(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】CO2回収のための収着材、その使用及び同収着材を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20241112BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20241112BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241112BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/30 ZAB
B01J20/28 Z
B01D53/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531220
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022082826
(87)【国際公開番号】W WO2023094386
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517006692
【氏名又は名称】クライムワークス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルガス,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】アルバーニ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェルス,ニーナ-ルイーザ
(72)【発明者】
【氏名】アズティリア,トマス
(72)【発明者】
【氏名】トゥルシュ,キム
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4D002
4G066
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB03
4G066AB13B
4G066AC14C
4G066AC35C
4G066AE10B
4G066BA07
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA26
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA11
4G066FA36
4G066FA37
(57)【要約】
ガス混合物(1)からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材(3)を調製するための方法であって、前記収着材(3)が、固体支持体上に固定化された第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含み、第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含む前記収着材(3)が、処理後に、1400ppm未満の総金属不純物含有量を有するように処理される、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物(1)からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材(3)を調製するための方法であって、
前記収着材(3)が、固体支持体上に固定化された第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含み、
第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含む前記収着材(3)が、処理後に、1400ppm未満の総金属不純物含有量を有するように処理される、方法。
【請求項2】
前記収着材(3)が、処理後に、1200ppm未満、好ましくは1100ppm未満、最も好ましくは200~1000ppmの範囲の総金属不純物含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属不純物を形成する金属が、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Sn、Ti、Zn又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、Al、Ca、Fe、Mg、Mn又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記処理が、酸-塩基洗浄、溶離力列洗浄若しくは金属キレート剤による処理、又はそれらの組み合わせの群から選択され、
好ましくは、酸-塩基洗浄の場合、前記処理が、好ましくはHCl、HNO
3、H
2SO
4、CH
3COOH又はそれらの組み合わせの溶液の形態での、5未満又は3未満、より好ましくは2未満又は1未満、最も好ましくは0.5未満のpHの水溶液による処理の少なくとも1つのステップと、好ましくは、好ましくはNaOH、Na
2CO
3、KOH又はそれらの組み合わせの溶液の形態での、9超又は10超又は11超、好ましくは13超、最も好ましくは13.5超のpHの水溶液による処理の少なくとも1つのステップとを伴い、好ましくは、続いて、6~8の範囲のpHを確立するために、水で、好ましくは脱イオン水で洗浄が行われ、
好ましくは、溶離力列洗浄の場合、前記収着材が、好ましくはメタノール、エタノール若しくは(イソ)プロパノール又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールによる処理に供され、及び/又は、好ましくはアセトン、メチルアセテート若しくはエチルアセテート又はそれらの組み合わせから選択される別の極性有機溶媒による処理に供され、好ましくは、続いて、非極性有機溶媒、好ましくは、分岐状若しくは線状の形態のプロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカンで洗浄が行われ、
好ましくは、金属キレート剤による処理の場合、前記キレート剤が、二座キレート剤又は多座キレート剤、好ましくは水溶性キレート剤、好ましくは、金属イオンと錯体形成して金属不純物を形成するための第一級アミノ基及び/若しくは第二級アミノ基、アルコール基並びに/又はエーテル基を有する水溶性キレート剤の群から選択され、好ましくは、エチレンジアミン及びそのポリマー、オキサレート、ジエチレントリアミン、トリホスフェート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記収着材(3)が、収着剤粒子、収着剤粉末、多孔質モノリス構造、若しくは固体支持体担体構造上の実質的に隣接した吸着剤層、又はそれらの組み合わせの形態を取る、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
α-炭素位の前記アミン部分が、水素及び/若しくはアルキルによって、好ましくは1個のメチル置換基及び1個の水素置換基によって、又は2個の水素置換基によって置換されており、好ましくは、前記収着剤(3)が、第一級ベンジルアミン部分及び/又は第二級ベンジルアミン部分を含み、最も好ましくは、前記収着材の二酸化炭素回収部分が第一級ベンジルアミン部分からなる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記収着材(3)の前記固体支持体が、有機材料及び/又は無機材料、好ましくはポリマー材料系の多孔質材料又は非多孔質材料であり、好ましくは、線状又は分岐状の、架橋又は非架橋のポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMAを含むアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリル又はそれらの組み合わせの群から選択され、好ましくは、前記ポリマー材料が、ポリ(スチレン)若しくはポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)系、セルロース、又はシリカ、アルミナ、活性炭、金属有機骨格、共有結合有機骨格及びそれらの組み合わせを含む無機材料であり、
好ましくは、前記収着材(3)が、ポリスチレン材料、好ましくは架橋ポリスチレン材料、最も好ましくはポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)系であり、これが、好ましくは、材料全体にわたって、又は少なくともその表面上に若しくはその表面上にのみ、アミノ部分で少なくとも部分的に官能化されているか、又はベンジルアミン部分を含み、好ましくは、前記材料又は前記官能化が、アミドメチル化若しくはフタルイミド若しくはクロロメチル化反応経路又はそれらの組み合わせによって得られる、
請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第一級アミン部分及び/又は前記第二級アミン部分が、好ましくはアジリジンを使用して得られるポリエチレンイミン構造の一部であり、これが、好ましくは化学的及び/又は物理的に固体支持体に結合されている、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
好ましくは多孔質形態であり、0.5~4000m
2/g又は1~2000、好ましくは1~1000m
2/gの範囲の比BET表面積を有する前記収着材(3)が、モノリスの形態、1つの層若しくは複数の層の形態、織布若しくは不織布(層)構造を含む中空繊維若しくは中実繊維の形態、又は中空粒子若しくは中実粒子の形態を取る、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記収着材が、0.002~4mm、0.005~2mm、0.002~1.5mm、0.005~1.6mm、又は0.01~1.5mmの範囲、好ましくは0.30~1.25mmの範囲の粒径(D50)を有する、好ましくは実質的に球形のビーズの形態を取る、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ガス状二酸化炭素をガス混合物から、好ましくは、前記ガス状二酸化炭素を含有する周囲大気(1)、煙道ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから、並びにガス状二酸化炭素とは異なる更なるガスから、ユニット(8)内での前記ガス状二酸化炭素を吸着する収着材(3)を使用した繰り返しの吸着/脱着によって分離するための方法であって、
前記方法が、少なくとも以下の順番の、この順序で繰り返されるステップ(a)~(e):
(a)前記ガス混合物(1)を前記収着材(3)と接触させて、少なくとも前記ガス状二酸化炭素を、吸着ステップにおいて、ガス混合物としての周囲大気の場合には、周囲大気圧条件及び周囲大気温度条件下で、その他の場合には、供給された前記ガス混合物の温度条件及び圧力条件下で前記ユニット(8)を通じてフロースルーさせることによって前記収着材(3)上に吸着させるステップ、
(b)前記ユニット(8)内の吸着された二酸化炭素を有する前記収着材(3)を前記フロースルーから分けるステップ、
(c)CO
2の脱着を開始する温度への前記収着材(3)の温度の上昇を誘発するステップであって、好ましくは、熱交換器によって、又は前記ユニット(8)を通じたフロースルーにより飽和水蒸気若しくは過熱水蒸気の流れを注入し、それによって、CO
2の脱着を開始する60~110℃の温度への前記収着材の温度の上昇を誘発するステップ、
(d)少なくとも脱着ガス状二酸化炭素を前記ユニット(8)から抽出し、好ましくは、前記ユニット(8)内又はその下流で、ガス状二酸化炭素を水蒸気から分離するステップ、
(e)ガス混合物としての周囲大気の場合には、前記収着材(3)を周囲大気温度条件にし、その他の場合には、前記供給されたガス混合物の前記温度条件及び圧力条件にするステップ
を含み、
前記収着剤(3)が、固体支持体上に固定化された第一級アミン部分及び/若しくは第二級アミン部分又はその組み合わせを含み、
及び、
請求項1~10のいずれか1項記載の方法によって調製された材料を前記収着材(3)として使用するか、
又は、低下した二酸化炭素回収容量の形態で前記収着材の劣化をもたらした回数で一連の前記ステップを繰り返した後に、好ましくは請求項1~10のいずれか1項記載の方法を使用して、前記収着材(3)を、処理後に、1400ppm未満、好ましくは1200ppm未満、より好ましくは1100ppm未満、最も好ましくは200~1000ppmの範囲の総金属不純物含有量を有するように処理する、
方法。
【請求項12】
前記総金属不純物含有量を低減するための処理を、ガス状二酸化炭素をガス混合物から分離するための装置内で、好ましくは、酸-塩基洗浄、溶離力列洗浄若しくは金属キレート剤による処理、又はそれらの組み合わせによって、その場で実施するか、又はガス状二酸化炭素をガス混合物から分離するための前記装置から前記収着材/支持体材料を取り出すことによって実施し、前記総金属不純物含有量を減少させるように処理し、次いで、ガス状二酸化炭素を分離するための前記装置に再導入して、分離プロセスを継続する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記収着材の処理を、前記二酸化炭素回収容量が、元の収着材の前記二酸化炭素回収容量と比較して、30%超、好ましくは20%超、より好ましくは15%超低下した場合に実施し、
及び/又は、前記収着材の処理を、前記一連のステップを、少なくとも500回、好ましくは少なくとも1000回、より好ましくは少なくとも10,000回繰り返した後に、ただし好ましくは、前記一連のステップを50,000回繰り返す前に、好ましくは、前記一連のステップを25,000回繰り返す前に実施する、
請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
ガス状二酸化炭素ガス混合物から、好ましくは、前記ガス状二酸化炭素を含有する周囲大気(1)、煙道ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから、並びにガス状二酸化炭素とは異なる更なるガスから、ユニット(8)内での前記ガス状二酸化炭素を吸着する収着材(3)を使用した繰り返しの吸着/脱着によって分離するための、請求項1~10のいずれか1項によって製造又は処理された材料の使用。
【請求項15】
好ましくは請求項1~10のいずれか1項記載の方法を使用して調製又は処理された、1400ppm未満、好ましくは1200ppm未満、より好ましくは1100ppm未満、最も好ましくは200~1000ppmの範囲の総金属不純物含有量を有する、ガス混合物(1)からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適な二酸化炭素回収容量特性を有する第一級アミン二酸化炭素回収部分及び/又は第二級アミン二酸化炭素回収部分を有する二酸化炭素回収材料、並びにそのような回収材料を調製するための方法、そのような回収材料の使用及びそのような材料を含む二酸化炭素回収方法及びそのような回収材料のための再生プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
2017年のOECD報告書[Global Energy & CO2 Status Report 2017, OECD/IEA March 2018]によれば、大気へのCO2の年間排出量は、約32.5Gt(ギガトン、すなわち3×109トン)である。2020年2月の時点で、2016年に国連気候変動枠組条約(UFCCC)内でパリ協定を交渉した196ヶ国のうちの2ヶ国を除く全ての国がこれを批准している。この数字が意味するのは、気候変動の脅威について、及び地球温度の上昇を産業革命以前のレベルから十分に摂氏2度未満に保持するための世界的な対応の必要性について、合意が得られているということである。
【0003】
大気へのCO2排出量を制限するという目標を達成し、温室効果ガスを大気から除去するための解決策を提示するという課題に取り組む技術及び科学界は、多くの技術を構想してきた。煙道ガス回収、すなわち特定の工業プロセス及び特定のCO2排出物などの点源からのCO2の回収は、煙道ガスを生成するプロセスに応じて、広範囲の比較的高い濃度のCO2(3~100体積%)を扱う。高い濃度によって、濃度が400ppmvオーダーである周囲空気などのより低い濃度を有する供給源からのCO2の分離と比較して、他のガスからのCO2の分離が、熱力学的により有利になり、結果的に、経済的に有利になる。しかしながら、CO2を点源から回収するという概念自体に大きな制限がある:これは、そのような点源を標的とするのには特に適切であるが、点源が位置している特定の場所に実質的に結びついており、良好には排出量を制限し、カーボンニュートラルの達成を補助することができるが、技術的な解決策として、ネガティブエミッション(すなわち、大気からの二酸化炭素の永久的な除去)に貢献すること、及び過去の排出量を除去することはできない。開発の初期段階ではあるが、ネガティブエミッション(すなわち、大気からの二酸化炭素の永久的な除去)を達成するために、現在適用されている最も注目すべき2つの解決策は、自然の光合成を使用した植生(すなわち、木及び植物であるが、永久的な除去というわけではない)による、及び唯一の実際に永久的な除去であるDAC技術によるCO2の回収である。
【0004】
植林は、世論で広く共感されている。しかしながら、再植林計画の範囲及び実現可能性が議論されており、回収されるCO2に対する占有表面の比率の点で大きな設置面積を必要とすることから、考えられているほど単純なアプローチではないように思われる。他方で、DACは、より小さな土地設置面積を有し、したがって、農作物の生産と競合せず、CO2を大気から永久的に除去することができ、地球上のどこでも展開することができる。
【0005】
気候変動を緩和するための上記の戦略は、全て潜在性を有し、全体的な解決策の潜在的な一部として考慮される。最もあり得る将来のシナリオは、更なる開発を経た後に、そのようなアプローチを組み合わせたものを展開することである。
【0006】
特許文献1に記載されているように、例えばアルカリ土類酸化物を利用して炭酸カルシウムを形成することなどの、幾つかのDAC技術が記載された。様々なアプローチが、典型的には収着剤粒子の充填床の形態にあり、CO2が気体-固体界面で回収される、固体CO2吸着剤(以降、収着剤と呼ぶ)の利用を含む。そのような収着剤は、特許文献2で報告されているような固定化アミノシラン系収着剤、及び特許文献3で開示されているようなアミン官能化セルロースなどの、様々な種類のアミノ官能化及びポリマーを含有し得る。
【0007】
特許文献4には、工業用途からの二酸化炭素の除去のためのアミノアルキル化ビーズポリマーを含むイオン交換材料の利用が記載されている。
【0008】
特許文献5には、CO2をガス混合物から可逆的に吸着するための収着剤が記載されており、この収着剤は、第一級アミノ官能基を有するポリマー吸着剤から構成されている。これらの材料は、圧力又は湿度スイングを適用することによって再生することができる。
【0009】
非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3などの幾つかの学術出版物でも、DAC用途のための固体収着剤としての第一級ベンジルアミンで官能化された架橋ポリスチレン樹脂の使用が詳細に調査されている。
【0010】
CO2を点源から回収するための最先端の技術は、典型的には、例えば工業用スクラバーなどにおいて、液体アミンを使用し、煙道ガスは、アミンの溶液に流入する(特許文献6)。他の技術は、充填床又はフロースルーの構造構成のいずれかでの固体収着剤の使用をベースとしており、収着剤は、支持体上に含浸又は共有結合したアミンで作製されている。
【0011】
アミンは、CO2と反応してカルバメート部分を形成し、これを、後続のステップで、例えば、収着剤床の温度を約100℃に上昇させ、それによりCO2を放出させることによって、元々のアミンに再生することができる。炭素回収のための経済的に実施可能なプロセスは、同じ収着材に対して数百又は数千サイクルのCO2の収着/脱着の繰り返しを実施する能力を意味し、収着剤は、CO2に対するその反応性を妨げる重大な化学的変換を受けるべきではない。
【0012】
非特許文献4では、銅が多層金属として半導体回路において広く使用されることが報告されている。銅に加えて、廃棄物流は、多くの場合、銅の溶解性を増加させるためにプロセスで広く使用されているEDTAのようなキレート剤を含有し、これは、銅でキレート化された錯体を形成する傾向がある。充填床カラム内のPEI-アガロース吸着剤は、これらのアニオン性錯体を除去することができるが、銅についてのこのキレート剤とPEIとの間の競合的結合は十分には理解されていない。当研究は、EDTAの存在下でのPEI-アガロース吸着剤による銅収着を調査することに焦点を当てている。カラムのpHは、0.1Mのアセテート緩衝剤を使用して、5.5で固定される。銅イオンに対するキレート剤の比率は様々である。銅結合容量及び銅ブレークスルー曲線は、追加のキレート剤が存在しない場合の結果と比較及び対照される。EDTAが過剰にあると、プロトン化されたアミン基に対する静電気引力について競合する遊離解離(アニオン性)リガンドの画分が増加し、したがって、カラム内の収着容量が減少する。しかしながら、この廃棄物処理技術は、実際の廃棄物からの多量の銅汚染溶液を12倍濃縮することができるため、半導体業界では依然として実施可能である。等モル(EDTAに対する銅)又はそれ以上の濃度のEDTAが存在する場合、アセテートを利用して、金属を回収することができる;EDTAに対する銅の比率が低い場合、金属回収は、塩酸を使用して達成される。
【0013】
特許文献7には、CO2をガス混合物から回収するための可逆的な吸着及び脱着サイクルが可能なアミン基を有する収着剤を含有する構造が開示されており、前記構造は、繊維フィラメントから構成されており、繊維材料は、炭素及び/又はポリアクリロニトリルである。
【0014】
特許文献8には、アミン複合体を含む酸性ガス収着剤が開示されている。複合体は、約1重量%~約75重量%の濃度のアミン化合物を含む第1の成分と、約1重量%~約30重量%の濃度の親水性ポリマー及び/又はプレポリマー化合物を含む第2の成分と、約0.01重量%~約30重量%の濃度の架橋剤及び/又はカップリング剤を含む第3の成分とを含み得る。
【0015】
特許文献9には、アミンの酸化分解を抑制するためのキレート剤を含み、及びアミン化合物が固定化された多孔質支持体をコアとして有し、及び二酸化硫黄による不活性に耐性のあるアミン層をシェルとして有する吸着剤としての、酸素及び二酸化硫黄に耐性のあるキレート剤を含むコアシェル型アミン系二酸化炭素吸着剤、並びにこれを調製する方法が開示されている。キレート剤を含むアミン系二酸化炭素吸着剤は、添加されたキレート化合物が、アミンの酸化に触媒的に作用する様々な遷移金属不純物を直接的に除去するように機能することから、かなり高い耐酸化性を呈する。さらに、シェルの耐二酸化硫黄性アミン層は、二酸化硫黄を選択的に吸着して、コアのアミン化合物を保護し、それと同時に、コアのアミン化合物は、二酸化炭素のみを選択的に吸着する。さらに、シェル上に吸着された二酸化硫黄は、約110℃でシェルから容易に脱着され、したがって、著しく改善された再生安定性が、二酸化硫黄を含む温度スイング吸着(TSA)プロセス中に得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010034724号明細書
【特許文献2】米国特許第8834822号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/168346号
【特許文献4】国際公開第2011/049759号
【特許文献5】国際公開第2016/037668号
【特許文献6】米国特許第9186617号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2012076711号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2013213229号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2019143299号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Alesi et al. in Industrial & Engineering Chemistry Research 2012, 51, 6907-6915
【非特許文献2】Veneman et al. in Energy Procedia 2014, 63, 2336
【非特許文献3】Yu et al. in Industrial & Engineering Chemistry Research 2017, 56, 3259-3269
【非特許文献4】Maketon et al. in “Removal Efficiency and Binding Mechanisms of Copper and Copper-EDTA Complexes Using Polyethyleneimine”, ENVIRONMENTAL SCIENCE & TECHNOLOGY, vol. 42, no. 6, 8 February 2008, pp. 2124-2129
【発明の概要】
【0018】
空気からの繰り返しの連続的な二酸化炭素回収のためのアミノ系収着剤、特に、例えばスチレンジビニルベンゼン部分に接続された、第一級アミノ単位及び/若しくは第二級アミノ単位、好ましくはベンジルアミン単位又はそれらの組み合わせを含有するアミノ系収着剤は、空気及び煙道ガスからの炭素回収のための既知の収着剤である。
【0019】
本発明では、驚くべきことに、本発明者等が、全窒素含有量(総アミノ含有量の指標)が大幅に変化していないにもかかわらず、これらの材料のCO
2回収性能(二酸化炭素回収容量)が変化し得ることを特定した。誘導結合プラズマ発光分光法(以降、ICP-OESと称する)分析を実施することによって、本発明者等は、驚くべきことに、全金属含有量がCO
2回収性能と相関していることを特定した(
図1を参照)。
【0020】
理論的な説明に縛られるものではないが、炭素回収に特に適するために、アミノ系収着剤は、アミノ基に結合し得、及び/又は、細孔を塞ぎ得、次いで、それによって、アミノ部位の利用可能性を低下させ、二酸化炭素回収性能に対する影響を伴う不純物が可能な限り少ないことが必要であると思われる。したがって、二酸化炭素回収と競合するアミノ基への競合的結合は回避されるべきである。二酸化炭素回収のために提供されるアミノ部分は、広範囲の金属に結合することができ、実際に、これらに結合し、そのような結合は、材料の二酸化炭素回収容量を減じることが見出された。収着材の金属含有量を減少させると、予想外なことに、この材料の二酸化炭素回収特性を高める非常に効率的で単純な手法が提供される。実際に、アミノ系収着材は、典型的には、触媒を使用して、洗浄ステップを伴って製造され、これらのステップにおいて、明らかに、かなりの数の表面露出アミノ基が、触媒作用及び/若しくは洗浄からの、出発材料からの、又は他の合成ステップからの金属イオンによって覆われている。
【0021】
それに応じて、本発明は、全てのアミノ基が効率的にCO2を回収することができるようにするために第一級アミン若しくは第二級アミン又はそれらの組み合わせで官能化されたアミノ系収着剤が必要とする純度レベルに関する。本発明はまた、不純物を除去し、炭素回収に許容可能な純度レベルに達するための方法に関する。提示されている方法は、二酸化炭素回収プロセスのための収着材を調製するために使用され得るが、これはまた、二酸化炭素回収材料として使用された後の収着材をリフレッシュするために使用され得る。特に、後者は、水、蒸気及び/又は水蒸気が、二酸化炭素を収着材から脱着する脱着プロセスで使用される場合、並びにこの水、蒸気及び/又は水蒸気において、金属不純物が、収着材中に連続的に蓄積され、その二酸化炭素回収容量を損ねる場合に重要である。
【0022】
以下でさらに証明されるように、材料の金属含有量又は不純物含有量は、材料の初期二酸化炭素回収容量に影響を与えるだけではない。これはまた、長期間にわたる使用を意味する経年劣化後の二酸化炭素容量の安定性にも影響を与える。驚くべきことに、精製され、低い金属含有量を有する材料は、二酸化炭素回収容量のより高い安定性も示し、すなわち、これは、劣化しにくく、使用中に酸化されにくいと思われることが見出された。
【0023】
一実施形態では、第1のベンジルアミン部分及び/若しくは第2のベンジルアミン部分又はそれらの組み合わせを含む収着材、好ましくは、第1のベンジルアミン部分からなる収着材の二酸化炭素回収部分の金属の量は、5~1600ppmの範囲、最も好ましくは1500ppm未満である。金属含有量についてのここで示されているppm値は、それぞれの場合で、重量によるppmで示されている。収着材の固体支持体は、好ましくは、有機材料及び/又は無機材料、好ましくは(有機)ポリマー材料系の多孔質材料又は非多孔質材料である。(有機)ポリマー担体材料は、好ましくは、線状又は分岐状の、架橋又は非架橋のポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMAを含むアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリル又はそれらの組み合わせの群から選択され、好ましくは、ポリマー材料は、ポリ(スチレン)若しくはポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)系、セルロース、又はシリカ、アルミナ、活性炭、金属有機骨格、共有結合有機骨格及びそれらの組み合わせを含む無機材料である。
【0024】
別の実施形態では、支持体の表面に物理的に含浸しているか又は化学的に結合しているかのいずれかであるポリエチレンイミンを含む収着剤(支持体は、シリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭、金属有機骨格、共有結合有機骨格であり得るが、これらに限定されることはない)が、5~2000ppmの範囲、最も好ましくは1500ppm未満の不純物レベルを示して、ほとんど又は全てのアミノ部位が二酸化炭素を回収するために利用可能であるようにする。
【0025】
別の実施形態では、金属(厳密に言うなら金属イオン)を除去し、したがって、CO
2回収性能を元に戻すために、収着剤は、0.01~10mol/L又は0.25~10mol/Lの濃度のHCl、HNO
3、H
2SO
4、CH
3COOHであり得る酸で処理される。収着剤は、1~最大24時間にわたる撹拌下で酸溶液と反応させ続けることができる。続いて、アミノ基を脱プロトン化し、したがって、遊離塩基としてのアミンを得るために、収着剤は、好ましくは、NaOH、Na
2CO
3、KOH又はそれらの組み合わせであり得る塩基で処理される。以後、この処理は、塩基処理を実質的に中性の及び/又は脱塩した水による拡張洗浄処理で置き換えることが可能であることを念頭に置いて、酸塩基洗浄と称する。処理後に、精製された収着剤の容量は、ブレークスルーアナライザーで測定することができ、稼働させたシステムについてのその結果は、
図2に示されている。驚くべきことに、二酸化炭素回収容量は、最大2.8倍増加した。
【0026】
別の実施形態では、収着剤を精製し、収着剤のCO
2容量を増加させるための別の処理が記載されている。この処理は、溶離力列順序(eluotropic row sequence)での洗浄を含み、これは、異なる極性の2種又は3種の溶媒で少なくとも2回又は少なくとも3回の連続洗浄ステップを行うことによって高極性から低極性までの様々な溶媒で収着剤を処理することを含むか、又はそれからなる。第1の溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせであり、第2の溶媒は、アセトン又は最大10個の炭素原子を有する別のケトンであり得、第3の溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカンであり得る。予想外なことに、ベンジルアミン系収着剤のCO
2回収容量は、溶離力列処理後に、2.54倍増加する(
図2)。
【0027】
別の実施形態では、ベンジルアミンで官能化されたスチレン-ジビニルベンゼン樹脂は、キレート剤、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で処理され、金属不純物を除去するために使用される。ここで、収着剤のCO
2回収容量は、2.8倍増加した(
図2)。
【0028】
別の実施形態では、酸及び塩基洗浄、溶離力列、並びにEDTAによる洗浄は、複数回(2~5回)の酸塩基洗浄を連続的に実施し、第1の酸及び塩基洗浄を行い、続いて、溶離力列を行うか、又はその逆を行うこと、第1の酸及び塩基洗浄を行い、続いて、EDTAによる洗浄ステップを行うか、又はその逆を行うこと、並びに溶離力列処理を行い、続いて、EDTAによる洗浄を行うか、又はその逆を行うことで、様々な組み合わせで実施される。
図2は、3回の連続的な酸塩基洗浄の効果を示し、CO
2回収容量が3.2倍増加するという結果をもたらす。
【0029】
より一般的な観点から言えば、本発明の第1の態様によれば、これは、ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材を調製するための方法であって、前記収着材は、固体支持体上に固定化された第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含む、方法に関する。この第1の態様によれば、第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含む前記収着材は、処理後に、1400ppm未満の総金属不純物含有量を有するように処理される。先に指摘したように、製造プロセスに起因する元のアミン系回収材料は、金属イオンで覆われた多数の表面露出アミノ部分を実質的に含み、本発明者等の分析によれば、系内の金属不純物含有量は、常に1600ppm超又はその前後である。1回の追加の処理だけで、特許請求されているようなより低い金属不純物含有量がもたらされ、それに応じて、二酸化炭素回収容量の大幅な向上がもたらされる。
【0030】
ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材を調製するための方法について論じる場合、これは、ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するために、収着材を処理して、収着材を調製すること、並びに/又は収着材を元に戻すこと/リフレッシュすること、並びに/又は収着材を洗浄及び最適化することを意味する。したがって、調製という用語は、収着材を物理的及び/又は化学的に変換して、収着材を、より低い金属不純物含有量、特に1400ppm未満の総金属不純物含有量を有する収着材に変換することであると理解される。提示されている方法は、ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として(より)適切なものにするために収着材をそのような精製された収着材に変換する少なくとも1つのステップを含み、このステップは、以下にさらに詳述されるように構築及び実施され得る。
【0031】
したがって、言い換えるなら、提示されている方法は、出発収着材を精製ステップで処理して、処理後に、金属不純物含有量を特許請求されているようにより低くして、特に、出発収着材を、ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材として(より)適切なものにする方法である。
【0032】
ガス混合物からの二酸化炭素分離のためのプロセスの1つの可能な構築は、CO2の脱着を開始する、例えば60~110℃の温度への収着材の温度の上昇を誘発するステップを含み、これは、ユニットを通じたフロースルーにより飽和水蒸気又は過熱水蒸気の流れを注入し、それによって、CO2の脱着を開始する60~110℃の温度への収着材の温度の上昇を誘発することによって行われると留意されたい。以下でさらに実験的に示されているように、そのような水蒸気処理は、金属不純物含有量の減少を全くもたらさず、実際に、単純な水洗浄処理又は水蒸気処理は、金属不純物含有量に影響せず、CO2回収容量にも有益には影響しない。
【0033】
この第1の態様の第1の好ましい実施形態によれば、前記収着材は、処理後に、1200ppm未満、好ましくは1100ppm未満、最も好ましくは200~1000ppmの範囲の総金属不純物含有量を有する。収着材をこれらの低い金属不純物レベルに精製すると、二酸化炭素回収容量を最大3倍増加させることができ、これは、全く予想外のことであり、プロセス全体の効率の極めて著しい増加である。
【0034】
ここで定義される総金属不純物含有量は、総収着剤重量に対する収着剤中の全ての金属の重量による合計として考慮され、金属は、第1族において水素を除いて、第13族においてベリリウムを除いて、第14族において第2~4周期の元素を除いて、第15族及び第16族において第2~5周期の元素を除いて、周期表の第1~16族の元素として定義される。
【0035】
金属不純物は、以下の分析方法を使用して測定する:
【0036】
収着剤中の金属不純物(特に、元の材料中に重量によって1ppm超の量で存在し得る、及び存在することが多い、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Sn、Ti、及びZn)の定量決定には、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)を使用する。測定は、Spectro Arcos FHM22 ICP-OES機器(SPECTRO Analytical Instruments GmbH)を使用して実施した。サンプル溶液を、空気圧アトマイザーシステムを介して導入する。プラズマにおいて5000~7000Kの温度で、溶液に含有される元素は、原子化及び励起されて、光を発する。原子/イオンは、励起後に化学元素に特有の電磁放射線を発するため、特定の波長で発せられる光の強度を測定及び使用して、対象の元素の濃度を決定する。サンプルにおける濃度は、個々の元素の測定された強度を使用して、及び個々の元素の記録された較正の関数を使用して計算する。
【0037】
機器の較正は、以下のように行う:
作業標準を調製するために、MerckのICPのための多元素標準溶液(MISA-04-1、MISA-05-1、MISA-06-1)を使用した。HNO3(Merck)で酸性化した脱イオン水を較正ブランクとして使用した。
【0038】
サンプルは、以下のように調製する:
収着剤の溶解をマイクロ波分解によって達成する。収着剤をN2流下で94℃で1時間乾燥させ、次いで、室温に冷却する。0.5gのサンプルを秤量し、100mLのサンプルホルダ内に入れる。サンプルに、10mLの65%HNO3を添加し、次いで、混合物を、サンプルホルダを閉じる前に10分間反応させる。次いで、サンプルホルダを、サンプルが完全に溶解するまで、マイクロ波オーブン(StarT、MWS GmbH)内に入れる。以下の温度プロファイルを使用する:3℃/分で240℃に加熱、1時間保持、続いて、50℃に冷却、それから、サンプルをオーブンから取り出す。次いで、サンプルをWhatman 42(2.5μmの粒子保持)濾紙で濾過する。サンプルの損失を防ぐために、2mLの脱イオン水を使用してビーカーの内壁を洗浄する。次いで、脱イオン水を添加して、最終体積を最大50mLにする。
【0039】
収着材中の金属不純物の濃度は、以下のように決定する:サンプルにおける濃度は、個々の元素の測定された強度を使用して、及び個々の元素の記録された較正の関数を使用して計算する。金属不純物濃度は、3回の測定の平均として表される。金属の濃度は、収着剤1kg当たりのmgでの金属、すなわち、重量によるppmで表される。
【0040】
前記金属不純物を形成する金属は、典型的には、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Sn、Ti、Zn又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。ほとんどの場合、関係する金属不純物は、これらの金属が、豊富に存在すること、並びに/又は合成中の触媒及び/若しくは出発材料及び/若しくは処理の一部を形成すること、並びに/又は収着剤の処理に使用される水中に存在することを理由に、とりわけ、Al、Ca、Fe、Mg、Mnからなる群から選択される。
【0041】
更なる別の好ましい実施形態によれば、前記処理は、酸-塩基洗浄、溶離力列洗浄若しくは金属キレート剤による処理、又はそれらの組み合わせの群から選択される。
【0042】
好ましくは、酸-塩基洗浄の場合、前記処理は、好ましくは、HCl、HNO3、H2SO4及び/又はCH3COOH溶液の形態での、5未満、好ましくは3未満、最も好ましくは1未満のpHの水溶液による処理の少なくとも1つのステップを伴い、同様に好ましくはまた、続いて、好ましくはNaOH、Na2CO3、KOH又はそれらの組み合わせの溶液の形態での、9超、好ましくは11超、最も好ましくは13.5超のpHの水溶液による処理の少なくとも1つのステップが行われる。この塩基処理ステップを水による洗浄で置き換えて、及び/又はこの塩基処理ステップに続いて水による洗浄を行って、例えば水、好ましくは脱イオン水で6~8の範囲のpHを確立することができる。
【0043】
好ましくは、溶離力列洗浄の場合、前記収着材は、好ましくはメタノール、エタノール若しくは(イソ)プロパノール又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、室温でのアルコール溶媒液による処理に供され、及び/又は、好ましくは、続いて、好ましくはアセトン(又は典型的には10個未満の炭素原子を有する別のケトン若しくはアセテート)、メチルアセテート若しくはエチルアセテート又はそれらの組み合わせから選択される別の極性有機溶媒による処理に供され、好ましくは、さらに続いて、非極性有機溶媒、好ましくは、分岐状若しくは線状の形態のプロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカンで洗浄が行われる。
【0044】
好ましくは、金属キレート剤による処理の場合、前記キレート剤は、二座キレート剤又は多座キレート剤、好ましくは水溶性キレート剤、好ましくは、金属イオンと錯体形成して金属不純物を形成するための第一級アミノ基及び/若しくは第二級アミノ基、アルコール基並びに/又はエーテル基を有する水溶性キレート剤の群から選択される。キレート剤は、好ましくは、エチレンジアミン及びそのポリマー、オキサレート、ジエチレントリアミン、トリホスフェート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
これらの処理方法は、組み合わせること及び/又は繰り返すことができ、例えば、酸-塩基洗浄は、3回の交互の酸及び塩基処理ステップ、続いて中性洗浄の順序として実施することができる。
【0046】
収着材は、典型的には、収着剤粒子、収着剤粉末、多孔質モノリス構造、若しくは固体支持体担体構造上の実質的に隣接した吸着剤層、又はそれらの組み合わせの形態を取る。
【0047】
α-炭素位のアミン部分は、好ましくは、2個の水素置換基によって、又は1個の水素及び線状若しくは分岐状であり得、及び分岐において更なるアミノ部分を含み得る1個のアルキル基(好ましくは最大10個の炭素原子を有し、好ましくはメチル又はエチルとして選択される)によって、又は線状若しくは分岐状であり得、及び分岐において更なるアミノ部分を含み得る2個のアルキル基(好ましくは最大10個の炭素原子を有し、好ましくはメチル又はエチルとして選択される)によって、又は1個の水素及び1個のアミノ基によって、又は1個の水素及びアルキル基(最大10個の炭素原子、好ましくはメチル又はエチル)が線状又は分岐状であり得、及び分岐において更なるアミノ部分を含み得るアルキルアミノ部分によって置換されており、好ましくは、収着剤は、第一級ベンジルアミン部分及び/又は第二級ベンジルアミン部分を含む。最も好ましくは、収着剤の二酸化炭素回収部分は第一級ベンジルアミン部分からなる。
【0048】
収着材の固体支持体は、有機材料及び/又は無機材料、好ましくはポリマー材料系の多孔質材料又は非多孔質材料であり得る。好ましくは、これは、線状又は分岐状の、架橋又は非架橋のポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、PMMAを含むアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリル又はそれらの組み合わせの群から選択され、好ましくは、ポリマー材料は、ポリ(スチレン)若しくはポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)系、セルロース、又はシリカ、アルミナ、活性炭、金属有機骨格、共有結合有機骨格及びそれらの組み合わせを含む無機材料である。
【0049】
好ましくは、収着材は、ポリスチレン材料、好ましくは架橋ポリスチレン材料、最も好ましくはポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)系であり、これは、好ましくは、材料全体にわたって、又は少なくともその表面上に若しくはその表面上にのみ、(第一級又は第二級)アミノ部分で少なくとも部分的に官能化されているか、又はベンジルアミン部分を含む。材料又は官能化は、例えば、アミドメチル化若しくはフタルイミド若しくはクロロメチル化反応経路又はそれらの組み合わせによって得ることができる。
【0050】
第一級アミン部分及び/又は第二級アミン部分は、好ましくはアジリジンを使用して得られるポリエチレンイミン構造の一部であってもよく、これは、好ましくは化学的及び/又は物理的に固体支持体に結合されている。
【0051】
好ましくは多孔質形態であり、0.5~4000m2/g又は1~2000、好ましくは1~1000m2/gの範囲の比BET表面積を有する収着材は、好ましくはモノリスの形態、1つの層若しくは複数の層の形態、織布若しくは不織布(層)構造を含む中空繊維若しくは中実繊維の形態、又は中空粒子若しくは中実粒子の形態を取る。
【0052】
更なる別の好ましい実施形態による収着材は、0.002~4mm、0.005~2mm、0.002~1.5mm、0.005~1.6mm、又は0.01~1.5mmの範囲、好ましくは0.30~1.25mmの範囲の粒径(D50)を有する、好ましくは実質的に球形のビーズの形態を取る。
【0053】
本発明の第2の態様によれば、これは、ガス状二酸化炭素をガス混合物から、好ましくは、前記ガス状二酸化炭素を含有する周囲大気、煙道ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから、並びにガス状二酸化炭素とは異なる更なるガスから、ユニット内での前記ガス状二酸化炭素を吸着する収着材を使用した繰り返しの吸着/脱着によって分離するための方法に関する。
【0054】
この方法は、少なくとも以下の順番の、この順序で繰り返されるステップ(a)~(e):
(a)前記ガス混合物を収着剤と接触させて、少なくとも前記ガス状二酸化炭素を、吸着ステップにおいて、周囲大気圧条件及び周囲大気温度条件下で前記ユニットを通じてフロースルーさせることによって収着材上に吸着させるステップ(周囲大気が換気装置などを使用して装置に押し通される場合、これは、換気装置によって反応器に押し通される空気が周りの周囲大気圧よりも僅かに高い圧力を有し、圧力が「周囲大気圧」の定義において先に詳述されているような範囲内にあっても、この出願に従ってなおも周囲大気圧条件であると考慮される)、
(b)好ましくは収着剤における温度を維持しながら、前記ユニット内の吸着された二酸化炭素を有する前記収着材を前記フロースルーから分けるステップ、
(c)CO2の脱着を開始する、好ましくは60~110℃の温度への収着材の温度の上昇を誘発するステップ(これは、例えば、熱交換器によって、又はユニットを通じたフロースルーにより飽和水蒸気若しくは過熱水蒸気の流れを注入し、それによって、CO2の脱着を開始する60~110℃の温度への収着材の温度の上昇を誘発することによって可能である)、
(d)少なくとも脱着ガス状二酸化炭素をユニットから抽出し、好ましくは、ユニット内又はその下流で、好ましくは凝縮によって、ガス状二酸化炭素を水蒸気から分離するステップ、
(e)収着剤を周囲大気温度条件にするステップ(収着材がこのステップにおいてちょうど周りの周囲大気温度条件に冷却されない場合、これは、このステップによるものであると考慮され、好ましくは、このステップ(e)において確立される周囲大気温度は、周りの周囲大気温度+25℃、好ましくは+10℃又は+5℃の範囲内にある)
を含む。
【0055】
本発明によれば、使用のために再生される又はそのような繰り返しサイクルにおいて使用される収着材は、固体支持体上に固定化された第一級アミン部分及び/又は第二級アミン部分を含む。
【0056】
本開示の文脈において、「周囲大気圧」及び「周囲大気温度」という表現は、屋外で操作されるプラントが曝露される圧力及び温度条件を指し、すなわち、典型的には、周囲大気圧は、0.8~1.1bar(絶対圧)の範囲の圧力を表し、典型的には、周囲大気温度は、-40~60℃、より典型的には-30~45℃の範囲の温度を指す。プロセスの入力として使用されるガス混合物は、好ましくは周囲大気、すなわち、周囲大気圧及び周囲大気温度の空気であり、これは、通常、0.03~0.06体積%の範囲のCO2濃度を示唆する。しかしながら、より低い又はより高いCO2濃度を有する空気も、例えば0.1~0.5体積%の濃度でプロセスの入力として使用することができ、一般的に言えば、好ましくは、入力ガス混合物の入力CO2濃度は、0.01~0.5体積%の範囲内にある。しかしながら、煙道ガスも供給源である場合があり、この場合、入力ガス混合物の入力CO2濃度は、典型的には、最大20体積%又は最大12体積%の範囲内にあり、好ましくは1~20体積%又は1~12体積%の範囲内にある。
【0057】
先の二酸化炭素回収方法のステップ順序(a)~(e)において、ステップ(a)及び(e)では、周囲大気圧条件及び周囲大気温度条件を参照する。これは、供給されるガス混合物がこれらの条件下で提供される場合にのみ、例えば、ガス混合物の供給源が大気である直接空気回収の場合に適用される。しかしながら、ガス混合物の供給源が異なる供給源である場合、供給条件が周囲大気圧ではない場合及び/又は周囲大気温度条件ではない場合がある。特に、煙道ガスの場合、ガス混合物は、高温である可能性があり、通常、高温、例えば、室温超の温度になり、これは、50℃超の温度になることさえある。温度は、最大70℃に上がることさえあり、その場合、通常、セットアップは、ステップ(c)における二酸化炭素を脱着する温度が、供給ガスの温度より少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃高くなるように調整される。したがって、ステップ(a)及びステップ(e)におけるこれらの非大気温度及び圧力条件下では、通常、圧力及び温度条件が異なり、具体的には、ステップ(a)における接触は、供給されたガス混合物の温度及び圧力条件下で行われ、ステップ(e)において、収着剤は、供給されたガス混合物の温度及び圧力条件にされる。
【0058】
本発明の第2の態様によれば、そのようなプロセスでは、上記のように調製された材料を収着材として使用するか、又は、表面露出アミノ基を金属で覆うことに起因する低下した二酸化炭素回収容量の形態で収着材の劣化をもたらした回数で一連の前記ステップ(a)~(e)を繰り返した後に、好ましくは上記のような方法を使用して、収着材を、処理後に、1400ppm未満、好ましくは1200ppm未満、より好ましくは1100ppm未満、最も好ましくは200~1000ppmの範囲の総金属不純物含有量を有するように処理する。
【0059】
前記ユニットは、好ましくは、400mbar(絶対圧)以下の真空圧に脱気可能であり、ステップ(b)は、前記ユニット内の吸着された二酸化炭素を有する前記収着剤を前記フロースルーから分離し、その一方で、収着剤における温度を維持し、次いで、前記ユニットを20~400mbar(絶対圧)の範囲の圧力に脱気することを含み得、ステップ(c)において、飽和水蒸気又は過熱水蒸気の流れの注入は、反応器ユニットの内部圧力の上昇も誘発し、ステップ(e)は、収着材を周囲大気圧条件及び周囲大気温度条件にすることを含む。
【0060】
好ましくは、ステップ(d)の後及びステップ(e)の前に、以下のステップを実施する:
(d1)水蒸気の注入及び(使用される場合)循環を停止し、ユニットにおいて、ユニットを、20~500mbar(絶対圧)の間、好ましくは50~250mbar(絶対圧)の範囲の圧力値に脱気し、それによって、収着剤からの水分の蒸発、並びに収着剤の乾燥及び冷却の両方をもたらすステップ。
【0061】
ステップ(e)は、好ましくは、専ら、前記周囲大気を周囲大気圧条件及び周囲大気温度条件下で収着材と接触させて、ユニット内の水を蒸発させて、除去し、収着材を周囲大気温度条件にすることによって実施される。
【0062】
ステップ(b)の後及びステップ(c)の前に、以下のステップを実施することができる:
(b1)非凝縮性水蒸気の流れによって非凝縮性ガスのユニットをフラッシングし、その一方で、ステップ(b)の圧力を実質的に保持し、好ましくは、ステップ(b)の圧力を±50mbarの枠内、好ましくは±20mbarの枠内に保持するステップ、及び/又は、温度を75℃未満又は70℃未満又は60℃未満、好ましくは50℃未満に保持するステップ。
【0063】
ステップb1の更なる実施形態では、吸着剤構造の温度は、ステップ(a)の条件から、80~110℃、好ましくは95~105℃の範囲に上昇する。
【0064】
ステップ(b1)において、ユニットを、好ましくは、ステップ(b1)の圧力を維持しながら、吸着剤構造の体積1リットル当たり1kg/h~10kg/hの水蒸気の比率で、飽和水蒸気又は最大20℃で過熱された水蒸気でフラッシングして、反応器から残留ガス混合物/周囲空気をパージすることができる。周囲空気のこの部分を除去する目的は、回収されたCO2の純度を改善することである。
【0065】
ステップ(c)において、水蒸気は、前記ユニットの対応する入口によって導入される蒸気の形態で注入することができ、水蒸気は、好ましくは、再循環水蒸気の再加熱を伴うか、又は異なる反応器からの水蒸気の再利用によって、前記ユニットの出口から前記入口に(部分的又は完全に)再循環させることができる。
【0066】
ステップ(c)におけるこのプロセスによる脱着のための加熱は、好ましくは、この水蒸気注入によって影響を受けるだけであり、熱流体を有する配管などによる追加の外部加熱又は内部加熱はないことに留意すべきである。
【0067】
ステップ(c)において、さらに好ましくは、収着剤は、80~110℃又は80~100℃の範囲の温度、好ましくは85~98℃の範囲の温度に加熱され得る。
【0068】
さらに別の好ましい実施形態によれば、ステップ(c)において、ユニット内の圧力は、700~950mbar(絶対圧)の範囲、好ましくは750~900mbar(絶対圧)の範囲である。
【0069】
本発明の第2の態様の第1の好ましい実施形態によれば、総金属不純物含有量を低減するための処理は、ガス状二酸化炭素をガス混合物から分離するための装置内で、好ましくは、酸-塩基洗浄、溶離力列洗浄若しくは金属キレート剤による処理、又はそれらの組み合わせによって、その場で実施される。実際に、これは、ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材を調製するための先の方法の文脈で記載されているようなスキームのいずれかを使用して、その場で実施することができる。
【0070】
代替的には、本発明の第2の態様は、処理を、ガス状二酸化炭素をガス混合物から分離するための装置から収着剤を取り出すことによって実施し、収着剤を、総金属不純物含有量を減少させるように処理し、次いで、ガス状二酸化炭素を分離するための装置に再導入して、分離プロセスを継続することで実践することができる。
【0071】
収着材の処理は、典型的には、二酸化炭素回収容量が、元の収着材の二酸化炭素回収容量と比較して、30%超、好ましくは20%超、より好ましくは15%超低下した場合に実施される。
【0072】
収着材の処理は、一連のステップを、少なくとも500回、好ましくは少なくとも1000回、より好ましくは少なくとも10,000回繰り返した後に、ただし好ましくは、一連のステップを50,000回繰り返す前に、好ましくは、一連のステップを25,000回繰り返す前に実施することもできる。
【0073】
材料をリフレッシュする時点は、対応するセンサによって検出されたような観測された二酸化炭素回収容量の関数として動的に選択されてもよいし、収着剤において測定された金属不純物含有量の関数として計算及び/若しくは動的に調整されてもよいし、二酸化炭素回収プロセスにおいて使用される水及び/若しくは蒸気及び/若しくは水蒸気における金属含有量の関数として計算及び/若しくは動的に調整されてもよい。
【0074】
本発明の第3の態様によれば、これは、ガス状二酸化炭素をガス混合物から、好ましくは、前記ガス状二酸化炭素を含有する周囲大気、煙道ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから、並びにガス状二酸化炭素とは異なる更なるガスから、ユニット内での前記ガス状二酸化炭素を吸着する収着材を使用した繰り返しの吸着/脱着によって分離するための、先に記載されているように製造された材料の使用に関する。
【0075】
本発明の第4の態様によれば、これは、好ましくは上記のような方法を使用して調製された、1400ppm未満、好ましくは1200ppm未満、より好ましくは1100ppm未満、最も好ましくは200~1000ppmの範囲の総金属不純物含有量を有する、ガス混合物からの二酸化炭素分離用の吸着剤として使用するための収着材に関する。収着剤は、好ましくは、固体支持体上に固定化された第一級アミン部分若しくは第二級アミン部分又はそれらの組み合わせを含むものであるが、必ずしもそうである必要はない。
【0076】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項に規定されている。
本発明の好ましい実施形態について、以下で図面を参照して説明するが、これは、本発明の好ましい実施形態を説明する目的のものであって、本発明を限定する目的のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】CO
2回収容量と金属含有量との間の相関関係、すなわち、DAC条件下での収着剤のCO
2回収容量に対する金属不純物(Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Ti、Zn)含有量の効果を示す図である。
【
図2】DAC条件下での収着剤のCO
2容量に対する様々な処理(酸-塩基洗浄、溶離力列洗浄、EDTA洗浄、3回の連続的な酸-塩基洗浄)の効果を示す図である。
【
図3】多くの不純物及び少ない不純物を有する収着剤の経年劣化の関数としてのCO
2回収容量の挙動を示す図である。
【
図4】CO
2回収容量を測定する器具を示す図である。
【
図5】DAC条件下での収着剤のCO
2容量に対する脱イオン又は脱塩液体水及び水蒸気処理の効果を示す図である。
【
図6】CO
2回収容量と金属含有量との間の相関関係、すなわち、
図5にも示されているように脱イオン/脱塩液体水及び水蒸気処理に供されたサンプルを含むDAC条件下での収着剤のCO
2回収容量に対する金属不純物(Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Ti、Zn)含有量の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下の実施例では、ベンジルアミン単位で官能化された架橋ポリスチレンビーズ(0.30~1.2mmの範囲の粒径(D50)を有する実質的に球形のビーズ)を使用した。使用した未処理の材料(「受け取ったままの状態」と指定)は、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、Sn、Ti及びZnの含有量を金属不純物含有量の合計として考え、ICP-OESを使用して決定して、1715ppm(重量による)の金属含有量を有する。以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、0.65mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図1及び
図2も参照)。
【0079】
未処理の材料の元素分析は、以下の通りである(元素含有量/重量%):C=78.6;H=8.3;N=11.0。
【0080】
ベンジルアミン単位で官能化されたスチレン-ジビニルベンゼン樹脂の合成手順
1Lの反応器内で、1%(質量比率)のゼラチン及び2%(質量比率)の塩化ナトリウムを340mLの水に45℃で1時間溶解させる。別のフラスコ内で、1gの過酸化ベンゾイルを、57.8gのスチレンと、5.86gのジビニルベンゼン(含有量80%)と、63.84gのC11~C13イソパラフィンとの混合物に溶解させる。次いで、得られた混合物を反応器に添加する。その後、反応混合物を撹拌し、最大70℃に加熱し、その温度を2時間維持し、次いで、温度を80℃に上昇させ、これを3時間保持し、次いで、6時間90℃に上昇させる。反応混合物を室温に冷却し、漏斗ガラスフィルタ及び真空吸引を使用して、ビーズを濾過する。ビーズをトルエンで洗浄し、ロータリーエバポレータで乾燥させる。
【0081】
ポリスチレン-ジビニルベンゼンビーズを、クロロメチル化反応を使用して官能化させる。5gのそのようにして得られたビーズを、50mLのクロロメチルメチルエーテルを含む三つ口フラスコに添加する。混合物を1時間撹拌し、2gの塩化亜鉛を添加し、40℃に加熱し、これを24時間保持する。その後、ビーズを濾過し、25%のHCl及び水で洗浄して、クロロメチル化ビーズを得る。ベンジルアミン単位を得るために、クロロメチル化ビーズを、以下の手順を使用してアミノ化する。クロロメチル化ビーズを27gのメチラールと一緒に三つ口フラスコに添加し、混合物を1時間撹拌する。この混合物に、16gのヘキサメチレンテトラミン及び13gの水を添加し、穏やかな還流下で24時間保持する。ビーズを濾過し、水で洗浄する。第一級アミンを得るためには、加水分解ステップ、続いて塩基による処理が必要とされる。ビーズを、140mLの塩酸(30%)-エタノール(95%)の溶液(1:3の体積比)を含む三つ口フラスコ内に入れ、反応混合物を80℃に加熱し、この温度で20時間保持する。その後、ビーズを濾過し、水で洗浄する。この段階で、アミンはプロトン化され、塩基を遊離させるために、ビーズを50mLのNaOH溶液2Mで処理し、80℃で1時間撹拌する。アミノ化されたビーズを濾過し、脱塩水で中性のpHになるまで洗浄する。
【0082】
手順 酸塩基洗浄
ベンジルアミン単位で官能化された6gのスチレン-ジビニルベンゼン樹脂(受け取ったままの状態の材料)を250mLのビーカー内に入れる。60mLの0.5MのHCl溶液を収着剤に添加し、35℃で24時間撹拌下に置く。懸濁液を濾過し、pH7になるまで脱イオン水で洗浄する。その後、60mLの0.5MのNaOH溶液を250mLのビーカー内の収着剤に添加する。収着剤を35℃で15分間撹拌下で反応させる。収着剤を濾過し、pH7になるまで脱イオン水で洗浄する。
【0083】
得られた酸-塩基洗浄された材料は、ICP-OESを使用して決定して、637ppm(重量による)の金属含有量を有していた。
【0084】
以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、1.78mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図2を参照)。
【0085】
手順 溶離力列
ベンジルアミン単位で官能化された6gのスチレン-ジビニルベンゼン樹脂(受け取ったままの状態の材料)を、底部にフリットを有するクロマトグラフィーカラム内に入れる。60mLのメタノールをカラムに入れ、重力で樹脂に通過させる。メタノールがなくなったら、60mLのアセトンを添加する。アセトンが床にもはや存在しない場合、60mLのn-ヘプタンを添加する。その後、収着剤をペトリ皿に広げる。ペトリ皿を40℃の真空オーブン内に置き、300~400mbarの間の圧力を24時間保持する。
【0086】
得られた溶離力列洗浄された材料は、ICP-OESを使用して決定して、772ppm(重量による)の金属含有量を有していた。
【0087】
以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、1.65mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図2を参照)。
【0088】
EDTAを用いた手順
ベンジルアミン単位で官能化された6gのスチレン-ジビニルベンゼン樹脂(受け取ったままの状態の材料)を250mLのビーカー内に入れる。0.44MのNaOH溶液中に入った60mLの1.0MのEDTAを収着剤に添加し、35℃で24時間撹拌下に置く。懸濁液を濾過し、pH7になるまで脱イオン水で洗浄する。その後、60mLの0.5MのNaOH溶液を250mLのビーカー内の収着剤に添加する。収着剤を35℃で15分間撹拌下で反応させる。収着剤を濾過し、pH7になるまで脱イオン水で洗浄する。
【0089】
得られた酸-塩基洗浄された材料は、ICP-OESを使用して決定して、762ppm(重量による)の金属含有量を有していた。
【0090】
以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、1.80mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図2を参照)。
【0091】
手順 三重の酸塩基洗浄
ベンジルアミン単位で官能化された6gのスチレン-ジビニルベンゼン樹脂(受け取ったままの状態の材料)を250mLのビーカー内に入れる。60mLの0.5MのHCl溶液を収着剤に添加し、35℃で24時間撹拌下に置く。懸濁液を濾過し、pH7になるまで脱イオン水で洗浄する。この酸洗浄ステップをさらに2回繰り返し、そのため、材料は、合計3回洗浄される。その後、60mLの0.5MのNaOH溶液を250mLのビーカー内の収着剤に添加する。収着剤を35℃で15分間撹拌下で反応させる。収着剤を濾過し、pH7になるまで脱イオン水で洗浄する。
【0092】
得られた酸-塩基洗浄された材料は、ICP-OESを使用して決定して、914ppm(重量による)の金属含有量を有していた。
【0093】
以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、2.10mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図2を参照)。
【0094】
水洗浄及び水蒸気処理の比較試験
水洗浄:ベンジルアミン単位で官能化された15gの未処理のスチレン-ジビニルベンゼン樹脂(受け取ったままの状態の材料)を、撹拌子を含む150mLのビーカーに添加した。脱イオン水(150mL)をビーカーに添加し、撹拌を開始し、250rpmで保持した。3時間後に、撹拌を止め、収着剤を、真空ポンプを使用して濾過し、ペトリ皿において25℃で24時間風乾して、約80w/w%の固体含有量にした。
【0095】
得られた液体水洗浄された材料は、ICP-OESを使用して決定して、1560ppm(重量による)の金属含有量を有していた(
図6を参照)。
【0096】
以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、0.46mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図5を参照)。
【0097】
水蒸気処理:ベンジルアミン単位で官能化された15gの未処理のスチレン-ジビニルベンゼン樹脂(受け取ったままの状態の材料)を密閉反応器に添加した。空気(450ppmのCO2、60%のRH)を1時間反応器に通過させた。真空を引いて200mbarに下げ、サンプルを10mL/分の水蒸気流で最大95℃(900mbar)に加熱し、この温度で10分間保持した。真空を引いて、水蒸気システムを取り外すことによって、サンプルを再び冷却して、18℃の温度に達した。このサイクルを3回繰り返した。
【0098】
得られた水蒸気処理された材料は、ICP-OESを使用して決定して、1620ppm(重量による)の金属含有量を有していた(
図6を参照)。
【0099】
以下にさらに記載されているような二酸化炭素容量測定セットアップを使用したところ、この材料は、0.50mmol/gの二酸化炭素容量を有していた(
図5を参照)。
【0100】
図から分かるように、脱イオン化/脱塩された液体水処理も、DAC吸着/脱着プロセスにおける水蒸気処理と同等の水蒸気処理も、本発明による処理の意味合いでの金属不純物含有量及び回収容量のどちらにも影響せず、これは、特許請求されているような金属不純物含有量をもたらすことは決してない。
【0101】
劣化試験
収着材の劣化速度を評価するために、収着剤を約90℃の空気流下で酸化させる。この試験によって、収着剤が経時的にどの程度酸化するかの指標が示される。高い金属含有量(2872ppm)を有するサンプル及び低い金属含有量(514ppm)を有するサンプルの2つのサンプルを実験に使用した。試験は、以下の手順を使用して行う:60gの収着剤を反応器に装入し、100mL/分の合成空気を90℃で収着剤床に通して送る。4日間の曝露後に、サンプルを反応器から取り出し、CO2吸着/脱着装置において試験した。吸着実験は、40mmの内径及び40mmの高さを有するシリンダーに6gの乾燥サンプルを充填し、これをCO2吸着/脱着装置に入れ、これを、30℃の温度に相当する60%の相対湿度を有する、450ppmvのCO2を含有する30℃の2.0NL/分の空気流に600分の期間にわたって曝露することによって行った。吸着前に、収着剤を2.0NL/分の空気流及び/又は窒素流下で94℃に加熱することによって収着剤床を脱着した。
【0102】
酸化したサンプルの吸着容量を、高温の合成空気への曝露前のサンプルの容量と比較する。
図3から分かるように、未処理の収着剤と比較した保持容量の割合は、高い不純物レベル(2872ppm)を有するサンプルよりも、低い金属含有量を有するサンプルの方がはるかに高く、それぞれ57%対40%である。これは、遷移金属が複数のメカニズムを介して酸化反応を触媒することが知られていることに基づいて合理化されている。したがって、これは、
図3に示されているように、不純物レベルが収着剤の劣化に多大な影響を与え、結果的に炭素回収の経済性にも影響を与えるため、不純物レベルを可能な限り低く保持することが極めて重要である。
【0103】
二酸化炭素回収容量特性:
先の例によるビーズを、ビーズが充填床反応器内又は空気透過性層内に含まれる実験器具で試験した。器具は、
図4に概略的に図示されている。周囲空気流入構造1があり、実際の反応器ユニット8は、収着材3の層が内部配置されている容器又は壁7を備える。例えば、水蒸気が脱着に使用される場合、脱着のための流入構造4があり、抽出のための反応器出口5がある。さらに、反応器を脱気するための真空ユニット6がある。
【0104】
吸着測定の場合、6gの乾燥サンプルを、40mmの内径及び40mmの高さを有するシリンダーに充填し、CO2吸着/脱着装置に入れ、これを、30℃の温度に相当する60%の相対湿度を有する、450ppmvのCO2を含有する30℃の2.0NL/分の空気流に600分の期間にわたって曝露した。吸着前に、収着剤を2.0NL/分の空気流下で94℃に加熱することによって収着剤床を脱着した。収着剤上に吸着されたCO2の量は、シリンダーから出る空気流のCO2含有量を測定する赤外線センサの信号を積分することによって決定した。
【0105】
代替的には、吸着剤構造は、までの温度及び50~250mbar(絶対圧)の範囲の真空圧を伴う温度/真空スイング直接空気回収プロセスを使用し、収着剤を60~110℃の温度に加熱することによって操作することができる。さらに、真空の有無にかかわらず、水蒸気を伴う実験を実施した。
【0106】
結果及び解釈:
図2に示されているグラフ表示から分かるように、これらの金属精製方法それぞれについて、受け取ったままの状態の材料と比較して、いずれの場合も未処理の材料の2倍以上で、大幅に増加した二酸化炭素容量値が得られる。また、1つの方法による繰り返し処理によって、又は異なる方法の連続的な使用によっても、さらにより高い二酸化炭素容量がもたらされることが分かる。
【0107】
さらに、
図1から分かるように、収着材におけるppm(重量による)での金属不純物含有量を二酸化炭素容量と相関させると、予想外なことに、金属不純物含有量と二酸化炭素容量との間に、ほぼ直線的な相関関係がある。未処理の材料は、典型的には、少なくとも1600ppmの範囲の金属不純物含有量を有し、その金属不純物含有量を、1400ppm未満、好ましくは1200ppm未満、最も好ましくは1000ppm未満に減少させると、二酸化炭素容量が大幅に増加する。
【0108】
脱イオン/脱塩液体水処理及び水蒸気処理に供された2つのサンプルについてのデータをさらに含む
図6から分かるように、収着材のこの種類の曝露によって、金属含有量の低下はもたらされない。
【符号の説明】
【0109】
1 周囲空気、周囲空気流入構造
2 吸着フロースルーモードにおける吸着ユニットの下流側での周囲空気の流出
3 収着材
4 水蒸気、脱着のための水蒸気流入構造
5 抽出のための反応器出口
6 真空ユニット/セパレータ
7 壁
8 反応器ユニット
【国際調査報告】