり得る。特に、回収PVBポリマーは、リサイクルPVBに最初に含まれていた可塑剤を非常にわずかしか保持しない又は全く保持すらしない場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、回収PVBポリマーは、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1.5%以下、約0.5%以下、又は約0%(又は検出不可能であるレベル)の、最初のリサイクルPVBに含まれる可塑剤を保持し得る。
【0039】
[045]特定の実施形態において、上記のステップS1~S6に対して変更、追加、及び/又は削除を行ってもよい。さらに、前述のように、回収PVBポリマーにさらなる処理を行ってもよい。
【0040】
[046]上記の回収方法のステップを使用して回収されたPVBを使用して、樹脂、樹脂層、ポリマー中間層、及び/又はポリマー中間層を含む積層ガラスパネルを形成させることができる。本明細書において使用される「ポリマー中間層シート」、「中間層」、「ポリマー層」、及び「ポリマー溶融シート」という用語は、単層シート又は多層中間層を示してもよい。「単層シート」は、その名称が暗に意味するように、1層として押出しされる単独のポリマー層である。多層中間層は他方で、別々に押出しされた層、共押出層、又は別々に押出しされた層及び共押出層の任意の組み合わせを含めた、複数の層を含んでもよい。したがって、多層中間層は、例えば互いに組み合わされた2つ以上の単層シート(「複層シート」);共に共押出しされた2つ以上の層(「共押出シート」);互いに組み合わされた2つ以上の共押出シート;少なくとも1つの単層シート及び少なくとも1つの共押出シートの組み合わせ;並びに少なくとも1つの複層シート及び少なくとも1つの共押出シートの組み合わせを含む可能性がある。本発明の様々な実施形態において、多層中間層は互いに直接接触して配置された少なくとも2つのポリマー層(例えば、単層又は共押出しされた多層)を含み、各層はポリマー樹脂を含む。本明細書において使用される、「樹脂」という用語は、酸触媒反応及びその後のポリマー前駆体の中和から生じる混合物から除去されるポリマー成分(例えば、PVB)を指す。一般に、可塑剤、例えば上記でさらに検討されたものなどを樹脂に加えて、可塑化ポリマーが得られる。さらに、樹脂はポリマー及び可塑剤に加えて、例えばアセテート、塩、及びアルコールを含めた他の成分を有してもよい。
【0041】
[047]上記のリサイクルのステップを行って少なくともいくらかの固有の可塑剤(例えば、3~5phrの可塑剤)を有する回収PVBを得ることができるが、PVBを使用してポリマー中間層及び/又はポリマー中間層を含む積層ガラスパネルを形成させる前に、実施形態はさらなる可塑剤をPVBへ加えることを必要とする場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマー中間層及び/又は積層ガラスパネルが製造される前に、25~50phr、25~45phr、30~40phr、又は33~35phrのさらなる量を得られるPVBに加えてもよい。他の実施形態において、ポリマー中間層及び/又は積層ガラスパネルが製造される前に、25phr未満、又は20未満phr、又はそれよりも少ない、又は50phrを超える、又は55phrを超える、又は60phrを超える、又は65phrを超える、又は70phrを超える、又はそれよりも多い、さらなる量を得られるPVBに加えてもよい。所望の特性及び用途に応じて、より高い又は低い量の可塑剤を所望の通りに加えてもよい。
【0042】
[048]回収PVB樹脂(複数可)は典型的には、低角レーザー光散乱を使用したサイズ排除クロマトグラフィーにより測定される、30,000ダルトンを超える、又は500,000ダルトン未満、又は約30,000~約500,000ダルトン、又は約500,000~約500,000ダルトン、又は100,000~約425,000ダルトンの分子量を有する。本明細書で使用する「分子量」という用語は、重量平均分子量を意味する。
【0043】
[049]十分な量の可塑剤が回収PVBへ加えられると、多層パネル(ガラス積層体など)において使用することが可能であるポリマー中間層シートの製造の業者に既知の任意の適切なプロセスにより、ポリマー中間層シートを製造することができると考えられる。例えば、溶液流延、圧縮成型、射出成形、溶融押出、メルトブロー、又は当業者に既知のポリマー中間層シートを生産及び製造するための任意の他の手段によって、ポリマー中間層シートを形成することができると考えられる。さらに、複数のポリマー中間層が利用される実施形態では、これらの複数のポリマー中間層を、共押出、インフレーションフィルム、浸漬塗工、溶液コーティング、ブレード、パドル、エアナイフ、印刷、粉末コーティング、スプレーコーティング、又は当業者に既知の他の方法によって形成させることができると考えられる。当業者に既知のポリマー中間層シートを生産するためのあらゆる方法が、本明細書に記載のポリマー中間層シートを生産するための可能な方法として考えられるが、この応用は押出及び/又は共押出プロセスによって生産されるポリマー中間層シートに焦点を当てることになる。
【0044】
[050]押出成形プロセスでは、上記の樹脂及び可塑剤のいずれかを含む熱可塑性物質樹脂及び可塑剤は、一般には予備混合され、押出デバイスに供給される。着色剤及びUV阻害剤などの添加剤(液体、粉末、又はペレットの形態)を使用してもよく、押出デバイスに到達する前に熱可塑性物質樹脂又は可塑剤に混合することができる。これらの添加剤は、ポリマー中間層シートの特定の特性及び最終的な多層ガラスパネル製品におけるその性能を向上させるために、熱可塑性ポリマー樹脂、ひいては得られるポリマー中間層シートに組み込まれる。
【0045】
[051]押出デバイスでは、樹脂、可塑剤、及び上記の他の添加剤のいずれかを含む、熱可塑性原料及び可塑剤の粒子をさらに混合及び溶融させ、一般に温度及び組成が均一である溶融物が得られる。本発明の実施形態は、およそ200℃である溶融温度を提供し得る。溶融物が押出デバイスの末端に到達すると、溶融物は押出ダイに押し出される。押出ダイは、最終的なポリマー中間層シート製品にそのプロファイルを与える、押出デバイスの部材である。ダイは一般にはリップにより画定される開口部を有し、これは1つの寸法が垂直の寸法よりも実質的に大きい。一般にダイは、溶融物がダイから生じる円筒形のプロファイルから製品の最終プロファイル形状へと均一に流れるように設計されている。連続プロファイルが存在する限り、ダイによって複数の形状を最終ポリマー中間層シートに与えることができる。一般に、最も基本的な意味において、押出成形は固定された断面プロファイルの物体を作るために使用される方法である。これは最終製品のための所望の断面のダイを通して材料を押す又は引くことにより実現される。
【0046】
[052]いくつかの実施形態において、共押出法を利用してもよい。共押出は、多層のポリマー材料が同時に押し出される方法である。一般に、このタイプの押出は2つ以上の押出機を利用して、一定体積の処理量の、異なる粘度又は他の特性の異なる熱可塑性溶融物を溶融させ共押出ダイを通して送り出して所望の最終形態とする。例えば、本発明の多層中間層(例えば、3層の中間層の形態)は好ましくは、第1のダイマニホールド、第2のダイマニホールド、及び第3のダイマニホールドを含むマルチマニホールド共押出デバイスを使用して共押出されてもよい。共押出デバイスはポリマー溶融物を各マニホールドからダイを通し開口部から同時に押出しすることにより作動させることができ、多層中間層は3つの個々のポリマー層の複合材として押出しされる。コア層がスキン層の間に挟まれている3層の中間層の製造をもたらすために、ポリマー溶融物はコア層がスキン層の間に配置されるようにダイを通って流れ得る。ダイの開口部は、開口部の両側に位置する一対のリップを含んでもよい。ポリマー溶融物の配置を考慮すると、スキン層はリップと接触し得る。ともかく、中間層厚さはダイ開口部に位置するダイリップ間の距離を調整することにより変化させることができる。
【0047】
[053]多くの場合、3層を有するポリマー中間層は積層ガラスパネルの製造において使用されることになる。例えば、この用途のいくつかの実施形態において、軟質層の向上した音響減衰特性を硬質/堅質層の機械的強度と組み合わせて多層中間層を作る。これらの実施形態において、中央の軟質層は2つの硬質/堅質な外層の間に挟まれている。(硬質)//(軟質)//(硬質)のこの構成は、取り扱いが容易であり、従来のラミネーション法において使用でき、比較的薄く軽い層により構築できる、多層中間層を作り出す。軟質のコア層は一般に、比較的硬質のスキン層よりも、低い残留ヒドロキシル含量、高い可塑剤含量、及び/又は低いガラス転移温度により特徴づけられる。
【0048】
[054]以下は、多層ガラスパネルが上記のプロセスにしたがって形成される中間層と組み合わせて一般に生産される方法の簡略化した説明を提示する。最初に、上記のように、マルチマニホールド共押出デバイスを使用して多層中間層を共押出することができる。デバイスは、各マニホールドから押出開口部に向かってポリマー溶融物を同時に押し出すことにより作動する。押出開口部のダイリップの特性(例えば、温度及び/又は開口部の寸法)を調整することにより、層の特性を変化させることができる。形成されたら、中間層シートを2枚のガラス基材の間に置くことができ、余分な中間層を縁から切り落とし、組立体を作る。複数のポリマー中間層シート又は多層を有するポリマー中間層シート(又はその両方の組み合わせ)が2枚のガラス基材の内側に置かれ、複数のポリマー中間層を有する多層ガラスパネルが作られることは珍しいことである。次いで、当業者に既知の適用可能なプロセス又は方法により;例えば、ニップローラー、真空バッグ、又は別の脱気メカニズムにより、組立体から空気を除去する。さらに、中間層は当業者に既知の任意の方法により基材に部分的に圧着される。最終ステップにおいて、最終的な一体的構造を形成するために、高温及び高圧のラミネーションプロセス、又は限定はされないがオートクレーブ処理などの、当業者に既知の任意の他の方法により、この予備的な接合をより永久的にする。
【0049】
[055]上記を考慮して、多層パネルはガラス、又は他の適用可能な基材の2枚のシートを含み、ポリマー中間層シート(1つ又は複数)がその間に挟まれている。多層パネルは一般に、少なくとも1つのポリマー中間層シートを2枚の基材の間に置いて組立体を作ることにより生産される。図2は、多層中間層が間に挟まれている一対のガラスシート12を含む多層パネル10を示す。多層中間層は、3つの個々のポリマー中間層シートを有する3層の中間層として構成され、軟質コア層14及びコア層14の両側に配置された2枚の比較的硬質なスキン層16を含む。そのような3層を組み込むそのようなガラスパネルは、上記で論じたように、軟質のコア層によりもたらされる減音に起因するより優れた音響特性を有し得る。
【0050】
[056]いくつかの実施形態において、中間層(例えば、コア層14及びスキン層16)は一般に中間層の長さに関して一定の又は均一の厚さを有する(例えば図2を参照)。しかし、代替的実施形態において、図3に示すように、中間層は不均一な厚さの少なくとも1つの領域を有してもよい。例えば、コア層14及びスキン層16を含む中間層は、中間層の厚さが中間層の長さに関して変化する(例えば直鎖的に)ように、くさび形であってもよい。いくつかのそのような実施形態において、中間層の厚さはコア層14の厚さの変化に起因して変化してもよい(すなわち、スキン層16は一般には一定の厚さを有する)。あるいは、中間層の厚さはスキン層16の厚さの変化に起因して変化してもよい(すなわち、コア層14は一般に一定の厚さを有する)。さらなる代替的形態において、中間層の厚さはコア層14及びスキン層16の両方の厚さの変化に起因して変化してもよい。さらなる実施形態において(図示せず)、不均一な厚さの少なくとも1つの領域を有する中間層、例えばくさび形の中間層などを維持しながら、1つ又は複数の層は中間層の幅方向において厚さが増加してもよく、一方で1つ又は複数の層は同時に厚さが減少する。そのような3層を組み込むそのようなガラスパネルは、上記で論じたように、軟質のコア層によりもたらされる減音に起因するより優れた音響特性を有し得る。さらに、3層の不均一な厚さに起因して、ガラスパネルは望ましくない画像投影欠陥を低減させる(例えば、ゴースト像を低減する)ことによりヘッドアップディスプレイ(「HUD」)での使用に有益な特性をもたらすことができる。
【0051】
[057]有利には、上記の回収方法から得られる回収PVBを含有する少なくとも1つのポリマー層/中間層で形成された積層ガラスパネルは、優れた光学的品質を有し得る。透明性は積層体の光学的品質の1つの指標である。透明性は、積層体のヘイズ値又はパーセントを測定することにより決定できる。ヘイズは散乱される透過光のパーセンテージであり、そのためその方向は入射ビームの方向から指定の角度よりも大きくそれる。当業者に既知のヘイズメーター又は分光光度計を使用して、光源Cを使用する2度の観測角度におけるASTM D1003-手順Bに準拠して、ヘイズを測定することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の回収PVBを組み込むガラスパネル、ポリマー層、及び/又は中間層は、5パーセント未満、約4パーセント未満、約3パーセント未満、約2パーセント未満、約1パーセント未満、又は約0.5パーセント未満のヘイズ値を有してもよい。
【0052】
[058]色は積層体の光学的品質の別の指標である。積層体の著しい変色又は黄変は多くの場合望ましくない。そのような変色は一般に、当業者に既知の光学測定器又は分光光度計を使用し、ASTM D1925に準拠して、黄色度指数(「YI」)にしたがって測定される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の回収PVBを組み込むガラスパネル、ポリマー層、及び/又は中間層は、12未満、10未満、8未満、6未満、5未満、約4未満、約3未満、約2未満、約1未満、又は約0.5未満のYIを有してもよい。下記に示される実施例において、ヘイズ及びYI値はASTM D1003及びASTM D1925にそれぞれ準拠して上記のように測定された。
【実施例
【0053】
実施例1
[059]100部のエタノール(SD29アルコール)及び50部の脱イオン水の溶媒混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で1時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは18.89部の重量であった。
【0054】
実施例2
[060]100部のエタノール(SD29アルコール)及び50部の脱イオン水の溶媒混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で4時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは18.12部の重量であった。
【0055】
実施例3
[061]100部のエタノール(SD29アルコール)及び30部の脱イオン水の溶媒混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で4時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは18.28部の重量であった。
【0056】
実施例4
[062]100部のエタノール(SD29アルコール)及び30部の脱イオン水の溶媒混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で4時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは16.84部の重量であった。
【0057】
実施例5
[063]100部のエタノール(SD29アルコール)及び50部の脱イオン水の溶媒混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、40℃で4時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは17.32部の重量であった。
【0058】
実施例6
[064]100部のエタノール(SD29アルコール)及び50部の脱イオン水の混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、60部のリサイクル三層PVB(18部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの42部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で4時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは57.99部の重量であった。得られる乾燥(回収)ポリマーを使用しそれを同じ割合のアルコール/水溶媒混合物へ加え、撹拌、ろ過、及び乾燥し、乾燥ポリマーの重量が44部で変化しなくなるまで繰り返すことにより、プロセスを複数回繰り返した。
【0059】
実施例7
[065]800部のエタノール(SD29アルコール)、実施例6のプロセスを使用して得られる150部のリサイクルPVB樹脂混合物(平均17.4wt.%PVOHのもの)、15部のブチルアルデヒド、3部の水、及び0.5部の硫酸の混合物を、1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入した。混合物を撹拌し78℃まで加熱し、その温度で混合物を約4時間維持した。得られる混合物を65℃まで冷却し、混合物が6.7のpHに到達するまで0.46部のKOHで中和した。得られる曇った混合物を8当量の水と共に高強度ミキサーでさらに混合してPVBスラリーを形成させた。アルコール及び残留ブチルアルデヒドを脱イオン水による注排水洗浄により除去し、得られるスラリーをろ過した。乾燥後、回収PVBをプレスして0.772mmの厚さを有する可塑化PVBシート(38phrの可塑剤(3GEH)を含む)とした。PVBシートを2枚の2.3mmガラスの間でラミネートした。1.0%未満の値の積層体のヘイズが測定され、1未満の値の積層体のYIが測定された。
【0060】
実施例8
[066]80部のメチルアルコール及び20部の脱イオン水の混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で1時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは18.03部の重量であった。
【0061】
実施例9
[067]80部のメチルアルコール及び20部の脱イオン水の混合物を1リットル三つ口ジャケット付きガラス反応器へ装入し、撹拌した。撹拌した混合物へ、20部のリサイクル三層PVB(6部の可塑剤、及び平均17.4wt.%PVOHの14部の樹脂混合物から成る)を加え、室温(22℃)で4時間撹拌した。次いで得られる混合物をろ過し、50℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥したポリマーは16.63部の重量であった。
【0062】
[068]グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)は、可塑剤の量を含めた、コポリマー又はターポリマーの組成及びポリマー成分の濃度についての情報を提供できる技術である。GPEC法は、最初にポリマー(すなわち、PVB)を良好な溶媒中に溶解させるか、又は抽出される成分の濃度が目的である場合は抽出物を使用することを伴う。ポリマーが析出する溶媒条件下で、溶解させた試料又は溶液をカラムに注入する。次いで移動相をグラジエントに変化させ、それによりポリマーは再溶解する際に溶出することになる。PVBの場合、主な分離メカニズムは、移動相中のPVB画分の溶解性であると考えられ、そのため可塑剤は溶媒中のその高い溶解性及び低い分子量に起因して最初に溶出する。PVBとカラム充填材との相互作用に起因する分離メカニズムも存在する。分離に影響を与える複数の要因が存在し得るが、コポリマーの組成が最大の要因であると考えられる。GPEC法は、ポリマーの組成を決定する、又はこの場合は試料中の樹脂及び可塑剤の濃度を決定するのに使用することができる。
【0063】
[069]GPEC試験に使用される実験条件及び装置:
[070]装置及び条件:
i.Thermo Scientific Dionex Ultimate 3000 Series HPLC
ii.Corona Veo Charged Aearosol検出器-Evaporator(低い設定)
iii.カラム:Supelco Discovery C18、150mm、4.6mm、5ミクロン、180A。
【0064】
iv.カラム温度:30℃
v.注入量:10マイクロリットル
vi.グラジエント(流量:1ml/分)
【0065】
【表3】
【0066】
[071]GPEC試料調製:PVB中間層固体試料を氷酢酸に溶解させ、抽出物をそのまま使用した(10mlの酢酸中におよそ0.05~0.5g)。溶液を室温で静置して一晩溶解させた。試料タイプには、アルコール/水混合物の抽出物、可塑剤溶液、可塑剤/樹脂ゲル、及びペレット、樹脂、又はシート試料が含まれた。
【0067】
[072]GPEC定量化:以下の式を使用して、相対面積パーセンテージに基づいて樹脂(R)及び可塑剤(Pz)の相対濃度を見積もる。
【0068】
[073]Pz/R=(a*可塑剤の面積)/(樹脂の面積)(式中aは応答係数である。)
[074]試料中の樹脂の重量パーセントは、既知の樹脂濃度の溶液の分析により、及び一点応答係数の決定又は線形較正により決定される。
【0069】
[075]図8は抽出物のGPECクロマトグラムであり、16~23分において検出可能な樹脂を示していない。図9は抽出済みシートのGPECクロマトグラムであり、16~23分において2つの樹脂を示し、8~10分において2phr未満の可塑剤が溶出している。
【0070】
[076]上記の実施例は、本明細書に前述のように、特定のステップを使用してリサイクルPVBを加工してPVBポリマーを回収又は再生することができることを示す。本明細書に記載のプロセスを使用して、リサイクルPVBを加工して、わずかなレベルの可塑剤しか含まない又は検出可能なレベルの可塑剤を含まないPVBポリマーを回収することができる。上記のように、次いで回収PVBポリマーをさらなるプロセスで使用できる。
【0071】
[077]現在のところ好ましい実施形態であると考えられるものを含めた、特定の実施形態の説明と併せて開示されるが、詳細な説明は例示的なものであることを意図しており、本開示の範囲を限定すると理解されるべきではない。当業者であれば理解するように、本明細書において詳細に説明されるもの以外の実施形態は本発明により包含される。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、説明される実施形態の修正及び変更を行うことができる。
【0072】
[078]本開示の任意の単独成分について示される範囲、値、又は特性のいずれかは、適合する場合、開示の他の成分のいずれかについて示される任意の範囲、値、又は特性と交換可能に使用して、本明細書の全体を通して示されるように、成分の各々について規定の値を有する実施形態をなすことができることがさらに理解されるであろう。例えば、残留ヒドロキシル含量について示される範囲のいずれかに加えて示される範囲のいずれかにある可塑剤含量を含むポリマー層を形成して、必要に応じて、本発明の範囲内であるがリストアップするのが煩雑となる多くの変更を行うことができる。
【0073】
[079]番号をつけた項目1~23に関して、本発明及びその好ましい実施形態をここでさらに説明する。
【0074】
[080]項目1.ポリ(ビニルブチラール)(PVB)を回収する方法であって、
(a)溶媒を再生システムへ供給するステップと;
(b)リサイクルPVBを溶媒へ加え、撹拌してPVB固体及び可塑剤を含むPVB混合物を形成させるステップと;
(c)PVB混合物をろ過してPVB固体を除去するステップと
を含む、方法。
【0075】
[081]項目2.PVB固体中の可塑剤のレベルを測定するステップ(d)をさらに含む、項目1の方法。
【0076】
[082]項目3.PVB固体に熱を加えて回収PVBポリマーを得るステップ(e)をさらに含む、項目2の方法。
【0077】
[083]項目4.ステップ(a)~(d)を繰り返すステップをさらに含む、項目2の方法。
【0078】
[084]項目5.ステップ(a)においてリサイクルPVBが供給される再生システムが、バッチ反応器システムを含む、項目1の方法。
【0079】
[085]項目6.ステップ(a)において加えられる溶媒が、水及びアルコールの混合物を含む、項目1の方法。
【0080】
[086]項目7.アルコールが、エタノール、メタノール、又はイソプロパノール、又は2種以上のアルコールの混合物である、項目6の方法。
【0081】
[087]項目8.水が約15~約48wt.%の量で存在する、項目6の方法。
【0082】
[088]項目9.アルコールがエタノールであり、水が約30~約40wt.%の量で存在する、項目8の方法。
【0083】
[089]項目10.アルコールがメタノールであり、水が約15~約25wt.%の量で存在する、項目8の方法。
【0084】
[090]項目11.アルコールがイソプロパノールであり、水が約40~約48wt.%.の量で存在する、項目8の方法。
【0085】
[091]項目12.リサイクルPVBが約2~約20ミリメートルの直径を有する、項目1の方法。
【0086】
[092]項目13.ステップ(a)においてリサイクルPVBが供給される再生システムが、連続再生システムを含む、項目1の方法。
【0087】
[093]項目14.連続再生システムが連続撹拌槽反応器である、項目13の方法。
【0088】
[094]項目15.リサイクルPVBが、少なくとも1wt.%(5wt.%、10wt.%、15wt.%、20wt.%、又はそれを超える)の量で溶媒へ加えられる、項目1の方法。
【0089】
[095]項目16.項目1~15のいずれかの方法により形成される、リサイクルPVB。
【0090】
[096]項目17.項目16のリサイクルPVBを含む、樹脂層。
【0091】
[097]項目18.項目17の樹脂層を含む、中間層。
【0092】
[098]項目19.第2の樹脂層をさらに含む、項目18の中間層。
【0093】
[099]項目20.樹脂層がコア層であり、中間層が第2の樹脂層及び第3の樹脂層をさらに含み、コア層が第2の樹脂層と第3の樹脂層の間にある、項目18の中間層。
【0094】
[0100]項目21.項目16のリサイクルPVBを含む、組成物。
【0095】
[0101]項目22.第1の基材、項目18の中間層、及び第2の基材を含む積層体であって、中間層が第1の基材と第2の基材の間にある、積層体。
【0096】
[0102]項目23.ステップ(b)が、約22℃~約60℃(22℃~約50℃、22℃~約40℃、22℃~約30℃)の温度で撹拌するステップを含む、項目1の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】