(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ニューラルネットワークをベースにした半導体デバイス応答の予測
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241112BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241112BHJP
G06N 3/0464 20230101ALI20241112BHJP
G06N 3/0442 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L21/66 Z
H01L21/02 Z
G06N3/0464
G06N3/0442
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529631
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 US2022048935
(87)【国際公開番号】W WO2023091313
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507005403
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】マストロ, マイケル, エー
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, トラヴィス, ジェイ
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106CA01
4M106CA12
4M106CA18
4M106CA38
4M106CB19
4M106DJ20
4M106DJ27
(57)【要約】
【解決しようとする課題】
コンピュータ実装の半導体ウエハ評価方法。
【解決方法】
本発明によれば、適切に設計されたニューラルネットワークを使用して、コンピュータは、問題のウエハに関する画像データに加えて、以前のウエハおよび当該以前のウエハ上に作製されたデバイスに関する画像および電気データを取得して、ウエハ上に作製されたデバイスの性能を低下させたり、ウエハのデバイス歩留まりを低下させたりし得る、既知および以前未確認の、構造的特徴との関係および当該構造的特徴間の関係を見つけることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューラルネットワークベースの半導体ウエハ評価方法であって、
半導体ウエハの初期評価を実行するステップと、
前記初期評価のデータをニューラルネットワークに入力するステップであって、前記ニューラルネットワークは、前記初期評価および前記ニューラルネットワークによって実行される後続の評価に基づいて前記ウエハの反復評価を実行する、ステップと、
前記ウエハ上に作製可能な電子デバイスの少なくとも1つの性能指標に関するデータを出力するステップと、
を含む、半導体ウエハ評価方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークに入力される前記データは、前記ニューラルネットワークへの以前のウエハの評価のデータを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項3】
前記ニューラルネットワークに入力される前記データは、評価対象の前記ウエハまたは以前のウエハを撮影した光学顕微鏡画像、光学形状測定画像、ノマルスキー画像、蛍光画像、または紫外線画像を含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項4】
前記ニューラルネットワークに入力される前記データは、評価対象のウエハまたは以前のウエハのフォトルミネッセンス画像、エレクトロルミネッセンス画像、カソードルミネッセンス画像、および/またはオージェ分光画像を含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項5】
前記ニューラルネットワークに入力される前記データは、評価対象のウエハまたは以前のウエハの走査型電子顕微鏡写真、原子間力顕微鏡画像、X線回折(XRD)マッピング画像、またはラマンマッピング画像を含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項6】
前記ニューラルネットワークは、多層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項7】
前記ニューラルネットワークは、ゲート付き回帰型ユニット(GRU)ネットワーク、長・短期記憶(LSTM)ネットワーク、または類似の回帰型ニューラルネットワークである、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項8】
前記性能指標は、前記ウエハの少なくとも1つの領域上に作製された電子デバイスの電流-電圧(IV)応答または容量-電圧(CV)応答である、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項9】
前記性能指標は、前記電子デバイスのオン抵抗性能、安定動作電圧、または最大動作周波数である、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項10】
前記性能指標は、時間の関数としての入力変化に対するターンオン時間もしくはレート、またはターンオフ時間もしくはレートである、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項11】
前記性能指標は、周波数の関数としての出力電力またはゲインである、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項12】
前記出力データは、前記ウエハ上の複数の場所に作製されたデバイスの性能を示すデータを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項13】
前記出力データは、前記ウエハ上の所定の場所に作製されるデバイスの最適な幾何学的構成または最大もしくは最小サイズを示すデータを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項14】
前記出力データは、前記ウエハ上の所定の場所に作製されるデバイスの合格/不合格のブールメトリックを示すデータを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項15】
前記出力データは、前記ウエハ上の所定の場所に作製されたデバイスが所定の機能閾値を超える確率を示すデータを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項16】
前記出力データは、前記ウエハ上に作製可能な光電子デバイスの少なくとも1つの性能指標のデータを含む、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【請求項17】
前記ウエハ上に作製可能な集積回路の少なくとも1つの性能指標に関するデータを出力する、請求項1に記載の半導体ウエハ評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年11月19日に出願された米国仮特許出願第63/281,206号に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発
米国政府は、本発明の所有権を有する。ライセンスに関する問い合わせは、海軍ケース番号210892を添えて、米国海軍研究所技術移転局、コード1004、ワシントンDC20375、米国、+1.202.767.7230、techtran@nrl.navy.milまで。
【0003】
技術分野
本発明は、半導体デバイスの評価に関し、特に、半導体デバイスが作製される半導体ウエハの特性評価または測定に基づいて、類似のウエハおよび当該ウエハ上に作製されたデバイスの特性評価および測定データについて訓練された適切に設計された機械学習モデルと組み合わせることにより、半導体デバイスの作製前に当該半導体デバイスの電気的応答を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
現代の半導体作製は、ブール成長、切断、研磨、エピタキシー、インプラント、およびリソグラフィーを含む数十のステップを用いる。しかし、これらのプロセスステップには、デバイスの性能に悪影響を与える欠陥が発生したり、このような欠陥が発生したウエハからのデバイス歩留まりが低下したりする可能性がある。
【0005】
半導体ウエハに共通する欠陥の1つは、現代の半導体製造で使用されるクリーンルーム施設においてさえ、ウエハ表面に堆積し得る粒子の存在に起因する。同様に、エッチングや堆積などのプロセスステップには、ウエハ材料内に、完成したデバイスの電気的応答を変える独特の粒子が生成される可能性がある。このような粒子の存在は、目視検査によって、または、光学もしくは電子顕微鏡写真、もしくは関連するイメージング技術を使用した事前定義されたコンピュータによる画像解析によって識別することができる。
【0006】
エピタキシーやドーパント注入などの他のプロセスステップには、ウエハに欠陥が発生する可能性があるが、当該欠陥は、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンス、オージェ分光法、または欠陥の放射遷移もしくは非放射遷移を調べる同様の技術によって容易に識別することができる。繰り返しになるが、このようなタイプの欠陥は、計測画像の分析によって、または、同様に、それ自体専門家によって分類された特徴に基づく、コンピュータアルゴリズムで見つけた所定の形状の分析によって、当業者によって簡単に識別される。
【0007】
半導体製造は、プロセス分析、プロセス制御、プロセス最適化、および全体的な歩留まり向上のために多数のデータサイエンスアルゴリズムを用いる。豊富なデータセットは、使用した作製ツールのプロセスパラメータによって、および、ツール自体によるその場測定から、生成される。
【0008】
プロセスとテストデータの相関関係を見つけてプロセスの最適化と一般的な歩留まり分析を実現するために、一連のデータサイエンス分析ツールが長い間適用されてきた。例えば、統計分析から、特定のワークフロー(例えば、リソグラフィーおよびエッチングのステップ中に特定のウエハ上のダイ位置と結合されたさまざまな堆積システム内のウエハ位置の特定の選択)の利用は、メトリック(例えば、最大動作周波数)が改善されたデバイスの生成と予測可能な相関関係があることが知られている。さらに、通常、典型的には作製の後の段階で、金属化テスト構造を組み込んで、プロセス中またはプロセス後の電気テストデータを提供する。作製プロセス全体の統計分析の1つのパラメータとして、最終デバイスまたはウエハ上のテスト構造の電気的応答を使用するのが一般的である。一例として、処理のさまざまな段階でのプロセスパラメータまたは計測メトリックを最終デバイスの電気的応答に関連付ける相関分析がある。
【0009】
デバイスの作製が完了する前にウエハを評価することは、歩留まりを最大化し、不良デバイスの発生率を減らすために不可欠である。(特許文献1を参照。)このような評価の一般的枠組みを使用すると、統計的な可能性(statistical likelihood)の範囲内で、プロセスステップごとまたはプロセスフロー全体での歩留まりの低下につながる特徴を特定することができる。光学計測は、特定のプロセスステップの前または後に半導体表面を検査するために実行できる評価方法の1つである。(特許文献2を参照。)デバイスのウエハ上での処理が完了した後、このような計測技術を用いて、ウエハ上のその物理的位置で障害発生デバイスを生み出した特定の特徴または欠陥を遡り特定することができる。
【0010】
最近、統計分析と最適化アプローチを強化するために機械学習アプローチが導入されている。森谷氏は、機械学習アプローチを使用して、PECVDプロセスのプロセス条件の最適化を強化した。非特許文献1を参照。従来、エッチングおよびリソグラフィーでは、視覚検査とルールベースのアプローチとの組み合わせを利用してプロセスステップまたはマスク自体を修正して、試作した特徴をターゲットの特徴セットに修正するのが一般的である。Hookerらは、全結合ニューラルネットワークを使用して、リソグラフィターゲット補正プロセスを強化した。非特許文献2を参照。
【0011】
彼らは、歩留まり予測、プロセス逸脱検出、およびプロセスフローの簡素化における機械学習の応用について議論した。非特許文献3を参照。一般に、機械学習技術の導入は、半導体作製プロセスにおけるプロセス最適化、プロセス制御、および歩留まり評価にすでに適用されている確立されたデータ分析技術を置き換えまたは強化するために使用されてきた。このような統計分析またはデータ分析それ自体は、当業者が行う分析に取って代わるものであり、または、半導体分野の専門家が直感的に期待するであろう関係を見つけるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第11,415,518号公報
【特許文献2】米国特許出願公報第2021/0389126号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】T. Moriya, "Machine Learning Approaches Optimizing Semiconductor Manufacturing Processes," 2021 5th IEEE Electron Devices Technology & Manufacturing Conference (EDTM), 2021, pp. 1-3, doi: 10. 1109/EDTM50988.2021.9420955
【非特許文献2】K. Hooker et al., "Using machine learning etch models in OPC and ILT correction," Proc. SPIE 11614, Design Process-Technology Co-optimizationXV, 116140B (13 April 2021); doi: 10.1117/12.2587225
【非特許文献3】C. He et al., “Applications for Machine Learning in Semiconductor Manufacturing and Test”, 2021 Electron Devices Technology and Manufacturing Conference (EDTM)
【非特許文献4】J. C. Gallagher, “High Voltage Vertical GaN Diodes for Shipboard Power Conversion,” NRL Technical Report, DTIC Accession No. ADI 145251 (2021)
【非特許文献5】M. Kuball, “Raman spectroscopy of GaN, AlGaN and AIN for process and growth monitoring/control,” Surf. Interface Anal. 2001; 31: 987-999
【非特許文献6】J. Gallagher, et al., “Predicting Vertical GaN Diode Quality using Long Range Optical tests on Substrates,” in 2020 International Conference on Compound Semiconductor Manufacturing Technology, 2020, pp. 207-210
【非特許文献7】J. C. Gallagher et al., “Long range, non-destructive characterization of GaN substrates for power devices,” Cryst. Growth, vol. 506, pp. 178-184, Jan. 2019
【発明の概要】
【0014】
本概要は、詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化した形式で紹介することを意図している。本概要は、特許請求の範囲に記載された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を決定するための補助として使用することを意図したものでもない。代わりに、本概要は、単に、本明細書に記載され主張された主題の簡単な概要として提示されているだけである。
【0015】
本発明は、コンピュータ実装の半導体ウエハ評価方法を提供する。本発明によれば、適切に設計されたニューラルネットワークを使用して、コンピュータは、問題のウエハに関する画像データに加えて、以前のウエハおよび当該以前のウエハ上に作製されたデバイスに関する画像および電気データを取得して、ウエハ上に作製されたデバイスの性能を低下させたり、ウエハのデバイス歩留まりを低下させたりし得る、既知および以前未確認の、構造的特徴との関係および当該構造的特徴間の関係を見つけることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークを使用して、半導体ウエハの重要な処理またはテストの前に、半導体ウエハを分析し、電気的性能、例えば、さまざまなバイアス状態でのデバイスの電流-電圧(IV)応答や容量-電圧(CV)応答などを予測することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明に係るニューラルネットワーク分析技術を使用して得られた応答予測値を、デバイスの合格/不合格の歩留まりメトリックへの入力として使用することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明に係るニューラルネットワーク分析技術を使用して得られた応答予測値を使用して、ニューラルネットワークが視覚情報を学習できるように設計されたモデルを開発することができる。ニューラルネットワークモデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であって入力画像または前のCNN層の出力をスキャンする一連のフィルタを学習する畳み込みニューラルネットワークの1つまたは複数の層に基づく。このタイプのニューラルネットワークは、個々の画像ピクセルは重要ではなく、代わりに、ピクセルのブロックのパターンのほうが有益であるため、特に画像に効果的である。多層CNNの重みを適切に訓練することにより、出力応答に影響を与える入力画像の特徴を本質的に識別するモデルが作成される。このような、学習したフィルタによって識別された入力画像の特徴には、当業者に知られているか予期される特徴だけでなく、当該技術分野の専門家に知られていないもしくは自明でない特徴も含まれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、応答予測値を使用して、特定の種類のデバイスの作製に多かれ少なかれ適し得るウエハ上の領域を特定し、特定のウエハに適したデバイスの作製を可能にし、これにより、歩留まりを向上させ、無駄を削減することができる。
【0020】
このアプローチは、トランジスタやダイオード、集積回路、発光体、コンデンサ、インダクタなどの、ウエハ上に作製可能な複数種類の電子デバイスおよび光電子デバイスの性能を予測するために、ウエハ全体に容易に適用することができる。さらに、適切に設計されたモデルは、回路、より大きな回路のサブコンポーネント、および回路トレースを予測可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、従来技術に従って評価された例示的な半導体ウエハのラマンマップであり、
図1Aは、ラマンA
1振動ピーク位置のマップであり、
図1Bは、ラマンE
2振動ピーク位置のマップである。
【
図2】
図2A~
図2Dは、
図1Bで使用したものと同じウエハ領域を撮影した光学形状測定画像であって半導体ウエハの欠陥に関する追加情報を提供するものである。
【
図3】本発明に係る半導体ウエハのニューラルネットワークベースの評価の例示的な実施形態を示すブロック図であり、この実施形態では、GaNウエハの光学画像を多層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルに入力して、ウエハ上に作製された半導体デバイスの性能を予測する。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、本発明に従って機械学習モデルによって予測された応答と比較した、半導体デバイスの測定されたDCオン抵抗性能(
図1A)および最大DC順方向電流(
図4B)を示すグラフである。
【
図5】3つの例示的なPIN縦型ダイオードから取得された-10V(逆バイアス)から+10V(順バイアス)までの例示的な電流-電圧測定値のプロットであり、正常に機能する(良好な)デバイス、低い(順方向)オン電流を持つデバイス、および逆バイアス(つまり、負の電圧)下で高リークを持つデバイスの電流-電圧性能を示す。
【
図6】作製時のPINダイオードの電流-電圧応答を、本発明に従ってウエハ表面の光学画像のみを入力として用いた機械学習モデルによって予測された応答と比較したプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記に要約した本発明の態様および特徴は、様々な形態で実施することができる。以下の説明では、例示として、態様および特徴を実施することができる組み合わせおよび構成を示す。記載した態様、特徴、および/または実施形態は、単なる例であり、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の態様、特徴、および/または実施形態を利用したり構造的および機能的な変更を加えたりし得ることを理解されたい。
【0023】
以下でより詳細に説明するように、本発明は、コンピュータ実装の半導体ウエハ評価方法を提供する。本発明によれば、適切に設計されたニューラルネットワークを使用して、コンピュータは、問題のウエハに関する画像データに加えて、以前のウエハおよび当該以前のウエハ上に作製されたデバイスに関する画像および電気データを取得して、ウエハ上に作製されたデバイスの性能を低下させたり、ウエハのデバイス歩留まりを低下させたりし得る、既知および以前未確認の、構造的特徴との関係および当該構造的特徴間の関係を見つけることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークを使用して、半導体ウエハの重要な処理またはテストの前に、半導体ウエハを分析し、電気的性能、例えば、さまざまなバイアス状態でのデバイスの電流-電圧(IV)応答や容量-電圧(CV)応答などを予測することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明に係るニューラルネットワーク分析技術を使用して得られた応答予測値を、デバイスの合格/不合格の歩留まりメトリックへの入力として使用することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明に係るニューラルネットワーク分析技術を使用して得られた応答予測値を使用して、ダイオードまたはトランジスタの応答を予測するモデルを開発することができる。当該モデルは、類似のウエハの入力データおよび出力データで訓練される。GaNベースのデバイスの入力データの1つは、光学画像である。ニューラルネットワークは、視覚情報を効果的に学習できるように設計されている。適切な設計は、各層が、入力画像またはネットワーク内の前の層の出力と畳み込まれるフィルタのセットを学習する多層畳み込みニューラルネットワークである。ニューラルネットワークを適切に設計することにより、ネットワークの学習された重みによって、デバイスの電流-電圧応答や容量-電圧応答、関連するメトリックなどの関係出力を正確に予測することができる訓練手順が可能になる。
【0027】
いくつかの実施形態では、応答予測値を使用して、特定の種類のデバイスの作製に多かれ少なかれ適し得るウエハ上の領域を特定し、特定のウエハに適したデバイスの作製を可能にし、これにより、歩留まりを向上させ、コストを削減し、作製プロセスで使用されるツールの有効利用を向上させることができる。
【0028】
このアプローチは、トランジスタやダイオード、集積回路、発光体、コンデンサ、インダクタなどの、ウエハ上に作製可能な複数種類の電子デバイスおよび光電子デバイスの性能を予測するために、ウエハ全体に容易に適用することができる。
【0029】
本発明に係る半導体ウエハ評価方法は、評価対象のウエハに関する入力データ、以前のウエハの評価の出力データ、ならびに、以前に処理されたウエハの入力データおよび出力データで訓練されたニューラルネットワークであって、以前の評価に関するデータを取り、評価対象のウエハに関するデータに適用して、ウエハから処理され得るデバイスに関する情報を取得するニューラルネットワークの使用を含む。このような情報には、ウエハの特定の領域に処理可能な1種類以上のデバイスの電気的応答の予測、1種類以上のデータの作成に多かれ少なかれ適し得るウエハ上の場所を特定するウエハのマップ、ウエハ上での作製に多かれ少なかれ適し得るデバイスの種類の特定、または、多数のデバイスを含む広い領域もしくはウエハ全体の総合的な評価を含めることができる。
【0030】
評価対象のウエハに関する入力データセットには、構造的画像、光学画像、および/もしくは発光画像、ならびに/または、当該画像セットから処理されたメトリックを含めることができる。例示的な実施形態では、入力には、光学形状測定画像やノマルスキー画像、蛍光画像、紫外線画像など、当該技術分野で知られている任意の1つ以上の光イメージング技術の結果を含めることができる。他の実施形態では、入力データには、評価対象のウエハまたは以前のウエハのフォトルミネッセンス画像、エレクトロルミネッセンス画像、カソードルミネッセンス画像、およびオージェ分光画像のうちの1つ以上が含まれ得る。さらに他の実施形態では、入力データには、評価対象のウエハまたは以前のウエハの走査型電子顕微鏡写真、原子間力顕微鏡画像、X線回折(XRD)マッピング画像、またはラマンマッピング画像が含まれ得る。さらに他の実施形態では、入力データは、すでに評価された以前のウエハに関する入力データから得られたメトリックを含むか、または、そのようなメトリックのみに基づくものであってもよい。
【0031】
対象のウエハを評価するためのニューラルネットワーク法で使用される以前の評価からの出力データには、以前のウエハの光イメージングの結果に関するデータ、以前のウエハ上に作製された1つ以上のデバイスの種類、サイズ、および配置に関するデータ、ならびに、そのようなデバイスの電気的性能に関するデータ(例えば、デバイスの電流-電圧性能や容量-電圧性能に関するデータなど)を含めることができる。
【0032】
本発明によれば、ニューラルネットワークは、これらの入力を受け取り、一連の数学的演算によって出力を計算する。ニューラルネットワークは、学習可能な重みを持つ行列演算から構成される一連のレイヤ(層)を有する。通常は、ネットワークが学習できる関係の複雑さを増大させるために、個々のレイヤの出力に活性化関数が適用される。多次元の入力データは、レイヤの行列および非線形演算によって多次元の出力データに変換される。出力データは、ニューラルネットワークの次のレイヤへの入力となる。ネットワーク内の各層は順に入力から出力までの演算を実行し、通常は最後の層の出力がターゲットデータの次元を持つように設計されている。
【0033】
行列代数から、一連(または複数の層)の線形行列演算は1つ(つまり、1層)の線形行列演算と同等であることが知られている。活性化関数は、ネットワーク内の1層の入力から出力へのマッピングの複雑さを増大させる。通常、活性化関数は、正規化線形ユニット(ReLu:rectified linear unit)、双曲線正接(TanH:hyperbolic tangent)やシグモイド(sigmoid)、スウィッシュ(Swish)、ソフトマックス(softmax)などの非線形関数である。通常、特定の1層には1種類の活性化関数のみが適用されるが、異なる層の出力には異なる活性化関数を適用することができる。
【0034】
ニューラルネットワークの重みは、入力から出力までの訓練データセットの特定のモデルにバックプロパゲーションアルゴリズムを適用することによって効率的に学習できることが知られている。
【0035】
ニューラルネットワークには、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:convolutional neural network)、全結合(fully-connected)ニューラルネットワーク、ならびに、ゲート付き回帰型ユニット(GRU:gated recurrent unit)ネットワークまたは長・短期記憶(LSTM:long short term memory)ネットワークを含む回帰型ニューラルネットワークなど、当該技術分野で知られている任意のニューラルネットワークが含まれ得る。
【0036】
このようなニューラルネットワークを使用して、コンピュータは、このような入力データを処理し、ウエハ上に作製され得るデバイスの電気的性能を示す出力データ(例えば、起こり得る電流-電圧(IV)応答または容量-電圧(CV)応答に関するデータなど)を提供することができる。データは、ウエハ全体に関するものでも、ウエハの特定の領域のみに関するものでもよく、ウエハのどの領域が特定のデバイスまたは特定のサイズを有するデバイスの作製に多かれ少なかれ適しているかに関する情報を提供する。いくつかの実施形態では、コンピュータは、デバイス上のさまざまな場所に作製されたデバイスの性能を示す、または、そのようなデバイスの最適な幾何学的構成もしくは最大もしくは最小サイズを示す、「マップ」またはウエハを生成することができる。
【0037】
本発明に係るニューラルネットワークベースの半導体ウエハ評価方法の最初のステップは、対象のウエハに関する入出力データのセットを取得することであり、類似の以前のウエハも取得する必要がある。多くの場合、入力データは、問題のウエハに関するラマン分光データおよび/または光学形状測定データから得られ、出力データは、以前のサンプル上に作製されたPIN縦型ダイオードの電流-電圧(IV)データで構成されている。
【0038】
ラマン分光法および光学形状測定法は、特に、半導体ウエハにおける欠陥の存在を検出するのに有用である。
【0039】
ラマン分光法を使用して、
図1Aおよび
図1Bに示すように、ウエハにおけるA
lピークおよびE
2ピークの位置を評価することによって結晶応力および電子キャリア濃度の変化を検出することができる。
【0040】
図1Aおよび
図1Bに示すウエハの場合、ウエハのラマンスペクトルは、532nmレーザを使用して励起され、比較的大きなサンプル領域にわたって取得された。サンプルは、規則的な結晶欠陥パターンを持つタイプII-aウエハであった。図中の黒いボックスは、縦型デバイスの陽極金属によって覆われた領域を表す。
【0041】
ラマンスペクトルの2つのピークを用いて、デバイスの性能に影響を及ぼす可能性のある欠陥が存在するウエハの領域を特定する。
【0042】
A
1(LO)ピークは、キャリア濃度の変化を検出するのによく使用される。
図1Aに示すように、このA
l(LO)ピークの位置から、サンプルにはキャリア濃度が比較的高い円形領域の規則的なパターンがあることがわかる。
【0043】
図IBに示すE
2ピークマップでは、高い結晶応力のポイントがしばしばプロット内で識別可能なスポットとして観察可能であるが、シフトは微妙な場合があり、当該マップに当該スポットが常に存在するとは限らない。プロット内に当該スポットが存在する場合、当該スポットは結晶応力の変化がある領域を示しており、A
l(LO)ピークによって示されるキャリア濃度の増加と同様に、ウエハ上に作製されたデバイスの性能を低下させる可能性がある。(非特許文献4参照。)このようなピークおよびキャリア濃度の計算方法についての詳細な説明は、例えば、非特許文献5に見つけることができる。
【0044】
光学形状測定法(例えば、ZYGO光学形状測定法または他の適切な方法)は、ウエハ表面の異常な特徴(バンプやピットなど)を検出するのに使用することができ、ウエハの潜在的な欠陥を特定するための別の方法である。このような表面異常は、しばしば、ウエハ表面下の欠陥によって引き起こされ、ウエハのそのような欠陥領域上に作製されたデバイスの性能を著しく低下させる可能性がある。
図2Aおよび
図2Bには例示的な光学形状測定画像が示されており、これらの画像は、図中に丸で囲んだ領域で示すように、撮像されたウエハ上に表面異常が存在することを示している。
【0045】
従来技術に係るこのような半導体ウエハを評価するための非機械学習環境におけるアプローチの一例では、フルウエハをグリッドに分割してウエハ上に作製可能なデバイスのサイズを推定し、その後、長距離光学手法を用いて、異常値を検出する一般化されたESD試験を表面RMSの測定と組み合わせて使用することにより、歩留まりを推定する。(非特許文献6参照。また、前掲の特許文献2も参照。)この方法は、ウエハのスクリーニングには十分な精度を有するが、特定の種類の表面特徴を使用してデバイスの故障を予測できるかどうかはまだ実証されていない。
【0046】
複数のデバイスを、撮像されたウエハ上に、図中に四角で示した場所に作製した。これらのデバイスには、デバイスのエッジ終端領域にバンプがあったり、1.5μmを超える深さのピットがあったり、いずれかであった。したがって、
図2Aに示す光学形状測定画像における円は、ウエハの構造的欠陥の位置を強調表示し、
図2Bの2つの円は、ウエハ上の表面ピットの位置を強調表示している。
図2Cおよび
図2Dに示すように、表面欠陥が顕著な領域に作製されたデバイスは、
図2Cおよび
図2Dの白い四角で示されるように、大きな電流損失を示した一方で、ウエハの他の領域に作製されたデバイスは、はるかに少ない損失を示した。しかし、
図2Cおよび
図2Dの黒い四角で示すように、滑らかな光学形状測定画像を示す領域上に作製されたデバイスであっても性能が低下したことに留意すべきである。
【0047】
本発明に係るニューラルネットワーク評価方法は、この入力データを使用して、IV(電流-電圧)、CV(容量-電圧)、またはIVとCVの両方の予測を提供する。IVおよびCVの予測を使用して、理想係数、(オン)電流、オン電圧、および順方向電圧でのオン抵抗、逆方向電圧での(オフ)リーク電流を含む特定のメトリックを抽出することができる。
【0048】
同様のネットワーク設計を訓練して、理想係数、(オン)電流、オン電圧、および順方向電圧でのオン抵抗、逆方向電圧での(オフ)リーク電流を含む特定のメトリックを直接出力し、予測することができる。ここで、ネットワークの出力は、出力メトリックの次元に等しい次元を持つベクトルである。
【0049】
特定のメトリックが予測されたIVおよびCVデータから抽出される設計でも、メトリックが直接計算される設計でも、どちらでも1つ以上のメトリックに対する合格/不合格の閾値を定義することができる。合格/不合格の基準に基づいて合格として認められるデバイスの数は、特定の空間的位置における局所的な歩留まりの推定に使用することができる。同様に、合格として認められるデバイスの数を広い領域またはウエハ全体にわたって合計して、全体的な歩留まりを予測することもできる。
【0050】
機械学習アルゴリズム
【0051】
本発明によれば、光学形状測定を入力データとして使用し、ダイオードのIV曲線を出力データとして使用することにより、半導体ウエハおよびその性能を評価するための機械学習アルゴリズムを訓練して、評価対象のウエハ上に作製されたデバイスのIVおよび/またはCV応答、ならびに他のメトリック(例えば、ターンオン電圧やブレークダウン電圧など)を正確に予測することができる。同様に、入力の変化に応じたオン状態への立ち上がり時間やオフ状態への立ち下がり時間などのメトリックを、時間の関数にすることができる。さらに、モデルを訓練して、出力電力やゲインなどの応答を周波数の関数として予測することができる。バックプロパゲーションアルゴリズムは、ネットワークの数学的演算の重みを繰り返し調整してネットワークの出力を既知のターゲット出力に適合させることによって機能する。
【0052】
以下、半導体ウエハを評価し、ウエハ上に作製される半導体デバイスの性能を予測するためのニューラルネットワークベースの方法について、当該技術分野で知られている畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の文脈で説明するが、当業者であれば、他の適切なニューラルネットワークおよび/または機械学習アプローチも使用可能であり、そのようなアプローチの使用はすべて本発明の範囲内であるとみなされることは容易に理解できるであろう。本発明に係る半導体デバイスの性能を予測するためのニューラルネットワークベースの方法のうち、いくつかの実施形態では、モデルが、デバイスのIVデータを直接予測することができ、他の実施形態では、ニューラルネットワークモデルによって得られた予測されたIVおよび/またはCV性能からデバイスのメトリックを導出することができる。
【0053】
よって、
図3は、本発明に係る半導体ウエハの例示的なニューラルネットワークベースの評価およびその半導体ウエハ上に作製されるデバイスの性能の予測の側面を示すブロック図である。
図3に示すように、前処理(例えば、ZYGOマッピング)を経たウエハの非破壊光学画像は、3つの畳み込み層302a/302b/302cと、デバイス出力(例えば、電流-電圧(IV)応答)の予測値を出力する2つの全結合層304、305とで構成されるニューラルネットワークモデルに入力される。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の各層は、画像全体または前のCNN層のデータ出力全体にわたって繰り返しスキャンされる一連のフィルタで構成され、最終出力の次元は、電流-電圧ターゲットデータの次元に等しい。画像は、表面高さ情報のみを含むため、カラー画像は、単に1次元[N×N]平面の表現である。ここで、Nは、正方形画像の所定のピクセルの高さと幅である。
【0054】
[N×N×l次元の]画像301は、第1の畳み込み層302aの入力データである。第1の畳み込み層では、ブロックと矢印は、[5×5×1]フィルタ重み行列および画像の[5×5×1]部分のピクセルに対するドット積計算を示す。このドット積を入力画像全体にわたって繰り返して、[N×N×l]平面を作成する。所定のC個のフィルタ(例えば、C=16)に対してフィルタ演算を繰り返して、302bで表される[N×N×C]出力ボリュームを作成する。このような[N×N×C]データブロック302bで表される第1の畳み込み層の出力は、次の畳み込み層の入力データである。2番目の畳み込みの数学的プロセスは、302bのデータブロックが16チャネルの深さであることを除いて、最初の畳み込みのプロセスと同様である。302bの第2の畳み込み層では、ブロックと矢印は、[5×5×16]フィルタ重み行列およびデータの[5×5×16]部分のデータポイントに対するドット積計算を示す。このドット積を302bのデータブロック全体にわたって繰り返して、[N×N×l]平面を作成する。所定のC2個のフィルタ(例えば、C2=32)に対してフィルタ演算を繰り返して、302cで表される[N×N×C2]出力ボリュームを作成する。302cのデータブロックは、2番目の畳み込みの出力であり、第3の畳み込み層への入力である。3番目の畳み込みの数学的プロセスは、データブロック303として表される3番目の畳み込みの出力と同様である。各畳み込みステップ302a、302b、302cでは、畳み込みの出力に最大プーリング関数が適用され、続いて正規化線形活性化ユニット(ReLu)が適用される。
【0055】
303の3次元データブロックは、フラットニング操作によって1次元の行列に変換される。この1次元データは、全結合層への入力であり、その出力は、1次元ブロック304で表される。第1の全結合層は、予測の堅牢性(robustness)を向上させるためにReLu活性化およびドロップアウト関数を含むが、画像には示されていない。
【0056】
304の1次元ブロックとして表される第1の全結合層の出力データは、第2の全結合層の入力データである。
【0057】
第2の全結合層の出力は、実験出力データ(例えば、特定の電圧範囲にわたる電流応答)と同じ形状を有する1次元ブロック305として表される。
【0058】
層の数、フィルタの数、フィルタの次元、フィルタのストライド長、活性化関数の種類の数、プーリング層の適用などのパラメータは、入力データと出力データ(入力データと出力データの次元を含む)および入力データの特徴の特徴的次元に応じて調整することができる。
【0059】
図3の前の説明では、ネットワークの最後の層が、実験データ(例えば、電流-電圧または容量-電圧の実験データ)の次元と一致する次元を持つ全体的な出力を生成するように設計されていることを示した。同様のネットワークは、デバイスのメトリックを直接予測することができる。ここでは、最後の層からの出力の次元は、ターゲットメトリックを含むベクトルの次元と等しい。例えば、ニューラルネットワークを、理想係数(Ideality Factor)、最大順方向電流(Max I
fwc)(A/cm
2)、200V逆リーク電流(200 V I
rev)(A/cm
2)、オン抵抗(R
on)(Ω・cm
2)、およびターンオン電圧(V
on)の5つの特定のメトリック値を表す5つの値のベクトルを生成するように設計することができる。
【0060】
予測の精度をテストするために、ニューラルネットワークモデルを、デバイスデータの80%を選択して訓練し、残りの20%のデバイスデータでテストした。テストデータは、モデルのパラメータに合わせるのには使用しない。モデルの精度と堅牢性を評価するには、訓練データとテストデータを分離する必要があることが知られている。以下の表1は、本発明に係るニューラルネットワークベースの方法を使用して評価されたウエハの理想係数、最大順方向電流、200V逆リーク電流、オン抵抗、およびターンオン電圧の例示的な予測結果を示している。
【0061】
【0062】
テストでは、これらすべての特性が実験結果の6%以内で予測された。
【0063】
図4Aおよび
図4Bのグラフは、本発明に従って機械学習モデルによってテストされたオン抵抗および最大順方向電流のポイントの精度を示しており、
図4Aは、機械学習モデルによって予測されたオン抵抗応答と比較した、テストデータセットで測定されたDCオン抵抗を示し、
図4Bは、機械学習モデルによって予測された応答と比較した、テストデータセットで測定された測定最大DC順方向電流を示している。両方の図にある1:1比率の線は、視覚的にわかりやすくするために含めている。
【0064】
これらのプロットから、テストされたポイントの91%が予測値の5%以内にあることがわかる。これは、アルゴリズムが順方向バイアス条件の予測に効果的であることを示している。これは予想されることである。なぜなら、表面粗さ、塵の粒子、およびヒロック(hillock)が大きいと接触抵抗またはエピタキシャル層の抵抗が大きくなる可能性が高く、これは本技術で明確に検出できるからである。(非特許文献7参照)。
【0065】
いくつかの実施形態では、デバイスの合格/不合格の歩留まりを、上述した方法の追加の次工程として予測し得る。例えば、1つ以上のメトリックの合格/不合格ポイントとして、所定の閾値を割り当て得る。例えば、合格デバイスには、-200Vの逆電圧での絶対電流レベルが2・10-7A/cm2未満、および、オン抵抗(Ron)が2mΩ/cm2未満であることが必要である。
【0066】
図5および
図6は、本発明に係るニューラルネットワークベースの方法を使用したデバイス評価の結果をさらに示している。
【0067】
図5は、3つの例示的なPIN縦型ダイオードから取得された-10V(逆バイアス)から+10V(順バイアス)までの例示的な電流-電圧測定値のプロットであり、正常に機能する(良好な)デバイス(501)、低い(順方向)オン電流を持つデバイス(502)、および逆バイアス(つまり、負の電圧)下で高リークを持つデバイス(503)の電流-電圧性能を示している。
【0068】
図6は、作製時のPINダイオードの電流-電圧応答を、本発明に従ってウエハ表面の光学画像のみを入力として用いた機械学習モデルによって予測された応答と比較したプロットである。電流-電圧実験データとモデルによって予測された応答とはよく整合している。ソース電流の急激な増加は、pn接合のターンオンの特徴であり、モデルは、このターンオンのメカニズムを正確に表現する。実験と予測の電流-電圧応答の整合は、このニューラルネットワークベースのアプローチの有効性を実証している。
【0069】
利点と新機能
【0070】
本発明の方法により、作製の前または初期段階において、対象の半導体ウエハ上に作製されるデバイスの電気的応答を決定することができる。また、本発明の方法により、ウエハ上に作製可能なデバイスの場所、数、サイズ、および形状を決定して、無駄を減らし、デバイス作製の効率を高めることができる。
【0071】
本方法のユニークな点は、ウエハの光学画像に基づいて電流-電圧データおよび容量-電圧データを含む縦型半導体ダイオードの電気出力を予測することができるニューラルネットワークを使用すること、ならびに、ウエハの光学画像に基づいて半導体デバイスの電気出力パラメータを予測することができるニューラルネットワークを使用することである。
【0072】
本発明は、テスト電気データまたは最終リソグラフィー後のイメージングを行わずに半導体デバイスの電気出力を予測する方法を提供する。
【0073】
また、本発明は、各ダイの合格/不合格を直接予測することによって、または、類似のウエハ上にその後作製されたデバイスの電気的応答を最初に予測することによって、半導体ウエハ上のダイの合格/不合格の歩留まりを予測する方法も提供する。
【0074】
本発明は、作製の初期段階におけるウエハの非破壊的な構造特性評価に基づいて、ニューラルネットワークによって、ウエハ上に作製されたデバイスの電気的性能を分析する方法を提供する。
【0075】
本発明は、ウエハ全体にわたって単一のデバイスまたは多数のデバイスを評価する方法を提供する。
【0076】
処理されたデバイスは、ダイオードやMOSFET、JFET、HEMT、HBTなどの任意の横型電子デバイス、または、ダイオードやMOSFET、JFET、サイリスタ、HBTなどの任意の縦型電子デバイスであることができる。
【0077】
他のケースでは、処理されたデバイスは、LEDやマイクロLED、レーザダイオード、太陽電池、薄膜トランジスタ、光電池などの任意の光電子デバイスであることができる。
【0078】
本発明の方法を用いて評価可能な半導体材料には、例えば、SiC、BN、GaN/AlGaN/InGaN/InAlGaN、ZnO/MgZnO、ZnSe/ZnMgSe、CdTe/CdMnTe、ZnS、Ga2O3/(AlxGa1-x)2O3、またはダイヤモンドを含む、任意のワイドバンドギャップ半導体が含まれる。
【0079】
また、本発明の方法を用いて評価可能な半導体材料には、SiやGe、SiGe、GaAs、AlGaAs、InGaAs、InP、GaP、CuO2、CuO、CuS、CuInGaSe2、CuZnSnS2、類似の合金などの、任意の中バンドギャップまたは狭バンドギャップ半導体も含まれる。
【0080】
本発明の方法を用いて評価可能な材料には、ペンタセンやポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3-アルキルチオフェン)(P3AT)、ポリ(3-オクチルチオフェン)(P3OT)、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などの有機半導体材料がさらに含まれる。
【0081】
本発明は、コンタクトメタライゼーションを含む最終処理の前に撮影または抽出された光学的、構造的、および電気的なウエハマップおよび画像に基づいて、半導体デバイスの応答を予測するアプローチを提供する。適切に設計されたニューラルネットワークは、専門家によって容易に識別される特徴だけでなく、専門家にとって現在未知またはほぼ知覚不可能な特徴または当該特徴間の関係も本質的に学習して応答する。
【0082】
特定の実施形態、態様、および特徴について説明してきたが、当業者であれば、本明細書に記載された発明はこのような実施形態、態様、および特徴のみに限定されるものではなく、本明細書に記載され主張された根本的な発明の精神および範囲内にあるあらゆる変更例および代替実施形態も想定していることが容易に理解するであろう。本出願は、本明細書に記載され主張された根本的な発明の精神および範囲内におけるあらゆる変更例を想定しており、そのような変更例および代替実施形態はすべて、本開示の範囲および精神内にあるものとみなされる。
【国際調査報告】