(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両の仮想プロトタイプ作成方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20241112BHJP
B60W 10/22 20060101ALI20241112BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20241112BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20241112BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20241112BHJP
B60W 10/20 20060101ALI20241112BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20241112BHJP
B60W 40/11 20120101ALI20241112BHJP
B60W 40/112 20120101ALI20241112BHJP
B60W 40/13 20120101ALI20241112BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W10/22
B60W40/076
B60W10/00 148
B60W10/184
B60W10/20
B60W10/04
B60W40/11
B60W40/112
B60W40/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024526692
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 AT2022060384
(87)【国際公開番号】W WO2023081944
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・フレック
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・オスヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・シュラーガー
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA31
3D241AA69
3D241AB01
3D241AD04
3D241AD47
3D241AD50
3D241AD51
3D241AE02
3D241AE45
3D241AF07
3D241BA18
3D241BA50
3D241BA62
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CC18
3D241CD01
3D241CE08
3D241CE09
3D241DA05Z
3D241DA52Z
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3D241DB46Z
3D241DB47Z
3D241DB48Z
3D241DC41Z
(57)【要約】
道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するための方法(S0)であって、以下の作業ステップ、すなわち、測定走行の測定変数の値を記録する作業ステップ(S1)、測定変数の記録された値に基づいて、加速時ピッチ勾配パラメータに関して少なくとも1つの値を計算する作業ステップ(S2)、車両モデルを用いて車両のシミュレーションを行う作業ステップであって、車両モデルには、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、車両の車種、並びに車両の以下の物理的特性、すなわち、‐バネ剛性、‐ダンパー剛性、‐ホイールベース、‐重心位置及び重心配置、‐車両質量、が含まれており、少なくとも加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ(S3)、道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、車両モデルを用いてシミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値と比較する作業ステップ(S4)、アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように車両モデルを調整する作業ステップ(S5)、車両モデルのアンチフィーチャの値を出力する作業ステップ(S6)を有しており、シミュレーション、比較及び調整の作業ステップは、終了条件に達するまで繰り返される方法(S0)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に請求項8から11のいずれか一項に記載の、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するための方法(S0)であって、以下の作業ステップ、すなわち、
S1)測定走行の測定変数の値を記録する作業ステップ、
S2)前記測定変数の記録された値に基づいて、加速時ピッチ勾配パラメータに関して少なくとも1つの値を計算する作業ステップ、
S3)車両モデル(M)を用いて前記車両(1)のシミュレーションを行う作業ステップであって、前記車両モデル(M)には、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、前記車両(1)の車種、並びに前記車両(1)の以下の物理的特性、すなわち、
‐バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、
‐ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、
‐ホイールベース、
‐重心位置、特に重心高さ及び重心配置、
‐車両質量、
が含まれており、少なくとも前記加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
S4)作業ステップS2において計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、作業ステップS3においてシミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータの値と比較する作業ステップ、
S5)前記アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する作業ステップ、
S6)前記車両モデル(M)の前記アンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、作業ステップS3~S5は、終了条件に達するまで繰り返される、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するための方法(S0)。
【請求項2】
前記終了条件が、シミュレーションされたパラメータと道路測定に基づいて計算されたパラメータとの間の差の最小値、特に局所的若しくは絶対的な最小値に到達すること、及び/又はシミュレーションされたパラメータの限界値に到達すること、特に前記パラメータが無限小にのみ変化する場合に前記限界値に到達することである、請求項1に記載の方法(S0)。
【請求項3】
以下の物理的特性群、すなわち、
軸荷重、車両タイプ、車両クラス、前車軸の振動数、後車軸の振動数、減衰係数、
からの車両(1)の物理的特性に基づいて、バネ剛性及びダンパー剛性が導出される、請求項1又は2に記載の方法(S0)。
【請求項4】
作業ステップS1において記録される測定変数が、以下の測定変数群、すなわち、
縦加速度、
横加速度、
ピッチ角、
ロール角、
ステアリング角、
タイヤスリップ角、
速度、
スロットル位置、
から選択されており、記録された値は、作業ステップS2)において各パラメータを計算するために少なくとも部分的に用いられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(S0)。
【請求項5】
測定走行の間、目標変数の関数として、少なくとも以下の運転操作、すなわち、
‐全負荷加速、部分負荷加速、全制動、部分制動、所定の速度、特に80km/hでのハンドルロック、
が実施され、好ましくは一定半径でのコーナリングが付加的な操作として実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(S0)。
【請求項6】
作業ステップS2においてさらに、制動時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値が、測定変数の記録された値に基づいて計算され、さらに、以下の作業ステップ、すなわち、
S7)車両モデル(M)を用いて車両(1)を再度シミュレーションする作業ステップであって、前記車両モデル(M)には、アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値が付加的に含まれ、前記車両(1)の付加的な物理的特性として従動軸に関する情報が含まれ、前記制動時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
S8)作業ステップS2において計算された前記制動時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、作業ステップS7においてシミュレーションされた同じパラメータの値と比較する作業ステップ、
S9)前記アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値を変更することによって、シミュレーションされた前記制動時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記制動時ピッチ勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する作業ステップ、
S10)調整された前記車両モデル(M)から前記アンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、作業ステップS7~S9は、終了条件に達するまで繰り返される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(S0)。
【請求項7】
作業ステップS2においてさらに、ロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング角勾配パラメータの少なくとも1つの値が、測定変数の記録された値に基づいて計算され、さらに以下の作業ステップ、すなわち、
S11)車両モデル(M)を用いて車両を再度シミュレーションする作業ステップであって、前記車両モデル(M)には、アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値と、物理的特性であるステアリング角とが付加的に含まれ、前記ロール勾配パラメータに関する車線幅、前記スリップ角勾配パラメータに関するステアリング角及び車両軌道、前記ステアリング角勾配パラメータに関するステアリング角及び横加速度が車両の物理的特性として付加的に含まれ、前記ロール勾配パラメータ、前記スリップ角勾配パラメータ及び前記ステアリング角勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
S12)作業ステップS2において計算された前記ロール勾配パラメータ、前記スリップ角勾配パラメータ、及び前記ステアリング角勾配パラメータの少なくとも1つの値を、作業ステップS11においてシミュレーションされたそれぞれ同じパラメータの値と比較する作業ステップ、
S13)前記アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値を変更することによって、シミュレーションされた前記ロール勾配パラメータ、シミュレーションされた前記スリップ角勾配パラメータ、及びシミュレーションされた前記ステアリング角勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記ロール勾配パラメータ、計算された前記スリップ角勾配パラメータ、及び計算された前記ステアリング角勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する作業ステップ、
S14)調整された前記車両モデル(M)から前記アンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、作業ステップS11~S13は、終了条件に達するまで繰り返される、請求項6に記載の方法(S0)。
【請求項8】
道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのコンピュータにより実装される方法(S0)であって、車両サスペンションのアンチフィーチャを有する仮想プロトタイプの車両モデル(M)は、道路測定の測定値に基づいて、ソフトウェアインザループシミュレーション(100)、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーション(100)によってパラメータ化され、前記車両モデルのドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループ(110、120、130)における前記車両モデル(M)の前記アンチフィーチャの値は、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定される、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのコンピュータにより実装される方法(S0)。
【請求項9】
前記車両モデル(M)が、アンチフィーチャである「アンチリフトフロント」、「アンチスクワットリア」、「アンチダイブフロント」、「アンチリフトリア」、「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」を有しており、第1のシミュレーションループでは「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値が、第2のシミュレーションループでは「アンチダイブフロント」及び「アンチリフトリア」の値が、第3のシミュレーションループでは「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」が決定される、請求項8に記載の方法(S0)。
【請求項10】
第1のシミュレーションループ(110)においてシミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において前記車両モデル(M)が最適化される、請求項8又は9に記載の方法(S0)。
【請求項11】
第2のシミュレーションループ(120)においてシミュレーションされた制動時ピッチ勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において前記車両モデル(M)が最適化される、請求項10に記載の方法(S0)。
【請求項12】
第3のシミュレーションループ(130)においてシミュレーションされたロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング角勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において前記車両モデル(M)が最適化される、請求項11に記載の方法(S0)。
【請求項13】
それぞれ1つのシミュレーションループ(110、120、130)で決定されたアンチフィーチャの値が、他のシミュレーションループに受け入れられる、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法(S0)。
【請求項14】
車両(1)が、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法(S0)を用いて作成された前記車両(1)の仮想プロトタイプを用いてシミュレーションされる、車両(1)を分析するための方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行される場合、前記コンピュータに請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム又は記憶媒体。
【請求項16】
道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)であって、アンチフィーチャを有する仮想プロトタイプの車両モデル(M)をパラメータ化するための手段(11、12、13、14、15)を有し、パラメータ化するための前記手段(11、12、13、14、15)は、道路測定の測定値に基づいて、ソフトウェアインザループシミュレーション、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーションによって、前記車両モデル(M)のドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループにおける前記車両モデル(M)のアンチフィーチャの値を、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定するように設定されている、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)。
【請求項17】
特に請求項16に記載の、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)であって、パラメータ化するための手段(11、12、13、14、15)を有しており、パラメータ化するための前記手段(11、12、13、14、15)は、
測定走行中に記録された測定変数の値に基づいて加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を計算するための手段(11)、
車両モデル(M)を用いて車両のシミュレーションを行うための手段(12)であって、前記車両モデル(M)には、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、前記車両(1)の車種、並びに前記車両(1)の少なくとも以下の物理的特性、すなわち、
バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、ホイールベース、重心位置、特に重心高さ及び重心配置、車両質量、
が含まれており、少なくとも前記加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される手段(12)、
道路測定に基づいて計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値と、シミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータの値とを比較する手段(13)、
前記アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する手段(14)、
前記車両モデル(M)の前記アンチフィーチャの値を出力するためのインターフェース(15)、
を含んでおり、パラメータ化するための前記手段は、終了条件に達するまで前記車両モデル(M)を調整するように設定されている、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路測定データに基づいて車両の仮想プロトタイプを作成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的なデータに基づいて車両のドライビングダイナミクスに関する運転挙動を分析することは従来技術から知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、以下のステップを有する自動車の運転挙動のプロセス分析が開示されている。
‐運転挙動に関する測定変数を得るために、実車で測定を実施するステップ、
‐自動車の所定の運転状態に対応する所定のトリガー条件、すなわち測定変数群が満たされているかどうかを継続的に検査するステップ、
‐トリガー条件の1つが満たされた場合にのみ、トリガー条件に依存する所定の関数に基づいて、1つ又は複数の測定変数から、車両のドライバビリティを表す少なくとも1つの評価変数を計算するステップ、
‐評価変数を出力するステップ。
【0004】
車両のドライビングダイナミクスに関する運転挙動を分析するために、また、分析を可能な限りすべての運転操作、道路及び環境条件において行うためには、多くの試験走行キロメートルを走破しなければならない。
【0005】
さらに、これらの試験走行は、車両の開発段階の後期にようやく実施可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0846945号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、車両の仮想プロトタイプを提供することにある。特に、車両の仮想プロトタイプの作成を可能な限り自動化することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、独立請求項の教示によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の第1の態様は、道路測定のデータに基づいて車両の仮想プロトタイプを作成するための方法に関し、当該方法は以下の作業ステップ、すなわち、
‐測定走行の測定変数の値を記録する作業ステップ、
‐測定変数の記録された値に基づいて、加速時ピッチ勾配パラメータに関して少なくとも1つの値を計算する作業ステップ、
‐車両モデルを用いて車両のシミュレーションを行う作業ステップであって、車両モデルには、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、車両の車種、並びに車両の以下の物理的特性、すなわち、
‐バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、
‐ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、
‐ホイールベース、
‐重心位置、特に重心高さ、好ましくは車輪半径を差し引いた重心位置、及び重心配置、車両質量、
が含まれており、少なくとも加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
‐道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、車両モデルを用いてシミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値と比較する作業ステップ、
‐アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように車両モデルを調整する作業ステップ、
‐車両モデルのアンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、シミュレーション、比較及び調整の作業ステップは、終了条件に達するまで繰り返される。
【0010】
本発明の第2の態様は、道路測定のデータに基づいて車両の仮想プロトタイプを作成するためのコンピュータにより実装される方法に関し、アンチフィーチャを有する仮想プロトタイプの車両モデルは、道路測定の測定値に基づいて、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーションによってパラメータ化され、車両モデルのドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループにおける車両モデルのアンチフィーチャの値は、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定される。
【0011】
本発明の第3の態様は、道路測定のデータに基づいて車両の仮想プロトタイプを作成するためのシステムに関し、当該システムは、アンチフィーチャを有する仮想プロトタイプの車両モデルをパラメータ化するための手段を有し、パラメータ化するための当該手段は、道路測定の測定値に基づいて、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーションによって、車両モデルのドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループにおける車両モデルのアンチフィーチャの値を、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定するように設定されている。
【0012】
本発明の第4の態様は、パラメータ化するための手段を備える、道路測定のデータに基づいて車両の仮想プロトタイプを作成するためのシステムに関し、パラメータ化するための手段は、
‐測定走行中に記録された測定変数の値に基づいて加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を計算するための手段、
‐車両モデルを用いて車両のシミュレーションを行うための手段であって、車両モデルには、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、車両の車種、並びに車両の少なくとも以下の物理的特性、すなわち、
‐バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、
‐ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、
‐ホイールベース、
‐重心位置、特に重心高さ、及び重心配置、
‐車両質量、
が含まれており、少なくとも加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される手段、
‐道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値と、シミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値とを比較する手段、
‐アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように車両モデルを調整する手段、
‐車両モデルのアンチフィーチャの値を出力するためのインターフェース、
を含んでおり、パラメータ化手段は、終了条件に達するまで車両モデルを調整するように設定されている。
【0013】
本発明の第5の態様は、車両を分析する方法に関し、車両は、道路測定に基づいて仮想プロトタイプを作成するための本発明に係る方法によって作成された車両の仮想プロトタイプを用いてシミュレーションされる。
【0014】
本発明のさらなる態様は、コンピュータプログラム、及びコンピュータによって実行される場合、コンピュータに本発明に係る方法を実行させる命令を有する記憶媒体に関する。
【0015】
本発明の意味での道路測定は、好ましくは、実地測定、すなわち、車両の実際の運転動作において行われる測定である。
【0016】
本発明の意味でのソフトウエアインザループシミュレーションは、好ましくは、ソフトウエアによって記述されたコンポーネントが仮想モデル世界で試験されるシミュレーションである。
【0017】
本発明の意味でのアンチフィーチャは、好ましくは、車両の特性を表している。特に、サスペンションシステムにおけるアンチフィーチャは、引張力下(制動時又は加速時)における前輪又は後輪サスペンションの挙動を表す特性である。アンチフィーチャはさらに、好ましくは、車両サスペンションの幾何学的形状に起因する。好ましくは、これらの特性は、車両の望ましくない動きに抵抗するか、あるいは防止するアンチデバイス(アンチダイブ、アンチロールなど)の効果を特徴付ける。好ましくは、アンチフィーチャの値は、侵入深度に依存する。さらに好ましくは、この依存性は、関数又は特性マップとして記憶され得る。
【0018】
本発明の意味でのピッチは、好ましくは、車両のピッチング又はヒーブとも呼ばれる。
【0019】
本発明の意味における加速時ピッチ勾配パラメータは、好ましくは、縦加速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示す。
【0020】
本発明の意味における制動時ピッチ勾配パラメータは、好ましくは、縦方向の減速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示す。
【0021】
本発明のロール勾配パラメータは、好ましくは、車両のロールの勾配、横加速度とロール角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示す。
【0022】
本発明の意味でのスリップ角勾配パラメータは、好ましくは、車両の横加速度に対するスリップ角の勾配、特に平均した又はフィルタリングした勾配を示す。
【0023】
本発明の意味におけるステアリング角勾配パラメータは、好ましくは、車両の横加速度に対するステアリング角の勾配、特に平均した又はフィルタリングした勾配を示す。
【0024】
本発明の意味における車種は、好ましくは、車両クラス及び/又は車両タイプを示す。ここで、車両クラスは、特に車両の相対的な大きさ、例えば小さい車両、大きい車両、サブコンパクトカー、コンパクトカー、中型車、大型車、高級車などを特徴付け、車両タイプは、特に車両のボディ、例えばスポーツカー、リムジン、ミニバン、RV車、SUVなどを特徴付ける。
【0025】
本発明は、サスペンションシステムのアンチフィーチャと、車両の3軸の周りでの動き、特に縦軸及び横軸の周りでの回転のいわゆる主要パラメータとを、仮想プロトタイプに関する反復シミュレーションプロセスによって決定できるというアプローチに基づいている。こうして、試験車両を用いたさらなる試験走行を必要とせずに、車両のドライビングダイナミクスに関する運転挙動をシミュレーションすることができる。車両モデルはこのようにして、少ない労力で、短時間で、検証可能な高い品質で作成され得る。この際、車体の動き、特に縦軸及び横軸周りでの回転と振動とを特に的確にシミュレーションすることが可能である。さらに、限界範囲まで、すなわち最大横加速度における車両のハンドリング挙動を、シミュレーションモデルにおいて正確にマッピングすることができる。本発明に係る方法によって、道路測定の測定データに基づく車両モデルの自動的な作成が行われ得る。
【0026】
有利な実施形態では、車両モデルは、「アンチリフトフロント」、「アンチスクワットリア」、「アンチダイブフロント」、「アンチリフトリア」、「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」というアンチフィーチャを有しており、「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」は、第1のシミュレーションループにおいて、「アンチダイブフロント」及び「アンチリフトリア」は第2のシミュレーションループにおいて、「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」は第3のシミュレーションループにおいて決定される。
【0027】
上記のアンチフィーチャは、車両の基本的に妨げになる動きに抵抗し、車両の物理的特性とともに、車両のドライビングダイナミクスに関する運転挙動を特徴付けることを可能にする。個々のアンチフィーチャは、個々のシミュレーションループにおける単独の考察を通じて、それぞれ次々に決定され得る。有利な実施形態において指定される、決定に際するシーケンスは、個々のアンチフィーチャが互いに及ぼす影響の強さを考慮するので、特に有利である。
【0028】
この際、好ましくは、第1のシミュレーションループにおいてシミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において車両が最適化される。
【0029】
さらに好ましくは、第2のシミュレーションループにおいてシミュレーションされた制動時ピッチ勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において車両モデルが最適化される。
【0030】
さらに好ましくは、第3のシミュレーションループにおいてシミュレーションされたロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において車両モデルが最適化される。
【0031】
いわゆる主要パラメータを決定するこのシーケンスは、特に時間の節約になることが証明されており、主要パラメータは、先に決定された主要パラメータに補正を加えることなく、当該シーケンスにおいて特に現実的に決定され得る。
【0032】
さらなる有利な実施形態では、1つのシミュレーションループで決定されたアンチフィーチャの値はそれぞれ、他のシミュレーションループに受け入れられる。これによって、個々のシミュレーションループにおける現実の表現の精度をさらに高めることができる。
【0033】
本方法のさらなる有利な実施形態において、終了条件は、シミュレーションされたパラメータと道路測定に基づいて計算されたパラメータとの間の差の最小値、特に局所的又は絶対的な最小値に到達すること、及び/又はシミュレーションされたパラメータの限界値に到達すること、特にシミュレーションされたパラメータが無限小にのみ変化する場合に当該限界値に到達することであるか、又はそれに相当する。
【0034】
このような終了条件を通じて、本発明に係る方法によって、特に現実に忠実な表現を達成することができる。
【0035】
さらなる有利な実施形態では、当該方法は以下の作業ステップをさらに有する。
以下の群からの車両の物理的特性に基づいて、バネ剛性及びダンパー剛性を計算する作業ステップ、すなわち、
‐軸荷重、車両タイプ、車両クラス、前車軸の振動パターン、後車軸の振動パターン、減衰係数。
【0036】
当該方法のさらなる有利な実施形態では、記録される測定変数は、以下の測定変数群から選択される。
‐縦加速度、ピッチ角、横加速度、ロール角、ステアリング角、タイヤスリップ角、速度、スロットル位置。
【0037】
好ましくは、記録された値は、各パラメータを計算するために少なくとも部分的に用いられる。
【0038】
ここでは特に、縦加速度及びピッチ角のパラメータが、加速時ピッチ勾配パラメータ及び制動時ピッチ勾配パラメータを計算するために用いられる。これに対して、横加速度、ロール角、ステアリングホイールのスリップ角、タイヤのスリップ角は、主にスリップ角勾配パラメータ及びステアリングホイールの勾配パラメータにおけるロール勾配パラメータを計算するために使用される。
【0039】
上記の測定変数は、車両上で容易に決定することができる。
【0040】
当該方法のさらなる有利な実施形態では、測定走行中に、目標変数の関数として、少なくとも以下の運転操作が実行される。
‐全負荷加速、部分負荷加速、全制動、部分制動、80km/hでのハンドルロック。
【0041】
好ましくは、一定の半径でのコーナリングが付加操作として実施される。
【0042】
当該方法のさらなる有利な実施形態では、測定変数の記録された値に基づいてさらに、制動時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値が計算され、当該方法はさらに、以下の作業ステップ、すなわち、
‐車両モデルを用いて車両を再度シミュレーションする作業ステップであって、車両モデルには、アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値が付加的に含まれ、車両の付加的な物理的特性として従動軸に関する情報が含まれ、制動時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
‐計算された制動時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、同じパラメータのシミュレーションされた値と比較する作業ステップ、
‐アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値を変更することによって、シミュレーションされた制動時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された制動時ピッチ勾配パラメータに適合させるように車両モデルを調整する作業ステップ、
‐調整された車両モデルからアンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、少なくともいくつかの作業ステップは、終了条件に達するまで繰り返される。
【0043】
好ましくは、車両を再度シミュレーションする際に、先に決定された加速時ピッチ勾配の値が既に考慮される。
【0044】
本発明の意味において、従動軸に関する情報とは、特に、いずれの車軸が駆動されるか、若しくはドライブトレイン部品によって制動されるか、又はブレーキがギアボックスの内側にあるか、若しくは車輪側にあるかを意味すると理解される。これは、電気駆動装置を備えた車両の場合、特に重要である。
【0045】
本方法のさらなる有利な実施形態では、ロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング角勾配パラメータの少なくとも1つの値が、記録された測定変数に基づいて計算され、本方法はさらに以下の作業ステップ、すなわち、
‐車両モデルを用いて車両を再度シミュレーションする作業ステップであって、車両モデルには、アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値と、物理的特性であるステアリング角とが付加的に含まれ、ロール勾配パラメータに関する車線幅、スリップ角勾配パラメータに関するステアリング角及び車両軌道が、車両の物理的特性として付加的に含まれ、ロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング角勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
‐計算されたロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ、及びステアリング角勾配パラメータの少なくとも1つの値を、それぞれ同じパラメータのシミュレーションされた値と比較する作業ステップ、
‐アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値を変更することによって、シミュレーションされたロール勾配パラメータ、シミュレーションされたスリップ角勾配パラメータ、及びシミュレーションされたステアリング角勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算されたロール勾配パラメータ、計算されたスリップ角勾配パラメータ、及び計算されたステアリング角勾配パラメータに適合させるように車両モデルを調整する作業ステップ、
‐調整された車両モデルからアンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、少なくともいくつかの作業ステップは、終了条件に達するまで繰り返される。
【0046】
この有利な実施形態においても、先に決定されたアンチフィーチャである「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値が、好ましくは既に含まれている。
【0047】
さらなる特徴及び利点は、図を参照した説明から明らかになる。少なくとも部分的に以下が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】車両の仮想プロトタイプを作成するための方法の一実施例を示す図である。
【
図2】車両の加速状態におけるアンチフィーチャの定義に関する例を示す図である。
【
図3】車両の減速状態におけるアンチフィーチャの定義に関する例を示す図である。
【
図4】車両の仮想プロトタイプを作成するためのシステムの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、道路測定のデータに基づいて車両1の仮想プロトタイプを作成するための方法S0の一実施例を示している。
【0050】
道路測定のために、好ましくは、車道2、特に道路上で車両1を用いて測定走行が実施される。
【0051】
当該方法は、好ましくは、3つのシミュレーションループ110、120、130を有し、これらのシミュレーションループは、好ましくは、次々に実行される。
【0052】
個々のシミュレーションループ110、120、130において、好ましくは、例えばピッチ勾配、ロール勾配、スリップ角勾配又はステアリング角勾配などの車両モデルのドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化される。決定されたアンチフィーチャは、各ループの後で出力され、車両モデルにおいて考慮される。
【0053】
第1の作業ステップS1では、測定走行の測定変数の値が記録される。これは、一方ではデータインターフェースを介して行うことができるが、測定走行中にセンサによって直接行うこともできる。
【0054】
第2の作業ステップS2では、測定変数の記録された値に基づいて、ドライビングダイナミクスに関するパラメータである加速時ピッチ勾配の少なくとも1つの値が計算される。
【0055】
第1のシミュレーションループ110の一部である第3の作業ステップS3では、車両1が車両モデルMでシミュレーションされる。車両モデルMには、車両サスペンションのアンチフィーチャ、車両1の車種、及び車両1のさらなる物理的特性が含まれる。したがって、車両モデルMは、これらの変数に依存する。車両1のさらなる物理的特性は、好ましくは、バネ剛性、特に前車軸のバネ剛性及び後車軸のバネ剛性、ダンパー剛性、特に前車軸のダンパー剛性及び後車軸のダンパー剛性、ホイールベース、重心位置、特に重心高さ及び重心配置、並びに車両質量である。ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値が、このシミュレーションの目標変数として出力される。
【0056】
同様に第1のシミュレーションループ110の一部である第4の作業ステップS4では、その第2の作業ステップS2で計算されたドライビングダイナミクスに関するパラメータであるピッチ勾配の少なくとも1つの値が、作業ステップS3でシミュレーションされたパラメータであるピッチ勾配の値と比較される。この際、しかしながら、加速時ピッチ勾配の値のみがつねに考慮される。
【0057】
第5の作業ステップS5において、車両モデルMは、そのシミュレーションされたピッチ勾配パラメータの値が、道路測定に基づいて計算されたピッチ勾配パラメータの値と可能な限り同じになるように調整される。この目的のために、好ましくは、アンチフィーチャの値が調整される。第1のシミュレーションループ110では、好ましくは、アンチフィーチャである「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値が計算される。
【0058】
最後に、第6の作業ステップS6において、車両モデルMのアンチフィーチャの値が、車両モデルMに出力され、車両モデルMにおいて考慮され得る。この際、シミュレーションループ110の作業ステップS3~S5は、終了条件に達するまで繰り返される。
【0059】
この終了条件は、特に最適化問題によって指定される。好ましくは、終了条件は、シミュレーションされたドライビングダイナミクスに関するパラメータ(第1のシミュレーションループ110の場合、加速中に存在するピッチ勾配)と、道路測定に基づいて計算された対応するドライビングダイナミクスに関するパラメータとの間の差の局所的又は絶対的な最小値に到達することである。
【0060】
さらに、終了条件は、特にパラメータが無限小にのみ変化する場合、シミュレーションされたパラメータの限界値に達することであり得る。
【0061】
バネ剛性及びダンパー剛性は、好ましくは以下の物理的特性群からの、車両1の物理的特性に基づいて導出される。
‐軸荷重、車両タイプ、車両クラス、前車軸の振動数、後車軸の振動数、減衰係数。
【0062】
第1の作業ステップS1で記録される測定変数は、さらに、好ましくは以下の測定変数群から選択される。
‐縦加速度、横加速度、ピッチ角、ロール角、ステアリング角、タイヤスリップ角、速度、スロットル位置。
【0063】
実際に記録又は測定される測定変数は、それぞれ計算されるドライビングダイナミクスに関するパラメータに依存する。
【0064】
測定走行の間、同様に決定されるドライビングダイナミクスに関するパラメータの関数として、例えば以下の運転操作が実行される。
‐全負荷加速、部分負荷加速、全制動、部分制動、所定の速度、特に80km/hでのハンドルロック、一定半径でのコーナリング。
【0065】
第1のシミュレーションループ110と同様に、後続の第2のシミュレーションループ120は、第7の作業ステップS7において、車両1の再度のシミュレーションを有し、第8の作業ステップS8では、第2の作業ステップS2で計算されたドライビングダイナミクス値の、ドライビングダイナミクスに関するパラメータのシミュレーションされたドライビングダイナミクス値との比較を有し、第9の作業ステップS9では、車両モデルMの調整を有する。
【0066】
第2のシミュレーションループのこれらの作業ステップも同様に、終了条件に達するまで繰り返される。第1のシミュレーションループ110とは異なり、考慮されるアンチフィーチャは、「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」であり、考慮されるドライビングダイナミクスに関するパラメータは、制動時ピッチ勾配である。
【0067】
この際、車両モデルMには、好ましくはアンチフィーチャ及びドライビングダイナミクスに関するパラメータである加速時ピッチ勾配に関して第1のシミュレーションループ110で決定された値が含まれる。第2のシミュレーションループ120の後でも、アンチフィーチャに関して決定された値が車両モデルMに出力されるか、又は車両モデルMにおいて考慮される。
【0068】
第2のシミュレーションループ120の完了後、すなわち終了条件に達した際に、アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」が出力される。
【0069】
第3のシミュレーションループ130では、第11の作業ステップS11において、車両モデルMを用いて車両Mがシミュレーションされ、第12の作業ステップS12において、ドライビングダイナミクスに関するパラメータのシミュレーションされた値がドライビングダイナミクスに関するパラメータの計算された値と比較され、これによって、第13の作業ステップS13において、車両モデルMが、実際の道路測定に基づいて計算されたドライビングダイナミクスに関するパラメータの値に適合する。
【0070】
第1のシミュレーションループ110及び第2のシミュレーションループ120とは異なり、第3のシミュレーションループ130では、ロール勾配、スリップ角勾配及びステアリング角勾配のドライビングダイナミクスに関するパラメータが目標変数として計算され、アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値が計算される。また、第3のシミュレーションループ130の後でも、アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値が第14の作業ステップS14において出力され、特に車両モデルMに出力されるか、又は車両モデルMにおいて考慮される。
【0071】
ロール勾配パラメータは、付加的に、物理パラメータである車線幅に基づいて計算される。スリップ角勾配パラメータは、付加的に、物理パラメータであるステアリング角及び車両の実際の移動方向に基づいて決定される。ステアリング角勾配パラメータは、付加的に、物理パラメータであるステアリング角及び横加速度に基づいて決定される。
【0072】
スリップ角は、好ましくは、ステアリング角と実際の移動方向との角度差を示す。
【0073】
図2及び
図3は、例示的なアンチフィーチャの定義を示している。
【0074】
この際、アンチフィーチャである「アンチリフト」、「アンチスクワット」及び「アンチダイブ」がそれぞれ示されており、当該アンチフィーチャは、縦加速度及び縦減速度によって引き起こされるいわゆるピッチングに抵抗する。
【0075】
図2は、縦加速度の場合の、対応するアンチフィーチャの定義に関する。
【0076】
図3は、減速又は制動の場合の、アンチフィーチャの定義に関する。
【0077】
それぞれ
図2e及び
図3eから、車両1が、
図2eでは後方へのピッチング運動を行い、
図3eでは前方へのピッチング運動を行うことがわかる。
【0078】
ピッチング運動は、車両1の重心の周りで行われる。この際、ピッチング運動は、車両1の各車輪軸が駆動軸を有して独立しているか、剛性車軸であるか、又はホイールハブモータを有して独立した車軸であるかに依存する。
【0079】
加速に対応して、車両1の前部における車両の仮想下側平面が道路2に対して上昇する。対応して、
図3に示すように、車両1がブレーキをかけると、
図3eの車両1の前部における車両の仮想下側平面は、道路2に対して下降する。
【0080】
この加速は、
図2においてそれぞれ矢印F
xで示されている。ブレーキの減速も同様に、
図3においてそれぞれベクトル矢印F
xで示されている。
【0081】
縦方向の加速又は減速に関連してそれぞれのアンチフィーチャを特徴付けるパラメータは、加速力F
x又は制動減速力F
xの関数として
図2及び
図3に示される角度φである。
【0082】
図2aは、駆動軸を有する独立した前車軸に関連した加速時のアンチフィーチャである「アンチリフト」の定義を示している。
【0083】
図2bは、駆動軸を有する独立した車軸に関連した加速時のアンチフィーチャである「アンチスクワット」の定義を示している。
【0084】
図2cは、剛性前車軸又はハブモータを有する独立した前車軸に関連した加速時のアンチフィーチャである「アンチリフト」の定義を示している。
【0085】
図2dは、剛性後車軸又はハブモータを有する独立した後車軸に関連した加速時のアンチフィーチャである「アンチスクワット」の定義を示している。
【0086】
図3aは、ギアボックスの内側にブレーキを備えた独立した前車軸に関連した減速時のアンチフィーチャである「アンチダイブ」の定義を示している。
【0087】
図3bは、ギアボックスの内側にブレーキを備えた独立した車軸に関連した減速時のアンチフィーチャである「アンチリフト」の定義を示している。
【0088】
図3cは、車輪側にブレーキを備えた独立した前車軸又は剛性前車軸に関連した減速時のアンチフィーチャである「アンチダイブ」の定義を示している。
【0089】
図3dは、外側にブレーキを備えた独立した後車軸又は剛性後車軸に関連した減速時のアンチフィーチャである「アンチリフト」の定義を示している。
【0090】
2つのアンチフィーチャ「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の定義は、Jin Gao et al., "Study on the effect of stiffness matching of anti-roll bar in front and rear of vehicle on the handling stability", International Journal of Automotive Technology, vol.22, No.1, p.185-199 (2021)、及びYahong Dong et al., "Analysis of characteristics and structure optimization of anti-roll intorsion bar", ICMD 2019, MMS 77, p.139-150, Springer Nature Singapore (2020)に記載されている。
【0091】
図4は、道路測定のデータに基づいて車両の仮想プロトタイプを作成するためのシステム10の実施例を示しており、システム10は、仮想プロトタイプの車両モデルMをパラメータ化する手段11、12、13、14、15を有している。この際、パラメータ化のための手段11、12、13、14、15は、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーションによって、道路測定の測定値に基づいて、車両モデルMのドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループにおける車両モデルMのアンチフィーチャの値を、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定するように設定されている。
【0092】
特に、システム10は、
図1に係る方法S0を実行するように設定されている。好ましくは、しかし限定するものではなく、システム10は、測定走行中に記録された測定変数の値に基づいて加速時ピッチ勾配に関する少なくとも1つの値を計算するための手段11を有している。
【0093】
さらに、システム10は、好ましくは、車両モデルMを用いて車両をシミュレーションするための手段12を有しており、車両モデルMには、車両1の車種及び車両の少なくとも以下の物理的特性、すなわち、
‐バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、ホイールベース、重心位置、特に重心高さ及び重心配置、車両質量、
が含まれ、少なくとも加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される。
【0094】
さらに好ましくは、システム10は、道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、シミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値と比較するための手段13を有している。
【0095】
さらに好ましくは、システム10は、アンチフィーチャの値、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変更することによって、シミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように車両モデルMを調整する手段14を有している。
【0096】
さらに、システム10は、好ましくは、車両モデルMのアンチフィーチャの値を出力するためのインターフェース15を有し、パラメータ化のための手段は、終了条件に達するまで車両モデルMを調整するように設定されている。
【0097】
システム10の手段11、12、13、14、15は、好ましくは、データ処理装置の一部である。好ましくは、方法S0は、このようなデータ処理装置によって自動的に及び/又はコンピュータに実装して実施される。
【0098】
特に、記載された手段11、12、13、14、15はまた、方法S0の第2のシミュレーションループ120及び第3のシミュレーションループ130を実行するようにも設定されている。
【0099】
これらの実施例は、保護範囲、適用範囲及び構造を何ら限定することを意図しない例に過ぎないことを指摘しておく。むしろ、当業者には、上述の説明によって、少なくとも1つの実施例を実施するための手引きが与えられており、特許請求の範囲及び特徴の等価な組み合わせから生じる保護範囲を離れることなく、特に、記載された構成要素の機能及び配置に関して様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0100】
1 車両
2 車道
10 システム
11、12、13、14、15 手段
100 ソフトウェアインザループシミュレーション
110 第1のシミュレーションループ
120 第2のシミュレーションループ
130 第3のシミュレーションループ
M 車両モデル
S0 方法
S1 第1の作業ステップ
S2 第2の作業ステップ
S3 第3の作業ステップ
S4 第4の作業ステップ
S5 第5の作業ステップ
S6 第6の作業ステップ
S7 第7の作業ステップ
S8 第8の作業ステップ
S9 第9の作業ステップ
S11 第11の作業ステップ
S12 第12の作業ステップ
S13 第13の作業ステップ
S14 第14の作業ステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するための
コンピュータにより実装される方法(S0)であって、以下の作業ステップ、すなわち、
S1)測定走行の測定変数の値を記録する作業ステップ、
S2)前記測定変数の記録された値に基づいて、加速時ピッチ勾配パラメータに関して少なくとも1つの値を計算する作業ステップ
であって、前記加速時ピッチ勾配パラメータは、縦加速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示している作業ステップ、
S3)車両モデル(M)を用いて前記車両(1)のシミュレーションを行う作業ステップであって、前記車両モデル(M)には、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、前記車両(1)の車種、並びに前記車両(1)の以下の物理的特性、すなわち、
‐バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、
‐ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、
‐ホイールベース、
‐重心位置、特に重心高さ及び重心配置、
‐車両質量、
が含まれており、
アンチフィーチャは、前記車両の特性を特徴付けており、少なくとも前記加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
S4)作業ステップS2において計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、作業ステップS3においてシミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータの値と比較する作業ステップ、
S5)前記アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する作業ステップ、
S6)前記車両モデル(M)の前記アンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、作業ステップS3~S5は、終了条件に達するまで繰り返される、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するための
コンピュータにより実装される方法(S0)。
【請求項2】
前記終了条件が、シミュレーションされたパラメータと道路測定に基づいて計算されたパラメータとの間の差の最小値、特に局所的若しくは絶対的な最小値に到達すること、及び/又はシミュレーションされたパラメータの限界値に到達すること、特に前記パラメータが無限小にのみ変化する場合に前記限界値に到達することである、請求項1に記載の方法(S0)。
【請求項3】
以下の物理的特性群、すなわち、
軸荷重、車両タイプ、車両クラス、前車軸の振動数、後車軸の振動数、減衰係数、
からの車両(1)の物理的特性に基づいて、バネ剛性及びダンパー剛性が導出される、請求項
1に記載の方法(S0)。
【請求項4】
作業ステップS1において記録される測定変数が、以下の測定変数群、すなわち、
縦加速度、
横加速度、
ピッチ角、
ロール角、
ステアリング角、
タイヤスリップ角、
速度、
スロットル位置、
から選択されており、記録された値は、作業ステップS2)において各パラメータを計算するために少なくとも部分的に用いられる、請求項
1に記載の方法(S0)。
【請求項5】
測定走行の間、目標変数の関数として、少なくとも以下の運転操作、すなわち、
‐全負荷加速、部分負荷加速、全制動、部分制動、所定の速度、特に80km/hでのハンドルロック、
が実施され、好ましくは一定半径でのコーナリングが付加的な操作として実施される、請求項
1に記載の方法(S0)。
【請求項6】
作業ステップS2においてさらに、制動時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値が、測定変数の記録された値に基づいて計算され、
前記制動時ピッチ勾配パラメータは、縦加速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示しており、さらに、以下の作業ステップ、すなわち、
S7)車両モデル(M)を用いて車両(1)を再度シミュレーションする作業ステップであって、前記車両モデル(M)には、アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値が付加的に含まれ、前記車両(1)の付加的な物理的特性として従動軸に関する情報が含まれ、前記制動時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
S8)作業ステップS2において計算された前記制動時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を、作業ステップS7においてシミュレーションされた同じパラメータの値と比較する作業ステップ、
S9)前記アンチフィーチャである「アンチリフトリア」及び「アンチダイブフロント」の値を変更することによって、シミュレーションされた前記制動時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記制動時ピッチ勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する作業ステップ、
S10)調整された前記車両モデル(M)から前記アンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、作業ステップS7~S9は、終了条件に達するまで繰り返される、請求項
1に記載の方法(S0)。
【請求項7】
作業ステップS2においてさらに、ロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング角勾配パラメータの少なくとも1つの値が、測定変数の記録された値に基づいて計算され、さらに以下の作業ステップ、すなわち、
S11)車両モデル(M)を用いて車両を再度シミュレーションする作業ステップであって、前記車両モデル(M)には、アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値と、物理的特性であるステアリング角とが付加的に含まれ、前記ロール勾配パラメータに関する車線幅、前記スリップ角勾配パラメータに関するステアリング角及び車両軌道、前記ステアリング角勾配パラメータに関するステアリング角及び横加速度が車両の物理的特性として付加的に含まれ、前記ロール勾配パラメータ、前記スリップ角勾配パラメータ及び前記ステアリング角勾配パラメータの値が目標変数として出力される作業ステップ、
S12)作業ステップS2において計算された前記ロール勾配パラメータ、前記スリップ角勾配パラメータ、及び前記ステアリング角勾配パラメータの少なくとも1つの値を、作業ステップS11においてシミュレーションされたそれぞれ同じパラメータの値と比較する作業ステップ、
S13)前記アンチフィーチャである「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」の値を変更することによって、シミュレーションされた前記ロール勾配パラメータ、シミュレーションされた前記スリップ角勾配パラメータ、及びシミュレーションされた前記ステアリング角勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記ロール勾配パラメータ、計算された前記スリップ角勾配パラメータ、及び計算された前記ステアリング角勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する作業ステップ、
S14)調整された前記車両モデル(M)から前記アンチフィーチャの値を出力する作業ステップ、
を有しており、作業ステップS11~S13は、終了条件に達するまで繰り返される、請求項6に記載の方法(S0)。
【請求項8】
道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのコンピュータにより実装される方法(S0)であって、車両サスペンションのアンチフィーチャを有する仮想プロトタイプの車両モデル(M)は、道路測定の測定値に基づいて、ソフトウェアインザループシミュレーション(100)、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーション(100)によってパラメータ化され、
アンチフィーチャは、前記車両の特性を特徴付けており、前記車両モデルのドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループ(110、120、130)における前記車両モデル(M)の前記アンチフィーチャの値は、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定される、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのコンピュータにより実装される方法(S0)。
【請求項9】
前記車両モデル(M)が、アンチフィーチャである「アンチリフトフロント」、「アンチスクワットリア」、「アンチダイブフロント」、「アンチリフトリア」、「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」を有しており、第1のシミュレーションループでは「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値が、第2のシミュレーションループでは「アンチダイブフロント」及び「アンチリフトリア」の値が、第3のシミュレーションループでは「アンチロールバー剛性フロント」及び「アンチロールバー剛性リア」が決定される、請求項8に記載の方法(S0)。
【請求項10】
第1のシミュレーションループ(110)においてシミュレーションされた加速時ピッチ勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において前記車両モデル(M)が最適化され
、前記加速時ピッチ勾配パラメータは、縦加速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示している、請求項
8に記載の方法(S0)。
【請求項11】
第2のシミュレーションループ(120)においてシミュレーションされた制動時ピッチ勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において前記車両モデル(M)が最適化され
、前記制動時ピッチ勾配パラメータは、縦加速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示している、請求項10に記載の方法(S0)。
【請求項12】
第3のシミュレーションループ(130)においてシミュレーションされたロール勾配パラメータ、スリップ角勾配パラメータ及びステアリング角勾配パラメータの値が、目標変数としての同じパラメータの測定値と調整され、この点において前記車両モデル(M)が最適化される、請求項11に記載の方法(S0)。
【請求項13】
それぞれ1つのシミュレーションループ(110、120、130)で決定されたアンチフィーチャの値が、他のシミュレーションループに受け入れられる、請求項
8に記載の方法(S0)。
【請求項14】
車両(1)が、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法(S0)を用いて作成された前記車両(1)の仮想プロトタイプを用いてシミュレーションされる、車両(1)を分析するための方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行される場合、前記コンピュータに請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム又は記憶媒体。
【請求項16】
道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)であって、アンチフィーチャを有する仮想プロトタイプの車両モデル(M)をパラメータ化するための手段(11、12、13、14、15)を有し、パラメータ化するための前記手段(11、12、13、14、15)は、道路測定の測定値に基づいて、ソフトウェアインザループシミュレーション、特にカスケード式のソフトウェアインザループシミュレーションによって、前記車両モデル(M)のドライビングダイナミクスに関するパラメータが最適化されるシミュレーションループにおける前記車両モデル(M)のアンチフィーチャの値を、シミュレーションされたパラメータ値を道路測定に基づいて計算されたパラメータ値と調整することによって、反復的に次々に決定するように設定されて
おり、アンチフィーチャは、前記車両の特性を特徴付ける、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)。
【請求項17】
特に請求項16に記載の、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)であって、パラメータ化するための手段(11、12、13、14、15)を有しており、パラメータ化するための前記手段(11、12、13、14、15)は、
測定走行中に記録された測定変数の値に基づいて加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値を計算するための手段(11)
であって、前記加速時ピッチ勾配パラメータは、縦加速度とピッチ角との間の商、特に平均した又はフィルタリングした商を示している手段(11)、
車両モデル(M)を用いて車両のシミュレーションを行うための手段(12)であって、前記車両モデル(M)には、車両サスペンションの少なくともアンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」、前記車両(1)の車種、並びに前記車両(1)の少なくとも以下の物理的特性、すなわち、
バネ剛性、特にフロントバネ剛性及びリアバネ剛性、ダンパー剛性、特にフロントダンパー剛性及びリアダンパー剛性、ホイールベース、重心位置、特に重心高さ及び重心配置、車両質量、
が含まれており、
アンチフィーチャは、前記車両の特性を特徴付けており、少なくとも前記加速時ピッチ勾配パラメータの値が目標変数として出力される手段(12)、
道路測定に基づいて計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータの少なくとも1つの値と、シミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータの値とを比較する手段(13)、
前記アンチフィーチャ、特に「アンチリフトフロント」及び「アンチスクワットリア」の値を変化させることによって、シミュレーションされた前記加速時ピッチ勾配パラメータを、道路測定に基づいて計算された前記加速時ピッチ勾配パラメータに適合させるように前記車両モデル(M)を調整する手段(14)、
前記車両モデル(M)の前記アンチフィーチャの値を出力するためのインターフェース(15)、
を含んでおり、パラメータ化するための前記手段は、終了条件に達するまで前記車両モデル(M)を調整するように設定されている、道路測定のデータに基づいて車両(1)の仮想プロトタイプを作成するためのシステム(10)。
【国際調査報告】