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特表2024-543023深層学習アルゴリズムをトレーニングするためのシステム、および関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】深層学習アルゴリズムをトレーニングするためのシステム、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/08 20230101AFI20241112BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20241112BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241112BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20241112BHJP
【FI】
G06N3/08
G01N23/04
G06T7/00 350C
G06V10/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525899
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2022079878
(87)【国際公開番号】W WO2023078747
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2111796
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508282993
【氏名又は名称】アクティエボラゲット・エスコーエッフ
(71)【出願人】
【識別番号】521221250
【氏名又は名称】エスカエフ・エアロスペース・フランス・エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・カレロット
(72)【発明者】
【氏名】ヨアン・エブラール
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001FA02
2G001FA06
2G001FA30
2G001HA04
2G001HA13
2G001HA14
2G001KA03
2G001LA06
2G001MA08
5L096AA06
5L096BA03
5L096DA02
5L096FA32
5L096FA33
5L096GA02
5L096GA55
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
セラミック転動体(2)の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングするための本システム(1)は、欠陥を含む転動体(2)およびいかなる欠陥も含まない転動体(2)のデジタル放射線画像のセット(DATA1)を取り込むための手段(3)と、フィルタリング手段(6)と、フィルタリングされた放射線画像のセット(DATA2)に基づいて、データセット(DATA3)を生成するための手段(7)と、実行手段(8)と、放射線画像のセット(DATA1)に基づいて、深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングするように構成された、トレーニング手段(10)と、統計的学習アルゴリズム(ALGO1)によって実行された画像セットの画像の分類と深層学習アルゴリズム(ALGO2)によって実行された画像セットの画像の分類とを、統計的学習アルゴリズムによって実行された分類に対して深層学習アルゴリズムの分類の精度を決定する目的で、比較するように構成された、比較手段(12)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック転動体(2)の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングするための方法であって、
欠陥を含む転動体(2)およびいかなる欠陥も含まない転動体(2)のデジタル放射線画像のセット(DATA1)を取り込むステップと、
各画像のコントラストを改善するために、前記放射線画像のセット(DATA1)の各画像を最初にフィルタリングするステップと、
フィルタリングされた放射線画像のセット(DATA2)に基づいて、データセット(DATA3)を生成するステップと、
前記データセット(DATA3)に基づいて、前記放射線画像のセット(DATA1)の各画像を、統計的学習アルゴリズム(ALGO1)を使用して、疑わしい転動体のクラス(CL1)または疑わしくない転動体のクラス(CL2)に分類するステップと、
深層学習アルゴリズムが前記放射線画像のセットの各画像を前記疑わしい転動体のクラス(CL1)または前記疑わしくない転動体のクラス(CL2)に分類するように、前記放射線画像のセット(DATA1)に基づいて、前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングするステップと、
前記統計的学習アルゴリズム(ALGO1)によって実行された前記放射線画像のセットの画像の前記分類と前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)によって実行された前記放射線画像のセットの画像の前記分類とを、前記統計的学習アルゴリズムによって実行された前記分類に対して前記深層学習アルゴリズムの前記分類の精度を決定する目的で、比較するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
トレーニングデータセット(DATA3)を生成する前記ステップが、
各画像をさまざまな領域(Z1,Z2,Z3)に区画するステップと、
前記放射線画像のセットの各画像の各領域を再度フィルタリングして、データベクトルを得るステップであって、前記データベクトルが前記トレーニングデータセット(DATA3)を形成する、ステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線画像のセットの各画像を、統計的学習アルゴリズム(ALGO1)を使用して分類する前記ステップが、
指標的な前記データセット(DATA3)に基づいて、前記フィルタリングされた放射線画像のセット(DATA2)の各画像の画像解析指標の値を計算するステップと、
前記解析指標をしきい値と比較するステップと、
比較の結果に応じて、各画像を分類するステップと
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像解析指標が、平均および/または標準偏差および/または中央値および/またはグレースケール勾配を計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングする前記ステップが、
フィルタリングされた各画像を複数の領域(Z1,Z2,Z3)に区画するステップと、
選択基準に基づいて少なくとも1つの欠陥を検出する目的で、前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)を使用して各画像の各領域を処理するステップと、
各領域に特有の選択基準により、欠陥を検出するステップと、
各画像を分類するステップと
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記選択基準が、前記領域内の前記転動体の幾何形状および/または前記領域内のテクスチャおよび/または前記領域内のコントラストを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)が畳み込みニューラルネットワークを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記統計的学習アルゴリズム(ALGO1)によって実行された前記放射線画像のセットの画像の前記分類と前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)によって実行された前記放射線画像のセットの画像の前記分類とを比較する前記ステップが、
前記放射線画像のセットの同一画像ごとに、前記統計的学習アルゴリズム(ALGO1)によって実行された前記分類と前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)によって実行された前記分類とを比較するステップと、
前記統計的学習アルゴリズムおよび前記深層学習アルゴリズムによって同一クラス(CL1,CL2)に分類された画像の数を決定するステップと、
2つのアルゴリズムによって同一クラスに分類された画像の数と前記放射線画像のセット内の画像の合計数との比を計算することによって、前記深層学習アルゴリズムの分類の精度を決定するステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
セラミック転動体(2)の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングするためのシステム(1)であって、
欠陥を含む転動体(2)およびいかなる欠陥も含まない転動体(2)のデジタル放射線画像のセット(DATA1)を取り込むための手段(3)と、
前記放射線画像のセット(DATA1)の各画像のコントラストを改善するように構成された、フィルタリング手段(6)と、
フィルタリングされた放射線画像のセット(DATA2)に基づいて、データセット(DATA3)を生成するための手段(7)と、
前記データセット(DATA3)に基づいて、前記放射線画像のセット(DATA1)の各画像を疑わしい転動体のクラス(CL1)または疑わしくない転動体のクラス(CL2)に分類するように構成された統計的学習アルゴリズム(ALGO1)を実行するように構成された、実行手段(8)と、
深層学習アルゴリズムが前記放射線画像のセットの各画像を前記疑わしい転動体のクラス(CL1)または前記疑わしくない転動体のクラス(CL2)に分類するように、前記放射線画像のセット(DATA1)に基づいて、前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)をトレーニングするように構成された、トレーニング手段(10)と、
前記統計的学習アルゴリズム(ALGO1)によって実行された前記放射線画像のセットの画像の前記分類と前記深層学習アルゴリズム(ALGO2)によって実行された前記放射線画像のセットの画像の前記分類とを、前記統計的学習アルゴリズムによって実行された前記分類に対して前記深層学習アルゴリズムの前記分類の精度を決定する目的で、比較するように構成された、比較手段(12)と
を備える、システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック転動体に関し、より詳細には、そのような転動体の製造欠陥の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的組立体の回転をガイドするために、セラミック製または鋼製の転動体を装備した転がり軸受を使用することが一般に提案される。転動体は例えば、玉とすることができ、または円筒ころ、円すいころ、もしくは球面ころとすることもできる。
【0003】
転がり軸受のこれらの転動体により、摩擦力を制限して固定要素に対する軸の円運動が確実なものになることが可能になる。
【0004】
転動体は、自動車および航空の両分野の可逆電動機または燃焼機関に利用可能である。
【0005】
しかし、セラミック転動体は焼結によって生産されるので、異物含有物、材料の不均一な凝集、または多孔を含むことがある。
【0006】
これらの欠陥は、転動体を故障させやすく、したがって、そのような転動体を装備した転がり軸受を備える製品に損傷を与えやすい。
【0007】
例えば、故障した転動体を装備した転がり軸受が回転軸上に位置付けられたとき、それらの転動体が剥離および/または過熱を生じさせるおそれがあり、軸の回転は次第に困難になる。
【0008】
さらに、転動体は、軸受の他の構成要素から完全に分離しやすく、したがって、回転軸をその周囲の機械系から結合解除(disassociate)させやすい。このことが航空学において危機的に重大であると判明する可能性がある。
【0009】
転動体の故障を防ぐために、その製造直後にこれらの欠陥を検出することが有利である。
【0010】
X線を使用して、転動体の放射線画像(radiographic image)を得ることが知られている。
【0011】
これらの画像は、処理後に、転動体の欠陥を認識する目的で、人間のオペレータによって解析される。
【0012】
しかし、オペレータによる転動体の欠陥の認識の手順は、大量製造された転動体に適していない。
【0013】
オペレータが画像を処理できる能力には限度があるので、欠陥認識手順により、転動体生産ライン全体の速度が遅くなることがある。
【0014】
さらに、オペレータは、画像についての自身の解釈を間違えることがある。
【0015】
深層学習アルゴリズム、例えばニューラルネットワークを使用して、画像内の所定の特徴を認識することが知られている。
【0016】
しかし、深層学習アルゴリズムが十分に機能するためには、深層学習アルゴリズムがトレーニングされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の内容に鑑みて、本発明の目的は、前述の制約を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明の一主題は、セラミック転動体の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズムをトレーニングするための方法であって、
- 欠陥を含む転動体およびいかなる欠陥も含まない転動体のデジタル放射線画像のセットを取り込むことと、
- 各画像のコントラストを改善するために、画像のセットの各画像を最初にフィルタリングすることと、
- フィルタリングされた放射線画像のセットに基づいて、データセットを生成することと、
- データセットに基づいて、放射線画像のセットの各画像を、統計的学習アルゴリズムを使用して、疑わしい転動体のクラスまたは疑わしくない転動体のクラスに分類することと、
- 放射線画像のセットに基づいて、深層学習アルゴリズムが放射線画像のセットの各画像を疑わしい転動体のクラスまたは疑わしくない転動体のクラスに分類するように深層学習アルゴリズムをトレーニングすることと、
- 統計的学習アルゴリズムによって実行された画像セットの画像の分類と深層学習アルゴリズムによって実行された画像セットの画像の分類とを、統計的学習アルゴリズムによって実行された分類に対して深層学習アルゴリズムの分類の精度を決定する目的で、比較することと
を含む、方法である。
【0019】
学習アルゴリズムによって実行された分類のデータを解析することにより、深層学習アルゴリズムがニューラルネットワークを備えるときに深層学習アルゴリズムの重みのばらつきについて解釈することが可能になる。
【0020】
深層学習アルゴリズムの適合率が十分であるとき、転動体の欠陥の認識の手順は、画像セットの解釈の誤りのリスクを最小限に抑えつつ、転動体を生産するためのラインの生産速度を向上させるために、自動化することができる。
【0021】
好ましくは、トレーニングデータセットの生成は、
- 各画像をさまざまな領域に区画することと、
- 画像のセットの各画像の各領域を再度フィルタリングして、データベクトルを得ることであって、データベクトルがトレーニングデータセットを形成する、得ることと
を含む。
【0022】
有利には、統計的学習アルゴリズムによる放射線画像のセットの各画像の分類は、
- フィルタリングされた画像のセットの各画像の指標的データセット(indicative data set)に基づいて画像解析指標の値を計算することと、
- 解析指標をしきい値と比較することと、
- 比較の結果に応じて、各画像を分類することと
を含む。
【0023】
好ましくは、画像解析指標は、平均および/または標準偏差および/または中央値および/またはグレースケール勾配を計算することを含む。
【0024】
有利には、深層学習アルゴリズムのトレーニングは、
- フィルタリングされた各画像をさまざまな領域に区画することと、
- 選択基準に基づいて少なくとも1つの欠陥を検出する目的で、深層学習アルゴリズムを使用して各画像の各領域を処理することと、
- 各領域に特有の選択基準により、欠陥を検出することと、
- 各画像を分類することと
を含む。
【0025】
好ましくは、選択基準は、前記領域内の転動体の幾何形状および/または前記領域内のテクスチャおよび/または前記領域内のコントラストを含む。
【0026】
有利には、深層学習アルゴリズムは畳み込みニューラルネットワークを備える。
【0027】
好ましくは、統計的学習アルゴリズムによって実行された画像セットの画像の分類と深層学習アルゴリズムによって実行された画像セットの画像の分類との比較は、
- 放射線画像のセットの同一画像ごとに、統計的学習アルゴリズムによって実行された分類と深層学習アルゴリズムによって実行された分類とを比較するステップと、
- 統計的学習アルゴリズムおよび深層学習アルゴリズムによって同一クラスに分類された画像の数を決定するステップと、
- 2つのアルゴリズムによって同一クラスに分類された画像の数と放射線画像のセット内の画像の合計数との間の比を計算することによって、深層学習アルゴリズムの分類の精度を決定するステップと
を含む。
【0028】
本発明の別の主題は、セラミック転動体の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズムをトレーニングするためのシステムであって、
- 欠陥を含む転動体およびいかなる欠陥も含まない転動体のデジタル放射線画像のセットを取り込むための手段と、
- 画像のセットの各画像のコントラストを改善するように構成された、フィルタリング手段と、
- フィルタリングされた放射線画像のセットに基づいて、データセットを生成するための手段と、
- データセットに基づいて、画像セットの各画像を疑わしい転動体のクラスまたは疑わしくない転動体のクラスに分類するように構成された統計的学習アルゴリズムを実行するように構成された、実行手段と、
- 深層学習アルゴリズムが放射線画像のセットの各画像を疑わしい転動体のクラスまたは疑わしくない転動体のクラスに分類するように、放射線画像のセットに基づいて深層学習アルゴリズムをトレーニングするように構成された、トレーニング手段と、
- 統計的学習アルゴリズムによって実行された画像セットの画像の分類と深層学習アルゴリズムによって実行された画像セットの画像の分類とを、統計的学習アルゴリズムによって実行された分類に対して深層学習アルゴリズムの分類の精度を決定する目的で、比較するように構成された、比較手段と
を備える、システムである。
【0029】
単に非限定的な例として与えられる以下の説明を、添付の図面を参照して読めば、本発明の他の目的、特徴、および利点が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による、セラミック転動体の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズムをトレーニングするためのシステムを示す図である。
図2】本発明によるトレーニングシステムの一実施モードを示す図である。
図3】本発明によるフィルタリングされた画像の一例を示す図である。
図4】フィルタリングされた画像を分割した一例を示す図である。
図5】本発明によるデータセットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、セラミック転動体2の欠陥の検出用の深層学習アルゴリズムALG1をトレーニングするためのシステムを示す。
【0032】
システム1は、欠陥を含む転動体2およびいかなる欠陥も含まない転動体2の2次元デジタル放射線画像のセットDATA1を取り込むための手段3を備える。
【0033】
取込み手段3は、写真センサ4と、電磁波R1を転動体2に向かって放出するように構成された、高周波電磁波R1の発生器5とを備える。
【0034】
これらの電磁波R1は、その後、写真センサ4によって吸収される。
【0035】
かくして、転動体2の2次元デジタル放射線画像が形成される。
【0036】
発生器5は一般に、微小焦点X線管の形態をとることに留意されたい。
【0037】
別の実施形態によれば、取込み手段3は、3次元デジタル放射線画像を生成する。
【0038】
システム1は、取込み手段3に接続されており、取込み手段3によって取り込まれた画像のセットDATA1の各画像のコントラストを改善するために、画像のセットの画像を処理する、フィルタリング手段6をさらに備える。フィルタリング手段6は、フィルタリングされた放射線画像のセットDATA2を供給する。
【0039】
システム1はまた、フィルタリング手段6によってフィルタリングされた放射線画像のセットDATA2からデータセットDATA3を生成するための手段7と、データセットDATA3に基づいて、フィルタリングされた画像のセットDATA2の各画像を疑わしい転動体2のクラスCL1または疑わしくない転動体2のクラスCL2に分類するように構成された統計的学習アルゴリズムALGO1を実行する実行手段8とを備える。生成手段7は、フィルタリング手段6および実行手段8に接続されている。
【0040】
統計的学習アルゴリズムALGO1によって実行された分類は、例えば、メモリ9内に記憶される。
【0041】
統計的学習アルゴリズムALGO1は、例えば、決定木アルゴリズム、ランダムフォレストアルゴリズム、サポートベクターマシンアルゴリズム、K近傍法アルゴリズム、またはロジスティック回帰アルゴリズムを含む。
【0042】
疑わしい転動体とは、少なくとも1つの欠陥を有するその確率が、いかなる欠陥も有さないその確率よりも高い転動体2であることに留意されたい。
【0043】
欠陥は、例えば、異物含有物、材料の不均一な凝集、または多孔を含む。
【0044】
システム1は、深層学習アルゴリズムがフィルタリングされた放射線画像のセットDATA2の各画像を疑わしい転動体のクラスCL1または疑わしくない転動体のクラスCL2に分類するように、フィルタリングされた放射線画像のセットDATA2に基づいて深層学習アルゴリズムALGO2をトレーニングする、トレーニング手段10をさらに備える。トレーニング手段10は、フィルタリング手段6に接続されている。
【0045】
深層学習アルゴリズムALGO2は、例えば、畳み込みニューラルネットワークを備える。
【0046】
深層学習アルゴリズムALGO2によって実行される分類は、例えば、メモリ11内に記憶される。
【0047】
システム1は、統計的学習アルゴリズムALGO1によって実行された分類と深層学習アルゴリズムALGO2によって実行された分類とを、統計的学習アルゴリズムの分類に基づいて深層学習アルゴリズムの精度を決定するために、比較する、比較手段12をさらに備える。比較手段12は、実行手段8およびトレーニング手段10に接続されており、例えば、統計的学習アルゴリズムALGO1によって実行された分類を記憶した実行手段のメモリ9の内容、および深層学習アルゴリズムALGO2によって実行された分類を記憶したトレーニング手段10のメモリ11の内容を読み取る。
【0048】
システム1は、画像のセットDATA1を取り込むための取込み手段3、フィルタリング手段、フィルタリングされた放射線画像のセットDATA2に基づいてデータセットDATA3を生成するための手段7、実行手段8、トレーニング手段10、および比較手段12を用いる、処理ユニットUTをさらに備える。
【0049】
比較手段12は、統計的学習アルゴリズムによって実行された分類に対して深層学習アルゴリズムの分類の精度を示すデータセットDATA4を供給する。
【0050】
データセットDATA4を解析することにより、深層学習アルゴリズムALGO2の動作が検証されることが可能になる。
【0051】
精度のレベルが不十分である場合、深層学習アルゴリズムALGO2のトレーニングを継続する目的で、新規のデータセットDATA1が生成される。
【0052】
一変形形態として、十分なサイズの画像のセットDATA1が利用可能であるとき、深層学習アルゴリズムALGO2のトレーニングを継続するとともに前記アルゴリズムの精度を向上させる目的で、システム1は前記セットに基づいて実施される。
【0053】
図2は、システム1の実施の一例を示す。
【0054】
ステップ20において、取込み手段3が、欠陥を含む転動体2およびいかなる欠陥も含まない転動体2の2次元デジタル放射線画像のセットDATA1を取り込む。
【0055】
画像のセットDATA1は、例えば100枚の画像を備え、アルゴリズムALGO1から十分な分類の精度が得られることを可能にする。
【0056】
画像のセットDATA1が全て揃っているとき、ステップ22において、フィルタリング手段6が、各画像のコントラストを改善するために、画像のセットDATA1の画像をフィルタリングし、フィルタリングされた画像のセットDATA2を生成手段7およびトレーニング手段10に供給する。
【0057】
フィルタリングされた画像のセットDATA2を受け取ると、生成手段7は、フィルタリングされた画像のセットDATA2に基づいて、データセットDATA3を生成し(ステップ24)、次いで実行手段8が、統計的学習アルゴリズムALGO1がフィルタリングされた画像のセットDATA2の各画像を疑わしい転動体のクラスCL1または疑わしくない転動体のクラスCL2に分類するように統計的学習アルゴリズムALGO1を実行する(ステップ26)。
【0058】
さらに、フィルタリングされた画像のセットDATA2を受け取ると、トレーニング手段10は、深層学習アルゴリズムがフィルタリングされた画像のセットDATA2の各画像を疑わしい転動体のクラスCL1または疑わしくない転動体のクラスCL2に分類するように深層学習アルゴリズムALGO2をトレーニングする(ステップ28)。
【0059】
2つのステップ24および26、ならびにステップ28は、例えば、並列に実行される。
【0060】
一変形形態として、ステップ24および26、ならびにステップ28は、逐次実行される。
【0061】
データセットDATA3を生成するステップ24において、生成手段7は、フィルタリングされた画像のセットDATA2の各画像をさまざまな領域に区画する。
【0062】
次に、フィルタリングされた画像のセットDATA2の各画像の領域ごとに、手段7は、画像のセットDATA2の各画像領域のコーディングを含むデータベクトルを生成する。
【0063】
データセットDATA3はこのデータベクトルを含む。
【0064】
図3は、フィルタリング手段6によってフィルタリングされた、転動体2の画像を示す。
【0065】
図4は、図3に示すフィルタリングされた画像を、異なるグレースケールレベルによって各領域が特徴付けられる3つの異なる領域Z1、Z2、Z3に分割した様子を示す。
【0066】
各画像はグレースケールレベルによってフィルタリングされている。
【0067】
言うまでもなく、各画像は、少なくとも3つを上回る、異なる領域に分割されてよい。
【0068】
図5は、コーディングラインLcによってモデリングされたデータセットDATA3の一例を示す。
【0069】
各ラインLcは、フィルタリングされた画像のセットDATA2の画像をコーディングしたデータを表す。
【0070】
実行手段8がデータセットDATA3を受け取ると、ステップ26において、実行手段8によって実行されるアルゴリズムALGO1が、データセットDATA3に基づいて、画像のセットDATA2の各画像についての画像解析指標の値を計算する。
【0071】
画像解析指標は、例えば、平均および/または標準偏差および/または中央値および/またはグレースケール勾配(gradient)を計算することを含む。
【0072】
次に、画像指標の値がしきい値と比較される。
【0073】
画像のセットDATA2の画像の指標の値がしきい値よりも大きい場合、前記画像は、例えば、疑わしい転動体のクラスCL1に分類され、画像の指標の値がしきい値よりも小さい場合、前記画像は、例えば、疑わしくない転動体のクラスCL2に分類される。
【0074】
ステップ28において、トレーニング手段10は、フィルタリングされた画像のセットDATA2の各画像を複数の領域に区画し、1つの選択基準に対応する各領域は、例えば前記領域内の転動体2の幾何形状および/または前記領域内のテクスチャおよび/または前記領域内のコントラストを含む。
【0075】
次に、トレーニング手段10によって実行されるアルゴリズムALGO2は、選択基準に基づいて少なくとも1つの欠陥を検出するために、各画像の各領域を処理し、転動体2内のいかなる欠陥をも検出し、前記転動体を、転動体2が疑わしいとみなされるか否かに応じて、クラスCL1とCL2の一方に分類する。
【0076】
例えば、転動体2の幾何形状が、その領域内で、転動体2の幾何形状と比べて所定の許容範囲内で円形ではない場合、アルゴリズムALGO2は前記転動体2をクラスCL2に分類する。
【0077】
フィルタリングされた画像のセットDATA2の全ての画像がアルゴリズムALGO1およびALGO2によってクラスCL1とCL2の一方に分類されると、ステップ30において、比較手段12が、画像のセットDATA1の所与の画像ごとに、統計的学習アルゴリズムALGO1によって実行された分類であって、手段8のメモリ9内に記憶されている分類と、深層学習アルゴリズムALGO2によって実行された分類であって、メモリ11内に記憶されている分類とを比較する。
【0078】
比較手段12は、統計的学習アルゴリズムALGO1および深層学習アルゴリズムALGO2によって同一クラスCL1、CL2に分類された画像の数を決定し、両アルゴリズムALGO1、ALGO2によって同一クラスに分類された画像の数と放射線画像のセットDATA1の画像の合計数との比を計算することによって、深層学習アルゴリズムALGO2の分類の精度を決定する。
【0079】
次に、比較手段12はデータセットDATA4を供給する。
【0080】
統計的学習アルゴリズムALGO1によって実行された分類であって、メモリ9内に記憶されている分類のデータDATA4を解析することにより、深層学習アルゴリズムALGO2がニューラルネットワークを備えるときに深層学習アルゴリズムALGO2の重みのばらつきについて解釈することが可能になる。
【0081】
深層学習アルゴリズムALGO2の適合率が十分であるとき、転動体の欠陥の認識の手順は、画像セットDATA1の解釈の誤りのリスクを最小限に抑えつつ、転動体を生産するためのラインの生産速度を向上させるために、自動化することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 システム
2 セラミック転動体
3 取込み手段
4 写真センサ
5 発生器
6 フィルタリング手段
7 生成手段
8 実行手段
9 メモリ
10 トレーニング手段
11 メモリ
12 比較手段
ALG1 深層学習アルゴリズム
ALGO1 統計的学習アルゴリズム
ALGO2 深層学習アルゴリズム
CL1 疑わしい転動体のクラス
CL2 疑わしくない転動体のクラス
DATA1 2次元デジタル放射線画像のセット
DATA2 フィルタリングされた放射線画像のセット
DATA3 トレーニングデータセット
DATA4 データセット
Lc コーディングライン
R1 高周波電磁波
UT 処理ユニット
Z1 領域
Z2 領域
Z3 領域
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】