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特表2024-543159両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241112BHJP
   C22C 38/32 20060101ALI20241112BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/32
C21D9/46 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531310
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022133985
(87)【国際公開番号】W WO2023093798
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111414367.4
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 嬌
(72)【発明者】
【氏名】孫 全 社
(72)【発明者】
【氏名】曲 李 能
(72)【発明者】
【氏名】蒋 小 明
(72)【発明者】
【氏名】王 俊 凱
(72)【発明者】
【氏名】王 金 濤
(72)【発明者】
【氏名】王 木
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA13
4K037EA14
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA22
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB05
4K037FA02
4K037FA03
4K037FC03
4K037FC04
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG00
4K037FH01
4K037FJ05
4K037FL01
4K037FL02
4K037GA04
4K037JA06
4K037JA07
(57)【要約】
本発明は、Feと不可避的不純物を含む両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板であって、さらに、質量パーセントで、化学元素C:0.06~0.12%、0<Si≦0.08%、Mn:0.5~1.2%、P:0.01~0.05%、S:0.005~0.05%、Al:0.008~0.06%、N≦0.006%、Ti:0.03~0.1%、B:0.0002~0.0035%、Cr:0.01~0.06%、Cu:0.01~0.06%、Mg:0.0005~0.03%を含む、両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板を開示している。応じて、本発明は、さらに、以下の工程を備える上記両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の製造方法を開示している:(1)製錬、精錬と連鋳;(2)鋳造ブランクの加熱;(3)熱間圧延と巻取:熱間圧延の最終圧延温度を810~880℃に、巻取温度を620~680℃に制御する;(4)スケール除去;(5)冷間圧延:冷間圧延の圧下率を60~70%に制御する;(6)連続焼鈍:均熱温度が780~850℃であり、均熱時間が120~200sであり、過時効温度が165~450℃であり、過時効時間が250~350sである;(7)平坦化。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feと不可避的不純物を含む両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板であって、
さらに、質量パーセントで、化学元素C:0.06~0.12%、0<Si≦0.08%、Mn:0.5~1.2%、P:0.01~0.05%、S:0.005~0.05%、Al:0.008~0.06%、N≦0.006%、Ti:0.03~0.1%、B:0.0002~0.0035%、Cr:0.01~0.06%、Cu:0.01~0.06%、Mg:0.0005~0.03%を含む、両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項2】
各化学元素の質量パーセントは、C:0.06~0.12%、0<Si≦0.08%、Mn:0.5~1.2%、P:0.01~0.05%、S:0.005~0.05%、Al:0.008~0.06%、N≦0.006%、Ti:0.03~0.1%、B:0.0002~0.0035%、Cr:0.01~0.06%、Cu:0.01~0.06%、Mg:0.0005~0.03%、残部がFeと不可避的な不純物である、請求項1に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項3】
不可避的不純物中に、0≦0.008%、Ni≦0.1%、Mo≦0.1%である、請求項1または2に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項4】
各化学元素は、さらに、
0.05%≦C-(Ti-3.43N-1.5S)/4≦0.1%;
0.08%≦Ti+0.875C≦0.25%;
0.65≦2.5Ti/(1.2C+8.57N+3.75S)≦1.35
から選ばれる少なくとも一項を満たす、請求項1または2に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項5】
さらに、Nb:0.005~0.04%を含む、請求項1又は2に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項6】
ミクロ組織のマトリックスが均一で微細なフェライト+パーライトであり、パーライトの体積での相割合<8%であり、ここで、パーライトがフェライト三叉粒界に位置する、請求項1又は2に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項7】
ミクロ組織は、微細で分散して分布したTiの第2相粒子を含む第2相粒子を含む、請求項6に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項8】
前記Tiの第2相粒子は、TiN、TiとTiCを含み、前記TiN析出物の直径が50~300nm、Ti析出物の直径が30~200nm、TiC析出物の直径が1~15nmである、請求項7に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項9】
フェライトの結晶粒度が10~11級である、請求項6に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項10】
降伏強度≧360MPa、ゲージ距離80mmにおける破断伸び≧28.0%、引張強度≧440MPa、850℃で12分間の高温エナメル焼成後の降伏強度≧330MPa;好ましくは、前記両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の降伏強度が360~415MPaであり、引張強度が440~510MPaであり、破断伸び率A80が28.0~33.0%であり、850℃12分間のの高温エナメル焼成後の降伏強度が330~370MPaである
から選ばれる少なくとも1つの性能を満たす請求項1又は2に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板。
【請求項11】
基材と基材の両面にエナメル層を備え、
前記基材の元素組成は、請求項1~5のいずれか1項に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の元素組成と同じである;好ましくは、前記エナメル鋼の降伏強度≧330MPa、好ましくは330~370MPaであり、引張強度≧400MPa、好ましくは400~460MPaであり、水素浸透値≧7.5 min/mm、好ましくは7.5~16.0 min/mmであり;好ましくは、該基材のミクロ組織のマトリックスが均一で微細なフェライト+パーライトであり、ここで、パーライトの体積での相割合<8%、好ましくは1.5~6.5%であり、パーライトがフェライト三叉粒界に位置する;好ましくは、基材のミクロ組織は、微細で分散して分布したTiの第2相粒子を含む第2相粒子を含む;好ましくは、Tiの第2相粒子は、TiN、TiとTiCを含み、TiN析出物の直径が50~300nmであり、Ti析出物の直径が30~200nmであり、TiC析出物の直径が3~25nmである
ことを特徴とする両面エナメル鋼。
【請求項12】
(1)製錬、精錬と連鋳;
(2)鋳造ブランクの加熱;
(3)熱間圧延と巻取:熱間圧延の最終圧延温度を810~880℃に、巻取温度を620~680℃に制御する;
(4)スケール除去;
(5)冷間圧延:冷間圧延の圧下率を60~70%に制御する;
(6)連続焼鈍:均熱温度が780~850℃であり、均熱時間が120~200sであり、過時効温度が165~450℃であり、過時効時間が250~350sである;
(7)平坦化;
の工程を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の製造方法。
【請求項13】
工程(2)において、加熱温度が1100~1230℃であり、炉時間≧360 minである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(7)において、平坦化の圧下率を0.6~1.2%に制御する、請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載の方法により前記両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板を製造する工程、及び、製造された両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板をエナメル焼成する工程を備える;好ましくは、エナメル焼成工程において、840~900℃で8~15分間エナメル焼成する、請求項11に記載の両面エナメル鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料及びその製造方法に関し、特に両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、通常のエナメル内胆の製造方法では、鋼板を、打ち抜き、丸めによりエンドキャップやバレルボディを得た後、溶接して内胆スラブになり、続いて前処理を行って表面の残油、酸化スケールなどの不純物を除去してエナメル塗装に適する表面を得、最後に湿式エナメル塗装と高温焼成を行い、完成品としてエナメル内胆を得る。
【0003】
鋼板は、エナメル内胆を作る重要な材料の一つであり、内胆全体の耐圧強度を決定するだけではなく、内胆全体のエナメル品質と使用寿命を大きく決定する。そのため、エナメル内胆用鋼の性能に対する市場の要求は通常に高く、高い降伏強度、優れた成形性、優れた溶接性とエナメル塗装性能を持つ必要がある。
【0004】
従来技術では、一部の研究者は、既にエナメル内胆を生産するための高強度鋼板について研究を行ってきた。例えば、公開番号CN103510011A、CN10139684A、CN10125530A、CN202199726A、CN103643118Aの特許文献では、いずれもエナメル内胆を製造するための高強度鋼板が設計されている。これらの成分の特徴は,低炭素鋼を基礎として、マンガンとチタンの含有量を高め、且つニオブ又は希土類元素を補助として添加することにより、鋼板の強度とスケール爆発防止性能を高める目的を達成する。
【0005】
これらの特許文献では、主に鋼板の強度問題に注目しており、挙げられた例では、鋼板の降伏強度がいずれも350MPa以上であるが、依然としていくつかの不足がある:これらの鋼板は、主に片面エナメル塗装技術に適用され、両面エナメルのスケール爆発しない要求を満たすことができない。
【0006】
エナメル内胆は、実際使用中に、お湯が排水管から排出されるにつれて、同時に大量の熱が奪われる;現在、電気熱企業は保温の効果を達成するために内胆と外殻の間に泡発層を充填する方法を採用している。電気温水器の作業効率を高め、熱損失を回避し、エネルギー消費を削減するために、多くのメーカーは、熱交換型の新たな内胆構造の開発を試みてきたが、そのためにはエナメル内胆に水と接触する内壁にだけではなく、余熱と接触する外面にも蒸気腐食の発生を防ぐためにエナメル塗装する必要がある。
【0007】
しかし、これまで、国内では両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の開発に向けた資料や応用実践が示されていない。これに基づいて、本発明では、市場の需要を満たすために、新たな両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法を得ることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、高い強度、良好な塑性及び優れたエナメル性能を備えるだけではなく、同時に両面エナメル塗装の要求を満たすことができる両面エナメル内胆用高強度冷延鋼板の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板は、成形、エナメル塗装、溶接、耐圧などの点で良好な総合性能を備え、特に優れた溶接性能、優れたスケール爆発防止性能、密着性能と耐ピンホール/バブル欠陥性能、及び高温エナメル焼成後の高い強度を備え、特に両面エナメル内胆の製造に適用される。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、Feと不可避的不純物を含む両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板であって、さらに、質量パーセントで、化学元素C:0.06~0.12%、0<Si≦0.08%、Mn:0.5~1.2%、P:0.01~0.05%、S:0.005~0.05%、Al:0.008~0.06%、N≦0.006%、Ti:0.03~0.1%、B:0.0002~0.0035%、Cr:0.01~0.06%、Cu:0.01~0.06%、Mg:0.0005~0.03%を含む、両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板を提供する。
【0011】
さらに、本発明に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、各化学元素の質量パーセントは、C:0.06~0.12%、0<Si≦0.08%、Mn:0.5~1.2%、P:0.01~0.05%、S:0.005~0.05%、Al:0.008~0.06%、N≦0.006%、Ti:0.03~0.1%、B:0.0002~0.0035%、Cr:0.01~0.06%、Cu:0.01~0.06%、Mg:0.0005~0.03%、残部がFeと不可避的な不純物である。
【0012】
本発明の化学成分設計において、主にC、MnとP元素で強化し、且つ適量のTiとB元素を配合して添加し、適切にS元素の含有量を高め、同時にCu、CrとMgなどの合金元素を補助として添加する。ここで、Ti元素を適量に添加し、S元素の含有量を高め、N元素の含有量を制御することにより、TiをC、S、Nと微細で分散して分布した第2相粒子を生成させることができ、それは、スケール爆発防止性能を高めるのに寄与するだけではなく、エナメル焼成時のフェライト結晶粒の成長を制御し、鋼板の抗高温軟化能力を向上させることができる。また、適量のB元素は、Pによる二次脆性問題を軽減させ、同時にさらにスケール爆発防止性能を改善させ、鋼板の高温強度を高めることができる。
【0013】
本発明では、化学元素及びその添加量を合理的に調整し、特にスケール爆発防止性能、耐ピンホール欠陥性能と強度に影響を与えるTi、C、SとNの関係を限定し、且つ加工プロセスを制御することによって、両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の開発を実現し、鋼板が高い強度と良好な塑性を備えることを確保すると同時に、両面エナメルがスケール爆発しなくてエナメル層のバブル構造の良好な要求を満たすことを確保できる。
【0014】
本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、各化学元素の設計原理は、以下の通りである:
C:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Cは、最も基本的な強化元素であり、鋼中のC元素含有量の上昇に伴い、鋼板の強度も増加するが、塑性と靭性はそれに応じて低下する。鋼に適量のC元素を添加することにより、鋼板の基礎強度を保証するだけではなく、鋼中のTi元素と結合してTiC粒子を形成でき、CがパーライトとTiC粒子の形で存在できるようにすることができる;応じて、プロセス制御により、形成されたTiC粒子をフェライトマトリックス上に均一に分散させることができ、それは、析出強化によって鋼板の強度を高めるだけではなく、有効な水素トラップとして鋼板のスケール爆発防止性能を向上させることができ、また高温エナメル焼成時にオーステナイト結晶粒の粗化やフェライト結晶粒の成長を制御でき、エナメル焼成後の鋼板の軟化を効果的に防止できる。なお、鋼中のC元素の含有量が高すぎると、鋼中に大量のパーライトが生成し、それは鋼板の成形性を損なうだけではなく、エナメル焼成時にCOガスが多く発生し、エナメル表面にバブル、ピンホール欠陥が形成されるので、鋼中のC元素の含有量は高すぎてはいけない。従って、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、C元素の質量パーセントを0.06~0.12%に制御した。
【0015】
Si:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Si元素は、フェライトとオーステナイトに溶解でき、鋼の硬度と強度を高めることができるが、含有量が高すぎると、鋼の塑性と靭性を著しく低下させる。一般的に、鋼に適量のSiを添加することは鋼板の密着性能に影響しないが、鋼中のSi元素含有量が高すぎると、鋼板が加熱時に表面にSiOフィルムが形成され、エナメルの鋼板への浸潤及び両者の間の化学反応を阻害し、鋼板とエナメルの密着強度を低下させる。また、Siが酸洗過程における鋼板の水素吸着を加速させ、スケール爆発生の可能性を高める。そのため、Si元素の鋼板の性能に対する有益な効果と不利な影響を総合的に考慮し、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Siの質量パーセントを0<Si≦0.08%を満たすように制御する。いくつかの実施形態では、Siの質量パーセントは、0.005~0.08%である。
【0016】
Mn:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Mnは、通常の強化元素であり、固溶状態で存在し、フェライトマトリックスを強化する役割を果たすことができる。同時に、Mn元素は、S元素と反応してMnSを生成でき、硫黄による熱脆性を克服できるだけではなく、有効な水素トラップとしてスケール爆発防止性能に対る重要な役割を果たす。しかし、MnSは長尺状の介在物であり、鋼板の横方向性能に不利であるので、鋼材の設計には、長尺状のMnSが球状Tiに徐々に置き換えられ、鋼板の横方向の塑性と靭性を改善させるように適量のTi元素を添加する。なお、鋼中のMn元素の含有量が高すぎると、Mn元素がフェライトのオーステナイトへの変態温度を低下させ、鋼板を高温エナメル焼成時の撓みと変形を容易にさせるので、材料の塑性と密着性を低下させるだけではなく、鋼板の撓み性能にも影響を与えるため、鋼中のMn元素の含有量は同様に高すぎてはいけない。従って、鋼板の性能を確保するために、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Mnの質量パーセントを0.5~1.2%に制御する。
【0017】
P:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、鋼に適量のP元素を添加することは鋼板のスケール爆発防止能力を有効に高めることができる;また、Pのフェライトへの固溶は鋼板の強度と硬度を高めることができる;しかし、Pは、偏析が深刻であり、鋼の冷脆性を増加させるだけではなく、塑性と靭性を著しく低下させるため、本発明では、Pの偏析による二次加工脆性を緩和するために、ホウ素、モリブデンなどの合金元素を適量に添加してもよい。従って、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、P元素の質量パーセントを0.01~0.05%に制御する。
【0018】
S:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、S元素の含有量を適宜に高めると、チタン、マンガンと複合介在物を形成し、エナメル塗装時のスケール爆発防止に有益な役割を果たすことができる;本発明では、その配合量とプロセスを合理的に制御することにより、これら複合介在物のサイズが大きすぎることをさらに防止でき、そうではないと、鋼板のスケール爆発防止性能と成形性能に影響する。従って、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、鋼におけるS元素の有益な効果を実現するために、Sの質量パーセントを0.005~0.05%に制御する。
【0019】
Al:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Al元素は、脱酸素と結晶粒を微細化させる役割を果たすだけではなく、鋼中の窒素を固定し、鋼の時効傾向を下げ、鋼の低温靭性を高めることができる。しかし、鋼中のAl元素の含有量が高すぎると、製錬や鋳造などに困難をもたらすので、鋼中のAl元素の含有量は高すぎるべきてはいけない。これに基づいて、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Al元素の質量パーセントを0.008~0.06%に制御する。
【0020】
N:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、窒素は、炭素と同様に、鋼中におけるN元素の含有量が高いほど、鋼板の成形性が悪くなり、時効を引き起こすので、N元素含有量の上限を制限すべきである;また、本発明では、N元素は、Tiと結合して対応な窒化物を形成でき、鋼板のスケール爆発防止性能を向上させることができる。なお、鋼中のN元素の含有量が高すぎると、形成された窒化物のサイズが大きくなり、スケール爆発防止性能を向上させる作用が非常に限られ、かつ、鋼の塑性を損なうので、鋼中のN元素含有量は高すぎるべきてはいけない。従って、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、N元素の質量パーセントをN≦0.006%に制御する。
【0021】
Ti:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Tiは極めて活発な金属元素であり、炭素、窒素、硫黄と安定な化合物を生成でき、プロセス制御によりこれらの化合物をフェライトマトリックスに均一に分散分布させ、これらのスケール爆発防止、マトリックス強化の役割を果たす。また、Ti元素は、密着にも一定の利点があり、Ti元素が酸化して生成されたTiが鋼板表面に偏集し、鋼板とエナメルの間の密着層の幅を大幅に広げることができるが、Tiの数が多すぎると、鋼板とエナメルの間の物理化学反応を阻害する。従って、Ti元素の有益な効果を発揮するために、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Ti元素の質量パーセント含有率を0.03~0.1%に制御する。
【0022】
B:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、B元素は、P偏集による二次脆性問題を効果的に軽減させることができる;また、Bは、鋼中に炭化ホウ素を形成し、部分的に固溶形式で存在し、材料のスケール爆発防止性能をさらに向上させることが改善できる;しかし、B含有量が高すぎると、連続鋳造ブランク角部の横割れを引き起こすこともある。また、B元素は、オーステナイト粒界に偏集でき、高温エナメル焼成時に元素の拡散と粒界の移動を阻止し、鋼板の高温強度を高めることができる。従ってB元素の有益な効果を発揮するために、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、B元素の質量パーセントを0.0002~0.0035%に制御する。いくつかの実施形態では、B元素の質量パーセントが、0.0005~0.0035%である。
【0023】
Cr:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Cr元素は、効果的に鋼材の強度を強化し、鋼材の靭性を低下させることができる;適量のCrは、鋼材の密着性を高めるのに有利である;しかし、鋼中のCr元素の含有量が高すぎると、スケール爆発を引き起こしてしまうので、鋼中におけるCr元素の含有量は高すぎてはいけない。従って、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板のおいて、Cr元素の質量パーセントを0.01~0.06%に制御する。いくつかの実施形態では、Cr元素の質量パーセントが、0.01~0.05%である。
【0024】
Cu:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、酸洗を含む前処理プロセスでは、微量のCuは、エナメル密着性能に一定の利点がある;Cu元素は、鋼中に主に固溶の形で存在し、酸洗時に酸液に溶解したCu2+は、置換反応によって再び鋼板表面に金属CuまたはCuS化合物を形成し、酸洗後の残渣であるCuまたはCuSは、多孔質フィルムであり、高温エナメル焼成時に陰極として電気対腐食を生じ、鋼板表面の粗さを増加させ、エナメルの密着性能を向上させる。しかし、銅が局所的に集中された箇所では、エナメル層内に大量のバブルが発生する。これに基づいて、Cu元素の有益な効果を発揮するために、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、Cu元素の質量パーセントを0.01~0.06%に制御する。いくつかの実施形態では、Cu元素の質量パーセントが、0.01~0.05%である。
【0025】
Mg:本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、適量のMg元素を添加することにより、鋼中の介在物の形態を効果的に改善し、鋼の塑性と靭性を高めることができる。したがって、本発明では、Mg元素の質量パーセントを0.0005~0.03%に制御する。
【0026】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、不可避的不純物中に、O≦0.008%、Ni≦0.1%、Mo≦0.1%である。
【0027】
本発明に係る技術方案では、O、Ni、Moはいずれも鋼中の不可避的不純物元素であり、技術条件及び生産コストが許す限り、鋼中における不純物元素の含有量をできるだけ低く制御する必要がある。
【0028】
O:本発明において、O元素は、鋼板の加工性能とエナメル性能に影響を与える。一方、O元素の含有量が高すぎると、鋼中に酸化物の混入が多すぎ、鋼板の塑性と靭性を悪化させる;一方、O元素の含有量が高すぎると、また大量のTiを消費し、過剰なTiを形成し、密着性能に不利であり、スケール爆発防止性能に有益な第2相粒子TiN、TiとTiCの生成も減少する。そのため、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、不純物元素Oの含有量を厳格に制御し、O元素の質量パーセントが0≦0.008%を満たすように制御する必要がある。
【0029】
NiとMo:本発明において、NiとMo元素は、エナメルの密着性を高めることに有利であり、これは、高温エナメル焼成時に、NiとMo元素は、エナメルの鋼板への浸潤と浸透を促進でき、かつエナメル中のイオンと鉄イオンの相互的な溶解と拡散を促進できるからである。また、Niは、鋼中の水素拡散を阻止する作用もあり、鋼板のスケール爆発防止性能を向上させることができる。しかし、NiとMo元素はいずれも貴重な合金であり、NiとMo元素の含有量が高すぎると、コストが増加するだけではなく、密着性能も低下する。総じて、不純物元素であるNiとMoがもたらす悪影響は、それがもたらす有益な効果よりも大きい。そのため、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、不純物元素であるNiとMoの含有量を、NiとMo元素の質量パーセントがNi≦0.1%、Mo≦0.1%を満たすように厳格に制御すべきである。いくつかの実施形態では、NiとMo元素の質量パーセントを、Ni≦0.02%、Mo≦0.04%を満たすように制御する。
【0030】
また、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、各化学元素は、さらに、以下の各式の少なくともいずれか一項を満たす:
0.05%≦C-(Ti-3.43N-1.5S)/4≦0.1%;
0.08%≦Ti+0.875C≦0.25%;
0.65≦2.5Ti/(1.2C+8.57N+3.75S)≦1.35;
式中の要素記号は、対応な要素の質量パーセントを表す。
【0031】
従来技術文献では、Ti、C、N、Sの関係の限定には言及していない。チタン化合物の生成自由エネルギーと固溶度に基づいて、Tiは、まず鋼中のNとSを固定し、Tiが残ると、Cと結合してTiCを形成する。過剰なチタン=Ti-(4C+3.43N+1.5S)>0であれば、炭素がすべてチタンに固定したことを示す;過剰なチタン≦0であれば、チタンが一部の炭素としか結合していないか、炭素と結合していないことを示し、炭素がパーライトの形で存在し、パーライト成分の制御は、鋼板の塗装性能、特に耐ピンホール欠陥性能に大きな影響を与える。パーライトは、焼成過程で分解してCOガスを発生するが、一般的には、パーライトの含有量が高いほど、焼成温度が高いか焼成時間が長いほど、発生するガスが多くなり、エナメル層に多すぎ、大きすぎるバブルが発生しやすく、表面バブル、ピンホール欠陥をもたらし、エナメル層の品質を損なう。
【0032】
上記の態様において、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、単一元素の含有量を制御すると同時に、さらに、C、Ti、N及びSの質量パーセントが0.05%≦C-(Ti-3.43N-1.5S)/4≦0.1%を満たすように制御する。
【0033】
その理由として、本発明において、炭素は、主にチタンの低温析出物であるTiC粒子とパーライトの形式で存在し、この関係式は、パーライト組織を形成する遊離炭素の含有量を制限するものであり、一方で鋼中に0.05%超のCでパーライトを形成して鋼板の強度とスケール爆発防止性能を確保することを保証し、他方でパーライトの含有量が高すぎてはならないことを制限し、そうしないと高温エナメル焼成する時に大量のCOガスが発生し、エナメル層のバブル構造不良、表面ピンホール欠陥をもたらし、鋼板の塑性を損なうこともある。
【0034】
また、鋼板中に十分な量の第2相粒子が形成されることを保証するために、Ti、Cの質量パーセントが0.08%≦Ti+0.875C≦0.25%を満たすように制御することも好ましい。
【0035】
また、析出物のタイプ、サイズ、形態は鋼板の性能に大きな影響を与えるため、析出物を制御するために、本発明は単一元素の含有量を制御すると同時に、さらに、Ti、C、N及びS元素の質量パーセントを、0.65≦2.5Ti/(1.2C+8.57N+3.75S)≦1.35ように制御してもよく、その目的は、チタンの炭素、窒素、硫化物粒子がフェライトマトリックス内に微細で均一に分散して分布したことを確保し、さらに鋼板の耐スケール爆発性能を向上させるだけではなく、析出強化の役割を果たし、且つ高温エナメル焼成時にフェライト結晶粒の成長を抑制する役割も果たし、鋼板の強度とエナメル焼成後の強度を高めるためである。この関係式を満たさないと、鋼板に形成される第2相粒子のサイズが大きくなり、鋼板の成形性能とスケール爆発防止性能を低下させる。
【0036】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、さらに、Nb:0.005~0.04%を含む。
【0037】
本発明の上記の態様において、鋼にはさらにNb元素を添加してもよく、Nbは、Tiと同様に、強炭素/窒化物形成元素であり、また、一部のNbは、固溶した状態で存在する。
【0038】
本発明において、Nb元素は、鋼の再結晶温度を高め、オーステナイトの再結晶を抑制し、オーステナイトの変形効果を効果的に保持し、それによってフェライト結晶粒を微細化させることができる;Nbの結晶粒を微細化させる作用により、鋼板がエナメル焼成後に軟化し、溶接時に熱影響領域の結晶粒の粗大化を阻止できる。また、Nbの炭素/窒化析出物は、鋼板の水素貯蔵能力にも役立つ。従って、Nb元素が奏する有益な効果を考慮して、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、好ましくは適量のNb素を添加し、Nb元素の質量パーセントが0.005~0.04%に制御してもよい。
【0039】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、ミクロ組織のマトリックスが均一で微細なフェライト+パーライトであり、パーライトの体積での相割合<8%である;ここで、パーライトがフェライト三叉粒界に位置する。いくつかの実施形態では、パーライトの体積での相割合は2.0~6.5%である。
【0040】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、ミクロ組織は、微細で分散して分布したTiの第2相粒子を含む第2相粒子を含む。
【0041】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、前記Tiの第2相粒子は、TiN、TiとTiCを含み、前記TiN析出物の直径が50~300nm、Ti析出物の直径が30~200nm、TiC析出物の直径が1~15nmである。
【0042】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、フェライトの結晶粒度が10~11級である。
【0043】
さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、その性能が下記の少なくとも1項を満たす:降伏強度≧360MPa、ゲージ距離80mmにおける破断伸び率≧28.0%、850℃で12分間の高温エナメル焼成後の降伏強度≧330MPa。さらに、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、引張強度≧440MPa。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、降伏強度が360~415MPaであり、引張強度が440~510MPaであり、破断伸び率A80が28.0~33.0%であり、850℃12分間の高温エナメル焼成後の降伏強度が330~370MPaである。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明は、基材と基材の両面にエナメル層を備える両面エナメル鋼を提供し、この基材の元素組成は、本発明のいずれかの実施形態に記載の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の元素組成と同じである。いくつかの実施形態では、このエナメル鋼の降伏強度≧330MPa(好ましくは330~370MPaである)、引張強度≧400MPa(好ましくは400~460MPaである)、水素浸透値≧7.5 min/mm いくつかの実施形態では、このエナメル鋼の水素浸透値が7.5~16.0 min/mmである。いくつかの実施形態では、該基材のミクロ組織のマトリックスが均一で微細なフェライト+パーライトであり、ここで、パーライトの体積での相割合<8%(好ましくは1.5~6.5%である)、パーライトがフェライト三叉粒界に位置する。いくつかの実施形態では、基材のミクロ組織は、微細で分散して分布したTiの第2相粒子を含む第2相粒子を含む。さらに、前記Tiの第2相粒子は、TiN、TiとTiCを含み、TiN析出物の直径が50~300nmであり、Ti析出物の直径が30~200nmであり、TiC析出物の直径が3~25nmである。前記エナメル層に用いられる材料は、当技術分野で周知のエナメル釉薬であってもよい。代表的な材料は、福禄EMP 6515型高温釉薬である。
【0046】
応じて、本発明のもう一つ目的は、簡便で実行可能な両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の製造方法を提供し、製造された両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の降伏強度≧360MPa、ゲージ距離80mmにおける破断伸び率≧28.0%、水素浸透値≧7.5 min/mm、少なくとも850℃で少なくとも12分間での高温エナメル焼成後の降伏強度≧330MPaであり、両面エナメル塗装の要求を満たすことができる。
【0047】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の工程を備える、前記の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の製造方法を提供する:
(1)製錬、精錬と連鋳;
(2)鋳造ブランクの加熱;
(3)熱間圧延と巻取:熱間圧延の最終圧延温度を810~880℃に、巻取温度を620~680℃に制御する;
(4)スケール除去;
(5)冷間圧延:冷間圧延の圧下率を60~70%に制御する;
(6)連続焼鈍:均熱温度が780~850℃であり、均熱時間が120~200sであり、過時効温度が165~450℃であり、過時効時間が250~350sである;
(7)平坦化。
【0048】
本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の製造方法では、工程(1)において、鉄水予備脱硫、転炉の頂底の複合ブロー、出鋼合金化を経て基本的な要求を満たす鋼液成分を得、その後CAS精製処理を経て温度と成分が均一で安定した鋼水を得、最後に連続鋳造を経て上記組成の連続鋳造ブランクを形成してもよい。
【0049】
工程(3)の熱間圧延と巻取において、熱間圧延の過程では、すべてオーステナイト単相領域で行われ、オーステナイト未再結晶領域に十分な変形量を蓄積し、オーステナイト粒界及び結晶粒内部の「変形帯」をともにフェライト核として、熱間圧延板に微細化されたフェライト組織を得ることを目的とし、最終圧延温度を、Ar相変態温度(冷却時のオーステナイトのフェライトへの転移温度)以上且つこの温度に近く設定し、これにより、本発明では、最終圧延温度を810~880℃に制御する;応じて、巻取の過程では、巻取温度が鋼板の組織性能に与える影響は非常に顕著であり、鋼板が高い強度を有することを確保し、同時にパーライトとTiC粒子を十分に分析するために、本発明では、巻取温度を620~680℃に制御する;巻取温度が低すぎると、材料の屈強比が上昇し、成形性能に不利である。
【0050】
本発明による製造方法では、前記工程(4)において、スケール除去は、熱間圧延帯鋼表面の酸化鉄スケールを効果的に除去でき、後続の操作を容易にさせる。
【0051】
工程(5)の冷間圧延操作において、冷間圧延の圧下率は、鋼板の力学性能とスケール爆発防止性能に影響を与える。まず、圧下率の大きさは、鋼板の強度に影響し、冷間圧延の圧下率が大きいほど、組織の圧延方向に沿った伸び程度が大きくなり、再結晶過程の核形成率を増加させ、再結晶が完了した時にフェライト結晶粒が細かくなり、さらに鋼板の降伏強度を向上させる。次に、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、常温組織には浸炭体とチタンの炭素/窒素/硫化物などの硬質相が含まれ、これらの粒子は冷間圧延時に変形せず、マトリックスの変形と調和しないため、粒子の周囲に大量の空孔が形成され、鋼板の水素貯蔵能力が増加し、冷間圧延の圧下率が大きいほど、空孔の数が多くなるほど、鋼板のスケール爆発防止性能が強くなる。鋼板の強度、スケール爆発防止性能及び圧延機の負荷能力を考慮して、本発明に係る製造方法の工程(5)において、冷間圧延の圧下率を60~70%に制御する。
【0052】
応じて、上記工程(6)において、高温高速の連続焼鈍プロセスを採用し、具体的に、均熱温度を780~850℃に、均熱時間を120~200sに、過時効温度を165~450℃に、過時効時間を250~350sに制御する。このような形態により、高温短時間で再結晶過程を完成でき、フェライト結晶粒の粗大化を回避でき、強度と塑性のいずれも優れた高強度冷間圧延鋼板が得られる;短時間の過時効処理により、浸炭体とチタンの低温析出物であるTiC粒子を十分に析出し、鋼板のスケール爆発防止性能を効果的に向上させる。
【0053】
さらに、本発明係る製造方法では、工程(2)において、加熱温度が1100~1230℃であり、炉時間≧360 minである。
【0054】
本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の製造方法では、工程(2)において、以下の2つの有益な効果を得ることができるので、加熱温度を1100~1230℃に、炉時間≧360minに制御することが好ましい:1は鋼材の塑性を高め、変形抵抗力を下げ、圧延中に大きな圧下量を得る;2は合金元素の十分な溶解を保証し、成分の均一なオーステナイト組織を得る。いくつかの実施形態では、工程(2)において、加熱温度が1130~1230℃であり、炉時間が370~420分間である。
【0055】
工程(2)の鋳造ブランクの加熱において、加熱温度や時間が設定値より低いと、上記2つの目的を達成できない;一方、加熱温度が高いか時間が長いと、鋳造ブランクの酸化と脱炭素が起こり、鋳造ブランクの焼損が深刻で、材料形成率に影響を与える。
【0056】
さらに、本発明に係る製造方法では、工程(7)において、平坦圧下率を0.6~1.2%に制御する。
【0057】
上記の態様により、前記の工程(7)において、焼鈍後の冷間圧延ストリップ鋼に対して小さい圧下率で二次冷間圧延を行い、以下の2つの有益効果を得ることができるので、平坦圧下率を0.6~1.2%に制御する:1は応力-歪み曲線における「降伏プラットフォーム」を軽減または除去し、プレス時に「リュダーズ帯」を回避する;2は鋼板の平坦度と板面の仕上げ度を改善する。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明は、また、上記の方法により本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板を製造する工程、及び、製造された両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板をエナメル焼成する工程を備える両面エナメル鋼の製造方法を提供する。いくつかの実施形態では、エナメル焼成工程において、840~900℃で8~15分間エナメル焼成する。いくつかの実施形態では、1回塗布と1回焼成プロセス、または2回塗布と2回焼成プロセスでエナメル焼成を行う。エナメル層に用いられる釉薬は、当技術分野で周知の様々な釉薬であってもよい。
【0059】
従来技術に比べて、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法は、以下のような利点及び有益な効果を有する:
(1)本発明では、低合金コストと低加工プロセスコストの設計思想に基づいて、成分設計の面で、炭素、マンガンとリン強化を基礎として、コストが比較的低いチタンとホウ素元素を添加し、そして銅、クロムとマグネシウムなどの合金元素を補助として添加する;加工技術の面では、連続鋳造ブランクの加熱温度、熱間圧延の最終圧延温度、巻取温度と冷間圧延の圧下率を制御し、且つ効率が高いの高温高速連続焼鈍プロセスを採用することにより、鋼板の優れた表面品質、力学性能とエナメル塗装性能を確保する。
【0060】
(2)本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、ミクロ組織のマトリックスが均一で微細なフェライト+パーライトであり、パーライトの相割合<8%、フェライトの結晶粒度が10~11級である。本発明では、主に固溶強化、析出強化と細結晶強化で鋼板の強度を高め、鋼板の降伏強度≧360MPa、ゲージ距離80mmにおける破断伸び率≧28.0%を確保する;850℃で12分間の高温エナメル焼成後、微細で分散して分布したチタンの第2相粒子は、フェライト結晶粒の成長を効果的に制御でき、しかもホウ素元素は、鋼の高温強度を高めることができ、鋼板のエナメル焼成後の降伏強度が330MPa以上に維持されることを確保し、電熱内胆の耐圧要求をよりよく満たす。
【0061】
(3)本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、主に、フェライトの三叉粒界におけるパーライトと、チタンの微細で分散して分布された第2相粒子に依存して、鋼板のスケール爆発防止性能を向上させる;また、ホウ素もスケール爆発防止性能をさらに改善させることができ、且つ微細化されたフェライト結晶粒も、結晶粒界に水素を貯蔵する役割を果たし、結晶粒が細い、粒界面積が大きいほど水素貯蔵能力が高いので、スケール爆発防止性能を向上させることができる。本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、水素浸透値≧7.5 min/mm、両面エナメルのスケール爆発防止要求を満たす。また、本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、パーライトを形成する遊離炭素の含有量を限定することにより、エナメル焼成過程におけるバブル不良、ピンホール欠陥の発生を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の金相ミクロ組織を示す。
図2図2及び図3は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の透過電子顕微鏡下で観察された第2相粒子の分布状態を示す。
図3図2及び図3は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の透過電子顕微鏡下で観察された第2相粒子の分布状態を示す。
図4図4は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の模擬高温エナメル焼成後の金相ミクロ組織を示す。
図5図5及び図6は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の模擬高温エナメル焼成後の透過電子顕微鏡下で観察された第2相粒子の分布状態を示す。
図6図5及び図6は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の模擬高温エナメル焼成後の透過電子顕微鏡下で観察された第2相粒子の分布状態を示す。
図7図7は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の両面エナメル塗装と高温焼成後のエナメル層のバブル構造を示す。
図8図8は、比較例1の比較鋼板の両面エナメル塗装と高温焼成後のエナメル層のバブル構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に、具体的な実施例と明細書の図面を結合して本発明に係る両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法について更なる解釈と説明を行うが、これら解釈や説明は、本発明の形態の構成を不当に限定するものではない。
【0064】
実施例1~6及び比較例1~2
表1-1及び表1-2は、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及び比較例1~2の比較鋼板における各化学元素の質量パーセントを示す。
【0065】
【表1-1】
【0066】
【表1-2】
【0067】
本発明の上記実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及び比較例1~2の比較鋼板はいずれも以下の工程で製造された:
(1)表1-1と表1-2に示す化学成分の配合比に従って製錬、精錬と連鋳を行った:鉄水予備脱硫、転炉の頂底の複合ブロー、出鋼合金化を経て基本要求を満たす鋼液成分を得、その後CAS精錬処理を経て温度と成分が均一で安定した鋼水を得、最後に連鋳を経て表1-1と表1-2に示す化学組成の連続鋳造ブランクを形成した。
【0068】
(2)鋳造ブランクの加熱:加熱温度を1100~1230℃に、加熱の炉時間≧360minに制御し、板スラブの鋳造ブランクを十分にオーステナイト化させ、均一な組成のオーステナイト組織を得、且つ鋼の変形抵抗力を低下させた。
【0069】
(3)熱間圧延と巻取:熱間圧延の最終圧延温度を810~880℃に制御し、圧延後に層流により巻取温度まで冷却し、その後、巻取温度を620~680℃に制御して巻取を行った。
【0070】
(4)スケール除去:熱間圧延板のロール表面の酸化鉄スケールを十分に除去した。
(5)冷間圧延:冷間圧延の圧下率を60~70%に制御した。
【0071】
(6)連続焼鈍:均熱温度が780~850℃であり、均熱時間が120~200sであり、過時効温度が165~450℃であり、過時効時間が250~350sであった。
【0072】
(7)平坦化:平坦圧下率を0.6~1.2%に制御した。
なお、本発明において、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板はいずれも上記の工程で製造され、その化学組成及び関連プロセスパラメータはすべて本発明の設計規範制御要件を満たす。比較例1~2の比較鋼板も上記の工程で製造されたが、その化学組成には本発明の設計規範制御要件を満たさないパラメータが存在する。
【0073】
表2-1及び表2-2は、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及び比較例1~2の比較鋼材の具体的なプロセスパラメータを示す。
【0074】
【表2-1】
【0075】
【表2-2】
【0076】
なお、実際の操作中に、過時効温度が変化し、一定値に安定するものではなく、過時効時間帯において徐々に温度が低下するものであるため、表2-2の工程(6)における過時効温度は、各実施例及び比較例では、点値ではなく、一定範囲値として示された。
【0077】
上記製造工程により製造された実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及び比較例1~2の比較鋼材それぞれについて性能試験を行い、試験結果を下記表3-1及び表3-2に列記し、具体的な試験方法は以下の通りである:
(1)エナメル用鋼の特殊な点は、高温焼成を経ったから使用することであるため、高温エナメル焼成前後における各実施例と比較例の鋼板の降伏強度の変化を検証するために、本発明では、連続焼鈍された実施例1~6及び比較例1~2の鋼板について直接に引張試験を行い、焼鈍状態鋼板の圧延方向に沿ってサンプリングし、JIS 13A規格に基づいてゲージ距離80mmにおける引張試料に加工し、その後、各実施例及び比較例の引張試料の通常の力学性能を測定して、降伏強度、引張強度とゲージ距離80mmにおける破断伸び率A80を得た。
【0078】
応じて、製造された実施例1~6及び比較例1~2の鋼板に対して、エナメル焼成温度を850℃に、炉時間を12minに制御する模擬高温エナメル焼成試験を行った;その後、高温エナメル焼成後の鋼板の圧延方向に沿ってサンプリングし、引張試験により各実施例及び比較例の鋼板のエナメル焼成(850℃×12min)後の降伏強度を得た。
【0079】
(2)実施例1~6及び比較例1~2の鋼板に両面湿式エナメル塗装と850℃×12min焼結を行い、鋼板を72h放置し、そのスケール爆発現象を観察した;且つ、光学顕微鏡によってエナメル板の断面のミクロ形態を観察し、エナメル層のバブル構造を検査した。応じて、鋼板のスケール爆発防止性能をさらに定量化するために、ヨーロッパ規格EN 10209-2013に規定の電気化学水素浸透法により無塗装鋼板のTH値を測定した。
【0080】
表3-1及び表3-2は、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板及び比較例1~2のエナメル鋼の各性能試験結果を示す。
【0081】
【表3-1】
【0082】
【表3-2】
【0083】
表3に示すように、本発明では、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、降伏強度が363~409MPaで高く、引張強度が447~502MPaであり、ゲージ距離80mmにおける破断伸び率A80が28.5~32.5%であり、三段式内胆のボディローリングまたはエンボスプレスの成形要件を満たすことができる。
【0084】
応じて、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、パーライトの相割合が2.17~6.03%であり、フェライトの結晶粒度がいずれも10.5級であった。
【0085】
模擬高温エナメル焼成(850℃×12min)後に、実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板は、依然として高い降伏強度を維持し、降伏強度はいずれも330MPa超で、332~368MPaであり、引張強度も400MPa超で、400~460MPaであった。これは、本発明に係る実施例1~6の冷間圧延エナメル用鋼が良好な高温軟化抵抗能力を有し、エナメル内胆の打圧能力を効果的に向上させ、内胆の使用寿命を延長させることができることを示す。
【0086】
実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板に基づいて、両面エナメル塗装後に得られたエナメル板は、良好なエナメル層のバブル構造を有し、バブルが微細で均一に分散する;鋼板の水素浸透時間がいずれもヨーロッパ規格EN 10209-2013に規定の閾値6.7 min/mm超であり、両面エナメル塗装時のスケール爆発防止の要求を満たした。
【0087】
しかし、比較例1においてTi元素は本発明に設計された制御範囲内にあるが、計算によると、Ti-3.43N-1.5S<0であり、すべてのTiがNとSとの結合によって消費され、Cとの結合しうる残りTiがないことを示す。また、比較例1においてC元素の含有量は制御範囲を超え、つまり、Cはすべてパーライトの形成に用いられ、かつパーライト組織の含有量は本発明の限定範囲を超え、エナメル焼成時に大量のガスが発生し、エナメル層が融着する際にガスが十分に放出されず、エナメル層中にバブルが密集して大きさも異なるため、バブル構造が不良になる。
【0088】
比較例2においてCとTiの含有量はいずれも本発明の制御範囲より低く、十分なパーライトとチタンの炭素/硫黄/窒化物を形成できず、鋼板の強度と水素吸蔵能力を低下させた。比較例2の比較鋼板は、両面エナメル塗装と高温焼成後の強度がさらに低下し、高圧水循環加圧の要求に達しず、かつ両面エナメル塗装にスケール爆発防止の要求を満たすことができなかった。
【0089】
図1は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の金相ミクロ組織を示す。
図2及び図3は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の透過電子顕微鏡下で観察された第2相粒子の分布状態を示す。
【0090】
図1に示すように、この実施形態では、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板では、ミクロ組織のマトリックスがフェライトの平均結晶粒径が8.14μmである均一で微細なフェライト+パーライトである。
【0091】
図2及び図3に示すように、この実施形態では、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、フェライトマトリックスにTiN、Ti、TiC粒子を分散して分布しており、TiN析出相の直径が76nm、Ti析出相の直径が41nm、TiC析出相のサイズは主に1~7nmである。
【0092】
図4は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の模擬高温エナメル焼成後の金相ミクロ組織を示す。図5及び図6は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の模擬高温エナメル焼成後の透過電子顕微鏡下で観察された第2相粒子の分布状態を示す。
【0093】
図4に示すように、この実施形態では、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、模擬高温エナメル焼成後のミクロ組織は、均一で微細なフェライト+パーライトであり、すなわち冷間圧延焼鈍後の組織状態と同じであり、フェライトの平均結晶粒の直径が9.52μmであり、高温エナメル焼成後のフェライトの結晶粒度には明らかな変化が見られなかった。
【0094】
実施例1~6の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板において、模擬高温エナメル焼成後のミクロ組織には、パーライトの体積での相割合がまだ8%未満であり、1.5~6.5%であった。
【0095】
図5及び図6に示すように、この実施形態では、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板では、模擬高温エナメル焼成後に、フェライトマトリックス中にTiN、Ti、TiC粒子を分散して分布し、TiN析出相の直径が82nmであり、Ti析出相の直径が73nmであり、TiC析出相のサイズは主に3~25nmであり、析出相が高温焼成過程で凝集成長する傾向があることを示す。
【0096】
図7は、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板の両面エナメル塗装と高温エナメル焼成後のエナメル層のバブル構造を示す。
【0097】
図7に示すように、この実施形態では、実施例1の両面エナメル内胆用高強度冷間圧延鋼板では、両面エナメル塗装と高温エナメル焼成後にエナメル層にバブルが細かく均一に分散しており、良好なバブル構造である。
【0098】
図8は、比較例1の比較鋼板を両面エナメル塗装と高温焼成後のエナメル層のバブル構造を示す。
【0099】
図8に示すように、比較例1の比較鋼板では、パーライトの含有量が高すぎて、エナメル焼成中に大量のCOなどのガスが発生し、これらガスがエナメル層の融着前に十分に放出されず、エナメル層中に大量の、大きさが不均一なバブルが形成し、個別のサイズが大きいバブルの直径は300μmに達し、エナメル層全体をほとんど貫通し、ピンホール欠陥が形成しやすく、エナメル製品の使用性能に影響を与える。
【0100】
なお、本件における各技術的特徴の組み合わせ方式は、本件の請求の範囲に記載の組み合わせ方式や具体的な実施例に記載の組み合わせ方式に限定されるものではなく、本件に記載のすべての技術的特徴は、相互間に矛盾が生じない限り、任意の方式で自由に組み合わせ又は結合してもよい。
【0101】
なお、上記に挙げされたたのは、本発明の具体的な実施例のみであり、本発明は、上記の実施例に限定されず、それに伴って多くの類似の変化があることは明らかである。本発明の開示から当業者によって直接に導き出される、または考えられるすべての変更は、本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】