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特表2024-543145カルボン酸官能性ポリオルガノシロキサン系チキソトロピー剤を含有する伝導性シリコーン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】カルボン酸官能性ポリオルガノシロキサン系チキソトロピー剤を含有する伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20241112BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241112BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20241112BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241112BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08L83/06
C08L83/05
C08K3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531203
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022046837
(87)【国際公開番号】W WO2023101767
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/285,363
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャンジー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、カイル
(72)【発明者】
【氏名】ベセラ、アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】スーツマン、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チー-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ダン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP043
4J002CP052
4J002CP054
4J002CP141
4J002DA119
4J002DE107
4J002DE146
4J002EX038
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD143
4J002FD159
(57)【要約】
組成物は、マトリックス材料中に分散した充填剤粒子を含有し、マトリックス材料は、(a)0.01~1.50重量パーセントの第1のポリオルガノシロキサンであって、1分子あたり平均2個以上のカルボン酸基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンである、第1のポリオルガノシロキサンと、(b)5~30重量パーセントの、カルボン酸基を含まない第2のポリオルガノシロキサンであって、摂氏25度及び101メガパスカルの圧力で液体である、第2のポリオルガノシロキサンと、を含有し、前記充填剤粒子は、組成物体積基準で15体積パーセント以上78体積パーセント未満の範囲内の濃度で存在し、重量パーセント値は、前記組成物の重量に対するものであり、前記組成物は、脂肪族ジオール及びシリコーンポリエーテルのうちの少なくとも一方を含まない、組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材料中に分散された充填剤粒子を含む組成物であって、前記マトリックス材料が、
(a) 0.01~1.50重量パーセントの第1のポリオルガノシロキサンであり、1分子あたり平均2個以上のカルボン酸基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンである、第1のポリオルガノシロキサンと、
(b) 5~30重量パーセントの、カルボン酸基を含まない第2のポリオルガノシロキサンであり、摂氏25度及び101メガパスカルの圧力で液体である、第2のポリオルガノシロキサンと、を含み、
前記充填剤粒子は、組成物体積基準で15体積パーセント以上78体積パーセント未満の範囲内の濃度で存在し、重量パーセント値は、前記組成物の重量に対するものであり、前記組成物は、脂肪族ジオール及びシリコーンポリエーテルのうちの少なくとも一方を含まない、組成物。
【請求項2】
前記第1のポリオルガノシロキサンが、平均化学構造(I):
HOOC-R’-RSiO-[RSiO]-SiR-R’-COOH (I)
を有し、式中、R’は、各出現において独立して、1~12個の炭素原子を有する二価炭化水素の群から選択され、Rは、各出現において独立して、1~8個の炭素原子を有するヒドロカルビルの群から選択され、下付き文字nは、5~150の範囲内の値である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各R’が-[CH-であり、各Rがメチルであり、下付き文字nが8~130の範囲内の値である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のポリオルガノシロキサンが、平均化学構造(II):
R”SiO-[RSiO]-OR” (II)
を有し、式中、各R”及びRが、各出現時において独立して、1~8個の炭素原子を有するヒドロカルビルの群から選択され、下付き文字mが、40~800の範囲内の値である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリックス材料が、2個以上のシリルヒドリド基を含む第3のポリシロキサンを更に含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記充填剤粒子が、組成物体積基準で40~74体積パーセントの範囲内の濃度の熱伝導性充填剤粒子を含み、
i. 前記熱伝導性充填剤が組成物体積基準で40~70体積パーセントの範囲内の濃度で存在する場合、前記第1のポリオルガノシロキサンは、組成物の重量に対して0.01重量パーセント以上1.5重量パーセント未満の範囲内の濃度で存在し、かつ
ii. 前記熱伝導性充填剤が組成物体積基準で70体積パーセントを超え、同時に74体積パーセントの濃度で存在する場合、前記第1のポリオルガノシロキサンは、組成物の重量に対して0.01重量パーセント~0.5重量パーセントの範囲内の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
トリアルコキシ官能性シリコーン及びシランから選択される充填剤処理剤を更に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記充填剤粒子が、組成物体積基準で5~55体積パーセントの範囲内の濃度で存在する導電性充填剤粒子を含み、前記第1のポリオルガノシロキサンが、組成物の重量に対して0.1~1.5重量パーセントの範囲内の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2のポリオルガノシロキサンが、1分子あたり少なくとも2個のビニル基を含み、前記組成物が、水素化シリル官能性ポリジメチルシロキサン架橋剤及び白金系ヒドロシリル化触媒を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、脂肪族ジオール、シリコーンポリエーテル、及びSi-OH末端ポリシロキサンのうちのいずれか一つを含まないか、又は2つ以上の任意の組み合わせを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸官能性シロキサン系チキソトロピー剤を含有する伝導性シリコーン組成物に関する。
【0002】
序論
充填剤入りシリコーン組成物は、ポリシロキサン成分を含むマトリックス材料中に分散された充填剤を含む。充填剤入りシリコーン組成物は、熱伝導性材料及び導電性材料などの伝導性シリコーン組成物を含む多くの用途で使用される。伝導性シリコーン組成物中の充填剤は、組成物の伝導特性を高めるのに役立つ。熱伝導性シリコーン組成物は、典型的には、熱伝導性充填剤を含有し、導電性シリコーン組成物は、典型的には、導電性充填剤を含有する。充填剤は、多くの場合、15体積パーセント(体積%)以上の濃度で存在し、充填剤入りシリコーン組成物体積基準で、最大80体積%、更にはそれ以上の濃度で存在することができる。導電性充填剤の量を増加させると、シリコーン組成物の導電特性を増加させることができるが、それはまた、典型的には、充填剤入りシリコーン組成物の粘度も増加させ、これは、シリコーン組成物を基材に適用することを困難にする(低い加工性)場合がある。その結果、シリコーン組成物の伝導特性を最大にすることと、シリコーン組成物の加工性を維持することとの間には緊張があった。
【0003】
高剪断下で低い粘度を有することによって高い加工性を有することが望ましいが、それが配置される形状及び位置(すなわち、物理的安定性)を維持するために、低剪断下又は無剪断下で高い粘度を有することが望ましいことも多い。剪断減粘組成物は、低剪断下又は無剪断下で比較的高い粘度を有して組成物安定性をもたらす一方で、剪断下で比較的低い粘度を示して塗布中の流動を可能にする。結果として、剪断減粘組成物は、押出などの比較的高剪断方法によって容易に適用することができ、更に、一旦適用されると物理的安定性を維持することができる。充填剤入りシリコーン組成物に剪断減粘特性を導入する方式が存在する。しかしながら、その課題は、組成物の押出が可能になるように剪断下で十分に低い粘度をなお達成しながら、充填剤入りシリコーン組成物において剪断減粘挙動を誘導する方法を特定することである。剪断減粘特性を増加させる多くの方法は、しばしば剪断下において押出/流動の減少をもたらす。剪断減粘挙動は、しばしば、組成物の「チキソトロピー指数」によって特徴付けられ、これは、低剪断条件における粘度を、高剪断条件における粘度で割った比である。チキソトロピー指数を増加させることは、組成物の剪断減粘特性を増加させることに対応する。
【0004】
チキソトロピー指数は、低剪断粘度を増加させること、高剪断粘度を減少させること、又はこれらの組み合わせによって増加させることができる。しかしながら、減少する高剪断粘度に対して低剪断粘度を優先的に増加させることが望ましい場合がある。低剪断粘度を増加させると、適用後又は保管時の物理的安定性及び組成安定性(組成物からの充填剤の沈降)が向上する。これらの特徴が最も重要である場合、例えば、組成物が滴り落ちたり又は垂れたりしてはならない垂直用途においては、低剪断粘度を可能な限り増加させることが望ましい。高剪断粘度を上下に変化させることは、組成物の堆積又は押出の方法に望ましくない影響を与える可能性があるので、高剪断粘度の変化は最小限に抑えることが望ましい場合がある。
【0005】
本発明の目的は、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を増加させるために、充填剤入りシリコーン組成物の低剪断粘度をその高剪断粘度に対して優先的に増加させる充填剤入りシリコーン組成物のための添加剤を特定することである。より具体的には、本発明の目的は、充填剤入りシリコーン組成物体積基準で、15~80体積%の充填剤を含む充填剤入りシリコーン組成物用添加剤であって、組成物のチキソトロピー指数を増加させながら、組成物の最小粘度に対して最大粘度を優先的に増加させ、かつ、本明細書で後述するように0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅範囲にわたってひずみ掃引法で測定されるとき、200パスカル秒(Pas)以下、好ましくは100Pas以下の最小粘度を達成する添加剤を特定することである。添加剤が同時に、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を、好ましくは50%以上、好ましくは75%以上、最も好ましくは100%以上増加させることができる場合が、更により望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、組成物のチキソトロピー指数を増加させるために、シリコーン組成物の低剪断粘度を、その高剪断粘度に対して優先的に増加させる充填剤入りシリコーン組成物のための添加剤を特定するという課題に対する解決策を提供する。本発明の添加剤は、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を増加させる充填剤を15~80体積%含む充填剤入りシリコーン組成物用チキソトロピー剤として働き、充填剤入りシリコーン組成物の最小粘度に対して最大粘度を優先的に増加させ、かつ本明細書で後述するように、0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅範囲にわたってひずみ掃引法で測定したときに、200パスカル秒(Pas)以下、更には100Pas以下の最小粘度を達成する。添加剤は、同時に、充填剤入りシリコーン組成物のチキソトロピー指数を50%以上さえも、好ましくは75%以上、最も好ましくは100%以上増加させることができる。
【0007】
本発明は、1分子当たり平均2個以上のカルボン酸基を有するカルボン酸官能性直鎖状ポリオルガノシロキサンが、充填剤入りシリコーン組成物中でチキソトロピー剤として作用して、上記目的を達成することができることを発見した結果である。
【0008】
第1の態様において、本発明は、マトリックス材料中に分散した充填剤粒子を含む組成物であり、マトリックス材料は、(a)0.01~1.50重量パーセントの第1のポリオルガノシロキサンであって、1分子あたり平均2個以上のカルボン酸基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンである、第1のポリオルガノシロキサンと、(b)5~30重量パーセントの、カルボン酸基を含まない第2のポリオルガノシロキサンであって、摂氏25度及び101メガパスカルの圧力で液体である、第2のポリオルガノシロキサンと、を含み;充填剤粒子は、組成物体積基準で15体積パーセント以上78体積パーセント未満の範囲内の濃度で存在し、重量パーセント値は、組成物の重量に対するものであり、組成物は、脂肪族ジオール及びシリコーンポリエーテルのうちの少なくとも一方を含まない、
【0009】
本発明の組成物は、例えば、熱伝導性ポリシロキサン組成物及び/又は導電性ポリシロキサン組成物などの充填剤入り導電性ポリシロキサン組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
試験方法は、日付が試験方法の番号とともに示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含有する。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTM国際方法を指し、ENは、European Normを指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0011】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0012】
「複数の」は、2つ以上を意味する。「及び/又は」は、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0013】
「ヒドロカルビル」は、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価の基を指し、アルキル基及びアリール基を含む。
【0014】
「アルキル」は、アルカンから水素原子を除去することによって得ることができる炭化水素ラジカルを指す。アルキルは、直鎖状又は分岐状であり得る。
【0015】
「アリール」は、芳香族炭化水素から水素原子を除去することによって得ることができるラジカルを指す。
【0016】
組成物の「最大粘度」、「最小粘度」、及び「チキソトロピー指数」は、以下の振動剪断ひずみ振幅掃引(「ひずみ掃引」)法に従って測定される。直径25ミリメートル(mm)の円形平行鋸歯状プレート(例えば、TA Instruments(New Castle,DE,USA)から、部品番号401978.901)を準備する。試料組成物を一方のプレートに配置し、プレートが互いに平行になり、プレート間のギャップ間隔が1.0mmになり、試料組成物が両方のプレートと熱接触し、プレート間のギャップ間隔が満たされるまで、もう一方のプレートを試料組成物に押し付ける。ARES-G2ひずみ制御されたレオメータ(TA Instruments(New Castle,DE,USA))を使用して、摂氏23度(℃)で、1秒当たり10ラジアンの角周波数を使用して、1桁当たり20個のサンプリング点で0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅の対数掃引を行う。パーセント振動ひずみ振幅の関数として、パスカル秒(Pas)の複素粘度を記録する。「最大粘度」は、0.1マイクロニュートンメートルの振動トルク振幅(又は同等に、0.0326パスカルの振動応力振幅閾値を超える)を超えて記録された最高複素粘度である。「最小粘度」は、同じ閾値を超えて記録された最低複素粘度である。
【0017】
「チキソトロピー指数」は、最大粘度対最小粘度の比である。本発明の組成物は、5以上、更には10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、更には150以上、200以上、250以上、更には300以上のチキソトロピー指数を達成すると同時に、100Pas以下、更には75Pas以下、50Pas以下、25Pas以下、更には10Pas以下の最小粘度を達成することができる。
【0018】
29Si、13C、及びH核磁気共鳴スペクトル法を使用して、ポリシロキサン中の組成物及びシロキサン単位の平均数を測定する(例えば、The Analytical Chemistry of Silicones,Smith,A.Lee,ed.,John Wiley & Sons:New York,1991,p.347ffを参照されたい)。
【0019】
本発明の組成物は、マトリックス材料中に分散(分布)された充填剤粒子を含む。マトリックス材料は、第1のポリオルガノシロキサン及び第2のポリオルガノシロキサンを含む。
【0020】
第1のポリオルガノシロキサンは、1分子当たり平均2個以上のカルボン酸基を含む。最も広い対象範囲では、第1のポリオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、環状、又は「ダンベル」構造として知られている直鎖状と環状の組み合わせを含む、任意の構造又は形状であり得る。ダンベル構造は、以下の化学構造を有することができる。
【0021】
【化1】

式中、Rは、各出現において独立して、1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビル及びカルボン酸官能化ヒドロカルビルの群から選択され;R及びRは、各出現において独立して、1~8個の炭素原子を有するヒドロカルビルから選択され;Rは、各出現において独立して、酸素及び1~12個の炭素原子を有する二価炭化水素から選択され;下付き文字mは、各出現において独立して、2~4の範囲内の値であり、下付き文字nは、各出現において独立して、5~150の範囲内の値であり;ただし、1分子当たり少なくともカルボン酸基が存在することを条件とする。
【0022】
望ましくは、第1のポリオルガノシロキサンは、直鎖状ポリオルガノシロキサンである。カルボン酸基は、末端若しくはペンダント(ペンダントは、鎖の末端以外のポリマー鎖に沿って位置することを意味する)又は末端とペンダントとの組み合わせであり得る。直鎖状ポリオルガノシロキサンは、R”SiO1/2(「M」)及びR”SiO2/2(「D」)シロキサン単位から選択されるシロキサン単位を主に含み、これらのみからなることができ、式中、R”は、ケイ素原子に結合した一価の有機基又は置換有機基であり、各シロキサン単位のO1/2及びO2/2は、別のシロキサン単位の別のケイ素原子と共有される酸素原子を指す。直鎖状ポリオルガノシロキサンは、2個以下、好ましくは1個以下のR”SiO3/2(「T」)及びSiO4/2(「Q」)シロキサン単位を含有することができる。望ましくは、第1のポリオルガノシロキサンは、末端カルボン酸基(複数可)として直鎖状ポリオルガノシロキサンの各末端に1つ以上又は複数のカルボン酸基を有する。
【0023】
第1のポリオルガノシロキサンは、化学構造(I):
HOOC-R’-RSiO-[RSiO]-SiR-R’-COOH (I)を有し得る。
式中、
R’は、各出現において独立して、1個以上の炭素原子を有する二価炭化水素の群から選択され、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、更には9個以上の炭素原子を有することができ、同時に、典型的には12個以下の炭素原子を有し、10個以下、9個以下、8個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を有することができる。例えば、R’は、1回又はすべての出現において-[CH-であり得る。
【0024】
Rは、各出現において独立して、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、更には7個以上の炭素原子を有するヒドロカルビルの群から選択され、かつ同時に、典型的には、8個以下の炭素原子を有し、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を有することができる。例えば、Rは、メチル基及びフェニル基から選択することができる。
【0025】
下付き文字nは、第1のポリオルガノシロキサン中の[RSiO]基の平均数であり、5以上の値を有し、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、更には100以上の値を有することができ、同時に、典型的には、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、更には100以下の値を有する。
【0026】
組成物中の第1のポリオルガノシロキサンの濃度は、組成物の重量に対して、望ましくは0.01重量パーセント(重量%)以上であり、0.02重量%以上、0.04重量%以上、0.06重量%以上、0.08重量%以上、0.10重量%以上、0.25重量%以上、0.50重量%以上、0.75重量%以上、1.00重量%以上、1.25重量%以上を含むことができ、同時に、典型的には1.50重量%以下であり、1.40重量%以下、1.30重量%以下、1.20重量%以下、1.10重量%以下、1.00重量%以下、0.8重量%以下、0.60重量%以下、0.40重量%以下、0.20重量%以下、0.10重量%以下、更には0.08重量%以下であり得る。
【0027】
マトリックス材料は、カルボン酸基を含まない第2のポリオルガノシロキサンを更に含む。第2のポリオルガノシロキサンは、摂氏25度(°C)及び1010メガパスカル(MPa)の圧力で液体である。「液体」は、材料がその容器の形状に一致することを意味する。
【0028】
第2のポリオルガノシロキサンは、直鎖状ポリオルガノシロキサンであり得る。例えば、第2のポリオルガノシロキサンは、平均化学構造(II):
R”SiO-[RSiO]-OR” (II)を有することができる。
式中、
R”及びRは、各出現時において独立して、好ましくは1個以上及び同時に8個以下、6個以下、4個以下、更には3個以下又は2個以下の炭素原子を有するヒドロカルビル基から選択される。R”はアルキル基であり得、一方Rはビニル基などのアルケニル基であり得る。例えば、各Rはビニル基であり得、各R”はメチル基又はフェニル基から選択され得る。
【0029】
下付き文字「m」は、1分子あたりのRSiO単位の平均数であり、概ね40以上の値であり、50以上、60以上、更には70以上、80以上、100以上、125以上、150以上、175以上、更には200以上であり得、同時に、典型的には800以下であり、600以下、400以下、200以下、150以下、100以下、80以下、60以下、更には50以下又は45以下であり得る。
【0030】
第2のポリオルガノシロキサンは、組成物重量に対して、典型的には5重量%以上、好ましくは6重量%以上の濃度で存在し、組成物重量に対して、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、14重量%以上、16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、24重量%以上、26重量%以上、更には28重量%以上であり得、同時に、典型的には30重量%以下であり、29重量%以下、27重量%以下、25重量%以下、23重量%以下、21重量%以下、19重量%以下、17重量%以下、15重量%以下、13重量%以下、9重量%以下、更には7重量%以下であり得る。
【0031】
マトリックス材料は、第1及び第2のポリオルガノシロキサンとは異なる第3のポリオルガノシロキサンを含むことができる。第3のポリオルガノシロキサンは、2個以上のシリルヒドリド基を含むことができる。例えば、マトリックス材料は、第1のポリオルガノシロキサンと、ビニル官能基を有する第2のポリオルガノシロキサン(例えば、各Rがビニルである化学構造(II))と、複数のシリルヒドリド(silyl hydride、SiH)基を有する第3のポリオルガノシロキサンと、を含む、ヒドロシリル化硬化性組成物であることができる。
【0032】
組成物は、マトリックス材料中に分散された充填剤粒子を更に含む。充填剤粒子は、組成物体積基準で、15体積パーセント(体積%)以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上、40体積%以上、45体積%以上、50体積%以上、55体積%以上、60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上、更には75体積%以上の濃度で存在し、同時に概ね78体積%以下、又は75体積%以下、74体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、55体積%以下、50体積%以下、45体積%以下、40体積%以下、35体積%、更には30体積%以下の濃度で存在する。
【0033】
充填剤粒子は、熱伝導性充填剤、導電性充填剤、非導電性充填剤、又はこれらのタイプの充填剤の任意の組み合わせであり得る。望ましくは、充填剤粒子は、熱伝導性充填剤及び導電性充填剤から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の任意の組み合わせである。
【0034】
熱伝導性充填剤としては、金属粒子、例えば、アルミニウム、銀、及び銅の粒子;アルミニウム、銀、及び銅などの金属で被覆された任意の種類の粒子を含む金属被覆粒子;無機粒子、例えば、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及びアルミニウム三水和物;並びに、炭素質材料、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び炭素繊維が挙げられる。
【0035】
導電性充填剤としては、金属粒子、例えば、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、及びそれらの合金の粒子;銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、及びそれらの合金などの金属で被覆された任意の種類の粒子;並びに、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びグラフェンが挙げられる。
【0036】
充填剤粒子は、典型的には、0.05マイクロメートル(μm)以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上の平均粒径を有し、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、更には100μm以上であり得、同時に、典型的には、250μm以下、200μm以下、150以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5.0μm以下、更には3.0μm以下、1.0μm以下の平均粒径を有する。Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザ回折粒径分析器を使用して、ポリオルガノシロキサンの粒径分布の体積加重中央値(Dv50)として平均粒径を測定する。
【0037】
最も広い対象範囲では、充填剤粒子は、以下の形状:球形、多面体、小板、棒状、又は不規則な形状(例えば、「粉砕された」)のうちのいずれか1つ又は2つ以上の任意の組み合わせを含む任意の形状であり得る。
【0038】
組成物は、異なるタイプ及び/又はサイズの充填剤粒子の組み合わせを含むことができ、典型的には含む。例えば、組成物は、組成及び/又は形状及び/又はサイズが異なる2つ以上、更には3つ以上の異なる充填剤粒子の集合体を含むことができる。
【0039】
本発明の組成物は、マトリックス材料の一部として充填剤処理剤を更に含むことができ、又は含まないことができる。充填剤処理剤は、典型的には、充填剤凝集及び充填剤-充填剤相互作用を低減することによって、マトリックス材料中への充填剤の分散を改善するために望ましい。充填剤処理剤はまた、マトリックス材料による充填剤表面のウェットアウトを改善し、組成物の粘度を低下させ、充填剤表面上の反応性基をキャップして、組成物の保管寿命を低下させ得る、充填剤との反応を防止することもできる。望ましくは、処理剤は、トリアルコキシ官能性シリコーン及び/又はシランである。処理剤は、アルキルトリアルコキシシラン及びモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの一方又は両方を含むことができ、又はそれらからなることができる。
【0040】
適切なアルキルトリアルコキシシランの例は、一般式:(R)(RO)Siを有する。式中、Rは、望ましくは1個以上の炭素原子を有するアルキルであり、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、更には16個以上の炭素原子を有することができ、同時に、典型的には1分子あたり平均で18個以下の炭素原子を有し、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、更には10個以下の炭素原子を有することができ、Rは、望ましくは、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、更には6個以上の炭素原子を有するアルキルであり、同時に、典型的には、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を含む。望ましくは、アルキルトリアルコキシシランは、上記のアルキル基を有するアルキルトリメトキシシランである。適切なアルキルトリアルコキシシランの例は、n-デシルトリメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランである。組成物中のアルキルトリアルコキシシランの濃度は、組成物の重量に基づいて、概ね0重量%以上、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.22重量%以上、0.24重量%以上であり、同時に、概ね0.75重量%以下、0.50重量%以下、0.40重量%以下、0.30重量%以下、好ましくは0.28重量%以下、0.26重量%以下、又は0.24重量%以下であり、0.22重量%以下であることができる。
【0041】
好適なモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの例は、一般的に、以下の化学構造(III):
SiO-(RSiO)-[(CH((CHSiO)-(CH-Si(OR (III)を有し、
式中、R及びRは各々、各出現において独立して、上記で定義されたとおりであり、下付き文字hは、1分子当たりの(RSiO)単位の平均数であり、典型的には10以上、15以上、20以上、25以上、更には30以上の値を有し、かつ同時に、概ね150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は更には30以下であり、下付き文字eは、各連結におけるCH単位の平均数であり、各出現において独立して0以上、1以上、更には2以上の値を有し、同時に、通常は4以下、3以下又は更には2以下であり;下付き文字fは、典型的には、0以上、1以上、2以上、3以上の値を有し、かつ同時に、概ね6以下、5以下、4以下、3以下、又は更には2以下であり、下付き文字gは、典型的には、0以上、1以上、2以上、3以上、更には4以上の値を有し、同時に、概ね、6以下、更には5以下、4以下、又は3以下の値を有する。
【0042】
望ましくは、モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、一般分子構造(IV):
(CHSiO-((CHSiO)-Si(OR(IV)を有する。
1つの特に望ましいトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、Rがメチルに等しく、下付き文字tが、130以下、好ましくは120以下、好ましくは110以下、より好ましくは110以下又は100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、又は30以下、かつ同時に20超、好ましくは30以上の値に等しい、式(IV)の組成を有することで末端トリメトキシ官能化ケイ素原子を形成する。
【0043】
モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノシロキサンの濃度は、組成物の重量に基づいて典型的には0重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.30重量%以上、0.40重量%以上、0.50重量%以上、0.75重量%以上、更には1.0重量%以上又は2.0重量%以上であり、同時に、概ね3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.20重量%以下、1.15重量%以下、又は更には1.10重量%以下である。
【0044】
組成物は、複数の追加成分のうちのいずれか1つ若しくは任意の組み合わせを更に含んでもよい(又は含まなくてもよい)。そのような追加成分の例としては、硬化抑制剤、硬化触媒、架橋剤、酸化防止剤安定剤、顔料、粘度調整剤、シリカ充填剤、及びスペーサ添加剤が挙げられる。誤解を避けるため、組成物は、このような追加成分のいずれか1つ又は任意の組み合わせ又は複数のものを含まなくてもよい。例えば、組成物は、シリカ充填剤を含まなくてもよい。「シリカ充填剤」とは、天然シリカ(結晶石英、粉砕石英、及び珪藻土シリカなど)、並びに合成シリカ(ヒュームドシリカ、溶融シリカ、シリカゲル、及び沈降シリカ)を含む、シリカを含む固体微粒子を指す。追加的、又は代替的に、本発明の組成物は、ポリエーテル及び/又はシラノール官能性ポリジメチルシロキサンを含まなくてもよい。
【0045】
硬化抑制剤の例としては、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2フェニル-3-ブチン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、フマレート、マレエート、及びメチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランが挙げられる。存在する場合、抑制剤は、典型的には組成物の重量に基づいて0.0001重量%以上、0.001重量%以上の濃度で存在し、かつ同時に、概ね5重量%以下、又は更には1重量%以下、更には0.5重量%以下の濃度で存在する。
【0046】
硬化触媒は、例えば、Karstedt触媒及び/又はSpeier触媒(HPtCl)などの白金系触媒などのヒドロシリル化硬化触媒を含むことができる。
【0047】
架橋剤は、1分子当たり平均2個以上のシリルヒドリド(SiH)官能基を有するシロキサンを含み、本明細書で上述した第3のポリオルガノシロキサンを含む。
【0048】
酸化防止剤は、存在する場合、典型的には組成物の重量の0.001~1重量%の濃度で含まれてもよい。酸化防止剤は、単独で、又は安定剤と組み合わせて存在してもよい。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤が挙げられ、安定剤としては有機リン誘導体が挙げられる。
【0049】
顔料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、及び銅フタロシアニンが挙げられる。存在する場合、顔料は、組成物の重量に基づいて0.0001~1重量%の濃度で存在する傾向がある。
【0050】
スペーサ添加剤は非熱伝導性充填剤であり、50~250マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。スペーサの例としては、ガラス及びポリマービーズが挙げられる。
【0051】
組成物は、ヒドロキシル官能性ポリシロキサン、特に末端シラノール(Si-OH)官能性ポリシロキサン;脂肪族ジオールなどのヒドロキシル官能性炭化水素;及びシリコーンポリエーテルのいずれか1つを含まなくてもよく、又は2つ以上の任意の組み合わせを含まなくてもよい。
【0052】
熱伝導性組成物
本発明の組成物は、熱伝導性組成物を含むことができる。熱伝導性組成物として、充填剤粒子は、熱伝導性充填剤粒子を、組成物体積基準で、望ましくは40体積%以上の濃度で含み、50体積%以上、60体積%以上、更には70体積%以上であり得、同時に概ね、78体積%未満、好ましくは74体積%以下の濃度で存在し、70体積%以下、60体積%以下、更には50体積%以下であり得る。
【0053】
熱伝導性充填剤が、組成物体積基準で、40~70体積%の範囲内の濃度で存在する場合、第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは0.01重量%以上の濃度で存在し、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、0.40重量%以上、0.60重量%以上、0.80重量%以上、1.00重量%以上、1.2重量%以上、更には1.4重量%以上であり得、同時に、組成物重量基準で、典型的には、1.5重量%以下、1.3重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.8重量%以下、0.6重量%以下、0.4重量%以下、0.2重量%以下、更には0.1重量%以下である。
【0054】
熱伝導性充填剤が、組成物体積基準で、70体積%超78体積%未満の範囲内の濃度、典型的には70~74体積%の範囲内の濃度で存在する場合、第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは0.01重量%以上の濃度で存在し、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、0.25重量%以上、0.30重量%以上、更には0.40重量%以上であり得、同時に組成物重量基準で、典型的には0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、更には0.075重量%以下である。
【0055】
熱伝導性組成物は、望ましくは、前述のような充填剤処理剤を含む。
【0056】
本発明の熱伝導性組成物に使用するための望ましい第2のポリオルガノシロキサンの一つは、末端ビニル官能基及び40~800の範囲内の平均重合度(すなわち、各Rがメチルであり、各Rがビニルであり、mが40~800の範囲内にある化学構造(II))を有するポリジメチルシロキサンである。
【0057】
導電性組成物
本発明の組成物は、導電性組成物であることができる。導電性組成物として、充填剤粒子は、導電性充填剤粒子を、望ましくは5体積%以上の濃度で含み、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、更には25体積%以上であり得、同時に、典型的には組成物体積基準で55体積%以下、更には50体積%以下、45体積%以下、40体積%以下、35体積%以下、30体積%以下、25体積%以下、20体積%以下、15体積%以下、10体積%以下、更には8体積%以下の濃度で存在する。
【0058】
組成物が導電性組成物である場合、第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、組成物重量基準で、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、更には1.4重量%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、更には0.5重量%以下の濃度で存在する。第2のポリオルガノシロキサンが、末端ビニル官能基及び140~800の範囲内の平均重合度(すなわち、各Rがメチルであり、各Rがビニルであり、mが140~800の範囲内にある化学構造(II))を有するポリジメチルシロキサンであることも望ましい。
【0059】
導電性組成物は、望ましくは、シリルヒドリド官能性ポリジメチルシロキサン架橋剤及び白金系ヒドロシリル化触媒を更に含む。適切な白金系ヒドロシリル化触媒の例としては、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(Karstedt触媒)、HPtCl、di-μ-カルボニルジ-π-シクロペンタジエニルジニッケル、白金-カルボニル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金アセチルアセトネート(acac)、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物等の白金化合物、塩化白金酸と1価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)、白金ジクロリド、及びこれらの白金化合物とオレフィン若しくは低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体又はマトリックス中若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金化合物からなる群から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。ヒドロシリル化触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含む、白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体を含む溶液の一部であり得る。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体であり得る。
【実施例
【0060】
表1に、本明細書に記載の試料を調製する際に使用するための材料を特定する。
【0061】
【表1-1】
【0062】
【表1-2】

DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。SYL-OFFはDow Corning Corporationの商標である。
【0063】
熱伝導性組成物の試料-パートI
ベース熱伝導性組成物
まず、ベース熱伝導性組成物(TC)を調製し、次いで、伝導性組成物を第1のポリオルガノシロキサン成分と混合することによって試料を調製する。表2の配合及び以下の手順に従って5種のベース熱伝導性組成物(TC-1~TC-5)を調製する:第2のポリオルガノシロキサン1、充填剤処理剤及び充填剤3を100ミリリットル(mL)のポリプロピレンカップに添加し、カップをFlacktek Speedmixerに入れ、2000回転/分(RPM)で20秒間混合する。次いで、充填剤2を添加し、再び2000RPMで30秒間混合し、続いて、充填剤1を添加し、2000RPMで30秒間混合する。得られた混合物をアルミニウムパンに移し、3.066メガパスカル(23トル)圧力の真空下で、1時間、摂氏150度(℃)まで加熱する。
【0064】
【表2】

重量%2は、組成物中のマトリックス材料の重量パーセントである。
【0065】
熱伝導性組成物
表3に指定される量の第1(1st)ポリオルガノシロキサンを添加することによって、表2のベース熱伝導性組成物を使用する熱伝導性組成物試料を調製する。
【0066】
0.1重量%、0.5重量%、及び1.5重量%の1stポリオルガノシロキサンを含有する試料の場合、20グラム(g)のベース熱伝導性組成物及び指定量の1stポリオルガノシロキサンを添加することによって、40ミリリットル(mL)のポリプロピレンカップ内で熱伝導性組成物試料を調製する。表2に明記されている0.1重量%ごとに0.02g(例えば、0.1重量%では0.02g、0.5重量%では0.10g、1.5重量%では0.30g)の1stポリオルガノシロキサンを使用する。
【0067】
0.01重量%及び0.05重量%の1stポリオルガノシロキサンを含有する試料の場合、100gのベース熱伝導性組成物及び0.01g(0.01重量%の場合)又は0.05g(0.05重量%の場合)の1stポリオルガノシロキサンを添加することによって、100mLのポリプロピレンカップ内に熱伝導性組成物試料を調製する。
【0068】
Flacktek Speedmixerを使用して試料を混合し、1500回転/分(RPM)で20秒間混合して、試料熱伝導性組成物を得る。
【0069】
熱伝導性組成物試料の配合は、熱伝導性組成物の特性と共に表3にある。表3は、組成物中の充填剤の体積%によって分類されている。本明細書で前述したように、ひずみ掃引法を使用して、最大粘度、最小粘度及びチキソトロピー指数を特性評価する。
【0070】
【表3】

最小粘度が200Pas未満であり、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が対応する参照組成物に対して最小粘度よりも大きく増加する場合、試料は合格である。
最小粘度が200Pasの最大量を超えるため、試料が不合格となった。
試料が非流動性混合物となり、粘度を測定できなかったため、試料が不合格となった。
【0071】
熱伝導性組成物の試料-パートII(高粘度/高重合度第2のポリオルガノシロキサン)
12.24gの第2のポリオルガノシロキサン2、1.9gの第2のポリオルガノシロキサン3、0.47gの充填剤処理剤1、62.88gの充填剤1及び22.51gの充填剤3を、Flacktek speedmixerにおいて2500RPMで20秒間、ポリプロピレンカップ内で一緒に混合することによって、ベース熱伝導性組成物TC-6(参照6)を調製する。3.066メガパスカル(23トル)の圧力の真空下、150℃で1時間、混合物を加熱して、参照6を得る。TC-6は71体積%の充填剤である。
【0072】
20gの参照6を0.02gの第1のポリオルガノシロキサン1と組み合わせることによって試料21を調製する。試料21は、0.1重量%の第1のポリオルガノシロキサン1を含有する。
【0073】
参照6及び試料21の最大粘度及び最小粘度並びにチキソトロピー指数を測定する。結果は表4にある。
【0074】
【表4】

最小粘度が200Pas未満であり、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が対応する参照組成物に対して最小粘度よりも大きく増加する場合、試料は合格である。
【0075】
熱伝導性組成物の試料-パートIII(アルミニウム三水和物を含まない試料)
1ガロンのBaker Perkinsシグマブレードミキサー中で参照7を調製する。827gの第2のポリオルガノシロキサン4、40gの充填剤処理剤1、40gの充填剤処理剤2、及び1229gの充填剤5を添加し、5分間混合する。スパチュラでチャンバ壁をこすり、5242gの充填剤4を添加し、5分間混合する。スパチュラでチャンバ壁をこすり、2621gの充填剤2を添加し、5分間混合する。チャンバ壁をこすり落とし、次いで更に5分間混合する。25トルまで真空にし、30分間混合する。135℃まで加熱し、60分間混合し、次いで、冷却して参照7を得る。充填剤の濃度は、組成物の70体積%である。
【0076】
Flacktek 100Maxポリプロピレンカップに100gの参照7を添加し、次いで0.05gの第1のポリオルガノシロキサン1を添加することによって試料22を調製する。Flacktek speedmixerで、2500RPMで20秒間、続いて、1000RPMで10秒間、混合する。
【0077】
Flacktek 100Maxポリプロピレンカップに100gの参照7を添加し、次いで0.10gの第1のポリオルガノシロキサン1を添加することによって試料23を調製する。Flacktek speedmixerで、2500RPMで20秒間、続いて、1000RPMで10秒間、混合する。
【0078】
参照7及び試料22及び23の最大粘度及び最小粘度及びチキソトロピー指数を決定する。結果は表5にある。
【0079】
【表5】

最小粘度が200Pas未満であり、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が対応する参照組成物に対して最小粘度よりも大きく増加する場合、試料は合格である。
【0080】
熱伝導性組成物の試料-パートIV(メチルトリメトキシシラン処理剤を含む試料)
0.88gの第2のポリオルガノシロキサン1及び0.84gの充填剤処理剤3を100mLのポリプロピレンカップに添加し、カップをFlacktek speedmixerに入れ、2000RPMで20秒間混合することによって参照8を調製する。41.64gの充填剤6を添加し、2000RPMで30秒間混合し、次いで、41.64gの充填剤7を添加し、2500RPMで20秒間混合する。手で混合し、次いで20秒間2500RPMで再び混合する。得られた混合物をアルミニウムパンに移し、3.066メガパスカル(23トル)の圧力における真空下で1時間10°Cに加熱して参照8を得る。
【0081】
30gの参照8を0.03gの第1のポリオルガノシロキサン1と1000RPMで20秒間混合し、続いて手で混合し、次いで1000RPMで20秒間混合し、再び手で混合することによって試料24を調製する。特性評価の前に25°Cで2日間放置する。
【0082】
第1のポリオルガノシロキサン1の代わりに第1のポリオルガノシロキサン2を使用する以外は、試料4と同様にして試料25を調製する。
【0083】
参照8及び試料24及び25の最大粘度及び最小粘度及びチキソトロピー指数を測定する。結果は表6にある。
【0084】
【表6】

最小粘度が200Pas未満であり、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が対応する参照組成物に対して最小粘度よりも大きく増加する場合、試料は合格である。
【0085】
硬化性導電性組成物の試料-パートI
表7は、パートI(参照9、10並びに試料26~33並びに試料C及びD)の硬化性導電性組成物試料の配合を提示する。以下のように試料を調製する。
【0086】
最初に、ポリプロピレンカップ中に7.89gの白金触媒1及び12.25gの第2のポリオルガノシロキサン2を添加し、FlackTeck speedmixerを使用して2000RPMで30秒間混合することによって触媒/抑制剤溶液を調製する。12.11gの抑制剤1を添加し、2000RPMで30秒間混合する。
【0087】
次いで、92.91gの第2のポリオルガノシロキサン3をポリプロピレンカップに添加し、次いで5.071gの触媒/抑制剤溶液を添加することによってマスターバッチを調製する。2000RPMで30秒間混合する。2.03gのSi-Hポリシロキサンを添加し、2000RPMで30秒間混合する。これが「マスターバッチ1」である。
【0088】
表7の指定量の充填剤8をポリプロピレンカップ(合計バッチサイズ20.00g)に量り取り、指定量のマスターバッチ1を添加し、2000RPMで30秒間混合する。指定量の第1のポリオルガノシロキサン1又は第1のポリオルガノシロキサン2を添加し、2000RPMで30秒間混合して最終的な硬化性導電性組成物試料を得る。
【0089】
【表7】
【0090】
硬化性導電性組成物の試料-パートII(硬化性組成物)
パートIIの硬化性導電性組成物試料(参照11及び12並びに試料34及び35)を以下の方法で調製する。
【0091】
最初に、ポリプロピレンカップ中に7.89gの白金触媒1及び12.25gの第2のポリオルガノシロキサン2を添加し、FlackTeck speedmixerを使用して2000RPMで30秒間混合することによって触媒/抑制剤溶液を調製する。12.11gの抑制剤1を添加し、2000RPMで30秒間混合する。
【0092】
参照11:24.00gの充填剤8及び5.28gの第2のポリオルガノシロキサン4をポリプロピレンカップに添加し、2000RPMで30秒間混合する。0.31gの触媒/抑制剤溶液を添加し、2000RPMで30秒間混合する。0.42gのSi-Hポリシロキサンを添加し、2000RPMで30秒間混合する。
【0093】
参照12:24.01gの充填剤8、0.16gのSi-Hポリシロキサン、0.32gの触媒/抑制剤溶液、及び(第2のポリオルガノシロキサン4の代わりに)5.53gの第2のポリオルガノシロキサン5を使用すること以外は、参照11と同様に調製する。
【0094】
試料34:5.00gの第2のポリオルガノシロキサン4及び0.40gのSi-Hポリシロキサンを使用すること以外は、参照11と同様に調製する。また、全ての他の成分を添加した後、0.30gの第1のポリオルガノシロキサン1において2000RPMで30秒間混合する。
【0095】
試料35:5.25gの第2のポリオルガノシロキサン5及び0.31gの触媒/抑制剤溶液を使用すること以外は、参照12と同様に調製する。また、全ての他の成分を添加した後、0.30gの第1のポリオルガノシロキサン1において2000RPMで30秒間混合する。
【0096】
表8は、導電性組成物試料の特性評価結果を示す。
【0097】
【表8】

最小粘度が200Pas未満であり、チキソトロピー指数が増加し、最大粘度が対応する参照組成物に対して最小粘度よりも大きく増加する場合、試料は合格である。
試料がチキソトロピー指数の増加をもたらさなかったため、試料は不合格であった。
【国際調査報告】