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特表2024-543075細粒鋼材でできたホットストリップを製造する方法
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  • 特表-細粒鋼材でできたホットストリップを製造する方法 図1
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  • 特表-細粒鋼材でできたホットストリップを製造する方法 図4b)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】細粒鋼材でできたホットストリップを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20241112BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241112BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C21D9/46 S
C22C38/00 301W
C22C38/14
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024527813
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022082238
(87)【国際公開番号】W WO2023089012
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021212902.1
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ハセル・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クリンケンベルク・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】パトベルク・ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ペータース・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュプロック・アウグスト
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA09
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA16
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EA32
4K037EB06
4K037FA00
4K037FD04
4K037FD06
4K037FE01
4K037FE06
4K037JA07
(57)【要約】
本発明は、厚さdWB≦1.75mm及び平均フェライト粒径g≦5μmを有する細粒鋼材でできたホットストリップを製造する方法に関する。機械的特性を調整するため従前必要であったホットストリップの熱処理を、最適化された圧延及び冷却ストラテジーによって回避するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さdWB及びg≦5μmの平均フェライト粒径を有する細粒鋼材でできたホットストリップを製造するにあたり、製造されたホットストリップが、<1.5mmの厚さdWBの時には、300MPaから400MPaまでの降伏点を有し、≧1.5mmかつ≦1.75mmの厚さdWBの時には、400MPaから500MPaまでの降伏点を有し、及び少なくとも以下のステップ:
- 粗製品、特にスラブまたは薄スラブを変形温度に加熱するステップ;
- 前記粗製品を、二回を超える圧下パス、特に五回を超える圧下パスを有するホットストリップミルにおいて、熱間圧延して、dWB<1.5mmの厚さ、またはdWB≧1.5mmかつ≦1.75mmの厚さを有するホットストリップとするステップ;
- 前記ホットストリップを巻き取ってコイルにするステップ;
が行われる製造方法であって、
- 前記ホットストリップは、巻き取ってコイルにする前の最後の圧下パスの後に、急速冷却、特にコンパクト冷却を用いて、熱間圧延温度Tから、硬質相、特にパーライト、ベイナイト及び/またはマルテンサイトの変態温度未満の温度Tに冷却し、及び
- a≧600K/(s・mm)、好ましくはa≧800K/(s・mm)の相対的冷却速度aで急冷することにより、ホットストリップの冷却を行い;
- 前記急速冷却によるホットストリップの冷却は、最後の圧下パス後、≦0.2秒、好ましくは≦0.1秒の期間内に始める、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
熱間圧延温度Tから、変態温度T未満の温度までのホットストリップの前記冷却が、最後の圧下パスの後に≦6m、好ましくは≦4mの距離内で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変態温度T未満の温度への前記冷却が、冷却剤として水を用いて行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
冷却時に、ホットストリップの質量流量に対して、V≧0.002m/kg、好ましくはV≧0.004m/kgの相対的水体積流量が調節されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
- プロセスモデルを含む制御または調整が、冷却速度のための設定値を、最後の圧下パスの前に定める及び/または熱変形の間に調整すること、及び
- プロセスモデルが、ホットストリップの化学分析値及び他のプロセスパラメータに基づいて、熱間圧延プロセスの進行中の組織の発達をシミュレートすること; 及び
- プロセスモデルが、最適化アルゴリズムを使用して、目標の組織、特にフェライト粒径が達成されるように、冷却速度の設定値を決定すること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
- 組織センサーが、ホットストリップの組織組成を決定すること; 及び
- プロセスモデルが、冷却速度の設定値決定の時に、測定された実際の組織組成を考慮すること;
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ホットストリップが、次の分析値:
・C: 0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%
・Si: 0.01%~0.50%、好ましくは0.05%~0.20%
・Mn: 0.30%~2.20%、好ましくは0.40%~1.80%
・Al: 0.015%~0.075%、好ましくは0.015%~0.035%
・N: 0.000%~0.050%、好ましくは0.001%~0.025%
・Nb: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Ti: 0.00%~0.12%、好ましくは0.01%~0.10%
・V: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Mo: 0.00%~0.35%、好ましくは0.01%~0.10%
・Ca: 0.005%~0.035%、好ましくは0.005%~0.025%
・残部として、Fe、並びに製造中に不可避の不純物
を有する鋼材からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
Al/N比が1と10との間、好ましくは1と8との間であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ホットストリップのホットストリップ温度が、急速冷却前の最後の圧下パスの前で、ホットストリップの合金のAe3温度よりも少なくとも50℃、好ましくは少なくとも30℃、最大で100℃高いことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一つに記載の方法よって製造されるホットストリップであって、
- 前記ホットストリップは、dWB<1.5mm、好ましくは≦1.2mmのホットストリップ厚さを有すること; 及び
- 300MPaから400MPaまでの引張強度R、及び≧340MPaの降伏点Rを有すること、
を特徴とする、前記ホットストリップ。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一つに記載の方法によって製造されるホットストリップであって、
- 前記ホットストリップは、dWB≦1.75mm、好ましくは≦1.4mmのホットストリップ厚さを有すること; 及び
- 400MPaから500MPaまでの引張強度R、及び≧340MPaの降伏点Rを有すること、
を特徴とする、前記ホットストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さdWB≦1.75mm、平均フェライト粒径g≦5μmを有する細粒鋼材でできたホットストリップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細粒鋼材でできた帯鋼は、通常は、多段階プロセスで製造される。先ず、ホットストリップを、複数の熱間変形を用いてスラブから製造し、次いでこれを巻き取ってコイルにする。次に、このようにして製造されたホットストリップを熱処理及び/または冷間圧延し、それによって、帯鋼の厚さ、組織及び所望の機械的特性を調整する。しかしながら、消費者側からは、既知の多段階プロセスをより費用対効果が高く、より単純にすることが要求されている。1つの可能性は、帯鋼の厚さ並びにその組織を、熱間圧延の後には既に、可能な最終用途のために調節することである。
【0003】
スラブ、特に薄スラブを、厚さdWB<1.5mmのホットストリップに圧延することは、従来技術から既知である。この目的のために、スラブまたは薄スラブを材料固有の変形温度まで加熱し、一連の圧下パスを有するホットストリップミル中で帯鋼に圧延する。次に、ホットストリップを巻き取ってコイルにする。ホットストリップの組織、それ故、機械的特性は、熱間変形及びコイルの形のホットストリップの冷却の後の冷却条件によって調節される。
【0004】
この既知の方法の欠点は、コイルの形での冷却は、帯の緻密な巻きのために遅く、そのため、使用可能な組織状態は、直ぐには達成されず、後続の追加的なアニール処理によって初めて生じるかまたは調整する必要がある点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、熱間圧延鋼板を、その厚さだけでなく、その組織に関しても直接使用できるように、細粒鋼材を製造するための既知の方法を更に発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、請求項1に記載の特徴を備えた方法、並びに請求項10または請求項11に記載の特徴を備えたホットストリップによって解決される。細粒鋼材でできたホットストリップは、少なくとも次の加工ステップ:
・粗製品、特にスラブまたは薄スラブを変形温度に加熱するステップ;
・前記粗製品を、2回超の圧下パス、特に5回超の圧下パスで、ホットストリップミル中で帯鋼に熱間圧延するステップ;
・前記ホットストリップを巻き取ってコイルにするステップ;
によって製造される。
【0007】
前記ホットストリップは、巻き取ってコイルにする前の最後の圧下パスの後に、急速冷却、特にコンパクト冷却によって、熱間圧延温度Tから、鋼材の変態温度よりも低い温度Tに冷却する。変態温度Tは、オーステナイト分解が始まる温度である。おおよその変態温度Tは、平均化学分析値及び関連するZTUまたはZTA図から読み取ることができる。あるいは、変態温度Tのシミュレートのために平衡モデルを使用することができる。凝固中は、化学元素の偏析が、化学分析値において局所的な偏差を引き起こす場合があるので、こうして求めた変態温度Tは、場合により更に調整する必要がある。この際、これは、局所的分解温度をシフトさせるために、それをより高いまたはより低い局所的変態温度にシフトさせる場合がある。変態温度Tは、変態温度Tの時のスラブのコア及び遷移領域が優先的に考慮されるように、調整される。
【0008】
急速冷却によるホットストリップの冷却は、a≧600K/(s・mm)、より好ましくはa≧800K/(s・mm)の相対的冷却速度aで行われる。追加的に、急速冷却によるホットストリップの冷却は、最後の圧下パスの後に、t≦0.2秒、より好ましくはt≦0.1秒の期間内に始める。
【0009】
本発明の特徴の組み合わせ、すなわち冷却速度、ホットストリップの厚さ、並びにパーライト、ベイナイト及び/またはマルテンサイトの変態温度未満の温度Tへの冷却の組み合わせは、厚さdWB<1.5mmでは300MPaから400MPaまでの、及び厚さdWB≧1.5mmかつ≦1.75mmでは400MPaから500MPaまでの前記の降伏点を有するホットストリップを生成する。
【0010】
本方法の好ましい実施形態は、請求項1を引用する請求項2~9に記載されている。熱間圧延温度Tから変態温度T未満の温度までのホットストリップの冷却は、好ましくは、最後の圧下パスの後に、≦6m、好ましくは≦4mの距離内で行われる。急速冷却を最後の圧下パス後に早く始めるほど、本発明による急速冷却による粒成長を、より良好に低減または防止することができる。この場合、特に細粒鋼では、望ましくない粒成長の抑制に注意する必要がある。
【0011】
変態温度T未満の温度への冷却は、冷却剤として水を用いて行うことが好ましい。この際、水は、標準化された冷却剤であり、輸送が容易であり、かつプロセス工学的に容易に提供することができる。使用される冷却水は、水の冷却特性を改変する添加剤も含有してよい。ガス、特に空気も、本発明の意味での冷却水への添加剤として理解される。この際、ガスが冷却水を輸送するために使用されるか、または、例えばスプレーノズルの後にもしくは用いて、冷却水の噴霧化のために使用されるかは関係ない。本発明の意味での添加剤は、冷却水の沸点または他の物理的もしくは化学的特性を改変するのに適切な化学物質であることもできる。
【0012】
冷却時には、ホットストリップの質量流量に対してV≧0.002m/kg、好ましくはV≧0.004m/kgの相対的水体積流量が設定されることが好ましい。この範囲において、ホットストリップミルの水管理に過度に負担をかけることなく、所望の冷却効果のための十分な水が提供される。
【0013】
少なくとも一つのプロセスモデルを有する制御または調整システムは、最後の圧下パスの前の冷却速度の設定値を定める及び/またはホットストリップの熱間変形の間にそれを適合させる。この際、前記プロセスモデルは、好ましくはオンラインで、圧延すべきホットストリップの化学分析値及び他のプロセスパラメータに基づいて、熱間圧延プロセス中の組織の発達をシミュレートする。本発明の意味において、プロセスパラメータとは、ホットストリップミルにおけるホットストリップの製造に直接または間接的に関連する全てのプロセスパラメータのことと理解される。直接的プロセスパラメータは、例えば、圧延速度、スラブ温度、化学分析値またはパス圧下率であり、間接的なプロセスパラメータは、例えば、ローラの使用年数、冷却水組成または装置の状態である。化学分析値及び既知の温度プロファイルに基づいて組織をシミュレートするシミュレーションモデルは、技術水準から知られている。圧延ミルの制御及び調整システムは、既知の温度モデルを用いて、既存の設定基準値または実際の値に基づいて、ホットストリップの可能な温度プロファイルを決定する。これは、好ましくは、進行中のプロセス中に周期的に行われる。同様に、ホットストリップの実際の組織も、これらの温度プロファイルから組織モデルによって周期的にシミュレートされる。実際の組織が目標の組織から逸脱する場合は、設定基準値、例えば圧延ミルにおける異なる箇所での冷却強度や、パス圧下率が、制御または調整システムによって適合される。
【0014】
更に、プロセスモデルは、最適化アルゴリズムを用いて、目標の組織、特にフェライト粒径が達成されるように、調節されるべき冷却速度のための設定値を決定する。このような制御または調整は、熱間圧延プロセス中の組織の発達を目的通りに調節することによって、完成したホットストリップの機械的特性の調節を改善する。制御システムは、プロセスモデルの助けにより、起こり得る変動をより良好に補償し、最適化することができる。
【0015】
組織センサーが、ホットストリップの組織組成を決定すること、及びプロセスモデルが、冷却速度の設定値決定の時に、測定された実際の組織組成を考慮することが好ましい。ホットストリップミル内での或る箇所での組織センサーの使用は、化学分析値に基づいて組織の発達を決定することを可能とするだけではなく、組織の発達を予測する際に組織の実際の状態を考慮することも可能にする。これにより、冷却速度の設定値の決定がより正確になり、かつ偏差がより小さくなる。
【0016】
ホットストリップは、好ましくは、次の分析値を有する鋼材からなる:
・C: 0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%
・Si: 0.01%~0.50%、好ましくは0.05%~0.20%
・Mn: 0.30%~2.20%、好ましくは0.40%~1.80%
・Al: 0.015%~0.075%、好ましくは0.015%~0.035%
・N: 0.000%~0.050%、好ましくは0.001%~0.025%
・Nb: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Ti: 0.00%~0.12%、好ましくは0.01%~0.10%
・V: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Mo: 0.00%~0.35%、好ましくは0.01%~0.10%
・Ca: 0.005%~0.035%、好ましくは0.005%~0.025%
・残部として、Fe、並びに製造中に不可避の不純物。
【0017】
このような鋼材は、その変態挙動及び機械的基本特性の故に特に好適である。
【0018】
Al/N比は、好ましくは1と10との間、好ましくは1と8との間である。このように調整されたAl/N比は、スラブが凝固する際の縁の亀裂と、圧延ミルにおける第一の変形パスでの縁亀裂の発生し易さとの両方を減少させる。
【0019】
ホットストリップのホットストリップ温度は、好ましくは、急速冷却前の最後の圧下パスの前で、ホットストリップの合金のAe3温度よりも少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも30℃、及び最大で100℃高い。それにより、ホットストリップ中でのフェライトの形成が、急速冷却を開始して初めて起こること、及び圧延ミルスタンドにおけるホットストリップの変形時に、より変形し易いオーステナイトが存在することが保証される。
【0020】
更に、本発明の課題は、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法によって製造されるホットストリップによって解消される。完成したホットストリップは、dWB<1.5mm、好ましくは1.2mmのホットストリップ厚さ、及び300から400mPAまでの引張強度R並びに≧340mPAの降伏点Rを有する。更に、本発明の課題は、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法によって製造されるホットストリップであって、dWB≦1.75mm、好ましくは<1.4mmのホットストリップ厚さ、及び400から500mPAまでの引張強度R並びにR≧340mPAの降伏点を有する、ホットストリップによって解消される。
【0021】
発明の詳細な説明には、3つの図面が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】鋳造圧延プラントの例
図2】プロセス進行中の細粒材でできたホットストリップの例示的な温度プロファイル
図3】プロセス進行中の変形度
図4】a)細粒鋼の従来の組織、b)本発明の方法を用いた場合の組織 以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。全ての図において、同一の技術要素には同一の参照符号が付されている。
【0023】
図1は、ホットストリップの製造のための鋳造圧延プラントの概略的な構造を示す。連続鋳造プラント1は、液状融解物から、スラブまたは薄スラブを製造する。第一の炉2では、スラブは、粗圧延ミル3中での第一のパス前の温度に加熱される。粗圧延ミル3と仕上げミルスタンド5との間には、他の均熱炉4が存在する。最後の仕上げ圧延ミルスタンド4、5の後には、本発明によるコンパクト冷却システム6が配置されている。これは、ストリップの所望の冷却速度を調節するのに十分な冷却液を提供することができる。冷却後、ストリップは、リール6上に巻き取ってコイルにする。
【0024】
図2は、粗圧延ミルスタンドにおける最初のパスから、リールにコイルとして巻き取るまでのホットストリプの温度推移aを有する図を示す。例えば1,120℃のパス温度から開始して、ホットストリップは、複数の段階で、≦1.6mmの厚さに圧延される。この際、それ以上の影響がなければ、温度推移は、例えば曲線aに従って起こる。粗圧延ミルスタンドと、仕上げ圧延ミルスタンドにおける第一のパスとの間の炉は、粗ストリップを加熱するのではなく、むしろ粗ストリップのコアと外層との間の温度を均質化する役割を果たす。最後の仕上げ圧延ミルスタンドにおける最後の変形ステップの後、仕上げされたホットストリップは、コンパクト冷却によって≦520℃の温度に冷却される。次いで、ラミナー冷却によって、例えば150℃のリール温度までの冷却を行う。
【0025】
【表1】
表1には、例示として、細粒材の分析値を示す。この分析値において技術的に起こり得る、個々の圧下パスにおける変形度、及び例示的な実際の変形度を、図3に示す。ここで、変形加工は、本質的に、最初の四つのミルスタンドにおいて起こり得ることは明らかである。その後、起こり得る変形度は減少し、この際、これは、仕上がったホットストリップの許容差に有利に作用する。これにより、この方法は、変形の最初から細粒を調節し、維持することができる。
【0026】
図4a)及びb)は、圧延されたホットストリップのそれぞれの組織摩面を示す。両ホットストリップは、同じ合金からなる、すなわち、それらは、単一バッチのスラブから圧延されている。図a)は、従来通りに製造されたホットストリップの摩面を示す。図b)は、本発明に従い製造されたホットストリップの摩面を示す。この際、両ホットストリップは、熱間圧延の後に、それぞれ巻き取ってコイルとした。組織魔面を比較すると、本発明による方法は、熱間圧延の直後に、明らかにより細かい粒子を生成することが明らかである。平均粒界は図a)では5.5μm、図b)では4.4μmである。図b)に示される組織は、その後の更なる熱処理無しに、ホットストリップの直接使用を可能にする。
[符号の説明]
1 連続鋳造プラント
2 炉
3 粗圧延ミル
4 炉
5 仕上げ圧延ミルスタンド
6 コンパクト冷却
7 リール
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
図4a)及びb)は、圧延されたホットストリップのそれぞれの組織摩面を示す。両ホットストリップは、同じ合金からなる、すなわち、それらは、単一バッチのスラブから圧延されている。図a)は、従来通りに製造されたホットストリップの摩面を示す。図b)は、本発明に従い製造されたホットストリップの摩面を示す。この際、両ホットストリップは、熱間圧延の後に、それぞれ巻き取ってコイルとした。組織魔面を比較すると、本発明による方法は、熱間圧延の直後に、明らかにより細かい粒子を生成することが明らかである。平均粒界は図a)では5.5μm、図b)では4.4μmである。図b)に示される組織は、その後の更なる熱処理無しに、ホットストリップの直接使用を可能にする。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 厚さd WB 及びg ≦5μmの平均フェライト粒径を有する細粒鋼材でできたホットストリップを製造するにあたり、製造されたホットストリップが、<1.5mmの厚さd WB の時には、300MPaから400MPaまでの降伏点を有し、≧1.5mmかつ≦1.75mmの厚さd WB の時には、400MPaから500MPaまでの降伏点を有し、及び少なくとも以下のステップ:
- 粗製品、特にスラブまたは薄スラブを変形温度に加熱するステップ;
- 前記粗製品を、二回を超える圧下パス、特に五回を超える圧下パスを有するホットストリップミルにおいて、熱間圧延して、d WB <1.5mmの厚さ、またはd WB ≧1.5mmかつ≦1.75mmの厚さを有するホットストリップとするステップ;
- 前記ホットストリップを巻き取ってコイルにするステップ;
が行われる製造方法であって、
- 前記ホットストリップは、巻き取ってコイルにする前の最後の圧下パスの後に、急速冷却、特にコンパクト冷却を用いて、熱間圧延温度T から、硬質相、特にパーライト、ベイナイト及び/またはマルテンサイトの変態温度未満の温度T に冷却し、及び
- a ≧600K/(s・mm)、好ましくはa ≧800K/(s・mm)の相対的冷却速度a で急冷することにより、ホットストリップの冷却を行い;
- 前記急速冷却によるホットストリップの冷却は、最後の圧下パス後、≦0.2秒、好ましくは≦0.1秒の期間内に始める、
ことを特徴とする、前記方法。
2. 熱間圧延温度T から、変態温度T 未満の温度までのホットストリップの前記冷却が、最後の圧下パスの後に≦6m、好ましくは≦4mの距離内で行われることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
3. 変態温度T 未満の温度への前記冷却が、冷却剤として水を用いて行われることを特徴とする、前記1.または2.に記載の方法。
4. 冷却時に、ホットストリップの質量流量に対して、V≧0.002m /kg、好ましくはV≧0.004m /kgの相対的水体積流量が調節されることを特徴とする、前記3.に記載の方法。
5.
- プロセスモデルを含む制御または調整が、冷却速度のための設定値を、最後の圧下パスの前に定める及び/または熱変形の間に調整すること、及び
- プロセスモデルが、ホットストリップの化学分析値及び他のプロセスパラメータに基づいて、熱間圧延プロセスの進行中の組織の発達をシミュレートすること; 及び
- プロセスモデルが、最適化アルゴリズムを使用して、目標の組織、特にフェライト粒径が達成されるように、冷却速度の設定値を決定すること、
を特徴とする、前記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6.
- 組織センサーが、ホットストリップの組織組成を決定すること; 及び
- プロセスモデルが、冷却速度の設定値決定の時に、測定された実際の組織組成を考慮すること;
を特徴とする、前記5.に記載の方法。
7. ホットストリップが、次の分析値:
・C: 0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%
・Si: 0.01%~0.50%、好ましくは0.05%~0.20%
・Mn: 0.30%~2.20%、好ましくは0.40%~1.80%
・Al: 0.015%~0.075%、好ましくは0.015%~0.035%
・N: 0.000%~0.050%、好ましくは0.001%~0.025%
・Nb: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Ti: 0.00%~0.12%、好ましくは0.01%~0.10%
・V: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Mo: 0.00%~0.35%、好ましくは0.01%~0.10%
・Ca: 0.005%~0.035%、好ましくは0.005%~0.025%
・残部として、Fe、並びに製造中に不可避の不純物
を有する鋼材からなることを特徴とする、前記1.~6.のいずれか一つに記載の方法。
8. Al/N比が1と10との間、好ましくは1と8との間であることを特徴とする、前記7.に記載の方法。
9. ホットストリップのホットストリップ温度が、急速冷却前の最後の圧下パスの前で、ホットストリップの合金のAe3温度よりも少なくとも50℃、好ましくは少なくとも30℃、最大で100℃高いことを特徴とする、前記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
10. 前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法よって製造されるホットストリップであって、
- 前記ホットストリップは、d WB <1.5mm、好ましくは≦1.2mmのホットストリップ厚さを有すること; 及び
- 300MPaから400MPaまでの引張強度R 、及び≧340MPaの降伏点R を有すること、
を特徴とする、前記ホットストリップ。
11. 前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法によって製造されるホットストリップであって、
- 前記ホットストリップは、d WB ≦1.75mm、好ましくは≦1.4mmのホットストリップ厚さを有すること; 及び
- 400MPaから500MPaまでの引張強度R 、及び≧340MPaの降伏点R を有すること、
を特徴とする、前記ホットストリップ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さdWB及びg≦5μmの平均フェライト粒径を有する細粒鋼材でできたホットストリップを製造するにあたり、製造されたホットストリップが、<1.5mmの厚さdWBの時には、300MPaから400MPaまでの降伏点を有し、≧1.5mmかつ≦1.75mmの厚さdWBの時には、400MPaから500MPaまでの降伏点を有し、及び少なくとも以下のステップ:
- 粗製品、特にスラブまたは薄スラブを変形温度に加熱するステップ;
- 前記粗製品を、二回を超える圧下パス、特に五回を超える圧下パスを有するホットストリップミルにおいて、熱間圧延して、dWB<1.5mmの厚さ、またはdWB≧1.5mmかつ≦1.75mmの厚さを有するホットストリップとするステップ;
- 前記ホットストリップを巻き取ってコイルにするステップ;
が行われる製造方法であって、
- 前記ホットストリップは、巻き取ってコイルにする前の最後の圧下パスの後に、急速冷却、特にコンパクト冷却を用いて、熱間圧延温度Tから、硬質相、特にパーライト、ベイナイト及び/またはマルテンサイトの変態温度未満の温度Tに冷却し、及び
- a≧600K/(s・mm)、好ましくはa≧800K/(s・mm)の相対的冷却速度aで急冷することにより、ホットストリップの冷却を行い;
- 前記急速冷却によるホットストリップの冷却は、最後の圧下パス後、≦0.2秒、好ましくは≦0.1秒の期間内に始める、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
熱間圧延温度Tから、変態温度T未満の温度までのホットストリップの前記冷却が、最後の圧下パスの後に≦6m、好ましくは≦4mの距離内で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変態温度T未満の温度への前記冷却が、冷却剤として水を用いて行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
冷却時に、ホットストリップの質量流量に対して、V≧0.002m/kg、好ましくはV≧0.004m/kgの相対的水体積流量が調節されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
- プロセスモデルを含む制御または調整が、冷却速度のための設定値を、最後の圧下パスの前に定める及び/または熱変形の間に調整すること、及び
- プロセスモデルが、ホットストリップの化学分析値及び他のプロセスパラメータに基づいて、熱間圧延プロセスの進行中の組織の発達をシミュレートすること; 及び
- プロセスモデルが、最適化アルゴリズムを使用して、目標の組織、特にフェライト粒径が達成されるように、冷却速度の設定値を決定すること、
を特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
- 組織センサーが、ホットストリップの組織組成を決定すること; 及び
- プロセスモデルが、冷却速度の設定値決定の時に、測定された実際の組織組成を考慮すること;
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ホットストリップが、次の分析値:
・C: 0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%
・Si: 0.01%~0.50%、好ましくは0.05%~0.20%
・Mn: 0.30%~2.20%、好ましくは0.40%~1.80%
・Al: 0.015%~0.075%、好ましくは0.015%~0.035%
・N: 0.000%~0.050%、好ましくは0.001%~0.025%
・Nb: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Ti: 0.00%~0.12%、好ましくは0.01%~0.10%
・V: 0.00%~0.10%、好ましくは0.01%~0.06%
・Mo: 0.00%~0.35%、好ましくは0.01%~0.10%
・Ca: 0.005%~0.035%、好ましくは0.005%~0.025%
・残部として、Fe、並びに製造中に不可避の不純物
を有する鋼材からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
Al/N比が1と10との間、好ましくは1と8との間であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ホットストリップのホットストリップ温度が、急速冷却前の最後の圧下パスの前で、ホットストリップの合金のAe3温度よりも少なくとも50℃、好ましくは少なくとも30℃、最大で100℃高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の方法よって製造されるホットストリップであって、
- 前記ホットストリップは、dWB<1.5mm、好ましくは≦1.2mmのホットストリップ厚さを有すること; 及び
- 300MPaから400MPaまでの引張強度R、及び≧340MPaの降伏点Rを有すること、
を特徴とする、前記ホットストリップ。
【請求項11】
請求項1または2に記載の方法によって製造されるホットストリップであって、
- 前記ホットストリップは、dWB≦1.75mm、好ましくは≦1.4mmのホットストリップ厚さを有すること; 及び
- 400MPaから500MPaまでの引張強度R、及び≧340MPaの降伏点Rを有すること、
を特徴とする、前記ホットストリップ。
【国際調査報告】