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  • 特表-均一系免疫アッセイ法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】均一系免疫アッセイ法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20241112BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241112BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20241112BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 16/40 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/53 S
G01N33/543 581A
G01N33/545 B
G01N33/53 D
C07K16/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525243
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022080215
(87)【国際公開番号】W WO2023073179
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21306520.4
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22305100.4
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517151969
【氏名又は名称】ベルジアン ボリション エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーク エドワード エクルストン
(72)【発明者】
【氏名】レミ ラボーフ
【テーマコード(参考)】
2G045
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA80
2G045FB03
2G045FB12
2G045GC10
2G045GC11
2G045GC15
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、均一系免疫アッセイ(HIA)法を使用して体液試料中のクロマチン断片の濃度を検出することに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液試料中の細胞外トラップ(ET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する方法であって、均一系免疫アッセイ(HIA)法を使用して該体液試料を分析すること、及びその分析から得た結果を使用して、該体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記HIA法が:
(a)前記体液試料を1以上の抗体の溶液と混合する工程であって、該抗体がET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームと特異的に結合することが可能であり、かつ結合時に凝集又は沈殿を引き起こす、前記工程;並びに
(b)混合物中での凝集又は沈殿の程度を測定する工程、を含み、
工程(b)における測定を該体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定するために使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1以上の抗体が、抗体でコーティングされた粒子の懸濁液中に存在する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記1以上の抗体が、ラテックスビーズ又はナノ粒子の表面にコンジュゲートされている、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記凝集又は沈殿の程度が、前記混合物の吸光度、透過率、反射率、光散乱、蛍光又はシンチレーションによって測定される、請求項2~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記1以上の抗体が、モノクローナル又はポリクローナル抗体である、請求項2~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
単一の抗体インキュベーション工程を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記HIA法が免疫比濁法又は免疫比朧法である、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記体液試料が血液、血清又は血漿である、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記血液、血清又は血漿試料が敗血症又は敗血症性ショックに罹患している、又は罹患する疑いのある対象から取得される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記血液、血清又は血漿試料が血液癌に罹患している、又は罹患する疑いのある対象から取得される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記ETが好中球細胞外トラップ(NET)を含む、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記クロマチン断片及び/又はヌクレオソームが細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴を含み、かつ前記1以上の抗体が、該細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴と特異的に結合することが可能である、請求項2~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記エピジェネティックな特徴がヒストンアイソフォーム、例えばヒストンH3アイソフォーム、特にH3.1である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記エピジェネティックな特徴がヒストン翻訳後修飾(PTM)、例えばコアヌクレオソームのヒストンPTM、特にヒストンH3又はH4 PTMである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記ヒストンPTMはシトルリン化又はリボシル化から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記1以上の抗体が、好中球細胞外トラップ(NET)関連タンパク質と特異的に結合することが可能である、請求項2~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記NET関連タンパク質が、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及び好中球エラスターゼ(NE)から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
対象における疾患の進行をモニタリングする方法であって:
(i)請求項1~18のいずれか1項記載の方法を使用して該対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;
(ii)1以上の時機に工程(i)を繰り返す工程;並びに
(iii)ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度の変化を使用して該対象における該疾患の進行をモニタリングする工程、を含む、前記方法。
【請求項20】
感染症に罹患している対象に有害転帰のリスクを割り当てる方法であって:
(i)請求項1~18のいずれか1項記載の方法を使用して該対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;並びに
(ii)検出されたET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を使用して、前記対象に有害転帰の可能性を割り当てる工程、を含み、
有害転帰の可能性が高いと特定された対象を、医学的介入に割り当てる、前記方法。
【請求項21】
前記対象が重症管理室にいる、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
前記対象が敗血症又は敗血症性ショックに罹患している、請求項19~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記対象が血液癌に罹患している、請求項19~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記対象がヒト又は動物対象である、請求項19~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記対象の前記体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を1以上の対照と比較することをさらに含む、請求項19~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度が測定のパネルの1つとして検出され、又は測定される、請求項19~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
敗血症又は敗血症性ショックの医学的処置を必要とする対象を検出する方法であって:
(i)請求項1~18のいずれか1項記載の方法を使用して該対象から取得された体液試料中のET及び/又はクロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;並びに
(ii)ET及び/又はクロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を該対象が敗血症又は敗血症性ショックの医学的処置を必要とすることの指標として使用する工程、を含む、前記方法。
【請求項28】
体液試料中のET及び/又はクロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を測定するためのキットであって:
ET及び/又はクロマチン断片及び/又はヌクレオソームと特異的に結合することが可能である1以上の抗体を含む試薬溶液、並びに抗体結合時に引き起こされる凝集又は沈殿の程度を測定してET及び/又はクロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定するための手段における使用に好適である容器を含み、かつ任意に1以上の緩衝溶液を含む、前記キット。
【請求項29】
敗血症若しくは敗血症性ショックにかかりやすい対象を特定するための、又は敗血症若しくは敗血症性ショックを有する対象をモニタリングするための、請求項28記載のキットの使用。
【請求項30】
癌、特に血液癌に罹患している対象を特定するための、又は癌、特に血液癌を有する対象をモニタリングするための、請求項28記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、細胞外クロマチン断片を測定するための均一系免疫アッセイ法と共に、そのような方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
感染性又は無菌性敗血症及び敗血症性ショックによる急性臓器不全は主たる死因となっている。敗血症は重度の臓器機能不全により特徴づけられる予防可能な、生命を脅かす状態である。世界保健機関により発行された敗血症の疫学及び負担に関する世界的報告(ISBN:978-92-4-001078-9)によれば、2017年に4900万の個人が敗血症に罹患しており、敗血症は世界中でおよそ1100万人の潜在的に避けられたはずの死と関連付けられ、これは全世界の全ての死因のおよそ20%を占めると推定された。敗血症の全年齢群における発生率及び死亡率に最も大きく寄与しているのは、それぞれ下痢疾患及び下部呼吸器感染症であった。全ての敗血症関連死のほぼ半数は創傷及び非伝染性の疾患の合併症であり、全世界の全ての敗血症症例の41%(2000万人)は5歳未満の子どもの間で発生していた。
【0003】
ヌクレオソームは細胞死の際のクロマチンの断片化の後に循環中に放出される。多くの感染症は様々な機構(例えば細胞への結合及び侵入、エンドソームのTLR3の活性化並びに遺伝子発現)を通じて細胞死を開始させ、それにより血液中の循環ヌクレオソームの数を増加させる(Danthiらの文献、Annu. Rev. Virol. (2016) 3: 533-53)。特に、ネトーシス(NETosis)は、好中球が細菌及び他の病原体を捕獲し、死滅させてそれらが広がることを防ぐことができる好中球細胞外トラップ(NET)を放出する、好中球細胞死の一形態である。最近の研究から、細胞外ヌクレオソーム及びNETが敗血症を含むいくつかの疾患の進行と関連付けられることが示されている。最も記述されている細胞外トラップ(ET)は好中球により生産されたものであるが、他の免疫細胞もETを生産する。
【0004】
NETについての現在のアッセイはミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好中球エラスターゼ(NE)、細胞外遊離DNA(cfDNA)及びヌクレオソームを含む。しかしながら、これらのいずれも臨床において使用されていない。その理由には、全身炎症反応症候群又は敗血症を有する患者は多臓器不全を発症し、かつ急速に、又は予想外に悪化し得ること、及びその臨床的処置に関する判定は適時になされなければならないことが挙げられる。現在利用可能な測定方法は実施に数時間を要する手作業の免疫アッセイキットである。さらに、これらのアッセイはリアルタイムで実施されるのではなく、血液試料の収集から最大数日後にアッセイバッチで実施される。そのため、NETのレベルは敗血症のバイオマーカーとして使用するための潜在性を有することが示されているものの、現状では短い所要時間で結果をもたらす低コストな患者の近くで行われる方法及びリアルタイムで臨床判定を下すための使用についてのヌクレオソーム又は他のクロマチン断片のアッセイ方法は報告されていない。
【0005】
以前、Holdenriederらの文献、Int. J. Cancer(2001) 95: 114-120に、良性及び悪性疾患を有する患者の血清試料中のヌクレオソームのレベルを検出することが記載されている。そのヒストン修飾、ヒストンバリアント、DNA修飾、及び付加物含有量に関する循環細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな組成も、癌の血液ベースのバイオマーカーとして研究されている。WO 2005/019826号、WO 2013/030577号、WO 2013/030579号、及びWO 2013/084002号を参照されたい。循環細胞外遊離ヌクレオソームのレベルはヒト(WO2021110776)及び他の動物(Dolanらの文献、BMC Veterinary Research (2021) 17:276及びWilson-Roblesらの文献、BMC Veterinary Research (2021) 17:231)の両方の血液癌において特に高度に上昇する。
【0006】
患者を診断及びモニタリングし、かつリアルタイムで治療を導くために必要な所要時間の短い検査を提供することは、当該技術分野において依然として要望されている。
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
第1の態様により、体液試料中の細胞外トラップ(ET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する方法であって、均一系免疫アッセイ(HIA)法を使用して該体液試料を分析すること、及びその分析から得た結果を使用して、該体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定することを含む、前記方法を提供する。
【0008】
本発明のさらなる態様により、対象における疾患の進行をモニタリングする方法であって:
(i)本明細書で定義する方法を使用して該対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;
(ii)1以上の時機に工程(i)を繰り返す工程;並びに
(iii)ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度の任意の変化を使用して該対象における該疾患の進行をモニタリングする工程、を含む、前記方法を提供する。
【0009】
本発明のさらなる態様により、感染症に罹患している対象に有害転帰のリスクを割り当てる方法であって:
(i)本明細書で定義する方法を使用して該対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;並びに
(ii)検出されたET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を使用して、前記対象に有害転帰の可能性を割り当てる工程、を含み、
有害転帰の可能性が高いと特定された対象を、医学的介入に割り当てる、前記方法を提供する。
【0010】
本発明のさらなる態様により、敗血症又は敗血症性ショックの医学的処置を必要とする対象を検出する方法であって:
(i)本明細書で定義する方法を使用して該対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;並びに
(ii)ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を該対象が敗血症又は敗血症性ショックの医学的処置を必要とすることの指標として使用する工程、を含む、前記方法を提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様により、体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を測定するためのキットであって:
ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームと特異的に結合することが可能である1以上の抗体を含む試薬溶液、並びに抗体結合時に引き起こされる凝集又は沈殿の程度を測定してET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定するための手段における使用に好適である容器を含み、かつ任意に1以上の緩衝溶液を含む、前記キットを提供する。
【0012】
本発明のさらなる態様により、敗血症若しくは敗血症性ショックにかかりやすい対象を特定するための、又は敗血症若しくは敗血症性ショックを有する対象をモニタリングするための、本明細書で定義するキットの使用を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様により、癌、特に血液癌を有する対象を特定するための、又は癌、特に血液癌を有する対象をモニタリングするための、本明細書で定義するキットの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
(図面の簡単な説明)
図1】実施例1に記載の方法を使用して作成した、HIAヌクレオソーム標準曲線。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
急性状態、例えば敗血症を診断し、かつモニタリングするための有効で迅速な検査が要望されている。当該技術分野の現在の方法では一般に高度に分析的に特異的であり(それは、数千もの混合物の中から単一の被験物質を検出することができる)、かつ極度に分析的に高感度である(それは、わずかな量で存在するタンパク質を検出し、かつ定量することができる)サンドイッチ免疫アッセイ法を使用して血液ベースのバイオマーカーを測定している。しかしながら、実施に数時間を要する手作業の免疫アッセイ法のみが商業的に利用可能である。業界最大手はRoche社であり、完了するのに最大2作業日かかるRoche Cell Death ELISA及び数時間かかるRoche Cell Death ELISAPLUSを提供している。さらに、アッセイはバッチで実施しなければならず、1つのアッセイキットはおよそ40試料に対して十分である。従って試料はリアルタイムで分析されるのではなく、収集され、凍結され、かつ分析バッチのための十分な試料が蓄積される時まで保存される。手作業の免疫アッセイ法は高価であり、リアルタイムで迅速に実施することができず、かつ患者の近くで行うことができない。
【0016】
大部分の免疫アッセイは不均一系であり、分離工程を必要とする。例えば、分離は抗原に結合した抗体を遊離抗体から分離すること、又は抗体に結合した抗原を遊離抗原から分離することを含み得る。これらのアッセイは典型的に高感度であるが、上記の通り時間がかかる。
【0017】
正常なヒト及び動物でのレベルは低いため、分析の感度は循環中のクロマチン断片の測定のために使用するアッセイに重要であると考えられた。一般に、最も正常なヒトでのレベルは低く、中央値はおよそ30 ng/mlであり、一部の対象については10 ng/ml未満のレベルである。従って、均一系免疫アッセイ(HIA)などの簡素なアッセイは健常対象又は軽度にヌクレオソームレベルが上昇した対象において正確かつ再現的に臨床クロマチン断片レベルを測定することができないと考えられていた。
【0018】
(全身炎症反応症候群、敗血症及び多臓器不全)
最近の研究から、全身炎症反応症候群(SIRS)又は敗血症などの急性状態を有する患者においてNET及びクロマチン断片のレベルが顕著に上昇することが認められたことが示されている。結果は、(NET由来の)ヌクレオソームについて250 ng/mlのアッセイ感度が治療に対する患者反応を有効にモニタリングするのに十分であることを示している(Stanford S.の文献、07/17/21; 326363; PB0152 ISTH Academy)。同様に、1 μg/mlのアッセイ感度は、臓器サポートを必要とし、又は臓器サポートの必要性を示す可能性が高い(又は多臓器不全を有するか、若しくは発症し得る)患者を有効に識別するのに十分である(Rea C.の文献、07/17/21; 326469; PB0268 ISTH Academy)。これらのレベルはHIA法の測定可能範囲内である。本発明者らは、HIA技術を使用してリアルタイムで臨床判定を下すために使用することができる低コストで迅速な患者の近くで行われる方法を提供することを提案する。
【0019】
従って、本発明の第1の態様により、体液試料中の細胞外トラップ(ET)、特に好中球細胞外トラップ(NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する方法であって、均一系免疫アッセイ法を使用して該体液試料を分析すること、及びその分析から得た結果を使用して、該体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定することを含む、前記方法を提供する。
【0020】
本明細書では生体試料中のクロマチン断片の含有量を決定するために、生体試料中の細胞外クロマチン断片及び検出抗体の溶液を凝集反応に付して、結果として得る凝集混合物の光学的特性(例えば照射によるその吸光度又はその散乱光)の変化を分析する、免疫アッセイ法を記述する。特に、免疫アッセイは、結果として得る光学的特性が、未結合の試薬を分離することを必要とせずに凝集/沈殿混合物から直接測定される、均一系免疫アッセイである。従って、特許請求の範囲に記載されたHIA法は、検査した体液試料からの(i)抗体と結合されたNET若しくはクロマチン断片(すなわち、被験物質)、又は(ii)未結合抗体の分離を伴わない。
【0021】
本明細書における「均一系免疫アッセイ」又は「HIA」への言及は、結合した試薬と未結合の試薬を分離する工程を必要とせずに被験物質を検出する免疫アッセイを指す。従って、免疫アッセイは1つの反応混合物中で実施することができる簡素な方法である。すなわち、本方法は単一の抗体インキュベーション工程を使用して実施することができる。この簡素さにより、完了させるのにわずか数分しか要さない迅速なアッセイ及び容易な自動化が可能となる。使用する計装は中央研究室に置いても、患者の近くの位置に置いてもよい。不均一系免疫アッセイについては詳細に論じないが、測定のために結合した試薬を未結合の試薬から分離する分離工程の使用を必要とする。
【0022】
一実施態様において、HIA法は:
(a)前記体液試料を1以上の抗体の溶液と混合する工程であって、該抗体がET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームと特異的に結合することが可能であり、かつ結合時に凝集又は沈殿を引き起こす、前記工程;並びに
(b)混合物中での凝集又は沈殿の程度を測定する工程、を含み、
工程(b)における測定を該体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定するために使用する。
【0023】
HIAの一例は免疫比濁法である。免疫比濁法は特定波長での反応混合物の光学的透過率の変化を測定する均一系で、ラベルフリーの免疫アッセイ法である。別のアッセイ法、免疫比朧法は透過率ではなく光散乱の変化を測定する。両方法は抗体の被験物質との特異的結合を使用し、ここで結合は、散乱光の増加として又は透過光の減少として測定され得る試料中の入射光の散乱の増加を引き起こす凝集反応をもたらす。続いて光散乱の変化を被験物質濃度が既知の標準/対照試料により生じた変化と比較する。
【0024】
例えば、被験物質を含む患者標本を検出抗体の溶液と組み合わせると、被験物質及び抗体の複合体が形成される。光がこの懸濁液を通って導かれると、光の一部が透過し、光学デバイス(例えば光学レンズシステムを介した光ダイオード)上に集束する。光学デバイスにより観察された透過光の量は患者標本中の被験物質濃度に反比例する。従って、高濃度の被験物質を含む標本は、低濃度の被験物質を含む標本よりも少ない光を透過させる。
【0025】
従来のHIA試薬は反応緩衝液及び抗体の溶液からなる。最適な条件下で、抗体は分析する試料中の被験物質と3次元格子を形成する。代替の方法は、凝集反応の粒子増強を使用する。これは通常、より強いシグナルを得るために、抗体をビーズ(例えばラテックスビーズ、ナノ粒子又はコロイド状金)の表面に吸着させることを伴う。従って、一実施態様において、1以上の抗体が抗体でコーティングされた粒子の懸濁液中に存在する。1以上の抗体を粒子、例えばラテックスビーズ又はナノ粒子の表面にコンジュゲートすることができる。抗体はビーズ又は粒子に直接連結させてもよく、あるいは親和性リンカー又はタグ、例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はHis(例えば、ヘキサ-His)タグの使用を通じて間接的に連結させてもよい。
【0026】
本発明の方法は一般に光学的特性を使用して凝集又は沈殿の程度を測定した。従って、一実施態様において、凝集又は沈殿の程度は、混合物の吸光度、透過率、反射率、光散乱、蛍光又はシンチレーションによって測定する。
【0027】
免疫アッセイ法における使用に好適な抗体は、当該技術分野で公知である。そのような抗体は、被験物質、すなわちNET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームと特異的に結合することが可能である。一実施態様において、1以上の抗体はモノクローナル抗体である。別の実施態様において、1以上の抗体はポリクローナル抗体である。
【0028】
当業者には、本明細書で使用する「抗体」、「結合剤」、又は「リガンド」という用語は、限定するものでないものの、特定の分子又は実体と結合することができる任意の結合剤を含むことを意図するものであること、及び任意の好適な結合剤を本発明の方法において使用することができることは、明らかであろう。
【0029】
試薬は、所望の標的との特異的結合が可能な1以上のリガンド又は結合剤、例えば、天然化合物又は化学合成化合物を含み得る。リガンド又は結合剤は、所望の標的との特異的結合が可能なペプチド、抗体、若しくはそれらの断片、又はプラスチック抗体などの合成リガンド、又はアプタマー、又はオリゴヌクレオチドを含み得る。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又はそれらの断片であり得る。抗体断片を使用する場合、それはバイオマーカーと結合する能力を保持する結果、(本発明に従い)バイオマーカーを検出することができることは理解されよう。
【0030】
一実施態様において、本明細書に記載する方法を使用して、細胞外トラップの濃度を測定する。特に、ETは好中球細胞外トラップ(NET)であり得る。NETは多くの体液試料で検出されており(例えば、Saffarzadehらの文献、(2012) PLoS ONE 7(2): e32366を参照されたい)、かつNETを含む任意の体液を本明細書に記載する方法を使用してNET又はクロマチン断片について検査することができる。本明細書に記載する方法及び使用は、体液試料、特に血液、血清、又は血漿試料で試験することができる。好ましくは、血漿試料を使用する。血漿試料は、1以上の抗凝固剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヘパリン又はクエン酸ナトリウム、特にEDTAを含む収集チューブに収集することができる。
【0031】
一実施態様において、本明細書で記載する方法を使用して、クロマチン断片の濃度を測定する。一実施態様において、本発明の方法により測定されるクロマチン断片は、1以上のヌクレオソームを含む。一実施態様において、本発明の方法により測定されるクロマチン断片及び/又はヌクレオソームは、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴を含む。従って、1以上の抗体は、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴と特異的に結合することが可能であり得る。
【0032】
ヌクレオソームはクロマチン構造の基本単位であり、8つの高度に保存されたコアヒストン(ヒストンH2A、H2B、H3、及びH4の各々の対を含む)のタンパク質複合体からなる。この複合体の周りには、およそ146塩基対のDNAが巻きついている。別のヒストン、H1又はH5はリンカーとして作用し、クロマチンコンパクションに関与する。DNAは、しばしば「ひもでつながったビーズ」のようであると言われる構造の中で連続したヌクレオソームの周りに巻きつき、これはオープンな、又はユークロマチンの基本構造を形成する。凝集クロマチン又はヘテロクロマチン中で、このひもはコイル及びスーパーコイルを形成し、閉鎖した複雑な構造となる(Herranz及びEstellerの文献、Methods Mol. Biol. (2007)361:25-62)。
【0033】
「ヌクレオソーム」への言及は、体液試料中で検出される場合、「細胞外遊離ヌクレオソーム」を指し得る。本文書の全体を通じ、細胞外遊離ヌクレオソームという用語は、1以上のヌクレオソームを含む任意の細胞外遊離クロマチン断片を含むことを意図していることは理解されよう。細胞外遊離ヌクレオソームはモノヌクレオソーム、オリゴヌクレオソーム、より大きなクロマチン断片を構成する部分若しくはNETを構成する部分又はそれらの混合物であり得る。
【0034】
細胞外遊離ヌクレオソームは、その構成要素との結合により検出され得ることは、理解されよう。本明細書で使用する「その構成要素」という用語は、ヌクレオソームの一部を指し、すなわちヌクレオソームの全体が検出される必要はない。細胞外遊離ヌクレオソームの構成要素は:ヒストンタンパク質(すなわち、ヒストンH1、H2A、H2B、H3、若しくはH4)、ヒストン翻訳後修飾、ヒストンバリアント若しくはアイソフォーム、ヌクレオソームに結合したタンパク質(すなわち、ヌクレオソーム-タンパク質付加物)、ヌクレオソームに会合したDNA断片、及び/又はヌクレオソームに会合した修飾ヌクレオチドからなる群から選択され得る。例えば、その構成要素は、ヒストン(アイソフォーム)H3.1又はヒストンH1又はDNAであり得る。
【0035】
本発明の方法及び使用では、(細胞外遊離)ヌクレオソーム自体のレベルを測定し得る。従って、一実施態様において、本明細書に記載の方法は、ヌクレオソーム、すなわちヌクレオソーム自体の濃度を測定するために使用する。「ヌクレオソーム自体」への言及は、ヌクレオソームに何らかのエピジェネティックな特徴が含まれている場合でも、含まれていない場合でも、試料中に存在するヌクレオソームの総レベル又は総濃度を指す。ヌクレオソームの総レベルの検出は、典型的に全てのヌクレオソームに共通のヒストンタンパク質、例えばヒストンH4の検出を伴う。従って、ヌクレオソーム自体は、コアヒストンタンパク質、例えばヒストンH4を検出することにより測定することができる。本明細書に記載の通り、ヒストンタンパク質は真核生物細胞においてDNAを小さくまとめるために使用される、ヌクレオソームとして知られる構造単位を形成する。ヌクレオソームはDNAも含み、従ってヌクレオソーム及びETはDNAへの結合剤、例えば抗DNA抗体を、単独で、又はET上に見出される他のエピトープへの結合剤との組合わせで使用して、本発明の方法によって測定され得る。
【0036】
循環ヌクレオソームは、タンパク質-核酸複合体の均質な群ではない。むしろ、それらは細胞死に際するクロマチンの消化から生じるクロマチン断片の不均質な群であり、特定のヒストンアイソフォーム(又はバリアント)、翻訳後のヒストン修飾、ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチド、及びタンパク質付加物を含む極めて多様なエピジェネティック構造を含む。当業者には、ヌクレオソームレベルの上昇が、特定のヒストンアイソフォーム(又はバリアント)を含むヌクレオソーム、特定の翻訳後ヒストン修飾を含むヌクレオソーム、特定のヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドを含むヌクレオソーム、及び特定のタンパク質付加物を含むヌクレオソームを含む、特定のエピジェネティックシグナルを含む、一部の循環ヌクレオソームのサブセットの上昇に関連することは明らかであろう。
【0037】
本発明の方法は、細胞外遊離ヌクレオソーム自体及び/又は細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴のレベルを検出し得る。「エピジェネティックシグナル構造」及び「エピジェネティックな特徴」という用語は、本明細書において互換的に使用されることは、理解されよう。これらの用語はヌクレオソームの検出可能な特定の特徴を指す。一実施態様において、ヌクレオチソームのエピジェネティックな特徴は:翻訳後ヒストン修飾、ヒストンアイソフォーム、修飾ヌクレオチド、及び/又はヌクレオソーム-タンパク質付加物中のヌクレオソームに結合するタンパク質からなる群から選択される。
【0038】
一実施態様において、ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴は、1以上のヒストンバリアント又はアイソフォームを含む。細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴は、ヒストンアイソフォーム、例えばコアヌクレオソームのヒストンアイソフォーム、特にヒストンH3アイソフォームであり得る。「ヒストンバリアント」及び「ヒストンアイソフォーム」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。また、ヌクレオソームの構造は、異なる遺伝子又はスプライシング産物であり、かつ異なるアミノ酸配列を有する代替のヒストンアイソフォーム又はバリアントを含むことにより、異なり得る。多くのヒストンアイソフォームが、当該技術分野において公知である。ヒストンバリアントは、個別の種類に細分されるいくつかのファミリーに分類され得る。多数のヒストンバリアントのヌクレオチド配列が公知であり、例えば米国立ヒトゲノム研究所NHGRIヒストンデータベース(Marino-Ramirezらの文献、「ヒストンデータベース:ヒストン及びヒストンフォールド含有タンパク質の統合リソース(The Histone Database: an integrated resource for histones and histone fold-containing proteins.)」Database Vol.2011.及びhttp://genome.nhgri.nih.gov/histones/complete.shtml)、GenBank (NIH遺伝子配列)データベース、EMBLヌクレオチド配列データベース、及び日本DNAデータバンク(DDBJ)において公開され、入手可能である。例えば、ヒストンH2のバリアントには、H2A1、H2A2、mH2A1、mH2A2、H2AX、H2AZがある。別の例では、H3のヒストンアイソフォームには、H3.1、H3.2、H3.3及びH3tがある。一実施態様において、ヒストンアイソフォームはH3.1である。
【0039】
ヌクレオソームの構造は、ヒストンタンパク質の翻訳後修飾(PTM)によって異なり得る。ヒストンタンパク質のPTMは典型的にコアヒストンの尾部で起こり、一般的な修飾には、リジン残基のアセチル化、メチル化、又はユビキチン化、並びにアルギニン残基のメチル化若しくはシトルリン化及びセリン残基のリン酸化など多数がある。多くのヒストン修飾が当該技術分野で公知であり、その数は新たな修飾が特定されるにつれ、増加している(Zhao及びGarciaの文献, 2015 Cold Spring Harb Perspect Biol, 7: a025064)。従って、一実施態様において、細胞外遊離ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴は、ヒストン翻訳後修飾(PTM)であり得る。ヒストンPTMは、コアヌクレオソーム、例えばH3、H2A、H2B、又はH4、特に、H3、H2A、又はH2BのヒストンPTMであり得る。特に、ヒストンPTMはヒストンH3 PTMである。そのようなPTMの例は、WO 2005/019826に記載されている。
【0040】
例えば、翻訳後修飾にはアセチル化、モノ-、ジ-、若しくはトリ-メチル化であり得るメチル化、リン酸化、リボシル化、シトルリン化、ユビキチン化、ヒドロキシル化、グリコシル化、ニトロシル化、グルタミン化、及び/又は異性化があり得る(Ausioの文献(2001) Biochem Cell Bio 79:693を参照されたい)。一実施態様において、ヒストンPTMはシトルリン化又はリボシル化から選択される。さらなる実施態様において、ヒストンPTMはH3シトルリン(H3cit)又はH4シトルリン(H4cit)である。なおさらなる実施態様において、ヒストンPTMはH3citである。
【0041】
関連するヒストン翻訳後修飾の群又はクラス(単一の修飾ではなく)も検出され得る。そのようなヒストン修飾の群との結合に方向づけられた抗体の例には、限定されることなく例示の目的で、抗汎アセチル化抗体(例えば、汎アセチルH4抗体[H4panAc])、抗シトルリン化抗体、又は抗ユビキチン抗体がある。ヒストンN-末端ドメイン、例えばH2A又はH4のN-末端ドメインに対する抗体は、ヌクレオソームアッセイに多座的な要素(multi-dentate dimension)を与えるため、これらは本発明において有用となり得る。
【0042】
一実施態様において、ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴は、1以上のDNA修飾を含む。ヌクレオソームヒストンアイソフォーム及びPTMの組成によって仲介されるエピジェネティックシグナル伝達に加え、ヌクレオソームはそのヌクレオチド及び修飾ヌクレオチドの組成においても異なる。一部のヌクレオソームは他のヌクレオソームよりも多くの5-メチルシトシン残基(又は5-ヒドロキシメチルシトシン残基又は他のヌクレオチド若しくは修飾ヌクレオチド)を含み得る。一実施態様において、DNA修飾は5-メチルシトシン又は5-ヒドロキシメチルシトシンから選択される。
【0043】
一実施態様において、ヌクレオソームのエピジェネティックな特徴は、1以上のタンパク質-ヌクレオソーム付加物又は複合体を含む。さらなる種類の循環ヌクレオソームのサブセットはヌクレオソームタンパク質付加物である。クロマチンが、その構成要素であるDNA及び/又はヒストンに結合した多数の非ヒストンタンパク質を含むことは長年知られている。これらのクロマチン関連タンパク質は極めて多様な種類があり、転写調節因子、転写増強因子、転写抑制因子、ヒストン修飾酵素、DNA損傷修復タンパク質ほか多数を含む、様々な機能を有する。ヌクレオソーム及び他の非ヒストンクロマチンタンパク質又はDNA、及び他の非ヒストンクロマチンタンパク質を含むこれらのクロマチン断片は、当該技術分野において記述されている。
【0044】
一実施態様において、ヌクレオソームに付加するタンパク質は:転写調節因子、高移動度群タンパク質、又はクロマチン修飾酵素から選択される。「転写調節因子」への言及は、DNAに結合し、転写を促進し(すなわち、アクチベータ)又は抑制する(すなわち、リプレッサ)ことによって遺伝子発現を調節するタンパク質を指す。転写調節因子は、それが調節する遺伝子に隣接するDNAの特定の配列に結合する1以上のDNA結合ドメイン(DBD)を含む。本明細書に記載する全ての循環ヌクレオソーム及びヌクレオソームの部分、種類、又はサブグループは、本発明において有用であり得る。
【0045】
NET中に滲出するクロマチンは、限定されることなく、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好中球エラスターゼ(NE)、ラクトトランスフェリン、アズロシジン、カテプシンG、白血球プロテイナーゼ3、リゾチームC、好中球ディフェンシン1、好中球ディフェンシン3、骨髄細胞核分化抗原、S100カルシウム結合タンパク質A8、S100カルシウム結合タンパク質A9、S100カルシウム結合タンパク質A12、アクチンβ、アクチンγ、α-アクチン、プラスチン-2、サイトケラチン-10、カタラーゼ、α-エノラーゼ、及びトランスケトラーゼを含む多数のタンパク質を含み、それらに付加され、又はそれらで装飾され得る(Urbanらの文献、PLOS Pathogens.(2009) 10: e1000639)。NET中に生じる任意のヌクレオソーム-タンパク質付加物は、本発明の方法におけるNETの上昇したレベルの検出に有用な付加物である。
【0046】
一実施態様において、1以上の抗体は好中球細胞外トラップ(NET)関連タンパク質に特異的に結合することができる。さらなる実施態様において、NET関連タンパク質はミエロペルオキシダーゼ(MPO)及び好中球エラスターゼ(NE)から選択される。
【0047】
ポリクローナル抗体は、同じ標的上の異なるエピトープに結合するよう方向づけられた(複数のクローンにより生産された)複数の抗体からなる。NET内の複数のエピトープに結合するように方向づけられた複数の抗体の存在は、達成される凝集の程度を最大化するのに有用である。従って、本発明の一実施態様において、ET又はヌクレオソーム上の利用可能な複数のエピトープに結合することができる1以上のポリクローナル抗体は、結合剤として使用される。
【0048】
同様に、(例えば異なるヒストンタンパク質、DNA、異なるヒストン修飾、又は他のエピジェネティックな特徴を含む)NET内の複数のエピトープに方向づけられた複数のモノクローナル抗体の使用は、達成される凝集の程度を増加させ得る。従って、本発明の別の実施態様において、複数の(すなわち、2以上の)モノクローナル抗体を結合剤として使用する。この実施態様において、抗体は異なるエピトープに結合する。一実施態様において、HIA法は、異なるエピトープに結合して、結合時に凝集又は沈殿を引き起こす2以上の結合剤を使用することを含む。さらなる実施態様において、HIA法は:(a)体液試料を2以上の結合剤(例えば、抗体)の溶液と混合する工程であって、前記2以上の結合剤がET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの異なるエピトープと特異的に結合することが可能であり、かつ結合時に凝集又は沈殿を引き起こす、前記工程;並びに(b)混合物中での凝集又は沈殿の程度を測定する工程、を含み、工程(b)における測定を体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定するために使用する。
【0049】
従って、NET内の異なるエピトープに方向づけられた複数の結合剤を使用することができる。一実施態様において、複数の結合剤(例えば、2以上の結合剤、例えば2以上の抗体)は、細胞外遊離ヌクレオソームの異なる特徴に特異的に結合することが可能である。さらなる実施態様において、異なる特徴は細胞外遊離ヌクレオソームの1以上のエピジェネティックな特徴(例えば、翻訳後ヒストン修飾、ヒストンアイソフォーム、修飾ヌクレオチド及び/又はヌクレオソーム-タンパク質付加物中でヌクレオソームに結合するタンパク質)を含み得る。例えば、結合剤の一方がヒストンタンパク質エピトープ(例えば、ヒストンH3アイソフォームH3.1)に方向づけられることができ、他方の結合剤が異なる特徴(例えば、ヒストン及びDNAを含むインタクトなヌクレオソーム中にのみ存在するヌクレオソームコンフォメーショナルエピトープ)に方向づけられる。
【0050】
(診断及びモニタリング方法)
本発明のさらなる態様により、対象における疾患の進行をモニタリングする方法であって:
(i)本明細書中で定義する方法を使用して対象から取得された体液試料中のET(例えば、NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;
(ii)1以上の時機に工程(i)を繰り返す工程;並びに
(iii)ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度の任意の変化を使用して対象における疾患の進行をモニタリングする工程、を含む、前記方法を提供する。
【0051】
本明細書に記載するように、本発明の方法はリアルタイムで臨床判定を下すことを可能にする迅速な結果を必要とする状況において使用することができる。従って、一実施態様において、対象は重症管理室(集中治療室とも呼ぶ)にいる。
【0052】
また、本明細書に記載の方法は、全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患している患者に対して特定の使用を見出す。SIRSは障害に対する不適切に高レベルのネトーシスを伴う体の不適切な反応である。障害は感染性のもの又は外傷、外科手術、急性炎症、虚血、再灌流、悪性腫瘍など多数を含む非感染性のものであり得る。一実施態様において、対象はSIRSに罹患している(又は罹患する疑いがある)。一実施態様において、対象は感染症に罹患している(又は罹患する疑いがある)。一実施態様において、対象は敗血症又は敗血症性ショックに罹患している(又は罹患する疑いがある)。
【0053】
本発明のさらなる態様により、感染症に罹患している対象に有害転帰のリスクを割り当てる方法であって:
(i)本明細書中で定義する方法を使用して対象から取得された体液試料中のET(例えば、NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;並びに
(ii)検出されたET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を使用して、前記対象に有害転帰の可能性を割り当てる工程、を含み、
有害転帰の可能性が高いと特定された対象を、医学的介入に割り当てる、前記方法を提供する。
【0054】
本発明の方法は有害転帰のリスクを有する患者を割り当てることを対象とし得る。有害転帰には、死亡並びに/又は緊急の医療、例えば、入院(すなわち、入院治療)及び/若しくは外科手術を必要とする急性事象が含まれる。多くの患者について、感染症は、医学的介入を必要とすることなく、その人自身の免疫系によって克服される。しかしながら、多くの患者において、感染症は、免疫系によって克服されることなく、進行若しくは重症度が増大し得るか、又は感染症に対する患者自身の免疫反応は、有害転帰に至り得る。同様に、SIRSを有する患者は、潜在的に多臓器不全に苦しむ状態により圧倒され得る。例えば、有害転帰には、急性冠状動脈又は心イベント(例えば、心筋梗塞及び/又は卒中)、急性多臓器若しくは単一臓器不全(例えば、腎不全、肝不全、及び/若しくは心不全)、消耗性急性状態、並びに/又は急性呼吸器状態(例えば、肺炎、低換気/徐呼吸、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、細気管支炎及び/若しくは気管支炎)の発症が含まれ得る。従って、一実施態様において、本明細書に記載される方法は、急性呼吸器状態を発症するリスクを有する患者又は対象を割り当てる。さらなる実施態様において、急性呼吸器状態は、肺炎である。さらなる実施態様において、急性呼吸器状態は、低換気/徐呼吸である。なおさらなる実施態様において、急性呼吸器状態は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び/又は重症急性呼吸器症候群(SARS)である。敗血症を有する患者の状態は、臓器不全評価スコア(SOFAスコア)の観点から表現されることが多い。SOFAは、救命救急診療において患者の状態を追跡するための臓器機能又は臓器不全の尺度として使用する。
【0055】
有害転帰のリスクを有する患者を割り当てることは、直前若しくは短期のリスクを割り当てることができるか、又は中期のリスクを割り当てることができる。直前又は短期のリスクには、患者が、症状の発現又は陽性診断から30日以内に、例えば、2週間若しくは14日以内に、1週間若しくは7日以内に、又は5日若しくは1日若しくは数時間以内に有害転帰を発症し得る場合が含まれる。そのような直前又は短期のリスクには、患者が、本明細書に記載される方法の実施から30日以内に、例えば、2週間若しくは14日以内に、1週間若しくは7日以内に、又は5日若しくは1日若しくは数時間以内に有害転帰を発症し得る場合も含まれ得る。
【0056】
急性短期リスクの例には、入院治療を必要とするCOVID感染症又は敗血症に対するNET関連合併症の発症を含む。COVID又は敗血症を有する患者の状態は、数時間で急速に悪化し、重篤な急性症例において12時間以内に死に至り得る。このことは、COVID、敗血症、SIRS、ARDS、SARS及び同様の状態を有する患者が迅速に患者の近くで行われる本発明のモニタリング方法を必要とする理由となっている。
【0057】
中期のリスクには、患者が、症状の発現、陽性診断、及び/又は本明細書に記載される方法の実施から30日を超えた後、有害転帰を発症し得る場合が含まれる。中期のリスクの例としては、いわゆる、COVID感染症の効果が何カ月も持続し得る長期COVIDの発症が挙げられる。
【0058】
従って、一実施態様において、本明細書に記載される方法は、症状の発現又は陽性診断から2週間又は14日以内に有害転帰を発症するリスクを有する患者又は対象を割り当てる。さらなる実施態様において、本明細書に記載される方法は、症状の発現又は陽性診断から1週間又は7日以内に有害転帰を発症するリスクを割り当てる。なおさらなる実施態様において、本明細書に記載される方法は、症状の発現又は陽性診断から1日以内に有害転帰を発症するリスクを割り当てる。
【0059】
対象が現在危険に又は不適切に高レベルのNETを有しないと決定された場合でも、本発明は医学的合併症の将来の発症について疾患の進行をモニタリングする目的で使用することができる。例えば、本方法が軽度の感染症を有すると決定された対象由来の試料を含む場合、NET又はクロマチン断片のレベルの測定を繰り返して別の時点でも行い、レベルが変化したかどうかを確立することができる。
【0060】
「バイオマーカー」という用語は、プロセス、事象、又は状態の示差的かつ生物学的な又は生物由来の指標を意味する。バイオマーカーは、診断の方法、例えば臨床スクリーニング及び予後評価において、並びに治療結果のモニタリング、特定の治療的処置に最も反応する可能性が高い患者の特定、薬物スクリーニング、及び創薬において、使用することができる。バイオマーカー及びそれらの使用は、新規薬物治療の特定及び薬物治療の新規標的の発見に有益である。
【0061】
検出及び/又は定量は、精製若しくは濃縮されたヌクレオソーム試料に対して直接的に、又は該試料からの抽出物若しくはその希釈物に対して間接的に、実施することができる。試料中に存在するバイオマーカーの量の定量化には、試料中に存在するバイオマーカーの濃度を決定することを含み得る。本明細書に記載する本発明による検出、モニタリング、及び診断の使用並びに方法は、疾患の存在を確認し、発症及び進行を評価することにより疾患の発展をモニタリングし、又は疾患の改善又は逆行を評価するのに有用である。また、検出、モニタリング、及び診断の使用並びに方法は、臨床スクリーニングの評価、予後診断、治療の選択、治療利益の評価、すなわち薬物スクリーニング及び創薬の方法に有用である。
【0062】
一実施態様において、疾患は、高レベルのNET又はネトーシスの病理的な臨床的合併症を伴う状態である。
【0063】
本明細書で使用する「検出する」又は「診断する」という用語は、疾患状態の特定、確認、及び/又は特性評価を包含する。本発明による検出、モニタリング、及び診断の方法は、疾患の存在を確認し、発症及び進行を評価することにより疾患の発展をモニタリングし、又は疾患の改善又は逆行を評価するのに有用である。また、検出、モニタリング、及び診断の方法は、臨床スクリーニングの評価、予後診断、治療の選択、治療利益の評価、すなわち薬物スクリーニング及び創薬の方法に有用である。
【0064】
一実施態様において、本明細書に記載の方法は複数の時機に繰り返される。本実施態様は、検出結果を一定期間にわたりモニタリングすることを可能とするという利点を提供する。そのような計画は、疾患状態の治療の有効性をモニタリングし、又は評価することの利益を提供する。本発明のそのようなモニタリング方法を使用して、発症、進行、安定化、改善、再発、及び/又は寛解をモニタリングすることができる。
【0065】
モニタリング方法において、検査試料は2以上の時機に採取し得る。本方法は、検査試料中に存在するバイオマーカー(複数可)のレベルを、1以上の対照(複数可)及び/又は例えば治療開始前に同じ検査対象から、及び/又は治療のより前の段階の同じ検査対象から、以前に採取した1以上の過去の検査試料(複数可)と比較することをさらに含み得る。本方法は、異なる時機に採取された検査試料中のバイオマーカー(複数可)の性質又は量の変化を検出することを含み得る。
【0066】
検査試料中のバイオマーカーのレベルの、同じ検査対象から以前に採取された過去の検査試料におけるレベルと比較した変化は、障害又は疑いのある障害に対するその治療の有益な効果、例えば安定化又は改善を示すことができる。さらに、治療が完了したら、疾患の再発をモニタリングするため、本発明の方法を定期的に繰り返すことができる。
【0067】
治療の有効性をモニタリングする方法を使用して、ヒト対象及び非ヒト動物(例えば、動物モデル)における既存の治療法及び新規治療法の治療有効性をモニタリングすることができる。これらのモニタリング方法は、新規な原薬及び物質の組合わせのスクリーニングに組み込むことができる。
【0068】
さらなる実施態様において、迅速に作用する治療によるより急速な変化のモニタリングを、より短い時間又は日数の間隔で実施することができる。
【0069】
診断又はモニタリングのキット(又はパネル)を、本発明の方法を実施するために提供する。そのようなキットは、好適にはバイオマーカーの検出及び/若しくは定量用の1以上のリガンドを、任意にキットの使用説明書とともに含む。
【0070】
本発明の1以上のバイオマーカーの検出及び/又は定量化を伴う方法は、実験机上の機器で実施することができ、又は実験室外の環境、例えば医師の執務室若しくは対象のベッド脇において使用可能な使い捨ての診断若しくはモニタリングプラットフォームに組み込むことができる。従って、本発明のさらなる態様において、本方法は患者の近くで行う、又はポイントオブケアの免疫アッセイ法として実施することができる。
【0071】
本発明の方法は、診断手順と治療レジメンの統合を可能にする。本方法は、治療反応、反応の失敗、望ましくない副作用プロファイル、服薬コンプライアンスの程度、及び適正な血清薬物レベルの達成を示す手段を提供する。本方法を用いて、有害薬物反応の警告を提供することができる。反応の評価を用いて、投薬量を微調整し、処方される投薬の回数を最小限に抑え、効果的な治療の達成の遅延を低下させ、かつ有害薬物反応を回避することができるので、本方法は、個別化治療の開発において有用である。従って、対象をモニタリングすることにより、ケアを、該対象の障害及び薬理学的プロファイルによって決定されるニーズに適合するように的確に合わせることができ、従って、それを用いて、最適な用量を調整し、ポジティブな治療反応を予測し、かつ重度の副作用のリスクが高い対象を特定することができる。
【0072】
また、バイオマーカーをモニタリングする方法、バイオセンサ、ポイントオブケア検査及びキットは、再発が障害の悪化によるものであるかどうかを医師が決定できるようにするための対象モニタリングツールとして重要である。薬理学的治療が不十分であると評価された場合、治療を再開又は増加させることができ;治療を適切に変化させることもできる。バイオマーカーは障害の状態に敏感であるため、バイオマーカーは薬物治療の影響の指標を提供する。
【0073】
「対象」又は「患者」への言及は、本明細書において互換的に使用される。対象は、ヒト又は動物対象であり得る。一実施態様において、対象はヒトである。一実施態様において、対象は(非ヒト)動物である。さらなる実施態様において、動物は伴侶動物(ペット又は家畜とも呼ぶ)である。伴侶動物には、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、ウマ又はウシなどがある。特に、伴侶動物はイヌ又はネコ、特にイヌである。本明細書に記載のパネル及び方法は、インビトロ又はエクスビボで実施され得る。
【0074】
検出結果及び/又は定量結果は、カットオフレベルと比較することができる。カットオフ値は、複数の患者及び対照からの結果を分析し、疾患を有しているか、又は有していないものとして対象を分類するのに好適な値を決定することにより、事前に決定することができる。例えば、疾患に罹患している患者のバイオマーカーのレベルがより高い疾患について、検出されたレベルがカットオフより高い場合、患者が疾患に罹患していることが示される。あるいは、疾患に罹患している患者のバイオマーカーのレベルがより低い疾患について、検出されたレベルがカットオフより低い場合、患者が疾患に罹患していることが示される。単純なカットオフ値を使用することの利点には、臨床医が検査を容易に理解できること、及び検査結果の解釈にソフトウェア又は他の補助の必要性が排除されることがある。カットオフレベルは、当該技術分野における方法を使用して決定することができる。
【0075】
また、検出結果及び/又は定量結果は、対照と比較することができる。当業者には、例えば疾患を有さないことが分かっている対象を含み得、又は異なる疾患を有する(例えば、鑑別診断の研究のための)対象であり得る対照対象は、様々な基準により選択され得ることは明らかであろう。「対照」には、健常対象又は非罹患対象、例えば感染症を有さない対象を含み得る。対照は、無症状又は軽度の症状を示す感染症を有する対象、例えば、無症状又は軽度の症状を示す呼吸器ウイルスに感染した対象でもあり得る。軽度の症状としては、病院介入及び/又は集中的な医学的処置を必要としない管理可能な症状を挙げることができる。
【0076】
一実施態様において、本発明の方法によって検査結果が陽性である対象は、ウイルス性疾患に感染している可能性があり、かつさらなる医学的合併症にさらに罹患するか、又は続けてさらなる医学的合併症に罹患する。対照的に、対照対象も、ウイルス性疾患に感染している可能性はあるが、医学的合併症に罹患しておらず、かつ続けて医学的合併症に罹患しない。対照との比較は、診断の分野において周知されている。対照群で見られる値の範囲は、検査対象について見られる値を比較することができる正常又は健常又は参照範囲として使用することができる。例えば、参照範囲が10単位未満であれば、5単位の検査値は、正常又は治療の必要がないものとみなされるが、11単位の値であれば、異常かつ治療の必要性を示すものとみなされる。
【0077】
従って、一実施態様において、本方法は対象の体液試料中のET(特に、NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を、1以上の対照と比較することをさらに含む。対照は健常対象であり得る。一実施態様において、ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度は対照と比較して上昇する。
【0078】
いかなる場合でも、比較目的で対照レベルを測定することが必要なわけではないことは、理解されよう。例えば、健常/非罹患対照について、一度「正常範囲」が確立されると、それは全ての後続の検査の基準として使用することができる。正常範囲は、感染症を有さない複数の対照対象から試料を取得すること、及びバイオマーカーのレベルを検査することにより確立することができる。続いて感染症を有する疑いがある対象の結果(すなわち、バイオマーカーレベル)を調べ、それらがそれぞれの正常範囲内にあるか、又は範囲外にあるかを確認することができる。「正常範囲」の使用は、疾患を検出するための標準的な慣例である。
【0079】
一実施態様において、本方法は、患者の少なくとも1つの臨床パラメータを決定することをさらに含む。このパラメータは、結果の解釈に使用することができる。臨床パラメータは、任意の関連する臨床情報、例えば限定されることなく、SOFAスコア、体温、性別、体重、ボディーマス指数(BMI)、喫煙状態、及び食習慣を含み得る。従って、一実施態様において、臨床パラメータは:SOFAスコア、体温、年齢、性別及びボディーマス指数(BMI)からなる群から選択される。
【0080】
一実施態様において、本発明の方法は、感染症への重度の反応を発症するリスクが高く、従って医学的介入が必要な対象を特定するために実施する。そのような医学的介入は、本明細書に記載の1以上の治療を含み得る。
【0081】
本発明の別の態様により、体液試料中のET(例えば、NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出するための、(例えば、本明細書に記載されたような)均一系免疫アッセイ(HIA)法における使用のためのキットの製造における結合剤の使用を提供する。
【0082】
(感染症)
本発明の方法は感染症のアウトブレイクの管理における特定の使用を見出す。感染症は様々な病原体及び環境因子により引き起こされ得る。一実施態様において、感染症はウイルス、細菌、真菌又は微生物感染症である。細菌感染症にはマイコバクテリア、肺炎球菌及びインフルエンザ菌感染症、例えば肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)により引き起こされる感染症(例えば、肺炎)があり得る。さらなる実施態様において、感染症はウイルス感染症である。ウイルス感染症には、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザA型、インフルエンザB型及びコロナウイルス(例えば、COVID-19)によって引き起こされる感染症があり得る。
【0083】
感染症は疾患により冒される組織により定義することができる。例えば、疾患は心臓、脳、腎臓、肝臓、膵臓、肺及び/又は血液を冒す場合があり、感染症は一般にそのような組織又は臓器を冒すことが知られる細菌、ウイルス、真菌又は微生物感染症であり得る。一実施態様において、感染症は気道感染症である。この実施態様により、感染症は肺、上気道及び/又は下気道を冒す。
【0084】
疾患により冒され得る他の組織には、末梢組織、例えば肢、手及び足があり、感染症は、細菌感染症(例えば、壊疽)であり得る。一実施態様において、感染症及び/又は疾患は複数の組織又は臓器を同時に冒し得る。例えば、感染症は肢、手又は足の細菌感染症であり得、疾患は血液も冒し得る(例えば、敗血症)。一実施態様において、感染症は敗血症である。別の例において、疾患は心不全又は冠状動脈不全であり得、疾患により冒される他の組織又は臓器には腎臓及び腎臓系並びに/又は脳(例えば、卒中)があり得る。
【0085】
さらなる実施態様において、敗血症又は敗血症性ショックに罹患している対象から採取した試料中のクロマチン断片の濃度は、特に疾患の予後を評価するために測定する。敗血症又は敗血症性ショックに罹患している対象から間隔をあけて採取した複数の試料についてさらなる測定を行い、疾患の進行をモニタリングし、かつ/又は治療の有効性を評価することができる。
【0086】
なおさらなる例において、疾患は肺を冒す場合があり、又は感染症は気道感染症であり得、かつ冒される他の組織若しくは臓器には、心臓、冠状動脈系及び/若しくは脳があり得る(例えば、心不全、心筋梗塞及び/若しくは卒中)。一実施態様において、気道感染症は:インフルエンザ、肺炎及び重症急性呼吸器症候群(SARS)から選択される。SARSはSARSコロナウイルス(SARS-CoV)によって引き起こされる呼吸器感染症であり、他の関連するコロナウイルスが公知である(例えば、COVID-19(SARS-CoV-2としても知られ、過去には2019-nCoVとして知られていた))。それは熱、インフルエンザ様の症状、咳及び倦怠感を引き起こすことが知られており、肺炎(例えば、直接的なウイルス性肺炎又は続発的な細菌性肺炎)につながり得る。
【0087】
NET又はネトーシス関連疾患には、SIRS、敗血症、肺炎、COVID及びインフルエンザなどの感染症並びに限定されることなく、任意の原因の肺炎、SARS又はARDS、血栓性又は微小血栓性状態、多くの炎症性疾患状態、並びに糖尿病の切断及び血栓性合併症並びに癌の血栓性合併症を含む他の疾患のネトーシス関連合併症を含む、NETの生産の病理的上昇を伴う他の疾患がある。また、本発明の方法は多くの他のネトーシス関連疾患又は状態におけるレシピエント患者への移植のためのドナー患者から摘出された臓器又は組織の生存可能性のエクスビボ評価及び移植された臓器又は組織に対する拒絶反応についてのレシピエント患者のモニタリングのための応用性を有する。
【0088】
(病理的レベルのNETを有する対象の治療方法)
さらなる態様により、それを必要とする対象において疾患(特に、感染症)を治療する方法であって、該対象から取得した試料中のET(例えば、NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を、対照対象から取得した試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度と比較した際に、異なっていると特定された対象に、治療(例えば、治療剤)を施す工程を含む、前記方法を提供する。治療には、限定されることなく、薬物(例えば、抗炎症薬、抗凝血若しくは血液凝固阻害薬、治療的抗NET抗体薬、DNアーゼ薬、ネトーシス阻害薬、抗細菌薬、若しくは抗ウイルス薬)、アフェレーシス治療、人工呼吸器補助、体液補助、又はその他のものを含む状態のための1以上の好適な治療があり得る。
【0089】
一実施態様において、治療は:抗生物質治療(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、マクロライド、クリンダマイシン、スルホンアミド、トリメトプリム、メトロニダゾール、チニダゾール、キノロン、及び/又はニトロフラントイン)、抗微生物治療(例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピシン、アミノグリコシド(アミカシン、カナマイシン)、ポリペプチド(カプレオマイシン、バイオマイシン、エンビオマイシン)、フルオロキノロン(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)、チオアミド(エチオナミド、プロチオナミド)、サイクロセリン(クロセリン)、テリジドン、リファブチン、マクロライド(クラリスロマイシン)、リネゾリド、チオアセタゾン、チオリダジン、アルギニン、ビタミンD及び/又はR207910)、抗ウイルスCOVID治療(例えば、レムデシビル)、抗ウイルスインフルエンザ治療(例えば、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、リマンタジン、ウミフェノビル、ザナミビル及びノイラミニダーゼ阻害剤、キャップ依存的エンドヌクレアーゼ阻害剤、アダマンタン、ペラミビル、ザナミビル、オセルタミビルリン酸塩、並びにバロキサビルマルボキシル)、並びに高レベルのネトーシスをもたらし得る他のウイルス疾患の抗ウイルス治療、並びに抗真菌治療(例えば、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾール、ケトコナゾール、及びアンホテリシン)のうちの1以上から選択される。
【0090】
一実施態様において、治療は、抗炎症薬である。多くのステロイド性及び非ステロイド性抗炎症薬が当技術分野で公知である。ステロイド性抗炎症薬のいくつかの例としては、限定されることなく、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、及びメチルプレドニゾロンが挙げられる。非ステロイド性抗炎症薬のいくつかの例には、限定されることなく、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、CD24Fc(免疫グロブリンGのFc領域に結合したCD24タンパク質)、及びEXO-CD24(CD24-エクソソーム)がある。
【0091】
一実施態様において、治療は、過剰なNETを消化するためのDNアーゼ治療、又はネトーシスの阻害剤、例えば、アントラサイクリン薬である。さらなる実施態様において、アントラサイクリン薬は:エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシンから選択される。
【0092】
一実施態様において、治療は、限定されることなく、ヌクレオソーム又はヌクレオソームの任意の構成要素部分に結合するように方向付けられた治療抗体を含む、NET又はNETの構成要素部分に結合するように方向付けられた治療抗体薬である。例としては、ヒストンアイソフォームH3.1、シトルリン化ヒストン、ミエロペルオキシダーゼ又は好中球エラスターゼを含むヌクレオソームに結合するように方向付けられた治療抗体がある。
【0093】
一実施態様において、治療は、循環から又は体から核酸を吸着及び/又は除去する核酸スカベンジャー、例えば、DNAスカベンジャーポリアミドアミンである。
【0094】
医薬毒性副作用を回避するネトーシス治療を提供するプラスマフェレーシスによる循環からのNET及びNET分解産物の除去を伴う治療が報告されている(WO2019/053243を参照されたい)。従って、一実施態様において、治療はプラスマフェレーシス治療を含む。
【0095】
一実施態様において、感染症は呼吸器感染症、例えばインフルエンザ又はコロナウイルスであり、医学的合併症は、肺炎である。好適な治療には、限定されることなく、体外式酸素供給を用いる呼吸補助、助けなしでは物理的に十分に呼吸することができない患者の肺の内外への空気の人工呼吸を提供するために設計された医療用人工呼吸器を用いる呼吸補助、並びに/或いは酸素及び/又は抗ウイルス薬、抗菌薬、若しくは抗炎症薬の提供があり得る。
【0096】
(血液癌)
血液癌は血液、骨髄及びリンパ節を冒す癌の種類である。一般的な血液癌には、冒される細胞の種類に応じて、限定されることなく、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び血管肉腫がある。血液癌は、特に伴侶動物、例えばイヌ又はネコにおいて一般的である。白血病は、通常骨髄において発生し、血流を介して移動する血球の癌である。白血病において、骨髄は突然変異細胞を生産し、それらを血液中に散布する。突然変異細胞は血液中で増殖し、健常血球を締め出す。リンパ腫疾患はリンパ系中の細胞を冒す。リンパ腫において、リンパ球と呼ばれる免疫細胞は制御の利かない増殖をし、リンパ節、脾臓、他のリンパ組織又は隣接する臓器に集まる。骨髄腫は多発性骨髄腫としても知られ、骨髄で発達し、感染症及び疾患を攻撃する抗体を生産する形質細胞を冒す。血管肉腫(及びイヌにおける血管肉腫)は脈管構造の内皮で発達する。血液癌の例には、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫(HL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)がある。イヌの一般的な血液癌には、イヌリンパ腫及び血管肉腫がある。
【0097】
最近の研究から、血液癌を有する患者において中央値レベルがヒトでは300~700 ng/ml(WO2021110776)、及びイヌでは最大6000 ng/ml(Dolanらの文献、BMC Veterinary Research (2021) 17:276及びWilson-Roblesらの文献、BMC Veterinary Research (2021) 17:231)となる循環細胞外遊離ヌクレオソームのレベルの顕著な上昇が見出されることが示されている。これらの結果は、ヌクレオソームについての100 ng/mlの範囲でのアッセイ感度が、患者における血液癌の存在を有効に検出し、又は治療に対する患者反応をモニタリングするのに十分であることを示す。これらのレベルはHIA法の測定可能範囲内である。本発明者らは、HIA技術を使用してリアルタイムで臨床判定を下すために使用することができる低コストで迅速な患者の近くで行われる方法を提供することを提案する。
【0098】
ヒト対象において有用であるだけでなく、本発明の方法は他の種の対象、特に血液癌を有するイヌ対象の診断及び治療において有用である。有用な理由の一部は血液癌はイヌにおいて一般的であるためであり、かつ別の理由の一部は現在の方法は、対象がスキャンの間スキャナの中で静止したままでいることを必要とするスキャンを伴うためである。イヌなどの非ヒト対象は意識がある場合スキャンの間静止したままではいられないので麻酔をかけなければならない。従って本発明の方法は、イヌに低コスト、迅速、正確であり、全身麻酔を使用する必要性を回避する解決策を提供する。
【0099】
従って、本発明のさらなる態様により、対象において血液癌疾患を検出する方法であって:
(i)本明細書で定義する方法を使用して対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;
(ii)ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を対象における血液癌の存在の指標として使用する工程、を含む、前記方法を提供する。
【0100】
本発明のさらなる態様により、対象における血液癌疾患を検出し、又は血液癌疾患の進行をモニタリングする方法であって:
(i)本明細書で定義する方法を使用して対象から取得された体液試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出する工程;
(ii)1以上の時機に工程(i)を繰り返す工程;並びに
(iii)ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度の変化を使用して対象における疾患の進行をモニタリングする工程、を含む、前記方法を提供する。
【0101】
一実施態様において、血液癌を有する対象をモニタリングして、対象に提供された治療の有効性を決定する。本発明の方法は血液癌を有する患者の特定及びモニタリングに特に有用であるが、本方法の応用性は血液癌に限定されず、任意の癌に適用することができることは認識されよう。
【0102】
(癌を有する対象の治療方法)
さらなる態様により、それを必要とする対象において癌、特に血液癌を治療する方法であって、該対象から取得した試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を、対照対象から取得した試料中のET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度と比較した際に、異なっていると特定された対象に、治療(例えば、治療剤)を施す工程を含む、前記方法を提供する。治療は、限定されることなく、薬物(例えば、細胞傷害性薬物、化学療法薬、免疫療法薬、エピジェネティック薬物ほか多数)、放射線療法処置、輸血処置、血液透析処置、及びアフェレーシス処置を含む状態のための1以上の好適な処置を含み得る。血液癌が転移を伴う場合、処置には続発性腫瘍を除去するための外科手術を含み得る。
【0103】
(キット)
本発明のさらなる態様により、体液試料中のET(例えば、NET)クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を測定するためのキットであって:
ET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームと特異的に結合することが可能である1以上の抗体を含む試薬溶液、並びに抗体結合時に引き起こされる凝集又は沈殿の程度を測定してET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を決定するための手段における使用に好適である容器、を含む、前記キットを提供する。そのようなキットは、任意に1以上の緩衝溶液を含み得る。
【0104】
抗体結合時に引き起こされる凝集又は沈殿の程度を測定するための手段は、当該技術分野において周知されている。例えば、分光光度計は、凝集反応から生じる粒子サイズの増加に起因する濁度の増加(すなわち、試料を透過する光の強度の低下)を測定するために使用することができる。比濁計は、光散乱の増加を測定するための免疫比朧法において使用することができる。その簡便な1ステップ手順及びその短い処理時間のために、HIA法は自動分析装置、特に臨床化学機器における使用に好適である。
【0105】
本発明のさらなる態様により、敗血症若しくは敗血症性ショックにかかりやすい対象を特定するための、又は敗血症若しくは敗血症性ショックを有する対象をモニタリングするための、本明細書で定義するキットの使用を提供する。本発明の別の態様により、血液癌を有する対象を特定するための、又は血液癌を有する対象をモニタリングするための、本明細書で定義するキットの使用を提供する。
【0106】
(追加のバイオマーカー)
NET、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を測定パネルの1つとして検出し、又は測定することができる。パネルは、本明細書中で上記した、ヌクレオソームの異なるエピジェネティックな特徴(例えば、ヒストンアイソフォーム及びPTM)を含み得る。医学的介入を必要とする重度の呼吸器感染症の検出のためのパネル検査に有用なバイオマーカーには、限定されることなく、サイトカイン成分(特に限定されることなく、IL-1、IL-6及びIL-8を含むインターロイキン)、C-反応性タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、D-ダイマー、第VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)、フィブリノーゲン及びフィブリン/フィブリノーゲン分解産物がある。一実施態様において、パネルはC-反応性タンパク質を含む。一実施態様において、パネルは1以上のサイトカイン、例えば1以上のインターロイキンを含む。
【0107】
当業者には、本明細書で開示するバイオマーカーの任意の組合わせを、(例えば、疾患、例えば感染症の進行をモニタリングするための)パネル及びアルゴリズムにおいて使用することができること、及びさらなるマーカーをこれらのマーカーを含むパネルに追加することができることは、明らかであろう。
【0108】
本発明の態様により、患者における感染症との合併症を検出し、又は予測するためのパネル検査であって、均一系免疫アッセイ法におけるET(例えば、NET)、クロマチン断片及び/又はヌクレオソームの濃度を検出するための試薬を含む、前記パネル検査の使用を提供する。
【0109】
本明細書に記載の実施態様は、本発明の全ての態様に適用することができる、すなわち、使用の記載のある実施態様は、特許請求の範囲に記載の方法などに等しく適用することができることは、理解されよう。ここで本発明の方法を、以下の実施例により例証する。
【実施例
【0110】
(実施例1)
ヌクレオソーム均一系免疫アッセイは、Beckman Coulter AU400分析装置を使用して実施した。
【0111】
凝集は、ラテックス粒子にコーティングされた2つの異なる抗体の組合わせを使用して達成した。第1の抗体は、H3のアミノ酸30の近くに存在するエピトープでヒストンH3アイソフォームH3.1を含むヌクレオソーム(H3.1-ヌクレオソーム)に結合するよう方向づけられ、ラテックス粒子(サイズ0.2 μm)に直接コーティングされた。第2の抗体は、ヒストン及びDNAを含むインタクトなヌクレオソーム中にのみ存在するヌクレオソームコンフォメーショナルエピトープに結合するよう方向づけられ、ビオチン化され、ニュートラビジンでコーティングされたラテックス粒子(0.3 μm)に間接的に結合させた。
【0112】
アッセイ手順は以下の通りとした。使用のために、ヌクレオソーム検査溶液(25 μL)を、KCl、NaCl、界面活性剤(Tween 20)、ポリエチレングリコール100、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ウシ血清アルブミン、及び防腐剤(アジ化ナトリウム)を含むpH 7.2のリン酸緩衝液(150 μL)に加えた。混合物を37℃で180秒間インキュベートした。スクロース、Tween 20、ウシ血清アルブミン及びアジ化ナトリウムを含む50 mM Tris緩衝液(pH 8.0)中のラテックス粒子の0.2%懸濁液(30 μL)を加え、さらに37℃で36秒間インキュベートした。続いてラテックス粒子に結合したヌクレオソームの凝集を700 nmの光の吸収の増加として、37℃で270秒間にわたり速度論的に測定した。
【0113】
結果を図1に示す。この結果から、測定された凝集が試料溶液中に存在するヌクレオソームの濃度とともに増加したことが実証された。アッセイの感度は100 ng/mlの水準であり、これは例えばSIRS、ARDS、SARS、敗血症、肺炎、COVID、インフルエンザ、血栓性又は微小血栓性状態、炎症性疾患状態、及び血栓性状態を含むネトーシスに関連する疾患又は状態の状況におけるヌクレオソームの検出に適当である。また、感度は癌、特に血液癌(骨髄増殖性障害)における適用、並びにまたレシピエント患者への移植のためのエクスビボでの臓器又は組織の生存可能性の評価及び移植された臓器又は組織の拒絶反応についてのレシピエント患者のモニタリングを含む多くの他の分野における使用に適当である。
図1
【国際調査報告】