(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】減速比変更デバイス
(51)【国際特許分類】
B62M 9/10 20060101AFI20241112BHJP
B62M 9/04 20060101ALI20241112BHJP
F16H 9/24 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B62M9/10 C
B62M9/04 A
F16H9/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526906
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022080490
(87)【国際公開番号】W WO2023078889
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】506155266
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ポワティエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE POITIERS
(71)【出願人】
【識別番号】524167289
【氏名又は名称】クレプス・ドゥ・ポワティエ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ・デブリル
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・エオン
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・フレシェ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ボー
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ドマラン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ドゥラン
【テーマコード(参考)】
3J050
【Fターム(参考)】
3J050AA08
3J050BA12
3J050BB01
3J050DA04
(57)【要約】
本発明は、機械式チェーン変速システムのための減速比変更デバイス(1)、いわゆるDCRRに関する。DCRR(1)は歯部(2、3)を備える。DCRR(1)の歯部は、DCRRの回転の軸(5)の周りに巻き付く歯付き螺旋を形成する部分(2)、いわゆる螺旋部分と、その中心がDCRRの回転の軸と一致する歯付き平面状円を形成する部分(3)、いわゆる円形部分とを備える。歯部の螺旋部分(2)は、DCRR(1)の歯部の遠位端(4)から、歯部の円形部分(3)に向けて延びる。DCRR1の歯部の円形部分(3)は、DCRRの歯部の近位端(3)を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式チェーン変速システムのための減速比変更デバイス(1)、いわゆるDCRRであって、前記DCRRは、歯部(2、3)を備え、前記DCRRの前記歯部は、
前記DCRRの回転の軸(5)の周りに巻き付く歯付き螺旋を形成する部分(2)、いわゆる螺旋部分と、
その中心が前記DCRRの前記回転の軸と一致する歯付き平面状円を形成する部分(3)、いわゆる円形部分と
を備え、
前記歯部の前記螺旋部分は、前記DCRRの前記歯部の遠位端(4)から前記歯部の前記円形部分に向けて延び、前記歯部の前記円形部分は、前記DCRRの前記歯部の近位端(3)を形成する、減速比変更デバイス(1)。
【請求項2】
前記螺旋部分(2)の歯の数が、前記円形部分(3)の歯の数より多い、請求項1に記載のDCRR(1)。
【請求項3】
前記螺旋部分(2)の半径が、前記螺旋部分の少なくとも1つの区域(21)、いわゆる第1の区域にわたって一定である、および/または、前記螺旋部分の半径が、前記螺旋部分の少なくとも1つの区域(22)、いわゆる第2の区域にわたって変化する、請求項1または2に記載のDCRR(1)。
【請求項4】
前記螺旋部分(2)の前記第1の区域(21)の前記歯付き螺旋は、前記DCRRの前記回転の軸(5)の周りで少なくとも1回の巻回で巻き付く、請求項3に記載のDCRR(1)。
【請求項5】
前記螺旋部分(2)の前記第2の区域(22)の半径が、前記螺旋部分の前記第2の区域の前記歯部の遠位端(6)から前記螺旋部分の前記第2の区域の前記歯部の近位端(7)に向けて延びる方向に応じて、前記回転の軸(5)に沿って増加する、請求項3または4に記載のDCRR(1)。
【請求項6】
前記螺旋部分(2)の前記歯部の近位端(7)と前記円形部分(3)の前記歯部との間に配置される案内部(8)であって、前記DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンの、前記螺旋部分から前記円形部分に向けた連続的な噛み合いを確保するように配置される案内部(8)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のDCRR(1)。
【請求項7】
前記円形部分(3)の前記歯部は、前記案内部(8)が反対に配置される少なくとも1つの歯の凹部(9)を備える、請求項6に記載のDCRR(1)。
【請求項8】
前記案内部(8)の近位表面(10)の一部分が、前記DCRRが噛み合わされるように意図される前記チェーンを、前記螺旋部分(2)から前記円形部分(3)へと案内するように配置される、請求項7に記載のDCRR(1)。
【請求項9】
前記DCRRは、前記DCRRの前記回転の軸(5)から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称であり、前記DCRRにおける伝達要素の留め付けを確保するように配置される隣接するオリフィス(11)のセットを備え、前記伝達要素は、前記DCRRに留め付けられるように、および、力トルクを前記DCRRに伝達するように意図される、請求項1から8のいずれか一項に記載のDCRR(1)。
【請求項10】
前記円形部分(3)および前記螺旋部分(2)の各々は、個別の部品の一部であり、前記個別の部品は、一体品において前記DCRRを形成するように、留め付け手段(12、13)によって可逆的に組み立てられるように配置され、前記円形部分を備える前記一部は、いわゆる近位ホイール(14)であり、前記螺旋部分を備える前記一部は、いわゆる遠位ホイール(15)である、請求項1から9のいずれか一項に記載のDCRR(1)。
【請求項11】
前記遠位ホイール(15)は、前記DCRRの前記回転の軸(5)から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称である隣接する開口(16)のセットを備え、
前記近位ホイール(14)は、前記DCRRの前記回転の軸から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称である隣接する開口(17)のセットを備え、
前記近位ホイールまたは前記遠位ホイールのそれぞれの前記開口のセットの前記開口の各々は、前記円形部分(3)と平行な円弧に従って延びる湾曲した形状を有し、
前記近位ホイールまたは前記遠位ホイールのそれぞれの前記開口のセットの前記開口が従って延びる前記円弧の半径が、前記遠位ホイールに対する前記近位ホイールの角度位置を調整するように、前記DCRRの前記回転の軸と、前記遠位ホイールまたは前記近位ホイールのそれぞれの前記開口のセットの前記開口の中心との間の距離に等しい、請求項10に記載のDCRR(1)。
【請求項12】
前記DCRRの前記遠位ホイール(15)は、中心開口部(181)を備え、前記DCRRの前記近位ホイール(14)は、半径方向周囲壁(20)を備えるリングを形成する半径方向突出部(19)を備え、前記リングは、前記DCRRの前記回転の軸に従って延びる、前記近位ホイールの余分な厚さを形成し、前記遠位ホイールの前記中心開口部(181)へと挿入されるように配置され、前記半径方向周囲壁は、前記遠位ホイールの前記中心開口部を画定する前記遠位ホイールの壁(41)に圧し掛かって支持されるように配置される、請求項10に記載のDCRR(1)。
【請求項13】
前記案内部(8)は、前記近位ホイール(14)または前記遠位ホイール(15)のそれぞれに留め付け手段(121)によって可逆的に留め付けられ、前記遠位ホイール(15)または前記近位ホイール(14)のそれぞれは、前記案内部を少なくとも部分的に受け入れるように配置される切り欠き(23)を備える、請求項6に記載の、または請求項6との組み合わせで考慮される請求項10から12のいずれか一項に記載のDCRR(1)。
【請求項14】
前記遠位ホイール(15)は、2つの個別の部品から形成され、前記2つの部品の一方、いわゆる始動ホイール(151)が、前記螺旋部分(2)の前記第1の区域(21)を備え、前記2つの部品の他方、いわゆる中間ホイール(152)が、前記螺旋部分の前記第2の区域(22)を備える、請求項3との組み合わせで考慮される請求項10に記載のDCRR(1)。
【請求項15】
前記始動ホイール(151)および前記中間ホイール(152)の各々は、前記DCRRの前記回転の軸(5)から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称である隣接する開口(24、25)のセットを備え、前記DCRRの前記回転の軸と、前記始動ホイールの前記開口(24)のセットの前記開口の中心との間の距離が、前記DCRRの前記回転の軸と、前記中間ホイールの前記開口(25)のセットの前記開口の中心との間の距離と等しい、請求項14に記載のDCRR(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式変速システムの技術分野に関する。特に、本発明は、チェーンによって連結される2つのピニオンを備える機械式変速システムに関する。
【0002】
本発明は、機械式変速システムのための、特に、チェーン変速システムのための、減速比変更デバイスに関する。特に、本発明は、これに限定されないが、自転車のための機械式変速システムに関する。
【背景技術】
【0003】
モータは、最大の動力を出力する最適な動作速度を有する。これは、動力発生が最適になる筋肉の伸び縮みの速度がある点において、人の生体力学にも当てはまる。これは、ペダリングなどの最適なジョイント回転速度または回転数を結果的にもたらし、クランクセットにおいて最大の機械的動力を発生させることができる。
【0004】
生成された機械的動力のホイールへの伝達を最適にするために、出力回転速度と入力回転速度との間の伝達比が、機械的動力を生成するシステムの最大効率点により近くなるという目的で、入力における抵抗またはトルクと、入力回転速度とを適応させるように、変調させられる。
【0005】
伝達比は、出力回転速度と入力回転速度との間の比として定められる。歯車を用いた伝達の場合、伝達比は、入力歯車ホイールの半径または入力歯車ホイールの歯の数と、出力歯車ホイールの半径または出力歯車ホイールの歯の数との間の比として定めることもできる。
【0006】
様々な伝達比変更デバイスが、先行技術から知られており、最適な動作体制に到達して維持するのを可能にする。これらのデバイスのうち、ギヤボックス、無断変速機、およびディレーラが主に知られている。
【0007】
自転車に関しては、既存の技術には、本質的に、ほとんどの自転車に備わるディレーラ、ギヤハブ、ギヤボックス、および無断変速機(CVT)システムがある。
【0008】
ディレーラは、一連のピニオンまたは歯付きホイールと、伝達比を変化させるために1つのピニオンまたは歯付きホイールから他のピニオンまたは歯付きホイールへとチェーンを通すことができる機械的案内デバイスとから成る。
【0009】
1つのプレートから他のプレートへの移動は、サイクリストのペダリングを特に不安的にし、パフォーマンスにとって好ましくない不連続性をもたらす。
【0010】
同様に、1つのプレートから他のプレートへの移動は、負荷の下では、つまり、大きなトルクが駆動シャフトに加えられているときには、ほとんど行えない。そのため、ディレーラの使用は、あるピニオンから他のピニオンへと切り替える間、短時間ではあるが、サイクリストに自身の労力を解放させるように強いる。
【0011】
ディレーラは、電気モータが備え付けられるかどうかに拘わらず、レバーまたはボタンを作動させることから成る操作者による手動の介入を必要とする。この介入は、特にBMXレースにおける停止でのスタートの間、不安定にさせることが分かっている。
【0012】
同じ制約は、パフォーマンスにとって弊害をもたらす有意な質量が加えられるギヤハブシステムに当てはまる。
【0013】
ギヤボックスは、負荷の下での減速比における変更を可能とするが、不連続性の問題を持ち続けている。
【0014】
CVTは、産業用デバイスと消費者向け自転車との両方に備わる。CVTについて、ハブの内部の一体化された歯車機構が、台形ベルト、摩擦機構、または他の複雑な機構によって置き換えられる。サイクリング用に現在市販されているCVTうちの1つは、伝達比における連続的な変更を可能にするボールシステムに基づかれている。それでもなお、これらのデバイスは大きな質量と、小さい伝達可能トルク/質量の比とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、先行技術のデバイスの欠点を、少なくとも部分的に克服することを目的とする。
【0016】
本発明はさらに、
- 減速比における変化を、
・ 連続的に、および/または、
・ 不連続なしで、および/または、
・ 機械的負荷の下で、および/または、
・ 適用される力トルクにおける低減なしで、および/または、
・ 自動的に、つまり、手動の介入なしで、および/または、
可能にする減速比変更デバイス、いわゆるDCRRを提案すること、
- モジュール式DCRRを提案すること、および/または、
- 減速比および/もしくは減速比の変化が、現場において直接的に、簡単に素早く修正または変調させられ得るDCRRを提案すること、および/または、
- 少数の機械的部品を備えるDCRRを提案すること、および/または、
- 高い動作信頼性を保証するDCRRを提案すること、および/または、
- 保守をまったくまたはほとんど必要としないDCRRを提案すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そのために、機械式チェーン変速システムのための減速比変更デバイス、いわゆるDCRRが提案される。DCRRは歯部を備える。DCRRの歯部は、DCRRの回転の軸の周りに巻き付けられる歯付き螺旋を形成する部分、いわゆる螺旋部分を備える。歯部の螺旋部分は、DCRRの歯部の遠位端または近位端のそれぞれから、DCRRの歯部の近位端または遠位端のそれぞれに向けて延びる。
【0018】
好ましくは、DCRRの歯部は、その中心がDCRRの回転の軸と一致する歯付き平面状円を形成する部分、いわゆる円形部分をさらに備え、歯部の螺旋部分は、DCRRの歯部のそれぞれの遠位端または近位端から、歯部の円形部分に向けて延び、歯部の円形部分はDCRRの歯部の近位端または遠位端のそれぞれを形成する。
【0019】
好ましくは、DCRRは、ピニオンの全部または一部を形成する、または、ピニオンの全部または一部から成る。さらに好ましくは、DCRRは、駆動ピニオンの全部または一部を形成する、または、駆動ピニオンの全部または一部から成る。好ましくは、DCRRは、自転車のピニオンの全部または一部を形成する、または、自転車のピニオンの全部または一部から成る。
【0020】
機械式変速システムによって、これは駆動システムと理解され得る。
【0021】
好ましくは、DCRRの歯部は、その遠位端からその近位端まで噛み合わされるように意図される。
【0022】
歯部は、少なくとも螺旋部分と円形部分とから成り得る。好ましくは、歯部は螺旋部分と円形部分とから成る。
【0023】
螺旋について、これは渦巻状と理解され得る。螺旋は、円形、楕円形、円錐形、放物線状、または双曲線状であり得る。
【0024】
好ましくは、歯付き螺旋は、同心部分または円、つまり、回転の中心を有する平面に含まれる円ではなく、そのような同心部分または円を備えない。
【0025】
螺旋は、軸対称の円筒または軸対称の円錐の周りに刻まれ得るかまたは巻き付けられ得る。
【0026】
「端」について、これは、歯部の末端の歯または初めの歯と理解され得る。歯部の端、または歯部の一部分もしくは一部の端によって、これは、DCRRの歯部の、または歯部DCRRの一部分もしくは一部の、末端の歯または初めの歯などの端の歯と理解され得る。
【0027】
「遠位」および「近位」という用語は、DCRRが搭載されるように意図される、および/または、機械式変速システムが搭載されるように意図される、車両、好ましくは二輪車などの物体の中央平面または矢状面に対して定められる。好ましくは、中央平面は、DCRRが搭載されるように意図される、および/または、機械式変速システムが搭載されるように意図される物体の前と後ろとの間で延びる軸を含む。好ましくは、中央平面は、物体が走行位置にあるとき、および/または、その車輪上にあるとき、鉛直の軸を含む。
【0028】
DCRRの歯部は、螺旋部分の遠位端も形成するDCRRの歯部の遠位端から、円形部分を形成するDCRRの歯部の近位端まで延びる。
【0029】
好ましくは、歯部の螺旋部分は、DCRRの歯部の遠位端から螺旋部分の近位端まで延びる。好ましくは、螺旋部分の近位端は、円形部分に隣接するか、円形部分と接触するか、または円形部分の反対に位置付けられる。好ましくは、螺旋部分の近位端は、円形部分、つまりDCRRの歯部の近位端が噛み合わされる前の、噛み合わされる螺旋部分の最後の要素、好ましくは最後の歯である。
【0030】
好ましくは、螺旋部分は連続的である。さらに好ましくは、螺旋部分は、その全体の長さにわたって連続的に巻き付けられる。またさらに好ましくは、螺旋部分は、螺旋部分の遠位端から螺旋部分の近位端まで連続的に巻き付けられる。好ましくは、螺旋部分の近位端は、円形部分、つまり平面状円の最も近くに位置付けまたは位置決めされる螺旋の歯に対応する、またはそのような螺旋の歯から成る。
【0031】
好ましくは、螺旋部分の歯部の近位端は、円形部分の歯部の半径と同一の半径を有する。
【0032】
好ましくは、DCRRの歯部は、螺旋部分の歯部と円形部分の歯部とから成る。
【0033】
好ましくは、螺旋の軸はDCRRの回転の軸と一致する。
【0034】
螺旋部分が、1つの単一の螺旋、および/または、螺旋部分の螺旋の途切れのない性質、および/または、螺旋部分の螺旋の連続的な性質から成るという事実は、DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンの、螺旋部分の螺旋との連続的な巻き付けおよび/または噛み合いを可能にする。したがって、DCRRが噛み合わされるように意図されているチェーンへの労力の伝達が、重なりまたは急な動きなしで確保される。さらに、減速比における変化または変更は、負荷の下で、急な動きなしで行われ、そのため、DCRRへの労力の伝達はすぐに開始される。
【0035】
「負荷の下で」、「負荷の掛かっている下で」、「機械的負荷の下で」、または「機械的負荷の掛かっている下で」について、これは、力トルクなどの力の適用と理解され得る。したがって、「負荷の下での減速比における変更」について、これは、DCRRへの力の適用、具体的には力トルクの適用を付随して伴うDCRRの減速比の修正と理解され得る。
【0036】
好ましくは、DCRRは、DCRRにおける力トルクの適用によって回転させられるように配置される。好ましくは、DCRRは、ピニオンと、好ましくは被駆動ピニオンと結合されるように意図されている。好ましくは、DCRRは、それに適用される力トルクを、DCRRが噛み合わされるように意図されているチェーンを用いて、ピニオンに、好ましくは被駆動ピニオンに伝達するように意図されている。
【0037】
DCRRの減速比および/または減速比における変化は、DCRRのパラメータ、いわゆるDCRRの調整パラメータを修正または変調することで、修正または変調させることができる。好ましくは、DCRRの調整パラメータは、DCRRの歯部の初期および/もしくは最終の半径、ならびに/または螺旋の巻回の数、ならびに/または歯部および/もしくは歯部の一部分の歯の数、ならびに/または螺旋の導平面曲線、ならびに/または螺旋の半径における変化、ならびに/または螺旋の導平面曲線における変化である。
【0038】
DCRRの調整パラメータ、および結果的に減速比は、最適な比率、ならびに/または最適な初期および/もしくは最終の駆動回転速度、ならびに/または最適な初期および/もしくは最終の駆動負荷など、パラメータ、いわゆるカスタマイズパラメータに応じて変調され得る。いくつかの場合で、DCRRの調整パラメータ、および結果的に減速比は、例として、地勢、ならびに/または経路、ならびに/または高度差など、地形のパラメータに応じて、相補的または代替的に変調され得る。カスタマイズパラメータは、地形のパラメータに依存してもよい、および/または、地形のパラメータに基づいてもしくは応じて決定されてもよい。
【0039】
螺旋部分の歯の数は円形部分の歯の数より多くてもよい。
【0040】
好ましくは、螺旋部分の半径が、螺旋部分の少なくとも1つの区域、いわゆる第1の区域にわたって一定である、および/または、好ましくは、螺旋部分の半径が、螺旋部分の少なくとも1つの区域、いわゆる第2の区域にわたって変化する。
【0041】
好ましくは、螺旋部分の半径は、第1の区域にわたって一定であり、好ましくは第1の区域だけにわたって一定である。好ましくは、螺旋部分の半径は、第2の区域にわたって変化し、好ましくは第2の区域だけにわたって変化する。
【0042】
好ましくは、螺旋部分の歯部は、螺旋部分の第1の区域の歯部と螺旋部分の第2の区域の歯部とを備え、好ましくはそれら歯部から成る。
【0043】
DCRRの螺旋部分の第1の区域の歯部の近位端は、DCRRの螺旋部分の第2の区域の歯部の遠位端と同じ半径を有し得る。
【0044】
好ましくは、螺旋部分の第1の区域の歯部の近位端は、螺旋部分の第2の区域の歯部の遠位端に隣接する、および/またはその遠位端と接触する、および/またはその遠位端の反対に位置付けられる。好ましくは、螺旋部分の第1の区域の近位端は、螺旋部分の第2の区域の遠位端、好ましくは、第1の歯が噛み合わされる前の、噛み合わされる螺旋部分の第1の区域の最後の要素、好ましくは最後の歯である。
【0045】
好ましくは、螺旋部分の第1の区域の近位の巻回の端部分と、螺旋部分の第2の区域の遠位の巻回の端部分とは、螺旋または連続的な巻き付けを形成するように、並べられる、および/または接している。「巻回」によって、これは螺旋または渦巻の巻回と理解され得る。
【0046】
好ましくは、螺旋部分の第2の区域の近位端、好ましくは最後の歯は、DCRRの螺旋部分の近位端に対応する、または、DCRRの螺旋部分の近位端から成る。
【0047】
好ましくは、螺旋部分の第2の区域の歯部の近位端は、円形部分の歯部の半径と同じ半径を有する。
【0048】
螺旋部分の第1の区域と第2の区域とが並べられるとき、DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンとの螺旋部分の連続的な巻き付けおよび/または噛み合いが確保される。したがって、DCRRが噛み合わされるように意図されているチェーンへの労力の伝達が、重なりまたは急な動きなしで確保される。さらに、減速比における変化は、負荷の下で、連続的に滑らかに行われ、そのため、DCRRへの労力の伝達はすぐに開始される。
【0049】
螺旋部分の第1の区域の半径が一定である巻回の数は、螺旋部分の第2の区域の遠位端の噛み合いが完了されるときに最適な駆動回転速度に到達させられるように、1つまたは複数のカスタマイズパラメータに応じて適合させられ得る。
【0050】
螺旋部分の第1の区域の半径が一定であるとき、DCRRの回転速度は素早く増加させられ、そのため、DCRRへの労力の伝達は、伝達比を一定に保ちつつ、すぐに開始される。
【0051】
螺旋部分の第2の区域の半径が可変であるとき、伝達比は、最適な駆動回転速度および/または最適な駆動負荷を保ちつつ、発生させられる動力を変化させるように修正される。
【0052】
好ましくは、螺旋部分の第1の区域の歯付き螺旋は、DCRRの回転の軸の周りに少なくとも1と2分の1回の巻回で巻き付けられる。
【0053】
別の言い方をすれば、螺旋部分の第1の区域の歯部は、少なくとも1と2分の1回の巻回を含み得る螺旋を形成する。
【0054】
螺旋部分の第2の区域の半径が、螺旋部分の第2の区域の歯部の遠位端から螺旋部分の第2の区域の歯部への近位端に向けて延びる方向に応じて、回転の軸に沿って増加してもよい。
【0055】
螺旋部分の第2の区域において実施される伝達比における変化が、最適な駆動回転速度および/または最適な駆動負荷が維持されることを確保するために、適切な時点に行われるように、螺旋部分の第2の区域の半径が変化する巻回の数は、1つまたは複数のカスタマイズパラメータに応じて適合させられ得る。
【0056】
螺旋部分の第2の区域の半径を増加させることは、最適な駆動回転速度および/または最適な駆動負荷を発展させる一方で、モータまたは人などのシステムの最大効率に接近することによって、発生させられる動力を増加させるために伝達比を増加させることを可能にする。
【0057】
駆動負荷について、これは、DCRRに適用される力トルクと理解され得る。
【0058】
デバイスは、螺旋部分の歯部の近位端と円形部分の歯部との間に配置される案内部であって、DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンの、螺旋部分から円形部分に向けた連続的な噛み合いを確保する、および/または支援する、および/または、そのような噛み合いに寄与するように配置される案内部を備え得る。
【0059】
好ましくは、案内部は螺旋部分と円形部分との間にさらに配置される。
【0060】
好ましくは、案内部は、螺旋部分の第2の区域の近位の巻回の端部分と平行な平面に主に従って延びる。
【0061】
案内部は、DCRRが噛み合わされるように意図されているチェーンへの力の伝達が、重なりまたは急な動きなしで確保されることを可能にする。さらに、案内部は、螺旋部分から円形部分に向けての移行または移動を、負荷の下で、急な動きなしで可能にする。
【0062】
好ましくは、円形部分の歯部は、案内部が反対に配置される少なくとも1つの歯の凹部を備える。
【0063】
好ましくは、凹部は少なくとも2つの歯を備える。さらに好ましくは、凹部は3つ以上の歯を備える。
【0064】
凹部は、円形部分の歯と、DCRRが噛み合うように意図されているチェーンとの間に、重なりまたは摩擦が無いことを確保することができる。したがって、減速効率における最小の低減が確保され、急な動きが観察されない。
【0065】
凹部は、螺旋部分から円形部分に向けての移行または移動の間に、機械的なクリアランスを最小限にすることを可能にする。
【0066】
好ましくは、案内部の近位表面の一部分、好ましくは少なくとも1つの一部分が、DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンの、螺旋部分から円形部分への案内を確保するように配置される。
【0067】
案内部の近位表面について、これは、円形部分の反対に位置付けられる表面と理解され得る。
【0068】
好ましくは、案内部は、DCRRの軸に応じて、遠位から近位への方向において、つまり、DCRRの遠位区域からDCRRの近位区域に向けて延びる方向において、チェーンを移動および/または案内するように配置される。
【0069】
案内部は、螺旋部分から円形部分に向けてのチェーンの移動の間に、チェーンが、案内部に、好ましくは案内部の近位表面に、摩擦を及ぼすように並べられ、および/または位置決め、および/または配置され得る。
【0070】
案内部、好ましくは近位表面は、チェーンが円形部分と噛み合っているとき、螺旋部分へのチェーンの戻りを防止するように配置され得る。
【0071】
デバイスは、DCRRの回転の軸から等距離にあり、DCRRの回転の軸に対して対において対称であり、DCRRにおける伝達要素の留め付けを確保するように配置される隣接するオリフィスのセットを備え、伝達要素は、DCRRに留め付けられるように、および、力トルクをDCRRに伝達するように意図される。
【0072】
好ましくは、オリフィスのセットは環状の帯を形成する。
【0073】
好ましくは、オリフィスの中心はDCRRの回転の軸から等距離に位置付けられる。
【0074】
好ましくは、DCRRが、DCRRの回転の軸に従って厚さが延びる、好ましくは1つまたは複数の壁である部品の、DCRRの回転の軸が延びるのに従う方向に従っての組み立てを含むとき、オリフィスは、DCRR、またはDCRRの1つもしくは複数の壁、または、DCRRの機械的部品もしくは機械的要素の1つもしくは複数の壁を通過する。
【0075】
好ましくは、DCRRは、DCRRの回転の軸を中心として有する開口部、いわゆる中心開口部を備え、好ましくは、DCRRのオリフィスのセットのオリフィスは中心開口部を境界付ける。
【0076】
オリフィスのセットは、DCRRに留め付けられるように意図され、力トルクをDCRRに伝達するように意図される伝達要素の角度位置を調整もしくは適合すること、または、そのような伝達要素の位置決めをすることを可能にする。
【0077】
伝達要素の角度位置または位置決めは、
- DCRRの歯部の遠位端もしくは近位端、ならびに/または、
- 螺旋部分の第1の区域の歯部の近位端、および/もしくは、螺旋部分の第2の区域の歯部の遠位端
に対して調整または適合させられ得る。
【0078】
伝達要素はレバーまたはクランクから成り得る。
【0079】
好ましくは、円形部分および螺旋部分の各々は、個別の部品、または機械的部品もしくは機械的要素の一部であり、前記個別の部品は、一体品においてDCRRを形成するように、留め付け手段によって可逆的に組み立てられるように配置され、円形部分を備える一部はいわゆる近位ホイールであり、螺旋部分を備える一部はいわゆる遠位ホイールである。
【0080】
好ましくは、ホイールの中心区域は中空とされ得る。
【0081】
好ましくは、螺旋部分は、遠位ホイールの環状の周囲区域を形成する、または、遠位ホイールの環状の周囲区域から成る。好ましくは、遠位ホイールは円筒形または円錐形の基部を有する。
【0082】
好ましくは、円形部分は、近位ホイールの環状の周囲区域を形成する、または、近位ホイールの環状の周囲区域から成る。好ましくは、近位ホイールは円板である。
【0083】
螺旋部分と円形部分とが、可逆的な手法で組み立てられ得る2つの個別の部品に属するという事実は、DCRRをモジュール式とさせる。
【0084】
螺旋部分と円形部分とが2つの個別の部品に属するという事実は、一方の部分を現場で簡単に素早く交換または変更しながらも、他方の部分を交換しないままにすることも可能にする。したがって、1つまたは複数のカスタマイズパラメータに従って、円形部分の減速比を一定に保ちつつ、螺旋部分の減速比および/または減速比の変化を簡単に素早く修正または変調すること、または、螺旋部分の減速比を一定に保ちつつ、円形部分の減速比および/または減速比の変化を簡単に素早く修正または変調することが、可能である。当然ながら、2つの部分の同時での修正は、各々の部分の減速比を同時に修正することを可能にする。
【0085】
遠位ホイールは、DCRRの回転の軸から等距離にあり、DCRRの回転の軸に対して対において対称である隣接する開口のセットを備え得る。
【0086】
近位ホイールは、DCRRの回転の軸から等距離にあり、DCRRの回転の軸に対して対において対称である隣接する開口のセットを備え得る。
【0087】
近位ホイールまたは遠位ホイールのそれぞれの開口のセットの開口の各々は、円形部分と平行な円弧に従って延びる湾曲した形を有し得る。近位ホイールまたは遠位ホイールのそれぞれの開口のセットの開口が従って延びる円弧の半径が、好ましくは近位ホイールとの遠位ホイールの組み立ての間に、遠位ホイールに対する近位ホイールの角度位置または位置決めを調整するように、または、近位ホイールに対する遠位ホイールの角度位置または位置決めを調整するように、DCRRの回転の軸と、遠位ホイールまたは近位ホイールのそれぞれの開口のセットの開口の中心との間の距離に等しくなり得る。したがって、開口のセットは、労力なしで、および調整なしで、近位ホイールと遠位ホイールとを互いに対して位置決めすることを可能にする。したがって、近位ホイールと遠位ホイールとの組み立てが容易にされ、確実に作られる。
【0088】
開口について、これは開口部と理解され得る。
【0089】
湾曲した形を有する、近位ホイールまたは遠位ホイールのそれぞれの開口のセットは、環状の帯を形成し得る。好ましくは、開口の中心は環状の帯に沿って位置付けられ得る。
【0090】
好ましくは、開口の中心はDCRRの回転の軸から等距離に位置付けられる。
【0091】
好ましくは、開口のセットは、DCRRの回転の軸が従って延びる方向に応じて、近位ホイールおよび遠位ホイールのDCRRの回転の軸に従って厚さが好ましくは延びる近位ホイールおよび遠位ホイール、または1つもしくは複数の壁を通過する。
【0092】
近位ホイールは、DCRRのオリフィスのセットを備え得る。好ましくは、DCRRのオリフィスのセットのオリフィスは近位ホイールに形成される。
【0093】
近位ホイールの開口のセットの開口は楕円形を有し得る。楕円形とされた開口の長さは、円形部分と平行な円弧に従って延び得る。
【0094】
角度位置または角度位置決めによって、これは、螺旋部分に対する、または螺旋部分の歯部に対する、円形部分の位置決め、または円形部分の歯部の位置決めと理解され得る。
【0095】
ネジおよびナットなどの留め付け手段が、近位ホイールの開口および遠位ホイールの開口と協働するように配置される。
【0096】
遠位ホイールに対する近位ホイールの位置の調整は、遠位ホイールまたは近位ホイールを現場で簡単に素早く交換または変更する一方で、他のホイールが交換されないことを可能にする。したがって、遠位ホイールに対する近位ホイールの位置の調整は、遠位ホイールの減速比を必要により現場で修正または変調する一方で、近位ホイールの減速比を保つこと、または、近位ホイールの減速比を必要により現場で修正または変調する一方で、遠位ホイールの減速比を保つことを可能にする。
【0097】
DCRRの遠位ホイールは中心開口部を備えてもよく、DCRRの近位ホイールは半径方向突出部を備えてもよく、または、DCRRの近位ホイールは中心開口部を備えてもよく、DCRRの遠位ホイールは半径方向突出部を備えてもよく、半径方向突出部は、半径方向周囲壁を備えるリングを形成し、リングは、DCRRの回転の軸に従って延びる、近位ホイールまたは半径方向ホイールのそれぞれの余分な厚さ、いわゆる横方向の余分な厚さを形成し、遠位ホイールまたは近位ホイールのそれぞれの中心開口部へと挿入されるように配置され、半径方向周囲壁は、遠位ホイールまたは近位ホイールのそれぞれの中心開口部を画定する遠位ホイールまたは近位ホイールのそれぞれの壁に圧し掛かって支持されるように、および/またはそのような壁に嵌められるように、および/またはそのような壁において中心付けられるように、配置される。
【0098】
好ましくは、DCRRの中心開口部は、遠位ホイールまたは近位ホイールのそれぞれの中心開口部に対応する、またはそのような中心開口部から成る。
【0099】
好ましくは、近位ホイールおよび/または遠位ホイールの各々は中心開口部を備える。
【0100】
好ましくは、DCRRの中心開口部は、遠位ホイールの中心開口部および近位ホイールの中心開口部を備え得るか、そのような中心開口部に対応し得るか、またはそのような中心開口部から成る。
【0101】
半径方向周囲壁は円形の外壁として定められてもよい。
【0102】
リングは、DCRRの回転の軸に対して垂直な平面に従って延びるホイールの表面に対して突出する円板として定めることができる。リングは、DCRRの回転の軸に従って突出する円板として定めることができる。リングは、DCRRの近位ホイールを遠位ホイールに連結する方向に従って突出する円板として定めることができる。
【0103】
横方向の余分な厚さがホイールの厚さにわたって延びることができる。横方向の余分な厚さはDCRRの回転の軸に従って延び得る。近位ホイールの横方向の余分な厚さはDCRRの回転の軸に従って延び得る。近位ホイールの横方向の余分な厚さは、近位ホイールを遠位ホイールに連結する方向に従って延び得る。
【0104】
半径方向突出部は、円板の外側壁によって形成される円形の肩部として定めることができ、円盤はホイールの横方向の余分な厚さを形成する。
【0105】
案内部は、留め付け手段によって、近位ホイールまたは遠位ホイールのそれぞれに可逆的に留め付けることができ、遠位ホイールまたは近位ホイールのそれぞれは、案内部を、少なくとも部分的に、全体的に、または一部のみ受け入れるように配置される切り欠きを備える。
【0106】
好ましくは、近位ホイールに案内部を留め付けるための手段は、近位ホイールと遠位ホイールとを一緒に留め付けるための手段と同一であり得る。案内部を近位ホイールに留め付けるための手段は、近位ホイールと遠位ホイールとを一緒に留め付けるための手段と異なってもよい。
【0107】
好ましくは、案内部は、径方向に、つまり、DCRRの回転の軸に対して垂直な方向に従って、DCRRの歯部を越えて延びる。好ましくは、案内部は、螺旋部分の近位端であって、好ましくは螺旋部分の歯部の近位端と、円形部分との間で延びる。
【0108】
好ましくは、遠位ホイールは2つの個別の部品から形成され、2つの部品の一方、いわゆる始動ホイールが、螺旋部分の第1の区域を備え、2つの部品の他方、いわゆる中間ホイールが、螺旋部分の第2の区域を備える。
【0109】
好ましくは、螺旋部分の第1の区域は、始動ホイールの環状の周囲区域を形成する、または、始動ホイールの環状の周囲区域から成る。
【0110】
好ましくは、螺旋部分の第2の区域は、中間ホイールの環状の周囲区域を形成する、または、中間ホイールの環状の周囲区域から成る。
【0111】
好ましくは、始動ホイール、および/または中間ホイール、および/または遠位ホイールの各々は中心開口部を備える。
【0112】
好ましくは、DCRRの中心開口部は、始動ホイールの中心開口部、中間ホイールの中心開口部、および近位ホイールの中心開口部を備え得るか、そのような中心開口部に対応し得るか、またはそのような中心開口部から成る。
【0113】
螺旋部分の第1の区域および第2の区域が、可逆的に組み立てられ得る2つの個別の部品に属するという事実は、DCRRをモジュール式とさせる。
【0114】
螺旋部分の第1の区域および第2の区域が2つの個別の部品に属するという事実は、一方の区域を現場で簡単に素早く交換または変更しながらも、他方の区域を交換しないままにすることも可能にする。したがって、1つまたは複数のカスタマイズパラメータによれば、
- 中間ホイールの減速比および近位ホイールの減速比を維持しつつ、例えば、始動ホイールの歯部の歯の数または巻回の数を変更することなどによって、始動ホイールを現場で簡単に素早く交換すること、つまり、始動ホイールの歯部を修正または変調することであって、別の言い方をすれば、例えば、螺旋部分の第2の区域の減速比または円形部分の減速比を変更することなく、螺旋部分の第1の区域の歯部の歯の数または巻回の数を変更することなどによって、螺旋部分の第1の区域を現場で簡単に素早く修正または変調すること、あるいは
- 中間ホイールの減速比を修正しつつ、および、近位ホイールの減速比を維持または修正しつつ、例えば、始動ホイールの歯部の歯の数および/または巻回の数を変更することなどによって、始動ホイールを現場で簡単に素早く交換すること、つまり、始動ホイールの歯部を修正または変調することであって、別の言い方をすれば、例えば、螺旋部分の第1の区域の歯部の歯の数および/または巻回の数を変更することによって、および、円形部分の減速比を変更または維持することで螺旋部分の第2の区域の減速比を変更することなどによって、螺旋部分の第1の区域を現場で簡単に素早く修正または変調すること、あるいは
- 中間ホイールの減速比をそれぞれ維持または変更しつつ、および、近位ホイールの減速比をそれぞれ変更または維持しつつ、例えば、中間ホイールの歯部の歯の数および/または巻回の数を変更することなどによって、中間ホイールを現場で簡単に素早く交換すること、つまり、中間ホイールの歯部を修正または変調することであって、別の言い方をすれば、例えば、螺旋部分の第2の区域の歯部の歯の数および/または巻回の数を変更することによって、螺旋部分の第2の区域を現場で簡単に素早く修正または変調し、螺旋部分の第2の区域の減速比をそれぞれ維持または修正し、円形部分の減速比をそれぞれ修正または維持すること、あるいは、
- 例えば、中間ホイールの歯の数を変更することで、近位ホイールを現場で簡単に素早く交換すること、つまり、中間ホイールの歯部を修正または変調し、始動ホイールの減速比を維持しつつ、中間ホイールを変更することであって、別の言い方をすれば、螺旋部分の第1の区域の減速比を維持しつつ、円形部分の第2の区域を変更するために、例えば、歯の数を変更することなどによって、円形部分を現場で簡単に素早く修正または変調すること
が可能である。
【0115】
当然ながら、螺旋部分の第1の区域と第2の区域との同時での修正、または、螺旋部分の第1の区域および第2の区域の修正に加えて、円形部分の修正は、区域の各々の減速比を同時に修正することを可能にする。
【0116】
始動ホイールおよび中間ホイールの各々は、DCRRの回転の軸から等距離にあり、DCRRの回転の軸に対して対において対称である隣接する開口のセットを備え、DCRRの回転の軸と、始動ホイールの開口のセットの開口の中心との間の距離が、DCRRの回転の軸と、中間ホイールの開口のセットの開口の中心との間の距離と等しい。
【0117】
好ましくは、始動ホイールは近位端壁を備える、および/または、中間ホイールは近位端壁と遠位端壁とを備える。
【0118】
好ましくは、遠位ホイールの近位端壁と、始動ホイールの近位端壁と、中間ホイールの遠位端壁および近位端壁とが、DCRRの回転の軸に対して径方向に延びる。
【0119】
好ましくは、DCRRの回転の軸は、遠位ホイールの近位端壁が従って延びる平面、始動ホイールの近位端壁が従って延びる平面、中間ホイールの遠位端壁が従って延びる平面、および、中間ホイールの近位端壁が従って延びる平面に含まれる。
【0120】
好ましくは、近位ホイールの遠位端壁、遠位ホイールの近位端壁、始動ホイールの近位端壁、および中間ホイールの遠位端壁および近位端壁は、DCRRの回転の軸の方向において、円形部分の歯部の遠位端、螺旋部分の歯部の近位端、螺旋部分の第1の区域の歯部の近位端、および螺旋部分の第2の区域の歯部の遠位端および近位端からそれぞれ延びる。
【0121】
好ましくは、近位ホイールの遠位端壁、遠位ホイールの近位端壁、始動ホイールの近位端壁、および中間ホイールの遠位端壁および近位端壁は、DCRRの回転の軸の方向において、円形部分の歯部の遠位端の基部、螺旋部分の歯部の近位端の基部、螺旋部分の第1の区域の歯部の近位端の基部、ならびに螺旋部分の第2の区域の歯部の遠位端および近位端のそれぞれの基部からそれぞれ延びる。好ましくは、端の基部は、DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンの巻き付き方向に対して、端へと連続的である。
【0122】
好ましくは、近位ホイール、遠位ホイール、始動ホイール、および/または中間ホイールの端壁は、DCRRの回転の軸を含む平面に含まれる。
【0123】
好ましくは、螺旋部分の第2の区域の近位端壁は、螺旋部分の第1の区域の遠位端壁と協働するように、および/または当接して支持されるように、配置される。好ましくは、始動ホイールの近位端壁は、中間ホイールの遠位端壁と協働するように、および/または当接させられるように、配置される。
【0124】
好ましくは、中間ホイールおよび/または螺旋部分の第2の区域は、中間ホイールの遠位端壁が延びる、および/または螺旋部分の第2の区域の遠位端壁が延びる平面と同じ平面に含まれる壁、いわゆる相補的な壁を備える。中間ホイールおよび/または螺旋部分の第2の区域の相補的な壁は、DCRRの回転の軸に関して、中間ホイールおよび/または螺旋部分の第2の区域の反対側に位置付けられる。
【0125】
好ましくは、始動ホイールおよび/または螺旋部分の第1の区域は、始動ホイールの近位端壁が延びる、および/または螺旋部分の第1の区域の近位端壁が延びる平面と同じ平面に含まれる壁、いわゆる相補的な壁を備える。始動ホイールおよび/または螺旋部分の第1の区域の相補的な壁は、DCRRの回転の軸に関して、始動ホイールおよび/または螺旋部分の第1の区域の反対側に位置付けられる。
【0126】
好ましくは、中間ホイールおよび/または螺旋部分の第2の区域の遠位端壁および相補的な壁は、始動ホイールおよび/または螺旋部分の第1の区域の近位端壁および相補的な壁と協働するように、および/または当接させられるように、配置される。
【0127】
始動ホイールの開口のセットと、中間ホイールの開口のセットとは、遠位ホイールの開口のすべてを形成する、開口のすべてに対応する、または開口のすべてから成ることができる。遠位ホイールの開口のセットの特徴は、始動ホイールの開口のセット、および中間ホイールの開口のセットに移されて適用されてもよい。
【0128】
本発明によれば、本発明によるDCRRを備える機械式変速システムも提案される。
【0129】
本発明によれば、本発明によるDCRRを備える二輪車も提案される。
【0130】
本発明の他の利点および特殊性は、非限定的な実装および実施形態の詳細な記載を読むことと、以下の添付の図面とから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【
図1】本発明によるDCRRの一実施形態の概略的な斜視図である。
【
図2】第1の有利な改良によるDCRRの概略的な分解図である。
【
図3】第1の改良によるDCRRの遠位ホイールの概略的な斜視図である。
【
図4】第1の改良によるDCRRの近位ホイールの概略的な斜視図である。
【
図5】実施形態の第2の改良によるDCRRの概略的な分解斜視図である。
【
図6】実施形態の第2の改良による遠位ホイールの始動ホイールの概略的な斜視図である。
【
図7】実施形態の第2の改良による遠位ホイールの中間ホイールの概略的な斜視図である。
【
図8A】クランクが搭載されている実施形態によるDCRRの概略的な斜視図である。
【
図8B】クランクが搭載されている実施形態によるDCRRの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0132】
他の記載されている特徴から分離された、記載されている特徴のうちの選択だけを含む(この選択が、これらの他の特徴を含む文の中で分離されていたとしても)、以下に記載されている制限ではない本発明の実施形態は、特徴のこの選択が、技術的な利点を与えるのに、または、先行技術に関して本発明を差別化するのに十分である場合、具体的に考慮され得る。この選択は、この一部分が、技術的な利点を与えるのに、または、先行技術に関して本発明を差別化するのに単独で十分である場合、構造的な詳細を伴わずに、または、構造的な詳細の一部だけを伴って、好ましくは機能的に、少なくとも1つの特徴を含む。
【0133】
開示されている実施形態は、二輪車または自転車に関する。具体的には、本発明はBMXの分野に関する。それでもなお、本発明は、二輪車および自転車の具体的な用途の分野に限定されない。
【0134】
既存の技術は、本質的にディレーラおよび無断変速機システムから成る。サイクリングにおいて、伝達比は、クランクセットの歯付きホイール、いわゆるプレートの歯の数と、後ハブの歯付きホイール、いわゆるピニオンの歯の数との間の比として従来から定められるギヤ比と同じとされる。この比は、プレートの根本の半径とピニオンの根本の半径との比に理論的には等しい。サイクリストの鍛錬(discipline)の特異性に適した技術的解決策がないため、サイクリストが比変更デバイスを使用しないサイクリングイベントがある。そのサイクリストは、1つだけの単一の伝達比を使用するように制約され、そのため、伝達比は、スタートの局面にとって好ましい低い比と、より高い比へ高めることができるときのペダリングの連続にとって好ましいより高い比との間でのトレードオフから生み出される。結果として、ペダリングの速さは、最初の瞬間の間には必然的に低すぎ、次に素早く高くなりすぎ、これは、2つの場合で最大動力の発生を妥協させている。
【0135】
これらのデバイスの利点/欠点のすべてが、Table 1(表1)においてまとめられている。
【0136】
【0137】
本発明によるDCRR1が、先行技術のデバイスの欠点のほとんどを克服することを可能にしている。具体的には、Table 1(表1)に示されているように、DCRR1は、不連続性なしで、かつ手動の介入なしで、負荷の下での減速比における変更を可能にする。一方、他のデバイスと異なり、本発明によるDCRRの伝達比における変更は自動であり、デバイスが使用中であるときに伝達比を修正するために介入することは可能ではない。さらに、比における変更は一方向のみにおいて実施される、または、DCRRは、伝達比を増加させるように、または、伝達を低下させるように配置される。
【0138】
図1~
図8を参照すると、本発明の実施形態が記載されている。
図1は、本発明によるチェーン伝達のためのDCRR1を示している。DCRR1は、本発明の一部またはDCRR1の一部を形成していないため示されていないチェーンと噛み合わされるように意図されている。符号27および28の矢印は、それぞれ、DCRR1の方向、または側方、または遠位区域に向けて、および、DCRR1の方向、または側方、または近位区域に向けて指している。
【0139】
図1~
図8を参照すると、DCRR1の実施形態が記載されている。DCRR1は歯部2、3を備える。歯部2、3は、DCRR1の回転の軸5の周りに巻き付く歯付き螺旋を形成する部分2、いわゆる螺旋部分2を備える。歯部2、3は、その中心がDCRR1の回転の軸5と一致する歯付き平面状円を形成する部分3、いわゆる円形部分3も備える。歯部2、3の螺旋部分2は、DCRR1の歯部の遠位端4または遠位端歯4から、歯部2、3の円形部分3に向けて延びる。歯部2、3の円形部分3は、DCRR1の歯部2、3の近位端3を形成する。歯部2、3の円形部分3は一定の減速比を維持するように配置される。好ましくは、歯部2、3の円形部分3は、入力回転速度の入力抵抗に対応する入力抵抗を提供し、サイクリストの最大効率に近付くように配置される。螺旋部分2は、DCRR1の回転速度における増加を可能とするように、および、減速比における増加を確保するように、配置される。好ましくは、DCRR1の回転速度における増加と、減速比における増加とが、サイクリストの形態、経路の地勢、および/またはレース戦略に応じて適応させられる。
【0140】
螺旋部分が、DCRR1の遠位端4から、歯部2、3の近位端3、すなわち円形部分3まで延びるという事実は、DCRR1の回転速度および減速比を自動的に(手動の制御を作動させる必要なく)増加させることで、DCRR1の回転を開始させ、延いては、二輪車の回転を開始させることを可能とし、負荷の下で、不連続性なく滑らかに続いていく。本発明によるDCRR1が、この局面(DCRR1の回転速度における増加、および減速比における増加)の間、移動の不連続性を発生させない、または、円形部分から他の円形部分へと、もしくは螺旋へのジャンプを発生させないという事実は、DCRR1の特性を向上させ、そのため、サイクリストのパフォーマンスを向上させることを可能にする。そのために、螺旋部分2の歯の数は、好ましくは円形部分3の歯の数より多い。
【0141】
DCRR1は、螺旋部分2の歯部の近位端7と円形部分3の歯部との間に配置される案内部8を備える。案内部8は、螺旋部分2から円形部分3に向けてのチェーンのDCRR1との連続的な噛み合いに寄与および/または参画するように配置される。案内部8は、負荷の下での重なりのない滑らかな螺旋部分2から円形部分3に向けてのチェーンの移動を可能にする。さらに、螺旋部分2がDCRR1の遠位端4から歯部の近位端3まで延びるという事実は、螺旋部分2から円形部分3に向けての移動が実施される一方で、サイクリストが自身の最適な回転数にすでに到達したこと、または最適な回転数に近いことを意味する。
【0142】
円形部分3の歯部は、案内部8が反対に配置される少なくとも1つの歯の凹部9を備える。本発明によれば、円形部分3の歯部に形成された凹部から3つの歯がなくなっている。この凹部9は、重なりの危険性を抑制することを可能とし、チェーンを損傷させる可能性を低減する。
【0143】
案内部8の近位表面10の一部分は、螺旋部分2から円形部分3に向けてのチェーンの案内を確保するように配置される。好ましくは、案内部8の近位表面10は、DCRR1の回転の軸5に従って、または、螺旋部分2を円形部分3に連結する方向に従って、摩擦によってチェーンを案内するように配置される。
【0144】
DCRR1は、DCRR1の回転の軸5から等距離にあり、DCRR1の回転の軸5に対して対において対称である隣接するオリフィス11のセットを備える。オリフィス11は、DCRR1へのクランクまたはペダル26の留め付けを確保するように配置される。クランク26はDCRR1の一部ではない。オリフィス11はDCRR1の中心開口部181を境界付ける。オリフィスは、DCRR1におけるペダル26の角度位置を適合または調整することを可能にするように分布させられる。角度位置は、DCRR1の遠位端4および/もしくは近位端3、ならびに/または螺旋部分2の第1の区域21の歯部の近位端30、ならびに/または螺旋部分2の第2の区域22の歯部の近位端7などのDCRR1の要素に対して調整される。好ましくは、ペダル26の角度位置は、サイクリストの形態、経路の地勢、および/またはレース戦略に関して調整させられる。
【0145】
実施形態の有利な構成によると、螺旋部分2の半径は、螺旋部分2の区域21、いわゆる第1の区域21にわたって一定であり、および/または、螺旋部分2の区域22、いわゆる第2の区域22にわたって変化する。
【0146】
この有利な構成において、螺旋部分2は、DCRR1の回転速度における急速な増加を確保するように配置される。好ましくは、DCRR1の回転速度における増加は一定の減速比で行われる。回転速度が増加させられ、好ましくは、螺旋部分2の螺旋の少なくとも1回の巻回にわたって減速比が一定に保たれる。そのために、螺旋部分2の第1の区域21の歯付き螺旋は、DCRR1の回転の軸5の周りで少なくとも1回の巻回で巻き付き、本実施形態によれば、1と2分の1回の巻回で巻き付く。
【0147】
この有利な構成において、螺旋部分2はまた、減速比を増加させるように配置される。したがって、螺旋部分2は、DCRR1の回転速度における増加を可能とするように、延いては、減速比における増加を確保するように、配置される。具体的には、螺旋部分2は、DCRR1の回転速度が所望の値に到達した後に、および/または、DCRR1と噛み合うチェーンが螺旋部分2の螺旋に沿って所望の数の巻回をカバーした後に、減速比を増加させるように配置される。そのために、螺旋部分2の第2の区域22の半径が、螺旋部分2の第2の区域22の歯部2、3の遠位端6から螺旋部分2の第2の区域22の歯部2、3の近位端7に向けて延びる方向に従って、回転の軸5に沿って増加する。
【0148】
図2~
図4を参照すると、本発明の第1の改良によれば、円形部分3および螺旋部分2の各々はDCRR1の個別の部品の一部である。これらの個別の部品は、組み立ての後に一体品においてDCRR1を形成するように、留め付け手段12、13によって可逆的に組み立てられるように配置される。円形部分3を備える部品はいわゆる近位ホイール14であり、螺旋部分2を備える部品はいわゆる遠位ホイール15である。この改良は、例えば競技会の最中に、ホイールのうちのいずれか1つを必要に応じて現場で置き換えることで、DCRR1をモジュール化することを可能にする。留め付け手段12、13はネジ12とナット13とから成る。
【0149】
第1の改良によれば、遠位ホイール15は、DCRRの回転の軸5から等距離にあり、DCRR1の回転の軸5に対して対において対称である隣接する開口16のセットを備える。近位ホイール14は、DCRR1の回転の軸5から等距離にあり、DCRR1の回転の軸5に対して対において対称である隣接する開口17のセットを備える。近位ホイール14の開口のセットの開口17の各々は、円形部分3と平行な円弧に従って延びる湾曲した形を有する。近位ホイール14の開口のセットの開口17が従って延びる円弧の半径が、遠位ホイール15に対する近位ホイール14の角度位置を調整するように、DCRR1の回転の軸5と、遠位ホイール15の開口のセットの開口17の中心との間の距離に等しい。また、ホイール14、15のうちの1つの変更または交換は簡単で迅速であり、開口16、17によって可能とされる角度位置の調整を介して現場で実施できる。
【0150】
第1の改良によれば、DCRR1は中心開口部181を備える。DCRR1の近位ホイール14は、半径方向周囲壁20を備えるリング19を形成する半径方向突出部19を備える。リング19は、近位ホイール14のDCRR1の回転の軸5に従って延びる余分な厚さを形成する。リング19は、近位ホイール14の中心開口部183から半径方向周囲壁20まで径方向に延びる。リング19は、遠位ホイール15の中心開口部182へと挿入されるように配置される。半径方向周囲壁20は、遠位ホイール15の中心開口部182を画定する遠位ホイール15の壁41に圧し掛かって支持されるように配置される。この半径方向突出部19は、近位ホイール14と遠位ホイール15との組み立てを容易にする。さらに、半径方向突出部19は、近位ホイール14と遠位ホイール15との互いに対する並進を防止する。最後に、半径方向突出部19はDCRR1の堅牢性を向上させることを可能にする。
【0151】
第1の改良によれば、案内部8は、実施形態によればピン121である留め付け手段121によって近位ホイール14に可逆的に留め付けられ、遠位ホイール15は、案内部8を少なくとも部分的に受け入れるように配置される切り欠き23を備える。
【0152】
図5~
図7を参照すると、本発明の第2の改良によれば、遠位ホイール15は2つの個別の部品から形成され、2つの部品の一方、いわゆる始動ホイール151が、螺旋部分2の第1の区域2,21を備え、2つの部品の他方、いわゆる中間ホイール152が、螺旋部分2の第2の区域2,22を備える。この改良は、例えば競技会の最中に、ホイールのうちのいずれか1つを必要に応じて現場で置き換えることで、DCRR1をモジュール化することを可能にする。第1の改良と組み合わされることで、DCRR1にさらなるモジュール化を与える。始動ホイール151および中間ホイール152は、組み立ての後に一体品においてDCRR1を形成するように、可逆的に組み立てられるように配置される。始動ホイール151および中間ホイール152は、留め付け手段12、13によって組み立てられるように配置される。さらに、ネジ12の胴部は2つの異なる直径を有する。ネジの頭部の側に位置付けられる、中間ホイール152の開口25の直径に近いより大きい直径と、ネジの頭部を含む側の反対側に位置付けられる、始動ホイール151の開口24の直径に近いより小さい直径とである。
【0153】
本発明の第2の改良によれば、始動ホイール151および中間ホイール152の各々は、DCRR1の回転の軸5から等距離にあり、DCRR1の回転の軸5に対して対において対称である隣接する開口24、25のセットを備える。DCRR1の回転の軸5と、始動ホイール151の開口24のセットの開口24の中心との間の距離は、DCRR1の回転の軸5と、中間ホイール152の開口25のセットの開口25の中心との間の距離と等しい。
【0154】
中間ホイール152は遠位端壁29を備える。遠位端壁29は、DCRR1の回転の軸5を含む平面に従って延びる。別の言い方をすれば、DCRR1の回転の軸5は、中間ホイール152の遠位端壁29が従って延びる平面に含まれる。中間ホイール152の遠位端壁29は中間ホイール152の遠位端6から延びる。中間ホイール152は、中間ホイール152の遠位端壁29と同じ平面に含まれる壁31、いわゆる相補的な壁31も備える。相補的な壁31は、DCRR1の回転の軸5に関して、中間ホイール152の遠位端壁29の反対の側に位置付けられる。
【0155】
始動ホイール151は近位端壁(視認できない)を備える。始動ホイール151の近位端壁は、DCRR1の回転の軸5を含む平面に従って延びる。別の言い方をすれば、DCRR1の回転の軸5は、始動ホイール151の近位端壁が従って延びる平面に含まれる。始動ホイール151の近位端壁は、遠位端壁29が延びる平面と同じ平面に含まれる。始動ホイール151は、始動ホイール151の近位端壁と同じ平面に含まれる始動ホイール151の近位端壁の壁32、いわゆる相補的な壁32も備える。始動ホイール151の近位端壁の相補的な壁32は、DCRR1の回転の軸5に関して、始動ホイール151の近位端壁の反対の側に位置付けられる。
【0156】
中間ホイールの遠位端壁29および遠位端壁29の相補的な壁31は、始動ホイール151の近位端壁および始動ホイール151の近位端壁の相補的な壁32とそれぞれ当接させられるように配置される。異なる壁同士の間の協働は、始動ホイール151と中間ホイール152との組み立てを容易にする。さらに、この協働は、中間ホイール152に対する始動ホイール151の回転を防止する。最後に、この協働はDCRR1の堅牢性を向上させることを可能にする。
【0157】
第1の改良は、第2の改良から独立して行うことができ、第2の改良の実装を必要としない。第2の改良は第1の改良と組み合わされる。
【0158】
当然ながら、本発明は、記載されている例に限定されることはなく、数多くの配置が、本発明の範囲から逸脱することなくこれらの例に行うことができる。
【0159】
また、本発明の異なる特徴、形状、変形、および実施形態が、様々な組み合わせに従って、互いと両立しないことのない程度、または互いと排他的とならない程度まで、互いと関連付けられてもよい。
【符号の説明】
【0160】
1 DCRR
2 歯部、螺旋部分
2,21 第1の区域
2,22 第2の区域
3 歯部、円形部分、近位端
4 遠位端、遠位端歯
5 回転の軸
6 歯部2、3の遠位端
7 第2の区域22の歯部の近位端
8 案内部
9 凹部
10 近位表面
11 オリフィス
12 留め付け手段、ネジ
13 留め付け手段、ナット
14 近位ホイール
15 遠位ホイール
16 開口
17 開口
19 リング、半径方向突出部
20 半径方向周囲壁
21 第1の区域
22 第2の区域
23 切り欠き
24 開口
25 開口
26 クランク、ペダル
29 中間ホイールの遠位端壁
30 第1の区域21の歯部の近位端
31 相補的な壁
32 相補的な壁
41 遠位ホイールの壁
121 留め付け手段、ピン
151 始動ホイール
181,182,183 中心開口部
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式チェーン変速システムのための減速比変更デバイス(1)
(DCRR)であって、前記DCRRは、歯部(2、3)を備え、前記DCRRの前記歯部は、
前記DCRRの回転の軸(5)の周りに巻き付く歯付き螺旋を形成する
螺旋部分(2)と、
その中心が前記DCRRの前記回転の軸と一致する歯付き平面状円を形成する
円形部分(3)と
を備え、
前記歯部の前記螺旋部分は、前記DCRRの前記歯部の遠位端(4)から前記歯部の前記円形部分に向けて延び、前記歯部の前記円形部分は、前記DCRRの前記歯部の近位端(3)を形成する、減速比変更デバイス(1)。
【請求項2】
前記螺旋部分(2)の歯の数が、前記円形部分(3)の歯の数より多い、請求項1に記載のDCRR(1)。
【請求項3】
前記螺旋部分(2)の半径が、前記螺旋部分の少なくとも
第1の区域(21)にわたって一定である、および/または、前記螺旋部分の半径が、前記螺旋部分の少なくとも
第2の区域(22)にわたって変化する、請求項1または2に記載のDCRR(1)。
【請求項4】
前記螺旋部分(2)の前記第1の区域(21)の前記歯付き螺旋は、前記DCRRの前記回転の軸(5)の周りで少なくとも1回の巻回で巻き付く、請求項3に記載のDCRR(1)。
【請求項5】
前記螺旋部分(2)の前記第2の区域(22)の半径が、前記螺旋部分の前記第2の区域の前記歯部の遠位端(6)から前記螺旋部分の前記第2の区域の前記歯部の近位端(7)に向けて延びる方向に応じて、前記回転の軸(5)に沿って増加する、請求項3または4に記載のDCRR(1)。
【請求項6】
前記螺旋部分(2)の前記歯部の近位端(7)と前記円形部分(3)の前記歯部との間に配置される案内部(8)であって、前記DCRRが噛み合わされるように意図されるチェーンの、前記螺旋部分から前記円形部分に向けた連続的な噛み合いを確保するように配置される案内部(8)を備える、請求項
1に記載のDCRR(1)。
【請求項7】
前記円形部分(3)の前記歯部は、前記案内部(8)が反対に配置される少なくとも1つの歯の凹部(9)を備える、請求項6に記載のDCRR(1)。
【請求項8】
前記案内部(8)の近位表面(10)の一部分が、前記DCRRが噛み合わされるように意図される前記チェーンを、前記螺旋部分(2)から前記円形部分(3)へと案内するように配置される、請求項7に記載のDCRR(1)。
【請求項9】
前記DCRRは、前記DCRRの前記回転の軸(5)から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称であり、前記DCRRにおける伝達要素の留め付けを確保するように配置される隣接するオリフィス(11)のセットを備え、前記伝達要素は、前記DCRRに留め付けられるように、および、力トルクを前記DCRRに伝達するように意図される、請求項
1に記載のDCRR(1)。
【請求項10】
前記円形部分(3)および前記螺旋部分(2)の各々は、個別の部品の一部であり、前記個別の部品は、一体品において前記DCRRを形成するように、留め付け手段(12、13)によって可逆的に組み立てられるように配置され、前記円形部分を備える前記一部は
、近位ホイール(14)であり、前記螺旋部分を備える前記一部は
、遠位ホイール(15)である、請求項
1または3に記載のDCRR(1)。
【請求項11】
前記遠位ホイール(15)は、前記DCRRの前記回転の軸(5)から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称である隣接する開口(16)のセットを備え、
前記近位ホイール(14)は、前記DCRRの前記回転の軸から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称である隣接する開口(17)のセットを備え、
前記近位ホイールまたは前記遠位ホイールのそれぞれの前記開口のセットの前記開口の各々は、前記円形部分(3)と平行な円弧に従って延びる湾曲した形状を有し、
前記近位ホイールまたは前記遠位ホイールのそれぞれの前記開口のセットの前記開口が従って延びる前記円弧の半径が、前記遠位ホイールに対する前記近位ホイールの角度位置を調整するように、前記DCRRの前記回転の軸と、前記遠位ホイールまたは前記近位ホイールのそれぞれの前記開口のセットの前記開口の中心との間の距離に等しい、請求項10に記載のDCRR(1)。
【請求項12】
前記DCRRの前記遠位ホイール(15)は、中心開口部(181)を備え、前記DCRRの前記近位ホイール(14)は、半径方向周囲壁(20)を備えるリングを形成する半径方向突出部(19)を備え、前記リングは、前記DCRRの前記回転の軸に従って延びる、前記近位ホイールの余分な厚さを形成し、前記遠位ホイールの前記中心開口部(181)へと挿入されるように配置され、前記半径方向周囲壁は、前記遠位ホイールの前記中心開口部を画定する前記遠位ホイールの壁(41)に圧し掛かって支持されるように配置される、請求項10に記載のDCRR(1)。
【請求項13】
前記案内部(8)は
、近位ホイール(14)また
は遠位ホイール(15)のそれぞれに留め付け手段(121)によって可逆的に留め付けられ、前記遠位ホイール(15)または前記近位ホイール(14)のそれぞれは、前記案内部を少なくとも部分的に受け入れるように配置される切り欠き(23)を備える、請求項6に記載
のDCRR(1)。
【請求項14】
前記遠位ホイール(15)は、2つの個別の部品から形成され、前記2つの部品の一方、
すなわち始動ホイール(151)が、前記螺旋部分(2)の前記第1の区域(21)を備え、前記2つの部品の他方、
すなわち中間ホイール(152)が、前記螺旋部分の前記第2の区域(22)を備える、請求項3
を引用する場合の請求項10に記載のDCRR(1)。
【請求項15】
前記始動ホイール(151)および前記中間ホイール(152)の各々は、前記DCRRの前記回転の軸(5)から等距離にあり、前記DCRRの前記回転の軸に対して対において対称である隣接する開口(24、25)のセットを備え、前記DCRRの前記回転の軸と、前記始動ホイールの前記開口(24)のセットの前記開口の中心との間の距離が、前記DCRRの前記回転の軸と、前記中間ホイールの前記開口(25)のセットの前記開口の中心との間の距離と等しい、請求項14に記載のDCRR(1)。
【国際調査報告】