(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】核酸塩基間の連続的な相互作用を示す変化するコンダクタンスの検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20241112BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241112BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
G01N27/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527130
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022049451
(87)【国際公開番号】W WO2023086416
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524170212
【氏名又は名称】デジタル バイオテクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ビエラス、 ジェイソン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンス、 ハーラン エス.
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AF08
2G060KA09
4B029AA23
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4B029FA15
4B063QA13
4B063QQ41
4B063QR31
4B063QS36
4B063QX04
(57)【要約】
電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことを含む方法が提供される。そのような方法は、相対移動中に、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することを含み、変化するコンダクタンスは、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す。変化するコンダクタンスは、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、変化するコンダクタンスに基づいて、1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーを決定すること、任意選択的に、第1の核酸の配列を決定することを含む。例えば、本開示の方法の実践において使用を見出されるコンピュータ可読媒体及びシステムも提供される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことと、
前記相対移動中に、前記第1の核酸の核酸塩基と前記電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、前記第1の核酸に沿って変化するコンダクタンスを検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
方法であって、
電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことと、
前記相対移動中に、前記第1の核酸と前記第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することであって、前記変化するコンダクタンスが、前記第1の核酸の核酸塩基と前記電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、検出することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記相対移動を引き起こすことが、前記電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された前記開口部を通して、前記第1の核酸を引っ張ることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の核酸が、伸長構造に付着しており、前記第1の核酸を前記開口部を通して引っ張ることが、前記伸長構造を、前記第1の核酸が引っ張られるべき方向に引っ張ることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記伸長構造が、ナノチューブ、ナノワイヤ、又はバイオポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオポリマーが、核酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の核酸及び前記核酸が、互いに相補的な末端を含み、前記引っ張り中に互いにハイブリダイゼーションされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電解された第2の核酸が、チャネル内に配置され、前記相対移動を引き起こすことが、前記電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された前記開口部を通して、前記第1の核酸を前記チャネル内に転位させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記電解された第2の核酸は、前記電解された第2の核酸がブリッジ構造を形成するように表面に付着した第1及び第2の不連続領域を含み、前記第1の核酸の前記相対移動が、前記ブリッジ構造の前記開口部を通してである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が、前記第1及び第2の不連続領域に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドで官能化されており、前記第1及び第2の不連続領域が、前記オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを介して前記表面に付着している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電解された第2の核酸が、表面に付着した第1の末端を含み、ステムループ構造を形成し、前記第1の核酸の前記相対移動が、前記ステムループ構造の前記ループ部分の前記開口部を通してである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電解された第2の核酸が、表面に付着した第1の末端と、前記電解された第2の核酸及び第3の核酸分子がループ構造を形成するように第3の核酸分子にハイブリダイゼーションされた第1及び第2の不連続領域とを含み、前記第1の核酸の前記相対移動が、前記ループ構造の前記開口部を通してである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電解された第2の核酸の前記第1の末端が、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して、又は磁気引力を介して前記表面に付着している、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記相対移動を引き起こすことが、前記表面を前記第1の核酸に対して相対的に移動させることを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の核酸が、前記相対移動中に固定化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電解された第2の核酸が、複数の電解された核酸のうちの1つであり、前記方法が、前記複数の電解された核酸によって少なくとも部分的に形成された複数の開口部を通して、前記第1の核酸の相対移動を引き起こすことを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の開口部のうちの1つ以上が、独立して、アデニンと塩基対合する核酸塩基、チミン又はウラシルと塩基対合する核酸塩基、グアニンと塩基対合する核酸塩基、及びシトシンと塩基対合する核酸塩基から選択される単一のタイプの核酸塩基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の開口部のうちの1つ以上が、脱塩基ヌクレオチドを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記変化するコンダクタンスが、前記第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記変化するコンダクタンスに基づいて、前記第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーを決定することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記変化するコンダクタンスに基づいて、前記第1の核酸のヌクレオチド配列を決定することを更に含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の核酸が、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、又はRNAから選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
システムであって、
1つ以上のプロセッサと、
1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は前記第1の核酸と前記第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスであって、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスをシステムに監視させる、その上に記憶された命令を含む、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体と、を備える、システム。
【請求項24】
前記変化するコンダクタンスが、前記第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、前記1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、前記変化するコンダクタンスに基づいて、前記第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーを前記システムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記変化するコンダクタンスが、前記第1の核酸における前記異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、前記1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、前記変化するコンダクタンスに基づいて、前記第1の核酸のヌクレオチド配列を前記システムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は前記第1の核酸と前記第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスであって、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスをシステムに監視させる、その上に記憶された命令を含む、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記変化するコンダクタンスが、前記第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、前記1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、前記変化するコンダクタンスに基づいて、前記第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーを前記システムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、請求項26に記載の1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
前記変化するコンダクタンスが、前記第1の核酸における前記異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、前記1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、前記変化するコンダクタンスに基づいて、前記第1の核酸のヌクレオチド配列を前記システム決定にさせる、その上に記憶された命令を含む、請求項26又は27に記載の1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月9日に出願された米国仮特許出願第63/263,803号の優先権の利益を主張するものであり、この出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
核酸配列決定は、核酸配列(例えば、DNA、RNA)におけるヌクレオチドの順序を決定するプロセスであり、医学的診断、法医学的生物学、及び生物学的研究などの分野における基本的なプロセスとなっている。配列決定のための利用可能な技術には、例えば、Sanger法が含まれる。この手順は、インビトロでのDNA複製中のDNAポリメラーゼによる連鎖停止ジデオキシヌクレオチドのランダムな組み込みを伴う。加えて、次世代配列決定プラットフォーム(「第二世代」配列決定と称されることもある)は、パイロ配列決定、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定、又はナノポアベースの配列決定などの異なる技術を配列決定に使用する。しかしながら、コスト、配列決定品質、配列決定時間、効率、及び使用の容易さに関連する問題に対処するために、新しい配列決定方法論が望ましい。
【0003】
最近では、DNAなどの核酸の電気化学的特性を利用する配列決定方法が提案されている。特に、DNAがナノポアを通して電気的に駆動されるアプローチが企図されている。DNAがナノポアを通って転位するとき、DNAは、イオン遮断電流又は横断電流を測定することによって検出される場合がある。しかしながら、核酸の電気化学的特性を使用するナノポア配列決定方法は、実現可能性、精度、及びコストに関連する問題のため、未だ広く採用されるに至っていない。したがって、代替的な電気化学的配列決定アプローチが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことを含む方法が提供される。そのような方法は、相対移動中に、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することを含み、変化するコンダクタンスは、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す。ある特定の実施形態では、変化するコンダクタンスは、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含む。いくつかの実施形態によれば、本方法は、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーを決定することを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸のヌクレオチド配列を決定することを含む。例えば、本開示の方法の実践において使用を見出されるコンピュータ可読媒体及びシステムも提供される。
【0005】
本開示の方法、システム、及びコンピュータ可読媒体は、異なる核酸塩基、例えば、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)、又はそれらの非天然バリアントを有する異なるヌクレオチド、及び各々が異なる化学的組成及び構造を有するそれらの様々な配列が、(DNA又はRNA軸に垂直な)横断トンネリングの特定のシグネチャに関連し得るという本発明者らの認識に部分的に基づいている。これを支持するものとして、DNA塩基対は、核酸塩基間の空間分離及び弱い結合のために、並びにこれらの塩基対を横切って流れる電流が特定のヌクレオチドの特異的性質に基づいて変化するために、生物学的Aviram-Ratner電気整流器として振る舞うことが示されている(例えば、Agapito et al.Nanotechnology,23(13),135202を参照されたい)。言い換えれば、DNA塩基対は、電流の一方向導体として機能することができ、所与の核酸塩基間の相互作用は、特定の「コンダクタンスフィンガープリント」によって特徴付けられる。そのようなものが、
図1A~1Dに示される(Agapito et al.(上記)から採用された)。C-G(
図1A)及びT-A(
図1C)接合部の上面及び側面図を、C-G(
図1B)及びT-A(
図1D)接合部のプリン及びピリミジン構成成分に投影された状態密度とともに示す。
【0006】
本発明者らは、配列決定される核酸が第2の核酸に対して相対的に移動するときに、コンダクタンスフィンガープリントの存在についてコンダクタンスを評価することによってDNA配列決定が実施され得ることを結論付けている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】所与の核酸塩基間のある特定の相互作用に関連する「コンダクタンスフィンガープリント」を示す。
【
図2】複数の電解された核酸によって形成された複数の開口部を通る第1の核酸の相対移動を含む、本開示の実施形態による方法の概略図を提示する。
【
図3】複数の電解された核酸によって形成された複数の開口部を通る第1の核酸の相対移動を含む、本開示の実施形態による方法の概略図を提示する。
【
図4】複数の電解された核酸によって形成された複数の開口部を通る第1の核酸の相対移動を含む、本開示の実施形態による方法の概略図を提示する。
【
図5】本開示の方法の実践において使用を見出される様々な電解された核酸構成の概略図を提示する。
【
図6】第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスが検出され、変化するコンダクタンスが、第1の核酸の核酸塩基とブリッジ構造の形態における電解された核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、実施形態の概略図を提示する。
【
図7】第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスが検出され、変化するコンダクタンスが、第1の核酸の核酸塩基と電解された核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、実施形態の概略図を提示する。
【
図8】第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間で変化するコンダクタンスが検出され得る本発明の実施形態を示す。「A」=電流計。
【
図9】ある特定の実施形態による主題の方法において使用するためのチップのアーキテクチャを示す。
【
図10】ある特定の実施形態による、右電極と左電極とゲート電極との間の絶縁層を示す顕微鏡写真を提示する。
【
図11】主題の方法において使用するためのチップのヘリウムイオン顕微鏡を介して取得された顕微鏡写真を提示する。
【
図12】
図9A~9Bに示すように構築されたチップのプロトタイプを示す。
【
図13】原子間力顕微鏡(AFM)を介して得られたチップ電極の顕微鏡写真を提示する。
【
図14】
図9A~9Bに示すように構築されたチッププロトタイプのトポグラフィー及び導電性の態様を示す。
【
図15】チオ結合を介して金基板上に固定化された一本鎖DNAを示すAFM画像を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の方法、システム、及びコンピュータ可読媒体をより詳細に説明する前に、方法、システム、及びコンピュータ可読媒体は、説明された特定の実施形態に限定されず、したがって、当然、そのようなものは変化する場合があることを理解されたい。また、方法、システム、及びコンピュータ可読媒体の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0009】
値の範囲が提供される場合、文脈において明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びその記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体内に包含されることが理解されるべきである。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特定の除外された制限に従うことを条件として、本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体に含まれる。
【0010】
本明細書では、数値の前に「約」という用語が付けられて、ある特定の範囲が提示される。本明細書では、「約」という用語は、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近い、又は近似する数について文字通りの支持を提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又は近似するかどうかを決定する際に、その近い又は近似する列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価物を提供する数であってもよい。
【0011】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は等価の任意の方法、システム、及びコンピュータ可読媒体はまた、本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体の実践又は試験において使用され得るが、ここで、代表的な例示的な方法、システム、及びコンピュータ可読媒体が記載される。
【0012】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用する材料及び/又は方法に関連して開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。いずれの刊行物の引用も、出願日以前のその開示に対するものであり、提供された刊行物の日付は、単独で確認する必要がある場合がある実際の公開日と異なる場合があるため、本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体がそのような刊行物に先立する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈において明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的な要素を除外するように起草される場合があることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0014】
明確にするために、別々の実施形態の文脈において説明される本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体のある特定の特徴はまた、単一の実施形態では組み合わせて提供される場合があることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において説明される本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適な部分組み合わせにおいて提供される場合がある。実施形態の全ての組み合わせが本開示によって具体的に包含され、そのような組み合わせが操作可能なプロセス及び/又は組成物を包含する限り、各々及び全ての組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、そのような可変部を説明する実施形態にリストされている全ての部分組み合わせもまた、本方法、システム、及びコンピュータ可読媒体によって具体的に包含され、各々及び全てのそのような部分組み合わせが本明細書に個別にかつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。
【0015】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明及び例証される個々の実施形態の各々は、本方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又は組み合わせられ得る個別の要素及び特徴を有する。任意の列記された方法は、記載されたイベントの順序で、又は論理的に可能な他の順序で実施され得る。
【0016】
定義
「ヌクレオチド」という用語は、天然に存在するプリン塩基及びピリミジン塩基だけでなく、修飾されている他の複素環式塩基も含有する部分を含むように意図されている。そのような修飾には、メチル化プリン又はピリミジン、アシル化プリン又はピリミジン、アルキル化リボース又は他の複素環が含まれる。加えて、「ヌクレオチド」という用語は、ハプテン又は蛍光標識を含有し、従来のリボース糖及びデオキシリボース糖だけでなく、他の糖も含有してもよい部分を含む。修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドはまた、例えば、ヒドロキシル基のうちの1つ以上がハロゲン原子若しくは脂肪族基で置き換えられるか、又はエーテル、アミンなどとして官能化されている、糖部分における修飾を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、2~500ヌクレオチド、例えば、2~200ヌクレオチドの、ヌクレオチドの一本鎖多量体である。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよく、又は酵素的に作製されてもよく、いくつかの実施形態では、5~50ヌクレオチド長(例えば、9~50ヌクレオチド長)である。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド単量体(すなわち、オリゴリボヌクレオチド又は「RNAオリゴヌクレオチド」であってもよい)、又はデオキシリボヌクレオチド単量体(すなわち、オリゴデオキシリボヌクレオチド又は「DNAオリゴヌクレオチド」であってもよい)を含有してもよい。オリゴヌクレオチドは、例えば、5~9、10~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、80~100、100~150、又は150~200、最大500以上のヌクレオチド長であってもよい。
【0018】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で互換的に使用され、ヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドで構成される任意の長さ、例えば、約2塩基超、約10塩基超、約100塩基超、約500塩基超、1000塩基超、10,000塩基超、100,000塩基超、約1,000,000超、最大約1010塩基以上のポリマーを説明し、酵素的又は合成的に産生されてもよく(例えば、米国特許第5,948,902号及びそれに引用されている文献に記載されているようなPNA)、これは、2つの天然に存在する核酸のものと類似の配列特異的な様式で天然に存在する核酸とハイブリダイゼーションすることができ、例えば、ワトソン-クリック塩基対相互作用に関与することができる。天然に存在するヌクレオチドには、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル(それぞれ、G、C、A、T、及びU)が含まれる。DNA及びRNAが、それぞれ、デオキシリボース及びリボース糖骨格を有するのに対して、PNAの骨格は、ペプチド結合によって連結した繰り返しN-(2-アミノエチル)-グリシン単位で構成される。PNAでは、様々なプリン及びピリミジン塩基は、メチレンカルボニル結合によって骨格に連結されている。多くの場合、アクセス不能(inaccessible)RNAと称されるロックド核酸(LNA)は、修飾RNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素及び4’炭素を接続する余分な架橋で修飾されている。架橋は、多くの場合、A型二重鎖に見出される3’-endo(North)立体配座でリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、所望されるときにいつでも、オリゴヌクレオチド中のDNA又はRNA残基と混合され得る。「非構造化核酸」又は「UNA」という用語は、安定性の低減を伴って互いに結合する非天然ヌクレオチドを含有する核酸である。例えば、非構造化核酸は、G’残基及びC’残基を含有してもよく、これらの残基は、天然に存在しない形態、すなわち、安定性の低減を伴って互いに塩基対合するが、それぞれ天然に存在するC及びG残基と塩基対合する能力を保持するG及びCの類似体に対応する。非構造化核酸は、UNAの開示のために参照により本明細書に組み込まれるUS2005/0233340に記載されている。
【0019】
方法
上記に要約されるように、本開示の態様は、第1の核酸に沿って、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することを含む、方法を含み、変化するコンダクタンスは、第1の核酸を配列決定するために測定され、利用されてもよい。本開示をレビューすると理解されるように、本方法は、例えば、本方法が、核酸配列決定のための既存のアプローチと比較して、増加した精度及び可搬性で、低下したコスト(例えば、本質的に消耗品なし)ではるかに迅速に実施される場合があるため、既存の配列決定技術に対する改善を構成する。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸(例えば、配列決定される核酸)の相対移動を引き起こすことを含む。「相対移動を引き起こす」とは、第1の核酸及び電解された第2の核酸のうちの少なくとも一方が、他方に対して相対的に位置を変えることを意味する。主題の方法のいくつかのバージョンでは、第1の核酸は、第2の核酸が静止したままである間に移動する。他の実施形態では、第2の核酸は、第1の核酸が静止したままである間に移動する。なお他の実施形態では、第1及び第2の核酸の両方が移動する。方法が、第2の核酸に対して相対的な第1の核酸の移動を引き起こすことを含む場合、移動は、任意の便利なアプローチを使用して達成されてもよい。例えば、方法は、第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸を引っ張ることを含んでもよい。「引っ張る」とは、その核酸に位置を変えさせるのに十分な力を核酸に及ぼすことを意味する。必要な力は、任意の便利な形態で存在してもよい。例えば、場合によっては、第1の核酸は、当該核酸を引っ張る(すなわち、物理的に引っ張る)ために使用することができる伸長構造に付着している。力は、化学推進、磁気推進、超音波駆動推進、光駆動推進、電気的駆動推進、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意の便利なアプローチを使用して駆動されてもよい。推進のナノスケール方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWang et al.Chemical reviews,115(16),8704-8735に記載されている。相対移動の速度は変化してもよい。いくつかの例では、相対移動の速度は、1~1000ヌクレオチド/秒の範囲である。
【0021】
ある特定のバージョンでは、伸長構造は、ナノワイヤである。ナノワイヤは、直径が0.5nm~500nm、例えば、1nm~200nm、及び5nm~100nmを含む範囲などの、任意の便利な直径を有してもよい。ナノワイヤは、任意の便利な材料を含んでもよい。例示的なナノワイヤ材料には、炭素、ゲルマニウム、シリコン、金、銅、酸化イットリウムバリウム銅(YBCO)、リン化インジウム、窒化ガリウム、ニッケル、白金、それらの組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
追加の実施形態では、伸長構造は、ナノチューブである。ナノチューブは、一般に炭素(例えば、フラーレン、グラフェン)を含むチューブ状構造である。カーボンナノチューブを作製するための様々な技術が開発されている。例として、カーボンナノチューブを形成する方法は、米国特許第5,753,088号及び同第5,482,601号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。ナノチューブの作製のための非限定的な技術には、レーザー蒸発技術、電気アーク技術、及び気相技術が含まれる。
【0023】
なお更なる実施形態では、伸長構造は、バイオポリマーである。いくつかの例では、バイオポリマーは、タンパク質である。他の例では、バイオポリマーは、核酸である。言い換えれば、バイオポリマー伸長構造は、第1の核酸を引っ張るために、上で説明されたナノチューブ又はナノワイヤと同じ様式で用いられてもよい。バイオポリマー伸長構造は、所望に応じて、任意の便利なアミノ酸又はヌクレオチド構造を有してもよい。
【0024】
方法が伸長構造を介して第1の核酸を引っ張ることを含む場合、伸長構造は、任意の便利なアプローチを介して第1の核酸に付着していてもよい。場合によっては、第1の核酸は、伸長構造の末端に結合(例えば、共有結合)していてもよい。選択的な場合では、アダプターは、第1の核酸の1つの末端(例えば、5’末端又は3’末端)と会合していてもよい。任意の便利なアダプターが用いられてもよい。選択的なバージョンでは、伸長構造は、2つの分子が互いに近接して配置されたときにハイブリダイゼーションしてもよく、それによって、伸長構造を第1の核酸に付着させるように、第1の核酸と会合したアダプターへの相補的な核酸配列を有してもよい。伸長構造が核酸である例では、伸長構造の末端(例えば、5’末端又は3’末端)での選択的な核酸塩基は、2つの分子が互いに近接して配置されたときにハイブリダイゼーションしてもよいように、第1の核酸と会合したアダプターに相補的であってもよい。
【0025】
他の場合では、第2の核酸に対して相対的な第1の核酸の移動を引き起こす力は、電磁力である。そのような場合では、方法は、第1の核酸が第2の核酸に対して相対的に移動するように、第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部にわたって電圧を印加することを含む。場合によっては、核酸が引っ張られる速度は、印加電圧を調節することによって調節することができる。主題の方法において使用するための電圧は、変化してもよく、いくつかの例では、25mV~500mV、例えば、50mV~400mV、例えば、75mV~300mV、及び100mV~200mVを含む範囲であってもよい。追加の場合では、第2の核酸に対して相対的な第1の核酸の移動を引き起こす力は、磁力である。いくつかのそのような場合では、第1の核酸は、それに付着された磁気粒子(例えば、磁気ビーズ)を含む。用いられる磁気粒子のタイプは、様々であってもよく、例えば、鉄ナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子などを含むことができる。実施形態では、第1の核酸に付着された磁気粒子に磁場を印加することは、第1の核酸に引っ張り力を提供するのに十分である。
【0026】
第2の核酸は、少なくとも部分的に開口部を形成するような様式で構成された任意の便利な電解された核酸であり得る。実施形態では、第2の核酸は、アデニンと塩基対合する核酸塩基、チミン又はウラシルと塩基対合する核酸塩基、グアニンと塩基対合する核酸塩基、及びシトシンと塩基対合する核酸塩基を少なくとも含む。ある特定の場合では、第2の核酸は、1つ以上の脱塩基ヌクレオチドを含む。第2の核酸は、場合によっては、一本鎖核酸であってもよい。本明細書で論じられるように、「電解された」核酸は、電流が通過している核酸を指す。理論に拘束されることなく、DNA骨格は、水及び対イオンによって誘導される小さな活性化ギャップから生じる複数の電荷移動メカニズムを支持することができると考えられている。いくつかの実施形態では、第2の核酸は、導電率を調節するように変性される。例えば、核酸の導電率は、導電性金属ナノ粒子などのドーパントで変性することができる。目的の金属ナノ粒子には、金、硫化鉛、セレン化鉛、ゲルマニウム、及び銀が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、核酸の導電率は、カーボンナノチューブ、カーボンナノロッド、カーボンブラック、グラフェンシート、グラフェンナノリボン、及びカーボンナノファイバーなどの導電性炭素などのドーパントで変性することができる。追加の場合では、第2の核酸の導電率は、アントラキノン、フェロセン、ノルボルナジエン、メチレンブルー、エチジウム、コラリン(coralyne)、及びクリプトレピン(cryptolepin)などのインターカレータを用いた分子ドーピングによって変性される。核酸インターカレーションは、核酸構造への1つのインターカレーション部分(モノインターカレータ)、2つのインターカレーション部分(ビスインターカレータ)、又は複数のインターカレーション部分の挿入を伴う。インターカレーションは、核酸鎖の全体的な導電特徴に影響を与える複合体の導電/抵抗を変える。一実施形態では、ドーパントは、印加電流によって還元又は酸化され得る。
【0027】
実施形態では、第2の核酸は、表面に付着している。第2の核酸は、任意の好適な様式で表面と安定的に会合していてもよい。「安定的に会合する」とは、第2の核酸が表面から容易に解離しないことを意味する。ある特定の場合では、電解された第2の核酸は、表面に付着した第1及び第2の不連続領域を含む。「不連続」領域とは、第1及び第2の領域が同じ領域ではない(すなわち、それらが重複しない)ことを意味する。第2の核酸の不連続領域は、同じ又は異なる表面に付着していてもよい。各表面は、任意の便利な材料を含んでもよい。ある特定の場合では、表面は、金属表面(例えば、金表面)である。いくつかの実施形態では、第2の核酸は、チオール結合化学を介して表面と安定的に会合している。例えば、表面が金表面である実施形態では、チオールは、金表面と直接反応して、酸化還元反応を介してAu-S結合を形成してもよい。追加の実施形態では、第2の核酸を表面と安定的に会合させることは、ディップペンナノリソグラフィを含む。そのような実施形態では、チオレートを表面上に刻印するために原子間力顕微鏡が用いられる場合がある。ディップペンナノリソグラフィは、例えば、米国特許第8,261,662号、同第9,403,180号に記載されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、第2の核酸は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して表面と安定的に会合している。選択的な場合では、第2の核酸は、複数の表面と接触している。言い換えれば、第2の核酸の一方の末端は、第1の表面と接触してもよく、第2の核酸の他方の末端は、第1の表面とは異なる第2の表面と接触してもよい。
【0028】
選択的な場合では、方法は、表面を生体適合性層でコーティングすることによって、第2の核酸の付着を空間的に標的とすることを含む。生体適合性層は、様々であってもよく、例えば、ポリマーマトリックス、ゲル、又は自己組織化単層(SAM)を含むことができる。ある特定の実施形態では、アルカンチオールSAMは、表面のうちの1つ以上で産生される。そのような場合では、表面(例えば、金表面)は、チオール官能化ブロッキング分子とともにインキュベートされる。チオール官能化ブロッキング分子には、1-メルカプト-11-ウンデカノール、1-メルカプト-6-ヘキサノール、ヘキサデカンチオール、それらの組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。SAM形成は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSzymonik et al.Nanotechnology,27(39),395301に記載されている。目的の方法は、溶液中の表面に負の電圧を印加し、それによってチオール結合を破断させ、ブロッキング分子を放出することを追加的に含んでもよい。そのような電気化学的脱離のための好適な方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWidrig et al.Journal of electroanalytical chemistry and interfacial electrochemistry,310(1-2),335-359に見出され得る。ブロッキング分子の放出後、ある特定の実施形態による方法は、目的の5’-又は3’-チオール官能化核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)とチオール含有ブロッキング分子との混合物をインキュベートして、目的の核酸が点在する新しい電極結合単層を形成することを含む。表面官能化において使用するために採用されてもよい方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWalti et al.Langmuir,19(4),981-984に記載されている。
【0029】
場合によっては、第2の核酸が結合する表面は、電極である。別の言い方をすれば、電解された第2の核酸に電流を通すために、核酸の5’及び/又は3’末端は、場合によっては、少なくとも1つの電極と接触していてもよい。選択的なバージョンでは、第2の核酸の一方の末端は、電極と安定的に会合し、一方、他方の末端は、非電極表面と安定的に会合している。他の場合では、第2の核酸の両方の末端は、異なる電極と安定的に会合している。電極は、任意の便利な材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極は、金属電極である。金属電極において使用するための材料には、白金、金、窒化チタン、銀、及びグラファイトが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、電極は、金電極である。
【0030】
選択的な実施形態では、表面(例えば、電極表面)は、第1及び第2の不連続領域に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドで官能化されており、第1及び第2の不連続領域は、オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを介して表面に付着している。言い換えれば、主題の方法の実施形態は、オリゴヌクレオチドを表面のうちの1つ以上にアンカーすることによって(例えば、チオール結合化学などを介して)、第2の核酸を表面に安定的に会合させることを含む。オリゴヌクレオチドは、任意の好適な短い(例えば、5~20ヌクレオチド)一本鎖DNA又はRNA分子であってもよい。ある特定の場合では、各オリゴヌクレオチドは、第2の核酸の配列に相補的である配列、すなわち、2つの分子がハイブリダイゼーションするような配列を有する。オリゴヌクレオチドが表面(例えば、電極表面)にアンカーされているため、オリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションした第2の核酸は、少なくとも1つの表面と安定的に会合することができる。
【0031】
上記で論じたように、第2の核酸は、開口部の少なくとも一部を形成する。開口部の「少なくとも一部」とは、第2の核酸が、開口部の1つの構成成分、又は開口部全体を構成する可能性があることを意味する。第2の核酸は、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を促進する任意の便利な構成で配置されてもよい。いくつかの例では、方法は、第2の核酸を「ブリッジ構造」構成に配置することを含む。本明細書に記載されるように、ブリッジ構造は、ブリッジ様形状が形成されるような様式で、当該核酸が表面(例えば、電極)と安定的に会合している第2の核酸の構成を指す。ある特定の例では、電解された第2の核酸は、電解された第2の核酸がブリッジ構造を形成するように、表面又は表面に付着した第1及び第2の不連続領域を含む。本方法の実施形態では、第1の核酸の移動は、ブリッジ構造の開口部を通して(例えば、上記で論じた方法のいずれかを介して)、第1の核酸を引っ張ることを含む。
【0032】
場合によっては、電解された第2の核酸は、複数の電解された核酸のうちの1つである。任意の好適な数の電解された核酸が用いられてもよい。場合によっては、電解された核酸の数は、1~20、例えば、1~15、及び1~10を含む範囲である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、2つ以上の電解された核酸の使用を伴う。なお他の実施形態では、本発明の方法は、3つ以上の電解された核酸の使用を伴う。複数の電解された核酸の各々は、同じ構成又は異なる構成を採用してもよい。いくつかの実施形態では、複数の電解された核酸の各々は、ブリッジ構造の構成で配置される。
【0033】
上記で論じたように、本発明の方法は、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンスを検出することを含む。Agapito et al.及び
図1に関して要約セクションにおいて上記で論じたように、核酸の所与の核酸塩基間の相互作用は、特定のコンダクタンスフィンガープリントによって特徴付けられる。言い換えれば、DNA塩基対は、核酸塩基間の空間分離及び弱い結合のために、並びにこれらの塩基対を横切って流れる電流が結合の特異的性質に基づいて変化するために、生物学的Aviram-Ratner電気整流器として振る舞う。したがって、方法は、第1の核酸が第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通過するときにこれらのコンダクタンスフィンガープリントを特定することと、それによって、第1の核酸の配列を含むが、これらに限定されない、第1の核酸の特徴を特定することと、を含む。したがって、方法は、電流が第2の核酸の骨格を通過するのに十分な様式で(例えば、電極を介して)第2の核酸に電流を印加することを含む。
【0034】
第1の核酸に「沿って」変化するコンダクタンスを検出することとは、電流が、電解された第2の核酸(例えば、ブリッジ構造)を横切って、配列決定されるDNA/RNA/分子(すなわち、第1の核酸)へと進行することを意味する。したがって、これらの反復において、電子は、第1の核酸に沿って進行して、回路を完成させる。配列決定される塩基と第2の核酸塩基との間の相互作用は、配列決定された塩基の特定を可能にする変化するコンダクタンスフィンガープリントにつながる。第1の核酸に沿って進行する電子の測定は、当該コンダクタンスフィンガープリントの評価を可能にする。
【0035】
第1の核酸に沿うコンダクタンスは、任意の便利なアプローチを介して測定されてもよい。いくつかの実施形態では、バイアス電流を提供し、結果として生じる電流を分析するために、電位計が用いられる。主題の方法において使用するために好適である場合がある市販の電位計には、例えば、Keithley(登録商標)計器が含まれる。いくつかの実施形態では、変化するコンダクタンスを検出することは、インピーダンスベースのアプローチを含む。ある特定のバージョンでは、方法は、その特徴的なエネルギーレベルに基づいて、核酸塩基を特定することを含む。目的の特徴的なエネルギーレベルには、最高占有分子軌道(HOMO)エネルギーが含まれるが、これらに限定されない。主題の方法において使用するために採用されてもよい測定技術は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Pedersen et al.Nanotechnology,28(1),015502、及びOhshiro et al.2012 12th IEEE International Conference on Nanotechnology(IEEE-NANO)(pp.1-2).IEEEに見出すことができる。
【0036】
図2は、複数の電解された核酸によって形成された複数の開口部を通る第1の核酸の相対移動を含む、本開示の実施形態による方法の概略図を提示する。この例では、電解された第2の核酸202は各々、電解された核酸202がブリッジ構造を形成するように、表面に付着した第1及び第2の不連続領域を含む。相対移動中に、第1の核酸201の核酸塩基と電解されたブリッジ構造202の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスが第1の核酸201に沿って検出される。この例では、相対移動は、ブリッジ構造202によって形成された開口部を通して、第1の核酸を引っ張ることを含む。アダプター203は、ブリッジ構造202を通して第1の核酸201を引っ張るために、第1の核酸201を伸長構造(図示せず)に接続する第1の核酸201にハイブリダイゼーションされる。
図2の実施形態では、第1の核酸201は、磁気ビーズ204に付着している。
【0037】
図3は、複数の電解された核酸によって形成された複数の開口部を通る第1の核酸の相対移動を含む、本開示の実施形態による方法の概略図を提示する。この例では、電解された第2の核酸302は各々、電解された核酸がブリッジ構造を形成するように、表面に付着した第1及び第2の不連続領域を含む。相対移動中に、第1の核酸301の核酸塩基と電解されたブリッジ構造302の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスが第1の核酸301に沿って検出される。この例では、相対移動は、第1の核酸をブリッジ構造によって形成された開口部を通して引っ張ることを含み、引っ張ることは、第1の核酸301が引っ張られるべき方向に、伸長構造305(例えば、ナノチューブ、ナノワイヤ、又はバイオポリマー(例えば、核酸))を介する。伸長構造305は、アダプター303を介して第1の核酸301に付着している。
【0038】
実施形態では、相対移動を引き起こすことは、表面を第1の核酸に対して相対的に移動させることを含む。言い換えれば、相対移動は、表面の移動によって引き起こされ、第1の核酸の移動は、無視できる。ある特定の例では、第1の核酸は、相対移動中に固定化されている。圧電材料/アクチュエータを用いるなどの、表面を移動させるために任意の便利なアプローチが用いられてもよい。いくつかの実施形態では、機械的に制御可能な破断接合(mechanically controllable break junctions)及びAFMで使用する材料及びアプローチが、表面を移動させるために用いられてもよい。
【0039】
図4は、複数の電解された核酸によって形成された複数の開口部を通る第1の核酸の相対移動を含む、本開示の実施形態による方法の図解を提示する。この例では、電解された核酸は各々、電解された核酸がブリッジ構造402を形成するように、表面406に付着した第1及び第2の不連続領域を含む。相対移動中に、第1の核酸401の核酸塩基と電解されたブリッジ構造402の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスが第1の核酸401に沿って検出される。この例では、相対移動は、第1の核酸401に対して相対的に表面406(及び順次ブリッジ構造402)を移動させることを含む。
【0040】
開示される方法のある特定のバージョンでは、電解された第2の核酸は、少なくとも部分的にループ構造を形成し、第1の核酸の相対移動は、ループ構造の開口部を通してである。例えば、電解された第2の核酸は、表面(例えば、電極)に付着した第1の末端を含み、ステムループ構造を形成してもよい。追加の実施形態では、電解された第2の核酸は、表面に付着した第1の末端と、電解された第2の核酸及び第3の核酸分子がループ構造を形成するように、第3の核酸分子にハイブリダイゼーションされた第1及び第2の不連続領域とを含む。第3の核酸は、本明細書に記載される第2の核酸に実質的に類似していてもよい。選択的な例では、第3の核酸もまた、電解されている。ある特定の場合では、第3の核酸は、2つの核酸がハイブリダイゼーションし、それによってループ構造を形成してもよいように、第2の核酸の領域に相補的である1つ以上の領域を有する。選択的な場合では、第2の核酸は、第1の表面に付着しており、第3の核酸は、第2の表面に付着している。他の場合では、第2及び第3の核酸のうちの1つのみが表面に付着している。第2及び/又は第3の核酸は、上で記載されるものなどの任意の便利なメカニズムを介して基板に付着していてもよい。選択的な実施形態では、電解された第2の核酸の第1の末端は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して表面に付着している。追加の実施形態では、電解された第2の核酸の第1の末端は、磁気引力を介して表面に付着している。
【0041】
図5は、本開示の方法の実践において使用を見出される様々な電解された核酸構成の概略図を提示する。左に示すように、電解された第2の核酸は、表面に付着した第1の末端を含み、ステムループ構造を形成してもよい。中央に示すように、電解された第2の核酸は、表面に付着した第1の末端と、電解された第2の核酸及び第3の核酸分子がループ構造を形成するように、第3の核酸分子にハイブリダイゼーションされた第1及び第2の不連続領域とを含んでもよい。この例では、第3の核酸は、第2の表面に付着した末端を含む。右に示すように、電解された第2の核酸は、表面に付着した第1の末端と、電解された第2の核酸及び第3の核酸分子がループ構造を形成するように、第3の核酸分子にハイブリダイゼーションされた第1及び第2の不連続領域とを含んでもよい。この例では、第3の核酸は、第2の表面に付着した末端を含まない。配列決定されるDNA(すなわち、「X」によってマークされる第1の核酸)は、ループの内部であり、回路を完成させる概念及び方法は、
図1~4におけるものと同一である。
【0042】
図5を参照すると、いくつかの実施形態では、示される構造(例えば、各基板に付着した中央の構造)は、ループが第1の核酸の配列決定に使用されるナノポアを形成するような様式で配置される。例えば、ヘアピンを形成するDNAは、導電性である領域及びアイソレータとして作用する領域を有してもよい。
【0043】
場合によっては、方法は、第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することを含む。
図1~5に関して上記で論じた実施形態と同様に、変化するコンダクタンスは、第1の核酸の核酸塩基と、電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示し、電流は、配列決定されるDNA分子に沿って流れる。しかしながら、理論に拘束されることなく、回路はまた、第2の核酸及び配列決定される核酸(すなわち、第1の核酸)の近接に導電性電極を配置することによって完了することができる。配列決定される塩基と第2の核酸塩基との間の相互作用は、配列決定された塩基の特定を可能にする変化するコンダクタンスフィンガープリントにつながる。第1の核酸に近接する電極は、上で記載されるものなどの任意の便利な電極であってもよい。
【0044】
図6は、第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスが検出され、変化するコンダクタンスが、第1の核酸の核酸塩基とブリッジ構造の形態における電解された核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、実施形態の概略図を提示する。
図6の例では、相対移動は、第1の核酸601と複数の(すなわち、3つの)電解された第2の核酸602との間で(例えば、上で記載されるメカニズムのうちのいずれか1つを介して)生じる。複数の電解された核酸602からの電流は、核酸間に塩基間相互作用が生じると、第1の核酸601を通過し、矢印の方向における電極603に進行する。コンダクタンスは、続いて、第1の核酸601の核酸塩基を特定するために、上で説明されたフィンガープリントについて評価されてもよい。
【0045】
場合によっては、電解された第2の核酸は、チャネル内に配置され、第1の核酸と第2の核酸との間の相対移動を引き起こすことは、電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸をチャネル内に転位させることを含む。核酸を転位させるのに好適な任意のチャネルが用いられてもよい。チャネルのサイズ(例えば、直径)は変化してもよい。例示的な直径は、0.5nm~20nmの範囲である。チャネルが構築される場合がある材料には、シリコン(例えば、窒化シリコン)、グラフェンなど、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、チャネルはナノポア(例えば、電位差が印加されるナノポア)であり、方法は、電気信号を監視しながら、核酸塩基を連続的な様式でナノポアに曝露することを含む。
【0046】
第2の核酸は、任意の便利な様式でチャネル内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の核酸は、第1の点において1つの末端でチャネルに付着しており、第2の点において他の末端でチャネルに付着している。場合によっては、第2の点は、第1の点の反対側にある。第2の核酸は、上で記載される技術(例えば、チオールベースの技術)を含むが、これらに限定されない、任意の便利な技術によってチャネルに付着していてもよい。ある特定の実施形態では、第2の核酸は、チャネル内に配置された複数の電解された核酸のうちの1つである。これらの実施形態では、電解された核酸は、任意の便利な様式で互いに対して配置されてもよい。選択的なバージョンでは、電解された核酸は、「クロスヘアー」構成で配置される。言い換えれば、電解された核酸は、電解された核酸の得られた形状がポアの上部の有利な点から十字に似ているように、ポアに付着されている。電解された核酸は、そこを通る電流を印加するように構成されるチャネル内の電極(例えば、正極)に付着していてもよい。クロスヘアー構成は、チャネル内に4つの象限の生成をもたらし、それらのうちの1つを第1の核酸が通過してもよい。実施形態では、各象限は、電極(例えば、負極)に関連している。電解された核酸からの電流は、それぞれの負極に到達する前に、所与の象限を通過する第1の核酸を通して伝導され得る。次いで、第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを用いて、第1の核酸の特徴(例えば、配列情報)を特定することができる。
【0047】
主題の方法を実践するとき、そこを通して第1の核酸を転位させ、転位中に変化するコンダクタンスを検出/監視するのに好適な任意のナノポアデバイス/装置が用いられてもよい。例えば、好適なナノポアデバイスは、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2つのセクションに分離する膜とを含んでもよく、膜は、その中に形成されたナノポアを含む。電気的測定は、例えば、Lieberman et al.(2010)J.Am.Chem.Soc.132(50):17961-72、Stoddart et al.(2009)PNAS 106(19):7702-7、米国特許第9,481,908号、及び米国特許出願公開第2014/0051068号に記載されているものなどの単一チャネル記録機器を使用して行ってもよく、これらの開示は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。代替的に、電気的測定は、例えば、米国特許出願公開第2015/346149号に記載されているような多チャネルシステムを使用して行ってもよく、この開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
ナノポアベースの分析(例えば、配列決定)では、ナノポアは、バイオセンサとして機能し、膜のシス側におけるイオン溶液がトランス側におけるイオン溶液に接触する唯一の経路を提供する。定電圧バイアス(トランス側の正)は、ナノポアを通るイオン電流を生成し、シスチャンバ内のポリヌクレオチドをポアを通ってトランスチャンバに駆動する。プロセッシブ酵素(例えば、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼなど)は、その段階的な移動がヌクレオチドを制御し、小径ナノポアを通して核酸塩基ごとにラチェットするように、ポリヌクレオチドに結合してもよい。
【0049】
ナノポアベースの分析(例えば、タンパク質ポア、固体状態ポアなど)のための好適な条件は、当該技術分野で既知である。典型的には、電圧は、膜及びポアを横切って印加される。使用される電圧は、+2V~-2V、例えば、-400mV~+400mVであってもよい。使用される電圧は、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、及び0mVから選択される下限と、独立して、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、及び+400mVから選択される上限とを有する範囲内であってもよい。電圧は、100mV~240mV、例えば、120mV~220mVの範囲内であってもよい。
【0050】
方法は、典型的には、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの好適な電荷担体の存在下で実施される。電荷担体には、イオン液体又は有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、又はl-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれてもよい。一般に、塩は、チャンバ内の水溶液中に存在する。例えば、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、又は塩化セシウム(CsCl)が使用されてもよい。塩濃度は、飽和であってもよい。塩濃度は、3M以下であってもよく、典型的には、0.1~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6M、又は1M~1.4Mである。塩濃度は、150mM~1Mであってもよい。本方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、又は少なくとも3.0Mの塩濃度を使用して実施される。高い塩濃度は、高い信号対雑音比を提供し、正常な電流変動のバックグラウンドに対してヌクレオチドの存在を示す電流を特定することを可能にする。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の核酸がナノポアに曝露される速度は、プロセッシブ酵素を使用して制御される。用いられてもよいプロセッシブ酵素の非限定的な例には、ポリメラーゼ(例えば、phi29又は他の好適なポリメラーゼ)及びヘリカーゼ、例えば、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、Tralヘリカーゼ、Tralサブグループヘリカーゼ、XPDヘリカーゼなどが含まれる。プロセッシブ酵素は、例えば、核酸に結合し、続いて得られた複合体が、例えば、ナノポアを横切って印加される電位差によってナノポアに引き寄せられる場合がある。他の実施形態では、プロセッシブ酵素は、プロセッシブ酵素が、例えば、ナノポアに到達すると核酸に結合するように、ナノポアに位置してもよい(例えば、ナノポアに付着しているか、又はナノポアに隣接している)。
【0052】
ナノポアは、固体状態フィルム、生物学的膜などに存在してもよい。いくつかの実施形態では、ナノポアは、固体状態ナノポアである。他の実施形態では、ナノポアは、生物学的ナノポアである。生物学的ナノポアは、例えば、アルファ-ヘモリジンベースのナノポア、Mycobacterium smegmatis porin A(MspA)ベースのナノポアなどであってもよい。
【0053】
図7A~7Bは、電解された第2の核酸がチャネル内に配置されている本発明の実施形態を提示する。
図7Aはチャネル705の上面図を提示し、一方で
図7Bはチャネル705の側面図を提示する。
図7Aに示すように、チャネル(すなわち、ナノポア)705は、負極703及び正極704を含む。電解された核酸702は、電極704を介してチャネル705付着しており、チャネル705の内部を4つの象限に分割する結果となるクロスヘアー構成で配置されている。配列決定される核酸(すなわち、第1のアミノ酸)は、4つの象限のうちのいずれか1つを通過することができる。配列決定される分子は、電気泳動を介して、又はポアを通る流体/緩衝液の流れを介して、ポアを通して、及びブリッジ構造を通して引っ張ることができる。例証されているのは、回路を完了することを可能にするベース「A」である。
図7Bは、電解された核酸702の複数のセットが存在するチャネル705の実施形態を提示する。
図7Bは、
図7Aに示される電極を示さないが、それらの存在が示唆される。
【0054】
実施形態では、主題の方法は、本発明のステップを実行するように構成された統合されたデバイス上で実施される。統合されたデバイスは、本明細書に記載される1つ以上の電解された核酸(すなわち、第2の核酸)を使用して、1つ以上の核酸(すなわち、第1の核酸)を分析する(例えば、配列決定する)ように構成されてもよい。統合されたデバイスは、電源、電極、電線管、及びスイッチなどの、第2の核酸を電解するために必要な構成要素を含んでもよい。統合されたデバイスは、所望に応じて、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンスを検出するように、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出するように構成されてもよい。選択的な実施形態では、統合されたデバイスは、チップである。チップは、任意の便利な材料から構築されてもよい。例示的な材料には、シリコン(例えば、二酸化ケイ素)が含まれる。
【0055】
図8は、第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間で変化するコンダクタンスが検出され得る本発明の実施形態を示す。
図8に示すように、オリゴヌクレオチドは、左側の電極804l及び右側の電極804rに付着している(例えば、上で記載されるように、チオール化学を介して)。第2の核酸802は、オリゴヌクレオチド805にハイブリダイゼーションし、それによって、配列決定される核酸が通過する場合がある開口部を形成する。電源806(例えば、電池)から生じる電流は、電極804l(左電極)及び804r(右電極)のうちの一方又は両方に印加することができる。例えば、スイッチ807aが解放されたかどうかに応じて、電流を電極804lに印加してもしなくてもよい。第2の核酸802が電解されるとき、電流は、第2の核酸802から電極803gにジャンプしてもよい。配列決定される核酸が核酸802によって形成された開口部を通過すると、2つの核酸間の塩基間相互作用は、デバイスによって検出されてもよいコンダクタンスフィンガープリントの存在につながる。回路は、スイッチ807bが係合されているか、又は解放されているかに応じて完了されてもよい。
【0056】
図9A~9Bは、主題の方法において使用するためのチップのアーキテクチャを示す。
図9Aに示すように、チップは、
図8に示される電極804l及び804rに対応する複数の(番号付けされた0~7の)左及び右電極(それぞれ「l」及び「r」で表される)を含む。加えて、チップは、
図8における電極803gに対応する「ゲート」電極を含む。
図9Bに示すように、左電極及び右電極の各々は、第2の核酸が横切って位置付けている小さなギャップ(例えば、20nm~60nmの範囲の長さ)によって分離されている(例えば、
図8に示すように)。左電極及び右電極の下には、当該左電極及び右電極から絶縁されているゲート電極がある。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、本開示の方法は、コンピュータ実装である。「コンピュータ実装」とは、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体を使用して、本方法の少なくとも1つのステップが実装されることを意味する。本開示のコンピュータ実装方法は、コンピュータ実装されていない1つ以上のステップ、例えば、対象から試料を得ること、配列決定のための核酸を単離すること、本開示の方法による接触及び/又は組み合わせステップを実施することなどを更に含んでもよい。
【0058】
本開示の方法によって配列決定される核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)であってもよい。目的のDNAには、ゲノムDNA又はその断片、相補的DNA(又は目的の任意のRNA又はDNAから合成された「cDNA」)又はその断片、組換えDNA(例えば、プラスミドDNA)又はその断片などが含まれるが、これらに限定されない。配列決定される核酸は、ヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドで構成される約2塩基超、約10塩基超、約100塩基超、約500塩基超、1000塩基超、10,000塩基超、100,000塩基超、約1,000,000超、最大約1010塩基以上であってもよく、酵素的又は合成的に産生されてもよく(例えば、米国特許第5,948,902号及びそれに引用されている文献に記載されているようなPNA)、これは、2つの天然に存在する核酸のものと類似の配列特異的な様式で天然に存在する核酸とハイブリダイゼーションすることができ、例えば、ワトソン-クリック塩基対相互作用に関与することができる。
【0059】
本開示の方法によって配列決定される核酸は、リボ核酸(RNA)であってもよい。RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランス作用性低分子干渉RNA(ta-siRNA)、天然低分子干渉RNA(nat-siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子核小体RNA(snoRNA)、低分子核RNA(snRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、非コードRNA(ncRNA)、トランスファーメッセンジャーRNA(tmRNA)、前駆体メッセンジャーRNA(プレmRNA)、低分子カハール体特異的RNA(scaRNA)、piwi-相互作用RNA(piRNA)、エンドリボヌクレアーゼ調製siRNA(esiRNA)、低分子時間的RNA(small temporal RNA)(stRNA)、信号認識RNA、テロメアRNA、リボザイム、又はそれらのRNAタイプ若しくはそれらのサブタイプの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意のタイプのRNA(又はそのサブタイプ)であってもよい。
【0060】
ある特定の実施形態では、配列決定される核酸の部分は、「非天然ヌクレオシド」又は「非天然ヌクレオチド」を含み、これらは、修飾された核酸塩基及び/又は修飾された糖などの他の化学修飾を含有するヌクレオシド又はヌクレオチドを指す。場合によっては、非天然ヌクレオチド/ヌクレオシドは、主題の方法によって認識される場合がある特有のコンダクタンスフィンガープリントを有する。いくつかの実施形態によれば、分子ディスクは、核酸-核酸ハイブリッドと比較して、合成鎖-核酸ハイブリッドの融解温度(Tm)を変性する非天然核酸塩基及び/又は非天然ヌクレオチドを含む部分を含む。非限定的な例には、修飾ピリミジン、例えば、メチル-dC又はプロピニル-dU;修飾プリン、例えば、G-クランプ;2-アミノ-2’-デオキシアデノシン-5’-三リン酸(2-アミノ-dATP)、5-メチル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸(5-Me-dCTP)、5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸(5-Pr-dCTP)、5-プロピニル-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(5-Pr-dUTP)、ハロゲン化デオキシ-ウリジン(XdU)、例えば、5-クロロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(5-Cl-dUTP)、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(5-Br-dUTP)、又はそれらの任意の組み合わせなどが含まれる。
【0061】
本開示の方法によって配列決定される核酸は、1つ以上の免疫細胞からの核酸であってもよい。目的の免疫細胞には、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好塩基球、及び好酸球が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、配列決定される核酸は、T細胞からのものである。目的のT細胞には、ナイーブT細胞(TN)、細胞傷害性T細胞(TCTL)、メモリT細胞(TMEM)、Tメモリ幹細胞(TSCM)、セントラルメモリT細胞(TCM)、エフェクターメモリT細胞(TEM)、組織常在型メモリT細胞(TRM)、エフェクターT細胞(TEFF)、制御性T細胞(TREG)、ヘルパーT細胞(TH、TH1、TH2、TH17)CD4+T細胞、CD8+T細胞、ウイルス特異的T細胞、アルファベータT細胞(Tαβ)、及びガンマデルタT細胞(Tγδ)が含まれる。
【0062】
ある特定の実施形態では、本開示の方法によって配列決定される核酸は、免疫細胞受容体(例えば、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR))又はその一部をコードする核酸である。例えば、ある特定の実施形態では、TCRのアルファ鎖又はベータ鎖の1つ以上のCDRをコードする核酸を配列決定することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態によれば、本方法は、TCRのアルファ鎖又はベータ鎖の全て又は一部をコードする核酸のCDR3コード部分を配列決定することを含む。ある特定の実施形態では、そのような方法は、各々がA、C、G、又はT/Uに結合するための部分を含む一連の分子ディスクを含む合成鎖を用いており、一連の各分子ディスクは、A、C、G、又はT/Uに排他的に結合し、一連の分子ディスクに隣接する分子ディスクの回転位置に基づいてCDR3コード部分のヌクレオチド配列が決定されてもよいように、一連は、TCRのアルファ鎖又はベータ鎖の全て又は一部をコードする核酸のCDR3コード部分に隣接する既知のヌクレオチド配列(例えば、定常領域配列)にハイブリダイゼーションするように設計されている。
【0063】
本開示の方法によって配列決定される核酸は、目的の任意の核酸試料中に存在してもよい。ある特定の実施形態では、核酸は、単一の細胞、複数の細胞(例えば、培養細胞)、組織、臓器、又は生物(例えば、細菌、酵母など)から単離された核酸試料中に存在する。いくつかの実施形態によれば、核酸試料は、動物の細胞、組織、臓器などから単離される。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物、例えば、ホモ属(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシからの哺乳動物、又は任意の他の目的の哺乳動物である。ある特定の実施形態では、核酸試料は、哺乳動物以外の供給源、例えば、細菌、酵母、昆虫(例えば、ショウジョウバエ)、両生類(例えば、カエル(例えば、アフリカツメガエル))、ウイルス、植物、又は任意の他の非哺乳動物核酸試料供給源から単離される/得られる。
【0064】
本開示の方法によって配列決定されてもよい核酸は、無細胞核酸、例えば、無細胞DNA、無細胞RNA、又はその両方を含む。そのような無細胞核酸は、任意の好適な供給源から得てもよい。ある特定の実施形態では、無細胞核酸は、全血、血漿、血清、羊水、唾液、尿、胸水、気管支洗浄液、気管支吸引液、母乳、初乳、涙液、精液、腹膜液、胸水、及び糞便からなる群から選択される体液試料からのものである。ある特定の実施形態では、無細胞核酸は、無細胞胎児DNAである。いくつかの実施形態によれば、無細胞核酸は、循環腫瘍DNAである。ある特定の実施形態では、無細胞核酸は、感染性因子DNAを含む。いくつかの実施形態によれば、無細胞核酸は、移植からのDNAを含む。
【0065】
本明細書で使用される「無細胞核酸」という用語は、実質的に細胞を有しない供給源から単離された核酸を指すことができる。無細胞核酸は、「細胞外」核酸、「循環無細胞」核酸(例えば、CCF断片、ccf DNA)及び/又は「無細胞循環」核酸と称される場合がある。無細胞核酸は、血液中に存在し、血液から得ることができる(例えば、動物の血液から、ヒト対象の血液から)。無細胞核酸は、多くの場合、検出可能な細胞を含まず、細胞要素又は細胞残存物を含有してもよい。無細胞核酸についての非細胞供給源の非限定的な例は、上で記載されている。無細胞核酸を得ることは、試料を直接得ること(例えば、試料、例えば、試験試料を収集すること)、又は試料を収集している別の者から試料を得ることを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、無細胞核酸は、多くの場合、スペクトル(例えば、「ラダー」)にわたって一連の長さを有する無細胞核酸についての基礎を提供する、細胞アポトーシス及び細胞分解の産物であってもよい。いくつかの実施形態では、試験対象からの試料核酸は、循環無細胞核酸である。いくつかの実施形態では、循環無細胞核酸は、試験対象からの血漿又は血清からのものである。
【0066】
無細胞核酸は、異なる核酸種を含むことができるため、本明細書では、ある特定の実施形態では「異種」と称される。例えば、がんを有する対象からの試料は、がん細胞(例えば、腫瘍、新生物)からの核酸及び非がん細胞からの核酸を含むことができる。別の例では、妊婦からの試料は、母性核酸及び胎児性核酸を含むことができる。別の例では、感染又は感染性疾患を有する対象からの試料は、宿主核酸及び感染性因子(例えば、細菌、真菌、原生動物)からの核酸を含むことができる。別の例では、移植を受けている対象からの試料は、宿主核酸及びドナー臓器又は組織からの核酸を含むことができる。いくつかの例では、がん、胎児、感染性因子、又は移植核酸は、時には、核酸全体の約5%~約50%である(例えば、全核酸の約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49%が、がん、胎児、感染性因子、又は移植核酸である)。別の例では、異種無細胞核酸は、2人以上の対象からの核酸を含んでもよい。
【0067】
本開示の方法によって配列決定されてもよい核酸には、腫瘍核酸(例えば、腫瘍から単離された核酸試料、例えば、腫瘍生検試料中に存在する)が含まれる。本明細書で使用される「腫瘍」は、悪性又は良性を問わず、全ての新生物細胞の成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」及び「がん性」という用語は、未制御の細胞成長/増殖によって典型的に特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指すか、又は説明する。がんの例には、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。そのようながんのより特定の例には、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、様々なタイプの頭頸部がんなどが含まれる。
【0068】
目的の供給源からDNA及びRNAを単離、精製、及び/又は濃縮するためのアプローチ、試薬、及びキットは、当該技術分野で既知であり、市販されている。例えば、目的の供給源からDNAを単離するためのキットには、Qiagen,Inc.(Germantown,Md)によるDNeasy(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAamp(登録商標)、QIAprep(登録商標)、及びQIAquick(登録商標)核酸単離/精製キット;Life Technologies,Inc.(Carlsbad,CA)によるDNAzol(登録商標)、ChargeSwitch(登録商標)、Purelink(登録商標)、GeneCatcher(登録商標)核酸単離/精製キット;Clontech Laboratories,Inc.(Mountain View,CA)によるNucleoMag(登録商標)、NucleoSpin(登録商標)、及びNucleoBond(登録商標)核酸単離/精製キットが含まれる。ある特定の実施形態では、核酸は、固定された生物学的試料、例えば、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)組織から単離される。FFPE組織からのゲノムDNAは、市販のキット、例えば、Qiagen,Inc.(Germantown,Md)によるAllPrep(登録商標)DNA/RNA FFPEキット、Life Technologies,Inc.(Carlsbad,CA)によるFFPEのためのRecoverAll(登録商標)トータル核酸単離キット、及びClontech Laboratories,Inc.(Mountain View,CA)によるNucleoSpin(登録商標)FFPEキットを使用して単離してもよい。
【0069】
本開示の方法によって決定された核酸配列は、利用可能な配列分析ソフトウェアを使用して分析(例えば、構築するなど)してもよい。
【0070】
選択的な実施形態では、核酸を配列決定するのではなく、本発明の方法は、ポリペプチドを配列決定することを含む。アミノ酸は、ヌクレオチドと同様の様式でコンダクタンスフィンガープリントを有してもよい。したがって、配列決定される分子がポリペプチドである実施形態が、本開示によって包含される。例えば、本発明の方法は、電解された第2のポリペプチドによって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1のポリペプチドの相対移動を引き起こすことと、相対移動中に、第1のポリペプチドに沿って変化するコンダクタンスを検出することとを含んでもよい。代替的に、相対移動中に、方法は、第1のポリペプチドと第1のポリペプチドに近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することを含むことができる。
【0071】
配列決定されるポリペプチドは、任意のポリペプチドであってもよく、これは、遺伝的にコードされた及び遺伝的にコードされていないアミノ酸、化学的若しくは生化学的に修飾された、又は誘導されたアミノ酸、並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。この用語は、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基の有無にかかわらず、異種及び相同のリーダー配列を有する融合、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などを含むが、これらに限定されない、融合タンパク質を含む。
【0072】
「アミノ酸」という用語は、一般に、置換若しくは非置換アミノ基、置換若しくは非置換カルボキシ基、及び1つ以上の側鎖若しくは基、又はこれらの基のいずれかの類似体を含む任意の単量体単位を指す。例示的な側鎖には、例えば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキンル、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、又はこれらの基の任意の組み合わせが含まれる。他の代表的なアミノ酸には、光活性化可能な架橋剤、金属結合アミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規の官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合又は非共有結合的に相互作用するアミノ酸、光ケージ化及び/又は光異性化可能なアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチン又はビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化アミノ酸、他の炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコール又はポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能な及び/又は光切断可能なアミノ酸、炭素結合糖含有アミノ酸、レドックス活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、並びに1つ以上の毒性部分を含むアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
「アミノ酸」という用語には、天然に存在するα-アミノ酸及びそれらの立体異性体が含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸の「立体異性体」は、L-アミノ酸又はD-アミノ酸などのアミノ酸の鏡像異性体を指す。例えば、天然に存在するアミノ酸の立体異性体は、天然に存在するアミノ酸(すなわち、D-アミノ酸)の鏡像異性体を指す。
【0074】
天然に存在するα-アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、及び後に修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリン)である。天然に存在するα-アミノ酸には、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体には、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
コンピュータ可読媒体及びシステム
本開示の態様は、システム、例えば、核酸配列決定システムを更に含む。ある特定の実施形態では、そのようなシステムは、1つ以上のプロセッサと、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスをシステムに監視させる、その上に記憶された命令を含む、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体と、を含む。システムによって監視された変化するコンダクタンスは、第1の核酸の核酸塩基と、電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す。いくつかの実施形態では、変化するコンダクタンスは、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体は、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーをシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む。追加の実施形態では、変化するコンダクタンスは、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体は、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸のヌクレオチド配列をシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む。
【0076】
本開示の実施形態を実装するために、種々のプロセッサベースのシステムが用いられてもよい。そのようなシステムは、システムアーキテクチャを含んでもよく、システムの構成要素は、バスを使用して互いに電気通信している。システムアーキテクチャは、システムバスに様々に連結されているプロセシングユニット(CPU又はプロセッサ)、及びキャッシュを含むことができる。バスは、システムメモリ(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)を含む様々なシステム構成要素をプロセッサに連結する。
【0077】
システムアーキテクチャは、プロセッサに直接接続された、プロセッサに極めて近接した、又はプロセッサの一部として統合された高速メモリのキャッシュを含むことができる。システムアーキテクチャは、プロセッサによる迅速なアクセスのために、メモリ及び/又は記憶デバイスからキャッシュにデータをコピーすることができる。このようにして、キャッシュは、データを待つ間のプロセッサ遅延を回避する性能の向上を提供することができる。これら及び他のモジュールは、様々なアクションを実施するようにプロセッサを制御するか、又は制御するように構成され得る。他のシステムメモリも使用可能である場合がある。メモリは、異なる性能特徴を有する複数の異なるタイプのメモリを含むことができる。プロセッサは、任意の汎用プロセッサ、並びにプロセッサを制御するように構成された、記憶デバイスに格納された第1、第2、及び第3のモジュールなどのハードウェアモジュール又はソフトウェアモジュール、並びにソフトウェア命令が実際のプロセッサ設計に組み込まれる特殊目的プロセッサを含むことができる。プロセッサは、本質的に、複数のコア又はプロセッサ、バス、メモリコントローラ、キャッシュなどを含む、完全に自己完結型のコンピューティングシステムであってもよい。マルチコアプロセッサは、対称であっても非対称であってもよい。
【0078】
本発明の態様はまた、非一時的コンピュータ可読媒体を含む。主題の非一時的コンピュータ可読媒体は、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスをシステムに監視させる、その上に記憶された命令を含む。上記のように、変化するコンダクタンスは、第1の核酸の核酸塩基と、電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す。選択的な場合では、変化するコンダクタンスは、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体は、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーをシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む。追加の場合では、変化するコンダクタンスは、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体は、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸のヌクレオチド配列をシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む。
【0079】
コンピューティングシステムアーキテクチャとのユーザ相互作用を可能にするために、入力デバイスは、例えば、音声用のマイクロフォン、ジェスチャ又はグラフィカル入力用のタッチ感知スクリーン、キーボード、マウス、動き入力、音声などの任意の数の入力メカニズムを表すことができる。出力デバイスはまた、いくつかの出力メカニズムのうちの1つ以上であり得る。いくつかの例では、マルチモーダルシステムは、ユーザがコンピューティングシステムアーキテクチャと通信するために複数のタイプの入力を提供することを可能にすることができる。通信インターフェースは、一般に、ユーザ入力及びシステム出力を制御及び管理することができる。任意の特定のハードウェア構成上で動作することに制限はなく、したがって、ここでの基本的な特徴は、それらが開発されるにつれて、改善されたハードウェア又はファームウェア構成に容易に置換されてもよい。
【0080】
記憶デバイスは、典型的には不揮発性メモリであり、磁気カセット、フラッシュメモリカード、ソリッドステートメモリデバイス、デジタル多用途ディスク、カートリッジ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、及びそれらのハイブリッドなどの、コンピュータによってアクセス可能であるデータを記憶することができるハードディスク又は他のタイプのコンピュータ可読媒体であり得る。
【0081】
記憶デバイスは、プロセッサを制御するためのソフトウェアモジュールを含むことができる。他のハードウェア又はソフトウェアモジュールが企図される。記憶デバイスは、システムバスに接続することができる。一態様では、特定の機能を実施するハードウェアモジュールは、開示される技術の様々な機能を実施するために、例えば、プロセッサ、バス、出力デバイスなどの必要なハードウェア構成要素に関連して、コンピュータ可読媒体に格納されたソフトウェア構成要素を含むことができる。
【0082】
本開示の範囲内の実施形態はまた、その上に記憶されたコンピュータ実行可能命令又はデータ構造を運ぶか、又は有するための有形及び/又は非一時的コンピュータ可読記憶媒体又はデバイスを含んでもよい。そのような有形のコンピュータ可読記憶デバイスは、上で記載されるような任意の特殊目的プロセッサの機能設計を含む、汎用又は特殊目的コンピュータによってアクセスすることができる任意の利用可能なデバイスであり得る。限定するものではなく例として、そのような有形のコンピュータ可読デバイスは、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、若しくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶デバイス、又はコンピュータ実行可能命令、データ構造、若しくはプロセッサチップ設計の形態で所望のプログラムコードを運ぶか、若しくは記憶するために使用され得る任意の他のデバイスを含むことができる。情報又は命令が、ネットワーク又は別の通信接続(ハードワイヤード、無線、又はそれらの組み合わせのいずれか)を介してコンピュータに提供されるとき、コンピュータは、接続をコンピュータ可読媒体として適切に見る。したがって、任意のそのような接続は、コンピュータ可読媒体と適切に称される。上記の組み合わせもまた、コンピュータ可読記憶デバイスの範囲内に含まれるべきである。
【0083】
コンピュータ実行可能命令は、例えば、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、又は特殊目的処理デバイスにある特定の機能又は機能の群を実施させる命令及びデータを含む。コンピュータ実行可能命令はまた、スタンドアロン環境又はネットワーク環境においてコンピュータによって実行されるプログラムモジュールを含む。一般に、プログラムモジュールは、タスクを実施するか、又は抽象データ型を実装する、ルーチン、プログラム、構成要素、データ構造、オブジェクト、及び特殊目的プロセッサなどの設計に固有の機能を含む。コンピュータ実行可能命令、関連するデータ構造、及びプログラムモジュールは、本明細書に開示される方法のステップを実行するためのプログラムコード手段の例を表す。そのような実行可能命令又は関連するデータ構造の特定のシーケンスは、そのようなステップで説明される機能を実装するための対応する動作の例を表す。
【0084】
本開示の他の実施形態は、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラム可能な家庭用電子機器、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータなどを含む、多くのタイプのコンピュータシステム構成を有するネットワークコンピューティング環境で実践されてもよい。実施形態はまた、通信ネットワークを通じて(ハードワイヤードリンク、無線リンク、又はそれらの組み合わせのいずれかによって)連結されているローカル及びリモート処理デバイスによってタスクが実施される分散コンピューティング環境で実践されてもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカル及びリモートメモリ記憶デバイスの両方に配置されてもよい。
【0085】
ある特定の態様では、本開示の合成鎖のいずれかを使用して、本開示の方法のステップのいずれかを実施するための命令をその上に記憶している1つ以上のコンピュータ可読媒体が提供される。いくつかの実施形態によれば、本開示のシステムのいずれかの1つ以上のコンピュータ可読媒体が提供される。例えば、その上に記憶された命令を含む1つ以上のコンピュータ可読媒体が提供され、これらの命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサに、1つ以上の位置インジケータリーダーを使用させ、合成鎖の核酸へのハイブリダイゼーション中又はその後に、本開示の合成鎖の位置インジケータを読み取ることによって核酸の配列を決定させる。
【0086】
キット
本開示の態様は、キットを更に含む。ある特定の実施形態では、キットは、例えば、本開示の方法のいずれかの実施において使用を見出される。いくつかの実施形態によれば、本開示のキットは、複数の本開示の第2の核酸のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、キットは、その上に配置された第2の核酸を有する表面を含む(例えば、チップなどの本明細書に記載される構成のいずれかで)。
【0087】
本開示のキットは、合成鎖を使用する核酸の配列決定において使用を見出される1つ以上の試薬を含んでもよい。例えば、本開示のキットは、配列決定される核酸を第2の核酸と接触させるための好適な条件を提供するのに有用な、pH、塩濃度、1つ以上の構成成分(例えば、キレート剤)などを有する溶液(例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液)を含んでもよい。
【0088】
本開示のキットは、本開示の方法のいずれかを実施するための説明書、例えば、電解された核酸を使用して第1の核酸を配列決定するための説明書を更に含んでもよい。説明書は、好適な記録媒体に記録されてもよい。例えば、説明書は、紙又はプラスチックなどの基板上に印刷されてもよい。したがって、説明書は、添付文書としてキットに、キット又はその構成要素の容器のラベリング(すなわち、パッケージング又はサブパッケージングに関連付けられた)などに存在してもよい。他の実施形態では、説明書は、好適なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、ポータブルフラッシュドライブ、DVD、CD-ROM、ディスケットなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。更に他の実施形態では、実際の説明書は、キットに存在しないが、例えば、インターネットを介して、リモートソースから説明書を得るための手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を閲覧することができ、かつ/又は説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るための手段が好適な基材上に記録される。
【0089】
実施形態
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示はまた、以下の実施形態によって定義される。
【0090】
1. 方法であって、
電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことと、
相対移動中に、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、第1の核酸に沿って変化するコンダクタンスを検出することと、を含む、方法。
【0091】
2. 方法であって、
電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことと、
相対移動中に、第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスを検出することであって、変化するコンダクタンスが、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、検出することと、を含む、方法。
【0092】
3. 相対移動を引き起こすことが、電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸を引っ張ることを含む、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0093】
4. 第1の核酸が、伸長構造に付着しており、第1の核酸を開口部を通して引っ張ることが、伸長構造を、第1の核酸が引っ張られるべき方向に引っ張ることを含む、実施形態3に記載の方法。
【0094】
5. 伸長構造が、ナノチューブ、ナノワイヤ、又はバイオポリマーを含む、実施形態4に記載の方法。
【0095】
6. バイオポリマーが、核酸である、実施形態5に記載の方法。
【0096】
7. 第1の核酸及び核酸が、互いに相補的な末端を含み、引っ張り中に互いにハイブリダイゼーションされる、実施形態6に記載の方法。
【0097】
8. 電解された第2の核酸が、チャネル内に配置され、相対移動を引き起こすことが、電解された第2の核酸によって少なくとも部分的に形成された開口部を通して、第1の核酸をチャネル内に転位させることを含む、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0098】
9. 電解された第2の核酸は、電解された第2の核酸がブリッジ構造を形成するように表面に付着した第1及び第2の不連続領域を含み、第1の核酸の相対移動が、ブリッジ構造の開口部を通してである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
10. 表面が、第1及び第2の不連続領域に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドで官能化されており、第1及び第2の不連続領域が、オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを介して表面に付着している、実施形態9に記載の方法。
【0100】
11. 電解された第2の核酸が、表面に付着した第1の末端を含み、ステムループ構造を形成し、第1の核酸の相対移動が、ステムループ構造のループ部分の開口部を通してである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
12. 電解された第2の核酸が、表面に付着した第1の末端と、電解された第2の核酸及び第3の核酸分子がループ構造を形成するように第3の核酸分子にハイブリダイゼーションされた第1及び第2の不連続領域とを含み、第1の核酸の相対移動が、ループ構造の開口部を通してである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
13. 電解された第2の核酸の第1の末端が、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介して、又は磁気引力を介して表面に付着している、実施形態11又は実施形態12に記載の方法。
【0103】
14. 相対移動を引き起こすことが、表面を第1の核酸に対して相対的に移動させることを含む、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
15. 第1の核酸が、相対移動中に固定化されている、実施形態14に記載の方法。
【0105】
16. 電解された第2の核酸が、複数の電解された核酸のうちの1つであり、方法が、複数の電解された核酸によって少なくとも部分的に形成された複数の開口部を通して、第1の核酸の相対移動を引き起こすことを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
17. 複数の開口部のうちの1つ以上が、独立して、アデニンと塩基対合する核酸塩基、チミン又はウラシルと塩基対合する核酸塩基、グアニンと塩基対合する核酸塩基、及びシトシンと塩基対合する核酸塩基から選択される単一のタイプの核酸塩基を含む、実施形態16に記載の方法。
【0107】
18. 複数の開口部のうちの1つ以上が、脱塩基ヌクレオチドを含む、実施形態16又は実施形態17に記載の方法。
【0108】
19. 変化するコンダクタンスが、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
20. 変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーを決定することを更に含む、実施形態19に記載の方法。
【0110】
21. 変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸のヌクレオチド配列を決定することを更に含む、実施形態19又は実施形態20に記載の方法。
【0111】
22. 第1の核酸が、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、又はRNAから選択される、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
23. システムであって、
1つ以上のプロセッサと、
1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスであって、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスをシステムに監視させる、その上に記憶された命令を含む、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体と、を備える、システム。
【0113】
24. 変化するコンダクタンスが、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーをシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、実施形態23に記載のシステム。
【0114】
25. 変化するコンダクタンスが、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸のヌクレオチド配列をシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、実施形態23又は実施形態24に記載のシステム。
【0115】
26. 1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
第1の核酸に沿って変化するコンダクタンス、又は第1の核酸と第1の核酸に近接する電極との間の変化するコンダクタンスであって、第1の核酸の核酸塩基と電解された第2の核酸の1つ以上の核酸塩基との間の連続的な相互作用を示す、変化するコンダクタンスをシステムに監視させる、その上に記憶された命令を含む、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【0116】
27. 変化するコンダクタンスが、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸の1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティーをシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、実施形態26に記載の1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【0117】
28. 変化するコンダクタンスが、第1の核酸における異なる核酸塩基についてのコンダクタンスフィンガープリントを含み、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体が、変化するコンダクタンスに基づいて、第1の核酸のヌクレオチド配列をシステムに決定させる、その上に記憶された命令を含む、実施形態26又は実施形態27に記載の1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【0118】
以下は、例として提供され、限定として提供されるものではない。
【0119】
実験
コンダクタンスフィンガープリントに関連する変化するコンダクタンスを監視するためのチップを、
図9A~9Bに示すように構築した。右電極及び左電極、並びに対応するゲート電極(すなわち、
図9Bに示される構造による)を、走査型ヘリウムイオン顕微鏡を使用して撮像した。得られた顕微鏡写真を
図10に提示する。
図10に示すように、左電極1001l及び右電極1001rは、絶縁層1003を介してゲート電極1002gから絶縁されている。
【0120】
図11A~11Cは、
図9A~9Bに示すように構築されたチップから取得された追加のヘリウムイオン顕微鏡写真を示す。
図11Aは、
図9Bで論じられるように配置された複数の左電極及び右電極、並びにそれらのそれぞれのゲート電極を示す。
図11B及び
図11Cは、左電極と右電極との間の例示的な距離を示す。
図11Bでは、距離は34nmである。
図11Cでは、距離は48nmである。
図12は、
図9A~9Bに示すように構築されたチップのプロトタイプを提示する。
【0121】
図13A~13Dは、原子間力顕微鏡(AFM)を介して得られたチップ電極の画像を提示する。
図13A及び
図13Cにおける画像は、AFMタッピングモードを介して生成され、一方で、
図13B及び
図13Dの画像は、導電性AFMを介して生成され、堆積電極が電流を伝導することができることを示す。
【0122】
図14A~14Eは、
図9A~9Bに示すように構築されたチップのトポグラフィー及び導電性の態様を示す。
図14Aは、電極の3DトポグラフィーAFM画像を示し、一方で、
図14Bは、その2D画像を提示する。
図14C~Eは、導電性AFMを使用する金電極の導電率の試験を示す。トポグラフィータッピングモード画像は電極を容易に示すが、これらの構造が表面の下にあるため、ゲートを見逃す。それにもかかわらず、導電性AFMは、ゲートを導電性(白色=電流=導電性)として分解することができる。
【0123】
図15A~15Bは、チオ結合を介して金基板上に固定化された一本鎖DNAを示すAFM画像を提示する。「虫様」構造はDNAである。これらの画像は、本開示の実施形態による方法の実践において使用を見出される電解されたブリッジ構造の形成を可能にする様式で、DNAが金電極上に固定化される場合があることを示す。
【0124】
したがって、上記の説明は単に本開示の原理を例示するに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載又は図示していないが、本発明の原理を具現化し、その主旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案できることが理解されよう。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件的文言は、主として本発明の原理及び発明者らにより当該技術の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、そのような具体的に列挙された例及び条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体的な例を列挙する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図している。加えて、そのような等価物は、現在既知の等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく、同じ機能を実施する開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示及び記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。
【国際調査報告】