IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オレクソ・アクチエボラゲットの特許一覧

特表2024-543125バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物
<>
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図1
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図2
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図3
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図4
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図5
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図6
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図7
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図8
  • 特表-バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】バイオ医薬品化合物を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/26
A61K47/36
A61K9/14
A61K38/02
A61K38/43
A61K39/395 M
A61K39/00 G
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530529
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 GB2022052985
(87)【国際公開番号】W WO2023094818
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2117005.5
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2208144.2
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2213306.0
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505141945
【氏名又は名称】オレクソ・アクチエボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴマルケル,ヨーナス
(72)【発明者】
【氏名】レン,ローベルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB01
4C076BB25
4C076DD67
4C076DD68
4C076EE30
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA03
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA59
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA11
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE01
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA11
(57)【要約】
本発明によれば、以下の混合物を含む非晶質の単粒子粉末の形態にある組成物が提供される:(a)薬理学的に有効な投薬量の少なくとも1つのバイオ医薬品化合物、並びに(b)薬学的に許容される担体材料であって、その担体材料が二糖類及びポリマー材料の組み合わせを含む、薬学的に許容される担体材料。この点における好ましい薬学的に許容される担体としては、ラクトース又はトレハロース及びデキストリン(例えば、マルトデキストリン)が挙げられる。組成物は、1つ以上のアルキル糖類を更に含み得る。好ましいアルキル糖類としては、ショ糖モノラウレートなどのショ糖エステルが挙げられる。粉末組成物は、様々な構成要素を組み合わせて一緒に噴霧乾燥することによって生成され得る。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される組成物であって、その組成物が、
(a)薬理学的に有効な投薬量の少なくとも1つのバイオ医薬品化合物と、
(b)薬学的に許容される担体材料であって、その担体材料が二糖類及びポリマー材料の組み合わせを含む、薬学的に許容される担体材料と、の混合物を含む固形の非晶質の単粒子粉末組成物の形態にある、薬学的に許容される組成物。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、マルトデキストリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記二糖類が、マルチトール、トレハロース、スクラロース、ショ糖、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記二糖類が、ラクトース又はトレハロースを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記担体材料が、トレハロース及びマルトデキストリン19DEの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の総重量に基づく二糖類:ポリマーの重量比が、約10:1~約1:10の範囲にある、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
二糖類:ポリマーの前記比が、約2:1~約1:8の範囲にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の最も低い測定可能なガラス転移温度が、最大約35%の相対湿度で測定された場合、少なくとも約10℃である、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ショ糖エステルを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ショ糖エステルが、ショ糖モノラウレートを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのバイオ医薬品化合物の前記薬理学的に有効な投薬量が、約100mg以下である、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が、タンパク質、オリゴペプチド、ポリペプチド、酵素、抗体、ワクチン、及びヌクレオチドの群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
経鼻送達に適しており、かつ/又は適合されている、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記粉末の粒子サイズ分布が、約3μmを超えるD10を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記粉末が、約10μm~約100μmの範囲内の体積基準平均直径を含む粒子サイズ分布を有する、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記バイオ医薬品化合物が、ワクチンである、請求項13~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
経口送達に適しており、かつ/又は適合されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記バイオ医薬品化合物が、酵素である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
注射又は注入による送達のために薬学的に許容される溶媒中に溶解されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記バイオ医薬品化合物が、抗体である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
先行請求項のいずれか一項に記載の組成物の製造のためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)適切な揮発性溶媒中で、1つ以上のバイオ医薬品化合物及び薬学的に許容される担体材料を一緒に混合するステップ、
(ii)ステップi)からの混合物を噴霧乾燥するステップを含む、プロセス。
【請求項22】
請求項21に記載のプロセスによって得られる、組成物。
【請求項23】
請求項1~16又は22のいずれか一項に記載の組成物を鼻に送達するのに適したかつ/又は適合された鼻用アプリケーターデバイスであって、リザーバーを含むか、又はそれに付属し、かつ/若しくは取り付けられており、そのリザーバー内に前記組成物が収容されている、鼻用アプリケーターデバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のアプリケーターデバイスの製造のためのプロセスであって、請求項21に記載のプロセスと、それに続く、そのように形成された前記組成物を、前記アプリケーターデバイス内にあるか、又はそれに付属するか、若しくは取り付けられたリザーバーに装填することと、を含む、プロセス。
【請求項25】
組成物中に含まれる前記少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が有用である状態の治療における使用のための、請求項1~20又は22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
組成物中に含まれる前記少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が有用である状態の治療のための薬剤の製造のための、請求項1~20又は22のいずれか一項に記載の組成物の、使用。
【請求項27】
請求項1~20又は22のいずれか一項に記載の組成物内に含まれる前記少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が有用である状態の治療の方法であって、その方法が、前記状態に罹患しているか、又はそれになりやすい患者への本発明の組成物の投与を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な医学的状態において有用である生物学的薬剤を含む新しい医薬組成物に関する。本発明はまた、かかる組成物を製造し、それらを剤形に製剤化する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術及び背景
本明細書における明らかに以前に公開された文書の列挙又は考察は、文書が最新技術又は共通の一般知識の一部であるという承認として必ずしも受け取られるべきではない。
【0003】
様々な周知の薬物送達経路の中で、胃腸管への経口送達が最も一般的である。概して、患者及び開業医に最も好まれていると考えられている。
【0004】
しかしながら、経口薬物投与は、有効成分が必然的に肝臓の初回通過代謝、胃腸管内(及び外)の酵素分解に供され、中枢神経系(CNS)の疾患を治療するために血液脳関門(BBB)へのアクセスが制限されているという事実を含む欠点を有することが既知である。これらの要因は、ある特定の薬物の有効性に影響を与えるだけでなく、場合によっては、投与経路として経口薬物送達を完全に不適格にする場合がある。
【0005】
胃腸管への経口投与には、消化過程の一部として腸を介して有効成分を吸収する必要があり、これは時間がかかるという更なる欠点がある。更に、(低い生物学的利用能のために)多くの場合、高用量の有効成分が必要とされ、多くの副作用及び/又は安全性の問題の増加のリスクを伴う。
【0006】
最後に、長期使用を制限する経口製剤の他の制限は、微生物の不安定性である。これは、制御するのに防腐剤の使用が必要となる場合があり、これは、刺激をもたらし、感作/アレルギー効果を引き起こす可能性がある。
【0007】
急性障害などのある特定の状態の治療において、多くの場合、経口薬物送達によってもたらされ得るよりもより迅速な薬理学的効果の発現が非常に望ましい。
【0008】
かかる場合、薬物はすぐに体循環に吸収されるという投与原則は、迅速な作用の発現をもたらす可能性が高くなる。これは非経口投与(皮下注射又は静脈内注射など)を介して行うことができるが、かかる送達手段は不便であり、かつ、患者にとってはそれを行うのに非常に困難及び/又は不可能な場合があり、コンプライアンスを確保し、かつ、望ましくないか、又は有害である影響を回避するために医師による時間のかかる介入が必要である。
【0009】
有効成分の経粘膜投与は、実行可能な非経口投与の代替案である。それにより、薬物分子を粘膜(例えば、直腸、舌下、頬、肺、及び鼻腔内)を介して体循環に直接送達する可能性が生じ、患者のコンプライアンスの増加、薬物の生物学的利用能の改善、したがって、より低い用量、より迅速な作用の発現、及び副作用の低減などの利点をもたらす可能性がある。
【0010】
しかしながら、薬物の経粘膜投与は、それ自体の非常に明確な問題がある。比較的大量の体液を含有する大きな器官である胃腸管とは異なり、口腔及び鼻腔などの空間は比較的小さく、はるかに少ない量の唾液及び/又は粘液などの体液を含有する。これは必然的に、単回用量で投与され得る有効成分の量にかなりの制限をもたらす。
【0011】
更に、消化管は動的なシステムであるが、大部分では、いくぶんか「閉じた」システムである。逆に、口腔及び鼻腔の両方において起こる急速なクリアランス機構は、多くの場合、すでにより限られた量の薬物のための粘膜表面を横断する吸収に利用できる時間も限られていることを意味する。
【0012】
この問題を解決するために、例えば、口腔粘膜薬物送達のための頬パッチ(例えば、Shojaei,J.Pharm.Pharmaceutical Sci.,15,19(1998)及びGandhi,Advanced Drug Delivery Reviews,43,67(1994)を参照されたい)、及び鼻腔内薬物送達のためのインサイチュゲル化組成物(例えば、Bertan et al,Eur.J.Pharm.Sci.,27,62(2006)を参照されたい)などの生体接着性製剤化原理を含む、多数の製剤化原理が提唱されてきた。
【0013】
固体にある経粘膜薬物送達システムは、製剤中のより高い薬物装填を可能にするというかなりの利点がある可能性がある。しかしながら、直腸、頬、舌下、及び肺粘膜に投与する場合、固形の薬物送達組成物がはるかに一般的であるが、鼻腔内薬物送達システムの大部分は、依然として、液体噴霧、典型的には水溶液の形態で提供される場合のままであり、薬物の溶解度は、吸収できる薬物の量を制限するもう1つの要因を担う。
【0014】
ほとんど至る所にあるのが鼻腔内送達用の液体噴霧であるのは、鼻用粉末の形で固形医薬製剤を製剤化することが容易ではないためである。有効成分の肺への吸入に頻繁に用いられる粉末とは異なり、市販の鼻腔内粉末製剤はほとんどない。
【0015】
乾燥粉末として製剤化される場合、経肺薬物送達組成物は、典型的には、より大きな担体粒子上のAPIの微粉化粒子を含む「凝集」混合物の形態をとる。これらの凝集体は、吸入又はデバイスの発動時に解離/分解し、有効成分の微粒子のみを肺に堆積させることを意図している。
【0016】
しかしながら、かかる薬物送達システムは、鼻腔内薬物送達の場合には有効に働かないことが理解されている。これは、かかる微粒子の存在が、意図した投与部位ではない肺への曝露の重大なリスクをもたらすためである。この問題を回避するために薬物の粒子サイズを増加させた場合、不均一な「相互作用」混合物において適切な相互作用を確保することが困難になる可能性が高く、これは、相互作用を確保するために2つの構成要素のサイズの実質的な違いに依存し、次いで、充填中の分離など潜在的な製造上の問題をもたらす。対応する担体の粒子サイズを増加させることによってこれと相殺しようと試みても、必ずしも問題が解決するとは限らず、すでに有限に制限されている剤形の総質量における不活性な賦形剤の質量が必然的に増加し、有効成分の用量の低減がもたらされる可能性がある。
【0017】
鼻腔内送達用の乾燥粉末を製剤化することの難しさは、米国特許出願第2005/001411A1号において対処されている。この文書において、経鼻投与用の粉末は、ガスの流れによって効率的に運ばれ、鼻に効率的に堆積できるように十分な微細さが必要であり、また、鼻腔内投与に常に必要な適切な粉末デバイスへの粉末の導入を容易にするのに十分な粗さも必要であると述べられている。US2005/001411A1は、有効成分を含む一次粒子のゆるく形成された二次粒子(凝集体)を作ることによって、どうやらこの問題を解決するようである。凝集体が数百ミクロンの寸法を有し、これにより、適切な鼻腔内投与(アプリケーター、ディスペンサー、又は吸入器)デバイスへのより効率的な装填が可能になると言われている。かかるデバイスを発動させ、組成物を投与すると、凝集体は、どうやら有効成分の一次粒子に急速に分解するようである。これらの一次粒子は、わずか数ミクロンのサイズであり、溶解を促進し、その後、有効成分の鼻腔内吸収を促進すると述べられている。
【0018】
上述のように、全身吸収を意図した薬物の経粘膜(例えば、鼻腔内)送達は、必然的に経口投与の構成要素である初回通過代謝を回避する。薬物代謝は、有効成分の化学構造、物理構造、及び/又は生物学的活性を変更することができる酵素との化学反応を介して生じる。
【0019】
ほとんどの薬物は、かかる化学反応を受けることができる官能基を含有する有機分子であるため、体外でそれらの官能基と相互作用できる物質と接触すると、多くの場合、何らかの形態の化学的分解を受けやすくなる。
【0020】
かかる化学変換は、典型的には、医薬品分野では化学的「分解」として分類され、それは、多くの場合、有効性の損失、又は極端な状況では有毒な副産物をもたらす可能性があり、そのいずれか又は両方により、患者に無効であり、かつ/又は有害である薬物をもたらす可能性があるためである。
【0021】
かかる分解がどのくらいの速さで生じ得るかは、薬物化合物がそもそもどの程度本質的に化学的に不安定であるか、製剤化の方法、及びその保管条件に依存する。多くの場合、高温及び湿度は、分解の加速をもたらす可能性がある。
【0022】
かかる化学的完全性の損失は、測定可能であり、全ての医薬品が、貯蔵寿命がラベルに印刷されており、かつ/又はパッケージにエンボス加工されているのはそのためである。また、ある特定の所定の薬剤は、添付文書に、適切な保管条件に関する特定の印刷情報が含まれているのもそのためである。
【0023】
経験則として、有効成分がより複雑であればあるほど、化学的又は物理的完全性の可能性が高くなり、問題である生物学的不活性化がもたらされる。この点において、ワクチン、酵素、抗体/その部分、並びに抗体類似体及び模倣物などの生物学的活性薬物/医薬有効成分(API)は、例えば、それらの高次(例えば、三次)構造、並びに適切な立体構造と有効な機能との間の相互作用のために、特定の問題を提示する。
【0024】
更に、小分子である他のAPIと比較して、広範囲の疾患及び障害の治療においてますます有用であることが証明されているにもかかわらず、抗体/その部分などのある特定の生物学的薬剤又は生物製剤は、特に強力ではない場合があり、顕著な生物学的効果を達成するために高用量を必要とする場合がある。
【0025】
教科書Amorphous Solid Dispersions,Shah et al(Eds.),Springer(2014)の第16章にKou及びZhouによって要約されているように、薬物が結晶の物理的状態とは対照的に非晶質で製剤化される場合、それは、典型的には、より高いエネルギー状態で提供されるため、化学的及び物理的により不安定になる可能性が高く、製薬製造者に課題を示す。
【0026】
したがって、化学的安定性は、多くの場合、塩形成を介して薬物(特に小分子のもの)を結晶状態で提供することによって改善される。しかしながら、かかる塩の形態で大きな(巨大分子)生物製剤を提供することは単純な問題ではなく、実際には通常は選択肢ではない。
【0027】
したがって、それが提供する前述の潜在的な利点の全てを考慮すると、改善された固形(例えば、粉末ベース)の経粘膜、特に鼻腔内薬物送達システムについての必要性が依然として残ったままである。
【0028】
特に、薬物送達の分野では、以下の粉末薬物送達組成物についての満たされていない重大な臨床的必要性が残っている:
(i)物理的及び化学的に安定しており、
(ii)
●十分な用量で、かつ/又は
●全身投与を意図している場合、
(比較的に言えば)可能な限り低い用量、及び鼻腔内などの経粘膜状況で利用可能な短い滞留時間で、必要な治療効果(発現速度及び/又は薬物標的へのアクセスなど)を提供するのに十分に浸透する形態で、有効成分を提供する。
【0029】
上記に加えて、鼻腔内薬物送達のより具体的な分野では、効率的な以下の両方を可能にする適切なサイズの粒子を含む、かかる薬物送達組成物についての満たされていない重大な臨床的必要性が残っている。
●薬物送達デバイスの充填、及び
●関連する(例えば、鼻)腔内の沈着。
【0030】
鼻腔内乾燥粉末製剤は、とりわけ、国際特許出願第2010/142696号及び同第2019/038756号、米国特許第10,653,690(B1)号、並びに米国特許出願第2018/0092839(A)号から知られている。
【0031】
生物製剤の噴霧乾燥は、例えば、Buerki et al,Int.J.Pharm.,408,248(2011)及びLipiuainen et al,ibid.,543,21(2018)に開示されている。
【0032】
本発明者らは、例えば、以下に開示するように、担体材料の特定の組み合わせと一緒にこれらの有効成分を噴霧乾燥するプロセスによって、ある特定の生物学的有効成分(すなわち、生物学的薬剤又は生物製剤)を非晶質乾燥粉末組成物の形態で製剤化することが可能であることを見出した。かかる組成物は、関連する有効成分の薬理学的及び/又は生物学的活性の著しい損失なしに、投与前のそれらの有効成分の安定性の驚くべき実質的な改善を提供し得る。かかる組成物は更に、投与後のそれらの有効成分の改善された生物学的利用能及び/又は吸収速度を提供し得る。
【発明の概要】
【0033】
本発明の第1の態様によれば、固形の非晶質の単粒子粉末の形態の薬学的に許容される組成物であって、
(a)薬理学的に有効な投薬量の少なくとも1つのバイオ医薬品化合物と、
(b)薬学的に許容される担体材料であって、その担体材料が二糖類及びポリマー材料の組み合わせを含む、薬学的に許容される担体材料と、の混合物を含む、薬学的に許容される組成物が提供され、
薬学的に許容される組成物は、以下一緒に「本発明の組成物」と称される。
【0034】
本発明の組成物は、非晶質の単粒子粉末の形態にある。「単粒子」とは、本発明の粉末組成物を形成する複数の粒子が、均一又は不均一な混合物を含み、バイオ医薬品化合物(複数可)(本明細書では「有効成分(複数可)」、「薬学的有効成分(複数可)」、「薬理学的活性化合物(複数可)」、及び/又は「薬物(複数可)」とも称される)が、上で定義された担体材料内に、任意選択で他の成分の存在下で、非晶質状態でカプセル化されていることを意味する。したがって、本発明の粉末組成物の粒子は、有効成分、担体材料、及び任意選択で、他の成分の非晶質複合物として提供される。
【0035】
それらの性質が非晶質であることにより、本発明の組成物は、完全に非晶質であり得、かつ/又は主に非晶質(例えば、約80重量%超を含む約75重量%超など、約99重量%超を含む約90重量%又は95重量%超などの約50重量%超の非晶質)であり得る。代替的に、本発明の組成物は、約25%未満を含む約50%未満、より好ましくは、約20%未満、例えば、約5%未満又は約1%未満を含む約10%未満の結晶質であり得る。結晶質の程度(%)は、粉末X線回折(PXRD)を使用して当業者によって決定され得る。固体NMR、FT-IR、ラマン分光法、示差走査熱量測定(DSC)微量熱量測定、及び真の密度の計算などの他の技法もまた使用され得る。
【0036】
後述するように、非晶質の物理的状態にあるにもかかわらず、本発明の組成物は、驚くべき予想外の物理的及び化学的安定性を示し、したがって、通常の保管条件下で保管した場合に優れた貯蔵寿命を示す医薬品の形態で提供され得る。
【0037】
本発明の組成物は、適切な技法によって、少なくとも最初は多粒子形態で(すなわち粉末として)生成される。概して、適切な技法は、噴霧乾燥、流動床技法、共沈、超臨界流体技法、スプレー造粒、極低温技法(凍結乾燥を含む)、エレクトロスピニング及び回転ジェット技法を含む「溶媒ベース」の方法、又は、溶融造粒、溶融押出、高剪断混合(例えば、KinetiSol(登録商標))、ミリング及び担体上の溶融材料技法(例えば、Meltdose(登録商標))を含む「融合ベース」の方法に分類される。好ましい方法には凍結乾燥が含まれ、より好ましくは、本発明の組成物は噴霧乾燥プロセスによって作製される。
【0038】
かかる粉末は、任意の薬学的に許容される投与経路を介して患者に直接送達するのに適していてもよく、1人以上の患者に投与される薬学的に許容される剤形に後で製剤化され得る中間組成物として提供されてもよい。
【0039】
この点において、製剤及び/又は剤形が患者に投与され、本発明の1つ以上の組成物を含む、医薬製剤及び/又は薬学的に許容される剤形が提供される。
【0040】
したがって、適した医薬剤形は、例えば、注射又は注入によってかかる患者に送達するための、(例えば、投与の直前に)本発明の組成物を薬学的に許容される溶媒(水など)に溶解することによって調製され得る、溶液などの液体製剤を含み得る。かかる投与手段は、有効成分が抗体などである場合に有用であり得る。
【0041】
代替の医薬剤形は、適切な剤形に装填され得るか、若しくは、例えば、注射若しくは注入によって送達し得るか、又は注射(例えば、皮下又は筋肉内)後、インプラント若しくはデポー製剤を形成するように形成され得る、適切な液体又は半固形担体に、懸濁又は溶解される本発明の組成物(例えば、その粒子)を含み得る液体懸濁液及び/又はゲル組成物などの液体又は半固形製剤を含み得る。
【0042】
代替的に、本発明の組成物は、本質的に固形医薬剤形の一部として提供され得る。「固形」という用語は、閉じ込められていないときにその形状及び密度を保持し、かつ/又は分子が一般にそれらの間の反発力が許す限り強く圧縮されている物質のあらゆる形態を含むことが当業者によく理解されるであろう。したがって、本質的に固形製剤は、少なくとも約95%(又は少なくとも約99%)を含む、少なくとも約90%などの少なくとも約80%がかかる形態にある製剤である。
【0043】
この点において、本発明の組成物は、個別に、かつ/又は集合的に、本発明の1つ以上の組成物から本質的になり得、かつ/又はそれを含み得る、複数の粒子を含む任意の多粒子形態(例えば、単純な粉末、顆粒、ペレット及び/又はビーズ)で提供され得る。
【0044】
したがって、本発明の組成物は、単純な粉末混合物、粉末ミクロスフェア、コーティングされた粉末ミクロスフェア、凍結乾燥されたリポソーム分散液、又はそれらの組み合わせの形態に(例えば、噴霧乾燥により)調製後、提供され得る。
【0045】
本発明の薬学的に許容される剤形が、本発明の1つ以上の組成物の粒子「から本質的になる」場合、これは、その剤形が、剤形の基本的で新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えない他の特徴及び/又は構成要素と一緒に、本発明の1つ以上の組成物のみを含むことを意味すると理解される。代替的に、本発明の剤形が本発明の1つ以上の組成物「から本質的になる」状況では、これは、その剤形が、合計で、少なくとも約97重量%(例えば、約99%)を含む少なくとも約95%などの少なくとも約90%の本発明の1つ以上の組成物を含むことを意味すると理解され得る。
【0046】
代替的に、医薬剤形は、ペッサリー、座薬若しくは挿入物の別の形態、丸剤、カプセル、ケーキ、パッチ(例えば、頬パッチ)、フィルム(例えば、口腔内フィルム)、又は錠剤(例えば、舌下錠)などの単一の単位剤形で提供され得る、本発明の1つ以上の組成物を含み得る。
【0047】
カプセルは、本発明の組成物を噴霧乾燥粉末として、舌下若しくは好ましくは経口送達用に設計された適切な材料から作られた薬学的に許容されるカプセルに直接装填することによって、又はかかる送達のためにカプセルに装填する前に、以下に記載する造粒ステップを含み得るかかるカプセルに装填する前に、組成物を賦形剤と混合することによって、調製され得る。経口送達は、有効成分が、例えば、酵素である場合に用いられ得る。
【0048】
この点において、本発明の組成物は、ペレット又は丸剤に造粒され得るが、乾燥した自由流動性の粉末の形態で製剤化する(すなわち、投与のために提供する)こともできる。「乾燥」とは、本質的に水及び他の液体溶媒を含まないことを含み、これには、製剤の約5%未満又は約4%未満を含む約6%未満などの約10%未満、より好ましくは約2%未満などの約3%未満、例えば、約1%未満が、水などの液体であることが含まれる。
【0049】
本発明の粉末組成物の流動性は、かさ密度測定、又は粉末流速依存性試験、ケーキ化試験、凝集試験などを含む粉末流量分析器(例えば、両方ともUKのStable Micro Systems又はMeriticsによって販売されるもの)で行われる測定を含む、当業者に既知の標準的な技法によって測定され得る。流動性の好ましい測定は、標準的な安息角であり、これは、回転シリンダ、固定ファンネル、又は傾斜ボックスを使用して実施され得る。
【0050】
本発明の文脈において、「自由流動性」という用語は、製造中に本発明の組成物を薬物送達デバイスに効率的に充填することを可能にし、かつ/又はデバイスから排出されたときに十分なショット重量を提供する粉末を含むことを意図している(以下を参照)。
【0051】
この用語はまた、粉末が、約40°以下を含む約45°以下などの約50°以下、例えば、約35°以下、より特に約30°以下の安息角、約0.3g/mL以上、例えば、約0.5g/mL以上などの約0.4g/mL以上、より特に約0.6g/mL以上のかさ密度、及び/又は約0.6g/mL以上などの約0.5g/mL以上、例えば、約0.7g/mL以上、特に約0.8g/mL以上のタップ密度を示すことも含み得る。
【0052】
乾燥粉末又は顆粒を含む剤形を作製するのに適切な技法には、単純な乾式混合、造粒(乾式造粒、湿式造粒、溶融造粒、熱可塑性ペレット化、スプレー造粒を含む)、押出/球形化、又はより好ましくは凍結乾燥若しくは噴霧乾燥が含まれる(以下参照)。
【0053】
乾式造粒法も当業者に周知であり、例えば以下に記載されるように、スラッギング及びローラー圧縮を含む、一次粉末粒子が高圧下で凝集される任意の技法を含む。
【0054】
湿式造粒法は、当業者に周知であり、水、エタノール又はイソプロパノールなどの揮発性の不活性溶媒を、単独又は組み合わせで、かつ任意選択でバインダー又は結合剤の存在下で含む造粒流体を使用した乾燥一次粉末粒子の混合物の塊化を伴う任意の技法を伴う。この技法は、湿った塊をふるいに通して湿った顆粒を生成することを含み得、それが次いで、好ましくは乾燥による損失が約3重量%未満になるように乾燥される。
【0055】
溶融造粒は、溶融バインダー、又はプロセス中に溶融する固形バインダー(これらのバインダー材料は本発明の組成物の薬学的に許容される担体材料を含み得る)の添加を介して顆粒が得られる任意の技法を含むことが当業者に既知である。造粒後、バインダーは室温で固化される。熱可塑性ペレット化は溶融造粒に類似していることが既知であるが、バインダーの塑性特性が用いられる。両方のプロセスにおいて、得られる凝集体(顆粒)はマトリックス構造を含む。
【0056】
押出/球形化は、成分の乾式混合、バインダーを用いた湿式塊化、押出、押出物の均一なサイズの回転楕円体への球形化、及び乾燥を伴う任意のプロセスを含むことが当業者に周知である。
【0057】
スプレー造粒は、液体(溶液、懸濁液、溶融物)の乾燥と同時に流動床に造粒物を蓄積することを伴う任意の技法を含むことが当業者に既知である。したがって、この用語は、任意の噴霧コーティング造粒技法を一般に含むことに加えて、外来種子(細菌)が提供され、その上に顆粒が蓄積されるプロセス、並びに摩耗及び/又は破砕によって流動床に固有の種子(細菌)が形成されるプロセスを含む。噴霧された液体は細菌を覆い、粒子の更なる凝集を補助する。次に、それを乾燥させてマトリックスの形態で顆粒が形成される。
【0058】
「凍結乾燥」という用語には、リオフィリセーション又はクリオデシケーション、及び生成物が凍結され、圧力が下げられ、昇華によって凍結溶媒(例えば、水)が除去される任意の低温脱溶媒和(例えば、脱水)プロセスが含まれる。
【0059】
代替的に、本発明の組成物は、経口、頬及び/又は舌下使用のための錠剤の形態で提供され得る。かかる錠剤は、例えば、任意選択で、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤及び/又は潤滑剤などの1つ以上の適切な賦形剤と一緒に混合された後に、本発明の組成物の直接圧縮(compression)/圧縮(compaction)によって形成され得、例えば、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets.Volume 1,3rd Edition,Augsburger et al(eds.),CRC Press(2008)及びそこに引用されている文書に記載されているものなどの技法を使用して達成され得る。適した圧縮装置には、Kilian SP300又はKorsch EK0、XP1、XL100、及びXL200などの標準的な打錠機が含まれる。
【0060】
錠剤に用いられ得る適した崩壊剤(例えば、Rowe et al,Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.(2009)において定義される)には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換度HPC、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、修飾セルロースガムなどのセルロース誘導体;中架橋デンプン、修飾デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、α化デンプンなどのデンプン誘導体;並びにアルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、ドキュセートナトリウム、グアーガム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ポラクリリンカリウム、及びポリビニルピロリドンなどの他の崩壊剤が含まれる。2つ以上の崩壊剤の組み合わせが使用され得る。
【0061】
好ましい崩壊剤には、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びクロスカルメロースナトリウムなどの、いわゆる「超崩壊剤」(例えば、Mohanachandran et al,International Journal of Pharmaceutical Sciences Review and Research,6,105(2011)において定義される)が含まれる。2つ以上の超崩壊剤の組み合わせを使用することができる。
【0062】
崩壊剤及び/又は超崩壊剤が錠剤で用いられる場合、組成物の総重量に基づいて0.5~15重量%の(例えば、総)量で用いられ得る。好ましい範囲は、約2~約7重量%などの1~8重量%(例えば、約4重量%などの約5重量%)である。
【0063】
存在する場合、バインダーは、好ましくは、錠剤製剤の総重量に基づいて0.5~20重量%の量で用いられる。好ましい範囲は、1.0~15重量%、例えば約2.0~約12重量%(例えば、約10重量%)である。適した結合剤には、セルロースガム及び微結晶性セルロースが含まれる。
【0064】
本明細書に記載のように、本発明の組成物は、好ましくは噴霧乾燥のプロセスによって作製される。
【0065】
更に、粉末の形態であろうとなかろうと、本発明の組成物を含む剤形は、他の点では、当業者に既知の標準的な技法によって、標準的な装置を使用して調製され得る。この点において、本発明の組成物は、本発明の組成物を含む剤形を作製するために、関連する調製物のために当技術分野で使用される従来の医薬添加剤及び/又は賦形剤と組み合わされ、標準的な技法を使用して様々な種類の医薬調製物に組み込まれ得る(例えば、Lachman et al,‘The Theory and Practice of Industrial Pharmacy’,CBS,4th edition(2015)、‘Remington:The Science and Practice of Pharmacy’,Troy(ed.),Elsevier,23rd edition(2020)、及び/又は‘Aulton’s Pharmaceutics:The Design and Manufacture of Medicines’,Taylor and Aulton(eds.),Elsevier,5th edition,2017を参照されたい)。
【0066】
どのようにそれらが製造されても、本発明の組成物は、有効成分の全身循環への経粘膜送達(及び、例えば、ワクチンの場合、全身免疫応答を生成する)、又は更に、例えば、ワクチンの場合、局所微小環境で免疫応答を生成するのに適しており、かつ/又はそのために製剤化されることが好ましい。
【0067】
「経粘膜」という用語は、どのように患者に投与されても、有効成分(複数可)が溶解後、その粘膜表を横断して吸収され得るような形態で、組成物が関連する粘膜表面に提供されることを意味することを当業者は理解するであろう。したがって、関連する粘膜表面には、口腔、鼻、眼、膣、子宮頸、肺及び/又は肛門直腸の粘膜、より特には口腔粘膜(頬及び舌下粘膜を含む)及び鼻粘膜が含まれる。
【0068】
したがって、本発明の組成物を含む剤形は、有効成分の経粘膜送達のために、患者の粘膜表面(肺、直腸、膣、頬、舌下、又は鼻腔内を含む)に直接投与され得る。肺、特に鼻腔内投与は、有効成分がワクチンである場合に特に有用であり、後者の場合、経粘膜吸収は、抗原に対する免疫応答を誘発するために必要ではない場合がある。
【0069】
舌下粘膜に投与される場合、本発明の組成物は、例えば上記の舌下錠の形態にあり得、これは崩壊剤(disintegrants)又は崩壊剤(disintegrating agents)を含み得、(これは、本発明のかかる組成物の崩壊/分散を測定可能な程度まで加速することができる任意の材料として定義され)、例えば、以下に記載するように、水性媒体と接触させたときに膨潤及び/又は膨張することができる材料によって達成され得る。
【0070】
代替的に、本発明の組成物は、本明細書に記載の粉末の形態で舌下投与され得、それは、カプセル又は小袋などの適切な容器から口及び舌の下に出してもよい。
【0071】
本発明の組成物が舌下投与、又はとりわけ鼻腔内投与に適しており、かつ/又はそのために製剤化されている場合、したがって、それらは好ましくは、有効成分(複数可)の投薬量が約100mg以下であるか、又は10国際単位(IU)以下である粉末組成物の形態で投与される。かかる舌下及び/又は鼻用粉末組成物は、他の賦形剤と混合された本発明の組成物を含み得るか、又は上記で定義された本発明の組成物から本質的になり得る。
【0072】
鼻腔内投与に適しており、かつ/又はそのために製剤化された本発明の組成物は、好ましくは、経鼻送達に適した投薬手段によって提供される。かかる投薬手段は、本発明の1つの噴霧乾燥粉末組成物を含有し得るか、又は2つ以上のかかる組成物を含有し得る。後者の場合、投薬手段は、2つ以上の投薬量の発明の当該組成物を含有し、その投薬量は各々、薬理学的に有効な用量の有効成分(複数可)を含有する。
【0073】
本発明の2つ以上の組成物は、その投薬手段を含むか、又はその投薬手段と通信するいずれかのデバイスの反復発動のいずれかによって、鼻腔内に投与され得る。したがって、本発明の組成物は、適切なデバイス(例えば、鼻用アプリケーター若しくはディスペンサー(吸入器)、例えば、以下に記載されるもの)内に提供されてもよく、かつ/又はかかるアプリケーターの部分である、付属している、及び/若しくは付属して配置するのに適している容器若しくはリザーバー内に提供されてもよい。かかる容器又はリザーバーは、本発明の1つ以上の組成物を含み得、各々が薬理学的に有効な投薬量の当該有効成分を収容する。
【0074】
このように、適切な投薬手段及び/又は鼻用アプリケーターは、1回だけ発動され、その発動に続いて適切な用量の有効成分を含む本発明の単一の組成物を送達し得(すなわち、単回使用投薬単位)、2回以上発動され、各々が適切な用量の有効成分を含む本発明の2つ以上の組成物を、かかる発動のたびに送達し得(すなわち、複数回使用の投薬単位)、かつ/又は1つ以上のかかる組成物を含む本発明の組成物(複数可)の交換源(例えば、容器又はリザーバー)で再充填され、単回及び/若しくは複数回の用量及び/若しくは投薬レジメンを提供し得る。
【0075】
したがって、本発明の組成物は、複数の粒子の形態で投与することができ、その粒子は、個別に、かつ/若しくは集合的に本発明の組成物で構成され、かつ/又はそれを含むことができる。
【0076】
したがって、本発明の組成物は、前述のように、(最初に)固形の乾燥した自由流動性の多粒子粉末の形態で調製される。
【0077】
上述のように、本発明の組成物は、非晶質の単粒子粉末の形態で提供される。それらは、有効成分(複数可)のより小さい粒子と、より大きな、しかし分離された化学的に異なる担体物質の粒子と会合した規則的又は相互作用的な混合物などの混合物の形態で、異なる成分の粒子の2つ以上の別個の分離したセットの物理的会合で構成されていない。とは言うものの、本発明の組成物は、その後、相互作用混合物中の分離した大きな担体粒子に付着することができる小さな粒子として提供することができ、かかる提供は、吸入、例えば、肺を目的とする剤形の場合に有用である(例えば、J.Drug Delivery,Art.ID 5635010,1-19(2018)を参照されたい)。
【0078】
前述のように、本発明の組成物を作製するプロセスは、本明細書で定義される通常の保管条件下で保管された場合に、物理的及び化学的安定性の両方に関して優れた貯蔵寿命を示す医薬品の形成を可能にする。
【0079】
本発明の組成物は、好ましくは噴霧乾燥のプロセスによって調製される。噴霧乾燥のプロセスは、高温ガスを使用して急速に乾燥して、液体の流れを、気化した溶媒、並びに前もって溶液に溶解されていた溶質、及び/又は前もって蒸発した液体に懸濁されていた粒子を含む固形の粒子に変換することを伴う、溶液又は懸濁液(スラリーを含む)を含む液体から乾燥粉末を生成する任意の方法を含むことが当業者に理解されるであろう。
【0080】
適切な噴霧乾燥装置は、比較的均一な液滴サイズを有する噴霧へと液体を分散させる噴霧ノズルなどの何らかの形態の噴霧化手段を含む。かかる手段は、乾燥した自由流動性の粉末を生成することができる任意の手段を含み得、高圧スワールノズル、回転ディスク及び/又は噴霧器ホイール、高圧単一流体ノズル、二流体ノズル及び/又は超音波ノズルを含み得る。
【0081】
噴霧乾燥機は、単一効果又は多重効果噴霧乾燥機であり得、統合及び/若しくは外部振動流動床、粒子分離器、並びに/又はドラム又はサイクロンであり得る収集手段を含み得る。
【0082】
本発明の更なる態様によれば、本発明の組成物を製造するためのプロセスが提供され、当該プロセスは、
i)適切な揮発性溶媒中で、1つ以上の有効成分及び薬学的に許容される担体材料を一緒に混合するステップ、
ii)ステップi)からの混合物を噴霧乾燥するステップを含む。
【0083】
好ましい揮発性溶媒としては、水、又は低級アルキルアルコール(例えば、メタノール、イソプロパノール、又はより特に、エタノール)、炭化水素(例えば、C5-10アルカン)、ハロアルカン(例えば、ジクロロメタン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトンなど、若しくはそれらの混合物などの有機溶媒が挙げられる。
【0084】
1つ以上の有効成分、本明細書に定義される薬学的に許容される担体材料(複数可)、及び本明細書に記載の他の任意選択の成分(例えば、以下に記載のアルキル糖類)を溶媒とともに一緒に混合して、噴霧乾燥され得る溶液が得られることが好ましい。
【0085】
本発明の組成物に用いられ得る適切な薬学的に許容される担体材料には、通常の保管条件下で固体で、適切な組み合わせで、医薬使用及び/又は経粘膜(例えば、舌下又は特に鼻腔内)送達に適しており(及び/又は承認された)、かつ、それらの物理的及び/又は化学的完全性を維持することができ、かつ/あるいは任意の有効成分及び/又は組成物中に存在するか、若しくは存在し得る任意の他の成分(アルキル糖類など)の物理的及び/又は化学的完全性に影響を及ぼさない関連材料が含まれる。
【0086】
化学的にも物理的にも安定性のある粉末などの固形組成物を得ようとすると、重大な困難が生じる可能性があることは周知である。組成物の物理的形態が通常の保管条件下で変化する場合(例えば、自由流動性の粉末から排出が困難な凝集塊へ)、有効成分の用量の再現性が失われる可能性がある。これは、本明細書に記載の鼻用アプリケーターから、又はそれを介して組成物を分注する場合に特にそうであり、かかる凝集は、有効成分を分注することが完全に不可能になる可能性がある。
【0087】
本発明の組成物は、約85%(例えば、約90%)から最大約120%(例えば、約110%などの約115%)などの約80%の目標重量に対する個々の粉末ショット重量、及び/又は約90%(例えば、約95%)~最大約115%(例えば、約105%などの約110%)などの約85%の目標重量に対する平均粉末ショット重量によって測定される最小ショット重量を有し得る。
【0088】
同様に、組成物の2回以上の用量を含有する複数回用量単位の場合、かかる安定性は、有効成分の用量の経時的な再現性を確保するために重要である。これらの問題のいずれも、被験者の健康に有害な影響を与える可能性があり、かつ/又は被験者の幸福を重大なリスクにさらす可能性がある。
【0089】
本発明のある特定の組成物の場合、大気水への曝露は、固体安定性が低い粉末組成物をもたらす可能性がある。例えば、ある特定の(例えば、比較的高い)相対湿度への曝露は、例えば潮解によって、並びに/又は組成物、及び/若しくは担体材料などの組成物の個々の成分のガラス転移温度を低下させることによって、又は別の方法で組成物の物理的形態に影響を及ぼし得る。
【0090】
したがって、本発明の組成物、並びにそれらを含む医薬製剤及び投薬手段(鼻用アプリケーターなど)は、好ましくは、本明細書で定義された保管条件下で大気水の侵入を実質的に防止する容器内にパッケージ化される。かかる容器は、錠剤及びカプセル用のブリスターパック並びにヒートシールされたアルミニウムパウチ及び/又は熱成形プラスチックなどのパッケージ化材料を含み得る。かかる容器はまた、例えば、3Å又は4Åの孔径を有するシリカゲル及び/又は適切なモレキュラーシーブなどの乾燥剤を含み得る。
【0091】
「物理的及び化学的完全性を維持する」という表現は、本質的に化学的安定性及び固体安定性を意味する。
【0092】
「化学的安定性」とは、本発明の任意の組成物が、医薬製剤若しくは剤形に製剤化された場合、及び/又は(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)そのための鼻用アプリケーター若しくはリザーバーなどの医薬投薬手段に装填された場合、又はそうでなければ、通常の保管条件下で、組成物自体又はそれに含まれる有効成分のいずれかのわずかな程度の化学的分解(degradation)若しくは分解(decomposition)を伴って単離された固形形態で保管され得ることを含む。
【0093】
「化学的安定性」という用語はまた、「立体化学的」及び/又は「構成的」安定性を含み得、これは、「バイオ医薬品化合物」分子内の1つ以上のキラル中心で、ラセミ化などの立体化学的変換に対する耐性を意味する。
【0094】
「物理的安定性」又は「固体安定性」とは、本発明の任意の組成物が、医薬製剤若しくは剤形に製剤化された場合、及び/又は(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)そのための鼻用アプリケーター若しくはリザーバーなどの医薬投薬手段に装填された場合、又はそうでなければ、通常の保管条件下で、組成物自体又はそれに含まれる有効成分のいずれかのわずかな程度の固体変化(例えば、結晶化、再結晶化、結晶化度の損失、固体相転移(例えば、ガラス状態若しくはゴム状態間、又は凝集形態へ))、水和、脱水、溶媒和、又は脱溶媒和を伴って、単離された固形形態で保管され得ることを含む。「物理的安定性」とはまた、折り畳まれたタンパク質の正しいコンフォメーションを保持すること、及び/又は以下に定義される生物学的活性の保持を含む。
【0095】
本発明の組成物の「通常の保管条件」の例としては、医薬製剤若しくは剤形の形態にあるかどうかにかかわらず、及び/又は、アプリケーター、デバイス、薬物リザーバー(キャニスター又は容器など)に装填される場合、又はそうでなければ、長期間(すなわち、約6か月などの約12か月以上)、約-50℃~約+80℃(好ましくは(約-25℃などの)-85℃~約50℃などの約+75℃)の温度、及び/又は約0.1~約2バールの圧力(好ましくは大気圧)、及び/又は少なくとも約460ルクスのUV光/可視光への曝露、及び/又は約5~約95%(好ましくは約10~約40%)の相対湿度が挙げられる。
【0096】
かかる条件下で、本発明の組成物(及び/又はそれに含まれる有効成分)は、鼻用アプリケーター若しくはそのリザーバー(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)などの医薬投薬手段に含まれるかどうかにかかわらず、又はそうでなければ、必要に応じて約15%未満、より好ましくは約10%未満、特に約5%未満が、化学的に分解(degraded)/分解(decomposed)され、かつ/又は固体変換されることが見出され得る。当業者は、温度及び圧力の上記の上限及び下限が通常の保管条件の極値を表し、これらの極値のある特定の組み合わせが通常の保管中に経験されないことを理解する(例えば、50℃の温度及び圧力0.1バール)。
【0097】
「通常の保管条件」の上記の定義にかかわらず、本発明の組成物(及び/又はそれに含有される有効成分)は、
(a)0℃若しくは室温(例えば、約20℃若しくは約25℃)若しくは約40℃などの-25℃を含む約-85℃、及び75%の相対湿度で、少なくとも約6か月若しくは少なくとも約12か月を含む少なくとも約3か月、
(b)0℃若しくは室温(例えば、約20℃若しくは約25℃)若しくは約30℃などの-25℃を含む約-85℃未満で(例えば、約60%を含む約65%の相対湿度で)、約36か月を含む少なくとも約24か月などの少なくとも約18か月、かつ/又は
(c)約100万ルクスを超えるUV光で、少なくとも約18時間
の保管後、約4%未満などの約5%未満(約1.5%未満、及び/又は更に約1%未満を含む、約2.5%未満(例えば、約2%未満)などの約3%未満を含む)化学的(及び/又は立体化学的)に分解され得る。
かかる化学的安定性、特に物理的安定性は、適切な用量が患者に送達されることを確実にするために、粉末などの固体組成物において重要である。
【0098】
したがって、本発明の組成物は、任意の温度(例えば、0℃又は20℃を含む-25℃などの約-85℃の低温)から最大約25℃(例えば、最大約30℃まで)で、好ましくは最大約40℃又は更に最大約50℃の変動を伴って、アプリケーター若しくはそのリザーバー(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)などの剤形内に、又はその他に、保管され得る。
【0099】
本発明の組成物を生成するために用いられ得、かつ本明細書に記載の望ましい特性を有する特に好ましい薬学的に許容される担体材料としては、二糖類構成要素として、マルチトール、スクラロース、ショ糖、イソマルト、マルトース、ラクトース、及び特にトレハロースが挙げられる。
【0100】
ポリマー材料構成要素について、本発明の組成物を生成するために用いられ得、本明細書に記載の望ましい特性を有する好ましい薬学的に許容される担体材料としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、修飾セルロースガム、微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース及びその誘導体;米デンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、並びにより特にトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;α化デンプン、カルボキシメチルデンプン、並びに中架橋デンプン、修飾デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体;デキストラン、プルラン、イヌリン、並びにデキストリン、シクロデキストリン、及びマルトデキストリンなどの線状又は分岐状デキストリンなどのデキストリンを含む多糖類;粉末トラガカント;ココアバター及び坐剤ワックスなどのワックス状の賦形剤;固形ポリエチレングリコールなどのポリオール;カルボマー及びその誘導体などのアクリルポリマー;ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP);架橋ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリco-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);並びにクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム)を含む。コハク酸ヒプロメロース(HPMCAS)、コポビドン及びポリビニルアルコール(PVA、又はPVOH)も言及され得る。
【0101】
より好ましいポリマー材料には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及び、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース2906、好ましくはヒプロメロース2910(すなわち「E」型)、及びより好ましくはUSP/NFヒプロメロース2208(すなわち「K」型)など)、又は特に、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム塩、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、分岐β-シクロデキストリンなどのα-、β-、及びγ-シクロデキストリン及びその誘導体、特に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)を含むデキストリンなどの多糖類、並びにマルトデキストリンなどの線状又は分岐状デキストリンが挙げられる。
【0102】
いずれにしても本発明の組成物に使用するのに適したポリマーは、二糖類と組み合わせて任意の所与の量で用いられた場合に、有効成分に適した担体材料を形成できるように、十分に高い分子量を有する必要がある。
【0103】
任意の所与のポリマーについて、ポリマー鎖長(したがって分子量)は、その粘度に正比例する。言い換えれば、そのポリマーの溶液の粘度は、特定のポリマーの分子量又は鎖長に比例する。
【0104】
この点で、以下の、任意の所与の本質的な場合について、測定値として、ポリマーが20℃で約1000mPa*s以下(より好ましくは、約60以下、特に約10以下などの約120以下)の相対粘度値を有することが好ましい場合がある。
(a)粘度に関する標準的なUSP方法、すなわち<911>方法I及び/又は<912>方法Iによる、水中のポリマーの2%溶液としての水溶性ポリマー、並びに
(b)USP方法<911>方法Iにより、溶媒系が乾燥又は部分的に水性であり得る、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、及びそれらの混合物などの適した有機溶媒中のポリマーの5重量%溶液としての水不溶性ポリマー。
【0105】
当業者は、試験されるポリマーにどの試験がより適しているかを理解するであろう。
【0106】
担体材料が、以下のガラス転移温度(Tg)を有する本発明の組成物を生じさせることができることが好ましい。
(a)医薬製剤若しくは剤形に容易に製剤化でき、かつ/又は、本明細書に記載の鼻用アプリケーター、若しくはかかるアプリケーター内、若しくはそれに付属する薬物リザーバー及び/若しくは容器などの適した投薬手段に容易に装填することができる、硬く及び/又は脆い、「ガラス状」、非晶質の、粉末状の物理的形態としてのその生成が可能であり、かつ
(b)本明細書に記載されるように、かかる医薬製剤、剤形、又はかかるアプリケーター若しくはリザーバーなどの投薬手段がパッケージ化され、その後、高い外部温度(例えば、最大約50℃~約80℃)に供された後に、その組成物が、より粘性若しくはゴム状の状態、及び/又は結晶状態に転換するよりもそのガラス状の状態に留まるほど十分に高い。
【0107】
このような極端な外部温度は、暖かくかつ/又は陽気な気候において、多くの場合、車両の内部で経験され、そのような車両は、頻繁に、炎天下で長期間にわたり駐車され、結果として生じる熱は莫大になり得る。本発明の(例えば、粉末)組成物のTgが低い場合、組成物は、かかる高温に曝露された後にかかる粘性/ゴム状の状態に転換する可能性があり、これは、本発明の組成物の非効率的な投薬、例えば、投薬手段又はアプリケーターを発動させたときに、アプリケーター又はそのためのリザーバーなどの投薬手段からの組成物(及び有効成分の用量(複数可)も)の非効率的な放出を生じさせる。更に、Tgが低すぎると、舌下又は経口使用のための錠剤の形態の本発明の組成物の崩壊及び/又は溶解に影響を与える可能性がある。
【0108】
この点において、本発明の組成物の最も低い測定可能なTgは、最大約25%を含む最大約30%などの最大約35%の相対湿度(例えば、約15%未満などの最大約20%、例えば、約10%未満)で測定される場合、少なくとも約60℃を含む少なくとも約55℃など、少なくとも約50℃などの少なくとも約40℃を含む少なくとも約35℃などの少なくとも約25℃を含む少なくとも約20℃などの少なくとも約15℃など、少なくとも10℃であることが好ましい。「最も低い測定可能なTg」とは、本発明の組成物が、その性質において不均一である粒子を含み得ることを含む。特に、粒子は担体材料の別個の領域、又はそれらの複合混合物を含み得、したがって、個々の及び別個のTg値を有し得る。最も低い測定可能なTgの値が組成物の物理的安定性に強い影響を与えることは当業者には明らかであろう。
【0109】
発明者らは、特に、二糖類と、ポリマー(例えば、本明細書で定義されるHPMC)及び/又は特にデキストリンとの組み合わせを含む本発明の組成物が、単独又は単離して用いられる場合、他の担体材料と比較して、組成物及び有効成分の適切なレベルの物理的及び化学的安定性を生じさせることができることを見出した。
【0110】
したがって、担体材料の特に好ましい組み合わせは、α-D-ラクトース一水和物などのラクトース又はより好ましくはトレハロースと、デキストリン、特に2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、又はマルトデキストリン12DEなどDEが11を超える、又はマルトデキストリン19DEなどDEが15を超える、マルトデキストリンと、が挙げられる。発明者らは、担体材料のかかる組み合わせを、有効成分及び存在する場合にはアルキル糖類と一緒に適切な比率で噴霧乾燥して、本明細書で定義された通常の保管条件下で、所望の物理的及び化学的安定性の両方を有する本発明の組成物を生成し得ることを見出した。
【0111】
発明者らは、担体材料中の二糖類及びポリマー成分の相対量(特に、ポリマーがデキストリンである場合)を、有効成分の所望のレベルの物理的及び/又は化学的安定性を確保し、同時に、物理的安定性に影響を及ぼすような様式で本発明の組成物のTgを低下させないように調整して得ることを見出した。
【0112】
用いられる有効成分に応じて、組成物の総重量に基づいて、重量で約50:1~約1:50の二糖類:ポリマー(例えば、デキストリン)比が機能し得ることが見出された。好ましい比率は、組成物の総重量に基づいて、約10:1~約1:40(最大約1:30又は最大約1:20を含む)、例えば、約4:1、約3:1、又は約2:1などの約5:1を含む約7:1~約1:5、例えば、1:3又は1:2を含む約1:8などの約1:10、より好ましくは約8:1(例えば、約7:1、約3:1、約2:1、又は約1:1)~約1:8(例えば、約1:3又は約1:2)の二糖類:ポリマー(例えば、デキストリン)の範囲にある。
【0113】
したがって、担体材料の特に好ましい組み合わせには、トレハロース、又はα-D-ラクトース一水和物などのラクトースと、デキストリン、特に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、又はより好ましくは、マルトデキストリンと、が挙げられる。
【0114】
マルトデキストリンはDE(デキストロース当量)によって分類され、DE値が高いほど、グルコース鎖の平均長は短くなる。
【0115】
好ましいマルトデキストリンとしては、DEが、8~12などの6~15、又は15を超える、例えば、38、39などの最大47、好ましくは、23、24、25、若しくは26、又はより好ましくは16、17、18、20、21、若しくは22、及び特に19のDEを有するものが挙げられる。20を超えるDEを有するマルトデキストリンは、「グルコースシロップ」と称されることが当業者には理解されるであろう。
【0116】
15を超えるDEを有するマルトデキストリンは、15以下のDEを有するものよりも低い平均分子量を有する。全てのマルトデキストリンは、異なる鎖長を有する多糖類の混合物であり、15を超えるDEを有するマルトデキストリンは、より大きな分子量の糖単位が少ない。
【0117】
12以下のDEを有するマルトデキストリンなど、より低いDEを有するマルトデキストリンが、より長い多糖鎖(例えば、約24個以上のグルコース単位を有する)を含有し、ショ糖エステルのような有効成分及び/又は界面活性剤などの他の成分と一緒に水溶液中に存在する場合に凝集体を形成し得、噴霧乾燥前に濁った溶液を生じさせるヘリックス構造を形成する傾向を有することを見出した。この濁りは、製造中に安定性及び/又は加工性の問題を起こす可能性があり、インラインフィルタの使用を必要とする。
【0118】
前述の濁りの問題が、本発明の組成物内に含まれるマルトデキストリンの相対量を低減させることによってある程度緩和され得ることを見出したが、これは、他の担体材料(例えば、二糖)、有効成分、又はショ糖エステルなどのある特定の添加剤などの他の成分の量を増加させることによって達成され得、マルトデキストリンの分子量が高いほど、含まれる必要が少なくなり、濁りを緩和するために添加される必要がある、例えば、二糖類又はショ糖エステルが多くなる。
【0119】
この濁りを低減するためにより多くのショ糖エステルを添加する場合、本明細書に記載されるように、吸収促進効果を含む適切な(例えば、物理的、化学的及び/又は生物学的)効果を提供するために必要とされるよりも多くが添加される必要がある場合がある。逆に、担体材料中のマルトデキストリンに対して二糖類の量を増加させることは、Tgに対する負の影響を有する場合があり、したがって、本明細書に記載の組成物の固体安定性に対して負の影響を有する場合がある。
【0120】
かかる問題は、完全に異なるマルトデキストリン、すなわち、15を超えるDE、例えば、DE18、20、又はより好ましくは19のDEを有するものなどの、より高いDEを有するものを使用することによって、低減され得、おそらく完全に回避され得ることを見出した。
【0121】
上記にもかかわらず、本明細書に記載の粉末組成物における使用に適したマルトデキストリンを含むポリマーは、それにもかかわらず、任意の所与の量(二糖類と組み合わせて)で用いられる場合、適切な程度の物理的安定性の提供を含む、有効成分に適した担体材料を形成することができるような十分に高い分子量を有する必要がある。
【0122】
二糖類及び/又はポリマー材料(マルトデキストリンを含む)の前述のリストのうちのいずれかからの混合物が用いられ得る。
【0123】
本発明の組成物に用いられ得る担体材料の量は、(当該組成物の1回用量が投薬手段又は他のものに含まれるかどうかにかかわらず)典型的には、組成物の総重量に基づいて、約50重量%~約75重量%を含む約10重量%(例えば、約35重量%を含む約25重量%)~約85重量%など、最大約99重量%(例えば、最大約95重量%又は約90重量%)を含む約5重量%~約99.9重量%の範囲にある。
【0124】
どんな最終混合物中のそれらの比率であっても、本発明の組成物は、二糖類及びポリマー材料(例えば、デキストリン)の組み合わせを含む噴霧乾燥担体材料を含む。したがって、担体材料は、担体材料を他の必須構成要素と一緒に噴霧乾燥して本発明の組成物を形成するか、又はより好ましくは、本発明の組成物の必須成分の全てを一緒に噴霧乾燥することによってインサイチュで作製されるかのいずれかの前に、関連する成分を噴霧乾燥して複合担体材料を形成することによって調製され得る。本発明の組成物は、L-ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、L-チロシン、又はL-アルギニンなどの加工助剤の存在下で噴霧乾燥することによって調製され得る。
【0125】
本発明の組成物は、少なくとも1つのバイオ医薬品化合物を含み得る。「バイオ医薬品化合物」とは、この定義には、バイオ医薬品化合物が生体又はその生成物から生成されるか、又は生体の構成要素を含む、生物学的薬剤又は生物製剤が含まれる。
【0126】
バイオ医薬品化合物には、タンパク質及び/又はオリゴ若しくはポリペプチド、酵素、抗体/その部分、ワクチン、ヌクレオチドなど、又は抗体類似体、抗体模倣物、免疫グロブリン、免疫調節剤、又はこれらの組み合わせが含まれる。バイオ医薬品化合物にはまた、血液(例えば、血液中に浮かんだ血液細胞)、血液構成要素(例えば、ヒト血液構成要素)、細胞、アレルゲン(例えば、花粉、イエダニ、動物のふけ、カビ、薬物昆虫毒、及び様々な食品)、遺伝子、ウイルス(例えば、動物ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルス、バクテリオファージ、古細菌ウイルス、ヘルパーウイルス、マイコウイルス、向神経性ウイルス、新規ウイルス、緊急ウイルス、オンコウイルス、オーファンウイルス、パッセンジャーウイルス、プロウイルス、レトロウイルス、遅発性ウイルス、DNAウイルス、dsDNAウイルス、dsDNA-RTウイルス、dsRNAウイルス、核細胞質大型DNAウイルス(NCLDV)、ネガティブセンスssRNAウイルス、RNAウイルス、ssDNAウイルス、ssRNAウイルス、サテライトウイルス(一本鎖RNAサテライトウイルス、二本鎖DNAサテライトウイルス、及び一本鎖DNAサテライトウイルスを含む)、ビリオン、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、カプシドウイルス様粒子、ウイルスの構成要素及び/若しくは要素(カプシド、カプソメア、内因性ウイルス要素(EVE)、ヌクレオカプシドなど)、毒素(例えば、細菌由来の毒素(炭疽菌致死毒素、ボツリヌス毒素、百日咳毒素、staphylococcalエンテロトキシンB(SEB)など)、菌類及び藻類(アフラトキシン、サキシトキシン、ネオサキシトキシン、アマニチン、ボミトキシン(デオキシニバレノール)、ジアセトキシシルペノール、T-2及びHT-2毒素など)、植物(アブリン及びリシンなど)、毒(神経毒、血液毒、細胞毒など)、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。かかる生物学的薬剤又は生物製剤は、腫瘍学、心血管疾患、感染症、自己免疫又は炎症性疾患、代謝性疾患などの群から選択される1つ又は複数の主要な適応症の治療又は予防に使用され得る。
【0127】
用いられ得るかかるタンパク質及び/又はオリゴ若しくはポリペプチドは、天然に存在するもの、並びにそれらの合成類似体、半合成、合成、プロテオ―スを含むことを理解されたい。そのようなタンパク質及び/又はオリゴ若しくはポリペプチドは、天然に存在する又は組換えのタンパク質及び/又はペプチドであることが好ましい。かかるタンパク質、オリゴ及び/又はポリペプチドは、5kDa超、例えば、10kDa超、例えば、30kDa超を含む20kDa超の分子量を有することが更に好ましい。
【0128】
天然に存在するタンパク質、オリゴペプチド及び/又はポリペプチドの種類には、アクチン、Arp2/3、Arp2/3、コロニン、ジストロフィン、ホルミン、FtsZ、グロベリン(gloverin)、ケラチン、ミオシン、チューブリンなどの細胞骨格タンパク質;コラーゲン、エラスチン、F-スポンジン、ピカチュリン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質;血漿タンパク質などの球状タンパク質(例えば、血清アミロイドP構成要素)、補体タンパク質などの凝固因子(例えば、C1阻害剤、C3変換酵素)、第XIII因子、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、タンパク質Z関連プロテアーゼ阻害剤、トロンビン、フォンビルブランド因子、急性相タンパク質(例えば、C反応性タンパク質);ヘモプロテイン(例えば、ヘモグロビン)、細胞接着タンパク質(例えば、カダリン、エペンディミン、インテグリン、NCAM、セレキシン)、膜透過輸送タンパク質(例えば、CFTR、グリコホリンD、スクラムブラーゼ)、イオンチャネル(例えば、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、グルコーストランスポーター)、ホルモン及び成長因子(例えば、コロニー刺激因子(CSF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF)、血管内皮成長因子(VEGF))、膜貫通受容体(例えば、ロドプシン)、細胞内受容体(例えば、エストロゲン受容体)、DNA結合タンパク質(例えば、ヒストン、プロタミン)、転写及び調節タンパク質(例えば、CIタンパク質、C-myc、FOXP2、FOXP3、MyoD、P53)、RNA結合タンパク質(例えば、SRRT)、免疫系タンパク質(例えば、免疫グロブリン、主要組織適合性抗原、T細胞受容体)、栄養貯蔵及び/又は輸送タンパク質(例えば、フェリチン)、シャペロンタンパク質(例えば、GroEL)、サイトカイン及び類似体(組換えサイトカインを含む)、例えば、IL-1受容体アンタゴニスト、アナキンラ、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-23、IL-27、IL-33、IL-35又は、より特に、IL-2、IL-7、IL-15、又はIL-21など、TNF-アルファ、IFN-アルファ、ピホナキン、モベナキン、アダルギロイキンアルファ(adargileukin alfa)、アルデスロイキン、セルモロイキン、デニロイキンジフチトクス、ペガルデスロイキン(pegaldesleukin)、テセロイキン、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ダニプレスチム(daniplestim)、ムプレスチム、ビネトラキン(binetrakin)、アテキサキンアルファ、エモクタキン、イロデカキン、オプレルベキン、エドデキンアルファ、シントレデキンベスドトックス、イボクタデキン、タンパク質治療薬に発展したサイトカイン(例えば、骨形成タンパク質(BMP)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロンアルファ、IL-11)、酵素(例えば、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ)、プロ酵素(例えば、アンジオテンシノーゲン、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、ペプシノゲン、プロトロンビン、プラスミノーゲン、プロカスパーゼ、パシファスチン、プロエラスターゼ、プロリパーゼ、プロカルボキシポリペプチダーゼ)、例えば、α-グルコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、イドロン酸-2-スルファターゼ、n-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ、n-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、膵酵素産物(PEP)、パンクレリパーゼを含み、消化酵素の混合物、リパーゼ、プロテアーゼ及びアミラーゼ;アルテプラーゼ、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼ;ドルナーゼアルファ、ペグロチカーゼ、ラスブリカーゼ、L-アスパラギナーゼ、コラゲナーゼ、ペガデマーゼ(ウシ)、グルカルピダーゼ、オクリプラスミン;並びにラクターゼ(asperillus oryzae、aspergillus niger、kluyveromyces fragilis、kluyveromyces lactis又はE coli由来);抗Muellerianホルモンなどのヒトペプチドホルモン、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン、抗利尿ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、コルチスタチン、エンドセリン、卵胞刺激ホルモン、ガラニン、ガストリン、グルカゴン様ペプチド-1、グルカゴン及びグルカゴン様ペプチド-1類似体、ダシグルカゴン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、レプチン、リポトロピン、黄体形成ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オステオカルシン、膵臓ポリペプチド、プロラクチン、プロラクチン放出ホルモン、リラキシン、レニン、成長ホルモン阻害ホルモン、成長ホルモン放出抑制ホルモン、ソマトトロピン放出阻害因子、ソマトトロピン放出阻害ホルモン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン、サイロトロピン、サイロトロピン放出ホルモン、グアニリンウログアニリン、テトラコサクティド、メカセルミン、ソマプシタン、ペグビソマント、デセモプレシン、テルリプレシン、リプレシン、オルニプレシン、アルギプレシン、デモキシトシン、カルベトシン、オクレオチド、バプレオチド、エルカトニン、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0129】
他の種類のタンパク質、オリゴペプチド、及び/又はポリペプチドとしては、ウイルスタンパク質又は細菌タンパク質が挙げられ得る。「ウイルスタンパク質又は細菌タンパク質」という用語は、ウイルス又は細菌の構成要素及び生成物の両方であり、好ましくは、ウイルス又は細菌のゲノムによってコードされるタンパク質を含む。好ましくは、ウイルスタンパク質は、ウイルスのカプシド又はエンベロープの構成要素である。ウイルスタンパク質は、コロナウイルスのスパイク(S)タンパク質又はその一部分若しくはバリアント、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(H)若しくはノイラミニダーゼ(N)タンパク質又はその一部分若しくはバリアント、アデノウイルスのL3タンパク質又はその一部分若しくはバリアント、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の融合タンパク質又はその一部分若しくはバリアントであり得る。
【0130】
タンパク質は、オリゴペプチド又はポリペプチドは、ヒトインスリン、シクロスポリン、インスリン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、TPA、アルブミン、HGH、第VIII因子、エリスロポエチン、カルシトニン、オキシトシン、バソプレシン、ボクロスポリン、サブスタンスP、カシニン、ニューロキニンA、エレドアシン、ニューロキニンB、VIP(血管作動性腸ペプチド、PHM27)、PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド)、ペプチドPHI27(ペプチドヒスチジンイソロイシン27)、GHRH1-24(成長ホルモン放出ホルモン1-24)、グルカゴン、セクレチン、NPY(ニューロペプチドY)、PYY(ペプチドYY)、APP(トリ膵臓ポリペプチド)、PPY膵臓ポリペプチド、プロオピオメラノコルチン(POMC)ペプチド、エンドモルフィン、エンケファリンペンタペプチド、プロダイノルフィンペプチド、カルシトニン、アミリン、AGG01、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)ラクトトリペプチド、伝統的な中国医学Colla Corii Asini由来のペプチド構成要素、ブセレリン、ゴナドレリン、ゴセレリン、ヒストレリン、リュープロレリン、ナファレリン、トリプトレリン、アバレリクス、セトロレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、エラゴリクス、レルゴリクス、テベレリクス、デスモプレシン、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチド、ソマトスタチン及び類似体、オクトレオチド、パシレオチド、ランレオチド、テリパラチド、又はブセレリン、ゴナドレリン、ゴセレリン、ヒストレリン、リュープロレリン、ナファレリン、トリプトレリン、アバレリクス、セトロレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、エラゴリクス、レルゴリクス、テベレリクス、ロイプロリド、リラグルチド、オクトレオチド、デスモプレシンのうちの1つ以上を含むペプチドではない。
【0131】
本発明の組成物に用いられ得るバイオ医薬品化合物にはまた、抗体も含まれる。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むと理解されるであろう。この用語はまた、以下のような抗体の全てのアイソタイプを含む:IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgE。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0132】
いくつかの状況では、特に、抗体がヒト患者に繰り返し投与される場合、モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である場合が好ましい。適したモノクローナル抗体は、既知の技法、例えば、‘Monoclonal Antibodies Meeting the Challenges in Manufacturing,Formulation,Delivery and Stability of Final Drug Product’ Steven Shire,(Woodhead Publishing,2015),Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing’,Shire et al(Springer New York,2010)、‘Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic’,Zhiqiang An(Wiley 2009)、‘Monoclonal Antibodies;A manual of techniques’,H Zola(CRC Press,1988)及び‘Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Application’,SGR Hurrell(CRC Press,1982)に記載されているものによって調製され得、これらの文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。多重特異性又は単一特異性であるポリクローナル抗体が生成され得る。
【0133】
一実施形態では、抗体は、マウス、ヒト(ヒト化を含む)、又はキメラ抗体であり得る。キメラ抗体は、Neuberger et al(1998,8th International Biotechnology Symposium Part 2,792-799)によって議論されており、この文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。適して調製された非ヒト抗体は、既知の方法で、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体のフレームワークに挿入することによって、「ヒト化」され得る。抗体は、所望の抗原又はエピトープに対する特異性を有するヒト抗体のアミノ酸配列を有するという意味で、ヒト抗体であり得るが、それらは、ヒトの免疫化を必要としない当技術分野で既知の方法を使用して調製され得る。例えば、本質的にヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスが利用可能であり(Vaughan et al(1998)Nature Biotechnol.16,535-539を参照されたい)、この文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
本発明に従って使用され得る(モノクローナル)抗体の非限定的な例は、エドレコロマブ(L01XC01)、トシツモマブ(V10XA53)、リツキシマブ(L01XC02)、バシリキシマブ(LO4AC02)、インフリキシマブ(L04AB02)、アダリムマブ(L04AB04)、イブリツモマブ(V10XX02)、ベドリズマブ(L04AA33)、トラスツズマブ(L01XC03)、ゲムツズマブオゾガマイシン(L01XC05)、セツキシマブ(L01XC06)、ベバシズマブ(L01XC07)、パニツムマブ(L01XC08)、デノスマブ(M05BX04)、エボロクマブ(C10AX13)、ブロダルマブ(L04AC12)、エレヌマブ(N02CD01)、カツマキソマブ(catumaxomab)(L01XC09)、オファツムマブ(L01XC10)、イピリムマブ(L01XC11)、エレヌマブ-aooe、ブレンツキシマブベドチン(L01XC12)、ペルツズマブ(L01XC13)、トラスツズマブエムタンシン(L01XC14)、オビヌツズマブ(L01XC15)、ジヌツキシマブベータ(L01XC16)、ニボルマブ(L01XC17)、ナタリズマブ(L04AA23)、イキセキズマブ(L04AC13)、レスリズマブ(R03DX08)、デュピルマブ(D11AH05)、ペムブロリズマブ(L01XC18)、ブリナツモマブ(L01XC19)、ラムシルマブ(L01XC21)、ネシツムマブ(L01XC22)、エロツズマブ(L01XC23)、ダラツムマブ(L01XC24)、モガムリズマブ(L01XC25)、イノツズマブオゾガマイシン(L01XC26)、オララツマブ(L01XC27)、デュルバルマブ(L01XC28)、ベルメキマブ(L01XC29)、アベルマブ(L01XC31)、アテゾリズマブ(L01XC32)、セミプリマブ(L01XC33)、モキセツモマブパスドトックス(L01XC34)、タファシタマブ(L01XC35)、エンフォルツマブベドチン(L01XC36)、ポラツズマブベドチン(L01XC37)、イサツキシマブ(L01XC38)、ベランタマブマホドチン(L01XC39)、ドスターリマブ(L01XC40)、トラスツズマブデルクステカン(L01XC41)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE、ブリナツマブなど)、ソリトマブ、AMG330、MT112、MT111、BAY2010112、MEDI-565、フレマネズマブ、ガルカネズマブ-gnlm、エプチネズマブ-jjmr、ウステキヌマブ、エクリズマブ、オマリズマブ、又はそれらの組み合わせである。
【0135】
本発明に従って使用され得る抗体の他の非限定的な例としては、エタネルセプト、トシリズマブ、シルツキシマブ、サリルマブ、オロキズマブ、シルクマブ、チルドラキズマブ、グセルクマブ、BI-655066、LY3074828、secukinumab、CNTO6785、ビメキズマブ、SCH-900117、MLDL1278A、ボコシズマブ、ブリアキヌマブ、ムロモナブ、アブシキシマブ、アレムツズマブ、セルトリズマブ、カナキヌマブ、ベリムマブ、イダルシズマブ、メポリズマブ、アリロクマブ、オクレリズマブ、エミシズマブ、ベンラリズマブ、ブロスマブ、ラナデルマブ、エマパルマブ、イバリズマブ、ラブリズマブ、ロモソズマブ、リサンキズマブ、ブロルシズマブ、クリザンリズマブ、サシツズマブ、エファリズマブ、ネバクマブ、ダクリズマブ、オマリズマブ、ウステキヌマブ、アドトラスツズマブエムタンシン、fam-トラスツズマブデルクステカン、サトラリズマブ、イネビリズマブ、テプロツムマブ、エビナクマブ、アミバンタマブ、トラロキヌマブ、アニフロルマブ、ロンカスツキシマブテシリン、アトルティビマブ、マフティビマブ、オデシビマブ-ebgn、マルゲツキシマブ-cmkb、アンスビマブ-zykl、アデュカヌマブ、アデュカヌマブ-avwa、レグダンビマブ、ソトロビマブ、チソツマブベドチン、チソツマブベドチン-tftv、テゼペルマブ、テゼペルマブ-ekko、テベンタフスプ、テベンタフスプ-tebn、ファリシマブ、ファリシマブ-svoa、スチムリマブ、スチムリマブ-jome、レラトリマブ、チキサゲビマブ、シルガビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、チスレリズマブ(tislelizumab)、オンブルタマブ(omburtamab)、スペソリマブ、ニルセビマブ、テクリスタマブ、ウブリツキシマブ、モスネツズマブ、トレメリムマブ、ペンプリマブ、レカネマブ、イノリモムブ(inolimomb)、テプリズマブ、ドナネマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、トリパリマブ、シンチリマブ、レチファンリマブ、オポルツズマブモナトックス、ナルソプリマブ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0136】
本発明の組成物に用いられ得るバイオ医薬品化合物にはまた、抗体模倣物も含まれる。使用され得る抗体模倣物の非限定的な例としては、アフィボディ分子(ABY-025など)、アフィリン(SPVF2801など)、アフィマー、アフィチン、アルファボディ(CMPX-1023など)、アンチカリン、アビマー、設計されたアンキリン反復タンパク質(MP0112などのDARPin)、フィノマー、クニッツドメインペプチド(Ecallantide(Kalbitor)など)、アドネクチン及びモノボディ(Pegdinetanib(Angiocept)など)、nanoCLAMP、ラクダ抗体などの単一ドメイン抗体、並びにIgNARから得られたVNAR断片、軟骨魚由来の(免疫グロブリン新抗原受容体)、二価単一ドメイン抗体(caplacizumab(Cablivi)など)、並びにアルマジロ反復タンパク質以下で設計されたアルマジロ反復タンパク質、ペプチドアプタマー、及びノッチン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0137】
代替における本発明の組成物は、抗体断片(F(ab)、例えば、ラニビズマブ(S01LA04)、二価抗体断片(F(ab’))などの抗体由来分子、並びに抗原結合部位を保持する可変断片(Fv)及びその他の断片などの関連する分子、単鎖可変断片(scFv)、(二価(例えば、ダイアボディ)又は三価であり得る)、単一ドメイン抗体(dAb)、又はそれらの組み合わせを含む。「二価」とは、抗体、抗体模倣物、抗体由来分子、及び関連する分子が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、一価分子は、1つの抗原結合部位のみを有する。特異的結合部位を保持する抗体由来分子の合成に関与する技法の一般的なレビューは、Winter & Milstein(1991)Nature 349,293-299に見出される。
【0138】
「ScFv分子」とは、V及びVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結されている分子を含む。抗体全体ではなく抗体由来の分子を使用には、数倍の利点がある。断片のより小さいサイズは、標的部位へのよりよい浸透などの改善された薬理学的特性をもたらし得る。補体結合などの抗体全体のエフェクター機能は除去される。Fab、Fv、ScFv、及びdAb抗体由来分子は全て、抗体由来分子において発現され、抗体由来分子から分泌され得、したがって容易に大量の分子の生成が可能である。
【0139】
かかる抗体、抗体模倣物、抗体由来分子、及び関連する分子は、単一特異性、二重特異性、若しくは多重特異性、又はこれらの組み合わせであり得ることを理解されたい。二重特異性又は多重特異性とは、それらが2つ以上の異なる標的に結合するという意味を含む。
【0140】
「抗体」という用語はまた、インビボ及びインビトロベースの両方の選択方法を使用してスクリーニング及び選択され得る抗体様分子を含む。かかる選択方法には、酵母表面ディスプレイ、原核又は細菌表面ディスプレイ、哺乳動物表面ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、cDNAディスプレイ、CISディスプレイ、共有結合抗体ディスプレイ(CAD)、インビトロ区画化(IVC)、及びファージディスプレイ技法、又は分子のための他のランダム選択技法が含まれる。
【0141】
本発明の組成物に用いられ得るバイオ医薬品化合物にはまた、以下の抗体/免疫グロブリンが含まれる:免疫グロブリン、正常ヒト、血管外投与用(J06BA01)、免疫グロブリン、正常ヒト、血管内投与用(J06BA02)、抗D(rh)免疫グロブリン(J06BB01)、破傷風免疫グロブリン(J06BB02)、水痘/帯状疱疹免疫グロブリン(J06BB03)、B型肝炎免疫グロブリン(J06BB04)、狂犬病免疫グロブリン(J06BB05)、風疹免疫グロブリン(J06BB06)、ワクシニア免疫グロブリン(J06BB07)、ブドウ球菌免疫グロブリン(J06BB08)、サイトメガロウイルス免疫グロブリン(J06BB09)、ジフテリア免疫グロブリン(J06BB10)、A型肝炎免疫グロブリン(J06BB11)、脳炎、ダニ媒介免疫グロブリン(J06BB12)、百日咳免疫グロブリン(J06BB13)、麻疹免疫グロブリン(J06BB14)、耳下腺炎免疫グロブリン(J06BB15)、パリビズマブ(J06BB16)、モタビズマブ(J06BB17)、ラキシバクマブ(J06BB18)、ベズロクスマブ(J06BB21)、オビルトキサキシマブ(J06BB22)、炭疽菌免疫グロブリン(J06BB19)、組み合わせ(J06BB30)、又はそれらの組み合わせ。
【0142】
本発明の組成物は、バイオ医薬品化合物が1つ以上のワクチンを含む場合に特に有用である。
【0143】
発展途上国におけるワクチン接種プログラムの改善を考慮する場合、コストは重要な要因である。ワクチンコストを低減する1つの方法は、より安定したワクチン組成物を生成することであり、かかる組成物は、コールドチェーンを必要とせず、例えば、それらをより安価で出荷及び保管しやすくする。更に、最適ではない保管条件下でのワクチンの活性の損失は、効果の低いワクチン接種プログラムに顕著に寄与すると考えられている(Brandau et al,2003)。World Health Organisation(WHO)は、37℃で1週間保管した後のワクチン製剤の最低力価を要求している。しかしながら、多くのワクチンは、室温でわずか1時間保管した場合、その効力の50%以上を損失する可能性がある(Plotkin&Orenstein,2004)。
【0144】
一実施形態では、ワクチンは、生ワクチン又は活性ワクチン、弱毒化ワクチン、生弱毒化ワクチン(例えば、麻疹、おたふく風邪、及び風疹(MMR)ワクチン、水痘(水疱瘡)ワクチン)、不活性化ワクチン又は死菌ワクチン(例えば、ポリオワクチン、インフルエンザワクチン)であり得る。
【0145】
一実施形態では、ワクチンは、例えば、生弱毒化ワクチン、不活性化ワクチン、サブユニットワクチン、組換えワクチン、多糖類ワクチン、コンジュゲートワクチン、トキソイドワクチン、ウイルスベクターワクチン、及び/又はメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンなどの全病原体ワクチン、サブユニットワクチン、又は核酸ワクチンであり得る。
【0146】
別の実施形態では、ワクチンは、サブユニットワクチン(例えば、B型肝炎、無細胞百日咳ワクチンインフルエンザ、HIV、HPV、マラリア、淋病、ポリオ、ジカ、天然痘、猿痘、様々な種類のがん(HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD-20、VEGF(血管内皮成長因子)、VEGFR(血管内皮成長因子受容体)、CEA(がん胎児性抗原)、CA-125(がん抗原125)、MUC-1(ムチン1)、又はMAGE(黒色腫関連抗原)を発現及び/若しくは過剰発現するがんなど)、より特に、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び/若しくは重症急性呼吸器症候群(SARS)などの呼吸器合胞体ウイルス(RSV)又はコロナウイルス(いずれかの変異体を含む)によって引き起こされる急性呼吸器疾患、特にCOVID-19に対する、又は例えば、タンパク質がスパイク(S)タンパク質若しくはその一部である、タンパク質サブユニットワクチン、例えば、組換えワクチン若しくはウイルス様粒子(VLP)ワクチン(カプシドウイルス様粒子、ウイルスカプシド由来のウイルス様粒子を含む);多糖類ワクチン、例えば、肺炎球菌多糖類ワクチン、髄膜炎球菌ワクチン;あるいはコンジュゲートワクチン、例えば、肺炎球菌コンジュゲートワクチン、インフルエンザ菌(haemophilus influenza)B型コンジュゲート、髄膜炎球菌コンジュゲートワクチン、MenACWYなど)であり得る。サブユニットワクチンは、異なる系、例えば、E.coli系、酵母細胞系、昆虫細胞系、植物系、又は哺乳動物細胞系で生成され得る。
【0147】
更に別の実施形態では、ワクチンは、核酸ワクチン(DNAワクチン又はRNAワクチンなど、好ましくはRNAがメッセンジャーRNA(mRNA)である)であり得る。かかるワクチンの例としては、がんに対するDNAワクチン、結核に対するDNAワクチン、エドワージエラ・タルダに対するDNAワクチン、HIVに対するDNAワクチン、炭疽菌に対するDNAワクチン、インフルエンザに対するDNAワクチン、デング熱に対するDNAワクチン、腸チフスに対するDNAワクチン、種々の抗原に対するDNAワクチン(例えば、pCE6、pCE18、プラスミドpSia10、pIDSia10、pIDOmpU、pSiVa1などの形態のS iniae DNAワクチン)、予防DNAワクチン、非複製mRNAワクチン、インビボ自己複製mRNAワクチン、インビトロ樹状細胞非複製mRNAワクチン、樹状細胞ワクチン、個別化がんワクチン(例えば、ワクチン内のRNA配列ががん特異的抗原子をコードするように設計されている)、SARS疾患に対するRNAワクチン(コロナウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされるもの、すなわち、コロナウイルス2019、又はCOVID-19など)が挙げられ得る。
【0148】
更に別の実施形態では、ワクチンは、トキソイドワクチン(例えば、破傷風トキソイド(TT)ワクチン、ジフテリアワクチン、ジフテリア、百日咳、及び破傷風(DPT)ワクチン、又はボツリヌストキソイドワクチン)であり得る。疑いを避けるために、トキソイドワクチンには、例えば、疾患を引き起こす細菌によって作製された毒素を使用するものが含まれる。
【0149】
更に別の実施形態では、ワクチンは、ウイルスベクターワクチンであり得る。ウイルスベクターは、ポックスウイルス(例えば、ワクチンウイルス、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)、アビポックス、鶏痘)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、センダイウイルス、単純ヘルペスウイルス、又はそれらの組み合わせであり得る。ウイルスベクターは、生又は活性ウイルスワクチン、弱毒化ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、不活性又は死菌ウイルスワクチンであり得る。
【0150】
更に別の実施形態では、ワクチンは、細菌ベクターワクチンであってもよい。細菌ベクターは、乳酸菌Mycobacterium bovis BCG、Lactococcus lactis、Salmonella、Salmonella spp、Bacillus subtilis、Pseudomonas aeruginosa、Shigella、Shigella spp、Vibrio Cholera、Vibrio anguillarum、Corynebacterium pseudotuberculosis、Bordetella pertussis、Streptococcus、Listeria Monocytogenes、Escherichia coli、Yersinia enterocolitica、Mycobacterium smegmatis、Lactobacillus、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0151】
更に別の実施形態では、ワクチンは、例えば、肺炎球菌細菌感染症に対するコンジュゲートワクチンであり得る。
【0152】
更に別の実施形態では、ワクチンは、組換えベクターワクチンであり得る。
【0153】
更に別の実施形態では、ワクチンは、ナノ粒子ベースのワクチン(例えば、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)ベースのワクチン又は固体脂質ナノ粒子(sLNP)ベースのワクチン)、又はウイルス様粒子(VLP)ワクチン(例えば、カプシドVLPワクチン又はウイルスカプシド由来のVLPワクチン)であり得、そのワクチンの各々は、インフルエンザ、HIV、HPV、マラリア、淋病、ポリオ、ジカ、天然痘、猿痘、細菌感染症(例えば、Chlamydia trachomatis、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Bordetella pertussis、又はMycobacterium tuberculosisなど)、又は様々な種類のがん(例えば、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD-20、VEGF(血管内皮成長因子)、VEGFR(血管内皮成長因子受容体)、CEA(がん胎児性抗原)、CA-125(がん抗原125)、MUC-1(ムチン1)、又はMAGE(黒色腫関連抗原)を発現及び/又は過剰発現するがん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、子宮頚がん、及び卵巣がんなど)、より特に、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び/又は重症急性呼吸器症候群(SARS)などの呼吸器合胞体ウイルス(RSV)又はコロナウイルス(いずれかの変異体を含む)などのウイルスによって引き起こされる急性呼吸器疾患、特にCOVID-19に対して有効であり得る。ナノ粒子又はVLPベースのワクチンはまた、タンパク質又はその部分(例えば、ウイルス、細菌、哺乳動物、真菌、又は寄生虫タンパク質など、それらのタンパク質又はその部分は、膜タンパク質、表面タンパク質、融合タンパク質、エンベロープタンパク質、構造タンパク質、スパイクタンパク質、ヌクレオカプシド若しくはカプシドタンパク質、又はそれらの組み合わせであり得る)、DNA、脂質、多糖類、毒素、(細菌毒素など)、mRNA、RNA、又はウイルスワクチン(生又は活性ウイルスワクチン、弱毒化ウイルスワクチン、生弱毒化ウイルスワクチン、不活性化又は死菌ウイルスワクチンなど)を運搬及び/又は送達し得る。ナノ粒子又はVLPベースのワクチンはまた、更に、TLRアゴニスト及びサイトカインなどのアジュバント及び免疫刺激分子を運搬及び/又は送達し得る。
【0154】
任意選択で、ワクチン組成物の形態にある本発明の組成物は、アジュバントを含み得る。「アジュバント」という用語は、製剤内の本発明の1つ以上の生成物の生物学的効果を増加させるために製剤に添加される任意の化合物を意味することが意図される。アジュバントは、異なるアニオン、例えば、限定されないが、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアネート、亜硫酸塩、水酸化物、ホスファート、カルボナート、ラクタート、グリコラート、シトラート、ボラート、タルトラート、及び異なるアシル組成のアセタートを有する亜鉛、銅、又は銀塩のうちの1つ以上であり得る。アジュバントはまた、有機ポリカチオン(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))、カチオン性セルロースエーテルなどのカチオン性ポリマー、カチオン性セルロースエステル、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン性デンドリマー、ポリ(ビニルイミダゾール)などのカチオン性合成ポリマー、及びポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、及びこれらのアミノ酸を含有するペプチドなどのカチオン性ポリペプチド、カチオン性(N3)又はアニオン性(L3)脂質アジュバントであり得る。宿主種に応じて、免疫学的応答を増加させるために様々なアジュバントが使用され得る。かかるアジュバントには、トキソイドアジュバント、サイトカイン、ナチュラルキラーT細胞(NKT)リガンド(例えば、アルファ-ガラクトシルセラミド(アルファGalCer)及び類似体)、C型レクチン受容体(CLR)リガンド、toll様受容体(TLR)アゴニスト(例えば、CpG、CpG ODN、ポリI:C、グルコピラノシル脂質A(GLA)、モノホスホリル脂質A(MPL)、レシキモド(R848)、フラゲリン、イミダゾキノリン(例えば、イミキモド))、STINGリガンド(例えば、STINGアゴニスト:ビス-(3’,5’)-環状二量体グアノシン一リン酸(c-di-GMP又はcdGMP))、ムラミルジペプチド、EP109942、EP180564及びEP231039の「Iscoms」、リゾールシチンなどの界面活性物質、ポリオニオン、ペプチド、リムペットヘモシアニン(KLH)、アルミニウム塩、ミョウバン、Alhydrogel、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、サポニンベースのアジュバント(例えば、マトリックスM1)、デルタイヌリン微粒子アジュバント(例えば、Advax)、DEAE-デキストラン、中性油(例えば、ミグリオール)、植物油(例えば、落花生油)、スクアレン(例えば、シャークスクワレン(shark squalene))エマルジョン(例えば、MF59、AS03、フロイントの完全又は不完全アジュバント、MontanideISA51、MontanideISA720)、リポソーム(例えば、DOPE(1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン):DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物塩)多重層リポソーム、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)リポソーム)、脂質ナノ粒子、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノ粒子、Pluronicポリオール又はRibiアジュバントシステム、核酸(例えば、一本鎖RNA)、Hiltonol、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。「Pluronic」、「Alhydrogel」、「Hiltonol」、「Montanide」は、登録商標である。
【0155】
かかるワクチンは、疾患、障害、及び/又は状態に対するワクチン接種、それらのリスクの低減、予防、又はそれらとの戦いにおける使用に適しているであろう。当該疾患、障害、及び/又は状態は、例えば、ウイルス、細菌、及び/又は寄生虫感染によって引き起こされ得る。代替的に、当該疾患、障害、及び/又は状態は、自己免疫疾患、心血管疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、及び/又はがんを含む、内因性及び/又は遺伝的/環境的病因を有し得る。
【0156】
好ましい実施形態では、疾患、障害及び/又は状態を引き起こすウイルスは、オルトミキソウイルス(例えば、インフルエンザA(H1N1)、A(H3N2)、A(H7N7)、A(H3N8)などのインフルエンザウイルス、イサウイルス、又はソゴトウイルス)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス、イヌパルボウイルス(CPV)、ネコ汎白血球減少症(FPV)、ミンク腸炎ウイルス(MEV))、アデノウイルス、ニューモウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)、ウマヘルペスウイルス(EHV)、水痘帯状疱疹ウイルス)、マトナウイルス(例えば、風疹ウイルス)、ラブドウイルス(狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV))、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、天然痘ウイルス、猿痘)、パラミキソウイルス(例えば、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、おたふく風邪ウイルス、イヌジステンパーウイルス(CDV)、イヌパラインフルエンザウイルス(CPi))、パピローマウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV))、レオウイルス(例えば、ロタウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、ポリオウイルス、肝ウイルスAウイルス、肝ウイルスBウイルス)、カリウイルス(例えば、ノルウォークウイルス、サポウイルス、ネコカリシウイルス(FCV)などのウイルス)、ノロウイルス、フラウイルス(例えば、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、日本脳炎ウイルス)、トガウイルス(例えば、アルファウイルス)又はコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2などの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)であり得る。
【0157】
好ましい実施形態では、細菌は、coccus細菌(例えば、Chlamydia trachomatis、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Staphylococcus aureus、Staphylococcus haemolyticus、Streptococcus agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus equi、Streptococcus pyogenes)、bacillus細菌(例えば、Bacillus anthracis、Bordetella pertussis、Bordetella bronchiseptica、Chlamydophila pneumoniae、Clostridium tetani、Corynebacterium diphtheriae、Legionella pneumophila、Mycobacterium leprae、Mycobacterium tuberculosis、Vibrio cholerae、Rickettsia)、らせん状(スピロヘータ又はスピリラ)細菌(例えば、Borrelia burgdorferi、Leptospira、Leptospira interrogans、Treponema pallidum、Treponema denticola)、Neorickettsia risticii、又はマイコプラズマ(例えば、Mycoplasma gallisepticum、Mycoplasma hyopneumoniae)であり得る。
【0158】
好ましい実施形態では、寄生虫は、原虫(例えば、ジアルジア、マラリア原虫)、寄生蠕虫(例えば、扁形動物、線虫)、又は外部寄生虫(例えば、ダニ(tick)、ノミ、シラミ、ダニ(mite))であり得る。
【0159】
好ましい実施形態では、自己免疫疾患は、ブドウ膜炎、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎(hidradenitis supporativa)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、1型糖尿病、重症筋無力症、ギランバレー症候群、変形性関節症、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、発作性夜間ヘモグロビン尿症、視神経脊髄炎、慢性特発性蕁麻疹、片頭痛、又は嚢胞性線維症であり得る。
【0160】
一実施形態では、がんは、がん腫、肉腫、リンパ腫、白血病、生殖細胞がん、又は芽腫であり得る。好ましくは、がんは、骨及び筋肉がん、脳及び神経系のがん(例えば、神経膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、脊索腫)、乳がん(例えば、乳がん、髄様がん、葉状腫瘍)、内分泌系がん(例えば、甲状腺がん、多発性内分泌腫瘍症候群、副腎皮質がん)、眼がん(例えば、ぶどう膜黒色腫、網膜芽細胞腫、視神経膠腫)、胃腸がん(例えば、胃(gastric)(胃(stomach))がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、膵臓がん、肝臓がん胆嚢がん)、生殖器及び婦人科がん(例えば、膀胱がん、子宮頚がん、卵巣がん、腎細胞がん、前立腺がん、腎芽腫、尿路上皮性膀胱がん)、頭頸部がん(例えば、頭頸部がん、食道がん、咽頭がん、口腔がん)、造血がん(ホジキンリンパ腫、エイズ関連リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫)、皮膚がん(例えば、黒色腫)、基底細胞がん、扁平上皮細胞皮膚がん、角化棘細胞腫)、胸部がん及び呼吸器がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸膜肺芽腫)、ウイルス関連がん(例えば、HIV/AIDS関連がん)であり得る。
【0161】
別の実施形態では、がんは、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)、EGFR(上皮成長因子受容体)、CD-20、VEGF(血管内皮成長因子)、VEGFR(血管内皮成長因子受容体)、CEA(がん胎児性抗原)、CA-125(がん抗原125)、MUC-1(ムチン1)、MAGE(黒色腫関連抗原)などの1つ以上の腫瘍関連抗原を発現及び/又は過剰発現していてもよい。
【0162】
したがって、ワクチンの例としては、注射型ポリオワクチン(ソークワクチン)、A型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン(例えば、イヌ科、ネコ科又はヒト狂犬病ワクチン)、インフルエンザワクチン(例えば、ウマインフルエンザワクチン)、ダニ媒介脳炎ワクチン、東部及び西部ウマ脳脊髄炎ワクチン(EEE/WEE)、コロナウイルス(例えば、SARSコロナウイルス)ワクチン(BBIBP-CorV、CoronaVac、Covaxin、QazVac、TURKOVAC、CoviVacを含む)、注射型腸チフロイドワクチン、コレラワクチン、ペタシスワクチン、百日咳ワクチン、炭疽菌ワクチン、コレラワクチン、ペストワクチン、サルモネラワクチン、結核ワクチン、腸チフスワクチン、腸内毒素原性Escherichia coliワクチン、生弱毒化インフルエンザワクチン(LAIV)例えば、FLUMIST、日本脳炎ワクチン、麻疹ワクチン、おたふく風邪ワクチン、麻疹及び風疹(MR)ワクチン、麻疹、おたふく風邪、及び風疹(MMR)ワクチン、麻疹、おたふく風邪、風疹、及び水痘(MMRV)ワクチン、ポリオワクチン、ロタウイルスワクチン、風疹ワクチン、天然痘ワクチン、水痘ワクチン、黄熱ワクチン、帯状疱疹(zoster)/帯状疱疹(shingles)ワクチン、ダニ媒介性脳炎ワクチン、COVID-19)、mRNAワクチン、トキソイドワクチン(例えば、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ボツリヌムトキソイド)、ウイルスベクターワクチン、DNAワクチン、組換えベクターワクチン、サブユニットワクチン(タンパク質サブユニット、例えば、B型肝炎、無細胞性百日咳ワクチン、多糖類、例えば、肺炎球菌多糖類ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、又はコンジュゲート、例えば、肺炎球菌コンジュゲートワクチン、インフルエンザ菌B型コンジュゲートワクチン、髄膜炎菌コンジュゲートワクチンなど)、組換えワクチン、コンジュゲートワクチン、並びにワクチンアジュバント、又はそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0163】
ワクチンの他の例としては、エボラワクチン、ジカワクチン、ポックスウイルスワクチン(例えば、猿痘ワクチン)、RSVワクチン、HIVワクチン、ネコ鼻気管炎(FVR)ワクチン、ウマ西ナイルウイルスワクチン、ポトマック馬熱(PHF)ワクチン、ウマヘルペスウイルスワクチン、マラリアワクチン(例えば、RTS、S/A S01又はMosquirix(登録商標))又はがんに対するワクチン(例えば、HEPLISAV-B(登録商標)、Gardasil(登録商標)、Cervarix(登録商標)、T-VEC(Imlygic(登録商標))、Sipuleucel-T、PROSTVAC(登録商標)、CVAC-301(PANVAC(登録商標))、CV9104、MVA.5T4、MVA-BN(R)-HER2、TroVax(登録商標)、DCVax-L、TAEK-VAC-HerBy、ChAdOx1-MAGEA3-NYESO、Rindopepimut、及びHER2及び短尾奇形発現がんに対するワクチンが挙げられる。
【0164】
いくつかの実施形態では、ワクチンは対象に1回のみ投与され得る。他の実施形態では、ワクチンは、対象に2回又は複数回投与され得る。例えば、ワクチンが不活性化ワクチン、サブユニットワクチン、組換えワクチン、多糖類ワクチン、コンジュゲートワクチン、又はトキソイドワクチンである実施形態では、対象に、一次用量、及び1つ以上の後続のブースター用量を別個に投与することが適切であり得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、別の種類のバイオ医薬品化合物(例えば、抗体)と組み合わせて対象に投与され得る。したがって、免疫化は、能動的及び/又は受動的免疫化の構成要素を含み得る。能動免疫化は、抗原への曝露後に能動免疫化を誘発するが、受動的免疫化は、例えば、(例えば、別の宿主から)外因的に生成される事前形成された抗体を介して、受動的に免疫を提供する。
【0166】
免疫療法、任意選択で、免疫療法は、腫瘍溶解性ウイルス療法である。腫瘍溶解性ウイルス療法(OV)とは、複製能力のあるウイルスを使用してがん細胞に感染させ、破壊する免疫療法の形態の意味を含む。好ましくは、能力のあるウイルスは、腫瘍細胞を特異的に攻撃するが、健康な細胞は攻撃しない。
【0167】
本発明の組成物はまた、
●外因性抗原、内因性抗原、及び自己抗原、若しくはそれらの組み合わせを含む抗原、並びに/又は
●レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、ポックスウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)、若しくはそれらの組み合わせを含むウイルスベクターを含み得る。
【0168】
本発明の組成物に用いられ得るバイオ医薬品化合物にはまた、アプタマー(DNA、RNA、XNA、又はペプチドアプタマーを含む)、モルフォリノ、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリプリン逆フーグスティーンヘアピン、又はそれらの組み合わせを含むオリゴヌクレオチド、並びに、ヌクレオチド(例えば、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、シチジン一リン酸(CMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、環状シチジン一リン酸(cCMP)、環状ウリジン一リン酸(cUMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシトシチジン一リン酸(dCMP)、(デオキシ)チミジン一リン酸(dTMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、グアノシン二リン酸(GDP)、シチジン二リン酸(CDP)、ウリジン二リン酸(UDP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、(デオキシ)チミジン二リン酸(dTDP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、(デオキシ)チミジン三リン酸(dTTP))、ヌクレオシド及び対応する核酸塩基(例えば、アデニン、アデノシン、デオキシアデノシン、グアニン、グアノシン、デオキシグアノシン、チミン、5-メチルウリジン、チミジン、ウラシル、ウリジン、デオキシウリジン、シトシン、シチジン、デオキシシチジン)、アンチセンス要素(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA)、siRNA治療薬(例えば、ONPATTRO(登録商標)(パチシラン)及びGIVLAARI(商標)(ギボシラン))、mRNA治療薬、DNA治療薬、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0169】
本発明の組成物に用いられ得るバイオ医薬品化合物には、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-27、IL-4、IL-10、IL-35、IL-33)、サイトカイン(例えば、インターフェロン、G-CSF)、ケモカイン(例えば、CCL3、CCL26、CXCL7)、シトシンホスフェート-グアノシン、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、又はそれらの組み合わせなどの免疫調節剤も含まれる。
【0170】
加えて、及び/又は代替的に、本発明の組成物に用いられ得る好ましいバイオ医薬品化合物には、室温及び大気圧で、少なくとも約10μg/mLなどの少なくとも約100μg/mLを含む、少なくとも約1mg/mLなど少なくとも約10mg/mL、例えば、少なくとも約1μg/mL、特に、少なくとも約0.5μg/mL、例えば、少なくとも約0.05μg/mLなどの少なくとも約0.1μg/mL、特に、少なくとも約0.01μg/mLである水性溶解度を有する(上に列挙されるか、又はその他の)ものが含まれる。「水性」溶解度は、純粋な水における溶解度だけでなく、関連する生理学的流体、特に鼻に見られるもの(等張性及びpHの観点からもシミュレートすることができる)における溶解度を含むことが理解されるであろう。
【0171】
本発明の組成物に用いられ得る好ましい有効成分としては、融合タンパク質アバタセプト及び以下の抗体:ペムブロリズマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、ニボルマブ、インフリキシマブ、エクリズマブ、オマリズマブ、セツキシマブ及びパニツムマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ-gnlm、及びエプチネズマブ-jjmr;以下の酵素:アルテプラーゼレテプラーゼ、テネクテプラーゼ、ドルナーゼアルファ、ペグロチカーゼ、ラスブリカーゼ及びL-アスパラギナーゼ;並びに以下のワクチン:チフロイドワクチン、百日咳ワクチン、コレラワクチン、結核ワクチン、腸チフスワクチン、麻疹、おたふく風邪及び/又は風疹(MMRを含む)ワクチン、ポリオワクチン、黄熱ワクチン、帯状疱疹(zoster)/帯状疱疹(shingles)ワクチン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びボツリヌストキソイドワクチン、特にインフルエンザワクチン及びSARSコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)ワクチンが挙げられる。
【0172】
本発明の組成物に用いられ得る他の有効成分には、がん胎児性抗原(CEA)、がん関連腫瘍マーカー(がん抗原125(CA-125)など)、ムチン1(MUC-1)、黒色腫関連抗原(MAGE)などが挙げられる。
【0173】
同じ又は異なるクラスの前述の有効成分のうちの1つ以上の組み合わせが用いられ得る。
【0174】
本発明の組成物が、噴霧乾燥のプロセスによるものを含む、前述の溶媒ベースのプロセスによって作製される場合、これは、非晶質の担体材料内に自由に分散し、カプセル化されているため、もはや結晶塩の形態ではない形態での有効成分の存在をもたらし得る。本発明の組成物は、本明細書に記載の通常の保管条件下で、その有効成分のほとんど損失のない又は損失のない化学的安定性をもたらし得る。
【0175】
更に、このように調製される場合、本発明の組成物中に存在するバイオ医薬品化合物は、関連する組成物の製造前に、単離された形態のバイオ医薬品化合物と比較した場合、本質的に同じ生物学的活性を有し得る。「本質的に同じ生物学的活性」とは、例えば、以下に記載されるように議題のバイオ医薬品化合物についての適切なアッセイによって測定され得る、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約20%未満、約25%未満、約20%未満、又は約15%を含む、約90%未満などの約95%未満、特に約10%未満の生物学的活性の損失(これは、用いられるバイオ医薬品化合物に応じて、効力、結合活性、及び/又は免疫応答などの薬理学的効果を含み得る)があることを含む。
【0176】
更に、本発明の組成物は、単離された固形形態で、医薬製剤若しくは剤形に製剤化された場合、及び/又は(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)そのための鼻用アプリケーター若しくはリザーバーなどの医薬投薬手段に装填された場合、又はそうでなければ、上記で定義された通常の保管条件下で、以下に記載されるように議題のバイオ医薬品化合物についての適切なアッセイによって測定され得る、バイオ医薬品化合物の生物学的活性のわずかな程度の損失(例えば、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約20%未満、約25%未満、約20%未満、又は約15%を含む、約90%未満などの約95%未満、特に約10%未満のバイオ医薬品化合物の生物学的活性の損失)を伴って保管され得る。
【0177】
本発明の組成物の単回用量で用いられ得る有効成分の量は、その薬理学的効果を発揮するのに十分である必要がある。経粘膜(例えば、舌下、頬、特に鼻腔内に)投与される本発明の組成物については、その量は単回投与で約100mgを超えない必要がある。上記の関連するバイオ医薬品化合物の実際の用量は、当技術分野で既知であり、Martindale-The Complete Drug Reference,40th Edition,Pharmaceutical Press,London(2020)及びそこに言及されている文書などの医学文献において議題の有効成分について記載され得、それら文書の全てに関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本発明の組成物は、同じ有効成分を含む先行技術の組成物と比較して、良好な生物学的利用能及び/又は迅速な吸収を示し、より迅速な作用の発現及び/又はより高い血漿濃度をもたらすことが見出され得る。
【0178】
この点で、本発明の組成物中の有効成分の薬理学的に適切な量は、文献で言及されている量よりも少なくてもよい可能性がある(上記参照)。それにもかかわらず、かかる量は、当業者によって決定され得、治療される状態の種類及び重症度、並びに個々の患者に何か最も適しているかによって異なり得る。これはまた、製剤の性質並びに治療される状態の種類及び重症度、及び治療される特定の患者の年齢、体重、性別、腎機能、肝機能及び応答によって変わる可能性が高い。
【0179】
バイオ医薬品化合物の効力、及び用いられる最終剤形に応じて、本発明の組成物で用いられ得る有効成分の総量は、組成物の総重量に基づいて、約0.0001重量%又は約0.0002重量%、例えば、約0.1重量%を含む約0.01重量%など(例えば、約1重量%、約2重量%又は約5重量%)、約10重量%(例えば、約20重量%)などの約0.001重量%~約75重量%などの最大約95重量%、例えば約50重量%、例えば約40重量%の範囲にあり得る。これは、本発明による投薬手段に最初に存在する組成物の別個の用量(同じである必要がある)の数とは無関係である。
【0180】
肺、頬、舌下、又は好ましくは鼻腔内を含む経粘膜投与の場合、単位投薬量当たりの(遊離酸/塩基として計算される)有効成分の適切な用量は、用いられ有効成分に応じて、約1mg~約60mg(例えば、約10mgなどの約3mg~約50mg)など、約1μgを含む約0.1μgなどの約0.01μg(例えば、約250μgなどの約10μg)~最大約100mg(例えば、約80mg)の範囲にある。
【0181】
他の投与形態(例えば、注射又は経口による投与)の場合、単位投薬量当たりの(遊離酸/塩基として計算される)有効成分の適切な用量は、用いられる有効成分に応じて、約1mg~約300mg(例えば、約10mg~約200mgなどの約3mg)など、約1μg~約500mgなどの約1,000mg(例えば、約400mg)の範囲にある。
【0182】
代替的に、有効成分の適切な用量は、種々の生物学的薬剤(すなわち、タンパク質、オリゴペプチド、ポリペプチド、酵素、抗体及びその部分、ワクチン、ヌクレオチドなど、抗体類似体、抗体模倣物、免疫グロブリン、免疫調節剤、血液、血液構成要素、細胞、アレルゲン、遺伝子、ウイルス、毒素、毒、又はそれらの組み合わせ)の生物学的活性又は効果(バイオ医薬化合物の質量ではなく)に基づくことができる。適切な用量は、約10-9国際単位(IU)~約1×10IUの範囲にあり得る。国際単位(IU)とは、国際的に受け入れられている標準化された生物学的手順(World Health Organization(WHO)International Standardsを参照)に従って試験された場合の特定の効果を生成する有効成分の量の意味を含む。種々のバイオ医薬化合物に応じて適切なIUを計算するための方法は、当業者に既知であろう。
【0183】
本発明の3つの更なる態様によれば、以下が提供される。
●その中に含まれる少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が(例えば、当該組成物の鼻腔内などの経粘膜投与により)有用である状態の治療での使用のための本発明の組成物、
●その中に含まれる少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が有用である状態の治療のための(例えば、鼻腔内などの経粘膜用)薬剤の製造のための本発明の組成物の使用、及び
●本発明の組成物内に含まれる少なくとも1つのバイオ医薬品化合物が有用である状態の治療の方法であって、当該状態を患っているか、又はそれになりやすい患者に本発明の組成物(例えば、鼻腔内などの経粘膜)投与を含む、方法。
【0184】
本発明の組成物は、かかる組成物に含まれる有効成分(複数可)の性質に応じて、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、クローン病、多発性硬化症、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、糖尿病、尿崩症、がん、並びに乾癬性関節炎及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む広範囲の臨床状態の治療に有用である。
【0185】
例えば、バタセプト及びアダリムマブ(抗TNF(アルファ)剤)を含む本発明の組成物は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、乾癬、化膿性汗腺炎、ブドウ膜炎、及び若年性特発性関節炎の治療に使用され得、例えば、ラニビズマブ及びアフリベルセプトを含む本発明の組成物は、糖尿病性網膜症及び加齢性黄斑変性の治療に使用され得、例えば、アダリムマブを含む本発明の組成物は、乾癬及び強直性脊椎炎の治療に使用され得、例えば、セツキシマブ及びパニツムマブを含む本発明の組成物は、EGFR発現転移性結腸直腸がんの治療に使用され得、ペムブロリズマブ(抗PD-1剤)を含む本発明の組成物は、黒色腫、非小細胞肺がん、頭頚部がん、ホジキンリンパ腫、胃がん、子宮頚がん、尿路上皮がん、結腸直腸がん、腎細胞がん、及び乳がんを治療するために使用され得、ウステキヌマブ(抗インターロイキン(IL)-12/23剤)を含む本発明の組成物は、乾癬を治療するために使用され得、トラスツズマブ(抗HER2剤)を含む本発明の組成物は、乳がんを治療するために使用され得、ベバシズマブ(抗VEGF剤)を含む本発明は、結腸がんを治療するために使用され得、リツキシマブ(抗CD20剤)を含む本発明の組成物は、非ホジキンリンパ腫を治療するために使用され得、ニボルマブ(抗PD1剤)を含む本発明の組成物は、黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん及び頭頚部がんを治療するために使用され得、インフリキシマブ(抗TNF(アルファ)剤)を含む本発明の組成物は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び乾癬を治療するために使用され得、エクリズマブ(抗補体成分C5剤)を含む本発明の組成物は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、及び視神経脊髄炎を治療するために使用され得、オマリズマブ(抗IgE剤)を含む本発明の組成物は、喘息及び慢性特発性蕁麻疹を治療するために使用され得、セツキシマブ及びパニツムマブ(抗EGFR剤)を含む本発明の組成物は、結腸直腸がんを治療するために使用され得、フレマネズマブ(例えば、フレマネズマブ-vfrm)、ガルカネズマブ(例えば、ガルカネズマブ-gnlm)、及びエプチネズマブ(例えば、エプチネズマブ-jjmr)(カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤)を含む本発明の組成物は、片頭痛を治療するために使用され得る。
【0186】
関連する酵素を含む本発明の組成物は、グリコーゲン貯蔵障害(α-グルコシダーゼ)、脂質貯蔵障害(α-D-ガラクトシダーゼA及びβ-グルコセレブロシダーゼ)、ムコ多糖症(α-L-イズロニダーゼ及びイズロネート-2-スルファターゼ)、ムコ多糖症(N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ及びN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ)、様々な膵臓疾患、嚢胞性線維症、シュワックマン・ダイヤモンド症候群、慢性膵炎、膵臓腫瘍、又は膵臓の全部又は一部の除去(PEP)、急性心筋梗塞(アルテプラーゼ、リテプラーゼ、及びテネクテプラーゼ)、嚢胞性線維症(ドルナーゼアルファ)、慢性痛風(ペグロチカーゼ)、腫瘍溶解症候群(ラスブリカーゼ)、白血病(L-アスパラギナーゼ)、デュピュイトラン拘縮(コラゲナーゼ)などのコラーゲンに基づく疾患、重度の複合免疫不全症(ペガデマーゼ、ウシ)、メトトレキサートの解毒(グルカルピダーゼ)、vitreomacular癒着(オクリプラスミン)、急性心筋梗塞(アルテプラーゼ、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼ)、嚢胞性線維症(ドルナーゼアルファ)、慢性痛風(ペグロチカーゼ)、腫瘍溶解症候群(ラスブリカーゼ)及びL-白血病(アスパラギナーゼ)などの様々な状態に使用され得る。
【0187】
ワクチンを含む本発明の組成物は、前述のもののうちのいずれかを含む、免疫応答を誘発することが意図される関連する状態を治療するために使用され得る。
【0188】
前述のように、本発明の組成物はまた、1つ以上のアルキル糖類を含み得るか、又はそれらと一緒に投与され得る。アルキル糖類を含む本発明の組成物は、例えば、アルキル糖類を含まず、かつ/又は界面活性剤として作用することが既知の異なる賦形剤を含む対応する組成物と比較して、驚くほど良好な生物学的利用能及び吸収速度を示すことが見出され得る。
【0189】
用いられ得るアルキル糖類には、アルキルグリコシドが含まれ、これは、C7-18アルキルグリコシドなどのアルキル基への連結によって結合される任意の糖として定義することができる。したがって、アルキルグリコシドは、アルキルマルトシド(ドデシルマルトシドなど)、アルキルグルコシド、アルキルスクロシド、アルキルチオマルトシド、アルキルチオグルコシド、アルキルチオショ糖、及びアルキルマルトトリオシドを含み得る。しかしながら、アルキル糖類は糖エステルであることが好ましい。
【0190】
本発明の組成物に使用できる糖エステルには、ラフィノースエステルなどの三糖類エステル、グルコースエステル、ガラクトースエステル及びフルクトースエステルなどの単糖類エステル、並びに/又は好ましくは、マルトースエステル、ラクトースエステル、トレハロースエステル、及び特に1つ以上のショ糖エステルなどの二糖類エステルが含まれる。
【0191】
本発明の組成物に用いられショ糖エステルは、6~20の親水性-親油性バランス値を有し得る。「親水性-親油性バランス」(HLB)という用語は、当業者によって十分に理解されるであろう専門用語である(例えば、ICI Americas Incにより1976発行(1980改訂)された‘The HLB System:A Time-Saving Guide to Emulsifier Selection’を参照されたく、文書の第7章(20~21ページ)は、HLB値を決定するための方法を提供している)。ショ糖エステルの脂肪酸鎖が長く、エステル化度が高いほど、HLB値は低くなる。好ましいHLB値は、10~20、より好ましくは12~20である。
【0192】
したがって、ショ糖エステルには、C8-22飽和又は不飽和脂肪酸エステル、好ましくは飽和脂肪酸エステル、好ましくはC10-18脂肪酸エステル、最も好ましくはC12脂肪酸エステルが含まれる。かかるショ糖エステルが形成され得る特に適した脂肪酸には、エルカ酸、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びラウリン酸が含まれる。特に好ましいかかる脂肪酸はラウリン酸である。市販のショ糖エステルには、Surfhope(登録商標)及びRyoto(登録商標)(Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)の商標で販売されているものが含まれる。
【0193】
ショ糖エステルは、脂肪酸のジエステル又はモノエステル、好ましくはショ糖モノラウレートなどのモノエステルであり得る。当業者は、「モノラウレート」という用語がラウリン酸のモノエステルを指し、「ラウリン酸エステル」及び「ラウレート」という用語が同じ意味を有し、したがって交換可能に使用できることを理解するであろう。市販のショ糖モノラウレート製品は、「ショ糖ラウレート」と称されることもある。Surfhope(登録商標)D-1216(Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)などの市販のショ糖モノラウレート(又はショ糖ラウレート)製品は、少量のジエステル及び/又はより高級のショ糖エステル、並びに少量の他のショ糖エステル及び遊離ショ糖を含有し得、本発明での使用に適している。当業者は、本明細書における特定のショ糖エステルへの任意の言及は、主構成要素としてそのショ糖エステルを含む市販の製品を含むことを理解するであろう。
【0194】
好ましいショ糖エステルは、1つのショ糖エステルのみを含有し、これは、単一のショ糖エステル(例えば、市販のショ糖エステル製品)が、主構成要素として単一のショ糖エステルを含有することを意味する(市販の製品は、不純物を含有する場合があり、例えば、モノエステル製品は、少量のジエステル及び/又はより高級のエステルを含有し得、かかる製品は、本発明の文脈において「1つのショ糖エステルのみを含有する」とみなされ得る)。本明細書で使用される場合、「主構成要素」という用語は、典型的に、ある特定の範囲のエステル組成で販売されている、一般的な市販の界面活性剤製品などのショ糖エステルの混合物中の主要構成要素(例えば、約70重量/重量%又は体積/体積%などの約50重量%超又は体積%超)を指すと理解されるであろう。
【0195】
特に好ましいショ糖エステルは、ショ糖モノラウレートである。
【0196】
本発明の組成物内又は本発明の1つ以上の組成物を含む最終剤形において含まれるかどうかにかかわらず、用いられ得るアルキル糖類の量は、組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%、好ましくは、約0.75重量%~約3重量%(例えば、約1重量%などの約2重量%まで)などの約0.1重量%~約10重量%の範囲にあり得る。
【0197】
更に、1つ以上の(更なる)界面活性剤を含む、任意選択の追加の賦形剤が本発明の組成物内で用いられ得るか、又は本発明の組成物とともに投与され得る。言及され得る界面活性剤には、ポリオキシル8ステアレート(Myrj(商標)S8)、ポリオキシル32ステアレート(Gelucire(登録商標)48/16)、ポリオキシル40ステアレート(Myrj(商標)S40)、ポリオキシル100ステアレート(Myrj(商標)S100)、及びポリオキシル15ヒドロキシステアレート(Kolliphor(登録商標)HS 15)を含むポリオキシエチレンエステル(例えば、Myrj(商標))、ポリオキシルセトステアリルエーテル(例えば、Brij(商標)CS12、CS20及びCS25)、ポリオキシルラウリルエーテル(例えば、Brij(商標)L9及びL23)、及びポリオキシルステアリルエーテル(例えば、Brij(商標)S10及びS20)を含むポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(商標))、並びにラウロイルポリオキシグリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)及びステアロイルポリオキシグリセリド(Gelucire(登録商標)50/13)を含むポリオキシグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標))、ソルビタンモノパルミテート(Span(商標)40)及びソルビタンモノステアレート(Span(商標)60)を含むソルビタンエステル(例えば、Span(商標))、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)及びポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を含むポリソルベート(Tweens(商標))、並びにラウリルスルファトナトリウム;並びに2-オレオイルグリセロール、2-アラキドノイルグリセロール、モノラウリン、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノパルミテート、グリセリルヒドロキシステアレート、そして好ましくは、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート(例えば、Cithrol(登録商標))及びグリセロールモノカプリレート(例えば、Capmul(登録商標))などのモノアシルグリセロール(モノグリセリド)が含まれる。他の界面活性剤としては、ラウリルラクテート、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、及びポロキサマーが挙げられ得る。
【0198】
本発明の組成物に含まれ得るか、又は本発明の組成物とともに投与され得る他の任意選択の追加の成分(賦形剤)としては、等張性及び/又は浸透性の薬剤(例えば、塩化ナトリウム)、コレステロール及びフィトステロール(例えば、カンペステロール、シトステロール、及びスチグマステロール)などのステロール(又はステロイドアルコール);抗酸化剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、又は加えて、α-トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸ドデシル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、オレイン酸エチル、モノチオグリセロール、コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール、又はチモール);キレート(錯化)剤(例えば、それらの薬剤のいずれかの塩形態を含む、エデト酸(EDTA)、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マルトール及びガラクトース);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、又は加えて、ベンジルアルコール、ホウ酸、パラベン、プロピオン酸、フェノール、クレゾール、又はキシリトール);粘度調整剤又はゲル化剤(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを含むセルロース誘導体、デンプン及び修飾デンプン、コロイド状二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミニウム、ポリカルボフィル(例えば、Noveon(登録商標))、カルボマー(例えば、Carbopol(登録商標))並びにポリビニルピロリドンなど);カルボキシメチルセルロース、修飾セルロースガム及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などの粘膜付着性ポリマー;中架橋デンプン、修飾デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体;架橋ポリビニルピロリドン、カルボマー及びその誘導体(ポリカルボフィル、Carbopol(登録商標)など)などのアクリルポリマー;ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリコ-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);及びクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム);pH緩衝剤(例えば、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、若しくはグリシン又はクエン酸ナトリウムなどのそれらの対応する塩);着色剤;浸透促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ピロリドン、又はトリカプリリン);他の脂質(中性及び極性);メチル、ヒドロキシル、アミノ、及び/又はニトロから選択される1つ以上の基で任意選択で置換された安息香酸、例えば、トルイル酸又はサリチル酸などの芳香族カルボン酸;必要に応じて、香味料(例えば、レモン、ペパーミント粉末、又は好ましくはメンソール)、甘味料(例えば、ネオヘスペリジン、アセスルファムK、又はスクラロース)、並びに染料が挙げられる。他の賦形剤としては、三糖類(例えば、ラフィノース)及びマンニトール、並びにpH調節剤(例えば、塩酸及び水酸化ナトリウム)が挙げられ得る。
【0199】
本発明の組成物自体と一緒に含まれ得るかかる「追加の」賦形剤(本発明の組成物に存在し得るアルキル糖類ではない界面活性剤を含む)の総量(含まれる剤形に関係なく)は、組成物の総重量に基づいて、最大約5重量%などの最大約15重量%(例えば、約10重量%)であり得る。
【0200】
本発明の1つ以上の組成物を含む最終剤形内に含まれ得るかかる「追加の」賦形剤の総量は、例えば、1つ以上の追加の賦形剤が、錠剤、フィルムなどの充填剤又は担体である場合、最大約99%、例えば、最大約90%を含む、最大約99.9%などの、最大約99.99%であり得る。
【0201】
当業者は、本発明の組成物にいずれかの追加の任意選択の成分が含まれる場合、それらの成分の性質、及び/又は含まれるそれらの成分の量が、前述の理由から、組成物のTgに有害な影響を及ぼしてはならないことを理解するであろう。この点において、かかる任意選択の成分は、噴霧乾燥プロセスに組み込まれ得るか(すなわち、適切な揮発性溶媒中で有効成分及び担体材料と一緒に混合され、次いで噴霧乾燥される)、又は噴霧乾燥された複数の粒子に別個に含まれ得る。
【0202】
本発明の更なる態様によれば、医学(ヒト及び獣医学)における使用のための本発明の組成物が提供され、したがって、関連する有効成分が治療するのに既知である状態の医学的治療を必要とする患者の治療において使用するための本発明の組成物が提供される。
【0203】
かかる状態の「治療」には、治療的、対症的、及び緩和的治療に加えて、かかる状態の予防又は診断が含まれる。
【0204】
本発明の組成物は、当業者に既知の任意の適した投薬手段によって投与され得る。本発明の組成物は、適した鼻用アプリケーター又はディスペンサー手段によって、経粘膜、特に鼻腔内に投与され得、この手段は、適した用量の有効成分を本発明の1つ以上の組成物の形態で鼻腔内へ投与することができる。
【0205】
したがって、適した鼻腔投薬手段及び/又はアプリケーターは、1回以上の用量の本発明の組成物自体を収容及び保管することができるか、又は、1回以上の用量の本発明の組成物を収容及び保管し、水の浸入によるものを含め、組成物の物理的及び化学的完全性の重大な損失がないようにするリザーバー/容器に取り付けることができる。このようにして、組成物は、アプリケーターデバイスがエンドユーザーによって発動されるとすぐに使用可能になり(これが単回投与又は複数回投与の使用であるかにかかわらず)、その上で、アプリケーターは、本明細書で定義される適切な用量の有効成分を有する組成物(例えば、粉末)を対象の鼻粘膜に送達する。
【0206】
適切なアプリケーター手段は、先行技術に記載されている。本発明の組成物とともに使用される場合、かかる組成物は、かかるアプリケーター手段に取り付けられているか、又はその一部を形成するリザーバーに装填され得、アプリケーター手段、又はディスペンサーが発動されるまでそこに収容される。以下、「アプリケーター」、「ディスペンサー」、「デバイス」、「アプリケーター手段」、「分注手段」、「アプリケーターデバイス」、「分注デバイス」、及び「吸入器」という用語は、交換可能に使用され得、同じことを意味し得る。
【0207】
本発明の固形の多粒子粉末組成物を収容するリザーバーは、不透明であり得る。本発明の組成物の安定性のために、投与又は使用の前にリザーバーの内容物(すなわち、粉末組成物)を検査する必要はない。
【0208】
「不透明」という用語は、当業者には、「透明又は半透明ではない、光を通さない、かつ/又は光が通過することを可能にしない」ことを含むことが理解されるであろう。
【0209】
したがって、本発明の組成物を含むアプリケーターは、アプリケーターのリザーバーの内容物を観察することができる検査ウィンドウを含まず(又は必要としない)、この点において、その特性が完全に不透明であり得、すなわち、少なくとも約99%などの少なくとも約98%、特に約99.9%の不透明であり、かつ/又は約1%以下などの約2%以下、特に約0.1%の透明、半透明、及び/又は光に透過可能であり、リザーバーの内容物の検査を可能にし得る。
【0210】
したがって、そのようなアプリケーター手段は、出口手段を介してリザーバーから本明細書に記載の粉末組成物を排出するための機構も含み得、この出口手段は、適切な形状のノズルなど、鼻孔などのヒトの体腔に配置するためのサイズであるあらゆるものを含む。
【0211】
したがって、粉末を排出するための機構は、デバイスを発動させるための手段を含み得、これは、呼吸で作動される発動、又はユーザーによるデバイスの発動時に力を生成するための発動手段を含み得る。
【0212】
したがって、アプリケーターは、治療用量の有効成分を提供する単一の投与ステップで(かつデバイスが「プライミング」を必要としない様式で)再現可能で十分な量の粉末製剤を提供することができる必要がある。
【0213】
粉末の形態で本発明の組成物を投与するために用いられ得る鼻用アプリケーター/吸入デバイスは、肺への有効成分の送達の分野で既知の技術に基づいて適合させることができる定量吸入デバイス(MDI)、乾燥粉末吸入デバイス(DPI;低、中、及び高抵抗のDPIを含む)及びソフトミスト吸入デバイス(SMI)などの複数回投与用途を含み得る。
【0214】
MDIでは、本発明の組成物が、それにおいて典型的に用いられる噴霧剤などの溶剤中に懸濁されたときに、安定した懸濁剤を形成することができ、この噴霧剤が、送達デバイスの作動時にエアロゾルを形成するのに十分な蒸気圧を有しなければならない(例えば、炭化水素、フルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、又はそれらの混合物)。
【0215】
しかしながら、鼻用アプリケーターが、発動後に組成物が分注され、使用後に廃棄される単回投与アプリケーターである場合、有効成分の単回投与を送達するための適したアプリケーター手段又はデバイスには、呼吸補助式及び吹き込み補助式の考案されたもの(Optinose(登録商標)など)、並びにUS6,398,074、US6,938,798、又はUS9,724,713に記載されるものが含まれ、全ての文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本出願の図1及び2は、それぞれ、US6,398,074の図1及び図2に基づいており、図3~7は、それぞれ、US9,724,713の図19図23に基づいている。両方とも、本発明の組成物を鼻腔内投与するために用いられ得るアプリケーターの図である。
【0216】
図1では、デバイスは、出口チャネル40(すなわち、前述の「出口手段」の一部)と、ユーザーがデバイスを発動させることを可能にする把持手段60とを組み込んだ本体上部/ディスペンサーヘッド1を備える。本体上部/ディスペンサーヘッド1の内側に、参照番号2によってその組み立てが指定された要素が取り付けられ、これは、リザーバー10及び空気ブラスト20のための空気チャンバー22を組み込む。この要素2は、本体1と一体に生成することが可能である。また、本体上部1に対して、及び要素2に対してスライドできるようにするために本体下部3も提供され、ユーザーは、この本体下部に押し力を加えてデバイスを発動させる。
【0217】
リザーバー10は、本発明の組成物の単回投与量を収容する。リザーバー10は、空気入口11及び生成物出口15を有する。空気を透過するグリッドを含む生成物保持デバイス12は、組成物が分注されるまで生成物をリザーバー10内に保持するために、空気入口11内に配置される。生成物出口15は、閉鎖ボール16によって、好ましくはシール様式で遮断され、これは、アプリケーターが発動されて生成物が分注されているときに空気の流れによってその遮断位置から除去される。
【0218】
ユーザーがデバイスを発動させると、ピストン21がチャンバー22に含まれる空気20を圧縮するように、プランジャー25に圧力が加えられる。グリッド12は空気を透過するため、チャンバー22内の空気の圧縮は空気ブラストを生み出し、これがリザーバー10に伝達され、その結果、生成物出口15を遮断している閉鎖ボール16に加えられる。
【0219】
閉鎖ボール16の寸法及びリザーバー生成物出口15でのその固定は、空気20のブラストによってリザーバー10を通して最低限の所定の圧力が生み出されたときに、ボール16がその遮断位置から除去されるようなものである。
【0220】
閉鎖ボール16によって生み出された予圧縮は、ボールがその遮断位置から除去されたときに、ユーザーの手に蓄積されるエネルギーが、プランジャー25と一体のピストン21がチャンバー22内で推進され、それによって、空気20の強力なブラスト、すなわち、本発明の組成物の投与量を細かく噴霧するのに適した気流を生み出すようなものであることを保証する。
【0221】
この最小圧力に達すると、ボールがデバイスの出口チャネル40に向かって迅速に移動し、ブラストによって生み出された空気20の流れが、リザーバー10内に収容される本発明の組成物の投与量を実質的に全て排出する。
【0222】
好ましくは、出口チャネル40は、生成物の投与量がボール16の周りを流れることによって出口チャネル40を通って排出されることを可能にするために、閉鎖ボール16の直径よりも大きい直径を有する。発動後の同じデバイスを表す図2に示されるように、チャネル40は、生成物が排出されているときにデバイスからのボールの排出を防ぐために、ボール16を停止又は固定する手段41を備える。
【0223】
本発明の組成物を鼻腔内に投与するために用いられ得る更なる実施形態は、本出願の図3~7として再現される、US9,724,713の列7、行50~列8、行61及び図19~23に提供される。
【0224】
この実施形態では、リザーバー10が、ユーザーがデバイスを発動できるようにする把持手段又はフィンガーレスト60を有するディスペンサー出口チャネル40(すなわち、前述の「出口手段」の一部)を含む本体上部/ディスペンサーヘッド1内に固定される。本体上部/ディスペンサーヘッド1の放射状ショルダー37(図5を参照)は、本体上部/ディスペンサーヘッド1内のリザーバー10の組み立て位置を有利に規定する。
【0225】
機械的開口システムは、ロッド61、62のセットを含み、デバイスが発動されると、第2のロッド部分62が当該第1のロッド部分61に押される。それらの発動ストロークの終わりに、すなわち分注位置において、ロッド61、62のセットは、球形である閉鎖要素16、特に上で考察した第1の実施形態のようなボールと協同作用し、それを閉鎖位置から機械的に排出する。
【0226】
この実施形態では、ピストン21は、第1のロッド部分61から分離されており、空気チャンバー22及び第1のロッド部分61に固定されている円筒面614の両方に対してスライドする。図7は、静止位置にある、図3~6のデバイスの空気エキスペラーの斜視図である。
【0227】
したがって、空気チャンバー22は円筒形であり得、静止位置では、フルーティング又は溝615で周囲の空気と連絡し、このフルーティングは、当該円筒面614に形成され、特に静止位置でピストン21と協同作用する。したがって、ピストン21は、発動中に円筒壁614上を気密様式にスライドし、静止位置で当該フルーティング615と協同作用する内側リップ215を含む。ピストン21はまた、発動中に当該ピストン21を空気チャンバー22内で動かすプッシャー要素25(第1の実施形態では「プランジャー」と呼ばれる)の上縁251と協同作用する軸方向延長部216を含む。
【0228】
保持部材42は、発動中に第1のロッド部分61の上部軸方向端部610と接触する軸方向延長部43によって下向きに延長される。
【0229】
加えて、この実施形態では、本体外部はなく、空気チャンバー22の下部軸方向縁部上に組み立てられたカバー27のみが存在する。
【0230】
発動後に空気エキスペラーが自動的に静止位置に戻るように、空気チャンバー22の放射状フランジ225と、第1のロッド部分61及び円筒面614を形成する部分との間にばね80が提供される。
【0231】
動作原理は次のとおりである。図3の静止位置では、リザーバー10は、保持部材42及び閉鎖要素/ボール16によってシール様式で閉じられている。空気エキスペラーは、ピストン21の内側リップ215と円筒面614のフルーティング615との間の協同作用によって大気に開放されている。
【0232】
デバイスを発動させたい場合、ユーザーはプッシャー要素25を押す。この最初のストロークの間、ピストンの内側リップ215は、フルーティング615を離れて、円筒面614と気密様式に協同作用するようになり、それによって、空気チャンバー22が閉じる。同時に、プッシャー要素25の上縁251が、ピストン21の軸方向延長部216と接触し、第1のロッド部分61の上部軸方向端部610が、保持部材42の軸方向延長部43と接触する。
【0233】
しかしながら、図4に見られるように、第2のロッド部分62の上部軸方向端部621は、依然として、閉鎖要素/ボール16の丸みを帯びた表面55と接触していない。
【0234】
したがって、継続的な発動は、同時に、空気チャンバー内でピストン21を動かし、それによって、そこに含まれる空気を圧縮し、保持部材42を、リザーバー10を閉じる位置から遠ざける。第2のロッド部分62が閉鎖要素/ボール16の丸みを帯びた表面55に接触すると、当該閉鎖要素/ボールは、空気エキスペラーによって圧縮された空気の影響下で組成物が排出され得るように、その閉鎖位置から機械的に排出される。
【0235】
分注位置を図5に示す。図5に見られるように、保持部材42は、空気エキスペラーによって提供される圧縮空気の影響下で組成物が排出されている間に、第1のロッド部分61から離れる可能性がある。この位置では、当該閉鎖要素/ボールは、圧縮空気の影響下で流体又は粉末が分注され得るように、リザーバー10から排出される。したがって、閉鎖要素/ボール16は、本体上部/ディスペンサーヘッド1のスプライン3に詰まり、このスプラインは、特に、当該閉鎖要素/ボール16が当該本体上部ディスペンサーヘッド1から排出される任意のリスクを防止する。
【0236】
図6に示されるように、ユーザーがデバイスを緩めると、発動中に圧縮されていたばね80が、第1のロッド部分61をその静止位置に向けて戻す。これは、閉鎖要素16及び保持部材42をそれらの閉鎖位置に向かって、又はその近くに吸引する吸引力を生み出す。したがって、これにより、空気エキスペラーが自動的に静止位置に戻る間に汚れないように、空のリザーバーが空気エキスペラー上に組み立てられたままの状態で、新しい吸引経路が遮断される。しかしながら、当該内側リップがフルーティング615ともう一度協同作用するようになるまで円筒面614が内側リップ215上をスライドするように、ピストン21は、空気チャンバー22との摩擦及びリザーバー30内に生み出された吸引力の結果としてその分注位置に留まる。この時点で、空気チャンバー22は再び周囲の空気と連絡しており、静止位置に戻ることによる吸引力はもはや生み出されない。したがって、ピストン21はまた、その静止位置に向かって引き込まれる。これにより、使用後にリザーバーを閉じることができる。
【0237】
任意選択で、本体上部/ディスペンサーヘッド1及び空のリザーバー10によって形成されたユニットを、空気エキスペラーから取り外して、満杯のリザーバーを含む新しいユニットと交換することができる。
【0238】
使用できる適切なアプリケーターデバイスには、Aptar Pharma,Franceから入手可能なもの(UDS Monopowder)が含まれる。例えば、国際特許出願第2022/208014号及び同第2021/005311号を参照されたい。本発明の組成物(特に粉末の形態のもの)と組み合わせて使用され得るアプリケーターデバイスの他の例としては、米国特許出願第2011/0045088号、米国特許第7,722,566号(例えば、図1及び7を参照)及び同第5,702,362号並びに国際特許出願第2014/004400号に記載されているものが挙げられ、これらの文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0239】
本発明の更なる態様によれば、本発明の組成物を含むアプリケーターデバイスを製造するためのプロセスが提供され、当該プロセスは、当該組成物を当該アプリケーターデバイス内にあるか、又はそれに付属するリザーバーに装填するステップを含む。
【0240】
本発明の更なる態様によれば、本発明の固形の非晶質の単粒子粉末組成物をヒト患者の体腔に投与するのに適している無針アプリケーターが提供され、その腔は、粘膜表面を含み、アプリケーターは、
(i)本発明の組成物を含む当該アプリケーター内にあるか、又は付属する(任意選択で不透明な)リザーバーと、
(ii)ユーザーによるデバイスの発動時に力を生成するための任意選択の発動手段と、
(iii)分注手段であって、それを介して、当該発動後に、当該粉末組成物が分注され得る、分注手段と、を含む。
【0241】
本発明の別の態様によれば、本発明の1つ以上の組成物を粉末の形態で含むアプリケーター及び/又はディスペンサーデバイスが提供され、このアプリケーター又はデバイスは、1つ以上の本発明の組成物を送達するために1回以上発動され得、各かかる発動のたびに各々が適切な用量の有効成分を含み、そのアプリケーター/ディスペンサーデバイスは、以下を備える:
少なくとも1つの組成物が分注される出口、
ユーザーによるデバイスの発動時に外部から力(例えば、気流)を発生させる手段、
ディスペンサー出口と直接若しくは間接的に連絡しているか、又は連絡するように配置することができる、当該本発明の1つ以上の組成物を収容する少なくとも1つの(任意選択で交換可能な)リザーバー、
組成物が分注されるまでリザーバー内に1つ以上の組成物を保持するための、デバイス及び/又はリザーバーにおける置換可能な、任意選択で可逆的なシール手段、
本発明の単回組成物が、デバイスが発動されたときに加力手段によって機械的に排出されるように当該シール手段と協同作用する機械的開口システム、並びに
任意選択で、更なる組成物が分注されるまで、更なる組成物をリザーバー内に保持するために、デバイス及び/又はリザーバーを再シールするための機構。
【0242】
本発明のなお更なる態様によって、単回用量の本発明の組成物を含み、その組成物を分注するのに適したアプリケーター及び/又はディスペンサーデバイスが提供され、このアプリケーター/ディスペンサーデバイスは、以下を含む:
ディスペンサー出口、
静止位置と分注位置との間で空気チャンバー内をスライドするピストンを含む、デバイスが発動している間に空気の流れを発生させるための空気エキスペラー、
当該ピストンは、当該空気チャンバー内で気密様式にスライドする、
当該空気エキスペラーに接続されている空気入口を含む、本発明の組成物の用量を収容する少なくとも1つのリザーバー、
当該ディスペンサー出口に接続されている組成物出口、
組成物が分注されるまでリザーバー内に組成物を保持するための置換可能なシール手段(例えば、保持部材)を含む、当該空気入口、
リザーバーの組成物出口にはめられた閉鎖要素によって閉じられている、当該組成物出口、
デバイスが発動している間に閉鎖位置から機械的に閉鎖要素を排出するように当該閉鎖要素と協同作用する機械的開口システムを更に含む、当該デバイス、及び
静止位置にあるとき、当該空気チャンバーと非気密様式に協同作用する、当該空気エキスペラーの当該ピストン。
【0243】
本発明の後者の態様では、以下のことが好ましい。
(i)当該ピストンが気密様式にスライドする空気チャンバーは実質的に円筒形であり、
(ii)閉鎖要素はリザーバーの組成物出口に圧力ばめされており、
(iii)当該空気チャンバーは静止位置で大気と連絡しており、かつ/又は
(iv)当該ピストンは、円筒面と協同作用するのに適している内側リップを含み、当該円筒面は、静止位置にあるピストンの当該内側リップと非気密様式に協同作用するフルーティングを含む。
【0244】
かかる鼻用アプリケーター又は分注デバイスは、鼻腔(例えば、鼻孔)への当該粉末の効率的な送達を可能にする、適切で再現可能な粉末噴霧パターン及び/又は幾何学的プルーム形状を提供することができる。
【0245】
本発明の組成物において、平均粒子サイズは、重量、数、又は体積基準の平均直径として提示され得る。本明細書で使用される場合、「重量基準平均直径」という用語は、平均粒径が、重量による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、ふるい分け(例えば、湿式ふるい分け)によって得られる重量分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。「体積基準平均直径」という用語は、重量基準平均直径と意味が類似しているが、平均粒子サイズが、体積による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、レーザー回折によって測定された体積分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。本明細書で使用される場合、「数基準平均直径」という用語は、平均粒径が、数による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、顕微鏡検査によって測定された数分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。例えば、Malvern Instruments,Ltd(Worcestershire,UK)、Sympatec GmbH(Clausthal-Zellerfeld,Germany)及びShimadzu(Kyoto,Japan)が販売する機器など、この分野で周知の他の機器を用いて、粒子サイズを測定し得る。
【0246】
本発明の組成物が、例えば、経口、局所、口腔、眼又は他の粘膜への、又は注射若しくは注入による投与のために製剤化される場合、粒子サイズは重要ではない(又はむしろ重要ではないかもしれない)が、本発明の粉末組成物は、典型的には、約0.5μm(例えば、約1μm)などの約0.2μm~最大約1,000μm(例えば、約400μm又は約500μmなどの最大約500μm)の範囲内の体積基準平均直径(VMD)を有し、かつ適切な粒子サイズ範囲は、かかる組成物を含むことが意図される剤形に基づいて選択され得る。
【0247】
しかしながら、当業者は、効果的な鼻腔内投与を可能にするために、粉末が典型的には約5μm~最大約300μm(例えば、最大約200μm)の範囲内の体積基準平均直径(VMD)を有することを理解するであろう。用いられるアプリケーターデバイスに応じて、VMDは、約20μm~約60μmなど、約10μm~約100μmの範囲にあり得る。
【0248】
鼻腔内薬物送達のための好ましい粒子サイズ分布はまた、D10が約10μm超などの約3μm超及び約75μm未満(例えば、最大約50μm)で、D90が約100μm未満などの約80μm~約1,000μm(例えば、約500μm)であるものを含み得る。当業者は、パラメーター「D10」(又は「Dv(10)」)が、それを下回るサイズにサンプル中の材料の総体積の10%が含まれる粒子サイズ分布のサイズ(又は直径)を意味することを理解するであろう。同様に、「D90」(又は「Dv(90)」)は、それを下回るサイズに材料の90%が含まれるサイズを意味する。
【0249】
当業者は、効果的な肺投与を可能にするために、粉末が典型的には約0.2μm~最大約10μmの範囲内のVMDを有するであろうことを理解するであろう。
【0250】
上記の範囲内の粒子サイズ分布及びVMDを有する粉末とは、バルクVMD及び/又は放出VMD、すなわち、それぞれ、最初にデバイスに装填されたとき及び/又はそこから排出されたときの粒子サイズ分布、を含む。
【0251】
粒子サイズは、Sympatec及びMalvernなどの製造業者から入手可能な乾式分散技法を含む乾式(又は湿式)粒子サイズ測定技法などの標準装置で測定できる。
【0252】
好ましい粒子形状は、球形又は実質的に球形を含み、これは、粒子が約20未満、より好ましくは約4未満などの約10未満、及び特に約2未満のアスペクト比を有し、かつ/又は粒子の少なくとも約90%において、平均値の約30%以下などの平均値の約50%以下、例えば、その値の約20%以下の半径(重心から粒子表面までで測定)の変動を有し得ることを意味する。
【0253】
それでも、粒子は、不規則な形状(例えば、「レーズン」型)、針型、円盤型、又は直方体型の粒子を含む、任意の形状であり得る。非球形粒子の場合、サイズは、例えば同じ重量、体積、又は表面積の対応する球形粒子のサイズとして示され得る。
【0254】
鼻用アプリケーター及び/又はディスペンサーデバイスから放出された(分注された)本発明の粉末組成物の噴霧角度は、好ましくは約90°未満である必要がある。
【0255】
本明細書において「約」という言葉が、例えば、用量、重量、体積、サイズ、直径、縦横比、角度などの絶対量、又は組成物中の個々の構成要素若しくは組成物の一成分の相対量(例えば、パーセンテージ)(濃度及び比率を含む)、時間枠、及び温度、圧力、相対湿度などのパラメーターなど、量の文脈で用いられる場合、かかる変数は概算であり、したがって、本明細書で指定された実際の数値から±10%、例えば、±5%、及び好ましくは±2%(例:±1%)変動する可能性があることが理解されよう。これは、かかる数字が最初にパーセンテージとして示される場合であっても当てはまる(例えば、「約10%」は、数字10について±10%を意味し得、9%~11%のいずれかである)。
【0256】
本発明の組成物は、生物学的活性を著しく損失することなく、広い範囲の温度及び/又は相対湿度にわたって、調製され、その後保管することができるという利点を有する。したがって、本発明の組成物は、対象に投与される有効成分の量に影響を与えることなく、低温(例えば、氷点下)に供され得る。更に、本発明の組成物は、関連する従来技術の組成物よりも高温でより物理的及び化学的に安定であるという利点を有し得る。
【0257】
本発明の組成物は更に、先行技術の組成物と比較して有効成分のより高い生物学的利用能を提供するという利点を有し得る。本発明の組成物は、より迅速な吸収とともにこのより高い生物学的利用能を提供し得、これは、かかる従来技術及び/又は市販の組成物よりも迅速な作用の開始をもたらす可能性が高く、したがって、重要な医学上の要求を満たす。
【0258】
本明細書に記載の組成物、医薬製剤、使用、及び方法は、関連する有効成分が既知の状態の治療において、鼻腔内などの経粘膜投与若しくはその他の方法による前述の状態の治療における使用のためであるかどうかにかかわらず、先行技術で既知である類似の製剤若しくは方法(治療)よりも、ファーストレスポンダー、医師、及び/若しくは患者にとって便利であり得、効果的であり得、低い毒性であり得、広範囲の活性を有し得、強力であり得、少ない副作用を生成し得、低い患者間変動を有し得るか、又はその類似の製剤若しくは方法(治療)を上回る他の有用な薬理学的特性を有し得るという利点も有し得る。
【0259】
本発明は、図を参照して、以下の実施例によって示されるが、決して限定されるものではなく、その図1図7は、粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表し、図8及び図9が、噴霧乾燥された粉末の形成後のSARS-CoV-2RBDスパイクタンパク質の種々の条件下での保持された活性対噴霧乾燥前の初期溶液に対する同じタンパク質の活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0260】
図1図1は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図2図2は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図3図3は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図4図4は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図5図5は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図6図6は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図7図7は粉末組成物を分注するために使用され得るアクチュエーターデバイスの図面を表す。
図8図8は、噴霧乾燥された粉末の形成後のSARS-CoV-2RBDスパイクタンパク質の種々の条件下での保持された活性対噴霧乾燥前の初期溶液に対する同じタンパク質の活性を示す。
図9図9は、噴霧乾燥された粉末の形成後のSARS-CoV-2RBDスパイクタンパク質の種々の条件下での保持された活性対噴霧乾燥前の初期溶液に対する同じタンパク質の活性を示す。
【0261】
実施例1
本発明の組成物I
30mLのガラスバイアルに、必要量の凍結乾燥されたβ-ガラクトシダーゼ(ラクターゼ酵素、mg当たり5000単位、Merck/Sigma Aldrich Germany)及び以下の賦形剤:トレハロース(Merck/Sigma Aldrich、Germany)、マルトデキストリン(MD)IT12及びIT19(Roquette、France)、スクロースラウレートD1216(SL、Mitsubishi Chemicals、Japan)、及びHPMC K3(Dupont、USA)を添加することによって、6つの製剤、各々約2gの粉末を調製した。組成物は、(個々の構成要素を重量%で)以下の表1に示した。
【表1】
【0262】
次いで、バイアルを-20℃で保たれた冷凍庫に入れた。出荷前に、バイアルを乾燥剤(モレキュラーシーブ)を含むアルミニウムバッグに入れ、濡れた氷を含む断熱箱に入れた。
【0263】
拡張カラムを備えたProCepT噴霧乾燥機を使用して、Xedev(ベルギー)で噴霧乾燥を実施した。調製された6つの製剤から、ノズルのタイプ及びプロセス条件を変更することによって、合計12個のサンプルが生成された。噴霧乾燥プロセスの概要を以下の表2に示す。
【0264】
噴霧乾燥の前に、6つの調製された製剤を、得られた固形充填(w/w%、水:固体)が5~10%の範囲で水に溶解させた。これらの溶液から、0.5mLを各バイアルから別個のLCバイアルに抽出し、出荷前に冷凍庫に入れた。これらは、噴霧乾燥の前に酵素の活性を決定するために使用された参照溶液であった。
【0265】
溶液の送り速度を4g/分に設定し、表2に示されるサンプルについて1~5分の間の処理時間を得た。処理中の熱曝露の可能性を低減するために、いくつかの実行中に氷浴を使用して収集容器を冷却した。
【表2】
【0266】
噴霧乾燥後、出荷までサンプルを冷凍庫に入れた。サンプルを上記と同じ条件、すなわち乾燥剤及び濡れた氷を使用して出荷した。
【0267】
酵素活性アッセイを、酵素の基質として2-ニトロフェニルβ-D-ガラクトピラノシド(ONPG、Merck/Sigma Aldrich、Germany)を使用して実施した。
【0268】
分析前に、100mgの各噴霧乾燥材料を別個のLCバイアルに移し、参照溶液と同じ濃度に希釈した(上記参照)。
【0269】
酵素溶液、参照及び噴霧乾燥粉末をPBS(pH7.4)で希釈し、その後、5mMのONPGを過剰に添加した。混合物のUV/vis吸光度を、420nmで、0.5、1、2、3、4、及び5分で測定した。これを二重に実施した。
【0270】
噴霧乾燥溶液の吸光度を、線形回帰を使用して対応する参照溶液と比較した。参照溶液を、100%の活性を有するものとして指定し、一方、傾きの除算の商を使用して、噴霧乾燥溶液の保持活性を決定した。結果を以下の表3に示す。(注記-参照サンプルの完全性に関していくつかの不確実性があるため、サンプル001及び002の結果は除外された。)
【表3】
【0271】
結果は、本発明による噴霧乾燥プロセス後の酵素の活性の損失が最小限であることを示す。
【0272】
実施例2
本発明の組成物II
必要量の凍結乾燥されたSARS-CoV-2 RBDスパイクタンパク質(L452R)、His Tag(「Sタンパク質」、SPD-C52He、ACRO Biosystems、US)、及び以下の賦形剤:トレハロース二水和物(Pfanstiel、US)、マルトデキストリン(MD)IT19(Roquette、France)、スクロースラウレートD1216(SL、Mitsubishi Chemicals、Japan)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び純粋な脱イオン水(5%固形充填)を100mLのガラスフラスコに添加することによって、各々約2.5~2.6gの粉末を含む12個の製剤を調製した。製剤は、(個々の構成要素を重量%で)以下の表4に示される組成物aを有した。
【表4】
【0273】
噴霧乾燥は、超音波及び二流体ノズルの両方を使用して、延長されたカラムを備えるProCepT噴霧乾燥機を使用して実施した。噴霧乾燥プロセスの概要を以下の表5に示す。
【0274】
噴霧乾燥の前に、0.8mLの溶液を各バイアルから別個のLCバイアルに抽出し、冷凍庫(-20℃)に入れた。これらは、噴霧乾燥前にタンパク質の初期活性を決定するために使用される参照溶液であった。
【0275】
溶液の送り速度を4g/分に設定し、表5に示されるサンプルについて約13分の処理時間を得た。
【表5】
【0276】
噴霧乾燥後、サンプルを乾燥剤を含む密封されたアルミニウムパウチに入れ、分析まで-20℃で保管した。追加の粉末を同じ方法でパッケージ化し、-20℃、-5℃、20℃、及び40℃の4つの異なる温度で4週間保管した。
【0277】
タンパク質活性を、SARS-CoV-2 Spike Protein Titer Assay Kit,ELISA(RAS-A020-96TEST、ACRO Biosystems、US)を使用して分析した。分析前に、噴霧乾燥材料及び初期溶液を約0.2ng/mLの目標濃度に希釈し、全てのサンプルを二重で分析した。
【0278】
図8に示すように、初期溶液に関連する粉末の噴霧乾燥後に測定された保持活性は、30%(許容される損失)~100%(最小損失)の範囲にあった。
【0279】
第2の分析を、4週間の保管後に実施した。図9に示すように、分析の間及び分析内の両方でのいくつかの変動(保管時のより高い活性及び二重間の変動を含む)に留意して、全ての温度で保管された全てのサンプルで活性が保持されたことが明らかであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】