(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】がんを処置するための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241112BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241112BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P35/00
A61P35/04
G01N33/574 C
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529907
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2021059975
(87)【国際公開番号】W WO2023091137
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524190128
【氏名又は名称】アヴェオ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・イー・ボウマン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)等のがんを有する対象を処置する、改善された方法を提供する。一態様では、本発明は、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、対象に、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤の治療上有効量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、再発性又は転移性HNSCCを、フィクラツズマブ及びセツキシマブの併用により処置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における再発性又は転移性頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を処置する方法であって、
ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である再発性又は転移性HNSCCを有する対象を同定する工程、及び
対象に、セツキシマブの有効量を、フィクラツズマブの有効量と共に投与して、HPV陰性であるHNSCCを処置する工程
を含む、方法。
【請求項2】
対象が、HPV陽性である再発性又は転移性HNSCCを有する場合、対象を処置しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HNSCCのHPV状態が、p16免疫組織化学により決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
HNSCCがp16陰性と分類されるか、又はHNSCCが、原発性の口腔、喉頭、若しくは下咽頭HNSCCである場合、HNSCCはHPV陰性である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
HNSCCがp16陽性と分類される場合、HNSCCはHPV陽性である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
HNSCCのHPV状態が、腫瘍DNA解析により決定され、HNSCCが、腫瘍中でのHPV DNAの不在に基づいてHPV陰性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象におけるHNSCCが、セツキシマブによる処置歴がない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象におけるHNSCCが、PD-1又はPD-L1免疫療法による処置歴がある、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
HNSCCが、PD-1又はPD-L1免疫療法耐性である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
免疫療法が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、又はチソツマブから選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
免疫療法がペンブロリズマブである、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
対象におけるHNSCCが、プラチナ化学療法による処置歴がある、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
HNSCCがプラチナ耐性である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
プラチナ化学療法が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン又はサトラプラチンである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
プラチナ化学療法が、シスプラチン又はカルボプラチンである、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
対象が、プラチナ化学療法に適さない、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
対象におけるHNSCCが、5-フルオロウラシル又は他の代謝拮抗薬化学療法による処置歴がある、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
HNSCCが、第一選択療法としてプラチナを伴う、又は伴わない、及び5-フルオロウラシルを伴う、又は伴わない、ペンブロリズマブによる処置歴がある、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
HNSCCをセツキシマブ及びフィクラツズマブにより処置する工程が、第二選択療法である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
HNSCCが、口腔、咽頭又は喉頭中の原発部位由来である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
HNSCCが、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん若しくは口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔がん若しくは鼻腔がん、又は唾液腺がんである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
フィクラツズマブの用量が、10mg/kgから100mg/kgである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
フィクラツズマブの用量が、10mg/kgから50mg/kgである、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
フィクラツズマブの用量が10mg/kgである、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
フィクラツズマブの用量が15mg/kgである、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
フィクラツズマブの用量が20mg/kgである、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
フィクラツズマブの用量が、2週間ごとに、静脈内投与により投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
フィクラツズマブの用量が、2週間+/-3日ごとに、静脈内投与により投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
セツキシマブの用量が、250から700mg/m
2である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
セツキシマブの用量が、300から500mg/m
2である、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
セツキシマブの用量が、500mg/m
2である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
セツキシマブの用量が、400mg/m
2である、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
セツキシマブの用量が、300mg/m
2である、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
セツキシマブの用量が、2週間ごとに、静脈内投与により投与される、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
セツキシマブの用量が、2週間+/-3日ごとに、静脈内投与により投与される、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
セツキシマブの用量及びフィクラツズマブの用量が同じ日に投与される、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
セツキシマブの用量及びフィクラツズマブの用量が、同時に又は逐次的に、静脈内投与により投与される、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記HNSCCの進行、発生若しくは新たな転移まで、又は患者が、許容できない毒性を体験するまで、セツキシマブ及びフィクラツズマブが対象に投与される、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
フィクラツズマブ及びセツキシマブによる併用療法に適切である頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を有する対象を同定する方法であって、HNSCCが、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性又はHPV陽性であるかを評価する工程を含み、HNSCCがヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である場合、対象は併用療法に適切と同定される、方法。
【請求項40】
患者がHPV陽性である場合、患者は併用に適切でない、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
HNSCCがプラチナ耐性であるか、又は対象がプラチナ化学療法に適さない場合、対象は併用療法に適切と同定される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
HNSCCがPD-1又はPD-L1阻害剤による免疫療法に応答性でない場合、対象は併用療法に適切と同定される、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
HNSCCがプラチナ耐性であってPD-1又はPD-L1阻害剤による免疫療法に応答性でない場合、対象は、併用療法に適切と同定される、請求項39から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
免疫療法が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ又はチソツマブである場合、対象は、併用療法に適切と同定される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
免疫療法がペンブロリズマブである場合、対象は、併用療法に適切と同定される、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
プラチナがカルボプラチン又はシスプラチンである場合、対象は、併用療法に適切と同定される、請求項41から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
HNSCCが、再発性又は転移性である場合、対象は、併用療法に適切と同定される、請求項39から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
対象が併用療法に適切と同定される場合、対象に併用療法を投与する工程を更に含む、請求項39から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
HNSCCのHPV状態が、p16免疫組織化学により決定される、請求項39から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
HNSCCがp16陰性と分類される、及び/又はHNSCCが、原発部位口腔、喉頭、若しくは下咽頭のHNSCCである場合、HNSCCはHPV陰性である、請求項39から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
HNSCCがp16陽性と分類される場合、HNSCCはHPV陽性である、請求項39から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
HNSCCのHPV状態が、腫瘍DNA解析により決定され、HNSCCが、腫瘍中でのHPV DNAの不在に基づいてHPV陰性であるか、又は腫瘍中でのHPV DNAの存在に基づいてHPV陽性である、請求項39から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
HNSCCが、口腔、咽頭又は喉頭中の原発部位由来である、請求項39から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
併用療法が第二選択療法である、請求項39から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
併用療法が、10mg/kgから100mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む、請求項39から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
併用療法が、10mg/kgから50mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む、請求項39から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
併用療法が、20mg/kg、15mg/kg又は10mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む、請求項39から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
併用療法が、フィクラツズマブ及びセツキシマブの用量を、2週間ごとに、静脈内投与により投与する工程を含む、請求項39から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
併用療法が、フィクラツズマブ及びセツキシマブの用量を、2週間+/-3日ごとに、静脈内投与により投与する工程を含む、請求項39から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
併用療法が、250から700mg/m
2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む、請求項39から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
併用療法が、300から500mg/m
2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む、請求項39から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
併用療法が、500mg/m
2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む、請求項39から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
併用療法が、セツキシマブの用量及びフィクラツズマブの用量を同じ日に、同時に又は逐次的に、静脈内投与により投与する工程を含む、請求項39から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
HNSCCが、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん若しくは口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔がん若しくは鼻腔がん、又は唾液腺がんである、請求項39から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片及び抗EGFR抗体又はその抗原結合断片の治療上有効量を対象に投与する工程を含む、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法。
【請求項66】
がんが頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
HNSCCが再発性及び/又は転移性である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
HNSCCがヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;並びに
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域
を含む、請求項65から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;及び(ii)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項65から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;及び(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び(ii)配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項65から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号17のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
抗HGF抗体若しくはその抗原結合断片が、キメラ抗体、ヒト抗体若しくはヒト化抗体であるか、又はそれらに由来する、請求項65から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、Fab、Fv、scFv、Fab'、及び(Fab')2からなる群から選択される、請求項65から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
抗HGF抗体が、リロツムマブ、フィクラツズマブ、及びその組合せからなる群から選択される、請求項65から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
抗HGF抗体がフィクラツズマブである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;並びに
(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域
を含む、請求項65から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;及び(ii)配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項65から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;及び(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び(ii)配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項65から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び(ii)配列番号20のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、キメラ抗体、ヒト抗体若しくはヒト化抗体であるか、又はそれらに由来する、請求項65から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、Fab、Fv、scFv、Fab'、及び(Fab')2からなる群から選択される、請求項65から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
抗EGFR抗体が、セツキシマブ、フツキシマブ、イムガツズマブ、マツズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、アミバンタマブ、ザルツムマブ、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項65から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
抗EGFR抗体がセツキシマブである、請求項65から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片及び抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、処置の少なくとも1サイクルにわたり、同時に又は逐次的に投与される、請求項65から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、処置の少なくとも1サイクルにわたり、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片の後に投与される、請求項65から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片及び抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、各々、約1週間ごとに、約2週間ごとに、約3週間ごとに、又は約4週間ごとに投与される、請求項65から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片及び抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、各々、約2週間ごとに投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、約2mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、又は約25mg/kgで投与される、請求項65から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片が、約20mg/kgで投与される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、約200mg/m
2、約250mg/m
2、約300mg/m
2、約400mg/m
2、約500mg/m
2、約600mg/m
2、約700mg/m
2、又は約800mg/m
2で投与される、請求項65から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、約500mg/m
2で投与される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
抗HGF抗体又はその抗原結合断片及び抗EGFR抗体又はその抗原結合断片が、静脈内注入により投与される、請求項85から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
(i)20mg/kgのフィクラツズマブ、及び(ii)500mg/m
2のセツキシマブを、2週間ごとに対象に投与する工程を含む、請求項65から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
請求項69から77のいずれか一項に規定の抗HGF抗体又はその抗原結合断片、及び請求項78から86のいずれか一項に規定の抗EGFR抗体又はその抗原結合断片を含む組成物。
【請求項98】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項97に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野は、医学、腫瘍学、チロシンキナーゼ阻害剤、EGFR受容体阻害剤、及び医薬品である。
【背景技術】
【0002】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、タバコ及び他の発癌物質への習慣的曝露又はヒトパピローマウイルス(HPV)に起因する病的且つ致死的ながんである。頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、上部気道消化管において生じる最も一般的ながんである。HNSCCは、2012年に見込まれる600,000症例により、世界的に6番目に多く発生するがんである(Kamangar, F.等、Journal of Clinical Oncology (2006) 24:2137~2150頁)。集学的療法における進歩にもかかわらず、5年全生存率(OS)は40~50%であり、過去20年間において徐々にのみ増加した(Jemal, A.等、CA Cancer J Clin. (2010) 60:277~300頁)。再発性又は転移性(R/M)HNSCCを有する患者は、特に予後不良であり、6~10か月の全生存期間中央値を伴う。緩和マネジメントの選択肢は限られている。ほぼ30年間にわたり、R/M HNSCCに対する第一選択化学療法の基本は、プラチナベース抗腫瘍薬(プラチン)、例えばシスプラチン等であり(Hong, W.K.等、Cancer (1983) 52:206~210頁)、シスプラチン単剤療法と比べて上回る生存の確証はないにもかかわらず、奏効率(RR)の上昇ゆえ、しばしばフルオロウラシル又はタキサン誘導体と併用されている(Forastiere, A.A.等、J Clin Oncol. (1992) 10:1245~1251頁)。
【0003】
EGFRの遍在的発現が、HNSCC処置に向けたEGFR阻害剤の開発を迫った(Rubin Grandis, J.等、J Natl Cancer Inst. (1998) 90:824~832頁;Chung, C.H.等、J Clin Oncol. (2006) 24:4170~4176頁)。EGFR指向モノクローナル抗体であるセツキシマブは、HNSCCの処置に関して、現在までのところFDA承認の唯一の標的療法であり、フロントラインプラチナに添加すると生存を改善させる(Vermorken, J.B.等、N Engl J Med. (2008) 359:1116~1127頁)。HNSCC症例の大半における異常なEGFRシグナル伝達にもかかわらず、セツキシマブの控えめな臨床活性は期待外れであり、一次耐性又は獲得耐性のいずれかが、圧倒的によくある出来事である。現在、EGFR遺伝子コピー数を含め、HNSCCでの抗EGFR療法に対する耐性又は感受性に関する予測的分子マーカーは存在しない(Licitra, L.等、Ann Oncol. (2011) 22:1078~1087頁)。
【0004】
プログラム死受容体1(PD-1)を阻害する免疫療法抗体は、最近になって、プラチナ耐性HNSCCを有する患者でのFDA承認を得た一方、全生存期間(OS)延長(benefit)は、およそ20%に限られているようである(Seiwert, T.Y.等、Lancet Oncol. (2016) 17:956~965頁;Ferris, R.L.等、J Clin Oncol. (2016) 34)。現在、プラチナ、セツキシマブ、及び抗PD1療法に失敗した患者に対する標準療法は存在せず、全てのそのような患者は、6か月未満の生存中央値で死亡する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kamangar, F.等、Journal of Clinical Oncology (2006) 24:2137~2150頁
【非特許文献2】Jemal, A.等、CA Cancer J Clin. (2010) 60:277~300頁
【非特許文献3】Hong, W.K.等、Cancer (1983) 52:206~210頁
【非特許文献4】Forastiere, A.A.等、J Clin Oncol. (1992) 10:1245~1251頁
【非特許文献5】Rubin Grandis, J.等、J Natl Cancer Inst. (1998) 90:824~832頁
【非特許文献6】Chung, C.H.等、J Clin Oncol. (2006) 24:4170~4176頁
【非特許文献7】Vermorken, J.B.等、N Engl J Med. (2008) 359:1116~1127頁
【非特許文献8】Licitra, L.等、Ann Oncol. (2011) 22:1078~1087頁
【非特許文献9】Seiwert, T.Y.等、Lancet Oncol. (2016) 17:956~965頁
【非特許文献10】Ferris, R.L.等、J Clin Oncol. (2016) 34
【非特許文献11】Eisenhauer等(2009)、EUR. J. CANCER、25:228~247頁
【非特許文献12】Therasse等、J. NATL. CANCER INST.、2000:92:205~216頁
【非特許文献13】Peruzzi, B.とBottaro, D.P. Clin Cancer Res. (2006) 12:3657~3660頁
【非特許文献14】Knowles, L.M.等、Clin Cancer Res. (2009) 15:3740~3750頁
【非特許文献15】Seiwert, T.Y.等、Cancer Res. (2009) 69:3021~3031頁
【非特許文献16】Ghadjar, P.等、Clin Exp Metastasis. (2009) 26:809~815頁
【非特許文献17】Stransky, N.等、Science (2011) 333:1157~1160頁
【非特許文献18】Agrawal, N.等、Science (2011) 333:1154~1157頁
【非特許文献19】Kabat, E.A.等(1991) SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号
【非特許文献20】Chothia, C.等(1987) J. MOL. BIOL. 196:901~917頁
【非特許文献21】Ciardiello, F.等、European Journal of Cancer (2003) 39:1348~1354頁
【非特許文献22】Grandis, J.R.等、Cancer (1996) 78:1284~1292頁
【非特許文献23】Dassonville, O.等、Journal of Clinical Oncology (1993) 11:1873~1878頁
【非特許文献24】Chung, C.H.等、Int J Radiat Oncol Biol Phys. (2011) 81:331~338頁
【非特許文献25】Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publ. Co., Easton, PA [1975]
【非特許文献26】Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、1990
【非特許文献27】Jordan等、Am J Surg Pathol. (2012) 36(7):945~954頁
【非特許文献28】Bauman等、Journal of Clinical Oncology 35、第15号補遺(2017年5月20日)6038~6038頁
【非特許文献29】Bauman等、Cancers (Basel). 2020;12(6):1537頁、2020年6月11日に公開、doi:10.3390/cancers12061537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、再発性又は転移性HNSCCを含む、HNSCCを有する患者に対する更なる治療選択肢の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)等のがんを有する対象を処置する、改善された方法を提供する。
【0009】
一態様では、本発明は、対象における再発性又は転移性頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を処置する方法を提供する。本方法は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である再発性又は転移性HNSCCを有する対象を同定する工程、及び対象に、セツキシマブの有効量を、フィクラツズマブの有効量と共に投与して、HPV陰性であるHNSCCを処置する工程を含む。一部の実施形態では、対象が、HPV陽性である再発性又は転移性HNSCCを有すれば、対象を処置しない。一部の実施形態では、HNSCCは、セツキシマブによる処置歴がない、即ち、HNSCCは、セツキシマブ処置未経験である。
【0010】
一部の実施形態では、HNSCCのHPV状態を、p16免疫組織化学により決定する。例えば、HNSCCがp16陰性であればHNSCCをHPV陰性と分類する。例えば、HNSCCが、原発性の口腔、喉頭、又は下咽頭HNSCCである場合、HNSCCをHPV陰性と分類する。例えば、HNSCCがp16陽性である場合、HNSCCをHPV陽性と分類する。例えば、HNSCCが、原発部位中咽頭HNSCCであってp16陽性である場合、HNSCCをHPV陽性と分類する。一部の実施形態では、HPV状態を、腫瘍DNA解析により決定する。例えば、HNSCCは、HPV DNA又はRNAが、HNSCCにおいて検出されなければHPV陰性である。例えば、HNSCCは、HPV DNA又はRNAが、HNSCCにおいて検出されたらHPV陽性である。
【0011】
一部の実施形態では、対象におけるHNSCCは、免疫療法、例えば、PD-1又はPD-L1チェックポイント阻害剤等による処置歴がある。一部の実施形態では、HNSCCは、PD-1又はPD-L1免疫療法耐性である。一部の実施形態では、免疫療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ又はチソツマブから選択される。一部の実施形態では、免疫療法はペンブロリズマブである。一部の実施形態では、免疫療法はニボルマブである。
【0012】
一部の実施形態では、HNSCCは、プラチナ化学療法による処置歴がある。一部の実施形態では、HNSCCがプラチナ耐性であるか、又は対象が、プラチナ化学療法に適さない。一部の実施形態では、プラチナ化学療法は、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン又はサトラプラチンである。一部の実施形態では、プラチナ療法は、カルボプラチン又はシスプラチンである。
【0013】
一部の実施形態では、対象におけるHNSCCは、5-フルオロウラシル又は他の代謝拮抗薬化学療法による処置歴がある。一部の実施形態では、HNSCCは、第一選択療法としてのプラチナを伴う、又は伴わない、及び5-フルオロウラシルを伴う、又は伴わない、ペンブロリズマブによる処置歴がある。
【0014】
一部の実施形態では、HNSCCは、口腔、咽頭又は喉頭中の原発部位由来である。一部の実施形態では、HNSCCは、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん若しくは口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔がん若しくは鼻腔がん、又は唾液腺がんである。
【0015】
一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は、10mg/kgから100mg/kgである。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は、10mg/kgから50mg/kgである。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は20mg/kgである。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は15mg/kgである。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は10mg/kgである。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量を、2週間ごとに、静脈内投与により投与する。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量を、2週間+/-3日ごとに、静脈内投与により投与する。
【0016】
一部の実施形態では、セツキシマブの用量は、250から700mg/m2である。一部の実施形態では、セツキシマブの用量は、300から500mg/m2である。一部の実施形態では、セツキシマブの用量は500mg/m2である。一部の実施形態では、セツキシマブの用量は400mg/m2である。一部の実施形態では、セツキシマブの用量は300mg/m2である。一部の実施形態では、セツキシマブの用量を、2週間ごとに、静脈内投与により投与する。一部の実施形態では、セツキシマブの用量を、2週間+/-3日ごとに、静脈内投与により投与する。一部の実施形態では、セツキシマブの用量及びフィクラツズマブの用量を同じ日に、同時に又は逐次的に、静脈内投与により投与する。
【0017】
一部の実施形態では、セツキシマブの用量は500mg/m2であってフィクラツズマブの用量は20mg/kgであり、各々を、2週間ごとに同じ日に、同時に又は逐次的に、静脈内注入により投与する。
【0018】
一部の実施形態では、HNSCCの進行、発生若しくは新たな転移まで、又は患者が、許容できない毒性を体験するまで、セツキシマブ及びフィクラツズマブを対象に投与する。
【0019】
他の態様では、本発明は、フィクラツズマブ及びセツキシマブによる併用療法に適切である頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を有する対象を同定する方法を提供する。一部の実施形態では、同定する方法は、HNSCCが、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性又はHPV陽性であるかを評価する工程を含む。一部の実施形態では、HNSCCが、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である場合、対象は、併用療法に適切と同定される。
【0020】
一部の実施形態では、HNSCCがプラチナ耐性であるか、又は対象がプラチナ化学療法に適さない場合、対象は併用療法に適切と同定される。
【0021】
一部の実施形態では、HNSCCがPD-1又はPD-L1阻害剤による免疫療法に応答性でない場合、対象は併用療法に適切と同定される。
【0022】
一部の実施形態では、対象が、例えば、PD-1又はPD-L1阻害剤等による免疫療法に適さない場合、対象は併用療法に適切と同定される。
【0023】
一部の実施形態では、HNSCCが、プラチナ耐性であってPD-1又はPD-L1阻害剤による免疫療法に応答性でない場合、対象は、併用療法に適切と同定される。一部の実施形態では、免疫療法が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ又はチソツマブである場合、対象は、併用療法に適切と同定される。一部の実施形態では、免疫療法がペンブロリズマブ又はニボルマブある場合、対象は、併用療法に適切と同定される。一部の実施形態では、プラチナがカルボプラチン又はシスプラチンある場合、対象は、併用療法に適切と同定される。
【0024】
一部の実施形態では、同定する方法は、対象が併用療法に適切と同定される場合、対象に併用療法を投与する工程を更に含む。
【0025】
一部の実施形態では、HNSCCのHPV状態を、p16免疫組織化学により決定する。一部の実施形態では、HNSCCがp16陰性と分類される場合、HNSCCはHPV陰性である。一部の実施形態では、HNSCCがp16陽性と分類される場合、HNSCCはHPV陽性である。一部の実施形態では、HNSCCのHPV状態を、腫瘍DNA解析により決定する。例えば、HNSCCは、HPV DNAが、HNSCCにおいて検出されなければHPV陰性である。例えば、HNSCCは、HPV DNAが、HNSCCにおいて検出されたらHPV陽性である。
【0026】
一部の実施形態では、HNSCCは、口腔、咽頭又は喉頭中の原発部位由来である。一部の実施形態では、HNSCCは、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん若しくは口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔がん若しくは鼻腔がん、又は唾液腺がんである。
【0027】
一部の実施形態では、併用療法は第一選択療法である。一部の実施形態では、併用療法は第二選択療法である。一部の実施形態では、併用療法は、第三選択療法又は後方ライン療法である。
【0028】
一部の実施形態では、併用療法は、10mg/kgから100mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、10mg/kgから50mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、20mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、15mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、10mg/kgであるフィクラツズマブの用量を投与する工程を含む。
【0029】
一部の実施形態では、併用療法は、250から700mg/m2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、300から500mg/m2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、500mg/m2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、400mg/m2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、300mg/m2であるセツキシマブの用量を投与する工程を含む。
【0030】
一部の実施形態では、併用療法は、フィクラツズマブ及びセツキシマブの用量を、2週間ごとに、静脈内投与により投与する工程を含む。一部の実施形態では、併用療法は、フィクラツズマブ及びセツキシマブの用量を、2週間+/-3日ごとに、静脈内投与により投与する工程を含む。
【0031】
一部の実施形態では、併用療法は、セツキシマブの用量及びフィクラツズマブの用量を、同じ日に、例えば、同時に又は逐次的に投与する工程を含む。
【0032】
一態様では、本発明は、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法を提供する。本方法は、対象に、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤の治療上有効量を投与する工程を含む。
【0033】
特定の実施形態では、HGF阻害剤は、抗HGF抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施形態では、抗HGF抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;並びに/又は(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗HGF抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号7のアミノ酸配列、又は配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;及び(ii)配列番号8のアミノ酸配列、又は配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗HGF抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号17のアミノ酸配列、又は配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び(ii)配列番号18のアミノ酸配列、又は配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗HGF抗体は、リロツムマブ、フィクラツズマブ、及びその組合せからなる群から選択され、例えば、抗HGF抗体はフィクラツズマブである。
【0034】
特定の実施形態では、EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施形態では、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;並びに/又は(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号15のアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;及び(ii)配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号19のアミノ酸配列、又は配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び(ii)配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブ、フツキシマブ、イムガツズマブ、マツズマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、アミバンタマブ、ザルツムマブ、及びそれらの組合せからなる群から選択され、例えば、抗EGFR抗体はセツキシマブである。
【0035】
抗HGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗EGFR抗体若しくはその抗原結合断片は、例えば、Fab、Fv、scFv、Fab'、又は(Fab')2であり得る。特定の実施形態では、抗HGF抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗EGFR抗体若しくはその抗原結合断片は、キメラ抗体、ヒト抗体若しくはヒト化抗体であるか、又はそれらに由来する。
【0036】
HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片)及びEGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片)は、例えば、処置の少なくとも1サイクルにわたり、同時に投与され得る。HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体若しくはその抗原結合断片)又はEGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体若しくはその抗原結合断片)は、例えば、処置の少なくとも1サイクルにわたり、逐次的に投与され得る。特定の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片)を、処置の少なくとも1サイクルにわたり、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片)の後に投与する、例えば、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片)を、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片)の投与の完了から少なくとも15分後、少なくとも30分後、少なくとも60分後、少なくとも120分後、少なくとも180分後、少なくとも240分後、若しくは少なくとも300分後に、又は約30分後から約60分後まで、約60分後から約120分後まで、若しくは約120分後から約180分後までに投与する。特定の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片)を、例えば、処置の少なくとも1サイクルにわたり、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片)と同時に投与する。例えば、HGF阻害剤、例えばフィクラツズマブ、及びEGFR阻害剤、例えばセツキシマブを、例えば、静脈内注入により同時に投与する。
【0037】
特定の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片)及びEGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片)を、各々、約1週間ごとに、約2週間ごとに、約3週間ごとに、又は約4週間ごとに投与する。HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体若しくはその抗原結合断片)及び/又はEGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体若しくはその抗原結合断片)は、例えば、静脈内注入により投与され得る。例えば、HGF阻害剤、例えばフィクラツズマブ、及びEGFR阻害剤、例えばセツキシマブを、例えば、静脈内注入により2週間ごとに同時投与する。
【0038】
HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ等)の考えられる用量には、約2mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、又は約25mg/kgが含まれる。EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ等)の考えられる用量には、約200mg/m2、約250mg/m2、約300mg/m2、約400mg/m2、約500mg/m2、約600mg/m2、約700mg/m2、又は約800mg/m2が含まれる。
【0039】
特定の実施形態では、本方法は、対象に、(i)20mg/kgのフィクラツズマブ(例えば、約2週間ごと)、及び(ii)500mg/m2のセツキシマブ(例えば、約2週間ごと)を投与する工程を含む。
【0040】
他の態様では、本発明は、(i)HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、本明細書に開示される抗HGF抗体又はその抗原結合断片)、(ii)EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、本明細書に開示される抗EGFR抗体又はその抗原結合断片)、及び場合により(iii)薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0041】
本発明は、以下の図面に関連して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】再発性又は転移性HNSCCを有する対象をフィクラツズマブ単独又はセツキシマブとの併用で処置する有効性を決定するための、実施例1に記載されるフェーズII試験の試験プロトコルを示す。
【
図2】再発性又は転移性HNSCCを有する対象をフィクラツズマブ単独又はセツキシマブとの併用で処置する有効性を決定するための、実施例1に記載されるフェーズII試験に関する患者内訳を示し、HPV状態により層別化した場合の患者集団に関する全奏効率(ORR)を含む、各試験群に関するORRを提示する。
【
図3】再発性又は転移性HNSCCを有する対象をフィクラツズマブ単独又はセツキシマブとの併用で処置する有効性を決定するための、実施例1に記載されるフェーズII試験に参加するそれらの対象のベースライン患者背景の分類を提示する。
【
図4】再発性又は転移性HNSCCを有する対象をフィクラツズマブ単独又はセツキシマブとの併用で処置する有効性を決定するための、実施例1に記載されるフェーズII試験に参加するそれらの対象により体験された毒性の種類の分類を提示する。毒性は、心血管性、体質性、皮膚科学、胃腸、代謝性、又は肺性と分類され、各種類の、グレード1~2又はグレード3による百分率を、処置種類に従い提示する(即ち、フィクラツズマブに対するフィクラツズマブとセツキシマブ)。
【
図5A】実施例1に記載されるフェーズII試験における患者集団に関する、処置に対する対照群により層別化された無増悪生存期間(PFS)を示すカプラン・マイヤー曲線である。フィクラツズマブ+セツキシマブ(処置)群のテールは、15か月を越えて延びる。
【
図5B】実施例1に記載されるフェーズII試験における患者集団に関する、処置に対する対照群により層別化された全生存期間データを示すカプラン・マイヤー曲線である。フィクラツズマブ+セツキシマブ群(処置)のテールは、15か月を越えて延びる。
【
図6A】実施例1に記載されるフェーズII試験の処置群(フィクラツズマブ+セツキシマブ)における、患者集団をHPV状態(HPV+亜群及びHPV-亜群)により層別化した場合の、全奏効率(ORR)及び無増悪生存期間中央値(mPFS)を示す(PR=部分奏効;CR=完全奏効)。
【
図6B】実施例1に記載されるフェーズII試験の処置群(フィクラツズマブ+セツキシマブ)を、HPV状態(HPV+亜群及びHPV-亜群)により層別化した場合の、無増悪生存期間(PFS)のカプラン・マイヤー曲線である。HPV-亜群のテールは、15か月を越えて延びる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)等のがんを有する対象を処置する、改善された方法に関する。
【0044】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、タバコ及び他の発癌物質への習慣的曝露又はヒトパピローマウイルス(HPV)に起因する病的且つ致死的ながんである。2021年に、米国では65,000名超の、そして世界的には700,000名超の人々が、HNSCCに罹患すると予想されている。HPV陽性又はHPV陰性のHNSCCを有する患者の90%は、頭頸部に局在する疾患を呈する。根治目的療法又は治癒目的療法と呼ばれる、局所性疾患の初期処置には、外科切除、放射線及び全身療法が含まれる。しかしながら、治癒目的集学的処置後の再発は、それぞれ、およそ20%及び50%である。再発性/転移性疾患に直面した全生存期間は、2年未満である。再発性/転移性疾患の処置は、緩和療法と呼ばれる。再発性/転移性疾患の緩和処置に関する、第一選択の全身的選択肢には、プラチナ及び5-フルオロウラシル細胞傷害性化学療法を伴う、又は伴わない、抗プログラム死受容体1(PD-1)免疫チェックポイント阻害剤、例えば、ペンブロリズマブ等が含まれる。第二選択又は後方ラインでは、利用可能な療法には、抗微小管タキサン化学療法、代謝拮抗薬メトトレキセート、及び抗上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体(mAb)であるセツキシマブが含まれ、単剤奏効率は、約5~15%である。
【0045】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、口腔、咽頭、喉頭、及び副鼻腔路(副鼻腔及び鼻腔)内の粘膜上皮から発生し、頭頸部で生じる最も一般的な悪性腫瘍である。口腔には、歯茎、口唇、頬粘膜(頬及び口唇裏側の内面)、硬口蓋(口の上部で骨のある部分)、前舌、口底(舌下)、及び臼後三角が含まれる。咽頭(咽喉)には、鼻咽頭、中咽頭(口蓋扁桃、舌扁桃、舌底、軟口蓋、口蓋垂、及び咽頭後壁)、並びに下咽頭(舌骨から輪状軟骨まで延びる咽喉下部)、並びに喉頭が含まれる。HNSCCは、これらの原発部位のいずれかにおいて発生し得る。HNSCCは、唾液腺においても発生し得る。これらの部位のいずれかにおいて生じるHNSCC腫瘍が、本明細書に開示される、本発明の方法により処置され得る。HNSCCには、例えば、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん及び口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔がん及び鼻腔がん、並びに唾液腺がんが含まれる。これらは、本明細書に開示される、本発明の方法により処置され得る、HNSCCの例示的な種類である。しかしながら、明らかに頭頸部に関連する、原発不明の扁平上皮癌が、本発明の方法により処置され得る。
【0046】
HNSCC腫瘍は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の発がん性株、例えば、HPV-16若しくはHPV-18等、並びに他の株での先行感染、又は喫煙若しくはタバコの常用に典型的に起因する。口腔及び喉頭のHPV陰性HNSCCは、主として、喫煙又はタバコの常用に起因する。HPV(HPV陽性)に起因するHNSCCは、典型的に、中咽頭の口蓋及び舌扁桃に生じ、タバコの常用と関連するHNSCCは、主として口腔、下咽頭及び喉頭に見出される。
【0047】
本明細書の下記の実施例1に記載されるフェーズII試験の重要な発見は、その腫瘍がHPV陰性であったHNSCC対象は、セツキシマブと併用したフィクラツズマブでの処置により、HPV陽性HNSCCを有する対象と比べて上回る転帰を有したことである。実際、実施例1に提示されるデータは、HPV陽性HNSCC対象の間では、併用群(フィクラツズマブとセツキシマブ)での応答者はなかったことを示し、全応答者(完全奏効及び部分奏効)は、HPV陰性HNSCCを有した。フィクラツズマブ単独群では、唯一の応答者はHPV陰性であり、HPV陽性の応答者は存在しなかった。歴史的に、HPV陽性HNSCC対象は典型的に、HPV陰性HNSCC対象よりも良好な転帰を有することから、この結果は驚くべきであった。実際、HPV陰性であることは、第二選択療法又は後方ライン療法において、現在の標準治療に従いセツキシマブで処置される者を含めたHNSCC患者に対する予後不良指標と見なされる。従って、本発明の方法による処置に関するHPV陰性状態は、肯定的な予後指標であり得る一方、HPV陽性状態は、否定的な予後指標であり得ることは、まったく驚くべき且つ予想外である。
【0048】
従って、中でも、本明細書に提示されるデータは、HPV陰性HNSCC対象が、フィクラツズマブ及びセツキシマブによる処置に選択されるべきである一方、HPV陽性HNSCCは、フィクラツズマブ及びセツキシマブによる処置に選択されるべきでないことを示唆する。更に、データは、フィクラツズマブを伴うセツキシマブが、HPV陰性HNSCCを有する対象における第二選択療法又は後方ライン療法のための現在の標準治療であるセツキシマブ単独を置換し得ることを示唆する。例えば、免疫療法(例えば、PD-1、PD-L1若しくは他のチェックポイント阻害剤)による処置、又はそのHNSCCがHPV-であれば標準治療である他の第一選択処置の後に進行したHNSCC対象においては、それらの対象は、セツキシマブのみで処置されるよりもむしろ、本明細書に開示される、本発明の方法により、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置され得る。従って、本発明に関する一部の実施形態では、本発明の方法により、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置される対象は、セツキシマブ処置未経験であり、セツキシマブによる処置歴がないことを意味する。本発明に関する一部の実施形態では、本発明の方法により、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置されるHNSCC対象は、セツキシマブ耐性であり、そのHNSCCは、セツキシマブによる処置歴があるが、HNSCCが再発又は転移したことを意味する。
【0049】
本発明の一実施形態によると、HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定される場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。
【0050】
本発明の一実施形態によると、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定される場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。
【0051】
本発明に関する一部の実施形態によると、HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCが、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)での処置に対して耐性である、例えば、HNSCCが、免疫チェックポイント阻害剤、PD-L1、又はPD-1耐性ある場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、対象は、放射線による処置歴も有し得る。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。一部の実施形態では、HNSCCは、プラチナ処置歴がなく、従って、プラチナ処置未経験であるか、又は対象はプラチナ不適格である。
【0052】
本発明に関する一部の実施形態によると、HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCが、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)に対して耐性であってプラチナ化学療法(例えば、シスプラチン又はカルボプラチン)処置歴があれば、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、対象は、放射線による処置歴も有し得る。一部の実施形態では、HNSCCはプラチナ耐性でもある。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。
【0053】
本発明の一実施形態によると、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCが、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)での処置に対して耐性である、例えば、HNSCCが、免疫チェックポイント阻害剤、PD-L1、又はPD-1耐性ある場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、対象は、放射線による処置歴も有し得る。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。一部の実施形態では、HNSCCは、プラチナ処置歴がなく、従って、プラチナ処置未経験であるか、又は対象はプラチナ不適格である。
【0054】
本発明の一実施形態によると、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCが、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)に対して耐性であってプラチナ化学療法(例えば、シスプラチン又はカルボプラチン)処置歴があれば、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、対象は、放射線による処置歴も有し得る。一部の実施形態では、HNSCCはプラチナ耐性でもある。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。
【0055】
本発明の一実施形態によると、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCがプラチナ耐性である場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、対象は、放射線による処置歴も有し得る。一部の実施形態では、対象は、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)不適格であるか、又は免疫療法処置未経験である(例えば、免疫療法、例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法を以前に受けたことがない、例えば、免疫チェックポイント若しくはPD-1若しくはPD-L1処置未経験である)。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。
【0056】
本発明の一実施形態によると、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCがプラチナ耐性である場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、対象は、放射線による処置歴も有し得る。一部の実施形態では、HNSCCは更に、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)耐性であり得るか、又は対象は、免疫療法(例えば、ペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤療法)で処置された。一部の実施形態では、対象は、免疫療法不適格(例えば、免疫チェックポイント阻害剤療法、例えば、PD-1若しくはPD-L1等不適格)であるか、又は対象は、免疫療法による処置歴を有しなくてもよく、従って、免疫療法処置未経験である。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。
【0057】
本発明の一実施形態によると、HNSCC、例えば、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCがプラチナ耐性及び免疫療法耐性である場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一実施形態では、対象はセツキシマブ処置未経験である。一部の実施形態では、HNSCC、再発性又は転移性HNSCCを有する対象は、HPV陰性HNSCCを有すると同定され、HNSCCがプラチナ耐性及び/又は免疫療法耐性である場合、本発明の方法により(例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで)処置される。一部の実施形態では、免疫療法は、本明細書に記載される免疫チェックポイント阻害剤療法を含む。一部の実施形態では、HNSCCは、放射線による処置歴もあり得る。
【0058】
一部の実施形態では、プラチナ耐性であるHNSCCは、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、ロバプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン又はサトラプラチン、又はそれらの組合せに対して耐性である。一部の実施形態では、プラチナ耐性であるHNSCCは、カルボプラチン又はシスプラチン、又はその組合せに対して耐性である。
【0059】
一部の実施形態では、免疫療法耐性であるHNSCCは、チェックポイント阻害剤に対して耐性である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤には、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、VISTA阻害剤、KIR阻害剤、2B4阻害剤、CD160阻害剤、CGEN-15049阻害剤、CHK1阻害剤、CHK2阻害剤、A2aR阻害剤、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。
【0060】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、REGN2810、PDR001、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤には、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤には、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN-1884、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIM-3阻害剤には、TSR-022、LY3321367、MBG453、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIGIT阻害剤には、BMS-986207、AGEN17、チラゴルマブ、MK-7684、OMP-313M32、EOS-448、AB154、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤には、BMS-986016、REGN3767、IMP321、LAG525、BI754111、ファベゼリマブ、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、VISTA阻害剤には、CI-8993、HMBD-002、WO2018/132476に記載されるPSGL-1アンタゴニスト、又はそれらの組合せが含まれ得る。
【0061】
一態様では、本発明は、処置を必要とする対象におけるがんを処置する方法を提供する。本方法は、対象に、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤の治療上有効量を投与する工程を含む。他の態様では、本発明は、HGF阻害剤、EGFR阻害剤、及び場合により、薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。他の態様では、本発明は、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤を含む併用療法に適切であるHNSCCを有する対象を同定する方法を提供する。
【0062】
I.定義
便宜上、明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲中の特定の用語を、この項に収集する。
【0063】
本明細書で使用する「薬学的に許容される」又は「薬理的に許容される」は、必要に応じて動物又はヒトに投与した場合、有害、アレルギー性、又は他の有害反応を生み出さない分子実体及び組成物を意味する。用語「薬学的に許容される担体」には、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤等が含まれる。医薬活性物質に関する、そのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が、活性成分と非相容性である場合を除き、治療用組成物におけるその使用が考えられる。補足的活性成分も、組成物中に組み込まれ得る。
【0064】
本明細書で使用する用語「無増悪生存期間(PFS)」は、無作為化から、RECIST(第1.1版;例えば、Eisenhauer等(2009)、EUR. J. CANCER、25:228~247頁を参照)による客観的腫瘍進行(進行性疾患「PD」、放射線学)の最初の記録、又は何らかの理由による死亡のどちらであれ最初に起こる方までの期間と定義される。
【0065】
本明細書で使用する用語「全生存期間(OS)」は、無作為化の日から、何らかの理由による死亡日までの期間と定義される。
【0066】
本明細書で使用する用語「客観的奏効率(ORR)」は、無作為化された対象の総数に対する、RECIST(第1.1版)による確定完全奏効(CR)又は確定部分奏効(PR)を伴う対象の比率と定義される。確定奏効は、奏効の最初の記録から少なくとも4週間後に、反復イメージング研究において存続する奏効である。
【0067】
本明細書で使用する用語「奏効期間(DoR)」は、客観的腫瘍応答(完全応答又は部分応答のどちらであれ最初に記録される方)の最初の記録から、客観的腫瘍進行の最初の記録又は何らかの理由による死亡までの期間と定義される。
【0068】
処置に対する対象の応答との関連での、本明細書で使用する用語「応答」又は「応答する」は、がん療法に対する標的病変の応答を評価するためのRECIST(固形腫瘍における応答評価基準、第1.1版、2009)基準を指す。RECIST基準によると、応答する対象は、「完全応答者」(全ての標的病変の消失;いずれかの病的リンパ節は(標的であれ非標的であれ)、短軸の<10mmまでの減少を有する必要がある)又は「部分応答者」(ベースライン長径和を基準に、標的病変の長径和の少なくとも30%の低下)のいずれかと分類され;非応答者は、2つのカテゴリー、つまり、安定(処置の開始以降の最小長径和を基準に、部分奏効に該当する十分な縮小も進行性疾患に該当する十分な増加もない)、又は進行性疾患(処置の開始以降に記録された最小長径和を基準に、標的病変の長径和の少なくとも20%の増加、又は1つ若しくは複数の新病変の出現;ベースライン径和測定;和は、20%の相対的増加に加えて、少なくとも5mmの絶対的増加を示す必要もある)のうちの一方に配置される。RECIST基準は、例えば、Therasse等、J. NATL. CANCER INST.、2000:92:205~216頁(RECIST 1.0)、及びEisenhauer等、EUR. J. CANCER、2009:25:228~247頁(RECIST 1.1)中で詳細に考察される。従って、本明細書に記載される、療法への応答は、完全応答者又は部分応答者に関するRECISTカテゴリー内に入る対象を指し、非応答は、安定又は進行性疾患に関するRECISTカテゴリー内に入る対象を指す。
【0069】
本明細書で使用する用語「薬物関連有害事象」、「有害事象」又は「AE」は、米国国立がん研究所の有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE))2010年6月14日付け第4.03版において定義及び分類される有害事象を指し、有害事象の「グレード」へのいかなる言及も、その中で概説される等級付けシステムを指す。
【0070】
がんの関連での、本明細書で使用する用語「処置すること」又は「処置する」又は「処置」は、(a)腫瘍増殖を減速させる、(b)腫瘍増殖を停止させる、(c)腫瘍退縮若しくは消失を促進する、(d)がんの症状を改善する、(e)がんを治癒する、若しくは(f)対象の生存を延長させる、技術、行為若しくは療法を対象に適用すること、又は個体が実際に、その技術、行為若しくは療法に応答するかにかかわりなく、(a)~(f)のいずれかを達成する試みにおいて、技術、行為若しくは療法を対象に適用することを指す。
【0071】
本明細書で使用する用語「臨床的有用性」は、(a)腫瘍増殖の減速、(b)腫瘍増殖の停止、(c)腫瘍退縮若しくは消失、(d)がんの症状の改善、(e)がんの治癒、又は(f)対象の生存の延長のいずれかを体験する対象を指す。
【0072】
がん又は腫瘍(例えばHNSCC)に関する、本明細書で使用する「進行」は、ステージ3若しくはステージ4に達したがん又は腫瘍を指す。特定の実施形態では、「進行」は、がん又は腫瘍が転移した、或いは外科的介入又は放射線療法等の局所療法単独では十分に処置することができないため、全身療法を必要とすることを意味する。特定の実施形態では、「進行」は、がん又は腫瘍が、局所療法又は全身療法による処置に応答した後に再発したことを意味する。
【0073】
本明細書で使用する「全難治性(pan-refractory)」HNSCCは、(i)プラチナ化学療法、(ii)免疫療法(例えば、チェックポイント阻害剤)、及び(iii)セツキシマブの各々での処置に耐性であるか、又は適さないHNSCCを指す。
【0074】
本明細書で使用する「再発性」がん(例えば、再発性HNSCC)は、処置に応答しないか、又は処置後に元の状態に戻る、即ち「再発する」がんを指す。例えば、がんは、処置の様式に応答しない、例えば、対象が、処置中に、臨床的有用性を達成しないか、又は疾患が進行すれば、再発性である。例えば、がんは、処置後に元の状態に戻るか、又は進行すれば再発性である。本明細書で使用する「再発性」がんは、初期処置に応答してから元の状態に戻るがんであり得るか、又は最初は処置に応答するが、処置の後期ではそのような処置に応答するのをやめるか、若しくは耐性を発現させるがんである。特定の実施形態では、「再発性」は、少なくとも1つの全身処置若しくは局所処置で処置されてそのような処置に応答しなかった若しくはそのような処置に対して耐性になる、又はそのような処置の最中若しくは処置後に進行し続ける、がん又は腫瘍、例えば、HNSCC等を指す。他の実施形態では、「再発性」は、少なくとも2つの全身処置若しくは局所処置で処置されてそのような処置に応答しなかった若しくはそのような処置に対して耐性になる、又はそのような処置の最中若しくは処置後に進行し続ける、がん又は腫瘍、例えば、HNSCC等を指す。一部の実施形態では、HNSCCは、根治目的療法又は治癒目的療法に応答せず、緩和療法を必要とすれば、「再発性」である。一部の科学的な関連では、再発性であるHNSCCは、「耐性」又は「難治性」と記載され得る。
【0075】
本明細書で使用する「転移性」がん(例えば、転移性HNSCC)は、開始した身体部(即ち、原発部位)から身体の他の部に拡散したがんを指す。例えば、転移性HNSCCは、身体の他の部に拡散したHNSCC原発部位腫瘍を指す。一部の実施形態では、転移性HNSCCは、緩和療法を必要とする。
【0076】
本明細書で使用する用語「対象」及び「患者」は、交換可能に使用され、本発明の方法及び組成物により処置される生物体を指す。そのような生物体は、好ましくは哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、又は非ヒト霊長類、例えば、サル、チンパンジー、ヒヒ、及びアカゲザル等)であり、より好ましくはヒトである。
【0077】
本明細書で使用する用語「医薬組成物」は、活性剤の、不活性又は活性の担体との組合せを指し、その組成物をインビボ又はエクスビボでの診断用途又は治療用途向けに特に適切にする。
【0078】
本明細書で使用する用語「有効量」は、有用又は所望の結果を達成するために、例えば、対象において臨床的有用性を達成するために十分な、活性剤(例えば、HGF阻害剤及び/又はEGFR阻害剤)の量を指す。有効量は、1回又は複数回の投与、適用又は用量で投与されてもよく、特定の製剤又は投与経路に限定されるとは意図されない。
【0079】
本明細書で使用する用語「耐性」は、ある種の抗がん療法に応答しないがん又は腫瘍を指す。一部の実施形態では、がん若しくは腫瘍は、以前に治療に応答した後で、処置経過中のある時点においてその治療に応答するのをやめれば「耐性」であり、又はがん若しくは腫瘍は、一過程の治療に一度も応答しなかったことから「耐性」であり得て、例えば、ある治療に対して、一過程の処置の最初から非応答性である。一部の実施形態では、がん又は腫瘍は、一過程の処置が完了した後に再発又は進行すれば、同じく「耐性」である。一部の実施形態では、がん又は腫瘍は、一過程の処置の最中に再発又は進行すれば、同じく「耐性」である。例えば、「プラチナ耐性」がん又は腫瘍、例えばHNSCCは、プラチナ化学療法、例えば、カルボプラチン又はシスプラチンに応答しないか、又は応答するのをやめるものである。例えば、免疫療法耐性がん又は腫瘍、例えばHNSCCは、免疫療法、例えば、PD-1又はPD-L1阻害剤等のチェックポイント阻害剤、例えば、ペムブロリズマブ等に応答しないか、又は応答するのをやめるものである。例えば、チェックポイント阻害剤に応答しないか、又は応答するのをやめるHNSCCは、「チェックポイント阻害剤耐性」HNSCCである。更に、免疫療法「に失敗する」か、又は免疫療法に対して「非応答性」であるがん又は腫瘍、例えばHNSCC等は、「免疫療法耐性」であるHNSCCと同義であり得る。プラチナ「に失敗する」か、又はプラチナ化学療法に対して「非応答性」であるがん又は腫瘍、例えばHNSCC等は、「プラチナ耐性」であるHNSCCと同義であると見なされる。
【0080】
本明細書で使用する用語「プラチナ不適格」は、何らかの理由で、HNSCC等のがんに対する治療としてのプラチナ化学療法を受けることに適格でない対象を指す。例えば、対象は、腎機能障害若しくは肝機能障害ゆえ、又は累積毒性ゆえ、プラチナ不適格であり得る。
【0081】
本明細書で使用する用語「免疫療法不適格」は、何らかの理由で、HNSCC等のがんに対する治療としての、例えばチェックポイント阻害剤等の免疫療法、例えば、PD-1又はPD-L1阻害剤を受けることに適格でない対象を指す。例えば、対象は、自己免疫障害を有することから、免疫療法不適格であり得る。
【0082】
本明細書に記載される方法及び組成物は、単独で、又は他の治療剤及び/若しくは様式との併用で使用され得る。本明細書で使用する用語「併用して」投与されるは、障害による対象の苦痛の過程において、対象に、2つ(以上)の異なる処置を、患者に対する処置の効果が一時点で重複するように送達することを意味すると理解される。特定の実施形態では、第2の処置の送達が開始する時に一方の処置の送達が依然として行われているため、投与に関して重複が存在することになる。それは、本明細書では「同時の(simultaneous)」又は「同時(concurrent)送達」と呼ばれることもある。他の実施形態では、一方の処置の送達は、他方の処置の送達が開始する前に終了する。いずれかの場合の特定の実施形態では、併用投与に起因して、処置がより有効である。例えば、第2の処置が、より有効である、例えば、より少量の第2の処置で同等の効果が見られる、若しくは第2の処置は、第1の処置の不在下に投与された場合に見られるであろうよりも著しい程度で症状を軽減する、又は類似の状況が、第1の処置により見られる。特定の実施形態では、症状の、又は障害に関連する他のパラメータの低下が、他方の処置の不在下に送達された一方の処置により観察されるであろう低下よりも著しいような送達である。2つの処置の効果は、部分的に付加的、完全に付加的であり得るか、又は付加的を上回り得る。送達は、送達される第1の処置の効果が、第2の処置の送達時になおも検出可能であるようなものであり得る。
【0083】
本明細書で使用する用語「抗体」は、特に指示がない限り、インタクト抗体(例えばインタクトモノクローナル抗体)、又はその断片、例えば、抗体のFc断片(例えば、モノクローナル抗体のFc断片)等、又は抗体の抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体の抗原結合断片)を意味すると理解され、インタクト抗体、抗原結合断片、又は修飾された、操作された、若しくは化学的にコンジュゲートさせたFc断片を含む。抗原結合断片の例には、Fab、Fab'、(Fab')2、Fv、一本鎖抗体(例えばscFv)、ミニボディ、及びダイアボディが含まれる。修飾又は操作された抗体の例には、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)が含まれる。化学的にコンジュゲートさせた抗体の一例は、毒素部分にコンジュゲートさせた抗体である。
【0084】
組成物が、特定の成分を有する、含む(including)若しくは含む(comprising)と記載される、又はプロセス及び方法が、特定の工程を有する、含む(including)若しくは含む(comprising)と記載される明細書を通して、列挙される成分から本質的になるか若しくはからなる、本発明の組成物が更に存在すること、並びに列挙される処理工程から本質的になるか若しくはからなる、本発明によるプロセス及び方法が存在すること、が考えられる。
【0085】
要素若しくは成分が、列挙される要素若しくは成分のリスト、に含まれる及び/又はから選択されると言われる出願では、要素若しくは成分が、列挙される要素若しくは成分のいずれか1つであり得る、又は要素若しくは成分が、列挙される要素若しくは成分の2つ以上からなる群から選択され得ると理解される。
【0086】
更に、本明細書に記載される組成物又は方法の要素及び/又は特徴は、本明細書中で明示的であれ暗示的であれ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々なやり方で組合せ可能であると理解される。例えば、特定化合物に言及する場合、特に文脈から他に理解されない限り、その化合物は、本発明の組成物の様々な実施形態において、及び/又は本発明の方法において使用可能である。言い換えると、本出願の範囲内で、実施形態は、明確且つ簡潔な出願を書き描くことを可能にする方法で記載及び描写されたが、実施形態は、本教示及び発明から別れることなく様々に組合せ又は分離可能であることが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載及び描写される特徴は全て、本明細書に記載及び描写される発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0087】
表現「の少なくとも1つ」には、特に文脈及び使用から他に理解されない限り、その表現に続いて列挙される目的語の各々が個別に、及び列挙される目的語の2つ以上の様々な組合せが含まれると理解される。列挙される3つ以上の目的語との関連での表現「及び/又は(and/or)」は、特に文脈から他に理解されない限り、同じ意味を有すると理解される。
【0088】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」の使用は、それらの文法的均等物を含めて、特に具体的に記載されない、又は特に文脈から他に理解されない限り、一般的にオープンエンドであり非限定的である、例えば、追加の列挙されない要素又は工程を除外しないと理解される。
【0089】
用語「約」の使用が定量値の前である場合、特に具体的に記載されない限り、本発明は、具体的な定量値それ自体も含む。本明細書で使用する用語「約」は、特に指示又は推察されない限り、公称値からの±10%のばらつきを指す。例えば、「約10」は、値10、並びに10±10%の範囲の開示である。
【0090】
工程の順序、又は特定の行為を行う順序は、本発明が依然として操作可能である限り、重要でないと理解される。更に、2つ以上の工程又は行為は、同時に行ってもよい。
【0091】
本明細書中でのあらゆる例、又は例示的用語、例えば、「など(such as)」又は「含む(including)」の使用は、本発明を単により好都合に例証することを意図し、主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。明細書中のどの用語も、いずれの特許請求されていない要素が、本発明の実践に必須であると示すとは解釈されない。
【0092】
本明細書で使用する、単数形「a」及び「an」及び「the」は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、複数の抗体を含み、一部の実施形態での、「抗体」への言及は、多数の抗体を含む、以下同様。
【0093】
本明細書で使用する全ての数値又は数値範囲は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、そのような範囲内又は範囲を包含する全整数、及び範囲内又は範囲を包含する小数を含む。従って、例えば、90~100%の範囲への言及は、91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%等、並びに91.1%、91.2%、91.3%、91.4%、91.5%等、92.1%、92.2%、92.3%、92.4%、92.5%等、以下同様を含む。他の例では、1~5,000倍の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍等、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5倍等、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5倍等、以下同様を含む。
【0094】
II.HGF阻害剤
1)がんにおけるHGF/c-Met
METがん遺伝子は、リガンド、肝細胞増殖因子(HGF)が排他的に結合するRTKであるc-Metをコードする。HGFは、「分散因子」としても知られ、この名称は、HGFが、細胞デカップリング(cellular decoupling)及び運動源性を促進するという早期の観察から生じた。c-Metの過剰発現は、正常細胞に対して形質転換性(transformative)であり、運動性、侵入/転移、及び血管新生を高める(Peruzzi, B.とBottaro, D.P. Clin Cancer Res. (2006) 12:3657~3660頁)。METは、上皮間葉転換の確立されたドライバーである。
【0095】
c-Met及び/又はHGFは、HNSCCのおよそ80%において過剰発現しており(Knowles, L.M.等、Clin Cancer Res. (2009) 15:3740~3750頁)、MET増幅が、HNSCC腫瘍の13%において報告されている(Seiwert, T.Y.等、Cancer Res. (2009) 69:3021~3031頁)。更に、HNSCCにおけるMETがん遺伝子では、セマフォリンリガンド結合、膜近傍、及びRTKドメインでの変化を含む、いくつかの変異が同定されている(Seiwert, T.Y.等、Cancer Res. (2009) 69:3021~3031頁)。局所進行性疾患に関するスイス化学放射線療法試験では、患者の14%において活性化点変異(Y1253D)が記載され、無転移生存期間の低下が予測されたもの、2つの全エクソームシーケンスプロジェクトでは、HNSCCにおけるこの変異の存在は確証されなかった(Ghadjar, P.等、Clin Exp Metastasis. (2009) 26:809~815頁;Stransky, N.等、Science (2011) 333:1157~1160頁;Agrawal, N.等、Science (2011) 333:1154~1157頁)。
【0096】
2)HGF阻害剤
本発明の実践において、様々なHGF阻害剤が使用可能であることが考えられる。阻害剤は、未処置の対照試料(例えば、組織試料若しくは体液試料)又は対象と比べて、所与のHGF活性、又は所与のHGF媒介性活性を、完全又は部分的に阻害すること、或いは低下させることができる。例えば、特定のHGF阻害剤は、HGFとHGFリガンド(例えばc-Met)との間の結合をブロックする、低下させる、或いは中和することにより作用し得る。HGF阻害剤は、HGFに直接若しくは間接的に結合することにより、又はその代わりにHGFリガンド(例えばc-Met)に直接若しくは間接的に結合することにより、HGFとHGFリガンドとの間の結合をブロックし得る、低下させ得る、或いは中和させ得ると理解される。代替的に又は付加的に、HGF阻害剤は、HGF又はHGFリガンド(例えばc-Met)の発現を低下させることにより作用し得る。代替的に又は付加的に、HGF阻害剤は、直接又は間接的に、HGFとHGFリガンド(例えばc-Met)との間の相互作用の下流効果を阻害し得る。
【0097】
例示的なHGF阻害剤には、抗体、HGF等の目的の標的に結合する核酸ベース治療薬、例えば、アプタマー及びシュピーゲルマー等、又はHGF等の目的の標的の発現及び/若しくは活性を阻害するアンチセンス若しくはsiRNA分子若しくはCRISPRシステム、又は小分子阻害剤、例えば、HGFの小分子阻害剤、又はそれらの組合せが含まれる。
【0098】
特定の実施形態では、異なるHGF阻害剤が、併用投与され得ると理解される。
【0099】
3)抗HGF抗体
特定の実施形態では、HGF阻害剤は、抗HGF抗体又はその抗原結合断片である。
【0100】
一般的に、抗体は、4本のポリペプチド鎖を含有する多量体タンパク質である。ポリペプチド鎖の2本は、免疫グロブリン重鎖(H鎖)と呼ばれ、ポリペプチド鎖の2本は、免疫グロブリン軽鎖(L鎖)と呼ばれる。免疫グロブリン重鎖と軽鎖とは、鎖間ジスルフィド結合により連結されている。免疫グロブリン重鎖は、鎖間ジスルフィド結合により連結されている。軽鎖は、1つの可変領域(VL)と1つの定常領域(CL)とからなる。重鎖は、1つの可変領域(VH)と、少なくとも3つの定常領域(CH1、CH2及びCH3)とからなる。可変領域が、抗体の結合特異性を決定する。
【0101】
各々の可変領域は、フレームワーク領域(FR)として公知の比較的保存された4つの領域が隣接する、相補性決定領域(CDR)として公知の3つの超可変領域を含有する。FR及びCDRの広がりは定義されている(Kabat, E.A.等(1991) SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号;及びChothia, C.等(1987) J. MOL. BIOL. 196:901~917頁)。CDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれる3つのCDRは、抗体結合特異性に寄与する。天然型抗体が、操作された抗体、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体等のための出発原料として使用されている。
【0102】
本明細書に開示される、本発明の抗体は、(a)構造CDRH1-CDRH2-CDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び(b)構造CDRL1-CDRL2-CDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み得て、但し、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域は、共に、HGFを結合するための単一結合部位を定義する。
【0103】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(但し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する);並びに/又は配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(但し、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する)を含み得る。
【0104】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(但し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する);並びに/又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(但し、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する)を含み得る。
【0105】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0106】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号7のアミノ酸配列の、可変領域全体及び/又はフレームワーク領域配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号8のアミノ酸配列の、可変領域全体及び/又はフレームワーク領域配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0107】
配列同一性は、当業者が備えている技能の範囲内にある様々なやり方で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等を使用して決定され得る。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastx(参照により組み込まれているKarlin等(1990) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:2264~2268頁;Altschul(1993) J. MOL. EVOL. 36、290~300頁;Altschul等(1997) NUCLEIC ACIDS RES. 25:3389~3402頁)により利用されるアルゴリズムを使用したBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析は、配列類似性検索に適合されている。配列データベースの検索における基本的問題に関する考察は、参照により完全に組み込まれているAltschul等(1994) NATURE GENETICS 6:119~129頁を参照。当業者は、比較対象の配列の全長にわたる最高のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムも含めて、アラインメント測定用の適切なパラメータを決定することができる。ヒストグラム、記述、アラインメント、期待値(即ち、データベース配列に対するマッチを報告するための統計的有意性閾値)、カットオフ、行列、及びフィルタ用の検索パラメータは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastn、及びtblastxにより使用されるデフォルトスコア行列は、BLOSUM62行列である(参照により完全に組み込まれているHenikoff等(1992) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915~10919頁)。4つのblastnパラメータは、次のように調整され得る。Q=10(ギャップ創造ペナルティ);R=10(ギャップ伸長ペナルティ);wink=1(クエリに沿ってwink.sup.thの位置ごとにワードヒットを生成する);及びgapw=16(ギャップのあるアラインメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。同等のBlastpパラメータ設定は、Q=9;R=2;wink=1;及びgapw=32であり得る。検索は同じく、NCBI(National Center for Biotechnology Information) BLAST Advanced Optionパラメータを使用して行われ得る(例えば:-G、ギャップを空けるためのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドに対する5/タンパク質に対する11;-E、ギャップを伸長するためのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドに対する2/タンパク質に対する1;-q、ヌクレオチドミスマッチに対するペナルティ[整数]:デフォルト=-3;-r、ヌクレオチドのマッチに対する報酬[整数]:デフォルト=1;-e、期待値[実数]:デフォルト=10;-W、ワードサイズ[整数]:デフォルト=ヌクレオチドに対する11/megablastに対する28/タンパク質に対する3;-y、ビットでのblast伸長についてのドロップオフ(X):デフォルト=blastnに対する20/その他に対する7;-X、ギャップのあるアラインメントに対するXドロップオフ値(ビット):デフォルト=全てのプログラムに対して15であるが、blastnには該当せず;及び-Z、ギャップのあるアラインメントに対する最終Xドロップオフ値(ビット):blastnに対する50、その他に対する25)。ペアワイズタンパク質アラインメント用のClustalWも使用可能である(デフォルトパラメータは、例えば、Blosum62行列、及びギャップオープニングペナルティ=10、及びギャップ伸長ペナルティ=0.1を含み得る)。GCGパッケージ第10.0版において利用できる配列間Bestfit比較は、DNAパラメータGAP=50(ギャップ創造ペナルティ)及びLEN=3(ギャップ伸長ペナルティ)を使用し、タンパク質比較における同等の設定は、GAP=8及びLEN=2である。
【0108】
前記の実施形態の各々では、HGFに結合する免疫グロブリン重鎖可変領域配列及び/又は軽鎖可変領域配列は、例えば、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のフレームワーク領域中に、アミノ酸改変、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、又は10個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を含有し得ることが本明細書で考えられる。
【0109】
特定の実施形態では、重鎖可変領域配列、例えば、配列番号7のVH配列又はそのいずれかのバリアントは、当技術分野で公知の様々な重鎖定常領域配列に共有結合され得ることが考えられる。同様に、軽鎖可変領域配列、例えば、配列番号8のVL又はそのいずれかのバリアントは、当技術分野で公知の様々な軽鎖定常領域配列に共有結合され得ることが考えられる。
【0110】
例えば、抗体分子は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEの重鎖定常領域から選択される;特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の(例えばヒト)重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を有し得る。他の実施形態では、抗体分子は、例えば、カッパ又はラムダの(例えばヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。抗体の特性を修飾するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクタ細胞機能、及び/又は補体機能の1つ若しくは複数を上昇又は低下させるために)、定常領域は、改変され得る、例えば、変異させてもよい。一実施形態では、抗体は、エフェクタ機能を有する、及び/又は補体を固定し得る。他の実施形態では、抗体は、エフェクタ細胞をリクルート、及び/又は補体を固定しない。他の実施形態では、抗体は、Fc受容体に対する、低下した結合能力を有するか、又は結合能力を有しない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支持しないアイソタイプ又はサブタイプ、断片又は他の変異体であり、例えば、抗体は、変異誘発させた、又は欠失させたFc受容体結合領域を有する。
【0111】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号17のアミノ酸配列、若しくは配列番号17に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び/又は配列番号18のアミノ酸配列、若しくは配列番号18に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0112】
特定の実施形態では、抗体は、標準的結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉を使用して測定して、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.75nM、0.5nM、0.1nM、0.075nM、0.05nM、0.01nM、0.0075nM、0.005nM、0.001nM以下のKDで、ヒトHGFに結合する。特定の実施形態では、抗体は、標準的結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉を使用して測定して、約20nMから約0.001nMまで、約20nMから約0.005nMまで、約20nMから約0.0075nMまで、約20nMから約0.01nMまで、約20nMから約0.05nMまで、約20nMから約0.075nMまで、約20nMから約0.1nMまで、約20nMから約0.5nMまで、約20nMから約1nMまで、約10nMから約0.001nMまで、約10nMから約0.005nMまで、約10nMから約0.0075nMまで、約10nMから約0.01nMまで、約10nMから約0.05nMまで、約10nMから約0.075nMまで、約10nMから約0.1nMまで、約10nMから約0.5nMまで、約10nMから約1nMまで、約5nMから約0.001nMまで、約5nMから約0.005nMまで、約5nMから約0.0075nMまで、約5nMから約0.01nMまで、約5nMから約0.05nMまで、約5nMから約0.075nMまで、約5nMから約0.1nMまで、約5nMから約0.5nMまで、約5nMから約1nMまで、約3nMから約0.001nMまで、約3nMから約0.005nMまで、約3nMから約0.0075nMまで、約3nMから約0.01nMまで、約3nMから約0.05nMまで、約3nMから約0.075nMまで、約3nMから約0.1nMまで、約3nMから約0.5nMまで、約3nMから約1nMまで、約3nMから約2nMまで、約2nMから約0.001nMまで、約2nMから約0.005nMまで、約2nMから約0.0075nMまで、約2nMから約0.01nMまで、約2nMから約0.05nMまで、約2nMから約0.075nMまで、約2nMから約0.1nMまで、約2nMから約0.5nMまで、約2nMから約1nMまで、約1nMから約0.001nMまで、約1nMから約0.005nMまで、約1nMから約0.0075nMまで、約1nMから約0.01nMまで、約1nMから約0.05nMまで、約1nMから約0.075nMまで、約1nMから約0.1nMまで、約1nMから約0.5nMまで、約0.5nMから約0.001nMまで、約0.5nMから約0.005nMまで、約0.5nMから約0.0075nMまで、約0.5nMから約0.01nMまで、約0.5nMから約0.05nMまで、約0.5nMから約0.075nMまで、約0.5nMから約0.1nMまで、約0.1nMから約0.001nMまで、約0.1nMから約0.005nMまで、約0.1nMから約0.0075nMまで、約0.1nMから約0.01nMまで、約0.1nMから約0.05nMまで、約0.1nMから約0.075nMまで、約0.075nMから約0.001nMまで、約0.075nMから約0.005nMまで、約0.075nMから約0.0075nMまで、約0.075nMから約0.01nMまで、約0.075nMから約0.05nMまで、又は約0.05nMから約0.035nMまでのKDで、ヒトHGFに結合する。
【0113】
特定の実施形態では、本発明は、開示される抗体が結合するエピトープと同じ、HGF中に存在するエピトープに結合する抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明は、HGFへの結合に関して、開示される抗体と競合する抗体を提供する。
【0114】
抗体が、開示される抗体と同じエピトープに結合するかどうか、又は結合に関して、開示される抗体と競合するかどうかを決定するための競合アッセイは、当技術分野で公知である。例示的な競合アッセイには、イムノアッセイ(例えば、ELISAアッセイ、RIAアッセイ)、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore解析)、バイオレイヤー干渉、及びフローサイトメトリーが含まれる。
【0115】
典型的に、競合アッセイは、固体表面に結合させたか、又は細胞表面上で発現させた抗原(例えば、ヒトHGFタンパク質又はその断片)、HGF結合試験抗体、及び参照抗体の使用を含む。参照抗体は標識されており、試験抗体は非標識である。競合阻害は、試験抗体の存在下、固体表面又は細胞に結合した標識参照抗体の量を決定することにより測定される。通常、試験抗体は、過剰に存在する(例えば、1x、5x、10x、20x又は100x)。競合アッセイにより同定される抗体(即ち競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープ、又は類似(例えば重複)エピトープに結合する抗体、及び立体障害が生じるように、参照抗体が結合するエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。
【0116】
競合アッセイは、標識の存在が、結合を妨げない、或いは阻害しないことを確保するために、両方向で行われ得る。例えば、第1の方向では、参照抗体が標識されており、試験抗体は非標識であり、第2の方向では、試験抗体が標識されており、参照抗体は非標識である。
【0117】
抗原に対する特異的結合に関して、一方の抗体の過剰(例えば、1x、5x、10x、20x又は100x)が、他方の抗体の結合を、競合結合アッセイにおいて測定して、例えば、少なくとも50%、75%、90%、95%又は99%阻害すれば、試験抗体は参照抗体と競合する。
【0118】
一方の抗体の結合を低下させる又は除去する、抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の抗体の結合を低下させる又は除去すれば、2つの抗体は、同じエピトープに結合すると決定され得る。一方の抗体の結合を低下させる又は除去するアミノ酸変異のサブセットのみが、他方の抗体の結合を低下させる又は除去すれば、2つの抗体は重複エピトープに結合すると決定され得る。
【0119】
特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号7に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号8に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、並びに(ii)ヒトHGFに対する結合に関して、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、及び/又はその抗体と同じ、ヒトHGF上のエピトープに結合する。
【0120】
更なる抗HGF抗体は、その内容が参照により完全に組み込まれている国際(PCT)特許出願公開第2007/143098号に記載される。
【0121】
本明細書に開示される抗体は、親和性及び/若しくは特異性を含む生化学的特徴を改善するため、凝集、安定性、沈殿、及び/若しくは非特異的相互作用を含む生物物理学的特性を改善するため、並びに/又は免疫原性を低下させるために、更に最適化(例えば親和性成熟)され得る。親和性成熟法は、当業者が備えている技能の範囲内である。例えば、DNAシャッフリング、鎖シャッフリング、CDRシャッフリング、ランダム変異導入及び/又は部位特異的変異導入により、免疫グロブリン重鎖及び/又は免疫グロブリン軽鎖内に多様性が導入され得る。
【0122】
特定の実施形態では、単離されたヒト抗体は、1つ又は複数の体細胞変異を含有する。その場合、抗体を最適化するために、ヒト生殖細胞系列配列へと抗体が修飾され得る(即ち、生殖系列化と呼ばれるプロセス)。
【0123】
一般的に、最適化された抗体は、抗原に対して、由来元の非最適化(又は親)抗体と少なくとも同じ、又は実質的に同じ親和性を有する。好ましくは、最適化された抗体は、抗原に対して、親抗体と比べて高い親和性を有する。
【0124】
特定の実施形態では、開示される抗体は、標準的インビトロコンジュゲーション化学を使用して、エフェクタ剤、例えば、小分子毒素又は放射性核種等にコンジュゲートされ得る。エフェクタ剤がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクタに化学コンジュゲートされ得るか、又は融合タンパク質としてエフェクタに連結され得る。融合タンパク質の構築は、当業者が備えている技能の範囲内である。
【0125】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、フィクラツズマブ(AV-299)である。フィクラツズマブは、ヒト化HGF阻害性免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体である。フィクラツズマブのCDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1、2及び3に示される。フィクラツズマブのCDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号4、5及び6に示される。フィクラツズマブの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7に示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号8に示される。フィクラツズマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号17に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号18に示される。
【0126】
特定の実施形態では、抗HGF抗体は、リロツムマブである。リロツムマブのCDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号21、22及び23に示される。リロツムマブのCDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号24、25及び26に示される。リロツムマブの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号27に示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号28に示される。リロツムマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号29に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号30に示される。
【0127】
III.EGFR阻害剤
1)がんにおける上皮成長因子受容体
EGFRは、膜貫通糖タンパク質受容体チロシンキナーゼ(RTK)のErbB/HERファミリーのメンバーである。活性化EGFRは、Ras/Raf/MAPK、PI3K/Akt、STAT、及びSrcキナーゼが引き起こす細胞増殖、侵入、血管新生及び転移を含む、下流シグナル伝達カスケードの多面的ネットワークを開始する(Ciardiello, F.等、European Journal of Cancer (2003) 39:1348~1354頁)。
【0128】
インビトロでのEGFRの強制過剰発現は、口腔上皮細胞の悪性形質転換を引き起こし、HNSCCにおけるがん遺伝子としてのその役割を示唆する。免疫組織化学(IHC)により測定されるEGFR過剰発現、及び蛍光in situハイブリダイゼーションにより測定されるEGFR遺伝子コピー数の増加は、HNSCCの大半で生じており、ステージの上昇、並びに無再発及び全生存期間(OS)の低下を伴う(Chung, C.H.等、J Clin Oncol. (2006) 24:4170~4176頁;Grandis, J.R.等、Cancer (1996) 78:1284~1292頁;Dassonville, O.等、Journal of Clinical Oncology (1993) 11:1873~1878頁;Chung, C.H.等、Int J Radiat Oncol Biol Phys. (2011) 81:331~338頁)。
【0129】
2)EGFR阻害剤
様々なEGFR阻害剤が、本発明の実践において使用可能であることが考えられる。阻害剤は、未処置の対照試料(例えば、組織試料若しくは体液試料)又は対象と比べて、所与のEGFR活性、又は所与のEGFR媒介性活性を、完全又は部分的に阻害すること、或いは低下させることができる。例えば、特定のEGFR阻害剤は、EGFRとEGFRリガンド(例えばEGF)との間の結合をブロックする、低下させる、或いは中和することにより作用し得る。EGFR阻害剤は、EGFRに直接若しくは間接的に結合することにより、又はその代わりにEGFRリガンド(例えばEGF)に直接若しくは間接的に結合することにより、EGFRとEGFRリガンドとの間の結合をブロックし得る、低下させ得る、或いは中和させ得ると理解される。代替的に又は付加的に、EGFR阻害剤は、EGFR又はEGFRリガンド(例えばEGF)の発現を低下させることにより作用し得る。代替的に又は付加的に、EGFR阻害剤は、直接又は間接的に、EGFRとEGFRリガンド(例えばEGF)との間の相互作用の下流効果を阻害し得る。
【0130】
例示的なEGFR阻害剤には、抗体、EGFR等の目的の標的に結合する核酸ベース治療薬、例えば、アプタマー及びシュピーゲルマー等、又はEGFR等の目的の標的の発現及び/若しくは活性を阻害するアンチセンス若しくはsiRNA分子若しくはCRISPRシステム、又は小分子阻害剤、例えば、EGFRの小分子阻害剤、又はそれらの組合せが含まれる。
【0131】
特定の実施形態では、異なるEGFR阻害剤が、併用投与され得ると理解される。
【0132】
3)抗EGFR抗体
特定の実施形態では、EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片である。
【0133】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(但し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する);並びに/又は配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(但し、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する)を含み得る。
【0134】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH3を含む免疫グロブリン重鎖可変領域(但し、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する);並びに/又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL3を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域(但し、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列は、免疫グロブリンFR配列間に介在する)を含み得る。
【0135】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0136】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、配列番号15のアミノ酸配列の、可変領域全体及び/又はフレームワーク領域配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗HGF抗体は、配列番号16のアミノ酸配列の、可変領域全体及び/又はフレームワーク領域配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0137】
前記の実施形態の各々では、EGFRに結合する免疫グロブリン重鎖可変領域配列及び/又は軽鎖可変領域配列は、例えば、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のフレームワーク領域中に、アミノ酸改変、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、又は10個のアミノ酸置換、欠失、又は付加を含有し得ることが本明細書で考えられる。
【0138】
特定の実施形態では、重鎖可変領域配列、例えば、配列番号15のVH配列又はそのいずれかのバリアントは、当技術分野で公知の様々な重鎖定常領域に共有結合され得ることが考えられる。同様に、軽鎖可変領域配列、例えば、配列番号16のVL又はそのいずれかのバリアントは、当技術分野で公知の様々な軽鎖定常領域配列に共有結合され得ることが考えられる。
【0139】
例えば、抗体分子は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEの重鎖定常領域から選択される;特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の(例えばヒト)重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を有し得る。他の実施形態では、抗体分子は、例えば、カッパ又はラムダの(例えばヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。抗体の特性を修飾するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクタ細胞機能、及び/又は補体機能の1つ又は複数を上昇又は低下させるために)、定常領域は、改変され得る、例えば、変異させてもよい。一実施形態では、抗体は、エフェクタ機能を有する、及び/又は補体を固定し得る。他の実施形態では、抗体は、エフェクタ細胞をリクルート、及び/又は補体を固定しない。他の実施形態では、抗体は、Fc受容体に対する、低下した結合能力を有するか、又は結合能力を有さない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支持しないアイソタイプ又はサブタイプ、断片又は他の変異体であり、例えば、抗体は、変異誘発させた、又は欠失させたFc受容体結合領域を有する。
【0140】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、配列番号19のアミノ酸配列、若しくは配列番号19に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;及び/又は配列番号20のアミノ酸配列、若しくは配列番号20に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0141】
特定の実施形態では、抗体は、標準的結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉を使用して測定して、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.75nM、0.5nM、0.1nM、0.075nM、又は0.05nM以下のKDで、ヒトEGFRに結合する。特定の実施形態では、抗体は、標準的結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉を使用して測定して、約20nMから約0.05nMまで、約20nMから約0.075nMまで、約20nMから約0.1nMまで、約20nMから約0.5nMまで、約20nMから約1nMまで、約10nMから約0.05nMまで、約10nMから約0.075nMまで、約10nMから約0.1nMまで、約10nMから約0.5nMまで、約10nMから約1nMまで、約5nMから約0.05nMまで、約5nMから約0.075nMまで、約5nMから約0.1nMまで、約5nMから約0.5nMまで、約5nMから約1nMまで、約3nMから約0.05nMまで、約3nMから約0.075nMまで、約3nMから約0.1nMまで、約3nMから約0.5nMまで、約3nMから約1nMまで、約3nMから約2nMまで、約2nMから約0.05nMまで、約2nMから約0.075nMまで、約2nMから約0.1nMまで、約2nMから約0.5nMまで、約2nMから約1nMまで、約1nMから約0.05nMまで、約1nMから約0.075nMまで、約1nMから約0.1nMまで、約1nMから約0.5nMまで、約0.5nMから約0.05nMまで、約0.5nMから約0.075nMまで、約0.5nMから約0.1nMまで、約0.1nMから約0.05nMまで、約0.1nMから約0.075nMまで、又は約0.075nMから約0.05nMまで、又は約0.05nMから約0.035nMまでのKDで、ヒトEGFRに結合する。
【0142】
特定の実施形態では、本発明は、開示される抗体が結合するエピトープと同じ、EGFR中に存在するエピトープに結合する抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明は、EGFRへの結合に関して、開示される抗体と競合する抗体を提供する。
【0143】
特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号16に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、並びに(ii)ヒトHGFに対する結合に関して、配列番号15のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、及び/又はその抗体と同じ、ヒトEGFR上のエピトープに結合する。
【0144】
本明細書に開示される抗体は、親和性及び/若しくは特異性を含む生化学的特徴を改善するため、凝集、安定性、沈殿、及び/若しくは非特異的相互作用を含む生物物理学的特性を改善するため、並びに/又は免疫原性を低下させるために、更に最適化(例えば親和性成熟)され得る。親和性成熟法は、当業者が備えている技能の範囲内である。例えば、DNAシャッフリング、鎖シャッフリング、CDRシャッフリング、ランダム変異導入及び/又は部位特異的変異導入により、免疫グロブリン重鎖及び/又は免疫グロブリン軽鎖内に多様性が導入され得る。
【0145】
特定の実施形態では、単離されたヒト抗体は、1つ又は複数の体細胞変異を含有する。その場合、抗体を最適化するために、ヒト生殖細胞系列配列へと抗体が修飾され得る(即ち、生殖系列化と呼ばれるプロセス)。
【0146】
特定の実施形態では、開示される抗体は、標準的インビトロコンジュゲーション化学を使用して、エフェクタ剤、例えば、小分子毒素又は放射性核種等にコンジュゲートされ得る。エフェクタ剤がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクタに化学コンジュゲートされ得るか、又は融合タンパク質としてエフェクタに連結され得る。融合タンパク質の構築は、当業者が備えている技能の範囲内である。
【0147】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))である。セツキシマブは、EGFRに対するマウス-ヒトキメラ抗体であるIgG1である。セツキシマブのCDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号9、10及び11に示される。セツキシマブのCDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号12、13及び14に示される。セツキシマブの重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号15に示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号16に示される。セツキシマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号19に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号20に示される。
【0148】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、イムガツズマブである。イムガツズマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号31に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号32に示される。
【0149】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、ネシツムマブである。ネシツムマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号33に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号34に示される。
【0150】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、アミバンタマブ(EGFR及びMET二重特異性抗体)である。アミバンタマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号35及び配列番号36に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号37及び配列番号38に示される。
【0151】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、ザルツムマブである。ザルツムマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号39に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号40に示される。
【0152】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、パニツムマブである。パニツムマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号41に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号42に示される。
【0153】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、ニモツズマブである。ニモツズマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号43に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号44に示される。
【0154】
特定の実施形態では、抗EGFR抗体は、マツズマブである。マツズマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号45に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号46に示される。
【0155】
IV.医薬組成物
HGF及び/又はEGFR阻害剤は、好ましくは、薬学的に許容される担体と併用される。
【0156】
薬学的に許容される担体には、標準的医薬担体のいずれか、例えば、リン酸緩衝食塩溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン又は水/油エマルジョン)、及び様々なタイプの湿潤剤等が含まれる。組成物は、安定剤及び防腐剤も含み得る。担体、安定剤及びアジュバントの例には、例えば、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publ. Co., Easton, PA [1975]を参照。薬学的に許容される担体には、医薬投与と相容性である緩衝液、溶媒、分散媒、コーティング、等張剤、及び吸収遅延剤等が含まれる。医薬活性物質に関する、そのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。
【0157】
特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解速度若しくは放出速度、吸収若しくは浸透を修飾する、維持する又は保存するための配合材料を含有し得る。そのような実施形態では、適切な配合材料には、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジン);抗菌薬;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウム等);緩衝液(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、又は他の有機酸等);嵩高剤(例えば、マンニトール又はグリシン等);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等);錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータシクロデキストリン、又はヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン等);充填剤;単糖;二糖;及び他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、又はデキストリン等);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等);着色剤、香味剤、及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン等);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えば、ナトリウム等);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、又は過酸化水素等);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール等);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート等のポリソルベート類、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール等);安定性向上剤(例えば、スクロース又はソルビトール等);張性向上剤(例えば、ハロゲン化アルカリ金属、好ましくは塩化ナトリウム、又は塩化カリウム、マンニトールソルビトール等);送達ビヒクル;希釈液;賦形剤及び/又は医薬アジュバントが含まれるが、これらに限定されない(Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、1990を参照)。
【0158】
本明細書に開示される、HGF及び/又はEGFR阻害剤を含有する医薬組成物は、単位剤形で提示され得て、任意の適切な方法により調製され得る。医薬組成物は、その意図される投与経路と相容性であるように製剤化されるべきである。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜、髄腔内、及び直腸投与である。一実施形態では、HGF阻害剤、例えばフィクラツズマブ、及びEGFR阻害剤、例えばセツキシマブを静脈内注入により投与する。本明細書に記載される組成物は、局所投与又は全身投与され得る。投与は、一般的に、非経口投与である。非経口投与用の調製物には、無菌、水性又は非水性の溶液、懸濁液及び乳液が含まれる。非経口投与に適切な配合成分には、無菌希釈液、例えば、注射用水、食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;EDTA等のキレート剤;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等;及び張性の調整剤、例えば、塩化ナトリウム又はブドウ糖が含まれる。
【0159】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるHGF及び/又はEGFR阻害剤は、IV注入により投与される。IV投与用に、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF社、Parsippany、NJ)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。担体は、製造及び貯蔵の条件下に安定であり、微生物から保護されている。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、並びにそれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0160】
医薬製剤は、好ましくは無菌である。滅菌は、任意の適切な方法、例えば、滅菌ろ過膜を通したろ過により実現され得る。特定の実施形態では、HGF及び/又はEGFR阻害剤は、凍結乾燥され、次いで、投与の時点で、緩衝食塩水中で再構成される。組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、ろ過滅菌してもよい。
【0161】
V.処置の方法
本発明は、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤でがんを処置する方法を含む。一部の実施形態では、本発明は、フィクラツズマブ及びセツキシマブを使用した、再発性又は転移性HNSCCの処置を含む。一部の実施形態では、本発明は、フィクラツズマブ及びセツキシマブを使用した、免疫チェックポイント阻害剤耐性の再発性又は転移性HNSCCの処置を含む。一部の実施形態では、本発明は、フィクラツズマブ及びセツキシマブを使用した、プラチナ耐性の再発性又は転移性HNSCCの処置を含む。一部の実施形態では、本発明は、フィクラツズマブ及びセツキシマブを使用した、免疫チェックポイント阻害剤耐性及びプラチナ耐性の再発性又は転移性HNSCCの処置を含む。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤には、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、VISTA阻害剤、KIR阻害剤、2B4阻害剤、CD160阻害剤、CGEN-15049阻害剤、CHK1阻害剤、CHK2阻害剤、A2aR阻害剤、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-1阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、REGN2810、PDR001、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤には、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤には、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN-1884、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIM-3阻害剤には、TSR-022、LY3321367、MBG453、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIGIT阻害剤には、BMS-986207、AGEN17、チラゴルマブ、MK-7684、OMP-313M32、EOS-448、AB154、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤には、BMS-986016、REGN3767、IMP321、LAG525、BI754111、ファベゼリマブ、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、VISTA阻害剤には、CI-8993、HMBD-002、WO2018/132476に記載されるPSGL-1アンタゴニスト、又はそれらの組合せが含まれ得る。
【0162】
一部の実施形態では、本発明は、フィクラツズマブ、セツキシマブ、及び免疫チェックポイント阻害剤を使用した、再発性又は転移性HNSCCの処置を含む。一部の実施形態では、臨床的有用性を改善するために、免疫チェックポイント阻害剤をすでに含む処置計画にフィクラツズマブ及びセツキシマブを加える。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤には、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、VISTA阻害剤、KIR阻害剤、2B4阻害剤、CD160阻害剤、CGEN-15049阻害剤、CHK1阻害剤、CHK2阻害剤、A2aR阻害剤、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-1阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、REGN2810、PDR001、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤には、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤には、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN-1884、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIM-3阻害剤には、TSR-022、LY3321367、MBG453、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIGIT阻害剤には、BMS-986207、AGEN17、チラゴルマブ、MK-7684、OMP-313M32、EOS-448、AB154、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤には、BMS-986016、REGN3767、IMP321、LAG525、BI754111、ファベゼリマブ、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、VISTA阻害剤には、CI-8993、HMBD-002、WO2018/132476に記載されるPSGL-1アンタゴニスト、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、プラチナは、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、ロバプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン及びサトラプラチンである。
【0163】
本発明の方法及び組成物は、いずれかのタイプのがんを処置するために使用可能であり、肺がん、肝がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、胆嚢がん、肉腫、ユーイング肉腫、甲状腺がん、黒色腫、皮膚がん、膵がん;消化器/胃(GIST(消化管間質腫瘍))がん、リンパ腫、頭頸部がん、グリオーマ、又は脳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、乳がん、腎細胞癌、又は腎がんを含むがそれらに限定されない。一実施形態では、がんは頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)である。一部の実施形態では、HNSCCは、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん及び口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔がん及び/若しくは鼻腔がん、又は唾液腺がんである。一部の実施形態では、がんは、結腸がん、直腸がん、及び/又は結腸直腸がんである。一部の実施形態では、がんはHPV陰性がんである。一部の実施形態では、がんは、本明細書に開示される方法によりセツキシマブ及びフィクラツズマブで処置される、結腸がん、直腸がん、及び/又は結腸直腸がんである。一部の実施形態では、がんは、本明細書に開示される発明によりセツキシマブ及びフィクラツズマブで処置されるHPV陰性がんである。一部の実施形態では、がんは、本明細書に開示される発明によりセツキシマブ及びフィクラツズマブで処置される、HPV陰性の直腸がん、結腸がん、又は結腸直腸がんである。
【0164】
特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、又は対象は、1つ又は複数の免疫チェックポイント阻害療法に対して耐性である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤耐性は、免疫チェックポイント阻害剤処置に応答しないか又は応答してから応答するのをやめた、HNSCCを有する対象を指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤耐性は、(i)局所進行性疾患、例えば、HNSCCに対する、同時免疫チェックポイント阻害剤療法を含む根治的放射線療法の完了から6か月以内の疾患存続若しくは再発、又は(ii)再発性/転移性背景、例えば再発性/転移性HNSCCにおける免疫チェックポイント阻害剤処置から6か月の間又は6か月以内の疾患進行を指す。一部の実施形態では、先行免疫チェックポイント阻害剤療法への曝露は、いずれかのラインの療法(第一選択、第二選択等)で行われ得て、免疫チェックポイント阻害剤療法は、がん又は腫瘍が免疫チェックポイント阻害剤療法耐性と分類されるために、受けた最近の療法である必要はない。特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、例えばHNSCC、又は対象、例えば、HNSCCを有する対象は、例えば、医学的併存疾患に起因して、免疫チェックポイント阻害剤療法不適格である、即ち、免疫チェックポイント阻害剤療法での処置に関して許容される候補でない。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤には、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、VISTA阻害剤、KIR阻害剤、2B4阻害剤、CD160阻害剤、CGEN-15049阻害剤、CHK1阻害剤、CHK2阻害剤、A2aR阻害剤、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-1阻害剤には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、REGN2810、PDR001、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤には、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤には、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN-1884、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIM-3阻害剤には、TSR-022、LY3321367、MBG453、又はそれらのいずれかの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、TIGIT阻害剤には、BMS-986207、AGEN17、チラゴルマブ、MK-7684、OMP-313M32、EOS-448、AB154、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤には、BMS-986016、REGN3767、IMP321、LAG525、BI754111、ファベゼリマブ、又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、VISTA阻害剤には、CI-8993、HMBD-002、WO2018/132476に記載されるPSGL-1アンタゴニスト、又はそれらの組合せが含まれ得る。
【0165】
特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、又は対象は、プラチナ耐性である。特定の実施形態では、プラチナ耐性は、(i)プラチナ化学療法が導入及び/又は同時全身処置の成分として投与された、局所進行性疾患、例えば、HNSCCに対する根治的放射線療法の完了から6か月以内の疾患存続若しくは再発、又は(ii)再発性/転移性背景、例えば再発性/転移性HNSCCにおけるプラチナ化学療法による処置から6か月の間又は6か月以内の疾患進行を指す。一部の実施形態では、先行するプラチナ曝露は、いずれかのラインの療法(第一選択、第二選択等)で行われ得て、がん又は腫瘍がプラチナ耐性と分類されるために、受けた最近の療法である必要はない。特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、例えばHNSCC、又は対象、例えば、HNSCCを有する対象は、例えば、医学的併存疾患に起因して、プラチナ不適格である、即ち、プラチナ化学療法に関して許容される候補でない。例示的なプラチナ化学療法には、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、ロバプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン及びサトラプラチンが含まれる。
【0166】
特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、又は対象は、セツキシマブ耐性である。一部の実施形態では、セツキシマブ耐性は、セツキシマブ処置に応答しないか又は応答してから応答するのをやめた、HNSCCを有する対象を指す。特定の実施形態では、セツキシマブ耐性は、(i)局所進行性疾患、例えば、HNSCCに対する、同時セツキシマブを含む根治的放射線療法の完了から6か月以内の疾患存続若しくは再発、又は(ii)再発性/転移性背景、例えば再発性/転移性HNSCCにおけるセツキシマブ処置から6か月の間又は6か月以内の疾患進行を指す。一部の実施形態では、先行するセツキシマブ曝露は、いずれかのラインの療法(根治目的若しくは治癒目的処置、又は第一選択、第二選択等)で行われ得て、セツキシマブは、がん又は腫瘍がセツキシマブ耐性と分類されるために、受けた最近の療法である必要はない。特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、例えばHNSCC、又は対象、例えば、HNSCCを有する対象は、例えば、医学的併存疾患に起因して、セツキシマブ不適格である、即ち、セツキシマブでの処置に関して許容される候補でない。特定の実施形態では、セツキシマブ耐性HNSCC、例えば、再発性/転移性HNSCCは、本発明の方法により、フィクラツズマブとの併用でセツキシマブにより処置される。
【0167】
特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、又は対象は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。特定の実施形態では、HPV陽性は、免疫組織化学により測定してp16陽性であるがん、腫瘍、又は疾患、例えばHNSCCを指し、がん、腫瘍、又は疾患細胞の≧70%が、p16抗体によるびまん性核染色及び細胞質染色を示すことを意味する。特定の実施形態では、HPV陰性は、免疫組織化学により測定してp16陽性でないがん、腫瘍、又は疾患、例えばHNSCCを指し、がん、腫瘍、又は疾患細胞の<70%が、p16抗体によるびまん性核染色及び細胞質染色を示すことを意味する。特定の実施形態では、HPV陽性は、(i)中咽頭又は不明の原発部位を有する、並びに(ii)免疫組織化学により測定して、がん、腫瘍、又は疾患細胞の≧70%が、p16抗体によるびまん性核染色及び細胞質染色を示すことを意味するp16陽性である、HNSCCを指す。特定の実施形態では、HPV陰性は、(i)中咽頭又は不明の原発部位である、並びに免疫組織化学により測定して、がん、腫瘍、又は疾患細胞の<70%が、p16抗体によるびまん性核染色及び細胞質染色を示すことを意味するp16陽性でない、HNSCCを指す。特定の実施形態では、HPV陰性は、中咽頭又は不明の原発部位によるのではないHNSCCを指す(即ち、中咽頭以外の公知の原発部位によるHNSCCは、HPV陰性であると推定される)。例えば、原発部位が口腔、喉頭、及び下咽頭のHNSCCは、HPV陰性であると推定される。一部の実施形態では、免疫組織化学により測定して、がん、腫瘍、又は疾患細胞の<70%が、p16抗体によるびまん性核染色及び細胞質染色を示すことを意味するp16陽性でないのである場合、HNSCCはHPV陰性である。特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物による処置の前に、がん、腫瘍、疾患、又は対象のHPV状態を評価する。本開示による対象のHPV状態を同定するために、任意の公知の免疫組織化学法が使用可能である。HPV状態を評価するために、例えば、p16抗体によるp16免疫組織化学的染色が使用可能であるか、又はHPV状態を決定するために、腫瘍DNAの解析が使用可能である。HNSCCのHPV状態を決定するための方法は、当技術分野で公知であり、本発明によるHPV状態を決定するために使用可能である。例えば、Jordan等、Am J Surg Pathol. (2012) 36(7):945~954頁を参照。
【0168】
特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物により処置されるがん、腫瘍、疾患、又は対象は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である。特定の実施形態では、HPV陽性は、HPVの存在が、例えば、対象におけるHNSCCでの、対象の腫瘍において、HPVの核酸(例えば、DNA又はRNA)の存在により検出されるがん、腫瘍、又は疾患を指す。特定の実施形態では、HPV陰性は、例えば、対象のHNSCCでの腫瘍において、HPV核酸(例えば、DNA又はRNA)が検出されないがん、腫瘍、又は疾患を指す。特定の実施形態では、HPV陰性HNSCCは、(i)中咽頭又は不明の原発部位を有しない(即ち、中咽頭以外の公知の原発部位によるHNSCCは、HPV陰性であると推定される)、及び/又は(ii)例えば、対象のHNSCCでの腫瘍において、HPV核酸(例えば、DNA若しくはRNA)が検出されない、HNSCCを指す。特定の実施形態では、本発明の方法又は組成物による処置の前に、がん、腫瘍、疾患、又は対象のHPV状態を評価する。対象においてHPV核酸(例えば、DNA、RNA等)の存在又は不在を評価する任意の公知の方法が、本開示による対象のHPV状態を同定するために使用され得る(例えば、PCR、in situハイブリダイゼーション等)。例えば、Jordan等、Am J Surg Pathol. (2012) 36(7):945~954頁を参照。
【0169】
一実施形態では、本発明の方法により、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤、例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置される対象(例えば、HPV陰性対象)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の全奏効率(ORR)を有する。特定の実施形態では、全奏効率(ORR)は、少なくとも35%である。
【0170】
一実施形態では、本発明の方法により、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤、例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置される対象(例えば、HPV陰性対象)は、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも7か月、少なくとも8か月、少なくとも9か月、少なくとも10か月、少なくとも11か月、少なくとも12か月、少なくとも13か月、少なくとも14か月、少なくとも15か月、少なくとも16か月、少なくとも17か月、少なくとも18か月、少なくとも19か月、少なくとも20か月、少なくとも21か月、少なくとも22か月、少なくとも23か月、少なくとも24か月、少なくとも25か月、少なくとも26か月、少なくとも27か月、少なくとも28か月、少なくとも29か月、少なくとも30か月、少なくとも31か月、少なくとも32か月、少なくとも33か月、少なくとも34か月、少なくとも35か月、少なくとも36か月、少なくとも37か月、少なくとも38か月、少なくとも39か月、少なくとも40か月、少なくとも41か月、少なくとも42か月、少なくとも43か月、少なくとも44か月、少なくとも45か月、少なくとも46か月、少なくとも47か月、少なくとも48か月、少なくとも49か月、少なくとも50か月、少なくとも51か月、少なくとも52か月、少なくとも53か月、少なくとも54か月、少なくとも55か月、少なくとも56か月、少なくとも57か月、少なくとも58か月、少なくとも59か月、又は少なくとも60か月の全生存(OS)率中央値を有する。
【0171】
特定の実施形態では、本発明の方法により、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤、例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置される対象(例えば、HPV陰性対象)は、約60か月から約1か月まで、約60か月から約2か月まで、約60か月から約3か月まで、約60か月から約4か月まで、約60か月から約5か月まで、約60か月から約6か月まで、約60か月から約7か月まで、約60か月から約8か月まで、約60か月から約9か月まで、約60か月から約10か月まで、約60か月から約20か月まで、約30か月から約1か月まで、約30か月から約2か月まで、約30か月から約3か月まで、約30か月から約4か月まで、約30か月から約5か月まで、約30か月から約6か月まで、約30か月から約7か月まで、約30か月から約8か月まで、約30か月から約9か月まで、約30か月から約10か月まで、約30か月から約20か月まで、約15か月から約1か月まで、約15か月から約2か月まで、約15か月から約3か月まで、約15か月から約4か月まで、約15か月から約5か月まで、約15か月から約6か月まで、約15か月から約7か月まで、約15か月から約8か月まで、約15か月から約9か月まで、約15か月から約10か月まで、約10か月から約1か月まで、約10か月から約2か月まで、約10か月から約3か月まで、約10か月から約4か月まで、約10か月から約5か月まで、約10か月から約6か月まで、約10か月から約7か月まで、約10か月から約8か月まで、約10か月から約9か月まで、約6か月から約1か月まで、約6か月から約2か月まで、約6か月から約3か月まで、約6か月から約4か月まで、又は約6か月から約5か月までの全生存(OS)率中央値を有する。
【0172】
一実施形態では、本発明の方法により、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤、例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置される対象(例えば、HPV陰性対象)は、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも7か月、少なくとも8か月、少なくとも9か月、少なくとも10か月、少なくとも11か月、少なくとも12か月、少なくとも13か月、少なくとも14か月、少なくとも15か月、少なくとも16か月、少なくとも17か月、少なくとも18か月、少なくとも19か月、少なくとも20か月、少なくとも21か月、少なくとも22か月、少なくとも23か月、少なくとも24か月、少なくとも25か月、少なくとも26か月、少なくとも27か月、少なくとも28か月、少なくとも29か月、少なくとも30か月、少なくとも31か月、少なくとも32か月、少なくとも33か月、少なくとも34か月、少なくとも35か月、少なくとも36か月、少なくとも37か月、少なくとも38か月、少なくとも39か月、少なくとも40か月、少なくとも41か月、少なくとも42か月、少なくとも43か月、少なくとも44か月、少なくとも45か月、少なくとも46か月、少なくとも47か月、少なくとも48か月、少なくとも49か月、少なくとも50か月、少なくとも51か月、少なくとも52か月、少なくとも53か月、少なくとも54か月、少なくとも55か月、少なくとも56か月、少なくとも57か月、少なくとも58か月、少なくとも59か月、又は少なくとも60か月の無増悪生存期間(PFS)中央値を有する。
【0173】
特定の実施形態では、本発明の方法により、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤、例えば、フィクラツズマブ及びセツキシマブで処置される対象(例えば、HPV陰性対象)は、約60か月から約1か月まで、約60か月から約2か月まで、約60か月から約3か月まで、約60か月から約4か月まで、約60か月から約5か月まで、約60か月から約6か月まで、約60か月から約7か月まで、約60か月から約8か月まで、約60か月から約9か月まで、約60か月から約10か月まで、約60か月から約20か月まで、約30か月から約1か月まで、約30か月から約2か月まで、約30か月から約3か月まで、約30か月から約4か月まで、約30か月から約5か月まで、約30か月から約6か月まで、約30か月から約7か月まで、約30か月から約8か月まで、約30か月から約9か月まで、約30か月から約10か月まで、約30か月から約20か月まで、約15か月から約1か月まで、約15か月から約2か月まで、約15か月から約3か月まで、約15か月から約4か月まで、約15か月から約5か月まで、約15か月から約6か月まで、約15か月から約7か月まで、約15か月から約8か月まで、約15か月から約9か月まで、約15か月から約10か月まで、約10か月から約1か月まで、約10か月から約2か月まで、約10か月から約3か月まで、約10か月から約4か月まで、約10か月から約5か月まで、約10か月から約6か月まで、約10か月から約7か月まで、約10か月から約8か月まで、約10か月から約9か月まで、約6か月から約1か月まで、約6か月から約2か月まで、約6か月から約3か月まで、約6か月から約4か月まで、又は約6か月から約5か月までの無増悪生存期間(PFS)中央値を有する。一実施形態では、無増悪生存期間(PFS)中央値は、少なくとも4か月である。
【0174】
本発明の特定の実施形態によると、HGF阻害剤及びEGFR阻害剤での処置は、対象において臨床的有用性が観察される限り、又は許容できない毒性が生じるまで必要である。
【0175】
HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な有効量又は用量には、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、約20mg/kg、約21mg/kg、約22mg/kg、約23mg/kg、約24mg/kg、又は約25mg/kgが含まれる。特定の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な有効量又は用量には、約25mg/kgから約0.5mg/kgまで、約25mg/kgから約1mg/kgまで、約25mg/kgから約2mg/kgまで、約25mg/kgから約3mg/kgまで、約25mg/kgから約4mg/kgまで、約25mg/kgから約5mg/kgまで、約25mg/kgから約10mg/kgまで、約25mg/kgから約15mg/kgまで、約25mg/kgから約20mg/kgまで、約20mg/kgから約0.5mg/kgまで、約20mg/kgから約1mg/kgまで、約20mg/kgから約2mg/kgまで、約20mg/kgから約3mg/kgまで、約20mg/kgから約4mg/kgまで、約20mg/kgから約5mg/kgまで、約20mg/kgから約10mg/kgまで、約20mg/kgから約15mg/kgまで、約15mg/kgから約0.5mg/kgまで、約15mg/kgから約1mg/kgまで、約15mg/kgから約2mg/kgまで、約15mg/kgから約3mg/kgまで、約15mg/kgから約4mg/kgまで、約15mg/kgから約5mg/kgまで、又は約15mg/kgから約10mg/kgまでが含まれる。一部の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な有効量又は用量は約20mg/kgである。一部の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な有効量又は用量は約10mg/kgである。一部の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な有効量又は用量は約15mg/kgである。
【0176】
一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約20mg/kgであり、セツキシマブの用量は500mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約15mg/kgであり、セツキシマブの用量は500mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約10mg/kgであり、セツキシマブの用量は500mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約20mg/kgであり、セツキシマブの用量は400mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約15mg/kgであり、セツキシマブの用量は400mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約10mg/kgであり、セツキシマブの用量は400mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約20mg/kgであり、セツキシマブの用量は300mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約15mg/kgであり、セツキシマブの用量は300mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブの用量は約10mg/kgであり、セツキシマブの用量は300mg/m2である。一部の実施形態では、フィクラツズマブ及びセツキシマブの前記の用量は、2週間ごとに与えられる。一部の実施形態では、フィクラツズマブ及びセツキシマブの前記の用量は、2週間ごとに同じ日に与えられる。一部の実施形態では、フィクラツズマブ及びセツキシマブの前記の用量は、2週間ごとに同じ日に、同時に又は逐次的に与えられる。
【0177】
HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な処置計画には、約1週間ごと、約2週間ごと、約3週間ごと、約4週間ごと、約5週間ごと、約6週間ごと、約7週間ごと、又は約8週間ごとの有効用量の投与が含まれる。一実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な処置計画には、約1週間から2週間までごと、約2週間から3週間までごと、又は約3週間から約4週間までごとの投与が含まれる。一部の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な処置計画には、約2週間ごとでの投与が含まれる。一部の実施形態では、HGF阻害剤(例えば、抗HGF抗体又はその抗原結合断片、例えば、フィクラツズマブ)の例示的な処置計画には、約2週間ごとの投与が含まれる。
【0178】
EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ)の例示的な有効量又は用量には、約200mg/m2、約250mg/m2、約300mg/m2、約400mg/m2、約500mg/m2、約600mg/m2、約700mg/m2、又は約800mg/m2が含まれる。特定の実施形態では、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ)の例示的な有効量又は用量には、約800mg/m2から約200mg/m2まで、約800mg/m2から約300mg/m2まで、約800mg/m2から約400mg/m2まで、約800mg/m2から約500mg/m2まで、約800mg/m2から約600mg/m2まで、約800mg/m2から約700mg/m2まで、約600mg/m2から約200mg/m2まで、約600mg/m2から約300mg/m2まで、約600mg/m2から約400mg/m2まで、約700mg/m2から約400mg/m2まで、約700mg/m2から約250mg/m2まで、約600mg/m2から約500mg/m2まで、約500mg/m2から約300mg/m2まで、又は約300mg/m2から約200mg/m2までが含まれる。特定の実施形態では、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ)の例示的な有効量又は用量は約500mg/m2である。
【0179】
EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ)の例示的な処置計画には、約1週間ごと、約2週間ごと、約3週間ごと、約4週間ごと、約5週間ごと、約6週間ごと、約7週間ごと、又は約8週間ごとの有効用量の投与が含まれる。一部の実施形態では、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ)の例示的な処置計画には、約1週間から2週間までごと、約2週間から3週間までごと、又は約3週間から約4週間までごとの投与が含まれる。一部の実施形態では、EGFR阻害剤(例えば、抗EGFR抗体又はその抗原結合断片、例えば、セツキシマブ)の例示的な処置計画は、約2週間ごとである。一実施形態では、EGFR阻害剤、例えばセツキシマブを、HGF阻害剤、例えばフィクラツズマブと同じ日に投与する。例えば、EGFR阻害剤、例えばセツキシマブを、HGF阻害剤、例えばフィクラツズマブと同時に投与する。一実施形態では、セツキシマブ及びフィクラツズマブを、2週間ごとに同じ日に投与する。一実施形態では、セツキシマブ及びフィクラツズマブを、3週間ごとに同じ日に投与する。一実施形態では、セツキシマブ及びフィクラツズマブを、4週間ごとに同じ日に投与する。
【0180】
投与量は、変数、例えば、処置される疾患又は適応症の種類及び程度、患者の健康全般、医薬製剤、及び投与経路等による。所望の血液レベル又は組織レベルを迅速に達成するために、初期用量は、上位レベルを超えて増加させてもよい。或いは、初期用量は、最適よりも小さくてもよく、1日用量は、処置の過程において次第に増加させてもよい。ヒト用量は、例えば、従来のフェーズI用量漸増試験において最適化され得る。投薬頻度は、投与経路、投与量、及び処置される疾患等の因子に応じて変わり得る。例示的な投薬頻度は、1日1回、1日おきに1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、及び2週間に1回である。
【0181】
HGF阻害剤、例えばフィクラツズマブ、及び抗EGFR抗体、例えばセツキシマブは、例えば、処置の少なくとも1サイクルにわたり同時に投与され得る。一実施形態では、処置サイクルは、4週間であり、2週時及び4週時における、セツキシマブ及びフィクラツズマブの投与を含む。HGF阻害剤(例えば、フィクラツズマブ等の抗HGF抗体)又はEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ等の抗EGFR抗体)は、例えば、処置の少なくとも1サイクルにわたり逐次的に投与され得る。特定の実施形態では、HGF阻害剤(例えば抗HGF抗体、例えばフィクラツズマブ)を、処置の少なくとも1サイクルにわたり、EGFR阻害剤(例えば抗EGFR抗体、例えばセツキシマブ)に続いて投与する、例えば、HGF阻害剤(例えばフィクラツズマブ)を、EGFR阻害剤(例えばセツキシマブ)の投与の完了から少なくとも15分後、少なくとも30分後、少なくとも60分後、少なくとも120分後、少なくとも180分後、少なくとも240分後、若しくは少なくとも300分後に、又は約30分後から約60分後までに投与する。
【0182】
本明細書で考察される特定の実施形態では、対象は、開示される組成物及び/又は方法による処置を受ける前に、無効であると確定される第一選択療法(例えば、一次耐性、獲得耐性等ゆえ)を受けてもよい。第一選択療法は、所与の疾患又は障害(例えばがん)の初期処置のために、医療分野で一般的に受け入れられている処置である。再発性/転移性HNSCCに関して本明細書で使用する場合、第一選択療法は、再発性/転移性HNSCCに対する初期処置(即ち、初期緩和処置)を指し、非再発性又は局在性HNSCCに対するいずれかの先行処置(即ち、いずれかの先行する根治目的又は治癒目的処置)は考慮に入れない。同様に、再発性/転移性HNSCCに対する第二選択療法は、再発性/転移性HNSCCに対する第2の処置(即ち、第2の緩和処置)を指し、非再発性又は局在性HNSCCに対するいずれかの先行処置(即ち、いずれかの先行する根治目的又は治癒目的処置)は考慮に入れない。一部の実施形態では、第一選択療法には、抗体(例えばモノクローナル抗体)若しくは抗体断片療法、免疫チェックポイント療法、がんワクチン、養子細胞移入、サイトカイン療法、又はそれらのいずれかの組合せが含まれる。本明細書に記載される一部の実施形態では、第一選択療法には、免疫チェックポイント阻害剤療法及び/又はプラチナ療法が含まれる。
【0183】
一実施形態によると、対象が臨床的有用性を得る限り、又は対象が、許容できない毒性を体験するまで、対象を、本発明の方法により処置する。例えば、再発性/転移性HNSCCを処置するために、対象が臨床的有用性を得る限り、又は対象が、許容できない毒性を体験するまで、対象を、セツキシマブ及びフィクラツズマブにより2週間ごとに処置する。例えば、再発性/転移性HNSCCを処置するために、対象を、セツキシマブ及びフィクラツズマブ処置サイクル(即ち、セツキシマブ及びフィクラツズマブが2週間ごとに投与される4週間であり、即ち、処置サイクル中に2回)で処置し、対象は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60回以上の処置サイクルを受ける。例えば、再発性/転移性HNSCCを処置するために、対象は、HNSCCが進行するまで、セツキシマブ及びフィクラツズマブの処置サイクルを受ける。
【実施例】
【0184】
本開示を、例証目的のみで提供されておりいかなる方法でも開示を限定するとは意図されない以下の実施例により更に例証する。
【0185】
(実施例1)
全難治性進行性HNSCCの処置におけるフィクラツズマブ及びセツキシマブの有効性を調べる試験
ここでは、必要とする対象を、抗HGF抗体及び抗EGFR抗体併用療法で処置するための例示的プロトコル及び例示的結果を提示する。
【0186】
フェーズIb試験は、セツキシマブ耐性進行性HNSCCにおける、セツキシマブ及びフィクラツズマブの安全性及び予備的有効性を示した(Bauman等、Journal of Clinical Oncology 35、第15号補遺(2017年5月20日)6038~6038頁、及びBauman等、Cancers (Basel). 2020;12(6):1537頁、2020年6月11日に公開、doi:10.3390/cancers12061537を参照)。セツキシマブ耐性再発性/転移性HNSCCを有する患者において、フェーズIb中に観察された期待できる臨床活性は、セツキシマブ耐性再発性/転移性HNSCCを有する患者における、セツキシマブの有無でのフィクラツズマブの有効性を評価する無作為化フェーズII試験に導いた。フェーズIIの推奨用量は、2週間ごとに、フィクラツズマブの20mg/kg及びセツキシマブの500mg/m2であって(「併用群」)、対照群は、2週間ごとに、20mg/kgのフィクラツズマブのみが投与された。全奏効率(ORR)及び無増悪生存期間中央値(mPFS)は、17%及び5.4か月であった。末梢性T細胞、特に、CD8+サブセットの増加は、処置応答を伴い、異なる骨髄性集団の増殖は進行を伴った。
【0187】
1.試験デザイン
a.試験目的
主要試験目的は、セツキシマブ耐性再発性/転移性HNSCCを有する患者において、無増悪生存期間(PFS)により測定される、同時セツキシマブの有無でのフィクラツズマブの有効性を評価することであった。
【0188】
第2の試験目的には、両処置群における、毒性及び患者報告生活の質の記述、並びに奏効率及び全生存期間の評価が含まれた。
【0189】
b.採用基準/除外基準
試験に登録された各患者は、以下の採用基準の全てを満たした。
・患者は、いずれかの原発部位由来の組織学的確定HNSCCを有した必要がある。類基底、低分化、及び未分化の癌組織像は容認された。WHOのI型及びII型(角質化、非EBV陽性)の鼻咽頭癌は含まれる。副鼻腔、口唇、及び外耳道の部位は含まれた。明らかに頭頸部に関連する原発不明の扁平上皮癌は含まれた。
・以下に定義する基準の少なくとも1つを満たす再発性/転移性疾患。
〇外科腫瘍学又は放射線腫瘍学により評価される難病
〇転移性(M1)疾患
〇治癒目的放射線に続く不変(Persistent disease)又は進行性疾患であり、不治又は病的状態ゆえ、外科的救済の候補でない。根治手術を断った患者は適格であった。
・中咽頭原発部位又は不明の原発部位を有する患者の場合に限り、局所部位により確立される腫瘍HPV状態が分かっていること。許容基準には、p16免疫組織化学(腫瘍細胞の少なくとも70%においてびまん性核染色及び細胞質染色を示す場合、腫瘍はp16陽性と分類された)及び/又はHPV DNAの評価が含まれた。
・患者は、以下に定義する基準の少なくとも1つを満たすことによりセツキシマブ耐性である必要があった。
〇局所進行性疾患に対する根治的放射線療法の完了から6か月以内の疾患の存続又は再発。放射線は、同時セツキシマブを含む必要があった。導入化学療法が投与された場合、セツキシマブを含んでも含まなくてもよかった。
〇再発性/転移性背景におけるセツキシマブ処置から6か月の間又は6か月以内の疾患進行。
〇先行するセツキシマブ曝露は、いずれかのラインの療法(第一選択、第二選択等)で行われ得て、セツキシマブは、受けた最近の療法である必要はなかった。
・患者は、以下に定義する基準の少なくとも1つを満たすことにより、プラチナ耐性又はプラチナ不適格である必要があった。
〇プラチナ化学療法が導入及び/又は同時全身処置の成分として投与された、局所進行性疾患に対する根治的放射線療法の完了から6か月以内の疾患の存続又は再発。
〇再発性/転移性背景におけるプラチナ化学療法(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)による処置から6か月の間又は6か月以内の疾患進行。
〇その場の治験責任医師(local investigator)の判断で、患者は、医学的併存疾患に起因して、プラチナ化学療法に関して許容される候補でなかった。
〇先行するプラチナ曝露は、いずれかのラインの療法(第一選択、第二選択等)で行われ得て、受けた最近の療法である必要はなかった。
・抗PD1/PDL1、抗CTLA4、抗TNFR抗体、又は他の治験中免疫療法を含む免疫療法に対する先行曝露は容認された。
・インフォームドコンセントの時点で米国東海岸がん臨床試験グループパフォーマンスステータス0~1。
・年齢≧18歳
・相関性試験の実施のため、患者は、ベースラインでの腫瘍組織の調査生検に同意している必要があった。アーカイブ化された生検材料は、インターバル抗がん全身療法が投与されていなかった場合に限り代用された。
・RECIST基準、第1.1版(例えば、Eisenhauer, E.A.等、Eur J Cancer (2009) 45:228~247頁の6項を参照)による測定可能疾患。
・患者は、登録から28日以内に測定された以下の臨床検査値を有した必要がある。
〇好中球絶対数(ANC)≧1500/mm3
〇血小板数(PLT)≧75,000/mm3
〇24時間採取により決定するか、又はコッククロフト・ゴールト式:
黒四角 クレアチニンクリアランス計算=[(140-年齢)X(kgでの現体重)X(0.85(女性であれば))]/(72X血清クレアチニン)により見積もって
クレアチニンクリアランス≧40ml/分
〇血清ビリルビン≦正常の上限(ULN)の1.5倍
〇AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)及びALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)≦ULNの3倍
・セツキシマブ又はモノクローナル抗体に対する、先行する重度輸注反応なし
・療法の開始前に、全患者から書面によるインフォームドコンセントが得られた。患者は、書面によるインフォームドコンセント文書を理解する能力を有し、署名する意思を有した必要がある。
・妊娠可能な女性である場合、登録前の14日以内に妊娠陰性の記録が必要とされた。妊娠検査陰性は、フィクラツズマブの初回用量から3日以内に確証された。性行為に積極的な妊娠可能女性は、試験中及び試験薬の最終用量から30日間、十分な避妊手段を使用することに同意した。
【0190】
以下の除外基準のいずれかを満たす患者は、試験に登録されなかった。
・鼻咽頭原発部位(WHOのIII型(局所部位で確立される非角質化及びEBV陽性)であれば)。
・治験薬中の組換えタンパク質又は賦形剤に対する重度のアレルギー反応又はアナフィラキシー反応又は過敏症の病歴。
・HGF/cMet阻害剤、例えば、リロツムマブ、クリゾチニブ、MetMAb、又はARQ197による先行処置。
・軟髄膜転移を含む非制御中枢神経系(CNS)転移は許容されなかった。以前に処置された脳転移を有する対象は、その脳転移が、ステロイド処置なしで少なくとも2週間安定であれば許容された(放射線療法又は外科手術)。
・以前の化学療法、放射線療法、生物学的療法、免疫療法、及び/又は実験的療法の全ての毒性効果からグレード1又はベースラインへの回復に失敗。例外:脱毛、グレード≦2の末梢神経障害、グレード≦2のセツキシマブ関連発疹又は他の皮膚変化、低マグネシウム血症(以下に詳述する許容値)、低カリウム血症(以下に詳述する許容値)、及び前記でまとめた許容血算値。先行セツキシマブから2週間の休薬期間が必要とされた;先行するいずれかの細胞傷害性化学療法、標的療法、免疫療法、又は治験薬からの3週間の休薬期間が必要とされた。
・肺高血圧又は間質性肺炎を含む重大な肺疾患。
・血清アルブミンの低下<30g/L(<3g/dL)
・末梢性浮腫≧NCI-CTCAE第4.0版によるグレード2
・登録前の重大な電解質異常(許容電解質値を達成するために患者に補給され得ることに留意):
〇低マグネシウム血症<1.2mg/dL又は0.5mmol/L
〇低カルシウム血症<8.0mg/dL又は2.0mmol/L
〇低カリウム血症<3.0mmol/L
・以下を含む重大な心血管疾患
〇ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類III又はIVの心不全
〇試験1日目より前の6か月以内の心筋梗塞、重症狭心症又は不安定狭心症
〇重篤な心室性不整脈(即ち、心室頻拍又は心室細動)の病歴
〇心拍異常治療薬を必要とする心臓不整脈。心房細動及び心房粗動を含む上室性頻拍のレートコントロール目的で投与されるベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、及びジゴキシンは、試験適格性の適用上、心拍異常治療薬と分類されないことに留意。
・試験1日目より前の4週間以内の重大な血栓性又は塞栓性イベント。重大な血栓性又は塞栓性イベントは、脳卒中又は一過性脳虚血発作(TIA)を含むがそれらに限定されなかった。カテーテル関連血栓は、除外の根拠ではなかった。深部静脈血栓又は肺塞栓の診断は、試験1日目より前の>4週間に行われており、患者が無症候性であって抗凝固療法に対して安定であれば許容された。
・治験責任医師の見解では、対象の試験参加を妨げるか、又は試験結果の解釈を妨げる他のいずれかの医学的状態(例えばアルコール乱用)又は精神医学的状態。
・試験1日目より前の2年間以内の二次性悪性腫瘍の病歴(切除され治癒した非黒色腫皮膚がん、乳がん若しくは子宮頸がんの上皮内癌、表在性膀胱がん、切除若しくは観察されたステージI分化甲状腺がん、又は<5%の切除組織を含む、切除以降は正常前立腺特異抗原(PSA)を有するpT1a/pT1b前立腺がん、又は小線源療法又は体外照射療法で処置された、放射線以降は正常PSAを有するcT1a/cT1b前立腺がんは除く)。
・試験1日目より前の6週間以内の大手術(対象は、試験1日目より前のいずれかの先行手術から完全に回復している必要がある)。
・試験薬の初回用量前の7日間以内、全身性の抗生物質又は抗真菌薬を必要とする活動性感染。例外:セツキシマブ関連発疹の管理のために投与されるテトラサイクリンファミリー抗生物質(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン)は、治験責任医師の判断で継続可能である。
・抗レトロウイルス併用療法を受けているHIV陽性患者は、試験薬との可能な薬物相互作用ゆえ、試験から除外された。
・フィクラツズマブ及び/又はセツキシマブは、胎児又は乳児に対して有害であり得ることから、女性は妊娠又は授乳状態であってはならない。フィクラツズマブ及び/又はセツキシマブは、催奇形効果又は堕胎効果の可能性を有することから、妊娠女性は除外された。
【0191】
c.無作為化
フィクラツズマブに対するフィクラツズマブとセツキシマブとの併用への無作為化は、UACC Biostatistics Shared Resource(生物統計学共有リソース)において行った。患者は、再発性/転移性HNSCCにおける公知の予後因子であるHPV状態により層別化した。
【0192】
層別化の目的で、局所部位における標準治療で行ったp16状態により、HPV陽性HNSCCを評価した。HPV陽性と分類されるためには、患者は、以下の基準:1)中咽頭又は不明の原発部位のいずれか;並びに2)腫瘍細胞の≧70%が、p16抗体によるびまん性核染色及び細胞質染色を示す、免疫組織化学によるp16+の両方ともを満たす必要があった。層別化の目的で、患者の残りの者は、HPV陰性と分類された。
【0193】
d.処置計画
フィクラツズマブを、IV注入として投与した。フィクラツズマブを20mg/kg IVの用量で、セツキシマブの初回用量と同じ日に開始して2週間(+/-3日)ごとに投与した。フィクラツズマブを、30~60分間かけて投与した。プロトコル特定の用量変更は許容された。減量レベルに関しては下のTable 1(表1)を参照。セツキシマブを最初に投与する。フィクラツズマブを、セツキシマブ注入の完了から30~60分後に投与する。
【0194】
セツキシマブを、IV注入として投与した。セツキシマブを500mg/m2 IVの用量で、フィクラツズマブの初回用量と同じ日に開始して2週間(+/-3日)ごとに投与した。初回用量は、120分間(+/-15分間)かけて投与し、その後の用量は、60分間(+/-15分間)かけて注入することが許容された。プロトコル特定の用量変更は許容された。減量レベルに関しては下のTable 1(表1)を参照。セツキシマブを500mg/m2 IVの用量で、フィクラツズマブの初回用量と同じ日に開始して2週間(+/-3日)ごとに投与した。初回用量は、120分間(+/-15分間)かけて投与し、その後の用量は、60分間(+/-15分間)かけて注入することが許容された。プロトコル特定の用量変更は許容された。減量レベルに関しては下のTable 1(表1)を参照。
【0195】
有害事象に起因する処置の遅れがない場合、疾患進行まで、又は以下の基準の1つが該当するまで処置を継続した。
・処置の更なる投与を妨げた併発性疾患、
・許容できない有害事象、
・患者が、何らかの理由で、試験の中止に選ばれた、
・治験責任医師の判断において、患者の容態の一般的又は特異的変化が、患者の更なる処置を許容できなくさせた。
【0196】
患者は、試験からの除外から2年間、又は死亡までのいずれか最初に起こる方で、3か月ごとに生存が追跡された。許容できない有害事象のため試験から除外された患者は、有害事象の回復又は安定化まで追跡された。
【0197】
e.投与延期及び用量変更
次の表は、フィクラツズマブ及び/又はセツキシマブに関するプロトコル特定の減量に利用可能である用量レベルをまとめる(Table 1(表1))。
【0198】
【0199】
フェーズI展開中、フィクラツズマブ単剤療法又はEGFR阻害剤とのフィクラツズマブの併用により、重篤な(グレード3~4)骨髄抑制は観察されなかった一方、好中球減少症又は血小板減少症に関しては、観察された場合、用量変更をTable 2A(表2)に特定する。セツキシマブは骨髄抑制を引き起こさないため、観察されたいずれかの好中球減少症又は血小板減少症により、セツキシマブ用量は影響を受けなかった。
【0200】
【0201】
観察され、少なくとも、試験薬に関連する可能性があると見なされる有害事象は、用量の中断、遅延、又は低減に関するガイドラインに従って管理された。
【0202】
毒性が、明らか且つ単にフィクラツズマブに起因した場合、下のTable 2B(表3)に記載のように、フィクラツズマブを保留又は低減した。毒性が、少なくとも、フィクラツズマブ及びセツキシマブの両方ともに関連する可能性がある場合、両試験薬ともを、以下に記載のように変更した。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
対象は、2回の減量まで許容された。帰属性のグレード3又は4の毒性が現れた、最低フィクラツズマブ用量レベル(10mg/kg)の対象は、フィクラツズマブを中止した。しかしながら、治験責任医師の見解において、臨床的有用性の証拠があれば、AEが、≦グレード2又はベースラインに回復又は改善した後で、対象の処置を10mg/kgで再開した。
【0208】
少なくとも、フィクラツズマブ及び/又はセツキシマブに関連する可能性がある、観察されるいずれかの毒性が、予定される試験来院期間内の投薬を妨げた場合、その試験来院の用量はスキップし、次回試験薬の投与は、次回予定用量で行った。フィクラツズマブ関連毒性の結果、2回続けて用量を逃した場合、フィクラツズマブを永続的に中止した。しかしながら、治験責任医師の見解において、臨床的有用性の証拠があれば、2回続けて用量を逃した対象は、AEが、Table 2A-2B(表2~表3)における最低限の仕様に回復した後、処置の再開が許容された。
【0209】
セツキシマブ関連皮膚毒性は、下のTable 3(表4)に概説される基準に従って等級付けされた。医師の判断に従い、患者に≧グレード3の発疹が現れたら、セツキシマブ処置を、上のTable 2A-2B(表2~表3)に従って調整した。軽度及び中等度の皮膚有害事象を有する患者では、調整なしにセツキシマブを継続した。
【0210】
【0211】
セツキシマブ療法中は、乾燥皮膚及び紅斑から膿疹に及ぶ皮膚発疹が、極めて一般的である。丘疹膿疱性発疹の生検は、尋常性ざ瘡ではなく病理組織学的化膿性炎症を実証する。初期発疹は無菌であるが、重感染が起こり得る。
【0212】
セツキシマブの投与中に皮膚AEを発現する患者は、炎症性又は感染性後遺症の発症に関してモニタリングされ、それらの症状の適切な処置を開始した。
【0213】
セツキシマブ注入に対する反応の管理は、Table 4(表5)に記載するように行った。
【0214】
【0215】
原因となっているがんに関連するとは思われない肺症状の急性発症(グレード≧2)又は悪化の事象では、セツキシマブ及びフィクラツズマブの両方ともを中断し、それらの症状の即座の調査を行った。それらの症状がグレード1に回復するまで、フィクラツズマブでもセツキシマブでも再処置を行わなかった。間質性肺疾患が確認されたら、セツキシマブ及びフィクラツズマブの両方ともを永続的に中止して、患者を適切に処置した。
【0216】
f.応答評価
この試験の目的で、患者の応答を8週間ごとに再評価した。
【0217】
この試験において、応答及び進行は、改訂された固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)ガイドライン(第1.1版)(Eisenhauer, E.A.等、Eur J Cancer (2009) 45:228~247頁)により提案される新国際基準を使用して評価した。腫瘍病変の最大径の変化(一次元測定)、及び悪性リンパ節の場合の最小径の変化を使用した。
【0218】
悪性疾患評価
客観的応答を評価するためには、それに対してその後の測定が比較された、ベースラインでの総腫瘍量を見積もることが必要であった。測定可能疾患は、少なくとも1つの測定可能病変の存在により定義される。
【0219】
全測定は、定規又はノギスを使用してメートル表記で記録した。同定された各々の病変を、ベースラインにおいて及び追跡調査中に特徴付けるために、同じ評価方法及び同じ技術を使用した。全てのベースライン評価は、処置開始にできるだけ近く行い、登録前の4週間を超えることはなかった。
【0220】
ベースラインでは、原発腫瘍及び病的頸部リンパ節は、測定可能又は測定不能のいずれかとして特徴付けられた。
【0221】
測定可能な原発腫瘍は、少なくとも一次元(記録される最長径)において、従来技術により≧20mm(2.0cm)と、又はスパイラルCTスキャンにより≧10mm(1.0cm)と精密測定され得る病変である。
【0222】
頸部リンパ節は、短軸が≧15mmである場合、病的且つ測定可能であると見なされた。頸部リンパ節は、短軸が≧10mmであるが<15mmである場合、病的であるが測定不能であると見なされた。頸部リンパ節は、短軸が<10mmである場合、非病的且つ測定不能であると見なされた。
【0223】
小さな病変を含む他の全ての病変[従来技術による最長径<20mm(2.0cm)又はスパイラルCTスキャンによる<10mm(1.0cm)]は、真に測定不能病変である。
【0224】
真に測定不能であると見なされる病変には、以下:骨病変、軟髄膜疾患、腹水、胸水/心嚢液貯留、炎症性乳房疾患、皮膚/肺リンパ管炎(lymphangitis cutis/pulmonis)、イメージング技術により確認且つ追跡されない腹部腫瘤、及び嚢胞性病変が含まれる。
【0225】
関与する全ての臓器を代表する、臓器当たり最多2つまで及び総計最多5つまでの全ての測定可能病変は、標的病変と同定され、記録されてベースラインで測定された。標的病変は、そのサイズに基づいて選択され(最長径を有する病変)、関与する全ての臓器の代表であって、再現性のある反復測定に適した。最大病変が、反復測定に適さなかった場合、その状況では、再現性よく測定可能である2番目に大きい病変を選択した。全ての標的病変の径(非節性病変の長径、節性病変の短軸)の和を計算し、ベースライン径和として報告した。リンパ節を和に含める場合、短軸のみを和に加えた。疾患の測定可能寸法におけるいずれかの客観的腫瘍退縮を更に特徴付けるために、ベースライン径和を基準として使用した。
【0226】
原発腫瘍の最長径和、及び標的病的リンパ節の短軸径和を、ベースラインで計算し、ベースライン径和として報告した。5つの標的病変以外のいずれかの測定可能病変を含む、他の全ての病変(又は疾患部位)は、非標的病変と同定され、ベースラインにおいて報告した。それらの病変の測定は必要でなかったが、各々の存在、不在、又はまれな場合の明らかな増悪は、追跡調査を通して記載した。
【0227】
応答基準
標的病変の評価に関して、完全奏効(CR)は、全ての標的病変の消失であった。いずれかの病的リンパ節は(標的であれ非標的であれ)、短軸の<10mmへの低減を有する必要があった。部分奏効(PR)は、ベースライン径和を基準に、標的病変径(非節性病変の最長径;標的リンパ節の短軸径)の和の少なくとも30%の低下であった。進行性疾患(PD)は、ベースライン径和測定以降に記録された最小長径和を基準に、標的病変径(非節性病変の最長径;標的リンパ節の短軸径)の和の少なくとも20%の増加であった。和は、20%の相対的増加に加えて、少なくとも5mmの絶対的増加を示す必要があった。1つ又は複数の新病変の出現も進行と見なされた。安定(SD)は、試験中の最小長径和を基準に、PRに該当する十分な縮小もPDに該当する十分な増加もなかった。
【0228】
非標的病変(必要ではないが、記載されるべきであった他の全ての病変又は疾患部位)の評価に関して、完全奏効(CR)は、全ての非標的病変の消失であった。部分奏効/安定(SD)は、1つ又は複数の非標的病変の存続であった。進行性疾患(PD)は、1つ若しくは複数の新病変の出現、及び/又は存在する非標的病変の明らかな増悪であった。明らかな増悪は、通常、標的病変状態を超えなかった。それは、単一病変の増加ではなく、全体的病態変化の代表である必要がある。「非標的」病変のみの明らかな増悪は例外的であるものの、そのような状況では担当医の見解が優先され、進行状態は、後で調査委員会(又は主席治験医師)により確認された。
【0229】
疾患進行の客観的証拠をその時に伴わずに、処置の中止を必要とする、健康状態の全体的悪化を有する患者は、症候性悪化を有すると分類された。
【0230】
最良総合効果は、進行性疾患に関する、登録以降に記録された最小測定を基準に、登録から疾患進行/再発まで記録された最良効果であった。下のTable 5(表6)は、標的病変及び非標的病変における、新病変の有無での、腫瘍応答の全ての可能な組合せに関する総合効果を提示する。
【0231】
安定状態に割り当てられるためには、試験登録後に少なくとも1回、8週間の最小間隔で、測定が安定基準を満たす必要がある。
【0232】
【0233】
応答の最初の記録は、療法の開始とPR又はCRの最初の記録との間の期間である。
【0234】
完全奏効又は部分奏効の状態に割り当てられるためには、応答に関する基準が最初に満たされてから少なくとも4週間後に行われた反復評価により、腫瘍測定における変化が確認される必要があった。
【0235】
総合効果期間は、完全奏効又は部分奏効の測定基準が満たされた時(どちらの状態であれ最初に記録された方)から、処置開始以降に記録された最小測定を基準に、再発性又は進行性疾患が客観的に記録された最初の日まで測定された期間であった。
【0236】
完全奏効の総合期間は、完全奏効の測定基準が満たされた時から再発性疾患が客観的に記録された最初の日まで測定された期間であった。
【0237】
安定期間は、登録から、登録以降に記録された最小測定を基準に、疾患進行に関する基準が満たされるまでの測定であった。安定状態に割り当てられるためには、試験登録後に少なくとも1回、6週間の最小間隔で、測定が安定基準を満たす必要があった。
【0238】
生存は、試験への登録日から測定した。
【0239】
無増悪期間及び無増悪生存期間は、試験への登録日から転移性新病変の出現又は客観的腫瘍進行まで測定した。
【0240】
無増悪生存期間(PFS)は、処置開始から、疾患進行又はいずれかの理由による死亡まで計算した。
【0241】
g.医薬品情報
注射用フィクラツズマブ濃縮物20mg/mLを、10mMヒスチジン緩衝液pH5.8中で製剤化した。製剤は、142mMアルギニン(等張性のため)及び0.01%ポリソルベート80も含む。製品を滅菌ろ過し、洗浄及び脱パイロジェン済み5mLガラスバイアル中に無菌充填した。4.0mLのラベル量が回収可能であることを確保するために、バイアル中での過量を提供した。製品は、透明からわずかに乳白色の、無色からわずかに黄色の溶液であった。
【0242】
注射用フィクラツズマブ濃縮物を、正常食塩溶液との混合物としてIV注入により投与した。IVバッグ中の混合溶液を、0.22μm低タンパク質結合性インラインフィルタを含有する注入セットに連結した。IVバッグ、及びインラインフィルタを含有する注入セットは、混合物と相容性であることが示された。ろ過した混合溶液は、透明からわずかに乳白色であった。
【0243】
フィクラツズマブを、冷蔵条件下(2℃~8℃)の安全な場所で保管した。
【0244】
セツキシマブは、抗EGFR受容体ヒト化キメラモノクローナル抗体である。セツキシマブをSP2/0骨髄腫細胞株において発現させ、ラージスケール細胞培養バイオリアクター中で増殖させ、プロテインAクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、低pH処理、及びナノろ過を含む、いくつかの精製工程を使用して、高レベル純度に精製した。セツキシマブは、発疱薬であるとは知られていない。
【0245】
調製及び投与:セツキシマブは、IVプッシュ又はボーラスとしては投与されなかった。セツキシマブは、低タンパク質結合性0.22ミクロメートルインラインフィルタを使用して投与した。
【0246】
セツキシマブは、100mgのセツキシマブを、リン酸緩衝食塩水中に2mg/mLの濃度で含有する50-mL使い捨てバイアルとして供給した。溶液は、無色透明であって、少量の容易に視認できる非晶性白色セツキシマブ粒子を含有し得る。
【0247】
セツキシマブを、注入ポンプ又はシリンジポンプにより投与した。セツキシマブは、患者の注入ラインへとピギーバックした。
【0248】
セツキシマブ注入に続き、1時間の観察期間が推奨された。
【0249】
2.結果
図1及び
図2に示すように、計60名の患者を無作為化して、計58名に、2018年1月から2020年12月まで試験処置を開始した。試験集団のベースライン背景は、2つの処置群にわたってつり合わせた(
図3)。デザインによると、全ての患者はセツキシマブ耐性であって、先行セツキシマブ曝露以来の期間の中央値は、フィクラツズマブ群及び併用群に関して、それぞれ、2.7か月及び3.6か月であった。60名のうち54名(90%)は、抗PD1 mAbで増悪し、43名(72%)はプラチナ耐性であった。60名のうち10名(17%)は、臨床研究において標本として不十分である、人種的又は民族的な少数派であった。
【0250】
フィクラツズマブ単剤療法群
図6A及び
図6Bに示すように、フィクラツズマブ単剤療法群は、26名の評価可能対象が、1.8か月の無増悪生存期間中央値(mPFS)(90% CI下限値:1.7か月)をもたらした後、無益のため停止し、OS中央値は4.9か月(90% CI下限値、3.3か月)であって、1/26(4%)の全奏効率(ORR)であり、その1名の応答はHPV陰性対照における部分奏効であった。
【0251】
フィクラツズマブ及びセツキシマブの併用群
フィクラツズマブ及びセツキシマブの併用群は、32名の評価可能対象の集積(accrual)で完了し、主要エンドポイントを満たした。フィクラツズマブ及びセツキシマブの併用群における対象は、3.6か月のmPFS(90% CI下限値、2.3か月;p=0.04;
図5A)をもたらし、フェーズIII試験に関する、プロトコル特定の基準を満たす。OS中央値は、7.3か月であった(90% CI下限値、4.8か月;
図5B)。ORRは、6/32(19%)であって、2名の完全奏効(CR)及び4名の部分奏効(PR)を含んだ。CRの1名の患者は、無関係の心血管疾患で死亡し、CRのままであった。第2の患者は、プロトコル処置の開始から46か月後にCRのままであり、セツキシマブの減量にもかかわらず再発性、重度のざ瘡様皮疹ゆえ、18か月目以降は、フィクラツズマブのみであった。
図5AのPFSカプラン・マイヤー曲線が示すように、フィクラツズマブが投与された全患者は、およそ9か月までに進行したのに対して、一部のフィクラツズマブ/セツキシマブ対象は、15か月を超えてなおも進行しなかった。対照群と処置群とを比べる
図5Bでは、同様の傾向が示された。このデータは、併用処置を受けた対象では好都合な転帰の可能性が大きいことを示唆する。
【0252】
全ての客観的応答は、HPV陰性疾患を有する患者において起きたことが注目に値する。全難治性HPV陰性疾患における予想外に高い奏効率ゆえ、併用群に関するHPV層別化亜群において事後解析を行った。
図6Aに示すように、HPV陽性患者に対するHPV陰性患者でのORRは、0/16(0%)に対する6/16(38%)、p=0.02であった。PFS中央値は、2.3か月に対する4.1か月、p=0.03であった(
図6B)。医学的不適格ゆえプラチナが投与されたことがない患者を除くHPV陰性患者において、ORRに関する感度分析を行った;ORRは、13名のうちの5名であった(38%)。
【0253】
特に、HPV陽性対象におけるORRは、HPV陽性対象のいずれも応答者でなかったことから0%であったのに対して、HPV陰性対象におけるORRは、38%であり、16名の陰性患者の中で2名の完全奏効及び4名の部分奏効が記録された(p=0.02)。HPV陽性対象のmPFSは、HPV陰性対象での4.1か月と比べて2.3か月であり、上回るORR(p=0.02)及びmPFS(p=0.03)を有していた。更に、
図6Bのカプラン・マイヤー曲線が示すように、全てのHPV陽性対象は、およそ6か月まで進行したのに対して、およそ18か月において、一部の対象は無増悪のままであった。HPV陰性HNSCC対象がそれだけ長く生存することは、現在利用可能な標準治療に基づいたこれらの患者の極めて不良の予後を考慮すると、驚くべき結果である。
【0254】
これらの結果は、セツキシマブによるHNSCCの処置が、10~13%のORRにより、これらのがんでのささいな有用性のみをもたらしたことから重大である。従って、中でも、本開示は、現在の標準処置、例えば、プラチナ療法又はセツキシマブを伴う免疫療法(例えば、ペンブロリズマブのような免疫チェックポイント阻害剤等)と比べて向上した臨床転帰をもたらす、HPV陰性であるHNSCCを有する対象向けの、組成物及び治療計画を提供する。
【0255】
データは、HPV陰性対象が、HPV陽性対象と比べて上回る転帰を体験することを明らかに示し、この併用療法に対するHPV陰性対象での著しい治療上有用性を支持する。HPV陽性患者は一般的に、HNSCCに対する従来の処置を用いるとHPV陰性患者よりも良い経過をたどり、HPV陽性状態は、肯定的な予後指標であることから、これは驚くべきであった。従って、HPV陰性状態が、再発性/転移性HNSCCにおけるセツキシマブ及びフィクラツズマブでの処置に対する肯定的な予後指標であり得る一方、HPV陽性状態は、否定的な予後指標であり得るという発見は、まったく驚くべき且つ予想外である。
【0256】
従って、データは、HPV陰性の再発性又は転移性HNSCCを有する対象が、免疫チェックポイント耐性及び/又はプラチナ耐性HNSCCを有する対象における第二選択療法又は後方ライン療法の標準治療としてのセツキシマブ単独と比べて、セツキシマブ及びフィクラツズマブによる処置から大いに利益を得ることができることを示唆する。
【0257】
毒性
フィクラツズマブ及び/又はセツキシマブに起因する、処置下で発現したAEを含む安全性データを
図4にまとめる。単剤療法群では、最も一般的なAEは、HGF/cMet阻害剤に関して予想される毒性クラス、低アルブミン血症(30%)及び浮腫(27%)であった。併用群では、最も一般的な毒性は、EGFR阻害剤に関する毒性クラスのざ瘡様皮疹(63%)、低アルブミン血症(31%)及び浮腫(22%)であった。HGF/cMet阻害剤の、まれではあるが公知の毒性クラスである肺炎の3例が観察された、2例は単剤療法群であり(1例の致死的AEを含む)、1例は併用群であった。
【0258】
図4は、観察された毒性の種類の詳細な内訳を、グレード1~2及び≧グレード3により分類して提示する。フィクラツズマブ群では、グレード1~2の浮腫、疲労、ざ瘡様皮疹、皮膚感染、及び低アルブミン血症が、それ以上のグレードの浮腫、斑点状丘疹、及び肺炎と共に観察された。併用群では、観察されたグレード1~2には、浮腫、体重減少、様々な皮膚毒性、食欲不振、粘膜炎、低アルブミン血症、及び肺炎が含まれ、一部のグレード3以上の浮腫、疲労、並びに皮膚毒性及び胃腸毒性を伴った。データは、フィクラツズマブ及びセツキシマブによる併用療法が、一般的な有害事象の浮腫及び低アルブミン血症、並びにまれな有害事象の肺炎を含む、HGF/c-MET阻害剤から予想される毒性クラスにより、良好に忍容されたことを示す。
【0259】
(実施例2)
HPV陰性である再発性又は転移性HNSCCを有する対象におけるセツキシマブ及びフィクラツズマブを評価するフェーズIII試験
HPV陰性である再発性又は転移性HNSCCを有する対象の処置を評価するためのフェーズIII試験を行う。HPV陰性であると決定される、並びにプラチナ耐性若しくはプラチナ不適格及び/又は免疫チェックポイント阻害剤耐性若しくは免疫チェックポイント阻害剤不適格である再発性又は転移性HNSCCを有する対象を、2つの試験群、つまりセツキシマブが500mg/m2の用量で2週間ごとに投与された対照群、及び500mg/m2でのセツキシマブが20mg/kgのフィクラツズマブと共に2週間ごとに同時i.v.投与される処置群、に無作為化する。
【0260】
対象は、増悪、死亡、又は許容できない毒性の体験を含む何らかの理由での試験の中止まで試験にとどまる。
【0261】
実施例1でのフェーズII試験からの結果に部分的に基づいて、結果は、無増悪生存期間中央値及び全生存期間の両方とも、処置群では対照群よりも統計的に有意に大きいことを示すと予想される。結果は、HPV陰性でありプラチナ耐性若しくはプラチナ不適格及び/又は免疫チェックポイント阻害剤耐性若しくは免疫チェックポイント阻害剤不適格でもあるHNSCCを有する対象は、セツキシマブ単独よりも、セツキシマブ及びフィクラツズマブによる処置から大きな臨床的有用性を体験することを示すとも予想される。安全性データは、併用したフィクラツズマブ及びセツキシマブが、許容される毒性クラスにより良好に忍容されることを示すと予想される。
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【国際調査報告】