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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】高発酵度ビールの製造
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/14 20060101AFI20241112BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20241112BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20241112BHJP
   C12C 5/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C12P19/14 Z ZNA
C12N9/24
C12C11/00 A
C12C5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531044
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 US2022080289
(87)【国際公開番号】W WO2023097202
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,709
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060588
【氏名又は名称】インターナショナル エヌ アンド エイチ デンマーク エーピーエス
(71)【出願人】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】クレマー、ジェイコブ フライホルム
(72)【発明者】
【氏名】ムンクスガード、ジャニク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B128
【Fターム(参考)】
4B064AF01
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC30
4B064DA10
4B128AC20
4B128AG09
4B128CP37
(57)【要約】
本発明は、発酵飲料において発酵度を増加させるための方法に関する。より具体的には、本方法は、非発酵性デキストリンをマルトースに変換するためのトランスグルコシダーゼのマルトース枯渇発酵液への添加に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵飲料における発酵度を増加させるための方法であって、トランスグルコシダーゼをマルトース枯渇発酵液に添加することを含む、方法。
【請求項2】
前記発酵飲料がビールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発酵液が、0.01%(w/w)未満のマルトース濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
3U/ml未満のトランスグルコシダーゼが、前記発酵液に添加される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
1U/ml未満のトランスグルコシダーゼが、前記発酵液に添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
0.5U/ml未満のトランスグルコシダーゼが、前記発酵液に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスグルコシダーゼが、全発酵時間の50%を超えた後に添加される、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ビールが、少なくとも85%のRDFを有する、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビールが、少なくとも86%のRDFを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ビールが、少なくとも87%のRDFを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ビールが、少なくとも88%のRDFを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ビールが、少なくとも89%のRDFを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ビールが、-0.20質量%以下の外観エキス濃度を有する、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスグルコシダーゼが、発酵の開始後4日目に前記発酵液に添加される、請求項2~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
グルコアミラーゼを前記発酵液に添加することを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記グルコアミラーゼが、発酵の開始時に添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記トランスグルコシダーゼが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、70%以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、75%以上の配列同一性を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、80%以上の配列同一性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、85%以上の配列同一性を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、90%以上の配列同一性を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、95%以上の配列同一性を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、99%以上の配列同一性を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、100%の配列同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に全体として組み込まれる、2021年11月24日に出願された米国仮特許出願第63/282,709号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
「NB42015-WO-PCT_SequenceListing.xml」と名付けられた本明細書共に出願された配列表は、2022年11月21日に作成されたものであり、3KBのサイズである。配列表は、参照により本明細書に全体として組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ビールの製造において、マッシング工程中で、発酵性糖がデンプンから生成され、これはその後酵母によってエタノールに変換される。しかしながら、全てのデンプンが、発酵性糖に変換されるわけではない。短いグルコースオリゴマーが発酵後もそのまま残り、これはビール酵母によってはエタノールに変換され得ない。デキストリンとも呼ばれるこれらのオリゴマーは、通常、4糖単位以上(DP4+)である。デキストリンがエタノールに変換されないため、これらの糖は、得られるビール中に存在し、ビールのカロリー量を増大させる。多くの消費者は、高カロリービールは望ましくないと考えている。
【0004】
当該技術分野において、より少ない非発酵性糖及びより低いカロリー量を有するビールを製造するための方法が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、トランスグルコシダーゼをマルトース枯渇発酵液に添加することによって、発酵飲料における発酵度(attenuation)を増加させるための方法が提示される。
【0006】
任意選択的に、発酵飲料は、ビールである。
【0007】
任意選択的に、発酵液は、0.01%(w/w)未満のマルトースの濃度を有する。
【0008】
任意選択的に、3U/ml、1U/ml又は0.5U/ml未満のトランスグルコシダーゼが、発酵液に添加される。
【0009】
任意選択的に、トランスグルコシダーゼは、全発酵時間の50%を超えた後に添加される。
【0010】
任意選択的に、ビールは、少なくとも85、86、87、88、又は89%のRDFを有する。
【0011】
任意選択的に、ビールは、-0.20質量%以下の外観エキス濃度(apparent extract)を有する。
【0012】
任意選択的に、トランスグルコシダーゼは、発酵の開始から4日目後に発酵液に添加される。
【0013】
任意選択的に、グルコアミラーゼも発酵液に添加される。任意選択的に、グルコアミラーゼは、発酵の開始時に添加される。
【0014】
任意選択的に、トランスグルコシダーゼは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、70%以上の配列同一性を有するポリペプチドである。
【0015】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、75%以上の配列同一性を有する。
【0016】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、80%以上の配列同一性を有する。
【0017】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、85%以上の配列同一性を有する。
【0018】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、90%以上の配列同一性を有する。
【0019】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、95%以上の配列同一性を有する。
【0020】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、99%以上の配列同一性を有する。
【0021】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、100%の配列同一性を有する。
【0022】
配列番号の簡単な説明
配列番号1は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のアルファ-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼ)の成熟アミノ酸配列を示す。
【0023】
定義及び略語
特に定義しない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology And Molecular Biology,2nd ed.,John Wiley and Sons,New York (1994),及びHale & Markham,The Harper Collins Dictionary Of Biology,Harper Perennial,N.Y.(1991)は、本明細書で使用される用語の多くの一般的な意味を当業者に提供する。それでも、明確さ及び参照を容易にするために、特定の用語を以下に定義する。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)」は、デンプン及び関連するオリゴ糖並びに多糖類の非還元末端からのD-グルコースの放出を触媒する酵素を指す。
【0025】
「1つのバリアント」若しくは「複数のバリアント」は、ポリペプチド若しくは核酸のいずれかに関する。用語「バリアント」は、用語「変異体(mutant)」と互換的に使用され得る。バリアントには、アミノ酸配列若しくはヌクレオチド配列それぞれにおける1つ以上の場所での挿入、置換、塩基転換、切断及び/又は転化が含まれる。語句「バリアントポリペプチド」、「ポリペプチドバリアント」、「ポリペプチド」、「バリアント」及び「バリアント酵素」は、例えば、配列番号1、2、3、4若しくは5などの選択されたアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1、2、3、4若しくは5などの選択されたアミノ酸配列と比較して修飾されているのいずれかであるアミノ酸配列を有するポリペプチド/タンパク質を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、核酸又はポリペプチド配列に関する「相同配列」及び「配列同一性」は、比較のために最適アライメントされる場合、核酸配列又はポリペプチド配列に対して、およそ少なくとも100%、少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも88%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、又は少なくとも45%の配列同一性を有することを意味し、ここでは、候補核酸配列又はポリペプチド配列の機能が、候補相同配列が比較されている核酸配列又はポリペプチド配列と本質的に同じである。いくつかの実施形態では、相同配列は少なくとも約85%~100%の配列同一性を有し、一方、他の実施形態では、約90%~100%の配列同一性を有し、また、他の実施形態では、少なくとも約95%~100%の配列同一性を有する。
【0027】
相同性は、当該技術分野において既知の標準的技法を使用して決定される(例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981);Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970);Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988);programs such as GAP,BESTHT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison,WI);及びDevereux el al.,Nucleic Acid Res.,12:387-395(1984)を参照されたい)。
【0028】
「パーセント(%)核酸配列同一性」又は「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、出発配列のヌクレオチド残基又はアミノ酸残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基又はアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。配列同一性は、出発配列の全長にわたって測定され得る。
【0029】
相同配列は、既知の配列アライメント法によって決定される。一般的に使用されるアライメント法は、Altschulらによって記載されるBLASTである(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);及びKarlin et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993))。特に有用なBLASTプログラムは、WU-BLAST-2プログラムである(例えば、Altschul et al,Meth.Enzymol.266:460-480(1996)を参照されたい)。WU-BLAST-2はいくつかのサーチパラメータを使用し、その殆どは初期値に設定されている。調整可能なパラメータは、以下の値に設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフフラクション0.125、ワード閾値(T)=11。HSP S及びHSP S2パラメータは動的値であり、特定配列の組成物、及び目的配列がサーチされる特定のデータベースの組成物に応じて、プログラム自体により設定される。しかしながら、これらの値は感度を増大させるために調節することができる。%アミノ酸配列同一性値は、適合する同一残基の数をアライメント領域の「より長い」配列の残基の総数で割ることにより決定される。「より長い」配列は、アライメント領域において実際に存在している残基を最も有する配列である(アライメントスコアを最大化するためにWU-BLAST-2により導入されたギャップは無視する)。
【0030】
配列アライメントで使用するための他の方法がある。有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブなペアワイズアライメントを用いて1群の関連配列から多重配列アライメントを作成する。それは更に、アライメントを作成するために使用されるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることができる。PILEUPは、Feng及びDoolittleのプログレッシブアライメント法の簡略化を用いる(Feng and Doolittle,J.Mol.Evol.35:351-360(1987))。この方法はHiggins及びSharpが記載したものと類似している(Higgins and Sharp,CABIOS 5:151153(1989))。有用なPILEUPパラメータは、デフォルトのギャップ・ウェイト3.00、デフォルトのギャップ長ウェイト0.10及び加重エンド・ギャップを含む。用語「最適アライメント」は、最も高いパーセント同一性スコアを与えるアライメントを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「ビール」は、伝統的に麦芽由来のアルコール飲料を指し、麦芽は大麦に由来し、任意選択で穀物粒などの副原料に由来し、ホップで風味付けされる。ビールは、本質的に同じプロセスによって様々な穀物から作ることができる。全ての穀物デンプンはグルコースホモポリマーであり、グルコース残基が、アルファ-1,4-結合又はアルファ-1,6-結合のいずれかによって結合され、前者が優勢である。発酵麦芽飲料を作製するプロセスは、一般に醸造と呼ばれている。これらの飲料において使用される主要原材料は、水、ホップ及び麦芽である。更に、例えば、一般的なコーングリッツ、精製コーングリッツ、醸造用粉砕酵母、米、ソルガム、精製コーンスターチ、大麦、大麦デンプン、脱穀大麦、小麦、小麦デンプン、焙焼穀物、穀物フレーク、ライ麦、オート麦、ジャガイモ、タピオカ、及び例えば、コーンシロップ、サトウキビシロップ、転化糖シロップ、大麦及び/又は小麦シロップなどのシロップの添加剤をデンプン源として使用できる。デンプンは、最終的にデキストリン及び発酵性糖に変換される。多数の理由のために、主として選択された大麦の品種から製造される麦芽は、ビールの全ての特性及び品質への最大の作用を有する。第一に、麦芽は、ビール中の主要香味剤である。第二に、麦芽は、発酵性糖の主要部分を提供する。第三に、麦芽は、ビールの本体及び泡の特性に寄与するであろうタンパク質を提供する。第四に、麦芽は、マッシング中に必要な酵素活性を提供する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「ホップ」は、風味剤を含むビールの品質に大きく寄与することでのその使用を指す。特に、ホップ(又はホップ構成成分)は、ビールに望ましい苦味物質を加える。更に、ホップは、タンパク質沈殿剤として作用し、防腐剤を確立し、泡の形成及び安定化に役立つ。
【0033】
本明細書で使用され場合、「ビールを作製するためのプロセス」は、当該技術分野において周知であるプロセスであるが、簡単にいうと、これは5つの工程:(a)マッシング及び/又は補助調理(b)麦汁の分離及び抽出(c)麦汁の煮沸及び漬け込み(hopping)(d)冷却、発酵、及び貯蔵、並びに(e)成熟、処理及び包装を伴う。第1の工程では、ミル粉砕又は破砕した麦芽は、水と混和され、麦芽中に存在する酵素が麦芽中に存在するデンプンを発酵性糖に変換させることを許容するための制御温度下において、ある期間にわたり保持される。第2の工程では、マッシュが、「ロータータン(lauter tun)」又はマッシュフィルターに移され、ここで液体が、穀物残渣から分離される。この甘い液体は「麦汁」と呼ばれ、残留する穀物残渣は「穀物かす」と呼ばれる。
【0034】
マッシュは、典型的には、穀物かすから残留可溶性抽出物を回収するためにマッシュに水を添加する工程を含む抽出にかけられる。第3の工程では、麦汁は、勢い良く沸騰される。これにより、麦汁が滅菌され、発色、風味及び匂いの発生を助ける。ホップは、沸騰中のある時点に加えられる。第4の工程では、麦汁が冷却され、発酵槽に移され、発酵槽が酵母を含むか、又は発酵槽に酵母が添加される。酵母の添加後に、液体は発酵液と称される。酵母は、発酵によって糖をアルコール及び二酸化炭素に変換し、発酵の終わりに発酵槽が冷却されるか、又は発酵を停止させるために発酵槽が冷却されてもよい。酵母は凝集して除去される。工程の最後に、ビールは、ある期間にわたり冷却して保管され、その間にビールは透明化してその香りが発生し、ビールの外観、香り及び貯蔵寿命を損なう可能性のある任意の物質は沈殿する。包装する前に、ビールは炭酸ガスで飽和され、任意選択的に濾過及び低温殺菌される。発酵後に、通常約2重量%~約10重量%のアルコールを含有する飲料が得られる。非発酵性炭水化物は、発酵中に変換されず、最終ビール中に溶解された固形物の大部分を形成する。この残渣は、麦芽アミラーゼがデンプンのα-1,6-結合を加水分解することができないために残留する。非発酵性炭水化物は、ビール12オンス当たり約50カロリーに寄与する。
【0035】
用語「発酵」は、醸造の観点において、醸造酵母中の酵素による麦芽中の糖の、他の発酵副産物の形成を伴うエタノール及び二酸化炭素への変換を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「発酵液」は、発酵プロセスを受けて、酵母又は細菌の作用によって食品、ビール又は飲料への化学変化をもたらす液体溶液であり、これは、二酸化炭素を生成し、その中の炭水化物をアルコールに変える。
【0037】
本明細書で使用される場合、「トランスグルコシダーゼ」は、酵素名称番号EC3.2.1.20を有し、優勢なトランスグルコシル化活性及び系統名α-D-グルコシドグルコヒドロラーゼを有する用語α-グルコシダーゼと同義である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アルファ-グルコシダーゼ」は、末端非還元(1→4)結合アルファ-グルコース残基を加水分解又はトランスグルコシル化して、グルコース又はIMOを生成する。エキソ型酵素は、系統名α-D-(1→4)-グルカングルカノヒドロラーゼ)及び酵素番号名称EC3.2.1.1を有するものである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「イソマルトオリゴ糖(IMO)」は、一般に、α-D-1,6結合を含むグルコースのオリゴ糖を指す。例示的なイソマルトオリゴ糖、及びそれらの縮合型IUPAC名(Id.)としては、イソマルトース(Glc(α-1,6)Glc)、イソマルトトリオース(Glc(α-1,6)Glc(α-1,6)Glc)、及びイソマルトテトラオース(Glc(α-1,6)Glc(α-1,6)Glc(α-1,6)Glc)が挙げられるが、これらに限定されない。α-D-1,4及びα-D-1,6結合の両方を有する分岐オリゴ糖、例えば、パノース(Glc(α-1,6)Glc(α-1,4)Glc)は、多くの場合、IMOとも考えられる。
【0040】
本明細書中で使用される用語「麦芽」は、あらゆる禾穀類穀粒、例えば、オオムギとして理解される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「麦汁」は、マッシング中の穀粉(grist)の抽出後に溢れ出した非発酵液を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「穀物かす」は、穀粉が抽出され、麦汁がマッシュから分離される場合に残る排出固形物を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「ビール」は、発酵麦汁、例えば、大麦麦芽、任意選択で副原料及びホップから醸造されたアルコール飲料を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、麦汁中の用語「エキス回収」は、乾燥物質に基づくパーセンテージで表される、穀粉(麦芽及び副原料)から抽出された可溶性物質の合計として定義される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「低温殺菌」は、加熱によって水溶液中の微生物を殺傷することを意味する。醸造プロセスにおける低温殺菌の実施は、典型的には、瞬間低温殺菌器又はトンネル低温殺菌器の使用を通して行われる。本明細書で使用される場合、用語「低温殺菌単位又はPU」は、低温殺菌の定量的尺度を指す。ビールについての1低温殺菌単位(1PU)は、摂氏60度で1分間の保温として定義される。これは、以下のように計算する:
PU=t×1.393^(T-60)、式中:
t=低温殺菌器内の低温殺菌温度での分での時間
T=低温殺菌器内の摂氏度での温度
[^(T-60)は、(T-60)の指数を表す]
ビールの種類、原材料及び微生物汚染、醸造者並びにビール風味に及ぼす知覚効果に応じて、異なる最小のPUが使用されてもよい。典型的には、ビール低温殺菌には、14~15PUが必要とされる。低温殺菌装置に応じて、低温殺菌温度は、典型的には、摂氏64~72度の範囲であり、それに応じて殺菌時間が算出される。更なる情報は、Wolfgang Kunze of the Research and Teaching Institute of Brewing,Berlin (VLB),3rd completely updated edition,2004,ISBN 3-921690-49-8による”Technology Brewing and Malting”で見出すことができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「DP1」(1重合度)は、グルコース又はフルクトースを意味する。「DP2」は、マルトース及び/又はイソマルトースを示す。「DP3」は、マルトトリオース、パノース及びイソパノースを意味する。「DP4/4+」は、非発酵性である4以上の重合度のデキストリン又はマルトオリゴ糖を意味する。
【0047】
値の範囲が提供される場合、前後関係が明らかに特に指示しない限り、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値は、下限の単位の少数第一位まで、具体的にまた開示されていると理解される。表示範囲内の任意の表示値又は介在値間のそれぞれのより狭い範囲、及びその表示範囲内の任意の他の表示値又は介在値は、本開示内に包含される。これらのより狭い範囲の上限及び下限は独立して、その範囲内に包含されるか又は除外される可能性があり、そのより狭い範囲内にいずれか若しくは両方の限度が含まれるか、又は両方の限度が含まれない各範囲はまた、表示範囲内で任意の限度が具体的に除外されることを前提として本開示に包含される。表示範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらの含まれた限度のいずれか又は両方を除外する範囲もまた本開示に含まれる。
【0048】
例示的な実施形態がより詳細に記載される前に、本開示は、記載される特定の実施形態に限定されず、それ自体、当然ながら、変動し得ることが理解されるべきである。本開示の実施若しくは試験においては、本明細書に記載するものと同様若しくは同等である任意の方法及び材料を使用することができるが、例示的な方法、及び材料がここで記載される。
【0049】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に指示されない限りは複数の指示対象を含む。したがって、例えば「1つの遺伝子」との言及には複数のそのような候補薬剤が含まれ、「細胞」との言及には1つ以上の細胞及び当業者には知られているそれらの同等物などが含まれる。
【0050】
本明細書中で考察される刊行物は専ら、それらの開示について、本出願の出願日よりも前に提供されている。本明細書には、先行発明に基づいて、本開示がこのような刊行物に先行する権利がないことが認められると解釈されるものは何ら記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の態様によれば、トランスグルコシダーゼが、高発酵度ビールを製造するために、醸造において利用され得ることが発見された。理論によって束縛されるものではないが、本発明によれば、トランスグルコシダーゼが、発酵液に添加されて、非発酵性デキストリンを、エタノールに変換されるマルトースに変換することができることが発見された。しかしながら、トランスグルコシダーゼは、麦汁から運ばれたマルトースが十分に枯渇した場合にのみ発酵液に添加することができる。マルトースが十分に枯渇している場合、トランスグルコシダーゼは、非発酵性デキストリンをマルトースに変換するであろう。しかしながら、トランスグルコシダーゼが、十分なマルトース枯渇の前に発酵液に(又は先行技術によって教示されるように更に麦汁に)添加されるならば、トランスグルコシダーゼはマルトースを非発酵性デキストリンに変換する逆反応を実行するであろう。
【0052】
ここ数年で、消費者の健康意識及び嗜好の変化により、低糖質のビールテイスト飲料に対する消費者の受容が高まっている。様々な麦芽ベースの原材料の発酵により得られるビール又は飲料の場合、発酵液中の発酵性糖の量を増加させることによって、最終生成物に相当するビール又は飲料中の最終的糖質が低減され得る。
【0053】
トランスグルコシダーゼ(a-グルコシダーゼとしても知られる)は、例えば、マッシング中又は最終麦汁において、基質としてのマルトースの存在下でトランスグルコシル化を実行し得る。トランスグルコシダーゼは、マルトースからイソマルトオリゴ糖(IMO)を生成する。これらのIMOは、一般的に、非発酵性であることが知られている。マルトースは、マルトースを加水分解し、1つの遊離グルコース分子を放出して、もう1つのグルコース分子をアクセプターに移動させるトランスグルコシル化反応のドナー分子である。アクセプターは、三糖類をもたらす別のマルトース分子であり得る。形成される最も豊富な三糖類は、パノースである。グルコースはまた、より高次の糖に移動することができ、その結果、より長い鎖のイソマルトオリゴ糖をもたらし、これがグルコースに移動され、イソマルトースの形成をもたらすか、又は水に移動されて、別の遊離グルコース分子としてそれを放出する。異なるオリゴ糖が形成される割合は、異なるアクセプターの濃度に依存する。
【0054】
最も重要なことは、マルトースが不在である条件下では、トランスグルコシダーゼはこれらの非発酵性IMO糖、例えば、パンノース及びイソマルトースを加水分解し得る。したがって、これらの糖は、非発酵性糖から発酵性糖に変換され得るが、これは、トランスグルコシダーゼがマンノースが不在の場合に適用され、IMOの増加をもたらす場合に限られる。
【0055】
トランスグルコシダーゼは、加水分解反応を介してグルコースを生成するが、基質濃度が高い場合、トランスグルコシル化反応を触媒する。例えば、熱処理前のマッシングにおいて、トランスグルコシダーゼを使用する麦芽飲料では、非発酵性糖であるイソマルトース及びパノースなどの高濃度のイソマルトオリゴ糖が生成される。
【0056】
同様に、発酵4日目の前に、最終麦汁にトランスグルコシダーゼを添加することは、イソマルトオリゴ糖:イソマルトース、ニゲロース、ゲンチオビオース及びセロビオースの非常に高い生成をもたらす。低炭水化物又はライトビールを醸造するために、これは明らかに望ましくない。
【0057】
本発明の態様は、マルトースの不在下で、且つイソマルトオリゴ糖を生成することなく、非発酵性糖を転換するための発酵の少なくとも4日後の非常に低用量(3U/mL未満)のトランスグルコシダーゼの効率的な添加に関する。
【0058】
本発明の態様によれば、トランスグルコシダーゼをマルトース枯渇発酵液に添加することによって、発酵飲料における発酵度を増加させるための方法が提示される。
【0059】
好ましくは、発酵飲料はビールである。
【0060】
好ましくは、発酵液は、0.01%(w/w)のマルトース濃度を有する。
【0061】
好ましくは、3U/ml、1U/ml又は0.5U/ml未満のトランスグルコシダーゼが、発酵液に添加される。
【0062】
好ましくは、トランスグルコシダーゼは、全発酵時間の50%を超えた後に添加される。
【0063】
好ましくは、ビールは、少なくとも85、86、87、88又は89%のRDFを有する。
【0064】
好ましくは、ビールは、-0.20質量%以下の外観エキス濃度を有する。
【0065】
好ましくは、トランスグルコシダーゼは、発酵の開始から4日後に発酵液に添加される。
【0066】
好ましくは、グルコアミラーゼも発酵液に添加される。好ましくは、グルコアミラーゼは、発酵の開始時に添加される。
【0067】
好ましくは、トランスグルコシダーゼは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、70%以上の配列同一性を有するポリペプチドである。
【0068】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、75%以上の配列同一性を有する。
【0069】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、80%以上の配列同一性を有する。
【0070】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、85%以上の配列同一性を有する。
【0071】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、90%以上の配列同一性を有する。
【0072】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、95%以上の配列同一性を有する。
【0073】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、99%以上の配列同一性を有する。
【0074】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスグルコシダーゼ活性断片に対して、100%の配列同一性を有する。
【0075】
以下の実施例で本開示を更に詳しく説明するが、それらの実施例は、特許請求された本開示の範囲を決して限定するものではない。添付の図面は、本開示の明細書及び説明に組み込まれたそれらの一部と見なされることが意図されている。以下の実施例は、請求の範囲に記載の
開示を説明するために提示されたものであって、その開示を限定するものではない。
【実施例
【0076】
実施例1-アルファ-グルコシダーゼが添加された麦芽ベースの麦汁のDP糖のHPLC分析
全ての標準物質:グルコース、マルトース、マルトトリオース及びマルトテトラオースを再蒸留水(ddH20)中で調製し、0.45μmシリンジフィルターを通して濾過した。各標準物質のセットを10~100,000ppmの濃度範囲で調製した。試料を10分間95℃に加熱することによって、活性酵素を含有する全ての麦汁試料を不活性化した。続いて、麦汁試料を96ウェルMTPプレート(Corning,NY,USA)に調製し、ddH20中で最小限4倍に希釈し、分析前に0.20μm 96ウェルプレートフィルター(Corningフィルタープレート、PVDF親水性膜、NY,USA)を通して濾過した。全ての試料を二重反復で分析した。糖類:DP1、DP2、DP3、DP4及びDP5+の定量化をHPLCによって実施した。試料の分析を、DGP-3600SD Dual-Gradient分析用ポンプ、WPS-3000TSLサーモスタットオートサンプラ、TCC-3000SDサーモスタットカラムオーブン及びRI-101屈折率検出器(Shodex、JM Science)を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Thermo Fisher Scientific)で実行した。データの取得及び分析にChromeleonデータシステムソフトウェア(Version 6.80、DU10A Build 2826、171948)を使用した。
【0077】
クロマトグラフ条件
70℃で操作される、分析ガードカラム(Carbo-Ag+中性,AJ0-4491,Phenomenex,オランダ)を備えた、Ag+4%架橋された(Phenomenex,オランダ)RSOオリゴ糖カラムを使用して、試料を分析した。カラムを流量0.3ml/分にて再蒸留水(0.45μmの再生セルロース膜を通して濾過され、ヘリウムガスでパージされた)で溶離した。総実行時間が45分である分析の間中、0.3ml/分のアイソクラチックフロー(isocratic flow)を維持し、注入量を10μLに設定した。恒温自動サンプラー区画内で20℃にて試料を維持した。屈折率検出器(RI-101,Shodex,JM Science)を使用して溶離液をモニターし、所定の標準物質のピーク面積に対するピーク面積によって定量化を行った(DP1:グルコース;DP2:マルトース;DP3:マルトトリオース及び4以上のマルトテトラオースのピークを標準として使用した)。
【0078】
0.5MのMES pH5.5ストックを、以下のように調製した:4.881gのMES粉末(Sigma Aldrich、M8250)を40mlのMilliQ.中に溶解し、pHを10%w/wのNaOHを使用して調整し、容量を50.0mlに満たした。希釈されたMuntons麦芽エキス(Munton’s Light Malt Extract、バッチXB 35189)を、25gのMuntons麦芽エキスを、0.5MのMES緩衝液pH5.5の25g中に溶解することによって調製した。アルファ-グルコシダーゼの100倍ストック希釈液を、0.2gの酵素(2000U/gの活性を有する、FoodPro(登録商標)TGO、Dupont Nutrition Bioscience)を、20mlのMES pH5.5中に希釈することによって調製した。麦汁試料を、600μLの希釈されたMuntonsエキス、100μLの0.5M MES pH5.5、262.5μLのMilliQ水及び37.5μLの希釈されたアルファ-グルコシダーゼ(又は酵素をなしの対照としての水)を混合することによって調製した。試料を、サーモミキサー内、60℃で750rpmにてインキュベートし、加速されたDP糖変換を評価した。試料を30分間隔で採取し、サーモミキサー内750rpmで95Cで15分間インキュベートすることによって、最終的酵素活性を停止させ、その後凍結させて、HPLC糖DP分析を行った。
【0079】
アルファ-グルコシダーゼを伴う麦汁のHPLC分析からの糖の相対分布を、以下の表1に示す。マルトース(DP2)が、麦芽ベースの麦汁中の主要な糖であることが明確に分かる。麦汁(マルトースを有する)中のアルファ-グルコシダーゼの存在下での加速されたDP糖の変換は、反応時間(4時間)全体にわたる非発酵性IMO(DP3+DP4+)の生成を明らかに実証している。麦芽中又は発酵中のIMOの生成は、高発酵度を得るためには好ましくない。したがって、アルファ-グルコシダーゼが、マルトースの存在下では添加されるべきではない。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例2-発酵液試料のDP糖HPLC分析
全ての標準物質:グルコース、マルトース、マルトトリオース及びマルトテトラオースを再蒸留水(ddH20)中で調製し、0.45μmシリンジフィルターを通して濾過した。各標準物質のセットを10~100,000ppmの濃度範囲で調製した。試料を10分間95℃に加熱することによって、活性酵素を含有する全ての麦汁試料を不活性化した。続いて、麦汁試料を96ウェルMTPプレート(Corning,NY,USA)に調製し、ddH20中で最小限4倍に希釈し、分析前に0.20μm 96ウェルプレートフィルター(Corningフィルタープレート、PVDF親水性膜、NY,USA)を通して濾過した。全ての試料を二重反復で分析した。
【0082】
糖類:DP1、DP2、DP3及びDP4+の定量化をHPLCによって実施した。試料の分析を、WPS-3000TSLサーモスタットオートサンプラ、TCC-3000SDサーモスタットカラムオーブン、及びRI-101屈折率検出器(Shodex、JM Science)を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Thermo Fisher Scientific)で実行した。データの取得及び分析にChromeleonデータシステムソフトウェア(Version 6.80、DU10A Build 2826、171948)を使用した。
【0083】
クロマトグラフ条件
70℃で操作される、分析ガードカラム(Carbo-Ag+中性,AJ0-4491,Phenomenex,オランダ)を備えた、Ag+4%架橋された(Phenomenex,オランダ)RSOオリゴ糖カラムを使用して、試料を分析した。カラムを流量0.3ml/分にて再蒸留水(0.45μmの再生セルロース膜を通して濾過され、ヘリウムガスでパージされた)で溶離した。総実行時間が45分である分析の間中、0.3ml/分のアイソクラチックフロー(isocratic flow)を維持し、注入量を10μLに設定した。恒温自動サンプラー区画内で20℃にて試料を維持した。屈折率検出器(RI-101,Shodex,JM Science)を使用して溶離液をモニターし、所定の標準物質のピーク面積に対するピーク面積によって定量化を行った(DP1:グルコース;DP2:マルトース;DP3:マルトトリオース及び4以上のマルトテトラオースのピークを標準として使用した)。
【0084】
実施例3-ビール発酵中の非発酵性糖のアルファ-グルコシダーゼでの変換によるビールの炭水化物含有量における低減
この分析の目的は、発酵中のトランスグルコシダーゼの添加、具体的には低マルトース濃度での添加が、麦汁の非発酵性糖を発酵性糖に加水分解して、酵母によるエタノール形成と並行して進めることが可能であるかを試験することであった。
【0085】
50%のピルスナーモルト(ピルスナーモルト;Fuglsang Denmark、バッチ番号:10.12.2019)及び50%のコーングリッツ(Nordgetreide GmBH Luebec,Germany、バッチ番号:02.05.2016.)で3:1の水対穀粉比を使用してマッシング操作から麦汁を調製した。ピルスナーモルトを、Buhler Miagミル(0.5mm設定)で粉砕した。
【0086】
トウモロコシ副原料を以下の方法で液化させた:コーングリッツ(35.0g)、モルト(粉砕されたピルスナーモルト、5.5g)及び水道水(105g)をマッシング浴(Lockner,LG-electronics)カップ内で混合し、pH2.5Mの硫酸でpH5.5に調整した。AMYLEX(登録商標)5T(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)を、0.25kg/t穀粉の用量で添加し、液化を容易にした。
【0087】
副原料を以下のプログラムを用いてマッシングした;60℃に加熱し、マッシングのために60℃で1分間維持し;2℃/分で温度を上昇させることによって、85℃まで13分間加熱し;85℃で30分間維持し、マッシングオフした。その後、副原料を64℃に冷却し、メインマッシュと組み合わせた。LAMINEX(登録商標)MaxFlow 4G(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)を0.10kg/t麦芽の量で添加し、濾過を容易にした。DIAZYME(登録商標)87(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)を0.0、1.5又は3.0kg/t麦芽の用量で添加し、糖化を容易にした。
【0088】
メインマッシュにおいて、麦芽(粉砕されたピルスナーモルト、35g)及び水道水(105g)をマッシング浴(Lochner、LG-electronics)カップ内で混合し、pHを2.5Mの硫酸でpH5.5に調整した。メインマッシュを45℃まで加熱し、その温度でマッシングのために一分間維持し、その後63℃に加熱し、メインマッシュを副原料(液化トウモロコシ、麦芽及び水)と組み合わせ;63℃で120分間維持し、1℃/分で温度を上昇させることによって、72℃に9分間かけて加熱し;72℃で15分間維持し、1℃/分で温度を上昇させることによって6分間かけて78℃まで加熱した。マッシュを最終的に78℃で10分間保持し、マッシングオフした。温度が72℃に達したら、ヨウ素が陰性であることを試験した。ヨウ素陰性になるのに必要な時間を分で記録した。
【0089】
マッシングの最後に、マッシュを350g構築して濾過した。30分後に、濾液の容量を測定した。pH5.2を2.5Mの硫酸で調整し、Hopfenveredlung,St.Johannからの1ペレットのビターホップ:16.0%のアルファ含量(EBC7.70特異的HPLC分析、01.10.2013)を、各フラスコ(210g)に添加した。麦汁試料を煮沸浴で60分間煮沸し、麦汁を17℃に冷却し、濾過した。各麦汁100gを発酵用の500 mL三角フラスコに計量し、17℃の麦汁に新たに生成された酵母(0.50g)0.5% W34/70(Weihenstephan)を添加した。濾過した麦汁の残部を分析用に使用した。麦汁試料を、酵素添加後18℃及び150rpmで発酵させた。最終ビールにおける高発酵度及び炭水化物の低含有量を確実にするために、2つの異なるグルコアミラーゼを発酵の開始時に添加した:それぞれ、DIAZYME(登録商標)87(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)を0.5g/hlの容量で添加し、DIAZYME(登録商標)TGA(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)を1.0g/hlの容量で添加した。発酵の開始時のグルコアミラーゼの添加は、具体的には、4日後に添加された2000U/gの活性を有するトランスグルコシダーゼFoodPro(登録商標)TGO(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)の0.02U/mL(1.0g生成物/hL)の低用量での添加と組み合わされた。酵素の組み合わせを、以下の表2に示す。全ての発酵は10日間続いた。発酵が完了した時に分析を実施した。
【0090】
【表2】
【0091】
麦汁の分析:オリジナルエキス(OE)、マッシング後の麦汁試料中のエキスを、Anton Paar(Lovis)を使用して、Dupont Standard Instruction Brewing、23.8580-B28に従って測定し、DP1、DP2、DP3及びDP4+であった発酵性糖(総%+g/100ml)を、マッシング後に上記実施例2に従ってHPLCによって決定した。麦汁における糖の相対分布を、以下の表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
ビールの分析:Anton Paar(DMA 5000)を使用し、Standard Instruction Brewing,23.8580-B28に従ってRDFを測定し、Dupont Standard Instruction Brewing、23.8580-B28によりアルコールを測定した。真正発酵度(RDF)は、下記式により算出することができる:
【数1】
式中、RE=真正エキス濃度=(0.1808×initial)+(0.8192×final)であり、initialは発酵前の標準化麦汁の比重であり、finalはプラート度で表した発酵麦汁の比重である。
本発明の文脈において、真正発酵度(RDF)は比重とアルコール濃度とから決定した。
【0094】
Beer Alcolyzer Plus及びDMA 5000比重計(両方ともAnton Paar、Gratz、Austriaより入手)を使用し、発酵試料について比重及びアルコール濃度を決定した。これらの測定に基づき、下記式より真正発酵度(RDF)を算出した:
【数2】
式中、E(r)はプラート度(°P)で表した真正エキス濃度であり、OEは°Pを単位とする原麦汁濃度である。Anton Paar(DMA 5000)を使用して、Dupont Standard Instruction Brewing,23.8580-B28に従って、マッシング後のビール試料中のオリジナルエキス(OE)を測定した。発酵が完了したときに分析を実施し、酵母を分離させ、結果を表4に示す。驚くべきことに、発酵の4日目に、全ての組み合わせにおけるトランスグルコシダーゼの添加が、非発酵性糖の変換によって%RDFを更に増加させたことが判明し得る。したがって、試料1及び2によって、トランスグルコシダーゼの添加が、%RDFを80.69%から85.49%まで増加させることを観察することができ、同様に、試料3及び4によって、トランスグルコシダーゼの添加が、%RDFを86.56%から87.43%まで増加させることを観察することができ、最後に、試料5及び6によって、トランスグルコシダーゼの添加が、%RDFを87.45%から88.59%まで増加させることを観察することができた。全ての場合において、トランスグルコシダーゼの添加によるアルコールの%(v/v)の増加によって、相対的高発酵度の増加が更に観察された。
【0095】
【表4】
【0096】
実施例4-HPLC-PADによる発酵液試料中の非発酵性糖の分析
この分析の目的は、発酵中のトランスグルコシダーゼ及びグルコアミラーゼの添加時に、少量の発酵性糖及び非発酵性糖を定量化することであった。試料を、実施例3に記載されたように調製した。
【0097】
全ての標準物質:グルコース、イソマルトース、イソマルトトリオース、マルトース、パノース、マルトトリオース、他のDP2及びより大型の糖類DP4+を再蒸留水(ddH20)中で調製し、0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過した。各標準物質のセットを、0.5~20mg/Lの濃度範囲で調製した。活性酵素を含有する全ての麦汁試料を、95℃に10分間かけて試料を加熱することによって不活性化させた。その後、試料を希釈し、濾過し(0.45μmのMinispikeフィルター)、分析した。全ての試料を二重反復で分析した。糖の定量化を、HPLC-PADによって実施し、データ取得及び分析用のChromeleonデータシステムソフトウェア(バージョン7.2)を用いて、PAD検出器を備えたDiones ICシステム(Thermo Fisher Scientific)で分析を行った。
【0098】
クロマトグラフ条件
試料を、0.25mL/分で操作するガードカラムを備えたCarbo PA100 2mmカラム(Thermo Fisher Scientific)及び以下の表5に示される溶離勾配プログラムを使用して分析した。
【0099】
【表5】
【0100】
注入容量を20μLに設定し、分析全体にわたって0.25ml/分の流量を維持した(総運転時間75分)PAD検出器(Thermo Fisher Scientific)でモニタリングし、所与の標準物質のピーク面積に対するピーク面積によって定量を行なった。トランスグルコシダーゼを添加した又は添加していない発酵の10日目に得られたビール試料中の発酵性及び非発酵性の糖並びに糖類の濃度を、表6に示す。驚くべきことに、発酵の4日目に、トランスグルコシダーゼが添加された全ての試料(試料2、4及び6)における全ての非発酵性糖類、例えば、イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース、マルトトリオース及び他のDP4+糖類が、トランスグルコシダーゼが添加されていない同等の試料(試料1、3及び5)のそれぞれと比較して減少されていることを観察することができた。他のDP2成分についても同じことが観察されている。全ての糖類の合計(発酵性及び非発酵性)は、発酵の4日目に添加されたトランスグルコシダーゼの添加によって著しく減少され、例えば、トランスグルコシダーゼを含まない試料1(1.053%)対トランスグルコシダーゼを含む試料2(0.253%)、トランスグルコシダーゼを含まない試料3(0.235%)対トランスグルコシダーゼを含む試料4(0.144%)及びトランスグルコシダーゼを含まない試料5(0.265%)対トランスグルコシダーゼを含む試料6(0.206%)であった。これは、トランスグルコシダーゼを用いて製造されたビールの増加した%RDF及び発酵度と一致しており、最終ビールにおけるより高い発酵性及びより低い結果として得られる糖類をもたらす。
【0101】
【表6】
【0102】
上記の発明は、理解を明確にする目的で、図面及び実施例によってある程度詳しく説明してきたが、添付の特許請求の範囲内で一定の変更及び修正を実施することができる。更に、本明細書で提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個々に組み込まれているのと同程度に、あらゆる目的でその全体が参照により組み込まれる。ウェブサイト又は受入番号を含む任意の引用の内容が時間とともに変化し得る限り、本出願の出願日に有効なバージョンが意図される。文脈から別途明らかでない限り、実施形態の任意のステップ、要素、態様、特徴は、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。
【0103】
実施例5-様々なアルファ-グルコシダーゼによるビール発酵中の非発酵性糖の変換によるビール炭水化物含有量の低減
この分析の目的は、発酵中のトランスグルコシダーゼの添加、具体的には低マルトース濃度での添加が、麦汁の非発酵性糖を発酵性糖に加水分解して、酵母によるエタノール形成と並行して進めることが可能であるかを試験することであった。
【0104】
実施例3に記載されるように麦汁を製造したが、マッシングに添加される糖化酵素の非存在下で製造した。最終ビール中の高発酵度及び炭水化物の低含有量を確実にするために、グルコアミラーゼを発酵の開始時に麦汁に添加した:DIAZYME(登録商標)87(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)を、3.0g/hlの容量で添加した。発酵の開始時でのグルコアミラーゼの添加は、2つの様々なトランスグルコシダーゼ:0.01、0.02若しくは0.03U/mLの容量の2000U/gの活性を有するFoodPro(登録商標)TGO(Dupont Nutrition Bioscience,Denmark)、又は0.5、1.0若しくは1.5g/hLの容量のAmano Pharmaceutical Co.,Ltdによって製造されたトランスグルコシダーゼLのそれぞれと組み合わされた。トランスグルコシダーゼを、具体的には、4日後に添加し、低マルトース濃度を確実にした。酵素の組み合わせを、以下の表7に示す。全ての発酵は10日間続いた。発酵が完了したときに、実施例3に記載されるように分析を実施した。
【0105】
トランスグルコシダーゼの全ての組み合わせにおける発酵4日目での添加は、非発酵性糖の変換によって%RDFを更に増加させたことが分かる。したがって、試料1及び2~7によって、トランスグルコシダーゼの添加が、使用されるトランスグルコシダーゼに関係なく、%RDFを84.39%から85.4%を超えるまで増加させたことを観察することができる。FoodPro TGOの添加では、%RDFを84.39%から85.76%まで増加させて、容量応答効果が見られた。全ての場合において、トランスグルコシダーゼの添加によるアルコールの%(v/v)の増加によって、相対的高発酵度の増加が更に観察された。したがって、発酵性糖の量を増加させて、最終ビールにおける%RDF及びアルコール濃度を増加させるために、トランスグルコシダーゼは発酵の後期に添加されてもよい。
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【配列表】
2024543131000001.xml
【国際調査報告】