(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】経口マイクロニードルパッチ
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20241112BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241112BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241112BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K9/70
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531254
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2022083371
(87)【国際公開番号】W WO2023094637
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021130954.9
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・シュリューター
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リン
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA73
4C076BB22
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC11
4C076CC13
4C076CC15
4C076CC21
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4C076DD37
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4C076DD67
4C076EE06
4C076EE07
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4C076FF39
4C076FF43
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF57
4C076FF61
4C076GG01
(57)【要約】
本発明は、マイクロニードルシステムが、経口薄膜の少なくとも1つの面に適用される、少なくとも1つのポリマーを含有するマトリックス層を含む経口薄膜、このような経口薄膜の製造方法、このような経口薄膜および少なくとも1つのポリマーを含む、経口薄膜および適用補助剤が互いに強固に連結されている経口薄膜用適用補助剤を含む複合体、経口薄膜の製造方法、この複合体の製造方法、ならびに医薬品としての使用のための経口薄膜および複合体に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーを含有するマトリックス層を含む経口薄膜であって、マイクロニードルシステムが、経口薄膜の少なくとも一方の面に適用され、マイクロニードルシステムが、接着層によって経口薄膜の少なくとも一方の面に適用される、経口薄膜。
【請求項2】
少なくとも1つのポリマーは、好ましくは、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースもしくはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリラート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラゲナン、および/または天然ゴムを含む群より選択される水溶性ポリマーを含む、請求項1に記載の経口薄膜。
【請求項3】
マトリックス層および/またはマイクロニードルシステムは、少なくとも1つの医薬品有効成分を含有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項4】
少なくとも1つの医薬品有効成分は、鎮痛薬、ホルモン、睡眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、アンフェタミン、向精神神経薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍薬、抗生物質、化学療法薬、および/または麻薬の有効成分のクラスを含む群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項5】
空洞を有する固化発泡体の形態で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項6】
マイクロニードルシステムは、10~1000μmの長さを有する、好ましくは100μm~600μmの長さを有する、および特に好ましくは250μm~350μmの長さを有するマイクロニードルを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項7】
マイクロニードルシステムは、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースもしくはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラゲナン、および/または天然ゴムをベースとするマイクロニードルシステムである、請求項1~6のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項8】
経口薄膜および/またはマイクロニードルシステムは、着色剤、香味料、甘味料、可塑剤、味覚マスキング剤、乳化剤、増強剤、pH調節剤、湿潤剤、保存料、および/または抗酸化剤を含む群より選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄膜および少なくとも1つのポリマーを含む、経口薄膜および適用補助剤が互いに強固に接合されている経口薄膜用適用補助剤を含む複合体。
【請求項10】
適用補助剤は、経口薄膜の表面積より、少なくとも2倍大きい、好ましくは2~10倍大きい表面積を有する、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
適用補助剤は、1cm
2~30cm
2の表面積を有する、請求項9または10のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項12】
適用補助剤は、少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄膜の製造方法であって、
- 少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの医薬品有効成分を含む経口薄膜を用意する工程と、
- マイクロニードルシステムを用意する工程と、
- マイクロニードルシステムおよび経口薄膜を強固に接合する工程であり、以下の、
- 接着層を経口薄膜の面に適用する工程と、
- マイクロニードルシステムをこの接着層に適用する工程と、
- 接着層を乾燥し、強固な複合体を得る工程と
を含む、工程と
を含む、方法。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか1項に記載の経口薄膜および経口薄膜用適用補助剤を含む複合体の製造方法であって、
- 適用補助剤を用意する工程と、
- 経口薄膜を用意する工程と、
- 適用補助剤を経口薄膜に強固に接合する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
経口薄膜および適用補助剤を強固に接合することは、以下の、
- 経口薄膜および/または適用補助剤をそれぞれの少なくとも1つのポリマーの軟化温度を超える温度まで加熱する工程と、
- 経口薄膜を適用補助剤の面に適用し、緩い複合体を得る工程と、
- 緩い複合体を冷却し、強固な複合体を得る工程と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
適用補助剤および経口薄膜を強固に接合することは、以下の、
- 接着層を経口薄膜の面または適用補助剤の面に適用する工程と、
- 適用補助剤および経口薄膜をこの接着層によって接合する工程と、
- 接着層を乾燥し、強固な複合体を得る工程と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
医薬品としての使用のための請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄膜または請求項13に記載の方法によって得られる経口薄膜。
【請求項18】
医薬品としての使用のための請求項9~12のいずれか1項に記載の複合体または請求項15もしくは16のいずれか1項に記載の方法によって得られる複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口薄膜、このような経口薄膜の製造方法、前記経口薄膜および適用補助剤を含む複合体、前記複合体の製造方法、ならびに医薬品としての使用のための前記経口薄膜または前記複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
経口薄膜は、通常、医薬品有効成分を含有する薄膜であり、薄膜は口腔中に直接置かれ、または口腔粘膜に適用され、そこで溶解する。具体的には、これらの経口薄膜は、有効成分を含有するポリマーをベースとする薄膜であり、粘膜に、特に口腔粘膜に適用される際、有効成分を粘膜中に直接放出する。これらの経口薄膜は、一般的に、外側が粘着性ではない。口腔粘膜の良好な血液循環によって、有効成分が血流中に迅速に吸収されることが確実になる。この投与システムは、有効成分が粘膜を介して大部分吸収され、したがって、不利となり得る、通常、液体と共に服用される錠剤形態における有効成分の従来の投与形態で起こる「初回通過代謝」を回避するという利点を有する。有効成分は、膜に溶解され、乳化され、または分散される。好適な有効成分はまた、口の中で経口薄膜が溶解した後に飲み込むこともでき、したがって消化管を介して吸収される。
【0003】
しかし、その大きさまたは疎水性などの他の特性のために、口腔粘膜を介して適用されない医薬品有効成分が多数存在する。口腔粘膜は、これらの医薬品有効成分に対して乗り越えられない障壁を形成する。
【0004】
したがって、本発明は、これらの不利を克服する経口薄膜を提供するという課題に基づくものであったが、この投与経路では以前は到達できなかった有効成分が、それを用いて口腔粘膜を介しても適用される。
【0005】
この課題は、請求項1による経口薄膜によって解決された。このような経口薄膜は、少なくとも1つのポリマーを含有するマトリックス層を含み、マイクロニードルシステムが、前記経口薄膜の少なくとも一方の面に適用されることを特徴とし、このマイクロニードルシステムは、接着層によって前記経口薄膜の少なくとも一方の面に適用される。
【0006】
マイクロニードルは、口腔粘膜を貫通でき、したがって医薬品有効成分がこの口腔粘膜をより容易に貫通できるように、その抵抗を減少させる。
【0007】
経口薄膜の適用は、問題となる場合がある。経口薄膜の形、大きさ、特性、および所期の適用部位のために、さらに使用者の障害のために、所望の部位への経口薄膜の適用において、困難が生じることもある。特に有効成分流速を増加させるために一方の面にマイクロニードルを備える経口薄膜の場合、いかなる適用の前にもこれらのマイクロニードルが損傷されないことは重要である。
【0008】
これらの不利は、経口薄膜用適用補助剤によって排除される。
【0009】
従来の適用補助剤はこの問題を改善し得るが、これらの適用補助剤は、通常、難儀して経口薄膜から取り外す必要があり、および/または、複雑な構造を有している。使用者が適用補助剤を不注意に飲み込むというリスクもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本出願は、上記の不利を克服する経口薄膜のための適用補助剤を提供するという課題に基づくものでもあった。適用補助剤は、経口薄膜を所望の部位に適用するために、高い触覚安定性(haptic stability)を有するべきである。さらに、適用補助剤を飲み込むというリスクは総じて最小限にするべきであり、使用者が適用前に経口薄膜を破壊し、または損傷するというリスクは最小限にするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、驚くべきことに、請求項9による複合体によって、すなわち、本発明による経口薄膜および少なくとも1つのポリマーを含む、経口薄膜および適用補助剤が互いに強固に接合されることを特徴とする経口薄膜用適用補助剤を含む複合体によって解決される。
【0012】
このような接合の利点は、経口薄膜を適用するために、使用者が経口薄膜自体に触れる必要がないということである。接触は、適用補助剤を介してのみ行われることが好ましい。さらに、好ましい実施形態において、適用補助剤は、使用者の口腔中で溶解するように設計される。適用補助剤との強固な接合により、一方の面にマイクロニードルを備える経口薄膜は、有利に適用される。
【0013】
一実施形態の全ての特徴は、異なる実施形態の特徴が相容れないものではない場合、別の実施形態の特徴と組み合わせられる。
【0014】
本開示の記述に使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを意図し、主題を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、文脈によって明示されない限り、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」は、複数形も含むものと理解されたい。これは逆も同様に適用し、すなわち、複数形もまた、単数形を含む。本明細書では、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたはそれ以上の全ての可能な組合せを指し、含むことも理解される。さらに、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含む(comprise)」、および/または「含むこと(comprising)」という用語は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、特定の特徴、工程、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたはそれ以上の他の特徴、工程、要素、構成要素、および/またはその群の存在または追加を排除しないことも理解されたい。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲では、「含む(include)」、「含む(comprise)」、および/または「含むこと(comprising)」という用語はまた、「からなること(consisting of)」も意味することがあり、すなわち、1つまたはそれ以上の他の特徴、工程、要素、構成要素、および/または群の存在または追加は排除される。
【0016】
本発明による経口薄膜は、少なくとも1つのポリマーを含有するマトリックス層を含み、マイクロニードルシステムが、前記経口薄膜の少なくとも一方の面に適用される。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明による経口薄膜は、マトリックス層およびマイクロニードルシステムからなる。
【0018】
マイクロニードルアレイとしても知られるマイクロニードルシステムは、支持体に複数のマイクロニードルを含むシステムを含むことが好ましい。
【0019】
支持体は、少なくとも1つのポリマーを含むことが好ましい。
【0020】
ニードルは、5μm~1000μmの長さを有することが好ましい。
【0021】
ニードルの密度は、cm2あたり50~1000、特に100~600ニードルであることが好ましい。
【0022】
マイクロニードルシステムは、経口薄膜の少なくとも一方の、好ましくは正確に一方の面に適用されることが好ましい。
【0023】
マイクロニードルシステムが適用される面は、経口薄膜の最も大きい面であることが好ましい。
【0024】
一実施形態において、マイクロニードルシステムは、経口薄膜よりも大きい。
【0025】
一実施形態において、マイクロニードルシステムは、経口薄膜よりも小さい。
【0026】
一実施形態において、マイクロニードルシステムおよび経口薄膜は、ほぼ同じ大きさである。
【0027】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、水溶性ポリマーを含む。
【0028】
水溶性ポリマーは、化学的にかなり異なる天然ポリマーまたは合成ポリマーを含み、その共通の特徴は、これらの水または水性媒体への溶解度である。前提条件は、これらのポリマーが、水溶性に十分な数の親水性基を有し、架橋されていないことである。親水性基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または双性イオン性であってもよい。
【0029】
水溶性は、25℃の水中で100g/Lを超える溶解度を意味すると理解されることが好ましい。
【0030】
少なくとも1つの水溶性ポリマーは、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースもしくはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリラート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラゲナン、および/または天然ゴムを含む群より選択されることが好ましい。
【0031】
本発明による経口薄膜は、少なくとも1つのポリマー、好ましくは水溶性ポリマーが、前記マトリックス層の総重量に対して、10~100%(w/w)、または30~95%(w/w)、好ましくは60~90%(w/w)、特に好ましくは70~90%(w/w)の量でマトリックス層に存在することを特徴とすることが好ましい。
【0032】
一実施形態において、本発明による経口薄膜は、マトリックス層が、少なくとも1つの医薬品有効成分を含有することを特徴とすることがさらに好ましい。
【0033】
一実施形態において、本発明による経口薄膜は、マイクロニードルシステムが、少なくとも1つの医薬品有効成分を含むことを特徴とすることがさらに好ましい。
【0034】
一実施形態において、本発明による経口薄膜は、マトリックス層および/またはマイクロニードルシステムが、少なくとも1つの医薬品有効成分を含有することを特徴とすることがさらに好ましい。この実施形態において、マトリックス層およびマイクロニードルシステムは、同じ医薬品有効成分を含有してもよく、またはこれらは、それぞれ異なる医薬品有効成分を含有してもよい。
【0035】
少なくとも1つの医薬品有効成分の量は、マトリックス層の総重量に対して、1~60%(w/w)、好ましくは約1~40%(w/w)であることが好ましい。
【0036】
少なくとも1つの医薬品有効成分の絶対量は、1μg~100mg、特に1μg~10mgであることが好ましい。
【0037】
少なくとも1つの医薬品有効成分は、原則として制限されない。
【0038】
少なくとも1つの医薬品有効成分は、鎮痛薬、ホルモン、睡眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、アンフェタミン、向精神神経薬(psychoneurotropic agents)、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍薬、抗生物質、ワクチン、化学療法薬および/または麻薬の有効成分のクラスを含む群より選択されることが好ましい。
【0039】
具体例は、アセトアミノフェン、アドレナリン、アルプラゾラム、アムロジピン、アナストロゾール、アポモルヒネ、アリピプラゾール、アトルバスタチン、バクロフェン、ベンゾカイン、ベンゾカイン/メントール、ベンジダミン、ブプレノルフィン、ブプレノルフィン/ナロキソン、ブプレノルフィン/ナロキソン/セチリジン、セチリジン、クロルフェニラミン、クロミプラミン、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン/フェニレフリン、ジクロフェナク、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン/フェニレフリン、ドネペジル、ドロナビノール、エピネフリン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェンタニル、グリメピリド、GLP-1ペプチド、グラニセトロン、インスリン、インスリンナノ粒子、インスリン/GLP-1ナノ粒子、ケタミン、ケトプロフェン、ケトチフェン、カフェイン、レボセチリジン、ロペラミド、ロラタジン、メクリジン、メチルフェニデート、ミダゾラム、ミロデナフィル(mirodenafil)、モンテルカスト、マルチメリック-001(multimeric-001)、ナロキソン、ニコチン、ニトログリセリン、オランザピン、オロパタジン、オンダンセトロン、オキシブチニン、ペクチン、ペクチン/メントール、ペクチン/アスコルビン酸、pediaSUNAT(アルテスナートおよびアモジアキン)、ピロキシカム、フェニレフリン、プレドニゾロン、プソイドエフェドリン、リスペリドン、リバスチグミン、リザトリプタン、セレギリン、センナ配糖体、クエン酸シルデナフィル、シメチコン、スマトリプタン、タダラフィル、テストステロン、トリアムシノロンアセトニド、トリプタン、トロピカミド、ボグリボース、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ならびに/または薬学的に許容されるこれらの化合物の塩を含む。
【0040】
医薬品有効成分はまた、異なる有効成分の混合物であってもよい。
【0041】
一実施形態において、経口薄膜、特にマトリックス層は、平滑な膜の形態で存在する。
【0042】
平滑な膜は、発泡体の形態ではなく、補助器具を用いることなく、または増幅することなく光学的に分析されたときに、いかなる顕著なむらも示さないということを特徴とすることが好ましい。膜は、例えば、ポリマー含有溶液、ポリマー含有乳剤、ポリマー含有懸濁液、またはポリマー含有溶解物を広げ、乾燥することによって製造される。
【0043】
別の実施形態において、経口薄膜、特にマトリックス層は、空洞を有する固化発泡体の形態で存在する。
【0044】
膜の空洞および関連する表面積が大きいことによって、水もしくは唾液または他の体液が投与形態の内部に到達することが促進され、したがって投与形態の溶解および有効成分の放出が加速する。
【0045】
急速吸収有効成分の場合、経粘膜吸収もまた、急速な溶解により改善される。
【0046】
その一方で、これらの空洞は固化した泡を表すので、例えば、これらの空洞が迅速に溶解し、または迅速に破壊されるように、言及した空洞の壁の厚さは低いことが好ましい。
【0047】
この実施形態のさらなる利点は、発泡体としての製造により、単位面積あたりの重量が比較的に高いもかかわらず、比較できる非発泡組成物を用いるよりも速い乾燥時間が得られることである。
【0048】
経口薄膜は、空洞が互いから隔離され、好ましくは泡の形態であることを特徴とすることが好ましく、空洞が空気またはガスで、好ましくは不活性ガスで、特に好ましくは窒素、二酸化炭素、ヘリウム、またはこれらのガスのうちの少なくとも2つの混合物で充填される。
【0049】
別の実施形態によれば、好ましくはマトリックスを貫通するつながったチャネルシステムを形成することによって空洞が互いに連結されることが提供される。
【0050】
前述の空洞は、マトリックス層の総体積に対して、5~98%、好ましくは50~80%の体積分率を有することが好ましい。このようにして、マトリックス層の溶解を加速することの有利な効果は、都合よく影響を受ける。
【0051】
さらに、表面活性物質もしくは界面活性剤が、発泡体形成のためにマトリックス層に添加され、または乾燥の前もしくは後の発泡体の安定性を改善するために、乾燥の前もしくは後の得られた発泡体に添加される。
【0052】
本発明による投与形態の特性に影響を及ぼす別のパラメータは、空洞または泡の直径である。泡または空洞は、発泡体泡立てマシンを用いて製造されることが好ましく、それを用いて泡の直径はほとんど意のままに広範囲に調整される。したがって、泡または空洞の直径は、0.01~350μmの範囲にわたり得る。直径は、10~200μmの範囲であることが特に好ましい。
【0053】
本発明による経口薄膜、より正確にはマトリックス層は、0.5cm2~10cm2、特に好ましくは1.5cm2~7.5cm2の表面積を有することが好ましい。
【0054】
本発明による経口薄膜、より正確にはマトリックス層は、経口薄膜、より正確にはマトリックス層の単位面積あたりの重量が、10~500g/m2、好ましくは100~400g/m2であることを特徴とすることが好ましい。
【0055】
経口薄膜、より正確にはマトリックス層の単位面積あたりの重量は、好ましくは少なくとも10g/m2、より好ましくは少なくとも20g/m2、もしくは少なくとも30g/m2、もしくは最も好ましくは少なくとも50g/m2であり、または400g/m2以下、より好ましくは350g/m2以下、もしくは300g/m2以下、もしくは最も好ましくは150g/m2以下である。経口薄膜、より正確にはマトリックス層の単位面積あたりの重量は、10~400g/m2、より好ましくは20~350g/m2、または30~300g/m2、および最も好ましくは50~150g/m2であることが好ましい。
【0056】
経口薄膜またはマトリックス層は、約20μm~約500μm、特に好ましくは約50μm~約300μmの層厚さを有することが好ましい。
【0057】
マイクロニードルシステムは、10~1000μmの長さを有する、好ましくは100μm~600μm、特に好ましくは250μm~350μmの長さを有するマイクロニードルを含むことが好ましい。
【0058】
さらに、マイクロニードルシステムは、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースもしくはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラゲナン、および/または天然ゴムをベースとするマイクロニードルシステムであることが好ましく、この群は網羅的ではない。
【0059】
マイクロニードルは、支持体にも存在するポリマーを含むことが好ましい。
【0060】
マイクロニードルは、経口薄膜、特にマトリックス層にも存在するポリマーを含むことが好ましい。
【0061】
マイクロニードルの支持体は、経口薄膜、特にマトリックス層にも存在するポリマーを含むことが好ましい。
【0062】
マイクロニードルおよびこれらの支持体は、経口薄膜、特にマトリックス層にも存在するポリマーを含むことが好ましい。
【0063】
具体的な実施形態において、マイクロニードルシステムはまた、セラミック、スチール、ポリマー、および/またはSiO2などの材料からもなり得る。
【0064】
好ましい実施形態において、経口薄膜および/またはマイクロニードルシステムは、着色剤、香味料、甘味料、可塑剤、味覚マスキング剤(taste-masking agents)、乳化剤、増強剤、pH調節剤、湿潤剤、保存料、および/または抗酸化剤を含む群より選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0065】
これらの添加剤は、それぞれ、経口薄膜またはマイクロニードルシステムに、0.1~30.0%(w/w)の量で含有されることが好ましい。
【0066】
一実施形態において、マイクロニードルを有する経口薄膜はまた、経口薄膜およびマイクロニードルが一体化となるように、経口薄膜の製造時にマイクロニードルのネガ型(negative mold)を使用することによっても製造される。
【0067】
あるいは、マイクロニードルシステムは、別々に製造され、任意の好適な接着手段を使用して経口薄膜に接着される。
【0068】
マイクロニードルシステムおよび経口薄膜は、例えば、接着層、好ましくは水溶性接着層によって、および/またはシール、好ましくはヒートシールによって接合される。
【0069】
シールは、エンボス加工および/またはヒートシールによって接合することを含むが、それだけに限定されない。
【0070】
ヒートシールは、点状の加熱および加圧によってマイクロニードルシステムおよび経口薄膜を接合することを指す。点状の加熱によって、マイクロニードルシステムまたは経口薄膜に存在する少なくとも1つのポリマーが軟化され、または融解され、それにより再冷却の後、強固な接合となる。温度は、それぞれのポリマーの融解温度またはガラス転移温度を超える温度まで点状に(punctiformly)上昇されることが好ましい。
【0071】
ヒートシールの通常の温度は、約50℃~200℃である。
【0072】
ヒートシールは、約50℃~200℃の温度で、約5秒間、より好ましくは約3秒間、および最も好ましくは約2秒間以下で行われることが好ましい。
【0073】
マイクロニードルシステムは、接着層、特に水溶性接着層によって経口薄膜の少なくとも一方の面に適用される。
【0074】
水溶性は、本明細書では、上記で定義されているように理解されるものとする。
【0075】
水溶性接着層は、DE102014127452A1に記載されているように、接着層として特に好適であり、この関連内容は全て本明細書に含まれる。
【0076】
好適な接着層は、少なくとも1つの水溶性ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含み、少なくとも1つの水溶性接着層中の少なくとも1つの水溶性ポリマーは、シェラック、ビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドンを含み、少なくとも1つの水溶性接着層中の少なくとも1つの可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、特にポリエチレングリコール200、および/またはクエン酸トリブチルを含む。少なくとも1つの接着層における少なくとも1つの水溶性ポリマーの少なくとも1つの可塑剤に対する重量比は、約85対50~約15対50であることが好ましい。
【0077】
少なくとも1つの水溶性ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含有するこのような接着層は、中間の水溶性接着層として、それら自身が粘着性ではない2つのさらなる層を互いに強固に接着でき、したがって多層複合体を形成することが可能になる。
【0078】
原則として、経口薄膜は、経口薄膜が含有できる層の数に制限されない。
【0079】
したがって、経口薄膜がさらなる層を含む実施形態が考えられる。上記の定義は、他の層にも類似的に適用する。
【0080】
本発明はさらに、上記のような経口薄膜および経口薄膜用適用補助剤を含む複合体にも関する。
【0081】
適用補助剤は、少なくとも1つのポリマーを含み、経口薄膜に強固に接合される。
【0082】
適用補助剤は、マイクロニードルシステムが適用されない面で経口薄膜に接合されることを理解されたい。
【0083】
「適用補助剤」という用語は、本明細書では、可能な限り広範な意味において理解される。
【0084】
適用補助剤は、その表面に経口薄膜が強固に接着される、0.1mm~4mmの好ましい厚さ、特に0.1mm~2mm、または0.5mm~2mm、または100μm~500μmの平坦な構造を含むことが好ましい。
【0085】
適用補助剤は、いかなる形態もとることができる。例えば、適用補助剤は、本質的に円形、卵形、または楕円形とすることができる。
【0086】
しかし、適用補助剤はまた、必要に応じて丸みのある角と共に、三角形または四角形とすることもできる。必要に応じて丸みのある角と共に考えられる他の多角形の形もまた可能である。
【0087】
混合した形態も可能であり、適用補助剤は総じてテニスラケットの形に似ている形を有するように、例えば、第1の円形の領域、卵形の領域、または楕円形の領域、および、例えば、この第1の領域に接着している帯状、三角形、または四角形(多角形も同様)である第2の領域を有し、第2の領域は、本明細書では、好ましくは「ハンドル」として機能し、第1の領域は経口薄膜を保持するように機能する。
【0088】
この場合、「強固に接合される」は、使用者が膜を破壊しなければ接合を離すことができないように、適用補助剤および経口薄膜が互いに接合されることを意味する。この接合はまた、より長い期間保存しても損なわれるべきではない。
【0089】
本発明による複合体は、適用補助剤が第1の領域および第2の領域を含むことを特徴とすることが好ましい。
【0090】
経口薄膜は、適用補助剤の第1の領域に配置されることが好ましい。
【0091】
適用補助剤の第2の領域は、経口薄膜が触れられないように使用者が適用補助剤に触れることができるよう設計されることが好ましい。
【0092】
経口薄膜は、適用補助剤の面の初めの3分の1または初めの半分に接着されることが好ましい。こうすると、適用補助剤の3分の2または後の半分が自由になり、それにより経口薄膜を適用するための「ハンドル」として機能することができる。
【0093】
本発明による複合体は、適用補助剤が、経口薄膜の表面積より、少なくとも2倍大きい、好ましくは2~10倍または2~4倍大きい表面積を有することを特徴とすることが好ましい。
【0094】
可能な実施形態において、適用補助剤は、1cm2~30cm2、好ましくは2cm2~15cm2、または2cm2~10cm2の表面積を有する。
【0095】
可能な実施形態において、経口薄膜は、0.3cm2~10cm2、好ましくは0.5cm2~7cm2の表面積を有する。
【0096】
可能な実施形態において、適用補助剤は、1cm~10cm、好ましくは2cm~5cmの長さを有する。
【0097】
可能な実施形態において、適用補助剤は、0.5cm~5cm、好ましくは1cm~3cmの幅を有する。
【0098】
可能な実施形態において、経口薄膜は、0.5cm~5cm、好ましくは1cm~4cmの長さを有する。
【0099】
可能な実施形態において、経口薄膜は、0.5cm~4cm、好ましくは1cm~4cmの幅を有する。
【0100】
可能な実施形態において、適用補助剤は、0.1mm~4mm、好ましくは0.1mm~2mm、または100μm~500μmの厚さを有する。
【0101】
可能な実施形態において、経口薄膜は、0.01mm~2mm、好ましくは0.05mm~1mm、または100μm~400μmの厚さを有する。
【0102】
可能な実施形態において、適用補助剤は、20g/m2~800g/m2、より具体的には20g/m2~500g/m2の単位面積あたりの重量を有する。
【0103】
可能な実施形態において、経口薄膜は、10g/m2~600g/m2、好ましくは10g/m2~400g/m2の単位面積あたりの重量を有する。
【0104】
適用補助剤は、単層または多層に形成される。
【0105】
本発明による複合体は、適用補助剤が少なくとも1つの水溶性ポリマーを含むことを特徴とすることが好ましい。
【0106】
水溶性ポリマーは、化学的にかなり異なる天然ポリマーまたは合成ポリマーを含み、その共通の特徴は、これらの水または水性媒体への溶解度である。前提条件は、これらのポリマーが、水溶性に十分な数の親水性基を有し、架橋されていないことである。親水性基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または双性イオン性であってもよい。
【0107】
水溶性は、25℃の水中で100g/Lを超える溶解度を意味すると理解されることが好ましい。
【0108】
少なくとも1つの水溶性ポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースもしくはプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリラート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラゲナン、ならびに/または天然ゴムからなる群より選択されることが好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0109】
本発明による複合体は、少なくとも1つのポリマー、好ましくは水溶性ポリマーが、適用補助剤の総重量に対して、10~100%(w/w)、または10~95%(w/w)、好ましくは60~90%(w/w)、特に好ましくは80~90%(w/w)の量でマトリックス層に存在することを特徴とすることが好ましい。
【0110】
本発明による複合体は、適用補助剤が総じて水溶性であることを特徴とすることが好ましい。ここでまた、水溶性は、25℃の水中で100g/Lを超える溶解度を意味すると理解されることが好ましい。
【0111】
本発明による複合体は、適用補助剤が、芳香(aroma)、味覚マスキング剤(taste masking agent)、および/または麻酔剤もしくは局所麻酔剤を含むことを特徴とすることが好ましい。
【0112】
麻酔剤または局所麻酔剤として、リドカインなどのアミノアミド、プロカイン、ホモカイン、キニソカイン、またはシクロニン(cyclonine)などのアミノエステルが、本明細書では好適である。
【0113】
これらの麻酔剤または局所麻酔剤は、適用補助剤の総重量に対して、0.1~10%(w/w)または0.1~5%(w/w)の量で含有されることが好ましい。
【0114】
本発明による複合体は、適用補助剤が、着色剤、甘味料、可塑剤、乳化剤、増強剤、pH調節剤、湿潤剤、保存料、および/または抗酸化剤を含む群より選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含むことを特徴とすることが好ましい。
【0115】
これらの添加剤のそれぞれは、適用補助剤の総重量に対して、好ましくは0.1~40%(w/w)、特に好ましくは0.1~30%(w/w)、より特に好ましくは0.1~15%(w/w)、およびさらにより好ましくは0.1~10%(w/w)、または0.1~5%(w/w)の量で存在する。
【0116】
具体的には、適用補助剤の安定性は、可塑剤含有量によって調整される。
【0117】
好適な可塑剤には、例えば、グリセリンが含まれる。
【0118】
可塑剤は、適用補助剤の総重量に対して、0.1~15%(w/w)、最も好ましくは0.1~10%(w/w)、または0.1~5%(w/w)、特に約5%(w/w)の量で存在することが好ましい。
【0119】
本発明による複合体は、適用補助剤が、できる限り平滑である膜の形態であることを特徴とすることが好ましい。
【0120】
別の実施形態において、本発明による複合体は、適用補助剤が、空洞を有する固化発泡体の形態であることを特徴とする。
【0121】
適用補助剤の空洞および関連する表面積がより大きいことによって、水もしくは唾液または他の体液が適用補助剤の内部に到達することが特に促進され、したがって適用補助剤の溶解が加速する。
【0122】
その一方で、これらの空洞は固化した泡を表すので、例えば、これらの空洞が迅速に溶解し、または迅速に破壊されるように、言及した空洞の壁の厚さは低いことが好ましい。
【0123】
この実施形態のさらなる利点は、発泡体としての製造により、単位面積あたりの重量が比較的に高いもかかわらず、比較できる非発泡組成物を用いるよりも速い乾燥時間が得られることである。
【0124】
本発明による複合体は、空洞が互いから隔離され、好ましくは泡の形態であることを特徴とすることが好ましく、空洞は、空気またはガスで、好ましくは不活性ガスで、特に好ましくは窒素、二酸化炭素、ヘリウム、またはこれらのガスのうちの少なくとも2つの混合物で充填される。
【0125】
別の実施形態によれば、好ましくはマトリックスを貫通するつながったチャネルシステムを形成することによって空洞が互いに連結されることが提供される。
【0126】
前述の空洞は、適用補助剤の総体積に対して、5~98%、好ましくは50~80%の体積分率を有することが好ましい。このようにして、適用補助剤の溶液は、好ましい形で影響を受ける。
【0127】
さらに、表面活性物質もしくは界面活性剤が、発泡体形成のために適用補助剤に添加され、または乾燥の前もしくは後の発泡体の安定性を改善するために、乾燥の前もしくは後の得られた発泡体に添加される。
【0128】
本発明による適用補助剤の特性に影響を及ぼす別のパラメータは、空洞または泡の直径である。泡または空洞は、発泡体泡立てマシンを用いて製造されることが好ましく、それを用いて泡の直径はほとんど意のままに広範囲に調整される。したがって、泡または空洞の直径は、0.01~350μmの範囲にわたり得る。直径は、10~200μmの範囲であることが特に好ましい。
【0129】
本発明による複合体は、適用補助剤および経口薄膜が、接着層、好ましくは水溶性接着層によって、ならびに/または、シール、好ましくはヒートシールによって互いに接合されることを特徴とすることが好ましい。
【0130】
接着層は、DIN EN923:2016-03に定義されているように、接着剤として作用できる層と理解される。
【0131】
水溶性接着層は、DE102014127452A1に記載されているように、接着層として特に好適であり、この関連内容は全て本明細書に含まれる。
【0132】
好適な接着層は、少なくとも1つの水溶性ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含み、少なくとも1つの水溶性接着層中の少なくとも1つの水溶性ポリマーは、シェラック、ビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドンを含み、少なくとも1つの水溶性接着層中の少なくとも1つの可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、特にポリエチレングリコール200、および/またはクエン酸トリブチルを含む。少なくとも1つの接着層における少なくとも1つの水溶性ポリマーの少なくとも1つの可塑剤に対する重量比は、約85対50~約15対50であることが好ましい。
【0133】
少なくとも1つの水溶性ポリマーおよび少なくとも1つの可塑剤を含有するこのような接着層は、中間の水溶性接着層として、それら自身が粘着性ではない2つのさらなる層を互いに強固に接着でき、したがって多層複合体を形成することが可能になる。
【0134】
シールは、適用補助剤および経口薄膜が互いに接合される任意の可能な方法を意味すると理解される。しかし、これは結論的に(concludingly)、エンボス加工および/またはヒートシールによる接合を含まない。
【0135】
ヒートシールは、点状の加熱および加圧によって適用補助剤および経口薄膜を接合することを指す。点状の加熱によって、適用補助剤または経口薄膜に存在する少なくとも1つのポリマーが融解され、それにより再冷却の後、強固な接合となる。温度は、それぞれのポリマーの融解温度またはガラス転移温度を超える温度まで点状に(punctiformly)上昇されることが好ましい。
【0136】
ヒートシールの通常の温度は、約50℃~200℃である。
【0137】
ヒートシールは、約50℃~200℃の温度で、約5秒間、好ましくは約3秒間、および特に好ましくは約2秒間以下で行われることが好ましい。
【0138】
本発明による複合体は、適用補助材が、10秒~5分、好ましくは30秒~3分以内に患者の口腔中で溶解することを特徴とすることがさらに好ましい。
【0139】
本発明による複合体は、適用補助剤および経口薄膜が、10秒~5分、好ましくは30秒~2分以内に患者の口腔中で溶解することを特徴とすることがさらに好ましい。
【0140】
本発明はまた、上記のような経口薄膜の製造方法であって、
- 少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの医薬品有効成分を含む経口薄膜を用意する工程と、
- マイクロニードルシステムを用意する工程と、
- マイクロニードルシステムおよび経口薄膜を強固に接合する工程であり、以下の、
- 接着層を経口薄膜の面に適用する工程と、
- マイクロニードルシステムをこの接着層に適用する工程と、
- 接着層を乾燥し、強固な複合体を得る工程と
を含む、工程と
を含む、方法にも関する。
【0141】
経口薄膜について、マイクロニードルシステム、および接着層についての上記の全ての実施形態および定義は、上記のような経口薄膜の製造方法にも類似的に適用する。
【0142】
マイクロニードルシステムと経口薄膜のどちらが第1の工程で用意されるかは、問題ではない。
【0143】
経口薄膜が発泡体の形態で存在する場合、方法はまた、ガスもしくはガス混合物を導入することによって、化学ガスを発生させることによって、または溶解ガスを膨張させることによって、溶液、乳剤、溶解物、または懸濁液を起泡する工程を含む。
【0144】
この場合、「強固に接合される」は、使用者が膜を破壊しなければ接合を離すことができないように、マイクロニードルシステムおよび経口薄膜が互いに接合されることを意味することが好ましい。この接合はまた、より長い期間保存しても損なわれるべきではない。
【0145】
特に上記のような経口薄膜の代替の製造方法は、マイクロニードルシステムおよび経口薄膜の間の強固な接合を形成するために、以下の:
- 経口薄膜を少なくとも1つのポリマーの軟化温度を超える温度まで加熱する工程と、
- マイクロニードルシステムを加熱された経口薄膜の面に適用し、緩い複合体を得る工程と、
- 緩い複合体を冷却し、強固な複合体を得る工程と
を含むことが好ましい。
【0146】
加熱は、好ましくは約0.5~5分間、50~100℃の温度まで加熱することを含むことが好ましい。
【0147】
本発明はさらに、上記の方法によって得られる経口薄膜にも関する。
【0148】
本発明はまた、上記のような経口薄膜および上記のような経口薄膜用適用補助剤を含む複合体の製造方法であって:
- 適用補助剤を用意する工程と、
- 経口薄膜を用意する工程と、
- 適用補助剤を経口薄膜に強固に接合する工程と
を含む、方法にも関する。
【0149】
複合体、経口薄膜および適用補助剤について上記で定義されている全ての実施形態は、本発明による方法にも類似的に適用する。
【0150】
適用補助剤と経口薄膜のどちらが第1の工程で用意されるかは、問題ではない。
【0151】
適用補助剤および/または経口薄膜は、それぞれに、適用補助剤または経口薄膜の全ての成分を含む溶液、エマルション、溶解物、または懸濁液を製造することに続いて、この溶液、エマルション、溶解物、または懸濁液を広げ、乾燥することを含む方法によって用意されることが好ましい。
【0152】
全ての好適な形は、これらの乾燥した溶液、エマルション、溶解物、または懸濁液から、切り抜かれるか、または打ち抜かれる。
【0153】
適用補助剤および/または経口薄膜が発泡体の形態で存在する場合、方法はまた、ガスもしくはガス混合物を導入することによって、化学ガスを発生させることによって、または溶解ガスを膨張させることによって、溶液、エマルション、溶解物、または懸濁液を起泡する工程も含む。
【0154】
上記のような複合体の製造方法は、適用補助剤および経口薄膜の間の強固な接合を形成するために、以下の:
- 経口薄膜および/または適用補助剤をそれぞれの少なくとも1つのポリマーの軟化温度を超える温度まで加熱する工程と、
- 経口薄膜を適用補助剤の面に適用し、緩い複合体を得る工程と、
- 緩い複合体を冷却し、強固な複合体を得る工程と
を含むことが好ましい。
【0155】
本明細書では、加熱は、好ましくは約0.5~5分間、50~100℃の温度まで加熱することを含むことが好ましい。
【0156】
上記のような複合体の代替の製造方法は、適用補助剤および経口薄膜の間の強固な接合を形成するために、以下の:
- 接着層を経口薄膜の面または適用補助剤の面に適用する工程と、
- 経口薄膜および適用補助剤をこの接着層によって接合する工程と、
- 接着層を乾燥し、強固な複合体を得る工程と
を含むことが好ましい。
【0157】
接着層は、上記で定義されているように理解されるものとする。
【0158】
さらに、本発明は、医薬品としての上記のような経口薄膜または上記の方法によって得られる経口薄膜にも関する。
【0159】
さらに、本発明は、医薬品としての上記のような複合体または上記の方法によって得られる複合体にも関する。
【0160】
複合体、経口薄膜、および適用補助剤について上記で定義されている全ての実施形態は、本発明による医療的用途にも類似的に適用する。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【
図2】マイクロニードルシステム(8)を備えた経口薄膜(7)を示す。
【
図3】経口薄膜および経口薄膜のための適用補助剤を含む複合体の可能な実施形態を示す。
【
図4】経口薄膜および経口薄膜のための適用補助剤を含む複合体の別の可能な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0162】
図面の説明:
図1:
図1は、経口薄膜の可能な設計を示す。膜は、マイクロニードル(5)がその上に適用される経口薄膜(3)である。これらのマイクロニードル(5)は、接着層(4)で経口薄膜に適用されるか、または代替の接着手段を使用して経口薄膜上に接着される。
【0163】
図2:
図2は、マイクロニードルシステム(8)を備えた経口薄膜(7)を示す。ここで、経口薄膜は、マイクロニードルシステムよりも大きい。
【0164】
図3:
図3は、経口薄膜および経口薄膜のための適用補助剤を含む複合体の可能な実施形態を示す。複合体は、経口薄膜が配置される適用補助剤の第1の領域、および経口薄膜が触れられないように使用者が適用補助剤に触れることができるように設計される適用補助剤の第2の領域を有する。
【0165】
接着層(2)は適用補助剤(1)に適用され、その第1の領域に経口薄膜(3)が適用される。場合により、適用補助剤(1a)の断片は、使用者が接着層に触れる必要がないように、第2の領域の接着層に再度適用される。
【0166】
経口薄膜は、場合によりマイクロニードル(5)を備える。これらのマイクロニードル(5)は、別の接着層(4)で経口薄膜に適用されるか、または代替の接着手段を使用して経口薄膜に接着される。
【0167】
図4:
図4は、経口薄膜および経口薄膜のための適用補助剤を含む複合体の別の可能な実施形態を示す。ここで、複合体は、経口薄膜が配置される適用補助剤の第1の領域、および経口薄膜が触れられないように使用者が適用補助剤に触れることができるように設計される適用補助剤の第2の領域を有する。使用者は、図案化された手(9)によって表される。
【0168】
経口薄膜(7)は、使用者が彼の手(9)で触れる領域とは異なる領域の適用補助剤(6)に適用される。経口薄膜(7)は、マイクロニードル(8)を備えることができる。
【実施例】
【0169】
本発明は、非制限的な実施例を参照して、以下により詳細に説明される。
【実施例1】
【0170】
経口薄膜を、マイクロニードルシステムを使用して製造した。
【0171】
マイクロニードルシステムは、以下の表1による組成を有していた。
【0172】
【0173】
全ての構成要素を、加工用溶媒水(process solvent water)に溶解した。ついで、塊をシリコーンマトリックス(「ネガ型」、ニードルの数、形、および長さを設定する)上に分注し、乾燥した。乾燥したマイクロニードルシステムをマトリックスから脱型し、包装した。
【0174】
経口薄膜は、以下の表2による組成を有していた。
【0175】
【0176】
原料を水に溶解し、ライナー上にコーティングし、ついで乾燥オーブン中で乾燥した。これにより、96g/m2の単位面積あたりの重量を有する膜を得た。
【0177】
マイクロニードルを適用するために、2つの変異形を選択した。
【0178】
両方の変異形は、この処方中のPolyoxが、70℃の乾燥温度(dry temperature)で柔らかく、粘着状態にある低い融点を使用した。
【0179】
変異形1:
乾燥時間が経過した直後に、マイクロニードルを、これらの裏側に、まだ70℃の膜があるように置いた。ポリエチレンオキシド膜は、まだ柔らかいので、マイクロニードルは、接着することになる。冷却後、膜は凝固し、マイクロニードルは、「溶接」される。
【0180】
変異形2:
マイクロニードルを、これらの裏側に、冷たく硬いポリエチレンオキシド膜があるように適用した。ついでこの膜を70℃まで加熱し、マイクロニードルを固定した。ついで冷却後、これらのマイクロニードルは膜に溶接される。
【実施例2】
【0181】
マイクロニードルを、接着層によって経口薄膜上に接着した。マイクロニードルシステムは、実施例1のマイクロニードルに一致する。
【0182】
この目的のために、表3に示される組成を有する接着層を使用した。
【0183】
【0184】
原料をエタノールに溶解し、シリコーン化ライナー上にコーティングし、ついで乾燥した。得られた接着層は、47g/m2の単位面積あたりの重量を有していた。
【0185】
経口薄膜として、以下の表4による溶解性組成物を使用した。
【0186】
【0187】
ポリマーを水/エタノール混合物に溶解し、ついで他の原料を撹拌し、ホモジナイズした。塊をシリコーン化ライナー上に広げ、乾燥した。これにより、48g/m2の単位面積あたりの重量を有する膜を得た。
【0188】
ついで、製造した接着層を使用してマイクロニードルおよび経口薄膜を互いに接合した。
【実施例3】
【0189】
マイクロニードルを有する経口薄膜を、適用補助剤としてのポリビニルアルコール発泡体と共に用意した。マイクロニードルシステムは、実施例1のマイクロニードルシステムに一致する。
【0190】
適用補助剤は、以下の処方を有していた。
【0191】
【0192】
ポリビニルアルコールのプレ溶液を、水中で製造した。ついで他の原料をこのプレ溶液に撹拌し、溶解した。ついでここで使用した発泡体を、発泡マシンを使用して起泡し、パイロットプラントで乾燥した。
【0193】
経口薄膜を、接着層を使用して適用補助剤に適用した(実施例2に類似している)。
【0194】
安定な複合体を得た。しわになりやすい非常に薄い経口薄膜を適用できた。不適切な適用をするとマイクロニードルが折れることになるので、マイクロニードルの存在は適切な適用を特に必要とした。
【国際調査報告】