(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】抗IL-13R抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241112BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241112BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241112BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241112BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241112BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N ZNA
A61K47/18
A61K47/22
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/26
A61P29/00
A61P37/08
A61P17/00
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525152
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 SG2022050779
(87)【国際公開番号】W WO2023075700
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10202112096R
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10202250847P
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523323538
【氏名又は名称】アスラン ファーマシューティカルズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルク,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ダニー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル,アンジェリカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC18
4C076DD07F
4C076DD23
4C076DD51
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
(57)【要約】
抗IL13R抗体の安定な製剤。また提供されるのは、治療のための本製剤の使用、本製剤を用いる治療の方法、および本製剤を生産するプロセスである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度の抗体製剤であって、
150~210mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片、例えば150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205または210mg/ml、特に150mg/ml、175mg/mlまたは200mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;
170~250mMのアルギニン(Arg-HClまたはArg-Gluなど)、例えば170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245または250mM、特に150mM、175mMまたは250mMのアルギニン;
20~50mMのヒスチジン緩衝液、例えば20、25、30、35、40、45または50mM、20mMまたは50mMなどのヒスチジン緩衝液;
0.02%w/wなどの、0.01~0.03%の非イオン性界面活性剤、
を含み;
および
製剤のpHが、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0などの、6.0~7.0の範囲、特にpH6.5であり;かつ
抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号:1を含むVH CDR1、
配列番号:2を含むVH CDR2、
配列番号:3を含むVH CDR3、
配列番号:4を含むVL CDR1、
配列番号:5を含むVL CDR2、および
配列番号:6を含むVL CDR3、
を含む、
製剤。
【請求項2】
抗IL-13R抗体が、配列番号:7に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインを含む、請求項1にしたがう製剤。
【請求項3】
抗IL-13R抗体が、配列番号:8に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む、請求項1または2にしたがう製剤。
【請求項4】
150、175または200mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~3のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項5】
250mMのアルギニンなどの、175mM、200mMまたは250mMのアルギニンを含む、請求項1~4のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項6】
アルギニンが、Arg-HClまたはArg-Glu、特にArg-HClである、請求項1~5のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項7】
20mMのヒスチジン緩衝液などの、20mMまたは50mMのヒスチジン緩衝液を含む、請求項1~6のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項8】
0.02%w/wのポリソルベート20などの、0.02%w/wの非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~7のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項9】
pHが、6.5などの、6.0、6.5または7.0である、請求項1~8のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項10】
さらなるアミノ酸、例えばフェニルアラニン、45、50、55、60、65、70、75または80mMなどの、45~85mMのフェニルアラニンをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項11】
50、75または80mMのフェニルアラニンを含む、請求項10にしたがう製剤。
【請求項12】
CaCl2、例えば50mMのCaCl2をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項13】
スクロースなどの、50~200mMの糖をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項14】
180mMのスクロースなどの、180mMの糖を含む、請求項1~13のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項15】
粘度が、25cP未満、特に20~25cP未満、20cP未満などである、請求項1~14のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項16】
175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;
Arg-HClなどの、250mMのアルギニン;
20mMのヒスチジン緩衝液;
0.02%ポリソルベート20などの、0.02%の非イオン性界面活性剤;
75mMのフェニルアラニン、
を含み;
および製剤のpHが、6.5である、
請求項1~15のいずれか1項にしたがう高濃度抗体製剤。
【請求項17】
配列番号:7に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインならびに配列番号:8に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;
250mMのArg-HCl;
20mMのヒスチジン緩衝液;
0.02%のポリソルベート20;
75mMのフェニルアラニン、
を含み;
および製剤のpHが、6.5である、
請求項1~16のいずれか1項にしたがう高濃度抗体製剤。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項にしたがう製剤の治療的有効量を投与することを含む、炎症性障害、例えば中等度~重度のアトピー性皮膚炎などの、アトピー性皮膚炎を治療する方法。
【請求項19】
治療における使用のための、特に中等度~重度のアトピー性皮膚炎などの、アトピー性皮膚炎の治療のための、請求項1~17のいずれか1項にしたがう製剤。
【請求項20】
中等度~重度のアトピー性皮膚炎などの、アトピー性皮膚炎の治療における使用のための、治療薬剤の製造における請求項1~17のいずれか1項にしたがう製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗IL13R抗体の製剤およびその用途、特に本明細書に開示の病態を治療するための、この製剤を用いる治療の方法、ならびにこの製剤を生産するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
IL-13は様々な病態に関連付けられており、そのような病態としては、各種の呼吸器障害およびアレルギー性障害、線維症、強皮症、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患および特定の癌が挙げられるが、これらに限定されない;例えば、Wynn、T.A.、2003 Annu.Rev.Immunol.21:425~456;Terabeら、2000 Nat.Immunol.1(6):515-520;Fussら、2004 J.Clin.Invest.113(10):1490-1497;Simmsら、2002 Curr.Opin.Rheumatol.14(6):717-722;およびHasegawaら、1997 J.Rheumatol.24(2):328-332を参照のこと。したがって、IL-13は、そのような疾患の治療に関する魅力的な標的である。
【0003】
IL-13の活性を阻害する可能な一手段は、例えばIL-13Rに特異的な抗体(IL-13Rα1に特異的な抗体など)を用いることにより、その受容体IL-13RへのIL-13の結合に干渉することであろう。IL-13Rα1に対する有効な抗体拮抗薬は、IL-13の結合に干渉しかつIL-4RαとIL-13Rα1の間のヘテロ二量体化を妨害し得る。そのような抗体は、I型受容体を介するIL-4シグナル伝達を保持しながら、II型受容体を介するIL-13およびIL-4の両方のシグナル伝達を阻害する。I型受容体を介するシグナル伝達は、その間にTh2細胞が分化する免疫応答の誘導相にとって必須である。T細胞はIL-13Rα1を発現しないので、II型受容体は、Th2分化においては何らの役割も果たさない。したがって、IL-13Rα1抗体は、全体的なThl/Th2バランスに、影響を与えないはずである。II型IL-4/IL-13受容体を介するシグナル伝達は、確立されたアレルギー性炎症の間の免疫応答のエフェクターの攻撃段階(A stage;エフェクター相)の間重要である。したがって、II型受容体の阻害は、喘息およびその他のIL-13R媒介性病態の症状の多くに対して有益な効果をもたらすはずであり、それゆえ、有効な疾患修飾性薬剤となるであろう。
【0004】
IL-13Rα1に対する抗体(モノクローナルおよびポリクローナルの両方)は、当該技術分野において報告されている;例えば、WO97/15663、WO03/80675;WO03/46009;WO06/072564;Gauchatら、1998 Eur.J.Immunol.28:4286-4298;Gauchatら、2000 Eur.J.Immunol.30:3157-3164;Clementら、1997 Cytokine 9(11):959(Meeting Abstract);Ogataら、1998 J.Biol.Chem.273:9864-9871; Graberら、1998 Eur.J.Immunol.28:4286-4298;C.Vermot-Desrochesら、2000 Tissue Antigens 5(Supp.l):52-53(Meeting Abstract);Poudrierら、2000 Eur.J.Immunol.30:3157-3164;Akaiwaら、2001 Cytokine 13:75-84;Cancino-Diazら、2002 J.Invest.Dermatol.119:1114-1120;および、Krauseら、2006 MoI.Immunol.43:1799-1807を参照のこと。
【0005】
特に有望な抗IL-13Rα1抗体の一つは、WO2008/060813において抗体10G5-6と記載されるCSL334(現在では、ASLAN004/エブラサキマブとよばれている)である。エブラサキマブは、高親和性(例えば、Kdが500pM程度であってよい)を有してヒトIL-13Rα1に結合することが示されている。エブラサキマブは、その受容体IL-13Rα1へのIL-13の結合を阻害することにより有効にIL-13機能に拮抗すること、およびNHDF細胞におけるIL-13およびIL-4誘導性エオタキシン放出、NHDF細胞におけるIL-13およびIL-4誘導性STAT6リン酸化ならびに血液または末梢血単核細胞におけるTARCのIL-13刺激性放出を阻害することが示されている。
【0006】
しかし、エブラサキマブについて最適化された製剤が必要とされている;その理由は、取り扱いと製造が困難であり得るからである。高濃度の抗体製剤、例えば150mg/ml超の抗体/断片濃度を有する抗体製剤を作成することは、それがより小さな注射容積を可能にするので、患者にとって有益であるが、その達成は容易ではない。非経口製剤における凝集体および粒子の形成は、患者とって非常に危険であり、避けなければならない。したがって、最適化された製剤が、これらの問題に対処するため、および/また製剤の保存可能期間、送達、効力、および効力を最大化するためにも、必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の概要を、以下の項目で要約する。
[項目1]
高濃度の抗体製剤であって、上記製剤が以下を含み:
150~210mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片、例えば150、155、160、165、170、175、180、185、190、195または200mg/mlの、特に150mg/ml、175mg/mlまたは200mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;
170~250mMのアルギニン(Arg-HClまたはArg-Gluなど)、例えば170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245または250mMの、特に150mM、175mMまたは250mMのアルギニン;
20~50mMのヒスチジン緩衝液、例えば20、25、30、35、40、45または50mM(20mMまたは50mMなど)のヒスチジン緩衝液;
0.01~0.03%の非イオン性界面活性剤、例えば0.01~0.03%w/w(0.02%w/wなど)の非イオン性界面活性剤;
ここで製剤のpHは、6.0~7.0の範囲(6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0などの範囲)、特にpH6.5であり;
およびここで抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:1に示されるようなアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号:2に示されるようなアミノ酸配列を含むVH CDR2、および配列番号:3に示されるようなアミノ酸配列を含むVH CDR3;ならびに配列番号:4に示されるようなアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号:5に示されるようなアミノ酸配列を含むVL CDR2、および配列番号:6に示されるようなアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
高濃度抗体製剤。
[項目2]
項目1にしたがう製剤であって、ここで製剤が、150~200mg/ml(150、155、160、165、170、175、180、185、190、195または200mg/mlなど)の抗IL13R抗体またはその結合断片を含む、製剤。
[項目3]
項目1または2にしたがう製剤であって、ここで製剤が、150、175または200mg/mlの抗体を含む、製剤。
[項目4]
150mg/mlを含む、項目3にしたがう製剤。
[項目5]
175mg/mlを含む、項目3にしたがう製剤。
[項目6]
200mg/mlを含む、項目3にしたがう製剤。
[項目7]
項目1~6のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、175、200または250mMのアルギニンを含む、製剤。
[項目8]
項目1~7のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここでアルギニンが、Arg-HClである、製剤。
[項目9]
項目1~8のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、20mMのヒスチジン緩衝液を含む、製剤。
[項目10]
項目1~9のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、フェニルアラニン(45~85mMのフェニルアラニンなど)をさらに含む、製剤。
[項目11]
項目10にしたがう製剤であって、ここで製剤が、50、75または80mMのフェニルアラニンを含む、製剤。
[項目12]
項目1~11のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、CaCl2(例えば、30、35、40、45、50、55、60、65または70mMのCaCl2)をさらに含む、製剤。
[項目13]
項目12にしたがう製剤であって、ここで製剤が、50mMのCaCl2を含む、製剤。
[項目14]
項目1~13のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤の浸透圧が、350~550mOsmo/kgの範囲(例えば350、355、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、515、520、525、530、535、540、545、550mOsmo/kg(405~435mOsmo/kgなど))である、製剤。
[項目15]
項目1~14のいずれか1項にしたがう製剤であって、50~200mMの糖(例えば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200mMの糖(180mMの糖など))をさらに含む、製剤。
[項目16]
項目15にしたがう製剤であって、ここで製剤が、180mMの糖を含む、製剤。
[項目17]
項目15または16にしたがう製剤であって、ここで糖が、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、ガラクトース、フルクトース、乳糖、トレハロースおよびスクロースから選択される、製剤。
[項目18]
項目17にしたがう製剤であって、ここで糖が、スクロースである、製剤。
[項目19]
0.02%w/wの非イオン性界面活性剤を含む、項目1~18のいずれか1項にしたがう製剤。
[項目20]
項目1~19のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、40、60、または80、ポリソルベート20である、製剤。
[項目21]
項目20にしたがう製剤であって、ここで非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート20である、製剤。
[項目22]
項目1~21のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、NaClを含まない、製剤。
[項目23]
項目1~21のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、50~150mMのNaCl(例えば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mMのNaCl(62.5または140mMのNaClなど))を含む、製剤。
[項目24]
項目1~23のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、10~30cPの範囲(mPa.s)で、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30cP(15~25cPなど、特に20cP)の粘度を有する、製剤。
[項目25]
項目1~24のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL-13R抗体が、抗IL13Rα1抗体である、製剤。
[項目26]
項目1~25のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL-13R抗体が、エピトープFFYQに結合する、製剤。
[項目27]
項目1~26のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL-13R抗体が、配列番号:7に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインを含む、製剤。
[項目28]
項目1~27のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL-13R抗体が、配列番号:8に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む、製剤。
[項目29]
項目1~28のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL13R抗体が、配列番号:7に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメイン、ならびに配列番号:8に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む、製剤。
[項目30]
項目1~29のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL13R抗体が、配列番号:7に示されるアミノ酸配列を含むVHドメインならびに配列番号:8に示されるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、製剤。
[項目31]
項目1~30のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで抗IL13R抗体が、ヒト抗体である、製剤。
[項目32]
項目1~31のいずれか1項にしたがう製剤であって、ここで製剤が、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤を含み、およびここで製剤のpHが、6.5である、製剤。
[項目33]
項目1~32のいずれか1項にしたがう製剤であって、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20を含み、およびここで製剤のpHが、6.5である、製剤。
[項目34]
項目1~33のいずれか1項にしたがう製剤であって、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20;フェニルアラニン(45~85mMのフェニルアラニンなど)を含み、およびここで製剤のpHが、6.5である、製剤。
[項目35]
項目1~34のいずれか1項にしたがう製剤であって、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHが、6.5である、製剤。
[項目36]
項目1~35のいずれか1項にしたがう製剤であって、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片を含み、ここで抗IL13R抗体が、配列番号:8に示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%同一の配列を含むVLドメイン、ならびに配列番号:7に示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%同一の配列を含むVHを含み;製剤が、250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHが、6.5である、製剤。
[項目37]
治療における使用のための、項目1~36のいずれか1項にしたがう製剤。
[項目38]
炎症または自己免疫疾患、例えば慢性炎症の治療における使用のための、項目37にしたがう製剤。
[項目39]
項目38にしたがう製剤であって、ここで炎症が、線維症(肺線維症(嚢胞性線維症、特発性肺線維症、進行性の広範な線維症など);肝線維症(肝硬変など);心臓疾患(心房線維化、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞など);関節線維化;デュピュイトラン拘縮;ケロイド線維症;縦隔線維症;骨髄線維症;腎性全身性線維症;後腹膜線維化症;および強皮症を含む)、ホジキン病、潰瘍性結腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎、アレルギー性鼻炎、喘息および慢性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患を含む)、特に喘息を含む群から選択される、製剤。
[項目40]
炎症または自己免疫疾患、例えば慢性炎症の治療のための治療薬剤の製造における使用のための、項目1~36のいずれか1項にしたがう製剤の使用。
[項目41]
線維症(肺線維症(嚢胞性線維症、特発性肺線維症、進行性の広範な線維症など);肝線維症(肝硬など);心臓疾患(心房線維化、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞など);関節線維化;デュピュイトラン拘縮;ケロイド線維症;縦隔線維症;骨髄線維症;腎性全身性線維症;後腹膜線維化症;および強皮症を含む)、ホジキン病、潰瘍性結腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎、アレルギー性鼻炎、喘息および慢性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患を含む)、セザリー症候群、特に喘息を含む群から選択される病態の治療のための治療薬剤の製造における項目40にしたがう製剤の使用。
[項目42]
項目1~36のいずれか1項にしたがう製剤の有効量を投与することを含む治療の方法。
[項目43]
項目1~36のいずれか1項にしたがう製剤の有効量を投与することを含む、炎症(慢性炎症など)または自己免疫疾患を治療する方法。
[項目44]
項目43にしたがう方法であって、ここで:
線維症(肺線維症(嚢胞性線維症、特発性肺線維症、進行性の広範な線維症など);肝線維症(肝硬変など);心臓疾患(心房線維化、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞など);関節線維化;デュピュイトラン拘縮;ケロイド線維症;縦隔線維症;骨髄線維症;腎性全身性線維症;後腹膜線維化症;および強皮症)ホジキン病、潰瘍性結腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎、アレルギー性鼻炎、喘息および慢性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患を含む)、特に喘息を含む群から選択される病態の治療。
【0008】
エブラサキマブなどの抗体は、ヒトにおいて所望の用量が可能な限り少ない容積で投与されることを可能にするために、高濃度に製剤化される必要がある。高濃度製剤は、相分離様の現象が観察され得るので、固有の困難をもたらす。凝集はまた、高濃度の抗体での共通の特徴である。しかし、製剤は、「単量体」として非常に高レベルの抗体分子を含む必要がある(例えば、99%以上の単量体)。さらに、製剤は、保存時に安定である必要がある。エブラサキマブは、その蛋白質中に疎水性部分を有すると思われ;それは例えば、高塩濃度の不在下で疎水性相互作用カラムと相互作用する。この仮定的な疎水性部分は、抗体を製剤化しつつ凝集を防ぐ場合に、さらなる複雑性を付与する。したがって、本開示の抗体は特に、製剤化するのが困難である。
【0009】
さらに、より高濃度の抗体製剤により提示される困難な問題は、そのような製剤が過度に粘稠である傾向である。したがって、粘度を許容可能な低レベル、すなわち、20~25cPの標的粘度範囲に近い値(20cPなど)に保つために製剤を最適化する必要がある。
【0010】
本発明者らは、本開示の製剤を最適化し、IL-13R抗体(エブラサキマブなど)が狭いパラメータセット内で製剤に最も好適であることを確立した。本開示の製剤は、高抗体濃度で製剤化される場合であっても、高度に単量体性であり、例えば少なくとも98%が単量体(98~99.5%が単量体など)である。本開示の製剤はまた、高い抗体濃度で良好な粘度を有する。さらに、製剤は、好適に安定であり、例えば、いくつかの実施態様において、4℃または25℃で90日間保存される場合、単量体量における変化はなく、あるいは単量体における0.5%未満の減少しか認められない。40℃での加速された「ストレス試験]はまた、本開示の製剤が、例えば効力測定を用いて、60日間の期間にわたって安定であることも示す。
【0011】
本開示の製剤の特徴の組み合わせ(pHを含む)は、IL-13受容体抗体またはその結合断片を安定化することに寄与する。
【0012】
一実施態様においては、本開示の製剤は、例えば周囲温度において、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30cPなどの、10~30cP(センチポイズ)の範囲で粘度、20cPなどを有する。意外なことに、本開示の製剤の粘度は、抗体が高濃度であっても比較的低い。
【0013】
一実施態様においては、粘度は、回転式粘度計、電磁球回転式(EMS)粘度計、またはスタビンガー粘度計などの粘度計を用いて測定される。一実施態様においては、粘度は、剪断レオメーター、ダイナミック剪断レオメーター、伸長レオメーター、キャピラリーレオメーターなどのレオメーターを用いて測定される。一実施態様においては、粘度は、Kinexus-ultra+レオメーター(Netzsch)を用いて測定される。
【0014】
一実施態様においては、製剤の浸透圧は、350~450mOsmo/kgの範囲(390~430mOsmo/kgなど、特に410+/-5mOsmo/kg)である。
【0015】
一実施態様においては、製剤は、150~210mg/mlの抗IL13R抗体、例えば150~175mg/ml(150、155、160、165、170、175mg/mlなど)の抗IL13R抗体を含む。一実施態様においては、製剤は、175mg/ml~210mg/ml(175、180、185、190、195、200、205または210mg/mlなど)を含む。一実施態様においては、製剤は、150mg/mlの抗IL13R抗体を含む。別の一実施態様においては、製剤は、175mg/mlの抗IL13R抗体を含む。一実施態様においては、製剤は、200mg/mlを含む。
【0016】
一実施態様においては、製剤は、170~260mMのアルギニン、例えば170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250または260mMのアルギニンを含む。一実施態様においては、製剤は、150mM、175mM、200mMまたは250mMのアルギニンを含む。一実施態様においては、製剤は、150mMのアルギニンを含む。一実施態様においては、製剤は、175mMのアルギニンを含む。一実施態様においては、製剤は、200mMのアルギニンを含む。一実施態様においては、製剤は、250mMのアルギニンを含む。
【0017】
一実施態様においては、アルギニンは、Arg-HClである。別の一実施態様においては、アルギニンは、Arg-Gluである。一実施態様においては、アルギニンは、L-アルギニンである。したがって、一実施態様においては、製剤は、150mMのArg-HClを含む。一実施態様においては、製剤は、175mMのArg-HClを含む。一実施態様においては、製剤は、200mMのArg-HClを含む。一実施態様においては、製剤は、250mMのArg-HClを含む。
【0018】
一実施態様においては、製剤は、20~50mMのヒスチジン緩衝液、例えば20、25、30、35、40、45または50mM(20mMまたは50mMなど)のヒスチジン緩衝液を含む。一実施態様においては、製剤は、20mMのヒスチジン緩衝液を含む。別の一実施態様においては、製剤は、50mMのヒスチジン緩衝液を含む。
【0019】
一実施態様においては、製剤は、0.01~0.03%の非イオン性界面活性剤(0.01、0.015、0.02、0.025、または0.030%などの、特に0.02%の非イオン性界面活性剤)を含む。一実施態様においては、製剤は、0.01~0.03%(0.01、0.015、0.02、0.025、または0.030%などの、特に0.02%)の容量/容量(v/v)の非イオン性界面活性剤を含む。一実施態様においては、製剤は、0.01~0.03%(0.01、0.015、0.02、0.025、または0.030%などの、特に0.02%)の重量/容量(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む。一実施態様においては、製剤は、0.01~0.03%(0.01、0.015、0.02、0.025、または0.030%などの、特に0.02%)の重量/重量(w/w)の非イオン性界面活性剤を含む。一実施態様においては、製剤は、0.02%w/wの非イオン性界面活性剤を含む。
【0020】
一実施態様においては、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(ポリソルベート20、40、60、または80など)である。一実施態様においては、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20である。したがって、一実施態様においては、製剤は、0.01~0.03%(0.02%など)のポリソルベート20(例えば、%w/wとして、%w/vとして、%v/w、または%v/vとして)を含む。一実施態様においては、製剤は、0.02%w/wのポリソルベート20を含む。
【0021】
一実施態様においては、製剤のpHは、6.0~7.0の範囲(6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0など)である。一実施態様においては、pHは、6.0、6.5または7.0である。一実施態様においては、pHは、6.5である。
【0022】
一実施態様においては、製剤は、フェニルアラニン(45~90mMのフェニルアラニンなど、例えば45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90mMのフェニルアラニン)をさらに含む。一実施態様においては、製剤は、50、75、または80mMのフェニルアラニンを含む。したがって、一実施態様においては、製剤は、50mMのフェニルアラニンを含む。一実施態様においては、製剤は、75mMのフェニルアラニンを含む。一実施態様においては、製剤は、80mMのフェニルアラニンを含む。
【0023】
一実施態様においては、製剤は、CaCl2(例えば10、20、30、40、50、または60mMのCaCl2)をさらに含む。一実施態様においては、製剤は、50mMのCaCl2を含む。
【0024】
一実施態様においては、製剤は、50~200mMの糖(50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mMの糖など)をさらに含む。一実施態様においては、製剤は、180mMの糖を含む。一実施態様においては、糖は、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、ガラクトース、フルクトース、乳糖、トレハロース、およびスクロースから選択される。一実施態様においては、糖は、スクロースである。したがって一実施態様においては、製剤は、180mMのスクロースを含む。
【0025】
一実施態様においては、本開示の特定の製剤は、例えば2~25℃の範囲の温度で90日間保存される場合に、1%以下の蛋白質凝集を有する。
【0026】
本開示の抗IL13R抗体製剤は、抗IL13R抗体の安定な長期保存に特に好適である。一実施態様においては、製剤は、2~8℃の範囲の温度(2、3、4、5、6、7、または8℃など、4℃など)で保存される。
【0027】
一実施態様においては、提供されるのは、例えば点滴または注射のための非経口製剤(特に、液状製剤)である。一実施態様においては、提供されるのは、注射用のグルコース、食塩水または水などの、注射用に液体で希釈する濃縮物として非経口液状製剤である。一実施態様においては、非経口液状製剤は、例えば注射のためまたは点滴のために、希釈せずに投与するための最終濃度で提供される。
【0028】
一実施態様においては、製剤は、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤を含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0029】
一実施態様においては、製剤は、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20を含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0030】
一実施態様においては、製剤は、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤;フェニルアラニン(45~85mMのフェニルアラニンなど)を含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0031】
一実施態様においては、製剤は、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0032】
一実施態様においては、製剤は、175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0033】
一実施態様においては、本開示の製剤に用いる抗体または結合断片は、モノクローナルである。
【0034】
一実施態様においては、本開示の製剤に用いる抗体または結合断片は、ヒト型である。一実施態様においては、本開示の製剤に用いる抗体または結合断片は、キメラ型またはヒト化された型である。
【0035】
一実施態様においては、抗体またはその結合断片は、配列番号:1に示される配列を有するCDRH、配列番号:2に示される配列を有するCDRH2、および配列番号:3に示される配列を有するCDRH3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号:4に示される配列を有するCDRL1、配列番号:5に示される配列を有するCDRL2、および配列番号:6に示される配列を有するCDRL3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0036】
一実施態様においては、抗体またはその結合断片は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインを含む。一実施態様においては、抗体またはその結合断片は、配列番号:8に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む。
【0037】
一実施態様においては、抗体またはその結合断片は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む。
【0038】
一実施態様においては、抗体またはその結合断片は、配列番号:7に示される配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列を含むVLドメインを含む。
【0039】
一実施態様においては、抗体またはその結合断片は、エブラサキマブである。
【0040】
一実施態様においては、製剤は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤を含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0041】
一実施態様においては、製剤は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20を含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0042】
一実施態様においては、製剤は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤;フェニルアラニン(45~85mMのフェニルアラニンなど)を含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0043】
一実施態様においては、製剤は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのアルギニン;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%の非イオン性界面活性剤;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0044】
一実施態様においては、製剤は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【0045】
一実施態様においては、製剤は、配列番号:7に示される配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含むVHドメインおよび配列番号:8に示される配列を含むVLドメインを含む175mg/mlの抗IL-13R抗体またはその抗原結合断片;250mMのArg-HCl;20mMのヒスチジン緩衝液;0.02%のポリソルベート20;75mMのフェニルアラニンを含み、およびここで製剤のpHは、6.5である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書で用いられる[長期」は、少なくとも6か月の期間(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36か月など)を指す。一実施態様においては、本開示の製剤の保存は、少なくとも12か月(12か月、18か月、および24か月など)である。
【0047】
本明細書で用いられる「非イオン性界面活性剤」は、疎水性の親構造体に結合される、共有結合で結合される酸素含有親水基を有する界面活性剤を指す。非イオン性界面活性剤の例としては:脂肪族アルコールエトキシレート類(狭範囲エトキシレート、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルおよびペンタエチレングリコールモノドデシルエーテルなど)、アルキルフェノールエトキシレート(ノノキシノール類およびTriton X-100など)、脂肪酸エトキシレート類、エトキシル化アミン類および/または脂肪酸アミド類(ポリエトキシル化獣脂アミン、コカミドモノエタノールアミンおよびコカミドジエタノールアミンなど)、末端ブロック型エトキシレート類(ポロクサマー類など)などのエトキシレート類;ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル類;グリセロールの脂肪酸エステル類(グリセロールモノステアリン酸塩およびグリセロールモノラウリン酸塩など);ソルビトールの脂肪酸エステル類(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートなど);Tween類(Tween20、40、60または80など);スクロースの脂肪酸エステル類;アルキルポリグルコシド類(デシルグルコシド、ラウリルグルコシドおよびオクチルグルコースなど);およびポリソルベート(ポリソルベート20、40、60または80など)が挙げられる。
【0048】
したがって、一実施態様においては、非イオン性界面活性剤は、エトキシレート;ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル類;グリセロールの脂肪酸エステル類;ソルビトールの脂肪酸エステル類;Tween類;スクロースの脂肪酸エステル類;アルキルポリグルコシド類;およびポリソルベートを含む群から選択される。
【0049】
本明細書で用いられる「非経口製剤」は、消化管を介して送達されないように設計された製剤を指す。典型的な非経口送達経路としては、注射(ボーラス注射を含む)、埋め込み、または点滴が挙げられる。一実施態様においては、製剤は、ボーラス送達の形態で提供される。
【0050】
一実施態様においては、非経口製剤は、静脈内投与される。一実施態様においては、非経口製剤は、皮下投与される。
【0051】
本明細書で用いられる「注射」は、注射筒またはシリンジポンプを介する身体中への液状製剤の投与を指す。注射としては、静脈内投与、皮下投与、腫瘍内投与、または筋肉内投与が挙げられる。注射は一般的に、5分間以下などの、短い期間にわたる。しかし、注射は、例えばシリンジポンプを用いて、ゆっくりと、または連続的に投与されてよい。注射は一般的に、点滴よりも小容積の投与を含む。一実施態様においては、注射は、例えば1.5~30分の期間にわたり、緩慢な注射として投与される。本明細書で用いられる緩慢な注射は、注射筒を用いる用手的注射である。一実施態様においては、製剤の1用量は、シリンジポンプによる投与などの、100ml未満、例えば30mlである。
【0052】
本明細書で用いられる「点滴」は、滴下、輸液ポンプ、または同等のデバイスによる液体の投与を意味する。一実施態様においては、点滴は、1~120分間の範囲の時間(例えば1~5分間)、約1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、65、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分間などの時間をかけて投与される。
【0053】
抗IL13R抗体
本明細書で用いられるインターロイキン13受容体(IL-13R)は、インターロイキン13に結合するI型サイトカイン受容体である。この受容体は、それぞれ、IL13Rα1およびIL4Rによりコードされる2つのサブユニットから成る。これらの2種類の遺伝子は、IL-13Rα1およびIL-4Rαの蛋白質をコードする。これらはIL-13Rα1鎖へのIL-13の結合を伴う二量体を形成し、IL-4Rαはこの相互作用を安定化する。IL4Rサブユニットの存在により、IL13Rはまた、IL-4シグナル伝達を引き起こし得る。いずれの場合においても、これは、ヤヌスキナーゼ(JAK)/シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路の活性化を介して起こり、STAT6のリン酸化を引き起こす。ヒトIL-13Rα1は、Uniprot番号:P3597を有する。
【0054】
IL-13Rα2(以前はIL-13RおよびIL-13Rαとよばれていた)は、IL-13に結合できるもう一つの受容体である。しかし、IL-13Rα1とは対照的に、この蛋白質は高親和性でIL-13を結合するが、IL-4を結合しない。ヒトIL-13Rα2は、Uniprot番号:Q14627を有する。
【0055】
本明細書の抗IL13R抗体は、IL13R、例えばIL13Rα1またはIL13Rα2に対する特異性を有する抗体を指す。
【0056】
一実施態様においては、本開示の抗IL13R抗体は、IL13Rα1に対し特異的である。一実施態様においては、抗IL13R抗体は、アミノ酸配列FFYQを含むエピトープに結合する。
【0057】
本開示の抗IL13R抗体は、全長の重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子またはその結合断片を含み得る。結合断片としては、Fab、修飾Fab、Fab′、F(ab′)2、Fv、単一ドメイン抗体(VH、VL、VHH、IgNARのVドメインなど)、scFv、二価抗体、三価抗体または四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ならびに前記のいずれかのエピトープ結合断片(例えば、HolligerおよびHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136; AdairおよびLawson、2005、Drug Design Reviews - Online 2(3)、209-217を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
これらの抗体断片を作成するおよび製造するための方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165~181を参照のこと)。本発明における使用のための他の抗体断片としては、WO2005/003169、WO2005/003170およびWO2005/003171に記載のFabおよびFab′断片が挙げられる。本発明における使用のための他の抗体断片としては、WO2010/035012に記載のFab-FvおよびFab-dsFv断片ならびにそれらの断片を含む抗体断片が挙げられる。多価抗体は、複数の特異性を含んでよく、あるいは単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22853およびWO05/113605を参照のこと)。
【0059】
本開示における使用のための抗体およびその断片は、例えばマウス、ラット、サメ、ウサギ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマ、ヤギ、またはヒトを含む、任意の生物種由来であってよい。キメラ抗体は、非ヒト可変領域およびヒト定常領域を有する。
【0060】
本発明における使用のための抗体または結合断片は、免疫グロブリン分子のいずれかのクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、またはIgA)またはサブクラスに由来してよい。一実施態様においては、本開示において用いられる抗体は、IgG4または241P変異を有するIgG4である。
【0061】
一実施態様においては、本開示の製剤で用いられる抗体または結合断片は、5nMの親和性またはそれより高い(より高い親和性は、より低い数値である)、例えば500pM、250pMまたはそれより高い、特に125pMまたはそれ未満の、親和性を有する。
【0062】
配列表を、本明細書の付属として提出する。
GYSFTSYWIG (配列番号:1)
VIYPGDSYTR (配列番号:2)
MPNWGSLDH (配列番号:3)
RASQSISSSYLA (配列番号:4)
GASSRAT (配列番号:5)
QQYAS (配列番号:6)
配列番号:7
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTSYWIGWVRQMPGKGLEWMGVIYPGDSYTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARMPNWGSLDHWGQGTLVTVSS
配列番号:8
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSISSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYASFGQGTKVEI* (* Kは、翻訳後修飾で欠失される)。
【0063】
本開示で用いられる抗IL13R抗体または結合断片は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号:3に示されるアミノ酸配列を含むCDRH3を含む。
【0064】
本開示で用いられる抗IL13R抗体または結合断片は、配列番号:4に示されるアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号:5に示されるアミノ酸配列を含むCDRL2、および配列番号:6に示されるアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0065】
一実施態様においては、VH配列は、配列番号:7またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。一実施態様においては、VL配列は、配列番号:8またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0066】
一実施態様においては、VH配列は配列番号:7またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含み、またVL配列は配列番号:8またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0067】
一実施態様においては、VH配列は配列番号:7であり、VL配列は配列番号:8である。
【0068】
本明細書で用いられる「可変領域」は、CDRおよび好適なフレームワークを含む抗体鎖の領域を指す。
【0069】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、ならびに同上のいずれかに対し少なくとも95%同一の配列を含む群から独立に選択される配列を含む。
【0070】
一実施態様においては、軽鎖は、配列番号:14に示されるアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0071】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:9またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含み、軽鎖は、配列番号14またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0072】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:10またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含み、軽鎖は、配列番号:14またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0073】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:11またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含み、軽鎖は、配列番号:14またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0074】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:12またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含み、軽鎖は、配列番号:14またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0075】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:13またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含み、軽鎖は、配列番号:14またはそれに対し少なくとも95%同一の配列を含む。
【0076】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:9であり、軽鎖は、配列番号:14である。
【0077】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:10であり、軽鎖は、配列番号:14である。
【0078】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:11であり、軽鎖は、配列番号:14である。
【0079】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:12であり、軽鎖は、配列番号:14である。
【0080】
一実施態様においては、重鎖は、配列番号:13であり、軽鎖は、配列番号:14である。
【0081】
本明細書で用いられる「に由来する」は、用いられる配列または用いられる配列に非常に類似した配列が、抗体の軽鎖または重鎖などの、起源の遺伝物質から取得されたことを指す。
【0082】
本明細書で用いられる「少なくとも95%同一」は、その全長にわたり、参照配列に対し96、97、98、または99%同一などの、95%以上同一であるアミノ酸配列を指すことが意図される。ソフトウエアプログラムを、同一性%を算出するために用いることができる。
【0083】
一実施態様においては、本開示の製剤で用いられる抗体またはその結合断片は、ヒト化される。
【0084】
本明細書で用いられる「ヒト化された」(これは、CDR移植抗体を含む)は、非ヒト生物種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する分子を指す(例えば、米国特許第5,585,089号;WO91/09967を参照のこと)。CDR全体ではなくCDRの特異性決定残基を移植することのみが必要であるということは、理解されるであろう(例えば、Kashmiriら、2005、Methods、36、25~34を参照のこと)。ヒト化された抗体は、CDRが由来する非ヒト生物種の1つ以上のフレームワーク残基を任意選択的にさらに含んでよい。総説としては、Vaughanら、Nature Biotechnology、16、535~539、1998を参照のこと。
【0085】
CDRまたは特異性決定残基を移植する場合には、マウス、霊長類およびヒトのフレームワーク領域を含む、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮して、いずれかの適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が用いられてよい。本発明に用いることのできるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、およびPOMである(Kabatら、上掲)。例えば、KOLおよびNEWMは、重鎖に用いることができる;REIは、軽鎖に用いることができる;EU、LAYおよびPOMは、重鎖および軽鎖の両方に用いることができる。あるいは、ヒト生殖細胞系列配列が、用いられてよい;これらは、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/において入手可能である。
【0086】
本発明で用いられるヒト化抗体では、アクセプター重鎖および軽鎖は、必ずしも同一抗体に由来する必要はなく、必要に応じて、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0087】
フレームワーク領域は、アクセプター抗体の配列と全く同じ配列を有する必要はない。例えば、普通でない残基は、そのアクセプター鎖のクラスまたはタイプにおいてより高頻度に起こる残基に交換されてよい。あるいは、アクセプターフレームワーク領域において選択される残基は、それらがドナー抗体において同一位置に存在する残基に対応するように置換されてよい(Reichmannら、1998、Nature、332、323~324を参照のこと)。そのような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するのに必要最小限に保たれるべきである。変化させる必要があるかもしれないアクセプターフレームワーク領域における残基を選択するためのプロトコルは、WO91/09967に記載される。
【0088】
一実施態様においては、本開示の抗IL13R抗体は、完全にヒト型であり、特に可変ドメインの1つ以上が、完全にヒト型である。
【0089】
完全にヒト型である分子は、重鎖および軽鎖の両方の可変領域および定常領域(存在する場合には)が全てヒト由来である、あるいはヒト由来の配列に対し実質的に同一であるが、必ずしも同じ抗体に由来しない分子である。ヒト完全抗体の例としては、例えば、上記のファージディスプレイ法により作成される抗体、ならびにマウス免疫グロブリンの可変領域遺伝子および任意選択的に定常領域遺伝子が、それらのヒトのカウンターパート、例えば大まかに言えば欧州特許出願第0546073号B1、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,770,429号、欧州特許第0438474号、および欧州特許第0463151号に記載されるようなそれらのヒトのカウンターパートにより置換されているマウスにより産生される抗体を挙げることができる。
【0090】
本明細書で用いられる「定常領域」は、重鎖における2つの可変ドメイン間、例えば非同系可変ドメイン間に位置する定常領域部分を指すことが意図される。したがって、本開示の抗IL13R抗体は、天然の定常ドメインまたは天然のドメインの誘導体などの、1つ以上の定常領域を含んでよい。
【0091】
本明細書で用いられる「天然のドメインの誘導体」は、天然の配列中の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸が、例えば、望ましくない特性を除去することによってなどでドメインの特性を最適化するために置換または欠失されているが、ドメインの特徴は保持されることを指すことが意図される。
【0092】
必要に応じて、本発明における使用のための抗体は、1つ以上のエフェクター分子にコンジュゲートされてよい。エフェクター分子が、単一エフェクター分子、または本発明の抗体に付着され得る単一部分を形成するように連結される2つ以上のそのような分子を含んでよいことは、理解されるであろう。エフェクター分子に連結された抗体断片を取得することが所望される場合、これは、抗体断片が直接的に、あるいはカップリング剤を介して、のいずれかでエフェクター分子に連結される標準的な化学的方法または組換えDNA法により調製されてよい。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートするための技術は、当該技術分野において公知である(Hellstromら、制御薬剤送達(Controlled Drug Delivery)第2版、Robinsonら編集、1987、pp.623-53;Thorpeら、1982、Immunol.Rev.、62:119-58、およびDubowchikら、1999、Pharmacology and Therapeutics、83、67~123を参照のこと)。特定の化学手段としては、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476、およびWO03031581に記載の手段が挙げられる。あるいは、エフェクター分子が蛋白質またはポリペプチドである場合、連結は、例えば、WO86/01533および欧州特許第0392745号に記載のように、組換えDNA法を用いて達成されてよい。
【0093】
本明細書で用いられる用語「エフェクター分子」としては、例えば生物学的に活性な蛋白質、例えば酵素、他の抗体または抗体断片、合成または天然のポリマー、核酸およびその断片、例えばDNA、RNAおよびその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子およびレポーター基(蛍光化合物あるいはNMRまたはESR分光法により検出されてよい化合物など)が挙げられる。
【0094】
他のエフェクター分子としては、例えば診断において有用な検出可能物質を挙げることができる。検出可能物質の例としては、各種の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子断層撮影法における使用のための)、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。診断法としての使用のための抗体にコンジュゲートされてよい金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。好適な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族としては、ストレプトアビジン、アビジンおよびビオチンが挙げられる;好適な蛍光物質としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセン、塩化ダンシル、およびフィコエリトリンが挙げられる;好適な発光物質としては、ルミノールが挙げられる;好適な生物発光物質としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる;および好適な放射性核種としては、125I、131I、111In、および99Tcが挙げられる。
【0095】
他の一例においては、エフェクター分子は、インビボにおける抗体の半減期を延長し得る、および/または抗体の免疫原性を低下させ得る、および/または免疫系への上皮障壁を越える抗体送達を促進し得る。このタイプの好適なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合蛋白質、またはアルブミン結合化合物(WO05/117984に記載のものなど)が挙げられる。エフェクター分子がポリマーである場合、それは、一般的に、合成ポリマーまたは天然ポリマーであってよく、例えば任意選択的に置換される直鎖のまたは分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマーまたは分岐のまたは非分岐の多糖、例えばホモ多糖またはヘテロ多糖であってよい。
【0096】
上記合成ポリマー上に存在してよい具体的な任意選択的な置換基は、1つ以上のヒドロキシ基、メチル基、またはメトキシ基を含む。
【0097】
合成ポリマーの具体的な例は、任意選択的に置換される直鎖のまたは分岐鎖のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、特に任意選択的に置換されるポリエチレングリコール(メトキシポリエチレングリコールなど)またはその誘導体を含む。具体的な天然ポリマーは、乳糖、アミロース、デキストラン、グリコーゲンまたはその誘導体を含む。
【0098】
本明細書で用いられる「誘導体」は、反応性誘導体、例えばマレイミド類などのチオール選択的反応基を含むことが意図される。反応基は、ポリマーに直接的にまたはリンカーセグメントを介して連結されてよい。そのような基の残基が、いくつかの場合に抗体断片とポリマーの間の連結基として産物の一部を形成するということは理解されるであろう。
【0099】
好適なポリマーは、ポリアルキレンポリマー(ポリエチレングリコールなど)または特に、メトキシポリエチレングリコールまたはその誘導体、および特に約15000Da~約40000Daの範囲の分子量を有するものを含む。
【0100】
一例においては、本発明における使用のための抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)部分に連結される。具体的な一例においては、抗体は、抗体断片であり、PEG分子が、いずれかの利用可能なアミノ酸側鎖あるいは抗体断片中に位置する末端アミノ酸の官能基(例えば、いずれかの遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル、またはカルボキシル基)を介して連結されてよい。そのようなアミノ酸は、抗体断片中に天然に生じてよく、あるいは組換えDNA法を用いて断片中に工学的に操作されてもよい(例えば、米国特許第5,219,996号;米国特許第5,667,425号;WO98/25971、WO2008/038024を参照のこと)。一例においては、本発明の抗体分子は、修飾されたFab断片であり、ここで修飾は、エフェクター分子の連結を可能にするための、その重鎖のC末端への1つ以上のアミノ酸の付加である。好適には、付加的アミノ酸は、それにエフェクター分子が連結されてよい1つ以上のシステイン残基を含む修飾されたヒンジ領域を形成する。複数の部位を、2つ以上のPEG分子を付着するために用いることができる。
【0101】
乳癌、癌関連リンパ液浮腫(BCRL)などの、癌を有する患者において、本開示の製剤は、線維症、過角化症、線維脂肪組織沈着、液体蓄積、四肢の腫脹、皮膚の弾力性の低下、および疼痛などのリンパ液浮腫に関連する影響を予防し得る。過剰な体積を減らすことにより、上記製剤は、リンパ機能および、例えば四肢の機能を改善し得る。
【0102】
リンパ傷害後のリンパ液浮腫発症は、組織炎症、CD4陽性細胞の浸潤、および2型ヘルパーT細胞(Th2)表現型へのそれらの細胞の分化に関連する。Th2細胞は、リンパ液浮腫関連症状の発生ならびに他のTh2媒介性疾患において主要な役割を担うIL-4およびIL-13を産生する。
【0103】
一実施態様においては、本明細書に記載の製剤は、別の治療法と組み合わせて投与される。
【0104】
本明細書で用いられる「組み合わせて」は、抗IL13R抗体が、別の治療の前に、同時に、または後に投与される場合を含むことが意図される。
【0105】
本明細書で用いられる「治療用量」は、例えば、特に用量を制限するような副作用を誘起することなく、疾患の症状または病態を改善する好適な治療レジメンにおいて用いられる場合、意図した治療効果の達成に好適な抗IL13R抗体(エブラサキマブなど)の量を指す。好適な治療用量は一般的に、例えば、治療法により達成される恩恵を考慮して副作用および毒性が許容できる、治療効果と忍容毒性との間のバランスである。
【0106】
一実施態様においては、本開示にしたがう製剤(これを含む製剤を含む)は、例えば1治療サイクルにおいてまたは維持療法として、1か月毎に投与される。
【0107】
本明細書との関連で、「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」と解釈される。特定の特徴/要素を含む本発明の実施態様はまた、関連する要素/特徴「から成る(consisting)」または「本質的に(同上)から成る(consisting essentially)」別の実施態様に拡張されることが意図される。技術的に適切であれば、本発明の複数の実施態様は、組み合わされてよい。
【0108】
本明細書の補正は、優先権書類に基づき得る。
【0109】
「背景」の節は、補正を行う場合の基盤として用い得る。
【0110】
特許および出願書類などの技術的参考文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0111】
本明細書において具体的かつ明示的に列挙される任意の実施態様は、単独でまたは1種類以上のさらなる実施態様と組み合わせで権利放棄の基盤を形成し得る。
【0112】
実施態様は、技術的に適切な場合組み合わされてよい。
【0113】
本明細書中の見出しは、本明細書を節に分けるために用いられ、本明細書で提供される開示の意義を解釈するために用いられると意図されない。
【0114】
本発明を、実例としてのみ以下の実施例によりさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1A】粘度測定に用いたKinexus ultra+レオメーターの概要図を示す。
【
図1B】エブラサキマブのバルク薬剤産物(BDP)の粘度のグラフを示す。
【
図2】製剤1~15の粘度を示す一連のグラフである。
【
図3】異なるArg-HClの濃度を含む製剤の粘度を比較するグラフを示す。
【
図4】150mMのArg-HCl+付加的添加剤を含む製剤の粘度を示すグラフを示す。
【
図5】製剤1~15の粘度を比較するグラフを示す。
【
図6】第1段階および第2段階のスクリーニングから得られたエブラサキマブBDPの粘度測定の比較を示す。
【
図7】製剤3および6の粘度を比較する一連のグラフを示す。
【
図8】粘度測定の再現性を確認するための製剤3の反復的な粘度測定のグラフを示す。
【
図9】製剤16~30の粘度を示す一連のグラフを示す。
【
図10】Arg-Glu含有製剤対Arg-HCl製剤の粘度のグラフを示す。
【
図11】150mMのArg-HCl+付加的添加剤を含む製剤の粘度を示すグラフを示す。
【
図12】異なるpHにおける150mMのArg-HClを含む製剤の粘度を比較するグラフを示す。
【
図13】20mM対50mMのHis緩衝性製剤の粘度を比較するグラフを示す。
【
図14】製剤16~30の粘度を比較するグラフを示す。
【
図15】製剤3および16との比較における製剤31および32についての粘度測定の一連のグラフを示す。
【
図16】製剤16~30(製剤40=200mg/ml、他の全製剤=175mg/ml)についての粘度測定の一連のグラフを示す。
【
図17】製剤33~45についての粘度測定の比較を示す。
【
図18】175mg/mlのエブラサキマブ製剤についての粘度測定のグラフを示す。
【
図19】150mg/mlのエブラサキマブ製剤についての粘度測定のグラフを示す。
【
図20】粘度に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。
【
図21】浸透圧に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。
【
図22】蛋白質濃度(soloVPE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図23】pHに関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図24】製剤の目視検査に基づく3か月間の安定性試験の結果の表を示す。
【
図25】濁度に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図26】色に関する3か月間の安定性試験の結果の表を示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図27A】マイクロフローイメージングを用いる肉眼不可視粒子(≧2μm)の含量(MFI)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図27B】肉眼不可視粒子(≧10μm)の含量(MFI)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図27C】肉眼不可視粒子(≧25μm)の含量(MFI)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図28】蛋白質の質量回復(HP-SEC)に関する3か月間の安定性試験の結果の表を示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図29A】凝集体含量%(HP-SEC)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図29B】単量体含量%(HP-SEC)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図29C】断片含量%(HP-SEC)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図29D】100mg/mlのエブラサキマブ製剤(HP-SEC)における凝集体、単量体、および断片の含量%の比較を示す概要表を示す。
【
図30A】非還元凝集体の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図30B】非還元単量体の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図30C】非還元無損傷蛋白質の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図30D】100mg/mlのエブラサキマブ製剤における無損傷蛋白質の含量%の比較の概要表を示す。
【
図31A】還元非グリコシル化重鎖(NGHC)の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図31B】還元重鎖(HC)の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図31C】還元軽鎖(LC)の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図31D】還元LC+HCの含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図31E】還元不純物の含量%(cGE)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。各製剤について左から右の順で:t0;t1m、05C;t1m、25C;t1m、40C;t3m、05C;t3m、25C;およびt3m、40C。
【
図31F】100mg/mlのエブラサキマブ製剤(cGE)における還元LC+HCの含量%およびNGHCの含量%の比較の概要表を示す。
【
図32A】酸性ピーク含量%(IEX)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。
【
図32B】天然ピーク含量%(IEX)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。
【
図32C】塩基性ピーク含量%(IEX)に関する3か月間の安定性試験の結果のグラフを示す。
【
図32D】100mg/mlのASLAN004製剤(IEX)における酸性ピーク、中性ピーク、および塩基性ピークの含量%の比較の概要表を示す。
【0116】
【0117】
実施例
実施例1:第1段階(第1)スクリーニング:製剤1~15
15種類の異なる製剤を、最初に作成した。
【0118】
【0119】
上記製剤を、以下のように作成した。
(1)エブラサキマブBDP試料を、約7.5mlへと2倍に濃縮し、7.5mlの製剤緩衝液で希釈した。
(2)製剤を、強制置換方式ピペットを用いてホモジナイズした。
(3)工程1および工程2を、8回反復した。
(4)第8希釈工程後に、各製剤を濃縮して、150mg/ml、175mg/ml、または200mg/mlの標的濃度を得た。
(5)各製剤を、滅菌濾過した。
(6)ポリソルベート-20を添加して、0.02%(w/w)の標的濃度を達成した。
(7)蛋白質濃度(Solo-VPE)、浸透圧、およびpHを、各製剤について測定した。
(8)バイアルを、製剤(1x1ml)で満たした。
(9)何らかの残りの試料を、2~8℃で保存した(CW18粘度/HP-SEC)。
【0120】
粘度試験
各製剤の粘度を、Kinexus ultra+レオメーターを用いて調べた。
図1Aを参照のこと。測定を、20℃にて1000rpm/秒で実施した。用いたコーンプレートは、以下であった:
・ 試料<10cP(mPas)に関して、40mm、角度1°、24μmギャップ
・ 試料>10cP(mPas)に関して、20mm、角度1°、24μmギャップ
【0121】
平均の動的粘度を、540~600秒の範囲の測定値から算出した。
【0122】
エブラサキマブ試料はおそらく、非ニュートン性流体として挙動し、適用される剪断速度は、一定である。したがって、本開示において、動的粘度および剪断粘度は同じとみなされ、これらの用語は、実施例において同義語として用いられる。
【0123】
図1Bは、ポリソルベート20を添加したエブラサキマブBDPについての粘度測定を示す。
【0124】
製剤1~15に関する粘度測定の結果を、
図2に示す。
【0125】
下の表2は、異なる標的濃度範囲における粘度によりランク付けされた製剤を示す。
【0126】
【0127】
上記の結果は、150mg/ml製剤の大部分および複数の175mg/ml製剤が標的粘度20~25cPに近いことを示している。
【0128】
図3は、Arg-HCl濃度と粘度の間の関連性を示す。これらの結果は、150mMのArg-HClで最小粘度に達すること、およびより高いArg-HCl濃度は、粘度をさらに低下させないことを示している。しかし、このことを、下記のようにさらに調べた。
【0129】
図4は、粘度に対する異なる添加剤の影響を示す。この結果は、Arg-GluがArg-HClと同様に粘度を低下させること、および150mMのArg-HClへの付加的添加剤の添加は粘度をさらに低下させなかったことを示す。このことを、下記のようにさらに調べた。
【0130】
図5は、粘度とASLAN004濃度の間の相関を示す。
【0131】
結果は、製剤3が3種類の抗体濃度にわたり最も良好な全体的粘度を有したことを示唆する。
【0132】
本明細書のデータは、完全なデータセットではなく、傾向を具体的に示すための例示的データである。
【0133】
実施例2:第2段階(第2)スクリーニング:製剤16~30
出発点として製剤3を用い、さらなる15製剤を、好適な200mg/mlのASLAN004製剤を開発するための試みにおいて作成した。下の表3を参照のこと。
【0134】
【0135】
上記製剤を、以下のように調製した:
(1)10mlのエブラサキマブBDP+5mlの製剤緩衝液を、アミコン15ユニット(MWCOが100kDa)中に入れた。
(2)製剤を、約7.5mlへと2倍に濃縮し、7.5mlの製剤緩衝液で希釈した。
(3)製剤を、強制置換方式ピペットを用いてホモジナイズした。
(4)工程2および3を、4回反復した。
(5)第5希釈工程後に、各製剤を濃縮して、150mg/ml、175mg/ml、または200mg/mlの標的濃度を得た。
(6)各製剤を、滅菌濾過した(0.8/0.2μmのPES)。
(7)ポリソルベート-20を添加して、0.02%(w/w)の標的濃度を達成した。
(8)蛋白質濃度(Solo-VPE)、浸透圧、およびpHを、各製剤について測定した。
(9)何らかの残りの試料を、2~8℃で保存した(粘度決定のため)。
【0136】
粘度試験
各製剤の粘度を、上記実施例1に記載の方法と同じ方法を用いて調べた。
【0137】
図6は、第1スクリーニング(実施例1)および第2スクリーニング(実施例2)からのエブラサキマブBDPについての粘度測定の比較を示す。図から分かるように、粘度値は非常に類似しており、両スクリーニングで用いたASLAN004 BDPが同程度であったことを示唆している。
【0138】
図7は、製剤3と製剤16の比較を示す。
図8が、製剤3の粘度測定値が再現的であったことを示すことに注意されたい。これらの結果は、測定法は信頼できること、および粘度測定値が製剤の評価に有用であることを実証した。
【0139】
製剤16~30についての粘度測定の結果を、
図9に示す。
【0140】
下の表4は、異なる標的濃度範囲における粘度によりランク付けされた製剤を示す。
【0141】
【0142】
結果は、全ての150mg/ml製剤および複数の175mg/ml製剤が標的粘度20cPに近かったことを示す。意外なことに、200mg/mlの製剤の多くは、予測粘度よりも大幅に低い粘度値を有した。高濃度のArg-HCl(250Mmなど)は、200mg/mlの製剤において粘度を大幅に低下させた。CaCl2(特に、50Mm)などの塩および/またはフェニルアラニン(特に、50~75mM)などのアミノ酸と組み合わせて高濃度のArg-HCl(250Mmなど)を含む200mg/mlの製剤は、約20cPの粘度を提供し得る。
【0143】
図10は、様々な濃度でのArg-HCl製剤およびArg-Glu製剤の粘度を示す。結果は、Arg-Glu製剤と比較してArg-HClについて粘度におけるより顕著な低下があったことを示唆す。特に、175mMから250mMにArg-HClを増加させることは、粘度を大幅に低下させるようであった。
【0144】
図11は、粘度に対する異なる添加剤の影響を示す。結果は、フェニルアラニンとCaCl2の添加が粘度低下を助けることを示す。
【0145】
図12は、150mMのArg-HCl製剤についての、粘度に対するpHの影響を示す。結果は、6.5から7にpHを上昇させること、または6.5から6.0にpHを低下させることは、粘度を改善しなかったことを示す。したがって、6.0~7.0の任意のpHが好適であると考えられる。
【0146】
図13は、His緩衝液の濃度を増加させることの影響を評価する実験の結果を示す。結果は、175mg/mlおよび200mg/mlのASLAN004製剤について、20mMから50mMにヒスチジン濃度を増加させることは、粘度を低下させることを示唆する。
【0147】
図14は、粘度とSLAN004濃度の間の相関を示す。
【0148】
結果は、製剤29が3種類の抗体濃度にわたり最良の全体的粘度を有したことを示唆する。
【0149】
実施例3:第3段階のスクリーニング
第3段階のスクリーニングの目的は、第1段階のスクリーニングと第2段階のスクリーニングの間で観察された粘度の差についてより良い理解を得ること、ならびに製剤ストレス試験のための製剤の粘度範囲を確認することであった。
【0150】
第1段階のスクリーニングと第2段階のスクリーニングに基づき、製剤3/16および29が、最良の全体的粘度を有した。さらなる2種類の製剤を、これらの製剤を基盤として調製した。
【0151】
【0152】
製剤を、以下のように調製した:
(1)20mlのASLAN004 BDP(100mg/ml)を、63ml(62mg/ml)に希釈した。
(2)緩衝液の交換を、8容の希釈体積で実施した(約24時間の実施時間)。
(3)製剤を、タンジェント流濾過(TFF)で166mg/mlに濃縮した。
(4)製剤を、アミコンユニットで208mg/mlに濃縮した。
(5)各製剤を、滅菌濾過した(0.8/0.2μmのPES)。
(6)最後に、ポリソルベート-20を、添加した。
(7)製剤32に関しては、100mMのArg-HClを、添加した。
【0153】
粘度試験
各製剤の粘度を、上記実施例1に記載の方法と同じ方法を用いて調べた。
【0154】
【0155】
【0156】
製剤29および32の粘度間で良好な一致があった。
【0157】
結果は、150mMから250mMへのアルギニン濃度の増加が、200mg/mlのASLAN004の粘度に大幅で一貫性のある改善をもたらしたことを示唆する。
【0158】
実施例4:第4段階のスクリーニング
出発点として製剤29を用いて、さらなる13種類の製剤を、175mg/mlの製剤をさらに改良するために作成した。下の表6を参照のこと。
【0159】
【0160】
製剤を、上記の第2スクリーニング(実施例2)に記載の方法と同じ方法を用いて、調製した。製剤41~45を、製剤33~40の2週間後に調製した。
【0161】
粘度試験
各製剤の粘度を、上記実施例1に記載の方法と同じ方法を用いて調べた。
【0162】
製剤33~45に関する粘度測定の結果を、
図16に示す。
【0163】
下の表7は、粘度によりランク付けした製剤を示す。
【0164】
【0165】
図17は、粘度とエブラサキマブ濃度の間の相関を示す。フェニルアラニン製剤は、より低い粘度値で密集する傾向を示した。このことは、製剤へのフェニルアラニンの添加が、粘度低下を支援することを示唆する。
【0166】
実施例5:製剤選択
第2~第4スクリーニングからの粘度の結果を、安定性試験に進める最良の製剤を決定するために比較した。
【0167】
図18は、175mg/mlのエブラサキマブ製剤についての第2、第3、および第4スクリーニングの粘度測定の概要を示す。結果は、Arg-HClおよびフェニルアラニンを含んだ、第4スクリーニングにおいて試験した製剤が、最低の粘度を有したことを示唆する;すなわち製剤35、38、39および41。
【0168】
図19は、150mg/mlのエブラサキマブ製剤についての第2および第3スクリーニングの粘度測定の概要を示す。結果は、製剤21および29が最低粘度を有したことを示唆する。
【0169】
これらの結果に基づいて、表8に示す製剤の最終リストを選択した。
【0170】
【0171】
これらの製剤を作成し、安定性/ストレス試験研究に進める。
【0172】
実施例6:安定性試験 3か月の暫定的結果
表8の6種類の製剤を、安定性試験研究に進め、それにより製剤を、2~8℃、25℃または40℃にて保存した。3か月間の暫定的結果を、
図20~32に示す。
【0173】
図20は、6種類の製剤に関する粘度の結果を示す。結果は、粘度が3か月後に僅かに増加したことを示唆する。特に、5℃および25℃で保存した試料について粘度は同程度であったが、より顕著な粘度における増加が、40℃で保存した試料で観察された。
【0174】
図21は、6種類の製剤に関する浸透圧の結果を示す。認められた差異は、予想される方法の変動内であった。
【0175】
図22は、6種類の製剤に関する蛋白質濃度の結果を示す。0日目試料と比較して3か月後の試料で認められる明確な変化はなかった。
【0176】
図23は、6種類の製剤に関するpHの結果を示す。認められた差異は、予想される方法の変動内であった。
【0177】
図24は、6種類の製剤の目視検査の結果を示す。一般的に、製剤は、40℃におけるF49を例外として、乳白色の外観を呈し、粒子は、可視できる限界であった。このことは、粒子形成が最小限であったことを示唆する。
【0178】
図25は、6種類の製剤に関する濁度の結果を示す。結果は、製剤の濁度が0日目、1か月、および3か月の試料間で同程度であったことを示唆する。最も低い濁度値が、25℃で保存した試料について観察された。
【0179】
図26は、6種類の製剤に関する色変化の結果を示す。40℃におけるF49を例外として、残りの製剤は、3か月の保存後に依然として褐色スペクトル(B5)内であった。着色の差異は、2~8℃または25℃で1か月間および3か月間保存した試料の間で認められなかった。反対に、40℃での1か月間の保存と比較して、40℃で3か月間の保存後の着色に僅かな変化が認められた。
【0180】
図27A~27Cは、マイクロフローイメージング(MFI)を用いて実施した肉眼不可視粒子の含量の実験の結果を示す。3か月後にサイズ≧2μmの粒子の含量増加が、全試料、特に40℃で保存した試料において認められた。
【0181】
図28および29A~29Dは、HP-SECを用いて実施した実験の結果を示す。用いた機器およびパラメータの詳細は、以下である:
機器:Dionex Ultimate 3000;カラム:Waters Xbridge protein BEH SEC、7.8 x 300mm
検出:280nmでのUV;試料調製:pH6.5にて20mMのヒスチジン-HCl中で1mg/ml(中間体希釈、50mg/ml)に希釈;測定:n=1
【0182】
図28は、40℃で3か月間保存した全ての製剤の蛋白質量回収%が、5℃または25℃で保存した製剤に比較して僅かに低いことを示唆する。しかしながら、製剤間の有意な差であるようには見えなかった。
図29A~29Cの結果は、6種類の製剤にわたる、同様な単量体含量の低下、高分子量および断片の含量の増加を示す。しかしながら、単量体の消失は相対的に低く、5℃で3か月後にほとんど消失せず、25℃で3か月後に≦1%消失、40℃で3か月後に≦4%消失した。より高い凝集体の含量が、他の製剤と比較してF49で観察された。
図29Dは、製剤F49に関してSECを用いて測定した無傷の蛋白質%濃度が、100mg/mlのエブラサキマブ製剤のものと非常に類似していたことを示す。
【0183】
図30A~30Dは、非還元試料に関してキャピラリーゲル電気泳動を用いて実施した実験(cGE)の結果を示す。用いた機器およびパラメータの詳細は、以下である:
機器:30.2cmの露出したフューズドシリカ毛細管を備えるSCIEX PA 800 plus。試料調製:2段階工程のプロセス(標的濃度、5mg/ml)での20mMのヒスチジンによる試料の希釈。測定:試料を異なる日の2回の実施に分割(精度内で、2回測定の日間再現性=0.8%)、n=2。
【0184】
図30A~30Cは、5℃で3か月後に無傷の蛋白質はほとんど消失せず、主に断片化に起因して、25℃で3か月後に3%未満の消失、および40℃で3か月後に15%未満の消失があったことを示唆する。
図30Dは、製剤F49に関してcGEを用いて測定した無傷の蛋白質%濃度が、100mg/mlのエブラサキマブ製剤のものと非常に類似していたことを示す。
【0185】
図31A~31Fは、還元試料に関してキャピラリーゲル電気泳動を用いて実施した実験(cGE)の結果を示す。
図31A~31Dは、軽鎖(LC)の相対含量に有意な変化がなかったことを示す。25℃および40℃で3か月後の重鎖(HC)含量には若干の減少があった。LC含量およびHC含量の両方を同時に考慮に入れると(
図31D)、結果は、LC+HC含量が5℃で3か月後に≧99%であり、25℃で3か月後に≧98%であったことを示す。
図31Eは、1か月の保存後および3か月の保存後の不純物レベルを示す。これらの結果から、本発明者らは、3か月後の相対的HC含量の減少は部分的には、還元試料の脱グリコシル化、およびまた時間経過に伴う不純物レベルの増加に起因すると考えている。この傾向は、各種の製剤にわたり認められた。
【0186】
図31Fは、製剤F49に関して測定したLC+HC%およびNGHC%が、100mg/mlのエブラサキマブ製剤のものと非常に類似していたことを示す。
【0187】
図32A~32Dは、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)実験の結果を示す。用いた機器およびパラメータの詳細は、以下である:
機器:Vanquish UHPLC;カラム:ProPac WCX-10、4.0 x250mm、10μm;検出:280nmでのUV;試料調製:20mMのMES(pH7.0)中で1mg/ml(中間希釈、50mg/ml)に試料希釈;測定:n=2
【0188】
図32A~32Cは、3か月間の保存にわたって全製剤について類似の中性種消失、および類似の酸性種増加および塩基性種増加があったことを示す。5℃で3か月後に中性種の消失はほとんど認められず、25℃で3か月後に中性種消失は10%未満であり、かつ40℃で3か月後には中性種消失は45%未満であった。
図32Dは、製剤F49について測定した酸性種含量、中性種含量、および塩基性種含量が、100mg/mlのエブラサキマブ製剤のものに非常に類似していたことを実証する。
【0189】
まとめると、3か月間の暫定的安定性データは、非常に有望であった;データは、試験した全ての6種類の製剤が3か月の時点で良好な安定性を有したことを示唆する。この結果に基づき、製剤F46を、先に進める第1の製剤として選択した。
【配列表】
【国際調査報告】