(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】インターロイキン-34を標的とする化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20241112BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241112BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241112BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241112BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20241112BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241112BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241112BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241112BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241112BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241112BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241112BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241112BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/071
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61P37/02
A61P25/28
A61P3/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P29/00
A61P37/08
A61P17/00
A61P13/12
A61P31/04
A61P1/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525307
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 US2022078837
(87)【国際公開番号】W WO2023077042
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】シェディド,マルシオ
(72)【発明者】
【氏名】フライシャー,アダム エス
(72)【発明者】
【氏名】ラナン,メーガン ブリタニー
(72)【発明者】
【氏名】ロー,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ミンタン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オブング,ビクター エイチ
(72)【発明者】
【氏名】レインズ,サラ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】シムズ,ジョン ランドール,ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】スコラ,アンドリュー ディクソン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,ロビン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト,エリザベス アン
(72)【発明者】
【氏名】イェ,ミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB17
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA21
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、IL-34抗体、それを含む組成物、並びに神経変性疾患、例えばアルツハイマー病又はタウオパチー疾患などの免疫介在性疾患を治療するための抗体及び/又はその組成物の使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-34に結合する抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)と、を含み、前記VHが、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記HCDR1が、配列番号5を含み、
前記HCDR2が、配列番号6を含み、
前記HCDR3が、配列番号7を含み、
前記LCDR1が、配列番号8を含み、
前記LCDR2が、配列番号9を含み、
前記LCDR3が、配列番号10を含む、抗体。
【請求項2】
前記VHが、配列番号3を含み、前記VLが、配列番号4を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、配列番号1を含む重鎖(HC)及び配列番号2を含む軽鎖(LC)を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号11又は12から選択される配列番号をコードする配列を含む、核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項6】
前記ベクターが、配列番号11をコードする第1の核酸配列と、配列番号12をコードする第2の核酸配列と、を含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
配列番号11をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号12をコードする核酸配列を含む第2のベクターと、を含む、組成物。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項9】
配列番号11をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号12をコードする核酸配列を含む第2のベクターと、を含む、細胞。
【請求項10】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項8又は9に記載の細胞。
【請求項11】
抗体を産生するプロセスであって、前記抗体が発現するような条件下で、請求項8~10のいずれか一項に記載の細胞を培養することと、発現した前記抗体を培養培地から回収することと、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスによって産生される、抗体。
【請求項13】
請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項14】
免疫介在性疾患の治療を必要とする対象において、それを治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~3若しくは12のいずれか一項に記載の抗体、又は請求項13に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
療法に使用するための、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
免疫介在性疾患の治療における使用のための、請求項1~3若しくは12のいずれか一項に記載の抗体、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からなる群から選択される、請求項18に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項20】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病である、請求項18に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項21】
免疫介在性疾患の治療のための医薬品の製造における、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項22】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からなる群から選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病である、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
体液中のヒトIL-34レベルを決定する方法であって、
(a)前記体液を、配列番号49のアミノ酸配列からなるヒトIL-34に特異的に結合する抗ヒトIL-34診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、それぞれ、アミノ酸配列(配列番号8)、(配列番号9)、及び(配列番号10)を含む軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と、それぞれ、アミノ酸配列(配列番号5)、(配列番号6)、及び(配列番号7)を含む重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、を含む、接触させることと、
(b)任意選択で、任意の非特異的に結合したモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを除去することと、
(c)ヒトIL-34に特異的に結合しているモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの量を検出及び/又は定量化することと、を含む、方法。
【請求項25】
前記体液が、血液、血清若しくは血漿、又は脳脊髄液であり、前記接触することがエクスビボで起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、その治療又は予防を必要とする前記ヒト対象に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を、有効量の請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体と同時に、別々に、又は順次組み合わせて投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記抗N3pG Aβ抗体が、ドナネマブであり、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体が、抗体1である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記抗N3pG Aβ抗体が、ドナネマブであり、前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
抗体1が、ドナネマブによる一連の治療の後に順次投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、
i)前記ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pG Aβ抗体を投与することであって、各第1の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
ii)前記1回以上の第1の用量を投与してから約4週間後に、前記ヒト対象に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量の前記抗N3pG Aβ抗体を投与することであって、各第2の用量が、約4週間に1回投与され、
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、ドナネマブである、投与することと、
iii)前記ヒト対象に、有効量の抗体1を同時に、別々に、又は順次投与することと、を含む、方法。
【請求項32】
前記ヒト対象が、前記第2の用量を投与される前に前記第1の用量のドナネマブを1回、2回、又は3回投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト対象が、約700mgの第1の用量のドナネマブを投与される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト対象が、1回以上の約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト対象が、1回以上の約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、最長72週間の一連の治療期間にわたって、又はアミロイドの正常レベルが達成されるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、前記患者におけるアミロイドプラークレベルが、約25センチロイド以下になるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、前記ヒト対象における前記アミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、前記ヒト対象への一連の治療のために投与され、任意選択で、前記2回の連続PETイメージングスキャンが、少なくとも6ヶ月間隔がある、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒト対象が、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回、最長72週間の一連の治療期間にわたって投与される、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト対象が、前記対象における前記アミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回投与され、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回投与される、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト対象が、前記対象におけるアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回投与され、任意選択で、前記2回の連続PETイメージングスキャンが少なくとも6ヶ月間隔がある、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ヒト対象が、前記疾患を治療又は予防するのに十分な一連の治療期間にわたって、前記第2の用量のドナネマブを投与される、請求項31~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患の前記治療又は予防が、i)前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物の低減、及び/又はii)前記ヒト対象の認知若しくは機能低下の遅延を引き起こす、請求項31~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物の前記低減が、アミロイドPET脳イメージング、又はAβのバイオマーカーを検出する診断法によって決定される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の用量が、前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物が約20~100%低減するまで、前記ヒト対象に投与される、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記ヒト対象の前記脳内の前記Aβ沈着物が、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約75%、又は約100%低減される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の用量のドナネマブが、前記ヒト対象の前記脳内の前記Aβ沈着物が、i)およその平均で約25センチロイド~約100センチロイド、ii)およその平均で約50センチロイド~約100センチロイド、iii)約100センチロイド、又はiv)約84センチロイド低減するまで、前記ヒト対象に投与される、請求項31~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物を特徴とする前記疾患が、前臨床アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD、中等度AD、重度AD、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症から選択される、請求項31~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒト対象が、早期症候性AD患者である、請求項31~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒト対象が、前駆期AD、及びADによる軽度の認知症を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒト対象が、i)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、ii)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、iii)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、iv)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、又はv)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有する、請求項26~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ヒト対象が、i)PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.46SUVr以下である場合、非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、又はii)PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.10SUVr~1.46SUVrである場合、低いから中等度のタウ負荷を有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ヒト対象が、i)高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されているか、又はii)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を保有し、高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されている、請求項26~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記ヒト対象が、PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.46SUVrを超える場合、高いタウ負荷を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ヒト対象の前記タウ負荷が、PET脳イメージング又はタウのバイオマーカーを検出する診断法を使用して決定される、請求項51又は53に記載の方法。
【請求項56】
ヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のための医薬品の製造における、抗体1と同時、別々、若しくは順次組み合わされた、抗N3pGlu Aβ抗体の使用であって、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pGlu Aβ抗体が投与され、各第1の用量が、約4週間に1回投与され、続いて1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量が、前記1回以上の第1の用量の投与の4週間後に投与され、各第2の用量の抗N3pGlu Aβ抗体が、約4週間に1回投与され、
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、ドナネマブである、使用。
【請求項57】
前記ヒト対象が、前記第2の用量のドナネマブを投与される前に、前記第1の用量のドナネマブを1回、2回、又は3回投与される、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
前記ヒト対象が、約700mgの第1の用量のドナネマブを3回投与される、請求項56又は57に記載の使用。
【請求項59】
前記ヒト対象が、1回以上の約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、請求項56~58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項60】
前記ヒト対象が、1回以上の約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、請求項56~59のいずれか一項に記載の使用。
【請求項61】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、最長72週間の一連の治療期間にわたって、又はアミロイドの正常レベルが達成されるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項56~60のいずれか一項に記載の使用。
【請求項62】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、前記患者におけるアミロイドプラークレベルが、約25センチロイド以下になるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項56~61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項63】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、前記患者における前記アミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、前記ヒト対象に投与され、任意選択で、前記2回の連続PETイメージングスキャンが、少なくとも6ヶ月間隔がある、請求項56~61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項64】
前記ヒト対象が、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回次いで1400mgの第2の用量のドナネマブを4週間に1回、最長72週間の期間にわたって投与される、請求項56~61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項65】
前記ヒト対象が、前記患者における前記アミロイドプラークレベルが、約25センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回投与され、次いで、1400mgの第2の用量のドナネマブを4週間に1回投与される、請求項56~61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項66】
前記ヒト対象が、前記患者におけるアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量のドナネマブを4週間に1回投与され、任意選択で、前記2回の連続PETイメージングスキャンが少なくとも6ヶ月間隔がある、請求項56~61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項67】
前記ヒト対象が、前記疾患を治療又は予防するのに十分な一連の治療期間にわたって前記第2の用量のドナネマブを投与される、請求項56~66のいずれか一項に記載の使用。
【請求項68】
前記疾患の前記治療又は予防が、i)前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物の低減、及び/又はii)前記ヒト対象における認知若しくは機能低下の遅延を引き起こす、請求項56~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物の前記低減が、アミロイドPET脳イメージング又はAβのバイオマーカーを検出する診断法によって決定される、請求項68に記載の使用。
【請求項70】
前記第2の用量のドナネマブが、前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物が、約20~100%低減するまで、前記ヒト対象に投与される、請求項68又は69に記載の使用。
【請求項71】
前記ヒト対象の前記脳内の前記Aβ沈着物が、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約75%、又は約100%低減される、請求項70に記載の使用。
【請求項72】
前記患者の前記脳内の前記Aβ沈着物が、100%低減される、請求項70又は71に記載の使用。
【請求項73】
前記ヒト対象の前記脳内の前記Aβ沈着物が、i)およその平均で約25センチロイド~約100センチロイド、ii)およその平均で約50センチロイド~約100センチロイド、iii)約100センチロイド、又はiv)約84センチロイド低減されるまで、前記第2の用量のドナネマブが、前記ヒト対象に投与される、請求項56~72のいずれか一項に記載の使用。
【請求項74】
前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物を特徴とする前記疾患が、前臨床アルツハイマー病、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD、中等度AD、重度AD、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症から選択される、請求項56~73のいずれか一項に記載の使用。
【請求項75】
前記ヒト対象が、早期症候性AD患者であるか、又は前記ヒト対象が、前駆期AD若しくはADによる軽度の認知症を有する、請求項56~74のいずれか一項に記載の使用。
【請求項76】
前記ヒト対象が、i)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、ii)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、iii)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、iv)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、又はv)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有する、請求項56~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項77】
前記ヒト対象が、i)PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.46SUVr以下である場合、非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、又はii)PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.10SUVr~1.46SUVrである場合、低いから中等度のタウ負荷を有する、請求項76に記載の使用。
【請求項78】
前記ヒト対象が、i)高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されているか、又はii)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を保有し、高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されている、請求項56~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項79】
PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.46SUVrを超える場合、前記ヒト対象が、高いタウ負荷を有する、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
前記ヒト対象の前記タウ負荷が、タウPET脳イメージング又はタウのバイオマーカーを検出する診断法を使用して決定される、請求項76又は78に記載の使用。
【請求項81】
i)非常に低いから中等度のタウ負荷、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されているか、又はii)非常に低いから中等度のタウ負荷、若しくは低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されているヒト対象の脳内アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、
i)前記ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量のドナネマブを投与することであって、ドナネマブの各第1の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
ii)前記1回以上の第1の用量を投与してから4週間後に、前記ヒト対象に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与することであって、各第2の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせることと、を含む、方法。
【請求項82】
ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、
前記ヒト対象が、脳の側頭葉、後頭葉、頭頂葉、又は前頭葉にタウ負荷を有するかどうかを判定することを含み、前記ヒト対象が前記脳の側頭葉、後頭葉、頭頂葉、又は前頭葉にタウ負荷を有する場合、
i)前記ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pGlu Aβ抗体を投与することであって、各第1の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
ii)前記1回以上の第1の用量を投与してから約4週間後に、前記ヒト対象に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量の抗N3pGlu Aβ抗体を投与することであって、各第2の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせることと、を含む、方法。
【請求項83】
前記ヒト対象が、前記脳の後外側側頭葉又は側頭葉にタウ負荷を有する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記ヒト対象が、前記脳の後頭葉にタウ負荷を有する、請求項82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記ヒト対象が、前記脳の頭頂葉にタウ負荷を有する、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
前記ヒト対象が前記脳の前頭葉にタウ負荷を有する、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
前記ヒト対象が、前記脳の後外側側頭葉(PLT)及び/又は後頭葉にタウ負荷を有する、請求項82に記載の方法。
【請求項88】
前記ヒト対象が、前記脳のPLT若しくは後頭領域におけるタウ負荷と共に、i)頭頂若しくは楔前領域、又はii)前頭領域にタウ負荷を有する、請求項82~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記ヒト対象が、前記脳のi)前頭葉に隔離されたタウ負荷、又はii)後外側側頭領域(PLT)を含まない前記側頭葉の領域にタウ負荷を有する、請求項82~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記ヒト対象が、前記脳の後外側側頭葉、後頭葉、及び頭頂葉にタウ負荷を有する、請求項82~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記ヒト対象が、前記脳の後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉、及び前頭葉にタウ負荷を有する、請求項82~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記ヒト対象が、前記脳の後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉、及び/又は前頭葉にタウ負荷を有する、請求項82~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記ヒト対象が、前記第2の用量を投与される前に、前記第1の用量を1回、2回、又は3回投与される、請求項82~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記ヒト対象が、約700mgの第1の用量を投与される、請求項82~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記ヒト対象が、1回以上の約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの第2の用量を投与される、請求項82~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記ヒト対象が、1回以上の約1400mgの第2の用量を投与される、請求項82~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、最長72週間の期間、又はアミロイドの正常レベルが達成されるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項82~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、前記患者におけるアミロイドプラークレベルが、約25センチロイド以下になるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項82~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、前記ヒト対象における前記アミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、前記ヒト対象に投与され、任意選択で、前記2回の連続PETイメージングスキャンが少なくとも6ヶ月間隔がある、請求項82~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記ヒト対象が、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回投与され、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回、最長72週間投与される、請求項82~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記ヒト対象が、前記対象における前記アミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回投与され、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回投与される、請求項82~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記ヒト対象が、前記対象におけるアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回投与され、任意選択で、前記2回の連続PETイメージングスキャンが少なくとも6ヶ月間隔がある、請求項82~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記ヒト対象が、前記疾患を治療又は予防するのに十分な期間、前記第2の用量を投与される、請求項82~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記疾患の前記治療又は予防が、i)前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物の低減、及び/又はii)前記ヒト対象の認知若しくは機能低下の遅延を引き起こす、請求項82~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物の前記低減が、アミロイドPET脳イメージング、又はAβのバイオマーカーを検出する診断法によって決定される、請求項97に記載の方法。
【請求項106】
前記第2の用量が、前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物が約20~100%低減するまで、前記ヒト対象に投与される、請求項97又は98に記載の方法。
【請求項107】
前記ヒト対象の前記脳内の前記Aβ沈着物が、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約75%、又は約100%低減される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記第2の用量が、前記ヒト対象の前記脳内の前記Aβ沈着物が、i)およその平均で約25センチロイド~約100センチロイド、ii)およその平均で約50センチロイド~約100センチロイド、iii)約100センチロイド、又はiv)約84センチロイド低減されるまで、前記ヒト対象に投与される、請求項82~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記ヒト対象の前記脳内のAβ沈着物を特徴とする前記疾患が、前臨床アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD、中等度AD、重度AD、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症から選択される、請求項82~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記ヒト対象が、早期症候性AD患者である、請求項82~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記ヒト対象が、前駆期AD、及びADによる軽度の認知症を有する、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記ヒト対象が、i)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されているか、又はii)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、請求項82~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記ヒト対象が、i)PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.46SUVr以下である場合、非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、又はii)PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.10SUVr~1.46SUVrである場合、低いから中等度のタウ負荷を有する、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記ヒト対象が、高いタウ負荷を有していないか、又は高いタウ負荷を有していないと判定されている、請求項82~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記ヒト対象が、PET脳イメージングによって測定される前記タウ負荷が1.46SUVrを超える場合、高いタウ負荷を有する、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記ヒト対象の前記タウ負荷が、PET脳イメージング、又はタウのバイオマーカーを検出する診断法を使用して決定される、請求項114又は115に記載の方法。
【請求項117】
前記抗N3pGlu Aβ抗体が、ドナネマブを含む、請求項82~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記患者が、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有する、請求項82~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
タウ負荷の更なる増加を減少させる/予防する、又はヒト脳の側頭葉、後頭葉、頭頂葉、又は前頭葉におけるタウ蓄積速度を遅らせる方法であって、前記ヒト対象に、抗N3pGlu Aβ抗体を、有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせて投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、神経炎症及び急性又は慢性炎症性疾患の分野で有用であると期待される、ヒトインターロイキン-34(interleukin-34、IL-34)に対する抗体を含む、化合物、医薬組成物、及び方法に関する。特に、実施形態は、アルツハイマー病、並びに他のタウオパチーに関連する治療及び/又は診断用途に有用であると期待される。
【0002】
認知症の主な原因であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease、AD)は、65歳~69歳までの人口の1%で発症し、95歳以上では40%~50%に増加する。AD患者は、認知機能障害及び記憶機能の欠損を含む明白な臨床症状を示す。これらの患者では、ADの存在は、死後の組織病理学的検査で大脳皮質に見られる重度の老人プラーク負荷及び神経原線維変化(neurofibrillary tangle、NFT)によって確認される。成熟老人プラークは、アミロイド前駆体タンパク質の酵素処理に由来する細胞外β-アミロイドペプチド、及び過剰リン酸化タウタンパク質のフィラメントに由来する細胞内神経原線維変化(NFT)から構成されている。神経原線維変化などの過剰リン酸化タウの凝集体は、アルツハイマー病における認知機能障害の程度に関連している。AD及びその他の様々なタウオパチーでは、タウ凝集体は、疾患のリスク、発症、及び/又は進行に関連する特定の脳領域及びパターンに現れ、これらの領域及びパターンは、当業者に知られている。
【0003】
サイトカインは正常な恒常性組織機能を調節し、これらのサイトカインネットワークの調節不全は病的状態に関連している。血液由来の免疫細胞がほとんど循環しない中枢神経系(central nervous system、CNS)は、調節不全のサイトカインネットワークに対して特に脆弱であると思われる。神経変性疾患では、CNS常在細胞が炎症誘発性サイトカインの主要な産生因子であり、調節不全のサイトカインネットワーク及び神経炎症に寄与し得る。中枢神経系の損傷には、常在ミクログリア、末梢由来単球、マクロファージ、及び樹状細胞からなる自然免疫応答をもたらす循環する免疫細胞の動員が関与し得る。ミクログリア及びマクロファージの活性化状態は、厳密には炎症促進性又は抗炎症性ではなく、それよりも様々な機能状態を有し得る。ミクログリア及び/又は末梢由来単球及びマクロファージは、壊死組織片を取り除き、再生と恒常性を促進する抗炎症表現型を獲得する可能性がある。神経機能障害又は損傷は、ミクログリアを活性化して炎症誘発性サイトカインを産生し、血流から白血球を動員することもあり得る。アルツハイマー病(AD)などの神経変性状態では、ミクログリアの活性化が頻繁に見られ、細胞外のベータアミロイドプラーク及び過剰リン酸化タウ凝集体の蓄積に対する組織応答を反映している。神経炎症は、神経変性疾患の重要な要素であり、CNS細胞による炎症誘発性サイトカインの産生増加を特徴とする(Becher,B.,Spath,S.& Goverman,J.Cytokine networks in neuroinflammation.Nat Rev Immunol 17,49-59(2017))。神経炎症及びミクログリオーシスは、アルツハイマー病におけるプラーク蓄積、パーキンソン病及びハンチントン病における神経細胞死及び機能障害などの神経変性疾患の根底にあるメカニズムであると考えられている。
【0004】
ミクログリオーシスには、炎症シグナルに応答したミクログリアの異常な増殖及び/又は肥大が含まれる。概して、IL-34は、炎症及び免疫プロセスの調節において強力で多面的なサイトカインとして作用し、正常組織の恒常性におけるCNS常在ミクログリアの増殖の重要な調節サイトカインである。IL-34は、皮質、前嗅核、及び海馬のニューロンによって発現される。IL-34は、CSF-1と低い配列相同性を示すが、同様の一般構造を有し、両方のサイトカインが共通の受容体CSF-1Rに結合し、受容体の自己リン酸化及び二量体化を引き起こし、その後複数のシグナル伝達経路が活性化される(A.Freuchet,et al J Leukoc Biol 2021 Oct;110(4):771-796)。IL-34は、分泌型ホモ二量体サイトカインであり、CSF1Rの2つの活性化リガンドの1つとして作用し、受容体の自己リン酸化及び二量体化を引き起こし、その後複数のシグナル伝達経路が活性化される(例えば、Structural basis for the dual recognition of helical cytokines IL-34 and CSF-1 by CSF-1R.Structure 20,676-687,and Felix J,De Munck S,Verstraete K,Meuris L,Callewaert N,Elegheert J.et al.を参照されたい)。ヒトIL-34ポリペプチドは、例えば、米国特許第9,770,486号に開示されており、リーダー配列を有する242のアミノ酸、及び成熟型の222のアミノ酸からなる(配列番号31)。
【0005】
抗IL-34抗体は、当該技術分野で説明されており、例えば、国際公開第2016/196679号は、様々な抗IL-34抗体及びその潜在的使用について詳述している。しかしながら、現在まで、IL-34を標的とするいかなる抗体も、治療用途には承認されていない。
【0006】
したがって、代替及び/又は改善された抗IL-34抗体、その医薬組成物、並びにIL-34が関与する免疫介在性疾患、及び/若しくは神経炎症性障害などの抗IL-34抗体で治療可能な疾患、及び/若しくはアルツハイマー病に関連する治療及び/又は診断適用のためにそれらを使用する方法に対する満たされていない必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、新規の抗ヒトIL-34抗体を提供する。いくつかの実施形態によれば、本開示は、軽鎖可変領域(light chain variable region、LCVR)と、重鎖可変領域(heavy chain variable region、HCVR)と、を含む抗体を提供し、LCVRは、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、HCVRは、CDR、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、これらは、表1に提供されるCDRの組み合わせの集団から選択される。本明細書で使用される配列識別子は、表1及び明細書全体に列挙され、配列は、本明細書に提供されるアミノ酸及びヌクレオチド配列表に提供される。
【0008】
【0009】
したがって、本開示の実施形態は、ヒトIL-34に結合する抗体を提供し、抗体は、重鎖可変領域(heavy chain variable region、VH)及び軽鎖可変領域(light chain variable region、VL)を含み、VHは、重鎖相補性決定領域(heavy chain complementarity determining region、HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、VLは、軽鎖相補性決定領域(light chain complementarity determining region、LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、HCDR1は、配列番号5を含み、HCDR2は、配列番号6を含み、HCDR3は、配列番号7を含み、LCDR1は、配列番号8を含み、LCDR2は、配列番号9を含み、LCDR3は、配列番号10を含む。
【0010】
したがって、本開示の実施形態は、配列番号4のアミノ酸配列を有するLCVR及び配列番号3のアミノ酸配列を有するHCVRを含む抗体も提供する。
【0011】
したがって、本開示の実施形態は、ヒトIL-34に結合する抗体を更に提供し、抗体は、配列番号1を含む重鎖(heavy chain、HC)と、配列番号2を含む軽鎖(light chain、LC)と、を含む。
【0012】
他の実施形態によれば、本開示は、配列番号4のアミノ酸配列を有するLCVRと、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCVRと、を含み、ヒンジ領域及びFc領域は、配列番号32及び配列番号33から選択される、抗体も提供する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「抗体1」とは、配列番号5のHCDR1アミノ酸配列と、配列番号6のHCDR2アミノ酸配列と、配列番号7のHCDR3アミノ酸配列と、配列番号8のLCDR1アミノ酸配列と、配列番号9のLCDR2アミノ酸配列と、配列番号10のLCDR3アミノ酸配列と、配列番号3のHCVRアミノ酸配列と、配列番号4のLCVRアミノ酸配列と、配列番号1のHCアミノ酸配列と、配列番号2のLCアミノ酸配列と、を有する抗体を指す。抗体1は、配列番号11のHC DNA配列、及び配列番号12のLC DNA配列によってコードされ得る。本明細書で配列が示される抗体の各々におけるフレームワーク及びCDR配列は、特に指定がない限り、North,et al..J.Mol.Biol.2011:406:228-256の方法と一致する注釈規則を使用して注釈が付けられている。
【0014】
他の実施形態によれば、本開示は、配列番号2と少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列を有するLCと、配列番号1と少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列を有するHCと、を含む抗体も提供する。
【0015】
他の実施形態によれば、本開示は、配列番号2のアミノ酸配列を有するLCと、配列番号35のアミノ酸配列を有するHCと、を含む抗体も提供し、本明細書では抗体2と更に称される。
【0016】
他の実施形態によれば、本開示は、配列番号2のアミノ酸配列を有するLCと、配列番号36のアミノ酸配列を有するHCと、を含む抗体も提供し、本明細書では抗体3と更に称される。
【0017】
他の実施形態によれば、本開示は、配列番号2のアミノ酸配列を有するLCと、配列番号37のアミノ酸配列を有するHCと、を含む抗体も提供し、本明細書では抗体4と更に称される。
【0018】
各HCのカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を定義し、本開示のいくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を低下させる各HCの定常領域に1つ以上の改変を有する。好ましくは、本開示の実施形態は、IgG4抗体であり、したがって、IgG4 Fc領域、又はヒトIgG4由来のFc領域、例えば改変IgG4 Fc領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、エフェクター機能を低下させる両方のHCの定常領域における改変、及びアミノ酸置換が、IgG4ヒンジ及びFc領域に導入される。したがって、いくつかの実施形態は、残基230及び231の両方にアミノ酸アラニンを含む両方のHCの定常領域における改変(それぞれ、抗体1のHC及び配列番号33に例示される)と、残基224にアミノ酸プロリンを含み、安定性を促進する両方のHCの定常領域における更なる改変(抗体1のHC、及び例えば配列番号32に例示される)と、残基443のアミノ酸リジンの欠失(配列番号1のHCに例示される)と、を有する。
【0020】
本開示の抗体は、以下の特性のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない、先行技術の抗IL-34抗体に対する特に有利な特性の組み合わせを有すると考えられる:1)望ましい会合及び解離速度、2)抗神経炎症応答及びインビボ有効性を達成するためのヒトIL-34の中和における効力、3)免疫媒介性障害及び/又は炎症性障害の治療及び/又は予防のための単剤療法としての十分に強い力、4)持続的な作用持続時間、5)十分に制限された望ましくないサイトカイン放出の誘導、6)許容される低い免疫原性(すなわち、ヒトにおいて十分に非免疫原性)、7)不都合な免疫無防備状態の回避、及び/又は8)炎症性又は神経炎症性障害、例えばADの治療における開発及び/又は使用に許容される、熱安定性、溶解性、低い自己会合、及び薬物動態特徴を含むがこれらに限定されない、望ましいインビボ安定性、物理的及び化学的安定性。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の実施形態は、本明細書に記載の実施形態で提供されるような薬理学的に有利な抗ヒトIL-34抗体を使用して、IL-34の中和を介して、炎症性及び/又は神経炎症性関連障害の予防、ダウンレギュレーション、又は改善に有用な組成物及び方法を提供することによって、先行技術に対して有意な進歩をもたらす。本開示の抗ヒトIL-34抗体は、好ましくは、免疫応答の自然免疫部分の阻害、及び/又はミクログリオーシス若しくは他の単球/マクロファージ系統の細胞の活性化及び/又は増殖の抑止を通じて、免疫及び/又は炎症病理を改善するか、又は免疫ホメオスタシスを回復することができ、それにより、根底にある疾患の病理を直接変更する。そのような抗体の臨床的使用は、治療されている疾患の長期持続性につながる可能性がある。
【0022】
更に、ヒトIL-34に特異的であり、改善された結合親和性を有し、かつヒトIL-34測定において感度の向上を示す、診断用抗ヒトIL-34抗体、並びに最小限の干渉及び広い希釈直線性をもたらす改善された酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)アッセイ条件に対する必要性が存在する。本開示のいくつかの態様によれば、配列番号31によって与えられるヒトIL-34に結合する、ヒトIL-34中和抗体を含む抗ヒトIL-34抗体が提供される。インターロイキン34(IL-34;未同定タンパク質C16orf77としても知られる)は、39kDaの単量体からなるホモ二量体として分泌される。既知のサイトカインファミリーには属していない。ヒトIL-34は、20個のAAシグナル配列を含む242個のアミノ酸(amino acid、AA)前駆体として合成され、222個のAA成熟鎖をもたらす。本明細書で使用される場合、IL-34は、成熟鎖を指す。成熟鎖には、N結合グリコシル化の可能性のある部位が1つ含まれている。IL-34は、心臓、脳、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、小腸、前立腺、結腸などの様々な組織で発現しており、脾臓で最も豊富である。「h IL-34」又は「ヒトIL-34」は、IL-34ポリペプチドに関して本明細書で使用される場合、別段の記載がない限り、野生型ヒトIL-34を指し、好ましくは配列番号31に示されるアミノ酸配列を有し、これは、リーダー配列が除去された成熟IL-34である。(例えば、Lin et.al.,Science(2008)Vol.320,Issue5877,pp.807-811を参照されたい)。
【0023】
例示的なヒトIL-34(配列番号31)は、アミノ酸配列:NEPLEMWPLTQNEECTVTGFLRDKLQYRSRLQYMKHYFPINYKISVPYEGVFRIANVTRLQRAQVSERELRYLWVLVSLSATESVQDVLLEGHPSWKYLQEVETLLLNVQQGLTDVEVSPKVESVLSLLNAPGPNLKLVRPKALLDNCFRVMELLYCSCCKQSSVLNWQDCEVPSPQSCSPEPSLQYAATQLYPPPPWSPSSPPHSTGSVRPVRAQGEGLLPを有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗IL34抗体」又は「抗ヒトIL-34抗体」とは、ヒトIL-34に結合する抗体を指す。好ましくは、インビトロ又はインビボで投与された「ヒト抗IL34抗体」又は「抗ヒトIL-34抗体」は、IL-34活性中和及び/又は応答ブロック、例えば、少なくとも1つの著しく低下した所望の活性、例えば、IL-34反応性分子又は細胞エンドポイントの変化によって証明されるように、IL-34シグナル伝達の望ましい減少をもたらす。例えば、中枢神経系におけるミクログリアの数、密度、又は表現型は、IL-34反応性分子又は細胞効果の可能性の例である。本明細書で使用される場合、「シグナル伝達(signaling)」及び「シグナル伝達(signal transduction)」及び「IL-34介在」という用語は、IL-34に関連する場合、IL-34の活性に起因する細胞及び/又は細胞間応答を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体の実施形態には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又はコンジュゲート抗体が含まれる。抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA)、及び任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のものであってもよい。例示的な抗体は、4つのポリペプチド鎖:鎖間ジスルフィド結合を介して架橋される2つの重鎖(HC)及び2つの軽鎖(LC)から構成された免疫グロブリンG(immunoglobulin G、IgG)型抗体である。LCは、カッパ又はラムダとして分類され、これらは各々、特定の定常領域を特徴とする。本開示の実施形態は、IgG1、IgG2、又はIgG4抗体を含み得、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖を更に含み得る。好ましくは、本開示の抗体は、κ定常領域である軽鎖定常領域を含む。
【0026】
HCは、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンとして分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD又はIgEとして定義する。4つのポリペプチド鎖の各々のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~125個以上のアミノ酸の可変領域を含む。4つのポリペプチド鎖の各々のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖の定常領域は、CH1、CH2及びCH3ドメインを含有する。CH1は、HCVRの後にあり、CH1及びHCVRは、抗原に結合する抗体の一部である抗原結合(Fab)フラグメントの重鎖部分を形成する。CH2は、ヒンジ領域の後にあり、CH3の前にある。CH3は、CH2の後にあり、重鎖のカルボキシ末端にある。軽鎖の定常領域は、1つのドメインCLを含有する。CLは、LCVRの後にあり、CL及びLCVRは、Fabの軽鎖部分を形成する。
【0027】
本開示の抗体は、サブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に更に分類することができるIgG HCを含み、本開示の実施形態は、例えば、エフェクター機能を増強するか、又は低減する、各HCの定常領域に1つ以上の改変を含み得る。本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む抗体の領域を指す。任意選択で、Fc領域は、抗体重鎖のヒンジ領域の一部分又はヒンジ領域全体を含み得る。IgG1は、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell cytotoxicity、ADCC)及び補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity、CDC)を誘導することが知られており、本明細書に記載のFc変異は、凝集を低減し、ADCC又はCDC活性(又は他の機能)を低減若しくは増強し、及び/又は抗体の薬物動態を改変し得る。本明細書に記載の抗ヒトIL-34抗体の実施形態は、FcγR及びC1q受容体への結合を低減し、それにより、野生型IgG Fc領域を有する抗体によって誘導され得る細胞傷害性を低減又は除去する。したがって、いくつかの実施形態によれば、変異は、本明細書に記載の位置でFc領域に導入される。改変Fc領域を含むそのような抗ヒトIL-34抗体のエフェクター機能を十分に低減又は除去することにより、患者の安全性を改善することができ、本明細書に記載の他の特性と組み合わせて、望ましくない活性を回避しながら有用な活性の改善されたプロファイルを有する治療薬を提供することができる。
【0028】
特定の生物学的系において発現する場合、抗体は、Fc領域においてグリコシル化される。典型的には、グリコシル化は、高度に保存されたN-グリコシル化部位の抗体のFc領域に生じる。N-グリカンは、典型的には、アスパラギンに結合する。抗体は、他の位置でもグリコシル化され得る。本開示の抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、単一のコピー又はクローン(例えば、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む)に由来する抗体であり、それが産生される方法により定義されるものではない。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、合成技術、例えば、CDR移植、又はそのような技術若しくは当該技術分野で既知の他の技術の組み合わせにより産生することができる。本開示は、本開示の抗体がヒト又はヒト化抗体であることを企図する。モノクローナル抗体の文脈において、「ヒト」及び「ヒト化」という用語は、当業者に周知である(Weiner LJ,J.Immunother.2006;29:1-9;Mallbris L,et al.,J.Clin.Aesthet.Dermatol.2016;9:13-15)。本開示の抗体の例示的な実施形態はまた、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fdフラグメント及び線状抗体などの、抗原と特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部分を含む、抗体フラグメント又は抗原結合フラグメントを含む。
【0029】
各LC及びHCのアミノ末端部分は、その中に含有されるCDRを介した抗原認識を主に担う約100~120アミノ酸の可変領域を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼ばれる、超可変領域に更に細分され得る。CDRはタンパク質の表面上に露出しており、抗原結合特異性のための抗体の重要な領域である。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成されており、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。本明細書では、重鎖の3つのCDRを「HCDR1、HCDR2、及びHCDR3」と称され、軽鎖の3つのCDRを「LCDR1、LCDR2、及びLCDR3」と称される。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。抗体が特定の抗原に結合する機能的能力は、6つのCDRによって大きく影響される。アミノ酸残基のCDRへの割り当ては、Kabat(Kabat et al.,「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991));Chothia(Chothia et al.,「Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987);Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、North(North et al.,「A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations」,Journal of Molecular Biology,406,228-256(2011))、又はIMGT(the international ImMunoGeneTics database、www.imgt.orgで利用可能、Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.1999;27:209-212)に記載されるものを含む、周知のスキームに従って行うことができる。
【0030】
本開示の目的のために、別段の指定がある場合を除き、本明細書に記載の抗IL-34抗体、及びLCVR領域及びHCVR領域内のCDRドメインへのアミノ酸の割り当てには、NorthのCDR定義が使用される。以下の表2は、Benchling informatics softwareを使用して生成された、それぞれ、North、Kabat、Chothia、及び/又はIMGTの規則に基づく、抗体1及び/又は本開示の抗体のCDR配列を提供する。
【0031】
【0032】
本開示の抗体の実施形態は、薬理学的に有用かつ重要な活性及び特性の組み合わせを有し、ある点では、ヒトIL-34に高い親和性及び高い特異性で結合することができ、並びに他の有用な特性を有する。本明細書で使用される「結合する」という用語は、別段の定めがない限り、別のタンパク質又は分子との引力相互作用を形成するタンパク質又は分子の能力を意味することを意図しており、当該技術分野で既知である一般的な方法によって決定されるように、2つのタンパク質又は分子の近接をもたらす。ヒトIL-34に対する抗IL-34抗体の親和性に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という語句は、別段の定めがない限り、本質的に本明細書に記載されるように、SPR(Surface Plasmon Resonance、表面プラズモン共鳴)バイオセンサー、及び/又はMSD(Meso Scale Discovery)機器によって測定される溶液平衡滴定(SET、solution equilibrium titration)の使用によるものを含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって決定されるように、好ましくは約1×10-10M未満、更により好ましくは、約1×10-10M~約1×10-12MのKDを意味することを意図する。「特異的に結合する」という語句はまた、他の抗原と比較して、ヒトIL-34に対する抗IL-34抗体の相対的な親和性を示し、ヒトIL-34に対する親和性は、ヒトIL-34の特異的認識をもたらす。
【0033】
本開示の抗体の実施形態は、本実施形態の配列を含む構築物から、当該技術分野で知られている様々な技術によって発現及び産生され得る。本明細書で互換的に使用される「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、天然ヌクレオチド、改変ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチドの類似体を組み込んだDNA、cDNA、及びRNA分子などの一本鎖及び/又は二本鎖ヌクレオチド含有分子を含むヌクレオチドのポリマーを指す。本開示のポリヌクレオチドはまた、例えば、DNA若しくはRNAポリメラーゼ又は合成反応によってその中に組み込まれた基質を含んでもよい。本開示のDNA分子は、本開示の抗体中のポリペプチド(例えば、重鎖、軽鎖、可変重鎖、及び可変軽鎖)のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする天然に存在しないポリヌクレオチド配列を含む、DNA分子である。
【0034】
HCVR又はLCVR領域をコードする単離DNAは、それぞれ重鎖又は軽鎖を形成するために、それぞれHCVR又はLCVRをコードするDNAを、重鎖又は軽鎖定常領域をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト及び他の哺乳動物の重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において既知である。これらの領域を包含するDNAフラグメントは、例えば、標準的なPCR増幅によって得ることができる。
【0035】
本開示のポリヌクレオチドは、配列が発現制御配列に作動可能に連結された後に宿主細胞において発現し得る。発現ベクターは、典型的には、エピソーム、又は宿主染色体DNAの一体化した部分のいずれかとして、宿主生物中で複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたそれらの細胞の検出を可能にするために、選択マーカー、例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、及びジヒドロ葉酸レダクターゼを含む。目的のポリヌクレオチド配列(例えば、抗体のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及び発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主のタイプに応じて異なる周知の方法によって宿主細胞に導入することができる。
【0036】
本開示の抗体は、哺乳動物細胞において容易に産生することができ、この非限定的な例は、CHO、NS0、HEK293、又はCOS細胞を含む。宿主細胞は、当該技術分野において周知の技術を使用して培養される。哺乳動物の抗体発現は、典型的にグリコシル化をもたらす。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合のいずれかである。N結合グリコシル化とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸への糖、例えばN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの結合を指す。典型的には、グリコシル化は、高度に保存されたN-グリコシル化部位(例えば、IMGT又はEUインデックスナンバリングによると、IgG1における297位)での抗体のFc領域に生じる。グリコシル化部位は、グリコシル化を変更するために改変することができる(例えば、グリコシル化を遮断若しくは低減するか、又はアミノ酸配列を変更して追加若しくは多様なグリコシル化を生成する)。
【0037】
IgGサブクラスからの哺乳動物での抗体の発現は、一方又は両方の重鎖からのC末端アミノ酸のクリッピングをもたらす可能性があり、例えば、IgG1抗体の場合、1つ又は2つのC末端アミノ酸が除去され得る。IgG1抗体の場合、C末端リジンが存在する場合、発現中に重鎖から切り詰められるか、又は切り取られ得る。追加的に、最後から2番目のグリシンも、同様に重鎖から切り詰められるか、切り取られ得る。
【0038】
哺乳動物での抗体の発現はまた、N末端アミノ酸の改変ももたらし得る。例えば、重鎖又は軽鎖の最もN末端のアミノ酸がグルタミンである場合、ピログルタミン酸に改変され得る。
【0039】
本開示の抗体、又はそれを含む医薬組成物は、非経口経路によって投与されることができ、この非限定的な例は、皮下投与及び静脈内投与である。本開示の抗体は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と共に単回投与若しくは複数回投与で患者に投与され得る。本開示の医薬組成物は、当該技術分野において周知の方法(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd ed.(2012),A.Loyd et al.,Pharmaceutical Press)によって調製することができ、本明細書に開示される抗体、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0040】
本発明の抗体実施形態の使用:
いくつかの実施形態によれば、本開示の抗IL-34抗体は、免疫介在性疾患の治療に有用である。本明細書で使用される場合、「免疫介在性疾患」又は「炎症性疾患又は障害」という用語は、互換的に使用され、不適切又は過剰な免疫応答から生じる望ましくない状態を指し、そこではIL-34阻害により、恒常性がより高く、より病理学的でない応答が引き起こされる。「免疫介在性疾患」又は「炎症性障害」という用語は、ミクログリア若しくはマクロファージの細胞性免疫応答によって媒介されるか、又は組織球、クッパー細胞、肺胞マクロファージ、腸管マクロファージ、マクロファージ様滑膜細胞、若しくはランゲルハンス細胞などの同様の組織常在細胞型の応答によって媒介されるかに関係なく、そのような状態を含むことを意味する。本明細書に記載される本開示の抗体によって治療されることが企図される例示的な疾患としては、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome、SS);関節リウマチ(Rheumatoid arthritis、RA);炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis、ALS)、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)が挙げられる。
【0041】
いくつかのより具体的な実施形態では、免疫介在性疾患は、アルツハイマー病(AD)である。本開示の他の実施形態によれば、抗IL-34抗体は、免疫介在性疾患の診断用途に有用である。いくつかの実施形態では、免疫介在性疾患は、AD;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のうちの少なくとも1つである。
【0042】
本開示は、本開示の抗IL-34抗体と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、医薬組成物を更に提供する。更に、本開示は、AD;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの免疫介在性疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本開示の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0043】
加えて、本開示は、免疫介在性疾患を治療する方法を提供する。より具体的には、本開示は、AD;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を含む免疫介在性疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本開示の抗IL-34抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0044】
本開示はまた、治療に使用するための本開示の抗IL-34抗体を提供する。より具体的には、本開示は、AD;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を含む免疫介在性疾患の治療に使用するための本開示の抗IL-34抗体を提供する。
【0045】
ある特定の実施形態では、本開示は、AD;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を含む1つ以上の免疫介在性疾患の治療のための医薬品の製造における本開示の抗IL-34抗体の使用を提供する。
【0046】
本開示の抗体は、IL-34が障害の病因に寄与している可能性がある免疫介在性障害の同定に有用である。更なる実施形態では、本開示は、患者の免疫介在性疾患を治療する方法を提供する。そのような方法は、患者試料を抗IL-34抗体と接触させ、患者試料中のヒトIL-34と抗体との間の結合を検出するステップと、患者試料中のIL-34の存在が、罹患していない個体において観察される基準値を超えて検出される場合、患者が免疫介在性疾患を有する、そのリスクがある、その治療を必要とする、及び/又は免疫介在性疾患に関連する症状のリスクがある、と診断するステップと、を含む(例えば、Xie,H.H.,et al.Elevated Serum Interleukin-34 Level in Patients with Systemic Lupus Erythematosus Is Associated with Disease Activity.Sci Rep 8,3462(2018)を参照されたい。本明細書に提供される治療方法のいくつかのより具体的な実施形態によれば、そのような方法は、対照標準を、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じIL-34の第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させる更なるステップを含む、基準値を決定するステップと、対照標準を、検出可能な標識を有し、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じIL-34の第2のエピトープ領域に結合する第2の抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップと、を更に含む。いくつかの具体的な実施形態では、抗IL-34抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、基準値は、例えばCNS組織ライセートからの、約10~30pg/mLである。ある特定の実施形態では、免疫介在性疾患は、AD;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のうちの1つである。いくつかの実施形態では、患者試料は、CSF、血液、血清、組織ライセート、又は血漿のうちの1つである。いくつかの実施形態によれば、本方法は、患者試料を、IL-34の第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗IL-34抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルにより提供されるシグナルを検出するステップとを更に含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。ある特定の実施形態によれば、第1及び第2の抗IL-34抗体は、一緒にビンに入れられない。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、患者試料中のIL-34を検出する方法であって、患者試料を、IL-34の第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップと、患者試料を、IL-34の第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗体と接触させるステップと、当該検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出するステップと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者試料は、血液、血清、組織ライセート、又は血漿のうちの1つである。いくつかのより具体的な実施形態によれば、IL-34の第1のエピトープ領域は、IL-34の第2のエピトープ領域と部分的に重複する。更に、いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体と接触させる当該ステップは、同時に生じる。いくつかの具体的な実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態によれば、患者試料中のIL-34を定量化する方法が提供される。そのような方法は、患者試料を、IL-34の第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップと、患者試料を、IL-34の第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗体と接触させるステップと、当該検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出するステップと、対照標準を、(患者試料を接触させる際に使用されるものと)同じIL-34の第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップと、対照標準を、(患者試料を接触させる際に使用されるものと)同じIL-34の第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗体と接触させるステップと、当該検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップと、を含む。いくつかの実施形態では、患者試料は、血液、血清若しくは血漿、又は組織ライセートのうちの1つである。いくつかのより具体的な実施形態によれば、IL-34の第1のエピトープ領域は、IL-34の第2のエピトープ領域と部分的に重複する。更に、いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体と接触させる当該ステップは、同時に生じる。いくつかの具体的な実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。いくつかの具体的な実施形態では、第2の抗体は、表1又は本明細書に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、免疫介在性疾患を診断する方法が提供される。このような方法は、患者試料を抗IL-34抗体と接触させ、患者試料中のIL-34と抗体との間の結合を検出するステップを含む。いくつかの具体的な実施形態によれば、診断する方法は、患者試料中のIL-34の存在が基準値を超えて検出される場合、患者が免疫介在性疾患を有する、そのリスクがある、その治療が必要である、及び/又は免疫介在性疾患に関連する症状のリスクがある、と診断することを含む。いくつかのより具体的な実施形態によれば、そのような方法は、対照標準を、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じIL-34の第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップを含む、基準値を決定するステップと、対照標準を、検出可能な標識を有し、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じIL-34の第2のエピトープ領域に結合する第2の抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップと、を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。本明細書に提供される免疫介在性疾患を診断する方法のいくつかの実施形態は、患者試料を、IL-34の第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗IL-34抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルにより提供されるシグナルを検出するステップとを更に含む。いくつかの具体的な実施形態では、抗IL-34抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。具体的な実施形態によれば、IL-34の第1のエピトープ領域は、IL-34の第2のエピトープ領域と部分的に重複する。ある特定の実施形態によれば、第1及び第2の抗体は、一緒にビンに入れられない。更なる実施形態によれば、基準値は、CNS組織ライセートからの約10~30pg/mLのおおよその範囲であり、及び/又は適切な基準群及び試料源について当業者によって決定される。更なる実施形態では、免疫介在性疾患は、AD;タウオパチー;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のうちの1つである。
【0050】
一実施形態では、本開示は、体液試料中のヒトIL-34レベルを決定する方法であって、(a)体液を、配列番号31のアミノ酸配列からなるヒトIL-34に特異的に結合する抗ヒトIL-34診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることであって、抗体、又はその抗原結合フラグメントが、アミノ酸配列(配列番号8)、(配列番号9)、及び(配列番号10)をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と、アミノ酸配列(配列番号5)、(配列番号6)、及び(配列番号7)をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、を含む、接触させることと、(b)任意選択で、任意の非特異的に結合したモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを除去することと、(c)ヒトIL-34に特異的に結合しているモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの量を検出及び/又は定量化することと、を含む、方法を提供する。好ましくは、当該体液は、血液、血清若しくは血漿、又は脳脊髄液であり、当該接触することは、エクスビボで起こる。
【0051】
タウオパチー疾患には、アルツハイマー病(AD)、ピック病(Pick’s disease、PiD)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy、PSP)、皮質基底核変性症(corticobasal degeneration、CBD)、嗜銀顆粒性認知症、ダウン症候群、慢性外傷性脳症(chronic traumatic encephalopathy、CTE)、外傷性脳損傷(traumatic brain injury、TBI)、17番染色体に関連するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia with Parkinsonism linked to chromosome、FTDP-17)、グアムのパーキンソニズム-認知症複合体、ニーマン-ピック病C型、筋強直性ジストロフィが含まれるが、これらに限定されない(Li,C.,Gotz,J.Tau-based therapies in neurodegeneration:opportunities and challenges.Nat Rev Drug Discov 16,863-883(2017)を参照されたい)。
【0052】
本開示の実施形態では、患者は、本明細書に記載の抗体による治療を必要とする、本明細書に記載の疾患又は障害のうちの1つなどの医学的リスク、状態又は障害を有することが診断されたヒトである。本開示の方法によって治療することができる障害が、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの、確立され許容されている分類によって知られている場合、それらの分類は、様々な周知の医学書に見出すことができる。例えば、現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第5版(DSM-5)は、本明細書に記載の特定の障害を同定するための診断ツールを提供する。また、International Classification of Diseases第10版(ICD-10)は、本明細書に記載の特定の障害についての分類を提供する。当業者は、DSM-5及びICD-10に記載のものを含む、本明細書に記載の疾患及び障害についての代替の命名法、疾病分類学、及び分類システムがあり、用語及び分類システムが医科学の進歩と共に進化することを認識するであろう。
【0053】
「治療すること(treating)」(又は「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」)という用語は、対象における既存の症状、障害、状態、又は疾患の進行又は重症度を遅延、妨害、阻止、緩和、停止、軽減、又は反転させることを指す。「対象」という用語は、ヒトを指す。「ヒト対象」及び「患者」という用語は、本開示において互換的に使用される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「治療方法」とは、本明細書に記載の疾患又は障害を治療するための組成物の使用、及び/又は本明細書に記載の疾患又は障害を治療するための医薬品の製造における使用及び/又は使用のための組成物の使用に等しく適用可能である。
【0055】
「予防する」又は「予防」という用語は、アルツハイマー病の発症又は進行を予防するために、無症候性対象又は前臨床アルツハイマー病に罹患している対象への本発明の抗体の予防上の投与を意味する。
【0056】
本明細書で使用される「進行を遅らせる」という用語は、対象における疾患又はその症状の進行を遅らせる又は抑えることを意味する。
【0057】
「Aβの沈着を特徴とする疾患」又は「Aβ沈着物を特徴とする疾患」という用語は、互換的に使用され、脳内又は脳脈管構造内のAβ沈着物を病理学的に特徴とする疾患である。これには、アルツハイマー病、ダウン症候群、脳アミロイド血管障害などの疾患が含まれる。アルツハイマー病の臨床診断、病期分類又は進行は、既知の技術を使用し、結果を観察することにより、当業者のような担当診断医又は医療専門家によって容易に判定され得る。これは、一般に、脳のプラークイメージング、精神若しくは認知評価(例えば、臨床的認知症評定-ボックスの要約(Clinical Dementia Rating-summary of box、CDR-SB)、ミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Exam、MMSE)若しくはアルツハイマー病評価スケール-認知(Alzheimer’s Disease Assessment Scale-Cognitive、ADAS-Cog))、又は機能評価(例えば、アルツハイマー病共同研究-日常生活の活動(Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living、ADCS-ADL)を含む。認知及び機能評価を使用して、患者の認知(例えば、認知低下)及び機能(例えば、機能低下)の変化を決定することができる。したがって、対象は、本明細書に記載の技術に従って、「緩徐進行性」認知機能低下を有すると判定され得る。例示的な実施形態において、「緩徐進行性」認知機能低下は、iADRSによって特定することができ、ここで、対象のiADRは、例えば所定の期間(例えば、6、12、18又は24ヶ月)にわたって約20未満低下している。別の例示的な実施形態では、「緩徐進行性」認知機能低下は、対象がAPOE-4ホモ接合型陰性又はAPOE-4ヘテロ接合型であるAPOE-4ジェノタイピングによって同定することができる。別の例示的な実施形態では、「緩徐進行性」認知機能低下は、MMSEによって特定することができ、ここで、対象は、約27のMMSE、又は所与の期間(例えば、6、12、18又は24ヶ月)にわたって約3未満のMMSE低下を有すると判定されている。本明細書で使用される「臨床的アルツハイマー病」は、アルツハイマー病の診断された段階である。これには、前駆期アルツハイマー病、軽度アルツハイマー病、中等度アルツハイマー病及び重度アルツハイマー病と診断された状態が含まれる。「前臨床アルツハイマー病」という用語は、臨床的アルツハイマー病に先行する段階であり、バイオマーカーの測定可能な変化(CSFAβ42レベル又はアミロイドPETによる沈着した脳プラークなど)は、臨床的アルツハイマー病に進行する、アルツハイマー病の患者の最も初期の徴候を示す。これは通常、記憶喪失及び混乱のような症状が顕著となる前である。前臨床アルツハイマー病には、1つ又は2つのAPOE e4対立遺伝子を保持するためにADを発症するリスクが高い患者だけでなく、発症前の常染色体優性保因者も含まれる。
【0058】
認知機能低下の低減又は緩徐化は、臨床認知症評価-ボックスの要約、ミニメンタルステート検査、又はアルツハイマー病評価スケール-認知などの認知評価によって測定することができる。機能低下の低減又は緩徐化は、ADCS-ADLなどの機能評価によって測定することができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「mg/kg」とは、キログラム単位の体重に基づいて、対象に投与される抗体又は薬物のミリグラム単位の量を意味する。用量は、一度に与えられる。例えば、体重70kgの対象に対する抗体の10mg/kg用量は、単回投与で投与される抗体の単回700mg用量である。同様に、体重70kgの対象に対する20mg/kg用量の抗体は、単回投与で投与される抗体の1400mg用量となる。
【0060】
本明細書で使用される場合、18F-フロルタウシピルベースの定量分析を用いて、タウ負荷が1.10SUVr未満(<1.10SUVr)である場合、ヒト対象は、「非常に低いタウ」負荷を有し、定量分析は、SUVrの計算を指し、SUVrは、参照領域と比較した場合、脳内の関心のある特定の標的領域内のカウントを表す(マルチブロック重心判別分析又はMUBADA、Devous et al,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」J.Nucl.Med.59:937-943(2018)を参照されたい)(参照シグナル強度又はPERSIのパラメトリック推定値、Southekal et al.,「Flortaucipir F 18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018)を参照されたい)。本明細書で使用される場合、18F-フロルタウシピルベースの定量分析を使用して、タウ負荷が1.46SUVr以下(すなわち、≦1.46SUVr)である場合、ヒト対象は、「非常に低いタウから中程度のタウ」負荷」を有し、定量分析は、SUVrの計算を指し、SUVrは、参照領域と比較した場合、脳内の関心のある特定の標的領域内のカウントを表す(MUBADA、Devous et al,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」J.Nucl.Med.59:937-943(2018)を参照されたい)(PERSI、Southekal et al.,「Flortaucipir F 18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018)を参照されたい)。
【0061】
本明細書で使用される場合、18F-フロルタウシピルベースの定量分析を使用して、タウ負荷が1.10以上から1.46以下(すなわち、≦1.10SUVr~≦1.46SUVr)である場合、ヒト対象は、「低いタウから中程度のタウ」負荷を有し、定量分析は、SUVrの計算を指し、SUVrは、参照領域と比較した場合、脳内の関心のある特定の標的領域内のカウントを表す(MUBADA、Devous et al,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」J.Nucl.Med.59:937-943(2018)を参照されたい)(PERSI、Southekal et al.,「Flortaucipir F 18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018)を参照されたい)。「低いタウから中等度のタウ」負荷を有するヒト対象は、「中間」タウ負荷を有すると称され得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、18F-フロルタウシピルベースの定量分析を使用して、タウ負荷が1.46SUVr超(すなわち、>1.46SUVr)である場合、ヒト対象は、「高いタウ」負荷を有し、定量分析は、SUVrの計算を指し、SUVrは、参照領域と比較した場合、脳内の関心のある特定の標的領域内のカウントを表す(MUBADA、Devous et al,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」J.Nucl.Med.59:937-943(2018)を参照されたい)(PERSI、Southekal et al.,「Flortaucipir F 18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018)を参照されたい)。
【0063】
本明細書で使用される「約」という用語は、最長±10%を意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「自然免疫」という用語は、免疫応答の適応性アームとは対照的に、適応免疫応答(抗体及びT細胞応答)を開始及び維持するために必要とされる免疫応答のアームを含む。
【0065】
「有効量」とは、治療医療専門家によって求められている組織、系、又はヒトの生物学的若しくは医学的応答、又は所望の治療効果を誘発するであろう本開示の抗ヒトIL-34抗体、又はそのような抗体を含む医薬組成物の量を意味する。本明細書で使用される場合、患者の「有効応答」、又は治療に対する患者の応答性という用語は、本開示の抗体投与時に患者に付与される臨床上又は治療上の利益を指す。抗体の有効量は、個体の病状、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて変動し得る。有効量はまた、抗体の任意の毒性効果又は有害効果よりも治療的に有益な効果が上回る量である。そのような利益には、炎症又は免疫活性化のレベルの低下、免疫介在性疾患又は障害の安定化、又は免疫介在性障害の徴候若しくは症状の改善のうちのいずれか1つ以上が含まれる。代替的に、そのような利益には、以下:移植された臓器の免疫寛容の増加;安定化された自己免疫疾患又は障害;又は自己免疫障害の徴候若しくは症状の改善のうちのいずれか1つ以上が含まれる。
【0066】
本明細書に開示される方法の潜在的な利点は、免疫介在性障害又は神経炎症性障害に罹患している患者において、許容される忍容性、毒性、及び/又は有害事象を含む許容される安全性プロファイルで、著しい及び/又は長期にわたる軽減をもたらす可能性であり、したがって患者は、全体的な治療方法から利点を得る。本開示の治療の有効性は、様々な免疫介在性障害の治療を評価する際に一般的に使用される様々なエンドポイントによって測定することができる。例えば、免疫細胞活性化マーカー、炎症の尺度、細胞周期依存性バイオマーカーの測定と視覚化、及び/又は様々な炎症若しくは免疫による応答の測定、又は組織特異的バイオマーカー評価を含む、本開示の任意の特定の療法の有効性を決定することへの他のアプローチを任意選択で使用することができる。
【0067】
有効量は、既知技術を使用して、及び同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により容易に決定され得る。本開示の抗ヒトIL-34抗体の有効量は、単回用量又は複数回用量で投与され得る。更に、本開示の抗体の有効量は、一度だけ投与される場合、有効量未満である量の複数回用量で投与され得る。患者に対する有効量を決定する際に、患者の大きさ(例えば、体重又は質量)、体表面積、年齢及び一般的な健康状態、関連する特定の疾患又は障害、疾患又は障害の程度又は関与又は重症度、個々の患者の応答、投与された特定の化合物、投与様式、投与された調製物の生物学的利用能特性、選択された投与レジメン、併用薬の使用、並びに担当医師に既知である他の関連する状況を含むがこれらに限定されない、いくつかの因子が、担当医師によって考慮される。
【0068】
毎週、2週間ごと、毎月、又は四半期ごとの非経口(皮下、筋肉内、及び/又は静脈内を含むがこれらに限定されない)用量は、約0.5mg/kg~約50mg/kgであり得る。本明細書で使用される場合、「1ヶ月」又はその派生語は、28~31の連続した日を含む期間を指す。
【0069】
本明細書に開示される方法の潜在的な利点は、免疫介在性障害又は神経炎症性障害に罹患している患者において、許容できる忍容性、毒性、及び/又は有害事象を含む許容できる安全性プロファイルで、著しい及び/又は長期にわたる軽減をもたらす可能性であり、したがって患者は、治療方法全体から利益を得る、より具体的には、本開示の抗体が、臨床的に望ましくない免疫抑制及び/又は「サイトカインストーム」又は有意なサイトカイン放出などの免疫関連の有害事象を回避しながら、効果的な治療を提供する。本開示の抗体は、サイトカインストーム、又はサイトカインの有害な放出の治療に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「著しいサイトカイン放出」は、当業者に知られている方法によって検出することができる測定可能なサイトカインの著しい増加を指す。例えば、著しいサイトカイン放出は、ELISAによってヒト血液試料で検出され得、ここで、刺激されていない血液からのサイトカインレベルは、抗体と共にインキュベートされた血液を伴うサイトカインレベルと比較される。いくつかのそのような試験では、例えば、IL-6、若しくはIL-8、又はIFN-γのレベルが、刺激されていない血液のレベルと比較して、抗体と共にインキュベートされた血液中で少なくとも3倍高い場合、著しいサイトカイン放出が検出され得る。好ましくは、本明細書の実施形態に記載の免疫介在性障害の治療が行われ、ここで患者は有意なサイトカイン放出を経験しない。
【0070】
抗体1の組み合わせ使用:
本開示は、本開示の抗体、特に抗体1及び抗N3pGlu Aβ抗体の同時、別々、又は順次組み合わせ、並びにアミロイドベータ(Aβ)の沈着を特徴とする疾患、例えばADを治療するために組み合わせを使用する方法を更に提供する。本組み合わせに有用ないくつかの既知の抗Aβ抗体としては、ドナネマブ、バピネウズマブ、ガンテネルマブ、アデュカヌマブ、GSK933776、ソラネズマブ、クレネズマブ、ポネズマブ、及びレカネマブ(BAN2401)が挙げられる。本開示は、抗体1及びドナネマブ(CAS番号1931944-80-7、配列番号38及び39)の同時、別々、又は順次組み合わせ、並びにアミロイドベータ(Aβ)の沈着を特徴とする疾患、例えばADを治療するために組み合わせを使用する方法を更に提供する(「Donanemab in early Alzheimer’s disease」,Mintun,M.A.et al,New England Journal of Medicine(2021),384(18),1691-1704)。好ましくは、組み合わせは、ドナネマブによる一連の治療の後に、順次抗体1の使用を提供する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抗N3pGlu Aβ抗体」、「抗N3pG抗体」、又は「抗N3pE抗体」は、互換的に使用され、Aβ1-40又はAβ1-42よりもN3pGlu Aβに優先的に結合する抗体を指す。当業者は、「抗N3pGluAβ抗体」、並びに「hE8L」、「B12L」及び「R17L」を含むいくつかの特異的抗体が、米国特許第8,679,498(B2)号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に特定され、開示されている(作製及び使用するための方法と共に)ことを理解し、認識するであろう。例えば、米国特許第8,679,498(B2)号の表1を参照されたい。「hE8L」、「B12L」及び「R17L」抗体を含む、米国特許第8,679,498(B2)号に開示されている抗体の各々を、本発明の抗N3pGluAβ抗体として、又は本発明の様々な態様に記載されている抗N3pGlu Aβ抗体の代わりに使用することができる。本組み合わせ方法の抗N3pGlu Aβ抗体は、それぞれ配列番号40及び41のHC及びLCを含む抗体である。抗N3pGlu Aβ抗体の他の代表的な種としては、米国特許第8,961,972号、米国特許第10,647,759号、米国特許第9,944,696号、国際公開第2010/009987(A2)号、国際公開第2011/151076(A2)号、国際公開第2012/136552(A1)号及びその均等物(例えば、米国特許法第112条(f)の下で)に開示されている抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
当業者は、「抗N3pGluAβ抗体」、及びいくつかの特異的抗体が、米国特許第8,961,972号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、米国特許第10,647,759号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及び米国特許第9,944,696号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に特定され、開示されている(作製及び使用のための方法と共に)ことを理解し、認識するであろう。米国特許第8,961,972号、同第9,944,696号、及び同第10,647,759号に開示されている抗N3pGluAβ抗体のいずれかが、本発明の抗N3pGluAβ抗体として、又は本発明の様々な態様に記載される抗N3pGluAβ抗体の代わりに使用され得る。
【0073】
当業者は、「抗N3pGlu Aβ抗体」、並びに「抗体VI」、「抗体VII」、「抗体VIII」、及び「抗体IX」を含むいくつかの特異的抗体が、国際公開第2010/009987(A2)号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に特定され、開示されている(そのような抗体を作製及び使用するための方法と共に)ことを理解し、認識するであろう。これらの4つの抗体(例えば、「抗体VI」、「抗体VII」、「抗体VIII」、及び「抗体IX」)のそれぞれを、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体として、又は本発明の様々な態様に記載される抗N3pGlu Aβ抗体の代わりに使用することができる。
【0074】
当業者は、「抗N3pGlu Aβ抗体」、及び「抗体X」及び「抗体XI」を含むいくつかの特異的抗体が、国際公開第2011/151076(A2)号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に特定され、開示されている(そのような抗体を作製及び使用するための方法と共に)ことを理解し、認識するであろう。これらの2つの抗体(例えば、「抗体X」及び「抗体XI」)の各々は、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体として、又は本発明の様々な態様に記載される抗N3pGlu Aβ抗体の代わりに使用され得る。
【0075】
当業者は、「抗N3pGlu Aβ抗体」、並びに「抗体XII」及び「抗体XIII」を含むいくつかの特異的抗体が、国際公開第2012/136552(A1)号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において特定され、開示されている(当該抗体を作製及び使用するための方法と共に)ことを理解し、認識するであろう。これらの2つの抗体(例えば、「抗体XII」及び「抗体XIII」)の各々は、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体として、又は本開示の様々な態様に記載される抗N3pGlu Aβ抗体の代わりに使用され得る。
【0076】
本開示の態様は、対象におけるAβの沈着を特徴とする疾患を治療する方法のための、本開示の抗体、特に抗体1、及び抗N3pGlu Aβ抗体、特にドナネマブの組み合わせの使用を提供し、対象は、i)脳全体におけるタウレベル/負荷(グローバルタウ)、ii)脳の領域(例えば、脳の異なる葉)におけるタウレベル/負荷、及び/又は対象のゲノムにおけるAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子の存在に基づいて選択される。本明細書に開示される組み合わせ方法を使用して治療又は予防され得る疾患には、例えば、アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群、及び脳アミロイド血管障害(cerebral amyloid angiopathy、CAA)が含まれる。本開示はまた、中間脳タウ負荷の存在下で早期症候性アルツハイマー病(AD)を有する対象における疾患の進行を遅らせるための、本明細書において提供される組み合わせの使用に関する。
【0077】
N3pGlu Aβに対する抗体は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載される。例えば、米国特許第8,679,498号(その中に開示された抗N3pGlu Aβ抗体を含め、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、抗N3pGlu Aβ抗体、及びアルツハイマー病などの疾患を抗体で治療する方法を開示している。沈着物に見られる、N3pGlu Aβを含むAβに対する抗体の長期慢性投与による受動免疫は、様々な動物モデルにおける脳内のAβ凝集体を破壊し、プラークのクリアランスを促進することが示されている。ドナネマブ(米国特許第8,679,498号に開示されている。CAS番号1931944-80-7も参照されたい)は、脳内のアミロイドプラークにのみ存在するアミロイドベータ(N3pGlu Aβ)エピトープの3番目のアミノ酸のピログルタミン酸改変に対する抗体である。ドナネマブの作用機序は、ADの重要な病理学的特徴である既存のアミロイドプラークの標的化及び除去である。ADの第2の神経病理学的特徴は、過剰リン酸化タウタンパク質を含有する細胞内神経原線維変化の存在である。Aβがタウの病理を引き起こし、Aβとタウとの間のより複雑で相乗的な相互作用が後の段階で現れ、疾患の進行を促進する可能性がある(Busche et al.,「Synergy Between Amyloid-β and Tau in Alzheimer’s disease,」Nature Neuroscience23:1183-93(2020))。
【0078】
Aβ抗体の投与は、アミロイド関連の画像異常(amyloid-related imaging abnormality、ARIA)、血管原性浮腫及び溝浸出液(ARIA-E)を示唆するもの、微小出血及びヘモジデリン沈着物(ARIA-H)、注入部位反応、及び免疫原性のリスクなどの有害事象をヒトにもたらした。例えば、Piazza and Winblad,「Amyloid-Related Imaging Abnormalities(ARIA)in Immunotherapy Trials for Alzheimer’s Disease:Need for Prognostic Biomarkers?」Journal of Alzheimer’s Disease,52:417-420(2016);Sperling,et al.,「Amyloid-related Imaging Abnormalities in Patients with Alzheimer’s Disease Treated with Bapineuzumab:A Retrospective Analysis,」The Lancet Neurology11.3:241-249(2012);Brashear et al.,「Clinical Evaluation of Amyloid-related Imaging Abnormalities in Bapineuzumab Phase III Studies,」J.of Alzheimer’s Disease66.4:1409-1424(2018);Budd et al.,「Clinical Development of Aducanumab,an Anti-Aβ Human Monoclonal Antibody Being Investigated for the Treatment of Early Alzheimer’s Disease,」The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease4.4:255(2017)を参照されたい。
【0079】
ドナネマブ及び抗体1についての本開示の併用療法戦略は、既存の脳アミロイド負荷を有する早期症候性AD患者の集団におけるアミロイドプラークに特異的なN3pGlu Aβを標的とすること、及びこれらの患者における神経炎症を標的とすることを含む。この理論的根拠は、Aβの生成及び沈着がADの病態形成における早期の必要な事象であることを述べている、ADのアミロイド仮説に基づいている。例えば、Selkoe,「The Origins of Alzheimer Disease:A is for Amyloid,」JAMA283:1615-1617(2000)を参照されたい。この仮説の臨床的支持は、ADの症状が現れる前に実質Aβレベルが上昇し、脳Aβを過剰産生するADの遺伝的変異体とAβ産生を防ぐ遺伝的変異体によって支持されるという実証から得られる。例えば、Jonssonら、「A Mutation in APP Protects Against Alzheimer’s Disease and Age-related Cognitive Decline」、Nature、第488巻(第7409号):第96~99頁(2012年)、及びFleisherら、「Associations Between Biomarkers and Age in the Presenilin 1 E280A Autosomal Dominant Alzheimer Disease Kindred:A Cross-sectional Study」、JAMA Neurol、第72巻:第316~24頁(2015年)。したがって、問題のある有害事象を引き起こし、又は増加させることなく、対象を治療するための薬剤の改善された組み合わせに対する必要性が存在する。神経炎症は、神経変性疾患の重要な要素であり、CNS細胞による炎症誘発性サイトカインの産生増加を特徴とする。神経炎症及びミクログリオーシスは、アルツハイマー病、及び/又は神経細胞死及び機能障害の根底にあるメカニズムであると考えられている。ミクログリオーシスには、炎症シグナルに応答したミクログリアの異常な増殖及び/又は肥大が含まれる。IL-34は、炎症及び免疫プロセスの調節において強力で多面的なサイトカインとして作用し、皮質、前嗅核、及び海馬のニューロンによって発現される。N3pGlu Aβ抗体、特にドナネマブによる治療に続いて抗体1による同時、別々、又は好ましくは順次治療は、神経炎症及び/又はミクログリオーシスのAD病因への寄与を改善し、これらの患者の神経変性プロセスの進行を遅らせるか又は予防すると考えられる。
【0080】
本開示の一態様は、タウが低い若しくは中等度、タウが非常に低いから中等度、又はタウが高くないアルツハイマー病患者が、ドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体及び抗体1などの本開示の抗体を用いる併用療法に反応するという概念に基づく。本開示の別の態様は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有するアルツハイマー病患者が、抗N3pGlu Aβ抗体による治療に反応するという概念に基づく。本開示の更に別の態様は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子及び低い若しくは中等度のタウ、非常に低いから中等度のタウを有する、又は高いタウを有しないアルツハイマー病患者が、ドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体及び抗体1などの本開示の抗体を用いる併用療法に反応するという概念に基づく。本開示のいくつかの態様は、患者の脳病理に基づいて患者を診断及び治療することを対象とする。脳の病理に基づいて患者を選択することで、臨床試験でより均質な集団が得られるだけでなく、ADの病期とその進行を適切に特定することができる。ADの病期を適切に特定することで、例えば、メモリークリニックへのタイムリーな紹介、正確かつ早期のAD診断、対症治療の開始、将来の計画、ドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体と抗体1などの本開示の抗体との併用療法による疾患改変治療の開始も可能になる。
【0081】
本開示のいくつかの態様は、脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患に罹患しているヒト対象を治療するための組み合わせ実施形態を提供し、対象は、最初にドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体を投与され、抗体1などの本開示の抗体を用いた同時、別々、又は順次治療と組み合わせて、2ステップで投与される。第1のステップでは、ヒト対象は、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pGlu Aβ抗体を投与され、各第1の用量は、約4週間に1回投与される。第1の用量を1回以上投与されてから約4週間後、第2のステップにおいて、ヒト対象は、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量を投与され、各第2の用量は4週間に1回投与される。好ましくは、抗N3pGlu Aβ抗体は、ドナネマブである。抗体1は、ドナネマブによる一連の治療の後に、同時に、別々に、又は順次投与される。好ましくは、抗体1は、ドナネマブによる一連の治療の後に順次投与される。
【0082】
治療の組み合わせ方法のいくつかの態様は、i)ヒト対象の脳内の全体的又は全体的なタウ負荷、又はii)対象の脳又はその領域若しくは部分におけるタウの広がり基づいて患者におけるADの段階/進行を特定することに関する。
【0083】
いくつかの実施形態では、患者は、対象の脳内(例えば、脳全体又は脳の部分)に存在するタウの量に基づいて層別化/特定/選択/治療することができる。いくつかの実施形態では、患者は、対象の脳内(例えば、脳全体又は脳の部分)に存在するタウの量、及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子の存在に基づいて、層別化/特定/選択/治療することができる。
【0084】
他の実施形態では、患者は、AD進行の段階(例えば、脳内のタウの広がりに基づいて)層別化/特定/選択/治療される。例えば、いくつかの段階では、AD患者におけるタウ負荷は、前頭葉又は後外側側頭領域(posterolateral temporal region、PLT)を含まない側頭葉の領域に分離される。ADの別の段階は、AD患者におけるタウ負荷が後外側側頭(PLT)又は後頭部領域に限定される。ADの更に別の段階は、AD患者におけるタウ負荷が、PLT又は後頭領域におけるタウ負荷と共に頭頂若しくは楔前若しくは前頭領域に存在する。いくつかの実施形態では、患者は、AD進行の段階に基づいて(例えば、脳内のタウの広がりに基づいて)、及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子の存在に基づいて、層別化/特定/選択/治療され得る。
【0085】
脳内のタウの量、脳の一部におけるADの進行、及び/又はAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子の存在に基づく患者の層別化を使用して、例えば、患者がドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体と抗体1などの本開示の抗体との併用療法に応答するかどうかを決定することができる。脳内のタウの量、脳の一部におけるADの進行、及び/又はAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子の存在に基づく患者集団の層別化/選択は、治療に加えて、臨床試験の設計及び実施中に直面する患者の不均質性及び反復可能性の問題を解決するのにも役立つ。
【0086】
本開示の他の態様は、ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患のための、ドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体と、抗体1などの本開示の抗体との併用療法又は予防に反応する、ヒト対象を提供する。本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、反応するヒト対象には、低いから中等度のタウ負荷、非常に低いから中等度のタウ負荷、及び/又はAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有するヒト対象が含まれる。本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、反応するヒト対象は、高いタウ負荷を有するヒト対象を除外する。本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、反応するヒト対象は、高いタウ負荷及び/又はAPOE e4の1つ若しくは2つの対立遺伝子を有するヒト対象を除外する。いくつかの実施形態では、ドナネマブなどの抗N3pGlu Aβ抗体と、抗体1などの本開示の抗体との組み合わせは、アミロイドベータ(Aβ)の沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のために、反応するヒト対象に投与される。
【0087】
一態様では、本開示は、抗N3pGlu Aβ抗体、特にドナネマブ、及び本開示の抗体、特に抗体1を使用した、ヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患に対する同時、別々、又は順次併用療法又は予防であって、i)ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pGlu Aβ抗体を投与することであって、各第1の用量は約4週間に1回投与される、投与することと、ii)1回以上の第1の用量を投与してから約4週間後に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量の抗N3pGlu Aβ抗体をヒト対象に投与することであって、各第2の用量は約4週間に1回投与され、抗N3pGlu Aβ抗体はドナネマブを含み、ヒト対象に本開示の抗体、特に抗体1を投与する、投与することと、を含む、同時、別々、又は順次組み合わせ治療又は予防に関する。好ましくは、抗体1は、ドナネマブによる一連の治療の後に順次投与される。
【0088】
今日まで、ドナネマブによる治療の臨床的焦点は、既存の脳アミロイド負荷を伴う早期症候性AD患者に限定されてきた。しかしながら、ADの第2の神経病理学的特徴は、過剰リン酸化タウタンパク質を含む細胞内神経原線維変化の存在である。現在の疾患モデルは、Aβがタウの病理を引き起こし、Aβとタウとの間のより複雑で相乗的な相互作用が後期段階で現れ、疾患の進行を促進することを示唆している(Busche et al.,「Synergy Between Amyloid-p and Tau in Alzheimer’s disease,」Nature Neuroscience23:1183-93(2020))。
【0089】
現在、ADのための疾患修飾治療はない。したがって、ヒト対象におけるAβの沈着を特徴とする、ADを含む疾患を治療する改善された方法に対する必要性が存在する。そのような方法は、そのような患者がそのような治療から治療的有用性を有し得るかどうかに基づいて患者を特定するのに役立つはずである。更に、そのような治療及び方法は、細胞傷害性の増加又は他の既知の有害事象に付随してはならない。本発明は、これらの必要性のうちの1つ以上を満たす。
【0090】
Doody et al.,「Phase 3 Trials of Solanezumab for Mild-to-Moderate Alzheimer’s Disease,」NEJM,370;4,311-321(2014)は、「APOE ε4キャリアとノンキャリアとの間で有効性尺度に対する明確な治療効果の違いは観察されなかった」ことを示している。抗N3pGlu Aβ抗体を本開示の抗体と組み合わせて、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子(例えば、APOE e4のキャリア)を有するヒト対象に投与することは、それらの対立遺伝子のうちの1つ以上のノンキャリアと比較した場合に、予想外の有効性を提供すると考えられる。したがって、本実施形態は、本開示の抗体、特に抗体1と組み合わせて、抗N3pGlu Aβ抗体、特にドナネマブの同時、別々、又は順次投与を、1つ又は2つのAPOE e4対立遺伝子を有する患者にそれらの患者の認知機能低下を遅らせる手段として、投与することを含む。
【0091】
特定の実施形態によれば、本発明は、高い神経学的タウ負荷を有すると判定されているヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、同時、別々、又は順次用量で、治療有効量の抗Aβ抗体、特にドナネマブと、治療有効量の本開示の抗体、特に抗体1と、を投与することを含む、方法を提供する。追加的に、特定の実施形態によれば、本発明は、後外側側頭葉タウ負荷を有すると判定されているヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する組み合わされた方法であって、同時、別々、又は順次用量で、治療有効量の抗Aβ抗体、特にドナネマブと、治療有効量の本開示の抗体、特に抗体1と、を投与することを含む、方法を提供する。
【0092】
特定の実施形態によれば、本発明は、高い神経学的タウ負荷を有し、かつアポリポタンパク質Eのイプシロン4対立遺伝子(本明細書ではAPOE e4又はAPOE4と称される)の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されているヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する組み合わせ方法であって、同時、別々、又は順次用量で、治療有効量の抗Aβ抗体、特にドナネマブと、治療有効量の本開示の抗体、特に抗体1と、を投与することを含む、方法を提供する。追加的に、特定の実施形態によれば、本発明は、後外側側頭葉タウ負荷を有すると判定されているヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、同時、別々、又は順次用量で、治療有効量の抗Aβ抗体、特にドナネマブと、治療有効量の本開示の抗体、特に抗体1と、を投与することを含む、方法を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、同時、別々、又は順次用量で、治療有効量の抗Aβ抗体、特にドナネマブと、治療有効量の本開示の抗体、特に抗体1と、を投与することを含む、高い神経学的タウ負荷を有すると判定されているヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のために、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次使用するための抗Aβ抗体、特にドナネマブを提供する。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、高い神経学的タウ負荷を有し、同様にAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子も有すると判定されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明は、後外側側頭葉タウ負荷を有すると判定されているヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のために、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次使用するための抗Aβ抗体、特にドナネマブを提供する。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉タウ負荷を有し、同様にAPOEe4の1つ又は2つの対立遺伝子も有すると判定されている。
【0095】
追加的に、いくつかの実施形態では、本発明は、アルツハイマー病(AD)を治療する、予防する、又はその進行を遅らせるために、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次使用するための抗Aβ抗体、特にドナネマブを提供する。追加的に、いくつかの実施形態では、本発明は、緩徐進行性AD認知機能低下を有すると判定されているヒト対象において、アルツハイマー病(AD)を治療する、予防する、又はその進行を遅らせるために、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次使用するための抗Aβ抗体、特にドナネマブを提供する。本発明のいくつかの実施形態は、緩徐進行性AD認知機能低下、及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されているヒト対象において、アルツハイマー病(AD)を治療する、予防する、又はその進行を遅らせるために、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次使用するための抗Aβ抗体、特にドナネマブを提供する。
【0096】
更に、いくつかの実施形態によれば、本開示は、アルツハイマー病の治療又は予防のための医薬品の製造における、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次組み合わされた、抗Aβ抗体、特にドナネマブの使用を提供する。更に、いくつかの実施形態によれば、本開示は、i)高い神経学的タウ負荷、又はii)高い神経学的タウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されているヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のための医薬品の製造における、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次組み合わされた、抗Aβ抗体、特にドナネマブの使用を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示は、i)後外側側頭葉タウ負荷、又はii)後外側側頭葉タウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されているヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のための医薬品の製造における、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次組み合わされた、抗Aβ抗体、特にドナネマブの使用を提供する。更なる実施形態では、本発明は、i)緩徐進行性AD認知機能低下、又はii)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子及び緩徐進行性AD認知機能低下を有すると判定されているヒト対象において、アルツハイマー病(AD)を治療する、予防する、又はその進行を遅らせるための医薬品の製造における、本開示の抗体、特に抗体1と同時、別々、又は順次組み合わされた、抗Aβ抗体、特にドナネマブの使用を提供する。
【0098】
本明細書で提供される実施形態のいくつかによれば、ヒト対象は、後外側側頭葉及び後頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉、後頭葉、及び頭頂葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉、及び前頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び/又は前頭葉のタウ負荷のうちの1つ以上を有することが神経学的PETイメージングによって判定されている。いくつかの実施形態では、後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び/又は前頭葉のタウ負荷のうちの1つ以上は、1.46SUVrを超える神経学的タウ負荷に対応する。
【0099】
本明細書で提供される実施形態のいくつかによれば、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子並びに後外側側頭葉及び後頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子並びに後外側側頭葉、後頭葉及び頭頂葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子並びに後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び前頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び/又は前頭葉タウ負荷のうちの1つ以上を、神経学的PETイメージングによって、並びにAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び/又は前頭葉のタウ負荷のうちの1つ以上は、1.46SUVrを超える神経学的タウ負荷に対応する。
【0100】
追加の実施形態によれば、本発明は、緩徐進行性AD認知機能低下を有すると判定されているヒト対象においてアルツハイマー病(AD)を治療する、予防する、又はその進行を遅らせる方法であって、同時、別々、又は順次用量で、治療有効量の抗Aβ抗体、特にドナネマブと、治療有効量の本開示の抗体、特に抗体1と、を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、ヒト対象は、高い神経学的タウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態によれば、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉タウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉及び後頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉、後頭葉、及び頭頂葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉、及び前頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、後外側側頭葉タウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子並びに後外側側頭葉及び後頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子並びに後外側側頭葉、後頭葉及び頭頂葉のタウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子並びに後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び前頭葉のタウ負荷を有すると判定されている。
【0101】
本明細書で提供される本発明の実施形態によれば、ヒト対象は、ADAS-Cog、iADL、CDR-SB、MMSE、APOE-4遺伝子型決定及び/又はiADRSのうちの1つ以上によって、緩徐進行性AD認知機能低下を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、iADRSによって、緩徐進行性AD認知機能低下を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、iADRSは、20未満減少した。いくつかの実施形態では、iADRSは、6ヶ月間にわたり20未満減少した。いくつかの実施形態では、iADRSは、12ヶ月間にわたり20未満減少した。いくつかの実施形態では、iADRSは、18ヶ月間にわたり20未満減少した。いくつかの実施形態では、iADRSは、24ヶ月間にわたり20未満減少した。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE-4ジェノタイピングによって、緩徐進行性AD認知機能低下を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE-4ヘテロ接合体であると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、APOE-4ホモ接合体陰性であると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、MMSEによってAD認知機能低下を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、27を超えるMMSEを有すると判定されている。いくつかの実施形態では、MMSEは、3未満減少した。いくつかの実施形態では、MMSEは、6ヶ月間にわたり3未満減少した。いくつかの実施形態では、MMSEは、12ヶ月間にわたり3未満減少した。いくつかの実施形態では、MMSEは、18ヶ月間にわたり3未満減少した。いくつかの実施形態では、MMSEは、24ヶ月間にわたり3未満減少した。
【0102】
本明細書で提供される本発明の実施形態によれば、ヒト対象は、神経学的PETイメージングによって高い神経学的タウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、神経学的PETイメージングによって、1.46SUVrを超える高い神経学的タウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、残基217のスレオニンでリン酸化されたヒトタウ(「hTau-pT217」)の定量化によって、高い神経学的タウ負荷を有すると判定されている。いくつかの実施形態では、hTau-pT217は、ヒト対象の生物学的試料において定量化される。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、脳脊髄液である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、血液、血漿又は血清のうちの1つである。
【0103】
本発明の目的のために、ヒト対象のタウレベル又は負荷(本明細書において互換的に使用される)は、例えば、i)神経学的若しくは脳のタウ沈着、ii)血液、血清及び/若しくは血漿中のタウ、又はiii)脳脊髄液中のタウを検出又は定量化する技術若しくは方法を使用して判定することができる。いくつかの実施形態では、神経学的タウ負荷(PETを介して、又は血液、血清、血漿又は脳脊髄液アッセイを介して決定されるかどうかにかかわらず)を使用して、神経学的タウ負荷(例えば、低い、中等度、又は高い神経学的タウ負荷)に基づいて対象を層別化することができる。
【0104】
神経学的タウ負荷は、PETリガンドである[18F]-フロルタウシピルを含む放射線標識PET化合物を使用するタウイメージング(Leuzy et al.,「Diagnostic Performance of RO948 F18 Tau Positron Emission Tomography in the Differentiation of Alzheimer Disease from Other Neurodegenerative Disorders,」JAMA Neurology 77.8:955-965(2020);Ossenkoppele et al.,「Discriminative Accuracy of[18F]-flortaucipir Positron Emission Tomography for Alzheimer Disease vs Other Neurodegenerative Disorders,」JAMA 320,1151-1162,doi:10.1001/jama.2018.12917(2018)、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)などの方法を使用して判定することができる。PETタウ画像は、例えば、公開された方法によってSUVr(標準化取り込み値比)を推定するために定量的に評価することができる(Pontecorvo et al.,「A Multicentre Longitudinal Study of Flortaucipir(18F)in Normal Ageing,Mild Cognitive Impairment and Alzheimer’s Disease Dementia,」Brain 142:1723-35(2019);Devous et al.,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」Journal of Nuclear Medicine 59:937-43(2018);Southekal et al.,「Flortaucipir F18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-51(2018)、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及び/又は患者を視覚的に評価するために、例えば、患者がADパターンを有するかどうかを判定するために定量的に評価することができる(Fleisher et al.,「Positron Emission Tomography Imaging With[18F]-flortaucipir and Postmortem Assessment of Alzheimer Disease Neuropathologic Changes,」JAMA Neurology77:829-39(2020)、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。SUVr値が低いほどタウ負荷が少ないことを示し、SUVr値が高いほどタウ負荷が高いことを示す。実施形態では、flortaucipirスキャンによる定量的評価は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Southekal et al.,「Flortaucipir F18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018)に記載される自動画像処理パイプラインによって達成される。いくつかの実施形態では、脳内の特定の標的領域内のカウント(例えば、マルチブロック重心判別分析又はMUBADA、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Devous et al,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」J.Nucl.Med.59:937-943(2018)を参照されたい)を参照領域と比較し、参照領域は、例えば、小脳全体(wholeCere)、小脳GM(cereCrus)、アトラス-ベースの白質(atlasWM)、対象固有のWM(ssWM、例えば、参照シグナル強度のパラメトリック推定(parametric estimate of reference signal intensity、PERSI)、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Southekal et al.,「Flortaucipir F18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018))である。タウ負荷を判定する例示的な方法は、標準化取り込み値比(SUVr)として報告される定量分析である。これは、参照領域(例えば、PERSIを使用)と比較した場合、脳内の関心のある特定の標的領域内のカウント(例えば、MUBADA)を表す。
【0105】
いくつかの実施形態では、リン酸化タウ(P-タウ;スレオニン181若しくは217で、又はそれらの組み合わせのいずれかでリン酸化)を使用して本発明の目的のためにタウロード/負荷を測定することができる(Barthelemy et al.,「Cerebrospinal Fluid Phospho-tau T217 Outperforms T181 as a Biomarker for the Differential Diagnosis of Alzheimer’s Disease and PET Amyloid-positive Patient Identification,」Alzheimer’s Res.Ther.12,26,doi:10.1186/s13195-020-00596-4(2020);Mattsson et al.,「Aβ Deposition is Associated with Increases in Soluble and Phosphorylated Tau that Precede a Positive Tau PET in Alzheimer’s Disease,」Science Advances 6,eaaz2387(2020)、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、残基217のスレオニンでリン酸化されたヒトタウに対する抗体を使用して、対象におけるタウロード/負荷を測定することができる(参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2020/242963号を参照されたい)。本開示は、いくつかの実施形態では、国際公開第2020/242963号に開示された抗タウ抗体を使用して、対象におけるタウロード/負荷を測定することを含む。国際公開第2020/242963号に開示された抗タウ抗体は、CNSにおいて発現されるヒトタウのアイソフォームに対して作られる(例えば、CNSにおいて発現されるアイソフォームを認識し、もっぱらCNSの外側で発現されるヒトタウのアイソフォームを認識しない)。
【0106】
放射性標識PET化合物を使用したアミロイドイメージング、又はAβ若しくはAβのバイオマーカーを検出する診断法を使用するなどの方法によって脳内でアミロイドが検出された場合、対象はアミロイド沈着物が陽性である。脳アミロイドロード/負荷を測定するために使用され得る例示的な方法としては、例えば、フロルベタピル(Florbetapir)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Carpenter,et al.,「The Use of the Exploratory IND in the Evaluation and Development of 18F-PET Radiopharmaceuticals for Amyloid Imaging in the Brain:A Review of One Company’s Experience,」The Quarterly Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging53.4:387(2009))、フロルベタベン(Florbetaben)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Syed et al.,「[18F]Florbetaben:A Review in β-Amyloid PET Imaging in Cognitive Impairment,」CNS Drugs29,605-613(2015))、及びフルテメタモル(Flutemetamol)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Heurling et al.,「Imaging β-amyloid Using[18F]Flutemetamol Positron Emission Tomography:From Dosimetry to Clinical Diagnosis,」European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging43.2:362-373(2016))が挙げられる。[18F]-フロルベタピルは、前駆期AD又は軽度AD認知症の患者を含む患者の脳プラーク負荷の定性的及び定量的測定を提供し、脳からのアミロイドプラークの低減を評価するためにも使用され得る。
【0107】
追加的に、β-アミロイドの脳脊髄液又は血漿ベースの分析を使用して、アミロイドロード/負荷を測定することもできる。例えば、Aβ42を使用して脳のアミロイドを測定することができる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Palmqvist,S.et al.,「Accuracy of Brain Amyloid Detection in Clinical Practice Using Cerebrospinal Fluid Beta-amyloid 42:a Cross-validation Study Against Amyloid Positron Emission Tomography.JAMA Neurol 71,1282-1289(2014))。いくつかの実施形態では、Aβ42/Aβ40又はAβ42/Aβ38の比は、アミロイドベータのバイオマーカーとして使用され得る(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Janelidze et al.,「CSF Abeta42/Abeta40 and Abeta42/Abeta38 Ratios:Better Diagnostic Markers of Alzheimer Disease,」Ann Clin Transl Neurol 3,154-165(2016))。いくつかの実施形態では、CSF又は血漿中に沈着した脳アミロイドプラーク又はAβを使用して、アミロイドロード/負荷に基づいて対象をグループに層別化することができる。
【0108】
本開示の抗体を使用する組み合わせ使用及び方法の追加の実施形態を以下に示す。組み合わせ実施形態は、抗体1に言及し得るが、実施形態は、本明細書に記載される本開示の抗体について本明細書に記載される類似の方法、使用、及び全ての制限を更に含む。組み合わせ実施形態は、本明細書に記載の抗N3pG Aβ抗体の各々を指す「抗N3pG Aβ抗体」を指し得るが、しかしながら、明確にするために、これらの実施形態は、類似の方法、使用、及び抗N3pG Aβ抗体の各々について個別に本明細書に記載する全ての限定を更に含み、例えば、ドナネマブと組み合わされて使用するのが好ましい。以下には、番号付けされ、かつ他の番号付けされた実施形態への内部参照を含む、本開示の追加の実施形態が提供される。明確にするために、これらの実施形態は、それらが参照する番号付けされた実施形態と一緒に、個別に及び/又は集合的に読まれるべきである。以下に記載する実施形態は、26番から始まる。「一連の治療」という用語は、特定の患者又は対象、列挙された抗体、列挙された用量、列挙された頻度及び/又は期間、列挙された順序、及び任意の他の制限を、各場合に記載されている範囲で指す。
【0109】
本開示の更なる組み合わせ実施形態は、以下を含む。
【0110】
26.ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、その治療又は予防を必要とするヒト対象に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を、有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせて投与することを含む、方法。
【0111】
27.抗N3pG Aβ抗体がドナネマブである、実施形態26に記載の方法。
【0112】
28.疾患がアルツハイマー病である、実施形態26に記載の方法。
【0113】
29.抗N3pG Aβ抗体がドナネマブであり、疾患がアルツハイマー病である、実施形態26に記載の方法。
【0114】
30.抗体1が、ドナネマブによる一連の治療の後に順次投与される、実施形態29に記載の方法。
【0115】
31.ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、
i)ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pG Aβ抗体を投与することであって、各第1の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
ii)1回以上の第1の用量を投与してから約4週間後に、ヒト対象に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量の抗N3pG Aβ抗体を投与することであって、各第2の用量が、約4週間に1回投与され、
抗N3pGlu Aβ抗体が、ドナネマブである、投与することと、
iii)ヒト対象に、有効量の抗体1を同時に、別々に、又は順次投与することと、を含む、方法。
【0116】
32.ヒト対象が、第2の用量を投与される前に第1の用量のドナネマブを1回、2回、又は3回投与される、実施形態31に記載の方法。
【0117】
33.ヒト対象が、約700mgの第1の用量のドナネマブを投与される、実施形態31又は32に記載の方法。
【0118】
34.ヒト対象が、1回以上の約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
35.ヒト対象が、1回以上の約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、実施形態31~34のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
36.抗N3pGlu Aβ抗体が、最長72週間の一連の治療期間にわたって、又はアミロイドの正常レベルが達成されるまで、ヒト対象に投与される、実施形態31~35のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
37.抗N3pGlu Aβ抗体が、患者のアミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、ヒト対象に投与される、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
38.抗N3pGlu Aβ抗体が、ヒト対象におけるアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、一連の治療のためにヒト対象に投与され、任意選択で、2回の連続PETイメージングスキャンが、少なくとも6ヶ月間隔がある、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
39.ヒト対象が、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回、最長72週間の一連の治療期間にわたって投与される、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
40.ヒト対象が、対象のアミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回投与される、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
41.ヒト対象は、対象のアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量を4週間に1回投与され、任意選択で、2回の連続PETイメージングスキャンが少なくとも6ヶ月間隔がある、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
42.ヒト対象が、疾患を治療又は予防するのに十分な一連の治療期間にわたって、第2の用量のドナネマブを投与される、実施形態31~41のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
43.疾患の治療又は予防が、i)ヒト対象の脳内のAβ沈着物の低減、及び/又はii)ヒト対象の認知若しくは機能低下の遅延を引き起こす、実施形態31~42のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
44.ヒト対象の脳内のAβ沈着物の低減が、アミロイドPET脳イメージング又はAβのバイオマーカーを検出する診断法によって決定される、実施形態43に記載の方法。
【0129】
45.第2の用量が、ヒト対象の脳内のAβ沈着物が約20~100%低減するまで、ヒト対象に投与される、実施形態43又は44に記載の方法。
【0130】
46.ヒト対象の脳内のAβ沈着物が、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約75%、又は約100%低減する、実施形態45に記載の方法。
【0131】
47.ヒト対象の脳内のAβ沈着物が、i)およその平均で約25センチロイド~約100センチロイド、ii)およその平均で約50センチロイド~約100センチロイド、iii)約100センチロイド、又はiv)約84センチロイド低減するまで、第2の用量のドナネマブをヒト対象に投与する、実施形態31~44のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
48.ヒト対象の脳内のAβ沈着を特徴とする疾患が、前臨床アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD、中等度AD、重度AD、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症から選択される、実施形態31~47のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
49.ヒト対象が、早期症候性AD患者である、実施形態31~48のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
50.ヒト対象が、前駆期AD、及びADによる軽度の認知症を有する、実施形態49に記載の方法。
【0135】
51.ヒト対象が、i)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、ii)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、iii)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、iv)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、又はv)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有する、実施形態26~50のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
52.ヒト対象が、i)PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が1.46SUVr以下である場合、非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、又はii)PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が1.10SUVr~1.46SUVrである場合、低いから中等度のタウ負荷を有する、実施形態51に記載の方法。
【0137】
53.ヒト対象が、i)高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されているか、又はii)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を保有し、高いタウ負荷を有していないか、若しくは有していないと判定されている、実施形態26~50のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
54.PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が、1.46SUVrを超える場合、ヒト対象は、高いタウ負荷を有する、実施形態53に記載の方法。
【0139】
55.ヒト対象のタウ負荷が、PET脳イメージング又はタウのバイオマーカーを検出する診断法を使用して決定される、実施形態51又は53に記載の方法。
【0140】
56.ヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患の治療又は予防のための医薬品の製造における、抗体1と同時、別々、若しくは順次組み合わされた、抗N3pGlu Aβ抗体の使用であって、
1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pGlu Aβ抗体が投与され、各第1の用量が、約4週間に1回投与され、続いて1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量が、1回以上の第1の用量の投与の4週間後に投与され、各第2の用量の抗N3pGlu Aβ抗体が、約4週間に1回投与され、
抗N3pGlu Aβ抗体が、ドナネマブである、使用。
【0141】
57.ヒト対象は、第2の用量のドナネマブを投与される前に、第1の用量のドナネマブを1回、2回、又は3回投与される、実施形態56に記載の使用。
【0142】
58.ヒト対象は、約700mgの第1の用量のドナネマブを3回投与される、実施形態56又は57に記載の使用。
【0143】
59.ヒト対象は、1回以上の約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、実施形態56~58のいずれか1つに記載の使用。
【0144】
60.ヒト対象は、1回以上の約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与される、実施形態56~59のいずれか1つに記載の使用。
【0145】
61.抗N3pGlu Aβ抗体が、最長72週間の一連の治療期間にわたって、又はアミロイドの正常レベルが達成されるまで、ヒト対象に投与される、実施形態56~60のいずれか1つに記載の使用。
【0146】
62.抗N3pGlu Aβ抗体が、患者におけるアミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、ヒト対象に投与される、実施形態56~61のいずれか1つに記載の使用。
【0147】
63.抗N3pGlu Aβ抗体が、患者におけるアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、ヒト対象に投与され、任意選択で、2回の連続PETイメージングスキャンが、少なくとも6ヶ月間隔がある、実施形態56~61のいずれか1つに記載の使用。
【0148】
64.ヒト対象が、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量のドナネマブを4週間に1回、最長72週間の期間にわたって投与される、実施形態56~61のいずれか1つに記載の使用。
【0149】
65.ヒト対象が、患者におけるアミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量のドナネマブを4週間に1回投与される、実施形態56~61のいずれか1つに記載の使用。
【0150】
66.ヒト対象が、患者におけるアミロイドプラークレベルが2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量のドナネマブを4週間に1回、次いで1400mgの第2の用量のドナネマブを4週間に1回投与され、任意選択で、2回の連続PETイメージングスキャンが少なくとも6ヶ月間隔がある、実施形態56~61のいずれか1つに記載の使用。
【0151】
67.ヒト対象が、疾患を治療又は予防するのに十分な一連の治療期間にわたって第2の用量のドナネマブを投与される、実施形態56~66のいずれか1つに記載の使用。
【0152】
68.疾患の治療又は予防が、i)ヒト対象の脳内のAβ沈着物の低減、及び/又はii)ヒト対象の認知若しくは機能低下の遅延を引き起こす、実施形態56~67のいずれか1つに記載の使用。
【0153】
69.ヒト対象の脳内のAβ沈着物の低減が、アミロイドPET脳イメージング、又はAβのバイオマーカーを検出する診断法によって決定される、実施形態68に記載の使用。
【0154】
70.第2の用量のドナネマブが、ヒト対象の脳内のAβ沈着物が約20~100%低減するまで、ヒト対象に投与される、実施形態68又は69に記載の使用。
【0155】
71.ヒト対象の脳内のAβ沈着物が、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約75%、又は約100%低減する、実施形態70に記載の使用。
【0156】
72.患者における脳内のAβ沈着物が、100%低減する、実施形態70又は71に記載の使用。
【0157】
73.ヒト対象の脳内のAβ沈着物が、i)およその平均で約25センチロイド~約100センチロイド、ii)およその平均で約50センチロイド~約100センチロイド、iii)約100センチロイド、又はiv)約84センチロイド低減されるまで、第2の用量のドナネマブが、ヒト対象に投与される、実施形態56~72のいずれか1つに記載の使用。
【0158】
74.ヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患が、前臨床アルツハイマー病、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD、中等度AD、重度AD、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症から選択される、実施形態56~73のいずれか1つに記載の使用。
【0159】
75.ヒト対象が、早期症候性AD患者であるか、又はヒト対象が、前駆期AD若しくはADによる軽度の認知症を有する、実施形態56~74のいずれか1つに記載の使用。
【0160】
76.ヒト対象が、i)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、ii)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、iii)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、iv)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されている、又はv)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有する、実施形態56~75のいずれか1つに記載の使用。
【0161】
77.ヒト対象が、i)PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が1.46SUVr以下である場合、非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、又はii)PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が1.10SUVr~1.46SUVrである場合、低いから中等度のタウ負荷を有する、実施形態76に記載の使用。
【0162】
78.ヒト対象が、i)高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されているか、又はii)APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を保有し、高いタウ負荷を有していないか、若しくは高いタウ負荷を有していないと判定されている、実施形態56~75のいずれか1つに記載の使用。
【0163】
79.PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が1.46SUVrを超える場合、ヒト対象は、高いタウ負荷を有する、実施形態78に記載の使用。
【0164】
80.ヒト対象のタウ負荷が、タウPET脳イメージング又はタウのバイオマーカーを検出する診断法を使用して決定される、実施形態76又は78に記載の使用。
【0165】
81.i)非常に低いから中等度のタウ負荷、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されているか、又はii)非常に低いから中等度のタウ負荷、若しくは低いから中等度のタウ負荷及びAPOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有すると判定されているヒト対象の脳内アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、
i)ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量のドナネマブを投与することであって、ドナネマブの各第1の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
ii)1回以上の第1の用量を投与してから4週間後に、ヒト対象に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量のドナネマブを投与することであって、各第2の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせることと、を含む、方法。
【0166】
82.ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法であって、
ヒト対象が、脳の側頭葉、後頭葉、頭頂葉、又は前頭葉にタウ負荷を有するかどうかを決定することを含み、ヒト対象が脳の側頭葉、後頭葉、頭頂葉、又は前頭葉にタウ負荷を有する場合、
i)ヒト対象に、1回以上の約100mg~約700mgの第1の用量の抗N3pGlu Aβ抗体を投与することであって、各第1の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
ii)1回以上の第1の用量を投与してから約4週間後に、ヒト対象に、1回以上の700mg超~約1400mgの第2の用量の抗N3pGlu Aβ抗体を投与することであって、各第2の用量が、約4週間に1回投与される、投与することと、
有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせることと、を含む、方法。
【0167】
83.ヒト対象が、脳の後外側側頭葉又は側頭葉にタウ負荷を有する、実施形態82に記載の方法。
【0168】
84.ヒト対象が、脳の後頭葉にタウ負荷を有する、実施形態82に記載の方法。
【0169】
85.ヒト対象が、脳の頭頂葉にタウ負荷を有する、実施形態82に記載の方法。
【0170】
86.ヒト対象が、脳の前頭葉にタウ負荷を有する、実施形態82に記載の方法。
【0171】
87.ヒト対象が、脳の後外側側頭葉(PLT)及び/又は後頭葉にタウ負荷を有する、実施形態82に記載の方法。
【0172】
88.ヒト対象が、脳のPLT若しくは後頭部領域におけるタウ負荷と共に、i)頭頂若しくは楔前領域、又はii)前頭領域におけるタウ負荷を有する、実施形態82~87のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
89.ヒト対象が、i)前頭葉に隔離されたタウ負荷、又はii)脳の後外側側頭領域(PLT)を含まない側頭葉の領域にタウ負荷を有する、実施形態82~86のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
90.ヒト対象が、脳の後外側側頭葉、後頭葉、及び頭頂葉にタウ負荷を有する、実施形態82~88のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
91.ヒト対象が、脳の後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉、及び前頭葉にタウ負荷を有する、実施形態82~88のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
92.ヒト対象が、脳の後外側側頭葉、後頭葉、頭頂葉及び/又は前頭葉にタウ負荷を有する、実施形態82~88のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
93.ヒト対象が、第2の用量を投与される前に第1の用量を1回、2回、又は3回投与される、実施形態82~92のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
94.ヒト対象が、約700mgの第1の用量を投与される、実施形態82~93のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
95.ヒト対象が、1回以上の約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの第2の用量を投与される、実施形態82~94のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
96.ヒト対象が、1回以上の約1400mgの第2の用量を投与される、実施形態82~95のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
97.抗N3pGlu Aβ抗体が、最長72週間の期間、又はアミロイドの正常レベルが達成されるまで、ヒト対象に投与される、実施形態82~96のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
98.抗N3pGlu Aβ抗体が、患者のアミロイドプラークレベルが約25センチロイド以下になるまで、ヒト対象に投与される、実施形態82~97のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
99.抗N3pGlu Aβ抗体が、ヒト対象におけるアミロイドプラークレベルが、2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイド以下になるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、ヒト対象に投与され、任意選択で、2回の連続PETイメージングスキャンが、少なくとも6ヶ月間隔がある、実施形態82~98のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
100.ヒト対象が、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回投与され、次いで、1400mgの第2の用量を4週間に1回、最長72週間投与される、実施形態82~99のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
101.ヒト対象が、対象におけるアミロイドプラークレベルが、約25センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回投与され、次いで、1400mgの第2の用量を4週間に1回投与される、実施形態82~100のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
102.ヒト対象が、対象におけるアミロイドプラークレベルが、2回の連続PETイメージングスキャンで約25センチロイドになるまで、又は1回のPETイメージングスキャンで約11センチロイド以下になるまで、3回の700mgの第1の用量を4週間に1回投与され、次いで、1400mgの第2の用量を4週間に1回投与され、任意選択で、2回の連続PETイメージングスキャンが、少なくとも6ヶ月間隔がある、実施形態82~101のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
103.ヒト対象が、疾患を治療又は予防するのに十分な期間、第2の用量を投与される、実施形態82~102のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
104.疾患の治療又は予防が、i)ヒト対象の脳内のAβ沈着物の低減、及び/又はii)ヒト対象の認知若しくは機能低下の遅延を引き起こす、実施形態82~103のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
105.ヒト対象の脳内のAβ沈着物の低減が、アミロイドPET脳イメージング、又はAβのバイオマーカーを検出する診断法によって決定される、実施形態97に記載の方法。
【0190】
106.第2の用量が、ヒト対象の脳内のAβ沈着物が約20~100%低減するまで、ヒト対象に投与される、実施形態97又は98に記載の方法。
【0191】
107.ヒト対象の脳内のAβ沈着物が、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約75%、又は約100%低減する、実施形態106に記載の方法。
【0192】
108.ヒト対象の脳内のAβ沈着物が、i)およその平均で約25センチロイド~約100センチロイド、ii)およその平均で約50センチロイド~約100センチロイド、iii)約100センチロイド、又はiv)約84センチロイド低減されるまで、第2の用量が、ヒト対象に投与される、実施形態82~107のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
109.ヒト対象の脳内のAβ沈着物を特徴とする疾患が、前臨床アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD、中等度AD、重度AD、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症から選択される、実施形態82~108のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
110.ヒト対象が、早期症候性AD患者である、実施形態82~109のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
111.ヒト対象が、前駆期AD、及びADによる軽度の認知症を有する、実施形態109に記載の方法。
【0196】
112.ヒト対象が、i)非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは非常に低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されているか、又はii)低いから中等度のタウ負荷を有するか、若しくは低いから中等度のタウ負荷を有すると判定されている、実施形態82~111のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
113.ヒト対象が、i)PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が、1.46SUVr以下である場合、非常に低いから中等度のタウ負荷を有するか、又はii)PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が、1.10SUVr~1.46SUVrである場合、低いから中等度のタウ負荷を有する、実施形態112に記載の方法。
【0198】
114.ヒト対象が、高いタウ負荷を有していないか、又は高いタウ負荷を有していないと判定されている、実施形態82~113のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
115.PET脳イメージングによって測定されるタウ負荷が、1.46SUVrを超える場合、ヒト対象が、高いタウ負荷を有する、実施形態114に記載の方法。
【0200】
116.ヒト対象のタウ負荷が、PET脳イメージング又はタウのバイオマーカーを検出する診断法を使用して決定される、実施形態114又は115に記載の方法。
【0201】
117.抗N3pGlu Aβ抗体が、ドナネマブを含む、実施形態82~116のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
118.患者が、APOE e4の1つ又は2つの対立遺伝子を有する、実施形態82~117のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
119.タウ負荷の更なる増加を減少させる/予防する、又はヒト脳の側頭葉、後頭葉、頭頂葉、又は前頭葉におけるタウ蓄積速度を遅らせる方法であって、ヒト対象に、抗N3pGlu Aβ抗体を、有効量の抗体1と同時に、別々に、又は順次組み合わせて投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【
図1】293SRE細胞を発現するhCSF1RにおけるヒトIL-34誘導ルシフェラーゼレポーター活性の抗体1中和を示す。
【実施例】
【0205】
以下の実施例は、特許請求された本発明を例解するために提供され、これを限定するものではない。以下のアッセイの結果は、本開示の抗体1などの例示されるモノクローナル抗体がIL-34に結合及び/又は中和し、したがって、本明細書に記載の免疫介在性及び炎症性疾患を治療するために使用され得ることを示している。
【0206】
実施例1:抗体の生成、発現及び精製
ヒト抗IL-34抗体のパネルを、完全ヒト酵母ディスプレイライブラリーを使用して取得し、効果的なヒトIL-34中和抗体であり得る試薬を特定するためにスクリーニングされる。親和性が改善されたクローンを単離するために、変異を各抗体の個々の相補性決定領域(CDR)に体系的に導入し、得られたライブラリーを、抗原濃度を低下させ、かつ/又は解離の時間の増やしながら、複数ラウンドの選択に供する。個々の変異体の配列を決定し、使用して、コンビナトリアルライブラリを構築し、それを、ストリンジェンシを高めながら追加ラウンドの選択に供して、個々のCDR領域間の相加的又は相乗的な変異のペアリングを特定する。個々のコンビナトリアルクローンを、配列決定し、結合特徴を決定する。IL-34に対する親和性を更に高めるために、これらのコンビナトリアルクローンを追加ラウンドの単一及びコンビナトリアル突然変異誘発にかけてもよい。このスクリーニングをヒト又はカニクイザルIL-34に対して行い、選択した種に対する親和性を高めることができる。選択した抗体を変異誘発して、IL-34に対する結合親和性を維持しながら、異性化などの翻訳後改変を修復することもできる。追加的に、潜在的な免疫原性リスクを低減するために、フレームワーク(framework、FW)又はCDR置換を抗体に対して行って、配列をそれらの生殖系列状態に戻すことができる。
【0207】
例えば、本明細書で抗体1と称される、改変及び/又は最適化された抗IL-34抗体が得られ、重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列と、完全な重鎖及び軽鎖アミノ酸配列と、以下の「アミノ酸及びヌクレオチド配列のリスト」と題するセクションにリストされているものと同じものをコードするヌクレオチド配列と、を有する。これらの配列に対応する配列番号、並びに軽鎖及び重鎖のCDRアミノ酸配列を表1に示す。
【0208】
本開示の例示される抗IL-34抗体は、本質的に以下のとおりに発現及び精製され得る。適切な宿主細胞、例えば、HEK293、NS0又はCHOは、最適な所定のHC:LCベクター比(1:3又は1:2又は1:1など)を使用して抗体を分泌するための発現系、又はHC及びLCの両方をコードする単一のベクター系で、一時的に又は安定的にのいずれかでトランスフェクトされ得る。
【0209】
発現プラスミドは、例えば、抗体1のLC及びHCをコードするDNA(例示される抗体1のHCをコードする配列番号11のDNA配列、及び例示される抗体1のLCアミノ酸配列をコードする配列番号12のDNA配列)を含有し、この目的のために一般的に使用される好適な構築物から発現される。クローン由来の細胞株を増殖させ、抗体1産生についてスクリーニングし、クローン由来の細胞株を選択して確立する。この細胞株は、動物成分を含む材料を一切使用せずに生成され、産生に使用される。
【0210】
抗体が分泌される浄化された培地は、イオン交換及び疎水性相互作用クロマトグラフィの混合モード法などの従来の技術によって精製され得る。例えば、培地は、従来の方法を使用して、プロテインA又はプロテインGカラムに適用され、そこから溶離することができ、イオン交換及び疎水性相互作用クロマトグラフィの混合モード法もまた、使用することができる。可溶性凝集体及び多量体を、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィを含む一般的な技術によって効果的に除去し得る。本開示の例示されるIL-34抗体は、一般的な技術を使用して濃縮及び/又は滅菌濾過される。これらのクロマトグラフィステップ後の例示される抗体の純度は、95%超である。本開示の例示される抗IL-34抗体は、-70℃で直ちに凍結され得るか、又は4℃で数ヶ月間保存され得る。
【0211】
実施例2:抗IL-34抗体の特徴付け
ヒト及びカニクイザルIL-34に対する結合親和性
ヒト及び/又はカニクイザル(cyno)IL-34に対する本開示の抗IL-34モノクローナル抗体の結合親和性は、当該技術分野で既知の方法によって決定することができる。手短に言うと、抗体の結合親和性及び動態学は、BIAcore(商標)8K(Cytiva)を37℃で使用して表面プラズモン共鳴によって評価される。結合親和性は、BIAcore(商標)Sensor Chip Protein A(Cytiva)に抗IL-34抗体を固定化し、HBS-EP+緩衝液(Teknova)で2倍連続希釈した25nM又は12.5nMから開始して、ヒト又はカニクイザルIL-34を流すことによって測定される。各サイクルで、200μLのIL-34を固定化抗体上に100μL/分で流し、次いで20分間解離させる。チップ表面は、pH1.5のグリシン緩衝液50μLで流速100μL/分で再生される。データは、1:1ラングミュア結合モードに適合され、kon及びkoffを導出し、KDを計算する。表3は、例示される抗体1についてヒト及びカニクイザルIL-34のための少なくとも3回の実験の平均を示す。
【0212】
【0213】
実施例3:抗ヒトIL-34抗体のインビトロでの機能的特徴付け
本開示の抗体を、IL-34結合及び/又は活性を中和する能力について試験する。本開示の抗体によるIL-34結合及び/又は活性の中和は、例えば、以下に記載されるように、1つ以上のIL-34/CSF1R受容体結合アッセイフォーマット、並びにIL-34細胞ベースの活性アッセイによって評価され得る。
【0214】
CSF1RからIL-34を置換する抗体1の能力
IL-34/CSF1R結合の中和抗体のアッセイは、酵素アッセイを使用して行うことができる。そのようなアッセイは、IL-34に結合することができる組換え発現CSF1R細胞外ドメインタンパク質を使用することができる。可溶性IL-34を捕捉するために、これらのタンパク質をELISAプレートに結合させることができる。次いで、IL-34は、抗原のビオチン化、及びストレプトアビジン/ニュートラアビジン結合ペルオキシダーゼ又はホスファターゼ酵素による検出のいずれかによって検出されることができる。そのような中和アッセイは、結合アッセイに添加する前に、標識されたIL-34(並びにIL-34を標的とする抗体が関与しない対照試料)で評価される抗体のプレインキュベーション(例えば1時間)を含む。
【0215】
CSF1R細胞外ドメインタンパク質(hCSF1R_Fc、R&Dから市販されている、カタログ番号329-MR、カニクイザルCSF1R ECD-Fc(AAAは、CSF1R細胞外ドメインとFcとの間のリンカーである)(配列番号34))は、可溶性ビオチン化IL-34を捕捉するために30nMの濃度でELISAプレートに結合することができ、1時間結合させた。プレートを洗浄してブロッキングした後、ビオチン化IL-34を加え、次いでストレプトアビジン結合ペルオキシダーゼで検出し得る。CSF1RからIL-34を置換するのに必要な抗体の濃度を決定するために、80%結合レベル(EC80)(3.7nM)に近い標識IL-34の濃度を様々な抗体濃度(0~100nM)と組み合わせて使用することができる。1時間のインキュベーション後、CSF1Rに結合したIL-34は、ストレプトアビジン結合ペルオキシダーゼを介して検出される。抗体をアッセイし(n=2)、各濃度での平均及び標準偏差を計算する。CSF1RからIL-34を置換する抗体の効力は、IC50(nM)として報告され、計算された信頼区間(confidence interval、CI)を表4及び表5に示す。
【0216】
【0217】
【0218】
IL-34は、約50~100pMの親和性でヒトCSF1Rに結合するため、CNSでこのサイトカインを効果的に中和するには高親和性抗体を必要とする。表4の結果は、抗体1がヒトIL-34に対して高い親和性を有し、0.1537nMのIC50でヒトCSF1RからIL-34を置換することができることを示している。表4の結果は、抗体1がヒトIL-34に対して高い親和性を有し、特に抗体1がヒトIL-34に対してhCSF1Rに匹敵する親和性を示し、したがってそれらがインビボでIL-34を効果的に中和することを可能にする結合特性を有することを示している。IL-34をブロックすることは、いくつかの既存の免疫調節療法に関連する安全性の懸念を回避しながら、疾患改変のための有用な手段を提供すると考えられている。したがって、IL-34を介したシグナル伝達の中和は、神経炎症、ミクログリオーシス、並びにアルツハイマー病、及び他のタウオパチーと炎症性疾患などの神経変性疾患の管理のための治療的なアプローチとなる。(例えば、Lelios,I.et al.Emerging roles of IL-34 in health and disease,J Exp Med(2020)217(3):e20190290を参照されたい)。
【0219】
インビトロでのIL-34誘導応答の阻害
本開示の抗体によるIL-34活性の中和は、例えば以下に記載するように、1つ以上のIL-34細胞ベースのアッセイによって評価することができる。ヒトIL-34誘導性ルシフェラーゼレポーター活性を中和する本開示の抗体の能力は、ヒトCSF1Rを発現するcDNAでトランスフェクトされた293 hCSF1R SRE細胞で評価することができる(受入:NP_001275634.1)。例えば、ヒトCSF1R(hCSF1R)を安定的に過剰発現する293/SRE細胞を0.05%トリプシン-PBS中で解離させ、組織培養処理した96ウェルプレートに100ul当たり70,000細胞で播種する。翌日、増殖培地を除去し、熱不活化1%FBS(fetal bovine serum、ウシ胎児血清)を添加したDMEM-F12(ダルベッコ改変イーグル培地:栄養混合物F-12)で細胞を飢餓状態にする。飢餓の24時間後、細胞を100ng/mlのヒトIL-34及び複数濃度のhCSF1R-Fc又は抗体1のいずれかで6時間処理する。インキュベーション後、細胞を50ulのPromega(商標)Glo(商標)溶解緩衝液(Promega(商標)E266A)で5分間穏やかに撹拌しながら溶解する。50mlのBrightGlo(商標)発光試薬(Promega(商標)E2620)を添加し、溶解細胞上で2分間インキュベートする。発光を、Perkin Elmer Wallac 1420 Victor2(商標)マイクロプレートリーダーで読み取る。表7及び
図1に示す相対蛍光単位(relative fluorescence unit、RFU)の低減は、ヒトIL-34誘導ルシフェラーゼ活性を中和する抗体1の能力を反映している。hIL-34の中和について、抗体1の半最大阻害濃度(IC50)値は、0.04582μg/mlである。ヒトCSF1R-Fcは、このアッセイにおいて陽性対照として使用され、0.09603μg/mlのIC50でルシフェラーゼ活性を阻害する。
【0220】
【0221】
フローサイトメトリーによる、抗IL34抗体のヒト単球におけるCD163のIL-34誘導発現を阻害する能力:
IL-34の中和は、フローサイトメトリーによってIL-34で処理した後のヒト単球における細胞表面抗原CD163の発現を測定することによっても評価し得る(例えば、Boulakirba,S.,et al.IL-34 and CSF-1 display an equivalent macrophage differentiation ability but a different polarization potential.Sci Rep8,256(2018)を参照されたい。CD14陽性単球をIL-34で6日間処理し、CD163について抗体を染色した後、フローサイトメトリーでCD163の発現を評価する。実験では、CD163を発現する細胞数の変化は、IL-34処理が単球におけるこの抗原の発現を増加させることを示している。抗体1の添加により、CD163の発現の増加が阻害される。この実験では、アイソタイプが一致したIgG4抗体を陰性対照として使用する。
【0222】
CD14+ヒト単球は、IL-34(100ng/ml)の添加によりマクロファージに分化し得る。マクロファージマーカーCD163は、分化の程度をモニターするために使用できる。このマクロファージへの分化は、抗IL-34抗体の添加によって阻害され得る。CD14+ヒト単球を、IL-34を含む又は含まない6ウェルプレートに播種する。細胞を抗IL-34抗体、例えば抗体1、又は15μg/mlのIgG4 PAAで合計6日間処理し、3日目に処理をリフレッシュする。6日目に非酵素的細胞解離緩衝液でプレートから除去した細胞を収集し、FACS緩衝液(PBS+2%FBS+0.1%アジ化ナトリウム+2%EDTA)で洗浄する。製造元の推奨に従って、細胞をTruStain FcX(カタログ番号422302)で30分間ブロックする。ブロッキング後、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、抗CD163-PE又はIgGkアイソタイプ対照-PEで、4℃で1時間染色する。インキュベーションの最後に、細胞を洗浄し、最小10,000イベントを使用してAccuriでフロー分析を行う。処理ごとに中央値-PE-Aレベルを収集する。結果を表10に示す。
【0223】
【0224】
IL-34に応答した、ヒト単球におけるCD163発現の抗体1による阻害は、IL-34に対する単球/マクロファージ数及び/又は表現型分化応答を調節する本開示の抗体の能力を実証し、神経炎症及び他の炎症状態などの免疫介在性疾患を治療するための本抗体の使用を支持する(例えば、Lelios,I.et al.Emerging roles of IL-34 in health and disease,J Exp Med(2020)217(3):e20190290を参照されたい)。
【0225】
実施例4:抗体1の免疫原性の可能性の特徴付け
樹状細胞(Dendritic Cell、DC)内在化アッセイ
単球由来DC培養(Monocyte-derived DC Culturing、MDDC)
標準プロトコルに従って、CD14+単球を末梢血単核細胞(periphery blood mononuclear cell、PBMC)から単離させ、培養し、DCに分化させる。手短に言うと、LRS-WBCからFicoll(#17-1440-02、GE Healthcare)及びSepmate 50(#15450、STEMCELL Technologies)による密度勾配遠心分離を使用してPBMCを単離する。製造元のマニュアルに従って、CD14+マイクロビーズキット(#130-050-201、Miltenyi Biotec)による陽性選択を使用してCD14+単球を単離する。次いで、1000単位/mlのGM-CSF及び600単位/mlのIL-4と共に、細胞を100万/mlで6日間培養して、L-グルタミン及び25mMのHEPESを添加し、10%FBS、1mMのピルビン酸ナトリウム、1×ペニシリン-ストレプトマイシン、1×非必須アミノ酸、及び55μMの2-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地(以下、Life Technologiesから購入した完全RPMI培地又は培地と称される)中で未成熟樹状細胞(MDDC)に誘導する。培地を2日目及び5日目の2回変える。6日目に、セルスクレーパで細胞を静かに収集し、実験に使用する。MDDCを、顕微鏡による樹状形態、及びフローサイトメトリーによるCD14、CD11c、及びHLA-DRの発現について視覚的に特徴付ける。LPS処理に応答する能力は、フローサイトメトリーを使用してCD80、CD83、及びCD86の増加を測定することによって確認される。
【0226】
Fab-TAMRA-QSY7の結合
F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)をQSY7-NHS及びTAMRA-SE(Molecular Probes)で二重標識して、試験物質の内在化を追跡するためのユニバーサルプローブとして使用するFab-TAMRA-QSY7を得る。F(ab’)2(1.3mg/mlで約1ml)の各バイアルを、Amico Ultra-0.5遠心フィルター装置(#UFC501096、Millipore)を使用して14,000rcfで2分間遠心分離することにより、約2mg/mlに濃縮する。pHを10%(v/v)1M重炭酸ナトリウムで塩基性(>pH8)に調整し、DMSO中10mMのQSY-NHS保存液6.8μlを添加し、混合する。反応バイアルを室温で30分間暗所に保つ。中間生成物であるFab-QSY7を、Zeba Spin脱塩カラム(#89890、Thermo Scientific)を用いて、相対遠心力(relative centrifugal force、RCF)1000で2分間遠心分離することにより精製する。NanoDrop(ThermoFisher)で280nm及び560nmの吸光度を測定することにより、濃度及び標識度(degree of labeling、DOL)を計算する。次いで、再びAmico Ultra-0.5遠心フィルター装置を用いて14,000rcfで2分間遠心分離することにより、Fab-QSY7を約2mg/mlに濃縮する。10%(v/v)1M重炭酸ナトリウムでpHを調整した後、DMSO中の15mMのTAMRA-SE保存液4.3μlを添加して混合する。室温の暗所で30分の後、最終生成物Fab-TAMRA-QSY7を精製し、1000rcfで2分間遠心分離することによりZeba Spin脱塩カラムを使用して収集する。NanoDrop分光光度計で280nm、555nm、及び560nmの吸光度を読み取ることにより、濃度及びDOLを再度定量化する。このプロトコルを使用すると、F(ab’)2当たり約2つのQSY7と2つのTAMRAとを含む約1.5mg/mlのFab-TAMRA-QSY7を約300μl得られる。
【0227】
FACSによる標準化内在化試験
個々の試験分子をPBSで1mg/mlに正規化し、次いで完全RPMI培地で更に8μg/mlに希釈する。Fab-TAMRA-QSY7を完全RPMI培地で5.33μg/mlに希釈する。抗体とFab-TAMRA-QSY7とを等量で混合し、複合体形成のために暗所で、4℃で30分間インキュベートする。MDDCを完全RPMI培地に400万/mlで再懸濁し、抗体/プローブ複合体50μlが添加される96ウェル丸底プレートにウェル当たり50μlで播種する。細胞をCO2インキュベーターで、37℃で24時間インキュベートする。細胞を2%FBS PBSで洗浄し、Cytox Greenの生/死色素を含む100μlの2%FBS PBSに再懸濁する。BD LSR Fortessa X-20でデータを収集し、FlowJoで分析する。生単一細胞をゲーティングし、TAMRA蛍光陽性細胞の割合を読み出しとして記録する。
【0228】
データ表示及び統計分析
分子は、二連又は三連で、3人以上のドナーに対して試験する。各ドナーについて、TAMRA陽性集団の割合を考慮する。異なるドナーから生成されたデータを有する分子の比較を可能にするために、正規化された内在化指数(NII)が使用される。内在化シグナルは、次の式を使用してIgG1アイソタイプ(NII=0)及び内部陽性対照PC(NII=100)に対して正規化する。
【0229】
【数1】
式中、XTAMRA、IgG1アイソタイプTAMRA、及びPCTAMRAは、それぞれ試験分子X、IgG1アイソタイプ、及びPCのTAMRA陽性集団の割合である。データは、JMP(登録商標)14.1.0又はGraphpad Prism 8.1.2で分析する。TAMRA陽性集団の割合の平均及びNIIを計算し、報告する。DCなどの抗原提示細胞における内在化の増加は、免疫原性のリスクの増加と関連している。抗体1の二重実験の幾何平均を表11に示す。
【0230】
【表8】
(例えば、Wen,Y.,Cahya,S.,Zeng,W.et al.Development of a FRET-Based Assay for Analysis of mAbs Internalization and Processing by Dendritic Cells in Preclinical Immunogenicity Risk Assessment.AAPS J22,68(2020)を参照されたい)
【0231】
MAPPsアッセイ(MHC-associated peptide proteomics、MHC関連ペプチドプロテオミクス)方法
10人の正常なヒトドナーからの初代ヒト樹状細胞を、記載されているように、CD-14陽性細胞の単離によってバフィーコートから調製し、5%血清代替物(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A2596101)を含有する完全RPMI培地中で20ng/ml IL-4及び40ng/ml GM-CSFと共に、37℃及び5%CO2で3日間インキュベートすることによって、未成熟樹状細胞に分化させる(Knierman et al.,「The Human Leukocyte Antigen Class II Immunopeptidome of the SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein」,Cell Reports,33,108454(2020))。4日目に3マイクロモルの試験抗体を約5×106細胞に添加し、細胞を成熟樹状細胞に形質転換するために5μg/mlのLPSを含有する新鮮な培地を5時間のインキュベーション後に交換する。翌日、成熟細胞をプロテアーゼ阻害剤及びDNAseを含む1mlのRIPA緩衝液中で溶解する。ライセートを、試料分析まで-80℃で保存する。
【0232】
自動液体処理システムを使用して、ビオチン化抗汎HLAクラスII抗体(クローンTu39)を使用し、解凍したライセートからHLA-II分子を単離する。結合した受容体-ペプチド複合体を、5%酢酸、0.1%TFAで溶出する。溶出したMHC-IIペプチドを、高分子量タンパク質を除去するために、事前に洗浄した10k MWCOフィルターに通す。単離MHC-IIペプチドは、Thermo LUMOS質量分析計を備えたThermo easy 1200 nLC-HPLCシステムを使用して、ナノLC/MSによって分析する。この分離では、75μm×7cmのYMC-ODS C18カラムを使用し、流速250nL/分、並びにA溶媒として0.1%ギ酸水溶液、及びB溶媒として0.1%ギ酸を有する80%アセトニトリルで、65分間の勾配を行った。質量分析は、解像度240,000のフルスキャン様式で実行し、続いてHCD及びEThcDフラグメンテーションによるイオントラップ型ラピッドスキャンで構成される3秒のデータ依存型MS/MSサイクルを実行する。
【0233】
ペプチドの同定は、試験抗体配列を含有するウシ/ヒトデータベースに対する酵素検索パラメータのない複数の検索アルゴリズムを使用して、内部プロテオミクスパイプライン(Higgs et al.,「Label-free LC-MS method for the identification of biomarkers」,Methods in Molecular Biology,428,209-230(2008))によって生成する。KNIMEワークフローを使用して、試料の同定ファイルを処理する。試験物質から同定されたペプチドを、親配列に対して整列させる。非生殖系列残基を提示するドナーの割合、非生殖系列残基を有するペプチドを提示する異なる領域の数、及び非生殖系列残基を有する各領域でのペプチド提示の深さを注釈する全てのドナーの要約を作成する。非生殖系列ペプチドの提示の程度の増加は、免疫原性のリスクの増加と関連している。抗体1の結果を表12に示す。
【0234】
【0235】
T細胞増殖アッセイ
このアッセイは、試験候補又は試験候補のMAPPs由来ペプチドクラスターの、以下に記載のように細胞増殖を誘導することによるCD4+T細胞を活性化する能力を評価する(Walsh et al.,「Post-hoc assessment of the immunogenicity of three antibodies reveals distinct immune stimulatory mechanisms」,mAbs,12,1764829(2020))。10人の健康なドナーからの凍結保存したPBMCを使用し、PBMCからCD8+T細胞を枯渇させ、1μMカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(Carboxyfluorescein Diacetate Succinimidyl Ester、CFSE)で標識した。PBMCを、5%CTS(商標)Immune Cell SR(Gibco、カタログ番号A2596101)を含有するAIM-V培地(Life Technologies、カタログ番号12055-083)に4×106細胞/ml/ウェルで播種し、様々な試験物質、DMSO対照、培地対照、及びキーホールリンペットヘモシアニン(KLH;陽性対照)を含有する2.0mLで、3連で試験した。細胞を培養し、5%CO2で37℃で7日間インキュベートした。7日目に、ハイスループットサンプラー(High Throughput Sampler、HTS)を装備したBD LSRFortessa(商標)を使用したフローサイトメトリーによる生存率検出のために、試料を次の細胞表面マーカーで染色した:抗CD3、抗CD4、抗CD14、抗CD19、及びDAPI。FlowJo(登録商標)ソフトウェア(FlowJo、LLC、TreeStar)を使用してデータを分析し、細胞分裂指数(Cellular Division Index、CDI)を計算した。手短に言うと、各試験分子のCDIは、刺激されたウェルで増殖しているCFSEdimCD4+T細胞のパーセントを、刺激されていないウェルで増殖しているCFSEdimCD4+T細胞のパーセントで割ることによって計算した。2.5以上のCDIは、陽性反応を表すとみなした。全てのドナーにわたるドナー頻度の割合を評価した。抗体1の結果を表13に示す。
【0236】
【0237】
実施例5:カニクイザルにおける抗体薬物動態
カニクイザルに、1mL/kgの量のPBS(pH7.4)中の抗体1の3mg/kgの単回静脈内(IV)用量を投与する。薬物動態学的特徴付けのために、投与の1、3、6、24、48、72、96、120、168、240、336、408、504及び672時間後に2匹の動物/時点から血液を採取し、血清に処理する。抗体1の血清濃度は、適格な免疫親和性液体クロマトグラフィ質量分析法によって決定される。抗体1及びヒト抗体内部標準(安定同位体標識ヒトIgG)を、ビオチン化ヤギ抗ヒトIgG抗体を使用して100%カニクイザル血清から抽出し、続いてQ-Exactive(商標)Orbitrap(登録商標)質量分析計を使用してトリプシンサロゲートペプチドを定量化する。薬物動態パラメータを、各動物(N=2)について非コンパートメント分析(NCA)を使用して計算し、パラメータを平均値によって要約する。NCA及び要約統計計算は、Phoenixを使用して行う。表14に示すように、抗体Iは、カニクイザルにおいて薬物動態プロファイルの拡張を示す。
【0238】
【0239】
アミノ酸及びヌクレオチド配列の配列表
抗体1の重鎖(配列番号1)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGKTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKRGYLWHAFDHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
【0240】
抗体1の軽鎖;抗体2のLC(配列番号2)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSLYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQVVGSSPPFTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0241】
抗体1のHCVR(配列番号3)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGKTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKRGYLWHAFDH
【0242】
抗体1のLCVR;抗体2のLCVR(配列番号4)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSLYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQVVGSSPPFT
【0243】
抗体1のHCDR1(配列番号5)
AASGFTFSSYAMS
【0244】
抗体1のHCDR2(配列番号6)
AISGSGGKTY
【0245】
抗体1のHCDR3(配列番号7)
AKRGYLWHAFDH
【0246】
抗体1及び抗体2のLCDR1(配列番号8)
RASQSVSSLYLA
【0247】
抗体1及び抗体2のLCDR2(配列番号9)
YGASSRAT
【0248】
抗体1及び抗体2のLCDR3(配列番号10)
QVVGSSPPFT
【0249】
抗体1の重鎖をコードするDNA(配列番号11)
gaagttcaactgcttgagagcggaggcggtcttgtacagccaggcgggagtttgagactcagttgtgcagcctctggctttaccttttcctcttatgctatgtcctgggtacgacaggcccccggaaaaggcctggaatgggtttccgctattagcggcagtgggggtaaaacatactatgccgactcagttaaaggcagatttacaataagccgggacaattctaagaacacactgtatcttcagatgaatagtttgcgagcagaggacaccgctgtttattactgcgctaaaaggggttacctttggcacgcatttgaccactggggccagggaacactcgtaactgtctcatcagcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaagacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccctgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggt
【0250】
抗体1の軽鎖をコードするDNA(配列番号12)
gaaatagttctcactcagtcccctgggacactctccctgagtccaggagaacgtgcaacactcagttgccgtgcaagccagtccgtctcatccttgtatcttgcttggtaccaacaaaaacctggacaggccccccgtcttcttatctatggtgcctccagtcgcgcaactggtattcccgaccggttcagcggcagtgggtccggcactgacttcaccctgactataagtcggttggagccagaggactttgccgtgtactattgccaagtggtgggaagctcccctcccttcactttcggcggagggaccaaggtagaaatcaaaagaactgtggcggcgccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatccggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgc
【0251】
抗体1のHCDR1(Kabat)(配列番号13)
SYAMS
【0252】
抗体1のHCDR2(Kabat)(配列番号14)
AISGSGGKTYYADSVKG
【0253】
抗体1のHCDR3(Kabat)(配列番号15)
RGYLWHAFDH
【0254】
抗体1のLCDR1(Kabat)(配列番号16)
RASQSVSSLYLA
【0255】
抗体1のLCDR2(Kabat)(配列番号17)
GASSRAT
【0256】
抗体1のLCDR3(Kabat)(配列番号18)
QVVGSSPPFT
【0257】
抗体1のHCDR1(Chothia)(配列番号19)
GFTFSSY
【0258】
抗体1のHCDR2(Chothia)(配列番号20)
SGSGGK
【0259】
抗体1のHCDR3(Chothia)(配列番号21)
RGYLWHAFDH
【0260】
抗体1のLCDR1(Chothia)(配列番号22)
RASQSVSSLYLA
【0261】
抗体1のLCDR2(Chothia)(配列番号23)
GASSRAT
【0262】
抗体1のLCDR3(Chothia)(配列番号24)
QVVGSSPPFT
【0263】
抗体1のHCDR1(IMGT)(配列番号25)
GFTFSSYA
【0264】
抗体1のHCDR2(IMGT)(配列番号26)
ISGSGGKT
【0265】
抗体1のHCDR3(IMGT)(配列番号27)
AKRGYLWHAFDH
【0266】
抗体1のLCDR1(IMGT)(配列番号28)
QSVSSLY
【0267】
抗体1のLCDR2(IMGT)(配列番号29)
GAS
【0268】
抗体1のLCDR3(IMGT)(配列番号30)
QVVGSSPPFT
【0269】
ヒトIL-34(配列番号31)
NEPLEMWPLTQNEECTVTGFLRDKLQYRSRLQYMKHYFPINYKISVPYEGVFRIANVTRLQRAQVSERELRYLWVLVSLSATESVQDVLLEGHPSWKYLQEVETLLLNVQQGLTDVEVSPKVESVLSLLNAPGPNLKLVRPKALLDNCFRVMELLYCSCCKQSSVLNWQDCEVPSPQSCSPEPSLQYAATQLYPPPPWSPSSPPHSTGSVRPVRAQGEGLLP
【0270】
IgG4PAAヒンジ領域(配列番号32)
ESKYGPPCPPCP
【0271】
IgG4PAA Fc領域(配列番号33)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
【0272】
カニクイザルCSF1R ECD-Fcの配列(配列番号34)
IPVIEPSGPELVVKPGETVTLRCVGNGSVEWDGPISPHWTLYSDGPSSVLTTNNATFQNTRTYRCTEPGDPLGGSAAIHLYVKDPARPWNVLAKEVVVFEDQDALLPCLLTDPVLEAGVSLVRLRGRPLLRHTNYSFSPWHGFIIHRAKFIQGQDYQCSALMGGRKVMSISIRLKVQKVIPGPPALTLVPAELVRIRGEAAQIVCSASNIDVDFDVFLQHNTTKLAIPQRSDFHDNRYQKVLTLSLGQVDFQHAGNYSCVASNVQGKHSTSMFFRVVESAYLDLSSEQNLIQEVTVGEGLNLKVMVEAYPGLQGFNWTYLGPFSDHQPEPKLANATTKDTYRHTFTLSLPRLKPSEAGRYSFLARNPGGWRALTFELTLRYPPEVSVIWTSINGSGTLLCAASGYPQPNVTWLQCAGHTDRCDEAQVLQVWVDPHPEVLSQEPFQKVTVQSLLTAETLEHNQTYECRAHNSVGSGSWAFIPISAGARTHPPDEAAAEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSP
【0273】
抗体2の重鎖(配列番号35)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGKTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKRGYLWHAFDHWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0274】
抗体3の重鎖(配列番号36)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGKTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKRGYLWHAFDHWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0275】
抗体4の重鎖(配列番号37)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGKTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKRGYLWHAFDHWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0276】
ドナネマブの重鎖(配列番号38)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYDFTRYYINWVRQAPGQGLEWMGWINPGSGNTKYNEKFKGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAREGITVYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0277】
ドナネマブの軽鎖(配列番号39)
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLYSRGKTYLNWLLQKPGQSPQLLIYAVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCVQGTHYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0278】
抗N3pG抗体の重鎖(配列番号40)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYPMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGSGSYYNGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0279】
抗N3pG抗体の軽鎖(配列番号41)
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSLGNWLAWYQQKPGKAPKLLIYQASTLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQHYKGSFWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-34に結合する抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)と、を含み、前記VHが、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記HCDR1が、配列番号5を含み、
前記HCDR2が、配列番号6を含み、
前記HCDR3が、配列番号7を含み、
前記LCDR1が、配列番号8を含み、
前記LCDR2が、配列番号9を含み、
前記LCDR3が、配列番号10を含む、抗体。
【請求項2】
前記VHが、配列番号3を含み、前記VLが、配列番号4を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、配列番号1を含む重鎖(HC)及び配列番号2を含む軽鎖(LC)を含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号11又は12から選択される配列番号をコードする配列を含む、核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項6】
前記ベクターが、配列番号11をコードする第1の核酸配列と、配列番号12をコードする第2の核酸配列と、を含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
配列番号11をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号12をコードする核酸配列を含む第2のベクターと、を含む、組成物。
【請求項8】
請求項5に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項9】
配列番号11をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号12をコードする核酸配列を含む第2のベクターと、を含む、細胞。
【請求項10】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項8又は9に記載の細胞。
【請求項11】
抗体を産生するプロセスであって、前記抗体が発現するような条件下で、請求項10に記載の細胞を培養することと、発現した前記抗体を培養培地から回収することと、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体を含む、免疫介在性疾患の治療薬。
【請求項14】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からなる群から選択される、請求項13に記載の治療薬。
【請求項15】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病である、請求項14に記載の治療薬。
【請求項16】
免疫介在性疾患の治療のための医薬品の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項17】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病;タウオパチー疾患;シェーグレン症候群(SS);関節リウマチ(RA);炎症性腸疾患(IBD)、アトピー性皮膚炎、腎疾患、敗血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び/又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記免疫介在性疾患が、アルツハイマー病である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
体液中のヒトIL-34レベルを決定する方法に使用するための薬剤であって、前記方法が、
(a)前記体液を、配列番号31のアミノ酸配列からなるヒトIL-34に特異的に結合する抗ヒトIL-34診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、それぞれ、アミノ酸配列(配列番号8)、(配列番号9)、及び(配列番号10)を含む軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と、それぞれ、アミノ酸配列(配列番号5)、(配列番号6)、及び(配列番号7)を含む重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、を含む、接触させることと、
(b)任意選択で、任意の非特異的に結合したモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを除去することと、
(c)ヒトIL-34に特異的に結合しているモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの量を検出及び/又は定量化することと、を含み、
前記薬剤が、前記抗ヒトIL-34診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、薬剤。
【請求項20】
前記体液が、血液、血清若しくは血漿、又は脳脊髄液であり、前記接触することが、エクスビボで起こる、請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
ヒト対象の脳内のアミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を治療又は予防する方法に使用するための医薬であって、前記医薬が、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体を含み、前記方法が、前記ヒト対象に、抗N3pG Aβ抗体を、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体と同時に、別々に、又は順次組み合わせて投与することを含む、医薬。
【請求項22】
前記抗N3pG Aβ抗体が、ドナネマブであり、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体が、抗体1である、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】
前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項21に記載の医薬。
【請求項24】
前記抗N3pG Aβ抗体が、ドナネマブであり、前記疾患が、アルツハイマー病である、請求項21に記載の医薬。
【請求項25】
抗体1が、ドナネマブによる一連の治療の後に順次投与される、請求項24に記載の医薬。
【国際調査報告】