IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

<>
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図1
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図2
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図3
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図4
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図5
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図6
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図7
  • 特表-アンモニア合成プラント及び方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】アンモニア合成プラント及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20241112BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241112BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241112BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20241112BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C01C1/04 G
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/65
C01C1/04 J
F04D25/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525565
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022025487
(87)【国際公開番号】W WO2023078583
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021000028049
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンジョリ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】グリマルディ,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】ペレグリーニ,ティツィアーノ
(72)【発明者】
【氏名】メアッジーニ,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】グリエルモ,アルベルト
【テーマコード(参考)】
3H130
4K021
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB42
3H130AB68
3H130AB70
3H130AC01
3H130BA97Z
3H130ED04Z
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA05
4K021DC03
(57)【要約】
【解決手段】 アンモニア生産システムは、水素源と、水素源からの水素を圧縮するように適合された水素圧縮ユニットと、を備える。システムは、窒素源と、窒素源から窒素を、水素圧縮ユニットから水素を受け取るように適合され、水素と窒素との混合物を含む合成ガスを圧縮し、圧縮ガス混合物をアンモニア合成モジュールに送達するように更に適合された合成ガス圧縮機と、を更に備える。窒素源は、使用時に水素圧縮ユニットが水素及び窒素を含有するブレンドを圧縮するように、水素圧縮ユニットに流体的に結合される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア生産システムであって、
水素源と、
前記水素源からの水素を圧縮するように適合された、水素圧縮ユニットと、
窒素源と、
前記窒素源から窒素を、前記水素圧縮ユニットから水素を受け取るように適合され、水素と窒素との混合物を含む合成ガスを圧縮するように更に適合された、合成ガス圧縮機と、
前記合成ガス圧縮機に流体的に結合された、アンモニア合成モジュールと、を備え、
使用時に前記水素圧縮ユニットが水素及び窒素を含有するブレンドを圧縮するように、前記窒素源が前記水素圧縮ユニットに流体的に結合される、アンモニア生産システム。
【請求項2】
前記水素圧縮ユニットが、前記水素源に流体的に結合され、前記水素源から水素を受け取るように適合された入口と、前記合成ガス圧縮機に流体的に結合された出口と、を備え、前記窒素源が、前記水素圧縮ユニットの前記入口に流体的に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水素圧縮ユニットが、直列に配置された少なくとも第1の水素圧縮機及び第2の水素圧縮機を備え、前記窒素源が、前記第1の水素圧縮機の送達側と前記第2の水素圧縮機の吸引側との間で前記水素圧縮ユニットに流体的に結合される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記窒素源を前記水素圧縮ユニットに流体的に結合する窒素送達ラインと、前記窒素源と前記水素圧縮ユニットとの間で前記窒素送達ラインに沿った減圧デバイスと、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記減圧デバイスが、絞り弁を備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記減圧デバイスが、膨張機を備える、請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記膨張機が、発電機、圧縮機のうちの1つに駆動可能に結合される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記減圧デバイスが、流量検出構成に機能的に結合された制御ユニットによって制御される、請求項4~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記流量検出構成が、前記水素圧縮ユニットに供給される水素流量を検出するように適合された水素流量検出デバイスと、前記水素圧縮ユニットに供給される窒素流量を検出するように適合された窒素流量検出デバイスと、を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記水素流量検出デバイス及び前記窒素流量検出デバイスに機能的に結合された制御ユニットを更に備え、前記制御ユニットは、前記合成ガス圧縮機を通る流量が変化するときに、窒素流量と水素流量との間の比を所望の範囲内に維持するために前記減圧デバイスを制御するように適合される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記水素源が、電解槽を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記電解槽が、再生可能エネルギー源からのエネルギーを電気エネルギーに変換するように適合されたエネルギー変換設備に電気的に結合される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記窒素源が、空気から窒素を分離するように適合される、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
水素及び窒素からアンモニアを生産するための方法であって、前記方法が、以下のステップ:
合成ガス吸引圧力で窒素流を合成ガス圧縮機の吸引側に送達するステップと、
前記合成ガス吸引圧力よりも低い水素入口圧力で水素流を水素圧縮ユニットの吸引側に送達するステップと、
前記水素圧縮ユニット内で前記水素流の圧力を前記水素入口圧力から前記合成ガス吸引圧力に昇圧し、圧縮された前記水素を前記合成ガス圧縮機に送達するステップと、
加圧された合成ガスを前記合成ガス圧縮機からアンモニア合成モジュールに送達し、圧縮された前記合成ガスからアンモニアを生産するステップと、を含み、
前記方法が、前記水素圧縮ユニットにおいて前記水素に窒素を添加するステップを更に含む、方法。
【請求項15】
窒素源から前記合成ガス圧力で主窒素流を送達するステップと、
前記主窒素流から窒素二次流を分流させるステップと、
前記窒素二次流の圧力を低減された窒素圧力まで低減するステップと、
前記低減された窒素圧力で前記窒素二次流を前記水素圧縮ユニットに送達するステップと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記窒素二次流の圧力を低減する前記ステップが、前記窒素二次流を絞り弁を通して流すステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記窒素二次流の圧力を低減する前記ステップが、膨張機内で前記窒素二次流を膨張させ、前記膨張機で有用な動力を生じるステップを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
以下のステップ:
前記膨張機によって生じた動力を電力に変換するステップと、
前記膨張機によって生じた機械的動力を、前記水素圧縮ユニット、空気圧縮機、及び前記合成ガス圧縮機のうちの少なくとも1つに伝達するステップと、のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水素圧縮ユニットが、直列に配置された第1の水素圧縮機及び第2の水素圧縮機を備え、前記第1の水素圧縮機が、前記水素圧縮ユニット内の前記水素流に対して前記第2の水素圧縮機の上流に配置され、窒素が、前記第1の水素圧縮機の上流の前記水素圧縮ユニット内で前記水素に添加される、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記水素圧縮ユニットが、直列に配置された第1の水素圧縮機及び第2の水素圧縮機を備え、前記第1の水素圧縮機が、前記水素圧縮ユニット内の前記水素流に対して前記第2の水素圧縮機の上流に配置され、窒素が、前記第1の水素圧縮機の送達側と前記第2の水素圧縮機の吸引側との間で前記水素に添加される、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニア合成プラント及び方法に関する。具体的には、アンモニア合成システムのための新規な圧縮列構成及び関連する方法が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
アンモニア(NH)は、水への溶解度が高いガスであり、水溶液中で使用されることが多い。アンモニアは、いくつかの工業用途において、とりわけ、硝酸、尿素、及び硝酸塩、リン酸塩などの他のアンモニア塩の生産のために使用される。アンモニア誘導体は、農業において広く使用される。アンモニア生産の約80%は、肥料の生産のために使用される。
【0003】
一般に、アンモニアは、以下の発熱反応(すなわち、熱を放出する反応)に従って窒素と水素との合成によって生産され:
【0004】
【化1】
式中、ΔHは、反応によって放出された熱である。
【0005】
広く使用される方法によれば、アンモニア生産は、通常、例えばメタンなどの水素源を提供する供給ガスから始まる。窒素は、空気から得られる。
【0006】
アンモニア合成のための代替方法は、電気分解によって得られた水素を使用する。近年、温室効果ガスの生産を低減し、炭化水素の使用を回避する試みにおいて、いわゆるグリーンアンモニア生産プロセス及びシステムが集中的に研究されている。グリーンアンモニア生産では、アンモニアをつくるプロセスが100%再生可能であり、炭素を含まない。グリーンアンモニアをつくる1つの方式は、空気から分離された窒素及び再生可能エネルギー源を動力源とする水電解からの水素を使用することによるものである。次いで、窒素及び水素は、ハーバープロセス(ハーバー-ボッシュプロセスとしても知られている)に供給され、ここで、水素及び窒素は、高温及び高圧でともに反応してアンモニアを生産する。
【0007】
ハーバープロセスは、通常、高圧高温条件下で行われ、そのために高いエネルギーを必要とするが、より最近では、合成反応を促進する好適な触媒を使用する、より低い温度条件下での合成方法が研究されている。
【0008】
使用される合成プロセスにかかわらず、周囲圧力での電気分解によって生産された水素を使用するアンモニア生産の1つの重要な態様は、合成反応に必要とされる高圧で水素を圧縮するための必要性である。
【0009】
ガスの分子量が低いほど、所望の圧縮比を達成するのに必要な圧縮機インペラの回転速度並びに/又は圧縮機段及び圧縮機ケーシングの数が多くなるので、低い分子量(molecular weight、Mw)を有するガスを圧縮することは、困難な場合がある。場合によってはいくつかの圧縮機ケーシングに分けられる多数の圧縮機段を含む長い圧縮機列は、とりわけロータの動的問題に関して設計者に困難な問題を提起する。
【0010】
水素は、最も低い分子量を有するガスであり、したがって、その圧縮は、圧縮機性能に関して特に要求が厳しい。
【0011】
触媒は、反応が行われる温度を低下させ得るが、合成反応に関与するガスの高い圧力が、アンモニア収率に関して合成プロセスの効率を改善するために必要である。
【0012】
電気分解によって生産される周囲圧力から、効率的なアンモニア合成反応に必要な圧力まで、水素を圧縮する必要があるため、水素圧縮機の設計を、遠心圧縮機などの動的圧縮機が使用される場合、圧縮機段の数に関してばかりでなく、その回転速度に関する両方で、特に要求を厳しくさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、アンモニア生産システム、具体的にはグリーンアンモニア合成システムにおける水素圧縮機の構造、製造、及び制御を簡略化することが有益であろう。
【0014】
一態様によれば、水素源と、水素源からの水素を圧縮するように適合された水素圧縮ユニットと、を含むアンモニア生産システムが本明細書に開示される。システムは、窒素源を更に含む。合成ガス圧縮機は、窒素源から窒素を、水素圧縮ユニットから水素を受け取るように適合され、合成ガス圧縮機に流体的に結合されたアンモニア合成モジュールに送達するために水素と窒素との混合物を含む合成ガスを圧縮するように更に適合される。窒素源は、使用時に水素圧縮ユニットが水素及び窒素を含有するブレンドを圧縮するように、水素圧縮ユニットに流体的に結合される。したがって、水素圧縮ユニットによって処理されたガスブレンドの分子量は、純粋な水素の分子量に対してより高く、圧縮プロセスを改善し、水素圧縮ユニットを簡略化する。
【0015】
水素圧縮ユニットは、少なくとも1つの動的圧縮機、例えば遠心圧縮機を含む。実施形態では、水素圧縮ユニットは、所望の圧縮比を達成するために直列の複数の動的圧縮機を含む。
【0016】
更なる態様によれば、水素及び窒素からアンモニアを生産するための方法が開示される。この方法は、窒素流を合成ガス吸引圧力で合成ガス圧縮機の吸引側に送達するステップを含む。この方法は、合成ガス吸引圧力よりも低い水素入口圧力で水素流を水素圧縮ユニットの吸引側に送達するステップを更に含む。更なるステップは、水素圧縮ユニット内で水素流の圧力を水素入口圧力から合成ガス吸引圧力に昇圧し、圧縮された水素を合成ガス圧縮機に送達することを含む。加えて、この方法はまた、加圧された合成ガスを合成ガス圧縮機からアンモニア合成モジュールに送達し、圧縮された合成ガスからアンモニアを生産するステップを含む。本明細書に開示される実施形態によれば、この方法は、水素圧縮ユニット内の水素に窒素を添加して、水素圧縮ユニットによって処理されたガスの分子量を増加させるステップを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
ここで、添付図面を簡単に参照する。
図1図1は、実施形態における本開示によるシステムの概略図である。
図2図2は、更なる実施形態における本開示によるシステムの概略図である。
図3図3は、更なる実施形態における本開示によるシステムの概略図である。
図4図4は、更なる実施形態における本開示によるシステムの概略図である。
図5図5は、更なる実施形態における本開示によるシステムの概略図である。
図6図6は、更なる実施形態における本開示によるシステムの概略図である。
図7図7は、更に更なる実施形態における本開示のシステムの概略図である。
図8図8は、本開示による方法を要約するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般論として、水素圧縮ユニットの構造又は設計を簡略化するように適合された新規の特徴を含むアンモニア合成のためのシステムが本明細書に開示される。
【0019】
端的に言えば、システムは、合成ガス圧縮機の吸引側で必要とされる最終水素圧力を達成する前に、ある量の窒素が低圧水素の流れに添加されるように構成され、そこで、部分的に圧縮された水素が窒素源からの窒素と混合される。いくつかの実施形態では、水素圧縮ユニット内で水素とブレンドする前に、窒素流は、減圧される。
【0020】
水素圧縮ユニットによって処理された水素と窒素とのブレンドは、純粋な水素の分子量よりも高い分子量を有する。水素圧縮の少なくとも一部が、水素が窒素に混合された状態で実行される場合、水素圧縮機段を低減することができ、かつ/又はその回転速度を現在の技術の水素圧縮機の回転速度よりも低くすることができる。これにより、圧縮機の設計に対する要求が少なくなり、水素圧縮ユニットの全体寸法を小さくすることができる。
【0021】
窒素と水素とが混合されて合成ガスを形成し、その後アンモニア合成モジュールに送達されるので、圧縮後の窒素と水素との分離は、不要である。
【0022】
ここで図面を参照すると、図1は、一実施形態における本開示によるアンモニア生産システム1の概略図を例解する。アンモニア生産システム1は、水素源3及び窒素源5を備える。図1の例示的な実施形態では、水素源3は、電解槽7を含み得る。電解槽7は、電力配電網8からの電気エネルギーで電力供給され得る。いくつかの実施形態では、電気エネルギーは、1つ以上の再生可能エネルギー源によって少なくとも部分的に提供され得る。非限定的な例として、図1の概略図では、再生可能エネルギーは、太陽エネルギーである。再生可能資源からのエネルギーを収集し、電気変換器9によって電気エネルギーに変換することができる。図1では、電気変換器9は、光起電力パネル9Aと、光起電力パネル9A及び電力配電網8に電気的に結合されたソーラーインバータ9Bと、を含む。
【0023】
図示されていない他の実施形態では、太陽エネルギーの代わりに、又は太陽エネルギーに加えて、他の再生可能エネルギー源を使用することができる。例えば、風力、地熱エネルギー、波力、及び潮汐エネルギーなどを使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、電力配電網8は、公共電力配電網に接続することができ、これは、再生可能エネルギー源からの動力が不足している場合に電力を供給するように、かつ/又は再生可能エネルギー源から得られた電力が電解槽7の動力需要を超える場合に電気変換器9から電力を受け取るように適合される。代替として、又は組み合わせて、電気変換器9からの余剰電力は、システム1の他のモジュールによって使用することができ、かつ/又は図示されていない好適な貯蔵ユニットに貯蔵することができる。
【0025】
窒素源5は、例えば周囲空気からの分離によって窒素を提供するように適合された任意の構成を含み得る。図1の実施形態では、窒素源5は、空気圧縮機5A及び窒素分離モジュール5Bを含む。窒素分離モジュール5Bは、例えば、膜分離器、分画システム、又は他の空気成分、具体的には酸素及び二酸化炭素から窒素を分離するように適合された任意の他のデバイスを含み得る。
【0026】
アンモニア生産システム1は、全体的に11で標識されたアンモニア合成ユニットを更に備える。アンモニア合成ユニット11は、圧縮機11A及びアンモニア合成モジュール11Bを含み得る。図1の概略図では簡略化のために単一の圧縮機11Aが示されているが、圧縮機11Aは、次に例えば圧縮機列のシャフトラインに沿って並列及び/又は直列に配置された単一の圧縮機又は複数の圧縮機、典型的には遠心圧縮機を含み得ることを理解されたい。
【0027】
アンモニア合成モジュール11Bは、圧縮機11Aによって好適な圧力でアンモニア合成モジュール11Bに送達される、ガス形態の水素と窒素とのブレンド又は混合物からアンモニアを合成するように適合された任意の構成を含み得る。本明細書では、圧縮機11Aは、アンモニア合成に必要とされる窒素及び水素を含有するガス混合物を圧縮するように適合されているので、合成ガス圧縮機と称される。
【0028】
水素は、低水素圧力P1、例えば周囲圧力付近で水素源3によって送達される。窒素源5は、窒素送達ライン12を通してアンモニア合成ユニット11に向けて低窒素圧P2で窒素を送達する。低窒素圧力P2は、空気圧縮機5Aによって加圧された空気が供給される窒素分離モジュール5Bによって実行される分離プロセスの性質により、低水素圧力P1よりも高い。
【0029】
窒素源5からの窒素は、主窒素送達ダクト12を通って合成ガス圧縮機11Aの吸引側に流れる。合成ガス圧縮機11Aの吸引側では、窒素は、合成ガス吸引圧力P3にある。合成ガス吸引圧力P3は、主窒素送達ダクト12に沿ったヘッド損失のために、低窒素圧力P2と実質的に等しいか又はそれよりもわずかに低い。
【0030】
アンモニア生産システム1は、水素圧縮ユニット15を更に備え、その入口は、水素源3に流体的に結合され、その出口は、合成ガス圧縮機11Aの吸引側に流体的に結合される。低水素圧力P1は、合成ガス吸引圧力P3よりも実質的に低いので、水素源3からの水素は、水素圧縮ユニット15の送達側を合成ガス圧縮機11Aに流体的に結合する接続ダクト17に沿ったヘッド損失を考慮して、水素圧縮ユニット15において、低水素圧力P1から合成ガス吸引圧力P3に、又はわずかに高い圧力P3’に加圧される。
【0031】
図1の概略図では、水素圧縮ユニット15は、単一の圧縮機として表されている。しかしながら、一般的に言えば、水素圧縮ユニット15は、1つ以上の圧縮機、典型的には遠心圧縮機を含んでもよく、これらは、通常直列に配置され、図示されていないドライバによって駆動される共通のシャフトラインに沿って配置された複数の圧縮機を有する単一の圧縮機列を形成し得ることを理解されたい。水素圧縮ユニット15の各圧縮機は、次に複数の圧縮機段を含み得る。
【0032】
水素圧縮ユニット15及び窒素源5によって送達されたガスは、合成ガス圧縮機11A内で一緒に流れ、したがって、これは、水素と窒素とのブレンドを処理し、ガス混合物の圧力を合成ガス吸引圧力P3からアンモニア合成モジュール11B内で実行される合成反応に必要な最終圧力P4に昇圧する。
【0033】
水素圧縮ユニット15によって処理されたガスの分子量を増加させ、水素圧縮機の設計の難しさを軽減するために、例えば、水素圧力を低水素圧力P1から合成ガス吸引圧力P3に昇圧させるのに必要な圧縮機インペラの回転速度又は数を低減するために、水素圧縮ユニット15における圧縮前又は圧縮中に、特定量の窒素が水素に添加される。窒素は、窒素源5によって提供される。
【0034】
図1の実施形態では、窒素源5によって提供される窒素の大部分は、主窒素送達ダクト12を通して合成ガス圧縮機11Aの吸引側に送達される。二次窒素流は、窒素源5を水素圧縮ユニット15に流体的に接続する二次窒素送達ライン21を通って主窒素送達ダクト12から分流される。図1の実施形態では、二次窒素送達ライン21は、水素圧縮ユニット15の入口の上流で水素送達ライン25に接続される。したがって、二次窒素送達ライン21を通して供給される窒素は、水素源3からの水素とブレンドされる前に低水素圧力P1に減圧されなければならない。
【0035】
主窒素送達ダクト12内の低窒素圧力P2は、通常、水素圧縮ユニット15の入口側の低水素圧力P1よりも高いので、減圧デバイス23は、二次窒素送達ライン21に沿って位置付けられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、減圧デバイス23は、絞り弁26を備える。本明細書で使用される場合、「絞り弁」という用語は、そこを流れるガスの圧力を低減するように適合された任意の弁を含む。
【0037】
図1の実施形態では、減圧デバイス23は、窒素圧力及び流量を調整するように制御される。このような目的のために、制御ユニット27を減圧デバイス23に機能的に接続することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、制御ユニット27は、流量検出構成に更に機能的に接続される。図1の実施形態では、流量検出構成は、水素送達ライン25に沿った水素の流量を検出し、二次窒素送達ライン21内の窒素の流量を更に検出するように適合される。概略的には、流量検出構成は、水素送達ライン25内の水素流量計29A及び減圧デバイス23の上流の二次窒素供給ライン21内の窒素流量計29Bを含む。一般的に言えば、流量検出構成は、質量流量を検出するように適合される。いくつかの実施形態では、これは、例えば、温度及び圧力測定と組み合わせてオリフィスを使用して得ることができる。
【0039】
流量計信号に基づいて、制御ユニット27は、水素源3によって送達される水素とブレンドされる窒素の百分率を調整するように適合される。水素流に添加される窒素の量が多いほど、水素圧縮ユニット15によって処理されたガス混合物の分子量が高くなる。より高い分子量のガスのブレンドは、水素圧縮ユニット15において純粋な水素よりも容易に処理されるので、水素圧縮ユニット15によって処理されるガス混合物中の窒素のモル百分率を増加させることは、水素圧縮ユニット15における圧縮機インペラの先端速度の低減及び/又はインペラの数の低減をもたらし、したがって、水素圧縮ユニット15の圧縮機の数の低減をもたらす可能性がある。
【0040】
制御ユニット27は、合成ガス圧縮機11Aによって処理される流量が変化するとき、減圧デバイス23を調整するように適合され得る。制御ユニット27は、例えば、合成ガス圧縮機によって処理される総流量が経時的に変化するとき、窒素流量と水素流量との間の比を所定の範囲内に維持するように適合され得る。
【0041】
上述したように、二次窒素送達ライン21内の窒素圧力は、圧力値P2(低窒素圧力P2)から、P2よりも低い圧力P1(低水素圧力P1)に低減されなければならない。次いで、得られた水素と窒素との混合物は、実質的にP2に等しい圧力P3’に再び加圧されなければならない。したがって、減圧デバイス23内での窒素膨張は、水素流中のブレンドされた窒素の百分率に正比例するある程度のエネルギー損失を引き起こす。
【0042】
したがって、エネルギー及び動力損失に関するコストと、水素圧縮ユニットの速度並びに/又はインペラ及びその段の数の低減に関する利点との間で、妥協が達成されるべきである。
【0043】
一例として、水素圧縮ユニット15によって処理されるガス流中の窒素モル百分率は、2%~20%、好ましくは4%~15%で変動し得るが、これに限定されない。より好ましくは、水素-窒素ブレンド中の窒素のモル百分率は、4%~10%の範囲であり得る。
【0044】
図1の実施形態では、二次窒素送達ライン21を通して送達された二次窒素流は、窒素圧力が低窒素圧力P2から低水素圧力P1に低減されなければならないように、水素圧縮ユニット15の上流に供給される。この手法は、圧力損失を最大にし、したがって、二次窒素送達ライン21を通して送達される二次窒素流の百分率を再加圧するのに必要な追加動力の量を最大にする。しかしながら、水素圧縮ユニット15におけるより容易な圧縮に関して、窒素と水素との混合の有益な効果を最大にする。
【0045】
他の実施形態では、エネルギー損失と水素-窒素ブレンド圧縮に関する利点との間の妥協は、水素圧縮の中間段階において二次窒素流を添加することによって得ることができる。このような場合、分子量増加の利点は、低減するが、窒素流の一部を膨張させる必要性によって引き起こされる動力損失も低減する。
【0046】
引き続き図1を参照すると、図2は、水素流が部分的に圧縮されると窒素が水素流に添加される実施形態を例解する。同じ番号は、図1に既に示され、上述された同じ又は同等の構成要素を示す。これらの構成要素及びそれらの機能については、再度説明しない。
【0047】
図2の実施形態は、主に、水素圧縮が2つの局面に分割され、窒素が第1の圧縮局面と第2の圧縮局面との間で水素流に添加されるという点で、図1の実施形態と異なる。
【0048】
図2の実施形態では、水素圧縮ユニット15は、2つの水素圧縮機15A及び15Bを含むものとして示されている。2つの水素圧縮機15A及び15Bは、直列に配置され、第1の水素圧縮機15Aは、水素圧縮ユニット15を通る水素の流れの方向に対して第2の水素圧縮機15Bの上流に配置されている。第1の水素圧縮機15Aの吸引側は、低水素圧力P1で水素源3から水素を受け取る。第1水素圧縮機15Aの送達側から第2水素圧縮機15Bの吸引側に中間水素圧力P5の水素が送達される。水素圧力は、第2の水素圧縮機15Bによって、中間水素圧力P5から合成ガス圧力P3又はわずかに高い圧力P3’に昇圧される。
【0049】
二次窒素送達ライン21は、第1の水素圧縮機15Aの送達側と第2の水素圧縮機15Bの吸引側との間で水素圧縮ユニット15に流体的に結合される。これにより、減圧デバイス23は、窒素圧力を低窒素圧力P2から低水素圧力P1よりも高い中間水素圧力P5に低減する。したがって、二次窒素送達ライン21において必要とされる圧力に到達するために必要とされる電力損失は、より低い。これは、システム1の電力消費の低減に関して有益であるが、水素圧縮ユニット15において処理されたガス流の分子量が第2の水素圧縮機15Bにおいてのみ増加され、第1の水素圧縮機15Aにおいては増加されないので、水素圧縮に関する利点を低減する。
【0050】
更なる実施形態では、減圧デバイス23を通った二次窒素流のエンタルピー低下を少なくとも部分的に回収して、有用な動力を生じることができる。この目的のために、減圧デバイス23は、絞り弁26の代わりに、又はそれと組み合わせて、少なくとも1つの膨張機を備えることができる。
【0051】
引き続き図1及び図2を参照すると、図3は、絞り弁26が膨張機24に置き換えられている、図1と同様の実施形態を例解する。図1に関連して既に開示されている図3に示されるシステムの構成要素は、同じ参照番号で標識され、再度説明しない。
【0052】
図3の実施形態と図1の実施形態との主な違いは、窒素源5からの窒素の圧力が、絞り弁ではなく、減圧デバイス23の膨張機24での膨張によって低減されることにある。図3の実施形態では、膨張機24は、発電機31に駆動可能に結合される。したがって、膨張機24における二次窒素流のエンタルピー低下は、発電機31によって少なくとも部分的に電力に変換される。電力は、参照番号8Aで標識された電力配電網に送達される。電力配電網8Aは、電力配電網8の一部であってもよいか、又は電力配電網8に電気的に接続されていてもよい。したがって、窒素膨張から膨張機24によって回収された動力は、水素を生産するために使用することができる。代替として、又は組み合わせて、発電機31によって生じた電力は、システム1の他の構成要素、例えば、システム1内の圧縮機のうちの1つ以上を駆動する電気モータに電力供給するために使用することができる。更なる実施形態では、膨張機24は、水素圧縮機、空気圧縮機、及び合成ガス圧縮機のうちの1つ以上のシャフトに駆動可能に結合することができる。この実施形態では、膨張機24は、それぞれの圧縮機の主ドライバを支援する機械的ドライバ(ヘルパー)として使用され、したがって、外部供給電力及び主ドライバのサイズを低減する。
【0053】
膨張機24は、図4の実施形態に示すように、図2の実施形態の絞り弁26の代わりに、又は絞り弁26と組み合わせて使用することもできる。膨張機24によって生じた動力は、上述したように、それ自体を利用するか、又は電力に変換することができる。
【0054】
現在好ましい実施形態では、二次窒素流は、主窒素送達ライン12から分流されるが、窒素分離モジュール5Bから独立した追加の窒素源構成要素から二次窒素流を分流させる選択肢は、除外されない。そのような選択肢が図5に示され、図1図4で使用される同じ参照番号は、同じ又は同等の構成要素を示しており、それらについては再度説明しない。図5において、窒素源5は、追加の窒素源5C、例えば、別個のプラント又はシステムからの窒素送達ラインを含む。ダクト32は、窒素源5の追加窒素源5Cを水素圧縮ユニット15の吸引側に接続する。制御弁33をダクト32に沿って配置して、窒素流の量を調節することができる。制御ユニット27にインターフェースされた流量計29が更に予測され、制御ユニット27は、弁33を制御するように適合されている。
【0055】
追加の窒素源5Cは、図2による実施形態においても想定することができ、二次窒素流は、第1の上流水素圧縮機と第2の下流水素圧縮機との間に注入される。この実施形態は、図6に示され、図2及び図5に関連して既に説明された同じ又は対応する構成要素を示すために同じ参照番号が使用され、再度説明しない。
【0056】
上述の実施形態では、二次窒素流は、水素圧縮ユニット15の上流(図1図3、及び図5)に完全に、又は水素圧縮ユニット15の上流水素圧縮機15Aと下流水素圧縮機15Bとの間に完全に送達される。他の実施形態では、二次窒素流を分割して、一部を水素圧縮ユニット15の上流に、一部を連続して配置された水素圧縮機15A、15Bの間の中間位置に送達することができる。代替として、二次窒素流を2つ以上の流れに分割し、水素圧縮ユニット15の異なる点、例えば異なる圧縮機又は異なる圧縮機段の吸引側に異なる圧力レベルで送達することもできる。
【0057】
例えば、図1図2図3図4図5、及び図6に関連して既に開示された同じ又は対応する構成要素を示すために同じ参照番号が使用され、再度説明しない図7では、二次窒素流は、圧力P2で主窒素送達ダクト12から分流され、水素圧縮ユニット15の上流で圧力P1で送達される第1の二次窒素流と、第1の水素圧縮機15Aと第2の水素圧縮機15Bとの間で圧力P5で送達される第2の二次窒素流とに分割される。2つの制御された絞り弁26A及び26Bなどの2つの減圧弁を制御ユニット27にインターフェースすることができる。代替として、絞り弁26A、26Bの一方又は両方を膨張機で置き換えることができる。3つの流量検出デバイス29A、29B、及び29Cは、水素源3によって水素圧縮ユニット15に送達される水素流量、並びに第1及び第2の二次窒素流の流量を検出するために使用される。
【0058】
いくつかの実施形態の上記の説明では、第1の上流水素圧縮機15A及び第2の下流水素圧縮機15Bが参照されており、二次窒素流を中間圧力P5でそれらの間に送達することができる。しかしながら、水素圧縮ユニット15は、3つ以上の連続して配置された水素圧縮機15A、15Bを含むことができ、二次窒素流が正しい中間圧力で送達されるならば、1つだけではない二次窒素流を、1対だけではない連続して配置された水素圧縮機の間に送達することができることを理解されたい。
【0059】
更に、本明細書で理解されるように、第1及び第2の連続して配置された水素圧縮機はまた、同じ圧縮機デバイスの2つの連続して配置された圧縮機段によって具現化されてもよい。例えば、1つ以上の二次窒素流を、1つ以上の多段水素圧縮機に沿った1つ以上の中間位置において側流として注入することができる。
【0060】
更に、上記に開示された実施形態のいくつかは、窒素分離モジュール5Bから送達された主窒素流から分流された二次窒素流を提供し、いくつかの他の実施形態は、追加の窒素源5Cによって送達された二次窒素流を提供するが、図示されていない他の実施形態は、主窒素送達ダクト12から分流された二次窒素流と、追加の二次窒素流を送達する追加の窒素源5Cとの両方を組み合わせて含み得る。そのような場合、2つの二次窒素流は、水素圧縮ユニット15の同じ点で組み合わされて供給されるか、又は別々に維持されて適切な窒素圧力で水素圧縮ユニット15の異なる点に送達されるかのいずれかであり得る。
【0061】
図8は、これまでに開示されたアンモニア生産システムによって実行された方法を要約するフローチャートを例解する。要約すると、この方法は、以下を含む。ステップ101において、窒素が合成ガス圧縮機11Aの吸引側に送達される。ステップ102において、低圧水素流が水素圧縮ユニット15の吸引側に送達される。ステップ103において、水素圧縮ユニット15において、その吸引側の上流及び/又は圧力P1の吸引側と圧力P3’の送達側との間の中間位置のいずれかで、窒素が水素に添加される。ステップ104において、水素と窒素とのブレンドの圧力が、水素圧縮ユニット15において、低水素圧力P1から合成ガス吸引圧力P3まで、又はそれよりもわずかに高い圧力まで昇圧される。圧縮された水素と窒素とのブレンドは、合成ガス圧縮機11Aに送達される(ステップ105参照)。合成ガス圧縮機11Aからの加圧された合成ガスは、アンモニア合成モジュール11Bに送達され(ステップ106)、最終的に、アンモニアは、アンモニア合成モジュール11Bにおいて、圧縮された合成ガスから合成される(ステップ107)。
【0062】
本明細書に開示されるシステム、デバイス、及び方法の構造、機能、及び使用の原理の全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実施形態を記載してきた。これらの実施形態の1つ以上の例が、添付の図面に例解されている。当業者は、本明細書に明確に記載され、添付の図面に例解されるシステム、デバイス、及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して記載又は例解される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。このような修正例及び変形例は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】