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特表2024-543074冷間成形後の耐衝撃性に優れた高降伏比型高強度鋼及びその製造方法
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  • 特表-冷間成形後の耐衝撃性に優れた高降伏比型高強度鋼及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】冷間成形後の耐衝撃性に優れた高降伏比型高強度鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241112BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20241112BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/38
C21D8/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527810
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2022017540
(87)【国際公開番号】W WO2023090751
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158366
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ソン-イル
(72)【発明者】
【氏名】ナ、 ヒュン-テク
【テーマコード(参考)】
4K032
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA04
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA16
4K032AA21
4K032AA22
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA35
4K032BA01
4K032CA02
4K032CA03
4K032CC03
4K032CC04
4K032CD02
4K032CD03
4K032CD06
4K032CE01
4K032CE02
(57)【要約】
本発明は、高強度鋼及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、冷間成形後の耐衝撃性に優れ、高降伏比を有する高強度鋼及びその製造方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.001~1.0%、P:0.001~0.05%、S:0.001~0.01%、N:0.001~0.01%、Ti:0.03~0.08%、Nb:0.01~0.05%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、NbとTiの合計が0.04~0.1%であり、
表面から厚さ50μm範囲の表層部の微細組織は、面積%で、等軸晶フェライトを95%以上、パーライトを3%以下含み、ベイニティックフェライト、ベイナイト、MA(Martensite-Austenite constituent)相及びマルテンサイトのうち1種以上を合計で5%以下含み、
厚さ1/4~3/4の範囲の中心部の微細組織は、面積%で、ベイニティックフェライトを80~95%、ベイナイトを10%以下、パーライトを3%以下、MA(Martensite-Austenite constituent)相及びマルテンサイトのうち1種または2種を合計で5~10%含み、残りは等軸晶フェライトを含む、鋼板。
【請求項2】
前記鋼板は厚さが8~25mmである、請求項1に記載の鋼板。
【請求項3】
前記鋼板は、引張強度が590MPa以上であり、破壊伸び率が25%以上であり、降伏比が0.75~0.9であり、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性が70J以上である、請求項1に記載の鋼板。
【請求項4】
前記鋼板は、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性(E)と冷間成形前の降伏強度(YS)の比(E/YS)が0.15以上である、請求項1に記載の鋼板。
【請求項5】
前記鋼板は、幅方向を基準として、両端部で30%の領域に該当するエッジ部と、両エッジ部を除いた領域に該当する中心40%領域の中央部を含み、
前記エッジ部と中央部は、引張強度の差が10MPa以下であり、破壊伸び率の差が8%以下であり、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性の差が20J以下である、請求項1に記載の鋼板。
【請求項6】
重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.001~1.0%、P:0.001~0.05%、S:0.001~0.01%、N:0.001~0.01%、Ti:0.03~0.08%、Nb:0.01~0.05%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、NbとTiの合計が0.04~0.1%の鋼スラブを再加熱する段階;
前記再加熱された鋼スラブを熱間圧延する段階;及び
前記熱間圧延された鋼板を500~650℃の温度範囲まで1~30℃/sの範囲内で下記関係式1で定義されるCR値以上である平均冷却速度で冷却及び巻き取る段階を含み、
前記冷却及び巻き取り段階において、コイル幅方向を基準に両端部で30%の領域に該当するエッジ部は550~650℃の温度(TE)で、幅方向に両エッジ部を除いた領域に該当する中心40%領域の中央部は500~550℃の温度(TC)で冷却し、
エッジ部と中央部の平均温度差は50~150℃である、鋼板の製造方法。
[関係式1]
CR=45-16.3×[C]-5.6×[Si]-16.3×[Mn]-2.9×[Cr]+15×[Ti]+23×[Nb]-0.9×(t-8)
(ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ti]及び[Nb]は各元素の重量%であり、tは鋼板の厚さ(mm)である。)
【請求項7】
前記再加熱温度は1100~1350℃であり、
前記熱間圧延温度は800~1150℃である、請求項6に記載の鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記巻き取られたコイルを200℃以下の温度範囲で空冷する段階をさらに含む、請求項6に記載の鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記鋼板は厚さが8~25mmである、請求項6に記載の鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度鋼及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、冷間成形後の耐衝撃性に優れ、高降伏比を有する高強度鋼及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の商用車シャーシ部品は、車両特性上、厚さ8mm以上の鋼材が主に適用され、メンバ類には引張強度が600MPaレベルの高強度熱延鋼板を、ホイールディスクには引張強度が440MPaレベルの熱延鋼板を用いている。しかし、最近の軽量化のために、メンバ類には引張強度が700MPa以上、ホイールディスクには引張強度が590MPa以上の高強度鋼板を適用し、鋼板の厚さを下向きにしたり、部品のデザインを変更している傾向にある。また、ホイールは従来、プレス成形工程で製造されたが、最近ではスピニング(Spinning)及びフローフォーミング(Flow forming)によって製造される傾向にある。このような成形工程は熱延鋼板により大きい変形量を与えるため、より優れた伸び率を有する熱延鋼板が要求され、成形された部品は使用中の耐久性及び耐衝撃性の確保が要求される。
【0003】
しかし、従来の高強度鋼は、上記のスピニング及びフローフォーミング工程に適用する際に、部品の耐久性が従来と同等以上でなければならないが、部品の成形時に、せん断面等で微細なクラックが発生したり、成形量の高い部位で耐久性が劣るなど適用に困難性を伴う。
【0004】
従来の高強度鋼は、特許文献1及び2のように、通常のオーステナイト域の熱間圧延を経た後、高温で巻き取ってフェライトを基地組織とし、析出物を微細に形成させており、特許文献3のように、粗大なパーライトが形成されないように巻き取り温度をベイナイト基地組織が形成される温度まで冷却した後、巻き取る技術を適用している。また、特許文献4のように、Ti、Nb等を活用して熱間圧延中の未再結晶域で40%以上に大圧下して、オーステナイト結晶粒を微細化させる技術も提案されている。最近では、特許文献5のように、鋼板の厚さ表層部と深層部との間の微細組織の均一性を向上させ、粗大な炭化物形成を抑制する技術が提案されており、特許文献6のように、耐久性に悪影響を及ぼすパーライトとMA相(Martensite and Austenite)及びマルテンサイトの形成を同時に抑制する技術が提案された。
【0005】
しかし、特許文献1~4は、高強度厚物材のせん断成形時に、せん断面及びその周辺にクラックが発生することを考慮できておらず、厚さ8mm以上の厚物材では製造時に、確保し難い冷却速度条件と大圧下条件で構成されている。厚物材の結晶粒を微細化すると同時に強度確保のためにTi、Nb、V等の析出物形成元素を活用する場合、析出物が形成されやすい500~700℃の高温で巻き取るとフェライトが過度に成長して、降伏強度が減少し、粗大なパーライトが形成されるという問題がある。また、ベイナイト基地組織を活用するために低い巻き取り温度で製造する場合にも、熱延後の冷却中の鋼板の幅方向の冷却速度を均一に制御しないと、熱延鋼板に不均一微細組織が形成されて、高い伸び率を有し難く、安定した高降伏比特性の確保が難しくなり、成形時に、せん断面の割れ発生などの成形クラックに対する敏感度も増加するようになる。さらに、このような技術は、乗用車用に用いられる厚さ5mm未満の熱延鋼板を対象としているため、必要な冷却速度が高すぎて厚物材製造に不適合である。また、未再結晶域で40%の大圧下を加えることは、圧延板の形状品質を劣化させ、設備に負荷をかけることがあるため、厚さ8mm以上の厚物材に適用し難い。特許文献5及び6は、厚物材を対象とした発明である。まず、特許文献5は厚物高強度鋼の耐久性の向上のために厚さ深層部(1/4t~1/2t)内の結晶粒形状が等軸晶であり、微細な結晶粒を有するようにし、MA相及びマルテンサイト形成を抑制するように製造する技術を提案した。特許文献6は、特定の成分に対して導出された関係式を介して熱延コイルを長さ方向に3等分し、Head、Mid、Tail部をそれぞれ互いに異なる冷却終了温度まで一定の冷却速度条件で冷却した後、巻き取って製造する技術が提案された。このような技術は、部品のせん断面の品質を考慮して特定の成分に対して導出された関係式を介して熱間圧延後の冷却速度を制御することにより微細組織を均一に製造する技術であり、パンチングホール(hole)を多数含み、荷重が加えられ続ける商用車ホイールの耐久性を向上させるのに効果的な側面はあるが、成形後の耐衝撃性が考慮されなかった。また、熱間圧延後の鋼板の冷却を全幅にわたって均一に制御し難く、厚さが8mm以上で熱延鋼板が厚い場合には実際の冷却速度で制御しにくいという問題がある。
【0006】
熱間圧延後の冷却工程は、通常、長さ100~120mのROT(Run-Out Table)から数十秒以内で行われるが、熱延鋼板の厚さ深層部の冷却速度が提案した範囲を満足しながら、冷却終了温度または巻き取り温度まで冷却して製造し難い。したがって、上記従来技術において厚さが8mm以上の熱延鋼板は、粗大な炭化物の形成が抑制される効果を得にくく、高いレベルの耐衝撃性を確保するにも不足するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2010-0029138号公報(2010.03.15.公開)
【特許文献2】日本国公開特許公報第2007-262487号公報(2007.10.11.公開)
【特許文献3】韓国登録特許公報第10-1528084号公報(2015.06.10.公開)
【特許文献4】日本国公開特許公報平9-143570号公報(1997.06.03.公開)
【特許文献5】韓国公開特許公報第10-2020-0062422号公報(2020.06.04.公開)
【特許文献6】韓国公開特許公報第10-2021-0068808号公報(2021.06.10.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一側面は、冷間成形後の耐衝撃性に優れ、高降伏比を有する高強度鋼及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全体内容から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.001~1.0%、P:0.001~0.05%、S:0.001~0.01%、N:0.001~0.01%、Ti:0.03~0.08%、Nb:0.01~0.05%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、NbとTiの合計が0.04~0.1%であり、
表面から厚さ50μm範囲の表層部の微細組織は、面積%で、等軸晶フェライトを95%以上、パーライトを3%以下含み、ベイニティックフェライト、ベイナイト、MA(Martensite-Austenite constituent)相及びマルテンサイトのうち1種以上を合計で5%以下含み、
厚さ1/4~3/4範囲の中心部の微細組織は面積%で、ベイニティックフェライトを80~95%、ベイナイトを10%以下、パーライトを3%以下、MA(Martensite-Austenite constituent)相及びマルテンサイトのうち1種または2種を合計で5~10%含み、残りは等軸晶フェライトを含む鋼板を提供することができる。
【0011】
上記鋼板は厚さが8~25mmであることができる。
【0012】
上記鋼板は、引張強度が590MPa以上であり、破壊伸び率が25%以上であり、降伏比が0.75~0.9であり、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性が70J以上であることができる。
【0013】
上記鋼板は、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性(E)と冷間成形前の降伏強度(YS)の比(E/YS)が0.15以上であることができる。
【0014】
上記鋼板は、幅方向を基準に、両端部で30%の領域に該当するエッジ部と両エッジ部を除いた領域に該当する中心40%領域の中央部を含み、上記エッジ部と中央部は引張強度の差が10MPa以下であり、破壊伸び率の差が8%以下であり、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性の差が20J以下であることができる。
【0015】
本発明の他の一側面は、重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.001~1.0%、P:0.001~0.05%、S:0.001~0.01%、N:0.001~0.01%、Ti:0.03~0.08%、Nb:0.01~0.05%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、NbとTiの合計が0.04~0.1%の鋼スラブを再加熱する段階;
上記再加熱された鋼スラブを熱間圧延する段階;及び
上記熱間圧延された鋼板を500~650℃の温度範囲まで1~30℃/sの範囲内で下記関係式1で定義されるCR値以上である平均冷却速度で冷却及び巻き取る段階を含み、
上記冷却及び巻き取り段階において、コイル幅方向を基準に両端部で30%の領域に該当するエッジ部は550~650℃の温度(TE)で、幅方向に両エッジ部を除いた領域に該当する中心40%領域の中央部は500~550℃の温度(TC)で冷却し、
エッジ部と中央部の平均温度差は50~150℃の鋼板の製造方法を提供することができる。
[関係式1]
CR=45-16.3×[C]-5.6×[Si]-16.3×[Mn]-2.9×[Cr]+15×[Ti]+23×[Nb]-0.9×(t-8)
(ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ti]及び[Nb]は各元素の重量%であり、tは鋼板の厚さ(mm)である。)
【0016】
上記再加熱温度は1100~1350℃であり、
上記熱間圧延温度は800~1150℃であることができる。
【0017】
上記巻き取られたコイルを200℃以下の温度範囲で空冷する段階をさらに含むことができる。
【0018】
上記鋼板は厚さが8~25mmであることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によると、冷間成形後の耐衝撃性に優れ、高降伏比を有する高強度鋼及びその製造方法を提供することができる。
【0020】
本発明の一側面によると、中大型商用車シャーシメンバ類及びホイール等に用いられる鋼材に適用できる高強度鋼及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例に係る発明例2の微細組織を走査電子顕微鏡(×3,000)で観察して示した写真である。
図2】本発明の実施例に係る比較例2の微細組織を走査電子顕微鏡(×3,000)で観察して示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の好ましい実施形態を説明する。本発明の実施形態は、様々な形に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明される実施形態に限定されるものと解釈されてはいけない。本実施形態は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。
【0023】
本発明者は、上述した従来の問題点を解決し、優れた成形性及び耐衝撃性を確保するために、鋼板の微細組織特徴による冷間成形後の耐衝撃性の変化を研究した。これにより、合金組成及び製造条件を最適化して鋼板の厚さ及び幅方向に応じた微細組織を制御することにより目的とする物性を確保することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0024】
通常コイルの形態で製造される熱延鋼板において、粗大な炭化物及びパーライトは、約500~700℃の高温域で長時間維持されるときに形成されやすい。特に、熱間圧延終了後の冷却過程で開始されるフェライト相変態がゆっくり進行する場合、未変態相には炭素の高容量が増加するため、粗大な炭化物やパーライトが形成しやすい条件となる。さらに、コイル幅の中央部はエッジ部に比べて冷却速度が遅くて、このような組織がさらに発達するようになる。したがって、コイル幅の中央部でこのような粗大な炭化物とパーライト形成を抑制するためには、巻き取られたコイルを水冷などの強制冷却により常温まで冷却することが必要であるが、この場合には冷却速度の速いエッジ部は、マルテンサイトやMA(Martensite and Austenite)相が過度に形成されて微細組織が不均一になり、高い伸び率を確保することが難しくなり、せん断面の割れも増加するため、好ましくない。したがって、本発明では、コイルを強制冷却せずとも粗大な炭化物及びパーライトの形成を抑制することができる方案を提案する。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
以下では、本発明の鋼組成について詳細に説明する。
【0027】
本発明において特に断りのない限り、各元素の含有量を表す%は重量を基準とする。
【0028】
本発明の一側面に係る鋼は、重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.01~0.1%、Cr:0.001~1.0%、P:0.001~0.05%、S:0.001~0.01%、N:0.001~0.01%、Ti:0.03~0.08%、Nb:0.01~0.05%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、TiとNbの合計が0.04~0.1%であることができる。
【0029】
炭素(C):0.05~0.15%
炭素(C)は、鋼を強化させるのに最も経済的且つ効果的な元素であり、添加量が増加すると析出強化効果またはベイナイト相分率が増加して強度確保が容易であることができる。しかし、熱延鋼板の厚さが増加すると、熱間圧延後の冷却中の厚さ中心部の冷却速度が遅くなって、炭素(C)の含有量が大きい場合に粗大な炭化物やパーライト(Pearlite)が形成されやすい。したがって、炭素(C)含有量が0.05%未満であると、十分な強化効果が得られにくく、その含有量が0.15%を超過すると、厚さ中心部にパーライトや粗大な炭化物の形成により耐衝撃性が低下するという問題点があり、溶接性も劣化するおそれがある。好ましい下限は0.055%であることができ、より好ましい上限は0.12%であることができる。
【0030】
シリコン(Si):0.01~0.5%
シリコン(Si)は、溶鋼脱酸及び鋼を固溶強化させるのに効果的であり、粗大な炭化物形成を遅らせて成形性向上にも効果的な元素である。しかし、その含有量が0.01%未満であると、固溶強化及び炭化物形成を遅らせる効果を極大化することができず、その含有量が0.5%を超過すると、熱間圧延時に鋼板表面に赤色スケールが形成されて品質が非常に劣るだけでなく、延性や溶接性も低下するという問題点がある。好ましくは0.05%以上含むことができ、より好ましくは0.3%以下含むことができる。
【0031】
マンガン(Mn):1.0~2.0%
マンガン(Mn)は、Siと同様に鋼を固溶強化させるのに効果的な元素であり、鋼の硬化能を増加させて熱間圧延後に冷却中のベイナイトの形成を容易にすることができる。しかし、その含有量が1.0%未満であると、添加による上記効果が得られず、2.0%を超過すると、硬化能が大きく増加してマルテンサイト相変態が起こりやすく、連鋳工程でスラブ鋳造時の厚さ中心部から偏析部が大きく発達するおそれがある。好ましくは1.3%以上含むことができ、より好ましくは1.8%以下含むことができる。
【0032】
アルミニウム(Al):0.01~0.1%
アルミニウム(Al)は、主に脱酸のために添加する成分であり、その含有量が0.01%未満であると、その添加効果が不足することがある。一方、その含有量が0.1%を超過すると、窒素と結合してAlNが形成されて連続鋳造時にスラブにコーナークラックが発生しやすく、介在物形成による欠陥が発生しやすい。好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.06%以下含むことができる。
【0033】
クロム(Cr):0.001~1.0%
クロム(Cr)は、Mnと類似に鋼を固溶強化させ、冷却時のフェライト相変態を遅らせてベイナイト形成を助ける役割を果たす。しかし、その含有量が0.001%未満であると、添加による上記効果が得られず、1.0%を超過すると、フェライト相変態を過度に遅らせて過度のマルテンサイト形成により伸び率が劣化することがある。また、過度のCr添加は厚さ中心部での偏析部が大きく発達し、厚さ方向の微細組織を不均一にして耐衝撃性を劣化させる。好ましい下限は0.01%であることができ、より好ましい上限は0.5%であることができる。
【0034】
リン(P):0.001~0.05%
リン(P)は、Siと同様に固溶強化及びフェライト相変態促進効果を同時に有している。しかし、リン(P)の含有量を0.001%未満にして製造するためには、製造費用が多くかかって経済的に不利であり、強度を得るにも不十分である。一方、その含有量が0.05%を超過すると、粒界偏析による脆性が発生し、成形時に微細な割れが発生しやすくて、耐衝撃性を大きく悪化させることができる。
【0035】
硫黄(S):0.001~0.01%
上記Sは、鋼中に存在する不純物であり、その含有量が0.01%を超過すると、Mn等と結合して非金属介在物を形成し、これにより、成形時に微細な割れが発生しやすくて、耐衝撃性を大きく低下させるという問題点がある。但し、その含有量を0.001%未満にして製造するためには、製鋼操業時に時間が多くかかって、生産性が劣るようになる。
【0036】
窒素(N):0.001~0.01%
窒素(N)は、Cと共に代表的な固溶強化元素であり、Ti、Alなどと共に粗大な析出物を形成する。一般的に、窒素(N)の固溶強化効果はCより優れるが、鋼中の窒素(N)の量が増加するほど靭性が大きく低下するという問題点がある。したがって、その含有量の上限を0.01%に制限することができる。一方、その含有量を0.001%未満にして製造するためには、製鋼操業時に時間が多くかかって、生産性が劣るようになる。
【0037】
チタン(Ti):0.03~0.08%
チタン(Ti)は、代表的な析出強化元素であり、Nとの強い親和力で鋼中に粗大なTiNを形成する。TiNは、熱間圧延のための加熱過程で結晶粒が成長することを抑制する効果がある。また、Nと反応して残ったチタン(Ti)が鋼中に固溶してCと結合することで形成されるTiC析出物は、鋼の強度を向上させるのに有用な成分である。チタン(Ti)の含有量が0.03%未満であると、上記効果が得られず、その含有量が0.08%を超過すると、粗大なTiNの発生及び析出物の粗大化により成形時に耐衝突特性を劣化させるという問題点がある。好ましくは0.04%以上含むことができ、より好ましくは0.075%以下含むことができる。
【0038】
ニオブ(Nb):0.01~0.05%
ニオブ(Nb)は、Tiと共に代表的な析出強化元素であり、熱間圧延中に析出して再結晶遅延による結晶粒微細化効果によって鋼の強度と衝撃靭性の向上に効果的である。ニオブ(Nb)の含有量が0.01%未満であると、上記効果が得られず、その含有量が0.05%を超過すると、熱間圧延中に過度の再結晶遅延で延伸した結晶粒形成及び粗大な複合析出物の形成により成形性を劣化させるという問題点がある。好ましい下限は0.015%であることができ、より好ましい上限は0.04%であることができる。
【0039】
本発明の鋼は、上述した組成以外に、残りの鉄(Fe)及び不可避不純物を含むことができる。不可避不純物は、通常の製造工程で意図せずに混入される可能性があるため、これを排除することはできない。このような不純物は、通常の鉄鋼製造分野の技術者であれば誰でも分かることであるため、そのすべての内容を特に本明細書では言及しない。
【0040】
本発明の一側面による鋼は、ニオブ(Nb)とチタン(Ti)の合計が0.04~0.1%であることができる。
【0041】
ニオブ(Nb)とチタン(Ti)は、(Ti、Nb)(C、N)系複合析出物として析出し、熱間圧延中に析出すると再結晶遅延による結晶粒微細化効果が大きく増加する。しかし、複合析出物の形成が過度であると、粗大な複合析出物が増加して強度向上効果は少なく、成形性は劣化するという問題点がある。ニオブ(Nb)とチタン(Ti)の合計が0.04%未満であると、結晶粒微細化及び強度向上効果が小さいことがある。一方、その合計が0.1%を超過すると、成形性が劣化するようになり、経済的にも不利である。好ましい下限は0.045%であることができ、より好ましい上限は0.09%であることができる。
【0042】
以下では、本発明の鋼微細組織について詳細に説明する。
【0043】
本発明で特に断りのない限り、微細組織の分率を表示する%は、面積を基準とする。
【0044】
本発明の一側面に係る鋼は、表面から厚さ50μm範囲の表層部の微細組織は面積%で、等軸晶フェライトを95%以上、パーライトを3%以下含み、ベイニティックフェライト、ベイナイト、MA(Martensite-Austenite constituent)相及びマルテンサイトのうち1種以上を合計で5%以下含み、厚さ1/4~3/4の範囲の中心部の微細組織は面積%で、ベイニティックフェライトを80~95%、ベイナイトを10%以下、パーライトを3%以下、MA(Martensite-Austenite constituent)相及びマルテンサイトのうち1種または2種を合計で5~10%含み、残りは等軸晶フェライトを含むことができる。
【0045】
本発明では、表層部で等軸晶フェライトが95%未満であると、商用車ホイール製造時に、適用するスピニング及びフローフォーミング成形時に、延性が不足し、表層部での加工硬化が激しくなって成形中に微細なクラックが発生するおそれがある。特に、脆性の強いパーライトが3%以上形成されるか、硬度の高いベイニティックフェライト、ベイナイト、MA相及びマルテンサイトのうち1種以上が5%を超過して含まれると、基地相との界面に沿ってクラックが容易に伝播するという問題点がある。したがって、成形中に表層部で形成される微細なクラックの発生を抑制し、クラックの伝播を防止するためにベイニティックフェライト、ベイナイト、MA相及びマルテンサイトのうち1種以上を合計で5%以下含むことが好ましい。本発明では、表層部の微細組織で等軸晶フェライトが100%であることができ、パーライト、ベイニティックフェライト、ベイナイト、MA相及びマルテンサイトの合計が0%であることができる。
【0046】
また、中心部でベイニティックフェライトが80%未満であると、ホイール製造時に、パンチング及びせん断成形過程でせん断面にクラックが容易に発生するという問題点があり、成形後に、耐衝撃性も劣るという問題がある。また、鋼板を製造する際に熱間圧延後の鋼板の冷却過程において、圧延板の厚さ中心部は基地組織であるベイニティックフェライトが形成された後、未変態されたオーステナイトには高い濃度の残留Cが残存するため、パーライトを形成しやすくすることができる。このとき、パーライトが3%を超過して形成されると、成形過程においてせん断面でクラック発生がひどくなり、成形後の耐衝撃性も劣る。パーライト分率が3%以下であるとき、せん断等成形による割れ発生がなく、低温での耐衝撃性に優れることができる。本発明では、直径1μm以上の炭化物及び窒化物をパーライトで含むことができる。
【0047】
これに対して、MA相またはマルテンサイトを5~10%含む場合、クラック発生に影響を及ぼすことなく、成形後の耐衝撃性及び高い強度を確保するのに有利であることができる。MA相は周辺に電位密度を形成して高強度を確保するのに有利な側面があり、フェライト及びベイナイトで構成された基地組織とともに形成されたとき、冷間成形後に電位密度が増加しても耐衝撃性に優れることができる。しかし、MA相またはマルテンサイトが5%未満であると降伏強度及び引張強度が不足し、10%を超過して含まれると、延性が不足して成形性が劣るという問題がある。ベイナイトも10%を超過する場合、延性が不足するという問題点がある可能性がある。
【0048】
本発明では、中心部の微細組織でベイナイト、パーライトはそれぞれ0%であることができ、ベイニティックフェライト、ベイナイト、パーライト、MA相及びマルテンサイトの他に、不可避に等軸晶フェライトを含むことができる。
【0049】
本発明では、微細組織の面積分率を光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて分析することができ、圧延断面の厚さ中心部に該当する位置で3,000倍率で観察したイメージからの相の面積分率を測定することができる。
【0050】
以下では、本発明の鋼製造方法について詳細に説明する。
【0051】
本発明の一側面に係る鋼は、上述した合金組成を満足する鋼スラブを再加熱、圧延、冷却及び巻き取って製造されることができる。
【0052】
再加熱
本発明の合金組成を満たす鋼スラブを1100~1350℃の温度範囲で再加熱することができる。
【0053】
再加熱温度が1100℃未満であると析出物が十分に再固溶されず、熱間圧延後の工程で析出物の形成が減少することがあり、粗大なTiNが残存することができる。一方、その温度が1350℃を超過するとオーステナイト結晶粒の異常粒成長によって強度が低下することがある。
【0054】
熱間圧延
上記再加熱された鋼スラブを800~1150℃の温度範囲で熱間圧延を行うことができる。
【0055】
熱間圧延温度が1150℃を超過すると、熱延鋼板の温度が高くなり、結晶粒径が粗大になり、熱延鋼板の表面品質が劣化することがある。一方、その温度が800℃未満であると、再結晶遅延により延伸した結晶粒が発達して、異方性がひどくなって成形性が悪くなることがあり、オーステナイト温度域以下の温度で圧延すると、不均一な微細組織がさらにひどく発達することがある。
【0056】
冷却及び巻き取り
上記熱間圧延された鋼板を500~650℃の温度範囲まで1~30℃/sの範囲内で下記関係式1で定義されるCR値以上である平均冷却速度で冷却及び巻き取ることができる。上記冷却時に、コイル幅方向に両端部で30%のエッジ部は550~650℃の温度(TE)で、幅方向に両エッジ部を除いた中心40%の中央部は500~550℃の温度(TC)で冷却することができる。このとき、エッジ部と中央部の平均温度差は50~150℃であることができる。
【0057】
本発明では、鋼板冷却時に、適正レベルのフェライト相変態を誘発し、微細且つ均一なMA相を形成させ、過度のパーライト形成を抑制するために、関係式1を導出した。冷却速度が関係式1のCR値未満の場合、厚さ中心部のフェライトが粗大になり、パーライトが過度に形成されてせん断面のクラック発生がひどくなり、成形後の耐衝撃特性が劣化することがある。また、冷却速度が30℃/sを超過する場合、ベイナイト、MA相及びマルテンサイトが過度に形成されて延性が不足し、せん断面品質も劣るという問題点がある。
[関係式1]
CR=45-16.3×[C]-5.6×[Si]-16.3×[Mn]-2.9×[Cr]+15×[Ti]+23×[Nb]-0.9×(t-8)
(ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ti]及び[Nb]は各元素の重量%であり、tは鋼板の厚さ(mm)である。)
【0058】
過度の炭化物とパーライト形成を抑制するためには、熱間圧延後の冷却時に、冷却終了温度を下回る必要があるが、過度のベイナイト形成によるフェライト減少またはMA相及びマルテンサイトの過度の形成により目標とする伸び率確保が難しいおそれがある。
【0059】
したがって、本発明では、コイルの幅方向の中央部での冷却速度を高め、巻き取り後のコイルが高温で維持される時間を減少させるために、熱間圧延後の冷却時に、幅方向の中央部とエッジ部の冷却終了温度を異ならせて設定することができる。但し、このとき、エッジ部と中央部の平均温度差は50~150℃であることができる。平均温度差が50℃未満であると、上記効果が得られ難いことがある。一方、その温度が150℃を超過すると、上記の効果はこれ以上増加しないが、コイルの区間別温度を制御することが困難になることがある。
【0060】
本発明では、巻き取り時に、エッジ部と中央部の冷却終了温度を異ならせて制御する方法を特に限定しないが、一例としては熱間圧延された鋼板を冷却する際に、エッジ部に注水される冷却水が鋼板に到達する前に遮断するか、または注水される冷却水量を異ならせて調節する方法を適用することができる。あるいは、2つの方法を並行して用いることもできる。
【0061】
本発明では、目的とする強度、成形性及び耐衝撃性を確保するために、上記関係式1と冷却終了温度の条件を全て満たすことが好ましい。上記冷却条件を全て満たす場合、厚さ方向の中心部にはベイニティックフェライトを基地組織として均一且つ微細な微細組織を有するようにし、冷却速度が遅いコイルの内巻部及び厚さ中心部で粗大な炭化物やパーライトが減少するようになって、熱延鋼板の不均一組織が解消されることができる。また、冷却速度が比較的速いコイルの外巻部とエッジ部では、MA相の不均一な形成と粗大なマルテンサイトの形成を抑制することができる。
【0062】
冷却
上記巻き取られたコイルを200℃以下の温度範囲で空冷することができる。
【0063】
本発明では、巻き取られたコイルを200℃以下の温度範囲で空冷することができる。コイルの空冷は、冷却速度0.001~10℃/hで常温の大気中に冷却することを意味する。このとき、冷却速度が10℃/hを超過するとコイルの外巻部には鋼中の一部未変態された相がMA相に変態しやすくなって、鋼のせん断成形性及びパンチング成形性と耐久性が劣ることがある。一方、冷却速度を0.001℃/h未満に制御するためには、別途の加熱及び保熱設備等が必要であるため、経済的に不利になることがある。好ましい下限は0.01℃/hであることができ、より好ましい上限は1℃/hであることができる。
【0064】
このように製造された本発明の鋼は、厚さが8~25mmであり、引張強度が590MPa以上であり、破壊伸び率が25%以上であり、降伏比が0.75~0.9であり、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性が70J以上であり、冷間成形後の衝撃靭性と冷間成形前の降伏強度との比が0.15以上であり、高降伏比を有しつつ、衝撃靭性に優れた特性を備えることができる。また、上記鋼は幅方向を基準として、両端部で30%の領域に該当するエッジ部と、両エッジ部を除いた領域に該当する中心40%領域の中央部を含み、上記エッジ部と中央部は、引張強度の差が10MPa以下であり、破壊伸び率の差が8%以下であり、冷間成形後の-20℃での衝撃靭性の差が20J以下であることができる。
【実施例
【0065】
以下、実施例を介して本発明をより具体的に説明する。但し、以下の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を制限するものではないことに留意する必要がある。
【0066】
(実施例)
下記表1の合金組成を有する鋼スラブを下記表2の条件で熱延鋼板を製造した。このとき、鋼スラブは1100~1350℃の温度で再加熱した後に熱間圧延を行った。表2には製造時に適用された冷却速度、関係式1のCR値を示しており、冷却終了温度は幅方向の中央部の40%範囲の温度(TC)、幅方向の両端部のそれぞれ30%範囲の温度(TE)をそれぞれ示した。また、中央部の温度とエッジ部の温度の差を示した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
[関係式1]CR=45-16.3×[C]-5.6×[Si]-16.3×[Mn]-2.9×[Cr]+15×[Ti]+23×[Nb]-0.9×(t-8)
(ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Ti]及び[Nb]は各元素の重量%であり、tは鋼板の厚さ(mm)である。)
【0069】
下記表3には、製造された鋼板の微細組織を測定して記載した。微細組織は厚さ方向の表層部と中心部をそれぞれ測定し、幅方向のエッジ部と中央部もそれぞれ分率を測定して示した。表層部は表面から厚さ50μmまでの部分の微細組織を観察し、中心部は鋼板表面から厚さ方向に1/4~3/4t(25~75%区間、tは厚さ(mm))部分について観察した。また、エッジ部は幅方向の両端で30%に該当する部分の微細組織を観察し、中央部はエッジ部を除いた中央40%に該当する部分を基準に観察した。MA相とマルテンサイトの面積分率の測定は、Leperaエッチング法でエッチングした後、光学顕微鏡とImage分析器を用い、1,000倍率で分析した結果である。その他、等軸晶フェライト(PF)、ベイニティックフェライト(BF)、ベイナイト(B)及びパーライト(P)の分率は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて3,000倍と5,000倍率で分析した結果から測定した。ここで、PFは等軸晶形状を有するPolygonal Ferriteであり、BFは、針状型フェライト、ベイニティックフェライトなどの低温域で観察されるフェライトを含むことができる。また、Pはパーライトと直径1μm以上の粗大な炭化物及び窒化物を含む。
【0070】
【表3】
【0071】
下記表4には、製造された各試験片に対する物性値を幅方向の中央部とエッジ部に対して測定して示した。降伏強度(YS)、引張強度(TS)、降伏比(YR)、破壊伸び率(T-El)は、JIS5号規格試験片を圧延方向に直角方向に試験片を採取して引張試験を行って評価された。また、冷間成形後の-20℃での衝撃吸収エネルギー(E)を測定し、冷間成形後の-20℃での衝撃吸収エネルギーと降伏強度の比(E/YS)を示した。衝撃吸収エネルギーはASTM規格(ASTM A370)に基づいて製作されたシャルピーV-ノッチ試験片を用い、圧延方向に垂直な方向に採取して試験した。
【0072】
【表4】
【0073】
表3及び4に示されたように、本発明の合金組成及び製造条件を満足する発明例の場合、本発明で提案する微細組織特徴を満足し、本発明で目的とする物性を確保した。図1は、本発明の一側面に係る発明例2の熱延鋼板の微細組織を走査電子顕微鏡(×3,000)で観察して示した写真である。
【0074】
一方、比較例1は、Ti及びNb含有量の合計が本発明の範囲を超過した場合であり、フェライト粒内に過度の析出物による粗大な析出物とTiN形成によって耐衝撃性が劣化した。
【0075】
比較例2は、冷却速度が関係式1で提案した冷却速度の基準に達しなかった場合で、図2に示されたように、微細組織内に過度のパーライトが形成された。
【0076】
図2に示されたように、これにより強度は大きく低下しなかったが、目標とする耐衝撃特性を確保することができなかった。
【0077】
比較例3は、幅方向の中央部の巻き取り温度が本発明で提案する範囲を超過した場合であり、特に、中央部とエッジ部の全てにおいて厚さ方向の中心部で過度のパーライトが形成され、目標とする耐衝撃特性を確保することができなかった。
【0078】
比較例4は、幅方向のエッジ部の巻き取り温度が本発明で提案する範囲を超過した場合である。そこで、エッジ部の厚さ方向の中心部で過度のパーライトの形成により、耐衝撃性が劣化することが示された。これは、エッジ部温度が高くて、巻き取りコイルの熱伝達がエッジ部でゆっくり進行されたためである。
【0079】
比較例5は、幅方向の中央部の巻き取り温度が本発明の範囲に未達する場合であり、中央部の厚さ方向の中心部でベイナイトが過度に形成され、表層部にはパーライト、MA相及びマルテンサイト等が本発明で提案した水準以上に過度に形成されて伸び率が劣化した。一方、エッジ部は巻き取り温度の範囲を満足して伸び率と耐衝撃特性が比較的良好であったが、表層部でのフェライトが本発明で提案する範囲に未達した。これは、幅方向の中央部の低い冷却終了温度によって巻き取り後のコイルのエッジ部の温度も急速に減少したためであると判断される。
【0080】
比較例6は、幅方向のエッジ部の巻き取り温度が本発明の範囲に未達する場合、厚さ方向の中心部でベイナイトが過度に形成されて伸び率が劣化することを確認することができた。また、中央部の表層部は、フェライトが不足し、中央部ではベイニティックフェライトが不足し、これにより耐衝撃特性と降伏強度の比が本発明で提案するレベルを満たさなかった。
【0081】
比較例7は、鋼の厚さが8mmに満たない場合であり、与えられた鋼成分において冷却速度が過度に適用されるため、表層部ではフェライトが不足し、厚さ方向の中心部にベイニティックフェライトが減少すると同時にパーライトが過度に形成された。これは、初期冷却過程で未変態した相が増加して、比較的Cの含有量が高い部位でパーライトが形成されたものと判断される。その結果、目的とするレベルの伸び率を確保することができなかった。
【0082】
比較例8は、Ti及びNb含有量の合計が本発明の範囲に未達する場合であり、各位置別に測定された微細組織のそれぞれの相分率は、本発明の提案する範囲を満足したが、熱間圧延中の析出物の減少により、微細組織が粗大になり、冷却及び巻き取り後の微細析出物も減少して強度が不足し、耐衝撃性も大きく減少した。
【0083】
比較例9は、冷却速度が関係式1のCR値以上であり、本発明で提案する範囲を満足したが、30℃/sを超過した場合である。その結果、表層部のポリゴナルフェライトが不足し、厚さ方向の中心部にベイナイトが過度に形成されて、目的とするレベルの伸び率を確保することができなかった。
【0084】
以上、実施例を介して本発明を詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。よって、以下に記載された特許請求の範囲の技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。
図1
図2
【国際調査報告】