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特表2024-543032プライミングされた子宮由来再生細胞組成物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】プライミングされた子宮由来再生細胞組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20241112BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20241112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241112BHJP
   A61K 35/48 20150101ALI20241112BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241112BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20241112BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20241112BHJP
   C12N 9/66 20060101ALN20241112BHJP
   C12N 9/76 20060101ALN20241112BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20241112BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20241112BHJP
   C07K 14/76 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/36
A61P43/00 121
A61P13/12
A61P17/00
A61P37/08
A61P19/02
A61P37/02
A61P1/16
A61P1/04
A61P19/08
A61P27/02
A61P1/18
A61P19/04
A61P25/00
A61P17/02
A61K35/12
A61K35/48
A61P1/02
A61K47/26
A61K47/20
A61K47/42
A61K47/46
A61K47/02
A61K47/36
C12N5/0775
C07K14/50
C12N9/66
C12N9/76
C12N9/50
C12N9/26
C07K14/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526559
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 US2022048067
(87)【国際公開番号】W WO2023081057
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/263,548
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,550
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523271170
【氏名又は名称】ギャラント・ペット,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】シェリー・ザカリアス
(72)【発明者】
【氏名】セオドア・ティー・サンド
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・バリジャス
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・バティスタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BB23
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA16
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB24
4C076BB36
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076DD55
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF61
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB48
4C087BB61
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA16
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA66
4C087ZA67
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB13
4C087ZC61
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA61
4H045CA40
4H045DA70
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA72
(57)【要約】
本開示は、イヌまたはネコの子宮組織に由来する不均一性細胞組成物及び/またはプライミングされた不均一性細胞組成物、ならびにその製造方法及びその使用に関する。いくつかの態様において、不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる。いくつかの態様において、不均一性細胞組成物は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の混合物を含む。いくつかの態様において、不均一性細胞組成物は、イヌ及びネコにおける慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎または創傷等の疾患を処置するための自家または同種治療薬として使用される。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライミングされた不均一性細胞組成物であって、
間葉系前駆細胞集団、及び
上皮系前駆細胞集団を含み、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は共培養され、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比であり、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞はIFN-ガンマでプライミングされる、前記プライミングされた不均一性細胞組成物。
【請求項2】
線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記FGF-2は8ng/mLの濃度で存在する、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の間葉系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の間葉系前駆細胞を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の上皮系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の上皮系前駆細胞を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
細胞集団をさらに含み、各細胞は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の両方のマーカーを示す、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
凍結保存培地をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
プライミングされた不均一性細胞組成物の調製方法であって、
間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、
前記単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含み、
前記単一細胞懸濁液は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比であり、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞はIFN-ガンマでプライミングされる、前記調製方法。
【請求項16】
前記単一細胞懸濁液は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記イヌまたは前記ネコの子宮組織を酵素的に解離して、前記単一細胞懸濁液を形成する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記FGF-2は8ng/mLの濃度である、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、
間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団を含む少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することであって、前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、前記イヌまたは前記ネコの子宮組織は、前記イヌまたは前記ネコ対象に対して自家または同種である、前記提供することと、
前記イヌまたは前記ネコ対象に前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【請求項22】
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
プライミングされた不均一性細胞組成物であって、
ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団、及び
V+/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団を含み、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、共培養され、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比であり、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞はIFN-ガンマでプライミングされる、前記プライミングされた不均一性細胞組成物。
【請求項25】
線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記FGF-2は8ng/mLの濃度である、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、請求項24~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、請求項24~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、請求項24~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む、請求項24~30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む、請求項24~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項24~32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、請求項24~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
凍結保存培地をさらに含む、請求項24~34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
プライミングされた不均一性細胞組成物の調製方法であって、
V+/C-細胞及びV+/C+細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、
前記単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含み、
前記単一細胞懸濁液は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比であり、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞はIFN-ガンマでプライミングされる、前記調製方法。
【請求項38】
前記単一細胞懸濁液は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記イヌまたは前記ネコの子宮組織を酵素的に解離して、前記単一細胞懸濁液を形成する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記FGF-2は8ng/mLの濃度である、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される、請求項37~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、
V+/C-細胞集団及びV+/C+細胞集団を含む少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することであって、前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、前記イヌまたは前記ネコの子宮組織は、前記イヌまたは前記ネコ対象に対して自家または同種である、前記提供することと、
前記イヌまたは前記ネコ対象に前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【請求項44】
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、
請求項1~14または24~36のいずれか1項に記載の少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することと、
前記イヌまたは前記ネコ対象に前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項37~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等の送達デバイスまたは容器に移された後に投与される、請求項37~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の前記処置に使用するための請求項1~14または24~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
医薬として使用するための請求項1~14または24~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
不均一性細胞組成物であって、
(a)ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団、
(b)ビメンチン陰性(V-)/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団、及び
(c)V+/C+細胞集団を含み、
前記集団(a)~(c)は、共培養され、
前記集団(a)~(c)は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
前記V+/C+細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出され、
前記V+/C+細胞集団は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記不均一性細胞組成物。
【請求項51】
前記V+/C-細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、請求項50に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項52】
前記V-/C+細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、請求項50または51に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項53】
前記V+/C-細胞集団及び前記V-/C+細胞集団の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、請求項50~52のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項54】
FGF-2をさらに含む、請求項50~53のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項55】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項50~54のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項56】
前記FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である、請求項50~55のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項57】
前記集団(a)~(c)は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、請求項50~56のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項58】
前記集団(a)~(c)は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、請求項50~57のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項59】
前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、請求項50~58のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項60】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む、請求項50~59のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項61】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV-/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV-/C+細胞を含む、請求項50~60のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項62】
5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む、請求項50~61のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項63】
前記不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される、請求項50~62のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項64】
前記CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、請求項63に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項65】
限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項50~64のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項66】
前記集団(a)~(c)は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、請求項50~65のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項67】
凍結保存培地をさらに含む、請求項50~66のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項68】
前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、請求項67に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項69】
不均一性細胞組成物の調製方法であって、
イヌまたはネコの子宮組織を単一細胞懸濁液に解離することと、
前記単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で培養することによって、
前記培養された単一細胞懸濁液から前記不均一性細胞組成物を調製することと、を含み、
前記3、4、5または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりには、前記不均一性細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団を含む、前記調整方法。
【請求項70】
前記ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記解離ステップは、酵素による解離を含む、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
前記酵素による解離は、前記イヌまたは前記ネコの子宮組織を、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記単一細胞懸濁液は、FGF-2と共に培養される、請求項69~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される、請求項69~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される、請求項69~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記不均一性細胞組成物は、請求項50~68のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物である、請求項69~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、以下:
前記イヌまたは前記ネコ対象に少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することを含み、
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【請求項81】
前記ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
前記CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記不均一性細胞組成物は、前記イヌまたは前記ネコ対象に対して自家または同種である、請求項80~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、請求項50~68のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物であるか、または請求項69~79のいずれか1項に記載の方法によって製造される、請求項80~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項80~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等の送達デバイスまたは容器に移された後に投与される、請求項80~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記凍結保存状態から前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を解凍することは、前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置に使用するための請求項50~68のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項90】
イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置または抑制等に対する医薬として使用するための請求項50~68のいずれか1項に記載の不均一性細胞組成物。
【請求項91】
ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞、好ましくは子宮細胞を含む、プライミングされた細胞組成物。
【請求項92】
前記細胞組成物は、間葉系前駆細胞及び/または上皮系前駆細胞をさらに含む、請求項91に記載の細胞組成物。
【請求項93】
線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む、請求項91または92に記載の細胞組成物。
【請求項94】
前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、請求項93に記載の細胞組成物。
【請求項95】
前記FGF-2は8ng/mLの濃度で存在する、請求項93または94に記載の細胞組成物。
【請求項96】
前記細胞組成物は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において培養される、請求項91~95のいずれか1項に記載の細胞組成物。
【請求項97】
前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、請求項91~96のいずれか1項に記載の細胞組成物。
【請求項98】
限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項91~97のいずれか1項に記載の細胞組成物。
【請求項99】
凍結保存培地をさらに含む、請求項91~98のいずれか1項に記載の細胞組成物。
【請求項100】
前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、請求項99に記載の細胞組成物。
【請求項101】
慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、
前記イヌまたは前記ネコ対象に、請求項91~100のいずれか1項に記載の細胞組成物を投与すること、を含む、前記処置、抑制、または寛解方法。
【請求項102】
前記細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等の送達デバイスまたは容器に移された後に投与される、請求項101または102に記載の方法。
【請求項104】
前記凍結保存状態から前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を解凍することは、前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置または抑制に使用するための請求項91~100のいずれか1項に記載の細胞組成物。
【請求項106】
医薬として使用するための請求項91~100のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月4日に出願された米国仮出願第63/263550号及び2021年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/263548号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、プライミングされた細胞組成物を含む、イヌまたはネコの子宮組織由来の細胞組成物、ならびにその製造方法及びその臨床使用に関する。いくつかの態様において、イヌまたはネコの子宮組織由来の細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる。いくつかの態様において、不均一性細胞組成物及び/またはプライミングされた不均一性細胞組成物には、間葉系前駆細胞と上皮系前駆細胞との混合物が含まれる。さらなる態様において、前述の不均一性細胞組成物及び/またはプライミングされた不均一性細胞組成物等の細胞組成物は、イヌ及びネコにおける、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、創傷、または慢性歯肉口内炎を含む疾患の処置、抑制、または寛解のための自家療法または同種療法において使用される。
【背景技術】
【0003】
炎症及び加齢に関連した退行性疾患は、老齢動物に大きな痛みまたは不快感を生じさせることがある。ペットの飼い主が治療的介入または緩和的介入の追求を選択するのであれば、それは飼い主への感情的負担及び潜在的な金銭的負担につながる。しかしながら、多くの退行性疾患に対しては、対症療法または過度に侵襲的な処置しか行うことができない。例えば、慢性腎疾患(CKD)はイエネコの主要な死亡原因であるが、高コストの腎移植を除いて、これらの動物における機能不全に陥った腎臓の機能を回復させる有効な処置は今のところない。別の例として、アトピー性皮膚炎は、イヌが罹患する最も一般的な皮膚疾患の1つであり、持続的なかゆみをもたらすものである。したがって、イヌ及びネコ等のペット及び他の動物のCKD、アトピー性皮膚炎、ならびに他の炎症性疾患及び/または退行性疾患に対する、効果的、安価、かつ非侵襲的な治療法が永続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、いくつかの実施形態において、細胞組成物及びプライミングされた細胞組成物が開示される。いくつかの実施形態において、これらの細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物は、間葉系前駆細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、これらの細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物は、不均一性であり、上皮系前駆細胞集団をさらに含む。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、共培養される。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、子宮組織から得られるか、または子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、子宮組織は、イヌまたはネコの子宮組織である。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、それぞれ、1%対99%、2%対98%、3%対97%、4%対96%、5%対95%、10%対90%、20%対80%、30%対70%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、70%対30%、80%対20%、90%対10%、95%対5%、96%対4%、97%対3%、98%対2%、もしくは99%対1%または約1%対約99%、約2%対約98%、約3%対約97%、約4%対約96%、約5%対約95%、約10%対約90%、約20%対約80%、約30%対約70%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約70%対約30%、約80%対約20%、約90%対約10%、約95%対約5%、約96%対約4%、約97%対約3%、約98%対約2%、もしくは約99%対約1%の比で、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の比で組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、組成物中の間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%の比で、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の比で存在する。
【0005】
いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、もしくはヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する少なくとも1つの生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、もしくはヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせ等の、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する少なくとも1つの生物学的または合成コーティング剤で前処理されている、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。
【0006】
いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の継代数、日数、または培養間隔数で、あるいは前述の継代数、日数、または培養間隔数のいずれか2つによって定義される範囲内の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。
【0007】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、100百万、20~30百万、30~40百万、40~50百万、50~60百万、60~70百万、70~80百万、80~90百万、もしくは90~100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約31百万細胞、約32百万細胞、約33百万細胞、約34百万細胞、約35百万細胞、約36百万細胞、約37百万細胞、約38百万細胞、約39百万細胞、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、約100百万、約20~30百万、約30~40百万、約40~50百万、約50~60百万、約60~70百万、約70~80百万、約80~90百万、もしくは約90~100百万個の間葉系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数の間葉系前駆細胞を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、100百万、20~30百万、30~40百万、40~50百万、50~60百万、60~70百万、70~80百万、80~90百万、もしくは90~100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約31百万、約32百万、約33百万、約34百万、約35百万、約36百万、約37百万、約38百万、約39百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、約100百万、約20~30百万、約30~40百万、約40~50百万、約50~60百万、約60~70百万、約70~80百万、約80~90百万、もしくは約90~100百万個の上皮系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数の上皮系前駆細胞を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の両方のマーカーまたは特性を示す細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物、好ましくは不均一性細胞組成物は細胞集団を含み、各細胞は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の両方のマーカーまたは特性を示す。
【0010】
いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、同一の子宮組織から得られるか、または同一の子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、異なる子宮組織(例えば、別々のネコ科動物もしくはイヌ科動物に由来する)から得られるか、または異なる子宮組織に由来する。
【0011】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、これらの細胞組成物、及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、V+/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団をさらに含む。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、共培養される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、子宮組織から得られるか、または子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、子宮組織は、イヌまたはネコの子宮組織である。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、1%対99%、2%対98%、3%対97%、4%対96%、5%対95%、10%対90%、20%対80%、30%対70%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、70%対30%、80%対20%、90%対10%、95%対5%、96%対4%、97%対3%、98%対2%、もしくは99%対1%または約1%対約99%、約2%対約98%、約3%対約97%、約4%対約96%、約5%対約95%、約10%対約90%、約20%対約80%、約30%対約70%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約70%対約30%、約80%対約20%、約90%対約10%、約95%対約5%、約96%対約4%、約97%対約3%、約98%対約2%、もしくは約99%対約1%の比で、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の比で組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%の比で、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の比で組成物中に存在する。
【0012】
いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、もしくはヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する少なくとも1つの生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、もしくはヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせ等の、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する少なくとも1つの生物学的または合成コーティング剤で前処理されている、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。
【0013】
いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の継代数、日数、または培養間隔数で、あるいは前述の継代数、日数、または培養間隔数のいずれか2つによって定義される範囲内の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。
【0014】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、100百万、20~30百万、30~40百万、40~50百万、50~60百万、60~70百万、70~80百万、80~90百万、もしくは90~100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約31百万、約32百万、約33百万、約34百万、約35百万、約36百万、約37百万、約38百万、約39百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、約100百万、約20~30百万、約30~40百万、約40~50百万、約50~60百万、約60~70百万、約70~80百万、約80~90百万、もしくは約90~100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、100百万、20~30百万、30~40百万、40~50百万、50~60百万、60~70百万、70~80百万、80~90百万、もしくは90~100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、約100百万、約20~30百万、約30~40百万、約40~50百万、約50~60百万、約60~70百万、約70~80百万、約80~90百万、もしくは約90~100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、V+/C-細胞及びV+/C+細胞の両方のマーカーまたは特性を示す細胞集団を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、同一の子宮組織から得られるか、または同一の子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、異なる子宮組織(例えば、別々のネコ科動物もしくはイヌ科動物に由来する)から得られるか、または異なる子宮組織に由来する。
【0018】
いくつかの実施形態において、細胞組成物、及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、線維芽細胞増殖因子(FGF)の量をさらに含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞増殖因子は、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)である。いくつかの実施形態において、FGFは、組換えで産生される。いくつかの実施形態において、FGFは、ヒトFGFである。いくつかの実施形態において、FGFは、ヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGFは、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF、好ましくはヒトFGF-2は、0.01、0.05、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ng/mLの濃度で、あるいは前述の濃度のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGFは、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ng/mLの濃度で、あるいは前述の濃度のいずれか2つによって定義される範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGFは、8ng/mLの濃度で存在する。
【0019】
いくつかの実施形態において、子宮組織は、卵巣摘出術により得られる。
【0020】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、少なくとも1種の添加物、抗生物質、サプリメント、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、凍結保存培地をさらに含む。いくつかの実施形態において、凍結保存培地は、CryoStor CS5、BioLife Solutions CS10、98% Hespan及び2% DMSO、約98% Hespan及び約2% DMSO、増殖培地中の2~10% DMSO及び2~20% FCS、または増殖培地中の約2~10% DMSO及び約2~20% FCSを含む。
【0022】
本明細書では、いくつかの実施形態において、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物、好ましくは不均一性細胞組成物を調製する方法が開示される。例示的方法は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞を含む単一細胞懸濁液または不均一性細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、単一細胞懸濁液または不均一性細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含む。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液または不均一性細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液または不均一性細胞懸濁液を生成させるために使用される細胞は、子宮組織から得られるか、または子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液または不均一性細胞懸濁液を生成させるために使用される細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液または不均一性細胞懸濁液を生成させるために使用される細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。
【0023】
いくつかの実施形態において、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、1%対99%、2%対98%、3%対97%、4%対96%、5%対95%、10%対90%、20%対80%、30%対70%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、70%対30%、80%対20%、90%対10%、95%対5%、96%対4%、97%対3%、98%対2%、99%対1%、または約1%対約99%、約2%対約98%、約3%対約97%、約4%対約96%、約5%対約95%、約10%対約90%、約20%対約80%、約30%対約70%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約70%対約30%、約80%対約20%、約90%対約10%、約95%対約5%、約96%対約4%、約97%対約3%、約98%対約2%、もしくは約99%対約1%の比で、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比で組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、または約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%の比で、あるいは前述の比のいずれか2つによって定義される範囲内の比で存在する。
【0024】
さらなる実施形態は、細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物、好ましくはプライミングされた不均一性細胞組成物を調製する方法に関する。いくつかの実施形態において、本方法は、V+/C-細胞及びV+/C+細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含む。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液の細胞は、子宮組織から得られるか、または子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液の細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液の細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液の細胞は、異なるイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または異なるイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。
【0025】
いくつかの実施形態において、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、1%対99%、2%対98%、3%対97%、4%対96%、5%対95%、10%対90%、20%対80%、30%対70%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、70%対30%、80%対20%、90%対10%、95%対5%、96%対4%、97%対3%、98%対2%、もしくは99%対1%または約1%対約99%、約2%対約98%、約3%対約97%、約4%対約96%、もしくは約5%対約95%、約10%対約90%、約20%対約80%、約30%対約70%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約70%対約30%、約80%対約20%、約90%対約10%、約95%対約5%、約96%対約4%、約97%対約3%、約98%対約2%、もしくは約99%対約1%の比で、あるいは前述の比のいずれか2つによって定義される範囲内の比で存在する。いくつかの実施形態において、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、V+/C-細胞及びV+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、もしくは99%対1%、または約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述の比のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の比である。
【0026】
いくつかの実施形態においては、子宮組織を酵素的に解離して、単一細胞懸濁液を形成する。いくつかの実施形態においては、イヌまたはネコの子宮組織を酵素的に解離して、単一細胞懸濁液を形成する。
【0027】
いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えで産生される。いくつかの実施形態において、FGF-2は、ヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、0.01、0.05、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ng/mLの濃度で、あるいは前述の濃度のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ng/mLの濃度で、あるいは前述の濃度のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLの濃度で存在する。
【0028】
ある特定の実施形態において、インターフェロン-γ(IFN-γ)は、本発明の子宮由来再生細胞の免疫調節作用を刺激または増強するために使用される。本発明の子宮由来再生細胞は、IFN-γに応答して、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDOまたはIDO1)の活性を上方制御する。
【0029】
本明細書では、いくつかの実施形態において、イヌまたはネコ対象における疾患もしくは病状の処置、抑制、または寛解方法が記載される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載される少なくとも1つの細胞組成物、好ましくは間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団を含む不均一性細胞組成物を提供することと、少なくとも1つの細胞組成物、好ましくは不均一性細胞組成物をイヌまたはネコ対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコの子宮組織は、イヌまたはネコ対象に対して自家または同種である。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコの子宮組織は、イヌまたはネコ対象に対して自家である。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコの子宮組織は、イヌまたはネコ対象に対して同種である。いくつかの実施形態において、疾患は、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫関連性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎または創傷である。こうした方法のいくつかにおいて、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、組成物において、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%の比で、あるいは前述の比のいずれか2つによって定義される範囲内の比で提供される。
【0030】
追加の実施形態は、イヌまたはネコ対象における疾患もしくは病状の処置、抑制、または寛解方法に関する。こうした方法のいくつかは、少なくとも1つの細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物、好ましくはV+/C-細胞集団及びV+/C+細胞集団を含む不均一性細胞組成物を提供することと、少なくとも1つの不均一性細胞組成物をイヌまたはネコ対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコの子宮組織は、イヌまたはネコ対象に対して自家または同種である。いくつかの実施形態において、疾患は、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、または創傷である。こうした方法のいくつかにおいて、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、組成物において、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%の比で、あるいは前述の比のいずれか2つによって定義される範囲内の比で提供される。
【0031】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎または創傷に対する前駆細胞療法を受けるように好ましく同定もしくは選択されたネコまたはイヌ対象に投与される。このような選択または同定は、臨床評価及び/または診断を介して、臨床医または獣医によってなされ得る。好ましく同定もしくは選択された当該ネコまたはイヌ対象は、次いで、本明細書で提供される細胞組成物の1つ以上を、経腸、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで与えられるかまたは投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍された後に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、送達デバイスまたは容器に移された後に投与される。いくつかの実施形態において、送達デバイスまたは容器は、シリンジ、IVバッグ、カニューレ、ポンプ、またはチューブである。いくつかの実施形態において、送達デバイスまたは容器は、適切な緩衝液、希釈液または流体を含む。いくつかの実施形態において、適切な緩衝液、希釈液または流体には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、またはデキストロース溶液が含まれる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を凍結保存状態から解凍することは、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む。さらなる実施形態は、好ましくは、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、もしくは創傷の処置、抑制、または寛解のために、本明細書に記載される細胞組成物のいずれか1つ以上を医薬として使用することに関する。
【0032】
本明細書で提供される実施形態には、好ましくは、以下の番号の代替形態が含まれる:
【0033】
1.プライミングされた不均一性細胞組成物であって、
間葉系前駆細胞集団、及び
上皮系前駆細胞集団を含み、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は共培養され、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比であり、
前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞はIFN-ガンマでプライミングされる、前記プライミングされた不均一性細胞組成物。
【0034】
2.線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む、代替形態1に記載の組成物。
【0035】
3.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態2に記載の組成物。
【0036】
4.前記FGF-2は8ng/mLの濃度で存在する、代替形態2または3に記載の組成物。
【0037】
5.前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0038】
6.前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0039】
7.前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0040】
8.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の間葉系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の間葉系前駆細胞を含む、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0041】
9.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の上皮系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の上皮系前駆細胞を含む、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0042】
10.限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0043】
11.細胞集団をさらに含み、各細胞は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の両方のマーカーを示す、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0044】
12.前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0045】
13.凍結保存培地をさらに含む、先行代替形態のいずれかに記載の組成物。
【0046】
14.前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、代替形態13に記載の組成物。
【0047】
15.不均一性細胞組成物の調製方法であって、
間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、
前記単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含み、
前記単一細胞懸濁液は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、前記調製方法。
【0048】
16.前記単一細胞懸濁液は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、代替形態15に記載の方法。
【0049】
17.前記イヌまたはネコの子宮組織を酵素的に解離して、前記単一細胞懸濁液を形成する、代替形態15または16に記載の方法。
【0050】
18.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態15~17のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
19.前記FGF-2は8ng/mLの濃度である、代替形態15~18のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
20.前記単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される、代替形態15~19のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
21.慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、以下:
間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団を含む少なくとも1つの不均一性細胞組成物及び/またはプライミングされた不均一性細胞組成物を提供することであって、前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、前記イヌまたは前記ネコの子宮組織は、前記イヌまたは前記ネコ対象に対して自家または同種である、前記提供することと、
前記イヌまたは前記ネコ対象に前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含む、前記処置、抑制、または寛解方法。
【0054】
22.前記間葉系前駆細胞及び前記上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、代替形態21に記載の方法。
【0055】
23.前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物及び/またはプライミングされた不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、代替形態15~22のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
24.プライミングされた不均一性細胞組成物であって、
ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団、及び
V+/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団を含み、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、共培養され、
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
前記V+/C-細胞及びV+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比であり、
【0057】
前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞はIFN-ガンマでプライミングされる、前記プライミングされた不均一性細胞組成物。
25.線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む、代替形態24に記載の組成物。
【0058】
26.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態25に記載の組成物。
【0059】
27.前記FGF-2は8ng/mLの濃度である、代替形態25または26に記載の組成物。
【0060】
28.前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、代替形態24~26のいずれか1つに記載の組成物。
【0061】
29.前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、代替形態24~28のいずれか1つに記載の組成物。
【0062】
30.前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、代替形態24~29のいずれか1つに記載の組成物。
【0063】
31.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む、代替形態24~30のいずれか1つに記載の組成物。
【0064】
32.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む、代替形態24~31のいずれか1つに記載の組成物。
【0065】
33.限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、代替形態24~32のいずれか1つに記載の組成物。
【0066】
34.前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、代替形態24~33のいずれか1つに記載の組成物。
【0067】
35.凍結保存培地をさらに含む、代替形態24~34のいずれか1つに記載の組成物。
【0068】
36.前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、代替形態35に記載の組成物。
【0069】
37.不均一性細胞組成物の調製方法であって、
V+/C-細胞及びV+/C+細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、
前記単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含み、
前記単一細胞懸濁液は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、前記調製方法。
【0070】
38.前記単一細胞懸濁液は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、代替形態37に記載の方法。
【0071】
39.前記イヌまたは前記ネコの子宮組織を酵素的に解離して、前記単一細胞懸濁液を形成する、代替形態37または38に記載の方法。
【0072】
40.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態37~39のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
41.前記FGF-2は8ng/mLの濃度である、代替形態37~40のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
42.前記単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される、代替形態37~41のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
43.慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、以下:
V+/C-細胞集団及びV+/C+細胞集団を含む少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することであって、前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、前記イヌまたは前記ネコの子宮組織は、前記イヌまたは前記ネコ対象に対して自家または同種である、前記提供することと、
前記イヌまたは前記ネコ対象に前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【0076】
44.前記V+/C-細胞及び前記V+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、または約80%対約20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、代替形態43に記載の方法。
【0077】
45.慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、以下:
代替形態1~14または24~36のいずれか1つに記載の少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することと、
前記イヌまたは前記ネコ対象に前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【0078】
46.前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、代替形態37~45のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
47.前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等の送達デバイスまたは容器に移された後に投与される、代替形態37~46のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
48.イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置に使用するための代替形態1~14または24~36のいずれか1つに記載の組成物。
【0081】
49.医薬として使用するための代替形態1~14または24~36のいずれか1つに記載の組成物。
【0082】
50.不均一性細胞組成物であって、
(a)ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団、
(b)ビメンチン陰性(V-)/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団、及び
(c)V+/C+細胞集団を含み、
前記集団(a)~(c)は、共培養され、
前記集団(a)~(c)は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、
前記V+/C+細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出され、
IFN-ガンマでプライミングされる、前記不均一性細胞組成物。
【0083】
51.前記V+/C-細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、代替形態50に記載の不均一性細胞組成物。
【0084】
52.前記V-/C+細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、代替形態50または51に記載の不均一性細胞組成物。
【0085】
53.前記V+/C-細胞集団及び前記V-/C+細胞集団の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である、代替形態50~52のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0086】
54.FGF-2をさらに含む、代替形態50~53のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0087】
55.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態50~54のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0088】
56.前記FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である、代替形態50~55のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0089】
57.前記集団(a)~(c)は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、代替形態50~56のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0090】
58.前記集団(a)~(c)は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される、代替形態50~57のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0091】
59.前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、代替形態50~58のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0092】
60.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む、代替形態50~59のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0093】
61.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV-/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV-/C+細胞を含む、代替形態50~60のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0094】
62.5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む、代替形態50~61のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0095】
63.前記不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される、代替形態50~62のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0096】
64.前記CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、代替形態63に記載の不均一性細胞組成物。
【0097】
65.限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、代替形態50~64のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0098】
66.前記集団(a)~(c)は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する、代替形態50~65のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0099】
67.凍結保存培地をさらに含む、代替形態50~66のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0100】
68.前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、代替形態67に記載の不均一性細胞組成物。
【0101】
69.不均一性細胞組成物の調製方法であって、
イヌまたはネコの子宮組織を単一細胞懸濁液に解離することと、
前記単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で培養することによって、
前記培養された単一細胞懸濁液から前記不均一性細胞組成物を調製することと、を含み、
前記3、4、5または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりには、前記不均一性細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団を含む、前記調整方法。
【0102】
70.前記ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する、代替形態69に記載の方法。
【0103】
71.前記解離ステップは、酵素による解離を含む、代替形態69または70に記載の方法。
【0104】
72.前記酵素による解離は、前記イヌまたは前記ネコの子宮組織を、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む、代替形態71に記載の方法。
【0105】
73.前記単一細胞懸濁液は、FGF-2と共に培養される、代替形態69~72のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
74.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態73に記載の方法。
【0107】
75.前記FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である、代替形態73または74に記載の方法。
【0108】
76.前記単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される、代替形態69~75のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
77.前記不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される、代替形態69~76のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
78.前記CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、代替形態77に記載の方法。
【0111】
79.前記不均一性細胞組成物は、代替形態50~68のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物である、代替形態69~78のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
80.慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、以下:
前記イヌまたは前記ネコ対象に少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することを含み、
前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団を含み、
前記不均一性細胞組成物は、IFN-ガンマでプライミングされる、前記処置、抑制、または寛解方法。
【0113】
81.前記ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する、代替形態80に記載の方法。
【0114】
82.前記不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される、代替形態80または81に記載の方法。
【0115】
83.前記CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、前記不均一性細胞組成物の前記細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される、代替形態82に記載の方法。
【0116】
84.前記不均一性細胞組成物は、前記イヌまたは前記ネコ対象に対して自家または同種である、代替形態80~83のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
85.前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、代替形態50~68のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物であるか、または代替形態69~79のいずれか1つに記載の方法によって製造される、代替形態80~84のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
86.前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、代替形態80~85のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
87.前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等の送達デバイスまたは容器に移された後に投与される、代替形態80~86のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
88.前記凍結保存状態から前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を解凍することは、前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む、代替形態87に記載の方法。
【0121】
89.イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置に使用するための代替形態50~68のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0122】
90.イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置または抑制に対する医薬等の医薬として使用するための代替形態50~68のいずれか1つに記載の不均一性細胞組成物。
【0123】
91.ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞、好ましくは子宮細胞を含む、プライミングされた細胞組成物。
【0124】
92.前記細胞組成物は、間葉系前駆細胞及び/または上皮系前駆細胞をさらに含む、代替形態91に記載の細胞組成物。
【0125】
93.線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む、代替形態91または92に記載の細胞組成物。
【0126】
94.前記FGF-2は組換えヒトFGF-2である、代替形態93に記載の細胞組成物。
【0127】
95.前記FGF-2は8ng/mLの濃度で存在する、代替形態93または94に記載の細胞組成物。
【0128】
96.前記細胞組成物は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において培養される、代替形態91~95のいずれか1つに記載の細胞組成物。
【0129】
97.前記子宮組織は卵巣摘出術により得られる、代替形態91~96のいずれか1つに記載の細胞組成物。
【0130】
98.限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、代替形態91~97のいずれか1つに記載の細胞組成物。
【0131】
99.凍結保存培地をさらに含む、代替形態91~98のいずれか1つに記載の細胞組成物。
【0132】
100.前記凍結保存培地には、以下:
(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、
(b)98% Hespan及び2% DMSO、
(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、
(d)増殖培地中2~10% DMSO及び2~20% FCS、または
(e)増殖培地中約2~10% DMSO及び約2~20% FCS、が含まれる、代替形態99に記載の細胞組成物。
【0133】
101.慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法であって、
前記イヌまたは前記ネコ対象に、代替形態91~100のいずれか1つに記載のプライミングされた細胞組成物を投与すること、を含む、前記処置、抑制、または寛解方法。
【0134】
102.前記細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、代替形態101に記載の方法。
【0135】
103.前記プライミングされた細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等の送達デバイスまたは容器に移された後に投与される、代替形態101または102に記載の方法。
【0136】
104.前記凍結保存状態から前記少なくとも1つのプライミングされた不均一性細胞組成物を解凍することは、前記少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む、代替形態103に記載の方法。
【0137】
105.イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置または抑制に使用するための代替形態91~100のいずれか1つに記載のプライミングされた細胞組成物。
【0138】
106.医薬として使用するための代替形態91~100のいずれか1つに記載のプライミングされた細胞組成物。
【0139】
上記の特徴に加えて、さらなる特徴及びバリエーションが、以下の図面の説明及び例示的実施形態から容易に明らかになるであろう。これらの図面は、典型的な実施形態を表すものであり、範囲の限定を意図するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
図1】実施例3のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF及び4日目試料の総細胞集団に対する前方散乱(FSC-A)及び側方散乱(SSC-A)フローサイトメトリーのドットプロット及び等高線プロットを表している。
図2】実施例3のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF及び4日目試料のインタクトな細胞に対するFSC-A及びLive/Deadアッセイフローサイトメトリーのドットプロット及び等高線プロットを表している。
図3】実施例3のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF及び4日目試料の生細胞に対するCD44及びCD90染色フローサイトメトリーの等高線プロットを表している。
図4】実施例4のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF及び3日目試料の総細胞集団に対するFSC-A及びSSC-Aフローサイトメトリーの等高線プロットを表している。
図5】実施例4のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF及び3日目試料のインタクトな細胞に対するFSC-A及びLive/Deadアッセイフローサイトメトリーの等高線プロットを表している。
図6】実施例4のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF、1日目、2日目、3日目、及び4日目試料の生細胞に対するCD44及びCD90染色フローサイトメトリーの等高線プロットを表している。
図7】実施例4のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたイヌ子宮由来細胞のPCF、1日目、2日目、3日目、及び4日目試料の生細胞に対するビメンチン及びサイトケラチン染色フローサイトメトリーの等高線プロットを表している。
図8】実施例5のプロトコルA及びBに従ってプロセシングしたネコ子宮由来細胞の4日目試料の細胞に対するビメンチン及びサイトケラチン染色フローサイトメトリーのドットプロットを表している。
図9A】位相差でのネコ子宮由来細胞の顕微鏡像を表している。
図9B】抗ビメンチン/DAPIでのネコ子宮由来細胞の顕微鏡像を表している。
図9C】抗サイトケラチン-18/DAPIでのネコ子宮由来細胞の顕微鏡像を表している。
図9D】抗サイトケラチン-18/抗ビメンチンでのネコ子宮由来細胞の顕微鏡像を表している。
図10-1】実施例6に関する、個々の動物についてのイオヘキソールクリアランスの結果、平均値、及び統計量を表している。
図10-2】図10-1の続き。
図11-1】実施例6に関する、個々の動物についての体重の結果、平均値、及び統計量を表している。
図11-2】図11-1の続き。
図11-3】図11-2の続き。
図12-1】実施例6に関する、個々の動物についての尿検査の結果、平均値、及び統計量を表している。
図12-2】図12-1の続き。
図12-3】図12-2の続き。
図12-4】図12-3の続き。
図12-5】図12-4の続き。
図12-6】図12-5の続き。
図13A】第4継代細胞培養物における例示的なネコ子宮由来再生細胞の組成を表している。細胞集団には紡錘形状細胞及び立方体様細胞の両方が認められる。
図13B】第4継代細胞培養物における例示的なイヌ子宮由来再生細胞の組成を表している。細胞集団には紡錘形状細胞が認められる。
図14A】コントロール培地または脂肪生成誘導培地のいずれかでインキュベーションした後のネコ及びイヌURC集団の脂肪生成染色を表している。
図14B】コントロール培地または軟骨形成誘導培地のいずれかでインキュベーションした後のネコ及びイヌURC集団の軟骨形成染色を表している。
図14C】コントロール培地または骨形成誘導培地のいずれかでインキュベーションした後のネコ及びイヌURC集団の骨形成染色を表している。
図15】1つの例示的なネコURC調製物の単一細胞におけるビメンチン染色及びサイトケラチン-18染色の二重染色を表している。Aは、ビメンチン染色を表している。Bは、サイトケラチン-18染色を表している。Cは、ビメンチン染色及びサイトケラチン-18染色をマージしたものを表している。
図16】第2の例示的なネコURC調製物の単一細胞におけるビメンチン染色及びサイトケラチン-18染色の二重染色を表している。Aは、ビメンチン染色を表している。Bは、サイトケラチン-18染色を表している。Cは、ビメンチン染色及びサイトケラチン-18染色をマージしたものを表している。
【発明を実施するための形態】
【0141】
本明細書では、子宮組織(卵巣摘出術によるもの等)から得られる細胞組成物及び/またはプライミングされた細胞組成物、好ましくは不均一性細胞組成物及び/またはプライミングされた不均一性細胞組成物が提供され、これらは子宮由来再生細胞(URC)と称される。本明細書で示されるように、URCは、幹細胞/前駆細胞のいくつかの確立された特徴に基づいて、幹細胞/前駆細胞として分類され得る。本明細書に開示されるイヌ及びネコURCは、ヒトMSCのプロファイルと定性的に一致するCDマーカープロファイルを有する。イヌ及びネコURCはまた、幹細胞/前駆細胞の公知のマーカーであるCD44が強度に陽性である。また、イヌ及びネコURCは、脂肪生成、軟骨形成、及び骨形成細胞系列に分化するように誘導され得る。このことは、多能性ヒトMSCに関連する別の要件である。最後に、イヌURC及びネコURCは、培養中、接着して増殖する。したがって、本明細書に開示されるイヌ及びネコURCは、多能性幹細胞/前駆細胞である要件を満たしている。
【0142】
しかしながら、イヌ及びネコURCは、幹細胞/前駆細胞にしてはいくつかの予想外の特徴を示す。イヌ及びネコURCのどちらも、同一細胞で、前駆細胞様の特徴と上皮細胞様の特徴とを二重に発現するという、予想外の特性を示す。このことは、幹細胞性細胞及び上皮細胞に関するマーカーが、単一細胞で二重に発現しているという初めての報告であると思われる。二重発現はいくつかの方法で観察された。ネコURCにおける二重発現細胞の物理的存在は、免疫蛍光法によって証明され、いくつかの細胞はビメンチン(幹細胞性バイオマーカー)を明確に発現し、いくつかの細胞はサイトケラチン-18(上皮性バイオマーカー)を発現し、一方で小集団は、両方のバイオマーカーを同時に発現した。フローサイトメトリー解析により、イヌ及びネコURCの両方で、ビメンチン及びサイトケラチン-18が発現することが観察された。加えて、イヌ及びネコURCのどちらもがCD44及びCD326を発現しており、CD44は幹細胞性バイオマーカーであり、CD326は上皮細胞のバイオマーカーである。さらに、イヌURCはまた、フローサイトメトリー解析により、CD44及びサイトケラチン-18を発現していることが観察された。したがって、本明細書に開示されるURC調製物は、同一細胞において、前駆細胞様特性及び上皮細胞様特性の両方を発現する細胞が存在することを実証するものである。二重発現細胞集団は、継代数がより多いイヌ及びネコURC両方の培養物において観察され、このことは、治療薬としてのそれらの特有の潜在性を支持するものである。したがって、いくつかの実施形態には、細胞組成物及びその使用方法が含まれ、当該細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方を発現する細胞を含み、当該ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方を発現する細胞は、精製もしくは単離された形態であり得るか、またはビメンチンを発現する間葉細胞及び/またはサイトケラチン-18を発現する上皮細胞と混合されている等、不均一性細胞集団中に存在し得る。
【0143】
イヌURC調製物は、イヌのアトピー性皮膚炎を処置する臨床試験で評価されてきた。処置してから30日後に、PVAS、CADESI-4及びCADLI(イヌのアトピー性皮膚炎を評価するための臨床測定基準)の評価スコアが、処置前のスコアと比較して減少したことから、使用されたイヌURC調製物が治療効果を示していることが示唆される。
【0144】
ネコURC調製物は、慢性腎疾患を有するネコの状態改善に関する臨床試験で評価されてきた。当該試験では、食餌及び水の摂取量が改善されると共に、6ヶ月間の試験で処置されたネコの50%超においてGFR値が20%増加するという、主要試験転帰の1つが満たされた。この試験は、公開された7つの試験のうち、GFR改善等の主要エンドポイントを達成した最初の試験である。
【0145】
治療効果の単一の機序に限定されるものではないが、アトピー性皮膚炎及び慢性腎疾患に共通する疾患状態の1つは、炎症促進性組織反応の存在である。本明細書に記載されるイヌ及びネコURCのどちらもが、MLRアッセイで測定されるように、炎症促進性環境を下方制御する能力を実証している。したがって、本明細書に開示されるURCは、部分的には、炎症促進性組織応答を低下させるその能力に起因して、治療効果を与えるものである。
【0146】
以下の発明を実施するための形態において、本明細書の一部を構成する添付図面を参照する。図面において、文脈上別段の指示がない限り、通常、同様の符号により同様の構成要素が識別される。発明を実施するための形態、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的実施形態は、限定を意味するものではない。本明細書に提示される内容の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、他の変更がなされ得る。本開示の態様は、本明細書に一般的に記載され、図に例示されるように、多種多様な異なる構成で、配置され、代用され、組み合わされ、分離され、及び設計されることがあり、それらの全てが本明細書では明確に企図されていることが容易に理解されるであろう。
【0147】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本内容が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の内容の説明に使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのものであり、本内容の限定を意図するものではない。
【0148】
冠詞「a」及び「an」は、当該冠詞の文法的対象の1つまたは2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指すように本明細書で使用される。一例として、「an element(要素)」とは、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準となる数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%ほど変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。
【0150】
本明細書を通じて、文脈上別段必要とされない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語は、記載されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の包含を意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の除外を意味するものではないと理解されよう。「からなる」に関しては、「からなる」という表現の前にあるものを全て含み、かつ、それらに限定することを意味する。したがって、「からなる」という表現は、列挙された要素が必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを指し示すものである。「から本質的になる」に関しては、その表現の前に列挙された任意の要素の包含を意味し、他の要素は、本開示で明示される列挙された要素の活性もしくは作用に干渉しないかまたは寄与しないものに限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という表現は、列挙された要素が必要または必須であるが、他の要素は任意選択であり、列挙された要素の活性または作用に実質的に影響を及ぼすか否かによって、他の要素が存在し得ることまたは存在し得ないことを指し示すものである。
【0151】
本明細書に開示されるように、処置される「個体」、「患者」または「対象」は、いくつかの実施形態において、哺乳動物である。本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語には、限定されないが、ヒト、非ヒト動物(霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)、サル等を含む)が含まれる。いくつかの実施形態において、個体、患者、または対象は、ネコ(ネコ科)またはイヌ(イヌ科)である。対象は、本明細書に開示される方法を「必要とする」対象であり得るか、または疾患状態を経験している、及び/または疾患状態を経験すると予測される対象であり得、本発明の方法及び組成物は、治療的処置及び/または予防的処置のために使用される。対象は患者であり得、患者とは、疾患の診断または処置のために医療提供者と対面する対象を指す。対象は、疾患または障害に罹患している可能性があるか、または罹患しやすいが、疾患または障害の症状を示すこともあれば示さないこともある。
【0152】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、必要性がある対象または患者の選択に関する。いくつかの実施形態において、疾患を有している、疾患に対する処置もしくは治療を必要としている、疾患に罹患するリスクがある、以前に疾患を有していた、または現在は疾患を有していない対象が選択される。いくつかの実施形態において、以前に別の治療には反応しなかった対象が選択される。いくつかの実施形態において、疾患は、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎または創傷である。いくつかの実施形態において、前述の選択基準の任意の組み合わせを有し得る対象が選択される。このような対象または患者の選択は、臨床医もしくは獣医または両者により、臨床評価もしくは診断評価またはそれら両方によってなされ得る。
【0153】
本明細書で使用される場合、「プライミング」または「プライミングされた」という用語は、プライミングされた細胞が治療薬の形態で提供される場合にin vivo環境で特定の成果を得るために、ex vivo環境で細胞の薬物動態特性及び治療活性を調節するための方法及び組成物を指す。
【0154】
本明細書で使用される場合、「創傷」という用語は、対象の皮膚、表皮、及び/または真皮の損傷を指す。創傷は、開放創または閉鎖創であり得る。開放創には、限定されないが、切り傷、裂創、擦過創、裂離創、刺し傷、貫通創、または銃創が含まれる。閉鎖創には、限定されないが、血腫または挫滅創が含まれる。創傷には、細菌、ウイルス、真菌、または原生動物等の病原体による感染のリスクがあり得る。
【0155】
本明細書で使用される場合、「慢性歯肉炎」という用語は、対象の口腔内の創傷または損傷を指す。例えば、ネコ慢性歯肉口内炎(FCGS)と診断されたネコは、口腔に重度の炎症が生じ、これにより、ネコの食欲及び水の摂取に影響が及び、その結果クオリティオブライフが低下する。処置は、罹患したネコの歯を、ほとんど、または全て抜くことに限られる。しかしながら、このような抜本的な医療行為の後であっても、かなりの数のネコ(およそ30%)が重度の口部炎症を患い続け、それらのネコのクオリティオブライフは、経時的に低下し続ける。
【0156】
本明細書で使用される場合、「アトピー性皮膚炎」及び「湿疹」という用語は、そう痒性皮膚に帰着する一般的な炎症関連疾患に関する。この疾患は、食物中のアレルゲン、花粉及び粉塵等の風媒性のアレルゲン、または遺伝的素因等、広範囲にわたる要因によって引き起こされ得る。アトピー性皮膚炎は、ヒトだけでなく、イヌ及びネコ等のペットを含む動物も発症する。アトピー性皮膚炎の一部の症例は、ある種の食品の使用停止等、比較的容易に処置され得る。しかしながら、多くの場合、アトピー性皮膚炎に対する治療法はなく、利用できる治療薬は抗ヒスタミン薬または抗炎症ステロイド薬しかない。ただし、こうした治療薬は、易感染性の上昇等、他の副作用を引き起こす可能性がある。
【0157】
本明細書で使用される場合、「骨関節炎」及び「OA」という用語は、1つ以上の関節に不自由がある臨床症状に関する。骨関節炎(OA)は、イヌにおける関節炎の最も一般的な形態であり、全頭数の約4分の1が発症する。骨関節炎は、関節軟骨の損失、関節包の肥厚及び関節周囲での骨新形成(骨増殖症)によって特徴付けられる慢性関節疾患であり、最終的に疼痛及び四肢の機能障害をきたす。イヌにおけるOAの大半は、前十字靭帯疾患、股関節形成不全、肘関節形成不全、OCD、膝蓋骨脱臼等の進行性肢体異常疾患に続発する。ごく一部のイヌにおいて、OAは、明白な主要原因なしに発症し、遺伝及び年齢に関連し得る。OAの原因となる他の要因としては、体重、肥満、性別、運動、及び食餌が挙げられる。
【0158】
症状としては、硬直、跛行、引きずり足歩行、もしくは起き上がりの困難さ、無気力、走る、跳ぶ、もしくは遊ぶことを嫌がる、体重増加、易刺激性もしくは行動の変化、撫でられるかもしくは触れられると痛む、排尿もしくは排便の姿勢をとる困難さ、あるいは家の中でおもらしをする、四肢及び脊柱を覆う筋肉の量の減少が挙げられる。例えば、0日目に、Canine Brief Pain Inventory(CBPI)でのPain Severity Score(PSS)が2以上、及びPain Interference Score (PIS)が2以上と飼い主に評価されたイヌは、本発明の細胞を用いた処置の対象となり得る。イヌは、新たに診断された骨関節炎、または慢性/再発性骨関節炎のいずれかの診断を受けている可能性がある。診断は通常、既往症、身体検査における徴候、及び骨関節炎のX線写真によるエビデンス(放射線科医のレビューによる)から構成されることになる。例えば、イヌの跛行スコアは2以上であり得る。イヌのCBPIスコアは10以上であり得る。イヌは、少なくとも1ヶ月間、OAに関連する症状を示し得る。本明細書で使用される場合、「有効量」または「有効投与量」という用語は、観察可能な効果をもたらす、詳述された組成物または化合物の量を指す。目下開示している内容の活性組成物における活性成分の実際の投薬レベルは、特定の対象及び/または用途に対して所望の応答を達成するのに有効な活性組成物量または化合物量が投与されるように、変更され得る。選択される投薬レベルは、限定されないが、組成物の活性、配合、投与経路、他の薬物または治療薬との併用、処置される病状の重症度、ならびに処置される対象の体調及び既往歴を含む様々な要因に依存することになる。いくつかの実施形態においては、最小用量が投与され、用量制限毒性がない場合、最小有効量まで用量が漸増される。有効投与量の決定及び調整、ならびに、いつ、どのようにこのような調整を行うかという評価が、本明細書において企図される。
【0159】
本明細書で使用される場合、「機能」及び「機能的」という用語は、生物学的機能、酵素機能、または治療学的機能を指す。
【0160】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、(1)(自然界及び/または実験環境のいずれであっても)初めに生成した際に付随していた成分の少なくとも一部から分離されている、及び/または(2)人の手によって生成、調製、及び/または製造された、物質及び/または実体を指す。単離された物質及び/または実体は、初めにそれらに付随していた他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、実質的に100%、もしくは100%に相当する値か、または少なくともその値(あるいは前述の値を含む範囲及び/または前述の値にまたがる範囲)で、当該他の成分から分離され得る。いくつかの実施形態において、単離された薬剤は、約80%超、約85%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超、実質的に100%、または100%(あるいは前述の値を含む範囲及び/または前述の値にまたがる範囲で)純粋である。本明細書で使用される場合、「単離された」物質は、「純粋」(例えば、他の成分を実質的に含まない)であり得る。本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、多細胞生物または組織中に含まれていない細胞を指す場合がある。
【0161】
「初代細胞画分」または「PCF」という用語は、培養ステップの前に、標的組織から生存単一細胞懸濁液を調製するために行われる単離、解離、及び/または精製ステップから得られる細胞集団を指す。不均一性集団における特定の細胞型の相対的比率及び当該細胞型の特性は、1つ以上の培養ステップにわたって変化するため、PCF集団は、1つ以上の培養ステップの後に得られる細胞集団とは異なる。
【0162】
「間葉系前駆細胞」または「MPC」という用語は、骨形成系列、軟骨形成系列、及び脂肪生成系列に分化する可能性を示す、紡錘形の接着細胞集団を指す。MPCはまた、「間葉系間質細胞」、「間葉系幹細胞」、「MSC」、または「間質細胞」とも呼ばれることがある。MPCは主に骨髄から単離されてきたが、他の組織にも存在し、特に臍帯組織、臍帯血、白色脂肪組織、及び胎盤組織に存在する。MPCは培養されると、一般的にCD105、CD73、CD90を発現するが、一般的にCD14、CD19、CD34、CD45、及びHLA-DR(クラスII)は発現しない。さらに、細胞骨格中間径フィラメントのビメンチン(V)は、公知のMPCマーカーである。MPCにおける複数の細胞型に分化する能力、ならびにMHCクラスIIの欠如により、自家または同種再生細胞療法での使用に対する研究が促されている。
【0163】
「上皮系前駆細胞」という用語は、身体組織の表面を構成する、上皮及び細胞外マトリックス成分の産生及び再生を担う立方体形状の接着細胞集団を指す。こうした細胞は、一般的にCD44、及び細胞接着タンパク質(特にE-カドヘリン、上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)等)を発現するが、一般的にCD45は発現しない。さらに、ケラチン中間フィラメントタンパク質(サイトケラチン(C)等、例えば、サイトケラチン-14、サイトケラチン-18)は、公知の上皮細胞及びEPCマーカーである。
【0164】
「線維芽細胞増殖因子」または「FGF」という用語は、細胞表面上の線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)タンパク質に結合することにより、細胞の増殖、分化、及び再構成に多面的な作用を及ぼすポリペプチド増殖因子のファミリーを指す。ヒトでは、22種のFGFが公知である。これらのうちの1つは、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2、塩基性線維芽細胞増殖因子、bFGF、FGF-β)であり、これは、他の機能の中でも特に、幹細胞の未分化状態を維持することが明らかにされている。いくつかの実施形態において、FGF-2は、細胞培養用の増殖培地中に存在する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、0.01、0.05、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ng/mLの濃度で、あるいは前述の濃度のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ng/mLの濃度で、あるいは前述の濃度のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、ヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、イヌまたはネコFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えで産生される。いくつかの実施形態において、FGF-2は、E.coliにおいて組換えで産生される。いくつかの実施形態において、FGF-2は、研究グレード基準または現行の医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(cGMP)に従って産生される。
【0165】
「インターフェロン-ガンマ」または「IFN-ガンマ」もしくは「IFN-γ」という用語は、ウイルス感染、一部の細菌感染及び原生動物感染に対する自然免疫及び適応免疫にとって重大な意味を持つサイトカインである。IFNγは、マクロファージの重要な活性化因子であり、主要組織適合性複合体クラスII分子の発現を誘導するものである。IFN-γの異常発現は、いくつかの自己炎症性疾患及び自己免疫疾患に関連している。免疫系におけるIFN-γの重要性は、部分的には、ウイルスの複製を直接阻害するその能力から生じるが、最も重要な部分は、その免疫賦活作用及び免疫調節作用から生じる。IFN-γは、自然免疫応答の一部として、ナチュラルキラー細胞(NK)及びナチュラルキラーT細胞(NKT)によって主に産生され、また、適応免疫応答の一部として、抗原特異的免疫が生じ次第、CD4 Th1及びCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エフェクターT細胞によって主に産生される。IFN-γはまた、2010年代初頭に初めて発見された免疫細胞ファミリーである、非細胞傷害性自然リンパ球(ILC)によっても産生される。いくつかの実施形態において、IFN-ガンマは、本明細書に記載される濃度で存在する。いくつかの実施形態において、IFN-ガンマは、ヒトIFN-ガンマである。いくつかの実施形態において、IFN-ガンマは、イヌまたはネコIFN-ガンマである。いくつかの実施形態において、IFN-ガンマは、組換えで産生される。いくつかの実施形態において、IFN-ガンマは、研究グレード基準または現行の医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(cGMP)に従って産生される。
【0166】
本明細書で使用される場合、「酵素による解離」という用語は、1種以上の酵素の触媒活性を用いた細胞組織の断片化または解離を指す。当該技術分野で一般によく知られたプロセスである、酵素による解離は、通常、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシンもしくはコラゲナーゼ)、または表面接着もしくは細胞間結合に関与する他の分子に特異的な酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)の使用を必要とする。
【0167】
本明細書で使用される場合、「in vivo」は、その通常の意味を有し、組織抽出物または死滅した生物とは対照的に、生体(通例、動物、ヒトを含む哺乳動物、及び植物)内で、ある方法を実行することを指す。
【0168】
本明細書で使用される場合、「ex vivo」は、その通常の意味を有し、天然の条件をほとんど変更せずに、生体外で、ある方法を実行することを指す。
【0169】
本明細書で使用される場合、「in vitro」は、その通常の意味を有し、生物学的条件外で(例えば、ペトリ皿または試験管において)、ある方法を実行することを指す。
【0170】
本明細書で使用される場合、任意の所与の物質、化合物、または材料の「純度」という用語は、予想される存在量に対する、物質、化合物、または材料の実際の存在量を指す。例えば、物質、化合物、または材料は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%(これらの間にある全ての小数を含む)純粋であり得る。純度は、限定されないが、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、脂質、細胞膜、細胞片、低分子、分解産物、溶媒、担体、ビヒクル、もしくは夾雑物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、望ましくない不純物によって影響を受けることがある。いくつかの実施形態において、物質、化合物、または材料は、宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸、プラスミドDNA、混入ウイルス、プロテアソーム、宿主細胞培養成分、処理関連成分、マイコプラズマ、パイロジェン、細菌内毒素、及び外因性物質を実質的に含まない。純度は、限定されないが、電気泳動、SDS-PAGE、キャピラリー電気泳動、PCR、rtPCR、qPCR、クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、分光法、紫外可視分光法、赤外分光法、質量分析、核磁気共鳴、重量測定、もしくは滴定、またはそれらの任意の組み合わせを含む技法を用いて測定することができる。
【0171】
本明細書で使用される場合、任意の所与の物質、化合物、または材料の「収率」という用語は、予想される全体量に対する、物質、化合物、または材料の実際の全体量を指す。例えば、物質、化合物、または材料の収率は、予測される全体量の少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%(これらの間にある全ての小数を含む)であり得る。収率は、反応またはプロセスの効率、望ましくない副反応、分解、投入する物質、化合物、もしくは材料の質、または製造ステップのいずれかにおける所望の物質、化合物、もしくは材料の減少によって影響を受けることがある。
【0172】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、採用される投薬量及び濃度で曝される細胞または哺乳動物に対して非毒性であるか、または許容されるレベルの毒性を有する担体、賦形剤、及び/または安定剤を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」「希釈剤」、「賦形剤」及び/または「担体」には、ヒト、ネコ、イヌ、または他の脊椎動物宿主への投与に適合性がある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、ならびに同様のものが含まれると意図される。典型的には、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、連邦政府、州政府、もしくは他の規制当局によって承認されているか、またはヒト及び非ヒト哺乳動物(ネコ及びイヌ等)を含む動物における使用のために米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に記載されている、希釈剤、賦形剤、及び/または担体である。希釈剤、賦形剤、及び/または「担体」という用語は、医薬組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指し得る。このような医薬希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、水及び油(石油、動物、植物または合成由来のものを含む)等の滅菌液であり得る。水、生理食塩水、ならびにデキストロース及びグリセロール水溶液は、特に、注射可能溶液用の液体希釈剤、賦形剤、及び/または担体として採用され得る。注射可能溶液用に使用される液体希釈剤のいくつかの例としては、限定されないが、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、またはデキストロース溶液が挙げられる。適切な医薬希釈剤及び/または賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、またはエタノール及び同様のものが挙げられる。生理学的に許容される担体の非限定的な例は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体はまた、以下の1つ以上を含み得る:抗酸化剤(アスコルビン酸等)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドン)、アミノ酸、炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリン等)、キレート剤(EDTA等)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトール等)、塩形成性対イオン(ナトリウム等)、及びポリエチレングリコール(PEG)。組成物は、所望により、少量の湿潤剤、増量剤、乳化剤、またはpH緩衝剤も含有し得る。こうした組成物は、溶剤、懸濁液剤、乳剤、徐放性製剤及び同様のものの形態を取り得る。製剤は、投与様式に適したものでなければならない。
【0173】
凍結保護物質は、大きな氷晶の形成を防ぐことにより、低温凍結保存の効率及び収率を改善するための細胞組成物添加剤である。凍結保護物質としては、限定されないが、DMSO、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トレハロース、ホルムアミド、メチル-ホルムアミド、ジメチル-ホルムアミド、グリセロール3-リン酸、プロリン、ソルビトール、ジエチルグリコール、スクロース、トリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、またはヒドロキシエチルデンプンが挙げられる。凍結保護物質は凍結保存培地の一部として使用され得、この培地には、細胞の解凍後の生存性を高めるための栄養素(例えば、アルブミン、血清、ウシ血清、またはウシ胎仔血清[FCS])等の他の成分が含まれる。凍結保存培地のいくつかの例は、CryoStor(登録商標)CS5、BioLife Solutions CS10、Hespan(登録商標)(0.9%塩化ナトリウム中6%ヘタスターチ[ヒドロキシエチルデンプン])、ならびにDMSO、FCS、及び標準増殖培地を含む当該技術分野で公知の他の組成物である。こうした組成物において、DMSOは、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%の濃度で、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出され得る。こうした組成物において、FCSは、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%の濃度で、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出され得る。こうした組成物は、本明細書に記載される他の凍結保護物質(トレハロース等)も含み得る。
【0174】
望ましい特性を有する追加の賦形剤としては、限定されないが、防腐剤、アジュバント、安定剤、溶剤、緩衝剤、希釈剤、キレート剤、抗酸化剤、アルコール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、塩類、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、糖類、デキストロース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、セルロース、血清、アミノ酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ゼラチン、エステル、エーテル、2-フェノキシエタノール、もしくはビタミン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの賦形剤は、限定されないが、血清、アルブミン、オバルブミン、抗生物質、不活化剤、ゼラチン、細胞片、核酸、ペプチド、アミノ酸、もしくは増殖培地成分、またはそれらの任意の組み合わせを含む、製造工程に由来する残留分中のものまたは夾雑物であり得る。賦形剤の量は、組成物中、0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100% w/wのパーセンテージで、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲における任意の重量パーセンテージで見出され得る。
【0175】
「薬学的に許容される塩」という用語には、限定されないが、鎮痛剤、治療剤、他の原料、及び同様のものを含む組成物もしくは賦形剤の、相対的に非毒性である、無機及び有機酸付加塩、または無機及び有機塩基付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩の例としては、鉱酸(塩酸及び硫酸等)に由来するもの、ならびに有機酸(エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及び同様のもの等)に由来するものが挙げられる。塩の形成に適切な無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、及び同様のものの水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩が挙げられる。塩はまた、適切な有機塩基で形成されてもよく、当該有機塩基には、非毒性であり、このような塩を形成するのに十分強力なものが含まれる。例えば、このような有機塩基の種類としては、限定されないが、モノ-、ジ-、及びトリアルキルアミン(メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンを含む)、モノ-、ジ-、またはトリヒドロキシアルキルアミン(モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミンを含む)、アミノ酸(グリシン、アルギニン及びリジンを含む)、グアニジン、N-メチルグルコサミン、N-メチルグルカミン、L-グルタミン、N-メチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、N-ベンジルフェネチルアミン、またはトリヒドロキシメチルアミノエタンを挙げることができる。
【0176】
選択された投与経路に依存して、製剤化は適切になされる。本明細書に記載される化合物の製剤化及び投与のための技法は、当業者に公知である。当該技術分野においては、限定されないが、経腸、経口、経直腸、局所、舌下、バッカル、点耳、硬膜外、皮膚上、エアロゾル、非経口送達(筋肉内、皮下、動脈内、静脈内、門脈内、関節内、皮内、腹膜内、髄内注射、髄腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射を含む)を含む、化合物を投与する技法が複数存在する。医薬組成物は一般に、意図された特定の投与経路に合わせて調製されることになる。
【0177】
本明細書で使用される場合、「担体」とは、細胞、組織及び/または身体器官への、化合物の通過、送達及び/または取り込みを容易にする化合物、粒子、固体、半固体、液体、または希釈液を指す。
【0178】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、薬理学的活性を欠くが、薬学的に必要であり得るかまたは望ましくあり得る、医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤は、製造及び/または投与するには質量が小さすぎる、効力がある薬物の体積を増加させるために使用され得る。希釈剤はまた、注射、経口摂取または吸入により投与される薬物を溶解させるための液体であってもよい。当該技術分野における希釈剤の一般的な形態は、限定されないが、ヒト血液の組成に類似するリン酸緩衝生理食塩水等の緩衝水溶液である。
【0179】
本明細書で使用される場合、「% w/w」または「% wt/wt」という用語は、本明細書に照らして理解される、その通常の意味を有し、組成物の総重量に対する成分または薬剤の重量に100を乗じて換算したパーセンテージを指す。本明細書で使用される場合、「% v/v」または「% vol/vol」という用語は、本明細書に照らして理解される、その通常の意味を有し、組成物の総液体体積に対する化合物、物質、成分、または薬剤の液体体積に100を乗じて換算したパーセンテージを指す。
【0180】
子宮由来再生細胞(URC)
子宮では、周期的に子宮内膜の外側構造(ヒトにおいては機能層としても知られる)が再生される。ヒトにおけるサイクルは、およそ30日ごとであるが、ネコ及びイヌといった動物におけるサイクルは、頻度が低い。子宮内膜外層の脱落(ヒト)または吸着(マウス)に続いて、子宮内膜外層は急速に再生する。例えば、ヒトでは機能層が脱落した後、24時間以内に、新たに露出した表面において再上皮化が生じる。したがって、機能層の再生を支持する子宮内膜の基底層には、重要な幹細胞及び前駆細胞のプールが認められる。基底層に存在する幹細胞及び前駆細胞は、間質系(間葉系、周皮細胞等)及び上皮系(上皮系幹細胞を含む)の両方である。上皮系幹細胞は、妊娠及び出産の「天然の」子宮内膜傷害に起因する大規模な増殖と関連していることから、「創始」細胞として同定されている。
【0181】
上皮組織で見られる別の重要な細胞型は、「一過的増殖」(TA)細胞である。TA細胞は、上皮系幹細胞に由来し、「自己複製」(真の幹細胞の特色である)をすることができず、子宮内膜のような層状上皮組織の恒常性及び修復に必要な成体細胞となる運命にある。CD44+上皮細胞は、子宮前駆細胞(上皮系前駆細胞)の候補とみなされている。子宮内膜には、間質線維芽細胞、血管平滑筋細胞、内皮細胞及び白血球を含む、他の様々な細胞が存在する。
【0182】
上皮組織は、子宮、皮膚、腸、気道、腎臓、肝臓、乳腺及び前立腺を含む、外部環境と内部構造との界面で頻繁に見られる。上皮系幹細胞の重要な側面は、その可塑性であり、上皮系幹細胞が上皮層内の「ニッチ」から取り除かれた際に可塑性が示される。上皮系幹細胞がそのニッチから取り除かれ、移植(直接または培養後のいずれかで)されると、上皮系幹細胞は一層多能性を帯び、その際、単能性上皮細胞またはある方向への分化が決定された(committed)上皮細胞は、脱分化機序を介して、より「幹細胞様」の状態をとる。
【0183】
子宮組織は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従ってプロセシングされ、培養において増殖された後、主に2種の細胞型をもたらす:1)ビメンチンが単独で陽性の細胞(V+、MSCマーカー)、ならびに2)サイトケラチン-18とビメンチンとが二重で陽性の細胞(C+/V+)及び/またはCD44とCD326とが二重で陽性の細胞(CD44+/CD326+)。サイトケラチンは、上皮細胞と関連している。本明細書に記載されるものと同じプロトコルでプロセシングされた、イヌ子宮から得られた細胞は、培養4日目、またはそれ以降の継代、日、または培養間隔において調べた場合、大まかに1:1の頻度でV+細胞及びC+/V+細胞をもたらす。さらに、イヌ子宮組織に由来する細胞はまた、CD90/CD44が二重で陽性であり、CD44が単独で陽性であった。上述したように、CD44マーカーは上皮系前駆細胞に関連すると考えられ、他のマーカーは前駆細胞及び線維芽細胞に関連する。
【0184】
本明細書では、「上皮様」細胞が「間葉様」細胞と共存している安定した培養環境の第4継代以降から全てが記載される。ヒト子宮内膜組織を酵素消化した後に得られた単一細胞懸濁液を培養すると、間葉系/線維芽細胞及び上皮系/小円形細胞の2種類のプラスチック接着性の細胞が生じることが、これまでに報告されてきた。しかしながら、外観上、第3継代培養物に存在する接着細胞の大部分は線維芽細胞であった。したがって、本明細書に記載されるプロトコルにおいて、第4継代に至るまでに2種の前駆細胞が存在することはめったにない。さらに、ネコ慢性腎疾患(CKD)を処置するために、2種細胞型調製物を用いた臨床試験が実施された。当該パイロット試験では、試験対象のおよそ70%に治療上有益な結果が得られた。この非常に肯定的な結果は、MSCのみを含有する細胞調製物に基づく、培養細胞調製物を用いた他の臨床試験とは対照的であった。
【0185】
慢性腎疾患は、腎臓のネフロンにおける上皮層の傷害によって特徴付けられる。上皮層が傷害されると生じる炎症促進性環境に長期間曝されることにより、慢性腎疾患に関連する進行性の病態が助長される。したがって、本明細書に記載されるCKDの臨床試験において、2種細胞型調製物は、おそらくCKDの主要な一因と考えられている炎症を抑えることによって、CKDの進行を逆転させることができたと思われる。
【0186】
MSCのような前駆細胞の重要な特性の1つは、炎症性反応の促進に関連する様々な免疫細胞に対して直接作用する、様々な生化学物質(IL-10等のサイトカインを含む)の分泌を通じて、炎症促進性環境を和らげることである。この能力は、マクロファージの炎症促進型(M1)から抗炎症型(M2)への移行を促進する等、広範な免疫調節特性にも関連している。本明細書に記載される調製物中にMSC様細胞が存在することにより、CKD及び/またはアトピー性皮膚炎に関連する炎症促進性環境の緩和が支持されるはずである。
【0187】
アポトーシスは、細胞(成体組織細胞、好中球、軟骨細胞等)が、そのゲノムを変化させ、プログラム細胞死をとる「シグナル」を受けると生じる。例えば、肺胞上皮細胞は、最適レベル以下の酸素に曝されると、低酸素誘導性因子を産生し、肺胞上皮細胞のアポトーシス及び細胞死を引き起こす。MSCは直接的な抗アポトーシス因子を産生する。本明細書に記載される調製物中にMSC様細胞が存在することにより、炎症促進性ネフロン等の病態部位に存在したシグナルに起因してアポトーシスに陥っていた組織細胞のレスキューが支持されるはずである。
【0188】
アポトーシス細胞のレスキューに加えて、MSCは、MSCが気管内に送達された後に、ヒト肺損傷モデルにおいて肺胞II型上皮細胞が障害された場合、当該細胞の活性の回復を助けることが実証されている。ネコCKD臨床治験及びイヌアトピー性皮膚炎処置の場合には、間葉系様幹細胞と共に上皮系幹細胞様細胞が注入された。この組み合わせによって、MSC型細胞と罹患したネフロンに存在する上皮細胞との有益な相互作用が強化された可能性がある。加えて、上皮系幹細胞様細胞もまた、TA細胞の生成を含め、上皮組織に見られる正常な環境を回復させることによって、上皮ニッチに応答し、これにより、ネフロンにおける機能的上皮バリアの修復及び再確立が補助された可能性がある。
【0189】
幹細胞がレジデント細胞を支持することの別の現われとして、多種多様なレジデント組織細胞の増殖を促進することが知られている生化学的因子(線維芽細胞増殖因子(FGF)等)の分泌がある。例えば、骨関節炎で生じるように、軟骨細胞が傷害を受けた場合、軟骨細胞の増殖は、部分的にFGFによって制御される。FGF-2は、間質由来の「幹細胞」が培養中にコロニーを形成し、増殖するのを促進するが、この因子は、上皮系幹細胞のクローン形成活性は促進しない。一方、TGF-ベータ、EGF及びPDGF-BBは全て、上皮細胞及び間質細胞の両方のクローン形成能を増強した。上皮細胞は、子宮内膜の「機能」層(月経期に放出される子宮内膜の外層)の再生に重大な意味を持つ。機能層の再上皮化は24時間以内に起こり、その上皮細胞は、上皮系前駆細胞に由来するものである。
【0190】
本明細書に記載のネコCKD及びイヌアトピー性皮膚炎の臨床治験で使用される治療調製物において、第4継代で2種の細胞型が存在するという事実は、2種の細胞型が長期間共培養されたことを意味し、その結果、「クロストーク」に起因して、2種の細胞型に変化が生じ得る。例えば、脂肪由来MSCは、ヒト乳房上皮細胞株の増殖によって馴化された培地で培養すると、腺房様構造を形成した。結果として生じる変性MSCが上皮遺伝子を上方制御したことから、MSCが、ヒト乳房上皮細胞から放出される因子の影響を受けていることが示された。II型肺胞細胞はプラスチック上で増殖された場合、通常、I型細胞に分化するところ、骨髄由来MSC及び肺胞上皮細胞を伴う混合共培養実験における肺胞細胞は、II型の形態を維持した。したがって、MSC及び上皮細胞は、in vitro実験において互いに影響し合うことが実証された。
【0191】
細胞をまとめて共培養すると、細胞は、多数の生化学的因子の分泌を介して互いに影響を与え合うことができる。例えば、マウス腎臓の細管から細胞株を樹立した場合、上皮細胞をFGF-2(MSCによって分泌されるサイトカイン)の存在下で培養すると、上皮細胞マーカーであるサイトケラチンに対する上皮細胞の反応性が失われ始め、間葉系幹細胞マーカーであるビメンチンに対する反応性が増した。著者らは、このことが「上皮間葉転換」と呼ばれる公知のin vivo現象を表している可能性があると指摘している。さらに、最初に複数の細胞型(MSCが含まれる)を培養する場合の典型的なパターンは、数回の継代中に他の細胞型が消失し、培養物がMSCに支配されるというものである。
【0192】
したがって、本明細書に記載される治療調製物における、CD44+でもあるサイトケラチン陽性の上皮系幹細胞様細胞の存在は、培養開始時に存在する上皮系前駆細胞が、ある種の分子クロストークを通じて、それらが第4継代まで生存可能になる様式で、MSC様前駆細胞に影響を与えることができたことを示唆している。本明細書に記載のネコCKD臨床治験で使用される治療薬における上皮系前駆細胞の存在により、上皮系幹細胞が上皮組織の再生(脱落後の子宮内膜における機能層の再生を含む)に重大な役割を果たすことに起因して、治療効果がもたらされた可能性がある。治療調製物中に存在する上皮系幹細胞様細胞はまた、CKDにおけるネフロンの機能障害性上皮組織において、健常な上皮組織を維持するための基礎となるTA細胞依存性修復機序の回復を補助し得る。
【0193】
最後に、共培養における細胞間の潜在的なクロストークについては、IL-10、FGF及び他のサイトカイン等の生化学物質の役割に焦点が置かれてきたが、上皮系前駆細胞とMSC様細胞との間で生じるコミュニケーションの重大な要因は、エクソソームである。エクソソームは体内の全ての細胞によって産生され、非常に特異的な条件下で、in vivoにおいて放出される。エクソソームは、その供給源に応じて、タンパク質、脂質、プロテオグリカン、RNA種及びDNAからなる「カーゴ」を含有するように設計されている。エクソソーム内のカーゴとして運ばれるタンパク質には、FGFまたはIL-10が含まれ得る。エクソソームが、その「標的」受容体と考えられ得る細胞に結合するとすぐに、エクソソームはそのカーゴを放出する。成熟タンパク質は、直ちに標的細胞の代謝に影響を与えることができる。しかし、RNA成分は、標的細胞のゲノム、またはタンパク質合成機構に組み込まれることになり、エクソソームのカーゴに基づいたタンパク質の産生が始まる。他のタイプのRNA成分(miRNA)は、標的細胞遺伝子の活性化を阻害し、それによって細胞のタンパク質産生に変化が生じ得る。それゆえに、本明細書に記載される治療調製物中に存在する2種の細胞型が互いに及ぼす影響には、培養物中に放出されるエクソソームの取り入れが含まれ得、このエクソソームは、共培養期間中及びそれに続いて試験対象に注入される際に、細胞の機能的挙動を改変する可能性がある。
【0194】
細胞組成物
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、特定の特性を示す細胞を含む細胞組成物に関する。いくつかの実施形態において、特定の特性としては、形態(紡錘形状及び立方体形状)、または間葉細胞型もしくは上皮細胞型に関連する細胞マーカー(例えば、ビメンチン、サイトケラチン-18、CD44、またはCD326)の発現を挙げることができる。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、特定の特性を示す1種以上の細胞集団を含み得る。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、2種以上の細胞集団を含む不均一性細胞組成物であり得る。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物中のいくつかの細胞集団は、2種以上の細胞型の特性を示し得る。
【0195】
本明細書では、不均一性細胞組成物が開示される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、共培養される。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、上皮系前駆細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)をさらに含む。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、子宮組織は、卵巣摘出術により得られる。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の間葉系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の間葉系前駆細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の上皮系前駆細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の上皮系前駆細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、合計で5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約31百万、約32百万、約33百万、約34百万、約35百万、約36百万、約37百万、約38百万、約39百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の細胞、あるいは合計が前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、合計で30~36百万または約30~36百万個の細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、細胞集団をさらに含み、各細胞は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の両方のマーカーを示す。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、D、または類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、凍結保存培地をさらに含む。いくつかの実施形態において、凍結保存培地は、(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、(b)98% Hespan及び2% DMSO、(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、(d)増殖培地中の2~10% DMSO及び2~20% FCS、または(e)増殖培地中の約2~10% DMSO及び約2~20% FCSを含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。
【0196】
また、本明細書では、ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団及びV+/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団を含む、不均一性細胞組成物が開示される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、共培養される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、V-/C+細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、FGF-2をさらに含む。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、子宮組織は、卵巣摘出術により得られる。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、合計で5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約31百万、約32百万、約33百万、約34百万、約35百万、約36百万、約37百万、約38百万、約39百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の細胞、あるいは合計が前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、合計で30~36百万または約30~36百万個の細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはDまたは類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、凍結保存培地をさらに含む。いくつかの実施形態において、凍結保存培地は、(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、(b)98% Hespan及び2% DMSO、(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、(d)増殖培地中の2~10% DMSO及び2~20% FCS、または(e)増殖培地中の約2~10% DMSO及び約2~20% FCSを含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。
【0197】
また、本明細書では、不均一性細胞組成物も開示される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、(a)ビメンチン陽性(V+)/サイトケラチン陰性(C-)細胞集団、(b)ビメンチン陰性(V-)/サイトケラチン陽性(C+)細胞集団、及び(c)V+/C+細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、集団(a)~(c)は、共培養される。いくつかの実施形態において、集団(a)~(c)は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、V+/C+細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞集団は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。いくつかの実施形態において、V-/C+細胞集団は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞集団及びV-/C+細胞集団の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、FGF-2をさらに含む。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、集団(a)~(c)は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、集団(a)~(c)は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、子宮組織は、卵巣摘出術により得られる。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C-細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C-細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV-/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV-/C+細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個のV+/C+細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数のV+/C+細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、合計で5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約31百万、約32百万、約33百万、約34百万、約35百万、約36百万、約37百万、約38百万、約39百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の細胞、あるいは合計が前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の数の細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、合計で30~36百万または約30~36百万個の細胞を含む。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、集団(a)~(c)は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、凍結保存培地をさらに含む。いくつかの実施形態において、凍結保存培地は、(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、(b)98% Hespan及び2% DMSO、(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、(d)増殖培地中の2~10% DMSO及び2~20% FCS、または(e)増殖培地中の約2~10% DMSO及び約2~20% FCSを含む。
【0198】
また、本明細書では、細胞組成物も開示される。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコ細胞は、子宮細胞である。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、間葉系前駆細胞及び/または上皮系前駆細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、V+/C-細胞及び/またはV-/C+細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコ細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、イヌまたはネコ細胞は、卵巣摘出術から得られるか、または卵巣摘出術に由来する。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、FGF-2をさらに含む。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、限定されないが、細胞ベースのフィーダー層、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、核酸、DNA、RNA、糖類、多糖類、炭水化物、脂質、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、テネイシン、ヘパラン硫酸、エンタクチン、ナイドジェン、オステオポンチン、細胞外マトリックス、基底膜、Matrigel、ハイドロゲル、PEI、WGA、ヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞接着及び/または細胞増殖を増強する生物学的または合成コーティング剤で前処理されていない、少なくとも1つの組織培養容器において共培養される。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、少なくとも1つの組織培養容器において培養される。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、30百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約30百万、約40百万、約50百万、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞、あるいは前述の細胞数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数の当該細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、限定されないが、トレハロース、DMSO、もしくはアルブミンを含む、添加物、サプリメント、抗生物質、ビタミン、増殖因子、凍結保護物質、緩衝液、塩類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖類、多糖類、または炭水化物、あるいはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、合計で30~36百万または約30~36百万個の細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、凍結保存培地をさらに含む。いくつかの実施形態において、凍結保存培地は、(a)CryoStor CS5及び/またはBioLife Solutions CS10、(b)98% Hespan及び2% DMSO、(c)約98% Hespan及び約2% DMSO、(d)増殖培地中の2~10% DMSO及び2~20% FCS、または(e)増殖培地中の約2~10% DMSO及び約2~20% FCSを含む。
【0199】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、有効量の本明細書に記載される細胞組成物、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくはそれらの組み合わせ、を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる医薬組成物に関する。本明細書に記載される医薬組成物は、ヒト及び/または獣医学上の用途に適したものである。また、医薬化合物は、全身性ではなく局所性に(例えば、臓器、組織、がん、腫瘍、感染範囲、または他の疾患領域に化合物を直接的に注射することによって)投与され得る。
【0200】
製造方法
本明細書では、細胞組成物を調製する方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、本明細書に開示される細胞組成物または不均一性細胞組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、イヌもしくはネコの組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの組織に由来する。いくつかの実施形態において、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、上皮系前駆細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、細胞培養物が70~80%コンフルエンスに達した際に継代される。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態においては、イヌまたはネコの子宮組織を酵素的に解離して、単一細胞懸濁液を形成する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。
【0201】
また、本明細書では、細胞組成物を調製する方法も開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、V+/C-細胞及びV+/C+細胞を含む単一細胞懸濁液を、FGF-2と接触させることと、単一細胞懸濁液を、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数で、FGF-2と共に培養することと、を含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、本明細書に開示される細胞組成物または不均一性細胞組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、イヌもしくはネコの組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの組織に由来する。いくつかの実施形態において、3、4、5、または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりに、V+/C-細胞及びV+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、V-/C+細胞は、不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、細胞培養物が70~80%コンフルエンスに達した際に継代される。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、同一のイヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、または同一のイヌもしくはネコの子宮組織に由来する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態においては、イヌまたはネコの子宮組織を酵素的に解離して、単一細胞懸濁液を形成する。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。
【0202】
また、本明細書では、不均一性細胞組成物等の細胞組成物を調製する方法も開示される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。いくつかの実施形態において、本方法は、イヌまたはネコの子宮組織を単一細胞懸濁液に解離し、当該単一細胞懸濁液を、3、4、5または6の継代数、日数、または培養間隔数で培養することによって、培養された単一細胞懸濁液から不均一性細胞組成物を調製することを含む。いくつかの実施形態において、3、4、5または6の継代数、日数、または培養間隔数の終わりには、不均一性細胞組成物は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、細胞培養物が70~80%コンフルエンスに達した際に継代される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、本明細書に開示される不均一性細胞組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、解離ステップは、酵素による解離を含む。いくつかの実施形態において、酵素による解離は、イヌまたはネコの子宮組織を、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、サーモリシン、中性プロテアーゼ、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、FGF-2と共に培養される。いくつかの実施形態において、FGF-2は、組換えヒトFGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF-2は、8ng/mLまたは約8ng/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、単一細胞懸濁液は、少なくとも4の継代数、日数、または培養間隔数で培養される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。
【0203】
使用方法
本明細書で使用される場合、「処置すること」、「処置」、「治療的」、または「療法」という用語は、本明細書に照らして理解される、その通常の意味を有し、必ずしも疾患または病状の完全な治癒または消滅を意味するものではない。本明細書で使用される場合(及び当該技術分野で十分に理解されているように)、「処置すること」または「処置」という用語はまた、臨床結果を含む、対象の状態において有益な結果または所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、部分的であるかまたは全体的であるか、検出可能であるかまたは検出不可能であるかに関わらず、限定されないが、1つ以上の症状または病状の緩和または寛解、疾患範囲の縮小、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患の伝播または拡散の予防、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または軽減、疾患再発の減少、及び寛解傾向を挙げることができる。本明細書で使用される「処置すること」及び「処置」には、予防処置も含まれる。処置方法は、治療有効量の活性薬剤を対象に投与することを含む。投与ステップは、単回投与からなり得るか、または一連の投与で構成され得る。組成物は、患者を処置するのに十分な量及び期間で対象に投与される。処置期間の長さは、病状の重症度、患者の年齢及び遺伝子プロファイル、活性薬剤の濃度、処置に使用される組成物の活性、またはそれらの組み合わせ等の種々の要因に依存する。また、処置または予防に使用される薬剤の有効投薬量は、特定の治療または予防体制の経過と共に増加または減少する可能性があることも認識されよう。投薬量の変更は、当該技術分野で公知の標準診断アッセイにより、結果としてなされ、明らかになり得る。場合によっては、慢性投与が必要とされる可能性がある。
【0204】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、2種以上の医薬組成物/薬剤または療法の組み合わせの使用を含む療法を定義することを意図する。したがって、本出願における「併用療法」、「併用」、及び組成物/薬剤の「併用」使用に対する言及は、同一の全体的な治療計画の一部として投与される組成物/薬剤を指し得る。よって、2種以上の組成物/薬剤の各々における投薬量またはタイミングは異なっていてもよい。つまり、それぞれが同時に投与され得るか、または異なる時間で投与され得る。したがって、併用する組成物/薬剤は、同一の医薬製剤中(すなわち、一緒に)、または異なる医薬製剤中(すなわち、別々に)のいずれかで、順次(例えば、前もしくは後に)または同時に投与され得る。併用療法における2種以上の組成物/薬剤の各々は、投与経路に関しても異なることがある。
【0205】
対象(イヌまたはネコ対象等)は、特定の疾患または病状を有し得る。あるいは、対象は、疾患もしくは病状を発症している可能性がある、疾患もしくは病状を有するリスクがあり得る、以前に疾患もしくは病状を有していた、または疾患もしくは病状を有していない。疾患または病状は、特発性であり得るか、または自己免疫疾患もしくは加齢に関連し得る。疾患または病状としては、限定されないが、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎または創傷を挙げることができる。本明細書に記載される少なくとも1つの不均一性細胞組成物が対象に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、経腸的または非経口的に投与され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、5百万、6百万、7百万、8百万、9百万、10百万、11百万、12百万、13百万、14百万、15百万、16百万、17百万、18百万、19百万、20百万、21百万、22百万、23百万、24百万、25百万、26百万、27百万、28百万、29百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、45百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、もしくは100百万、または約5百万、約6百万、約7百万、約8百万、約9百万、約10百万、約11百万、約12百万、約13百万、約14百万、約15百万、約16百万、約17百万、約18百万、約19百万、約20百万、約21百万、約23百万、約24百万、約25百万、約26百万、約27百万、約28百万、約29百万、約30百万、約31百万、約32百万、約33百万、約34百万、約35百万、約36百万、約37百万、約38百万、約39百万、約40百万、約45百万、約50百万細胞、約60百万、約70百万、約80百万、約90百万、もしくは約100百万個の細胞、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数の細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万細胞、約30百万細胞、約31百万細胞、約32百万細胞、約33百万細胞、約34百万細胞、約35百万細胞、または約36百万細胞、あるいは前述の細胞数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数の細胞を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回の用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、各用量は、前回の投与から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30日後、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月後、または1、2、3、4、5年後に投与され得る。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも1つの不均一性細胞組成物の投与後に、症状の緩和または疾患の完全もしくは部分的な軽減を経験する。
【0206】
また、本明細書では、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団を含む少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することであって、当該間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、当該イヌまたはネコの子宮組織は、イヌまたはネコ対象に対して自家または同種である、提供することと、イヌまたはネコ対象に少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含む。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞及び上皮系前駆細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、間葉系前駆細胞は、少なくとも1つの不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、上皮系前駆細胞は、少なくとも1つの不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、送達デバイスまたは容器(生理食塩水、酢酸リンゲル液、デキストロース溶液、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等)に移された後に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を凍結保存状態から解凍することは、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、本明細書に開示される不均一性細胞組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該細胞が、好ましくは子宮細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物であって、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される細胞組成物。
【0207】
また、本明細書では、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、もしくは創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、V+/C-細胞集団及びV+/C+細胞集団を含む少なくとも1つの不均一性細胞組成物を提供することであって、当該V+/C-細胞及びV+/C+細胞は、イヌもしくはネコの子宮組織から得られるか、またはイヌもしくはネコの子宮組織に由来し、当該イヌまたはネコの子宮組織は、イヌまたはネコ対象に対して自家または同種である、提供することと、イヌまたはネコ対象に少なくとも1つの不均一性細胞組成物を投与することと、を含む。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞及びV+/C+細胞の比は、20%対80%、40%対60%、50%対50%、60%対40%、80%対20%、90%対10%、99%対1%、約20%対約80%、約40%対約60%、約50%対約50%、約60%対約40%、約80%対約20%、約90%対約10%、または約99%対約1%であるか、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の比である。いくつかの実施形態において、V+/C-細胞集団は、少なくとも1つの不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、V-/C+細胞集団は、少なくとも1つの不均一性細胞組成物の総細胞数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、送達デバイスまたは容器(生理食塩水、酢酸リンゲル液、デキストロース溶液、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等)に移された後に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を凍結保存状態から解凍することは、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、本明細書に開示される不均一性細胞組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。
【0208】
また、本明細書では、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎または創傷の処置、抑制、または寛解を必要とするイヌまたはネコ対象における、その処置、抑制、または寛解方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも1つの細胞組成物、好ましくは不均一性細胞組成物をイヌまたはネコ対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの細胞組成物(好ましくは不均一性細胞組成物)は、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、本明細書に開示される不均一性細胞組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで存在する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団によってさらに定義される。いくつかの実施形態において、CD44及びCD326の両方が陽性である細胞集団は、不均一性細胞組成物の細胞の総数のうち、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%のパーセンテージで、あるいは前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出される。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、イヌまたはネコ対象に対して自家または同種である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、皮内、髄腔内、腹腔内、門脈内、関節内、眼内もしくは腎臓内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物は、凍結保存状態から解凍され、送達デバイスまたは容器(生理食塩水、酢酸リンゲル液、デキストロース溶液、リン酸緩衝生理食塩水または乳酸リンゲル液等の適切な緩衝液、希釈液または流体を含むシリンジ等)に移された後に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を凍結保存状態から解凍することは、少なくとも1つの不均一性細胞組成物を、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製される。
【0209】
また、本明細書では、イヌまたはネコの慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、慢性歯肉口内炎もしくは創傷の処置に使用するための、本明細書に開示される不均一性細胞組成物のいずれかが開示される。
【0210】
また、本明細書では、医薬の製造に使用するための、本明細書に開示される不均一性細胞組成物のいずれかが開示される。
【0211】
慢性腎疾患
いくつかの実施形態において、動物患者が罹患する疾患は慢性腎疾患(CKD)である。イヌよりもネコでより一般的であるが、CKDは、潜在的にあらゆる動物が罹患する可能性があり、したがって、本明細書に提供されるCKDに関するあらゆる開示は、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、及び他の動物に適用され得る。
【0212】
ネコCKDは一般的な炎症性の退行性病態であり、通常は高齢のネコで生じる。全体的な有病率はおよそ4%であり、有病率は年齢と共に急速に増加し、10歳以上のネコでは30~40%に達し、15歳以降では80%ほどに達する場合がある。CKDは、5歳以上のネコにおける最も一般的な死因であり、年齢中位数15歳での死亡率は、少なくとも13%である。腎臓は、内分泌物の産生から老廃物の排泄まで、広範囲にわたる生理的プロセスを担っているため、可能性がある臨床症状も同様に多岐にわたるが、多くの場合、体重減少及び食欲不振を伴う。CKDの根源的な原因は、個体によって異なり、通常は不明である。低酸素症、中毒性傷害、ワクチン接種、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、上部尿路閉塞、またはレトロウイルスもしくはモルビリウイルス等のウイルス感染を含む、複数のプロセスが提唱されている。ときには、多発性嚢胞腎疾患、アミロイドーシス、腎リンパ腫、先天性疾患、高カルシウム血症性腎症、鈍的腹部外傷、急性腎臓損傷(例えば、特異的毒素の摂取)、または尿道閉塞の既往等、原因が同定されることがある。年齢以外にも、脱水、歯科疾患、変性関節疾患、または体調不良を含む、いくつかの他のリスク因子がCKDと関連している。
【0213】
CKDは、慢性的な腎臓の炎症及び変性によって特徴付けられる。組織学的には、腎標本は一般的に、炎症性浸潤、細胞外マトリックスの増加、尿細管の損失、石灰化、及び線維化を示し、これらは全て、尿細管間質性腎炎及び腎線維症としてより簡潔に説明され得る。肉眼的には、腎臓のサイズは経時的に縮小する。
【0214】
疾患進行の機序は多くの要素からなり、十分に理解されていない。ある専門家は、腎機能の最良の尺度である糸球体濾過値(GFR)は、構造変化、機能しているネフロンの減少、及び尿細管機能障害に起因して、腎臓の老化過程の「正常な」一部として減少すると推測する。細胞レベルでは、こうした現象は、テロメア短縮、ミトコンドリア傷害、酸化ストレス、炎症促進及び線維化促進メディエーター、ならびに細胞増殖及び細胞再生と細胞死及びアポトーシスとの間の全般的な不均衡と関連している。これらの分子過程は、単に自然老化の1つの態様であるという主張もいくらかあるが、慢性的な傷害からも生じる可能性があるという指摘もある。正確な病因に関わらず、CKD患者の腎臓は、損傷に対する感受性が経時的により高くなり、傷害後の回復が低下する。その結果、慢性炎症及び変性の方へ不均衡が生じる。
【0215】
細胞レベルでは、傷害の直接的原因として、低酸素、タンパク尿、アンジオテンシンII、高血糖、または酸化ストレスを挙げることができる。傷害により、遺伝子発現の変化ならびにT細胞及びマクロファージ等の炎症細胞の動員が刺激され、線維化促進及び炎症促進メディエーターのレベルが上昇する。また、筋線維芽細胞は、線維細胞、内皮細胞、及び尿細管上皮細胞の分化、または周皮細胞を介した分化により生じる。この後者の経路が、間質毛細血管網の喪失の一因となり、酸化ストレス、低酸素、線維化、及びさらなる傷害が増進する。これにより、疾患進行の悪循環に陥る。
【0216】
ネコCKDに関連している分子異常を挙げると長くなるが、インターロイキン-6(IL-6)、単球走化性促進因子(MCP-1)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、上皮性増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、形質転換増殖因子-β(TGF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、または活性酸素種を含むがこれらに限定されない、増殖因子、サイトカイン、及びケモカインの異常レベルが挙げられる。
【0217】
第一線の専門家パネルが率いるInternational Society of Feline Medicineによれば、CKDに対する治療の有効性は、クオリティオブライフ(QOL)を決定する臨床徴候を改善する能力に基づいて検討されるべきである。治療によって基礎疾患の進行を遅らせることにより、延命を図ることもできるが、このことは一般に、有効性の二次的尺度と考えられている。このパラダイムのために、CKDの臨床徴候を根本的に理解することが、研究の解釈に役立つことになる。
【0218】
腎機能が低下するにつれて、血液中の毒素の蓄積、赤血球の産生低下、電解質の不均衡、脱水、代謝性アシドーシス、胃腸管の吸収不良、全身性の炎症、エネルギー必要量の増加、免疫機能の障害、高血圧、及びタンパク質の損失を含む、多くの生理的障害が生じる。こうした異常による影響は、動物によって異なり、時間と共に変化し得る。
【0219】
こうした変化に関連する臨床徴候としては、慢性的な体重減少、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、便秘、飲水量の増加及び排尿量の増加、無気力、呼気悪臭(口臭)、口腔潰瘍、及び被毛の減少が挙げられる。疾患が貧血を誘発するほど重篤な場合は、歯肉が淡いピンク色であるか、または白色にもなることがある。
【0220】
高血圧は、永続的な視力喪失を引き起こし得る網膜出血、心臓異常(左心室肥大(心臓の肥厚)、不整脈、心雑音、及び鼻出血(鼻血)等)、ならびに神経学的欠乏(精神変調、痙攣、行動変化、及び前庭性徴候(平衡感覚の喪失)等)を含む、様々な後遺症をもたらす可能性がある。
【0221】
CKDは尿路感染症(UTI)のリスクを増加させるが、これはおそらく、尿濃度の低下が理由であると考えられる。下部尿路のみに影響を及ぼすUTIは、無症候性であり得るか、または、血尿症(血尿)、頻尿症(頻尿)、排尿困難(排尿痛)、周囲での排尿(不適切な場所での排尿)、及び/または有痛性排尿困難(排尿負担)を含む種々の臨床徴候を引き起こし得る。さらに深刻なことに、UTIは、腎臓そのものに影響を与えることがあり(腎盂腎炎)、加えて、側腹部痛、発熱、及び極度の無気力を引き起こす。
【0222】
CKDは、少なくとも3ヶ月間の腎機能低下によって定義される。腎機能測定のゴールドスタンダードは糸球体濾過値(GFR)であり、これは、1分ごとに糸球体で濾過される血漿量によって定義され、腎容積の直接的基準となる。GFRを最も正確に測定する方法には、腎性に排泄された物質を逐次的に測定することが必要となる。理想的には、このような物質は、非毒性であり、最小限に代謝され、血漿タンパク質との結合が最小であり、腎臓によってのみ排泄されるものである。一例は、ヨード系造影剤のイオヘキソールである。GFRを測定するには、イオヘキソールを単回注射し、続いて、注射後の血清試料を少なくとも1時間間隔で少なくとも2回採取するが、より多くの試料をより長い期間にわたって採取することで、より正確な結果が得られる。こうした一連の試料中のイオヘキソール量を測定することにより、GFRに直接関連するイオヘキソールクリアランス率を決定することができる。次いで、イオヘキソールのクリアランス率、したがって、GFRを正常範囲と比較することにより、腎機能の正常と異常とを読み取ることができる。GFRは、造影剤の注射及び核シンチグラフィを用いて測定することもできるが、この技術は一般に研究専用である。
【0223】
逐次測定による注入は、GFRを決定するための臨床的ゴールドスタンダードであるが、臨床診療ではまれである。その代わりに、ほとんどの臨床医は、International Society of Feline Medicine(ISFM)及びInternational Renal Interest Society(IRIS)が推奨するように、血清クレアチニンと尿濃度との組み合わせに依存している。クレアチニンはイオヘキソールと同様の理由で使用されるが、注目すべき例外として、クレアチニンは、身体により天然に産生され(筋肉代謝の副産物)、糸球体濾過を介して排泄され、尿細管分泌または再吸収が最小限である。理論的には、GFRが低下すると血清クレアチニンは正常範囲を超えて上昇することになる。尿比重(尿濃度の尺度)は、老廃物を濃縮する腎臓の能力の大まかな指標を与えるものであるため使用される。機能喪失によりその能力が減弱すると、尿が一層希釈される。
【0224】
事態を複雑にすることに、血清クレアチニン及び尿比重の両方が、腎臓に関連しない他の様々な理由で正常範囲を超える可能性がある。例えば、クレアチニンは、平均以上の筋肉量によって増加することがあり、尿比重は、(他の理由の中でも特に)単に動物が直近で飲んだ大量の水によって低くなる(すなわち、尿が希釈される)ことがある。したがって、血清クレアチニン及び尿比重の両方は、臨床徴候、X線所見、腎生検、ならびに他の検査結果(血中尿素窒素(BUN)濃度及び尿タンパク質レベル(いずれもCKDで上昇する可能性がある)等)を含み得る、他の利用可能なデータに照らして解釈されなければならない。CKDはまた、タンパク尿レベル及び収縮期血圧レベルによってサブステージに段階付けられ得る。
【0225】
IRISガイドラインでは、血清クレアチニン及び臨床徴候に基づいて、表1に示すように、CKDを4つのステージに分類している。(高窒素血症は、クレアチニン及びBUN等、血中老廃物のレベルが異常に高いことを指す)
【表1】
【0226】
血清クレアチニンがGFRの実用的な尺度ではあるが不完全であることは再強調しておくに値する。なぜなら、血清クレアチニンは非腎性プロセスに影響される可能性があるだけでなく、少なくとも75%のネフロンが失われるまで血清クレアチニンは上昇せず、クレアチニンが腎臓病理の非感受性バイオマーカーとなるからである。換言すれば、IRISステージ2のCKDは、「軽度高窒素血症」と定義されるが、既に腎機能の4分の3が失われているため、ステージ2の疾患の病理学的実態は、決して軽度ではない。
【0227】
クレアチニンの非感受性、及びイオヘキソール等の物質による逐次的GFR測定の非実用性から、GFRの代替尺度が検討されている。クレアチニンの代替(または補足)として有力なのは、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)であり、これはクレアチニンよりも感受性が高い可能性があるが、同様に非腎性プロセスの影響を受ける可能性もある。SDMAは現在市販されており、特に疾患の早期検出を改善する手段として、一部の開業医により使用されている。
【0228】
クオリティオブライフ(QOL)及び寿命を同時に改善することが示されている食事療法は別として、ほとんどの治療法は、QOLを阻害する臨床徴候の管理(胃腸管系の問題に対する制吐性薬物療法または脱水に対する液体投与等)を目的としている。
【0229】
CKDを処置するために、疾患のステージ及び個々の臨床症状に応じて、広範囲の治療法が用いられる。
【0230】
処置の柱は食生活の改善であり、一般的には、リン、タンパク質、及びナトリウムを減らし、カロリー密度、カリウム、ビタミンB群、オメガ-3脂肪酸、及び抗酸化物を増やした処方食が用いられる。注目すべきことに、食事療法は、クオリティオブライフ及び寿命の両方を改善することが判明している、唯一の既存の治療法である。
【0231】
食欲不振、悪心、及び嘔吐のために、多くのネコは、嘔吐抑制剤及び制吐剤、ならびに食欲増進剤によっても処置される。一般的に使用される薬物は、マロピタント(制吐剤)及びミルタザピン(嘔吐抑制剤、制吐剤、及び食欲増進剤)の2つである。
【0232】
脱水は、一般的に生理食塩水をベースとした皮下輸液で管理され、これは飼い主が自宅で行うことが多く、頻度と量は、動物のサイズ及び疾患の重症度に依存する。急性発症の際は、静脈内輸液がより頻繁に用いられる。
【0233】
残りの治療法は、特定の疾患症状に依存する。例えば、貧血のネコは、骨髄での赤血球産生を刺激するエリスロポエチンというホルモンの合成型である、ダルベポエチンで処置され得る。高血圧のネコには、アムロジピン等の抗高血圧薬が与えられ、UTIを発症しているネコには、理想的には尿培養に基づいて抗生物質が与えられる。腎移植及び血液透析は、専門施設ではネコに実施可能であるが、経済的及び倫理的懸念から実施されることはまれである。
【0234】
慢性炎症性病態として、ネコCKDは、間葉系幹細胞(MSC)の治療標的となり得る。MSCは、イヌにおける骨関節炎及び乾性角結膜炎等、他の退行性疾患に対する獣医学的療法において有望視されている。しかしながら、自然に発症したCKDを有するネコにおける、MSCの有効性の結果は限られており、また、一部の調製物では急性輸液反応が生じている。
【0235】
いくつかの実施形態において、CKDは、本明細書に開示される子宮由来再生組成物または細胞組成物のいずれか1つ以上を用いて処置され得る。いくつかの実施形態において、子宮由来再生組成物または細胞組成物、例えば、ビメンチン及びサイトケラチン-18の両方が陽性であるイヌまたはネコ細胞を含む細胞組成物であって、当該イヌまたはネコ細胞が、好ましくは子宮由来細胞である、細胞組成物、及び/または本明細書に記載される不均一性細胞集団(例えば、ビメンチンもしくはサイトケラチン-18及び/または両方のマーカーが陽性であるイヌまたはネコ細胞であって、好ましくは子宮由来細胞である、イヌまたはネコ細胞)のいずれか1つ以上を含む細胞組成物は、プロトコルB、C、もしくはD、または類似のプロトコルに従って調製され得る。
【実施例
【0236】
上述した実施形態のいくつかの態様は、以下の実施例においてさらに詳細に開示されるが、これらはいかなる形であれ、本開示の範囲の限定を意図するものではない。本明細書において上で記載したように、また、特許請求の範囲に記載されるように、他の多くの実施形態も本発明の範囲内にあることが当業者に認識されよう。
【0237】
実施例1.子宮組織プロセシングプロトコルA(「プロトコルA」)
子宮試料は、ドナープログラムにより、ネコまたはイヌ等の哺乳動物から得た。子宮組織試料から脂肪組織を除去した。
【0238】
1.子宮体部及び子宮角組織を長軸に沿って開き、長軸に沿って細片に切断し、その細片を細かく切り刻み、およそ2mm×2mmの組織小片にする。
【0239】
2.細かく切り刻んだ組織を遠心分離ができる容器に移し、DE 10コラゲナーゼ解離試薬を添加し、当該容器をプラットフォームロッカー上のドライインキュベーター内に37℃で40分間置いて、組織を消化する。
【0240】
3.インキュベーションステップの終了時点で、10% FBSを含有する組織培養液を添加することにより消化を停止する。
【0241】
4.リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で容器を満たし、当該容器を遠心分離にかける。
【0242】
5.上清を除去し、細胞ペレットを残す。
【0243】
6.少量のPBSを添加し、ペレットを再懸濁する。
【0244】
7.懸濁液を一連のセルストレーナー:100μm、70μm、及び40μmストレーナーに通過させる。
【0245】
8.最後のセルストレーナーステップに続いて細胞懸濁液を回収し、PBSを添加して体積を35~40mLにし、遠心分離にかける。
【0246】
9.上清を除去し、細胞ペレットを残す。
【0247】
10.少量のPBSを添加し、ペレットを再懸濁する。
【0248】
11.再度遠心分離にかけ、上清を除去し、ペレットを3~4mLのPBS中に再懸濁する。
【0249】
12.細胞懸濁液の細胞数をカウントする。
【0250】
13.十分な量の組織培養液を添加し、細胞懸濁液を、総細胞数及び播種密度に応じて、適切な数の組織培養フラスコに移す。
【0251】
14.フラスコを標準条件下でインキュベーター内に置き、1、2、3、及び4の継代数または日数を通して、培養物を増殖させる。
【0252】
培養ステップ14の前に細胞調製物試料を採取し、凍結保存して(A-PCF)、プロセシングプロトコルAの終了時点で組成を評価した。接着細胞を標準プロトコルに従って培養し、各培養間隔の試料を、1、2、3、及び4日目に採取し、凍結保存した(それぞれ、A-D1、A-D2、A-D3、及びA-D4)。培養を継続する場合もあり、試料採取をさらに繰り返して、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日目、及びそれ以降の細胞組成物及び試料をさらに得ることができる。
【0253】
実施例2.子宮組織プロセシングプロトコルB(「プロトコルB」)
子宮組織試料は、ドナープログラムにより、ネコまたはイヌ等の哺乳動物から得た。子宮組織試料から脂肪組織を除去した。
【0254】
1.子宮体部及び子宮角組織を長軸に沿って開き、長軸に沿って細片に切断し、その細片を細かく切り刻み、およそ3mm×3mmの組織片にする。
【0255】
2.細かく切り刻んだ組織を容器に移し、規定濃縮(DE10)コラゲナーゼ(Vitacyte、#011-1110、コラゲナーゼと中性プロテアーゼとの組み合わせ)解離試薬を添加し、37℃で60分間インキュベートして、組織を消化する。10分ごとに容器をインキュベーターから取り出し、容器を40回振って溶液を分散させ、容器をインキュベーターに戻す。
【0256】
3.インキュベーションステップの終了時点で、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するGIBCO DMEM組織培養液を添加することにより消化を停止する。
【0257】
4.追加の組織培養液を添加して、細胞懸濁液を希釈する。
【0258】
5.消化に使用した容器の内容物を、プロセシングした組織のグラム数に基づいて、適切な数のT-225培養フラスコに移す(例えば、T-225培養フラスコあたり0.1gの組織)。
【0259】
6.各フラスコに十分な量の組織培養液を添加し、ヒトFGF-2を最終濃度8ng/mLに至るまで添加し(例えば、T-225フラスコ中の培養液45mLにおいて合計360ngのFGF-2)、フラスコを37℃、5% COインキュベーター内に置く。
【0260】
7.標準条件下でインキュベートして、1、2、3及び4の継代数または日数を通して、細胞を増殖させる。
【0261】
培養ステップ7の前に細胞調製物試料を採取し、凍結保存して(B-PCF)、プロセシングプロトコルBの終了時点で組成を評価した。
【0262】
本プロトコルを用いてプロセシングした組織から調製した試料は、未解離の組織小片を含有しているので、細胞を以下の様式で培養した:
【0263】
1.上記ステップ1のプロセシングからインキュベーション1日後(1日目、D1)、接着細胞を残しながら培養液を除去することにより、非接着細胞及び組織片を回収した。
【0264】
2.接着細胞を、当該技術分野で公知の標準プロトコルによってプラスチックから剥がし、凍結保存した(B-D1と呼ばれる試料)。
【0265】
3.回収した上清及び組織片を新しいフラスコに入れ、一晩インキュベートした。
【0266】
4.ステップ1~3を繰り返して、2、3、及び4日目に試料を生成した(それぞれ、B-D2、B-D3、及びB-D4)。
【0267】
別のフラスコを0日目に樹立し(ステップ7)、4日目に採取したが、それ以前の日に回収ステップを実施しなかった(B-D4-1)。ステップ1~3をさらに繰り返して、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日目、及びそれ以降の細胞組成物及び試料をさらに得ることができる。
【0268】
実施例3.イヌ子宮組織を用いたプロトコルA及びプロトコルBの評価
ドナーからイヌ子宮組織を得て、計量した。ドナー組織の半分をプロトコルAに従ってプロセシングし、残りの半分はプロトコルBに従ってプロセシングした。本実施例では、0日目のPCF(A-PCF及びB-PCF)試料及び4日目の試料(A-D4及びB-D4-1)のみを分析した。
【0269】
フローサイトメトリープロトコル(実施例3)
全ての細胞調製物を凍結保存バイアルから回収し、標準プロトコルを用いて、CD44試薬及びCD90試薬で染色した。全ての調製物に生/死染色剤を添加した。
【0270】
細胞集団のインプットから始めて、膨潤細胞及びデブリを除いた細胞集団を、側方散乱に基づいて確定した。ここから「Live/Dead vs前方散乱」プロットを作成し、生細胞集団を確定した。CD44及びCD90染色で生細胞集団を調べた。
【0271】
結果(実施例3)
試料のゲートを図1に示す。ゲートは、側方散乱に基づき、デブリ及び損傷細胞を除外するように設定した。B-D4-1パネルでは、2つの細胞集団が明示されたのに対し、A-D4パネルでは、3つの細胞集団が明示され、3つ目の細胞集団は原点近くに存在した。
【0272】
生細胞/死細胞の分布を図2に示す。培養細胞の生存率はPCFの生存率より低下した。これは、組織培養フラスコのプラスチックに接着しない細胞、または使用した培養液によって支持されなかった可能性がある細胞の集団死を反映している可能性がある。図2の等高線図でより容易に可視化される通り、両方法において、2つの異なる生細胞集団が存在した(すなわち、生細胞ゲートボックス内に2つの異なる等高線領域が存在する)。また、D4培養で得られた細胞のサイズ及び/または形状では、PCF試料で明らかになったサイズ/形状分布と比較してシフトが生じた。これは、原点近くでよりタイトにクラスター化していたPCTプロットにおける細胞分布に対する、D4プロットにおけるX軸に沿った右側へのシフトによって認められる。
【0273】
PCF及びD4試料のCD90/CD44染色の等高線プロットを図3に示す。右上の象現及び右下の象現の細胞パーセンテージは、両プロトコルとも、PCFでのレベルからD4でのレベルまで顕著に変化している。
【0274】
表2に示すように、上で概説したプロトコルで得られたPCF試料における生存細胞数は、プロトコルAで5.1×10、プロトコルBで4.3×10であった。培養4日後(D4試料)の細胞数は、プロトコルAで0.45×10、プロトコルBで5.3×10であった。表2に示したパーセンテージは、A-PCF、B-PCF、A-D4、及びB-D4-1におけるCD44+/CD90+及びCD44+/CD90-染色集団についての、未染色シグナル(自家蛍光による)を差し引いた後の値を反映している。しかしながら、A-D4試料の自家蛍光シグナルは、これのコントロール細胞が不足していたため、推定した。
【表2】
【0275】
表3は、各プロトコルのD4時点とPCF時点とにおける、表示したCDマーカーが陽性である細胞パーセンテージの倍率変化量を示している。例えば、A-PCF試料に対してA-D4試料では、CD44+/CD90+細胞のパーセンテージが3.9倍高かった。1を超える倍率変化量は、培養の結果として、CDマーカー陽性細胞が濃縮されたことを指し示す。
【0276】
表4は、PCF及びD4試料の各プロセスにおいて、表示したCDマーカーセットに細胞が反応する頻度のパーセンテージを示している。例えば、A-PCF試料におけるCD44+細胞のパーセンテージは、A-PCF試料におけるCD44+/CD90+細胞のパーセンテージと比較して、5.5倍高い。
【表3】

【表4】
【0277】
結論(実施例3)
図1に示した細胞分布は、両プロトコル(プロトコルA及びプロトコルB)で得られたPCF試料で類似しているように見える。しかしながら、B-D4-1の等高線プロットでは、2つの細胞集団が支配的であるが、A-D4の等高線プロットでは、それら2つの細胞集団に加えて、異なる細胞集団領域が原点近くにさらにあることが示されている。
【0278】
図2に見られるように、プロトコルA及びプロトコルBの両方で作製されたPCF試料で認められる細胞では、散布図においてタイトなクラスタリングが示されている。しかしながら、両プロトコルでD4まで培養された細胞は、x軸(前方散乱-A)に沿って細胞がシフトしていることから明らかなように、形状及びサイズが変化している。こうした変化はおそらく、細胞が培養される際に受ける影響に起因するものであり、このことから、子宮組織を消化することで得たPCF試料に存在する細胞の形態からシフトが生じていることが指し示される。
【0279】
両プロトコルで得られた細胞は、図3に示すように、PCF及びD4の両方に関して表面上類似したパターンでCD90及びCD44マーカーに反応した。
【0280】
表2に示したように、PCF試料では、表示したCDマーカーのパーセンテージがプロトコルBによって一層高くなった。
【0281】
表2に示したように、PCF試料をD4まで培養することにより、表示したCDマーカーのパーセンテージがプロトコルBによって一貫して高くならなかったことが明らかになった。実際、CD44+/CD90-マーカー陽性細胞のパーセンテージは、プロトコルAの方が高かった。
【0282】
概して、D4試料では、PCF試料と比較して、表示したCDマーカーが陽性である細胞のパーセンテージが高かった。この結果は、プロトコルA及びプロトコルBの両方に関し、D4において表示したCDマーカーが陽性である細胞のパーセンテージの、PCFに対する倍率増加として、表3に示している。
【0283】
本実施例で使用したCDマーカーセットは1つであった:CD44/CD90。両マーカーを共に発現する細胞(二重陽性-図3の右上象限)、または一方のマーカーのみを発現する細胞(単独陽性-図3の右下象限)のパーセンテージを表2に示した。各試料タイプについて、二重陽性細胞に対する単独陽性細胞のパーセンテージ変化量を表4に示す。例えば、A-PCFにおける単独陽性細胞(CD44+/CD90-)のパーセンテージは、二重陽性細胞(CD44+/CD90+)のパーセンテージと比較して5.5倍高い。
【0284】
A-PCF及びB-PCFでは、CD44単独陽性細胞(CD44+/CD90-)のパーセンテージが、二重陽性細胞(CD44+/CD90+)のパーセンテージと比較して高く、A-D4及びB-D4-1における試料パーセンテージと比較して高かった(A-PCF 5.5倍対A-D4 4.2倍、B-PCF 6.2倍対B-D4-1 2.1倍)。さらに、A-PCF(5.5倍)とA-D4(4.2倍)とでは、CD44単独陽性細胞レベルに1.3倍の差があり、B-PCF(6.2倍)とB-D4-1(2.1倍)とでは、CD44単独陽性細胞レベルに4.1倍の差があった。
【0285】
実施例4.イヌ子宮組織を用いたプロトコルA及びプロトコルBのさらなる評価
ドナー(実施例3のドナーとは異なる)からイヌ子宮組織を得て、計量した。ドナー組織の半分をプロトコルAに従ってプロセシングし、残りの半分はプロトコルBに従ってプロセシングした。本実施例では、両プロトコルの0、1、2、3及び4日目の細胞(A-PCF、A-D1、A-D2、A-D3、A-D4及びB-PCF、B-D1、B-D2、B-D3、B-D4)を分析した。
【0286】
フローサイトメトリープロトコル(実施例4)
全ての細胞調製物を凍結保存バイアルから回収し、標準プロトコルを用いて、CD44及びCD90試薬で染色した。全ての調製物に生/死染色剤を添加した。
【0287】
細胞集団のインプットから始めて、膨潤細胞及びデブリを除いた細胞集団を、側方散乱に基づいて確定した。ここから「Live/Dead vs前方散乱」プロットを作成し、生細胞集団を確定した。CD44及びCD90染色で生細胞集団を調べた。
【0288】
加えて、サイトケラチン及びビメンチンを検出するために細胞調製物の染色を実施した。これには別の細胞アリコートを必要とした。プロトコルには、True-Nuclear Transcription Factor Buffer kit(BioLegend、#424401)で細胞を固定し、続いて透過バッファーで細胞を処理し、その後、透過性細胞をサイトケラチンまたはビメンチンに特異的な適切な抗体とインキュベートすることを含めた。固定した細胞でCD90/CD44も評価した。
【0289】
結果(実施例4)
細胞の収量が不十分であったため、一部の調製物は評価に使用できなかった。それらについては表中に「NA」と表示するか、または図中に直接記した。この概要では、使用可能な場合に、プロトコルBのPCF及びD1~4試料、ならびにプロトコルAのA-PCFまたはA-D4試料(固定/透過処理した調製物のみ)の結果に焦点を当てる。
【0290】
試料のゲートを図4に示す。ゲートは、A-PCF及びB-PCFプロットに示されているように、側方散乱に基づき、デブリ及び損傷細胞を除外するように設定した。A-D3、A-D4またはB-D4を評価するための試料は不十分であった。B-D3プロットには2つの主要な細胞集団のエビデンスがあるが、側方散乱レベルのより高い部分に非常に小さな集団がある。ドナー間のばらつきが、本実施例のドナー試料のプロセシングに由来するB-PCF試料において、「第3の」非常に小さな集団を伴う2つの集団が存在することの原因であり得る。一方、実施例3のドナー試料では、B-D4-1について2つの集団のみが顕著に示された。
【0291】
生細胞/死細胞の分布を図5に示す。両プロトコルにおいて、2つの異なる生細胞集団が存在した(すなわち、生細胞ゲートボックス内に2つの異なる等高線領域が存在する)。また、B-D3試料で得られた細胞のサイズ及び/または形状では、B-PCF試料で明らかになったサイズ/形状分布と比較してシフトが生じている。これは、左軸近くでよりタイトにクラスター化していたB-PCFにおける細胞分布に対する、B-D3プロットにおける前方散乱軸(x軸)に沿った右側へのシフトによって認められる。A-PCF及びB-PCF/B-D3で観察されたパターンは、先に実施例3で示したLive/Deadの結果と同様である。
【0292】
A-D4、B-PCF、B-D1、B-D2、B-D3、及びB-D4試料のCD90/CD44染色の等高線プロットを図6に示す。右上の象現及び右下の象現の細胞パーセンテージは、B-PCFでのレベルからB-D3及びB-D4でのレベルまで顕著に変化している。このパターンは、実施例3のプロトコルB試料で先に観察されたものである。
【0293】
図7に示したように、サイトケラチン/ビメンチン(C/V)染色は、A-D4、B-PCF、B-D1、B-D2、B-D3、及びB-D4試料で得られた。C/V染色を評価するために使用可能なA-PCF細胞は十分ではなかった。
【0294】
表5に示すように、上で概説したプロトコルで得られた生存細胞数は、A-PCF及びB-PCFの両方で非常に少なかった。細胞数の少なさはB-D3でも示された。CD44/CD90セットのパーセンテージは、実施例3で観察された結果と類似しているが、同一ではない。
【表5】
【0295】
A-PCFのみであるため(収率が悪いため)、表6は、B-PCF及びB-D3に関する、表示したCDマーカーが陽性である細胞のパーセンテージにおける倍率変化量を示している。表7は、二重陽性マーカーレベルに対する単独陽性CDマーカーレベルの倍率変化量を示している。
【表6】

【表7】
【0296】
サイトケラチン及びビメンチン(C/V)との反応性に関する、B-PCF、-D1、-D2、-D3、及び-D4ならびにA-D4のフローサイトメトリー結果を、調製物中に存在する単独陽性V+細胞(図7、右下象限)及び二重陽性C+/V+細胞(図7、右上象限)のパーセンテージについて表8に示す。単独陽性(V+)細胞レベルと二重陽性(C+/V+)細胞レベルとの比率は、B-PCFの約42倍からB-D4の1.03倍まで変化した。A-D4調製物にC+/V+細胞は若干存在するが、C+/V+細胞パーセンテージに対するV+細胞パーセンテージの比率は8.5倍である。
【表8】
【0297】
結論(実施例4)
図4に示した細胞分布は、両プロトコルで得られたPCF試料で類似しているように見える。しかしながら、B-D3の等高線プロットは2つの細胞集団が支配的であり、B-D3の側方散乱値が高い部分に非常に小さな集団がある。A-PCFとA-D3との比較はできない。
【0298】
図5に見られるように、両プロトコルで作製されたPCF試料で認められる細胞では、散布図においてタイトなクラスタリングが示されている。しかしながら、プロトコルBでD3まで培養された細胞は、x軸(前方散乱-A)に沿って細胞がシフトしていることから明らかなように、形状及びサイズが変化している。こうした変化はおそらく、細胞が培養される際に受ける影響に起因するものであり、このことから、組織を消化することで得たPCFに存在する細胞の形態からシフトが生じていることが指し示される。
【0299】
両プロトコルで得られた細胞は、図6(CD90/CD44)に示すように、両PCF試料に関して表面上類似したパターンでCD90及びCD44マーカーに反応した。
【0300】
表5に示したように、実施例3の結果とは対照的に、プロトコルAによりPCF試料では、プロトコルBによるPCF試料の値と比較して、表示したCDマーカーのパーセンテージがより高くなった。これはおそらく、ドナー間のばらつきに起因するものである。
【0301】
表6に示したように、B-D3試料では、表示したCDマーカーが陽性である細胞のパーセンテージがB-PCF試料と比較して高かったことを、倍率変化量の両結果が明らかにした。これは実施例3の結果と同様である。
【0302】
本実施例で使用したCDマーカーセットは1つであった:CD44/CD90。両マーカーを共に発現する細胞(二重陽性-図6の上部象限)、または一方のマーカーのみを発現する細胞(単独陽性-図6の右下象限)のパーセンテージを表5に示した。各試料タイプについて、二重陽性細胞に対する単独陽性細胞のパーセンテージ変化量を表7に示す。PCFの倍率シフトは、実施例3ではD4よりも高かったが、本実施例では逆であった。おそらく、ドナーのばらつきがパターンの違いの原因である。
【0303】
プロトコルBでプロセシングしたB-PCFからB-D1、-D2、-D3、及び-D4までの物質について、サイトケラチン/ビメンチン(C/V)に対する反応性を図7に示す。B-PCFに存在する細胞のうち、C+/V+二重陽性細胞は低レベルであり(2.24%、右上象限)、かなりの部分はビメンチンのみ陽性である(93.1%、右下象限)。ビメンチン単独陽性細胞集団内において(右下象限)、2つの集団が存在し、一方の集団はC欠損/V+であると考えることができるが、他方の集団はサイトケラチンに対して低シグナルを示す。だが、これも陰性として考えるものとする。C欠損/V+集団が経時的に減少していることから、これらの細胞は生存不能であるか、または培養中に形質転換することが示唆され得る。また、B-PCFではサイトケラチンのみが陽性である細胞(左上象限)は実質的になく、このことはB-D4まで持続している。
【0304】
プロトコルBの細胞パターンは、図7に示したように、培養中にシフトし、C+/V+細胞の出現レベルが増加して、D4ではC+/V+細胞のパーセンテージが、V+のみである細胞と実質的に同一となる。この経過は、表8に示した比率で説明される。
【0305】
対照的に、図7に示したA-D4試料では、C+/V+細胞レベルよりもV+細胞のみのレベルが優り、比率がおよそ8.5であるため、プロトコルB及びプロトコルAでプロセシングした培養4日後の細胞間には、ビメンチン単独陽性及びサイトケラチン/ビメンチン二重陽性の細胞レベルに明らかな差がある。
【0306】
図7に示しているプロットのB-D1、-D2、-D3、-D4培養物は、組織及び細胞を0日目(D0)に播種したものであるため、本質的には、それぞれの日の培養物に存在する細胞の独立した一面を反映している。培養時間の経過と共にC+/V+細胞レベルが増加していることは、プロトコルBの方法で提示された組織片から、サイトケラチン陽性の上皮系前駆細胞がさらに出現したことを反映している可能性がある。表8に示したように、A-D4培養物においてC+/V+細胞は存在するが、V+のみの細胞レベルと比較して比率にかなりの差がある。
【0307】
実施例5.ネコ子宮由来細胞組成物の特性評価
ドナーのネコ子宮組織をプロトコルBに従ってプロセシングした。得られた細胞集団を少なくとも4継代増殖させた。当該技術分野で公知の標準手順に従って、これらの細胞を収集し、固定し、Triton-X 100緩衝液で15分間透過処理した。FITCとコンジュゲートした抗サイトケラチン-18抗体及びAlexa Fluor 647とコンジュゲートした抗ビメンチン抗体を用いて、透過処理した細胞を染色した。図8は、これらの染色細胞のフローサイトメトリープロットを表しており、C+/V+二重陽性細胞(右上象限)、ならびにV+のみの単独陽性細胞(左上象限)及びC+のみの単独陽性細胞(右下象限)の存在を示している。図8に示したように、C+/V+細胞に対するV+細胞の比率は0.74である。
【0308】
第4継代におけるネコ子宮由来細胞集団には、立方体様細胞(すなわち、上皮系前駆細胞)及び紡錘体様細胞(すなわち、間葉系前駆細胞)が含まれる(図9A)。第4継代におけるネコ子宮由来細胞を細胞培養スライド上で増殖させ、固定し、透過処理し、(1)抗ビメンチン-FITC及びDAPI(図9B)、(2)抗サイトケラチン-18-FITC及びDAPI(図9C)、ならびに(3)抗サイトケラチン-18-FITC及び抗ビメンチン-Alexa Fluor 594(図9D)と共にインキュベートした。これらの画像は、プロトコルBでプロセシングした場合の不均一性細胞集団の存在を強調している。
【0309】
実施例6.ネコ子宮由来再生細胞によるネコCKDの処置
ネコにおける慢性腎疾患(CKD)に対する処置として、同種ネコ子宮由来再生細胞(URC)の使用を検討した。CKDに関連する高窒素血症及び糸球体濾過値の低下を伴う、片側性に腎摘出されたネコの腎機能の改善における、URCの有効性を評価した。本明細書で使用されるURCは、プロトコルB、プロトコルC、プロトコルD、または類似のプロトコルに従って製造された不均一性細胞組成物を含み、当該細胞組成物は、ビメンチンのみ単独陽性の細胞集団及びビメンチン/サイトケラチン二重陽性の細胞集団(例えば、間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団)の両方を含む。いくつかの実施形態において、ビメンチン/サイトケラチン二重陽性細胞に対するビメンチンのみ単独陽性の細胞の比率は、およそ50%:50%または約50%:50%であるが、この比率は、±20%(例えば、約40%:60%もしくは約60%:40%またはその間の任意の比率)ほど逸脱し得る。
【0310】
試験デザイン
本試験では、組み入れ基準を満たしている、腎不全の腎摘出されたネコ18頭(雌15頭及び雄3頭)を用いた。全てのネコに、同種ネコ子宮由来再生細胞(「獣医学的治験製品」、「IVP」)(30百万(M)細胞)を、単回静脈内(IV)注入により、1分間に百万細胞(1mL/分)の速度で、最初の5分間は0.5mL/分の注入速度で投薬した。IVPは、全てのネコに2回投与した(0/1日目及び14/15日目)。上記のように、IVPは、プロトコルB、プロトコルC、プロトコルD、または類似のプロトコルに従って調製した不均一性細胞組成物を含み、本質的に、ビメンチンのみ単独陽性の細胞集団及びビメンチン/サイトケラチン二重陽性細胞集団で構成される。
【0311】
主な測定変数は、血漿クレアチニン及び糸球体濾過値(GFR、イオヘキソールクリアランス試験による)とした。試験の経過中、少なくとも50%のネコにおいて、血漿クレアチニンレベルが20%減少したか、またはGFRが20%増加した場合、個々のネコにおいてIVPが有効であるとみなすことにした。さらに、IVPを奏功させるためには、全ネコの少なくとも50%で、クレアチニンの減少またはGFRの増加のいずれかが有効であることを実証する必要があった。臨床病理パラメータを測定するために、-7、7、13、29、56、97、120、149及び181日目に、血液試料を採取した。GFR測定のために採取した血液試料は、投与前、ならびに-5、13及び28日目のイオヘキソール投与2、3、及び4時間後、ならびに57、99、121、150及び182日目のイオヘキソール投与2、3、及び4時間後に得た。
【0312】
第2の変数には、尿比重及び総尿タンパク質の分析(-7、7、14、28、56、97、120、149及び181日目に採取した試料を分析)、ならびに水及び飼料の摂取量(1週間間隔で測定)を含めた。
【0313】
各ネコについて、IVPに起因し得る重篤な有害事象が認められなければ、IVPは安全であるとみなすことにした。加えて、当該製品は、罹患した動物の数及び発生した事象のカテゴリーの点から、有害事象の発生率が低く、ネコにおいて忍容性が良好でなければならない。
【0314】
結果(実施例6)
主要変数
【0315】
血漿クレアチニンの平均値は、ベースラインと比較して、28日目のみ有意に減少した(P=0.0283)。この日、4頭の動物において本パラメータの20%の減少が観察された。13、28、57、99、121及び182日目のGFRにおいては、ベースラインと比較して平均値が有意に増加した(13日目から99日目まで(13日目及び99日目を含む)はP<0.0001、121日目及び182日目はそれぞれ、P=0.0029及びP=0.0225)。50%超のネコで、13、28、57及び99日目に、GFRにおける20%の増加が示された。
【0316】
第2の変数
【0317】
統計解析の結果、14、42、70、84、112、126、140及び154日目の食餌摂取量がベースラインと比較して有意に増加したことが示されている(P<0.05)。また、42日目から168日目まで(42日目及び168日目を含む)の水の摂取量もベースラインと比較して有意に増加した(P<0.05)。尿分析の結果、ベースラインと比較して、尿比重は13日目のみ有意に減少し(P<0.0001)、尿タンパク質は181日目のみ有意に増加し(P=0.0221)、尿クレアチニンは7、13、28、56、97、120及び181日目に有意に減少し(P<0.05)、尿タンパク質/クレアチニン比は120、149及び181日目に有意に増加した(P<0.05)。
【0318】
試験物の調製
試験物(任意の所与の日に投薬するのに十分な量)は、投薬日にドライシッパーから取り出した。試験物が入ったCellSeal(登録商標)バイアルを、解凍されるまで、37℃(±1℃)に維持した水浴中で3~5分間保持した。バイアルから細胞懸濁液(10×10細胞/mL)を取り出すために、3または5mLシリンジ及び18ゲージ注射針を用いた。十分な量の細胞を、0.9%生理食塩水中の3.3%トレハロースを十分な量で含有するシリンジに入れ、mLあたり1×10 6 URCにした。各ネコに投薬する直前に、60mLシリンジ内の調製した試験物懸濁液の所定量を、何度か反転させて混合し、次いでシリンジポンプに装填した。
【0319】
試験物投与
単回IV注入でIVPをネコに投薬した。IVPの投薬は、0/1日目及び14/15日目に行った。
【0320】
シリンジポンプを用いたIV注入を介して試験物を投与した。全てのネコには、1分あたりおよそ百万細胞(およそ1mL/分)の速度で、試験物(およそ30M細胞)が投与された。注入における最初の5分間は、1/2の速度(すなわち、およそ0.5mL/分)で細胞を投与した。有害事象がなかったため、次いで、細胞を通常の速度(1mL/分)で注入した。
【0321】
臨床化学
各ネコから以下のスケジュールで血液を採取した:-7日目の馴化中に1回、ならびに7、13、29、56、97、120、149及び181日目。
【0322】
任意の所与の日に、絶食状態で採血を行った。血液は、適切なサイズの針及びシリンジを用いて、直接静脈穿刺により、頸静脈から採取した。およそ2mLの血液を採取し、適切にラベリングした採血管に直ちに移した。
【0323】
使用した採血管には以下のものが含まれる:
【0324】
1xエチレンジアミン四酢酸(EDTA-0.7mL)、
【0325】
1xヘパリンリチウム(1.3mL)、
【0326】
EDTA及びヘパリンリチウム管を、血液と抗凝固剤との適切な混合が確実になされるように、穏やかに反転させた。ヘパリンリチウム管を3000rpmで10分間遠心分離にかけ、分析のために血漿を除去した。
【0327】
イオヘキソールを用いた糸球体濾過値の測定
糸球体濾過値を以下のスケジュールでイオヘキソールクリアランス試験を用いて測定した:馴化中に1回(-5日目)ならびに13、28、57、99、121、150及び182日目。
【0328】
ネコを、手順の少なくとも6時間前から絶食させた。300mgヨウ素/kg(OMNIPAQUE(登録商標)、イオヘキソール注入、Nycomed Inc,Princeton,NJ)の用量を、およそ10秒かけてIV注入を介して投与した。血液試料は、注入前、ならびに-5、13及び28日目のイオヘキソール投与2、3、及び4時間後(±2分)、ならびに57、99、121、150及び182日目のイオヘキソール投与2、3、及び4時間後(±2分)に得た。頸静脈穿刺により、およそ2.5mLの血液を、1本の標準血清管に採取した。標準血清管を、少なくとも30分間凝血させた後、3000rpmで10分間遠心分離にかけた。血清を2つのほぼ等しいアリコートに分け、ラベリングした2本のマイクロチューブに移した。血清を、採取後90分以内に凍結保存器内(≦-70℃)に移した。イオヘキソールのクリアランスについて、検証済みのICP/MSアッセイを用いて試料を測定した。
【0329】
尿比重及びタンパク質/クレアチニン比
各ネコから以下のスケジュールで尿を採取した:-7日目の馴化中に1回、ならびに7、14、28、56、97、120、149及び181日目。
【0330】
およそ1mLの尿を、フリーキャッチ/カテーテル挿入/膀胱穿刺のいずれかによって採取し、添加剤を含有しないチューブに移した。カテーテル挿入または膀胱穿刺のいずれかを用いて行った採尿のために、プロポフォールを用いてネコを鎮静させて、採尿可能にした。採尿してから3時間以内に、屈折計を用いて尿比重を測定した。比重測定後、タンパク質/クレアチニン比について試料を分析した。
【0331】
体重
各ネコの体重は、馴化中(-7日目)に1回、及び5日目に開始し4週間±1日ごとに、校正済みの体重計を用いて測定した。
【0332】
給餌プログラム及びスケジュール
標準的な市販のキャットフードを推奨率で、すなわち、試験-7日目から試験9日目までは、およそ300g/ネコ/日でネコに与え、試験10日目から試験終了までは、およそ400g/ネコ/日で与えた。採血(臨床病理)日に関して、試料採取前日の夕方に給餌を中止した。
【0333】
以下の期間:-3~3日目、10~17日目、24~31日目、38~45日目、52~59日目、66~73日目、80~87日目、94~101日目、108~115日目、122~129日目、136~143日目、150~157日目及び164~171日目の間、提供した食餌の量を計量及び記録した。前日から消費されなかった食餌の量を、各ネコの囲いから除き、計量及び記録した。食餌は、種及び齢級に対し、エネルギー、タンパク質、ビタミン、及びミネラルについて、National Research Councilの最新の要件を満たしているか、または超えているものにした。
【0334】
水の供給及び給水プログラム
試験中は、ネコがステンレススチール製ボウルを介して水を自由に摂取できるようにした。以下の期間:-3~3日目、10~17日目、24~31日目、38~45日目、52~59日目、66~73日目、80~87日目、94~101日目、108~115日目、122~129日目、136~143日目、150~157日目及び164~171日目の間、提供した水の量(毎日およそ300ml)を計量及び記録した。前日から残っている水の量を、各ネコの囲いから除き、計量及び記録した。
【0335】
バイオマーカー分析のための血清採取
潜在的な血清バイオマーカー分析のために、各ネコから以下の通りに血液を採取した:-7日目の馴化中に1回、ならびに7、13、29、56、97、120、149及び181日目。潜在的な尿バイオマーカー分析のために、各ネコから以下の通りに尿を採取した:-7日目の馴化中に1回、ならびに7、14、28、56、97、120、149及び181日目。
【0336】
適切にサイズを設定した注射針及びシリンジを用いて、およそ2mLの血液を採取し、適切にラベリングした血清分離用チューブ(SST)に移した。血清分離用チューブを、少なくとも30分間凝血させた後、3000rpmで10分間、室温にて遠心分離にかけた。血清を、およそ150μLのアリコートに分け、適切にラベリングした2本のポリプロピレンマイクロチューブに入れ、採取してから90分以内に≦-70℃で凍結させた。血清試料をバイオマーカーについて分析した。
【0337】
およそ1mLの尿を、膀胱穿刺/カテーテル挿入またはフリーキャッチにより採取し、添加剤を含有しない冷却したチューブに移した。チューブには、試験番号、動物ID、日付、及び採取時点をラベリングした。チューブは、凍結保存器に移すまで、湿った氷上に置いた。試料を、採取してから90分以内に≦-70℃で凍結させた。尿試料が入手可能か予測できないため(すなわち、尿試料を採取するために膀胱を触診した)、可能な限り所望の時点に近い試料を採取するよう努めた。
【0338】
有効性の分析方法
有効性を決定するために、以下の主要転帰を分析した:
【0339】
1)試験経過中の血清クレアチニンレベルの低下。
【0340】
2)試験経過中のGFRの増加。
【0341】
測定分析を繰り返して、線形混合モデルにより、試験中の各試料について、血清クレアチニンレベル及びGFRの両方における、ベースラインと比較した平均相対変化量を推定した。加えて、ベースライン及び最終試料の両方と比較して、血清クレアチニン及びGFRの平均変化量を算出した。
【0342】
体重変化に関する記述統計量を算出した。
【0343】
各ネコについて、試験経過中に血漿クレアチニンレベルが20%低下した場合、IVPが有効であるとみなすことにした。成功基準では、50%のネコがIVPの有効性を示さなければならない。または
【0344】
各ネコについて、試験経過中にネコにおけるGFRの20%の増加が達成された場合、IVPが有効であるとみなすことにした。成功基準では、50%のネコがIVPの有効性を示さなければならない。
【0345】
各ネコについて、IVPに起因し得る重篤な有害事象が認められなければ、IVPは安全であるとみなすことにした。加えて、当該製品は、罹患した動物の数及び発生した事象のカテゴリーの点から、有害事象の発生率が低く、ネコに対して忍容可能でなければならない。
【0346】
結果及び考察(実施例6)
18頭の動物が組み入れ基準を満たした。全ての手順(すなわち、投薬、一般健康状態観察、臨床観察、獣医学的検査、体重測定、食餌摂取量測定、水摂取量測定、血液試料採取及び採尿)は、指定の時点で実施した。
【0347】
血漿クレアチニンレベル
【0348】
統計解析の結果は、血漿クレアチニンが、ベースラインと比較して28日目のみ有意に減少したことを示している(P=0.0283)。この日、4頭の動物において本パラメータの20%の減少が観察された。
【0349】
GFRレベル
統計解析の結果は、13、28、57、99、121及び182日目に、GFRがベースラインと比較して有意に増加したことを示している(13日目から99日目まで(13日目及び99日目を含む)はP<0.0001、121日目及び182日目はそれぞれ、P=0.0029及びP=0.0225)。50%超のネコで、13、28、57及び99日目に、GFRにおける20%の増加が示された。個々の動物についてのイオヘキソールのクリアランス結果、平均値、及び統計量を図10に示す。
【0350】
体重
【0351】
試験経過中(すなわち、-7日目から168日目まで)、9頭のネコで体重が増加し、3頭のネコで体重が維持され、5頭のネコで体重が減少した(体重減少の範囲は0.1kg~0.8kg)。120日目に死亡した動物は、-7日目から112日目まで体重が増加していた。統計解析により、試験中のどの時点においても、ベースラインと比較して体重に有意差(P>0.05)はなかったことが示された。個々の動物についての体重値、平均値、及び統計量を図11に示す。
【0352】
食餌摂取量
【0353】
統計解析の結果、14、42、70、84、112、126、140及び154日目の食餌摂取量がベースラインと比較して有意に増加したことが示されている(P<0.05)。
【0354】
水摂取量
【0355】
統計解析の結果、42日目から168日目まで(42日目及び168日目を含む)の水の摂取量がベースラインと比較して有意に増加したことが示されている(P<0.05)。
【0356】
尿検査
【0357】
個々の動物についての尿検査の結果、平均値、及び統計量を図12に示す。ベースラインと比較した統計解析の結果により、以下のことが示されている:
【0358】
1)尿比重は、13日目のみ有意に減少した(P<0.0001)。
【0359】
2)尿タンパク質は、181日目のみ有意に増加した(P=0.0221)。
【0360】
3)尿クレアチニンは、7、13、28、56、97、120及び181日目に有意に減少した(P<0.05)。
【0361】
4)尿タンパク質/クレアチニン比は、120、149及び181日目に有意に増加した(P<0.05)。
【0362】
結論(実施例6)
13、28、57、及び99日目に、腎摘出したネコの少なくとも50%で、イオヘキソールクリアランスにおける20%の増加が認められたため、糸球体濾過値に基づき、IVP(同種ネコ子宮由来再生細胞)は、ネコの慢性腎疾患の治療薬として有効である。GFRの統計的改善が、150日目を除き、6ヶ月間の評価期間を通して認められた。
【0363】
血漿クレアチニンの結果に基づき、血漿クレアチニンの減少は、28日目のみで認められた。この日、22%のネコにおいて、本パラメータの20%の減少が達成された。
【0364】
IVPは、試験中2週間の間隔で2回投与した30M細胞の用量において、忍容性が良好であった。
【0365】
実施例7.イヌ子宮由来再生細胞によるイヌCKDの処置
イヌ(イヌ科動物)のCKDは、実施例6に開示したものと類似の様式で、イヌ子宮由来再生細胞を用いて処置され得ると想定される。
【0366】
ドナーのイヌ子宮組織を、プロトコルB、プロトコルC、または類似のプロトコルに従って調製して、ビメンチンのみ単独陽性の細胞集団及びビメンチン/サイトケラチン二重陽性細胞集団(例えば、間葉系前駆細胞集団及び上皮系前駆細胞集団)の両方を含む不均一性細胞集団を得る。いくつかの実施形態において、ビメンチン/サイトケラチン二重陽性細胞に対するビメンチンのみ単独陽性の細胞の比率は、およそ50%:50%または約50%:50%であるが、この比率は、80%:20%または20%:80%(V+/C-:V+/C+)ほどに逸脱し得る。
【0367】
実施例6のように、CKDを有するイヌ対象を、少なくとも1回のIV投与において、総数30百万細胞の本不均一性細胞集団で処置することができる。しかしながら、この量は、イヌの大きさ及び体重に応じて、合計で百万、5百万、10百万、20百万、25百万、30百万、31百万、32百万、33百万、34百万、35百万、36百万、37百万、38百万、39百万、40百万、50百万、60百万、70百万、80百万、90百万、または100百万個の細胞、あるいは前述の量のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の数の細胞等、最適化してもよい。不均一性細胞組成物の投与後、イヌ対象において、腎臓機能にプラスの効果が認められている。
【0368】
実施例8.自家または同種子宮由来再生細胞を用いたイヌまたはネコ疾患の処置
イヌまたはネコ患者は疾患を呈する。疾患は、特発性であり得るか、または自己免疫疾患もしくは加齢に関連し得る。この疾患は、慢性腎疾患、アトピー性皮膚炎、免疫介在性関節炎、肝炎、肝疾患、炎症性腸疾患、骨関節炎、椎体内疾患(intravertebral disc disease)、乾性角結膜炎(ドライアイ)、膵臓炎、線維症、硬化症、アミロイドーシス、免疫介在性多発性関節炎、または創傷であり得る。子宮組織から調製し、ビメンチンのみ単独陽性の細胞集団及びビメンチン/サイトケラチン二重陽性細胞集団の両方を含む、自家または同種不均一性細胞組成物を、イヌまたはネコ患者に投与する。この不均一性細胞組成物は、プロトコルB、プロトコルC、プロトコルDまたは類似のプロトコルに従って調製することができる。いくつかの実施形態では、この不均一性細胞組成物における、ビメンチン/サイトケラチン二重陽性細胞に対するビメンチンのみ単独陽性の細胞の比率は、およそ50%:50%または約50%:50%であるが、この比率は、80%:20%または20%:80%(V+/C-:V+/C+)に逸脱し得る。不均一性細胞組成物は、静脈内に、または別の経腸経路もしくは非経口経路で投与することができる。
【0369】
アトピー性皮膚炎に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、不快感及びそう痒症状の軽減を経験する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、ステロイド、グルココルチコイド、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、オクラシチニブ、ロキベトマブ、抗ヒスタミン薬、ヒドロキシジン、クロルフェニラミン、または局所軟膏剤及びシャンプー等、アトピー性皮膚炎用の別の治療薬と共に投与する。他の実施形態においては、例えば、他の治療薬はアトピー性皮膚炎の処置において有意な効果を有しないか、他の治療薬は持続期間が短く複数回の適用を必要とするか、または他の治療薬はイヌもしくはネコ患者に有害な副作用を引き起こすため、不均一性細胞組成物を別の治療薬の代わりに投与する。
【0370】
骨関節炎または他の免疫介在性関節炎に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、関節痛及び炎症の軽減を経験する。当該組成物は、全身性にまたは関節内に投与することができる。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、ステロイド、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、多血小板血漿(PRP)、グルコサミン、PSGAG、ヒアルロン酸、またはオピエート等、骨関節炎または他の免疫介在性関節炎用の別の治療薬と共に投与する。他の実施形態においては、例えば、他の治療薬は骨関節炎または他の免疫介在性関節炎の処置において有意な効果を有しないか、他の治療薬は持続期間が短く複数回の適用を必要とするか、または他の治療薬はイヌもしくはネコ患者に有害な副作用を引き起こすため、不均一性細胞組成物を別の治療薬の代わりに投与する。
【0371】
乾性角結膜炎に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、涙液産生の完全もしくは部分的な回復、及び/または涙腺、結膜、及び角膜の炎症の軽減を経験する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、人工涙液、コルチコステロイド、シクロスポリン、ピメクロリムス、またはタクロリムス等、乾性角結膜炎用の別の治療薬と共に投与する。他の実施形態においては、例えば、他の治療薬は乾性角結膜炎の処置において有意な効果を有しないか、他の治療薬は持続期間が短く複数回の適用を必要とするか、または他の治療薬はイヌもしくはネコ患者に有害な副作用を引き起こすため、不均一性細胞組成物を別の治療薬の代わりに投与する。
【0372】
創傷に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、創傷のより迅速な治癒、感染リスクの低減、及び/または創傷に起因する痛みもしくは不快感の軽減を経験する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、局所抗菌薬等、創傷治癒用の別の治療薬と共に投与する。他の実施形態においては、例えば、他の治療薬は創傷の処置において有意な効果を有しないか、他の治療薬は持続期間が短く複数回の適用を必要とするか、または他の治療薬はイヌもしくはネコ患者に有害な副作用を引き起こすため、不均一性細胞組成物を別の治療薬の代わりに投与する。
【0373】
肝炎及び他の肝疾患に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、肝臓の炎症及び瘢痕化の軽減、ならびに肝機能の改善を経験する。
【0374】
炎症性腸疾患に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、腸管炎症の軽減、食欲の増加、及び嘔吐の減少を経験する。
【0375】
椎間板疾患に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、脊椎の炎症及び痛みの軽減を経験する。
【0376】
膵臓炎に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、膵臓の炎症の軽減、食欲の増加、及び嘔吐の減少を経験する。
【0377】
線維症に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、肝臓、肺、心臓、腎臓、または他の臓器等、臓器の線維瘢痕化の減少を経験する。
【0378】
硬化症に関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、視力の改善及び白内障様症状の軽減を経験する。いくつかの実施形態において、不均一性細胞組成物は、眼内に投与する。
【0379】
アミロイドーシスに関して、イヌまたはネコ患者は、不均一性細胞組成物の投与後に、腎臓、肝臓、または心臓等、全身に及ぶアミロイド沈着物の減少を経験する。
【0380】
実施例9.自家子宮由来再生細胞
先行実施例は全て、自家細胞を用いて適用することができる。本明細書に由来する不均一性細胞組成物を得るために使用される子宮組織は、疾患を有し、当該不均一性細胞組成物を必要としているイヌもしくはネコ患者から得ることができるか、または当該イヌもしくはネコ患者に由来し得る。いくつかの実施形態において、子宮組織は、イヌまたはネコ患者が若いときに、当該患者から得る。いくつかの実施形態において、子宮組織は、通常1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月齢等の幼齢時に行われる避妊手術(卵巣子宮切除術または子宮摘出術)中に、イヌまたはネコ患者から得る。いくつかの実施形態においては、子宮組織を凍結保存する。例えば、子宮組織は、低温(すなわち、液体窒素温度)で凍結保存培地中に保存する。イヌまたはネコ患者が本明細書に記載される不均一性細胞組成物を必要とする場合、子宮組織を解凍し、本明細書に記載されるプロトコルまたは類似のプロトコルに従ってプロセシングして、不均一性細胞組成物を製造する。次いで、不均一性細胞組成物を、免疫関連の負の効果をほとんどまたは全く引き起こさない自家組成物として、イヌまたはネコ患者に投与することができる。いくつかの実施形態においては、子宮組織を本明細書に記載されるプロトコルまたは類似のプロトコルに従ってプロセシングし、得られた不均一性細胞組成物を凍結保存する。イヌまたはネコ患者が不均一性細胞組成物を必要とする場合、不均一性細胞組成物を解凍し、免疫関連の負の効果をほとんどまたは全く引き起こさない自家組成物として、イヌまたはネコ患者に投与する。任意選択で、1回の子宮組織の提供からイヌまたはネコ患者に自家組成物を2回以上投与することができるように、不均一性細胞組成物を細胞培養液において増殖させて、凍結保存用の多数の細胞を得る。
【0381】
実施例10.イヌ及びネコ子宮組織の酵素消化及び培養プロセス(プロトコルC)を用いて調製した臨床用量
イヌ及びネコドナーの卵巣摘出術から得た子宮組織を、外科手術後24時間以内にプロセシングした。卵巣摘出術において、子宮を、存在している他の組織から切離することにより単離した。子宮組織を2mm×2mmの組織片に細かく切り刻み、コラゲナーゼ及びサーモリシン(両方ともVitaCyte,Inc.によるもの、子宮組織のグラムあたりコラゲナーゼ13mg及びサーモリシン0.2mg)で消化した。消化は、4.5mLのDPBS中、37℃で1時間、定期的に手動で振盪しながら行った。10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するCorning DMEM(HG、高グルコース、ダルベッコ変法イーグル培地)培養液を加えて反応をクエンチした。遊離細胞及び外植組織片で構成される消化物を、T225フラスコ(0.1g組織/フラスコ)に蒔き、37℃、5% CO、湿度100%でインキュベートした。培養液に、8ng/mL組換えヒト線維芽細胞増殖因子-基礎活性タンパク質(rhFGF-2、CellGenix,Inc.)、6mM L-グルタミン及び10% FBSを補充した。T225フラスコを3日目にプロセシングして、組織小片または外植組織片及び使用済み培地を除去し、新鮮な培養液を添加した。フラスコが70~80%コンフルエンスに達し次第、細胞を、TrypLE(商標)(Gibco)で処理することにより遊離させ、洗浄し、NucleoCounter NC-200でカウントし、1mLの凍結保存培地(CS10、BioLife Solutions)において凍結保存した。クライオバイアル(CellSeal,Sexton Biotechnologies)をCellSealバイアル専用の冷却チャンバーに移し、-80℃のフリーザーに一晩置いた後、バイアルを、モニター可能な液体窒素(LN)気相保存器に移した。各バイアルには5x10個の細胞を含有させた。これらのバイアルを第1継代(P1)と指定した。細胞培養は、T225フラスコにおける10% FBS、6mM L-グルタミン、8ng/mL FGF-2を含むDMEM(HG)中で続け、細胞が70~80%コンフルエンス近くに達した際に継代した。各継代において、細胞を、TrypLE処理により遊離させ、洗浄、カウントし、適切な培養フラスコ内に4000~10000細胞/cmで再播種した。培養サイクルの終了時点(例えば、第4継代または第5継代)で、子宮組織由来再生細胞(URC)を、CS10(BioLife Solutions)中で凍結保存し、-80℃のフリーザーに一晩移し、液体窒素気相保存器内に置いた。
【0382】
実施例11.培養物におけるネコ子宮組織由来接着細胞
ネコ子宮組織由来細胞は、10% FBS及びFGF-2(8ng/mL)を含むDMEM中で、プロトコルC(実施例10)に従って培養した場合、図13A(ID:S-001、第4継代)に表されるような接着細胞を示す。
【0383】
図13A(S-001)には2種の細胞型が明白に存在していることから、紡錘形状細胞及び立方体形状細胞の両方が、第4継代まで持続的に増殖していることが示される。継代培養には、接着細胞を酵素剤(例えば、TrypLE,Gibco)で処理し、プラスチック容器に固着した接着細胞を遊離させることが必要となる。剥離した細胞は、新鮮な培養容器内に播種する。したがって、図13Aに表されている例では、細胞が4回剥離及び再播種されている。ネコURC調製物は、適切な凍結保存培地(例えば、CS10、またはCS5 BioLife Solutions)中で凍結保存した剥離細胞で構成される。
【0384】
実施例12.培養物におけるイヌ子宮組織由来接着細胞
イヌ子宮組織由来細胞は、10% FBS及びFGF-2(8ng/mL)を含むDMEM中で、プロトコルBに従って培養した場合、図13B(S-002、第4継代)に示されるような接着細胞を示す。紡錘形状細胞は、第4継代までの培養プロセスを通じて存在する。継代培養には、接着細胞を酵素剤(TrypLE,Gibco)で処理し、プラスチック容器に固着した接着細胞を遊離させることが必要となる。剥離した細胞は、新鮮な培養容器内に播種する。したがって、図13Bに表されている例では、細胞が4回剥離及び再播種されている。イヌURC調製物は、適切な凍結保存培地(例えば、CS10、BioLife Solutions)中で凍結保存した剥離細胞で構成される。
【0385】
実施例13.イヌ及びネコURC調製物の三系統分化
プロトコルBまたはプロトコルCによるイヌ及びネコURC調製物は、適切な誘導培地中で培養した場合、両方とも脂肪生成、軟骨形成、及び骨形成細胞系列に分化した。表9に三系統分化条件を示す。
【表9】
【0386】
各ドナーURC調製物を、誘導培地に対する反応としての三系統分化について評価し、コントロールとして培養液で維持した細胞と対にした。染色完了後、Amscope MDカメラを取り付けた位相差顕微鏡でウェルを撮像した。イヌ及びネコの両方における三系統分化の具体的なアッセイ条件は以下の通りである:
【0387】
脂肪生成:脂肪細胞分化を経る前駆細胞は、当該細胞の細胞質に脂質を含有する液胞を生じさせるが、これは成体脂肪細胞が脂質を貯蔵する方法と同様である。培養してから14日後に、脂肪細胞分化アッセイ用の6ウェルプレート上のウェルを、細胞内の脂質液胞形成のエビデンスについて調べた。21日間の播種期間後にウェルを固定した。固定プロセスでは、細胞の細胞質内に形成される脂質含有液胞(液滴)に優先的に保持される、オイルレッドOを染色剤として用いた。染色手順の間、30秒を超えて細胞を乾燥させないことが重要である。細胞の細胞質内に赤く染色された脂質「液滴」または液胞がある場合、細胞が脂肪細胞分化を経ているとみなした。
【0388】
軟骨形成分化:細胞を濃縮させた液滴を6ウェルプレート内に播種し、誘導培地で3週間インキュベートした。軟骨形成分化を経た前駆細胞は、通常、コラーゲンを含む種々の細胞外タンパク質を含有する「ノジュール」で増殖した。細胞外マトリックスに存在するコラーゲンの染色にはアルシアンブルーを用いた。
【0389】
骨形成分化:細胞を6ウェルプレート内に播種し、一晩インキュベートした後、試験ウェルの培地を誘導培地に切り替えた。インキュベーションは3週間続けた。骨形成誘導培地に反応した細胞では、骨形成系列に沿って分化している細胞によって合成された、ミネラル化した細胞外マトリックスの広範囲にわたる沈着が示された。骨芽細胞から分泌されたミネラル化細胞外マトリックスに存在するカルシウムを、アリザリンレッドを用いて染色した。
【0390】
図14A~Cに表した各画像セットは、三系統分化を樹立するために誘導培地で処理した際のネコ及びイヌURC調製物の両方における陽性反応を示している。
【0391】
実施例14.イヌ及びネコURC調製物の単色陽性頻度
CD34、CD45、CD90(イヌ及びネコ、ThermoFisher)、CD44(イヌ及びネコ、BioLegend)、CD105(ネコ、ThermoFisher)、MHCII(イヌ、ThermoFisher)及びLive/Dead(イヌ及びネコ、7-AAD、Invitrogen)に反応する市販の直接標識抗体で細胞を分析した。前もって最適化した試薬中で、細胞を暗所、氷上にて30分間インキュベートしてから反応性を評価した。まず、全てのイベントをLive/Dead染色で評価し、生存可能単一細胞のイベントのみを、表面反応性CDマーカーパネルとの反応性について分析した。試料はAttune Flow Cytometerで評価した。データはFloJo(BD Life Sciences)で解析した。
【0392】
血縁関係のない複数のネコ及びイヌURC調製物を、それぞれプロトコルB及びプロトコルCを用いて調製し、イヌまたはネコ細胞との反応性が認められている様々なCDマーカー試薬との反応性について評価した。表10はネコURC調製物の単色陽性頻度を示し、表11はイヌURC調製物の単色陽性頻度を示している。
【表10】

【表11】
【0393】
表10及び表11に示したCDマーカープロファイルは、一般的に、前駆細胞をどのように特性評価するかという、従来のコンセンサスに基づいている。ある細胞が間質細胞とみなされるための第1要件は、その細胞が、プラスチック接着性であること、及びin vitroにおいて軟骨形成、骨形成及び脂肪生成細胞系列に分化誘導され得ることである。さらに、培養されたヒト「間葉系幹細胞」(MSC)のCDマーカー単一陽性頻度は、以下の通りである:1)CD73、CD90及びCD105に対する陽性反応性(例えば、>95%)、ならびに2)特にCD34及びCD45に対する陰性反応性(例えば、<2%)。また、ヒトMSCに対しては、HLA-DRが「陰性」であるという要件もあり、これは、非ヒトMSCに対してMHCIIが陰性であることを意味することになる。
【0394】
図13A~Bに示したように、ネコ及びイヌURCは、接着細胞として直ちに増殖する。図14A~Cに示したように、ネコ及びイヌURC両方の代表的ドナーでは、軟骨形成、骨形成、及び脂肪生成細胞系列に分化することが示されている。表10及び表11でわかるように、培養したネコ及びイヌURCは、CD34及びCD45に対して明らかに陰性であり、イヌURCがMHCII陰性であるエビデンスがいくつかある。CD44は前駆細胞と関連している。しかしながら、CD44が明らかに陽性である一方で、CD90及びCD105は、イヌ及び/またはネコURCにおいて陽性ではあるが、MSCとみなされる細胞として一般的に認められている>95%のレベルには達していない。したがって、本明細書に開示される子宮組織由来URCは、古典的なヒト由来MSCには似ていない。それにも関わらず、本明細書に開示されるネコ及びイヌURCは、プラスチック接着性に増殖し、3種の成体細胞系列(脂肪生成、軟骨形成、及び骨形成)に分化し、幹細胞/前駆細胞に関連する伝統的なCDマーカープロファイルを示すことから、イヌ及びネコにおける子宮組織由来の前駆細胞としてのステータスが支持される。
【0395】
以下の実施例において確立されるように、イヌ及びネコURC調製物のさらなる特徴により、本明細書におけるURC調製物が特有の前駆細胞であることがさらに指し示される。
【0396】
実施例15.免疫蛍光法によるネコ子宮組織由来接着細胞におけるビメンチン及びサイトケラチン-18の二重発現
図13Aに表されているように、ネコURC調製物には、継続的な継代及び再播種サイクルにおいて、2種の明確な形状の細胞型が持続的に存在したが、ネコ子宮組織由来細胞培養物に存在する細胞の一部が、同じ細胞内で、上皮細胞だけでなく前駆細胞にも関連する細胞特性を示すことがわかったのは驚きであった。ビメンチンは、前駆型細胞とみなされる細胞と関連しており、一方、サイトケラチン-18は、上皮様細胞であり、通常はビメンチンを発現すると予想されないはずの細胞と関連している。
【0397】
免疫蛍光法(IF)の技術を用いて、接着性URC培養物におけるビメンチン及びサイトケラチン-18の存在または非存在を、染色及び可視化プロセスを通じて可視化した。細胞を、増殖培養容器から得るか、または凍結保存細胞バイアルから得て、専用の培養チャンバー(Lab Tech II CC2 Chamber Slide)に播種し、37℃/5% COで一晩インキュベートした。10% FBS及び8ng/mLのFGF-2を含むDMEMにおける一晩のインキュベート中に、細胞が容器表面に接着した。一晩培養した後、培養液を除去し、チャンバーをPBSで洗浄して培養液を除去した。細胞を、室温で15分間固定した後(Invitrogen,Image-iT Fixative/Permeabilization Kit:Fixative、Wash Buffer、Permeabilization Solution、Blocking Solution)、固定液を除去し、チャンバーをWash Bufferで3回洗浄した。透過処理試薬(Image-iT Permeabilization Solution)を加えて細胞を透過処理し、室温で15分間インキュベートした。ビメンチン及びサイトケラチンはどちらも細胞内の細胞骨格タンパク質であるため、透過処理が必要である。透過処理溶液を除去し、Wash Bufferで洗浄した後、処理した細胞層をBlocking Solutionを用いて一晩ブロッキングした。ブロッキングした細胞をPBSで洗浄した後、AlexaFluor 647染色剤で標識した抗ビメンチン試薬(abcam)及びFITCで標識した抗サイトケラチン-18試薬(abcam)をチャンバーに添加した。これにより、ビメンチンが存在する場合は赤で染色された構造が得られ、サイトケラチン-18が存在する場合は緑で染色された構造が得られる。染色後、チャンバー(複数可)をeVOS装置(ThermoFisher)で画像化した。プロトコルCを用いた、血縁関係のない2つのネコ子宮組織由来調製物の染色パターンを、図15A~C及び図16A~Cに表す。
【0398】
図15A~C及び図16A~Cに示したネコURC調製物の各画像セットにおいて、上段の画像(図15A及び図16A)では、ビメンチン陽性細胞が多数示されている。中段の画像(図15B及び16B)では、少数のサイトケラチン陽性細胞が示されている。下段のマージされた画像(図15C及び16C)では、ビメンチン及びサイトケラチンの両方が陽性である細胞が同定されている。全てのビメンチン陽性細胞がサイトケラチンも陽性であることはなく、また、全てのサイトケラチン陽性細胞がビメンチンも陽性であることはない。しかしながら、血縁関係のない複数のネコドナーURC調製物に、二重に染色された細胞集団が予想外にも存在していることは明らかである。したがって、二重に染色された細胞は、前駆様細胞及び上皮様細胞の安定した培養物において持続的に存在する、上皮細胞様特性(サイトケラチン陽性)及び前駆細胞様特性(ビメンチン陽性)の両方を持つより少数の細胞集団を同定するものである。
【0399】
実施例16.CDマーカー陽性頻度の評価により、ビメンチン、サイトケラチン、CD44、及びCD326を複数発現する細胞の存在が実証される
表面マーカー検出アッセイにおいて、細胞をその単色陽性頻度について評価してきた(表10及び表11)。しかしながら、実施例15で指し示したように、固定及び透過処理した細胞において、ビメンチン及びサイトケラチンを検出することが可能である。フローサイトメトリー解析のために、変更を加えた染色アッセイを実施した。その際には、CD44及びCD326試薬を細胞と共にインキュベートし、余分な試薬だけを洗い流した後、実施例15に記載したように細胞を固定、透過処理及びブロッキングし(Invitrogen,Image-iT Fixative-Permeabilization Kit)、標識化抗ビメンチン(イヌ及びネコ、abcam)及び抗サイトケラチン-18(イヌ及びネコ、abcam)試薬と反応させた。試料はAttune Flow Cytometerで評価した。データはFloJo(BD Life Sciences)で解析した。
【0400】
それぞれプロトコルC及びプロトコルBを用いた、血縁関係のない複数のネコ及びイヌドナー子宮組織由来の培養細胞調製物に由来する細胞を、CD44、CD326、ビメンチン及びサイトケラチン-18の同時発現について、フローサイトメトリーアッセイで調べた。CD44は前駆細胞マーカーであり、CD326は上皮細胞マーカーである。評価した3ドナーのネコURC調製物のビメンチン/サイトケラチン及びCD44/CD326に対する二重染色陽性頻度を表12に示す。表13に示すように、CD44/CD326、CD44/サイトケラチン、CD44/ビメンチン及びビメンチン/サイトケラチンの二重陽性頻度について、複数のイヌドナーURC調製物を評価した。
【表12】

【表13】
【0401】
表12に示したように、各ネコドナー細胞調製物では、ビメンチン/サイトケラチンまたはCD44/CD326の両方の組み合わせに関し、前駆細胞様特性または上皮細胞様特性を同時発現する細胞の予想外の存在が実証されている。
【0402】
イヌドナー子宮組織に由来する細胞培養物の評価において、表13に示したように、いくつかのマーカーの組み合わせを二重に発現する細胞の存在について調査した。
【0403】
CDマーカーペアの発現プロファイルはいずれも、前駆細胞様特性及び上皮細胞様特性の両方を同時に発現する細胞の同定を支持するものである。
【0404】
ドナー間のばらつきはあるが、表12及び表13における各ドナーURC調製物では、イヌ及びネコURC調製物に関し、同一細胞において、前駆細胞様マーカー(ビメンチン及びCD44)と上皮細胞様マーカー(CD326及びサイトケラチン-18)との両方が予想外に存在することが示されている。表13に示したように、イヌURC調製物に関するCD44及びビメンチンの二重発現パーセンテージの高さから、イヌURCにおけるビメンチンマーカーは前駆様細胞と関連していることが示唆される。したがって、ビメンチン及びサイトケラチンの組み合わせ二重陽性細胞により、前駆細胞様特性及び上皮細胞様特性の両方を示す細胞集団がURCにおいて同定される。このことはさらに、実施例15における、同一細胞でビメンチン及びサイトケラチンを同時発現するネコURCの存在により、個々の細胞が前駆細胞様特性及び上皮細胞様特性の両方を同時発現することが指し示される、という解釈を支持するものである。こうした所見を補強するように、CD44及びCD326の両方を発現するイヌ及びネコ両URC、ならびにCD44及びサイトケラチンを同時発現するイヌ細胞が、測定可能なパーセンテージで存在する。こうした試薬の組み合わせにより、前駆細胞様及び上皮細胞様の両方であるネコ及びイヌURCが検出される。
【0405】
ネコURC及びイヌURC培養物における、前駆細胞様マーカー及び上皮細胞様マーカーの両方を発現する細胞の存在により、高継代数まで培養可能であり、故に、治療目的としても興味深い、子宮組織由来の特有な前駆細胞型の実在が実証される。
【0406】
実施例17.アトピー性皮膚炎におけるイヌドナー子宮組織由来臨床用量の転帰
臨床用量はイヌドナーS-011から得た。S-011の子宮組織は、組織を酵素で消化し、得られた消化物を培養するために、プロトコルBに記載したようにプロセシングした。培養液中で細胞を増殖させ、第4継代で、CS10(BioLife Solutions)中に36百万細胞/クライオバイアルで凍結保存した。細胞を解凍し、PBSで希釈した後、アトピー性皮膚炎を有する適格なイヌ患者に、用量をIV注入により投与した。2回分の臨床用量を2週間の投薬間隔を設けて注入し、その後、各イヌ患者の臨床症状をモニターした。イヌ患者は、処置前と、間隔をおいて処置後に、Pruritus Visual Analog Score(PVAS、そう痒症(かゆみ)の重症度の指標)、Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index-4(CADESI-4)、及びCanine Atopic Dermatitis Lesion Index(CADLI)を含む、いくつかの臨床測定基準により評価した。有効な臨床データを表14に示す。
【表14】
【0407】
処置した4頭のイヌ患者に関し、3種の測定基準の平均値が処置前のベースライン値と比較して減少したという、臨床測定基準の傾向から、アトピー性皮膚炎と確定診断されたイヌ患者を処置することの臨床上の有益性が実証された。臨床測定基準における減少から、患者の臨床状態の改善が示唆された。
【0408】
PVASは、患者におけるそう痒症の重症度を評価するための有効なスケールである。このスケールは、「健常のイヌ-かゆみの問題なし」から「極めて重度のかゆみ/ほとんど継続する(かゆみを物理的に抑制する必要がある)」まである。自宅で見られるかゆみレベルの観察に基づいて、同一の飼い主が、各試験訪問時にこの評価を行う。CADESI-4は、イヌの皮膚の状態を評価するための有効な評価ツールである。CADESI-4は、前足及び後足、脇腹、ならびに鼠径部エリア等のイヌの特定部位に焦点を当て、紅斑(発赤)、苔癬化(皮膚の肥厚及び擦創(皮膚外傷))及び/または脱毛症(脱毛)の重症度を測定するものである。この評価は、各試験訪問時に同一の獣医が行う。CADLIは、イヌの皮膚の状態を評価するための有効な評価ツールである。CADLIは、CADESI-4評価ツールに類似しており、技術的に若干の違いがあるだけで、類似した様式で機能する。CADLIは、イヌの皮膚のより一般的なエリアに焦点を当てるが、やはり、色素沈着過度(皮膚の色素レベル)をさらに含む、同一の重症度基準を評価するものである。この評価もまた、各試験訪問時に同一の獣医が行う。
【0409】
実施例18.イヌ及びネコURCのサイトカインプロファイル
サイトカインは、前駆細胞によって分泌される重要分子であり、組織内の成体細胞及び免疫細胞の両方を調節するための、よく知られたパラクリン機構を構成する。イヌURC及びネコURCのサイトカインプロファイルを、これらの細胞調製物の培養上清で得た。特異性のため、イヌ及びネコ上清は、市販のアッセイにより個別に分析した。培養液中にバックグラウンドレベルのサイトカインがない場合、血縁関係のない2つのイヌURC(S-016及びS-002)は、ガレクチン-3(細胞間接着、マクロファージ活性化に関与)、MCP-1(単球走化性タンパク質-1は、単球、メモリーT細胞及び樹状細胞を炎症部位に引き寄せる)、IGFBP-2(インスリン様増殖因子結合タンパク質は、幹細胞性の維持、細胞遊走[走化性]に関与する)、及びVEGF(血管内皮増殖因子-血管新生)を恒常的に分泌することが判明した。ネコドナー(S-001)は、MIP-1、VEGF、PDGF(組織における血管新生及び細胞増殖を支持する血小板由来増殖因子)及びIL-10(免疫細胞の炎症促進性応答を抑えるように作用するインターロイキン-10)を分泌することが判明した。
【0410】
実施例19.混合リンパ球反応ならびにIDO活性及びPGEレベル
ドナー由来の単球の増殖を抑制する能力について、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて前駆細胞を評価した。アッセイは、刺激(通常はコンカナバリンA(Con A)といったマイトジェンによる)して増殖させた単離ドナー末梢血単球(PBMC)を使用し(コントロール条件)、同じ条件ではあるが前駆細胞調製物を含めた場合(試験条件)と比較することに基づくものであった。URCを加えることによりPBMC/Con A条件での増殖レベルが低下したことから、URC調製物が炎症促進性条件において免疫を調節することができるというエビデンスが示される。加えて、PBMC/Con A/URC反応物の上清を、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ活性(IDO、トリプトファンに対するIDO作用の主要代謝産物であるキヌレニンのレベル評価)及びプロスタグランジンE2(PGE、市販のELISAで測定)のレベルについて分析した。IDO活性及びPGEはどちらも、T細胞による免疫応答を下方制御することで炎症を抑制するバイオマーカー/エフェクター分子として確認されている。
【0411】
表15は、ネコPBMC MLRアッセイで評価した場合のネコURC製剤による増殖抑制を、上清で得られたIDO活性及びPGEレベルと共に示している。表16は、イヌPBMC MLRアッセイで評価した場合のイヌURC製剤による増殖抑制を、上清で得られたIDO活性及びPGEレベルと共に示している。注:IDO活性及びPGEレベルをドナーPBMC+Con A値と比較して、倍率増加を決定した。
【表15】

【表16】
【0412】
イヌ及びネコURC調製物の両方でMLRにおける増殖下方制御が示されたことから、URCが、幹細胞/前駆細胞に一般的に関連する重要な免疫調節特性を有することが示唆された。さらに、イヌ及びネコURC調製物の両方でIDO及びPGEが生じた。これらは、活性化した免疫細胞に対する幹細胞/前駆細胞の免疫調節行為に関与することが知られている。
【0413】
実施例20.血縁関係のないネコドナー子宮組織由来URCのin vitroにおける増殖挙動の違い
いくつかの血縁関係のないネコドナー組織を、プロトコルC(実施例10)で消化した。各消化物の同等の部分を分割し、Lonza(登録商標)DMEMまたはCorning(登録商標)DMEM配合物(両方とも10% FBS及び8ng/mL FGF-2を含有する)のいずれかで培養した。各培養調製物を同一の様式で処理し、細胞の継代は、培養フラスコ内で培養物がおよそ70~80%コンフルエンスを示した際に行った。
【0414】
培養物は、接着細胞を酵素剤で剥離し、細胞をカウントし、新鮮な培地を含む新しい培養フラスコに細胞を再播種することによって継代した。したがって、培養物においては、継代に向けて次に再播種するのに十分な細胞を得るために、培養間隔中に細胞数を増加させる必要があった。表17に示すように、各ネコURC調製物について、継代数単位で、増殖停止/分化(SG/D)または増殖(G)として培養状態を評価した。なお、表17中の「NA」は、前の継代で増殖が停止または分化(すなわち、成体細胞に変換)し、したがって、目下の継代のために播種する細胞がなかった培養物を指す。「L」はLonza(登録商標)DMEMを指し、「C」はCorning(登録商標)DMEMを指す。
【表17】
【0415】
ネコURC調製物のうちの2つ(S-004及びS-007)では、Lonza(登録商標)DMEMにおいて第3継代で増殖停止または分化(増殖したとしてもゆっくりとした成体細胞への分化)した。ネコURC調製物のうちの2つ(S-004及びS-023)では、Corning(登録商標)DMEMにおいて第4継代で増殖停止または分化(増殖したとしてもゆっくりとした成体細胞への分化)した。1つのURC調製物(S-005)のみが、Lonza(登録商標)DMEMにおいて第4継代で増殖した。しかし、第5継代では増殖できなかった。したがって、URC調製物の5/6がLonza(登録商標)DMEMにおいて第5継代より前に増殖できなくなり、1/6だけが第5継代で播種されたが増殖できなかった。対照的に、Corning(登録商標)DMEMにおいて増殖させたURC調製物の4/6は、第5継代で播種され、かつ増殖した。URC調製物の残りの2/6は、増殖が停止したか、または成体細胞に分化し、第5継代で播種されなかった。
【0416】
表17に見られるように、共通の消化物から並行して培養した6つの血縁関係のないネコドナーURC調製物は、Lonza(登録商標)DMEMにおいては十分に増殖せず、URCのうちの1つだけが第5継代で播種されたが増殖できなかった。対照的に、URCのうちの4つは、Corning(登録商標)DMEMにおいて、分化することなく第5継代の終わりまでロバストに増殖し、2つのURCだけが第4継代で十分に増殖できなかった(または分化した)。
【0417】
Lonza(登録商標)DMEMとCorning(登録商標)DMEMとの間の組成の違いを表18に示す。
【表18】
【0418】
組成の違いによる影響:
【0419】
イノシトール:イノシトールは、神経伝達、及びステロイドホルモンの結合に関与する、重要なin vivo補助因子である。イノシトールは、細胞膜の代謝に関与することが判明しており、グルコースレベルに影響される。細胞はイノシトールを合成できるため、外因性イノシトールの2.8%の差による影響は不明である。
【0420】
フェノールレッド:フェノールレッドはpH指示薬として使用され、培養物の健全性及び代謝活性の指標として作用し得る。フェノールレッドは、弱いエストロゲン活性を有すると同定されており、酸化還元反応の標的となることができ、MSCの分化活性に影響を与えることが示されている。こうした影響はいずれも、子宮組織由来細胞用の培地の培養効率に直接の関わりをもたないように思われる。
【0421】
重量モル浸透圧濃度/一塩基性リン酸ナトリウム:一塩基性リン酸ナトリウムは、培養液の重量モル浸透圧濃度に寄与する無機塩の1つであり、培地の緩衝能の一部である。この化学種のレベルがCorning(登録商標)培地において15%高いことによる影響は、Corning(登録商標)DMEMの例示的ロットにおける重量モル浸透圧濃度が、Lonza(登録商標)DMEMの重量モル浸透圧濃度の上限値であるという、より高い値であることに認められる可能性がある。
【0422】
グルタミン:グルタミンは、タンパク質合成に必要とされる重要なアミノ酸である。Lonza(登録商標)DMEMは、グルタミンを欠いている。しかしながら、完全培地が必要な場合はいつでも、グルタミンがサプリメントとして基本培地に添加された。グルタミンのレベルは、5.5mMに達するように調整した。Corning(登録商標)培地には、4mMのグルタミンが含有されており、これは、グルタミンが補充されているLonza(登録商標)DMEMにおけるレベルのおよそ73%である。
【0423】
全体として、Corning(登録商標)DMEMで培養したURC調製物では、相対的にかなり不十分であったLonza(登録商標)DMEMにおける増殖と比較して、第5継代の終わりまでロバストに増殖したことが示された。表18に示したように、2種の培地間の差は限定的であるが、Corning(登録商標)DMEMでは、グルタミンが27%も大幅に低い。ある理論または機序に束縛されるものではないが、グルタミンのレベルが低いと、接着細胞が成体細胞に分化するのに好ましくない環境が創出される可能性がある。
【0424】
実施例21.酵素消化によって得られた細胞の増殖に対するネコ子宮組織のデコンタミネーション処理の影響。
子宮組織は、無菌での卵巣摘出術中にイヌ及びネコから得られるが、微生物コンタミネーションのリスクが残る。したがって、臨床用量を創出するための代替プロトコルを評価した(プロトコルD)。プロトコルDは、子宮組織を酵素消化した後に培養液中に入れる細胞の微生物コンタミネーションの可能性を最小化するプロトコルの1つであり、最初にデコンタミネーションステップを行った後、さらなるプロセスを必要とするものである。プロトコルDのさらなる態様を表20に記載する。プロトコルDのデコンタミネーションステップでは、1%(ポリ)ビニルピロリドン(PVP)溶液及び0.1%チオ硫酸ナトリウム溶液を使用し、続いてPBSでリンスする。プロトコルDのデコンタミネーション条件とは異なるものとして、子宮組織をPBSで4回洗浄しリンスすることが含まれる条件も評価した。2つのデコンタミネーション方法の評価は、3頭のネコから卵巣摘出術により組織を採取し、非子宮組織を切離し、次いで、各ドナーの子宮組織を2等分することによって行った。その一方を以下のようにプロセシングした:
【0425】
1.子宮組織を、10mLのPBSを含有する50mLのコニカルチューブに入れ、穏やかに混合して組織をPBSに曝す。
【0426】
2.組織を移すために使用する鉗子を、70%イソプロピルアルコールを用いて拭くことにより洗浄する。
【0427】
3.子宮組織を、第1のPBSチューブから、10mLのPBSを含有する第2の50mLコニカルチューブに移し、穏やかに混合して組織をPBSに曝す。
【0428】
4.1% PVPを5mL含有する50mLコニカルチューブに子宮組織を移す。穏やかに混合し、インキュベーションを2分間継続させる。
【0429】
5.PVP溶液中で2分間インキュベーションし終えた後、PVPコニカルチューブから組織を取り出し、0.1%チオ硫酸ナトリウムを5mL含有する50mLコニカルチューブに子宮組織を入れる。子宮組織を0.1%チオ硫酸ナトリウム溶液中で1分間インキュベートさせておく。
【0430】
6.チオ硫酸ナトリウム溶液中で1分間インキュベーションし終えた後、チオ硫酸ナトリウムコニカルチューブから組織を取り出し、PBSを10mL含有する50mLコニカルチューブに子宮組織を入れる。チューブを穏やかに混合して組織をPBSに曝す。
【0431】
7.子宮組織をPBSチューブから、PBSを10mL含む別の50mLコニカルチューブに移す。チューブを穏やかに混合して組織をPBSに曝す。
【0432】
子宮組織の他方は、それぞれPBSを10mL含有する4本の別々の50mLコニカルチューブに組織を入れることによってデコンタミネーションした。
【0433】
各組織片を細かく切り刻み、同一条件(コラゲナーゼ及びサーモリシン、10分間隔でチューブを手動で振り混ぜながら30分消化)で消化した。消化物をフラスコに入れ、完全培地(DMEM、高グルコース、10% FBS及び8ng/mL FGF-2、0.44μg/mLアムホテリシンB及び0.05mg/mLゲンタマイシン含有)中、37℃/5% CO/100%湿度でインキュベートした。培養物をコンタミネーションについて毎日検査し、4日目に回収し、各ドナーの各デコンタミネーション処理に対する総細胞数を求めた。PBSでデコンタミネーションした組織の培養物に対する細胞収率を、各ドナーのPVP/チオ硫酸塩デコンタミネーション組織による培養物の対応する細胞収率で除算し、100を乗じて、表19に示したように、各ドナーのPVP/チオ硫酸塩(コントロール)処理細胞培養物と比較したPBS処理細胞培養物の%増殖値(細胞数)を得た。
【表19】
【0434】
いずれの条件でも、3つのドナー組織の培養物においてコンタミネーションは認められなかったが、PBSを使用した方が4日間の培養で平均細胞収率が大幅に増加した。現行のプロトコルCでは、臨床用量を創出するための酵素消化プロセスの際、子宮組織をデコンタミネーションする手段としてPBSを使用している。
【0435】
実施例22.プロトコルCとプロトコルDの比較
プロトコルCとプロトコルDを区別する相違点がさらにいくつかある。その違いを表20に列挙する。
【表20-1】

【表20-2】
【0436】
プロトコルCとプロトコルDとの間には、いくらかの重要な違いがある。
【0437】
1.組織プロセシング:
【0438】
A)プロトコルCでは、組織に害を与えないPBSをデコンタミネーションに用いるのに対して、プロトコルDにおける組織のデコンタミネーションでは、組織を強烈な化学物質に曝す。プロトコルDのデコンタミネーション溶液は、組織細胞への影響に起因して、第1の培養間隔における細胞収率を減少させることが示されている。
【0439】
B)組織を消化する時間は、プロトコルDでは30分にすぎないのに対し、プロトコルCでは60分である。消化時間を長くすることにより、30分にすぎない消化時間で生じた対応する組織消化物(70~80%コンフルエンスに達するまで5日を要した)と比較して、70~80%コンフルエンスにより早く達することができる(3日間)、消化物中の細胞組成物が得られることが示されている。
【0440】
2.消化物及び細胞の培養:
【0441】
A)プロトコルCでは、細胞及び外植組織片を3日目までそのまま培養液中に残しておくのに対し、プロトコルDでは、1日目に培養液及び組織片を取り出し、その組織片を新鮮な培地と共に培養フラスコ内に戻す。どちらのプロトコルでも3日目に培養液を交換する。培養液を1日目に除去することの影響を評価するのは難しいが、明らかに、組織から拡散した生体分子、または細胞が周囲の液中に分泌した生体分子は、いずれもプロトコルDでは失われるはずである。上の重要な相違点の項目1Bに示した実験結果から、30分間消化した組織片では、60分間消化した組織片と比較して、コンフルエンスに達するまでにおよそ2日長くかかったことが認められた。消化酵素への曝露を長くすると、インキュベーション時間が短い場合と比べて、組織マトリックスの破壊がより多く生じ、それによって、細胞及び生体分子が、組織マトリックスからより容易に離れ、培養液環境に入ることができ、その結果、コンフルエンスに達するまでの時間がより早くなる原因が生じた可能性がある。
【0442】
B)別の重大な違いであり得るのは、プロトコルDの培養液にアムホテリシンB及びゲンタマイシンを使用していることである。これらの抗生物質はどちらも細胞に対して強烈なものであることが知られている。例えば、アムホテリシンBは、培養中の細胞の生存率を低下させると報告されている。ペニシリン及びストレプトマイシンも培養中の細胞の生存率を一過性に低下させる。このタイプの挙動は、アムホテリシンB、及び他の抗生物質が、何らかの様式で細胞に負の影響を及ぼしている可能性を示唆している。したがって、プロトコルCではアムホテリシンBまたはゲンタマイシンを使用していないため、プロトコルCの培養環境では生じない方法で、アムホテリシンB及びゲンタマイシンを含有するプロトコルDの培養環境が培養細胞に影響を与えている可能性がある。
【0443】
C)プロトコルCでは細胞の培養にCorning(登録商標)DMEMを用い、プロトコルDではLonza(登録商標)DMEMを用いる。これら2種のDMEM配合物における組成の違いを表18に示す。Corning(登録商標)DMEMのグルタミンレベルは、Lonza(登録商標)DMEMのグルタミンレベルと比較しておよそ27%低く、このことは、6つの血縁関係のないネコドナーURC調製物の培養反応(表17)で指し示されるように、プロトコルDの培養液では、第5継代に達した調製物が6つのうち1つにすぎなかったことに対して、プロトコルCで使用した培養液で増殖させた場合、第5継代に達したドナー調製物の数がより多いこと(6つのうちn=4)を説明し得る。
【0444】
3.臨床用量を創出するための細胞増殖:
【0445】
A)表20に示したように、臨床用量を得るためのプロトコルDで使用する製造プロセスでは、凍結保存細胞のマスターセルバンク(MCB)ステージを生成させた後、4回の培養間隔が必要とされる。凍結保存細胞のMCBステージを生成させた後、3回の培養間隔を採用する。プロトコルDのLonza(登録商標)DMEM配合物で増殖させたURCの不十分な増殖パターンを明らかにした、表17に示しているデータを鑑みて、プロトコルCにおいては、そのCorning(登録商標)DMEM配合物の優れた増殖パターンであれば、有用な用量が得られる可能性がより高い。
【0446】
B)臨床用量を凍結保存する前の細胞増殖に使用する技術における、大きな違いを表20に示している。プロトコルDは、スピナーフラスコ技術と呼ばれる、インペラーで浮遊状態に保たれるマイクロキャリア粒子の使用に依拠するものであった。細胞はマイクロキャリア粒子に接着し、培養間隔中、インペラーの回転によって浮遊し続ける。バイオリアクターは、スピナーフラスコ技術よりはるかに大規模な例であるが、CO及び酸素を能動的にモニターすることによって、気相の組成を非常に高度に制御するものである(必要に応じて窒素を導入することができる)。プロトコルCは、臨床用量を創出するための細胞増殖に、スピナーフラスコまたはインペラーベースのバイオリアクター技術を用いないが、その代わりに、インペラーベースのバイオリアクターで生じる剪断力によって悪影響を受ける可能性がある細胞型に対して特別に設計された、特殊な高密度マルチプレートバイオリアクター技術に依拠する。プロトコルCでは、剪断を誘発するインペラーベースのバイオリアクター環境を避け、静置培養を採用することで、URC調製物がより安定して増殖する。
【0447】
4.凍結保存製剤:
【0448】
A)プロトコルDでは、URC調製物の臨床用量を創出する過程で2種の配合物を使用する。第1の凍結保護配合物については、10% FBSを含有する培養液の使用を基礎とし、これをDMSOと混合して、最終的に10% DMSO/5% FBSを含有する凍結保護物質を得た。この配合物は、臨床用量を生成させる前のあらゆる培養細胞の凍結保存に使用した。プロトコルDの臨床用量は、2% DMSO(最終)及び0.9%生理食塩水中の6%ヒドロキシエチルデンプン(HES)である市販の調製物(HESPAN,B.Braun Medical)で構成される溶液中で凍結保存した。
【0449】
B)プロトコルCでは、臨床用量を含む全ての細胞の凍結保存に、CS10と呼ばれる市販の凍結保護物質(BioLife Solutions)を使用する。
【0450】
まとめると、イヌ及びネコURCの臨床用量についてのより最適な培養物及び収率を得るために開発されたプロトコルCと、プロトコルDとを比較すると、かなりの違いがある。その違いには、消化時間、培養液の抗生物質、培養液成分の組成(例えば、グルタミンレベル)、及び臨床用量を創出するための細胞増殖に使用されるバイオリアクター技術が含まれる。表17に示したように、プロトコルCのプロセシング及び培養アプローチでは、プロトコルDのアプローチによる成績と比較して、より多くのドナー組織が臨床用量までプロセシングされ得ることが明らかである。
【0451】
実施例23.URCの投与
URC用量は、クリニックでの解凍を必要とする凍結保存用量として、またはクリニック到着時には患者に投与する用意ができている解凍済み用量として提供する。凍結保存用量をクリニックに提供する場合、凍結保存用量は、それを-120℃未満の温度に維持する適切な温度制御容器で出荷する。解凍済み用量をクリニックに提供する場合、解凍済み用量は、1℃~8℃の温度を維持する適切な温度制御容器で出荷する。URC凍結保存用量は、URCを適切な凍結保護物質(例えば、CS10、BioLife Solutions)中で凍結保存し、無菌の低温安定バイアル(例えば、CellSeal vial,Sexton Biotechnologies)に収容する。URC解凍済み用量は、無菌シリンジ、またはヘッドスペースもしくは空隙のない同様の密閉された無菌容器に収容する。URC解凍済み用量は出荷前に解凍し、PBS、乳酸リンゲル液、標準生理食塩水といった親和性のある液体、または生存可能な有核細胞の維持に適合する他の液体中に懸濁させる。
【0452】
URC凍結保存用量は、乾熱(例えば、加熱パッド)もしくは制御した乾熱を適用するように設計された機器(ZipThaw,FreMon Scientific)または37℃の水浴の使用、あるいは氷が見えなくなるまで室温で放置することを含む、いくつかの手段のうちの1つによって解凍する。URC凍結保存用量は、クライオバイアルから取り出し、シリンジ等の患者への投与に適切な容器に入れる。シリンジには、クライオバイアルのURCを装填する前に、PBS、乳酸リンゲル液、標準生理食塩水、または生存可能な有核細胞の維持に適合する他の液体等の適切な希釈液をあらかじめ充填することができる。URCは、希釈していない状態で、または患者に投与する前に、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈してから患者に投与することができる。URC解凍済み用量は、通常、クリニックに出荷する前に、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、または少なくとも1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、もしくは10xに希釈する。URCは、静脈内(IV)、動脈内(IA)、髄腔内(IT)、実質内(IP)、病巣内、局所(皮膚創傷)、皮内(ID)、皮下(SC)、及び筋肉内(IM)注射を含む、種々の経路を介して投与することができる。シリンジ、注射針、カニューレ付きIVセット、エクステンションセット、Tコネクタセット及び他のコンポーネントを含む、専用の医療用コンポーネントを、言及した経路でURCを投与するために利用してもよい。URCの投与は、手動で行うか、またはシリンジポンプを使用して投薬することができる。
【0453】
標的とする病理及び患者の状態は、URCの投与方法に影響を及ぼし、注射回数、注射間隔、注射のための単一ルートの使用または混合ルートセットの使用、及び注射されるURCの数に影響を及ぼす可能性がある。URC用量には、通常、最小20百万細胞から最大40百万細胞までが含有されることになり、用量あたりの好ましい細胞数は、30百万細胞~36百万細胞である。
【0454】
実施例24:アトピー性皮膚炎におけるイヌドナー子宮組織由来臨床用量の転帰
臨床用量はイヌドナーS-011から得た。組織を酵素で消化し、培養する消化物を得るために、S-011の子宮組織をプロトコルBに示したようにプロセシングした。培養液中で細胞を増殖させ、第4継代で、CS5中に36百万細胞/クライオバイアルで凍結保存した。細胞を解凍し、PBSで希釈した後、アトピー性皮膚炎を有する適格なイヌ患者に、用量をIV注入で投与した。2回分の臨床用量を2週間の投薬間隔を設けて注入し、その後、各イヌ患者の臨床症状をモニターした。7頭のイヌ患者は、処置前と、間隔をおいて処置後に、Pruritus Visual Analog Score(PVAS、そう痒症(かゆみ)の重症度の指標)、Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index-4(CADESI-4)、及びCanine Atopic Dermatitis Lesion Index(CADLI)を含む、いくつかの臨床測定基準で評価した。有効な臨床データを表21に示す。
【表21】
【0455】
処置した7頭のイヌ患者に関し、3種の測定基準の平均値が処置前のベースライン値と比較して減少するという、臨床測定基準の傾向から、アトピー性皮膚炎と確定診断されたイヌ患者を処置することの臨床上の有益性が実証される。臨床測定基準における減少から、患者の臨床状態の改善が示唆される。6頭の患者のうち5頭では、処置前からD90評価までに、評価した3種の測定基準に関し大幅な改善が明らかに示された。
【0456】
PVASは、患者におけるそう痒症の重症度を評価するための有効なスケールである。このスケールは、「健常のイヌ-かゆみの問題なし」から「極めて重度のかゆみ/ほとんど継続する(かゆみを物理的に抑制する必要がある)」まである。自宅で見られるかゆみレベルの観察に基づいて、同一の飼い主が、各試験訪問時にこの評価を行う。
【0457】
CADESI-4は、イヌの皮膚の状態を評価するための有効な評価ツールである。CADESI-4は、前足及び後足、脇腹、ならびに鼠径部エリア等のイヌの特定部位に焦点を当て、紅斑(発赤)、苔癬化(皮膚の肥厚及び擦創(皮膚外傷))及び/または脱毛症(脱毛)の重症度を測定するものである。この評価は、各試験訪問時に同一の獣医が行う。CADLIは、イヌの皮膚の状態を評価するための有効な評価ツールである。CADLIは、CADESI-4評価ツールに類似しており、技術的に若干の違いがあるだけで、類似した様式で機能する。CADLIは、イヌの皮膚のより一般的なエリアに焦点を当てるが、やはり、色素沈着過度(皮膚の色素レベル)をさらに含む、同一の重症度基準を評価するものである。この評価もまた、各試験訪問時に同一の獣医が行う。
【0458】
実施例25:骨関節炎におけるイヌドナー子宮組織由来臨床用量の転帰
臨床用量はイヌドナーS-011から得た。組織を酵素で消化し、培養する消化物を得るために、S-011の子宮組織をプロトコルBに示したようにプロセシングした。培養液中で細胞を増殖させ、第4継代で、CS5中に36百万細胞/クライオバイアルで凍結保存した。細胞を解凍し、PBSで希釈した後、自然に生じた骨関節炎を有する適格なイヌ患者に、用量をIV注入で投与した。2回分の臨床用量を2週間の投薬間隔を設けて注入し、その後、各イヌ患者の臨床症状をモニターした。D30で6頭の患者を評価した。患者の転帰Canine Brief Pain Inventory(CBPI)及びClient-Specific Outcome Measures(CSOM)は、獣医による跛行評価と共に、飼い主が各クリニック訪問時に評価した。処置前及びD30のデータ値を表22に示す。
【表22】
【0459】
飼い主による12の評価のうち11で、D30におけるペットの状態が飼い主による評価で改善とされた。この改善は、CBPI及びCSOMの平均値にも示されており、D30の平均値は、CBPI及びCSOMの両方で処置前群の平均値を十分に下回っている。担当獣医は、処置された6頭の患者のうち4頭で跛行に改善が見られ、D30における平均跛行スコアが処置前群の平均跛行スコアを下回っていると判断した。表22に示した早期治療効果は、2回分の治療用量を、2週間の間隔をあけてIV注入により送達することで達成された。ヒト患者または獣医学上患者のいずれかにおける骨関節炎を処置するための標準的な治療手法は、関節内(すなわち、関節包内)注射による細胞注入である。
【0460】
実施例26:難治性ネコ慢性歯肉口内炎におけるネコドナー子宮組織由来臨床用量の転帰
ネコ慢性歯肉口内炎(FCGS)と診断されたネコでは、口腔に重度の炎症が生じ、これにより、ネコの食欲及び水の摂取に影響が及び、その結果クオリティオブライフが低下する。処置は、罹患したネコの歯を、ほとんど、または全て抜くことに限られる。しかしながら、このような抜本的な医療行為の後であっても、かなりの数のネコ(およそ30%)が重度の口部炎症を患い続け、それらのネコのクオリティオブライフは、経時的に低下し続ける。
【0461】
抜歯後も転帰不良が続く、組み入れ対象となるネコにおいて臨床試験を開始した。FCGS患者の処置に使用した用量は、ドナーS-025から得た(プロトコルCに従ってプロセシング)。36百万個の細胞を30分かけて静脈内送達して、対象となった各患者を2回処置した。各ネコを、処置前及び処置後定期的にStomatitis Disease Activity Index(SDAI)で評価した。この指標は、担当獣医により行われる疾患の重症度を評価するための半定量的スコアリングシステム(口部炎症パラメータを反映している)と、患者のクオリティオブライフに関連するパラメータについての飼い主による評価との組み合わせからなる。
【0462】
2回目の用量を注入した後、対象となった3頭の患者がD14に達し、2頭はD14において処置前と比較してSDAI値がわずかに低下した。難治性FCGSに罹患しているネコにおける改善には、炎症状態の解消のため数ヶ月を要することが報告されている。しかしながら、難治性FCGSに罹患している患者では、いかなる有害事象もなく細胞療法に忍容性が示され、D14までの初期にSDAIスコアがわずかに低下(改善)した。
【0463】
実施例27:外植組織片を用いた培養細胞の収率、生存率及び表現型評価
酵素消化後の初期培養間隔において、組織のみ、細胞のみ、及び細胞を伴う組織の培養結果を評価するため、複数の血縁関係のないイヌ子宮組織ドナーを用いて、試験を実施した。
【0464】
組織消化条件及び凍結保存
【0465】
各イヌドナーの子宮を他の組織から切離し、BSC内で小片に切り刻んだ。切り刻んだ後、組織をコラゲナーゼ及びサーモリシンにより、37℃で60分間、10分ごとに手動で振盪しながら消化した。各例において、消化した組織及び細胞(T-PCF)をクライオバイアルに入れ、10% DMSOを含む市販の凍結保護溶液(BioLife Solutions,CryoStore CS10)で、または培養液(10% FBS含有)と1:1(v:v)で混合した培養液中の20% DMSO溶液で凍結保存した。
【0466】
T-PCFの培養
【0467】
T-PCFの各クライオバイアルをLN気相保存器から回収し、37℃の水浴中で氷の細片が残るまで解凍した。外植組織片と細胞との組み合わせ(T-PCF)用にプロセシングした解凍済みクライオバイアルを、直ちに組織培養液(DMEM、高グルコース、10% FBS、8ng/mL FGF-2及び4mMグルタミン)中に入れて希釈し、培養フラスコに入れ、5% COインキュベーター(湿度100%)において37℃でインキュベートした。同じドナー組織の消化から得た別のクライオバイアルを、40μmセルストレーナーに通して処理し、培養液でリンスして細胞のみ(PCF)条件を得た。細胞ストレーナーを上下反対にし、培養液でリンスすることにより外植組織片を回収して、外植組織片のみ(Tissue)条件を得た。PCF及びTissue調製物の両方を培養フラスコに入れ、T-PCF条件について記載した通りにインキュベートした。
【0468】
回収するまで、PCF及びTissueフラスコには新鮮な培養液を3日ごとに供給した。T-PCFフラスコには、D3に、外植組織片を取り出して供給した。
【0469】
3つの条件全てのフラスコを、5日間または7日間インキュベートした。回収日に、PCF及びT-PCFフラスコの使用済み培地を除去し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を添加してフラスコをリンスし、続いてTrypLE(商標)(Gibco)を添加して細胞を剥離した。回収した細胞をDPBSで洗浄し、NucleoCounter NC-200(Chemometec,Denmark)でカウントした。Tissueフラスコから使用済み培地及び外植組織片を除去し、次いで、PCF及びT-PCFフラスコについて記載した通りに扱った。
【0470】
免疫表現型検査
【0471】
細胞は、CD34-PE(Thermo Fisher,Clone 1H6)、CD45-PE(Thermo Fisher,Clone YKIX716.13)、CD90-APC(Thermo Fisher,Clone Thy-1)、CD326-PE(Thermo Fisher,Clone G8.8)、CD44-PeCy7(BioLegend,Clone IM7)及びLIVE/DEAD(商標)633または635nm励起用Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit(Thermo Fisher,L34976)に反応する市販の直接標識抗体で分析した。ブロッキング剤の存在下、最適化した試薬と共に細胞を氷上暗所で30分間インキュベートしてから反応性を評価した。まず、全てのイベントを生/死染色で評価し、生存可能単一細胞のイベントのみを、表面反応性CDマーカーパネルとの反応性について分析した。加えて、別の反応において、細胞を製造業者の指示に従って固定、透過処理、及びブロッキングし(Invitrogen,Image-iT Fixative-Permeabilization Kit:Fixative、Wash Buffer、Permeabilization Solution、Blocking Solution)、次いで、表面マーカーについて記載した通りに、標識化抗ビメンチン-Alexa Fluor 647(Abcam,Cambridge,England,clone V9)及び抗サイトケラチン-18-FITC(Abcam,clone C-04)試薬と反応させた。いくつかの調製物は、CD44-PeCy7及びCD326-PeCy7と共にインキュベートした後、固定、透過処理、ならびに抗ビメンチン及び抗サイトケラチン-18による染色を行った。試料はAttune Flow Cytometerで評価した。データは、FlowJo(Becton Dickinson,Ashland,OR,USA)で解析した。
【0472】
培養結果
【表23】
【0473】
免疫表現型検査の結果
【0474】
第2のT-PCFドナー試料セット(S-032、S-033)を、T225フラスコ内で培養した。CD34、CD45、CD44、CD90についての単色分析を行った。
【表24】

5つのドナーのうち4つにおいて、PCF及びT-PCFの細胞収量が、どちらもTissueの細胞収量よりも多かった。このことから、5日間培養したかまたは7日間培養したかを問わず、PCF及びT-PCFの両条件の寄与により細胞数がより多くなったことが示唆される。したがって、培養環境中に存在する、切り刻まれ消化された子宮組織の外植組織片は、遊離した細胞と共に、臨床応用に重要な役割を果たす。
【0475】
実施例28:臨床応用のためのプライミングされたネコ子宮組織由来再生細胞
第3継代で得た2つの血縁関係のないドナーネコURCを、数種の濃度のIFN-γでプライミングした。ネコ子宮組織をコラゲナーゼ/サーモリシンで消化し(定期的に手動で振盪しながら37℃で1時間-例えば、プロトコルC)、外植組織片及び細胞を含有する消化物を、DMEM(高グルコース、6mMグルタミン含有)/10% FBS中で培養した。細胞増殖にも、高グルコース及び6mMグルタミンを含むDMEMを10% FBSと共に用いた。IDO活性の観点から、ネコURCに対するIFN-γの影響を、IDO活性の代謝産物であるL-キヌレニンのレベルを評価することにより決定した。
【0476】
IDO検出アッセイ:IDOの上方制御を用いて、IFN-γプライミングに対する2つの血縁関係のないネコドナーURC調製物の応答を評価した。
【0477】
L-キヌレニンの存在に対するアッセイ:IDO1の活性はトリプトファンが供給されている場合にのみ検出できるため、細胞を600μMのトリプトファンの存在下で培養した。プライミングした細胞及びコントロール(非プライミング)細胞の細胞懸濁液を回収し、アッセイするまで-80℃で保存した。培養上清試料の処理を行った。エールリッヒ試薬を用いてL-キヌレニンとの複合体を形成させ、それを490nmで検出した。L-キヌレニンを倍数で段階希釈して作成した標準曲線を用いて、細胞培養上清中に存在するL-キヌレニンの量を確定した。
【0478】
サイトカインアッセイ:2つの血縁関係のないネコドナーのプライミング済み及び非プライミング(コントロール)URC調製物を、サイトカイン産生について評価した。ネコURC調製物は、培養期間中10ng/mL IFN-γでプライミングした。それぞれの細胞調製物を4日間培養(10% FBS含有培養液)してから、培養液上清を回収した。上清を全ての条件から採取し、PhenoVista Laboratory(San Diego,CA)で、ヒト用Isoplexis codeplexチップ及びマウス用Isoplexis codeplexチップを用いて分析するまで凍結状態を維持した。予備実験では、ネコのサイトカインについて、2つのデバイスで使用した抗体の一部に交差反応性があることが示された。細胞を増殖させた培養液(10% FBS含有)を陰性コントロールとして用い、陰性コントロールの非特異的シグナルを他の分析物の結果から差し引いた上で報告した。結果は、各分析物に対しpg/mLで報告した。
【0479】
結果(実施例28):IDO活性によって評価したIFN-γでの処理に対するネコURCの応答
【0480】
表25は、様々なレベルのIFN-γの存在下で培養した場合のS-005 URC及びS-001 URCの応答を示している。プライミング剤に対する応答は、IDOアッセイにおいて産生されたL-キヌレニンの量で測定した。非プライミングコントロール条件(0ng/mLのIFN-γ)と比較して、L-キヌレニン濃度の上昇が示されたことから、どちらのネコURC調製物もIFN-γによるプライミングに応答した。ドナーS-005では、IFN-γを増加させてもL-キヌレニン産生はそれほど増加せず、用いた最低レベルのIFN-γに対して高い応答率が示された。対照的にS-001では、IFN-γの濃度が高くなるほどL-キヌレニンが誘発されて高レベルになるという滴定効果がより顕著に示されたが、試験した最高濃度においてプラトー効果を示すいくつかのエビデンスがあった。IFN-γでのプライミングに対する応答は、ドナーによってばらつきがあることが報告されている(Boyt,et al.2020)。
【表25】
【0481】
ネコURCのサイトカインプロファイル
【0482】
サイトカインは、前駆細胞によって分泌される重要分子であり、組織内の成体細胞及び免疫細胞の両方の細胞活性(例えば、増殖、アポトーシス、免疫調節)を調節するための、よく知られたパラクリン機構を構成する。ネコURCのサイトカインプロファイルは、血縁関係のない2つのネコドナー(S-005及びS-001)の培養上清から得た。ヒトサイトカイン/タンパク質及びマウスサイトカイン/タンパク質を検出するための市販のIsoplexis codexplexデバイスを、当該方法に記載した通りに使用した。
【0483】
プライミングしたドナーURC調製物のどちらにおいても、IFN-γの存在に応答する特定の細胞型によって産生されるタンパク質IP-10が非常に多く分泌されることが示された。パーフォリンもまた、非プライミングコントロール調製物に比べ、プライミングした調製物において有意に高いレベルで分泌される。全体として明白であるのは、プライミング剤としてIFN-γを用いると、ネコURCの非プライミングコントロール調製物と比較して、ネコURCの分泌プロファイルが変更されることである。
【表26-1】

【表26-2】
【0484】
プライミングしたURC調製物の試験アッセイにおいて、IDOレベルが増加した結果、非プライミングコントロール調製物と比較して、相当なレベルのL-キヌレニンが分泌されたことから実証されるように、2つの血縁関係のないネコドナーURC調製物は、IFN-γでプライミングされた。IFN-γでプライミングしたネコURCにおいて認められたL-キヌレニンのレベルが、非プライミングコントロールと比較して高いこと(表25)により、プライミングしたネコURC調製物では、IDOの存在レベルが上昇することが示される。IDOは、炎症促進性免疫細胞の活性を低下させることにより、免疫状態のメディエーターとして作用することが明らかになっている。
【0485】
サイトカイン発現の差にはエビデンスがあり、プライミングしたURCでは非プライミングURCよりも分泌レベルが高く(例えば、IP-10、パーフォリン)、また、プライミングしたURCでは非プライミングURCよりも分泌レベルが低い(例えば、MCP-1、IL-6)。いくつかのサイトカインは、プライミング済みURCまたは非プライミングURCから同程度のレベルで分泌された(IL-4、IL-5)。S-005及びS-001の両方をプライミングするとIP-10が非常に高いレベルで分泌されることが判明した。これは、ドナーネコURC調製物がIFN-γに曝されることにより変質したことをさらに確かにするものである。
【0486】
まとめると、これらの結果は、IFN-γでプライミングされたネコURCにおける、臨床的有用性のある重要な変化を実証している。
【0487】
実施例29:臨床応用のためのプライミングされたイヌ子宮組織由来再生細胞
IFN-γの濃度及び培養中の曝露継続時間に関する、イヌURCから応答を誘発する条件を評価するために実験を行った。インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDOまたはIDO1)活性の存在について、IFN-γに曝露させたURCを評価した。IDO1がトリプトファンを異化する際に産生される最初の代謝産物はN-ホルミルキヌレニン(NFK)であり、次にこれが改変されてL-キヌレニンが生じる。プライミングしたイヌURC及び非プライミングイヌURCに対して、NFK及びL-キヌレニンの両方を評価した。
【0488】
リンパ球に対するイヌURCの免疫調節効果を評価するため、プライミングしたイヌURCを混合リンパ球反応アッセイ(MLR)でも評価した。このアッセイでは、末梢血単核球(PBMC)をマイトジェン(コンカナバリンA、Con A)を用いて刺激し、PBMC+Con A反応混合物にMSCを添加した試験条件と比較する。PBMCにおけるT細胞増殖応答の抑制は、プライミングしたMSCの潜在的免疫調節能と関連している(Boyt,2020)。
【0489】
加えて、プライミングしたイヌ細胞調製物のCDマーカープロファイルを、標準的なフローサイトメトリープロトコルに従って特性評価した。CD34、CD45、CD44、CD90及びMHCクラスII(MHC-II)を含むCDマーカーを評価した。MHC-IIは、IFN-γに応答した細胞において上昇することが報告されているため、MHC-IIを調べた。したがって、評価した各ドナー調製物に関し、プライミングした細胞を、非プライミングコントロール培養物と比較して、MHC-IIの発現陽性頻度における変化について評価した。
【0490】
方法
【0491】
イヌURC調製物の培養プライミングプロトコル
【0492】
イヌドナーS-011 URC調製物は、プロトコルB(すなわち、DE10コラゲナーゼ、10分ごとに手動で振盪しながら37℃で60分間)により得た。イヌドナーS-017、S-026、S-027、S-028及びS-029のURCは、プロトコルC(すなわち、コラゲナーゼ及びサーモリシン、10分ごとに手動で振盪しながら37℃で60分間)により得た。
【0493】
IFN-γへの曝露時間及びIFN-γ濃度の影響を評価するために、G0338及びG0340を用いて初期範囲実験を行った。L-キヌレニンアッセイを用いて、プライミングしたURCに存在するIDOの活性を評価した。プライミング条件についての初期試験の後、組織培養容器にP3細胞を播種し、回収する48時間前に、10ng/mL IFN-γを補充した培養液を交換することにより、イヌURC調製物をプライミングして、P4でプライミング済み細胞を創出した。
【0494】
その後、プライミングイベントを持続性にするために、第4継代後のプライミング済み細胞を、IFN-γ非存在下で2日間培養し、IDO活性(L-キヌレニンとして)について細胞を評価した。また、前もってプライミングし、凍結保存した細胞がIDO活性を保持することについても、プライミングし、凍結保存した細胞をアッセイ(N-ホルミルキヌレニンとして)用に解凍した後に評価した。
【0495】
CDマーカー評価
【0496】
細胞は、CD34-PE(ThermoFisher,Clone 1H6)、CD45-FITC(ThermoFisher,Clone YKIX716.13)、CD90-APC(ThermoFisher,Clone Thy-1)、CD326-PE(ThermoFisher,Clone G8.8)、MHCII-APC(ThermoFisher,Clone YKIX334.2)、CD44(BioLegend,Clone IM7)及びLIVE/DEAD(商標)633または635nm励起用Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit(ThermoFisher,L34976)に反応する市販の直接標識抗体で分析した。ブロッキング剤の存在下、前もって最適化した試薬中、細胞を氷上暗所で30分間インキュベートしてから反応性を評価した。まず、全てのイベントを生/死染色で評価し、生存可能単一細胞のイベントのみを、表面反応性CDマーカーパネルとの反応性について分析した。試料はAttune Flow Cytometerで評価した。データは、FlowJo(Becton Dickinson)で解析した。
【0497】
三系統分化
【0498】
軟骨形成、骨形成、及び脂肪生成細胞系列への分化を評価するため、IFN-γでプライミングした凍結保存細胞(P4)を解凍し、6ウェルプレート(Corning Life Sciences)において、10% FBS、4mMグルタミン及び8ng/mL FGF-2を補充したDMEM(HG、Corning Life Sciences)中で培養して、分化アッセイを開始した。コントロール培地にも誘導培地にも、IFN-γを補充しなかった。
【0499】
軟骨形成
【0500】
細胞を濃度4x10細胞/mLに希釈し、6ウェルプレート(Corning Life Sciences)の各ウェルに、濃縮した細胞懸濁液の50-μLの液滴を3滴入れた。プレートを37℃/5% COで一晩インキュベートした。24時間後、軟骨細胞分化培地(StemPro Chondrogenic Differentiation Medium,Gibco)を実験ウェルに添加し、培養液をコントロールウェルに添加し、37℃/5% COでインキュベートした。各ウェルの培地は、3日ごとに全量交換した。最低7日間インキュベートした後、ウェルから培地を吸引し、細胞をDPBSで洗浄し、1mLの10%ホルマリン(ThermoFisher,Carlsbad,CA,USA)を添加して、室温で一晩細胞を固定した。ホルマリンを吸引し、ウェルを脱イオン(DI)水で洗浄した。次いで、アルシアンブルー1mLを各ウェルに添加し、室温で45分間、穏やかに揺り動かしながらインキュベートした。ウェルから色素を吸引し、脱染色液(2:3[v:v]酢酸対純エタノール)をウェルに入れ、室温で10分間インキュベートし、吸引した。2回目の脱染色後、脱染色液を吸引し、室温で乾燥させた後、Amscope MDカメラを取り付けた位相差顕微鏡でウェルを撮像した。
【0501】
骨形成
【0502】
細胞を6ウェルプレート(Corning Life Sciences)における培養液中に50,000細胞/cmの密度で蒔き、37℃/5% COのインキュベーター内に置いた。24時間後、コントロールウェルの培地を交換し、実験ウェルの培地を吸引し、骨形成分化培地(StemPro Osteogenic Differentiation Medium,Gibco)を添加した。対応する培地を3日ごとに細胞に供給した。最低12日後、ウェルから培地を吸引し、細胞をDPBSで洗浄し、各ウェルに10%ホルマリン(ThermoFisher)を1mLずつ添加し、一晩インキュベートして細胞を固定した。ホルマリンを吸引し、ウェルをDI水で洗浄した。洗浄液を吸引し、1%アリザリンレッド染色液(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を各ウェルに1mLずつ添加し、室温で30分間、穏やかに揺り動かした。ウェルから染色液を吸引し、プレートをDI水で洗浄して余分な染色液を除去した。室温で乾燥させた後、Amscope MDカメラを取り付けた位相差顕微鏡でウェルを撮像した。
【0503】
脂肪生成
【0504】
解凍した細胞を、6ウェルプレート(Corning Life Sciences)における培養液中に、およそ100,000細胞/ウェルの密度で蒔き、5% CO/37℃のインキュベーター内に入れた。培養液は3日目に交換した。細胞がコンフルエンスに達した後、半分のウェルの増殖培地を、脂肪生成分化培地(StemPro Adipogeneic Differentiation Medium,Gibco)に交換し、コントロールウェルには新鮮な増殖培地を供給した。インキュベーションを12日間または15日間継続し、3日ごとにコントロール培地または分化培地を交換した。インキュベーション期間終了時に、ウェルから培地を吸引し、DPBSを添加してウェルを洗浄した。洗浄液を吸引し、各ウェルに10%ホルマリンを1mLずつ添加して、細胞を室温で15分間固定した後、ホルマリンを吸引した。細胞を60%イソプロパノールで洗浄し、これを除去した後、0.3%オイルレッドO染色液(Sigma-Aldrich)を1mL添加し、室温で15分間インキュベートした。その直後にオイルレッドO染色液を吸引し、蒸留水(dHO)を添加し、吸引した。dHOで合計4回洗浄してから、プレートを室温で乾燥させた。ウェルは、Amscope MDカメラを取り付けた位相差顕微鏡で撮像した。
【0505】
サイトカイン分析
【0506】
複数の血縁関係のないイヌドナーのプライミング済み及び非プライミング(コントロール)URC調製物を、サイトカイン産生について評価した。イヌURC調製物は、培養期間中10ng/mL IFN-γでプライミングした。それぞれの細胞調製物を4日間培養(10% FBS含有培養液)してから、培養液上清を回収した。上清を全ての条件から採取し、分析するまで凍結状態を維持した。2つの試験アッセイセットを用いて上清を分析した。
【0507】
Codeplexデバイスアッセイ
【0508】
プライミング済み及び非プライミング(コントロール)イヌドナー(ドナーS-026及びS-027)URC調製物の上清を、PhenoVista Laboratory(San Diego,CA)で、ヒトサイトカイン用Isoplexis codeplexデバイス及びマウスサイトカイン用Isoplexis codeplexデバイスを用いて分析した。予備実験では、イヌのサイトカインについて、2つのデバイスで使用した抗体の一部に交差反応性があることが示された。細胞を増殖させた培養液(10% FBS含有)を陰性コントロールとして用い、陰性コントロールの非特異的シグナルを他の分析物の結果から差し引いた上で報告した。結果は、各分析物に対しpg/mLで報告した。
【0509】
Quantibodyイヌサイトカインマイクロアレイ
【0510】
プライミング済み及び非プライミング(コントロール)イヌドナー(ドナーS-017及びS-011)URC調製物の上清を、商業的研究室におけるマイクロアレイ技術(Quantibody Canine Cytokine 40,Raybiotech,Peachtree Corners,GA,USA)で分析した。細胞を増殖させた培養液(10% FBS含有)を陰性コントロールとして用いた。各サイトカインの結果は、「pg/mL」として報告している。補正係数を用いて、各サイトカインの「正味」分泌レベルを算出した。検出限界(LOD、各アッセイに対してRaybiotechが提供)の2Xまたは陰性コントロール値の2Xのいずれか大きい方を、各サイトカインの結果から差し引いた。調整した値は、注釈に基づいて分類した。つまり、調整した濃度値は、表6の脚注に示しているように、「0」、低、中、高、または超高のスコアでの濃度範囲に割り当てた。
【0511】
混合リンパ球反応(MLR)及びMLR上清についてのIDO/PGE評価
【0512】
イヌPBMCを、Ficollベースの密度勾配遠心分離によって処理した、新たに採血した全血から得た。濃縮されたPBMC層を回収し、カウントし、トリプトファンを最終濃度600μMまで補充した、10% FBS及び1% Pen/Strepを含む低グルコースDMEMで希釈した。PBMCを、単独で、5μg/mLのコンカナバリンAと共に(PBMC+Con A、Sigma-Aldrich)、及びPBMC+Con AにURCを含めて(10:1 PBMC:URC)、12ウェルプレートに入れた。調製物を37℃/5% CO中で4日間インキュベートし、3日目に全てのウェルに10μMブロモデオキシウリジン(BrdU、BD Biosciences,San Jose,CA)を添加した。各条件から無細胞培地を採取し、インドール-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性(L-キヌレニンレベルとして)及びプロスタグランジンE(PGE)についてアッセイするまで-80℃で凍結保存した。細胞をフローバッファー(2% FBS、DPBS中2mM EDTA)に移し、2つのアリコートに分けた。アリコートの1つは、活性化T細胞を検出するためにDog Activated Lymphocyte Cocktail Kit(BD Biosciences)で標識した。第2のアリコートは、BrdU flow labeling kit(BD)で処理し、抗BrdU-APC(clone BU20A,ThermoFisher)でシグナルを検出した。標識した調製物をBD FACSCalibur Flow Cytometer(CellQuestソフトウェアによる)で読み取り、FlowJo(Becton Dickinson)で解析した。全ての試料について、活性化T細胞の割合(第1のアリコート)または増殖の程度(第2のアリコート)を測定した。いずれのマーカーでも、最大反応はPBMC+Con A試料で認められ、一方、活性化または増殖における減少率は、PBMC+Con A/URC試料を用いて算出した。
【0513】
IDO検出アッセイ
【0514】
2種のアッセイが、細胞内に位置するIDOの活性を検出するために内部で使用されている:1)L-キヌレニンの存在に対するアッセイ、及び2)L-ホルミルキヌレニンの存在に対するアッセイ。
【0515】
L-キヌレニンアッセイ:IDO1の活性はトリプトファンが供給されている場合にのみ検出できるため、細胞を600μMのトリプトファンの存在下で培養した。プライミングした細胞及びコントロール(非プライミング)細胞の細胞懸濁液を回収し、アッセイするまで-80℃で保存した。培養上清試料の処理をR&D WI:L-kynurenineに記載されている通りに行った。エールリッヒ試薬を用いてL-キヌレニンとの複合体を形成させ、それを490nmで検出した。L-キヌレニンを倍数で段階希釈して作成した標準曲線を用いて、細胞培養上清中に存在するL-キヌレニンの量を確定した。
【0516】
N-ホルミルキヌレニン(NFK)アッセイ:細胞調製物を製造業者の説明書(Abcam,ab235936)に従って溶解し、続いて遠心分離ステップにより、無細胞上清を得た。上清、陽性コントロール及び陰性コントロール、ならびに標準物質を、製造業者の説明書に従って黒色マイクロタイタープレートで処理した。(NFKを生成するための)現状での最初のインキュベーションの後、NFKに結合する試薬を添加し、インキュベートした。2回目のインキュベーション期間の後、プレートを、蛍光プレートリーダーにおいて励起/発光402/488nmで分析した。
【0517】
結果
【0518】
様々なプライミング条件に対する複数の血縁関係のないイヌURC調製物の反応
【表27】
【0519】
プライミングした細胞の培養特性
【0520】
S-017の第3継代細胞を、0日目に同型培養で樹立した。2日目に全フラスコの培養液を100%交換し、そのうちの2つのフラスコには10ng/mLのIFN-γを補充した培養液を入れた。およそ2日後にフラスコを回収した(総培養時間95時間)。表28に示したように、生存細胞のパーセンテージ、倍加時間(DT)及び集団倍加レベル(PDL)を測定した。
【表28】
【0521】
複製プライミング済みS-017URC培養物及び複製非プライミングS-017URC培養物では、倍加時間及び集団倍加レベルが同様であった。したがって、URCのプライミング剤としてIFN-γを使用しても、プライミングしたURCの増殖は妨げられない。
【0522】
プライミング済みURC及び非プライミングURCのCDマーカープロファイル
【0523】
非プライミングイヌURCで評価される標準CDマーカーセットは、CD34、CD45、CD44及びCD90からなる。イヌURCをIFN-γでプライミングすると、MHCIIの発現が増加することが観察され、これは他のMSCに関する文献で報告されている変化であるため、MHCIIの評価を既存のCDマーカーセットに追加した。表29は、プライミング済みURC調製物及び非プライミングコントロールURC調製物についての単色頻度として、CDマーカーに対するQCリリースプロファイル発現レベルを、MHCII発現を含めて示している。
【表29】
【0524】
表29に示したように、プライミングした細胞では、非プライミングコントロール調製物と比較して、CD34、CD45及びCD44の発現パターンが類似している。
【0525】
CD90頻度はプライミングした調製物でかなりのばらつきがあり、10.2%(S-027)、16.0%(S-026)及び97.3%(S-017)のCD90発現頻度であった。表29に記載した血縁関係のないドナーURCのそれぞれに関し、MHCII発現頻度は、非プライミングコントロール調製物と比較して、プライミングした調製物の方が大幅に高い。S-027プライミング調製物のMHCII発現レベルは27.2%と最も低かったが、S-027プライミング細胞のMHCIIレベルの比率は、非プライミング細胞のMHCIIレベルと比較して約34X高い。また、S-017及びS-026では倍率増加がより高く認められたことから、IFN-γプライミングプロトコルにより、非プライミングイヌURCと比較して顕著なMHCII発現の増加が誘発されることが指し示される。
【0526】
非プライミング細胞におけるMHCIIの発現レベルは、実質的に1%未満であることが認められ、一方、プライミングしたイヌURC調製物におけるMHCIIの最小発現レベルは27.2%であった。対応するコントロール培養調製物に対するプライミングした培養調製物のMHCII発現における倍率増加は、非プライミングコントロールMHCII発現レベルに対する、プライミングした細胞のMHCII発現の実質的な倍率増加を示している。表29に示したように、S-017、S-026及びS-027に関し、非プライミング細胞のMHCII発現に対するプライミング済み細胞のMHCII発現の倍率増加は、それぞれ1360X、418X及び34Xであった。
【0527】
IFN-γに応答するMHCIIの表面発現は、骨髄から単離されたヒトMSCでは数日かかると報告されている。対照的に、プライミングしたイヌURC細胞調製物について表29に示したMHCII表面発現レベルは、曝露してからわずか2日で得られた。ヒトMSCに関して報告されている表面発現の遅さと比較して、URCで認められたMHCIIのより迅速な表面発現の潜在的利点の1つは、URC(プライミング済みまたは非プライミング)が、in vivoにおける炎症促進性環境に存在するIFN-γに対してより迅速に応答し得ることである。したがって、GallantのURCにおけるMHCIIの表面発現速度は、他の種及び/または組織のMSCと比較して、子宮組織由来URCの生物学的特性を際立たせるものとみなすことができる。
【0528】
三系統分化
【0529】
軟骨形成、骨形成及び脂肪生成細胞系列への分化誘導培地に対する応答を評価するために、前もってP4で凍結保存したプライミング済みイヌURCを解凍し、培養液中に入れた。三系統分化アッセイの培養液にはIFN-γを補充しなかった。各分化条件について、3つのイヌURC調製物の染色像を撮った(図示せず)。
【0530】
S-017では、軟骨形成誘導培地中で特徴的なアルシアンブルー染色ノジュールが示された。S-026及びS-027 URC調製物では、誘導培地像の隅に存在する薄暗くわずかに青に着色したノジュールが示しているように、D7で極めて確固としたノジュール形成が示された。軟骨形成のコントロール条件では、青く染色されたノジュールは見られなかった。URC調製物では、骨形成誘導培地条件において、特徴的なアリザリンレッド染色細胞外マトリックスが示されるが、3つのURC調製物のコントロール条件においては、赤く染色された細胞外マトリックスは存在しない。最後に、脂肪生成誘導培地で培養したURC細胞では、オイルレッドOで赤く染色された細胞内液胞の存在が示される。こうした赤く染色された液胞は非常に小さく、細胞の一部に関連するマトリックスの染色がさらに付随している。
【0531】
プライミングした3つのイヌURC調製物は、誘導培地存在下で、軟骨形成、骨形成、及び脂肪生成細胞系列への分化に成功したことを示した。プライミングしたURC調製物の三系統分化により、URCのプライミングにIFN-γを用いても、URCの多能性は変化しなかったことが示唆される。
【0532】
イヌURCのサイトカインプロファイル
【0533】
サイトカインは、前駆細胞によって分泌される重要分子であり、組織内の成体細胞及び免疫細胞の両方の細胞活性(例えば、増殖、アポトーシス、免疫調節)を調節するための、よく知られたパラクリン機構を構成する。複数の血縁関係のないイヌドナーURCのサイトカインプロファイルを、培養した細胞調製物の培養上清で得た。ドナーS-026及びS-027の上清を、PhenoVista Laboratory(San Diego,CA)で、ヒトサイトカイン用Isoplexis codeplexチップ及びマウスサイトカイン用Isoplexis codeplexチップを用いて分析した。ドナーS-011及びS-017の上清を、Quantibody Canine Cytokine 40アッセイ(Raybiotech,Peachtree Corners,GA,USA)で分析した。
【0534】
Isoplexis codeplexデバイスによるサイトカイン評価
【0535】
プライミング済み及び非プライミングイヌURC上清をヒト及びマウス両デバイスで分析した結果を、方法のセクションで概説した要件を満たすサイトカインデータで表30に示す。
【表30-1】

【表30-2】
【0536】
Quantibody Canine Cytokine 40による評価
【0537】
プライミング済み及び非プライミングイヌURC上清をQuantibody Canine Cytokine 40マイクロアレイで分析した結果を、方法のセクションで概説した要件を満たすサイトカインデータで表31に示す。
【表31-1】

【表31-2】
【0538】
MSCに関連する多種多様なサイトカイン及びタンパク質の分泌を評価するために、異なる検出技術に基づく2種のアッセイを使用した。重複する分析物がいくつかあったが、各アッセイは、IP-10、ガレクチン-3、ランテス、インターロイキン(IL-2、4、5、6、8、9、10、12、17A)、及びパーフォリンを含む重要なサイトカインの分泌確認に貢献した。分泌されたサイトカインセットでは、いくつかの異なる作用機序が示されるため、培養上清における多種多様なサイトカイン分泌物により、イヌURCの潜在的な治療効果が裏付けられる。例えば、イヌURCは、プライミング済みまたは非プライミングのいずれでも、T細胞、好酸球、好塩基球、好中球、リンパ球、樹状細胞及び単球を含む、多種多様な免疫細胞を標的とするいくつかの走化性サイトカインを分泌する。ガレクチン-3は、炎症促進性細胞を減少させるメディエーターとして作用することが示されている。IFN-γでプライミングしたイヌURCでは、非プライミングURCコントロール調製物と比較して、いくつかのサイトカイン(IP-10、MCP-1)の分泌が亢進したが、非プライミングイヌURCが分泌するほとんどのサイトカインの分泌も維持されている。
【0539】
プライミングしたイヌURCのMLR及びIDO/PGE活性
【0540】
プライミング済み及びコントロール(非プライミング)イヌドナー由来URC調製物セットのうちの1つ(S-017)を、MLR上清中のIDO活性(L-キヌレニンで測定)及びPGEレベルの決定と共に、Con A活性化イヌドナーPBMCの抑制について評価した。2つの異なるPBMCドナー(Daisy及びKato)を用いた、プライミング済み及びコントロールS-017 URC調製物に関連するMLR阻害の結果を表32に示す。4日間培養を継続してから、PBMC+Con A単独のコントロール条件において、及びPBMC+Con A/URCの試験条件において、活性化T細胞のレベルを決定した。IDO活性及びPGEレベルの倍率増加は、PBMC+Con A/URC条件において見出されたL-キヌレニン及びPGEのレベルを、PBMC+Con A単独条件におけるレベルで除算することにより決定した。
【表32】
【0541】
プライミングしたS-017 URC調製物を用いて生成されたPBMC活性化抑制データでは、Daisyから得たPBMCを用いたコントロールS-017調製物と比較して、抑制%において明白な増加が示された。IDO活性及びPGEにおいて、DaisyのPBMCを用いたMLRに由来するMLR上清でより大きい倍率増加が見られたが、KatoのPBMCを用いたMLRでも、非プライミング細胞と比較して、S-017プライミング済み細胞でより大きい倍率増加が示された。これらの観察から、プライミングしたURC調製物は、非プライミング調製物と比較して、PBMCの活性化を抑制するのに優れていることが示唆される。この抑制は、IDO及び/またはPGEによって媒介される可能性があり、これらの両方が免疫調節に関与することが文献で報告されている。
【0542】
プライミングしたイヌURCのIDO活性
【0543】
IDO活性は、L-キヌレニン及びN-ホルミルキヌレニン(NFK)を検出するアッセイで、プライミング済み及び非プライミングイヌURC調製物において評価した。これらの化合物はどちらも細胞内に存在するIDO活性に起因するものであり、IDO活性はトリプトファンに作用してNFKを産生し、その次にL-キヌレニンが生じる。表8は、10ng/mLのIFN-γに48時間曝してプライミングした、4つの血縁関係のないイヌURC調製物に関するL-キヌレニンのデータを示している。表9は、プライミングしたばかりのドナーS-011調製物及び前もってプライミング、凍結保存、及び解凍し、直ちにアッセイしたドナーS-011調製物のNFK活性を示している。
【表33】

【表34】
【0544】
プライミングしたイヌURC調製物の各々でIDO酵素活性が存在し、非プライミングコントロール培養物での0~3μMのL-キヌレニンレベルに対し、37~199μMのレベルが測定された(表8)。プライミングした調製物において、はるかに高いレベルのL-キヌレニンが検出されたことから、イヌURC調製物では、IFN-γでのプライミングに応答すると共に、IDOレベルが増加したことが示唆される。
【0545】
プライミングした細胞の評価で重要なことは、凍結保存し解凍したプライミング済み細胞がIDO活性を保持していることを示すことであった。ドナーS-011から得た凍結保存及び解凍プライミング済み細胞ペレットにおいて、IDO活性の上昇が保持されているという予備的エビデンスは、凍結保存したS-011プライミング済み細胞ペレットが、対応する培養したばかりのS-011細胞ペレットにおいて産生されたNFKのおよそ58%を保持していたことを示すことによって確立された(表33)。この結果により、プライミング状態が凍結保存及び解凍後も保持されることの予備的エビデンスがもたらされる。表33に見られるように、血縁関係のないドナーS-028及びS-029の凍結保存及び解凍プライミング済み細胞でもまた、解凍してもIDO活性が保持されていることが示された。対応するドナーS-028及びS-029の非プライミングコントロール細胞調製物では、非常に低いレベルでNFKが存在していることが示された。
【0546】
プライミングしたURCが、上で明らかにしたPBMC活性化の抑制に見られるような免疫調節能を示し、このことはMLR培養上清中のIDO及びPGEレベルの上昇と関連していることが実証されたことから、IFN-γでプライミングしたURC調製物の治療目的での使用が支持される。重要なことは、URCが凍結保存及び解凍後もプライミング状態(すなわち、IDOレベルの上昇)を保持していたことであり、このことは、解凍されたプライミング済みURCにおけるNFKが、解凍された非プライミングコントロール調製物と比較して、はるかに高レベルで存在したことによって示されている。
【0547】
要約
【0548】
プライミングしたURCにおけるMHCIIの表面発現が、対応する非プライミングコントロール調製物と比較して増加したことから示されるように、複数の血縁関係のないイヌドナーURCは、IFN-γでのプライミングに応答した。プライミングしたURCは、成体免疫細胞で発現されるタンパク質であるMHCIIを発現したが、プライミングしたURC調製物は、誘導培地に応答して、脂肪生成、軟骨形成及び骨形成細胞系列に分化した。プライミングしたURC調製物が三系統分化を経る可能性があることから、プライミングした細胞が、成体免疫細胞には見られない、前駆細胞に関連する特性である多能性という重要な特徴を保持していることが示唆される。さらに、ヒト骨髄由来MSCではMHCIIの発現速度が遅いと報告されていることに対比して、イヌURCをIFN-γでプライミングすると、MHCIIの急速な表面発現が誘導された。また、プライミングしたURCでは、前駆細胞のIFN-γによるプライミングに関連して発現される酵素IDOの活性レベルも上昇した。IFN-γでプライミングしたイヌURCでは、プライミングした細胞を凍結保存し、続いて解凍した後も、MHCIIの表面発現が保持された。また、凍結保存及び解凍したプライミング済みイヌURCでは、IDO活性のレベルも上昇したまま保持された。
【0549】
MLRアッセイにおいて、プライミングしたURC調製物がドナーPBMCの活性化を抑制することができたというエビデンスが得られた。この抑制作用は、IDO活性の増加、ならびにPGE分泌の増加に関連していた。IDO活性及びPGEレベルは、プライミング済みURC調製物において、非プライミングURC調製物と比較して高かった。IDO活性及びPGEはどちらも、特に炎症促進性作用を直接下方制御することによる、免疫細胞の免疫調節に重要なメディエーターである。
【0550】
サイトカインの発現には差があり、プライミングしたURCでは非プライミングURCよりも分泌レベルが高く(例えば、IP-10、MCP-1)、また、プライミングしたURCでは非プライミングURCよりも分泌レベルが低い(HGF、IL-2)。いくつかのサイトカインは、プライミング済みURCまたは非プライミングURCにより同程度のレベルで分泌された(ガレクチン-3)。IP-10のレベル上昇が認められたことにより、イヌURCが、「成体」様細胞よりの細胞への移行を誘発する種々の薬剤に曝された場合に応答し得る方法とほぼ同様にして、in vitroにおけるIFN-γによるプライミングに応答していることが示される。したがって、IFN-γでプライミングしたURCをin vivo処置として用いると、炎症促進性環境が存在するin vivo条件に対するより迅速な応答が支持され得る。
まとめると、こうした結果により、非プライミングイヌURCと比較して、プライミング済みイヌURC(URC)の治療効果が高まるという、IFN-γでのプライミングによるURCの変化が実証される。
【0551】
本明細書においては一般に、多数の実施形態を説明するために積極的な言い回しを用いて本発明を開示している。本発明はまた、物質もしくは材料、方法のステップ及び条件、プロトコル、または手順等の内容が、全部または一部除外されている実施形態も含む。
【0552】
先述した実施形態の少なくともいくつかにおいて、ある実施形態で使用される1つ以上の要素を別の実施形態で互換的に使用することができるが、このような置き換えが技術的に実行可能でない場合を除く。特許請求される内容の範囲から逸脱することなく、上述した方法及び構造に対して様々な他の省略、付加及び修正がなされ得ることが、当業者には認識されるであろう。このような修正及び変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される内容の範囲内に入ることが意図される。
【0553】
本明細書で任意の複数形及び/または単数形の用語が実質的に使用されていることに関して、当業者は、文脈及び/または用途に対して適切であるように、複数形から単数形へ、及び/または単数形から複数形へと変換することができる。明確性のために、種々の単数形/複数形の交換が、本明細書で明白に示される場合がある。
【0554】
一般に、本明細書で使用される用語、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、一般に「オープン」である用語として意図されると当業者には理解されるであろう(例えば、「を含む(including)」という用語は「を含むがそれに限定されない」と解釈されるべきであり、「を有する」という用語は「を少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「を含む(includes)」という用語は「を含むがそれに限定されない」と解釈されるべきである等)。さらに、請求項を詳述する特定の数が意図される場合、このような意図は、請求項に明白に詳述されることになり、このような詳述がない場合にはこのような意図が存在しないと当業者には理解されよう。理解の一助として、例えば、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項を詳述するために、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という語句を前置きする語法が含有され得る。しかしながら、このような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の詳述が、たとえ同じ請求項に「1つ以上」または「少なくとも1つ」という前置きの語句及び「a」または「an」等の不定冠詞が含まれる場合であっても、そのような請求項の詳述を含有する任意の特定の請求項を、そのような詳述事項を1つのみ含有する実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない(例えば、「a」及び/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。同様のことが、請求項を詳述するために用いられる定冠詞の使用についても有効である。加えて、たとえ請求項を詳述する特定の数が明白に詳述されていても、当業者は、このような詳述が少なくとも詳述された数を意味すると解釈されるべきであることを認めるであろう(例えば、他の修飾語句がないありのままの「2つの詳述事項」という詳述は、少なくとも2つの詳述事項、または2つ以上の詳述事項を意味する)。さらに、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ等」に類似した表記法が使用される場合、このような構造は一般に、当業者が理解するであろう当該表記法の意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」には、限定されないが、A単独を、B単独を、C単独を、AとBとを共に、AとCとを共に、BとCとを共に、及び/またはAと、Bと、Cとを共に有するシステム等が含まれることになる)。「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ等」に類似した表記法が使用される場合、このような構造は一般に、当業者が理解するであろう当該表記法の意味において意図される(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」には、限定されないが、A単独を、B単独を、C単独を、AとBとを共に、AとCとを共に、BとCとを共に、及び/またはAと、Bと、Cとを共に有するシステム等が含まれることになる)。さらに、明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する実質的に離接的な任意の単語及び/または語句は、当該用語の1つ、当該用語のいずれか、または当該用語の両方を含む可能性を企図するものと理解されるべきであることが当業者には理解されよう。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」もしくは「B」または「A及びB」の可能性を含むと理解されることになる。
【0555】
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群により記載されている場合、それによって本開示が、マーカッシュ群の任意の個々の要素または要素の亜群によっても説明されることを当業者は認めるであろう。
【0556】
当業者に理解されることになるように、例えば、文章により説明するという点から、ありとあらゆる目的で、本明細書に開示される全ての範囲は、可能な限りのありとあらゆるサブ範囲及びそのサブ範囲の組み合わせも包含する。列挙された任意の範囲は、少なくとも等しく2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分解される同一の範囲について十分に記載し、効果を与えるものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書に記述された各範囲は、下側の3分の1、中間の3分の1及び上側の3分の1等に容易に分解され得る。また、当業者に理解されることになるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より少ない」、及び同様のもの等の全ての言い回しには、言及された数が含まれ、上述した通り、その後にサブ範囲に分解され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解されることになるように、範囲は、個々の各要素をそれぞれ含む。したがって、例えば、1~3の項目を有する群は、1、2、または3の項目を有する群を指す。同様に、1~5の項目を有する群は、1、2、3、4、または5の項目等を有する群を指す。
【0557】
種々の態様及び実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態も当業者には明らかとなるであろう。本明細書に開示した種々の態様及び実施形態は、例示を目的とするものであり、限定を意図するものではなく、真の範囲及び精神は、特許請求の範囲によって示される。
【0558】
限定されないが、公開及び未公開の出願、特許、ならびに参考文献を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、これによって本明細書の一部となる。参照により組み込まれる刊行物及び特許または特許出願が、本明細書に含有される開示内容と矛盾する場合において、本明細書は、そのような矛盾したあらゆる内容に取って代わる、及び/または優先することが意図される。
図1
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図10-1】
図10-2】
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【国際調査報告】