(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】効率的なトランスフルクトシル化活性を有する突然変異体FTアーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 9/10 20060101AFI20241112BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241112BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241112BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241112BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241112BHJP
G16B 15/20 20190101ALI20241112BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N1/19
C12N15/09 Z
G16B15/20
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530524
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 IN2022051021
(87)【国際公開番号】W WO2023089639
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202141053708
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524192890
【氏名又は名称】レベレイションズ バイオテック プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ビーラム,ラヴィ チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,ディパンウィタ
(72)【発明者】
【氏名】バブー,ムスク バラス
(72)【発明者】
【氏名】サンカラ,ディーピカー
(72)【発明者】
【氏名】ラホティ,シュラッダ
(72)【発明者】
【氏名】アニルダーン,アルパ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA60Y
4B065AA77X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065BD25
4B065CA29
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】
本発明は、フルクトオリゴ糖の効率的な及びコスト効果が高い産生のための、トランスフルクトシル化活性を有する改善された微生物酵素に関する。
【解決手段】
本発明は、アスペルギルス(Aspergillus)属から突然変異体FTアーゼ遺伝子ファミリーを得ることを対象とする。新規FTアーゼの組換え発現のための核酸、ペプチド配列、突然変異体タンパク質、ベクター及び宿主細胞も提供される。種々の突然変異、例えば、限定されるものではないが、点突然変異及び欠失突然変異並びにそれらの組み合わせが本明細書に提示される。本発明は、分泌タンパク質としての新規組換えFTアーゼ突然変異体の発現のプロセスにも関する。酵素は、濾過後に高い純度を示し、それは、コストがかさむクロマトグラフィー手順の必要性を除外する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変ポリペプチドであって、限定されるものではないが、単一の点突然変異若しくは複数の点突然変異又は欠失突然変異或いはそれらの組み合わせから選択される突然変異を含むアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)のFTアーゼである改変ポリペプチド。
【請求項2】
前記点突然変異は、限定されるものではないが、N32R、R166Y、H240F、H43Q、N32K、T155W、R286I、V382L、Q406R、A371E、T293Q、F118Y、H43Y、R166N、F259W、H43F、H43A、T155Y、L322Y、F568Y、T293F、A371M、T293V、L78R、H43V、F182P、R286V、H43S、H43N、T155M、I324Q、Q586K、T293H、E405W、T293Y、L78W、H43L、F182R、V343F、P131R、H43K、R166L、V343Q、Q586Y、T293I、N290L、A188H、N290K、H43R、F182A、V343L、T155L、V127I、R166Q、V343K、Q586V、T293K、N290M、A188K、N290Q、H43T、F182D、381R、T155V、V127M、H180Y、V343Y、Q586W、T293L、N290R、D191A、Q327C、H43M、F182V、A381L、R166K、P131H、H180R、V343I、A188R、T293R、Q327A、D191N、Q327I、H43I、F182T、L440R、R166H、P131F、F182M、A381V、D191K、T293S、Q327D、D191W、Q327K、V125F、F182L、Q586R、F182E、P131Q、F182H、A381K、D191R、T293W、Q327E、A371L、Q327V、V127A、F182W、N32Q、A381I、T132L、F182S、A381P、Q327G、A188F、Q327F、A371V、Q406K、P131Y、F182N、N32V、Q586F、T132M、Y232W、A381Q、Q327H、A188Q、Q327R、E405F、Q406M、P131W、F182K、H43W、N32D、T132V、H240R、A381T、Q327L、D191E、Q406L、E405G、S329N、T155R、F182Q、H43E、N32I、T132I、H240K、A381Y、Q327M、D191F、T293M、E405L、S329T、T155K、R196K、H43D、N32Y、T155I、F259Y、V382I、Q327N、D191Q、T293N、E405N、Y404W、V44L、K199R、R459T、N654K、L44V、R199K、T459R、K654Nから選択される、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項3】
前記欠失突然変異は、限定されるものではないが、32~654aa、32~194aa、1~194aaから選択される、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチド配列は、限定されるものではないが、配列番号9~218から選択される、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチド配列は、配列番号9~66から選択される、請求項4に記載の改変ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載の改変ポリペプチドをコードする核酸分子を含むポリヌクレオチド。
【請求項7】
アミノ酸配列又はヌクレオチド配列は、FAK、FAKS、AT、AA、GA、IN、IV、KP、LZ及びSA又はそのバリアントを含む群から選択されるシグナルペプチドにさらに融合されている、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
a.FAKは、配列番号219のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
b.FAKSは、配列番号229のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
c.ATは、配列番号220のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
d.AAは、配列番号221のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
e.GAは、配列番号222のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
f.INは、配列番号223のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
g.IVは、配列番号224のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
h.KPは、配列番号225のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
i.LZは、配列番号226のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、及び
j.SAは、配列番号227のアミノ酸配列又はそのバリアントを含み、
前記シグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を可能にする、請求項7に記載の改変ポリペプチド。
【請求項9】
プロモーターに作動可能に結合されている、請求項6に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項10】
FTアーゼ遺伝子のための前記プロモーターは、AOX1、ADH3、DAS、FLD1、LRA3、THI11、GAP、YPT1、TEF1、GCw14及びPGK1を含む群から選択される構成的、誘導性プロモーターである、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
pPICZαA、pPICZαB、pPICZαC、pGAPZαA、pGAPZαB、pGAPZαC、pPIC3、pPIC3.5、pPIC3.5K、PAO815、pPIC9、pPIC9K、pHIL-D2及びpHIL-S1並びにFTアーゼの分泌又は細胞内発現のために構成された発現ベクターを含む群から選択される、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項9に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞であって、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)を含む群から選択される組換え宿主細胞。
【請求項13】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)Mut+、Mut S、Mut、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71H、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)SMD1168H、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)SMD1168、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)X33、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)GS115又は任意の他のピキア・パストリス(Pichia pastoris)宿主株を含む群から選択される、請求項12に記載の組換え宿主細胞。
【請求項14】
請求項1に記載のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)の改変FTアーゼを発現することができる組換え宿主細胞を産生する方法であって、
a.請求項6に記載の改変核酸分子を合成するステップと、
b.前記改変核酸分子を保有するベクターを構築するステップと、
c.宿主細胞をステップ(b)の前記ベクターで形質転換して、組換え宿主細胞を得るステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記改変核酸分子は、請求項2に記載の少なくとも1つ以上の点突然変異若しくは請求項3に記載の欠失突然変異又はそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)の改変FTアーゼを発現させるプロセスであって、
a.アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)のFTアーゼを発現することができる組換え宿主細胞を好適な発酵培地中で培養して、発酵ブロスを得ることと、
b.前記発酵ブロスから上清を回収することであって、前記上清は、組換えFTアーゼを含有する、回収することと、
c.組換えFTアーゼを精製することと
を含むプロセス。
【請求項17】
前記発酵培地は、基礎塩培地である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記発酵ブロスのpHは、4.0~7.5の範囲に維持され、前記発酵ブロスの温度は、15℃~45℃の範囲に維持される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
活性部位を含むFTアーゼタンパク質にわたるアミノ酸の突然変異を同定するプロセスであって、ステップは、
a.バイオインフォマティクスツールを使用して、FTアーゼ酵素のapo構造をシミュレーションすることと、
b.根平均二乗偏差(RMSD)の変動に基づいてトラジェクトリーをクラスタリングして、ユニークな立体構造を同定することと、
c.前記FTアーゼ酵素が突然変異についてのシミュレーション残基の過程中に採用した前記ユニークな立体構造を同定することと、
d.ステップ(c)の前記同定されたユニークな立体構造を、各アミノ酸が別のアミノ酸と行ったペアワイズ相互作用について分析することと、
e.残基のペア間のファンデルワールス及び水素結合についての適切な重みを提供することにより、指標相互作用強度として前記アミノ酸の前記ペアワイズ相互作用を定量することと、
f.前記シミュレーションの前記過程を通して前記相互作用強度のより大きい標準偏差を有することが見出された各アミノ酸の19個の突然変異を生成することと、
g.-ΔΔG値に従って同様の又はより良好な安定性を有する安定化突然変異を同定及び選択することと
を含む、プロセス。
【請求項20】
前記タンパク質は、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、好ましくはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)から選択される、請求項19に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、フルクトオリゴ糖の効率的な及びコスト効果が高い産生のための、トランスフルクトシル化活性を有する改善された微生物酵素を得ることに向けられた遺伝子工学の分野に関する。より具体的には、本発明は、アスペルギルス属(Aspergillus)から突然変異体FTアーゼ遺伝子ファミリーを得ることを対象とする。
【背景技術】
【0002】
背景
フルクトースオリゴマーは、フルクトオリゴ糖(FOS)としても公知であり、一連の同族オリゴ糖を構成する。フルクトオリゴ糖は、通常、式GFnによって表され、主に2、3及び4つのフルクトシル単位がグルコースのβ-2,1位で結合している1-ケストース(GF2)、ニストース(GF3)及びβ-フルクトフラノシルニストース(GF4)から構成される。
【0003】
フルクトオリゴ糖(FOS)は、多くの有益な特性、例えば低甘味強度及びプレバイオティックとしての有用性によって特徴付けられる。低甘味強度(スクロースと比較して約3分の1~3分の2)及び低発熱量(およそ0~3kcal/g)に起因して、フルクトオリゴ糖は、種々の食品中で糖代用品として使用され得る。さらに、プレバイオティックとして、フルクトオリゴ糖は、結腸癌に対する保護剤としての使用、免疫系の種々のパラメータの向上、ミネラル吸着の改善、血清脂質及びコレステロール濃度に対する有益な効果並びに肥満及び糖尿病の管理のための血糖管理の効果付与について報告されている(Dominguez, Ana Luisa, et al.“An overview of the recent developments on fructooligosaccharide production and applications.”Food and bioprocess technology 7.2 (2014): 324-337)。
【0004】
しかしながら、フルクトオリゴ糖は、果実、野菜及び蜂蜜中の天然構成成分として微量で見出されるにすぎない。このような低濃度に起因して、食料からフルクトオリゴ糖を抽出することは、事実上不可能である。
【0005】
トランスフルクトシル化活性を有する微生物酵素によるスクロースからの酵素的合成を介してフルクトオリゴ糖を産生する試みが行われてきた。しかしながら、従来の試みの主な制約は、より低い触媒効率、より低いFOS収率をもたらす、グルコースによる酵素のフィードバック阻害及び組換え宿主系中で発現される酵素によるスクロースの変換のためのより長い期間の条件であった。さらに、トランスフルクトシル化活性を示す微生物酵素の工業的産生は、酵素の大規模発現、酵素安定性、発酵及び精製プロセスに伴う追加の制限に起因して困難である。
【0006】
フルクトオリゴ糖の商業規模産生は、効率的な酵素の同定及び大量産生を要求する。上記の制限に起因して、効率的なトランスフルクトシル化活性を有する微生物酵素の産生は、したがって、フルクトオリゴ糖の産生コストを増加させるコストがかさむ事案である。
【0007】
したがって、次いでフルクトオリゴ糖の産生のコストを低下させる、優れたトランスフルクトシル化活性を有する効率的で安価で工業的に有用な酵素を同定及び提供することが長期にわたって継続的に必要とされている。
【0008】
FTアーゼ遺伝子/タンパク質ファミリーとしては、いくつかの酵素、例えば、限定されるものではないが、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からのβ-フルクトフラノシダーゼ、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)からのフルクトシルトランスフェラーゼ、アスペルギルス・フィジエンシス(Aspergillus fijiensis)からのアラビナナーゼ/レバンスクラーゼ/インベルターゼ及びアスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculeatus)からのフルクトシルトランスフェラーゼなどが挙げられる。これらのタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1、2、3及び4)によって表される。これらの酵素は、トランスフルクトシル化活性を示し、したがってフルクトオリゴ糖の産生で重要である。
【0009】
β-フルクトフラノシダーゼ及びフルクトシルトランスフェラーゼは、アスペルギルス属(Aspergillus)から産生されているが、効率的及びコスト効率的な酵素が依然として要求されている。本発明は、より良好な酵素を良好な量で得ることができるような種々の突然変異体及び種々の株を生成することにより、先行技術における上記の課題に対処することを試みる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
技術的課題
本発明で解決される技術的課題は、優れたトランスフルクトシル化活性を有する新規酵素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題に対する解決手段
課題は、ユニーク酵素工学及びアスペルギルス属(Aspergillus)からのFTアーゼの突然変異体を開発するためのバイオインフォマティクスベースアプローチを用いることによって解決された。
【0012】
発明の概要
本発明は、新規FTアーゼ、例えば、限定されるものではないが、β-フルクトフラノシダーゼ又はフルクトシルトランスフェラーゼ酵素の組換え発現のための核酸、ペプチド配列、突然変異体タンパク質、ベクター及び宿主細胞に関する。種々の突然変異体、例えば、限定されるものではないが、点突然変異体及び欠失突然変異体並びにそれらの組み合わせが本明細書に提示される。本発明は、分泌タンパク質としての新規組換えFTアーゼ突然変異体の発現のプロセスにも関する。酵素は、濾過後に高い純度を示し、それは、コストがかさむクロマトグラフィー手順の必要性を除外する。
【0013】
最後に、酵素は、フルクトオリゴ糖の高い収率を得るために使用され得る。
【0014】
図面の簡単な説明
本開示の特徴は、添付図と併せて以下の詳細な説明から詳細に明らかになる。図が本開示によるいくつかの実施形態を示すにすぎず、その範囲を限定するとみなされるべきではないという理解のもと、本開示は、添付図の使用を通してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】いくつかの代表的なアスペルギルス属(Aspergillus)からの天然FTアーゼの多重配列アラインメントを示す。
【
図2a-1】天然fopA遺伝子と改変fopA遺伝子との多重配列アラインメントを示す。
【
図2a-2】天然fopA遺伝子と改変fopA遺伝子との多重配列アラインメントを示す。
【
図2b-1】天然ft遺伝子と改変ft遺伝子との多重配列アラインメントを示す。
【
図2b-2】天然ft遺伝子と改変ft遺伝子との多重配列アラインメントを示す。
【
図3】pPICZαAベクターの構築スキームを表す。
【
図4-1】(a):V44L;(b):T155R;(c):T293W及びR286V、を含有する組換えプラスミドpPICZαAに対して実施された制限消化分析の結果を示す。
【
図4-2】(d):T459R;(e):R199K;(f):F182P;(g):32~654aa、32~194aa及び1~194aa突然変異体、を含有する組換えプラスミドpPICZαAに対して実施された制限消化分析の結果を示す。
【
図5-1】インテグレーション(a):pPICZαA-V44L;(b):pPICZαA-T155Rを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株におけるタンパク質発現をスクリーニングするためのSDS-PAGE分析を示す。
【
図5-2】インテグレーション(c):pPICZαA-T293W;(d):pPICZαA-R286Vを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株におけるタンパク質発現をスクリーニングするためのSDS-PAGE分析を示す。
【
図5-3】インテグレーション(e):pPICZαA-R199K;(f):pPICZαA-T459Rを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株におけるタンパク質発現をスクリーニングするためのSDS-PAGE分析を示す。
【
図5-4】インテグレーション(g):pPICZαA-F182Pを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株におけるタンパク質発現をスクリーニングするためのSDS-PAGE分析を示す。
【
図6-1】種々の突然変異体FTアーゼタンパク質の発酵追跡中の異なる時間間隔で回収されたサンプルのSDS-PAGE分析を示す。(a):pPICZαA-V44L;(b):pPICZαA-T155R。
【
図6-2】種々の突然変異体FTアーゼタンパク質の発酵追跡中の異なる時間間隔で回収されたサンプルのSDS-PAGE分析を示す。(c):pPICZαA-T293W;(d):pPICZαA-R286V。
【
図6-3】種々の突然変異体FTアーゼタンパク質の発酵追跡中の異なる時間間隔で回収されたサンプルのSDS-PAGE分析を示す。(e):pPICZαA-R199K;(f):pPICZαA-T459R;(g):pPICZαA-F182P。
【
図7-1】突然変異体酵素によるスクロースからのFOSの形成を示すTLCを示す。(a):V44L;(b):T155R。
【
図7-2】突然変異体酵素によるスクロースからのFOSの形成を示すTLCを示す。(c):T293W;(d):R286V。
【
図7-3】突然変異体酵素によるスクロースからのFOSの形成を示すTLCを示す。(e):R199K;(f):T459R;(g):F182P。
【
図8-1】突然変異体酵素によって形成されたFOSサンプルのHPLC分析クロマトグラフを示す。(a):V44L;(b):T155R。
【
図8-2】突然変異体酵素によって形成されたFOSサンプルのHPLC分析クロマトグラフを示す。(c):T293W;(d):R286V。
【
図8-3】突然変異体酵素によって形成されたFOSサンプルのHPLC分析クロマトグラフを示す。(e):R199K;(f):T459R。
【
図8-4】突然変異体酵素によって形成されたFOSサンプルのHPLC分析クロマトグラフを示す。(g):F182P。
【
図9-1】(a):N32R、H43Y、H43V、H43L、V125F、V127A、P131Y;(b):F182R、F182A、F182D、F182V、F182T、T293F、T293Hを含有する組換えプラスミドpPICZαAに対して実施された制限消化分析の結果を示す。
【
図9-2】(c):T293R、T293L、T293S、Q327L;(d):Q327N、V343Fを含有する組換えプラスミドpPICZαAに対して実施された制限消化分析の結果を示す。
【
図10-1】インテグレーション(a):pPICZαA-H43Y;(b):pPICZαA-H43Lを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株におけるタンパク質発現をスクリーニングするためのSDS-PAGE分析を示す。
【
図10-2】インテグレーション(c):pPICZαA-Q327N;(d):pPICZαA-V343Fを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株におけるタンパク質発現をスクリーニングするためのSDS-PAGE分析を示す。
【
図11】FTアーゼ中の安定化点突然変異を同定するためのワークフローを示す。
【
図12】ft遺伝子及びfopA遺伝子の比較配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
配列及び配列表の簡単な説明
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
定義
特に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本方法が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似の又は均等な任意のベクター、宿主細胞、方法及び組成物もベクター、宿主細胞、方法及び組成物の実施又は試験で使用され得るが、代表的な説明がここで記載される。
【0027】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限間の各介在値並びにその記述範囲中の任意の他の記述値又は介在値は、本方法及び組成物に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲に独立に含めることができ、記述範囲の任意の具体的に除外される限度に従ってそれぞれの範囲も本方法及び組成物に包含される。記述範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれか又は両方を除外する範囲も本方法及び組成物に含まれる。
【0028】
明確性のため、別個の実施形態に関連して記載される方法のある特徴は、単一の実施形態との組み合わせでも提供され得ることが認識される。逆に、簡潔性のため、単一の実施形態に関連して記載される方法及び組成物の種々の特徴は、別個に又は任意の好適な下位の組み合わせでも提供され得る。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、特に文脈が明示しない限り、複数の参照対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、いかなる任意選択の要素も除外するように作成され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の要素の引用に関する「唯一」、「のみ」などのような排他的用語の使用又は「否定的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0029】
本開示を読むことで当業者に明らかなとおり、本明細書に記載及び説明される個々の実施形態の各々は、区別される構成要素及び特徴を有し、それらは、本方法の範囲からも趣旨からも逸脱することなく、他の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されるか又はそれと組み合わされ得る。任意の引用される方法は、引用される事象の順序又は論理的に可能な任意の他の順序で実施され得る。
【0030】
用語「宿主細胞」には、発現構築物の対象のためのレシピエントであり得るか又はあり得た個々の細胞又は細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれる。本発明の目的のための宿主細胞は、本発明の目的のために好適に使用され得るピキア・パストリス(Pichia pastoris)の任意の株を指す。本発明の目的のために使用され得る株の例としては、ピキア属(Pichia)の野生型、mut+、mut S、mut-株、例えばKM71H、KM71、SMD1168H、SMD1168、GS115、X33が挙げられる。
【0031】
用語「組換え株」又は「組換え宿主細胞」は、本発明の発現構築物又はベクターで形質移入又は形質転換された宿主細胞を指す。
【0032】
用語「発現ベクター」は、挿入される核酸配列の、宿主中への形質転換後の発現を可能にするように設計される任意のベクター、プラスミド又はビヒクルを指す。
【0033】
用語「プロモーター」は、遺伝子の転写がいずれの箇所で開始するかを定義するDNA配列を指す。プロモーター配列は、典型的には、転写開始部位の直接上流又は5’末端に位置する。RNAポリメラーゼ及び必要な転写因子がプロモーター配列に結合し、転写を開始させる。プロモーターは、構成的又は誘導性プロモーターのいずれかであり得る。構成的プロモーターは、その関連遺伝子の発現が、通常、環境及び発生因子によって条件付けされないため、その関連遺伝子の継続的転写を可能にするプロモーターである。構成的プロモーターは、遺伝子工学で極めて有用なツールであり、なぜなら、構成的プロモーターは、誘導物質を有さない条件下で遺伝子発現を駆動し、一般に使用される誘導性プロモーターよりも良好な特徴を示すことが多いためである。誘導性プロモーターは、生物又は非生物及び化学又は物理的因子の存在又は不存在によって誘導されるプロモーターである。誘導性プロモーターは、遺伝子工学で極めて強力なツールであり、なぜなら、それらに作動可能に結合している遺伝子の発現を、生物の又は特定の組織若しくは細胞タイプにおける発生又は成長のある段階でオン又はオフに切り替えることができるためである。
【0034】
用語「作動可能に結合している」は、一方の機能が他方によって調節されるような単一核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、それがそのコード配列の発現を調節し得る場合、コード配列と作動可能に結合している(すなわち、そのコード配列は、プロモーターの転写制御下にある)。
【0035】
用語「転写」は、遺伝子配列のRNAコピーを作製するプロセスを指す。このコピーは、メッセンジャーRNA(mRNA)分子と呼ばれ、細胞核を出て細胞質に入り、細胞質において、そのコピーは、それがコードするタンパク質の合成を指向する。
【0036】
用語「翻訳」は、メッセンジャーRNA(mRNA)分子の配列をタンパク質合成中にアミノ酸の配列に翻訳するプロセスを指す。遺伝子コードは、遺伝子中の塩基対の配列と、それがコードする対応するアミノ酸配列との間の関係を記載する。細胞質中では、リボソームがmRNAの配列を3塩基ずつのグループで読み取ってタンパク質を組み立てる。
【0037】
用語「発現」は、コード配列によってコードされる産物の生物学的産生を指す。ほとんどの場合、コード配列を含むDNA配列は、転写されてメッセンジャーRNA(mRNA)が形成される。次いで、メッセンジャーRNAが翻訳されて、関連する生物学的活性を有するポリペプチド産物が形成される。発現のプロセスは、転写のRNA産物に対するさらなるプロセシングステップ、例えばイントロンを除去するためのスプライシング及び/又はポリペプチド産物の翻訳後プロセシングも含み得る。
【0038】
本明細書で使用される用語「改変ポリペプチド/ポリヌクレオチド」は、限定されるものではないが、シグナルペプチドに融合されているβ-フルクトフラノシダーゼ及び/又はフルクトシルトランスフェラーゼ突然変異体から選択されるポリペプチドFTアーゼ又はそれをコードするポリヌクレオチドを指すために使用される。機能バリアントには、本明細書に記載のβ-フルクトフラノシダーゼ及び/又はフルクトシルトランスフェラーゼ突然変異体とかなりの又は顕著な配列同一性又は類似性を有し、それらの生物学的活性を保持する任意の核酸が含まれる。
【0039】
前駆体ペプチド/タンパク質に関して本明細書で使用される用語「バリアント」は、シグナルペプチド又は酵素の活性を実質的に減少させないアミノ酸置換、付加、欠失又は変更を有するペプチドを指す。バリアントには、構造及び機能バリアントが含まれる。バリアントという用語には、非置換親アミノ酸に代わる置換アミノ酸の使用も含まれる。
【0040】
機能的に類似するアミノ酸を提供するアミノ酸置換表は、当業者に周知である。以下の6つのグループ(表1)は、互いについてのバリアントとみなされるアミノ酸の例である。
【0041】
【0042】
用語「点突然変異」は、ヌクレオチドが別のヌクレオチドに交換されるようなDNAの単一ヌクレオチドの変化を表す突然変異、又はヌクレオチドが欠失されるか若しくは単一ヌクレオチドがDNA中に挿入され、それによりDNAが通常又は野生型遺伝子配列と異なるようになる突然変異の大きいカテゴリーを指す。
【0043】
用語「欠失突然変異」は、遺伝子材料の損失を伴う突然変異のタイプを指す。これは、単一ミッシングDNA塩基対を伴う小規模のものであり得るか、又は染色体の一部分を伴う大規模のものであり得る。
【0044】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、ペプチド結合又は改変ペプチド結合によって互いに連結している2つ以上のアミノ酸残基を指すために本明細書で互換的に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然発生アミノ酸の人工化学模倣体である、アミノ酸ポリマー並びに天然発生アミノ酸ポリマー、改変残基を含有するもの及び非天然発生アミノ酸ポリマーに当てはまる。「ポリペプチド」は、一般にペプチド、オリゴペプチド又はオリゴマーと称される短鎖及び一般にタンパク質と称される長鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20種の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。同様に、「タンパク質」は、少なくとも2つの共有結合しているアミノ酸を指し、それには、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドが含まれる。タンパク質は、天然発生アミノ酸及びペプチド結合又は合成ペプチド模倣構造から構成され得る。したがって、「アミノ酸」又は「ペプチド残基」は、本明細書で使用される場合、天然発生及び合成アミノ酸の両方を意味する。「アミノ酸」には、イミノ酸残基、例えばプロリン及びヒドロキシプロリンが含まれる。側鎖は、(R)又は(S)配置のいずれかであり得る。
【0045】
用語「シグナルペプチド」又は「シグナルペプチド配列」は、ポリペプチドを細胞の細胞膜(原核生物では原形質膜及び真核生物では小胞体膜)にわたって又はその中に指向する、新たに合成される分泌又は膜ポリペプチドのN末端に通常存在するペプチド配列として本明細書で定義される。これは、通常、続いて除去される。特に、前記シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞の分泌経路中に指向することが可能であり得る。
【0046】
本明細書で使用される用語「前駆体ペプチド」は、アスペルギルス属(Aspergillus)からのそれぞれのFTアーゼに作動可能に結合しているシグナルペプチド(リーダー配列としても公知)を含むペプチドを指す。シグナルペプチドは、ピキア属(Pichia)宿主細胞内部の翻訳後修飾中に開裂除去され、成熟FTアーゼ突然変異体が培地中に放出される。
【0047】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の具体的な実施形態によって記載される。当業者は、本明細書の開示を読んだ後に本発明の他の利点及び機能を容易に理解することができる。本明細書に記載の種々の詳細は、異なる条件及び用途に基づき、ここで開示される本発明の範囲から逸脱せずに改変され得る。
【0048】
禁忌が示されるか又は特に記述のない限り、本明細書全体にわたり、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ以上を意味し、用語「又は」は、及び/又はを意味する。
【0049】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有している」、「包含する(include)」、「包含する(includes)」及び「包含している」の使用は、限定的であることを意図されない。上記の概要及びこの詳細な説明の両方が例示及び説明にすぎず、限定的なものでないことを理解されたい。
【0050】
本明細書で使用される場合、バイオテクノロジー用語は、以下の説明的定義によって説明されるとおり、その慣用的な意味を有する。
【0051】
特に定義のない限り、本明細書で使用される科学及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0052】
上記は、以下の本開示の詳細な説明がより良好に理解され得るように、本開示の特徴及び技術的利点を広く概述している。開示される概念及び具体的な実施形態を、開示される方法を改変するか又は本開示の同じ目的を実施するための基礎として容易に利用できることが当業者によって認識されるべきである。
【0053】
フルクトシルトランスフェラーゼ(FT)酵素は、保持型機序を介して、フルクトースオリゴ糖であるフルクタンの産生を触媒するグルコースヒドロラーゼ32ファミリー(GH32)のメンバーである。この酵素によって行われる基質結合及び触媒作用の構造基礎を提供するアスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)からの酵素FT(AjFT)の三次元構造は、解明されている。Chuankhayan et. al.[1]によって解明された構造のうち、AjFTのapo構造(PDB ID:3LF7)及びケストース結合(PDB ID:3LDR)構造が本研究に関連する。
【0054】
本発明は、限定されるものではないが、分泌タンパク質としてのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からのβ-フルクトフラノシダーゼ、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)からのフルクトシルトランスフェラーゼ、アスペルギルス・フィジエンシス(Aspergillus fijiensis)からのアラビナナーゼ/レバンスクラーゼ/インベルターゼ、アスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculeatus)からのフルクトシルトランスフェラーゼ、アスペルギルス属(Aspergillus)から得られるそれらの突然変異体を含む、生物学的に活性で可溶性の組換えFTアーゼの効率的な産生のための核酸、ベクター及び組換え宿主細胞を開示する。さらに本発明は、組換えβ-フルクトフラノシダーゼ及び/又はフルクトシルトランスフェラーゼ突然変異体の商業規模産生のプロセスを提供する。代表例であるが、限定的でない例として、本発明者らは、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)のft遺伝子によってコードされるフルクトシルトランスフェラーゼ及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のfopA遺伝子によってコードされるβ-フルクトフラノシダーゼに言及する。
【0055】
本発明は、異種宿主中の新規組換えFTアーゼ突然変異体の高い収率を達成するための多次元アプローチを企図する。限定されるものではないが、フルクトシルトランスフェラーゼ又はβ-フルクトフラノシダーゼ、アラビナナーゼ/レバンスクラーゼ/インベルターゼから選択されるFTアーゼについてのコドン最適化遺伝子は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)中の発現のために突然変異によって改変されている。突然変異は、点突然変異若しくは欠失突然変異又はそれらの組み合わせであり得る。
【0056】
一実施形態では、β-フルクトフラノシダーゼ及び/又はフルクトシルトランスフェラーゼについてのコドン最適化遺伝子は、異種宿主細胞中の発現のために改変されている。さらに、改変遺伝子は、1つ以上のシグナルペプチドに融合されている。
【0057】
一実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のβ-フルクトフラノシダーゼをコードするコドン最適化核酸は、配列番号6によって表される。
【0058】
一実施形態では、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)の改変フルクトシルトランスフェラーゼをコードするコドン最適化核酸は、配列番号8によって表される。
【0059】
別の実施形態では、改変核酸は、1つ以上のシグナルペプチドに融合されている。
【0060】
別の実施形態では、シグナルペプチドは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子(FAK)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子全長型(FAKS)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子_T(AT)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のアルファ-アミラーゼ(AA)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼ(GA)、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromycesmaxianus)のイヌリナーゼ(IN)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のインベルターゼ(IV)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のキラータンパク質(KP)、ガルス・ガルス(Gallus gallus)のリゾチーム(LZ)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)の血清アルブミン(SA)から選択される。
【0061】
別の実施形態では、シグナルペプチドは、表2に提供される。
【0062】
【0063】
別の実施形態では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の回収されたβ-フルクトフラノシダーゼ及びアスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)からのフルクトシルトランスフェラーゼを特性評価して生物活性断片を同定した。保存されたFTアーゼの以下の生物活性断片が触媒活性の要因であることが見出され、以下の表3に提供される。
【0064】
【0065】
別の実施形態では、全ての分泌シグナルペプチド配列において、4つのアミノ酸(LEKR)のストレッチを、表4に提供されるプレタンパク質の効率的なKex2プロセシングのために付加した。
【0066】
【0067】
【0068】
別の実施形態では、改変核酸は、発現ベクター中でクローニングされる。
【0069】
別の実施形態では、発現ベクターは、アスペルギルス属(Aspergillus)からの組換えFTアーゼの分泌又は細胞内発現のために構成される。
【0070】
さらに別の実施形態では、発現ベクターは、pPICZαA、pPICZαB、pPICZαC、pGAPZαA、pGAPZαB、pGAPZαC、pPIC3、pPIC3.5、pPIC3.5K、PAO815、pPIC9、pPIC9K、pHIL-D2及びpHIL-S1を含む群から選択される。
【0071】
別の実施形態では、シグナルペプチドに融合されている改変FTアーゼ遺伝子の発現は、好ましくは、構成的又は誘導性プロモーターによって駆動される。
【0072】
別の実施形態では、発現させる核酸は、プロモーターに作動可能に結合されている。
【0073】
別の実施形態では、構成的又は誘導性プロモーターは、以下の表5に列記される群から選択される。
【0074】
【0075】
別の実施形態では、プロモーターは、メタノールによって誘導され、グルコースによって抑制されるAOX1プロモーターである。
【0076】
一実施形態では、改変された目的遺伝子(シグナルペプチドをコードする核酸に融合されているFTアーゼ遺伝子)を含有する発現ベクターは、適切な宿主中で形質転換される。
【0077】
一実施形態では、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)の改変FTアーゼを発現することができる組換え宿主細胞を産生する方法であって、
a.請求項6に定義されるアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)からの改変核酸分子を合成するステップと、
b.改変核酸分子を保有するベクターを構築するステップと、
c.宿主細胞をステップ(b)のベクターで形質転換して、組換え宿主細胞を得るステップと
を含む方法である。
【0078】
一実施形態では、β-フルクトフラノシダーゼ及び/又はフルクトシルトランスフェラーゼについてのコドン最適化遺伝子は、異種宿主細胞中の発現のために改変されている。
【0079】
一実施形態では、異種組換え宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)などを含む群から選択される原核生物宿主である。
【0080】
別の実施形態では、異種組換え宿主細胞は、真核生物宿主である。真核生物宿主細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などを含む群から選択され得る。
【0081】
別の実施形態では、目的遺伝子を含有する発現ベクターは、酵母細胞中で形質転換される。
【0082】
別の実施形態では、酵母細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0083】
さらに別の実施形態では、ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)宿主細胞は、mut+、mut S又はmut-株である。Mut+は、メタノール資化性が陽性である表現型を表す。
【0084】
さらに別の実施形態では、ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)宿主細胞株は、KM71H、KM71、SMD1168H、SMD1168、GS115、X33を含む群から選択される。
【0085】
別の実施形態では、本発明は、FTアーゼ前駆体ペプチドであって、アスペルギルス属(Aspergillus)のFTアーゼが1つ以上のシグナルペプチドに融合されている、FTアーゼ前駆体ペプチドを提供する。
【0086】
重要な実施形態では、アスペルギルス属(Aspergillus)のFTアーゼの突然変異体及び突然変異体を生成するプロセスが提供される。突然変異は、単一、二重又は三重点突然変異及び欠失突然変異体並びにまたそれらの突然変異の組み合わせであり得る。
【0087】
別の実施形態では、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65に記載のアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からの改変β-フルクトフラノシダーゼの核酸配列が提供される。
【0088】
別の実施形態では、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、67~218に記載のアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からの改変β-フルクトフラノシダーゼのペプチド配列が提供される。
【0089】
別の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号219に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子全長型(FAK)、配列番号229に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子全長型(FAKS)、配列番号220に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子_T(AT)、配列番号221の記載のアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のアルファ-アミラーゼ(AA)、配列番号222に記載のアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼ(GA)、配列番号223に記載のクルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces maxianus)のイヌリナーゼ(IN)、配列番号224に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)のインベルターゼ(IV)、配列番号225に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)のキラータンパク質(KP)、配列番号226に記載のガルス・ガルス(Gallus gallus)のリゾチーム(LZ)、配列番号227に記載のホモ・サピエンス(Homo sapiens)の血清アルブミン(SA)及びそれらのバリアントを含む群から選択される。
【0090】
さらに別の実施形態では、突然変異体は、慣用の遺伝子工学技術により、及びバイオインフォマティクスベースツールを利用することにより産生されたものである。点突然変異が予測され、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のコドン最適化β-フルクトフラノシダーゼ(fopA)遺伝子及び/又はアスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)ft遺伝子中に導入された。慣用の遺伝子工学、例えばPCRなど、ソフトウェアGROMACSを使用する分子動力学シミュレーションを利用するバイオインフォマティクスツール及びコドンバイアスの導入などのアプローチが本発明で使用された。
【0091】
一実施形態では、以下に提示されるフルクトシルトランスフェラーゼ突然変異体が提供される。
点突然変異体:
V44L、T155R、T293W、R286V、T459R、R199K、F182P
欠失突然変異体:
32~654aa、32~194aa、1~194aa
【0092】
一実施形態では、アスペルギルス属(Aspergillus)からの組換えFTアーゼの産生のプロセスが提供される。
【0093】
本発明の態様は、改変/突然変異組換えFTアーゼ遺伝子を含有する組換えピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞の発酵に関する。発酵の完了後、発酵ブロスは、遠心分離に供され、精密濾過を使用して濾過され、組換え酵素が分離される。回収された組換え酵素は、タンジェンシャルフロー限外濾過又は蒸発を使用して濃縮され、最終的に濃縮された酵素が配合される。
【0094】
一実施形態では、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)の改変FTアーゼを発現させるプロセスであって、
a.アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)のFTアーゼを発現することができる組換え宿主細胞を好適な発酵培地中で培養して、発酵ブロスを得ることと、
b.発酵ブロスから上清を回収することであって、上清は、組換えFTアーゼを含有する、回収することと、
c.組換えFTアーゼを精製することと
を含むプロセスである。
【0095】
別の実施形態では、発酵培地は、以下の表6に記載の基礎塩培地である。
【0096】
【0097】
さらに別の実施形態では、発酵ブロスからの上清は、遠心分離を使用して回収される。
【0098】
一実施形態では、発酵槽培養を開始するための植菌物又はスターター培養物の割合は、2.0%~15.0%(v/v)の範囲である。
【0099】
別の実施形態では、発酵培地のpHは、4.0~7.5の範囲に維持され、なぜなら、分泌される酵素は、このpH範囲で適切なフォールディングを受け、生物学的に活性であるためである。
【0100】
さらに別の実施形態では、発酵プロセスの温度は、15℃~40℃の範囲である。
【0101】
別の実施形態では、発酵プロセスのための時間は、50~150時間の範囲である。
【0102】
さらなる実施形態では、発酵ブロスは、連続オンライン遠心分離を使用して2000×g~15000×gの範囲の速度で遠心分離される。
【0103】
遠心分離後に得られた上清は、精密濾過に供され、精製されて生物学的に活性な組換え/突然変異体FTアーゼが回収される。
【0104】
一実施形態では、遠心分離後に得られた上清は、タンジェンシャルフロー濾過ベースの限外濾過系を使用して濃縮される。
【0105】
不純物を除去し、及び回収された培養物上清を濃縮するために使用され得るタンジェンシャルフロー濾過(TFF)系で使用される膜のカットオフサイズは、5~100kDaの範囲であり得る。
【0106】
別の実施形態では、遠心分離は、分泌される酵素の高い収率及び純度に起因してプロセスに要求されない。
【0107】
本発明で得られるFTアーゼ濃度は、2~5グラム/L以上の範囲であり、純度が高く、約85%以上であることが見出される。
【0108】
一実施形態では、活性部位を含むFTアーゼタンパク質鎖にわたるアミノ酸の突然変異を同定するプロセスであって、ステップは、
a.バイオインフォマティクスツールを使用して、FTアーゼ酵素のapo構造をシミュレーションすることと、
b.根平均二乗偏差(RMSD)の変動に基づいてトラジェクトリーをクラスタリングして、ユニークな立体構造を同定することと、
c.FTアーゼ酵素が突然変異についてのシミュレーション残基の過程中に採用したユニークな立体構造を同定することと、
d.ステップ(c)の同定されたユニークな立体構造を、各アミノ酸が別のアミノ酸と行ったペアワイズ相互作用について分析することと、
e.残基のペア間のファンデルワールス及び水素結合についての適切な重みを提供することにより、指標相互作用強度としてアミノ酸のペアワイズ相互作用を定量することと、
f.シミュレーションの過程を介して相互作用強度のより大きい標準偏差を有することが見出された各アミノ酸の19個の突然変異を生成することと、
g.-ΔΔG値に従って同様の又はより良好な安定性を有する安定化突然変異を同定及び選択することと
を含む、プロセスである。
【実施例】
【0109】
実施例
以下の実施例は、特に、本発明が実施される様式を記載する。しかし、本明細書に開示される実施形態は、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0110】
実施例1:ピキア・パストリス(Pichia pastoris)中のアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の組換えβ-フルクトフラノシダーゼの発現のための改変核酸
β-フルクトフラノシダーゼの天然cDNA(配列番号5)を、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)中の発現の最大化のためにコドン最適化した。(配列番号6)によって表されるβ-フルクトフラノシダーゼのコドン最適化ヌクレオチド配列を、表7に定義される1つ以上の点突然変異若しくは表8に定義される欠失突然変異又はそれらのその組み合わせから選択される突然変異を誘導することによってさらに改変し、それらは、コドン最適化ヌクレオチド配列中で誘導された。改変β-フルクトフラノシダーゼのアミノ酸及びヌクレオチド配列は、配列番号9~218によって表される。
【0111】
【0112】
【0113】
β-フルクトフラノシダーゼをコードする発現カセットを、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)中の発現の最大化のために改変した。改変オープンリーディングフレームは、シグナルペプチドに融合されているβ-フルクトフラノシダーゼをコードする改変ヌクレオチド配列を含有する。核酸は、コードされるシグナルペプチドが前駆体ペプチドの効率的なKex2プロセシングのための4つのアミノ酸(LEKR)の追加のストレッチを含有するように設計した。
【0114】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)中の発現に好ましいコドンを希少コドンに代えて使用した。β-フルクトフラノシダーゼをコードする改変オープンリーディングフレームのヌクレオチド配列を改変シグナルペプチドと融合させた。シグナルペプチドと融合しているアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のβ-フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子を翻訳することにより、組換え前駆体タンパク質を得た。シグナルペプチドをピキア属(Pichia)宿主細胞内部の翻訳後修飾中に開裂除去し、成熟組換えβ-フルクトフラノシダーゼを培地中に放出させた。
【0115】
実施例2:突然変異体の開発
実施例2(a):バイオインフォマティクスアプローチ:
本発明者らは、タンパク質AnFT、すなわちアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からの酵素FTのより大きい安定化をもたらし得る、活性部位を含むタンパク質鎖にわたるアミノ酸の突然変異を同定することを求めた。このようなアミノ酸を同定するため、AnFTのapo構造を、ソフトウェアGROMACSを使用する25nsの分子動力学シミュレーションに供した。
【0116】
シミュレーションに続き、CA原子の根平均二乗偏差(RMSD)の変動に基づいてトラジェクトリーをクラスタリングして、タンパク質がシミュレーションの過程中に採用したユニークな立体構造を同定した。クラスターの代表的構造(クラスター中心)を選択した。
【0117】
これらの構造を、各アミノ酸が別のアミノ酸と行った相互作用について分析した。アミノ酸のペアワイズ相互作用を、残基ペア間のファンデルワールス及び水素結合についての適切な重みを提供することによって指標相互作用強度として定量した。
アミノ酸i及びj間の相互作用の強度、Sij=Wt/rij
式中、Wtは、所与の相互作用のタイプについての重みであり、rijは、残基i及びjの原子間の距離である。2つの残基間で計算される相互作用の強度は、2つの残基の原子間の相互作用の強度の代数和である。
【0118】
これは、N個の残基のタンパク質についてのN×N行列を与え、各要素は、相互作用強度を表し、0は、相互作用がないことを表す。行列中の各行の総和は、所与のアミノ酸の全体的な相互作用強度を簡易に与える。
例えば、残基100の総相互作用強度=総和(残基100と他のあらゆる残基との相互作用強度)
【0119】
5Åの半径をカットオフとして選択して相互作用を分析及び定量した。相互作用強度が、三次構造を介した安定化を正確に反映するように、連続アミノ酸間では相互作用を想定しなかった。より大きい相互作用強度は、アミノ酸のより大きい安定化及びしたがってタンパク質の安定化を意味する。
【0120】
分子動力学シミュレーション、その後のクラスタリングから生じたAnFT構造のアンサンブルは、5~6つの異なる立体構造(クラスター中心)からなるものであった。立体構造の各々について、相互作用強度行列を生成し、各アミノ酸の個々の相互作用強度を上記のとおり計算した。
【0121】
アンサンブルにわたる各アミノ酸の相互作用強度の変動を、標準偏差の統計的パラメータを使用して試験した。種々の立体構造間の相互作用のより大きい標準偏差は、フレキシブルな残基を示した一方、より低い標準偏差は、十分にネットワーク化された残基を示した。フレキシブルな残基を標的化して突然変異体を生成した。突然変異のための最も安定的な部位の同定のためのスキームの概要を
図11に説明する。
【0122】
さらに、シミュレーションの過程にわたって相互作用強度のより大きい標準偏差を有することが見出されたこのような各アミノ酸を、タンパク質中で生じる全ての他の19個の天然アミノ酸に突然変異させた。
【0123】
さらに、安定化のエネルギーを突然変異アミノ酸について野生型に対して計算し、それらを、野生型及び安定化突然変異体についてのΔG間の差を示すパラメータΔΔGによって表した。この分析は、MolSoft製の市販ソフトウェアICMを使用して実施した。19個の他のアミノ酸への各アミノ酸の突然変異についてのΔΔG(kcal/モル)値を計算し、さらなる安定化を示さないか、又はより良好な安定化を示した突然変異を選択した。こうして選択された突然変異のリストを以下の表9に各突然変異についてのΔΔG(kcal/モル)値とともに挙げる。
【0124】
【0125】
上記と同様の実践をケストース結合AnFT構造に対して実施して、ケストース結合部位中のアミノ酸の相互作用の強度及びタンパク質の安定性に対するそれらの突然変異の効果を分析した。その分析の結果を以下の表10に示す。
【0126】
【0127】
上記のとおり、分子動力学シミュレーション、トラジェクトリー分析、個々のアミノ酸の相互作用強度及びタンパク質に対する突然変異体の安定化影響についての突然変異体の特性評価の組み合わせを利用して、点突然変異のための少なくとも172個の部位を同定した。さらに、FTアーゼのapo構造に関する先行技術における構造研究に基づき、欠失に好適な部位も同定した。
【0128】
実施例2(b):遺伝子工学アプローチ:
バイオインフォマティクスアプローチに基づき、FTアーゼタンパク質についての機能ドメインの代替形態を着想及びクローニングしてプロセスについてのそれらの有効性をさらに試験した。クローニング作業のため、プライマーを、コドン最適化全長FTアーゼ遺伝子を有するテンプレートとして使用される組換えプラスミドからのDNAの特定のストレッチをPCR増幅させるように設計した。したがって、増幅されたPCR産物は、要求される欠失を含有し、遺伝子からの所望のストレッチを保持した。これらのPCR産物を、それぞれの発現ベクター中において適合する方針でクローニングし、例えばベクターpPICZαAのMCS中の対応する部位におけるXhoI及びSacII断片としてクローニングした。
【0129】
突然変異ヌクレオチドを担持するプライマーを介してFTアーゼ遺伝子の配列中に点突然変異を導入した。これらのプライマーを介して生成されたPCR産物は、対応する部位における突然変異配列を含有した。次いで、ここで点突然変異を担持しているこれらのPCR産物を、所望の発現ベクター中において適合する方針に従ってクローニングした。
【0130】
実施例3:組換えプラスミドでの形質転換による組換え宿主細胞の開発
このプロセスで使用されるベクターは、pPICZαAであった。ベクターは、改変オープンリーディングフレーム及び誘導性プロモーターAOX1を含有した。組換えタンパク質をコードする改変配列をpPICZαAベクター中にクローニングした。
【0131】
それぞれのFTアーゼ遺伝子をコードする改変核酸を、定型の分子生物学手順を使用して、pPICZαAベクターのMCS中に存在するXhoI/SacII制限部位間でクローニングして、シグナル配列であるS.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルファ因子(FAK)をインフレームで入れて発現カセットを作出した。pPICZαAについてのベクター地図を
図3に表す。
【0132】
25μg/mlのZeocinを含有する低塩LB培地上で推定組換えプラスミドを選択し、XhoI/SacII制限消化分析によってスクリーニングした。
【0133】
組換えプラスミドpPICZαA-FTアーゼを、1980bp断片の放出をもたらしたXhoI/SacII制限消化分析によって確認した。制限消化分析の結果を
図4に示す。
【0134】
図9は、(a):N32R、H43Y、H43V、H43L、V125F、V127A、P131Y;(b):F182R、F182A、F182D、F182V、F182T、T293F、T293H;(c):T293R、T293L、T293S、Q327L;(d):Q327N、V343Fを含有する組換えプラスミドpPICZαAに対して実施された制限消化分析の結果を示す。
【0135】
その後、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞を線形化組換えpPICZαA-FTアーゼDNAでエレクトロポレーションした。100μg/mlのZeocinを含有する酵母エキスペプトンデキストロースソルビトール寒天(YPDSA)上でピキア属(Pichia)インテグラントを選択した。
【0136】
インテグレーションをコロニーPCR(cPCR)でスクリーニングした。cPCRのため、ピキア属(Pichia)インテグラントの各々からのテンプレートをアルカリ溶解法によって生成した。
【0137】
ピキア属(Pichia)インテグラントをBMD1培地中で48時間成長させ、さらに最初にBMM2培地で、次いで連続的にBMM10培地で誘導し、それは、培養培地中0.5%のメタノールの最終濃度を提供した。96時間の誘導期間の終了時、異なるクローンからの培養物上清を回収した。回収された上清の各々からの総タンパク質を20%のTCAで沈殿させ、SDS-PAGE上で分析した。
【0138】
FTアーゼタンパク質の誘導時、
図5に示されるとおり、およそ110kDaのサイズでバンドが見られた。
【0139】
算出分子量は、約70.85kDaであった。分子量の増加は、グリコシル化に起因し得た。
【0140】
実施例4:アスペルギルス属(Aspergillus)の突然変異体FTアーゼを発現する組換えピキア・パストリス(Pichia pastoris)の発酵
実施例1に記載の改変FTアーゼ遺伝子を含有する組換えピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞の発酵を50Lの発酵槽中で実施した。発酵は、本明細書に記載の基礎塩培地中で実施した。
【0141】
プレシード及びシード植菌物の調製:
プレシードをグリセロールストックから25mLの無菌YEPG培地中で植菌し、温度制御オービタルシェーカー中で30℃において一晩成長させることによって生成した。シードを生成するため、植菌物をバッフル付き振盪フラスコにおいて、基礎塩培地中、温度制御オービタルシェーカー内で30℃において、15~25のOD600に達するまで成長させた。
【0142】
発酵プロセス
シード培養物を用いる発酵槽の植菌から最終回収までの発酵のプロセス全体は、約130時間を要した。基礎塩培地を調製し、発酵槽中で現場滅菌した。
【0143】
発酵プロセスのために最適化された基礎塩培地の組成を表6に提供する。
【0144】
ピキア属(Pichia)微量ミネラル(PTM)塩溶液を、表11に挙げられる構成成分を用いて調製した。PTM塩を溶解させ、1Lの容量にメスアップし、フィルター滅菌した。PTM塩溶液を基礎塩培地の滅菌後に初期培地容量1リットル当たり4mlの割合で含めた。
【0145】
【0146】
成長期:
成長期は、50Lの発酵槽中の基礎塩培地に5%のシード培養物を植菌することによって開始し、約24時間継続させた。溶解酸素(DO)レベルを継続的にモニタリングし、40%未満に降下しないようにした。
【0147】
18時間後、炭素源(グリセロール)の枯渇を示すDOスパイクが観察された。50%のグリセロール(供給物1リットル当たり12mlのPTM塩を有する)を、OD600が200に達するまで約6時間供給することにより、グリセロール供給バッチを開始した。
【0148】
誘導期:
十分なバイオマスが生成されたら、グリセロール供給を中止し、メタノール供給を開始することによって誘導期を開始した。メタノール(供給物1リットル当たり12mlのPTM塩が補給された)を初期発酵容量1リットル当たり0.5g~3gの割合で供給した。DOを40%に維持し、メタノール供給をそれに従って調整した。
【0149】
培養物上清を酵素活性アッセイによって分析することにより、FTアーゼ遺伝子の誘導を定期的にモニタリングした。OD600が600に達し、湿潤バイオマスが培養ブロス1リットル当たり約560グラムに達するまで、誘導期を約100時間継続させた。
【0150】
発酵を約130時間後に停止し、発酵槽ブロス中の酵素活性を発酵の終了時にDNS法(Miller, 1959)によって決定した。1単位は、100mMのクエン酸緩衝液、pH5.5、55℃中の10%のスクロース溶液から1マイクロモルの還元糖(グルコース均等物)を放出するために要求される酵素の量と定義される。培養ブロス中の組換えFTアーゼの総量をブラッドフォードアッセイによって推定した。
【0151】
発酵条件:
検討される発酵パラメータは、表12に挙げるとおりであった。これらの必須パラメータを発酵プロセス中にモニタリングした。
【0152】
【0153】
実施例5:細胞回収及び精製
酵素の回収を8000RPMでの連続遠心分離によって実施した。遠心分離後に得られた澄明な上清を、0.1ミクロンカットオフスパイラル型TFF膜を使用する精密濾過に供した。濾液を、10kDaカットオフスパイラル型TFF膜を使用する限外濾過及び透析濾過にさらに供し、十分に濃縮し、所望の活性に到達させた。35~50%のグリセロール及び食品グレード保存剤を最終調製物中に含めることによって酵素を配合した。酵素の最終純度は、SDS-PAGE分析によって決定されたとおり、85%であることが観察された。
【0154】
組換えFTアーゼ酵素を発現するピキア・パストリス(Pichia pastoris)株の発酵中の異なる時間間隔で回収されたサンプルのSDS-PAGE分析も実施した。精製後の組換えFtアーゼ酵素のSDS-PAGE分析も実施した。
【0155】
図5は、インテグレーション(a):pPICZαA-V44L;(b):pPICZαA-T155R;(c):pPICZαA-T293W;(d):pPICZαA-R286V;(c):pPICZαA-R199K;(f):pPICZαA-T459R;(g):pPICZαA-F182Pを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株中のタンパク質発現のスクリーニングについてのSDS-PAGE分析を示す。
【0156】
図6は、種々の突然変異体Ftアーゼタンパク質の発酵追跡中の異なる時間間隔で回収されたサンプルのSDS-PAGE分析を示す。(a):pPICZαA-V44L;(b):pPICZαA-T155R;(c):pPICZαA-T293W;(d):pPICZαA-R286V;(c):pPICZαA-R199K;(f):pPICZαA-T459R;(g):pPICZαA-F182P。
【0157】
図10は、インテグレーション(a):pPICZαA-H43Y;(b):pPICZαA-H43L;(c):pPICZαA-Q327N;(d):pPICZαA-V343Fを有するピキア・パストリス(Pichia pastoris)組換え株中のタンパク質発現のスクリーニングのためのSDS-PAGE分析を示す。
【0158】
Ftアーゼ濃度は、約2.4グラム/Lであることが見出された。バッチのほとんどでは、濃度は、2~5グラム/Lであった。組換えFtアーゼの純度は、約85%であることが観察された。
【0159】
実施例6:Ftアーゼ活性の推定
Ftアーゼの活性を推定するための試験を実施した。推定試験のため、Ftアーゼ酵素の作用に起因して生成された還元糖の量を、DNS(3,5ジニトロサリチル酸)法(G. L. Miller,“Use of dinitrosalicylic acid reagent for determination of reducing sugar”, Anal. Chem., 1959, 31, 426-428)を使用して算出した。
【0160】
酵素活性アッセイの実施のため、10%のスクロース(100mMのクエン酸緩衝液中で溶解)を基質として使用した。Ftアーゼを発酵ブロスから回収し、限外濾過を介して処理した。次いで、限外濾過されたサンプルを100mMのクエン酸緩衝液中で段階希釈によって25,000倍希釈し、使用した。反応容量は、2.5mLであった。pHを5.5に維持し、反応を15分間継続させた。
【0161】
インキュベーション後、3mLのDNS(3,5ジニトロサリチル酸)を各反応混合物に添加し、10分間煮沸し、冷却し、540nmにおける吸光度を分光光度的に読み取った。異なる濃度におけるグルコースのODを、表13に示されるとおり測定した。その後、反応後の吸光度測定値に基づき、酵素活性を表14に示されるとおり算出した。
【0162】
【0163】
【0164】
異なるクローンのFTアーゼ活性をメタノール誘導の96時間後に推定した。各クローンの上清をTCA沈殿に供した。次いで、TCAプレップされたサンプルをFTアーゼ活性について(DNS法により)上記の参照文献に従って試験した。各構築物の複数のクローンをFTアーゼ活性について試験した。代表的なクローンからのデータを表15に提示した。290単位/mlであることが見出された野生型分子のFTアーゼ活性を実験対照とみなした。
【0165】
突然変異体バリアント、すなわち、限定されるものではないが、N32R、H43V、V125F、V127A、P131Y、T155R、F182P、F182R、F182A、F182D、F182V、F182T、R286V、T293F、T293H、T293L、T293S、T293W、H43Y、H43L、Q327N、Q327L及びV343FのFTアーゼ活性が驚くべきことに良好であることが見出された。
【0166】
【0167】
【0168】
実施例7:スクロース及び組換えFTアーゼ酵素からのフルクトオリゴ糖(FOS)の生成
フルクトオリゴ糖の形成における酵素の能力を理解するための試験を実施した。90%(w/v)のスクロースの100mL溶液を150mMのクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5中で調製した。これに、51692単位/mlの活性(合計5000単位の酵素と同等)を有する96.7μLのFTアーゼ酵素を添加した。
【0169】
反応物を250mLのコニカルフラスコ中で設定し、65℃及び220rpmでインキュベートした。規則的な時間間隔でサンプルを採取し、薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート上で分析した。
【0170】
グルコース、スクロース、フルクトース及びFOS(ケストース、ニストース及びフルクトフラノシルニストースを含有)を薄層クロマトグラフィー分析のための標準として使用した。使用された移動相は、n-ブタノール:氷酢酸:水(4:2:2v/v)であり、使用された展開/染色溶液は、尿素リン酸であった。
【0171】
図7は、スクロース及び組換えFTアーゼ酵素からのフルクトオリゴ糖(FOS)の生成について行われたTLC分析を示す。
【0172】
サンプルを、フルクトオリゴ糖の産生の定量的推定のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にさらに供した。4.6(ID)×150mm(長さ)及び5μm(粒子サイズ)を有するアミンカラム(Zorbax NH2カラム、Agilent Technologies)を使用してHPLC分析を行った。異なる濃度のグルコース、フルクトース、ケストース、ニストース、フルクトフラノシルニストース及びスクロースの標準溶液を標準曲線作成のためにランさせた。
【0173】
図8は、FOSサンプルのHPLC分析クロマトグラムを示す。
【0174】
実施例8:アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)の組換えFTアーゼの特性評価
限定されるものではないが、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)のフルクトシルトランスフェラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のβ-フルクトフラノシダーゼから選択されるアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)の回収されたFTアーゼを特性評価して、生物活性断片を同定した。上記の表3に説明されるとおり、以下の生物活性断片が保存され、触媒活性の要因であることが見出された。
【0175】
上記と同様のアプローチをアスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)のFTアーゼの突然変異体の作出に用いた。A.ニガー(A. niger)及びA.ジャポニクス(A. japonicus)中のFTアーゼのタンパク質配列は、
図12に説明されるとおり、654個の遺伝子座のうちの4つの遺伝子座、すなわち44、199、459及び654でのみ異なる。活性に関して、両方の酵素(遺伝子ft及びfopAからのもの)は、互いに同等であることが見出された。
【0176】
利点:
1.酵素は、濾過後に高い純度を示し、それは、コストがかさむクロマトグラフィー手順の必要性を除外する。
2.酵素は、フルクトオリゴ糖の高い収率を得るために使用され得る。
【配列表】
【国際調査報告】