(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】修飾されたタンパク質又はポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241112BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241112BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241112BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241112BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241112BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241112BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P3/00
A61P37/00
A61P31/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Q
A61K39/395 U
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531051
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2022134923
(87)【国際公開番号】W WO2023093899
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111429892.3
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520392096
【氏名又は名称】上海盛迪医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1288 Haike Road, Zhangjiang Town, Pudong New District, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】王 楠
(72)【発明者】
【氏名】楊 暁峰
(72)【発明者】
【氏名】張 偉
(72)【発明者】
【氏名】曹 志亮
(72)【発明者】
【氏名】葉 浩
(72)【発明者】
【氏名】沈 余紅
(72)【発明者】
【氏名】廖 成
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZC21
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZC21
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
予備の抗薬物抗体への結合が低減された、修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン及び上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチドを提供する。具体的に、上記免疫グロブリン単一可変ドメインのC末端は、アミノ酸修飾を含む。さらに、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチドの製薬的使用、医薬組成物、コード核酸及び調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインであって、X
1X
2(X
3)
n又はVTVX
1X
2(X
3)
nで示されるアミノ酸配列のC末端を含み、そのうち、X
1はS、F及びRから選ばれ、X
2はA、P、Sから選ばれ、X
3はAであるか又は存在せず、nは0~5の整数であり、
nが0である場合、X
3は存在せず、
nが1~5である場合、X
3はAであり、
好ましくは、前記修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、下記の(a)~(e)、即ち、
(a)SAA又はVTVSAA、
(b)FP又はVTVFP、
(c)FPA又はVTVFPA、
(d)RS又はVTVRS、及び
(e)RSA又はVTVRSA
の何れか1つからなるC末端を含む、修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項2】
修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインであって、ヒト生殖細胞系列に由来する重鎖フレームワーク配列を含み、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する112位に112F又は112Rのアミノ酸修飾が存在し、
選択的に、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、さらにヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する113位に113Pのアミノ酸修飾が存在し、又は113位はSであり、
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する112位と113位には、下記の(f)~(h)、即ち、
(f)112Fと113P、
(g)112Rと113S、及び
(h)112Fと113S
の何れか1つのアミノ酸残基の組み合わせが存在する、修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項3】
修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインであって、ヒト生殖細胞系列に由来する重鎖フレームワーク配列を含み、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する112位はSであり、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する113位に113A、113Pのアミノ酸修飾が存在し、かつ113位の後にさらに1~5個のアミノ酸残基のアミノ酸伸長があり、前記アミノ酸伸長は、A、AA又はAAAが好ましい、
修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項4】
VH単一ドメイン抗体又はナノボディから選ばれ、前記VH単一ドメイン抗体は、ヒト由来のものが好ましく、ナノボディはラクダ由来又はヒト化のものが好ましい、
前記請求項の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項5】
未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメインに比べて、前記修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、予備の抗薬物抗体(pre-ADA)又は抗薬物抗体(ADA)への結合が低減され、前記未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメインは、アミノ酸配列VTVSS(配列番号189)のC末端を有する、
前記請求項の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項6】
標的抗原に特異的に結合し、かつ、
a)前記標的抗原に特異性を有する3つの相補性決定(CDR)領域と、
b)4つのフレームワーク(FR)領域と、
を含む、前記請求項の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項7】
a)ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する14位、41位、108位における1つ又は複数のアミノ酸修飾、好ましくは、14A、14K、14Q若しくは14T、及び/又は41A、及び/又は108A若しくは108Q、及び/又は、
b)ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する11位及び/又は88位におけるアミノ酸修飾、好ましくは、11K、11R、11D若しくは11E、及び/又は88E、88D、88R若しくは88K、
を含む、前記請求項の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項8】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、4-1BBに特異的に結合し、
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号6及び15~18の何れか1つのアミノ酸配列におけるCDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1、CDR2及びCDR3は、Kabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムによって定義され、
より好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、それぞれ配列番号7、8及び9で示されるCDR1、CDR2及びCDR3、又はそれぞれ配列番号7、8及び19で示されるCDR1、CDR2及びCDR3を含み、
最も好ましくは、前記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、配列番号21、30~35の何れか1つで示されるか又はそれに対して少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%の同一性を有する、
前記請求項の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン。
【請求項9】
C末端に請求項1~8の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインが含まれる、タンパク質又はポリペプチド。
【請求項10】
抗体であり、好ましくは、一価、二価、多価、単一特異性、二重特異性、多重特異性抗体である、請求項9に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも2つの異なる抗原を標的とするか、又は同じ抗原の少なくとも2つの異なるドメイン若しくはエピトープを標的とし、
好ましくは、前記少なくとも2つの抗原の中の少なくとも1つ又は前記同じ抗原は4-1BBである、
請求項9又は10に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項12】
免疫グロブリンFc領域、好ましくは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4のFc領域をさらに含む、請求項9~11の何れか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項13】
前記修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインのN末端は、直接的に又はリンカーを介して前記Fc領域のC末端に連結される、請求項12に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項14】
治療又は予防用抗体である、請求項9~13の何れか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド。
【請求項15】
請求項1~8の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン、請求項9~14の何れか一項に記載のタンパク質又はポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを包含又は発現する、ベクター。
【請求項17】
請求項1~8の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン、請求項9~14の何れか一項に記載のタンパク質又はポリペプチド、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターを含む、医薬組成物。
【請求項18】
対象の体内におけるpre-ADA又はADAへの結合が低減された薬剤を調製するための請求項1~8の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン、請求項9~14の何れか一項に記載のタンパク質又はポリペプチドの使用。
【請求項19】
疾患を予防又は治療する方法であって、それを必要とする対象に予防又は治療有効量の請求項1~8の何れか一項に記載の修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン、請求項9~14の何れか一項に記載のタンパク質又はポリペプチドを投与することを含み、好ましくは、前記疾患は、細胞増殖性疾患、代謝性疾患、自己免疫疾患又は感染性疾患であり、より好ましくは、前記細胞増殖性疾患はがんである、
方法。
【請求項20】
免疫グロブリン単一可変ドメインのpre-ADA又はADAへの結合を低減する方法であって、前記方法は、前記免疫グロブリン単一可変ドメインのC末端がX
1X
2(X
3)
n又はVTVX
1X
2(X
3)
nで示されるアミノ酸配列のC末端を含むようにすることを含み、そのうち、X
1はS、F及びRから選ばれ、X
2はA、P、Sから選ばれ、X
3はAであるか又は存在せず、nは0~5の整数であり、
nが0である場合、X
3は存在せず、
nが1~5である場合、X
3はAであり、
好ましくは、前記修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、下記の(a)~(e)、即ち、
(a)SAA又はVTVSAA、
(b)FP又はVTVFP、
(c)FPA又はVTVFPA、
(d)RS又はVTVRS、及び
(e)RSA又はVTVRSA
の何れか1つからなるC末端を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2021年11月29日に提出された中国特許出願(出願番号CN202111429892.3)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本開示は、バイオ医薬分野に関し、具体的に、予備の抗薬物抗体への結合が低減された、修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン及び上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチドに関する。上記免疫グロブリン単一可変ドメインのC末端は、アミノ酸修飾を含む。本開示は、さらに、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチドの製薬的使用、医薬組成物、コード核酸及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体薬物の免疫原性は一般的な現象である。前臨床試験と臨床試験に関する報告によると、市販又は開発中の種々の抗体薬物は、動物の体内で抗薬物抗体(anti-drug antibody、ADA)を誘発するようになるが、産生されたADAは、抗体薬物の治療効果及び体内代謝などの特性に影響を及ぼす可能性がある。当該現象に対して、キメラ抗体の調製、抗体のヒト化改変、完全ヒト抗体の開発などを含む、回避又は緩和するための様々な技術及び方法が長年にわたって開発されてきた。
【0004】
しかし、完全ヒト抗体であっても、免疫原性の産生を完全に回避することができず、その原因の一つは、ヒトの体内に天然の免疫グロブリン又は免疫グロブリンの断片に結合可能な自己抗体、即ち、予備の抗薬物抗体(pre-anti-drug antibody、pre-ADA)が存在することである。これらのpre-ADAは、ヒトの体内にわたって存在する様々な免疫グロブリンにエピトープ特異性を有し、エピトープは、Fc領域内のエピトープ、可変領域/CDR領域内のエピトープ、重鎖中のヒンジ領域内のエピトープなどを含む。機能的には、現在の研究によれば、これらのpre-ADAは、感染症、生体の免疫系の恒常性維持などに関連しているが、多くの具体的な機能がまだ十分に認識されていない。
【0005】
pre-ADAは、内因性免疫グロブリンに加え、治療用のタンパク質又はポリペプチド(モノクローナル抗体を含む)若しくはポリペプチド分子に結合することができる。治療用のタンパク質又はポリペプチド分子に結合するpre-ADAは、当該分子を維持、消失、中和して、その機能と代謝に影響を与えることで、臨床応答及び生物学的利用能の変化を引き起こし、さらに過敏反応などの副作用及び特殊な現象の発生を招くことになる。
【0006】
単一ドメイン抗体(single-domain antibody、sdAb)は、ヒトと非ヒト霊長類に由来するIgG分子の重鎖可変領域(VH)のsdAb及びラクダ/アルパカに由来する重鎖(VHH)のsdAbを含み、臨床開発に入る前に、ADAが低減されるように、免疫原性に関連する検出及び最適化を行うことが一般的である。しかし、ヒト化改変が行われても、これらの分子は、依然としてpre-ADAに結合する可能性がある。sdAb及びその誘導体の構造に基づく薬物分子は、臨床開発中に強い免疫関連の副作用を生じさせ、かつ副作用がpre-ADAの結合と密接に関係していることが報告されている。
【0007】
従って、sdAb及びその誘導体のpre-ADAへの結合程度を低減可能な改変方法を提供することは、対応する薬剤のより良い開発、その臨床的価値の活用のために非常に有益である。本開示では、sdAbのpre-ADAへの結合を低減するための一連の改変方法が試験され、かつ望ましい候補分子を得ることに成功した。それらの改変方法及びそれらにより産生された候補分子は、今後、sdAbベースの治療用生体高分子のpre-ADAへの結合を低減し、さらに薬剤の臨床的治療効果を最適化するために広く使用されることが期待される。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、抗薬物抗体(anti-drug antibody、ADA)、予備の抗薬物抗体(pre-ADA)への結合が低減された免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する。また、本開示は、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド、関連製品のコード核酸、調製方法、医薬組成物、製薬的使用、検出的使用を提供する。
【0009】
免疫グロブリン単一可変ドメイン
第1の態様において、本開示の幾つかの実施形態は免疫グロブリン単一可変ドメインを提供し、それは、
X1X2(X3)n又はVTVX1X2(X3)nで示されるアミノ酸配列のC末端を含み、そのうち、X1はS、F及びRから選ばれ、X2はA、P、Sから選ばれ、X3はAであるか又は存在せず、nは0~5の整数であり、
nが0である場合、X3は存在せず、
nが1~5である場合、X3はAであり、
幾つかの具体的な実施形態において、上記修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、下記の(a)~(e)、即ち、
(a)SAA又はVTVSAA(配列番号37)、
(b)FP又はVTVFP(配列番号38)、
(c)FPA又はVTVFPA(配列番号39)、
(d)RS又はVTVRS(配列番号45)、及び
(e)RSA又はVTVRSA(配列番号46)
の何れか1つからなるC末端を含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインを提供し、そのC末端は、X1X2X3若しくはVTVX1X2X3で示されるアミノ酸配列を含むか又は上記アミノ酸配列で終結され、そのうち、X1はS、F、Rから選ばれ、X2はA、P、Sから選ばれ、又はX2は存在せず、X3はAから選ばれ、又はX3は存在しない。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記X1X2X3若しくはVTVX1X2X3は、下記の(1)~(10)、即ち、
(1)SAA若しくはVTVSAA(配列番号37)、
(2)FP若しくはVTVFP(配列番号38)、
(3)FPA若しくはVTVFPA(配列番号39)、
(4)RP若しくはVTVRP(配列番号40)、
(5)R若しくはVTVR(配列番号41)、
(6)RA若しくはVTVRA(配列番号42)、
(7)FS若しくはVTVFS(配列番号43)、
(8)SP若しくはVTVSP(配列番号44)、
(9)RS若しくはVTVRS(配列番号45)、及び
(10)RSA若しくはVTVRSA(配列番号46)
から選ばれる何れか1つである。
【0012】
幾つかの実施形態において、C末端が下記の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含むか又は上記アミノ酸配列で終結される免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する:SA、SAS、SAST(配列番号47)、SASTK(配列番号48)、SASTKG(配列番号49)、SASTKGP(配列番号50)、SAT、SATV(配列番号51)、SAAS(配列番号52)、SAAST(配列番号53)、SAASTK(配列番号54)、SAASTKG(配列番号55)、SAASTKGP(配列番号56)、FS、FSA、FSAS(配列番号57)、FSAST(配列番号58)、FSASTK(配列番号59)、FSASTKG(配列番号60)、FSASTKGP(配列番号61)、FST、FSTV(配列番号62)、FPAS(配列番号63)、FPAST(配列番号64)、FPASTK(配列番号65)、FPASTKG(配列番号66)、FPASTKGP(配列番号67)、RPA、RPAA(配列番号68)、RPAST(配列番号69)、RPASTK(配列番号70)、RPASTKG(配列番号71)、RPASTKGP(配列番号72)、RPT、RPTV(配列番号73)、RPAAST(配列番号74)、RPAASTK(配列番号75)、RPAASTKG(配列番号76)、RPAASTKGP(配列番号77)、RAA、RAST(配列番号78)、RASTK(配列番号79)、RASTKG(配列番号80)、RASTKGP(配列番号81)、RAAST(配列番号82)、RAASTK(配列番号83)、RAASTKG(配列番号84)、RAASTKGP(配列番号85)、RAT、RATV(配列番号86)、SAAG(配列番号87)、SAAGG(配列番号88)、FPG、FPGG(配列番号89)、FPAG(配列番号90)、FPAGG(配列番号91)、RAG、RAGG(配列番号92)、RS、RSA、RSAA(配列番号93)、RSAAA(配列番号94)、RSAS(配列番号95)、RSAST(配列番号96)、RSASTK(配列番号97)、RSASTKG(配列番号98)、RSASTKGP(配列番号99)、RSG又はRSGG(配列番号100)、VTVSA(配列番号101)、VTVSAS(配列番号102)、VTVSAST(配列番号103)、VTVSASTK(配列番号104)、VTVSASTKG(配列番号105)、VTVSASTKGP(配列番号106)、VTVSAT(配列番号107)、VTVSATV(配列番号108)、VTVSAAS(配列番号109)、VTVSAAST(配列番号110)、VTVSAASTK(配列番号111)、VTVSAASTKG(配列番号112)、VTVSAASTKGP(配列番号113)、VTVSAT(配列番号114)、VTVSATV(配列番号115)、VTVFS(配列番号116)、VTVFSA(配列番号117)、VTVFSAS(配列番号118)、VTVFSAST(配列番号119)、VTVFSASTK(配列番号120)、VTVFSASTKG(配列番号121)、VTVFSASTKGP(配列番号122)、VTVFST(配列番号123)、VTVFSTV(配列番号124)、VTVFPAS(配列番号125)、VTVFPAST(配列番号126)、VTVFPASTK(配列番号127)、VTVFPASTKG(配列番号128)、VTVFPASTKGP(配列番号129)、VTVRPA(配列番号130)、VTVRPAA(配列番号131)、VTVRPAST(配列番号132)、VTVRPASTK(配列番号133)、VTVRPASTKG(配列番号134)、VTVRPASTKGP(配列番号135)、VTVRPAA(配列番号136)、VTVRPT(配列番号137)、VTVRPTV(配列番号138)、VTVRPAAST(配列番号139)、VTVRPAASTK(配列番号140)、VTVRPAASTKG(配列番号141)、VTVRPAASTKGP(配列番号142)、VTVRAA(配列番号143)、VTVRAST(配列番号144)、VTVRASTK(配列番号145)、VTVRASTKG(配列番号146)、VTVRASTKGP(配列番号147)、VTVRAAST(配列番号148)、VTVRAASTK(配列番号149)、VTVRAASTKG(配列番号150)、VTVRAASTKGP(配列番号151)、VTVRAT(配列番号152)、VTVRATV(配列番号153)、VTVSAAG(配列番号154)、VTVSAAGG(配列番号155)、VTVFPG(配列番号156)、VTVFPGG(配列番号157)、VTVFPAG(配列番号158)、VTVFPAGG(配列番号159)、VTVRAG(配列番号160)、VTVRAGG(配列番号161)、VTVRS(配列番号162)、VTVRSA(配列番号163)、VTVRSAA(配列番号164)、VTVRSAAA(配列番号165)、VTVRSAS(配列番号166)、VTVRSAST(配列番号167)、VTVRSASTK(配列番号168)、VTVRSASTKG(配列番号169)、VTVRSASTKGP(配列番号170)、VTVRSG(配列番号171)又はVTVRSGG(配列番号172)。
【0013】
第2の態様において、本開示の幾つかの実施形態は免疫グロブリン単一可変ドメインを提供し、そのC末端は、X4X5若しくはVTVX4X5で示されるアミノ酸配列を含むか又は上記アミノ酸配列で終結され、そのうち、
X4はF又はRから選ばれ、X5は存在してもしなくてもよく、X5は存在する場合、1~10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、また、例えば、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9個)のアミノ酸残基のアミノ酸伸長を表し、上記アミノ酸伸長は、例えば、P、PA、A、AA、AAA、AAAA(配列番号173)、PAA、PAAA(配列番号174)、AS、AST、ASTK(配列番号175)、ASTKG(配列番号176)、ASTKGP(配列番号177)、PAS、PAST(配列番号178)、PASTK(配列番号179)、PASTKG(配列番号180)、PASTKGP(配列番号181)、PT、PTV、PG、PGG、PAG、S、SA、SAA、SAAA(配列番号182)、SAS、SSAST(配列番号183)、SSASTK(配列番号184)、SSASTKG(配列番号185)、SSASTKGP(配列番号186)、SRSG(配列番号187)又はSRSGG(配列番号188)であり、或いは
X4はSであり、X5は1~10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、また、例えば、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9個)のアミノ酸残基のアミノ酸伸長を表し、上記アミノ酸伸長は、例えば、A、AA、AAA、AAAA、AS、AST、ASTK、ASTKG、ASTKGP、T、TV、G、GGである。
【0014】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインを提供し、そのC末端は、X4X5若しくはVTVX4X5で示されるアミノ酸配列を含むか又は上記アミノ酸配列で終結され、そのうち、
X4はF又はRから選ばれ、X5は1~5個のアミノ酸残基のアミノ酸伸長を表し、上記アミノ酸伸長はP、PA、S、SAが好ましく、又は
X4はSであり、X5は1~5個のアミノ酸残基のアミノ酸伸長を表し、上記アミノ酸伸長はAAが好ましく、
例えば、上記X4X5若しくはVTVX4X5は、
SAA若しくはVTVSAA、
FP若しくはVTVFP、
FPA若しくはVTVFPA、
RS若しくはVTVRS、又は
RSA若しくはVTVRSA
から選ばれる何れか1つである。
【0015】
第3の態様において、本開示の幾つかの実施形態は、ヒト生殖細胞系列に由来するフレームワーク配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する。
【0016】
幾つかの実施形態において、それは、ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する112位に、例えば、112F、112R又は112Aから選ばれるアミノ酸修飾が存在する。
【0017】
幾つかの実施形態において、それは、ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する113位に、例えば、113P、113A又は113Sであるアミノ酸修飾が存在する。
【0018】
幾つかの実施形態において、112Fのアミノ酸修飾が存在する場合、113位に113P、113A又は113Sのアミノ酸修飾が同時に存在し、或いは、112Rのアミノ酸修飾が存在する場合、及び/又は113位に113P又は113Aのアミノ酸修飾が存在する。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、112位と113位に、112Fと113P、112Fと113A、112Fと113S、112Rと113P、112Rと113A、112Rと113S、112Aと113P、112Aと113A、112Aと113S、112Sと113Pから選ばれる何れか1つのアミノ酸修飾の組み合わせが存在する。
【0020】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインを提供し、それは、ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する112位に112F又は112Rのアミノ酸修飾が存在し、
選択的に、さらにヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する113位に113Pのアミノ酸修飾が存在し、又は113位はSであり、
幾つかの具体的な実施形態において、上記ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する112位と113位には、
112Fと113P、
112Rと113S、及び
112Fと113S
の何れか1つのアミノ酸残基の組み合わせが存在する。
【0021】
第4の態様において、本開示の幾つかの実施形態は、ヒト生殖細胞系列に由来するフレームワーク配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する。
【0022】
幾つかの実施形態において、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する112位は、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列に対する113位におけるアミノ酸修飾を含むSであり、上記修飾は113A、113Pから選ばれる。
【0023】
幾つかの実施形態において、113位の後に、さらに1~10個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、また、例えば、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9個)のアミノ酸残基のアミノ酸伸長があり、上記アミノ酸伸長は、例えば、A、AA、AAA、AAAA、AS、AST、ASTK、ASTKG、ASTKGP、TV、T、G、GGである。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記C末端は、上記免疫グロブリン単一可変ドメインが上記アミノ酸修飾を含むように、アミノ酸修飾(例えば、置換又は取替、欠失、付加)により産生することができる。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、以下のものをさらに含んでもよい:
1)ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する14位、41位、108位における1つ又は複数のアミノ酸修飾である。幾つかの具体的な実施形態において、14位の修飾は、14A、14K、14Q、14T(例えば、P14A、P14K、P14Q、P14T)を含むが、これらに限定されず、41位の修飾は41A(例えば、P41A)を含むが、これらに限定されず、108位の修飾は108A、108Q(例えば、L108A、L108Q)を含むが、これらに限定されない。ここにWO2013024059Aにおける関連変異が全体として組み込まれている。
【0026】
2)ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する11位、13位、14位、15位、82位、82a又は82b位、83位、84位、107位、108位における1つ又は複数のアミノ酸修飾である。ここにWO2012175741Aにおける関連変異が全体として組み込まれている。
【0027】
3)ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に対する11位及び/又は88位にあるアミノ酸修飾である。幾つかの具体的な形態において、11位の修飾は、11K、11R、11D、11E(例えば、L11K、L11R、L11D、L11E)を含むが、これらに限定されず、88位の修飾は、88E、88D、88R、A8K(例えば、A88E、A88D、A88R、A88K)を含むが、これらに限定されない。幾つかの具体的な形態において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、11E/88E、11E/88D、11E/88K、11E/88R、11D/88E、11D/88D、11D/88K、11D/88R、11K/88E、11K/88D、11K/88K、11K/88R、11R/88E、11R/88D、11R/88K又は11R/88R(例えば、L11E/A88E、L11E/A88D、L11E/A88K、L11E/A88R、L11D/A88E、L11D/A88D、L11D/A88K、L11D/A88R、L11K/A88E、L11K/A88D、L11K/A88K、L11K/A88R、L11R/A88E、L11R/A88D、L11R/A88K又はL11R/A88R)から選ばれる組み合わせを有する。ここにWO2016118733における関連変異が全体として組み込まれている。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記ヒト生殖細胞系列フレームワーク配列は、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列であってもよい。
【0029】
幾つかの実施形態において、未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメインに比べて、上記本開示に提供される修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、低減された副作用、及び/又は向上した安全性を有する。例えば、低減された免疫原性を有する。
【0030】
幾つかの具体的な実施形態において、未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメインに比べて、上記本開示に提供される修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、血清に存在するpre-ADA又はADAへの結合が低減されている。低減された結合能は、当該分子が、低減された親和性(affinity)又は低減された親和力(avidity)でpre-ADA(又はADA)に結合することを意味する。例えば、上記本開示に提供される修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインのpre-ADA(又はADA)へのKDは、未修飾のsdAbのpre-ADA(又はADA)へのKDの1.5倍又はそれ以上(例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、8倍)である。また、例えば、上記本開示に提供される修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインのpre-ADA(又はADA)への結合は、未修飾のsdAbのpre-ADA(又はADA)への結合に比べて、10%以上(例えば、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%)低減されており、採用可能な検出方法は、この分野で通常のもの、例えば、本開示の実施例1に示されるELISAである。KDは平衡解離定数を指し、当業者には、KDの値が小さいほど、結合が強くなることが理解される。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記本開示に提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一ドメイン抗体(single domain antibody、sdAb)又はナノボディであってもよい。例えば、VH sdAb又はVHHである。上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト又は非ヒトのもの、例えば、ヒトVH sdAb又はヒト化したラクダVHHであってもよい。上記免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、sdAb、ナノボディ)は、ファージディスプレイで得られたもの、又はキメラの、ラクダの、ヒト化のものであってもよい。上記免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、sdAb、ナノボディ)は、配列が最適化されたもの、例えば、ヒト化、親和性成熟、T細胞エピトープの除去、抗体脱アミドの低減及び/又は抗体異性化の低下によって配列が改変されたものであってもよい。上記免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、sdAb)は、翻訳後修飾されたもの、例えば、リーダー配列の切断、様々なグリコシル化とリン酸化モードにおける様々な糖部分の添加、脱アミド、酸化、ジスルフィド結合の混在(disulfide bond scrambling)、異性化、C末端リジンの切断及びN末端グルタミンの環化が行われたものであってもよい。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記本開示に提供される免疫グロブリン単一可変ドメインの標的抗原への結合(例えば、一価結合)は、標的抗原のCDR領域(例えば、CDR1、CDR2、CDR3を含む)への特異的結合を含み、上記sdAbは、例えば、約5μM~約1pMの範囲内のKDで標的抗原に結合し、また、例えば、約500nM~約10pM、約200nM~約10pM、約50nM~約10pM、約10nm~約10pMの範囲内のKDで上記標的抗原に結合する。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記本開示に提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは、その変異体を含み、上記変異体は、親免疫グロブリン単一可変ドメインに比べて1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個)のアミノ酸変異を有し、上記アミノ酸変異は、保存的な取替、置換若しくは修飾、及び/又は機能に影響を及ぼさない欠失、付加であってもよく、上記アミノ酸変異はCDR領域及び/又はFR領域に発生されてもよく、上記変異体は、親免疫グロブリン単一可変ドメインに比べて、同様又は非常に類似の生物学的機能、pre-ADA又はADAへの結合親和性を有する。幾つかの具体的な実施形態において、上記変異体は、例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸保存的置換変異体である。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは、別の分子と融合するか又は複合し、融合物又は複合体の形態で存在する。上記別の分子は、別の免疫グロブリン単一可変ドメイン、タンパク質又はポリペプチド、ポリペプチド、抗体又はその抗原結合断片、免疫グロブリンのFc領域、PEG分子を含むが、これらに限定されない。幾つかの具体的な実施形態において、上記本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは上記融合物又は複合体のC末端に位置又は暴露し、例えば、当該融合物又は複合体が1つのポリペプチド鎖からなる場合、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは当該ポリペプチド鎖のC末端に位置又は暴露し、当該融合物又は複合体が2つ又は複数のポリペプチド鎖で重合されてなる場合、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは、少なくともその1つのポリペプチド鎖のC末端、又は2つ、複数のポリペプチド鎖のC末端に位置又は暴露する。
【0035】
タンパク質又はポリペプチド
本開示は、上記本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8個)を含むタンパク質又はポリペプチドを提供する。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチドは、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインと他のポリペプチド(例えば、治療用ポリペプチド)との融合タンパク質又はポリペプチドである。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記タンパク質又はポリペプチドのC末端に位置する。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチドは、抗体(その抗原結合断片を含む)である。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記抗体は、単一特異性抗体(モノクローナル抗体)又は二重特異性抗体(二重抗体)、多重特異性抗体(例えば、三重抗体、四重抗体)である。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記抗体は、一価、二価、三価、四価、五価又は六価のものである。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記抗体は重鎖及び軽鎖を含み、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記重鎖のC末端及び/又は上記軽鎖のC末端に位置する。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)が1つのポリペプチド鎖で構成される場合、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは、当該ポリペプチド鎖のC末端に位置し、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)が2つのポリペプチド鎖で構成/重合されてなる場合、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つのポリペプチド鎖の1つ又は2つのC末端に位置してもよく、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)が3つ、4つ又はそれ以上のポリペプチド鎖で構成/重合されてなる場合、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインは、その中の1つ、2つ、それ以上又は全てのポリペプチド鎖のC末端に位置してもよい。本開示において、上記ポリペプチド鎖のN末端に対する他の免疫グロブリン可変ドメイン、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH sdAb又はVL sdAb又はVHH)、scFv、ポリペプチドの連結を排斥しない。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)は免疫グロブリンFc領域を含み、例えば、上記Fc領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域である。幾つかの具体的な実施形態において、上記Fc領域は、エフェクター機能が増加又は減少されたものであり、上記エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)又は補体依存性細胞傷害(CDC)である。幾つかの具体的な実施形態において、上記Fc領域は、FcγRへの結合が増強又は減弱されたものである。幾つかの具体的な実施形態において、上記Fc領域は、重鎖ミスマッチ防止変異を含むもの、例えば、Knob-into-hole(KIH)である。幾つかの具体的な実施形態において、エフェクター機能が増強された例示的なIgG1 Fc領域は、S239D、S239E、S239K、F241A、V262A、V264D、V264L、V264A、V264S、D265A、D265S、D265V、F296A、Y296A、R301A、I332Eという置換又はその任意の組み合わせを含み、例えば、S239D/I332E、S239D/A330S/I332E、S239D/A330L/I332E、S298A/D333A/K334A、P247I/A339D、P247I/A339Q、D280H/K290S、D280H/K290S/S298D、D280H/K290S/S298V、F243L/R292P/Y300L、F243L/R292P/Y300L/P396L、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L、G236A/S239D/I332E、K326A/E333A、K326W/E333S、K290E/S298G/T299A、K290N/S298G/T299A、K290E/S298G/T299A/K326E又はK290N/S298G/T299A/K326Eである。幾つかの実施形態において、エフェクター機能が低減された例示的なIgG Fc領域は、IgG1上のL234A/L235A、L234F/L235E/D265A、又はL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、K214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2上のV234A/G237A、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、H268Q/V309L/A330S/P331S、S267E/L328F、IgG4上のF234A/L235A、S228P/F234A/L235A、S228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238S、S228P/F234A/L235A/G237A/P238S、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4上のN297Aという置換を含み、さらに、ハイブリッドIgG2/4Fcドメイン、例えば、IgG2由来の残基117~260及びIgG4由来の残基261~447を有するFcを使用してもよい。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)では、本開示の免疫グロブリン可変ドメインのN末端がFc領域(例えば、そのCH3)のC末端に直接的に又はリンカー(linker)を介して連結される。幾つかの実施形態において、上記抗体では、本開示の免疫グロブリン可変ドメインのN末端が抗体の軽鎖(例えば、そのCL)のC末端に直接的に又はリンカー(linker)を介して連結される。本開示において、重鎖及び/又は軽鎖のN末端に対する他の免疫グロブリン可変ドメイン、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH sdAb又はVL sdAb又はVHH)、scFv、ポリペプチドの連結を排斥しない。幾つかの実施形態において、上記リンカーは通常のものであり、例えば、(GmSn)h又は(GGNGT)h又は(YGNGT)h又は(EPKSS)hを含むが、これらに限定されず、そのうち、m、nはそれぞれ独立的に1~8の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8)から選ばれ、hは独立的に1~20の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20)から選ばれる。例えば、リンカーは、G4S、GS、GAP、(G4S)2、(G4S)3、(G4S)4、(G4S)5又はASGSである。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8個)の抗原結合ドメインを含み、幾つかの具体的な形態において、上記少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8個)の抗原結合ドメインは、2つの異なる抗原を標的とするか、又は複数(例えば、3、4個)の異なる抗原を標的とし、或いは同じ抗原の2つ又は複数(例えば、3、4、5、6個)の異なるドメイン又はエピトープを標的とする。
【0046】
幾つかの実施形態において、上記抗原は、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIGIT、CD40、TNFα、TNFR(TNFR1を含む)、VEGF、IL-1R、IL-6R、IL-4、IL-5、IL-13、DC-SIGN、ASGPR、HSA、TGFβR2及び4-1BBを含むが、これらに限定されない。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)は、疾患/病状を治療又は予防するための治療又は予防用のものであり、上記疾患/病状は、細胞増殖性疾患(例えば、腫瘍)、代謝性疾患、自己免疫疾患又は感染性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)は、アルブミン又はポリペプチド(HSA)、HSA結合ドメイン(例えば、抗HSA抗体、抗HSA単一ドメイン抗体)、PEG分子又は免疫グロブリンFc領域などの半減期延長ドメインをさらに含む。
【0049】
本開示は、上記本開示に係るsdAbを含み、又は上記本開示に係るタンパク質又はポリペプチドを含む複合体又は誘導体をさらに提供する。上記複合体は、例えば、任意の検出可能な標識を含んでもよい。
【0050】
例示的な免疫グロブリン単一可変ドメイン
上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメインの例として、本開示は、4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む4-1BBタンパク質又はポリペプチドをさらに提供する。
【0051】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、CDR1、CDR2、CDR3を含み、上記CDR1、CDR2、CDR3は、配列番号6、15~18の何れか1つで示されるアミノ酸配列におけるCDR1、CDR2及びCDR3であり、上記CDR1、CDR2及びCDR3は、Kabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムによって定義される。
【0052】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記CDR1、CDR2及びCDR3の何れか1つ又はその任意の組み合わせを含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号7、8、9で示され、又は配列番号7、8、18で示される。それは、Kabat番号付けシステムによって定義されるCDRである。
【0054】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト化、親和性成熟、T細胞エピトープ(TCE)の除去/低減、抗体脱アミドの低減及び/又は抗体異性化の低下によって改変されたものである。幾つかの具体的な実施形態において、上記ヒト化に使用されるヒト生殖細胞系列テンプレートの重鎖フレームワーク領域(FR)は、IGHV3-64*04、IGHV3-23*03及び/又はIGHV3-74*01に由来する。幾つかの実施形態において、FR1はIGHV3-64*04、FR2はIGHV3-23*03、FR3はIGHV3-74*01に由来する。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号6、15~18、20~35の何れか1つで示されるか、又はそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%の同一性を有する。
【0056】
本開示において、「少なくとも80%の(配列)同一性」は、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の(配列)同一性をカバーし、「少なくとも90%の(配列)同一性」は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の(配列)同一性をカバーし、「少なくとも95%の(配列)同一性」は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の(配列)同一性をカバーする。
【0057】
幾つかの実施形態において、アミノ酸配列が配列番号21、30~35の何れか1つで示され、配列番号20、22~29の何れか1つで示される4-1BBに特異的に結合するsdAbに比べてpre-ADA(又はADA)への結合が低減された、4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を提供する。上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6個)であってもよく、同一でも異なってもよい。上記抗体は、例えば、単一、二重又は多重特異性抗体である。
【0059】
幾つかの実施形態において、上記タンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)は、ヒト免疫グロブリンFc領域をさらに含み、例えば、上記Fc領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域である。幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、エフェクター機能が低下した、例えば、ADCC、ADCP、CDCが低減されたFc領域である。幾つかの実施形態において、上記Fc領域は、配列番号10~12の何れか1つで示されるか、又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0060】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、以下から選ばれる少なくとも1つの活性を有する:
(a)≦10-7のKD値でヒト4-1BB又はそのエピトープに結合すること、
(b)FcγRIIb(即ち、CD32b)で架橋されていない場合、4-1BBシグナル伝達経路を弱く活性化するか又は活性化せず、例えば、100nの抗体濃度で、FcγRIIbで架橋されていない場合の活性化の程度が、FcγRIIbで架橋された場合の飽和抗体濃度条件下での活性の10%以下であること、
(c)FcγRIIbで架橋された場合、4-1BBシグナル伝達経路を比較的強く活性化するか又は強く活性化し、例えば、EC50が1nM未満であること、
(d)T細胞を活性化し、及び/又はT細胞の増殖を促進すること、及び
(e)腫瘍の増殖を阻害すること。
【0061】
そのうち、(b)、(c)における4-1BBシグナル伝達経路の活性化検出については、例えば、実施例5の4-1BB/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイが参照される。
【0062】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン結合4-1BBのKD値は、≦1×10-7M、例えば、≦1×10-8M、又は≦1×10-9M、又は≦1×10-10Mであってもよい。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、腫瘍の増殖を少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%阻害することができる。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記本開示に係る4-1BBに特異的に結合するsdAbと同じエピトープに結合するか又は競合的に結合し、或いは、上記本開示に係る4-1BBに特異的に結合するsdAbの4-1BBへの結合を遮断し、或いは、4-1BBへの結合が上記本開示に係る4-1BBに特異的に結合するsdAbにより遮断されるタンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)を提供する。
【0065】
ポリヌクレオチド及びベクター
上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)をコードする核酸分子を提供する。上記核酸は、RNA、DNA又はcDNAであってもよい。本開示の幾つかの実施形態によれば、上記核酸は、基本的に単離した核酸である。
【0066】
本開示に係る核酸は、ベクターの形態であってもよく、ベクター中に存在してもよく、及び/又はベクターの一部であってもよく、当該ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、YAC又はウイルスベクターである。ベクターは、特に発現ベクターであってもよく、即ち、PD-1結合タンパク質又はポリペプチドのインビトロ及び/又はインビボで(即ち、適切な宿主細胞、宿主有機体及び/又は発現系で)の発現を可能にするベクターであってもよい。当該発現ベクターは一般的に、少なくとも1つの本開示の核酸を含み、1つ又は複数の適切な発現調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)に操作可能に連結される。特定の宿主における発現に対して上記要素及びその配列を選択することは、当業者の常識である。本開示のsdAb、上記sdAbを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)の発現に有用又は必要な調節要素及び他の要素は、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、組み込み因子、選択マーカー、リーダー配列、レポーター遺伝子である。
【0067】
本開示に係る核酸は、本開示に係るポリペプチドのアミノ酸配列についての情報に基づき、既知の方法(例えば、自動DNA合成及び/又は組換えDNA技術)により調製又は取得されてもよく、及び/又は適切な天然源から単離されてもよい。
【0068】
宿主細胞
上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を発現するか又は発現できる、及び/又は本開示の核酸若しくはベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。幾つかの実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞である。
【0069】
細菌細胞は、例えば、グラム陰性菌株(例えば、大腸菌(Escherichia coli)菌株、プロテウス属(Proteus)菌株及びシュードモナス属(Pseudomonas)菌株)及びグラム陽性菌株(例えば、バシラス属(Bacillus)菌株、ストレプトミセス属(Streptomyces)菌株、ブドウ球菌属(Staphylococcus)菌株及びラクトコッカス属(Lactococcus)菌株)の細胞を含む。
【0070】
真菌細胞は、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)、アカパンカビ属(Neurospora)及びアスペルギルス属(Aspergillus)の種の細胞を含み、又はサッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えば、ピキアパストリス(Pichia pastoris)とピキアメタノリカ(Pichia methanolica))及びハンゼヌラ属(Hansenula)の種の細胞を含む。
【0071】
哺乳動物細胞は、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などを含む。
【0072】
しかしながら、本開示は、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞及びこの分野における異種タンパク質又はポリペプチドを発現するための任意の他の細胞を使用してもよい。
【0073】
調製方法
上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を調製するための方法であって、上記の宿主細胞において上記目的タンパク質又はポリペプチドを発現し、かつ当該宿主細胞から目的タンパク質又はポリペプチドを単離する方法を提供する。選択的に、精製工程を含んでもよく、例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製し、非特異的に結合した成分を洗い流し、さらにPH勾配法により、結合した抗体を溶離し、SDS-PAGEにより検出して収集する。選択的に、通常の方法によりろ過して濃縮する。可溶性の混合物及びポリマーは、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0074】
本開示に係る工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローニングして発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定的にトランスフェクションすることができる。哺乳動物類の発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒト抗原に特異的に結合する抗体を発現することにより、安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において拡大培養することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製して収集することができる。抗体は、通常の方法によりろ過して濃縮することができる。可溶性の混合物及びポリマーは、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。
【0075】
組成物
上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメを含むンタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を含む組成物を提供する。例えば、疾患(例えば、がん)への治療、緩和又は予防有効量の本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0076】
幾つかの具体的な実施形態において、上記医薬組成物の単位用量には、本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)が0.01~99重量%含まれてもよく、或いは医薬組成物の単位用量における本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)の含有量は0.1~2000mgであり、幾つかの具体的な実施形態では1~1000mgである。
【0077】
幾つかの実施形態において、上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を含む製品又は生産品を提供する。選択的に、製品は、容器及びラベルを含む。容器は、例えば、バイアル、注射器及び試験管である。容器には、病状(例えば、がん、自己免疫疾患、代謝性疾患)の治療に有効な組成物が収容される。容器における、又は容器に接続されるラベルは、上記組成物が、選択された病状(例えば、がん、自己免疫疾患、代謝性疾患)の治療に用いられることを示す。
【0078】
幾つかの実施形態において、上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を含む医薬組成物を提供する。上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)は、疾患(例えば、がん、自己免疫疾患、代謝性疾患)を治療又は緩和する有効量であってもよく、医薬組成物には、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターがさらに含まれてもよい。
【0079】
上記免疫グロブリン単一可変ドメインが4-1BBに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインである場合、上記病状は、例えば、肺がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、肝がん、黒色腫、腎がん、扁平上皮がん、血液系がん又はその任意の組み合わせから選ばれるがんなどである。
【0080】
治療方法及び製薬的使用
上記本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)及びその医薬組成物を疾患又は病状の治療・緩和・予防・診断に使用する方法を提供する。
【0081】
幾つかの実施形態において、疾患を改善、緩和、治療又は予防する方法であって、対象に改善、緩和、治療又は予防有効量の本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)及びその医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0082】
幾つかの実施形態において、疾患を改善、緩和、治療又は予防する薬剤の調製に用いられる本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)及びその医薬組成物の使用を提供する。
【0083】
幾つかの実施形態において、上記疾患は、増殖性病状、又は制御不能な細胞増殖を特徴とする任意の他の疾患や病状である(例えば、がんであり、本開示において、がんと腫瘍は入れ替えて使用されてもよい)。幾つかの実施形態において、上記がんは固形腫瘍又は血液腫瘍である。幾つかの実施形態において、上記がんは進行性又は転移性である。幾つかの実施形態において、上記がんは、肺がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮がん、卵巣がん、肝がん、黒色腫、腎がん、扁平上皮がん、血液系がん又はその任意の組み合わせから選ばれる。
【0084】
幾つかの実施形態において、対象の感染症又は自己免疫疾患を治療又は予防する方法であって、上記対象に治療又は予防有効量の本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)及びその医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。幾つかの実施形態において、上記感染症は、ウイルス特異的T細胞応答の異なる程度の機能障害を特徴とする、HIV、HCV、HBVなどの病原体感染である。幾つかの実施形態において、上記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病、クローン病、関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ及び乾癬性関節炎から選ばれる。
【0085】
検出
インビボ又はインビトロで使用可能な本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)の検出的使用を提供する。
【0086】
さらに、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)による副作用(免疫原性、ADA又はpre-ADAへの結合を含む)を検出する方法、システム又は装置を提供し、それは、本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)により試料、例えば、対象からの血清試料を処理することを含み、上記対象は、疾患の治療又は予防のために本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)が投与される対象であり得る。
【0087】
幾つかの実施形態において、本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)は、それがタンパク質又はポリペプチド干渉を発生するか否かを予測する方法に使用される。例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)には、タンパク質若しくはポリペプチド干渉が発生されるか、或いはヒト血液若しくは血清にある干渉因子(例えば、pre-ADA)に結合する高い又は増加したリスクがあるか否かを確認することに使用される。
【0088】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)が免疫アッセイ(例えば、ADA又はpre-ADAアッセイ)においてタンパク質又はポリペプチド干渉を発生するか否かを測定するための方法を提供し、上記方法は、
(i)上記任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を、ヒト対象から得られ、かつC末端がアミノ酸配列VTVSSで終結される免疫グロブリン単一可変ドメイン(本開示における「未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメイン」)のC末端を認識及び/又は結合するその能力によって選択/単離された抗体と接触させるステップと、
(ii)上記任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)が上記免疫アッセイにおいて上記抗体に結合するか否かを確認するステップと、
を少なくとも含む免疫アッセイを行うことを含む。ステップ(ii)における上記抗体への結合は、上記任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)がそのようなタンパク質又はポリペプチド干渉を発生することができる(或いは発生するリスクが高い又は増加される)ことを意味する。
【0089】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメイン、免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質若しくはポリペプチド又は抗体が免疫アッセイにおいてタンパク質又はポリペプチド干渉を発生する程度を予測するための方法を提供し、上記方法は、
(i)本開示に係る任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を、ヒト対象から得られ、かつそのC末端がアミノ酸配列VTVSSで終結される免疫グロブリン単一可変ドメインのC末端を認識及び/又は結合するその能力によって選択/単離された抗体と接触させるステップと、
(ii)上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)が上記免疫アッセイにおいて上記抗体に結合するか否か、及び結合程度の強さ(幾つかの実施形態では、上記結合程度の強さは、同一の実験又は同等の検出条件下で、C末端がアミノ酸配列VTVSSで終結される免疫グロブリン単一可変ドメインの上記抗体への結合程度と比較される)を確認するステップと、
を少なくとも含む免疫アッセイを行うことを含み、
ここで、ステップ(ii)において結合が発生され、又は結合程度が強いことは、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)がタンパク質又はポリペプチド干渉を発生することができ、或いはタンパク質又はポリペプチド干渉を発生するリスクが高い又は増加されることを意味し、ステップ(ii)において結合が発生されず、又は結合程度が弱いことは、上記免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)がタンパク質又はポリペプチド干渉を発生せず、或いはタンパク質又はポリペプチド干渉を発生するリスクが低いことを意味し、例えば、上記免疫アッセイはELISAアッセイである。
【0090】
幾つかの具体的な実施形態において、上記抗体はポリクローナル抗体である。幾つかの形態において、上記抗体は、対象から得られ、かつポリクローナル抗体を得る原材料として適用される生体試料から、少なくとも1つの免疫親和性クロマトグラフィーステップと、任意選択的に、上記試料からポリクローナル抗体を単離及び/又は精製するための1つ又は複数の他のステップとを含む方法により取得可能なポリクローナル抗体であり、上記免疫親和性クロマトグラフィーでは、免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)を親和性構造部分又は抗原として使用し、ここで、上記親和性構造部分又は抗原として使用される上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、そのC末端がアミノ酸配列VTVSSで終結される。
【0091】
幾つかの実施形態において、そのC末端が配列VTVSSで終結される免疫グロブリン単一可変ドメイン(即ち、本開示における「未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメイン」)、上記sdAbを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)が抗薬物抗体アッセイにおいてタンパク質又はポリペプチド干渉を発生する傾向を低減するための方法を提供し、或いは免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記sdAbを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)がタンパク質又はポリペプチド干渉を発生する傾向を低減するためのC末端修飾の使用であって、その末端に配列VTVSSがある免疫グロブリン単一可変ドメイン(即ち、本開示における「未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメイン」)に比べて、タンパク質又はポリペプチド干渉を発生する傾向が低減されるか又は基本的に低減されるように、上記本開示に提供される方法により免疫グロブリン単一可変ドメインのC末端を修飾することを含む使用を提供する。
【0092】
幾つかの実施形態において、インビトロ検出方法、システム又は装置は、例えば、
(i)試料を本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)と接触させること、
(ii)任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)と試料との間で形成された複合物を検出すること、及び/又は
(iii)参照試料(例えば、対照試料)を任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)と接触させること、及び
(iv)参照試料と比較することにより、複合物形成の程度を確認することであって、対照試料又は対象中と比較して、試料又は対象における複合物に形成された変化(例えば、統計的に有意な変化)が、試料における上記任意の免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)の、試料からの対象のインビボでのpre-ADA(又はADA)への結合程度を示すこと、
を含み得る。
【0093】
検出は、複合物を形成する位置又は時間を確認することを含んでもよい。免疫グロブリン単一可変ドメイン、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)も、検出可能な物質で標識し、上記標識により検出が達成される。好適な検出可能な物質は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質を含む。例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は組織免疫組織化学などの通常の検出アッセイを使用することができる。検出の目的のために、本開示に係るsdAb、上記免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質又はポリペプチド(抗体を含む)は、フルオロフォア発色団で標識することができる。
【0094】
幾つかの実施形態において、試薬キットをさらに提供し、上記試薬キットは、上記結合タンパク質又はポリペプチド、ポリヌクレオチドを含み、さらに診断マニュアルを含んでもよい。試薬キットは、少なくとも1つの付加的な試薬、例えば、マーカーや付加的な診断剤をさらに含んでもよい。インビボでの使用に対して、抗体は、医薬組成物として調製することができる。
【0095】
本開示は、WO2012175741Aの検出方法を全体として援用している。
【0096】
用語の定義
本開示がさらに容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本開示で別途明確に定義しない限り、本開示に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を持っている。
【0097】
文脈で特に明記のない限り、明細書及び特許請求の範囲の全体において、「含む」、「有する」、「含有する」などの言葉は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味、即ち、「含むが、これらに限定されない」という意味を持っていると理解すべきである。
【0098】
本開示に使用されるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載された通りである。
【0099】
「4-1BBタンパク質又はポリペプチド」又は「4-1BB」は、CD137、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー9とも呼ばれ、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、CD8+及びCD4+T細胞、制御性T細胞(Tregs)、NK細胞及びNKT細胞、B細胞及び好中球などの細胞表面に発現される共刺激分子である。4-1BBは共刺激分子に属し、免疫細胞が活性化された後に発現される。ヒト4-1BBタンパク質又はポリペプチドは、NCBI登録番号がNP_001552.2である。本開示において、「4-1BB」は、本開示に記載される既知又は野生型の4-1BB、及び任意の天然に産生されたスプライス変異体、アミノ酸変異体又はアイソフォームを含む(が、これらに限定されない)ようなタンパク質又はポリペプチド若しくはその断片、変異体の何れかを任意選択的に含んでもよい。
【0100】
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、所望の抗原結合活性を示せば、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造をカバーしており、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、全長抗体及び抗体断片(又は抗原結合断片、又は抗原結合部分)を含むが、これらに限定されない。「抗原結合断片」は、単鎖抗体(即ち、全長重鎖と軽鎖)、Fab、修飾されたFab、Fab’、修飾されたFab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH/VL又はVHH)、scFv、二価又は三価又は四価抗体、Bis-scFv、diabody、tribody、triabody、tetrabody及び上記の何れか1つのエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されない(例えば、Holliger and Hudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136、Adair and Lawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209-217を参照)。
【0101】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、一般的に、他の可変ドメインと相互作用しない場合(例えば、通常の4本鎖モノクローナル抗体のVHとVLドメインの間に必要なVH/VL相互作用がない場合)に機能的抗原結合部位を形成することができる免疫グロブリン可変ドメイン(重鎖又は軽鎖ドメインであってもよく、VH、VHH又はVLドメインを含む)を指すために使用される。「免疫グロブリン単一可変ドメイン」の実例は、ナノボディ(VHH、ヒト化VHH、ラクダ化VH(例えば、ラクダ化ヒトVH)を含む)、IgNAR、ドメイン、VHドメインとしての又はVHドメインに由来する(単一ドメイン)抗体(例えば、dAbsTM)及びVLドメインとしての又はVLドメインに由来する(単一ドメイン)抗体(例えば、dAbsTM)を含む。重鎖可変ドメイン(例えば、VH又はVHHドメイン)に基づく及び/又は由来する免疫グロブリン単一可変ドメインは、一般的に好ましい。免疫グロブリン単一可変ドメインの一具体的な実例としては、以下に定義されるような「VHHドメイン」(又は、「VHH」と略称)である。本開示において、ドメイン抗体(dAb)、単ドメイン抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)は、互換的に使用されてもよい。
【0102】
「VHH」は、ナノボディ、VHH抗体、VHH抗体断片、VHHドメイン、重鎖単一ドメイン抗体とも呼ばれ(単一ドメイン抗体と呼ばれることもある)、重鎖抗体の可変領域を指す(Hamers-Casterman C,Atarhouch T,Muyldermans S,Robinson G,Hamers C,Songa EB,Bendahman N,Hamers R.:「Naturally occurring antibodies devoid of light chains」,Nature363,446-448(1993))。「VHH」は、通常のテトラペプチド鎖抗体における重鎖可変領域(VH)と区別するために使用される。VHHは、そのドメイン特異性により、他の抗原結合ドメインを必要とせずに、単独でエピトープに結合することができる。通常のテトラペプチド鎖抗体では、VHドメインとVLドメインの両方が共にエピトープを認識するが必要である。VHHドメインは、単一の免疫グロブリンドメインで形成された小さくて安定的かつ効率的な抗原認識ユニットである。幾つかの実施形態において、4-1BBを例とする、「抗4-1BB単一ドメイン抗体」、「4-1BB VHH」、「4-1BB VHH抗体」及び「4-1BBナノボディ」は、互換的に使用されてもよい。
【0103】
VHHは、一般的に、110~120個、例えば112~115個のアミノ酸からなる。しかし、より長い及びより短い配列も、本開示に記載の目的に適用されると留意すべきである。VHH及びVHH含有ポリペプチドの他の構造特性と機能特性について、次のようにまとめることができる:VLが存在しないと共にVLと相互作用しない場合に、VHHは抗原と機能的に結合する。通常のテトラペプチド鎖抗体のVH及びVLドメイン自体は、単独で抗原結合分子又は免疫グロブリン単一可変ドメインとして実用化することに適しておらず、VH及びVLドメインは、機能的抗原結合ユニットが提供されるように、ある形態によるか又は組み合わせる必要がある(例えば、Fab又はscFvの形態による)。VHHは、単一でかつ比較的小さい機能的抗原結合ユニット、ドメイン又はポリペプチドとして使用することができる。それらのユニークな特性のために、VHHドメイン(単独で、又は大きなポリペプチドの一部としてもよい)を使用することで、通常のVH及びVLドメイン、scFv又は通常の抗体断片(例えば、Fab又はF(ab’)2断片)を使用する場合よりも優れた顕著な利点が多く提供される:
-単一のドメインによって高親和性及び高選択性で抗原に結合するだけでよく、これにより、2つの単独なドメインが存在する必要がなく、当該2つのドメインが適切な空間配座及び配置で存在することを確保する必要もない(例えば、scFvは、一般的に特に設計されたリンカーを使用する必要がある)こと、
-VHHドメインは、単一の遺伝子によって発現可能であり、かつ翻訳後に折り畳みや修飾を必要としないこと、
-VHHドメインは、多価及び多特異的フォーマットに容易に改変することができること、
-VHHドメインは、可溶性が高くて凝集傾向がないこと、
-VHHドメインは、熱、pH、タンパク質又はポリペプチダーゼ及び他の変性剤又は条件に対して非常に安定的であり、かつそれで、調製、貯蔵又は輸送中に冷凍機器を使用しなくてもよく、コストや時間の節約及び環境保全が達成されること、
-VHHドメインは、調製されやすくて比較的安価で、さらに生産に必要な規模においても同様であること、
-VHHドメインは、通常のテトラペプチド鎖抗体及びその抗原結合断片に比べて比較的小さい(約15 kDa又はサイズが通常のIgGの1/10である)ので、高い組織浸透性を示すと共に、高用量で投与することができること、及び
-VHHドメインは、いわゆるキャビティ(cavity)結合特性を示すことができること(通常のVHドメインに比べて、VHHは、延長したCDR3ループを有するので、通常のテトラペプチド鎖構造抗体及びその抗原結合断片が到達できない標的エピトープに到達することができる)。
【0104】
標的抗原又はエピトープに結合するVHHを得る方法は、この前、既にR.van der Linden et al.,Journal of Immunological Methods,240(2000)185-195、Li et al.,J Biol Chem.,287(2012)13713-13721、Deffar et al.,African Journal of Biotechnology Vol.8(12),pp.2645-2652,17 June,2009及びWO94/04678という文献に開示された。
【0105】
ヒトの通常のテトラペプチド鎖抗体のVHドメインにおける対応する位置における1つ又は複数のアミノ酸残基で元のVHH(例えば、ラクダ科由来のVHH)のアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸残基を置換することにより、VHHドメインを「ヒト化」することができる(本開示では「配列最適化」とも呼ばれ、「配列最適化」は、ヒト化の他に、潜在的な翻訳後修飾部位の除去など、改良した特性をVHHに付与する他の修飾をカバーしてもよい)。ヒト化VHHドメインは、1つ又は複数の完全ヒトフレームワーク領域配列を含んでもよく、かつ一具体的な実施形態において、IGHV3のヒトフレームワーク領域配列を含んでもよい。ヒト化の方法としては、例えば、リサーフェシング法(resurfacing)、CDRユニバーサルフレームワークグラフト法(CDR grafting to a universal framework)、フレームワークシャッフリング法(Framework shuffling)などである。ヒトFR生殖細胞系列配列は、例えば、ImMunoGeneTics(IMGT)のホームページから取得可能である。
【0106】
(タンパク質又はポリペプチドの)「ドメイン」は、折り畳まれたタンパク質又はポリペプチド構造を指す。一般的に、ドメインは、タンパク質又はポリペプチドの単一の機能を担う。多くの場合には、タンパク質又はポリペプチドの他の部分及び/又はドメインの機能を失うことなく、付加され、除去され、又は他のタンパク質に移転されてもよい。本開示における幾つかの実施形態において、「ドメイン」は、抗体と抗原の結合部位として使用されてもよい。
【0107】
「可変ドメイン」は、基本的にこの分野及び下記でそれぞれ「フレームワーク領域1」(FR1)、「フレームワーク領域2」(FR2)、「フレームワーク領域3」(FR3)、及び「フレームワーク領域4」(FR4)という4つの「フレームワーク領域」からなるドメインを指し、ここで、上記フレームワーク領域は、この分野及び下記でそれぞれ「相補性決定領域1」(CDR1)、「相補性決定領域2」(CDR2)、及び「相補性決定領域3」(CDR3)という3つの「相補性決定領域」で離間される。従って、可変ドメインの一般的な構造(又は配列)は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4と示されてもよい。可変ドメインは、抗原結合部位を有するため、抗原に対する特異性が付与される。
【0108】
「フレームワーク領域(FR)」又は「フレームワーク」は、CDRのステントとして使用される可変ドメインにおける一部を指す。
【0109】
例えば、Riechmann及びMuyldermans、J.Immunol. Methods 231,25-38(1999)の
図2に示すように、VHHドメインに使用されるアミノ酸残基は、KabatらによるVHドメインの一般的な番号付け方法に従って番号付けされる(「Sequence of proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda、MD、公開案第91号)。ところが、この分野でVHドメイン及びVHHドメインについて公知されているように、各CDRにおけるアミノ酸残基の総数は、異なる可能性があり、かつKabat番号で示されるアミノ酸残基の総数に対応しない可能性がある(即ち、Kabat番号に基づく1つ又は複数の位置は、実際の配列において占められていない可能性があり、又は実際の配列はKabat番号の許容する数よりも多いアミノ酸残基を含む可能性がある)と留意すべきである。これは、一般的に、Kabatに基づく番号は、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際の番号に対応するか又は対応しない可能性があることを意味する。
【0110】
当業者は、多くの既知の番号付け案の何れか1つによって抗体CDRのアミノ酸配列境界を決定することができ、既知の番号付け案は、Kabat et al.,上記参照(「Kabat」番号付け案)、Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.,273:927-948(「Chothia」番号付け案)、MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.,262:732-745(「Contact」番号付け案)、Lefran et al.,Dev.Comp.Immunol.,2003,27:55-77(「IMGT」番号付け案)及びHonegge&Pluckthun,J.Mol.Biol.,2001,309:657-70(「AHo」番号付け案)という文献に記載された番号付け案を含み、それらは、それぞれ援用により全体として組み込まれている。この分野ではVHドメインのアミノ酸残基を番号付けする代替的な方法が知られており、上記代替的な方法は同様にVHHドメインにも使用可能である。しかしながら、特に明記のない限り、本開示の明細書、特許請求の範囲及び図面においては、上記のようなKabatによるVHHドメインに適した番号に従う。
【0111】
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持すると共に、ヒトにおいて低い免疫原性を有する抗体である。例えば、非ヒトCDR領域を保持すると共に、そのヒト対応物(即ち、定常領域及び可変領域のフレームワーク領域部分)で抗体の残りの部分を置き換えることにより達成してもよい。
【0112】
「親和性成熟」の抗体、特にVHH又はドメイン抗体は、1つ又は複数のCDRにおいて1つ又は複数の変化を有し、上記変化により、標的抗原への親和性がその親抗体に比べて増加される。親和性成熟の抗体は、この分野で既知の方法によって調製することができる。
【0113】
「Fc領域」又は「断片結晶化可能領域」は、抗体重鎖のC末端領域を定義するためであり、天然Fc領域及び改変されたFc領域を含む。幾つかの実施形態において、Fc領域は、同一又は異なる2つのサブユニットを含む。幾つかの実施形態において、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226位置におけるアミノ酸残基から、又はPro230からそのカルボキシ末端へ延びると定義される。本明細書に記載の抗体に用いられる好適なFc領域は、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3及びIgG4のFc領域を含む。幾つかの実施形態において、Fc領域の境界は変化してもよく、例えば、Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによる残基447)の欠失、又はFc領域のC末端グリシンとリジン(EU番号付けシステムによる残基446と447)の欠失である。特に説明のない限り、Fc領域の番号付け規則はEU番号付けシステムであり、EUインデックスとも呼ばれる。
【0114】
「未修飾の免疫グロブリン単一可変ドメイン」、例えば、標的抗原に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、フレームワーク構造における3つの相補性決定領域(CDR)を含む。天然に存在する免疫グロブリン鎖の遺伝学において、V領域がCDR3の始まりで終結され、かつCDR3の残部がD及びJ領域によって提供される(V-D-J融合物をもたらす)ことに鑑みて、本開示に係る免疫グロブリン単一可変ドメインは、CDR3の全てを含むと共に、そのC末端がFR4残基で終結される。VH sdAbは、そのC末端が残基LVTVSSで終結される。VHH sdAbは、そのC末端が残基VTVSSで終結される。VL sdAbは、そのC末端がVEIKRで終結される。「修飾された免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、本開示に記載されたような免疫グロブリン単一可変ドメインであり、免疫グロブリン単一可変ドメインのC末端の3次元配座を改変する修飾をさらに有する。修飾された免疫グロブリン単一可変ドメインは、本開示のようなC末端付加、伸長又はタグ及び/又はあるアミノ酸置換を含む免疫グロブリン単一可変ドメインを含む。
【0115】
「予備の抗薬物抗体」又は「pre-ADA」は、薬剤(例えば、タンパク質又はポリペプチド系薬剤、さらに例えば、抗体薬)が施用又は投与される対象又は個体に既に存在しているADAである。予備の抗薬物抗体は、初めて実験に使用される対象又は個体(即ち、この前に薬剤が投与されたことのない対象又は個体)にあり得る。
【0116】
「抗原」とは、抗原を認識する抗体が産生され、又は発現ライブラリー(例えば、特にファージ、酵母又はリボソームディスプレイライブラリー)がスクリーニングされるように、免疫適格性脊椎動物を免疫化するための分子である。本開示において、抗原はより広義に定義されており、抗体により特異的に認識される標的分子を含み、かつ抗体を産生するための免疫化プロセス又は抗体を選択するためのライブラリースクリーニングに使用される分子の一部又は模倣体を含む。
【0117】
「エピトープ」又は互換的に使用可能な「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原における任意の抗原決定基を指す。抗原決定基は、一般的に、例えばアミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的活性表面基を含み、かつ、一般的に、特定の3次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有する。エピトープは、「線状」エピトープ又は「配座」エピトープであってもよい。線状エピトープにおいて、抗原と相互作用分子(例えば、抗体)との間の相互作用部位の全ては、抗原の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。配座エピトープにおいて、相互作用部位は、互いに分離したアミノ酸残基に跨って存在する。
【0118】
「特異性」は、標的抗原結合分子又は抗原結合分子の結合可能な異なるタイプの抗原又はエピトープの数を指す。その特異性は、抗原結合分子の親和性(affinity)及び/又は親和力(avidity)に基づいて確認することができる。抗原と抗原結合分子との解離平衡定数(KD)で示される親和性は、エピトープと抗原結合分子上の抗原結合部位との結合強度の目安であり、KD値が小さいほど、エピトープと抗原結合分子との結合強度が強くなる(又は、親和性は、1/KDである会合定数(KA)で示されてもよい)。当業者に知られるように、具体的な関心抗原によっては、既知の方法で親和性を測定することができる。親和力は、抗原結合分子(例えば、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はそれを含むポリペプチド)と関連抗原との結合強度の目安である。親和力は、その抗原結合分子上の抗原結合部位との親和性、及び抗原結合分子に存在する関連結合部位の数に関係している。
【0119】
「結合親和性」又は「親和性」は、本開示において、2つの分子(例えば、抗体又はその一部と抗原)間の非共有相互作用の強度の目安として使用される。2つの分子間の結合親和性は、解離定数(KD)を決定することにより定量化することができる。例えば表面プラズモン共鳴(SPR)方法(Biacore)を使用して複合物の形成及び解離の動態を測定することでKDを決定することができる。一価複合物の結合及び解離に対応する速度定数は、それぞれ結合速度定数ka(又はkon)及び解離速度定数kd(又はkoff)と呼ばれる。KDは、KD=kd/kaという方程式によりka及びkdに関連する。解離定数の値は、周知の方法により直接決定することができ、かつ、例えばCaceci et al.(1984,Byte 9:340-362)に記載されたような方法により、複雑な混合物に対しても算出することができる。例えば、Wong&Lohman(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428-5432)に開示されたような二重ろ過ニトロセルロースフィルター結合アッセイにより、KDを決定することができる。標的抗原に対する抗体の結合能を評価する他の標準的なアッセイは、この分野で既知のものであり、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIAとフローサイトメトリー分析、及び本開示の他所で例示された他のアッセイを含む。抗体の結合動態と結合親和性は、この分野で知られている標準的なアッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)により、例えばBiacoreTMシステム又はKinExAにより評価されてもよい。各抗体/抗原複合物のKD値を比較することにより、異なる分子との相互作用に関連する結合親和性を比較し、例えば、異なる抗体による所定の抗原への結合親和性を比較することができる。同様に、相互作用の特異性は、目的相互作用(例えば、抗体と抗原の間の特異的相互作用)のKD値と非目的相互作用(例えば、標的抗原に結合しない既知の対照抗体)のKD値を決定して比較することで評価することができる。
【0120】
「相同性」、「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列類似性である。2つの比較される配列における位置が何れも同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットに占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンに占められる場合、上記分子は当該位置で相同である。2つの配列間の相同性百分率は、2つの配列の共有するマッチング又は相同位置数を比較される位置数で割って100をかける関数である。例えば、配列の最適アラインメントを行う際に、2つの配列中の10個の位置のうち、6個がマッチングしており、又は相同である場合は、2つの配列が60%相同であり、2つの配列中の100個の位置のうち、95個がマッチングしており、又は相同である場合は、2つの配列が95%相同である。
【0121】
「変異体」は、本開示に係るヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に適当な置換、挿入や欠失などの変異修飾を行った場合に得られた、本開示に係るヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に対して異なる百分率の配列同一性レベルを有するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を指す。上記配列同一性は、少なくとも85%、90%又は95%であってもよく、非限定的な実施例として、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%を含む。2つの配列間の配列比較及び同一性の百分率測定は、National Center For Biotechnology Instituteのホームページから取得可能なBLASTN/BLASTPアルゴリズムのデフォルト設定により行うことができる。
【0122】
「保存的置換」は、元のアミノ酸残基と類似の特性を有する別のアミノ酸残基に置換されることを指す。それは、ポリペプチドの機能、活性又は他の生物学的特性に影響が少ないか又は実質的にない。上記保存的アミノ酸置換は、この分野で公知のものであり、例えば、保存的アミノ酸置換は、下記の群(i)~(v)における1つのアミノ酸が同一の群における別のアミノ酸残基で置換されることが好ましい:
(i)小さい脂肪族非極性又は弱極性残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGly、
(ii)極性負電荷残基及びその(非帯電)アミド:Asp、Asn、Glu及びGln、
(iii)極性正電荷残基:His、Arg及びLys、
(iv)大きい脂肪族非極性残基:Met、Leu、Ile、Val及びCys、並びに
(v)芳香族残基:Phe、Tyr及びTrp。
【0123】
特に好ましくは、保存的アミノ酸置換は、AlaがGly又はSerで置換され、ArgがLysで置換され、AsnがGln又はHisで置換され、AspがGluで置換され、CysがSerで置換され、GlnがAsnで置換され、GluがAspで置換され、GlyがAla又はProで置換され、HisがAsn又はGlnで置換され、IleがLeu又はValで置換され、LeuがIle又はValで置換され、LysがArg、Gln又はGluで置換され、MetがLeu、Tyr又はIleで置換され、PheがMet、Leu又はTyrで置換され、SerがThrで置換され、ThrがSerで置換され、TrpがTyrで置換され、TyrがTrp又はPheで置換され、ValがIle又はLeuで置換されることである。
【0124】
「復帰変異」とは、ヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸残基を、元の抗体の対応する位置におけるアミノ酸残基に変異させることを意味し、一般的に、ヒト化抗体による免疫原性の低下と共に引き起こされる活性の低減を回避するために、上記ヒト化抗体の可変領域に対して最も少ない逆変異を行うことで、抗体の活性を維持することができる。本開示において、「復帰変異」は、CDRにおける変異も含む。
【0125】
「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」は、DNA及びRNAをカバーしており、単鎖又は二本鎖であってもよいが、二本鎖DNAが好ましい。核酸が別の核酸配列と共に機能的関係に置かれる場合、核酸は「効果的に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えると、プロモーター又はエンハンサーは、上記コード配列に効果的に連結されている。
【0126】
「ベクター」は、それに連結された別の核酸を輸送可能な核酸分子を指す。一実施形態において、ベクターは「プラスミド」であり、他のDNAセグメントをそれに連結可能な環状二本鎖DNA環を指す。別の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、ここで、別のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。本開示におけるベクターは、それらを導入した宿主細胞において自己複製することができ(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーマル哺乳動物ベクター)、又は、宿主細胞に導入された後、宿主細胞のゲノムに整合されることで、宿主ゲノムと共に複製することができる(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)。
【0127】
「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」は、互換的に使用されてもよく、かつそのような名称は何れも子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」は、移転数を考慮せずに、初代被験細胞及びそれより誘導された培養物を含む。また、意図するかしないかの変異のために、あらゆる子孫は、DNA含有量において精確に同じであり得ないと理解すべきである。最初の形質転換細胞からスクリーニングされたものと同様の機能又は生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。異なる名称を指す場合は、文脈から明らかになる。
【0128】
「宿主細胞」は、その中に発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞は、微生物(例えば、細菌)、植物又は動物細胞を含んでもよい。形質転換しやすい細菌は、大腸菌(Escherichia coli)やサルモネラ菌(Salmonella)の菌株などの腸内細菌科(enterobacteriaceae)のメンバー、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス科(Bacillaceae)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を含む。好適な微生物は、サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア酵母(Pichia pastoris)を含む。好適な動物宿主細胞株は、CHO(中国ハムスター卵巣細胞株)、NS0細胞、293細胞を含む。
【0129】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本開示に記載される化合物又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。
【0130】
「薬学的に許容されるベクター」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、活性成分と組み合わせる場合に、当該成分が生物学的活性を保つことを許容すると共に、対象の免疫系と反応しない任意の材料を含む。例としては、任意の標準的な薬剤ベクター、例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び種々の湿潤剤などを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、エアロゾル又は非経口投与に用いられる希釈剤は、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)又は生理(0.9%)食塩水である。このようなベクターを含む組成物は、周知の通常方法により調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,edited by A.Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990、及びR Remington,The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,Mack Publishing,2000を参照)。
【0131】
「与える」、「投与」及び「処理」は、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器や生物流体に使用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器や生物流体との接触を意味する。「与える」、「投与」及び「処理」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究及び実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、ここで、上記流体は細胞と接触する。「与える」、「投与」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に使用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究及び診断的使用を意味する。
【0132】
「有効量」は、医学的病状の症状又は病状を改善又は予防するために十分な量を含む。有効量は、さらに、診断の許容又は促進に十分な量を指す。対象に使用される有効量は、治療される病状、対象の全体的健康状態、投与の方法経路と用量、及び副作用の重症度といった要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用が回避される最大用量又は投与計画であってもよい。本開示の対象は、動物又はヒト対象であってもよい。
【0133】
「対象」、「患者」は、哺乳動物、特に霊長類、特にヒトを意味する。
【0134】
「治療」とは、対象に経口又は外用治療剤、例えば、本開示に係る何れか1つの抗体又はその抗原結合断片を含む組成物、或いは抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸分子を投与することを意味し、上記患者は1つ又は複数の疾患症状を有し、そして上記治療剤がそれらの症状に治療作用を有することが知られている。通常、治療される患者又は集団には、1つ又は複数の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導し、又は臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこれらの症状を阻害する。何れかの具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」ともいう)は、患者の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の患者において必要な治療効果を発生させる能力など、種々の要因により変化することができる。当該症状の重症度又は進行状況の評価に医者又は他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が軽減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、それぞれの目標疾患症状の緩和において無効な可能性があるが、この分野で知られている任意の統計学的検定方法、例えば、Student t検定、カイ二乗検定、MannとWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定及びWilcoxon検定により、統計学的に有意な数の患者において目標疾患症状を軽減するはずであることが確認された。
【0135】
「配列」(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「単一可変ドメイン配列」、「VHH配列」又は「タンパク質又はポリペプチド配列」などにおいて)は、本開示においてさらに限定的に解釈する必要がない限り、一般的に、関連するアミノ酸配列を含むだけでなく、上記配列をコードする核酸配列又はヌクレオチド配列も含むと理解すべきである。
【0136】
「任意選択的」又は「任意選択的に」は、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、必ずしも生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】健常な個体の血清にpre-ADAを有する頻度検出結果である。
【
図2】sdAbのpre-ADAへの結合に対する異なるアミノ酸修飾方法の影響検出結果である。
【
図3】健常な個体の血清にアミノ酸修飾されたsdAbに対するpre-ADAを有する頻度検出結果である。
【
図4】測定待ちの抗体のヒト4-1BB抗原へのFACS結合試験結果である。
【
図5】測定待ちの抗体のFcγRIIb架橋前(
図5のA)及び架橋後(
図5のB)の4-1BB/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子検出結果である。
【
図6】抗4-1BB単一ドメイン抗体C5及びそのヒト化した抗体C5_V1、C5_V2、C5_V3のHEK293細胞表面ヒト4-1BBに結合するFACS検出結果であり、Urelumabが対照として使用されている。
【
図7】抗4-1BB単一ドメイン抗体C5及びそのヒト化した抗体C5_V1、C5_V2、C5_V3のNF-κBシグナル伝達経路への活性化作用の検出結果であり、Urelumab、アイソタイプIgG1抗体が対照として使用されている。
【
図8】C5_V2及びC5_V2-YTIのHEK293細胞表面ヒト4-1BBへの結合のFACS検出結果であり、Urelumab、アイソタイプIgG1抗体が対照として使用されている。
【
図9】異なるC5_V2-YTIアミノ酸修飾変異体のpre-ADAへの結合の検出結果である。
【
図10】健常な個体の血清にC5_V2-YTIアミノ酸修飾変異体に対するpre-ADAを有する頻度の検出結果である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
以下、実施例に合わせて本開示をさらに説明するが、これらの実施例は、本開示の範囲を制限するものではない。
【0139】
本開示の実施例又は試験例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に通常の条件、又は原料や商品のメーカーにより推奨された条件に従う。Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー研究所、及び現代分子生物学方法、Ausubelら著、Greene出版協会、Wiley Interscience、NYが参照される。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0140】
実施例1.単一ドメイン抗体(sdAb)に対するpre-ADAの検出
本開示は、単一ドメイン抗体に対してpre-ADAの測定を行い、酵素結合免疫吸着(ELISA)の方法を採用し、ELISAは、抗体pre-ADAの効果を測定するためによく使用される検出方法である。本実験に用いられた血清は、健常人の1人分の血清(上海信帆生物科技有限公司)であり、二次抗体は抗ヒト抗体λ鎖のHRP標識抗体である(Southern Biotech、2070-05)。
【0141】
先の研究によれば、GSK特許WO2013024059A中のsdAb(配列1及び配列16)に由来するP2-1、P2-2の抗体配列が合成されたが、そのうち、P2-1はWO2013024059Aにおける配列1のN末端融合His6タグであり、P2-2はWO2013024059Aにおける配列16のN末端融合His6タグである。P2-1、P2-2は、本開示において対応する配列番号が配列番号1及び配列番号2である。また、Cetuximabと同じアミノ酸配列を有するIgG1分子が合成されたが、上記IgG1分子は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号3及び配列番号4で示される。
【0142】
上記ELISAアッセイは、以下の通りである:
1)抗原の被覆:PBSによりP2-1とP2-2を含む測定待ちの抗体試料をそれぞれ2ng/μLの有効最終濃度に希釈し、96ウェルプレートに加え、50μL/ウェルで、室温で1hインキュベートし、
2)ブロッキング:上清を捨て、PBSTで1回洗浄し、4%のM-PBSTブロッキング液を加え、150μL/ウェルで、室温で1hインキュベートし、
3)血清によるインキュベート:PBSTで1回洗浄し、30μL/ウェルの1人分の血清(PBSにより1:5の比率で希釈)を加え、室温で1hインキュベートし、
4)洗浄:上清を捨て、PBSTで8回洗浄し、
5)二次抗体インキュベート:希釈した二次抗体(4%のM-PBSTで希釈し、希釈比率は対応する明細書を参照)を加え、50μL/ウェルで、室温で1hインキュベートした。
6)洗浄:上清を捨て、PBSTで8回洗浄し、
7)発色:50μLの基質ABTSを加え、暗所で20min程度インキュベートし、その後SpectraMax iD3(Molecular Devices)によりOD415を検出した。
【0143】
今回の実験では、合計40人の健常ドナーの血清試料の各抗体試料に対するバックグラウンド反応性を検出し、陰性対照PBS群、P2-1群、P2-2群、IgG1群に分け、結果を
図1に示している。その結果、陰性対照PBS群に比べて、P2-1群は、血清試料の約57.5%が検出可能なsdAb反応性pre-ADAを有するが、免疫原性が低減されるように改変されたP2-2群は、血清試料の約12.5%が検出可能なsdAb反応性pre-ADAを有することが示され、それは、GSK文献に報告されたデータと基本的に一致している。本開示のpre-ADA陽性は、測定待ちの試料群のIgG1群に対応する一点シグナルの差異が+50%以上である試料が陽性試料と見なされることを意味し、その逆は陰性試料であり、以下同様である。
【0144】
>P2-1(配列番号1)
【化1】
>P2-2(配列番号2)
【化2】
>IgG1分子の重鎖(配列番号3)
【化3】
>IgG1分子の軽鎖(配列番号4)
【化4】
【0145】
実施例2.単一ドメイン抗体のVHフレームワーク(FR)のアミノ酸改変
pre-ADAの単一ドメイン抗体フレームワークへの結合が低減できるか否かを研究するために、単一ドメイン抗体P2-42を親クローンとして選択し、部位特異的変異導入技術によりP2-42のフレームワーク領域に対してアミノ酸修飾(付加、置換、欠失を含む)を行い、各修飾変異体を得て、構造が表1を参照する。表1及び表2中のクローンの親クローンは、何れもP2-42である。
【0146】
上記P2-42は、C末端がVTVSSで終結されたVHH抗体であり、クローンP2-43~P2-58は、P2-42のみに対するC末端修飾の変異体であり、表1で行われたC末端修飾(付加、置換を含む)のアミノ酸残基以外、他の配列が変更されなかった。上記位置は、何れもヒト生殖細胞系列フレームワーク配列に基づいて番号付けされた。
【0147】
実施例1中のELISA方法により上記修飾変異体を測定・検証し、使用された血清は、実施例1中の検出が行われてかつ結果としてpre-ADA陽性を示した8つの1人分の血清試料であり、結果は
図2と表1を参照する。表1の結果により、親クローンに対する各修飾変異体の平均シグナル低減百分率(%)及び陽性個体数が示されている。平均シグナルの低減(%)が大きいほど、当該修飾変異体は、pre-ADAへの結合能が低くなり、ヒト体内における予備のpre-ADAにより中和される可能性も低くなることを意味する。
【0148】
本開示の平均シグナル低減%の算出式は、以下の通りである:
平均シグナル低減%=(対応する試料群の算術平均シグナル値ーP2-42群の算術平均シグナル値)/P2-42群の算術平均シグナル値×100%
その結果、P2-53、P2-54、P2-55、P2-56、P2-57及びP2-58という6つの分子のpre-ADA結合シグナルは、明らかに低減された。
【0149】
【0150】
ここで、VTVSS、VTVSSA、VTVSF、VTVSG、VTVSL、VTVSR、VTVST、VTVSVは、それぞれ、配列番号189~196で示される。
【0151】
実施例3.単一ドメイン抗体の修飾変異体に対するpre-ADAの検出
P2-53、P2-54、P2-55、P2-56、P2-57及びP2-58という6つの分子について、本実施例は、さらに40個の健常ドナーの血清試料における各修飾変異体に対するpre-ADAの頻度を検出することで、変異の効果を検証し、使用された血清は健常人の1人分の血清である(実施例1中の40個の試料と同様)。
【0152】
実施例1中のELISA方法により上記修飾変異体を測定・検証し、
図3は各変異体のシグナル阻害レベルを示し、表2は各変異体の平均シグナル阻害(%)及びpre-ADA陽性の頻度を示す。
【0153】
その結果、何れのクローンも平均シグナル低減が40%近く又はそれを超えたので、何れの修飾も単一ドメイン抗体のpre-ADAへの結合を明らかに低減することができる。
【0154】
【0155】
実施例4.抗4-1BB単一ドメイン抗体のスクリーニング及び準備
本開示に使用されたタンパク質又はポリペプチドは、ヒト4-1BBタンパク質又はポリペプチド(Human 4-1BB/TNFSF9 Protein、His Tag、Acrobiosystemsから購入、製品番号41B-H5227)、ヒト4-1BBタンパク質又はポリペプチド(ビオチン/Hisタグ)(Biotinylated Human 4-1BB/TNFRSF9 Protein、Avitag(商標)、His Tag、Acrobiosystemsから購入、製品番号41B-H82E3)、及びサル4-1BBタンパク質又はポリペプチド(Cynomolgus/Rhesus macaque 4-1BB/TNFRSF9 Protein、His Tag、Acrobiosystemsから購入、製品番号41B-C52H4)であり、アミノ酸配列は、始まりも終わりもLeu24-Gln186である。
【0156】
1.アルパカ免疫、力価検出及びファージライブラリーの親和性パニング
Hisタグ付きのヒト4-1BB組換えタンパク質又はポリペプチド(Acrobiosystems、41B-H5227)でアルパカを免疫し、2週間に1回、合計4回免疫した。初回免疫時に、0.5mgの抗原原と1mLの完全フロイントアジュバント(CFA)を均一に混合して皮下注射し、後の3回の免疫では、0.25mgの抗原と1mLの不完全フロイントアジュバント(IFA)を均一に混合して皮下注射した。免疫前にブランク血清を採取し、3回目の免疫後の1週間と4回目の免疫後の1週間にそれぞれ末梢血50mLを採取し、PBMCを単離し、全RNAを抽出し、純度を検出し、DNAに逆転写し、2ラウンドのネステッドPCR後に、ナノボディの標的断片をファージディスプレイベクターに連結した。エレクトロポレーションして、ファージライブラリーを得た。
【0157】
>ヒト4-1BBタンパク質又はポリペプチド配列(配列番号5)
【化5】
【0158】
ヒトとサルを同時に認識する抗4-1BBナノボディを得るために、2ラウンドのヒト、サル抗原のクロススクリーニングの戦略を用いた。第1及び第2ラウンドのスクリーニングの抗原は、それぞれ、ヒト4-1BBとサル4-1BB、又はサル4-1BBとヒト4-1BBを使用した。各ラウンドのスクリーニングは、何れもGly-HCl酸溶離方法を使用し、4-1BBに特異的に結合するファージを溶離した。第1及び第2ラウンドの力価測定プレートから、それぞれ96個のクローン(合計192個のクローン)をランダムに選択し、ファージELISAを用いて陽性クローンをスクリーニングし、450 nmでの光学密度を検出した。陽性クローンをシークエンシングした。シークエンシングの結果に基づき、配列アラインメント及び系統樹解析を行い、H27、H170、C3、C5、C145などを含む14本のユニークな配列をスクリーニングし、そのうち、C5の配列は以下の通りであり、H27、H170、C3、C145などの配列は示されていない。
【0159】
【0160】
2.VHH-Fc融合タンパク質又はポリペプチドの発現・精製
C5の配列をC220A、S267E及びL328F変異(Euシステムによって番号付けされた)付きのヒトIgG1-Fc(配列番号10で、下線部が変異である)に連結した。連結されたVHH-Fc融合タンパク質又はポリペプチドの配列は、以下の通りである。また、ヒトIgG1のFcにL234A、L235A及びN297A(Eu番号付けシステムによる)などの変異を導入することにより、抗体FcγR媒介性のエフェクター機能(例えば、配列番号10で示される)を完全に除去し、ヒトIgG4のFcにS228P(Eu番号付けシステムによる)を導入することにより、抗体分子を安定化して半分子の形成(例えば、配列番号11で示される)を阻止し、それらは何れも選択可能なIgG Fcである。配列番号10~12において、下線部はFc変異である。
【0161】
>ヒトIgG1-Fc(C220A、S267E、L328F変異を含む)(配列番号10)
【化7】
(配列番号10)
>ヒトIgG1-Fc(C220A、L234A、L235A、N297A変異を含む)(配列番号11)
【化8】
>ヒトIgG4-Fc(S228P変異を含む)(配列番号12)
【化9】
>ヒトIgG1 Fc(配列番号13)
【化10】
配列番号14で示される、C5が配列番号10に連結された抗体配列を例として挙げる。
>C5-Fc(配列番号14)
【化11】
プラスミドを構築し、細胞に一過性トランスフェクションし、抗体を発現して精製した。検出により、標的抗体を得た。
【0162】
実施例5.抗4-1BB単一ドメイン抗体の抗原結合活性及びそのアゴニスト活性の検出
1、4-1BB抗原への結合能の検出
フローサイトメーターにより、抗4-1BB単一ドメイン抗体のヒト4-1BBタンパク質又はポリペプチドへの結合活性を検出した。
【0163】
HEK293-Hu4-1BB細胞は、HEK293細胞(ATCC CRL-1573)にヒト4-1BBタンパク質又はポリペプチドを発現する遺伝子(CD137 cDNA ORF Clone、Human、C-OFPSpark tag、Sino Biologicalから購入、Cat#HG10041-ACR)を一過性トランスフェクションすることにより得られ、細胞培地は、10%のウシ胎児血清を含むDMEM(Gibco、Cat#11995065)である。実験培地は、2%のウシ胎児血清を含む滅菌PBS(リン酸塩緩衝液、pH7.40)である。実験培地でHEK293-Hu4-1BB細胞を2回洗浄し、1×10
5個/ウェルでHEK293-Hu4-1BB細胞を96ウェルU底プレートに接種し、異なる濃度の測定待ちの抗4-1BB単一ドメイン抗体VHH-Fc試料を加え、細胞を4℃で1hインキュベートした後、実験培地で2回洗浄し、そしてヒツジ抗ヒトIgG(H+L)Alexa Fluor 488抗体(Thermo、Cat#A11013)を加えて2回洗浄した後、フローサイトメーターにより蛍光シグナル値を読み取った。Urelumabモノクローナル抗体を陽性対照として使用し、各抗体のMFI値を
図4に示している。
【0164】
その結果、かかる抗4-1BB単一ドメイン抗体は、HEK293-Hu4-1BB細胞表面の4-1BBに対して異なる程度の結合能を有し、そのうち、C5は良好な細胞膜表面抗原結合活性を有する。
【0165】
2、4-1BBシグナル伝達経路に対するアゴニスト活性の検出
4-1BB/NF-κBレポーター遺伝子を使用して抗4-1BB単一ドメイン抗体のアゴニスト活性を評価した。
【0166】
HEK293細胞(ATCC CRL-1573)にヒト4-1BBを発現する遺伝子(CD137 cDNA ORF Clone、Human、C-OFPSpark tag、Sino Biologicalから購入、Cat#HG10041-ACR)及びNF-κBレポーター遺伝子(pGL4.32[luc2P/NF-κB-RE/Hygro]Vector、Promegaから購入、Cat#E849A)を一過性トランスフェクションし、HEK293-Hu4-1BB/NF-κBダブルトランスフェクション細胞を取得し、4-1BBの活性化は、NF-κBシグナル伝達経路の活性化レベルで特徴付けることができる。FcγRIIbプラスミド(CD32B/Fcgr2b cDNA ORF Clone、Human、N-His tag、Sino Biologicalから購入、Cat#HG10259-NH)をHEK293細胞に一過性トランスフェクションして、FcγRIIb高発現HEK293細胞を得た。細胞培地は、10%のウシ胎児血清を含むDMEM(Gibco、Cat#11995065)である。HEK293-Hu4-1BB/NF-κB細胞(2×10
6/mL)を50μLで96ウェル細胞培養プレートに播種し、40μLの培地又はFcγRIIbを発現するHEK293細胞(2.5×10
6/mL)を加え、10×勾配希釈された測定待ちの抗4-1BB単一ドメイン抗体を10μL/ウェルで加え、37℃で6h培養した。細胞を取り出し、各ウェルに等体積のBio-Glo Luciferase Assay System試薬(Promega、Cat#G7940)を加え、暗所で5minインキュベートし、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer、2150)で蛍光シグナルを測定し、EC
50値及びEmax値(対照無抗体群の蛍光強度)を算出し、EC
50値で抗4-1BB単一ドメイン抗体のインビトロ細胞アゴニスト活性を評価した。結果を
図5及び表4に示している。
【0167】
その結果、FcγRIIb(即ち、CD32b)陽性架橋が付加されていない場合、かかる抗4-1BB単一ドメイン抗体は、4-1BB/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナル伝達経路への活性化が何れもUrelumab対照よりも弱いことが示され、本開示に係る抗4-1BB単一ドメイン抗体は安全性がより高いことが示唆され、FcγRIIb架橋が付加された後、かかる抗4-1BB単一ドメイン抗体は、4-1BB/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナル伝達経路への顕著な活性化を示し、C5は、活性化能力が最も強くてかつUrelumab対照に相当している。活性の結果をまとめて、FcγRIIb架橋前に低いバックグラウンド活性化を有すると共に、FcγRIIb架橋後にさらに強い活性化活性を有する配列C5をスクリーニングし、ヒト化した。
【0168】
【0169】
実施例6.抗4-1BB単一ドメイン抗体の改変
1、ヒト化改変
Kabat番号付けシステムによってC5配列のCDR及びFR領域(ヒトフレームワーク領域、framework)のアミノ酸番号を標識し、FR1+CDR1配列、FR2+CDR2配列、FR3+CDR3配列をそれぞれ抗体生殖細胞系列データベースとアラインメントし、それぞれ相同性の高いFRヒト生殖細胞系列テンプレートを得た。FR1はIGHV3-64*04、FR2はIGHV3-23*03、FR3はIGHV3-74*01に由来する。ヒト体内に生じる免疫原性が低減されるように、上記各ヒト生殖細胞系列FR領域をそれぞれ原配列に置換挿入した。抗体の構造及び機能に影響を及ぼす重要なアミノ酸に対して復帰変異を行うことで、結合力及び活性を回復させた。各ヒト化配列は、以下の通りである。
【0170】
>C5_V1(配列番号15)
【化12】
>C5_V2(配列番号16)
【化13】
>C5_V3(配列番号17)
【化14】
上記3つのヒト化配列をそれぞれヒトIgG1-Fc(配列番号10)に連結した。プラスミドを構築し、一過性トランスフェクションし、発現して精製した。具体的な過程は以下の通りである:培養液をトランスフェクション試薬60μLに希釈した後にプラスミド15μgと均一に混合し、37℃で15minインキュベートした後、混合トランスフェクション溶液を細胞液30mLに1滴ずつ滴下し、シェーカーに置いて1週間培養して発現させ、上清を収集した。次に、それに対してProteinA親和性精製を行い、クエン酸緩衝液(pH3.4)で溶離し、最後に1×PBS緩衝液で透析し、凍結保存した。
【0171】
2、TCE部位の除去
その後、C5_V2配列に対してT細胞エピトープ予測(T-cell Epitope、TCE)を行い、TCEの数が低減されるように、予測結果に基づいてC5_V2のCDR3配列を改変した。CDR3領域のF変異をYに変異させて(F99Y、Kabat番号付けシステムによる)TCE最適化版のC5_V2配列を取得し、C5_V2-YTIと命名し、その配列は以下の通りである:
>C5_V2-YTI(配列番号18)
【化15】
即ち、Kabat番号付けシステムに従って、C5_V2-YTI中のCDR1のアミノ酸配列は配列番号7で示され、CDR2のアミノ酸配列は配列番号8で示され、CDR3のアミノ酸配列はHPLTYTIATMNDYDY(配列番号19)で示される。
【0172】
上記C5_V2-YTI、C5、C5_V1、C5_V2、C5_V3の配列をヒトIgG1-Fc(配列番号10)に連結した。プラスミドを構築し、一過性トランスフェクションし、発現して精製し、後の検出に用いた。
【0173】
実施例7.改変された抗4-1BB単一ドメイン抗体の抗原結合活性、アゴニスト活性の検出
1、4-1BB抗原への結合能の検出
ヒト化抗体は、実施例2に記載されたようなFACS検出方法により抗原結合活性を検出した。結果を
図6、表5に示している。
【0174】
その結果、かかるヒト化抗4-1BB単一ドメイン抗体は、HEK293-Hu4-1BB細胞表面の4-1BBに対して異なる程度の結合能を有し、C5_V1、C5_V2、C5_V3は、何れも良好な結合活性を維持している。
【0175】
【0176】
2、4-1BBシグナル伝達経路に対するアゴニスト活性の検出
実施例2に記載されたようなNF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子実験により、ヒト化抗体の4-1BB/NF-κBシグナルへの活性化を検出し、結果を
図7、表6に示している。
【0177】
その結果、FcγRIIb架橋が付加された後、かかるヒト化抗4-1BB単一ドメイン抗体は、4-1BB/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナル伝達経路への活性化を示し、C5、C5_V1、C5_V2、C5_V3の活性化能力は、Urelumab(WO2005035584Aによる)対照に相当する。
【0178】
【0179】
実施例5に記載されたようなFACS検出方法により、C5_V2とC5_V2-YTIの抗原への結合活性を比較し、結果を
図8、表7に示している。その結果、かかるC5_V2-YTIは、HEK293-Hu4-1BB細胞表面の4-1BBに対して良好な結合活性を維持し、C5_V2に相当する。
【0180】
【0181】
実施例8.抗4-1BB単一ドメイン抗体のVHフレームワーク(FR)に対するアミノ酸改変及びpre-ADAの検出
本開示に係る抗4-1BB単一ドメイン抗体C5_V2-YTIに対して表8に示すようにC末端改変を行った。
【0182】
【表8】
>C5_V2-YTI-42(配列番号20)
【化16】
>C5_V2-YTI-43(配列番号21)
【化17】
>C5_V2-YTI-44(配列番号22)
【化18】
>C5_V2-YTI-46(配列番号23)
【化19】
>C5_V2-YTI-47(配列番号24)
【化20】
>C5_V2-YTI-48(配列番号25)
【化21】
>C5_V2-YTI-49(配列番号26)
【化22】
>C5_V2-YTI-50(配列番号27)
【化23】
>C5_V2-YTI-51(配列番号28)
【化24】
>C5_V2-YTI-52(配列番号29)
【化25】
>C5_V2-YTI-53(配列番号30)
【化26】
>C5_V2-YTI-54(配列番号31)
【化27】
>C5_V2-YTI-55(配列番号32)
【化28】
>C5_V2-YTI-56(配列番号33)
【化29】
>C5_V2-YTI-57(配列番号34)
【化30】
>C5_V2-YTI-58(配列番号35)
【化31】
配列番号20~35で示される配列のN末端及びIgG1のFc(配列番号13)のC末端をGGGG(配列番号197)リンカーで連結し、表9及び表10の検出を行った。例示的な配列は以下の通りであり、ここで、イタリック体部はIgG1のFc、下線部はリンカーである。
【0183】
>C5_V2-YTI-42(配列番号36)
【化32】
実施例2の実験方法に従ってC5_V2-YTIのC末端改変した各変異体にELISA検出を行い、結果を表9に示している。その結果、C5_V2-YTI-53、C5_V2-YTI-54、C5_V2-YTI-55、C5_V2-YTI-56、C5_V2-YTI-57及びC5_V2-YTI-58という6つの分子は、pre-ADA結合シグナルが明らかに低減された。
【0184】
【表9】
実施例3の実験方法に従ってC5_V2-YTIのC末端改変した各変異体にELISA検出を行い、結果を表10に示している。その結果、何れのクローンも平均シグナル低減が40%近く又はそれを超えたので、何れの修飾も単一ドメイン抗体のpre-ADAへの結合を明らかに低減することができる。
【0185】
【0186】
以上、本開示の具体的な実施形態を説明したが、当業者は、それらが単に例示的な説明であり、本開示の原理及び主旨から逸脱することなく、これらの実施形態に種々の変更や修正を行うことができると理解すべきである。従って、本開示の請求範囲は、添付される特許請求の範囲によって限定される。
【配列表】
【国際調査報告】