(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】多孔質炭素またはグラファイトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/205 20170101AFI20241112BHJP
【FI】
C01B32/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529759
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022081768
(87)【国際公開番号】W WO2023094199
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021130581.0
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522242292
【氏名又は名称】ニッポン・コルンマイヤー・カーボン・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】コルンマイヤー・トルステン
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ダーフィト
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA02
4G146AB01
4G146AB05
4G146BA02
4G146BA03
4G146BA13
4G146BA31
4G146BB02
4G146BC04
4G146BC23
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC34
4G146BC34A
4G146BC34B
4G146BC35A
4G146BC35B
4G146BC38A
4G146BC38B
4G146CB02
(57)【要約】
多孔質炭素またはグラファイトの製造方法。本発明は、再生可能原料から多孔質炭素またはグラファイトを費用効率よく製造するための、実現することが容易な方法であって、構造要素、鋳型または容器として使用するための、任意の成形品の製造のための機械的後処理を可能にする方法を創出する、という課題に基づくものである。これは、粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦-もしくは米デンプンを型/容器(1)に緻密な塊として充填し;型/容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化し;前記の充填された型/容器(1)における塊(2)を、炉内で、170℃~450℃の第1の温度レベルに、酸化性または不活性雰囲気中で加熱することにより、収縮プロセスを生じさせ;より長い時間にわたって、加熱した塊(2)を安定化し;塊(2)を、炉内で、炭化のために>1,000℃のまたはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成し;および緻密なブランク(5)を型/容器(5)から取り出すことによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの簡単な製造方法であって、
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプンまたは他のデンプンを型/容器(1)に充填するステップ、
- 型/容器(1)内で緻密な塊(2)を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊(2)に加えることにより容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の充填された型/容器(1)における緻密な塊(2)を、炉内で、170℃~450℃の第1の温度レベルに、5℃のステップで、酸化性または不活性雰囲気中で、塊(2)をさらに圧縮/高密化しながら加熱することにより、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える期間にわたって、加熱した塊(2)を安定化するステップ、
- 塊(2)を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の第2の温度レベルまで、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成するステップ、および
- 緻密なブランク(5)を型/容器から取り出すステップ、
を特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの簡単な製造方法であって、
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプンまたは他のデンプンを型/容器(1)に充填するステップ、
- 緻密な塊(2)を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊(2)に加えることにより容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の緻密な塊(2)の約190℃の開始温度への加熱、それに続く数時間にわたる冷却プロセス、および緻密な塊(2)の、当該塊(2)をさらに圧縮/高密化しながらの210~230℃への連続的な再度の加熱によって、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える比較的長い期間にわたって、加熱した塊(2)を安定化するステップ、
- 塊(2)を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の第2の温度レベルまで、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成するステップ、および
- 緻密なブランク(5)を型/容器から取り出すステップ、
を特徴とする、前記製造方法。
【請求項3】
小麦デンプンまたは米デンプンに、バインダーとして糖または油が混合されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
小麦デンプンもしくは米デンプン、または小麦デンプンもしくは米デンプンと糖もしくは油(食用油)との混合物に、さらに別のグラファイト化が可能な材料が混合されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
さらに別のグラファイト化が可能な材料として、高温耐性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトダスト、天然グラファイト、PVA(ポリビニルアルコール)接着剤が混合されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
小麦もしくはトウモロコシデンプンまたは混合物に、天然繊維物質、例えば、綿、セルロース、竹、麻などが混合されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
型/容器(1)に充填された塊(2)の圧縮/高密化が、例えば、重しによって、塊(2)上に載った板にさらに荷重をかけることにより、塊(2)に作用する均一な圧力を発生させることによって、または型/容器(1)の振動もしくは振とうによって、または例えば型/容器(1)に対する打撃による、塊(2)に横からもしくは下から作用する激しい衝撃によって、行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
炭化のための塊(2)の加熱が、複数の段階で行われ、その際50~100℃の段階ごとに、約30~120分の休止が導入されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
保護ガスとして、希ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドンが使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
炭化またはグラファイト化が、>500mbarの圧力で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
テフロンでできた型/容器(1)が使用され、および/または塊を充填する前に型/容器(1)の内側が布帛(4)で覆われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
本発明に従って製造された、グラファイトでできたブランク(5)が、炉内において、>1,200℃の温度で、キャリアガスとしてのアルゴンと共にSiOを供給しながら、30mbarの圧力で、SiCに変換されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
SiCへの変換が、約1,520℃の温度で行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品を製造するための機械的処理に適した、均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料の製造は、通常、コークス、カーボンブラックまたはグラファイトを、所望の粒子径を有する粒状物、または粉末が得られるまで粉砕することによって行われる。これらの粒状物の単純な圧縮による変形は不可能なので、粒状物に適切なバインダー、例えば熱可塑性プラスチックが混合される。次いで、この混合物を均質化し、圧縮により所望の形態にする。このようにして製造された成形体は、圧粉体(Gruenling)とも呼ばれ、最終的には、炉内で適切な雰囲気下、高温で炭化またはグラファイト化される。
【0003】
炭化/グラファイト化に続いて、次に、炭素部品またはグラファイト部品を製造するための機械的処理を続けることができる。
【0004】
言うまでもなく、上記の製造プロセスは、非常に手間がかかるものであり、使用される出発材料のために非常に高価である。
【0005】
CN113620272A(引用文献1)から、デンプンとカーボンブラックとを最初に所定の比率で機械的にかつ均一に互いに混合する、グラファイトでできた電池電極を製造する方法が知られている。次いで、混合物が坩堝に入れられ、マッフル炉中、200~600℃で3~8時間にわたって安定化される。最後に、混合物を、窒素雰囲気中で800~1,600℃で1~3時間にわたって炭化して、カーボンブラックをベースとする炭素微小球を製造し、続いて室温に冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、再生可能原料から均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトを費用効率よく製造するための、実現することが容易な方法であって、構造要素、鋳型または容器として使用するための、およびSiC成形品に容易に変換できる、任意の成形品の製造のための機械的後処理を可能にする方法を創出する、という課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の根底をなす前記課題は、以下の方法ステップによって解決される:
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦-、トウモロコシ-、米または他のデンプンを型/容器に充填するステップ、
- 型/容器内で緻密な塊を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊に加えることにより容器内の塊を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の充填された型/容器における緻密な塊を、炉内で、170℃~450℃の第1の温度レベルに、5℃のステップで、酸化性または不活性雰囲気中で、塊をさらに圧縮/高密化しながら、ゆっくりと加熱することにより、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える比較的長い時間にわたってブランクを安定化するステップ、
- 前記ブランクを、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランクを形成するステップ、および
- 緻密なブランクを型/容器から取り出すステップ。
【0009】
本発明の根底をなす前記課題はさらに、以下の方法ステップによって解決される:
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦-、トウモロコシ-、米または他のデンプンを型/容器に充填するステップ、
- 型/容器内で緻密な塊を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊に加えることにより容器内の塊を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の緻密な塊の約190℃の開始温度への加熱、それに続く数時間にわたる冷却プロセス、および緻密な塊の、当該塊をさらに圧縮/高密化しながらの210~230℃への連続的な再度の加熱によって、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える比較的長い時間にわたって、加熱した塊を安定化するステップ、
- 塊を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランクを形成するステップ、および
- 緻密なブランクを型/容器から取り出すステップ。
【0010】
好ましくは、第1の温度レベルへのゆっくりとした加熱は、5℃ずつのステップで行われ、各ステップ間の待機時間は約8時間である。
【0011】
小麦デンプン、トウモロコシデンプンまたは米デンプンには、バインダーとして、糖または植物油を混合することもできる。
【0012】
さらに別の実施形態では、小麦デンプンまたは米デンプンと糖または油(食用油)との混合物に、さらなる外来物質として、さらに別のグラファイト化が可能な材料が混合される。
【0013】
グラファイト化可能な材料としては、例えば、高温耐性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトダスト、天然グラファイト、PVA(ポリビニルアルコール)接着剤が挙げられる。
【0014】
最後に、天然繊維物質、例えば、綿、セルロース、竹、麻などを混合することもできる。
【0015】
本発明の継続において、型/容器に充填された塊の圧縮/高密化は、例えば、重しによって、塊上に載った板にさらに荷重をかけることにより、塊に作用する均一な圧力を発生させることによって、または振動(Ruetteln)(例えば振動プレート、または別の振動デバイスを用いる)、または型/容器の振とう(Schuetteln)、または例えば型/容器に対する打撃による、塊に横からもしくは下から作用する激しい衝撃によって行われ、その結果、緻密な成形品が生じる。
【0016】
塊の圧縮/高密化は、上に載せた重しで荷重をかけることによって、加熱中に実施することもできる。
【0017】
炭化またはグラファイト化のための加熱勾配は、約1℃/分以下であり、50~100℃の段階ごとに、約30~120分の休止が導入されるべきであり、それにより、材料が弛緩し、同時にガス、例えば空気または水蒸気が、構造に損傷を与えることなく、外へ拡散することができる。
【0018】
加熱勾配および加熱段階の具体的な選択は、このプロセスの間の圧力にも依存し、そのため、より高い圧力では、全体として、より迅速に加熱することができる。
【0019】
保護ガスとしては、希ガス、すなわちヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンが挙げられる。
【0020】
炭化またはグラファイト化は、好ましくは、>500mbarの圧力で実施される。
【0021】
好ましくは、成形品の容易な取り出しを可能にするために、テフロン(最高温度250℃まで)または別の適切な材料でできた型/容器を使用することができ、あるいは、塊を充填する前に、型/容器の内側を布帛で覆うことが可能である。
【0022】
本発明によって製造されたグラファイトでできたブランク5は、炉内で、30mbarの圧力でキャリアガスとしてアルゴンを用いてSiOを供給しながら、1,200℃の温度で、問題なくSiCに変換することができ、ここでは、約1,520℃の温度が好ましい。
【0023】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。以下の図面において以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1aは、小麦デンプンと外来物質の混合物を充填した型/容器を示す。
【0025】
【0026】
【0027】
図3は、250℃への第1の加熱後に、小麦デンプンと糖と外来物質としての食用油から製造された炭化塊を示す。
【0028】
図4は、1℃/分の加熱勾配で、および、200℃、400℃および500℃でそれぞれ120分間停止させて昇温された、1600℃で3時間後のブランクを示す。
【0029】
図5は、両側(外側および内側)の切削後の、成形体として完成した
図4のブランクを示す。
【0030】
本発明による方法は、最初に以下のステップを含む:
粉末状/粒状の乾いたまたは乾燥させた小麦デンプンまたは米デンプンを型/容器1に、緻密な塊2として充填するステップ、それに続く、型/容器1内で塊2を高密化するステップ(
図1a)。このために、型/容器1に充填された塊2は、例えば、重しによって、塊2上に載った板にさらに荷重をかけることにより、塊2に作用する均一な圧力を発生させることによって、または振動(例えば振動プレート、または別の振動デバイスを用いる)、または型/容器の振とう、または例えば型/容器1に対する打撃による、塊2に横からもしくは下から作用する激しい衝撃によって、高密化され、その結果、緻密な塊2が生じる。
【0031】
あるいは、小麦デンプンまたはトウモロコシデンプンに、バインダーを混合してもよい。
【0032】
前記混合物の製造のためのバインダーとしては、特に糖または油、例えば食用油が適している。
【0033】
小麦デンプンまたは米デンプンと糖または油(食用油)からの塊2に、さらに別のグラファイト化可能な材料を混ぜることも可能である。
【0034】
さらに別のグラファイト化可能な材料としては、例えば、高温耐性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトダスト、天然グラファイト、PVA(ポリビニルアルコール)接着剤が挙げられる。
【0035】
最後に、天然繊維物質、例えば、綿、セルロース、竹、麻などを混合することもできる。
【0036】
続いて、充填された型/容器1における緻密なまたは高密化された塊2を、炉内で、170℃~450℃の第1の温度レベルに、酸化性または不活性雰囲気中で、または>170℃で、加熱することより、収縮プロセスを生じさせ、塊2を、型/容器1内で、より長い時間にわたって安定化させる。その際安定化は、塊2の量に応じて、>1時間の期間にわたって行われる。
図1bは、第1の熱処理後の少なくとも部分的に炭化された塊3を示し、
図3は、型/容器1から取り出された後の少なくとも部分的に炭化された塊3の異なる視点からの図を示す。
【0037】
あるいは、収縮プロセスはまた、緻密な塊2の約190℃の開始温度への急速な加熱、およびそれに続く数時間にわたる冷却プロセス、および緻密な塊の210~230℃へのゆっくりとした連続的な再度の加熱によって生じさせることもできる。
【0038】
収縮プロセスは、約180℃および230℃まで段階的にゆっくり加熱することによって生じさせ得ることが最良である。
【0039】
鋳型/容器1は、安定化された塊3を容易に取り出せるように、耐熱性の可塑性プラスチックまたは他の材料でできていてよく、あるいは、塊を充填する前に、型/容器1の内側を布帛4で覆うことが可能である(
図2)。
【0040】
次のステップにおいて、少なくとも部分的に炭化された塊3は、炉内で、加熱勾配において、炭化のために>1,000℃の、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルに、保護ガス下で加熱されて、できるだけ緻密なブランク5が形成され、引き続き、ブランク5は、型/容器1から取り出すことができる。保護ガスとしては、希ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンが挙げられる。原則的に、N2も使用することができる。
【0041】
言うまでもなく、ブランク5はまた、炭化/グラファイト化の前であっても、型/容器1から取り出して、炉内での熱処理に付すことができる。
【0042】
ブランク5の炭化またはグラファイト化のための加熱勾配は、例えば、約1℃/分以下であり、50~100℃の段階ごとに、約30~120分の休止が導入されるべきであり、それにより、材料が弛緩し、同時にガス、例えば空気または水蒸気が、構造に損傷を与えることなく、外へ拡散することができる。炭化またはグラファイト化は、好ましくは、>500mbarの圧力で実施される。
【0043】
言うまでもなく、ブランクの量に応じて、他の勾配にもなり得る。
【0044】
図4は、200℃、300℃、400℃、500℃でそれぞれ120分間停止する、1℃/分の加熱勾配で、1,600℃の最終温度で約3時間にわたって熱処理した後のブランク5を示す。
【0045】
図5は、両側(外側および内側)の切削により機械的に加工された後の、成形体6として完成した
図4のブランク5を示す。
【0046】
本発明により製造された、グラファイトでできたブランク5は、SiCに問題なく変換することもできる。SiCへの変換は、通例のように、炉内において、>1200℃の温度で、キャリアガスとしてのアルゴンとともにSiOの供給下で、30mbarの圧力において行うことができる。このプロセスに好ましい温度は1520℃である。
【0047】
SiCへの変換はまた、高圧下、例えば950mbarで実施することもできる。実際に使用される圧力が、変換の均一性および速度に影響を及ぼす。
【0048】
原則的に、炉内での炭化/グラファイト化では、追加的に炭素含有ガスを供給することも可能であり、その結果、成形体6はさらに高密化される。
【0049】
多孔質炭素またはグラファイトの製造方法
【符号の説明】
【0050】
符号リスト
1 型/容器
2 緻密な塊
3 炭化された塊
4 布帛
5 ブランク
6 成形体
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
原則的に、炉内での炭化/グラファイト化では、追加的に炭素含有ガスを供給することも可能であり、その結果、成形体6はさらに高密化される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの簡単な製造方法であって、
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプンまたは他のデンプンを型/容器(1)に充填するステップ、
- 型/容器(1)内で緻密な塊(2)を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊(2)に加えることにより容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の充填された型/容器(1)における緻密な塊(2)を、炉内で、170℃~450℃の第1の温度レベルに、5℃のステップで、酸化性または不活性雰囲気中で、塊(2)をさらに圧縮/高密化しながら加熱することにより、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える期間にわたって、加熱した塊(2)を安定化するステップ、
- 塊(2)を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の第2の温度レベルまで、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成するステップ、および
- 緻密なブランク(5)を型/容器から取り出すステップ、
を特徴とする、前記製造方法。
2.均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの簡単な製造方法であって、
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプンまたは他のデンプンを型/容器(1)に充填するステップ、
- 緻密な塊(2)を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊(2)に加えることにより容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の緻密な塊(2)の約190℃の開始温度への加熱、それに続く数時間にわたる冷却プロセス、および緻密な塊(2)の、当該塊(2)をさらに圧縮/高密化しながらの210~230℃への連続的な再度の加熱によって、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える比較的長い期間にわたって、加熱した塊(2)を安定化するステップ、
- 塊(2)を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の第2の温度レベルまで、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成するステップ、および
- 緻密なブランク(5)を型/容器から取り出すステップ、
を特徴とする、前記製造方法。
3.小麦デンプンまたは米デンプンに、バインダーとして糖または油が混合されることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
4.小麦デンプンもしくは米デンプン、または小麦デンプンもしくは米デンプンと糖もしくは油(食用油)との混合物に、さらに別のグラファイト化が可能な材料が混合されることを特徴とする、上記1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.さらに別のグラファイト化が可能な材料として、高温耐性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトダスト、天然グラファイト、PVA(ポリビニルアルコール)接着剤が混合されることを特徴とする、上記4に記載の方法。
6.小麦もしくはトウモロコシデンプンまたは混合物に、天然繊維物質、例えば、綿、セルロース、竹、麻などが混合されることを特徴とする、上記1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.型/容器(1)に充填された塊(2)の圧縮/高密化が、例えば、重しによって、塊(2)上に載った板にさらに荷重をかけることにより、塊(2)に作用する均一な圧力を発生させることによって、または型/容器(1)の振動もしくは振とうによって、または例えば型/容器(1)に対する打撃による、塊(2)に横からもしくは下から作用する激しい衝撃によって、行われることを特徴とする、上記1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.炭化のための塊(2)の加熱が、複数の段階で行われ、その際50~100℃の段階ごとに、約30~120分の休止が導入されることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
9.保護ガスとして、希ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドンが使用されることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
10.炭化またはグラファイト化が、>500mbarの圧力で実施されることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
11.テフロンでできた型/容器(1)が使用され、および/または塊を充填する前に型/容器(1)の内側が布帛(4)で覆われることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
12.本発明に従って製造された、グラファイトでできたブランク(5)が、炉内において、>1,200℃の温度で、キャリアガスとしてのアルゴンと共にSiOを供給しながら、30mbarの圧力で、SiCに変換されることを特徴とする、上記1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.SiCへの変換が、約1,520℃の温度で行われることを特徴とする、上記12に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの簡単な製造方法であって、
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプンまたは他のデンプンを型/容器(1)に充填するステップ、
- 型/容器(1)内で緻密な塊(2)を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊(2)に加えることにより容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の充填された型/容器(1)における緻密な塊(2)を、炉内で、170℃~450℃の第1の温度レベルに、5℃のステップで、酸化性または不活性雰囲気中で、塊(2)をさらに圧縮/高密化しながら加熱することにより、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える期間にわたって、加熱した塊(2)を安定化するステップ、
- 塊(2)を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の第2の温度レベルまで、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成するステップ、および
- 緻密なブランク(5)を型/容器から取り出すステップ、
を特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
均一で硬質な構造を有する多孔質炭素またはグラファイトの簡単な製造方法であって、
- 粉末状の乾いたまたは乾燥された小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプンまたは他のデンプンを型/容器(1)に充填するステップ、
- 緻密な塊(2)を、均一な圧力またはインパルス圧力を塊(2)に加えることにより容器(1)内の塊(2)を圧縮/高密化することによって、生成するステップ、
- 前記の緻密な塊(2)の
190℃の開始温度への加熱、それに続く
1時間を超える期間にわたる冷却プロセス、および緻密な塊(2)の、当該塊(2)をさらに圧縮/高密化しながらの210~230℃への連続的な再度の加熱によって、収縮プロセスを生じさせるステップ、
- 1時間を超える比較的長い期間にわたって、加熱した塊(2)を安定化するステップ、
- 塊(2)を、炉内で、約1℃/分の温度勾配で、炭化のために>1,000℃の第2の温度レベルまで、またはグラファイト化のために>2,500℃の第2の温度レベルまで、保護ガス下でゆっくりとさらに加熱して、できるだけ緻密なブランク(5)を形成するステップ、および
- 緻密なブランク(5)を型/容器から取り出すステップ、
を特徴とする、前記製造方法。
【請求項3】
小麦デンプンまたは米デンプンに、バインダーとして糖または油が混合されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
小麦デンプンもしくは米デンプン、または小麦デンプンもしくは米デンプンと糖もしくは
油との混合物に、さらに別のグラファイト化が可能な材料が混合されることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項5】
さらに別のグラファイト化が可能な材料として、高温耐性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトダスト、天然グラファイト、
ポリビニルアルコール接着剤が混合されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
小麦もしくはトウモロコシデンプンまたは混合物に、天然繊維物質、例えば、綿、セルロース、竹、麻などが混合されることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項7】
型/容器(1)に充填された塊(2)の圧縮/高密化が、例えば、重しによって、塊(2)上に載った板にさらに荷重をかけることにより、塊(2)に作用する均一な圧力を発生させることによって、または型/容器(1)の振動もしくは振とうによって、または例えば型/容器(1)に対する打撃による、塊(2)に横からもしくは下から作用する激しい衝撃によって、行われることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項8】
炭化のための塊(2)の加熱が、複数の段階で行われ、その際50~100℃の段階ごとに、約30~120分の休止が導入されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
保護ガスとして、希ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドンが使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
炭化またはグラファイト化が、>500mbarの圧力で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
テフロンでできた型/容器(1)が使用され、および/または塊を充填する前に型/容器(1)の内側が布帛(4)で覆われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
本発明に従って製造された、グラファイトでできたブランク(5)が、炉内において、>1,200℃の温度で、キャリアガスとしてのアルゴンと共にSiOを供給しながら、30mbarの圧力で、SiCに変換されることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項13】
SiCへの変換が、
1,520℃の温度で行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】