(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】グルタチオンリサイクル能力をアッセイするための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526791
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022079255
(87)【国際公開番号】W WO2023081785
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519344682
【氏名又は名称】ランケナウ・インスティテュート・フォー・メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワロン,ユー.・マルガレータ
(72)【発明者】
【氏名】メッツ,ノーラン・エル.
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB10
2G045CA02
2G045DA36
2G045FA13
2G045FB01
2G045FB11
(57)【要約】
対象の赤血球のGSHリサイクル依存的抗酸化活性の1つ以上の測定値を取得することを含む、化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する対象の易罹患性を評価するための方法及び組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RBCを含む一連の試料におけるGSHリサイクル能力を測定するためのアッセイであって、前記アッセイが、
(a)前記試料のそれぞれをHEDS含有溶液と混合して一連の第1の体積を取得し、前記一連の第1の体積をインキュベートすることと、
(b)前記試料を遠心分離して懸濁液由来のRBC及びデブリを除去することと、
(c)RBC及びデブリを実質的に含まない前記第1の体積のそれぞれの一定分量を取得し、それぞれの一定分量をトリクロロ酢酸(TCA)と混合して一連の第2の体積を取得することと、
(d)前記一連の第2の体積またはその一定分量を遠心分離に供すことと、
(e)前記第2の体積から一連の上清を取得し、前記上清またはその一定分量のそれぞれを5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して一連の第3の体積を取得することと、
(f)前記一連の第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して一連の吸光度読み取り値を取得することと、
を含み、
(e)において取得される前記吸光度読み取り値が、前記RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す、前記アッセイ。
【請求項2】
ステップ(a)が、一連の8ウェルストリップのウェルにおいて一連の第1の体積を取得することを含み、任意選択で、各ストリップが、異なる試料または異なる試料の希釈液を含む、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
前記一連の8ウェルストリップが、L-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)を含む陽性対照を含む1つ以上のウェルを含み、前記LCHMが、任意選択で、凍結乾燥形態のものであるか、または約25μMol、約50μMol、及び/もしくは約25μMol~約50μMolの濃度で溶液中に存在するものである、請求項1または2に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記8ウェルストリップが、2つ以上の異なるLHCM陽性対照を含み、それぞれが、異なる量または濃度のLCHMである、請求項2または3に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記8ウェルストリップが、V底ウェルを含む、請求項2~4のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項6】
ステップ(e)の方法が、一連の8ウェルストリップのウェルを用いて実施され、各ストリップが、ブランク、試料、陽性対照、及び陰性対照のうちの1つ以上を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項7】
ステップ(e)が、平底8ウェルストリップを使用して実施される、請求項2~6のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項8】
前記8ウェルストリップのそれぞれが、
(i)ブランク、
(ii)陰性対照体積、
(ii)1つまたは2つの陽性対照体積、
(iii)血液試料低体積(任意選択で、2連のウェル中)及び/または
(iv)血液試料高体積(任意選択で、2連のウェル中)
を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項9】
前記8ウェルストリップが、インキュベート、遠心分離、及び分光光度分析を含む1つ以上のステップの間に、最大で12個の8ウェルストリップを保持することが可能なフレーム内に設置される、請求項2~8のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項10】
赤血球(RBC)を含む試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル能力を測定するためのアッセイであって、前記アッセイが、
(a)前記試料をヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)含有溶液と混合して第1の体積を取得し、前記第1の体積をインキュベートして、前記試料由来の実質的なRBC画分を沈降させることと、
(b)RBCを実質的に含まない前記第1の体積の一定分量を取得し、前記第1の体積の前記一定分量を磁気ナノビーズ含有溶液と混合して第2の体積を取得することと、
(c)前記第2の体積またはその一定分量を磁場に晒すことと、
(d)前記第2の体積から上清を取得し、前記上清またはその一定分量を5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して第3の体積を取得することと、
(e)前記第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して吸光度読み取り値を取得することと、
を含み、
(e)において測定される前記吸光度が、前記RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す、前記アッセイ。
【請求項11】
RBCを含む一連の試料におけるGSHリサイクル能力を測定するためのアッセイであって、前記アッセイが、
(a)前記試料のそれぞれをHEDS含有溶液と混合して一連の第1の体積を取得し、前記一連の第1の体積をインキュベートして、前記試料由来の実質的なRBC画分を沈降させることと、
(b)RBCを実質的に含まない前記第1の体積のそれぞれの一定分量を取得し、それぞれの一定分量を磁気ナノビーズ含有溶液と混合して一連の第2の体積を取得することと、
(c)前記一連の第2の体積またはその一定分量を磁場に晒すことと、
(d)前記第2の体積から一連の上清を取得し、前記上清またはその一定分量のそれぞれを5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して一連の第3の体積を取得することと、
(e)前記一連の第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して一連の吸光度読み取り値を取得することと、
を含み、
(e)において測定される前記吸光度が、前記RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す、前記アッセイ。
【請求項12】
ステップ(a)が、v底マイクロプレートにおいて実施される、請求項10または11に記載のアッセイ。
【請求項13】
ステップ(e)が、平底マイクロプレートにおいて実施される、請求項11~12のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項14】
ステップ(e)が、オプティカルボトムマイクロプレートにおいて実施される、請求項10~13のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項15】
前記ビーズが、シリカ及びマグヘマイトから構成されている、請求項10~14のいず
れか1項に記載のアッセイ。
【請求項16】
前記アッセイが、96ウェルマイクロプレートにおいて実施される、請求項10~15のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項17】
前記アッセイが、384ウェルマイクロプレートにおいて実施される、請求項10~16のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項18】
ステップ(e)が、自動化プレートリーダーを使用して実施される、請求項10~17のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項19】
前記吸光度読み取りが、412nmにおいて実施される、請求項10~18のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項20】
L-システイン塩酸塩一水和物を含む陽性対照の吸光度読み取り値を取得することをさらに含み、任意選択で、前記L-システイン塩酸塩一水和物が、約25μMol、約50μMol、及び/または約25μMol~約50μMolの濃度で存在する、請求項10または19のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項21】
赤血球を含む生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル能力を測定するためのキットであって、前記キットが、ヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)及び磁気ナノビーズを含み、
任意選択で、前記HEDS及び/または前記磁気ナノビーズが、担体を含む組成物中に存在する、前記キット。
【請求項22】
前記磁気ナノビーズが、グルタチオン磁気アガロースビーズである、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
DTNB、v底プレート、平底プレート、磁気分離ユニット、及びL-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項21または22に記載のキット。
【請求項24】
赤血球を含む生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル能力を測定するためのキットであって、前記キットが、ヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)及びL-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)を含み、
任意選択で、前記LCHMが、凍結乾燥形態のものであるか、または約25μMol、約50μMol、及び/もしくは約25μMol~約50μMolの濃度で溶液中に存在するものである、前記キット。
【請求項25】
DTNB、V底8ウェルストリップ、平底8ウェルストリップ、最大で12個の8ウェルストリップを保持することが可能なフレーム、トリクロロ酢酸(TCA)、及びグルタチオン緩衝液のうちの1つ以上をさらに含む、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンのような白金ベースの化学療法の身体障害性の副作用である。この副作用はすべての患者に生じるわけではないが、この副作用が生じる患者は、生涯続く慢性神経障害のリスクを有する。
【0002】
がんサバイバーシップ問題は、がん治療の前向きな成果と並行して大きくなっている。結果として、CIPN症例の診断、予後、及び治療に目が向けられることが増えている。さまざまな抗腫瘍薬及びそれらの用量に起因するCIPNの有病率は大きく異なる。実際、化学療法を受けている患者のおよそ70%が治療の最初の1ヶ月の間にCIPNを発症する一方で、こうした患者の20~30%は、化学療法の休止から6ヶ月以降に慢性CIPNへと移行する。重要なことに、こうした遅発性の合併症の症状は、数ヶ月間持続するだけでなく、進行性に増悪もし得る。軽度の神経障害が悪化する症例または新たな形態のCIPNを発症する症例は、「コースティング」と呼ばれている。コースティングの発症時には化学療法剤は投与されていない上に、患者は無がん状態であり得るが、その早期がん治療によって引き起こされた神経障害に依然として罹患していることもあって、この障害は臨床医に大きな課題を突き付けている。
【0003】
予防または治療向けに薬理学的方法は開発されているが、慢性CIPNのリスクが最も高い患者を特定するための組成物及び方法を開発することも不可欠である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、GSHリサイクル能力を測定するための患者試料の大規模処理を容易にするアッセイ及びその使用方法について記載される。
【0005】
一態様では、RBCを含む一連の試料におけるGSHリサイクル能力を測定するためのアッセイが本明細書で提供され、このアッセイは、(a)試料のそれぞれをHEDS含有溶液と混合して一連の第1の体積を取得し、当該一連の第1の体積をインキュベートすることと、(b)試料を遠心分離して懸濁液由来のRBC及びデブリを除去することと、(c)RBC及びデブリを実質的に含まない当該第1の体積のそれぞれの一定分量を取得し、それぞれの一定分量をトリクロロ酢酸(TCA)と混合して一連の第2の体積を取得することと、(d)一連の第2の体積またはその一定分量を遠心分離に供すことと、(e)第2の体積から一連の上清を取得し、上清またはその一定分量のそれぞれを5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して一連の第3の体積を取得することと、(f)一連の第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して一連の吸光度読み取り値を取得することと、を含み、(e)において取得される吸光度読み取り値は、RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す。
【0006】
ある特定の実施形態では、ステップ(a)は、一連の8ウェルストリップのウェルにおいて一連の第1の体積を取得することを含み、任意選択で、各ストリップは、異なる試料または異なる試料の希釈液を含む。ある特定の実施形態では、一連の8ウェルストリップは、L-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)を含む陽性対照を含む1つ以上のウェルを含み、当該LCHMは、任意選択で、凍結乾燥形態のものであるか、または約25μMol、約50μMol、及び/もしくは約25μMol~約50μMolの濃度で溶液中に存在するものである。ある特定の実施形態では、8ウェルストリップは、2つ以上の異なるLHCM陽性対照を含み、それぞれは、異なる量または濃度のLCHMである。
【0007】
一態様では、赤血球(RBC)を含む試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル能力を測定するためのアッセイが本明細書で提供され、このアッセイは、(a)試料をヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)含有溶液と混合して第1の体積を取得し、当該第1の体積をインキュベートして、試料由来の実質的なRBC画分を沈降させることと、(b)RBCを実質的に含まない第1の体積の一定分量を取得し、当該第1の体積の一定分量を磁気ナノビーズ含有溶液と混合して第2の体積を取得することと、(c)第2の体積またはその一定分量を磁場に晒すことと、(d)第2の体積から上清を取得し、上清またはその一定分量を5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して第3の体積を取得することと、(e)第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して吸光度読み取り値を取得することと、を含み、(e)において測定される吸光度は、RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す。
【0008】
一態様では、RBCを含む一連の試料におけるGSHリサイクル能力を測定するためのアッセイが本明細書で提供され、このアッセイは、(a)試料のそれぞれをHEDS含有溶液と混合して一連の第1の体積を取得し、当該一連の第1の体積をインキュベートして、試料由来の実質的なRBC画分を沈降させることと、(b)RBCを実質的に含まない当該第1の体積のそれぞれの一定分量を取得し、それぞれの一定分量を磁気ナノビーズ含有溶液と混合して一連の第2の体積を取得することと、(c)一連の第2の体積またはその一定分量を磁場に晒すことと、(d)第2の体積から一連の上清を取得し、上清またはその一定分量のそれぞれを5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して一連の第3の体積を取得することと、(e)一連の第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して一連の吸光度読み取り値を取得することと、を含み、(e)において測定される吸光度は、RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す。
【0009】
別の態様では、赤血球を含む生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル能力を測定するためのアッセイを実施するためのキットが提供される。
【0010】
これらの組成物及び方法の他の態様及び利点は、それらの好ましい実施形態についての以下の詳細な説明にさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】神経系障害のグレード分類基準を含む表を提供する。
【
図2】患者の年齢を平均CIPNグレードと比較する分析から得られた結果を示す。
【
図3】患者の性別と1年のうちの時期とを比較するChemotoxスコアの分析から得られた結果を示す。
【
図4】4つの異なる収集時点の最小値を利用して、患者についてChemotoxスコア対平均CIPNグレードを決定する分析から得られた結果を示す。
【
図5】患者ベースライン/治療前Chemotoxスコアを使用してグレード3 CIPN対グレード0 CIPNを予測する能力を示す。
【
図6】第1の治療の後であるが、第2の治療の前(「プレ2」)に決定された患者Chemotoxスコアを使用してグレード3 CIPN対グレード0 CIPNを予測する能力を示す。
【
図7】一連の4つの時点から取得された患者Chemotoxスコアを使用してグレード3 CIPN対グレード0 CIPNを予測する能力を示す。
【
図8】CIPNを予測する上で、ベースライン/治療前評価のみを使用する方法よりも、治療の間の複数のChemoxスコアを利用する手法の方が優れていることを実証するROC曲線を含むグラフを示す。分析に使用した患者の総数は260(N=260)である。最初の4回の被検試料採取の平均値を使用すると、ROCは0.8に近づいている。
【
図9A】4つの異なる時点(A)または2つの異なる時点(B)で取得されたChemotoxスコアを使用する患者の平均Chemotoxスコア対CIPN重症度を示す。
【
図9B】4つの異なる時点(A)または2つの異なる時点(B)で取得されたChemotoxスコアを使用する患者の平均Chemotoxスコア対CIPN重症度を示す。
【
図10】治療の間の個々の患者内での変動及びChemotoxスコアの相対変化の例を示すグラフを提供する。
【
図11】4つの時点から取得されたChemotoxスコアを使用して、タキソールを含む治療(A)またはオキサリプラチン/FOLFOX併用治療(B)を受けている患者においてグレード3 CIPN対グレード0を予測する上での精度を示す。
【
図12】本明細書で提供されるハイスループットアッセイにおいて利用される8つのウェルストリップを示す。これら8つのウェルストリップは、インキュベートステップ、遠心分離ステップ、及び吸光度読み取りステップの間に試料を保持するフレーム内にロードできるものである(最大12個)。
【
図13】本明細書で提供されるハイスループットプレートベースのアッセイ及び以前に説明されたチューブベースの方法を使用した試料の並行分析から得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、血液における抗酸化グルタチオン(GSH)のリサイクルを測定するための方法及び組成物について記載される。
【0013】
本発明者らは、血液における抗酸化グルタチオン(GSH)のリサイクルの測定値が対象におけるCIPNまたはCIPNの重症度を予測することを示している。具体的には、化学療法の投与の前後の患者の血液における経時変化を利用することで、CIPNのリスクが上昇している患者を特定できることが実証されている。具体的には、ベースラインGSHリサイクル能力のレベルが低下したままであり、化学療法の複数サイクルの間にリバウンドしない場合、患者は、CIPNのリスクが上昇している。
【0014】
理論によって拘束されることを望むものではないが、白金ベースの治療は、ニューロン障害、軸索障害、及び/または髄鞘障害を含む末梢神経の構造変化を誘発し得る活性酸素種(ROS)のバーストを引き起こす。グルタチオンは天然の体内抗酸化物質であり、還元酸化(レドックス)ホメオスタシスにおいて重要な役割を担う。化学療法後に患者によっては生じるGSHリサイクル能力の変化は、下記の理由からCIPNを予測するものであると仮定されている。活性酸素種(ROS)は、さまざまな組織及び細胞成分を破壊することが知られている。神経障害は、イオンチャネル、微小管、後根神経節、小神経線維、ミトコンドリア、及びミエリンに対する損傷によって引き起こされ、ROSは、ミトコンドリア、ミエリンシート、及びカルシウムイオンホメオスタシスに損傷を与えることが知られている。GSHは、ROSの中和に重要な抗酸化物質である。ROSがGSHによって中和される場合、後者は酸化されて二量体形態(GSSG)となり、このGSSGは、より多くのROSを中和し得るその還元型単量体形態(GSH)へのリサイクルに必要となる。したがって、より多くのROSが、それらの中和に利用可能な存在GSHよりも多く生成された場合は組織損傷が生じ得る。何故、GSSGを効率的にリサイクルし、ROSのクエンチに十分なレベルに化学療法中にGSHレベルを維持できる患者がいる一方で、それができない患者もいるのかは不明である。
【0015】
本発明者らは、化学療法ががん患者に投与される期間の間にフリーラジカルが効率的に除去されるようにGSHをリサイクルする能力に自然に生じる個体差を患者のCIPNリ
スクが反映し得ると結論付けた。GSHリサイクルによって維持されるレドックスホメオスタシスを化学療法の間にアッセイされるバイオマーカーとして使用することで、個体における慢性CIPNのリスクが予測される。
【0016】
GSH活性は、化学療法治療によって生成されるフリーラジカルのバーストを細胞が生き延びる能力における極めて重要な決定因子であることが知られている。したがって、細胞がROSを解毒し、組織損傷を最小化するには、効率的なGSHリサイクルが不可欠である。本発明者らは、グルタチオン(GSH)によって維持されるレドックスホメオスタシスと対象における慢性CIPNに対する易罹患性との間の関連性を特定した。
【0017】
現在のところ、CIPNを治療または予防するための承認された薬理学的手段は存在しない。救命の可能性のある化学療法の用量低減、遅延、または中止のみが、CIPNの発症及び進行を唯一制限し得る。一方で、多くのがん患者及びがん専門医がCIPNのリスクに関心を強めており、これと同時に、この副作用を軽減または予防するための研究が続けられている。したがって、リスクが最も高い患者を特定し、治療レジメンを適切に変更または付加してCIPNを除くか、またはその重症度を低減することに高い関心が寄せられている。
【0018】
本明細書で使用される場合、「化学療法誘発性末梢神経障害」または「CIPN」という用語は、化学療法で治療されているまたは治療されたことがある患者における末梢神経の損傷から生じる症状を指すか、または当該症状を説明するものである。患部神経に応じて、症状には、限定されないが、刺痛(「ピリピリ感」)、疼痛、灼熱感、感覚の低下、接触、温度、圧力、または疼痛に対する感受性の増加、感触の喪失(圧力、接触、高温、または低温に対する知覚麻痺または感知能力低下であり得る)、物を持ち上げるまたは保持するための指の使用困難、手からの物の落下、平衡感覚障害、つまづきまたはよろめきによる歩行困難、圧力または温度に対する通常以上の痛み(例えば、低温感受性)、筋肉縮小、筋力低下、嚥下困難、便秘、排尿困難、血圧変化、及び反射の低下または喪失を伴う神経伝導速度の変化が含まれる。CIPNの重症度の評価にはグレード分類スケールを利用することができる(例えば、
図1を参照のこと)。Zhang et al.Biomed Rep.2017 Mar;6(3):267-271も参照のこと(当該文献は、参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0019】
本明細書で使用される場合、「痛覚過敏」は、疼痛に対する感受性の増加を指し、これは、侵害受容器または末梢神経の損傷(すなわち、神経障害)によって引き起こされ得る。この用語は、一時的及び永続的な痛覚過敏を指し、一次性痛覚過敏(すなわち、損傷組織に直接的に生じる疼痛感受性)及び二次性痛覚過敏(すなわち、損傷組織の周辺の非損傷組織に生じる疼痛感受性)の両方を包含する。この用語は、限定されないが、薬物毒性によって引き起こされる神経障害、薬物毒性に起因する神経障害、またはその他の様式で薬物毒性と関連する神経障害によって引き起こされる痛覚過敏を包含する。いくつかの実施形態では、痛覚過敏は、化学療法誘発性末梢神経障害によって引き起こされる。
【0020】
一態様では、CIPNに対する易罹患性を評価するための方法は、酸化ストレスのレベルについて、赤血球(RBC)を含む哺乳類対象の生物学的試料をアッセイすることを含む。酸化ストレスは、本質的には、フリーラジカルの生成と、抗酸化物質による中和を介してその有害作用を体が相殺または解毒する能力と間の不均衡である。一実施形態では、アッセイは、酸化ストレスに対する抗酸化応答における品質の指標として、試料におけるRBCのGSHリサイクル活性を評価することによって実施される。このアッセイは、化学療法の間に対象のRBCのGSHリサイクル能力の低下(すなわち、高酸化ストレスを生き延びる能力の相対的な低下)が、対象がCIPNを発症するリスクの上昇と逆相関したという発見に基づく。
【0021】
本明細書に記載の方法によれば、生物学的試料は、化学療法剤の投与の前及び後に哺乳類対象から取得される。「生物学的試料」または「試料」は、本明細書で言及される場合、赤血球を含む生物学的体液を意味する。ある特定の実施形態では、生物学的試料は、全血である。ある特定の実施形態では、試料は、RBCを含む別の体液である。ある特定の実施形態では、試料は、希釈される。ある特定の実施形態では、試料は、濃縮試料である。
【0022】
「患者」または「対象」は、本明細書で使用される場合、ヒト、獣医学的動物または家畜、飼育動物またはペット、ならびに臨床研究に通常は使用される動物(マウス及びラットなど)を含む哺乳類動物を意味する。より具体的には、こうした方法及び組成物の対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、がんを有する。
【0023】
「担体」は、本明細書で使用される場合、例えば、本発明の活性剤が維持され得る希釈剤、マトリックス、補助剤、保存剤(例えば、チメロソール(Thimersol)、ベンジルアルコール)、抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、可溶化剤(例えば、Tween80、Polysorbate80)、乳化剤、緩衝剤(例えば、トリスHCl、酢酸塩、リン酸塩)、抗微生物剤、増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)、賦形剤、助剤、または媒体を指す。担体は、石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源のものを含む、水及び油などの滅菌液体であり得る。水または生理食塩水ならびにデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液も担体として用いられ得る。
【0024】
「化学療法剤」は、本明細書で使用される場合、がんの治療に使用され得る任意の化合物(その誘導体を含む)を指す。化学療法剤(例えば、抗がん剤)は当業者によく知られており、こうした化学療法剤には、限定されないが、アントラセンジオン(アントラキノン)(アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びバルルビシン)など)、ミトキサントロン、ならびにピクサントロン;白金ベースの薬剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、及びリポプラチン);タモキシフェン及びその代謝物(4-ヒドロキシタモキシフェン(アフィモキシフェン)及びN-デスメチル-4-ヒドロキシタモキシフェン(エンドキシフェン)など);タキサン(パクリタキセル(タキソール)及びドセタキセルなど);アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、及びクロラムブシルなど));エチレンイミン及びメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、スルホン酸アルキル(ブスルファンなど)、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNLJ)、セムスチン(メチル-CCN--U)、及びストレプトゾエイン(streptozoein)(ストレプトゾトシン)など)、ならびにトリアゼン(デカルバジン(decarbazine)(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)など);代謝拮抗剤(例えば、葉酸類似体(メトトレキサート(アメトプテリン)など)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)、及びシタラビン(シトシンアラビノシド)など)、ならびにプリン類似体及び関連阻害剤(メルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;6-TG)、及びペントスタチン(2’-デオキシコフォンニシン(cofonnycin))など));天然物(例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなど)、エピポドフィロトキシン(エトポシド及びテニポシドなど)、ならびに抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミスラマイシン)、及びマイトマイシン(マイトマイシンQ)など);酵素
(L-アスパラギナーゼなど);生物学的応答調節剤(インターフェロンアルファなど);置換尿素(ヒドロキシ尿素など);メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジン(N-メチルヒドラジン;MIH)など);副腎皮質機能抑制剤(ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミドなど);それらの類似体、それらの誘導体、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。当該技術分野において知られるさらに他の細胞増殖抑制性化学療法剤もまた、本明細書に記載の方法に有用であり得る。例えば、米国特許第9,186,357号に記載の化学療法(参照によって組み込まれる)を参照のこと。
【0025】
ある特定の実施形態では、方法は、タキサン、白金化合物、任意選択でオキサリプラチンまたはシスプラチン、ビンカアルカロイド、サリドマイド、エポチロン、エリブリン、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、またはボルテゾミブである化学療法剤を対象に投与することを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、無制御の細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳類における生理学的状態を指すか、または当該生理学的状態を説明するものである。一実施形態では、「がん」という用語は、固形腫瘍の存在によって特徴付けられる任意のがんを意味する。別の実施形態では、がんは、血液がんである。本明細書で言及される場合、がんには、限定されないが、黒色腫、乳がん、脳がん、結腸/直腸がん、肺がん、卵巣がん、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、腎がん、喉頭がん、肝がん、頭頸部がん、鼻咽頭がん、骨肉腫、口腔がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、腟がん、肺がん、リンパ腫、骨髄腫、及び神経内分泌がんが含まれる。
【0027】
「化学療法レジメン」は、本明細書に記載の方法において使用される場合、一般に、1つもしくは2つの異なる化学療法剤の併用投与もしくは連続投与、または3~10個の異なる化学療法剤の併用投与もしくは連続投与、のいずれかを意味する。本明細書に記載の方法では、2剤以下のレジメン(化学療法剤を含まなくてもよい)の選択または3剤以上のレジメンの選択は、血液試料の酸化レベルに依存する。対象由来の試料が高いグルタチオン(GSH)リサイクル依存的抗酸化活性(すなわち、高酸化ストレス)を示す場合、化学療法レジメンが変更されて、レジメンが含む化学療法剤の数が増やされ得る。対象由来の試料が低いグルタチオン(GSH)リサイクル依存的抗酸化活性(すなわち、低酸化ストレス)を示す場合、投薬レジメンが変更されて、レジメンが含む化学療法剤の数が減らされるか、または治療の化学療法剤レジメンの終了時期が早められるか、もしくはそれが不要なものとして使用されないことさえもあり得る。ある特定の実施形態では、化学療法レジメンは、フォリン酸(ロイコボリン、FOL)、フルオロウラシル(5-FU、F)、及びオキサリプラチン(Eloxatin、OX)(すなわち、FOLFOX)の組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、化学療法レジメンは、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン塩酸塩/ヒドロキシダウノマイシン、ビンクリスチン硫酸塩/Oncovin、及びプレドニゾン)の組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、化学療法レジメンは、ABVD(ドキソルビシン塩酸塩/アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン硫酸塩、及びダカルバジン)を含む。ある特定の実施形態では、化学療法レジメンは、R-CVP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチン硫酸塩/Oncovin、及びプレドニゾン)を含む。
【0028】
「一緒に投与される」または「組み合わせられる」化合物は、同じ治療レジメンにおいて同じ時点または別々の時点に、同じ組成物の一部として投与され得るか、または別々に投与され得る。
【0029】
「グルタチオンリサイクル活性」は、どの程度、RBCがトリペプチドGSHをその酸
化状態から還元状態へと変換し、それによってROSを中和し得るかを意味する。GSHリサイクル活性が相対的に上昇すると、酸化型アイソフォームであるグルタチオンジスルフィド(GSSG)が還元型アイソフォームであるグルタチオンモノマー(GSH)へとリサイクルされることによって酸化ストレス及びROSから細胞が保護される。適切なGSHリサイクル依存的抗酸化活性は、こうした方法の生物学的試料において測定可能であり、一実施形態では、OxPhos(商標)Cell Survival Kit,カタログ番号KLD-02,Rockland Incを使用することによって測定可能である。このアッセイでは、β-メルカプトエタノール(ME)を放出するGSH→GSSG→GSHの変換を伴うグルタチオン依存的な解毒の間接的な指標としてヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS)が使用される。ある特定の実施形態では、方法では、試薬で処理された血液試料によって放出されるβ-メルカプトエタノール(ME)の量を定量化し、MEの吸光度読み取り値を分光光度化学的に測定し、吸光度読み取り値をME濃度に変換し、血液採取時点の総赤血球数にME濃度を正規化し、試料におけるインタクトな赤血球のGSHリサイクル依存的抗酸化活性を評価することによってGSHリサイクル活性の測定値が利用される。Ox-Phos(商標)アッセイでは、事前に混合されたジチオビスニトロ安息香酸(DNTB)試薬を使用してHEDSからMEへの変換が分光光度的に決定され、吸光度読み取り値がME濃度に変換され、血液採取時点で決定される総赤血球数(RBC×106個)に正規化される。ある特定の実施形態では、GSH依存的抗酸化活性は、OxPhos(商標)アッセイプロトコールと共に提供される変換係数を使用して計算され、総赤血球数に正規化される。ある特定の実施形態では、GSHアッセイは、米国特許第8,697,391号に記載のものであり、当該文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。GSHアッセイは、還元状態から酸化状態へとGSHを確実に繰り返し変換し得る6つの別々の経路における酵素の効率の測定値を与える。本明細書で提供される方法及びアッセイを使用して取得される測定値は、場合によっては、「Chemotox」スコアと称される。ある特定の実施形態では、Chemotoxスコアは、単一の試料から取得される。他の実施形態では、Chemotoxスコアは、複数の試料から取得され、例えば、平均値に相当する。複数の試料は、患者の治療の間の異なる時点で取得され得る。
【0030】
GSHリサイクル活性を測定するための方法及びアッセイについては、WO2018/071323A1、Kutner et al.Support Care Cancer.2017 Feb;25(2):581-587.doi:10.1007/s00520-016-3442-5、及びMcCourt et al.J Unexplored Med Data 2019;4:6.doi:10.20517/2572-8180.2019.01にさらに記載されており、これらの文献はすべて、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
一態様では、CIPNに対する対象の易罹患性を予測または評価する方法が提供され、この方法は、酸化ストレスのレベルについてRBCを含む生物学的試料をアッセイすることを含み、試料は、化学療法剤の投与の前及び/または後に哺乳類対象から取得される。方法を実施することで、対象においてCIPNの発症のリスクが評価され、及び/またはCIPNの重症度が予測され得る。
【0032】
ある特定の実施形態では、酸化ストレスの指標は、GSHリサイクル能力である。したがって、対象の血液は、化学療法剤での治療の前に取得される。ある特定の実施形態では、試料(例えば、全血の試料)は、化学療法剤の投与の前に哺乳類対象から取得される。試料は、試料におけるRBCの酸化能力(血液細胞のGSHリサイクル依存的抗酸化活性など)の評価を可能にするアッセイ成分と接触される。一実施形態では、血液は、採取直後にGSHリサイクル活性について検査される。他の実施形態では、血液は、保管後にGSHリサイクル活性について検査される。血液のGSHリサイクル活性は、採取から数時
間~数日の間は安定性を保つことが見込まれる。
【0033】
ある特定の実施形態では、方法は、試料をHEDSと接触させることを含み、これに加えて、GSHアッセイについて上に記載されるステップ、すなわち、HEDSで処理された試料によって放出されるMEの量を定量化し、MEの吸光度読み取り値を分光光度的に測定するステップ、吸光度読み取り値をME濃度に変換するステップ、ME濃度を総RBC数に正規化するステップ、及び当該試料におけるインタクトなRBCのGSHリサイクル依存的抗酸化活性を評価するステップをさらに含む。これらのステップは、対象の血液試料または生物学的試料が低いまたは低下した(GSH)リサイクル依存的抗酸化活性を有するものとして特徴付けられるかどうかを決定するために実施される。この方法は、対象がCIPNを発症し易いかどうかの評価をさらに可能にする。
【0034】
方法は、化学療法剤での治療を必要とするがんを有する対象に適用可能である。化学療法剤は、任意の従来の方法において投与され得る。ある特定の実施形態では、化学療法剤は、静脈内に投与される。ある特定の実施形態では、化学療法剤は、経口的に投与される。
【0035】
一態様では、化学療法剤を投与される患者における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性を評価する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の投与の前に患者から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性の測定値を取得することと、(b)化学療法剤での治療の後に患者から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(c)(a)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を(b)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値と比較することと、を含む。ある特定の実施形態では、治療後のGSHリサイクルの減少は、CIPNに対する易罹患性の増加を予測する。ある特定の実施形態では、治療後のGSHリサイクルの減少は、重症度、頻度、及び/またはCIPN症状の増加を予測する。
【0036】
一態様では、化学療法剤での患者の治療を管理し、CIPNに対する患者の易罹患性を低減するための方法が提供される。この方法は、(a)化学療法剤の投与の前に患者から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(b)化学療法剤での治療の後に患者から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(c)(a)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を(b)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値と比較することと、(d)化学療法剤での対象の治療を変更し、及び/またはCIPNの治療を投与することと、を含む。
【0037】
ある特定の実施形態では、方法は、対象のRBCがGSHリサイクル活性の低下を示す場合、化学療法剤の投与の間または後に治療レジメンを変更することを含む。ある特定の実施形態では、対象のRBCが、化学療法剤での治療の後にグルタチオンリサイクル能力の低下を示す場合、化学療法レジメンは、対象に送達される化学療法剤のその後の用量または投与量が低減されるように変更される。ある特定の実施形態では、方法は、1つ以上の化学療法剤を含むレジメンを中止することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、異なるまたは追加の化学療法剤での治療を開始することを含む。治療レジメンの改変後にGSHリサイクル活性の追加の測定値が取得され得る。
【0038】
ある特定の実施形態では、方法は、対象のRBCがGSHリサイクル活性の低下を示さない場合、化学療法剤の投与の間または後に治療レジメンを変更することを含む。ある特定の実施形態では、化学療法レジメンは、対象に送達される化学療法剤のその後の用量または投与量が増加するように変更される。ある特定の実施形態では、方法は、1つ以上の
化学療法剤を含むレジメンを継続することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、異なるまたは追加の化学療法剤での治療を開始することを含む。治療レジメンの改変後にGSHリサイクル活性の追加の測定値が取得され得る。
【0039】
一態様では、がんを有する患者を治療するための方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の投与の前に患者から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(b)化学療法剤を投与することと、(c)化学療法剤での治療の後に患者から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(d)化学療法剤での対象の治療を変更し化学療法剤での対象の治療を変更し、及び/またはCIPNの治療を投与することと、を含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、患者を治療する方法は、対象のRBCがGSHリサイクル活性の低下を示す場合、患者に送達される化学療法剤の用量または投与量を変更することを含む。ある特定の実施形態では、対象のRBCが、化学療法剤での治療の後にグルタチオンリサイクル能力の低下を示す場合、化学療法レジメンは、対象に送達される化学療法剤のその後の用量または投与量が低減されるように変更される。ある特定の実施形態では、方法は、1つ以上の化学療法剤での対象の治療を中止することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、異なるまたは追加の化学療法剤での治療を開始することを含む。
【0041】
ある特定の実施形態では、患者を治療する方法は、対象のRBCがGSHリサイクル活性の低下を示さない場合、患者に送達される化学療法剤の用量または投与量を変更することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、対象に送達される化学療法剤送達のその後の用量または投与量を増加させることを含む。ある特定の実施形態では、方法は、1つ以上の化学療法剤での対象の治療を継続することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、異なるまたは追加の化学療法剤での治療を開始することを含む。
【0042】
一態様では、化学療法剤での治療の後のCIPNに対する易罹患性を低減する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の投与の前に患者から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性の測定値を取得することと、(b)化学療法剤での治療の後に患者から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(c)(a)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を(b)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値と比較することと、(d)(c)において決定されるGSHリサイクル活性の変化に応じて患者の治療を変更してCIPNに対する易罹患性を低減し、及び/またはCIPNの治療を投与することと、を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、対象におけるCIPNに対する易罹患性を低減する方法は、対象のRBCがGSHリサイクル活性の低下を示す場合、対象に送達される化学療法剤の用量または投与量を変更することを含む。ある特定の実施形態では、対象のRBCが、化学療法剤での治療の後にグルタチオンリサイクル能力の低下を示す場合、対象に送達される化学療法剤のその後の用量または投与量が低減される。ある特定の実施形態では、対象におけるCIPNに対する易罹患性を低減する方法は、1つ以上の化学療法剤での対象の治療を中止することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、異なるまたは追加の化学療法剤での治療を開始することを含む。ある特定の実施形態では、CIPNに対する易罹患性を低減する方法は、CIPNまたはその症状についての1つ以上の治療を含む。
【0044】
一態様では、対象におけるCIPNに対する易罹患性を治療が変える能力を評価するための方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH
)リサイクル活性の測定値を取得することと、(b)化学療法剤での治療の後に患者から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することと、(c)(a)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を(b)におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値と比較することと、(d)CIPNの治療を対象に投与することと、を含む。
【0045】
ある特定の実施形態では、方法は、CIPNの治療と組み合わせて化学療法剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、CIPN治療は、化学療法剤を投与する前に投与される。ある特定の実施形態では、CIPN治療は、化学療法剤の投与の後に投与される。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤及びCIPNの治療の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性の測定値を取得することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤及びCIPNの治療の投与の後に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性の測定値を取得することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤の投与の後及びCIPNの治療の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性の測定値を取得することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、CIPNの治療の後及び化学療法剤の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性の測定値を取得することを含む。
【0046】
本明細書で提供される方法は、化学療法のレジメンの間に患者の治療を評価することを含めて、臨床現場において使用されることが意図される。レジメンは、数日、数週間、または数年の期間にわたり、複数回の化学療法剤治療または化学療法剤投与を伴い得る。ある特定の実施形態では、治療レジメンの一部として、化学療法剤での治療が、少なくとも少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、または少なくとも16回、対象に投与される。ある特定の実施形態では、測定値は、治療の開始前(化学療法の投与の前の治療日当日を含む)に獲得される試料から取得される。場合によっては、この測定値は、ベースライン測定値、治療前測定値、または「プレ1」測定値と称される。さらに、1つ以上の測定値は、化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前(第2の投与の当日を含む)、または化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前(第3の投与の当日を含む)などの時点で獲得される試料から取得され得る。
【0047】
一態様では、化学療法剤が投与される対象における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性またはCIPNの重症度を評価する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性のベースライン測定値を取得することと、(b)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第1の測定値を取得することと、(c)化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第2の測定値を取得することと、(d)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第3の測定値を取得することと、(e)ベースライン測定値、第1の測定値、第2の測定値、及び第3の測定値の平均値を取得することと、を含む。ある特定の実施形態では、1.85以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。ある特定の実施形態では
、1.50以下、1.55以下、1.65以下、1.70以下、1.75以下、1.80以下、1.90以下、1.95以下、または2.00以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。
【0048】
別の態様では、化学療法剤が投与される対象における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性またはCIPNの重症度を評価する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第1の測定値を取得することと、(b)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第2の測定値を取得することと、(c)ベースライン測定値、第1の測定値、及び第2の測定値の平均値を取得することと、を含む。ある特定の実施形態では、1.8以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。ある特定の実施形態では、1.50以下、1.55以下、1.65以下、1.70以下、1.75以下、1.85以下、1.90以下、1.95以下、または2.00以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。
【0049】
別の態様では、化学療法剤が投与される対象における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性の評価またはCIPNの重症度の予測を行う方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性のベースライン測定値を取得することと、(b)(i)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値、(ii)化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値、または(iii)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することであって、GSHリサイクル活性の減少が、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度の増加を予測する、取得することと、を含む。
【0050】
別の態様では、化学療法剤での治療の後のCIPNに対する易罹患性を低減する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性のベースライン測定値を取得することと、(b)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第1の測定値を取得することと、(c)化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第2の測定値を取得することと、(d)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第3の測定値を取得することと、(e)ベースライン測定値、第1の測定値、第2の測定値、及び第3の測定値の平均値を取得することと、(f)化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性もしくはCIPNの重症度を低減するために対象の治療レジメンを変更し、及び/またはCIPNの治療を投与することと、を含む。ある特定の実施形態では、1.85以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。ある特定の実施形態では、1.50以下、1.55以下、1.65以下、1.70以下、1.75以下、1.80以下、1.90以下、1.95以下、または2.00以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。
【0051】
別の態様では、化学療法剤での治療の後のCIPNに対する易罹患性を低減する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第1の測定値を取得することと、(b)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第2の測定値を取得することと、(c)第1の測定値及び第2の測定値の平均値を取得することと、(d)化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性もしくはCIPNの重症度を低減するために対象の治療レジメンを変更し、及び/またはCIPNの治療を投与することと、を含む。ある特定の実施形態では、1.8以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。ある特定の実施形態では、1.50以下、1.55以下、1.65以下、1.70以下、1.75以下、1.85以下、1.90以下、1.95以下、または2.00以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。
【0052】
別の態様では、化学療法剤での治療の後のCIPNに対する易罹患性を低減する方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性のベースライン測定値を取得することと、(b)(i)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値、(ii)化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値、または(iii)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することであって、GSHリサイクル活性の減少が、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度の増加を予測する、取得することと、(c)化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性もしくはCIPNの重症度を低減するために対象の治療レジメンを変更し、及び/またはCIPNの治療を投与することと、を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、対象の治療を変更することは、化学療法剤のその後の用量または投与量を低減することを含む。例えば、患者の予定治療レジメンは、測定されたGSHリサイクル活性に基づいて変更され得る。ある特定の実施形態では、対象の治療を変更することは、異なる化学療法剤での治療を含む。ある特定の実施形態では、対象の治療を変更することは、代替または追加の化学療法剤を投与することを含む。別の実施形態では、対象の治療を変更することは、化学療法剤の投与を中止することを含む。ある特定の実施形態では、対象の治療を変更することは、異なる化学療法剤での治療を含む。
【0054】
一態様では、対象における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性またはCIPNの重症度を治療が変える能力を評価するための方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性のベースライン測定値を取得することと、(b)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第1の測定値を取得することと、(c)化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第2の測定値を取得することと、(d)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第3の測定値を取得することと、(e)ベースライン測定値、第1の測定値、第2の測定値、及び第3の測定値の平均値を取得することと、(f)CIPNの治療を対象に投与することと、を含む
。ある特定の実施形態では、1.85以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。ある特定の実施形態では、1.50以下、1.55以下、1.65以下、1.70以下、1.75以下、1.80以下、1.90以下、1.95以下、または2.00以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。
【0055】
一態様では、対象における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性またはCIPNの重症度を治療が変える能力を評価するための方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第1の測定値を取得することと、(b)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の第2の測定値を取得することと、(c)ベースライン測定値、第1の測定値、及び第2の投与の平均値を取得することと、(d)CIPNの治療を対象に投与することと、を含む。ある特定の実施形態では、1.8以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。ある特定の実施形態では、1.50以下、1.55以下、1.65以下、1.70以下、1.75以下、1.85以下、1.90以下、1.95以下、または2.00以下の平均値は、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度を示す。
【0056】
一態様では、対象における化学療法誘発性神経障害(CIPN)に対する易罹患性またはCIPNの重症度を治療が変える能力を評価するための方法が本明細書で提供され、この方法は、(a)化学療法剤の第1の投与の前に対象から取得される赤血球(RBC)を含む1つ以上の生物学的試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル活性のベースライン測定値を取得することと、(b)(i)化学療法剤の第1の投与の後であるが、化学療法剤の第2の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値、(ii)化学療法剤の第2の投与の後であるが、化学療法剤の第3の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値、または(iii)化学療法剤の第3の投与の後であるが、化学療法剤の第4の投与の前に対象から取得されるRBCを含む1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の測定値を取得することであって、GSHリサイクル活性の減少が、CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度の増加を予測する、取得することと、(c)CIPNの治療を対象に投与することと、を含む。
【0057】
ある特定の実施形態では、提供される方法は、グレード0 CIPN、グレード1 CIPN、グレード2 CIPN、またはグレード3 CIPNに対する易罹患性の増加を予測する。方法は、治療レジメンの間または治療レジメンの後に発症するCIPNを予測し得る。ある特定の実施形態では、方法は、CIPNまたは重度CIPNの症状が生じる少なくとも1週間前、少なくとも2週間前、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前、少なくとも5週間前、少なくとも6週間前、少なくとも7週間前、少なくとも8週間前、少なくとも9週間前、少なくとも10週間前、少なくとも11週間前、少なくとも12週間前、少なくとも13週間前、少なくとも14週間前、少なくとも15週間前、少なくとも16週間前、少なくとも17週間前、少なくとも18週間前、少なくとも19週間前、少なくとも20週間前、少なくとも3ヶ月前、少なくとも6ヶ月前、または少なくとも1年前にCIPNの発症を予測する。
【0058】
治療の前及び治療の間に取得される測定値、または治療の間(例えば、さまざまな回数の治療の後)に取得される測定値を使用して、個体についてのGSHリサイクル活性の変化が測定され得る。ある特定の実施形態では、GSHリサイクル活性の減少は、(治療の間の一時点で取得される測定値-ベースライン)/ベースライン)として計算される減少
パーセントである。CIPNに対する易罹患性またはCIPNの重症度の増加を予測するGSHリサイクルの減少は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%であり得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、提供される方法は、ある特定の年齢または性別の患者を対象とする。ある特定の実施形態では、患者は男性である。ある特定の実施形態では、患者は女性である。ある特定の実施形態では、患者は、25~100歳、25~50歳、25~75歳、50~75歳、または50~100歳である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」という用語は、疾患または状態の1つ以上の症状の改善を目的とする組成物(複数可)及び/または方法(複数可)を指す。例えば、CIPNの治療は、症状(四肢の疼痛など)の頻度、重症度、及び/または持続期間の予防または低減を含めて、神経障害または痛覚過敏を緩和するために組成物を投与することを含み得る。したがって、治療は、CIPNの発症もしくは進行を低減すること、CIPNを予防すること、CIPN症状(例えば、四肢の疼痛)の頻度及び/もしくは重症度を低減すること、CIPNの進行を遅延させること、ならびに/またはCIPの進行を鈍化させること、のうちの1つ以上を含み得る。CIPNの治療には、限定されないが、経口鎮痛薬、抗鬱薬、リドカインパッチ、メントールクリーム、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)(例えば、デュロキセチン)、三環系抗鬱薬(TCA)、抗痙攣薬、配合外用剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、及びオピオイド療法、理学療法、ならびに作業療法が含まれる。ある特定の実施形態では、治療は、非治療対照対象と比較して治療対象における症状の頻度及び/または重症度を低減する。本明細書で使用される場合、CIPNの治療は、CIPNの治療としての潜在力が調査中である組成物(すなわち、試験化合物)を含み得る。
【0061】
ある特定の実施形態では、CIPNの治療は、「ナトリウムチャネル遮断薬」を投与することを含み、「ナトリウムチャネル遮断薬」は、ナトリウムチャネルに選択的に結合し、それによってナトリウムチャネルを不活性化する化合物である。具体的には、ナトリウムチャネル遮断薬には、ナトリウムチャネルのアルファサブユニットのSS1またはSS2細胞外ドメインに結合する化合物が含まれる。ナトリウムチャネルのSS1またはSS2サブユニットに結合するナトリウムチャネル遮断化合物、具体的には、テトロドトキシン及びサキシトキシンは、同様の医薬活性を有することが明らかになっている(例えば、US6,407,088を参照のこと。当該文献は、参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0062】
ある特定の実施形態では、CIPNの治療は、対象にカルシウム/マグネシウム補給を施すことを含む。ある特定の実施形態では、CIPNの治療は、カルパイン阻害剤を含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、CIPNの治療は、1つ以上のフィトカンナビノイドまたはその合成誘導体を含む組成物を投与することを含む。ある特定の実施形態では、CIPNの治療は、カンナビジオール(CBD)を含む組成物を投与することを含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、生物学的試料における低いグルタチオン(GSH)リサイクル依存的抗酸化活性(すなわち、高酸化ストレス)という語句は、CIPNに対する素因を示すために使用される。ある特定の実施形態では、低いGSHリサイクル依存的抗酸化活性スコアは、≦1.0である。本明細書で使用される場合、生物学的試料における高いグルタチオンリサイクル依存的抗酸化活性(すなわち、低酸化ストレス)という語句は、CIPNのリスクの上昇を示すために使用される。ある特定の実施形態では、高いGS
Hリサイクル依存的抗酸化活性スコアは、>1.0である。
【0065】
本明細書に記載のように、本発明者らは、例えば、化学療法剤を投与する前に取得される患者試料におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を、化学療法剤を投与した後に取得される患者試料におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値と比較することを利用する方法を明らかにしている。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤の投与の前及び/または後の複数日間に、または数週間もしくは数ヶ月の過程にわたって測定値を取得することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤の投与の前及び/または後の1日に取得されるGSHリサイクル活性の測定値の平均値を比較することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤を対象に投与する前の同じ日に、または数日もしくは数週間の過程にわたって取得される測定値に基づいてGSHリサイクル活性の平均値を取得することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤を対象に投与した後の同じ日に、または数日もしくは数週間の過程にわたって取得される測定値に基づいてGSHリサイクル活性の平均値を取得することを含む。したがって、GSHリサイクル活性の「測定値」は、(例えば、化学療法剤での治療の前または化学療法剤での治療の後に)取得される一連の試料から取得される測定値の平均値を指し得る。
【0066】
ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤での治療の前の12時間未満、24時間未満、または36時間未満の間に対象から取得される1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を取得することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、化学療法剤での治療の後の12時間未満、24時間未満、または36時間未満の間に対象から取得される1つ以上の生物学的試料におけるGSHリサイクル活性の1つ以上の測定値を取得することを含む。
【0067】
化学療法剤での対象の治療の後のGSHリサイクル活性の低下または低下したGSHリサイクル活性は、CIPNのリスクの上昇と関連する。ある特定の実施形態では、方法は、治療前測定値と比較して約10%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約85%以上、約90%以上、もしくは少なくとも約95%以上の低下、またはこれらの具体的に記載されるパーセントの間の任意の低下量が存在するGSHリサイクル活性の低下を特定することを含む。
【0068】
ある特定の実施形態では、方法は、GSHリサイクル活性の低下の不在、または治療前試料から取得される測定値と比較した場合の治療後のGSHリサイクル活性の相対的な不変を特定することを含む。ある特定の実施形態では、方法は、治療後に取得される測定値の治療前測定値(複数可)からの逸脱が約5%未満、約10%未満、約15%未満、約20%未満、約25%未満、約30%未満、約35%未満、約40%未満、約45%未満、約50%未満、またはこれらの具体的に記載されるパーセントの間の任意の低下量である、GSHリサイクル活性の低下の不在(またはGSHリサイクル活性の不変)を特定すること含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、方法は、対象においてCIPNを診断することまたはCIPNの重症度を評価することを含む。CIPNの診断は、主観的な及び/または客観的な評価方法の両方の結果に基づき得る。ある特定の実施形態では、方法は、患者考慮事項、以前及び現在の治療(化学療法剤及び非化学療法剤の両方)、ならびに社会歴などの主観的な評価を含む。ある特定の実施形態では、方法は、身体検査、臨床検査、標準化アンケート、電気診断検査、及び神経生検などの客観的な評価方針を含む。全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)は、CIPNの重症度の評価に使用される最も一般的な医師ベースのグレード分類スケールについて詳述している。こうしたグレード分類スケールには、Ajani Sensory、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)、国立がん研
究所-有害事象共通用語基準(NCI-CTCAE)、及び世界保健機関(WHO)システム(0(正常)~5(死亡)のスケールでCIPN重症度をグレード分類する)が含まれる。
【0070】
さらに別の態様では、がんを有する個々のヒト対象向けに個別化された化学療法レジメンを決定する方法が提供され、この方法は、化学療法を開始する前に対象の血液試料のグルタチオンリサイクル依存的抗酸化活性及びフリーラジカル除去効率を評価するためにアッセイを実施することを含む。
【0071】
後述の実施例に示されるように、血液におけるGSHリサイクルを測定することが可能なレドックスアッセイを使用して、化学療法を受ける前の患者固有のGSHリサイクル能力を、治療を受けた後の患者のその後のCINV易罹患性と比較した。実施例では、白金ベースの治療に焦点を当てた。しかしながら、後述の実施例に示される添付データは、より広い患者人口に拡張し得るものである。実施例は、血液におけるGSHリサイクル能力の低下がCIPNの発症の客観的な指標となることを示す予備結果を説明するものである。
【0072】
アッセイ
上記のように、試料における抗酸化グルタチオンのリサイクル能力を評価するための方法は当該技術分野で知られている。本発明者らは、生体内還元機構を介するヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS)からメルカプトエタノール(ME)への変換を利用するOxPhos(商標)Cell Survival Kit(カタログ番号KLD-02、Rockland Inc.)を含むこれまでのアッセイに改良を加えた方法を開発した(米国特許第8,697,391号も併せて参照のこと。当該文献は、参照によって本明細書に組み込まれる)。改良法では、(例えば、96ウェルプレート形式において)多くの試料を処理することが容易になっており、CLIA公認の臨床検査室に典型的には見られる自動化プレートリーダーを使用した場合に正確な測定値が得られる。注目すべきことに、ある特定の方法は、スルホサリチル酸(SSA)緩衝液で試料を処理することを必要としない。
【0073】
一態様では、赤血球(RBC)を含む試料におけるグルタチオン(GSH)リサイクル能力を測定するためのアッセイが本明細書で提供され、このアッセイは、(a)試料をヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)含有溶液と混合して第1の体積を取得し、当該第1の体積をインキュベートして、試料由来の実質的なRBC画分を沈降させることと、(b)RBCを実質的に含まない第1の体積の一定分量を取得し、当該第1の体積の一定分量を磁気ナノビーズ含有溶液と混合して第2の体積を取得することと、(c)第2の体積またはその一定分量を磁場に晒すことと、(d)第2の体積から上清を取得し、上清またはその一定分量を5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して第3の体積を取得することと、(e)第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して吸光度読み取り値を取得することと、を含み、(e)において測定される吸光度は、RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す。
【0074】
別の態様では、RBCを含む一連の試料におけるGSHリサイクル能力を測定するためのアッセイが本明細書で提供され、このアッセイは、(a)試料のそれぞれをHEDS含有溶液と混合して一連の第1の体積を取得し、当該一連の第1の体積をインキュベートして、試料由来の実質的なRBC画分を沈降させることと、(b)RBCを実質的に含まない当該第1の体積のそれぞれの一定分量を取得し、それぞれの一定分量を磁気ナノビーズ含有溶液と混合して一連の第2の体積を取得することと、(c)一連の第2の体積またはその一定分量を磁場に晒すことと、(d)第2の体積から一連の上清を取得し、上清またはその一定分量のそれぞれを5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)
(DNTB)含有溶液と混合して一連の第3の体積を取得することと、(e)一連の第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して一連の吸光度読み取り値を取得することと、を含み、(e)において測定される吸光度は、RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す。
【0075】
別の態様では、RBCを含む一連の試料におけるGSHリサイクル能力を測定するためのアッセイが本明細書で提供され、このアッセイは、(a)試料のそれぞれをHEDS含有溶液と混合して一連の第1の体積を取得し、当該一連の第1の体積をインキュベートすることと、(b)試料を遠心分離して懸濁液由来のRBC及びデブリを除去することと、(c)RBC及びデブリを実質的に含まない当該第1の体積のそれぞれの一定分量を取得し、それぞれの一定分量をトリクロロ酢酸(TCA)と混合して一連の第2の体積を取得することと、(d)一連の第2の体積またはその一定分量を遠心分離に供すことと、(e)第2の体積から一連の上清を取得し、上清またはその一定分量のそれぞれを5,5’-ジスルファンジイルビス(2-ニトロ安息香酸)(DNTB)含有溶液と混合して一連の第3の体積を取得することと、(f)一連の第3の体積またはその一定分量を分光光度分析に供して一連の吸光度読み取り値を取得することと、を含み、(e)において取得される吸光度読み取り値は、RBCを含む試料におけるGSHリサイクル能力を示す。
【0076】
実施例3に記載のように、本発明者らは、1つの8ウェルストリップまたは一連の8ウェルストリップを使用して実施できるアッセイを開発した。このアッセイのある特定の実施形態では、各8ウェルストリップは各試料に割り当てられる。アッセイの設計は、試料の処理を容易にし、利用可能なアッセイと比較して測定値の精度を改善するものである。8ウェルストリップは容易に入手可能であり、最大で12個のストリップを保持するフレームに適合するように設計されている(例えば、J G Finneran and Porvair Sciences,モデル番号208107,96ウェルプレート,12×8フレーム上8ウェルストリップの設計を参照のこと)。8ウェルストリップは、用途応じてV底、U底、及び平底のものが入手可能である。
【0077】
例えば、
図12に示されるように、8ウェルストリップのウェルは、RBC含有試料の希釈液に加えて、ブランク、陰性対照、陽性対照のうちの1つ以上を可能にする。ある特定の実施形態では、ウェルは、精度を制御するために2連にされる。8ウェルストリップにおける試料体積の配置は、清澄化ステップ(例えば、遠心分離)後の上清の移動を含めて、アッセイのさまざまなステップでの試料の移動及びその秩序化を容易にする。
【0078】
本明細書に記載のように、本発明者らは、GSHリサイクル活性を測定するためのアッセイに含めることができる有用な陽性対照としてL-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)を同定した。L-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)は、例えば、凍結乾燥形態または緩衝液に溶解した状態ものがさまざまな供給業者(例えば、Alfa Aesar,CAS7048-04-6)を介して容易に入手可能である。陽性対照は、1つ以上の濃度でアッセイに含められ得る。ある特定の実施形態では、LCHMは、約25μMol、約50μMol、及び/または約25μMol~約50μMolの濃度で溶液に含められる。LCHMは、例えば、低pHの超純水(Cayman Chemicals)に溶解され得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、第1の体積(一連の第1の体積中の各体積)は、約250μl以下、約200μl以下、約150μl以下、約100μl以下、約75μl以下、約50μl以下、または約25μl以下である。ある特定の実施形態では、第2の体積(または一連の第2の体積中の各体積)は、約250μl以下、約200μl以下、約150μl以下、約100μl以下、約75μl以下、約50μl以下、または約25μl以下である。ある特定の実施形態では、第3の体積(または一連の第3の体積中の各体積)は
、約350μl以下、約300μl以下、約250μl以下、約200μl以下、約150μl以下、約100μl以下、約75μl以下、約50μl以下、または約25μl以下である。ある特定の実施形態では、方法は、少なくとも約5つ、少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約50個、少なくとも約100個、少なくとも約200個、少なくとも約250個、少なくとも約300個、または少なくとも約350個の第1の体積、第2の体積、及び/または第3の体積を含む。
【0080】
ある特定の実施形態では、記載の方法のステップ(a)は、試料(複数可)を少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、または少なくとも約2時間インキュベートすることを含む。インキュベート時間によって、ヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS)からメルカプトエタノール(ME)への変換及びRBCの沈降が可能になる。ある特定の実施形態では、ステップ(a)は、インキュベート時間のすべてまたは一部の間に試料を例えば700rpmで振とうさせることを含む。ある特定の実施形態では、第1の体積は、V底マイクロプレートにおいてインキュベートされる。ある特定の実施形態では、プレートは、96ウェルマイクロプレートである。ある特定の実施形態では、プレートは、384ウェルマイクロプレートである。ある特定の場合、ステップ(a)は、21℃または約21℃で試料体積をインキュベートすることを含む。インキュベートが21℃で実施されない場合、下記の式を利用して、調整された最終的なGSH活性測定値を取得することができる:
【数1】
【0081】
ある特定の実施形態では、記載の方法の磁気ナノビーズは、グルタチオン磁気アガロースビーズである(例えば、Pierce(商標)Glutathione Magnetic Agarose Beads;カタログ番号:78601を参照のこと)。ある特定の実施形態では、ナノビーズは、シリカ(SiO2)及びマグヘマイト(γ-Fe2O3)から構成される。シリカ(SiO2)及びマグヘマイト(γ-Fe2O3)から構成される適切なナノビーズまたは同様のものは、Stoeber,Werner;Fink,Arthur;Bohn,Ernst(January 1968).“Controlled growth of monodisperse silica spheres in the micron size range”.Journal of Colloid and Interface Science.に記載の方法に従って生成させることができ、当該文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0082】
磁気分離は、当業者が利用可能な従来の手段を使用して達成できる。ある特定の実施形態では、方法は、試料を含むプレートまたは試料含有ウェルを磁気分離デバイス(例えば、Dexter LifeSep(登録商標)biomagnetic separator tray;Dexter Magentic Technologies)と接触させることを含む。適切な磁気分離デバイスは、当該技術分野で他にも知られている。
【0083】
以前に報告されたように、生物学的試料における細胞外MEは、5,5-ジチオビス2-ニトロ安息香酸(DTNB)アッセイによって測定できる(例えば、Ayene et
al.(2002)J.Biol.Chem.,277:9929-35を参照のこと)。例えば、細胞外培地がDTNBと混合され、その後に412nmでO.D.が測定され得る。MEの濃度は、還元型DTNBの吸光係数1.36×104を使用して計算され得る。ある特定の実施形態では、記載の方法における吸光度の測定値は、自動化プレートリーダーを使用して取得される。ある特定の実施形態では、吸光度を測定するステップは
、平底プレート中の試料に対して実施される。ある特定の実施形態では、プレートは、96ウェルマイクロプレートである。ある特定の実施形態では、プレートは、384ウェルマイクロプレートである。ある特定の実施形態では、プレートは、オプティカルボトムマイクロプレートである。ある特定の実施形態では、吸光度の測定は、最大で12個の8ウェルストリップを保持することが可能なフレーム内の1つ以上の8ウェルストリップに対して実施される。ある特定の実施形態では、方法は、被検試料由来の吸光度の量を少なくとも1つの標準と比較することを含む。例えば、標準は、生物学的試料(例えば、対象)由来の量であり得る。ある特定の実施形態では、標準は、ヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)及びL-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)を含む溶液である。
【0084】
キット
本明細書に記載の方法を実施するためのキットも提供される。
【0085】
ある特定の実施形態では、キットは、HEDS及びナノビーズを含む。別の実施形態では、キットは、HEDS、ナノビーズ、及びDTNBを含む。ある特定の実施形態では、HEDS、ナノビーズ、及びDTNBのうちの1つ以上は、担体を含む組成物に含められる。ある特定の実施形態では、キットは、1つ以上のマイクロタイタープレートをさらに含む。ある特定の実施形態では、キットは、V底マイクロプレートを含む。
【0086】
別の実施形態では、キットは、ヒドロキシ-エチル-ジスルフィド(HEDS)及び陽性対照としてのL-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)を含む。ある特定の実施形態では、LCHMは、凍結乾燥されたものである。他の実施形態では、LCHMは、約25μMol、約50μMol、及び/または約25μMol~約50μMolの濃度で溶液中に存在するものである。ある特定の実施形態では、は、DTNB(エルマン試薬)、V底8ウェルストリップ、平底8ウェルストリップ、最大で12個の8ウェルストリップを保持することが可能なフレーム、トリクロロ酢酸(TCA)、及びグルタチオン緩衝液のうちの1つ以上も含む。
【0087】
ここでは、本発明は下記の実施例に関連して説明される。これらの実施例は例示のみを目的として与えられており、いかなる様式においても本発明をこれらの実施例に限定されるものとして解釈すべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形形態を包含するものと解釈すべきである。
【実施例】
【0088】
実施例1:CIPNに対する易罹患性を評価するためのGSHリサイクル活性の測定及びCIPNの重症度の予測
ビンカアルカロイド(ビンクリスチンなど)は、血液がんの治療に主に用いられる重要な抗がん剤である。その抗腫瘍作用の主な機序は微小管破壊である。一方で、こうした薬剤は、酸化ストレス及び活性酸素種(ROS)の生成を引き起こすミトコンドリア損傷も引き起こす。この機序、すなわち、酸化ストレスの増加によって末梢神経障害を引き起こすことが示唆される他の化学療法剤には、タキサン及び白金化合物が含まれる。末梢ニューロンに対する酸化的損傷は、ミエリン鞘、ミトコンドリアタンパク質、及び他の抗酸化酵素に損傷を引き起こして、末梢ニューロンの過剰興奮性を生じさせ得る。この神経損傷は、一般に見られる用量制限神経学的副作用である化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を生じさせる。
【0089】
本発明者らは、ミトコンドリアに対して同様の作用を有する化学療法剤(ビンカアルカロイド、タキサン、及び白金化合物)であれば、CIPNに罹患し易い患者において特定のグルタチオンリサイクルパターンをもたらすであろうと仮定した。
【0090】
方法:この探索的単一施設前向きIRB承認試験への参加承諾書を提出した患者から、各治療サイクルの前に血液試料の提供を得た。治療レジメンの開始前にベースライン/治療前試料を取得した。いずれの化学療法の投与前にも各治療の当日に追加の試料を取得した。各来診時にロッテルダム症状チェックリスト(RSCL)に記入してもらい、診療記録の内容と比較することによって報告症状を確認した。
【0091】
生物活性プローブであるヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS)を使用してグルタチオンリサイクル能力について全血を分析し、穏やかに混合しなら室温で2時間インキュベートした。分光光度的な決定に先立って、酸沈殿及び遠心分離によって血液細胞及びタンパク質性チオールを試料から除去した。OxPhoアッセイキット(Rockland
Inc)において提供される変換係数を使用して最終的な分光光度的読み取り値を生成MEに変換して「chemotox」スコアを取得した。リサイクル能力(Chemotoxスコア)をCIPNの自己申告グレードと比較した。「重度CIPN」は、3回以上の連続する治療来診でグレード3 CIPNを自己申告した患者を指す。
図1は、CIPNを含む神経系障害をグレード分類するためのガイドラインを示す表を提供する。
【0092】
結果:登録患者は428人であり、患者の平均年齢は63.84歳(12.85STDEV±13.00;範囲;25~92)であった。患者は主にコーカサス系の人種背景(82%)から構成され、これに加えて、アフリカ系アメリカ人系の人種背景(16.59%)及びアジア人系の人種背景(0.43%)、ならびにラテン系の人種背景(0.48%)である。コホートの57.94%を女性が構成している。これまでに、経過観察期間が24ヶ月超の患者は306人存在し、これらの患者のうち19.28%でグレード3 CIPNが報告され、24.51%でグレード2の症状が報告された一方で、32.35%ではCIPNの症状は報告されなかった。
図2は、患者年齢が重大なCIPNリスク因子であることを示す。性別及び1年のうちの時期に基づくChemotoxスコアの分析から、一般に女性よりも男性の方が低いchemotoxスコアを有し(すなわち、グルタチオンリサイクルのレベルが低い)、レベルは1年のうちの時期によって変動し得ることが示された(
図3)。一連の4つの患者Chemotoxスコアの最初の分析から、CIPNに対する患者の易罹患性の決定には時点を組み合わせることが有用であり得ることが明らかになった(
図4及び
図8)。グレード2または3のCIPN症状を発症する5~12週間前にCIPNの予測が得られた。この方法を使用することで、持続性CIPN(3回の治療サイクルまたは経過観察来診を超えて持続するものと定義される)を有する患者のうち80.77%が正しく特定された(AUC0.869281)(
図8)。ベースライン/治療前測定値を単独で使用することは、重度CIPNの予測に有用ではなく、このことは、AUCが0.47であることによって明らかになった(
図5)。代替的に、第1の治療の後(かつ第2の治療の前)に取得した測定値を使用すると0.74のAUCが得られた(
図6)。次に、さまざまな時点で患者から得られたChemotoxスコアと追加の因子(患者の年齢及び性別など)との組み合わせを使用することで重度CIPNが予測可能であるかどうかを評価した。4つの測定値(1=治療前/ベースライン、2=第1の治療の後/第2の治療の前、2=第2の治療の後/第3の治療の前、及び4=第3の治療の後/第4の治療の前)の平均値ならびに追加の基準を使用することで、評価のAUCが0.81に改善した(
図7)。化学療法レジメンを受ける患者における重度CIPNの予測に平均chemotoxスコアを使用可能であることが、さらなる解析から示された。4つのChemotoxスコアの平均値を使用することで、重度CIPNの予測のカットオフ値が1.85であることが明らかになった(
図9A)。驚くべきことに、第1の治療の後/第2の治療の前に取得されるChemotoxスコアと、取得される第2のスコアと、第3の治療の後/第4の治療の前に取得されるChemotoxスコアとの平均値を利用するだけでも、1.8のカットオフ値で重度CIPNが高度に予測された(
図9B)。
図11A及び
図11Bは、4つの時点で取得されるChemotoxスコアの平均値を使用する解析が、タキソールを含む治療またはオキサリプラチン/FOLFOX併用
治療を受けているコホートにおけるCIPNを予測可能な有用なものであることを示す。追加のリスク因子/変数を含めてChemotoxスコアと組み合わせて利用することで、CIPNの予測を改善することができる。因子には、患者年齢、人種、性別、特定の治療レジメン、がん型、併存疾患、がん罹患歴及び治療歴、体格指数、遺伝因子、ならびに赤血球数が含まれる。
【0093】
実施例2:グルタチオンリサイクル能力を測定するための改良型アッセイ
活性酸素種によって誘発される酸化ストレス及び有害作用のレベルの決定には、抗酸化グルタチオンのリサイクル能力を測定するための現存するチューブベースのアッセイ(Oxphos(商標)Cell Survival Assay Kit;Rockland,Inc.)が使用されている。本発明者らは、このこれまでのマイクロ遠心チューブベースのアッセイを96ウェルハイスループットアッセイへと改変し、古い化学のいくつかを置き換えることで、CLIA公認の臨床検査室に典型的には見られる自動化プレートリーダーを使用して正確な最終測定値が確実に得られるようにした。
【0094】
アッセイに対する第1の改変では、血液試料と生物活性プローブであるヒドロキシ-エチル-ジスルフィドとのインキュベートにV形状96ウェルマイクロプレートを使用するようにした。標準的なインキュベート時間を経ると、血液細胞がウェルの底に沈降して上清を新たなプレートに移せるようになる。損傷細胞から放出されている可能性のある干渉物質を除去するためにナノビーズのスラリーを添加する。ナノビーズは、Stober プロセスに従って創出されるシリカ(SiO2)及びマグヘマイト(γ-Fe2O3)または同様のものから構成されている(Stoeber,Werner;Fink,Arthur;Bohn,Ernst(January 1968).“Controlled
growth of monodisperse silica spheres in the micron size range”.Journal of Colloid and Interface Science.26(1):62-69.Bibcode:1968JCIS26-62-S.doi:10.1016/0021-9797(68)90272-5.)。ビーズは、最終的な光学的測定を妨害し得る分子に結合する表面リガンドを有する。プレートを磁気分離器ユニット上に置くことによって、リガンドに結合した物質を含むビーズがウェルの底に沈降し、その後に、これまでの方法論(Oxphos(商標)Cell Survival Assay Kit;Rockland,Inc.)で行われるようなジチオビスニトロ安息香酸を使用する412nmでのプレートリーダーでの測定のためのオプティカルボトムプレートに清澄化上清を移すことができる。
【0095】
こうした改良によって、自動化ハイスループット機器が利用される臨床検査室における大量検査が容易になり、患者におけるグルタチオンリサイクル能力の決定を迅速化することが可能になる。
【0096】
マルチウェルアッセイのためのプロトコール
非キット材料:
-2つのV底96ウェルプレート
-1つの平底96ウェルプレート
-平衡/洗浄緩衝液:125mM トリス-HCL、150mM NaCl、1mM EDTA,pH 7.4
-Pierceグルタチオン磁気アガロースビーズ。カタログ番号78601
-Dexter LifeSep 96F磁気プレート分離器
-0.9%塩化ナトリウム
【0097】
Magnabeadの調製
1.各患者につき、100uLのビーズスラリー(25uLの安定沈降ビーズ)を1.5mLのマイクロ遠心チューブに添加する。
注記:多数の患者にはより大きなチューブを使用し、ビーズの体積及び平衡/洗浄緩衝液の体積をそれぞれ増やす。
2.400uLの平衡/洗浄緩衝液をビーズに添加し、10秒間ボルテックスする。
3.チューブを磁気スタンドに置いてチューブの壁面にビーズを集める。上清を除去し、捨てる。
4.500uLの平衡/洗浄緩衝液をチューブに添加する。ビーズを10秒間ボルテックスし、磁気スタンドを用いてビーズを集める。上清を除去し、捨てる。
5.400uLの平衡/洗浄緩衝液をチューブに添加し、10秒間ボルテックスする。
注記:ビーズを乾燥させないこと。必要な場合はビーズを平衡/洗浄緩衝液中で保管する。
【0098】
試薬
試薬#1:(HEDS)
2-ヒドロキシエチルジスルフィド(CAS1892-29-1,MW154.25g/mol)
試薬#2:(PBS)
リン酸緩衝生理食塩水,pH7.4
2.0gのKCL、2.40gのKH2PO4、80.0gのNaCl、及び14.4のNa2HPO4×7H2Oを蒸留水に溶解し、pHを調整し、体積を1Lに調整する。
試薬#3:(SS酸)
[100mM 5-スルホサリチル酸二水和物,BioXtra≧99%]
[Sigma S7422-100G]
CAS5965-83-3,C7H6O6S・2H2O,MW254.21g/mol
500mlを調製するには12.71グラムを蒸留H2Oに溶解する。溶解時点でさらに水を加えて体積を500mlに調整する。
試薬#4:(GSH緩衝液)
[0.1M NaH2PO4・0.5mM EDTA、pH7.5]
[リン酸二水素ナトリウム無水USP,Fisher S397-500] CAS7558-80-7,MW119.96g/mol NaH2PO4;
[エチレンジアミン四酢酸(EDTA),二ナトリウム塩,無水USP,Fisher S312-500]
CAS6381-92-6,MW372.24,C10H14N2Na2H8・2H2O1Lを調製するには、11.996グラムのリン酸二水素ナトリウムを溶解する。0.1862グラムのEDTAを添加し、溶液の撹拌を継続する。すべてのEDTAを溶解させるにはpH調整が必要になることもあり得る。
完全溶解時点でpHを7.5に調整する。
試薬#5:(DTNB)
[10mM 5,5’-ジチオビス(2-ニトロ-安息香酸)]
[Sigma D8130-10G]
CAS69-78-3;MW396.35;C13H8N2O8S2
250mlを調製するには、0.9908グラムのDNTBを試薬4に溶解する。
【0099】
マルチウェルアッセイ
ステップ1
表1に示されるように生理食塩水及び試薬6を含むV底96ウェルプレートを準備して、5uL及び10uLの血液試料を2連にして患者当たりの総ウェル数を5とする。血液を各ウェルに入れて穏やかに混合した後、マイクロプレート密封フィルムでプレートをカバーしてから、ロッカー上で2時間インキュベートする。
【表1】
【0100】
ステップ2
2時間のインキュベート後、ステップ1由来の各ウェルに由来する上清75uLを、洗浄済磁気ビーズ溶液を各ウェル中に75uL含む新たなV底96ウェルプレートに移し、10分間インキュベートする。
【0101】
ステップ3
インキュベート後、ステップ2由来のV底96ウェルプレートをDexter磁気プレート上に30~60秒間置く。磁気ビーズは、各ウェルの底に引き寄せられる。表2に示されるように試薬4及び5を含む平底96ウェルプレートに各ウェル由来の上清10uLを移して患者当たりの総ウェル数を5とし、さらに1つのブランクを用意する。
【表2】
平底96ウェルプレート上に蓋を置き、412nmで吸光度を読み取る。実験試料からブランクを差し引く。
【0102】
実施例3:Chemotoxハイスループットアッセイ
改良型アッセイを開発して、多数の患者試料を効率的に分析できるようにした。
【0103】
試料ごとに必要な材料
-3つの空の96ウェルプレートフレーム
-試料当たり2つのV底8ウェルストリップ
-試料当たり1つの平底8ウェルストリップ
-試料当たり4つの8ウェルストリップキャップ
-試薬#1:ヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS)(CAS1892-29-1、MW154.25g/mol)
-試薬#2:トリクロロ酢酸(TCA)
-試薬#3:発色試薬,エルマン試薬(DTNB)[10mM 5,5’-ジチオビス(2-ニトロ-安息香酸)][Sigma D8130-10G]CAS69-78-3
;MW396.35;C13H8N2O8S2
-試薬#4(グルタチオン緩衝液)
-凍結乾燥L-システイン塩酸塩一水和物(LCHM)[Alfa Aesar:CAS7048-04-6
【0104】
以下のリストは、アッセイのための特定の試薬を含む、使用準備ができた状態の8ウェルストリップのレイアウトである(それぞれの3つのストリップは、
図12に示されるウェルA~Hを含む)。患者試料ごとにストリップのうちの1つが必要であり、最大で12個のストリップを単一のプレートフレームが並行して保持して(8×12)、一度に12個の患者試料に対するアッセイを実施できる。
【表3】
【表4】
【表5】
【0105】
アッセイの実施:
1.210μLの試薬#4をプレート#1のウェルB及びCに添加する。
2.2連の全血20μLをウェルE及びF(180μLの生理食塩水を含む)に添加し、60μLの血液をG及びH(140μLの生理食塩水を含む)に添加する。
3.キャップストリップでプレートを密封し、700RPMの振とう機上に2時間置いて室温でインキュベートする。
注記:最適な性能は21℃で得られる。環境温度が21℃と異なる場合は、下記の式を使用して最終的なChemotoxスコアを取得する:
【数2】
4.2時間のインキュベート後、遠心分離のバランスが適切であることを事前に確認して、プレート#1を2,000Gで6分間遠心分離する。
5.ペレットを乱さないようにしながら、各ウェル由来の上清50μLをプレート#2中の対応ウェルに慎重に移す。新たなストリップでプレートを密封する。
6.遠心分離のバランスが適切であることを確認して、プレート#2を2,000Gで6分間遠心分離する。
7.プレート#2由来の上清30μLをプレート#3に移し、ピペットチップを洗浄する。透明から黄色へと色が即座に変化する。
8.30分以内に412nmで吸光度値を読み取る。
【0106】
商業的に利用可能なチューブベースの方法から得られた結果をハイスループットプレートベースの形式から得られた結果と比較する患者試料の並行分析から、プレートベースのアッセイが少なくとも同等かそれ以上に正確であることが明らかになった(
図13)。陽性対照(LCHM)の追加は、アッセイの信頼性をさらに高めるものである。
【0107】
特許、特許出願、及び刊行物の1つ1つが、参照によって本明細書に組み込まれる。2021年11月3日出願の米国仮特許出願第63/275,271号及び2021年11月3日出願の米国仮特許出願第63/275,279号は、参照によって本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく改変形態をつくれることが理解されよう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【国際調査報告】