(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】シリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20241112BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241112BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20241112BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20241112BHJP
H01B 9/00 20060101ALI20241112BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20241112BHJP
C08K 5/25 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/36
C08L83/06
C08L83/05
H01B9/00 Z
H01B7/18 H
C08K5/25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527796
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2021131641
(87)【国際公開番号】W WO2023087233
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ペン
(72)【発明者】
【氏名】マー、ジンシア
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユーシェン
【テーマコード(参考)】
4J002
5G313
【Fターム(参考)】
4J002CP043
4J002CP062
4J002CP141
4J002DA118
4J002DJ016
4J002EC049
4J002EQ027
4J002EU167
4J002EV097
4J002FB126
4J002FD016
4J002FD067
4J002FD143
4J002FD158
4J002FD209
4J002GN00
4J002GQ01
5G313AB10
5G313AC07
5G313AD03
5G313AE06
(57)【要約】
本発明は、ヒドロシリル化(付加)硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物、当該組成物の硬化時に作製されるシリコーンゴムエラストマー、並びにそれらの用途及び使用に関する。組成物中で利用される熱安定剤添加剤は、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオニル]ヒドラジン、金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物であって、次の成分、すなわち、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R
10)
2SiO)-
式中、各R
10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を含む、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
硬化阻害剤も含む、請求項1に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
成分(c)の前記直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤が、前記組成物の0.1~10重量%を形成する、請求項1~2のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
成分(e)の前記熱安定剤添加剤が、前記組成物の0.001~5.0重量%を構成する、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
前記組成物が、圧縮永久歪添加剤、成分(c)以外の追加の疎水性処理剤、顔料及び/又は着色剤、可使時間延長剤、難燃剤、離型剤、UV光安定剤、殺菌剤、並びにこれらの混合物から選択される1種以上の任意選択の添加剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
成分(a)の前記オルガノポリシロキサンポリマーが、ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも125mm/100のウィリアムス可塑度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物から硬化されたシリコーン系生成物。
【請求項8】
ISO6722及びLV216規格についてクラスEに合格する、請求項7に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物から硬化されたシリコーン系生成物。
【請求項9】
ヒドロシリル化硬化された熱安定化シリコーンゴムの調製のための本明細書に記載されるプロセスであって、
(i)シリコーンゴムベース組成物を調製する工程であって、前記組成物が、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R
10)
2SiO)-
式中、各R
10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、を含む、工程と、
(ii)工程(i)の前記シリコーンゴムベースに、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤と、同時に又は続いて、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を混合する工程と、
(iii)前記組成物を硬化させる工程と、を含む、プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスによって得られるか又は得ることができるシリコーン系生成物。
【請求項11】
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される添加剤e)の、組成物中の熱安定剤又は前記熱安定剤としての使用であって、前記組成物は、それ以外に次の成分、すなわち、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R
10)
2SiO)-
式中、各R
10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物
と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を含む、使用。
【請求項12】
電力ケーブルであって、
○導電性コアと、
○前記コアの周りの1つ以上の絶縁層と、
○請求項1~6のいずれか一項に記載の上記組成物の硬化生成物である前記熱安定化シリコーンゴムから作製された外側シースと、を含む、電力ケーブル。
【請求項13】
請求項7に記載の硬化生成物である熱安定化シリコーンゴムの、又は電力ケーブル用の外側シースとしての使用。
【請求項14】
電力ケーブルを製造する方法であって、前記ケーブルの周りに外側シースを適用し、硬化させる工程を含み、前記外側シースが、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の硬化生成物である、方法。
【請求項15】
自動車及びエレクトロニクス用途の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の使用。
【請求項16】
前記自動車及びエレクトロニクス用途が、電力ケーブル用の外側シース、導体絶縁体、電気自動車用のケーブル及び外側シース、自動車ワイヤケーブル、床暖房システム用の工業用ワイヤケーブル、列車及び高速列車ケーブル、高温耐性用途シリコーンゴム材料、自動車ターボチャージャーホース及び高温工業装置用ジャケットとしてから選択され得る、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒドロシリル化(付加)硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物、当該組成物の硬化時に作製されるシリコーンゴムエラストマー、並びにそれらの用途及び使用に関する。
【0002】
不飽和(アルケニル及び/又はアルキニル)基を有するオルガノポリシロキサンポリマーと、ヒドロシリル化触媒の存在下でヒドロシリル化反応によって硬化可能なケイ素結合水素原子を含有する化合物とを含有するヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、当該技術分野において既知である。
【0003】
このような組成物は、通常、早期硬化を防止するために2つ以上の部分で使用前に貯蔵されるが、シリコーンポリマーが高粘度シリコーンゴムである場合に使用される傾向があるラジカル(すなわち、過酸化物)反応硬化性シリコーンゴム組成物に対して以下の利点を有する。
●より速く、より低い温度で硬化できる
●硬化プロセスが実質的に無臭である
●硬化プロセスが通常、硬化後処理を必要としない
●得られるエラストマーが通常、より高い引裂強度を有する
【0004】
当該ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、単独で又は組み合わせて使用される1種以上の無機熱安定剤、例えば水和酸化セリウム、水和酸化アルミニウム、水酸化セリウム、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト及び酸化亜鉛の導入によって改善された熱安定性を有し得ることが知られている。
【0005】
上記組成物から硬化されたシリコーンエラストマー製品は、それらの優れた物理的及び熱安定性特性のために、様々な分野で使用される。例えば、このような組成物から製造されるシリコーンエラストマー製品は、有機系ゴムと比較して優れた熱安定性のために、様々な高温用途において使用される。用途としては、例えば、トランジスタ、集積回路及び回路基板などの固体電子デバイスの被覆/封入に使用される傾向がある電子機器が挙げられ、自動車用途及び電源用途の両方において、例えば電力ケーブル絶縁のために使用されることが増えている。
【0006】
したがって、ますますヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、電気自動車(EV)及び/又はハイブリッド電気自動車(HEV)における電力ケーブル絶縁目的のために使用されている。上記のヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物は、大径の高電圧電力ケーブル上に押出して、ケーブル上に連続的な外側シースを提供することができる。
【0007】
そのような高電圧電力ケーブルは、充電ポートとバッテリとを接続し、インバータを介してバッテリとエンジンとを配線接続するために、EV及びHEVにおいて使用され、低電圧電力は、バッテリモジュール/パックからインバータに転送され、ここで電圧は、かなり大きい電圧、例えば、500V以上に増幅され、次いで、駆動モータに転送されて、持続時間にわたって電力を提供し、再充電間の許容可能な長い移動を可能にする。更に、HEV及びEVの電力ケーブルは、エンジン内の他の熱源、例えば排気の熱に曝される可能性があるため、長期間にわたって十分な熱安定性を維持する能力は、そのようなケーブルの重要な特徴である。
【0008】
電力ケーブルは、HEV及びEVの製造業者からの増大する要求を考慮して、電力ケーブルが車両内に置かれる過酷な環境のために、国際規格に従って、非常に高い性能要件を満たすことが要求される。例えば、EV及びHEVのバッテリモジュール及び/又はバッテリパックの動作電圧プラットフォームの増加は、高電圧ケーブルが、優れた熱老化性能を有し、ISO6722及びLV216規格に関するクラスE要件、すなわち、175又は180℃で3,000時間の長期熱老化及び200℃で240時間の短期熱老化に耐える能力に合格することを必要とし、この老化後、結果として生じる老化ケーブルは、ここでも巻線試験に合格する必要がある。
【0009】
本明細書には、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物が提供され、これは、次の成分、すなわち、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R10)2SiO)-
式中、各R10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を含む。
【0010】
また、ヒドロシリル化硬化された熱安定化シリコーンゴムの調製のためのプロセスも本明細書に記載され、これは、
(i)シリコーンゴムベース組成物を調製する工程であって、組成物が、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R10)2SiO)-
式中、各R10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、を含む、工程と、
(ii)工程(i)のシリコーンゴムベースに、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤と、同時に又は続いて、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を混合する工程と、
(iii)組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0011】
また、本明細書では、e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される添加剤の、組成物中の熱安定剤としての使用も提供され、組成物はそれ以外に、次の成分、すなわち、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R10)2SiO)-
式中、各R10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物
と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を含む。
【0012】
本明細書では、電力ケーブルも提供され、これは、
○導電性コアと、
○当該コアの周りの1つ以上の絶縁層と、
○上記組成物の硬化生成物である熱安定化シリコーンゴムから作製された外側シースと、を含む。
【0013】
また、電力ケーブル用の外側シースとしての、上記組成物の硬化生成物である熱安定化シリコーンゴムの使用も本明細書に提供される。
【0014】
また、ケーブルの周りに外側シースを適用して硬化させる工程を含む電力ケーブルの製造方法も本明細書に提供され、当該外側シースは、本明細書で前述した上記組成物の硬化生成物である。
【0015】
各場合において、本明細書に示される各組成物の総重量(wt.)%は、100重量%である。
【0016】
驚くべきことに、上記組成物における添加剤(e)の使用は、短期間(200℃で240時間)及び長期間(180℃で3000時間)の、シリコーンゴム(25℃で1,000,000mPa・s超の粘度を有する)を使用する、すなわち、上述のASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度を有する、ヒドロシリル化硬化性組成物における熱安定性を改善したことが確認された。より重要なことに、そのような組成物が国際規格の熱安定性試験ISO6722及びLV216規格(175又は180℃で3,000時間の長期熱老化、及び200℃で240時間の短期熱老化について、クラスEに合格することを可能にした。
【0017】
組成物の成分は次の通りである。
成分(a)
成分(a)は、ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーである。不飽和基は、アルケニル及び/又はアルキニル基から選択される。
【0018】
成分(a)の各オルガノポリシロキサンポリマーは、式(I)の複数のシロキシ単位を含む。
R’aSiO(4-a)/2(I)
【0019】
下付き文字「a」は0、1、2、又は3である。
【0020】
シロキシ単位は、R’が上記の通りであるか、あるいはアルキル基、典型的にはメチル基である場合、省略(略記)命名法、すなわち、「M」、「D」、「T」、及び「Q」によって記載され得る。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、R’3SiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、R’2SiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、R’1SiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。成分(a)のオルガノポリシロキサンポリマーは、実質的に直鎖であるが、分子内に(上記のような)T単位の存在に起因してある割合の分岐を含有し得、したがって構造(I)のaの平均値は、約2である。
【0021】
成分(a)の不飽和基は、オルガノポリシロキサンポリマーの末端若しくはペンダントのいずれかに、又は両方の位置に位置し得る。成分(a)の不飽和基は、上記のようにアルケニル基又はアルキニル基であり得る。各アルケニル基は、存在する場合、例えば、2~30個、あるいは2~24個、あるいは2~20個、あるいは2~12個、あるいは2~10個、あるいは2~6個の炭素原子を含み得る。存在する場合、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、メタリル基、イソプロペニル基、プロペニル基、及びヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基によって例示され得るが、これらに限定されない。各アルキニル基は、存在する場合、2~30個、あるいは2~24個、あるいは2~20個、あるいは2~12個、あるいは2~10個、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。アルキニル基の例は、エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基によって例示され得るが、これらに限定されない。成分(a)の不飽和基の好ましい例としては、ビニル、プロペニツ、イソプロペニル、ブテニル、アリル、及び5-ヘキセニルが挙げられる。
【0022】
式(I)中、上記の不飽和基以外の各R’は、独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、置換脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族基、又は置換芳香族基から選択される。各脂肪族ヒドロカルビル基は、基1個当たり1~20個の炭素、代替的に基1個当たり1~15個の炭素、代替的に基1個当たり1~12個の炭素、代替的に基1個当たり1~10個の炭素、代替的に基1個当たり1~6個の炭素を有するアルキル基、又はシクロヘキシル等のシクロアルキル基によって例示され得るが、これらに限定されない。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基、及びオクタデシル基、あるいはメチル基及びエチル基を挙げることができる。置換脂肪族ヒドロカルビル基は、好ましくは、非ハロゲン化置換アルキル基である。
【0023】
脂肪族非ハロゲン化オルガニル基は、好適な窒素含有基、例えば、アミド基又はイミド基等の置換基を有する上記のアルキル基;ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基によって例示されるが、これらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、ホウ素含有基が挙げられ得る。芳香族基又は置換芳香族基の例は、フェニル基及び上記の置換基を有する置換フェニル基である。
【0024】
成分(a)は、例えば、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はそれらのコポリマー(アルキルに言及する場合、任意の好適なアルキル基、あるいは2個以上の炭素を有するアルキル基を意味する)から選択され得るが、ただし、各ポリマーは、少なくとも2つの不飽和基、典型的には上記のアルケニル基を含有し、少なくとも2,500の重合度を有する。それらは、例えば、トリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端、アルキニルジアルキル末端であってもよく、又は各ポリマーがASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度及び少なくとも2つの不飽和基を有するならば、任意の他の適切な末端基の組み合わせで末端化されていてもよい。
【0025】
したがって、成分(a)は、例えば、以下のものであってもよい:
ジアルキルアルケニル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、例えば、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、ジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマー、ジアルキルビニル末端メチルフェニルポリシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、ジアルキルアルケニル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルメチルフェニルシロキサン、トリメチル末端メチルビニルジフェニルシロキサン、又はトリメチル末端メチルビニルメチルフェニルジメチルシロキサン。
【0026】
各場合において、成分(a)は、ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度を有する。この大きさのオルガノポリシロキサンポリマーは、それらの非常に高い粘度(25℃で少なくとも1,000,000mPa.s、多くの場合25℃で数百万mPa.s)及び高分子量のために、オルガノポリシロキサンポリマーゴム、シロキサンゴム又はシリコーンゴム(以下、シリコーンゴムと呼ぶ)と業界で一般に呼ばれている。このような高粘度流体の粘度の測定は困難であるため、シリコーンゴムは、粘度に対立するものとして、ウィリアムス可塑度値を用いて定義される傾向がある。成分(a)はシリコーンゴムであり、ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定される少なくとも125mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定される少なくとも140mm/100のウィリアムス可塑度を有する。典型的には、シリコーンゴムは、ASTM D-926-08に従って測定される約100mm/100~300mm/100のウィリアムス可塑度を有する。
【0027】
そのようなポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、典型的には、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる。本開示において、本明細書における成分(a)として使用されるシリコーンゴムの数平均分子量及び重量平均分子量の値は、真空脱気装置を備えたWaters 2695 Separations Module及びWaters 2414屈折率検出器(Waters Corporation,MA,USA)を使用して求めた。溶離液として1.0mL/分で流れる認定グレードのトルエンを使用して分析を行った。Waters Empower GPCソフトウェアを使用して、データの収集及び分析を行った。
【0028】
ポリマーの重合度は、およそ、ポリマーの数平均分子量を74(上記の1つの成分(I)の分子量)で除したものであった。
【0029】
典型的には、ポリマーのアルケニル及び/又はアルキニル含有量、例えばビニル含有量は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含有する各オルガノポリシロキサンポリマーについて成分(a)の0.01~3重量%である、あるいは成分(a)の0.01~2.5重量%、あるいは成分(a)の0.01~2.0重量%、あるいは0.01~1.5重量%の1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンポリマー又は各オルガノポリシロキサンポリマーであり、当該不飽和基は、成分(a)の1分子当たりアルケニル又はアルキニル基から選択される。成分(a)のアルケニル/アルキニル含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。
【0030】
成分(a)は、組成物の40重量%から約90重量%、あるいは組成物の45~85重量%、あるいは組成物の50~80重量%の量で組成物中に存在し得る。典型的には、成分(a)は、100重量%と組成物の他の成分/構成成分の累積重量%との差である量で存在する。
【0031】
成分(b)
成分(b)は、少なくとも1つの補強シリカ充填剤である。好ましくは、当該補強シリカ充填剤は微細に分割された形態である。補強シリカ充填剤(b)は、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び/又は沈降性シリカによって例示され得る。
【0032】
沈降性シリカ、ヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカが、典型的には少なくとも50m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)であり、代替的に、50~450m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する、代替的に50~300m2/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する比較的高い表面積から特に好ましく、典型的に使用される。これらの種類のシリカは全て市販されている。
【0033】
成分(b)の補強シリカ充填剤は本来親水性であり、それらを疎水性にするために1つ以上の処理剤(c)で処理される。これらの成分(b)の表面改質された補強充填剤は、表面処理により充填剤がオルガノポリシロキサンポリマー(a)によって容易に湿潤することから、凝集せず、以下に記載のオルガノポリシロキサンポリマー(a)に均質に組み込むことができる。
【0034】
成分(b)は、組成物の最大50重量%、あるいは組成物の1.0~50重量%、あるいは組成物の5.0~45重量%、あるいは組成物の10.0~40重量%の量で存在する。
【0035】
成分(c)
補強シリカ充填剤(b)は、成分(c)で処理することによって疎水処理される。本明細書の組成物の成分(c)は、ジアルキルヒドロキシ又はジアルキルアルコキシ末端である短鎖直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンを含み、この短鎖直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンは、次の構造の複数の単位を含む。
-((R10)2SiO)-
式中、各R10は、同一であっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であり、あるいはメチル、エチル若しくはプロピルであるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基、あるいはフェニルであり、数平均重合度は、2~50、あるいは2~25の範囲である。一実施形態において、各R10は、メチル、エチル、プロピル及びフェニルから選択される。各末端アルコキシ基は、存在する場合、典型的には1~6個の炭素を有するが、好ましくはエトキシ又はメトキシである。したがって、短鎖直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンは、数平均重合度が2~25、あるいは2~20である、ジメチルヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルメトキシ末端ポリジメチルシロキサン若しくはジメチルエトキシ末端ポリジメチルシロキサン、数平均重合度が2~25、あるいは5~20である、ジメチルヒドロキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルメトキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン若しくはジメチルエトキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン、及び/又は、数平均重合度が2~25、あるいは2~20である、ジメチルヒドロキシ末端ポリジメチルメチルフェニルシロキサンコポリマー、ジメチルメトキシ末端ポリジメチルメチルフェニルシロキサンコポリマー若しくはジメチルエトキシ末端ポリジメチルメチルフェニルシロキサンコポリマーから選択されてもよく、例えば、
HO-((R10)2SiO)x-Hであり、式中、xは、数平均重合度である。
【0036】
分子量値は、同様にゲル透過クロマトグラフィーによって求めることができるが、例えば、約2~20のDPを有する範囲の下端のポリマーは、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)によって分析され得る。
【0037】
成分(b)の未処理の補強充填剤の表面処理は、組成物中に導入する前に、又はその場で(すなわち、本明細書の組成物の他の原料の少なくとも一部の存在下で、充填剤が完全に処理されるまで、これらの原料を一緒に室温以上でブレンドすることによって)行われ得る。典型的には、未処理の補強充填剤(b)を、オルガノポリシロキサンポリマー(a)の存在下、その場で、成分(c)を含む又は成分(c)からなる処理剤で処理し、それにより、後で他の成分と混合することができるシリコーンゴムのベース材料を調製する。成分(c)は、組成物の0.1~20重量%、あるいは組成物の0.5~15重量%、あるいは組成物の1~10重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0038】
成分(d)
成分(d)は、架橋剤として機能し、1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物の形態で提供される。成分(d)は、通常、水素原子が成分(a)の不飽和アルケニル及び/又はアルキニル基と反応してそれらと網目構造を形成し得、それによって組成物を硬化させることができるように、3つ以上のケイ素結合水素原子を含有する。あるいは、ポリマー(a)が1分子当たり2つを超える不飽和基を有する場合、成分(d)の一部又は全てが、1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し得る。
【0039】
1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つの末端-Si-H基を有する有機ケイ素化合物(d)の分子構成は、特に制限されず、直鎖状、分岐状(T基の存在を通していくつかの分岐を有する直鎖)、環状、又はシリコーン樹脂ベースであり得る。
【0040】
成分(d)の分子量は特に制限されないが、ポリマー(a)との良好な混和性を得るために、粘度は、典型的には、せん断速度10s-1でプレート-プレートモデルにおいてTA instrumentsのAR2000 Rheometerを使用して測定するとき、25℃で5~50,000mPa.sである。
【0041】
成分(d)において使用されるケイ素結合有機基は、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基等のアリール基;3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基によって例示され得、好ましくは1~6個の炭素を有するアルキル基、特にメチル、エチル、若しくはプロピル基、又はフェニル基である。好ましくは、成分(b)において使用されるケイ素結合有機基は、アルキル基、あるいはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。
【0042】
1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物(d)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(a)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(b)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(c)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー、
(d)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンの環状コポリマー、
(e)(CH3)2HSiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(f)(CH3)2HSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(g)1分子当たり3~10個のケイ素原子を有するメチルハイドロジェンシロキサン環状ホモポリマー、
代替的に、架橋剤である成分(d)は、充填剤、例えば、上記のうちの1つを用いて処理されたシリカ、及びこれらの混合物であり得る。
【0043】
一実施形態では、成分(d)は、両分子末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン;分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマーから選択される。
【0044】
架橋剤(d)は、一般に、成分(d)中のケイ素結合水素原子の総数と、ポリマー(a)又は異なる場合組成物中のアルケニル基及び/又はアルキニル基の総数とのモル比が0.5:1~20:1となるように、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物中に存在する。この比が0.5:1未満である場合、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1を超える場合、加熱された場合に、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。好ましくは、成分(d)のケイ素結合水素原子と、成分(a)又は組成物中のアルケニル/アルキニル基、あるいはアルケニル基とのモル比が、0.7:1.0~5.0:1.0、好ましくは0.9:1.0~2.5:1.0、最も好ましくは0.9:1.0~2.0:1.0の範囲となるような量である。
【0045】
成分(d)のケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して求められる。本発明において、ケイ素結合水素とアルケニル(ビニル)及び/又はアルキニルとの比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。一般に、これは、組成物中のアルケニル基の総重量%、例えば、ビニル[V]と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。
【0046】
典型的には、成分(a)中の不飽和基の数並びに成分(d)中のSi-H基の数に応じて、成分(d)は、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.1~10重量%、あるいはヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.1~7.5重量%、あるいはヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.5~7.5重量%、更に代替的には0.5%~5重量%の量で存在する。
【0047】
成分(e)
成分(e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオニル]ヒドラジン、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド、ペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネート、金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、及びそれらの混合物のうち1つ以上から選択される熱安定剤添加剤。成分(e)は、組成物の0.001~5重量%、あるいは組成物の0.01~5重量%、あるいは組成物の0.01~3重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0048】
成分(f)
ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の成分(f)は、白金族金属若しくはその化合物を含むか又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒である。それらは、通常、白金族の金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)、又はこのような金属のうちの1つ以上の化合物の触媒から選択される。代替的に、白金及びロジウム化合物は、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の高い活性レベルに起因して好ましく、白金化合物が、最も好ましい。ヒドロシリル化(又は付加)反応において、本明細書における成分(f)等のヒドロシリル化触媒は、不飽和基、通常はアルケニル基、例えばビニルとSi-H基との間の反応を触媒する。
【0049】
成分(f)のヒドロシリル化触媒は、白金族金属;担体、例えば活性炭、酸化アルミニウム若しくは二酸化ケイ素等の金属酸化物、シリカゲル若しくは粉末状木炭上に堆積された白金族金属;又は白金族金属の化合物若しくは錯体であり得る。好ましくは、白金族金属は、白金である。
【0050】
好ましい成分(f)のヒドロシリル化触媒の例は、白金系触媒、例えば白金黒、酸化白金(アダムス触媒)、様々な固体担体上の白金、塩化白金酸、例えばヘキサクロロ白金酸(Pt酸化状態IV)(シュパイヤー触媒)、アルコール、例えばイソオクタノール又はアミルアルコールの溶液中の塩化白金酸(ラモロー触媒)、並びに塩化白金酸とエチレン性不飽和化合物、例えばオレフィン及びエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体、例えばテトラ-ビニル-テトラメチルシクロテトラシロキサン-白金錯体(アシュビー触媒)である。使用可能な可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl2.(オレフィン)2及びH(PtCl3.オレフィン)の白金-オレフィン錯体を挙げることができ、この文脈では、エチレン、プロピレン、ブテンの異性体及びオクテンの異性体など、2~8個の炭素原子を有するアルケン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロヘプテンなど、5~7個の炭素原子を有するシクロアルカンの使用が好ましい。他の可溶性白金触媒は、例えば、式(PtCl2C3H6)2の白金-シクロプロパン錯体であり、ヘキサクロロ白金酸の、アルコール、エーテル、及びアルデヒド、若しくはこれらの混合物との反応生成物、又はヘキサクロロ白金酸及び/若しくはその変換生成物と、メチルビニルシクロテトラシロキサンなどのビニル含有シロキサンとのエタノール性溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下での反応生成物である。リン、硫黄、及びアミン配位子を有する白金触媒、例えば、(Ph3P)2PtCl2、及びsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンなど、ビニルシロキサンとの白金の錯体も、使用することができる。
【0051】
したがって、好適な成分(f)の白金系触媒の具体例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、塩化白金酸と、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体;
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸、
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒、
(iv)(COD)Pt(SiMeCl2)2(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体、及び/又は
(v)典型的にはビニルシロキサンポリマー中に、典型的には約1重量%の白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、Karstedtの触媒、が挙げられる。トルエンなどの有機溶媒のような溶媒は、歴史的に代替物として使用されてきたが、ビニルシロキサンポリマーの使用がはるかに好ましい選択である。これらは、米国特許第3,715,334号及び米国特許第3,814,730号に記載されている。好ましい一実施形態では、成分(f)は、白金の配位化合物から選択され得る。一実施形態では、ヘキサクロロ白金酸及びビニル含有シロキサンとのその変換生成物、Karstedtの触媒、並びにSpeier触媒が好ましい。
【0052】
ヒドロシリル化触媒の触媒量は、概ね、組成物の重量に基づいて百万部当たりの白金族金属の重量部(ppm)で、0.01ppm~10,000ppm、あるいは0.01~5000ppm、あるいは0.01~3,000ppm、あるいは0.01~1,000ppmである。特定の実施形態では、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~750ppm、あるいは0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppmの範囲に及んでもよい。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2つ以上の異なる種の混合物として添加され得る。典型的には、例えば、ポリマー又は溶媒中において触媒が提供される形態/濃度に応じて、存在する成分(f)の量は、組成物の0.001~3.0重量%、あるいは組成物の0.001~2.5重量%、あるいはヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.01~2.0重量%の範囲内である。
【0053】
追加の任意の成分
追加の任意の成分は、その意図される最終用途に応じて、前述のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物中に存在し得る。そのような任意の成分の例としては、硬化阻害剤、圧縮永久歪添加剤、成分(c)以外の追加の疎水性処理剤、顔料及び/又は着色剤、並びに可使時間延長剤、難燃剤、離型剤、UV光安定剤、殺菌剤、及びそれらの混合物等の他の追加の添加剤が挙げられる。
【0054】
任意のヒドロシリル化反応阻害剤
本明細書に記載されるヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物はまた、1つ以上の任意のヒドロシリル化反応阻害剤を含んでいてもよい。ヒドロシリル化反応阻害剤は、必要な場合、特に保管中にヒドロシリル化反応阻害剤硬化プロセスを防止又は遅延するために使用される。白金系触媒の任意のヒドロシリル化反応阻害剤は、当該技術分野において周知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、並びにジアジリジンが挙げられる。米国特許第3989667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、その中で環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0055】
既知のヒドロシリル化反応抑制剤の1つの種類は、米国特許第3445420号に開示されているアセチレン化合物である。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレン系アルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する好ましい種類の抑制剤を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度で加熱する必要がある。
【0056】
アセチレンアルコール及びその誘導体の実施例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(1-ethynyl-1-cyclohexanol、ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、1-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。アセチレン系アルコールの誘導体としては、少なくとも1個のケイ素原子を有するこれらの化合物が挙げられてもよい。
【0057】
場合によっては、存在する場合、触媒(f)の金属1モル当たりヒドロシリル化反応阻害剤1モル程度であり得る低いヒドロシリル化反応阻害剤濃度でも、依然として満足な保管安定性及び硬化速度を付与する。他の場合には、触媒の金属1モル当たり阻害剤最大500モルのヒドロシリル化反応阻害剤濃度が必要になる。所与の組成物における所与のヒドロシリル化反応阻害剤の最適濃度は、日常的な実験によって容易に決定される。選択されたヒドロシリル化反応阻害剤が商業的に提供される/利用可能である濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、阻害剤は、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。
【0058】
一実施形態では、阻害剤は、存在する場合、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)及び/又は2-メチル-3-ブチン-2-オールから選択され、組成物の0超~0.1重量%の量で存在する。
【0059】
任意の追加の疎水化処理剤
補強シリカ充填剤は、本明細書では、前述のように成分(c)で処理される。任意選択で、追加の疎水化剤、例えば、オルガノシラン、又はオルガノシラザン、例えば、ヘキサアルキルジシラザン及び短鎖メチルビニルシロキサンジオールを利用することができる。具体例としては、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDZ)、ジビニルテトラメチルジシラザン、及びテトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザンなどの、ヘキサオルガノジシラザン;ヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシランを含むシランが挙げられる。一実施形態では、処理剤は、シラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサンから選択され得る。ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)などのヘキサオルガノジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン;並びにヒドロキシルジメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、並びにメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及び/又はビニルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されないシランから選択され得る。少量の水が、加工助剤としてシリカ処理剤と一緒に添加され得る。
【0060】
任意の顔料/着色剤
本明細書に記載されるヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物は、所望される場合、添加され得る1つ以上の顔料及び/又は着色剤を更に含み得る。顔料及び/又は着色剤は、有色、白色、黒色、金属効果、及び発光性、例えば蛍光性及びリン光性であってもよい。
【0061】
好適な白色顔料及び/又は着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、リトポン、酸化ジルコニウム、及び酸化アンチモンが挙げられる。
【0062】
好適な非白色無機顔料及び/又は着色剤としては、針鉄鉱、鱗鉄鉱、赤鉄鉱、マグヘマイト、及びマグネタイト黒酸化鉄、黄酸化鉄、褐色酸化鉄、及び赤酸化鉄などの酸化鉄顔料;青鉄顔料;酸化クロム顔料;カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウム辰砂などのカドミウム顔料;バナジン酸ビスマス及びバナジン酸モリブデン酸ビスマスなどのビスマス顔料;チタン酸コバルトグリーンなどの混合金属酸化物顔料;クロムイエロー、モリブデン酸レッド、及びモリブデン酸オレンジなどのクロム酸塩顔料及びモリブデン酸顔料;ウルトラマリン顔料;酸化コバルト顔料;チタン酸ニッケルアンチモン;鉛クロム;カーボンブラック;ランプブラック、及び金属効果顔料、例えばアルミニウム、銅、酸化銅、青銅、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、及び黄銅が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
好適な有機非白色顔料及び/又は着色剤としては、フタロシアニン顔料、例えばフタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン;モノアリーリドイエロー、ジアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、複素環式イエロー、DANオレンジ、キナクリドン顔料、例えばキナクリドンマゼンタ及びキナクリドンバイオレット;金属化アゾレッド及び非金属化アゾレッド及びその他のアゾ顔料を含む有機レッド、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、イソインドリノン、及びイソインドリン顔料、多環式顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインディゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンサントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、及びジケトピロロピロール顔料が挙げられる。
【0064】
顔料及び/又は着色剤は、存在する場合、組成物の2重量%から、あるいは3重量%から、あるいは5重量%から組成物の15重量%まで、あるいは組成物の10重量%までの範囲で存在する。
【0065】
本明細書における別の任意の添加剤としては、トリアゾール等の可使時間延長剤が挙げられ、使用してもよいが、本発明の範囲内で必須であるとはみなされない。したがって、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物は、可使時間延長剤を含んでいなくてもよい。
【0066】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0067】
したがって、一代替形態において、本開示は、したがって、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物を提供し、これは、
a)最大ウィリアムス可塑度がASTM D-926-08に従って測定される約300mm/100である、ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定される少なくとも125mm/100、あるいはASTM D-926-08に従って測定される少なくとも140mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基は、組成物の40重量%~約90重量%、あるいは組成物の45~85重量%、あるいは組成物の50~80重量%の量で組成物中に存在するアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤であって、あるいは、少なくとも50m2/gのBET表面積(ISO9277:2010)を有するヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び/又は沈降性シリカ、あるいは、50~450m2/gの表面積(ISO9277:2010)を有する、あるいは50~300m2/gの表面積(ISO9277:2010によるBET法)を有し、典型的に使用され、組成物の最大50重量%、あるいは組成物の1.0~50重量%、あるいは組成物の5.0~45重量%、あるいは組成物の10.0~40重量%の量で存在する、充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R10)2SiO)-
式中、各R10は、同一であっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であり、あるいはメチル、エチル若しくはプロピルであるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基、あるいはフェニルであり、数平均重合度は、1~50、あるいは1~25の範囲であり、及び又は各末端基は、少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含み、組成物の0.1~20重量%、あるいは組成物の0.5~15重量%、あるいは組成物の1~10重量%の量である、処理剤と、
d)ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.1~10重量%、あるいはヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.1~7.5重量%、あるいはヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.5~7.5重量%、更に代替的には0.5%~5重量%の量で存在する成分(b)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤であって、組成物の0.001~5重量%、あるいは組成物の0.01~5重量%、あるいは組成物の0.01~3重量%の量の熱安定剤添加剤と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒であって、触媒が提供される形態/濃度に応じて、組成物の0.001~3.0重量%、あるいは組成物の0.001~2.5重量%、あるいはヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の0.01~2.0重量%の範囲内である量の、ヒドロシリル化触媒と、を含む。
【0068】
上記組成物中の成分の任意の組み合わせの総重量%は100重量%である。
【0069】
組成物はまた、当該組成物の総重量%が100重量%である限り、再度指定された量の上記の任意の添加剤のうちの1つ以上を含有していてもよい。
【0070】
上記成分(a)、(d)、及び(f)の混合物は、周囲温度で硬化を開始し得る。したがって、前述のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物は、組成物が即時使用のために調製されていない場合、使用直前に一緒に混合される2つの部分で保管されてもよい。そのような場合、2つの部分は、一般に、(A)部及び(B)部と称され、早期硬化を回避するために、成分(d)架橋剤及び(f)触媒を離して維持するように設計されている。
【0071】
典型的には、そのような場合、A部組成物は、成分(a)、(b)、(c)、及び(f)を含み、B部は、成分(a)、(d)、(b)、及び(c)、並びに存在する場合は阻害剤を含む。
【0072】
組成物中に存在する場合、他の任意の添加剤は、任意の他の成分の特性に悪影響を及ぼさない限り(例えば、触媒不活性化)、A部又はB部のいずれに存在していてもよい。ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物のA部及びB部は、全組成物のシリコーンエラストマー材料への硬化を開始させるために、使用直前に共に混合される。組成物は、任意の好適な重量比で混合されるように設計することができ、例えば、パートA:パートBは、任意の好適な重量比で一緒に混合されてもよい。典型的には、A部及びB部組成物は、2本ロールミル又は混練ミキサーを使用して一緒に混合される。
【0073】
しかし、成分(a)がシリコーンゴムであるとすると、組成物が直ちに使用される場合、一般に組成物は、全ての成分を周囲温度で一緒に合わせて一部型組成物にすることによって調製されてもよい。典型的には、補強シリカ充填剤を成分(c)及び追加的に存在する場合、任意の他の追加の処理剤によってその場で処理することを可能にするために最初にベースを調製し、次いで、残りの成分を任意の好適な順序で混合物に導入してよい。
【0074】
この目的のために、先行技術に記載されている任意の混合技術及び装置を用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終硬化性コーティング組成物の粘度によって決定される。好適なミキサーとしては、パドルタイプのミキサー、例えば遊星ミキサー、及びニーダータイプのミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、成分(a)がゴムである場合、好ましくは、既に指定したように、混練ミキサーを使用して混合が行われる。混合中に成分を冷却して、組成物の早期硬化を避けることが望ましい場合もある。
【0075】
また、ヒドロシリル化硬化された熱安定化シリコーンゴムの調製のためのプロセスも本明細書に記載され、これは、
(i)上記の成分(a)、(b)及び(c)を含むシリコーンゴムベース組成物を調製する工程と、
(ii)工程(i)のシリコーンゴムベース中に成分(d)、(e)及び同時に又は続いて成分(f)を混合する工程と、
(iii)組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0076】
工程(i)は、成分(a)及び(b)を一緒に、処理剤(c)と、80℃~250℃、あるいは100℃~220℃、あるいは120℃~200℃の範囲の温度で、30分~2時間、あるいは40分~2時間、あるいは45分~90分間の時間共に混合し、確実に、補強シリカ充填剤をその場で成分(c)で処理し、完全に成分(a)に混合することによって達成され得る。次いで、得られたベースを室温前後(23℃~25℃)まで冷却してもよい。
【0077】
次いで、成分(d)、(e)及び同時に又は続いて成分(f)の触媒(触媒組成物、例えば、Karstedtの触媒)、並びに任意選択の阻害剤(例えば、エチニルシクロヘキサノール(ETCH))及び任意の他の任意選択の添加剤を任意の好適な順序で又は同時に加え、均質になるまで混合する。
【0078】
一旦調製されると、成分(a)、(d)、及び(f)の反応性に起因して、組成物は硬化する。典型的には、硬化は、80℃~180℃、あるいは100℃~170℃、あるいは120℃~170℃の温度で行われる。これは、任意の好適な方法で行うことができ、例えば、組成物を型に導入し、次いで好適な時間、例えば2~10分間又はそうでなければ所望の通り若しくは必要に応じてプレス硬化させる。あるいは、本発明のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物 は、射出成形、封入成形、プレス成形、ディスペンサ成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー成形、ビード適用、又はブロー成形によって更に加工されてもよい。必要に応じて、そして必要な場合には、最長4時間かけて130℃~200℃の温度に加熱することによって、試料を更に後硬化させてもよい。
【0079】
上述したような二部型ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の製造プロセスの場合、プロセスは、
(i)上記一部型組成物を調製するための工程(i)と同じ工程と、
(ii)得られた混合物を2つの部分、A部及びB部に分割し、触媒(f)をA部に導入し、架橋剤及び阻害剤(存在する場合)をB部組成物中に導入する工程と、
(iii)任意の他の任意選択の添加剤を、A部及びB部のいずれか又は両方に導入する工程と、
(iv)A部組成物及びB部組成物を別々に保管する工程と、を含み得る。
【0080】
典型的には、利用する場合、早期硬化を回避するために、A部及びB部組成物を使用直前に上記のような適切な重量比、例えば約1:100の重量比で十分に混合する。次いで、一部型組成物について上述した通りに硬化を行う。A部及び/又はB部のそれぞれの成分は、個々に一緒に混合されてもよく、又は例えば最終組成物を混合しやすくするために、組み合わせて予め調製した状態で組成物に導入されてもよい。例えば、成分(a)及び(b)を一緒に混合してベース組成物を形成することができる。そのような場合、成分(c)の処理剤は、通常、補強シリカ充填剤(b)がその場で処理され得るように混合物中に導入される。あるいは、補強シリカ充填剤(b)を成分(c)で前処理してもよいが、これは好ましくない。得られた基材は、2つ以上の部、典型的にはA部及びB部に分割されてもよく、もし必要であるときは、適切な追加の成分及び添加剤を添加してもよい。また本明細書では、本明細書で前述した成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(f)を含む組成物中の熱安定剤としての添加剤e)の使用も提供される。驚くべきことに、添加剤(e)は、ゴムであるとみなされない、すなわち、25℃で1,000,000mPa.s未満、典型的には、25℃で1,000,000mPa.sよりはるかに小さい(<<)粘度を有する、例えば、25℃で1000mPa.s~25℃で500,000mPa.s、あるいは25℃で1000mPa.s~25℃で150,000mPa.s(粘度は以下の実施例で特定されるように測定される)の粘度を有するオルガノポリシロキサンポリマーを利用する液体シリコーンゴム組成物に対して、顕著な熱安定化効果を一見したところ有しないことが見出された。しかしながら、本明細書において先に記載された組成物は、例えば、ISO6722及びLV216規格に関するクラスE要件を満たすために、200℃で240時間(h)の短期熱老化、180℃で3000hの長期熱老化の両方の後に伸び及び引裂を改善することができ、更に、熱老化後の巻線試験にも合格することができる。これは、そのような組成物及びそれから得られる硬化シリコーンゴム材料を、自動車及びケーブル市場において、耐熱性ゴム材料、例えば、電気ケーブル、例えば、電気自動車及び高速列車用の高電圧電力ケーブルにおける外側シース、ターボチャージャーホース用の高耐熱性ゴムとして可能にする。特に、それらは、高電圧ケーブルを必要とするEV及びHEVのバッテリモジュール及び/又はパックの動作電圧プラットフォームの増加を考慮すると、EV及びHEVでの使用に適している。
【0081】
したがって、前述したように、本明細書では電力ケーブルも提供され、これは、
○導電性コアと、
○当該コアの周りの1つ以上の絶縁層と、
○上記組成物の硬化生成物である熱安定化シリコーンゴムから作製された外側シースと、を含む。
【0082】
また、ケーブルの周りに外側シースを適用して硬化させる工程を含む電力ケーブルの製造方法も本明細書に提供され、当該外側シースは、本明細書で前述した上記組成物の硬化生成物である。適用は、任意の適切な方法、例えば押出によって行うことができる。ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物は、例えば、電力ケーブル用の外側シースとしての自動車及びエレクトロニクス用途を含むが、電力ケーブル用の外側シース、導体絶縁体、電気自動車用のケーブル及び外側シース、自動車ワイヤケーブル、床暖房システム用の工業用ワイヤケーブル、列車及び高速列車用ケーブル、高温耐性用途シリコーンゴム材料、自動車ターボチャージャーホース及び高温工業装置用のジャケットも含む、多種多様な用途で使用され得る。
【実施例】
【0083】
特に指示がない限り、全ての粘度を25℃で測定した。以下の実施例における個々の成分の粘度は、特に明記しない限り、プレート-プレートモデルでTA instrumentsのAR2000 Rheometerを使用して、せん断速度10s-1で測定した。ウィリアムス可塑度の結果を、ASTM D-926-08に従って調製した。以下の数平均分子量(Mn)値は、真空脱気装置を備えたWaters 2695 Separations Module、及びWaters 2414屈折率検出器(Waters Corporation of MA,USA)を使用して決定した。ポリスチレン構成基準を使用して、溶離液として1.0mL/分で流れる認定グレードのトルエンを使用して分析を行った。Waters Empower(商標)GPCソフトウェア(Waters Corporation of MA,USA)を使用して、データの収集及び分析を行った。
【0084】
以下の表1に示すように、一連のベース組成物を調製した。
【0085】
【0086】
シリコーンゴム1は、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンであり、0.012重量%のビニル含量、約155mm/100のウィリアムス可塑度及び702,000のMnを有する。
シリコーンゴム2は、ジメチルビニル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンであり、0.725重量%のビニル含量、約147mm/100のウィリアムス可塑度及び700,000のMnを有する。
シリコーンゴム3は、ジメチルビニル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンであり、0.0654重量%のビニル含量、約157mm/100のウィリアムス可塑度及び702,000のMnを有する。
ポリマー1は、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンであり、25℃で55,000mPa・sの粘度及び0.088重量%のビニル含有量を有する。
ヒュームドシリカは、DIN ISO9277 DIN 66132(供給元の詳細)に従って試験される270~330m2/gのBET表面積を有しており、Wacker ChemieからHDK(商標)T30Pの商品名で市販されている。
疎水化処理剤1は、HO(Me2SiO)xH(x=1~18)である。
疎水化処理剤2は、HO(MePhSiO)xH(x=8~15)である。
疎水化処理剤3は、HO(Me2SiO)x(MeViSiO)yH(x+y=4~17)である。
【0087】
表1のシリコーンゴムベース組成物は、シリコーンゴム又はシリコーンポリマー(ベース6で比較のために使用される)、ヒュームドシリカ及び処理剤を一緒に混練ミキサー中で混合し、次いでベースを目標温度170℃に加熱し、その後約120分間ストリッピングすることによって調製した。次に、得られたベース混合物を室温まで冷却した。ヒュームドシリカは、ベースの加熱及びストリッピングプロセス中に、特定の疎水化処理剤を使用してその場で疎水処理した。
【0088】
次に、表1の関連するベース100重量部を取り、そのベースに、表2a~2dに示す組成に従う触媒以外の成分の必要量を、混練ミキサーを用いて導入してシリコーンゴム組成物を調製した。次いで、得られた混合物を、2本ロールミルを用いて示された量の触媒と混合した。混練ミキサー中で冷却水を用いてベース及び添加剤を均一に混合する。
【0089】
【0090】
熱安定剤1は、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]である。
掃酸剤は、シリコーンポリマー中34重量%の酸化マグネシウムのマスターバッチとした。
DCBP 50%は、シリコーンポリマー中50重量%のビス-(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシドを含むマスターバッチである。
【0091】
【0092】
全体を通して使用した架橋剤は、25℃で5mPa.sの粘度を有するトリメチルシリル末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサンであった。
全てのヒドロシリル化硬化の場合に使用した触媒は、ポリジメチルシロキサンポリマー中のKarstedt触媒(5,000ppm Pt)であった。
ETCHは、エチニルシクロヘキサノールである。
【0093】
【0094】
熱安定剤(HS)2は、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンであった。
熱安定剤(HS)3は、25℃で9000mPa.sの粘度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン中の40重量%のフタロシアニン銅(II)であった。
熱安定剤(HS)4は、サリチロイルアミノトリアゾールであった。
熱安定剤(HS)5は、ペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートであった。
ポリマー2は、25℃で350mPa.sの粘度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンであった。
X-リンカー2は、25℃で50mPa.sの粘度を有するトリメチル末端ジメチル、メチルハイドロジェンシロキサンであった。
【0095】
【0096】
次いで、得られた組成物を、圧縮成型を使用して2mmのシートに成型した後、得られた組成物を120℃で10分間硬化させた。後硬化は利用しなかった。次いで、試料をそれらの物理的特性について試験し、一方、他の得られた硬化シートを続いて必要な温度で必要な時間老化させた。物理的特性試験に関しては、次の通りである。
ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定した。
引張強度、破断点伸び及び100%伸長時の弾性率は、ASTM D412に従って測定した。
比重は、ASTM D792に従って測定した。
引裂強度は、ASTM D624に従ってダイBを用いて測定した。
引裂は、ASTM D624に従ってダイC及びニックを用いて測定した。
【0097】
【表6】
弾性率@100%=100%伸びにおける弾性率。
【0098】
【表7】
弾性率@100%=100%伸びにおける弾性率。
【0099】
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、すなわち熱安定剤1は、表3aの過酸化物硬化実施例に熱安定性を提供しないことがわかる。
【0100】
【0101】
【0102】
表3aと同様に、表3bの結果は、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド](熱安定剤1)の非存在下では、200℃で240時間の熱老化後の硬化生成物において熱安定性の明らかな欠如があることを示す。C12、C13及びC14は、添加剤HS1及びHS3が、ポリマー1(ベース6)組成物、すなわち、本明細書の記載によるシリコーンゴムよりもはるかに低い粘度のポリマーに対して、熱安定性に良い影響を与えないことを明確に示す。これは驚くべきことであると考えられた。
【0103】
【0104】
【0105】
表3cの結果は、組成物中のドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド](熱安定剤1)の存在が、240時間にわたる200℃での老化後の熱安定性、特に伸び及び引裂強度に関して著しい改善をもたらしたことを示している。
【0106】
【0107】
【0108】
表3d(i)及び(ii)に示した結果から、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオニル]ヒドラジン(熱安定剤2)、25℃で9000mPa.sの粘度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン中40重量%のフタロシアニン銅(II)(熱安定剤3)、サリチロイルアミノトリアゾール(熱安定剤4)及びペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネート(熱安定剤5)は、200℃で240時間にわたって老化させた後の伸び及び引裂強度を改善することによって、ヒドロシリル化硬化系における熱安定性を改善することがわかる。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表4aの結果を、ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]処方中の金属酸化物の結果と比較した後、熱安定剤1はまた、白金硬化系に作用して、200℃で240時間の短期熱老化、並びに180℃で1000、2000及び3000時間の長期老化後の伸び及び引裂強度を改善することがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物であって、次の成分、すなわち、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R
10)
2SiO)-
式中、各R
10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及びペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を含む、ヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
硬化阻害剤も含む、請求項1に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
成分(c)の前記直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤が、前記組成物の0.1~10重量%を形成する、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
成分(e)の前記熱安定剤添加剤が、前記組成物の0.001~5.0重量%を構成する、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
前記組成物が、圧縮永久歪添加剤、成分(c)以外の追加の疎水性処理剤、顔料及び/又は着色剤、可使時間延長剤、難燃剤、離型剤、UV光安定剤、殺菌剤、並びにこれらの混合物から選択される1種以上の任意選択の添加剤を含む、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
成分(a)の前記オルガノポリシロキサンポリマーが、ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも125mm/100のウィリアムス可塑度を有する、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物から硬化されたシリコーン系生成物。
【請求項8】
ISO6722及びLV216規格についてクラスEに合格する、請求項7に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物から硬化されたシリコーン系生成物。
【請求項9】
ヒドロシリル化硬化された熱安定化シリコーンゴムの調製のためのプロセスであって、
(i)シリコーンゴムベース組成物を調製する工程であって、前記組成物が、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R
10)
2SiO)-
式中、各R
10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、を含む、工程と、
(ii)工程(i)の前記シリコーンゴムベースに、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物と、
e)
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、
1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、
金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される熱安定剤添加剤と、同時に又は続いて、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を混合する工程と、
(iii)前記組成物を硬化させる工程と、を含む、プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスによって得られるか又は得ることができるシリコーン系生成物。
【請求項11】
ドデカン二酸、ビス[2-(2-ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、1,2-ジ[-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、金属又は非金属フタロシアニン錯体、サリチロイルアミノトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジフェニルスルフィド及び/又はペンタエリスリトールβ-ラウリルチオプロピオネートのうちの1つ以上から選択される添加剤e)の、組成物中の熱安定剤又は前記熱安定剤としての使用であって、前記組成物は、それ以外に次の成分、すなわち、
a)ASTM D-926-08に従って測定される少なくとも100mm/100のウィリアムス可塑度と、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基とを有するオルガノポリシロキサンポリマーであって、不飽和基がアルケニル基又はアルキニル基から選択される、オルガノポリシロキサンポリマーと、
b)補強シリカ充填剤と、
c)次の構造の複数の単位を含む直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサン充填剤処理剤であって、
-((R
10)
2SiO)-
式中、各R
10は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基であるか、又は6~12個の炭素を有する芳香族基であり、数平均重合度は1~50の範囲であり、各末端基は少なくとも1つのヒドロキシル又はアルコキシを含む、充填剤処理剤と、
d)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのSi-H基を有する有機ケイ素化合物
と、
f)白金族金属若しくはその化合物を含むか、又は白金族金属若しくはその化合物からなるヒドロシリル化触媒と、を含む、使用。
【請求項12】
電力ケーブルであって、
○導電性コアと、
○前記コアの周りの1つ以上の絶縁層と、
○請求項1又は2に記載の上記組成物の硬化生成物である前記熱安定化シリコーンゴムから作製された外側シースと、を含む、電力ケーブル。
【請求項13】
電力ケーブルを製造する方法であって、前記ケーブルの周りに外側シースを適用し、硬化させる工程を含み、前記外側シースが、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の硬化生成物である、方法。
【請求項14】
自動車及びエレクトロニクス用途の製造における、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化硬化性熱安定化シリコーンゴム組成物の使用。
【請求項15】
前記自動車及びエレクトロニクス用途が、電力ケーブル用の外側シース、導体絶縁体、電気自動車用のケーブル及び外側シース、自動車ワイヤケーブル、床暖房システム用の工業用ワイヤケーブル、列車及び高速列車ケーブル、高温耐性用途シリコーンゴム材料、自動車ターボチャージャーホース及び高温工業装置用ジャケットから選択される、請求項14に記載の使用。
【国際調査報告】