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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】抗NGF抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/22 20060101AFI20241112BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C07K16/22
C07K16/46 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/06 100
C12N15/09 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K38/16
A61P25/04
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531129
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 US2022080428
(87)【国際公開番号】W WO2023097275
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,590
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/383,173
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522439847
【氏名又は名称】インベテックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVETX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ブロンディク ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】セヴィニー レイラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AB05
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084DB70
4C084NA14
4C084ZA08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、NGFとTrkA及び/またはp75との会合を阻害し、イヌまたはネコ対象への投与に適した新規抗NGFタンパク質、抗体、及びそのNGF結合断片を提供する。本発明はまた、有効量の抗NGFタンパク質、抗体またはその断片を投与することを含む、イヌまたはネコ対象における疼痛を治療するかまたは鎮痛効果を誘発する新規組成物及び方法を提供する。この方法及び組成物は、NGF関連障害を治療または予防するために使用される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する抗原結合タンパク質であって、
(a)アミノ酸配列X12345678(配列番号146)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)であって、式中、X1が、A、G、またはNを含み、X2が、LまたはMを含み、X3が、A、D、E、またはSを含み、X4が、F、I、L、M、またはVを含み、X5が、NまたはTを含み、X6が、E、S、またはTを含み、X7が、G、H、N、S、またはQを含み、X8が、AまたはSを含む、前記VH-CDR1、
(b)アミノ酸配列X12SNX5GT(配列番号147)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)であって、式中、X1が、IまたはLを含み、X2が、WまたはYを含み、X5が、GまたはRを含む、前記VH-CDR2、
(c)アミノ酸配列AX2IX45YX789YLX1213YX151617(配列番号148)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)であって、式中、X2が、D、E、K、N、Q、S、またはTを含み、X4が、WまたはYを含み、X5が、F、H、W、またはYを含み、X7が、DまたはEを含み、X8が、AまたはSを含み、X9が、DまたはYを含み、X12が、HまたはYを含み、X13が、FまたはWを含み、X15が、F、I、L、W、またはYを含み、X16が、DまたはQを含み、X17が、F、I、L、M、W、またはYを含む、前記VH-CDR3、
(d)アミノ酸配列X12IX456(配列番号149)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)であって、式中、X1が、D、E、またはKを含み、X2が、A、G、またはNを含み、X4が、G、N、Q、またはSを含み、X5が、NまたはSを含み、X6が、A、G、N、S、またはTを含む、前記VL-CDR1、
(e)アミノ酸配列AX23(配列番号150)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)であって、式中、X2が、A、S、またはTを含み、X3が、A、D、E、N、Q、S、またはTを含む、前記VL-CDR2、及び
(f)アミノ酸配列QX2GX456PX8T(配列番号151)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)であって、式中、X2が、HまたはQを含み、X4が、F、H、W、またはYを含み、X5が、KまたはQを含み、X6が、FまたはWを含み、X8が、LまたはMを含む、前記VL-CDR3
を含む、前記抗原結合タンパク質。
【請求項2】
(a)アミノ酸配列X1234TX67S(配列番号152)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)であって、式中、X1が、AまたはGを含み、X2が、LまたはMを含み、X3が、EまたはSを含み、X4が、FまたはLを含み、X6が、SまたはTを含み、X7が、H、N、またはSを含む、前記VH-CDR1、
(b)アミノ酸配列IWSNX5GT(配列番号153)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)であって、式中、X5が、GまたはRを含む、前記VH-CDR2、
(c)アミノ酸配列AX2IYYYX7ADYLHX13YX15DX17(配列番号154)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)であって、式中、X2が、N、Q、またはSを含み、X7が、DまたはEを含み、X13が、FまたはWを含み、X15が、F、I、L、W、またはYを含み、X17が、F、I、L、またはMを含む、前記VH-CDR3、
(d)アミノ酸配列X1GIX4NX6(配列番号155)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)であって、式中、X1が、DまたはEを含み、X4が、QまたはSを含み、X6が、G、N、S、またはTを含む、前記VL-CDR1、
(e)アミノ酸配列ATX3(配列番号156)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)であって、式中、X3が、D、E、N、Q、またはSを含む、前記VL-CDR2、及び
(f)アミノ酸配列QQGX456PLT(配列番号157)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)であって、式中、X4が、F、H、またはYを含み、X5が、KまたはQを含み、X6が、FまたはWを含む、前記VL-CDR3
を含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項3】
配列番号137と比較してVH-CDR当たり2つ以下の置換を含み、配列番号138と比較してVL-CDR当たり2つ以下の置換を含む、請求項1または2に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項4】
配列番号137と比較してVH-CDR当たり1つ以下の置換を含み、配列番号138と比較してVL-CDRあたり1つ以下の置換を含む、請求項1または2に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項5】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、配列番号141、または配列番号207のいずれか1つのVH-CDRを1つ以上、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号60、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142のVL-CDRを1つ以上含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項6】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、配列番号141、または配列番号207のいずれか1つのVH-CDR、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号60、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142のVL-CDRを含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項7】
2166、SC-42_006、SC-42_007、SC-42_008、SC-42_010、SC-42_011、SC-42_023、SC-42_032、SC-42_045、SC-42_047、SC-42_048、SC-42_052、SC-42_070、SC-42_073、SC-42_077、SC-42_082、SC-42_090、またはSC-42_101のVH-CDR及びVL-CDRを含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記CDRが、IMGT系に従う、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記CDRが、Kabatに従う、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記CDRが、Chothiaに従う、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、配列番号141、または配列番号207と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3H+FR4H)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項12】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号60、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1L+FR2L+FR3L+FR4L)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項13】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、配列番号141、または配列番号207と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一であるVHドメインを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項14】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一であるVLドメインを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項15】
NGFに特異的に結合する抗原結合タンパク質であって、
(a)アミノ酸配列X1LX345678MX10を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)であって、式中、X1が、A、G、L、N、またはQを含み、X3が、A、D、E、G、H、I、M、S、T、またはYを含み、X4が、L、M、またはVを含み、X5が、A、M、N、R、S、T、またはVを含み、X6が、A、E、G、H、K、R、S、またはTを含み、X7が、A、D、H、I、N、Q、S、T、またはYを含み、X8が、AまたはSを含み、X10が、SまたはVが含む、前記VH-CDR1、
(b)アミノ酸配列X12345GTX8YX10DX12VX14を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)であって、式中、X1が、IまたはLを含み、X2が、WまたはYを含み、X3が、A、P、またはSを含み、X4が、D、E、N、Q、R、またはSを含み、X5が、G、R、またはYを含み、X8が、DまたはYを含み、X10が、D、E、H、S、またはTを含み、X12が、DまたはSを含み、X14が、D、E、またはKを含む、前記VH-CDR2、
(c)アミノ酸配列X12345678910LX121314FX1617を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)であって、式中、X1が、A、D、E、K、N、Q、S、またはTを含み、X2が、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、またはYを含み、X3が、I、L、W、またはYを含み、X4が、F、T、W、またはYを含み、X5が、F、H、またはYを含み、X6が、HまたはYを含み、X7が、DまたはEを含み、X8が、A、S、またはVを含み、X9が、D、E、H、K、N、Q、またはYを含み、X10が、F、H、またはYを含み、X12が、HまたはYを含み、X13が、FまたはWを含み、X14が、D、I、L、W、またはYを含み、X16が、DまたはQを含み、X17が、E、F、H、I、L、M、N、P、W、またはYを含む、前記VH-CDR3、
(d)アミノ酸配列X1ASX456789LX11を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)であって、式中、X1が、FまたはRを含み、X4が、E、K、またはNを含み、X5が、AまたはGを含み、X6が、I、L、またはVを含み、X7が、A、D、G、L、P、Q、S、V、またはYを含み、X8が、K、Q、N、S、またはYを含み、X9が、A、D、E、F、G、H、K、L、N、Q、R、S、またはTを含み、X11が、A、G、またはSを含む、前記VL-CDR1、
(e)アミノ酸配列AX234567を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)であって、式中、X2が、A、D、L、Q、S、T、V、またはYを含み、X3が、D、E、K、N、Q、またはSを含み、X4が、H、I、K、L、M、N、またはVを含み、X5が、HまたはLを含み、X6が、H、I、L、またはMを含み、X7が、D、E、N、S、またはTを含む、前記VL-CDR2、
(f)アミノ酸配列QQX345678Tを含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)であって、式中、X3が、GまたはYを含み、X4が、D、F、G、H、K、L、R、S、T、V、W、またはYを含み、X5が、E、K、Q、R、またはSを含み、X6が、I、F、T、またはWを含み、X7が、EまたはPを含み、X8が、L、M、またはWを含む、前記VL-CDR3
を含む、前記抗原結合タンパク質。
【請求項16】
VH-CDR1が、GLSLTSX7SMX10を含み、式中、X7が、A、D、またはNを含み、X10が、SまたはVを含み、
VH-CDR2が、X12SNX5GTを含み、式中、X1が、IまたはLを含み、X2が、WまたはYを含み、X5が、GまたはRを含み、
VH-CDR3が、ASIYYYX7AX9YLHWYFDX12を含み、式中、X7が、DまたはEを含み、X9が、DまたはEを含み、X12が、EまたはFを含み、
VL-CDR1が、RASX4GIX78NLSを含み、式中、X4が、EまたはKを含み、X7が、A、Q、またはSを含み、X8が、KまたはNを含み、
VL-CDR2が、AX234LHSを含み、式中、X2が、QまたはTを含み、X3が、DまたはSを含み、X4が、I、N、またはVを含み、
VL-CDR3が、QQGX4KWPLTを含み、式中、X4が、F、W、またはYを含む、請求項15に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項17】
配列番号204と比較してVH-CDR当たり2つ以下の置換を含み、配列番号199と比較してVL-CDR当たり2つ以下の置換を含む、請求項15または16に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項18】
配列番号204と比較してVH-CDR当たり1つ以下の置換を含み、配列番号199と比較してVL-CDRあたり1つ以下の置換を含む、請求項15または16に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項19】
配列番号141、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号205、または配列番号206のいずれか1つのVH-CDRを1つ以上、及び配列番号142、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号199、配列番号201、または配列番号203のいずれか1つのVL-CDRを1つ以上含む、請求項15に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項20】
配列番号141、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号205、または配列番号206のいずれか1つのVH-CDR、及び配列番号142、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号199、配列番号201、または配列番号203のいずれか1つのVL-CDRを含む、請求項15に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項21】
クローンAHF17591、AHF17592、AHF17593、AHF17595、AHF17597、AHF17602、AHF17607、SC-184_76、SC-184_102、SC-184_110、SC-184_76-Arg、SC-184_102-Arg、またはSC-184_110-ArgのVH-CDR及びVL-CDRを含む、請求項15に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項22】
配列番号141、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号205、または配列番号206と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3H+FR4H)を含む、請求項15~21のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項23】
配列番号142、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号199、配列番号201、または配列番号203と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1L+FR2L+FR3L+FR4L)を含む、請求項15~22のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項24】
配列番号141、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号205、または配列番号206と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一であるVHドメインを含む、請求項15~23のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項25】
配列番号142、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号199、配列番号201、または配列番号203と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一であるVHドメインを含む、請求項15~24のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載の抗NGF抗体または抗体断片をコードする単離された核酸配列。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸を含むベクター。
【請求項28】
請求項26または27のいずれか1項に記載の核酸を含む、組換え細胞。
【請求項29】
請求項1~25のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質または請求項26もしくは27に記載の核酸を発現する細胞。
【請求項30】
前記抗原結合タンパク質の産生をもたらす条件下で請求項29に記載の細胞を培養することを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質の産生方法。
【請求項31】
治療有効量の請求項1~25のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項32】
対象における疼痛の治療または軽減方法であって、治療有効量の請求項1~25のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質を前記対象に投与することを含む、前記治療または軽減方法。
【請求項33】
前記疼痛が、炎症性疼痛、術後切開疼痛、がん性疼痛、原発性または転移性骨がん性疼痛、骨折痛、骨粗鬆症性骨折痛、火傷に起因する疼痛、外傷由来の疼痛、筋骨格痛、リウマチ性疼痛、または骨粗鬆症の痛みを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、イヌを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、ネコを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、ヒトを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
試料中のNGFの検出方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質の存在下でNGFを含む試料をインキュベートし、前記試料中のNGFに結合した前記抗NGFタンパク質を検出することを含む、前記検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願及び参照による援用
本出願は、2021年11月23日に出願された米国仮出願第63/282,590号、及び2022年11月10日に出願された米国仮出願第63/383,173号に対する優先権を主張し、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本明細書で引用または参照される全ての文献(「本明細書で引用される文献」)、及び本明細書で引用される文献中で引用または参照される全ての文献は、本明細書で、または本明細書で参照により援用される文献中で言及される製品についての製造業者の取扱説明書、説明書、製品仕様書、及び製品パンフレットとともに、参照により本明細書に援用され、本発明の実施において採用され得る。より具体的には、全ての参照文献は、あたかも各個別の文献が参照により援用されることが明示的かつ個別に示されるかのように、同様に参照により援用される。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを経由してASCII形式で提出された配列表を含み、その全体は参照により本明細書に援用される。2022年11月22日に作成された前記ASCIIコピーは、G9432-99003.xmlという名称であり、サイズは292,984バイトである。
【0004】
本発明は、NGFとTrkA及び/またはp75との会合を阻害し、イヌまたはネコ対象への投与に適した新規抗NGFタンパク質、抗体、及びそのNGF結合断片を提供する。本発明はまた、有効量の抗NGFタンパク質、抗体またはその断片を投与することを含む、イヌまたはネコ対象における疼痛を治療するかまたは鎮痛効果を誘発する新規組成物及び方法を提供する。この方法及び組成物は、NGF関連障害を治療または予防するために使用される。
【背景技術】
【0005】
神経成長因子(NGF)は、末梢交感神経ニューロン、胎児感覚ニューロン、及び前脳基底部コリン作動性ニューロンの発達及び維持に重要である。NGFは、感覚ニューロンにおける神経ペプチドの発現を上方制御し、その活性は2つの異なる膜結合受容体を介して媒介される。NGFを含むいくつかのニューロトロピン(NT)は、p75として同定される低親和性受容体に結合する。NGFは、高親和性ニューロトロフィン受容体TrkAに選択的に結合し、高い親和性を示す。
【0006】
ニューロトロフィンが結合すると、TrkAは自己リン酸化を受けるだけでなく、MAPK経路のメンバーをリン酸化する。このキナーゼの存在は細胞分化をもたらし、感覚ニューロンのサブタイプを特定するうえで役割を果たしている可能性がある。
【0007】
NGFは、がんに関連する痛み、神経障害性疼痛、及び神経原性疼痛など、広範囲の疾患及び障害に関連する痛みを含むがこれらに限定されない、いくつかの疾患及び障害において役割を果たす。広範な疼痛関連疾患及び障害におけるNGFの関与により、当技術分野では、NGFに関連する疾患及び障害、特にイヌ、ネコ、及び他の動物を含む疼痛に関連する疾患及び障害を予防または治療するのに有用な組成物及び方法が必要とされている。特に好ましい抗NGF組成物は、対象に投与した場合に炎症などの有害反応が最小限であるか最小限に抑えられる組成物である。
【0008】
本出願におけるいずれかの文献の引用または特定は、そのような文献が本発明の先行技術として利用可能であることを承認するものではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、NGF関連障害の治療または改善のための新規抗NGF結合タンパク質を提供し、特にイヌ及びネコでの使用に適しているが、それに限定されない。
【0010】
本発明は、NGFに特異的に結合する結合タンパク質を提供する。特定の実施形態では、結合タンパク質を、イヌへの投与用に最適化する。特定の実施形態では、結合タンパク質を、ネコへの投与用に最適化する。
【0011】
一態様では、本発明は、抗体の様式で、すなわち1つ以上の相補性決定領域(CDR)によってNGFに結合するように設計または適合された結合タンパク質を提供する。CDRは、国際ImMunoGeneTics(IMGT)情報システムによって識別され得る。したがって、特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X12345678(配列番号146)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、A、G、またはNを含み、X2は、LまたはMを含み、X3は、A、D、E、またはSを含み、X4は、F、I、L、M、またはVを含み、X5は、NまたはTを含み、X6は、E、S、またはTを含み、X7は、G、H、N、S、またはQを含み、X8は、AまたはSを含む)、(b)アミノ酸配列X12SNX5GT(配列番号147)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X1は、IまたはLを含み、X2は、WまたはYを含み、そしてX5は、GまたはRを含む)、(c)アミノ酸配列AX2IX45YX789YLX1213YX151617(配列番号148)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X2は、D、E、K、N、Q、S、またはTを含み、X4は、WまたはYを含み、X5は、F、H、W、またはYを含み、X7は、DまたはEを含み、X8は、AまたはSを含み、X9は、DまたはYを含み、X12は、HまたはYを含み、X13は、FまたはWを含み、X15は、F、I、L、W、またはYを含み、X16は、DまたはQを含み、X17は、F、I、L、M、W、またはYを含む)、(d)アミノ酸配列X12IX456(配列番号149)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X1は、D、E、またはKを含み、X2は、A、G、またはNを含み、X4は、G、N、QまたはSを含み、X5は、NまたはSを含み、X6は、A、G、N、SまたはTを含む)、(e)アミノ酸配列AX23(配列番号150)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X2は、A、S、またはTを含み、X3は、A、D、E、N、Q、S、またはTを含む)、及び(f)アミノ酸配列QX2GX456PX8T(配列番号151)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X2は、HまたはQを含み、X4は、F、H、WまたはYを含み、X5は、KまたはQを含み、X6は、FまたはWを含み、X8は、LまたはMを含む)、のうちの1つ以上を含む抗原結合部分を含む。
【0012】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X12345678(配列番号152)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、AまたはGを含み、X2は、LまたはMを含み、X3は、EまたはSを含み、X4は、FまたはLを含み、X5は、NまたはTを含み、X6は、E、S、またはTを含み、X7は、H、N、またはSを含み、X8は、AまたはSを含む)(b)アミノ酸配列X1WSNX5GT(配列番号153)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X1は、IまたはLを含み、X5は、GまたはRを含む)、(c)アミノ酸配列AX2IYYYX7ADYLHX13YX15DX17(配列番号154)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X2は、N、Q、S、またはTを含み、X7は、DまたはEを含み、X13は、FまたはWを含み、X15は、F、I、L、W、またはYを含み、X17は、F、I、L、またはMを含む)、(d)アミノ酸配列X1GIX456(配列番号155)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X1は、DまたはEを含み、X4は、N、Q、またはSを含み、X5は、NまたはSを含み、X6は、G、N、S、またはTを含む)、(e)アミノ酸配列ATX3(配列番号156)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X3は、D、E、N、Q、またはSを含む)、及び(f)アミノ酸配列QQGX456PX8T(配列番号157)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X4は、F、H、W、またはYを含み、X5は、KまたはQを含み、X6は、FまたはWを含み、X8は、LまたはMを含む)を含む抗原結合部分を含む。
【0013】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図1に示す重鎖CDR1を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図1に示す重鎖CDR2を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図1に示す重鎖CDR3を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図2に示す軽鎖CDR1を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図2に示す軽鎖CDR2を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図2に示す軽鎖CDR3を含む。
【0014】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図1に示す重鎖可変ドメインの重鎖CDRを含む。
【0015】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図1に示すVHドメインと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、または同一である重鎖可変ドメイン(VH)を含む。
【0016】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図2に示す軽鎖可変ドメインの軽鎖CDRを含む。
【0017】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図2に示す軽鎖可変ドメインに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、または同一である軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0018】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図1及び図2に示すFv由来のVH及びVLを含む。
【0019】
図1及び図2では、CDRは、IMGT系によって識別される。あるいは、CDRは、Kabat付番系またはChothia付番系に従って識別され得る。したがって、特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書でさらに記載されるようにKabatまたはChothia付番系に従って、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3のうちの1つ以上を含む抗原結合部分を含む。
【0020】
本明細書に記載のVHドメインとVLドメインのペアリングでは、任意のVHドメインを任意のVLドメインとともに使用することができる。同様に、任意のVHドメインのCDRを任意のVLドメインのCDRとともに使用することができる。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号137のVHCDR(SC-42_101)及び配列番号3のVLCDR(SC-42_006)を含む。VH-CDR2の55位にアミノ酸アルギニンを含む実施形態では、本発明の抗体は、配列番号207のVHCDR(SC-42_101R)及び配列番号3のVLCDR(SC-42_006)を含む。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の抗体には、一緒に選択された、すなわち、同じクローン内で同定されたVH及びVLドメインが組み込まれている。一緒に選択されたVH及びVLクローンは、図1においても図2においても同じクローン名を有するものとして識別される。同様に、図1のクローン名によって識別されるVHドメインのCDRを、図2の同じクローン名によって識別されるVLドメインのCDRとともに使用することができる。対のVH及びVLドメインは、保存的置換、例えば、限定されないが、VHCDR及びVLCDRの特定の位置、VH及びVLCDRに隣接する位置、ならびに本明細書に記載のVHドメイン及びVLドメインの位置で観察される保存的変異をさらに含み得る。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、クローン2166、SC-42_006、SC-42_007、SC-42_008、SC-42_010、SC-42_011、SC-42_023、SC-42_032、SC-42_045、SC-42_047、SC-42_048、SC-42_052、SC-42_070、SC-42_073、SC-42_077、SC-42_082、SC-42_090、またはSC-42_101のVH及びVLCDRを含む(図1及び図2)。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、クローン2166、SC-42_006、SC-42_007、SC-42_008、SC-42_010、SC-42_011、SC-42_023、SC-42_032、SC-42_045、SC-42_047、SC-42_048、SC-42_052、SC-42_070、SC-42_073、SC-42_077、SC-42_082、SC-42_090、またはSC-42_101に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、または同一であるVH及びVLドメインを含む。
【0024】
特定の実施形態では、ネコ化抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X1LX345678MX10(配列番号208)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、A、G、L、N、またはQを含み、X3は、A、D、E、G、H、I、M、S、T、またはYを含み、X4は、L、M、またはVを含み、X5は、A、M、N、R、S、T、またはVを含み、X6は、A、E、G、H、K、R、S、またはTを含み、X7は、A、D、H、I、N、Q、S、T、またはYを含み、X8は、AまたはSを含み、X10は、SまたはVを含む)、(b)アミノ酸配列X12345GTX8YX10DX12VX14(配列番号209)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X1は、IまたはLを含み、X2は、WまたはYを含み、X3は、A、P、またはSを含み、X4は、D、E、N、Q、R、またはSを含み、X5は、G、R、またはYを含み、X8は、DまたはYを含み、X10は、D、E、H、S、またはTを含み、X12は、DまたはSを含み、X14は、D、E、またはKを含む)、(c)アミノ酸配列X12345678910LX121314FX1617(配列番号210)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X1は、A、D、E、K、N、Q、S、またはTを含み、X2は、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、またはYを含み、X3は、I、L、W、またはYを含み、X4は、F、T、W、またはYを含み、X5は、F、H、またはYを含み、X6は、HまたはYを含み、X7は、DまたはEを含み、X8は、A、S、またはVを含み、X9は、D、E、H、K、N、Q、またはYを含み、X10は、F、H、またはYを含み、X12は、HまたはYを含み、X13は、FまたはWを含み、X14は、D、I、L、W、またはYを含み、X16は、DまたはQを含み、X17は、E、F、H、I、L、M、N、P、W、またはYを含む)、(d)アミノ酸配列X1ASX456789LX11(配列番号211)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X1は、FまたはRを含み、X4は、E、K、またはNを含み、X5は、AまたはGを含み、X6は、I、L、またはVを含み、X7は、A、D、G、L、P、Q、S、V、またはYを含み、X8は、K、Q、N、S、またはYを含み、X9は、A、D、E、F、G、H、K、L、N、Q、R、S、またはTを含み、X11は、A、G、またはSを含む)、(e)アミノ酸配列AX234567(配列番号212)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X2は、A、D、L、Q、S、T、V、またはYを含み、X3は、D、E、K、N、Q、またはSを含み、X4は、H、I、K、L、M、N、またはVを含み、X5は、HまたはLを含み、X6は、H、I、L、またはMを含み、X7は、D、E、N、S、またはTを含む)、及び(f)アミノ酸配列QQX345678T(配列番号213)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X3は、GまたはYを含み、X4は、D、F、G、H、K、L、R、S、T、V、W、またはYを含み、X5は、E、K、Q、R、またはSを含み、X6は、I、F、T、またはWを含み、X7は、EまたはPを含み、X8は、L、M、またはWを含む)を含む。
【0025】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示す重鎖CDR1を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示す重鎖CDR2を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示す重鎖CDR3を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示す軽鎖CDR1を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示す軽鎖CDR2を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示す軽鎖CDR3を含む。
【0026】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示す重鎖可変ドメインの重鎖CDRを含む。
【0027】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示すVHドメインに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、または同一である重鎖可変ドメイン(VH)を含む。
【0028】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示す軽鎖可変ドメインの軽鎖CDRを含む。
【0029】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示す軽鎖可変ドメインに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、または同一である軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0030】
図17Aに示すVHCDRは、図17Bに示すVLCDRと任意の組み合わせで使用することができる。図17Aに示すVHドメインは、図17Bに示すVLドメインと任意の組み合わせで使用することができる。表11及び表12は、例示的な組み合わせを示している。
【0031】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、Fv由来のVH及びVLを含み、VH図17Aに示され、VL図17Bに示される。
【0032】
図17では、CDRは、IMGT系によって識別される。あるいは、CDRは、Kabat付番系またはChothia付番系に従って識別され得る。したがって、特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書でさらに記載されるようにKabatまたはChothiaまたはIMGT付番系に従って、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3のうちの1つ以上を含む抗原結合部分を含む。
【0033】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、上記のようなCDRを含み、各CDRは、本明細書に記載される特定の抗体重鎖及び軽鎖、例えば、その配列が図1図2図17A、及び図17Bに示される重鎖及び軽鎖CDR(同様の配列であり、高い親和性でNGFに結合する)と比較して、1つまたは2つ以下のアミノ酸差異を含むというさらなる制限を有する。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書に開示されるVH及びVLのCDRを含む。
【0034】
特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、本明細書に記載される特定のイヌ化抗体重鎖及び軽鎖、例えば、同様の配列であり、最も高い親和性でNGFに結合する、図1及び図2に記載される重鎖及び軽鎖CDRと比較して、CDR当たり1つまたは2つ以下のアミノ酸差異を含む。そのような抗体としては、VH-CDR当たり2つ以下の変化を含み、すなわち、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、または配列番号141と比較して、CDR当たり2つ、1つの変化を含むか、または全く変化を含まず、VL-CDR当たり2つ以下の変化を含み、すなわち、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142と比較して、CDR当たり2つ、1つの変化を含むか、または全く変化を含まない抗体が挙げられる。
【0035】
特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、本明細書に記載される特定のネコ化抗体重鎖及び軽鎖、例えば、同様の配列であり、最も高い親和性でNGFに結合する、図17A及び図17Bに記載される重鎖及び軽鎖CDRと比較して、CDR当たり1つまたは2つ以下のアミノ酸差異を含む。そのような抗体としては、VH-CDR当たり2つ以下の変化を含み、すなわち、配列番号141、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号205、または配列番号206と比較して、CDR当たり2つ、1つの変化を含むか、または全く変化を含まず、VL-CDR当たり2つ以下の変化を含み、すなわち、配列番号142、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号199、配列番号201、または配列番号203と比較して、CDR当たり2つ、1つの変化を含むか、または全く変化を含まない抗体が挙げられる。
【0036】
許容される変異及び有利な変異を含む、CDR内及びCDR間の変異及びその組み合わせは、図1及び図2、ならびに図17A及び図17Bに示される配列データセットから明らかである。例えば、データセット全体の様々なCDR位置における配列の多様性または欠如を比較することにより、特定のアミノ酸が結合に有利となるCDR位置を観察することができる。同様に、同じ生殖系列に由来するVH鎖間またはVL鎖間での配列の多様性を比較することにより、アミノ酸変化が協調的であり得るCDRの位置を観察することができる。さらに、このデータセットにより、結合に重要と思われるCDR位置を同定することができる。
【0037】
本明細書に開示される特定の抗体は、他の抗NGF抗体とのCDR配列類似性に基づいてイヌまたはネコのライブラリから選択された。したがって、CDR及びFRは、双方ともイヌ様またはネコ様であり、同じ生殖系列の配列に由来する抗体重鎖及び軽鎖間に一定程度の均一性が観察されるであろう。そのような均一性は必須ではなく、採用されたイヌ化及びネコ化方法の結果であることを理解されたい。また、抗原結合に有害ではない程度で、配列変動が許容されるか、またはFRに導入され得ることも理解されたい。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、図1に示す重鎖と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3HH)を含む。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、または配列番号141と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3H+FR4H)を含む。
【0038】
特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、図17Aに示す重鎖と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3HH)を含む。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、配列番号141、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号205、または配列番号206と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3H+FR4H)を含む。
【0039】
特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、図2に示す軽鎖と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1+FR2+FR3+FR4)を含む。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1L+FR2L+FR3L+FR4L)を含む。
【0040】
特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、図17Bに示す軽鎖と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1+FR2+FR3+FR4)を含む。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、配列番号142、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号199、配列番号201、または配列番号203と少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1L+FR2L+FR3L+FR4L)を含む。
【0041】
抗体のV(H)及びV(L)機能をサポートするアミノ酸の天然に保存されたネットワークの議論については、例えば、Wang et al.,Conserved amino acid networks involved in antibody variable domain interactions.Proteins 2009 Jul;76(1):99-114を参照のこと。Wangは、抗体のVH及びVLドメイン、VH-CH1可変-定常ドメイン界面、さらにはVL及びCH1との相互作用を欠くように進化したラクダ科のVHHドメインにおける保存アミノ酸ペア及び非保存アミノ酸ペアを同定した。特定の実施形態では、治療用抗体の有効性、安全性、及び製造可能性、ならびに安定性などの生物医薬品特性及び生物物理学的特性を最適化するために変異を導入する。例えば、Douillard et al.,Optimization of an Antibody Light Chain Framework Enhances Expression,Biophysical Properties and Pharmacokinetics.Antibodies(Basel)2019 Sep 6;8(3):46を参照のこと。
【0042】
特定の実施形態では、本発明は、可変重鎖が、図1に示す重鎖可変ドメインに対して、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された組換えNGF結合タンパク質を提供する。特定の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、または配列番号137に対して、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0043】
特定の実施形態では、本発明は、可変軽鎖が、図2に示す軽鎖可変ドメインに対して、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された組換えNGF結合タンパク質を提供する。特定の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、または配列番号138に対して、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
別の態様では、本発明は、本発明の抗NGFタンパク質をコードする核酸を提供する。別の態様では、本発明は、本発明の抗NGFタンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、本発明のベクターの核酸を含むか、または本発明の抗NGFタンパク質を発現する細胞を提供する。
【0046】
抗NGF結合タンパク質、例えば、限定されないが、抗体及び抗体断片は、NGFと特異的に結合し、NGFとTrkAとの会合を阻害し、さらにNGFとp75との会合を阻害する。特定の実施形態では、これらの新規抗NGF結合タンパク質は、NGFを検出するのに、ならびに疼痛及び疼痛に関連する障害及び病態、例えば、炎症に関連する疼痛、がん、特定の疼痛、及び炎症に関連する障害、特にNGFレベルの上昇と関連する疼痛関連障害の治療に適しており、単独で投与してもよく、別の生物学的製剤、限定されないが、NSAIDまたはオピオイド鎮痛薬などの別の活性薬剤と組み合わせて投与してもよい。
【0047】
したがって、本出願人が権利を保有し、任意の以前に既知である製品、プロセス、または方法の免責事項を開示するように、任意の以前に既知である製品、製品を作製するプロセス、または製品を使用する方法を本発明内に包含しないことが、本発明の目的である。本発明は、本発明の範囲内に、本出願人が権利を保有し、任意の前述の製品、製品の製造プロセス、または製品の使用方法の免責事項を開示するように、USPTO(米国特許法第112条、第1段落)またはEPO(EPCの第83条)の書面による記述要件及び実施可能要件を満たさない任意の製品、プロセス、または製造方法、または製品の使用方法を包含することを意図していないことに更に留意されたい。本発明の実施において、EPC第53条(c)及びEPC規則28(b)及び(c)に準拠することが有利であり得る。本出願の系統もしくは任意の他の系統、または任意の第三者の任意の先行出願における本出願人の任意の付与された特許(複数可)の主題である任意の実施形態を明示的に除外する全ての権利は明示的に保有される。本明細書では、いかなるものも約束事項と解釈されるべきではない。
【0048】
本開示において、特に特許請求の範囲及び/または段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」などの用語は、米国特許法ではそれに帰属する意味を有することができ、例えば、それらは、「含む(include)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」などを意味することができ、「本質的にからなる(consisting essentially of)」及び「本質的にからなる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法ではそれらに帰属する意味を有し、例えば、それらは、明示的に記載されていない要素を許容するが、従来技術において見出されるか、または本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を与える要素を除外することに留意すべきである。
【0049】
これら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明から開示されるか、または該詳細な説明から明らかであり、かつ、これに包含される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A】本発明の例示的なVH重鎖可変ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アラインメントされる可変ドメインは、2つの部分に分かれる:部分(A)はN末端を示す。アラインメントの目的で、フレームワーク(FR)と相補性決定領域(CDR)をIMGT系に従って識別する。CDR及びFRを、本明細書で開示される他の系に従ってマッピングしてもよい。
図1B】本発明の例示的なVH重鎖可変ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アラインメントされる可変ドメインは、2つの部分に分かれる:部分(B)はC末端を示す。アラインメントの目的で、フレームワーク(FR)と相補性決定領域(CDR)をIMGT系に従って識別する。CDR及びFRを、本明細書で開示される他の系に従ってマッピングしてもよい。
図2A】本発明の例示的なVκ軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アラインメントされる可変ドメインは、2つの部分に分かれる:部分(A)はN末端を示す。アラインメントの目的で、フレームワーク(FR)と相補性決定領域(CDR)をIMGT系に従って識別する。CDR及びFRを、本明細書で開示される他の系に従ってマッピングしてもよい。各VLドメインは、図1に示されるVHドメインのいずれかとペアリングするのに適している。図1と合わせて、クローンの名称は、結合について試験される例示的なVH-VLペアの選択を示す。
図2B】本発明の例示的なVκ軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アラインメントされる可変ドメインは、2つの部分に分かれる:部分(B)はC末端を示す。アラインメントの目的で、フレームワーク(FR)と相補性決定領域(CDR)をIMGT系に従って識別する。CDR及びFRを、本明細書で開示される他の系に従ってマッピングしてもよい。各VLドメインは、図1に示されるVHドメインのいずれかとペアリングするのに適している。図1と合わせて、クローンの名称は、結合について試験される例示的なVH-VLペアの選択を示す。
図3】TF-1細胞の増殖の阻害を示す。
図4】キメラ2166抗体の重鎖(配列番号144)及び軽鎖(配列番号145)のアミノ酸配列を示す。エフェクター活性を除去するために、Fcに2つの残基変更(「AA」、下線及び太字)を加えた。この変化は、ヒトIgG1 Fcについて記載されている「LALA」変異と類似している。キメラ2166抗体は、イヌIgGB重鎖定常領域及びκ軽鎖定常領域を含む。
図5】イヌNGFに結合するイヌ2166キメラ抗体のセンサーグラムである。NGF濃度は、0.78、1.56、3.12、6.25、及び12.5nMであった。
図6】イヌp75-Fcに結合するイヌNGFのみのセンサーグラムである。NGF濃度は、0.78、1.56、3.12、6.25、12.5、25、及び50nMであった。
図7】イヌTrkA-Fcに結合するイヌNGFのみのセンサーグラムである。NGF濃度は、0.78、1.56、3.12、6.25、12.5、25、及び50nMであった。
図8】イヌp75-Fcに結合するイヌ2166キメラ抗体-NGF混合物のセンサーグラムである。NGF濃度は、12.5、25、及び50nMであった。
図9】イヌTrkA-Fcに結合するイヌ2166キメラ抗体-NGF混合物のセンサーグラムである。NGF濃度は、12.5、25、及び50nMであった。
図10】イヌNGFに結合する70個のイヌ化クローンのセンサーグラムを示す。NGF濃度は、0.23、0.69、2.06、6.17、及び18.52nMであった。
図11】イヌp75-Fcに結合するイヌNGFのみのセンサーグラムである。NGF濃度は、0.78、1.56、3.12、6.25、12.5、25、及び50nMであった。
図12】イヌTrkA-Fcに結合するイヌNGFのみのセンサーグラムである。NGF濃度は、0.78、1.56、3.12、6.25、12.5、25、及び50nMであった。
図13】イヌp75-Fcに結合するイヌ化SC42_101抗体-NGF混合物のセンサーグラムである。NGF濃度は、12.5、25、及び50nMであった。
図14】イヌTrkA-Fcに結合するイヌ化SC42_101抗体-NGF混合物のセンサーグラムである。NGF濃度は、12.5、25、及び50nMであった。
図15】ネコ化抗NGF抗体のVH(配列番号141)及びVL(配列番号142)アミノ酸配列を示す。
図16】NGFに結合するネコ化クローン101のセンサーグラムである。NGF濃度は、1.23、3.7、11、33、及び100nMであった。
図17A】本発明の例示的なネコ化及び親和性成熟ネコ化VH重鎖可変ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アラインメントの目的で、フレームワーク(FR)と相補性決定領域(CDR)をIMGT系に従って識別する。CDR及びFRを、本明細書で開示される他の系に従ってマッピングしてもよい。例えば、表4、及びKabatとIMGT手法の組み合わせを使用して定義されるCDRを参照のこと。
図17B】本発明の例示的なネコ化及び親和性成熟ネコ化Vκ軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アラインメントの目的で、フレームワーク(FR)と相補性決定領域(CDR)をIMGT系に従って識別する。CDR及びFRを、本明細書で開示される他の系に従ってマッピングしてもよい。例えば、表4、及びKabatとIMGT手法の組み合わせを使用して定義されるCDRを参照のこと。
図18A】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:クローン101。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18B】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:AHF17602。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18C】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:SC-184_76。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18D】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:SC-184_76-Arg。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18E】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:SC-102。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18F】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:SC-184_102-Arg。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18G】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:SC-110。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
図18H】親和性成熟ネコ抗体のセンサーグラムを示す:SC-184_110-Arg。NGF濃度は、50、25、12.5、6.25、3.125、及び1.56nMであった。
【0051】
本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公開の複写は、要請かつ必要な料金の支払により特許庁より提供される。
【0052】
以下の詳細な説明は、例として与えられ、記載される特定の実施形態のみに本発明を限定することを意図するものではないが、添付の図面と併せて最もよく理解され得る。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の特定の例示的な実施形態によれば、NGF結合タンパク質は、抗NGF抗体またはその抗原結合断片である。本明細書で使用される用語「抗体」には、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)が含まれる。典型的な抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でLCVRまたはVLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域と共に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に、さらに細分することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端へ向かって、以下の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施形態において、抗NGF抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、イヌ生殖系列配列と同一であってもよく、または天然もしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0054】
標的抗原への結合の親和性及び特異性に実質的な影響を与える抗体残基は、主にCDRに存在する。Kabatらは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の配列を編集及びアラインし、保存及び超可変領域及び残基を同定する免疫グロブリンの可変領域の標準化された付番スキームを最初に提案した。(Kabat EA et al.,1979,Sequences of Immunoglobulin Chains:Tabulation and Analysis of Amino Acid Sequences of Precursors,V-regions,C-regions,J-Chain and BP-Microglobulins,Department of Health,Education,and Welfare,Public Health Service,National Institutes of Health)。Kabat系は、抗体残基の付番に広く採用されている標準であるが、Kabatによって定義された超可変領域は、抗原結合ループの構造的態様と正確には一致しない。Chothia及びLeskは、抗体可変領域の結晶構造をアラインすることによって構造に基づく付番スキームを開発し、CDRループを少数の「標準」クラスに分類した(Chothia C,et al.,1987,Canonical structure for the hypervariable regions of immunoglobulins.J.Mol.Biol.196:901-17.doi:10.1016/0022-2836(87)90412-8)。Chothia付番スキームの利点は、異なる抗体のトポロジー的にアラインされた残基が同じ位置番号に局在し、ChothiaのCDR定義がほとんどの抗体配列で構造的抗原結合ループに対応することである。Lefrancは、T細胞受容体鎖を含む免疫グロブリンスーパーファミリーのすべてのタンパク質の付番を標準化することを目的とした、生殖系列配列に基づく新たな系を導入し(Giudicelli V et al.,1997,IMGT,the international ImMunoGeneTics database.Nucleic Acids Res.25:206-11)、その後、可変ドメイン全体に拡張された(Lefranc M-P et al.,2003,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains.Dev Comp Immunol.27:55-77.doi:10.1016/S0145-305X(02)00039-3)。非従来型のフレームワークをアラインし(Abhinandan KR et al.,2008,Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains.Mol Immunol.45:3832-9.doi:10.1016/j.molimm.2008.05.022)、可変鎖配列を構造的に不変な「コア」を含む複数の断片に細分化する(Gelfand et al.,1998,Algorithmic determination of core positions in the VL and VH domains of immunoglobulin molecules.J Comput Biol.(1998)5:467-77)ための追加の付番系が提案されている。本発明の特定の実施形態では、CDR残基を、上記のような標準系に従って同定する。特定の実施形態では、本発明の抗体を、本明細書に記載の抗体配列のKabat CDR残基のすべてまたはサブセットによって同定する。特定の実施形態では、本発明の抗体を、本明細書に記載の抗体配列のChothia CDR残基のすべてまたはサブセットによって同定する。特定の実施形態では、本発明の抗体を、本明細書に記載の抗体配列のIMGT CDR残基のすべてまたはサブセットによって同定する。特定の実施形態では、本発明の抗体を、例えば、限定されないが、KabatによるVH-CDR1の残基の全部またはサブセット、ChothiaによるVH-CDR2の残基の全部またはサブセット、KabatによるVH-CDR3の残基の全部またはサブセット、KabatによるVL-CDR1の残基の全部またはサブセット、IMGTによるVL-CDR2の残基の全部またはサブセット、及びChothiaによるVL-CDR3の残基の全部またはサブセットを含む、2つ以上の系によって定義されるCDR残基によって同定される。表1は、図1及び2に示される抗体配列に対するFR及びCDRの対応を示す。
【表1】
【0055】
KabatによってCDRを同定すると、特定の実施形態では、イヌ化抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X12345(配列番号158)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、E、S、またはTを含み、X2は、G、H、N、S、またはQを含み、X3は、AまたはSを含み、X4は、I、M、またはVを含み、X5は、DまたはSを含む)、(b)アミノ酸配列X123SNX6GTX9YX1112AX141516(配列番号159)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X1は、V、L、M、またはTを含み、X2は、IまたはLを含み、X3は、WまたはYを含み、X6は、GまたはRを含み、X9は、D、Q、またはSを含み、X11は、A、N、またはTを含み、X12は、DまたはSを含み、X14は、IまたはVを含み、X15は、EまたはKを含み、X16は、GまたはSを含む)、(c)アミノ酸配列IX23YX567YLX1011YX131415(配列番号160)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X2は、WまたはYを含み、X3は、F、H、W、またはYを含み、X5は、DまたはEを含み、X6は、AまたはSを含み、X7は、DまたはYを含み、X10は、HまたはYを含み、X11は、FまたはWを含み、X13は、F、I、L、W、またはYを含み、X14は、DまたはQを含み、X15は、F、I、L、M、W、またはYを含む)、(d)アミノ酸配列X1ASX45IX7891011(配列番号161)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X1は、LまたはRを含み、X4は、D、E、またはKを含み、X5は、A、G、またはNを含み、X7は、G、N、Q、またはSを含み、X8は、NまたはSを含み、X9は、A、G、N、S、またはTを含み、X10は、LまたはVを含み、X11は、AまたはNを含む)、(e)アミノ酸配列AX234567(配列番号162)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X2は、A、S、またはTを含み、X3は、A、D、E、N、Q、S、またはTを含み、X4は、A、E、K、L、N、Q、S、またはTを含み、X5は、L、M、またはNを含み、X6は、AまたはQを含み、X7は、G、D、R、S、またはTを含む)、及び(f)アミノ酸配列X12GX456PX8T(配列番号163)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X1は、H、M、Q、またはRを含み、X2は、H、N、Q、またはSを含み、X4は、F、H、W、またはYを含み、X5は、KまたはQを含み、X6は、FまたはWを含み、X8は、LまたはMを含む)のうちの1つ以上を含む抗原結合部分を含む。
【0056】
特定の実施形態では、イヌ化抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X1234S(配列番号164)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、E、S、またはTを含み、X2は、HまたはNを含み、X3は、AまたはSを含み、X4は、IまたはMを含む)、(b)アミノ酸配列TIWSNX6GTDYX1112AVKG(配列番号165)(式中、X6は、GまたはRを含み、X11は、AまたはTを含み、X12は、DまたはSを含む)、(c)アミノ酸配列IYYYX5ADYLX1011YX13DX15(配列番号166)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X5は、DまたはEを含み、X10は、HまたはYを含み、X11は、FまたはWを含み、X13は、F、I、L、W、またはYを含み、X15は、F、I、L、またはMを含む)、(d)アミノ酸配列RASEGIX78910A(配列番号167)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X7は、N、Q、またはSを含み、X8は、NまたはSを含み、X9は、G、N、S、またはTを含み、X10は、LまたはVを含む)、(e)アミノ酸配列ATX34LX67(配列番号168)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X3は、A、D、E、N、Q、またはSを含み、X4は、E、K、Q、またはSを含み、X6は、AまたはQを含み、X7は、RまたはTを含む)、及び(f)アミノ酸配列QQGX456PLT(配列番号169)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X4は、F、H、W、またはYを含み、X5は、KまたはQを含み、X6は、FまたはWを含む)を含む抗原結合部分を含む。
【0057】
ChothiaによってCDRを同定すると、特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X1234567(配列番号170)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、A、G、またはNを含み、X2は、LまたはMを含み、X3は、A、D、E、またはSを含み、X4は、F、I、L、M、またはVを含み、X5は、NまたはTを含み、X6は、E、S、またはTを含み、X7は、G、H、N、S、またはQを含む)、(b)アミノ酸配列X1SNX4G(配列番号171)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X1は、WまたはYを含み、X4は、GまたはRを含む)、(c)アミノ酸配列IX23YX567YLX1011YX131415(配列番号172)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X2は、WまたはYを含み、X3は、F、H、W、またはYを含み、X5は、DまたはEを含み、X6は、AまたはSを含み、X7は、DまたはYを含み、X10は、HまたはYを含み、X11は、FまたはWを含み、X13は、F、I、L、W、またはYを含み、X14は、DまたはQを含み、X15は、F、I、L、M、W、またはYを含む)、(d)アミノ酸配列SX23IX567(配列番号173)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X2は、D、E、またはKを含み、X3は、A、G、またはNを含み、X5は、G、N、Q、またはSを含み、X6は、NまたはSを含み、X7は、A、G、N、S、またはTを含む)、(e)アミノ酸配列AX23(配列番号174)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X2は、A、S、またはTを含み、X3は、A、D、E、N、Q、S、またはTを含む)、及び(f)アミノ酸配列GX234PX6(配列番号175)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X2は、F、H、W、またはYを含み、X3は、KまたはQを含み、X4は、FまたはWを含み、X6は、LまたはMを含む)のうちの1つ以上を含む抗原結合部分を含む。
【0058】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X1234567(配列番号176)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、A、G、またはNを含み、X2は、LまたはMを含み、X3は、A、E、またはSを含み、X4は、FまたはLを含み、X5は、NまたはTを含み、X6は、E、S、またはTを含み、X7は、H、N、またはSを含む)、(b)アミノ酸配列WSNX4G(配列番号177)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X4は、GまたはRを含む)、(c)アミノ酸配列IYX3YX5ADYLX1011YX13DX15(配列番号178)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X3は、FまたはYを含み、X5は、DまたはEを含み、X10は、HまたはYを含み、X11は、FまたはWを含み、X13は、F、I、L、W、またはYを含み、X15は、F、I、L、M、W、またはYを含む)、(d)アミノ酸配列SX2GIX567(配列番号179)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X2は、DまたはEを含み、X5は、N、Q、またはSを含み、X6は、NまたはSを含み、X7は、G、N、S、またはTを含む)、(e)アミノ酸配列ATX3(配列番号180)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X3は、D、E、N、Q、またはSを含む)、及び(f)アミノ酸配列GX234PX6(配列番号181)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X2は、F、H、W、またはYを含み、X3は、KまたはQを含み、X4は、FまたはWを含み、X6は、LまたはMを含む)を含む抗原結合部分を含む。
【0059】
別の態様では、本発明は、哺乳動物、例えば、限定されないが、ネコでの使用に適した結合タンパク質を提供する。特定の実施形態では、ネコ化抗NGF結合タンパク質は、(a)アミノ酸配列X1LX345678MX10(配列番号208)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)(式中、X1は、A、G、L、N、またはQを含み、X3は、A、D、E、G、H、I、M、S、T、またはYを含み、X4は、L、M、またはVを含み、X5は、A、M、N、R、S、T、またはVを含み、X6は、A、E、G、H、K、R、S、またはTを含み、X7は、A、D、H、I、N、Q、S、T、またはYを含み、X8は、AまたはSを含み、X10は、SまたはVを含む)、(b)アミノ酸配列X12345GTX8YX10DX12VX14(配列番号209)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)(式中、X1は、IまたはLを含み、X2は、WまたはYを含み、X3は、A、P、またはSを含み、X4は、D、E、N、Q、R、またはSを含み、X5は、G、R、またはYを含み、X8は、DまたはYを含み、X10は、D、E、H、S、またはTを含み、X12は、DまたはSを含み、X14は、D、E、またはKを含む)、(c)アミノ酸配列X12345678910LX121314FX1617(配列番号210)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)(式中、X1は、A、D、E、K、N、Q、S、またはTを含み、X2は、A、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、またはYを含み、X3は、I、L、W、またはYを含み、X4は、F、T、W、またはYを含み、X5は、F、H、またはYを含み、X6は、HまたはYを含み、X7は、DまたはEを含み、X8は、A、S、またはVを含み、X9は、D、E、H、K、N、Q、またはYを含み、X10は、F、H、またはYを含み、X12は、HまたはYを含み、X13は、FまたはWを含み、X14は、D、I、L、W、またはYを含み、X16は、DまたはQを含み、X17は、E、F、H、I、L、M、N、P、W、またはYを含む)、(d)アミノ酸配列X1ASX456789LX11(配列番号211)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)(式中、X1は、FまたはRを含み、X4は、E、K、またはNを含み、X5は、AまたはGを含み、X6は、I、L、またはVを含み、X7は、A、D、G、L、P、Q、S、V、またはYを含み、X8は、K、Q、N、S、またはYを含み、X9は、A、D、E、F、G、H、K、L、N、Q、R、S、またはTを含み、X11は、A、G、またはSを含む)、(e)アミノ酸配列AX234567(配列番号212)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)(式中、X2は、A、D、L、Q、S、T、V、またはYを含み、X3は、D、E、K、N、Q、またはSを含み、X4は、H、I、K、L、M、N、またはVを含み、X5は、HまたはLを含み、X6は、H、I、L、またはMを含み、X7は、D、E、N、S、またはTを含む)、(f)アミノ酸配列QQX345678T(配列番号213)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)(式中、X3は、GまたはYを含み、X4は、D、F、G、H、K、L、R、S、T、V、W、またはYを含み、X5は、E、K、Q、R、またはSを含み、X6は、I、F、T、またはWを含み、X7は、EまたはPを含み、X8は、L、M、またはWを含む)を含む。
【0060】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、VH-CDR1(GLSLTSX7SMX10(配列番号214)を含み、式中、X7は、A、D、またはNを含み、X10は、SまたはVを含む)、VH-CDR2(X12SNX5GT(配列番号215)を含み、式中、X1は、IまたはLを含み、X2は、WまたはYを含み、X5は、GまたはRを含む)、VH-CDR3(ASIYYYX7AX9YLHWYFDX12(配列番号216)を含み、式中、X7は、DまたはEを含み、X9は、DまたはEを含み、X12は、EまたはFを含む)、VL-CDR1(RASX4GIX78NLS(配列番号217)を含み、式中、X4は、EまたはKを含み、X7は、A、Q、またはSを含み、X8は、KまたはNを含む)、VL-CDR2(AX234LHS(配列番号218)を含み、式中、X2は、QまたはTを含み、X3は、DまたはSを含み、X4は、I、N、またはVを含む)、及びVL-CDR3(QQGX4KWPLT(配列番号219)を含み、式中、X4は、F、W、またはYを含む)を含む。
【0061】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書に開示されるネコ化抗体101の1つ以上(すなわち、1、2、3、4、5、または6つすべて)のCDRを含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書に開示される親和性成熟ネコ化抗体の1つ以上(すなわち、1、2、3、4、5、または6つすべて)のCDRを含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書で提供されるネコ化抗体101及び親和性成熟バリアントの1つ以上に由来するCDRを含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示すVHCDRを含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示すVLCDRを含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Aに示す抗体VHドメインのVHCDRを含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、図17Bに示す抗体VLドメインのVLCDRを含む。
【0062】
本発明によれば、特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、本明細書に開示されるネコ化抗体101バリアントのアミノ酸、例えば、VH内の以下のアミノ酸:S28H、T30N、T30R、S31H、S35V、Y52W、S53P、G55R、G55Y、Y58D、T60D、T60E、T60H、T60S、S62D、K64D、K64E、S97H、S97K、S97M、S97N、S97Q、S97T、Y99F、Y101H、D104E、D104K、D104N、D104Q、F112E、D112H、F112N、F112P、及び/またはVL内の以下のアミノ酸:R24F、S30A、S30L、S30P、S30Q、S30V、S30Y、N31Q、S34A、S34G、N53H、N53I、N53K、N53L、N53M、N53V、L54H、H55I、H55L、H55M、S56D、S56E、S56N、S56Tのうちの1つ以上を含む。特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、上記に挙げたアミノ酸バリアントの1つ以上を含まない。例えば、特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、G55Rのアルギニンを含まない。アミノ酸の位置は、ネコ化抗体101の残基及び番号によって示され、例えば、S28Hは、VHまたは抗体101のS28に対応する位置のHを示す。前述の位置には、CDR及びフレームワークアミノ酸残基が含まれる。
【0063】
特定の実施形態では、抗NGF結合タンパク質は、VHに以下のアミノ酸:S35V、G55R、S97Q、F112Eの1つ以上を含み、及び/またはVLに以下のアミノ酸:S30A、S30Q、N53I、N53Vの1つ以上を含む。上記の配列変異を含むVH鎖とVL鎖の対形成は、VH及びVL変異の適合性、ならびに変異を含むVH及びVLドメインの互換性を示す。
【0064】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、イヌ抗体またはイヌ化抗体を含む。特定の実施形態では、結合タンパク質は、ネコ抗体またはネコ化抗体を含む。
【0065】
特定の実施形態では、アミノ酸残基を、アミノ酸側鎖の特性が保存され得るアミノ酸残基へ変異させる。アミノ酸側鎖の特性の例としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、及び以下の側鎖:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖(R、K、H)、ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)を含むアミノ酸が挙げられる。括弧内の文字は1文字表記のアミノ酸コードを示す。各グループ内のアミノ酸置換は保存的置換と呼ばれる。1つ以上のアミノ酸残基が欠失、付加、及び/または置換された修飾アミノ酸配列を含むポリペプチドが、元の生物学的活性を保持できることはよく知られている(Mark D.F.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:5662-5666(1984);Zoller M.J.and Smith M.,Nucleic Acids Res.10:6487-6500(1982);Wang A.et al.,Science 224:1431-1433;Dalbadie-McFarland G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.79:6409-6413(1982))。変異アミノ酸の数は限定されないが、通常、各CDRのアミノ酸の40%以内、好ましくは35%以内、さらに好ましくは30%以内(例えば25%以内)である。アミノ酸配列の同一性は、本明細書に記載されるように決定することができる。
【0066】
本発明は、イヌ及びネコにおける抗原性を最小限に抑えるように設計または修飾された組換え抗体を提供する。特定の実施形態では、抗体を、T細胞エピトープを除去するためにさらに修飾する。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「イヌ」には、別段の指示がない限り、すべてのイエイヌ、Canis lupus familiaris、またはCanis familiarisが含まれる。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「ネコ」とは、ネコ科の任意のメンバーを指す。イエネコ、純血種及び/または雑種の伴侶ネコ、及び野生または野良ネコはすべてネコ科である。
【0069】
本明細書で使用される用語「イヌフレームワーク」または「ネコフレームワーク」とは、本明細書でCDR残基として定義される超可変領域残基以外のイヌ抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を指す。イヌ化抗体に関して、特定の実施形態では、他の種に由来するNGF結合抗体のCDRと密接に一致するイヌ抗体重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列において、イヌCDRを同定する。特定の実施形態では、天然のイヌCDRを、対応する外来CDR(例えば、ラットまたはマウス抗体由来の)に、両鎖において置換する。ネコ化抗体に関して、特定の実施形態では、他の種に由来するNGF結合抗体のCDRと密接に一致するネコ抗体重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列において、ネコCDRを同定する。特定の実施形態では、天然のネコCDRを、対応する外来CDR(例えば、ラットまたはマウス抗体由来の)に、両鎖において置換する。任意選択で、イヌ化抗体またはネコ化抗体の重鎖及び/または軽鎖は、いくつかの変異したまたは外来の非CDR残基、例えば、生殖系列抗体配列間で異なるフレームワークアミノ酸残基、または抗体内の外来CDRの立体構造を保存する変異を含み得る。
【0070】
イヌには5つの主要なアイソタイプ(IgA、IgG、IgM、IgD、IgE)ならびに2つの形態の軽鎖(κ及びλ)が存在する。イヌでは、IgGに4つのサブタイプが存在し、それらは、IgGA、IgGB、IgGC、及びIgGDである(Bergeron etal al,2014,Comparative functional characterization of canine IgG subclasses.Veterinary Immunology and Immunopathology.157:31-41)。ネコの場合、IgGにはIgG1a、IgG1b、及びIgG2の3つのサブタイプが存在する(Streitzel et al.2014,In vitro functional characterization of feline IgGs.Vet Immunol Immunopathol 158,214-223,doi.org/10.1016/j.vetimm.2014.01.012)。
【0071】
本発明は、1つ以上のエフェクター機能または循環半減期を調節するように改変されたイヌ化抗体及びネコ化抗体を提供する。抗体のヒンジ及び定常ドメインは、宿主の受容体または補体タンパク質と結合して、エフェクター機能を媒介し、抗体循環を調節する。特定の実施形態では、1つ以上のエフェクター機能を増強する。特定の実施形態では、1つ以上のエフェクター機能を低減または排除する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)を調節するための修飾を含む。非限定的な例としては、エフェクター機能を低下させるためのイヌIgGB定常領域残基Met242及び/またはLeu243の改変が挙げられる。特定の実施形態では、本発明のIgGB定常領域は、M242A及びL243A置換を含む。特定の実施形態では、第2の定常ドメイン(CH2)及び/または第3の定常ドメイン(CH3)は、FcRn(新生児Fc)受容体への結合を調節するように設計された野生型からの変異及び変異の組み合わせを含む。イヌ定常領域では、そのような変異には、限定されないが、Ala426の置換、例えばA426YまたはA426H、Thr286の置換、例えばT286LまたはT286Y、Tyr436の置換、例えばY436H、ならびにA426Y+T286L、A426Y+Y436H、A426H+T286L、及びA426H+T286Yを含むがこれらに限定されないそのような変異の組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、本発明のキメラ抗体またはイヌ化抗体は、アミノ酸Asn434における置換、例えば、限定されないが、N434Hを含む。ネコ定常領域では、そのような変異には、限定されないが、S428YまたはS428Lを含むがこれらに限定されないSer428の置換、Q311Vを含むがこれに限定されないGln311の置換、L309Vを含むがこれに限定されないLeu309の置換、T286Eを含むがこれに限定されないThr286の置換、E380Tを含むがこれに限定されないGlu380の置換、ならびにS428Y+Q311V、S428Y+L309V、S428Y+Q311V+T286E、S428Y+Q311V+E380T、及びS428Y+L309V+E380Tを含むがこれらに限定されないそのような変異の組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、本発明のキメラ抗体またはネコ化抗体は、S428L及び/またはS434Hを含むがこれらに限定されないアミノ酸Ser428及び/またはSer434における置換を含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」には、完全な抗体分子の抗原結合断片が含まれる。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語には、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然の、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子改変されたポリペプチドもしくは糖タンパク質が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「特異的に結合する(specifically binds)」または「特異的に結合する(binds specifically)」とは、本発明のNGF結合タンパク質が、代替抗原に比べて、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、及び/またはより高い親和性でNGFと反応または会合することを意味する。例えば、NGF結合タンパク質は、他のタンパク質またはペプチドに比べて、実質的により高い親和性(例えば、少なくとも2倍、もしくは5倍、もしくは10倍、もしくは20倍、もしくは50倍、もしくは100倍、もしくは500倍、もしくは1000倍、もしくは10,000倍、またはそれ以上)でNGFに結合する。特定の実施形態では、NGF結合タンパク質は、その結合するエピトープまたは標的について、例えば、10-4M以下、例えば、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの平衡解離定数KDでNGFに結合する。当業者であれば、1つの種に由来する標的(例えば、NGF)に特異的に結合する抗体が、NGFのオルソログにも特異的に結合し得ることを認識するであろう。
【0073】
抗体の抗原結合断片は、任意の好適な標準的技術、例えば、タンパク質の分解消化、または抗体の可変ドメイン及び任意選択で定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を伴う組換え遺伝子工学技術を使用して、例えば、完全な抗体分子から誘導され得る。そのようなDNAは既知であり、及び/または例えば商業的供給元、DNAライブラリ(例えばファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAを、化学的に、または分子生物学技術を使用して配列決定し、操作して、例えば、1つ以上の可変ドメイン及び/または定常ドメインを適切な構成に配置し、コドンを導入し、システイン残基を作成し、アミノ酸を修飾、付加、または欠失させる、などを行ってよい。
【0074】
抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。他の改変分子、例えばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュラー免疫医薬品(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインもまた、本明細書で使用される表現「抗原結合断片」に包含される。
【0075】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってもよく、一般に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するか、またはフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインに会合したVHドメインを有する抗原結合断片において、VH及びVLドメインは、任意の好適な配置で相互に配置してよい。例えば、可変領域は二量体であり、VH-VH、VH-VL、またはVL-VL二量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VHまたはVLドメインを含み得る。
【0076】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出され得る可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的な例示的な構成としては、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(V)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CLが挙げられる。上記に列挙した例示的な構成のいずれかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインの任意の構成において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結され得るか、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子内の隣接する可変ドメイン及び/または定常ドメイン間に屈曲性または半屈曲性の結合をもたらす少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個、またはそれ以上)のアミノ酸からなり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いに、及び/または1つ以上の単量体VHまたはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)非共有結合した、上記で列挙した可変及び定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0077】
用語「ダイアボディ(Db)」とは、遺伝子融合によって構築された二価の抗体断片を指す(例えば、P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993),EP404,097,WO93/11161)。一般に、ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖の二量体である。各ポリペプチド鎖において、同一鎖内の軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)は、短いリンカー、例えば約5残基のリンカーを介して接続しており、その結果、それらは相互に結合することができない。2つの間のリンカーが短すぎるため、同じポリペプチド鎖内のVLとVHは、一本鎖V領域フラグメントを形成することができず、代わりに二量体を形成する。したがって、ダイアボディは、2つの抗原結合ドメインを有する。2種類の抗原(a及びb)に対するVL領域とVH領域を約5残基のリンカーを介して結合させてVLa-VHb及びVLb-VHaを形成し、次いで共発現させると、それらは二重特異性Dbとして分泌される。本発明の抗体は、そのようなDbであってもよい。
【0078】
一本鎖抗体(「scFv」とも呼ばれる)は、抗体の重鎖V領域と軽鎖V領域を連結することによって調製することができる(scFvの総説については、Pluckthun“The Pharmacology of Monoclonal Antibodies”Vol.113,eds.Rosenburg and Moore,Springer Verlag,N.Y.,pp.269-315(1994)を参照のこと)。一本鎖抗体の調製方法は当技術分野で公知である(例えば、米国特許第4,946,778号、第5,260,203号、第5,091,513号、及び第5,455,030号を参照のこと)。そのようなscFvでは、重鎖V領域と軽鎖V領域は、リンカー、好ましくはポリペプチドリンカーを介して互いに連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,1988,85,5879-5883)。scFvにおける重鎖V領域及び軽鎖V領域は、同じ抗体に由来してもよく、または異なる抗体に由来してもよい。V領域を連結するために使用されるペプチドリンカーは、12~19残基からなる任意の一本鎖ペプチドであってよい。scFvをコードするDNAは、上記の抗体の重鎖または重鎖のV領域をコードするDNA、及び上記の抗体の軽鎖または軽鎖のV領域をコードするDNAから選択される、所望のアミノ酸配列をコードする全DNAまたは部分DNAを鋳型として使用し、両端を規定するプライマーペアを使用して、PCRによって増幅することができる。続いて、ペプチドリンカー部分をコードするDNAと、それぞれ重鎖及び軽鎖に連結されるDNAの両端を規定するプライマーペアとの組み合わせを使用して、さらなる増幅を行うことができる。scFvをコードするDNAを構築した後、従来の方法を使用して、これらのDNAを含む発現ベクター、及びこれらの発現ベクターによって形質転換された宿主を取得することができる。さらに、得られた宿主を用いて従来の方法に従ってscFvを取得することができる。これらの抗体断片は、抗体断片をコードする遺伝子を取得し、上記で概説したようにこれらを発現させることによって宿主内で産生することができる。修飾された抗体として、ポリエチレングリコール(PEG)などの各種分子に結合させた抗体を使用してもよい。抗体の修飾方法は当技術分野ですでに確立されている。本発明における「抗体」には、上記の抗体も包含される。
【0079】
本明細書で使用される用語「Kd」とは、抗体-抗原相互作用の解離定数を指す。解離定数Kdと結合定数Kaは、親和性の定量的な尺度である。平衡状態では、遊離抗原(Ag)及び遊離抗体(Ab)は、抗原抗体複合体(Ag-Ab)と平衡状態にあり、速度定数ka及びkdは、個々の反応の速度を定量化する。平衡状態では、ka[Ab][Ag]=kd[Ag-Ab]である。解離定数Kdは、Kd=kd/ka=[Ag][Ab]/[Ag-Ab]で求められる。Kdは濃度の単位を有しており、最も一般的にはM、mM、nM、pMなどである。Kdとして表される抗体親和性を比較する場合、NGFに対する親和性が高いほど、より低い値が示される。結合定数Kaは、Ka=ka/kd=[Ag-Ab]/[Ag][Ab]で求められる。Kaは、濃度の逆数の単位を有し、最も一般的には、M-1、mM-1、nM-1、pM-1などである。本明細書で使用される場合、用語「結合力」とは、価数を考慮した抗原抗体結合の強度を指す。
【0080】
得られた抗体は均一になるまで精製することができる。タンパク質の単離及び精製に通常用いられる方法により、抗体を単離し、精製することができる。例えば、カラムクロマトグラフィー、濾過、限外濾過、塩析、透析、分取ポリアクリルアミドゲル電気泳動、及び等電点電気泳動から選択される1つ以上の方法を適宜組み合わせて、抗体を単離し、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual,Daniel R.Marshak et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996);Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。そのような方法は、上記に列挙したものに限定されない。クロマトグラフィー法には、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、及び吸着クロマトグラフィーが含まれる。これらのクロマトグラフィー法は、HPLC及びFPLCなどの液相クロマトグラフィーを用いて実施することができる。アフィニティークロマトグラフィーに使用されるカラムとしては、プロテインAカラム及びプロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAカラムとしては、Hyper D、POROS、及びSepharose F.F.(Pharmacia)が挙げられる。また、抗原を固定化した担体を用いて、抗原の結合を利用して抗体を精製することもできる。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「治療薬」とは、哺乳動物レシピエントに対して有益な効果を有する任意の薬剤または材料を指す。したがって、「治療薬」は、核酸またはタンパク質成分を有する治療用分子と予防用分子の両方を包含する。
【0082】
本明細書で使用される「治療する」とは、所与の疾患または病態の少なくとも1つの症状を改善すること、治癒すること、及び/またはその発症を予防することを指す。
【0083】
抗体またはその断片を含む、本明細書に記載の抗NGFタンパク質は、NGFに関連する疾患及び障害を改善するか、またはその症状を軽減するか、または治療するか、または予防するのに有用である。抗NGFタンパク質または断片、ならびに他の薬剤との組み合わせを、本明細書に記載の医薬組成物の形態で、NGFに関連する疾患及び障害の治療を必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0084】
特定の実施形態では、本方法は、対象における疼痛を改善するか、またはその症状を軽減するか、または治療するか、または予防することを含む。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質、抗体、またはそれらの断片は、NGFとTrkA及び/またはp75との会合を阻害し、例えば、単独でまたは第2の薬剤と併用して投与され、炎症性疼痛、術後切開痛、複雑ながん性疼痛(原発性または転移性骨がん性疼痛を含むがこれらに限定されない)、骨折痛、骨粗鬆症性骨折痛、骨粗鬆症による痛み、火傷による痛み、及び他の侵害受容性疼痛を治療するか、改善するか、その症状を軽減するか、または予防するために使用される。
【0085】
特定の実施形態では、抗体組成物及び方法を、変形性関節症(OA)の痛みを改善するか、その症状を軽減するか、治療するか、または予防するために使用する。OAは、関節軟骨、滑膜、軟骨下骨、及び関節周囲成分を含む関節全体の構造変化を特徴とする、緩やかに進行する変性関節疾患であり、痛み及び関節機能の喪失をもたらす。慢性的な痛み及びOAは、イヌ及びネコによく見られる。イヌの20~30%が臨床的に影響を受けており、OAの兆候がある。すべてのネコの最大40%が臨床的に影響を受けており、12歳以上のすべてのネコの90%にOAの兆候がある。
【0086】
イヌのOAの最も一般的な部位は股関節であり、次いで膝関節、肩、及び手根骨である。ネコでは、股関節、膝関節、手根骨、または脊椎が最もよく影響を受ける。
【0087】
抗NGFタンパク質、抗体または抗体断片を、任意選択で、他の鎮痛剤を含む1つ以上の活性薬剤と組み合わせて投与する。そのような活性薬剤には、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、解熱剤、抗炎症剤、抗生物質、抗ウイルス剤、及び抗サイトカイン剤が含まれる。活性薬剤としては、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、IL-18、IFN-α、IFN-γ、BAFF、CXCL13、IP-10、VEGF、EPO、EGF、HRG、肝細胞増殖因子(HGF)、ヘプシジンのアゴニスト、アンタゴニスト、及び調節因子が挙げられる(前述のいずれかに対して反応する抗体、及びそれらの受容体のいずれかに対して反応する抗体を含む)。活性薬剤としてはまた、限定されないが、2-アリールプロピオン酸、アセクロフェナク、アセメタシン、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アモキシプリン、アンピロン、アリールアルカン酸、アザプロパゾン、ベノリレート/ベノリラート、ベノキサプロフェン、ブロムフェナク、カルプロフェン、セレコキシブ、コリンマグネシウムサリチル酸塩、クロフェゾン、COX-2阻害剤、デキシブプロフェン、デキケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、ドロキシカム、エテンザミド、エトドラク、エトリコキシブ、フェイスラミン、フェナム酸、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドメタシン、インドプロフェン、ケブゾン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロモキシカム、ロキソプロフェン、ルミラコキシブ、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メタミゾール、サリチル酸メチル、モフェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、n-アリールアントラニル酸、神経成長因子(NGF)、オキサメタシン、オキサプロジン、オキシカム、オキシフェンブタゾン、パレコキシブ、フェナゾン、フェニルブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プロフェン、プログルメタシン、ピラゾリジン誘導体、ロフェコキシブ、サリチル酸サリチル、サリチルアミド、サリチル酸塩、スルフィンピラゾン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチン、及びバルデコキシブも挙げられる。
【0088】
抗ヒスタミン剤は、ヒスタミンの作用または細胞(例えばマスト細胞)からのヒスタミンの放出に対抗する任意の化合物であり得る。抗ヒスタミン薬としては、アクリバスチン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ベタタスチン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、セチリジン、セチリジン類似体、クロルフェニラミン、クレマスチン、CS560、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デキスクロルフェニラミン、エバスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、HSR609、ヒドロキシジン、レボカバスチン、ロラチジン、メスコポラミン、ミゾラスチン、ノルアステミゾール、フェニンダミン、プロメタジン、ピリラミン、テルフェナジン、及びトラニラストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
抗生物質としては、アミカシン、アミノグリコシド、アモキシシリン、アンピシリン、アンサマイシン、アルスフェナミン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズトレオナム、バシトラシン、カルバセフェム、カルバペネム、カルベニシリン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファロチン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトビプロール、セフトリアキソン、セフロキシム、セファロスポリン、クロラムフェニコール、シラスタチン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、シリンダマイシン、クロキサシリン、コリスチン、コトリモキサゾール、ダルホプリスチン、デメクロサイクリン、ジクロキサシリン、ジリスロマイシン、ドリペネム、ドキシサイクリン、エノキサシン、エルタペネム、エリスロマイシン、エタンブトール、フルクロキサシリン、ホスホマイシン、フラゾリドン、フシジン酸、ガチフロキサシン、ゲルダナマイシン、ゲンタマイシン、糖ペプチド、ハービマイシン、イミペネム、イソニアジド、カナマイシン、レボフロキサシン、リンコマイシン、リネゾリド、ロメフロキサシン、ロラカルベフ、マクロライド、マフェニド、メロペネム、メチシリン、メトロニダゾール、メズロシリン、ミノサイクリン、モノバクタム、モキシフロキサシン、ムピロシン、ナフシリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、オキシテトラサイクリン、パロモマイシン、ペニシリン、ペニシリン類、ピペラシリン、プラテンシマイシン、ポリミキシンB、ポリペプチド、プロントシル、ピラジナミド、キノロン、キヌプリスチン、リファンピシン、リファンピン、ロキシスロマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド、スルファサラジン、スルフィソオキサゾール、スルホンアミド、テイコプラニン、テリスロマイシン、テトラサイクリン、テトラサイクリン、チカルシリン、チニダゾール、トブラマイシン、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、トロレアンドマイシン、トロバフロキサシン、及びバンコマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
活性薬剤としてはまた、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、コルチコステロイド、コルチゾール、酢酸コルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、グルココルチコイド、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ステロイド、及びトリアムシノロンも挙げられる。これらの活性薬剤の任意の好適な組み合わせもまた企図される。
【0091】
OA及びOAに関連する痛みの現在の最も一般的な治療法は、NSAID(抗疼痛薬でもある)である。NSAIDは常に十分な効果があるとは限らず、通常は毎日投与する必要があり、米国ではネコへの長期使用が承認されているものはない。さらに、イヌとネコの両方でNSAIDを使用する場合、特に長期治療の場合、安全性と忍容性に関する懸念がある。NSAIDを抗NGF mAbと長期間にわたって共投与することは推奨されない。
【0092】
特定の実施形態では、治療は、関節の健康を補助するために、オメガ3脂肪酸、マイクロラクチン、及び/またはグルコサミン/コンドロイチンを含有する栄養補助食品の共投与を含む。Adequan(多硫酸化グリコサミノグリカン)は、軟骨の損失を抑制するFDA承認の疾患修飾薬であり、これも共投与してよい。
【0093】
製剤及び投与方法
【0094】
in vivoで使用する場合、本明細書に記載の治療薬を、一般に、投与前に医薬組成物に組み込む。そのような組成物中には、本明細書に記載の1つ以上の治療化合物が活性成分(複数可)として存在する(すなわち、代表的なアッセイを使用して測定した場合、嚢胞性線維症の症状に対して統計的に有意な効果をもたらすのに十分なレベルで存在する)。医薬組成物は、特定の投与様式に適していることが当業者に公知である任意の薬学的に許容される担体(複数可)と組み合わせて、1つ以上のそのような化合物を含む。さらに、他の医薬活性成分(他の治療薬を含む)を組成物中に存在させてもよいが、必ずしも存在させる必要はない。
【0095】
本発明の抗体は、標準的な方法に従って製剤化することができ(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、最新版、Mark Publishing Company,Easton,U.S.Aを参照のこと)、薬学的に許容される担体及び/または添加剤を含み得る。本発明は、本発明の抗体と、薬学的に許容される担体及び/または添加剤とを含む組成物(試薬及び医薬品を含む)に関する。例示的な担体としては、界面活性剤(例えば、PEG及びTween)、賦形剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)、着色剤、香料、保存剤、安定剤、緩衝剤(例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸)、キレート剤(例えば、EDTA)、懸濁化剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、及び矯味剤が挙げられる。しかしながら、本発明で使用してもよい担体は、このリストに限定されない。実際には、他の一般的に使用される担体:軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油60、ショ糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などを適宜使用することができる。組成物はまた、他の低分子量ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、及び免疫グロブリン、ならびにアミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、及びリジンを含み得る。組成物を注射用の水溶液として調製する場合、組成物は、例えば生理食塩水、ブドウ糖、ならびに例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、及び塩化ナトリウムを含む他のアジュバントを含む等張液を含み得、これには、適切な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール及びPEG)、ならびに非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80及びHCO-50)も含有され得る。
【0096】
必要に応じて、本発明の抗体をマイクロカプセル(ヒドロキシセルロース、ゼラチン、ポリメチルメタクリレートなどからなるマイクロカプセル)に封入し、コロイド状薬物送達系(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)の構成要素としてもよい(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Science 16th edition”,Oslo Ed.(1980)を参照のこと)。さらに、徐放性薬剤の製造方法も知られており、これらを本発明の抗体に適用することができる(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.12:98-105(1982);米国特許第3,773,919号;欧州特許出願第58,481号;Sidman et al.,Biopolymers 22:547-556(1983);EP:133,988)。
【0097】
イヌ及びネコの両方における好ましい投与経路は、通常、首の付け根の皮膚への皮下注射による投与である。特定の実施形態では、抗NGFタンパク質は、皮下投与用のペンまたはプレフィルドシリンジなどの統合送達系にパッケージングされる。Ghil et al.は、関節リウマチ(RA)における注射部位の痛み、患者の好み、及び安全性に基づいて、プレフィルドシリンジ(PFS)及び自動注射器(AI)ペンを介したアダリムマブのバイオシミラーSB5の投与について説明している(Ghil et al.,Usability and safety of SB5(an adalimumab biosimilar)prefilled syringe and autoinjector in patients with rheumatoid arthritis.Curr Med Res Opin 2019 Mar;35(3):497-502を参照のこと)。本発明の組成物を、イヌ、ネコ、及び他の哺乳動物に同様に投与する。
【0098】
疾患状態/病態の治療に関して、用語「治療有効量」とは、単回用量または複数回用量として投与した場合に、疾患状態/病態の任意の症状、態様、もしくは特徴に対して検出可能なプラスの効果を有し得る、単独であるか、または医薬組成物に含有されるかのいずれかの化合物の量を指す。そのような効果は、絶対的に有効である必要はない。
【0099】
本明細書で使用される用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」には、症状を予防するために疾患状態/病態の臨床症状の発症前に化合物を投与すること、ならびに疾患状態/病態の任意の症状、態様、または特徴を軽減または除去するために、疾患状態/病態の臨床症状の発症後に化合物を投与することが含まれる。そのような治療は、絶対的に有用である必要はない。
【0100】
特定の実施形態では、本治療薬を、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体などの薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて、例えば経口的に全身投与してもよい。それらを、硬質または軟質のゼラチンカプセルに封入してもよく、錠剤に圧縮してもよく、または患者の食事の食物に直接組み込んでもよい。経口治療投与の場合、活性化合物を1つ以上の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用してもよい。そのような組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。組成物及び製剤の割合は、当然ながら変動させてもよく、所与の単位剤形の重量の約2~約60%であることが好都合であり得る。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な用量レベルが得られるような量である。
【0101】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどは、以下を含有し得る:トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及びスクロース、フルクトース、ラクトース、もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、ウィンターグリーン油、もしくはチェリー香料などの香味料を加えてもよい。単位剤形がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有してもよい。他の様々な材料を、コーティングとして、または固体単位剤形の物理的形態を改変するために存在させてもよい。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルを、ゼラチン、ワックス、シェラック、または砂糖などでコーティングしてもよい。シロップまたはエリキシルには、活性化合物、甘味剤としてのスクロースまたはフルクトース、防腐剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、染料及びチェリー香料またはオレンジ香料などの香味料が含有され得る。当然のことながら、単位剤形の調製に使用される材料はいずれも、薬学的に許容され、使用される量において実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物を徐放性製剤及び装置に組み込んでもよい。
【0102】
活性化合物はまた、点滴または注射によって静脈内または腹腔内に投与してもよい。活性化合物またはその塩の溶液は、任意選択で非毒性界面活性剤と混合して、水中で調製してもよい。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物中、ならびに油中で調製することもできる。これらの調製物は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の発育を阻止するための保存剤を含有する。
【0103】
注射または注入に適した医薬剤形には、任意選択でリポソームにカプセル化された、滅菌注射もしくは注入溶液もしくは分散液の即時調製に適合した、活性成分を含む滅菌水溶液もしくは分散液または滅菌粉末が含まれ得る。すべての場合において、最終的な剤形は無菌で、流動性があり、製造及び保管の条件下で安定であるべきである。液体担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びこれらの好適な混合物を含む、溶媒または液体分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成、分散液の場合には必要な粒子径の維持、または界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の抑制は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、緩衝液、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中の使用によってもたらされ得る。
【0104】
無菌注射用溶液は、上述の様々な他の成分とともに、活性化合物を必要な量で適切な溶媒中に組み込み、必要に応じて、その後濾過滅菌することによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、その調製の好ましい方法は、予め滅菌濾過した溶液中に存在する活性成分と任意の所望の追加成分とを合わせた粉末が得られる、真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
【0105】
本発明の化合物の有用な用量は、それらのin vitro活性と動物モデルにおけるin vivo活性を比較することによって決定することができる。特定の実施形態では、有用な用量は、約0.1mg/kg~約5mg/kg、または約0.5mg/kg~約2mg/kgである。異なるサイズのヒト及び動物における有効用量の外挿方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0106】
治療に使用するために必要な化合物、またはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩だけでなく、投与経路、治療中の病態の性質、ならびに患者の年齢及び病態によっても変動し、最終的には主治医または臨床医の裁量に委ねられる。
【0107】
しかしながら、一般に、好適な用量は、1日当たり約0.5~約100mg/kg体重、例えば、約10~約75mg/kg体重、例えば、3~約50mg/レシピエント体重kg/日の範囲、好ましくは6~90mg/kg/日の範囲、最も好ましくは15~60mg/kg/日の範囲である。
【0108】
この化合物は、例えば、単位剤形当たり5~1000mg、好都合には10~750mg、最も好都合には50~500mgの活性成分を含有する単位剤形で投与するのが好都合である。
【0109】
理想的には、活性成分は、約0.5~約75μM、好ましくは約1~50μM、最も好ましくは約2~約30μMの活性化合物のピーク血漿濃度を達成するように投与すべきである。これは、例えば、任意選択で生理食塩水中の活性成分の0.05~5%溶液の静脈内注射によって、または約1~100mgの活性成分を含有するボーラスとして経口投与することによって、達成され得る。望ましい血中レベルは、約0.01~5.0mg/kg/時間を提供する連続注入によって、または約0.4~15mg/kgの活性成分(複数可)を含有する断続注入によって、維持され得る。
【0110】
所望の用量を、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日当たり2回、3回、4回、もしくはそれ以上の分割用量として、好都合に与えてもよい。分割用量自体を、例えば、複数の個別の緩やかな間隔の投与にさらに分割してもよい。
【0111】
本発明及びその利点は詳細には記載されているが、添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変化、置換、及び変更が行われ得ることを理解されたい。
【0112】
本発明を以下の実施例においてさらに例示するが、実施例は、例示目的のために与えられたものであって、本発明をいかなる方法でも限定することを意図しない。
【実施例
【0113】
実施例1
イヌNGFに結合するラット抗体2166の生成及び特性評価
【0114】
Lewisラットを、8週間にわたって毎週、ヒトNGF(R&D Systems,256-GF-100/CF)で免疫化した。ヒトNGFコーティングビーズを使用したフローサイトメトリーアッセイで力価を測定した。ビーズとヒトNGF(R&D Systems,256-GF-100/CF)を複合体化し、異なる希釈率の血清(1:100、1:500、1:2500)とともに30分間インキュベートした。ビーズを洗浄し、蛍光標識した抗ラットIgG二次抗体を使用して結合を検出した。Intellicyt iQue Screener Plusを使用して蛍光を測定した。3匹すべてのラットについて1:2500希釈で力価を測定したが、それらは正常なLewisラット血清の値より約100倍高かった。
【0115】
有意なNGF力価を有するラットから、大腿骨、脛骨、及び骨盤由来のリンパ節(上腕、腋窩、鼠径部、膝窩、及び坐骨)ならびに骨髄を採取した。両方の組織から細胞を分離し、フローサイトメトリーを使用して形質細胞を濃縮した。濃縮された形質細胞懸濁液を、91,000または153,000ナノリットル容量の個別の反応チャンバーを備えたAbCelleraのマイクロ流体スクリーニング装置に注入した。NGF特異的抗体を分泌する単一細胞を、ビーズベースのアッセイを使用して同定及び単離した。抗ラットIgG抗体でコーティングされたビーズをマイクロ流体スクリーニング装置上に流し、単一の抗体分泌細胞とともにインキュベートした。形質細胞によって分泌されたIgGを、定常領域を使用してビーズ上に捕捉した。続いて、蛍光標識されたヒトNGF抗原を使用して、ビーズ上に固定化された分泌IgGへの結合を評価した。陽性のヒットをマシンビジョンを使用して特定し、自動ロボットベースのプロトコルを使用して回収した。およそ269,000個の個々のB細胞をNGF結合アッセイでスクリーニングし、592個の細胞がNGFを認識する抗体を発現していた。これらの陽性細胞から、190個の固有の抗体配列を同定した。クロノタイプの多様性に基づいて、190個の抗体から88個の抗体を選択した。
【0116】
単一細胞ポリメラーゼ連鎖反応及びカスタム分子生物学プロトコルにより、自動ワークステーション(Bravo,Agilent)を使用してNGSシーケンシングライブラリ(MiSeq,Illumina)を生成した。カスタムバイオインフォマティクスパイプラインを使用して配列データを解析し、回収された各抗体分泌細胞について重鎖と軽鎖のペア配列を取得した(Jones et al.,2020,bioRxiv 2020.09.30.318972.doi:10.1101/2020.09.30.318972)。ラット抗体2166の重鎖及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列をそれぞれ図1及び図2に示し、CDRを示す。各抗体鎖の可変(V(D)J)領域を合成し、カスタム自動ハイスループットクローニングパイプラインを使用して哺乳動物発現プラスミドに挿入した。
【0117】
メーカー推奨プロトコルを使用して、24ディープウェルプレート内のExpi293-F細胞(Gibco,ThermoFisher Scientific)に発現ベクターをトランスフェクトした。トランスフェクションの4日後、馴化培地をプロテインAビーズで精製し、100mMグリシン、pH2.0を添加することにより抗体を溶出し、1M Tris-HCL、pH8.0を添加することによりpH7.0に中和した。中和された抗体をPBS、pH7.2にバッファー交換した。
【0118】
精製された抗体の分析には、CE-SDS(変性キャピラリードデシル硫酸ナトリウムゲル電気泳動)及びDSF(示差走査蛍光分析)が含まれていた。CE-SDSを使用して精製抗体の純度を決定し、LabChip GXII Touch装置(Perkin Elmer)を使用して完了した。PBS中の350μg/mLの濃度の抗体溶液2マイクロリットルを非還元変性緩衝液(Perkin Elmer)と混合し、70℃で10分間インキュベートした。LabChip装置(Perkin Elmer)のHT Antibody Analysis 200アッセイの設定を使用して、分離及び検出を実施した。LabChip GX Reviewer Software(Perkin Elmer)を使用して、純度の百分率によって蛍光データを分析した。ラットモノクローナル抗体2166の純度の百分率は96%であった。
【0119】
抗体の融点(Tm)を、SYPRO(商標)Orange蛍光プローブ(5000倍濃縮溶液、Thermo Fisher Scientific)を使用した示差走査蛍光分析(DSF)によって評価した。PBS中の350μg/mLのmAb溶液6μLを、PBS中に希釈した19倍濃縮SYPRO(商標)Orange溶液6μLと混合した。蛍光の変化によって評価される熱変性を、CFX96 Real-Time Systemリーダーヘッド(Bio-Rad Laboratories)を使用してBio-Rad C1000 Touch Thermal Cycler装置(Bio-Rad Laboratories)において測定した。励起及び発光の波長は、それぞれ450~490nm及び560~580nmであった。蛍光シグナルを、25℃の開始温度で測定し、0.5℃/分ずつ増加させ、95℃まで上昇させた。データを分析し、Bio-Rad CFX Maestroソフトウェア(v1.1)を使用して融解曲線を統合した。Tmは、融解曲線の導関数から得られる極小値として定義した。ラット抗体2166のTmは66.5℃であった。
【0120】
結合アッセイを完了して、NGF(R&D Systems,256-GF-100/CF)に対する抗体の結合を確認した。さらに、抗体の特異性を、密接に関連したタンパク質であるNT-3及びBDNFへの抗体の結合を試験することによって決定した。ハイスループットフローサイトメーターでのマルチプレックスビーズアッセイを使用して、固有の抗体配列がスクリーニング標的に結合することを確認した。異なる光学的にコード化されたビーズを、ヒトNGF(R&D Systems,256-GF-100/CF)、NT-3(R&D Systems,267-N3-025/CF)、またはBDNF(R&D Systems,248-BDB-050/CF)のいずれかと複合体化させた。精製した抗体を、異なる抗体濃度で多重化ビーズとともに室温で30分間インキュベートした。ビーズを洗浄し、蛍光標識した二次抗体を使用して結合を検出した。Intellicyt(登録商標)iQue Screener Plusにおいて、ハイスループットのプレートベースのフローサイトメトリーを使用して蛍光を測定した。
【0121】
各抗体の蛍光強度の中央値を、個々のビーズタイプの適切なアイソタイプ対照の蛍光強度の中央値に対して正規化した。アイソタイプの10倍を超える抗体値を結合剤とみなした。
【0122】
抗体2166はバックグラウンドレベルより59倍超高くNGFに結合し、この抗体のNT-3及びBDNFへの結合はバックグラウンドレベルであった。
【0123】
TF-1細胞を用いた機能アッセイを使用して、2166抗体のイヌNGFへの結合が、NGFに対する高親和性受容体であるヒトTrkAによるシグナル伝達を誘導するイヌNGFの能力を遮断するかどうかを判定した(Chevalier et al.,1994.Blood,83:1479)。これらの試験では、イヌNGF(Genbank NP_001181879.1)をNGF源として使用した。C末端にstrepタグ(Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys)を有するイヌNGFをDmel-2細胞内で安定して発現させ、StrepTactinXTクロマトグラフィーとそれに続くSuperdex 200 16/600クロマトグラフィーによる研磨ステップを使用して精製した。TF-1細胞の増殖は、GM-CSF及びNGFなどの様々な成長因子によって刺激され得る。TF-1細胞(ATCC-CRL2003)を、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、及び2ng/mL組換えヒトGM-CSFを含有するRPMI-1640培地中で培養した。細胞を、3×104~5×105生細胞/mLに維持し、48時間ごとに継代した。各条件を3つ組のウェル中で実行した。細胞を収集し、計数した。GM-CSFを含まない培地に細胞を1.75×105細胞/mlで再懸濁し、加湿した37℃、5%CO2のインキュベーター内でフラスコ中にて4時間インキュベートした。インキュベーション中、NGF/抗体混合物を、GM-CSFを含まない完全培地及び10ng/mLイヌNGFを含む完全培地中の2×培地溶液として培地中で調製した。抗体を適切な2×培地溶液に添加し、NGF/抗体溶液を細胞に添加する前に室温で少なくとも1時間インキュベートした。次いで、細胞を回収し、GM-CSFを含まない培地中で0.5×106細胞/mlの懸濁液を達成するために、適切な培地量に再懸濁した。50μlの細胞懸濁液を96ウェルプレートのウェルごとに加え、これに50μlの2×NGF/抗体培地を細胞プレートのウェルごとに加えた。加湿した37℃、5%CO2のインキュベーター内で細胞を48時間インキュベートし、次いで20μlのAqueous One solution Reagent(Promega)をウェルごとに添加した。加湿した37℃、5%CO2のインキュベーター内で細胞をさらに4時間インキュベートし、次いでBioTek Synergy/neO2において490nmで吸光度を読み取った。すべての測定値からブランクウェルを差し引くことによってデータを分析した。阻害率は以下の式を使用して計算した:阻害率(%)=100×[1-(X-MIN)/(MAX-MIN)]、式中、X=所与の濃度でのシグナル、MAX=0%阻害=イヌNGFのみ、及びMIN=100%阻害=NGFなし対照。各条件について、三つ組で平均を計算した。ラット抗体2166及びアイソタイプラット抗体対照の増殖データを図3に示す。データは、ラット抗体2166がNGFのTrkAへの結合を効果的に遮断することを示している。
【0124】
抗体2166のVHドメインを、イヌIgGB定常ドメインと融合させ(Tang et al.2001.Vet.Immunol.Immunopathol.80:259)、抗体2166のVLドメインをイヌκ定常ドメインに融合させて、イヌキメラ抗体を生成した(図4)。Fcに2つの残基変更(AA)(下線及び太字)を行ってエフェクター活性を排除し、これらの変更は、ヒトIgG1 Fcについて説明されている「LALA」変異と類似している(Tamm&Schmidt,1997.Int.Rev.Immunol.16:57)。これら2つの構築物をpcDNA3.4(ThermoFisher Scientific)にサブクローニングし、Expi293システム(ThermoFisher Scientific)を用いて共トランスフェクトし、HiTrapプロテインA HPクロマトグラフィーで精製した。SDS/PAGEにより測定した抗体の純度は>95%であり、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)により、抗体の単量体率は98%であった。
【0125】
イヌNGFに対するイヌ2166キメラ抗体の親和性を、SPR(表面プラズモン共鳴)によって測定した。これらの試験のために、C末端にFlagタグ(DYKDDDDK)を融合し、バキュロウイルス技術でイヌNGF構築物を発現させ、次いで抗DYKDDDDK G1アフィニティークロマトグラフィーでこのNGFを精製することによって、イヌNGF(Genbank NP_001181879.1)を生成した。イヌNGFに対するイヌ2166キメラ抗体の結合速度を、Biacore T200装置を用いて測定した。アッセイの形式は、2166抗体のFcをプロテインAセンサーチップ上に捕捉し、分析物としてイヌNGFを使用することであった。ランニングバッファーはHBS-EP緩衝液(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%tween20)であり、装置温度を25℃に設定した。流速は40μl/分であり、二つ組で試験した5つの分析物の濃度は0.78nM~12.5nMの範囲であった。結合シグナルをブランクについて補正し、得られたセンサーグラム(図5)を使用して、BIAEVALソフトウェアによる1対1結合モデルを使用して速度定数(ka及びkd)ならびに結合親和性(KD)を決定した。これらの結合条件下で、イヌ2166キメラ抗体の結合速度は、ka(1/Ms)=1.2E+7、kd(1/s)=3.5E-6、及びKD=3E-13であった。この抗体の測定された親和性(KD)は、Biacore装置の感度を超えているが、これらのデータから少なくとも50pMであると推定される。
【0126】
イヌ2166キメラ抗体がイヌNGF受容体(TrkA及びp75)へのイヌNGFの結合を遮断する能力を、Biacore T200でのSPRアッセイで測定した。アッセイの形式は、センサーチップ上でNGF受容体を捕捉し、イヌNGFのみ、イヌ2166キメラ抗体と混合したNGF、またはイヌ2166キメラ抗体のみのいずれかを流すことであった。
【0127】
アッセイで使用するNGF受容体は、受容体とFcとの間の2×Gly-Gly-Gly-Serリンカーを用いてヒトIgG1 Fc(UniProtKB P01857)に融合させたイヌp75(XP_038340439.1)及びイヌTrkA(XP_038398906.1)の細胞外ドメインからなる。融合タンパク質をCHO細胞で発現させ、プロテインAクロマトグラフィーで精製した。このアッセイでは、タンパク質p75-Fc及びTrk-Fcをヒト抗Fcセンサーチップ上に捕捉した。
【0128】
NGFのみ、イヌ2166キメラ抗体のみ、及びイヌ2166キメラ抗体-NGF混合物(モル比2:1)を分析物とした。NGFのみの条件におけるNGFの7種類の濃度は、0.78nM~50nMの範囲であった。イヌ2166キメラ抗体-NGF混合物中のイヌNGFの濃度は、50nM、25nM、及び12.5nMであった。最後に、イヌ2166キメラ抗体単独条件の4種類の濃度は、12.5nM~100nMの範囲であった。装置の温度及び流速を、それぞれ25℃及び40μL/分に設定した。
【0129】
結合シグナルを参照について補正し、得られたセンサーグラムを使用して、BIAEVALソフトウェアによる1対1結合モデルを使用して速度定数(ka及びkd)ならびに結合親和性(KD)を決定した。センサーグラム(図5、6、7、8)は、p75-Fc及びTrkA-Fc受容体の両方について、NGFのみの条件及びイヌ2166キメラ抗体-NGF混合物を表す。これらの結合条件下で、二量体形式のイヌp75に対するイヌNGFのみの結合速度は、ka(1/Ms)=1.2E+10、kd(1/s)=45、及びKD=3.7E-9であった(図6)。二量体形式のイヌTrkAに対するイヌNGFのみの結合速度は、ka(1/Ms)=1.3E+7、kd(1/s)=1.7E-4、及びKD=1.3E-11であった(図7)。イヌ2166キメラ抗体のみの条件では、イヌNGF受容体への結合は観察されなかった(データは示さず)。センサーグラム(図8及び図9)によって示されるように、イヌ2166キメラ抗体は、イヌTrkA及びp75へのイヌNGFの結合を効果的に遮断する。
【0130】
実施例2
ラット2166抗体のイヌ化
【0131】
イヌPBMC(末梢血単核球)に対してNGS(次世代シーケンシング)を実施することによって、イヌ抗体データベースを生成した。このデータベースには、5.0×106個のVHドメイン、3.7×106個のVKドメイン、及び2.6×106個のVLドメインの配列が含まれている。2166親抗体のHCDR1、2及びLCDR1、2、3配列をアルゴリズムに使用して、イヌ抗体データベース内の最も近いイヌCDR配列及びそれらに連結されたフレームワーク配列を同定した。これらの連結フレームワーク配列を、最も近いフレームワーク生殖系列配列、及び最も近い生殖系列に戻された1~3残基を有する連結フレームワーク配列とともにscFvファージディスプレイライブラリに含めた。独自のアルゴリズムを使用して、元の2166のCDRに類似し、生殖系列及び発現させたCDR配列との同一性がより近いCDR配列のセットを同定した。これらのCDRとフレームワーク配列を使用して、理論上の複雑度3×1012のscFv抗体ファージディスプレイライブラリを生成した。抗体ファージの選択は、イヌNGFを用いて4ラウンドで完了し、各ラウンドで抗原濃度を下げ、洗浄回数を増やすことによってストリンジェンシーを高めた。具体的には、96マルチウェルプレートを、第1ラウンドでは200pmol、第2ラウンドでは100pmol、そして第3ラウンド及び第4ラウンドでは50pmolのNGFでコーティングした。選択後のPBS-tween20(0.01%)での洗浄回数は、第1ラウンドで6回、第2ラウンドで7回、第3ラウンドで8回、第4ラウンドで9回であった。第3ラウンド及び第4ラウンドから出力されたscFvクローンの配列を決定し、固有のクローンをIgGに再フォーマットし、SPRによってイヌNGFへの結合についてスクリーニングした。親クローン2166とともに上位69個のイヌ化クローンの配列及びイヌNGFに対する結合速度を、図1及び2ならびに表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0132】
69個のクローンすべてのセンサーグラムを図10に示す。EDC/NHS活性化によって抗体(約5μg/ml)をHC30Mセンサーチップにアミンカップリングし、その後エタノールアミンHCLでクエンチすることによってSPRを完了した。SPR分析の分析物として使用したイヌNGF(Genbank NP_001181879.1)は、C末端にFlagタグ(DYKDDDDK)を付けたイヌNGFについて実施例1に記載したものと同じ調製物であった。
【0133】
イヌ化SC42_101抗体がイヌNGF受容体(TrkA及びp75)へのイヌNGFの結合を遮断する能力を、Biacore T200でのSPRアッセイで測定した。アッセイの形式は、センサーチップ上でNGF受容体を捕捉し、イヌNGFのみ、イヌ化SC42_101抗体と混合したNGF、またはイヌ化SC42_101抗体のみのいずれかを流すことであった。受容体の遮断方法は、実施例1のイヌ2166キメラ抗体について記載した方法と同一である。センサーグラム(図11、12、13、14)は、p75-Fc及びTrkA-Fc受容体の両方について、NGFのみの条件及びイヌ化SC42_101抗体-NGF混合物を表す。これらの結合条件下で、二量体形式のイヌp75に対するイヌNGFのみの結合速度は、ka(1/Ms)=3.8E+7、kd(1/s)=0.1、及びKD=2.7E-9であった(図11)。二量体形式でのイヌTrkAに対するイヌNGFのみの結合速度は、ka(1/Ms)=2.4E+7、kd(1/s)=1.6E-4、及びKD=6.6E-12であった(図12)。イヌ化SC42_101抗体のみの条件では、イヌNGF受容体への結合は観察されなかった(データは示さず)。センサーグラム(図13及び14)によって示されるように、イヌ化SC42_101抗体は、イヌTrkA及びp75へのイヌNGFの結合を効果的に遮断する。
【0134】
実施例3
ラット2166抗体のネコ化
【0135】
ネコPBMC(末梢血単核球)に対してNGS(次世代シーケンシング)を実施することによって、ネコ抗体データベースを生成した。このデータベースには、7.5×106個のVHドメイン、1.3×106個のVKドメイン、及び3.8×106個のVLドメインの配列が含まれている。2166親抗体のHCDR1、2及びLCDR1、2、3配列をアルゴリズムに使用して、ネコ抗体データベース内の最も近いネコCDR配列及びそれらに連結されたフレームワーク配列を同定した。これらの連結フレームワーク配列を、最も近いフレームワーク生殖系列配列、及び最も近い生殖系列に戻された1~3残基を有する連結フレームワーク配列とともにscFvファージディスプレイライブラリに含めた。独自のアルゴリズムを使用して、元の2166のCDRに類似し、生殖系列及び発現させたCDR配列との同一性がより近いCDR配列のセットを同定した。これらのCDRとフレームワーク配列を使用して、理論上の複雑度3×1012のscFv抗体ファージディスプレイライブラリを生成した。ネコNGFのプロセシングされた形態(XP_004001166.1)は、イヌNGFのプロセシングされた形態(NP_001181879.1)と同一であるため、ネコ化試験では、実施例1に記載されているFlagタグ(DYKDDDDK)をC末端にタグ付けしたイヌNGFを使用した。
【0136】
抗体ファージの選択は、NGFを用いて4ラウンドで完了し、各ラウンドで抗原濃度を下げ、洗浄回数を増やすことによってストリンジェンシーを高めた。具体的には、96マルチウェルプレートを、第1ラウンドでは200pmol、第2ラウンドでは100pmol、そして第3ラウンド及び第4ラウンドでは50pmolのNGFでコーティングした。選択後のPBS-tween20(0.01%)での洗浄回数は、第1ラウンドで6回、第2ラウンドで7回、第3ラウンドで8回、第4ラウンドで9回であった。第3ラウンド及び第4ラウンドから出力されたscFvクローンの配列を決定し、固有のクローンをIgGに再フォーマットし、SPRによってNGFへの結合についてスクリーニングした。クローン101の可変ドメインを図15に示し、CDR領域に下線を付している。ネコ化クローン101のNGFに対する親和性をSPRによって測定した。このアッセイの形式は、EDC/NHSを使用してシリーズS CM5バイオセンサー上にヤギ抗ネコIgG(30μg/ml)を固定化し、残りの部位をエタノールアミンでクエンチすることであった。ネコ化クローン101(1μg/ml)をヤギ抗ネコIgGセンサーチップ上に捕捉した。単一サイクルの反応速度を使用して、5つの濃度のNGFを捕捉した。ネコ化クローン101のNGFに対する結合速度は、ka(1/Ms)=3.8E+5、kd(1/s)=3E-3、及びKD=7.8E-9であった。
【0137】
実施例4
CDRの部位特異的変異誘発を使用したネコ化クローン101の親和性成熟
【0138】
第1の親和性成熟アプローチでは、ネコクローン101の重鎖可変ドメインとCH1ドメイン(表3)をGenScript FASEBAプラスミドにサブクローニングした。この構築物は、重鎖(VH-CH1)のC末端に、アルブミンに対して低いpM親和性を有する血清アルブミン(SASA)タグに対する単一ドメイン抗体を含んでおり(例えば、US2013/0129727A1を参照のこと)、さらに下流には、精製用のHisタグを含んでいた。軽鎖可変ドメインをネコCκを用いて独自のE.coli発現ベクターにサブクローニングした(表3)。TG1 E.coliで発現させた場合にFabの分泌が促進されるように、重鎖と軽鎖の双方がN末端にPelB(ペクチン酸リアーゼB)シグナルペプチドを有していた。可変ドメインの発現を、Lacプロモーターによって調節した。
【表3】
【0139】
半導体ベースのオリゴヌクレオチド合成技術を利用するGenScript独自のPrecision Mutant Library(PML)を使用して、重鎖及び軽鎖内の各CDR位置についてバリアントライブラリを生成した。変異体の生成では、KabatとIMGTの方法論を組み合わせて使用してCDRを定義し、各CDRについて選択された残基を以下の表4に示す。CDRの残基番号を括弧内に示す。

【表4】
【0140】
ライブラリの品質を、NGS(次世代シーケンシング)を使用して検証した。2YT培地に播種し、室温で一晩0.2mM IPTGで誘導することによって、96ディープウェルプレート中のE.coli内で発現させるために各ライブラリから44個のPMLクローンを選択した。ELISAを完了することによって、培地中に分泌されたFabを結合活性について分析した。このELISAでは、プレートを10μg/mlのBSAで一晩4℃でコーティングし、0.1%tween20を含有するPBS、pH7.4(PBST)で3回洗浄し、3%脱脂粉乳を含有するPBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)中で37℃にて1時間、非特異的相互作用を遮断し、PBSTで3回洗浄し、粗製Fab上清(PBSTで1:1に希釈)を加え、37℃で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、0.15μg/mlのNGFを添加し、37℃で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートした抗Flagタグ抗体(NGF上に存在するFlagタグ)を添加し、室温で45分間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、TMB基質を用いて室温で10分間インキュベートし、450nmで吸光度を測定することによってHRP複合体を検出した。ELISAで測定して親和性が明らかに増加した上位100個のクローンを配列決定してCDR内のバリアントを検出し、57個のユニークなクローンを同定した。57個のクローンそれぞれのクローン101からの変異を表5にまとめる。

【表5】
【0141】
57個のユニークなクローンの結合を、Biacore T200で実施するSPRアッセイにおける解離速度スクリーニングアッセイによって確認した。SPR分析では、ウシ血清アルブミン(BSA)をCM5センサーチップに固定した。センサーチップ表面を、50mmol/L H-ヒドロキシスクシンイミド及び200mmol/L 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩で420秒間活性化した。その後、10mM酢酸ナトリウム、pH4.5で希釈したBSAを注入した。アミンカップリング反応後、チップ表面に残っている活性カップリング部位を1mMエタノールアミン塩酸塩で遮断した。馴化培地中の選択されたFab-SASAバリアントを、BSAでコーティングされたチップ上に捕捉した。ランニングバッファーは、HBS-EP(10mM HEPES、500mM NaCl、3mM EDTA、0.05% Tween20、pH7.4)であった。平衡化後、抗原を120秒間注入し(結合相)、続いてランニングバッファーを420秒間注入した(解離相)。Biacore T200評価ソフトウェアを使用して実験データを1:1相互作用モデルに局所的にフィッティングすることにより、Fab-SASAクローンの解離速度を取得した。Fabバリアントを、表6に示す解離速度定数(解離速度、kd)によってランク付けした。
【表6-1】
【表6-2】
【0142】
FabバリアントG55R、S30A、S30Q、S35V、N53I、F112E、S97Q、及びN53Vをコンビナトリアルライブラリ構築のために選択した(表7)。

【表7】
【0143】
コンビナトリアルライブラリを、上記と同じFab-SASAベクター内に構築した。コンビナトリアルライブラリの理論上の多様性は、2×2×2×2×3×3=144であり、構築されたライブラリのサイズは5.6×107CFU(コロニー形成単位)であった。ライブラリのインフレーム率と多様性を、DNA配列決定によって評価し、結果を以下の表に示す。
【表8】
【表9】
【表10】
【0144】
コンビナトリアルライブラリから184個のクローンをランダムに選択し、NGF ELISAによる結合を完了した。NGF ELISAは上記と同じ方法であった。ELISA結合の上位20クローンを配列決定し、SPR解離速度アッセイで試験した。結合結果をアミノ酸の組み合わせごとに表11に示す。表12は、上位20クローンの可変ドメイン配列IDを示す。VHとVLの対形成は、VHとVLの変異に実質的な互換性があり、及びVHとVLドメインに互換性があることを示している。
【表11】
【表12】
【0145】
実施例5
scFvファージディスプレイによるネコ化クローン101の親和性成熟
【0146】
第2の親和性成熟アプローチでは、ネコ化クローン101のフレームワーク、ならびに表13に示す重鎖及び軽鎖CDR配列について以下の配列を含むscFvファージディスプレイライブラリを構築した。

【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【0147】
重鎖のライブラリ多様性は、37(HCDR1)×11(HCDR2)×57(HCDR3)=23,199であり、軽鎖のライブラリ多様性は、24(LCDR1)×13(LCDR2)×22(LCDR3)=6,864であった。重鎖と軽鎖を組み合わせたライブラリの多様性は1.59×108である。抗体ファージの選択は、NGFを用いて5ラウンドで完了し、各ラウンドで抗原濃度を下げ、洗浄回数を増やすことによってストリンジェンシーを高めた。具体的には、96マルチウェルプレートを、第1ラウンドでは200pmolのNGF、第2ラウンド及び第3ラウンドでは50pmolのNGF、第4ラウンドでは25pmol、及び第5ラウンドでは10pmolでコーティングした。選択ステップ後のPBS、pH7.4-Tween20(0.01%)での洗浄回数は、第1ラウンド後に3回、第2ラウンド後に4回、第3ラウンド後に5回、第4ラウンド後に6回、及び第5ラウンド後に7回であった。NGF結合ELISAでスクリーニングされた第3、第4、及び第5ラウンドの各出力から760クローンのファージを単離した。陽性クローンを配列決定し、140個のユニークな陽性クローンをネコIgG1aに再フォーマットし、CHO細胞内で発現させ、プロテインAで精製した。EDC/NHS活性化によって抗体(約5μg/ml)をHC30Mセンサーチップにアミンカップリングし、その後エタノールアミンHCLでクエンチすることによってSPRを完了した。NGFは、0.01%のtween20及び0.5mg/ml BSAを含むHEPES緩衝生理食塩水で希釈した分析物であった。NGFは、500nM、166nM、55nM、18nM、6.2nM、2.0nM、0.68nM、及び0.23nMの濃度で実行した。上位3つの親和性成熟クローンの親和性を以下の表14に示す。上位3つのクローン(SC-184_76、SC-184_102、SC-184_110)の可変ドメインの配列を図17に示す。

【表14】
【0148】
実施例6
ネコNGFに対する親和性成熟ネコ抗体のSPR及びNGF受容体遮断データ
【0149】
第1の親和性成熟アプローチで記載された、親和性成熟抗体AHF17602、SC-184_76、SC-184_102、及びSC-184_110、ならびにG55R変異を含む後者の3つのクローン(SC-184_76-Arg、SC-184_102-Arg、及びSC-184_110-Arg)を、Biacore T200装置を備えたSPRを使用して、NGFに対する親和性を評価した。AHF17602、SC-184_76-Arg、SC-184_102-Arg、及びSC-184_110-Argの可変ドメイン配列を図17に示す。さらに、クローン101も評価した。抗体を、抗ネコをカップリングしたCM5チップを使用して捕捉した。次いで、PBSP+ランニングバッファー(Cytiva)を流速30μL/分で使用して、NGF結合を50nMから開始する複数の濃度で評価した。結合時間の長さは120秒であり、解離時間は600秒で実行した。チップ表面を10mMグリシンで再生させた。Biacore T100 Evaluationソフトウェアを使用して、参照を差し引いたセンサーグラムを1:1結合モデルにフィッティングした。データを以下の表15に示し、センサーグラムを図18に示す。
【表15】
【0150】
NGF受容体遮断実験のために、ネコTrkA及びp75 NGF受容体を生成し、Biacore T200を用いたSPR実験において使用した。ネコTrkAの細胞外ドメイン(XP_023103311)を、C末端にAviTag(GLNDIFEAQKIEWHE)と8×Hisタグを付けてクローニングし、HEK293細胞で発現させた。組換えネコTrkAタンパク質を、ニッケルクロマトグラフィーを使用して馴化培地から精製した。ネコp75の細胞外ドメイン(XP_023099534)を、C末端にAviTag(GLNDIFEAQKIEWHE)と8×Hisタグを付けてクローニングし、HEK293細胞で発現させた。組換えネコp75タンパク質を、ニッケルクロマトグラフィーを使用して馴化培地から精製した。BirAビオチンタンパク質リガーゼ反応キット(Avidity)を使用して、両方の受容体をAviTag部位でビオチン化した。Series S CAPチップ及びBiotin CAPture試薬(Cytiva)でビオチン化受容体を捕捉した。抗体をランニングバッファー(1×PBSP+、Cytiva)中で滴定し、10nM NGF(TrkAアッセイ)または50nM NGF(p75アッセイ)とともに指定の比率でプレインキュベートした。捕捉した受容体上にこれらの試料を180秒間注入することによって結合を評価した。Rmaxを使用して、事前に混合した試料のRmaxを、アッセイ全体で回収したNGFのみのRmax試料の平均で割ることにより、阻害の割合を計算した。ネコTrkA及びp75へのNGFの結合を遮断する各抗体の能力を表16に示す。
【表16】
【0151】
実施例7
イヌクローンSC-42_101_006における親和性成熟変異G55Rの試験
【0152】
ネコクローン101は、イヌクローンSC-42_101_006(SC-42_101のVHドメイン;SC-42_006のVLドメイン)と顕著なCDR類似性を有する。親和性成熟したネコクローンAHF17602は、G55Rの変異により潜在的なNG脱アミド部位を除去しており、この潜在的な脱アミド部位はイヌクローンにも存在する。クローンSC-42_101_006をR55に変異させ、親及びR55バリアントの両方をCHO細胞で一時的に発現させ、プロテインAによって精製した。可変ドメイン配列を図1及び図2に示す。Biacore T200装置を備えたSPRを使用して、NGFに対する親和性を評価した。Protein A Series Sチップを使用して抗体を捕捉した。次いで、PBSP+ランニングバッファー(Cytiva)を流速30μL/分で使用して、NGF結合を50nMから開始する複数の濃度で評価した。結合時間の長さは120秒であり、解離時間は600秒で実行した。チップ表面を10mMグリシンで再生させた。Biacore T200 Evaluationソフトウェアを使用して、参照を差し引いたセンサーグラムを1:1結合モデルにフィッティングした。データを以下の表17に示す。
【表17】
【0153】
本発明を、以下の番号付きの段落によってさらに説明する:
【0154】
1. イヌNGFに特異的に結合する単離されたタンパク質であって、
(a)アミノ酸配列X12345678(配列番号146)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)であって、式中、X1が、A、G、またはNを含み、X2が、LまたはMを含み、X3が、A、D、E、またはSを含み、X4が、F、I、L、M、またはVを含み、X5が、NまたはTを含み、X6が、E、S、またはTを含み、X7が、G、H、N、S、またはQを含み、X8が、AまたはSを含む、前記VH-CDR1、
(b)アミノ酸配列X12SNGGT(配列番号147)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)であって、式中、X1が、IまたはLを含み、X2が、WまたはYを含む、前記VH-CDR2、
(c)アミノ酸配列AX2IX45YX789YLX1213YX151617(配列番号148)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)であって、式中、X2が、D、E、K、N、Q、S、またはTを含み、X4が、WまたはYを含み、X5が、F、H、W、またはYを含み、X7が、DまたはEを含み、X8が、AまたはSを含み、X9が、DまたはYを含み、X12が、HまたはYを含み、X13が、FまたはWを含み、X15が、F、I、L、W、またはYを含み、X16が、DまたはQを含み、X17が、F、I、L、M、W、またはYを含む、前記VH-CDR3、
(d)アミノ酸配列X12IX456(配列番号149)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)であって、式中、X1が、D、E、またはKを含み、X2が、A、G、またはNを含み、X4が、G、N、Q、またはSを含み、X5が、NまたはSを含み、X6が、A、G、N、S、またはTを含む、前記VL-CDR1、
(e)アミノ酸配列AX23(配列番号150)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)であって、式中、X2が、A、S、またはTを含み、X3が、A、D、E、N、Q、S、またはTを含む、前記VL-CDR2、及び
(f)アミノ酸配列QX2GX456PX8T(配列番号151)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)であって、式中、X2が、HまたはQを含み、X4が、F、H、W、またはYを含み、X5が、KまたはQを含み、X6が、FまたはWを含み、X8が、LまたはMを含む、前記VL-CDR3
を含む抗原結合部分を含む、前記単離されたタンパク質。
【0155】
2.
(a)アミノ酸配列X1234TX67S(配列番号152)を含む重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)であって、式中、X1が、AまたはGを含み、X2が、LまたはMを含み、X3が、EまたはSを含み、X4が、FまたはLを含み、X6が、SまたはTを含み、X7が、H、N、またはSを含む、前記VH-CDR1、
(b)アミノ酸配列IWSNGGT(配列番号153)を含む重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)、
(c)アミノ酸配列AX2IYYYX7ADYLHX13YX15DX17(配列番号154)を含む重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)であって、式中、X2が、N、Q、またはSを含み、X7が、DまたはEを含み、X13が、FまたはWを含み、X15が、F、I、L、W、またはYを含み、X17が、F、I、L、またはMを含む、前記VH-CDR3、
(d)アミノ酸配列X1GIX4NX6(配列番号155)を含む軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)であって、式中、X1が、DまたはEを含み、X4が、QまたはSを含み、X6が、G、N、S、またはTを含む、前記VL-CDR1、
(e)アミノ酸配列ATX3(配列番号156)を含む軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)であって、式中、X3が、D、E、N、Q、またはSを含む、前記VL-CDR2、及び
(f)アミノ酸配列QQGX456PLT(配列番号157)を含む軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)であって、式中、X4が、F、H、またはYを含み、X5が、KまたはQを含み、X6が、FまたはWを含む、前記VL-CDR3
を含む抗原結合部分を含む、段落1に記載のタンパク質。
【0156】
3.配列番号137と比較してVH-CDR当たり2つ以下の変化を含み、配列番号138と比較してVL-CDR当たり2つ以下の変化を含む、段落1または2に記載のタンパク質。
【0157】
4.配列番号137と比較してVH-CDR当たり1つ以下の変化を含み、配列番号138と比較してVL-CDR当たり1つ以下の変化を含む、段落1または2に記載のタンパク質。
【0158】
5.配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、または配列番号141に対して、少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である重鎖フレームワーク(FR1H+FR2H+FR3H+FR4H)を含む、段落1~4のいずれか1項に記載のタンパク質。
【0159】
6.配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142に対して、少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%同一である軽鎖フレームワーク(FR1L+FR2L+FR3L+FR4L)を含む、段落1~5のいずれか1項に記載のタンパク質。
【0160】
7.配列番号13、配列番号31、配列番号55、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号103、配列番号109、配列番号113、配列番号121、配列番号133、配列番号137、または配列番号141を含むVHドメインを含む、段落1~6のいずれか1項に記載のタンパク質。
【0161】
8.配列番号14、配列番号32、配列番号56、配列番号62、配列番号70、配列番号78、配列番号104、配列番号110、配列番号114、配列番号122、配列番号134、配列番号138、または配列番号142を含むVLドメインを含む、段落1~7のいずれか1項に記載のタンパク質。
【0162】
9.段落1~8のいずれか1項に記載の抗NGF抗体または抗体断片をコードする単離された核酸配列。
【0163】
10.段落9に記載の核酸を含むベクター。
【0164】
11.段落9または10のいずれか1項に記載の核酸を含む、組換え細胞。
【0165】
12.段落1のいずれか1項に記載のタンパク質、治療有効量の段落1~8のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質、または段落9もしくは10に記載の核酸を発現する細胞。
【0166】
13.前記抗NGFタンパク質の産生をもたらす条件下で段落11に記載の宿主細胞を培養することを含む、段落1~8のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質の産生方法。
【0167】
14.治療有効量の段落1~8のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質を含む、医薬組成物。
【0168】
15.対象における疼痛の治療方法であって、治療有効量の段落1~8のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質を前記対象に投与することを含む、前記治療方法。
【0169】
16.前記疼痛が、炎症性疼痛、術後切開疼痛、がん性疼痛、原発性または転移性骨がん性疼痛、骨折痛、骨粗鬆症性骨折痛、火傷に起因する疼痛、外傷由来の疼痛、筋骨格痛、リウマチ性疼痛、または骨粗鬆症の痛みを含む、段落15に記載の方法。
【0170】
17.前記対象が、イヌを含む、段落16に記載の方法。
【0171】
18.前記対象が、ネコを含む、段落16に記載の方法。
【0172】
19.前記対象が、ヒトを含む、段落16に記載の方法。
【0173】
20.試料中のNGFの検出方法であって、段落1~8のいずれか1項に記載の抗NGFタンパク質の存在下でNGFを含む試料をインキュベートし、前記試料中のNGFに結合した前記抗NGFタンパク質を検出することを含む、前記検出方法。
【0174】
本発明の好ましい実施形態について詳細に説明してきたが、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、その多くの明らかな変形形態が可能であるため、上記の段落によって定義される本発明は、上記の説明に記載された特定の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。
図1A-1】
図1A-2】
図1A-3】
図1B-1】
図1B-2】
図1B-3】
図2A-1】
図2A-2】
図2A-3】
図2B-1】
図2B-2】
図2B-3】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図10-5】
図10-6】
図10-7】
図10-8】
図10-9】
図10-10】
図10-11】
図10-12】
図10-13】
図10-14】
図10-15】
図10-16】
図10-17】
図10-18】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A-1】
図17A-2】
図17B-1】
図17B-2】
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図18G
図18H
【配列表】
2024543139000001.xml
【国際調査報告】